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渡来船2

1カサブタ:2012/03/06(火) 22:56:29
※注 この小話は、過去に愛璃さんが某サイトにて投稿したシリーズを私が脚色したものです。
オリジナルの渡来船2とは一部設定が異なります。

2カサブタ:2012/03/06(火) 22:57:27
とある夏の夜、ここはハンガリーの片田舎ホロウ・クイ。ある夜、この人里離れた寒村の中心にある古城で盛大なパーティが開催されました。

宮殿の豪華な広間では紳士淑女たちが軽やかにステップを踏んで、
華やかに仮面舞踏会が繰り広げられていた。
その中でも一際めだったカップルが広間の中央で踊っていた。

一人はこの城の城主であり、仮面舞踏会の主催でもあるキルシュ伯爵である。由緒正しい貴族の血を引く伯爵であり、有数の大富豪でもある彼は、この古城でまさに中世の貴族さながらの悠々自適な生活を送っていた。彼は道楽好きで知られ、今では村の数少ない行事であるこの仮面舞踏会も元々は彼の思いつきで始められたものだった。

身長が180センチくらいある大柄な体格の持ち主であり、豊かな黒い髪は腰のあたりまで長く伸び、顔立ちも端正ですごく凛々しかった。きめ細かな白い肌に厚みのある口唇は、真っ赤で力強さが感じられた。

もともと病弱だった彼は、数年前まで病気療養中で暫くこの舞踏会にも姿を現さないでいたものの。今ではそれが嘘であったかと思うくらいに回復して周囲を驚かせたものでした。

黒い燕尾服の上に黒いマントを羽織り、そして黄金仮面の奥の瞳は優しく淑女を見つめていた。
そんな瞳に見つめられるとどんな女性でも彼に魅了されることだろう
事実、この仮面舞踏会に出席している大半の女性は彼のファンだった

今宵、伯爵の相手となった淑女の方は、危なっかしいステップで彼についていこうと必死で踊っていた。彼女にとって今日は、記念すべき舞踏会デビューの日でもあった。
今年数え年で17歳になり、名前はマリアといいます。町にある宿屋を死んだ両親に代わって姉とともに切盛りするしっかり者の少女であり、チャーミングで器量よしの看板娘だ。 もちろん、普段はこんな舞踏会とは無縁で、仕事以外では、読書することと絵を描くことくらいが楽しみのごく普通の町娘でした。実は今回の舞踏会も、招待状は姉に届いたのですが、優しい姉は彼女にチャンスを譲ってくれたのだった。

彼女にとってキルシュ伯爵とダンスをするなんて夢のような状況でした。
彼女の今まで知っている伯爵というのは、まわりの女性達が黄色い声をあげては噂しあっている、そんな姿だけでした。
男性を知らない彼女にとっては、初めて憧れた男(ひと)でもあったのです。

3カサブタ:2012/03/06(火) 22:59:24
「よりによって舞踏会デビューの日に、伯爵様のお相手だなんて・・・」

嬉しくて飛び上がって喜びたい反面、回りの女性達からの厳しい視線を仮面越しからでも感じられます。
そんなプレッシャーの中、彼女のかわいいフリルのついた純白のドレスは、室内の熱気と冷や汗でぐっしょりと濡れてしまいました。

「きゃあ!」

伯爵とリズムをあわせようと必死だった彼女だったのですが、微妙にタイミングが狂ったのです。
足を床に下ろした瞬間、自分のドレスのスカートを踏んで、バランスをくずしてしまったのです。

「おっと、大丈夫ですか?お嬢さん」

「あッ、大丈夫です!」

広間の床に倒れそうになった彼女を伯爵が支えて優しく抱きしめたのでした。

「踊り疲れたみたいですね!私も疲れたから、すこし中庭でやすもう」
「・・・はい、伯爵さま」
まわりの女性達から冷ややかなそして妬ましい視線を感じる中、両肩を優しく抱く伯爵さまの手からは、
白い絹の手袋ごしでも温もりを感じることができたのです。

「今夜の月はいつにもまして輝いている。
お譲さんのその美しさが、月の女神アルテミスを嫉妬させるのだろう・・・」

「そんな嫉妬だなんて・・・」

「だって、そうだろう。私達が広間から出るとき、あそこにいたすべての女達の想いがわからなかったのかい?」

「・・・・・」

伯爵はワイングラスに赤ワインを注ぐと、私に手渡したのでした。
その時の私の気持ちは複雑にゆれ動いていた・・・。

「美しくなるには、どうしたらいいと思う?」

私は伯爵さまに質問されたが、なんて答えていいのかわからず、グラスに注がれたワインを見つめていた。

「美しい」ってどういうことだろう?・・・今までそんな事すら考えもしなかった。
伯爵は答えに窮してる私をみていたのだが、おもむろに庭先に行くとたくさんある赤い薔薇を1本摘んできた。

「答えは、目の前にあるよ」

そう言うと私に薔薇を渡してくれました。
私はおもむろにそれを受け取ったのです。

4カサブタ:2012/03/06(火) 23:00:37
「痛ッ!」

無用心に受け取ったので、なんと薔薇のトゲで右手の人差し指を刺してしまったのです。
人差し指から血がにじみはじめてきたのです。
それをみた伯爵さまは私の前に跪くと、傷ついた右手をつかんできました。
その時です!
私の血を見た伯爵さまは不気味に笑い出したのでした!!

「ふふふッ、ふはははッ!」

そして、私の顔を見上げたのです!
あーなんてことでしょう・・・神様・・・!
あの優しかった仮面の奥の瞳は真っ赤に充血し、厚みのある口唇からは2本の長く大きな牙が伸びていたのでした!!

「きゃあ!」

私はびっくりして伯爵さまのつかんでいる右手をふりほどこうとしましたが、できませんでした。
人間の力ではない信じがたいような力を感じたからです。
すると伯爵さまはつかんでいる私の右手を、おもむろに自分の口唇に押し付け、血を吸い始めたのです。
伯爵さまに吸血されるたびに、私は今までに味わった事のない感覚が全身を襲ってきました。

「ああん・・・」

「おかしくなりそう・・・」

イッてもイッってもその感覚がさざなみのようにやってくるのです。

「・・・はッ、はく・・しゃく・・・さ・・・ま・・・」

黒く揺れ動く伯爵さまの長い髪をみつづけながら、
私の視界は真っ白になって、気を失いました・・・。

5カサブタ:2012/03/06(火) 23:01:53
2

「う、ううっ・・・」

少女が意識を取り戻したのは、あたりの闇がまた一段と濃くなった頃でした。
呻き声を発しながら上半身を起こした少女は、キョロキョロとあたりを見回しました。

「・・・ん」

マリアが見たものは窓が一つもない石造りの部屋でした。
部屋の中は冷たく張り詰めた空気が漂っていました。
部屋の四方には松明の明かりが煌々と照らしだされていて、
樹脂が焦げるかすかな音だけが聞こえてきました。
マリアは静寂に息苦しさを感じ、ごくりと唾を飲み込んだのでした。

「ここはどこ?」

なんとマリアが寝かせられていた場所は、大きな石の上だったのです。

(なぜ私、こんな所で寝ていたんだろう?
そうだわ!私は憧れていた伯爵様とダンスして踊ったんだっけ!そして・・・)

マリアは優しかった伯爵様が欲望を剥き出しにして変身していく姿を思い出して身震いするのでした。
そして、さらに自分の身体が震えているのは恐怖の為だけではないことに気づきました。
(え・・・? な・・・なにこれ)

シーツが掛けられていたために分かりませんでしたが、起き上がって冷たい空気に触れたことで自分が裸である事にようやく気づくのでした。
(わ・・・わたし、何をされるんだろう・・・。 怖い・・・。なぜわたしがこんな酷い目にあわないといけないの・・・)

その時でした!
2つの黒い影が部屋に入ってきたのです。
それは床に引きずるほどの長く黒いマントにすっぽり身を包んでいました。
1人はキルシュ伯爵本人で、もう1人は深くフードをかぶっているため顔までは見えませんでしたが、
姿から見て女性であることは想像がつきました。

「ふふふッ。 お目覚めかなお嬢さん。我が城へようこそ。」

伯爵の声をきいたマリアは背筋が凍る思いでしたが、勇気を出して言い返しました。

「私をどうするつもり・・・? どうしてこんなことをするの?!」

「おやおや・・・、これは驚いた。 大抵の娘達は恐怖のあまり声すらも上げられないというのに。
これは有望かもしれないな、ローズよ。」

伯爵に寄り添う、ローズと呼ばれた女性はクスリと笑いました。

この女も伯爵とグルなのか・・・。彼と同じ黒いマントを着ている所をみると彼女も吸血鬼?
一体、彼らはどうして私を連れてきたのだろう? まさか、私の血を吸うために?

「ふふふッ、この状況にあっても思考することをやめないか。実に素晴らしい娘だ。
どうして私がダンスの相手にあなたを選んだかお答えしましょうか?」

・・・!!
(なぜ私が考えている事が、伯爵様に伝わったのだろう・・・
伯爵様が本当にヴァンパイアだから・・・?)
そんな疑問をよそに、伯爵は真相を打ち明けたのでした。

「あなたのご察知のとおり、私はヴァンパイアなのだよ。とはいえ、元々は人間だがね…。

知ってのとおり、ヴァンパイアは人間とは違う。
人間以上に完全に近い存在だ。人間では持ち得ない強大な力を持ち、他の生き物のように死ぬことも無い。素晴らしいとは思わないかね?
私もかつてはおとぎ話だと思っていた。しかし、私はこのローズと出会ったことがきっかけでヴァンパイアが実在することを知り、その魅力に心を奪われてしまったのだ。
しかし、残念なことに今世界にいる多くのヴァンパイアは到底、知的とは言い難い、醜く、荒々しい化物だ。 

ここにいるローズも私もそんな現状を憂慮している。本来、ヴァンパイア達は彼女のように美しく、神に等しい崇高な存在であるべきなのだ。」

伯爵は、揚々と演説を続ける。ローズは黙っていたが、その目はまるで品定めをするようにマリアに注がれている。

6カサブタ:2012/03/06(火) 23:03:47
「私は、恥知らずなヴァンパイアが増えている原因の一つは、彼らを統率する存在がいない為だと考えている。 そこで私は彼女に提案したのだ。本当にヴァンパイアに変える価値のある者だけを選定し、その者達でいわゆる支配層を作ろうとな。

では、その価値ある者たちの基準とは何かと考えた時、私とローズは一つの結論に達した。
人の生血の中でも最高の質を持つ者たち・・・。すなわち若い娘こそが相応しいと考えたのだ。
そう、例えば君のような・・・。」

マリアは衝撃を受けた。 私の血を吸うことが目的ではなく、私を仲間にするのが目的だったなんて。

「古今東西の吸血鬼に関する物語では、処女が犠牲になることが多いのは知っているね? それにはちゃんとした理由があるのだよ。
純潔な娘は生命の根源に近い存在。
我々、ヴァンパイアの生命の力は質のいい純潔な娘の生き血をいただくことによって、より長く生き長らえることができるのだ。 そして同様に、女性がヴァンパイアに変わると、総じて強い魔力を持つことが私の研究により分かっている。 美しく汚れのない体こそ、強い生命力が溢れ、ヴァンパイアの素体として絶好なのだよ。

今夜のパーティは町の娘たちの中でも一際美しく芳醇な血を持った者を選定するために開いた。
そして、君は並居る美しい少女達の中から見事に選ばれたのだ。
光栄に思っていいぞ・・・ふふふッ

しかし、本当は君の美しい姉を招待した筈なのだが、どういう因果か君が来てみたら姉以上に優れた資質を持っているとはな。 どうやら君は運命に導かれたようだ。」

それを聞いたマリアは毅然とした態度でいいかえした。

「だったら何なのよ! わたしにこんな思いさせるなんて、許せない!!
何が運命よ!! 早くお家に返して!!」

「ここまで聞いてもなお物怖じせんか。 なんて聡明なお譲さんだ。
君はきっと素晴らしいヴァンパイアになるだろうよ。・・・ふははは!」

「バカにしないで!! 私は貴方と違って貧しい家の出だけど誇りはあるわ。
吸血鬼になんか絶対になるつもりは無いわ。」

「そうか・・・、ならばよかろう・・・。 まずは君にヴァンパイアになることの素晴らしさを教えてあげるとしよう。 ローズよ、任せてもいいかな?」

「はい、わかりました伯爵さま」

キルシュ伯爵の隣にいたローズという黒マントの女は、フードをあげるとマリアを見たのだった。

「・・・・・」

フードをあげたと同時に、ローズの長い髪の毛がサラサラとなびいた。
腰まであるそのしなやかな黒髪は、美白の肌とあいまってとても美しかった。
そして美白肌の顔は化粧をしているのだろう・・・目蓋を紫色に染め、口唇はまっ赤に塗っていた。
年の程はマリアの姉と大差無いように見えるが、その化粧のために妖しい美しさが漂っている。
憂いを含んだ暗い表情は、その神秘性をいっそう際立たせていた。
闇の誘惑に魅せられた者の美しさだ。

「マリア・・・。あなたはここで儀式を受けるのよ・・・。そして私達の仲間になるの・・・。」

女はマリアの瞳を見つめはじめたのでした。

「いけない・・・」

マリアは身の危険を感じたのですが、時既に遅し・・・体が金縛りにあって動けなくなったのでした。

「うふッ、恐がらなくていいのよ、マリア」

ローズの瞳はまっ赤に充血して口唇からは大きな2本の牙が伸びてきたのです。
そして妖しく微笑みながら、マントの裾を掴んで両手を広げてみせました。
なんと黒マントの下は全裸だったのです!

7カサブタ:2012/03/06(火) 23:05:26
病的なまでに白い彼女の肌は、月明かりを帯びて青白く不気味に輝いていました。

「うふッ、かわいらしい子。あなたがあんまりカワイイから
もうこんなに濡れてきちゃったわ…。」

ローズは股間に手を宛てがうと、マリアの目の前で陰部を拡げて見せた。
そこは彼女の白い身体の中にあって彼女の唇に負けず劣らず赤く輝いており、溢れ出た汁でしっとりと濡れていました。

「な・・・何をする気なの?」

マリアはまだ強がって見せますが。自分に迫ってくる不気味な女に恐怖を隠せないでいました。

「ふふふッ、流石に自分と同じ女に犯されることには戸惑いを隠せまい。
安心しろ。彼女は並の男とは比べ物にならないくらい女の悦ばせ方を知っている。
ローズよ。この娘をおまえの虜にしてやるがよい!」

「うふふふ・・、言われずとも・・・、 こんな可愛らしい子を目の前にしては、私の疼きも抑えようがありませんわ。」

ローズはマントを大きく広げると、そのまま覆い被さるようにマリアの身体を包み込み、抱き竦めました。

「きゃああっ!!」

黒いマントがマリアの身体を隙間無く巻き込み動きを封じます。ローズの肌がマリアに密着し、またその温もりと匂いはマントを通して、マリアの全身を包み込んできたのです。

「まぁ・・・、なんて滑らかなのかしら・・・。 それに温かいわぁ。 
とても若々しさに満ちて、いつまでも抱きしめていたくなるわ・・・。」

「あッ・・あ」

シュルル・・・サワ、 シュル・・・シュルル・・・

ローズが身体を上下に揺するたびに彼女の肌やマントが擦れあい、マリアの身体はぴくッ、ぴくッっと反応してしまいます。同じ女に、しかも吸血鬼に抱かれる、おぞましい状況だというのに最初に感じていた嫌悪感はだんだんなりを潜め、代わりになんともいえぬ気持ちよさを感じ始めました。

(なに・・・・・・、この感じ・・・・・・っ!! そんな・・・どうして私、こんな気持ちになるの・・・。)

マリアの身に今まで感じたことのない疼きが生じました。あそこから熱い汁が溢れてきてローズの身体にも飛び散ります。皮膚の上を伝って落ちる温かい液体に、ローズはマリアの心が傾き始めていることを感じとりました。

「い・・いや・・・・・・、 あぁ・・・。」

「うふふ・・・、すぐに慣れろとはいわないわ・・・。 ゆっくりと私の温もりに沈めてあげる・・・。」

ローズはまるで我が子を労るように優しくマリアを抱きしめ続けました。彼女の顔を引き寄せて自分の乳房の中に埋めると、マリアの震えはだんだんと小さくなって行きます。

マリアは精一杯の抵抗をこころみても体はもうローズの虜、豊満な美肉の誘惑にかないませんでした。我慢できなくなったマリアはとうとうローズの大きな乳房に頬を擦り付け乳首をくわえ込むと、
頭を左右に振りながら乳首を力強く吸っては舌で舐めあげたのです。

「あんッ・・いい・・気持ちいいわ・・マリア・・」

「んぁ・・・、ああ・・・っ わたしも気持ちいい・・・、もっと抱きしめてください・・・・・・。」

見た目は若い身体だというのに、ローズの赤い乳首の先からは濃い母乳がとっぷりと流れ出てきました。マリアはそれをごくごくと飲み込んでいきます。ですが乳房を口いっぱい頬張っても、そこから溢れ出るミルクを飲み込んでも、今のマリアには全然ものたりず、もっともっとローズの胸が、身体が欲しかったのです。

とうとうマリアはヴァンパイアの手に落ちたのでした・・・。

8カサブタ:2012/03/06(火) 23:09:40
3

それから2年後、日本にて

「ヴァンパイアとは孤独であり、永遠の愛のさすらい人・・・ヴァンパイア・キス」

わたしはいかにもありがちな映画広告から目をそむけると、
ミントの香るタバコの煙を胸いっぱいに吸い込んだ。
ふぅーッ!

「そうよね、ヴァンパイアほど魅力的で美しい存在はないものね! しかし・・・」

ここは東京は下北沢の一角にあるBAR渡来船。
わたしはこのBARの女船長で穂積みゆき。
もちろん船長っていっても、本物の船を操縦するわけではありません。
ちなみにこのお店は、かつて私の両親が経営していましたが、今は私が総支配人です。
店内は15、16世紀の渡来船をイメージしたつくりになっています。
女の子船員達(クルー)の制服は海軍のセーラー服風にできていて可愛く、
お客さまに大人気なのです。
常連客の中には、この制服姿の女の子を見たいがために通っている方もおられるらしいのですが・・・。

「ねー、カズ君!」

わたしの表の顔は女船長ですが、じつは裏の顔も持っているのです。

「ヴァンパイア・ハンター!!」

わたしの住む世界には「ヴァンパイア」はあたりまえのように存在し実在しているのです!
あたりまえのように存在すると言っても、裏の世界を知っている特殊な存在きりこの事実は知らないのです。
表世界の住人達にしてみれば「ヴァンパイア」という知識はあるのですが、
存在しているという事実はもちろん知りません。

わたしの職業である「ヴァンパイア・ハンター」はお祖母さん、母親、そしてわたしへと受け継がれてきました。
代々直属の女系に受け継がれてきているのです。

なぜ、女ばかりかって…? そりゃぁ、吸血鬼達は乙女の生血が大好物だからです。 自らの若々しい身体と生血をエサに吸血鬼達を誘き寄せて、油断したところを一気に突くのが我が家秘伝の猟法なのです。

とはいえ、別にヴァンパイア・ハンターだけがヴァンパイアを狩っているわけではありません。
世界中の宗教団体、特にキリスト、ユダヤ、イスラムといった教会には、公にはされていないものの大抵「化け物狩り」専門の戦闘集団を有しています。
その規模と戦闘能力たるや恐るべきもので、一国の軍隊にも匹敵すると言われています。

一方、ヴァンパイア・ハンターはと言うと、教会のような大きな組織に依存するわけでもなく、信仰する神がいるわけでもありません。
単純に日銭を稼いで生計を立てるため、もしくはヴァンパイアに対する私怨のために魔物狩りを営んでいる者達が多いのです。

前者が軍隊ならば、後者はいわば傭兵。 
依頼があればすぐに駆けつけて魔物をやっつけます! 

しかし、同業者だからといって仲がいいわけではなく、金のために魔物狩りをする私達を、教会は快く思ってはいないようです。
かくいう私もある事情から教会とは犬猿の仲なのですが・・・。

あと私達の仕事は、ヴァンパイアをこの世から抹殺(=存在をなくす)することを目的としてはいません。
教会のように大きな組織の中にはそれを目標としている所もありますが、我々はちょっと違います。
ハンターの仕事は悪さをするヴァンパイアをその都度討伐するという形になることが主で、表世界に生きる住人をいかにヴァンパイアの魔の手から守るかが問題なのです。

9カサブタ:2012/03/06(火) 23:13:30
ヴァンパイアは「永遠の若さ」を求めて、獲物の生き血や精気を吸うことにより、
この世に存在しつづけられるのです。その為には、あらゆる手を使って人間から「永遠の若さの源」を奪うのです。
それが「ヴァンパイアの意思」でもあるがゆえ、ヴァンパイア本体は人の形をしているとは限らないのです。

前回の事件がそうでした・・・。
ヴァンパイアの本体は黒いサテンのマント。
そのマントのなかに「ヴァンパイアの意思」が秘められていたのです。
事件の主犯だった黒百合は、まったくその事実を知りませんでした。
知りようがなかったからです・・・。

黒百合・・・、本名、黒川由里子は政界や経済界の重鎮も御用達の高級コールガールでした。
彼女は元々は普通の人間でしたが、このマントを羽織ったがために「ヴァンパイアの意思」に体が強く支配されて、女吸血鬼と化してしまったのです。
黒百合にとってみれば天から災が降り注いだようなものです。
女吸血鬼となった黒百合は、表の人間を無作為に襲っては「永遠の若さの源」を奪っていったのでした・・・。
どうしてヴァンパイアの本体が黒いサテンのマントに乗り移ったのか、また黒百合がどこでそれを手に入れたのかはわかりません。それは目下調査中なのです!

ただ心強いことに、こちらにはヴァンパイアの存在をいち早く察知できる切り札があります。
それはずばり「ヴァンパイアの意思」を感じ取ることができる仲間の存在です。
今ここにはいませんが、そろそろひょっこり顔を出す頃では無いでしょうか。

そして頼れるかは分からないけど中々役に立つ仲間がもう一人、もっともこいつは有事の時意外はまったくのダメ人間なのですが・・・。
前回の事件で彼を囮に使ったことが、わたしにとって間違いでないと考えたいですけどね。

「ね〜、みゆきさ〜ん。なに考え事してんの〜? 話に加わってよー。」

前回の事件ではかなり頑張ってもらったけど・・・、
わたしって男をみる目がないのかしら・・・(泣)。

わたしの目の前のカウンター席に座って、楽しそうにビールを飲んでる男ッ!

「美樹ちゅわ〜ん、お酌して〜〜。」

そー、こいつ。 カウンターを挟んで目の前に座ってるから嫌でも目に飛び込んでくるこいつ! 
こいつは飲めもしないのにお酒好きで、可愛い女の子さえいればどこにでもほいほい遊びに行く奴なのです。
最近、会社からリストラされたらしく暇なものだから、毎日うちの店に入り浸りだし・・・。
さっきから女の子船員(クルー)にあおられながら飲めもしないお酒を懲りずに飲んでるし・・・、みてるだけで頭痛が・・・。

「なぁーに美樹ちゃーん、さっきクルーのコに聞いて驚いたんだけどぉー。
最近、彼氏と結婚したんだってー!?」

「あー誰だー、カズ君にわたしが結婚したこと教えたのぉー!」

「ありゃ!?マジに結婚したんだぁー!おめでとーッ!!
えーとそれじゃあー、美樹ちゃんを祝してどーんっと俺がクルーみんなの分のビールおごちゃう!!」

「きゃーごちそーさま!ありがとうカズ君」

「えーとそれじゃあー、美樹ちゃんと彼氏・・・じゃなかった旦那さまの幸せにッ!乾杯ッ!!!」

「かんぱーい!!」

「ごくッ、ごくッ、ぷはーッ!最高にうまいっす!」

そんなお調子者のカズ君を見ていた みゆきが我慢できなくなったのだろう、嗜めた。

「ほらカズ君ったら、あんたそんなに飲めないんだから、ほどほどにしときなさい!(怒)」

「美樹ちゃーんの幸せのために、オレのんでるっす!だから大丈夫っす!オレも幸せっす!」

「はいはい!」

今までカズ君のことを心配してたあたしがバカだったか・・・はぁー!
まー酔っ払い相手にマジになってもしゃーないし。

「ところでカズ君、この映画広告はどうしたの?」

さっきカズ君がヴァンパイア映画を見に行こう!とわたしを誘ってくれたものでした。

「もちろん みゆきさんと映画みたいから映画館からもらってきたんですよぉー!
その広告には割引券もついているからぁー、お得なんですよぉー!
それにぃー」

意味ありげな視線を 私に投げかけるカズ君・・・。 も〜言葉なんて必要ないくらい下心丸出し。

はぁー!(ため息)

軽い眩暈を覚える みゆきだった。

10カサブタ:2012/03/06(火) 23:19:41
「こんばんはー」

おっと、あの声は・・・

「あら、いらしゃいアイ。今帰り?」

「そーでーす、みゆきさん。
あたし朝から何も食べてないの・・・だから、もーふらふらなのー。
みゆきさんの手作り料理で、体があたたまる美味しいもの食べたいなぁー」
ばたむ!

