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【エルデンリング】黄金律最終報告リマスター版:投稿者【同人拓也】
1
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2022/12/19(月) 00:33:52 ID:h6sxUnPA
このスレはエルデンリングと、無料HPのサービス終了により2013年8月30日をもって閉鎖されたブログにて投稿されていた、KBTITこと拓也氏の怪文書をクロスさせた二次創作スレの加筆修正版です。ちなみに氏の文章は氏自らがフィクションとして扱っていましたので、ジャンルとしては二つの創作物を混ぜ合わせたクロス系になると思います。
本SSを読むにあたっての注意点
・すげー長い
・拓也さん風の文章形式のまま最後まで進むので、台本形式が多用される
・ノムリッシュ 語録も混入されている
・拓也さん風の地の文を再現するため、所々で文章の接続詞や主語の有無などがおかしくなる
・エルデンリングというゲームは登場キャラが多すぎてセリフや描写が混乱しやすいため、セリフの前にキャラクター名を表記
「ウッス!」←本SSでは採用しない
拓也「ウッス!」←本SSで採用する
拓也の設定
・虐待おばさんをはじめとした、メジャーな部類の拓也さんの怪文書に書かれている内容を真として、本SSの拓也は執筆される
・本SSの拓也は家庭が崩壊して両親が離婚後、母親から虐待を受けつつ育ち、学校ではいじめられ、腐女子のお姉さんに仕込まれたりした経験がある拓也である
・バリ島にも行ったことがあり、女にモテモテな社長とプレイしたこともある。外国人に波乗りの腕前を褒められたことも事実として扱う
127
:
ミラン本田★
:<削除>
<削除>
128
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 18:10:37 ID:pzPzsPLc
…はずだった。
「待て」
前にも一回だけ聞いたことがある言葉が聞こえて、誰だっけ?って思ってると、目の前のモーゴットが忌々しいものを見てるみたいな顔で、ミリセントがぶっ飛んだ方を見ている。ディアロスも瓶を手繰り寄せるのを忘れて、這いつくばった体勢のまま目線釘づけで動かない。なに見てんだろ?って気になった拓也も、同じ方を見て固まり、頭が正常に動きだす。
俺の肩に掛かった内臓が蝶に変わって羽ばたいていく。俺の顔にかかった血も、地面に落ちて広がった血も、朱い煙になって集まっていく。集まった煙は蝶の群れと合流して、立ち上がったミリセントの傷口に吸い込まれる。赤と白の粘り気がミリセントの腹を塞いでいくと、折れた脚も元に戻っていった。その姿に拓也の脳裏に現れたのはあのターミネーターだったけど、出てきたのはシュワちゃんの方じゃなくてT-1000の方だった。
拓也「い…生きてる…」
拓也「マジかよ…生きてるよ…!」
火山館で見たことがあるあの景色は、合ドラとかイエロをキメてたから見てたわけじゃなかったんだよな。ミリセントの義手の隙間からは朱い蝶が羽ばたきまくってるし、あの時嗅いだ甘い香りが、こんな広い広場でも分かるくらいに漂っている。そしてミリセントが顔を上げた時、義手の肩が割れて、隙間から朱い花びらが散り始めた。
モーゴット「…何者だ」
ミリセント「…今は誰か、分からない」
ミリセント「…でも、感じるんだ…」
ミリセントをギン眼で睨みつけるモーゴットの手が、ギリギリいって剣の持ち手を締め付ける。
ミリセント「私は、二度咲いたんだ」
ミリセントの言葉で眼を見開いたモーゴットは、黄金の剣でミリセントに斬りかかった。
飛んできた黄金の剣に、ミリセントは剣を構えて突っ込む。それで俺が「えっ?」と思う暇も無く、ミリセントの肩に虹色の剣が深くめり込む。でも同時にミリセントの剣もモーゴットの脇腹を突いていて、たまらない様子でモーゴットがミリセントを蹴り飛ばす。
血を流しながらお互いに後ろにスライドするミリセントとモーゴット。ミリセントはまた重傷を負ったのに全然怯まずに立ち上がるし、俺とディアロスはそんなミリセントを見てビビっちまって、言葉が全然出てこない。モーゴットに斬られた肩はあっという間に塞がって、血が出た跡さえ残らなかった。
モーゴット「貴様…そのさまはやはり…」
ミリセントがまたジャンプして、モーゴットにミキサー攻撃を放つ。
その剣筋は朱く光ってて、速さも段違いだった。
モーゴット「マレニア!」
叫びを掻き消すような、嵐みたいな朱い竜巻にモーゴットが巻き込まれて、あっという間に全身血まみれになっていく。頭のツノは猛烈な勢いで斬り飛ばされていって、尻尾の先も千切れて飛んでいく。「おおおおお!」って叫びながら剣を振り回してモーゴットも抵抗するけど、その抵抗がミリセントの脚を折ろうが、片目を潰そうが、ミリセントがモーゴットを斬ると、斬った分だけミリセントの傷もすぐに塞がっていく。
129
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 18:16:49 ID:pzPzsPLc
拓也「すっ、すっげ…」
ディアロス「何が…起こってるんだ?…あれは本当に、ミリセントなのか…?」
ミキサー攻撃からバックステップで抜け出たモーゴットは、ミリセントに向かって黄金ナイフをまた投げる。飛んだナイフはミリセントの頬と両目にザックリ刺さったけどミリセントはそのままジャンプ。モーゴットの顔に空中回転蹴りを叩き込むと、ミリセントの顔に刺さったナイフが飛ぶように消えて両目と頬が瞬時に再生。モーゴットは大きくよろめいて倒れそうになる。
ミリセントはその隙に素早くモーゴットの足元に着地して、懐で剣を3回振り抜いて斬りつける。モーゴットは黄金剣で反撃するも、回避されたと同時に後ろに回り込まれて、流れるようにまた一発斬られた。
モーゴット「うおーっ!」
苦し紛れのゴールデンハンマーの横振りはバックステップで回避されて、直後にミリセントの信じられないくらい速い突きがモーゴットの胸にぶっ刺さる。3メートル超えの巨体が物凄い勢いでぶっ飛び、地面に当たってバウンドする。完全に正気を取り戻していた拓也は、ミリセントがモーゴットをボコボコにしてる間にディアロスに近づいて、聖杯瓶を飲ませた。
ディアロス「はぁ、はぁ、助かった…」
ディアロス「しかし、ミリセントに何が起きたんだ?…あまりに強い…強すぎる…」
拓也「いや、強いっすけど、なんかヤバくないすか…?」
ディアロス「…それは…」
拓也「あれって、マジでミリセントなんすかね…?」
ぶっ倒れたモーゴットの顔にサッカーボールキックを叩き込んで無理矢理立たせたあとに、ミリセントがもう一度朱いミキサー攻撃を叩き込む。息も絶え絶えのモーゴットはそれを血だらけの腕で防いで、さらに深傷を負っていく。手からはもう骨が見え始めてる。ミリセントはミキサー攻撃を中断すると回転蹴りをモーゴットの脚に叩き込んでまた転倒させて、今度は馬乗りになって、ガードの姿勢になったモーゴットを腕だろうが肩だろうが関係無く刺しまくり。ミリセントは目玉に指を突っ込まれても、目の前の敵を斬ると傷が塞がるから、むしろモーゴットの片手が防御に使えなくなった所をチャンスとばかりに斬撃しまくる。モーゴットの口に剣を突っ込んで掻き回し、モーゴットは自分の血をしゃぶらされて溺死寸前でいる。
拓也「あれって、本当はマレニアなんじゃないすか…?」
ディアロス「そんな…彼女はミリセントだろう…?」
ディアロスが俺からまたミリセントに目線を戻すと、モーゴットが絶叫を上げながら、目玉に指を突っ込んだままミリセントを放り投げるところだった。でもミリセントは投げられようとしてる時も身体を回転させて、手を離れる瞬間にモーゴットの指を何本か斬り飛ばしてから着地。身体の傷は全部治ってるのに、ミリセントは全身が血まみれで、ボサボサになった髪で目元は見えない。
ディアロス「いや、貴公はもう…」
ディアロス「マレニア、なのか…?」
ミリセントがまたミキサー攻撃の構えを取ると、モーゴットから物凄い大爆発が起こって、あたり一面に光る泥みたいなものが波を打ってぶち撒けられた。
130
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 18:22:49 ID:pzPzsPLc
拓也「うぉーっす!」
ディアロス「こっ、今度は何が起きた!」
そこら中で光る泥が爆発しまくりでモーゴットは吠えまくり。抑え込んできた何かが解放されたみたいに、モーゴットの剣がさらに怪しく輝きはじめる。ミリセントの剣を握る手には力が入って、ボサボサ髪は浮き上がる。目は見えないけど、口は真一文字でとじていた。
モーゴット「…王の座を、呪いで穢すなど…耐えがたい恥よ…」
モーゴット「…許さんぞ、お前だけは…」
満身創痍のモーゴットの剣に赤い光が瞬いて、ミリセントはまたモーゴットに突撃。三連斬りを繰り出した瞬間、三撃目をモーゴットの剣に防がれた。そして直後に虹色の剣から爆発が起きて、ミリセントは後ろにふっ飛ばされるもケンケンしてから着地。それからモーゴットからの縦振り攻撃を肩に食らって、地面に叩きつけられる。でも直後の光景に、ディアロスも「うわっ…」ってマジ引きの声を出した。
ミリセントは鎖骨と肩甲骨にめり込んだ剣を、電車のレールみたいに使って四つん這いでジャンプ。レールに沿ったまま勢いをつけてモーゴットの胸に剣をブッ刺した。その過程で自分の鎖骨が真っ二つになって、片腕がほぼ皮だけで繋がってる状態になっても気にしてる様子は全然ないから拓也なんか戦慄してる。もう痛みを感じてるのかどうかも怪しく思えてきたぜ。そしてモーゴットは、その傷でも死なずにミリセントにタックルを決めて、そのまま壁側まで進んで叩きつける。猛烈なタックルを食らったミリセントは即反撃して、モーゴットの頭に強烈な頭突きをみまって、怯ませた瞬間に腕を再生。剣を振り上げた。
でもミリセントが剣を振り下ろす前に、モーゴットの虹色剣がミリセントの腹に突き立てられて、ミリセントは壁に固定される。その上で、モーゴットはミリセントが振り上げた剣を避けようともしないで肩に食らった。でも短い悶絶声をあげたのはミリセントの方だった。
ディアロス「わざと斬らせたのか!?」
モーゴットの肩を斬ったミリセントの傷は一瞬で塞がったけど、その塞がる締め付けが腹に突き刺さってる虹色剣をガッチリ咥え込んで、ミリセントは蛾の標本みたいに壁に縫い止められる。やられたぜ!パキギメ状態になってるミリセントの体質を利用したな!全身血まみれのモーゴットは、動けないミリセントの首筋に向けて黄金の剣を構えたあと、一気に振り上げてからぶん回す。
ディアロス「おお!」
でも黄金の剣は、空から飛んできた透明の鷹に弾かれて、ミリセントの頭上を通過。
モーゴットはいきなり乱入してきた鷹に警戒して大ジャンプ。ミリセントから距離を置く。
空を飛ぶ鷹は広場を猛スピードでぐるっと一周してから、広場入り口に立っていた飼い主の手に止まった。
「貴様の相手は私だ、マルギット」
鷹を左手に乗せて、右手の斧に雷を纏わせながら、俺が良く知る色黒マッチョなイケメンが、モーゴットに向かって歩いていく。その姿を見て顔を上げたミリセントの表情は、いつもの感じに戻っていた。
ミリセント「ネフェリ!」
鷹を手に乗せたネフェリは、モーゴットが警戒して近付いて来ない間に、鷹をミリセントに向かわせて、虹色の剣からミリセントを引き抜く。ミリセントの腹の傷はずっと再生中だったみたいで、剣から抜けると同時に一瞬で塞がった。
ネフェリ「しばらく見ぬ間に、変わったな、ミリセント」
鷹を放したネフェリは、左手の方にも斧を持つ。飛び立った鷹の方は拓也とディアロスに向かって飛んできて、俺の前に舞い降りたあとにギン目でモーゴットを威嚇。
ミリセント「変わったのは、君も同じだろう。…よく来てくれた」
ミリセントの言葉に、ネフェリが口の端を少しあげて応える。その間にモーゴットは血まみれの手を上げて、空にいくつもの光の粒を浮かべる。まだ隠しダネがあんのかよって俺とディアロスは唖然としたけど、ミリセントは怯んだ様子もなくジャンプして、ネフェリの隣に着地する。
ネフェリ「いけるか、ミリセント」
ミリセント「力を尽くそう」
光の粒はひとつひとつが剣のような形になっていき、広場の上を埋めていく。俺とディアロスは嫌な予感がしてふたりで大盾の下に隠れた。キスできるくらいの距離にいるディアロスが「弧゜ッ!」って俺のフェロモンに感じまくってるけど、今はそんな場合じゃねーよ!俺たちを守るはずの鷹も盾の下に隠れてるし、狭くってしかたがないから拓也も息がハアハアで切れまくり。
鷹「弧゜ッ!」
そして鷹が拓也の激エロな雄フェロモンに狂った声を合図にして、決戦の時がきた。
131
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 18:42:18 ID:Ym53jzPI
タクヤの激エロフェロモンだけで笑える
132
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 18:50:37 ID:cgB2C4k6
こんなくさい子。とよく旅を続けていられるなと思う
133
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 20:12:00 ID:pzPzsPLc
モーゴットは手を振り下ろして光の剣の雨を降らせまくる。
拓也「すっげ!マジかよ!」
ディアロス「弧゜ッ!」
鷹「弧゜ッ!」
でも光の剣の雨は、ミリセントの朱いミキサー攻撃に次々弾き飛ばされて、その後ろをネフェリが駆けていく。アクション映画ばりの激ヤバ剣撃アクションに俺が鳥肌立てていると、ミリセントが接近しきったところでモーゴットが剣の雨を止めて大ジャンプ。ミリセントを縫い付けていた壁に脚をつけてから、虹色剣を握って壁を蹴る。そしてそのまま二人の居る方へ突っ込みながら、虹色剣に炎を纏わせて回転攻撃を開始。いくつ技あるんだよ!お前マジシャンみてぇだな!
モーゴットの炎回転斬りが迫る中、ネフェリは地面に飛び込んで、ミリセントは空中に飛び上がって回避。モーゴットはそのまま空振りしてから勢いのままスライディングしつつ方向転換。ネフェリとミリセントを遠くに見据えてから突きの姿勢に入る。
ネフェリ「掴まれ!」
そうミリセントに言いながら、ネフェリは斧に雷を纏わせる。
ミリセントはネフェリのやりたいことを瞬時に神人分析して、バチバチ光る斧に脚を掛けて、ネフェリに振り回され始めた。
拓也「あっ!」
ディアロス「弧゜ッ!」
鷹「弧゜ッ!」
その光景には見覚えがあるぜ!リエーニエの湖にある、レアルカリア学院の中で、ネフェリが俺にやった「ケツマン斧責めお仕置き人間洗濯機プレイ」だ。あの時にネフェリは新テクを開発していたんだ!でもミリセントに流れる風と電気は、俺の時よりも断然やばくて、ミリセントの身体からも少し炎が上がり始める。
そしてモーゴットが虹色剣に光を纏わせた時、二人の回転速度も最高潮に達した。
ネフェリ「今だ!」
モーゴットが今までで最速の突きを繰り出したと同時に、ネフェリからもミリセントがぶっ飛び発射。
雷と嵐を剣に纏わせた、電光石火のミリセントの突きがモーゴットの剣にぶつかると、鼓膜と視力がぶっ飛ぶくらいの音と光が飛び出して、気付いた時には、モーゴットの背後にミリセントが立っていた。
そして、ネフェリに届くはずだった虹色の剣は、粉々に砕けてあたりに散らばっていた。
二人の完全勝利だぜ!
ネフェリ「勝負あったな、マルギット」
ネフェリ「勝者の情けだ。せめて負け惜しみは聞いてやる」
全身傷だらけの血だらけで、武器もバラバラになって戦える状態じゃなくなったモーゴットの前に立って、ネフェリはゴドリックに言ったような最期の言葉をかける。本当に正々堂々戦うのが好きだよな。モーゴットは息を切らしながらネフェリに応えた。
モーゴット「…このモーゴットが…最後の王が…」
モーゴット「…ゴドリックの如くに…屈すると思うか…」
ネフェリ「ならばどうする、モーゴット」
モーゴット「…戦うまでよ」
モーゴットが両手に黄金の剣と黄金の槍を構えた瞬間に、ネフェリの両手斧がモーゴットの腹を裂いた。両膝を地につけたモーゴットは腹から血と内臓を流して、脱力したように後ろに倒れ込み、白いルーンを全身から爆発させる。白い爆発は辺りを一瞬包み込んでから、どこかに吸い込まれるようにしてすぐに晴れて、あとにはツノもガタイも無い、ガリに痩せた老人のようなモーゴットの倒れた姿があった。
ネフェリはモーゴットを一瞥すると、斧をしまった。
134
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 20:18:35 ID:pzPzsPLc
ネフェリ「ミリセント、これはお前たちの戦いだったな」
ネフェリ「介錯はお前に譲ろう」
大盾に隠れてた鷹はネフェリのいる方へ飛んで行って消失。オレの激エロフェロモンに侵されながらもイかずに主人の元に戻れるなんてスゲーぜ。ミリセントはモーゴットの剣をバラバラにするくらい斬りまくったんで全身の傷が再生。俺とディアロスも盾から出て、力が抜けて立ち尽くす。ぶっ倒れて今にも逝きそうになってるモーゴットの枕元に立ったのは、あのミリセントだった。
モーゴット「その力…腐敗に抗う、その身は…」
モーゴット「…やはり…マレニアなのだな…」
ミリセントはモーゴットのすぐ横に屈み込む。
ネフェリも、敵の最期を見送る為なのか分からないけど、ミリセントのすぐ横に立った。
ミリセント「そうだ…この私は、マレニアの分け身として生まれた」
ミリセント「あなたの憎む、まつろわぬ裏切り者が捨てた、心の化身…それが私だ…」
ミリセントからの告白に、モーゴットの唇が震える。
怒ってるのか、哀しんでるのか、訴えたいことがあるのか、拓也にはわからない。
モーゴット「マレ…ニア…お前は、愚かだ…」
モーゴット「お前たちが、破砕戦争を起こし…今や黄金樹は、すべてを、拒んでいる…」
モーゴット「我らは…見捨てられたのだ…」
モーゴット「…もう誰も、エルデの王にはなれぬのだ…」
そう言い終えて、モーゴットの目が閉じていく。でもミリセントは少し躊躇した感じで自分も眼を閉じたあとに、すぐに開いてモーゴットの手を両手で握った。突然のことでネフェリも一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐにミリセントの考えてることが分かって、浅くため息。俺とディアロスにもなんとなく察しはついていた。
ミリセント「約束する…モーゴット…私は、皆を見捨てない」
ミリセント「マレニアの犯した罪も、過ちも、私が全て背負おう。そして必ず、王となるべき者を見い出してみせる」
ミリセント「黄金樹の祝福が、また皆に満ちるように」
ネフェリ「…この、蛮地の勇者ネフェリ・ルーも、誓おう」
ネフェリ「王たるものを探し出し、再び黄金の地へ連れ帰ることを」
ミリセントの優しさに、ネフェリも言葉を足した。ネフェリにはあんな事があったから、多分モーゴットにも同情したんだろうな。信じた人達に裏切られて、愛した人に捨てられるなんて、それより哀しいことなんてないよな。モーゴットはまた少しだけ目を開くと、声を途切れ途切れに小さな笑みを浮かべる。意識があるかどうか、目が見えてるかも、シリアスビルダーになっている拓也には分からない。
モーゴット「おお…ゴッドフレイ王よ…」
モーゴット「王たる者達が…黄金を…継ぐ者達が…ようやく…」
モーゴット「…我らの…もとに…」
モーゴットはそのまま事切れた。
ミリセントはモーゴットの顔に手を伸ばすと、虚空を見つめる眼を伏せさせた。
ネフェリ「この王は、安らかに逝けただろうか」
ミリセント「…わからない…」
ミリセント「…だが、そう信じたい」
最後の王のモーゴットが死ぬと、広場の真ん中に祝福が灯った。
モーゴットがばら撒いた黄金色の泥も色褪せて、気付いた時には消えていた。
135
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 20:32:21 ID:pzPzsPLc
狭間の地は奥深い 投稿者:ビルダー拓也
祝福が灯って、黄金樹への道が開かれて、やっと終わったぜ!って帰る気でいた拓也をネフェリが引き止める。「おい拓也。黄金樹に本当に入れないのかどうか、まだ試していないだろう」だって。どうせ大ルーンが全部揃わないとダメだとか、マネージャーが言ってる「新しい律」が無いとムリだとかの話なんだろってガタイで予想をつけたところで、黄金樹のパックリマンコから出てきたミリセントが「だめだ、入れない」と言ってくる。
ミリセント「黄金樹の奥は、棘が硬く閉ざしている。手詰まりになってしまった」
拓也「棘くらいならミキサー攻撃でなんとかならないんすか?」
ミリセント「試してはみたが、無理筋のようだ。…ミキサー攻撃?」
拓也「アレっすよ、こう、ババババッて斬りまくるやつっすよ」
ミリセント「フッ、妙な呼び名だな」
ミリセントの雰囲気は、もうモーゴットと戦ってた時からいつもの感じに戻ってた。一瞬マジで別人かと思って焦ったぜ。でもディアロスは、そんなミリセントの前でショボショボの顔でシラケ気味。落ち込んでる理由をミリセントが聞くと
ディアロス「私はついぞ、何も出来なかった…貴公が追い詰められ、望んでいない力を振るってしまうのを、指を咥えて見ているだけだった」
ディアロス「貴公と共に旅をして、なにかを得た気になっていたが…それは幻想だったのだ…」
ディアロス「…情けない限りだ…」
なんてことを言ってくる。そんなこと言ったら俺なんて最初から最後まで見てただけだぜ!?って拓也が言っても、それは話が違うって聞かない。ミリセントは「君は十分、よくやったじゃないか」って言うけど、こういうヤツにはむしろ逆効果なんだぜ。だから結局ネフェリの言葉が一番ディアロスを慰めた。
ネフェリ「実力が足りぬと言えるようになっただけ、お前は器を上げたんだ。己を不甲斐ないと言うのなら、また鍛えればいい。その時は、私も力を貸そう」
「ああ、そうだな…すまない」ってディアロスの表情は少し緩んで、ネフェリなりに昔辛く当たったことも気にかけてるんだなぁって拓也も感心。上から目線でネフェリを評価しながら祝福に触る。円卓に帰ったら、マネージャーと一緒に話しておきたいことが沢山ある。ひとつは黄金樹がとんだ処女ケツ野朗で、キツマンを全然緩めないから入れないこと。もうひとつはメリナの言ってたマリカの言霊とかいうやつ。ネフェリがどうやって立ち直ったのかも気になるし、四つ目は、ミリセントの変化についてだぜ。これは前にも一度マネージャーに話す機会はあったけど、あの時は火山館で見たことが何なのか分からなかったし、ネフェリとギデオンの件で色々ぶっ飛んで、結局話す暇がなかったんだよな。
でもミリセントに起こったことを何て言えば良いんだろうって心で分析していると、祝福からまた「少し、話をさせて欲しい」ってメリナが出てきてた。モーゴットにやられたんじゃないのかよ!?
ネフェリ「何者だ!」
祝福からいきなり出てきたものだから、ネフェリが咄嗟に斧を構えたところを俺が慌てて制止する。そういえばこの二人、初対面だったんだよなって思い出して、拓也の説明がネフェリに補われる。俺にもメリナのことなんてほとんど分からないから説明もふわふわだったけど、敵じゃないことは分かってくれてネフェリは斧をしまった。また戦いにならなくてよかったぜ。
メリナ「…黄金樹の内に、入れなかったのでしょう?」
メリナ「棘の覆いが、貴方達を拒んだ。 …それは、拒絶の刺。黄金樹が外の全てを拒む、自我の殻」
また訳わかんねーこと言い出すのかと思ったら、結構すぐに役に立ちそうな話をしてくれそうで、拓也も聞き耳を立てる。ネフェリ、ディアロス、ミリセントの3人も、キリ目でメリナの話に集中している。
メリナ「エルデンリングに見え、玉座にエルデの王を戴くためには、その刺を超えなければならない」
メリナ「…私の使命は、そのためのものだった。だから、また私と旅をしてほしい」
拓也「また一緒に旅をしてよって言われてもさ、今までだって実感無かったし、ついて来たいなら来ればいいじゃん」
ネフェリ「旅をしろとは、何処へだ」
軽く無視された拓也がちょっと傷付いてる間に、ネフェリがメリナに地図を渡す。その地図にはラーヤの名前が入っていて、ネフェリがここに来れた理由もこれで判明。メリナは受け取った地図を開くと、目的の場所を指差した。
ネフェリ「…ここは…」
メリナ「遥か雲の上、雪深い巨人たちの山嶺。その頂きにある、滅びの火まで」
ディアロス「滅びの火?…本当にまだ残っていたのか…火の僧侶たちの迷信と思っていたが…」
メリナ「そうしたら、黄金樹を焼くことができる」
ディアロス「え?」
さらりととんでもないワードが出て、俺も含めて全員が自分の耳を疑ったと思うぜ。ネフェリとディアロスは互いに見遣って、俺もドラのやり過ぎて頭がおかしくなった可能性を考えてると、ミリセントが焦りを口にする。
ミリセント「焼くなんて…君は何を考えているんだ? 私はモーゴットに、黄金樹へ王を導くことを約束したんだ…」
ミリセント「それを君は…焼くだなんて…」
ネフェリ「私も反対だ。黄金樹を燃やしてしまえば、例え王を見出したとしても、座する玉座が無くなる。黄金律も失われ、終わらぬ荒廃が続くだけだ」
メリナ「心配はいらない。黄金樹は、エルデンリングさえ修復されたなら、律と共に再び力を強め、黄金の力を取り戻す」
ディアロス「そのようなことを言うが、証拠はあるのか!?」
メリナ「無いわ。ただ私は、知っているだけ」
メリナ「これが私の使命。焼けた体となってまで、私が在ることを許される理由なのだから」
メリナはそう言ってから姿を消した。またとんでもないことを言うだけ言って消えていったけど、今回は事情が違って超重要な話題だ。黄金樹に入れないまま、新しい律を持つ王様候補を見つけるか、黄金樹を焼いて入れるようにしたあとにするか。二つにひとつを選ばなきゃならないシチュエーションだとわかったぜ。こういう時はマネージャーに相談だ。
早速帰るぜってことでみんなで祝福に触れると、瞬間移動が始まる前にミリセントが拓也のズボンを弄る。え!何するの!?って乙女みたいにドキっとすると、ミリセントはズボンのポケットから、黄色い花を取り出してモーゴットの倒れてる方へ走っていく。それからモーゴットの胸の上に花を置いて、すぐに戻ってきた。ミリセントに聞くと「円卓の本で読んだんだ」って答えだけでよく分からない。
アルタスの花なんて置いてどうするのかなぁ?
136
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 20:37:22 ID:pzPzsPLc
円卓会議5回目 投稿者:ビルダー拓也
円卓に戻ると、早速マネージャーが席に座って、隣にラーヤも座らせた会議モード。オレ脇腹折れてますって言うと、俺が怪我してたのを見越してたみたいで生肉団子と毒消しのコンボを提供される。ちょっと臭いけどユッケみたいで美味いぜ。ネフェリが最初に席に着くとディアロスとミリセントも座って、最後は拓也の順番だ。あの便利な団子ってなんの肉なんだろうな?
ミリセント「ネフェリ、君はもういいのか?しろがね村の生き残りを探しに行ったと聞いたが」
ネフェリ「ああ、用は済んだ。ロボという狼とラティナというしろがね人を救ったが、他は既に手遅れだった」
ミリセント「そうか…」
ネフェリ「だが、四鐘に導かれた先に、故郷を想わせる鷹の王を見出して、私は悟ったのだ」
ネフェリ「義父のギデオンを王とせずとも、私が新たに、王を見出せば良いと」
椅子を引いてネフェリが立ち上がる。
全員から視線受けながら、少し間を置いて
ネフェリ「皆が大変な時に、手前勝手に抜けて、すまなかった」
ネフェリ「私も、お前たちの王を探す旅に加わりたい。許してくれるか」
とか、妙にかしこまった態度で謝罪を入れてくる。
ギデオンとのことならネフェリは悪くないし、最初っから責めてないんだけどな。
ミリセント「ああ、加わってくれ。君が共に居てくれると、心強いよ」
ディアロス「許すと言っても、そもそも私は責めた覚えは無いのだが…」
拓也「ウッス!よろしくお願いしまっス!」
マネージャー「というわけです。みなさんからの許可も降りたことですし、加わってくれますね?ちなみに私も、あなたが悪いことをしたなんて欠片も思っていませんからね」
ネフェリ「そ、そうか…それでは、よろしく頼む」
王探しの旅に加わって、ネフェリは唇を締めてちょっとソワソワ気味。この先どうなるんだろうってところに見知った顔が戻ってきてくれて、拓也の緊張もケツマンと共に緩む。でもマネージャーがその緩んだ緊張を戻すかのような話題を振ってくる。
137
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 20:42:13 ID:pzPzsPLc
マネージャー「さて、ネフェリさんが戻ってきた事ですし、話しておかなければならないことを話し合いましょうか。拓也?何か報告はありますか?」
拓也「あっ、はっ、はい。あっ、ありまっす」
拓也「えーと、まずは黄金樹に入れないから、滅びの火って奴で焼かなきゃいけないのと…」
マネージャー「焼く!?…ああ、いえいえ…続けてください」
拓也「うす。もう一個はメリナが言ってたマリカとラダゴンの話で、最後は…」
マネージャー「…最後は、なんです?」
そこまで言って言葉に詰まる拓也は、首筋に冷やっとした感覚を覚える。俺が言っても言わなくても多分ネフェリが話すし、ネフェリが話さなくてもミリセントが自分で話しちゃうんだろうなって思っても、中々口にできないぜ。ミリセントが少しづつ、ケイリッドをガン掘りの腐敗タネマン状態に堕とし込んだ、あのマレニアに近付いているなんてさ。でも俺の予感は案の定的中して、ミリセントが全てを話してしまう。
ミリセント「…私が、マレニアと同じく、腐敗として咲きつつあることだ…」
マネージャー「え!?」
ミリセント「モーゴットとの戦いも含め、今まで二度咲いた。もう…後が無いのだと思う…」
ラーヤ「後が無いとは、どういうことですか?…英雄様は腐敗を使うお方のはず…その言いようでは、まるで…」
マネージャー「ちょ…ちょっと待ってください!どういうことですか!?後が無いって…」
拓也「ウッス!すいませんマネージャー!申し訳ないす!」
ディアロス「話すか否か…話すとしていつ話すべきかを逸してしまったんだ…」
ディアロスも言ってるけど、マジで話せるタイミング無かったなりね。火山館での出来事は現実感無くて何が起こったかあの時は分からなかったし、ディアロスは精神ボコボコにパンチ喰らって自分のことで一杯一杯。しかも帰ってきたらギデオンの虐待と犯罪行為が発覚してネフェリが泣いちゃってそれどころじゃないって空気になってさ、あの後に話を放り込むなんて無理だぜ!今となってはこういう言葉も言い訳に早変わりだから、拓也はとにかく謝るしかない。
マネージャー「待ってください!今はミリセントさん優先で話します!」
拓也「うす…」
マネージャー「それでは…ミリセントさん、もう後が無いというのはどういう意味ですか?」
ミリセント「それは…感じるんだ…」
マネージャー「何をです…?」
ミリセント「腐敗が進み、私の中で花開くごとに…感覚があるんだ…腐敗の力と、その力に抗う意志というか…」
ミリセント「…ともかくそれが、私の中で強まり、私を突き動かしていくのが分かるんだ。…次、再び花が咲けば、私はそれに飲まれるだろう…」
マネージャー「飲まれてしまうと…どうなるんですか?」
マネージャーに聞かれて、ミリセントは一度黙る。それから、分かってるけど言いたくないことをどうしても言う時みたいに、誰にも目線をあわせないまま応える。
ミリセント「…おそらく私は…腐敗の花となるか…伝承にあるような、腐敗を撒く朱き翼…マレニアの同類となる…」
ミリセント「どちらになっても…私は君たちを…ひどく傷つけ、その命をも脅かしてしまうだろう…」
ミリセント「…すまない…」
ミリセントが言い終えると、マネージャーは背もたれにもたれかかって天井を仰いでから、テーブルに両肘をついて頭を抱える。口を半開きにしてミリセントを見つめるラーヤは、少し呼吸が乱れてるのが服の上下する様子で分かる。ネフェリは腕を組んだまま一言も喋らないし、ディアロスと俺はやらかした!って感じで居心地がチョー悪くなって、俺は罪悪感で背中と首筋に熱を感じる。
138
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 20:49:35 ID:pzPzsPLc
ミリセント「…もっと早くに…マレニアの分け身であると知った時に、全てに気付けていれば良かった…」
ミリセント「だが…私は失敗した…己に巣食う業を忘れ、君達との旅に、安らいでしまった…」
ミリセント「やはり私は…去るべきだった…」
自分を疫病神みたいに言ってるミリセントに、頭を抱えたままのマネージャーが言う。
「あなたは悪くないです」のその一言はそれでもミリセントを傷付けるだろうけど、これは事実だしそう言うしかねーよ。
マネージャー「…自分の病気が、周り全てを巻き込む時限式の核爆弾だなんて、普通は気付けないですよ。例え気付けたとしても、周りに言えるわけがありません。言えば隔離されるか、排除されるか、殺されるに決まってます。私がいた世界でも同じです」
マネージャー「私があなたでも言いませんね。それにあなたはマレニアの善性の全てを受け継いだだけであって、自分に宿る腐敗の特性は、そもそも知らなかったんです。知らない人に対して、教えてもいない身で『気付いておくべきだった』と言うのは、無責任な結果論にすぎません」
ラーヤ「核爆弾…?」
マネージャー「私と拓也の世界で言うところの、朱い腐敗のようなものです。その例えは無視してください」
マネージャーがマイバッグを開けると、中から携帯と、携帯に繋がれた持ち運び充電器が出てくる。マネージャーは携帯から充電器を外すと、携帯を起動してメモ帳を開く。
マネージャー「さて、それではミリセントさんの腐敗をどうやって無力化するかの話をしましょうか」
沈んでたミリセントがその言葉に顔をビクッと上げて、何を聞いたか分からないって目線を俺に向けてくるけど、俺にだってわかんねえよ。腐敗が治せるならとっくの昔にミリセントのお父さんのゴリ?が治してるはずだし、少しの努力で治るなら、マレニアの分け身だっていう大層な事実はどうなるんだよぉ?ミリセントから向けられる驚愕の視線を気にしてないみたいに、マネージャーは携帯片手に会議でメモを取る気マンマンだ。
ミリセント「無力化なんて…君は何を言ってるのか分かってるのか…?」
マネージャー「分かっています。だからあなたから情報を聞き出そうとしてるんです。狭間の地には腐敗を抑え、あるいは取り除く手段は多く存在しますが、女神の腐敗ほどのものを癒す手段はありません。今まで調べた土地に、そのような物が無い以上、ヒントはあなたに求めるしかありません」
ミリセント「む…無理だ…私の腐敗は、決して癒えることはない…ラダーンでさえも逃れられぬ悪病なんだ…」
マネージャー「それでは、あなたの腐敗を抑えた金の針は、一体誰が作ったんです?マレニアの義手は、何故腐敗に犯されて腐り落ちないんですか?」
ミリセント「それは…」
マネージャー「腐敗に抗う手段はまだあるはずです。少なくとも、その方法を確立した人物はどこかにいるはずなんですよ。その人になら、三度目の開花を防ぐ方法も見出せるかもしれません」
ネフェリ「観念しろミリセント。無駄だと断じることなど、それこそ無駄だ」
ネフェリ「嫌とは言わせんぞ」
マネージャーの押し付けまくりなトークとネフェリの鋭い眼付きに気圧されて、ミリセントは言い返せなくなる。ディアロスと俺も無言でうなずいてなんか責めてるみたいだけど、コレも愛のムチだぜ。今までミリセントには何度も助けられたんだから、助けられた分のお返しは終わっちゃいないからな。
ミリセント「本当にすまない…君達には…本当に…なんと言ったらいいか…」
両手で顔を抑えて嗚咽するミリセントに、ラーヤが駆け寄って肩を抱いてあげる。この感じだとやっぱりミリセントはオレ達から離れてからどこか遠くで死ぬつもりだったんだ。でもなんか話がいい方向に進んで良かったぜって、拓也も胸筋をなで回す…はずだった。マネージャーはいきなりギン眼で拓也とディアロスを威嚇。ネフェリからの視線もチョー冷たくてキツいぜ!
マネージャー「なんとか言うべきは貴方達です。言うことありますか?」
拓也「ないダス…」
ディアロス「…申し訳ない…」
マネージャー「遅かれ早かれ、ミリセントさんの腐敗の宿痾はいずれは進行していたでしょうけれど、その事態が手遅れ一歩手前まで伏せられていた事については、貴方達のせいでもありますからね。これからしばらくは馬車馬の如くこき使うと思いますので、そのつもりで」
マネージャー「分かりましたね?二人とも?」
拓也「ウッス!」
ディアロス「ウッス!」
マネージャーの奴隷になる俺たち。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/11(水) 21:02:08 ID:pzPzsPLc
ミリセントが落ち着いてから、マネージャーはインタビューを開始。
ミリセントが気になっていたものを全部聞き出そうってんで、メモを走らせる。
それで分かったんだけど、ミリセントはメリナが話していた巨人たちの山嶺ってところを超えた先にある、エブレフェールの聖樹ってところに、ずっと呼ばれてる感覚があるらしい。そこにいる誰かに渡さなきゃいけないものがあるってさ。そこまで言われたらもう行くしかないって、早速マネージャーがメモに記入。どうやって行くのか分かりますか?ってミリセントに質問を投げる。でもミリセントにも分からなくて、じゃあどうしようって時に、拓也は競パンの中の違和感に気付いた。
拓也「ウッス!これなんかどうすか!?」
競パンに入っていたのは暗い色をした割符だった。メリナはあの時、俺のズボンの中の競パンにコイツを忍ばせてたんだぜ。普通に渡せよな!マネージャーは早速ゴム手袋を装着。ホカホカの拓也湯気に包まれた割符を受け取って写真を撮り、携帯に集めた資料と照合を開始。結果はすぐに出た。
マネージャー「早速お手柄ですね、拓也。これは巨人たちの山嶺へと続く、禁域への大昇降機を動かす割符です。どこで手に入れたんですか?」
拓也「ウッス!多分メリナって子に競パンに突っ込まれたんすよ!」
マネージャー「メリナ…その名前は先程も聞きましたね。あとで詳しく聞かせてもらいますね」
ミリセント「普通に手渡しでは駄目だったのだろうか…」
ネフェリ「子供のやることは分からん」
巨人たちの山嶺への行き方が分かって、会議は次の問題にズブリと入る。
「ミリセントさんのことでインパクトが薄れましたけど、これも相当困った問題ですよ?」ってマネージャーが言ってる通りで、このことについてはメリナを信じるしかない。黄金樹を燃やしても良いのかどうかなんて、俺たちには分からないなりね。マネージャーに聞いても「私が知る限りでは前例が無い」「というか前例があれば今の黄金樹にも痕跡があるはず」っていう、俺でも思いつく返事が返ってくる。
マネージャー「私はそのメリナという子に会ったこともないんですが、あなたが言うことが正しければ、今も私たちの周りにいるという事ですよね?」
拓也「ウッス!そうらしいっすよ」
マネージャー「そうなると、覗かれているような気がして良い気にはなりませんね。意思疎通が円滑にできていれば、ギデオンへの監視を任せられたのでしょうけれど…」
拓也「俺が黄金律と全然繋がってないから、簡単には出てこれないみたいっす。俺以外のヤツについて行けばいいと思うんすけどね」
ネフェリ「繋がりのある褪せ人を選び、しかし使命を果たせなかったからこそ、拓也に白羽の矢を立てたのではないか?」
マネージャー「それはあり得そうです!旅の途中で消息を絶った褪せ人の記録は、円卓に山ほどありますからね。納得です。ただいずれにしても、黄金樹を燃やすことに関しては情報が全くありませんし、ここは思い切って二本指を頼るのも手かもしれませんね。あとで聞いてみることにします」
マネージャー「さて、それではメリナさんが言っていたこと、マリカとラダゴンについての話を聞きましょうか」
あの時メリナがなんて言ってたのか、俺はほとんど覚えてなかったから代わりにディアロスが話した。ラダゴンが黄金律の犬で、ラダゴンはまだマリカではなくて、マリカとラダゴンは一緒に砕けた?死んだ?って話。でもマリカは黄金樹に閉じ込められてるとか、隠れてるとかの話もあって、やっぱ俺にはわけわかんねーよ。どれが本当のことなんだっていくら乳首をこねくり回しても真実は見えてこない。
マネージャー「マリカがラダゴン…ですか」
マネージャー「途切れ途切れの文献を集めたうえで、今分かっていることだけを見ても、両者が同一人物とは考えにくいですね」
マネージャーが携帯を操作してメモ帳を閉まったあと、写真を表示して皆に見せて、次々にページをめくっていく。俺は機械の扱いにも慣れてるけどさぁ、こんなに情報をドンドン見せられても、訳わかんないだけだと思うんだよね。俺の読みは当たって、俺以外のみんなは何を見せられてんだよって顔で、眼で写真を追うので精一杯って感じになっている。
マネージャー「マリカは群雄割拠の戦国時代をゴッドフレイと共に統一し、黄金時代の基礎を作り上げた神。いわゆる創世記の神です」
マネージャー「そしてラダゴンは、巨人戦争で功を上げて勢力を増したあとに、カーリア王家と争いました。彼はその後にカーリア王家と和解し、レナラと結ばれて何人かの子をもうけましたが、さらなる力を求めてレナラを捨て、マリカの王配にまで登り詰めました。野心的英雄ですね」
マネージャー「どちらも性格としては似通ったところがありますが、二人が同一人物となると、かなりの量の矛盾が生じてしまいます」
マネージャー「例えば、王配ラダゴンの時代における捧闘の文化の衰退などが、分かりやすい例です。私が調べた限り、マリカは極めて好戦的かつ独善的な神に思えますが、そんな彼女がラダゴンと同一の存在であるとするなら、彼女は神である自分に捧げられる闘いの祭事を、自らの手で破壊したことになります。長年かけて作り上げた自分の権威を自分で壊すようなものです」
マネージャー「このような矛盾が、二人に関する歴史の各所で発生する以上、二人が同一人物である可能性はかなり低いように思います。二人の神格の伝説が、情報の消失や不正確な伝聞を繰り返すうちに、ひとつに統合されたという見方でもしない限りは、これらの矛盾は解消できません」
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 14:20:49 ID:6w5.gtmw
マネージャーは写真を閉じて鼻からフーって息を出すけど、俺達は情報が多くて圧倒されただけで、納得できたかどうかは微妙。やっぱりよくわかんねーよ。俺たちよりもメリナの方が長く狭間の地にいるし、実際に割符もくれたし、俺たちに嘘をつく理由が分からないなりね。そのこともマネージャーはわかってると思うけど、目が開き気味で、得意げに自分の調査の成果を誰かに見せたくなってる気がするんだよね。気持ちは分かるけどさー
マネージャー「えー…とにかくですね…マリカとラダゴンについては、正直まだ情報が足りません。悔しいことですが、この件はギデオンとも話をしなければならないと思います」
拓也「は?え、ヤバくないすかそれ?危なくないですか?」
ネフェリ「そうだ。何を画策しているか、知れたものではないだろう」
マネージャー「心配いりません。ギデオンは大ルーンを集めることと、智識を得ること以外には興味がありません。私はかつて彼に協力しないと言いましたが、彼はそのことを気にも留めていないでしょう。私が恥をしのんでギデオンの書斎に入り、気まずさを我慢すれば済むだけのことです。大ルーン探しのヒントくらいは提供することになるかもしれませんが」
ミリセント「しかし、それではラーヤの父が危ない。ギデオンの手下は、しろがねの村を滅ぼしてしまったのだろう?」
ネフェリ「丸腰の者共を襲い、なお幾人かのしろがね人を取り逃すような者共に、デミゴッドを狩れるとは思えんがな。ラーヤ、お前の父は忌み潰しや犬どもに屈するか?」
ラーヤ「あり得ません。ライカード様は生命を冒涜し、神をも喰らわんとしたお方です。たとえ英雄様であっても、あのお方を弑することは出来ないでしょう」
ミリセント「…君がそこまで言うのなら、信じてはみるが…」
考えてみると俺はライカードと会ったことがない。ブライヴが蛇とか言ってた気がするから蛇の形してるんだろうな。ラダーンとかゴドリックとか、他のデミゴッドの事を考えるとライカードっていうのも相当なパキギメガタイの持ち主に違いないぜ。娘のラーヤも蛇の姿になったら拓也の激エロビルダーガタイの胸囲よりも太い首になったしね。大ルーンを手に入れるとガタイが全身パンプして強くなるなら、今は普通のネフェリもゴドリックみたいになるのかな?
円卓での会議が終わってから日にちを跨いで、次の日の朝から禁域に向けて出発。
ミリセントは例の腐敗の事があるから円卓で待機するはずだったけど、戦わないにしても何かやりたいって事で、マネージャーから「金仮面卿は探求者です。彼を探してください」って頼まれた。今は俺たちとは別行動だけど、金仮面について行ったコリンが黄金樹狂いのマジ信者ってことが分かってたから、ミリセントは黄金樹の周りを探してみることにしたらしい。
よく体力あるよな。毎日闘いづくめのハードスケジュールの中で、戦えないオレはまだ楽でいいけど、他の皆は毎日ジムでガタイいじめ抜いてる以上のストレス職場だぜ。だからみんなもちゃんと休みとってくれよな。そうじゃないとオレも休めないからな。特にオレは祝福にあたっても体力戻らないんだから、最近はガタイも栄養が不足して少しづつ縮んでる気がする。身体いじめるなら栄養も補いたいぜ。
なんて考えながら、オレは禁域への道を求めて今日も王都を駆け抜ける。ディアロスとネフェリを入れた三人のメンツで、適当にぶらついて見つけた門を開けると、奥から翼の生えたブサイク顔がナタを持って襲ってくる。そいつは一瞬でネフェリに叩き殺されたけど、顔が人間なのに尻尾が生えてて脚の形もなんかおかしいしでチョーグロ!ディアロスが言うには、コイツらは混種っていう奴ららしいけど、ここまで混ざってると元がどういう生き物なのかもわかんねーぜ。
でも今まで見たことが無いやつが居る所には何かがあるって、オレの歴戦のビルダーガタイが問いかけてくる。オレも伊達にエルデを回ってるわけじゃない。こっちの方が怪しいっていうオレの意見にはネフェリとディアロスも賛成で、三人でそのまま進んでいくと、いきなり敵の集団に襲われる。さっきの混種の仲間が次々飛んできて、奥からは赤獅子城で見た赤毛のデカ獣人がギン眼剥いて吠えまくり。ディアロスが混種を一人ムチでしばき上げてる間に、ネフェリは雷と風の人間洗濯機コンボで混種三人を一気にガン掘り。デカ獣人が剣を持って飛び掛かってくる頃には、残る敵はそいつだけ。
と思いきや、さらに白衣を着た奴が奥から二人出てきて、体にバリアを張って警戒してくる。デカ獣人はネフェリとの一騎討ちでこっちに来る感じは無いけど、コイツらの行動が読めなくて俺たちは警戒を解かないまま、ヒソヒソ声で作戦会議に入る。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 14:27:43 ID:6w5.gtmw
拓也「なんなんすかねアレ?」
ディアロス「彼らは調香師だ。香を嗅ぎ分け、調合の技を振るう。火の粉に気をつけろ」
ディアロスはチョー警戒してるけど、白衣の二人は目の前で右往左往で、襲ってくる気配が無い。
そこでホスロー家の分析が入って、白衣の奴らの弱点が判明する。
ディアロス「…そうか、香りか」
ディアロス「調香師は香りを嗅ぎ分け、薬効を判断する…その香りに、貴公からの異臭が混じっているのだ…」
ディアロス「嗅いだことの無い異臭には、火薬もぶつけられまい…ぶつけて大爆発でも起こせば、敵との心中となるのだからな。フフ…」
拓也「マジ?これってチャンス?」
俺の激エロな雄フェロモンには、イエロの瞳含めていくつものキメ物が入ってるし、ここに来てから一度も歯を磨いてない(歯ブラシがないから)拓也は、こいつらにとっては全身から淫乱な匂いを発散する一匹の野獣だ。この溜まりに溜まったエロバワーを、こいつらに向けて一気に解放するぜ!
