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从 ゚∀从二人暮らしのようです(-_-)
1
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:11:46 ID:KbZp5als0
※ハートフル同棲ものですが少しエロがあります
205
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:22:28 ID:bLfC7y560
そのまま顔を近づける。トソンも目を閉じた。柔らかい唇が重なる。
何度かキスを交わしてから舌を絡ませる。トソンは健気にそれに応じた。
顔を離すとまだ舌を出したままのトソンがとろんとした目でぼくを見上げる。
(´・_ゝ・`)「キス、好きなの」
(゚、゚トソン「はい、好きです」
舌を交わらせてたっぷりとキスをする。トソンもぼくの背中に手を回す。
緊張は解けただろうか。
(゚、゚トソン「制服、触りますか?」
(´・_ゝ・`)「あぁ」
トソンの身体を包む制服に触れる。紺色を基調としたブレザータイプの制服だ。
プリーツ・スカートも同じ色で統一されている。シンプルではあるが洗練されている。
澄んだ色のストライプのネクタイが特徴的だ。
(´・_ゝ・`)「いいね、この制服」
(゚、゚トソン「私も結構気に入っています」
インターネットで何でも買える現代では女子高生の着ていた制服すら売っている。
顔を晒す事なくそういったものが手に入ってしまうのだ。一昔前と比べると便利になったものだと思う。
しかしぼくとしては、制服は現役女子高生が着ていなければ価値はない。卒業後のOBが着てもそれはコスプレの域を出ない。
女子高生が常日頃着ているからこそ、真の価値が生まれるのだ。
206
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:24:38 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「じゃあ、脱がすよ」
ぼくは制服を完全に脱がしたりはしない。あくまではだけさせる程度だ。
行為の最後まで制服を脱がしてしまう事はない。嫌がる子もいるので、あらかじめ承諾した子のみを買う。
ブレザーを脱がす。丁寧にアイロンがかけられたシャツが現れる。
制服を愛でる時も良いがゆっくり時間をかけて脱がしていく時間も至高のものだ。
真っ白なシャツのボタンを一つ一つ外していく。宝箱を開ける時のような高揚感がある。
(´・_ゝ・`)「胸大きいんだね」
(゚、゚トソン「そんな事、ないです」
ボタンを全て外したシャツをめくる。下着に包まれた豊かな胸が出迎える。
シャツの上からでも分かったがトソンの胸は同年代の中では大きい部類だろう。
包み込むようにその胸を手で覆う。あまりの柔らかさについ顔がほころぶ。
手で弄ぶとトソンが小さく声を漏らす。見れば手で口元を抑えていた。
(-、-トソン「ま、まだやっぱり恥ずかしいですね」
ぼくの視線に気づいたトソンが弁解する。可愛らしい仕草だった。
別にぼくは処女崇拝者ではないが、やはり彼女は処女を連想させる。
もっと彼女が喘ぐところを見てみたい、どんな声を出すのか聞いてみたい、そんな欲望に駆られた。
トソンをゆっくりとベッドに倒す。そして右手だけを下半身に持っていく。
プリーツ・スカートをめくると可愛らしい下着が見える。上下できちんと揃えられている。
するすると下着だけを脱がす。プリーツ・スカートはそのままだ。
スカートだけを残して秘部が露わになる。このギャップがたまらなく好きだった。
207
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:26:11 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「こういうの、好きなんですか」
(´・_ゝ・`)「あぁ。 こういうのがいいんだ」
(゚、゚トソン「変態さんですね」
処女すら連想させる風貌とは裏腹にトソンの秘部はすっかりと開発されている。
指を入れてトソンの反応を確かめる。トソンは小さく喘ぐ。
まだ恥ずかしさが残っていて、口元に手を当てて堪えている。
ぼくは意地悪がしたくなる。トソンを困らせたくなる。
わざと音をたてて激しく指を動かしてやる。
たまらずトソンは声をあげる。それは可愛らしいものだった。
やがて小刻みに震えてトソンは静かに達する。
悲鳴のような小さい喘ぎ声が一際大きく部屋に響いた。
指を離してもトソンの息は荒いままで、呼吸を整えるのに時間が必要だった。
(゚、゚トソン「…デミタスさん、意地悪なんですね」
(´・_ゝ・`)「君の反応が可愛らしいものだったからね」
(゚、゚トソン「じゃあ今度は私が意地悪をします」
トソンがぼくの腰のタオルを優しく取った。
既に充血した肉棒はぴんと上を向いている。
元気ですね、とトソンは笑ってそれを愛おしそうに撫でた。
トソンの細い指に触れられるたびに肉棒は小さく跳ねる。
ぼくが床に立ち、ベッドの上でトソンが四つん這いになる。
208
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:27:44 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「いいですか」
(´・_ゝ・`)「あぁ」
トソンの舌が亀頭に触れる。舌でゆっくりと先端を濡らしていく。
やがて唇で包み込むように優しく肉棒を咥える。
何度か時間をかけて亀頭を行き来する。
そのまま徐々に根本の方へ沈み込ませる。
限界まで沈んでから、また頭を持ち上げる。
ぼくは感嘆の声をあげる。それは女子高生には上手過ぎた。
フェラチオを覚えたばかりの一般的な女子高生とは違う。
勢いに任せて激しくするだけの風俗嬢とも違う。
ねっとりとしたトソンのフェラチオは恐らく中年男性仕込みのものだ。
性欲有り余る同世代とのセックスでは会得出来ないだろう。
じっくりと時間をかけて肉棒を咥える。激しくせずしっかりと吸い付いている。
舌が亀頭を舐めまわし手はと殆ど使わずにぼくの腿に添えられている。
確実にトソンのそれはぼくを絶頂に導きつつあった。
その事実に気づいて随分とぼくは驚いた。
(´・_ゝ・`)「トソン、ちょっと待ってくれ」
(゚、゚トソン「はい」
トソンが肉棒から唇を離す。ねっとりとした唾液が糸をひく。
209
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:28:59 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「少し休憩しよう」
(゚、゚トソン「もしかしてデミタスさんいきそうですか」
(´・_ゝ・`)「もしかしなくてもだ」
(゚、゚トソン「じゃあだめです」
今度は私が意地悪をすると言ったじゃないですか、そう言ってトソンはまた肉棒を咥える。
ぼくは我慢出来ない事を悟った。快感のあまり肉棒に神経が集中していく。
もうこのまま出してしまいたいと思ってしまった。そう考えてから絶頂はすぐにやって来た。
ぼくが射精するとトソンは更にゆっくりと頭を上下させた。精液が残らないように強く吸う。
口の中に放たれた精液をこぼしてしまわないように慎重に肉棒から唇を離す。
別にこちらが指示する訳でもなくトソンは一思いにそれを飲み込んだ。
(゚、゚トソン「あ、飲んでしまって良かったんでしょうか」
(´・_ゝ・`)「あ、あぁ」
(゚、゚トソン「それにしてもたくさん出ましたね」
トソンがぼくを見上げて微笑む。そしてまた肉棒に唇をつけて吸う。
(´・_ゝ・`)「まさか口でいくとは思わなかったよ」
(゚、゚トソン「これでおあいこですよ」
清純そうに見えてトソンの技量は相当のものだ。女子高生としては成熟しすぎていぎる。
どうやってトソンはそれを身につけたのだろう。どんな男性関係を経てここまで成長したのだろう。
訊いてみたいと思ったがそれは憚れた。ぼくはトソンを一時的に買っているに過ぎないからだ。
210
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:30:25 ID:bLfC7y560
それから少し時間をおいてトソンとセックスをした。
トソンはまた肉棒を吸って大きくしてから慣れた手つきで避妊具を取り付けた。
左手を添えて右手で無駄のない動きで避妊具をするすると根元の方へ伸ばしていった。
避妊具の装着を確かめてから唇を重ねてトソンはベッドに横たわりぼくを待つのだ。
きちんと教育されている。トソンの性に対する方面を教育した者の影が見え隠れする。
トソンに覆いかぶさっている時も彼女は背中に腕を回して足を絡ませた。
本当に身体を預けるだけの女子高生も多い。いわゆるマグロだ。
それに対してトソンはセックスに積極的だった。
むしろどうすれば男が喜ぶのかに成通していると思った。
一度射精しているというのにぼくはほどなく絶頂を迎える。
避妊具越しのトソンの中にたっぷりと射精する。
ぎゅっと身体を抱きしめながらトソンはそれを受け止めた。
(゚、゚トソン「いっぱい出ました?」
(´・_ゝ・`)「いっぱい出たね」
肉棒を引き抜くとすぐにトソンが取り外しにかかった。
避妊具を指で吊るすと精液がたっぷり溜まっている。
(゚、゚トソン「本当にいっぱい出ましたね」
(´・_ゝ・`)「二回目なんだけどな」
(゚、゚トソン「すごいですね」
(´・_ゝ・`)「普段はこんなにいかないなぁ」
211
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:32:52 ID:bLfC7y560
トソンに報酬を払い互いにシャワーを浴びて部屋を後にする。
出口で料金を清算するとドアが解錠されて外に出られるようになる。
屋内駐車場に停めてあったスバル・レガシィに乗り込んでトソンをまた横浜駅に送る。
もう外は暗くなり始めていてヘッド・ライトを点灯させた。
ホテルを出てすぐに首都高へ合流する。全線片側三車線の湾岸線は流れが良い。
羽田線への分離を過ぎると羽田空港の中央を突っ切る。トンネルの上を飛行機が横切って行く。
多摩川をくぐり浮島ジャンクションを通過すると川崎と横浜に跨る人工島に入る。
ぼくはトソンと学校の話をした。学校生活が楽しいかなどといった内容だ。
女子高生と流行りの話をしようと思ってもそれは難しいだろう。
話題のお笑い芸人ぐらいならばついていけるがそれ以外の流行りは難しい。
女子高生というのはもはや別の人種なのではと思わされるほど自分達の世界を持っている。
そこに三十代の男性が立ち入るのは極めて困難な事なのだ。いくら女子高生が好きでもそれは大変な事だ。
まして彼女達から見れば三十代男性はおじさんのカテゴリに振り分けられる事すらある。
更にトソンとはまだ今日初めて直接会ったほどなので当り障りのない程度にしておく必要がある。
しかしトソンは行きと比べて緊張は解けたようで楽しく会話が出来るようになった。
トソンの通う学校は市内の私立校でレベルも高い。トソンによく合っていると感じた。
(´・_ゝ・`)「ほら、右手が横浜だよ」
212
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:34:57 ID:bLfC7y560
大黒ジャンクションを過ぎて湾岸線は横浜ベイブリッジに差し掛かる。
右手に見えるのがみなとみらいエリアの夜景だ。
横浜ランドマークタワーや大観覧車などが見渡せる。
みなとみらいエリアは夜景が綺麗だと有名だがその通りだ。
狩場線に入るために左車線に移り制限速度そのままで走る。
(゚、゚トソン「ベイブリッジから見る横浜ってこんなに綺麗なんですね」
横浜ベイブリッジを渡り終えてすぐに狩場線へ分岐する。
いったん狩場線に入り横羽線に移って関内などの中心地を過ぎると横浜駅へのランプに到達する。
速度を落として一般道への坂を降りていく。横浜駅東口のランプで降りて地下広場へ入る。
栄えている西口と比べて東口の方は車も人も少ない。相鉄沿線に住んでいるというトソンは車を降りた。
(´・_ゝ・`)「また、いいかな」
ぼくは名残惜しさを感じていた。
女子高生を買うのは八人目だが、トソンのようなタイプは初めてかもしれない。
(゚、゚トソン「はい、お待ちしています」
そう微笑んでトソンは人混みに消えていった。
ぼくの住まいは津田沼にある賃貸マンションだ。
津田沼という地名はよく誤解されやすいが習志野市の中にあって単独の市ではない。
スバル・レガシィを所有しているが職場は錦糸町にあって毎朝総武線に乗って通勤している。
職場に駐車場はないし千葉からの都心方面は道路事情があまり良くないのもあって朝は渋滞するのだ。
賃貸マンションは駅から近いし駅前の店舗で買い物は事足りるが、それでもぼくは車を購入した。
それには訳があり車を所有していると援助交際はとても円滑に進める事が出来るからである。
車は独立した空間であり周囲の目から逃れる事が出来る。
ぼくの愛用するラブ・ホテルは車で直接乗り入れる事も可能だ。
女子高生の送迎さえ注意すれば他人の目を気にしなくて済む。
援助交際とはそうやって目立たないように行うものだ。
213
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:36:16 ID:bLfC7y560
ぼくはやはりまたトソンに会いたいと思っていた。
清楚で可憐な女子高生。しっかり仕込まれた性技。
本来は共存しないものをトソンは持ち合わせている。
興味があった。普通の女子高生とは少し違うトソンに興味があった。
育ちの良さを感じさせる話し方とスカートを折り曲げず化粧もしない姿は優等生そのものだ。
それなのに援助交際に手を出し、更に恐らく年上の男に性技を仕込まれている。
ぼくはトソンにまた会いたいと連絡をした。あれからも断続的にメッセージのやり取りをしていた。
本当は金で若い身体を買っているだけなので用がある時だけ連絡しても良いのだがなるべく普段からメッセージのやり取りをするよう心がけている。
トソンは快諾して日時の打ち合わせをした。また土曜日の横浜駅で待ち合わせをする。
住まいから横浜へは東関東自動車道と首都高湾岸線を使う。賃貸マンションの最寄りインターチェンジは谷津船橋で数年前に新設されたものだ。
付近にはららぽーとTOKYO-BAYをはじめとした大型商業施設があり増加する来店客に対応するべく後付で建設された。
実際に近くの交差点は土休日になるとすさまじい渋滞を引き起こして問題になっている。
住まいからは本当は京葉道路の方が近いのだが横浜方面に出るのならば湾岸線経由の方が圧倒的に便利だ。
214
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:38:10 ID:bLfC7y560
四月二十三日、約束の日にぼくは湾岸線で横浜へ向かう。
台場から大井を結ぶ東京港トンネル近辺が少し渋滞していたが抜けると流れは一気に良くなる。
アクアラインの渋滞情報を横目に浮島を過ぎ横浜ベイブリッジを渡る。
地下駐車場に入れるため横浜駅西口のランプで降りて一般道に出る。
今日もぼくはスーツだ。普通に振る舞っていれば怪しまれる事はない。
また地下駐車場に車を停めて地上へ出た。
ヨドバシカメラの入り口前のベンチにトソンは既に座っている。
(´・_ゝ・`)「やぁ」
(゚、゚トソン「こんにちは」
周囲の人に悟られないよう自然を装ってトソンを連れ出す。
(´・_ゝ・`)「また会ってくれてありがとう」
