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クリフトとアリーナへの想いは Vol.1

1管理人★:2015/04/05(日) 00:08:03 ID:???
クリアリの話題を扱うための待避所です。
ほのぼのから悲恋物まで、あらゆるクリアリの行く末を語り合っていきましょう!
職人さんによるSS投稿、常時募集!

【投稿内容に関するお願い】
・原作や投下された作品など他人の作品を悪く言うのは控えてください。小説版も含めて。
・趣向の合わない作品やレスはスルーしましょう。
・個人のサイトやサークルなどを特定する投稿(画像などへのリンク含む)はご遠慮下さい。
・読む人を選ぶ作品(死ネタ、悲恋、鬱ネタ等)を投下する時には、先に注意書きをお願いします。
・性描写を含むもの、あるいはグロネタ801ネタ百合ネタ等は、相応の場所でお願いします。


    ,. --、
    | |田|| 姫様、お気をつけて
     |__,|_||     __△__ 
     L..、_,i    ヽ___/
 . 。ぐ/|.゚.ー゚ノゝ   / ,ノノハ)) クリフトがいるから
   `K~キチス  (9ノ ノ(,゚.ヮ゚ノi. 大丈夫よ!
    ∪i÷-|j @〃とヾ二)つ
    Li_,_/」   ん'vく/___iゝ
     し'`J      じ'i_ノ

クリフトとアリーナへの想いは@wiki(携帯可)
ttp://www13.atwiki.jp/kuriari/
 ※wikiに掲載されたくない場合は、作品を投下する際にお申し出ください。

3名無しさん:2015/04/06(月) 02:23:18 ID:ugMRKFCA
2chに多少の集客力があっても、機能不全なスレでは無意味ですからね
避難所があるのは安心材料になると思います
したらばは、2chと違って迷惑投稿への対応策が充実していますし

専用ブラウザだと仕組み上、読み込み済みなら削除済みの投稿でも表示されますね
「再読み込み」をすると消えますね
面倒かなと思いましたが、あぼーん設定に好都合なのかも

4名無しさん:2015/04/06(月) 21:22:57 ID:1UKgU/jM
2chのスレ、また例のお客さんが来ましたな

5名無しさん:2015/04/06(月) 23:05:02 ID:ugMRKFCA
この避難所にも来たようですけど、あっけなく削除されていますね

6名無しさん:2015/04/07(火) 14:52:39 ID:SO4UfqAo
折角いいゲームが出たのに語れなくてさびしかったよ

7名無しさん:2015/04/07(火) 22:51:50 ID:1UKgU/jM
あの客はもう異常だから放っておくしかないね
ヒーローズの二人の距離の近さが予想外で萌えたよ

8名無しさん:2015/04/08(水) 03:56:34 ID:Hc8eXubk
今気付いたけどクリアリwikiにも避難用の掲示板作ってくれてたんだね
管理人さん乙

9名無しさん:2015/04/08(水) 21:50:13 ID:0xV/ZLXc
ここは本当に避難所でしかないようなので、集客力には不安がありますかね
でも集客力が高すぎてもお子様が流入したりして考え物ですし
したらばでも過疎スレは落ちるんでしょうかね

10名無しさん:2015/04/10(金) 20:55:07 ID:Ft9Tnx46
サントハイムの王妃様は他界してたんだっけ?

サントハイム王は再婚しないイメージがあるけど、
再婚したら違う人間模様が生まれる予感がする
アリーナとクリフトの関係にも影響するかも

11名無しさん:2015/04/10(金) 23:48:59 ID:Ft9Tnx46
ちょっとだけ調べてみたところ、2章でブライさんが言ってたわ
「お亡くなりになった お妃さまは とても 上品な方でしたのに」と・・・

上品なお方だったのかぁ
ブライさんが教育用にそう言い聞かせているだけかも知れないけど

ファミコン時代以来だからなぁ、さすがに忘れてしまうよ
あ、ヒーローズの映像をちょっと見たけど、かなりいい感じだね!

12名無しさん:2015/04/10(金) 23:54:20 ID:1UKgU/jM
アリーナは16歳くらいだそうだから、今さら父親が再婚というのもどうかと

13名無しさん:2015/04/11(土) 00:02:46 ID:jr0c0ztI
真面目な話王家が跡継ぎ候補姫一人ってのも問題有りなんだが。

エンドールとボンモールも一人っ子同士の結婚になったしな。

14名無しさん:2015/04/11(土) 00:26:40 ID:Ft9Tnx46
お父上は、普通の父親と違って、国全体を背負ってるからね
周囲が縁談を勧めるのが自然な気がするんだよ

亡き王妃を想い続け・・・というイメージが強いよね
でも逆に再婚となったら、アリーナはどう思うんだろう
クリフトはアリーナに何と言うんだろう
そんな繊細なことを話せる相手、そう多くはないんだろうし
2人の距離が縮まるきっかけになるかもよ

これがあまり二次創作で開拓されてない展開だったら、
今になって新しい展開のストーリーが生まれたり・・・?
とか思うとワクワクが止まらない

落ち着いてクリアリを話せる場所があって良かったよ
ワクワクを胸のうちに封印する日々は切ないよ

15名無しさん:2015/04/11(土) 08:50:45 ID:Z2IO6m7k
身分差はよくネタになるけど、逆パターンというか、クリフトが同程度の身分の相手と結婚式を挙げるのを
教会の貴賓席から遠く離れて見ているしかないアリーナとか、そういうのも考えたことはある

でもやっぱり辛い系は気が滅入るわ
無理矢理でもご都合でも、みんな幸せなのが一番

16名無しさん:2015/04/11(土) 17:13:12 ID:Ft9Tnx46
悲恋もある関係性だからこそ、ハッピーエンドの感激もひとしお
クリアリは色々なパターンに進化できる題材だから未だに飽きないよ

悲恋気味に進行して最後にハッピーになるのもいいね
例えば2006/03/09から始まった506さんの長編なんて感動の嵐で大好き

ギャグ方面では、wikiには載ってない小ネタにも好きなのが多いな

17名無しさん:2015/04/14(火) 01:37:52 ID:OV01.e9I
のんびり気ままにクリアリを語ってもいい
気が向いたらSSを書いてみるのもいい
ネタがなければまた川柳大会でもすればいい
まったりできるスレは良いですな

18名無しさん:2015/04/14(火) 22:37:55 ID:vmISsk5A
クリフトはこれから仕事が楽しくなってくるお年頃だと思ってるんで
実際にいろいろ任されるようになって、忙しくなってあまり一緒にいなくなって
でも楽しそうにお仕事してるのを見て、アリーナがどう思うだろうとか

ゲーム中だと、クリフトの方ばかり過剰なまでに(まあ半ばネタで)表現されてるから
自分で考えるのは逆の方向ばかりになるなあ

19名無しさん:2015/04/16(木) 22:12:38 ID:yzpFHmVw
>>18
クリフトさんは敬虔に穏やかにお仕事しそうですね
あまりお仕事で失敗しそうにない印象です

でも逆に、お仕事で失敗するクリフトさんもアリで、
ひたむきな仕事ぶりをアリーナさんは見てたよとか…

でも、教会にはどんな仕事があるんでしょうか?
教会の外でもザオリク使えるし護衛要らずなので、
地方巡回で活躍する道もありそうです

20名無しさん:2015/04/18(土) 04:11:33 ID:FcJ3vt.A
アリーナに似合う花って何だろう?
年齢を重ねると変わってくるのかな?
クリフトやブライが選ぶと違う花になるのかな?

とか考えだすとキリがないなと思ったけど、
俺は花に詳しくないから空想が広がらなかったorz

21名無しさん:2015/04/19(日) 04:54:12 ID:4pKQrSOQ
今日も平和にスレ進行中!
いいねえ!

22名無しさん:2015/04/23(木) 23:01:55 ID:0YmM8kyc
自制してアリーナと距離を置きつつ心のよりどころにするクリフト
そういう切なくも暖かさのある展開もいいと思う

23名無しさん:2015/04/23(木) 23:10:58 ID:5ke2IcNM
いつか、今よりもうちょっと大人になったクリフトが
すっぱりとアリーナへの気持ちを断ち切ってしまって
それからしばらくして、アリーナがクリフトを好きになってしまう

という、完全なすれ違いは有り得るだろうか

24名無しさん:2015/04/24(金) 23:00:35 ID:t3p9l5zA
>>23
失って大切さに気づく甘酸っぱい展開もいいじゃない!

アリーナはその想いを抱きながらどう歩んでいくのかとか、
掘り下げていけば名作SSにもなり得る予感

25名無しさん:2015/04/29(水) 00:51:27 ID:P6FQc1.A
ハッピーエンドはもちろん良いのだけどハッピーエンド一辺倒ではなくて、
悲恋でも何でも自然に成立するのがクリアリの魅力
クリアリスレに来て、バリエーションの豊かさに感激しましたよ
年老いた未亡人アリーナとか、想像もしなかったなぁ

このスレなら平和な進行が半ば保証されているわけで、
新規でも古参でもSS職人さんが来てくれるといいですねぇ
近年は職人じゃないけど書くって方もみえましたね

26名無しさん:2015/04/30(木) 02:49:27 ID:RsRgFiCs
AAにも名作があることを忘れるわけにはいかない

27名無しさん:2015/05/04(月) 06:13:11 ID:2RmJC776
アリーナは姫としての公務に追われるようになり、クリフトもお仕事がある。
これ、学生時代は自由に会えたのに就職したら時間が合わなくなるパターンと似てるかもね。
我々から遠そうでも身近に感じやすいのがクリアリの良さかも。

28名無しさん:2015/05/09(土) 22:56:45 ID:dDZKUgMM
親子2代でクリアリを楽しむ方々もいるんだろうな

29名無しさん:2015/05/11(月) 03:54:00 ID:A1DiwQXo
エスターク ザキで倒せるわけがない

30名無しさん:2015/05/14(木) 01:28:17 ID:1foffBVw
エジンベア 4にもあればと悔やまれる

31名無しさん:2015/05/26(火) 03:47:18 ID:/opkN8PM
いつでも平和な場って安心ですね

2chでもテンプレでの規則はあって、守るのが前提なんですが、
一部の守らない人のせいで機能不全になったりもします
こっちは規則無視の人に規制が入るってだけなんでしょうけど、
それは大きな違いですね

32名無しさん:2015/05/28(木) 20:42:02 ID:FiCSXsPQ
本スレずっと荒らしてる人はなぜ10スレにこだわってるんだ?
10にクリフトもアリーナも出てなくて全然関係ないのに突然言い出してまじで意図が不明すぎるんだが

33名無しさん:2015/05/29(金) 23:11:30 ID:KPy7Z1t6
>>32
時間や頭を使って書くほどの思いがなければワンパターンな一言で終わる
やっつけ仕事で書いてるだけで、特に意味はないだろうよ

34名無しさん:2015/06/01(月) 02:11:37 ID:VYuNBW6Q
2chって魅力があるのかないのか分からないね。
管理人に気を使わずに気軽に書けるのは魅力なんだけどな。

35名無しさん:2015/06/11(木) 00:34:21 ID:CZO0J0jA
今の過疎は叩かれた職人がモウコナイヨウワァァンってなってから長く続いてる
その後も職人に文句ばかり言う奴が居座ったりしてたから回復しなかった
避難所が立った頃には職人がみんな去ってたんだろう
職人が避難所に気づくのをのんびり待つしかないさ

36名無しさん:2015/06/21(日) 05:12:41 ID:B6ViGcXI
2chはブラウザゲーの板が運営の実験場にされて大惨事
一時的にスレッド保持数50にされたり、4時間書き込みがないと落ちる設定にされたりして、
大半のスレが落ちるという訳の分からない状態

既存の専ブラを切り捨ててまで大いに広告を出して営利事業まっしぐらなのに、
そういう運営がまかり通るってのが2chの怖さなんだよね

そういうのを目の当たりにすると、あまり2chにスレを置きたいと思えなくなる

37名無しさん:2015/06/21(日) 22:32:36 ID:3OJx.Cx6
過去ログだけはけっこう色んなとこに保存されてるから見やすいってのはあるかな
それ以外だともうあんまり2ちゃんにメリットはないね

38名無しさん:2015/06/23(火) 23:25:22 ID:Blib6XGM
2chの運営は仕事をしない割にトラブル源orz

ま、2chのスレも入り口としては価値はあるんだろうが、
メインで活用する気にはならないな
捨ててもいい程度の雑談にどうぞ程度か

たしかに過去ログが保存されている点は便利かもな
そもそも過去ログがdat落ちしなきゃ良い気もするが

39名無しさん:2015/07/05(日) 02:05:45 ID:tnUwp9zY
2chで雑談したい人はそれでいいし、両方で雑談してもいいじゃん
本格的な作品投稿ならこっちの方が適しているんだろうけど

40名無しさん:2015/07/18(土) 04:19:25 ID:efJbX/XA
FC版でクリフトがザラキをよく使うなとは思って控えろとは思ってたけど、
回復呪文で消費するMPを考えると実はMP節約につながっていたので
悪くないなとも思っていたよ
でも賢者の石など無限回復アイテムに頼る段階になると、
ザラキはMPを浪費するばかりでありがたくない
杖など攻撃アイテムを優先的に使うAIなので害は少なかったけどな
むしろ最強の剣を装備しても弱すぎる攻撃力が困り物だった

アリーナは強いんだけど、打たれ弱いのが困ったところ
強敵が相手だと打たれ強いライアンさんでないと安定しなくなる
先手を打って倒せる程度の敵ならアリーナが最強なんだが

ブライは活躍する場面がなかったなぁ
一軍が壊滅しかけたときのピンチヒッターにしかならなかった
魔法使いなのに、なぜヒャド系しか持ってないんだ?
クリフトの代わりにザキ系を持ってても良かったんじゃないか?

41名無しさん:2015/07/19(日) 03:18:55 ID:fBH21vWU
ドラクエの世界において基本的にザキは僧侶系の魔法で、魔法使いの魔法ではないと思う

42名無しさん:2015/07/19(日) 04:59:07 ID:SIBhqel.
僧侶系とか魔法使い系とかは前作の3からなので、4での変更は難しくなかったかと
2015年現在では、四半世紀の積み重ねがあるから難しいと思う

43名無しさん:2015/07/19(日) 12:34:47 ID:rfMhdvFE
3から4で変更されたのは、スカラスクルトが魔法使いから僧侶系になったことだね
しかも4のスクルトが史上最強

44名無しさん:2015/07/19(日) 14:56:22 ID:3r0mOJdM
3の魔法使いはMPが低いからスクルトで補助役に徹するのが最適解だった
でも守備のスクルトは僧侶系が似合うから4で代えたのは正解だと思う
ザキはクリフトじゃなくても良かったかもなぁ

45名無しさん:2015/07/19(日) 18:17:00 ID:3r0mOJdM
クリフトがザキ系を持っていなければバギ系持ちのミネアとの差が明確化して、
どちらを使おうか戦略的に決めることができそう
FC版のミネアはHPが低すぎる割にメリットがなくて選びづらかった
ミネアとのバランス調整のためにクリフトは力を極端に下げられたんだろうけど、
クリフトからザキを外してミネアのHPを上げれば良かったんじゃないか

え、ブライ?ご老人を馬車の外で歩かせるなんてとんでもない!

46名無しさん:2015/07/21(火) 04:41:30 ID:GjkrNp6o
回復役に攻撃呪文を持たせると得意になって浪費するから
攻撃呪文を忘れて欲しいと思うことがある
特にクリフトね

47名無しさん:2015/07/30(木) 00:32:11 ID:/Zr3Y1bs
戦闘面では、アリーナが強い奴を削ってマーニャが一掃するガールズ連携が良かった

一方のクリフトは、アリーナが削った後でザラキだからアリーナの労力を無駄にするんだよね
そういう微妙に思惑がすれ違うところもクリアリの特徴かな
距離が縮まりそうで縮まらないもどかしさがいつまで続いても魅力的に思えてしまうよ

48名無しさん:2015/07/30(木) 21:06:57 ID:lcgU6jO.
>>47
普通に、アリーナが削った敵にクリフトが攻撃でとどめ刺すことも多かったよ
なんかザラキネタに引きずられ過ぎなんじゃないかな

49名無しさん:2015/07/30(木) 23:30:10 ID:vFNrXCbM
>>48
無駄にすることもあれば、もちろん無駄にしないこともあるよ

アリーナの労力を無駄にする確率、仲間の中でクリフトが突出してる気はするけど、
作戦とか装備によっては変わることもあるのかな
そういう工夫で相性を良くするプレイもクリアリ好きの良い楽しみ方かもね

50名無しさん:2015/07/31(金) 00:05:29 ID:OiShKPxY
>>49
無駄って具体的にどういうことなんだろう
削った敵を一撃死させようが攻撃で倒そうが、敵を倒せたって結果は同じだよね
むしろ、クリフトがザラキで倒す予定の敵を中途半端に削ってるアリーナが無駄なんじゃないか、それ

51名無しさん:2015/07/31(金) 00:42:23 ID:EZq3q3CQ
>>50
アリーナが無駄かクリフトが無駄かなんて、どっちでも同じですよ
戦闘において2人の行動が噛み合わない面があるってだけで

HP不問で倒せるザキ系はノーダメージのときに放つのが効率がいいです
クリフトは星降る腕輪で一番に行動したらいいんです
そうしたらアリーナが与えるダメージも後に活かされ、敵を早く倒せます

52名無しさん:2015/08/01(土) 03:42:46 ID:kmXmm6tE
DS版だけど、クリアした後仲間を馬車に詰め込んで「バッチリがんばれ」でクリアリ二人旅させてたけど、クリフトがザラキで2匹位倒して、残った1匹をアリーナが倒すって感じでサクサク進めた

DS版はザラキが効く相手にしか使わないから優秀なんだけどw
なかなかうまい連携だなって思ってた

53名無しさん:2015/08/01(土) 12:23:33 ID:H8QUy6Ck
DS版、やりおるわ!
>>52のクリアリ愛に溢れたプレイに感激じゃ!

54名無しさん:2015/08/12(水) 02:27:25 ID:8r0IAuFs
生きるか死ぬかっていうギリギリの旅を一緒にした経験って、鮮烈に残ると思うんだよ
あの日々の感覚を残したまま平常運転のつまらない日々に戻ると、どうなるんだろう
あの頃の感覚を共有する数少ない人と近づくのは当然だと思う
郷愁のような感覚でさ

逆に目まぐるしいほど充実した日々になったら、そんなに思い出に帰ることはないかも
じゃあ、アリーナは退屈な日々で、クリフトは充実した日々になっちゃったら?
うーん

55名無しさん:2015/08/12(水) 11:51:37 ID:OlN.MlGQ
ヒーローズの二人を見る限りは、相変わらずの調子っぽいけどね
それを置いといても、クリフトは本業でやることが増えてくるとやりがいも大きくなるだろうし
アリーナは王宮暮らしを退屈と思ってても、鬱屈するタイプじゃないし
なにより二人とも若いから、過去にすがったりはしないんじゃないかな

56名無しさん:2015/08/14(金) 01:44:04 ID:s/OkbhXI
アリーナは何をして過ごすんだろう?
公務はあるんだろうか?

ドラクエの世界の姫には公務がある印象も自由な印象もないな
「自由でうらやましいわ」とか「あなたのような田舎者がうらやましいわ」とか
中庭あたりでそんなことを話してるイメージがある

アリーナは魔物退治でもやるのかな
足手まといにならないお供はクリフトやブライの他にはいないんだろう
でも神官としてのお仕事が捗らないだろうなクリフト

57名無しさん:2015/08/15(土) 07:31:32 ID:9Z0VXlOQ
アリーナは強いけど回復役がいてこそ活躍できるんだと思う
ライアンさんもホイミンがいたから打撃に専念できた

58名無しさん:2015/08/30(日) 18:18:35 ID:AIzrBrNU
ドラクエ8のリメイク恐ろしいな…
最初は写真とか撮れて楽しそうって思ってたけど
もう4はリメイクしないで欲しい…

59名無しさん:2015/08/30(日) 20:03:19 ID:SGs1LYow
こういう場合、配慮するのは主人公の選択権利ばかりで
脇キャラの都合は基本お構いなしだろうからね
アリーナほか女性キャラがみんな男勇者に夢中でより取り見取り、的な
まあ4は女勇者もいるから、逆にクリフトが女勇者に連れて行かれたりしてね

うん、もうリメイク要らない

60名無しさん:2015/09/26(土) 01:56:49 ID:Xg/3I7/g
ドラクエ4も古典の領域になりつつあるけど、
リメイクやら何やらで現役でもあるね

本当は過去の作品が忘れられるくらいに
魅力的な新作が続々と出たらいいんだろうけど

61名無しさん:2015/12/23(水) 05:20:37 ID:slN5/mNs
>>59
男勇者にはシンシアがいるから、そういう路線は難しそうかも

女勇者にしたってお年頃の男性がクリフト以外にいないから、
選ぼうにも選択肢がなさすぎる
おやじ好みだとしても既婚者では仕方がないのだし

62名無しさん:2015/12/23(水) 10:28:52 ID:CVHZHv4c
>>61
既婚者はトルネコだけで、ライアンもブライも独身だ!
個人的にライアンは、例のバトランドで待ってる女性がいいと思ってるけどね

63名無しさん:2015/12/25(金) 01:49:18 ID:x2Vvvgfo
トルネコは既婚者で、しかもあのプロポーション
ブライを選んだら介護が待ってる
ライアンはあんな色の鎧を選ぶ悪趣味

そんな選択肢を示されたら気の毒だ

64名無しさん:2015/12/25(金) 05:11:44 ID:2Fc2A376
男のピンクはオサレなんだよ

65名無しさん:2015/12/26(土) 02:21:06 ID:wZT1yhK.
ライアンの髪型ってどうなってるんだろう?
髪が生えてるイメージを持てないんだけど

66名無しさん:2015/12/26(土) 09:12:41 ID:VdBdx48g
4コマですずや那智が描いていたのが
私のイメージに近かった

67名無しさん:2015/12/30(水) 01:23:27 ID:ISEFHrgA
過去のSSを読み返すと楽しい
ハッピーエンド・悲恋・ギャグなど、バリエーションがあって飽きない

以前は俺も投下してたけど、今は他の作品がないから触発されなくてね

68名無しさん:2016/01/13(水) 22:03:22 ID:CJooDeAo
公式のツイッターでクリフトに告白企画、ほとんどがアリーナとお幸せにと書かれれて吹いたw

69名無しさん:2016/01/13(水) 23:43:02 ID:CBEfro52
>>68
なんと素晴らしいファンであろうか

70名無しさん:2016/01/17(日) 05:53:45 ID:RfLQESkM
一途なクリフトに対しては告白する気も起きないかも
横槍を入れるのは野暮ってものです
幸せを願いましょう

71名無しさん:2016/01/17(日) 12:08:54 ID:0oFPiHo6
別にアリーナからクリフトを取り上げる企画ってわけじゃないでしょ…

72名無しさん:2016/01/17(日) 15:18:39 ID:RfLQESkM
>>71
誰もそこまで言ってませんのでご心配なさらずに

73名無しさん:2016/01/18(月) 02:53:42 ID:8snNDiOw
アリーナみたいな長い髪の人って寝るときどうするのかな?
髪は背中の下?横?
旅で適当に扱ってると寝癖とか凄くなるのかも
寝癖を見てクリフトがどう反応するか考えるのも悪くないかも

74名無しさん:2016/01/22(金) 22:32:06 ID:RkqahzL2
ロングヘアーの人が寝癖による爆発ヘアーを防ぐためには、
三つ編みなどでまとめておくか、フードやナイトキャップを使うとか、
髪を枕の上の方にやっちゃうといいみたい
アリーナはどうしてるんだろ

75名無しさん:2016/01/24(日) 22:30:20 ID:ktyXFMUE
そもそもあれは巻いてるのかくせ毛なのか…
お姫様だから巻いてる可能性は高いけど、旅の間はどうしてるんだろう?

76名無しさん:2016/01/25(月) 22:24:10 ID:HQKDpT.Q
髪のセッティングを最初はブライがやってたけど、
しんどくなってクリフトの役目になって内心喜ぶクリフト
しかし勇者ご一行と合流後はマーニャがやっちゃって
クリフトしょんぼり
というSSを書こうと思ったけどオチが思い浮かばないや

77名無しさん:2016/01/26(火) 21:58:29 ID:wSrLYs7s
>>76
オチなど要らん行け。

と言いたいが、ブライはもちろんクリフトも女の子の髪をセットなんて出来なさそうなのが問題だ。

78名無しさん:2016/01/26(火) 23:14:24 ID:t.f0jM/2
>>77
お先にどうぞ

79名無しさん:2016/01/27(水) 19:34:50 ID:idIDRIOY
髪はともかく、アリーナの身の回りの世話をマーニャやミネアに奪われてガッカリ
でも女同士だから仕方ないか…みたいな妄想はしてたなー

80名無しさん:2016/01/27(水) 23:43:37 ID:w7e0rRuE
>>79
あるある
そのへん掘り下げるのも楽しいですね

81名無しさん:2016/01/30(土) 23:36:53 ID:OaZ8YKaw
アリーナもマーニャもミネアも、髪の手入れは大切だろうね

だが…女勇者の髪の手入れは想像できない
そもそもどうやって洗い、どうやって乾かすのか…

もしも手入れが簡単なら、アリーナが羨ましがって、
クリフトとブライが止める展開があるかもよ

82名無しさん:2016/02/01(月) 02:19:57 ID:rGHO16s.
女勇者は、あの髪で頭部の守備力がアップしていると思う
そんな機能性に着目したアリーナがうらましがることはあるのかも

83名無しさん:2016/02/13(土) 04:35:50 ID:AtlWatMM
頭部といえばアリーナのかぶってる帽子には何の意味があるんでしょうか
動きにくくなると思うんですけど
いやクリフトの帽子ほどじゃないですけど

戦闘中は長い髪を帽子の中に収納して邪魔にならないようにするのも、なくはなかったのかも
見栄えの問題があるので、戦う映像が出てくる現在では通用しない設定でしょうけど

84名無しさん:2016/02/23(火) 05:01:47 ID:zzSK5nwk
アリーナの帽子は色合いの都合な気がするけど

クリフトの帽子は重そうで、肩こりが心配だ
そこでアリーナが気を利かせてマッサージしたらどうなるのかって、
嫌な予感しかしないから不思議

85名無しさん:2016/02/23(火) 08:32:40 ID:t4grZcN6
いたストDSで、「この帽子結構重いんですよ」って言ってたな
多分責任と使命の重さなんだな

86名無しさん:2016/02/25(木) 00:25:15 ID:OLgnAUto
ゲームより先にドラクエ4コマを読んでたので、アリーナ見た時はとんがり帽子の女の子だから魔法使い系かなって思ってたw

ヒーローズ2の男主人公の色合いとマフラーでクリフトとかぶるんだけど…なぜ緑にしたんだw

87名無しさん:2016/02/27(土) 02:06:37 ID:vNyws9XY
ああ、そういえば魔法使いを思わせる見た目だね
意図的にギャップのある見た目にしたのかもね
怪力と姫っていうギャップもあるし

帽子の理由って、ゲーム内でクリフトと並んだときに長身に見えすぎるのを防ぐため?
特にファミコンの場合はキャラのサイズが正方形に近いあのサイズに決まってたから、
帽子抜きのクリフトと身長を合わせるとアリーナが不自然に横長になりそう

88名無しさん:2016/03/03(木) 01:36:32 ID:kiqmkd3k
>>85
>多分責任と使命の重さなんだな
ほのかに文学性を感じさせる表現にグッときた
もしかしてSS職人?

89名無しさん:2016/03/10(木) 22:29:05 ID:aS48HN4k
春は新たなる門出の季節
旅立ちと別れ、そして未来に向けて新生活が始まる
特別な郷愁を感じてしまう季節だな

クリフトとアリーナにはどんな春が訪れるんだろう?
再会を誓って前向きな別れとか?
そういうSSを読みたいな

90名無しさん:2016/03/10(木) 22:34:48 ID:TXxvWXtE
アニソンだけど
「さよならの行方」聞いたとき
いつかアリーナはこうなるんじゃないかなと思ってしまった

本来は単純に明るい話が好きです

91名無しさん:2016/03/14(月) 04:18:34 ID:Rr9AEYUM
>>90
そういう切ない展開も普通にある境遇だからこそ、
明るい展開になると幸せな気持ちになるよね

ま、思い浮かんだ流れでSSを書いたらいいんじゃない?
切ないSSが多くなってきたら明るいのを書いちゃうかもさ

過去にSS書いてたけど、周囲がどう動くんだろうとか考えると
ハッピーエンドにしづらくはある
だからハッピーエンドに行けたときの喜びもひとしお

92名無しさん:2016/03/14(月) 13:32:20 ID:sftchESU
公式の、クリフトのホワイトデーお返しメッセージ
個人的にはすんごい好みだけど、いいのかこれww

93名無しさん:2016/03/20(日) 08:28:53 ID:xOZkmbek
「クリフトのホーリーケーキ」
ザラキにちなんで緑のザラメを散らしました。

94名無しさん:2016/03/20(日) 17:06:54 ID:DfXCvwDw
>>93
凝ってるなーと感心したよ
カップの柄とかも、あれを悪意だなんだっておちょくってる人も見かけたけど
ここまで用意してくれたって意気込みがむしろありがたい

95名無しさん:2016/03/20(日) 21:51:22 ID:xOZkmbek
>>94
そこまで意気込みを持って凝るほど愛されてるキャラってことだ
最もキャラっぽさを感じさせる出来栄え

テリーのも涼やかでオシャレに仕上がってる
夏でなくこの季節に出したことが悔やまれるけどな

なおハ…

96名無しさん:2016/03/20(日) 21:56:05 ID:3zpQSTn2
>>95
ハッサンは、パンケーキという素材がらしいというか
彼がキッチンでフライパン振って豪快にパンケーキ量産してる姿が目に浮かぶ気がする

97名無しさん:2016/03/21(月) 02:01:26 ID:0RsiqHoY
ハッサンは豪快なデカ盛りにしたらもっと良かったかも
パンケーキに加え、揚げ物のドーナツでさらにヘビーに仕上げる
まさに漢のスイーツ!
ハッサンには女子の好みを察することなく突き進んでほしい

クリフトのは、クリフトがスタッフに愛されてるのがよく分かるね
ただザラメが全体の味わいを邪魔しないのかな?
ザラメ付きのカステラと似たようなものかな?
紅茶に合う一品になりそう

98名無しさん:2016/03/22(火) 01:24:20 ID:nOWbYPkg
>>92
女心をくすぐる、よく考えられたメッセージだなと思うよ

99名無しさん:2016/03/23(水) 01:52:39 ID:fa7Q1ngs
お返しのメッセージ、なかなか良いな
クリフトはもちろん、テリーのもキャラを大切に丁寧に作られた印象
両者とも良かったー

他1名のメッセージは気が向かなかったので見てないけど、
きっとファンが喜ぶメッセージなんだろうな

100名無しさん:2016/03/23(水) 08:37:16 ID:64FeSiNg
なんで他のキャラを見下すようなことをこのスレで言うんだろう
スレと関係あるキャラとか聞いたキャラのことだけ言えばいいんじゃないの
わざわざ「このキャラは聞いてません」って宣言する意図って何?

101名無しさん:2016/03/24(木) 03:18:02 ID:4IPM3xdg
>>100
私は見下しているとは感じませんけれど、人それぞれでしょうかね。

ひとまず>>1をご覧になってはいかがでしょうか。
「趣向の合わない作品やレスはスルーしましょう。」とありますよね。

102名無しさん:2016/03/24(木) 08:43:18 ID:xjH543No
「他一名」っていう言い方にそもそも悪意感じるけどな
名前を言ってる2人に比べて、取るに足らない存在ですって言ってるようなもん

103名無しさん:2016/03/25(金) 21:21:23 ID:QDweuKhw
>>1でお願いされてることを無視して書き込むスレで合ってる?

104名無しさん:2016/03/26(土) 05:15:58 ID:yYsY59M2
2chのスレで得た教訓を生かさずテンプレ無視で同じ轍を踏むスレ
さすがに自虐的過ぎるか

105名無しさん:2016/03/28(月) 01:41:46 ID:v42PmJY2
テンプレ無視を防止するならテンプレ改訂が得策かも
お願い事項でなくルールと言えば少しは変わらないかな?

106名無しさん:2016/03/30(水) 01:24:16 ID:MSfbpQyM
全員が過去から教訓を得ているとは限りませんからね。
教訓を元にしたルールを設定するのが現実的な対策になるのでしょう。
少し息苦しくはなりますけど2chと住み分ければ良いのですし。

ただ、今のも分かりやすくて良いテンプレだと思います。

107名無しさん:2016/04/02(土) 04:13:05 ID:KO3o1Sys
今すぐでも悪いとは思わないけど、ひとまず様子を見て、
テンプレ無視が続発するなら対処くらいが妥当かもっす

108名無しさん:2016/04/04(月) 01:20:00 ID:5Btgaw1M
テンプレ修正は次スレへの移行になり、ちょっと大掛かりじゃないでしょうか
様子を見て必要なら対処でも悪くはないと思います
今までテンプレ無視がそんなに多かったわけでもないですよね
気を取り直し、ひとまずは平常運転に戻したらいかがでしょう

桜の花は色が薄いので、色鮮やかな花を見慣れている沖縄とかの人が見ると、
あまり綺麗じゃないって感じる場合もあるらしいですね
桜の花を好むクリフトと対照的にアリーナは桜の花の良さを理解できず、
年齢を重ねて理解した頃にはクリフトがいないというシチュエーションを
ふと思い浮かべてしまいました

109名無しさん:2016/04/08(金) 19:13:32 ID:1Z3D3IaQ
ヒーローズ2のキャラ紹介ページで、緑川がなんか気になること言ってる…

110名無しさん:2016/04/09(土) 01:00:05 ID:1goY0sS.
四半世紀が経ち、子供だった人もクリフトやアリーナの親くらいの年齢になってきたはず
それでもクリフトやアリーナの人気は消えることなく、最新作にも度々登場

20年くらい後、我々はクリフトやアリーナの活躍を孫を見るように暖かく見てるんだろうか

111名無しさん:2016/04/15(金) 12:04:33 ID:zKYa.JjE
この前ニコニコ生放送でヒーローズ2体験会中に有名実況者を招いてヒーローズ1の実況プレイをやってたんだけど、
一緒に司会やってた女優さんがものすごいクリフト好きでクリアリ好きで終始クリフト萌えトークしててすごかったw
ヒーローズのプロデューサーも一緒にいてクリアリムービー見ながらこの2人の絡みが良いんですよねって言ってたよ

>>109
「そして!今作では、ついに姫様にうれしい言葉をかけてもらえるシーンもあるので、是非そこにも注目してほしいです。」ってやつだね
気になるね。サンプルボイスも全部姫さまの事だったし

あとパッケージイラストでも唯一ヒーローズ1から続けて出てるのがクリフトとアリーナのみだし
ヒーローズではクリアリかなり優遇してもらえてるなあと感じる

112名無しさん:2016/04/17(日) 00:27:58 ID:9gh201TM
アリーナ姫結婚相手決定武術大会(勿論ラスボスアリーナ)でクリフトが優勝するにはどうすればいいか?

まあ他の導かれし者たちは出場しないだろうから、実質クリフトがタイマンでアリーナに勝つ方法。
グリンガム持たせればクリフトにとってはザコに成るけど、じゃあどうやって持たせるか。

113名無しさん:2016/04/17(日) 00:40:23 ID:ORO8dJ6w
自分に勝てれば誰でもいいなんていう姫様なら、クリフトのことは好きじゃないってことだよね
そんなのと無理に結婚させようなんてかわいそうだし、最後にクリフトが勝っても絶対嫌がって認めないと思うな

114名無しさん:2016/04/17(日) 13:09:09 ID:0nqmETmw
ボスにさえザキ連発のクリフトなので勝利しかなく、負けるとすれば光のドレス
ザキ禁止なら女勇者に出場してもらうしかありますまい

過去にはアリーナの気持ちまで踏まえたSSもあって、かなり良かった覚えがある
その頃はSS職人さんが多かったけど、いつしかいなくなってしまったな
他人のネタを否定する人が現れる度に離れていった印象がある

115名無しさん:2016/04/17(日) 14:15:53 ID:0nqmETmw
良くも悪くもクリフトのザキは規格外
他の火力が弱い分、1人で戦うならザキを主軸にしないと厳しい

ザキを使わないなら回復しつつ持久戦にならざるを得ない
守備力重視の装備にスカラとマヌーサがあれば、アリーナ戦の脅威は会心の一撃のみ
アリーナの回復手段がやくそうだけなら楽勝で、杖や石といった無限回復なら厳しくなる
奇跡の剣を装備すれば安定はするが、1回のダメージが10近く減ってしまう
互いに決定打がないまま無限回復をし続ける泥仕合で引き分けになればいいけど、
打率25%の改心の一撃を連発される可能性を考えると、MP切れ後のクリフトは苦しい


過去にあったSSだと、決勝の相手はアリーナでなくソロってのがあったな
ソロは優勝インタビューをシンシアへのプロポーズの場にしようとしてるから真剣勝負
アリーナとクリフト、そしてソロさんたち仲間の会話が良くてさ
大会でザキを使わない理由も何気に明記され、SS職人の実力を見せ付けた

後に俺も書き手に加わったが、職人の背中は遥か彼方にあった
職人さん戻ってくれないかな

116名無しさん:2016/04/18(月) 03:54:52 ID:nJfk10AA
せっかくのネタ振りですから、乗らずに終了は勿体ないですね。

強気な戦闘民という性格だけに、アリーナは負けることを想定していないかも。
結婚を回避する口実を兼ねた大会という可能性もあるでしょう。
かわいそうな状況としても、打開に当人や仲間が動けばストーリーが動きます。
後の展開に広がりのある、良いシチュエーションですね。


DSリメイク準拠で概算してみます。

クリフトLv.99
 与ダメージ はぐメタ剣=78、奇跡の剣=63
 守備力 308(103+95+60+50)
アリーナLv.99
 与ダメージ ピアス=40x2(会心250)、爪78(会心340)、鞭105(会心なし)
 守備力 166(116+ひかりのドレス50)

クリフトが相手ということで、アリーナは呪文対策にひかりのドレス。
仮にクリフトがグリンガム装備でも会心を捨てて攻撃力5UP。剣にしましょう。

クリフトが勝つ手段は実質ザキ系のみです。
呪文でアリーナの攻撃を防げても、自分の攻撃が祝福の杖を上回りません。
皆殺しの剣を使えばダメージを20〜40増やせるものの、雀の涙程度です。
約3%の会心の一撃を3連発すれば勝機が見えます。でも厳しいです。
静寂の玉を使われたらクリフト涙目。

117名無しさん:2016/04/18(月) 06:23:42 ID:nJfk10AA
>>116はアリーナが何もかぶっていない試算でした。
金の髪飾りを装備すると、アリーナの被ダメージが3下がりますね。
命の指輪を装備すると、更に4下がります。

クリフトが豪傑の腕輪を装備すると、与ダメージが12くらいUP。
少しは勝率が上がります。

あとはメガンテの腕輪で相討ち狙いくらいしかなさそう。
やはりザキを使わないと苦しそうです。

118従者:2016/04/20(水) 14:40:04 ID:dvtPB6.6
おひさしぶりです、かつて従者と名乗っていた者です。初めての方ははじめまして。
続きに煮詰まりあまりに遠く空けすぎてしまいました。力量と根気のなさに申し訳ない思い。
こうしてまた語ることのできるこの場所と皆さまに心から感謝です。

気持ちだけはありますのでまた時々でも投稿させてもらえたら嬉しいです。
試しに一投稿。ちなみに私はPS版のセリフをもとにストーリー展開させていた者です。

119従者の心主知らず 海辺の村編 1/2:2016/04/20(水) 14:45:44 ID:dvtPB6.6
やっぱりクリフトって変。
あんな頭の痛くなるようなことをいっつも考えてるから胸が苦しくなったり鼻血が出たりするんだわ。
この間海辺の村に行ったときだってそう。

「ここだと毎日泳いだり日光浴をしたりできるからたいくつしないわね」
「日光浴、ですか…………。ひ、姫さまの日光浴!」
「そう、日光浴!」

クリフトの足が止まったみたいだけど気にせず早足で歩く。
何だかお説教が始まりそうな気がして。

「でも水着は持ってきてないし、買おうかな」

ぶはあっ!
いきなり後ろで変な音が聞こえた。
振り向くとクリフトが鼻を押さえてよろめいてた。
手にも服にも血がついてる。

「ちょっとクリフト、どうしたのよ!」

慌てて駆け寄るとクリフトは目をそらした。
もう、なんなのよー。

「……なんでもありません……」
「何でもなくないでしょ、鼻血が出たの?大丈夫?」
「……だいじょうぶです……」
「と、とにかく手当てしなきゃ、どうすればいいの?横になったほうがいいの?」
「い、いえ、横になるのはかえって危険……」
「えーじゃあどうすればいいの?あ、とりあえず荷物は下ろして」

クリフトが安静にしてればすぐよくなるっていうからとりあえず建物の陰に座らせて私も座った。
クリフトはハンカチで鼻を押さえたままぼーっとしてる。

「……大丈夫?」
「……申し訳ありません……」
「そうじゃなくて、大丈夫?」
「……はい……」

血は止まったみたい。よかったー。

120従者の心主知らず 海辺の村編 2/2:2016/04/20(水) 14:51:47 ID:dvtPB6.6
「んもう、びっくりするじゃない。どうせまた頭の痛くなるような難しいこと考えてたんでしょ」
「…………」

クリフトはぼーっとしたまま答えない。

「何考えてたの?」

もう一度聞いた。そしたらクリフトはやっと答えた。聞こえないくらい小さな声で。

「……日光浴による人体への効果と影響について……」
「やっぱり難しいこと考えてたんじゃない」
「……申し訳ありません……」
「別に謝らなくてもいいけど」
「…………」

「……姫さま、あまり肌を晒すのはおやめください」

来た!お説教!でも病人だからって譲らないわよ。

「どうして?」
「それは……」
「どうせまたお肌が荒れるとか言うんでしょ」
「それもありますが」
「あるんじゃない!もう、じいもクリフトも気にしすぎなのよ。ちょっとくらい日に焼けたからって死ぬわけじゃないんだし、
いいじゃない」
「その……困るんです」
「困らないわよ、楽しいじゃない」
「私が困るんですっ」

なんかクリフト、むきになってる?顔赤いし。

「んもう、わかったわよ。じゃあ日光浴はクリフトにも付き合ってもらうわ。それならいいでしょ?」
「え、あ……」
「そうだ、クリフトもいっしょに日光浴すればいいのよ、そしたらきっとよさがわかるわ」
「い、いっしょに?!」
「そうと決まれば水着を買いに行きましょ!あ、その前に着替えなくっちゃね。大丈夫?歩ける?」
「ひ、姫さま…っ」

私はクリフトの手を取って歩き出した。後ろでクリフトが姫さま姫さま言ってるけど気にしない。
心配性のクリフト、そういう人ほどいざそのときになれば自分から進んで日光浴するんじゃなーい?

ぐはあっ!
後ろでまた変な音が聞こえた。つないでた手に少しだけ衝動。どうしよう、振り返ったほうがいいわよね……。
んもう、そんなに体調崩すほど私のことが心配なわけ?そりゃ過保護って言われるわよ。

121名無しさん:2016/04/21(木) 03:38:40 ID:kN6wXz92
>>118-120
乙です!
クリフトの言葉とアリーナの解釈の自然なズレが良いですね
そういう会話から2人の普段の関係が見えてきて、文面以上の奥行きを感じます
微笑ましい絶妙な距離感がたまりませんね

というか、お懐かしい!
お名前は鮮明に覚えているのですが、その名を再び見る日が来るとは夢のようです
再びスレにその名が刻まれたことに感謝の念を禁じえません

122名無しさん:2016/04/21(木) 07:58:59 ID:5dNkr012
2人ともめちゃくちゃ可愛すぎて読んでるこっちが鼻血出そうだよ
おつです!

123名無しさん:2016/04/22(金) 02:51:39 ID:xx15Lz7U
伝説にも似たお方の再来による感激のあまり、視界が鼻血…いや涙で滲むぜ
乙すぎるぜ

124従者:2016/04/22(金) 12:09:47 ID:GvL5W766
>>121-123さん
感想をいただけるどころか私を覚えていてくださった方にお会いできるとは…!
感謝感激のあまり私こそ目から鼻血が
短い書き込みの中にさりげなく垣間見えるお三方の文才に嫉妬です。

実は今後のことで言い訳とお願いをしたく。
次に書き込むときは続きを投下するときだ→煮詰まる→書き込めない→焦ってさらに煮詰まる→さらに書き込めない→遠い年月→現在に至る
という事態に陥っていました。

どうにも私は時系列に沿って投下しようとすると煮詰まるようです。
今後は続きでなくとも単発やネタ、仕上がった場面から投下させてもらえるとゆとりが持てそうです。
(今一番はかどっているのはピサロナイトとロザリーを絡めてのクリアリ)
ちょっと視点が他へ向くと続きがはかどる不思議。(あの教会の夜の続き、目下仕上げ中です;)
いきなり来て申し訳ないのですが、今後そんな感じで流していただけると嬉しいです。

それでさっそくですがあの教会の夜の続きで寝癖のシーンを考えていましてですね。
>>73さん以降ちょうど寝るときの髪型や寝癖の話題になっていて一部そのまま良案いただきました。
皆さまの知識と想像力の豊かさに感涙です。ナイトキャップなんて思いも浮かびませんでしたよ。
私は声を大にして叫びたい。YOUたちこそ書いちゃいなYO!

そこでふと、アリーナはお忍びの旅に出るときいったいどれだけの準備をして壁をけやぶったのかと考えた末このような小ネタが。
例えばこんなクリアリ、いかがでしょうか。

125従者の心主知らず 1/2:2016/04/22(金) 12:16:06 ID:GvL5W766
アリーナ「さあ、今日から自分のことは自分でやるのよ。なんだってできるんだから!」
クリフト「……(知られざる姫さまの日常生活が今や目の前に…)」

アリーナ「ごちそうさまでした!外で食べるご飯ってしんせんでおいしいわね!」
クリフト「……(姫さま、なんと上品に召し上がるのか。やはり気品とは隠そうとして隠せるものでは…)」
アリーナ「えっと、ここはご飯を出してもらったんだから、片づけはやらなくていいのよねっ」
クリフト「……」
アリーナ「ちょっとクリフト、聞いてるの?」
クリフト「あ、はい。そうですね、ここは食堂ですからしたとしても食器をまとめておくくらいですね」
アリーナ「うん!」
クリフト「あの、会計をお願いします」
店員「はい、ありがとうございます」
アリーナ「え?」

アリーナ「ねえクリフト、かいけいってなに?」
クリフト「え?あ、あの、それは……」
ブライ「姫さま、まさかただで飯が食えると思っているわけではあるまいに」
アリーナ「え?」

アリーナ「そっか。お金を払うんだものね。会計ってお支払いのことだったのね。覚えたわ」
クリフト「……。あの、姫さま」
アリーナ「なに?」

なんかクリフトがやけににこにこしてこっち見てるんだけど。

クリフト「もしよろしければ、金銭管理は私にお任せいただけないでしょうか」
アリーナ「えー?」
クリフト「いくらか旅を円滑に進めるお力にはなれると思います」
アリーナ「うーん。でも私、自分のことは自分でやりたいんだけど……」
クリフト「そう、ですか…」
アリーナ「うーん。でもまだお金のことよくわかんないし……」
クリフト「……」
アリーナ「じゃあじゃあ、私がちゃんと覚えるまでお願い!覚えたら私がやるんだから!」
クリフト「はい!姫さま!」

126従者の心主知らず 2/2:2016/04/22(金) 12:21:40 ID:GvL5W766
アリーナ「髪をとくのってけっこう疲れるのね。着替えはなんとかなったけど」

クリフト「……(姫さまは今お部屋で何をされているのだろうか。お困りごとはないだろうか)」

アリーナ「あ!ナイトキャップと歯ブラシ忘れてきちゃった!ちゃんと用意したはずなのに…っ」

クリフト「……(やはりもしものことがあっては……。部屋近辺で警備をしたほうがいいだろうか)」

アリーナ「クリフトに借りるわけにもいかないしお城にはもう戻れないし……どうしよう」

クリフト「……行くか」

クリフト「姫さま、クリフトです」
アリーナ「あ、クリフト!」

アリーナ「よかったわ。ちょうど会いに行こうと思ってたの」
クリフト「わ、わたしにですか!?(ひ、姫さまのパジャマ姿…!)」
アリーナ「うん。あのね、私……」
クリフト「は、はい…!」
アリーナ「あのね……うー……」
クリフト「……」
アリーナ「…………」

アリーナ「あのね!ナイトキャップと歯ブラシ忘れてきちゃったのっ!どうしよう、なくてもいいかなあ」
クリフト「……」

なんかクリフトうつむいてる。なんで?やっぱりないとダメなのかなあ。
そしたらクリフトが顔を上げて言ったの。またやけににこにこして。

クリフト「今夜はもう遅いので無理ですが、明日買いに行きましょうか。似たものがあればいいのですが」
アリーナ「あ…」

アリーナ「そっか!買えばいいんだものね!明日さっそく買いに行くわ!ありがとうクリフト!」
クリフト「はい!姫さま!」

127wiki菅:2016/04/22(金) 22:33:09 ID:RElmhH8A
何度かこちらにも書き込んでいたのですが名乗るの忘れてたので、一応再度確認ということで
クリアリwikiの管理人です
したらばのテンプレが2chからの流用ということで、こちらに投稿されたssもwikiに載せちゃってもOKということで良いでしょうか?

あと2chの本スレが落ちちゃってるんですけど、ツアーやヒーローズ2でまた荒れるのが目に見えてるので2chに新スレは立てなくてもいいですよね?
保守するにも見るのが辛すぎて…


>>118
従者さん乙です!
やっぱりクリアリはかわいいなぁ
ナイトキャップかぶったアリーナ想像したらほんとかわいい

お好きな順に投稿してくださいね
wiki保管でしたらお任せください、この管理人どこまでもついていく所存であります!

128管理人★:2016/04/23(土) 03:35:26 ID:???
>>127
お疲れ様です。
著作権法の観点からコメントしておきますね。
著作権法的には、このスレからの転載は、そちらのwikiへの転載に限り自由です。

「※wikiに掲載されたくない場合は、作品を投下する際にお申し出ください。」
>>1に記載してあるので、法的には事前に許諾を得ている状態となります。
各種裁判での判例を踏まえ、確実にOKになる記載方法にしてあります。

なお他の場所への転載は、作者の許諾を別途得る必要があります。
次スレでは、この避難所内への転載もOKというテンプレが良いかなとは思います。


こっちは私がガチガチに守っていますが2chはノーガード。
それでも2chに立てるなら、IPアドレスやら何やら強制表示にすると良いのでは。
スレ立て時に「!extend:checked:vvvvvv」を1行目に書くだけのはず。
匿名性が薄れて書きづらくはなりますが、荒らしは減るでしょう。

129管理人★:2016/04/23(土) 16:08:52 ID:???
コテハンの人はトリップを使うのも良いかも知れません。
http://jbbs.seesaa.net/article/360026210.html


あと、2chにスレ立てする場合の1行目。
 (1)IP表示 「!extend:checked:vvvv:1000:512」
 (2)強制コテハン 「!extend:checked:vvvvv:1000:512」
 (3)強制コテハン&IP表示  「!extend:checked:vvvvvv:1000:512」

最適解は(3)に思えますが、効果はやってみないと分かりません。
IPアドレスが分かれば、荒らしのプロバイダに通報して強制退会を狙えるかも。

130従者:2016/04/23(土) 18:06:02 ID:GSSeebbc
>>127
感想ありがとうございます!
あのあとやっぱり一人で旅に出たいと部屋を抜け出しクリフトに見つかりブライにさんざんしかられる、
という設定を入れてしまっているため次の日気まずくなって結局ナイトキャップは買わなかったという残念な展開に……。
時系列に沿った投下をしないデメリットはあとで素敵な発想に巡り合えたとき補完が難しいところです;

投下順のご了承ありがとうございます。その節は訂正分を差し替えていただき本当に感謝です。またよろしくお願いします。
個人的にはこうして書かせていただけるだけで感謝ですのでそこがしたらばであっても2chであってもついていく次第です。

>>129
トリップ……なんともなつかしい響きです。
こちらではなくても大丈夫でしょうか。もし必要であればつけますのでまたご指示をいただければと思います。
お世話になります。


ところで違う話も一つしたいのですが、
いたストでアリーナは雷が苦手という設定がありますがその理由ってどこかでわかりますでしょうか。小説版でしたっけ。
初出がどこだかも曖昧でして……。調べる気力はあるのですがもしすぐわかる方いましたらどうか教えてください…。

132管理人★:2016/04/23(土) 21:27:58 ID:???
>>130
トリップを使わないのは構いません。その結果は自己責任です。
いざとなっても私がIPアドレスとか見て本人確認する義理はないということで。
私の手間が余計に増えなければ、私としては問題なしです。

次スレの1か2でコテハンへのトリップ推奨を記載しようとは思っていますが、
トリップを強制するつもりはありません。

以前に、ss投稿者にトリップを推奨する意見が出たことはあります。
2chのPart13スレで、wiki管の方がテンプレ案の中で。
ただ「職人さんの負担になるかな」ということで自ら廃案にされていました。

133名無しさん:2016/04/23(土) 23:34:45 ID:XSK9yW3E
>>124
流れに逆らってまで乙を言いたくなるほどの感激をありがとうございます乙
アリーナとクリフトの微笑ましい関係性に鼻血が出そうです乙
行間のニュアンスを無理なく読ませる力量に脱帽です乙
台詞だけなのに動作まで見えてくることに驚きを隠せません乙
連載を複数抱える作家であれば、読者の楽しみも倍増ってものです乙
予告でさらに楽しみを膨らませるとは乙

あ、言い忘れてましたが・・・乙!

134名無しさん:2016/04/24(日) 02:44:10 ID:KeODlO1Y
>>127
無法地帯な2chに立てても不愉快になるだけなので個人的には立てたくないですが

立てる理由があるとすれば来る人の多さ?
しかしスレタイにクリアリと付けて来る人を増やしたら案の定、癇癪持ちのお子様が暴れる有様
2chに人を呼び込んで平和にやっていくってのはあまり現実的ではない気がする
強制コテハン&IP表示でどれだけ良くなるのだろうか

2chに画期的な対策が加わるまではwikiとしたらばの充実を考えた方が得策?
作品が多ければ検索にかかりやすくなるんだろうな

135従者:2016/04/24(日) 22:45:20 ID:qzWYjsm6
>>131さんが私宛てだったのかまったく違う話だったのか気になって早起きできるようになった従者です。
アリーナの雷の件解決しました。もし教えようと思ってくださっていた方いましたらありがとうございました。

>>132
自己責任承知しました。今のところ支障が出たことはないので今しばらくは従者のままでお願いします。
やろうと思えばIPアドレスを見て本人確認できるその守備の堅さと教えてくださったお心遣いに感謝です。

>>133
乙言いすぎwなんで皆さんそんなにおもしろいんですかw

本当にありがとうございます。皆さんの声が飛び上がるほど嬉しくて何度も読み返してしまうのですが
その声にお応えできる作品に仕上げられるかはわかりませんので
こうしたほうがクリアリっぽいとかいやその展開はおかしいとかありましたら言っていただけると助かります。
書きたいから書いているとはいえ読者がいてくださるからこそ書けるのだと本当に思います。

一つ、爆笑という言葉は複数人に使う言葉であって一人のときには大笑いなどのほうがよいそうですね。
アリーナを無知にさせてしまいました。物を書こうという人間自身が言葉知らずというのは致命傷です;
それでも書こうとする無謀者ですので何とぞ皆さまおかしいところはおかしいと教えてくだしあ

136従者:2016/04/24(日) 22:51:59 ID:qzWYjsm6
皆さまのおかげで5年がかりのあの教会の夜の続き、やっと目処が立ちそうなので景気づけに前お伝えした
ピサロナイトでクリアリ前置きパートを置いていきます。前置きなのでクリアリ要素少なめです;
どうにも私は前置きの長い話も書いてしまうようで、また従者の前置きか、と軽く流していただけると助かります。

2chへのスレ立てをどうするかという大事な話を遮ってしまって心苦しいですが
私もいつまた書けなくなるかわかりませんしどうか投下できるときに投下させてくだし


ではPS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、ロザリーヒル編「ナイト」16シーク分投下します。
勇者は男「ソロ」で進めていきます。戦闘、流血描写がありますのでご覧の際にはお気をつけください。
いろいろな過程をすっ飛ばしてのロザリーヒルですので「?」な描写もありますが何とぞご容赦を。

137従者の心主知らず ナイト 1/16:2016/04/24(日) 22:57:03 ID:qzWYjsm6
キイキイ…。
何かの鳴き声のような耳ざわりな音が聞こえてきた。ここ、確実に何かいる…。私は手を強くにぎり返す。
別に怖いわけじゃないけど、何だか息がつまるような気がした。

私たちは今ソロに続いて塔の地下を進んでる。あたりは静まり返っててみんなの足音だけが響いてた。
長い長い階段をのぼってく。やっと階段が終わりかけた先に人影が見えた気がした。誰か、立ってる…?