オレは王者のように大股開きで歩きながら近づいて、怯んでる調香師の調教を開始。金色のバリアが貼ってあるけど、黄金樹とは何の関係も無いオレの手はバリアを素通りして調香師のマスクを取り去り、オレの唇が調香師の唇を奪う。
調香師A「弧゜ッ!!!」
コイツは相当溜まってたみたいでキスされただけで白目剥いてマジイキをキメ込む。ピンと張った手足と背中はガチガチに固まって痙攣を始めて、オレが前掛けを剥がしてズボンに手を突っ込むと、その股間もグジュグジュに濡れててマジエロっ!コイツ相当欲していたんだな!って高潔なボランティア精神が湧き上がり、口に突っ込んだ舌を調香師の震える舌に絡ませて、歯の裏を舐め回すと白目から涙が滝のように流れてきて、顔も耳も真っ赤で汗も俺の鼻にまで垂れてくる。
調香師B「あ…あ…あ…」
ディアロス「すまない、本当に同情するよ」
調香師B「うわぁーっ!」
久しぶりに男の唇を吸ったオレは完全に淫乱なモードにギアが入って、キスで責め倒した方を投げ捨てると、逃げようとするヤツを背後から押し倒す。そしてそのまま暴れるそいつを腕力で制しながら、こいつのチンポを強く握りしめてローションも無しに拳でケツマンをファック!一息に手首まで突っ込まれた衝撃で、相手は一気に抵抗をやめて白目剥いて海老反りに入り、階段を小便で濡らしていく。「まだ行くんじゃねーぞ!」とオレにもSが入り、深々と刺さったフィストをぶち抜くと、両手で相手の顔をホールドしてから容赦なくキス強要。
調香師B「弧゜ッッ!!!!」
猛烈な快楽の濁流に飲まれた相手は、一瞬で意識がぶっ飛び射精!白目剥いて真っ赤の顔には青筋が浮き上がって、激エロ興奮のし過ぎで鼻血が出始めてる。ここまで感じてくれると逆に怖くなってきて、激しく痙攣しながら脱糞を繰り返すそいつを放置してプレイ終了。オレは不完全燃焼だったけど、客は満足のしすぎで今にも死にそうだからやめとくぜ。
ディアロス「洗練させた嗅覚が仇となったな…哀れなことだ…」
拓也が二人をヤリ潰した後にネフェリを見ると、そっちもどうやら終わりそうで、血まみれの獣人がギン眼のネフェリに斬られまくって吠えまくり。前よりも全然強くなってるからか、ネフェリには擦り傷のひとつもついてない。最後にネフェリが雷の斧で獣人の脳天を犯してフィニッシュ。脳みそを射精みたいに飛び散らせて獣人はダウンした。
ネフェリ「王都の兵なだけはある。見事な戦士だった。お前たちも終わったか?」
拓也「ウッス!」
ディアロス「問題はない」
ネフェリ「ならば進むぞ。しかし糞臭いな、どこから臭ってるんだ?」
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 14:34:00 ID:LkVimkT.
調香師かわいそう(ミランダパウダーを回収しながら)
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 14:36:39 ID:6w5.gtmw
敵の群れを抜けた後にはデカい扉があって、開けると奥には何十人も乗れそうな木造エレベーターを発見。狭間の地はなんでもデカいけど、さっきの二人はデカマラってわけでも無かったな。なんて考えながらエレベーターで上に登ると、長い石橋に出る。天気が一気に悪くなって雨の中、橋の上には兵士が三人と騎士が二人いて、騎士の片方は馬に乗っている。さっそくネフェリが兵士三人に突っ込んで斬りまくると、騎士も騒ぎに気付いて二人同時に向かってくる。
ネフェリの斧が盾を持ってる騎士の盾にぶち当たると同時に、馬に乗った騎士がオレに向かって槍を構えて、逃げるオレのケツを追いかけ始める。そんなのでケツマン抉られたら死ぬぜ!ってガチ逃げしてると、ディアロスのムチが馬の前脚に絡みついて、ディアロスが転けると同時に馬も転けたところを、オレは剣で斬りつける。でも全然効かねー!鎧が硬すぎてどこ斬れば良いんだよって拓也はひとりパニック。
そうしてる間に、ネフェリは両手の斧を使って盾持ち騎士から盾を弾き飛ばして、首に斧を叩き込んでいた。オレは起き上がった騎士から逃げてディアロスに合流。ディアロスを立たせて「ウッス!お願いしまっす!」と他力本願モードでおねだりする。ディアロスが嫌々盾を構えたところで、ネフェリがこっちの騎士も後ろからガン掘りして撃破。「相変わらずだな、拓也」と余裕を見せつけられて、懐かしさで照れ笑いが出てくる。
進んだ先にあったコロセウムみたいな建物に入るとエレベーターがあって、割符をどこに使うんだって周りを探したけど、それっぽい物も無かった。どこのエレベーターに使うんだよ?って疑問に答えが無いまま、三人でエレベーターに乗ると、着いた先で気温が一気に下がってマジ狂い!息が白くなって、そよ風だけでも刺すような寒さがオレとネフェリを襲う。でもディアロスだけ平気そうで羨ましいぜ。その鎧オレにもくれよ!
拓也「うぉあ寒っみーなオイ!マジかよぉ!」
ネフェリ「すーっ!寒いっ!なんだいきなり…!?」
ディアロス「この寒さ…外では雪でも降ってるのか?」
拓也「あーっ!寒い!」
拓也「あっ!?」
自分の肩を抱いて内股になりながらプルプルで震えていると、ネフェリがいきなり抱きついてきて、俺のムチムチした胸筋に胸を押し付けてくる。だからオレにはそういう趣味ねーよ!って身を捩って脱出しようとするけど、ネフェリのゴリラみたいな腕力で締め上げられて上半身の骨が全部軋み、動きが封じられる。でも窒息イキする前に力を緩めてくれてどうにか意識は繋いだ。マジなんなんだよぉ!?
拓也「ネフェリさん!?なにするんですか!?やめてくださいよ!」
ネフェリ「恥ずかしがっている場合か!熱が消えれば凍え死ぬぞ!」
ネフェリ「ディアロス!ここに長居するのは危険だ!一度退くぞ!」
ディアロス「ああ、そうしよう…ここの寒さは私の鎧にも沁みる…」
元きた道を逃げ帰って急いで王都まで戻ると、寒さに強い服を着て行こうという事になって、探求者を探すはずが服を探すことに。そこでディアロスが「王都で倒した二人の調香師から服を奪おう」って提案。ネフェリが死者からはあまり奪いたくないって言って拒否して、オレも拒否した。汚したのはオレだけどさぁ、アイツら糞と小便まみれで汚いじゃん。
だから結局円卓まで帰って、双子の婆さんから防寒具になりそうな物を買おうとしたけど、金属鎧しか売ってなかった。もう仕方がないってネフェリも嫌々な顔で、三人でストームヴィルのゴドリックに話をつけにいった。
ゴドリック「ハッハッハーハハ!寒さを凌ぐ武具など、我が城には掃いて捨てるほどありますぞ!お好きにお選びくだされ」
そのゴドリックが恩を売りつけるなら今だってばかりに、鎧をズラッと並べてくる。どれも手入れがされてて、コイツ本気で取り入ろうとしてるなって感じがビンビンだぜ。これが神様だっていうんだから、世界がマトモになってもリムグレイブの人は何を信じたらいいのか分からなくなりそうだよな。えんじ色の布がグルグルに巻かれた鎧をネフェリは二つ選ぶと、黙ってそのまま持ち去って行こうとするから、ディアロスが流石に礼くらいは言ってやってもいいじゃん?って説得。
ネフェリ「…感謝はするが、ゴドリック、貴様の下心が気に食わん。貴様の首が繋がっていることが、貴様に対する私の礼と思うんだな」
でもネフェリは礼と言うにはあんまり過ぎる礼を返して、金のコックリングも払わずに去っていく。こんなので良いのかよ!?ってゴドリックを見ると、悟り顔のままコイツはコイツで納得してそうだった。すっかり中間管理職みたいな空気が板についてきたぜ。偉そうだったコイツは怖くて好きじゃなかったけど、偉さのカケラも無いのもどうかと思うんだよな。
ゴドリックからホカホカな鎧をもらって王都に帰ると、禁域探索が始まった。
やっぱり首に布が巻いてあるのは良いよな。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 14:40:48 ID:6w5.gtmw
続きだぜ!
元のチョー寒い降りのエレベーターに戻ってから外に出ると、辺り一面が真っ白の雪景色に変わって、しかも全体的に薄暗くて前は見づらいし鼻は冷たいしでマジヤバい!とりあえず近くに祝福は見つけたけど、こんなところ進むのかよって拓也は早くも意気消沈気味。それでもネフェリは「行くぞ」って言って進み始める。こんな状況でもやる気が萎えないんだから流石だ。
ネフェリ「止まれ」
ネフェリがいきなりそう言うと、口元に指を当てるジェスチャーをしたから咄嗟にオレとディアロスも口を抑える。そしてそのまま岩場に歩いて行って三人で身を隠すと、少しづつ馬の足音みたいなのが聞こえてきて、音はさらにデカくなっていく。音の出どころは何かと思って、オレが顔の上半分だけを岩場から出して確認すると、相手は例のマルギットに仕えてた、あの殺し屋系の黒ずくめナイトだった。
こんな状況でアレと戦うのかよって思ってると、まさかの携帯からの着信!
凍りついた雰囲気の中、能天気なパラオナボーイが真冬の禁域にこだまして、俺は探索に出る前に円卓で交わした会話を思い出す。
マネージャー「ミリセントさんに何かあった時のために、彼女には私のマイ携帯を渡しておきます。拓也?あなたが私と電話したい時は、いつもの仕事用携帯にかけてください」
ミリセント「ケイタイって…こんなもの、私には使えないぞ」
マネージャー「使い方は私が教えます。いきなりメールはハードルが高いので、電話機能の使い方だけを教えますね」
ミリセント「よろしく頼む…」
やられたぜ!ミリセントが間違えて電話してきたな!殺し屋系ナイトは携帯の着信音に敏感に反応。馬を操ってこっちにダッシュをかけてくる。「馬鹿!何のつもりだ拓也!」って携帯の仕組みを知らないネフェリに頭を叩かれつつも、オレはネフェリと一緒に岩場を飛び出した。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 14:49:23 ID:6w5.gtmw
「待ってくれ!」と叫んだのはディアロスだった。装備が重いから咄嗟には逃げられなくて、ネフェリの後ろを走るオレよりもちょっと離れた距離を追いかけて来る。そのディアロスに向かって殺し屋騎士が武器を振り回して追いつこうとして来たところに、「伏せろ!」って声と同時に、ネフェリが急ブレーキをかけて反転してから騎士に飛びかかる。
ネフェリの両手斧に両肩ファックされて騎士はたまらず雄鳴き。その間にディアロスはオレと合流。
仕方ないから戦うかって感じで武器を抜くと、近くの岩陰や足元から、ノコギリを持った小人が何人も出てきた。
ディアロス「卑人だ!多いぞ!6人はいる!」
その声にネフェリはハッと顔を上げると、騎士が武器を振り回してネフェリを投げ飛ばし、遠くに馬を走らせながら弧を描いて向かって来る。投げられたネフェリは空中で体操選手みたいに回転して、ディアロスの隣に着地。足元の小人の股間に斧を叩きつけて悶絶させて叫ぶ。
ネフェリ「この場は不利だ!駆け抜けろ!」
拓也「ウッス!」
今度はちゃんと合図も間に合って、三人揃って駆け出して走りまくり。後ろからは小人がノコギリを振り回す音や、馬の蹄が雪を打つ音が聞こえてきて、寒さも相まって全身に鳥肌が立つ。「崖だ!跳べ!」ネフェリの掛け声がまた響いて俺たちは同時にジャンプ。でも着地した先で毒霧が爆発して違ドラに全身を犯されてマジ狂い!ハメられた!通り道に罠を仕掛けたな!
拓也「うぉあーっす!うーっす!」
ディアロス「ネフェリ!拓也の様子が…」
ネフェリ「私が背負う!治癒はあとにしろ!走れ!」
ケツマンに毒を仕込まれてポジ狂いする拓也を背負ってネフェリが走り、その隣をディアロスが走る。鼻水も凍る極寒の中に違ドラ仕込まれて生命の危機を感じてる拓也のチンポは、オレの意志に逆らって自動的に勃起。ドクドクと射精して種を残そうとし、ネフェリの鎧の背中に一本の白線を描き出す。まったくよー、こんな寒いところでタネ残したってすぐに凍っちゃうだろ!本能ってマジ頭悪いよな。
ディアロス「この臭い…! またやったな!拓也!」
ネフェリ「構うな走れ!追いつかれるぞ!」
小人からは逃げ切ったけど、殺し屋騎士はむしろどんどん迫って来ていて、馬の走る振動がネフェリの走る振動と合わさって、オレの違ドラチンポに激エロな刺激を送り込む。ほとんど床オナ状態になってる拓也はアンアン喘ぎが入って、ポジも相まって狂い方が加速していく。飛びそうな意識の中、このままじゃ逃げ切る前に出し切っちゃうぜって思った瞬間
ネフェリ「伏せろっ!」
ディアロス「うわっ!」
前の方からチョーデカい色黒ガタイを誇る石像が飛んできて、俺たちの頭上を通り過ぎてから殺し屋系騎士と正面衝突。デカい翼を振り回しながら武器に赤い煙を纏わせて、地面に転がった殺し屋系騎士を一方的に叩きのめし始める。
ディアロス「ははっ!いいぞ!そのまま相討て!」
ネフェリ「調子付くな!走れ!」
石像に救われた拓也は、それでも思った通りに金玉を空にするほどの射精をネフェリの背中に撒き散らして、ビクビク痙攣を始める。その様子を横目で見てるディアロスは明らかに青ざめてる。きっとネフェリはスゲー怒ってるんだろうなって、全身の甘い痺れに飲まれかかってる頭でオレは考えた。ネフェリは暗くてデカいエレベーターについた後に、オレを下ろしてから割符を取り出して、エレベーターに向ける。すると割符の宝石がピカッと光って、エレベーターが動き始めた。大昇降機ってこれだったのかぁ。
ネフェリ「はぁ…」
ネフェリは軽く溜息をついてから、オレの右頬にピンタを一発キメる。本人は軽くやったつもりだろうけど、オレはすさまじい打撃に一瞬で皮膚感覚がぶっ飛び、意識混濁がチョー気持ちよくて死ぬぜ!右頬だけ2倍に膨らんだ拓也の頬は、この寒さの中でも火に焼かれたみたいに熱いし、口の中は血まみれになって鉄の味が鼻をついて、オレの意識を無理矢理引き戻してくる。背中をザーメン塗れにされてもきっとミリセントならぷんぷん怒るだけで許してくれたけど、ネフェリは実際に手が出てくるから怖いぜ。
146
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 14:57:59 ID:6w5.gtmw
ネフェリ「毒を盛られるだけで動けなくなるとはな」
拓也「うっしゅ!王都でちょっと気持ちよくなりしゅぎて、ギャタイが敏感になってましたっしゅ!」
ネフェリ「敏感であろうと、毒のひと盛りで腰が抜けて放精するなど、情けないとは思わないのか?私が走り抜けるという判断を下さなければ、お前は死んでいただろう。多少は性欲に抗ったらどうなんだ」
拓也「申し訳なしゅ…」
大昇降機の上で正座させられて本気の説教を喰らう拓也に、ディアロスも「話したところで、今更だとは思うが…」ってフォローを入れてくれて、ささやかな優しさを味わう。説教を終えたネフェリは、口がパンパンで喋れなくなってるオレに生肉団子の欠片と毒苔薬を提供してくれた。オレはネフェリの鎧のデカ布をカピカピにしちゃったのにね(笑)
大昇降機が上がり切ると、俺たちは雲より高い山に立っていた。後ろを見るとめちゃくちゃデカい黄金樹がそびえて、前には雲海の水平線が広がる。俺たちが立っている山にも雪が積もりまくってて、冷たい空気が肺の中の入ってくる。
拓也「スゲー!なにここ!富士山みたいじゃん!」
ディアロス「雪しか見えないな…本当にここに滅びの火などあるのか…?」
ネフェリ「どれ、地図によると…なるほど、禁域は既に過ぎたようだ」
ディアロス「過ぎたというと…ここが巨人の山嶺…?」
ネフェリ「そのようだ。ひとまず山嶺は見出した。一度円卓に…」
突然、ネフェリの言葉を遮るように、またしても携帯に着信が入る。
またミリセントが間違えたのかなって携帯を開くと、電話の相手はマネージャーだった。
マネージャー「拓也?禁域にはつきましたか?」
拓也「ウッス!禁域はもう過ぎちゃいまして、今は巨人の山嶺ってとこにいます!すげー眺めっすよ!」
マネージャー「あら、もうそこまで見つけたんですか?意外と早かったですね。お見事です」
マネージャー「こちらにも少し進展がありましたので、情報が新鮮な内に報告しておきますね。拓也?スピーカーをONにしてください」
マネージャーの言う通りにスピーカーをONにすると、携帯から大音量のマネージャーの声が流れて、ネフェリとディアロスの肩がすこしピクつく。「電池をあまり使いたくないので簡潔に話しますね」って前置きをしてから、マネージャーは喋りだす。
マネージャー「ミリセントさんが王都ローデイルにて、金仮面卿を発見しました。彼にメリナさんからの言葉である、マリカとラダゴンの話を伝えたところ何か閃いたらしく、コリンさんを連れて巨人たちの山嶺に向かったそうです。そちらに金仮面卿はいませんか?」
拓也「マジすか?見ましたっけ?」
ネフェリ「いや、見ていないな」
拓也とネフェリの視線がディアロスに移って、ディアロスが首を横に振ったと同時に、大昇降機が動きだした。突然の振動に雄膣揺すられて感じるあまり転びそうになりながら、オレは会話を続ける。
拓也「あん!」
マネージャー「どうしました?今の音はなんですか?」
ディアロス「ロルドの大昇降機が動きだした!」
マネージャー「動き…待って、どういうことですか!?」
ディアロス「分からない!誰かが仕掛けを…!」
ネフェリ「馬鹿な…割符は私が持っている…誰かが割符も無しに動かしたと言うのかっ?」
拓也「そんなこと出来るんすか!?」
ネフェリ「知らん…だが現に、この仕掛けは動いている」
拓也「なんかヤバそうなんで一旦切りまっす!すいません!」
マネージャー「拓也!?」
何が起きてるのか誰にも分からないまま、大昇降機は降りていった。
147
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 15:07:32 ID:6w5.gtmw
全てを知っていたかのように5人で探索 投稿者:ビルダー拓也
大昇降機が降りるがままに任せるしかない俺たちは、大昇降機が止まった瞬間に襲われることを警戒して武器を構える。下に降りていくごとに気温があったかくなって助かるぜ。寒い場所で斬ったり斬られたりなんてやってらんねーよ。大昇降機はそのまま降り切って、仕掛けを動かした謎の相手を乗せる。その姿には見覚えがあったぜ。
コリン「おお、やはり貴方がたも来たのですね」
大昇降機を降ろしたのはコリンと、長身のガリこと金仮面卿だった。
「貴方がたの同志、ミリセントに導かれ、先生の思索は巨人たちの地へと向きました」なんて言ってるけど、こっちはどうやって大昇降機を動かしたんだって疑問が先に来るから、ネフェリが先にそれをぶつける。金仮面は手に網なんか持ってるけど、中身は空っぽだ。
ネフェリ「お前たち、どうやって大昇降機を動かした?」
コリン「私は何もしていませんよ。ただ、先生の示す通りのことを、私の手足が行ったにすぎません」
コリンはそう言いながら大昇降機の石像に登り、盾の裏に手を突っ込む。
すると石像が回転して、大昇降機が動き始めた。
ネフェリ「な、何をした!?」
ディアロス「本当に、割符も無く動いている…」
コリン「先生は言われました。神の望む世においては、回帰性の求められるところに、因果性も必ず求められると」
コリン「神代の創造物である、この大昇降機にも、因果と回帰は巡ります」
コリン「時が経てば衰え、風雨に晒されれば脆くなることは因果が定めています。作り手が去れば、万物は無へと回帰しようと綻びを生じます。先生はそれを予期し、ただ私に語り伝えたにすぎません」
色々言ってるけど、要するにピッキングってことでオレはガッカリの顔でシラケ気味。たしかにいつどうやって大昇降機が壊れるかを言い当てるのは凄いけどさぁ、そんなのウリやってればオレにも出来るんだよね。オレのケツマン鑑定団にキメモノを差し出せば、妙に眩しいのはバイアグラだな、この動悸はイカ王だな、このエロさは3だなとかガタイによる分析書の作成は朝飯前だ。オレは今まで、シックスナインで回帰と因果を表現してきたんだぜ。
拓也「色々言ってますけど、ただの予測でしょ?数打ち当たるってヤツっすよね?」
ネフェリ「…ただの勘で、ここまでの事が出来るとは思えんがな…」
コリン「分からないのも無理はありません。先生の思索は奥深く、私も筆記することがやっとなのですから」
胡散臭い奴らと一緒に昇降機が登っていく。なんか面倒臭いことになったな〜ってダルダルな疲労を抱えて、合計5人で山嶺を進むことに。コリンはオレのこと無視してたヤツだし、なんでこんな奴らと一緒に旅しなきゃいけないんだよ。なんて思っても、ネフェリとディアロスのやる気にも関わるからそんな事は決して絶対に言えない。金仮面卿も戦えるとは思えないし、マジでネフェリとディアロスだけが戦力だぜ。
148
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 15:39:02 ID:6w5.gtmw
円卓に帰るはずが緊急のミッションが入ったんで、このまま山嶺探索頑張るぜ!
と言っても大昇降機を降りてすぐ見えるのは、なんか変な編笠被ったおっさんと、ボロボロの廃墟だけ。いきなり不穏な空気が漂ってて早くも緊張感が高まるけど、金仮面卿は近所の公園を散歩するみてーに躊躇なく進み始めて、慌てて俺たちもついていく。
編笠の男が「ようやくお会いできましたね、王となるべき者…」とか言ってくるけど、誰に言ってるのか分からないし金仮面が完全なシカトを決め込んで歩いていくから、皆なんとなくコイツを無視して歩いていく。いきなり話しかけて来て気味が悪いから、関わらないのが吉だぜ。
「おや、知らぬ存ぜぬですか?この体の元の主も、死んでしまったというのに」
なんて言われて関われるわけねーよ!構ってほしいならそれ相応の話を振れよな。
ネフェリとディアロスもオレに同意見みたいで、黙って金仮面についていく。
「残念ですね!貴方たちは釜に友を投げ込もうとしている!今ならまだ間に合いますよ!」
俺たちはそのまま、街の中でマジ狂いしてるヤツと不幸にも遭遇したってテンションで、編笠男から離れて廃墟の中を歩いていった。すると目の前を、ガリガリの騎士みたいなヤツが歩いてくる。ネフェリとディアロスは武器を構えるけど、金仮面は脚を止める。
コリン「先生が止まりました。武器を下げて、先生にならってください」
ネフェリ「なに?戦うなということか?」
ディアロス「そんな場合では…」
コリン「心配いりません。先生はこの山嶺に登る前に、すでに旅を終えているのです」
ネフェリ「なに?」
ネフェリから疑問の声が上がると同時に、近づいて来ていた騎士が曲がり角を曲がって、俺たちの前からいなくなる。それと完全に同時に金仮面はまた歩き始めて、ネフェリは言葉を失ったし、オレもあまりにも自然に起きた事がなんなのか分からない。「おい、今のはなんだ!何をした!?」ってネフェリの声に、コリンが「何もしていません。先生は知っているだけなのです」と煙にまいてくる答え。勿体ぶってないで教えてくれよって考えながらも金仮面の後ろをついていくと、あっさり廃墟を抜けて長い橋に出る。
拓也「は?」
ネフェリ「あっ!?」
ディアロス「ばっ、何をしているんだ!敵に気付かれる!」
その橋の入り口辺りには三人くらいの長い松明を持った赤い服のヤツと、頭に火鉢を乗せた力士系のガチムチデブが一人いたけど、金仮面はそいつらにも構わずに同じペースで歩いていく。当然だけど全員に一瞬で気付かれて、ネフェリとディアロスが慌てて金仮面を守ろうとするけど、金仮面は止まらずに歩いていくだけだった。
でも赤い服の三人組の一人が、金仮面の足跡に脚を取られてバランスを崩し、隣の奴を焼く。その焼かれた二人目に驚いた三人目が、橋の入り口手前から転げ落ちて崖下に転落。橋の上に陣取ったデブが頭の火鉢を爆発させて炎の雨を降らせるけど、ゆっくり歩く金仮面には一発は愚か、火の粉のひとつも当たることはない。デブは無言で近づいて来る金仮面に怯む。
その金仮面の背中に向かって、残った赤服の松明が押し付けられようとした時、ネフェリは反射的に飛び出して、赤い服を着たヤツを叩き斬る。斬られたそいつは倒れ込む瞬間に松明を放り投げ、投げられた松明はデブの顔面に直撃。
顔面に火がついたデブはパニックを起こして、視界も無くなってるのに奇跡的に橋から落ちずにもがき回り始める。そのデブ目がけて何処かから電柱みたいな矢が飛んでくる。デブの動きが不規則すぎるのか、それとも金仮面を狙ってるのか分からないけど、狙いが定まらない矢は奇跡的にデブから外れながら崖下に吸い込まれていく。遠くから矢を射っていたのはゴーレムだった。
そして次の瞬間、崖の側の同じ場所で射ちすぎたせいか、重い体重のせいかは知らないけど、ゴーレムが崖崩れと同時に落ちていく。その振動に脚を取られたデブも橋から転げ落ちて、後には橋を渡る金仮面だけが残っていた。
拓也「マジ?これって偶然?」
ネフェリ「何が起こった…? 今のはなんだ!?」
ディアロス「何かの輝石魔術か!?いや、祈祷なのか!?」
コリン「いいえ、そのどちらでもありません。先生はただ思索し、そして知っているのです」
コリン「黄金樹の恵み、ルーンは万物に流れています。驚くべきことですが、先生は黄金樹から流れるルーンを知り、ついにルーンを内に持つ万物をも読み切ったのです」
コリン「ですが万物の完全なる理解は、先生が歩む思索の道程にすぎません。先生はその万物をも律する黄金律こそを知ろうとしているのですから。さぁ、先生の後に続きましょう」
胡散臭いどころの話じゃねーよ!素粒子だか分子だかの動きを全部理解できたら、未来予知もできるとかってトンデモ話は聞いたことあるけど、金仮面はマジで未来予知めいた事ができるようになったプロ級大学者だ!少し前のオレはよくこんなのと張り合える気になってたよな。シックスナインでなんとかするなんて恥ずかしすぎて今は絶対に書けないぜ。というか俺たちの事をほとんど知らないのに、ネフェリの行動まで全部読めてるのがやべーよ。前に会った時の少しの時間で、どこまで俺たちを把握したのかは想像もつかない。
149
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 19:02:11 ID:6w5.gtmw
コリン「ラダゴンとは、マリカである…あなた方の同志、ミリセントがもたらした答えに、先生の指は再び旋律を奏で始め、今の思索にまで至りました」
コリン「しかし、悲しいかな…私には、それが何を示すのかよく理解出来ぬのです。あるいはあなた方には、真実は見えているのでしょうか?」
ネフェリ「いいや、生憎だが、私たちにとっても謎だ。解いたところで、何の役に立つかも分からない」
一緒に話しながら橋を渡り切ると、今度は凍った川に出る。金仮面は川を左に進んでいくからそのままついていくと、オレの視線の先にコウモリの集団が見えてくる。でもコウモリの群れは何処かからか出てきた小さい獣人?みたいな奴らと小競り合いを始めて、金仮面を無視して戦い始める。その戦いを眺めながらも真横を素通りしていく感覚が、透明人間にでもなった気に思わせる。川の端につくと小さな小屋が見えて、金仮面の脚は止まった。
ディアロス「あ…」
小屋の前には、ディアロスの着ている鎧と同じものを着た奴がいて、焚き火にあたって座っている。「先生?あの方に何か用ですか?」と言うコリンに「シッ、黙って見てろ」って言ってくれたのは、ネフェリなりの優しさなのかな。ディアロスは俺たちから離れていって、遠くの小屋に近づいていく。コウモリと獣人たちの戦いも終わったみたいで、あたりの物音も全部雪に吸われて、不思議なくらい静かになる。
ディアロス「兄上…なのですか…?」
ディアロスに兄って呼ばれたそいつは、舞踏会風の兜を取って、渋さの強いハリウッドイケメンフェイスを晒す。ディアロスからの「まさか、このような場所で会えるとは…」って言葉にも、自嘲したような、それでいて落ち着いてるみたいな微笑みを返してくる。こんないかにも大物って風格の奴が兄貴なら、オレだったらむしろ距離感が近すぎてムラムラジェラシーを感じてダメなんだろうけどね。
ユーノ「久しいな、弟よ」
ディアロス「あ、ああ…兄上も元気そうで何よりです。何故このような、封じられた土地に?」
ユーノ「大層な話ではない。使命に挫け、俺の戦いは終わったのだ」
ユーノ「今は、指巫女と共に、この地に眠る時を待つ身だ」
兄貴の言葉に「巫女ってどこだ?」ってオレは小屋の中に目線をやる。そしてぐったりしたままで動かない、顔が真っ白いオンナを見て乳首が全てを察した。「指巫女が死んだのか」ってネフェリも静かに納得。雪が積もる音さえ聞こえてきそうな静寂の中で、二人は会話を続ける。
ディアロス「…指の巫女を、亡くしてしまったのですか…心中、察します…」
ディアロス「ですが、兄上ほどの英傑が、この地に埋もれていくなど…」
悔しそうに頭を下げるディアロスとは対照的に、兄貴の方は別に気にしてる感じもなくて、焚き火に座ったまま火を眺めてる。
するとディアロスは何かを思いついたらしくて、頭を上げた。
ディアロス「そ、そうだ!兄上も我らに加わっていただければ、まさに敵無しのはず!」
ディアロス「今、円卓には、ゴッドフレイ王の血を引くネフェリ・ルーや、あのマレニアの分け身たる剣士のミリセントが、ともに剣を並べているのです。他にも多くの友や、腕の立つ者が集っています。調霊に長けた者もおります。兄上の巫女も丁重に送り出すことができましょう」
ディアロス「どうでしょう、兄上…円卓に加わってはいただけませんか…?」
ディアロスの捲し立てるような話を聞いて、兄貴は座ったまま白い空を見上げたあと、目線を火に戻して、今度は小屋の中の巫女を見る。それからまた火に目線をやって、そのイケメンな顔で静かに笑った。
ユーノ「…俺の後ろを、ついて歩くだけだったお前が、伝説と肩を並べるようになったか」
ユーノ「なってしまったか」
呟いてから、肩にうっすら積もった雪を払って、兄貴は立ち上がる。
期待に胸とチンポを膨らませたのは俺だけじゃなかったはずだぜ。そして兄貴は弟に応えた。
ユーノ「ディアロス、俺は円卓には行かん」
ディアロス「そんな……何故ですか…?」
ユーノ「俺の戦いは、巫女の死と共に終わったのではない。巫女とこの地に根付き、終わったのだ」
ユーノ「使命を棄て、小さな小屋で、その命尽きようとも共に過ごすと誓った、その時にな」
兄貴は腰に下げていた、鎖の束のようなものをディアロスに差し出す。
それはディアロスが戦いに使っていた、金属の花を繋げたような、あのムチだった。
ディアロス「兄上…」
ユーノ「俺には、ふたつもいらぬ物だ。持っていけ」
ディアロス「…兄上、私には双鞭など扱えません…」
ユーノ「できるさ。誰もお前に、振るわせようとしてこなかっただけだ」
ディアロスはしばらく黙ったけど、それでも兄貴からムチを受け取る。
それから諦めたように、もしくは決心したように贈り物を腰に下げた。
ディアロス「…しかし…兄上はどうするのですか…?」
ユーノ「言ったはずだ。俺はここに骨を埋める。見ろ」
兄貴がこっちを指差してきて、ディアロスが振り返る。拓也はこういう展開に弱くて、手を後ろで組んで「うす、うす」って軽く会釈する。ネフェリは何か感慨深そうに腕組みで眺めてるし、やっぱこういうところに育ったお国柄って出るよな。
ユーノ「お前の同志が待っている」
ユーノ「お前は俺から解き放たれたのだ。もう戻ることはない」
ユーノ「振り返ってくれるなよ」
言い終えた兄貴は、また座って焚き火を眺める。ディアロスはまた黙った。そして20秒以上?30秒以下?の時間が経って、金仮面が一歩下がると同時に
ディアロス「兄上。私はホスローの家に生まれたことを、誇りに思います。名家の子だからではなく、あなたの弟であることに」
ディアロス「ゆえに、ホスローは血潮で物語るのです。敵のではなく、自らの熱き血潮で」
ディアロス「さようなら、兄さん」
ディアロスは兄貴に背を向けて歩いてくる。「気は澄んだか?」とネフェリに聞かれて、ああって答えたディアロスの瞳は潤んでいたけど、表情は前より凛々しくなって男前だ。こんなひと時を演出するなんて金仮面にも粋なところあるよな!金仮面にオレとセンパイのデートプラン組んでもらって、同性婚OKな台湾で14時間とか遊び歩いて告白されたいっ!
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 19:12:12 ID:6w5.gtmw
ディアロスが男として成長した後は、今度は川を右に進む。すると凍った川の真ん中にゴーレムが立っていて、さすがにコレは何が起きるか分かったぜ。金仮面が川のど真ん中を歩いていくと、ゴーレムが動きだす。と思ったらビクともしなくて「アレ?」なんて思ってる間にも、金仮面はドンドン進むしオレ達も歩いていく。結局ゴーレムは、背後を俺たちが通過しても気付くことなく、そのまま棒立ちのままだった。
川を渡り終えると凍った湖に出たぜ。湖の上には透明な鹿が歩いてて、いかにもディズニーって感じでいてくれる。このチョー寒い山に来てから戦いらしい戦いを経験してないから、のどかだなぁーってオレは観光気分。思えばこんなにじっくり外を歩いたことがなかったな。ここは晴れてるけど気温は高くないから、現実だったらスケート日和だなって頭で分析しつつ、オレたちは湖を左に登って、坂に雑に立てられまくった墓を歩ききることに。
墓からは前に見たようなガイコツが湧き出しまくるけど、みんなで墓の裏を経由しながら歩くと、ここには誰も来てないって感じでオレ達に気付かない。墓からガイコツが出てくる方向や、そのあとどこを歩くかも金仮面は知ってるらしく、墓をジグザグに歩いているだけで、マジでびびるくらいに全員に無視されて、すんなり進んでいける。ディズニーランドのホラー系の乗り物ってあるけど、あれの車両を目一杯遅くして周りをジロジロ見てる感じでなんだか観光気分。
ネフェリ「むっ!?」
拓也「あ!」
コリン「先生!?」
金仮面の奇行はいつも突然だ!いきなり俺たちを置いて走り出して、全員がスタートを出遅れる。しかも金仮面のヤツは長い手足を計算され尽くしたフォームで動かして走るからスゲー速い!陸上短距離ガタイかってくらい速い!コリンが置いていかれ気味だけど、俺たちはどうにか金仮面を見失わないまま走る。
拓也「うおぉーっす!」
ディアロス「なんだ!?」
すると突然に、チョー巨大なガイコツ野朗に遭遇!ガイコツは顔面から黒いビームを出して、俺たちが元々いた場所を墓ごと木端微塵にする。あぶねー!あんなの食らってたら即逝きしてたぜ!オレは突然走りだした金仮面に感謝しながら走りきり、今度は突然止まった金仮面の周りでゼェゼェハァハァ息を切らせた。コリンもギリ間に合ったみたいで、金仮面の後ろで「弧゜ッ!」ってエロを感じながら青息吐息だぜ。
ネフェリ「あの大きさはトロルでは無いな…だとすると、巨人の霊か」
ディアロス「巨人たちの山嶺と言うだけはあるな…危なかった…」
遠くに見える巨大ガイコツが墓に引っ込むと、金仮面は手に持ってる網をコリンに渡す。
コリンは息を整えてから「分かりました」と一言。それからオレ達に向き直る。
コリン「これからあなた方には、聖水壺と聖律壺を作っていただきます」
拓也「聖水壺?キメション入り雄膣っすか?」
ディアロス「死に生きる物を正しく殺す壺だ。…まさか、さきほどの巨人と戦うのか?」
コリン「それを言うことは、先生に許されていません。知らずに作ることが、あるいは重要なのでしょう」
ネフェリ「はぁ…こういう事は不得手だが、仕方ない。拓也?材料はあるか?」
拓也「ウッス!草とかキノコとかは、歩きながらちぎってポケットにしまってるんで、多分ありまっす!」
こんな雪原の中でいきなり工作の時間だぜ。オレは壺をひとつしか持ってなかったけど、みんなはそこそこ持ってて、ディアロスなんか一人で20個も持ってて笑ったぜ。「小壺作りは趣味でやっていたんだ。他にも木彫りの馬や、小鳥も作ってことがあるぞ」なんてディアロスは得意気だけど、騎士の家系でそういう趣味になったらたしかに色々大変かもな。フランスあたりに錠前作りが趣味な王様とかもいた気がするけど思い出せない。そいつも大変な目にあってた気がするんだよね。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 19:16:30 ID:6w5.gtmw
壺が揃ったら俺は鎧についてるポケットから、道中むしってきた物を取り出して壺に入れていく。作り方を知ってるディアロスからアドバイスをもらってから、あとは全員で材料が入った壺を手当たり次第に振りまくってシェイク完了。聖水壺と聖律壺の山が出来上がる。
コリン「それではこの壺を、あなたに網で包んでもらいたいのですが」
ネフェリ「ん?ああ、構わないが」
さらにネフェリが壺の山を網で包んで縛り上げると、ただの積荷にしか見えない塊が完成。
こんなの何に使うんだよ?って拓也の頭にハテナが回ってるところに、ネフェリがまた頼まれる。
コリン「これなら大丈夫でしょう。ではこの壺入りの網を、向こうの崖に向かって力の限りに投げてください」
ネフェリ「…投げる?投げたら割れるだろう?台無しじゃないか」
コリン「ええ、割れますね。おそらく、割るのが目的なのです」
また訳のわかんねー展開になってきて、オレだけじゃなくてディアロスとネフェリも互いの顔を見やる。「どういうことだ?」と言われてもさ、オレもディアロスも分からないって言うしかない。ネフェリが「投げるのはいいが、いつ投げるんだ?」って聞いても、コリンは「いつでも構わないそうです」っていう更に訳が分からなくなる答えを返してくるし、金仮面は何も言わない。というかその格好寒くないのかよ?見てるだけでも震えが来るぜ。
ネフェリ「はぁ…とにかく、これを崖にぶつければいいんだな?」
コリン「はい。いつ投げるかは任せます」
ネフェリ「…何をやらされているんだ、私は…」
シラケ気味のネフェリだけど、頼まれた事はキッチリやるところに根の真面目さが出てるよね。
ネフェリは足元の雪ガンガン踏んで固めてから、壺でパンパンの網を室伏広治の要領でグルグル振り回して投げる。
ネフェリ「フン!!」
死儀礼の鳥「コ゜ーーッ!!!」
ネフェリ「は?」
ネフェリがぶん投げた壺の塊は、突然飛んできたガイコツ鳥の顔面に叩き込まれて大爆発!マジ狂いの悲鳴を上げながら金色のキノコ雲を立ち上らせて雪に落ちるガイコツ鳥は、壺の威力でガタイがボロボロになっていたらしく、墜落と同時に全身の骨が砕けてピザみたいに伸びる。それでも若干息があったところを、金色に光る液体に全身を隙間なく犯されて全身黄金状態に堕ちる。最後は溶けかけの口から金色の液体を、飲みきれなかったザーメンみたいに垂れ流して終了。そのままピクピクと痙攣してから消えていった。
そんな景色を見せられたものだからオレたちの思考はぶっ飛びマジ停止!チョー衝撃的な展開に言葉が出なくなり、一瞬息をするのも忘れる。さっきまで男らしかったディアロスの顔が金仮面に掻き回されて、気付いた時には元のディアロスに戻っていた。ネフェリも首だけを動かして金仮面に問いかける。
ネフェリ「…お前…」
ネフェリ「いや、あなたは…何者なんだ…?」
そうしてる間にも金仮面はゆっくりと歩いて進んで行く。その様子は、まるでさっき起こったことをまるっきり知らない人のようで、オレはマジで思索がイっちゃってる金仮面卿に戦慄。ゴドリックよりもよっぽど神の風格があるぜ。こんなヤベーパキギメ大学教授に手相占いなんてされたら、今日の運勢とか昨日何食べたとかも即バレちゃうし、明日のプレイや今やってる合ドラは何かとかも全部当てられちゃうんだろうな。やっぱりイエロの瞳は隠し場所を変えた方がいいかな…
152
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 19:17:25 ID:hiVVOiW.
黄金仮面くんが読み解きすぎてRTA走者みたいなの面白いっすね
各々のNPCストーリーがエロいぜ!拓也!
153
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 19:23:31 ID:LkVimkT.
「金仮面とコリンの貧弱な装備でどうやって禁域を超えて巨人の山嶺まで行ったのか?」という当然の疑問に対する解釈が物語に食い込んで気持ちいい!