(゚、゚トソン「いいえ、構いません」
トソンは今日もきちんと制服を来ている。
特に化粧もせず背伸びをしている訳でもない。
本当に援助交際とは無縁の真面目な女子高生に見える。
(´・_ゝ・`)「じゃあ行こうか」
車に乗り込んで出庫させる。トソンは助手席で姿勢を正して座っている。
いつもラブ・ホテルに向かう時にはこうして女子高生を助手席に座らせるがこれほど行儀よくしているのも初めてだ。
首都高に入り湾岸線を使ってラブ・ホテルまで三十分ほどのドライブをする。
215
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:42:06 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「あの、一つ訊いてもいいですか」
(´・_ゝ・`)「なんだい」
鶴見つばさ橋を渡っているところでトソンが切り出した。
大黒を過ぎてしまうと東扇島までランプもなく特にカーブもない。
勾配はあるものの殆ど直線で三車線の走りやすい道が続く。
(゚、゚トソン「失礼な事かもしれないですが、デミタスさんは女子高生が好きなんですよね」
(´・_ゝ・`)「あぁ、そうだよ」
(゚、゚トソン「こうして女子高生を買う事はもう長く続けているのですか?」
(´・_ゝ・`)「そうだね、もう十年近くになるかな」
(゚、゚トソン「十年」
(´・_ゝ・`)「もう随分と長いだろう。 だがやめられないんだ」
下り坂に差し掛かったところで追越車線に入りアクセルを少し踏み込んで三台ほど連なっていた車を追い越す。
バック・ミラーに白い光が高速で近づいてきたので走行車線に戻るとAudi・A1が追越車線をかっ飛ばしていった。
(゚、゚トソン「きっかけってなんだったんですか」
(´・_ゝ・`)「大人になって、だんだん自分は女子高生が好きなんだって自覚していったんだ。
はじめは女子高生を模したもので満足しようとしていたんだけど我慢出来なくなった、本物が欲しかったんだ」
(゚、゚トソン「それで援助交際を始めた」
216
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:45:29 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「そう。 勿論それは犯罪だし、罰せられる事だと理解はしている。
だけどそうする事でようやくぼくは満足出来るようになったんだ」
(゚、゚トソン「なんというか、大変ですね」
(´・_ゝ・`)「そうだろう、特殊な性癖を持つと大変だ。 ぼくも普通の趣向だったら楽だったのにと思う事もあるよ」
(゚、゚トソン「でもデミタスさん、普通にすごく真面目な方に見えます」
(´・_ゝ・`)「そりゃあどんな変態も普段は真面目に仕事をして社会に溶け込んでいるのさ」
(゚、゚トソン「ふふ、面白いですね」
ぼくは煙草を吸う習慣はないがエチケットとして消臭剤を車内に設置している。
三十を過ぎてから体臭が気になるようになったのだ。認めたくないが加齢臭というものの類だろう。
十代や二十代と比べて三十代に入ると一気に身体は老いへと進んでいく気がする。
体力はなくなるし一晩たっぷり眠っても疲れが取れにくい。
オール・ナイトで遊ぶ事などもう不可能だろう。
(゚、゚トソン「すいません、変な事を訊いてしまって」
(´・_ゝ・`)「いいや、いいんだ」
歳の離れた少女と何か話せるのならばぼくの過去の話など喜んで提供する。
まず女子高生が好きで援助交際を十年以上続けている事など普段は誰にも言えない。
女子高生にならば隠す必要もないし今更取り繕って格好つける必要もさほどないだろう。
(´・_ゝ・`)「ぼくも君に訊いてみたい事があるんだ」
(゚、゚トソン「いいですよ」
217
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:50:39 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「だけどもう着いてしまうね、続きは帰りかな」
左から羽田線が合流して交通量が増える。
間もなく都心部に入る本線料金所に到達するがその直前のランプで湾岸線を降りる。
そこから行きつけのラブ・ホテルはものの数分だ。
工場群と住宅街のちょうど境界線の辺りに建っている。
周囲には高い壁が張り巡らされ中に入るとすぐに駐車場になっている。
建物自体は毳々しい感じはなくむしろ洗練されたシンプルなデザインだ。
ぼくとトソンは二度目のセックスをする。
やはりトソンのフェラチオはねっとりと吸い付くもので女子高生にしては完成されたものだ。
今度は暴発してしまわないようにぼくは気をつける。
制服に包まれた瑞々しい身体を撫でてぼくは更に勃起する。
若い身体に制服を身につけさせたままのセックスは最高だ。
制服をはだけさせてするセックスは最高だ。
ぼくは長い射精をした。
時間をおいてからもう一度セックスをした。
もう三十を過ぎたしぼくもセックスは一日に一回が基本だ。
だけどトソンは別だった。何度でも彼女と交わりたいと思った。
トソンは嫌な顔せず受け入れた。報酬を倍にすると申し出たがトソンはそれを丁重に断った。
(゚、゚トソン「ホテルのシャンプーって不思議ですよね」
(´・_ゝ・`)「そうかい?」
(゚、゚トソン「リンス入りシャンプーってあるじゃないですか。 どうして勝手に混ぜちゃうのか不思議で」
(´・_ゝ・`)「リンスインシャンプーってやつだな」
218
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:53:53 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「はい、それって横着じゃないですか。 きちんと別々にしてほしいものです」
(´・_ゝ・`)「君がそれほど強く言うのは珍しいね」
(゚、゚トソン「髪は昔からしっかりするべきだと思っていまして、あれは許せません」
(´・_ゝ・`)「はは、これは参った」
このラブ・ホテルはボディソープとリンスインシャンプーの二つが設置されているだけだ。
出来るならきちんと分かれているホテルを選びたいが女子高生を連れ込む事の出来るラブ・ホテルはここぐらいしか知らない。
清算を済まして駐車場を出る。まるで異世界のような非日常空間が広がるラブ・ホテルから一歩外へ出てしまえばそこは日常だ。
駐車場の向こうには首都高羽田線と海岸通りが走っていてどちらも車の往来がひっきりなしに続いている。
あの外は日常だ。しかしぼくもトソンも日常に帰らなければならない。
(´・_ゝ・`)「行こうか」
車に乗り込んで駐車場から出る。
ラブ・ホテルから出てくると興味津々といった様子で顔を覗き込んでくるドライバーもいるので車の往来が完全に途切れてから道路に出る。
また首都高湾岸線に入り横浜を目指す。ちょうど本線料金所を越えたばかりのところでどの車も元のペースを取り戻そうとスピードを上げている。
(´・_ゝ・`)「行きの話の続きをしようか」
(゚、゚トソン「次はデミタスさんが私に訊く番でしたね」
(´・_ゝ・`)「あぁ」ぼくはやんわりとアクセルを踏む。「どうして君は援助交際をしようと思ったんだい」
トソンは少し考えたのでぼくは付け足した。
(´・_ゝ・`)「君はとても真面目な生徒に見えるし、実際にそうだと思う。 援助交際に手を出すような子には見えないんだ」
援助交際に手を出すのは背伸びをしている子だ。お金が欲しい子。手っ取り早く稼ぎたい子。寂しい思いを抱えた子。
落ち着いた物腰と丁寧な話し方をするトソンは大人びて見せる。しかしそれは援助交際に手を出す女子高生とのは違う。
トソンは本来援助交際とは無縁の、むしろ真逆なところにいるであろう人間なのだ。
219
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:56:30 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「そうですね」
トソンは頭上のトンネルを横切るANAの飛行機を見ていた。
(゚、゚トソン「なんといえばいいか…」
(´・_ゝ・`)「いや、言いたくないのならば無理に言わなくてもいいんだ」
(゚、゚トソン「でも、私はデミタスさんの話を訊いたのにそれでは不公平になってしまいます」
(´・_ゝ・`)「いいんだ、ぼくは話したいから話したんだ。 君がいつか話したくなったら話してくれればいい」
(゚、゚トソン「すみません」
料金所の閉鎖しているゲートが赤く発光している。点滅して注意を促している。
(´・_ゝ・`)「ただこれだけは訊きたかったんだ、君は誰かにこれを強いられている訳ではないよね?」
(゚、゚トソン「それは違います、自分の意思です」
トソンはきっぱりと断言した。先程のように言い淀む事はなかった。
こればかりはぼくは安心した。援助交際をしている女子高生の中に親やそれに近い存在からそれを強いられている場合があるのだ。
金銭的な事情があり稼いでくるように言われて仕方なく援助交際をしている子は少なからず存在する。ぼくはそれを買いたくはない。
ぼくの女子高生が好きだという趣味は金で買って達成されるものだが相手のきちんとした同意がなければいけないのだ。
それはぼくのポリシーだと思う。どのみち犯罪ではあり社会的に糾弾され罰せられる事には間違いない。
それでもぼくは自分の意思で援助交際に手を出す子のみを買いたいのだ。
ぼくは女子高生が好きだという性癖を満たせるし相手は一時的に身体を自由にさせ金を手に入れる。
どちらも利益がありいわゆるウインウインの関係というものだ。援助交際はそうあるべきだとぼくは思っている。
220
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 18:58:24 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「良かった、安心したよ」
(゚、゚トソン「その、なんというか、あれですね」
(´・_ゝ・`)「なんだい」
(゚、゚トソン「当てつけ、です」
(´・_ゝ・`)「当てつけ」
(゚、゚トソン「ええ」
予想しなかったワードにぼくは考える。
(´・_ゝ・`)「それは、お父さんやお母さんかい?」
(゚、゚トソン「いいえ、そうではありません。 両親と仲が悪い訳ではなかったのです」
(´・_ゝ・`)「そうか」
それ以上はもう踏み込むべきではないと思った。ただ当てつけ、という言葉は引っかかった。
仲が悪い訳ではなかったのです、と過去形にしたのも気になった。
助手席を見るとトソンはエアコン送風口に差した車用ファブリーズをぐにぐにと触っていた。
(゚、゚トソン「デミタスさんは、恋人はいないんですか」
(´・_ゝ・`)「いる訳がないだろう、女子高生が好きなのだから」
(゚、゚トソン「でもそういう趣味を持つ人は普段は社会に溶け込んでそれを隠していると言っていたじゃないですか」
(´・_ゝ・`)「そりゃあ異常性癖を隠して生活する事は可能だ。 しかし恋愛になるとその性癖は大いに左右される」
(゚、゚トソン「実際問題女子高生と付き合うのは難しい」
(´・_ゝ・`)「そう、援助交際という金で一時的に買うだけのドライな関係だから満たされる。 恋愛とは違うんだよ」
221
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:01:37 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「今まで関係を持った女子高生で恋愛感情を抱いた事はないんですか」
(´・_ゝ・`)「ないね、あくまでもぼくが好きなのは女子高生なんだ」
(゚、゚トソン「すごい、徹底されていますね」
トソンは感心したようにほう、と息を吐いた。
(゚、゚トソン「じゃあ私もこのまま続いても卒業したらお別れなんですね」
(´・_ゝ・`)「まぁ、そうなるな」
(゚、゚トソン「なるほど」
(´・_ゝ・`)「引いたかい?」
(゚、゚トソン「いいえ、面白いです。 本当に色んな人がいる。
それは当然分かっている事なんですけど、実際に接してみないと分からない」
(´・_ゝ・`)「分かったつもりが一番よくないからね」
(゚、゚トソン「本当にそう思います。 デミタスさんと話せて良かったな」
追越車線を我が物顔でベンツやAudiなど外国産の車が駆け抜けていく。
前方で粘っていた日産・セレナがベンツ・GLAに走行車線から追い越された。
三車線あるうちの真ん中の車線でぼくは湾岸線の応酬を見つめる。
外国産の車に負けじと三菱・ランサーエボリューションが坂を駆け上がっていった。
(゚、゚トソン「デミタスさん、面白い人ですね」
(´・_ゝ・`)「そうかい? あまり言われた事がないな」
謙遜ではなく本当の事だ。ユーモアセンスのある人間だと評される事は極めて少ない。
222
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:04:47 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「良かったらまた、連絡を下さい」
首都高を降りると間もなく別れのサインだ。
トソンは地下の乗降場へ続く坂を降りていくところでそう言った。
ぼくはトソンの方からそんな言葉が出るとは思っていなかったので意外だった。
(´・_ゝ・`)「あぁ、ぜひまた」
トソンは車を降りて雑踏に消えていく。こうして日常に帰ってくる。
相鉄線のどこかの駅まで列車に乗って帰る。自分の家という日常に帰る。
ぼくもトソンとの時間を終えて自分の日常へと帰らなければいけない。
また首都高に入って自分の住む賃貸マンションへ向かう。
ラブ・ホテルという異空間は非日常を与えてくれる。
女子高生に触れるという行為もまた非日常だ。
しかし非日常から日常には必ず帰るものだ。
女子高生を送り家に帰る瞬間はまさに日常に帰るものだ。
出来る事ならば女子高生をずっと手元に置いておきたい。
数週間に一度ではなく毎日女子高生を眺め触れていたい。
しかしそれは叶わない。毎日ではなく時折触れるからこそ貴重であるし満たされる。
欲望の達成にはバランスが必要なのだ。手に入れるばかりでは満足出来なくなってしまう。
帰りの湾岸線では色々な事を考える。会った女子高生を思い出し次の予定を考える。
トソンを思い出す。また、また会いたいとぼくは思っている。強くそう感じている。
彼女の方からも良かったらまたと言われた事を嬉しく思っている。
当然ながらぼくとトソンの関係は援助交際でありぼくは客でしかない。
それでもまたトソンに会いたいと感じているのだ。
223
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:06:04 ID:bLfC7y560
それはもしかすると恋なのでは、と考えるがやはりそれは違うとぼくは首をふる。
ぼくが好きなのは女子高生だ。永遠に女子高生なのだ。
女子高生の途中である一人の女の子を好きになってもいずれ女子高生でなくなってしまう。
そのためにぼくはもう何年も恋をしていないのだ。女の子を抱きたいのではなく女子高生を抱きたいのだ。
似たような感情ではあるが本質は大きく異なる。そこを履き違えてはいけないのだと思う。
トソンにまた会いたいと思うのは買う事の出来る女子高生としては異質で、完成されているからだ。
清廉さを持ち、性技を仕込まれているちぐはぐさが不思議な魅力としてトソンを彩っているのだ。