「おい、あんた」

ソロが声をかけた。やっぱり人が立ってたみたい。でも返事がない。ソロが前に進み出た。
でも私はなぜかその人に近づく気になれなかった。なんだろう、なぜかドキドキする…。

「ぬぬっ!きさま人間だな…!」

人影はゆらりと動いた。何かが光る。シャラっと金属がすれる音。剣を、抜いた…?
だんだん人影がはっきりしてくる。それは全身を緑色のよろいで固めた騎士だった。

「ここを通すわけにはいかぬ!成敗してくれるわっ!」
「待て!俺たちは戦いに来たんじゃないっ!」
「問答無用」

キィィンッ!!
いっしゅん何が起こったのかわからなかった。気がついたら金属のぶつかる音が聞こえて。
すぐ目の前に騎士がいてソロが剣で受け止めてた。速い…!
私たちは身構えた。きっと速く見えただけ。いつもみたいに戦えばきっと相手の動きだって見えてくるわ。
さっき感じた違和感はこれだったんだ。そう、こいつは敵だったんだ!

「くそっ…」

ソロが剣で騎士を押し返す。騎士はとんだ。え、どこ…!?あんなに重そうなよろいを着てるのに!
ふと口笛のような音が聞こえた。それにこたえるようにキイキイと何かが鳴くような音。
何かが大きく羽ばたくような音と同時に天井から剣を構えた騎士と大きな翼を持った青い竜が突っ込んできた。
ガキィィィンッ!!!キィィンッ!!キィィンッ!!
一撃目をすんででかわしソロが再び騎士の剣を受け止める。そしたら竜が凍えるような吹雪を吐いた。

「ちくしょう!なんだってんだよ!」
「きゃあっ!!」
「姫さまこちらへ!!」
「ソロ!」

138従者の心主知らず ナイト 2/16:2016/04/24(日) 23:01:29 ID:qzWYjsm6
私たちは竜の吹雪にさえぎられソロと離されてしまった。まずはこの竜を何とかしなくっちゃ。
クリフトがすぐに魔法をかけてくれた。私の凍えた手足がほわっとあったかくなって痛みが和らぐ。
吹雪を吐き終えて再び息を吸い込む竜。今がチャンス!!
私はさっきの騎士みたいに高くとんだ。竜はクリフトたちに気をとられてて私に気づいてない。よしっ!

「いっけえええ!!」

私は竜の頭に思いっきりキックした。首が曲がるんじゃないかってくらいこんしんをこめたキック。
竜は大きな音を立てて倒れた。よし!

「姫さま!危ない!!」
「え?」

クリフトが横向きにふっとんだ。そのまま床に叩きつけられる。えっなに?なにが起こったの!?

「クリフトっ!!」
「ギァァアアアッ!!」

目の前に竜がいて私に向かってきた。もう一匹いたんだ…!

「姫さま!」

ブライが私に魔法をかけた。バイキルトだ。力がみるみるあふれてくる。怒りも湧き上がってきた!

「クリフトに何すんのよーっ!!」

するどい口をぬって私は竜のおなかに思いっきりキックした。口から何か吐いて竜は倒れる。

「クリフト大丈夫っ?!」
「わ、私は大丈夫です!それよりもソロさんをっ!」
「……うん!」

向こうで何かがカッと光った。白くてまぶしい光が見えたと同時に雷みたいな大きな音が聞こえた。
衝撃で足がくずれる。

「きゃああっ!!」
「姫さま!」

139従者の心主知らず ナイト 3/16:2016/04/24(日) 23:11:26 ID:qzWYjsm6
私は思わず目をぎゅって閉じちゃった。ううん、ダメよ!今は戦闘中なんだから!

「……大丈夫。大丈夫よ。私は大丈夫!じい!クリフトをお願い!」

震える足を引きずって私は奥に走った。


「うっ……ぐぐぐ……」
「ソロ!」

駆けつけるとソロも騎士も少し離れて立っていて、騎士がふらふらとよろめき後ずさってるとこだった。
血と金属と何かが焼け焦げたような匂い……。騎士のよろいはこわれていた。ソロも服が血まみれだった。
でもソロはふらふらしてない。ちゃんと立ってる。ソロが勝ったのね!!

「何者も…ここを通すことは……」

騎士は床にひざをついたけど剣で支えて立ち上がる。何度も何度も足がくずれては立ち上がろうとする。

「ぐふっ!」

床にぱたぱたと血がこぼれた。騎士はうつ伏せに倒れてく。剣の転がる音と重いよろいのぶつかる音。
でも、まだだ。まだ生きてる…。倒れてもなお両手ではってこっちに進んでくるの。私は背筋がぞっとした。

「ナイト!どうしたのです!?」

どこか遠くで女の人の声がした。騎士が振り返る。

「ロザリー様…いけません…っ」
「ナイト…?」

声が近づいてくる。

「ロザリー様、お逃げください…!」
「ナイト……」

私たちの前に淡いピンクのドレスを着た女の人が現れた。耳がとがってて、色白で、とっても綺麗な女の人。
そう、イムルで夢に出てきたエルフさんだ…!

「まあっ!あなたたちは…!」

140従者の心主知らず ナイト 4/16:2016/04/24(日) 23:16:59 ID:qzWYjsm6
エルフさんは私たちに気づいて驚いた顔をしたけどすぐにきっと唇を結んだ。

「コンドル!ロザリー様を連れて逃げろ!コンドル!!」

騎士が私たちに向かって叫んだ。後ろでバサバサと翼を動かす音。竜に言ったんだ。
でも竜は動かない。力なく翼を上下させるだけ。私が思いっきりキックしたから…。

「コンドル!何をしている!早くロザリー様を連れて逃げろ!!」
「ナイト…」

エルフさんが倒れてる騎士のそばまで近づいてきた。

「大丈夫です。いつかはこんな日が来ると、わかっていました」
「………………ぐっ…!!」

エルフさんは騎士の前でひざをついた。私は何もできなくてただ立ち尽くしてた。ソロも一歩も動かない。
まるで時間が止まったみたいに…。でもクリフトとじいがこっちに来たことで時間は動いてるんだってわかった。

「大丈夫です、ナイト……」
「ロザリー様…っ」

エルフさんが騎士にそっと手を伸ばす。

「ロザリー様…いけません…っ!」

ロザリーと呼ばれたエルフさんは騎士のひび割れたかぶとに手をかけた。きっと外そうとしたのね。
でも少し持ち上げたとたんかぶとはパシッと砕け音を立てて転がった。
中から現れたのは茶色で少し長めの髪にエルフさんと同じくらい耳がとがった男の人。耳が、とがった…?
もしかして、この人もエルフだったの…!?

「ナイト、あなたは…」
「……………………」

騎士とエルフさんはしばらく見つめ合ってたけど騎士がぎゅっと目を閉じて下を向いた。

「コンドル!!何をしている!!早く!!!…がはっ!」
「ナイト…」

141従者の心主知らず ナイト 5/16:2016/04/24(日) 23:22:00 ID:qzWYjsm6
騎士の口からぱたぱたと血がこぼれる。どこか内臓をやられてるんだ。でも竜は動かない。

「大丈夫です……大丈夫……」
「…………っ」

エルフさんは騎士の頭を両手でそっと引き寄せた。

「あ…ロザリー様…っ」
「大丈夫です…」
「っ…」

騎士を優しくぎゅってして、エルフさんはこっちを向いた。私たちをまっすぐ見つめる。なぜか私はびくってなって…。

「あなたたちは、人間ですね……」

エルフさんの腕や服に騎士の血がついていくつも染みを作った。染みはどんどん広がってく。
でもそれを気にもせず、エルフさんはもっと騎士をぎゅってした。まるで守るみたいに……。

「ぷるぷるっ!ロザリーちゃんをいじめたらしょうちしないよっ!」
「スラちゃん…」

どこからかスライムが現れ前におどり出た。でもおびえてる。怖いんだ…。そりゃしょせんスライムだし……。

「違う…。違うんだ。俺たちは…」

ソロ…。

「申し訳ありません!」

クリフト!

「申し訳ありません。すぐに治療をっ!」
「ピキー!!」
「うわっ」
「クリフト!」

スライムがクリフトに飛びかかった。腕から血が流れる。かみつかれたんだ…!
それなのにクリフトはまったく気にとめず床にひざをついて頭を下げたの。

142従者の心主知らず ナイト 6/16:2016/04/24(日) 23:26:10 ID:qzWYjsm6
「どうか、どうか治療をさせてください…。お願いします!」

クリフト…!

「……ちりょう?」

スライムはしばらくその場で右往左往してたけど少しずつ後ずさりを始めた。
クリフトもひざをついたまま前に進んでエルフさんたちとの距離を詰める。

「きさま……ロザリー様に、近づくな……」

騎士がクリフトをにらみつけた。でもエルフさんが再び両手を騎士の首もとに回して引き寄せる。

「大丈夫ですナイト…」
「っ…っ」

騎士はエルフさんを抱きしめた。片方の手で自分を支えてもう片方の手でエルフさんをぎゅってする。
きっと、守ろうとしてるんだ。いっしょうけんめいエルフさんを守ろうとしてるんだ……。

――自分はどんなに傷ついても…!――

「大丈夫です……大丈夫ですよナイト……」
「ぐ……うっくっ……」

クリフトが誰にともなく頭を下げ、何かをささやき始めた。手当てをするときのいつものささやきだ。

「う…っ……ロザリー様……っ」
「大丈夫ですよ、ナイト…」
「っ……」

クリフトはささやき続ける。優しくて澄んだ声。いつもの声。
でも、今まで聞いたどんな声よりも澄んだ声のような気がした。あたりが優しさに包まれる。
私はクリフトの声に聞き入った。

「っ…ロザリー…さま…っ…」
「大丈夫……大丈夫ですから、どうか体を楽にしてください」
「っ…っ…」
「大丈夫…」
「…いやだ…っいやだああああっ…!!!」

143従者の心主知らず ナイト 7/16:2016/04/24(日) 23:30:46 ID:qzWYjsm6
騎士はエルフさんをもっとぎゅってした。私……なんでだろう、私……。前もこんな光景をどこかで見た気がするの。
どこで…?

――いやだああああっ!!!――

どこで……。

――姫さまあっ!!!姫さまああああっっ!!!!――

クリフト…!
そう、コナンベリーへ向かう途中の砂漠で倒れた私に必死に呼びかけてたクリフト。私はそれを遠くから見てた夢。
どうしてこんなことを思い出すの?あの人はクリフトじゃないのに。あのときとはぜんぜん違う状況なのに……。

――いやだああああっ!!!――

――いやだ…っいやだあああっ…!!!――

――あの人はクリフトじゃないのに…っ――

――姫さまああああっっ!!!!――

私はいつの間にか泣いてた。
ただ戦っただけ。いつもみたいに戦っただけ。最初に攻撃をしかけてきたのは向こうのほうなのに。
それなのに、どうしてこんなに胸が苦しいの…?

「クリフト…」

お願い死なないで。死なないで……。自分でも不思議に思うくらいそればっかり願ってた。

――バル…――

ミネア……マーニャ……。お願い、助けて……。

――あの人を助けて……――

「あ、ナイト」

クリフトのささやきが終わったと同時に騎士はエルフさんを抱きしめたまま倒れた。

144従者の心主知らず ナイト 8/16:2016/04/24(日) 23:35:18 ID:qzWYjsm6
「ナイト…」

エルフさんはいっしょに倒れたまま騎士の頭をそっとなでる。もどかしくなるような優しい笑顔で。
クリフトは背中を向けたまま動かない。動かない…。

「クリフトぉ…っ」
「…………」

返事もしない。クリフト…っ。

「っ…死んじゃったの…っ?」

クリフトは答えない。少しだけのぞきこんだらすごく真剣な顔してた。クリフト…っ。

「いえ、眠ったみたいです」

横になったままのエルフさんが笑って私に声をかけてくれた。眠った…?

「ありがとうございます、神官さん」

私は恐る恐る近づいて騎士の顔をのぞいてみた。
ほんとだ。息してる。クリフトの魔法が効いたんだ。死んだんじゃない。生きてる。ちゃんと生きてる。
助かったんだ…!

「よかった…っ」

私はへなへなとその場に座り込んでしまった。何だか力が抜けてしまって。
クリフトはエルフさんに頭を下げると私を通りすぎて後ろに走ってった。その先にいたのは竜。

「あ…」

クリフトは再びささやき始める。竜に向かって。私が思いっきりキックしてやっつけた竜……。
私はもう立てなくなっていてクリフトの後ろ姿をずっと見てた。泣き止んだつもりだったのにまた涙があふれる。
クリフト…っ。
しばらくして竜を一匹抱えたクリフトがこっちにやってきた。でも私は怖くてクリフトの顔を見られなかった。

「さすがは姫さまですね。いついかなるときもみね打ちのキックですまされるその慈悲深きお心」

145従者の心主知らず ナイト 9/16:2016/04/24(日) 23:40:04 ID:qzWYjsm6
さっきまで真剣な顔して返事もしてくれなかったクリフトがやっと声をかけてくれた。いつもの声……。
恐る恐る顔を上げるとクリフトはいつもの笑顔だった。いつもの……。

「竜も、大丈夫なの…?」
「はい。二匹とも命に別状はありません」

クリフト…っ!

「よかった……よかったぁ…っっ」
「はい」

みね打ちのキック……ううん、違う。私は本気で戦った。必殺のキックだった。それなのに、クリフト……。

――優しいクリフト……――

ソロが一歩前に出た。

「すまなかった……」

ソロが頭を下げてる。さっきのクリフトみたいに床にひざをついて。ソロまで…。
その後ろにいたじいまで頭を下げてた。あわてて私も頭を下げる。

「俺たちは戦いに来たんじゃないんだ。どうか、信じてほしい…」
「え?いじめにきたんじゃないの?」

エルフさんと騎士のそばで身構えてたスライムがほっとしたようにとろけて伸びた。
エルフさんもさっきのきっとした顔じゃなくて優しい笑顔でうなずいてくれた。

「傷を負わせておいてこんなこと言える立場じゃないが、どうかその男を休ませたい。どこかないだろうか…」

ソロが少しだけ顔を上げて弱々しげに聞いた。ソロ…。

「……どうしましょう。この塔のどこにナイトの部屋があるのかわかりません。……あ。ああ、いえ、大丈夫です。
この先にもベッドがあるのでそこで休ませましょう。敷布もありますのでコンドルたちも休ませられると思います。
ですが、あの……」

エルフさんは少しだけ騎士を見て、またソロを見た。

「私は力がなくて、彼らを支えることができません。どうか連れてきていただけませんか?」

146従者の心主知らず ナイト 10/16:2016/04/24(日) 23:44:56 ID:qzWYjsm6
ソロが当たり前だって言って騎士を抱えた。じいも手伝ってよろいやこてを外して手当てを始める。
よろいとその下に着てるえんじ色の服を脱がせたら騎士の体は血まみれだった。
じいが魔法で氷水を作り出して洗い流す。胸からおなかまで縦につらぬき裂かれたあと……肌は焼け焦げてて……。
私は思わず目をそらした。
エルフさんの案内で私たちは奥のお部屋に通された。騎士を抱えるソロにコンドルと呼ばれた竜を抱えるクリフトが続く。
私はあわててもう一匹のコンドルを抱えてクリフトの後に続いた。

「申し訳ありません、姫さま」
「ううん…」

クリフトが声をかけてくれたけど私は返事だけして黙っちゃった。
ぐったりして動かないコンドル。とっても重い。いつもだったらぜんぜん気にしないのに、今は胸がずきってしたの。


「ん…う……ザリー…さ……」

騎士が力なく手を伸ばす。宙ぶらりんの手。もう意識はないはずなのに、まだ守ろうとしてるんだ…。
エルフさんはそっと手をとった。

「ナイト、大丈夫です。私はここにいますよ。大丈夫ですから、どうかゆっくり休んで」
「っ……」

エルフさんは騎士の手をとったままこっちに向き直った。

「ありがとうございます、皆さん。……皆さんこそ、おけがは大丈夫ですか…?」

スライムがはっとしたようにクリフトの周りで震え始めた。

「ぷるぷるっ!ごめん。ごめんね…。痛い…?」
「ああ、いえ、大丈夫ですよ。あなたにけががなくてよかったです」
「うぅ…」

クリフトが腕にもう片方の手をかざして何かささやいた。聞こえたのはホイミ。腕にできていた傷がいっしゅんで治った。

「すごーい。すごーい。ぷるぷるっ!」

スライムに笑顔を向けたあと、クリフトは私に向き直って頭を下げた。

「姫さま、治療が遅くなり申し訳ありませんでした」
「ううん、いいのよクリフト。ありがとう…」
「姫さま…」

147従者の心主知らず ナイト 11/16:2016/04/24(日) 23:49:12 ID:qzWYjsm6
思わずお礼を言っちゃった。でも今はほんとにそんな気分だったの。コンドルたちも敷布でゆったり眠ってる。
騎士もコンドルも助かったのは、クリフトがすぐ動いてくれたから。スライムに攻撃されても頭を下げてくれたから……。

――ありがとう…――

クリフトが私にベホイミをかけてくれた。さっきの戦いでの疲れやぬぐい切れてなかった痛みがすっかりなくなった。
ソロもじいも手当てをすませて私たちもやっと落ち着く。
エルフさんにも着替えをするよう言ったらその間騎士の手を握っててほしいって言われて私が握ってあげた。
騎士の手はすっごく震えてた。まるで何かにおびえるみたいに…。力は弱いけどいっしょうけんめい握り返そうとしてるのがわかる。
何をそんなにおびえてるんだろう……。おふとんはしっかりかけてるから寒くはないはず。
私は騎士の手を両手でぎゅってしてエルフさんは大丈夫だよって声をかけたけど騎士の震えは止まらなかった。
エルフさんがありがとうございますって言って戻ってくる。もう一度交代してエルフさんも騎士の手を両手でぎゅってした。

「あなたたちは、やはり人間ですね。けれど……不思議。あなたたちは他の人間とちがってすんだ目をしています……」

エルフさんは私たちひとりひとりを見た。

「何より彼らを救ってくださった……」

エルフさんはいったん視線を騎士に移したけどもう一度私たちをまっすぐ見つめた。

――あなたたちを信じてみましょう――

「私の名はロザリー。どうか話を聞いてください」

世界が魔物たちによって滅ぼされようとしていること。もうそのときはすでに始まっているんですって。
魔物たちをたばねる者の名はピサロ。今はデスピサロと名のり進化の秘法でさらに恐ろしい存在になろうとしていること。
ロザリーはお話ししていった。デスピサロ……。

「お願いです!ピサロさまの……いいえデスピサロの野望を打ちくだいてください!わたしはあの方にこれ以上罪を重ねさせたくないのです……。
たとえそれが……」

――あの人の命をうばうことになろうとも……――

「どうか、どうかお願いします…っ」
「…………」

頭を下げるロザリーの瞳からルビーがこぼれおちた。腕に当たってベッドの下に落ちる。これがみんなの言ってたルビーの涙なのね……。
ソロが落ちたルビーをそっと拾った。でもルビーの涙はソロの手にのったとたんに砕け散った。とけるみたいに消えてなくなる……。

148従者の心主知らず ナイト 12/16:2016/04/24(日) 23:54:17 ID:qzWYjsm6
「…………」

ソロは何にも言わない。クリフトも、じいも……。私もかけられる言葉が浮かばなくて、ずっとだまってた。

「うっうっ……」

ロザリーはずっと泣いてる。いっしょうけんめい声を殺してるけど、すっごく泣いてる……。なんで……。
デスピサロが罪を犯すから?デスピサロを止めるには、殺さなくちゃいけないかもしれないから?

――本当は、死んでほしくないから…?――

「ロザリーってとてもかわいそうな人ね」
「むずかしいものですな。愛し合えばこそそこに悲しみも芽生える……」
「愛…?」

デスピサロとロザリーは愛し合ってるの…?なんで……。そんなの……。そんなこと言われたって……。

「……ごほっ。これはわしにはすこし似合わぬセリフでしたかな」

じいが口をにごした。

「世界が魔物たちに滅ぼされるとはにわかには信じがたい話ですが……今の話がうそだとは私にはどうしても思えません。
戦うしか、手はなかったのでしょうか……」

クリフトがつぶやいた。ひとり言みたいに……。
でも私はクリフトの最後の言葉がよくわからなかった。戦うしか手はなかったのかって、それはだれに対して言ってるの…?

「…………わかった」

ソロがロザリーを見つめたまま小さく、でもはっきり言った。

「デスピサロは、必ず止める」
「………………」

――できる限り、戦わずにすむ方法で……――

ロザリーはソロを見た。驚いた顔をしてたけど、両手で口もとを押さえて、また瞳に涙をあふれさせ、頭を下げて言ったの。

149従者の心主知らず ナイト 13/16:2016/04/24(日) 23:58:56 ID:qzWYjsm6
――ありがとうございます…っ――

その声は震えながらも少しだけ嬉しそうに聞こえた。


「う……っ…」
「ナイト、大丈夫ですよ。大丈夫……」
「っ……」

騎士はロザリーにしがみついた。両手で服をつかんでぎゅってする。ロザリーが手を離したから不安になったのかな。
ロザリーはベッドに座って騎士をひざまくらした。泣き顔を無理に笑ってみせる。
騎士は両腕をロザリーの腰に回して抱きついた。まるで子どもがお母さまに甘えてるみたい。
ロザリーも両手で騎士の頭や肩をそっと包み込む。そのままなでてあげたらやっと安心したみたい、騎士は静かになった。
私はなぜか気になって、騎士のことを聞いてみたの。

「この人、ナイトってお名前なのね」
「……それが、わからないのです……」
「わからない?」
「ナイトは自分のことをピサロナイトだと言うのでナイトと呼んでいるのですが、私はそれは名前ではなくて役職だと思うのです。
でもナイトはそれ以外の名前を教えてくれませんし、ピサロさまに聞いてもそれが名前だとおっしゃるので……。でも、私……」
「……じゃあ、この人のほんとのお名前はわからないのね」
「……ええ……」
「アドンて言ってたぜ」
「え?」

荷物をまとめてたソロが返事した。

「さっき戦ったとき、自分のことアドンって名乗ってた」
「アドン?」
「ああ…」

ロザリーは嬉しそうな顔をして騎士を見つめた。

「アドン…」

騎士の頭や肩を優しくなでる。騎士は静かに寝てる。気持ちよさそう。ロザリーのひざまくらにすっかり安心したみたい。
アドン……どうして今まで名乗らなかったんだろう……。どうしてソロには名乗ったんだろう……。やっぱり耳がとがってる。

150従者の心主知らず ナイト 14/16:2016/04/25(月) 00:03:03 ID:haR8raCM
「この人も、エルフなの…?」
「いえ、この方はピサロさまと同じ魔族の方です」
「この人魔族なの…?」
「ええ…」

魔族……魔物……?私の大ッキライな……。

――ロザリー様を連れて逃げろ!――

あのときの声がずっと頭に響いてる。何度も何度も動かないコンドルに呼びかけてた。
自分も動けない体で必死にロザリーをかばって……。

――いやだ…っいやだあああっ…!!!――

さっきの光景を思い出して私はまた胸がずきってした。
この人はいっしょうけんめいロザリーを守ろうとしてたんだ。ただ守ろうとしただけだったんだ…。

「アドンはずっと素顔を見せてくれなかったのです。
コンドルを呼ぶときやお茶を飲むときに少しだけ口もとは見せてくれるのですが。
こんなかたちでアドンの素顔を見ることができるなんて」

ロザリーはおふとんをかけ直し、アドンの頭を優しくなで続ける。

「アドン…」

――私がここに来るずっとずっと前から私を守ってくれていた人……――

「こういうのをけがの功名っていうのかしら」

ロザリーは私に茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。
自分を守ってくれてた人が私たちのせいでこんなひどい目にあったのに、私たちを一言も責めない…。
本当に、私たちを信じてくれたんだ。

「名前も知ることができましたし、本当にありがとうございます」

すごい人だな…。

「ロザリー」
「なんでしょうか?」
「その……ごめんなさい……」

151従者の心主知らず ナイト 15/16:2016/04/25(月) 00:07:07 ID:haR8raCM
ロザリーは笑顔で小さく首を振った。

「あなたたちのおかげで誰も命を落とさずにすんだのです。本当にありがとうございます。
こちらこそ、お客さまにお茶をお出しするどころかおけがをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
「ぷるぷるっ!ごめんなさい!」
「ん……」

何だか安心する人だなー。

そのあとも私はロザリーといっぱいお話をした。デスピサロのこと、アドンのこと、ロザリーのこと、私たちのこと。
となりに座らせてもらったからお話の合間にアドンの頭をなでたりとがった耳をつっついてみたり。
ソロが買い出しに行ってくるからその間ゆっくり話せよって言ってくれて、じいといっしょにお部屋を出てった。
クリフトはアドンやコンドルの様子を見たり私たちのお話にはんぶん加わったり。スライムも寄ってきてみんなでお話しした。
お城のみんながいなくなったことも話してみたけどロザリーは何にも知らなかったみたい。


デスピサロがみんなをさらったのかどうかもまだわかんないのにロザリーは何度も何度も泣きながら謝ってくれた。
ルビーの涙がアドンの頭に落ちる。でもルビーは砕けなくて、ロザリーがごめんなさいって言いながら取りのぞいた。
魔族はさわってもこわれないんだ…。
泣き続けるロザリーに私はあなたが悪いわけじゃないんだし大丈夫だよって言って笑顔で返した。
デスピサロの名前だけを頼りにばくぜんと続けてきたこの旅が、やっとここで目的地に近づいたような気がしたの。
ソロとじいが戻ってきた。ソロはすっごく落ち込んでるように見えた。じいと何を話してたんだろう……。

「私はここに残ります。まだ彼らの傷も癒しきれていませんし、今何者かに襲われたら一たまりもありませんから」

クリフト…。

「姫さま…。こんなことを申し上げられる立場ではないのですが、その、もしできましたら……その……」

そこまで言ってクリフトはまごまごした。でも私はクリフトの言いたいことが何となくわかったような気がするの。

「どうか……ご一緒に……」
「うん。クリフトが残るんなら私も残る」
「姫さま…」
「アドンにもお城のみんなのこと聞いてみたいし」

私はすぐ返事ができた。何となく思ってたことといっしょだったから。クリフトったら別にまごまごすることないのに。

「ふむ…。いたしかたあるまいな」

152従者の心主知らず ナイト 16/16:2016/04/25(月) 00:11:39 ID:haR8raCM
じいもうなずいてくれた。ソロも小さくうなずいた。

「いえ、どうか行って下さい。サントハイムの皆さまのことは、私からアドンに聞いておきます。
ピサロさまの配下にはアドンと同じか、それ以上に強い方々がたくさんいるのです。どうか万全の態勢でのぞんでください。
私は大丈夫です。アドンの手当ても私がしますから。どうか、ご無事で、またここにお立ち寄りください」
「ロザリー…」
「ぷるぷるっ!ロザリーちゃんはぼくが守るよ!」
「ふふ、ありがとう。スラちゃん」

スライムに笑顔を向けた後、ロザリーは私たちをまっすぐ見つめた。

「どうか、行ってください…」

優しい目をしてるのに、まるで戦いに行くときみたいな決意をした目に見えた。

「……すまない……」

ソロが再び頭を下げる。クリフトとじいも……。

「ロザリー……ありがとう……」

私たちはロザリーの言葉に甘えて少しでも早くデスピサロに会うことに決めた。

「ねえねえ。いいこと教えてあげる。エンドールの南西の岬の王家の墓にはへんげの杖があるらしいよ。
その杖を使えば魔物たちのお城にも入りこめるんじゃないかなあ」
「へんげの杖?」
「うん。いろんな生きものに変身できるんだよっ」

スライムの突然の助け舟に私はなぜか言葉がつまった。

「……あんたは私たちとデスピサロ、どっちの味方なの?」
「?ピサロさまにもロザリーちゃんにも幸せになってほしいよ?」

「スライムってどこにいるのも変に事情通ね」
「エンドールの南西の岬……。そこはたしかにサントハイムの王家の墓がある場所です。
そのスライムの話は信じるに値すると考えてもよいでしょう」
「ふむ。わがサントハイムの王家の墓に財宝があるというのはたしかな話ですぞ。
しかし……あのスライムなにゆえそのことを知っていたのですかな……」

私たちはひとまずスライムの言うままにエンドールの南西の岬、サントハイム王家の墓を目指すことにした。

153従者:2016/04/25(月) 00:19:12 ID:haR8raCM
短編集「知られざる伝説」より、ピサロナイトの名前はアドンでピサロとは旧友であり直属の騎士、
一度ロザリーを人間から救ったことがありその際に一目惚れするも
ピサロに想い人の護衛を頼まれた際その相手が当のロザリーだったことを知り、
顔と名を隠しピサロナイトとして二人に尽力することを決意、
という設定を入れています。戦闘に関しては小説版の流れも取り入れさせていただきました。
本編ではピサロナイトはこの戦闘で死んでいます。けっこうあっさりです。
ただ、ロザリーから依頼を受けるこのイベントは任意という点と
このイベントで倒さなかった場合その後死んだのかどうかが確定できない点
(特にDS版はロザリーがさらわれた後もしばらくはロザリーヒルにいるためますます確定できなくなっています)、
何よりピサロナイト関連でクリアリを思いついたものでして、
この従者シリーズではイベントをこなしつつもピサロナイトを倒さない、というクリアリルートでお届けしていきたく……
本編には直接影響しない範囲ですのでどうかお付き合いいただけると嬉しいです。

それからコナンベリーへ向かう途中の砂漠から教会での蘇生を扱ったクリアリ(ざっくりとは文章化済み)と
バルザックとマーニャミネアを絡めてのクリアリ(まだ構想のみ)は後ほど投下……できたらいいなあ。
この度は長文にお付き合いいただきありがとうございました。

154名無しさん:2016/04/25(月) 00:56:52 ID:FgPX6Cx6
>>135-136
スレ立ての話が必要ならまた誰かが話すのだから遮っても問題なしですよぅ
従者さんは対話スタイルが同人サイト寄りっぽいので2chよりこちらの方が快適に書けそうな気が
2chでそういう密な対話を気に入らないとか言う人が現れて変な感じになったこともありますし

ともあれ長編乙でございます
こういう作品はwikiでしか読めなかっただけに懐かしさがこみ上げてきますよぅ
現役のスレでこんな作品を読める日が来るとは誰が想像したでしょうか

前から続いてきて先にも続く流れですね
まさしく一連の長編の1シーンといった感じで全体の流れを想像させてくれます
順番通りにフルで書いてたらすごいボリュームになることでしょう
所々切り出して発表してあとは想像で補わせるスタイルはベストな選択に違いありません

ピサロナイト存命という暖かい展開に暖かさが垣間見えて安心感があります
場の空気を行間からにじませながらテンポを崩さず進行する安定感が心地良いです
続編でも別の作品でも、今後の作品に期待が膨らんでしまうというものです
スレから目が離せなくなってしまいましたよぅ

155名無しさん:2016/04/27(水) 02:46:28 ID:R1Yzbmf6
2chは集客力があるのかも知れない。
でも心地良い場所でなければ人は離れていくよね。
書き手を叩き、子供が暴れ、火を注ぐ人までいたら無理。
だから2chでは失敗続きで、人が離れてしまったね。

対するしたらば。
集客力の低さは否めない。
平和だから離れる人は少ないんだろう。
でもあまり増えもしない。
加えて、書き手がいなかった。
書き手が離れてから立った避難所だからね。

そんな中で従者さんに絶大な乙。

書き手がいればスレに魅力が加わるよね。
wikiが更新されればwikiの集客力も上がるはず。
これをきっかけにして人が増えたらいいな。

156従者:2016/04/27(水) 03:22:08 ID:Zdi4sfmE
>>154
対話スタイルも切り出しての発表も力量的気力的に精一杯だからなのですがプラスにとらえていただき恐縮です。
同人サイト寄りとは前にも言われたような気が……もしや154さんは5年前当時もそのように教えてくださった方でしょうか。
お心遣いありがとうございます。本当に居場所があるだけで感謝ですのでご提供いただいたスレと皆さんについていきます。

感想もありがとうございます。さえずりの塔編もそうですが本編に直接影響しない範囲ではけっこう好き勝手やっています。
本編をもとにはしていますがかといって何もかもただ忠実になぞるだけでは物足りなすですよ。
クリアリにつながるならたとえピサロナイトだろうとピサロだろうとエビルプリーストだろうとエスタークだろうと
利用させていただく次第です。そそそその分礼儀は尽くしますとも!
書き込みの度に投下できるわけではないのですが遠く空けすぎることだけはないようにしますのでよろしくお願いします。


お恥ずかしながらヒーローズ関連の知識が浅く情報収集中です。(いただきストリートとDS版もです;)
既出ですがギガンテスを前にした二人のやりとりがぐっときますね。相変わらずのお二人にほっとします。

クリフト「ひ、姫さま、またそんな無茶を!相手はギガンテスですよ!?」
アリーナ「ただでっかいだけじゃない!それともクリフトは私があれにやられちゃうくらい弱いって言いたいの?」
クリフト「そ、そういう事ではありません。姫さまのお力は重々承知しております。おりますが、しかし…」

157名無しさん:2016/04/27(水) 09:04:56 ID:P0etH8SM
従者さん長編乙です

いたストは、最初のSPはアリーナが「クリフトなんか最初から相手にしてないのよね〜(笑顔)」とか、ひどかった記憶が
その次のポータブルなんか、クリフトがいないところで堂々とバカにしながら男プレイヤーをちやほやしてて、最悪でした
DSは前2作とは別人か?ってくらいに微笑ましくて、おすすめできます。メダパニにかかったアリーナがかわいい

ヒーローズはムービーシーンはもちろん、戦闘ステージ中の細かい会話なんかも楽しめるので、実際にプレイしてほしい所ですね
個人的に、ムービーでクリフトがアクトに高所恐怖症の克服法として「好きな女の子と手をつないで幸せな気分で行けば…」と言われた後
世界樹ステージ中にアリーナが突然「一緒に世界樹でバンジーやろう」ってクリフトを誘い始めるのが、深読みできて萌えたなあ

158従者:2016/04/28(木) 09:04:13 ID:n/DILxyc
今さらながらふと思ったのですが、wiki管さんがお任せくださいといってくださったのは
もしや投下順ではなく時系列順に保管してくださるという意味だったのでしょうか。

>>157
貴重な情報をありがとうございます。
クリフトを堂々バカにしながら男プレイヤーをちやほや……ちょっとすぐイメージできないすね;
DS版はPS版とさほど変わりないと思っていたらとんでもないことに気がつきまして。
メダパニにかかったアリーナ……どんななのでしょうか。FC版のアリーナしか知らんですよ。

アリーナ「えーん!おうちに帰りたーい!」

ヒーローズは確かに奥が深そうですね。バンジーてwあの世界観でやるバンジーてどんなw
新規キャラクターとの掛け合いがあるのでは4に取り入れるの難しそうですが
手をつなぐのなどさえずりの塔でさっそくやっちまってますし
またおもしろい情報が入り次第それとなく取り入れてみますね。本当にありがとうございました!

159従者:2016/04/28(木) 09:12:17 ID:n/DILxyc
PS版をもとにはしていますがイラストはFC版の目がくりくりしたアリーナと肩幅の広いクリフトが好きです。
(実はこの従者シリーズもそちらのイメージで描いています)
PS版から入られた方はイメージが違うかと思いますがFC版イラストに当てはめてみてもおもしろいと思いますよ。

先日いつまた書けなくなるかわからないと書いてしまいましたが次書けるのがいつになるかと書いたほうが
聞こえ的によかったですね。たとえおなじ意味だったとしても言い方大事。
教会の夜とピサロナイトでクリアリの続き、今しばらくお時間いただきそうなのでつなぎで恐縮ですが小ネタをどうぞ。
長編も書くようになった私ですが本当は1、2カキコで終わるような単純な話が好きです。

160従者の心主知らず:2016/04/28(木) 09:17:05 ID:n/DILxyc
「ねえクリフトー」
「はい姫さま」
「クリフトってぼうしを外すとふんいき変わるわよね」
「え?」

私は砂漠のバザーに行った夜にクリフトと外でお話しした日のことを思い出して言った。

「こないだの砂漠の夜では男の子の秘密が聞けて楽しかったわ。
クリフトはいっつも難しいことばっか言うと思ってたから、さいしょなに言ってるのかわからなかったもの」
「ひ、姫さま…」
「ねえねえ、また外してみて」
「な、なにをおっしゃるのですかっ」
「えー」

クリフトは私から目をそらした。

「この神官帽は私が私であるための象徴です。言わば私の最後の砦なのです。
これを外されてしまったら私はまた、何を口走るか…」
「砦ってなによ。じゃあじゃあ、そこを攻めおとせばクリフトに勝てるのね?クリフトしゃがんでしゃがんで」
「そ、そんな、姫さま…っ」
「ねえしゃがんでよー」
「姫さまおやめくださいっ」
「ちょっとー」
「お願いですっ」

必死にていこうするクリフト。私はぼうしに手を伸ばすんだけどクリフトは背が高いからなかなか届かない。

「あーもうじれったいわね。えいっ」
「ああっ」

私はクリフトを押したおしてぼうしをひったくった。

「あ、あなたがそんなだからわたしがおかしくなるのですっっ」

161名無しさん:2016/04/29(金) 23:13:28 ID:lfXFZJaA
乙です
漢字で書くところを所々ひらがなで書くのが意味深ですね

162従者:2016/04/30(土) 11:24:41 ID:gxwZAjnU
5年がかりのあの教会の夜の続き、やっと仕上がりました。皆さんに心から感謝です。
初めてご覧になる方もいるかと思いますので簡単にあらすじとご説明を。

私はPS版のセリフをなぞったSS(続き物)を書く者です。(合間になぞらないSSを書くときもあります)
王の病気をさえずりの蜜で治しこれからエンドールの武術大会へ向かうという前夜、
お城の教会に泊まりクリフトや神父といろいろな話をして眠りについたという場面から始まります。
前の内容を知っていなければ読み込めないという話にはならぬようなるべく気をつけますが、
wiki管理者さんが>>1のサイトにて保管してくれていますのでもし読んでいただけたら嬉しいです。

では今回はセリフをなぞらないSSアリーナ視点(一部第三者視点)、「旅立ち」10シーク分投下します。
予告するほどご期待に添える仕上がりになったかは不明ですが、どうぞご覧ください。

163旅立ち 1/10:2016/04/30(土) 11:28:53 ID:gxwZAjnU
――また姫さまと旅ができるだなんて……――
――このクリフト、世界中どこへなりとお供をさせていただきます!――
――嬉しいんです。とても嬉しいんです…!姫さまとこんなに近くにいられることが、私には…っ!――

――クリフトも……いつでも姫さまのお側にいることを望んでいた――
――クリフトを選んでくださったということ、クリフトと過ごしてくださった……――
――クリフトもいずれは……いえ、もうすでに……――

クリフトと神父さまの言葉がやけに耳に残ってる。ふたりとも、あれは本気で言ってたのよね。
きっと本気で言ってた……。

クリフトは私のそばにいることを本気で望んでたんだ。でも、どうして?どうしてそこまで?
わかんない。そんなふうに思われる私ってなんなんだろう。わかんない。
ちょっとだけこわい…。
だって、私がクリフトのそばにいたいなんて思ったことあったかな。
……ああ、そうか。
ひとりで旅に出るのは寂しいからクリフトを連れていきたいって思ったことはあったわ。
もしかしたらクリフトも、ひとりが寂しいから私といっしょに旅に出たかったのかなあ。

「姫さま、神父様、朝ですよ」
「んー」
「姫さま」

クリフトの声がする。うっすら目を開けてみるとすぐ目の前に神父さまがおふとんを頭までかぶってた。
その向こうにクリフトが立ってるのが見える。

「んークリフトおはよー」
「おはようございます、姫さま」
「神父さまー朝だってー」
「あと5分、いえ、3分、時間をください」
「えー」
「朝の二度寝とまどろみは最高だと思いませんか?」
「思うー」
「神父様!」

「朝ですねー。起きますかー」
「ふぁーい」

寝ぼけ顔をこすりながら私は大きく伸びをした。夢を見てた気がするんだけどなんだか思い出せない。

164旅立ち 2/10:2016/04/30(土) 11:32:41 ID:gxwZAjnU
「おはようクリフト。あなたはいつも早起きですね」
「おはようございます神父様、いえそんな」
「姫さまも、おはようございます。夕べはよく眠れましたか?」
「おはようございますー。んー眠れたー」
「それはよかった」
「あ、神父さま寝ぐせー」
「え、どこですか?」
「ここー」
「ああ、本当ですね。恥ずかしいです見ないでください」
「ふふ」
「姫さま。姫さまも、髪が少々乱れておりますよ」
「え、うそっ」

クリフトに言われてあわてて髪をととのえた。ちょっと、少々どころじゃないわ、爆発してるじゃない。

「やだもうー」

昨日ナイトキャップはお部屋に置いてきちゃったの。旅の間はしなかったからもうないのに慣れちゃってて……。

「クリフト、そこのニ段目の引き出しに使っていないブラシがあります。姫さまの髪をといてさしあげなさい」
「わ、私がですか?」
「クリフトといてー」
「そ…っ」

なんとなくつられて言っちゃったけど、クリフトに髪をといてもらうのなんて初めてだわ。
お城にいた時はいっつも侍女にといてもらってたの。お母さまがいた時はお母さまもといてきれいに結ってくれた。
でも旅に出てからは自分でとくことを覚えた。髪もお着替えも、ご飯もお洗たくも、ほんとはぜんぶ自分でやるものなのね。
旅に出て本当にいろんなことを覚えたわ。今までどれだけみんなに甘えてたのかってことも。
でも、今だけは甘えちゃってもいいわよね。これからまたすぐ旅人に戻るんだし。神父さまとクリフトだし。

「で、では姫さま、失礼いたします……」
「うん」

クリフトがブラシを持ってきたから私は反対側を向いた。
神父さまはお着替えをしてるみたい。シャラって金属の音が聞こえるのはロザリオかな。
クリフトもそうだけど、ロザリオってジャマにならないのかな。
パンチをするたびに揺れるだろうしキックをしたら外れるかよけいにからまるかしそう。
そんなことを考えてたらブラシがゆっくり髪にとおった。あ、引っかかった。
クリフトは何回か引っぱってるみたいなんだけどぜんぜんとけない。私の髪、ずいぶんからまっちゃってるみたい。
そしたらクリフトは止まっちゃって。しかもブラシを外しちゃった。さらにおんなじことをもういちど繰り返し。

165旅立ち 3/10:2016/04/30(土) 11:36:32 ID:gxwZAjnU
「ちょ、ちょっとクリフト、そんなやり方じゃぜんぜんとけないわよ。先のほうでかたまるだけじゃない」
「も、申し訳ありませ……姫さま、痛くはありませんでしたか?」
「っもう、クリフトったらまどろっこしいわね。こうやるのよ」

私は左手で髪のつけ根あたりを束にしてつかんで、右手でブラシをクリフトの手ごとつかんで何回かしっかりとおした。
からまった髪がやっとほどけてきれいにとけた。

「ひ、ひめさ…っ」
「そのまんま引っぱると痛いから、こうやって髪を押さえてブラシをとおすの。わかった?」
「…は、はい…」

クリフトは今度は覚えたみたいでちゃんとといてる。でもまだなーんか動きがのそのそしててまどろっこしい。
いつもはなんでもてきぱきやるくせに。髪をつかむ時なんかあんまりゆっくりやるからくすぐったくてむずむずしちゃった。

「…ねえ。クリフトってもしかして、不器用なの?」
「っ…女性の、それも姫さまの髪をとくなどまったくもって想定外です。触れるなどとんでもないことですっ」
「そんなにおこらなくたっていいじゃない」
「い、いえ別に怒っているわけでは…っ」
「おこってるじゃない」

神父さまがくすくす笑ってる。

「神父さまーどうして笑ってるの?」
「いえいえ、これは失礼。それにしても、おふたりは本当に仲良しですね」
「え?」
「そ…」
「な、仲良くなんかないわよっ」
「おや、そうですか?」
「そう!」
「……」
「あ……」

思わず叫んじゃったけど、クリフトがなんにもしゃべらないのが気になってきちゃった。手はゆっくり動いてるけど……。
うう、なんだか振り返れない。でもどんな顔してるかわからないのもこわい。どうしよう。

「あ、そうだクリフト。聞きたいことがたくさんあるのよ!」

166旅立ち 4/10:2016/04/30(土) 11:40:29 ID:gxwZAjnU
そういえば思い出した。
昨日クリフトに聞くことがたくさん出てきて頭の中で整理したんだわ。
でも、なんだったっけ。

「ちょっと待ってね。今思い出すから」

そう、聞きたいことが3つあったのよ。数だけは覚えてるんだけど……かんじんの内容が出てこない。

「ええと、なんだったっけ。えーと……」

いっしょうけんめい思い出してるんだけどどうしてこう思い出したいときに思い出せないのかしら。あーもう!
そしたら後ろでクリフトが笑ったような気がしたの。え、笑った?怒ってない?気まずくなってない?

「…クリフトー」
「はい、姫さま」

あ、普通に返事してくれた。よかったー。ってなんでクリフトが普通に返事するとほっとするのよ。

「あ!思い出した!」

さっきまでぜんぜん思い出せなかったのにほっとしたらなんでか一気に思い出した。

「あのねクリフト、昨日は私、途中で寝ちゃったの。だからクリフトとなに話したか覚えてないの。
それを教えてちょうだい」
「…………」
「それとそれと、どうして私のそばにいたいのかと、あと、どうして最初はいやがってたのかも教えてほしいの」
「…………」
「そうよ。前にもおんなじようなこと聞いた時あったわ。だから今度はちゃんと答えて」
「………………」

クリフトまた黙っちゃった。手も止まってるし。神父さまも黙ってる。しーん。うう、どうしよう。
でも私はクリフトがなにか言ってくれるまでじっと待った。そしたらクリフトがやっと口を開いたの。

「ひ、姫さま……」
「う、うん……」

167旅立ち 5/10:2016/04/30(土) 11:44:44 ID:gxwZAjnU
なんだろう、自分から聞いておいてなんだかドキドキしてきたわ。
これで今までの長年の謎が解けるような気がするの。

「その……そのように一気にいろいろ聞かれましても、何からお話しすればよいか…」
「あ、そっか」

私、あせって一気にいろいろ聞きすぎたのね。

「じゃあじゃあ、どうして私のそばにいたいのかを教えてちょうだい。それがいちばん知りたいの」
「………………」

また黙っちゃった。私、言いにくいこと聞いちゃってるのかなあ。

「おふたりとも、大切なお話の途中で大変申し訳ないのですが……」
「え?」

ずっと黙ってた神父さまが話しかけてきた。お着替えはもうすんだみたい。

「姫さまはいったんお部屋に戻られたほうがいいでしょう。話は旅に出てからもできますから、今は…」
「あ、そっか」

私、昨日はこっそり教会に来たんだった。確かにいちどお部屋に戻って仕切りなおしたほうがいいかも。
せっかく聞いたことがおあずけになっちゃうのは悔しいけど、クリフトとはいつでもお話しできるものね。
そしたらクリフトが小さくため息をついたような気がしたの。ため息っていうか、ほっとしたような…?
私は思わず振り返ってクリフトに言った。

「ちょっとクリフト、今聞いたことちゃんと覚えておいてよね。あとでまた答えてもらうんだから」
「あ、はい姫さま!」

ちょっとびっくりして私を見るクリフト。いつものあわてクリフト。なんでだろう、やっぱりほっとしてしまう。

「髪、もういいわ。ありがと」

私は髪をまとめる振りして目をそらしちゃった。
クリフトの行動ひとつひとつにあせったりほっとしたりするのがなんだか悔しいの。
クリフトのくせに。私よりよわっちいくせに。

168旅立ち 6/10:2016/04/30(土) 11:48:16 ID:gxwZAjnU
「神父さまも、泊めてくれてありがとうございます。お着替えをしたらまた来るわ」
「そうですか。ええ、いくらでもいらしてください」
「クリフトはここにいる?」
「あ、いえ、私も外に行く用事がありますので途中までご一緒いたします」
「うん」
「あの、姫さま、このような大きな忘れ物をされては少し戸惑ってしまうのですが……」

あ、私のまくら!

「うーん、ここに置いてっていい?お城に帰ってきたらまたここに泊まりたいの」
「そんな……こまりましたね。お帰りを待つ間抱きまくらにしてしまいそうです」
「んーいいよー」
「…………」

「何かはなむけでもできればよいのですが、こんな色気のない部屋では……」
「えーいいよー」

神父さまはタンスを開けたり閉めたりなにかさがしてたみたいだけど小ビンを持ってきた。
見たことのある青く透きとおった小ビン。

「ふむ、こんなものしかありませんねえ。持ってきます?聖水。使いかけですけど」
「え、いいの?」
「ええ、いいですとも。来るべき姫さまの門出に使いかけの聖水ではまことに締まりませんが」
「ううん、神父さまありがとう!」

私は神父さまから聖水を受けとった。出かける前にまくと虫よけになるんですって。
ちっちゃいころお出かけするとき神父さまがまいててまき方がすごーくカッコよかったの。
さっそく使おうかしら。

「王に、あなたのお父上にごあいさつしてお出かけくださいね」
「えー?」
「どうかごあいさつを」
「えー」
「姫さま」
「うー。わかったわよ、あいさつね」

169旅立ち 7/10:2016/04/30(土) 11:52:36 ID:gxwZAjnU
私はまず神父さまにあいさつしてクリフトとしずーかに教会を出た。


アリーナたちが出ていったあと、普段の静けさを取り戻した居室で神父はふと呟いた。

「姫さま……。あなたが遺伝や親譲りに嫌悪を示すのは、
あなた自身が幼いころからそのことでつらい思いをされてきたからでしょうか……。
ですが、何も心配することはありませんよ。
何者にも立ち向かっていく力強さと、何者をも愛することのできる心優しさは、亡き王妃そっくりです。
クリフト……」

――姫さまを、どうかよろしくお願いしますよ――

神父はそう言うと少し目を伏せて小さく笑った。
彼女たちがその意味を知ることになるのはもう少し先の話。


「昨日は申し訳ありませんでした」
「え?」
「結局何を申し上げたかったのかはっきりしないままで……」

クリフトがうつむきながら小声でしゃべった。あれ、なんの話だっけ。

「えーと、なんだったっけ」
「…………」
「だ、だから昨日話したこと覚えてないんだって。なんのことで謝ってるの?」
「………………」

うう。
私ってなんでかんじんなこと覚えてないのかなあ。思い出すのだって頭の中でちゃんと整理したのに時間かかったし。
そしたらクリフトがすこしだけ笑ったの。あ、また笑った。
バカにした笑いじゃなくて、おかしい笑いでもなくて、なんだろう、ほっとするような笑い。ほんとになんなんだろう。

「では、改めて申し上げます」
「う、うん」

クリフトは立ち止まった。私をまっすぐ見つめる。

170旅立ち 8/10:2016/04/30(土) 11:56:32 ID:gxwZAjnU
「私は姫さまに、感謝しているということです」

え?

――もしあの日姫さまが城の外へ出なければ、私が外で出ることも、こうしていろいろ学ぶことも、
何より姫さまのおそばにいることはなかったでしょう――

「今まで気づけなかったことや知らなかったことがあまりに多く自分の不甲斐なさに落ち込む時もありますが、
それも含めいろいろ学ばせていただけるこの機会に、おそばにいられるこの時間に、心から感謝しているのです」
「…………」
「姫さま、本当にありがとうございます」
「………………」

「……もしかして、それが答えなの?」
「え?」
「さっきどうして私のそばにいたいのか聞いたじゃない。
それは、今まで気づけなかったことや学べることが、いっぱいあるから?」
「…………」

私はなんとなく思ったまんまに聞いてみた。そしたらクリフトはすこしだけ目をそらしたの。

「それもありますが、その……」
「うん…」
「それだけではありません」

…………。

「……じゃあ、なに?」
「それは……その……」

口ごもるクリフト。でも私はまくしたてないで次の言葉を待った。待ってればクリフトは必ず返事をくれるから。

「その…」
「うん…」
「…………」
「…………」
「………………」
「…………」

171旅立ち 9/10:2016/04/30(土) 12:00:32 ID:gxwZAjnU
「私にも、わからないのです…」
「わからない?」
「っ……」

クリフトはすこしとまどった様子を見せた。なんか、いっしょうけんめい言葉をさがしてますって感じ。

「なんと申し上げればいいのか……その……」
「…………」
「ありませんか?こう、理屈では説明できないようななにか、こう、感情的な心理が……」
「…………」
「と、ともかく私は、ひ、姫さまのおそばにいたいのですっ」

クリフトが早口で言いきった。ちょっと顔が赤くなってる。
まるで思いどおりにならなくて駄々をこねるような、子どもみたいなクリフト。余裕のないクリフト。
…………ぷっ。なんでか笑っちゃった。

「もうー、クリフトったらー」
「恥ずかしい…っ」

両手で顔を隠すクリフト。きっと今真っ赤なんじゃないかな。ふふ。

私がクリフトを連れていきたいって思ったのも別に難しい理由があるからじゃなくて、
ひとりで旅に出るのはなんだか寂しいと思ったから。やっぱりクリフトもひとりが寂しいからなのかな。
でも、私はクリフトを連れていきたい理由が寂しいからなんて悔しくてぜったい言わないって決めたから、
クリフトだってはっきり答えてくれなくても文句は言えないわ。
それになんだか嬉しいの。
だからここまで教えてくれたことに感謝して私はあとのふたつを聞くのはやめた。
クリフトが私のこと嫌いなわけじゃないのはとてもよく伝わってきたしなんだか聞かなくてもよくなっちゃった。

「ありがと」
「姫さま…?」
「言いにくいこと言ってくれてありがと」
「姫さま…」

私はクリフトににっこり笑ってみせた。これからもよろしくね、クリフト。

172旅立ち 10/10:2016/04/30(土) 12:07:01 ID:gxwZAjnU
クリフトといったん別れてお着替えをしてお部屋にいるお父さまにかんたんにあいさつをすませて。
じいがそばにいてなにか話してたみたい。あとで合流するから先に正門まで行っててくれって。
私は荷物をまとめて急いで教会へ。クリフトも荷物をまとめて待ってたみたいでまたいっしょになった。
神父さまに最後のあいさつをして教会を出る。やっと堂々と正門から旅に出られるんだわ!

「あっアリーナ姫さま!ごきげんうるわしゅう!城内異常ありません!」
「うん、おはよう」

兵士があいさつしてきた。昨日会った兵士のひとりだ。どうしよう、昨日のこと謝らなくっちゃ。

「ねえ。……あのね……」
「?…はっ!」
「昨日は、ごめんなさい……」
「?…え、あ、な、何を?ひ、姫さまそのようなっ…あ、頭をお上げください!いったいどうされましたっ?」
「ん…」

私は昨日会った兵士たちに昨日はひとりで寝たくなかったのって言ってみね打ちしちゃったことを謝った。
でもだれも私を責めなくて。
最初に私を見つけた兵士は「あれからお風邪は召されませんでしたか?」って私を心配してくれて。
私がいきなりキックしちゃった兵士は「姫さまがご無事で何よりです!」って叱りもしなかった。
最後に会った兵士はすこしだけ顔が赤くて「昨夜はご無礼をどうかお許しください」ってはんたいに謝っちゃって。
だれも私があのあとどこで寝たのかは聞かなかった。どうしてみんな……。

「それはひとえに姫さまのお人柄によるもの。誰もが皆姫さまを信頼し大切に思っているのですから」
「……そうなの?」
「はい」
「…………」

クリフトの言ったこと、よくわかんない。でも私は兵士たちみんなにお礼を言うのを忘れなかった。

正門でじいとも合流する。
「このブライめの目の黒いうちは姫さまにそうそうムチャはさせませんぞ!」ですって。
お父さまのお許しが出たからもう引き止めるのはやめてちがう作戦に出たみたい。やっぱりじいだなあ。
さあ、向かうはエンドール。今度帰ってくる時は武術大会に優勝した時よ!

173名無しさん:2016/05/02(月) 03:06:56 ID:WTLvu1kU
>>162-172
さらっと書いているように見せながら、心の流れを自然に中心に据えていくスタイルですね
それぞれの登場人物の人柄が見えるのは、書き手の中で全員が生きていて、全員の顔が見えているということなのでしょう
メインキャストから兵士に至るまで、書き手に愛されているんだなと思います
登場する人々を大切に思いながら描いていく優しさ、それは読んでいて心地良いです

前のストーリーを思い出しました
当時は「なんで神父さんが主役になってるんだろう?」と疑問に思ったものです
でも、神父さんも書き手に愛されていて、単なる端役と位置づけられていなかったのでしょうね
全員が等しく表情を持って生きていて、大切に扱われて描かれているのが分かります

あえて最後に言いましょう、乙です

174従者:2016/05/02(月) 12:47:41 ID:cIJ8yws6
>>173
乙ありがとうございます。あまりに冷静な分析力あなたいったい何者ですかw

>当時は「なんで神父さんが主役になってるんだろう?」と疑問に思ったものです
ああやはりそう思いましたよね。私も書いてて思いました。プラスに解釈いただき恐縮です。
実はあれはサントハイムでの失踪事件を背景にサランの神父を絡めたクリアリへとつながる伏線なんです。
ところどころ端折ったのですがそれでも長くて当時途方に暮れていました。

どうにもこの従者シリーズはクリアリを中心にストーリーが展開されるのではなく
一連のストーリーの中にクリアリが存在するというスタイルになっています。
クリアリパートを思いつく→そこに至るまでの準備パートを考える→前置きがやたら長くなってどこがメインかわからなくなる→これってクリアリなのか?→端折れず投下できず煮詰まって自信もなくなる→遠い年月→現在に至る
当時は時系列順に投下しなければという焦りもあったものでお手上げ状態でした。
今は開き直らせていただいたのでなんとか……

今投下中のピサロナイトでクリアリ、投下予定のサランの神父でクリアリでも端折りきれず
同じ疑問を持たせるかと思います。
クリアリが読みたいのにクリアリじゃないパートを読ませられるというのはまことに苦痛かと思いますが
(乙してくださる方にレスしたり個人的な好みをベラベラしゃべったりするのもマイナスだったかと感じております;)
人が集まってくるまでの間に合わせ程度になれたら嬉しいです。
(今後クリアリパートはどこという旨(7/12〜9/12など)を事前に抜き出してみます。少しでも読みやすくなれば幸い)

従者は前置きばかりでまどろっこしいから俺がクリアリ書いてやる、という方をぜひお待ちしております。

175従者の心主知らず 1/2:2016/05/02(月) 12:51:33 ID:cIJ8yws6
「お父さまのお許しも出て気分もスッキリ!さあ、はりきっていきましょう」
「侍女の入れたお茶をゆーっくりとすすってのんびりとしたかったのに。
読みかけの魔法書もたんまりたまっておったしああまったく。ぶつぶつ……」

ブライの独り言は相変わらずだから気にしない!

