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ツンデレじゃない長編投下・評価スレ
7
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 01:02:28 ID:ggKXaOy6
>>6
判断基準・ツ ン デ レ はあるか?
ツンデレなキャラがでてくるSS。
さあツンデレはあるか?
8
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 01:02:48 ID:39XN4txs
ようはツンデレ萌えがあればいいんじゃない?
ごめんもっと人集まってくれないと検討は難しいけど。
9
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 01:12:48 ID:bJpDc5Hs
>>7
一応あると思い込んでる
10
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 06:46:44 ID:msiNWKA2
俺はツンデレじゃないのは別スレで投下してる。
そのスレはちょっとコテの馴れ合いが多くてちょっとウザイが、適当なスレもないんでww。
11
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 07:32:30 ID:0Kkx74/.
最近は10レス以内の中編までしか投下してない俺が一言。
最初に脳内で考えてる時は、十分ツンデレなんだけど、
書いているうちに長くなってツンデレの無い回が増える俺。
一応、設定やストーリよりも、常にツンデレ重視で組んでたんだけどなあ。
12
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 15:38:48 ID:ggKXaOy6
>>11
そこはツン期→デレ期の境目の中性期ってことでひとつ
13
:
ロストマン 1/3
:2005/08/27(土) 02:16:29 ID:IEuNLHTo
まるで、出来の悪い喜劇。
…もしも神様がこの世にいるのなら、子供みたいに、無邪気で、残酷なんだろう。
見ていてくれたら、嬉しい、って…!
……でも、死んじゃったら、見届ける事なんて、できないじゃないか!
「うぅ…くっ……!」
努力して、努力して、努力して…!
他の人の、何倍も何倍も努力して!
周囲からの罵詈雑言も、堪えて、
こらえるたびに、努力して、努力して、努力して!!
「なんで…!なんでなんだよ……!?」
……それで報われないなんて、そんなの、おかしいよ!
そんなことは、絶対に、間違ってる。間違ってるんだ…!
「―――だって、だってそんなの、」
努力した人が、惨め過ぎるじゃないか…!
そんなの、虚しすぎる。そんなの、哀しすぎる……!!
――――――たくさん努力をしたなら、努力した分、報われるべきなんだ。
ぼくは、まだたったの十数年しか生きていない。
…だから。はたから見たら、こんなの唯のキレイゴトでしかないんだろう。
だけど、それでも。
……この想いだけは、間違いなんかじゃない。
――――――――決して、間違いなんかじゃ、ないんだ……!
14
:
ロストマン 2/3
:2005/08/27(土) 02:17:39 ID:IEuNLHTo
少し、眠ってしまったみたいだ。
父さんの遺した手紙が、なみだとか、はなみずとかで、くしゃくしゃになっている。
…外に出る気が、しなかった。
でも、かなみに休むって伝えないと。
「…ごめん、かなみ。
今日は、学校休むよ。ちょっと、熱があるみたい」
「アンタ、風邪じゃないでしょ。
…理由を教えなさい。それなら適当に取り繕ってあげるわ」
どうして、ばれちゃったんだろう。
嘘つくことには、慣れていたのに。
でも、かなみに教えるわけには、いかない。
同情も、哀れみも、ぼくは欲しくないんだ。
「……ただの風邪だよ。それ以上の理由は、ない」
「嘘つくの、ヘタね。
さっさと教えなさい、命令よ」
――――――もう、教えるしかない。
「……父さんが、いなくなったんだ」
そう、いなくなって。
―――――もう、二度と、帰ってこない。
「よかったじゃない、どうせすぐに―――――」
「ふざけんな!よくないに決まってるだろッ!!
どうせ!?どうせって何だよ、お前に俺の父親の何が分かるんだよ!?」
「いや、だってその………」
「今までずっと努力してきたアイツの、何がわかるって言うんだよッ!?
…分かるなら言ってみろよ。ほら、さっさと言えよ椎水かなみッ!!」
電話口から、かなみの声は聞こえない。
それで、ようやく、自分の過ちに気がついた。
…ぼくは、ばかだ。
誰も傷つけたくなんか、ないのに。
こんな言葉を、吐いてしまった……!
ぼくは、ばかだ…………!!
15
:
ロストマン 3/3
:2005/08/27(土) 02:18:46 ID:IEuNLHTo
「……ごめん、言い過ぎた。でも、ぼくは学校には行けない。
ちょっとの間、ほっといてくれ。かなみに、迷惑かけちゃうから」
ぼくは、いつも誰かに迷惑をかけて。
…やっぱり、ぼくはいらない人間なんだ。
「アンタ、やっぱりバカよ。
生きてく上で、誰かに迷惑かけるなんて当然のことでしょ?」
「…たしかに、そうかもしれない。
でも、ぼくは、かなみみたいに割り切れないんだ」
そういう生き方は、ぼくみたいな弱い人間には、できないんだ。
「学校、しばらく休むよ。風邪をこじらせたって伝えてほしい。
……ぼくのことなんて、誰も分かっちゃくれないだろうから」
「ウジウジウジウジ、いい加減あったまきたわ!
大体、アンタのことなんて、他人がわかるはずないでしょ!?」
…言われなくても、わかってる。
ただ、わかってほしいだけなんだ。
「ちょっと穿き違えてるみたいだから、一言だけ言っとくわ。
……アンタの周りにいる人たちは、人形なんかじゃない」
「そんなこと、言われなくてもわかってるよ…!」
電話を切る。
…回線を、抜いておいた。
――――――これ以上話すと、ぼくがぼくじゃなくなる気がしたから。
16
:
名無しさん
:2005/08/27(土) 13:48:02 ID:ta7UtgeM
>>15
GJ!!!
17
:
保守代わり長編の人
:2005/08/27(土) 14:45:16 ID:8dR622LE
ここは、一気に30レス投下してもおk?
18
:
名無しさん
:2005/08/27(土) 14:54:31 ID:ta7UtgeM
>>17
人いないし、いいんじゃまいか?
19
:
保守代わり長編23〜end (1/30)
:2005/08/27(土) 17:10:34 ID:8dR622LE
一人のエルフが森を駆け抜ける。
全力で、森中の気配を探る。無数に感じ取れる森の生き物の気配。そんな中、かすかに
漂ってくる邪の気配。それを目指して、ただひたすらにアスタは走っていた。
早くしなければ、魔王が降臨し世界が滅びる。それは絶対に起こってはいけないこと。
彼、アスタにとって世界の平穏こそが彼の信じる正義。彼はそれだけを信じてただひた
すらに生きていた。
そして今、魔王討伐という、まさに彼の正義の最終地点のような使命を与えられた。こ
ういうと不謹慎かもしれないが、彼は喜んでいた。
自分が、英雄になれるチャンス。(ちなみに彼は人でありながら、エルフに英雄と呼ばれ
たエドを心の師と勝手にしている)
気配は、着実に近づいている、あと少しだ。
だが、いついかなる時も、邪魔というものは入るものだ。
走る先、一人の男がたたずんでいた。二日前、小屋の外で話を盗み聞きしていた男だ。
気配で分かる。
闘志に満ちた気配。
アスタは剣の柄を握る。そして、そのままのスピードで男――リオンに攻撃を仕掛けた。
リオンも左手一本で剣を握り、対応する。
ガギンッ!!
馬鹿でかい金属音が森の空気を振動させた。
高速で走りながら振り下ろした一撃を、片手で止められた。そのことに多少の驚きを感
じつつも、アスタはすぐに後方へ跳び剣を構える。
対するリオンは独特の構えでアスタを迎える。
リ「悪いが、ここら先は絶対に行かせない」
ア「!? 何を考えているんだ!? お、お前はあの娘を守ろうとしてるのか!?」
リ「あぁ、そうだが? そんなに驚くことか?」
ア「あ、あの娘はもうじき魔王になるんだぞ! 何故守る?!」
リ「ニーナを守る。そう俺が決めたからだよ」
二人の男が、己の正義を胸に、戦いを始めた。
20
:
保守代わり長編23〜end (2/30)
:2005/08/27(土) 17:11:29 ID:8dR622LE
2500年前、魔王と神々との戦いに区切りが打たれ、世界が安定し始めた。それまで
逃げ隠れ細々と生きていた人間は、ようやく文明を発達させ始めた。
そして、その頃エルフ族の使う魔術に、人間は興味を持った。しかし、人間は魔術が使
えない。
そこで、当時の人間はエルフと血を混ぜることで、魔術行使可能な人間を作り出そうと
考えた。しかし、エルフは我々人間の欲深いところを危険に思い、決して人間とエルフが
交わらないようにと、エルフ達の間で法律を作った。
そこでエルフに一人の男が送り込まれた。男はエルフの女との間に一人の子を持つこと
に成功した。だが、すぐにハーフエルフの誕生はエルフ達に知られた。送り込んだ男はな
んとかしてハーフエルフだけは逃がすことに成功したが、ハーフエルフを生んだエルフの
女と、人間が送り込んだ男は処刑された。
しばらくして人間達は男の送った情報から、ハーフエルフを発見、保護した。
その後、研究所にてあらゆる実験が行なわれた。そして血液を採取した後、エルフがこ
のハーフエルフを始末しに来て、そのとばっちりを、人間が受けないように、先にハーフ
エルフを処分することを決定した。
だが、それを本能的に察知したのか? ハーフエルフは次の日の早朝、牢獄から逃げ出
した。
その後は、研究所では採取したハーフエルフの血液を使い、ホムンクルスの製造を試み
た。肉体そのものは、意外と早くにできた。けれど、魂ができなかった。
魂のないただの抜け殻。それでは全く意味がない。
擬似魂の製造。それは当時の人間の持つ知識では不可能な領域だった。
そのため、ホムンクルスの製造は暗礁に乗り上げた。
そして、ある時突然降臨した魔王の欠片。折角築き上げていた文明は、一気に壊され研
究所も崩壊した。だが、何とか研究員の一人が血液サンプルだけは回収に成功した。
その後、2500年の間。現れた魔王の欠片が竜族とエルフ達によって滅ぼされて、再
び文明を復活させようとしても、また途中で新たな欠片が復活し、ホムンクルスの研究も
全く出来ない状況にあった。
21
:
保守代わり長編23〜end (3/30)
:2005/08/27(土) 17:12:11 ID:8dR622LE
しかし、今から300年前の欠片の降臨を最後に文明の崩壊は起こっていない。
それによって、人間もそれなりに文明を戻し、再びハーフエルフのホムンクルス製造の
計画が持ち上がった。
だが、やはり擬似魂の製造が困難を極めた。
魂など、非物質に関する情報、知識を人間は全くと言っていいほど持っていない。
もう、ハーフエルフのホムンクルス製造は不可能なのか?
そう思われ始めた。
だが、意外なところから助け舟が出てきた。
現れたのは、一人のエルフだった。
彼は人間達に多くの知識を供給した。人間の全く知らなかった、細かな情報を与えた。
人間は彼に問うた。
―何故、我々にこんな知識を与えるのだ?―
エルフは言った。
―ハーフエルフと、人間に興味を持ったからだよ。でなければ、こんなことはしない―
よくわからないが、人間はこれによって一気に研究を進めた。
そして、今からおよそ20年前。ついに擬似魂の製造に成功。
ハーフエルフの完全なホムンクルスを作り出すことに成功した。
これは、強力な魔術兵器を手に入れたのと同義だ。
人間は感謝の意を込めて、エルフにホムンクルス一号の命名を頼んだ。
彼は自分の名前からいくつか文字を取り、それをラスティンと名付けた。
22
:
保守代わり長編23〜end (4/30)
:2005/08/27(土) 17:12:49 ID:8dR622LE
ドランドは興味あることしかしない。興味のないことは全くしようとしない。
ドランドは、ハーフエルフに興味を持った。理由は何なのだろう? 同じ異端者だから
だろうか? わからないが、彼はハーフエルフ――ミントに興味を持った。
次に興味を持ったのは人間だった。
人間はミントの血液からホムンクルスを作ろうとしていた。
全く以って馬鹿らしい。当時のエルフ達はそう思った。そのため人間のことはもはや眼
中に入らなくなった。何故なら、そんなこと不可能に違いないとエルフは思ったからだ。
ホムンクルスを作るということは、魂を創り出さなければならない。それは『奇跡』の
領域。魔王や神族くらしかできない『奇跡』だ。そんなことを、人間ができるはずがない。
そういう理由があって、人間は監視する必要なしと結論付けられた。
しかし、そんな人間にドランドは興味を持った。
本当に無理なのだろうか? 彼等の考え、アイディアは時に思いもしない物を作り出す。
もしかしたら、できるのではないか?
人間の持つ巨大な『可能性』。それにドランドは興味を持った。そして、知識を与えた。
するとどうだろうか。人間は擬似魂の製造に成功したのだ。もちろんこのことは他のエル
フには知らせていない。
作り上げられたホムンクルスは順調に成長し、今年21歳となった。
見た目は驚くほど美しく育った。だが、彼女に自我はない。もともとそうなるように魂
を創ったのだ。彼女は与えられた命令に必ず従う。まさに兵器だ。
そして、つい先日。ドランドはこの兵器を借りていった。
ドランドの目的――興味のあることは、コピー対オリジナル。どちらが勝つのか?
まるで子供のような考えだ。だが、彼はそれに興味を持ってしまった。
興味のないことは、徹底的に拒絶する。だが、興味のあることは、徹底的に試してみた
くなる。
それが、彼の性質なのだ。
だから、今ミントと、コピー――ラスティンは対峙していた。
ド「私は、あなたがこれに勝てるのかどうか、それを見てみたいんですよ」
ミントが苦渋の表情を浮かべた。
23
:
保守代わり長編23〜end (5/30)
:2005/08/27(土) 17:13:25 ID:8dR622LE
目の前のエルフが何を言っているのか。わかってるんだけど、理解できない。
混乱していると、ドランドはコピーに命令を下した。
ド「このハーフエルフを殺せ」
ミントを指差して言う。
その言葉で、コピーは動いた――いや、跳んだ。瞬時にミントの目の前に跳び込む。ミ
ントは突然のことで動けない。
コピー――ラスティンはミントの襟首を掴むと、そのまま思い切り壁目掛けてぶん投げ
る。
壁が砕ける。ミントの体が小屋の外に飛ばされた。小屋の壁に開けられた大きな穴。
その縁にラスティンが立ち、地面に倒れるミントを見た。無表情のまま跳び、大地に着
地する。
ミントは地面にうずくまりながら勝手に肺からこぼれ出る息を、何とか押しとどめよう
としていた。目を開き、こちらに向かってくる自分を見る。奇妙な光景だ。自分に殺され
る。馬鹿らしい。そんなこと、させてたまるか。
ミントが、ゆっくりと力を込めて立ち上がった。ふらふらとする体を、何とか支えなが
ら、目前の自分を見る。それは無表情。何の感情も読み取れない。まるで人形だ。
それが再び跳んだ。さっきと同じように懐に跳び込んで来る。しかし、今度は反応でき
た。全く同じでは、ミントでも分かる。地面を蹴り、体を後ろに飛ばす。
ラスティンの手は空を切った。だが、すぐにもう一歩跳び、逃げたミントに詰め寄る。
今度はミントの反撃。一瞬で魔術の構造を創りだす。描き出したのは炎。紅蓮の炎。
躊躇わず言葉を発する。
ミ「燃えろっ!」
詰め寄ろうとするラスティンとミントとの間の空間に炎の球が現れ、ラスティンを襲う。
ラスティンは体を右に飛ばした。大地を転げ周り、衣服についた火を消す。
そしてすぐに立ち上がる。両手足の布はほぼ完全に焼け落ちている。そこから見える皮
膚もひどい火傷を負っている。しかし、ラスティンは全く痛がるそぶりを見せない。
今度はラスティンが魔術の構造を編み出した。
世界の『法則』が覆され、ラスティンの想像した「法則」が具現化する。
魔術対魔術。
二人のミントの戦いが始まった。
24
:
保守代わり長編23〜end (6/30)
:2005/08/27(土) 17:14:00 ID:8dR622LE
ぶつかり合う剣と剣が火花を散らす。
リオンとアスタの攻防。
リオンが器用に敵の僅かな隙に攻撃をしようとすると、アスタが即座に反応して止める。
アスタが左右に剣を振れば、リオンが片手でその全てを受け止める。
リオンが縦に一息に剣を振る。しかし、それは空を切り地面に刺さる。すぐに抜き取り
アスタの攻撃をかわす。
アスタが一歩踏み込み、剣を横に薙ぐ。だが、それはリオンの着る服の先端を浅く切る
だけに終わった。
どちらも一歩も譲らない。
放たれる全ての攻撃をかわし、受け流し、受け止め、そしてカウンターを放つ。
だが、放たれたカウンターを、相手は全てかわし、受け流し、受け止め、そしてカウン
ターを放つ。
同じことの繰り返し。一歩も進まない戦い。
互角。
これを見たものなら、必ずそう思う。だが、実際にはそうではなかった。
アスタは全力ではなかった。
アスタはどうしてもわからないことがあった。
それは、何故目の前の男が戦うのか? それが分からない。それの理由を知りたい。だ
から、アスタはどうしても全力を出せずにいた。
もともとエルフとは対魔族用に神の創った生物兵器。素質の時点で人間とエルフは天と
地ほどの差がある。そして、彼、アスタはすでに200年を生きている。その内の150
近く、彼は剣術の鍛錬をしてきた。経験の差も歴然。
そもそも人間がエルフに勝てるはずがないのだ。
だが、アスタは全力を出せれない状況にあった。
何故、目の前の男は戦うんだ?
あの娘は魔王になる危険性を孕んでいるんだぞ!
覆しようのない悪のはずだ。
なのに、何故目の前の男はあの『悪』を守ろうとしているんだ?