154
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 19:52:54 ID:6w5.gtmw
金仮面卿について行って、全員が全くの無傷で、遠くに城みたいなのが見えると、そのとなりに四本足で歩く山も見える。「何だよアレ、ハウルの動く城じゃん!」って言うと、何だそれはっていうネフェリからのマジな質問が飛んでくる。映画ってなんだろうって話から始めなきゃいけないから、それはまたあとで話すけど、とにかく鐘の音がうるさいんだよね。脚の間に生やした鐘が揺れ動く度にゴーンって音がするから、金玉みたいだなって一人空想する。
遠くの砦が大きくなって、目の前に広がる頃には鐘のうるささも相当ヤバくなってきてる。アイツはなんなんだよぉ!ってオレがヒスを起こすと、コリンからデミゴッドの墓だって答え。日本の墓地では騒音厳禁なのに、狭間の地では墓地が騒音出してるだもんな。そりゃぁこんなことしてるんだもん、ガイコツゎ眠れなぃ。とりあえず砦の前の祝福は灯しておいたけど多分もう使わないぜ。
ネフェリ「金仮面卿、あなたは何故、この砦に?」
ネフェリは騒音なんて気にしてないらしく、尊敬していた頃のギデオンを相手に喋るような口調で金仮面卿に疑問を投げる。ズバ抜けて賢い相手には素直に尊敬の眼差しを向けるところが妙に子供っぽくて、ネフェリが男だったらオレの庇護欲も刺激されてるところだぜ。ネフェリの疑問に金仮面卿は何も言わないけど、かわりにコリンが「ソール砦についたのなら、あなた方の同志、ミリセントの助けがあるとよいでしょう」とアドバイス。そりゃあミリセントもいてくれたら助かるけど、今のアイツは腐敗がビンビンに感じやすくなっててヤバいんだよね。
ディアロス「ミリセントは、今はあまり調子が良くないんだ」
コリン「それは私も、そして先生も知っています。ですが、先生の導きを達するには、彼女の助力が必要なのです」
普通だったらモロ怪しい宗教の勧誘って判断してすぐにお断りする。でも金仮面卿の常識では考えられないアンビリバボーな探索の進め方をめちゃくちゃ見た後だから、そうと決めつけることももう出来なくて、これはマネージャーを一旦通すかなって事に。オレはマネージャーを電話で呼び出して、金仮面卿と山嶺で会ってからのことを全部話した。
マネージャー「…にわかには信じられませんが…あなたの言っていた事が本当にあったのなら、金仮面卿を信じてみる価値は大いにあります。もちろん、安全策を講じてからという条件つきですが…」
っていういかにもマネージャーらしい答え。その安全策ってなんですかって聞いても、うんうん唸って煮え切らない。そしたら電話の奥でミリセントとマネージャーが話し合う声が聞こえて、しばらくしたらマネージャーからGOサインが出る。ミリセントは金仮面卿を信じることにしたらしい。「何かあったらすぐに電話してくださいね」って忠告を最後に、マネージャーは電話を切った。
ディアロス「どうだった?マネージャーはなんと言っていた?」
拓也「ミリセントは来れるらしいっす。でも危ない目にはあわせないようにして、何かヤバくなったら電話くれってことらしいっす」
ディアロス「これから砦に入ろうというのに、それは無理な話ではないのか?」
ネフェリ「しかし、私達はかすり傷のひとつも負わずに、ここまで来れたぞ」
話し合っているうちに祝福が光って、ミリセントが合流。でもいつもの服装で着たから「寒くないんすか?」って聞くと「このくらいの寒さなら平気だ」なんて痩せ我慢を言ってくる。そんなわけないじゃん絶対寒いってって言っても「一日中でもいられるよ」って涼しい顔で意地を張る。ネフェリは呆れて「凍えて腐敗を咲かれても困る」って言って、背中側がカピカピになってるデカ布を脱いで、ミリセントに被せた。
ミリセント「本当に平気なんだがな…というかこの布、生臭い気がするが」
ネフェリ「ああ、拓也がまたやったのでな」
ミリセント「またか…本当に君って人は…」
会って早々、ミリセントに痴呆老人を見る看護婦さんみたいな目線向けられてマジ狂い!せめてやらかし癖のあるペット感覚でいてくれよ。オレだって出したくて出したわけじゃないんだからさ。「こうまで寒いと迂闊にも洗えなくてな…嫌だろうが、しばらくは我慢してくれ」ってディアロスまで追い討ちをかけてくる。なんだよ、みんなしてまたオレを腫物扱いかよってシラケに入りかけた時、金仮面卿が砦に入った。
155
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 20:09:28 ID:6w5.gtmw
ミリセント「あっ」
ネフェリ「迂闊に入っては…!」
いきなりのことでもギリギリ反応が間に合ったのは、ミリセントとネフェリだけ。ネフェリが金仮面卿を掴んで引き戻して、ミリセントが金仮面卿の前に出て剣を構える。危ない目に遭わないようにっていうマネージャーからの忠告をいきなり無視するなよな!オレとディアロスが慌てて駆けつけるけど、砦の狭い入り口に三人で固まってるからミリセントのいるところに行けない。ネフェリと金仮面卿をガタイで押し退けてミリセントの肩を掴もうとすると、目の前にあのブレードライガーくんが二匹も降りてくる。
拓也「ヤベーよ!」
ネフェリ「ミリセント!下がれ!」
老獅子「弧゜ッ!ア…」
ミリセントの首に巻かれた拓也の肉厚ザーメン入りスカーフの激エロな香りに、ブレードライガーくんの一匹がソフトイキした瞬間が救出のチャンスだぜ!オレの手はミリセントの肩に届いて、強引に引っ張り込もうとする。でもミリセントは、鼻を抑えて悶絶するブレードライガーくんの前でスカーフを外してオレに手渡してくる。そんなことしてる場合かよって見ると、もう一匹の悶絶してない方のブレードライガーが妙に大人しくなって、座り込んでこっちを見てくる。
その変に静かな感じに入り口の揉みくちゃも解けて、ネフェリが金仮面卿を連れて入り口外まで引き返すと、砦に残ったのはオレとミリセントの二人だけだけだ。でもブレードライガーは二匹とも襲って来ない。この展開に見覚えがあった拓也は乳首を高速タッチして閃きを得る。
拓也「コイツらって、アレじゃないすか?またマレニアの仲間なんじゃないすか?」
ミリセントは「まさか」って顔をしたけど、自分でもそんな感じがしたみたいで、ブレードライガーくんに剣を向けながらもゆっくりと近づいていく。「おい!よせ!」ってネフェリが斧を構えて突っ込んできて、ミリセントの手がブレードライガーの額に触れる。
ミリセント「待てネフェリ、大丈夫だ」
ミリセントの言葉で、ネフェリは慌ててスライディングに近い形で止まる。ブレードライガーはいきなり出てきたネフェリに対しても大人しくて、ミリセントに静かに撫でられている。
ミリセント「マレニア、か…この寒空に、君も彼女を待っていたのだな」
撫でられているブレードライガーは、待機中のバイクみたいな音を喉から鳴らしてる。
こうなるとただのデカいネコだな。エロ悶絶してヒンヒン言ってる方には拓也という最高級マタタビはキツかったみたいだぜ。
ネフェリ「まったく…肝が冷えたぞ。大人しく引け」
ミリセント「フッ、すまないことをしたな。下がっておくよ」
ネフェリ「拓也、お前もだ。止めるならばまだしも、お前がけしかけてどうするんだ」
止めろって言われてもさぁ、一回止めようとしたけどビクともしなかったんだからしょうがないじゃん!神様相手だから仕方ないんだろうけど、ビルダーガタイのオレよりも細身のミリセントの方が何倍も力があるから、オレの力じゃどうしようもできないなりね。ジト目で睨んでくるネフェリもそれは分かっていたから、あんまりキツく当たってこないけどね。
砦に入ってからも金仮面卿はマイペースでゆっくり歩き続けるし、オレとみんなはその後ろをずっとついて行くから、なんか医療ドラマみたいだなって妄想。院長先生の回診だぜ。あれって現場から離れたお偉いさんの自慢でしかないから嫌いだったけど、金仮面卿はバリバリの実践派だから同じ回診でも説得力が違う。戦いになる可能性も無くなって、オレ達の上の口もついつい緩む。
ディアロス「しかし、マレニアの居城がこのような寒地にあるとは、思いもしなかったな」
ネフェリ「どうだかな。マレニアには聖樹のミケラという双子がいたらしいが、この城に聖樹らしいものは見えん」
ディアロス「ただの渾名なのではないか?」
ネフェリ「かもしれんな。ミリセント、お前はどう思う?何か思い当たるか?」
ミリセント「マネージャーから教えてもらったことだが、聖樹というのは確かに存在するらしい。この砦にそれが無いということは、ここはマレニアの居城ではないのだろう」
ディアロス「外れたか…ではこの砦は、マレーマレーの日影城と似たようなものなのか?」
ミリセント「それにしては、護りが硬いように思える。日影城とは違い、何かの役割があるのだろう」
オレは全部金仮面卿に聞けば分かるんじゃねーの?って思ってたけど、金仮面卿は興味無いものは徹底的に無視してるし、そもそもオレ達の言葉がちゃんと通じてるのかさえ怪しいから、オレは上の口を閉じている。オレ達が喋ってる間にも金仮面卿はドンドン歩いていって、ついていく俺たちには、通り過ぎる兵士や騎士が全員敬礼したり跪いたりしてくる。礼をする相手はもちろんミリセントだから、その度にミリセントは軽く頷いたり、手を肩まで上げてちょっと振ったりして応えていくから律儀だぜ。しかも狼や鷹までお座りしたり頭を下げたりでミリセントは忙しい!天皇陛下じゃん。コイツらにとっては本当に神様だから仕方ないんだけどさ。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 20:19:43 ID:6w5.gtmw
狭い部屋を通ったり階段を登ったりを繰り返して、広い円形の場所に出ると、真ん中に割腹のいい歴戦系クマ体格騎士が立っている。騎士はガシッと脚を揃えてからデカい槍を胸の前で立てて、ミリセントに敬礼をする。金仮面卿の脚が止まったと同時に、ミリセントが「長きに渡り、砦を護ってくれたことに礼を言う。これからも務めに励んでくれ」と言うと、騎士は敬礼したまま静かに目を閉じて、何かを心の中に噛み締めている。
金仮面卿がまた歩き出して、更に奥に進みながら、オレはミリセントに「意外っすね。ゆっくり休めって言うと思ったんすけど」と言ってから、あ、これちょっとヤバいかな?って少し後悔。
ミリセント「あの騎士にも生きる理由が必要だ。彼が生きれば、この砦の守護霊たちにも、少なくとも居場所がある」
ミリセント「それに日影城で見た者は、苦しんでいるように見えたんだ。身体は腐り、毒に犯され、腐れた体や悪霊となっても安らぎを得られないのは、あまりに気の毒だった」
ミリセント「…すまない、身勝手なことを話したな。人の生き死にを決められる身ではないというのに」
拓也「いやいや、気にしなくてイイっすよ!ただの世間話っすから!」
優しすぎるとこういう事でもいちいち落ち込むから大変だ。でもこういう面倒なくらい良い奴こそ大切にしなきゃいけないなって、狭間の地では染み染み思うぜ。オレのいた新宿や、ウリ仲間、子供の頃の人間関係にこんな奴はいなかった。いてくれたらオレの人生もちょっとは変わったのかな?なんて考えてみたりもする。前にも考えた気がするけど。暇な時間ができると色んな考えがグルグル巡りだすから金仮面卿との旅はなんだか哲学的。
木で出来たエレベーターに全員で乗って、砦の一番高い場所の屋上に出る。空には暗い青空と、デカい月と黄金樹が見える。屋上の奥には透明な爺さんが座ってて、金仮面卿がその爺さんを指差して止まったから、ネフェリを先頭にオレ達は爺さんに近づく。すると爺さんは風みたいな声でずっと独り言を呟いていた。
「…申し訳ありませぬ、ミケラ様」
「まだ、太陽は蝕まれませぬ。我らの祈りが弱いばかりに」
「貴方の友は、魂無きままなのです…」
「…もう、見ることは叶わないでしょう」
「貴方の聖樹を」
爺さんの足元に落ちている何かのカケラを、ネフェリは拾ってオレたちに見せる。
それは割符の片方だった。
ディアロス「また割符か…まさかこの山嶺で、割符の片割れを探すなんてことは…」
ネフェリ「いや、割符はすでに揃っている」
ネフェリは深く溜め息を吐いてから、鎧のポケットから銀色の汚れがこびりついた板を取り出して、砦で見つけた割符と合わせたらピッタリと形がハマった。
ディアロス「それは…割符?」
ミリセント「ネフェリ、君はこれをどこで…?」
ネフェリ「忌々しいことだ…我が義父、ギデオンは正しかったようだ」
完成した割符を両手で持ちながら、ネフェリの眼は沈んでいた。
ギデオンが正しかったってどういうことなんだよ?
157
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 20:30:32 ID:6w5.gtmw
ネフェリ「…かつて、私がブライヴと共に、ラダーンを討つ手がかりを義父上に求めた時、彼は答えた。…リエーニエにある、しろがね村に、その手掛かりがあるかもしれぬと…」
ネフェリ「それが、これだ」
ミリセント「…つまりギデオンは、この割符を見つけるために、しろがね村を…?」
ネフェリ「彼の所業を知ったあと、私は安堵したんだ。彼の望む物が、壊れた形で見つかったことに…」
ネフェリ「だが、それは私の見当違いだった…壊れてなどいない…割符だったんだ…」
ネフェリ「私は、彼の所業から離れていない…まだ彼の手中に囚われ、彼の策略の片棒を…」
そこまで言ったネフェリは、割符をオレに渡してから少し離れたところにある樽に手をついて、息を整える。「この割符が、あの星砕きの英雄…ラダーンを倒す鍵となるのか…」ってディアロスは呟く。お前無神経だぜって言おうと思ったけど、ディアロスはギデオンのことでどれだけネフェリが傷ついたのかを直接は知らないから、テンションがちょっと軽いのもしかたがないかもね。でもディアロスの言葉を聞いたミリセントが何かを思いついたように呟いて、オレはそれに無神経だぞとは言えなかった。
ミリセント「ラダーンを討つための割符…その片方が…ミケラに関わる砦に…」
ミリセント「…そうか…そういうことか、ギデオン…」
何かのピースがミリセントの中でもズブりとハマる。
そういうことって、どういうこと?って、さっき飲み込んだ言葉もオレは忘れてた。
ミリセント「この割符が示すものは、恐らくは、マレニアの潜む地…」
ミリセント「ラダーンを討てる者は、彼女しかいない…そして、ミケラと関わりがある者も…」
ミリセント「だからギデオンは、この割符を、ネフェリに見つけさせたのだな…」
マネージャーの方針やミリセントの葛藤もあって、ラダーンを倒す気はオレたちにはもう無い。だけどミリセントの腐敗がマジでヤバくなってきてるし、そのミリセントがエブレフェールって場所に呼ばれてて、しかもミリセント自身がマネージャーが言う「新しい律を見出す可能性のある人の条件」にピッタリハマってる。この激ヤバな状況がここまで同時に揃うと、オレも運命感じまくりで全身に鳥肌を立てて脳ドラが思考を駆け巡る。そして今のオレには、これも全部金仮面卿が見抜いていたことのように思えて仕方がない。あの人に何が見えてるのかオレには全然わかんねー!
ネフェリ「フン!」
金仮面卿の深淵な思索に乳首ビンビンに感じまくっていると、遠くではネフェリが斧を振り回して樽を割る。
ネフェリ「…考えても仕方がない…悩むのはもうやめだ」
ネフェリ「貴方が何を企んでいようと、私には私の風が吹く」
独り言を呟いてから斧をしまって、ネフェリが戻ってくる。
そのネフェリに、ミリセントが自分の閃いたことを伝える頃には、いつものネフェリに戻っていた。
ネフェリ「…マレニアの潜む地への割符と言ったが、その地こそが、お前を呼ぶエブレフェールなのではないか?」
ミリセント「それは私も微かだが、考えてはいた。だがそれは今となっては、私を迷わせているんだ」
ディアロス「…火山館で、ラーヤが貴公に見出した、新たな英雄についてか?」
ミリセント「そうだ…私が求めていたものが、結局は自らの半身に過ぎないなど…私は認めたくない」
ミリセント「認めてしまえば、私はマレニアのような有様になることを、望んでいるということになる……私は彼女の犯した過ちを、繰り返すことになるだろう」
ミリセント「それだけは、あってはならないんだ」
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 20:44:12 ID:6w5.gtmw
ミリセントは胸元で手を握って決意を新たに堅める。
マレニアはラダーンを倒して破砕戦争に勝つために、ミリセントの心を捨てたらしいけど、そこまでやったマレニアが何を考えていたのかがオレには分からない。だって戦争に勝って、エルデンリングを手に入れて王様になるのが目的なのに、世界をメチャクチャにしてラダーンと引き分けになって、それで結局大ルーン集めもやらないで何処かに隠れてるなんて、これじゃあただ人を大勢殺しただけじゃん。ミリセントの心を捨ててまでやりたかった事がそれだなんて、いまいち信じられねーんだよな。
拓也「オレ、信じてないんすよ」
ネフェリ「…いきなり何を言う。ミリセントを信じないのか?」
拓也「そういうことじゃないっす。マレニアのことっす」
拓也「ミリセントの心を捨ててまでマレニアがやりたかった事が、ただの虐殺だったとかさ、信じられないんすよね。絶対なんかありますよ」
ミリセント「…拓也…」
拓也「今って破砕戦争で狂いまくったあとじゃないすか。戦争やってた当時からは、色々変わってるんじゃないすかね」
オレがこう言うと、ネフェリが「へー、コイツも言うようになったじゃん」みたいな感じの先輩風吹かせた目で見てくるし、ミリセントは目がいつもよりキラキラしててオレの首筋が痒くなってくる。「…そうだ。全てが決まっているわけではないんだ」ってディアロスが同意してくれるけど、なんの根拠も無い出まかせにこんな反応返されたらオレも恥ずかしいこと言ったような気がしてきて、つい誤魔化したくなってくる。
ミリセント「そうだな…君の言う通りだ」
ミリセント「色々変わっている…君のその言葉に、賭けてみるのも悪くはないのかしれない」
小っ恥ずかしい雰囲気で、オレが頭を掻いて半笑いで頷いていると、金仮面卿がオレたちに背を向ける。
その金仮面卿の指の動きを見ながら、コリンが話しかけてきた。
コリン「どうやら、先生が新たな思索に入るようです。あなた方とは、ここでお別れですね」
ネフェリ「…待ってください。なぜ別れるのですか?」
コリン「それは私にも分かりません。時折、私も不安になることがありますが、これも律の導き。私はただその導きに準じ、先生の思索を筆記するのみです」
ネフェリ「しかし…」
コリン「例え不安を感じようとも、黄金樹が私達を照らす限り、またいつか、何処かで会えるでしょう」
金仮面卿が歩き出すと、コリンもついていって屋上から降りていく。
その去り際に「黄金樹の導きが、あなた方にもありますよう、祈っています」という声が聞こえて、木造のエレベーターが動く音がした。するとディアロスが突然、思い切ったようにオレ達から離れた。
ディアロス「すまないが、私は金仮面卿を追うことにするよ」
別れの時はいつも突然だ。
いきなりのことでオレ達が固まって目を白黒させてる中で、ネフェリが口火を切る。
ネフェリ「ま、待てディアロス!どういうつもりだ!お前は…」
ディアロス「確信したんだ。金仮面卿は、新たな律を見出し得る方だと。ならば、誰かが彼の動向を知り、円卓に伝えなければならない」
ディアロス「それなら、私が適任だ。金仮面卿との旅なら、旅の仲間の足手纏いにもならないだろうしな」
ネフェリ「何を言う!お前は既に戦士じゃないか!」
ミリセント「私も君に助けられたんだ…足手纏いだなんて言わないでくれ…」
拓也「そ、そうっすよ!足手纏いって言うんなら、オレも連れてってくれよ!」
ディアロス「伝令は一人で十分だ。ケイタイという道具も、マネージャーと、拓也と、ミリセントの三人分しか無いのだろう?ならば誰かが一人、伝令役にならなければな」
ディアロス「さぁ、このまま行かせてくれないか?急がなければ、金仮面卿に追いつけなくなってしまう」
たしかにディアロスの言う通りだけどさぁ、それだったら携帯使えるオレが代わりに行ってもいいじゃん!でもこれもディアロスの言う通りだけど、金仮面卿は今もディアロスから離れていってる。砦の中に居るうちはまだ見つけられるけど、砦の外に出ちゃったらマジで見失う。やられたぜ!金仮面卿が歩き出すのを見計らってたな!金仮面卿と偶然山嶺で出会っただけのオレ達は、こうなるとディアロスを黙って見送るしかない。
ディアロス「騙し討ちのような真似をして、すまなかった」
それだけを言い残して去ろうとするから、ヤベーなんか言わなきゃって焦っていると、またネフェリが一言。
ネフェリ「…危険を感じた時は、逃げろ。逃げは恥ではない」
ディアロス「逃げるのには慣れてるさ」
その一言に小粋なジョークを飛ばして、ディアロスは金仮面卿を追っていった。昔のお前だったらそんなこと決して絶対に言えなかったぜ。ブライヴとネフェリの時も思ったけど、オレ好みのイケメンほどオレのそばから居なくなっていくのはなんでなんだよぉ?ネフェリは戻ってきてくれたけど、ブライヴとはまだ離ればなれだから不安だぜ。マジエロルックスのディアロスには戻ってきてもらわないと切なさと不安で頭がマジおかしくなる。オレの周りからイケメンがこのまま居なくなっていったら、俺もいつか妄想した男ネフェリでオナニーできるようになるな。
159
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 21:42:15 ID:6w5.gtmw
3Pで刺客を掘り倒したあとの聖樹探索マシーン拓也 投稿者:ビルダー拓也
ディアロスと別れたオレ達は、円卓に帰ってマネージャーに報告を入れる。こういう報告は小まめにやっておくと良いんだよね。王様候補が今のところ二人いるし、滅びの火っていうのも探さなきゃいけないしで、次やることもちゃんと決めないと予定がダブつくぜ。
マネージャー「そうですか、ディアロスさんが行きましたか…」
マネージャー「みなさんの報告の通りなら、金仮面卿と共にいる限りディアロスさんには危険は及ばないはずですが、それでも心配になりますね。無事でいてくれるといいのですが」
ネフェリ「もはや、信じてやる他はない。彼奴は王都を切り抜けたのだ」
マネージャー「…そうですね。信じましょう」
円卓を囲っているメンバーの顔がオレも含めて暗くなり気味だ。特にオレはエロすぎるイケメンがいなくなったダメージがひどくてショボショボの顔で傷心気味。今円卓を囲んでるのはマネージャー、ネフェリ、ミリセント、ラーヤ、そして拓也の五人で、男が足りない。オンナ特有のチョーウゼー話が無いのと、ミリセントとネフェリが男らしいイケメン系の女子なのが幸いだけど、オレは振られたばかりみたいな喪失感でぐったり。オレはディアロスともブライヴとも付き合ってもいなかったのに、なんでだろう?
マネージャー「ミリセントさん?ソール砦の幽霊の言葉は確かですか?」
ミリセント「ああ、全てをそのままに話した」
マネージャー「そうですか…ミケラの魂無き友というのは、恐らくは魂を殺された死王子、ゴッドウィンのことを指しているのでしょうけれど、祈りで太陽を蝕むというのが、まだ分からないですね。何かの比喩である可能性もありますし、もしそうであればお手上げです」
マネージャーは各地の伝説とか、意味深な言葉とかも集めて調べてる。何の役に立つかも分からないのによくやるよな。でもイカの皮を研究したら液晶に使えたとか、青色ダイオード?とかも、どこで便利な技術が出来るのか分からないから、マネージャーの調査も無駄じゃないかもな。
マネージャー「それに、ゴッドウィンが死んでしまうと聖樹が完成しない、というのも気になりますね。友という表現といい、ミケラとゴッドウィンは協力関係にあったと考えられますが…」
マネージャー「…いえ、これについて考えるのは後にしましょう」
マネージャー「今、私たちが取り組むべきことは二つでしたね。ひとつは滅びの火の探索で、もうひとつはエブレフェールの探索です。私としては、先にエブレフェールを探索した方がリスクが少ないかと」
ネフェリ「賛成だ。…しかし、一応聞いておきたい。何故そう思うんだ?」
マネージャー「滅びの火で黄金樹を燃やすという事が、何にどこまでの影響を及ぼすのか…それが全くの未知数だからです」
マネージャー「みなさんが探索に行っている間に、私はダメ元で二本指に助言を求めてみたのですが、二本指は動きを止めていました。指読みのエンヤさんからは、意外なことに同意をいただけましたが、それも彼女が悩んだ末のことです。つまり黄金樹を燃やすと、彼女や二本指ですら知り得ない出来事が起きる可能性があるということです」
マネージャーの言葉で「やっぱりな」って思った拓也の頭にメリナの姿が浮かぶ。オンナってヘーキでウソつくよな。メリナは心配ないって言ってたけど、こんなんじゃ燃やすに燃やせねーよ。これは黄金樹を燃やす前にやることやっておかないと、あとで痛い目を見るシチュエーションだと分かったぜ。
マネージャー「それにエブレフェールには、ミリセントさんも関係していますからね。彼女の腐敗が不安定になっている以上、彼女のためにもあまり時間は掛けられないと思うんです。エブレフェールにミリセントさんの腐敗を止めるヒントがあるかもしれませんし」
ミリセント「…ああ、そうだな」
ラーヤ「私もエブレフェールの探索に賛成です。炎がもしも黄金樹を包めば、あの空を覆う枝も燃えてしまうかもしれません…そうなれば、空から火が降り落ちて、エブレフェールも燃えてしまうかもしれませんので…」
マネージャー「拓也?あなたはどうですか?」
拓也「ウッス!行きまっす!当たり前じゃないすか!」
マネージャー「分かりました。それでは決まりですね。今日はゆっくり休んで、明日のエブレフェール探索に備えましょう。お疲れ様でした」
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 21:47:58 ID:6w5.gtmw
SMホテルで3P。
180?pの精悍な狼風の剣士を「製作アイテム」に堕としてきたぜ。全裸首輪手錠で開脚坐りのブライヴをブーツで押し倒して「オマエは犬だよな」って言ったら「いや、半狼だが、犬以下の道具です。ご主人様の性処理道具に使って下さい」なんて答えるからのっけからそそられたぜ!これからどれだけ悶え苦しむか見るのが楽しみだな。十字架に手枷開脚足枷で縛り付けて浣腸を3コぶっこむ。縄で体も縛り付けて鞭打ち。「あぅ!苦しい!」と言うので「気持ちいいですって言え」とさらなる鞭打ち調教。「あぁ、あぅ、気持ちいいです!」って、もうビン勃ちだ。いい根性してるぜ!時々ご褒美にキスをやる。
ブライヴ「弧゜ッ!」
乳首はまだ開発されてないらしい。こいつもほぼノンケだな。「もう出させて下さい!」「ダメだよ。漏らしたら全部食わせるぞ」「はい、全部食います」腰振って泣き始めて狂ってきたところで上半身だけ枷を解いてコンクリートの冷たい床に降ろして拓也のマラで口マンを犯す。口が大きくてガバガバじゃねーかよ!喉マンでゲーゲー言わせながらさんざん犯す。ヒーヒー白目を剥きながら「拓也さんのサイズにはもう拡がってます」なんて舐めたことを言いやがる。確かに舐めてるけどな。浣腸してかなり時間が経ってるからかなりきついはずだぜ!
ブライヴ「拓也さんに飼われて便所になりたいです」
と言うので「いいぜ、飼ってやるよ。毎朝毎晩オレのイエロの瞳飲めよ!」「うっす!」「もう円卓に便所いらねぇな!24時間全部処理しろよ!」「うっす!」「じゃぁ、今から使ってやるよ」勃起マラからオシッコを喉マンに流し込む。すげーな!イケメンにオシッコ飲ませるの最高だな!完全に支配した気になるぜ!ゲボゲボ飲んでやがる。ブライヴのガタイが痙攣しはじめて限界を超えそうなのでシャワー室に引っ張って行き排泄。「汚ねーな」と言って全身冷水シャワー。30分経過してホスロー家のディアロスが到着したのでさっそく飲尿。ガタガタ震える体に頭から尿をか…
マネージャー「助けて!」
マジかよぉ!目覚めの時はいつも突然だ。
せっかく良いところまで盛り上がってきたのに起こすんじゃねーよ!ってネムネムの眼を擦って、パンツ越しにビンビンに勃ったチンコを見てガッカリ。メチャクチャ良い夢見てたのに勿体ねー、なんで起こしたんだよって考えたところで疑問が頭に浮かんでくる。助けてって、誰が言ったんだ?
なんて半ボケの頭で考えてると、また声がして、同時にバタバタと揉める音が聞こえてくる。
マネージャー「誰か助けて!」
ミリセント「エンシャ!?何をしてるんだ!」
マジ!?これって襲撃!?
揉むことは好きだけど揉め事は嫌いな拓也は、すぐにベッドから飛び起きて下着姿で大祝福に駆けつける。
襲われてるのはあのマネージャーだ!絶対に死ぬなよな!オレが助けてやるからな!
ネフェリ「なんだ貴様ーっ!」
大祝福につくと、そこには寝巻き姿のマネージャーを抱えて避難しているミリセントと、下着姿のステゴロ状態でエンシャの顔面にボコボコにパンチ食らわせてるネフェリの姿。オレも良い夢を壊されたムカつきと、マネージャーに手を出された怒りに、溜まった性欲を発散できなかったムラムラを組み合わせたぐちゃぐちゃの真っ黒な感情をエンシャにぶつける事にした。
拓也「逃げんじゃねーよ!」
ネフェリに組み伏せられてる顔面血まみれのエンシャの所まで走ると、駆け込むようにエンシャにキス強要。歯の裏と歯茎を舐め回してから、逃げる舌にオレの舌を絡ませて息を塞いでやる。コイツに吸える酸素はオレの激エロな口臭だけだぜ!
エンシャ(弧゜ッ!!)
王子様のキスの力で一瞬にしてガタイ仰け反らして痙攣。エロ奴隷に堕ちたエンシャの鎧に、オレは手をかけてガチャガチャ外そうとする。「クソ!処女鎧キツいぜ!」「どけ拓也!鎧はこう剥がすんだ!」普段は敵にも尊厳を与えるネフェリも、卑劣な暗殺者の前では戦いの鬼に大変身!血走ったギン目でエンシャから鎧を引き剥がしていく。「おい拓也、こいつマワしていいぞ!」ってネフェリからの許可も降りて、血で真っ赤なエンシャの顔が真っ青になると、オレの脳内も完全にSが押し込められて戻らなくなり、ネフェリと二人でエンシャを担ぎ上げてオレの部屋に放り込む。
ミリセント「う…それは流石に…」
マネージャー「かまいません!いい気味です!」
部屋に放り込まれたエンシャはすぐに立ち上がって部屋から出ようとするけど、ネフェリの槍みたいな前蹴りを食らって部屋に叩き込まれて、壁にダウンしてるところに強烈なコンクリパンチの追い討ちを食らってベッドにぶっ飛ぶ。そこにオレがすぐさま飛び込みをかけて覆いかぶさり、ネフェリがエンシャの脚の部分の鎧を、ベルトちぎりながら脱がせていく。その間もエンシャはオレをどかせようとするけど、オレに乳首を強烈に吸われると力が抜けて動きが鈍くなる。その間にネフェリは高速で腕の鎧も外したから、本番開始だぜ!
161
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/13(金) 21:52:51 ID:6w5.gtmw
ベッドの上に拘束されてるエンシャの顔に、ネフェリがまたパンチを喰らわせて動きを一瞬止める。オレはその隙をついて「代わりにお前にオシッコ飲ませてやるよ!」って声と共に、エンシャの口にチンポを押し込んで小便を流し込む。するとすぐに白目むいて痙攣しだしたから、ネフェリが気付けとばかりに脇腹に一撃を加えると、黒目がグルンと戻ってきてオレのチンポがゲロまみれ。「きたねーな!返してやるよ!」ってオレはゲロを掬ってエンシャの鼻に押し込んでやると、ブボっ!って鼻から吹き出して白眼剥いてまた痙攣。その白眼も喉にチンポをギュウって押し付けるとまた戻ってきた。
ネフェリ「フン!」
エンシャの意識が戻った瞬間にネフェリの拳がエンシャの手首に飛んで、バキって音がするとエンシャの手がプラプラになる。すっげー!骨折プレイなんてマジであるんだ!って感激してる間もネフェリはもう一方の手首も叩き折る。「勇猛を重んじる蛮地ではな、貴様のような卑劣漢には何をしても良いんだぞ」っていうネフェリの眼はマジにイッちゃってる。蛮地の勇者っていうだけはあるぜ!
オレは弱々しく暴れるエンシャの口からチンポを引き抜くとデングリ返しをさせてケツマンを開張。カピカピに乾いてて入んねーなって言うとネフェリのコンクリパンチが狭いケツマンに炸裂!同時にエンシャのガタイが跳ね上がってチンポが大量に潮を吹いて天井を濡らす。ネフェリは一気に肘まで入った手をケツマンから引き抜いて、血まみれになった手をエンシャの胸で拭いてるから、オレはその間に切れ痔ローションを使ってエンシャのケツマンを堪能。激しくピストンを食らわせながら、部屋に隠していたイエロの瞳をネフェリに取ってもらってキメる。
拓也「おおおーっ!」
ひさびさのイエロの瞳に脳みそがスパークしまくり射精しまくりで、エンシャの処女マンコをみるみるうちに種マンへと変えていく。するとネフェリが「待ってろ」って言って部屋から出ていったから、何するんだろって思いながらオレは抵抗出来なくなったエンシャの唇を吸い、胸とキンタマを揉んでエンシャマラを堪能する。そしたらドアが勢いよく開かれて、両手に斧を持った下着姿のネフェリが入ってきた。「斬るぞ!」ってネフェリの言葉にオレのリミッターも振り切れて「やっべー!次は斬り裂きプレイかよ!マジたまんねー!」って
ミリセント「もうやめろ。やりすぎだ」
声を上げたところで、部屋にミリセントが入ってきた。
ミリセントはネフェリを押し退けると、オレの肩を押してエンシャからどかせてから、エンシャのものっぽい聖杯瓶をエンシャの口に突っ込んだあと、ぐったりしたそいつを肩に担ぐ。
ミリセント「十分罰は与えただろう。彼の鎧も、武器も、キミたちが持っていればいい」
ミリセント「再びエンシャがマネージャーを襲うようなら、その時は私が斬り伏せる」
エンシャを担いだミリセントは、そのままオレの部屋から出て行った。
ネフェリ「甘いな。寝込みを襲うような者に、一切の情けはいらんというのに」
かっこいいこと言ってるけど、下着姿で返り血浴びながら両手に斧なんて持ってるから、見た目が完全に猟奇殺人鬼だよね。エンシャを徹底的にエンシャを責め立てて、苦痛と快楽の坩堝に堕としてやろうと思ってたところを邪魔された拓也も、イエロの瞳がキマってるから興奮が収まらなくて、色黒マッチョイケメンなネフェリが男に見えてくる。だから出来心でその肩に手なんかかけたけど、不意打ちされてマジギレ戦闘モードのネフェリにそんなことしたものだから、オレは素早くフロントチョークをキメられて5秒以内に堕ちたぜ。
162
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/15(日) 05:31:38 ID:dkR.EI2I
ミリセント「拓也、起きてくれ。皆、君を待ってるぞ」
ミリセントに頬を撫でられて起きたオレがいたのは、暗くて広いロルドの大昇降機前だった。寝てる間に円卓から禁域に拉致された拓也は、ネムネムの顔に刺さる寒さで完璧に目を覚ます。周りにいるのはネフェリと、ミリセントと、マネージャー!?
拓也「マジ!?なんでいるんすか!?」
マネージャー「しょうがないじゃないですか。円卓でギデオンの手下に狙われてしまった以上、もう私にとっては、円卓はセーフゾーンではないんですからね。おかげで私もゴドリックの鎧のお世話になってしまいましたよ」
ネフェリ「彼奴に二度も礼を言うなど…くっ!」
マネージャー「まぁ、エンシャが勝手にやったことだって、ギデオンは関与を否定してますけどね」
そういえばアイツってギデオンの手下だったんだっけ?昨日は勢いに任せてガン掘りしまくったけど、よく考えたらあいつ乾燥途中の干し柿みたいなシワシワだったな。狼でイケるクチになって、木のお化けともやって、今度はフケもOKになったのかよ!オレの性癖の拡がりが止まることをしらねーな!全てを受け入れる淫獣拓也の進化だぜ。というかなんでマネージャーが狙われたんだろう。色々調べてるからかな?
ネフェリ「私もあの人にはつくづく失望した。もう義父とも思わん」
拓也「なんでギデオンを捕まえないんすか?真っ黒じゃないですか!」
マネージャー「真っ黒ではありません。黒寄りのグレーです。事実としてあるのは『私がエンシャに襲われた』ことだけですので、そのエンシャの犯行とギデオンの間に明確な関係性を立証できない以上、ギデオンを捕まえることはできません。エンシャが何も喋らない限り、ギデオンが『エンシャが早まったことをしてすまない』と言うだけで、問題が行き詰まってしまうんです」
マネージャー「そして私たちには、円卓での探偵ごっこに没頭する暇はありません。なのでエンシャは装備を全て没収し、聖杯瓶も破壊して完全に無力化したうえで、裸のままソール砦の牢屋にぶち込みました。もう二度と戻ってくることは無いでしょう」
マネージャー「ですがギデオンと一緒にいる気にはなれませんので、私はしばらく円卓には戻らないつもりです。他の円卓在住の方にも、ギデオンの動向には一層気をつけるように言いました。まぁ、目当てはあくまで私だと思うので、ラーヤさんやローデリカさん、他の方々には危害は及ばないとは思いますけどね」
マネージャーも入れた四人で探索をすることになったけど、円卓最強の二人と円卓最弱の二人の組み合わせだとネフェリとミリセントの負担がかなりデカい。しかもミリセントは危ない目に合わせちゃいけないから、戦いになったらほとんどネフェリが一人で頑張ることになる。オレのビルダーガタイは男を喜ばせる専用の激エロボディーだから、戦いには向かなくて悔しいぜ!こんなことなら水泳部じゃなくて剣道部とか空手部とかに入っておくんだった。
不安なことが多いけど今日も探索を開始。ロルドの大昇降機でネフェリが割符を掲げると、割符から緑色の光が出てから二つの石像が回転。そのままオレ達を乗せて上にあがり、青白く照らされた遺跡みたいな場所につく。明かりが青白い蝋燭だけだからスゲー暗い。光ってる場所以外はほとんど真っ暗だから、オレもしかたなくサングラスを外す。
ネフェリ「…お前、私が思うよりも老骨だったのだな」
ミリセント「目付きが、なにか…その目はどうしたんだ?…疲れ切っているように見えるが…」
サングラスを外したオレに二人の集中攻撃が降り注いでマジ狂い!フケてるだの目付きがおかしいだのと、容赦なくオレの心を抉ってくる。オレの眼は元からこうだって!って言っても信じてくれず
「その歳で戦場に出ていたとは知らなかった…今までの奇行も耄碌が故か…今まで酷い言いようをして、すまなかった」
「拓也…円卓に戻ったなら、次こそ本当にイエロの瞳を絶ってくれないか…君が心配なんだ…」
とか平気で言ってきて、まるでオレを病気持ちのお爺ちゃんか何かみたいに扱ってくる。オレは居た堪れなくなってサングラスを付け直す。お先真っ暗みたいに言われるよりは、視界が真っ暗の方がいいんだよね。マネージャーは「これでも現役なんですから、今まで通り扱ってあげてください」ってフォローを入れてくれるけど、それもまた哀しくなってくる。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/15(日) 05:38:42 ID:dkR.EI2I
マネージャー「それにしても、ゴドリックが想像以上に人とかけ離れた姿をしていたので、正直怖かったです。報告でどのようなデミゴッドなのかは聞いていましたが、実際に目にすると脚がすくみました。ネフェリさんはよくあんな人を倒せましたね」
ネフェリ「恐れが無かったわけではない。ただ闘志と怒りが、それを上回っただけだ」
青白い遺跡の中をマネージャーは小声で喋りながら歩いてて、初めての探索だからしょうがないんだけど、テンションが普段より↑入ってる感じがある。ネフェリはそんなマネちゃんにそこそこ付き合いつつ、両手に持った斧には緊張感が漂ってる。そしてもっと進んだ先には、排水溝で絡まってる陰毛をデカくしたみたいな奴が道を塞いでいた。
拓也「…なんすかアレ?」
ミリセント「あれは陸蛸だ。迂闊に近付くと、絡めとられてしまう」
マネージャー「あれタコなんですか?酢蛸にしたら美味しそうですね」
ネフェリ「下がっていろ。あのような手合いは得意だ」
そう言ってネフェリは絡まってるタコに歩いて近付く。するとタコの両脇から小人が出てきて、ノコギリを持って飛びかかってきた。マネージャーの「危ない!」の声を聞いてもオレには余裕があって、まぁ見てれば分かるぜって思いながらほくそ笑む。ネフェリの攻撃は予想通りだった。
マネージャー「あっ!すごい!」
ネフェリは雷をまとった斧を振り回して風を巻き起こし、瞬時に人間洗濯機状態に移ると、小人を風で弾き飛ばしてダウンさせながら、雷でタコを痺れさせる。動けなくなったタコはクチマンから黄色い光を出してぶっ倒れて、そこにすかさずネフェリの斧ファックが入る。クチマンを雷と風と斧にぐちょぐちょに掻き回されたタコは即逝きして大量潮吹き。そのままぐったりして消えていった。
ネフェリ「卑兵もいたとはな。陸蛸などよりもよほどの手練れだ」
敵を全滅させたネフェリに向かって、マネージャーがハチドリのような拍手をする。オレはもう見慣れちゃったけどね。「この先を見てくる。お前たちはここで待て」と言ってから、ネフェリは一人で奥に歩いていくと、遠くから斧をガンガン叩きつける音とタコのイキ声が聞こえてくる。ネフェリだけでも意外となんとかなるみたいで拓也も一安心して、胸とチンポを撫で下ろす。
それから蛸汁の旨そうな匂いを全身から漂わせたネフェリが戻ってきて「もう済んだぞ」の一言。みんなで進んでいくと、道中に小人と蛸の死体だらけで、マネージャーの顔色が少し悪くなる。
マネージャー「ここは、卑人たちに蛸の養殖場にでも使われていたのでしょうか…もしそうだとしたら、私たちは急に襲ってきた野盗みたいですね…」
ネフェリ「向こうが先に刃を振り上げたのだ。彼らは蛸を引かせ、道を開けることもできたが、私を倒し、蛸の餌とすることを選んだ」
ネフェリ「ならばこちらも、斧で応えるのみだ」
マネージャー「…そうですよね」
シビアかつリアルな戦いの世界を目にして、はやくもマネージャーの目が曇ってくる。頭で分かっても心では拒否したくなるから、オレもまだ戦いが怖くてロクに武器も振るったことがない。おかげでこうやって生きてるんだから、戦いを嫌がることも悪くないぜ。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/15(日) 05:43:51 ID:dkR.EI2I
遺跡の出口まで近付くと祝福を見つけたから、ネフェリがそれを灯してから出口の扉を開くと、外は一面の銀世界だぜ。吹雪と一緒に白い闇が色濃く視界を遮ってくるし、突然の吹雪にみんな腕を盾にして自分の顔をかばったけど、バワー全開の扇風機が耳元で回ってるみたいな強風がずっと吹いてるせいで、互いの声もよく聞こえない。
マネージャー「すごい雪っ…前が見えない!」
拓也「いきなり吹雪かよ!?禁じられた土地らしいな!」
ネフェリ「祝福を探す!まずはそこからだ!」
ミリセント「待て!近くに幽霊がいる!彼の声に、何か手掛かりがあるかもしれない!」
ミリセントは近くでしゃがみ込んでいた幽霊に近付くと、幽霊の顔に耳を近付ける。
どんなヒントでも良いぜ!この吹雪を抜けられるならなんだって聞いてやるぜ!
ミリセント「光を追えば聖樹へと辿り着くらしい!光を追おう!」
ネフェリ「分かった!行くぞ!」
マネージャー「この吹雪の中でははぐれる危険があります!手を繋ぎあって進みましょう!」
165
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ミラン本田★
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<削除>
166
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/15(日) 20:12:30 ID:x9vNyq3g
サングラス外した瞬間一斉に同情される拓也さんほんと草
何度見ても笑っちゃうんすよね
167
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 03:38:01 ID:aUmnn46k
猛吹雪の中の行軍はキツいぜ! 投稿者:ビルダー拓也
狭間の地の旅はいつも過酷だ。今日は足元ぐらいしか見えない吹雪の中を八甲田山遭難プレイだぜ。「今から進むぞ」ってネフェリの合図で数珠繋ぎになってから即座に歩きだし、吹雪を掻き分けていく。これで無事に生還できたらオレって山岳救助隊になれるかも。
拓也「光がもう二つありますよ!右にしますか!?それとも左に向かいますか!?」
ネフェリ「左に行く!はぐれるなよ!」
まぁジムは毎日行ってるし、水没紳士のしごきは結構キツイから、それに比べたら今はまだなんとか耐えられる。
明かりに着くとちょうど目の前を荷車隊が通っていく。
ミリセント「こんな場所で何を運ぶというんだ…」
ミリセントの呟きも吹雪に掻き消されて、荷車隊には聞こえていない。オレは起きてから何も食べてなかったから、ネフェリにおねだりすると勇者の肉塊を差し出されたんで、ネフェリのペットみたいにもらった肉にかじりついてから、また手を繋ぐ。拓也が寒さで固くなった肉を噛みきれなくて苦戦していると「お前、また歳をとったな」ってネフェリに苦いことを言われながら寒さに命の危機も感じて完全勃起する。
マネージャー「ほら、荷車の一団が通り過ぎましたよ!」
拓也「まだちょっと待ってほしいっす!」
マネージャー「なんで!?」
拓也「だって旅に備えてメシが食えなかったんで、今食ってまっす!」
マネージャー「いい心構えですね!早くしてください!」
急いで食べ終わって腹の調子をガタイで確認。ぜんぜん大丈夫だぜ。
行軍へ戻ると妖しい石の光が3つ。
さっそくどれかひとつを選ぶシチュエーションがおとずれる。
ネフェリ「この明かりを置いた奴は何を考えてるんだ!?」
オレは喘ぎながら「ソイツも迷いながら石を置いたんじゃないすか!?こんな風にね!」と、ズボンの中でいきり立ったチンポを雪原に突っ込み、ふざけて「ほらほら、上手に咥えろよ、ちゃんと舌使えよ!」と遊んでみる。ネフェリは「雪とヤッて楽しいのか?」と冷めた目で言うけど、正直に「ぜんぜん!」と言ったのがヤバかった!いつもは仲間にそれとなく優しさを見せるのに、いきなりオレの勃起チンポをズボンの上から掴んで、オレのガタイをタオルみたいに振り回してくる。どうやらオレの悪ふざけにブチ切れたらしい。場を和ませることに失敗したとはいえいきなりコレじゃキツすぎるぜ!
キレたネフェリをミリセントがなだめてからまた吹雪の中を進む。吹雪がオレを串刺しにしようとして、ビュービューとケツの穴を責め立てる。「あー、いきなりバックはムリっす!」と叫ぶオレを無視して冷気という凶器が突き刺さる。「ぐぉぉーっ!」冷たく沁みまくって感じている余裕もない。弓なりにのけぞった胸ががっしりとネフェリに捉まえられてそのまま長時間動かない。その体勢のまま身動きできず汗がじわっと凍ってくる。
マネージャーに「毎晩弄って敏感にしてるから、こういう時に沁みちゃうんですよ!」とツッコまれても声も出ない。オレの締まったケツ筋に冷たさが暖められて、痛みが遠のいて快感に変わる頃を見計らってデカマラがゆっくりとピストン運動を始める。オレは膣壁の快感にのけぞってひたすら吠えるだけの淫乱犬になる寸前に、ネフェリにズボンの中に雪を詰められてデカマラが緊急冷却。さっきまでのムラムラも瞬時に消える。
ネフェリ「こんな時でも盛るとはな!もはや感心するよ!」
急に下半身を冷やされて「あっあっあっあっ」とそれに喘ぎ声も連呼する。欲情が消えてからも下半身の冷たさに上半身をくねらせて狂っていく。15分ほどそのまま歩いてると目印にしていた白い光が途絶えた。背中からマネージャーの大声がかかる。
マネージャー「どうしました!?なぜ止まるんですか!?」
今日はすっげー寒気が強い。呼吸を整える間もなく冷気が口の中を犯してきておしゃぶり。「今日もエロいぜオマエ!」冷気に乳首を摘まれながらフェラで欲情して、凍えるたびにデカ冷気が肺の中でさらにデカくなる。
ネフェリ「目印が消えた!引き返すぞ!」
先頭のネフェリが引き返そうとすると、最後尾のミリセントが遠くに何かを見つける。
その間もオレはまたのけぞって喘ぎ続ける。ずっと冷気に乳首も揉まれっぱなしで狂いまくり。両足の筋肉がブルブルと震えてケツがキュウキュウ締まる。
ミリセント「遠くに光が見える!あれを目指そう!」
ネフェリ「私からは見えないぞ!どこにあるんだ!?」
ミリセント「私のいる場所からだと少し見えるんだ!岩の影に隠れてる!」
ネフェリ「ならば案内を頼む!お前が先頭を行け!」
今度は遠くに見えたっていう明かりを目指して歩いて、また明かりの点々を発見。そこから15分間歩いたけどまだ吹雪は晴れない。オレはまだ冷気をおしゃぶり。「乗れ!」というネフェリの命令ですぐにネフェリの背中におぶさる。またのけぞって上を向いた冷え冷えの口から、意識朦朧の中で自分のよだれを凍らせながら悲鳴をあげる。「あーっ!あーっ!」寒さに乳首をつねられながら下からのガン凍りで上半身を踊らせて狂いまくる。
「どうだ!?ふざけても良いことは無いだろ!」ネフェリの顔はSの口調とは裏腹にヤベーって感じで焦りが見える。「あーっ、もう、ダメっす!」そのまま10分歩いて、ようやく吹雪が弱まり始める。ネフェリの背中にぶっ倒れているオレの足を、ネフェリは広げて背負い直し、その後ろからマネージャーがネフェリの手を掴んでついてくる。デスク仕事ばかりで体が鈍ってるマネージャーも鎧の重さと寒さに悶え死にしそうになっていると、吹雪から出る前にオレの膀胱を抑える筋肉が寒さで限界を迎えて、ハアハア息切らしてるネフェリの背中に、黄金の流れ星を流していく。
マネージャーは寒さと鎧の重さに、オレは感覚を失った下半身と全身の冷たさに、ネフェリは背中でガッチリ凍った拓也の小便に体力を奪われて、元気なミリセントも列の先頭で風避け役と案内役を同時にやってるから限界が近付いてる。やばいこのままだと死ぬぜ!って時に、遠くから狼の声がする。
ネフェリ「狼か…こんな時に…」
マネージャー「もう休みましょう…眠いです…」
ミリセント「もうすぐで吹雪を抜ける!眠ってはだめだ!」
拓也「チョーネム…ジム行きたい…」
ネフェリ「なんなんだ…そのジムっていうのは…」
ぐらついているネフェリを引っ張るようにして、ミリセントはそのまま進み続けて、マネージャーが過労でぶっ倒れたと同時に、吹雪は晴れた。
ネフェリ「フフ…ついてないな…」
ミリセント「ネフェリ、二人を頼む。私が戦う」
でも吹雪が晴れた先に待っていたのは、三頭の狼と、それにまたがる尼僧系女戦士の三人だった。
ネフェリはオレを背負ったまま片腕で斧を構えるけど、足元がおぼつかない。オレは寒さでマジ頭おかしくなり、頭の中で冷気のヤツと激エロなピロートークを展開している。マネージャーは大の字に倒れてハアハア言ってるだけで、戦えるのはミリセントだけだったけど、その髪もバリバリに凍っている。
しろがね人「…マレニア様…?」
そして女戦士のリーダー格っぽい奴がそう言うと、緊張の糸が切れて、ミリセントもうつ伏せにぶっ倒れた。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 04:41:30 ID:aUmnn46k
4Pで遭難しかけた後の恍惚解凍マシーン拓也 投稿者:ビルダー拓也
ネフェリ「拓也、また死ぬところだったな」
ネフェリは筋肉フェチなんで、しろがねのオンナが拓也の脚を掴み、お湯をかけ始めるところを眺めている。「あぁ、あ〜!いいっす!」後ろからも別のしろがねのオンナに腕を揉まれて「もう少し遅かったら危なかった」って、しばらく全身の筋肉を愛撫される。
典礼街オルディナっていうところに死にそうになりながら到着したオレ達を、しろがね人達は快く迎え入れてくれたぜ。なんでもここもマレニアと縁がある場所らしく、全身氷まみれのオレ達を担ぎ込むやいなやすぐに火を起こしてくれて、冷やし拓也うどん状態だったオレも九死に一生を得る。マジ危なかったぜ!ここも寒いといえば寒いけど、吹雪も強風も無いし、視界もクリアでデカい風の音も無いから天国みたいなものに思える。
筋肉を揉みほぐしたあとに、銀色のスライムでできた浴槽に入れられると、温水に喘ぎ声をあげる拓也の全身に温もりを取り戻し、凍傷になりかけた手足を癒してくれる。くそー、こんなことなら亀首漬けとかの補えるヤツも持ってくるんだったぜ!別のところで歓待されてるマネージャーも、普段から拓也に精神的に(ウリの仕事のマネジメントとエルデンリング修復のマネジメントで)徹底的にいじめられているので、こんな時はここぞとばかりに自分を徹底的に自分を甘えさせてるんだろうな。
ミリセント「今回は特別に計らってもらえたのだから、あまり遊ばないでくれ」
なんて遠くからキツめに忠告されるけど、でもオレはそんなことはおかまいなしだ。ミリセントとネフェリもリフレッシュしたんだからオレだってするぜ!暖かい浴槽に腕と足首をかけて、王者のように寛ぎながら手首をクイっと動かすと、狼に乗ったしろがね人が赤い干し肉を提供してくれる。マジ気持ちいい!ギデオンはこんなに優しい奴らを迫害してないで、そっとしておけばいいのにな。
マネージャー「はぁー、すっきりしました。おかげさまで生き返りました。本当にありがとうございます」
最高のもてなしの中で王になっていると、ツヤツヤのマネージャーがいつもの格好でこっちに来る。「あら、まだ寛いでるんですか?すぐに出ろとは言いませんが、迎えてくれたからって甘え過ぎてもいけないですよ」って、こんな時でもマネージャーはキッチリしてる。でも肩肘張ってるのはオレの性に合わないんだよね。
マネージャー「まぁ良いです。しろがねの方々によると、この典礼街オルディナを抜けた先にあるのが、エブレフェールの聖樹らしいです。いよいよですね」
ミリセント「そうか…いよいよエブレフェールか…」
ネフェリ「やはり、不安は取れないか」
ミリセント「ああ…むしろ、前よりも不安が大きくなったほどだ。聖樹についてしまえば、私はどうなってしまうのか…そればかりを考えている」
マネージャー「仕方がありませんよ。探求によって新たな律を生み出す可能性、腐敗が酷くなる可能性、その腐敗が収まる可能性に囲まれて、これからそれらに答えが出るかもしれないとなったら、誰だって不安になります」
マネージャー「ですが、この街の方々も、あなたが腐敗の女神として咲いてしまうか否かを気にして、あなたを招き入れたわけではありません」
マネージャー「今後あなたがどうなろうとも、あなたには必ず味方になってくれる人がいるはずです。そのことを忘れないでくださいね」
ミリセント「…ああ、覚えておくよ」
ちょっと空気がしんみりしたから、景気付けに「うーっす!」ってオレは勢いよく浴槽から飛び出して、全回復したガタイを惜しげもなく曝け出す。ネフェリがはーってため息をつくと、寒暖差の激しさにオレの心臓が淫らに悶えたんで、拓也は耐えられずガタイを痙攣硬直させて地面に倒れ込む。ミリセントが這いつくばったオレの両手を掴んで、ずるずると引きずっていく。
しろがね人「…普段から彼はこうなのですか?…」
ミリセント「なんでもない。気にしないであげてくれ」
一級品の美術品を鑑賞するように、グッタリした激エロボディーを鑑賞する現地のお嬢様方。これだぜ!得意げなオレの極上ビルダーガタイ。まったくさー、みんな人をもてなして楽しんでるんじゃねーよ!拓也のビルダー系肉体とネフェリの色黒イケメンとミリセントの性格がコラージュできれば完璧なんだよな!今のうちに拝んでおくと目の保養になるぜ!オレがゲイだと知ったらさぞかしガッカリするだろうな。
典礼街オルディナを心ゆくまで楽しんだ俺たちは、旅支度を整えると、マネージャーが出発する旨をしろがね人の一人に伝える。そしたらいきなり王都で見たような三人くらいの黒ずくめな女盗賊が現れて、オレたちも一瞬身構える。でもそいつらが、狐が岩山を跳ね回ってるみたいなスピード感で建物を登って、灯台?みたいなのを弄ると、奥の建物の白い壁が消えて、通れるようになった。
マネージャー「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
ネフェリ「私からも礼を言う。ありがとう」
狼と一緒に見送りに来てくれるしろがねの皆さんに、順々に礼を言って転送門に集まっていく。オレも「ここマジで良いところでした!いつかまた来たいっす!」って手を振ると、困ったような笑顔で手を振られる。お淑やかなお嬢さん方に、テンション↑な激エロのモロホストは刺激が強すぎるよな。オレが転送門でミリセントを待っていると、遠くからしろがね人に礼を言いながら歩いてくるミリセントが見えた。
そして転送門に全員が集まって、エブレフェールへ向けて出発って時に、しろがね人の一人が階段に座って、こっちに背中を向けたまま
しろがね人「いってらっしゃい、ミリセント様。あなたの目覚めが、有意なものでありますように」
と言った。ミリセントは少し間を開けたあとに「ああ、私もそう願うよ」と言って、転送門に触れる。
それと同時にオレたちの転送も始まって、オレは典礼街オルディナをあとにした。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 04:54:38 ID:aUmnn46k
典礼街とエブレフェールで2連休 投稿者:ビルダー拓也
典礼街で休んだあとにエブレフェールにワープすると、いきなりとんでもない高さの木の枝に飛ばされてマジ狂い!落ちないように咄嗟に足元に伏せてしがみつく。エブレフェールの聖樹って文字通りの木かよ!しがみつく時にパリって剥がれていったキノコが、下に広がる霧に吸い込まれて音も立てずに消えていく。
拓也「マジかよぉ!転送する場所考えろって!」
マネージャー「なっ、何この高さ!?待ってください!無理ですって!」
マネージャーもオレにならって足元にしがみつく。さすがのネフェリもその場にしゃがみ込んでキョロキョロ見渡してる。
「待て!慌てて動くな…落ちれば助からんぞ」だって。そんなの見たら分かるぜ!