きっとトソンが女子高生であるうちは、ぼくは彼女を買い続けたいのだと思う。
ぼくはトソンと連絡を続けた。メッセージのやり取りをした。
それはまたトソンに会いたいと思っていたからだし途切れさせたくないとも思ったからだ。
援助交際は一種の一時的な売買契約みたいなものでその時だけ連絡を取ればいい。
こうして頻繁にメッセージのやり取りをするのはまるで女性と付き合う前の期間のようだ。
トソンはこれまでの女子高生とは違っていて、ぼくはそれに興味を抱いているからだ。
もっとトソンの事を知りたい。純粋にそう思えるのだ。
224
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:07:22 ID:bLfC7y560
ぼくは自分の性癖すらさらけ出しているのだし隠す事はない。
しかしトソンの事はあまり知らない。知っているのは表面的な事ばかりだ。
毎日欠かさずトソンとメッセージのやり取りをしているが概ね好印象ではないだろうか。
実際のところ三十代も間もなく終わる男と女子高生の話はなかなか噛み合わない。
会話をするに当たって女子高生は全く別の生き物だ。独自の世界観を確立している。
それでもトソンはメッセージのやり取りにおいても非常に大人びていた。
幼稚な部分は見られずしっかりとした受け答えをするのだ。
うっかりしていると女子高生なのだと忘れてしまいそうになるぐらいだ。
やはりまた会いたくなりトソンの都合を伺って、次の日程が決まる。
五月七日、また土曜日だ。ゴールデン・ウィークの終盤に当たる。
今年は憲法記念日・みどりの日・こどもの日が火曜日・水曜日・木曜日に当たる。
月曜日と金曜日が平日として残る、途中で飛んでいる不完全な大型連休なのだ。
逆にその月曜日と金曜日さえ休みを取れれば一気に十連休となる。
しかしそれは単に土休日が休みとなる者だけに限られた話だ。
自分のように土日休みでなくシフトで回っている者には関係のない事である。
ぼくは今のシフトでは金曜日と土曜日が休みなのだ。勿論休日出勤があれば別である。
勤めている会社は交通インフラ関係なので曜日で左右されない。
225
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:10:18 ID:bLfC7y560
トソンを迎えに行く前にスバル・レガシィをきちんと洗車する。
昨年のガラス・コーティング施工の効果がまだ残っているので水を流せば汚れは大体取れる。
しかしぼくはハイヤーの運転手のように念入りに汚れが残っていないか確かめる。
たっぷりと自動車用洗剤を希釈した水をスポンジに含ませて車体に滑らせる。
水でしっかりと流してからマイクロファイバークロスで拭きあげる。
一周してからよし、と満足してぼくは洗車を終えた。
いつも通り谷津船橋のインターチェンジから東関東道に入る。
左手には京葉線が並走する。ラインカラーであるワインレッドを身に纏ったステンレス製の車両とすれ違う。
あの列車は東京ディズニー・リゾートや幕張エリアへの輸送を任されている。
いつも車内は混雑しているように見えるが湾岸線が渋滞しているとさっと追い抜かされてしまうのでその時ばかりは恨めしく思う。
湾岸線に寄り添っていた京葉線は新木場で一気に右に進路を変えて都心方面に向かっていく。
京葉線を跨ぐとすぐ左手に今度はりんかい線が現れてまた湾岸線と並走を始める。
東雲の駅を過ぎるとりんかい線は地下に潜ってしまいいよいよ湾岸線のパートナーはいなくなる。
晴海線と分岐する東雲ジャンクションの付近はタワーマンションが建ち並び近未来的な光景が広がる。
有明と台場の臨海副都心を通過すると車線変更が禁止され東京港トンネルへ突入する。
前のトヨタ・シエンタが下り勾配になってから何度もフットブレーキを踏んでいるので車間距離を多めに開ける。
土休日の高速道路には不慣れなサンデー・ドライバーが多いものだ。余計な事故に巻き込まれるリスクは減らす必要がある。
どのみち東京港トンネルは車線変更が禁止されているので前に遅い車がいても逃げられない。車線ごとに一蓮托生なのだ。
226
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:15:30 ID:bLfC7y560
横浜駅に着いて地下駐車場に車を停める。ルームミラーでネクタイを締め直して車を出た。
土曜日の横浜駅は混み合っている。バスロータリーには横浜市営バスや神奈中バスがひっきりなしにやって来る。
今日もヨドバシカメラの前のベンチにトソンはいた。手には読みかけの文庫本がある。
いつもと様子が違うのは二人の男子高校生に何か話しかけられているところだ。
トソンは読んでいたであろう文庫本を膝に置き少し困った顔をしていた。
知り合いではないな、と考えて努めて明るくトソンの方へ歩いていった。
(´・_ゝ・`)「いやぁトソン、おまたせ。 そちらは友人かな?」
(゚、゚トソン「あ、いえ」
(´・_ゝ・`)「どうも、トソンの父です。 娘が何か?」
二人の男子高校生はぼくとトソンを見比べて気まずそうに去っていった。
特に目立つ要素のないありきたりな公立高校の生徒だ。
トソンはお礼を言って読みかけの文庫本をしまい立ち上がった。
(´・_ゝ・`)「明らかに困っていたからね」
(゚、゚トソン「すいません、あまり慣れていないんです」
(´・_ゝ・`)「女子校では仕方がないよ」
トソンが通うのは私立で中高一貫の女子校だ。県内屈指のお嬢様学校として有名である。
彼女自身は相鉄線沿線に住んでいていつも横浜まで相鉄線で出てきて学校のある大船までJRで向かうのだそうだ。
(´・_ゝ・`)「君の学校の制服は有名だし目立つからね」
(゚、゚トソン「そうなんでしょうか」
それは本当の事だ。しかしそれ以上に目を引くのがトソンの胸の大きさだ。
トソンは整った顔立ちをしているし髪も流れるように美しいが、目立つようなタイプではない。
何よりも目立ってしまうのがよく育った胸なのだ。冬制服の上からでもはっきりと分かってしまう。
薄着の夏の制服になればいっそう目立つのではないだろうか。そしてそれは否応なしに男の目を引くものだ。
中高一貫の女子校では男子生徒はいないが学校の外に出てしまえば男性など幾らでもいる。
227
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:17:35 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「でもぼくとは普通に話せるし、男性が苦手という訳ではないんだろう」
(゚、゚トソン「それは勿論です、でもデミタスさんとはずっとメッセージのやり取りをしているからです」
(´・_ゝ・`)「何者かも分からない男性に急に話しかけられるのは困ると」
(゚、゚トソン「そういう事なんです」
援助交際に手を出すほどの女子高生が街中で男に声をかけられて困ってしまう。
掲示板で出会って実際に会うまでにメッセージのやり取りを何度もしたが、どうしてそれでトソンはぼくに心を許したのだろうか。
そもそも身体を提供する一時的な契約をして援助交際を行っているだけで、トソンが本当にぼくに心を許しているのかも分からない。
まるで彼女に恋をしているように、ぼくはそれについて知りたいのかもしれない。
(´・_ゝ・`)「行こうか」
(゚、゚トソン「はい」
横浜駅は言うまでもなくエリア最大のターミナル駅だ。
相鉄線沿線に住むトソンが来やすいという理由で指定しているが長居はしない方がいいだろう。
トソンの高校は鎌倉市に位置するが広大な土地を持つ横浜市からほど近い。
生徒も半数ほどは横浜市から通学しているそうで、当然この横浜駅を使う者も多いのだ。
今日は土曜日であるし人の多い横浜駅ではまず見つかる事はないだろうが用心するに越した事はない。
援助交際をする女子高生は基本的にそれを周囲に隠しているものだ。特別な事情のある者以外は親にだって言っていない。
また援助交際で欲望を満たす男としてもそれを知られる訳にはいかない。それは明確な犯罪行為であるし社会的地位も失墜する。
そのために車という独立した空間を持つアイテムを所有している者が多いのだ。
(´・_ゝ・`)「女子校だとやはり男子の知り合いは少ないのかな」
(゚、゚トソン「人それぞれだと思います、他校の男子の知り合いが多い人もいます」
228
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:25:10 ID:bLfC7y560
私は殆どいないんですけどね、とトソンは言った。階段を降りて地下駐車場に出る。
出掛ける前に念入りに拭いたので車体は綺麗だ。蛍光灯の灯りがくっきりと反射している。
車に乗り込んで地下駐車場を出て首都高に乗った。
(´・_ゝ・`)「じゃああまり男子と付き合うっていうのは少ないだろうね」
(゚、゚トソン「共学の学校と比べれば少ないと思います」
(´・_ゝ・`)「トソン自身は今までには?」
(゚、゚トソン「ないですよ、男子の知り合いも殆どいないので」
(´・_ゝ・`)「そうか」
トソンには交際経験がない。しかし男子と付き合った事もない女子高生に男性経験があるはずがない。
ましてあれほどの男を悦ばせる技術を身に着けているはずがない。そもそもそれは同年代のとセックスで身につくものでもない。
トソンは一体どうやってぼくと援助交際をするに至ったのだろう。それはトソン自身から話してくれるまで待つしかない。
狩場線から湾岸線に入るとまた追越車線での応酬が始まる。
湾岸線は横浜の幸浦から始まるが本牧ジャンクションより東から一気に交通量が増える。
住宅地を走る二車線の横羽線と比べると湾岸線は全区間三車線で線形も良く非常に走りやすい。
特に本牧から浮島までの工業地帯をひた走る区間はランプの設置も最低限で分離や合流もない。
まさしく都市のサーキット場であり制限速度を大幅に越えたスピードで走り去っていく。
湾岸線には自動速度取締機オービスの設置が少ないのも原因の一つだろう。
土曜日なので大黒パーキングでは走り屋の集会でもやっているだろう。
大体左の走行車線には遅いトラックが走っているので中央の走行車線を走る。
追越車線を走っていくのは外国産のセダン車や国産のスポーツ・カーだ。
スピードメーターが百八十までしかなさそうなミニバンも頑張ってそれに追随する。
ホンダ・S-MXが逃げるが後ろからBMW・3シリーズに煽られて走行車線に逃げる。
湾岸線の応酬は自らの限界と引き際を知る事も大事なのだ。
再びS-MXは追越車線に戻っていくがすぐにミニ・クーパーが詰めていく。
応酬に下手に巻き込まれないよう車間距離を取りながら羽田空港を過ぎる。
いつものランプで降りて大井競馬場の横を通り右折するとラブ・ホテルが見えてくる。
229
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:28:07 ID:bLfC7y560
このラブ・ホテルに入れば非日常だ。直前でウインカーを出してさっと入庫させる。
壁は高く外から覗き込めないように少し入り組んでいてもう目線を気にする必要はない。
今日も部屋はトソンに選んでもらう。せっかくなのでとトソンはまた違う部屋を選択した。
このまま関係を続けていれば二人で全ての部屋を制覇するかもしれない。
土休日料金なので最大四時間の休憩料金は少し高めの設定になっている。
更に部屋は様々な形態のものが用意され部屋ごとに料金が変動する。
オーソドックスな部屋なら五千円程度で豪華な部屋ならば一万円ほどする。
(゚、゚トソン「プールのある部屋というのも面白そうなんですが水着がないですからね」
(´・_ゝ・`)「裸で入ればいいんだよ」
(゚、゚トソン「そういうものなんですか」
(´・_ゝ・`)「中高一貫女子校じゃあ知らないかもしれないが男子は女子が出て行ってから裸で入る事もある」
(゚、゚トソン「えぇ、どうしてそんな事を」
(´・_ゝ・`)「裸で泳ぐ開放感はとても良いものだからだよ。 もう二、三十年も前の話だし今の子はやらないかもしれないけど」
(゚、゚トソン「その、裸で開放感があるという事は泳ぐのは速くなるんですか」
(´・_ゝ・`)「いや、水着を履いていた方が速いよ」
ぼくとトソンはたっぷり時間をかけて三度目のセックスをする。
完全密室のラブ・ホテルでは誰も邪魔する者はいない。
二人の関係を咎める者もいない。自由に伸び伸びとしていられる。
まるでこのラブ・ホテルの部屋だけが世界から切り離されたようだ。
この部屋の中でならばぼくとトソンは交わる事が出来るし何も偽装しなくていい。
普段は物静かなトソンがベッドの上で乱れる。制服を掴んだままぼくは射精する。
トソンはぼくの首に腕を回してそれを受け止めた。
ずっとこの時間が続けばいいのにとすら思う。一番幸せなこの時間が。
230
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 19:30:13 ID:bLfC7y560
シャワーを浴びて部屋を出て清算をする。屋内駐車場に出ると外から車の往来が聞こえる。
海岸通りと首都高羽田線の往来。聞こえてくるそれは待ち構える日常の証だ。
ぼくは寂しいと思う。トソンはどうなのだろう。この帰り道をどう思うのだろう。
(゚、゚トソン「あの」
空港中央を過ぎたところで不意にトソンが切り出した。
(´・_ゝ・`)「なんだい」
(゚、゚トソン「今日、もうちょっとお話出来ませんか」
(´・_ゝ・`)「ゆっくり話が出来るところがいいかな」
(゚、゚トソン「出来れば、そうですね」
(´・_ゝ・`)「いいよ」
左の車線に寄り浮島ジャンクションで湾岸線から離れる。
幾重にも続くカーブを経て大師から来た本線へ合流するとすぐに下りトンネルへ突入する。
東京湾アクアラインの半分以上を占める海底トンネルはほぼ一直線に続き先が見通せる。
途中には巨大な換気口があり頭上にぽっかりと大きな穴が空いている。
長い上り勾配の先には光が見える。東京湾の真ん中に浮かぶ海ほたるに着く。
本線を別れ大きくカーブして反転するとようやく海ほたるの全景が見えてくる。
海ほたるはまるで戦艦のように海上に浮かんでいる。
橋から続く道路がそのまま戦艦の腹の中へ飛び込んでいく。
まるで大きく開かれた口に車達が吸い込まれていくかのようだ。
駐車場に車を停めてエスカレーターを上がる。
施設に入ったところにスターバックス・コーヒーがあってカウンターの近くは混雑している。
しかしカウンターを離れた場所は空いていて一人掛けの単独のソファーが並べられていた。
それぞれ好みのコーヒーを購入してそのソファーに座る。
231
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 20:11:01 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「我儘を言ってすいません」
(´・_ゝ・`)「いや、構わないよ」
大きなウインドウの向こうは夕陽が沈みかけている東京湾だ。
左手には木更津と君津の工場群があり、右手にも横浜と川崎に跨る工場群が見える。
(゚、゚トソン「この前お会いした時に、こういう事をしているのが当てつけだと言ったのを覚えていますか」
(´・_ゝ・`)「あぁ、覚えている」
援助交際をする事が自分の意思か尋ねた時に不意にトソンが漏らした言葉。当てつけ。
それも両親にではない。ぼくが引っかかり、そしてそれ以上は踏み込めないと思った言葉だ。
(゚、゚トソン「デミタスさんに隠し事をしたかった訳でもありません。 しかし今となっては説明する必要があります」