「ありゃ!?アイ、手作り料理ならお金を出してくれれば何でも食べさせてあげるわよ。
ただお店の入り口でへこまれても困るわよー!カズ君、アイんとこ手伝ってあげてやって!」

(私も少女時代は自分のボディーラインが気になってよく食事減らしたりしてたっけ。
母さんからは、食わないと力が出ないぞとか説教くらってたわね。)
みゆきは藍ちゃんの様子を伺いながらも、純情だった頃の自分を重ね合わせては苦笑いするのでした。

「アイちゃん、だいじょーぶー?」

よっぱらった赤い顔のカズ君が心配そうに藍ちゃんに声をかけました。

「あッ、カズ君」

「ほら、そんな所にいると他の人が通れないよ」

カズ君は優しく藍ちゃんを助け起こしました。

我らが「渡来船」のヒロインでありマドンナでもある吸血娘、水無月 藍ちゃん。
彼女は有名私立女子高、蓮見台女子高校に通う2年生のお嬢様。
学校では17歳で通っているのですが、ハーフ・ヴァンパイアなもので詳しい生年月日は彼女自身も把握していないのです。

実は彼女と私はかなり長い付き合いで、一時期一緒に暮らしてもいたのですが、彼女の希望によって現在は明大前あたりに一人暮らししています。
毎週火曜と木曜は学校帰りに駅前の劇場内の書店でアルバイトをしており、仕事上がりにちょくちょく顔を出してくれるのです。

そして、さっき言っていた我らが切り札こそほかならぬ彼女であります。彼女はヴァンパイアであることを生かして、私には到底出来ないことを色々やってくれます。
例えば、前回の事件の原因となったマントは彼女の魔力により封印され、厳重に保管されています。
もし、人間である私が触ってしまったら今度は私がマントに心を支配されかねませんが彼女なら平気なのです。
藍ちゃんの魔力は並のヴァンパイアとは比較にならない程強く、他のヴァンパイアの意思に支配されることはまずありません。

また、彼女はヴァンパイアの意志を感じることができます。これはハンターである私にとって非常に助けになる能力です。
なにしろ、人の中に紛れたヴァンパイアを見つけることは困難であり、大抵のハンターは犠牲者が出てから存在に気づくことが多いのです。
しかし、私は彼女のおかげで事件を事前に防ぐことができます。 まさに、ハーフ・ヴァンパイアさまさまですね。

11カサブタ:2012/03/06(火) 23:23:58
ここで「下級ヴァンパイア」について紹介しておきましょう。
下級ヴァンパイアにはハーフ・ヴァンパイアとレッサーヴァンパイアが存在します。
ハーフ・ヴァンパイア、もしくはダンピールとはヴァンパイアと純粋な人間の間に生まれた子のことです。
人間とヴァンパイアの血(悪?)を半分ずつ受け継いでおり、日中でも普通の人間と変わらず活動できる上に、ヴァンパイア特有の強い魔力も備えています。
 また、人間の子供であるためか、その多くは人間と友好関係にあるのです。
まさに藍ちゃんはヴァンパイアの血を受け継いでこの世に生まれてきました!

そしてもう1つは、ヴァンパイアに生き血や精気をすべて吸い尽くされた哀れな人間、
その残骸が生ける屍として生まれ変わったレッサーヴァンパイアがいます。
レッサーヴァンパイアになると知能が低く、欲望に歯止めがきかなくなり動物的な行動をとります。

下級ヴァンパイアは「永遠の生命」とはほとんど無関係で、
肉体が滅べばその人の意思も自然消滅します。
しかし下級ヴァンパイアはヴァンパイアの近くにいると(ヴァンパイアの存在を確認しなくとも)、
普通の人間以上の鋭い感覚で、その存在に気づきます。
レッサーヴァンパイアの場合は低知能ですので、すぐ近くにいるヴァンパイアの下僕となってしまいます。
ハーフ・ヴァンパイアの場合も、人間の血を受け継いでいるためか純粋なヴァンパイアに血を吸われた場合、意志をある程度支配されてしまうようです。

ちなみに、カズ君は前回の事件でハーフ・ヴァンパイアの藍ちゃんに初吸血されているため、レッサー化はしていないものの実質彼女の下僕なのです!


「アイちゃん、そのマントを脱ぐと少しは楽になるんじゃない?
オレがコート掛けにかけといとくよ」

「ありがとうカズ君、じゃあお願いね!」

そういうと藍ちゃんは胸元のリボン結びにしてあった紐を素早くほどくと、
「バサッ!」っとカッコよくマントを脱ぎ放ったのです!
「・・・・・」
(うぉー、かっちょえー!しびれるー!どよどよどよ)
その時、カズ君の心の中では歓声とどよめきがおこったのです(笑)。

カズ君は手渡された藍ちゃんの黒マントを何か思い出したかのように見つめたのでした。

「そういえば、最近は漫画とか映画でも吸血鬼が出てくるのが多くなったけど、
こういう黒マントを翻しているのって滅多にみないよなぁ…。」

そして何を思ったのか、いきなりマントの裾をつかむとおもむろに顔に押し当てくんくんと匂いを嗅いだのでした!

「はぅー、この匂いがたまらん!」

そういうとマントに頬づりするのでした。

「こりゃー、カズ君のへ・ン・タ・イ!!」

12カサブタ:2012/03/06(火) 23:31:46
藍ちゃんはマントの匂いを嗅いで喜んでいるカズ君を見て眉を潜めていたのですが・・・
そのうち何かをひらめいたのか、無邪気ないたずら娘の顔つきになると、カズ君を呼びました。

(うふッ、あたしのマントの匂いを嗅いで喜んでる人には、おしをきが必要だわね!
あたしは高貴なヴァンパイアの血を受け継いでるハーフ・ヴァンパイアよ。
一度血を吸った人なら、あたしの思い通りに操ることができるのよ!きゃは!
さあー覚悟なさい、へんたいさん)

「ほーらカズ君、あたしを見てごらん!きゃは!」

マントから顔を離したカズ君は、うっとりとほうけていたのですが。

「そうよ・・・、あたしの瞳をみつめるのよ・・・。私は君の”ご主人様”なんだからね」

するとどうでしょう・・・藍ちゃんの瞳が充血したように赤くなっていったのです!
そして藍ちゃんはカズ君を手招きしながら誘うのでした。
カズ君は夢遊病者のようにふらふらと吸い寄せられていきました。
その足取りは頼りなげでもありました。

「うぁ・・・っ!! アイちゃん・・・」

カズ君のズボンの中のモノはパンパンに膨れ上がって、
少し触れただけでもすぐに爆発してもおかしくない状態になっていました。

「おいでー、おいでー! あは!かわいいわね、カズくん」

たとえレッサー化しなかったとしてもヴァンパイアに血を吸われた者は眷属あるいは奴隷と呼ばれ、血を吸ったご主人様に心も身体も依存するようになります。
ご主人様に命令される、触られる、あるいはただ見つめられるだけでも、大きな快楽を感じ、ご主人様のいいなりにされるのです。 

しかも、これはご主人様と奴隷の性別が違うと更に顕著になるようです。 
いまのカズ君は藍ちゃんの暗示によってとってもエッチな気分にさせられ、いいように操られているのです。

「きゃは!やっときたわね! ささ・・・、他のみんなには刺激が強すぎるからこっちへいらっしゃい。」

藍ちゃんはカズ君の手を引くと、店の中から影になっている物置の方へ引っ張っていきました。
そして、暗がりに入ったところで藍ちゃんはいきなりカズ君のズボンのふくらみをわし掴みしたのでした。

「あうッ、アイちゃん・・・」

その瞬間、体に電気が走ったかのように一瞬びくッとしたカズ君でしたが、手は操られるように藍ちゃんの腰にまわり、制服の上からやさしく抱きしめたのです。

「そうよ・・・、そうやって私を抱きしめて。 やさしくだよ・・・?」

藍ちゃんもカズ君の首のほうに手を回すと顔を近づけて、
そーっと耳元で囁くのでした。

「あたしのお腹にあたっている、カズ君の熱くなったモノなぁーに?
あたしのマントの匂い嗅いで発情するなんて・・・信じられない!
この変態やろう・・・」

藍ちゃんはそういうと、カズ君の手からマントを奪い返しました。
そして、それを再び羽織ると、自分にすがりついているカズ君の身体をふわりと包み込んだのです。

「あ・・・っ、」

カズ君の身体を足元まで藍ちゃんの大きなマントが覆い込みました。そして同時に彼の鼻腔を甘い香りが満たしました。
マントから匂い立つ薔薇のような香りと、藍ちゃんが醸し出す初々しい女の子の匂いが混ざった香りです。 
密着した藍ちゃんの身体とマントから伝わる温もりと匂い。それに包まれたカズ君の興奮はどんどん高まっていきます。

「うふッ、でもあたしの匂いで感じてくれるなんて嬉しいわ! 
マントをクンクンするよりもこうやって直に嗅いだ方がずっといいでしょう?」

そういうとカズ君の首筋にキスをするのでした・・・。

13カサブタ:2012/03/06(火) 23:34:11
「あうぅ・・・っ!! あいちゃん・・・!!」

カズ君の身体に震えが走りました。藍ちゃんの唇はいじわるにも、この前血を吸われた時の痕をチュチュッ、と吸い上げたのです。
体中をジンと痺れさせる刺激にカズ君はへなへなと足元から崩れ落ちてしまいます。

「ふふふ・・・、この前は残念だったね? あんなに気持ちよくなってたのに寸止めされちゃって。
でも、あの時はああするしかなかったのよ。じゃないとカズ君は快楽と引換に心を失っていたもの・・・。」

カズ君はハッとします。あの時のおぞましくも気持ちいい感覚が蘇ってきたのです。

そうなのだ!オレはとんでもない経験をしていたのだ!!
実は恥ずかしい話、オレの童貞を奪った女こそ、女吸血鬼黒百合だったのだ!あはは(T_T)ぐすん。
偽りの愛でも肉体、精神ともに感じてしまったオレは、いつの間にかそれが快感になっていた。
女吸血鬼に犯され最後までイキたかったが、みゆきさんやアイちゃんのおかげで寸止めをくらったのです。
もしオレが最後までイッたとしたら、生ける屍と化して徘徊してさまよっていたはずだ。
それを考えると痛いものがあるが、だからといって寸止めも辛かった・・・相対する悩み・・・。
今ではその事がオレの癖になり、トラウマの1つでもある。

「まだうなされるんでしょう? なら私が慰めてあげようか?」

藍ちゃんの腕の力が強まり、マントがよりきつく巻きつきます。 
この状況・・・、あの時にそっくり・・・。カズ君の胸が高鳴ってきます。 
しかも、今マントで自分を拘束しているのは黒百合よりもずっと若い、ピチピチの女の子である藍ちゃん。正直今のドキドキだけでもあの時を凌駕しています。

「お・・・おれ・・・藍ちゃんになら・・・、何されてもいい。」

「嬉しい・・・、私はカズ君の命を取ったりなんかしないから、安心して溺れていいよ・・・。」

そして、とうとう藍ちゃんの指がカズ君のチャックにかかります。

14カサブタ:2012/03/06(火) 23:36:42
キュピーンッ!
「ハッ!! 不純で邪な密約の匂いがする!!」

「船長、急に何言ってるんですか?」

「美樹ちゃんっ!! ちょっとこの料理頼むね。」

みゆきはカウンターを飛び越えると、射るような目できょろきょろと店内を見渡した。

(ここにはいない!! となると・・・、)

みゆきは電光石火の早さで店の影にある物置に向かいました。そして、扉を開けると、思ったとおり二人の姿がそこにありました。

「み・・・みゆきさん・・・。」

「あ・・・姉御・・・、どうかご勘弁を。」

そこには二人してマントにくるまってなにやら乳繰りあっている男女の姿がありました。
床を見ると、脱ぎ捨てられたジーパンと汚いトランクスが・・・。
もうかなりヤバいところまでいきかけたのか、二人共額に汗が浮かび、息が荒くなっています。
みゆきはすぅ〜っと息を吸い込んでから、店全体が揺れるような大声で叫びました。

「こらァー!そこォー!ふざけてるんじゃねーぞ、てめーらッ!!」

カズ君と藍ちゃんは濡れ水をかぶったように、飛び上がりました!

「アイにバカ男!ここでそれ以上やったら、二度とこの店の敷居またがせないわよ!
ここはお酒を楽しんで飲むところであって、そっち系のいかがわしい店じゃないのよ!!」

ありゃまー、みゆきにしこたま怒られてしまったおバカな二人でした・・・。


再び 渡来船内

「ごめんなさーい、みゆきさん」

二人はみゆきの正面のカウンター席に座らされて反省していました。

悪い事をしたと思い、素直に謝った藍ではあったのだが・・・。

(ダイエットの最中だから普段より食欲旺盛なのはわかっていたのよ!
んッ、だけど・・・あたしって食欲を満たす方法って、アッチでもできちゃうじゃん!
そしたらお食事はアッチがメインでしちゃえば、ダイエットなんか気にしなくてもいいかも!
・・・てへッ!我ながらいい名案じゃーん)
真顔であった藍の顔がじょじょに緩みはじめ、しまいには口からヨダレがたらーっと。

「てへッ、えへへ!」

「ちょ、ちょっとアイちゃん。それヤバくない?」

カズ君に肩を叩かれ、ようやく正気を取り戻した藍は右手で口を拭った。

「ヤバー・・・(冷汗)」

気まずくなりながらも、みゆきを上目づかいでうかがう藍であった。

みゆきは温かい牛肉と野菜のトマトソース煮を皿に盛る最中だったのですが、藍の様子にあきれ返っていました。

「お前ら…、トマト塗れになりたくなければ暫くそこを動くな…。」

「「は……はい…」」

みゆきには藍が考えていたことが、どんな事なのがすぐにわかったようでした!
彼女は二人をじろりと見据えながら、近くに居た美樹を呼んだ。

「美樹ちゃん度々ごめん!私、ちょっとこいつらと地下室でお話ししてくるから!」

「は・・・はい!」

「あとの店番はよろしく頼む!」

「わ、わかりました船長!」

カズ君におごってもらった生ビールでほろ酔い状態だった美樹でしたが、
みゆきのただならぬ態度に、あっというまに酔いが覚めていくのでした・・・。

「痛ッ!うぎゃー」

「やめてー、みゆきさーん!!」

「うるさいわねー、ちょっとこっちおいで!」

みゆきは藍の右耳とカズの左耳をむんずとつかむと、ずりずりと引きずるように店内から連れ出したのでした。
美樹はふるえながらも、みゆきの後ろ姿に敬礼するのでした。
(ご愁傷さまです・・・アイちゃんそしてカズ君)

15名無しさん:2012/03/08(木) 03:46:21
4

昔、人間は夜が嫌いであった。
夜になると、暗い闇があらわれたからである。
暗い闇は、人間を恐怖へと陥れる。
その恐怖こそ、人間は死と同じ意味合いを持っていたからだ。
しかしある日、人間は火を手に入れた。
火は人間にとって大きな希望につながった。
火は夜の暗い闇を明るく照らし出してくれたからである。
それは人間が生きるうえで重要だった。

ここはキルシュ伯爵のお屋敷・・・。
まわりには、火の光も通さない漆黒の闇があたりいちめん包み込んでいた。
そんななか、闇に魅入られし1人の女が伯爵の寝室にあらわれた。

「おめざめなさい、伯爵さま・・・」

黒いフード付マントに身を包んだ女は、大きな木製の棺の前に跪いていた。
しばらくするとギギィーと鈍い音とともに、棺の蓋が静かに開いたのでした。
そこから充血したような赤い目をしたキルシュ伯爵が、上半身を起こして表れたのでした。

「うぅ・・・血がほしい・・・」

伯爵の厚みのある口唇からは大きな鋭い牙が2本伸びていたのです。

「ローズ・・・君の血が・・・ほしい・・・」

おさえきれない欲望の瞳で、女を見つめる伯爵。
女はそれを黙ったまま見つめると、立ち上がってフードをめくった。
それと同時に長い黒髪がさらさらとながれ、ほのかな甘い香りが伯爵の鼻腔をくすぐるのでした。
そして女は軽く頭を振ると、黒髪を1つに束ねて右肩から前に流したのです。

「ふふ・・・、いいわ。 ほら、お飲みなさい。」

ローズは静かに頭を右側に傾けると、左側の肩を伯爵へ向けるのでした。
伯爵はローズのうなじに顔を近づけると、大きな口を開いた!
真っ赤な口から伸びるするどい牙がローズの首筋にゆっくりと沈み、消えていったのだ。

「あぁ・・・、もう、そんなに欲張らないの・・・」

噛まれたときは痛そうにしていたローズだったが、
伯爵が血を吸うたびに恍惚な表情へとかわっていった。

「いい・・・気持ちいいわ・・・もっとよ・・・」

ローズは我慢できなくなったのだろう、じっとしてはおれず伯爵の股間をまさぐりはじめた。
伯爵のパンパンにはちきれんばかりの肉棒は、ズボンの上からでもその形が手にとるようにわかりました。
ローズはズボンのチャックから手を滑り込ませると、膨れ上がった肉棒を優しく撫ではじめたのです。
端正だった顔立ちの伯爵も次第に快楽の波に引きずりこまれ、
色白だった肌にもほのかに赤みがさしてきたのでした。

「あッ、あん。アナタも感じているのね!」

快楽に我慢できなくなった伯爵は吸血を一時中断して、
ローズをマントの上から強く抱きしめたのでした。

「わたしも伯爵さまに吸血されて、すごく感じているのよ。
ほら、わたしのアソコも伯爵さまに負けないくらいベトベトなんだから・・・うふッ」

そういうとマントを左右にひらいて、目の前にいる伯爵に自らの秘部をみせつけたのです。

「どうかしらわたしのア・ソ・コ。・・・ほら!」

ローズのそれは真っ赤に膨れ上がり、蜂蜜のようにトロトロした汁に濡れていました。

「君は実に淫乱な女だな…、淫乱で…、とても美しい……。」

伯爵はローズのヴァギナに手を伸ばし、ゆっくりとした指使いで弄びました。
陰唇に沿って上下に指先で撫で上げたかと思えば、クリトリスをつまんでみたり・・・
思いのよらぬ動きが、刺激となって彼女の女陰に快楽をあたえ続けたのです。

16名無しさん:2012/03/08(木) 03:48:11
「うッ・・うん!上手よ・・・」

そして濡れたビラビラの奥からは膣液が止め処なくどくどくと流れ出し、あちらこちら汚したのでした。

「こうやって軽く触っているだけで指が溶けてしまうのがわかる…。
これは少し皮膚に付いただけで人間を死に至らしめる猛毒の蜜なのだ…。
私は君がこの蜜で何人もの人間を蝋燭のように溶かしてしまうのを見てきたというのに、こうやって味わうのをやめることができん。
これも吸血鬼の魔性というやつか…?」

「うふッ、ひょっとしたら伯爵さまが変態なだけかもしれませんわ…。貴方も私に溶かされてしまいたいと思っているのではなくて?
ほら、貴方のアソコがもういやらしいお汁でいっぱいだわ!ズボンに染み出した我慢汁が、濡れてテカテカに光っているわよ!」

そういうとズボンの大きな染みを指ですくったのです。

「ほら、こんなに糸がひいてるわよ!」

親指と人差し指で我慢汁をもてあそぶローズであった。
伯爵の顔は紅潮して赤くなった。
もちろん吸血して赤くなっていたのだろうけど、それだけではなかった。

「久しぶりに伯爵さまのアソコをみせていただきますわね!」

ローズはズボンの中から伯爵の肉棒を取り出したのでした。

「こんなに大きくなっちゃって、ほらッ、ピクピクって引きつってるんじゃない、うふふ・・・!
もう、そんなにココに入れるのが待ちきれないのかしら?」

そういうとローズは自分の陰唇を、伯爵の亀頭に向かい合わせたのです。
濡れたクリトリスが鈴口にちゅくっ、と触れた途端に彼のペニスはますますビクビクと震え、溢れてきた汁で濡れるのでした。

「ううッ・・・」

まるで自分の意志とは無関係にペニスが疼いているようでした。体中がローズの魔力に侵されて彼女の中に還りたがっているのがわかります。

「どう伯爵さま?こんなことされてガマンできるかしらね!うふふッ!」

ローズは自分のマントの裾をつかむと、彼の肉棒に絡めていった。
そして滑らかな布地越しに肉棒を優しく撫でては、亀頭に刺激をあたえたのです。

「う…ぁぁ、ッローズ!! 素晴らしい……、
君の責めは…、何度味わってもたまらない……!!」

「ふふふ……、そういえば私が初めて貴方にお目に掛かった時からこのマントの虜でしたわね。」

「あぁ……、忘れるものか…、あの暗い地下墓地で、棺の中で眠る君を初めて見たときから私は変わった。以来、私は君を長い眠りから目覚めさせることだけを考えて日々を過ごしたのだ…。

度重なる実験の失敗で疲労し、眠りに落ちたあの冬の晩のことだ・・・
私の寝室に月明かりに光る黒いマントを纏った美しい女が現れた・・・・・・。

その女は私の召使い達を忽ち死に追いやり、私までも誘惑するような視線で舐めるように見つめてきた。私は恐怖した・・・!! 私も君に殺されると覚悟したのだ・・・。

だが、君は私を殺すどころか、死ぬ運命にあった私を救ってくれた・・・。私の血を吸い、眷属にしてくれたのだ・・・。その瞬間、私は恐怖以上に大きな感情が湧き上がってくるのを感じたのだ。
狂おしい情欲!! 羨望・・・!! 愛情・・・!!
私はこの美女の物になってももいいと思ってしまったのだ!!
これまでどんな女も自由に手に入れ、好きなように弄んでは捨ててきたこの私がだ・・・!!

人間の女では決して持ち得ない美しさを持ち…、いつまでも若くありつづける…。 まさしく“完全”っ! 運命の出会いとはまさにあのことだったのだ。」

17名無しさん:2012/03/08(木) 03:55:10
そこまで話したところで、ローズは彼の唇を自らのそれで塞いだ。

「ふふふ・・・、いつにも増して口が多いですわよ、キルシュ坊や? 貴方を吸血鬼に変えてあげたのはこの私。 本当なら死せる運命だった貴方を生かしてあげたのはこの私なのよ。
人間相手には尊大な貴方も私にとってはただの従者。 よもやお忘れになどなってないでしょうね?」

「ううぅ・・・。 ローズよっ!!  一体いつになったら君は私を同等とみなしてくれるのだ?
私は君の心が欲しい! 君を本当に愛しているのだっ!! 私は君の物になりたい!! 永遠に君を妻としたいのだ・・・!!」

「ええ、存じていますわ・・・。私自身、長い眠りから醒ましてくださった貴方のことを特別だと思っていますもの。
でも、貴方の願いを叶えてあげるのは私の悲願が叶ったその時ですわ。お忘れになっていませんわよね?」

「無論だ・・・。私は君の願いを叶えるためにこれまで手を尽くしてきた。
そのために、君の“城”を作り、良い血を持つ処女を選りすぐり、儀式の為の生贄として君に提供してきたのだ。」

「感謝していますわ伯爵さま・・・。貴方のおかげで今までの黒ミサは成功続きですわ。
それに、あの忌々しいハンターに邪魔されていた最後の儀式もまもなく準備が整います。おそらく次の満月の夜くらいには・・・。」

「なにっ!? もうそんな段階まで来ているのか? 次の満月には私も完全な存在に変われるのだな?!」 

ローズは肉棒をしごく手を早めました。

「うぅっ!!」

「ふふふ・・・、ついつい話し込んでしまいましたわ。
私たちは今、夜伽の途中でしたわね・・・。詳しいことはあとでゆっくりと話しましょう。
今は楽しんでくださいな・・・。」

バサァァァッ!!

ローズはマントを大きく広げると、そそり立つ伯爵の肉棒の上に腰を持ってきました。
そして、猛毒の蜜が滴る肉の華の中へ伯爵のペニスを呑み込んでいったのです。

ヌププ・・・、ヌプン・・・ヌブブ・・・・・・

「うッ・・・!!
ううッ・・・あぁ、 体が・・・熱い!! い、イキそうだ・・・!! 」

「いいわよ、イッっちゃっても!わたしの中ににいっぱい貴方の熱い命を注ぐのよ!!
一滴残らず絞り上げてあげるわ!! うふふッ、死んだとしてもまた生き返らせてあげるから
怖がらずに溶けておしまいなさい。」

ローズは彼に跨ったまま身体をマントで包み込むと、腰をゆっくりと揺らしながら肉棒を搾り上げていった。

「うぁ・・・っ!! おぁぁ・・・!!」

びゅるる〜〜 ぶびゅるるるっ!!