分からない。
理解できない。
25
:
保守代わり長編23〜end (7/30)
:2005/08/27(土) 17:14:36 ID:8dR622LE
アスタは生きとし生けるもの全てが、共通に持つ『絶対的な正義』があると信じていた。
別に誰かに教えられてそう信じているわけではない。本人が、自ら思ったことだ。
絶対的な正義。それがあるのだから、相対的に絶対的な悪があるはずだ。
それは魔王。そうである。そうに違いないとアスタは信じていた。思い込んでいた。
けれど・・・・
けれど、目の前にいる男はどうだろう?
彼は絶対的な悪であるはずの魔王を、事実上庇おうとしている。
もちろん本気で魔王を守ろうとしているのではないだろう。彼が守っているのはあのニ
ーナとかいう少女だ。
だが、今守ったところでどうなる?
ここで、自分を殺し、ニーナが死ななくなっても、じき魔王が降臨する。そうすれば世
界は終わりだ。そのことを分かっていたら、絶対悪である魔王を滅ぼすことを最優先にす
べきではないのか? それが正義ではないのか?
自分と、目の前の男――リオンと、一体何が違うのか?
それは・・・・
それは、きっと・・・
優先順位。
そうだ、リオンとアスタの絶対的な違い。それは優先順位だ。
リオンはニーナを最上段に置いている。
それに対してアスタは、世界の平穏を最上段に置いている。
この違いが、二人の正義にズレを生じさせている。だが、やっぱり理解できない。魔王
は絶対悪。これは間違いないはずだ。だから、それを滅ぼすことを最優先させる。それは
当然のことじゃないか。
ア「何故だっ!? 何故、彼女を庇う!? 魔王が降臨すれば世界は終わるんだぞっ! 分
かってるのかっ?!」
アスタが剣を振る。それを受け止め、リオンが叫ぶ。
リ「分かってるよ! んなことっ!」
剣を弾き返す。アスタが、すぐにもう一撃放つ。
ア「だったら何故っ?! 何故!!?」
26
:
保守代わり長編23〜end (8/30)
:2005/08/27(土) 17:14:59 ID:8dR622LE
リ「ニーナを守る! それが理由って、最初に言っただろうがっ!!」
リオンがアスタの剣を再び弾き、反撃を放つ。それを受け止め、アスタが叫ぶ。
ア「守っても、すぐに魔王が降臨するんだぞっ!」
リ「ニーナを守り通したら、今度はしっかり世界も守ってやるよっ!」
ア「出来るわけないだろっ!」
横薙ぎの一撃。それをリオンが受け止め、一歩後ろに跳ぶ。そして、怒号と共に全力で
剣を振る。
もう嫌なんだ。
もう、大切な人がいなくなるのは嫌なんだ。
アミィの顔が浮かび、ニーナと重なる。
それだけは、それだけは絶対に嫌なんだ。
だから、だから!
リ「守るって言ってるだろうが! このクソエルフっ!!!!」
強力な一撃。初めてアスタの体勢が揺らいだ。体が僅かに傾く。
その隙を見逃すわけがない。
光の如く、閃光のような攻撃。その全てがアスタの体勢を崩していく。
勝てるっ!
そう思ったとき、視界の隅で何かがよぎった。そう思った時には、既にリオンの体は宙
を舞っていた。
地面に落ちる。二転三転。止まったところですぐに立ち上がり、アスタを見た。
アスタがゆっくりと右足を下ろしていた。
蹴り?!
頬がズキンズキン痛む。そっと触れてみると、その場所が痛んだ。
なるほど・・・・
攻撃は別に剣だけじゃないか・・・・
忘れてたな。
すぐに自分を戒める。
そして、再び剣を構えた。
27
:
保守代わり長編23〜end (9/30)
:2005/08/27(土) 17:15:30 ID:8dR622LE
もはや、彼には何を言っても通じない。決してその決意を曲げることはない。
そう悟った。
そして、思い出した。
前長老の言葉。
アスタが『絶対的な正義』を口にすると、前の長老は必ずこう言った。
『絶対的な正義など存在せんよ。正義は国によって、種族によって、個人によって変わる。
だから・・・・必ずいつか、全く相容れない正義を持つ者と戦うことがあるじゃろう。そ
の時は全力で戦うんじゃ。相手もそのつもりで戦ってくるはず。よいな? お前もその時
は全力を出せ。でなければ、己の正義を守れんぞ』
己の正義を守る・・・・・・
そうか・・・・これは、これは己の正義を守る戦い。自分の信じた道を、守る戦い。
故に全力を出さなければならない。自分の選んだ道を守り通すために。
全力を出さなければ、それは自分の正義を裏切ったことになる。それは出来ない。自分
の信じた正義を、裏切るわけにはいかない。
目の前の男もきっとそうだ。自分の正義を信じ、それを守る。道を歩み続けるために、
全力を出して戦っている。
なら、自分も全力を出さなければならない。
アスタの気配が変わる。
それをリオンも察知した。
さっきも言ったが、エルフと人間の力量は天と地ほどの差だ。
勝てるはずがないのだ。
アスタが動いた。
否。それは動いたというには余りにも速すぎた。
人間の目がそれを捉えられるはずがない。
気付いた時には勝敗はついていた。
リオンの腹に突き刺さったアスタの剣。
倒れて数秒後、リオンは自分の身に何が起こったのかをやっと理解して、死んだ。
その直後、森全体を強力な邪のオーラが包んだ。
ア「なっ!!? まさかっ!!?!」
28
:
保守代わり長編23〜end (10/30)
:2005/08/27(土) 17:16:03 ID:8dR622LE
リオンが死ぬ数十分前。
森を幾つもの魔術が破壊していた。
ミ「砕けろっ!」
声と共にラスティンの足元の大地が爆ぜた。
轟音と共に土砂が舞い上がる。しかし、立ち昇る砂煙の中からラスティンは何事もなか
ったかのように飛び出てきた。
ラスティンの口が僅かに動く。
すると、ミントの周りの空気の温度が急激に上昇し始めた。
ミ「熱っ!?」
すぐ、その場を離れる。すると、その動きを読んでいたのか、ラスティンが飛び込んで
きた。そして、回し蹴りを放つ。
ごうっ、と空気を切り裂く音。直撃すれば、頭蓋骨くらい軽く砕けるだろう。
格闘の技術が明らかに段違いだ。おそらくラスティンは幼少の頃より、格闘術を習わさ
れてきたのだろう。対するミントは、一応はエルフの血も入っている。才能は十分保障さ
れている。僅かな戦闘の間に、ミントはラスティンの動きを既にいくつか盗んでいる。
だが、やはり経験が少ないようだ。どう見ても、ラスティンの方が優勢だ。
ミ「くっ」
ミントが手を差し出す。
ミ「吹き飛べっ!」
暴風がラスティンを襲った。空中をラスティンの体が舞う。その体はそのまま後方の大
木にぶつかろうとした。が、その一歩手前でラスティンの体が急に方向転換して、それを
回避した。おそらく何か魔術を発動させたのだろう。地面に難なく着地して、そして口が
僅かに動く。
するとミントを囲むようにして氷の刃が現れ、それが一気にミントに降り注いだ。
ミ「壁よっ!」
ドーム上の半透明の壁がミントを守る。次々と壁に突撃して砕け散る氷の刃。
その全てを防御して、壁を消す。すると、そのタイミングを予想してか、巨大な炎の壁
がミントを襲った。
ミ「!?」
29
:
保守代わり長編23〜end (11/30)
:2005/08/27(土) 17:16:25 ID:8dR622LE
森中に響き渡るような爆音。
木々が吹き飛び大地がえぐれる。
灼熱の炎の風が吹く中、ミントは寸でのところで発動させた障壁で、なんとか生き延び
ていた。
ド「ふむ・・・・ハーフエルフといっても、魔力は十分に強いんだな」
ドランドは彼女達の戦いを、遠くの森を見渡せる崖――エドが酒を飲む時に行くあの崖
でその戦いを見ていた。
何故、今ミントとラスティンを戦わせたのか。
最大の理由は、彼女達が全力で戦えば、間違いなく巨大な破壊がもたらされるのがわか
っていたからだ。
できれば、オリジナル対コピーの戦いはすぐにでも見たかった。しかし、そうするとこ
ういった、『破壊』がどうしても発生してしまう。そうなるとエルフも遅かれ早かれコピー
の存在に気づく。そうなれば、間違いなく無断で知識を与えた自分のこともエルフ達に知
られ、間違いなく処刑される。
だから、彼女達が戦っても、ばれない。もしくは言い訳の言える状況が欲しかったのだ。
それがまさに今だ。
今なら、どんな『破壊』も、魔王のせいだと言い訳ができる。
故に今なのだ。
ニ、三度言ったが、彼は魔王の降臨などには興味がないのだ。
ド「うむ、面白い」
眼下で広がる攻防。
また、轟音と共に木々が吹き飛んだ。
30
:
保守代わり長編23〜end (12/30)
:2005/08/27(土) 17:17:00 ID:8dR622LE
自然が生み出した洞穴。
その中で、ニーナは一人膝を抱えて座り込んでいた。
遠くから聞こえてくる爆音。
何が起こっているのかはわからないけど、恐かった。
死が恐かった。
独りが恐かった。
空気の冷たさが恐かった。
そして何よりも、自分が恐かった。
魔王が降臨しようとしている。
リオンの言われた、信じがたい事実。
自分の両親――エドとミントに何があったのか、ニーナはある程度本人達から聞いてい
た。
だからこそ、リオンの馬鹿げたような話も信じることができた。
恐い。
死にたくないと思っている自分がいる。
だが、自分が生き続ければ、魔王が降臨して世界が、世界中のみんなが死ぬことになる。
だったら、自分が死ななければ・・・・魔王が降臨する前に死ななければ・・・
そう思ったけれど、死にたくない。
死にたくないと思っている自分がいる。
潔い人なら・・・・・自決するのかな?
だとしたら、自分はなんて女々しいのだろう。自分が 死ななければ、世界中の人々が
死ぬ。けれど、死にたくない。世界中の命より、自分を優先させている自分が恐い。
『何よそれっ! 恐いの!? 自分が大事なのっ!? アンタって最低っ!』
『何よ、そのこと? 嘘言わないでよ。俺は自分が一番大事だって、顔に書いてるわよ。
ばかっ』
いつの日か、リオンに言った言葉。
自分が情けない。何よりも自分が大事だと思っているのは・・・・自分じゃないか・・・
31
:
保守代わり長編23〜end (13/30)
:2005/08/27(土) 17:17:24 ID:8dR622LE
ニ「・・・グスッ・・・・リオン・・・・グスッ・・・・」
愛する人の名を呼ぶ。
その声が洞穴の中に響き渡る。
早く彼に会いたい。
彼の顔を見たい。
こんな時になって、改めて自分の中でのリオンの存在の大きさをニーナは知った。
会って、言いたい。
この気持ちを言いたい。
だから・・・・だから、早くこんな悪夢は終わってほしい。
だが現実は厳しい。再び遠くから爆音が聞こえた。洞穴の入り口を見る。すると焼けた
木々の欠片が火の粉となって空から降り落ちていた。
どうやら戦いは結構近くで行なわれているようだ。
そう思うと、より一層死の恐怖がニーナの心を侵食した。
ニ「うぅ・・・・リオン・・・・・リオン〜・・・・」
返事などない。
心が寂しさで一杯になる。
・・・・・・
?
・・・・・・・・・・・・・・どくんっ
!?
ニ「え?・・・・・」
どくんっ!
ニ「嘘っ!?!」
体の内側から生まれる、強大な『力』を、ニーナは感じ取った。
今? 今、この瞬間!?
ニ「うそっ! うそうそうそうそうそうそうそうそっ!!」
絶叫するニーナが、だが内側からせり上げてくる『力』を押さえることはできない。
ニ「■■■あ゛■■ぎ■■■■゛■■び■■ゃ■■■■■っ!!?!」
激痛で、ニーナの意識が飛んだ。
それとほぼ同時にその洞穴が外からの攻撃で吹き飛んだ。
32
:
保守代わり長編23〜end (14/30)
:2005/08/27(土) 17:17:47 ID:8dR622LE
舞い上がる砂煙。視界が全くない。
気配を探る。だが、見当たらない。
ミントは息を荒らげながら構え、次の攻撃に備えていた。
しかし、それは途中で中断される。
どこからともなく、有り得ないくらいに大きな邪のオーラがミントを襲った。
ミ「?!!?」
その気配に覚えがある。20年前、自分にとりついた魔王の気配。
それはすなわち・・・・
ミ「ニーナっ!!」
叫んだ。
もちろん返事などない。
未だに消えない砂煙。茶色の視界。ラスティンからの攻撃も、何故かない。機会をうか
がっているのか? だが、今はそれどころじゃない。
恐れていたことが起こった。
魔王再臨。
それが意味すること。
ミ「エドっ!!」
名を呼び、小屋のある方を見た。その時、背後から強烈な殺気がミントを襲った。すぐ
に振り向き障壁を生み出す。が、想像が不十分だった。生み出された障壁は完全にそれ――迫り来る真空の刃を防ぎきることはできなかった。ミントの右腕と左足の太ももを刃が
切り裂く。血が噴き出る。
ミ「うっ」
ようやく落ち着き始めた砂煙の中からラスティンが現れた。高速でミントを回り込み、
背後に立つ。そして回し蹴りを放つ。
死んだ。ミントはそう思った。頭蓋骨を粉砕する一撃。今の体勢では防御など不可能。
魔術を発動させたくても、構造を編み出すための時間が足りない。
目を瞑り、全てを諦める。
バシッ!!
目を開けた。生きてる?
33
:
保守代わり長編23〜end (15/30)
:2005/08/27(土) 17:18:09 ID:8dR622LE
生きていた。
ミントは死んではいなかった。
放たれたラスティンの回し蹴りは、ミントに届く少し手前でニーナの手によって止めら
れていた。
目の前の光景が判断できない。
何で?
ニーナが助けてくれた? 違う。今のニーナからは、魔王の気配しか感じ取れない。
だったら、魔王が私を守った?
まさか?
ニーナがゆっくりと、ラスティンを見た。
そして、『力』がニーナからラスティンに移った。
ドランドは立ち上がり、事態の把握をしようと必死になっていた。
何が起こった!?
魔王が降臨した。
そして・・・・・そしてどうした?
何が起こった!?
魔王の気配は今もまだある。
あるのだけれども、それが・・・・・・ニーナからではなく、ラスティンから感じ取れ
る。
ド「どういうことだっ!?」
・・・・・・必死に考える。
現状を見て、知識を総動員して、可能性の全てを検討する。
そして、一つの答えに行き着いた。
ド「まさか・・・・ラスティンに乗り換えたのか?」
・・・・・・・なるほど、考えれば、それはおかしくない現象だ。
ラスティンは人形だ。たとえ擬似魂を使っているといっても、所詮は空っぽの人形にす
ぎない。それに対してニーナは、ニーナの魂がある。
既に一人が座っている一人用のイスに横入りするより、初めから空いているイスに座っ
た方が、明らかに楽だ。
34
:
保守代わり長編23〜end (16/30)
:2005/08/27(土) 17:18:29 ID:8dR622LE
魔王は、それをしたのだろう。
魔王は人間に乗り移っても、大抵はその肉体の本来の持ち主である人の魂が邪魔をする。
そのため魔王は本来の力を発揮することはできない。20年前、人間のエドが魔王を滅ぼ
すことができたのも、ミントによる邪魔があったおかげだ。
しかし、これは違う。完全に空っぽの人形に入り込んだのだ。
邪魔などない。
完全な自由。
それは、最悪の事態。
突然、爆発的な魔力の渦が森を包み込んだ。
ド「ぐっ!」
吐き気がする。邪のオーラ。普通の人間ならそれだけで死んでしまいそうな、強烈な邪
のオーラ。
が・・・・・・何なんだろうか?
この違和感は。確かに邪のオーラは桁外れの大きさ。なのだが、何だか弱い。
言葉で表現するのが難しい・・・・・これは・・・・・・そう、邪は邪なのだけれども、
そこにそれ以上のものが何もない。ただ、気持ち悪い。ただそれだけの、何とも弱々しい
感じのオーラ。
ドランドは魔王を見た。そして把握した。
魔王の・・・・そこに魔王の意思はなかった。
それはただの力だ。魔王という力しかそこにはなかった。意思など20年前に完全に消
えてなくなっていたんだ。今のあれは、ただ本能に従って破壊をもたらすだけの存在。
拍子抜けだ。
邪の大きさに驚いていたが、よく見てみると、魔王の魔力の大きさはそれほどでもない。
むしろしょぼい。
どうやら、魔王はまだ以前の力を戻していないのだろう。実際、眼下の魔王は再び大気
中から魔力を吸収し始めている。
考えなんて何もない。ただ、本能に従って降臨し、待遇の良いところに流れ込んで、そ
して回復している。
ラスティンに魔王が移った時、僅かに生まれた興味も、すぐに失せた。
失望だ。
35
:
保守代わり長編23〜end (17/30)
:2005/08/27(土) 17:19:11 ID:8dR622LE
興味を持たされて、結局失望させられる。これはドランドが最も嫌う展開。
ド「私を失望させた罪は重いよ」
ドランドが弓矢を持つように構えた。もちろん弓矢は持っていない。
ド「それは光」
つぶやきと共に、光り輝く弓矢が出現した。
ド「それは音よりも速く、光よりも速く。放たれたそれは空を切り裂き、大地を震わす。
それは唯一つ、目標にだけ突き進む。それが大地に突き刺されば、それは終焉の合図。全
ては塵と化し、決して存在を残さない」
言葉を紡ぎ出せば、その分だけ光の輝きは増してゆく。呪文。自己の想像力を高めるも
っとも単純で効果的で、非効率な手法。戦闘中に長ったらしい呪文の詠唱などできない。
しかし、実際にすれば想像力は高められ、放たれる魔術の威力は格段に上昇する。
今の魔王は正直って弱い。まだ、完全には回復しておらず、大気中からところかまわず
エネルギーを吸収している。
だが、弱いといっても普通のエルフでは束になっても敵わない。こんなことを思えるの
は、彼ドランドがそれくらいに強いからだ。
ド「消えうせろ」
光の矢を放つ。
超高速で眼下の魔王目掛けて突き進む光の矢。
一瞬。
桁外れの爆発が森を包み込んだ。光のドームが生まれる。木々も大地も一瞬にして蒸発。
圧倒的な破壊力。キノコ雲が空高くまで立ち昇りその威力の凄まじさを見せ付ける。
数十分が経ち、煙が消えた。そこに、それは立っていた。
ド「!?」
右手を掲げたまま立つラスティン。いや、魔王。
本能的に危険を察知して防御したのか?