「エンドールでは何が私を待ってるのかしら?うふふっ楽しみね!」
「エンドールまで行けば気がすむか……いや すまない。姫さまはそんなに甘くない。
ぶつぶつ……これは王さまに特別年金をいただかねば。ぶつぶつ……」
「まずは武術大会に出て。それからエンドールのある大陸をずーっと冒険するのよ。
世界を一周してうーんと強くなって帰ったらお父さまびっくりするわ!」
「海の底でも地の果てでもどこへなりと行きましょうぞ。えーどこへでも!」

ブライがすっとんきょうな声をあげた。やっと諦めたみたい。

「うふふ。よろしくね、ブライ」
「まったく……」

私はクリフトを見た。クリフトは考えごとしてたのかな。前を向いたまま歩いてる。

「これから世界中ずっと姫さまといっしょに……」

クリフトが小声で話しはじめた。前を向いたままだからいつもの独り言ね。
私のことをいってる気がしたからいつもならなんの話?って聞くんだけど、私はいいこと考えたの。
もう無理に聞こうと思わないで今度はクリフトを観察することにしたの。
そうしたらどうして独り言を教えてくれないのか、どうして教えてくれなくなったのか、
前とはちがった答えが見つかるかもしれないって思ったから。さっそく観察よ!

「…………」
「…………っ…」

クリフトは嬉しいみたいな切ないみたいな顔して手を胸に当てたあと両手で顔を隠しちゃった。
なかなか手を離さないクリフト。私はずっとクリフトを見てた。

「はっ!」
「あ」

クリフト気づいちゃった。

176従者の心主知らず 2/2:2016/05/02(月) 12:57:41 ID:cIJ8yws6
「ひ、姫さま…」
「うん」
「い、いつから見ていらしたのですか…?」
「えーとね、クリフトが独り言をはじめたあたりから」
「…………あああ…」

クリフトはまた両手で顔を隠しちゃった。ちらっと見えた顔は真っ赤だった。

「ねえクリフト、どうしてそんなに顔が真っ赤なの?」
「そ、それは…っ」
「なに考えてたの?」
「そんなこと…っっ」

クリフトは顔を隠したまま答えない。むー。

「また難しいこと考えてたの?」
「………っ…」
「…………」
「た、たしかにこれから世界中を旅するにあたってのもろもろを考えてはいましたが…っ」
「ふーん。やっぱり難しいことなのね」

クリフトは顔を隠したまんま。こんなにいつまでも顔を隠してるの珍しいわ。
よっぽど熱が出るほど難しいことを考えてたのかしら。たしかに世界中ってうーんと広いものね。
クリフトがやっと落ち着いたみたいで手を離した。その手を胸に当てて私にからだを向ける。

「姫さま、その、申し訳ありませんでした」
「どうして謝るの?」
「いえ、その……会話が円滑に進められず、その……」
「いいわよそんなこと」
「………………」
「っもうー、クリフトったらー」

私はクリフトにいつものことじゃない気にしなくていいわよって言ってにっこり笑ってみせた。
クリフトはしばらくおどおどしてたけどやっと笑ってくれたの。いっしょに前を向いて歩く。

「エンドールとわが国は親しい間柄です。きっと歓迎してくれるでしょう」

クリフトがさらっと言ってのける。
私ではわからない難しいことを考えてくれるクリフト、本当はちょっとだけ頼りにしてるんだから。

177名無しさん:2016/05/02(月) 23:34:56 ID:WTLvu1kU
>>174
むしろ開き直って、端折らず素直に長編を書いた方が楽ではないですか?

クリアリ成分の少ない部分も多い長編でスレを独占するのは問題ですが、専用スレを用意してもらう道もあろうかと思います
冒頭から順に投稿しづらくても、最後に新規スレで手直ししながら順に再投稿できるならそれで解決という気がします
クリアリっぽい部分だけをピックアップして整えてメインスレに投下すればメインスレも潤います

読み応えのあるボリュームの長編があれば、wikiもここもバリエーションが広がって楽しみが増えるでしょう

178従者:2016/05/06(金) 22:18:12 ID:/f.Mh3yE
>>177
貴重なご提案を本当にありがとうございます。全力で考えてきました。

今どうすることが一番楽かといわれたら、今しばらくはこのままの投下を続けさせてもらえることでしょうか。
いかに端的な前置きで展開に破綻なくクリアリできるか、共感いただけるかに今はまだ力を入れてみたいのです。
何ぶん遠く空けてしまいましたので公式も様子が変わったでしょうしこのスレの需要もまだ把握できていません。
もとより次書けるのがいつになるかわからないなどと申している人間です。お心遣い痛み入ります……。

過去スレを改めて見直してきました。いろいろな苦悩があっての避難所とお察し申し上げます。
趣向の合わない作品はスルーということなので現時点ですら楽しく読んでいただけているかわかりませんが
あなた以外にも実は楽しみにしているよ、今回はスルーだけど次は期待しているよ、という方がいてくれると信じて
もう少しこのまま関わらせていただけると嬉しいです。ご提案は今後に備えありがたく控えておきます。

179従者:2016/05/06(金) 22:22:59 ID:/f.Mh3yE
今さらですが>>175‐176を一部訂正したいのです。やはり最初は両手ではなく片手で……
お手数ですが脳内補完をお願いします。失礼しました。

>>175
○ クリフトは嬉しいみたいな切ないみたいな顔して手を胸に当てたあとそのまま顔を隠しちゃった。
× クリフトは嬉しいみたいな切ないみたいな顔して手を胸に当てたあと両手で顔を隠しちゃった。

>>176
○ クリフトは今度は両手で顔を隠しちゃった。ちらっと見えた顔は真っ赤だった。
× クリフトはまた両手で顔を隠しちゃった。ちらっと見えた顔は真っ赤だった。

180名無しさん:2016/05/07(土) 02:56:42 ID:yTXuG.8M
>>178
人が多い時代の2chでも作品に反応する人はそう多くはなかったから、
過疎後に作られた避難所で反応があることが奇跡かと
同人サイトほど密に会話する場所でもないだろうし
過疎が続いてきたんだからめったに来ない人も多いはず

クリアリである限り需要を裏切るくらいでも変化があって楽しめる
悩み煮詰まるくらいなら、あれこれと振り返らずに走り抜けてほしい

見える乙以外に、声にならない乙が存在するので

181名無しさん:2016/05/09(月) 01:47:40 ID:ATmYv9ao
乙するタイミングを逃すことは多々あれど、乙の心は変わりません。

乙する女、略して乙女。
すみません。言いたくなっただけです。

182従者:2016/05/10(火) 22:05:37 ID:WmmW7.EQ
このスレをもう一度日づけから見直してみました。長くて3ヶ月も書き込みのないときがあったのですね。
ここに来たとき思いのほか多くの方に声をかけていただけたので私はまた調子に乗ってしまったようです……。
浅はかで本当に申し訳ありません。お恥ずかしい話です……。

初心に返り少しでも楽しんでいただけるよう、訂正のない作品を並べておけるようやっていきます。
ご返事や反応を本当にありがとうございます。こうしてお話しいただけたこと本当に、私は幸せ者です。


レスと同時に何か投下できたらと練っていたのですがもう少しお時間いただきそうなのですみませんレスのみで。
投下しないのならもっと早くレスすればよかったのにさっそくすみませんでした。また後日伺います。

183名無しさん:2016/05/10(火) 23:53:10 ID:xXjkDHFM
作品投下が始まったことを知らない人がまだ多数派でしょうし、避難所の存在を忘れてる人も多いんでしょうね
ふと思い出したときにwikiを見て新しい作品の存在に気づき、一部の人は避難所に来るのかな?
継続的に作品投下のある避難所であれば、いずれは人が集まるのでは
3ヶ月投稿がなかった時期は2chにスレがあった時期なので、避難所が本スレ化した今は状況が違うはずです

避難所は守られている場所なので平穏が保たれており、作品投下には適しているんじゃないでしょうか
特に従者さんの場合は、今の対話の仕方であれば2chだけは避けた方が良さそうです
無理せず負担のない範囲で、今後ともクリアリファンを楽しませていただけたら嬉しいです

184名無しさん:2016/05/13(金) 01:57:49 ID:XPdVdM/I
今やここが本スレ
ずっと2chでやってきたけど良くも悪くも悪くも2chだったからなー

185従者:2016/05/14(土) 15:07:43 ID:rymdB1q6
ああ、3ヶ月不在は2chと並行していた時期だったのですね。把握もしていなくて;
皆さまが大変だったときに離れてしまっていたことが本当に悔やまれます…

あたたかい声を本当にありがとうございます。
先日過去スレを見直したとき私が書けなくなってから2年たっても名前を呼んでくださっていた方もいました。
今その方々がここにいるかはわかりませんが、どうかご返事させてください。

従者は今ここにおります。帰ってきました。名前を呼んでくださりありがとうございます。


今回はPS版のセリフをなぞらないSSいってみます。
時期はアリーナの幼少期。
クリフトが神学校を卒業してサントハイムへ赴任してからある日のこと、アリーナ視点です。
ちょい役侍女たちとお城のニブい神父さん出てきます。
密着度やたら高いです。でも今回は幼いので微笑ましい……かな。
長くなったので前編後編に分けました。
これまで自分の見た中でクリフトがアリーナに恋をしたきっかけを描いたSSはあまり見かけた記憶がありません。
例えばこんな恋のきっかけ、いかがでしょうか。

186恋をしたのはあの日から 前編 1/14:2016/05/14(土) 15:11:46 ID:rymdB1q6
――クリフトなんかきらい、キライ、大ッキライ!!――


従者の心主知らず 〜恋をしたのはあの日から〜


あたしはずっとぶすっとしてた。クリフトったらあうたんびにお説教のあらしなんだもの。
言葉づかいだってきびしいわ。
「あたし」はお父さまやじいのまえだけ、ふだんは「わたし」、おおやけでは「わたくし」ですって。
いみがつうじれば言葉なんてなんだっていいじゃない。

いつでもあたしのあとをついてきて、おしゃべりいっぱいしてくれて、雨の日は絵本をよんでくれて。
パンチをしたらすぐ泣いちゃって、それでも姫さまぁっていってあたしのあとをついてくるの。
あのころのクリフトはもうどこにもいないんだ……。


「えー神父さまいないのー?」
「はい、今日は急ぎの用がたくさんありましてね。申し訳ありません」
「えー…」
「ですから今日のお勉強は自習です。クリフトとふたりでしていただけますか?」
「えー?」

やだな、クリフトとふたりでなんて。いちにちじゅうお説教をきかされちゃう。
そうだ。休んじゃおう。
あたしは神父さまをおみおくりしたあとクリフトがくるまえにまどをこわしてなんとかお外へはいでた。
きょうはくもひとつなくってとってもいいてんき!んー!きもちいーい!

「姫さま!なんという…!」

あ、クリフト。もう見つかっちゃった。

「やだっ!お勉強なんかしないもんっ!」
「姫さま…!」

あたしはおおいそぎでちかくにあった木にのぼった。

「姫さま危険です!おやめください!」

187恋をしたのはあの日から 前編 2/14:2016/05/14(土) 15:15:32 ID:rymdB1q6
クリフトはすぐいきますといっていなくなった。からだがおっきいからまどからはでられなかったのね。
少ししてむこうから走ってくるクリフト。

「姫さま!下りてください危険です!」

大声でさけぶクリフト。いつものうるさいお説教クリフト。
でも木の下にきたときにはあたしは手のとどかない高いとこまでのぼってた。

「姫さま!」
「やだっ!ぜったい下りないもん!」
「姫さま…!」

あたしはとおくをながめた。きょうはお空がすんでてとってもきれい。風もとってもきもちいい。
こんなきもちのいい日にかたっくるしいお勉強なんかしたくない。クリフトとふたりでなんかもっとしたくない。

――ずっとこのままでいられたらいいのに――

「姫さま!」

クリフトがまた大声でさけんだ。ふ、ふーんだ、おこったって下りたげないんだから。

「今行きます」

え?
うそ、クリフトのぼってきた?ほんとに!?
クリフトはえだに手をかけたり足をかけたりしてる。ほんとにのぼってるの!?

――神父さまだって木の上まではのぼってきたことないのに!――

「クリフトこっちこっちー。ながめがとってもいいのよー?」
「姫さま!それ以上登らないでください!」
「やだもーん」

クリフトどんどんのぼってくる。なんだかわくわくしてきちゃった。

「クリフトはやく、こっちー」
「姫さま……。私は、あなたと遊ぶために登っているのではありません」

188恋をしたのはあの日から 前編 3/14:2016/05/14(土) 15:20:52 ID:rymdB1q6
けっきょくこれ以上はのぼれないってとこまでのぼりきっておいつかれちゃった。

「姫さま……は、はやく下りましょう……」

すこし下をむいてこわい顔でしゃべるクリフト。あーあ、このあといつものお説教がまってるのね。
でも今日はちょっとだけ楽しかったわ。あたしはにっこりわらってみせた。ちょっとびっくりするクリフト。

「姫さま……なにを、ひめさ……姫さま!!」
「あれ?…ちょっとー」
「姫さま!大丈夫です!すぐ持ち上げますからっ!」

木からとびおりようとしたあたしをクリフトがつかんだみたい。からだがぶらーんてなってる。

「ちょっとーはなしてよー」
「なにをいっているのですか姫さま!」
「きゃああっ!姫さま!?」

あ、侍女だ。こわれたまどからのぞきこんでる。

「誰か、誰か姫さまをっ!!」

侍女はだれかをよびにいったみたい。あーあ、お父さまやじいのお説教までまってるわ。クリフトのバカ。

「姫さま、動かないでください!」
「はーなーしーてー」
「姫さま、すぐ、すぐ持ち上げますから…っ」
「だーかーらー」

あ、侍女もむこうからやってきた。そのうしろに兵士がふたり。
あたしははやくおりたくってからだをめいっぱいゆらした。そしたらやっと自由になった。

「きゃああっ!!」
「よいしょっ!!いったあああ…!」ぇぇっ…!!」

足がじんじんする。やっぱりこんかいはちょっと高かったなあ。つぎおりるときは気をつけよっと。

「クリフト?」

189恋をしたのはあの日から 前編 4/14:2016/05/14(土) 15:25:05 ID:rymdB1q6
クリフトは顔を下にしてねてた。ぼうしがとれてる。

「クリフト…?」

もういちどよんだけどクリフトはへんじをしない。

「クリフト…??」
「姫さまご無事ですか!?」

気がついたらまわりにたくさん人があつまってておおさわぎになってた。


「ええ……首の骨にひびが……」

「ええ、命に別状はございません。二、三日ほど安静にしていれば……」

「……はい……はい…。この度は誠に申し訳ありませんでした……」

クリフトが教会にはこばれてからあたしはずっとクリフトを見てた。
クリフトはただねむってるだけだって。そのうちおきるんだって。
だいじょうぶなんだって。
お父さまやじいにいわれていちどおへやにもどる。このあとまってるのはお説教。わかってる。
でもあたしはクリフトのことばっかかんがえてた。

おへやにもどるとちゅうとなりのおへやで侍女たちがなにかしゃべってるのがきこえてきた。

「まったく、姫さまのおてんばにも困ったものだ」

…………。
いつものこと。あたしはおてんばでいうこときかなくて、みんなにめいわくかけるわるい子。
もういいの。いわれなれてるから。

「それにしてもあのお付きの神官は何をやってたんだ。姫さまといっしょに木登りしてたっていうんだろ?」
「外出の際も兵士に何の報告もしてなかったそうですわ」
「いったい何を考えてるんだ…!」

…………。
あたしはおへやにとびこんで大声でさけんだ。

190恋をしたのはあの日から 前編 5/14:2016/05/14(土) 15:29:06 ID:rymdB1q6
「ちがうわ!クリフトはあたしを木から下ろすためにのぼったのよ!クリフトのことわるくいわないで!」

おへやにいたみんながびっくりしてあたしを見る。

「姫さま……失礼いたしました……」

口をそろえてあやまるみんな。どうせうわべだけのみんな。おとなはいっつもほんとのことをいってくれないの。

「みんなみんな大ッキライ!!」

あたしはもういちど教会に走った。だれもあたしをとめなかった。


教会にとびこんできたあたしに神父さまはさいしょびっくりしたけどわらってまねきいれてくれた。
さっきとかわらずねてるクリフト。あたしはまたずっとクリフトを見てた。

「寝る時までロザリオをつけていては肌を痛めてしまいます。これは外しておきましょうね」

神父さまがクリフトのくびからロザリオをはずした。たなの上においたあとあたしの前で片ひざをつく。

「姫さま」
「……」
「あなたがこうしてクリフトを心配してくださるように、王様も、あなたのお父上もまたあなたのことを心配しています。
クリフトはもう大丈夫ですから、さあ、お部屋にお戻りなさい」

…………。

「お父さまがしんぱいなのは、あたしじゃないのっ」
「姫さま?」
「お父さまがたいせつなのは、お上品で、おしとやかで、お母さまのかわりができるだれかであって、あたしじゃないのっ」
「姫さま……そんなことは……」
「あたしじゃなければよかったの」
「…………」
「あたしじゃなくて、もっとお母さまみたいな、お上品で、おしとやかで、いっつもわらってて、
なんでもいうこときく女の子らしい子があたしだったら、お父さまもあんなにおこったりしなくていいの」
「………………」

191恋をしたのはあの日から 前編 6/14:2016/05/14(土) 15:34:12 ID:rymdB1q6
あたしはクリフトの手をぎゅってした。

「ねえ神父さま、あたしここにいちゃダメ…?クリフトといっしょにいちゃダメ…?おへやにもどりたくないの」
「姫さま……」
「だって、おへやにもどったってあたしのいばしょなんてないんだもん」

あたしは神父さまをまっすぐ見た。神父さまはこまったようなお顔をしてる。
でもあたしは目をそらさないでずっと神父さまを見てた。そしたら神父さまは手でお顔をかくしたの。

「子どもにこんなことを言わせるなど、王は……神は……!」
「神父さま…?」

神父さまはしばらくお顔をかくしてたけど手をはなしてあたしを見た。
神父さまはとってもやさしいお顔をしてた。

「ええ、姫さま、ぜひここにいてくださいますか?
先ほどは戻るよう申し上げましたが、本当は私も姫さまにここにいてほしいのです」
「…ほんとに?」
「ええ、うそをついてしまって申し訳ありませんでした。
あなたがそばにいてくだされば、クリフトもきっと安心してぐっすり眠れるでしょう」
「うん!」

「王様には私からお願いしておきますよ。クリフトをよろしくお願いしますね」
「ありがとう神父さまっ」

神父さまはおへやをでていった。あたしはクリフトに向きなおる。うれしいはずなのに、なんだかもやもやしてた。
さっきまでわらってたのに、おへやをでていくときちらっと見えた神父さまはこわいお顔をしてたの。
たけのながいぼうしをかぶりなおして、お仕事のときしかつかわないつえをもって、しずかに十字をきってでていった神父さま。
神父さま…?
あたしはクリフトの手をぎゅってした。ちょっとだけつめたい。あたしは思いきってベッドにはいってクリフトをぎゅってした。
クリフトのからだはあったかい。ちょっとだけほっとした。きっと外にだしてたから手はつめたくなってしまったのね。
あたしはもういちどクリフトの手もぎゅってした。あたしがあっためたげる。きょうはクリフトといっしょにここですごすんだもの。
クリフトはやくおきないかな。


「おかあさまぁ…」

じぶんでいってはっとした。あたし今、お母さまっていったの…?

192恋をしたのはあの日から 前編 7/14:2016/05/14(土) 15:38:22 ID:rymdB1q6
お母さまのことはもうあんまりおぼえてないの。
おぼえてるのはいっつもわらってるお母さまのお顔。となりでねむってるお母さまのお顔。

どんなに声をかけてもおきなくて。
つかれておきられないのかなっておもったけど、つぎの日になってもお母さまはおきなくなって。
いつからかまわりがあわただしくなって、お父さまやじいや大臣、神父さままでよくくるようになって。
お父さまがお母さまをおふとんの上からぎゅってしたのを見たことある。

いつだったかお母さまのお顔に白い布をかけた日があったの。
そんなことしたらいきができなくて苦しいじゃないってあたしははんたいしたのに布をとってくれなくて。
あたしはもしお母さまが苦しがってたらすぐ布をとってあげようと思っていっしょにねたの。
でもお母さまはおきなくて。ぜんぜん苦しがらなくて。

どんどんお母さまがつめたくなってくの。どんなに大きな声でよんでもおきないお母さま。
もうにどとおきてくれないお母さま……。あたしをおいてとおいお空にいっちゃうの。

お母さま…!

おぼえてないんじゃない。あたし、あたし…っ

――いっしょうけんめい思いださないようにしてたんだ!――
――おかあさま…っ!!――

「クリフトおきて。ねえおきて。あたし言葉づかいちゃんと気をつけるから。お勉強もがんばるから。
だからおきて。ねえおねがい。おきて……」

クリフトもしんじゃうの……?
クリフトもあたしをおいてとおいお空にいっちゃうの……?

「やだぁ…やだよお……クリフト……クリフトぉ…っ」

あたしはクリフトをぎゅってした。

「やだぁ…やだあぁ…っ」

やだあああ……。

193恋をしたのはあの日から 前編 8/14:2016/05/14(土) 15:42:19 ID:rymdB1q6
どれくらいじかんがたったんだろう。あたしはずっとクリフトをぎゅってしてた。
クリフトはあったかい。つめたくなってない。だからだいじょうぶ。
あたしがつめたくならないようにあっためる。ずっとあっためる。
だって、つめたくならなければクリフトはいつかおきてくれるでしょ?ここにいてくれるでしょ?
そのうちきっとおきてくれるわ。だからあたしはもっとクリフトをぎゅってしたの。

「っ…」
「クリフト?」

クリフトがすこしだけからだをうごかしたような気がした。

「クリフト…?」
「ひめ…さま…?」

とじてた目が……あいた。あいたの。クリフトがおきた……。おきた!おきたんだっ!!
クリフトはぼんやりした目であたしを見た。
あたしはたぶんなみだで顔がめちゃくちゃだったかもしれないけどいっしょうけんめいえがおでクリフトをむかえたの。

「クリフト。アリーナよ。わかる?」
「姫さま……ここは……私はいったい……はっ!姫さまっ」

クリフトはあたしからはなれようとした。あたしはとっさにクリフトの服をつかむ。
もういちどクリフトをおふとんにもどしてぎゅってした。

「やだクリフト。どこにもいかないで」
「何をおっしゃるのです。は、離してください。なんというみだらなことを…!」
「やあだ」

クリフトだ。いつものうるさいお説教クリフトだ。よかった…。よかった…っ。

「よかったああ…っ」
「姫さま…」
「クリフト、さむくない?ぐあいわるくない?あたまいたくない?」
「姫さま……」
「あたし、あたしね……クリフトがしんじゃったらどうしようって…っ」
「勝手に私を殺さないでください」
「うん、よかった……ほんとによかったぁ……っ」
「…………」

194恋をしたのはあの日から 前編 9/14:2016/05/14(土) 15:46:53 ID:rymdB1q6
あたしはクリフトをぎゅってした。

「っ…姫さま…っ」
「よかった…っ」
「………っ…」

クリフトはまだあたしからはなれようとする。

「こ、こんなことが王様に知れたら…っ」
「だいじょうぶ。神父さまがお父さまにおねがいにいってくれたの。あたしはきょうはここにとまるの」
「そんな…!」
「だからだいじょうぶ」
「そんな……」

あたしはもういちどクリフトをぎゅってした。

「っ…なぜ……なぜ神父様がそのような……」
「ここにいたかったの」
「…………」
「おへやにもどりたくなかったの」
「………………」

――クリフトといっしょにいたかったの――

あたしはクリフトをまっすぐ見てほんとのことをいった。

「そしたら神父さまがお父さまにおねがいにいってくれたの」
「………………」

クリフトはびっくりした顔であたしを見た。びっくりした顔っていうかちょっとこまった顔っていうか。
きっとまってるのはいつものお説教。でもいいの。あたしはもういちどクリフトをぎゅってした。

「あ…」
「ほんとによかった…」
「………………」

あたしはクリフトを見てお母さまみたいににこってわらった。それからまたやさしくぎゅってする。

195恋をしたのはあの日から 前編 10/14:2016/05/14(土) 15:50:54 ID:rymdB1q6
「っ…………」
「クリフトがぶじでよかった…」
「………………」

クリフトのからだはあったかい。生きてる。ちゃんとここにいる。もうだいじょうぶ。だいじょうぶ……。

「姫、さま……」
「うん、もうだいじょうぶ」
「……………………」

お花のにおい……葉っぱのにおい?クリフト、とってもいい匂いがする……。
あたしはなんどもなんどもクリフトの顔を見てクリフトのすがたをかくにんして、ぎゅってした。
クリフトをそばにかんじたかったの。手をのばしてもっとクリフトをかんじる。

「ひめ…さま…」
「うん。よかった…」
「…………姫…っ」
「んっ」

クリフトもあたしをぎゅってしてきた。ちょっとドキっとしちゃった。
でもからだがふるえてる……。クリフト、こわいんだ。いたい思いをしたから……。
あたしがいたい思いをさせちゃったから……。
それにさむいのかも。あっためなくちゃ。あたしがあっためてあげなくっちゃ。

「うん、クリフト。もうだいじょうぶだからね。だいじょうぶだから。
クリフト……ごめんなさい……」

あたしはクリフトのからだをさすった。もういちどぎゅってする。

「ち、ちが……これは…っ」

こんこんて音がした。だれかがおへやのとびらをたたいたみたい。
そしたらクリフトがぱっとあたしからはなれようとするの。あたしはクリフトの服をつかんでひっぱった。
クリフトを引きよせてもういっかいぎゅってする。あわてるクリフト。

「姫さま、神父です。入りますよ」

196恋をしたのはあの日から 前編 11/14:2016/05/14(土) 15:55:01 ID:rymdB1q6
あ、神父さまだ。

「あ、あの、姫さ…っ」
「だいじょうぶだから、クリフト」
「ちが、あの…っ」
「だいじょうぶ」

クリフトはしばらくあたふたしてたみたいだけどあたしのかたに顔をうずめてしがみついた。
うん、だいじょうぶ。

「神父さまーはいってー」

とびらがあいて神父さまがはいってきた。

「おや」
「……っ」

クリフトふるえてる。すっごくふるえてる。どうしてこんなにふるえてるんだろう。

「だいじょうぶよ。クリフト」
「っ……っ」
「…………」

「これはお取り込み中大変失礼いたしました」
「えー神父さまー」

神父さまはこっちを向いたまま下がってとびらをはんぶんしめちゃった。

「クリフト、意識が戻ったのですね。具合いはいかがですか?」

はんぶんになったとびらのむこうからお声をかける。あたしはクリフトを見た。
クリフトはしばらくあたしのかたに顔をうずめてたけどゆっくり顔を上げて神父さまのほうをむいた。
クリフトは切ないみたいな苦しいみたいな顔をしてた。クリフト…?

「神父様…っこんな……」
「…………」
「こんなこと学校では教わりませんでしたっ」

197恋をしたのはあの日から 前編 12/14:2016/05/14(土) 15:59:52 ID:rymdB1q6
え?

「こんな……こんな感情……」
「クリフト…?」
「わ、私は……わたしはいったい…っ」
「…………」
「なぜこんな……こんな……」

クリフト…?

「わたしは、アリーナ姫を……こんな…」
「…………」
「こんな……みだらな……罪…っ」
「………………」

え、なに、どうしたの?どうしてクリフトはこんなにとりみだしてるの?どうして?
神父さまはとびらのむこうでだまってる。クリフトは泣きそうな顔してて……。

「……クリフト」
「神父様っ……」
「………………」

すこしして神父さまがおへやにはいってきた。クリフトの前まできてかがむ。神父さまは……やさしいお顔をしてた。

「今あなたに生じた感情は、人間であればだれもが持ち得ているものです。もちろん私も持っている情です。
学校で教わったことがすべてではありません。何も怖れることはありませんよ」
「……っ…………っ……」
「大丈夫ですクリフト。情を持つこともそれを表に出すことも罪ではありません。
ゆっくり深呼吸をして、肩の力をお抜きなさい」
「……………………」

クリフト…。
クリフトはちからがぬけたのかな。ふっとうしろにたおれこんだの。あたしはあわててクリフトをささえてゆっくりねかす。

「………………」
「クリフト…」
「……………」

198恋をしたのはあの日から 前編 13/14:2016/05/14(土) 16:10:33 ID:rymdB1q6
クリフトはぼんやりした目であたしを見たけどすぐ目をそらしちゃった。クリフト…。
クリフトは神父さまのほうを見る。

「神父様……申し訳ありません……」
「…………」

神父さまはおふとんをととのえてクリフトの頭をそっとなでた。

「まだ体を支えるのも大変でしょう。今はゆっくりお休みなさい」
「………………」

クリフトははいっていおうとしたのかな。口をうごかそうとしてたけどそれは声にならなくて、ゆっくり目をとじちゃった。
口ももううごかそうとしなかった。

「まだ治癒をすませたばかりですからね。疲れていたのだと思います」

神父さまがもういちどクリフトの頭をやさしくなでた。クリフトはもうねむってた。クリフト…。
さっきふたりがはなしてたこと、むずかしくてよくわかんなかった。つみ……つみってなに…?

「姫さまも」
「え?」
「姫さまも、どうか中へ。今夜はずっとクリフトのそばにいてくださいますか?」
「あ、うん!」

神父さまがおふとんを上げてくれてあたしは中にもぐりこんだ。もういちどクリフトをぎゅってする。
神父さまはやさしくわらってくれた。クリフトといっしょにゆっくりおやすみくださいって。
さっきクリフトがいってたのは、あたしがあんまりちかくにいてびっくりしたのとやみあがりでつかれていたのとあって
あせっちゃっただけなんだって。あんまり気にしなくていいんだって。あしたはなせばわかるって。
あたしはまたずっとクリフトを見てたけど気がついたらうとうとしてたの。クリフトのからだがあったかいからだわ。
そう、クリフトはあったかい。ほんとうにもうだいじょうぶ。だいじょうぶなんだ……。
よかった……。ほんとうによかった……。あたしもクリフトをぎゅってしながらゆっくり目をとじた。


「姫さま……。
クリフトの母が天に召され、クリフトもサランへ戻り、ここに遊び相手がいなくなっても、あなたはよくこの教会に足を運んでくださいましたね。
あの時私が、どれだけ嬉しかったか、わかりますか?」
「んー…」

199恋をしたのはあの日から 前編 14/14:2016/05/14(土) 16:14:47 ID:rymdB1q6
神父さまがなにかしゃべってる……。あたしはうとうとしながらきいた。

「あの時あなたは懸命に否定してくださいましたが、当時私は本当に、本当に、自分でもいやになるほど役立たずだったのですよ。
神の声がまったく聞こえなかったのです。何もかも、すべてが疎かになっていて……ニブい神父と言われても仕方がなかったのですよ」
「えー神父さまはなんにもわるくないよー」

神父さまは小さくわらった。

「その言葉にどれだけ救われたことか……。姫さま……あなたのその笑顔に、どれだけ救われたことか……」

神父さまはとおくを見たみたい。

「本当に、失ったものばかりを数えていてはいけませんね……」
「んー…」

――命はこんなにもたくましい――

神父さま…?

「母たちよ、見ていますか。あなた方の遺した子どもたちは今、こんなに元気に育っていますよ」

神父さまはずっととおくを見てる。なにを見てるんだろう。でもすこししたらこっちをむいてわらってくれた。
あたしはほっとしていっしょにわらう。そしたら神父さまがあたしの頭もなでてくれたの。とってもおっきくて、昔のお父さまみたいなやさしい手。
あたしはあんしんしてまたゆっくり目をとじた。神父さまはあたしがねるまでずっと頭をなでてくれた。


――次代を担う子どもたちよ、健やかであれ――

200従者:2016/05/14(土) 16:20:04 ID:rymdB1q6
>>192>>193の間もう一行改行したつもりなのに反映されてなかったんだぜ。
最後の神父さんとの会話は例のごとく今後のためのただの伏線です。いつもすみません;

今回、以下より二人はこんな幼少期だったのではと推測したSSとなっております。

FC版より
・クリフトは神学校を主席で卒業

PS版より
・クリフトは幼いころサランの教会で神の道を教えてもらった
・クリフトは昔からどうも身体が弱い(ブライのセリフより)
・アリーナは小さいころサントハイム王妃の葬儀で王家の墓に行った(ことを覚えている)
・アリーナはよく家庭教師の前で居眠りしていた(ブライのセリフより)
・クリフトは玉座の間にてアリーナの命令で代わりにブライの説教を聞いていた(プロローグより)
・クリフトはブライからアリーナが一人旅に出るという情報を聞いていた(FC版と共通)

小説版より
・クリフトとアリーナは乳兄妹

クリフトとアリーナは乳兄妹としてサントハイムで育ったが
クリフトがサランの教会で神の道を教えてもらいそのまま神学校へ。
(神学校の所在はサラン近辺にあるとしてサランの神父さんも教官の一人としました。
5の学校の規模を見るに下手したらあの教会が神学校という可能性もありそうなので)
その後学校を首席で卒業、サントハイムの教会に見習い神官として赴任。
アリーナは次期女王となるべく勉学の時間があり神学のみ(アリーナの希望で)教会にて、
クリフトが赴任してからは(必然的に)クリフトも同席したとしました。
(その他命令(気まぐれ)でクリフトを玉座の間に呼び出したり遊び相手にさせたりもしており
明確な役職としてではないがクリフトに従者の役目もそこそこ果たさせているとしました)

この従者シリーズではとりあえずそんな感じの幼少期でいってみようと思います。
もしイメージと違う方がいましたらどうかご容赦ください。
公式にて詳細が判明次第そちらを優先したいと思います。(すでに抜けなどありましたら教えてください;)
この度はご覧いただきありがとうございました。後編は翌日〜その後の予定です。

201従者:2016/05/14(土) 20:02:43 ID:rymdB1q6
学校は5じゃなくて4のイムルだったorz
誤字も見つけたしもうダメだorzorz

202名無しさん:2016/05/14(土) 22:15:55 ID:S2LTRg/s
>>185
手が離せないのでSSは後で読みますが、言いそびれないうちに…乙です

気分が悪くなる時期には見ない書かないが一番
不在で良かったんじゃないでしょうか

203名無しさん:2016/05/15(日) 05:23:58 ID:2Lhxuwkg
>>201
なんだかお疲れ様です。

過去にも似た場面があったことで、同じシーンに奥行きが!
さすが、一過性のクリアリ萌えシーンでは終わらせませんね。
クリアリにもシナリオにも注目です。

神父様が絶妙な伏線を張ってくれました。
やり過ぎない程度に心に引っかかりを残す力加減がお見事。
今後への期待が高まることを避けようがありません。

204名無しさん:2016/05/20(金) 02:56:24 ID:7.6Y2vZs
コテハンのキャップ持ちだと投稿制限が緩和されるなら良かったけど、
したらばにそういう機能はなさそうだね

205名無しさん:2016/05/23(月) 02:25:16 ID:lwr.tU/w
>>201
後編の前ではあるんじゃが、ここでGJという言葉を贈ることにしようかの
なるほど、前編だけでも一旦の区切りをつけておるようじゃな
さすがの安定感じゃ

206従者:2016/05/24(火) 21:49:27 ID:fD0voP1o
従者です。少々出遅れました。
PS版のセリフをなぞらないSSアリーナ視点「恋をしたのはあの日から 後編」いきます。
お城の神父さんとサランの神父さん出てきます。密着度やっぱりちょいありです。
両神父との関係や城と教会との関係などやや疑問を残す流れかもしれませんが後ほど解消予定です。
取り急ぎクリアリには影響ないかなと思われますので何とぞご容赦を…。ではどうぞ。

207恋をしたのはあの日から 後編 1/14:2016/05/24(火) 21:55:38 ID:fD0voP1o
あったかい。あったかい。だれかがあたしをぎゅってしてくれてるの。
だあれ?あたしをぎゅってしてくれてるのはだあれ?あたまをなでてくれてるのはだあれ?
お父さま?お母さま?

――姫さま…――

神父さま?

――さようなら…――

え…?
だあれ?だれなの?

だれかがなにかはなしてるのがきこえる。でもあたしはねむくておきられなかった。
やっと目をあけたときあたしはいつもとちがうとこでねてた。
そうだ、きのうは教会にとまったんだった。
まわりを見たら神父さまがそばにいてごあいさつをしてくれた。クリフトは……

「どうしてクリフトはいないの!?」

あたしは大声でさけんだ。クリフトがいなかったの。きのういっしょにねたはずなのに。

「クリフトは……クリフトはお休みをとったのですよ。養生のためしばらくサランで過ごすそうです」
「えーあたしなんにもきいてないわ」
「そうですね……。せめて姫さまが目覚めるまで待ってはと何度も止めたのですが……」
「うー…」

「ねえ神父さまー、きょうのお勉強サランにいっちゃダメ?クリフトにあいたいの。だってなんにもおはなししてないもの」
「そうですねえ……。先日も外出しましたからねえ……。今度はどんな理由で外出しましょうか……」
「うー…」
「………………」

「ああ、視察にしましょう。サランの大聖堂に収めてある女神像の視察と歴史のお勉強。そのついでにクリフトの様子も見てくる。
今回はそんな感じでいってみましょうか」
「うん!」
「あくまでサランの大聖堂に行く理由は女神像の視察です。クリフトと話したあと視察っぽいこともしますので覚えておいてくださいね」
「はーい」

208恋をしたのはあの日から 後編 2/14:2016/05/24(火) 22:01:09 ID:fD0voP1o
あたしはもういちどおふとんにもぐった。おふとんあったかーい。神父さまはたなのそばでご本をよんでる。
あたしはおへやにもどりたくなくってお勉強のじかんまでここにいていいってきいたら
きがえて顔をあらってお祈りしてあさごはんをたべないといちにちがはじまらないからどうかおへやへっていわれた。
それさえおわればまたここにきていいからって。たしかにおなかはすいてきたけど……
それからお父さまに教会にとまるおゆるしをくれたことのお礼をいってくださいって。
お勉強をずる休みしたことも木にのぼったこともあやまらなくていいからお礼だけはしてくださいって。
やだな、お父さまにお礼なんて。

おへやにいくにはお父さまの前をとおらないといけないの。あたしははやく教会にもどりたくって走っておへやへ。
兵士たちをすりぬけてかいだんをのぼったらいつものとこにお父さまもじいもいた。
ごあいさつだけしていそいでとおろうとしたけどアリーナってよびとめられる。やっぱり。
あたしはぶすっとした顔になっちゃったけどいっしょうけんめいお礼をいったの。
そしたらきのうはよくねむれたかですって。
あたしはクリフトがあったかかったからすごーくよくねむれたわっておおげさにいってやった。
じいがちょっとだけさわいだからクリフトはなんにもわるくないわって、クリフトのことせめないでって大声でさけんだの。
そしたらお父さまは……

お父さまもじいもあたしのことおこらなかったの。クリフトのことも……ぜんぜんおこらなかったの。
神父さまといっしょにサランへいくっていってもそうかって、気をつけていってくるのだぞっていうだけだったの。
なんか……なんかへんなの。
きのうのことがうそみたいにふつうにおきがえをして侍女にかみをといてもらってお祈りをしてあさごはんをすませる。
あたしはまた教会へ。神父さまがまってくれてたみたいでさっそくサランへつれてってくれた。


サランの教会に入る。いつものとこにサランの神父さまはいなかった。クリフトは……
お城の神父さまがシスターにクリフトのことをきいてくれた。

「申し訳ありません、神父様とクリフトは別室でお話をされています」
「ああ……告解室ですか」
「あ、は、はい…」
「…………。告白するようなことなど、何もないと思うんですがねえ……」
「……」

神父さまとシスターがなにかむずかしいおはなしをしてる。なにをはなしてるんだろう。

「姫さま」

209恋をしたのはあの日から 後編 3/14:2016/05/24(火) 22:06:53 ID:fD0voP1o
神父さまがもどってきた。

「クリフトは今サランの神父様とお仕事の話をしているそうです。待っている間に例の視察でも終わらせておきましょうか」
「あ、うん!」

あたしは神父さまといっしょに女神像の前へ。のぼったらながめがよさそうなおっきな女神像。
サランの教会はとってもひろい。おいかけっこができそうなくらい。ものもいっぱいあるからかくれんぼもできそう。
でも走るとクリフトがうるさいからできないの。クリフトはいっつもうるさいの。お説教クリフトなの。
でもきょうはそのクリフトにあいにきたんだわ。

「ああ姫さま、終わったようですよ」

むこうからサランの神父さまがあるいてきた。そのうしろに……あ、クリフトだ。いつものふくとぼうしのクリフト。
ふたりともあたしにあたまを下げてごあいさつする。あたしはいっしゅんサランの神父さまににらまれたような気がした。
サランの神父さまはお城の神父さまにもごあいさつする。

「大司教殿……。またアリーナ姫様をお連れして……視察と称した散策ですか」
「ええ、視察と称した視察です」
「…………。お戯れもほどほどにしていただきたいものです」
「おや人聞きの悪い。どこをどう見ても立派な視察じゃありませんか」

ふたりはそのあともなにかはなしてたみたいだけどあたしはクリフトが気になってずっとクリフトを見てた。
クリフトもあたしに気がついたみたいでこっちにくる。あたしの前まできたらクリフトはあたまを下げたの。

「アリーナ姫さま、この度はご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした」
「なによクリフト、かしこまっちゃって」
「姫さまがご無事で、何よりでした……」
「…………」

「ねえクリフト、これからもいっしょにいられるんでしょ?」
「……はい、変わりなく」
「いっしょにあそべるんでしょ?」
「……はい」
「ん」

よかった……。

210恋をしたのはあの日から 後編 4/14:2016/05/24(火) 22:10:58 ID:fD0voP1o
「クリフト、こんどじょうずな木のとびおり方おしえてあげるからねっ」
「そ、それはまたの機会に……」

よかった。
これからもクリフトといっしょにいられる。
よかった……。

「クリフト」
「はい!」

クリフトがふりかえる。サランの神父さまがよんだみたい。

「立ち話も失礼です。アリーナ姫様を部屋へご案内してさしあげなさい」
「あ……はい」

あたしはクリフトのあんないで今までいったことのないおくのおへやにつれてってもらった。
シスターがのみものをもってきてどうぞごゆっくりっていってでてった。あたりがいっしゅんしんとなる。
あたしはさっそくのみものをのみながらきのう気になったことをきいた。あ、ジュースおいし。

「ねえクリフトー」
「…はい、姫さま」
「きのう侍女がはなしてたのをきいたの。どうしてお外にでたときあたしのこと兵士にいわなかったの?」
「は…?」
「だから、あたしをおいかけたときお外へでたでしょ。そのときどうしてあたしのこと兵士にいわなかったのかなって……」
「………………」

「なぜ、そんなことを……」
「いいじゃない、しりたいの」
「…………」

「……確かに、私らしくない対応ではありました。あなたをかばうなど」
「え?」
「あの時、静かなはずの教会からあまりに不快な音がしたもので、まさかと思えば案の定壊れた窓の先にいらっしゃったのはあなたで」

う。

211恋をしたのはあの日から 後編 5/14:2016/05/24(火) 22:15:55 ID:fD0voP1o
「ただ、神父様から本日の講義は自習と伺っていましたし、嫌気が差してのずる休みだということは一目で把握いたしました」

うう。

「というのはあなたの第一声で確信したわけですが」

ううう。

「私は今はただの神官ですがゆくゆくはサントハイムの教会を任される身になるかもわかりません。
本来ならあなたを無事連れ戻すため王様や兵士に早急にご報告しなければならない立場だったのですが、そうしなかったのは私の怠慢によるもの。
罪深きことです……」

え…?

「ただ、ご報告することは放棄しましたが、かといってあなたのずる休みや木登りを容認したわけではありません。
ですからあの時私が取れる最善の対応は……誰にも知られぬうちに教会に戻っていただくこと、あれ以外には浮かびませんでした」

…………。

「以上です。望む解答は得られましたか?」
「あ……はい……」

えっと……。あたしはいっしょうけんめいあたまの中をせいりした。
クリフトは……ほんとはあたしのことお父さまや兵士にいわなきゃいけなかったたちばで……でも、あたしのこと……かばってくれたんだ……。
きのうのことを思いだしてみる。走りながら大声でさけんでたクリフト。あたしが下りるまでまってなくて木の上までのぼってきたクリフト。
そっか……。そうだったんだ……。そうだったんだ!そう思ったらなんだかうれしくなってきた。

「ありがとうクリフト!」

クリフトのうごきがとまった。

「なぜ、礼を……」
「ありがとう!ほんとうにありがとう!」
「か、勘違いしないでください。あなたのためだけではありません。神父様にご迷惑をおかけしたくなかったからです」

なんかあわててるクリフト。

212恋をしたのはあの日から 後編 6/14:2016/05/24(火) 22:20:37 ID:fD0voP1o
「それにあなたの運動神経のよさは理解していますから、多少の木登りならそこまで危険はないと判断したためです」

あたしはずっとクリフトを見てた。なんかいっしょうけんめいしゃべってるクリフト。なんでかわらっちゃった。

「ありがとうクリフト!」
「〜……」

「今さらではありませんか。こんなこと……」
「えへへ」
「ですが、結局侍女に知られてしまいました。あなたにも危険な思いをさせてしまい……今回の判断はあまりに軽率でした…。
私が暇をいただきサランへ帰ったのは、自粛の意味も込めているのです」
「?じしゅく?」
「自らに処罰を下したのです」
「え、なんで」
「…………」
「お父さまもじいもあたしのことおこらなかったの。クリフトのこともぜんぜんおこってなかったわよ?だから、だいじょうぶよ…?」
「……まさか」
「だいじょうぶだから」
「……まさか……」

――おお、クリフトか。もう体調はよいのか?――
――クリフト、今回の件そなたへの処罰はない。神父への処罰もない。今までどおり日課に励むがよい――
――聞けばアリーナを連れ戻すために木の上まで登ったそうだな。大儀であった――
――アリーナが侍女にそういったのだそうだ――
――昨夜もあやつは教会で寝るといって聞かなかったそうだな。いつも世話になる……――
――なに、サランへ行くと申すか――
――どうしても行くというなら止めはせんが体調がよくなり次第またサントハイムへ戻ってまいれ――
――待っておるぞ――

「なぜ……」

クリフトは下をむいちゃった。なにかいっしょうけんめい考えてる。あたしは……あたしはまちきれなくってきいちゃった。

213恋をしたのはあの日から 後編 7/14:2016/05/24(火) 22:24:48 ID:fD0voP1o
「ねえクリフトー、じしゅくっていつおわるの?あしたにはこっちにこれるの?」
「あ、明日!?明日は……無理です……」
「えー…。じゃああさっては?」
「姫さま……。なぜそんな、私が戻る時期を気にされるのです」
「えーだって」
「……」
「だって、クリフトといっしょにいたいんだもん」
「…………」

クリフトはびっくりした顔であたしを見た。でもあたしはクリフトをまっすぐ見た。そしたらクリフトが目をそらしたの。
口に手をあてて……

「クリフト…?」
「…………」
「クリフトー」
「……あさって」
「え?」
「……あさってには、サイトハイムへ戻ります」
「ほんとに?」
「……はい」
「やったやった!」
「……」
「ありがとうクリフト!」
「ひ、ひめさま!?」

あたしはクリフトをぎゅってした。あれ、このかんじ……このかんじ、どこかで……。
あたしはクリフトを見た。クリフトは……かたまってた。あれ?

「ちょっとクリフト、どうしたの?」
「あ、あなたがどうしたのです!い、いきなり抱きつくなど…っ」
「だってクリフトあったかいんだもん」
「そっ……お、おやめください…」
「えー」

あたしはクリフトにやさしくひきはなされちゃった。っもう、きのうみたいにぎゅってかえしてくれたっていいじゃない。

214恋をしたのはあの日から 後編 8/14:2016/05/24(火) 22:32:28 ID:fD0voP1o
「姫さまこそ、なぜ侍女に、私があなたを木から下ろすためにのぼったと言ってくださったのですか?」
「え?」
「王様から伺いました。姫さまが侍女にそう言ってくださったと……。なぜわざわざそのような……」

クリフトがちらっとこっちを見る。侍女が…?
侍女……あたしがいったことお父さまにはなしてくれたんだ……。
お父さまも、それをクリフトに……。

「一緒に木登りをして自分を危険な目にあわせたと話していれば、私を教会から、ひいてはこのサントハイムから追い出すこともたやすかったでしょうに」
「え、なんでそんなことしなくちゃいけないのよ」
「…………。私を、疎ましく思っていらっしゃったのではないのですか…?」

え…?
クリフトはあたしをじっと見る。すこしだけさみしそうな顔。なにかをつたえたいみたいな顔……。

「……」
「……」
「…………」
「……うーん。たしかにクリフトはうるさいけど……」
「……」
「けど、やだ。いっしょにいないのはいやなの」
「姫さま……」
「だからこれからもいっしょなのっ」

クリフトがあたしを見てる。ずっと見てる。あんまり見てるからこんどはあたしが目をそらしちゃった。

「クリフトは、あたしといっしょにいるのいやだった…?」
「なにを……そんなことあるはずが……とんでもないことです」
「ん…」
「身に余る、光栄です……」

あたしはもういちどクリフトを見た。クリフトは……すこしだけわらってあたしにまたあたまを下げたの。

――おそばに置いてくださり、ありがとうございます――

215恋をしたのはあの日から 後編 9/14:2016/05/24(火) 22:38:46 ID:fD0voP1o
「アリーナ姫さま……申し訳ありません」
「え?」
「その、昨夜はあなたを……その……抱きしめてしまいました……」
「……え?」
「私からあのように触れたのは、その……初めてだったもので……なんとお詫びを申し上げればいいか……」
「え?クリフトぎゅってするのはじめてなの!?」

あたしはクリフトの言葉をさえぎっちゃった。

「っ…そんなに何回もあっては困りますっ」
「でもでも、きのうあたしをぎゅってしたじゃない」
「?……」
「ほらあの、あたしが木からとびおりたとき」
「…………」

「あ、あれは非常事態ではありませんか…っ」
「え?ひじょーじ隊?…ってなに?」
「………………」

「と、ともかく、その……」
「…………」
「申し訳、ありませんでした…」

とっても小さな声であやまるクリフト。あたしはなんだかうれしくなってきた。
クリフトったらあやまることないのに。クリフトにぎゅってしてもらえてうれしかったのに。
あ。そういえば。

「ねえクリフトー」
「…はい、姫さま」
「あれ、クリフトだったの?」
「?…」
「あたしがねてたときだれかがあたしをぎゅってしてくれてたの。あたまもなでてくれてたの。
神父さまかなって思ったんだけど、クリフトだったの?さっきぎゅってしたときなんかかんじがにてたのよね」
「…………」

クリフトはびっくりした顔であたしを見た。びっくりした顔っていうかちょっとこまった顔っていうか。

216恋をしたのはあの日から 後編 10/14:2016/05/24(火) 22:42:57 ID:fD0voP1o
「あ、あれは……。起きていらしたのですか……」
「あ、やっぱりクリフトだったのね」
「……もうし、わけ……」
「とってもきもちよかったわ」
「!……」
「あったかくってとってもきもちよかったの。ありがとうクリフト!」

クリフトはまたびっくりした顔であたしを見た。なんかクリフトびっくりしてばっかりね。
あ。そういえば。

「ねえクリフトー」
「は…はい、姫さま」
「きょうはいつもみたいに言葉づかいっていわないのね」
「え、あ……」
「いつもなら、さいしょにいっかい、とちゅうでいっかい、さいごにいっかい、さんかいはいうのに」
「…………」

クリフトはこんどはへんな顔してあたしを見てる。なにかをいおうとしていわないみたいな。

「い、言わないからといって直さなくていいというわけではありません。…お気をつけください」
「……はーい」

あ、そうだ。あたし言葉づかい気をつけるっていったんだった。そしたらクリフトがおきてくれたのよね。
気をつけなくっちゃ。これからはちゃんとしなくっちゃ。あたしはクリフトににっこりわらっていった。

「はい。こんどこそ気をつけるわ。わたし気をつけます!」
「…………」

クリフトはまたへんな顔した。こっちを見たり下を見たりするの。それにちょっと顔が赤いような?

「ねえクリフトー」
「は…はい…姫さま」
「きょうのクリフトなんかへん」
「は…」
「なんか、しずかだし、あんまりお説教しないし、へんなかおしてるし、赤いし」
「っ……」

217恋をしたのはあの日から 後編 11/14:2016/05/24(火) 22:48:25 ID:fD0voP1o
「ま、まだ体調が万全ではありませんので…」
「ふーん。へんなの」
「っ…いきなりいらしておいてそれはあんまりです」

あ。やっぱりいつものうるさいお説教クリフト?

「クリフトこそいきなりサランにかえっちゃうなんてひどいわ」
「っ……それは……。そもそもなぜこちらにいらしたのです。私に用事だったのですか?」
「あ、そうだ。あたしお勉強しなくちゃいけないんだった」
「…………。姫さま、言葉づかい」
「あ。わたしわたし」

クリフトがすこしだけわらっていったの。やっぱりきょうのクリフトはどこかへん。
言葉づかいっていわれるのほんとにいやだったのに、きょうはそんなにいやじゃなかったの。
クリフトはあさっては10時ごろもどりますって。もしよろしければごあいさつにうかがいますって。
あさってにはクリフトがもどってくる。あさって……よし!
あたしはクリフトにまたあさってねっていっておわかれした。クリフトもはい姫さまってわらってくれた。
なんだかきもちがすっとした。足がとってもかるいの。今ならなんだってできそう。
きょうはずる休みしないでちゃんとお勉強してからかえろうって、心からそう思えたの。

――ありがとう、クリフト――


「これはおいしそうですね。チョコレートケーキですか?」
「ううん、ふつうのケーキなんだけど、ちょっとこげちゃったの」
「そうですか。んー香ばしい匂いですね」
「あたしだってやればできるんだから!あ、またあたしっていっちゃった」

そう、きょうはクリフトがサントハイムへかえってくる日。
わたしはクリフトをびっくりさせようと思ってケーキをつくったの。ちゃんとつくりかたしらべたんだから。
クリフトはお父さまと神父さまにごあいさつにいかないといけないからこっちにこられるのはそのあとなんですって。
だからごあいさつがおわったら食堂にくるようにいってってお父さまにおねがいしておいたの。
神父さまはこっちによんどいたの。さんにんでいっしょにたべようと思って。クリフトはやくこないかな。

「アリーナ姫さま、遅くなり申し訳ありません」

きた!