亀頭がぐりぐり膣の内壁と擦れあううちに伯爵のペニスは射精をむかえ、大量の白濁液がローズの子宮へと流れ込んでいく。
普通ならとっくに精液が途切れる時間が過ぎてもその勢いは衰えることは無く、彼の精は止め処なくどぷどぷと流れ出て行った。

18名無しさん:2012/03/08(木) 03:59:31
「ん・・・、はぁ・・・。 おいしいぃ・・・!!」

精液を飲み込む度に、ローズは自らの乳房を揉みしだきながら身体を捩らせて感じていた。
新鮮な命のエキスを搾り取るのは彼女の最大の愉悦だ。若い男たちの精を枯らす度に彼女の身体はますます瑞々しさを増し、美しく妖しく輝くのだ。 

「貴方の精はやはり格別ですわ・・・。お礼に私もぶっかけてあげる・・・。」 

ローズが一際強く胸を寄せ上げると、そこから大量の乳が迸った。

どびゅるるるる〜〜〜!! ジュバジュバジュバァァ〜〜〜

伯爵が漏らした精液などまるで比較にならないくらい、ローズの乳は生白く濃厚でまるで練乳のような粘度を持っていた。
おまけに量も桁外れで、激流のような勢いで伯爵の寝る棺桶の中を満たしていった。

「うぅ…!! ああぁぁ…っ!!!」

ローズの乳から吹き出たミルクが伯爵の身体をどんどん白く汚していく。
大量の濃いミルクは彼の顔や胸にまで当たって弾け、まるでパイでもぶつけられたように頭をドロドロの粘液で覆い隠してしまった。

そして、白い乳液はたちまち伯爵の服を溶かし、ついには彼の体までもドロドロに溶解しはじめた。
皮膚が溶け、 内蔵が溶け・・・、 溶けた体は下腹部に溜まり、精液のように股間から吹き出し続ける。 伯爵は溶けていきながら延々と続く射精の快楽に狂い続けていた。

「うああぁ・・・・・・ ああぁぁ・・・・・・と・・・ける・・・ とけ・・・・・・。」

じゅぶぶ 、べちょ・・・ どくどくどく・・・・・・

「うふふふ・・・、今のその身体もそろそろ綻びが出てくる頃よ。
とろとろに溶けなさい・・・。そして私のお腹の中でまた新たに生まれ変わりなさい・・・。」

「うぶ・・・・・・、おぁ・・・・・・ うくぅ・・・・・・・・・」

びちゃびちゃびちゃ・・・・・・ どろどろどろ・・・・・・・
ヌプププ・・・・・・、ジュルジュルジュルルゥ〜〜〜〜

ローズの乳と粘液に溶かされ、伯爵の身体はどんどん形を失い小さくなっていった。
最後には身体は萎んだ風船のようにペラペラになり、それすらも溶けて彼女の膣の中へと没してしまった。

クチュ・・・、クチュ・・・、 クチュ・・・・・・ 

「ん・・・はぁ・・・ん、 よしよし・・・・・・ボウヤ・・・、そんなに暴れないの・・・。
すぐにまた産み落としてあげるからおとなしくするのよ・・・・・・、ああぁ・・・ああん・・・っ!!」

バサァ、 ブワサァァ・・・

自分の身体に濡れたマントを巻きつけ、少し大きくなったお腹を抑えながら、闇の美女はくねくねと身体をうねらせ、悩ましい声を漏らす。

「ああ・・・、おおぉ・・・、ん・・・、はぁっ!! あああぁぁっ!!!」

バサァァァッ!!

そして、大きく身体をくねらせたかと思うとマントをめいっぱいに広げ、腰を突き出した。すると、吸い残しの精液と粘液で濡れた彼女の膣から、ズルリと何かが産み落とされ、ドロドロのミルクで満たされた棺桶の中に落ちた。

「はぁ・・・はぁん・・・・・・、んふ・・・っ うふふふふ・・・・・・!!」

息を落ち着かせた彼女は棺桶の中の物をいとおしそうに見つめた。
そのミルクの海の中には、大きさが卵くらいの胎児のような物が蠢いていたのだ。 
いや、胎児と呼ぶにはあまりにおぞましいそれはまるで母体の中から無理やり取り出されたように不完全で、手足の無い水蛭子のようだった。 
そしてその顔は歪な形に歪んでいるもののキルシュ伯爵そのものであり、言葉にならないうめき声を上げつづけていた。

「ふふふ・・・、これで何回目の誕生かしら・・・? 覚えているかい? キルシュ坊や?」

ローズはその胎児を両手で掬い上げると、自分のマントでその身体を包んで胸に抱いてやり、その小さな口を自分の乳房へと持っていったのだ。
小さな伯爵は母の乳を吸うように濃厚なミルクをのみはじめた。

19名無しさん:2012/03/08(木) 04:05:16
するとどうだろう。 卵のように小さかったその身体は、つい一刻前に身体を溶かしてしまった筈の乳を飲む度に大きくなり、だんだんと元の伯爵の姿に戻っていったのだ。

普通なら、ローズに溶かされた人間は彼女の血肉と化し、二度と元の姿に戻ることはない。
だが、ローズにとって有益な人間であるキルシュ伯爵に限っては、一度殺された後、例外的に新しい身体で再生させてくれたのだ。 
ローズの母胎の中で作られた身体は、吸い取った人間の精から作られたホムンクルスである。

通常のレッサーヴァンパイアと違い、理性を失わず、生きている人間と見た目にも遜色が無い上に、純粋なヴァンパイアと同等の魔力を行使できる。
しかし、その代償にその身体は非常に不安定であり、長い間形を保つことはできないのである。
伯爵は身体にガタがくる度にローズに溶かしてもらい、また生み出してもらうということを繰り返しているのだ。

「ふふふ、お目覚めかしら伯爵様? 今度の身体の調子はいかが?」

ローズはまだ足元もおぼつかない伯爵の身体を抱いたままやさしく微笑んだ。
フード付きの大きなマントで裸の男の身体を包込み胸に抱く姿はさながらマリア様のようではあるが、彼女のその姿は聖母に例えるにはあまりにもおぞましかった。



それから数時間・・・。
伯爵はすっかり元に戻り、秘め事を終えた2人は別室でくつろいでいた。
伯爵が着ていた服はローズのミルクによってもう原型をとどめておらず、彼は別の服に着替えていた

「時にローズよ、マリアの調子はどうだ? 日本に留学させてから随分たつが。」

「伯爵さま。マリアは中々頭が回る切れ者ですわ。狙った獲物はほとんど逃がしません。
さすが伯爵さまが目をつけた小娘だけのことはありますわ!」

伯爵は氷の入ったグラスにブランディーを注ぐと、軽くグラスに入った液体をまわした。

「そうか、マリアは使えるか! くくく・・・、本当はあれではなく美しく聡明な姉の方が候補だったのだがな。マリアは思わぬ収穫だったようだ。」

「ふふ、姉のエレナの方もなかなか手際がいいですわ。毎晩1、2名の人間がエレナの犠牲になっております。
ただ彼女は手加減をまだ知らないので、欲望が満たされるまでは暴走するのですが・・・。
わたくし共々、その点は困っているのです・・・」

「まーよいではないか!エレナに群がる奴らが悪いのよ! ところで、成果があったということは例の娘が見つかったということだろう? 
ということはつまりこの村もそろそろ用済みということだ。いっそエレナにやってしまっても構わんだろう。」

「そうですわね・・・うふッ。 これからもっと広い狩場が必要になりますわね。
伯爵様の贈り物がいよいよ役に立つ時がきたのですわ。」

ブランディーを口に含みながら、妖しい笑みをうかべる伯爵。ローズは彼が座るソファに腰掛け彼の身体にしなだれかかった。
伯爵は彼女の肩を引き寄せると、軽くキスを交わしあった。

「で、だ。 娘は一体どこにいるのだ」

「ふふふ・・・、日本ですわ伯爵さま。 前に貴方が会見の為に訪日した際、黒百合という娼婦を私に味わわせてくださったでしょう? 
先日彼女が襲ったある男の中に“あの子”の血を感じましたの。
私は早速、黒百合にその男を襲わせてあの子をおびき出そうとしたのだけど、残念ながら例のハンターの手で黒百合は滅んでしまいましたわ。 
でも倒される瞬間、確かにあの子の姿を見ましたの。驚いたことにハンターといっしょになって黒百合と戦っていましたわ」

「ほう・・・、君を苦しめるあのハンターと娘が仲間か。 おもしろい・・・。 で、居場所は?」

「黒百合が倒されたのは東京の世田谷区内。でも、そこに住んでいるとは限りませんわ。たまたま黒百合を追ってきただけなのかも。」

それを聞いて、伯爵はほくそ笑みます。

「ローズよ、確かそこはマリアを向かわせた学校からも遠くないな? さては彼女を留学させたのは娘を捕まえる為か?」

「最終目的はそうですが、少し違いますわね。マリアは稀に見る逸材ですけど、さすがにアイの力には敵いませんわ。
あの子に近すぎると気配を察知されてしまいますもの。マリアには別の仕事を頼んでいますの。それこそこの計画の為に重要な仕事を。」

すると、ローズはマリアの動向と計画の骨子について伯爵に話始めた。

「くくく、なるほど・・・。 君はいつも手が早いな。 
私もうかうかしてはいられない。すぐに訪日の準備をはじめなければ。」 

「よろしくお願いしますわ! 私たち二人が君臨するユートピアの実現のために!! ほほほほッ!!」

暗い闇夜に大きく真っ赤に輝いている月の光は、2人の影を妖しくうつしだしていたのです・・・。

20名無しさん:2012/03/08(木) 04:11:23
5

「渡来船」の地下室は、お店の従業員でも滅多に出入りしない場所であった。
いや出入りしない場所ではなく、したくても出入りできない力が働いていると考えたほうが、
わかりやすいのではないだろうか。
それは裏の世界を知っている特殊な存在きり出入りできない空間だったからです。
その為か、お店の従業員でも「渡来船」の地下室があることを知っているのは、
穂積みゆきと北原美樹だけなのです。

地下室は中世ヨーロッパのお城の一室のような部屋でした。
部屋の大きさは、地下室にしてみれば結構広い空間でした。
そして部屋の中央には、ドラキュラが愛用してるような木製の棺がおいてあり、そのためか部屋は狭く感じられ、異様な雰囲気が漂っていたのです。

カズこと、早瀬和也 は みゆきに案内されてこの地下室を訪れるのは2度目となった。
初めて訪れた時もそうだったが、この部屋に入ると緊張して変な胸騒ぎがするのでした。
(それにしても、左耳が痛てー!)
みゆきに左耳をつかまれ引きずられながらこの部屋についてきたので、
まっかっかに腫上がってしまったのでした・・・。
カズは耳をさすりながら部屋見渡すと、同様に藍も泣きべそをかきながら右耳をさすっています。

「みゆきさん!確かにお店でアイちゃんといちゃついた事については謝るよ!だけれどもこの仕打ちは・・・」

「カズ!おだまり!!」

間一髪、みゆきから返事がかえってきた。
みゆきはセーラー服のポケットからバージニアスリムを取り出すと、1本口にくわえた。
そのタバコをジッポで火をつけると、煙を胸にいっぱい吸い込んだのでした。
ふぅーッ!
その時、みゆきは何かを考えていたのだろう・・・タバコの煙を吐き出したとき、その考えが決意にかわったのです。
そして話しました。

「2人ともこれからわたしが話すことをよくきいてちょうだい!
イチャつくのは構わない。 だけど、節度をわきまえなさい!!
アイには欲望に左右されない、誇り高い愛のあるヴァンパイアになってほしいの!
もしアイが欲望のうずまく黒い闇に心を奪われたなら、わたしはヴァンパイア・ハンターの名にかけてあなたを手に掛けなければならないわ・・・」

「ちょ、ちょっと待った!!
ってことはアイちゃんが黒い闇の世界に支配されちゃったら、あの年増女の黒百合みたくエッチになちゃうわけ?」

「”エッチになっちゃう”? ほほぅ・・・、
男を暗がりに連れ込んで、子種を絞り取ろうとするような状態でもまだエッチじゃないと?」

「いや・・・、それは」

「今ならまだその程度で済むかもしれない。 でもアイがヴァンパイアであることを忘れちゃいけないわ。
アイだけでなく多くのハーフヴァンパイアは個人差はあれど性に対して奔放だと聞くわ。これは吸血鬼の本能に起因する部分が多いの。 

ヴァンパイアにとって性交渉は獲物を狩ること、つまり吸血行為の延長線上にある。 
ああいうふしだらな事をなりふり構わず行っていると、そのうち欲望に歯止めが効かなくなるわ。

吸血鬼としての動物的本能が目覚めて、永遠の若さを求めて手当たり次第に獲物を追い求めては生き血をすすり、そして偽りの愛で精気を貪り尽くすの。
そしてボロボロになって死んだ人間は、生ける屍、レッサーヴァンパイアとして生まれ変わり他の獲物を襲うのよ!
カズは1度経験してるからわかるでしょう!」

「う・・・それは・・・」

「・・・・・」

藍は無口のままうつむいて、二人の会話をきいていた。

21名無しさん:2012/03/08(木) 04:15:11
「わたしとアイは昔、あるきっかで強い絆で結ばれたの・・・今は時間がないから詳しいことは話さないけど。
しかしこの事を口にしたのは、カズがはじめてなのよ・・・」

(ずっしり!なんかオレすごい重荷を背負わされちゃったみたい・・・。みゆきさん、オレの気持ちは・・・)
どんよりとした湿気のある空気が室内にただよった。
そんな空気を打ち消したのは、今まで無口でうつむいていた藍であった。

「偽りの愛なんかじゃないもん・・・・・・。」

藍は下を向いたままボソッとつぶやいた。その言葉にみゆきも和也も彼女の方を向く。すると今度は藍は二人の方をまっすぐに向いて話し始めた

「みゆきさんの言う通り、さっきのは確かに軽率だったわ・・・。 
でも私、あの時カズくんのことを単に性欲の対象として見てたわけじゃない。 
私、誰彼かまわずあんなことしないわ。相手がカズくんだったから、ちょっと変な気持ちになっちゃっただけだもん・・・。 

だってカズ君のこと好きだもん!! 好きなひととならついエッチなことしてもいいって思っちゃうのは当然でしょ? 
カズ君といっしょに気持ちよくなりたいと思ったから・・・。」

「ストップっ!! よくわかったからそこまでにしなさい!!」

「みゆきさん!! 私これでも真剣に話してるのよ?」

「わかってるわよ・・・、問題はそこじゃなくて・・・。」

みゆきは横に目配せする・・・、藍もそっちを見ると、思わずあっ!! と叫んだ。

「あ・・・あい・・・ひゃん・・・。ぼくのこと・・・・・・そんなに・・・」

ぼ〜っと藍を見つめて立ち尽くす和也の鼻からボタボタと鼻血が滴っていたのだ。
既に足元には大きな血溜まりができつつある。

「カズ君!! ちょっと、大丈夫?」

「貴女の気持ちは純粋なんだろうけど、こいつの頭の中では全部いやらしく変換されちゃうの。店の床が汚れるからこいつのスケベ心を刺激しないでちょうだい。」

カズ君はそのまま、貧血で倒れそうになったところを二人に介抱されました。

・・・・

「みゆきさん。あたしあなたの希望に添えるようなヴァンパイアになれるかわからないけど、努力してみる。 
カズ君が私の手でレッサーになるのなんて嫌だもの。」

なんとか落ち着いたカズの頭を撫でながら藍は言います。

「そうね、その考え方は賢明だわ。貴方が気をつけていてもカズがこの調子じゃね。
勝手に鼻血出して失血死して、ヴァンパイアになっちゃったらやりきれないし。」

「そこまでいわなくても・・・。」
 
「しゃべるな、寝てろバカ男!! 
ま、それはそうと貴女自身もまだヴァンパイアとして未熟だし、ヴァンパイア・ハンターとしての腕前もまだまだだし、修行が必要だけどね。」

「ぶーッ!!そこまでいうことないぢゃん!!」

「だって本当のことでしょう?それに初めて吸血した相手ってカズだったんでしょう!?
ちょっと男の趣味も問題ありすぎて心配だわ。」

意味ありげな視線で、藍をみつめる みゆきであった。

「えッー、オレがアイちゃんのファーストキス・・・じゃなかったファースト吸血の相手なのー?」

藍の顔が一瞬にして真っ赤になってしまった。
そんな藍の初心な姿に心温まるみゆきであった。 でも、だからこそ厳しくしなければならないとみゆきは改めて思うのだった。
この純粋な笑顔を守る為に私がまだまだ教えてあげなきゃならないことは多いのだ。

22名無しさん:2012/03/08(木) 04:19:11
「それでは2人に試練をあたえるわよ、まずはカズ。
さっきあなたはわたしにヴァンパイアの映画を見に行こうって誘ってくれたよね。
その気持ちは嬉しいわ、素直に受け取ってあげる。
だけどカズは前回の体験(ヴァンパイアに肉体を弄ばれた)での興味本位からのお誘いなんでしょう?」

(ずさーッ!みゆきの姉御はそこまで気づいていたのか・・・お、男のロマンが崩されていくー・・・む、無念!)
そういうと みゆきはカズの瞳を見つめながら話したのでした。

「くすッ・・カズ、あなたはそんな安っぽい男になってはダメ。
もっと自分に自信を持って生きてほしいの!その為には強い理性と優しさが必要よ!
そしてアイが暗黒の闇に堕落しないようにサポートしてあげてほしいの!!」

オレは吠えた!

「うぉーッ!オレはカズ、男の中の男だぁーッ!やってやるぅーッ!!」

「くすッ、やっぱりカズって単細胞な男ね!」

みゆきの姉御には弱いカズであった。

「そしてアイ、あなたは自分自身のことをしっかりと受け止めるの。
自分を知る事が一番大事なことよ!自分というモノサシをしっかり持つの!
そうすると自分の行くべき道は、おのずと開かれてくるはずだわ!」

そういうと みゆきはタバコの煙を吸い込むと、短くなったタバコをもみ消した。

「わたしがあなたたちにアドバイスできるのはここまでよ。
これからは自分達が自分の意思でしっかり進みなさい!」

(ヴァンパイアハンターのわたしが、ハーフ・ヴァンパイアのアイに教育するなんてね・・・
表世界の住人を守る為には、致し方ないことだものね(苦笑))

「ま、そんなわけで…、藍、急な話だけどちょっと一週間ばかり店に入ってくれない? 寝泊まりは私の事務所を使っていいから。」

「「へ?」」

みゆきは大きなカバンを取り出すと呆然と立ち尽くす2人を尻目に、地下室にある一見ガラクタにしか見えないものを自分の鞄に詰めていた。

「あの…、みゆきさん? そのカバンは一体。」

「ああ、この中に私の着替えと非常食とパスポートが入っているわ。
その他もろもろ、必要なもの。」

「いや…、そうじゃなくて…。旅行にいくなんて聞いてませんけど……。」

みゆきは手を止めて、真剣な表情で言った。

「旅行じゃないわ。 事件(ヤマ)よ。 それもとびきりビッグな…。」

みゆきの言葉を聞いて2人は思わずゴクリと唾を飲んだ。

「ちょっと前に知合いの情報屋から連絡があったのよ。 ヨーロッパの田舎でね、人を襲う魔物が出ているらしいの。 しかも、そいつはかなりの大物で力もハンパじゃないらしいの…。」

みゆきは一旦言葉を切ると、アイの方を向いて言った。

「事件の発生場所はハンガリー北西の寒村、ホロウ・クイよ。 私と貴女が出会った場所もかなり近いわね。」

それを聞いて藍もハッとしたようだ。カズにはその意味を伺い知ることはできなかったが、二人にとって何か深い因縁のある場所なのだということは予感できた。

「みゆきさん・・・っ!! 私も行きます!」

「だめよ!! 今回は貴女は連れていけない。 カズといっしょに留守番してて。」

「私はハンターでみゆきさんのパートナーなんですよ! 
それに・・・、このことは私の手で決着をつけたいんです。お願いですから連れていってくださいっ!!」

「藍・・・、気持ちはわかるわ。貴方には戦う理由がある・・・。でも、わかって。
敵がもしあいつだとしたら貴女を近づかせるわけにはいかない。もし貴女があいつの手に落ちたら大変な事になるわ。 わかるでしょう?」

「でも・・・・・・。」

23名無しさん:2012/03/08(木) 04:21:59
みゆきは藍の側に寄ると、そっと抱き締めた。

「もう貴女は一人じゃない。わたしだけじゃなく、お店のみんなや、学校のみんなや、それにカズだって・・・、貴女を思う人たちは沢山いる。
貴方にもしものことがあったら皆を悲しませることになるわ。
ハンターとして皆を守りたい気持ちはわかるけど、でも抑えて・・・。 相手は貴女にとって危険過ぎるのよ。」

「・・・・・・・・・。」

藍はもう何もいいませんでした。

「藍、貴女にこれをあげる、お守りよ。」

そういうと、みゆきは藍の首にペンダントのようなものをかけた。金属製で少し錆びており六芒星を象ったものだった。

「みゆきさん・・・、それなに?」

「今からこの店に我が家秘伝の防御陣を施すわ。これでヴァンパイアはこの店に一歩も踏み込めなくなる。
もちろん、このままじゃ藍にも悪影響があるけど、そのペンダントをつけていれば貴女にはまじないが作用しなくなるわ。」

そして、みゆきはカズと藍の両方を見て言った。

「いい? カズも良く聞いて。 私は行くけど、その間にこちらで何か起きないとも限らない。
前の事件でわかったろうけど、吸血鬼は気付かないうちに紛れ込んでいるものよ。

さっき私が言ったことを良く噛み締めて!! 何があっても絶対に闇の世界に堕ちてはならないわ。
いざというときはこの店に来なさい。ここにさえいれば奴等の手を逃れられるわ。」

「わ…わかったよ、みゆきさん……なんかよくわからないけど頑張ってみるよ。」

カズの表情に強い決心を感じたみゆきは、安心したように微笑むと大声で二人に言った。

「よーし! そんじゃ、ちょっと言ってくるわ! 二人とも店番よろしく!!」

みゆきは、地下室から出ると美樹や他のクルーたちに声をかけて、しばらく休養を取ることを伝えた。
そして、さっき集めたガラクタのうちいくつかを店のあちこちに置き、小さく十字を切っていた。
どうやらこれが、ヴァンパイア用の防御陣のようだ。

そして、その仕事を終えたあと、軽く挨拶をして一人店を出て行った。
後にはカズと藍だけが残されて、しばらくの間その場から動くことができなかった。

「アイちゃん・・・。」

「みゆきさんのバカ・・・、 みゆきさんがいなくなっても悲しむ人は大勢いるのに・・・。」

24カサブタ:2012/03/08(木) 23:56:20
私がまだハンター見習いだった頃・・・。
私は束縛されることが嫌で世間に反抗し、親に反抗し、そして自分自身にも反抗した。
若さゆえの無知無謀が自分自身をそう駆り立てたのかもしれない。
その時の私は自分に力さえあれば束縛されることから逃げ出し、自分の宿命であるヴァンパイア・ハンターの道を替えることができると信じて疑わなかった。

「ちッ、逃げられたか!」

《生命(いのち)の宝珠(たま)》を天高く掲げた梨香(りか)は、ひるんで膝をついていたみゆきに声をかけたのだった。

「みゆき、しゃっきっとしなさい!!その扉からヴァンパイアが逃げたわ!!急いで後を追うのよ!!」

ヴァンパイアの下僕となって襲ってきたレッサーヴァンパイア達は、《生命の宝珠》から溢れ出した聖なる光を体全身に浴びて声にもならない断末魔を漏らした。
そして次々と灰になって静かに崩れ去った。

「はい、母さん」

ヴァンパイアは《生命の宝珠》から光が溢れ出ると同時に、蝙蝠へと姿をかえたのでした。
そして光を避けながら下僕としていたレッサーヴァンパイアの陰に隠れるように部屋から逃げ出したのだった。
キワドイ戦闘服の上に黒のロングコートに身を包んだ梨香は、娘のことなど気にもせずに扉から出て行ったヴァンパイアの後を追いかけていった。

「はぁ、はぁ・・・」
みゆきは額から流れ出る汗を濃紺のセーラー服の袖で拭うと、母の後を追うように走った。
自分のプライドと体制への反逆の印であるロングスカートがこの時ほど恨めしく思ったことはない。
すると突然、女がみゆきを呼び止めたのだ。

「ヴァンパイア・ハンターのお姉さん。どうかわたしの魂を、この呪われた身体から解放してください・・・」

ヴァンパイアの吸血の呪力が今ひとつ足りなかったせいなのだろうか、
下僕のなかにはレッサーヴァンパイアになり果てない不完全な吸血鬼として存在した奴がいたのである。
理性を保ってはいるが肉体は既に痴れ狂っていた・・・。

25カサブタ:2012/03/08(木) 23:59:05
先程までここではヴァンパイアによる漆黒の宴(黒ミサ)が執り行われていたのである。
男女の性別は関係なく互いの精気を心ゆくまで貪り尽くしては、また自分の側にいる別の相手を犯し、そして犯される。
その凄まじい狂態は地の底の深淵から轟々と湧き上がる瘴気そのものであった。

女の口元には血が付着し、身体は体液で濡れている。おそらくは彼女も、自分の中からどす黒く湧き上がる欲望を抑えきれず、周囲の犠牲者達を襲ってしまったのだろう。

「私はもう人を襲う衝動を理性で抑えることができません・・・。親や子供、そして友人を吸血し殺してまで、生きたいとは思いません・・・。
どうかわたしが生気を保っているうちに、また誰かをを襲わないうちに殺してください・・・」

まだ見習いヴァンパイア・ハンターの みゆきでさえも、彼女は人間として生きていくことのできない体であることがわかった。
そして他人の生き血や精気を吸い取り続けなければ、生きていくことはできない体であることもすぐにわかった。
自分にはどうすることもできない儚く虚しい感情が みゆきの体を覆い尽くすのだった。

「しかし、わたしには・・・」

「まだ生気であるうちに・・・、お願いします・・・。そしてこの子を・・・ううッ・・・」

女吸血鬼のマントの陰に隠れるように、1人の少女が みゆきを見つめていた。
まだ小学生くらいのその子は、おかっぱ頭の少女だった。

(っ!! この子・・・!!)