・・・・・・
しばらく思案する。そして大体の見当をつけた。
ド「何だこれは・・・・・ただのグッドエンドじゃないか・・・・つまらん・・・・」
心底つまらなそうに、ドランドはその場をあとにした。
36
:
保守代わり長編23〜end (18/30)
:2005/08/27(土) 17:19:31 ID:8dR622LE
アスタがリオンを殺し、森を走っていると。
目指しているのは突然現れた邪のオーラ。それは間違いなく魔王の降臨。
正直言って、自分が行ったところで魔王に敵うはずがない。けれど、行かなければなら
ない。
走る、走る。そして、それは見えた。
地面に倒れるミント。その横に立つ二人の女性。一人はニーナだ。もう一人・・・
ア「?!」
もう一人もミントだ。ミントが二人? 意味が分からない。何があった?
分からないが、ニーナの体から発せられる邪のオーラが、魔王のそれであることに違い
はない。早く倒さなければ、世界が滅びる。
走ろうとした時、異変は起きた。魔王の気配が動いた。
ニーナから、足を掴まれている『ミント』に。
ア「!?」
その途端、『ミント』が大気中から一気にエネルギーの吸収を始めた。
訳が分からない。
一体何が起こってるんだ?
考えが追いつかない。そして、それは唐突に襲ってきた。
何かが空を走り、そして爆発。
ア「断っ!」
脳が反射的に活動し、瞬時に障壁を張る。アスタの周りの空間が外界と断絶される。
障壁の外で繰り広げられる破壊。全てのものが吹き飛び、消し飛んでいく。
爆発が終わったあとも、もうもうと立ち昇る煙で全く何も見えない。
およそ数十分。ようやく煙は消えた。
それまで森のあったそこは、完全に焦土と化していた。そして、そこに立つ『ミント』。
『ミント』の周りにはミントとニーナも倒れている。
考えろ! 考えろ! 何が起こっているのか!?
常識を捨てろ! ありのままを受け入れろ!
想定、推理、考察、そして理解。
アスタの中で決断は下された。原因は分からない。だが、ニーナに降臨したはずの魔王
が、今『ミント』に乗り移った。
37
:
保守代わり長編23〜end (18/30)
:2005/08/27(土) 17:20:07 ID:8dR622LE
『ミント』から発せられる魔力は自分のそれを圧倒的に凌駕している。
普通に戦っても絶対に勝てない。ならば、それ以外の方法で勝たなければならない。
すぐに思い至ったのは、そばで寝ているニーナだ。その肩が僅かに上下している。
魔王の移動――すなわち魂の移動があったのに、まだ生きているということは、ニーナ
と『ミント』はまだ繋がっている。ならば、ニーナを殺せば同時に魔王も滅ぼせるはず。
アスタの下した決断はそれだった。
駆ける。
速い。リオンを殺したときの数倍の速さ。これが彼の全速力だ。
ただ単純に速さだけなら、アスタはエルフの中でも1位、2位を争う速さを持っている。
大きく『ミント』をまわりこみ、倒れているニーナに一気に走りこむ。剣を振り上る。
そして、ニーナの体を切ろうとしたとき、その肩を何者かに掴まれた。
急に、もの凄い力で肩を掴んだ何か。
アスタが振り向くと、そこには『ミント』がいた。それまで『ミント』のいたところを
見ると、そこには誰もいない。圧倒的に『ミント』のほうが速い。
?「ニーナは殺させないぜ。絶対に守るって言っただろう。クソエルフ」
ア「!!?!?」
『ミント』から発せられた言葉に驚愕する。その声は女の、ミント本人の声と同じだ。
だが、それは間違いなく、数十分前に殺した男だった。
『ミント』がアスタの顔をぶん殴る。
アスタの体が、まるで木の葉のように吹き飛び、大地を二転三転した。
38
:
保守代わり長編23〜end (20/30)
:2005/08/27(土) 17:22:01 ID:8dR622LE
リオンも、自分に何が起こったのか理解することはできなかった。
エルフと戦ってて、突然相手の気配が変わり、気付いたら血まみれで大地に倒れてて・・・
そして気付いたらこの体に入っていた。
とりあえず反射的に自分と、そばにいたニーナとミントを守ったわけだが・・・
リ「何なんだ? 一体」
自分の体を見回す。いや、それは本来の自分の体ではない。それはミントの体だ。
けれど、ミントはそばに横になって気絶している。
全く現状が理解できない。けれど、とりあえずエルフがニーナを殺そうとしていたから、
止めて、ぶん殴っといたわけだが・・・・
目の前のエルフが立ち上がり、こちらを睨んだ。
しばらく無言のままこちらを見て、何かに思い立ったふうな顔をして、言ってきた。
ア「そうか・・・・魔王が森中からエネルギーを吸収した時に、霊体となっていたお前も
また、魔王に取り込まれたのか・・・・・」
・・・・・・・?
アスタの言葉の意味はあんまり理解できない。
ただ、何となく・・・・分かる気がする。
まぁ、どうでもいい。まだニーナを守れそうだ。
39
:
保守代わり長編23〜end (21/30)
:2005/08/27(土) 17:22:22 ID:8dR622LE
全く・・・・どれだけ運がいいんだ。
アスタは心の中で毒づいた。
魔王は『ミント』の体に乗り移った後、そこら中からエネルギーを吸収した。その時、
死んで魂だけの存在となって森を彷徨っていたリオンを、魔王はエネルギーとして吸収し
たのだ。
普通なら、吸収されればそれはエネルギーとなって意思は残らない。
だが、あの魔王は普通ではない。『ミント』に乗り移った時に感じたが、あれはただの力
の集まりだ。あれ自体に意思などない。そこに新たに『リオン』という意思が流れ込んで
きて、最初にあの体のコントローラーを手に入れたのが、リオンだったのだろう。
・・・・・・・・
とりあえず、アスタは剣をしまった。両手を挙げ、戦う意志のないことをリオンに知ら
せる。リオンは不思議そうな顔をしたが、こちらが降参していることに気付き、殺気を消
した。
ア「終わりだ。もう戦う必要はない」
リ「さっぱり状況が掴めんのだが・・・・」
ア「アンタの執念が勝ったんだよ。俺にも魔王にも」
リオンはますます不思議な顔をしてアスタを見た。
とりあえず説明に時間がかかりそうだ。
40
:
保守代わり長編23〜end (22/30)
:2005/08/27(土) 17:22:47 ID:8dR622LE
ドランドが森を歩いていた。
表情から、機嫌が悪いことが手に取るようにわかる。
ド「全く・・・・つまらない。実につまらない。オリジナル対コピーの戦いは駄目になる
わ、結局誰も不幸にならん。つまらな――」
すとん!
愚痴を言って歩くドランドの足元に、突然矢が突き刺さった。歩くのを止めて辺りを見
回す。
数人? いや、もっとだ。凄い数のエルフが、彼を囲んでいる。その全員が弓を構えて
いる。
・・・・・・・
何だ、一応不幸になる奴もいるんじゃないか・・・・
エルフ達の中から、一人のエルフが姿を出した。
賢人会議で議長をやっているディラン=ラインドヴィッチ=パブリコ。初老の男性の姿
をした彼が、ドランドに言う。
デ「・・・・私達が何をしに来たかはわかっているな?」
ド「えぇ、まぁ・・・・さすがにばれますか? こんなに暴れたら」
デ「当たり前だ。我々をなめるな。人間に対する必要以上の技術供与。これは許されざる
行為。極刑に値するぞ」
ド「・・・刑の執行は・・・・今すぐですか?」
デ「無論」
そして、ディランが右手をあげた。それに合わせて、ドランドを囲む全てのエルフが弓
を引き絞る。
ド「・・・・・ふぅ〜」
ディランが手を下ろした。
放たれる無数の矢。
その全てがドランドを突き刺し、ドランドは絶命した。
彼は自分の死に対しても、興味を抱くことができなかった。
41
:
保守代わり長編23〜end (23/30)
:2005/08/27(土) 17:23:16 ID:8dR622LE
小屋に戻り、リオンに何が起こったのかをアスタが説明する。ちなみにその場にはドラ
ンドの処刑をし終えたディランと数人のエルフもいる。
リオンが事情を把握するのにはおよそ3時間を要した。
何とか理解してもらえたら、次は後始末だ。
まずはニーナ。ニーナとリオン――『ミント』はまだ繋がっている。
その繋がりを利用して、ニーナを回復させた。
意識を取り戻したニーナに何が起こったのかを教えるのにも、およそ3時間近くかかっ
た。
そして次はエド。エドはまだ生きていた。生きていたといってもほとんど瀕死。虫の息
だ。
あと少しで死にそうになっていたエドを、魔王がかき集めた魔力を使い、リオンは蘇生
させた。エドは物分りがよく、30分もせずうちに状況を理解した。
そして、最大の問題はリオン本人だった。
リオンの体はあの爆発で完全に消滅してしまっている。
リ「ちょ・・・・どうすればいいんだよ・・・・」
困るリオンをニーナが冷たく言う。
ニ「アンタが負けたのが悪いんでしょ? そのまま一生いたら?」
リ「そりゃないよ。つーか俺が死んで魔王に取り込まれなかったら、今頃みんな死んでた
んだぞ。いいか? 俺はあくまでわざと負けたんだよ。わざと」
ニ「馬鹿言ってるんじゃないわよ」
パン、とリオンの頭をはたく。リオンの頭といっても見た目はミントだが。
リ「あたっ・・・・でもさ、どうすればいいんだ? 何か方法はないの?」
アスタに訊く。だが、彼もいい案は浮かんでこないようだ。
が、そこでディランが提案してきた。
デ「なくはないな。要は新しい体があればいいんだ。まだ使われていない体があれば」
まぁ、確かにそうだが、
ア「そんなのあるわけないですよ」
42
:
保守代わり長編23〜end (23/30)
:2005/08/27(土) 17:23:54 ID:8dR622LE
デ「あるではないか、そのいい例もここに」
言ってリオンを指差す。
リオンが不思議な表情でディランを見る。
ア「あぁ〜・・・・なるほど」
デ「人間達には、作れば罪は帳消しにしてやると言えばいいだろ」
ア「そうですね」
リ「? どういうこと?」
ニ「要は、人間にアンタのホムンクルス――コピーを作ってもらおうってことでしょ? コ
ピーの体なら、空っぽだから、アンタも簡単に入れるはずだし」
リ「あ、なるほど。お前頭良いな」
ニ「アンタが馬鹿なだけでしょうが。流れで大体わかるでしょ?」
リ「いや、わからん」
ニ「本当馬鹿ね。呆れるわね、その馬鹿さ加減には」
リ「おいおい、さっきから馬鹿馬鹿多くねぇか? これでも一応命の恩人だぞ?」
ニ「関係ないわよ、ばーか」
リ「くぬっ! そんなことを言うのはこの口かっ!」
リオンがニーナの口を掴み両方に引っ張る。
ニ「ふぬーーーっ! はひふんほほーーーっ!!(なにすんのよーーっ!!)」
リ「うらうらっ! どうだっ! 参ったかっ!?」
ニ「はへは、はひっははんはへひふはーっ!(誰が、参ったなんか言うかーっ!)」
ニーナが両手でリオンのお腹をポカポカと叩く。が、あんまり力はこもってない。
しばらくして、ニーナも疲れてきたのか、ようやく参ったと言った。
ニ「はぁー、はぁー・・・アンタ、本当に最低ね。アンタなんかそのまま死んじゃえばよ
かったのよっ!」
リ「そうしたら、お前悲しんだだろ?」
ニ「なっ!?(////)誰が悲しむかっ!? せいせいするわよっ!」
リ「はいはい、お前はもっと素直になれ」
ニーナの頭をくしゃくしゃと撫でる。
ニ「うわっ!? や、やめてっ!」
43
:
保守代わり長編23〜end (25/30)
:2005/08/27(土) 17:24:27 ID:8dR622LE
ニーナがリオンの手を離そうと腕を掴みにかかるが、それをリオンはさっとかわす。
そしてまたすぐに頭を撫でる。
ニーナがどけようとする。
リオンがかわす。
ニーナが――
リ「ほーれ、ほーれ」
ニ「ふわ・・・・はううぅぅぅ・・・・(////)」
ニーナはその場にへたり込んでしまった。
そんなニーナは無視しといて、リオンはディランに訊いた。
リ「いつ頃その新しい体はできるんだ?」
デ「君は確か23歳だろ? だったらそれと同じ分の時間がかかる」
リ「げっ!? マジかよ・・・・」
デ「だが、我々の技術も合わせれば、おそらく半年ほどでできるはずだ」
リ「おっ!? マジでっ!? サンキュー、おっちゃん!」
デ「お、おっちゃん・・・」
ディランは賢人会議の議長。要はもの凄く偉いのだ。そんなディランをおっちゃん呼ば
わりするリオンを見て、アスタがビクビクとしている。
だが、ディランは怒ることはなかった。どんな偶然とはいえ、リオンもまた英雄である
ことに違いはない。
デ「今から人間達に会って交渉してくる。とりあえず、半年。ここで待っていてくれ」
リ「わかった・・・・あれ? けどさ、ホムンクルス作るのって、本人の体の一部がいる
んじゃないのか?」
ア「それなら、大丈夫だ。この剣にお前の血液がついてる」
アスタが剣を抜いた。根元の部分に僅かに赤い血液がついている。
リ「こんなんで本当に大丈夫か?」
ア「安心しろ」
デ「では、失礼する」
リ「あぁ、頼んだぞ、おっちゃん」
ディランと、その他のエルフ達が小屋から出て行った。
44
:
保守代わり長編23〜end (26/30)
:2005/08/27(土) 17:25:17 ID:8dR622LE
リ「さて・・・・」
いまだに床にへたり込んでいるニーナを見る。
・・・・・・ま、いっか。
しばらくすると、奥からミントが出てきた。リオンの顔を見て、嫌な顔をする。
ミ「やっぱ違和感あるわね・・・・自分と同じ顔の人がいると・・・・」
リ「あ、すんません」
ミ「い、いいのよ。リオン君のせいじゃないから」
リ「はぁ〜・・・あの、ところでエドさんは?」
ミ「エド? エドならいつものところじゃない?」
いつものところ・・・・あの崖だろう。
リ「ちょっと行ってきますね」
小屋から出ようとするリオンを見て、ニーナが慌てて立ち上がる。
ニ「あ、待って。私も行く」
リ「早くしろ」
ニ「偉そうに命令するなっ!」
パコーン!