218恋をしたのはあの日から 後編 12/14:2016/05/24(火) 22:54:39 ID:fD0voP1o
「クリフトー!」
「ひ、ひめさま…っ」

わたしはクリフトにぎゅってした。クリフトはあったかい。ふくの上からでもわかるの。あったかくってきもちいいの。

「クリフトおかえりー!」
「姫さまっあの…っ」
「クリフトクリフト!わたしね、ケーキを作ったのよ!」

わたしはクリフトを見上げながらにっこりわらっていった。びっくりするクリフト。

「ケーキ…?」
「そう!」
「姫さまの、手作り…」
「そうよ!わたしがつくったのよ!」

わたしはテーブルまで走ってふりかえる。手をさしだしてクリフトをあんないした。

「クリフト、こちらへどうぞ」
「…………」

クリフトはしばらくびっくりしてこっちを見てたけどふっとわらっていったの。

――あまりにもったいないことです――

クリフトが神父さまにもごあいさつをはじめたけど神父さまはまずはいただきませんかってケーキをさしてくれた。
さんにんでおせきにつく。テーブルにはケーキと紅茶。わたしたちはいただきますしてさっそくケーキをたべた。

「ごめんなさい……」

あたしはひと口でたべるのをやめた。

「…なぜ謝るのですか?」
「だってぜんぜんおいしくないんだもの。にがいしボロボロするし……」
「そんなことはありませんよ」

クリフトがもうひと口たべてくれた。

219恋をしたのはあの日から 後編 13/14:2016/05/24(火) 22:59:04 ID:fD0voP1o
「姫さまが心を込めて作ってくださったケーキなのですから……」

クリフト…。

「そうですねえ……。やはり、少し焦げてしまったのがもったいなかったのでしょうね」

あ。神父さまも食べてくれた。

「ケーキもクッキーもそうですが、低い温度でじっくりと。なかなか時間と手間のかかる料理のようです。
一気に焼いてしまいたい気持ちをぐっとこらえて、今度作る時はのんびり気長に待ってみましょう」

あ。また食べた。

「それから、味つけにはもしやあのあたりを使われましたか?」
「あ、うん。じゃなくてはい!」
「……そうですか。
ではこれらも、今度作る時は蜂蜜やシナモン、バニラエッセンスなど甘くて香りのよいものを選んでみましょう。
ソースや砂糖醤油の味もとてもおいしいのですが、甘いものを作るときには適さないのかもしれません」

あ。また食べた。クリフトも食べてる。

「最初から何もかもうまくいってしまったら料理人の立つ瀬がありません。
どんなにおいしいものを作る料理人も、最初は不満足から始めるものです。不満足でいいんです。
次への参考にすることで、どんどん満足のいくものが作れるようになるのですよ」

いつのまにかふたりに出したケーキはきれいになってた。

「……神父さまもしっぱいしたことあるの?」
「おや、これは痛いことを聞かれてしまいました」

「失敗したことがあるというより、成功したことがない、といったほうがいいですかねえ。
野外で初めて作ったカレー、ご飯は白くふっくら仕上げるつもりがふたを開けたら上から下まで真っ黒、
食べられるところなんかどこにもありませんでした。
サランの神父様に涙目で訴えてご飯を半分めぐんでもらったのは今ではいい思い出ですねえ」
「…………」
「そんな私も今では何とか白いご飯が炊けるようになりましたよ」
「そうなんだ。しっぱいしてもいいんだ」

220恋をしたのはあの日から 後編 14/14:2016/05/24(火) 23:04:17 ID:fD0voP1o
神父さまはにこにこしてあたしにいったの。

――大切なのは、どう仕上げればいいかではなく、自分がどう仕上げたいかですよ――


「悔しいです……」
「?…」
「私も、もっと……もっと何か言えることがあったはずなのに……」
「…………」

「クリフト」
「…………」
「あなたが最初に「そんなことはありません」と言ってケーキを口に運んでくれた、その気持ちこそが大事なのです。
何事も経験です。姫さまを大切に思うその気持ちがあれば、話術など自然と身につくものですよ」
「……」

あたし……わたしがおかたづけをしてるあいだ神父さまとクリフトがなにかお話ししてた。
なにを話してたのか気になったけどおかたづけもひとりでやるっていっちゃったからすぐにそっちにはいけないの。
わたしはいそいでおかたづけをすませておせきにもどった。
神父さまとクリフトがねぎらいの言葉をかけてくれたけどあたしはさっきのことであたまがいっぱい。

「ねえねえ、さっきなんのお話をしていたの?」

神父さまはにこにこしてわたしを見たけどクリフトはすこしかたい顔してあたしを見てた。

「姫さまの笑顔はとても素敵ですねと話していたのですよ」
「えー?」
「姫さまは本当に素敵な笑顔をなさいます。思わずドキドキしてしまいますから」
「神父様…」
「えーそんなことないよ」
「鏡でご覧になったことはありませんか?」
「だってかがみを見るときは侍女がかみをとくときだもの。はやくおわってほしくってぶすっとしてるわ」

わたしはわざとぶすっとした顔をしてみせた。そしたらさっきまでかたい顔してたクリフトがすこしだけわらってくれたの。
神父さまもくすっとわらってあたしにいった。

――では姫さま、あなたのその素敵な笑顔、鏡を使わずしてお見せいたしましょう――

221従者:2016/05/24(火) 23:08:58 ID:fD0voP1o
無駄に伏線回収の好きな従者です。今回のPS版のセリフをなぞらないSSは
「クリフトがアリーナに恋をしたワケ」から始まり
「クリフトが高所恐怖症になったワケ」
「クリフトがアリーナの手作りケーキの味を知っているワケ」
「アリーナが私といったりあたしといったりするワケ」と、今後への伏線にまぎれて
「お城の神父がニブい神父と呼ばれるようになったワケ」が入りました。
最後にまた一つ伏線を入れていますが後ほど回収予定です。
今のところこれらは公式では詳細不明と記憶していますが判明次第修正いたします。
この度はご覧いただき本当にありがとうございました。

222従者:2016/05/24(火) 23:14:27 ID:fD0voP1o
>>202-203
さっそくの感想を本当に本当にありがとうございます!あの、あなたこそお疲れさまです。
過去を悔やんだところで変えられるわけではありませんしね……。お心遣い痛み入ります…。
こうしてまた投下のできるこのスレに、反応を下さるあなた方に、心から感謝です。

>>205
ちょwどちらさまw
ここに来て初めてのGJ……本当にありがとうございます!


かつて私がまだ従者と呼ばれる前、私を「原作沿いの人」と呼んでくれた方がいまして。
その響きがとても嬉しくてですね、なおのこと原作沿いをきわめたいと思ったんです。
なにぶん公式ではアリーナがクリフトの想いに気づいたとはっきりわかる描写がないため
この従者シリーズでも付かず離れずの二人を描き続けるわけですが
続き物のメリットは>>203さんもおっしゃるように一過性でなく徐々に関係を進展させられる点ですので
イベントをこなすごとに原作に支障のない範囲で関係が(主に密着度が)進展いたします。
前置きの長いSSもあり本当に申し訳ないのですが、長い目で見ていただけると救われます。
今後とも原作沿いの人をよろしくお願いいたします。

223名無しさん:2016/05/29(日) 00:32:46 ID:UIgMxrDI
>>221
Good Job!

パズルのピースをバラ売りするかのような発表スタイル
分冊百科のような期待感があります
完成に近づいていくたびに楽しみが膨らみそうです

初回で買ったら逃れられない
そんな分冊百科の魔力がこのスレを襲うとは・・・
無料で良かったです

224名無しさん:2016/05/30(月) 02:42:06 ID:85M36lTw
>>221
前編と後編が揃ったことで、今こそ乙と言うタイミングのようじゃな
謹んで乙という言葉をお贈りいたそう

不味いものを食べたときにそんな優しい言い回しがあるとは
それがにじみ出る人柄というものじゃな
そういう台詞の積み重ねによってじっくりと人柄を描き出すのですな
腰を据えた長距離走型のお方とお見受けしましたぞ

225名無しさん:2016/06/01(水) 00:54:17 ID:tbY6wrSU
やっぱアリーナ姫って料理が下手なイメージですよね。
姫が料理する機会なんてないだろうから当然ですけどね。

226名無しさん:2016/06/01(水) 08:10:40 ID:MU/9sIC2
>>225
イメージというか、クリフトが仲間会話で姫の手作りケーキがパデキア味(すごく不味い)だったと言うしね

227名無しさん:2016/06/02(木) 04:01:41 ID:CRh/iF32
逆に「これだけは下手じゃない」っていう料理があったりするのも、設定としては良いのかもね
以前にクリフトに教えてもらったとか

ぶっちゃけ、料理って味付けせずに炒めちゃえば、初心者でも大きな失敗にはならないよね
食べるときにお好みで調味料をかければいいんで
最初から完璧な料理をマネしようとするから収拾がつかなくなるんだと思う

228従者:2016/06/02(木) 09:00:39 ID:5h2uhey.
従者です。PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、デスパレス編いきます。
今回クリフトのあやしげなセリフはないのですがクリアリを思いついたので書いてみました。
実際にセリフをなぞっているのは1/5のみです。マーニャ(ミネア)さん出てきます。
一部さらっとですが流血、残酷描写がありますのでご覧の際にはお気をつけください。
今はまだもどかしいクリアリですが少しでも楽しんでいただけたら嬉しく思います。

229従者の心主知らず デスパレス編 1/5:2016/06/02(木) 09:05:00 ID:5h2uhey.
「アリーナ、クリフト、あんたたちはそっちの牢屋をお願い!」
「わかったわ!クリフト!」
「はい!姫さま!」

「おお神よ!ほかの人はどうなってもかまいません!
なにとぞなにとぞわたしの命だけはお救いください。アーメン」
「神父さま…?」
「……」

私たちは今魔物たちの城デスパレスにいる。
地下の牢屋に捕まってる人たちを助けようと思ってクリフト、マーニャ、ミネアと回っていたの。
けどその先で見たのは床によこたわって命乞いをしていた神父さまの姿……
私は足が止まってしまった。

「神の教えのなんたるかをひとつも理解していないとは……」

クリフトがぽつりとつぶやく。

「まったくなんと情けない神父でしょう。おなじ教えを説く者として私は…っ」

クリフトは震えてた。クリフト…。
私はよこたわった神父さまをぼんやり見る。見て、思わずクリフトの服をつかんだの。

「待って、クリフト……。ちがう……ちがうよ……」
「姫さま…?」
「ちがう…」

――違和感――

どうして……
他の人たちはみんな連れてこられたばっかみたいにきれいな服を着て普通に動いてたのに、
この人の服はボロボロで、血まみれで、傷だらけで、うつろな目……

――この人はいつからここにいるの…?――

230従者の心主知らず デスパレス編 2/5:2016/06/02(木) 09:09:37 ID:5h2uhey.
「神父さま!」

私は思わず声をかけた。こっちに気づいてもらえるくらい大きな声で。

「あぁぁあああっ…!」
「神父さま?」
「わ、わたしはあなたを救えません…っ」

神父さまはおびえた目をしてあとずさった。救えませんって……

「もう、もう、救えません…っっ」
「神父さまっ」
「あ…っ」

私は神父さまの手を両手でぎゅってした。神父さま震えてる…。すっごく震えてる…っ

「大丈夫……助けに来たの……私があなたを助けに来たのよ。だからもう大丈夫……」
「…っ………」

「神、さま…?」
「私は神さまじゃないよ」
「女神さま!!」

神父さまも私の手を両手でぎゅってした。震えながらその手に顔を寄せる。まるでお祈りするみたいに。
私ももういちどやさしくぎゅって返した。

「うん、もう大丈夫だからね」
「っ……っ」
「姫さま…」

クリフトが後ろは引きうけますっていってくれて、私たちは無事うら口から脱出した。
日の光がまぶしい。今日はとってもいい天気!

231従者の心主知らず デスパレス編 3/5:2016/06/02(木) 09:14:11 ID:5h2uhey.
「女神さま、まだ……まだ牢に捕われた者がおります。男性が二人と女性が一人……。
魔物たちは今夜女性から先に食べようなどと言っているのです。どうか…どうか彼らを…っ」

神父さまは泣きそうなお顔をして私にお願いしてきた。ああ、ほら、やっぱり。やっぱり神父さまなのよ。

「大丈夫。私たちの仲間が助けに行ってるから大丈夫よ。もう大丈夫だから」

私は神父さまににっこり笑ってみせた。
神父さまはおどろいたお顔をしたけどぽろぽろと涙を流してその場にくずれおちたの。

「ああぁぁあ…っっ」
「うん、もう大丈夫だからね」
「姫さま……」

私は神父さまをそっと包んだ。
マーニャとミネアも他に捕まってる人たちを無事連れだせたようで作戦は大成功だった。
よかった……。


「姫さま……申し訳ありません……」
「ん?なに?クリフト」
「私はまだまだ修行が足りません…っ」
「クリフト…?」

捕まった人たちを無事おうちに送りとどけてひと安心!と思ったらクリフトがとても落ちこんでるように見えた。
なんで…。クリフトもいっしょにみんなを助けだしてくれたのに。

「どうしたの?どうして謝るの…?」
「…………」

顔を上げたクリフトはとても寂しそうだった。クリフト…?私はクリフトがなにかいってくれるまでじっと待つ。
そしたらしばらくしてやっとしゃべってくれた。クリフトはさっきの神父さまとすこしお話ししたんだって。

232従者の心主知らず デスパレス編 4/5:2016/06/02(木) 09:19:04 ID:5h2uhey.
神父さまも捕われた人たちを助けだそうとした。でも力が足りなかった。助けられなかった。救えなかった…。
目の前でたくさんの人たちが自分に助けを求めながら死んでいく。死んだ後も恨めしそうにずっとこっちを見てて……
魔物たちはおもしろがって神父を食べるのは最後、なまいきな態度がなくなったらにしたんだって。
何人も何人も次から次へと捕われて死んでいく。無力な自分、募る罪悪感、待ちうける罰、絶望、恐怖、孤独……
逃避。
神父さまがあんなふうになってしまったのはそんないきさつがあったからなんだって。クリフトは静かにお話ししていった。

「私は、あの方の事情を知ろうともせず一方的に批判してしまいました……あまりに情けないことです……っ。
せめて私は、何を失っても変わらない自分でいられるよう、いつでも神の教えを説ける自分でいられるよう」
「……」
「いられるよう、強く……強く…」

いいながらクリフトはゆっくりと私を見た。

――たとえあなたを、……としても……――

クリフト…?
クリフトがとても思いつめた顔してるように見えるの。どうして……

――あなたは今なにを思っているの…?――

「大丈夫よ」

けど私は迷わずすぐ返事ができたの。だって

「だってクリフトは強いもの」
「……」
「失うことも取りみだすこともないわ」
「姫さま…」

あれ。私さらっとなにいってるのかしら。でもクリフトが強くなったのはほんとのことだし。そうよ、ほんとのことよ。
私はクリフトににっこり笑ってみせた。そしたらクリフトはびっくりしたみたいだけどふと下を向いちゃったの。あれ?

「ひ、姫さま…」
「うん」
「その……」
「う、うん」
「………………」

233従者の心主知らず デスパレス編 5/5:2016/06/02(木) 09:25:05 ID:5h2uhey.
あ、クリフト笑った?クリフトはそのままゆっくり頭を下げていったの。

――あまりに、もったいないお言葉です…――

もういちど私を見たクリフトはやっぱり笑ってた。
その笑顔がなんだかまぶしく見えて、私は思わずクリフトから目をそらしちゃった。なんだか顔が熱いの。なんで?
そしたらクリフトも私から目をそらしたみたいなの。なんだかもじもじしてるようなかんじ。それもなんで?
ふたりして下を見てる。
……なんなのこの状況。なんか……なんかへんなの。

「ほらほらそこふたり、なーに青春してるのよ」
「あ、マーニャ。ミネアも」
「マーニャさんっ」
「野次馬してあげてもいいんだけど今はちょっと状況が状況だからねえ、一段落した後にしてくれない?」
「姉さん、そんな言い方……」
「も、申し訳ありません!」
「え?」

なんかマーニャとミネアとクリフトがわかりあったみたいにお話ししてるのに私は話の展開がはやすぎてよくわからなかった。
クリフトが私に向きなおる。

「姫さま、今は一刻を争う時です。ソロさんたちはまだ城を調べているでしょうから急いで合流しましょう」
「あ、そっか。わかったわ!」

私たちはマーニャのルーラでふたたびデスパレスへ。
なんだか悔しいな。さっきさんにんが話してたのはつまりそういうことだったのよね。クリフトにいわれるまでわからなかった。
くやしいな……。
でも今はそれどころじゃないわよね。はやくソロたちと合流しなくっちゃ。
このもやもやはみーんな魔物たちにぶつけることにするわ。

私たちは入り口でソロたちと合流した。
今日は2階で会議があるんですって。牢屋のことはまだ気づかれてないみたい。
とりあえずまた変化の杖で魔物の姿になってその会議にこっそり出てみようってことになった。
私はもういちど名乗りでる。そしたらクリフトもいっしょに行くっていってくれてソロもいいぜ、頼むっていってくれた。
さあ、今度こそデスパレスの中へ!

234従者:2016/06/02(木) 09:29:16 ID:5h2uhey.
>>223
Good Jobありがとうございます!なんだか大げさですよぅ
思いつきで状況が変わることもあるのでいつかどこかで破綻しそうです;
もしおかしな展開がありましたら何とぞ何とぞ教えてくだしあ

>>224
なんという見事な乙。謹んでお受けいたします。ありがとうございます。
私自身が台詞や人柄、言い回しの勉強中でして。。
投下の流れ的にも長距離走になりそうです、今しばらくお世話になります。

料理の話の続きですがクリフトの仲間会話とはこちらですね。

クリフト「パデキアの味ですか?
  そうですねえ たとえるなら
  姫さま手作りのケーキのような……
クリフト「い いえそのっ
  別に まずいとか 苦いとか
  そういうつもりでは!!

まずいとか苦いとかそういうつもりではないのならどういうつもりで言ったのか。
実は意味深な言葉でもあるのかと思うと本当にいろいろな背景が浮かびそうです。

235名無しさん:2016/06/03(金) 02:46:29 ID:45P5YSG6
人の心を中心に描き、人を浮き彫りにしていく。
だからクリアリ成分にも深みが出てくるのでしょう。
ただの萌えネタに留まらない本格派のクリアリ。
いやはや乙です。

236名無しさん:2016/06/04(土) 04:32:00 ID:i97sPjrI
「おお神よ!ほかの人はどうなってもかまいません!」って、そこに至るまでの経緯は垣間見えて
それなりに深い台詞なんですけど、それだけを見るととんでもない台詞ではあるので
ファミコン版で気に留めなかった人も多かったんだろうなと思います
説明過多にならずに考えさせる余地を残しているのが良さではあるんですけどね

>>229-233
God Job!
牢屋から出た人々が神の祝福を得て、あの島から脱出できますように
脱獄しても、城内より城外の敵の方が強いから絶望しかない島なんですよね

237従者:2016/06/04(土) 12:38:09 ID:QS3H3Q5k
従者です。さっそくすみません。
前回のデスパレス編、6章では牢に捕われていた人たちが反対に牢の番をしていたんでしたね。
さっそく設定破綻しました;(せっかくのリメイク版なので6章ルートで進めたいと考えていまして)
また同じ人が捕まったのでは切ないので6章では同グラフィックの別人が牢の番をしたとしといてください;
それと微々たる訂正ですがクリフトのセリフ
「まったくなんと情けない神父でしょう。おなじ教えを説く者として私は…っ」

「まったくなんと情けない神父でしょう。同じ聖職者として私は…っ」
にて脳内補完をお願いします。同じ言い回しがガーデンブルグにあったものでできる限り取り入れたく……
後から訂正箇所が見つかったときの落胆半端ないです。いつも申し訳ないです;

>>235
本格派……まぢですか!乙ありがとうございます。

>>236
God Job!て、うまいですね。そんなあなたがGod Job!です。

あ、あ、SS内では一応マーニャのルーラで脱出したとしています。わかりにくくてすみません;
絶望しかない島……確かに。
もともと商人が脱獄?していましたがそこかしこに移民がうろうろする世界観ですし(どうやってそこまで行ったのかと)
外の敵との関係ってゲーム内ではどうなってるんでしょうね。
ドラクエのそういういい加減なところが残念なようで気が楽でもあって実はけっこう好きです。

238従者:2016/06/04(土) 12:45:05 ID:QS3H3Q5k
PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、ロザリーヒル編「男」21シーク分投下します。
ピサロナイト「アドン」存命ルートで>>137-152の続きのようなものです。(理由詳細は>>153にあります)
クリアリパートは12/21以降です。それ以前には流血描写がありますのでご覧の際にはお気をつけください。
その節はクリアリ要素のない前置きパートを置き逃げしてしまい大変失礼しました;
今後ピサロナイト関連にはクリアリパートがありますのでどうかお付き合いいただけると嬉しいです。

239従者の心主知らず 男 1/21:2016/06/04(土) 12:49:21 ID:QS3H3Q5k
――詳しいことはわしが聞いておく。お前たちは早く塔へ!――

私たちは今ロザリーヒルに戻ってきてる。デスピサロたちの話が気になって。
エルフのロザリーがどうのこうのって言ってたの。もしかしたらロザリーの身になにかあったんじゃ……。
ブライがよろず屋のおじいさんから話を聞いてくれるっていうから私たちは塔に走った。

「ねえ、ねえあれ、コンドルじゃない!?」

塔に近づいてきたら外れに青い生きものがよこたわってたの。あれはきっとコンドル…!

「もしやけがを……。早く治療をしなければ」

クリフトも気づいたみたいでいっしょに走ってくれた。

「コンドル大丈夫!?」
「……ギャア!」
「きゃっ」
「姫さま!」

コンドルはくちばしで私を振りはらった。でも私は気にせずコンドルをぎゅってする。

「大丈夫よコンドル!私たちは敵じゃないの!」
「ギァアアッ!!」
「お願いだから言うこと聞いてっ…」

コンドルはさわいで私から離れようとする。私はいっしょうけんめいコンドルをぎゅってした。

「クリフト!」
「姫さま!どうかそのままで!」
「うん!」

クリフトはもう準備してくれてたみたいですぐベホイミをかけてくれた。さわいでたコンドルがすこしだけ静かになる。
ケガを治したことで敵じゃないってわかってくれたのかな、やっと落ちついたみたい。ちからが抜けたのがわかった。

「キイキイ…」
「あ、こら」

コンドルは私の腕をなめた。よく見ると血がにじんでる。私、いつの間にかすりむいちゃってたみたい。

240従者の心主知らず 男 2/21:2016/06/04(土) 12:54:20 ID:QS3H3Q5k
「もう大丈夫だからね」
「キイ…」
「姫さま」

クリフトが手をかざしてた。手当てしますの合図。さっそく私にホイミしてくれた。腕がほわっとあったかくなる。

「ありがとう、クリフト」
「……いえ」

クリフトは下を向いて返事した。そのまま塔のほうを見る。

「……急いだほうがよさそうですね」

またこっちを向いたクリフトはすっごく真剣な顔してた。

「コンドルも連れていきましょう。ここに置いていくのは危険です」
「うん。私が連れてく」
「姫さま」
「私が連れてきたいの。コンドルおいで」
「キイッ」

コンドルを抱えようとしたらコンドルのほうがこっちに寄ってきた。私の前まで来ておしりをついて座る。
もしかして、私の言ったことわかったのかな。

「クリフト、アリーナ」

ソロがこっちに走ってきた。あれ、さっきまでどこにいたの?

「もう一匹のコンドルは近くにいなかった。もしかしたらまだ塔にいるかもしれない」

あ、もう一匹のコンドルをさがしてくれてたんだ。ソロもすこしだけ塔を見たあとすっごく真剣な顔して私たちを見た。

「……ふたりとも……覚悟、しとけよ……」

低い声でいうソロ。覚悟…?

「キィ…」
「ん…」

241従者の心主知らず 男 3/21:2016/06/04(土) 12:59:36 ID:QS3H3Q5k
コンドルが私に頬ずりした。まるで大丈夫だよって言ってくれてるような気がした。


重い足どりで階段を上がる。ソロもクリフトも何も言わなかった。私もだまったままただ奥へと進んだ。

「…ねえ、声が聞こえない?」

階段の向こうでだれかの話し声が聞こえた気がするの。

「お願いだよお…」

やっぱりだれかしゃべってる。この声は……

「ねえあれ、スライムの声じゃない?」
「ぷるぷるっ!お願いだよお。薬湯だけでも飲んでよお。死んじゃうよお…」
「スライム!いるのか!?」

階段を上がって廊下を見わたす。ずっと先、部屋の前の片すみにスライムとアドンの姿が見えた気がした。
無事……なの……?

「あっソロ!」

スライムは私たちに気づいてこっちにとんできた。私たちも急いで駆けつける。

「ぷるぷるっ!ロザリーちゃんが欲深い人間につかまっちゃったよお!
ロザリーちゃんのルビーの涙は人間たちにはさわることもできないってのに……」
「お前……よく無事で……っ」

ソロがひざをついてスライムをそっとなでた。スライムの目がじわって涙ぐんだように見えた。

「うん……ロザリーちゃんが守ってくれたんだ……」
「ロザリーが…」
「うん…」

――あなたたちの目当ては私でしょう!――
――これ以上彼らを傷つけることは許しません!!――
――連れていくなら早く連れていきなさい!!――

「…………」
「ぷるぷるっ!ぼくがんばったんだけど…っ」

242従者の心主知らず 男 4/21:2016/06/04(土) 13:04:24 ID:QS3H3Q5k
今にも泣きだしそうなスライムに私は思わず声をかけた。

「ええ、あなたはよくがんばってくれたわ。見なくてもわかるもの」
「うぅ…」
「お前、けがは?…大丈夫か?」
「うん、ちょっとぶつかっただけだから大丈夫。
ぼくよりもアドンのほうが心配だよ!ぼくをかばって……血が止まらないんだ……っ」
「アドン!!」

スライムが言い終わるか終わらないかのうちにソロはアドンのほうに走ってた。

「念のため治療しますよ」
「うん……ありがとう……」

クリフトもすぐスライムの手当てを始めてくれた。ふたりとも、すごくてきぱき動いてる……。
私はどうすれば……私もアドンのほうに走った。

アドンは壁に寄りかかってうつむいてた。手当てした姿のまんま。武装する時間が、なかったんだ……。
剣だけがすこし向こうに転がってる。布切れやグラスも……。
胸からおなかにかけて巻いた包帯は血まみれだった。おなかには黒い布が巻きつけてある。
ソロがもういちど名前を呼んでゆっくり近づいた。アドンは機械みたいにすっごくゆっくりこっちを向く。
血にまみれた顔。こっちを見てるのに見てないみたいなうつろな目……。床にも壁にも血がついてて……
近づけば近づくほど血のあとがはっきりしてくる。からだをひきずってここまで来たことがわかる血のあと……
私は背筋がぞっとした。
こっちを向いたんだから生きてるはずなのに、私はもうアドンが死んでるんじゃないかって思った。

「ニン、ゲン…」

でも私たちに気づいたら立ち上がろうとして……ふらついてひざをついた。

「何やってんだよ。…大丈夫か?…俺が、わかるか…?」
「……ソロ…っ」

抱きおこそうとする手を振りはらってアドンはソロにつかみかかった。血がぱたたっと飛びちる。

「アドンやめてっ」
「ぷるぷるっ!この人たちは悪い人たちじゃないよ!」
「キイキイッ!」

私と後ろに来てたスライムと抱えてたコンドルがいっせいに叫んだ。

243従者の心主知らず 男 5/21:2016/06/04(土) 13:09:13 ID:QS3H3Q5k
「ぐっ……っ…」
「っ…………」

アドンの顔がくずれてく。苦しそうな顔……。ソロも泣きそうな顔してて……

「………っ…」
「…………」

ソロをつかんでた手がゆっくり離れる。そのまま手はちからなく下に落ちた。
壁にどさっと背をあずけアドンはまたうつむく。ソロもだまったまま立ちつくしてた。

「…………」
「…………」
「…………」
「……すまなかった……」

ソロがぽつりとつぶやいた。ソロ…。

「……問答無用と斬りかかったのは俺だ。そして敗れた。お前たちに罪はない……」

アドンはうつむいたままちからなく答える。

「だが、戦いに来たんじゃないって言っときながら応戦したのは俺だ。お前が悪いわけでもない。
お前と最初に剣を交えたとき、それでも戦いに来たんじゃないって言ってたら、お前だって少しは考えただろ?」
「…………」
「それに、やっぱり誰か代わりの護衛を置いていくべきだったんだ。すまない…っ」
「………………」

アドンはゆっくり顔をあげてソロをぼんやりと見つめた。それから私を見る。私はドキッとした。

「キイキイッ」
「お前たちが、コンドルを……」

あ、コンドルを見たのね。

「……無事でよかったわ」

私はいっしょうけんめい笑顔で答える。アドンはすこしだけ泣きそうな顔したように見えた。

244従者の心主知らず 男 6/21:2016/06/04(土) 13:14:19 ID:QS3H3Q5k
「……とにかく、手当てすんぞ」
「いらん」
「ふざけんなっ」

ソロが荷物から布や消毒液、薬草を取りだしてアドンの手当てを始めた。
クリフトもスライムといっしょに奥のお部屋から水をくんできたり救急道具を集めてきたりする。
よかった……これで助かるんだ……。

「キィッ」
「ん」

コンドルが私に頬ずりした。まるで大丈夫だったでしょって言われてる気がして私はなんでか笑っちゃった。
本当によかった……。
応急処置がすんだところでコンドルがアドンに向かってキイキイ鳴きはじめた。そういえばもう一匹のコンドルは……

「キイ、キイキイ…」
「……」
「キイ…」
「そうか、見失ったか…」
「キィ…」
「アドン、お前…」
「ギァァアアアアッ…!!」

いきなりコンドルが大きな声を出した。え?あれ?ちがう。アドンは上を向いてる。ソロも。

「ギァアアア…!!!」

声は天井から聞こえてくる。別のコンドルが鳴いてたんだ。もう一匹のコンドル?
ふと口笛のような音も聞こえた。前にも聞いたことあるような音。あっと思ってアドンを見たら指をくわえてた。
指を離したら口笛もやむ。この口笛はやっぱりアドンが吹いてたのね。

「ギァアアッ!!」

バサバサと大きく羽ばたく音がしてコンドルが天窓から下りてきた。そのまま床へ墜落、いきおいで壁に激突。

「ちょ、ちょっと…」
「どうした。なぜ飛んできた?ピサロ様は…」
「キイ!キイキイキキイッ…!!」
「…………」

245従者の心主知らず 男 7/21:2016/06/04(土) 13:19:18 ID:QS3H3Q5k
コンドルは倒れたままいっしょうけんめいキイキイ鳴く。アドンもそれにこたえるみたいにコンドルを真剣に見てる。
クリフトがけがしていますって言って手当てを始めてくれた。私も思わずちからが入って抱えてるコンドルをぎゅってしちゃった。

「キイ、キイ、キイキイ…」
「ミニデーモンが?アームライオンやライノソルジャーではなくか?」
「キィ…」
「………………」

アドンは難しそうな顔してしばらくだまってた。アドンてコンドルの言葉がわかるのかしら。クリフトはずっとささやき続けてる。

「コンドル」
「「キイッ!」」
「わっ」
「きゃっ」

手当てをしてるクリフトを翼で押しのけてコンドルはアドンの前までからだをひきずって床にべたーってなった。
私が抱えてたコンドルもおんなじようにアドンの前に下りて床にふせる。
アドンは立ち上がってコンドルに近づいた。でも足もとがふらついて私が抱えてたほうのコンドルに倒れこんだ。

「キイッ」
「お前、どこ行くんだよ」

ソロがアドンの肩をささえる。でもアドンは答えない。なおもコンドルに足をかける。乗るつもりなんだ。

「お前、今の自分の状況がわかってるか?」
「…………」
「腹の傷が開いちまってんだぞ!!」

私ははっとした。止血のつもりかおなかに強引に巻きつけてあった黒い布。
ソロが手当てをするとき外してて、そのときはあんまり気にしなかったけど、今あらためて見たらぐしょぐしょに濡れてた。
床にまで黒っぽい液体がしみだしてて……もしかして、これもみんな、血なの……?
私は全身がぞくっとした。アドン…!アドンもすこしだけ自分のおなかを見たけどまたコンドルに向きなおる。

「関係ない」
「お前…!」
「アドン…っ」
「死ぬつもりか…?」
「俺が死ぬことであの方を守れるのなら、いつでもこの命…」
「ばかやろう!!」

246従者の心主知らず 男 8/21:2016/06/04(土) 13:24:37 ID:QS3H3Q5k
ソロはアドンをコンドルから引きはなした。今度はソロがアドンにつかみかかる。

「死ぬことは守ることじゃねえぞっ!!!」

ソロが大声で叫んだ。アドンはおどろいてソロを見る。

「そんなつもりで守ってほしいんじゃねえ…っ!!」
「………………」

ソロ…。

「本気で守り抜くつもりなら…っ」
「…………」
「生きて…っ」
「…………」
「ソロ…っ」
「生きて……一緒に……っ」
「………………」
「…………」
「っ……っ…」

そこから言葉が続かない。ソロはアドンの肩にゆっくり顔をしずめた。まるで隠すみたいに……。アドンもずっとだまってる。
ソロ……泣いてるの……?ソロ……っ

――村のみんなのこと、考えてたの…っ?――

ソロはアドンをゆっくり床に座らせた。アドンはもう自分をささえるちからもないみたいでソロに寄りかかる。
ふたりともしばらく目を合わせないでだまってた。苦しいのかな、アドンの息がやけに乱れてる。ソロもすこし…。

「…………」
「…………」
「…………」
「……お前、コンドルの言葉がわかるんだろ?」
「………………」

「……だったら、なんだ」
「教えてくれ」
「…?」
「ロザリーをさらったやつらはどこへ行ったのか」

247従者の心主知らず 男 9/21:2016/06/04(土) 13:29:10 ID:QS3H3Q5k
アドンがおどろいたようにソロを見た。

「……なぜ…?」
「助けに行くから」
「………………」

――俺たちが助けに行くから……――

アドンはもっとおどろいた顔をした。

「なぜ…」
「なぜって」
「お前たちに、何の関係が…?」
「……んなこと当たり前だろ。いちいち聞くんじゃねえよ」

私はすぐ思いつく言葉があってアドンに言った。

「ロザリーは、私たちのお友だちなの。お友だちの危機には駆けつけるのが当たり前でしょ?」
「…………」
「アリーナお前、いいこと言うな」
「え、そう?」

こっちを向いたソロはもう普通の顔してた。すこしだけほっとした。でもアドンはまだびっくりしてる。

「とも…だち…?」
「そう!」
「………………」
「頼む。教えてくれ」
「どうか、お願いします」

クリフトも話に加わった。あれ、さっきまでどこにいたの?思わずコンドルを見たらもうからだをひきずってなくてこっちを見てた。
もしかして、ずっとコンドルの手当てをしてくれてたの…?クリフトは今はまっすぐアドンを見てる。
クリフト…。
クリフトって、いつもてきぱきしててすごいな……。助けられてばっかり。なんだかくやしいな……。私もしっかりしなくっちゃ。
私もアドンに向きなおった。

「………………」

アドンはまだびっくりしてこっちを見てたけど、視線をゆっくり下に落とした。
しばらく床をぼんやり見てたけど、ひとりごとのようにつぶやいたの。

248従者の心主知らず 男 10/21:2016/06/04(土) 13:34:23 ID:QS3H3Q5k
「……ここより北西」

「さらったのは三人。
青いフルプレートの戦士と腰巻に鉄火面をつけた武闘家、白いシャツに赤いバンダナを巻いた盗賊、こいつは確実に人間だった」
「青いフルプレート……恐らくこの村でかぎ回っていたあの戦士ですね……」

クリフトが手をぎゅってした。クリフト…。

「キメラの翼で砂漠と山脈を越えた先まではコンドルが目撃している。
軌道から追えばバトランド地方だが、あるいはブランカか、ボンモール地方北部か……それ以上はわからない」
「それだけわかればじゅうぶんだ」

さがしに行こう。私たちの意見がひとつになった。


クリフトが飛んできたほうのコンドルを奥へ連れてく。私もさっき抱えてたコンドルをもういちど抱えてクリフトの後に続いた。

「申し訳ありません、姫さま」
「ううん、いいのよクリフト」
「姫さま…」

そういえば前もこんな会話をしたの覚えてる。あのときはコンドルを休ませることにいっしょうけんめいで返事しかできなかったけど。
でも、今はなんだか胸を張ってコンドルを抱えていられるの。もしかしたら、私もあれからすこしはクリフトみたいにやさしくなれたのかな。

「あなたたちも無理しないでね…」

コンドルたちを敷布に寝かせると二匹ともくるりとうずくまる。大きなからだなのに今はなんだか小さく見えた。

「お前も部屋で休んでろ。血流しすぎだ」

私はアドンを見た。
アドン……口調も変わらないし平気そうにしてるけど、ほんとうはアドンがいちばんひどいケガしてたのね……。
でも肩を貸そうとするソロの手をアドンははらった。

「俺はいい」
「いいわけないだろう」

ソロがアドンを抱き上げてこっちに来る。

249名無しさん:2016/06/04(土) 13:38:08 ID:kEILwRP6
ネタばれはまだ控えますがヒーローズ2でもクリアリ的に美味しい会話や設定などが出てくるのでおすすめですよ!

250従者の心主知らず 男 11/21:2016/06/04(土) 13:39:12 ID:QS3H3Q5k
「腹の傷は治すのに時間かかるし後にもひびくから厄介なんだ」
「待て、頼む。ダメだ!そこはダメだ…っ」
「何が」

アドンはソロの首に腕を回してしがみついてる。下ろされたくないみたい。

「そこは……その……」
「?」
「ロザリー様の、寝台だから…………その……」
「…………」

私は話の内容がよくわからなくてふたりをじっと見てた。心なしかアドンの顔が赤いような気がするの。なんでだろう。

「知るかそんなこと」
「あっ…」

ソロはアドンをベッドに寝かせておふとんをととのえた。

「ロザリーがここに寝かすように言ってくれたんだ」
「ロザリー様が…?いや、だがっしかしっ」

起きようとするアドンをソロが手で押さえる。

「必ず連れて帰る……」
「………………」

「頼む…」

ソロがアドンのおなかに手を当ててもう一度かけるぞって言って何かささやいた。アドンは腕で顔を隠す。向こうを向いてすこしだけうめいた。
ソロはまだささやいてる。聞こえてきたのはべホイミ。……そっか。ソロも魔法が使えるんだもんね。魔法ってすごいな。魔法っていいな。

「……っ」
「?」

泣いてる…?手で顔を隠してるから見えないけど、アドン、泣いてるんだ……。
ロザリーを守れなかったから……?

251従者の心主知らず 男 12/21:2016/06/04(土) 13:45:03 ID:QS3H3Q5k
「絶対に連れて帰るからな…」
「…………」
「だからお前も、体あっためて安静にしとけよ。少し落ち着いたら薬湯飲め。せっかくスライムが用意したんだ。
いざ帰ってきたら死んでましたとか許さねえからな」
「………………」

アドンは腕で顔を隠したまま無言でうなずいた。


手当ても終わって出かける準備もととのって、お部屋を出るとき私はふと思い立って。
すぐ下りてくから先に行ってるようクリフトにお願いして私はアドンに声をかけたの。

「ねえ、アドン…」

アドンがびっくりしてこっちを見た。

「あ、ごめん。私アリーナっていうの。よろしく」

そうだ、私も謝らなきゃ……。

「あの、ごめんなさい……。最初に会ったときコンドルにケガさせたの私なの。
ごめんなさい……」
「…………」

私はコンドルたちにもごめんなさいって頭を下げた。コンドルたちはだまってこっちを見てる。
さっき私が抱えてたほうがすこしだけキイキイって鳴いた。なんて言ったのかな。わかんないや。

「なぜ……」
「え…?」

――なぜ、お前たちは……――

アドン…?
アドンはゆっくり天井を向いた。

252従者の心主知らず 男 13/21:2016/06/04(土) 13:49:24 ID:QS3H3Q5k
「……すまなかった……」
「え?」
「人間はすべて、敵だと思っていた……」
「……」
「欲深く、騙す生きものなのだと……」
「……」
「…………」
「……」
「…………すまなかった…………」
「…………」

確かに私たちは敵だった。最初は本気で戦った。でも今は敵じゃない。味方になったわけじゃないけど、でも敵じゃない。
倒れるまで戦わなくてもいい敵がいる。たとえそれが……

――魔族であっても……――

そういうことだよね。そういうことなんだよね、クリフト。

「スライムから聞いた。前に手当てをしてくれたのもお前たちだそうだな。
今も……コンドルまで……」
「…………」
「…………ありがとう…………」
「キィ…」
「…………ん」

私はにっこり笑ってみせた。そしたらアドンもすこしだけ笑ってくれたの。

「姫さま、そろそろ行けますか?」

あ、クリフト。先に行っててって言ったのに。

「もうちょっとだけ待って」

クリフトはうなずいて戻ってった。あれ、いるならいるで別にここにいてもよかったんだけど……
まあいっか。私はアドンに向きなおる。

「ねえアドン、さっきどうして顔が赤くなったの?」
「?」
「それに、ロザリーのベッドだからダメとか待ってとか、どういう意味?」

253従者の心主知らず 男 14/21:2016/06/04(土) 13:55:09 ID:QS3H3Q5k
アドンがいっしゅんちらっと下を見る。おふとんを見たのかな。あ、また顔が赤くなった。

「お前に関係ないだろう!さっさと行け!」
「なによ!教えてくれたっていいじゃない!」
「常識的に考えろ!お、女のベッドに男が入るなど、ありえんだろう!人間は違うのか!?」
「え、だって……私はよくクリフトといっしょに寝るし……」
「…………」

「それは、お前の男だからだろう…」

え?

「ロザリー様は……」
「……」
「俺の、女では…」
「……」
「…………」
「……」
「……いいからさっさと行け!!」
「むー。また来るから」

どうして今まで名乗らなかったの?どうして素顔を見せなかったの?
聞きたいことはまだあったのに、急にアドンの声が暗くなった気がしてそれ以上聞けなかった。
ううん、それ以前に言われたことがあまりにとうとつすぎて言葉を返せなかったの。
お前の男って……私のクリフトってことよね。どういう意味?
私のクリフトって、なんでそんな、物みたいな言い方……たしかに家来ではあるけど……。

「…待て、女」

…………。
私はいきおいよく振りかえってアドンに言った。

「アリーナ!」
「あ……アリーナ…」
「……なによ」
「あれを持っていけ」
「え?」
「そこにある水晶」

254従者の心主知らず 男 15/21:2016/06/04(土) 13:59:43 ID:QS3H3Q5k
アドンの視線の先を見てみると紫色の水晶があった。首飾りになってる。
水晶の両側を竜の足みたいなのがつかんでてちょっと不気味だけど。

「なにこれ。きれい…」
「静寂の玉。光を浴びた者の魔法を封じ込める力を秘めている。
お前たちの役に立つかはわからんが、俺にはもう必要ないからな」
「え、いいの?」
「ああ…」
「……ありがと……」

アドンも照れてるのかな。向こうを向いてる。

「……ロザリー様を、頼む……」
「おねがい!」

いつの間にか足もとにいたスライムもこっちを見上げながらお願いしてきた。

「……うん!」


私はお部屋を出ながらさっきのことをもういちど頭の中で整理した。

――お前の男だからだろう…――

私のクリフト。今までそんなふうに言われたことなかったな。私のクリフト……

――私の…男?――

ちょっと、なにこのひびき。やだ、どうしよう。顔が熱いわ。きっとアドンの熱がうつったのね。
でも、どうしてアドンの顔が赤くなったのかは結局教えてもらえなかったわ。
それがわかればクリフトが赤くなるのもわかるかもしれないのに。クリフトは教えてくれないから。

「姫さま?」
「あ、クリフト」

廊下で待っててくれたみたいでクリフトが近づいてきた。私はなんでかうつむいちゃった。

「これ…」

静寂の玉をクリフトに見せる。

255従者の心主知らず 男 16/21:2016/06/04(土) 14:04:16 ID:QS3H3Q5k
「これは…」
「もらったの。敵の魔法を封じこめられるんだって」
「…………」

「何か、話したのですか?」
「え?」
「いえ、その……姫さまのご様子が先ほどと違うように見えるので……」

クリフトが私の顔をのぞきこんできた。

――私の男――

やだ、また顔が熱くなっちゃった。

「なんでもないっ」
「姫さま?」
「なんでもないったらっっ」
「姫さま…」

私はものすごいいきおいで歩く。
っもう、どうして私がなんでもないとかクリフトみたいなこといわなくちゃいけないの?
クリフトのバカ!


「ソロ、これアドンからもらったの」
「アドンから?」
「うん。静寂の玉だって。敵の魔法を封じこめられるんだって。
とりあえず私が持ってていい?」
「……あー、そういうことか」
「え、なに?」
「いやまあこっちの話なんだ。別にいいぜ。しばらく持っててくれ」
「う、うん…」

256従者の心主知らず 男 17/21:2016/06/04(土) 14:09:07 ID:QS3H3Q5k
「アドン謝ってたよ。人間はみんな敵だと思ってたんだって。すまなかったって言ってたよ」
「……そうか……」
「あと手当てしてくれてありがとうって。アドンてもしかしたらいい人なのかなあ。
私、魔族はみんなおんなじだと思ってたんだけど…」
「……俺は怖いよ、ああいうやつは」
「え?」
「あいつ、本気で死ぬつもりだったんだ。
お前はあのときコンドルと戦ってたから知らないと思うけど、あいつ、俺が腹刺したあと盾投げ捨ててさ、
俺を道連れにするつもりで、相打ち狙って突っ込んできたんだ」
「え…」
「死ぬつもりだったから名前も名乗ったんだろうなって、ロザリーの話聞いて思った」

――名はなんという、人間?――
――ソロ。お前は?――
――ピサロナイ……いや、アドン。俺の名はアドンだぁっ!!――

「…………」
「さっきだって、スライムの話じゃ手当てどころか止血すらまともにしてなかったみてえじゃねえか。
死ぬことを何とも思っちゃいねえ。ああいうやつって、一度思い詰めると何するかわからねえから怖いんだ。
まああんだけ血流して平然としてるんだから、魔族ってのはもともと生命力が高いんだろうけど、
何かもう、死にたがってるようにすら見えちまったからさ……。……自害なんか、しなきゃいいけどな…」
「そんな…」

私は静寂の玉を見た。

――俺にはもう必要ないからな――

あのときのアドンの顔、見なかった。向こう向いてたから。でも……
でも、ちがうよね。あれは、自分はもう死ぬから必要ないって、そんなつもりで言ったわけじゃないよね……。
ちがうよね……。

「はやく、ロザリーをさがそう」
「……そうだな」

257従者の心主知らず 男 18/21:2016/06/04(土) 14:14:18 ID:QS3H3Q5k
「なあアリーナ」
「ん、なに?」
「お前さ、アドンのことが気になるのか?」
「え、なんで?」
「ロザリーに話聞いたり自分から話しかけたりしてたじゃねえか」
「あー」
「その首飾りももらったわけだろ?あいつに気があるのか?」
「なにそれ。アドンには悪いことしちゃったから謝っただけ。首飾りは何かの役に立つかもってもらっただけ。
私はきほん、魔族は大ッキライ!」
「……それクリフトに言ってやれよ」
「え?」
「変な風に落ち込んでんだ。きっと喜ぶぞ」
「えー?」

どうして私がアドンとお話ししたり何かもらったりするとクリフトが落ちこむのよ。
あ、もしかして。
クリフトはずっと普通にしてたから気にしなかったけど、ほんとはアドンのこと、魔族のこと、クリフトもキライだったのかな……。
私だってべつにアドンと仲良くなったわけじゃないし。

「……うん。クリフトと話してみる」
「おう、頼んだぜ」

――私の男――

なんでまた思い出すかなあ。っもう、また顔が熱くなっちゃった。うう、大丈夫、大丈夫よ。普通に話そう。うん、大丈夫。
そうよ、いっそクリフトにそれどういう意味って聞いちゃえばいいのよ。それくらいの気持ちで行こう。よし。


「クリフトー」
「姫さま…」
「ちょっといい?」
「……なんでしょうか」

すこし落ちこんでるように見えるクリフト。ソロが言ってたのはほんとうだったのね。クリフト…。
私はクリフトに頭を下げた。

「ごめんなさい…」
「姫さま?な、何を…あ、頭を上げてください!」
「…………」

258従者の心主知らず 男 19/21:2016/06/04(土) 14:19:11 ID:QS3H3Q5k
私は頭を上げたけどクリフトをまっすぐ見ることができなかった。
すこしだけ下を向いて話す。

「クリフトはアドンのことキライじゃないんだって思ってたけど、クリフトだって魔族のこと、キライだったのかなって」
「…………」
「私クリフトのことぜんぜん考えないでアドンに話しかけてた。ごめんなさい」
「…………」

私はもういちど頭を下げたあとがんばってクリフトを見るようにした。

「アドンね、お礼を言ってたの。ありがとうって。それからすまなかったって謝ってもくれたの。
何かの役に立つかもって首飾りもくれたの。あれね、敵の魔法を封じこめられるんだって。俺にはもう必要ないからって」
「…………」
「アドンは魔族だけど、悪い人じゃない気がするの。だからクリフトも、アドンのことキライにならないでほしいの」
「姫さま……」
「お願い…」
「………………。浅はかで、本当に申し訳ありません…っ」
「え?」

クリフトは私に深々と頭を下げた。え、なんで。しかもすぐに頭を上げないの。それもなんで?


「ソロさんの言葉、胸に落ちました……」

――死ぬことは守ることじゃねえぞっ!!――

クリフトが遠くを見ながらぽつりとつぶやいた。私はクリフトのよこ顔を見る。クリフト…。

クリフトも私を守るって言ってて、私を守ろうと無理をして、無理をして、ずっと無理をして、ミントスで倒れた。
ソロたちがパデキアを持ってきてくれなかったらどうなってたかわからない。
あのとき私はただ泣くことしかできなくて、クリフトを抱きしめることしかできなくて、
すぐ他の方法をさがしにいけてたかどうか、わからない。
あのときのことはもうわからない。けどこれからのことだってわからない。いつどこでだれがどうなるかわからないの。
だから……

「クリフトも、無理しないでね……」
「…………はい……」
「……ん」

259従者の心主知らず 男 20/21:2016/06/04(土) 14:24:05 ID:QS3H3Q5k
私はなんとなくクリフトに肩を寄せた。クリフトはびっくりしたみたいで姫さまって言ったけど動かなかった。
クリフトの肩にそっと頭を乗っける。立ってるとできないけど座ってるとなんとかできるの。私はクリフトをそばに感じた。
あ、そういえば。うん、よし。

「あのね、クリフト」
「…はい、姫さま…」
「アドンにね」
「……はい」
「アドンに……アドンにー……」
「…………」
「うー…」
「………………。アドンさんと、何かあったのですか…」
「あのねっアドンにクリフトのこと、お前の男って言われたのっ。
それってどういう意味?私の男ってどういう男っ?」
「え?」

クリフトがびっくりした顔で私を見るの。な、なによー。

「たしかにクリフトは私の家来だけど、なんか、物みたいな言い方だし、ヘンなひびきだし、なんか……
なんかへんなのっ」

やだ私、もしかしてまた顔が熱くなっちゃってる…?
でも私は気にせずクリフトをじっと見た。
クリフトもしばらく私を見てたけどそのうちあっち見たりこっち見たり私を見たりなにか言いかけたりやめたり忙しそうだった。
きっと今むずかしいこと考えてるのね。

「ア、アドンさんが、あなたにそのようなことを言ったのですか…」
「そう!」
「…………」

あ、クリフトも顔が赤くなった。やっぱり赤くなるようなお話なのね。

「い、いったいアドンさんとどんな話をしたんですか!」
「知らないわよ!アドンが勝手にそういったんだもん!
あとロザリーは、俺の女じゃ……ないっていってたのかな」
「………………ああ…」
「ああって」
「そういった意味では、姫さまも私の……その、女ではありません。
ですから必然的に、私も姫さまの、男では……」
「……」

260従者の心主知らず 男 21/21:2016/06/04(土) 14:30:46 ID:QS3H3Q5k
クリフトはそこまで言いかけて止まった。むー?

「いえ、その……もし、もの……所属という意味で答えていいのなら、そのように考慮していただけるのなら、
姫さまは私のものではありませんが、私は……」

クリフトはそこまで言ってゆっくりと私を見た。

――私は、姫さまのものです――

「…………」

クリフトがすっごく真剣な顔して言うの。なんで…。そういう顔されると目をそらしたくなっちゃうからいやなのに……。
私は結局目をそらしちゃった。ずっと向きあっていられないのってくやしい…。急いでクリフトの言葉の意味を考える。
私はクリフトのものじゃないけどクリフトは私のもの…?ものって……

「ですから、姫さまの向かうところ「クリフトー」
「……はい、姫さま」
「難しいことよくわかんない」
「あ…はい…」
「クリフトはクリフトのものよ。私は私のもの。だれのものでもないしだれのものにもならないわ。そうでしょ?」
「…………」

クリフトがちょっとびっくりした顔で私を見たけどすこししたらふっと笑ったの。そのまま遠くを見る。

「そうですね」
「そうよ!」

私もいっしょに遠くを見た。またクリフトの肩に頭を置いてみる。そしたらクリフトもすこしだけ顔を寄せてくれたの。
なんだろう、なんだかすっごく安心する。元気も出てきた。
今ソロとトルネコ、ライアン、ブライがブランカ、ボンモール、バトランドへ捜索願いに行ってくれてる。
よろず屋のおじいさんが犯人のことをくわしく教えてくれたんだって。じいがいうにはただ者じゃない神官なんだって。
ソロがその間にエスタークを倒したことでサントハイムになにか変化があったか見に行ってこいよって言ってくれたの。
お父さまのことずっと気になってたけど、でも、今はなんだかロザリーをさがすのを急いだほうがいい気がしてる。
ロザリーを無事助けだしたら嬉しい知らせを持ってお父さまのところに行こうと思うの。
クリフトにそのことを言ったら姫さまの望むままにって、このクリフトどこまでもお供いたしますって返ってきた。
っもう、クリフトったら大げさなんだから。
でもちがうときはちがうって言ってくれるのがクリフトだから、きっとよかったってこと。そういうことよ。

私たちはこれからロザリーをさがしにいく。ぜったい見つけようねって言ったらはい姫さまっていつもの声が返ってきた。
よし、ロザリーをさがそう!

261従者:2016/06/04(土) 14:35:08 ID:QS3H3Q5k
ロザリーがさらわれた場所がバトランド地方というのはFC版のスライムの台詞「イムルのほう」を参考にしています。
当時はイムルで夢を見るよう誘導するための台詞だったと思うのですが、なぜかPS版では削られていて残念に思います。
また、短編集「知られざる伝説」より、ロザリーヒルで商売をしているご老人はゴットサイドの神官であり
ピサロの動向を探るために訪れたスパイでしたがロザリーがいれば魔族の王と人間との戦いを回避できるかもと思い
自分の役目はなくなったとゴットサイドへの報告書を灰にし一生をロザリーヒルで過ごすことにしたという設定を入れています。
その後もロザリーの安否を気にかけていたとしました。この度は長文をご覧いただき本当にありがとうございました。

>>249
まさかのはさまれる人wなつかしいです。恥ずかしいです。ありがとうございます。

ヒーローズは本当に親密度がぐっと上がっている感じですね!
クリフトの「誰よりも強くてまっすぐでいつだってステキな姫さま」発言が自分のイメージを後押ししてくれていてとても嬉しいです。
ヒーローズ関連も4クリア後という設定でいいのでしょうか?
DS版6のデスコッドといただきストリート関連は4クリア後ということで把握しているのですが
もしそうならいろいろな戦いやイベントをこなすごとに親密になっていったのかな、いくのかなとさらにわくわくなのです。

262名無しさん:2016/06/04(土) 14:49:54 ID:opyK2yL2
>>261
いつも楽しく読ませてもらってます
ヒーローズは、1が本編クリア後の参戦だとインタビューで回答されていて
2はさらにその後(1のことは皆覚えてないが、時々思い出しかける)なのでやはりクリア後ですね

263名無しさん:2016/06/04(土) 15:16:55 ID:kEILwRP6
>>261
SS乙です!さえぎってしまってごめんなさい!

ヒーローズは1も2もクリア後設定ですね
今回は長い間2人で旅してたらしいのと4の仲間キャラがクリフトの片想いに言及するなど…とちょっと匂わせておきますw

264従者:2016/06/04(土) 15:40:38 ID:QS3H3Q5k
>>262
ああやはりクリア後ですか!
個人的にパラレルとはちがった嬉しさがありまして、ありがとうございます!
SSも読んでいただき感謝です!

最初あなたがはさまれた人かと勘違いしました失礼しました。

>>263
いえいえ!直にお話しできて嬉しいです。乙ありがとうございます!
長い間二人旅というのがすでにクリフトがんばったのにさらにそんな展開が…!
貴重な情報をありがとうございます!今後の二人に期待ですね。

265名無しさん:2016/06/05(日) 02:29:24 ID:Lv6DfGlw
>>261
GJです
ソロの気遣いが何気にいいですね
こういう暖かいリーダーがまとめてくれてるから、死と隣り合わせの旅にも笑顔が生まれるのでしょう
ソロにもGJ!

過去スレでもソロって、たいていさりげなくクリアリを応援する優しい人でしたね
直接応援したり頭を抱えてたりポカーンだったりと、展開の仕方は色々ありましたが、書き手の暖かさがソロの人柄に出ることが多かった気がします

266従者:2016/06/07(火) 16:58:32 ID:jCTGY80g
従者です。今回レスだけで失礼します。

>>265
ソロにも注目していただけるとは…!嬉しいです。感想ありがとうございます!
実はソロの人柄は正に過去スレをベースにさせてもらっています。
皆さんの描くソロがとても暖かくてあの雰囲気を出したいと考えていました。

実はこの従者シリーズではソロはその生い立ちゆえ落ち込んでいたり病んでいたり、
なんというかこう、暗く腐った状態から始まっております。
クリアリに関わる部分もありますのでそう遠くないうちに一部投下するかと……。
いつだったか同じ発想をされた方がいてとても心強かったのですが、
どうにも絆を深めるためにはソロとクリフト、一度は喧嘩せざるを得ない展開です;

今後訂正箇所のないよう見直し気をつけます。更新今しばらくお待ちください。
この度はご覧いただき本当にありがとうございました。

267名無しさん:2016/06/12(日) 05:59:52 ID:JsFm30Jk
全てを失って旅立ったソロが出会ったのは、面倒見の良いお姉さんたち。
1章のライアンでなく、わざわざ4章の姉妹から会わせてるのが上手いんだよね。
戦闘では格段に強かったお姉さんたちだけど、敵が強くなってくると打たれ弱さが目立ってくる。
ソロは庇護される立場から守る立場に変わって、責任感ってのも生まれてくるはず。

そんなソロが2章の面々に出会って、クリアリとどう関わるんだろうか。
ドラクエ伝統のしゃべらない主人公だけに、我々は想像するしかない。
そういうあたりもクリアリの奥深さだね。

268従者:2016/06/14(火) 21:15:39 ID:20PI.NtE
>>267
>1章のライアンでなく、わざわざ4章の姉妹から会わせてるのが上手いんだよね。
同意です!
辛さを感じさせない二人の明るさにソロは大いに救われたのではないでしょうか。

>そんなソロが2章の面々に出会って、クリアリとどう関わるんだろうか。
さしあたって本編で確実にわかるのは、ソロは
・ブライと同行したときブライに旅の目的を聞いている
・アリーナがデスピサロをさがす旅を続けましょうと言ったとき自分もさがしていると自己申告した(もしくはブライに事前に話していた)
・山奥の村(夜)では元気がなく落ち込んでいた(ようにアリーナには見えた)
ですかね。他にもあるかもしれません。
これらから想像するのは難しいですが、伝説の勇者といえど一人の人間だ、
そう思える人だったらいいなと思いここではそんなソロを描いていきます。少しでも共感いただけたら嬉しく思います。


PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、結界のほこら(アンドレアル)編いってみます。
今回もクリフトのあやしげなセリフはないのですがクリアリを思いついたので書いてみました。
一部さらっとですが流血描写がありますのでご覧に際にはお気をつけください。(いきなり倒しています)
回復や蘇生に関して一部疑問を残す流れがあるかと思われますが後ほど解消予定です。
取り急ぎこれらも直接クリアリには影響ないかなと思われますので何とぞご容赦を…。ではどうぞっ

269従者の心主知らず 結界のほこら編 1/6:2016/06/14(火) 21:20:21 ID:20PI.NtE
竜のからだがゆらめいた。こっちをにらみつけてるけどもうなんにもしてこない。
やった!