みゆきは彼女の顔を見て、驚愕した。彼女はどころなく今逃がしたヴァンパイアに似ていたのだ。
その娘はまだあどけない顔をしているが、その姿や纏う雰囲気には、ヴァンパイア特有の人を惹きつけるような妖しさが片鱗を見せている。
そして彼女の口の中も既に小さい牙が生え始めていた。

この子もヴァンパイアであることは間違いないが、おそらく他のレッサー達とは違う。
あのヴァンパイアが執り行おうとした黒ミサにおいて何かの重要な役割を担っていたのでは?

(どうしよう・・・、 悪い可能性は小さなうちに潰しておくべきかしら・・・。)

みゆきは少女を怖がらせないようにゆっくり歩み寄るが、片手は聖水の瓶に手をかけていた。
この少女があいつに何の関係あるのかは知らない、だが、憂いを残さない為には今ここで殺しておくに越したことはないはず・・・。

「おねがいします・・・・・・、この子をどうか・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

しかし、みゆきにはどうしてもできなかった。
この瘴気がうずまく絶望のなかにあって、みゆきを見つめる少女の瞳には生きる希望を秘めた強い意志が感じられる。ヴァンパイアとは死の影を背負う者の筈なのに、彼女からはなぜか眩しいばかりの生命の光を感じるのだ。

この子をここで殺すべきではない・・・。みゆきの心はそう伝えていた。

26カサブタ:2012/03/09(金) 00:00:27
「名前は?」

「アイ」

「アイ、わたしについておいで!」

みゆきの淡い想いが通じたのだろうか?藍がこくりと頷いた。

「わかった・・・。この子はわたしが預かるわ。
あなたはこの世に未練を、そして心残すことなくすべて忘れなさい」

みゆきはロングスカートのポケットから聖水の入った小さな小瓶を取り出すと、
不完全な吸血鬼にむけて聖水を降りかけたのでした。
そして女吸血鬼は至福な表情を浮かべポロポロと涙を流しながら、とろけるように静かに消えていったのだ。

(天にまします我らの父よ 願わくば御名を尊とまれんことを、
御国の来たらんことを 御旨の天に行なわるるごとく
地にも行なわれんことを、 我らの日常のかてを今日我らに与えたまえ
我らが人に許すごとく、我らの罪を許し給え
我らを試みに引き給わざれ、我らを悪より救い給え アーメン)

みゆきは心の中で主の祈りを唱えると、十字をきった。
これで みゆきは女吸血鬼に対して正しく弔ったどうかは、自分自身でもよくわからなかった。
しかし少女の瞳から語られた意思から、みゆきに新しい何かの力を受け取ったことは確かであった。

「ふーッ!何やってたのさーみゆき。
あんたがボケボケしていたおかげで、ヴァンパイアを逃しちゃったじゃないの!」

くわえタバコをしながら みゆきの前に姿をあらわした梨香であった。

「しかし奴の寝床の棺は浄化しながら燃やしたから、当分の間は悪さをしないでおとなしくしているはずよ!」

梨香は自慢げに娘をみた。

「はいはい!」

すこし憂鬱になった みゆきだった。

みゆきの母、梨香の容貌は、みゆきより背が少し小さかった。
体格はやや小柄で細身だが決して華奢(きゃしゃ)ではなかった。
むしろ昔から体を動かす事が大好きで、鍛え上げられたしなやかさは並みの人間では考えられないほどである。野性の中の美獣といっても過言ではない。
ショートにした黒髪がとても似合い、特に左腕に彫った蝶のタトゥーがまた印象的でもあった。

27カサブタ:2012/03/09(金) 00:02:33
「およ? みゆき。 その子はなんだ?」

「ああ、母さん。 実はね・・・。」

みゆきは先程ここであったことを梨香に話した。

「なるほど・・・、確かに似てる・・・。 それに普通のヴァンパイアでもないわね。何か特別なのよ。」

「特別ってどういうこと?」

「よく考えてみなさいよ。 この子、宝珠の光を浴びても大丈夫だったんでしょ?」

「あっ!!」

みゆきはそこで初めて重要なことに気付いた。宝珠の光はヴァンパイアをはじめとした魔物をほぼ確実に滅ぼす力を持っている。
純粋なヴァンパイアならばこの光の威力に耐えることは出来ないはず。

「さっきから違和感を感じたんだけどね・・・、あいつがやろうとしていた黒ミサって私が知ってるのとちょっと違うのよ。 
この子はたぶんあんたの思った通り、黒ミサで何かの役割を担っていた可能性はあるわね・・・。」

梨香はアイの顔を見つめながら言う。 じっと見つめられたアイはたじろぐようにしてみゆきの影に隠れてしまう。

「あらー、みゆきったらいつの間にか懐かれちゃったのね!」

「・・・・・・母さん・・・、この子どうするの・・・?」

みゆきの不安そうな表情を見て、梨香もすぐに彼女の心中を察したようだった。

「それは逆にあんたに聞きたいわね・・・。 何を思ってこの子を生かそうとしたの・・・?
あのヴァンパイアが私の仲間達を大勢殺したことは知ってるはずよね?
あいつと同じ顔をしたこの子を私が放っておくと思うか?

第一、私達ハンターの流儀に従うなら、この子を保護するべきではなかったはずよね?」

「それはわかってる・・・。でも・・・。」

じっと、アイのことを見つめるみゆき・・・、梨香はじれったそうに頭を掻いた。

「あんたさぁ・・・、まるで動物拾ってきた子供みたいな反応ね。
そろそろ、シャキッとしなさいよ!! あたしがどうとか、ハンターがどうとかじゃなく、あんた自身がその子をどうしたいのかを聞いてるの!! どうなのさ・・・?」

「私は・・・。」

みゆきはまっすぐ梨香に向き直って答えた。

「母さんは抵抗があると思う・・・、でも私はこの子を助けたいわ・・・!!
理屈じゃないんだけど、この子を絶対消してはならない気がするの。それに何より、あの女の人の死に際にこの子を生かすって約束してしまったもの・・・。それを裏切りたくないわ。」

「ふむ・・・、相変わらず身勝手な理由だね。」

梨香はしかし、そう言ったものの表情を緩ませた。

「でもまぁ、あんたらしい答えだ・・・。 
いいよ。 うちは教会みたいな戒律も無いんだし。思うようにやってみることだね。
もし、その子があいつにとって重要なものなら弱みを握ったことにもなるしね。」

「ありがとう母さん・・・。」

28カサブタ:2012/03/09(金) 00:04:35
「さぁて、となるといつまでも怖がられたまんまじゃ困るわね。」

そういうと梨香は笑いながら藍の前に右手をさしのべた。

「ほ〜ら、見ててごらん!」

藍は少々とまどいを見せたが、恐る恐る手を出したのだった。
するとどうだろう!
梨香の右手の真ん中には、いつの間にか赤い大きな飴玉が1つあらわれていた。
びっくりした藍は、何もなかった所から突然あらわれた飴玉を興味深々と見つめたのだった。

(くすッ!あの時のびっくりしたアイの顔は、10数年たった今でも思い出すよなぁ・・・。
なんていったて、母さんの飴玉マジックは子供を驚かす時のとっておきの十八番(おハコ)だもの!
私も小さい頃、よくあのマジックで母さんに誤魔化されたもんなぁ)

みゆきは飛行機の席で窓の外を見つめながら昔の事を思い出していた。

みゆきは何度か母に変わって幼い藍の世話をしたことがある。
ベッドの中で眠る藍はやすらかな天使のような寝顔をしていた。 
その顔を見るたびに藍が恐ろしい魔物であるヴァンパイアだということを忘れそうになったものだ

(もうあれからアイもずいぶんと大人になったのね。こんな娘に発情する男が現れるようになったんだから)

「さて、目的地まではまだ遠いし私も寝るか!」

みゆきは目をつぶると、飛行機の静かな振動に揺られながら静かに眠りについていったのだ。

29カサブタ:2012/03/09(金) 00:07:58
7

みゆきが出かけた翌日、日本を一つのニュースが駆け巡った。

“欧州一のシェアを誇る大手製薬会社ローバックスの社長、キルシュ・ローバックス氏がアポなしで緊急来日!! 
羽田空港に自家用ジェット機で飛来。訪日の目的はまだ不明とのこと。”

“欧州の雄、ローバックス緊急来日!! 赤字続きの武藤製薬の買収交渉が目的か?”

“欧州一のセレブにしてプレイボーイとして知られるローバックス氏、愛人と見られる女性を伴って来日! この女性は前回の訪日の際も同行していた噂があり・・・”

「どの新聞も週刊誌も同じ記事ばっかし・・・。」

いつものごとく渡来船に来ていたカズは新聞を広げながらビールをチビチビ飲んでいた。
みゆきがいなくなった渡来船はてんやわんやの大忙し。

実質、みゆきの片腕であった美樹がなんとか仕切ってはいるものの、クルーたちはみゆきの存在の大きさを改めて実感した次第だった。
こんな状態ではいつものように、ぺちゃくちゃおしゃべりするわけにもいかずカズは一人酒に甘んじていた。

(ローバックスっていえば俺がいた会社とも取引があったところだな。きっと今頃、この店なんか比較にならないくらいの大騒ぎだぞ。 ざまぁみろだ、くそっ!!)

後輩に抜かれ、企画を潰され、あえなくリストラとなり、元彼女にも逃げられた苦い記憶を拭い去るようにカズはビールを飲み干すのだった。

週末の為か今日の客は多かった。
いつもの常連に加え、先日藍といっしょに店に来ていたクラスメート達も藍が店で働いている姿を見物に来ていた。
そのうちの一人は自分の弟まで連れてきていて、

彼は藍に挨拶されると顔を赤くしていた。

まぁ、それも当然の反応だろう。
藍が渡来船の制服である水兵服を着ているところを見るのはカズも初めてだが、これがなかなか可愛いのだ。

彼女が通う蓮見台女子校では白いブラウスの上にベストを着て、チェックのスカートを履くという、
いかにも女学院的なオシャレな制服を採用していて、これも中々良いのだが、藍はセーラー服を着てもすごく似合うことがこれで証明されたわけだ。 眼福、眼福。

30カサブタ:2012/03/09(金) 00:13:57
いつもより早い閉店時間を迎えると、クルーの女の子達はあちこちの机でぐったりとなっていた。

「つかれた〜〜、もううごけない〜〜。」

「みゆきさぁん、早く帰ってきて〜〜。」

「みんなお疲れ、俺が一人ずつビール奢ってあげようか。」

甲斐性なしの俺をこの子たちはいつも温かく迎えてくれるのだ。
普段の感謝の意味も込めてこれくらいしてあげなければ・・・。 
俺はカウンターに入ると自らビールサーバからジョッキに注いでいった。勝手知ったるなんとやらだ。

「きゃぁぁ☆ カズ君太っ腹〜〜!!」

「へへへ・・・、」

おいしそうにビールを飲む彼女達を横目にカズは外れの席を見る。
そこには机に頬杖をついてなにやら物思いに耽る藍の姿があった。彼女も皆と同じように疲れているのだろうが、表情が暗い理由はそれだけではないだろう。

「はい、藍ちゃんにはオレンジジュース。一応未成年ってことで。」

「あ・・・、カズ君、ありがとう・・・。」

藍はそれきり何も言わずジュースを飲みはじめる。

「落ち着いた?」

「・・・・・・・・・。」

コクッ と最後の一滴を飲み干すと、ふぅ、と息をはき、藍は笑う。

「正直言うと、まだ気持ちの整理がついてないかな・・・。でも、大丈夫。
私、頑張るってみゆきさんと約束したもん。」

藍はみゆきから貰ったペンダントをぎゅっと握り締めた。

「みゆきさんから店を任されたからには帰ってくるまできちんと仕事をしないと。また修行不足って言われちゃうわ。」

「そうか、元気で良かったよ。 でもあまり無理しちゃだめだよ? 困ったときは俺に相談してくれよ。
藍ちゃんを助けられないようじゃ俺だってみゆきさんにど突かれるもん。」

「あはっ、そうだね。 ん〜、でもカズくんは相談相手としてどうなのかな〜?
なんか、普段の君をみてるとちゃんと女心を理解できるのかものすごく疑問なのです。」

「え〜? 藍ちゃんまでそんなこというの?」

「あはは、冗談、冗談♪ でもこうやって話してるだけでも気が楽になるよ。 それは素直に感謝してるかな?」

楽しそうに話す二人を他のクルー達はじ〜っと見つめています。

(ほおほお、これはこれは・・・・・・。) バイトA
(なかなか、よい感じではないでしょうか?) 美樹
(でも、カズくんとじゃ年齢的にも、性格的にも不釣り合いな気がするわ。無職だし・・・。) バイトB
(確かに今は愛だけじゃやっていけないね。正直私はカズくんは無理〜。)バイトC

(そもそも、なんでカズくんといい感じになってるのか理解できないわね。カズくんて正直どうなの?)A
(スケベですよぉ・・・、そしてダメ人間ですよぉ・・・。) 美樹
(あれよ・・・、藍ちゃんは優しいから、きっと母性本能みたいなのが働いて・・・。)B
(あちゃ〜〜っ ダメ男に引っ掛かるタイプか〜。)C

(どうする? ここは順当に応援してあげるべきかな?)A
(藍さんの為を思ったら、友達としてそれでいいのかどうか・・・)美樹
(確かに、ここは道を踏み外す前にきっぱり別れさせてあげるのが親心というものかも)B
(それならなるべく穏やかにやらないと、カズくんは単純だからいいけど逆に藍ちゃんが傷ついちゃうかも・・・)C

「ちょっと? 君たち何かすごく酷いこと噂してない?」

「「「「そんなめっそうもございません(よぉ)!! カズ君、最高!!」」」」

「くすっ!!」

他のメンバーのおかしなやりとりをみて藍の顔にもようやくいつもの笑顔がもどったのでした。

31カサブタ:2012/03/09(金) 00:17:52
「みゆきさん、そろそろ着いたのかな・・・。ハンガリーって遠いよな。」

「そうだね・・・、私も住んでたことがあるけど。 よく考えたら随分遠くに来ちゃったんだな・・・。 
日本の方が長いからむこうの事はあまり覚えてないんだけどね。」

そういえば、藍は外国の出身だったか。 なるほど、この日本人離れしたスタイルや顔つきはヨーロッパ系の血が混じっているためか。
藍は自分の生い立ちについて語ったことが無いので今まで気にしてなかった。
むこうでは一体どんな生活をしていたかとか、家族はどうしてるのかとか、 藍とは親密になったとはいえカズにとってはまだ謎が多い。

「みゆきさん、大丈夫かしら・・・。思い過ごしならいいけど、少し胸騒ぎがするのよね。」

「そうだ、 藍ちゃん占いができるんだよね? それでみゆきさんの運勢はわからないの?」

「実はもうやったの。そしたら、ちょっと不安な結果が出てね・・・。今日持ってきてるんだけど見る?」

すると藍はカバンからタロットカードのデッキを取り出し、そこから4枚のカードを引いた。昨日帰ってから行った占いに使った物らしい。 
彼女はタロットを使った占いを得意としているらしい。
説明を聞いてもカズにはチンプンカンプンだったが、藍が言うにはかなり我流の方法なので理解しなくてもいいとのことだった。

使うのは大アルカナと呼ばれる22枚のカード。カードをよく切ってから特殊な方法で振り分けるのだそうだ。 
そうして形6枚のカードを裏返したまま選び出し、並べてから全てを開く。
そのうち正位置のカードが運勢を表すのだという

「出たのは、右から正義(Justice)、死神(Death)、吊られた男(Hunged Man)・・・。」

「意味は知らないけど、俺にも不吉なのはわかるね・・・。」

「正義はきっとみゆきさんのことね。死神はたぶん私。吊られた男はやっぱカズくんよね・・・優柔不断で女難の相ありかな。 ふふふ・・・。」

「えぇ、そんな単純な判断でいいの? タロットってもっとこうカードごとに深い意味があるんじゃ・・・。」

「だから、私の我流なのよ。 実質は私の魔力を使って占ってて、カードはただの媒体みたいなものなの。 で、気になるのは最後のこれ・・・。」

藍は一番左端のカードを指差す。 夜空の下で水を注ぐ女性の絵柄が描かれたカードだ。

「星(ster)・・・。 暗い見通しの中に残された一筋の希望。 一体何を示しているのかしらね・・・。」

「きっと、何かいいことがあるってことじゃないかな。みゆきさんはたぶん無事ってことだと思うよ?」

「そうね・・・。私もそうだったらいいなって思うよ・・・。」

「なになに? 何の話してるの?」

「あっ! これってひょっとして占いじゃないですか?」

「カズくんだけずる〜い!! 藍ちゃんの占いってよく当たるって評判なのに!!」

二人の様子を見て周りの女の子達も寄ってきた。恋愛運を占ってほしいという皆に藍はちょっと困ったように笑いながらも答えていた。

(やっぱり和むなあ・・・。 これがこの店のいいところだ。)
皆の輪の中心にいる藍はとても幸せそうに笑っている。俺だけでなく、きっと藍にとってもこの店は特別な存在なんだろうなと思った。

32カサブタ:2012/03/09(金) 00:22:43
と、その時、店のドアが開いて誰かが入って来ました。

「あっ!! すいませ〜ん、今お昼休みなんですけどぉ・・・、 あっ!!」

「おや、貴女はこの前の。」

入ってきたのは白髪まじりの初老の男だった。応対に出た美樹と藍は見知った顔に驚く。
というのも彼は先日の一件の時、黒百合に襲われて倒れていた美樹を保護してくれた警察官だったのだ。

「先日はどうもお世話になりました(ペコリ」

「いやいや、覚えていていただけるとは・・・。その後、お変わりありませんか?」

「はい!! すっかり元気です!!」

「美樹ちゃん、この人は?」

「この前、私が怪我したときにお世話になった警察官の人ですよぉ。」

「世田谷署で警部をやっております、大原という者です。 
こちらこそ、先日はどうもお世話になりました。そこの水無月藍さんが知らせてくれたおかげで美樹さんを保護することができたんです。
しかし、貴女もこちらで働かれていたとは。」

「あはは・・・、先日はどうも・・・。 あのときは変な恰好で驚かせちゃいましたよね・・・。」

「いえいえ・・・、お気になさらず。 さっそくなのですが、穂積みゆきさんはいらっしゃいますか?」

「あ、船長ですか? すいません。今ちょっと外遊中でここ一週間は来ない予定なんです。」

「え? そうなんですか? それは残念ですね・・・、ちょっと彼女の耳にも入れて頂きたかったのですが・・・。」

「あの、俺連絡先知っているんですけど、言伝があるなら伝えますよ? 何かあったんですか?」 

「ああ、いや。すぐにではなくていいのですが。ちょっとご注意に上がりまして。
ここ最近、隣の狛江市で奇妙な通り魔事件が頻発しているんです。
ニュースでご覧にはなっていると思うのですが、被害者は既に4人を越えており、全身から血を抜かれた状態で発見されるのです。」

「え・・・?!」

店内が一瞬騒然となりカズと藍は顔を見合わせた。 すると、バイトの子の一人が言った。

「そのニュース聞いたことある! けっこうここから遠くないから怖いなって思ってたんだけど。」

「はい、これまでは被害が狛江市周辺に集中していたのですが、先日、とうとうこの世田谷でも被害者が出たのです。
おそらく夕方辺りには各ニュースで取り上げられると思いますが・・・。

私共は今、区内の各店舗に対しこうやって注意を促して回っているのです。特にここはそこにいる美樹さんが先日、首筋を噛まれたような傷を負いましたよね。
実は今回の被害者にも同じような傷が見られるのです。ですから、美樹さんの一件となんらかの関連性がないかと睨んでおりまして・・・。
貴女にまた被害が及ばないとも限りませんので十分にご注意いただきたいのです。」

大原警部は、その他諸々の注意をよびかけ、店内に防犯啓発のポスターを貼るよう伝えると店を出て行った。
クルーの皆はまだ騒然としていたが、しかしカズと藍の動揺はそれ以上の物だった。

33カサブタ:2012/03/10(土) 01:57:39
8

「七海・・・、一緒に帰らない・・・?」

七海と呼ばれた少女は振り返る。 そこには仲良しで無二の親友の姿があった。

「ううん・・・、ちょっと寄りたいところがあるの。 さやかは先に帰ってて・・・。」

少女は無理をして作り笑いをしていたが、音無さやかには彼女が辛い胸中にあることがよくわかっていた。

「無理しちゃだめだよ・・・。 私はいつでも七海の味方だからね。」

「ありがとう・・・。 じゃあね・・・。」

七海は駆けるように校門を飛び出した。本当は寄りたいところがあったわけじゃない。
ただ一人になりたかった・・・。 今日の出来事を思い出すと泣きたくなってしまう。 ここ最近は親友のさやかと顔を合わせることも辛かった。

「ひっく……、うぅ……。」

帰りがけに立ち寄った夕暮れの公園、人目をはばかるように彼女は一人泣いていた。
紺のブレザーの袖を涙で濡らし、肩を震わせて立ち尽くしている。

紅葉台学園高等学部の2年生、大原七美。彼女は今日、失恋した。
幼馴染でありずっと密かに想っていた男の子、金森健二が1歳年上の先輩と付き合い始めたというのだ。

彼女の名前はマリア・ハミルトン。今年度の初めに転入してきたハンガリー出身の留学生だ。
マリアは健二と同じ美術部に所属する先輩であり、七美が健二を尋ねて部室を訪れたときとても親密にしていたことを覚えている。
外国人とは思えないほど日本語が堪能で他の部員とも早々に打ち解けていたようだった。

しかし、前から健二のことが気になっていた七美はマリアが好きになれなかった。健二とマリアが仲良くしていたこの数ヶ月間は辛い日々だった。
部活を見に行ったとき、強情な性格をしているはずの彼が、マリアの前ではあからさまにモジモジし、ぎこちない敬語を使っていたことにまず衝撃を受けた。 
そして、今まで当たり前のように話をしていた健二が段々冷たくなり、七美のことを避けるようになっていった。

それだけでも辛かったが、一番打ちのめされる出来事はつい1週間程前に起こった。

ある日の放課後、健二と一緒に帰ろうと思って彼を誘うと、健二は用事があるといって突然七美から離れた。不審に思った七美がこっそり跡を付けると、彼が校舎裏でマリアと会っているのを見た。何を話しているのか気になって隠れて見ていたが、次の瞬間マリアは健二の肩をそっと引き寄せ、彼の唇にキスをしたのだった…。 

二人はそのまま一緒にどこかへ向かった。七海は気付かれないように跡をつけてみると、マリアと健二は住宅地の外れにある洋風の大きな家の中に入っていったのだ・・・。
七海がその家の表札を確認すると、そこがマリアの家であることがわかった。

なんとか気持ちの整理をつけ、今日になってようやく健二にそのことを問いただしてみたが、そこで健二にマリアと付き合っていることを打ち明けられたのだ。

34カサブタ:2012/03/10(土) 02:03:25
「帰ろう・・・。」

まだつらくてたまらないが、沢山泣いて少し落ち着いた。七美はショックで足元もおぼつかなかったが、ゆっくりと家路についたのだった。

七海は他の子たちよりもずっと長く健二と付き合ってきた。だからこそ、つい最近になって現れたマリアに健二を取られてしまったことが悔しくてたまらなかった。だが、その一方でしょうがないという諦めの気持ちもある。
七美は引っ込み思案だったから今まで健二に対して思いを伝えたことなんて無いし、それに、マリアは可愛いのだ。
亜麻色の髪を肩よりも少し長いくらいのセミロングにして、きめ細かな肌の色は小麦色で健康的、外国人だからなのか他のクラスメートに比べて長身でスマートだったしとってもお洒落だった。
健二でなくとも夢中になってしまうのは七美自身にも痛いほどよくわかった。それに比べて七美は今でさえ高等部のブレザーを着ていなければ小学生とも見間違えそうな小さな女の子だったのだ。

「あ・・・。」

歩いている途中、七海はハッとした。あの交差点を右に曲がってまっすぐいったらマリアの家だ。なんてことだろう。足が勝手にこっちを向いてしまったようだ。健二に未練があるから・・・?
今は彼のこともマリアのこともなるべく考えたくない。七海は踵を返そうとしたが・・・

キッ!!