ニーナがリオンの頭を叩いた。
二人は森の中に消えていった。
45
:
保守代わり長編23〜end (27/30)
:2005/08/27(土) 17:25:38 ID:8dR622LE
エドはあの崖で、酒を飲んでいた。
眼下に広がる森は、以前の姿を残していない。
ところどころに広がる焦土。えぐれた大地。
あの美しい景色が見る影もない。
けれど、エドはその景色を肴に酒を飲んでいた。それが日課のようなものだから。
後ろから、ニーナの叫び声が聞こえてきた。
ニ「待てええええっ! アンタ、ぶっ殺す!」
リ「殺せるものなら殺してみなってんだ!」
ニ「くうぅぅ! ムカツク!」
二人は走ってきて、あぐらをかくエドの横に立った。まぁ、一応訊いてみた。
エ「何があったんだ?」
ニ「聞いてよ! お父さん! コイツ、「今は女の体だから、別にいいよな?」とか言って
私の胸触ったのよ! 信じられない!」
リ「別にいいじゃん」
ニ「よくないわよ! 馬鹿!」
エ「まぁまぁ、ニーナ、落ち着け」
ニ「お父さん!? まさかコイツの肩持つの!?」
エ「いや、そういう訳じゃないが」
ニ「じゃあ、どういう訳なのよっ!」
リ「まぁまぁ、エドさんは落ち着けと言っているじゃないか。お前は大人になれ」
ニ「アンタは死んどけーーーっ!」
ニーナの見事なアッパーがヒットした。リオンが地面に倒れる。そこに情け容赦なくニ
ーナが蹴りを入れる。
ニ「この! この! 死ねっ! 馬鹿っ!」
リ「や、やめ・・・本当に死ぬ・・・・」
とりあえず、ニーナが落ち着くまでエドは待つことにした。
46
:
保守代わり長編23〜end (28/30)
:2005/08/27(土) 17:26:01 ID:8dR622LE
三人で座って、変わってしまった景色を見る。
ニ「あーあ・・・・こんなになっちゃって・・・・・私ここの景色結構好きだったんだけ
どな・・・・」
リ「これはひどいよな・・・・」
エ「まぁ、仕方ないさ」
リ「けど、これが元に戻るには、かなり時間がかかりますよね?」
エ「あぁ、おそらく何百年とかかるだろうな」
リ「じゃあ、俺とエドさんはもうあの景色は見れないんですね・・・なんか哀しいな・・・
あ、でもニーナ、お前は見れるよな? 一応エルフの血が流れてるんだし」
ニ「わかんないよ。もしかしたら案外人間と同じくらいしか生きられないもしれないわ
よ?」
リ「いやぁ〜、お前の神経の図太さだったら長生きできるって」
ニ「何 か 言 っ た ! ?」
リ「い、いえ、なにも・・・・」
ニーナの一睨みでリオンが畏縮した。
ニ「けど、本当哀しいな・・・・あんな綺麗な景色、世界中どこ行ったってないだろうな・・・」
リ「いや、世界中探せばあると思うぞ」
ニーナのぼやきに、リオンが反応する。
ニ「うっそ〜」
リ「世界中旅してきた俺が言うんだから、間違いない」
ニ「アンタの言うことなんて、信用できないわね」
リ「ひでぇな・・・・」
エ「確かめてみればいいんじゃないか?」
ニ「え?」
エ「二人で旅に出て、確かめてくればいい。ここ以上の景色があるかどうか」
ニ「な!? 何言ってんの!? お父さん! わ、私がコイツと二人で旅に出る!? 変
なこと言わないでよ!」
エ「別に変なことじゃない。お前ももう18、そろそろ親離れして、広い世界に飛び立た
ないとな・・・・」
ニーナは顔を真っ赤にして、己の父を見ていた。
47
:
保守代わり長編23〜end (29/30)
:2005/08/27(土) 17:26:26 ID:8dR622LE
半年後
二人は、旅の準備をすませて小屋の前に立っていた。
結局ニーナはリオンと一緒に旅に出ることにした。
名目上はあの景色以上の景色を探す旅。実際には、この旅はニーナの巣立ちだ。
ニーナはあの日、散々拒否し続けたが、結局次の日にはOKを出したのだ。
リオンが荷物を担ぐ。リオンはすでに新しい体を手に入れている。
エ「じゃ、気をつけてな」
エドが左手を出す。それにリオンも左手で対応する。
リオンは新しい体に右手をつけなかった。その理由は、この方がもう慣れてるから。そ
して、右手があると、決意を、昔のことを忘れてしまうんじゃないかと思ったからだ。
ミ「ニーナを守ってあげてね」
ミントとも握手をする。
ちなみに当のニーナ本人は恥ずかしがってか、それとも別れが悲しいのか、その場には
いない。まぁ、多分後者だろう。
リ「ったく、アイツ別れの時くらいちゃんと来いよな」
エ「大丈夫だよ。ニーナとは昨日の夜たっぷりと話したから」
リ「はぁ〜、何かすんませんね。まるで奪ってくみたいで」
ミ「そんなことないわよ。ニーナもリオン君と一緒に旅が出来て嬉しそうだし」
リ「素直に嬉しいって言ってくれたら、こっちもいいんですけどね・・・・」
エ「まぁ、そのへんはあれだ、時間の問題だ」
いつの日か、エドが言っていた言葉だ。いつかはニーナもミントみたいに落ち着いてく
れるのかな。
リ「じゃ、行ってきます」
お辞儀をして、手を振り、リオンはその場を去った。
残されたエドとミント。
ミ「いつかはこうなるとは思ってたけど、寂しくなるわね〜・・・・・」
エ「じゃあ、子供をもう一人つくるか?」
ミ「(////) 馬鹿っ」
エドの頭を小突いて、ミントは小屋へと入っていった。
エドはしばらくリオンの行った方を見ていた。彼等の歩いてゆく道を。
48
:
保守代わり長編23〜end (30/30)
:2005/08/27(土) 17:26:47 ID:8dR622LE
リ「お待たせ」
しばらく進んだところで、ニーナを見つけた。
ニ「遅いっ! どんだけ待たせんのよ!」
リ「いや、そんなに時間経ってないだろ?」
ニ「経ってるわよ! もうっ」
ニーナがいつも通り、リオンにあたる。
しかし、そんなニーナの目にキラリ光るものが見えた。
リ「? お前泣いてるのか? ははぁ〜ん。やっぱりお父さんお母さんと離れ離れになる
のは寂しいか?」
ニ「ち、違うわよ! ゴミが入っただけ! 変なこと・・言わないでよ・・・」
語尾に近づくにつれ、ニーナの声が弱まっていく。
まぁ、仕方ないだろう。ニーナも女の子だ。それに今までずっと愛し続けてくれた両親
との別れだ。悲しくないはずがない。
リオンは、そっとニーナを抱きしめてやった。
ニーナは、それで堰が切れたように泣き出した。
しばらくリオンの腕の中で泣いたニーナは、小さな声で訊いてきた。
ニ「・・ぐすっ・・・・・・ねぇ、リオン・・・・」
リ「ん?」
ニ「・・・守ってくれるんだよね? ずっと・・・・」
リ「・・・あぁ。いつまでも、お前を守り続けてやるよ」
ニ「・・・(////) ありがとう・・・・」
胸の中の少女を、リオンは片腕で、しっかりと、強く、強く抱きしめた。
ずっと放さない。ずっと守り続けてやる。
しっかりとした想いを胸に抱いて。
今日、二人は旅に出た。
―了―
49
:
保守代わり長編の人
:2005/08/27(土) 17:30:51 ID:8dR622LE
>>37
(18/30)→(19/30)
>>42
(23/30)→(24/30)
本当にこんなに大量投下してよかったのか?・・・・('A`)
50
:
名無しさん
:2005/08/27(土) 18:33:00 ID:ta7UtgeM
>>49
がんがったwwwテラGJ
クオリティタカスwwww
51
:
名無しさん
:2005/08/27(土) 18:58:00 ID:ggKXaOy6
>>49
キタコレwwww完結wwwwお疲れwwww
52
:
名無しさん
:2005/08/28(日) 00:09:12 ID:Qo9mPf12
正直、どうすればこんなクオリティが出せるのか聞きたいほどGJ。
53
:
1/8
:2005/08/28(日) 13:31:49 ID:uu.ib/mg
『何で私がタカシと一緒に肝試しなんかしなきゃならないのよ?』
「いいじゃねーかよ、夏の思い出作りだ」
『だからってね……この廃墟、雰囲気ありすぎじゃない?』
「ああ、山田がネットで調べたんだ。元病院だって」
『そういえば、山田君とちなみちゃんは?まだ来てないの?』
「あの二人なら先に行ったぞ、オレらも行こう」
『あ、ちょっと、待ちなさいよ!』
「ブーーーーーーーン♪」
山田君がさっきから両手を広げて走り回っている。
雰囲気も何もあったもんじゃない。
「幽霊出ないお、幽霊出て来いお!」
『……山田君は……怖くないんですか?』
「ちなみちゃんが一緒だから、勇気百倍だお!」
『……そうですか』
『待ち合わせ場所とか、決めてるの?』
「別に。一通り回ったらそれで終わり」
『あんた達って本当に無計画ねぇ。迷ったらどうする積りなの?』
「まぁ何とかなるだろ、携帯もってるし」
かなみが何時もの如くぶつぶつ言い出したので、オレはそれを軽く受け流した。
『ちょっと!聞いてるの?』
「聞いてるよ。それよりさ、地下に行った方が幽霊が出ると思わない?」
『馬鹿!』
「ブン♪ブン♪ブーーーーーーーン♪」
山田君が変な歌を歌ってる。前からずっとだ。
54
:
2/8
:2005/08/28(日) 13:32:34 ID:uu.ib/mg
多分怖いのだろう。
『……本当に……怖くないんですか?』
「な、何言ってるお。ちなみちゃんと一緒なら、全然平気だお」
青ざめた笑顔で返答されても、説得力ゼロだ。
「幽霊早く出て来いおーーー!」
階段を上がって、廊下に向かってそう叫ぶと、また次の階に行く。
廊下を歩くとか、病室やトイレに行く事はしない。
……怖いなら怖いって言えばいいのに。
地下はかび臭かった。段々と恐怖心が積る。
「なあ、やっぱ雰囲気あるな」
『ひょっとして、怖いの?』
「んなワケねーだろ、馬鹿」
『ば、馬鹿って何よ、大体ね――』
「どこ向いて喋ってるんだよ」
かなみを懐中電灯で照らすと、彼女は闇に向かって喋っていた。
『あ……あれ?』
かなみが慌ててオレを見た。顔が少し引きつっている。
オレは手を伸ばした。
「手、繋ぐぞ。逸れたら面倒だからな」
『……そ、そうね。仕方ないわね……逸れないでよ』
「それはオレの台詞だ」
「この扉、開かないお」
『……この先には……行けませんね』
階段を上ると、鍵の掛かった扉があった。その先は多分屋上だろう。
『……戻りますか』
「ちょっと待ってお」
55
:
3/8
:2005/08/28(日) 13:33:10 ID:uu.ib/mg
山田君が扉を蹴り始めた。派手な音が響き渡る。
『……山田君……止めた方が……』
止めに入ろうと近寄った時、扉が蹴破られた。
「開いたお!屋上だお!ブーーーーーーーン♪」
『あ……』
山田君が両手を広げて駆けていく。まるで幼い少年のようだ。
「ちなみちゃん!!来てみるお!!凄く綺麗だお」
私は、山田君の後を慌てて追いかけた。
そこには、宝石箱を引っくり返した様な、煌びやかな夜景が広がっていた。
かなみの手が温かい。何だかドキドキする。
この胸の高鳴りは、かなみだけの所為ではない。
道に迷ったのだ。最初は地下に居たのに、何時の間にやら地上に出ている。
辺り一面ガラス張りで、月明かりが差し込んでいる。どうやら温室らしい。ワケわかんねーよ。
「……引き返そうか?」
『そうね』
戻ろうとすると、かなみに腕を引っ張られた。
「ん?」
振り向くと、彼女はうつむいていた。
「どうした?怖くてちびったか?」
『馬鹿……』
ゆっくりと、ちなみが顔を上げる。
彼女の瞳は、月の光を宿らせて、少しだけ潤んでいた。
「この病院、丘の上に建てられたんだお。だから夜景がよく見えるんだお」
山田君が、夜景を見ながらそう説明する。
『……そうだったんですか……』
本当に綺麗だ。どんな宝石も、この煌びやかさを再現できるとは思わない。
56
:
4/8
:2005/08/28(日) 13:33:47 ID:uu.ib/mg
「ちなみちゃんは……タカシの事、どう想ってるお?」
『……え?』
夜景に見入っていると、山田君が訊いてきた。
「答えなくてもいいお……大体の察しは付くお」
『……』
「でも……友達なら……いいお?」
『……うん』
山田君の気持ちは分かっていた。けど――
「相談とか、愚痴を聞く事なら、ボクにもできるお」
『……うん』
ずっと前から気付いてた。だけど――
「だから……これからも、よろしくお!」
『……うん』
山田君は、何時も、私の前では笑顔だった。
何時もこうして、笑顔で私に話し掛けてくれる。
「じゃあ、もう戻るお、タカシ達が待ってるかもしれないお」
『……うん』
私は、山田君の後を追いながら、気付かれないように涙を拭いた。
……好きなら好きって言えばいいのに。
辺り一面が月の光に染まっている。
『タカシは……ちなみちゃんの事、どう想ってるの?』
「ど、如何したんだよ?急に」
『ねぇ、どうなのよ?』
かなみの、余りに切羽詰った態度に、オレは少し気圧されてしまった。
「オ、オレは――」
どこかで、何かが動いた音がした。茂みの奥に何か居る。
「お、おい、今、何か聞こえなかったか?」
『……聞こえた』
57
:
5/8
:2005/08/28(日) 13:34:22 ID:uu.ib/mg
幻聴じゃない。嫌な予感がする。早くこの場から離れよう。
「戻ろ――」
居た。かなみの後ろに何かが居た。ソイツはゆっくり近づいてくる。
「う、う、うし……」
『牛?何言ってるの?』
かなみは振り返ると、ビクッと身震いした。ソイツに気付いたらしい。
ソイツが近づくにつれ、段々とその姿が浮かび上がってきた。
白いナース服を着て、左手には注射器を持っている。目の焦点が合っていない。
口から涎を垂れ流し、手足の関節を不自然に曲げながら近づいてくる。
「ナ、ナースの幽霊だ、逃げるぞ!!」
かなみの手を引っ張ったが、彼女は動かなかった。
「かなみ?」
震えている。
『……人の……』
「おい、しっかりしろ!!」
『……恋路を』
拳を握り締めている。
『邪魔……するなああぁぁああ!!』
かなみはオレの手を振り払うと、ナースの幽霊に突進した。
「か、かなみぃぃ!!」
幽霊は、スッと、左手に持っていた注射器をかなみの顔に突き刺そうとする。
その刹那。かなみは、前に出した左足を軸にして、上半身を左に振る。右拳が弧を描いて、幽霊の顔面に直撃した。
トマトを潰すような、嫌な音が温室に響く。幽霊が宙を舞って……落ちた。
「かなみのやつ……幽霊に右フックかましやがった……」
しかもカウンターだ。
『アンタねぇ、人の恋路を邪魔したら馬に蹴られて死ぬって、お婆ちゃんから教わらなかったの!?』
かなみが幽霊相手にマジギレしてる。
「死んでるから、だいぶ前に死んでるから」
『タカシは黙ってなさい!!』
一喝すると、かなみは幽霊を指差して叫んだ。
58
:
6/8
:2005/08/28(日) 13:34:52 ID:uu.ib/mg
『アンタ、私がどれだけ勇気を振り絞ったか、分かってるの!?ほら、立ちなさいよ!!』
アンタ呼ばわりされた幽霊が、よろよろと四つん這いの姿勢になった。律儀にも立つ積もりらしい。
かなみは四つん這いになった幽霊に近づくと、相手の頭部にミドルキックを浴びせた。
「うわっ……エグいなぁ」
幽霊よりもかなみが怖いと思った。
ナースの幽霊が仰向けに倒れる。今度はピクリとも動かない。
『ちょっと!!何寝てるのよ!?立ちなさいよ、ほらぁ!!』
「いいから!やっと永眠できたんだ、寝かせとけ!」
暴れるかなみを引きずりながら、オレはその場を後にした。
「タカシ達遅いお、何かあったのかお」
『……携帯の電波……届かないから……ここで待ってましょう』
外は、少し肌寒かった。
東の空が次第に明るくなり、夜空の星達を飲み込んでいく。
「……一体どうしたんだお」
山田君は、本当に心配そうな顔で病院を見上げた。
君のそんな顔……見たくないです。
『ちょっと!!ここどこなのよ?』
「わかんねーよ、今山田に連絡するから、少し静かにしてろ」
『何言ってるのよ!ここ、電波届かないって前言ったでしょ、やっぱり人の話聞いてないじゃない!』
「マジかよ!!これ、きっとナースの祟りだ。お前が幽霊に蹴り入れたから祟られたんだ」
『人の所為にしないでよ、このヘタレ馬鹿!!』
「ヘタ……お前、言って良い事と悪い事があるぞ」
『うるさいわね、大体アンタが地下に行こうなんて言うから、こんな目に遭うんじゃない』
「でも、幽霊に会えただろ。オレの勘は正しかったワケだ」
『ああ、タイミング最悪のあれね。右フックとミドルキック入れたら動かなくなったわ。アンタもああなりたいの?』
「……悪かったよ」
59
:
7/8
:2005/08/28(日) 13:35:26 ID:uu.ib/mg
『だったら、無駄口叩いてないで、走るわよ!』
「あ、ちょっと、待てよ!」
『……朝靄……綺麗です……』
「……」
街は、その殆どが朝靄に覆われて、背の高いビルが古木の様にそびえ立っている。
所々、ライトを点けて走る車が、まるで川辺を漂う蛍の様だ。
山田君との距離は、手を伸ばせば届くようで、届かない。
彼は多分、一線を画したのだろう。
幼い少年の様な横顔が、どことなく大人びて見えた。
『……あの』
「ん?何だお?」
自分でも、何を言おうとしたのか分からなかった。
山田君が不思議そうにこっちを見ている。
不意に、後ろから、扉を乱暴に開ける音がした。
「あ、タカシ達だお!」
山田君が笑いながら走っていった。
「遅かったお、心配したお、何かあったのかお?」
「ハァ……ハァ……ああ、かなみがナースの幽霊をミドルキックで沈めて、一緒に院内を走り回ってた」
「何言ってるか全然分かんないお。だけど二人とも無事でよかったお」
山田君は本当に嬉しそうに笑った。
かなみちゃんは少し恥ずかしそうに、タカシさんと繋いでいた手を、そっと放した。
翌日、オレが教室に着くと、山田が飛んできた。
「かなみちゃんが吹っ飛ばした、あのナースの幽霊、正体が分かったお」
「もういいよ、あんな思いは懲り懲りだ。思い出したくない」
「いいから聞くお、あれ、幽霊じゃなかったお」
「じゃあ何だよ、夜勤か?」
60
:
8/8
:2005/08/28(日) 13:36:45 ID:uu.ib/mg
「違うお、ただのヤク中だお」
「ヤク中?」
「そうだお。何時もあそこに忍び込んで、ナース服着て薬打ってたんだお」
「なんでわざわざそんな面倒くさい事するんだ?」
「マニアの考える事は分からないお」
「まあ、そりゃそうか……で、なんで分かったんだ?」
「朝刊に載ってるお。あの後、ちなみちゃんが救急車を呼んだんだお。それで発覚したお」
「ああ、それでか。確かに、幽霊が殴られるなんて、可笑しな話しだ」
「でも、かなみちゃんは何でソイツを蹴り飛ばしたんだお?一緒に逃げれば良かったお」
「ああ、それな、オレも最初は――」
山田の背後から、かなみが真っ赤な顔でオレを睨み付けている。
「どうしたんだお?」
山田が振り向くと、彼女は何時もの笑顔に戻っていた。どうやらあの件は秘密にして欲しいみたいだ。
『あの幽霊がどうかしたの?』
「ああ、あれ、幽霊じゃなかったお」
二人は幽霊の正体で盛り上がっている。
ふと視線を泳がすと、窓際にちなみが居た。
彼女は、どこか寂しげに、八月の雲を見上げていた。
61
:
8/8
:2005/08/28(日) 13:40:12 ID:uu.ib/mg
。
62
:
9/8
:2005/08/28(日) 13:45:50 ID:uu.ib/mg
>>61
間違えたorz
長くなったんで一応こっちに投下します
63
:
名無しさん
:2005/08/28(日) 15:27:56 ID:t1uVqBkQ
本スレ過疎ってるし、ツンもあるから投下しても良かったんじゃね?