(´・_ゝ・`)「うん」
(゚、゚トソン「当てつけ、それは私の後見人に対してです」
(´・_ゝ・`)「後見人」
それは両親のいない者の証だ。
両親と仲が悪い訳ではなかったのです。トソンは過去形でそう語っていた。
(´・_ゝ・`)「未成年後見人という事か」
(゚、゚トソン「はい。 私の母親は私が九つの頃に急な病でこの世を去りました。 私は父親に育てられたのです」
トソンはトールサイズのスターバックス・ラテを手に持ったまま、少し考えていた。
話す言葉を順序立てて整理しているようだった。ぼくはカフェ・アメリカーノを飲んでそれを待った。
急かそうなどとは思わなかった。トソンが自身について話してくれるようになった事をむしろ喜んでいた。
それだけで、トソンにほんの少し近づけたような気がするのだ。
いくらトソンを抱いても心の奥にたどり着ける訳ではない。
ましてぼくとトソンは金銭授受で成り立つ契約関係だ。
今現在トソンのセックスはビジネスに他ならない。
232
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 20:12:39 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「先々月、三月の終わりに父が亡くなりました。 仕事中に脳卒中で倒れてそのままもう目を覚ましませんでした」
トソンはまた区切る。二ヶ月前に父親が亡くなった女子高生が援助交際をしている。
その事実だけが急に浮かび上がってぼくは混乱してしまう。
(゚、゚トソン「父は実家を十八で出ており、親からも勘当されていたそうです。 私は父以外に身寄りはありませんでした」
(´・_ゝ・`)「お父さんは何を?」
(゚、゚トソン「秘書をしていました。 その父が担当していた先生とは家族ぐるみの付き合いをしていて、その方が私を引き取ってくれる事になったのです」
(´・_ゝ・`)「ではそのお父さんが秘書をしていた先生が君の後見人」
(゚、゚トソン「はい、そうなります。 今はまだ後片付けもあるという事で父と暮らしたマンションに住んでいますが、間もなく先生のお宅へと住まいを移す事になります」
トソンはまさに激動の人生のまっただ中にいる気がした。しかしまだ援助交際に繋がる要素は見当たらない。
ここでトソンはいったん口を閉ざした。口はきゅっと結ばれ、また何か考えているようだった。
トールサイズのカップを指でなぞっていた。トソンの細い指が円を描く。
(゚、゚トソン「まず」ようやく口を開く。「私と父の関係から」
(´・_ゝ・`)「関係?」
(゚、゚トソン「私と父は一緒に寝る事がありました」
(´・_ゝ・`)「一緒に」
そこまで言って、その言葉の意味に気がつく。とんでもない事を言い出そうとしている。
周囲を見るが近くには誰もいない。
233
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 20:14:34 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「それは」
(゚、゚トソン「私と父はそういう関係にありました」
(´・_ゝ・`)「その、実の親子なんだろう?」
紛れも無く、とトソンは表情すら変えずに答える。
(゚、゚トソン「十四の頃からそういう関係になりました。 母は早い内に亡くしました。 父は多忙であったし、私も父のためならと思って応えました」
(´・_ゝ・`)「それでお父さんに、色々な事を教えられた」
(゚、゚トソン「はい」
女子高生としては完成されたねっとりとしたフェラチオも絡みつくようなセックスもトソンの父親から仕込まれたものだ。
初めてトソンに咥えられた時に同年代とのセックスで覚えたものではなく中年仕込みのものに思えたのは間違いではなかった。
トソンの性に関するルーツは父親にあるのだ。
(゚、゚トソン「当然ながら私と父の関係は秘密のものです。 私は今の今まで誰にも話さなかった」
ですが、とトソンは繋げる。
(゚、゚トソン「あの人、私の後見人となるあの人は、その事を知っていた。
そしてそれを私に求めてきました。 後見人となる代わりに」
(´・_ゝ・`)「では、君に住まいを提供し親代わりとなる代わりに身体を提供しろと?」
(゚、゚トソン「そこまで直接な表現ではありませんが、そういう解釈で間違いありません」
(´・_ゝ・`)「それでは善意で君の後見人になったのではなく下心があったからではないか」
(゚、゚トソン「いえ、善意もあるのだと思います。 父と先生は長い付き合いです。 私自身可愛がってもらいました」
234
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 20:16:14 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「だが身体を寄越せというのは横暴過ぎる」
(゚、゚トソン「はい」
トソンは頷いた。そして視線を遠い海の向こうにやった。
(゚、゚トソン「私にはもはやあの人しか身寄りがありません。 断る余地はなかった。」
だけど。そう言ってまたトソンは暫く黙る。
(゚、゚トソン「私は父を愛していました。 父として、男性として。
父に求められて、両方の思いから応じました。 関係を続けました」
トソンはぼくの方を見る。
(゚、゚トソン「私は交際した男性の人もおらず、父としか関係を持った事がありませんでした。
あの人に身体を差し出すのは、父との思い出まで奪われてしまう気がした」
(´・_ゝ・`)「当てつけ…」
(゚、゚トソン「はい、当てつけです。 あの人に身体を差し出す前に、誰か他の知らないような人に身体を明け渡してしまおう。
そう思いました。 それが当てつけです」
(´・_ゝ・`)「それなら、それなら、どうしてぼくだったんだ」
(゚、゚トソン「正直最初は本当に誰でも良かったんです。 自分自身自暴自棄になっていました。
だからああいう掲示板に書き込んで連絡を待った。 何人も来ました。 その中でデミタスさんが一番誠実そうな感じだった」
(´・_ゝ・`)「援助交際をするような男だぞ」
(゚、゚トソン「それでもメッセージのやり取りを続けるうちに誠実そうな人だと思ったんです。
そして実際に会って、やはり感じた通り誠実な人だと」
235
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 20:18:49 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「そうか」
トソンは後見人への当てつけを果たしたのだ。その後見人に抱かれるぐらいなら見知らぬ他人に抱かれてやろうと。
それがたまたまぼくだった。援助交際を繰り返し新たなパートナーを探していたぼくだった。
(´・_ゝ・`)「どうしてそれを話そうと思ったんだ」
(゚、゚トソン「来週に、あの人の家に引っ越します。 ずっとなんとか引き伸ばしにしていましたが、ゴールデン・ウィークが終わったらという話になっていました」
来週。そんなものすぐだ。二週に一度ぐらいで会えればいいとぼくは呑気にそう考えていた。
(゚、゚トソン「きっと会うのは難しくなります」
東京湾の向こうに夕陽が沈んでいく。夜の帳が下りる。日付が変わって定められた未来に近づいていく。
(´・_ゝ・`)「君は、嫌なんだろう、その後見人に引き取られるのが。 その後見人に抱かれるのが」
(゚、゚トソン「長い間お世話になっている人です。 良い人です。 その人が後見人になる事で私はこの先の未来に安心する事も出来たぐらいです。
今の学校もこのまま通えるし大学にも進ませてくれるそうです。 だけど」
だけど、もう一度トソンは繰り返す。
(゚、゚トソン「抱かれるというのは違う。 何も対価を払わず満足な生活を手に入れようというのは都合の良い話だとも分かっています。
しかし私の中でそれは父と繋がる特別な意味を持つものでした。 だから当てつけとしてデミタスさんと会った」
(´・_ゝ・`)「じゃあ、君はこれでいいのか」
トソンはぼくの方を見て、微笑む。
(゚、゚トソン「初めて父以外の人に抱かれて、私の中で徐々に何かが変わっていったのです。
デミタスさんは面白い方ですし、私の知らない事を幾つも教えてくれる。
優しく、相手を尊重し、とても気遣ってくれます」
まだ会ったのは今日で三回目なのに変ですよね、と自嘲気味にトソンは呟く。
236
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 20:48:48 ID:LKSIJcuI0
トソンの背景が思いの外重かった
たまにデミタスの事をモララーと呼んでいるがデミタスでいいのかな?
エロいがそれ以上に面白い
237
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 21:40:38 ID:bLfC7y560
>>236
ぐおお本当だ
元々モララーで書いていておっさん感が足らないのでデミタスに書き換えたんですが漏れがあるみたいです
238
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 21:48:28 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「いつからかデミタスさんだったら良かったのに、と思い始めている自分がいました」
またトソンは窓の向こうの海に視線を戻す。
夕陽を失った海はすっかり暗くなり、寂しく感じられる。
遠くを何機もの飛行機が飛び交い、海上をタンカーが横切って行く。
(゚、゚トソン「でも、もう来週には引っ越しです。 だからデミタスさんにはきちんと話しておかなければならないと考えていました。
私がそういう反逆心を持ってデミタスさんと会った事も謝りたいと思っていました」
(´・_ゝ・`)「いいんだ、そんな事は」
そんな事は大した事ではない。それよりもトソンが望まない方向に流れてしまう事だ。
(´・_ゝ・`)「その後見人には何とか言えないのか。 他の人に訴え出たり、後見人にも奥さんだとかがいるだろう」
(゚、゚トソン「無理だと思います」
トソンは首を振る。
(゚、゚トソン「あの人は巨大な権力を持っています。 大きな家の人です。 強欲で自分が手に入れたいものを全部手にしてきました。
父はそんな人の下だからこそ恩恵を受けてきたのです。 あの家であの人に逆らえるものは一人たりともしません。 奥さんでさえも」
(´・_ゝ・`)「その後見人というのはそれほどの人物なのか。 秘書を持っているほどの」
(゚、゚トソン「国会議員です。 平成新党党首ロマネスク衆議院議員」
ぼくは天を仰いだ。言うでもなく大物議員だ。神奈川県横浜エリアを地盤に持ち衆議院議員七期目。
自民党時代には大臣も経験し離党後に平成新党を立ち上げ現在では野党第二位の勢力を誇る。
自由奔放な発言が多く大臣時代にはマス・メディアに随分と叩かれたがその饒舌ぶりは今でも健在だ。
むしろ切れ味の良い発言がある程度の評価を得ておりそれが彼の最大の特徴でもある。
(゚、゚トソン「邸宅は山手にあって、その中での出来事など外に出る事はありません。 あくまでも、その中での出来事です」
239
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 21:53:24 ID:bLfC7y560
それはまるで諦めてしまっているニュアンスのように感じられた。
これまでで一番諦めの色の強い言葉だった。
(´・_ゝ・`)「君は、本当にそれでいいのか」
(゚、゚トソン「はい」
そうするしかない。そうするしかないのだ。
父を雇っていた男について行けば、金銭面でも住環境でも苦労する心配はまるでないのだ。
この先もこれまで通りの学校生活と進路が用意され約束されているのだ。案じる事はない。
ただその男に身体を差し出せばいいだけで、その未来が約束されるのだ。
(-、-トソン「今までありがとうございました」
それは諦めと別れの言葉だ。しかしぼくには遮る事が出来ない。
ぼくに何が出来るというのか。
ただの会社員で、三十代終盤にも関わらず未婚で、貯蓄もそれほど多くない。
まして女子高生が好きで援助交際を繰り返す社会的にもどうしようもない男だ。
トソンを引き止める事も出来ないし引き止める術もない。
ただ援助交際でトソンとセックスしただけの男が出しゃばる場所などない。
そもそもトソンとは連絡し始めてから一ヶ月ほどだ。
会ったのもたった三度だ。
ぼくには何も出来ない。まるで何も出来ない。
絶望感と無力感に襲われる。
自分は何とちっぽけな存在なのだろう。
(゚、゚トソン「私の事は気にしないで下さい」
トソンは言う。
(゚、゚トソン「一ヶ月ほどでしたが、楽しかったです。 それに私の勝手な当てつけに巻き込んでしまって申し訳ありません」
240
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 21:58:08 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「君が謝る事じゃない」
謝らなくていい。トソンが謝る必要は何もない。
(゚、゚トソン「行きましょうか。 すっかり暗くなってしまいました」
(´・_ゝ・`)「あぁ…」
言葉が見つからなかった。適切な言葉など存在しないように思えた。
気の利いた言葉を放って事態が好転するはずもなかった。
(´・_ゝ・`)「行こうか」
駐車場に戻ってスバル・レガシィに乗り込んだ。料金所を通り川崎方面へと戻る。
長い海底トンネルを経て浮島ジャンクションから湾岸線に入る。
アクセルを強く踏み込む気になれなかった。一番左の走行車線をゆっくり走った。
それでも横浜駅は着実に近づいた。制限速度で走っても確実に近づいていった。
横浜駅で別れてしまえばそれは永遠の別れになる気がした。きっともう会えないと思った。
それなのに会話は少なかった。ぼくは言葉を失ってしまったみたいに話せなくなった。
ボキャブラリーという辞典を無くしてしまったようだった。
何か言わなくてはと焦るほど見つからなかった。
横浜ベイブリッジを静かに渡り、狩場線に入る。
関内、みなとみらいと市街地を過ぎて横浜駅東口のランプで降りる。
地下広場で車を停める。無情にも時間は終わってしまう。
(゚、゚トソン「本当にありがとうございました」
(´・_ゝ・`)「いや」
お礼を言うべきはぼくの方だ。ぼくとトソンは援助交際の契約関係だ。
これにて契約満了となるのだ。
241
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:00:45 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「元気で」
(゚、゚トソン「デミタスさんも、お元気で」
(´・_ゝ・`)「あぁ」
トソンが鞄を持って車を降りる。ぼくに頭を上げて、踵を返して歩いていく。
ぼくはそれを眺めている。トソンが人混みに紛れて見えなくなる。
これが最後。永遠の別れ。もう会えなくなってしまう。
声をかけるべきだと思った。呼び止めるべきだと思った。
車から飛び降りて追いかけて抱きしめるべきだと思った。
しかしぼくには出来なかった。何も出来なかった。
ここでそうしたとして、この先に未来はないからだ。
ぼくには何も出来ない。トソンの未来を好転させられない。
ぼくは無力なのだ。恐ろしく無力なのだ。
とてもとても、小さい人間なのだ。
ぼくはハンドルにうずくまり、暫くそこから動けなかった。