「わぁっ!!」

七美の目の前で黒い車が急ブレーキを掛けた。七美は驚くと同時にゾッとした。
自分は今、車道の真中に居たのだ。彼女は端っこに避けて道を開けようとしたが、その時、車の後ろの窓が開いた。

「大丈夫? 怪我は無い?」

車の中から顔を出したのは若い女の人だった。流れるような黒髪に黒い服を着てサングラスをかけている。
とても気品を感じさせる人だ。よくみると車も見るからに高級そうな外車だし、きっとすごいお金持ちの人なんだろう。

「す・・・すいません。 よく見てなかったもので・・・。」

「気にしないで・・・。こっちもちょっと不注意だったわ。 貴女みたいな可愛い子を轢いてしまったら大変だものね。」

七美の無事を確認すると車は発進し、交差点を右に曲がっていった。
マリアの家がある方向だ・・・。 この住宅地はよく通るが普段あんなすごい車がくるような場所じゃない・・・。 七海は何かおかしな予感がした・・・。

35カサブタ:2012/03/10(土) 02:05:20
ちゅっ、 くちゅ……  ぴちゃ……

はぁ……  はぁ……っ!!

息苦しそうな喘ぎ声が、薄暗く広い部屋の中に響いている。 
紫色のサテンシーツが敷かれた天蓋付きの豪華なベッドの上で、大きな黒マントを羽織ったマリアは妖しい微笑を浮かべ心底愉しそうに声を漏らすのだ。

「うふふ……、ふふふふ……。」

彼女はマント以外何も身につけておらず、十代とはとても思えぬグラマラスな肉体をすべて晒してしまっている、

そして、ベッドの上に座する彼女の膝元には、サテンのシーツに巻かれた裸の少年が…。 
マリアは綺麗な爪をした手を少年の身体に伸ばし、繊細な細い指で彼の体中を弄るように愛撫するのだ。

「あぁ……、だ……だめ…!! くすぐったいです……っ!!」

「ふふ…、金森くんってほんとうにカワイイわぁ…。
癖になっちゃいそう……。」

バサァァ

マリアは彼の上に覆いかぶさり、自分より小柄な身体をマントの中にきつく抱きこんでしまう。
彼の耳元に熱い息を吹きかけると、マリアの舌が、耳の裏をチロチロと舐めくすぐる。

「あ…ッ!! マリア…さん…。 そこはダメです…、くすぐった…、ヒィッ!!」 

「ふふ…、マリアさんじゃないでしょう…? 二人きりのときは“マリアお姉様”
もう忘れたのかしら…ボウヤ?」

彼を押し倒すような体勢でのし掛かったまま絶えず愛撫し、柔らかいマリアの肢体がゆっくりうねりながら強く絡み付いてくる。
巻きついたマントも健二の敏感な肌をサワ、サワ、と撫でくすぐり、彼女の素肌と共に健二を快楽の中に沈めていく。

「う…うぅ…っっ!!! あぁ!! すいません……、マリア……っ さま……っ!! 
あ・・・ あああっ!!」

どぷっ、 どくどくどくどく・・・・・・。

健二はマリアの身体に溺れながら、今日何度目か分からない射精を迎えた。力なく溢れ出た精液がマリアの太股を濡らし、身体を痺れるような痛みが襲う。
同時に彼女の身体の熱さと湧き出る汗の匂いに頭がぼんやりし、目が潤んで涙が零れ落ちた…。

マリアと付き合いはじめて以来、健二は幾度となくこうやって彼女に弄ばれてきた。

外国の人は積極的だとは思っていたし、マリアのことはちょっとSっ気があるお姉さんくらいにしか思っていなかった。 だが本格的に付き合い始めマリアの家に泊まりにいった最初の晩、彼女はその悪魔的な本性を露にした。

二人きりになった途端、彼女は成熟の早い自分の身体を惜しげもなく晒して健二を誘惑し、彼がつられて寄ってくるや否やベッドに連れ込んで淫らに性交した挙句、たちまち童貞を奪ってしまったのだ。

それ以来、既成事実を作ったのをいいことに彼女は度々彼を呼び出して過激なプレイを強要してくるようになった。 
そして、どういうわけか彼女は健二の身体を弄びながら彼の家族の事や一人いる姉の事、そして彼自身のことを強引に聞き出すのだ。それは快楽による拷問に他ならなかった

健二は最初こそ彼女の淫乱さに戸惑い、一方的で暴力的とも言えるプレイに戦慄した
しかし健二も所詮は男、マリアの美しさと彼女が与えてくる快楽から逃れることなどできず、ズルズルと彼女の手に堕ちてしまった。

「うふふ…、ふふふ……っ!! もっと味わっていいのよ。
君はもう私の物なんだからね。」

マリアは健二を抱き起こすと、顎を掴んで無理やり上を向かせ、半開きになった彼の口に舌を突っ込み、ドクドクと唾液を流し込んだ。

「うぅ…、ごほっ!! ……ぐふっ!!」

苦しそうに身体を震わせながら、それでも彼はマリアの唾液を溢すことなく飲み干していく。

苦しいはずなのに彼女の命令には逆らえない。それどころか、彼女に従わさせされることや、いいように弄ばれることに対し悦びを覚えるようにさえなっていった。
調教されるとはこういうことなのだろうかと、健二は薄れ行く意識の中で思った。

36カサブタ:2012/03/10(土) 02:12:33
「ふふふ・・・、マリア、随分ご機嫌じゃない?」

その時、二人の後ろで声がした。マリアが驚いて振り向くと、そこにはマリアと同じように黒いマントを羽織った、流れるような黒髪の美女が立っていた。

「ローズお姉様!! いらしてくれたのねっ!!」

「会いたかったわ、マリア。」

マリアは健二の身体をベッドに放り出すと、そのローズという女性の元に駆けていった。そして飛びつくように抱きつくと、いきなり彼女と濃厚なキスを交わし始めたのだ。

「・・・?!!!」

健二はわけがわからなかったが、美しい女同士が激しく求めあう艶かしい光景に衝撃を受けた。
やがて二人はお互いの顔をゆっくり離すと健二の方を見た。

「マリア・・・、この子が例の?」

「ええ・・・、正確にはお姉様が探している子・・・、 アイさんだったかしら?
その子の友達の弟なんですって。この前、学校で話してたのを偶然聞いたの。」

「ほほほっ、 貴女を先んじて日本に送り込んだのは藍の手掛かりを探す為でもあったのだけど、まさかこの学校の生徒から見つかってしまうなんてね。」

「ふふ・・・、それでもこの子に行き着くまでには苦労しましたわ。世田谷周辺の高校の生徒を襲ってみても何の情報も得られなかったんですもの。」

マリアはこれまでに健二を拷問して聞き出した情報をローズに話し出した。

「お姉さんには水無月藍っていうすごく綺麗な友達がいて、その子と一緒に下北沢のBARによく行くんですって。BARの名前は“渡来船”だそうよ。」

「水無月藍・・・、なるほどそんな名前を・・・。
下北沢といえば世田谷ね。 でも、その店は例のハンターの居場所なのかしら?」

「ふふっ!! それも調べたわ。 この前、この子には姉と一緒にこのBARに行くように命令したの。
私はお姉様が前にテレパシーで見せてくれたアイさんとハンターがいるかどうか、この子を使って調べさせたの。 
そしたら確かに見たそうよ!! この子の姉はアイさんのクラスメートだったの。
そして、一緒に渡来船に行き、そこで店主みたいな女と仲良さそうに話していたわ。その女は間違いなくあのハンターだったそうよ。お姉様!!」

黒百合の目を通して見た藍とみゆきの姿、ローズはマリアを日本に行かせる前にそのビジョンを見せていた。
マリアは後輩にあたる健二が藍の友達の肉親であることを突き止めると、すぐにレッサーヴァンパイアに変えることはせず、姦淫によって生きたまま彼を虜にしてしまった。

絵を趣味とし写生に長けたマリアは藍とみゆきの似顔絵を描き、健二に持たせた。
そして、健二に命令して渡来船に向かわせ、店の場所と藍とみゆきの存在を確認したのである。

37カサブタ:2012/03/10(土) 02:14:43
「私はこの前、店の近くへ行ってみたの。そしたらお姉様が思った通り、店にはヴァンパイアを寄せ付けない為のまじないが幾重にも施してあったわ。
ご丁寧にも、アイさんに対してだけは無効化されるように仕組んであるみたいよ。」

「なるほどね・・・。このボウヤをわざわざレッサーに変えないまま使っていたのは、アイに気取られないようにする為だけでなく、それも見越してのことだったのね。
レッサーだったらそのお守りに弾かれて中に入れないものね。」

「つい昨日だけど、蝙蝠に化けて店の前を張っていたらあの女が出てくるのを見たわ。きっと連絡を受けてホロウ・クイに向かったのよ。お姉様の作戦は見事に成功したってことだわ。」

「上出来だわマリア!! 貴女は本当に頭がいい子ね。 今、随分楽しんでいるみたいだったから仕事を忘れて遊びほうけているのかと心配になったわ。」

「金森くんには今、情報をくれたお礼にたっぷりと可愛がってあげてるところなの。
この1週間、血を吸わずに焦らすだけだったから、 今日は搾れるだけ搾ってあげようと思ってね・・・、うふふっ!!」

マリアの目が真っ赤に染まり、口元には八重歯が鋭く尖って伸びていた。

「ひ・・・ひいいぃぃっ!!」

「ふふ・・・、動いちゃだめよ金森くん・・・。いまからとぉってもイイことしてあげる。」

マリアの目に見つめられると健二の体は動かなくなった。マリアはベッドの上に上がると健二を羽交い締めにし、ローズの方を向いた。

「お姉様も味わってみない? この子・・・おいしい精をもっているわ。」

「ふふふ・・・、マリアったら。 ならお言葉に甘えようかしら。」

ローズはマントを体に巻きつけてベッドに近づいていく。 妖しい微笑みを湛える美女に健二はこの上ない恐怖を覚えた。
彼女のマントがさらさらと床を撫でながら近づいてくる音が、死神の足音に聞こえた。

「本当に可愛らしいボウヤ・・・、とってもおいしそうだわ・・・。」

ローズは少年の目前でマントを大きく広げる。
健二の目の前に、真っ白で肉感的な彼女の肉体が晒される。
二つの巨大な乳は彼を誘惑するようにタプンと揺れ、股間はしっとり濡れて、粘液が糸を引いて滴り落ちていた。

「私のマントに溺れさせてあげるわ。」

バサアアァァァァッ!!

「あぁぁ・・・っ!!」

ローズの巨大なマントは、彼の体を捕まえていたマリアもろとも覆いこみ、ベッドに組み敷いてしまった。 
紫のシーツが敷かれたベッドは真っ黒に染め上げられ、健二はまるでタールの沼に溺れているようにも見えた。

「あん!! お姉様のマント気持ちいい・・・、このままじゃ私までおかしくなっちゃう。」

「ふふ・・・、久しぶりだから貴女も一緒に味わいたくなっちゃったわ。 貴女も私と一緒にこのボウヤに魔の快楽を味わわせてあげましょう!!」

「うふ・・・、そうねお姉様・・・。」

マリアは後ろから、健二のうなじに唇を這わせたり息を吹きかけたりし、彼の身体に絡ませた手で胸や脇を愛撫したり、乳首の先を指先で弄んだりする。

38カサブタ:2012/03/10(土) 02:19:17
「抱いてるだけなのにこんなに震えて、女を知らなかったのねボウヤ・・・。
お姉さんがもっと気持ちよくして、溺れさせてあげる・・・。」 

ローズはマントの中で彼の股間に手を伸ばし、硬くなった肉棒を柔らかな手つきでしごき上げる。

「ああぁ・・・っ!! んぁぁ・・・!!!」

ぴゅる・・・、びゅるる・・・・、 びちゃびちゃ・・・。

ローズの手にしごき上げられ、たちまち射精させられる。
精液がマントに付着して汚れてしまうが、やがて真っ赤な裏地へと染み込んでゆき、そのままローズの糧となるのだ。

「ふふふ・・・、若い精を吸ってこのマントも喜んでいるわ。 ボウヤ、貴方のザーメンをもっとかけてちょうだい。 このマントにも、私にもね・・・。」

さわさわさわ・・・、しゅる・・・、しゅるるる・・・・・・ 

「ひゃぁ・・・!! いぃぃ・・・、や・・・あ・・・!!」

ローズはマントを手繰り寄せ、精液を求めて不気味な光沢を放つ裏地に少年の身体を舐め上げさせた。 
滑らかな布地が身体を滑っていくうちにまた精液が筒先からトロトロと漏れ、吸い取られていく。

艶々した肌触りのマントと、二人の女の身体に絡みつかれ、健二は為す術もなく快楽の泥沼へ引き込まれていった。
元々、女性に免疫が無いうえ、それをいいことにマリアに好き勝手虐められてきたのだ。
マリアのみならず、より成熟した美女であるローズにまで責められてしまっては、これ以上理性を保つことさえ苦しくなってきた。

「ひぃ・・・っ!! ひっく・・・っ ひぁぁ・・・っ!!」

「あらあら・・・、ソフトに攻めてあげてるあげてるつもりなのに・・・。
もう壊れてしまいそうじゃない?」

「やっぱり、この子にお姉様はまだ早かったみたいね・・・。 この子ったら本当にウブでもともと加減が難しかったの。 
お姉様がそんなにいやらしく責めたら発狂しないか心配だったのだけど・・・。」

「まあ、そんなに? 全然、手加減してたのに弱いのねぇ・・・。
まぁいいわ。 長く持たないなら、それはそれで楽しみ方があるわ。」

ローズはぐったりした少年の身体を寝かせると、その上にまたがり、未だ硬くなっている彼のモノを受け入れ始めた。

ヌプヌプ・・・、くちゅるる・・・・・・

「ぁぁ・・・・・・、あああ・・・!!」

「うふふふ・・・、どうせすぐ壊れてしまうなら、どんなに手荒に扱っても同じことよねぇ?
なら遠慮なく、思い切り吸い尽くしてあげるわ。」

グチュ・・・、グチュ・・・、 じゅぷ・・・ジュブブ・・・!!

少年のペニスを取り込んだ悪魔の肉壷は、熱く濡れそぼった肉襞で激しく締め上げてきた。
若く、未熟な彼のモノは容赦なく揉まれ、しゃぶり上げられ、なすがままに精液を漏らしつづけた。


じゅぶぶぅぅ・・・!! びゅるびゅる・・・・・・ どびゅううぅぅ・・・・!!

「あ・・・あ・・・、 あああああああぁぁぁっ!!!」

いつまでも終わらない、長い長い射精。 数回分の精液が1秒も経たないうちにローズの子宮へ吸い込まれていく。 
彼の身体はローズの魔力によって、自己崩壊しながら絶えず精液を産生し続け、精液も快楽も途切れることはない。

「うふふ・・・、健二くんの身体、どんどん腐り落ちてる・・・。 とってもいい匂い・・・。
きっと血もさっきより美味しくなっているわね・・・。」

マリアも後ろで押さえているだけでいるのが我慢できず、彼の首筋に噛みついた。

がぶぅ!!

「・・・っ!!」

「じゅる・・・、ぢゅ・・・、ごくごく・・・、チュゥ・・・チュゥ・・・!!」

首筋から血を、股間から精液を、少年は彼女達の思いのままに貪り尽くされる。
吸血鬼にとって、獲物を性的に犯すことは食事を盛り上げるための前戯に過ぎない。
快楽漬けになって反応が楽しめなくなった時点で彼の身体は二人の魔女にとってオモチャから食べ物に変わってしまったのだ。

あとは、身体が朽ち果ててしまうまで彼女達に味わわれるだけだ。
地獄のような快楽に、少年がいくら暴れようともローズのマントから解放されること二度とはなかった。

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

39カサブタ:2012/03/13(火) 02:29:34
9

すべてが眠りについてるような、静かな夜であった。
耳の痛むような静寂があたりいちめん満たしていた。
空には星々が輝き、月の淡い光が森の木々と茂みに溶け込んでいた。
その静寂の中を二つの影が歩いていく。

「姐さん、ずいぶん辺鄙なところにきましたねぇ? ここら辺はバスも通ってないみたいですよ?」

みゆきは舗装もされていない山道を、月明かりを頼りに2時間以上歩いていた。 彼女に同行しているのは相棒のトビー。度々、彼女と仕事を共にしてきた腕利きのハンターだ。 二人はブダペスト空港で落ち合ってから、北西へおよそ80キロ先の山間にある村コスパラッグを経て、深い山中を数キロも歩いている。自然保護区であるドゥナ=イポイ国立公園に属するこの山間は、周囲におよそ人工物とよべるものが全く無い異界のような場所だった。

「わたしも始めて来るから良く知らないのよ。 こんな山奥の田舎町なんて観光ガイドにも載ってないし。とりあえずゆっくり休める場所を見つけましょう!」

「こんな崖だらけの一本道しか町にいくルートが無いなんてね。ここが崩れたら完全に陸の孤島ですぜ。」

「まぁ、確かにミステリーものとかなら明日には崖がダイナマイトで爆破されて私たちは孤立無援かな。」

「ちょっと、縁起でもないこと言わないでくださいよ。」

昔馴染みの2人は気軽に談笑していたが、やがて森の先にちらちらと光が漏れるのを確認した。

「あれ!? 姐さん! この森を抜けた先に、点々と明かりが見えますよ。
もしかしたらあれが目的の町じゃないですか?」

「おっ! ようやく見えてきたようね。でかしたトビー!街に行けば何か美味しいものご馳走してあげるから!」

「へ〜い! そんじゃ急ぎますよ!!」

…………
……

崖道を抜けた先の開けた谷間には月明かりに照らされた暗い街の影が、静かに横たわっていた・・・。

ホロウ・クイはまるで、中世から時間が止まったような村だった。くねくねした石畳の細い道路の脇にパローツ式の木造住宅が点々と立ち並び、村を見下ろす丘の上には13世紀に建てられたという古城が立っている。教会らしき尖塔が月を背負って巨大な影を落とし、いかにも魔物が出て来そうな風景である。

夜の帳が降りた街に明かりはまばらで、ねずみや猫、犬といったような小動物の奏でる物音が聞こえる他は静まり返っていた

(この街のメイン通りだというのに、誰も人がいないなんて不思議よね・・・。
やっぱり魔物の被害のせいで警戒してるのかしら?)

「姐さん、宿屋がありましたよ? とりあえず腹ごしらえして狩りに備えましょうや。」

「ま、それもそうね!」

二人は木の看板が掛かったレトロで小さな宿屋を見つけた。

「いらっしゃいませ。今日は泊まりですか?」

扉を開けてエプロン姿の若い女主人が顔を出した。
無邪気に笑う笑顔が可愛らしく、その口元の八重歯がちょこっと覗かせるところがまた印象的でもあった。彼女に見惚れてか、トビーがヒューッと口笛を吹いた。

「お二人さまですね? ごらんの通り、今日はお客様が多いので相部屋でもよろしいでしょうか?」

「え?! えええっ??! 」

店の中に通されたみゆきは店内を見ておどろいた。街はあれだけ閑散としていたはずなのに、なぜか宿屋のロビーは沢山の人でごった返していた。しかも、その中の何人かはみゆきと顔見知りか、写真でだけなら見たことがある人物達だった。なにしろ、彼らは皆ヴァンパイアハンターだったからである。

「みゆきっ!! みゆきじゃねえか!!」

「何? みゆきまで来てるのか?!」

どうやら向こうもこちらに驚いたようだ。
その名前を聞いて、料理のオーダーを取ろうとしていた女主人は横目でチラリとみゆきの方を見ました。

(穂積みゆき・・・、ふ〜ん彼女が・・・、うふふっ!!)

彼女は、騒然とする客たちを尻目に、こっそりと店の奥へ入っていった。

40カサブタ:2012/03/13(火) 02:40:57
「あんたたち・・・、なんでここに居るの?」

「その反応をみると・・・、どうやらお前もボルマンの情報で来たようだな・・・。」

「えっ! そうだけど・・・。まさかあんたらのところにも連絡が?」

「ああ、俺たちみんなあいつの情報を聞いてこの村に来たんだぜ。」

「くそ・・・、ボルマンの奴、嵌めやがったな。俺だけに耳寄りな情報をくれるとか言いやがったのに。」

情報屋のボルマンはガセ情報を複数の人間に売ったりはしない。漏金に汚い男だが、ネタの正確さと質の良さをなによりの売りにしていたからだ。そもそも、儲けが第一なら尚更こんなマネをするわけがない。これだけ大勢のハンターの信頼を失うのは情報屋を営む物にとって死活問題だからだ。

だとすれば、今回のような行為に及んだ理由は大金と引換えに何者かに買収されたからだと考えてもおかしくはないだろう。

「そういえば、あんたらはどうしてこんなところで油売ってるわけ?
同じ情報もらってんなら、ターゲットが居る場所の目星はつけているんでしょう?」

「知らないのか? ローバックスは今朝、日本に向かったらしいぞ?」

「えっ?!」

「お前もボルマンの情報を聞いて、ローバックスが“奴”を匿ってると睨んだんだろ?
俺達だって丘の上のあの城が怪しいと思って調べたようと思ったさ。だが、いざこの村に着いてみりゃ入れ替わるように高飛びだぜ。この村は情報が入ってくるのが遅いからすっかり巻かれちまった。」

「ボルマンはおそらく利用されたんだ。まだ生きているとはとても思えないな。
ローバックスは嘘情報で俺達をこの辺境の村に集めて、まとめて足止めさせる魂胆だったんだろうぜ。この森を夜に抜けるのは俺達でも危険だから今日一日は邪魔されることないってことだろう。」

「こうなりゃ、明るくなると同時に村を出て明日一番の飛行機で日本に向かうしかないぜ。
ローバックスが何企んでるのか知らねえがこんなことするってことはかなりの大事だろう。」

ハンター達は早くも明日に向けて息巻いているようだった。一方でみゆきはまだ今の状況が釈然としないようだった。

「姐さん・・・、どうしやす? こりゃ何やらキナ臭いですぜ。」

(妙だ・・・。 

おそらく奴が日本に向かった目的は藍に違いない・・・。私と藍を引き離す為に仕組んだんだ。だが、それなら最初から私だけに情報を与えればいいだけのこと。
なぜわざわざ他のハンター達にも情報を流した・・・?