ネフェリ「ミリセント、これはどういうことだ?しろがね人の罠か…?」
ミリセント「分からない…転送門が壊れたのかもしれない…」
伏せた木の枝から、オレは歯を食いしばりながら顔を上げてあたりを見渡す。ここはスカイツリーレベルのチョー巨大な木の上みたいで、遠くに見える枝には例のマシュマロくんの集団が笛を吹いてるし、下の枝にはコモドドラゴンよりデカい蟻が何匹も歩いててマジグロい!でも木の根本あたりにはうっすら建物の密集した感じのやつも見えて、人が住んでそうな気配がある。でもここに来る為のルートがこの木の枝って、人を来させる気がねーよな!ウーバーイーツのにいちゃんが自転車ごと落っこちていく姿を想像して、オレの全身に鳥肌が立つ。
ミリセント「待て、あそこにいる彼らは王都にもいた。助けてくれるかもしれない」
ネフェリ「あの白くて丸っこい者か?助けてくれるとは、どういうことだ?」
ミリセント「彼らも、私をマレニアと思っているようなんだ。王都を進み歩いた時、彼らの同類に命を救われたことがある」
あー、アイツらのことか。懐かしいぜ。ミリセントが声を上げて手を振ると、遠くのマシュマロ軍団もこっちに気付いてすぐにお祈りのポーズに入ったり、感激しすぎて笛を落としたりしてて忙しい。雪は無いけど、高すぎる木の上はまだ冷え込みが厳しいし、高さにやられて手足が痺れてきてるから早く助けてくれって心で念じていたら、デカい蟻に乗ったマシュマロがやってきて、アリのデカ顎でガタイを挟んで運んでくれる。ネフェリとミリセント、マネージャーもキャッチされた。おー、こりゃあ楽だぜっ!
ネフェリ「人喰い蟻に運ばれるとは、妙なものだな」
拓也「え?人食べるんすかコイツ!?」
ネフェリ「食べるぞ。ただこの蟻共は、白い者達に飼われているようだ。何者なんだ?」
マネージャー「この白い子たちは、おそらくは信託の使者でしょうね。ギデオンの集めた本によると、なんでも新しい神や時代の到来に応じて、何処からともなくやってきて信託をもたらす存在らしいです。だから彼らはミリセントさんに祈りを捧げるんですね」
ミリセント「…つまり、彼らにとって、私は新しい時代をもたらす者…ということなのか?」
マネージャー「そうかもしれませんね。あなたが新しい律を生み出すという私の予想は、当たるかもしれません。そうなった場合、あなたが王になるのか、それとも神になるのかは分かりませんが、少なくともあなたが、私達を元の世界へ帰すことになるでしょう」
マネージャー「凄まじい大役です。正直に言いますと、これらの事に関しては引け目を感じます。律を見つける探求者が、あなたではなく金仮面卿であってほしいと、考えてしまうんです」
マネージャー「身勝手な話ですよね」
蟻に運ばれながらシリアスな話をしていると、これから食われるんじゃないかって気持ちになってくる。でも着いた先はチョーデカな大樹をグルっと囲んでる建物だった。しっかりした足場に降ろされて心の余裕が大きくなると、スゲーいい眺めに心が踊り始めて、チンポの血流も良くなって喜びはじめる。建物のひとつひとつがオシャレなアンティークみたいな形してて、シティーボーイなオレにもピッタリだぜ。
マネージャー「ここから先は歩き、ということでしょうか?」
オレたちを置いた蟻達は、元いた木の枝に去っていく。
マシュマロも礼をしてから、その蟻の後ろをついていった。
ミリセント「そのようだな。では、進もうか」
ミリセントを先頭にして、木で出来てるのか石で出来てるのか、それすら分からないオシャレすぎる建物を歩いていく。花とかツタとかまで建物に絡めてオシャレポイントを稼ぐのはいいけどさ、手すりはつけてくれないと怖くて歩きにくいんだよな。一列に並んで歩いているオレ達は、ネフェリの手にマネージャーの手が、ミリセントの手にオレの手が握られてて、拓也はまるでイケメン警察官に補導されてる一般Mウケビルダーだ。デスクワークが専門のマネージャーは腹が出ていない程度の、健康なタイプの細身な若干モチモチ体型だけどね(笑)
170
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 06:18:14 ID:aUmnn46k
ミリセントと一緒に歩いたり階段を降りたりしてると、当然だけど途中で混種って奴らに頭を下げられるし、それだけなら分かるけどゾンビにまでお祈りされてビビったぜ!死んでる奴らからも信仰されてるって相当キてるよな。マレニアとミケラの二人で、どれだけの数の心チンポを相手にしてんだよ?でもそれだけ心のマンコが広くて、なんで戦争なんかやっちゃったんだろう。殺し合いより揉み合い犯しあいの方が気持ちいいのにね。
さらに進んで、梯子登ったり降りたりして、王都や赤獅子城で見た赤毛の獣人にも剣構えられて敬礼なんかされちゃって、ここまでPIV扱いだとマジ調子狂うぜ。いつもは斬り合い刺し合い犯し合いの連続だから、典礼街からここまで平和だと逆に不意打ちされたらって考えちゃうんだよな。オレもだいぶエルデの地に染まってきてるよな。なんてひとり考えてると、ミリセントが石像の前から動かなくなる。
マネージャー「どうしました?」
涙を流して見上げてるミリセントの視線の先には、片腕が無いオンナと、髪の長い子供が抱き合ってる石像があった。オンナの方の顔はなんとなくミリセントっぽい感じがして、オレもああ、そういうことかって静かに納得。ネフェリも察して石像を見上げる。
ネフェリ「…何か、思い出したのか?」
ミリセント「…思い出したとは、違う…感じるんだ…」
ミリセント「哀しみと、愛おしさ。この像に描かれた愛…痛みさえ覚えるほどのそれを…」
石像の片腕オンナは、泣いてる子供を抱きしめるお母さんのようにも見えるけど、泣きついている子供の表情には、何かにスゲームカついてるとか、決意を固めるような真剣な目つきがある。オンナの方がマレニアだったら、子供の方はミケラってことなのかな?
ミリセント「この二人にとっては、この世で互いだけが、支え合える者だったのだろうか…」
マネージャー「…辛くなりましたか…?」
ミリセント「少しだけな…それでも、この像を見られてよかった」
ミリセント「かつてのマレニアにも、人らしい心が正しく溶け合っていた。それを知ることができたのだから」
涙を拭いてミリセントがオレ達に振り返ると、少し慌てたような表情をする。それを見てオレ達も振り返ると、ミリセントを後ろから見ていたらしい混種やら赤髪の獅子やらが泣きまくり祈りまくり、声を殺して吠えまくりだ。そりゃ帰ってきた神様の分身に、神様のそれそのものの心があったって分かったら、どんな宗教の信者だってこうなるぜ。コイツらただの動物かと思ってたけど、どうもこういう人種っぽいな。異文化交流で見識が広がるよね。
ミリセント「あ、ああ、すまない…驚かせてしまったな。君たちのことも、覚えていたら良かったんだが…細かい記憶はあまり継いでいないんだ…」
ミリセント「だから、そう泣かれても…なんて言ってあげたらいいのか、分からないよ…」
居た堪れなくなったミリセントはオレ達をつれてそそくさと退散。ネフェリとマネージャーも微笑ましいのか気まずいのかで微妙な顔。アイツらの仲間と王都や赤獅子城で戦ったことがあったけど、ああいう反応を見ると嫌でも「あー、向こうから仕掛けてきたとはいっても、オレたちって人を殺したんだな」って実感が湧いてくる。兵士はほとんど干からびたゾンビだし、騎士は顔が見えないから、こういう人の面影がハッキリ出てる奴の方が人間に見えてキツいぜ。こう考えてくると、エンシャにもやり過ぎたなって反省が出てくる。エルデの地に染まりすぎてて、元の世界に帰った後のことを考えると少し怖くなるよな。エルデに飼い慣らされたオレって新宿でやっていけるのかな?
さらに進んでいくとまた新しい住人とすれ違っていく。動く青い人型のクリスタルは、ただ静かにその光をたたえているし、二本の橋を護っていたのは激デカガタイの魔法使いの二人組。ミリセントがいなかったら、この落ちたら即死間違い無しの超高度の橋の上でコイツらと戦ってたんだなって思うと、やっぱり殺し合いって良くないぜって改めて思うぜ。
171
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 06:32:03 ID:aUmnn46k
橋を渡り切るとやたら広い場所に出て、その真ん中に馬に乗った騎士がいる。
ミリセントはそいつと顔見知りみたいだったけど、武器を構えたから良くない方の知り合いだったみたいだ。
ネフェリ「…敵か」
ミリセント「前に一度戦った。油断ならない相手だぞ」
マネージャー「こんなところに敵が…まさかギデオンの刺客!?」
拓也「マジかよぉ!チョーしつこいよな!」
ミリセント「彼の手下かどうかは分からない。しかし、カーリアの城で戦った者が、エブレフェールにも現れたなら…やはりそうなのか?」
パカパカ音を立てながら、騎士を乗せた馬がこっちに近づいてきて、オレの心臓も高鳴っていく。ネフェリも体勢を低くして、草むらから獲物を狙うライオンみたいにいつでも飛び出せるポーズに入ってる。でも騎士が馬を止めて薙刀を立てると、ミリセントはネフェリを手で止めた。
聖樹の騎士、ローレッタ「お待ちしておりました、ミリセント様。マレニア様は聖樹の根にて休まれています」
ゴツい鎧からオンナの声が聞こえて、期待もしてなかったのに何故か落胆するオレ。でも戦うことにはならなそうで安心したぜ。騎士は薙刀を持ってない方の手で、広場の出口を示す。「君は何者なんだ?」っていうミリセントからの質問にも「私はしろがね人を護る者です」と言って、正体は明かしてくれない。ほんとにオンナって秘密が好きだよな。仕方ないからオレ達は騎士を通り過ぎて広場を歩いていく。
マネージャー「マレニア…本当にここに居るんですね…」
ネフェリ「おそらく、まともな身では無いだろうがな」
ネフェリ「ケイリッド全土を腐らせるほどの腐敗を解き放ち、清き心も、全てミリセントに移ったのだ」
ネフェリ「もはや言葉どころか、姿形すら失っているかもしれん」
ってネフェリが言ったところでミリセントがまたストップ。今度は別の石像を指差して「マネージャー、来てくれないか?これは…」って呼ぶから、全員でミリセントの方に集合。指の先に見える石像は、三人分の像がひとつに纏められてる感じになっていて、片腕が無い女の子を小さい少年が庇ってて、その二人をお母さんっぽい像がさらに庇って羽織をかけてる形だ。手前の子供二人はミケラとマレニアで決まりだけど、二人に羽織をかけてる女は誰だよ?って考えたところで、拓也の頭にお母さんってワードが引っかかる。
拓也「この子供に布被せてる方、お母さんじゃないっすかね?」
ミリセント「え…?」
マネージャー「お母さんって、まさか女王マリカの像ってことですか?」
ネフェリ「どうなんだ?」
ローレッタ「その通りでございます。この像は、マリカ様の愛を心に刻むためのもの。ミケラ様が聖樹街をお造りになった日に、広場に置かれたものです」
適当に言ったことがまさかの大当たりで、思わず得意げに乳首を立たせながら舌をチロチロ出し入れする拓也。オレの推理力も鍛えられてるな、乳首分析するまでもなかったなって気分に↑が入ってるところを全員に無視されて、ミリセントが像に向かって微笑む。
ミリセント「よかった…ミケラも、マレニアも、マリカから愛されていたんだな…」
マネージャー「マリカにも母親らしい一面があったんですね。今までの探索で知り得た情報の上では、もっと厳格で恐ろしげな人物だと考えていましたが、どうやら彼女に対する認識を改めなければならないようです」
ネフェリ「ゴッドウィンが死んだことに狂い、エルデンリングを砕いたほどだ。血縁の者には情が深いのだろう」
拓也「でも、それじゃあ火山館でハゲが言ってたコトと違うんじゃないすか?子供に甘いお母さんが、子供同士で殺し合えなんて言うんすかね?」
ミリセント「それはそうかもしれないが、私はこの像にあることを信じたいな…」
マネージャー「微妙なところですね。私の世界にもかつては、仲間への情に厚くて子供や親との絆も深かったとされる、スパルタ人という人々がいました。ですが彼らも病弱な赤ちゃんを殺したり、訓練について来られない身内を見捨てたりしていたらしいですからね」
マネージャー「厳しい掟というのが、生きるうえでの前提として存在し、それが社会のシステムに深く組み込まれていた場合は、個人の情愛の深さが誰かに対して行える事もほとんど無いはずです。その個人が例え女王であっても、民へ示しをつける必要がありますから」
マネージャーの分析にミリセントもちょっとションボリして、オレは騎士に「マジなところ、どうなんすかね?」って聞いてみるけどノーコメントを通される。そりゃお前らかすればミケラもマレニアもイエスキリストみたいなもんだし、そしたらマリカなんてヤハウェレベルに偉い奴ってことになるから疑問に思っちゃいけないんだろうけどさぁ、こっちは世界治してやるんだから教えてくれてもいいじゃん!なんて不貞腐れながら、とりあえず先に進むことにしたマネージャーについていく。
結局マリカが子供思いの良いお母さんなのか、それとも弱肉強食系黄金律パキギメ女なのか分からなくて、拓也の中で保留ってことで結論を先延ばしにされる。ミリセントは最後まで像を見上げてたけど、マネージャーに呼ばれたらハッと気付いて、慌てて列の先頭に立った。
ミリセントはそのまま進んでいって、オレたちも続いて長い梯子を降りたり、また階段を降りたりを続ける。ミリセントはどう思ってるんだろう。多分マレニアと会ってやりたいコトとか話したいコトとか、そんなのは全然決めてないんだろうけど、それでも引き返したりしないんだからスゲーよな。確かなことが何もないから出たとこ勝負をするしかないのは分かってるけどさ。
木造のエレベーターに乗って更に下に降りてから、エレベーターの部屋から出ると、視界いっぱいに神秘の光景が広がる。左側に見える聖樹は天高くそびえて、枝の先が雲に隠れて見えなくなってるし、左側には聖樹を囲むようにして、格式高いオシャレな建物がズラリと並ぶ。空に広がる雲間からは黄金の光がところどころ差し込んできて、下に広がる広い海を水平線まで照らし続ける。
マネージャー「おお…」
マネージャーが息を飲むように小さなうめきを上げる。結局なんのプランも立てられないまま、結果がどうなるかも分からない旅を続けている中で、こんな景色に出会うと拓也も神聖な気分になって、最初からここに来るのが運命だったみたいな気もしてくる。マネージャーとネフェリも、きっと同じ気持ちに違いないぜ。
ふとミリセントのことが気になって、隣に立って表情を見てみる。
でも諦めてるのか、安心したのか、満たされてるのかも分かんねー顔だった。
ミリセント「?…どうしたんだ?拓也?」
拓也「え?な、なん、なんでもないっす」
ミリセント「フッ…本当に変な人だな、君は」
ミリセント「さぁ,進もうか。この旅の答えも、今や目の前だ」
黄金色の木の葉が舞い降りる石橋の上を、ミリセントは歩き出して、橋の隅にいた腐女子系騎士に伝言を頼む。
ミリセント「皆に伝えに行ってほしい。マレニアの分け身が帰還したと」
ミリセントの言葉を聞いた騎士は、ボロボロの身体をフラつかせながら、街のある方へ伝えに走って行った。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 18:41:54 ID:aUmnn46k
橋を渡った先には小さな教会みたいな場所があって、そこに入るといくつか椅子が並べられてて、祭壇みたいな台の前には祝福が光ってるんで、ミリセントはそれを灯した。
マネージャー「都市に入った者は、すぐにここで何らかの洗礼を浴びていたようですね。エブレフェールに入ってきた者に、ミケラの庇護下に入ったことを教えるためでしょうか」
ネフェリ「あるいは、都を出る兵たちに、加護を与えるためのものか」
祝福が使えるようになったことを確認すると、オレ達は教会から出て街に入る。そしたら聖樹に沿って作られた一本道の両脇に、聖樹を護ってたらしい兵士達が整列してて、奥から今まで見た腐女子系騎士の中で、一番状態が良い高身長片目腐敗系イケメン女騎士が兜を脇に抱えて歩いてくる。女騎士はミリセントの前で跪いて頭を垂れてくるから、ミリセントは「大丈夫だ、立ってくれ」って言うと、女騎士はオレ達を案内するみたいに格式立った仕草で先導をする。腐敗に全身犯されまくりで声も出なくなってるみたいだけど、キラキラの瞳に迷いは見えない。
兵士の列の間を歩いていくと、色んな奴らと目があって、コイツらがどんな思いでミリセントを待っていたのかも想像がついてくる。顔の半分が溶けてる奴、片目の周りが骨まで見えてる奴、腕が無い奴、脚が無い奴ばかりの全員はだしのゲン状態に堕ちてるけど、それでも数えられない年月をひたすら待ち続けて、決して絶対に諦めなかった末での今なんだなって考えたら、拓也も緊張して右手と右足が同時に出る。
女騎士を先頭にして、兵士の列を抜けてまた視界が開けると、今度は王都でオレに掘り倒された樹木くんの仲間が出てきて、デカハンマーを縦に構えながら道を譲ってくる。コイツは黄金樹から出てくる化身らしいけど、コイツがここにいるってことは聖樹も黄金樹の一種なのかな?大樹を通り過ぎたあとは、また人間クリスタルが3人くらい、ただ静かにその光をたたえているし、よくよく考えたら聖樹って人間じゃない奴ばっかりだよな。
拓也「この聖樹ってところ、なんか人間じゃない奴多いっすよね?ここが故郷だったりするんすかね?」
マネージャー「聖樹のミケラは、混種や亜人や忌み人たちなどの、黄金律から見放された者を多く救った神人でもありますからね。ここにいる彼らは、みなミケラに救われてここに居るか、もしくは頼って身を寄せているのでしょう」
ネフェリ「弱きを助けし神格か。そのような者が、なぜ破砕戦争などを…」
マネージャー「ミケラの場合は、ラダゴンと黄金律そのものへの不信からでしょうね。ギデオンの資料によると、ラダゴンの力や、黄金律でさえも、マレニアの腐敗の宿痾に対しては全くの無力だったらしいですから」
ネフェリ「黄金律をもってしても、宿痾たる腐敗は破れないのか…!?」
ミリセント「そうか…通りで、あのラダーンでさえも退けられなかったわけか…」
マネージャー「それに黄金律に祝福されたかつての民は、混種や亜人、忌み人やしろがね人を迫害し、見捨てました。その黄金律に見捨てられた彼らの一部がこの聖樹に集まっているのですから、腐敗の件も含めてミケラが黄金律をどう思っていたのかも、大体察しがつきます」
マネージャー「ミケラはもしかしたら、黄金律を手に入れて世界を支配するために、破砕戦争に参じたわけではないのかもしれません。本当は黄金律を手に入れてから腐敗と共に世界から分断し、黄金律にも、腐敗にも虐げられる者のいない、いわゆる彼なりの平和な世界を作りたかったのかもしれませんね」
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 18:51:13 ID:aUmnn46k
女騎士というガイドに導かれながら、異国の地を歩いて考察を広げていくマネージャーは、まるで世界不思議発見だ。でもエルデの歴史ミステリーは問題が多すぎて2時間スペシャルでも足りないぜ。マネージャーが考察を広げる中オレが妄想を広げてると、さっきまで綺麗だった景色が一変。隙間から陽の光が入ってくるバカデカい大穴に到達する。眼下にはドロドロに種マンにされまくった時の拓也のマンコみてーに腐れまくった腐敗の沼と、それに溶かされてグズグズになってる木の根が見えて、しかもその腐敗の沼すらも腐って底が抜けちゃってるから、この高い場所からでも最下層っぽい場所まで丸見えになっちゃってる。聖樹の外見は立派だったけど、中身がこれならそりゃあ兵士も腐っちゃうよなー。
マネージャー「これは…!?」
拓也「これって…中から溶けてるってことっすよね?」
ネフェリ「溶けた木の根が、滝となって流れ落ちるほどとはな…ここも遠からず、ケイリッドのように腐敗に沈むだろう」
ミリセント「…マレニアがこれを……これは彼女が、本当に望んだことなのか?」
マネージャー「わかりません。もしかしたら本当に、ネフェリさんの言った通りの有り様になっているのかもしれませんね」
マネージャー「もしそうだったなら、マレニアの状態が分かり次第、ネフェリさんがすぐにあなたを連れて円卓に逃げ込みます。その時が来ても、抵抗したりしないでくださいね」
ミリセント「…ああ、分かってる」
踏み締めるとグニュっとした弾力を返してくる木の根を伝いながら、女騎士に連れられて腐った大穴を降りていく。腐敗の沼の周りには桜色の花が咲きまくりで、一見するだけだとチョー綺麗だけど、桜色の花畑の真ん中に立ってるエビかムシかも分からない奴らが妙にシュールだ。そのエビ虫人間は、女騎士が槍を高く上げるとオレ達の方に寄ってきて、オレ達を
担いで腐敗の沼を渡っていく。ありがたいけど細かい足が顔にあたってかゆいなりね。
でも腐敗の沼を渡り切った時に、女騎士がまた槍を掲げるとエビ虫人間達が止まって、オレ達を中心に円陣を組んで外側に槍を向ける。「なんすかこれ?なんか始まったんですけど」って拓也に、ネフェリはハッとした。
ネフェリ「これは防御の陣だ!敵が来るぞ!」
「敵!?」と叫んだマネージャーをミリセントは伏せさせて、素早く剣を構える。オレもマネージャーにならって頭を抱えてうずくまって、ネフェリも両手に斧を持ってギン目の戦闘モードに入った。こっちにはエビ虫人間が四人もいるし腐女子騎士も一人ついてて、しかもネフェリとミリセントがいるんだから楽勝だぜ!
でも遠くから凄い勢いでぴょんぴょん跳んでくる四人の人影を見て、オレの勝利の確信も、強烈な違和感とともに腐敗混じりの風に吹き飛ばされていく。「あの服装って…」っていうオレの呟きも、急速に高まる緊張感に無視される。そして四人がオレ達を囲むように立って、ネフェリの言葉にミリセントが応えた時、オレの確信はただの妄想だったことを思い知らされた。
ネフェリ「この者らは何者だ?なにか、お前と…」
ミリセント「…彼女たちは、私に害意を向ける者からの使い…」
ミリセント「……私の、姉妹達だ」
とんでもない事を聞いて、ネフェリの瞳孔がカッと見開くと同時に、オレとマネージャーも伏せを忘れた犬のように顔をあげる。マネージャーはどうかは分かんないけど、ミリセントの強さを十分すぎるほど知り得ているオレとネフェリにとっては、気が遠くなるような絶望的な言葉だ。のんびりしていた空気から一気に最悪の危機的状況に追い込まれて、拓也のデカマラも生命の危機感じまくりで一瞬にして完全勃起した。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 19:06:05 ID:aUmnn46k
休み明け集団戦 投稿者:ビルダー拓也
休み明けでいきなり4人との戦闘。腐敗で溶けている聖樹の中、オレ達の数は相手方より多いけど、戦いが始まるとそこは姉妹の独壇場。手に持ったそれぞれの武器を、目にも止まらぬ早業で使いこなしてオンナたちがオレ達で戯れる。エビ虫人間の二人が目の前で粉々に斬り飛ばされたあと、刃の嵐がミリセントとネフェリと女騎士を弾き飛ばして、四姉妹が残ったオレとマネージャーを無視しながら、二人のエビ虫人間を怒涛の攻めで追い詰めつつ、隙を作って下から武器をぶっこんでよがらせる。
早々にエビ虫人間が全滅してが陣形が崩れると、四対三のプレイが始まる。ガテンだけど顔だけはガテン系には見えない色黒ロンゲイケメンのネフェリには、特別待遇で二人もついてくる。あのネフェリも、ミリセントも、女騎士も追い詰めて行ってコイツらすげー強いぜ〜!帰りたくなるけど祝福は無いし、今はみんなが戦ってるから置いて帰るわけにも行かない。命の危機に怯えてる拓也に、ネフェリから離れた姉妹の一人が野獣のように黄金の刃を振るってきて終了。
貴腐騎士「おおおお!」
と思いきや、腐った喉で吠えながら女騎士が黄金の刃を剣で弾いてから、オンナにタックルして互いに揉み合い、奈落の底に落ちていく。その瞬間にオレと目があった女騎士の瞳は潤んでいた。「託された!」そう思ったオレはなけなしの勇気を振り絞り、一度も敵に効いたことがない剣をもう一度握って立ち上がる。「無茶ですよ!」って足元で止めに入るマネージャーを無視して状況を素早く確認。ネフェリは一番強そうな槍を持ったオンナとタイマンになってて、ミリセントは2対1で延々と追い詰められてるピンチな状態。
ネフェリ「私に構うな拓也!行け!」
ネフェリが言った「行け」って言葉は、多分逃げろとかそういう意味だったんだろうけど、オレはミリセントを助けに走って行って、デカい鎌でミリセントの剣を弾いてる女に斬りかかる。でもさっきまでミリセントに斬りかかってた二人のうちの片方が、両手に曲がった剣を持ったまま割り込んできて、オレが持ってた剣を二刀流で絡めて弾き飛ばしてから、脇腹にチョー鋭い蹴りを叩き込んできてオレはゲロと共にダウン。ピクピクと痙攣しながらミリセントの方を見る。
ミリセントは鎌女と二刀流女の合計3本の刃との斬り合い中。鎌を弾くと二刀流が跳んでくるし、二刀流を弾くと鎌が服を掠める連撃に全身を撫で回されている。全身を少しづつ切られ、血は地面に滴るほどたっぷり服に染み込んでて、テカテカと血で輝く服が体に張り付いてる。いろんな角度から責められて薄皮斬られまくって、どんどん腐敗が傷口から染み出してて、ミリセントは戦いながら全身をフルフルと震わせながら、外からの攻撃と内側からの腐敗の暴走に板挟みのハードプレイ状態。
そんな極限状態に焦ったオレは、力が入らない下半身を死に物狂いで動かして、産まれたての子鹿のような足取りで転ぶように二刀流オンナに縋り付く。少しの間ミリセントが鎌持ちオンナと一対一になったけど、オレは太ももの外側に剣をブッ刺されて「ぐおおああー!」ってマジ狂いの悲鳴を上げる。後ろからはネフェリの人間洗濯機が炸裂してる音が聞こえるけど、その最中でも金属がカンカンぶつかる音が鳴ってたから、助っ人は期待できない。
拓也「うぉーっ!うーっす!」
二刀流オンナの剣の片方が太ももに刺さったまま、オレの喉元にもう一本の剣が向けられてオレは両手で掴んで耐えてるけど、マジで力が半端なく強くて、そのままジリジリ地面に押し倒されていく。
マネージャー「わああああ!」
そのオレを押し倒してくる積極的すぎる二刀流オンナの頭に、マネージャーが振り回した木の棒が直撃。
でも二刀流オンナは全く意に介していないみたいで、マネージャーの脇腹を曲がった剣でシュッと斬ると、マネージャーは「あぐっ!」って悲鳴をあげてダウン。ゴドリックからもらった鎧は紙みたいに切れてて、マネージャーが抑える腹からは血がダラダラ流れて腸が飛び出した。
拓也「うあーっ!」
その瞬間にオレの脳が強烈にスパークして脳ドラをドクっと噴射。声は裏返ってオンナみたいになり、自分でも信じられないくらいの怪力が両手に宿って二刀流オンナを突き飛ばす。そのままマネージャーに駆け寄ろうと一瞬思ったけど、マネージャーは苦悶の表情を浮かべながら、血まみれの手でミリセントを指差していた。
オレはミリセントの肩に鎌を突き立てた鎌オンナに後ろから覆い被さると、腕力に任せてヘッドロックを仕掛ける。だけど素手で建材を締めてるみたいな手応えにオレが絶望した瞬間に、オンナは岩壁に縫われてるミリセントから離れて、オレの脇腹にビルダーガタイが浮き上がるほどの肘鉄を食らわせる。グボって吐血してたまらず鎌オンナを離したオレは、そのまま腕を掴まれて地面に叩きつけられた。叩きつけられた瞬間に肩からボコって音がして、激痛と共に片手から一瞬で力が抜ける。
ミリセント「うああっ!」
オレとオンナが絡み合ってたその一瞬に、ミリセントは鎌を力づくで引き抜いて自由になった。
それからミリセントは、マネージャーに追い討ちを食らわせようとしていた二刀流オンナの後頭部に鎌を投げつけて貫通させたあと、剣を拾って戦おうとするも、拾う寸前に鎌オンナに剣を蹴り飛ばされてから、もう一発の蹴りを顔面に食らって岩壁に叩きつけられる。それでもダウンしなかったミリセントは素手の状態のまま、鎌オンナとの絡み合い殴り合いに移行。でも全身の傷と腐敗のハンデのせいで、すぐに組み伏せられて馬乗り体制でボコボコにパンチを喰らい始める。
ミリセント「ぐーっ!うぐーっ!」
パンチの雨で弱ったところに首を締め上げられて、ミリセントはギン目で口の端から泡を吹きながら脚をバタつかせる。一方拓也は太ももを剣に犯されて、肩も外れて、多分内臓も破裂してるガタイでフラフラと立ち上がると、地面に落ちてた石を拾って鎌オンナの後頭部を殴る。それとほぼ同時にネフェリのコンクリパンチより硬い裏拳が鎌女から飛んできて、拓也の顎が一撃で砕かれる。そのまま錐揉み回転でダウンしたオレの全身からは急速に力が抜けていって、消えそうな意識をギリギリで繋ぎ止めるだけで精一杯になり、指一本も動かせない。マネージャーとオレが血まみれでダウンしてる中、ミリセントのうめき声も小さくなっていく。
そして鎌オンナの背後に現れたのは、あのネフェリ・ルー!
ネフェリの左手は肘から先が無くなっていて、右手には槍オンナの生首が握られている。血まみれのネフェリはその生首を思いっきり振りかぶると、ミリセントをもう少しで締め殺すってところまでいってた鎌オンナの後頭部に、全力で生首をぶち込んで吹っ飛ばした。ミリセントを離して宙に舞った鎌オンナは、脳震盪でフラフラになりながら立ち上がると、その顔面に槍オンナの顔を叩きつけられて濃厚なキスを味わう。
キスパンチでダウンした鎌オンナにネフェリは馬乗りになると、鎌オンナの顔に向かって、槍オンナの強制キスパンチを連打。鎌オンナの顔がみるみるうちに血のキスマークで腫れ上がっていく。でも鎌オンナは急に両手を突き出して、ネフェリが振り込んだ槍オンナの両目に指を差し込み、そこから手を開いて槍オンナの頭を粉々に砕いて脳みそを撒き散らす。
脳みその煙幕に一瞬視界を遮られて、ネフェリの動きが一瞬だけ緩む。
鎌オンナはその一瞬にネフェリの顔へ両手を突き出し、ネフェリの両目に親指を突っ込んで根元まで抉り込む。
でも同時に、ネフェリの右手も鎌オンナの顔面を掴んでいた。
ネフェリ「オオオオーッ!!」
両目を潰されて全盲状態に堕ちたネフェリは、自分の顔を開いてくる両手に全体重をかけて、鎌オンナの脱出を防ぎつつ、両手の広がりも阻止。さらに右手のアイアンクローに渾身の力を込めて、バキャッという音と共に鎌オンナの頭を砕き散らした。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 20:54:20 ID:aUmnn46k
敵も含めた全員が血まみれダウンしてる中で、ネフェリは懐の聖杯瓶を手探りで見つけ出してから一気飲み。左手と右目が再生したけど、左目は聖杯水が足りなくて回復ができないらしい。ネフェリはその事には構わずにハアハア息切らしてマネージャーに駆け寄った。
ネフェリ「はぁ、はぁ…マネージャー…生肉団子と毒の苔薬、持ってきてるはずだな…どこにある…?」
血まみれのマネージャーは、どうにか希望が繋がったことに安堵の表情を浮かべつつ、汗まみれの顔のまま、鎧のポケットを指差す。ネフェリはそこから生肉団子と苔薬を取り出すと、マネージャーの口に回復セットをひとつ突っ込んでから、オレとミリセントがダウンしてるところまで走って来て、オレとミリセントにも回復セットが提供される。
マネージャー「ぷはっ!はぁ、はぁ…危なかった…死ぬかと…思った…」
傷が治ったマネージャーは花畑の中で大の字になり、ただ息を切らしている。オレもどうにか治療が間に合って全身の怪我が治ったけど、完全には治らなかったみたいでまだ太ももがチョー痛いぜ。見ると刺し傷は無くなってるけど、内出血はしてるみたいで皮膚が青くなっていた。
ネフェリ「ミリセント、大丈夫か?息はできるか?」
ミリセント「ごほっ!はぁ……辛うじてだがな…」
岩壁のそばでぶっ倒れていたミリセントも、全身の怪我がほぼ治った状態になっていて、どうにか立ち上がることができた。
オレも倒れたままのマネージャーに肩を貸して立ち上がらせる。
マネージャー「斬られるって、あんな感覚なんですね…帰りたくなってしまいました…」
拓也「はは、無理ないですよ。オレも早く帰りたいっす」
マネージャー「さっさとマレニアを見つけて、早く終わらせましょう…こんなんじゃ命がいくつあっても足りませんよ…」
ミリセント「悪意の主は…どうしても私を、腐敗の花として咲かせたいらしい…」
ミリセント「そうなるよりは…」
ネフェリ「何を独り言を言っている。刺客はすでに打ち倒した。ここに敵はもはや居ないだろう」
ミリセント「それならば、いいんだがな…」
突然の山場をギリギリで切り抜けて、全員が披露困憊の中で、危機から解放された安心感で上の口も緩む。まわりは血だらけで、襲ってきたオンナの死体もあるのに、不釣り合いなほど弛緩した空気があたりに漂う。ミリセントが叩きつけられた岩壁がドスンと倒れた音も響いて、あんなデカ岩が倒れるほどの力でミリセントをぶっ飛ばす奴を、よくも四人相手にして生き残ったなって、引いた笑いが口に浮かぶ。でもエビ虫人間と、あのイケメン女騎士がどうなったのかを考えると、その笑みもため息に変わる。
そして岩壁が倒れた所から、ぬかるんだ地面がひび割れてバコッて音を立てると、崖側の地面が引っ張られるように崩れた。
ネフェリ「なっ!?」
マネージャー「あ!」
その崩れた地面には、ミリセントが立っていた。
聖樹の底へ向かって落ちていく土や岩と一緒に、ミリセントの両足も宙に浮いて落下していく。
そんなミリセントは、何故か安心したかのように目を閉じた。
拓也「マジかよぉー!」
オレも、ネフェリも、マネージャーも、ミリセントからはほんの少しだけ遠くて、ミリセントが落ちるのは速かった。
走り出す暇も無くミリセントは視界から消えてしまい、オレは唖然として立ち尽くして、ネフェリは膝をついた。
ネフェリ「そんな…」
聖樹の下の方からは、デカいものが墜落する音が響いてくる。
それと同時に、生き物を倒した時に出てくる、あのルーンがネフェリに向かってやってくる。
ネフェリ「嘘だ…そんな馬鹿な…」
ネフェリ「どうして…」
両手を地面について泣き崩れるネフェリに、オレもマネージャーも声をかける余裕がない。
ただ目の前で起こったことをどう受け止めて良いのか分からずにいて、マネージャーもキョトン顔で何が起きたか分かっていない。
頭の中にいきなり思い出が浮かんでくる。初めて会った時は、ミリセントに股間を蹴り上げられたとか、円卓では隠し持ってたイエロの瞳をほとんど没収されたなとかが浮かんで、さらなる思い出の呼水になりながら、記憶の波に塗りつぶされていく。
レナラの魔法からオレを守ってくれたこと。ラダーンの前に立ちはだかったその背中。オレとディアロスと一緒に背中を流し合ったこと。王都で見せた鮮烈な強さ。ふとした拍子に見せる微笑み。オレが死にそうになってるわけでもないのに、ミリセントはもういないのに、ミリセントとの走馬灯が現れては消えていく。となりに立ってるマネージャーが「…ミリセントさんは…?」と呟く。すると「もし!もし!助けてーっ!」っていう、馬鹿に間の抜けた叫び声が聞こえてくる。
何かと思って崩れた崖にフラフラ近づいていくと…
蛇になっているラーヤが、太い木の根にしがみついた体勢で首を伸ばし、落ちたはずのミリセントを咥えていた。
ラーヤ「助けてください!重いです!」
ラーヤの後ろには、騒ぎを聞きつけた兵士達が群れをなしてついて来ていて、気を失ったミリセントを咥えてプルプル震えてるラーヤは、兵士たちに引き戻されていった。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 21:06:22 ID:aUmnn46k
ネフェリ「よかった…お前を死なせてしまったかと…」
ミリセント「すまなかった。まさか足場が丸ごと崩れるとは思わなかったんだ…」
ラーヤと兵士達の手で助け出されたミリセントを、ネフェリは抱きしめて肩に顔を埋めて背中を震わせている。当のミリセントは困ったような顔で、どうしていいのか分からないみたいで視線をこっちに向けてくる。そんな顔されてもオレもマジで焦ったんだよな!マネージャーなんて今頃になって泣いてるしでもうメチャクチャだし、ミリセントのせいじゃないのは分かってるけどさ、心配させるんじゃねーよ!って心の中で説教モードに入る。まわりにいる兵士達もビンビンに気が立ちまくりで、全員剣を抜いてそこら辺を歩き回って、怪しい草むらを刺したり、崖下を覗き込んだりしている。
ミリセント「ラーヤ、助けてくれたこと、感謝しているよ。でもどうして君はここに?」
ラーヤ「禁域の向こうの探索が進めば、禁域の向こうの祝福も灯るはずと思い、その灯火を、祝福に何度も出入りすることで確認していったのです」
ラーヤ「その甲斐もあり、こうして英雄様をお救いすることもできました。もし、私が罰せられるとしても、私に悔いはありません」
ミリセント「罰するなんて…そんなことは、私はしない。君は命の恩人なのだから」
ラーヤ「ああ…あなたをお救いすることができて、本当によかった…」
ミリセントは安心顔のラーヤからも後ろから抱きつかれて、いやらしさの一切無い三連結が完成。マネージャーもようやくグズるのをやめて、ぐっしょり濡れたハンカチをポケットにしまって鼻をすすった。
マネージャー「はぁ…もう本当に心臓に悪いです…襲われるし、斬られるし、ミリセントさんは死にかけるし…散々ですよ」
マネージャー「だいいち、襲ってきた彼女達はなんなんですか?遺体を調べようにも、あっという間に腐敗して消えてしまいましたし」
ミリセント「…彼女達は、私の姉妹だ。マレニアの心はほとんど継ぐこともなかったが、その力の片鱗は持っている」
ミリセント「彼女たちは、悪意の主の命を受けて、腐敗の熟した姉妹を狩り、朱き花として咲かせる使命を帯びている」
マネージャー「同じ姉妹を、狩るんですか!?」
拓也「姉妹で殺し合いかよ!チョーSどころじゃねーぜ!」
物騒な真実を聞いて、さっきまで泣いていたネフェリもミリセントから離れて、キリ目の戦闘モードで「それは本当か?」とミリセントに聞く。ラーヤにも顔を覗き込まれて、ミリセントは何かを決心したように話を始める。
ミリセント「ああ、本当だ。すでに何度か退け、襲ってくることも無くなっていた。諦めたと思っていたんだが、甘かったようだ」
ネフェリ「何故それを、もっと前に…」
ネフェリ「…いや、その話はもはや済んだことか。それで、お前は悪意の主とやらに、心当たりはあるのか?」
ミリセント「ある。その者は腐敗に生じる蕾から、朱き花を育てることを目的としている」
ミリセント「たしか、ゴーリーと名乗っていたはずだ」
拓也「は!?ウッソだろお前!」
ネフェリ「ゴーリーだと!?」
マネージャー「ゴッ!…それ、あなたのお父さんですよ!?」
全身に電流を流されたような衝撃に、拓也の認識がまたもぶっ飛ぶ。
あのゴーリーって奴、優しそうな顔してミリセントを娘とか言ってたのに蓋を開けたらこれが本性かよ!ミリセントや姉妹達を愛さずに、ただのペットとして見てるプロ級の腐敗マニアだったことを知って、初めて会った時にミリセントに金の針を仕込んだことも何かの策略に見えてくる。もしかして今になってミリセントの腐敗が悪化してるのも、あの針に細工がしてあるとかなんじゃねーの?
ミリセント「父か…たしかに、そうと言えるかもしれない…私も朧げながらに覚えているのだから」
ミリセント「腐敗の沼から、嬉しそうに私を拾い上げる、彼の姿を」
マネージャー「…信じられない…なんなんですか?…ギデオンといいゴーリーといい、この世界にまともな父親っていないの!?ラーヤさんを愛していたライカードが一番まともじゃないですか!」
義憤に駆られてマネージャーは地団駄を踏む。けどそれを言っちゃうと、お母さんを捨てて出ていったオレのお父さんにもちょっとカスってオレも怪我するんだよね。ネフェリもため息をつくけど、ミリセントは話を続ける。でも次の話もまた重くてキツかった。
ミリセント「私は…彼の悪意には屈したくなかった…」
ミリセント「彼の望むように、私ではない何かには……命を食い荒らす腐敗の花とは、なり果てたくなかった」
ミリセント「だから私は…姉妹達が目の前に現れた時に…考えたんだ…」
ミリセント「姉妹達を、もし打ち破れたのなら、金の針を抜き、この命を絶とうとな」
拓也「マジ!?それって自殺!?」
悪い父親を倒したいって話かと思いきや、いきなり自殺未遂が発覚してマジ狂い!どうしてそうなっちゃうんだよ!ミリセントは気持ちが優しすぎて、サイテーな父親に復讐したいとか悪事を止めたいとかにはならないんだろうけど、それでも自殺なんてやっちゃダメだぜ!ミリセントは悲しくないかもしれないけど、オレ達は絶対みんな悲しむからな。
マネージャー「命を絶つって…」
ネフェリ「馬鹿なことを…どうしてそうなる…! 死んだところで、お前の死に呪われる者が生まれるだけだ!ゴーリーを成敗しようとは思わなかったのか!?」
ラーヤ「も、もう、そう考えてはいませんよね…? 英雄様は、こうして生きています。あなた様が死を選ぶなんて、私は…」
ミリセント「大丈夫だラーヤ。今はもう、針を抜く気はない」
ミリセント「君に命を救われて、ネフェリとマネージャーに泣かれてしまったんだ……私の命は、もはや私だけのものではないと、今ならわかる」
ミリセント「まだ少し、私も腐敗に抗ってみるよ」
ラーヤ「よかった…もう死ぬだなんて、言わないでください…」
拓也「少し抗うじゃないっすよ!ずっと抗ってくださいよ!」
ミリセント「あ、ああ、そうだったな」
177
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/16(月) 21:26:48 ID:aUmnn46k
ミリセントと探索漬けの日々 投稿者:ビルダー拓也
死ぬ寸前まで痛めつけられたけどギリギリでオレ達は生還して、ミリセントも死なずにすんで、思いもしない黒幕も発覚したけど、今はゴーリーよりもマレニア優先ってことで探索の続きだぜ!と言ってもマネージャーもオレもヘトヘトだし、ネフェリも聖杯瓶を使い切ったから次の祝福までは独眼竜状態だぜ。まぁ兵士の護衛もついて今度こそ大丈夫だと思うけどね。
ネフェリ「…ミリセント、お前が落ちた時に、多くのルーンを得たが、あれはなんだったか分かるか?」
ミリセント「いや、心当たりはないが?」
ラーヤ「あれは樹霊のルーンです。崩れていった足場の中に、樹霊の尾が見えました。戦いの最中に、あれが目を醒さなくてよかったです」
ネフェリ「樹霊までいるのか。この聖樹は、環樹までも行っていたのだな」
喋りながら壁の横道に入って、梯子を降りて水路を進むと、水路脇に祝福が見えてそこで休憩を入れる。ネフェリの独眼竜も祝福のバワーで治って、マネージャーは「生肉団子と苔薬が切れたので、ちょっと補充しに行ってきますね。待っててください」と言って祝福の光の中に消えていった。それからちょっと間があって、ゴーリーについてミリセントが語り始める。
ミリセント「…ゴーリーについてだが、私は、復讐をしようとは思っていない」
ミリセント「彼を斬ることはできる。…だが、腐敗の拡がりを望む者は、腐敗がなければ、そもそも現れなかったはずだ」
ミリセント「そんな彼を、マレニアの分け身である私が斬るのは、勝手のように感じるんだ」
ネフェリ「勝手?」
ミリセントからの意外な言葉に、ネフェリが聞き返す。
でもオレはミリセントの言いたいことがなんとなく分かった。
お母さんに「こんな子産むんじゃなかった」って言われたことがあるからかなぁ?