――竜を倒したのね!――

「うぐぐ……」

竜は足をなんども置きなおして大きなからだをささえようとする。
でもささえられなくてからだはずっとゆれてる。

「ロザリーさまを失いピサロさまがどれほどなげいたことか…」

え?

「なげいたことか…っ」

竜はまた私たちをにらみつけた。

「人間など滅びてしまうがいい……」

――デスピサロさまばんざい!――

「ぐふっ!」

竜はふたたび口から血を吐いた。大きな音を立てて地面に倒れる。
もういちど大量に血を吐いたあと竜は動かなくなった。

「……」

ロザリー…?

「敵ながら、忠誠心を忘れぬ見事な死に際でしたな」

ブライがぽつりとつぶやいた。

「……」
「……どうやら外の結界がこれでひとつ消えたようです」

270従者の心主知らず 結界のほこら編 2/6:2016/06/14(火) 21:24:14 ID:20PI.NtE
クリフトも外のほうを見ながら言った。
剣をかまえてたソロもゆっくりしまって外のほうを見る。そのままなにも言わずに歩き出した。
クリフトとブライも私に目で合図して外へ向かう。でも私はすぐ歩き出せなくて……

「…………」

ロザリー…。
ロザリーは、ほんとうに死んじゃったんだ……。
ロザリー……。
私はぼんやりと竜を見た。

――わたしはこの結果を守る者――
――命にかえても結界を破らせるわけにはいかぬ!さあ、来るがよい!――

竜はもう動かない。

「…………」

動かない……。

「…………。ロザリー……」
「姫さま?」
「…………」

もしロザリーを助け出せてたら、ううん、その前にアドンの代わりにだれか護衛をつけてたら、守れていたら、
この竜も戦わなくていい敵だったのかな。アドンみたいに、お話しできたのかな……。
でも、ロザリーがさらわれる前からデスピサロは人間を滅ぼそうとしてた。それならやっぱり、戦うべき敵でいいのよね。
……じゃあ、いつかアドンとも戦うことになるのかな……。今みたいに、殺しあうことになるのかな……。
私は竜に近づいてそっと首に手を置いた。

「姫さま!?」
「…………」

竜はもう動かない。ソロが深くつらぬいたからきっと内臓もやられてる。
だからたぶん、もう生き返らせることもできない。この竜とはもうにどと会えない。話せない。
戦えない……。

「姫さま…」
「…………」

271従者の心主知らず 結界のほこら編 3/6:2016/06/14(火) 21:29:02 ID:20PI.NtE
私は戦うのが好き。大好き。
でも、だからって、殺すのが好きなわけじゃなくて……出会う敵みんなを殺したいわけじゃなくて……
そうじゃなくって……

トクン…

え?まだ脈打ってる?生きてるの…?

「クリフト!」

私は思わず叫んだ。クリフトがすぐ駆けつけてくれる。

「はい!姫さま!」
「ねえクリフト、この竜、助けられないかな…」
「姫さま…?」
「まだ脈打ってるの。助けられないかな…」
「…………」
「お願い…」
「…………」
「おねがい…っ」
「…………」
「っ……っ」
「………………」

「かしこまりました。やってみます」

クリフトが笑って答えてくれた。すぐ竜の手当てに入ってくれる。クリフト…っ。
クリフトの優しいささやきがあたりに響いた。私はクリフトの声に聞き入る。

「がはっ!」

竜が息を吹きかえした。目をうっすら開けようとしてる。
助かったの…?

「ぐっ…」
「大丈夫です。ゆっくり息をしてください」
「あ……ぐ…っ。なんの、マネだ…っ」
「あなたのためではありません。姫さまがお望みになったからです」
「………っ…」

272従者の心主知らず 結界のほこら編 4/6:2016/06/14(火) 21:34:06 ID:20PI.NtE
クリフト…。
竜はしばらくクリフトをにらみつけてたけどふたたびゆっくり目を閉じた。
また地面によこたわる。

「クリフト…?」
「大丈夫です。少々強めにかけましたので、疲労で眠ったようです」
「眠ったの…?」
「はい」
「そっか……。よかった…」
「……はい」
「アリーナ」

すぐそばまで来てたみたいでソロが私の名前を呼んだ。私はあわてて振りかえる。
でも私はうつむいちゃった。ソロの顔をまっすぐ見ることができない……。

「ソロ、ごめん…っ」

声までふるえちゃった。泣きそうになるのをいっしょうけんめいこらえて言葉をつむぐ。

「でもわたし、なんかいやだったの」
「…………」
「なんだか、死なせてはいけないような気がしたの」
「…………」
「……ごめん……」
「………………」
「ごめんなさい…っっ」
「………………。そうか」

ソロは小さな声でそれだけ言った。ソロ…。

「結界が戻っていないか心配ですが」

あ…。
クリフトも小さな声で言ったあとまた結界のほうを見た。
少ししてクリフトはこっちに向きなおる。

「大丈夫です。とけたままのようです」

クリフト……。

273従者の心主知らず 結界のほこら編 5/6:2016/06/14(火) 21:38:08 ID:20PI.NtE
ソロたちは私がしたことに対してなんにも言わなかった。いっつも口うるさいじいも私を怒らなかったの。
なんで……。
みんなであらためて外へ向かう。だれもなんにも言わなかった。
私は外へ向かう前に竜を抱えようとしてみた。大きすぎて重くてうまく持てない。首も長いし耳も大きいし。
思えばコンドルは小型の竜だったのね。

「姫さま……」

クリフトが私に話しかけてきた。いつもより少しだけ低い声……。
クリフトは竜のほうを見たまま話を続ける。

「ここで一命を取りとめたところで、また戦うことになるだけです」
「……」
「敵を生かしたことに他なりません」

クリフトがゆっくり私のほうを見た。

「私たちの関係を取り持ってくれる方はもういません。
アドンさんのときとは状況が違うのです」

いつものようにお説教を言うクリフト。あきれるくらいいつものこと。
でも今は、その言葉が痛いくらいよくわかって……

「姫さまのお考えは、甘いと言わざるを得ません……」

よくわかって、私はなんにも返すことができなかった。
少しだけ目が熱くなる。

「ですが……」
「…………」
「限りある命を大切にしようとされる、あなたのその慈悲深きお心遣いが……」
「…………」
「私は、好きです」

え…?
クリフトは向こうを向いた。

「ここに置いていくしかないでしょう。どのみちすぐには目覚めないと思います」

私に背中を向けたまま話す。顔をこっちに向けてくれないの。

274従者の心主知らず 結界のほこら編 6/6:2016/06/14(火) 21:44:14 ID:20PI.NtE
「クリフト…?」

クリフトはそのまま外へ行こうとしてしまう。

「待ってよ。ねえクリフト」

さっきなんて言ったの…?

――今どんな顔をしてるの…?――

「とにかく一度このほこらから出るとしましょう。
どうするかを考えるのはここを出てからでも遅くはありますまい」
「はい、ブライ様」
「え」

ブライの言葉にクリフトが反応しちゃったからそのままになっちゃった。
でもブライもいつものじいらしくない優しい声だったの。
ソロもこっちを見てた。きっと怒ってると思ったのに、ソロも優しい顔をしてたの。どうしてみんな……
みんな…っ。
もしまたあの竜と戦うことになっても、私はぜったいにみんなを守るって決めた。ぜったい守ってみせる。
それに竜も死なせない。ぜったい死なせない。それが今私ができるせいいっぱいのことだと思うの。
よし!
さっ次行くわよ!次!もうここに用はないでしょ!私は自分に言い聞かせて気を引きしめた。
両手を強くぎゅってする。

「あせらず行きましょう。あせって生命を落としたのでは意味がありません」

え…?
まるでクリフトが私の心を読んだみたいに言ってきたの。クリフト…?クリフトはもう普通の顔をしてた。
勘の鋭いクリフトっていや。いやだったはずなのに、なぜか今は……

「とはいえもうこのほこらには用がありませんね。次にまいりましょうか」

…………ぷ。なんでだろう、なんでか笑っちゃった。
なぜか今は少しだけ気が楽になったの。またクリフトに助けられちゃった。
おかしいな。いつもだったらくやしいはずなのに、気持ちがすっとしてるのはなんでだろう。ねえクリフト……

――不思議なクリフト…――

なんだか元気も出てきた。今度は堂々とみんなの顔を見て話しかけることができたの。

「わたしはまだ大丈夫よ。みんなはまだいける?」

275従者:2016/06/14(火) 21:48:41 ID:20PI.NtE
従者です。これ以降いたストSP・ポータブル・DS、ドラクエヒーローズの語り入ります。

触りだけですがだいたいの流れを把握しました。>>157さんの教えてくださったこと大いに理解です。
「クリフトなんか最初から相手にしてないのよね〜(笑顔)」
とはクリフトが最下位のときのライアンとの掛け合い台詞でよいでしょうか。
DSは確かにアリーナの心の動きがよく見えますね。前2作で何かあったのかと勘ぐりたくなるw

ヒーローズは壮大感半端ないですね。
何ぶん個性的なキャラが多いので(作戦好きだったり最強だったり王だったり魔王だったり)
何かとサポートに回りがちなクリフト、ヒーローズでは和み・ヘタレ要員に回っていた感が;
ですが基本後ろに控えつつ危機を感じた際にはとっさにアリーナの前で守りの体勢に入るところや
アリーナが突っ走っている際にはすぐ後ろで間を空けず追うところ(背中を預けられそうな印象を受けました)、
何より肩を貸す際のコンビネーションや例のバンジーへの誘いなど見逃せないところが山ほどですね!
礼儀正しく頭は下げるも名乗らないクリフトw
あの名台詞「このクリフト……」も出ましたね。思いつめた表情とまばたき一回が印象的でした。
今回「王様」ではなく「お父上」と言っていたのもちょっと気になりましたが。。
主人公たちに同行する際まじめな思案顔でいったい何を懸念しているのかと思ったら
「せっかく姫さまとふたりきりだったのに……(涙目)」
ってそっちかいw思わず噴いてしまいましたよ。あのイケメン顔であれは反則ですw
後ろ手に組み佇む姿も素敵でした。
ヒーローズ2はまだ登場シーンを拝見しただけですが、いきなり親密度がハイパーになっていませんか?!

今のところ大きな設定破綻はなさそうなので本編クリア後このシリーズのまま展開してみようか考え中です。
まだ把握不足にて会話の流れがめちゃくちゃかもしれませんが、とりあえずこんなクリアリ、いかがでしょうか。

276従者の心主知らず いただきストリートSP編(仮):2016/06/14(火) 21:54:10 ID:20PI.NtE
「ねえライアン。クリフトじゃ相手にならないと思わない?」
「うーむ、クリフトどのは意外とこういうのは得意かもしれませんぞ!」
「えー?でもでも、クリフトってかけ事はしないしお金とか宝とかにも興味ないし、
自分のことより人のこと優先するし、みんなを応援しちゃう気がするのよねっ」
「ほほっアリーナどのはクリフトどののことを本当によくご存知なのですな」
「え?そ、そんなことないよ!」
「うーむ、ライアンさんが相手ですか……。姫様をお守りしなくては」
「え」

「平気よクリフト!わたしのことはほっといて!!」
「ひ、姫さま?」

ほらやっぱり、自分のことより人のこと優先するクリフト。
べつに私がクリフトのことよく知ってるわけじゃなくて、クリフトがいっつもそうだからなのっ!
なんでこんなことで顔が熱くなるの!っもう、クリフトになんかぜったい負けないわ!

「いい、クリフト?手を抜いたりしたらあとでおしおきよ!」
「そ、そんな姫さま…」
「ほほっこれはきびしいですな、クリフトどの」
「ぜったいにクリフトには負けたくないわ!!」

クリフトが私の高いお店に止まった!やったやった!
「おお、ここは姫様のお店!ここに止まれるなんて神にカンシャします!」
「え」
「……アリーナ姫様にならば、この身を捧げてもかまいません……」
「な…」

クリフトがぶっちぎりで最下位!
「悪いけどクリフトは最初っから相手にしていなかったのよね」
「キツいですな、アリーナどの」
「アリーナ姫様と一緒に遊べるなら、順位などどうでも良いのです」
「え…」

目標金額を達成したわ!
「このままお城へ行けば私の優勝ね!」
「さすがはアリーナ姫様です!優勝なさればブライ様もきっとおよろこびになりますよ!!」
「う…」

っもう、なんなのよクリフト!今は勝負中でしょ!?クリフトのバカ!バカバカバカ!!
顔が熱いわ…。

277従者の心主知らず いただきストリートポータブル編(仮) 1/2:2016/06/14(火) 21:58:46 ID:20PI.NtE
今回クリフトはお休みなの。だからもう調子がくるわないで勝負できるのよ!よし!
サントハイムのアリーナよ!手加減なしでお相手するわ!

「わたしはアリーナ。プレイヤーさんはみどころがありそうね。楽しみだわ」
クリフトもたくさんもうけてて実はけっこう強かったんだなって見直したんだけどね。

「プレイヤーさん、そろそろこの勝負にも慣れてきたんじゃないかしら?」
私もクリフトも最初はよくわからなくってバタバタしてたっけ。ふふ。

「プレイヤーさんとの勝負悪くないわ。ね、もっと2人で特訓しましょ!」
そういえばクリフトともよく特訓してたっけ。クリフト今なにしてるかな。

「プレイヤーさんってなかなかのウデね。ねぇ、もっと試合しに来て!
わたし、プレイヤーさんが対戦相手だとワクワクするわ!」
クリフトともいっつも追いつ追われつしててドキドキワクワクイライラしてたのよね。
なつかしいな。やっぱりクリフトとももういちど勝負がしたいかな。

「ねえ、プレイヤーさんじゃなくってプレイヤーって呼んでもいいかしら?」
今までもみんなのことそう呼んでたしここでだけさんづけで呼ぶのはめんどうなのごめんなさい。

「プレイヤーといっしょに旅ができたらすごーく楽しそうね!
ねえ知ってる?『プレイヤーは強い』ってみんなのうわさになってるのよ」
クリフトはうわさになるほど強くはないけど優しくて気がきくところがあるのよね。

……なんでクリフトいないのかな。
弱っちくてお説教バカで過保護でうるさくて、でもいっつも姫さまっていって私のあとついてくるのに。
なんでいないのかな……。
やはり私も参加いたしますって飛びこんできたっていいのに。
お休みした理由は知ってるんだけど、そういうんじゃなくて……そういう難しい話じゃなくって……
なんで……

「ね、ねっ!プレイヤーってちょっといい男じゃない?」
「……そうですね。少なくともトルネコさんより見込みがありそうです」
「……あんたそれ、すっごい皮肉?」

…………。

「わたしもザキにばっかりたよるクリフトよりよっぽどホネがあると思うわ!」

しーん。ん?何か間違ったかな。

278従者の心主知らず いただきストリートポータブル編(仮) 2/2:2016/06/14(火) 22:04:08 ID:20PI.NtE
「アリーナあんた、なんかキゲン悪い?」
「アリーナさん…?」
「え?そ、そんなことないよ!だってクリフトがここにいないのが悪いんだもん!」
「「え?」」

マーニャとミネアがびっくりした顔で私を見るの。
あれ?だってクリフトが……あれ?

「……じゃあアリーナ、次の勝負にはクリフトを引っぱってでも連れてきてやんなさい」
「ふふ、アリーナさん、クリフトさんがいなくて寂しかったんですね」
「えー?」

マーニャはなんかにやにやしてるしミネアはなんかにこにこしてるしなんなのよもうっ。

「さ、寂しくなんかないわよ!イライラしてるのよ!」
だっていっつもいるのにいないから!

「そうね。ま、そういうことにしといてあげるわ」
「姉さん、そんな言い方……」
「ともかく、サントハイムに帰ったら今思ったことちゃんと本人に伝えなさいよ?」
「えー…」

やだな、クリフトになんか会いたくないわ。だってほんとにイライラしてるんだもん。
いても調子くるうのにいなくても調子くるうってなんなのよ!クリフトのバカ!バカバカバカ!!
…………。


……私、やっぱりクリフトといっしょがいいのかな。クリフトと勝負がしたいのかも……。
くやしいな。クリフトなんかいなくたってひとりでぜんぜんかまわなかったはずなのに……

「アリーナ姫、長旅お疲れさまでした。勝負はいかがでしたか?」

…………。

「もうサイアクだったわよ!!」
「ひ、姫さま…?」

お城に着いたら帰りを待ってたのかお出迎えしてきたクリフト。
私はものすごいいきおいでお部屋に走っちゃった。だってクリフトの顔を見られなかったの。
なんで……なんで顔が熱いの……?

279従者の心主知らず ヒーローズ編(仮) 1/2:2016/06/14(火) 22:08:43 ID:20PI.NtE
こんなたくさんの人数で旅をするなんてひさしぶり!前より人数多いし馬車より広いし!
うふふったのしーい!

「今のところこの中でわたしより強そうな人は……」

うん!やっぱりムチと魔法のゼシカよね!あと最強とか言ってる剣のテリーも気になるわ。
ピサロはまたあとで戦えるからほっといて、あとはー……あ、マーニャ。
そういえばマーニャとは手合わせしたことなかったな。空にいることが多いから戦いにくそう。
そういえばクリフトとも……あれ、クリフト?クリフトは?クリフト!?クリフトー!?

「クリフト!?」

クリフトがいないの!どこ?どこなの!?

「クリフトー!?」
「はっはい姫さま!」

クリフトが向こうから走ってきた。

「ちょっとクリフト、どこ行ってたのよ!」
「いえあの、ちょっとトランペットの……いやあの、ちょっと外へ……」
「っもう、心配したじゃない!いっつもそばにいるくせに!」
「…………。……申し訳ありません……」
「べ、べつに謝らなくてもいいけど……。
けど、今度どこか行くときはちゃんと言ってってよねっ」
「…………。はい、姫さま」

なんかクリフトがちょっとだけ笑ったような気がしたんだけど。まあいいわ。

「クリフトわたしね!この中でわたしより強そうな人がいないかさがしてたの!
手合わせしようと思って」
「手合わせ、ですか……」
「そう!手はじめにあなたとすることに決めたわ!クリフト勝負よ!」
「ええ!?そっそんな……姫さまにヤリなど向けられません!」
「なにいってるのよ!勝負なんだから姫とか家来とかはなしよ?わたし本気なんだから!」
「あのっ……で、ではせめて、ちがう勝負にしませんか?」
「ちがう勝負?」
「はい。たとえば、すごろくとか、いただきストリートとか「クリフトー……」
「……はい、姫さま」
「みね打ち!」ぅ…っ」

280従者の心主知らず ヒーローズ編(仮) 2/2:2016/06/14(火) 22:12:17 ID:20PI.NtE
おなかを押さえてうずくまるクリフト。まったくすきだらけだわ。

「ひ…ひめ……さ…っ」
「いつどこから敵がおそってくるかわからないのにクリフトすきだらけよ」
「も……もうしわけ……っ」

ガタンッ

「え?なに?」
「っ…船が急に進路方向を変えたような気がしましたが……」

ふと気がつくとクリフトが私の目の前にいた。手を広げて私を守ってる。あ…。

「……落ち着いたようですね」

少ししてクリフトは手を戻した。まじめな顔をして私を見る。

「何があったのか聞いてまいります。姫さまはここでお待ちください」
「う、うん…」

クリフトは静かに走って外へ出ていった。クリフト…。

今日はもともと風が強くて視界が悪い日だったんだって。
着地の際にさほうにあった小だかい岩山の発見が遅れて?進路変更したとき少しかすってしまったみたい。
船に損傷はなかったけど念のためメンテナンスするんだって。
ご心配をおかけして申し訳ありませんでしたと言っていましたよって、クリフトがわりとすぐ戻ってきて教えてくれた。
クリフト……すごくてきぱきしてた……。

「姫さま……あの、私の顔に何かついていますか?」
「ううん」
「そ、そうですか…」

でもまたあっち見たりこっち見たり私を見たりそわそわしてる。すきだらけのクリフト。
…………。


私がみんなとの旅を楽しめるのは、いつものクリフトがいつものようにそばにいてくれるからなのかな。
もしクリフトがいなくて私ひとりだけでここに来ていたら、今みたいには楽しめなかったかもしれない。
今クリフトはここにいるからいないときのことはほんとにはわからないけど、なんとなくそんな気がするの…。
クリフト……ねえクリフト、私だってあなたを守るからね。負けないからね。

281従者:2016/06/14(火) 22:17:51 ID:20PI.NtE
いただきストリートSP編の補足として、本編にてアリーナはロザリーに
クリフトさんと恋人同士なのですよね?クリフトさんのこととてもお詳しいですよね、
と言われ慌ててちがうちがう、幼なじみだよ、仲間だよと返した経緯があります。
少しでも解釈の助けになれば幸い……詳細はピサロナイト編にて投下予定ですすみません;
またヒーローズ編でのクリフトのすごろく発言も本編クリア後にて詳細投下予定です;
いただきストリートDSとヒーローズ2は台詞そのままで楽しいのでもう少し眺める側をやってきます。
いろいろ長くなりました。この度はご覧いただき本当にありがとうございました。

282名無しさん:2016/06/15(水) 04:40:49 ID:STMXZHEo
お姉さんたちと会った当初はお姉さんたちが前に出て戦うので、戦闘のBGMはジプシーダンスでしょう。
お姉さんたちがメインで戦ってる感を感じさせます。
しかしソロがお姉さんたちを庇わないと戦闘が成立しなくなり、戦闘のBGMは通常曲になります。
そういった無言の演出が秀逸です。
ソロのパーティー内での立ち位置の変化を感じさせます。

以前のスレでも、ソロと姉妹のそういう力加減をステータスだけで表現したことに感心の声がありましたっけ。
ドラクエ4が丁寧に組み上げられていることにあらためて驚かされます。

283名無しさん:2016/06/15(水) 04:45:57 ID:STMXZHEo
>>281
あら、乙です。
あとでゆっくりと読ませていただきますね。

284名無しさん:2016/06/17(金) 02:53:38 ID:pWpNU6.g
ソロの支えになるという意味ならライアンでも問題なし
師匠のように支えて育ててくれるだろうから、精神的にはより安定するはず
ホイミン的な位置でライアンとの互助関係が最初から成立するのも安定材料

あえて圧倒的な火力を持つ姉妹に会わせ、ソロをいったん戦力外に追いやる
先に進むと4章でプレイヤーを苦しめた姉妹の打たれ弱さがじわじわ
ひよっ子だったソロが先頭に立つという決断をプレイヤー自身が体験する

BGMも加えて無言の演出が上手いよなぁ
全く説明せずにソロの立ち位置の変化を表現しきってるんだよな

285名無しさん:2016/06/18(土) 03:25:01 ID:DNh9hs5A
>>281
いたストは知りませんでしたが、おかげさまでなんとなく雰囲気が分かってきました
乙です

286名無しさん:2016/06/20(月) 00:53:14 ID:YMqkb3zw
>>281
What a nice job!

アンドレアルって無限に呼び続ける敵ですよね。
物語の上では1匹という扱いで書かれているのですね。
私だったら無限にいることを物語に反映できずに悩んで書けないかも。
そういう壁をさらっと乗り越えて書いてみせるのが素敵です。

287従者:2016/06/20(月) 23:03:01 ID:4Eu3kMOc
従者です。今回もレスだけで失礼します。

>>282 >>284
その発想はなかった…!
私はずっとソロを先頭のままにしていた並び替えに無頓着な人間です;
ただ戦力面で感じることは同じなのでBGMも手伝っているというのは大きいですね…!
素敵な発見をありがとうございます!
そうした変化を感じ取れる皆さんが丁寧で素敵なのだと思います。

>>283 285
乙ありがとうございます!
(仮)と銘打ちましたがいたストは決まったストーリーがあるわけではないので
あるいはこの(仮)で終了かもしれませんw

>>286
What a thankful word!

すみませんいろいろ端折っていまして、大勢いるけど1匹という面倒な結論に至っています;
仲間を呼ぶということから複数いる種と思われますが
戦闘前と戦闘後の台詞は同じ方が話していそうなので(そうであってほしい気もしたので)
どちらにも支障のない設定を考えた結果
配下としてのアンドレアルは大勢いるけれどあの場所で守っていたのは1匹(リーダー格)で、
呼ばれた仲間は倒したそばから消えていく幻術(身代わり分身)のようなものとしました。
何ぶん今回の戦闘はピサロナイトと違ってクリアリにはほぼ影響しない範囲だったので
いきなりすべて倒した後から始めちゃいましたし(一応前戦闘で4体倒したことになっています)
その解説も後ほど再会した際本人の一言「あれは幻術……」で済ますつもりでした;

ソロの件もそうですがクリアリ以外にも目を向けてくださる方がいるとやる気がさらに増します。
クリアリはもちろん他の面でも読み応えあるSSを目指します。本当にありがとうございます!

288名無しさん:2016/06/23(木) 03:52:40 ID:3ofwLQyY
5章に入ったのにBGMが直前の4章のに逆戻りして「あれ、姉妹の冒険に戻っちゃった…」となる
真打たる勇者登場の5章だけに、新しい展開への期待との落差で拍子抜けするのは否めない
しかしながら、それも後で勇者の成長を実感させるための演出かー
本当に何も語らないままプレイヤーに感じさせるんだからうまい

そういう無言の演出が際立つからこそ、クリフトとアリーナの関係にも含みがあるのかなと思う
ほのかに想像を掻き立てる台詞がいい
ファミコン版は情報の削ぎ落としかたが上手なんだよなー

シンシア生き返りだって、流れ的にはマスドラの配慮の可能性が高いが、幻覚説も支持されてる
堀井さんもインタビューで「幻覚じゃね?」みたいに笑って煙に巻いてしまった
意識して想像に任せてるんだろうな

ただ、サントハイムの人々がどこに消えたのか語られないのは消化不良だった気もする
戻ってくるのがエンディングだから語るタイミングがないのは仕方ないけど

289従者:2016/06/27(月) 11:34:46 ID:HXrOBnxE
>>288
>堀井さんもインタビューで「幻覚じゃね?」みたいに笑って煙に巻いてしまった
あれ、私は幻覚説に対し「そういう見方もあるんだ」みたいな発言をしたと記憶していましたが……
ガセ?
どちらにしても明確にしていないのは確かなようですね。上手ですよねー。

>ただ、サントハイムの人々がどこに消えたのか語られないのは消化不良だった気もする
同意です。
ゲームブックではデスパレスに幽閉されていて
短編集「知られざる伝説」でもデスピサロ率いる軍に連れ去られた描写があり
小説版では時が流れない光の国でサントハイム王妃に会っていたという描写になっていました。
真実がどれにせよPS版では6章があるのですしピサロに詰め寄る描写くらいあってもよかったのにと。。
これも想像に任せるというスタンスなのでしょうかね。

現在構想を文章化です。SSもう少々お待ちください。職人さんたち戻ってこないかな。

290名無しさん:2016/06/28(火) 03:29:33 ID:G..bDhJY
そうか!
6章のピサロ加入で「ソロはどんな思いだよ!」とか言われがちですけど、
アリーナたちが何も聞かないのはもっと不思議ですね
6章はお祭りゲーのノリなんでしょうけどね

291名無しさん:2016/06/29(水) 02:37:21 ID:IirOZg9s
スレが2chの外に移転しているとは、かつての職人さんたちは気づかないのかも。
過去ログから見つけてくれれば良いですけど。

292従者:2016/06/30(木) 09:47:08 ID:bUFKGPys
>>290
6章はもともとFC版ですでに構想があり容量の関係で入れられなかったと記憶していますが
どこまで本当なのでしょうか。
PS版でやっと入れられたというわりには完成度で腑に落ちない点がどうにも……
またヒーローズではピサロもアリーナも互いを知っていたりクリフトが敵にならなくてよかったとこぼしたりと
6章後の設定になっていそうな気がするのですがどうなんでしょう。


PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、結界のほこら(エビルプリースト)編いきます。
すみません今回クリアリパートはないのですが前置きでどうしても外せず、どうか置いといてください;
(最近どこまでの描写があればクリアリと呼んでいいのかわからなくなってきてます;ナンテコッタイ)

293従者の心主知らず 黒幕 1/4:2016/06/30(木) 09:52:06 ID:bUFKGPys
「塔なんだからやっぱのぼっていくに決まってるわよね!」

私たちは今最後の結界を守る敵のもとへ向かってる。
最後は高い塔だったの。

「なんだかわたし、今は強い敵と戦うことこそが最高の楽しみなの。
だってひとつ勝つごとに世界が平和に導かれていくってすごく実感できるんだもの!」

私は自信を持って言うことができた。
クリフトもそうですねって笑顔で返してくれた。

最初の大きな竜と戦ったあと私は大丈夫だと思ってたのになぜかちからが入らなくなっちゃって、
あとの敵にはライアンやトルネコが向かってくれたの。
そしたらみんなもつらい戦いだったはずなのに敵を死なせないでくれたの。
あんな卑怯なヤツ生かしとくのやだわーってマーニャは言ってたけど、
マーニャもミネアも、ソロも、がんばって死なせないでくれたの。
マーニャが言うにはアタマの弱い卑怯なヤツはちょうどよく気を失ってくれたんだけど、
アタマのかたい偉そうなヤツはびっくりしてたんだって。
なぜだってあんまり聞いてくるからしつこい男は嫌われるわよってどくがのナイフでマヒさせといたって。
クリフトがみんなに感謝してて、私もみんなにお礼を言った。心の底からお礼を言った。
涙も出ちゃった……。
私の気持ちがみんなに伝わったこと、何より私のやったこと間違ってなかったのかなって思えたことが本当に嬉しくて。
最後の敵は私が行きたいって、思いっきり戦いたいって、堂々とお願いすることができたの。

――ありがとう、みんな…――

「……ですが、のぼるほどにイヤな予感が高まっていきます。
この塔の頂上には何が待っているのか……」

クリフトが小さくつぶやいた。いつもの独り言かな。
でもちょっとだけ気になる……最後の敵は今までとはなにかちがうのかな。

「うう……」

クリフトが手を胸に当ててぎゅってした。

294従者の心主知らず 黒幕 2/4:2016/06/30(木) 09:56:19 ID:bUFKGPys
「クリフト?」
「なぜでしょうか?この場所ではちょっとだけ胸が苦しいです……」

顔をしかめるクリフト。ほんとに苦しそう……。

「クリフト、大丈夫…?」
「…………。
……はい、大丈夫です……」
「ん…」

申し訳ありませんってクリフトは小さくつけ加えた。すぐ謝るクリフト。謝ることないのにな。
でもいつものクリフトでちょっとだけほっとした。そのあとは誰も何も言わずに頂上へと進んだ。

「ここが頂上のようですが不思議と魔物の気配がありませんな。
どうしたことか……」
「え?」

ブライが首をかしげる。そうなの?

「じゃあ、ここには魔物がいないってこと?」
「むう……」

ブライは何か考えてる。ソロも難しい顔してじいを見てた。
でも私は何かを感じることも何かを感じないこともできなかった。ただの頂上ってだけ。
くやしいな……。
私はただただソロのあとを追って玉座へ向かった。そしたら……

「神父さま?」

玉座に魔物はいなかったの。
今までだったら結界を守る魔物がいるはずの玉座の前にいたのは神父さまだった。
少しだけ寂しそうなお顔をした神父さま……うつむいたままゆっくりこっちを見る。
神父さま…?
私は神父さまにここは危険よって、きっとどこかに魔物がいるはずだから早く逃げてって、
そう言おうと思って前に出た。そしたらクリフトがすぐその前に出て……

295従者の心主知らず 黒幕 3/4:2016/06/30(木) 10:00:57 ID:bUFKGPys
「姫さま、いけません」
「え?」

手を伸ばして私を止めた。そのまま私を守ろうとするの。

「クリフト?」
「いけません……」

クリフトは真剣な顔してた。すぐ神父さまのほうを向いたけど、すっごく真剣で、怖い顔だった。
クリフト…?
私は思わずクリフトの服のすそをつかむ。そっとクリフトの後ろから神父さまをのぞき見た。
さっきまで寂しそうなお顔をしてた神父さま……けど次のしゅんかん神父さまはにやっと笑ったの。
口もとがさけたんじゃないかってくらい引きつった顔……私は背筋がぞっとした。

――この人、人間じゃない…!――

「ほほう……?
とうとうここまで来よったか。しかし今では遅すぎたようだな」

神父さまが話しはじめた。低くてすこししわがれた声……。

「デスピサロは進化の秘法を使い究極の進化をとげ、やがて異形の者となり目覚めるだろう。
変わり果てたやつの心にはもはや人間に対する憎しみしか残っておらぬはず」

気づいたらみんなかまえてた。
神父さまは一度みんなを眺めて小さく笑ったあとまた話を続ける。

「そしてデスピサロは二度と魔族の王に君臨することなくみずから朽ち果てるのだ!!
めいどのみやげにお前たちにも教えてやろう!」

え?なにが起こったの?
いっしゅん風が吹いたと思ったらもう目の前に神父さまはいなくて。
そこにいたのは魔物だった。
大きくて、耳が長くて、指が4本で、赤紫の肌……

296従者の心主知らず 黒幕 4/4:2016/06/30(木) 10:05:01 ID:bUFKGPys
「人間どもを利用しロザリーをさらわせたのはこのわたし!」

――このエビルプリーストさまなのだ!――

え?
ロザリー?
ロザリーをさらわせた…?
からだがほわっとあったかくなる。クリフトが魔法をかけてくれたみたい。守りのオーラのスクルトだ。
それは戦いの合図。
でも私はさっきの魔物の言葉で頭がいっぱいで……。
ロザリーをさらったのは人間たちで……じゃあさらわせたって……

「…………」

人間たちに、さらわせた…?
あなたが……

「あなたが…?」

魔物は笑ってる。
さっきまでの寂しそうな顔はもうどこにもなくて、笑いながらゆっくり手を上げた。
魔物のよこから泥みたいなかたまりがあらわれる。
人のかたちをしたそいつらはだらしなく舌を出して手を伸ばしながらこっちにふらふら歩いてきた。
前にも戦ったことあるような敵……でも私は魔物だけをまっすぐ見た。

「あなたが…っ」
「ん…?わたしが?」

魔物は笑ってる。

――あなたがロザリーをっ!!――

叫ぶと同時に私は魔物に飛びかかってた。後ろでクリフトの呼ぶ声が聞こえた気がした。
魔物がなにかささやいたあと目の前がまぶしい光に包まれる。


イムルでロザリーが死ぬ夢を見てから見はじめたデスピサロの夢はますますはっきりしていった。

297従者:2016/06/30(木) 10:11:05 ID:bUFKGPys
検索にかかりやすくするためにも適宜書きこんで更新を増やしたほうがいいのかもですね。
次の投下は純クリアリですなるべく急ぎますね。今回ご覧いただいた方ありがとうございました。

298名無しさん:2016/06/30(木) 23:56:21 ID:KM7YYGFU
乙です。
検索は書き込まれる頻度と内容によりますね。
スレが止まっている時間が少ないと良いのでしょうね。

6章はFC版の構想とは別物なんじゃないかなと思うのです。
リメイク自体がお祭りゲーのノリというか、元々の構想とは別方向に舵を切って突っ走っているような。
少なくとも会話システムは、過剰な語りを避けて余白を作る従来の堀井さんの方式とは違う気がします。
クリフトにザキロジックを組み込んだリメイクスタッフがFC版のスタッフに「クリフトらしさを入れました」とか言ったようですし、FC版とは考え方の違う人がノリで色づけしているような気がするのです。

299名無しさん:2016/07/04(月) 06:01:34 ID:ZCcQR/KM
1000匹でも2000匹でも仲間を呼べるアンドレアル
あんな狭い場所に何千匹も待機しているとは考えづらいので、
幻術と解釈するのも悪くないと言えましょう

300名無しさん:2016/07/04(月) 09:01:04 ID:yi58Vcsw
アンドレアルと言えば、四天王なのにザラキが効いちゃう異色のボスとして鮮明に記憶しています…

301名無しさん:2016/07/05(火) 03:19:30 ID:drntPDCA
ほ、ほら、幻術を使うのに精一杯で、ザラキ耐性が落ちちゃったんだよ!
アンドレアルさんも大変なんだよ!

アリーナのような打撃系の人を中心にして挑むと無限増殖で長引くから、
ブライとソロ(回復専任)で挑んだ方が早かったりするのがアンドレアル
異色のボスと呼ぶにふさわしいお方です

302名無しさん:2016/07/08(金) 03:00:05 ID:1P9GEiXI
アンドレアル戦はギガデインが最も有用な戦いと言っても過言じゃないです
眠らせたり混乱させたりといった策、またはギガデインなどで均等にダメージを与えることが重要です
アリーナ型の力押しだと長引いてジリ貧になりかねません
アリーナが頭の使いどころを思い知って仲間を見直す場面なのかも知れません

303名無しさん:2016/07/09(土) 01:39:21 ID:U7yYufm.
FC版でもエビルプリーストが真犯人ではあったけど、本人の一言だけで終わらせ、余計な説明はしてない。
最終盤のいよいよクリアへ向かう高揚感の中に一言だけぶち込んで、一気に攻略するスピード感の中でプレイヤー自身に考えさせていく構成は見事。
断片的な情報しかない中でプレイヤーは主人公と同じ視点で悩み、考える。
ロザリーを襲った奴らは何者で、どこからどこまでがエビルプリーストの仕業なのか、最後まで答えは得られない。
デスピサロがどれだけの悪者なのかも分からなくなる。

プレイヤーの心理を都合良く誘導してくれる台詞がないから、最後までプレイヤーの心の引っかかりは消えない。
あえて語らないことでプレイヤーを主人公と同じ位置に置く。
そういう引き算の演出が丁寧に作られているのがFC版の魅力。

もちろんアリーナにもクリフトにも思うところはあるはず。
クリアリの未来にも少なからず影響してくる要素には違いないから想像は尽きない。

304名無しさん:2016/07/10(日) 01:32:36 ID:eSEpxJtw
今更ながら、アンドレアルの仲間呼びを幻術とする発想力に脱帽
不自然になる場面を革新的なアイデアで整えてしまうとは

エビルプリーストを略すとエビプリ
なぜかおいしそう

305従者:2016/07/10(日) 22:23:07 ID:gKp9PGnc
急ぎますと言ったそばから急げていないこの不甲斐なさ;
間が空くと来にくくなってしまうので今回またレスだけなのですがどうかさせてくだしあ

>>298
乙ありがとうございます。
一応FC版で6章の構想自体はあったのですね。どんなだったのか知りたいものです……。
ザキロジックを組み込んだのは堀井氏本人と記憶してました(ラジオか何かで)どうにも記憶がダメですね;
ヒーローズでは本来のクリフトのイメージに例の会話システムの性格を少し取り入れた、
といった情報がありますので(声優へのインタビューだか何かだったような)
もしそれが事実ならあの会話システムは本当に独り歩きだったということになるかと。。。

アンドレアルとエビプリの人気に嫉妬wアンドレアルの幻術描写への反応ありがとうございます。
かつて、アベルなる者が主人公のアニメ版ドラゴンクエストでは
ゴールドを媒体に魔物を生み出していて倒すとゴールドに戻る描写がありました。
ヒーローズもそんな感じですね。(屍が転がっていても絵的にあれですしね;)
もしかしたら単に魔方陣的なものでアンドレアルを呼び出していて倒したらそれに戻るという設定かもわかりません。
ただすべての魔物が倒すと消えてゴールドになったり宝箱になったりするのはどうにもしっくり来ないので、
「ぐふっ」のあとでグラフィックが消えても本当に消えたわけではないと勝手に想定してます。
何ぶんそこらへんの細かい設定がよくわからないので詳細が判明するまでは幻術設定でお願いします;

エビプリ(確かにおいしそうw)はFC版とPS版で台詞が真逆になっているんですよね。
FC版「わが まぞくの おうとして めざめるだろう。」
PS版「二度と 魔族の王に 君臨することなく みずから 朽ち果てるのだ!!」
どちらが本来想定されていた台詞だったのか気になるところです。
エビプリ(ジャコーシュ)でクリアリ……実はちょっとだけ浮かんでいまして、いつかお付き合いいただきたく……
長文失礼しました。ありがとうございました。

306名無しさん:2016/07/11(月) 01:16:59 ID:Rn3QTm5Q
4と5は同じ世界ですが、絶命がどういう形なのかは定まっていない感がありますよね。

5では大臣が絶命するときに消えてますが、ヨシュアは白骨が残ってます。
マーサは肉体ごとパパスのところに行ってしまいます。
人間でも一定しないんですから、魔物はどうなってるんでしょうね。

5では倒した魔物が起き上がるので、原則としては倒しても殺傷していないのでしょう。
4はどうなんでしょうね。

307従者:2016/07/11(月) 21:06:44 ID:t06nodbU
そういえば4でもロザリーが消えていますが6章でなきがら描写がありましたね。
お告げ所のシスターがうろ覚えなのですが会話途中で消されてしまったんでしたっけ??

>5では倒した魔物が起き上がるので、原則としては倒しても殺傷していないのでしょう。
確かに!4でも基本的には倒しているだけで殺してはいないと思いたいところです。
ただ、ザキザラキしても起き上がってくるとなると呪文の性能という別の問題で悩みそうですw
さらに経験値はともかくゴールドは倒れた魔物たちからくすねていることに。。。
人の家のタンスやつぼをあさる勇者一行ですしそこまで気にしてはいけないのかもですね。

少し気が楽になりました。ありがとうございます。

308名無しさん:2016/07/13(水) 22:11:20 ID:70UbrK7g
他人の家のタンスをあさり、ガーデンブルクでは盗人として捕まってしまうのに
それでも最後には冤罪としてお咎めなしって、さすがにモラル崩壊がひどいですが
アリーナはともかく、クリフトはどう感じているのでしょうか

誰にも責められないのは仕方がないです
武器を手に武装集団が家に押し入ってきたら、誰も文句は言えません

それとも導かれている者の特権だったのかな
マスタードラゴンの加護だとしたら、マスタードラゴンは想像以上に偉大です

309名無しさん:2016/07/18(月) 09:14:57 ID:7ioW0b/I
エルフが普通にいる村で育ったソロは、エルフへの見方がちょっと違うんでしょうね
他の人にとっては特殊な存在、でもソロにとっては普通の存在なので
ロザリーとも、異種族に対する気負ったかかわり方ではないんでしょう
そういう人がリーダーですから、アリーナやクリフトも影響されるんでしょう

310従者:2016/07/19(火) 00:38:46 ID:oUhNFHE2
現在SS推敲中です。もうちょとお待ちください;

>>308
ガーデンブルグの件は濡れ衣という流れのようですしそこまで問題ないのではと。。。
勇者一行にとってはあそこがシスターの部屋だったことも
タンスにおもしろいものがあると教えた人物が赤の他人(盗人)だったことも知らなかったわけですし。

個人的にはエルフが落としたさえずりの蜜をそのまま持ち帰ってしまうほうが気になりました。
アリーナとブライは喜んでいましたがクリフトはこれでやっと塔から降りられるんですねと言うのみ。
ブルブルッと最後に震えているので高所恐怖症で蜜どころではなかったという感じですが
何か思うこともあったからだといいなとこの従者シリーズではオリジナル展開ぶっこみました失礼しました;

>>307で確定行為のように書いてしまいすみませんでした。
タンスやつぼをあさるのは結局のところプレイヤー次第なんですよね。(私はあさるプレイヤーです;)
木こり(勇者の祖父)のように持っていけと言ってくれる方もいますし
個人的にはそこそこ了承の上(暗黙の了解)で旅に必要で持っていっていいものだけをいただいている
(タンスやつぼに何もないのは旅に必要なものがないというだけで日用品はいろいろ入っているという解釈)
と思いたいところです。導かれし者(旅する者)の特権という考え方に同意したいところです。

>>309
あ。シンシアってエルフで確定なんでしたっけ。
どうにもFC版の公式ガイドブック挿絵の人間シンシアが抜けなくてですね……。
小説版やゲームブックではエルフ(人外)になっていますが未だ自分の中では「少女」のみに留まってます;
もしエルフだとしたら次に初めて会う(見る)エルフがロザリー……きっと思うことがあるでしょうね。

311名無しさん:2016/07/19(火) 02:48:04 ID:t/ubqccg
ガーデンブルグでは、ロザリオ(?)は盗んでいないけど留守中にタンスを漁ってますからね
そこに目ぼしいアイテムがあれば、くすねていたでしょう
それで冤罪とか言われても「何を言ってるの?」と、子供だった当時に思ったものです
そういう倫理に厳しそうなクリフトとか、いるのにね

他人の物をくすねても良い理由が説明書にでも記されていれば良かったのですが、
そういうのは全く見当たらなかったです
子供たちがプレイするゲームなんですから、説明を省かないで欲しいなと思います

312従者:2016/07/19(火) 23:32:08 ID:oUhNFHE2
>>311
ああ、確かに……。
クリフトは疑ってしまったことを恥じるシスターに対してフォローしていただけですね。
唯一釘を刺していたのがミネア。

ミネア「この国で 学んだのは
  むやみに 他人の家のタンスを
  のぞかないということ……。
ミネア「……なんて言っても
  ソロさんが そう簡単に
  やめるワケないですよね。
ミネア「いいです。
  もう あきらめてますから。

のぞかないプレイヤーにとってはなんのこっちゃという台詞ですが
ゲーム進行的にはのぞくのが普通という流れですからこういう台詞が用意されたのでしょう。
あきらめているからのぞいてもいいという解釈もいかがなものかという話ですが;
ちなみに隣のタンスにはかしこさのたねが入っていたのですがそれに関しては言及なし。
確かにこうした倫理観は冗談で流さずきちんとした説明があってほしかったですね。

313名無しさん:2016/07/20(水) 03:18:48 ID:Zgh7//fQ
他人の家の冷蔵庫を勝手に開ける子供が多くなってるという話は聞くけど、残念ながらドラクエの影響もありそう。

他人の家のタンスを漁ることについて、魔法陣グルグルという作品では、家の人を「いやー、僕、勇者ですからーwww」で押し切るのが勇者の素養とか言ってたような。
秀逸なパロディでありながら、それがドラクエにおける本質なのかも。というか他の説明がしづらいっすね。

世間知らずのアリーナがタンス漁りをしても怒られないのは、ブライやクリフトが処世術として対応を教えてるってことなのかな。
しかしそこからクリアリにつなげる勇気が出ないっす。

314従者:2016/07/20(水) 21:49:32 ID:PbXFkvGE
PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、ロザリーヒル編「ふたつでひとつ」23シーク分投下します。
ピサロナイト「アドン」存命ルートで>>239-260の続きのようなものです。(理由詳細は>>153にあります)
クリアリパートへのきっかけは6/23-12/23、クリアリパートは15/23以降です。
6/23-12/23では前置きで外せず、アドンとの抱擁シーンがあります。ご覧の際にはお気をつけください。

実はこれは以前予告していた純クリアリではないです。(こっちが先に仕上がってしまいました)
順序がだいぶ反転しますが今のところなんとか問題ないかと……。
(そもそも2章エンドールの武術大会から5章ロザリーヒル以前がすっぽ抜けてる時点であれなのですが;)
前に>>223さんがパズルのピースをバラ売りするかのような発表スタイルと書いてくれましたが
最後にはきっとはまるはず……なのでどうか気長にお待ちいただけるとありがたいです;ではどうぞ;

315従者の心主知らず ふたつでひとつ 1/23:2016/07/20(水) 21:54:03 ID:PbXFkvGE
アドンは部屋の前の片すみに座りこんでた。ひざを立てて腕を組んで、顔をうずめてる。
肩にスライムも乗って顔をふせてた。
きっと、泣いてる……。すっごく泣いてる……。顔が見えなくてもわかった。

私たちは今ロザリーヒルに戻ってきてる。私がみんなにお願いしたの。
イムルでロザリーが死ぬ夢を見て、そこでピサロは人間を根絶やしにするって叫んでて、
それだけは止めなくちゃってずっと走ってきた。
でもロザリーを殺したのは人間じゃなくて、彼らを操ってた魔物だったの。エビルなんとかって。
私たちもピサロも騙されてた……。

何もかも人間が悪いわけじゃなかった、それは嬉しい。嬉しいけど……
このままただまっすぐピサロと戦いに行くことが私にはなぜかできなくて……
足が前に出なくって……
そんなときに浮かんだのがアドンとスライムだったの。
結局ロザリーは助けられなかった、けどふたりに何にも言わないでここまで来てしまった、
だから……
ピサロを止めるまえに、戦うまえに、殺しあうまえに……
ちゃんと伝えておきたいって思ったの。
伝えてどうなるわけでもない。ふたりがなんて答えるかもわかんない。
でも、もしみんなが行かないって言っても私はひとりで伝えに行くつもりだった。
そしたらみんなは何も言わないでいっしょに来てくれたの。
クリフトが優しく笑って真っ先についてくれて、ソロも……行くぞってみんなに言ってくれたの。

みんなが私に付き合ってくれた……
この時間を大事にする、忘れないようにする、ぜったい後悔しないようにするって決めた。

「あ、ソロ…」

スライムが私たちに気づいたみたい、ぴょんと下りてこっちにやってきた。
でもアドンは動かない。

「ぷるぷる、おかえり。待ってたよ」
「……そうか……」

ソロが小さく答える。

「遅くなって悪かったな……」
「ううん、だいじょうぶ。アドンもお願いしたら待っててくれたよ」
「…………」

316従者の心主知らず ふたつでひとつ 2/23:2016/07/20(水) 21:58:11 ID:PbXFkvGE
――ぷるぷる……ロザリーちゃん……――
――……――
――アドン、どこ行くの?――
――……――
――アドン!――
――…………。ピサロ様が進撃を開始される。行かなければ――
――アドン…――
――私も行かなければ――
――……やだよぅ……――
――……コンドルたちは置いていく。仲良く暮らせ――
――……やだよう……――
――この村だけは生き残れるようにする――
――ぷるぷるっ!待ってよ!まだソロたちが帰ってきてないよ!――
――…………。もう……――
――待ってようよ!ソロたちを待つって約束したよね!?――
――………………――

「ぷるぷる、だからだいじょうぶだよ」
「…………。そうか……」

アドン……。
ずっと私たちを待っててくれたのね……。

「ぷるぷる……。ぼく聞いちゃったんだ。ピサロさま、ロザリーちゃんのお墓にひとりでこう言ってたんだ。
ふたりで暮らす約束は生まれ変わって必ず果たすって。ピサロさま死ぬ気なのかなあ……」
「…………」

ここに来る途中の丘にお墓がたってたの。ロザリーのお墓……
「この村のすべてに愛された魂よ 安らかに眠れ……」って刻まれてあった。
ロザリーは、ほんとうに……ほんとうにもう、どこにもいないんだ……。
ロザリー……。

「デスピサロは、ここには来なかったんだな…」

ソロがひとり言みたいに小さくつぶやいた。

「あいつがアドンってヤツなのね…」

317従者の心主知らず ふたつでひとつ 3/23:2016/07/20(水) 22:02:12 ID:PbXFkvGE
マーニャもアドンを見ながら言った。
ミネアはブライといっしょによろず屋のおじいさんのところに行ってる。
マーニャがじゃああたしはこっちに付き合うわってついてきてくれたの。
私もアドンを見た。ゆっくり近よる。

「アドン…」
「…………」

――アドン……。やっとあなたの名前を呼べる……――
――アドン……本当に、ごめんなさい……――
――無事戻ってきたら、こうしてまたお部屋に来ていただけますか?――
――ありがとう……。本当に、ありがとう。アドン……――

「なぜ、生きている……」

アドンがぽつりとつぶやいた。ふるえた声…。

「なぜ、私だけが生きている…?」

アドン…。
自分のことを、言ってるの…?

「我々に必要なのはあの方だった!私の命など…っ!」

――私が代わりに死ねたらよかった…っ!!――

アドン…っ。
スライム
がもういちどアドンの肩に乗っかってなぐさめるみたいに顔をうずめた。
ソロもこっちに来た。

「アドン……」
「……」

アドンがゆっくりソロを見上げる。

「ソロ……」
「……」
「…………」
「…………」

318従者の心主知らず ふたつでひとつ 4/23:2016/07/20(水) 22:06:19 ID:PbXFkvGE
ふたりともしばらくお互いを見たままだまってた。
けっこう長い時間待ったと思う、やっとソロが口を開いた。

「……お前、これからどうする…?」
「…………」
「…………」
「…………」

「私はピサロ様の臣下だ。私の心は常にピサロ様と共にある。
ピサロ様が我が身を犠牲にしても人間を滅ぼすというのなら、私もそれに殉ずるまで。
……ピサロナイトの名に恥じぬ最期を飾るまで」

アドン……なんでそんな、かしこまったしゃべり方……。
アドンはソロを見上げたままゆっくり腰を上げた。

「ソロ…!」

ガキィィンッ!

「ぷるぷるっ!アドンやめてよおっ」
「アドンさん!」
「ちょっと、なにやってんのよ!」
「やだよっ!」

みんなでいっせいに叫ぶ。私も大声で叫んだ。

「戦うなんてやだよおっ!!」

剣をぶつけ合うふたりに必死に呼びかける。

――お願い…っ――

「お前たちには感謝する。人間とこんなかたちで関われたことを誇りにすら思う。
わずか一日にして三国を動かすことのできる人間よ、
お前たちとなら、もう一度最初からやり直せるのではないかとすら考えていた……」

え?

「だが、もう、やり直す必要はなくなった……。私はお前たちと戦わなければならない」

319従者の心主知らず ふたつでひとつ 5/23:2016/07/20(水) 22:10:16 ID:PbXFkvGE
――人間は変わらなかった――

「たとえお前たちのような良識ある人間がいたとして、罪びともまた生み出される社会がある限り、
人間はこれからも変わらないのだろう。
我々魔族では人間を変えられない。変えられなかった……」

え…?何の話…?

「いや、本当はもう、変えようとする前からわかっていたのだ……」

――人間は変わろうとしない。なぜなら変わる必要がないから――

「お前たち人間からすれば、我々魔族にこそ、魔物にこそ、変わってほしいと思うことがあるのだろう。
だが我々も変わるつもりはない。変わる必要はないと思うから。それと同じこと」

――他種族同士が歩み寄ることは未来永劫あり得ない――

「だから……」

声がふるえてる。アドン…?

「その社会でお前たち良識ある人間も生きていく限り……」

キィィンッ!

アドンの動きが鈍い。初めて会ったときの切れがない。
ケガをかばってるから…?

ガキィィンッ!!

アドンが壁に叩きつけられた。大きな音を立てて剣が転がる。ソロが剣をかまえ近づいた。
アドン!!死んじゃう…!!

――せっかく仲良くなれたのにっ!!!――

「ソロ!!やめてっ!!」

ソロ、泣きそうな顔してる。でも止まらない。なおもアドンに近づく。
アドンはソロを見上げた。

320従者の心主知らず ふたつでひとつ 6/23:2016/07/20(水) 22:14:02 ID:PbXFkvGE
「やめてって言ってるでしょ!!!」

私はソロに思いっきりキックした。よこ向きにふっとぶソロ。

「何すんだよっ!!」

私はアドンに向きなおる。

「もうどうしようもねえだろっ!!!」

アドンは体勢をそのままに、手を伸ばして転がった剣を拾おうとした。
私はかまわずアドンに近づく。アドンは私に気づいて伸ばした手を止めた。
私を見て、視線を切り、そのままゆっくり目を閉じる。私は……
アドンをぎゅってした。

「っ……」
「姫さま……」
「…………」

アドンが再び手を伸ばし剣をつかむ。その剣を振り上げたような気がした。
でも私はずっとアドンをぎゅってしてた。

「……」
「…………」
「…………」

斬られると思ったのに痛くない。まだ斬られてない。なんでだろう……。
私はゆっくり顔を上げてアドンを見つめた。そして気づく。
アドンののどもとに剣が押しつけられてた。その先を追うとかまえてたのはクリフト。
私の背中は盾で守られてた。

「クリフト……」

クリフトはすっごく真剣な目でアドンを見てた。私はドキッとした。
私の苦手な、真剣なまなざし……。
私は思わず目をそらす。でも、アドンも……おんなじようにクリフトを見てた。
しばらくしてアドンがゆっくり剣を床に置いた。クリフトがその剣を足でけっとばす。
剣は音を立てて向こうに転がってった。クリフトもかまえてた剣と盾を下ろした。

「最初からアリーナ姫を斬る気はなかったのですね……」

321従者の心主知らず ふたつでひとつ 7/23:2016/07/20(水) 22:18:01 ID:PbXFkvGE
え?

「……お前こそ、とんだ期待外れだったな……」

え…?何の話…?