仮に私以外のハンター達の妨害を恐れてこの村に誘き寄せたにしても、このやり方はあまりに場当たり的すぎる。今日一晩足止めしたところで、足の速いハンター達は明日にでも日本に押し寄せ、邪魔をしてくるは明らかなはずなのに。)

みゆきは腕を組むと目をつぶり考え込んだ。
そして・・・
「くしゅん!」
とくしゃみをしたのだった。

だがその刺激がきっかけになったのか、彼女はある可能性に思い当たった。

「!!・・・まさか!! いや、そうとしか考えられない!!」

「ちょっと!! なんですかい?」

「やられた・・・!! 私としたことがっ!!」

「え・・・? なんですって?」

「トビー、早く引き返しましょう!! 今すぐ日本に・・・。」

その時、遠くの方で激しい爆発音が鳴るのが聞こえた。来る時に通ってきた崖の方だ。

「うふふふ・・・、せっかく来たのにもうお帰りになるの?」

突然、不気味な笑い声が宿屋の中に響く。全員が上を見ると、さっきいなくなった筈の女主人が天井に掛かったシャンデリアの上に座り、妖しい笑みを浮かべていた。彼女の目は真っ赤に染まり、濡れたような光沢のドラキュラマントを羽織っていた。

「おもてなしの準備はもうできていますのよ? ぜひとも楽しんでいってくだなさいな。」

そして、彼女を取り囲むように獣のような目をした男たちが天井に張り付いてハンター達を睨みつけていた。

41カサブタ:2012/03/13(火) 02:44:54
ちゅ・・・・・・、 ちゅ・・・っ
  ちゅぅ・・・・・・、 ちゅぱっ

暗く、 湿っていて、 血生臭い部屋の中で二つの真っ赤な唇と舌が互いを求めあって絡み合う。

「ちゅ・・・ん・・・、マリア・・・・・・、これくらいにしましょう・・・、あんまり時間を使うわけにはいかないわ。」

「ん・・・、お姉様のカラダ、もっと味わいたい・・・。」

「ふふ・・・、機会ならこれから何度でもあるわ。それにこの子ももう動かなくなっちゃったみたいだし・・・。」

二人の柔肌とマントに挟まれるようにして、少年は干からびて横たわっていた。体は二人の牙によっておびただしい噛み傷が穿たれ、二人の体液でベトベトに汚されていた。もはや動くことはないだろう。

「あら・・・、もうちょっと楽しむつもりだったのに案外保たないものね。やっぱり我慢しすぎると加減が
出来ないみたいだわ。」

二人はベッドから起きると、今後について少し話し合った。

「ローズお姉様、一体どうするの? アイさんがあの店にいる限りお姉様も近寄れないわ。」

「ふふふ、心配いらないわマリア。こういう時は慌てずに外堀から固めていくことよ。あの子は確かに並のヴァンパイアじゃ敵わないくらい強いけれど、その半面とっても優しいのよ。
あのハンターさえ居なければ、つけ込む隙はいくらでもあるわ。安心なさい。」

「そういえば、今頃ハンターの方はどうしてるかしらね? お姉様の罠は完璧だし流石にもう生きてはいないかしら?」

「さて、どうかしらね・・・、そうなってくれれば嬉しいけれど、相手は私を封じ込めたあの女の娘よ。
そう簡単にやられてくれるとは思えないわね・・・。」

「心配いらないわ。 私の尊敬するお姉様の計画が上手くいかないわけがないもの。
きっと他のハンターと一緒にあの世いきにきまってるわ。」

「ふふっ、ありがとう。 本当に可愛くて良い子だわマリア。 でも、例え死んでなくても構わないのよ。
あの女があそこに向かっただけで、目的の半分は達成できたような物だもの。」

…………
……


つい先刻まで水を打ったように静かだった町は銃声と怒号に包まれた。
あちこちの家からは火の手が上がり、不気味ないななきと悲鳴が谺している

宿屋の女主人がレッサーヴァンパイアを仕向けたことによってハンター達は外に飛び出て散り散りになった。 しかし、外に出た彼らを待っていたのは、同じようにマントを着た大勢の女達と彼女達に従えられたさらに多くのレッサーヴァンパイアだった。

暗闇の中から、レッサーヴァンパイア達が次々と飛び出し、ハンター達を狙ってきた。

「くそっ!! どんどん沸いてくるぞ。キリがねえ!!」

「弾の残りがもう少ないっ!! 誰か分けてくれっ!!」

ハンター達は町のメインストリートを走りながら応戦を始める。経験の浅い素人は既に何人かが宿屋で女主人の餌食になった。今生き残っているのはほとんどが歴戦のベテラン達だった。流石に経験豊富な狩人だけあって、大量の敵にも慄くことなく、次々と撃破していく。 しかし、あちこちの路地や建物の壁を這い回る影の数が減ることはない。敵はどうやらこちらの消耗を狙っているようだ。

「ふふふふ・・・・・、」         「きゃははっ!!」
          「ほほほほほ・・・・・・・」
バサァッ バサバサァッ!!

空には、沢山のヴァンパイア達が獲物を狙うカラスのように飛び交っている。ドレスを着た年配の女性や、裸同然の若い娘、中には子供たちまで、マントを広げて飛び回っている。 あちこちの屋根の上には、下で繰り広げられる死闘を見物するように笑いあう女たちの姿もあった。 所々にマントを着た女たちが集まって黒い塊のようになっている場所があるが、そこでは既に倒されたハンターが寄って集って貪り喰われているのだ。

42カサブタ:2012/03/13(火) 02:51:25
空には、沢山のヴァンパイア達が獲物を狙うカラスのように飛び交っている。ドレスを着た年配の女性や、裸同然の若い娘、中には子供たちまで、マントを広げて飛び回っている。 あちこちの屋根の上には、下で繰り広げられる死闘を見物するように笑いあう女たちの姿もあった。 所々にマントを着た女たちが集まって黒い塊のようになっている場所があるが、そこでは既に倒されたハンターが寄って集って貪り喰われているのだ。

「姐さん何なんですかねあいつらは!? 男共はただのレッサーだが、女の方は普通じゃないですぜ?」

「純血のヴァンパイアがこんなに沢山寄り集まっているわけがない!! こいつら、前に話した黒百合と同じだわ。あのマントのせいでヴァンパイアと同等の力を得ているのよ!」

(きっと、町の女達全員があのマントによってヴァンパイアにされたに違いない。このレッサー達は、彼女達に噛まれたこの町の男達だ!!)

みゆきとトビーはハンター達の戦列に紛れながら、正確な射撃とナイフ捌きでレッサーヴァンパイアを狩っていく。しかし、このままではいずれ限界がくることはみゆき自身にもわかっていた。

(まさか、住民全員が敵だなんて!!
どんなヴァンパイアハンターだって、町ひとつを相手にする装備なんか持っているはずがない!
おまけに普段、単独か少ない人数で行動するのが常のハンターがいくら寄り集まったところで所詮は烏合の衆だ。 あいつめ!! これを機に邪魔なハンター達を一網打尽にするつもりか!!)

屋根の上や空にいるヴァンパイア達は無闇に手を出してはこない。自分たちの下僕であるレッサーヴァンパイア達に戦わせ、こちらの弾薬と体力が尽きるのを待っているのだ。レッサーヴァンパイアがハンターを仕留める度に歓声を上げる者たちや、自分の下僕が何人殺せるかを賭ける者たちまでおり、まるで人間を狩るゲームを楽しんでいるようだった。

「ちくしょうめ・・・、高見の見物決め込みやがって、俺たちが野垂れ死ぬのを待ってやがる!!」

ハンターの一人が空に向かって発砲を始める。

「・・・っ!! やめなさいっ!! よそ見をしているとレッサーにやられるわっ!!」

みゆきは忠告したが、もう遅かった。 ガラ空きになった彼の横腹めがけて闇の中からレッサーが飛び出してきたのだ

「ぐぁ!!」

彼はとっさに避けて致命傷は免れたものの、鋭い爪で足を負傷するとそのまま地面に倒れて動けなくなってしまった。相棒と思しき男が彼に駆け寄っていこうとしたが・・・、

「うふっ つ〜かまえた♪」

バサアアァァァッ!!

その時突然闇の中に真っ赤な色が広がり、彼を包み込むとそのまま飛び去ってしまった。 

「うわあぁぁ・・・、やめろ・・・はなせ!!」

「ふふふ・・・、抵抗なんてせずにおとなしくしていれば気持ちよくしてあげるのに。」

ヴァンパイアは彼を屋根の上に転がすと、その上からマントを広げて覆い被さり首筋に牙を突き立てた。

じゅぶっ!! じゅるじゅるじゅる・・・、じゅじゅ・・・

「ぎゃあああぁぁっ!! あ・・・あ、あああっ!!」

「イイ男じゃない。私にも吸わせてよ!! 」 

「あたしも〜〜!! しゃぶりたい〜!!」

ブワァ、 バサァッ!! 

他のヴァンパイア達も近づいてきて彼の体に飛びかかってきた。
マントの黒い奔流が次々と彼を覆い隠していく。

「ああんっ おさないでよ!! この子の首筋は私のなんだから」

「じゃぁ、二の腕から吸っちゃお・・・。」

「うふ・・・っ キスしちゃおうかな。」

「ぐぁ・・・、がはぁ!! や・・・やめ・・・。 うぶぅ・・・!!」

じゅぷっ!! じゅじゅじゅ・・・っ!! 
ちゅう・・・チュゥゥ・・・

「くすっ、それじゃぁ、私はあそこを・・・。」

ヌププ・・・、ヌプヌプヌプ・・・。

「ふふ、次は私なんだから、全部は搾りとらないでちょうだいよ。」

「ぉあ・・・・・・、 ああぁ・・・・・・、 か・・・はぁ・・・・・・。」

ドクドク・・・、びゅる・・・・・・ びちゃ・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・


「く・・・・・・っ!!」

ああなってしまえばもう終わりだ。一度ヴァンパイアに犯された者は完全に心を奪われてしまう。あの男が理性を取り戻すことは二度とないだろう。
地面に倒れていた方の男はレッサーヴァンパイアに群がられ、貪られていた。

みゆきを含め、誰もが仲間たちの凄惨な光景から目を背けた。少しでも戦いから目を離せば次にああなるのは自分だ

43カサブタ:2012/03/13(火) 02:53:28
「この野郎・・・っ!! 死んでたまるか!!」

次々、襲い来るレッサーにハンター達はなおも善戦を続けるが、いよいよ肉体的な疲労が目に見えて大きくなってきた。

ふふふふふ・・・・   おほほほほ・・・・・・

ヴァンパイア達の歓喜と嘲笑の声、そして彼女達に捕まり喰われる仲間の悲鳴によって彼らの精神も急速に蝕まれていく。

ダァンッ!!

一瞬よろめいた隙に襲いかかろうとしたヴァンパイアをみゆきの銃が捉える。宝珠の弾は打ち出された瞬間に強烈な光を放ち、直接命中していない数人のヴァンパイアやレッサーをも巻き込んで一撃で葬り去った。

「これで・・・、あと3発・・・。」

奴を討ち取るために今日まで温存しておいた切り札がどんどん消費されていく。トビーに調達させた廉価の銀コーティング弾で粘ってはいるものの、レッサーはともかくこれだけのヴァンパイアに太刀打ちするには不十分だ。この危機的な状況を生き残るには武器を出し惜しみする余裕などない。

その時、頭上から干からびた男の死体がみゆきの横にどさりと落ちてきた。
みゆきは思わず動きを止めてしまった。 身ぐるみを剥がされ、皮膚は茶色に痩け、枯れ枝のようになった男。その顔には心の許容量をはるかに越えた快楽によって歪まされた壮絶な表情が貼り付いていた。

「あんまり美味しくなかったね・・・、クスクスッ!!」

「あのお姉ちゃんはちょっと美味しそうだよ・・・。 早く怪我しないかな〜。」

「あっ!! こっち見てるよ。 お〜い。」

上では、数人のヴァンパイアがくすくす笑いながらみゆきを見下ろしていた。 みんなまだ幼い少女達だ・・・。 しかし彼女達の口元にも鋭い牙が伸び、涎のように血を滴らせていた。

(まさか、この男はあの子達に・・・っ?! そんな・・・、子供達までがこんな惨いことを・・・。)

みゆきの目の前に落としたのは無邪気さ故の残酷ないたずらのつもりか・・・、しかし、それはみゆきのメンタルを擦り減らすには十分なものだった。

(なんで・・・・・・、なんで皆こんな酷い目に遭わなきゃならないの・・・!! あの子たちも他のヴァンパイア達も、元は何の関係もない人たちなのにっ!!)

みゆきの動きが鈍ったのをヴァンパイア達は見逃さなかった。空の上から虎視眈々と彼女を狙っていた数人の女たちが一斉に急降下しはじめたのだ。

「うふふ・・・、可愛いお嬢さん、貴女も私達とお友達になりましょう!!」

ブワァァッ!!
大鷲のようにマントを広げ、みゆきを包み込もうとする。

「姐さんっ、あぶねぇ!!」

トビーが放った銀の散弾が、最初に飛び込んできたヴァンパイアを横殴りした。ヴァンパイアは悲鳴を上げてそのまま地面に落ちると燃え尽きて灰に変わってしまい、後のヴァンパイアは一目散に空へ逃げて行った。

「大丈夫ですかい?! 気をしっかり持ってくださいよ!!」 

「トビーッ!! く・・・っ、ごめんなさい。 私どうかしてた・・・!」

「姐さんっ、こっちですぜ!! ついてきてください!!」

トビーは腰からジュースのような金属の缶を取り出すと、それを空中に放った。
それが空中で破裂すると、周囲に銀色の粒子がばらまかれ、近くにいたレッサー達はひるんで後退った。

「シルバーチャフか!」

「ここで出し惜しみする理由はないでしょう? お互いにね!!」

空中に浮揚する銀の粒子をばら撒くこの装備は、魔物に直接ダメージを与えるだけでなく、ヴァンパイアの念を遮断しレッサーを撹乱する作用もある。高価ではあるもののかなり有効な武器だった。

トビーは、主人と意思の疎通が出来ずに戸惑っているレッサー達の隙間をすり抜けて裏通りに入っていった。
みゆきは彼を追いかける。後ろではまだ仲間のハンターたちが戦っており、彼らを残していくのが後ろめたくもあったが、振り向くことはなかった。今は他人の心配をする余裕はない。戦場では非情にならなければ生きられないことが彼女には身に染みていた。

44カサブタ:2012/03/13(火) 02:57:50
トビーが辿り着いた場所は、元は教会だったと思われる東側の町外れの廃墟だった。ここは今回のことが起こる前に既に焼失していたらしい。

「うっ!! これはっ!!」

教会の中や周辺にはおびただしい数の亡骸が折り重なる用に転がっていた。吸血鬼に噛まれた様子はなく、皆黒焦げになって焼け死んだようだった。

「ヴァンパイアやレッサーにならなかった住民たちは、俺たちが来る前に粛清されてたみたいですね。
こいつらはきっと、ヴァンパイア達が教会に足を踏み入れることができないと知って、ここに逃げ込んできたんでしょう。 だが、そうなってしまうと袋の鼠も同然でさぁ。 大方、教会に火を点けられて炙り出された奴は喰われて、逃げ出さなかった奴はこうやって焼け死んだんでしょう・・・。」

「普通、ヴァンパイアは火なんて使わないわ。大の苦手だもの。もし、あんたの予想どおりだとすると生きた人間の仲間が居たか・・・、もしくはヴァンパイアの親玉は火も大丈夫な奴ってことになる。」

「後者だとすると・・・、やはりボルマンの情報の内容自体は正しかったってことですかい?」

「ええ、きっと奴で間違いないと思うわ。 おそらく、私を藍から引き離すために今回の罠を仕組んだんだわ。他のハンター仲間たちも巻き添えにして・・・。 そして、先の黒百合の一件もおそらくは奴が藍を見つけるために世界中にばらまいた災いの種の一つ。」

「ま、詳しい分析は逃げた後でも遅くないですぜ。とりあえずこちらへ・・・。」 

トビーは教会に踏み入り、瓦礫を掻き分けると、床に敷かれたタイルを探り当てた。その中の一つを動かすと、なんと地下への入り口が姿を表したのだ。

「こんな道が・・・!?」

「この穴の奥は隠された地下墓地(カタコンベ)です。この町では中世の異端審問を逃れるために、邪教の信徒たちや祭具を隠すための秘密の抜け道が作られてたんでさぁ。 ま、教会には早々に見つかっちまってその後は、もっとヤバい代物の取引に使われてたようですが・・・。奥には谷底の河原に続く隧道が掘られているのでそこから出られますぜ。」

「こんな小さな町の裏の歴史なんていくら調べても見つからなかったわ。貴方、一体どこからこういうネタを拾ってくるの?」

「へへっ!! 伊達に梨香さんの代からサポート努めてるわけじゃない。実は教会にハッキングかけたらこの街に関する資料があっさり見つかったんですぜ。
 この脱出ルートもそのデータに載ってたもんです。事前準備は抜かりないですぜ。
 外に出たら河に沿って山を抜けてから、西のエステルゴムに向かいましょう。 あそこには俺のセーフハウスがあります。そこで準備を整えて日本に帰りましょう。 お供しますぜ。」

二人が深い穴を降りていくと、そこには日干し煉瓦で粗末に補強されただけの暗い空間が広がっていた。あちらこちらに古びた棺が無造作に置かれ、床にはなぜか本来なら棺に入っているべき遺体がごろごろ転がっていた。

「これは墓場というより人間のゴミ捨て場ね・・・。 なるほど、死体を抜き出した空っぽの棺をブツの入れ物に使ってたのね。大抵の物は入るし教会の人間以外には開けられる心配もないと。」

「ブツを入れた棺はこの隧道を通って川に運ばれたり、舟で川から持ち込まれたりしてたみたいでさ。残念ながら何を取引してたのかはわかりやせんでした。宝石や金塊も運ばれてたようですが、本命は他にあるみたいで・・・。」

「ふ〜ん、その辺調べたら面白い物が出てきそうね。教会にはいろいろ邪魔されることも多いし、スキャンダルの一つでも掴んだら黙らせる材料にもなるかな・・・。」

カタコンベの奥にはさらに下へ続く道があった。洞穴のあちこちに溜まった地下水をバシャバシャと踏み分けながら二人は走っていく。

45カサブタ:2012/03/14(水) 01:45:25
「あなたには感謝するわ・・・。今回ばかりは本当に貴方がいなければどうなってたか・・・。」

「よしてくだせぇ・・・。女を守るのは男として当たり前のことですぜ。それに俺はまだ梨香さんに恩を返せてないんです。せめて姐さんを無事に送り届けなきゃ申し訳が立たないってもんです。」

「貴方もまだ母さんのことを吹っ切れてないのね? 貴方には何も責任はないのに・・・。
 ま、あいつを倒せると聞いて頭に血が登っちゃうあたり、私も人のことは言えないわね。」

「しっかし、今回の罠は奴にしちゃずいぶんと雑ですねぇ。奴もいよいよ後先考えなくなってきたんでしょうか・・・。 いくら人里離れた村だからってこれだけの大事おこしたら教会の化け物狩り部隊だって黙っているわけが・・・。」

トビーがそこまで言いかけた所で二人とも重要なことに感づき顔を見合わせた。

「姐さん・・・、まさか奴は・・・。」

「私も違和感があった・・・。奴の謀略にしてはあまりに大雑把すぎるって。
現にあんたも私もこうやって生きてるし、たぶん上のハンターも何人かは生き残るわ・・・。第一、これだけの騒ぎなら、教会どころか一般にまでヴァンパイアの存在を知られる危険があるはず。奴がそんなリスクを犯すわけがないわ。

でも最初からそう企んでいたのなら合点はいく・・・。そっちの方がハンター達を確実に皆殺しに出来るもの!!」

「だとしたら、なおのこと早くここから抜けた方が・・・・・・っ!! ううぅ・・・っ!!」

「っ!! どうしたのトビー!!」

いきなりトビーが腕を抱えて苦しみ始めた。立っているのも苦痛なのか、壁に寄りかかってしまう。

「姐さん・・・。どうやらついていけないみたいです・・・。 すいません・・・。」

「何言ってるのよ・・・!! 怪我してたんなら早く言いなさい!! 
あんた一人を担いでいくことくらい訳もないわよ。」

「へへ・・・、そうですよね。 今まで姐さんにも梨香さんにもそうやって何度も助けていただきやした。
でなきゃ、俺はとっくに死んでましたよ。だが、こればっかりは流石の姐さんにも無理ですぜ・・・。」

そう言って、トビーは悟ったような表情で自分の腕を見せた。みゆきは驚くとともに彼の言うことの意味を理解した。 そこには小さい傷ではあるが、ヴァンパイアの牙に噛まれた跡があったのだ。

「実をいいますとね・・・、最初に逃げるときに一足遅れて・・・。
あの女主人のコにやられちまったんです。小さな傷だし、今まで何ともなかったから大丈夫かと思ったんですがね・・・。
 どうやら彼女、わざと俺を泳がせてたみたいですぜ。 感じるんです・・・、あの子すぐ近くまで来やがってます。」

みゆきは何か助ける方法はないかと思案したが、無情にも長年の経験はそれが無理であることを即座に悟らせた。自分を襲ったヴァンパイアの存在を感じるということは、既にレッサーになりかかっている証拠だ。こうなってはもう助けようがない。

「姐さんの読み通りならそろそろここも危ないですぜ。 俺はいいんでどうか生き延びてください。」

「トビー・・・、そんな・・・。」

「姐さん、俺がいなくなってもどうか仇を打とうなんてバカなことは考えないでください。
敵を間違えちゃいけませんぜ。 姐さんは藍ちゃんを守ることだけを考えてください。

さぁ、いってくだせぇ姐さん・・・。あの子は俺が食い止めます。 セーフハウスにある武器はお譲りしますぜ。あと、パソコンの中には姐さんの指紋も登録してあるんで、それでログインしてください。解析途中だったこのカタコンベのデータがあるんで活動資金の足しにでもしてくだせぇ。  さぁ、早く!!」 

トビーは手榴弾をみゆきにみせた。 みゆきは即座に洞窟の奥へ駆け出す。
彼女が十分に離れたことを確認すると、トビーは奥に向かって手榴弾を放った。爆音とともに古い隧道は崩れ、道は完全に塞がってしまった。

(姐さん・・・、生き延びてくださいよ・・・。)

トビーはほっと一安心した。

46カサブタ:2012/03/14(水) 01:52:39
「ふふっ、みーつけた。 さっきのイケてるお兄さん。」

鈴のなるような声が洞窟に響く。やがて闇の中から一匹の蝙蝠が現れたかと思うと、煙のように霧散し、空中に浮かぶ若い女性が現れた。宿屋の女主人だ。

ふわりと空気を孕んだ彼女のスカートとマントは、黒いヒールの爪先が地面に着地するとともに彼女の身体を包み込んだ。

「随分かっこいいやりとりしてたみたいね? おかげで本命を取り逃しちゃったわ。
こうなってしまったら、逃した獲物の分は貴方の血で贖ってもらうしかなさそうね。」

彼女は身体に巻きつけたマントを優雅に揺らしながら、しゃなりしゃなりと誘うように近寄ってくる

「へへ・・・、この俺を狙うとは嬢ちゃんお目が高いぜ。だが、殺し合いは止めてもっと平和的な夜の過ごし方してくれるならなおいいんだけどな。」

「ふふ・・・、私これでも男を見る目は自身あるのよ? でも、平和主義の貴方には悪いけど、男の扱いに関してはあまり上品じゃないの・・・。」

バサアアァァァァッ

トビーの目の前でマントを広げる女主人。今までに襲った男の抵抗を受けたのか、メイド服のようなエプロンドレスは血まみれで所々破けており、胸元はすっかりはだけて豊満な乳房が露出している。顔の印象からまだ若い娘と思いきや、身体の方はたわわに成熟しきっており実に扇情的だった。

「貴方みたいに粋がった男って大好き・・・、たっぷりイジメて泣かせてあげたいわ・・・。」

妖しく微笑み、ルージュを塗ったように赤い唇を舌で舐める彼女。
真っ赤に揺れるドレープの中に浮き上がる姿はあまりにも艶やかで、既に何人かの男を食い荒らしたのか、胸はヌルリとした粘液が淫らな光沢を作っている。

「へ・・・へへ・・・っ!!」

恐怖と期待、そして諦めが入り混じったような震えと欲情がトビーを襲った。身体に力が入らない、彼女を見ているだけで溺れてしまいたくなってくる・・・。 どうやら、もうこの魔の誘惑から逃れる精神力は残されていないらしい。

彼女の真っ赤な瞳に魅入られ、身体は勝手に彼女の方へ引き寄せられる・・・

(このコ・・・・・・、一目見たときからちょっと気になってたんだよねぇ・・・、
へ・・・・・・へ・・・、 醜いレッサーヴァンパイアに喰われた仲間に比べりゃ、このカワイ子ちゃんにやられる俺はまだ幸せかなぁ・・・。)

トビーが近くまで寄ってきた所で彼女はマントを閉じ、彼の身体を包み込んでしまった。

ブワッ、バサアァッ

「あ・・・、ああぁ・・・・・・!!」

彼女の匂い、そして服を通して伝わってくる体温を味わうだけで彼の股間は膨らみ、だんだんと濡れ始めた・・・。

「ふふ・・・ 私に抱かれた瞬間から貴方は壊れ始めるわ・・・。」

トビーの方が背が高い為に、彼の顔を見つめる女主人は自然と上目遣いになり、胸の谷間まで見えてしまう。普段ならただ欲情するだけですむが、今の彼にとってはこれも見ただけで心を破壊する誘惑の魔術だ。

(ああぁ・・・、なんだこれ・・・、 胸に・・・、瞳に・・・意識が吸いとられる・・・・・・、
怖い・・・・・・、でも気持ちいい・・・・・・、溺れたい・・・・・・!!)