三週間が経った。ぼくはトソンに連絡をしなかった。彼女からもメッセージはなかった。
もう相鉄線沿線のマンションを引き払い山手の豪華な邸宅に移り住んでいるはずだ。
そこでトソンはロマネスクという男に抱かれている。誰も何も言う事は出来ない。
それはぼくとて同じ事だ。何も変えられないのだ。
242
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:02:21 ID:mG7urDGc0
円光相手には偽名を語ってたのかと思ってた
243
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:16:35 ID:bLfC7y560
ぼくは忘れようと務めた。長年援助交際をしてきたがイレギュラーな例だったと。
また新しくパートナーを見つけて思う存分制服のにおいを楽しもうと。
今までそうしてきた。女子高生のパートナーを失えば新しい女子高生のパートナーを探した。
しかしそんな気にはなれなかった。掲示板を覗こうとも思えなかった。トソンは頭のなかから消えなかった。
いつまでも鎮座しているどころか輝きを増していった。
通勤で津田沼から総武快速線に乗る。行き先は横須賀線直通の久里浜行きだ。
このまま乗って行ってしまいたくなる。このまま乗っていれば横浜駅に行く。
トソンの通う高校のある大船駅にも行く。トソンはこの列車に乗って通学するかもしれない。
しかしそれまでだ。そこからどうするというのだ。どうしようもないのだ。
もし万が一ぼくとトソンの関係が知られればどのような事態になるのか想像もつかない。
きっとぼくは男の怒りを買いあらゆる方面から攻撃されて社会的に破滅させられるのだろう。
トソンは念のためぼくとのメッセージのやり取りを綺麗に削除しているかもしれない。
そもそも連絡先すら痕跡の残らぬよう消されているかもしれない。
それはトソンのため、ぼくのためだ。責める事は出来ない。
忘れるべきだ。忘れるべき。頭では分かっているのだ。
244
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:18:14 ID:bLfC7y560
ぼくの職業はJRの駅員だ。勤務する職場は総武線沿線にある。そのため仕事柄ぼくは女子高生を目にする機会が多い。
大学生のうちはまだ何か物足りないと思う程度だっが、社会人になり女子高生をよく見る環境になってから確信に変わったのかもしれない。
毎朝女子高生を見るうちに目で追うようになっていたのだ。その華やかさに惹かれるようになっていったのだ。
何人かで仲良く登校する者もいれば一人で携帯電話を見ながら改札口を通っていく者もいる。
春には真新しい制服を着てまだスカートを折る度合いを確かめている初々しい女子高生が好きだ。
夏に涼しそうな薄着になりうっすら透けるプリーツ・スカートを履いた女子高生が好きだ。
秋に中学と比べて成熟し始めた身体のラインが浮き出るカーディガンを着た女子高生が好きだ。
冬になりこんもりとしたマフラーに首を覆いながらもスカートをしっかりと折る女子高生が好きだ。
四季のある国で良かったと思う。表情豊かな女子高生を年中見ていられるのだ。
改札口に立って客が清算切符を持って来ない限りはずっと女子高生を見ていられる。
しかしぼくはその時間すら楽しめなくなっていた。女子高生を見るだけでトソンを思い出すのだ。
勿論東京の東端の方ではトソンの通う神奈川のお嬢様学校の制服は見かけない。
それでも制服を見るとトソンの事を思い出して胸を締め付けられるのだ。
ぼくはトソンから逃げ出したのだ。トソンの抱える問題はぼくの力で解決出来る問題ではなかった。
トソンの置かれた環境はぼくの力でどうにか出来る程度のものではなかった。
245
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:19:40 ID:bLfC7y560
勤務を終えて総武快速線に乗り津田沼駅で降りて徒歩六分のアパートに帰る。
一人の部屋はテレビか音楽を流していないととても静かだ。このアパートに女性を連れ込んだ事はない。
ぼくが好きなのは女子高生で、援助交際を始めてから普通の女性と付き合った事がないのだ。
そして女子高生と会うのは必ずラブ・ホテルだけだ。まず家に連れ込んだりしない。
自分の住まいを知られるというのは後々面倒な事態に発展する恐れもある。
また女子高生が出入りしているのを近隣住民に見られれば不審な目で見られるだろう。
私服で来てもらっても明らかに若い女の子が何度も出入りするのは不自然だ。
援助交際は何より犯罪であるし明るみに出れば逮捕され罰せられる。
とにかくリスクを抑え証拠を残さない事が大事なのだ。
ぼくはこれまでの十年間を徹底してきた。
それなのにこの虚しさは何だろう。
一人の部屋は音もなくあまりにも空虚に感じる。
トソンに対してぼくは何も出来なかった。何もしなかった。逃げ出した。
きっとトソンはぼくに打ち明けるにあたり随分と勇気が必要だっただろう。
ぼくに話している時も考え間を置いて自分の置かれた状況を話したのだ。
それなのにぼくは逃げ出した。自分には何も出来まいと逃げ出した。
いつからかデミタスさんだったら良かったのに、と思い始めている自分がいました。
トソンはそう言った。それはまるでぼくに助けを求めているようにも感じた。
悲しげに、儚げにトソンはそう言ったのだ。それなのにぼくは、何もしなかった。
246
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:21:43 ID:bLfC7y560
ぼくはただの会社員だ。トソンを抱くのは野党第二位の党首を務める大物国会議員だ。
彼の行為はスキャンダルだ。ぼくの行為は罰せられる犯罪だ。
ぼくはこの状況をひっくり返せない。好転させる事は出来ない。
あるとすればトソンを攫ってしまう事ぐらいだ。
そうすれば少しだけこの現状を変えられる。
歯車を狂わせる事ぐらいは出来る。
そう、それが唯一自分に出来る事だ。
勿論それは全て失う。ぼくの全てを失う。
社会的地位も職も友人も全てを失う。
そんな事は頭では分かっているのだ。
逮捕されれば懲戒解雇になるし名前も新聞に出る。
それでもぼくに出来るのはそれぐらいしかないのだ。
トソン。ぼくは呟いて天を仰ぐ。
仕事中も、運転中も、食事中も、トソンの顔が浮かんでは消える。
クリアに鮮明に現れては水面に浮かぶ月のように儚く消えてしまう。
どうしてだろう。あんな話を聞いたから。彼女に恋をしたから。
ぼくが愛するのは女子高生だ。女子高生はいずれ女子高生でなくなる。
だから恋愛感情を抱いたりはしない。無情にも大人の女性へなってしまう。
それなのにぼくはトソンを想う。恋い焦がれるように想う。
トソン。声に出してみるといよいよそれは現実のものとなる。
この三週間、気づかないように蓋をしてきた。
考えないように奥底に封じてきた。
しかし無理なのだ。それは極めて難しい事なのだ。
考えないようにすればするほど考えてしまう。トソン。
苦しくなる。呼吸が上手くいかなくなる。
いつの間にか、自分の中でトソンがこれほどの大きさになっていたのだ。
自分に置けるトソンがこれほどの割合にまで膨れがっていたのだ。
あぁ、きっとぼくは恋をしていたのだ。ミステリアスなトソンに。
未完成な女子高生トソンに。いずれ大人になってしまうトソンに。
ぼくは無意識の内に携帯電話を取っていた。手のひらよりは小さいソニー製XPERIA。
無料通話アプリでいつも最上位にいたトソン。中ほどにまで落ちてきていた。
それを開いて最下部右端の通話呼び出しボタンを押す。
待ち合わせの時にすら使わなかったボタンだ。
一人の静かな部屋にその呼び出し音はとてもよく響いた。
長い長いコールのあと、不意に呼び出し音が途切れる。
『はい』
247
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:23:33 ID:bLfC7y560
紛れも無くトソンの声だった。三週間ぶりの彼女の声だった。
(´・_ゝ・`)「トソン、すまない、電話をしてしまった」
『いえ』
(´・_ゝ・`)「今は大丈夫なのかい」
『部屋にいるので大丈夫です』
(´・_ゝ・`)「ぼくの番号はもう消されてしまったかと思った」
『本当は消そうとしました。 消すべきだと。 もし携帯電話を検められて何者なのかと問われると信憑性のある答えを返す事は難しい』
(´・_ゝ・`)「でも消さないでおいてくれた」
『消さなかったのではありません。 消せなかったのです』
ほう、とトソンが一息つく。
『こうして電話が来てはっきり分かりました。 やはり私はデミタスさんの事が好きなのです』
(´・_ゝ・`)「ぼくもだトソン。 君を忘れようとした。 だけどそれは無理だった。 君が好きなんだ」
言ってしまってから言葉は現実のものとなる。形となる。
本物なのだ。この想いは本物だ。
(´・_ゝ・`)「ぼくは君を助けたい。 結果として助けられなかったとしても、少しでも君を助けたい」
『はい』
248
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:26:17 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「君はどうなんだ」
『助けて下さい。 ここから』
(´・_ゝ・`)「今から行くよ、今すぐ」
電話を切った。ぼくは着替えて車のキーを持って部屋を飛び出した。
もう後先考えるのはやめる。目の前の女の子を救えずして何を格好つけても無駄だ。
たとえこれが救いにならないとしても。助けられなかったとしても。
トソンが望んだのならばぼくは行くべきだ。迷わず行くべきだ。
トソンからメッセージで住所が送られてくる。スバル・レガシィにキーを差し込み起動する。
カー・ナビゲーション・システムに住所を入力する。神奈川県横浜市中区鷺山。
慌ただしく車を発進させ国道三五七線に入り東関東道に入る。
しかし交通情報に湾岸線事故で一部区間通行止めと表示させる。
通行止め区間は浮島から東扇島まで。迂回するほかなく東海ジャンクションで羽田線に転線する。
湾岸線通行止めの影響で羽田線に集中し昭和島ジャンクション合流手前から渋滞が発生していた。
すぐ脇を東京モノレールが走り抜けていく。新型車両の青いデイライトが不気味に闇夜に消えていく。
遠くでは羽田空港の光の数々が見え隠れした。いつもくぐる飛行機のトンネルも羽田線にはない。
羽田を抜け横羽線へ入っても慢性的な渋滞は続いていた。ぼくの焦る気持ちばかりが募っていった。
着実に近づいているはずなのに延々と海側に続く工場が進行具合の遅さを感覚的に助長させる。
工事中の生麦ジャンクションから大黒線を経由して湾岸線に復帰して横浜ベイブリッジを渡る。
長い橋を渡って本牧ふ頭で降り山手を目指す。一軒家ばかりがどこまでも続く。
予想到着時間まで五分を切ったところで信号待ちの最中に間もなく着くと送信する。
スクールゾーンに指定された細い道を登っていくと石造りの立派な玄関が見えた。
邸宅は更に登った先にあるようでその全姿は見えない。しかしそれは必要なかった。
トソンはその玄関よりもう少し先に立っていた。
(´・_ゝ・`)「乗って」
素早くトソンが助手席に乗る。ぼくは確認するとさっと車を発進させた。
249
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:28:24 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「すいません、玄関前には監視カメラがあるので」
(´・_ゝ・`)「なるほど、機転が利く」
(゚、゚トソン「いいえ。 携帯電話の電源もここで切った方がいいですよね」
(´・_ゝ・`)「つくづく機転が利く」
(゚、゚トソン「いえいえ」
(´・_ゝ・`)「久しぶりだ」
(゚、゚トソン「三週間ぶりですね」
(´・_ゝ・`)「あぁ」
レクサスやメルセデス・ベンツの高級セダンばかりが顔を揃える高級住宅地を抜ける。
高台から駆け下りるようにレガシィは来た道を戻る。
(゚、゚トソン「まるでドラマみたいですね」
(´・_ゝ・`)「君もテレビ・ドラマを見るのか」
(゚、゚トソン「当たり前じゃないですか、私だって普通の女子高生です」
(´・_ゝ・`)「それはすまない」
(゚、゚トソン「ドラマチックな恋愛を子供の頃に夢見た時があります」
(´・_ゝ・`)「ぼくは白馬の王子様ではないがね」
(゚、゚トソン「それでも助け出してくれたじゃないですか。 じゅうぶん、白馬の王子様です」
本牧ふ頭から首都高に入り横浜ベイブリッジを渡る。左手に横浜みなとみらいエリアの綺羅びやかなネオンの光が見える。
トソンの新たな住まいだった邸宅のある山手はもう遥か闇の向こうだ。これでもう後戻りは出来ない。
不思議と後悔はなかった。あれほど悩んだというのにいざ実行してしまうと晴れやかな気持ちだった。
隣にトソンが座っている。これだけで幸せを感じられるのだ。
250
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:30:39 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「ひとまずは家に行こう。 なんでもないアパートだけど」
(゚、゚トソン「ありがとうございます」
湾岸線の東行きは通行規制がかかっていなかった。
扇島から東扇島へ移る坂を降りたところで流れが滞る。遠くでパトカーの赤色回転灯が見える。
事故現場が近づいているのだ。事故の様子見たさに速度を落とす車が多いので対向車線もよく混む。
西行き東扇島ランプ付近で大型トラックが横転し三車線全てを器用に塞いでいた。
おおかた携帯電話でも見ているうちに側壁に当たり慌ててハンドルを切ったのだろう。
あれでは現場検証にも撤去にも時間が相当かかるはずだ。
事故現場を通り過ぎるとまた車は順調に流れだした。
(゚、゚トソン「とても長い三週間でした」
(´・_ゝ・`)「長い三週間」
(゚、゚トソン「あそこの家に人は皆優しい。 あの人だって優しかった」
(´・_ゝ・`)「だけど君を抱いた」
(゚、゚トソン「正直なところ、さすがにたまに私を抱く程度だと思っていました。 しかしあの人は旺盛な方だった」
(´・_ゝ・`)「たしか六十手前だっただろう、六十を過ぎても旺盛な男性はいるものだ」
(゚、゚トソン「はい。 まさか毎日だとは思いませんでした」
(´・_ゝ・`)「毎日」
(゚、゚トソン「やはり皆知っていても何も言えないのです。 奥様ですらも」
(´・_ゝ・`)「うん」
(゚、゚トソン「あのでっぷりとした腹で覆い被さられるのです。 あの毛深い胸毛が当たるのです。 あの恐ろしいにおいのする口で舐め回されるのです」
いつもトソンを迎えに行ってから降りた行きつけのラブ・ホテル最寄りのランプを通過する。
駐車スペースのキャパシティを大きく越えた数の車が停まる大井パーキング・エリアを過ぎる。
もうとっくに陽は沈んでいて臨海副都心のビル達はそれぞれ灯りを宿していた。
頭上を新型車両に主役を譲りつつあるゆりかもめの従来車が横切って行く。
251
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:36:59 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「君を助けて正解だった。 迷っていた自分が恥ずかしいぐらいだ」
(゚、゚トソン「いいえ、こうして連れ出してくれただけで私は助けられました」