ミリセント「彼もきっと、望んで腐敗に生まれたわけではないんだ」
ミリセント「ただ、そのように生まれたから…生まれたままの己だけで、生きる道を探すしかなかったんだ」
ミリセント「それを、私は責めることはできない。…ましてや私は、彼を生み出した側に立つ者なのだから…」
そこまで聞いてから、ネフェリはフンと鼻から息を吐いた。ネフェリの性格と、ネフェリが育った蛮地をどんな王が仕切ってたか考えると、ネフェリがミリセントの考えを気に入らなく思うのも無理がないよな。ネフェリは見て分かるとおりのバリバリの体育会系女子だからな。
ネフェリ「ミリセント、お前は優しい。優しくて愚かだ」
ラーヤ「愚か?そうでしょうか…」
ネフェリ「愚かさ。生み出した側の者であると言うのなら、生まれた者が道に迷う時に、導いてやるべきだろう」
ネフェリ「過ちを繰り返すならば止めてやり、過ちを認めないのならば罰する。過ちに信仰を抱き、過ちによって滅びを招こうとするのなら、いっそ殺してやるのが情というものだ。穢れた惨風は、清風に吹き飛ばされねばならない」
ネフェリ「強き者は、勇者となって弱き者を助する使命を帯びるだろう。しかし、血に濡れた卑怯者などに、生きる道など無い。ゴーリーは卑怯者であり、血も流しすぎた。殺してやるのが情けだ」
ネフェリの突き出してきた蛮地の理論は、死刑制度がある現代の倫理観に意外と近かったけど、近いってだけで決定的な違いがある。蛮地では犯罪を犯罪として認めて、罰を与えたり処刑したりしているものが、法律ではなく人の情けなんだよね。でもゴーリーの場合は、エルデの地の法律なんてものが完全に壊れてる現状だと、もう個人の感情でどうにかするしかない気もするんだよな。ここは新宿じゃないしな。どんな人にも最低限の権利はあるとかの、現代の基本的な倫理観が全然ないかもしれないし。そうなるとオレにはネフェリの意見も、ミリセントの意見も否定できなくなって、上の口も下の口も閉じて悩むだけだ。
ミリセント「…私には…そう言い切ることはできない…」
ミリセント「過ちを犯した者を、殺すことが情けと言うのなら、どうして君はゴドリックを殺さなかった?」
ミリセント「一度は刃を交えて、君はゴドリックを殺そうと決めたはずだ。でも君は考えを改め、ゴドリックを見逃した」
ミリセント「私は、その時の君を信じたい。生かすことも、また情けであることを」
ネフェリは痛いところをミリセントにソフトタッチされたらしく、「あれは…」と何かを言おうとしたところで、ため息をついてバツが悪そうに祝福を眺め始める。そしたら祝福の光が強くなって、中からマネージャーが出てきた。
マネージャー「物資の補充が終わりました。先に進みましょう」
マネージャーの一言で休憩を終わらせて、祝福から離れて水路から出ると、また木の根を伝って聖樹の外側の街を歩く。長い年月で建物が壊れちゃってるから仕方ないけど、狭間の地は建物の中の移動経路がチョーごちゃごちゃしてて、火事とか起きたら避難が間に合わなさそうなりね。というか聖樹に建物くっつけてるような場所なのに松明とかが点いてるから、この薪をオレが蹴り倒すだけで大火事が起ると思うと、首筋の毛が逆立ってくる。防災意識ぐらいしっかり持ってくれよな!
178
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/17(火) 20:48:09 ID:h0pwMgm6
木の根を伝って下に降りていって、最初の方で見たような教会に似た建物に入ったら、中には木が掘られた石板が並んでて、エビ虫人間が案の定ミリセントに祈りを捧げてくる。
マネージャー「この石板の並びは…どうやらここは墓地のようですね」
拓也「墓っすか?それがマジな話だったら、墓に城の主人を住まわせてるってことになるじゃないですか」
マネージャー「ありえる話ではあります。環樹というのは、木の根に死者を埋めることによって、樹に死者の生命を還してから、新しい生命として産み直すことを指します。つまり、命のパワーみたいなものは木の根に集まっているという信仰が、狭間の地にはあるんです」
マネージャー「それなら、最も尊い人を木の根近くに住まわせることにも、木の根に墓が近いことにも説明がつきます。あくまでこれも私の推測に過ぎないですけど」
オレは心の中のマネージャーにスーパーヒトシくんを贈呈しながら、教会奥のエレベーターに乗る。すると兵士達は全員敬礼をしてから去って行くから、オレも「うっす…」と反射的に小声を漏らす。それからミリセントがエレベーターのスイッチを踏むと、オレ達5人は聖樹の底へと降りていく。
エレベーターが止まると、木の根だらけで埃っぽい、薄暗い部屋に到着。部屋の真ん中には祝福が光っていて、部屋の横にはもうひとつ部屋があり、そこにはオレを縦に二人並べたよりもデカい、朱い花が咲いている。
ネフェリ「この花…まさか…」
ミリセント「これは、朱い腐敗の花だ」
マネージャー「えっ!?」
拓也「ヤバっ!」
ミリセント「心配はいらない。この花は小さく、すでに咲いたあとでもある。腐敗はすでに吐き尽くして、あとは静かに、そこにあり続けるだけだ」
マネージャー「…ということは、聖樹の腐敗はこの花のせい?」
ミリセント「そこまでは分からない。ただ、この花に近寄るだけなら、腐敗を患うことはないだろう」
ミリセントからの答え合わせでオレとマネージャーもひと安心。ラーヤも口を覆っていた手を離す。一瞬オレは死を覚悟したけどネフェリは両手に斧を持っていた。こんなワケわかんねー病気の塊みたいなのが相手でも戦う気なんだから、よくその闘争心の種火が消える時がねーなって思うぜ。
朱い花の部屋を一応調べてみると、マネージャーがエレベーターを発見。でも今は用は無いから、ちょっと戻って祝福を点けたあとに、そこで一度蟹休憩を挟んでから、祝福のある部屋の奥からうっすらと見えるもうひとつの通路に向かう。階段を降りてそのまま真っ直ぐ歩いてたら木の根で出来たチョー広い空間に出た。
拓也「うお…でっか…」
マネージャー「ここが聖樹の最下層…木の根で自然にできた空間とは、思えませんね」
ネフェリ「風と水が澄んでいる。腐敗で穢されたものが、ここでは浄化されているのか?」
ラーヤ「ですが、腐敗に芽吹く草花も見えます。腐敗と、そうでないものが、混ざり合っているかのようです」
木の根で出来たドーム状の空間の中を、確かめるようにゆっくり進む。足元の木の根を踏むと腐敗臭の代わりに古い草の匂いが鼻に入ってくる。遠くに見える水たまりも透明で、上で見たようなドロドロの腐敗汁はどこにも見えない。もしかしたら本当にここは浄化されてるのかもね。ミリセントは俺たちよりも少し速いペースでドームの中を歩いていく。そして水たまりに踏みいって、パシャって音がすると同時に歩くのをやめた。
拓也「お,何かあったんすか?」
ミリセント「…彼女だ…」
拓也「え?」
視線を何かに奪われたままミリセントが呟いて、オレはミリセントの目線を目で追っていく。
オレは舐めるように目線動かして木の根を鑑賞しながら、その木の根に触れる人の手に気付いて「あっ…」と声を上げる。椅子に座ったそのオンナには片腕が無くて、足元には金色の義手と兜が置いてある。髪は燃えるように朱く、表情は虚ろで何を考えているのか分からない。でもその横顔には見覚えがあったぜ。
オンナの顔は、ずっと長い間、一緒に旅をしてきた仲間の顔とソックリだった。
オンナは一言も話さないしこっちを見もしないし、ただ木の根に張った蔓の一本みたいに、木の根をゆっくり撫でていた。
179
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/17(火) 20:59:17 ID:h0pwMgm6
ネフェリ「おい、どうした?何を見て…」
俺の後ろからは、ネフェリが言葉を切って息を呑む音が聞こえる。そのあとまた水音がしてマネージャーとラーヤが小さな声を漏らす。オレ達はみんなして水溜りに足を踏み入れたまま固まっていて、遠くで座っているオンナから目が離せない。
するとオレ達が入ってきた入り口からそよ風が吹いてきて、ミリセントの髪についていた枯葉を宙に舞わせる。
舞った枯れ葉はオンナの足元の義手に乗ると、また流れていって、奥の暗い影に隠れた。
「…長い、夢を見ていた」
オンナが声を発して、オレ達はまた息を呑む。
そして、その一挙手一投足に様々な感情を覚える。
興味、期待、不安…そして悪寒付き恐怖を感じて、それでもオンナから目が離せない。
「体は貧金、血は腐れ」
「幾万の屍を積み上げ、ただ一人を待つ」
オンナは重々しくガタイを起こすと、屈んで義手を拾う。
それから義手を右肩につけて、兜を手に取って頭に被った。
そして剣を構えた時、オンナの足取りから重さが全く無くなった。
マレニア「貴公らも、知るが良い。ミケラの刃、マレニアを」
マレニア「敗れを知らぬ戦いを」
穏便なファーストコンタクトがマレニアに無視されて、気づいた時には一触即発になっていた。ただならない雰囲気を感じ取ったマネージャーはラーヤの手を引いてドームの隅に退避。ネフェリとミリセントも武器を取ったけど、その瞬間にはもうミリセントの鼻先にマレニアが現れていた。
ネフェリ「なにっ!?」
ほとんど瞬間移動に近い超スピードで現れたマレニアに、オレはおろか、ネフェリですらも全く反応できなくて、気付けばミリセントが袈裟懸けに斬られる。ミリセントもいつ斬られたのか分からずに、血を流しながらそのままヨロヨロと後退して、跪いて吐血する。
ミリセント「な…なにが…いつ斬られた…」
マネージャー「え…なに?何が起きたの?」
ネフェリ「うおおおっ!」
間合いに入られてミリセントが斬られたことで、ネフェリは反撃するしかなくて、両手の斧を振り上げて空中攻撃を仕掛ける。でもネフェリの斧がマレニアの兜に当たる瞬間、ネフェリは何故か背後からマレニアに斬られて、地面に叩きつけられていた。
拓也「ウッソだろお前…」
ドラゴンボールみたいな激ヤバのスピードで、一瞬にしてミリセントとネフェリを倒したマレニアが、拓也の胸元を鷲掴んで垂直に放り投げる。そしてオレのガタイを激長ブレードで刺し貫こうとして、ミリセントの剣に阻まれた。
拓也「あ!」
いきなり深傷を負ったミリセントは、わざとかどうかは分からないけど一気に咲きかけ状態に移行。朱色のミキサー攻撃がマレニアに炸裂する。ミリセントはそのままマレニアを勢いに任せて押していき、空中に飛んでいたオレは地面に落ちて、両乳首とチンポを同時に強打して悶絶。その間もミリセントはマレニアを押しまくるけど、攻撃自体は全部マレニアの剣に阻まれて、ガガガって音と一緒にド派手な火花を撒き散らすだけだった。
ネフェリ「おおお!」
聖杯瓶を一発キメたネフェリが立ち上がって、マレニアに向かって例の人間洗濯機を繰り出すことでミリセントに援護を入れる。マレニアはミリセントとネフェリからの怒涛の同時攻撃を剣で受けてるけど、流石に勢いが強烈だったらしく、後ろに大ジャンプして距離を取る。その間にオレはラーヤとマネージャーに合流。ネフェリには聖杯瓶が残ってるし、ミリセントは咲きかけてるお陰か傷の治りが速くなってる。
180
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/17(火) 21:11:50 ID:h0pwMgm6
ラーヤ「あれは…!」
マネージャー「ミ、ミリセントさん!?あなたの体…」
ミリセント「構わないでくれ!マレニアを相手に、加減はしていられない!」
マネージャー「ダメですよ!あなたの腐敗が咲いてしまいます!そうなれば何がおきるか…」
マレニアはこっちの会話なんて聞いてくれないから、マネージャーの言葉を無視して突きを繰り出す。その突きもほとんど瞬間移動で、どこからどこまで飛んだのかも分からない。かろうじて見えたのは、武器で防いでぶっ飛んでいくネフェリとミリセントの姿だけだった。
ネフェリ「は、速いなんてもんじゃない…見えない…」
素早く立ち上がったミリセントがネフェリを起こす。
マレニアはそんな二人を前にしても追い討ちなんてせずに、ゆっくりと歩いてくる。
マネージャー「ネフェリさん!勝てません!逃げましょう!ミリセントさんを連れて撤退してください!」
マネージャーはそんなこと言ってるけど、オレと同じで、多分逃げられないのは分かってる。背中を向けて一歩でも走り出した瞬間に、瞬きする暇もない超スピードで首を跳ねられて終了。そんな結末しか見えないからこのドームに入った時点で脱出なんて無理だぜ。
ネフェリ「フッ…ラダーンを倒す手掛かりか。ギデオンもタチの悪い冗談を言ったものだ」
ミリセント「ネフェリ、まだ戦えるか?せめてあの三人だけでも、生かして帰したい」
ネフェリ「なんであれ、戦おう。私は蛮地の勇者なのだからな」
マレニアに向かって二人はまた戦闘体勢を取るけど、こんな奴相手に勝機なんてあるのかよ!
ネフェリの斧にはもう一度風と雷が沸き起こり、ミリセントの義手から朱い蝶が飛び立ち始める。
マレニア「知り得ぬか。ミケラの刃、マレニアを」
その二人を前にしても、マレニアの歩みは余裕たっぷりって感じで遅くて、まるで誰もいない野原を一人で散歩してるみたいだ。
ネフェリ「オオオオーッ!」
獣のように吠えたネフェリがマレニアに飛びかかると同時に、ミリセントは高く跳び上がって空中からマレニアを襲う。渾身の力で振るわれる雷の斧をサイドステップでかわしたマレニアは、ネフェリの背後に回り込んで斬撃を繰り出すけど、その剣は空中のミリセントに弾かれてネフェリの頭上スレスレを通過する。
その隙にネフェリは斧に嵐を呼んで小型の竜巻を作り、マレニアをどんどんどんどん切り裂いていく。でも流石に神の血を引いてるだけはあって、マレニアの身体はネフェリの斧を叩き込まれてもかすり傷程度しか傷つかない。そこにミリセントの空中ミキサー攻撃もプラスされるけど、体勢を一瞬で立て直したマレニアはその攻撃もネフェリの嵐ごと防いで、二人を弾き飛ばす。
弾かれた二人はマレニアから離れたところに同時に着地して、マレニアにギン目を向けて再び戦闘体制に入る。そして二人が気付くと同時に、遠くで戦いを見てるしかない俺たちも気付いた。
拓也「マジかよ…」
マネージャー「そんな…こんなの…どうすればいいんですか…?」
ラーヤ「英雄様…ネフェリ様…ああ、お父様、どうか二人をお守りください…」
ネフェリとミリセントの攻撃でついた擦り傷はマレニアに無視されて、この一瞬で消えていた!
あれだけの連撃を浴びせて与えたダメージがどこにも残ってなくて、かわりに圧倒的な絶望をマレニアが残してくるから、マジ狂う気力さえも砕かれた拓也は恐怖でガクガク震えながらその場にヘナヘナとへたり込む。その時の拓也の脳内に浮かぶのは、昔セックスしたボーイくんとの妄想ごっこだった。
「拓也は戦車にひかれても死なないんだよな」
「氷の海に沈められても大丈夫だよな。」
「高圧電流にも耐えられるよな!」
負けることを知らないプロ級マレニアの奴はきっと平気で耐えてくる。そもそも耐える必要があるのかすら分からねーよ。冗談で言ったような、妄想で遊んだような事を悪夢へと変える、絶対に出会いたくなかった真のチョーSの出現に、オレは心を徹底的に心を砕かれて、逃げろの一言すら言えなくなっていく。
ネフェリ「傷が…無い…だと…!?」
ミリセント「治癒したのか…今の一瞬で…?」
マレニアの激ヤバな自己再生能力は、この場にいる全員に絶望を与えつつも、同時にひとつの疑問をズブリと植え付けてくる。自己再生がマレニアの持つ何かのせいで生まれた力なら、その自己再生が今起きてるミリセントには、何が起こってるんだよ?その疑問には初めから答えは用意されてるけど、拓也はそれには目を逸らす。
ミリセントの花が咲けば、ミリセントは第二のマレニアになって、この場にいる全員が腐敗に飲まれて即逝き。その可能性を認めると、マレニアに斬られて死ぬかミリセントと一緒に腐って死ぬかの、二つにひとつを選ばなきゃいけないシチュエーションだとわかってしまうからだ。
マネージャー「あっ…」
ネフェリとミリセントが絶望感と無力感に飲まれていると、マレニアのヤツがふわりと跳び上がる。
それから空中で剣を構えると、あのミキサー攻撃がやってくる。
181
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/17(火) 23:06:44 ID:h0pwMgm6
マレニアの剣がブワっと動きだす瞬間に、ネフェリとミリセントはギリギリで武器を構えるのが間に合った。
でも空中からミキサー攻撃をブチかまして来るのは、デミゴッドを斬り刻むのが趣味のプロ級マレニアだ。密室でヘリコプターのプロペラをフル回転させてるようなバカデカい音を立てながら、マレニアが刃の球体みたいになって超スピードで二人に飛んでくる。目に見えるだけでも剣の振りと音の数も明らかに合ってなくて、一度振った音で10発以上?20発以上?もう何回剣を振ってるのかも分かんねー勢いで振りまくっていた。
その超スピードで回転する刃の塊をガードした瞬間、ネフェリの両手斧は一瞬で弾き飛ばされて何処かにぶっ飛び、両肘から先を粉微塵に吹き飛ばされて血煙に変えられたネフェリは、そのまま刃の嵐にビュンと巻き込まれて嵐の中を跳ね回り、全身を余すところなく切り刻まれて血のシャワーを巻き上げながら、どこがどうなってるのかも分からない状態になってオレ達の所に飛んでくる。
マネージャー「ひっ!」
一方のミリセントは0.5秒くらい耐えたあと、剣と一緒に義手を粉々にされながら刃の嵐に巻き込まれて、両脚を膝下からぶっ飛ばされて左手一本と胴体と頭だけを残して、水溜りの真ん中に叩きつけられて動かなくなった。マレニアの刃の嵐はミリセントとネフェリが吹き飛んだ後も地面にぶち当たり、爆発みたいな衝撃波と一緒に土と木の根を撒き散らして土煙の竜巻を上げながら、ギャリギャリギャリと鼓膜が破裂しそうな轟音を響かせて地面に大穴を開けた。
その間は5秒くらいの時間だったけど、オレ達から正気を飛ばすのにはそれだけで十分なんだよな。
ネフェリはどっちが背中でどっちが胸かも、男かも女かも、元の顔がどうだったかも分からなくなって血まみれで痙攣してるし、それを見たマネージャーは金切り声をあげてその場にうずくまる。ラーヤは腰が抜けて過呼吸になってるところを、弾丸のように突っ込んできたマレニアに顔面を蹴り飛ばされて木の根にぶち当たりバウンド。そのまま地面に倒れて痙攣することもなく動かなくなった。
周りは土煙舞いまくり、木の根の破片落ちまくり、マレニアの朱い服が一瞬だけ視界の端に映りまくりで、オレは恐怖で完全に現実感を消失していて、よく分からない状態になってるネフェリを見ても大した怪我にはなぜか見えなかった。それが逆によかったのか拓也の思考は妙にクリアで、プルプル震える肉塊状態のネフェリを漁って聖杯瓶を探り出すと、頭っぽいところに空いてる穴に聖杯瓶を押し込んで、中の液体を全部飲ませる。
するとネフェリの傷はみるみるうちに再生していって、両手が無くなった状態にまで復活する。でもヒューヒューと息をするだけで精一杯になってるネフェリにマレニアは強烈なサッカーボールキックを食らわして、ドームの端っこからミリセントが転がってるあたりまで転がしていった。
ミリセント「ネフェリ…ネフェリ…返事を、してくれないか…」
片腕だけで這いずるミリセントからの問いに、ネフェリは返事の代わりに、軽くなった腕をピクっと動かす。そうしてる間にもマレニアは剣を構えたオレの腕を切り落として、腹のシックスパックに剣を突っ込んでグリグリ掻き回してくる。壮絶な痛みに吠えることもできずに白目剥いて痙攣してるオレを遠くから眺めつつ、満身創痍のミリセントは話を続ける。
ミリセント「君たちとの…約束だが…」
ミリセント「…守れそうに、無いな…」
それだけを言うと、ミリセントは飛びそうな意識の中で片腕だけの力で身体を起こして、残った両太ももで辛うじて座る体勢を作る。拓也を瀕死に追い込んだマレニアは腹筋から剣を引き抜くと、伏せて泣きじゃくるマネージャーの髪を鷲掴んで無理やり引き起こしたあとに、喉を掻き斬ろうとする。オレは地面に倒れてピクピク痙攣して、あの絶頂すら全く来ない。
ミリセント「マレニア」
そしてミリセントに名前を呼ばれると、マレニアはマネージャーを離してミリセントの方に歩いていく。自由になったマネージャーは鼻水と涙を垂れ流して完全にテンパった顔だったけど、必死にポケットをまさぐって生肉団子と苔薬を取り出す。でもその数はたった三人分しか無い。それはついに、傷を治す治療品が尽きたことを意味していて、あー、オレもうマジで死ぬなって、激痛に喘ぎながら、麻痺しまくりの妙に冷静に浮いた思考で考える。
オレとラーヤを必死に治療するマネージャーを無視して、マレニアはゆっくりとミリセントに近づいていく。ネフェリはミリセントのやろうとしてる事が、何にしても良いことなんかじゃないことを察したのか、無い腕でミリセントの脚に触れようとする。
ネフェリ「だめ…だ…やめろ…」
ミリセント「…大丈夫だ…君達は、これで助かる」
ミリセント「みんなに伝えてくれ…君達がいてくれて、一時とて…私は私として生きることができたと…」
ミリセント「…ありがとう…」
瀕死のミリセントの前に立ったのは、あの破砕戦争の大英雄。
マレニアがミリセントに向かって剣を振り上げると、ミリセントは自分の空っぽの右肩に左手を突き刺す。
直後にミリセントの腹を剣が貫いて、同時にミリセントは右肩から金の針を抜いてから、針をマレニアの胸に突き刺していた。
ミリセント「マレニア…君に…返そう…」
ミリセント「君の矜持…君の…戒め…」
ミリセント「君の……こころを…」
金の針が抜かれて、二度も開花したミリセントの身体はみるみるうちに腐敗に飲まれていく。全身の傷口や穴という穴から白と赤のカビが生えていって全身を覆っていき、ミリセントは手足が欠けた人型のカビの塊になっていく。ネフェリは無い両手をミリセントに向けながら、歯を食いしばって荒く息をしながら、目の前で起きてることを否定するかのように泣くのを耐えている。オレの体も、消えていくミリセントの命を吸ってるみたいに、生肉団子と苔薬で急速に治っていくし、意識もすぐにハッキリしてくる。
そしてミリセントだった人型はバラッと崩れると、崩れた破片が朱と白の蝶に変わってマレニアを一瞬囲むように羽ばたいてから、マレニアに溶け込むようにして消えていった。マレニアは立ったまま動かずにいて、静かになった木の根のドームの中ではマネージャーの「起きて!起きて!」っていう、ラーヤを起こそうとする声だけが響く。
ラーヤ「う…ごほっ…」
マネージャー「はぁ!起きた!よかった…!生きてる…!」
傷が治ったラーヤを、マネージャーが抱き起こす。オレはフラフラの足でそんなマネージャーの後ろに立って、決して絶対に口になんかしたくない事を話さなきゃいけなくなった。
拓也「マネージャー…」
マネージャー「拓也!あなたも生きてましたか!?ラーヤさんを早く連れて…」
拓也「ミリセント、死んじゃいました…」
オレからの報告を聞いて、マネージャーの動きが表情も含めて全て止まる。
抱き起こされていたラーヤは、口を閉じたまま、ただ両目だけを大きく開いた。
182
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/17(火) 23:25:24 ID:h0pwMgm6
マネージャー「……え?」
しばらく間があって、忘れてた言葉を思い出すかのようにマネージャーが声をもらす。
ラーヤはただ呆然として、マレニアが立ってる方向を眺めてる。オレにも拓也が何を話してるのか分かんねーよ。
マネージャー「…死んだ…?」
拓也「ウス…マレニアに刺されて…そしたら金の針、抜いちゃって…腐って、バラバラになって…」
どうしてミリセントが死んだのかを、何もかもに疲れ果てたオレがボソボソ喋ると、マネキンみたいに生気の無い顔でラーヤがたずねてくる。
ラーヤ「なんで?」
ラーヤのその「なんで」が、理由を聞いてる言葉なんかじゃないことは、今のオレでも分かるぜ。それは暗い感情が少しづつ湧き上がって、すぐに大きくなって、堪えきれない悪感情に育っていくことを意味する「なんで」だったんだ。
マネージャー「あっ!」
急にマネージャーが声を上げて、ラーヤの肩もビクッと動く。
オレも振り返って見ると、兜を外したマレニアが、両手を失くして気絶してるネフェリを胸に抱えて、近づいて来るところだった。ヘビに睨まれたカエルのように、オレもラーヤもマネージャーも動けない。マレニアの両目は腐敗の白い角質で塞がれていたけど、オレ達に近づくたびに角質はひび割れていって、オレたちの目の前に立つ頃には黄金色の二つの瞳を輝かせていた。
マレニアはネフェリをゆっくり下ろすと、オレ達に背中を向けて歩いていく。
「どうして…?」ってマネージャーが呟くと、マレニアの背中に怒声が飛んだ。
ラーヤ「お待ちください!」
マレニアは脚を止めたけど、振り返ったりはしない。
ラーヤは怒鳴り続ける。
ラーヤ「ネフェリ様を生かしたのなら、なぜ戦いを始めたのですか!」
ラーヤ「英雄様をどこにやったのですか!どうして私たちと戦わないんですか!」
ラーヤの怒鳴り声がドームの奧の静寂に消えていく。
マレニア「…私はもう、貴公らを斬らぬ」
その静寂を破ったマレニアは、オレ達に背中を向けたままだった。
ラーヤはマネージャーとオレと一緒に絶句して、次の言葉をひり出すのに何秒もかかった。
ラーヤ「…今、なんて…」
ラーヤ「…あなたは…なんなのですか…?」
マレニア「私のことが知りたくば、その勇者に聞くといい」
マレニア「きっと多くを語るだろう。しかし君の…貴公の望む答えはそこには無いはずだ」
このマレニアの言葉に違和感を覚えたのは、きっと三人共ともほぼ同時だった。ラーヤのことをキミって言う奴は一人しかいないからだ。オレはガタイで分析することもできない、信じたくないことを何もかも察しながら、奥歯に力を入れてネフェリを背負う。マレニアの言ってることは多分そのままの意味なんだろうし、それにネフェリの傷だと、マジで早いところ祝福にあたって円卓に帰ってあげないと手遅れになるかもしれない。そしてマネージャーの中でも嫌な予感が確信に変わった。
マネージャー「…ああ…そういうこと、なんですね…」
悔しいのか悲しいのかも分からない表情でマネージャーが呟く。
ラーヤは顔を震わせて、その目には涙が浮かんでいた。
ラーヤ「そんな…嫌です……こんなこと、ひどすぎます…」
ラーヤ「どうしてこんなことに?…これが黄金律からの手酷い仕打ちではなくて、なんだと言うのですか…?」
マレニアは振り返らない。
そのマレニアにラーヤは駆け寄って、マレニアの左手に両手で縋りついた。
ラーヤ「お願いです、返してください…英雄様を返してください…!」
ラーヤ「どうか…どうかお願いです…!」
ラーヤ「あの方が、あなたに何をしたというのですか…!」
震えた声で泣いてすがるラーヤに、マレニアはとうとう振り返ってから、かがんでラーヤを抱き寄せる。
ラーヤ「ああ…」
マレニアが伏せたその目に、オレたちとラーヤはミリセントの面影を見た。
それでラーヤも何もかもが手遅れなことを悟って、マレニアの胸の中でただ嗚咽するだけだった。
マレニア「すまないラーヤ…私は貴公から、主を奪ったのだ」
マレニア「己の腐敗に飲まれ…害してしまった…またしても…」
ラーヤに縋られているマレニアに、「マレニアさんと、今は呼ぶべきなのでしょうね…」とマネージャーが言う。オレ達の誰とも目を合わせずに、マレニアは目線を下げたまま小さく頷くと、マネージャーは深く溜め息をついてから、重くなった口を開く。
マネージャー「あなたは、本来のあなたに戻ったのかもしれません…ですが私達は、大切な戦力であり、なにより旅の仲間だった人を失いました」
マネージャー「そのことが、申し訳ないと思うのなら…ミリセントさんを喪ったことを、少しでも惜しいと思うのなら…」
マネージャー「ミリセントさんの遺志を、どうか汲んでください…そして、教えてください…」
マネージャー「彼女の旅の結末を…彼女が最期に、何を私たちに託したのかを…」
マレニアはマネージャーの言葉に頷いた。
ミリセントの姿はどこにもなくて、ただ義手と剣の破片が、ドームに散らばるだけだった。
183
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 21:56:05 ID:1INPoOOE
【マレニア、オマエかぁ💥】
一緒に冒険して
昨日まで元気で
誰よりも強かったミリセントが
今日の円卓でゎ
マレニアに変わっててびっくり❗👀
「……何を話せばいいのか…わかりません…」
って…マネージャーが途方に暮れてるから、次何やるかを話せばいいって教えたら
「…ああ…次ですか…」
マレニアそっちのけで大祝福に見とれてるし…
はぁぁ〜、、、
( ̄∇ ̄ )(マネージャーゎ知らないけどね、オレは昨日円卓に帰ってからずっと泣いてて、たくやゎイエロの瞳をキメてエネルギーぉ無理やり入れてるんだよぉ〜)
まぁ良かったね、ミリセントがマレニアにランクアップしてさ
ミリセント似のヅカ系イケメン顔に、高級そうな服を着て、マジ半端ない伝説的なキャラで恐れられてるマレニアさんゎ、狭間の地で公認されてる一級の神人
👀そうなんだぁ、マレニアさん…
ってか
よぅ!
オマエかぁぁ💥😌😌😌
腐女子💥腐女子😱
184
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 21:57:09 ID:1INPoOOE
そーいぇばお父さんのラダゴンなんて、18才のキムタクに圧勝するチョー美形らしいし…
マレニアの遺伝子にゎ
最初から腐敗が隠されていたんだよ
(実ゎ私も
伝説の上で
チョー有毒のキャラなんだよぉ😌
「敗れを知らぬ戦いを」とかね…😌
「知り得たか?ミケラの刃、マレニアを」なんてヤワな言い方しないぜっ
「貴公はおぞましいものを見るだろう😌腐れよ💥」
ってな具合にね)
ミリセントさん
元に戻ったら
お祝いに
拓也もお化粧して
オシャレして、また探索に連れてってあげるね😉
(ちょっとぉ〜😌
あそこの茹で蟹、とってもおいしいわよぉ〜😌)
って感じ?
おやすみ💤
ミリセントさん
そしてマレニアさん
淫夢をね(^-^)b
185
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 21:58:17 ID:1INPoOOE
【ミリセントのイエロの瞳😌】
二日目だけど
心に夕闇が訪れて
激しい虚無感で
ぐったりして…
もぅだめっ
寝ちゃうよ
(ノ-_-)ノ~┻━┻
って時に
ちょっとだけキめる…😌
すると
いつの間にか細身のヅカ系イケメンくんがベッドに入ってきて…
あっあっ!
だめだよ!
「拓也、君はまだイエロの瞳を使っているのか。もうやらないと言っただろう?😠」
「だっ、だめだよ!この前没収したばっかりじゃん!」
「いつも隠し持ってるじゃないか⤴」
拓也は後ろから抱かれて
乳首もみもみ
愛のあるキスされて
マンコにデカマラがブスリ!!
あっ
あ〜〜🌙
なんだ😒
夢だった…
186
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:00:26 ID:1INPoOOE
三日目になって
今日ゎどうしようって思って
ベッドの裏を探して
イエロの瞳を発見!
でも最後の一個だから
ミリセントが取りに来なくなっちゃう😣
ネフェリ「おい、拓也」
ネフェリも来てて
今日は二人で取りに来たってさ!
ネフェリ「…私も、経験がないわけではない」
ネフェリ「だが…塞ぎ込もうと、もはや時は戻らないんだ」
そんなこと言うけどさー
お前はどうなんだよっ?👉
ネフェリ「はぁ…」
ネフェリは溜め息ついちゃって
オレはベッドにダウン
ネフェリ「…ブライヴが来てるぞ」
187
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:02:05 ID:1INPoOOE
おぃ!
早く言えよなー❤️って
たくゃは単純で
ベッドから飛び起きてから
ちょっとオシャレの時間!
仕込む時間が無かったから、種マンじゃないけど
まぁいいよねっ😌
ネフェリに手を引かれて
部屋から円卓に入って
あ〜
ハメられた(T_T)
円卓にゎマネージャーと、あのマレニア
ネフェリゎオレに苔薬飲ませて
イエロの瞳が消える
いきなりの離脱症状で、あの痙攣がやってきて
拓也わ戻りたくない
兜も義手も外して、座ったままのマレニアは申し訳なさをアピールしてくる
悪いって思ってるならさ、オレを呼ぶなよな!
だんだん頭がはっきりしてきて、後ろのミリセント似の細身イケメンくんが離れてく
ネフェリに肩を掴まれて、椅子に座らされた拓也の隣に
ネフェリがドカっと座ると、はーって溜め息
マネージャー「…今日は、何を話すか決めていません…ディアロスさんからの報告も無いですし、ブライヴさんの方にも、目立った動きは無いそうです」
マネージャー「…私も最近、ぼーっとしてましてね。…まぁ、何も決めずに話すのも、たまにはいいんじゃないですか?」
マネージャーの30連勤明けみたいな激しすぎる疲れが残った微笑みに、ネフェリはまた溜め息で、マレニアは一言も声を出さない。
オレは戻りがひどくて、たまらず下の階に駆け込んで、木の桶にゲロをゲーゲー。
そしたら意識がはっきりして、あの現実がやってくる。
拓也「マジかよ…」
ミリセントの声も形も無くなって、気付けばアイツは消えていた。
ぼやけた木の桶に溜まったゲロに、涙がポタポタ落ちていった。
188
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:03:10 ID:1INPoOOE
マレニアとの絡みショウ 投稿者:ビルダー拓也
シラフになって円卓に戻ると、また椅子に座る。ネフェリとマネージャーはいつものように座ってるけど、二人とも目線が落ちてるぜ。まぁしょうがないけどね。ミリセントがいたらその隣にいつもラーヤはいたけど、そのラーヤがいないってことが、円卓で決定的な何かが変わったことを嫌でも教えてくる。そして義手と兜を外した状態のマレニアの雰囲気は、マジで一瞬錯覚を覚えるくらいミリセントに似ていた。
マネージャー「…マレニアさん」
マレニア「なんだ」
マネージャー「まずは…あなたに礼を言うべきでしょうね…ミリセントさんの遺志を汲んでほしいとは言いましたが…あれは、ミリセントさんに戻って来てほしい一心で、言ってしまったことです…」
マネージャー「ミリセントさんではないあなたに…私からの一方的な言葉に、従う義務はありません…それなのに、こうして円卓にまで来てくれました」
マネージャー「…ありがとう、ございます」
マレニア「礼を言うことではない」
マネージャーが話しかけると、マレニアが低音イケメンセクシーボイスで応える。ヅカ系のイケメンに耳元で囁かれたら即勃起する自信があるけど、声の主はあのマレニアだ。胸のサイズも控えめで、顔も声もガタイも男みたいに完璧なギリシャ彫刻ガタイでも、オレは絶対に勃起したくなくて、マレニアのガタイをオンナらしい形に妄想して必死に自分を抑える。同じヅカ系イケメンが相手でも、ミリセントに顔向けできねーからな。
マネージャー「…あなたは、金の針と一緒に、ミリセントさんを取り込んだ…そうですよね?」
マレニア「そうだ」
マネージャー「…そうですか」
マネージャーは自然な会話を心がけてるみたいだけど聞きたい事が多すぎるし、ぶつけたいことも多すぎてどうしても尋問みたいな空気が出てきてぎこちない。それを意識しないようにマネージャーはひと呼吸を入れるけど、ネフェリは頬杖をついて疲れ目でマレニアを眺めはじめる。
マネージャー「…それでは、腐敗は今は治まっているんですね?」
マレニア「疼きは、止まっている」
マネージャー「なるほどね…」
唇をキュッと結んで、マネージャーが次の話題を考えてると、ネフェリが案の定、業を煮やした。
ネフェリ「間怠っこしいな」
椅子から立ち上がったネフェリは円卓の周りをズンズン歩いて、あのマレニアの隣の椅子を引く。「ちょ、ちょっと…」って焦りだすマネージャーをネフェリは無視しつつ、ドカっと座って片肘をテーブルにつき、高身長なマレニアを下から覗き込むように睨む。いきなりヤベー空気になって、流石にそれはマズいって拓也の乳首が警報を鳴らしはじめる。
ネフェリ「お前は、ミリセントのことを覚えているのか?」
マレニア「何を私に期待している」
ネフェリ「なに?」
マレニア「私はミケラの刃たる者、マレニアだ。貴公の知るミリセントは、すでに無い」
189
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:07:59 ID:1INPoOOE
キッパリ言われたネフェリは鼻からフンと息をつく。マレニアはラーヤに謝ってたから、悪いことをしたって感じてはいるんだろうけど、ネフェリとマネージャーには何故か態度がカチカチに硬い。生かさず殺す状態まで行きかけたから気が引けてるのかな?それにしては話し方が堂々としてるよな。相手は神様なんでいくら拓也がガタイで考察しても、何を考えてるのか分からない。
ネフェリ「…言い方を変えよう」
ネフェリ「お前は、ミリセントだった時のことを覚えているか?見聞きし、感じたこと、その全てを」
マレニア「覚えている」
返ってきた答えにまさかって感じで拓也の乳首が反応すると、マネージャーがマレニアを二度見。ネフェリの目つきが鋭いものに変わる。戦闘モードってわけじゃないけど、探りを入れてる時はいつもこんな目だ。マレニアの目線はそれでも伏せられたままで、ネフェリの目も見ていない。
マレニア「だからこそ、測りかねている」
ネフェリ「測る?」
マレニア「貴公が何者であり、いかに戦を共にしたか。ミリセントの追憶も、全て私の内にある」
マレニアの言葉が続くごとに、空気のピリピリが増していく。ミリセントのことを忘れてようが覚えてようが、多分ネフェリは怒りだす。忘れてるなら「よくもミリセントを殺したな」ってなるし、覚えていたなら「返せ」って言いたくなってるはずだぜ。オレだって全然割り切れてねーよ。だからマレニアにはミリセントについて何かを言ってほしいんだ。
マレニア「ゆえに私は、貴公らと、語らうべきではない」
俯き気味でそう言ったマレニアに、ネフェリは鳩に摘まれたような顔で片肘をつくのをやめて、マネージャーはちょっとだけ前のめり。オレももっと的を射るような話が出るのかと思ったけど、何も話したくないって答えで少し肩透かしを食らい気味。でもそんないかにも人間くさい返答で、何故かオレの心は少しだけ軽くなる。
ネフェリ「……はっ」
ネフェリ「なんだそれは?語らうべきかどうかは、お前が決めることなのか?」
ネフェリの気が立ってるとこに急にマレニアが弱みを見せたんで、ネフェリにSが入りかけたけど、ここでオレがファインプレーを魅せる!「まずは話させてあげましょうよ。責めるのはその後でもいいじゃないすか」とマレニアにパスを渡してネフェリを牽制。マレニアが見せた隙を拓也は違う形で生かすぜ。マネージャーも賛同してくれて、ネフェリはフンと鼻を鳴らして腕を組んで座り直す。
190
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:09:10 ID:1INPoOOE
「…私は貴公らの友として、時に刃として、数多の敵に勝利した」
「貴公らと共に駆け、庇い合い、支え合った」
「あたかも、私が兄様を信じ、兄様が私を信じたように」
ひとまず話は聞いといてやるぜ、って感じなのか、ネフェリのSな気配が少し和らぐ。
マネージャーとオレも静かに耳を傾けてる中で、マレニアは続ける。
「…だが、貴公らと共に歩んだ者は、私ではない。腐敗に迷い、貴公らを襲った私とは違う」
「そのような身の私が、貴公らと語らうなど、あるべきことではない」
「……しかし、心の内にある…貴公らと歩んだ日々からは…」
「…私は…離れがたい…」
話ながら、マレニアの顔には少しづつ苦悶が浮かび始める。
まるで痛みに耐えるみたいに、声にも小さく震えが入る。
「彼女の清き心で、多くを見聞きし、多くの友と遠方を巡り、新たな出会いを知り、くだらぬことに小腹を立てる…」
「その日々を…忘れられない…たまらなく、愛おしいのだ…」
「…私は、その愛しき日々を、彼女から奪ってしまった……聖樹の底、兄様の繭の前で…清き彼女を掻き消したのだ」
「最期の時まで、彼女は私を救おうと願い、皆との出会いに感謝していたというのに…」
「彼女こそ清く、高潔で、愛深き者だったというのに…」
「私は…ミリセントを…」
191
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:10:58 ID:1INPoOOE
話の途中でマレニアは湧き上がって来るものを堪えるみたいに口を真一文字に閉じる。
オレはだんだんやるせなくなってきたし、マネージャーはデミゴッドを調べて色々知ってるせいかしらないけど、マレニアに向ける眼が同情的になってきた。ネフェリは呆れたような、疲れたような溜め息をまたついた。
ネフェリ「……期待だの測るだのと…虚勢を張らず、全て話せばよかったろうに…」
マレニアは顔をゆっくり上げて、ネフェリとはじめて眼を合わせる。
その潤んだ瞳に、ネフェリは何かを察したみたいに、何度か小さく頷く。
マレニア「ネフェリ…私は、ミリセントを消したくはなかった…」
マレニア「私は彼女のような者に…兄様を…私を…」
マレニア「助けて、ほしかった…」
マレニアはそれ以上は何も言えなくなって、俯いて小さく鼻をすすり始める。この正直なところとか、湿っぽさとかにスッゲー既視感。オレの妙な安心感は大きくなって、ちょっとした気付きに変わる。マレニアはきっと大きくなったミリセントなんだなぁって思うと、心の寂しさも少しづつ弱まってきた。マネージャーもなんだかしんみりの顔で納得気味。
ネフェリ「…はぁ……」
ネフェリ「お前には、心中をありったけぶつけるつもりでいたが、その気も失せたよ…これだけ情けない姿を晒されてはな…」
ネフェリ「マネージャー、酒を持ってきてくれないか?こういう時は、飲むに限るんだろう?」
マネージャー「え?まぁ…そうですね…そうしましょっか…」
拓也「なんだかオレ、話の最後あたりで、マレニアがガタイでかくしたミリセントに見えてきちゃいましたよ。マジ変ですよねコレ」
ネフェリ「はは、大柄なミリセントか…確かにな…」
マネージャー「どうせ飲むなら、下の階の酒樽倉庫に行きませんか?いちいち持ってくるのは面倒ですし、今日は四人で飲み会しましょう」
死んだのかも、消えたのかも、変わったのかすらも完全にはハッキリしない状態になったミリセントを偲んで、オレ達4人は飲み明かすことに。ネフェリはしのごの言うマレニアに「私を惨たらしく殺そうとした事を許したわけではないからな」と言って弱みに漬け込み、無理やり倉庫に連れ込む。ネフェリはマレニアを情けないって言ったけど、冷静に考えたらラダーンとの戦いで起きる腐敗の被害とか、道徳的なアレコレとかに耐えられないから、マレニアはミリセントを切り離したんだ。そんなマレニアがミリセントと合体したら、また罪の意識感じまくりの性格になるのもあたりまえだよね。
192
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:12:47 ID:1INPoOOE
4人で酒を飲み倒したあとの哀れなゲロマシーンマレニア 投稿者:ビルダー拓也
ショボショボの顔のマレニアを酒樽が積まれてる一角に三人で連れ込んで、マネージャーがエルデの地に持ち込んだジャパニーズ文化の、なんでも飲み会に落とし込む。翼のついた兜は大祝福の大テーブルに置きっぱなしだ。シャイな日本人は、集団の中では良いことも悪いことも、なんでも酒の力を借りないと本音を語ったり聞けたりしないっていうのはホントだけど、マレニアはこのパターンにバッチリハマったみたいだぜ。最初にミリセントに盃を掲げたあとに酒を次々開けていって、ふとネフェリが語り始める。
ネフェリ「ミリセントは最期の時まで、良き者であり続けた。そう努め続けた」
ネフェリ「私の目の前で消える前に、こう言っていたよ。『皆に伝えてくれ。君達がいてくれて、一時とて、私は私として生きることができた。ありがとう』と…」
ネフェリの言葉に誰よりも早くマネージャーが決壊して、半開きの口を震わせながらテーブルに涙を落としていく。オレも前が見えなくて、エブレフェールに着いた時のアイツの顔がグラサンに映って離れない。「恐らく最後まで、ミリセントは誰も恨むことなく死んでいったんだ。きっと、お前のことも恨んではいないさ。あれはそういう者なのだからな」そうネフェリに言われるマレニアは、テーブルの上に置いた両手を軽く握ったまま、潤んでぼやける瞳でテーブルの真ん中あたりをずっと見つめてる。
ネフェリ「いや…お前は、知っているのだったな…わざわざ私が語ることでもないか。お前の口から聞いても、同じだったな…」
マレニア「…私には、彼女の言葉を語る資格など、無い」
マレニア「ただ、腐敗の悪夢の中で、私は手を伸ばしたのだ…差し伸べられた手を握ろうと…そしてもがくあまりに、彼女の手を掻き消してしまった…」
マレニア「私は貴公に、許されるべきではない…貴公らの、敵であるべきなのだ」
マレニアの言葉にネフェリが何か言おうとしたところで、涙を拭いたマネージャーがクスっと笑う。「なんだ?」ってたずねるネフェリに「そういう真面目なところ、誰かとそっくりですよ、本当に」ってマネージャーがマレニアに返す。するとマレニアは下唇を噛んで、俯き気味な顔の角度をまた深くする。「はは、マジ、そっくりっすよね」ってオレもついつい同意。だってマジでこういう真面目なところが似てるって思ったんだ。スゲーアイツらしいぜ。
ネフェリ「フフッ…己をミリセントの敵と言うのなら、その敵にこれほど惜しまれるミリセントという者は、よほどの仁徳を持っていたに違いない。敵のお前も、誇らずにいてどうする?」
マネージャー「あ、口達者ですね。そういう言い回し、私もサラッと言いたいですね」
マレニアが何も言えないまま口を震わせてる間に、マネージャーが会話のパスをネフェリからキャッチ。そのままオレも加わって、穏やかな会話が続いて、マレニアが落ち着いた頃にマネージャーが音頭を取る。「それじゃあ、乾杯しましょうか」またかよ!もうやったじゃん!ってオレは新宿で飲み会やってるみたいにわざと明るく言う。「何に乾杯するんだ?」って言うネフェリに、今度はマネージャーが口達者になる。
マネージャー「そうですね…じゃあ、故郷に帰ったミリセントさんに、なんてどうです?」
「故郷か……そうだな、それが良い」ネフェリはそう言うし、オレもその考え方が好きになった。アイツはひと足先に家に帰ったんだよな。オレもネフェリもマネージャーも、酒が入った四つの盃をマレニアと一緒に掲げる。俺たち三人はグイッと飲み干して、マレニアは盃に口をつけないままテーブルに置いて、飲む気になれない酒に憂いの視線を落とす。拓也はそのまま酒の力を借りてマネージャーに肝心の話を振り込む。
拓也「じゃあさ、マネージャー、例の話聞きましょうよ。ミリセントが最期に託したヤツって話しましょうよ」
マネージャー「えぇ?この流れでですかぁ?ちょっとそれ、どうなんですか?」
呆れたみたいな半笑いで聞き返してくるマネージャーに、ネフェリも便乗。「そうだな、私も聞きたい。この神人が良ければの話だがな」ってイタズラっぽく乗ってきて、オレたちからの注目をマレニアが浴びることに。マレニアは胸に手を当てて、震えた息をふーって吐いてひと休み。それから一言「分かった…」って呟いて、マネージャーに聞き返す。
マレニア「…私から、何を聞きたいのだ?」
マネージャー「そうですねー…それじゃあ昔話なんてどうです?」
マレニア「良いのか?そんなことで…」
マネージャー「良いですよ。神の時代の物語なんですから、私たちにとっては情報の宝庫です。それにこういう機会じゃないと、胸に溜まったものは中々吐き出せないじゃないですか」
マネージャー「聞かせてください、あなたの話」
マネージャーからの返しに、マレニアは伏せた眼でテーブルを見渡して、一拍おいて話し出す。「…分かった。ならば、話そう」そう言ったマレニアの口から、ギデオンも知らない極秘な物語が紡がれる。
193
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:14:26 ID:1INPoOOE
それでいくつか分かったことがあって、どうやらマレニアには友達が一人もいなくて、頼れる人もお兄ちゃんだけだったらしい。生まれた時から激偉い特権階級にいたせいで、周りの大人はほとんど全員「頼ってくるやつ」「拝んでくるやつ」「怖がってくるやつ」「利用してくるやつ」「部下」の5パターンしかいなくて、しかも親の親戚付き合いがメチャクチャだったこともあってか、同じ神人仲間のラニとの仲は最悪で、行事でたまに顔を合わせるごとに「お前の息は臭すぎる」「くさい子」とか言われて落ち込んでたんだって。
ラニはオレの激エロなモロホストフェロモンは大丈夫だったのにね。不感症なのかなぁ?