マントに包まれているうちに身体から力が抜け、彼女の手でなすがままになり、身体の中に抑えられない疼きが沸き上がる。

「もっと私に顔をよくみせてちょうだい・・・。」

彼女の言葉に操られるように膝を落としていくトビー、やがて顔が彼女と同じ高さになると、彼女は両手で彼の頬を優しく包み、労るように撫ではじめる。やさしい手つきにトビーの意識は蕩かされるばかりだ。

「お名前・・・。まだ聞いてなかったわね?」

「あ・・・っ??」

「貴方のお名前は・・・? 私はエレナ・・・、エレナ・ハミルトン・・・。」

「お・・・おれ・・・、トビー・・・。」

まるで、催眠術を掛けられたようにぼんやりとした意識で答えるトビー。

「そう、トビーね・・・。 ふふふ・・・私の下僕になってもらうわ。」

彼女の手が服の間に潜り込み、トビーの身体に直接触れて愛撫してくる。指の表面で撫でるように、そして爪の先でくすぐるように、背中から脇腹、そして胸まで
さわさわ、こちょこちょと繊細な指使いでくすぐる。

「ううぅ・・・、なぁ・・・あ・・・ (なんだこれぇ・・・、くすぐられてるだけの快感じゃねぇ・・・)」

トビーはよろめいて、背中から壁にぶつかり、そのまま倒れそうになる。

47カサブタ:2012/03/14(水) 01:56:25
「くすっ、まだ降参するには早いんじゃない? まだまだよ・・・。もっと敏感にしてあげる。」

やさしくちょっとイジワルに耳元で囁くエレナ。トビーは女の手で弄ばれることに少しの悔しさと、ゾクリとするような疼きを覚えた。彼女は指先で彼の皮膚の感触を味わうように体中に手を這わせていく。

「ほら、貴女の身体はもう私の手の中・・・。」

そして、それまで体の表面をやさしく引っかくように撫で回していたか細い指がほんの少し力を込めてめりこむと・・・

「アッ!! うああっ、」

それだけのことで、思わず声を漏らしてしまう程の快感が走った。
そして倒れそうになる彼の身体を彼女の手が支え、無理やり立たせる。

「ふふっ、一度感じたらもう我慢できないわよ・・・。ほら、もっともっとセメてあげる。」

さわさわさわ〜こちょこちょこちょ〜

「あっ!! ひぃ・・・っ、ぁは、あっ!!」

思わず足から崩れ落ちる。 何度も壁伝いに倒れ、倒れてはてはやさしく引き起こされて、また撫でくすぐられる。

「か・・・、かんべんしてくれぇ・・・っ!!  も、もう立ってられねぇ・・・」

トビーは、泣きそうな声で懇願する・・・、喧嘩なら負けない自信があったのに、少女の指先でこの有様・・・、情けないやら気持ちいいやらで、心が乱される。

「ふふふ・・・っ!!」

そして、エレナは指を這わせると同時に彼が着ていたジャケットのボタンを外し、シャツを爪で引き裂き、徐々に彼の身ぐるみを剥がしていった。

「まぁ、素敵・・・。」

トビーの上半身が露になると、彼女は目の前の鍛えられた大胸筋にうっとりと見惚れた。そして彼女はトビーの身体を壁に押し付けると、浮かび上がる彼の鎖骨にチュッ、と吸い付いた。

「・・・っひあぁ!!」

そのまま、皮膚に浮かび上がる骨や筋にそってチュゥチュゥと吸い付き、上目遣いで反応を伺う彼女。
そして、彼女の手はズボンの中に潜り込み、今にも破裂しそうな彼の股間へ伸びていった。ベルトはひとりでに外れ、ズボンも下着も落ちる。そして彼女は固くなったペニスに指を絡みつかせると、滲んできた我慢汁をわざと触り、粘液まみれの指でしごき上げてきた。
にちゅ、ぬちゅ、くちゅ・・・、淫らな水音を立てて彼のペニスを弄ぶ指。

(う・・・ぁ・・・、でる・・・、絞り出される・・・・・・っ!!)

精神は犯されても、彼の身体はまだ危険を感じて彼女から逃れようとする。しかし、彼女のマントに包み込まれた状態では身動きもとれない。そのまま、抵抗もできず彼女の手によって搾り出されてしまった。

どぶびゅぅぅ・・・、 どぷどぷぷ・・・・・・!!

「あ・・・がぁ・・・・・、あぁ・・・!!」

気持ちいい・・・。なめらかで温かい少女の指で精液が搾り出されてしまう・・・。
精液がびちゃびちゃと落ちる地面にトビーは力なく膝を落とす。エレナはもうトビーの身体を無理やり起こすことはせず、そのまま地面に倒れさせ、手についた精液をおいしそうに舐めながら微笑んだ。

「これでもう貴方は抵抗できないわ。 さぁて・・・、どうしてあげようかしらね?」

彼女の女豹のような目は、これで終わりではないことを如実に物語っていた。彼女はマントを巻きつけて、倒れるトビーのまわりをコツ、コツ、と歩き回る。どこから責めてやろうか思案しているのだ。

「そうね・・・、やっぱりここかしら・・・。」

エレナは片方のヒールを脱ぎ、トビーの肉棒の上に黒のハイソックスを履いた脚を持ってくると、足の親指で亀頭をくちゅくちゅと撫で回した。

「あっ!! あうぅ・・・っ!!」

「まだまだ夜は長いわ。 楽しみましょう・・・。」

足の親指に擦られた亀頭から、透明な汁がぴゅっ、と吹き出す。 エレナはしばらく先端を弄んだあと、こんどは土踏まずで裏筋全体を覆うようにして股間を踏みつけてきた。
最初は、あまり力を入れず、だんだんと体重を乗せて、グリグリと彼の股間を刺激する。

「ううぅぅ・・・、あ・・・、な・・・なにを・・・・・・、ああぁっ!!」

48カサブタ:2012/03/14(水) 01:58:39

ぐりぐりゅ・・・、じゅぷ・・・くりゅ・・・。

今までに襲った男もこうやって責めたのか、既にヌルヌルの液がべっとり付いたハイソックスで攻め嬲るエレナ。ざらざらした靴下の生地で肉棒を包んで擦り上げ、折り曲げた指で亀頭をゴシュゴシュと刺激する。縦に横に、足を少しずらしただけで異なった喘ぎ声を上げる男の姿に彼女は悦楽に満ちた表情を浮かべた。

「ふふふ・・・、みっともない・・・。 さっきの子を逃して正解だったわねぇ。あんなカッコいい別れのあとでこんな無様な姿になったと知ったら彼女もゲンナリでしょうからね。」

エレナは足を一旦浮かせると、今度は乱暴にトビーの股間をドス、ドスと踏みつけてきた。

「ほぉらっ 正体みせなさいよ。 貴方も所詮、足でやられて興奮しちゃうヘンタイ男なんでしょう?」

「い・・・っ!! ぎゃっ!! ぎゃあ・・・っ!!」
 
びゅるるっ!! びゅびゅっ!!

若い女の足で責められ、無様にイってしまう。今までの人生でここまでの醜態を晒したことはない。
トビーの羞恥はもはや耐えがたいものになっていた・・・。

「はぁ・・・はぁ・・・、 も・・・、もうやめてくれよ・・・・・・、後生だぜ・・・。」

しかし、彼の必死そうな顔はエレナを喜ばせるだけだった。エレナは今度はヒールを履いたもう片方の足で踏みつけ、踵を彼の身体に食い込ませた

「ぉああ・・・っ、あああぁ・・・!!」

「ふふふ・・・、ほんとに止めてほしいの? その割には喜んでるようにみえるけど?」

「やめ・・・、あ・・・ちが・・・・・・っ!!」

「嘘はおやめなさいっ、気持ちいい癖に。 貴方の身体は正直に答えてるわよ。
もっともっと踏んでくださいってね!!」

バサッ

エレナがマントを広げると、彼女の身体が浮き上がる。そして、彼女は両足をトビーの身体の上に降ろし、ヒールとソックスの両方で踏みつけはじめた。 マントで浮力を調整し、痛みと快感を程よく感じるくらいの体重がかかるようにして彼の身体の上を歩き回る。

「い・・・ひいいぃぃっ!!」

トビーはまたしてもみっともない喘ぎ声を上げた。認めたくないと思っていたのに、踏まれることに対して彼は確かにだんだんと欲情を呈するようになってきたのだ。

「ん〜? どうしたの? だんだんとふやけた顔になってきたねぇ? もう強がりも限界かな?」

「はぁ・・・、はぁ・・・・っ!!」

エレナはお辞儀をするように可愛く上半身を曲げて、わざとらしく小首を傾げながらトビーの顔を覗き込んでくる。それでも、足は彼の身体をぐりぐり刺激するのを忘れない。

彼女が自分を踏む度に目の前で揺れるドレスの裾。チラチラと見える絶対領域・・・。
両手でマントを広げ、支配者のように見下ろすエレナの嘲るような目線に、彼の中に眠っていたマゾヒズムが不気味に沸き上がってくる。

「ようやく素直なお顔になってきたようね・・・。 ほらっ、ご褒美よ!!」

エレナはエプロンドレスの肩紐を外した。すると、ドレスが彼女の身体からすべり落ちて、トビーの身体の上に ふぁさっ、と覆い被さったのだ。

「うぅ・・・っ!!」

ビロードと思しきドレスの裏はツルツルのキュプラだろうか、 彼女の匂いが染み付き、汗で湿っていて冷たかった。

「女の子のスカートに埋もれて光栄でしょう? 特別におまけも付けてあげる・・・。」

そういうと、エレナは下着に手を掛けて脱ぎ始める。上半身を曲げたせいで、マントの裾がトビーの身体に届きさらさら撫でくすぐってきた。

そしてエレナは脱いだショーツをトビーの顔の上に被せてしまった。 彼女の恥部は既にトロトロに塗れており、その粘液がベッチョリと染み付いたショーツは彼の顔に纏わりついてきた。

49カサブタ:2012/03/14(水) 02:05:32
「うああぁ・・・っ!!」

鼻までショーツで被われてしまった彼は、ヌルヌルしたおぞましい感触に震えた。息を吸うと愛液の濃厚な匂いが頭の中に広がって気分が変になる。

「ふふふっ!! せっかく私のドレスっていういいオカズがあるのに、それじゃオナニーもできないわね! 特別に手伝ってあげるわっ!!」

そういうとエレナは、片足を上げたままバレリーナのようにくるくると周り始めた。マントが水平に翻り、トビーの目の前で真っ赤な渦を巻く。すると回転する軸足がスカートの生地を巻き込み、回るモップのようにザワザワと彼の身体を撫で回し始めた。

「うぉ・・・っ!! うぅ、 あぁぁぁっ!!!」

ザワワワ〜〜〜、サワサワサワ〜〜〜っ!!

今までは、点の責めだった彼女の足が、ドレスによって面の攻めに変貌した。高速回転する布地が彼の頭から足先までくまなく舐め尽くしてくる。

びゅるびゅるびゅるびゅる、びゅるびゅるびゅびゅびゅびゅ〜〜〜っ!!

「ああぁ・・・・、くぅ、 うぉ・・・ぉあっ!! あああ・・・!!」

固く上を向くペニスの表面を、まるで削るように滑っていくドレスは、吹き出した精液を絡めとっていく。まるでドレスの渦巻きの中に吸い込まれていくようだった。

「さぁて、お遊びはこれくらいにしましょうか・・・。」

エレナは軽く彼の体を蹴って、地面に着地した。
トビーは濡れたスカートに巻かれたまま、地面に力なく横たわっている。

「うふふふ・・・、そろそろ噛んであげてもいいけど・・・。
せっかく、ゆっくり楽しめるわけだし、もうちょっといじめてもいいかしらねぇ・・・。」

裸のままぐったりしているトビーを見て、彼女は艶かしく唇を濡らした。
悩ましく腰を揺らし、エレナはじりじりとトビーに近づいてくる。

「私は妹に噛まれて吸血鬼になったの・・・。
手塩にかけた可愛い妹が、獣みたいに私を求めてきて、めちゃくちゃにされてしまったわ。」

そう言いながら、彼女はトビーに覆い被さったエプロンドレスを蹴りのける。

「それから私おかしいの・・・、体が妙に疼いてね・・・。 ずっと心にしまっていた欲求みたいなのが抑えられなくなっちゃったわ。それ以前の私は男に言い寄られることはあっても怖くてダメだったのにねぇ。
 うふふ・・・、それでね、私、妹と一緒にこの村の半分以上の男を襲っちゃったわ。男だけじゃ足りないから女も襲っちゃった。

でも、他の子たちみたいにただ血を奪うだけじゃ満たされないの・・・。獲物の体をたっぷり味わい尽くして、たっぷり犯し抜かなきゃ私は満足できないの・・・。」

エレナは股間の割れ目を指で両側に開いた。
ぐちゃぁっ と音を立てて濡れたヴァギナが露になる。
真っ赤に腫れた女肉は、まるで彼のペニスを欲しがっているようにぴくぴくと蠢き、粘度の高そうな愛液をとろとろと滴らせている。

「こんな小さな村に住んでると、お兄さんみたいな男の人には中々出会えないの。 だから、殺す前にたっぷり楽しむとするわ・・・。覚悟なさい…、ボウヤ。今までここに飲み込まれて無事だった男は一人もいないわ…。村中の男達を狂わせ、溶かしてきた私の肉壷…。貴方はいつまで理性を保っていられるかしら…?」

ヌチュゥ…

「ぁ……ひぃ…!!」

粘液にまみれた陰唇が亀頭を咥え込む。それだけで、トビーの身体にじんわりと痺れるような刺激が染み渡っていく。

「地獄へ引き摺り込んであげるわ…。」

エレナのヴァギナがトビーの肉棒を根元まで飲み込んでいく。

ずびゅる……、ぬぷぬぷ・・・じゅぶじゅぶじゅぶ………。

「ああああ……、あひゃぁぁあああああっ!!」 

彼は絶叫を上げた。
そこは、普通の女とは明らかに違う未知の感覚が渦巻く場所だった。

まるで、熱く煮立った蜂蜜の中にペニスを挿しいれたような感触…。

枯れていたはずのペニスがドロドロの蜜の中で揉まれるにつれて徐々に硬さをとりもどしていき、身体は体内の器官を溶かして異常な速度で精液を産生していく。
あっという間に数日間精液を溜め込んだような状態になり、少しでも刺激が加わればすぐに射精に至ってしまいそうだった。
すると次の瞬間、柔らかい感触でペニスを押し包んでいた膣が一気に収縮し、恐ろしい吸引力で搾り上げる

「快楽の坩堝の中で溶けておしまいっ!!」

ヌブブブ…、ブジュルルルゥ……!!

「はぁあああああぁぁっ!!」

で……でるぅぅ……っ!! 搾り出されるううぅ…………っ!!!

ぶびゅるるる〜〜!! ドブドブドブブブブブ……

ものの数秒も持たず、トビーは屈服の証をエレナの胎内へと漏らしてしまう。

50カサブタ:2012/03/14(水) 02:08:31
さっき大量に搾り取られたのがうそだったかのような勢いだ。

「ふふふ・・・っ!! 体を内側から壊されて吸い取られる感覚はいかが?」

それでもエレナは腰を激しく揺らして彼を責め続ける。
彼女の膣の中でトビーのペニスはグチャグチャとしごき上げられ、萎えることも許されないまま次の射精へと導かれる。

じゅぶ・・・びゅっ!! びゅっ びゅぅぅっ!!

「ぃあっ!! あああ・・・・・、うああ・・・・っ!!!」

その繰り返しで、彼は幾度となく精を搾られ続けやがてペニスからは何も出てこなくなってしまう。

「ぜぇ……、はぁ… はぁ…… 」

「くふふ……どうしたのよ……、早く出しなさいよ……
私はまだ全然、満足できていないわ……。」

ヌププッ  ッチュゥ・・・ チュゥゥッ!!

「ひぁ・・・、やめ・・・、ぁああああっ!!」

精液が中々出てこなくなったペニスを、エレナの膣が貪欲に吸い上げてくる。
膀胱が吸い上げられるような吸引力にトビーはビクビクとのたうつが、それでももう精液は出てきそうにない。

「ふ〜ん、これ以上無理やり出させたら流石に死んじゃうかしらね?
まぁいいわ…。 出せないなら出せないで別の楽しみ方をさせてもらうだけよ。」

にゅるっ ずぷぅ・・・。

エレナが腰を上げると、トロトロの粘液を滴らせながらトビーのペニスが開放された。
彼の自慢の息子は、今では溶けかけてひしゃげたアイスキャンディーみたいに弱々しくなっている。

「まぁ・・・、どうりであんまり気持ちよくないはずだわ。 これじゃぁ使い物にならないわね。 くすくすっ!!」

「う・・・うぅ、 あ・・・っ!!」

じょぼ・・・じょぼぼぼぼ・・・・・・・っ!!

常軌を逸した快感を与えられ続けた彼は、ペニスを開放された途端に力が抜け、失禁してしまった。水たまりが地面にじわ〜、と広がっていき、エレナの足元までも濡らした。

「うわぁっ、 きたな〜い!! うふふふ・・・っ!! お兄さん最高ね・・・。
どうしてそんなに私を笑わせてくれるの?」

「く、うぅ・・・、あ・・・ああぁ・・・・・・。」

トビーの精神はもはや羞恥とか屈辱とかそういうものを通り越していた。
ただただ惨めでしょうがなかった。

「おねがいだ・・・・・・、もう殺してくれよぉ・・・。」

せめて死ぬときくらいは誇り高くという信念ゆえにわずかに残っていた理性も、この羞恥には耐えられなかった。 彼の心はすべてを諦め、投げやりになり、ついにエレナに対して死を懇願しはじめた。

「うふふっ!! いくら泣いてもだめ! すぐに殺してなんかあげないわよ。
死んだらつまんないし、心が空っぽのレッサーになったら責め甲斐が無いじゃない。」

それでも、エレナは更なる生き恥をトビーに要求する。

「あなたを泳がせたのは、他の子たちと取り合いになるのが嫌だったからよ。 あの子達ったらすぐ殺しちゃうんだもん。
だからわざわざ、あなたが他の誰にも見つからない所に逃げ込んでくれるのを待ってたのよ。
せっかく、たっぷり楽しめる場所に居るのに、誰が殺してやるもんですか!!」

「ひぃぃ・・・っ!!」

エレナはトビーの両足を掴んでひっくり返した。いわゆるちんぐりがえしの姿勢だ。

「ふふふ・・・、私みたいな女の子にこんなに好き勝手されて悔しい?
なら、もっと死にたい気分にさせてあげようか?」

51カサブタ:2012/03/14(水) 02:10:18
彼女の手が彼の股を無理やり開いた。そして、指を2本まっすぐに重ね合わせて菊門に狙いを定める

「地獄の羞恥を味わいなさい。 ボ・ウ・ヤ」

ズ…、ジュボォッッ!!

「ぁ…!! ぐああああぁ…っ!!」

ぐりっ、ぐりりり・・・っ!!

エレナは、トビーのアナルに2本の指を挿し込んだ。細いしなやかな指は彼の肛門をやすやすと押しのけてどんどん奥まで入り込んでゆく。

「ふふ…、身体の外からだけでなく…。内側からも辱しめてあげるわ…。」

そして彼女は差し込んだ指をグイッと曲げたままものすごい勢いで出し入れした

ズポッ、ジュッボ…ジュボ、ジュボッ、ジュボッ!
 ズブッ ズズ…… ジュブジュブ……ズボボボボボボ…ッ!!

「あああ…、うぁあああああああ……!!!!」

「うふふ…、あはははっ!! 感じてるわね……。
お尻の穴を犯されてそんなに気持ちいいの…? この変態!! ケダモノ!!」

彼女の指は前立腺を削り取らんばかりの勢いで出し入れされる。
そして・・・、

「ふふ・・・、ほぉらっ!!」

ずぶぅっ!!
「うああぁぁっ!!」

彼女の指が3本一気に突き刺さり、前立腺にぐりぐりと食い込んだ。

ぶびゅぅぅぅ!! ビュルビュルビュルっ!!

「っ!! うっ!! あああぁぁぁっ!!」

枯れたはずのペニスから、透明な液体が流れ出す。潮を吹いてしまったのだ。

「あははははっ!! お漏らしだけじゃなく、潮まで吹いちゃってる! もう、恥も外聞もないわねぇ。」

彼が堕落していく様子を楽しみながら、アナルを責め続けるエレナ…。
トビーはもはや発狂する寸前だった。 涎と涙を垂れ流し、焦点の合わない目で快楽に狂い続ける…。

「ふふふ……、なんて醜いの…。貴方の性欲は本当に底なしだわ…。
すこし責めてあげればすぐに心を乱し、快楽の亡者に成り下がる愚かな獣だわ!!」

「や・・・ぁ・・・っ!! やめ・・・、もうっ!! ううぅ・・・・・・っ!!
も・・・もう・・・ぁぁあ、 こ・・・ころして・・・、ぇぇえ・・・ぇああああっ!!!」

「あはははっ、それよ・・・その可愛い悲鳴と嗚咽がたまらないのよっ!!
すぐに吸って下僕にするなんてつまらない・・・、生殺しにしてあげるのが一番楽しいわ!
ふふふ・・・あはははははっ!!」

ジュブブッ!! ズビュ・・・ッ、どぷ、 ぐびゅぅぅぅ・・・!

「うぁぁぁっ!! ぐぁ、ぎゃああああああっ!!」

エレナは楽しそうに彼の身体を弄びつづける。狂喜に溺れる吸血少女のマントは闇の中でいつまでも翻りつづけた。 たとえ血を吸われなくても、この強烈な責めのせいで十分に狂ってしまいそうだった。
トビーは半殺しの快楽地獄を味わわされながら叫び声を上げつづける。 彼女が求めるままに何度も何度も・・・、

52カサブタ:2012/03/14(水) 02:11:48



ぎゃああああ・・・・・

ふふ・・・、あははは・・・・・

「くっ!!」

遠く離れても響いてくる悲鳴に、みゆきの心は締め上げられる。
これを聞いているだけで、どんな酷い辱めをうけているかがわかってしまう。
あの時、せめてすぐに逃げ出したりせずに自分の手で介錯してやればよかったと激しく後悔していた。

そうしてさえいれば、あの誇り高い男が死の間際にあんな恥辱を味わうことも無かったのに・・・。

だが、みゆきは背中に纏いつく悲鳴を振り払うように洞窟を駆け抜けた。いくら後悔してももうどうしようもないのだ。ならば、この悲劇の元凶を叩くしか彼に報いる方法はない。まずは私自身がここを生き延びなければ。 みゆきは息を切らしながら奥へ奥へと進んでいく。

「あら・・・?」

ふと、彼女は立ち止まった。目の前は行き止まりなのだ。

「いけない、さっきの分かれ道を間違えたか・・・。 早く戻らなきゃ!!」

だが、振り返ろうとした時、みゆきは奇妙なことに気がついた。行き止まりになっている壁、そこだけが洞穴の他の壁と様子が違ったのだ。

「人の手が加わっている・・・? きっと後から埋められたものだわ。」

ここだけは、日干し煉瓦やモルタルではなくコンクリートで固められている。おそらくかなり最近埋められたものだろう。みゆきはプラスチック爆弾を取り出すと、適当な量を壁に貼り付け、急いで離れた。

洞窟の中に轟音が響き、石壁が崩れた。すると、その先には教会の真下と同じかそれ以上の広い空間が広がっていた。 中には教会の地下と同じように棺がいくつも並べてあったが、どれも中身が入っているのか蓋が厳重に閉められている。

みゆきはナイフを取り出すと、古い蓋をこじ開けて中を見てみた。

「・・・っ!! やっぱりっ!!」

棺の中には白骨化した死体。 しかし、胸には木の杭が打ち込まれ、口には煉瓦の欠片を咥えさせられていた。そして、その口から覗く歯は獣のように鋭い牙だった。

「母さん・・・、ついにみつけたわ。 貴女が暴こうとしていた教会の大罪・・・。」

みゆきは携行していた小型のカメラを取り出すと、時間が許す限りそこにあるものを写真に収めたのだった。

53カサブタ:2012/03/14(水) 02:13:59


一方、街の方ではまだ数名の手練のハンターが生き残り、吸血鬼達を相手に善戦を繰り広げていた。

「なによあいつら・・・、 全然、倒れる気配が無いわ・・・。 誰か倒せないの?」

「で・・・でも、私の下僕はもういないわ。 みんな倒されちゃった。」

「まずいわ・・・、もうすぐ日の出が近い。」

今まで、余裕の表情だったヴァンパイア達にも少しずつ焦りの色が見えてきた。これまで防戦一方だったハンターたちが次第に反撃を始めたのだ。力が劣る者たち、互いに協力できない者たちが淘汰される中で、自然に最高レベルの実力を持つハンターだけが前線に立ち、それ以外の者は彼らのサポートに徹するというチームワークが出来上がっていった。

人数が絞り込まれた今なら、弾薬や兵糧の配分が正確になり、互いに足りないものを補強しあいながら身軽に動くことができる。皮肉にも多くの仲間が殺されたことが、本来少人数で行動するハンターにとって絶好のコンディションを生み出したのだ。

「弾と食料はまだあるか?!」

「安心しろ、この分なら日の出まで十分だ!!」

「深追いは無用だぞ! 襲ってくる相手だけをやれ!
どのみち日が出れば奴等は終わりだ!!」

いかに手強い相手とはいえ、歴戦の勇士である彼らは常に冷静だった。戦況を分析し、相手の強みと弱みを見極め、適切な対応をするだけのこと。

レッサー達も無限ではない。確実に一人ずつ片付けていくうちに、目に見えて数を減らしていった。
屋根の上のヴァンパイア達も焦りを隠せなくなり、ハンターたちに余裕が生まれはじめた。

レッサーが少なくなれば、ヴァンパイア達は自ら出てこざるを得なくなる。力は下僕より数段上の彼女達だが、レッサーと違い決定的な弱点がある。 それは死を恐れることだ。
経験の浅いハンターは、最初から元凶である彼女達を叩こうとする。 彼女達はレッサーを無限に生み出すし、そいつらを倒しきっても彼女達が襲ってくる頃には、体力も弾も尽きていると考えるからだ。 だから、遠くの彼女達に気をとられ、足元から迫るレッサーに隙を突かれる。
しかし、それは間違い。 経験を積んだハンターはもっと賢い戦い方を知っている。