「アドン…?」
「…………」

アドンは少しだけ私を見たけどすぐに視線を遠くに戻して壁にからだをあずけた。
さっきみたいにゆっくり目を閉じる。
まるで、もうにどと起きる気がないみたいな、ちからのない顔……寂しそうな顔……。
アドン……。


「いつか、クリフトが言ってたね…」

――戦うしか、手はなかったのでしょうか……――
――戦いのほかにデスピサロを止める方法はないのでしょうか?――

「ねえアドン……。戦う以外に、方法はないの…?」
「…………」

「……もう、疲れた……」

目を閉じたままアドンは小さく答えた……。

「…………」
「…………」
「…………」

「ねえ……待ってほしいの……」
「…………」
「戦う以外の方法を、私に探させてほしいの」
「…………」
「ねえソロ、私に時間をちょうだい」

――お願い――

「いやなの。私はなんにもしてない。なんにもしないでただ戦うのはいや」

322従者の心主知らず ふたつでひとつ 8/23:2016/07/20(水) 22:21:29 ID:PbXFkvGE
――探したい――

「なんにも方法が見つからなくて、結局戦うことになったとしても、それでも、
自分のちからで納得いくまでせいいっぱい探したいの」

――お願い…――

私はみんなに頭を下げた。
みんなはしばらくだまってたけど、まるで打ち合わせしたみたいに返事をくれたの。

「行くときはいつも一緒だろ」
「どこまでもお供いたします」
「付き合ったろうじゃないの」
「…………っ」

みんながいっせいに受け入れてくれた。
思わず涙が出そうになって私はいっしょうけんめいまばたきする。
ぐっとこらえて顔を上げた。

「ん……」

みんな笑顔で私を見てた。優しい笑顔……
私もなんだか嬉しくなって気がついたら笑顔になってた。

「ありがとう……」

――ありがとう……――

私はアドンとスライムを見た。

「アドン……スライム……」
「…………」
「……」
「お願い、もうすこしだけ待ってて……」
「…………」

スライムも笑顔でうんって、いつまでも待ってるよって返してくれた。
私も笑顔でありがとうって返す。

323従者の心主知らず ふたつでひとつ 9/23:2016/07/20(水) 22:25:09 ID:PbXFkvGE
「アドン……あなたも、待ってて……」
「………………」

「なにを…?」
「え?」

アドンはすこしだけ目を開けて言った。

「これ以上、なにをまてばいい…?」
「…………」

――あの方はもう、どこにもいないのに……――

「ロザリーさま……」

消え入りそうな声。ふるえた声……。アドン、泣いてるの…?
アドンは少しだけ上を向いた。

「いずれにせよ、お前たち人間は遅かれ早かれピサロ様に滅ぼされるのだ。
それだけはずっと先送りにしていたのに、望んだのはお前たち人間。
そのザマを見届けるのも、悪くはないな……」
「…………」
「は、はは……ざまあみろ……はは…ははははは……!」

――滅びろ、人間…!!――

アドンが笑ってる。私たちをあざ笑ってる……。でも私は知ってるの。
アドンはほんとは笑ってない。ぜんぜん笑ってない。
ほんとうはふるえてて、苦しんでて、つらくて、寂しくて、それでもいっしょうけんめい笑ってみせる、
私はそんな人をなんにんも見てきたの。
私はアドンをぎゅってした。

――アドンは泣いている――

「っ……」
「姫さま……」

私はアドンを包みこむようにぎゅってした。
背中に、腰に、腕をまわしてアドンの肩に顔をうずめる。

324従者の心主知らず ふたつでひとつ 10/23:2016/07/20(水) 22:28:47 ID:PbXFkvGE
「…………」
「うっ……ぐすっ……ふぇぇ…っ…」
「…………」
「ふぇぇええええん…っ」

アドンにとって、ロザリーはほんとうに大切な人だったんだ。
私にとってのお父さまやお母さまみたいに。お城のみんなみたいに。今いっしょに旅してるみんなみたいに。
クリフトみたいに……。
たとえ自分が死んだって守りたかったくらい、ほんとに、ほんとうに、だれよりも大切な人だったんだ……っ。

「ごめんなさい……っごめんなさい……っっ」
「………………」

――助けられなくてごめんなさい…っっ――

「ごめんなさいぃぃ……っっうぇぇええええん…っっ」
「………………っ」

アドンの息が乱れた。
肩がふるえて……からだがふるえて……。

「うわぁぁああああん…っっっ」
「っ……っ」

アドンも私をぎゅって抱きしめかえしてきた。

――さびしい……さびしい……たすけて……――

アドンがしゃべってるわけじゃない。でもアドンの声が聞こえてきた。

――ひとりにしないで……わたしをおいていかないで……――

アドンはふるえてた。
ふるえるからだで、腕で、いっしょうけんめい私をぎゅってしてた。

――わたしもそこへいかせてください……あなたのおそばにいさせてください……――

…………。

325従者の心主知らず ふたつでひとつ 11/23:2016/07/20(水) 22:32:30 ID:PbXFkvGE
「……っ……ぐすっ…………っ」
「……………………」

ピサロと戦わなくていい方法……
アドンをもういちど笑顔にする方法……
私、必ず探してみせる。

――ぜったいに探してみせる――

「アドン…」

私はアドンをやさしく呼んだ。アドンが少しだけびくってなる。
小さな声で呼んだんだけど耳もとに近すぎたみたい。

「私を待ってて……。必ず戻るから」

私は顔を上げてアドンを見つめた。
きっと涙で顔がめちゃくちゃだったと思うけど、気にしないでアドンをまっすぐ見つめた。
アドンも泣いてたのね。やっぱり泣いてた……。
涙にぬれた目で私をぼんやり見てる。

「ピサロが人間を滅ぼすまえに、必ず答えを見つけて戻ってくるから。
だから、それまで待ってて」
「…………」

アドンはうなずかない。私をぼんやり見つめたまま。ちからのない目……。
私はふと思い立って、耳飾りをひとつはずした。

「これ、あずけてく」

アドンの手をとって持たせる。

「キラーピアス。ふたつでひとつなの。片ほうあずけてくから、私が戻ってきたときに返して」
「…………」

アドンは手に乗ったキラーピアスをぼんやり見つめる。
私はアドンをまっすぐ見つめてもういちどやさしく言った。

「必ず戻るから、ここで待ってて……」
「………………」

326従者の心主知らず ふたつでひとつ 12/23:2016/07/20(水) 22:36:05 ID:PbXFkvGE
それでもアドンはうなずかなかった。


「もちろん私は戦うのが大好きなんだけど……
戦う以外に物事を解決する方法があるなら、それにこしたことはないわ。
……ううん、そうほうが、きっといいんだわ……」

私はいっしょうけんめい考える。どうすればいいか考える。
後悔しないように……。

「この分だとデスピサロは本気であたしたち人間を滅ぼすつもりでしょうね……。
あーーんっ!ホントにどうすればいいの!?ミネア、いいアイデアない?」
「私に聞かないでよ。
……だって、ロザリーさんはもう死んでしまったし……どうしようもないわよ……」

エルフをいじめるような人間こそ地獄に落ちちゃえばいいのに……
ミネアがそうつぶやいたのが聞こえた。

「約束……生まれ変わって……あ、私もうホントにダメです。うっううっ……」

トルネコ……話を聞いただけなのに。

「考えてみましょう。考えればきっと別の道も見えてくるはずです」

クリフト……。

「ねえ、ロザリーにザオリクってできなかったの?」
「できない事情があったみたい。もともとエルフって「今からでもやったらどうよ」
「……もう日にちもたっているし……どっちにしたって消滅してしまうのが関の山よ」
「そこをさー、あのかたっくるしい町のじーさんとかマスタードラゴンとかがさあ、こう、ちょちょいとちょいと」
「姉さんって本当に……」
「……なによ」

どうしてみんな、いっしょに考えてくれるんだろう。
なんで……。
ブライはずっとだまってた。よろず屋のおじいさんとなにかむずかしい話をしてきたみたい。
ライアンもなんにも言わなかった。腕を組んでうつむいて、なにか考えごとしてる。
ライアン……。

327従者の心主知らず ふたつでひとつ 13/23:2016/07/20(水) 22:40:01 ID:PbXFkvGE
――あの者に同情はしますが、われら人間もおとなしく滅ぼされるわけにはいかんのです――
――デスピサロが人を滅ぼそうとする限り、こちらも命をかけて戦わねばなりませんぞ――

いつか話してたライアンの言葉がまだ胸に残ってる。ライアンは今何を思ってるんだろう……。
ほんとうは今すぐにでも戦いに行きたいんじゃないかな……止めに行きたいんじゃないかな……。

――被害が出るまえに……――

ソロもずっと腕を組んでだまってる。
その沈黙がなんだか重苦しくて、私は思わず声をかけちゃった。

「ソロ……」

ソロがゆっくりこっちを向く。

「その……ありがと……」
「…………」
「付き合ってくれて、ほんとうにありがとう…」

私は改めてお礼を言ってしっかり頭を下げた。
大事なごあいさつをするときは言葉を終えてからおじぎをすることって教わったの。
だから……

「アリーナ」
「…………」
「ありがとな」
「え?」

ソロが組んだ腕をほどいて私のほうを向いた。

「お前が止めてくれなきゃ俺はアドンを殺してた」

…………。

「お前も気づいてたか?」

「あいつ、隙だらけだった。動きにぜんぜん切れがなかった。ふざけてんのかって思うくらい。
あいつ、最初から俺たちを殺す気なんかなかったんだ」
「え…?」
「殺す気がないんなら戦う意味なんかないのに、そういう無駄なことあえてするタイプ。
あいつはさ、俺たちに殺してほしかったんだよ」

328従者の心主知らず ふたつでひとつ 14/23:2016/07/20(水) 22:44:08 ID:PbXFkvGE
――最初からアリーナ姫を斬る気はなかったのですね……――
――……お前こそ、とんだ期待はずれだったな……――

「…………」
「かたちだけでも使命を守ったって、デスピサロのために戦って死んだって、そういう結果を残したいんだろうな。
俺が殺さなくてもあいつはどっかに死に場所求めに行ってたと思うから、同じ死ぬんなら俺の手で死なせてやろうと思ってた。
それしか考えてなかった」

…………。

「俺さ、もうどうしようもないと思ってたんだ。
もしかしたらまだ他に何か方法があるかもしれないなんて、考えもしなかった。
探すまえからあきらめてた」
「…………」
「ありがとうな」
「ううん…」

ソロが少しだけ笑って話すの。
でも、私はなんだか胸が苦しくて、切なくて、ソロをまっすぐ見ることができなかった。
なんでだろう……ソロは言葉を続ける。

「お前、なかなかやるな」

「あいつ、使命とか約束とかに弱い、そういうの律儀に守るヤツだから。
お前がキラーピアス引き取りに行くまでは生きてると思う。きっとあそこでお前を待ってると思うよ」
「え……そうなの?私そこまで考えてなかった……」
「そうなのかよ」
「……うん……」
「…………」

「お前、前に言ったろ。魔族はみんな同じだと思ってたって」
「…………」
「そう考えてたのは俺のほう」

――残忍で、卑劣で、自分のことしか考えてねえ――

…………。

「けど、デスピサロのために戦いながら俺たちも生かそうとする、あんなヤツもいるんだな」

329従者の心主知らず ふたつでひとつ 15/23:2016/07/20(水) 22:49:34 ID:PbXFkvGE
ソロ……。
誰にも何にも聞いたわけじゃないのに、ソロはいろんなことに自分から気づいて変わってく。
ソロってすごいな……。
私もソロみたいになれるかな。自分からいろんなことに気づいて動けるようになれるかな……。
なりたいな……。

私たちはひとまずそのままロザリーヒルの宿屋に泊まることにした。
明日にはもういちど何か方法がないか天空城やゴットサイド、エルフの里に行ってみるんだって。
きっかけはマーニャの一言……私はマーニャに、みんなに、改めてお礼を言った。


「クリフト……」
「……はい、姫さま」

ご飯も終わって寝るしたくもととのって、私はクリフトに声をかけた。
クリフトは相変わらず仕切りの外で見張ろうとしてる。
だから声もかけやすいっていったらかけやすいんだけど、もう無理はしないでほしいのにな。
でも私もちゃんと休むようにしますからって結局見張りをやめなかったの。

「守ってくれて、ありがとう…」
「姫さま…」

私はクリフトにもお礼を言った。ソロにしたみたいに言葉を終えてから頭を下げる。
アドンは最初から私たちを殺す気はなかった。
でもそれは後からわかったことだしクリフトが守ってくれたのは確かだから……

「それから……」
「…………」
「アドンを傷つけないでくれて、ありがとう……」
「………………」

――殺さないでくれて、ありがとう……――

「………………」

ソロはアドンを殺すつもりだった。でもあのとき私を守ってくれたクリフトは……
クリフトはアドンを攻撃しなかった。
あんな状況で、私だけじゃなくアドンも守ってくれたんだって、ソロと話してたときはっとしたの。
だから……

330従者の心主知らず ふたつでひとつ 16/23:2016/07/20(水) 22:54:54 ID:PbXFkvGE
「……姫さま……」
「……ん……?」
「…………」

「少し……外に出ませんか……」
「え?」
「……少し、外の景色を眺めに行きませんか?」
「…………」

クリフトは私をまっすぐ見てる。なんだかいつものクリフトとちがう…?
なんだろう、私はよくわかんないけどいいよって返した。寒くないように上着を用意する。
クリフトもありがとうございますって言ってブライにお断りを入れに行った。
じいもいつものように口うるさくお説教しなかったみたい、クリフトはわりとすぐ戻ってきた。
遠くには行くなよって言われただけだったって。

私たちは並んで外を歩く。教会の明かりで外はほんのり明るい。
よろず屋のおじいさんはまだお店にいるみたい。ミネアやじいと何を話したんだろう。
塔も明かりをつけてるのかな、窓から少しだけ光がもれてる。
アドンもスライムもちゃんと寝てるかな。眠れてるかな……。
寒いかと思ったけどわりとあったかい風が吹いてて上着は必要なかった。

「姫さま……」
「ん、なに…?」

クリフトの声がいつもより低い気がして私も返事が小さくなっちゃった。

「……アドンさんのことが、気になるのですね……」
「え…?」

――私を待ってて……。必ず戻るから――
――キラーピアス。ふたつでひとつなの。片ほうあずけてくから、私が戻ってきたときに返して――
――必ず戻るから、ここで待ってて……――
――アドンをもういちど笑顔にする方法……――
――私、必ず探してみせる――
――ぜったいに探してみせる――

…………。

「……うん……」

331従者の心主知らず ふたつでひとつ 17/23:2016/07/20(水) 22:58:53 ID:PbXFkvGE
クリフトが少しだけ寂しそうな顔をした気がした。クリフト?

――……かないでください……――

クリフト…?
クリフトはすぐ視線を切ってうつむく。なにか考えてる……。

――せめて私は、何を失っても変わらない自分でいられるよう、いつでも神の教えを説ける自分でいられるよう――

「クリフト?」

あなたは今なにを考えているの…?

「たとえ……」
「…………」

――たとえあなたを、……としても……――

クリフト…?いつもの独り言なの…?でも、どうしてこんなに……
再び顔を上げて私を見たクリフトは優しく笑ってた。
でも私はなぜか胸がぎゅってしめつけられた。前もこんな笑顔をどこかで見た気がするの。
どこで…?

――……クリフト……――

どこで……。

――…………。ひめさま…――

そう!ミントスで倒れたクリフトにパデキアを飲ませようとしたとき!
あのときクリフトは笑って私を抱きしめたの。
ううん、寄りかかったっていったほうがいいくらいぜんぜんちからが入ってなくて……
お薬を持ってきたのっていっても、もう大丈夫だから飲んでっていっても、ぜんぜんパデキアを飲んでくれなくて。
飲ませようとしても口から出てしまって……むせてしまって……
ぜんぜん飲みこめなかったの。
自分で飲めないなら飲ませてやるしかないって、口うつしでゆっくり流しこんでやんなさいって、
マーニャが言ってくれなかったらクリフトはパデキアを飲めなかったかもしれない。
もうほんとうにからだがよわってたんだ……。
からだがよわると食欲もなくなって、飲みこむちからもなくなって、ほんとうになんにもできなくなるんだって知った。
あのときとおんなじ笑顔……?

332従者の心主知らず ふたつでひとつ 18/23:2016/07/20(水) 23:02:31 ID:PbXFkvGE
――ひめさま……――

苦しくて、切なくて、つらい、胸がしめつけられる……

――クリフト…!!――

「寄りそってくださる方がいて、アドンさんはきっと心強かったと思います」
「ダメ、クリフト」
「?…」

私はクリフトをまっすぐ見て言った。

「今なにを考えているの?」
「……」
「教えて。ちゃんと教えて」
「…………」

クリフトはおどろいた顔して私を見てる。でもなんにも答えない。
しばらく待っても答えない……。
とまどってるような、ためらってるような、何かを言いたいけど言えない……そんな気がした。
私はたまらなくさびしくなってクリフトをぎゅって抱きしめたの。

「姫さま…」
「やだよ…」
「……」
「また私を置いて遠いとこに行こうとしないでよ…っ!」
「…………」
「やだよ…っ」
「…………」

声がふるえそうになるのを必死にこらえて私は言葉を続ける。

「なにを考えてるのかちゃんと教えて…っ」
「………………」
「教えて……」
「………………っ」

クリフトがいきなり私を強く抱きしめかえしてきた。

――ひとりにしないで……わたしをおいていかないで……――

え?

333従者の心主知らず ふたつでひとつ 19/23:2016/07/20(水) 23:07:06 ID:PbXFkvGE
――わたしもそこへいかせてください……あなたのおそばにいさせてください……――

え…?
アドンと、おなじ声…?
え、でもこれは、クリフトの声…?

「遠くへ行こうとしているのはどちらなのか…」
「……」
「それは……」
「…………」
「それはこちらのセリフですっ!!」

クリフトは私をもっと強く抱きしめてきた。
え?なに?どうして?

「クリフト…?」
「行かないでください……」
「…………」
「どこにも行かないでください……」
「…………」

クリフトはずっと私を抱きしめてる。ぜんぜん身動きとれない。息もうまくできない。
クリフトってこんなにちからあったっけ……?ううん、たぶんそうじゃなくて……

「クリフト……?」
「…………」

クリフトは今度は何も答えない。ただ私をぎゅってしてるだけ……
クリフト……。

「…………」
「…………」
「………………」

クリフトはひとりで旅に出るのが寂しいから私についてきたんだと思ってた。
今でもそう思ってる。
私といっしょにいるのは、私がいっしょに強くなろうねって約束したのと、強くなって私を守りたいのがあるから。
それは、私が姫でクリフトが家来だから。
守るのがイヤになるほど私のことキライなわけでもないから……。
じゃあ、なんで私、こんなにドキドキしてるんだろう。
なんでクリフトはいっつもこんなにあったかいんだろう。いい匂いがするんだろう。

334従者の心主知らず ふたつでひとつ 20/23:2016/07/20(水) 23:10:35 ID:PbXFkvGE
「申し訳、ありません……」
「…………」

クリフトが私から離れようとする。
あ……

「いいよ!」

私は思わず叫んでもういちどクリフトをぎゅってした。クリフトが少しだけびくってなる。

「いいよクリフト、離れなくていいから」

私はクリフトをもっとぎゅってした。
立ってるから肩に顔をうずめられない。いっしょうけんめいクリフトに胸に顔をうずめる。

「っ…」

クリフトのとまどいが伝わってきた。でも私はかまわずクリフトをぎゅってした。
もっとぎゅうっ!

「私はどこにも行かないわ。今までといっしょよ。なんにも変わらないわ。
だからクリフトもどこにも行かないで。今までといっしょでいて」
「…………」
「変わらないでいて……」
「………………」

私は顔を上げてクリフトにお願いした。クリフトはやっぱりまだびっくりしてる。
私、泣いてないわよね。だいじょうぶよね。
自分が今どんな顔してるかちょっと気になったけど、かまわずクリフトをまっすぐ見つめた。

「どこにも行かないで……」
「………………」
「…………」
「……………………」

「………………はい……」

クリフトが小さく、でも返事をしてくれた。

「…………ん」

335従者の心主知らず ふたつでひとつ 21/23:2016/07/20(水) 23:15:03 ID:PbXFkvGE
でも抱きしめる腕にちからを込めてる。ちょっとふるえてる…?
まるで離れたくないって言わんばかりに。
なんでだろう……私はどこにも行かないのに、なにをそんなに心配してるんだろう……。
わかんない……今日のクリフトはやっぱりいつもとどこかちがう……。

「キラーピアス……どうなさいますか…?」

クリフトがぽつりとつぶやいた。

「え?」
「とても気に入っていらっしゃった武器ですよね。
ひとつだけでは効力をじゅうぶんに発揮できないでしょうし……
炎のツメに替えられますか?」
「あ……」

そっか!そうだったわ!

「どうしようクリフト」
「…?」
「うーん」
「……え?」
「でも今さらアドンにやっぱりべつのにしてちょうだいっていうのもなんかくやしいし」
「…………。あの…」
「どうしよう…」
「あの、姫さま」
「ん?」

クリフトは口を開けたり閉じたりあっち見たりこっち見たりしててすぐに次の言葉が出てこない。
ん?

「……それを、承知の上でアドンさんに渡したのではなかったのですか…?」

やっと次の言葉が出たクリフトは心から不思議ですって言わんばかりの口調で聞いてきた。
ん??

「ううん」

私はすぐ答える。
さっきソロにもなかなかやるなって言われたけど……

336従者の心主知らず ふたつでひとつ 22/23:2016/07/20(水) 23:24:11 ID:PbXFkvGE
「私なんにも考えてなかった」
「…………」
「どうしようクリフト……」
「………………」
「あ、また買えるかな。私お金どれくらい持ってたっけ」

私はいっしょうけんめい思い出す。
最後に買い物したのはいつだったっけ。でもお金の管理は結局クリフトに任せたままなのよね。
だからやっぱりクリフトに聞くのがいちばん早いわけで。

「えーと…」
「……く……」
「?」
「はははは……」

クリフトが声を上げて笑ったの。ほんとにおかしそうな笑い声。

「うー…」

いつまでも笑ってるクリフト。

「っもう、そんなに笑わなくたっていいじゃない」
「いえ、その、申し訳ありません、くくくく……」

――浅はかで、本当に申し訳ありません……――

クリフトが笑ってるの。
さっきみたいに胸が苦しくなるような笑いじゃなくて、心から笑ってるような気がしたの。
それもなんでだろう。私がうっかりしてたのそんなにおかしかったかなあ。
クリフトが元気になってくれたのは嬉しいけど……
なんだったんだろう。さっきはどうしてあんなに思いつめたような感じで……
クリフトがまた抱きしめる手にちからを込めた気がした。
でも今度はなんだか優しくて……さっきとはまたちがう感じ……なんだか包みこまれてるような……
なんだろう、なんだかからだがむずむずしてきちゃった。

「ねえクリフトー」
「はい、姫さま」
「ちょっと、ちょっとさ、くっつきすぎじゃない?」
「…………」

337従者の心主知らず ふたつでひとつ 23/23:2016/07/20(水) 23:28:47 ID:PbXFkvGE
さっき抱きしめられて抱きしめかえしてからけっこう長い間くっついてるのよね。
寝るときくっついてるのはよくあるけど立ったままくっついてるのはそんなにないわ。
今日のクリフトはやっぱりちょっと変。

「姫さま…」
「ん?」
「…………」
「んー?」

「どうか、もう少しだけ、このままで……」
「え?」
「どうか……」
「う、うん…」

クリフトはずっと私をぎゅってしてる。
なんだかほんとうにクリフトらしくないわ、こんなにずっとぎゅってしてるなんて。
でもクリフトはあったかいしいい匂いするし、ぎゅってされるとすごーく安心するのよね。
私ももういちどクリフトをぎゅってした。クリフトが私の肩に顔を寄せてくる。
……どうしよう、今夜もいっしょに寝てってお願いしよっかな。
ベッドはせまくなるけど起きて見張ってるよりずっとからだが休まると思うの。
それにそばにいたほうがお互いもっと守りやすいわよね。うん、やっぱりお願いしよっと。

「ねえクリフトー」
「……はい、姫さま」
「あのね」
「……はい」

――――


夢の内容は変わらない。
私は急いでデスピサロの手を取ろうとかけつけるけど、いっつも間に合わない。
なにか変わったことがあったとしたら、それは
私もクリフトもデスピサロのことをいつの間にかピサロとも呼ぶようになってたこと。
夢から覚めたときとなりで私をぎゅってしたまま寝てるクリフトを見て
もしかしたらぜんぜん大した夢じゃないんじゃないかなって思えるようになってたこと。
だからだいじょうぶ。きっといい方法が見つかるわ。よし、明日はまず天空城!

338従者:2016/07/20(水) 23:34:06 ID:PbXFkvGE
なんとなく今回の戦闘シーン>>318-321をゲームシステム的に書かせてください。
通常では60〜70ダメージほど受けるピサロナイトの攻撃ですが今回は受けても20ダメージ前後、
命中率も落ちており2回に1回はミスする仕様です。静寂の玉不使用、アイスコンドルも呼びません。
防御力も武装していないため皆無に等しくHPも療養中のため全回復していません。
通常なら2〜3ターンで倒せる状態ですが倒さずにいると6〜7ターンほどで自動的に戦闘が終了、
もう一つのイベントへと移る分岐ルートとしています。(今回そちらに進みました)
どうにもピサロナイト編は前置きが長くなり申し訳ないです。ご覧いただいた方ありがとうございました。
お疲れさまでした。

>>313
フレノールでは偽の姫に蓄えを差し出そうとした老人もいましたしサントハイム領地では
税(金品)を納める→生活をよくしてもらう、という循環として捉えられそうでしょうか。
タンス漁りでクリアリ……その発想はなかったwとっさではこんなのしか浮かばんかったですw
下ネタ注意。

「クリフトー、こんなものが見つかったわ!これ持ってっていいかしら。あったかそう!」
「そ、それはステテコパンツ!」
「おっきいからおなかまで包んでくれそうだわ!寝るとき履いてみよっかな」
「ま、ま、待ってください!いくら古着でいらないものをいただくとはいえ
男の履きふるした下着を姫さまが履くなど!」
「え、あ、下着なの?そっか……。見ず知らずの人が履いた下着じゃ抵抗あるわ」
「……ふう」
「じゃあクリフトのステテパンツ……」
「なにをいってるんですか!それとステテコパンツです!そもそも私はそんなもの履きません!」

339従者:2016/07/20(水) 23:37:42 ID:PbXFkvGE
今さらで恐縮ですが>>295を一部訂正したいのです。微々たるものですが……

とうとうここまで来よったか。しかし今では遅すぎたようだな」

とうとうここまで来よったか、ソロよ……。しかし今では遅すぎたようだな」

FC版ではエビルプリーストは名前を呼んでいて印象的だったのにPS版ではなぜか削られていて残念なので……
何度もお手数ですが脳内補完をお願いします。では長々と失礼しました;

340従者:2016/07/21(木) 00:49:20 ID:yaG5si.Y
よく考えたらアリーナ一行はお忍びの旅でした。
>>338の循環はなしです。何度も失礼しました;

341名無しさん:2016/07/22(金) 01:52:41 ID:X4hsGj4I
乙です。
長いのを投稿すると分割投稿ですから手間だけで大変ですね。
時間をかけて投稿していることに頭が下がります。
とは言え連続投稿制限の厳しすぎる2chと比べれば大幅に楽になっているはず。
掲示板を使う以上は仕方がないと割り切るしかない手間なのでしょうね。
手間を減らそうと思ったら1回の投稿を長くするしかなさそう。
wikiのお方の手間も含めて少しでも楽になればと願うばかりです。

342名無しさん:2016/07/23(土) 03:13:56 ID:kuOVHd0I
ホイミンと一緒に歩んできたライアンのように、種族の壁を難なく乗り越えた例もあるからこそ
悪化する一方のデスピサロというか魔族との関係は悩ましいですな
そういった難題に直面するパーティーの苦悩が、若いアリーナを中心に描くことで引き立ち、
クリアリとしても深みのあるものになっていくのですな
Good Jobと申し上げる他ありますまい

343名無しさん:2016/07/25(月) 02:56:09 ID:kSeeJz0U
何故か分かりませんがホイミンは念願の人間になれたんですよね。
しかし人間になったホイミンは、ライアンさんを目の前にしても「ライアンさまに どうか ぶじで たびをつづけられますよう おつたえください。」と言います。
人間になった代償なのかは不明ですが、記憶か視力がだいぶ欠損しているようで、本当にハッピーになれたのか分かりません。
ハッピーに見せつつも、種族の壁を越えることは簡単ではないと暗喩しているのかも知れませんね。

ドラクエの世界には御伽噺では済まされない現実の壁もあって、なかなかご都合主義では回っていきません。
そんな現実に直面しながら、アリーナとクリフトは何を話しながら進んでいくのでしょうね。

344名無しさん:2016/07/25(月) 04:55:04 ID:kSeeJz0U
あ、ホイミンとライアンさんはどの版でも会わないんでしたっけ。
それも寂しいですが。

345名無しさん:2016/07/26(火) 02:38:40 ID:nIekQaNc
訪問者を徹底的にもてなすモンゴルのように、ドラクエも訪問者を徹底的にもてなす文化?
または四国のお遍路さんへのお接待に似た文化?
そうであれば、訪問者がタンスを勝手に開けて何かを持っていくのが普通という文化もあり得る?
訪問者専用の自由にお持ちください的な引き出しがたまにあるとか?
そう考えていけばタンス漁りは理解できなくもない

壷割りでさえ、壷が自動で復活する世界という前提条件でなら説明はつく
古い壷は力のある人が割って新しくしてあげるのが親切なんだろう

346名無しさん:2016/07/28(木) 00:43:04 ID:XuvfRudQ
FC版をやっていた当時、なんでピサロナイトを倒さなきゃいかんのかと思ったもんです。
ピサロナイトを倒されたことをロザリーが気に留めないのもどうなのと思ったもんです。
そのあたりを補完してくれるお方には乙です。

347名無しさん:2016/07/29(金) 20:54:15 ID:ouJixA8M
2章では結果的に進化の秘法に加担してるんです
さらにロザリーの護衛を消すことでピサロ発狂へと追い討ちをかけてしまいます
そんな後味の悪い流れが二次創作によって晴れるならありがたい

348従者:2016/07/29(金) 21:56:41 ID:hDaD7Hlg
また誤字がorzなんでいつも投下したあとから見つかるしorzorz
今回またレスだけで失礼します。

乙やGood Job本当にありがとうございます!
長い原因の一つは台詞の前後で空行を入れているのもあるんですよね……。
私の手間は問題ないですが皆さんの手間が……
読者さんはもちろんwiki管理者さんの手間も半端なく。。。
もし載せていただけるならどうかwiki管さんの手間の少ない方法でお願いします。
いろいろとお手数おかけします;

349従者:2016/07/29(金) 22:00:13 ID:hDaD7Hlg
短編集「知られざる伝説」ではホイミンは旅の途中で亡くなりライアンに土葬されているようです。
魂の状態で白髭の老人(マスタードラゴンの仮の姿)に魔物はどんなことがあっても人間として転生させないのが決まり、
人間として転生させることはできぬが新しい身体、人間の肉体を与えてやることは可能と言われ、
死んだ詩人の身体に入って人間として生きてはみないかと提案を受けます。
ホイミンは、ライアンさんは誇りなくして戦士たる自分は生きている意味はないと言っていた、魔物の自分にだって誇りはある、
この身体はこの人のもの、魂を自由にできる力があるならこの詩人の魂を元の身体に戻してあげてくださいと言い断ったところ
もし誘いに乗っていれば未来永劫地獄の業火の中で苦しまねばならなかったと返され結果的に詩人として目覚めることに。

ホイミンは嬉しそうに外に出ていくライアンを見ただけのようですね。
ホイミンがあえてライアンに会わなかったのは結果的に詩人に憑依してしまったことを恥じていたためか、
今は人間でも死んで魂になれば再び魔物として転生するという宿命から歩み寄りへの躊躇が生まれていたためか……
短編集自体がFC版時代のものですし憶測の域を出ませんが、いろいろ考えていくと奥が深そうです。
前に予告していた純クリアリにてアリーナとクリフトが現実の壁について話す描写がありますのでまたご覧いただけたら嬉しいです。
推敲急ぎます。

ピサロナイトにも反応いただき感謝です。
クリアリのために存命ルートにさせていただいた以上できる限りの伏線は回収していくつもりなのでまたよろしくお願いします。
(ヒーローズでちゃっかり登場しているようですし実は生きていた説もあっていいかもしれんです)

350名無しさん:2016/07/29(金) 22:11:52 ID:gm2jzxyY
>>349
知られざる伝説もわりと適当というか、あれは公式同人みたいなものだと思ってます…
ホイミンの話は良かったですけどね

351名無しさん:2016/07/30(土) 08:56:26 ID:PAV7Cvc2
公式設定とみなせるかどうかは分からないが、
たった1回の選択によって未来永劫地獄の業火の中で苦しまねばとか、
この時期のマスタードラゴンには狭量さが目立つね
下界で幸せに暮らすのが気に入らんって程度の理由で親の命を奪ったんだし、
ソロはマスタードラゴンをどう見ていたのか
アリーナたち仲間もどう見ていたんだろうね

352名無しさん:2016/07/30(土) 09:06:15 ID:yAKI7ZJA
苛烈でも何でも、神としてそれくらいの威厳あっていいんじゃないの
少なくとも勇者の母が掟を破ったことは事実なわけだし
それを「いいじゃんいいじゃん、かわいそうじゃん、見逃せよ〜」は
あまりにも都合が良過ぎ、甘え過ぎな勝手理論だと思う
その後マスドラは残された子供のことを気にかけていたんだし
むしろそんな情すら本来なくていいくらいだ

353名無しさん:2016/07/30(土) 20:15:28 ID:CK7fqENw
見逃すか殺すかの2択しかないっていう極端な思考方法は危険だと思うよ
他の選択肢だってあるじゃないか

ドラクエ5の人間界で暮らすマスタードラゴンはなんで無罪なんだろうか
それこそ、あまりにも都合が良すぎだし、甘え過ぎな勝手理論だよ
自分が守らないことを誰かが破れば殺す、果たしてそれは威厳なんだろうか
悪いけど、俺はそうは思わないな

後で子供のことを気にかけるくらいなら親を殺すのは浅はかな行動でしかなく、
そういうマスタードラゴンには威厳でなく危なっかしさを感じる
違反者を殺せば威厳ってわけではなく、恐怖政治と威厳は違うよ
どこぞやの国の将軍様や首領様を見れば明らかじゃね?

ドラクエ4の時点では人間を見下した若くて未熟で独善的な神だよ
ただ最後、天空城への誘いを蹴る勇者にムッとしながらも許可してるし、
何百年後のドラクエ5では随分と視野を広げて成熟してる
マスタードラゴンだって成長途中のキャラとして描かれてるんだよ
未熟さがあればこそ、舞台装置化せず魅力のあるキャラになってる

354名無しさん:2016/07/31(日) 04:53:12 ID:YXWGpEuA
うーん・・・
私としては、掟を破ったのは母君なのに殺されたのは何故か父君ってのが釈然としないんですけど。
それでも父君を殺したことを妥当と考え、威厳まで感じるお方もみえるのですよね。
感性は人それぞれですね。

クリフトとアリーナ、そしてブライも、それぞれ違う感じかたをするんでしょう。
そこからどんなクリアリになるのか考えるのも悪くないですね。

355従者:2016/07/31(日) 11:10:01 ID:.IwaCRws
PS版のセリフをなぞらないSSいってみます。
時期はイムルでロザリーが亡くなる夢を見てから数日後、アリーナ視点です。
結界のほこら編より前となります。順序がめちゃくちゃで申し訳ない;

前に予告していた純クリアリ、やっと完成しました。
(純といっても単に前置きがさほど長くないだけで本当に純かどうかはわからんです;)
一応抱擁シーンがあります。

wiki管さん、もし載せていただけるなら今までの分も含め投下順そのままでお願いできたらと。
時系列はめちゃくちゃですが一応それなりに考えてのめちゃくちゃといいますか
つまり何が言いたいのかわかりませんがどちらにしてもお手数おかけしますお世話になります……

SSが長い原因となっている台詞の前後の空行なのですが、
どうにも私自身がSSを見直すとき一律に密集した文体だと読む気がなくなる性分でして;
(皆さんのSSは楽しく読めるのになぜか自分のはダメなんです;)
皆さんにとってはどうなのかわからず恐縮ですが、どうか空行はそのままでお願いしたく……
他の点でなるべく端的に手間なくおもしろく読み終えられるよう心がけていきますので
何とぞご容赦を、よろしくお願いいたします。

356恋なのか愛なのかそれとも 1/12:2016/07/31(日) 11:14:23 ID:.IwaCRws
――なぜ人間は変わらない……?――
――だれもがみな平和を望みながら罪をおかし、命をうばう――
――口をそろえて主張するいのちの尊さは、同族、身内、自分、だけなのか……?――
――ならばなぜ平和を望むのか。幸福を望むのか……――
――わからない……――
――人間よ――
――わたしはもうお前たちのことがわからない――


従者の心主知らず 〜恋なのか愛なのかそれとも〜


夢を見たの。
私たちは巨大な怪物と戦っているの。その姿はエスターク。
けど戦ううちにどんどん姿を変えていって、最後に変わったのは人の姿……
魔族の姿のデスピサロだった。

デスピサロはちからなく手を伸ばす。
何か言おうとしたみたいなんだけどそれは声にならなくて。
聞き取れなくて……。
私は思わずデスピサロの手を取ろうと走るのだけど、いっつも間に合わないの。
手が届きそうになったときに目が覚める。
私の手は届かない。

あれはたしかにデスピサロだった。
魔族の姿の……ピサロだった。
寂しそうな顔をして、うつろな目をして、何かを言おうとしてた……
あれはピサロだった……。
ずるいわ。
今までさんざんひどいことしてきたのに。たくさんの命をうばってきたのに。
これからだってうばおうとしてるのに。
ずるいわ…っ!

――最初から最後まで悪いヤツだったらよかったのに…っ!!――

もうこの夢をさんかいも見てるの。ずっとおんなじ夢。
私はひとりで夢のことを考えるのがいやでクリフトにぜんぶ話した。
ただの夢だって思いたかったんだけどあんまりおんなじ夢を見るから……。
そしたらクリフトは真剣に聞いてくれたの。
お父さまは夢で未来の出来事を知ることができたかもしれない、
だからもしかしたら私が見るこの夢にも何か意味があるのかもしれないって。

357恋なのか愛なのかそれとも 2/12:2016/07/31(日) 11:18:22 ID:.IwaCRws
結局ロザリーは見つけられなかったの。
前にイムルの宿屋でロザリーの夢を見たことがあったからまた泊まってみようってなって。
けどそこで見たのはロザリーが人間たちに殺される夢だった。
ピサロがすぐかけつけて人間たちをけちらすんだけど間に合わなくて……。
そこでピサロは……人間どもをひとり残らず根絶やしにしてやるって叫んでた。
たとえこの身がどうなろうともって……。
ピサロは泣いてた。すっごく泣いてた……。泣きながらロザリーをぎゅって抱きしめて……
ピサロのあんな泣きくずれた顔、初めて見た……。

ソロは捜索願いを出していたブランカ、バトランド、ボンモール、それぞれへ
行方不明者は発見されましたって、ご協力本当にありがとうございましたって伝えた。
捜索は打ち切られた。

ソロはふるえてた……。

人間は、自分の手で滅びの運命を選んだの。けどそのことに気づいてない。
知らない。
世界中のほとんどの人間たちが、そのことを何にも知らないまんま滅ぼされるの。
だから、それだけは止めなくちゃ。止めなくちゃ……

「姫さま……」

クリフトの優しい声にはっとする。私、考えごとしちゃってたみたい。

「……言いにくいことを教えてくださって、ありがとうございます」
「……ん……」

私は小さく返事をすることしかできなかった。
なんだか頭の中がもやもやしてる。

「……姫さま、今のどの調子はいかがですか?」
「え?」
「普通に声を出せますか?」

いきなりクリフトに言われて私はとりあえず発声練習するみたいにあーって言った。

「……大丈夫のようですね」
「?」
「いえ、以前王様が夢の話をされたときお声が出なくなったことがありましたから」
「あ…」
「今回は大丈夫のようです。本当にあれは、誰のしわざだったのか……」
「うん…」

358恋なのか愛なのかそれとも 3/12:2016/07/31(日) 11:24:26 ID:.IwaCRws
お父さま……。
お父さまたちはまだ戻ってきてない。エスタークを倒しただけじゃダメだったの……。
おとうさま……。
クリフトもすこし遠い目をした。

「……デスピサロは、ロザリーさんの名前を呼ぼうとしたのかもしれませんね」
「え?」
「…………」

そんな気がします、クリフトは小さくそうつけ加えた。
ロザリーの名前…?
なんでわかるんだろう……もしかしたらクリフトはデスピサロの気持ちがわかるのかな。
クリフトは遠くを見たままだった。私はずっとクリフトを見てた。

「姫さま……」

やっとクリフトがこっちを向いた。優しい目で私を見る。

――この話は、ここだけにしておきましょう――

「ライアンさんもおっしゃっていました」

――あの者に同情はしますが、われら人間もおとなしく滅ぼされるわけにはいかんのです――
――デスピサロが人を滅ぼそうとする限り、こちらも命をかけて戦わねばなりませんぞ――

「そして、ブライさまも……」

――勇者どのしかり。苦しくともくじけぬ者はいくらでもおります――
――何であれ悪の道に走るは罪。逃げにすぎんとこのじいは思いますがな――

「いかなる理由があろうと、人を傷つけていい理由にはなりません。
これから戦う敵には、悲しい最期が待っているかもしれないと伝えたところで、ただただ……
皆さんの士気を下げるだけかもしれません……」

…………。

「姫さまのお気持ちは、このクリフトがしかと受け止めました。
これからも、ずっと忘れず、失くさず、一生をかけて受け止めていきます。背負っていきます。
ですから……」

――ふたりでいっしょに、抱えていってはいただけませんか…?――

359恋なのか愛なのかそれとも 4/12:2016/07/31(日) 11:28:24 ID:.IwaCRws
…………。
手を胸に当てて話すクリフト。私をまっすぐ見て話すクリフト。
本気で話してるんだってことがすっごく伝わってくる。クリフトは本気なんだ。本気で……
クリフト……。

「……うん……だれにもいわない」
「…………」

クリフトが少しだけ笑ってくれた。私もめいっぱい笑ってみせた。
気持ちはきっとすっきりしない。
でもクリフトが話をぜんぶ聞いてくれて、いっしょに秘密も抱えてってくれる。
だからだいじょうぶな気がした。前に進めそうな気がした。

「あの夢ね、いっつも私たちが勝つの。
どんどん姿が変わって強くなってく気もするんだけど、最後にはぜったい私たちが勝つの。
それはつまり、これから戦うあいつにだってぜったい勝つってことよね!」

私は元気よく言ってみせた。そしたらクリフトが笑ってうなずいてくれたの。
私もなんだか嬉しくなって気がついたら笑ってた。心から笑えたような気がした。

「ありがとう、クリフト…」
「……い、いえ……」

ちょっとびっくりした顔をしてクリフトは目をそらした。あれ?
たまーにあるのよね、私が笑うと目をそらすクリフト。なんでだろう。
……どうしよう、今夜はいっしょに寝てってお願いしようかな。
クリフトといっしょに寝ればもういやな夢を見なくてすむような気がするの。
どうしよう……うん、やっぱりお願いしよっと。

「ねえクリフト」
「……はい、姫さま」
「あのね」
「……はい」
「今夜は……」
「…………」
「今夜はいっしょに寝てほしいの」
「姫さま…」
「おねがい…」
「…………」

360恋なのか愛なのかそれとも 5/12:2016/07/31(日) 11:32:06 ID:.IwaCRws
「いや、あの…」
「クリフト?」
「この流れでそれはちょっと、あの…っ」
「?」
「私のほうが、その…っ」

なんかクリフトあわててる?

「前ソロにいったらいいっていってくれてたわ」
「ソロさんが!?」
「うん。じいだってもうそんなに口うるさく言わなくなったじゃない」
「…………。そ、それで……ソロさんは、なにか言っていましたか…?」
「ん?」
「なにか、そのことに対して……」
「んー、朝飯までには起きてこいよっていってたかな」
「………………」

「……あああ……」

クリフトは手で顔を隠した。
ん?

「そうですよね、普通はそういう意味でとらえますよね…っ」
「?」

後でソロさんに誤解を解いておかねば、クリフトが小さくそう言ったのが聞こえた。
クリフト…?

「姫さま…」

クリフトが私のほうをちらっと見る。でもしっかり見ないの。見てくれないの。
さっきのクリフトとはぜんぜんちがうクリフト。なんかあわててるクリフト。

「ひとつだけ、確かめたいことがあるのです…」
「……なに?」
「………………」

クリフトは次の言葉を言うのにとまどってるようだった。
でも今度はちゃんと私のほうを見て言った。

361恋なのか愛なのかそれとも 6/12:2016/07/31(日) 11:36:13 ID:.IwaCRws
「私たちはもう、子どもではありません」
「……」
「もし人恋しいだけならば、マーニャさんやミネアさんでもいいではありませんか。
普段とても仲良くお話をされていますし」

うらやましいほどにってクリフトは小さくつけ加える。

「なぜ、その……」
「……」
「私を……」
「……」
「わざわざ、私を……」
「…………」

クリフトは私を見たり下を見たり私を見たり、ちょっとあっち向いたりしてる。
落ち着かないクリフト……。
クリフトは、なにが言いたいんだろう。子どもじゃないから…?子どもじゃないなら……

「子どもじゃなかったら、もうクリフトといっしょに寝ちゃいけないの…?」
「い、いえあの…」
「クリフトはもう、私といっしょに寝るの、いやなの…?」
「っ……」

――子どもだった私じゃないと、いやなの…?――

「そ、そんなわけありません!とんでもないことです!なにをそんな当たり前のことをおっしゃるのですか!!」
「ん……」

あわてて否定するクリフト。前にもこんなことあった気がする。
いっしょに寝るっていうとクリフトはいっつもさわいだりあわてたり抵抗したりする。
でもいやともいっつも言わないしいざいっしょに寝てもほんとにいやじゃないみたいなの。
クリフトのほうからぎゅってしてくることもあるしずっとくっついてることだってあるし。
じゃあ、なんで…?なんで最初はいっつも……

「じゃあ、いいじゃない…」
「そ…っ」
「……」
「……っ…」
「……」
「………………」

「………………はい……」

362恋なのか愛なのかそれとも 7/12:2016/07/31(日) 11:40:09 ID:.IwaCRws
クリフトは結局私といっしょに寝てくれた。

「また流されてしまいました…っ」
「?」


「クリフトー…」
「…………」

「はい、姫さま…」

あ、クリフトまだ起きてた。なぜかほっとする。
明かりを消したらお部屋が真っ暗なまんまでなんにも見えなかったの。
小さな窓はあるんだけど今日はくもってるのかな、明かりがそんなに入らなくて。
ソロとじいが寝てる音は仕切りの向こうからなんとなく聞こえてくるのに
となりでクリフトが寝てても起きてるのか寝てるのかわかんなくて。
でも返事のあと少しだけこっちを向いてくれた気もしたからなんだか一気に安心した。
私は思わずクリフトをぎゅってする。

「っ…」

クリフトの息が小さくもれた。
そんなに強く抱きしめたつもりはなかったんだけど、もしかしたら苦しかったのかな。

「ごめん、痛かった…?」
「い、いえ…」
「そう…」

でもクリフト、少しこわばってる気がする。なんでだろう。いつものかたまるクリフトかな。
私はもういちど、今度はやさしくぎゅってした。そしたらクリフトも私をぎゅって返してくれたの。
特になにをいうでもなく伸ばされたクリフトの腕に頭を乗っける。クリフトのうでまくら。
クリフトはそんなつもりなかったのかな、ちょっととまどったような感じだったけどもういちどぎゅってしてくれた。
クリフトのうでまくら、安心する……私はもうちょっとだけクリフトにすり寄った。

「……不安、なのですね……」
「…………」

「うん…」

なんでわかるんだろう。わかっちゃったんだろう。
なんでクリフトはいっつも私の心を読んだみたいに話してくるんだろう。当てられちゃうんだろう。
私もクリフトの心を読んだみたいに話せたことあるかな。当てられたことあったかな。
なんだかくやしいな……。

363恋なのか愛なのかそれとも 8/12:2016/07/31(日) 11:45:04 ID:.IwaCRws
「姫さまがどのような決断を下されようと、どこに行かれようと、私はついていきます。
共に考えますし、共に悩みますし、共に迷います。姫さまは決してひとりではありません」

――どうか、おそばに……――

クリフトの抱きしめる腕にちからが入る。まるで包みこまれてるみたい。

「ん……」

からだのちからが抜けてく。ぎゅってしがみつかなくてもクリフトはどこにも行かない。
ほんとうにだいじょうぶなんだ。クリフトはほんとうにずっとそばにいてくれるんだ……。

「ありがとう……」

私はクリフトの胸もとに顔をうずめた。
クリフトあったかい。すっごく安心する。今夜はぐっすり眠れそう。
またクリフトの息が小さくもれた気がした。

「本当に、私たちはいったい……」
「?」

なにかつぶやいたあとクリフトは私の頭に顔を寄せたみたい。ずっとくっついてる。
クリフトは私が寝るまでずっとくっついたままだった。

「クリフト?」


夢を見る。またおんなじ夢……。
でも私のすぐよこにクリフトがいた。優しく笑って私を見てる。
まるで大丈夫って言われた気がした。
私も気がついたら笑ってた。みんなでいっしょに崖をのぼってく。
今度は堂々とのぼってく。

――私は決してひとりじゃない――

戦ううちにどんどん姿を変えていくデスピサロ。最後はやっぱり魔族の姿に戻る。
ふらふらと足もとがくずれ、ちからなく手をのばすデスピサロ……。
私はデスピサロの口もとを気をつけて見てみたの。
クリフトがもしかしたらロザリーの名前を呼ぼうとしたのかもしれないっていってたから。
そしたら……

364恋なのか愛なのかそれとも 9/12:2016/07/31(日) 11:49:01 ID:.IwaCRws
「……ロザリー……」

呼んでた……。
ピサロはやっぱりロザリーって呼んでたの。
クリフトの言ったとおりだった……。

――……ロザリー……――

でもロザリーはいない。もういない……。
私はやっぱりピサロの手を取ろうと走る。でもやっぱり間に合わなくて……


目が覚めたらクリフトはもう着替えててベッドのあっち側に座ってた。
お祈りしてるみたい、ロザリオを握りしめて目を閉じてた。
私がずっと見てたのに気づいたのかな、少ししたらクリフトはロザリオを離して私のほうを向いた。

「姫さま、おはようございます」

クリフトが笑顔であいさつしてくれた。

「うん、おはよう」

私も笑顔で返した。
私のほうが早く起きるときもあるんだけどそれはほんとにたまーにで、だいたいはクリフトのほうが早いの。
荷物もまとまってる、もう出かける準備万端なんだ。
なんだかちょっとだけくやしいような、さびしいような……なんだろ、よくわかんないや。

「クリフトの言ったとおりだったわ」
「?」

私はさっそく夢でわかったことを話した。

「ピサロはロザリーって呼んでたの」
「…………」

お部屋がいっしゅんしんとなった気がした。
私ははっとしてとなりでソロやじいが聞いてなかったか気になったんだけどクリフトがそれは大丈夫って。
ふたりともちょうど近くにはいなかったみたい。よかった……。

「……やはり、そうでしたか……」
「……うん……」

365従者:2016/07/31(日) 11:52:42 ID:.IwaCRws
今さらですみません!
このあとさらっとですがアリーナの言葉に残酷、鬱描写があります。
注意書き忘れました;
すみませんご覧の際にはお気をつけください;;

366恋なのか愛なのかそれとも 10/12:2016/07/31(日) 11:56:30 ID:.IwaCRws
…………。

「ねえ、どうしてクリフトはピサロの言ったことがわかったの?」

昨日話を聞いただけなのに。

「クリフトは、ピサロの気持ちがわかるの?」
「…………」

クリフトはしばらくだまってたけどそのうちぼんやりと遠くを見つめた。
まるで独り言みたいに小さくつぶやく。

「ピサロ……さんが……」
「…………」

――ロザリーーっ!!ロザリーーーーっっ!!!――

「他人とは思えない瞬間を、あの夢で見ましたので……」

――ロザリーーっ!!――
――ピサロはベホマをとなえた!――
――しかし何もおこらなかった――
――ロザリーーーーっっ!!!――
――ピサロはベホマをとなえた!――
――しかし……――
――許さん……!許さんぞ!人間ども!――
――たとえこの身がどうなろうともひとり残らず根絶やしにしてやる!――

…………。

「ねえ……」

私はふと思い立ったことがあってクリフトに聞いてみた。

「もしピサロの気持ちがわかるなら、どうすればいいのかな。やっぱりただ戦うしかないのかな」
「…………」
「もちろん私は戦うのが大好きなんだけど……こてんぱんにやっつけてはやるつもりだけど……」
「…………」
「でも……」

ふとクリフトが優しい顔をした気がした。嬉しそうな顔にも見えた。
でも少しだけ寂しそうな顔にも見えた。クリフト…?

367恋なのか愛なのかそれとも 11/12:2016/07/31(日) 12:01:20 ID:.IwaCRws
「もし、ピサロ……さんが……」

クリフトが静かに話しはじめる。ゆっくり……。

「ピサロさんが、私と同じだったなら……」
「……」
「彼は今、悔やんでいると思います」
「……悔やんでる…?」
「はい」
「…………」

――愛する人を守り切れなかった自分の無力さを、不甲斐なさを、心から悔やんでいると思います……――

…………。

「しかし時間は戻らない。死んだ者はよみがえらない……」
「…………」
「だから……」
「…………」
「……戦うしか……」
「…………」
「………………」

そこから先が続かない。クリフトはだまったままうつむいてしまった。クリフト……。
なんでだろ、私はふと思い出してる光景があったの。あれも夢だったんだけど……。

いつか見た夢……
コナンベリーへ向かう途中の砂漠で倒れた私に必死に呼びかけてたクリフト。
あのときクリフトも何度も何度も倒れてる私にホイミしてて、でも私のケガは治らなくて。
すべての敵をザキやザラキで、剣で、殺してたの。逃げようとする敵にまでザキしてた……。
血まみれの手で気味の悪い笑い方をしてて、まるでクリフトじゃないみたいだった。
怖かった……。
あれは夢だったけど、もし私が本当に倒れたら、現実のクリフトもああなるのかな……。
それはイムルの夢で見たピサロといっしょ……だから、もしかしたらピサロも……

目にうつるすべての敵のいのちを奪って、だれもいなくなって、ひとりきりになって、そして、
守れなかった人のそばに寄りそって目を閉じるの。たとえ砂漠に埋もれても、いっしょに……
きっと、いっしょにそのまま朽ち果てるの……。

あの夢はブライがクリフトをたたき起こして早く行くぞって言ってくれたから大丈夫だった。
じゃあ、ピサロは……

368恋なのか愛なのかそれとも 12/12:2016/07/31(日) 12:04:57 ID:.IwaCRws
――愛する人を守り切れなかった……――

え?

「…………」
「……?」

愛する人?
え…?

「姫さま…?」

…………。

「ううん、ごめん、なんでもない」
「?…」

なんだろ、なんかかんちがいしちゃった。
クリフトはピサロにとってのロザリーを愛する人って言ったんだわ。私じゃないわ。
なんだかいろんなことが一気に起こったから頭の中がぐちゃぐちゃになっちゃったみたい。
私やっぱり考えるのは苦手だわ……。

「ごめん、ほんとになんでもないの。ちょっといろいろ考えすぎちゃって……」
「そう……ですか……」
「うん…」
「…………」

「朝食までまだ時間があります。もうひと休みされてはいかがですか?」
「…………」

「……うん……」

私はもういちどベッドにごろんてなった。

「クリフトー」

なんとなく手を伸ばしてみる。そしたらクリフトは少しだけ笑って手を取ってくれたの。
思いきって指をからませてぎゅってする。クリフトはちょっとびっくりしたみたいだけどぎゅって返してくれた。
クリフトの手、ほんのりあったかい……私は安心してまた目を閉じる。

このさきどうなるかなんて、どうすればいいかなんて、考えててもしょうがない。
行こう。前に進んでみよう。
答えはきっと頭の中じゃなくて、今目の前に広がってる世界にあると思うの。よし、行こう!