と、思いつつもGJを送っておくwwwwww
8レスなら、2回程度に分ければちょうどいい位だし。
64
:
9/8
:2005/08/28(日) 21:58:31 ID:B0exBX8c
意見アリガ㌧
過疎ったら修正して投下します
65
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 18:50:54 ID:yRwbKb2M
5レス投下します。
山田が嫌いな人はスルーしてください。。。
66
:
山田を支援するヒト(1/5)
:2005/08/30(火) 18:51:55 ID:yRwbKb2M
『先輩…』
「ブ――――ン!!!ちなみちゃんおはよー!」
『……目障りです。消えてください』
「ぐはっ! ヒドスwww ………あ!かなみちゃんおはよー!」
『コラぁ!タカシ!アンタはいっつもそうやって…あら、山田、いつからいたの?』
「うえっwww テラヒドスwww ………あ!いずみちゃんおはよー!」
『なんや… 朝から暑苦しい… 頼むから今はほっといて〜…』
「うはwww みんな漏れにツメタスwww ……セツナス… orz」
『山田先輩!!』
「うわ!!ビクーリした… やよいちゃん……どうしたんだお?」
『あ、あの…私、先輩に……おおおおお手紙を書きました…(////) ……う…受け取ってください…』
「あ…アリガタス……でも、言葉で伝えてもらえればい
『はわわわわわわ〜…… し、失礼しますっ!!』
「………あの娘はいつも変だお」
「おい山田!!」
「ひぃっ!!………た、タカシ……」
「なんだよ今の萌えっ娘は?え?おい!詳細キボンヌ!!」
「あ、あの娘は、やよいちゃんといって、漏れの家の近所に住んでるんだお」
「な…なんだってぇーーー!?後輩っ娘の幼馴染ってわけかぁ?そして今まさにフラグ成立の瞬k
『タカシ!!早くアタシのノート返してって言ってるでしょ!?』
「あぁ…すまねぇ………オレの幼馴染も、あんな感じだったらよかったのに……」
『な ん か 言 っ た ?』
「いいえ… 何も…」
『よろしい… (あ…アタシも手紙とか書いてみよっかな… な〜んてやだぁもうアタシったら積極的♪)』
「………タカシは幸せだお……みんなから愛されてるんだお……それに比べて漏れは……… orz」
67
:
山田を支援するヒト(1/2)
:2005/08/30(火) 18:52:47 ID:yRwbKb2M
山田、自室にて。
「手紙なんてもらったのなんて初めてだな。不幸の手紙じゃないことを祈ろう…」
先輩、私、先輩に伝えたいことがあります。
私、実はずっと前から先輩のことを …………とっても心配しています!!
先輩はきっと、みんなを楽しませようとして一生懸命になってるんでしょ?
私は知ってます。先輩の口調は、本当は普通の人と同じだし、
いつもハイテンションだけど、悩みだって色々あったりするはずです。
先輩はいつもがんばりすぎです。そんなにがんばらなくてもいいんですよ。
もし先輩に悩みとかがあるなら、私でよければいつでも相談してください。
あ!もちろん私には、昔みたいに普通の口調でしゃべってもらって構わないし、
私を楽しませようとがんばったりしなくてもいいですよ♪
やよい
「………やよいちゃん……」
68
:
山田を支援するヒト(3/5) orz
:2005/08/30(火) 18:53:59 ID:yRwbKb2M
『ねぇやよい!』
『な…なぁに?』
『昨日さ、例のキモい先輩に手紙渡してたでしょ!?』
『キモいってゆーな!!………あ…(////)』
『きゃーーかわいい♪あの人の悪口は許さない!ってか?』
『もーーからかわないでよー』
『で?どうなの?進展しそうなの?想いを伝えたんでしょ?』
『実は……直接的な表現にはできなかったんだけど…一応気持ちは伝えられたっていうか……』
『好きなら好きって言っちゃいなよ!まぁ、私はあんな頭悪そうな人はパスだけどね〜』
『先輩は頭悪くなんかない!!口調だって本当は普通なんだし、時々クールなことだって言うんだから!
それに、スッゴク優しいし、努力家だし、正直者だし……かっこいいし…(////)』
『…あ!ほら!白馬の王子様が来たわよ♪』
『え……あ…先輩が…どどどどどどうしよう…なんか変なこと言われちゃったら…』
『大丈夫!いざとなったら抱きついちゃえばいいの!じゃ、私は消えるね!ぐっどらっく!!』
『あ…待っ……………』
69
:
山田を支援するヒト(4/5)
:2005/08/30(火) 18:54:44 ID:yRwbKb2M
「……………やよいちゃん…」
『ああああああの、あの、えっと、あの、おおおおおはようございます!!』
「お、おはよう……それでさ………」
『あわわわわわわわわ…………………はい……』
「オレさ、決して無理して口調変えてたりするわけじゃないんだ…」
『…………はい…』
「オレがテンション高く話して、みんなが元気出してくれたら、それが一番だなって思ってる」
『…………………』
「……でも、時々自分って、みんなから必要とされてないのかなって思う時があるんだ…」
『そ…そんなことっ!……』
「だから……たまにでいいから…オレの話し相手になってくれないかな……」
『!! も、もちろんです!いつでもどこでも、どんな話でも聞きます!!全然遠慮しなくていいですっ!!』
「…そっか。ありがとう!!オレ、今日も一日がんばるよ! ブブブ――――ン!!!」
『………先輩……私はいつでも…待ってますから……』
70
:
山田を支援するヒト(5/5)
:2005/08/30(火) 18:55:23 ID:yRwbKb2M
『やよいちゃ〜ん♪』
『わ!……み、見てたの…?』
『見守ってたの♪それより、やったじゃん!』
『あ…ありがと……』
『あとはこっちからどんどんアプローチするだけよね〜。てゆーか山田先輩って…案外イイ男かも!』
『だ、ダメだからね!!手を出したりしたら許さないんだからね!!………あ…(////)』
『冗談よ、冗談。みんなにもカマかけとくから安心して!』
『ちょ…余計なことしなくていいよ!ウワサになっちゃったりしたらどうするのっ!』
私、やっと先輩に認めてもらえたんだね。
もっともっと先輩と仲良くなって、先輩にとって特別な存在になれたらいいな…
ツンがねぇ… 一応、山田に言い寄ったり、山田をバカにしたりする人にはツンになるって設定。。。
71
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 19:00:38 ID:tRqBawZY
>>70
こっちで正解だな。だがGJ
72
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 19:04:48 ID:r65xiF7.
>>70
確かにツンがないな。
けど、やよいにはげしく萌えた俺ガイルwwwwwwwwwwww
73
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 19:05:36 ID:yRwbKb2M
おっかないので、今はそ〜っと消えておくお。。。
読んでくれた人、サンクス…
74
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 19:06:21 ID:Qo9mPf12
やよいモエスwwwwツンデレ主体じゃないのがあれなだけで、
凄くGJなSSだよ。
75
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 19:09:20 ID:HHQwY9mA
微笑ましいwww
優しい気分になれるわぁwwwwww
76
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 19:14:56 ID:Xz19N/ZM
やよいちゃんモエスwwwwwwwwww
これでツンデレ入ったら本スレに投下しても何の問題もないwwwwww
…うまいことツンデレを入れるのが一番難しいな…
77
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 19:44:49 ID:yRwbKb2M
(´・ω・`)……… (`・ω・´)みんな感想ありがとう!
勢いで作ったものだからアレなんだけど、あと2話分あるのです…
山田のせいで叩かれてツンデレワールド追放されるのもキツいけど、
途中で終了させてしまうのも気持ち悪いので…
一応… みんなが忘れた頃に… 1話ずつ投下するかも…
山田嫌いな人、スレ汚しスマソ…
適当な男キャラに脳内変換していただければ幸いでつ……
78
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 19:49:49 ID:/hR2EsC.
>>77
私はいつでも…待ってますから……
うはwwwww俺キモスwwwwwwwwww
79
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 21:01:51 ID:9bw2AxHQ
>>77
スレ汚しも何も、こっちはそういうスレじゃんwwwwww
ツン無いとか、スレ違いっぽい奴とかを投下するためのスレだから、
じゃんじゃん投下すべし。
80
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 23:19:04 ID:yRwbKb2M
(´・ω・`)………トウカスルナライマノウチ
2話目は4レスでつ。山田はウンコだと思う人はスルーしてください。。。
81
:
山田を支援するヒトⅡ(1/4)
:2005/08/30(火) 23:19:44 ID:yRwbKb2M
「………おい山田」
「なんだお?」
「あの娘、今日も来てるぞ」
「あ、やよいちゃん…」
『いいわねぇ山田、毎日かわいい後輩にお弁当作ってきてもらえるなんて』
「は…恥ずかしいんだお……い、行ってくるお…」
「チキショー!逝っちまえ!」
『………と、ところで、タカシ…』
「んあ?」
『ああああアタシも……お弁当…作ってきたんだ…』
「ふ〜ん。食えば?」
『……あ…アタシのじゃなくてっ!……アンタの…(////)』
「…………………そ、そうか……わざわざスマン……」
『あ…味は保障できないけどね……』
「……………うまい……」
『……そ、そう…ふ、ふんっ!タカシのバーカ!アタシはあっちでみんなとお弁当食べるから…』
「…………ちょっとだけ山田とあの娘に感謝する……」
「なんか、お弁当、いつも作ってきてもらっちゃって悪いね…」
『そ…そんな…私が好きでやってることですから…先輩がご迷惑だったらいつでも言ってください…』
「迷惑だなんてとんでもない!……すごく感謝してるよ…おいしいし……」
『……は…はい………(////)』
「…ん?誰か来る…」
82
:
山田を支援するヒトⅡ(2/4)
:2005/08/30(火) 23:20:28 ID:yRwbKb2M
「おーいテメェらぁ!!屋上でイチャついてんじゃねぇぞゴルァ!!」「チョづいてんじゃねぇぞゴルァ!!」
『うう……こわいです……』「ぶ、ブーン…」
「ブーンじゃねぇよゴミクズが!!」「なーにかわいこちゃんはべらしちゃってんのかなぁ!」
「………う……」『せ…せんぱぁい……』
「おらおらどうした?なんか言い返してみろやゴルァ!!」「このかわいこちゃんは俺達がイタダかせてもらうぜぇ」
「……………この娘には手を出すな…」
「あ?なんだテメェ?!やんのかゴルァ!!」「やっちまえ!!」
「この娘には手を出!『ちょっとアンタたちっ!!』 ……あ…アレ…?」
「な…なんだぁ?お嬢チャン」「俺達に意見しようってのか?」
『先輩のことをこれ以上バカにしたら、許さないんだからぁ!!』
「へっへっへ、かわいいお嬢チャンだぜ」「テメェもぶっ殺してやらぁ!!」
『!!!』
「…はぁ……はぁ……」『……先輩…』
「………ぐふっ……な…なんなんだテメェは………」「……あ…アゴが……は…はずれふぁ…」
「やよいちゃんをキズつけたら…許さない!」『……………』
「……あ…あんた…とんでもなく強えぇな…」「あ……兄貴と呼ばへてくらはい……」
「あ…兄貴…?漏れが…?そ、そんなの困るお…」
「姉御も……どうもスイヤセンでした!!」「ふいまへんでひは!!」
『あ…アネゴって…私のことですか…?』
「どうぞ…お二人ともごゆっくり…」「俺はひが見張ってまふから、遠慮なく昼めひ食ってくらはい…」
「……………」
『……………』
「………ケガはない?」
『…は、はい……先輩が…守ってくれましたから…(////)』
「よかった……じゃあ、一緒にお弁当食べようか」
『……はい…』
83
:
山田を支援するヒトⅡ(3/4)
:2005/08/30(火) 23:21:05 ID:yRwbKb2M
『今日は、先輩の意外な一面を発見してしまいました…』
「オレの方こそ、やよいちゃんの意外な一面を発見してしまいますた」
『え…?どういうことですか?』
「やよいちゃん、アイツらを相手に、オレをかばってくれた…」
『…え……あ…そんな…うぅ……嫌いにならないでください…』
「え?どうして?」
『だって……私、女の子なのに……あんなに怒ったりしたら…嫌われちゃいますぅ……』
「嬉しかったよ」
『え…?』
「オレのこと、あんな風にかばってくれたりするの、やよいちゃんだけだよ…」
『……先輩………あの……明日もお弁当、作ってきます!』
「うん、ありがとう」
『それと……明日も………一緒に帰ってくれますか…?』
「もちろん!む、むしろ…よろしくお願いします……」
『…はい!!』
84
:
山田を支援するヒトⅡ(4/4)
:2005/08/30(火) 23:21:47 ID:yRwbKb2M
「山田のやつ、今日もあの娘と昼飯かぁ…」
『…ね、ねぇ…今日もアンタのお弁当作ってきてあげたから…その…アタシも…タカシと…お弁当食べていい?』
「………いいけど…」
『…か、カン違いしないでよ!アタシはアンタが一人で食べてるのが不憫に思っただけなんだからね!!』
「……なぁ…山田とあの娘がどんなランチを楽しんでるのか…気にならないか?」
『え…?べ…別に……好きにさせてあげればいいんじゃない…?』
「いつも屋上で食ってるらしい……見に行ってみようぜ!」
『あ!ちょっと待ってよぉ!』
「ここから屋上に行けるぜ」『う…うん』 ………コソコソ… ……ヒタヒタ…(ワクワクテカテカ)
「おいゴルァ!こっから先は立ち入り禁止じゃボケェ!!」「この先は山さんと姉御の愛の巣なんじゃゴルァ!!」
「『!!! す!スイマセンでした!!』」 スタコラサッサー…
「な…なんだ…あのイカツイ二人組みは…」
『し…死ぬかと思った……』
「愛の巣がどうとか言ってなかったか…?」
『愛の…巣……って…もう!タカシのえっち!バカ!先に行くっ!!』
「お…おい!待てって!!」
『……せ…先輩……あ〜んしてください…(////)』
「は…恥ずかしいよ……あ、あ〜ん………」
先輩…私、先輩のことがどんどん好きになってしまいます…
責任………取ってくださいね……
……ただの健気な女の子になってる件&長ったらしくてゴメス。。。。。
85
:
名無しさん
:2005/08/31(水) 00:17:42 ID:/hR2EsC.
>>84
どんなに肉が好きな人でも肉だけを食い続けるのは不可能だ。
たまには野菜も食べたくなる。つまり何が言いたいかというと
GJ
86
:
名無しさん
:2005/08/31(水) 00:46:31 ID:yRwbKb2M
もうなんというか、4話目(最終話)まで一気に落としてしまいます…
本当にごめんなさい… 色んなプレッシャーから開放されたいのです…
読みづらいかもしれませんが、4レスずつにします。
山田はチンカス以下だと思う人、長いのウザイ人はスルーしてください…(´・ω・`)
勢いで書いたものなのに、スレ占拠してしまうみたいでスマソ。
暇な時にダラーっと読んでいただけるとありがたいですw
87
:
山田を支援するヒトⅢ(1/4)
:2005/08/31(水) 00:47:26 ID:yRwbKb2M
『別府先輩…』
「やぁ、やよいちゃん」
『今日…山田先輩がお休みって…ほんとですか…?』
「あぁ…今日は来てないな……バカでも風邪はひくんだなww」
『山田先輩はバカじゃありませんっ!!………あ…ごめんなさい…』
「……い、いや、オレも軽率だった。ごめんね。」
『あの…こちらこそ……あ、ありがとうございました!失礼します!』
「…………山田のやつ……愛されてるな…」
ピンポーン… ガチャ
『こ…こんにちは…』
「あれ……やよいちゃん…授業は…?」
『授業なんてどうでもいいんですっ!……それより…大丈夫ですか…?』
「うん……なんとか…熱は下がってきた…」
『そ…そうですか…よか………
バタッ!