(´・_ゝ・`)「そうか」
(゚、゚トソン「本当は家出でもしてやろうかと思っていました。 しかし私には何のあてもない。 女子高生があてもなくふらふらしていればすぐに警察に保護され連れ戻されてしまう」
(´・_ゝ・`)「あぁ、そうだろうね」
東雲のタワービル群、舞浜のディズニー・リゾート、湾岸線の景色は移ろい行く。
横浜から始まった湾岸線は東京を横切り千葉へと入る。浦安では防音壁も高く景色は楽しめない。
東京外環道と繋がる予定地では湾岸線を取り巻くように接続路が取り付けられようとしている。
ETCの確認音が鳴ると首都高から東関東道に入ったサインだ。
(゚、゚トソン「嬉しかったです。 デミタスさんから電話が来て。 夢じゃないかと」
(´・_ゝ・`)「そうするべきだと思ったんだ」
ららぽーとTOKYO-BAYの立体駐車場はまるで要塞だ。無数の光が鉄骨の城のあちこちに点在している。
高い防音壁に寄り添って走ると谷津船橋インターチェンジが現れる。料金所を低速で通過すると料金が表示される。
すぐ訪れる二択の分岐を直進して国道に出る。もう住んでいるアパートはすぐだ。
(´・_ゝ・`)「本当に普通のアパートだよ。 きっと狭く感じる」
(゚、゚トソン「気にしないで下さい」
それに、とトソンが続ける。
(゚、゚トソン「デミタスさんの暮らしている場所を見てみたいとも思っていました」
アパート横の駐車場に車を停める。ETCカードを抜き取り車から降りた。
トソンも助手席から降りる。トソンは制服ではなく私服だ。
家を出てくる直前に着替えてきたのだという。
ぼくは用心しながらアパートに入った。同じアパートの住民に見られるのは避けたい。
制服ではないしトソンは大人びた容姿をしているのですぐには女子高生とは分からないだろう。
しかしやはり何かしらのリスクは減らせば減らしておくだけ良いはずだ。
(´・_ゝ・`)「入って」
252
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:39:22 ID:bLfC7y560
鍵をかけて部屋に入る。幸いにも誰にも会わなかった。
トソンは靴を脱いできょろきょろと部屋の中を眺めている。普通のワンケーの部屋であり特徴のようなものもない。
ましてこれまで相鉄線沿線のマンション暮らし、最近では横浜山手の邸宅で暮らしていたトソンにとっては狭く感じるだろう。
更に帰宅して衝動的に飛び出してきたのでスーツは脱ぎ捨てられたままだ。部屋も完璧に片付いている訳ではない。
(´・_ゝ・`)「君の制服でない姿は初めてだ」
(゚、゚トソン「デミタスさんこそスーツでない姿は初めて見ます」
お互い笑い合う。笑い合って、トソンが先に言葉を失った。
(´・_ゝ・`)「どうしたんだ」
(゚、゚トソン「…寂しかった」
(´・_ゝ・`)「寂しかった」
(゚、゚トソン「会いたかった」
(´・_ゝ・`)「会いたかった」
(゚、゚トソン「だけど自分からは言い出せませんでした。 未練がましく連絡先も消せなかったのに、巻き込みたくないと思っていました」
(´・_ゝ・`)「あぁ」
(-、-トソン「だから本当に、嬉しかったんです」
トソンの肩が震える。ぼくはその華奢な肩をそっと抱いた。
静かに泣くトソンの頭を撫でる。早く、早くこうするべきだった。
しかしもう後悔しても遅い。これから後悔しないようにしなければならない。
トソンを強く抱きしめるのはその決意のあらわれのようでもあった。
253
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:42:06 ID:bLfC7y560
それからトソンとセックスをした。制服を身につけないとても普通のセックス。
互いに身に着けていたものを全て脱いで裸でセックスをした。
まさぐりあい埋め合うように二人で何度も交わった。
今日は控えるべきなのでは、と思ったがトソンは求め続けた。
貪欲に欲しがりぼくはそれに応えようと善処した。
そうする事で書き換えなんてものは出来やしない。
出来るとすれば上書きだ。それでも構わないと思った。
交わって、果てて、交わって、果てて、ぼくとトソンは沈み込むように眠った。
目を覚ますともう夜明けが近い事が分かった。カーテンを引くとうっすら明るくなっている。
新しい朝。新しい旅立ち。ぼくとトソンは今日から生まれ変わるのだ。全てを捨てて。
(´・_ゝ・`)「遠くへ行こう」
二人分のコーヒーを入れる。トソンには好みを訊いてたっぷりのミルクを注ぐ。
(´・_ゝ・`)「君が昨夜急に家を飛び出して、家の人は行方不明届けを出しているだろうか」
(゚、゚トソン「恐らくは」
(´・_ゝ・`)「君とぼくの繋がりは残していない。 君のぼくのコンタクトは全て携帯電話で行われた。
その携帯電話は君が持っている。 電源は家を出てすぐのところで切られている」
(゚、゚トソン「はい」
(´・_ゝ・`)「家出か拉致か迷うところだ。 更に君は自分の意志で家の門を出ている」
(゚、゚トソン「監視カメラに映っています。 デミタスさんの車は映っていないはず」
(´・_ゝ・`)「そして家の方も家主が君を抱いていたというやましい点がある。 それが苦痛で家出をしたと考えているかもしれない」
(゚、゚トソン「それが一番考えられると思います」
熱いコーヒーを飲む。トソンは猫舌のようで慎重に冷ましてから少し口をつける。
(´・_ゝ・`)「どこか遠くに行こう」
(゚、゚トソン「どこか遠く」
(´・_ゝ・`)「ぼく達の事を誰も知らないどこか遠くへ」
254
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:43:57 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「いいと思います」
(´・_ゝ・`)「せっかくだし、どこか行ってみたいところはあるかい」
(゚、゚トソン「父は多忙でしたが旅行好きで、色々なところに連れて行ってもらいました。 国内だと沖縄、北海道、神戸、京都、松山、青森、名古屋…」
(´・_ゝ・`)「殆ど行っているみたいだね」
(゚、゚トソン「あぁ、でも九州には行った事がありません。 縁がありませんでした」
(´・_ゝ・`)「九州か。 いいな、とても遠い」
(゚、゚トソン「遠いですよね」
(´・_ゝ・`)「いいんだ、遠い。 ぼく達の事を誰も知らない」
もう振り向く事もない。留まる事も必要ない。
(´・_ゝ・`)「行こう、九州」
(゚、゚トソン「今からですか」
(´・_ゝ・`)「早い方がいいさ。 君の日用品はきちんと買い揃えよう」
(゚、゚トソン「でも」
(´・_ゝ・`)「いいんだ。 君を放したくない。 一緒に行こう」
(゚、゚トソン「はい」
255
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:45:44 ID:bLfC7y560
職場に今日は体調不良で休むと連絡をする。明日朝までの勤務で明後日以降は怪しまれるだろう。
キャリー・バッグに荷物をまとめてスバル・レガシィに積み込む。トソンの日用品はどこかのドラッグ・ストアで買おう。
まだ夜は明けたばかりで住人が出てくる気配はない。素早くトソンを車に乗せてアパートを発った。
谷津船橋インターチェンジから東関東道に入り湾岸線に出る。有明ジャンクションからレインボー・ブリッジを渡る。
レインボー・ブリッジから日の出が見える。東京の摩天楼はようやく眠りから覚めようとしている。
その眠りから街が覚めない内にぼく達は慣れ親しんだ東京を出て行ってしまう。アクセルを踏み込み、街を置き去りにする。
渋滞名所の浜崎橋ジャンクションも全く混雑がない。交通量は極めて少なく快適に都心を横断する事が出来る。
回送表示のタクシーやトラックがいつもよりスピードを上げて走っていく。渋谷の開けた谷間を通り過ぎる。
マークシティから出庫してきた銀座線の奇抜な色の車両がビルの中に設けられた駅へゆっくり入っていった。
用賀を過ぎてそのまま東名高速道路へ入った。東京インターチェンジからの合流で三車線の道路が始まる。
御殿場から新東名高速道路に入る。駿河湾沼津サービス・エリアでいったん休憩して更に西へ進む。
足柄付近で急カーブの連続だった東名高速と比べて新東名はそれほどのカーブも勾配もなく走りやすい。
三車線区間と二車線区間が交互にやって来るが全線で三車線に出来るスペースは確保されている。
浜松サービス・エリアを出て二月に開通したばかりの区間を通りそのまま伊勢湾岸自動車道に入る。
三つの橋が連なる名港トリトンで名古屋港を一気に駆け抜ける。
東名阪自動車道で流れが悪くなり新名神高速道路でまた一気に流れる。
土山サービス・エリアで刈谷パーキング・エリア以来の休憩を取った。
東京を出て六時間が過ぎていた。そこで昼食にする。
もう関西地方なのだ。西日本までやって来た。
夜が明けるまで東京にいたとは思えないところまで来た。
(゚、゚トソン「随分と遠くまで来ましたね」
(´・_ゝ・`)「あぁ」
256
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:48:39 ID:bLfC7y560
上下線集約型の土山サービス・エリアのフード・コートで食事を取る。
凝り固まった身体の筋肉をほぐす。長時間の運転で全身が痛い。
普段これほどに長時間運転する事はなく慣れていないせいでもある。
毎日のように長距離を行き来するトラックドライバー達は大したものだ。
サービス・エリアで休憩するたび身体を伸ばしていたがそれでも疲労は溜まっている。
(゚、゚トソン「お疲れのようです」
(´・_ゝ・`)「もう若くないのだと痛感したよ」
三十代に入ってから一気に体力の衰えを感じていた。
間もなく四十代だ。こればかりは考えると気が滅入りそうになる。
(゚、゚トソン「今日はもうやめておきますか」
(´・_ゝ・`)「うん、そうだね、この辺りで泊まろう」
携帯電話で駐車場付きのビジネス・ホテルを探す。
この辺りとは言ってもまだ滋賀県に入ったばかりの山間部なのでその先の大津や草津で探す事にする。
ラブ・ホテルならば駐車場が自動的に用意されている。しかし宿泊ならばやはり普通のビジネス・ホテルの方が好ましい気がした。
結局、大津市内のビジネス・ホテルが良さそうだったのでそこに決める。名神高速道路のインターチェンジからもほど近い。
昼食を終えて車に戻る。柔らかいクッションの購入を真剣に検討する必要がありそうだ。
部分開通の新名神高速道路は草津で終わり、名神高速道路に合流する。
サービス・エリアと併設の大津インターチェンジで遂に高速道路を降りる。
一般道に出て下り坂を進むとすぐに市街地に出る。大津市の市街地は山と湖に挟まれているようだ。
道なりに進んでいくと琵琶湖が見えてくる。先にドラッグ・ストアに立ち寄りトソンの日用品を買い揃える。
予約をしておいた東横インは駅からも近く国道沿いにあった。国道の中央には線路が伸びている。
路面電車でも来るのかと信号待ちの間に待っていると駅から四両編成の普通の列車が走っていく。
道路の上を普通の列車が走るのも衝撃だが急カーブをなんとか曲がっていくのも驚きだ。
東横インにはタワー駐車場がありそこに車を停めてチェック・インを済ませる。
257
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:51:34 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「お疲れ様でした」
(´・_ゝ・`)「いやぁ、疲れた」
ベッドに座って深く息をついた。テレビの電源を入れてみると放送局が関東とは違うので戸惑う。
チャンネル一番はやはりNHKだがそれ以外の大手民放は順番が違い混乱する。
(゚、゚トソン「難しいですね」
(´・_ゝ・`)「難しいな」
せっかくなので琵琶湖を見に行く。
中央に線路が敷かれている国道を歩いていくと湖の畔に設けられた駅に出る。
そこで線路は交差点を横切る形で大きく曲がっているため電線が多く張り巡らされている。
歩道橋に上がると駅に繋がっていた。時刻表や運賃表を見ると先ほどの四両編成は京都まで行くようだ。
琵琶湖の近くで道路の上を路面電車のように走り、県境では山間の急勾配を走り、京都市内では地下鉄として走るらしい。
随分とマルチな活躍をするのだと思った。琵琶湖を映したような水色の四両編成は鐘のような警笛を鳴らしながら交差点に入っていく。
歩道橋は駅を出てもペデストリアンデッキとなって続き、そこから広大な琵琶湖を見渡す事が出来た。
吹き付ける風は強すぎずむしろ気持ちいいぐらいだった。
(´・_ゝ・`)「琵琶湖を初めて見たよ」
(゚、゚トソン「琵琶湖の下の方は結構絞られて狭くなっています。 彦根とか長浜の方が大きく見えますよ」
(´・_ゝ・`)「そうなのか。 ここだけでも海みたいに見えるけどね」
駅近くの洋食屋で夕食にする。瑞々しくカラフルなテリーヌが目を引いた。
昨晩にトソンを攫ってからもう丸一日が経とうとしている。
今朝まで東京で今では大津だ。遠いところまで来た。
しかし目指すべき九州はもっともっと先だ。
258
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:54:27 ID:bLfC7y560
ぼくは会社に体調不良を言って休んだがこの言い訳は長くは持たない。
トソンの方も家出か事件か判断をしかねているだろう。
どちらも時間が経過すると共にこれはおかしいと気づかれるはずだ。
しかしぼくとトソンの関係性については何も残っていないはずだ。
関東から同じ日に二人が失踪しただけだ。
その間にぼくとトソンは遠い異郷の地に行ってしまうのだ。
(´・_ゝ・`)「せっかくだから、明日は四国でも寄って行こうかな」
(゚、゚トソン「四国ですか」
(´・_ゝ・`)「行った事がないんだ。 あの大きな橋もテレビでしか見た事がない」
(゚、゚トソン「高松へ行った時は列車で、松山へ行った時は飛行機でした。 車で行くのは初めてです」
(´・_ゝ・`)「せっかくだしな」
駅から東横インへ歩いていく。国道に敷かれた線路を四両編成の列車がゆっくりと走っていく。
車用に設置された信号機が赤に変わり並走する車と共に横断歩道の前で停車する。
青信号に変わると鐘の音のような警笛を鳴らしながら列車は発車していく。
もう少し行った先で列車は身をよじらせて国道から離れていった。
部屋に戻ってシャワーを浴びた。それからトソンとセックスをした。
シャワーからトソンは何も身につけずに出てきた。ぼくも裸でそれを待っていた。
ぼくは制服が好きだ。女子高生が好きだ。それは今でも変わっていない。
何年も積み重ねてきた性癖は簡単に消えたりはしない。
それでもトソンとは制服を介さずともセックスしたいと思った。
気がつけば一人の女性として愛していた。
(゚、゚トソン「父との行為は日常的なものであったし私もその時間は好きでした」
(´・_ゝ・`)「お父さんと一つになれる」
259
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 22:58:18 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「一つになる前の時間も、一つになっている瞬間も、終わった後の時間も好きでした」
胸元までシーツを持ってきてトソンはぼくの胸に顔を寄せた。
(゚、゚トソン「脳卒中で倒れてからあっという間でした、。 その予兆もありませんでした。 何の前触れもなく。 文字通り私は急に父を失ってしまいました。