369従者:2016/07/31(日) 12:10:13 ID:.IwaCRws
改めて気づかされましたがつぼって割っても割っても元に戻ってましたね。
つぼやたる、花びんが自動で復活する世界……花が自動で定位置に戻る世界……
だから町の人たちも特に咎めないのだとしたらそれには大いに納得なので
何とか腑に落ちる解釈を見出したいところですが今のところ謎世界です。

>>350
わりと適当という点は大いに同意ですがそれを言ってはおしまいだw>公式同人
ホイミンの話よかったですよね。本編で再会くらいはしてほしかったです。
(なぜ教会に連れていかなかったのかという疑問はどうしても残ってしまいましたが;)

本編に支障のない範囲でこの短編集の設定も取り入れていますが
一部取り入れて一部なしという部分も出てくるかと思います。
抜け、矛盾も多々あると思うのでもし設定破綻がありましたら何とぞ教えてください。
この度は途中の注意書き本当にすみません。ご覧いただきありがとうございました。

370従者:2016/07/31(日) 12:14:08 ID:.IwaCRws
もうひと書きお願いします。

マスタードラゴンに関する皆さんの解釈がとても鋭くて一気に目が覚めました。
威厳ある(情すらなくていいくらいな)マスドラ、未熟で成長途中の魅力あるマスドラ、いいですね。
ところであの、皆さんの中で勇者の父を殺したのはマスタードラゴンで決定でしょうか。
私もずっとそう思っていたのですがそれを揺るがせやがったのがこの日記なんですよ;

天空人の日記があった。
ソロにも 読める文字で
書かれてあった。
禁をおかして 地に下りた彼女を
マスタードラゴンは どんなに時が
たとうとも お許しにならないだろう。
今に マスタードラゴンは もっとも
残酷なやり方で 彼女のしあわせを
うばうことだろう。
悲劇がおこる前に 地に下りた彼女を
私は なんとしても連れ戻すつもりだ。
それで どんなに憎まれようとも……。

これは一見するとああやっぱり勇者の父を殺したのはマスドラなんだな、と思うのですが
もう少しよく読んでいくともしかしてこいつが先に父を殺して彼女を連れ戻したのか?という……
PS版からなので後付け感が半端ないですが未だ意味不明で腑に落ちないんですよ……。

371従者:2016/07/31(日) 12:54:22 ID:.IwaCRws
もうやだorz台なしだorzorz
すみませんさっそく>>367下から12行目あたり訂正を……どう多く見積もってもやりでした;
いつも申し訳ないです……

>>367
すべての敵をザキやザラキで、剣で、殺してたの。逃げようとする敵にまでザキしてた……。

すべての敵をザキやザラキで、やりで、殺してたの。逃げようとする敵にまでザキしてた……。

372名無しさん:2016/07/31(日) 13:27:13 ID:YXWGpEuA
おお、乙です。
wikiのお方は完結したら掲載する方針でしたね。何年後に掲載されるのでしょうね。
順不同で書かれている場合は、書き手が完結宣言しない限り掲載されないのかも知れませんね。

>>370
その日記を読む限り、威厳のある統治者というよりは恐怖政治寄りで確定なんでしょう。
規則に沿った処罰ではなく怒りに任せた制裁をするタイプのようですね。
天空人が怯えるばかりで諌めようとしないのは、粛清が怖いのでしょうか。
一方で、ドラクエ5のマスタードラゴンは独善的なところがなくなり、まさに成長途中といった感じ。
いずれ落ち着いて威厳のある神様になるのでしょう。

373名無しさん:2016/08/01(月) 03:06:23 ID:pAhVVTgE
天空人の日記を素直に読めばその天空人は「彼女」の幸せを願っているわけで、勇者父を殺害したとは解釈しづらい気がするのですけど…
その天空人の行動が間に合ったという情報もなかったはずです
ただ、勇者父を殺害したのがその天空人だという解釈も試みられており、解釈方法の1つとして存在はしています

デスピサロを倒して平和になったのに、勇者の母らしき天空人は1人だけ泣いていましたっけ
一緒に暮らせないとしてもせめて名乗りたいところ、止められているのでしょう
マスドラが自分のやったことを隠蔽する以外の理由が見当たらないだけに、この時代のマスドラってどうなのかなと思うところです

ドラクエ5ではマスドラが地上でサボっていたせいで世界に危機が訪れましたが、マスドラは反省するどころかエンディングで再び人間に戻ってました
まだ遊びたい盛りなのか、神として世界を守ろうという意思は弱いようです
天空人が同じことをやったら殺すのでしょうけどね…それが威厳なんでしょうか…

ドラクエ5では学びたい(遊びたい?)盛りの若いマスドラ像が強調されているようで、まだ成長の途中なのでしょう
それを踏まえると、4のマスドラは若さゆえに独善と暴走を繰り返して怖がられている未熟な神と言えるのではないでしょうか
完璧じゃない若い神だから失敗も迷走もする…と解釈するのが妥当なようです
それでも自分と違う存在を理解したいと探究心を燃やす5のマスドラは、4よりも確実に成長しているし、これからも成長するでしょう

天空シリーズは目立ちすぎないようにマスタードラゴンの成長物語を仕込んであり、うまく作られていると感心させられます

374名無しさん:2016/08/01(月) 23:59:28 ID:STiv.c7k
あと初めて会ったときのマスドラ自身の台詞からも、当時のマスドラの性格が分かります
「私はここにいて世界のすべてを知ることができる。
お前たちがなぜ私に会いに来たかもすでにわかっている。」
ドラクエ5のときと比べるとかなり驕っていますし、自分を偉く見せて相手より上に立とうとしているのが分かります

日記から分かるように、気に入らないことがあるとキレて執拗に相手を苦しめようとします
違反者である勇者母ではなくなぜか勇者父を殺した挙句に、謝ることもありません
まだ自分中心に世界が回っていて客観的になれず、自己顕示欲とか虚栄心が強いお年頃なのでしょう

5では人間のことをもっと知るために人間として暮らしていました
自分には知らないものがあると認める余裕ができて、知りたいという要求に駆られています
癇癪持ちの独善的な子供が少し成長し、知らないことを知りたがる年齢になったのでしょう
リスクや立場をわきまえて我慢せずに欲求に身を任せてしまうところからも、まだ大人ではなさそうに思われます
まだまだ未熟ですが着実に成長の過程を踏んでいるので、立派な神様に近づいているとは言えます

4では中身が伴わないまま背伸びして偉ぶっていて、まだあまり魅力がありませんでした
5では成長途中の素直な若々しさが鮮やかに花開き、未熟ながらも魅力にあふれています

やっていることが神として失格なので、ネット上ではマスドラは随分と嫌われています
私としては、まだ未熟すぎてダメな子だけど成長しつつある若い神と解釈して見てほしいなと思います
子供だから許されるというものでもありませんが、子供に大人としての振る舞いを期待するのは無理というものです


勇者やアリーナたちがそこまで考えるとは思いませんけど、ブライは考えるのかも知れません

375従者:2016/08/02(火) 17:30:26 ID:enJ8MPmc
>>372
乙ありがとうございます!
ああ、全話が完結したら掲載する方針に変わったのでしょうか?
とするとこの従者シリーズ、たぶん完結はしないので……(少なくともヒーローズ2まではこのまま引きずる予定です;)
ふと思いついて途中挿入もあるかもしれませんし……どうしましょう。

特殊なSSで本当に申し訳ないです;(もともと保守ネタで始めたものでした;)

376従者:2016/08/02(火) 17:34:16 ID:enJ8MPmc
マスタードラゴンに関してですが、これは一つの憶測です。

>>370の日記の天空人が勇者父を殺害し彼女を連れ戻したと考えた理由は最後の一文「それで どんなに憎まれようとも……。」です。
もしそうだとしたら、当のマスタードラゴンはもっと残酷なやり方(彼女自身に制裁を加えるなど)を考えていたと予測されます。
(小説版では禁を犯した元天空人ジャコーシュ(エビルプリースト)は翼をもぎ取られ地上に捨てられました)
連れ戻しさえすれば悲劇は起こらないという何らかの確信を持っていたのだとしたら、
勇者父を殺害しその上で彼女を連れ戻すことで彼女自身への制裁を免れようとしたのだろうかと。

ただ、>>373さんもおっしゃるように言い回しから解釈しづらい部分もありますし
当の日記を書いた天空人らしき人物はどこにも見当たりませんし
元よりPS版からなので、マスタードラゴンが制裁を加えたという解釈を後押しするための伏線と考えたほうが妥当かもしれません。
ずっと腑に落ちなかったのですがなんだかすっきりしましたありがとうございます。

いずれにしても、マスタードラゴンが残された子供のことを気にかけていた点、
これもPS版からですが、移民の町へ向かう天空人たちには一切の制裁を加えていない点から、
本編内ですでに意識の変化が見られていないでしょうか。
禁を犯した立場でありながら残された子供のことを片時も忘れずにいる勇者母を十数年も見てくれば何らかの影響も受けるかもしれません。
自分ですでに私は完璧な存在ではないとも言っていますしね。

私自身がマスタードラゴンをどう捉えているかは今後のSSで(アリーナたちの動きで)バレバレになると思われます;
皆さんの素敵な解釈、いたるところで反映させていただくかもしれません、今とても楽しいです本当にありがとうございます。

377従者:2016/08/02(火) 17:51:54 ID:enJ8MPmc
>>376の憶測に追加ですが、子供への制裁も、ですね。

378名無しさん:2016/08/03(水) 01:56:38 ID:ACtTm6II
>>375
wikiのトップに書かれている掲載基準は、昔から全然変わっていないと思うのですが。
少なくとも、未完のものを原則として掲載しないという方針は数年前から書かれていました。
例外規定も昔から変わっていません。

あくまで原則ですので、wikiのお方の思うようにやっていただければ良いでしょう。
検索のことを考えれば更新の頻度を増やした方が良いのでしょうけどね。

379名無しさん:2016/08/04(木) 20:29:36 ID:49WBVCyg
>移民の町へ向かう天空人たちには一切の制裁を加えていない
短期間で掟が完全撤廃されるとは思えないし、有名無実化するとも思えません
スタッフの失念の可能性大では?

仲間会話などリメイクの追加要素の多くはノリで作られ、不整合もあるでしょう
というか、リメイクのスタッフが堀井さんが作った設定を知っているのか怪しいです
特に移民なんて、シナリオや設定を統括する人が見ているかどうかも怪しいです
ストーリーの本編とは関係ないはずの要素ですから

>自分ですでに私は完璧な存在ではないとも言っていますしね。
それ、完璧に近い存在と思わせるための、深層心理に誘導をかける台詞なんでは?
そもそも人間はマスタードラゴンなんて知らないので、完璧かどうかなんて知りません
そこで最初に「完璧だと思ってるはずだが、そこまででもないぞ」と線を引いちゃうことで、
自分への評価を完璧付近に固定しようとしてるんでしょう

実際には、正体不明のマスタードラゴンにプレイヤーが完璧寄りの印象を抱くよう、
堀井さんが設定した台詞なんでしょう
そんなことを言い始めたら身も蓋もないので、マスタードラゴンがそう言った意図を
考えていきたいもんです

380名無しさん:2016/08/05(金) 04:45:31 ID:733yTkNg
>>376-377
父親を殺して子供を残すというのは、勇者母を連れ帰る方法としては不自然だと思うのですけど…
母親なら父親のいない幼い子供を残して去るなんてとんでもないことなので、地上に残る強い動機を作ることになるでしょう
普通の母は子のためなら命を惜しまないでしょう

子の命を守るためと説得して天空城に帰らせた可能性もありますが、それだと勇者父を殺害する理由がありません
その気はなかったがアクシデントで勢い余ってやっちゃったとしても、夫を殺した人の説得に応じる母がいるのか疑問に思うところです
マスドラから直接的な通告(脅し)があったから地上に戻れないと考えるのが自然だと思うのです

あとマスドラの意識についてですが、4の時点ではほとんど変化がないと思われます
勇者母は勇者に名乗れないまま泣いて終わることから、勇者を守るために最後まで名乗れなかったと推測できます
本当にマスドラが勇者や勇者母を思うのなら、名乗ることを許可して後押しくらいはするでしょう
マスドラにとっては、勇者や勇者母の幸せよりも自分自身のイメージの方が大切なことだったのではないでしょうか

381名無しさん:2016/08/06(土) 10:43:44 ID:0vnWmmWg
そろそろマスドラ糾弾スレでも立てて、そこで存分に語られたらいかがでしょうか?

382名無しさん:2016/08/07(日) 03:03:25 ID:ion9ENeA
>>381
どのキャラがどう考え、クリアリにどう絡むんだろうとかいう問題提起も出ているわけで、
クリアリ絡みの話題って認識なんですけどね
このスレから追放しなきゃいけない理由がありましたか?

383従者:2016/08/07(日) 12:54:49 ID:bdg2MsJQ
>>378
あ、変わっていませんか。教えてくださりありがとうございます。
そうですね、wiki管さんの思うように……お願いいたします。

>>379
天空人の中にはマスタードラゴンの命令で地上世界のことを調べに来た者もいるため
(どうして急に地上のことを調べさせるのか不思議がっており
「ひょっとして 自分も 地上に 遊びに来るつもりだとか?……いや そんな まさかな。」
と発言するなど5への伏線と取れる描写が入っています)
失念というより先走った感がありましょうか。
地獄の帝王による危機を下界に住む者たちに伝えようとした者もいますが、夜には
「禁をやぶって 地上へおりた私を おゆるしください……うーんうーん。」とうなされているため
禁自体は変わっていないようです。あえて補完するなら
エスターク、第二のエスターク出現による混乱のため措置が遅れている、といったところでしょうか。

マスタードラゴンの実際の台詞はこうでした。そこはかとなく違いました失礼しました;
「しかし もはや 私にもデスピサロという者の 進化を 封じることはできぬ……。
お前たちが 思っているほど この私とて 絶対の者ではないのだ。」
図書館でも「マスタードラゴンでさえも エスタークを 封じ込めるだけで 消滅させることまでは できなかった。」とあり、
エスタークやデスピサロのほうがもっとすごいんだぞという印象を抱かせようとした感もありますね。
本編だけで考えるならマーニャやブライあたりが
「……天空の神さまも 知ってるなら 自分でちょちょいと やっつけちゃえば いーのに。」
「魔族でも 天空人でもない われわれに 西の洞くつに入れとは。まったく 次から次へと ムチャばかりさせよってからに。」
などと発言しており(ブライはマスタードラゴン宛てではありませんが)
あなたなら何とかできるんじゃないの?なんで前回エスタークを封じたみたいに今回もやってくれないの?
と問い詰められるのを防ぐために先に絶対ではないと線を引いたともとれそうです。

384従者:2016/08/07(日) 13:08:59 ID:bdg2MsJQ
>>380
あくまで憶測ですので……丁寧に対応いただき感謝です。
もしマスタードラゴンが父母子すべて処するつもりでいたとしたら、天空人が母を連れ帰るだけでは仮に母の命は救えても父も子も失います。
また本人を処するより大切な者を奪うほうが残酷という見解もあるので、父と子を処しもともと母は連れ帰るというやり方も考えられます。
(だから子が生まれるまで制裁を待った)
ただ、自分だけが生き家族すべてを失うのなら、たとえマスタードラゴンの通告(脅し)だとしても母も地上に残る道(死)を選ぶのではないでしょうか。
マスタードラゴンが手をわずらわすその前に天空人が動いたということ、父は自ら処し母は子と引き離す(連れ帰る)ことで
これからの命である子だけは生かしてやってもらえまいかと訴えた、でなければ父も子も(ともすれば母も)死ぬはずだったと考えるならどうでしょうか。

ただあの、私は別に勇者父を殺したのは天空人ではないかと説得させたいわけではないんです。
前回のレスで私の中ではすでに解決していますし……(やはりマスドラが妥当だと思います)
例えば天空城に戻らなければ子の命もない(戻るなら子のことを気にかけよう)などと言われれば泣く泣く戻らざるを得ないかもしれません。
どちらにしても当時のマスタードラゴンが残酷であったことは変わりないです。
小説版では記憶喪失の母が初産の際に記憶を取り戻し怖ろしくなって神を呼び、一瞥した神が過失で全員に落雷させてしまったことになっています。
(天空人には害のない光のようです)
子は落雷の光に耐えたため神は驚愕しこの子こそ云々……ただそれではPS版のあの日記「もっとも残酷なやり方」に矛盾するのでなんとも……
そもそもなぜ下界に下りることが禁なのでしょうかね。

マスタードラゴンは勇者に天空人として天空城に住むことを提案していますがその意図もどうなのでしょうか。
もし勇者が承諾していたら勇者母も母と名乗れたのかもわかりません。

>>381
も、申し訳ないです……。
マスタードラゴンでクリアリ……は今のところ浮かばないんですよね;(何を考えているのかよくわからない人物って難しいです;)
ここからクリアリに行けそうな何か、ありますでしょうか。

385名無しさん:2016/08/07(日) 14:31:29 ID:ion9ENeA
>>384
>マスタードラゴンでクリアリ……は今のところ浮かばないんですよね;
いや、「いたるところで反映させていただくかもしれません」と仰ってましたよね
原作準拠を心がける書き手がそう仰っているので、考察を深めるのもクリアリの糧と考えてます
クリアリと無関係な流れでマスドラ論が繰り広げられたらNGでしょうけど

386従者:2016/08/07(日) 16:08:02 ID:bdg2MsJQ
>>385
なんと、ありがとうございます!
先ほどの発言に語弊があったのでどうか訂正させてください。

マスタードラゴンが直接クリアリのきっかけとなるSSが今のところは浮かばないという意味でした。
ピサロ(デスピサロ)でクリアリ、ジャコーシュ(エビルプリースト)でクリアリは一部浮かんでおり
間接的にマスタードラゴンとの接触があるのでそこで反映させていただけたらと考えております。

お世話になります。

387名無しさん:2016/08/07(日) 23:16:27 ID:ion9ENeA
クリフトの価値観の核になっているものは宗教でしょう
クリフトの宗教上の神とマスドラが同じ存在なのかは分かりませんけど、
マスドラがどんな神なのかは、クリフトの価値観に影響することは確実でしょう

クリフトの価値観が揺れるところにアリーナやブライ、また仲間たちが関わっていくと、
どうなっていくのでしょうね
特に、クリフトの価値観の再構築にアリーナが関わっていくことがあれば、
クリフトとアリーナに新たな関係性が生まれていくんでしょう


ところで、「ここにいて世界のすべてを知ることができる」と自称するマスドラは、
その気になればロザリーが襲われてるときに雷を落とせたんでしょうね
それともマスドラさん、寝てたんでしょうかね

388名無しさん:2016/08/09(火) 03:00:02 ID:ZEOvh0Ok
雷を落とせるのなら、勇者たちが戦ってるときに加勢して雷を落としてくれればいいのに。
とか思いましたが、そうしたら正体不明の雷が降り注ぐ変なゲームになりそうです。

>>386
乙です。早くも終盤ですね。
いや後で戻るのでしょうけど。

389名無しさん:2016/08/16(火) 01:51:10 ID:Syv/LTDk
四半世紀経った今でも話題があることは良いこと
普通はもう話すことなんてないんだからさ

390名無しさん:2016/08/20(土) 03:03:26 ID:unx/PtM2
素朴な疑問を吐き出させてください。
ファミコン版のAIは杖などの攻撃アイテムを優先的に使うので、クリフトのザラキ連発って私はあまり見かけなかったんですよ。
クリフトのザラキが伝説化しているということは、杖とかをあまり持たせない方々が多かったのでしょうか。
私の場合は、クリフトには常に2種類以上は持たせていました。

391名無しさん:2016/08/21(日) 16:28:49 ID:uVSqAKio
私の場合は常にクリフトに最高の装備をさせ、力の種なども与えていたせいかと思いますが
ザキ系は一度も使わず、通常攻撃と回復以外の行動はありませんでした
スクルトも使ってくれませんでしたが…なんとか無事にクリアできた思い出があります

392従者:2016/09/01(木) 11:58:07 ID:CtYOGEig
私の場合は適度にザラキ神官でしたね。(杖はブライやマーニャ、ミネアに持たせていまして)
私自身があまり気にしなかったので伝説化していることに驚きましたがまあ確かにという感じで。。

従者です、出遅れました。
実はこの5年になから完結させていたSSをほぼ投下し終えまして、今また文章化段階です。
このまま6章へ進むかいったん2章エンドールへ戻るかも迷っていまして、同時推敲しているため
今しばらくお時間いただきそうです;
時々小ネタなど携えて顔は出しますので今後とも気長にお付き合いいただけると嬉しいです。

393従者の心主知らず:2016/09/01(木) 12:04:18 ID:CtYOGEig
ということで小ネタを一つ。ほのぼのです。
サントハイム地方にはほどよく四季があるという設定でお願いします。

「もうすぐ秋ですね、姫さま」
「だんだん涼しくなってくるのね!」
「秋はなんとも切なく、寂しさを感じさせる季節です」
「えーそう?」
「たくさんの命が儚く散っていく季節だからでしょうか……」
「私は秋大好きよ?お肉もお魚もお野菜も果物もたっくさん食べられる季節なんだもの!」
「姫さまそれ、いつの季節もおっしゃっている気が……」
「そしてうーんとちからをつけてからだを一から鍛えなおすの!」
「そうですか……」
「それにクリフトがいれてくれるお茶もおいしいからお茶の時間も大好きよ?」
「え…?」
「えーと、いつもいれてくれるあのお茶なんていったっけ?」
「え、あ、ああ、ハーブティーですね」
「そうそう、それティー!あのお茶ほんのり甘いだけだからお菓子がおいしいの!」
「そうなのですね。姫さまは甘めがお好みかと思い少しばかりハチミツを入れていまして」
「そうだったのね!とってもおいしいわ!あとお菓子もおいしいのばっかり!」
「お茶うけはしつこすぎずかたすぎず、適度な甘さとなめらかさがよいかと思いクッキーやサブレ、生チョコを」
「ふーん」
「……姫さま、どうかしましたか?」
「クリフトってすごいのね。また時間があるときはお茶をいれてちょうだい!」
「…………」
「ん?クリフト?」
「姫さま、感激でございます!このクリフト、いくらでもお茶をお淹れいたします!」
「やだクリフトったら大げさなんだから」

394名無しさん:2016/09/12(月) 21:45:27 ID:nNHGdL3M
>>393
書き込みテストを兼ねて、乙をお贈りいたします!

逆引きできないホストという規制でしばらく書き込めませんでした。
この投稿は成功するのかな…

395名無しさん:2016/09/15(木) 22:09:10 ID:rLFgGjvU
>393
乙です。
そういえば4に四季を感じさせる要素があったかどうか。寒い地域もあったかどうか。
どのような気候の世界なのか気になってきますね。

396名無しさん:2016/09/20(火) 02:45:05 ID:RFxxqJYo
そういや2chは規制だらけでしたなー懐かしい

397名無しさん:2016/09/30(金) 01:24:52 ID:aK65cUNs
突然ですけど、詩人のマローニってどんな声なんでしょうか?

シスターをも魅了し、旅の商人に安眠をもたらす美声のようですね。
毎日24時間体制で休まず歌い続けるスタミナも持っています。
物語の流れから、澄んだ声なんだろうなとは思います。
でも、声が高いのか低いのか、重いのか軽いのか。
ビブラートの利かせ方はどうなのか。

マローニをSSに起用しようと思ったんですが、声が分からないもので。

398従者:2016/10/07(金) 11:41:09 ID:tuj0D.s6
「クリフトー」
「ひ、姫さま…!…………!」
「な、なによクリフト。どうせまた扉は静かに開けてくださいっていうんでしょ」
「……お久しぶりでございます……」
「え……。なによこないだ会ったばっかりじゃない。ちょっと頭上げてよ」
「いえ、いえ……もう一週間以上もお会いしておりませんでした」
「あれ、そうだったっけ」
「先週は神学の講義がありませんでしたから」
「あー」
「今週は私の都合がつかずまたしばらくお会いできないところでしたので、その……」
「そういえば先週は見合いとか面会とか疲れることばっかりだったわね」
「み、見合い!?」
「うん、ただお話ししただけ。得意なことは必殺のキックっていってやったわ」
「……」
「で、いつもどおりお父さまとじいに叱られた。縁談はもちろんなしになったわ」
「…………」
「クリフトー、今日のクリフトなんかヘン」
「はっ!い、いえ……ともかく、扉は静かに開けてください。まずはそこからです」
「……ふふ」
「この度は、政務をお疲れさまでした」
「いいわよ労いなんか。でもやっぱり、お説教のないクリフトはクリフトじゃないわ」
「…………。姫さま……」
「ん?」
「その……私の説教を聞きに来たいがためにこうして扉を強く開けるわけでは……」
「?ううん、こうなっちゃうの」
「ですよねー。……静かにお開けくださいっ」
「あーはいはい」

399従者:2016/10/07(金) 11:45:20 ID:tuj0D.s6
遅ればせながら乙ありがとうございます。

>>395
四季はわかりませんが地図南端部にあるパデキアの洞くつは一面氷に覆われる寒い場所でしたね。
中央部(やや上部ですが)では暑いという台詞も聞ける砂漠のバザー、アネイル北の大砂漠、
海辺の村ではアリーナの日光浴発言にクリフトが恐らく肌を露出する姿を想像しただろうことから
同じく寒くはない地区かと思われます。
ただそうなると同じ南端部のモンバーバラ近辺にも寒さを思わせる場所がないとおかしなことになり
結局のところ本編だけでは四季も気候もよくわからないという結論に……どなたかわかる方いませんか。

>>397
おお!マローニでクリアリ!楽しみに待ってます!
本編では美しい歌声といわれているだけのようですね。
私も澄んだ声というのは同感です。個人的にはオペラ歌手のようなものをイメージしていましたが……
そこも含めて創造されてはいかがでしょうか。

400名無しさん:2016/10/07(金) 21:18:26 ID:QkPMN2K6
>>399
初秋の候、澄み渡る空に一筋の乙。

ああ、オペラ声だとイメージと真逆なのでSSにならなそうです。
遠くまで聞こえる大声で美しいとなれば、オペラ声と考えるのが自然ですね。
ヨーデル声とかも考えられますが、マローニとは絶対に合わなそう。
他のSSを考えてみますか。
何年も抱いて全く進まない構想ですから、行き詰まって当然なんです。

401名無しさん:2016/10/13(木) 20:46:46 ID:mnJRntbk
あの世界の詩人って吟遊詩人なんだろうね
ホイミンも吟遊詩人になったのかなぁ
ライアンさんに会わないホイミンは切ない声で歌うのかな
クリフトあたりが発見してくれないかな
ホイミンを軸に進むクリアリがあってもいいじゃん

402名無しさん:2016/10/22(土) 03:03:07 ID:jOWzGGrs
ホイミン絡みだと、ライアンをさん付けで呼びたくなりますね

403名無しさん:2016/10/29(土) 17:13:20 ID:010vyZJQ
人間になったホイミンが何かに悩んで教会に懺悔しに来て、
面識のないクリフトが対応し、アリーナも気まぐれで関わって、
あーだこーだしてるうちにクリアリの仲が進展

とかネタの種は思い浮かびますが具体的な物語にするのは
だいぶ難しいですね

404従者:2016/10/31(月) 18:34:20 ID:/R.Yqr2Y
「姫!またこちらにいらしたのですな!」
「あ、じい。じゃあねクリフト、またお茶をいれてちょうだいね」
「あ、はい、姫さま」
「こりゃ姫さま!」
「戻ればいいんでしょ!戻れば!」
「わかっておいでならなぜ抜け出そうとなさるのか!」
「あーはいはい、じゃあ今度はクリフトに来てもらうことにするわ」
「え…?」
「姫さま、姫さまー!」
「…………あの…」
「まったく、どうしてああもおてんばなのか」
「…………あの、ブライさま……」
「なんじゃ」
「つい先日縁談があったとうかがいました。その、城の者たちは……」
「一部の者しか知らん。おぬしにも伝えておらんかったな」
「……そう、ですか……」
「知らせんで正解だったわ。よもやあのような結果になるなど…!」
「……お察し、申しあげます……」
「会うだけ会ってみるとすんなり受けるから成長したかと思いきや。
……やはりここはおぬしにも協力してもらうしかないのかもしれんな」
「え…?」
「ちょうど姫さまもおぬしをそばに置きたがっているようだしの」
「そ…」

こうしてクリフトは事あるごとに玉座の間に呼び出されることとなる。

405従者:2016/10/31(月) 18:40:08 ID:/R.Yqr2Y
>>400
乙ありがとうございます!
アリーナの台詞「見合い」ではなく「お見合い」と言いそうですね。失礼しました。

ああ、ヨーデル声もいいと思いますよ。
マローニのあの外見ですと線が細そうですし女性っぽい感じもしますし。
本編ではっきりしないところは創造でいいのではないでしょうか。
構想が浮かんでもなかなか具体化できないSSってありますよね。。

ホイミンでクリアリ……実は本編クリア後(ヒーローズ前)に構想だけ浮かんでおりまして。

世界が平和になり少し落ち着くとやはり外に出たがるアリーナ。
あるとき外に飛び出してしまいクリフトが急いで追いかけ同行したところ
ホイミンを捜しに旅に出たライアンと遭遇する。
彼も同じく世界が平和になり落ち着いたからやっと捜しに行けるのだとか。

「ホイミンの顔だったら私覚えてるわ。いっしょにさがしましょう!」
「なんと…!かたじけない…っ」

「ホイミンはライアンのこと気にかけててライアンは旅に出てまでさがそうとして、なんかすごいな」
「お二人はとても深い絆で結ばれているのですね」
「きずなかー」
「無事会えるといいですね。そして今度こそずっといっしょに……」
「うん!」

「あれ…?私たちもずっといっしょに旅してるけど、私たちはどういうきずななのかしら」
「えっ…と……それは……」

とかいう。
皆さんのライアンとホイミンの話を聞いて以来どうしてもお二人に再会してほしくなり
そこにクリアリが関わって改めてクリアリの絆も見直すSSにできたら二重に嬉しいかなと。
とはいえまだ2章すら終わっていないこの従者シリーズ、投下できるのはいつになるやら;
どなたかSSにできる方いましたらお願いします。

406従者:2016/11/02(水) 11:14:27 ID:ZJSwBVY2
小ネタといいながらいつも続き物になってしまいすみません;
>>393>>398>>404の続きのようなものです。思い立ったときに投下しときます。

それと前に6章か2章か迷っていた件あのまま6章に進みそうです。
何かと賛否両論ある6章、気合い入れていきますのでよろしくお願いします。

407従者の心主知らず 1/2:2016/11/02(水) 11:18:30 ID:ZJSwBVY2
「クリフトを呼んでちょうだい」
「はっ!」
「これ姫さま、クリフトとていつでも暇なわけではないのですぞ」
「大丈夫よ。今日の午前中は空いてるっていってたわ」
「なんと!気まぐれで呼んでいるわけではなかったのですか!」
「うふふ」

「姫さま…」
「んー!やっぱりクリフトのいれるお茶おいしいわ!」
「えっ…あ、ありがとうございます。もったいないお言葉です……」
「それで、なにかいった?」
「あ、はい。先週の縁談のことですが、お相手はどのような方だったのだろうかと」
「んー?えーとね、なんか似顔絵がクリフトに似てたのよね」
「えっ…」
「だからクリフトみたいにお説教する人なのかと思ったらずっと笑ってるだけだったの」
「そんな、初対面で説教などしませんよ!」
「そうなの?」
「初対面でなくてもしない方はしませんし……」
「ふーん。ただ笑っているだけなんてつまんないの」
「え……。で、では姫さま、もし、もし縁談相手がその、わ、わた……わた…」
「綿?」
「いえっその!……他にどういった方なら会ってもよいと思われるのでしょうか」
「うーん、そんなのそのときになってみなくちゃわからないわ」
「そ、そうですよね」

「最近アリーナはクリフトをよく呼んでいるようだな」
「王さま、それがあやつの用意する茶や茶菓子が姫のお口にたいそう合うようです」
「ほう、そうか」
「幼なじみゆえに接しやすいというのもあるのでしょうな」
「なるほど」
「そこでクリフトからも姫さまをおいさめするよう言おうと思うのですが……」
「ふむ……」

408従者の心主知らず 2/2:2016/11/02(水) 11:24:20 ID:ZJSwBVY2
「ずっと座っているのってつかれるわ。クリフトを呼んでちょうだい!」
「はっ!」

「姫さまがまた家庭教師の前でいねむりしてしまったんじゃ。なんとかならんものか」
「まだ学問に興味が向かないのかもしれませんね……」
「まったく困ったものだ」

「姫さまが中央部の柱をけりこわしてしまってな……」
「ああ……あれはやはり姫さまでしたか……」
「もう兵士たちでは手に負えんほど強くなってしまったんじゃ。どうしたものか……」
「……」

「今日はクリフトは空いているかしら。空いてたら呼んできてちょうだい」
「はっ!」

「んー!やっぱりクリフトのいれるお茶おいしいわ!」
「あ、ありがとうございます。もったいないお言葉です……」
「ここで飲むのもいいけどやっぱり教会のゆったりした中で飲むほうがもっとおいしいと思うのよね。
また抜け出しちゃおうかな」
「えっ…」

「神よ……。私は今、天国と地獄が同時に訪れたような気分です。
姫さまとお近づきになれたことは嬉しい。姫さまの身近な情報をいただけるのも嬉しい。
しかし、笑顔で話される姫さまをおいさめせねばならないのは……」

「姫さまが寝室のカベをけり飛ばしおった」
「えっ?」
「ついに兵士長を打ち負かしての、この城で私にかなう者はいない、ちからだめしに一人旅に出るなどといっておるんじゃ」
「一人旅……。しかし、今は昼間も魔物が出るようになって……」
「そうなんじゃ。このご時世で外に出るのは危険。クリフト、おぬしからもいうてくれ。頼んだぞ」
「は、はい」

「姫さま……」

409名無しさん:2016/11/06(日) 04:04:15 ID:oaLHEJ4s
>>408
あれ、終わってたんですね。遅ればせながら乙です。

投下の直後にお見かけしましたが投稿途中と思ってスルーしちゃってました…
2/2って書いてますのにね…

410名無しさん:2016/11/08(火) 23:57:13 ID:r0RZB5tM
>>407-408
6章どころかスタートの時点まで戻ったのかの
ただいずれにせよ乙を免れることはできぬのじゃ

411名無しさん:2016/11/21(月) 02:00:28 ID:pH3dhV3c
思えばファミコンの時代でしたね

任天堂がある程度の品質チェックをやって認証していたから、
劣悪すぎるソフトがそんなに多く出ることがなく、
アタリショックみたいなことが起きなかったという印象です
当時にしては破格の性能と価格設定もあり、
高い普及率を獲得したファミコンというハードに恵まれ、
ドラクエシリーズのような良い作品がファミコンをさらに押し上げ、
良い流れができていたのでしょう

そういった中でドラクエ4も少なからず歴史的な意味を持ち、
語り継がれていくのでしょうね

412名無しさん:2016/11/22(火) 03:05:17 ID:yURtPpsc
>>408
何かと思えば旅立ちのエピソードだったとは!
乙です

413従者:2016/11/28(月) 16:08:23 ID:N7lr7cbw
遅くなりすぎました…!乙ありがとうございます!
小ネタは台詞だけで進めるのでだいたいお城での日常的なやりとりになります。
(もしくは導かれし者が全員そろってからのある日とか)
今文章化している6章はアリーナ視点のSSでして、小ネタとはちょっと違うものと思っていただけるとありがたいです。
6章投下、今しばらくお待ちください。ややこしくして申し訳ありませんでした;

今回の小ネタが続き物になってしまったのは、
旅立ち前のアリーナとクリフトの関係はどうだったのかを考えていたらいつの間にか続いてしまっていたという。。
クリフトは玉座の間にてアリーナの命令でかわりにブライの説教を聞くというシーンがあり
王様とアリーナの部屋に入ることを「私のような身分の者が……」と気にする台詞もあり。
アリーナは後を追いかけてきた二人に「どうしてついて来ちゃったのよ。」とふくれる台詞もあることから
最初はアリーナの命令(気まぐれ?)で関われるだけで想いは完全にクリフトの一方通行だったのかなとか。
それが旅を続けることでだんだんアリーナもクリフトに……とか。
小ネタは思いつき次第(脈絡なく)投下していきますのでクリアリを語るきっかけにでもなれたら嬉しく思います。

414名無しさん:2016/12/12(月) 04:07:53 ID:A2/dROIw
欧米のクリスマスは家族で過ごしたり教会に行ったりで、
少なくとも恋人たちがいちゃいちゃする日ではないでしょうね
王家だと何か儀式的なものがあるんでしょうか
教会に勤務していると何かミサ的なイベントに忙しいのでしょうか

415名無しさん:2016/12/14(水) 04:37:23 ID:nWHpzRiY
ドラクエ5でスライムナイトがイオラを忘れてくれたらいいのにと思った
回復できる攻撃役として期待してるのに、得意になってイオラを連発するから回復する前にMPが尽きる
やむを得ず後衛に下げる

クリフトも同じで、ザキ系を忘れてくれたらもっと使いやすくなるんだけどな
ザキ系の消費は激しくないけどさ

416名無しさん:2016/12/17(土) 06:44:51 ID:ONFVPv16
あれ、408ってこれで終わってるんですかね
乙と申し述べることにいたしましょう

417名無しさん:2016/12/25(日) 07:42:29 ID:dVNlDJnI
「クリフトって、力はないけど剣の扱いは上手よね。
強い男としか結婚したくないアリーナとしては、クリフトはどうなの?
こんな激しい戦いの中でも通用してるんだから、強い男じゃない?」
ニヤニヤしがら聞くマーニャとは対照的に、アリーナの表情は曇った。
「私…クリフトに戦ってほしいとは思ってないのよね…。」
「え…」
思いがけない反応にマーニャは戸惑う。

「この旅に出るとき、一人旅をするつもりだったのにクリフトとブライがついてきたの。
でさ、初めて3人で一緒に戦って、モンスターには勝ったんだけどね。
返り血を浴びたクリフトが悲しそうに笑ったんだ。
殺生って、クリフトにとっては絶対にやっちゃいけないことなのよ。
私のせいで真っ当な聖職者としての生き方を捨てなきゃいけなくなったの。」
「聖職者ってそういうの面倒くさいからね。」
「私、後悔したんだ。
でももう戻れないのよね。血で汚した手は元には戻らない。」
「洗えばいいじゃないの。」
「そういう意味じゃなくてさ…」
「あー、聖職者の面倒くさい意味ね。モンスターが相手なら仕方がないのにね。」
「そうなんだけどね…」

「だから私は、クリフトにはあんまり剣を使ってほしくないんだ。
戦いの場にいるとしても後衛で呪文を使っていてほしい。
その分、前衛は私がやるから。」
「でもさ、最近のクリフトはザラキ偏重だから返り血を浴びてないよね。
良いんじゃない?」
「そうかな…クリフト、殺すことに躊躇がなくなってきてるみたいでさ。
元のクリフトとは違ってきてる気がするの。」
「そりゃこんな戦いの中だからね、いつまでも優しいままじゃいられないよね。」
「ううん、クリフトは今でも優しいよ。なのに心を凍らせて無理して戦ってる。
私、どうすればいいのか分からない…」
アリーナは悲しみを押し殺すように黙り込んだ。

マーニャは言葉を選びながらゆっくりと話し始めた。
「アリーナはクリフトに感謝してるよね?」
無言でうなずくアリーナを見てマーニャは言葉を続ける。
「クリフトみたいな優しい人には、感謝を伝えることが一番の癒しになるのよ。
毎日クリフトの目を見て、笑顔で感謝を伝えてあげるといいわね。
あと、ねぎらいとか気遣いの言葉もいいわよ。」
「そんなに言うことが色々あると、何を言えばいいのか分からなくなるわ。」
「ありがとう、私もクリフトのこと大切に思ってるわ…とか言えば大喜びよ。」
「それだけでいいの?」
「ああ、そういえば今日はクリスマスだったわ。何か贈り物をあげるといいわよ。」

その後に何があったか定かではないが、クリフトとアリーナの笑顔は増えたようだ。

418名無しさん:2016/12/25(日) 07:53:21 ID:dVNlDJnI
着地点のないままアリーナとマーニャの会話を書いてみました。
着地点がないなら着地点を書かなきゃいいのだ!(開き直り)

Q. アイテムもお金もパーティーの共有物だろ。クリスマスプレゼントに何をあげるの?
A. ご想像にお任せします(むしろ私が教えてほしい)

419従者:2016/12/29(木) 23:17:38 ID:mb4Lf3kk
あああ今回もレスのみで失礼します!
wiki管理人さんを久しく見なかったので心配でしたがお変わりないようでよかったです。
皆さんもお変わりないでしょうか。

>>416
す、すみません。思いついたネタはあれで終わりだったんです;
あとはゲームの通りだなーと思ったもので……
「本編へ続く」とか入れといたほうがわかりやすかったでしょうか;;

>>418
GJGJGJ!
むしろあえて着地点を書かないようにしてくださったのではないかと思うくらいな
こちらに想像の余地を残してくださる描き方にセンスを感じました。
クリフトのことを冷静に見れているアリーナにもセリフの端々から愛情が見えてきますね!

アイテムもお金もパーティーの共有物って発想はなかったです。
お金を使うときは勇者か誰かの了承がいるのでしょうか。そう考えていくと難しいですね。

420名無しさん:2016/12/31(土) 01:12:55 ID:2SybrEIc
書き手の皆様もコメントだけの皆様も、見ているだけの皆様も乙です!
いかがお過ごしでしょうか
来年は皆様にもこのスレにも実りある年でありますように
良いお年を!

421名無しさん:2017/01/02(月) 22:04:48 ID:rPXtYW.w
謹賀新年 2017

「クリフト司教、お急ぎ下さい」
 祭服を身に纏い、頭には司教冠(ミトラ)を冠り、手には経典と司教杖を持ったクリフトが司祭達と共に回廊を駆け抜けた。
「アリーナ姫様、お召し替えをお願い致します」
「分かった」
 着慣れないドレスに歩く事さえ不自由に感じる窮屈な靴を少しばかり、不機嫌そうな表情でアリーナは従女に伴って、クリフトが先程駆け抜けた回廊を同じように駆け抜けた。
 年明けと共に、サントハイムの王族と教会関係者が慌ただしくなる三日間が始まった。
 特にサントハイム王女であるアリーナ、その教育係であり侍臣ブライ、そして司教であるクリフトは、眠るまで休む暇も殆どなかった。

「もう、いい加減にして欲しいと思わない。クリフト、ブライ」
「落ち着いて下さい、姫様。これは私達の国や国民に対する責務ですから」
「でも!! 」
「まぁまぁ、お疲れなのは分かりますが」
 来賓が遅れた為に出来た思わぬ一時の休憩の中、アリーナは少し頬を膨らませていた。そんなアリーナをクリフトとブライは少し疲れた表情で宥めていた。
「もう嫌!! 」
 半分我儘、半分甘えが入った駄々に、侍臣二人は苦笑いを浮かべた。
「クリフト」
 ここはお前の出番だとブライは眉を上下させて、クリフトに視線を送った。
「姫様、お疲れのようですので、これをどうぞ。見つからないようにこっそりお口にして下さい」
 クリフトは祭服のポケットから何やら装飾された茶巾袋を手渡した。アリーナは手渡された茶巾袋を開けた。
「ボンボン(飴)じゃない」
 一つ赤い透明な飴を取り出すと口の中に転がした。
「おいしーい」
 アリーナは嬉しさとおかしさで顔を綻ばせた。
(クリフトって、飴食べないのに)
 そうクリフトは飴を食べない。そんなクリフトが何故、飴を準備していたか。
「ありがとう、クリフト」
 アリーナはクリフトにウインクをすると、三人を呼び出した近衛兵の声に踵を返した。

422名無しさん:2017/01/03(火) 01:36:07 ID:rlcDbJKc
皆様の新年を謹んでお慶び申し上げるとともに、
名無しの書き手様に乙を捧げさせていただきます。

新たな書き手様の到来はこの上ない慶事です。
幸先の良い年明けを迎えられました。
感謝感激です。

423名無しさん:2017/01/03(火) 09:06:09 ID:7EkL.jeI
乙です!
クリアリあけおめ
クリアリにとって良い年になりますように

424名無しさん:2017/01/15(日) 05:17:22 ID:Aldp3/ro
皆様乙です!
今年もよろしくお願いします!

425名無しさん:2017/01/29(日) 01:44:23 ID:ZuVKBbXs
新しい書き手さんも古参の書き手さんも良いですね。
乙です。
良い1年になりますように。

426名無しさん:2017/01/30(月) 01:12:32 ID:3hj7ISgI
>>421
乙です!

年始の3日間にどんな行事があるのでしょう?
来賓を招いての各種祝賀行事を、色々な場所で実施しているのでしょうか。
姫様が時間に追われて走るということは、王様もどこかで走っているのでしょうか。
王家の仕事ぶりに思いを馳せながら次回作を楽しみにしてます!

427名無しさん:2017/02/19(日) 14:21:16 ID:H8qmi4Sc
ひな祭りでクリアリにならないか考えてみたけど難しいです。
ジパングがあれば強引に話を作れそうなものですけど。

428名無しさん:2017/02/19(日) 15:02:49 ID:lc56gtE.
>>427
旅の扉がよじれてジパングに来ちゃったとか
新たな冒険で未知の土地に着いたとかなんか適当にこじつけちゃえ
楽しみにお待ちしております!

429名無しさん:2017/03/04(土) 11:38:03 ID:hmxO.SMg
さすがにひな祭りは使えるイベントがないですね…。
ひな人形が飾られたり、甘酒を飲んだり、和服を着てみたり?
ひな祭りからどんなクリアリを想像しましょうね。
幼少期の記憶を軸に構成すれば作りやすいのかも知れません。

430名無しさん:2017/03/05(日) 23:39:54 ID:E4lA.0lw
いにしえのサントハイム王子と嫁いだ姫君との結婚式が教会で行われた時
凛々しき王子と清らかな姫君とのお披露目を喜んだ国民たちが二人の人形を並べ
若夫婦の幸福を祈りその幸福にあやかろうとしたのが毎年の行事になり…季節はやっぱり春かな

431名無しさん:2017/03/08(水) 01:52:58 ID:HsqRy1Tg
姫君の国の民族衣装が和服なら成立するかも!

432名無しさん:2017/03/10(金) 21:53:34 ID:2hcQzTmo
初めて書いたかも

「8代目のおばあさまが異国から嫁いだ時に伝わったんだっけ?」
少しずつ食べて残り固くなりはじめたモチをつつきながらアリーナがつぶやく。
「11代目ですぞ、姫様。まったく嘆かわしいですじゃ。
明日からまたサントハイム史の復習ですな。」
炭に熱が通ったのを確かめ網の上にモチを並べるブライ。
言うんじゃなかったとスネて甘い匂いを発する小豆の煮込みをつまみ食いするアリーナ。
「日にちがたっても食べられるお菓子はありがたくうれしいものですね。
砂糖や蜂蜜がもう少し安ければもっと気軽に食べられるのですが」
微笑みながら大豆の粉に砂糖を加えるクリフト。
「来年のおモチは旅空ではなく暖かい城内でいただきたいものですな」
ブライがお茶のポットにお湯を注ぐ。
「そうね!来年はお城のみんなで美味しいおモチをいただきたいわ!
あ、でも、あの服は着たくないなぁーズルズル長いしかさ張って動きにくいし」
アリーナのコロコロよく変わる表情に目を細めてしまうのを自覚しながらクリフトは思い出す。
上等の絹を惜しげもなく使い何枚も重なった裾の長いキモノを着たアリーナ姫は不服そうな顔さえ愛らしく美しかった。
旅が終わればこのようにお近くで姫様を見ることは出来なくなるのかなと
出てしまいそうになるため息を押し殺して小豆の煮込みを取り分ける。
「たまには姫様らしい格好をして陛下を安心させるのも姫様のつとめじゃろうて。
普段から普通の姫様らしくしておればつとめではないであろうがの。
では、アリーナ様、誕生日おめでとうございます。」
「ささやかながら姫様のお好きなおモチのお菓子を用意させていただきました。
誕生日おめでとうございます。アリーナ様。」

433名無しさん:2017/03/13(月) 23:48:39 ID:V5cpMYxo
>>432
なんと初ですか乙です!
初めてとは思えない安定感がありますね
芯があるからブレがなく、安心して見ていられる作風かも

ひな祭りやお正月かと思ったら誕生日とは…最後に意表を突かれました
予想を外しながらきれいにまとめる演出、上手いですね!

434名無しさん:2017/03/18(土) 11:13:21 ID:PG04b7g2
誕生日にそういうので祝う風習があり、それが後に転じてひな祭りになるとな?
伏線だけ張って想像に任せるとは、なんとも乙な着想ではありませんか!
地方によってはお汁粉もひな祭りのアイテムなのでしょう。めでたさが倍増です。

435名無しさん:2017/03/20(月) 01:58:04 ID:bZ8wFlVw
誕生日もひな祭りも喜ばしいですが、何より新しい書き手の誕生を祝いたいです。
書き手さん乙です。

436名無しさん:2017/03/25(土) 11:06:34 ID:t9ZDdWaE
最先端で出会えるクリアリにやっと追いついたと思いましたら、
現在書き手さん待ちなのでしょうか?
せっかくなので、クリアリ小ネタ投下で2スレ失礼させていただきます。




「ねえ、クリフトは将来なにになりたい?」

 あどけない顔をした、いずれこの国の女王となる姫様は無邪気に問いかけてきた。

 現在神学の勉強中であることは重々ご理解されているはずなのだが、
 と、聖書の言葉を詠むのを止め、ふうと息を吐いた。
「姫様、今私が詠んでいる箇所に不明な点でも?」
「かみさまの言葉はね、今はどうでもいいの」
 よくありませんよ、と続く言葉を飲み込んで、ぎゅっとなる眉間に指を寄せた。
「わたしね、大きくなったら、つよい人になりたいの」
「……姫様は、今でも十分お強いと思いますよ?」
 何せ、この幼い姫様は、この国一番の兵士長を軽々と投げ飛ばすのだ。御歳七歳になられたばかりの少女が、だ。
 いくら手加減してもらっているからといって、鎧を付けた大の大人に対して出来る芸当ではもはやない。
 その上でもっと強くなりたいとは、はたしてこの姫君はどうすれば満足するというものか。
「わたしなんて、まだまだよ。
 だって世界は、こぉーんなにひろいんでしょう?
 わたしよりつよい人なんて、それこそいっぱいるわ」
「それは、そうでしょうけれど」
「だからわたしね、いつか旅をしようとおもうの」
「それは……」
 無理に決まっている。仮にも一国の姫が、武者修行の旅などと、許されるはずがない。
 そうは思っても、期待を胸に夢に夢見ている姿を、突き放すような無粋な物言いは出来ず、出来るといいですね、と呟くだけで精一杯だった。

437名無しさん:2017/03/25(土) 11:10:40 ID:t9ZDdWaE
「でね?」
「はい」
「その旅にはね、クリフトが必要なの」
「はい……はい?」
「だから、クリフトが将来なにになりたいかきいておかないと、
 いざ旅にでるとき、こまるでしょ?」
「困る、ええ、困りますね……? ええ、今もちょっと困ってます」
「でしょう? クリフトが、もしがかさんになりたかったら、えのぐの用意とか、
 コックさんだったら、いっぱいのしょくざい? ひつようになるかしら?」
「少なくとも、画家やコックには今のところなる予定はございません」
 むしろそういう役職には、すでに見習いとして入っていなければ、今の歳では遅すぎる。
「それに、私は今司祭様のもとで手習いをしております。いずれは神学校へ赴き、神の道へとむかうつもりです」
 姫様は大きな瞳をくりくりと輝かせて、それから、首が取れそうなほど大きくうなづいた。
「じゃあ、クリフトはサントハイムの司祭さまになるのね?!」
「なれたらとは思っております。けれどその道は大変厳しいものですから、私ごときに…」
「じゃあ問題ないわね! クリフトは司祭さまになる、それで、私の旅にも一緒にいくのよ!」

 うんうんと素晴らしいことだと言わんばかりの姫様に、
 司祭になるのにはそれこそ何十年もかかり修行が必要なのだが、果たしてそれまで待ってくれるのだろうかという一抹の不安が過る。
 しかし、それこそとっても嬉しそうな笑顔を前では、すべてがうまくいくような気がしてならなかった。





 結局そのあとは次の予定があるとブライ様がやってくるまで、将来旅に出たときの話ばかりで授業にはならず、
 あとでその件についてはブライ様直々に怒られるのだろうなと思っていた、そのとき。
 ブライ様に手を引かれた姫様が、あ、と思い出したように振り向いた。

「わたし、かみさまの言葉より、クリフトの言葉のほうが好きよ」



 あとに残されたのは、赤面している少年が一人。

 (終)

438名無しさん:2017/03/25(土) 11:15:26 ID:t9ZDdWaE
すみません、最初のレスであげてしまいました。
次回以降は気を付けます。
一応子供自体のクリアリということで、書かせて頂きました。

いろいろと至らない部分はあると思いますが、
他の書き手さんを楽しみにしておりますので、
またよろしくお願いします。

439名無しさん:2017/03/26(日) 01:07:27 ID:TDMofoII
僭越ながら乙を申し述べさせていただきます。
心の中にすっと入ってくる心地良さがありますね。幼少時のエピソードが現在に違和感なくつながっているからでしょうか。
彼らのイメージを大切にしながら丁寧に描いている、そんな感じがします。

ageてもsageても、この掲示板ではノーガードの2chとは違ってほぼ悪影響はないようです。
だから>>1のテンプレからsage推奨が省かれたんじゃないかなと…。

絶賛書き手待ちです。
書き手さんが離れてから立った避難所ですから、書き手さんが多くないのですよ。
ただ最近になって書き手さんが増えてきました。流れは悪くないです。
私も、他の作品が増えてきたら触発されてまた書き手側に行きたくなるかも知れません。

440名無しさん:2017/03/30(木) 14:21:22 ID:R3BCZMtA
sageなくても構わないのですね、教えてくださりありがとうございます。
また拙い小ネタですが暖かい感想もありがとうございます。
とてもうれしいです。

スレが賑わうように書き手さんが戻ってくることを期待します。
貴方様のクリアリ、楽しみにしておりますね。

報告だけでは寂しいので、小ネタ投下します。
導かれし者たち+クリアリのネタで、6レスほど失礼します。

441名無しさん:2017/03/30(木) 14:25:19 ID:R3BCZMtA
 地図にものらない、山と森に囲まれた静かな農村。
 本日の導かれしものたちの宿となったその村は、どことなく楽し気な雰囲気が漂っていた。

「オホホ祭りぃ?」
「なんだその三角メガネつけたおばさん達ばっかいそうな祭り名は?」 
 踊り子とポーカーに興じていた勇者は、
 また変な話題を仕入れてきたなと内心毒気つきながら、配られたカードに目を落とした。
 宿泊の手配をしてきたやり手の商人が、いやそれがですね、とふくよかなお腹を揺らす。
「宿の亭主の話ですが、
 なんでも顔を合わせた人同士でお互いに褒め合うお祭りなんだそうですよ。
 この祭りの期間中は、旅人でも誰でもってんですから、ねえ?
 先ほどいきなり、抱きつきたいような素敵なお腹ですな、なんて言われてしまってびっくりしましたよ」
 いやはやとっさに私には妻と子がおりますと言ってしまいましたがね、
 と商人が笑うので、つい誘われるままにその抱きつきたくなる素敵なお腹に目が行ってしまう。
「世界には珍妙な祭りがありますな」
「ええ、まったく。でも、意外にこれは面白いですよ。
 褒めたほうは気持ちいいですし、
 言われた方は照れ臭くて笑ってしまいますがね、まあ褒められれば誰でも嬉しいもんです。
 このお祭り、商売にもいいんじゃないかなあ、道具屋さんで奥さん美人ですね、なんて言われたら余分に買いたくなってしまいませんかね?」
「なるほど、トルネコ殿は商人の鏡ですな。
 しかし拙者は武人ゆえ、人を喜ばせる褒め言葉はなかなか……うーむ」
「おや、ライアンさん。今の商人の鏡という言葉は、私にとってかなりの褒め言葉ですよ。
 何気ない言葉にこそ、その人の本音が出ると言いますからね。
 ライアンさんのような気骨ある御方に、そんな言葉を貰えるなんて商人冥利に尽きるってもんです」

442名無しさん:2017/03/30(木) 14:29:22 ID:R3BCZMtA
「しっかし、褒め合う祭りが、なんでオホホ祭りなのかしらね?」
 まるで扇を開くかのようにカードを開く踊り子の手付きは、見惚れるほど美しい。
 が、対面する勇者にとって、そんなことよりも手の内のカードのほうが大事だった。
「あれじゃね……なんか……あれ」
「あれってなによ。トルネコとーさんみたいな駄洒落のセンスで決めたっていいたいの?
 私、スリーペア。あんたのは?」 
「はい、俺の勝ちー。今夜の呑みはマーニャの奢り決定ー」
「はぁ!? なによ、なにこれロイヤルストレートフラッシュって! 
 おかしいでしょ、あんたインチキしたんじゃないでしょうね!」
「マーニャと違って誰が……ああ、
 美人なお姉さんは負けたときも綺麗なんだなー俺びっくりだなー」
「おっほほほ!? 何急に、変なこと言い出すの、この子は!」

「あ、それじゃね? 祭りの命名の由来」

「……やっぱりトルネコとーさんの駄洒落並みだわ」

443名無しさん:2017/03/30(木) 14:34:10 ID:R3BCZMtA
「ねえクリフト、オホホ祭りだって」
「はい、そのようですね」
「褒めるんだって、顔を合わせた人のこと」
「姫様はいつも大変麗しゅうございますね」
「私、そういうのより、普通にかわいいねって言われた方が嬉しいと思うわ」
「姫様いつも大変可愛らしいですね……でしょうか」
「もう一声」
「姫様は可愛いです?」
「おしい! 私、もっと、クリフトの言葉で言ってもらいたいな」
「……姫様の大陽のような微笑みは、いつも私の心を温めてくださいます。
 とても、助けられて……その、おりますよ」
「あ、クリフト照れてる」
「……照れておりますので、あまりこちらを見ないでください」
「ねえ知ってた? 私、クリフトが照れるのね、好きなの」
「はい?」
「クリフトは照れると顔を隠して俯くでしょう? でもね、そうしてくれた方が――」

「私とクリフトの距離はいつもよりずっと近くなるのよ?」

444名無しさん:2017/03/30(木) 14:38:14 ID:R3BCZMtA

「ちょっとちょっとー、あそこの馬鹿ップルに、
 好きなところを言い合う祭りじゃないって誰か指摘しなくていいわけー?」
「マーニャが言えばいいじゃん。俺、絶対やだ」
「私だって馬に蹴られる趣味はなぁーいの。
 こんな時こそお爺ちゃんでしょ? どこ行ったのブライは」
「ミネアと一緒にパトリシアを預けてもらってたはずだから、そろそろ来るんじゃね?」
 作り上げたロイヤルストレートフラッシュを片手に仰ぎながら、
 勇者はのっそりと玄関の方に顔を向ける。
 視界の端に映り込むやっかいな主従から意識をそむけるためでは、けしてない。
 すると、ちょうどカランコロンと玄関が開く音がして、
 占い師と老魔導士が入ってくるところだった。

「ああーんブライ、杖を持つ姿が誰より似合うナイスミドルー!
 緑の布地が最高にキュートー、渋さがひかっ……渋さにしびれる―!」
「……」
 さっそく踊り子がオホホ祭りに乗っかり、この場の救世主へと歩み寄る。
 けれど老魔導士は憮然とした面持ちで無言を貫くので、
 すぐさま踊り子は妹へと助け舟を求めた。
「ああーんミネア、私の命より大切な妹!
 すべすべの肌! 憂いを帯びた瞳も美人ねー! きゃーかわいい!」
「姉さん、ちょっと」
「え、なあに?」

445名無しさん:2017/03/30(木) 14:42:23 ID:R3BCZMtA
「その祭りのことはさっき人に聞いて知っているの」
「あれ、ほんと? やだー、それならこの祭りはお互いのことを褒め合うのよ?
 わかる? ほーめーあーう、よ?
 一方通行じゃダメなんだから……って、なに、何かあったの?」
「ちょっと、ブライ様がね」
「お爺ちゃんが?」
「いい? 絶対に笑わないでよ? 
 ……さっき馬小屋から出たとき、ブライ様と小さい女の子とぶつかったのよ。
 まあ別にその子が転んで怪我をしたとかじゃないだけど、
 それで……顔を合わせたわけじゃない?」
「女の子はここの村の子よね? じゃあお爺ちゃんのこと褒めてくれたんでしょ? 
 いい話じゃない。それがなんであれ?」
「それがねえ……」

『おじいちゃん、お日さまがいつも昇っているすてきな頭してるね!』

「……って」
 女の子にとっては十分褒めたつもりなのだろう。
 しかしそんな祭りがあるとは露知らない旅人が、
 どうしてすぐさま女の子を褒め返すことが出来ようか。
 常日頃頭上には大変気を使っているデリケートな部分であるだけに、
 固まってしまった老魔導士を誰が責められよう。
 けれど、一向に相手からお褒めの言葉を貰えない女の子が、
 泣き始めてしまってはもはや誰にもどうしようもない。
 心優しい村人が、そっと二人に祭りの説明をしてくれたおかげでなんとかその場はやり過ごせたが、
 時すでに遅し。

446名無しさん:2017/03/30(木) 14:47:13 ID:R3BCZMtA

「―ーぶはっ! ひゃーっはっはっは! 何その子サイコー!」
「笑わないでって言ったでしょ、姉さん!」
「み、ミネア殿、先ほどの話はやめてくだされと言ったではないか!」
「ああもう、ばれたじゃない! 姉さんの馬鹿!」
「なんで私ばっか責めるのよー、こいつだって肩震わせて大爆笑してるじゃないの!」
「わら、わらってないって! むっ、むせてるだけだって!」
「ふ、ふん! 若造が、年寄りを馬鹿にすると痛い目見ますからなっ
 わしは失礼させていただきますぞ!」
「あ、待って待ってブライ! 今日、飲みマーニャの奢りだからさー!
 夜は好きなだけ呑んでくれよ、な?」
「ちょ、この馬鹿! 全員に奢ってたら破産しちゃうじゃないのよー!」

「あ、ブライ、おかえりー。
 ねえ知ってる? この村ね、今オホホ祭りってお祭りやってるのよ」
「お互いを褒め合うお祭りだそうです」
「素敵な祭りなのよ、ね、クリフト?」
「ええ、ですからブライ様も是非……」

「あ――! そこのお馬鹿主従! 火に! 油注がないでー!!!」

 その日の夜、さぞや飲めや食えやしたかというと、
 ちょこんと座っていた酒場のマスターの娘と目が合った魔導士は、
 あーおひさまのおじいちゃんだーという嬉しそうな声に、
 ひたすら気まずそうに麦酒を飲む他なかったという。


【終】

447名無しさん:2017/03/30(木) 14:52:15 ID:R3BCZMtA
クリフトは照れたら顔を隠すよね
でもそれってアリーナからするといつもより顔の位置近くなるよね
身長差ネタとしてそれは絶対見逃せないよね! という妄想から書き始めたら
なぜかオールキャストになってしまいました。なんででしょう、すみません。

旅の合間の、騒々しい仲間たちにいながら
突如二人だけの空気感を醸し出すクリアリが好きです。
でも周りに突っ込まれると
付き合ってません、そういうんじゃないんですとか言い訳する感じがもっと好きです。
今回そこまで行けなかったので、次回そのあたり書きたいと思います。

あとはひたすら他の書き手さんのクリアリを楽しみにしながら
小ネタをしたためてお待ちしております。

それでは長々と失礼いたしました。

448名無しさん:2017/03/31(金) 03:11:11 ID:dRgL84hw
時間の都合で読んでませんが、ひとまず先に乙
時間ができたらゆっくり読ませていただきます!