『……あ…先輩!!しっかりしてください!!先輩!!』
88
:
山田を支援するヒトⅢ(2/4)
:2005/08/31(水) 00:48:04 ID:yRwbKb2M
「――――う…うぅん……」
『……先輩…気がつきましたか……良かった…』
「やよいちゃん……オレ、どうなったの…?」
『…玄関で倒れて…私が勝手に……先輩を運んで…寝かせました…』
「……ごめんね…大変だったでしょ…?」
『私が先輩を呼び出してしまったのが原因だし……それに、勝手に先輩の家に上がりこんでしまってごめんなさい……
……おうちの人も誰もいらっしゃらないみたいだったから………つい……』
「…あぁ…オレ…かっこわりぃな…」
『そんなことないですよ……はい、冷たいおしぼりに取り替えますよ〜』
「……今日、両親がちょうど旅行に行っちゃってたんだ……やよいちゃんがいなかったら…オレ、ダメだったかも…」
『やっぱり誰もいないんですか……………誰も……………………(////)』
「………やよいちゃん…」
『は…はいっ!!………(/////)』
「?? ………オレの風邪、うつっちゃうよ…?」
『……え…?あ、あの、私はいいんです…むしろうつされたいってゆーか…なんとゆーか……(////)』
「?? …うつっちゃったら…ごめんね……」
『……いいえ…今日は、先輩が帰れっていうまでは、看病してあげますね!』
「ありがとう…」
『あの…もしよければ……お粥とか作りましょうか?』
「無理しなくていいけど……作ってくれたら…嬉しいかも…」
『はい!がんばります!!』
89
:
山田を支援するヒトⅢ(3/4)
:2005/08/31(水) 00:48:35 ID:yRwbKb2M
『ねぇボクっ娘ぉ』
『ボクっ娘って呼ぶな! で、な〜に?』
『やよい、今風邪ひいて休んでるじゃない?』
『うん。風邪なんてひかない娘なのにね』
『昨日、やよいの家にお見舞いに行ってきたんだ。そしたらね♪面白い話を仕入れちゃいました♪』
『なに?なに?ボクにも教えてよ〜』
『実はね…………ヒソヒソ……』
『え…それじゃ……風邪ひいて喜んでるってこと?』
『そうみたいよ。"私、先輩と苦しみを共有できて…幸せ……" だって♪もうこっちはやってらんないわよね〜』
『いいな〜!いいな〜!ボクもアッツイ恋愛してみたいな〜!』
『タカシ、山田って今日も休んでるの?』
「あぁ、でもなんか、もう治ってるらしいけどな…」
『えぇ?じゃあ、学校に来ればいいじゃない……本格的に引きこもっちゃったのかしら…』
「いや、"漏れのせいでやよいちゃんに風邪をうつしてしまったから、看病してあげるんだお" だとさ」
『ふ〜ん………(タカシも風邪ひいてくれないかな…そしたらアタシが……ってやだぁもうかなみちゃんったら♪
あ、でもでもぉ、タカシが風邪ひいちゃってつらいのはかわいそうだしぃ……
そうだ!アタシが風邪ひいたら…うちにお見舞いに来てくれるかな……そしたら…………うふ♪うふふふ♪)』
「…………おい……どうした?ニヤニヤして…」
『……!!(/////) な、なんでもないわよっ!!タカシのバーカ!!』
90
:
山田を支援するヒトⅢ(4/4)
:2005/08/31(水) 00:49:03 ID:yRwbKb2M
「―――やよいちゃん、大丈夫?」
『平気です……』
「全然熱が下がってないじゃないか……」
『…………そ、それは……先輩が……………そばにいるから…(/////)』
「今、おしぼり濡らしてくるからっ!」
『あ…………はぁ……… …でも……幸せ…♪』
先輩は…私のことどう思ってるんですか…?
やっぱり、妹みたいにしか思ってくれてないのかな…
今の私は、先輩のこと…おにいちゃんとしてじゃなくて…………………
先輩……私の気持ちに…気づいてくれてますか…?
たまに他のキャラのエピソードが入るのは、せめてもの罪滅ぼしです。。。
91
:
山田を支援するヒトⅣ(1/4)
:2005/08/31(水) 00:49:47 ID:yRwbKb2M
「さて………そろそろ帰るとするかな…」
「………タカシぃ…」
「お、おい山田…どうした…元気ないな…」
「…タカシに相談したいことが……」
「おう、言ってみろ」
「…実は……………漏れ、やよいちゃんのこと…好きになってしまったかもしれないんだお……」
「……そ、そうだろうな…あれだけ尽くされればな……(てゆーかまだ付き合ってなかったんだ…)」
「……でも…漏れには自信がないんだお……」
「………………」 『(? なに男二人で話してんだろ………)』
「漏れがあの娘と付き合うことになってしまったら…彼女を苦しめてしまいそうだお……」
「………………」
「漏れみたいな人間に…彼女が尽くしてくれるのが…申し訳ないんだお…」
「バカヤロー!!」 『!!!』
「…タカシ……」
「おまえ、やよいちゃんの気持ちを考えたことあんのか!」
「…わかってるお……だからこそ…申し訳ないんだお……」
「やよいちゃんはなぁ!おまえのことが好きなんだよ!それ以上でもそれ以下でもねぇっ!
あの娘は、おまえじゃなきゃダメなんだよ!!どうしてその気持ちに応えてやれねぇんだ!!」
「………………」
「やよいちゃんは、そのままのおまえが好きなんだよ!頼りなくて、アホみたいにブンブン言ってて、
だけど、どんなにつらくても笑顔を絶やさないおまえが好きなんだよ!!」
「………………」
「おまえも、やよいちゃんが好きなんだろ!?」
「…う……うん……」
「だったら、その気持ちを思い切って伝えちまえ!!
もし彼女がおまえに対して不安を述べたら、彼女好みの男になれるように、自分をみがけばいいだろ!!」
「…タカシ………やっぱりタカシは大人だな……オレ、思い切って告白してみるよ!ありがとうタカシ!!」
「……………な…なんだ…? 今、オレの知らない山田が見えたような気が……」
92
:
山田を支援するヒトⅣ(2/4)
:2005/08/31(水) 00:50:27 ID:yRwbKb2M
『………た、タカシ…』
「うわぁ!!か、かなみ……聞いてたのか……」
『うん…ごめん……でも…タカシ…かっこよかったよ…(////)』
「ううううるせぇな!!とっとと帰れ!バーカ!」
『な…なによ!ほめてあげたのに!バーカバーカ!』
「バーカバーカバーカ!」
『バカバカバカバカバーカ!!』
「………(はぁ…人にはあんなこと言えるくせに……オレって素直じゃねぇよな…)」
『………(あ…黙っちゃった……ちょっと言い過ぎちゃったかも……)』
「『あの…! …………』」
「ど…どうぞ……」
『あ…アンタから…言いなさいよ…』
「…………い…一緒に…帰ろうぜ…」
『………う……うん……』
「…………………」
『…………………』
「あ、あの…やよいちゃんは……まだいるかい…?」
『あ!山田先輩!やよいなら………』
『先輩!!どうしたんですか!?』
「……話があるんだ………時間……いいかな…」
『は…はい…』
『………ねぇボクっ娘ぉ♪』
『ボクっ娘って呼ぶなー!』
『山田先輩……もしかして♪』
『う、うん…ボクまで緊張してきたよ…』
93
:
山田を支援するヒトⅣ(3/4)
:2005/08/31(水) 00:50:54 ID:yRwbKb2M
「……突然呼び出してごめんね…」
『…いいえ……あの…屋上でなければできない話…なんですか…?』
「…いや、その、なんてゆーか……ごめんね…」
『あ…謝らなくていいですよ…』
「えっと……オレが君を呼び出したのには理由があって…」
『…は、はい…』
「まぁ、あの、理由っていっても、やよいちゃんにとってマイナスになるようなことじゃなくて…
…いや、こんな言い方おかしいかな…少なくともオレにとってはプラスになるってゆーか……」
『……はい…』
「その、要するに……お、オレと…付き合ってくらふぁいっ!!……………あ…」
『…………………………』
「…………………………」
バタッ!
「!! やよいちゃん!しっかりして!やよいちゃん!!」
『―――…ん…うぅ……』
「…あ!……やよいちゃん!……良かった…大丈夫…?」
『………先輩……ここは…?』
「保健室だよ……やよいちゃん…突然倒れて……」
『………先輩……私…夢を見ていました……』
「…どんな夢?」
『…………そんなの………言えません…(////)』
「……教えてよ…」
『…………先輩が……学校の屋上で……私に………こ、告白してくれる夢…です……(/////)』
「……………そ、それって……」
『……??』
「……改めて言うよ………やよいちゃん……オレと、付き合ってください…」
94
:
山田を支援するヒトⅣ(4/4)
:2005/08/31(水) 00:51:19 ID:yRwbKb2M
『……………夢じゃ……なかったんだね…………』
「…………………」
『……………………うぅ……グスッ……』
「…や、やよいちゃん…ごめん……オレ、バカなこと言っちゃっt
『私のこと…ずっと大切にしてくれますか…?』
「……………う、うん…」
『浮気とか、絶対にしないって…約束してくれますか…?』
「…うん……」
『私のこと、やよいって、呼び捨てにしてくれますか…?』
「う……や……やよい……」
『……もっと…私の名前……呼んでください…』
「…………やよい……」
『もっと…』
「……やよい…」
『もっとぉ……』
「………やよい……ちゃん……も、もう、恥ずかしいよ……」
『…えへへ♪………じゃあ……許してあげます……』
「…………オレが…やよいを……絶対に幸せにするって…約束するよ…」
『幸せにしてください……』
糸冬
何度も"やおい"と打ち込んでしまった件&読んでくれた人サンクスw
95
:
名無しさん
:2005/08/31(水) 00:52:15 ID:yRwbKb2M
いっぱい書き込んでしまってゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ×100
ツン
96
:
名無しさん
:2005/08/31(水) 09:56:37 ID:4ftpZkEE
>>94
>何度も"やおい"と打ち込んでしまった件
あるあるwwwwwww
で、全部読んだ。確かにツンデレが主じゃなかったけど、GJ!
別に山田嫌いじゃないし、たまにはこういう話も読んでも(・∀・)イイ!
VIPPRE山田の裏を垣間見るタカシにワロスwww
97
:
ロストマン 1/4
:2005/09/02(金) 01:55:37 ID:nhaV1Ay6
もう、正午を過ぎた。
…そういえば、昨日の夜から何も食べていなかったっけ。
何も食べなければ、どうなるかぐらいわかる。
現に今、立っているだけで精一杯なんだから。
成人男性ですら、一週間で餓死すると聞いたことがある。
ぼくみたいに体が小さいと、三日もつかどうかすら危ういな。
パンなら、冷蔵庫の中にある。
でも、食べる気には、なれない。
もう、寝てしまおう。
夢でも、見よう。…底抜けに明るいやつがいい。
ぼくと、いなくなった父さんと、いなくなった母さんとで。
…あの、思い出のような日々を、もう一度、見てみたい。
見るだけで、いい。
父さんと母さんが、一緒に助け合って、笑い合って。
そんなゆめのような夢が、見れるだけでいい。
母さんは、ぼくが邪魔だから、父さんに任せてどこかに行った。
そんな母さんと、父さんが、一緒に笑っているところが、見たいんだ。
ぼくは、その輪に入る権利がないから、輪の外で見ている。そんな夢。
…母さんがいなくなったのは、ぼくのせいだ。ぼくが邪魔だったからいけないんだ…!
父さんが仕事を辞めたのだって、ぼくのせいだ。
母さんがいなくなって、家事をする必要があったからなんだ。
ぼくのせいだ。
ぼくのせいなんだ。
ぼくのせいだ。
みんな、ぼくのせいなんだ。
ぼくのせいだ。
母さんが、いなくなったのも。
ぼくのせいだ。
父さんが、仕事を辞めたのも。
ぼくのせいだ。
父さんが、少し乱暴になったのも。
ぼくのせいだ。
かなみが、傷ついちゃったのも…!
ぼくのせいだ。
父さんが、死んでしまったのも……ッ!!
みんな、ぼくが悪いんだ……!!!!
「うっ、う…、うぁあああぁあああぁぁあああああぁああああぁ!!」
――――――――こんな現実には、もう疲れた。
98
:
ロストマン 2/4
:2005/09/02(金) 01:56:21 ID:nhaV1Ay6
…ぼくの屍骸は、どうしよう。
夏は生ものがすぐに腐る。
腐ったら、周りのひとに迷惑かかるかもしれないな…。
鍵は…かかってない。わざわざ立つのは面倒だし。
とは言っても、金目のものなんてないから、空き巣にも狙われないや。
何か、引っかかる。
…だいじな、なにかを忘れていたような気がする。
まぁ、いいや。
考えることなんて、もうこれ以上ないんだから。
―――――もう、疲れたんだ。
だから、そろそろ眠りたい。
…それが、できない。
「これは錯覚だ」と、自分に言い聞かせようとする。
でも、この感覚は、錯覚なんかじゃない。
がちがち、がちがち。
がちがち、がちがち。
がちがち、がち…。
セミの鳴き声は、いつの間にか止まっていた。
…セミの声がない今、時計の音をかき消すものはなにもない。
こんなにも、かちかちとうるさいとは、思っていなかった。
かち、かち、かち、かち。
かち、かち、かち、かち。
かち、かち、かち、かち。
かちかちと鳴く時計は、もう7時を指している。
つらいけど…まだ、眠るわけにはいかない。
…不意に、思い出した。
ぼくは、まだみんなに、ごめんなさいって言ってないんだ。
みんなに、たくさん迷惑かけてきたんだ。
…伝えなきゃ、いけないことだったのに。
せめて、遺書だけでも書いておこう。
そう思い、布団から起き上がる。
書き出しは、どうしようかな…?
「うっ…」
あれ、何でぼくは立てないんだろう。
ああ、何も食べてないことを忘れてた。
ぼくのことなんて、大事じゃないしどうでもいいや。
…意識を失うまで、若干のタイムラグがあるみたい。
次があるのなら、参考にしよう。
ぼくは、死にたいのか、それとも、死にたくないのか。
…それが、よくわからなくなってきた。
でも、ひとつだけ分かることがある。
――――――これで、ようやく楽になれるってことだ。
99
:
ロストマン 3/4
:2005/09/02(金) 01:57:18 ID:nhaV1Ay6
――――イントルード、かなみ。
みことさんから、休んだ理由を聞いた。
…朝は、悪いこと言っちゃったかもしれない。
あいつ、傷ついてたらどうしよう。
そのことばかり考えて、部活に身が入らなかった。
電話をかけても、透は出ない。
そりゃあ、当然か。私が、あんな言葉をかけたんだから。
……わたしは、どうしようもないくらい、ばかだ。
今、時計は七時。
何度もかけたのに、でないっていうのは、いくらなんでもおかしい。
…透の家に行くためにも、身支度をしなきゃ。
「……あいつ、自暴自棄にでもなってんのかしら」
それは、ありえないことじゃない。
だってあいつ、繊細なやつだから。
…だから、開き直ることが、出来ないんだ。
透の家の前についた。
ずっと、あいつのことばかり考えていて、どこをどう通ったとか、ぜんぜん覚えていない。
ドアノブを、回す。…おかしい、開いている。
あいつは抜けてるけど、鍵をかけ忘れるほどじゃない。
…そこまで、追い詰められてるってこと……!?
「――――――え?」
嘘、でしょ?
だって、こんなのってない。
今日の朝まで、いたんだから。
…いや、ついさっきまで、いたのかもしれない。
わたしの、せいだ。
わたしが、あんな風に言ったから……!
人の気も知らないで、なんてことを…!!
100
:
ロストマン 4/4
:2005/09/02(金) 01:58:29 ID:nhaV1Ay6
――――みことさんの手腕は、見事なものだった。
倒れた原因を栄養失調だと看破し、ビタミン剤を注射。
透は起きたけど、体が動かないみたいだった。
…二日は入院が必要だ、とか。点滴だとかをすると言う。
命に、別状はないらしい。よかった。
車で、病院まで送るという。
こいつをここまで追い詰めたのは、私のせいだ。
だから、病院まで見届ける義務がある。
「…いや、それにしてもだ。
あと数時間遅れてたらお陀仏だったぞ」
…みことさんは、顔に似合わず物騒なことを言う。
「あ…はは…、そうなんですか…」
横たわっている透が、元気がなさそうに見えた。
いや、そりゃあ元気がないのも当然といえば当然かもしれない。
…でもそれが、私には、精神的なものだと思えたのだ。
――――再び、透へ。
かなみが、どうやらぼくを見つけたらしい。
…ぼくは、潔く消えたかったのに。
……どうやら、かなみは自分のせいだと思っているらしい。
さっきから、何もかも上の空だ。
―――――まただ。また、ぼくは人を傷つけた。
もう、いやだ。
何もかもが、いやになる。
「病人はベッドで寝ていろ、早く療養するんだ。
…かなみ、自分の家までの道のり、わかるな?」
こくり、とかなみが頷くと、みことさんは帰っていった。
飄々とした人だなぁ、いつ見ても。
「ごめん…とおる、ごめん……!
わたしのせいで…わたしのせいで……!!」
なんで、そんな風に、全て自分で背負い込むんだよ…!?
誰かが傷つくのを見るのは、嫌なんだよ…!
もう、やめてくれよ………!!!
「ごめん…ごめん…ごめん…ごめん…」
もう、そんなの聞きたくないんだよ…!!
かなみは、いつもの強いかなみでいてくれよッ!!
――――――だれでもいいから、はやく、ぼくを楽にしてくれよ……!!
101
:
語り部 座敷童
:2005/09/04(日) 23:31:29 ID:3L0wwhi6
ツンデレじゃないんで、こっちに投下です
102
:
語り部 座敷童 1/4
:2005/09/04(日) 23:32:08 ID:yPeEHYb.
暗い、闇の中に俺はいる
何も見えない
何も聞こえない
深い闇の中
意識はどんどん冴えていく
でも体の方は、全く感覚がない
金縛り、というやつだろうか
その割には何も見えないし
何も感じない
…なんだか、眠たくなってきた…
103
:
語り部 座敷童 2/4
:2005/09/04(日) 23:32:30 ID:yPeEHYb.
「ほっほ、魔力が溢れてくるわい」
(へー、凄いのね私)
「な…何故お主が…」
(いや、意識があるのよ。なんか間違えたんじゃないの?)
「そんな筈は…いや…そうか…」
ニヤリと笑い、楓は走り出した
「どうやらお主の意識が強すぎて、精神だけ残ったみたいじゃの」
(ふーん…)
「それはいいとして…タカシじゃな。本格的に危ないかも知れんのう」
(!!)
「案ずるな小娘。儂がいれば…」
すらり、と刀身が長いナイフを取り出す楓
ずばっと空気を裂くと、闇がこぼれだした
「こんなものじゃ」
(ここにタカシが?)
「そう考えて間違いは無いじゃろうな」
104
:
語り部 座敷童 3/4
:2005/09/04(日) 23:33:39 ID:nqhT4eQU
「…さて、ここから先はお主の覚悟の問題じゃ」
(…)
「自らの命を懸し、タカシを助けに行く…覚悟の」
(ふん…)
(幽霊や妖怪が怖くて女子高生なんかやってられないわよ。タカシを助ける覚悟?そんなもんねぇ…)
(無かったらこんな危ない場所にいないわよ!!惚れた男の危機なのよ!?)
「ぷっ…」
(な…なによ!)