気持ちの整理がつかないうちにあの人に話を持ちかけられました。 そこには直接的な表現でないものの私が身体を差し出す必要があると示唆しました」
それが前に語った通り、トソンが当てつけとして援助交際に名乗りを上げた理由だ。
(゚、゚トソン「そしてデミタスさんと会いました。 初めて父以外と。 その時点で愛していた訳でもない人と」
(´・_ゝ・`)「ぼくは驚いたんだ。 こんな性的なものとは無縁そうなお嬢様学校の生徒がこれほど上手にするものかと」
(゚、゚トソン「父は本当に色々な事を私に教えました。 見方によれば妻を亡くした男が娘を都合の良いように教育しただけに過ぎないのかもしれません。
それでも私は父が好きでしたし求められればその分応えたかったのです。 二人だけの家庭においてそれは日常の一部でした」
トソンに様々なものを与え、トソンにとっての全てであり、急に去ってしまった父親。ぼくは彼を想像する。
父親である以上に彼は娘を愛した。トソンの家族としての愛情も恋としての愛情も彼のものだった。
彼はトソンにとっての全てであったしトソンの全てを持っていた。
(゚、゚トソン「普通は出会ったお互いを知って恋をして一つになる。 だけど私達は逆から始めてしまいましたね」
(´・_ゝ・`)「そうだな。 だからぼくは君を抱いても君の中まで見られないような気がしていた。 実際そうなんだ。
いくらセックスをしても本当に相手の全てが分かる訳ではない。 考えている事が手に取るように分かる事もない」
(゚、゚トソン「正直なところ私は本当に好きになってしまうとは思っていませんでした。 まだ父がこの世を去ってからじゅうぶんな時間が経った訳でもない」
(´・_ゝ・`)「君は父親とずっと繋がっていたから、急にそれが断ち切られてしまったんだ。 そしてぼくと繋がるようになった。 誰かと繋がっていていたかった」
260
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:02:07 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「そうなのかもしれません」
トソンが顔を寄せる。確かめるように少し唇を合わせ、今度は時間をかけて唇を重ねる。
(゚、゚トソン「だけどあの時、デミタスさんに打ち明けた時は、当てつけとして利用した罪悪感もありましたし、純粋に話したかったんです。
そしてデミタスさんなら良かったのにと、本当に思いました」
(´・_ゝ・`)「ぼくは怯えてしまった。 早く決心すれば君が傷つく事はなかった」
(゚、゚トソン「いいんです。 今こうして二人でいられるのなら」
翌朝チェック・アウトを済ませて東横インを出た。タワー駐車場からスバル・レガシィを出庫させ西を目指す。
大津インターチェンジから再び名神高速道路に乗る。吹田サービス・エリアで休憩をしてから終点の西宮インターチェンジに到達する。
そこから阪神高速道路神戸線に乗り継ぎが出来る。神戸市街地を眺めながら二車線の道路が続く。
市街地を横断する神戸線は防音壁が高く、更に海寄りにもう一つ道路がありそちらの方は眺めが良さそうだった。
やがて山間部に入り関西の象徴ホームセンター・コーナンを横目に分岐すると美しい形の垂水ジャンクションに入る。
ジャンクションの先は長いトンネルで変化のない景色は眠気を誘った。遠い先にようやく光が見えてくる。
長いトンネルを抜けるともう明石海峡大橋が目前に迫っていた。トンネルを出るとすぐに橋を渡り始めるのだ。
世界最長の単独吊り橋で長さはおよそ四キロメートルにも及ぶ。そこから眺める明石海峡は格別だ。
橋を支える二つの主塔は高さ三百メートルほどあり、これは横浜ランドマークタワーと同じほどだ。
渡り終えてすぐの場所に設置された淡路サービス・エリアで停まり橋を眺める。
再び走りだし淡路島を抜けて大鳴門橋を渡るとようやく四国に入る。
徳島へ向かう真新しい道路との分岐を過ぎると片側一車線の対面通行となる。
実質高速道路に組み込まれている有料道路区間にある津田の松原サービス・エリアで昼食にする。
坂出ジャンクションから瀬戸大橋に入り四国を出る。瀬戸大橋は瀬戸内海に架かる幾つもの橋の総称だ。
瀬戸内海に浮かぶ途中の与島にはパーキング・エリアが設置されていて立ち寄る事が出来る。
その日は広島で泊まる。テレビでニュース番組を見ていたが世間は平和だ。
それに地方はローカル局の番組が多くなかなか全国区の番組をやっていない。
翌朝広島を発ち、昼前に壇ノ浦パーキング・エリアに着いた。本州最後の休憩施設だ。
車を停めるとすぐ眼前に関門橋がどかんと構えている。これを越えれば九州だ。
展望スペースへ降りて暫く関門海峡を眺めた。大きな船舶が行き来していく。
これまでに通ってきた明石海峡や瀬戸内海と比べると対岸までの距離は近い。
向こう側の九州の様子がよく分かる。
261
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:04:41 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「壇ノ浦の戦いで有名なところだね」
(゚、゚トソン「はい」
(´・_ゝ・`)「もう少しで九州だね」
(゚、゚トソン「ここまで来ましたね」
(´・_ゝ・`)「九州で行ってみたい場所はあるかい?」
(゚、゚トソン「熊本城ですかね…あとは長崎鼻に」
(´・_ゝ・`)「長崎鼻?」
(゚、゚トソン「鹿児島県の南端にある九州最南端です」
(´・_ゝ・`)「いいね、文字通り地の果てという訳だ」
壇ノ浦パーキング・エリアを出て出発する。
関門橋を越える。遂に九州に入る。陸路で行ける果てだ。
山口で山陽自動車道から乗り継いだ中国自動車道は九州自動車道に名前を変える。
九州自動車道は大合併で広大な土地を持つ北九州の市街地を迂回するように通り過ぎる。
福岡インターチェンジで九州自動車道を降りて福岡都市高速道路へ乗り継いだ。
西鉄天神駅近くの駐車場に車を停めて福岡の市街地を散策した。
九州とはいえ市街地は本州とさほど変わらない。どこまでもビルが続く。
道路脇には色とりどりのタクシーが並び路線バスが長い列を作っている。
他の大都市と比べて福岡の空港は市街地のすぐ隣にあって飛行機が近くに見える。
食事をして駅近くの西鉄インで一泊する。カーテンを開くと西鉄の線路がすぐ下を走っていた。
翌日に再び福岡都市高速道路に乗り南下する。市街地に隣接する福岡空港のすぐ隣を通る。
フェンスのない場所から国際線ターミナルが見えた。そのまま終点まで進み国道三号線に出る。
西鉄太宰府線を越えて左折して大型駐車場に停めた。石畳の参道を歩いて奥へ進む。
(゚、゚トソン「太宰府天満宮は一度行ってみたかったんです」
(´・_ゝ・`)「ぼくもいつか九州に行く機会があれば行ってみたいと思っていたんだ」
262
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:08:26 ID:bLfC7y560
平日という事もあり境内はそれほど混んでいなかった。三が日などには初詣客でごった返すのだという。
五月の大型連休も終わりここからは休日の一つもない退屈な日々だ。更に梅雨も控えている。
本殿に着いてトソンに硬貨を渡して一緒に放る。手を合わせて静かな時間が訪れる。
祀られているのは菅原道真で、学問の神として全国的に有名だ。
トソンは一体何を祈ったのだろうか。大学進学についてだろうか。
今こうしてぼくと生活を共にしている間、トソンは学校を休んでいる。
トソンは家を出た直後からずっと携帯電話の電源を切ったままだ。
勿論無断欠席という訳ではなく家の者が何か理由をつけて学校に連絡をしているだろう。
こうしてぼくといわば駆け落ちのような状態が続いている以上は学校という日常にも戻らない。
それでもトソンはその日常に戻った先での大学進学という至極まっとうな目標を祈っているのだろうか。
別にぼくとの関係の継続をトソンにも祈って欲しいだとか、そういう押し付けがましい高校生じみた希望がある訳ではない。
ただ純粋に気になるのだ。そもそもこの逃避行はおそらくは永続する事のないものだ。それはぼくもトソンも心のどこかでは冷静に理解している。
ぼくはトソンを助けたかった。トソンはあの男から逃げたかった。ぼくはトソンを愛していた。トソンもぼくを愛していた。
二人で誰も知らない場所へ行きたかった。しかしそれは永遠に続く事はないだろう。トソンの家の者は捜索願を出しているだろう。
ぼくの行為は拉致だ。略取・誘拐罪として検挙されるだろう。いつかぼくとトソンの繋がりがどこかから調べ上げられてたどり着かれるかもしれない。
職場には体調不良だと言い続けているがそろそろ限界だろう。昨日から着信が多くなり電源を切ってしまった。
緊急連絡先として住所を職場に提出しているのでそのうち上司がやって来るはずだ。そこにはぼくも車もない。
上司はようやく異変に気づく。ぼくも捜索願を出されるかもしれない。そう考え始めるとぼくとトソンの時間は極めて有限である気がする。
少しでも長くトソンといられるように。ぼくは願う。きっといつかトソンはあの邸宅に連れ戻される。あの男の元へ戻される。
トソンの望まない環境に戻される。どういう形になるかは分からないけれど。せめて少しでも長くこうしていたい。
263
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:10:21 ID:bLfC7y560
幼稚な考えだと分かっていた。トソンを助けたいという気持ちだけでここまで来た。誰もがぼく達の知らない場所へ。
しかし将来的な展望などはそこにない。行き当たりばったりの逃避行だ。果てまでたどり着いてその先にどうするのか。
どうやって生活していくのか。いずれ貯金は尽きる。会社から解雇通知が来る。頭でそんな当然の未来は理解しているのだ。
それでももう後戻りは出来ないとトソンを邸宅から連れ出して横浜ベイブリッジを渡った時に覚悟したのだ。
(´・_ゝ・`)「行こうか」
(゚、゚トソン「はい」
ぼくは結局トソンが何をお願いしたのか訊かなかったしトソンもぼくに訊かなかった。
九州自動車道に戻って南下を続ける。熊本インターチェンジで降りて市街地へ向かう。
駐車場に車を停めてトソンが見てみたいと言っていた熊本城に行く。
それから繁華街を歩いてみた。熊本もJRの駅と中心地は離れているようだった。
新幹線もある熊本駅からは路面電車が繁華街の方へ続いている。
古い単行の列車もあれば黒塗りの豪華絢爛といった列車も走っている。
散策をしているともう遅い時間となったので熊本で泊まる事にする。
繁華街にある三井ガーデンホテルに予約をして駐車場に車を入れた。
もう熊本なのだ。もう一つ南下すると鹿児島に入る。果ての地、長崎鼻まで間もなくだ。
そこでいったんぼく達の旅は終わる。果てに着いてしまえばその先はない。
それからの事も考えていなかった。トソンを助け出し、一緒に逃げ、果てに着く。
そうしてどうするのか。明確なビジョンなんて持っていなかった。
しかし必ずその先というのは存在するのだ。どういう形であれ存在する。待ち構えている。
ホテルでぼくはトソンとセックスをする。一日の運転の疲れを癒やすようにトソンは労る。
こんな日々がずっと続いていけばいいと思っていた。果てに着いてしまうのならばまた一周すればいいと思った。
二人で日本一周でもしようかとすら思った。しかしそれは違うのだ。時間の引き伸ばしにしかならないのだ。
ぼくはトソンを助けたかった。助け出した。しかしそれは一時的なものに過ぎない。本質的なものは解決されない。
現実からトソンを隠匿しているだけだ。いずれ終焉が来るものだ。分かっているのだ。
264
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:12:50 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「ねぇトソン」
(゚、゚トソン「はい」
(´・_ゝ・`)「明日にはきっと長崎鼻に着くよ。 九州最南端に」
(゚、゚トソン「なんだか旅の終わりみたいですね」
(´・_ゝ・`)「あぁ、本当だ」
ぼくの腕に絡まるトソンの頭を撫でる。この時が永久に続けば。しかし永遠なんて存在しない。
そのうちトソンは眠ってしまったようだった。小さく寝息をたて始めた。
ぼくはトソンを助けたかったし、守りたいのだ。しかしこの状況は最善ではない。
ようやく決心をする。トソンのより良い未来のために。輝かしい未来のために。
せめて今日ばかりはこうしてトソンとのゆったりとした時間を楽しみたいと思った。
翌日、熊本から九州自動車道に乗る。南下して県境を越え霧島山を横目に最後の鹿児島県に入る。
海に突き当たり鹿児島湾に寄り添うように九州自動車道はやんわりとカーブする。
鹿児島インターチェンジで九州自動車道の終点を迎える。
吹田から続く中国自動車道から関門橋より託された道路もここで終わりだ。
道路はそのまま指宿スカイラインとしてもう少し続く。
途中からそれまでの高速道路とは異なり一般的な有料道路らしい形態になる。
ETCにすら対応していない終点の料金所を越えるといよいよ道路も終わる。
夜明け前の谷津船橋インターチェンジから。東名高速道路の起点東京インターチェンジから。
随分と走ってきたものだ。長い旅だった気がする。何度も給油が必要であったし時間もかかった。
後は地の果てまで一般道路を走るだけだ。途中の大きな湖が見られる駐車場で停まった。
トイレに行くと言ってトソンを車に残してぼくは携帯電話の電源を数日ぶりに入れる。
そしてどの着信履歴とも違う番号に連絡をする。そして車に戻って最後の地を目指した。
長崎鼻入口という分かりやすい交差点で曲がる。もう夕方となっていた。
奥には綺麗な形をした開聞岳が見える。半島の先端に近づくにつれ左右が狭くなる。
やがて道路は一本だけになった。そして道路が終わり脇にあった駐車場に車を停めた。
まさしく終着地だ。地の果て。旅のゴール地点。遂にここまで来てしまった。
車を降りて歩いてその先を目指した。先には白い灯台が建っていた。
更にその先にごつごつとした岩が海に張り出していた。その先へ岩に注意しながら歩く。
そして遂に赤い岩の先端にたどり着いた。もうこの先には何もない。
夕陽に照らされて海が輝いている。奥で形の綺麗な開聞岳が佇んでいる。
地の果て。これ以上はもうどこにも行けない。ゴール。行き止まり。
265
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:14:35 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「ここまで来ましたね」
(´・_ゝ・`)「ここまで来たな」
(゚、゚トソン「なんだか感慨深いです」
(´・_ゝ・`)「あぁ。 トソン、ぼくは君に会えて良かったよ。 出会えて良かった。
ずっと女子高生と援助交際をしているような男がようやく一人の女性を愛したいと思った」
(゚、゚トソン「私もデミタスさんに出会えて良かったです。 自暴自棄になって掲示板に書き込んで、ここまで来るとは思いませんでした」
(´・_ゝ・`)「ある意味では運命的だ。 ぼくは新たな援助交際のパートナーを探していて、君は自棄になり当てつけで掲示板に書き込んだ」
(゚、゚トソン「それでもデミタスさんが一番誠実そうな方だと思ったからです。 援助交際で誠実そうかどうかで判断するなんて変な話ですが」
(´・_ゝ・`)「本当に考えれば考えるほどよく出会えたものだ。 まぁ男女の出会いなんてどれも運命的でロマンチックなものなんだろうけど」