でも頼れた大人は何人かいて、そのひとりが武術の師匠だったらしくて、例のパキギメな超ミキサー攻撃も「腐敗の神様に抗う剣士の技なんだよ」って、その師匠から教えてもらったみたいだぜ。酔ってるオレが「その腐敗のボスに、お前がなっちゃうんだから世話ねーな!」ってつい口を滑らせて笑うと、マレニアは
「黙れ!!」
って顔真っ赤にして怒鳴って立ち上がってきて、その拍子にテーブルがコケて焦ったぜ!「ウッス!すみません!」「拓也?今のは無神経です。謝ってください」「酒が溢れただろう、なにをやっている」ってほろ酔いのネフェリとマネージャーが言うから、申し訳ナス!って頭下げてから、鼻息荒げた涙目のマレニアと一緒にテーブル戻したけどさ。
テーブルと一緒に話も戻すけど、マネージャーからの酒で更に話を続けるマレニアによると、マレニアはバリ高な特権階級と持病の腐敗のせいで、今まで一度も恋愛したことがなくて、セックスしたことも無いっていうんだからビックリ。オレの中での同情ポイントを荒稼ぎしまくりだったぜ!一度だけお兄ちゃんのミケラに
「いつかお前は、この世の律を握るかもしれないのだから、夫を貰って子を産むことにもなる」
「ただの試しだと思えばいい、経験したところで誰も責めない」
「上手く隠しておく」
みたいな感じのことを言われて、お兄ちゃんに背中押されて援護されながら、階級無視の禁じられた恋愛関係になりかけた相手もいたらしいけど、相手が腐敗に感染しちゃうかもって思うと気が乗らなくて、結局1回目のデートの中盤あたりで相手に別れを伝えて、それ以降はずっとお兄ちゃんにベッタリになったんだってさ。もうここまで話したあたりでマネージャーがまた泣いちゃって、このペースで保つのかよってオレに笑われてたぜ。
他にも両親の仲が子供目線からみても明らかにおかしかったとか、腐敗のせいで戦争以外で遠出したことがないとか、腐敗が少し酷くなる度に周りの他人がゴソッと減ってったとか、出るわ出るわの根暗君なエピソードの山にオレも同調しまくり溜め息つきまくりだし、マレニアは威厳壊れまくりの全身不幸人間にイメージが落ちていた。オレにはまだ悪ガキ仲間とかウリ仲間とかいたもんな。それも無い中で両親の仲が悪いとかさ、オレがマレニアだったらグレまくって、世界各地でウリなんかやっている。
でも兄ちゃんとお母さんとは仲がよかったんだろ?って感じのことをオレが言ったら、そこからミリセントが見上げて泣いた、例の『ミケラとマレニアの像』と『抱き合う三人の像』についての話になる。マレニアが言うには、昔のマレニアは五体満足だったけど、ガタイが成長するうちに腐敗も進んで、最初に右手が腐り落ちて、そのあとは順番に全身がやられていったらしいぜ。ミケラとマレニアの像は、右手が腐り落ちたマレニアを実年齢が幼い頃の兄ちゃんが抱きしめて
「マレニア‼︎死んじゃだめだよ!! 絶対にだよ!! 僕が絶対に寂しくさせないからね‼︎」
って言った時のことを、腐敗を根絶する誓いの像として彫刻したものらしい。マレニアとミケラとマリカの三人の像は、お父さんとお母さんからミケラが決別したあとに、昔優しくしてくれたお母さんのマリカを忘れないために、ミケラが建てたものなんだってさ。その話を聞いた瞬間にオレの頭にもお母さんとの思い出が広がってマジ狂い!「あーっ!おぅううっす!おーっ!うーっす!」溢れる涙を抑えきれずにたまらず大声で雄泣きが入る。
ネフェリ「どうしたんだ拓也?いきなりそんな大声あげて…」
拓也「お、オレ、お母さんに虐待されてて…家に居場所なくて、毎日泣いてたけど…」
拓也「お母さんは、最初の10年間は大事にしてくれて…だからオレもお母さんに、10年分の愛を返したくて…」
拓也「でもお母さんは日本の病院にいるから、今は会えないっす…病気も患ってて、結構歳もいってて…だから早く帰ってやんなきゃいけないんですよ」
ネフェリ「そうか…」
拓也「だからオレ、ちょっとミケラが考えてたこと分かるっていうか…共感しちゃうっていうか…やっぱり親が頼もしくて、優しくて、大きくて立派だった頃って、誰だって覚えていたいじゃないですか」
マレニアが自分語りするはずがいつのまにかオレが自分語りをすることに。でもオレの話にマレニアはなんかグッときたみたいで、グラサンに隠れてる拓也の目に潤んだ視線を向けてくる。やっぱりつらくて孤独な子供時代を過ごした奴は通じ合うところがあるんだな、オレの昔話も罪だなって照れ笑いを返すと、オレの話に聞き入ったマレニアを見て、何故か泣き止んでたマネージャーがまたやられて、涙で真っ黒になってるハンカチ握りしめてまた泣き出す。もらいに更にもらってんじゃねーよ!
酔いが回ってるネフェリもまた酒を一杯あおって、話はミケラがマレニアを助けようとしたコトに戻る。お前の兄は勇者の鑑だ、弱きを助けようとする王の器だってネフェリはベタ褒めする。オレもカポジ肉腫で全身腐って死んでったホモくんの話は聞いたことあるから、ウリをやってもいないのにポジるなんて腐敗の神様も不公平だよなって思うぜ。
それで、腐敗退治を誓った兄ちゃんの努力は相当なものだったらしくて、世界中を飛び回って賢者とか大学者とかと話つけまくって、新しい術とかも見つけていった。でもマレニアの両脚が腐って取れたり、下腹部をやられて子供を産めない身体になったり、乳腺と脂肪がカビに置き換わって胸が縮んだりしてくる頃には、兄ちゃんは目の前で妹が死んでいく恐怖と焦りと、世界への怒りでパキギメ状態に堕ちていて、邪法だとか禁術だとかに手を出しまくり、人騙しまくり、理想吠えまくりのマジ狂いだったんだとか。なんかモーグウィン?モーグ?とかいう奴と関わりだした時期から、本格的におかしくなり始めたって感じで、生活苦の人が宗教の人に騙されるいつものパターンな空気がしてくる。
マネージャー「なんですかそれ!!ひどすぎ!許せない!そのモーグウィンってヤツ殺したっていいでしょ!!」
泣きまくってたマネージャーはそのことを知ると顔真っ赤にして青筋立ててマジギレ開始。こんなにキレまくってるマネージャーはギデオンネフェリ事件の時以来で、ネフェリも「待て、落ち着け」ってなだめる側に回る。マレニアにまで「そこまで憤るのは、兄様だけだと思っていた」とコメントされてマジおもしれー!キレまくったマネージャーはネフェリから大量に酒を補ってもらって、怒りがシュンとなくなって目がトロトロになっていく。
また話を戻すけど、兄ちゃんはそこまでやってようやく神テクを開発!
腐敗を抑える技術の確立に成功した。
それこそがネフェリがケイリッドで手に入れた、あの金の針だって知ってビックリ!
ネフェリ「…そうか…あの針には、これほど迄の心血が注がれていたのだな…」
拓也「オレたち、その針を円卓に置きっぱなしにしたり、人にあげたりするとこだったんすよね。マジあぶなかったんすね〜」
ネフェリ「全くだ。そのようなことをしていたなら、マレニアの兄があまりにも浮かばれん」
拓也「でもそんな針がどうしてケイリッドに落ちてたんですかね?」
ネフェリ「あっ、お前…」
マネージャー「あっ!」👉
拓也「え?どうしたんすか?」
拓也「……あっ!」
マレニアの話ばっかり聞いてたから、いつの間にかオレは結構な量を飲んじゃってて、気付いた時には決して絶対に質問されたくないであろう殺人ストレートな話題をマレニアにブチ込んでいた。なんでケイリッドに金の針が落ちてるかなんて、マレニアがそこで金の針を捨てて腐敗バワーを炸裂させたからに決まってんじゃねーかよ!やっちまったぜ!痛恨のミスをしたな!無害だと思っていた相手から必殺パンチをブチ込まれて、マレニアは一瞬で青ざめてから固まったあと、小刻みに震え始める。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:17:41 ID:1INPoOOE
拓也「ちょっ!ヤバ!ごめん!すいません!マジ許してください!」
マネージャー「ごめっ、ごめんなさい!今の聞かなかったことにして!」
ネフェリ「おい待て、まさかここで花を咲かせたりしないだろうな…!」
マレニアを除いた全員がテーブルから跳びのいて、ネフェリの椅子が転がる音が響く。
ネフェリは酔って顔が赤いけど、それでも両手に斧を持って警戒にはいる。
マレニアはハァハァ息乱して震えながらゆっくり立ち上がって、何度かビクッと痙攣すると
マレニア「弧゜ッ!」
えづき声を上げながら左手で口を覆って、指の間からゲロを漏らしながら走り、空の桶に頭を突っ込んでゲーゲー吐き始めた。「え!?だっ、大丈夫!?」ってマネージャーは速攻で駆け寄ってマレニアの背中をさする。オレ達の生命の危機ってことにはならなくて良かったけど、かわりにネフェリとオレの間に「あーあ」って空気が漂い始める。人格が真っ二つになるようなストレスが掛かった瞬間を思い出して、パニック発作を起こしてるマレニアから、酸っぱいゲロの匂いが強烈に漂ってくる。
1日に2回もゲロの匂い嗅ぐヤツなんて、狭間の地でもオレぐらいなりね。
一気に気まずくなった空気の中で、神のゲロが桶に溜まる音がビチャビチャタポタポ響いて、こんなに神聖なゲロの音なんて地球のどこ探しても無いんだよなぁって感じで現実逃避なんかしてる。多分ネフェリには気付かれなかったと思う。とうのネフェリは2本の斧をしまって、困り眉でマレニアの背中を見ている。
マレニア「ごほっ!げほ!か…構うな…!」
マネージャー「無理ですよ!吐いちゃってるじゃないですか!」
マレニア「腐敗が…感染るっ、うぶっ!」
マネージャー「感染ったりしませんよ!お兄さんの針があなたの腐敗を止めてるから平気です!」
胃の中の酒を全部出したってくらい吐きまくったマレニアは、桶から離れた後にフラフラっと後ろに倒れそうになったから咄嗟に三人がかりで支える。なんせ2メートル越えの超絶ガタイだから支えるのもひと苦労で、オレたちはそのままヨロヨロと壁まで歩いて行って、マレニアを壁にもたれさせて座らせる。
ネフェリ「…まったくお前は、どこまで情けない姿を晒せば気が済む……そこで待っていろ、水を汲んでやるから」
マレニア「私ではない…」
ネフェリ「…何がだ?」
マレニア「私ではない…私がやったのではない…」
ゲロを吐いたかと思ったら、今度は座ったままでまた顔が青くなって、寒さに震えるみたいにブルブルし始める。ネフェリが困った顔で振り返って無言で助けを求めてくる。オレはネフェリの代わりに水入りの樽から水を汲みに行こうと思ったけど
マネージャー「…私がやったのではないって…まさかこれって…」
マネージャーの深刻顔を見て、オレまたなんかやっちゃった!?って思って固まる。その間にもマレニアは過呼吸になって座ってもいられなくなってきて、ネフェリが「弱ったな…一体どうしんたんだお前は…」ってあやし方も分からずに、とりあえずマレニアの神人ガタイを支えて口の周りのゲロを布で拭ってやっている。マネージャーは考えに少しだけ耽ってたけど、すぐにハッとしてオレに指示。
マネージャー「あっ、拓也!水!水汲んできて!」
拓也「ウッス!」
マネージャーからの指示を受けるオレは速いぜ。無駄のない動きでパパッと水を汲んできてネフェリにパス。ネフェリはまともに息ができなくなってるマレニアに水をグイッと飲ませる。すると一回デカい咳をしてから、マレニアはハァハァ言ってぐずってる状態になる。さらに一口だけ飲ませて呼吸を落ち着かせる。「どうしたんだ、いきなり…」ってネフェリが聞いてくるけど、オレは「知らねーよ、そんなの…」って応えるので精一杯だった。ネフェリに睨まれて舌打ちされたけど。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:20:22 ID:1INPoOOE
D「たまに円卓に帰ってみれば、また何やら起きているな」
エドガー「今の声…貴公も聞いたか?」
トープス「ああ、確かに聞いたとも。お前さんも今の声を?」
ローデリカ「い、いけません…あの方は今、ひどく傷つき、身を裂くほどに哀しんでいます。どうかそっとしておいてあげてください…」
エドガー「しかしだな、また揉め事かもしれぬだろう」
マ騒ぎを聞きつけたのか他の部屋からもゾロゾロ出てきて、エドガーとかトープスとかが階段の上から降りてくる。その若干の人混みはマレニアを見て「おお…」って感じでみんなビビって固まったけど、そこを掻き分けてラーヤが出てくると、今度はオレが嫌な予感を覚えて固まる。そしたらネフェリが「神人の悪酔いを珍しがるのは分かるが、見世物ではないぞ」って一言入れてジト目で牽制。ラーヤ以外の全員が部屋に戻って行った。
ネフェリ「ラーヤ、お前の考えていることは私にさえも分かる」
ネフェリ「ここで起きた何事かに、一縷の望みを見たのだろう」
ネフェリ「だが、お前が希望を託した英雄は、もういない。諦めてくれ」
ネフェリに諭されたラーヤは、控えめにお辞儀をしてから、マレニアに背中を向けて歩いていく。ここではマレニアとラーヤの間で何も起きてないけど、それでもまた溝が深くなった気がして、うわー、この空気ヤバいぜってオレが首筋に冷や汗感じてると
マレニア「…待ってくれないか…」
意外な一言がマレニアから出る。オレはめっちゃ良い方向か、チョー最悪な方向かに話が進む、二つにひとつのシチュエーションだと覚悟した。チクショー、あんなこと言わなきゃ良かったぜ!ラーヤは立ち止まって向き直ったけど、顔だけはマレニアから逸らしてる。マレニアはそんなラーヤのところまで歩いてから、片膝を着いてしゃがむ。
マレニア「私は…貴公を裏切った…」
マレニア「貴公の見た英雄を奪い、貴公を甚だしく傷つけた…」
マレニア「私はその償いをしたい…貴公の痛みを、せめて和らげたいのだ…」
俺から見たマレニアの後ろ姿は、中世ものの海外ドラマでよく見るような、お姫様に忠誠を誓う騎士みたいだった。ラーヤはその騎士の頬を両手で包むと、目を閉じて、マレニアの額に自分の額をつける。
ラーヤ「…償うことは、ありません」
ラーヤ「英雄様が去ってしまったことは、哀しく思います…ですがきっと、英雄様は自らの死を予感して、エブレフェールに向かったのでしょう」
ラーヤ「そして四人の姉妹と戦い、予感を確信へと変えたのでしょう。私はそのことを、受け入れるつもりです」
ラーヤ「私は、それで十分です」
そこまで言ったラーヤを、マレニアは掻き抱く。
ラーヤは眼を見開いていて、マレニアの表情はオレからは見えない。
でも声は震えていた。
マレニア「すまないラーヤ…私は…君の信頼に応えたかった…」
マレニア「君を裏切りたくなかった…決して、裏切りたくなかったんだ…」
マレニアの口調までがかなり聞き覚えがある感じになって、拓也も思わずマレニアを凝視。マネージャーとネフェリも互いに見やって、やっぱりって感じの空気をかもし出す。心の底では期待していた可能性に灯りがついて、拓也の脳裏にあの細身なヅカ系イケメンがやってくる。はっと息を飲んだラーヤの目もみるみるうちに涙を溜めていくけど、その目がゆっくり閉ざされると、行き場をなくした涙は頬を伝った。
ラーヤ「あなた様から、その気持ちが聞けて、嬉しいです…」
ラーヤ「ですが…あなた様は英雄様ではありません…ですからどうか、あの方の影に囚われないでください…」
ラーヤ「私もこの円卓を去ります。新たな英雄たるお方を求めて、旅をするのです」
ラーヤ「ですからあなた様も、新たな旅を歩んでください」
ラーヤ「さようなら、マレニア様。どうかお元気で…」
ラーヤ「私の……」
何かを言いかけたところで、ラーヤはマレニアの欠けた右手側から抜け出て、階段を駆けていく。マネージャーも「待ってください!」って言ったけどその声も無視されて、駆けていった足音は遠くなっていって、すぐに消えた。
マレニア「ラーヤ…ああ、ラーヤ…」
マレニア「…すまない、ラーヤ…」
その場にへたり込んだまま、ただラーヤがいなくなった階段の前でうずくまるしかないマレニアに、ネフェリとマネージャーと拓也も無力のままでいる。オレはマレニアが好きじゃなかった。オレは腕と腹を斬られて死ぬ寸前まで痛めつけられたし、ネフェリもラーヤもボロボロにされて、マネージャーまで泣かされて、正直に言うとミリセントを消したことも嫌いだった。そのマレニアの中に、ミリセントを形作っていた優しさや愛情があるのに気付いたけれど、気付いた時には遅かった。
そして今日はオレの失言が発端で、円卓からまたひとり見知った顔がいなくなった。
拓也一生の不覚だったぜ。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:22:28 ID:1INPoOOE
マネージャー「迂闊でした…」
円卓の椅子に座ったマネージャーが呟いて、オレが「すみませんっす…」って即謝罪を入れる。「いえ、この可能性を考えずに、ネフェリさんの時みたいに上手くいくだろうと思ってしまった、私の判断ミスです」と反省をしているのはマネージャーだ。
ネフェリ「拓也、今度のことは、私も同罪だ。酷い間違いを犯した…」
円卓のテーブルにはマレニアが寝かされている。本当はベッドのある部屋で寝かせるつもりだったけど、マレニアの神人ガタイに合うベッドが無かったから、仕方なくテーブルに寝かせることになった。マネージャーがトリーナ?ミケラ?の花を使って作った、鎮静効果のあるキメもののおかげで、マレニアは静かに眠っている。
マネージャー「マレニアさんは、解離性同一性障害の可能性が非常に高いです。それも極めて重度の。もちろん過度の飲酒も、長時間の興奮状態もご法度です。トラウマを思い出させることにも危険があります」
マネージャー「神人というものを、私の世界の人間と全く違う、別種の存在だとばかり私は考えていましたが…それは間違いでした…」
マネージャー「まさかここまで、人間のように悩み、苦しみ、精神病の構造までも似通っているとは思わなかったんです…分離した精神から、ミリセントさんという一人の人間を丸々作ってしまえるほどの異常な特性を前にして、私はつい思ってしまったんです。神の特別な力で、そうなっているだけだと…」
マネージャー「その結果がこれです。私は精神科医でもカウンセラーでもないので、正直に言いますと、マレニアさんに何をすべきなのかが分かりません…」
マネージャーが意気消沈しているとネフェリが質問を飛ばす。刑事ドラマとかでたまに出てくるから、オレも病気の名前くらいは聞いたことがあるけど、どんな病気かはほとんど知らないんだよね。マネージャーの知識も多分それくらいだと思うぜ。
ネフェリ「その解離性…なにがしというのは、いかなる病だ?」
マネージャー「解離性同一性障害というのは…私も素人知識しか無いですけど、簡単に言えば、ひとりの人が複数の人格を持ってしまう病気です。極めて強い精神的苦痛から自分を守ろうとするあまり、人格をいくつかに分けて苦痛を分散しようとするんだとか」
マネージャー「ですがこれは神秘的な力がなせる現象ではない、心の病気です。今から思えば、あの飲み会での彼女も言動が不安定でした。酔っていたとはいえ、あそこまで自分の過去を話してしまっていたのも…今から思えば、ストレスに対しての逃避行動のひとつだったのでしょうね」
ネフェリ「……治す方法は、あるのか?」
マネージャー「それなんですが、私のいた世界でも研究があまり進んでないらしくて、確実な治療法が存在しないんです…もしあったとしても、私はそれを知りませんし…」
ネフェリ「不治の業病か…そんなものを二つも抱えているとは…哀れなことだ…」
拓也「でも、どうやって気付いたんすか?」
マネージャー「ミリセントさんの存在と、言葉遣いの不安定さと、私がやったのではないという発言で推測しました。この病気は分裂した人格が、ひとつひとつ違う性格と思考を持ちやすいとも聞きます。…恐らく、聖樹で私たちを襲ったミリセントさんの姉妹たちも、それぞれがマレニアさんから分離した人格なのでしょう」
マネージャー「恐らくですが…金の針でマレニアさんの力を抑えていなければ、彼女の人格は砕け続け、増殖する腐敗と一緒に無数の姉妹達を生み出し続けたでしょうね…そしてその度に心をすり減らせ、人間性を失っていく…」
マネージャー「聖樹で会った時に彼女が斬りかかって来たのも、恐らくこれが原因です。それに腐敗の悪夢というものについても話していましたし、これはミリセントさんの口からも語られたことです。そう考えますと、彼女は腐敗からも何らかの精神的影響を受けていた可能性もあります」
マネージャー「いずれにしても、あの時の彼女からは正常な判断力は完全に失われていたことでしょう」
腐敗の悪夢には元から罹ってるんだろうけど、なんでマレニアが解離性なんとかって精神病に罹ったのかは、二人とも言わないようにしてるのがエチケットって感じでいたし、オレもそうしたんだよね。マレニアが話していた根暗エピソードの数々が病気の原因に決まってるし、決定打になったのがラダーンとの戦いだったんだ。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/23(月) 22:26:19 ID:1INPoOOE
マレニア「うう…」
少し唸ってから、マレニアが起き上がる。オレ達の視線はマレニアに釘付けになって空気が一気に張っていく。オレはまず最初にやらなきゃいけないと思ったから、緊張でパンプしたビルダーガタイを張ってから、頭を下げて嫌な沈黙を真っ先に裂く。
拓也「ウッス!すみません!申し訳ないす!ラーヤがいなくなったことは、全部オレのせいです!罰としてマンコを腐敗マンにされても構わないです!」
マレニアの前に立ってオレが深々と頭を下げると、マネージャーとネフェリも口々に謝罪。
マレニアは無表情でオレを見つめると
拓也「グボボ!」
マネージャー「あ!」
テーブルの上から身を乗り出して、片手で拓也の首を締め上げる。マレニアのギン目に睨まれてオレの意識が遠くなる。「頼むマレニア…私達が悪かった…やめてくれ…!」ってネフェリがマレニアの手を掴んで引き離させようとしてるけど、両手で力を込めるネフェリでも神人バワーの腕力はビクともしなくて、マネージャーも「すみませんでした!もう二度とあんなことはしませんから…!」ってマレニアの前で必死で頭を下げる。マレニアの表情が辛そうなものに変わっていくと、俯いてからオレを解放。息が吸えるようになった拓也は酸欠で後ろに倒れ込むところをネフェリにキャッチされる。
マレニア「フフッ…」
マレニア「兄様を待たずに…私は…ここで何をしているんだ…」
マレニア「己の友ではない者が去れば、幼な子のごとく悲嘆に暮れ…拓也の首を締め上げれば…貴公らとの日々に、それを遮られる…」
マレニア「…私の日々ではないというのに…」
マレニアはテーブルに座って、ため息をつく。
疲れ切っていることを、丸めた背中が教えてくる。
マレニア「マネージャー…助けてくれないか……私はもう、迷い疲れたのだ…」
SOSはいつも突然だ。しかも出しているのは神様で、その神様は酒に酔って弱みを全部さらけだしたあとの絶不調ゲロマシーンと化したマレニアだ。これで拒否したら、オレ達はただマレニアに嫌がらせをしただけの罰当たりなイジメっ子だし、そんなことはミリセントの奴も決して絶対に望んじゃいないぜって、オレは眼と乳首だけをキョロキョロ動かしてマネージャーに訴える。ネフェリは「私の準備はできている」って普通に言ったけどね。
マネージャーは顎に手を当てて、しばらく眼を閉じて考えてから答えを出した。
マネージャー「……分かりました。なんとかやってみましょう。滅びの火で黄金樹を燃やす前に、やるべきことはやると言ったのは、私ですからね」
マネージャー「マレニアさん?あなたはミリセントさんの全てを継承していると言っても過言ではありませんから、あなたが探求の末に律を見出す可能性がある限り、あなたの迷いに私達も付き合うべきなのでしょう」
マネージャー「拓也?あなたは私の部屋からバッグを持ってきてください」
拓也「ウッス!」
マネージャー「ネフェリさんはローデリカさんを呼んできてください。彼女ならマレニアさんの力になれるかもしれません」
ネフェリ「わかった」
オレがマネージャーの部屋からカバンを持って戻って来ると、円卓にはローデリカが立っていた。オレにもマネージャーのやりたいことがなんとなく分かったぜ!オーラの泉作戦で、マレニアに付かず離れずのスピリチュアル体験をさせるんだよなって期待が高まる。
マネージャー「それに、ほとんど顔見知りと言っても良いあなたが、私たちのせいで弱ってるんです。お願いするのはむしろ私の方です」
マネージャー「罪滅ぼしをさせてください。お願いします」
そう言ってマレニアにマネージャーが頭を下げると、オレとネフェリも頭を下げた。
マレニアは何も言わなかったけど、頷いてくれたんでOKも無事にもらえたぜ。
いきなりこんなこと見せられてローデリカも困っただろうね(笑)
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 17:31:53 ID:q472nQng
マレニアとストレス漬けの日々 投稿者:ビルダー拓也
続きだぜ!
円卓にローデリカとマレニアを座らせて、マネージャーがカバンを受け取ると、さっそくマネージャーが本題に入る。
マネージャー「さて、まず最初に考えるべきなのは、マレニアさんの解離性同一性障害が偽病であるという可能性についてですが…いいえ、これは考える必要もありませんね。証拠が十分すぎるほど揃ってますので」
ローデリカ「かいり…なんですか?」
ローデリカが病名を聞きそびれると、マネージャーがカバンからミントガムを三枚取ってオレに投げ渡してから、「拓也?それを食べたらローデリカさんに病気の説明をしてください」って言ってくる。オレのメシのことまで考えてくれるなんて流石だよな!オレはミントガムを噛みまくって、濃厚なミントの香りを楽しみながらローデリカに病気の説明をする。
その間にマネージャーは話を続ける。
マネージャー「次に考えるべきことは、マレニアさんの障害を引き起こしているトラウマの根幹、強大なストレスの原因の特定についてですが、これも必要ありません。理由はみなさんもお分かりのはずですので、省略させていただきます」
ネフェリが横目でマレニアをチラッと見たけど、マレニアは静かにマネージャーの話を聞いている。
ローデリカに病気の内容を伝え終わって、オレとローデリカも話に集中。
マネージャー「それで、次は解離性同一性障害そのものの治療法についてですけど…私はさっき言った通りの素人なので、推測しかできません。ここが大問題ですね」
拓也「病気のデータとか、なんかそういうの無いんですか?狭間の地にも医者ぐらい居るんじゃないすか?」
マネージャー「そういう方々がまとめた資料も無いわけではなかったんですが…狭間の地では弱肉強食が当然のように肯定されてますので、厄介な病気についての書物がほぼ無いんですよ。厄介な病人は閉じ込めるか殺してしまう、そんな話ばっかりです」
拓也「マジかよ!チョーSじゃん!」
ネフェリ「…前から気になっていたが、そのSというのはなんだ?」
マネージャー「サドとかサディズムとか、サディスティックとかの略ですよ。拓也は理不尽だと思ったことをそう呼びます。話を戻しますが、解離性同一性障害というのは、強烈なストレスに心が耐えられなくなって罹る病気です。私が思いつく治療法は、そのストレスの源を取り去ること…」
マネージャー「…なのですが、どうすれば取り去れるのかが分からないんです…何故ならマレニアさんのストレス源の大半は、過去に起きた出来事にあるからです」
マネージャーの話を聞いて、マレニアが静かに溜め息をつく。
自分でもうんざりするほど分かってるって感じなんだろうけど、確かにマネージャーの言う通りなんだよね。破砕戦争も終わってるし、マレニアの兄ちゃんのミケラも、聖樹はあったけど本人には会えてない。最大のトラウマになってるラダーンと戦うにしても、ミリセントの心と合体した今のマレニアにとって、ラダーンは色んな意味で二度と戦いたくない相手だよな。デロリアンで過去に行って、ストレス漬けの日々の根暗エピソードを全部解決するぐらいしないと無理なんじゃないかな?
マネージャー「そこで…かなりリスクがある事ではありますけど…ローデリカさんに頼みたいことがあります」
ローデリカ「私に、ですか?」
マネージャー「はい。あなたにしかできないことです…」
と言ってから、マネージャーは躊躇って次の言葉が出てこない。
だからローデリカが先に言った。
ローデリカ「…分かりました。私は、マレニア様を視ればいいのですね?」
マネージャー「すみません、そういうことです」
マレニア「私を視ると?」
マネージャー「はい。ローデリカさんには、生き物の魂や彷徨う霊魂に、干渉する力があるんです。死者の魂に干渉できるとしたら、生者の魂にも出来るのではないかと思いまして」
マネージャー「ローデリカさんにはその力を使って、マレニアさんの心の弱っている部分を避けつつ、今でも解消が可能なストレスの源を探ってもらいます。それしか手はありません」
次の瞬間マレニアがガタッと立ち上がって、椅子の音がオレの心臓を刺激してきたからマジで驚いたぜ。
立ち上がったマレニアがローデリカを見ると、ローデリカがちょっと怯えた顔をしてるせいか、マレニアはローデリカから顔を逸らして背中を向ける。それから「駄目だ」って一言呟いて円卓の壁に背中をつけて、義手のついてない右肩を抱く。ローデリカのことも心配してるんだろうけどマレニア本人が怖がってることもオレには見て分かるぜ。だから拓也はマネージャーに任せてことの成り行きを見守る。
マネージャー「あなたが怖がるのも、分かります。私も怖いです。多分、ローデリカさんも」
マレニア「何が分かる…貴公には知り得ぬことだろう…」
マレニア「酒の席を囲んだことが、そもそも誤りだ…埒もないことを話した…」
マネージャー「そうです、あれは間違いでした。ですから、あなたがやりたくないのなら、私達は別の方法を探します。決めるのはあなたです」
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 17:32:53 ID:q472nQng
拓也は他人に「あなたの自由にしてください」みたいなこと言われるのが苦手なんだよね。自分で自由に選ぶのと、他人に自由に選べって言われるのはなんか違うなりね。だからいつも長々と悩みたくなくて、客とセンパイとウリ仲間とマネージャーからの連絡には即返事を入れて、後から色々準備して出発する。でもマレニアは黙ったままで、ひとりで長々と考えるタイプだった。しかも周りにはオレみたいな待ってる奴がいるし、こういうのって焦るよな。
最終的にマレニアは20秒以上?30秒以下?悩んでから
マレニア「……分かった…貴公らに委ねよう…」
ってシブシブの顔で観念。GOサインを出した。それからはローデリカに言われるがままにオレが義手を持ってきたり、大昔の円卓の英雄が倉庫にしまったままにしてた、霊姿の大輪とかをネフェリが持ってきたりしてから、全員でローデリカの調霊場に移動。ハンマーで剣を打ってる混種のジイさんがチョー嫌そうな目つきでマレニアをジロジロ見てきたけど、ローデリカとはそれなりに話が通じるみたいで、説得に応じて渋々ハンマーを置いて寝始める。拓也は全然武器使わないから、このジイさんの世話に一度もなったことなくて人見知りしちゃうぜ。
ジイさんも寝て静かになったところで、ローデリカが床に座って仕事道具を広げる。よくわかんねえ本とか小さい灯籠?すり鉢?みたいなのとか、蝋燭とかも用意した。これにムチがあったらこれからSMプレイ!って感じになるよね(笑)
準備が完了したらマレニアを座らせて、二人は正面から向かい合う形に。
蝋燭には火が灯されて、霊姿の花は歴史がありそうな小皿に置かれる。
ローデリカの表情もキリッとして、これからはプロの時間だぜっ!
ローデリカ「ネフェリ様、マレニア様に義手を」
ネフェリ「分かった」
ネフェリから義手を渡されたマレニアは、長い剣を下に向けた状態で義手をガシャっと肩にハメると、剣がついてる部分に左手を入れて操作。そのあとチャキッって音がしたら、長い剣が義手から外れて床に置かれた。この義手はミリセントがつけてた義手よりデラックスだけど、じゃあミリセント用の義手を作った奴って誰なんだろう。
ローデリカ「いいでしょう」
今度はローデリカは正座の姿勢になって、両手を両膝に乗せて、掌を上に向ける。
ローデリカ「それではマレニア様。私の両手に、あなたの両手を重ねてください」
マレニアのひび割れた左手と義手の右手が、ローデリカの両手に乗る。それから「眼を閉じて、鈴の音を想ってください」と言われたマレニアは眼を閉じた。それから1分くらい、何かの言葉遊びみたいな、よく分からない質問をローデリカがして、マレニアがそれに答えてくっていう時間が続いたあと、ローデリカが急に眼を閉じて
ローデリカ「入りました。マレニア様、私を感じますか?」
マレニア「…ああ」
とか、ディアロスあたりがスケベ心を出しそうなことを言いだした。あいつミリセントの裸で興奮してたからな、って思い出してから、あいつはミリセントが居なくなった事を知らないんだよなって考えて悲しくなった。
ローデリカ「それでは、行きましょう」
そう言って、いよいよ本番だぜ!ってオレも覚悟したけど、ここからが長い!チョー長い!1分くらい二人とも黙ってたら、いきなりマレニアが苦しそうに「うっ…」ってうめいて、かと思ったら5分くらい二人とも喋らないままだったりする。目もつぶってるし、寝ちゃったのかなって思ったところにまた呻き声が入って、もうスゲー地味な展開になってきてオレもネムネムの顔でシラケ気味。隣のネフェリに「おい、何をやっているか分かるか?」って小声で聞かれたけど、知らねーよそんなのって心の中で返事をする。
ローデリカ「今は、マレニア様の心を、マレニア様と共に歩み、彼女が見た情景を旅しています」
そしたらネフェリに向かってまさかの返事が返ってきて、ネフェリがビクッと反応。
ローデリカは目をつぶって霊視をしながら会話もできるプロ級調霊師だ。
マネージャーはこの様子をじっと見てるんだからすげーよな。
200
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 17:38:12 ID:q472nQng
ローデリカ「マレニア様の心は、とても複雑です…避けるべき感情が、あたりに渦巻いています」
ローデリカ「本来はとても優しく、慈悲が深い心が…痛みに蝕まれ、引き裂かれているのです」
ローデリカ「…いえ、待ってください」
ローデリカが何かを見つけると、マレニアがまたピクっと動いて、震えながら痛みに耐えるような表情になった。だんだんエクソシストって感じになってきて、緊張感でオレも目を覚まして生唾を飲み込む。
ローデリカ「数多の声が…姉妹のような、割れつつある心が見えます…みな腐敗を恐れ、嘆き、泣き叫び、それでも耐え忍んでいます…」
ローデリカ「…助けを求めています…ですが、近づくべきではないようです…」
ローデリカは見えてる何かから離れたらしくて、マレニアは痛みから解放されたみたいにハァハァ息切らして眼をつぶったまま顔を上げる。まだ心霊旅行中だしヤベーことになんなくて良かったけど、まだまだ油断できそうになくて見てるだけでもキツいぜ!ローデリカの額にも、じんわり汗が浮かんできてる。
ローデリカ「少し、集中を乱しました」
オレ達がヒヤヒヤで見守る中、ローデリカはそう言ってまた黙る。マレニアも静かになると場の空気が固まってまた長い沈黙が続く。でもこの沈黙の中で何をやってるのかは分かったから、マレニアがうめいたらヤベー感情にぶつかったな、静かになったら上手いこと歩けてるなってガタイで分析。うまくやれば感情に邪魔されないで、霊や魂が見たものを見られるローデリカって、CIAになれるかも。
でもオレはもうそろそろ集中力が限界にきてて太ももが攣ってくる。
マネージャーも鼻から溜め息ついて、ハンカチを額にポンポンあてる。
そしてローデリカが「……見えました」と言った時、全員で身を乗り出した。
ローデリカ「私は、聖樹の中にいます。聖樹の根には、マレニア様の心が…」
ローデリカ「…いえ、何かがマレニア様の心に触れています。これはおそらく、すでに残滓となっていますが…元は、無垢金色の光だったようです」
ローデリカ「残滓は、マレニア様の心を縛り、聖樹へと繋ぎ止めていたようですが……ミリセント様の心がマレニア様のそれと溶け合った時に、役割を終えて、力を失ったのでしょう」
ローデリカ「無垢金の光の主は、マレニア様がいかなる形となっても、聖樹に帰れるようにしたのでしょうね…」
ローデリカ「この残滓を辿ってみましょう」
重要っぽい手掛かりを見つけたローデリカがそう言ってから数分。
マレニアは少し息が荒いけど、それだけであとは安定してる、はずだった。
ローデリカ「ああっ…!」
ローデリカが何かを見つけた瞬間に、マレニアの眉間にググッと皺が寄って、呼吸がフゥフゥと戦闘モードに入ってオレたち全員マジ焦り!オレとネフェリは跳びのいて、二人でマネージャーの両手を引いて部屋の隅に下がる。
ローデリカ「そんな…なんてことを…血の流れが見えます…輝きを喪った無垢金に、縋りつき、貪って…」
ローデリカ「きゃあああ!」
拓也「うぉーっす!」
ローデリカが短く叫ぶと同時にオレの心臓もぶっ飛び不全。
意識が飛びそうになったところをネフェリに抱き止められた瞬間
マレニア「モーグ!!」
怒声上げたマレニアがローデリカを跨いで立ち上がり、義手を使ったとんでもないビッグパンチを壁に叩きつけて、拓也の心臓がどくんと不整脈に落ちる。手首から先を石の壁にめり込ませるチョーバワーの爆音に混種のジイさんも飛び起きて、マネージャーが慌ててローデリカに駆け寄る。
マネージャー「大丈夫ですか!?」
ローデリカ「わ…私は無事です…」
ローデリカ「忌み角の者に知られ、危うく命を落としかけましたが、マレニア様が助けてくれました…」
とうのマレニアは、真っ赤な髪がフワッと浮き上がって、風もないのに揺らめいてる。恐る恐る横から顔を見ると、「思い出したぞ…血に酔いし忌み者め…」とか言ってるからどう見てもキレてるしマジで目がイっちゃってる。だけどマネージャーとローデリカの作戦がギリギリで成功したみたいで、マレニアは胸に手を当てて何度か静かに呼吸を入れる。無事に落ち着いたあとは、壁に寄りかかって溜め息。オレとネフェリもホッとひと息だ。マレニアが来てからはとにかく気疲れが多くて、このペースだとオレマジに壊れるな…
201
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 17:41:02 ID:q472nQng
ローデリカはマネージャーの手を借りて立つと、マレニアに「ありがとうございます…おかげで、あの者に蝕まれずに済みました」と感謝。でもマレニアは強がってるのか本当にそう思ってるのか知らないけど「貴公のためなどではない。彼奴は私の怨敵だ」っていかにも系のかっこいいセリフをキメる。でも可哀想な過去とか色々聞いちゃったあとだから、耳に入る言葉がいちいち重く感じてキツいぜ。ミリセントに解除されたミケラからの言いつけがローデリカに発掘されて、気付いた時にはマジ憎悪キマりの復讐マシーンマレニアの誕生だ。
マネージャー「ローデリカさん、あなたは何を視たんですか?」
ローデリカ「血の加護を受けた魂を視ました…かの魂は、忌み者のものです…」
ローデリカ「私のか細い交信を、手繰り寄せて食らわんとするほどの者でした…いったい、どれほどの力を持っているのか…」
マレニア「…モーグだ」
さっき大声で言ってた言葉をマレニアがまた言う。
モーグウィンって奴の名前は聞いたけど、そこにモーグってのも入ってややこしいぜ。
マネージャーもそう思ってたみたいだ。
マネージャー「モーグ?モーグウィンの話はあなたから聞きましたが…」
マレニア「モーグウィンは、彼奴の夢想する王朝の名だ。所在は、いまだ分からぬがな」
壁に寄りかかってたマレニアは、またローデリカの前にしゃがむ。
マネージャーはおおって感じでちょっと仰反ったけど、目当てはローデリカだ。
マレニア「貴公も、あの忌み者を見たのだろう。彼奴は何処にいる」
ローデリカ「それは私には分かりません…それらを知る前に、モーグに捕らえられかけましたので…」
マレニア「……そうか」
暴れ出したりはしてないけど、かなりイラついてるみたいで気配をビンビンに張り詰めてるマレニア。それからは唇をキュッとしめてローデリカから離れたあと、また壁に背をつけて腕組み足組み、溜め息つきながら、組んだ腕の指で義手をトントン叩いてる。
マネージャー「…マレニアさん、あなたとモーグの間に何があったんですか?」
その指がマネージャーの質問で止まると、昔話が始まった。
202
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 17:56:34 ID:q472nQng
「…モーグは、血の力を見出した者にして、我が兄ミケラが盟友としたデミゴッドの一人。エブレフェールの助力を得る代わりとして、狂い火の火防を任された者」
「彼奴は忌み捨ての地下を抜け、聖樹へ至ると、兄様に取り入り、やがて王朝の夢を見たのだ」
「その王朝は、叶わぬ夢想にすぎぬ。しかしモーグに叶わぬ夢を追わせる限り、彼奴は狂い火を封じる約定を守り続けると兄様は画策し、盟約を結んだのだ」
「だが彼奴は兄様の助力を利用し、血の貴族を称する輩どもを密かに国々に張り巡らせていた。陰謀の夜が起こる時を予見し、力を蓄えたのだ」
「そしてエルデンリングが砕かれた時、彼奴は夢想を結実すべく暴挙へと及んだ。破砕戦争に他のデミゴッドが乗り出す前に、彼奴は兄様を聖樹から攫い、何処かへと消えた…」
「そして私は、兄様をどのような手を用いてでも探し出すことを誓った。全ては聖樹のため、虐げられし者たちのため、兄様の意志の完遂のためだった」
「私は大ルーンを得て破砕戦争に参じ、血の痕跡ある処の全てに出向き、必要とあらば軍をも率いた」
「リムグレイブ、リエーニエ、ゲルミア火山…多くの戦地へと巡っては、モーグの信奉者どもを…血の貴族を名乗り、血の技に酔う者どもを、皆殺しにした。彼奴らに助力するならばデミゴッドをも斬り伏せていった」
「そうして遂に、モーグの側近と思しき者を捕え、拷問の末に聞き出したのだ」
「モーグがラダーンに取り入り、ラダーンがモーグを匿ったことを」
「そして私は……」
203
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 17:59:02 ID:q472nQng
マジで血みどろの激ヤバな話聞かされてるぜって拓也が戦慄してたら、途中で話がピタっと止まって、生理がめちゃくちゃ酷くて立ってられない時のオンナみたいにマレニアがゆっくりうずくまる。こりゃヤバいって察知したオレ達はマレニアに駆け寄って、ローデリカがマレニアの両手を取って「私の目を見てください、ここは安全です。ケイリッドは遠くにあり、腐敗は退けられています」って言うと、半泣きで息も絶え絶えなマレニアが落ち着いてくる。
マネージャー「そのあとに、ケイリッドで、ラダーンと戦ったんですね…」
マネージャーが確かめるみたいに恐る恐る言うと、マレニアは涙目で細かく頷く。
少し前に、マレニアがなんで破砕戦争に出たんだろうって考えたことがあるけど、その謎にも答えが出たぜ。マレニアの目的はお兄ちゃん一筋で、大ルーンは初めからどうでもよかったんだなってガタイで納得。オレもセンパイとの約束を最優先にするけど、それでも戦場を駆けずり回って待ち合わせ場所に向かおうとは思わないし、マレニアのお兄ちゃん狂いはかなりイッちゃってるぜ。そりゃさー、オレだって「世界にはオレ達二人だけ!」って気分も分かるけどさ。
なんて考えてると、落ち着いたマレニアが声をまた震わせる。
マレニア「情けない…また私は…我を失いかけて…」
マネージャー「しかたありませんよ。心が粉々に壊れた時の出来事を克服するだなんて、どんな人にだって難しいことです。よいしょっ!」
マネージャーがマレニアの手を掴んで起こそうとしたから、咄嗟にオレとネフェリも協力してマレニアを立たせる。なんかここまで来ると怪我人とかお婆ちゃんとか、手のかかる子供って感じがしてきて、むしろ拓也の母性が刺激され始める。俺がオンナだったら胸が筋肉じゃなくて別のもので張ってたかもね(笑)
マネージャー「大丈夫ですか?」
マレニア「ああ、落ち着いてきた…手間をかけるな…」
拓也「でも前より回復するの早くなってますよ!マネージャーの作戦成功してるんじゃないすか?」
マネージャー「そんなにすぐに結果は出ないですよ。こういうことには時間をかけて向き合わないといけません。マレニアさん、戻りましょうか」
マレニア「……待ってくれないか」
円卓の大テーブルがある部屋に戻ろうとしたマネージャーを、マレニアが呼び止める。
オレとネフェリも「なんだ?」みたいな顔で互いに横目でアイコンタクト。
オレ達を呼び止めたマレニアは、足元に視線をやって悩みながら、途切れ途切れに喋りだす。
マレニア「この不甲斐ない身で…貴公らに頼むべきか…迷っているが…」
マレニア「どうか、頼まれてもらえるだろうか…」
マネージャー「…え…ええ、いいですけど。ネフェリさんと拓也はどうです?」
拓也「ウッス!大丈夫っす!」
ネフェリ「私は構わないが、どうしたんだ?」
そこからまた10秒くらい間を置いて「…私に、モーグを討たせてくれないか」なんて言い出した。
予想はついたけどさぁー、そんなフラフラな状態で戦えるのかよ?