「いや…強い娘じゃ。なかなかの度胸じゃの」
(そりゃどうも)
「その言葉を待っていた。ここから先はお主が行くのじゃ」
(…わかった。アタシじゃないと駄目なのね?)
「強き想いは運命をも手繰り寄せるのじゃ。儂からはそれだけじゃの」
105
:
語り部 座敷童 4/4
:2005/09/04(日) 23:35:11 ID:46Ull2aE
(あんたもしかしたら…)
「なに、年寄りの節介じゃよ」
(……ありがとう)
「礼には及ばん。ほれ、そろそろ儂は引っ込むぞ」
「あ、戻ってる…」
(ほっほ、早く行かんとタカシが危ないぞ?)
「…!!」
タカシはゆらゆらと闇に揺られていた
何だか気持ちがいい
このまま眠ってしまえば、楽になるのかな…
………
かなみ………
そこまで考えた所で、タカシの意識はぷっつりと途切れた
限界が、訪れたかのように…
「はあっ…はあっ…おかしいわね…この辺りに気配があるんだけど…」
(むう…もしかしたら…罠なのかも知れんのう…)
「なんですって!?」
106
:
名無しさん
:2005/09/06(火) 01:02:20 ID:oCc9cRRc
中華長編書いたわけだがちょっとツンデレってこれでいいのかって思ったので
出来た分だけ投下します
107
:
誓い
:2005/09/06(火) 01:03:10 ID:oCc9cRRc
銀色に光る雨が体の体温を奪っていく、彼には指一本動かす気力も無い
彼に残る想いは色あせていた
「慶明、あんたの手に何か付いてるアルか?」
贖緋香(ショク・ヒコウ)が戸を開けるとベッドの男は自分の両手をまじまじと見詰めていた
背中に氷を入れられたように背筋を伸ばす反応を示した後男は話し始める
「慶明・・・・・・俺の名前か?」
彼の奇妙な反応に眉をひそめながらも、緋香は答える
「慶明は慶明アル、さっさと服を着替えるヨロシ」
「何に?」
「あんた、さっきから何を言ってるネ、いい加減にしないと張っ倒すアルよ」
「済まない、ふざけているつもりは無い、と言うよりも貴女は誰だ?」
文字通り張っ倒され、ベッドに倒れこむ
「いい加減にするアル!アタシを忘れたなんて絶対に許さないネ!」
「済まない、本当に・・・・・・でも、記憶が無いんだ」
その言葉を言ったときには緋香は部屋を出て行ってしまっていた
(おい、服を着てさっさと追いかけろ)
突然、自分の中に別の意識が沸き立つ
(誰だ・・・・・・)
(俺はお前の味方だ、それ以上はどうでもいいだろう?)
108
:
誓い
:2005/09/06(火) 01:03:36 ID:oCc9cRRc
緋香はただ独り路地裏を駆け抜けていく
(慶明・・・慶明・・・・・・!)
どこへ行く当ても無く走り続ける、住宅地を抜け市場を抜けその先まで
(アンタにとってアタシはそんな存在だったアルか?)
涙が零れ落ちる、目をこすって涙を振り払うとそこには黒衣の集団が周りを囲んでいた
「何アル!さっさとそこをどくヨロシ!」
「すぐに退きます、その前に一つ、慶明様は何処に?」
リーダー格らしい長髪の男性が言うと、ようやく緋香は気付く
「まさかアンタ、瀏の・・・・・・」
そこまで言った時、獣の咆哮の様な銃声が連続して響く
牙は地面ごと黒衣の集団を噛み砕き、赤茶けた土煙が舞う
気が付けば、立っているのは長髪の男と緋香そして二挺拳銃を構えたもう一人
「慶明!」
「慶明様!」
(お前は・・・・・・)
(言っただろう、お前の味方だ、用があればいつでも呼べ)
慶明の中にはもう既にもう一つの意識は消滅していた
「取り敢えず、介抱してもらった恩もあるので貴女の味方をした」
緋香は慶明に駆け寄る、慶明は長髪の男へ視線を移す
「慶明様、いかがされました?」
「・・・・・・どうやら、俺の名前は慶明のようだな」
そう慶明が言うと、長髪の男は暫くして納得したように
「成る程、では、自己紹介をば、範斬(ハンザン)と申します、では」
長髪の男は死体の処理を任せてどこかへ去っていった
「慶明・・・・・・良かったアル」
慶明が目覚めた部屋に戻った緋香は慶明に話しかける
「ところで・・・・・・貴女の名前はなんなのだ?」
緋香は慶明の鳩尾に貫手を食らわせる
「未だ思い出せないアルか!いい加減思い出すアル!アンタの恋人、贖緋香アル!」
「恋・・・・・・人?」
ベッドに突っ伏しつつ慶明は聞き返す
「あっ、ち、違うアル!そこはただの言葉のあやアル!」
「あやもなにも無いような気が・・・・・・」
「だ、黙るヨロシ!」
頭に衝撃を受け、慶明の意識は遠のいていった
109
:
名無しさん
:2005/09/06(火) 01:06:35 ID:oCc9cRRc
出来れば
ツンデレと言うものはもっとこういうものだ
って言うのがあれば目安程度にアドバイス希望
110
:
名無しさん
:2005/09/06(火) 02:25:30 ID:ggKXaOy6
>>109
「ツンがない女キャラ」以外全てと思えばよし
111
:
ロストマン 1/3
:2005/09/11(日) 00:57:08 ID:8NkVx/ik
白いベッド。
白い天井。
白い壁。
点滴と呼吸の音。
それ以外の音は、何ひとつない。
…まるで、隔離されているみたいだ。
いや、「みたい」じゃないな。
隔離されているんだろう。
――――――ここは、異界だ。
部屋には、ぼく以外の呼吸はない。
…誰のことも、考えなくていいんだ。楽でいい。
今日の土曜日。
明日の日曜日。
その二日間だけ、ぼくはここに留まることができる。
…逆に言えば、その、二日間だけなんだ。
ずっと、ここにいたい。
当たり前のように生きることは、ぼくには少し難しすぎた。
この世界で生きていくことは、障害に溢れてる。
その障害に目を瞑って生きていけるほど、ぼくは賢くない。
…だから、ずっとここにいたいと思えるんだろう。
この考えが正しいとか、間違ってるとか、そんなことわからない。
でも、ひとつだけ言えることがある。
――――――――これが、ぼくの望んだ世界、そのものなんだ。
112
:
ロストマン 2/3
:2005/09/11(日) 00:57:46 ID:8NkVx/ik
コンコン、という扉のノックで目が覚めた。
…どうやら、少し眠っていたらしい。
ぼくなんかのために、わざわざ来る必要、ないっていうのに。
…ぼくなんかのために。
コンコン、コンコン。
ノックの音が大きくなってきた。
…うーん、かなみのことだ。ぼくが許可するまで、ノックし続けるんじゃないかな?
コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン!!
…ぎぃっ、と扉が悲鳴をあげた。
「だーっ!いるんなら返事ぐらいしなさいよ!!
大体アンタって、いっつも抜けてるわよね!!」
「うん、そうかもしれない。
でも、かなみは…もう少しおしとやかになるべきだよ」
「ちょっ、ちょっとそれどういう意味よっ!?」
…脊髄反射で応答するのは、やめた方がいいと思うな。
「……だって、かなみは、女の子なんだから」
「う、うるさいわねっ!病人は病人らしく寝てなさい!!」
この提案は、助かる。眠くて仕方がなかったから。
…ここは、お言葉に甘えさせてもらおう。
「それじゃあ……おやすみ」
「ちょっと!私が来てるってのに寝る!?」
でも、病人は病人らしく寝てろ、って言ったのは、かなみの方じゃないかな…?
う、…睡魔が襲ってきた。
それに抗う術なんて、ぼくにはない。
「…ばか、もう知らない!」
バタン、と大きな音を立てて、ドアが閉まる。
…かなみには、ちょっとわるいことしちゃったかもしれないな。
113
:
ロストマン 3/3
:2005/09/11(日) 01:02:27 ID:8NkVx/ik
病室が赤く歪む。
赤いベッド。
赤い天井。
赤い壁。
…そのセカイは、少しずつ溶けていく。
その様が、ぼくには、流れ出る血に見えた。
赤い海。
地球の始まりは、こんな世界だったらしい。
その原初の海は、生命のスープ。
…うろ覚えだけど、みことさんが、そんなことを言っていた。
生命のスープから、いのちが生まれるのは当然のこと。
地面から、人間らしきものが生えてくる。
「…父、さん……?」
……じゃ、ない。
父さんは、死んでしまったんだ。
ぼくが、殺したんだ……!
その面影と、その姿は、どこか、父さんに似ている。
…みんな、虚ろな眼差しで、死んだ目をしているからだろうか。
もう、いやだ。
まるで、ここがゲンジツみたいじゃないか。
こんな世界、ぼくは望んでいないのに。
さっきまで、ぼくはどこにいた?
…ぼくだけの、ぼくの望んだ世界に、いたはずだ。
―――――じゃあ、ここは、一体どこなんだ?
狂っているのはどちらだろう。
世界か、それとも自分の方か。
わからない。わからない。
…自分が、わからない。
くるくるくるくると、かれらは踊り始めた。
ぼくのことなんて、目にもかけない。
くるくるくるくる、くるくるくるくる。
くるくるくるくるくるくるくるくるくる。
くるくるくるくるくるくるくるくるくるくる。
…そして、共食いが始まる。
それも当然だ。だって、食べ物がないんだから。
ぐちゃ、ぐちゃ。ぶちゅ、ぐしゃ。
肉を咀嚼する音。吐気がする。
ひとがたが、ひとがたを喰らう。
父さんが、父さんを殺した。
…目をつぶっても、耳をふさいでも、その音が聞こえてくる。
もう、いやだ。もういやだ……!
――――――ここから、逃げたい。
でも、その手段がない。
ドアも壁も天井も窓も、全て溶けてしまった。
…もう、逃げられない。
ぼくの望んだ世界なんて、こころの中だけのもの。
そんな当たり前のことに、ようやく気付いた。
…そんなこと、きづかなければ、よかった。
ぼくは、どこにも。
どこにも、逃げることなんて、できないってことに。
――――――夢からも、現実からも。
114
:
名無しさん
:2005/11/04(金) 20:25:56 ID:Z6IZxJzI
「あいつが…そう、中学三年の時だな。お前がまだ居なかった頃だ」
桜は黙って、しかしはっきりとした目で頷いた。
「ちなみは…レイプされた。運良く未遂だった…」
「そんな…」
「丁度通りかかった人が助けてくれて、すぐ犯人は逮捕された…けど…」
「けど?」
「学校に…来なくなった」
タカシはふうとため息をついた。
「それで、かなみや山田と一緒にあいつの家に行ったんだ。そしたら…あいつ、何て言ったと思う?」
「…分からない」
「『こんな体、見ないで』だ」
「そんな…未遂だったんでしょ?」
「でも、…あいつは傷ついてた。俺は顔も知らない犯人を恨んだよ。夢の中で何回殴ったか」
「ひどい…」
「…今の性格になったのも、あの頃だな。無口で、冷静な顔して、一度口を開けば毒舌で」
「そんな事が…あったの」
「まだ話は半分も終わってないぞ。でな、俺たちで学校に来させようという事になったんだ。
―今思えば、結構無茶してたな。朝からみんなでちなみの家に行ったり、電話かけたり。
時には、山田が無理矢理連れて行こうともした。かなみに殴られたけどな。
でもそんな事をしてる内に少しずつだけど…笑う様になっていった」
「…優しいね、みんな」
タカシはまたため息をついた。
「…学校に来るようになった時は受験期で、みんなぴりぴりしてた。ある時、ささいな事で喧嘩が起きた。
男子同士の他愛の無い物だったんだけど…」
「けど?」
「ちなみが止めに入ると、一人が『お前みたいな汚れた女が出しゃばるな!』って言ったんだ。
…気がついたら、殴ってた。かなみも一緒に、思いっきり殴ってた」
「…どうなったの?」
「二人とも停学喰らって、自宅謹慎。内申書に傷がついて、志望校を一個下げた。
あん時は単に『お前に何がわかるんだ!』って感情だけで殴ってたからな…」
「ちなみさんは?」
「…責任取るって言って俺たちと同じ所―つまり志望校を三個下げた」
「凄いよ…みんな」
「…結局みんな同じ高校に入って、進路を決める時にあいつ、カウンセラーになりたいって言った
最初は気にしてなかったけど…たまたまちなみがこの家にいる時、ちょっと、な―」
115
:
名無しさん
:2005/11/04(金) 20:26:47 ID:Z6IZxJzI
「…私、カウンセラーになって…同じ…犯罪の被害者を…勇気づけたいんです」
―何でだよ!?あんな事、もう忘れろよ!
「…忘れられませんよ。いやでも。…今でも思い出す事があるんです。男の人が後ろから急に口を押さえて
…私を押し倒して…服に手を…って」
―もう大丈夫だから…
「今でも…知らない男の人がぶつかったりすると…怖いんです。…道に誰もいなくて…
向こうから男の人とすれ違うと…手が震えて…でも…」
―でも?
「もっと…私より非道い事を…されてる人がいるんです…
きっと…私より男の人が怖い人が…」
―何もお前がならなくても…
「でも…私は…被害者の気持ちがわかるんです。あの時の恐怖が―。
何もかもが…閉ざされてしまう気持ちが―。優しい人も、好きな人もみんな同じに見えてしまう怖さが…わかるんです」
―でも…
「伝えたいんです。…この世には、あんな人達ばかりじゃ無くて…やっぱり優しい人もいて、自分を受け止めてくれる人がいて…
泣きすがってもいい人がいて…互いに愛し合える人もいるって…」
―止めようとしても…無駄だよな?
「…ええ」
116
:
名無しさん
:2005/11/04(金) 20:27:30 ID:Z6IZxJzI
「で、あいつは大学に進学してカウンセラーの卵になった」
「…そんな事が…」
「多分…お前が想像してるより、つらい事をあいつは味わってる。
―回りから好奇の目で見られたり
―満員電車が怖かったり
―夜、一人で出かけられなくなったり
―何よりも、世間の目が『性犯罪被害者』として見てくれなかった。決してちなみを見ようとはしなかった
…あいつは心の中に隠したい傷を…ずっと―」
「それでも…カウンセラーに…」
タカシは少しだけ明るい声になった。
「俺たちは…単純だからさ!…山田は警察官になるって言って
俺とかなみは必死に勉強して法学部に…。まあ今の俺はただの駄目人間だけどな」
「そんな事ないよ…凄いよ…みんな…」
「あいつは…多分一番人の痛みが解ってる奴だ…だから…口は悪くても―。わかるな?」
「…うん」
桜は静かにうなずいた。
「さ、もう寝ろ。この事は他言無用だから絶対に喋るなよ」
「…お兄ちゃん」
桜がドアを開けて入り口で立ち止まった。
「…私も…お兄ちゃん達みたいに―みたいな人に…会えるかな?」
「好きな奴が出来れば、きっと会えるさ」
「そうだ…ね」
桜はドアを閉めて、廊下を歩いていった。
そしてタカシは電気を消して、暗闇に向かって
「ちなみごめん。口止め破っちゃった」
と呟き、すぐに眠りについた。
117
:
名無しさん
:2005/11/04(金) 20:47:58 ID:XNrPdSlo
泣いた。本当に、眼が潤んでモニターが歪んだ。
118
:
名無しさん
:2005/11/23(水) 21:04:43 ID:MkjhFWiU
自分で書いてて、正直ちょっと訳が分からなくなったから、こっちに投下。
先を先を考えて……ツンデレを愛でてたはずなんだが、はて………('A`)?
119
:
1/4
:2005/11/23(水) 21:05:14 ID:MkjhFWiU
>>229
・胸いっぱいの愛と情熱をツンデレへ
今俺は、全力で走っている。その理由は、少し時を遡り―――――
「尊先輩!!!!!!」
“キャ――――!!!”
俺の叫び声の後に、女子達の黄色い声が炸裂。
―――理由は簡単。学●へ行こうという番組をご存知だろうか? 一時流行っていた、未成年の主張。
それの真似事のような事が、ウチの高校の文化祭では体育館で行われている。
厳密にはパフォーマンスのはずだが、この場で告白・全校公認のカップルとなり、結婚までした人達が居るらしい。
それはこの高校の恋愛伝説として、実際真偽は定かでない。
だけど…………こうして俺の様に、この場を告白の場として利用する者は、毎年居るらしい。
「ずっと好きでした!! 俺と付き合ってください!!!」
“キャアアアアアァァァァ――――!!!!!”
……会場のボルテージ、MAX。そこですかさず、司会進行の人が出てくる。
「はい! えー、現生徒会長の水野さんですね。それではー……裏方だっけな? 会長、出てきて下さーい!!」
ざわざわざわざわ…………
辺りのざわめきは、人混みの中に居るよりも凄かった。何せその中心人物は自分だ……少し後悔しそう。
でも、出来る限りの事はやったはず……あとは返事を待つのみ。
「あれ? 遅いなぁー…………おっ!? って、会計の山田君。どした?
………………あー……うんうん……。あちゃー…………えっと皆さん! 落ち着いて聞いてください!
あ、特に君は」
ビシッ! ……とした感じの顔で、小さくそう言われた。一体、何が起こったんだ?
120
:
2/4 (>>119にあるレスアンカーは現行スレのものです)
:2005/11/23(水) 21:07:16 ID:MkjhFWiU
「生徒会長………逃げちゃいました」
“工工工エエエエェェェェ(´д`) ェェェェエエエエ工工工”
…………いやぁ、この「ええええええぇぇ」の被りっぷり、TVに出ても恥ずかしくないな。打ち合わせしてんのか?
……………………ん? え、えええええ!?