まず第一に、彼女達は襲ってこない。
そもそも彼女らが大量の下僕達を仕向けて自分は後方に控えているのは、身を危険に晒したくないからに他ならない。 ならば駒が無くなればかえって戦意を喪失し、逃亡するか隠れるしかない。

第二に、レッサーは無限ではない
勘違いするものが多いが彼女達はレッサーを“生み出して”いるわけではない。元々いた人間をレッサーに変えているだけなのだ。となれば、住民全員がレッサーになり、唯一の道も封鎖されたこの町にこれ以上人間が増えることはなく、彼女達の駒はいつか底をつくのは道理なのだ。
そしてなによりも重要なのは、無限に下僕を生み出せるという勘違いをするのはハンターよりもむしろ当のヴァンパイアである場合が多いということだ。

現に彼女達は気付き始めた。 レッサーたちはまだまだいるが、直接襲ってくる数は減っている。
保身を第一に考える彼女達は自分が出ざるを得ない状況を恐れて、レッサーたちを出し惜しみしはじめたのだ。

いける・・・!! ハンターたちは確実な手応えを覚えた。この膠着状態こそずっと待ち望んでいた状況だ。 屋根の上のヴァンパイア達はようやく彼らの企みに気付いて慌てふためいている。これが人間同士の戦いならばこの膠着状態は人数が少なく、物資もないハンターたちの方が圧倒的に不利になるだろう。 しかし、ヴァンパイアである彼女たちには日の出という絶対のタイムリミットが存在しているのだ。

「どうするのよ・・・!! もうすぐ太陽が上り始めるわ!!」

「私にいけっていうの?! もし殺されちゃったらどうするのよ・・・。」

「でも、日が登ったら家に入るか、棺桶に入れば・・・。」

「バカなの?! その家や棺桶を燃やされたらどうするのよ!!」

「へい、お嬢さんたち!! あんたらはこないのか? 男共の相手はもうごめんだぜ。」

「もうすぐ朝だがどうするんだい? このまま俺と遊ばないでベッドにいっちゃうなら寝込みを襲っちまうぞ?」

ハンターが挑発すると、女たちは顔をしかめた。 苛立ってレッサーを向かわせる者もいたがもはや彼らの敵ではなかった。

54カサブタ:2012/03/14(水) 02:18:33
「空が白み始めたぞ!! もうすぐの辛抱だ! みんな頑張れよ!!」

ハンターたちは一斉に雄叫びを上げた。誰もが生き残れる希望を抱いた。
しかし、ハンターの一人が明るくなり始めた空に複数の小さな影を見つけたことでそれは絶望に変わることになった。

「おいっ!! ヘリが近づいてくるぞ!!」

遠くから聞こえてくるローター音にハンターのみならず、ヴァンパイア達すらも一斉に目を向けた。
見ると、複数の黒い機影が町の上空を旋回しながら近づいてくる。 ハンターの一人が双眼鏡でそのヘリの詳細を捕らえると、震える声で叫んだ。

「畜生やられたっ!! 教会の化物狩り部隊だっ!!」

その声と同時にヘリから一斉にミサイル攻撃と機銃掃射が始まった。 轟音と共にまず上がったのが屋根の上や空にいたヴァンパイア達の悲鳴だった。空に身を晒していたために彼女らは降り注ぐ銃弾をまともに浴びて次々と倒れ建物ごとミサイルの爆炎に飲み込まれていった。

「逃げるぞっ!! 散れ!!」

崩れゆく瓦礫に混じってヴァンパイアの灰や焼けたマントの欠片が降り注ぐなか、地面にいたハンターたちは各々、銃火から逃れようとした。だが、ヴァンパイアとの戦いで優位になった彼らも、近代兵器の圧倒的な火力の前には歯が立たなかった。 時代を感じさせる古い町に爆炎を凌げる建物などあるはずも無く、彼らは

「各機、ハンターと思しき一団を確認したら ミサイルを出し惜しみせずに殲滅しろ!!
一人も生かして帰すなとのお達しだ!」

「まだ、空を逃げているヴァンパイアがいますぜ。 ニンニク入りのマスタードガスをバラ撒いているとも知らずに哀れなもんだ。」  

ヘリの乗組員達は嬉々として地上攻撃を続けていた。 訓練以外でこれほど大規模な攻撃が行える状況など滅多にないために今回の作戦に参加した者たちの興奮はただごとでは無かった。

「隊長〜、もう動いてる影はありませんよ? そろそろじゃないですか?」

「うむ、そろそろだな。」

ヴァンパイアとハンターの殲滅を一通り済ますと、チームの隊長、ジェームスは各機体に次の指令を出した。いよいよ、本作戦の本題に入る時だ。

「全機、町の東側に移動!! 教会の廃墟を目印にしてホバリングだ。地中貫通爆弾(バンカーバスター)でカタコンベを埋めろ!!」

ヘリたちは、一定の距離を保って上空に停止すると、一斉に爆弾を落とし始めた。
バンカーバスターは厚い地盤を貫き、その衝撃は地下墓地と隧道にまで及んだ。古い墓地はたちまち崩れ初め、隧道のあちこちで落盤が起きた。

「な・・・なに・・・?! 一体何が!?」

トビーを徹底的に犯し抜き、そろそろ血を吸おうとしていたエレナは洞窟の異変に慌てふためいていた。

(始まったか・・・、幸か不幸か、どうやら完全にレッサーヴァンパイアになる前に死ねるみて〜だな。)

裸に剥かれ、体は傷とあざだらけ。精神の方も限界に近い。だが、エレナが吸血行為を散々焦らしたために理性だけは失わずに済んだようだ。

「きゃあっ!!」

すぐそばで落盤が起きる。エレナは思わずトビーの体にすがりついた。

「い・・・いやぁ・・・、死にたくない・・・!!」

「・・・・・・・・。」

トビーはエレナの背中に手を回し、話しかける。

「嬢ちゃん・・・、もうあきらめようぜ。気休めかもしれないけど、気持ちよくしてくれたお礼に最後まで俺がついててやるよ・・・。」

彼女は何も言わず、震えながらトビーの胸に顔を埋めていた。

(これでお別れだな姐さん・・・、先に梨香さんの所に行ってますぜ・・・。)
 
爆弾の威力は凄まじく、隧道の真上の地面をまるまる打ち砕いてしまった。岩盤が降り注ぎ、トビーはエレナもろとも土の中へ埋まっていく、頭まで土が被ってしまう最後の一瞬に太陽の光に照らされる空を見た・・・。

55カサブタ:2012/03/14(水) 02:23:55


「こんだけ打ち込めば、カタコンベは跡形もないでしょうね。」

すっかり地形が変わってしまった地上を見て、パイロットはつぶやく。 地上にはもうそこに町があった形跡すら残っていないほどに破壊し尽くされている。

「よし、空挺部隊を下ろせ。 ハンター共はゴキブリのようにしぶといから油断するな。まだ生き残っている者がいないか徹底的に洗え。 もちろんカタコンベもだ!! 形跡を残すものは棺桶の欠片でも焼き捨てろ。」

「ひひひ・・・、ずいぶん念入りですね隊長。 そりゃぁ、あのカタコンベを合法的に破壊できるチャンスですからね。枢機卿もさぞや鼻息が荒かったのでは?」

「黙ってろ。一兵士であるお前が知る所ではない。」

「へいへい・・・、 空挺降下開始させます。」

・・・・・・・・・
・・・・・・

激しい衝撃は、町からかなり遠ざかったと思われる隧道の東側まで及んでいた。 後ろから落盤による土煙が迫る中をみゆきは必死に駆け抜ける。 ここで絶対に死ぬ訳にはいかない。教会の罠に嵌った仲間たち、そして志半ばにして倒れた母に報いる為には、今この手の中にある情報を必ず生きて持ち帰らなければならない。

やがて、暗い洞窟の先に光が見え始めた。谷底の河原が見えてきたのだ。
もう落盤はすぐ後ろ。 土煙がみゆきを追い越しつつある。

みゆきは渾身の力を振り絞って跳んだ。 
彼女の体が川に没したその後ろで、岩肌に開いた穴が崩れ落ちた。 間に合った・・・。 

「く・・・っ!!」

落盤には巻き込まれなかったものの、みゆきは体中を強打してしまった。
命は助かったものの、この状態で川を下ってエステルゴムに向かうのは非常に危ういだろう。

と、そのとき。みゆきの目の前を古びた木の棺が流れていくのが見えた。

(ブツを運んでいた棺か・・・、爆発の勢いで飛び出てきたのね。 これは好都合だわ。)

みゆきは、近くに落ちていた流木を拾ってから棺に向かって泳いで言った、みゆきはその上に乗ると流木を櫂にしてカヤックのように川を下っていった。森が開けてくると、やがて目の前に広大な流域面積を持つドナウ川が見えてきた。

みゆきは棺を捨て、そこからは陸路で街を目指した。チェコ・スロバキアとの国境付近にあるハンガリー有数の歴史ある都市、エステルゴムの片隅にトビーから教えられた住所はあった。
トビーから渡された鍵を使って中に入る。その空き家は一見すると何も無いが、これはカムフラージュだろう。

案の定、床板の一部に隠し扉があり、その下の階段を下っていくと、最新の情報機器と武器で埋め尽くされた一室が姿を表した。パソコンの電源がついており、パスワードの打ち込み画面が表示されている。みゆきが指紋認証を行うと、画面には伸びきったプログレスバーとcompleteの文字が出てきた。

「データの解析を自動で行ってたのか・・・。きっと、さっき言ってたカタコンベの資料の解析が完了したのね。」

みゆきは早速、そのデータを見てみることにした・・・。さっきあそこで見たものの正体、そして恐るべき事実がここに書かれているに違いない。母がかつて見つけようとしていた事実が・・・。

56カサブタ:2012/03/14(水) 02:41:41

ローマ法王庁 バチカン

「ジェームス君!! これはどういうことだね!! 説明したまえ」

「はぁ・・・、何か問題でも?」

枢機卿が見ていたのは、今回の作戦で死亡が確認されたハンターのリストだった。各ハンター達の身元と、遺体発見場所、そして遺体の写真が載っている。彼が激怒していたのはその中に2つだけ、
遺体の写真が無い人物がいたことだ。

「トビー・トンプソンにミユキ・ホズミ!! こいつらは今回の作戦で確実に殺さなければならなかったターゲットだ!! なぜ死体を確認せんのだ!!」

「お言葉ですが枢機卿どの、あのミサイルの雨の後で死体の判別をしろってのも中々無理がある話ですよ。他の写真を見れば分かる通り殆どのターゲットが身体の原型を止めて居ない状態でして・・・、ミサイルの直撃を受けた場合は粉々になってその辺の灰との判別もできなくなってしまいますし、その二人に関しても生きているとは思えませんが。」

隊長の言っていることはもっともだった。
確かに、資料に出ている写真を見てみても死亡が確認されたハンターの中で、その顔や体が一目で判別できるものは少なかった。 住民どころか町自体が消えてしまうほどの破壊状況で、特定の人物が原型を留めたまま発見される可能性は極めて低いことだろう。

だが隊長の言葉を聞いても枢機卿の表情はまだ晴れなかった。彼の仕事は確かに完璧ではあるが、それはあくまで一般のハンターに対しての話だ。 トビーやみゆきに関しては実際に死体を見ない限りは死んだと確信することはできない。 

考えられないことだが、万が一あのカタコンベを発見されているとしたら・・・、それだけは絶対にあってはならない。

あの女の母親、穂積梨香はかつて教会のブラックリストに載った程の危険人物だった。 というのは、彼女は元々、教会専属の化物狩り部隊に所属していた優秀なハンターであり、多くの仲間のみならず何人かの枢機卿からの多大な信頼も得ていた修道女(プリースト)だったのだ。 しかし、ある日、教会がひた隠しにしていた禁忌とも言えるある秘密を知ったことで教会と決別。厳重に保管されていた聖遺物である生命の宝珠を盗み出し逃走したのだ。

以来、教会は彼女を抹殺する為に様々な手を尽くすが、あと一歩というところでいつも煙に巻かれていた。とうとう彼女を自分たちの手で始末することは叶わず、数年前に彼女が死んだという報告を受けたときには胸を撫で下ろしたものだが、今度は彼女の娘であるみゆきが立ちはだかってきたのだった。彼女の腕前は全盛期の母親に匹敵するものがあり、おまけに母から教会の秘密を知らされており、ハンター稼業の傍らにその証拠を探し回っているのだ。 また、梨香の現役時代に彼女の同僚だった元神父のトビー・トンプソンが、彼女の遺言によって娘であるみゆきの味方に回っているのも由々しき事態だった。 

(ここで、潰しておくべきなのだ・・・。 あいつらだけは・・・・・・。)

と、その時、枢機卿の机にあるアンティークな電話のベルがなった。
こんな時間になんだ? 今日は何も予定は無いはずではと、彼は受話器を取ったが

「ハーイ、枢機卿。 ずいぶん苛立ってるみたいじゃない?」

電話の先から響いてきた声に枢機卿は絶句する。そして、目の前に立ち尽くジェームスを忌々しげに睨みつけた。

「あの・・・、何か問題が?」

「いや・・・・・・、もうよい。 お前は下がってろ!!」

枢機卿は怒りを押し殺すように静かな声で言った。ジェームスが出ていくと、彼は息を整えて再び受話器を耳に当てる。

「これはこれは・・・、リカ・ホズミの娘か。 私の専用回線に直接電話するなんて余程、早急な用事なのかね?」

彼は、何も知らないと言う風につとめて冷静に答えた。

57カサブタ:2012/03/14(水) 02:45:40
「よくも、仲間のハンターたちを沢山殺してくれたわね・・・。 あの攻撃命令は貴方が出したんでしょう・・・?」

「あの村に、危険な吸血鬼が潜伏しているという情報を得たのだよ。 教会としては見過ごせないに決まっているだろう。 それに、君やお仲間だってどこからか同じ情報を得てあの村に集まったのだろう? まさか、ハンター達が死んだのを私のせいにするつもりか?」

「・・・・・・・・・。」

みゆきは黙っていた。

「私に文句を言ってくるとはお門違いもいいところだな・・・。こちらは君たちが頼っている情報屋と違って、村民全員が吸血鬼化していることを事前に掴んでいたんだよ。ならばヴァンパイアを一匹でも逃さないよう、速やかに全火力を持って処理するのは当然のことだろう?」

「へぇ・・・、私が街に向かっている間、検問も何も無かったわよ? 一般人が巻き込まれたらどうするつもりだったのよ・・・。」

「そんなことをして相手に悟られたらどうする。 我々にとってはヴァンパイアが逃げ出す方が一大事なのだ。勝手にやってきたハンター達が巻き込まれようが、それは自業自得というものだ。

納得がいかないか? ならリカの名を出して教会に私を訴えてみるか・・・? もっともハンター一人の言うことなど、信じてくれるとは思えんがね・・・。」

枢機卿はみゆきが仲間を殺されたことへの抗議として電話を掛けてきたのだと思っていた。
だからこそ、枢機卿はあくまで作戦の正当性を謳い、わざとみゆきの神経を逆撫でするような口調で話していたのだ。

きっと彼女はこう思うことだろう・・・
今回の作戦の目的は、ヴァンパイア狩りにかこつけて気に入らないハンター達を一掃することが目的だったと・・・。そして我々教会がその事実を隠蔽しようとしていると。

ならば、そうであるとますます彼女に思い込ませてやればいい。 彼女は教会に対する恨みを一層強くするだろうが、そんなことはどうでもいい。
彼女が作戦の本当の目的に気付かなければそれでいいのだ。

だが、次のみゆきの発言を聞いて彼は凍り付くことになる

「そう、訴えてもいいのね? なら、あんたたち教会があの町の地下に隠した秘密を世界中にバラしてやるわ。」

「・・・っ!! なにっ?!」

「時間が無いから単刀直入に言うわ・・・。 私、母さんが探していたものを見つけたの。
あんたの目の前にあるパソコンにダイレクトメールを送ってあるからチェックしてみなさい。」

枢機卿は急いで、デスクのパソコンから自分宛の連絡をチェックした。
見るとそこには今しがた届いたと思われる画像ファイルとデータファイルがあった。
そして、その内容を見た彼は青ざめる。
そこには、教会の部隊が破壊する前のカタコンベと、その中の棺、そして、棺の中の奇妙なミイラがはっきりと写っていたのだ。

なんということだ・・・。よりにもよって彼女にここが見つかってしまうとは・・・。

とうとう恐れていた事態が起こってしまった・・・。
しかし、彼はなんとか冷静さを保ち、白を切り通そうとした

「こ・・・これがどうしたというのだ・・・、 一体なんなのか私にはわからん。 あの女が何を探していたって?」

「まだとぼける気? これこそあんたたち教会がひた隠しにする秘密でしょ! これで母さんが言ってたことが正しかったことが証明されたわ!! ヴァンパイアはあんたら教会が作り出した物だったのねっ!!」

58カサブタ:2012/03/15(木) 02:15:22
なんとか、平静を保とうとする枢機卿だが、手の震えが収まらない。 
非常にまずいことになった。 あれが公になれば、自分の進退だけではない。教会全体にとって大きなダメージだ。

「あんたら教会は長年に渡り、“不老不死”の研究を行ってきた。 あんたらの教えによれば、歴史上死んでから生き返った人物はただ一人・・・。 
よって、死なない身体を手に入れることは彼と同等になることであり聖人になることと同義なわけよね。もし実現できれば教会の権威を絶対の物とすることができる・・・。 だからあんたたちははるか昔から血眼になって探求を続けてきた。 そうでしょう・・・?」

反論しなくては・・・、そう思っているはずなのに枢機卿の口からは言葉が出てこない。 

「そして、研究の過程であんたらはとてつもない過ちを犯した・・・。
はるか古代、死なない肉体の開発に行き詰まった当時の教会は、ついに教えで禁じている筈の黒魔術に手を出し・・・、
 そしてとうとう天の摂理に反し、創造主に唾吐く、おぞましい術式を完成させた。 他の人間の命を自らの中に取り込み生き永らえる存在、ヴァンパイアを作り出す方法をね!!」

かつて梨香が教会にいた頃、恐るべきヴァンパイアが現れた。
桁外れの魔力を持ち、それまで多くのヴァンパイアを葬ってきた化け物狩りチームの装備すら通用しない怪物だった。そして何より、おそろしく残虐かつ狡猾で、梨香の仲間たちは多くがそのヴァンパイアに殺されてしまったのだ。

そいつこそ、噂こそ聞いていたが、だれもがその存在を信じているわけではなかった存在。
始まりのヴァンパイア、“真祖”の一人だったのだ。

ロサリナ・エルジュベート。
ハンター達の間でも“ブラッディ・ローズ”の異名で恐れられる最凶の吸血鬼にして、全ての吸血鬼の頂点に立つ存在だ。 彼女はヴァンパイアこそ人間を越える種であるという強い確信を持っており、人間を食い物か奴隷としかみなしていない。プライドの高い彼女は世界を人間が支配していることが大いに不満らしい。永遠の美しさの為に人を襲うことに飽き足らず、人間すべてを自分の奴隷にして全世界を支配下に置くという壮大な野望を抱いているのだ。 
 そんな慢心を持つヴァンパイアは決して少なくないが、ローズの場合、それを実現するだけの実力を備えているから始末が悪かった。

梨香はすぐさま仲間たちの仇討ちの為に、法王庁が秘蔵する宝物級の武具の使用と、真祖討伐の許可を申し入れたのだった。 一般の戦闘員とは違い、梨香にはそれだけの許可を取り付ける実力があったのだ。

だが、教会から返ってきた答えは不可だった。どういうわけか、上層部は真祖に関わるなと釘を刺してきたのだった。

だが、梨香は教会からの勧告を無視して、そのブラッディ・ローズについての情報を密かに集め出した。
そして、教会の内情を探っているうちに彼女は世にもおぞましい事実を知ってしまうことになったのだ。

はるか古代の時代に教会は不老不死の研究の途中、ヴァンパイアを作り出してしまったこと。
その最初のヴァンパイア達こそが真祖の正体であり、現在いる全てのヴァンパイアの祖であり、仲間たちを殺した仇敵であること。

そして、教会はその事実を秘匿していたうえに、ヴァンパイア達を処理するどころか、今でもどこかに封印しているということだった。真祖の一人ローズが封印を破り、我が物顔で外を歩き回っていたのはすべて教会の過ちゆえだったのである。

この事実を知ったわずか3日後、梨香は宝具である生命の宝珠を盗みだし出奔した。

59カサブタ:2012/03/15(木) 02:19:10
「あんたらは、過ちに気付いていながら結局、作り出したヴァンパイアを放棄することができなかった。
ヴァンパイアの中でも真祖の力が桁違いだっていうことは私もよく知っているわ。
不老不死の足掛かりになるかもしれないし、そうでなくてもあの力をコントロールできれば強力な武器になるからね。 あんた達はとりあえずあの街のカタコンベにヴァンパイア達を封印して隠し、うまく利用するための研究を密かに進めていたんでしょう? でも、そのせいでやっかいなことになってしまった。
封印は解かれ、真祖は目覚めてしまったのよ!!」

「そ・・・それは・・・推測にすぎない!! 我々があの町にヴァンパイアを隠していただと・・・!?
デタラメを言うな!!」

「ハンターに転向した母さんや、その娘である私を躍起になって消そうとしていたのはこの事実を悟られるわけにはいかなかったからでしょう・・・?
 情報化が進んだ今の時代、あの巨大なカタコンベや大量の真祖のミイラをハンターや他の宗教団体に知られることなく秘密裏に処理するなんて出来るわけが無い。とりわけ、ハンターは情報を盗み出すのも広めるのも早いから、特に危険視してたんでしょ? あんたらは相当、頭を悩ませていたはずだわ・・・。
でも、そこに思わぬチャンスが舞い込んできた・・・。 待ちに待った機会がね・・・!!」」

みゆきはそこで一呼吸おいて、いよいよ問題の核心に触れる。

「あの村で不老不死の研究をしていたあんたらの関係者が、あんたにある提案を持ちかけてきた。
村にヴァンパイアをわざと蔓延させて、その処理の名目でカタコンベを村ごと消滅させようという計画よ。 ついでにヴァンパイアと真祖の情報をハンター側にもリークしてあの村に集まらせ、不安の種をまとめて潰そうって魂胆だったんでしょう?」

「憶測だっ!! 我々は真祖なんて生み出していないし、そもそも真祖という存在など関知すらしていない!! 今回の作戦はヴァンパイアの処理という責務を果たしただけだっ!!」

「そう・・・、ならそのメールに添付されてるもう一つのデータを見なさい。 そこに私の言うことの根拠が全部書いてあるわ。」

枢機卿は、メールに添付されているもう一つのデータを開いた。
そして戦慄する。 それは、カタコンベの写真以上に想定外の物だったのだ。

「なんだ・・・、 これは・・・・・・!!」

それは羊皮紙に書かれていると思しき古い街の地図と、いくつかのスケッチの写しだった。
地図に描かれたその街は明らかにみゆき達が向かったホロウ・クイだった。そして、そこには地表の街と共に地下のカタコンベの構造までも詳細に描いてあったのだ。
それはまさしく、教会の最高機密であるあのカタコンベの工事計画書だった。
そこには、当時の法王の署名のみならず、工事責任者としてローバックスのサインまであったのである。

そして、もう一つはなにやら物品の名前と数字が書かれた目録のようなものがある。
空っぽの棺を使ってカタコンベに運び込まれた物品のリストだった。そこには金塊や宝石とその重量が書かれていたが、それに混じって人間の名前と、運び込まれた年月日が書かれていた。

見ると、そのいくつかの名前の中に、ロサリナ・エルジュベートの名がはっきりと書かれていたのだ。

「この年月日は、ちょうど中世で魔女狩りが行われていた時期だわ。
ロサリナ・エルジュベート・・・。 つまりブラッディ・ローズも魔女狩りによってあんたら教会が処刑した異教徒の女僧だったようね。おそらく、ここに名前が書かれている他の人間達も同じくヴァンパイアの素体にされたんでしょう? あんたらは街の下の川から隧道を通って死体をカタコンベに運びこんでたのね。他にも、そこで行われたと思われる研究の記録が私の手元に大量にあるわ。あんたらが罪人の死体をあのカタコンベに集めて不老不死の研究や実験を行っていた証拠よ。」

「ばかな・・・・なんなのだこれは・・・!! なぜそんなものがあるのだ!! 
これは、法王庁の地下金庫に厳重に保管しているはずなのに・・・。」

「やっぱり・・・、その反応を見るとこれをトビーに渡したのはあんたらじゃないようね・・・。
そもそもこんな機密情報が、簡単に複製したり改竄できる電子データになってるなんておかしいと思ったわ。」

「トビー・トンプソンがこれを持っていただと・・・、バカな・・・、例え教会内に奴の内通者が居たとしてもこれを持ち出せる筈が無い・・・。一体誰が・・・。」


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