オレがそう言っても「無理は承知だ。だが、彼奴が生きているなど…兄様が今も手篭めにされているなど…私には耐えられぬのだ…」ってまたウルウルの眼で訴えてくるから、こんなの卑怯だよな。拓也だって「センパイが事故って手術と入院費に100万必要だ!」ってもしもレオに言われたら、いつものように即受けして借金でも何でもして払っちまうぜ!
拓也「ウッス!オレは行けまっす!」
ネフェリ「お、おい、少しは考えたんだろうな?」
拓也「こういうのは即決ですよ!マネージャーはどうすか?」
マネージャー「うーん…たしかにマレニアさんの闘病に付き合うとは言いましたよ?ですが私たちも同行するとはいえ、今のマレニアさんの状態でデミゴッドと戦うのは、キツいような気がしますけど…」
マレニア「頼む…今もきっと、兄様は嬲られている…行かせてくれ…」
マネージャー「それにですよ?行きたい気持ちも分かりますけど、モーグウィンという王朝が何処にあるのかはマレニアさんにも分からなかったんですよね?」
マレニア「それは……」
粘るマレニアにマネージャーの正論パンチが飛んで、マレニアもしゅんとして言葉に詰まる。
ギデオン「血の君主の居所を探しているのかね?」
そこに現れたのは、あのギデオン・オーフニール!
コイツが出てくるとロクな事がないって知ってる拓也は、ネフェリと一緒にギン目で威嚇。
ネフェリは斧を構え、オレはケツ突き出して万が一に備える。マレニアもコイツのことは知ってるから、マネージャーを後ろに隠れさせて、義手の緊急作動させて掌に剣を握り込む。
204
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 18:01:34 ID:q472nQng
ギデオン「ふむ…警戒されたものだ。まだエンシャのことを引きずるのかね?あれはもう、終わったのだよ」
マネージャー「あなたにとっては終わってても、こっちはそうじゃないんですよ!何の用ですか!?」
ギデオン「構えることはない。ひとつ、君たちに情報を提供しようと思い立ったのでね。それに君が円卓にいるのも、マレニアを輩に抗するための戦力として数えているからだろう?誤解を誤解とせずに、終わらせたがっていないのは君ではないかね?」
突然現れて突然情報を提供するなんて言われても信用できねーよ!マネージャーは悔しそうな顔で黙ってるし、ネフェリはギン眼で「今更あなたを信じろというのか?」って言って威嚇の姿勢を崩さない。それでもギデオンの奴は「君たちに聞けとは言わんよ。ただ私が、勝手に話をするだけだ」って言って、こっちの事情はお構いなしでチョーウゼー!
ギデオン「君たちが聖別雪原の祝福を灯したのは、私にとっても僥倖であったのでね。いくつか手駒に知恵を与え、雪原に送り込み、探らせたのだ」
ギデオン「手駒は皆死んだが、彼らの犠牲は、君たちの糧となるだろう」
ギデオン「聖別雪原奥地に灯る祝福から、西の崖に向かい、血の色を探したまえ」
ギデオン「王朝を拡げんとする者達が行き交う、新たに作られた転送門があるはずだ」
ギデオンはそれだけ言い残して本当に帰っていく。オレとネフェリとマネージャーは意外な展開に拍子抜けだったけど、「待て」って言いながらオレ達を押し退けてマレニアがギデオンの後を追ったから、また何か起きそうって思ってオレ達も後を追うと、二人が離れて向かい合ってた。
マレニア「ギデオン…貴公に礼を言う。ありがとう」
マレニアが静かに、小さく礼をすると
ギデオン「君はミリセントの時と同じく愚直だが、同じく誠実のようだ。律無き世においては、誠実さは貴重だ」
ギデオン「今後もずっと、そうであってくれたまえ。ミケラの刃、マレニアよ」
ギデオンはなんか良い感じな言葉を残して、部屋に戻ってドアを閉めた。「ああいう一面を見せて、あの人は私を利用したのだ。お前も気をつけろ」ってネフェリがマレニアの脇を小突く。「ああ、分かっている」ってマレニアは言ったけど、それにしては名残惜しそうにギデオンのドアを見てたし、良いことしてくれた人にはあっさりなびくタイプなのも、やっぱりデカいミリセントなんだよな。
でもこのデカガタイ系神人のことはそろそろミリセントじゃなくて、マレニアとして見てやらないと、ウリ客とのセックス中にセンパイとの思い出でイッちゃうみたいで失礼だし、それだとマレニアが可哀想だからオレも真剣にマレニアの取扱説明書を熟読して、関係構築頑張るぜ!
205
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 18:05:07 ID:q472nQng
休み明けモーグウィン王朝 投稿者:ビルダー拓也
最近ずっとマレニア関係にかかりきりで探索行ってなかったから、今日はマネージャーからの許可も降りて、久々にメンバーと一緒に探索。メンツはオレ、ネフェリ、マレニアの3人になるはずだったけど、心が不安定なマレニアをそのまま行かせちゃダメでしょってことで、ローデリカとマネージャーがついて来てくれて万全の布陣だぜ。特にローデリカは助けてくれたマレニアにお礼がしたいって、使命感に燃えてる。ラーヤとディアロスもそうだけど、良いところ出てる奴はこういうところが真面目だよな。
マネージャー「あーっ!寒い!」
拓也「ウッス!ウッス!ハクション!」
でも久々の探索が吹雪ふきまくり視界消えまくりの雪原のど真ん中でマジ狂い!
この前典礼街に行った時は冗談で「また来ます!」とか言っちゃったけど、ホントに来ることになるなんて思わねーよ!今回はちゃんと円卓で亀首漬けと勇者の肉塊と蟹を食って来たし、吹雪といっても大声出さないと会話が出来なくなるレベルでもないからまだ動けるけど、生肉団子と苔薬を聖樹で使い切っちゃったから、マネージャーとオレは一発でもヤバい攻撃を貰うとそのまま死ぬぜ!
ネフェリは防寒対策ってことで、ローデリカにもストームヴィル産のデカ布鎧を着せたかったらしいけど、ゴドリックからの施しは絶対に受けませんってローデリカは断固拒否。結局ローデリカはマレニアから朱いデカマントもらって、グルグル羽織って誰よりも一番あったかそうになっている。
マレニア「この雪原に、本当にあるのだろうか…」
とか言ってるマレニアは、朱いマントを外した肩出しドレスに、両足と右手が義肢で、兜もつけて無いから、いよいよ雪原の真ん中に何しに来てるのか分からない格好だけど、「マレニアさん!?あなた寒くないんですか!?」ってマネージャーに言われても「この程度は耐えられる」ってあっさりしてる。ドレス一枚で猛吹雪の中を歩けるマレニアはエベレスト単独無酸素登頂ができるかも。
今回の雪中行軍はマネージャーの地図を頼りに、ガタイがデカいマレニアを先頭にして歩いてるから、オレ達は雪まみれにならずに済んでる。でも横からは容赦なく冷たい風が入り込んでくるからやっぱりキツい!そのまま進んでいくと、前に見た荷車隊に遭遇。運が悪いことに今回はラッパを持ったゾンビに見つかった。マレニアのデカガタイが災いしたぜ。
でもラッパが「パ!」って吹かれた直後に、ラッパ持ちのゾンビの首がぶっ飛んで雪にスポッと埋まる。ラッパに反応したゾンビ達も振り返ったり武器を構えたりした瞬間に首をポンポン飛ばされて、ボウガンを持った剣士?みたいな二人も、一瞬で三枚に下ろされて雪に倒れて見えなくなった。あとには、義手の剣をチャキッと変形させるマレニアだけが立っている。
ローデリカ「これが、マレニア様の剣技…」
マネージャー「やっぱりすごいですね…今見ても怖くなってきます。ミリセントさんがいなければ、今頃…」
ネフェリ「シッ、その話はやめておけ、聞こえるぞ」
四人で見ると、遠くに見えるマレニアの横顔がまたショボショボの傷心気味。「大丈夫だ、気にするな。ミリセントとのことは事故と思え。私たちなら平気だ」ってネフェリのさりげない全力フォローで「ああ、そうだな…」って気を取り直す。離れたマレニアと合流してから少しの間歩くと、吹雪が晴れて凍った川に出る。
そこでマネージャーが地図を開いて場所を確認しながら、それっぽい方向に歩いていくと
マレニア「あれは…」
先頭のマレニアが、遠くに赤い斑点が見える場所を発見。全員でそこに行ってみると、カチカチに凍ったデカい倒木があちこちにある場所に到着。足元には白い草と赤い花がそこらじゅうに咲いている。
拓也「血の色ってこれっすかね?」
マネージャー「多分これでしょう。この雪景色じゃ、他に赤色なんてありませんからね。それではここからは崖側を目指しましょうか」
崖って言っても、こんなに白くちゃ距離感が狂ってどこが崖かも分かりにくいから、また全員で固まりながら地図をたよりに進んでいく。それからは坂を上がって、倒木を回り込んで歩き回る。その間にも拓也のポケットは、途中でむしった青白い植物でパンパンになっていく。そういうことを繰り返していくうちに
マネージャー「あっ」
シロクマに遭遇!
でもデカすぎてシロクマって言っていいのか分かんねーよ!ゴドリックよりデカい激ヤバなワイルドガタイには、束ねた木の枝みたいなバキバキな体毛をビッシリ生やしてるし、なにより上半身と下半身が屈強すぎるだろ。腕の太さなんて拓也の胴体の2倍以上はあるし、こんな食べ物もろくになさそうな場所で何を食ったらこんなガタイが仕上がるのかマジ分かんねー!
マレニア「下がっていろ。ルーンベアは貴公らの格上だ」
マレニアが剣を構えると同時に、ビルダー系シロクマが毛を逆立てまくり筋肉盛り上がりまくり、ギン目剥いて吼えまくりの全身凶器状態に変貌。オレ達がマレニアから急いで離れると、ビルダーシロクマが新幹線みたいなバカげたスピードでマレニアに突っ込んで雪の爆発が起きる。さすがにマレニアでもこれはやべーよ!って思ったけど、それは杞憂で、マレニアはすでにあの構えをしながら空中にとどまっていた。
ネフェリ「勝った…!」
空中のマレニアは真下にいるビルダーシロクマに落下すると、ネフェリとミリセントを9割がた殺した、あの刃の嵐を叩き込む。全身を斬られまくったビルダーシロクマは全身から滝みたいな血を炸裂させながら、肉片をあたりに散らばらせてぶっ倒れると、そのままピクピクと痙攣して血の池を作りながら動かなくなった。強いぜ!グロいぜ!
マネージャー「うわ〜…」
ネフェリ「凄まじいな…」
ローデリカ「い、今何をしたんですか!?マレニア様、あなた様は何を…」
マレニア「この剣技は、水鳥乱舞という。…拓也はミキサー攻撃と呼んでいたがな」
ローデリカ「みきさー?」
「技の名前分かんなかったんで、テキトーに呼んでたんすよ。今は水鳥乱舞って言ってますよ」ってとりあえず嘘ついてみたけど、「言っていないだろ」「いや、言ってます」「本当のことを言え」「言ってないっす」って瞬時に屈服するオレ。だって水鳥乱舞っていっても水鳥って感じ全然ないんだから仕方ねーじゃん。だからオレは「じゃあ扇風機乱舞で」と妥協しながらせめてもの抵抗を図るも「駄目だ」って却下される。
なんてやってたらビルダーシロクマがまさかの復活でマジ狂い!驚いてひっくり返るオレとローデリカとマネージャーに、血のシャワーをあたりに撒き散らしながら襲い掛かってくるも、行く手をマレニアに阻まれて、水鳥乱舞が炸裂する。二発目の乱舞でシロクマは完全に粉々になって血の池に積み上がった。
ネフェリ「あの水鳥乱舞を一度は耐え切るとはな…恐ろしい奴だ…」
マレニア「此奴らは、小黄金樹に近しい木々から、ルーンを啜っている。…ゆえに祝福を溜め込み、英雄の如き強さを得る」
マレニア「この者の力であれば、例えゴドリックであろうと相手にはならぬだろう。貴公らには危険な相手だ」
ネフェリ「デミゴッドをも凌ぐのか!?もはやクマなどとも呼べんな…」
マネージャー「大ルーンに頼るよりも、地道にルーンを溜め込んだ方が強くなるなんて、皮肉な話ですね」
ゴドリックより強いクマを倒したあとは、地図通りの崖に到着。あたりを警戒しながら探索してると、崖の上から少し下がったところに、いかにも系の血まみれな転送門を発見。隠したいなら血ぐらい拭いとけよな。おかげで分かりやすいけどさ。
206
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 18:11:16 ID:q472nQng
ローデリカ「待ってください。前もってお伝えしたいことがあります」
マネージャー「はい?なんでしょう」
ローデリカ「モーグは前の干渉で、私とマレニア様に気付きました。おそらく今の彼は、マレニア様の力を恐れているでしょう」
ローデリカ「襲撃に備えているはず。どうか、お気をつけて」
マレニア「分かっている」
マレニアが剣から血を拭って、ネフェリが肩をグリグリ回してから両手の斧を持ち直す。準備できましたか?ってマネージャーからの声にも二人は無言で頷く。じゃあ王朝襲撃の開始だぜってことで、拓也は転送門に指を突っ込んでヌルヌルグチョグチョと掻き回すと、手が血でべっとりと濡れる。こいつもう感じてるぜ!なんてふざけてたらネフェリにケツを蹴り上げられて頭から門に突っ込み転送。気付いた時には洞窟の中だった。鉄臭い洞窟に不潔感を覚えた拓也は洞窟を出る。
拓也「あーっ!おぅううっす!」
すると目の前に、あのカエル顔した奴らが20人以上?30人以上?も揃ってて、全員武器を構えた戦闘体制だし、奥には血まみれのバカデカいカラスが4羽と、口を超高速でガチガチ鳴らしてる腐った犬が並んでる。あーあ、こりゃ死んだなって拓也が四つん這いになって絶望してると、オレを飛び越えてマレニアとネフェリが登場。戦いが始まった。
奧にいるカエル人間がケツマン犯されてる時の拓也みたいにビクビク痙攣すると、全身から血のザーメンを針のように飛ばしてくるけど、マレニアがそれを水鳥乱舞で弾き飛ばして、一瞬の空白時間にネフェリが突撃。カエル軍団の最前線に突っ込んで斧に雷を纏わせて振りまくり斬りまくり、ギン目剥いて吠えまくりの戦闘モードで四方向から同時にカエルの相手をする。
そしたら奧にいるカラスが思いっきりジャンプして、頭からマレニアに突っ込んでくる。マレニアは「立つなよ、拓也」と一言いってジャンプ。空中でカラスを斬り上げで串刺しにしてから、カエル軍団の奥の方に突っ込んで、もう一匹のデカカラスを叩き潰す。それと同時にオレの後ろからローデリカとマネージャーが洞窟の中を歩いてくるけど、戦いの音と、四つん這いのままのオレのケツを見て全てを察したから、洞窟の奥に戻っていった。
その間にも、ネフェリと戦ってるカエル軍団のうち、全身が勃起デカマラみたいに真っ赤の奴らが全身から針を出して回転を開始。白いカエルをあらかた斬り倒したネフェリに襲いかかる。一匹の攻撃はクロスした両手の斧で防いだけど、もう一匹から背中をガン掘りされて片膝をつく。そこに他のデカマラカエル軍団が追い討ちをかけに行くけど、二匹のカラスを相手にしてたマレニアが急加速してUターン。ネフェリの周りにいたマラガエル人間を真一文字で真っ二つにした。
ネフェリ「たすかっ…」
そのあと、マレニアは礼を言って立とうとしたネフェリを蹴り飛ばしてオレにぶつけてから、直後に飛んできた二匹のデカカラスと犬軍団を相手にし始める。「流石だな…任せておけば、あとは勝つだろう」ってネフェリはオレを起こしながら聖杯瓶をひと口。でもマレニアの剣とクチバシをぶつけまくってる二匹のカラスのうしろで、犬軍団は走り回ってるだけで何もしてこない。ドッグランやってるんじゃねーんだぞ!
二匹のデカカラスは、クチバシを弾きまくるマレニアに業を煮やして、二匹いっぺんにジャンプ。両足の爪でマレニアを踏み潰しにかかる。でもそれが狙い目とばかりにマレニアが突き上げた剣に、片方のカラスのケツマンコが激しく犯されて切れ痔の浣腸状態に。そこから水鳥乱舞がまた炸裂して、一匹のカラスを体内から粉々にしつつ、ぶっ飛ぶ肉片でもう一匹のカラスと犬軍団を吹き飛ばして、谷底に落としていった。
ネフェリ「片付いたようだ。おい、行くぞ」
ネフェリの合図で、洞窟からマネージャーとローデリカが出てくる。ふたりは血の池地獄状態に堕ちた戦場を眺めてちょっと引いてたけど、引いてたのはオレも同じで、ネフェリ以外の三人で死体や血をぴょんぴょん避けながらマレニアに近づいていく。
マレニア「…待て、妙だ…」
そのオレ達に、マレニアが手を向けて待ったをかける。
「どうしました?」ってマネージャーの質問に「数が足りない」とマレニアが返事をした直後に、カラスの肉片の中から犬が登場!血まみれで飛び出したそいつをマレニアは剣で防いだけど、犬はまるでドリルみたいに体を回転させてマレニアの剣を受け流して、脇腹のあたりに噛みついた。
マレニア「うあぁっ!」
ネフェリ「あっ!?」
拓也「ウッソだろ!」
スクリュー状態で突っ込んできた犬の牙は、ネフェリの斧とミリセントの剣でもすり傷程度しかつけられなかったマレニアの皮膚を、いとも簡単に食い破っていく。「まずい!」ビビったオレを置いてネフェリは駆け出すと、マレニアに噛み付いてる犬に両手の斧を叩き込んで、アックスファックで犬の頭をクラッシュさせた。
ネフェリ「どこをやられた!?傷口を見せろ!」
マレニア「ば…ばかな…野良犬ごときに…!」
ネフェリに抱き起こされたマレニアの脇腹からは大量の血が溢れ出ていて、ヤバイと思ったネフェリは咄嗟に腰巻きの一部を千切って、マレニアの脇腹をキツく縛ると「うぐっ!」ってマレニアの口からうめきが溢れる。オレ達も駆け寄って見たけど、たしかにかなりの出血で手当てされた場所から白カビが少し拡がっている。「やべーよ!祝福探さなきゃ!」「言われなくとも分かってる!」ってオレとネフェリが言い合ってると、ローデリカがすぐ近くに祝福を発見。たすかったーってひと安心しながら灯して休憩を挟む。…はずだった。
207
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 18:25:46 ID:q472nQng
ネフェリ「どうだ?治ったか?」
マレニア「駄目だ…傷が塞がらない…」
拓也「どういうことっすか!?」
マネージャー「祝福で傷を癒せるのは、褪せ人だけなのかも……拓也?あなたは一度でも、狭間の地をさまよう兵士や動物が、祝福で休んでたところを見たことがありますか?」
拓也「ウッス!無いです!」
やられたぜ!あの犬はモーグの秘密兵器だな!神人の圧倒的な強さはモーグの罠で無力化され、気付いた時には戦える奴がネフェリだけ!「私なら戦える…このマレニアは、いかなる戦場も駆けてきたのだ…」とかマレニアは強がり言ってるけど、ネフェリに先頭を代わって、オレとローデリカに体を支えられて立ってる奴が言っても説得力ねーよ!仕方ないからオレはマレニアをマネージャーに任せて、敵を一度も倒したことがない剣と盾を構える。
2メートル超えの怪我人を抱えながら、オレ達はじわじわ進んでいくと、前方はマジの血の池が拡がってて、デカマラカエル人間があたりをうろついてる。「あれを全て相手にはしてられない。突っ切るしかないぞ」ネフェリはそう言って斧を構えて「私が囮になる。お前たちは走り抜けて、祝福を探せ」とか無茶なことを言ってくる。それじゃあお前はどうすんだよって言っても「頃合いを見て逃げる」って言うだけ。本当に上手くいくのかよ?
マネージャー「あっ!マレニアさん!?」
ローデリカ「だめです!」
でもマレニアはネフェリの作戦をさらに無視して、ローデリカとマネージャーの制止も聞かずに突撃。マジかよぉ!こいつメチャクチャだぜ!しかも走りながら包帯代わりの布も投げ捨てちゃうからもう訳わかんねーよ!「死ぬ気か!?戻れ!」ってネフェリが叫ぶ頃には、マレニアは腹と口から血を噴きながらの決死の水鳥乱舞を放っていた。
ネフェリ「馬鹿なことを!」
ネフェリは走り出して、そのあとをオレも追いかける。マレニアは水鳥乱舞でデカマラカエルの一団を一気に5人くらいミンチにしたあと、そのまま三連斬りでカエルを一匹、横跳び斬りでカエルを二匹撃破。でもあとからきたカエルに背中や腹を殴られて膝をつく。ネフェリも急いで駆けつけるけど、マレニアはまた立ち上がってカエル達を斬りまくって、オレ達が着く頃にはハァハァ息切らして敵を全滅させていた。
ネフェリ「何を考えている!甘えた真似をするな!」
ネフェリに胸ぐらを掴まれてマレニアは説教を食らう。見てみると脇腹の怪我の出血は止まってて、オレは「相手を斬って出血を止めたな」「血は止まってるけど、傷はほとんど塞がってないな」「聖樹で会った時よりも回復力がガクンと落ちてるな」ってガタイで分析。もしかしてマレニアの再生能力って気分で変わるのかな?ネフェリもギン眼でマレニアを睨み付けてるし、神様に説教してるなんてよくよく考えたら凄いことしてるよな。でもマレニアはネフェリを見ないで俯き気味だから、ネフェリも何かを察した。
ネフェリ「…お前まさか…ずっとこうやって戦って来たのか?」
マレニア「私の身など、どのようになろうと構わん…」
マレニア「私の身は腐敗に、心は罪に穢れている…その私にできるのは、剣を振るうことだけだ…」
ネフェリ「はぁ……」
マレニアの言い分を聞いたネフェリは
ネフェリ「お前は、己を犠牲にすることに慣れすぎている。そんな性根でいるから、ラダーンとの戦いでさえも退くことができず、己を犠牲にし、お前すらも望まぬ結果をもたらしたのではないのか」
マジかよぉ!?ネフェリはオレたちが避けてきた話をストレートに言い放った。不意打ちを食らったマレニアは目を見開いて青ざめていき、そこにネフェリはピンタを飛ばすもんだからチョーSだよな!オレ達3人も血の気が引いて「ネフェリさん!?」ってマネージャーからのストップも斧を向けて拒んでくるし、声はキレてるしでもう手がつけらんねー!
ネフェリ「泣くな!お前はずっと、そうやって過去の暗がりに怯えてるつもりか」
ネフェリ「負け戦を不敗と称して、さらわれた兄を迎えにも行けず、己が負うであろう罪と苦しみをミリセントに背負わせ、己の強情さで己さえも破滅させる、そんな昔のお前に、そこまで戻りたいか」
ネフェリ「違うだろう。お前は敵地に赴いた。己が怨敵と定めた者の地にだ。何故来たか言え、言ってみろ」
マレニア「…に…兄様を…救いに…」
ネフェリ「ああそうだ。お前はさらわれた兄を救いにここにいる。昔のお前に行えなかったことを果たしに、敵地へと赴いたのだ。それだけではない。お前は自らの罪をミリセントに押し付けず、こうして自らで受け止め、耐えているじゃないか。お前は変わりつつあるんだ」
ネフェリ「そのお前を、己を犠牲にすることへの誘惑で無下にするな。これから過去の暗がりを照らそうという時に、過去に屈するな」
チョー体育会系の筋肉質なビルダー説教をマレニアに食らわして、ネフェリはひと呼吸いれるけど、マレニアはショボショボの顔で涙目気味。蛮地は病人に説教入れるのかよ!ってオレはガタイで抗議する。ネフェリがそんな抗議が見えないかのようにマレニアを離してその場に座らせると、語りかける口調に説教をトーンダウン。
ネフェリ「お前は知っているだろう…ギデオンに踊らされ、全てを失った私を…だからお前は、いかにして私が再び立ったのかも、すでに知っているはずだ」
ネフェリ「失ったものは、取り戻すか、新たなもので埋めるしかない。…私はギデオンではない、新たな王を探すことにした。お前にも新たな風が吹くだろう」
ネフェリ「ケイリッドは戻らぬが、お前の兄はここにいる。お前の怨敵もここにいる。そしてお前の欠けた心も、今やお前と共にある」
ネフェリ「失ったものを取り戻す。ただ、それだけを考えることだ。私達もそのために、お前について来たのだからな」
説教を終えたネフェリはマレニアから離れて、キョロキョロと見回して敵がいないかを確認する。オレ達はすぐにマレニアに駆け寄って「今のネフェリさんは言い過ぎです…あまり気にしないでください」「そうっすよ!あんな言い方ないっす!」「マレニア様、大丈夫ですか?」って口々にフォローを入れるけど、眼を拭いて立ち上がったマレニアは割と落ち着いていた。
マレニア「…いや…彼女の語った通りだ」
マレニア「私は、間違っていた。今は兄様を救うこと…それのみを想わねばな」
マレニア「ネフェリ、私は浮き足立っていた。ありがとう」
マジ?これって軟着陸?雨降って地固まるってあるけれど、マレニアは落ち着いてるしネフェリも「分かればいい。泣きださないか肝が冷えたぞ。敵地でそれでは困るからな」っていつもの調子に戻ってる。「どうしたんすかね?これ」ってヒソヒソ声でマネージャーに聞くと「多分あれですよ。誰かに言って欲しかったことを、全部言われてスッキリしたとか、そういうことですよ」ってヒソヒソ声で返答。乙女心っていうのは複雑だよな。
208
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 18:28:42 ID:q472nQng
その間にもネフェリが「見えるだけでも赤いしろがねが3人のみ。守りが今までと比べ、薄すぎる。罠だ」って戦士の勘で分析。ローデリカもそれに乗って「罠で間違いありません。怨みに溢れた巨人達の霊が、怨みの吐口を求めています。術師達が彼らを縛って、使役しているようです」と霊感で分析。そこにオレのガタイ分析をコラージュできると完璧なバランスで良いんだけど、拓也の乳首センサーは沈黙していて萎えたデカマラみたいに垂れ下がっている。
ネフェリ「ならば、まず私が出て囮になる。マレニア、お前は私を狙う術師達を討て」
ネフェリの言葉にマレニアが頷いてプランが決定。オレ達は草葉に隠れて、そこからネフェリが斧をしまったまま登場。棍棒を持ったデカマラカエル達に近づいていく。するとそこでカエル達が一斉に棍棒を掲げて、デカい骸骨を次々に召喚!デカ骸骨達は全員ギン眼を光り輝かせてネフェリにビームを発射。その少し前から走り出していたネフェリの後ろを、青白い炎で焼いていく。その隙にマレニアがデカマラカエル達に近づいて、三連斬りと薙ぎ払いのコンボで次々にカエル達を血の池に沈めていく。カエルを倒すとガイコツも溶けていって、結局ふたりで20秒以下?で全部倒しちゃったから、オレ達も草から出てネフェリとマレニアと一緒に駆け抜ける。
そこでようやく祝福を発見!
マレニアの傷は癒せないけど、座り仕事メインで体が鈍りまくりのローデリカのスタミナとネフェリの聖杯瓶が回復して、さらに探索は続行だぜ。階段を登るとすぐにゾンビの群れが見えて一瞬ゾッとしたけど、こいつら攻撃する気はないみたいで、ただブラブラしてるだけだから平気かなって思ってドンドン進むと、急に水風船みたいにガタイ膨らませて抱きついてくるヤツらがきて、オレはケツ穴を揉まれながらベロチューで迎えられる。血まみれゾンビとのセックスは非対応だぜ!って言うと、マレニアが風船ゾンビたちを両手でキャッチして投げ飛ばし、遠くの岩場で破裂させた。
マレニア「皮肉なものだ…モーグの信奉者が、先の私のようなことをするとは…」
拓也「マジ!?マレニアさん、ラダーンにベロチューしようとしてたんすか!?」
マレニア「そういう意味で言ったのではない。貴公は変わらんな…フフッ」
拓也「あっ、今…マネージャー、今の見ましたよね?」
マネージャー「見てないですけど聞きましたよ。はじめてちゃんと笑ってくれたようですね、ちょっと嬉しいです」
マレニア「なにを…ただの笑みだろう…」
ネフェリ「素直に受け取っておけ。また一歩進んだ証だ」
周りがゾンビだらけなのにちょっと空気が和んだから、やっぱりオレの激エロなフェロモンには人を幸せにする力があるよな。そりゃゾンビもオレの唇を吸いたくなるよな。そのあともゾンビの群れを歩いて素通りしていくけど、デカい肉の塊とかが置いてあってもマレニアの水鳥乱舞で一発だったし、あとの道を練り歩いているゾンビも全然敵意が無い。襲撃への備えって、もしかして最初の敵の群れだけで終わりだったりするのかな?ってガタイで考察しつつ、俺たちは壁の洞窟に入っていく。
209
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 18:30:59 ID:q472nQng
ネフェリ「暗いな。誰か明かりを持っているか?」
マネージャー「ランタンぐらいならありますけど…あ、これです。点けました。どうですか?」
ネフェリ「5人で歩くにはまだ暗いが、まあいい。拓也、ローデリカ、マネージャーから離れるなよ」
拓也「ウッス!」
ローデリカ「弧゜ッ!」
マネージャー「あっ!気をつけてください、口臭がありますから…」
オレの激エロなフェロモンをまるで悪臭みたいに言ってくるから、マネージャーはこういうところデリカシーが無いよな。洞窟の中を進みながら「もしオレが迷子になっても、激エロのモロホストフェロモンで位置が分かるじゃないですか」って抵抗しても「ただ臭いんだよ」ってネフェリがストレートな悪口で返してくるし、確かにところ構わずエロな空気にしちゃうのは悪いと思ってるけど、エロに生まれたエロの男だから仕方がないんだよね。
ネフェリ「敵だ!」
なんてふざけてたらいきなり襲撃されて、咄嗟に拓也はマネージャーの後ろに隠れたけど、オレの後ろにローデリカとマネージャーがまた隠れようとして、オレたち3人は皇帝ペンギンの群れみたいに車懸の陣で避難。地面にできた血の池から襲ってきたのは、全身を赤と黒の豪華な衣装で覆った、優しそうな顔の血没紳士だ。
血の貴族「モーグウィン王朝開闢するまで血中ブリッジできるよな?」
拓也「ウッス!できまっ…え?マサヒコさん?」
マレニア「マサヒコ…?」
ネフェリ「お前、顔見知りなのか!?」
拓也「あっ、すいません!人違いっす!」
ネフェリが見せた一瞬の隙を紳士は見逃さずに、ネフェリに血のナイフを投げつけて攻撃。ネフェリは咄嗟に斧で弾き返したけど、一発目の影に隠れた二発目を腹にかすって後ずさる。紳士はそれから洞窟の闇に隠れようとしたけど、マレニアは義手の剣をチャキッと変形させた火花で紳士の居場所を特定。三連斬りを仕掛けるけど、また血の池に逃げた紳士を斬る事はできずに空振りする。
「開闢まで血中に沈め」
洞窟の闇の中を、紳士のささやきだけが響いていく。「ここは敵の術中です!駆け抜けましょう!」っていうマネージャーの提案を「灯を持っているのはお前だけだ!この人数で駆ければ誰かがはぐれる!」ってネフェリが却下して、闇の中での戦いが始まった。
「ほら、ネフェリ、笑って」
ネフェリ「うおぉっ!」
耳元で囁かれたネフェリは反射的に斧を振り回すと、そこにはマレニアの剣があって激しい火花を散らす。「お前だったか…あやうく斬るところだ…」「それは私も同じだ。厄介な…」二人は互いに背を向けて武器を構える。
「まずは神人の剣を見せてもらおうか」
マレニア「!」
今度は闇の中から猛スピードの突きが繰り出される。マレニアはそれを間一髪で弾き返して、返す刀を横振りするも
マレニア「うぐっ!」
超低空を駆け抜ける紳士に横振りをかわされて、犬に噛まれた怪我を斬られて悶絶。紳士は更に下からマレニアの顔を狙うけど、顔を逸らして回避したマレニアは同時に水鳥乱舞の構えに移行。それを見た紳士は、襲いかかってくるネフェリの足元に転がってネフェリを転ばせてから、ネフェリの影に血の池を作って姿を消す。水鳥乱舞は放たれることなくマレニアは着地した。
マレニア「逃したか…」
ネフェリ「卑怯者め!姿を見せろ!」
立ち上がって斧を構えたネフェリのブチ切れた怒号が、無限に広がる闇に溶け込んで消える。
「次は闇を往復だ」
拓也「ウッス!」
いきなりオレが耳元で囁かれて、気付いた時にはランタンの火が消えていた。
「ランタンを奪われました!」マネージャーの声が示すとおり、残る明かりは洞窟入り口からの薄暗い光だけ。「やむを得ん…!」マレニアは何か覚悟を決めると、隣のネフェリを掴み上げてオレ達の方にジャンプ。そのままマネージャーとローデリカとオレまで両脇に抱えた。
マレニア「このまま走り切る。覚悟を決めよ」
「マジかよぉ!」「走り切るって、この暗さですよ!?」「マレニア様、それは無茶では…」
口々にオレ達は小鳥のように囀ってみるけど、ネフェリだけは唇をキュッとしめて腹を据えていた。
「バカ野朗!誰が逃げていいって言った!」
闇からの怒声を合図にして、マレニアは闇の中を全力ダッシュ開始!何も見えない闇の中をビンビンに張り詰めた感覚で駆け回り、洞窟の壁にぶつかる前に足でブレーキをかけたり、脚で壁を蹴ったりして、ピンボールのように闇の中を跳ね回って出口を探す。
210
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 18:53:53 ID:q472nQng
「10往復しろ!」
紳士はそんなマレニアにも追いついてきて、お仕置きとばかりにマレニアの背中に剣によるしばきを入れる。「くっ!」と声を漏らすマレニアの両脇で、グルングルンに眼を回したマネージャーがダウン。ローデリカはキャアキャア悲鳴を上げてるし、オレはセンパイと行ったディズニーランドを思い出しながら強烈な酔いに耐えている。
その間にもマレニアの脚に向かって紳士の血のナイフが命中し、マレニアはオレ達を抱えたまま転倒。
すぐに起きあがろうとするけど、その脚を紳士に踏みつけられて動きを止められる。
血の貴族「おい、誰が休んでいいって言ったんだよ!」
仰向けに倒れたマレニアに向かって、往復斬りと傷痕責めが入って、マレニアが悶絶すると同時にネフェリが斧を振り回して紳士を攻撃。斧は流れるような剣捌きで弾かれたけど、この一瞬だけ紳士はマレニアから離れる。その隙を逃さずにマレニアは両脚を開脚で振り回して、カポエイラの要領で起き上がった。闇の中でもすぐ近くだったから見えちゃったけど「マレニアお前、そんなスケベなパンツ履いてたのかよ!?」って拓也は驚愕。そこは鎖帷子とかじゃねーのかよ!
マレニア「そんなことを気にしてる時か…!」
拘束からの脱出に成功したマレニアはまた闇を駆け抜けていき、今度はゾンビの群れに突っ込んだ。「お前たちに血を仕込んでやるよ!」紳士はそう言ってからゾンビを斬りまくって血の雨を降らせる。ゾンビの血を被ったオレ達は猛烈なガタイの痛みに襲われて悶絶。ネフェリの「この疼きでは出血するぞ!早く抜け出ろ!」の言葉にマレニアは反応して即座にジャンプ!壁を蹴って地面を走り、また闇のピンボールが始まりかけた時、出口が見えた!
マレニア「くっ…!」
出口に向かってマレニアはラストスパートをかける。
それでも紳士は後ろをピッタリついてきて、マレニアの首を斬ろうと剣を振り回してくる。
血の貴族「ほら!血を見せろ!」
拓也「あっあっ、ダメっす!」
でもマレニアのスパートが起こす激エロな振動に、酔いに酔いまくった拓也は耐えられなかった。
拓也「ぐぐ、グボグボ!」
血の貴族「弧゜ッ!」
マレニアの腕から上半身をはみ出させて、我慢できなくなった拓也がたまらずゲロをぶち撒けると、マレニアのすぐ後ろを走っていた紳士の顔面がゲロを余すところなく受け止めて絶頂の声を上げる。紳士はそのまま全身に引きつけを起こして頭から石床に突っ込み、ヘッドスライディングのように地面を滑って停止。マレニアから離れていった。
211
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/25(水) 18:56:06 ID:q472nQng
洞窟の外には祝福が見えて、そこに全員で飛び込んでから、祝福を点灯。マジ死ぬかと思ったけどマレニアの全力パワープレイで危機を乗り切った。「お前、また己を…!」ってネフェリはマレニアに怒ろうとしたけど「すまないネフェリ、策が無かったのだ」って満身創痍でダウンしてる奴に言われて、はぁーって溜め息と同時に大人しくなる。ローデリカはマレニアを介抱してるけど、酔いまくりのマネージャーと拓也は並んで大の字ダウンだ。
ネフェリ「まったく、私もとんだ恥を晒した。お前に高説を垂れて、このざまとはな…」
マレニア「致し方ない。闇に慣れた手練れから、皆を庇いながら戦うなど、誰にも出来ぬことだ」
ローデリカ「ですが、これでは無理のしすぎです…神人とはいえ、これだけ傷を負うのは障りがあります」
マレニア「そうだな…」
会話が途切れて、少しだけ静寂が訪れる。
そこに拓也も訪れて、酔いから回復した体で祝福のそばに座ると、ネフェリが肩を震わせ始める。オレが「どうしたんすか?」って言うと、「しかしお前…」って堪え笑いを浮かべてくる。
拓也「え?なにがっすか?」
ネフェリ「お前、あの倒し方はないだろう…フフッ」
拓也「なんすか倒し方って?オレただゲロ吐いただけっすよ?」
ネフェリ「神人すら追い詰めた刺客を、吐瀉物で倒すなど、聞いたこともないわ…」
そう言って腹を抱えてニヤついてくるネフェリに、妙に腹が立った拓也は「しょうがないじゃないすか!気持ち悪かったんすよ!」って反論。ネフェリは声を上げて笑い始めて、ローデリカもつられてフフッと来たのを、口で隠して無かったことにしようとする。
ネフェリはそのまま嫌がらせみたいに「おい、吐瀉物で刺客を倒した者の逸話は、王都や聖樹にはあるのか?」って割とありそうな話をマレニアに振っていく。マレニアも律儀に「あるかもしれぬが、聞いたことはないな」って返すものだからネフェリがさらに調子に乗って「拓也?お前は吐瀉物で新たな律を見つけるんだよな?」とか言ってくる。卑怯者を倒した時はフツーに敵をネタにして弄るんだから、蛮地の勇者ってタチ悪いぜ!しかもそこに
マレニア「拓也?お前は私の騎士団に入れるんだよな?」
とか、絶対に妄想遊びなんかしそうにない奴まで言ってくるから、オレは羞恥心でマジ狂い!ネフェリは笑い転げてるし、ローデリカは「まぁっ…」って言って驚いてる中で、オレは顔を真っ赤にして「ウッス!入りません!」って断固抵抗の意志を見せる。「お前…やめてくれ…!」って腹を抱えてるネフェリが男だったら、そのイケメン顔にキスをして悪い口を塞いでやるところだぜ!
マネージャー「みなさん楽しそうですね…何かあったんですか…?」
酔いから回復してフラフラなマネージャーに、またマレニアが「今、拓也が貴腐騎士団に属したところだ」ってしつこく言ってきて、マネージャーはすぐに半笑いになって「なるほど、私は大役ごめんというわけですか。拓也は薄情ですね」って被せてくる。オレも恥ずかしさと悔しさで言い返そうと思ったけど、ネフェリもあらかた笑い終わって落ち着いてきたし、マネージャーとマレニアも話のオチに満足したらしく静かになった。散々自分達だけ笑っておいてオレは放置かよ!いいご身分だよな!ってプリプリ怒ってると
マレニア「…あの貴き騎士たちは…今も兄様と、私の帰りを待っているのだろうな…」
空気がいきなりしんみりモードに突入。オレがまた置いていかれてると「…ああ、待ち侘びた者を、連れて帰ってやるといい」ってネフェリも祝福を眺めながらしんみり言うから、オレの怒りも行き場が無くなってショボショボになっていく。
マネージャー「ですがマレニアさんの今の傷では、回復にもうしばらく時間が必要でしょう。手当できればいいんですが、ローデリカさんの止血以外に、私たちに出来ることが無さそうなのが痛いですね」
ローデリカ「回復の祈祷なら、マレニア様の傷も癒せるとは思うのですが…私も信仰心が強いわけではないですから…」
怪我の治りが遅いマレニアを心配して、マネージャーとネフェリとローデリカの3人で、マレニアを祝福に休ませたまま、ここから先をちょっとだけ探索することが決定。結局オレはマレニアとネフェリにろくに言い返せないまま祝福を離れていく。アイツが激エロなパンツ履いてるってこと、マネージャーにも教えてやろうか迷うぜ。
拓也「あっ!」
そして階段を登ってすぐに見える広場では、さっき戦ったばかりの血没紳士の用意した、血の池プールによる集団血没プレイが繰り広げられていた。
212
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/28(土) 01:06:39 ID:Bbhv4U.Q
この続編超助かる!
213
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/31(火) 22:11:26 ID:JgJwEPBA
血の貴族「ほら、しろがね、笑って!」
しろがね1「ウッス!」
血の貴族「名誉ある血の民となったお前の泳ぎを見せてもらおうか!お前は往復だ!」
しろがね2「ウッス!」
血の貴族「お前は全身から針を出して往復だ!」
しろがね3「ウッス!」
血の貴族「バカ野朗!誰が上がっていいって言った!お前は10往復しろ!」
しろがね4「ハァ、ハァ、ス、スミマセン」
目の前で繰り広げられる、縛って沈めて斬りつけて刺してエグっての、あまりにもハードすぎる血没プレイにオレ達全員が絶句するなか、一人で場を支配している血没紳士からの苛烈な調教は続いて、血の池プールを泳ぎまくるカエル人間たちは次々に沈みまくり溺れまくり、白目剥いて吠えまくりの全身出血状態に落ちていく。殺戮としか言いようのないチョーSプレイの内容に銀色の死んだガタイがプールに次々と浮かび上がり、水面を埋め尽くしながらオレ達にも自動的にルーンの嵐が舞い込む。
しろがね5「ぐぐ、グボグボ…」
血の貴族「おい、誰がルーン出して良いって言ったんだよ!」
血の貴族「そこのお前!お前には好きなの仕込んでやるよ!」
しろがね6「ウッス!」
血の貴族「ほらケツ向けろ!十文字槍仕込んでやるよ!」
しろがね6「マジ許してください!」
しろがね7「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」
血の貴族「良くやったな!でもこれからだよな!お前は穢らわしい擬血を、高貴なる血に入れ替えるんだよな!」
しろがね7「ウッス!ウッス!」
血の貴族「お前は王朝に入った時の誓いを果たせよ!できるよな!休憩は与えないから、王朝開闢まで血の底に沈め!」
しろがね8「ウッス!」
血の貴族「出来なかったらどうすんだ!?言ってみろ!」
しろがね8「ウッス!忌まわしき黄金律の前に引きずり出され、黄金波によって塵と化します!」
血の貴族「じゃあ始めろよ!」
しろがね8「うぐ…グボグボ…!」
血の貴族「おい、しろがね、お前は王朝開闢まで出来るって言ったよな?え?」
しろがね8「ウッス!すみません!やります!」
血の貴族「ざけんなよ!しょーがねーな!手足切断して血の底に縫い付けるぞ!」
しろがね8「ぐああああ!」
血の貴族「ざけんなよ!誰が死んでいいって言ったんだよ!使えねー!」
血の貴族「いつかお前らに恨まれてモーグ様が殺されても、俺のせいじゃねーからな!」
拓也「ウッス!」
血の貴族「おぅ、生きてたか拓也。血中ブリッジ王朝開闢、できるよな?」
ネフェリ「あっ!?」
マネージャー「拓也っ!?」
ハメられた!あまりにも懐かしすぎる光景に、つい我を忘れてプールに飛び込んでいた拓也に、鬼のコーチの戦技が飛ぶ!でもそこにマレニアの緊急水鳥乱舞が入って、紳士は慌ててバックステップ、オレは間一髪で助かった。あぶねー!生肉団子と苔薬が無いから、もし斬られでもしたら死ぬところだったぜ!
214
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/31(火) 22:17:51 ID:JgJwEPBA
マレニア「不安を覚えて来てみれば…このありさまか…」
拓也「ウッス!すいません!つい飛び込んじゃいました!」
プールにプカプカ浮いてるオレの周りでは、プールから上がった瀕死のカエル人間をネフェリが次々斬り倒してるし、こりゃ泳いでる場合じゃねーって判断した拓也は手を差し伸べてくれるマレニアの手を取った。
拓也「あ、ヤベー!」
そのマレニアの背中に紳士はタックルをキメて、派手な血しぶきを上げてプールに水没。助けなきゃって思った拓也も急いで潜水すると、血の海の中ではあのマレニアが、徹底的にあのマレニアが、血没紳士に痛めつけられていた。
血の貴族「マレニア!お前は血中ブリッジ王朝開闢、いけるよな!?義手は手錠で固定するぞ!義足は足枷で固定するぞ!左手はロープで拘束するぞ!」
マレニア「ぐぐ…グボグボ…!」
ヤバいぜ!水を得た魚のように超スピードで動き回る紳士に剣も全部はじかれて、腹筋ボコボコにパンチ食らったマレニアは手も足も出ずにやられてグッタリ。一瞬で義手と義足も外されてプールに固定され、ダルマ状態で首を絞められている。オレは急いで浮上してネフェリに「やべーよ!プール壊さないとマレニアが死んじまうぜ!」って緊急報告。驚愕の事実に焦ったネフェリは相手にしてるカエル人間を斧でファックしたあとにプールに突き落とすと、その場で斧に雷をまとわせて嵐を作り、プールの壁を叩き割って血の池を全部抜いた。
ネフェリ「離せ!」
空のプールに飛び込んだネフェリが、紳士の背中に斧を叩き込むと、紳士は怒りの声をあげてネフェリに剣を振り回す。
でもここにはお前の好きな闇も、血の池もねーぜ!
血の貴族「ぐあーっ!」
ネフェリに向かって突きを繰り出した紳士は、ネフェリからのすれ違いざまのカウンターを胴体に受けて大量出血。そのあとに「マレニア!お前はこのプールで練習してから帰れ!約束だぞ!」って負け惜しみを叫びながら、崖から飛び降りて姿を消した。得意な戦い方を封じたらどうってこと無い奴で助かったぜ。
マレニア「ハァ,ハァ、な…何者なんだ、あれは…」
ネフェリ「これは、手ひどくやられたな…万全ではないとはいえ、あのマレニアをこうまで抑え込むとは…」
ダルマ状態で転がるマレニアに、ネフェリが近づいていって義足と義手をハメていく。マレニアはかなりの恐怖と敗北感を味わったみたいで、寝転がったままハァハァ息切らせて、下唇を噛んで左手で目元を隠してる。あんなの相手に水中で戦ったら誰でも勝ち目はねーよって言っても慰めにはならないだろうから、オレはエチケットを遵守してネフェリを手伝うだけだぜ。でもこうやってマレニアを組み立ててると、デカいプラモデルを作ってるみたいでちょっと新鮮だよね(笑)
マネージャー「とんでもない強敵でしたね…もしかして、今のがモーグだったのでしょうか…」
マレニア「いや、あれではない…あれはモーグの腹心のひとりに過ぎん…あれほどの手練れは、見たことがなかったが…」
ネフェリ「モーグが死んでもオレのせいではない、などと言っていたが、あれで腹心なのか?」
ローデリカ「忠誠を軽く捉え、容易くことを成してしまう者もいます。あれもきっと、そうだったのでしょう…」
マレニアの組み立てが完了すると、目の前のチョーデカい石のエレベーターを見て、マネージャーがこの先を登るか登らないかを分析。その間にマレニアをどうするかって話をネフェリ、ローデリカ、拓也の3人で話し合ったけど、満場一致でマレニアを休ませることに決まった。脇腹の傷はまだ塞がってないし、さっきの紳士の猛攻に全身をやられてるから、身体中が細かい傷とアザだらけだからだ。マレニアは最初「私はまだ…」って言いかけたけどネフェリとのことを考えて
マレニア「…いや…私はここで待つ。昇降機の上は、貴公らだけで見てくれ」
って待機を決める。これだけの連戦で回復もできないんじゃ、神人とはいえ危ないもんな!