「と言う訳で、えっと……別府君」
肩にポン、と手を置かれた。ちょっとくすぐっt
「ダッシュ!」
握り拳に親指を立て、爽やかな笑顔でそう言った。言われた。
――――だから俺は今、走っている。そして、尊先輩の居そうな所へ………
≪この場所は、私のお気に入りだ。生徒も来ないし、普段とは隔離された雰囲気が……何となく好きなんだ―――≫
「見つけたっ!」
『ぅわぁ?!』
少し、情け無い声。聞いたことの無い声だった。……息も絶え絶えに、俺は言う。
「どうしてっ……逃げたりするんですか」
『それは……貴様があんな馬鹿な真似をするから!』
「だって仕方ないじゃないですか! ……先輩、何だかんだ言いつつモテるし……」
『それはっ……誰も私の本質を見ていないからだろう? 私がどれだけつまらない人間か、
君ほど私の近くに居るのなら、分かっていると思ってたのに………』
捲くし立てる様に先輩が言う。
――――先輩と俺は、幼馴染だった。そうは言っても、家が比較的近所で親の仲が良く、幼稚園が一緒だっただけ。
121
:
3/4
:2005/11/23(水) 21:07:37 ID:MkjhFWiU
小学校に上がれば、学年は一つ違うので疎遠になった。
中学の時、部活が同じになって、でも昔のように呼ぶのは気まずくて、「先輩」と呼ぶようになった。
そして、同じ高校に入って、また部活が同じになって。勉強も、時々教えてもらってた。だから―――
「それは違う」
俺は……ずっと言いたかった。
まだ幼稚園児の時に覚えた、何ともいえない心の充実感を。
小学生の時、何度もひとつ上の学年の階に行こうとして、諦めた事を。
中学生の時、部活帰りに同じ帰り道を歩きながら言おうとした言葉を。
「ずっと……ずっと前から好きだった。だから、尊せ…………みことは、つまらない人間じゃない」
『だったらどうして、今の今まで先輩と呼び続けた!? 私は……私はっ…………!
貴様よりも、もっと前から――――』
そこで止まった。文化祭で盛り上がっている学校から、この空間だけが切り離されたような錯覚を覚える。
前から……もっと前から……一体、何?
『自分が、惨めじゃないか………一人で勝手に諦めて、嫌いになろうとして、出来なくて…………。
考えない事にして、それでもお前は近くに居て………』
……ここまで言われても、あの言葉が聞けないとまだ不安……なのは、俺が保守的な人間だからだろうか。
『今、凄く嬉しくて…………もう一度、聞きたい』
「何を?」
『好きだ、と……(////』
「んっと……ずっと前から、これからも、好きだから……」
『ありがとう……私も…………いや、私は大好きだ……(/////』
二人で抱きしめあった。その時間は、永遠に近く―――――
122
:
4/4
:2005/11/23(水) 21:07:57 ID:MkjhFWiU
「って尊先輩! 仕事ほったらかし!!!」
『お前……この期に及んでまだ先輩と……』
むぅ、と言わんばかりにこちらを見る。可愛い……じゃない!
「それじゃなくて!裏方の仕事!!」
『ん……?』
ここまで言って、尊の顔はみるみる蒼ざめていった。……かと思えば、少し考えていつもの冷静な顔へ。
『いや、私が居なくても生徒会のメンバーは優秀だ。上手くやってくれるだろう』
「そんな、えらい他人任せな……」
『今日は、文化祭が終わるまで此処でさぼらせて貰おう』
「いいのかなー……品行方正で有名な尊がそれで」
『ん、それでいい………(/////』
さぼってもいい、なのか……したの名前で呼んだのがいいのか……どっちにせよ、尊は満足そうだった。
〜後日談〜
これで全校公認のカップルになるかと思いきゃ、何と尊、人前に出ると全否定。
あの思い切った告白も、そこまで大きな意味は持てなかったらしい……。
でもきっと大丈夫。二人の想いは、10年以上積み重ねた何よりも大きい、大切なモノだから――――。
123
:
名無しさん
:2005/11/23(水) 21:30:25 ID:XNrPdSlo
>>122
どう見てもツンデレです。
本当に、テラモエスでしたwwwwwwwwwwwwwwGJ!!!
124
:
名無しさん
:2005/11/23(水) 22:02:08 ID:MkjhFWiU
>>123
結構下にあるのに、見てる人居るんですね。ちょっと感激。
はて、このSSどうしよう……
とりあえずURLでも本スレに貼って……って、何か違うような……('A`)
125
:
名無しさん
:2005/11/24(木) 07:31:36 ID:UZ236z3Q
>>122
悩むのが不思議なほどいいツンデレでした。
本スレに貼ってきちゃった(・∀・)
126
:
名無しさん
:2005/11/24(木) 17:15:06 ID:MkjhFWiU
>>125
ちょwww何してるんですかwwww
……とりあえず、悩んだ理由でも書いときます。
何かこう、書いてて設定ばっかり先に先にいっちゃって、
(学年一個違いの幼馴染とか、お互いずっと好きだったとか、諦めようとしたとか)
書いてる段階で「('A`)?」となった訳です。
最後の後日談も、ツンデレに見せるために取って付けた風に見えたりしちゃったりして。
今は無いけど、以前の愚痴スレを見て少し敏感になり過ぎてたのかも知れませぬ。
たぶん、懲りずに今日も書きますが。
127
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:37:22 ID:OsxQoflE
書いてたら、随分長いものになってしまった……('A`)
最初頭にあったような妄想から、かけ離れた様な……そうでも無い様な。
自分の中で訳ワカラナスな内容になったので、こちらに投下します。
本当に長いので、本当にお暇な人は見てください、それでは……。
128
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:38:03 ID:OsxQoflE
小さな小さな、子供が二人。 男の子と、女の子が、一人ずつ。
気の弱そうな男の子と、気の強そうな女の子。セピア色に流れるその思い出は、夢。
『タカシは、わたしとずっといっしょにいなさいっ!』
「……でも、ぼく…………」
『あなたはわたしの“しよーにん”ですわ。だから、わたしの言うことはぜったいですっ』
「……うん…………」
『言いたいことでも、あるのですか?』
「リナがほかの人と“けっこん”するの……やだ」
『そんなことはかんけいありませんっ!』
「え……?」
『タカシは、わたしがほかの人と“けっこん”してもずっといっしょですのよ? これは“めーよ”あることだから、
なにももんくは言わせませんっ!(////』
「ずっと、いっしょにいれるの…………?」
『なんどもおなじことは言いませんっ!(////』
「……ありがとう、リナっ」
『 で も ! ……やくにたたない“しよーにん”なんて、いらないんですからね!』
「……ぼく、がんばるから」
『…………?』
「……がんばるから、見てて」
『い、いちおう……おうえん、してあげますわ……(////』
小さな子供が抱く幻想。
――――“ただずっと、一緒にいたい”――――
素直にそれを表現するか、不器用ながらも表現するか。
違ったのは立場。名のある大企業、御家の使用人である両親を持ち、また自分も使用人になる事を疑わない、少年。
そして、それを従者とする親を持つ、少女。
この二人が交わした――大人が見れば、ほんの小さな――約束の後、二人が再び逢うのに……15年以上の時を要した。
129
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:38:52 ID:OsxQoflE
何てものを、夢に見ているんだろう。……小さい頃に交わした、ただの約束。
いかにも気の弱そうな……引っ張ってあげないと、ろくに行動を起こせない男の子。
素直じゃない私は、立場に託けて彼にどれほど無理難題を押し付けただろうか。
…………一通り思い出して、嫌になる子供の純粋さ。
たとえ自分が結婚しようと、彼が近くにいれば良い。彼と一緒にいる時間は、自分の心を躍らせる。
それで良いと思っていた。――――まさか、良いはずがない。
誰が認めよう? 夫よりも使用人を愛する、女など…………
何を今更、こんな事を夢に見ているんだろう。
今まで自分が必死に気付かない振りをしてきた、自分の気持ち。使用人の身でありながら、主人を愛した馬鹿な人間。
……小さい頃の、自分の純粋さに嫌気が指す。
一緒に居られればそれでいい、それだけのために努力をし続けたこと。
例え彼女が目の前にいなくても、いつか必ず帰ってきて、自分を認めてくれると。
料理も出来る、家事全般だってこなせる、彼女を護るための力もある。……だから俺は“使用人”なんだ。
“使用人”から愛されて幸せな“主人”がいるだろうか? ……いるはずがない。
“使用人”として優秀な人間であることを言い訳に、俺は神野家に仕え続ける…………中途半端な愚か者。
そんなことだから、俺は…………
―――同じ時、違う場所で。
同じ夢を見て思う事は、自分の中途半端さと、どうしようも出来ないと思い込む事と。
また同じ時、二人は呟く。
―――――最悪……朝からこんな……―――――
と。
130
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:39:58 ID:OsxQoflE
コンコン、とドアをノックする音が廊下に響く。
「お嬢様、朝食の準備が済みました。お早めに、御出でになって……」
『解りましたから、さっさとどこかへ行って頂けますか? 朝から不愉快ですわ』
「…………失礼します」
嫌われたものだな……と、自嘲気味に思う。15年あまりの時は、人を変えすぎる。
もっとも、その間自分にも明確な変化が訪れているのだから、他人のことをとやかくは言えない。
この方が自分にとって楽なのだから、と自分を納得させる。
……きっと、今日の朝食はあまりお召しにならないだろう、という思いと共に。
『この朝食は、誰が作りました?』
「別府主任……ですが」
『そう……少し食欲がないの。今日はこれでいいわ』
「は、はい……」
やっぱりか、と思う。盗み聞くように、わざわざ用もないキッチンに居座り続ける自分もどうかと思うが。
続けて、他の使用人達の会話も聞こえる。
「……ねぇ、お嬢様……主任の料理は殆ど食べませんよね」
「しーっ……でも、主任とお嬢様って小さい頃一緒だったらしいよ?」
「えっ、そうなんですか?」
「何でも、主任の両親もここに仕える人だったらしくて――――」
とりとめのない話。度が過ぎるようなら、自分が注意しに行かねばならない……そう思った時だった。
「でも、よく主任も耐えられるよね。お嬢様、主任には自分のこと殆ど隠してますし」
「態度も結構露骨だしねー……結婚のことなんて、私達にまで口止めしたし」
「そうだよね、そこまで隠さなくても……」
―――出来れば聞きたくない、話が聞こえてしまった。
「その話、本当か?」
「しゅ、主任?!」 「っ…………」
「本当、だな?」
気まずそうに、こくりと頷く二人。
「……嫌われてても、祝わなくちゃいけない。無理矢理聞き出した事にするから、安心してくれ」
そう言うと、俺は自然とリナの部屋に向かっていた。
恐れていた事が、起こっている。いずれリナは結婚するという、この当たり前の事。
…………どうせ二度とないこの機会に、決別しよう……自分の中途半端さから。
今朝見せられた夢は、きっとそれを暗示していたのだ。
――部屋に向かいながら、思い出し、そして考える。
お嬢様、貴女が居た日々は、少なくとも自分にとっては輝かしい日々であったと。
そして、貴女を想いながら努力を続けた日々は、辛くもまた多くのものを得たと。
最後に……この世にはどうしようも無い事があるのだと思い知り、それでも道を間違えた、自分は馬鹿のままであると。
可能ならば、次に顔を合わせるのが最後になりますように。
お嬢様……いや、リナ…………俺は貴女が、ずっと好きでした。
131
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:40:54 ID:OsxQoflE
無機質な音が、刹那的に部屋を支配する。
たった二度のノックは、私の呆けを解くには十分すぎる音だった。
「お嬢様、少し宜しいですか」
聞き慣れた、一番聞きたくない声。瞬時に私は、拒絶の言葉を発する。
『宜しくありませんわ。私が貴方とお話しする事は、一切ありません』
「すみません、失礼します」
いきなり部屋に入ってくる。今まで一度もこんな事をしてこなかった、この使用人に絶句した。
彼のことになると色々と制御が出来なくなる私は、すぐにヒステリックを起こす。
『話などないと言っているでしょう!? すぐにこの部屋から去りなさい!!!』
「使用人として……いえ、人としてお嬢様と顔を合わせるのは、これで最後にします。ですので、どうか」
言葉を凄ませて、彼は言った。
…………何を? 今、彼は何を言ったのだろう? それは、私が“私”を保つために望んでいたはずの事。
彼さえ居なくなれば、自分は何もかもを忘れて全てに打ちかかれる。だのに、どうして…………
どうしてこんなに、心苦しい?
「御結婚されると、本日耳にしました。……いえ、自分が無理矢理聞きだしたのですが……おめでとう御座います」
『親が勝手に決めた結婚ですわ。こちらに情はありませんし、勝手に祝わないで下さる?』
――――自分の想いとは、反対の言葉を口にする。違う、本当に私の言いたい事はそうじゃない。
「そう仰らずに。…………質問を、宜しいでしょうか?」
『勝手になさい。場合によっては、答えませんが』
―――― 一緒にいたい、一緒にいたい。そのはずなのに。
「お嬢様は、自分のことをどう御思いでしょうか?」
『……早々に、消えて頂きたいと』
――――違う、違う、違う違う違う違うっ!
「……これより、異動もしくは退職の意を人事の者へ伝えます。それでは、今までありがとう御座いました」
『………………』
黙っていては駄目。行動を起こさないと、このままでは本当にタカシはどこかへ行ってしまう。
私が望むのはどっち? 立場を考えて行動するのか、それとも感情を優先させるのか。
考えてるうちに、身体は動いた。…………ドアノブに手をかけ、今にも出て行こうとする、タカシの方へ。
132
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:41:58 ID:OsxQoflE
これでいい。そう、これでいいんだ。
自分でも分かっていたはずだ、“使用人に異性として愛され、喜ぶ主人などいない”と。
今までそばに居られたのも、全てはこの主従の関係があったからこそ。
だから、このドアを開ければ、全部終わり。……もう、後悔は――――
『駄目ですっ! 私が許可しません!!』
――突然、後ろからリナに抱きつかれていた。
「……どう、しました?」
『貴方が、貴方がいけないんですわ! 私は貴方と離れて15年余り、貴方の事を考えなかった日などないのに!!
なのに、なのに会ってみれば、私の事を“お嬢様”なんて呼んで…………』
「…………」
『あなたがっ……グスッ……貴方がそんな事さえ言わなければぁ……私だって、もっと……』
今俺は、触れてはいけないものに触れている。
声を震わせ、涙を流しながら、それでも続けようとするリナに。
これ以上触れ続けると……駄目だ。
『忘れるしかないじゃありませんかっ……こんな、こんな想いなど……』
「俺だって……俺だって!」
絡みつく腕を解き、振り返る。
「考えない日なんて無かった! だからずっと努力した、“役立たずの使用人”にはなりたくなくて!!」
リナは呆然と、こちらを見ている。
「でもそれじゃ意味が無い! 一緒に居るだけじゃ、意味なんてない! ……俺は“使用人”なんだから、
どうしようもないじゃないか!? 突然、リナに見合う大企業の御曹司になんてなれないんだよ!!」
『関係ありませんっ! もう嫌なんですっ……素直になれないが故に、こんな思いをするのは』
「それでもっ……! それでも俺は、使用人です。お嬢様、失礼し――」
『駄目です、行かせませんっ!!』
「もう自分に触れないで下さいっ!!」
…………一瞬の沈黙。今までの言い合いが嘘のように、静まり返った。
「これ以上……これ以上抱き締めないで下さい。自分が、駄目になりそうです」
『駄目です、絶対に放しません……』
「…………いいん、ですね……?」
『貴方が望むのなら、私は構いませんわ……』
「……すみません、俺は、駄目な使用人でした」
ゆっくりと、唇を重ね合う二人。
真夜中になるまで、この二人は部屋から出る事は無かった―――……。
133
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:42:29 ID:OsxQoflE
「……リナ、やっぱりもっと別の方法を考えないか?」
『あら、まだそんな事をいいますの? 私が部屋に篭り、昼食や夕食まで取らないと他の使用人たちは随分焦っていますわ。
主任である貴方は遠出をした事になってますし、準備まで完璧に整った今、もう引き返せないと思いますよ?』
「うー……いやでも、他に方法……ああああああああ」
『後日連絡をすれば、万事解決ですわ。どの道もう神野家には居られないのですから、覚悟を決めなさいな?』
「何でそんなにパワフル何だ……」
『金銭面はお互い問題ないんですもの。私だって既に貯金は有り余るほどありますし、使用人……それも主任となれば、
給料はかなりの額ですわ。何せ、神野家ですからね』
「今から出て行く当家の自慢をすな……ったくもう……」
『既成事実さえあれば、後には引き返せないですからね。もういい加減お分かりになったかしら?』
「うあああああ……」
『全くもう……うだつの上がらない男ですわね。さっきの激しさはどこに行きましたの?』
「激しいとか言うなああぁぁぁぁ……」
『さ、そろそろ予定していた時間ですわよ。準備はいいかしら……?』
「ん、そだな……キスした時点で、全部俺の負けか」
『分かっているじゃありませんか。正確には、“抱き締めないで下さい”と言った時点ですが』
「リピートしなくていいから!」
『ふふっ、それじゃあ行きますわよ!』
「ちょ、いきなりは待てって!」
―――気弱そうな男の子と、気の強そうな女の子の、成長した姿。
―――二人は心を通わせて、その絆は永遠に続く。
―――当人らの知らぬところで、15年以上続いていたように。
―――これからも、永遠に……
134
:
名無しさん
:2005/12/31(土) 22:11:11 ID:6vXZ3Zic
>>133
感動と萌えで泣いたwwwwwwwwwwwwwwwwwwww最高だよぉ!wwwwwwwwwwwwww
GJ! GJ!!!!
135
:
名無しさん
:2006/06/28(水) 20:19:08 ID:A4qgkQsk
ロストマンのつづきを
wktkしながら待ってますね
136
:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/07/19(土) 08:13:40 ID:ExQh/rAU
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