(゚、゚トソン「たとえ援助交際だとしても」
(´・_ゝ・`)「全くだよ。 もしも違う出会い方をしていれば、とぼくは今でも思う」
(゚、゚トソン「違う出会い方」
トソンが繰り返す。
(´・_ゝ・`)「あぁ、違う出会い方。 たとえばぼくは普通の青年で君は女子高生でなく普通の大人の女性だったならば」
(゚、゚トソン「だったならば?」
(´・_ゝ・`)「きっと普通の男女の関係になれたのかもしれない」
266
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:16:45 ID:bLfC7y560
あくまで仮定の話だ。違う出会い方をしていれば、抱えている問題も環境も違ったかもしれない。
このような結末をたどる事もなかったのかもしれない。
けれどぼくが好きなのは女子高生で、その仮定はやはり仮定の域を出ない。
(´・_ゝ・`)「でも実際は女子高生しか愛せなかった男と未成年の女の子だ」
だから。そこで区切る。きっとお互い分かっていた事だ。
(´・_ゝ・`)「この関係は永続するものではない」
トソンは何も言わずに海を見ていた。この海の先にあるのは屋久島に種子島、奄美大島に沖縄の南西諸島だ。
道路はここで終わりこの先に行けなくとも土地も生活もまだ続いている。二人で行く機会があればきっと楽しいだろう。
(´・_ゝ・`)「間もなくこの逃避行という非日常は終わる。 君はこれから日常に帰る。
また普通に高校に通い、大学へ進学して、希望の進路へと進む」
(゚、゚トソン「私は、デミタスさんと一緒に」
(´・_ゝ・`)「いいや、君には未来がある。 今の生活を続けていくのはその未来を閉ざす事になる。 君の将来を思うこそなんだ」
(゚、゚トソン「どうして」
(´・_ゝ・`)「分かるんだ、ぼくみたいに十年近く援助交際を続けて何人もの女子高生と接していると分かる。 君のような年齢の判断能力はとても低い。
君は同じ年齢の子と比べるとしっかりしているし大人びているけれど、それでも長期的なビジョンを見据えた時の判断能力は低いんだ。
それを食い物にしてきたぼくが言うのもおこがましい事なんだが、ぼく達大人がそれを正して補助しなくてはならない」
(゚、゚トソン「そんな…」
(´・_ゝ・`)「今日までの日々が間違いだったとは言わない。 ぼくは後悔していないし、楽しかった。
だけど君は元の日常に戻らないといけない」
(゚、゚トソン「でも今になって」
267
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:18:34 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「大丈夫だ、ぼくは誘拐犯で君は連れ回された。 そういう構図になる。 君は被害者だ」
(゚、゚トソン「デミタスさんを犠牲にするも同然ではありませんか」
(´・_ゝ・`)「実際に罰せられるのはぼくだよ。 援助交際に未成年の誘拐と連れ回し。 紛れも無く犯罪だ」
トソンは守られる。奇異の目で見られるかもしれないが、守られるのだ。
(´・_ゝ・`)「ぼくは君があの邸宅で受けていた仕打ちを話す。 この誘拐がその仕打ちから救い出すべく行われたものだと話すよ。
そして君も正直に全て話すんだ」
(゚、゚トソン「私も、話す」
(´・_ゝ・`)「そうだ。 君をあの邸宅から攫った事で風穴ぐらいは開けられただろう。 そして、そうして警察に話す事でこの逃避行は完遂するんだ」
それでも揉み消されるかもしれない。抹殺されてしまうのかもしれない。
もっと確固たる証拠を掴んで突きつけてやるとか、そういう根本的な解決が出来たら良かった。
しかしセキュリティが強固で閉鎖的な邸宅でそれは叶わない。
(゚、゚トソン「デミタスさん、私は離れたくないんです」
(´・_ゝ・`)「そう言ってくれるのは本当に嬉しい」
ぼくは本当に嬉しい。十年近く援助交際を続けてきて、ここまで心を通わせた子はいなかった。
そもそもいずれ大人になってしまう女子高生には恋愛感情を抱かないようにしてきたせいでもある。
だから今になってこれほどに誰かの事を思う時が来るとは思わなかった。我ながら驚くばかりだ。
トソンの未来のためならばぼくは進んで犠牲になる。それは傲慢ながらこれまでの贖罪にも繋がるだろう。
十年あまり援助交際を続けて己の欲求を満たしながらもどこかでいつかは手を打たなければならないと思っていた。
まさに今がその時なのだと思う。これまでの自分の行いが清浄化される訳ではない。それでも構わない。
トソンが救えるのなら。トソンの未来を少しでも良いものに変えられるのなら。
何せトソンはまだ十代の女子高生だ。未来はどの方向にも繋がっている。
268
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:22:27 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「ありがとう、トソン。 どうか幸せに」
(゚、゚トソン「どうして、今生の別れみたいではないですか」
(´・_ゝ・`)「それに等しいものさ」
ぼくは振り返って両手を挙げる。
(´・_ゝ・`)「投降します」
長崎鼻の灯台の前に何人もの警察官が構えていた。大きな湖が見られる駐車場でぼくが携帯電話で通報した警察だ。
背後に忍び寄る存在に気がついていなかったトソンは驚いて周囲を見渡した。
最南端の地の果て、海に囲まれた岩場の先端。完全に警察官に包囲されている。
(´・_ゝ・`)「これでぼくは誘拐犯、君は攫われた被害者だ」
(゚、゚トソン「そんな、デミタスさん、これでは」
(´・_ゝ・`)「いいんだ」
トソンが女性警察官に保護される。ぼくには男性警察官がやって来て、手を取る。
/ ゚、。 /「先程電話で通報したデミタスさんでよろしいですか?」
(´・_ゝ・`)「はい。 ぼくがデミタスです。 彼女はトソン。 ぼくが誘拐しました」
/ ゚、。 /「分かりました。 ではデミタス容疑者、略取・誘拐罪で十七時四分、現行犯逮捕します」
手錠がかけられる。テレビ・ドラマなどでよく見る銀色のものでなく黒い手錠だった。
トソンの方を見る。女性警察官に保護されたトソンは泣きそうな顔をしていた。
そんな弱々しい表情を初めて見た。胸を締め付けられる。きっとこれが最後に見る彼女の顔だ。
269
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:26:16 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「さようなら、トソン」
警察官に手を引かれながらぼくは言う。
(´・_ゝ・`)「君は幸せになるんだ」
それが最後だった。泣き出したトソンはもう何も言葉に出来なかった。
ぼくは取り調べで全てを話した。トソンの家庭状況も、この十年あまり援助交際を続けていた事も洗いざらい話した。
新聞の社会面で報道され会社も懲戒解雇となった。担当弁護士から聞かされた話ではトソンはぼくが悪くないのだと庇っているそうだった。
ぼくとしてはいっそ悪者にしてもらって構わなかった。それでトソンが元の生活に復帰出来るのならばそれで構わない。
逃避行の間は家の者が仮病で通しただろうし、公開捜査に踏み切られていないうえ未成年なのでメディア媒体に名前も出ていない。
気がかりなのはあのロマネスクという男との関係性がどうなったかであった。トソンの望む方へ進んでいればと願うばかりだった。
ぼくには実刑判決が下った。求刑は懲役四年で言い渡された判決は懲役三年だ。ぼくは控訴せず受け入れ一審判決が確定した。
そしてどうやらあの横浜山手の邸宅で働いていた従者の一人がロマネスクとトソンの身体的関係を週刊誌にリークしたようだった。
週刊誌は三週に渡って大々的に特集を組み、ワイドショーでは昼夜問わず連日騒がれた。国会でも厳しい追求が行われた。
野党第二位の党首を務める大物国会議員が引き取った未成年の少女を夜な夜な抱いていたというスキャンダルは世間を騒がした。
彼は失脚して表舞台から姿を消した。そしてトソンは新たな環境に身を置く事となった。ここまでが担当弁護士に聞かされた事実だ。
270
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:28:24 ID:bLfC7y560
当然ながらぼくは出所後もトソンとの接触を禁じられている。もうトソンに会う事もないだろう。どこかで幸せに暮らしているのならそれで良いのだ。
取り調べにおいても裁判においてもぼくは反省しているのだと語った。しかし後悔はやはり全く感じていない。
これで良かった。ぼくは確信を持ってそう言える。未練や後悔など微塵もない。
トソンを助けたかった。本当に愛した。良い未来にしてあげたいと思った。
それにきっとどこかでこれまでの贖罪を求めていた。
援助交際を続ける現状をどこかで終わらせなければならないと気づいていた。
全てを失ったが、それはこれまでの代償にも思えた。そしてトソンを救えたのだという事実でぼくはやはり満足をする。
出所をしてからぼくは鹿児島へ住まいを移した。もう会社は解雇されているし元同僚や友人に合わせる顔もない。
元々両親はとっくに他界していて遠い親戚がちらほらいたぐらいだし、津田沼は出身地でもなく思い入れのある土地でもない。
あれほど通った首都高湾岸線を走る事はもうないだろう。あの欲望渦巻く大都会東京に戻る事もきっとない。
それに、誰も知らない場所に行きたかったのだ。ぼくが援助交際を十年近く続けて、女子高生を誘拐したとは誰も知らない場所へ。
ぼくが逮捕された鹿児島では小さな記事程度にしかならなかっただろうし、もう三年も経っていれば誰も覚えていない。
全くの新しい土地でゼロからのスタートを切る。これまでとは違う人生を歩み始める。誰もぼくを知らない場所で。
住み込みで働ける建設現場の仕事に就いてなんとか一応は安定した生活に入る。
ぼくのような流れ者が多い職場で人種も様々だ。同じ前科者が全体の二割を占めるほどだ。
これまで鹿児島には縁がなかったが、面白い街だと思う。テレビで降灰予報を流している。
駅ビルの屋上には何故か観覧車がある。蛇のような連接の路面電車が市街地を走っている。
もう長年乗ってきたスバル・レガシィに乗る事は出来ないけれど、ようやく安い中古の軽自動車を買える。
たまに安い中古の軽自動車で長崎鼻に行く事がある。その行為に意味はないけれどどうしても行ってしまう。
駐車場に車を停めて歩いて灯台まで行き、その先の赤いごつごつとした岩を眺める。
地の果て。最後の場所。トソンとの時間はそこで終わった。何もその痕跡はない。
駆けつけてきた警察官も赤色灯を回転させた鹿児島県警のパトカーもいない。
勿論トソンもそこにはいない。
271
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:32:52 ID:bLfC7y560
トソンの事を忘れた事はなかった。忘れた日はなかった。元気にしているか、無事に日常に戻れたか、望む進路に決まっただろうか。
三年が経った今、トソンはもう女子高生ではない。お嬢様学校を卒業し、神奈川か東京の大学に進み、成人を迎えているはずだ。
制服を脱いで大人になったトソンを時折想像する。元々大人びた彼女なので劇的に変わる事もないだろう。
ぼくからの接触は禁じられている。それにこっそり会いに行ったり姿だけ見に行ったりしようとも考えなかった。
この日本のどこかでトソンが良い未来に進み幸せに暮らしていればそれで良いのだ。
そう思っているがぼくはこうしてあの最後の地の果てを訪れてしまう。恐らく彼女の面影を求めている。
やはり、きっと会いたいのだ。夢の中でもいいから一目見たいのだ。
そうして成長して大人になったトソンの姿を確認して良かったなぁと心から安堵したいのだ。
しかしそれは叶わない。叶う事はない。ぼくは東京から遠く離れた地の果てで彼女を想う。それだけだ。
さて、ぼくの話はこれでお終いだ。異常性癖を持った男の哀れな末路だと言われてもぼくは否定する事が出来ない。
もっと違う道があっただとか、それではただの自己満足だとか罵られてもぼくはそれを黙って受け入れるほかない。
それでもぼくは後悔していないのだ。これで良かった。願わくば、いつか会う事が許されるのならば。
ぼくは目を閉じる。聞こえるのは海のさざなみだけだ。緩やかに、激しく、それは打ちつける。満ちては引いていく。
初めて会った日の事を思い出す。四月九日、土曜日。横浜駅西口。ヨドバシカメラマルチメディア横浜のベンチ。
今でも鮮明に思い出せる。果たして彼女は本当に来るだろうかと不安に思いながら腕時計を見ると声をかけられる。
―――さん」
忘れもしない彼女の声。きっと永遠に忘れる事のない、
「デミタスさん」
透き通るような凛とした声がぼくの名前を呼ぶ。
ぼくはゆっくりと声のした方を振り返る。
(゚、゚トソン「久しぶり、ですね」
(´・_ゝ・`)「久しぶり、だな」
(´・_ゝ・`)また出会うようです(゚、゚トソン
272
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:33:51 ID:bLfC7y560
投下終了です。
読んでいただいた方ありがとうございました。
273
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:35:48 ID:LKSIJcuI0
いいねえ
部屋と男女の関係が毎回凄く面白かった
乙
274
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:42:27 ID:bLfC7y560
余談です。
今回の同棲もの+物件情報は新潮NEX『この部屋で君と』の真似です。
あと紅白で投下した人間オナホールは元々このスレに投下するものでした。
別に書いていたものが全く間に合わなかったので紅白の方に回しました。
あと無名ちゃんめちゃシコ
275
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 00:16:48 ID:PVtQUY0.0
オナホもこれもすげー面白かった
>>1
に盛大に乙
あと抜いた
276
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 10:50:39 ID:YFUPYrhM0
乙! とても良かったです
277
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 11:18:28 ID:lJtXTmMU0
人間オナホールあんただったのか
あれもすごく好きだったよ
278
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 14:36:15 ID:jqTRXESg0
乙!すごくよかった。人間オナホの人だったのか、あれも面白かったなあ。
出てくる登場人物が大体自分の異常な部分とか最低な部分を認めてるのが好きだな。
特にデミタスなんかは、未成年買春に変わりは無いんだけどその上で最善の行動をした感じだ。
279
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 15:59:23 ID:OOg4SPg60
濃厚な鹿児島描写で懐かしい気持ちにさせられた
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