良いぜ!俺たちで調べてやるぜ!ってオレが息巻いてると、マネージャーからも報告。「拓也?この昇降機はどうやら動かせるようです。上を少し見て、何も無いようであればマレニアさんを呼んできましょう」とプランが決まる。
拓也「ウッス!行ってきまっす!」
マネージャー「くれぐれも安静にしててくださいね」
オレ達が乗ったエレベーターは、ネフェリのレバー操作と同時にゴリゴリと音を立てて上がっていく。
ローデリカが小さく手を振ると、座って待機してるマレニアも小さく頷いた。
215
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/31(火) 22:27:39 ID:JgJwEPBA
マレニア「………」
血の貴族「前回の約束を果たせよ!」
マレニア「!?」
血の貴族「血中ブリッジ王朝開闢、できるよな!マレニア!今回は犬もたくさん連れてきたからな!」
マレニア「お、お前、まだ…!」
血の貴族「少し休憩を与えたから、王朝開闢まで血の底に沈め!」
216
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/31(火) 22:44:31 ID:JgJwEPBA
マレニアを下の方で待たせてる間に、オレ達を乗せたエレベーターは登りきって、デカい広場に到着。エレベーターを降りると広場の奥にメチャクチャデカい卵?蛾の繭?みたいなのが見えて、そこから乾燥しきった干し柿みたいな細い手が伸びてる。「あれがミケラなんすか?なんかデカくないすか?」ってマネージャーに聞いてみるけど、「ギデオンの資料では、ミケラは永遠に幼い神人と書いてましたが…たしかにあの手は相当大きいですね。別人のものじゃないですか?」ってオレの疑問を見透かしたみたいな答えだ。
ローデリカ「あの繭から気配を感じます。まるで眠っているかのよう…」
ネフェリ「手を上げて眠っているとも思えん。お前たちはここで待て、私が探りを入れる」
ネフェリがエレベーターにオレたち3人を待機させて、2本の斧を持ち直して、デカい広場をそろりそろりと進んでいく。繭はピクリとも動かないし、細い手はずっと伸びたままだ。もしかしたらそういう置物かもしれないぜ。
ネフェリ「ん?」
と思ったら繭から伸びる手がいきなりピクっと震えて、そのままだらんと垂れ下がる。「ネフェリさん!生きてます!確認を急いでください!」直後にマネージャーから指令が飛んで、ネフェリは両手に斧を持ったまま走り出す。そこでローデリカが二言。
ローデリカ「何か変です…混ざり合った気配が大きくなりました…」
マネージャー「混ざり合ったって…何がです?」
ネフェリはどんどん広場を進んで行って繭のそばまで来ると、細い手から血が流れ始めた。ネフェリは警戒して戦闘体勢に入って、その様子は遠くのオレ達からも見える。「マネージャー、ネフェリがなんかしてまっす!細い手から血出てません?」ってオレの言葉に、マネージャーとローデリカも話を中断して広場に目をやる。
マネージャー「血があんなに…まさか、遅かったってことですか?」
ローデリカ「いけない!ネフェリ様を下がらせてください!」
マネージャー「どうしてですか!?」
ローデリカ「今、混ざりが解かれました!片方の気配が近づいて、形もはっきりとしました!」
ローデリカ「あの血はモーグです!ネフェリ様!離れてください!」
ローデリカが叫ぶと、ネフェリの目の前に出来ていた血溜まりから、これまたデカい化け物がググッと出現。さっきの紳士が着てた服よりも更に豪華な赤と黒と金の服を着て、SMに使えそうな三叉の槍を持って、頭からはちん毛そのものみたいなツノを生やしている。そいつは細い手を取ってから、こっちまで聞こえてくる囁き声を細い手にかける。
モーグ「私のミケラよ」
モーグ「少しだけ、独りでお待ちください」
モーグ「賓客が参りました。我らの素晴らしき王朝に!」
血溜まりから現れたモーグが寿司屋の社長みてーなポーズを取ると、ネフェリが「おおおお!」って戦いの咆哮を上げる。戦いの開始だぜ!でも同時にオレ達と広場を繋ぐ入り口に小便色の霧が立ち込める。「なんだよこれ!行けねーじゃん!」ってオレがパニくってると「きゃあああ!」ってローデリカの悲鳴。見ると、エレベーターのオブジェがカエル人間に変身して、エレベーターのレバーを武器で叩き壊していた。広場からはすでに戦ってる音が聞こえ始めてて、マレニアを呼ばなきゃってエレベーターの下を覗いて、拓也は絶望に足が竦む。
エレベーターの遥か下では、大量の犬とカエル人間を引き連れてマレニアを追い回してる、あの優しそうな顔の紳士の姿があった。マレニアは飛びかかってくる奴をひとり斬って一匹斬ってって繰り返してるけど、カエル人間の針や犬の噛みつきで少しずつ傷ついていってる。
ネフェリはモーグにかかりきり。マレニアは今にもやられそう。
エレベーターにはカエル人間。マネージャーとローデリカを守れるのは拓也だけ!
拓也「うおぉーっす!」
チクショー、やってやるぜ!
恐怖と絶望を振り払うかのようにオレは剣と盾を構えた。
217
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/31(火) 22:51:17 ID:JgJwEPBA
拓也の前に現れたカエル人間は、先っぽが曲がりくねった槍?鎌?みたいなのを持って、側転しながら襲ってくる。オレはそれを横飛びでかわして、通り過ぎたところを斬ろうとするけど武器が全然届かねーよ!カエル人間は側転をやめて今度はマネージャーを斬ろうとするから、オレは剣なんか届かないから盾を肩に密着させて思いっきりタックルをする。でも全然効かなくて、振り回された鎌に殴られて転ばされる。あーあ、ネフェリやマレニアだったら3秒以内にぶっ倒してるのにな、って思いながらまた立ち上がり、今度はカエルの貧弱な下半身を思いっきり剣で殴った。
しろがね人「オアーッス!」
カエル人間はすっ転んで、オレに容易くマウントポジションを許した!下半身をちゃんと鍛えてないからこんなことになるんだぜ!オレは両手に持った剣と盾で、とにかくカエル人間をなぐりまくると、少しは効いてるみたいで悶絶の声を上げ始める。霧の奧からは炎が燃える音と石が砕ける音がするし、エレベーター下では犬が吠えまくってて剣がぶつかる音が掻き消されてる。マネージャーとローデリカは抱き合って震えてるから、オレが頑張んなきゃダメだよな!ここで負けたら拓也の男が廃るぜ!
拓也「おううぅっす!」
マウントとって殴りまくってたら、デカい腹を思い切り突き上げられてオレは後ろにすっ転んで、起き上がったところを鎌の棒の部分で腹を殴られる。でもこれが幸いしたぜ!オレの激エロなゲロは紳士までも即イキさせるマジックアイテムだからだ!オレは吐きそうになったところをカエルの奴に強引にキスしにかかり、カエルのデケー口に特別サービスを注ぎ込む。
しろがね「弧゜ッ!」
ローデリカ「弧゜ッ!」
マネージャー「弧゜ッ!」
オレのゲロを一滴残らず胃に流し込まれたカエル人間は、自分の中から湧き上がる激エロな媚薬フェロモンに脳を犯されてマジ狂い!断末魔みてーなイキ声を上げて自ら死を選ぶように側転しながらエレベーターから飛び降りて、下にいる犬を一匹叩き潰して命が終了。そのあとオレはエレベーターのレバーの折れた部分に手を入れて、なんとか動かそうとするけどビクともしないし、マネージャーに
「エレベーターを動かせるようにするのはいいですが、今エレベーターを動かして下に降りても、マレニアさんの足手纏いになるだけです!ですが霧の奧ではモーグとネフェリさんが戦っていますので、霧の向こうにもいけません!マレニアさんが下で勝つことを祈るしか無いんです!」
って言われた。焦った拓也は、小便色の霧がかかった入り口の横をよじ登って、広場を覗けるアーチ状の穴からギリギリで顔を出す。広場の中では、ネフェリがモーグの血液攻撃を避けて転げ回っていた。モーグの血はめちゃくちゃ熱いらしくて、石に当たると石が真っ赤に燃え上がる。お前エイリアンみてえだな!
ネフェリはその炎も避けながらモーグに近づいて、一発二発と斧を当てていくけど、ダメージは小さいみたいでデカい三叉槍を振り回されて距離を取らされる。それで離れるとすぐに燃える血のシャワーを浴びそうになるから、ネフェリはデカい槍を掻い潜って結局モーグに近づくしかない。
拓也「あぶねー!」
でも近づくとモーグは炎の爆発で迎え撃ってくるから、ネフェリにとっては最悪にやりづらいヤツだぜ!ネフェリは横にダッシュしてモーグの背後に回り込む作戦に移って、それはうまくいって何発かモーグを斬れたけど、かわりにスゲー勢いの槍の横振りを喰らってぶっ飛び、起き上がりながら聖杯瓶を一発キメる。あの聖杯瓶が尽きたらヤバいぜ!
218
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/31(火) 22:57:59 ID:JgJwEPBA
オレはマレニアがどうなってるかも気になるけど、ネフェリがどうなっちゃうのかも気になって動けない。マネージャーとローデリカはエレベーター下を覗き込んでマレニアがどうなってるかを確認しようとするけど、その度に紳士からの血のナイフが飛んできて、危うく顔に刺さりそうになるから覗くに覗けない。結局ふたりは諦めて拓也と合流。
拓也「マネージャー!どうすればいいんすか!?」
マネージャー「と、とにかく昇降機のレバーを使えるようにします!棒の部分を何かで代用できれば…」
そういってマネージャーとローデリカはあたりを探すけど、そんなのここにあるわけねーよ!カエル人間の武器は使えそうだったけど、アレもエレベーターの下に落ちちゃって取れるわけない。そんなこと考えてたらネフェリとモーグの方から赤い光が迸った。
モーグ「トレース!」
モーグは三叉の槍を勃起しまくりのデカマラ以上に赤く光らせて、ネフェリの胴体に赤くてデカいコックリングをハメる。ネフェリは一瞬戸惑ったけど、モーグが槍を振り回してくるせいで悩んでる暇も無くなったみたいで、また戦闘モードに入って突撃、モーグの足を斧で斬りまくる。血が出てるのにモーグはまだまだ元気そうで、また三叉槍を掲げる。
モーグ「ドゥオ!」
槍が光ると、またネフェリのガタイに赤いコックリングが装着されて、フラフープみたいになってきた。ここまでくるとオレのガタイも嫌な想像を働かせて、あの光は罠だな、時間が経つと爆発するんだな、時間が来るとネフェリが性転換するんだなと分析が入る。その間もモーグはデカ槍をネフェリに振り回して、ネフェリがそれを避けた瞬間に、避けた先の床に燃える血を投げ込んでジワジワネフェリを追い詰めていく。普通に戦っても強いのに、炎の血と得体の知れない技も使ってきて、コイツは技のデパートかよ!
マネージャー「あ!」
ローデリカ「これは…ルーンが…」
気付くとエレベーターの下から大量の黄金色の光が立ち昇って、ローデリカとネフェリとモーグのガタイに入っていく。マジで川みたいにとんでもない量のルーンだったから、オレの脳裏に最悪の妄想がよぎる。するとモーグが攻撃を止めて、勝ち誇るかのように槍を床に立てて宣言した。
モーグ「おお!ルーンよ!我が王朝を祝福せよ!」
モーグ「マレニアは遂に討たれ、開闢を阻みし者はまたひとり倒れた!」
モーグ「我らが王朝に栄えあれ!」
マジかよぉ!?マレニアが倒された!?信じらんねー!
オレは急いでエレベーターの隅っこまで駆けて行って下を覗こうとしたけど、必死の顔したマネージャーに止められる。「拓也!顔を出しちゃダメですよ!モーグの言葉が正しいなら、マレニアさんを倒した敵は次に私たちを狙うはず。顔を少しでも出せば射殺さてしまいます!」それはそうかもしれないけど、今のが嘘かもしれないじゃん!って言うと、ローデリカも「多くの魂が放たれた感覚はありました…そして、マレニア様の気配も、昇降機の下から消えました…」なんて不吉なことを言ってくる。ミリセントがいなくなった時の光景が頭の中に蘇ってきて、マジ狂いそうになりながらオレはまた壁をよじ登って広場を見た。
ネフェリ「マレニアが…討たれた…?」
モーグ「真実の母の祝福に選ばれし猟犬どもが、恐らくは討ったのだろう」
モーグ「我が賓客よ、褪せ人よ。今こそ我が王朝に血を捧げ、開闢の糧となりたまえ!」
モーグ「ウーヌス!」
槍がまた輝くと、ネフェリのガタイにまたコックリングが装着されて、拓也の全身にも鳥肌が立つ。
「やべーっす!」そうオレが叫ぶと同時にネフェリも走り出す。
斧に雷を纏わせて決死の猛攻に入る気だ。モーグがそんなネフェリの前でまた槍を光らせた。
モーグ「ニーヒル!」
槍が光るとネフェリは全身の穴という穴から、血をドバーっと吹き出してその場に膝をつく。飛び出した血は全部モーグの方に飛んでいって見えなくなる。やべーよ!血を吸って殺す気だ!って拓也は助けを誰かに求めるけど、マネージャーにもローデリカにもどうしようもないし、マレニアは助けに来なかった。頭上を通り過ぎていったルーンがどこからきたのか、オレの絶望が確信へと変わる。ネフェリは震える手で聖杯瓶をキメるけど
モーグ「ニーヒル!!」
モーグの繰り出した二発目でまた全身から血を噴き出すと、意識を無くしてぶっ倒れた。「あーっ!おぅううっす!」オレも絶望と焦燥に駆られて、たまらず体揺らして吠えまくってると、モーグは槍を構えて
モーグ「ミケラは私のものだ!」
モーグ「ニーヒル!!!」
と言って止まった。
槍は突き上げたけど光らないし、モーグは槍を掲げたポーズでプルプル震えてる。
何が起こったのか分かってなくて、オレも鼻水垂らしていると
モーグ「弧゜ッ!!!」
モーグは激エロなフェロモンにイッたみたいに痙攣して、血を吐きながらその場に尻もちをついて、腹や喉を抑えて苦しみだす。マジかよ!オレのフェロモンがモーグに届いたのかよ!って小躍りしそうになったけど、いくら激エロのモロホストのフェロモンでも血を吐いて苦しむほど気持ち良くはないはずだよな。持病でも持ってたのかな?って小躍り乳首で分析をするけど、答えはすぐに現れてくれたぜ。
219
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/31(火) 23:34:52 ID:JgJwEPBA
オレはマレニアがどうなってるかも気になるけど、ネフェリがどうなっちゃうのかも気になって動けない。マネージャーとローデリカはエレベーター下を覗き込んでマレニアがどうなってるかを確認しようとするけど、その度に紳士からの血のナイフが飛んできて、危うく顔に刺さりそうになるから覗くに覗けない。結局ふたりは諦めて拓也と合流。
拓也「マネージャー!どうすればいいんすか!?」
マネージャー「と、とにかく昇降機のレバーを使えるようにします!棒の部分を何かで代用できれば…」
そういってマネージャーとローデリカはあたりを探すけど、そんなのここにあるわけねーよ!カエル人間の武器は使えそうだったけど、アレもエレベーターの下に落ちちゃって取れるわけない。そんなこと考えてたらネフェリとモーグの方から赤い光が迸った。
モーグ「トレース!」
モーグは三叉の槍を勃起しまくりのデカマラ以上に赤く光らせて、ネフェリの胴体に赤くてデカいコックリングをハメる。ネフェリは一瞬戸惑ったけど、モーグが槍を振り回してくるせいで悩んでる暇も無くなったみたいで、また戦闘モードに入って突撃、モーグの足を斧で斬りまくる。血が出てるのにモーグはまだまだ元気そうで、また三叉槍を掲げる。
モーグ「ドゥオ!」
槍が光ると、またネフェリのガタイに赤いコックリングが装着されて、フラフープみたいになってきた。ここまでくるとオレのガタイも嫌な想像を働かせて、あの光は罠だな、時間が経つと爆発するんだな、時間が来るとネフェリが性転換するんだなと分析が入る。その間もモーグはデカ槍をネフェリに振り回して、ネフェリがそれを避けた瞬間に、避けた先の床に燃える血を投げ込んでジワジワネフェリを追い詰めていく。普通に戦っても強いのに、炎の血と得体の知れない技も使ってきて、コイツは技のデパートかよ!
マネージャー「あ!」
ローデリカ「これは…ルーンが…」
気付くとエレベーターの下から大量の黄金色の光が立ち昇って、ローデリカとネフェリとモーグのガタイに入っていく。マジで川みたいにとんでもない量のルーンだったから、オレの脳裏に最悪の妄想がよぎる。するとモーグが攻撃を止めて、勝ち誇るかのように槍を床に立てて宣言した。
モーグ「おお!ルーンよ!我が王朝を祝福せよ!」
モーグ「マレニアは遂に討たれ、開闢を阻みし者はまたひとり倒れた!」
モーグ「我らが王朝に栄えあれ!」
マジかよぉ!?マレニアが倒された!?信じらんねー!
オレは急いでエレベーターの隅っこまで駆けて行って下を覗こうとしたけど、必死の顔したマネージャーに止められる。「拓也!顔を出しちゃダメですよ!モーグの言葉が正しいなら、マレニアさんを倒した敵は次に私たちを狙うはず。顔を少しでも出せば射殺さてしまいます!」それはそうかもしれないけど、今のが嘘かもしれないじゃん!って言うと、ローデリカも「多くの魂が放たれた感覚はありました…そして、マレニア様の気配も、昇降機の下から消えました…」なんて不吉なことを言ってくる。ミリセントがいなくなった時の光景が頭の中に蘇ってきて、マジ狂いそうになりながらオレはまた壁をよじ登って広場を見た。
ネフェリ「マレニアが…討たれた…?」
モーグ「真実の母の祝福に選ばれし猟犬どもが、恐らくは討ったのだろう」
モーグ「我が賓客よ、褪せ人よ。今こそ我が王朝に血を捧げ、開闢の糧となりたまえ!」
モーグ「ウーヌス!」
槍がまた輝くと、ネフェリのガタイにまたコックリングが装着されて、拓也の全身にも鳥肌が立つ。
「やべーっす!」そうオレが叫ぶと同時にネフェリも走り出す。
斧に雷を纏わせて決死の猛攻に入る気だ。モーグがそんなネフェリの前でまた槍を光らせた。
モーグ「ニーヒル!」
槍が光るとネフェリは全身の穴という穴から、血をドバーっと吹き出してその場に膝をつく。飛び出した血は全部モーグの方に飛んでいって見えなくなる。やべーよ!血を吸って殺す気だ!って拓也は助けを誰かに求めるけど、マネージャーにもローデリカにもどうしようもないし、マレニアは助けに来なかった。頭上を通り過ぎていったルーンがどこからきたのか、オレの絶望が確信へと変わる。ネフェリは震える手で聖杯瓶をキメるけど
モーグ「ニーヒル!!」
モーグの繰り出した二発目でまた全身から血を噴き出すと、意識を無くしてぶっ倒れた。「あーっ!おぅううっす!」オレも絶望と焦燥に駆られて、たまらず体揺らして吠えまくってると、モーグは槍を構えて
モーグ「ミケラは私のものだ!」
モーグ「ニーヒル!!!」
と言って止まった。
槍は突き上げたけど光らないし、モーグは槍を掲げたポーズでプルプル震えてる。
何が起こったのか分かってなくて、オレも鼻水垂らしていると
モーグ「弧゜ッ!!!」
モーグは激エロなフェロモンにイッたみたいに痙攣して、血を吐きながらその場に尻もちをついて、腹や喉を抑えて苦しみだす。マジかよ!オレのフェロモンがモーグに届いたのかよ!って小躍りしそうになったけど、いくら激エロのモロホストのフェロモンでも血を吐いて苦しむほど気持ち良くはないはずだよな。持病でも持ってたのかな?って小躍り乳首で分析をするけど、答えはすぐに現れてくれたぜ。
220
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/01/31(火) 23:51:40 ID:JgJwEPBA
拓也「おーっ!」
広場の奧の壁に立つのは、あのマレニアだった!
全身傷だらけで義手の剣も血だらけだし、左手には例の歯をガチガチ鳴らしまくってる犬を抱えてて、犬の顔も血で真っ赤に染まってる。小便色の霧もふっと消えて、モーグがぶっ倒れてるってことをマネージャーとローデリカに知らせてから、オレ達三人もネフェリの元へ駆けていく。
マレニア「腐敗した我が血は、さぞ美味しかろう、モーグよ」
ギン目でモーグを睨みつけるマレニアは、ジャンプしてモーグの前に着地。
義手で胸ぐらを掴んで持ち上げると、モーグの巨体が宙に浮く。スゲー!クレーン車みたい!
モーグ「ありえぬ…何故生きている…」
理解が追いついてないモーグに、マレニアは「あのルーンのことなら、あれはお前の犬の仕業だ」と言いながら、左手に抱えてる血だらけの犬を見せつけてから、犬を広場の外に放り投げる。やられたぜ!犬を一匹捕まえて、そいつを武器にして全ての敵を瞬殺したんだな!あの大量のルーンもその時出たんだな!崖を跳んで伝って広場の裏に回り込んでいたから、エレベーターの下から気配が消えてたんだな!モーグに自分の血を吸わせて腐敗をポジらせたんだな!ってオレのガタイ考察にも次々答えがもたらされる。
モーグもそれが分かったみたいで「まさか、このような事が…」って、いかにも作戦が失敗した悪役って感じのセリフを吐く。
ローデリカ「ネフェリさんは生きてます!聖杯瓶も全て飲ませました!もうすぐ目が醒めるはずです!」
マネージャー「よかった…なんとか間に合いました…」
ネフェリもギリギリで助かって、オレもホッと胸とマラを撫で下ろす。
マレニアが片手でモーグを締め上げると、モーグが爪先立ちになった。
マレニア「洗いざらい吐いてもらうぞ、モーグ」
マレニア「兄様をどこへやった?」
221
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/02/05(日) 06:17:50 ID:0LCL7WDg
モーグ「う…うぐ…グボグボ」
拓也「その持ち方まずいっすよ!オチちゃいますよ!」
マレニアはアドバイスにしたがって、気絶寸前のモーグを床に下ろしてから、気付にピンタを一発飛ばす。「まだ死ぬことは許さん。兄様をどこへやった」静かにブチ切れてるマレニアの前でモーグは牙だらけの口をぐにゃっと曲げて笑ってみせた。
モーグ「今日は賓客が多い…もてなしが追いつかぬようだ…」
モーグのニヤついた顔に、今度はピンタではなくパンチが飛ぶ。牙を6本と口の周りのツノを2本撒き散らして、モーグの頭がボクサーが練習に使ってる小さい玉みたいにブルルンと揺れる。「もう一度聞く。兄様をどこへやった」マレニアの口調もテンションも変わらない。
モーグ「ことを急くな…ミケラは我が王朝と深く関わる…話が長くなるのでな…」
モーグの口からは血と一緒に白カビが流れ出してる。こりゃ先も長くねーなってガタイで分析するまでもない状態だけど、モーグの口からは笑みが離れない。なんでそんなに余裕そうなのかが分からなくて気持ちが悪いぜ。オレの後ろではネフェリが目を覚まして、体から流れた血を拭っている。モーグの敵がマレニア以外にもう一人増えたけど、それでもモーグの表情は勝ち誇っていた。
モーグ「ミケラは、この私を愛したのだ、マレニアよ…」
モーグ「この私に狂い火の守りを任せ、聖樹に妹を残し、私との繭を作り上げるほどにな」
マレニア「…軽々しく、ミケラなどと…」
マネージャー「マレニアさん、今は彼に喋らせましょう。どうせ長くはありません。情報を聞き出したあとは煮るなり焼くなり、あなたのやりたいようにして構いません」
声を震わせたマレニアをマネージャーが静かにさせると「気を遣わせてしまったようだ。続けて構わぬかな?」ってモーグからの挑発が入る。マレニアが挑発に耐えると、話の続きが始まる。
モーグ「ミケラは我が心を見透かし、王朝の開闢に力を貸したのだ。…エルデンリングが砕かれる前に、私が力を強め、国々の貴族共に血の祝福を広めることを、ミケラは見逃した。許したのだ」
モーグ「故に私は、私が望むがままを行ったのだ。ミケラが私に望むというのなら、何者がそれを咎めようか」
モーグ「私は王朝開闢を阻む者を、みな取り除いたにすぎぬ」
モーグ「遺跡に住まう祖霊にすがる者達も、我が領地を荒らす悪意ある星の子らも」
モーグ「ミケラの意思を揺らがせる妹も…そしてあの、最強のデミゴッドたるラダーンさえもな」
その瞬間にメチャクチャな違和感が走って、広場が静かになる。オレも違和感の正体に気づいたからマネージャーを見ると、マネージャーがマレニアに「…話が…違ってる?…」って呆然として顔で語る。そのマレニアは眼を見開いて、手には震えがきていた。
マレニア「……ラダーン?…」
マネージャー「変ですよこれ…だってマレニアさんは…モーグの腹心から聞き出したはず…確か…」
マネージャーの口から腹心って言葉が出た瞬間に、モーグのニヤついた口が吐息を漏らす。
俺の脳裏にまた最悪な妄想が出てきて、サングラスもずり落ちる。
マネージャー「モーグがラダーンに取り入り…ラダーンがモーグを匿っ…た…」
マネージャー「うそ、なにこれ…」
気付きは俺たち全員に伝わっていって、俺は全身に鳥肌が立って冷や汗が吹き出すし、ネフェリとローデリカの顔からも血の気が引いて、驚愕の視線がマレニアの後ろ姿に集まる。決定的な何かが白日の元にさらされて、気付いた時には、何もかもが手遅れだった。
モーグ「この私が、ラダーンなどという愚昧なる者を、信じると思ったのかね?」
モーグ「取り入ってもおらぬ。匿われたこともない。彼奴はこの私に、体よく使われたに過ぎぬ」
モーグ「ミケラの刃、マレニアと相討たせるためにな」
222
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/02/05(日) 06:27:24 ID:0LCL7WDg
マジ?これって謀り?マレニアはフラフラっと後ろに下がって、義手はブランと垂れ下がって左手はフルフルと震える。俺達は咄嗟に駆け寄ったけど、駆け寄っただけで、かける言葉が見つからない。
マレニア「…何を…お前は…」
モーグ「この血の君主に信奉者はいれど、腹心などおらぬ…我が王朝は私とミケラだけのもの…」
モーグ「血の貴族を称する者達に、私が真実を語る道理はない。語れば、王朝の秘匿が、どこぞの輩に破られるかもしれぬのでな」
話しながらモーグは咳をする。
口からは更に血が流れて、顔の表面には極小の赤いデキモノがいくつか現れ始める。
モーグ「ゆえに、聞き出した真実などというのは、我が王朝には存在せぬ」
モーグ「全ては、破砕戦争を誰も勝ち得ぬもとして、王朝を完全なものとするための布石」
モーグ「謀よ…」
マレニアがその場に崩れ落ちて、ネフェリに背中を抱き止められる。
呼吸は浅く乱れて、顔色は人形みたいに白くなってて、開かれた両目からは涙が伝う。
マレニア「嘘だ…」
マレニア「そのようなことは、ありえぬ…ラダーンは…」
モーグ「フフッ、ラダーンか…」
モーグ「彼奴は悪意ある星々に対し、無力となりつつあった黄金律を、見限ったに過ぎぬ」
モーグ「サリアを襲いし流星にも、エルデの全土に降り注ぐ星々にも、黄金律は無力であり、ラダーンの星砕きの力も無限ではない」
モーグ「希少な重力魔術の使い手がいかに奮起したとて、それでは手が足りぬ。全土を襲う星々を、星々から生じる獣を、悪意と共に来たるアステールの全てを、打ち破ることはできぬ」
モーグの腐敗は更に進んで、赤いデキモノは少しづつ増えてきて、ツノもとうとう一本落ちる。それでもモーグの顔からは勝ち誇った表情が剥がれない。今のコイツは俺たちを、何よりマレニアを弄ぶために自分の命を全部使う気でいる、プロ超えのチョーS野朗だ。
モーグ「ゆえに彼奴は望んだのだ。黄金樹を有する王都を襲い、王位を簒奪し、全土を護る新たな王として君臨することを」
モーグ「ラダーンは黄金律に反旗を翻した。ゆえに律に楯突く裏切り者ではあろう。だがお前の腐敗に落とされるいわれは微塵も無い」
モーグ「マレニアよ。お前はそのような者のいる地を襲ったのだ。お前に奪われる故など無い者たちから、お前は全てを奪ったのだ」
モーグ「土地を枯らし、老兵の首を取り、女子供を腐らせ、彼らの支えとなった男に、尽きることのない苦しみを与えた」
モーグ「故郷も、尊厳も、歴史をも消し去り、全てを泡吹く肉塊と、悪臭を放つ汚泥の山と、蠢く菌糸に永久に変えたのだ」
モーグ「敵と疑わしき者がいる。ただ、それだけのために」
俺たちはハメられた。座っているのも辛くなったマレニアが、床に手をついて涙垂れ流してすすり泣く。全部モーグのデチ上げで、全部ウソなんじゃねーかって可能性も一応考えたけど、ここに来る前のマレニアの話とケイリッドで見た激腐れな光景がそれを否定してくる。
頭の中に、ミリセントと睨み合いになってる最中に大剣を手離したラダーンの姿が映る。なんでラダーンはあの時剣を離したのか、どうしてミリセントを斬らなかったのか、その疑問にモーグの話が組み合わされて残酷な妄想ゲームの始まり。マジで陰惨な可能性が乾くことなく拓也の思考に垂れ流される。
ラダーンは本当は、マレニアが騙されてることを知ってたのかもしれない。でも当時は世界中が破砕戦争でマジ狂い状態だし、しかもお互い敵同士で、マレニアは確かな情報をモーグの部下から聞き出してると信じてた。だからラダーンが口で言っても、マレニアはラダーンを信じなかったのかもしれない。だからラダーンはマレニアのことも見逃そうとしたのかもしれない。あの時の慟哭砂丘でミリセントを見逃そうとしたみたいに。
モーグの頭からツノがまとまって落ちると、その口からもドクッと血が溢れて、口の牙も抜け落ちる。
顔のブツブツは大きいキノコみたいになっていく。
223
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/02/05(日) 06:31:10 ID:0LCL7WDg
モーグ「ミケラは…あの繭の中にいる…」
モーグ「我が王朝は滅びぬ…我が血は多くの者に継がれ……いつしかミケラも…蘇る…」
モーグ「無垢なる黄金と…我が血が絶えぬ限り…王朝は開闢を待つ…」
モーグ「…我が素晴らしい王朝…モーグウィンは…」
頭がどろりと溶けてモーグは死んだ。そのモーグに近づいていったネフェリは、服だけ残して溶けまくりの死体を斧で突いたあと、モーグが言い残した言葉をたよりに繭によじのぼって中を見る。そのあとに戻ってきて、伏せた姿勢ですすり泣くマレニアに語りかける。
ネフェリ「あの繭を見てきたが、中にあるのはトロルの死体だ。お前の兄はいなかった」
するとネフェリに、目を見開いて涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってる顔が向けられて、ネフェリの顔が一気に強張る。
マレニア「ほ…本当…か…?」
ネフェリ「あ…ああ、本当だ。あれは巨人の死体だ」
マレニア「そ…そう、なのか?ローデリカ…そうなのか…?」
突然マレニアに答えを求められて、ローデリカは咄嗟に「はい」とも「いいえ」とも言えなかったけど、それがマズかった。マレニアはヨロヨロと立ち上がって、千鳥足を無理矢理真っ直ぐに進ませてるみたいな動きで、繭に向かって駆け出す。ネフェリは「マレニア!何も無いんだ!」って叫んだけど、それは「何かがある」って言ってるようなものなんだよな。マレニアはそのまま走って繭にすがりつくと、「よせーっ!」ってネフェリの抵抗も聞かずに、繭から伸びる手に額をつけて動かなくなる。
それからは嗚咽が聞こえてきて、一番考えたくなかった展開が来たことに、どうしようもないやるせなさを感じまくりながらオレ達は走る。繭につくと、枯れ木みたいになった手に縋り付いて座ってる、泣いたマレニアがいた。ネフェリには繭の死体が誰のものなのか分からなかったし、マネージャーとオレにも分からなかった。ローデリカは分かってても言わなかった。でも昔のテレビでもやってたけど、双子には不思議な繋がりがあるんだよ。きっとマレニアにはその繋がりが切れたことが分かったんだよな。
「兄様…兄様…どうか起きてください…」
「マレニアが参りました…どうか…どうか起きてください…」
「どうか私を殺してください…もう生きていたくないのです…」
「私を連れていってください…」
「私の兄様…」
繭から伸びる手にすがって泣くマレニアを、俺たちは何も言わずにそっと抱きしめる。
泣きつかれて眠るまでの数分間をずっとそうしていた。
セクハラになっちゃうかも、とかも拓也は考えなかった。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/02/05(日) 06:39:32 ID:0LCL7WDg
人生窒息プレイ 投稿者:ビルダー拓也
ローデリカからの話だと、モーグウィン王朝で感じた二つの気配は、モーグとミケラのものではあったらしいんだよね。でもミケラの方がイメージが朧げで、誰かに食われて死んでるかフツーに死んでるか判断がつかなかったってさ。訳わかんねーけど、フツーに死んでるならエルデンリングを修復したあとの環樹で生き返らせることもできるみたいだけど、誰かに食われて死んでる場合は、その誰かも環樹に加えないと無理らしいぜ。ミケラの場合は大部分をモーグが信じてる神様に取られてる状態で、エルデンリングを治したり環樹しようとしたりしても無駄らしい。その神様をエルデンリングの追憶とかいうのにしないと駄目とかで、もうどうすりゃ良いのか分かんねーよ。真実の母ってなんなんだよ。
拓也が円卓についたのは随分前のこと。
泣きつかれて寝ちゃったマレニアをみんなで円卓に運んで、とりあえず円卓のテーブルに寝かせたけど、それから先に何をするのかも俺たちは完全にノープランになってて、しばらく円卓の椅子に座って途方に暮れた。一回ネフェリが「金仮面卿はどうなってる」って言って、それにマネージャーが「まだディアロスさんから連絡はありません。置き手紙や伝言の類いも無いです」って返事したけど、会話はそれだけで2時間以上?3時間以下?はみんな無言でブラブラしたり、ちょっと蟹摘んだり、グッタリしたり、泣き腫らしたマレニアの顔を一瞬見てチョー深いため息をついたりの時間だけが過ぎていった。
そのあとマレニアがチョーダルな感じで起きると、俺たちの緊張感も一気にマックスまで上り詰める。ネフェリやローデリカ、マネージャーまで、マレニアを見ても何かを言ってあげようって雰囲気出して、結局何も言えずに通り過ぎてく。大丈夫?って言っても大丈夫なわけないし、兄ちゃんのこと気の毒だったって話も、気の毒なんかじゃすまねーよって話しかける前から自分で答えが分かるしな。だからここは何も話しかけないのがエチケットって感じでいるしかない。
モーグの最後の悪あがきにやられたぜ。腐敗を食らった後に、抵抗せずに長々と語りまくったのもヤツの作戦だったんだな。
マレニア「……拓也…」
そんな状況でいきなり話しかけられて、気まずさと申し訳なさと気遣い心が一気に振り切れた拓也は「はっ、はん、はい!う、ウッス!」ってケツマンを掘られてるみたいな不自然な返事しちゃうけど、マレニアの表情は落ち込んだままでピクリとも動かない。そりゃしかたねーよ。
マレニア「みな…私を避けているな…」
拓也「いえ、アレっすよ!ほら、アレ!違いますよ!」
マレニアのボソッとした声にもオレはテンパって、大祝福の周りにいる奴らもみんな過剰反応。「そ、そういうわけじゃないですよ。かけてあげられる言葉が見つからないんです…」「マレニア様、それは誤解です。私はただ…」って、マネージャーもローデリカも精一杯の気遣いで「いつも通り」みたいなオーラを出すけど、ふたりの言葉も今のマレニアには届かない。
マレニア「…いいんだ……私など…皆を腐らせるだけだ…」
フラフラっと立ち上がったマレニアが、夢遊病患者みたいな足取りで歩いて行くから、心配になったオレ達はその後をついていく。そしたらトープスのいる部屋に入っていってそこから
トープス「マレニア様!?は、話なら聞きました…お、お気の毒に…」
マレニア「頼みがある…私を…殺してくれないか…」
トープス「えぇ!?む、無理ですよ!そんな罪深い、大それたこと!やりたくない!」
マレニア「頼む…もう耐えられない…生きていたくないんだ…」
かなり面倒なことにトープスが巻き込まれかけたので、ネフェリとマネージャーが部屋に乗り込んで終了。部屋から出てきたトープスは「だっ、大体私は鈍石なんだ!聖杯瓶を全部飲み切ったって、あなたの体に小さなアザを作るのが精一杯ですよ!お力にはなれません!不戦の約定を守ってください!」って逃げて行く。部屋に残ったマレニアはマネージャーの両手を握って、鼻を啜って俯いてた。
でもそれからは、マレニアは何処かの部屋の隅っこでグッタリダウンしてるか、円卓をブラついてるか、発作的に殺してくれって誰かに泣きついてるだけのヤツになってきて、もう神人の威厳とか関係ないし、あまりにも哀れすぎてこれがあのミリセントで、あのマレニアなんだって思いたくなくなってくるぜ。デミゴッドを殺して大ルーンを奪えとか言ってた二本指がいた部屋にまで入って行った時は
マレニア「私は…どうすればいいのですか…トープスも…エドガーも…ネフェリも…どうして私を殺さないのですか…?」
エンヤ婆「かわいそうに。さあて、どうしたものだろうねえ…」
エンヤ婆「指様はあんたを殺すことに、躊躇はいらぬと言うだろうが、その指様は止まっておる。確かなことが揺らぐ今、私はあんたに同情してるよ。あんたに神人の座は重すぎたんだ。何の力にもなれんが、今はただ、気の済むまでお泣きよ」
っておばあちゃんに抱きついて子供みたいに泣きまくりだったし、神人とデミゴッドがなにより嫌いな鍛治職人の混種じいさんからまで「哀れ。己で撒いた種ではあろうが、殺してやるのが慈悲というものじゃないか」って、同じ嫌うにしても前より同情的なことを思われてる。
泣き疲れたり泣き止んだりしたら、それから何時間かは円卓のどこかの部屋の隅で死んだように寝る。起きたらその瞬間に心がメチャクチャになって、一人で泣くことにも耐えられない状態に堕ちて他人に助けを求めてさまよう。そんな息継ぎ皆無な人生窒息プレイ状態が二日間くらい続いて、あのギデオンも含めた全員が一度はマレニアに泣きつかれたことがある円卓になってから
マレニア「どうして死なせてくれないんだ…私が生きて、貴公らに良いことなどあるのか…?」
拓也「良いとか悪いとかの話じゃないっすよ!仲間殺して良いわけないじゃないですか!」
マネージャー「ほら、涙拭きますから動かないでください…」
マレニア「やめっ…そんなこと、しなくていいんだ…私など…」
ネフェリ「マレニア、話がある」
ついにネフェリが新テクを開発したみたいで、オレとマネージャーがマレニアからの恒例お悩み相談を受けている時に、ネフェリが奥の部屋から歩いてくる。それから「頼むネフェリ…殺してくれ…もう、私には何もない…すべてを終わりにしたいのだ…」って泣きついて来るマレニアの前に立つ。
ネフェリ「そこまで死を望むなら、ついてこい。マネージャーと拓也もだ」
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/02/07(火) 01:48:49 ID:QK9dodVU
「ちょっと、それどういう意味なんですか?ネフェリさんあなた…」ってマネージャーが混乱するけど、「いいから来い」の一点張りで押し切ってくるし、どう見ても正気じゃないマレニアをなんとかする方法なんて実際オレも思いつかないから、仕方ないから大祝福に触れる。祝福が光でオレ達を包み込む。どこに行くんだよって思ってたけど、到着した先を見て全身の鳥肌がビルダーガタイを凍えさせた。
拓也「は?」
マネージャー「なっ…なんでここなんですか!?」
着いた先はケイリッドだった!
しかも周りの壁とか建物とかを見て分かったけど、ここって赤獅子城じゃん!
やられたぜ!ネフェリは本当にマレニアを殺す気だ!
とうのマレニアは呆然と立ち尽くして何を考えてるのか分かんねーけど、絶対ろくでもないことしか考えてないぜ。
アレキサンダー「おぉ!?久しいな貴公ら!息災で…」
アレキサンダー「…おおぉ…これはなんとも…凄まじい大英雄を連れてきたな…」
チョー久々にあったアレキサンダーは元気そうでツボの隙間が埋まってる。まぁそれは良いんだけど、後ろから出てきたブライヴも最初は再会が嬉しそうな顔をしたけど、呆然と立ち尽くすマレニアを見てすぐに険しい顔になった。
ブライヴ「こいつ……まさか…」
ネフェリ「そうだ、あのマレニアだ。ラダーン祭りに参加したいそうだ」
拓也「マジかよぉ!?」
マネージャー「なな、なに言ってるんですか!?しませんよ!勝手に決めないでください!」
マネージャーとオレの抗議にネフェリが斧を向けてくる。「…そんなの向けられたって、私は引かないですよ!」ってマネージャーが言うと、強烈なボディーブローが飛んでマネージャーは腹を抱えて曙ダウン。オレもギン目で再びネフェリに抗議。「おい、何してる」ってブライヴの声も無視されたし、やべーよ、こいつマジだ!ネフェリの眼は静かだけど、それだけに行動がカチカチに硬くなってそうで、逆らうと何をされるかわからないって空気がビンビンに張り詰めている。
ブライヴ「…その様子では、お前の独断というわけか、ネフェリ」
ネフェリ「ああそうだ。それで、出られるのか?星辰はまだ満ちているはずだ」
ブライヴ「星辰は満ちたままだが…こいつ、本当にマレニアか?随分腑抜けた面ではないか」
ブライヴがマレニアの顔を覗き込むと、マレニアがピクっと反応して、ぎこちなく疲れた顔をブライヴに向ける。「ああ、貴公…ブライヴか……円卓、以来か…」って呟きに、ブライヴは一瞬硬直。そのあと嫌なことを悟ったみたいでマレニアの胸ぐらを掴み上げる。
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2023/02/07(火) 01:56:39 ID:QK9dodVU
ブライヴ「貴様、食らったな?あのミリセントを…」
ブライヴ「元は己の一部だからと、遠慮も無くか。やはり貴様は好きになれんな」
ブライヴはギン眼で威嚇しながらマレニアに嫌味を言ったけど、掴み上げた相手が眼を見開いて震えはじめて涙をポロポロ流し始めたんだから、相当面食らったと思うぜ。掴み上げた手を離して咄嗟に後退りするブライヴだけど、縋りついてくるマレニアに距離を詰められて尻餅をつき、結局すがりつかれた。
ブライヴ「な、なんだ!?おい!離せ!」
マレニア「私…私はミリセントを、消したくなかった…こんな痛みは、背負いたくなかった…信じてくれ…」
マレニア「ブライヴ、私を殺してくれ…でなければまた、私のせいで誰かが死んでしまう…!」
ブライヴ「お前、本当にマレニアなのか?何があったんだ?」
マレニアはブライヴの胸の中でまた泣き始めて、ブライヴも思わずたじたじ。ネフェリに「掻い摘んで言うが、その女は血の君主に踊らされ、敵ではない者を大勢殺し、ケイリッドを穢し、ラダーンを狂わせ、それでも兄を救えなかった神人。ミケラの刃、欠け身のマレニア本人だ」と大きめの声で教えられて、ブライヴもマレニアを見て信じらんねー!って顔してる。気持ちは分かるぜ。
アレキサンダーとの二人がかりでブライヴはマレニアから離れると、マレニアはアレキサンダーに抱え上げられたまましゃくり上げてて、両手で目の涙を拭いてる。それでも「頼む…頼むから…」ってブツブツ言ってるんだから、流石のブライヴも全てに合点がいったみたいだった。
ブライヴ「なるほど…全てを喪った…いや、喪っていたことを悟ったというわけか」
アレキサンダー「いたわしい…これがあのラダーンと、双璧を成した英雄の姿か。無常なものだ…」
アレキサンダーだけじゃなくて、マレニアを嫌っていたブライヴまで落ち込んで気持ちに深い↓が入ってる。ブライヴはミリセントと仲良かったし、ミリセントはみんなに好かれてた。オレはマレニアとミリセントを同じ奴だとは考えないようにしてるけど、ブライヴは会ったばっかりでそんなの無理だよな。城の真ん中でマレニアのしゃくり声だけが静かに響いてると、城の奥から兵士と騎士を連れたあのおじさんがやってくる。
ジェーレン「マレニア貴様!何をしに現れた!」
ヤバいぜ!マズイぜ!赤獅子城に出てきちゃったから嫌な予感は鳥肌と乳首でビンビンに感じまくってたけど、お祭りおじさんは案の定剣を抜いてて騎士も全員眼を光らせて戦闘モード全開だ。恨み骨髄な相手がいきなり現れたんだからしょーがねーけど、ここで殺し合いなんて勘弁だぜ!オレが気絶したマネージャーを背負っていつでも逃げられる姿勢に入ると、マレニアがアレキサンダーの手から脱出。そのまま騎士達に走っていく。それからオレが待ったをかける暇もなく、突き出された騎士の槍に自分から突っ込んだ。
ブライヴ「あっ…」
マレニア「そうだ、殺せ、私を殺せ…!」
ジェーレン「オーッ!」
騎士の槍はマレニアの腹に食い込んだけど、神人のカチカチな皮膚で止まる。おじさんがマレニアの首筋に剣を振り回したら、それはネフェリが斧で止めた。「何をする!その女は我らが宿敵!邪魔だてするでない!」って吠えるおじさんに「マレニアも祭りに出る」なんて単刀直入に言っていくんだから、おじさんは更にキレまくって唾を飛ばす。
ジェーレン「将軍を今の有り様に貶めた者に、将軍の首を取らせるわけにはいかぬわ!引かせよ!」
ネフェリ「待て。参加するとは言ったが、剣を交えるわけではない。マレニアの言い分を聞いてからでも遅くはないだろう」
ジェーレン「そのようなもの、儂が聞くと…」
だけどマレニアが、腹に刺さった槍を貫通させながら強引に近付いて来ると、流石にビビってみたいで言葉に詰まる。スゲー痛そうな瞬間を目にしてブライヴとアレキサンダーもなんだかんだ心配になってマレニアに駆け寄っていく。「お前、本気なのか…?」ってブライヴにたずねられても、マレニアは目の前のおじさんにずっと殺せって催促の嵐。周りの騎士達も流石に動揺し始めて、互いにアイコンタクトを始める。
マレニア「頼む…ラダーンに謝らねば…死んで詫びを入れさせてくれ…」
マレニア「この首を斬り、彼に捧げてくれ…」
ジェーレンはしばらく黙ると、自分の剣をまた振り上げて、マレニアを貫通してる槍を叩き折る。
それからマレニアの腹から槍を引き抜いて、騎士に武器を下げさせた。
ジェーレン「…敗れを知り、熾烈なる意志の翼も、もはや折れたか…」
ジェーレン「貴様は我らの敵ではない。在りし日の我らの敵は、在りし日の将軍と共に死んだようだ」
ジェーレン「参加を認めるとしよう。ただし、貴様にとっては戦祭りではなく、断罪の地となるだろうがな」
マレニアの参加を認めたおじさんは騎士と兵士を率いて去っていく。後ろ姿は哀愁が漂ってて元気がない。オレはマレニアが殺されなくて良かったけど、これからマジでラダーンに会いにいくとも思えないんだよね。だってそんなことしたら本当に死んじゃうじゃん。本当に殺す気があったら、円卓の不戦ルールなんて無視してマジでその場で殺してたはずじゃん。そうしないんだから脅しだよね、きっと。
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