449名無しさん:2017/04/01(土) 00:24:25 ID:fN4F4NPM
乙です
どうクリアリが進展するのかと思いきや、まさかのブライ主役で突っ切る展開
これは意表を突かれましたね
いや、そうと見せかけて「その頃ふたりは…」とクリアリに続くのでしょうか

変化球でじらすのもテクニックのうちなのでしょう
タイミングを外した球を見せてからの直球は、ただの直球よりも強いです
次はどんな球が来るのでしょうか、続きが気になってきます

450名無しさん:2017/04/06(木) 05:02:01 ID:T0RtLh0Q
新年度は旅立ちの時期です
皆さんも新しい門出があったり新人を迎えたりしたのでは
そういった心境をベースにしてクリアリを作っても良さそうですね
作品として成立しなければネタだけ出すのも

451名無しさん:2017/04/06(木) 17:24:06 ID:HmvkOdSI
>>448,>>449
乙ありがとうございます!
甘いクリアリを書いているとつい変化球でギャグに逃げたくなる癖が…。
直球を投げられるよう、精進いたします。

>>450
新人のクリアリですか…。なんて素敵な響き。

アリーナが新入社員として入った会社に、幼馴染だったが引っ越しで疎遠になってしまったクリフトが先輩として働いていて…!?
泣き虫でひ弱だったはずなのに、今ではびしばし仕事が出来る上にカッコいいと評判のクリフト。
昔と今の差に、アリーナはなんだか面白くないような気持ちを抱いていた。
おまけに、何故かクリフトはアリーナを避けている。
仕事上の話はまだいい。けれどそれ以外の話をしようとすると露骨に目も合わせない。
歓迎会の集まりで二人きりになれたアリーナは、
せっかく再会出来たのに、どういうことなのかとクリフトに詰め寄ると、

「あまりにお美しくなられていて、直視など出来ませんでした」



なーんて言われるクリアリどこかに落ちてませんか?
その後お約束通り隣同士の部屋だったオチが付いているとなお良しです。

452名無しさん:2017/04/07(金) 00:57:01 ID:8w0rDDSc
ど真ん中のストライクだけが正解ってわけでもないのですよね。

過去スレでは暴投レベルのボール球を投げ続けた書き手も支持されてました。
クリアリとしては成立していたので当然と言えば当然ですけど。

> なーんて言われるクリアリどこかに落ちてませんか?
他のサイトのことを話すのは辞退させてください。
この場所の禁止事項に抵触しそうな気がしますので。すみません。

ここだと過去スレも含め、そういう作品はほぼ扱われてきませんでした。
ドラクエの世界から離れたオリジナル色の強い作品は書かれにくいです。
2chだったので叩かれやすい作品の投下は回避の方向だったのでしょう。

453名無しさん:2017/04/16(日) 02:36:20 ID:AHO2aIXE
学園モノなど別世界にした作品については、まれに話題に出ることはあっても見かけなかったような
そういうのは個人の独自の世界になって好みが分かれるんで、個人のサイトでやるのが無難なのかな
少なくとも2chでは荒れる原因になりかねないからと避けられてきたのかなと
かと言って他のサイトを紹介するのはご法度なんで、各自で別の場所を探す方向で・・・

454従者:2017/04/18(火) 09:28:33 ID:C32JUIWc
お久しぶりです従者です。
書き手さんが増えてとても嬉しいです!流れを切って恐縮なのですが

>>421
自分は食べないのにアリーナのため事前に飴を準備しているクリフトを想像したら和みました。
言葉の選び方からとても書き慣れた方とお見受けします。素敵な新年をありがとうございました。GJ!

>>432
愁いを抱えながらもひたすら尽くすクリフトをよそにただただ元気いっぱいのアリーナ……
もどかしいですがそれがまたいいんですよね。初投下に乙そしてGJです!

>>436-437
まっすぐなアリーナに翻弄されるクリフト……否、アリーナの何気ない一言がクリフトの琴線に触れる瞬間。
あとでブライに怒られたとしてもきっと素敵な一日だったのではないでしょうか。GJ!

>>447
同意共感する部分ばかりです。
クリアリが核心に迫りそうになるとなぜか回避の方向に進んでしまうのもあるあるですねw
ブライが帰ってくるまでクリフトはずっと照れたままだったのでしょうか…!
周りに突っ込まれて言い訳する感じな次回作や小ネタ、楽しみにしています。GJ!


私も小ネタ2レス、6章一部2レスを置いていきます。
6章一部はまた前置き状態なのですがその後のためにちょと外せなかったもので、何とぞ何とぞ。
遅ればせながら今年もよろしくお願いいたします。

455従者の心主知らず 1/2:2017/04/18(火) 09:32:18 ID:C32JUIWc
「魔法ってずるいわ!いっつもいっしゅんでパッてなっちゃうんだもの!」
「姫さま…」
「ずるい!私も使えるようになりたい!」
「……」
「ねえクリフトー、魔法ってどうすれば使えるようになるの?」
「姫さま、魔法を使えるようになりたいのですか?」
「うん!敵をパッてやっつけたいの!」

「ではまず魔法の原理から学びますぞ。
ひと口に魔法といっても無から有を生み出しているわけではないのですじゃ。
もともとある物質を状態変化させることで「ぐー……」
「……」

「姫さま、魔法の初歩は火です。物質の運動速度を上げることで熱を発生させるのですじゃ。
そうですな、まずはご自分の体温を上げてみなされ」
「体温?そんなの動けばすぐ上がるわ」
「まてまて、動かずして上げてみなされ。精神力を使うのです」
「むー。むーー…!!」
「……姫さま、全身にチカラを入れただけでは体温は上がりませんぞ。
こう精神を集中させるのです。………」
「むー!!」

「魔法とは状態変化によって得たエネルギーを一点に集中させることで生み出しているのですじゃ。
私の手の平に光が集まっているのが見えますかな?」
「うん、見える。すごーい」
「姫さまもまねしてみてくだされ。まずはご自分の内にためたエネルギーを手の平に集中させるのです」
「むむむ、むーー…!!」
「……姫さま、ですから全身にチカラを入れただけでは……」
「むー!!」

456従者の心主知らず 2/2:2017/04/18(火) 09:36:16 ID:C32JUIWc
「魔法ってむずかしい!わかんない!」
「姫さま…」
「ずるい!ずるい!」
「……」
「ねえクリフトー、魔法って私には使えないのかな…」
「姫さま……」
「ん……」

「魔法など使わずとも、姫はもうじゅうぶん……」
「え?」
「魔法では手に入れられない多くの知恵やチカラ、技を、姫さまはすでに持っていらっしゃいます」
「……」
「ですから姫さまは今のままも、その……」
「……」
「その、いいと、思います…」
「…………」

「なにいってるのよ!ほんとによくわかんないわ!」
「いえ、あの…っ」
「〜…!」
「〜…っ」
「……まあでも、今のままでもいいのなら、まあ……」
「……」
「まあいいことにするわ」
「姫さま…」
「私もっともっと強くなるわ!うんとカラダを鍛えるわ!魔法になんか負けないんだからね!」
「はい、姫さま」

「なんじゃ、魔法の勉強はもう終わりか」

457従者の心主知らず 世界樹の花 1/2:2017/04/18(火) 09:40:42 ID:C32JUIWc
「これが世界樹の花……」

私たちは長い長い冒険の末、世界樹の花を手に入れた。
たとえどんな生命でもこの花のチカラでよみがえらせることができるんですって。

――人間でも動物でもエルフでも――

今みんなで誰のために花のチカラを使えばいいのか考えてるところ。
誰のために……
ミネアは世界樹の花がわたしのチカラを世界のためにお使いなさいと言ってたって教えてくれた。
世界のために……
ブライは世界樹の花の奇跡がエルフにも使えると聞いて納得してたみたい。
エルフ……

ロザリー…?

そっか!これでロザリーをよみがえらせることできるのかな。
だからじいは納得してた…?

ロザリー……。

私はみんなを見た。みんな難しい顔してなにか考えてるみたい。
みんな……。

――本来は神の奇跡もいかなる者にも与えられねばと私は思います――

ふとクリフトがつぶやいた言葉を思い出した。

――そう、この世界樹がすべての者をいやすように――

世界樹の花を見ながらつぶやいてた、あのときクリフトはすっごく真剣な顔してたの。
クリフトらしいなって思ったと同時になんだか嬉しい言葉だなって思った。だから今も耳に残ってる。
いかなる者にも……あ。

458従者の心主知らず 世界樹の花 2/2:2017/04/18(火) 09:44:33 ID:C32JUIWc
「ねえ」

私は思わずみんなに声をかけた。

「ねえ、これって、ひとりしかよみがえらせることできないのかな」

みんなが驚いた顔して私を見た。私はかまわず言葉を続ける。

「そりゃあ世界樹の花にしては小さかったけど、でもキレイだし、花びらいっぱいついてるし」
「姫さま…?」
「ひとりだけじゃなくて、今必要としてる人たちみんなに使うことできないのかな」
「…………」

誰もなんにも言わない。みんな黙って私を見てる。まだびっくりしてるみたい。
あ。私はふと思い立った。

「ねえあそこ!世界樹に花のこと詳しいエルフがいたわよね?あ。ニワトリの洞くつにもいたわ!
私ちょっと聞いてくる!」
「姫さま!私もご一緒いたします!」

クリフトがすかさず私のあとをついてくる。あきれるくらいいつものクリフト。ふふ。

「じゃあ一緒に行こう!」
「ひ、姫さまっ」

私はクリフトの手をぎゅってつないでめいっぱい走り出した。

「みんな、ちょっとだけ待ってて!」
「お、おい!」
「姫さま!」

ソロやブライの声。でも私は聞こえないふりをした。すぐ戻ってくるからね、ソロ、じい、みんな!

459従者:2017/04/18(火) 09:48:19 ID:C32JUIWc
すみませんもう1レス。
ヒーローズやいただきストリートのように別世界に紛れ込むという設定が公式となっている今でしたら
新人モノや学園モノもこじつけ次第でなんとかなりそうな気もしてきますがいかがでしょうか。

「クリフト!今日から私シスター体験するの!よろしくね!」
「……!」

「まず必要なのは傾聴……相手の言葉にじっくり耳を傾けることです。
悩みや想いは自分としっかり向き合うことで浮かび上がってきますのでそのための環境づくりをするのが役目「ぐー……」
「……」

「ちょっとクリフト、クリフトばっかり動いてて私がなにすればいいのかわかんないじゃない」
「姫さま出番です。こちらにいらしてください」
「えっ」

「クリフトっていっつもこんな難しくて忙しいことしてるの?」
「……まあ……」
「人に合わせてばっかりで疲れない?」
「……いえ……」
「なんかそっけないわね」
「」

「クリフト!今日は私もここで寝るのよ!今日から私シスターなんだからね!」
「えっ」

とか。

「学校ってなんだかほのぼのしてていいわね。私もみんなと一緒だったら勉強できたかもしれないのに」
「……ああ……姫さまはずっとおひとりでしたからね」
「ねえクリフト!みんなしばらくイムルにいるのよね!私子どもたちと一緒に学生してみたいわ!」
「えっ」
「ちょっと先生にお願いしてみる!もしいいっていってもらえたらクリフトもちょっとだけ学生しましょ?ねっねっ」
「あの…」

とか。
完全に別世界にした作品とは流れが違うのですが例えばこんな新人風学園風クリアリどうでしょう??

460名無しさん:2017/04/23(日) 07:13:57 ID:ra5v9s/E
このたった一言に思いを込めて
「乙」

押忍っぽい…

461名無しさん:2017/04/23(日) 15:40:58 ID:jQsuhiLg
公式がどうこう以前に2chから完全に独立した場所になりましたからね
多くの作風が許容される素地はあるのではと思います

ただ読者がモヤモヤしすぎる作風になってくると要注意な気はします
設定や性格が原作から離れ過ぎたり厨二病全開になるとか
クリアリを差し置いてオリキャラが主役みたいな作風になるとか
特定のキャラを嫌う気持ちが作品に出てしまうとか

ある程度の書き込み数を見込めるなら「厨二病妄想スレ」のように
独立した専用スレを立てたら書き手も読み手も幸せになれるかも?
定期的に書きこむ人が1人もいなければ無駄でしかありませんが

462従者:2017/04/30(日) 18:07:32 ID:A3mA/VdQ
乙ありがとうございます。

>>461
う、すべて私に当てはまっている気がして耳が痛いです;
ピサロナイトや神父たちはオリキャラではないですが似た作風にはなっていますしね;
前置きの長すぎるクリアリ……すでにモヤモヤされている方がいましたら
スルーしてくださっているからこうして投下させてもらえている現状と存じます。

前置きが本編かと疑うくらい長く趣向が合わなくなってきたと感じたため2chを離れ
もう戻れるとは思わなかった者です。こうして再投下させてもらえるだけで感謝。

463名無しさん:2017/04/30(日) 20:11:22 ID:81RsKZsE
>>462
当時のことは知らないですけど、恐らく2chを離れたのは正解でしょう。
会話の特徴が同人サイト的すぎて、サバサバしたやりとりを好む2chでは悪い意味で目立ちそう…。
鼻につくと思った人が叩いてきて場が荒れ気味になるかも知れません。
もちろん、場の空気に合わせてサバサバと書いていたのでしたら問題はないと思います。

作風としては、少なくともこの場所であれば特に問題ないと個人的には思います。
一時的にクリアリ以外にスポットライトを当てていても、クリアリに戻る気配はありましたので。

464従者:2017/05/02(火) 09:16:38 ID:H2xJnYGs
>>463
ああ、前も言われましたね同人サイト。2chでも丁寧すぎて叩かれないかと心配してくれた方がいました。
ただ私がいたその当時はとても穏やかでノリもよくて居心地いいスレだったのですよ。
書き手が少なかったのもありましょうか、書き手がいないうちは大目に見てもらえるのかもしれません。

作風問題ありませんか!そういっていただけると救われます。それだけが気がかりで……
一応クリアリにつながる場面だけを抜き出しているつもりです。そこに目に向けていただき心より感謝です。
さっそく6章の続きができました6投下分失礼します。

465愛とは 1/6:2017/05/02(火) 09:20:38 ID:H2xJnYGs
「……愛ですよ、愛。愛っていいなあ……」
「え?」

「ねえクリフト、それってどういう意味?」
「え?」

今までずっと黙っていたクリフトがやっと口にした独り言……私は思わず聞いてしまった。


世界樹の花のチカラでロザリーがよみがえった。
ロザリーは私たちに何度もお礼をいったあとピサロの所へ連れてってほしいってお願いしてきたの。
もしピサロを止められなかったら私たちの手で亡き者にしてほしいって。
ピサロの野望を止めなければ世界が滅んでしまうからって……。
どのみちピサロとは戦わなければいけないと思ってた。だから今、改めて向かうことになった。

ピサロの所に行くと決まってから急ごうと言ったきり誰もなんにも言わなかった。ロザリーも黙ってる。
私もなんにも言葉が見つからなかった。クリフトもさっきまでずっと黙ってたの。

ロザリーは生き返った。でも、ソロやマーニャ、ミネアは……

――ロザリーを、よみがえらせる…?――

――俺さ、村のみんなが生き返るかもって思ったとき、少しでもざまあみろって思ったんだ――
――俺、極悪人になっちまったのかなあ…っ――

――父さんが帰ってくるなんて考えもしなかった。夢を見させてくれただけでじゅーぶんよ――
――ありがとう、アリーナさん――

――ねえ、クリフトはどう思うの?――
――私は……――

――世界樹の花のチカラを世界のために使うとは…?――

何も言葉が見つからない。

ホイミンは生きてたの。ライアンにホイミンの言葉を伝えたときすっごくびっくりして捜そうとして。
旅の途中で生き返らせられないくらい傷ついたからだで死なせてしまったのだって教えてくれたの。
けどホイミンは生きてた。人間の姿になって。だからホイミンのお墓には行ってない。

466愛とは 2/6:2017/05/02(火) 09:26:56 ID:H2xJnYGs
みんながずっと黙ってたから私はなんだかたまらなく寂しくなってて、
ふとクリフトがつぶやいた独り言を聞き逃したくなかったの。愛って聞こえた。

「愛ってどういうこと?」
「それは…」

クリフトは口ごもって視線をあちこちさせる。周りを気にしてるのかな。
けど私はクリフトが何か言ってくれるまでじっと待った。

「ここではちょっと……また落ち着いたときでよろしいでしょうか」
「……うん……」

少ししてこっちを見たクリフトはすっごく真剣な顔してて、私は返事しかできなかった。
でもよくある「なんでもありません」とも言わなかった。言わないでくれた。ちゃんと教えてくれるんだ……。
はやく落ち着いたときにならないかな。


ルーラであちこち飛び回ってきたから戦いの準備を整えたあと小休止をとることになった。
私はさっそくクリフトに聞く。
クリフトも気にしてくれてたみたいで散歩といって馬車から少し離れたところで教えてくれた。

「この奇跡は、たくさんの方の愛が織り重なって生まれたものだと感じたのです」
「愛が織り重なって…?」
「はい」

クリフトは遠くのほうを見ながら言葉を続けた。

「ソロさんの村の人たちも、マーニャさんやミネアさんのお父上も、よみがえらせることができなかった……」
「…………」
「そんなつらい中で、敵であるデスピサロの大切な人を……ロザリーさんをよみがえらせようとしてくれた」
「……」
「よみがえった」
「…………」

ソロ……マーニャ、ミネア……
マーニャとミネアは大丈夫っていってすっきりした笑顔を見せてくれた。けどソロは……
ソロはきっとまだ……

467愛とは 3/6:2017/05/02(火) 09:31:38 ID:H2xJnYGs
「そしてロザリーさんも……本当は、すぐそこにいるアドンさんやスライムと話したかったでしょうに、
世界のため、大切な人であるピサロさんを亡き者にしてでも止めようとしてくれています……」
「…………」

ロザリー……
ピサロの話をしてたときふと塔のほうを見た、けどすぐ視線を戻してお急ぎください、お願いしますっていったの。
あれはやっぱりアドンやスライムのこと気にしてたんだ。クリフトもそう感じたのね。

「何より、姫さまが……」
「え?私?」
「はい」

クリフトが私をまっすぐ見た。私は思わず下を見る。

「アドンさんもピサロさんも、戦って、倒して、平和を取り戻す方法もあったと思います。
そんな中、戦わなくていい方法を姫さまが懸命に探そうとしてくださったから、そのように縁が巡り……」
「……」

――皆さんの愛が織り重なって、この奇跡は生まれたのだと思います――

「きっと皆さん、思うことはたくさんあると思います。
ですが、自分以外の誰かを大切にできるというこの行為は、まぎれもなく愛だと私は思います」
「…………」

自分以外の誰かを大切にできる……

「自分は幸せになれないのに…?」
「…………」

思わず顔を上げて聞いちゃった。少し驚いた顔するクリフト。
けどすごく優しい顔して言葉を返した。とても静かな声で。

――自分が幸せかどうかと、人を大切に思う気持ちは、本来関係はないのだと思います――

「ですから、私はまだ……」
「わかんない」
「姫さま…」
「やだよ…」
「……」
「ソロもマーニャもミネアも、あんなに喜んでたのに、嬉しそうだったのに…っ」

468愛とは 4/6:2017/05/02(火) 09:36:08 ID:H2xJnYGs
――よかったね、ソロ…――
――これで村の人たちを生き返らせられるんじゃないかな?――
――よかったね、マーニャ、ミネア――
――これでお父さまを生き返らせられるんじゃないかな?――
――村のみんなを…シンシアを…?――
――父さんを…?――

――何で…?――

――みんな生き返ったらよかったのに…っ!――

「やだよ…」
「姫さま…」
「みんなで幸せになりたいよ…っ」
「…………」

自分がはんぶん泣きそうになってるのがわかって思わず下を向いちゃった。
クリフト、きっと言葉に困ってる。こんな話がしたいんじゃなかったのにな……。

「……それこそ、愛ですね」
「え?」
「ああ、姫さま…」

――私は、そんなあなたこそ……――

クリフトの声がとてもか細くて、震えてる気がして、思わず顔を上げちゃった。
クリフト、目がうるんでる…?
私はもうはんぶんどころか涙があふれちゃってたけどクリフトもはんぶん泣きそうになってるの…?

「…………」
「……」

クリフトはなんにもいわない。私も言葉が浮かばなくてただただクリフトを見てた。
そしたらクリフトが私に手を伸ばしてきたの。でもそのまま。宙ぶらりんの手。

「…………」
「…………」
「ひ、姫さまっ」
「え。だってなんとなく」

クリフトの宙ぶらりんの手が気になって思わずぎゅってつかんじゃった。びっくりするクリフト。

469愛とは 5/6:2017/05/02(火) 09:41:07 ID:H2xJnYGs
「クリフト、手ちょっと冷たいわ」

私は両手でクリフトの手をぎゅってした。私の手はわりといつでもあったかいのよね。

「っ…」

クリフトが少し手を引いて私に寄った。でもやっぱりそのまま。宙ぶらりんな体勢。
私の肩の上に顔があるから今どんな顔してるのかわからない。
なんだろう。たまにあるのよね。いきなりぎゅってしてきたり寄ってきたりするクリフト。
なんでだろう。

「……申し訳、ありません」
「え?あ、待って。離れなくていいから」
「ひ、姫さまっ」
「謝らなくていいから」

クリフトがまた離れようとしたからなんとなく私からぎゅってしちゃった。腰に手を回してみる。

「なんかいっつも謝って離れようとするけど気にしなくていいんだからね」
「いえ、あの…」

クリフトが遠くのほうをしきりに見る。あ、馬車のほう?私も思わず手を離す。ふたりでパッ。
馬車のほうを改めて見る。マーニャとミネアが向こう向いてなんか話してるみたい。えーと。

「それにしても世界樹の花ってすごいわね!」

私はなんとなく話題を変えてみた。なんだろう。よくわかんない。

「けど、これで次に花が咲くのは千年後か……。気が遠くなりそうだわ」

なんとなく思ったまんま口にしてみたらクリフトもそうですねって笑ってくれた。なんだろう。わかんない。


小休止を終えてみんな集まった。さっきまでのピリピリした空気がちょっとだけ和んだ気がする。

「早まってデスピサロを倒しに行かずよかったのかもしれませんな」
「え?」
「このライアン、これから何が起こるか久々に楽しみですぞ」

470愛とは 6/6:2017/05/02(火) 09:46:32 ID:H2xJnYGs
ライアンは私に目配せしてソロの肩をぽんと叩いた。なんだよって顔するソロ。
ライアン……今回のことずっと反対だったのかなって思ってたのに、そんなこと言ってくれるんだ。

「まったく、運命とはまことにおもしろいものですな。
こうして人とエルフが手を取りひとつの場所を目指す……。フムフム」

ブライも言葉を続ける。
ライアンもじいも、今回のこと前向きに考えてくれてるんだ……
なんだか一気にやる気が出てきた。

「デスピサロのもとへ……。気を引きしめて行かなくちゃ」

ミネアが手をぎゅってする。
そっか、ピサロとはやっぱり戦いになるかもしれないんだから、気を引きしめて……
そうよね。
今まで何度も見てきたピサロの夢にはロザリーはいなかった。けど今はロザリーがいる。
だからきっと、戦いになったとしてもあの夢のとおりにはならない、そんな気がする。
私はロザリーを見た。
ロザリー……思いつめたような覚悟を決めたような、かたい顔してる。
私は思わずソロも見た。
ソロは一呼吸ついてみんなを見渡す。私とも目が合った。

「よし、行こう」

ソロの声。すっごくはっきりした声。マーニャやミネアみたいにソロも少しだけすっきりした顔してるように見えた。

471名無しさん:2017/05/05(金) 02:47:56 ID:wn8nzTSY
乙です
早まって無理に距離を縮めようとせず、ストーリーの中で少しずつ積み重ねるのが好印象です
私が書いたらクリアリのためにストーリーがかき乱されて収集がつかなくなるかも

472従者:2017/05/08(月) 08:51:10 ID:Ll6Ce2ng
乙ありがとうございます。
クリアリのためのストーリーが描ける方をずっとずっと羨んでいますが
ストーリー中に点在するクリアリを拾っていくといったこの作風も
受け入れていただけるスレで本当に感謝です。

今さらですが前回の補足を。短編集「知られざる伝説」にて
ホイミンはライアンと旅を続ける中で敵のメラミを受け焼けただれた姿で死んでしまい
ライアンに埋葬されています。その後魂はマスタードラゴンと思われる老人に会い
良心を試されはねのけた結果詩人の体に入ることで詩人としてよみがえることになります。
という設定を入れています。いつかライアンと再会してほしいと願いつつ。

クリアリ以外の要素も色濃くなってきてしまい恐縮ですが6章続きを参ります。

473従者の心主知らず 奇跡 1/5:2017/05/08(月) 08:57:50 ID:Ll6Ce2ng
「…ロ…ザ……。……ロ…ロザリー……」

――ルビーの涙がデスピサロの進化の秘法を打ち消していく!――

さっきまで巨大な怪物の姿をしていたピサロがゆっくり魔族の姿に戻っていった。
まるであのときの夢のよう……けど夢とはちがう、これは現実。

「…………!」
「ピサロさま!!」

ロザリーがピサロに駆け寄る。手の届くそばまで寄ってピサロを見つめた。
ピサロも最初うつろな目をしてたけどロザリーに気づいたのかゆっくり視線を落とした。
たぶんロザリーを見てる。見ようとしてる。

「やはり愛です!愛のちからはなににも勝るのです!」

ふいに聞こえたクリフトの声。

「なんかクリフト、やけにうれしそうね」
「これが喜ばずにいられますか!」

クリフトは本当にうれしそうだった。独り言はまだ続いてる。

「信じていれば……愛をつらぬけば……私だっていつかきっと……」

――……を幸せに……!――

クリフトは両手をぎゅってしてる。最後なんていったのかわからなかった。
愛……でも、そっか。夢では怪物の姿のデスピサロと戦わなければならなかった。
たぶん、殺さなければならなかった……。
けどそうはなっていないのだから、これはきっとうれしいことなんだ。そういうことなんだ。
まだ実感がわかない。なんだか頭がはたらかない。
いつもみたいにそれどういうことってクリフトに聞く元気が今はなかった。

「ルビーの涙に進化の秘法を打ち消すちからがあったなんて……。
こんなこときっとお父さんも知らなかったに違いないわ」

ふとミネアがつぶやいたのも聞こえた。奇跡が起こったのはルビーの涙のちから?

「ロザリー……。ロザリーなのか?」
「はい…!」
「…………。ならば、ここは死の国なのか……?」

474従者の心主知らず 奇跡 2/5:2017/05/08(月) 09:02:21 ID:Ll6Ce2ng
ピサロはさっきよりはしっかりした顔であたりをゆっくり見渡してる。

「いえ。ソロさんたちが世界樹の花でわたしに再び生命を与えてくださったのです」

ピサロはおどろいてロザリーを見た。

「そして信じがたいのですが……わたしをさらったのは魔族にあやつられた人々かと……」

ロザリーは小さくつけ加える。

「世界樹の花……魔族にあやつられた……?」
「はい……」

ピサロはしばらくなにか考えてたみたいだけどゆっくり私たちを……ソロを見た。
ソロもピサロを見てる。しばらくの間ふたりはじっと見つめ合ってた。

「……人間たちよ。
おもしろくはないがお前たちに礼を言わねばならんようだな。
お前たちはロザリーとこのわたしの命の恩人だ。素直に感謝しよう」

ピサロはロザリーをそっとどかして私たちに頭を下げた。

「人間こそ真の敵と思っていた……長年…………だが…………わたしは……」

ピサロは独り言のようにつぶやいた。言葉が途切れ途切れでうまく聞き取れない。
なんていってるんだろう。やっぱり頭がはたらかない。

「ピサロさま!デスピサロさまっ!!」

どこか遠くで声がした。

「アンドレアル」

空から大きな竜が舞い降りてきた。あれ?あの竜、どこかで見たことあるような……?

「生きていたか」

あ、結界を守っていた竜だわ!起きちゃったのね。

「……ロザリー、さま?」
「?……どこかで、お会いしたことがありましたでしょうか……」
「……これは……」

475従者の心主知らず 奇跡 3/5:2017/05/08(月) 09:06:38 ID:Ll6Ce2ng
竜はピサロを見る。

「見てのとおり、ロザリーはよみがえった。そこにいる人間たちの手によってな……」
「!……」

竜はおどろいて私たちを見た。

「アンドレアル、この者たちには手を出すな。地上への進撃も一時中断する。
他の者たちへ通達せよ。また追って指示を出す。それまでここで待機せよとな」
「…………」

「ピサロさまは、どちらへ……」
「…………」

「逆賊が出た」
「!……」
「いったん身辺整理をする」
「…………」

「…………はっ」

竜は翼をとじて低姿勢をとった。戦いに、ならない?戦闘態勢をといたってこと…?
竜は低姿勢のままじっとしてる。
戦わなくて、いいんだ。前みたいに殺し合わなくていいんだ…!
よかった……。
私は思わず竜に声をかけてしまった。

「あなた、アンドレアルってお名前なのね」

竜はびっくりしてこっちを見る。でもそのままの姿勢でいてくれた。

「ごめんなさい、あとの4にんは助けられなかったの。どこかに消えてしまったままで……」
「…………」

「いや、あれは幻術……」
「え?」
「まて、それ以前になぜ助けようなどと……」
「…………」

「わかんない」
「……」
「わかんないけど、どうしてもあなたたちに死んでほしくなかったの」
「…………」

476従者の心主知らず 奇跡 4/5:2017/05/08(月) 09:11:05 ID:Ll6Ce2ng
ふとクリフトが前に進み出てアンドレアルの真下まで寄っていった。

「まだ体調が万全ではないはずです。治療をします」
「…………」

「い、いらぬいらぬ!これ以上人間のなさけは受けぬっ!」
「アンドレアル!」

私もアンドレアルのそばに駆け寄る。

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!ひどいケガなんだからちゃんと手当てを受けなさい!!」
「っ……」
「すぐ済ませますから」
「…………」

クリフトも小さくつけ加える。
アンドレアルはずっと私たちをにらんでたけど結局低姿勢のまま、手当てを受けてくれた。

「気丈な娘だ…」
「当然です。私の姫さまですから」

え?

「クリフト、今なんて言ったの?」
「い、いえ、この方も姫さまのお心遣いに感謝しているとのことです」
「…………」

え、そうなの?
なんかクリフトがしゃべってたような気がしたんだけど……。

「……わたしは感謝しているなどとはひとことも言っておらんぞ……」
「黙ってください」
「…………」

「あの娘に頭が上がらんのか」
「黙れ」
「…………」

「かっかっかっ…」
「おとなしくしないと一度殺してみますよ」

ふたりは小声でぼそぼそおしゃべりしてる。なんか、なんか楽しそうじゃない。

477従者の心主知らず 奇跡 5/5:2017/05/08(月) 09:15:10 ID:Ll6Ce2ng
ソロとピサロが少しお話ししたみたい。新しい敵を目指して出発するって。
しばらくピサロも同行するんだって……。
ソロ、どんな気持ちでピサロと話したんだろう……。ソロもピサロもなんだか重苦しい顔してる。
なにかいわなくちゃ、しなくちゃって思うのに、なんにも浮かんでこないの。なんで……。
とりあえずここを出ることになった。

「アンドレアルは、ここに残るの?」
「?」
「こんな暗いとこにひとりで待ってるなんて、寂しくない…?」
「〜……っ」

「神官!はやくこの娘を連れていけっ!!」
「なによー」
「調子が狂う…っ」

「アリーナさん……」

ロザリーが寄ってきた。悲しそうな泣きそうな顔してる。

「アドンは……無事ですか?スラちゃんは……」

あ……。

「スライムは無事。でも、アドンは……」

私が戻ってくるまで待っててって言っても、キラーピアスをあずけても、アドンはうなずかなかった……。

「アドンはわかんない……」
「……そうですか……」

ロザリー……。
ロザリーは少しだけ笑った。

「ごめんなさい、いいんです。ありがとうございました」
「ロザリー……」
「先ほどピサロさまとご一緒するって言ったばかりなんです。
それなのにアドンにも会いたいなんて、わがままですものね……」
「ううん!そんなことないよ!」

私は思わず声を上げちゃった。ロザリーだってずっとがまんしてきたんだもの。
私もクリフトも知ってるもの。

「私、ソロに聞いてみる。ロザリーはピサロに言ってみて!」

478従者:2017/05/11(木) 21:07:28 ID:7O11Q12w
従者です。連続書きこみで恐縮なのですが投下できるときにさせてください。
PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、ロザリーヒル編「代わり」18シーク分いきます。
ピサロナイト「アドン」存命ルートでの6章続きとなります。(理由詳細は>>153にあります)
ところどころ伏線はまぎれていますがクリアリパートと呼べるのは13/18以降です。
ではどうぞ。

479従者の心主知らず 代わり 1/18:2017/05/11(木) 21:11:31 ID:7O11Q12w
アドンは前とおなじ場所に座ってた。肩にスライムも乗っかってる。今までとなんにも変わらない光景。
アドン……いた……いてくれた……!

「なぜ……」

アドンは驚いてロザリーを見た。私たちには目もくれずずっとロザリーを見てる。

「なぜ……どうして……ここに……」
「ソロさんたちが私を再びこの世に呼び戻してくださったのです」

ロザリーがそっとアドンに近よる。

「ご心配をおかけしましたね。ただいま戻りました。来るのが遅くなってごめんなさい……」
「…………」
「もう大丈夫ですよ、アドン……」

ロザリーはアドンをぎゅってした。すっごく優しくぎゅってした。

「……っ…っ」

アドンの目から涙がこぼれる。

「っ…ああああ…っうああぁぁあああ…っっ」

よかったね、アドン……。
でもアドンはロザリーをぎゅってしない。宙ぶらりんの手。自分の手だけぎゅってしたあとそっと床に下ろす。
アドン…?

「ぷるぷるぷるっ!!ピサロさま!もうどこにも行かないでよぉ!
ロザリーちゃんと一緒にここで平和に暮らそうよぉ!」
「…………」

スライムがピサロのまわりをぴょんぴょんはねながらお願いしてる。

「ピサロさん、複雑そうな顔してますね」

クリフトが私にそっと耳打ちする。けど私はあんまりピサロを見る気にならなくてずっとアドンを見てた。
アドンはもういちど手を上げてロザリーをそっと離す。

480従者の心主知らず 代わり 2/18:2017/05/11(木) 21:15:43 ID:7O11Q12w
優しい笑顔をしてた。アドンのあんな笑顔、初めて見た……。
でも、どうしてあんな、胸がしめつけられるような、ほんとはなにかを伝えたいみたいな、もどかしい笑顔……。
アドン…?
アドンはロザリーをどかして立ち上がった。ゆっくり私たちのほうを向く。さっきと違ってもう普通の顔してた。
姿勢を正して、胸に手を置いて、アドンは私たちに深々と頭を下げた。少しして顔を上げたアドンは私を見る。

「アドン…?」

アドンは私の前まで来て手をとった。少しだけ冷たくて、大きな手。長い指。
なんどか見て知ってるはずなのになぜかドキッとしちゃった。
その手にもうひとつの手を重ねる。私の手になにかが当たった。あ、キラーピアス。
アドン……ずっと持っててくれたんだ……。
あのときうなずかなかったけど、やっぱり私を待っててくれたのね。
アドンが私の肩に顔を寄せた。きゃっ!そのままの体勢でいる。なんか、宙ぶらりんな……なんかクリフトみたい。
なにかをささやかれるのかと思ったけどなんにも言わなかった。なんだったんだろう。
アドンはピサロの前までゆっくり進み出て片ひざをついた。

「ピサロ様……此度の失態、誠に申し訳ございませんでした……。
どうか、処罰を」

え…?
アドンはそれだけ言うと目を閉じてうつむいた。ピサロはだまってアドンを見下ろしてる。

「待って、処罰って」
「アドン…?ピサロさま…!」
「…………」

なんで……どうして……。私は身構えた。
もしピサロがアドンに何かするようなら思いっきりキックしてやる……。

「………………」

ピサロはずっと黙ったままだった。
けっこう長い時間待ったと思う。やっとピサロが口を開いた。

「お前には再びロザリーの護衛を頼むことになるだろう。そのときまで腕を磨け」
「……」
「それが処罰だ」
「!……」
「……だが、今は体をいとえ。勇気と無謀を履き違えんことだ」

481従者の心主知らず 代わり 3/18:2017/05/11(木) 21:19:36 ID:7O11Q12w
アドンは顔を上げた。ピサロはずっとアドンを見てる。
ふたりはしばらく見つめ合ってたけど、アドンが再び目を閉じて頭を下げた。

「はっ…ピサロ様…!」

よかった……。

アドンとの再会も無事できてお話も終わって、いったん街に戻ろうかってなった。
そしたらピサロがアドンともう少し話があるから先に出ていてくれって。
すぐすませるからって。
話ってなんだろう。ちょっと気になったけど私もクリフトといっしょに外に向かった。

「ロザリー、お前も席を外していてくれるか。すぐすませる。遠くには行かんようにな」
「……はい、ピサロさま」
「スライム、ロザリーのそばにいてやれ」
「ぷるぷる!はい、ピサロさま」

あ、ちょっと待って。どうしよう、この静寂の玉、アドンに返そうかな。うん、そうしよう。
で、言ってやるの。命を大事にしなさいって。
誰かのために死ぬんじゃなくて、いつでもどこでもその人といっしょに生きのこる方法を考えなさいって。
よし、そうしよう。私はくるっと向きを変えた。

「姫さま?」
「クリフトも先に行ってて。すぐ追いかけるから」
「姫さま……」

私は仕切りをそっと開けてもういちどお部屋に入った。でも少し進んで足が止まっちゃった。
なんかもうお話が始まっちゃってるみたい。どうしよう、お話を割っちゃっていいものかな。

「アドン…」
「はっ…」
「ロザリーだったのだな」
「は…?」
「お前がかつて、バトランド地方の西で人間から救ったエルフというのは」
「っ……それは……」

――その悲しみに満ちた眼が今もまぶたに焼きついていると話していたエルフは……――

「ロザリーだったのだな……」
「…………」

え、なにこの重苦しい空気。ほんとにどうしよう。

482従者の心主知らず 代わり 4/18:2017/05/11(木) 21:24:04 ID:7O11Q12w
「……申し訳、ございません…っ」
「アドン」
「は…っ」
「もうピサロナイトの名はやめ、アドンとしてロザリーを守れ。もとより、初めからそうだったはずだ」
「ピサロ様…」
「守れる者が守ればよい。彼女を幸せにしてやれる男がとなりに立てばいいのだ。その相手は、わたしでなくて構わない。
……いや、わたしでないほうがいいのかもしれん……」
「ピサロ様、なにを……そんな……」
「お前に護衛を任せてからロザリーが次第に明るくなったのだ。口数が増えてな……。お前のおかげだと確信している。
だが、名を明かさず顔も見せないと聞いて以来ずっと気にはなっていた。
お前にロザリーを紹介した時点で気づけなかったこと、こうしてゆっくり話す時間が取れなかったこと、申し訳なく思う……」
「ピサロ様……何をおっしゃるのです……!」
「……」
「このような、私ごときに……」
「改めて頼みたい。今度はわたしの代わりではなく、ともにあの娘を想うひとりの男として、守ってやってほしいのだ。
このミナレットでの護衛、今後も引き受けてくれるか?」
「………………」
「…………」
「………………」

アドンがロザリーの護衛をしてたのって、ピサロが頼んだからだったのね。

「……お引き受けいたしましょう。今度こそ、臣下としてではなく、友として、ひとりの男として……」
「……感謝する」
「…………」
「……ともに、守ろうぞ。アドン……」
「………………」

「………………はっ!」

私はふたりの会話がよくわからなかった。
そもそも幸せって、誰かにしてもらうものじゃなくて自分で手に入れるものなんじゃないかしら。
それよりもピサロがこっちに来たときに見つかっちゃうとまずいわ。いったん外に出ないと。隠れたほうがいいかしら。
ガタッ。
あ。こういうときに限っていすにぶつかっちゃうのはお約束……ふたりはそろってこっちを見た。
私、隠れ場所を探すあまりふたりの見えそうなとこにも来ちゃってたみたい。

「えっと…」

ふたりともびっくりしてる。

「ごめん。話を聞くつもりはなかったんだけど……聞いてもよくわからなかったけど……」

483従者の心主知らず 代わり 5/18:2017/05/11(木) 21:27:53 ID:7O11Q12w
ふたりとも顔に手を当てた。なんで?

「「出ていけっ!!」」
「なによー」

でもひとつだけわかったことがあるの。
男の人って、女の人を守りたがるのね。ピサロもアドンもロザリーを守りたいんだわ。
私を守りたがってるクリフトといっしょ。
これって、クリフトだからじゃなくて、男の人だから、だったんだわ。男の人の法則なのね。
あれ、でも私は男じゃないけどクリフトやみんなを守りたいわ。これは私の法則ね。

「大丈夫!安心して!私もロザリーを守るからね!」

私はにっこり笑ってみせた。

「それと思ったんだけど、幸せって、誰かにもらうものじゃなくて自分で手に入れるものなんじゃないかな?
だって、どんなに幸せを用意したってその人が幸せだって思わなくっちゃほんとの幸せにはなれないじゃない」
「…………」
「私はそう思うけどな」
「…………」
「………………」

「はっ…はは…」

え、なに?アドンが笑ってる。

「アドン」

ピサロが静かにアドンを呼んだ。

「申し訳ありません。ですが、あまりにアリーナらしくて……」
「…………」

「ふん…」

ピサロは鼻を鳴らした。

「幸せは、自分の心が決める……か?」

ピサロは私をにらみつけた。

「そう言えるのは、幸せとはなにかを知っているからだろう?」

484従者の心主知らず 代わり 6/18:2017/05/11(木) 21:31:41 ID:7O11Q12w
え?

「……」
「…………」
「…………」

ピサロは視線を切った。

「その程度の見識しか持ち合わせておらんから人間は愚かなのだ」
「なによ、どういうことよ」
「アドン」
「はっ」
「話は以上だ。ロザリーはしばしの間わたしが直接見る。今は、養生せよ……」
「……はっ」

それだけ言うとピサロは扉のほうに歩いてく。

「ちょっと、待ちなさいよっ!」

ピサロは返事もしないでそのままお部屋から出ていった。

「なんなのよ!!いーだっ!!」

いやなやつ!

「……アリーナ」
「……なによ」
「ピサロ様は、決してお前の意見を否定したわけではないからな」
「…………」

「アドンはピサロの言ったことわかるの?」
「…………」

アドンは何かを言いかけたけどやめた。何度も何度も何かを言いかけようとするけど黙る。
そしたらそのうち少しだけ上を向いた。

「知りたかったのならなぜ追わなかった。俺に用事か?」
「むーっ」

なんだかはぐらかされた気分。もういいわ。あとでピサロに思いっきり聞いてやるんだから。

485従者の心主知らず 代わり 7/18:2017/05/11(木) 21:35:16 ID:7O11Q12w
「これ、返す」
「?」

私はアドンの胸に静寂の玉を押しつけた。

「これは……」
「またロザリーの護衛をするんだから、必要になるでしょ?だから返すの」
「…………」

「いや、これはお前にやったものだ。返してもらう理由はない」
「え、いいの?」
「役には立たなかったか?」
「ううん、なんどか使ったわ。私も魔法使いになった気分だった」
「ならいいだろう。持っていけ」

アドンは静寂の玉をゆっくり押しもどして窓辺のほうへ歩いてった。

「そっか……よかった……」
「?」

私もアドンを追ってとなりに並ぶ。

「私ね、アドンがこれをくれたのは、自分がもう死ぬつもりだったからなのかなって、ちょっと不安に思ってたの」
「……」
「そうじゃなかったのよね」
「…………」

「……なぜ、不安に思うのだ……」
「え?」
「俺がどんなつもりでそれを渡そうが、お前には関係ないだろう」
「関係なくないよ!」

私は思いっきり否定しちゃった。

「だって、だって、もしあなたがもう死ぬつもりだからあげるって言ってたら、私はぜったいに受けとらなかった」
「……なぜ……」
「なぜって…」
「俺が死のうが生きようが、それこそお前には関係のないことだろう?」
「アドン……」
「違うか?」
「…………」

486従者の心主知らず 代わり 8/18:2017/05/11(木) 21:39:04 ID:7O11Q12w
アドン……。どうしてそんなこと……。

――やっぱり死ぬつもりだったの…?――

「アドン、おかしいよ……こんな会話おかしいよ……」
「…………」
「もっと自分を大事にしてよ。
誰かのために死ぬんじゃなくて、いつでもどこでもその人といっしょに生きのこる方法を考えてよ」
「……なぜ……」
「なぜって、当たり前でしょう…?」
「…………」

「……よけいな世話だな……」
「っ……」
「俺は護衛役なのだ。俺に課せられた使命はあの方をお守りすることであって、俺が生き残ることではない。
俺がどうなろうがあの方が無事でさえいてくれればいいのだ。後のことは引き継いだ者がやるだけのこと」

――ピサロナイトは私以外にも大勢いる――

「……ちがうよ。それはちがうよ……」
「何が違うというのか。使命とは命をかけるものだ。使命を果たせぬ者に生きる資格はない。
それだけの話だろう」
「……」

そこまで言ってアドンはうつむいた。

「……そうだ、俺に生きる資格はない……。
敵でない者に斬りかかり、真の敵からは守れなかった役立たずなど、本当はもう……」

――生きていてはいけなかった……――

「ちがうよ!」
「何が違う。俺はピサロ様に二度も三度も恥をかかせたのだっ」
「ちがうよ!ちがうよ…!そんなこと言わないでよ…っ」
「…………」
「使命も大事だけど、命だって大事だよ…っ!」
「………………」

487従者の心主知らず 代わり 9/18:2017/05/11(木) 21:42:47 ID:7O11Q12w
初めてアドンと会ったとき、アドンはどんなに傷ついてもいっしょうけんめいロザリーを守ろうとした。
いやだって叫んで必死にロザリーをぎゅってした。
あの姿を見たとき、敵なのになぜか死なないでほしいと思った。
ロザリーがさらわれたときも、ひどいケガしてたのに助けに行こうとして……
ソロが止めてくれて、死ぬことは守ることじゃないって、生きて、一緒にって言ってくれたとき、私の気持ちもはっきりしたの。
生きてほしい。これからも生きていてほしい。ずっといっしょに生きていきたい。心の底からそう思ったの。
その気持ちは今も変わってない。

「もっと自分を大事にしてよ…っ」
「………………」

ロザリーが死んでもういちど戦ったとき、私が戦いたくなくてアドンをぎゅってしたとき、アドンは私を斬らなかった。
本当は私たちを殺す気はなかったんだってわかった。
それは、私たちの命を大事にしてくれたからでしょう…?命の大切さを、尊さを、ほんとうは知ってるからでしょう…?

――いっしょに生きたい…!――

「……お前たちには本当に感謝している。してもしきれぬほどに……。
だが、俺がお前たちに返せるものなど何もない。頭を下げることしかできない。俺とお前たちとでは住む世界が違うのだ。
せめて俺にできることは、今度こそお前たちの手をわずらわせることなくロザリー様をお守りすること……」

――お守りして果てること……――

「……こうして話している時間すらもったいない。俺などに……」
「……」
「仲間が待っているぞ。早く行け」
「やだっ」
「……」
「仲間は今は関係ないのっ!私はアドンとお話がしたいのっ」
「…………」

あきらめない。アドンが自分から生きようって、生きたいって、そう思ってくれるまで、私はぜったいにあきらめない…!
アドンがとまどったのがわかった。私、いつの間にか泣いてたみたい……。涙がこぼれてきたのがわかった。

「なぜ……そこまで……」
「……」
「俺と話すことに、何の価値がある……」
「…………」

――使命を果たせぬ私など、死んだところで誰も見向きはしないのに……――

ぜったいにあきらめないっ。

488従者の心主知らず 代わり 10/18:2017/05/11(木) 21:49:02 ID:7O11Q12w
「ソロだってあなたのこと心配してるよ。ロザリーだって。みんなあなたのこと心配してるんだよ…?」
「………………」
「アドン…?」
「…………っ」

アドンが歯ぎしりした。すぐに向こうを向いたけど、イライラしてる…?

「ロザリー様は……あの方はただ話し相手を欲しがられただけだ。あの方の目にはピサロ様しか映っていない。
だがピサロ様もお忙しい方だ。なかなか会うことが叶わず、寂しい思いをされていたからな」
「……」
「だが、俺がピサロ様の代わりなどできるはずがないのだ。
せいぜい俺にできたことは、次にピサロ様が訪れるまでの、間に合わせ…」

アドン…声がふるえてる…?

「だから、あの方をお守りし、寂しさをいく分でもまぎらわしてさしあげられる者であれば、その相手は別に、俺でなくとも……
俺の代わりなどいくらでもいる。俺ひとりが死んだところで誰も困りはしない。すぐに忘れる。しょせん俺はその程度の存在なのだ。
だから、お前ももう、俺のことは…」
「バカ!!」
「!……」
「ロザリーのことなんにも知らないで…!
ロザリーがどれだけあなたのこと大事にしてるか、どれだけ心配してるか、なんにも知らないからそんなこと言えるのよ!」
「……」
「ずっとあなたの名前を知りたがってたのに。ずっと素顔が見たいって言ってたのに!
あなたがケガしたときずっとそばにいたのにっ!」
「っ……」
「言葉や言い方はきつくて冷たいけど、出したお茶はいりませんって言いながらも飲んでくれるし、会いに行けば必ずそこにいてくれるし、
お部屋に招けばすこしだけだけど入ってくれるし、お話だってしてくれるし、顔はだめでも手はこてを外して見せてくれるしっ」
「…………」
「ずっと鳴き声がして不思議がってたら申し訳ございませんって、あれはアイスコンドルという翼竜ですって、
今夜は満月だから気がはやっているのですって、すごーくていねいに教えてくれたんだって」
「…………」
「思いきってご飯作ってったら困りますって言いながらも全部食べてくれたって、寂しくて眠れない夜はそばにいて手を握ってくれてたって、
任務外ですって言いながらも朝までずっとそこにいてくれたんだって、ほんとはすごーく優しくていい人だって、ロザリー何回も言ってたのよ?
ずっと仲良くなりたかったって。ずっと謝りたかったって。拒否して傷つけてしまったこと、心から謝りたいんだって。
初めて感情を見せてくれたのに、名前を呼んでくれてたのに、あのときは自分のことしか考えてなかったって。今度こそちゃんと謝るんだって。
仲直りしてまたお部屋に来てもらうんだって!」

――アドン……本当に、ごめんなさい……――
――無事戻ってきたら、こうしてまたお部屋に来ていただけますか?――

やだ、また泣きそう。

489従者の心主知らず 代わり 11/18:2017/05/11(木) 21:54:05 ID:7O11Q12w
「ロザリーね、あなたの素顔を見れてソロに名前も教えてもらって、ほんとうに嬉しそうな顔してたのよ…?
ここに来る前から私を守ってくれてた人だって、森まで送ってもらったんだって、
そのあともしばらく森の中を見回ってくれてたんだって、あなたのことすごーく嬉しそうに話すの。
もしまた見かけたらすぐ教えてくださいって鳥さんたちにお願いしてたんだけど、それ以来会えなかったって。
もう会えないと思ってたって……。
だからまた会えて嬉しいって。ずっと会いたかったって。ずっとお礼がしたかったって」

――こんな素敵な方に守っていただけるなんて、私はなんて幸せ者なのでしょう――

「今日ここに来たのだって、ロザリーがアドンに会いたいって言ったからなのに……それなのに……っ」

やだもう、また目に涙があふれてきた。

「なんでそんなことが言えるのよ…!自分じゃなくてもいいなんて言わないでよ…っ!」
「…………」
「あなたのこと、こんなに大事に思ってるのに…っ」
「………………」

気がついたらアドンも泣いてた。目から涙があふれてる。つつっと頬を伝ってなんども落ちてた。
その涙を指ですくっておどろいたように見つめる。とまどったように視線をさまよわせる。
まるで、どうして自分が泣いてるのかわからないみたいに。なんでこんなことを言われてるのかわからないみたいに。

「アドン…?」
「…………」
「アドン…」

子どもみたいにぽろぽろ涙を流してる。いつもはそれでも強そうにしてるのに。

「え、だって……知らないわけじゃないよね……?命はみんなおんなじでひとりひとりが大事な存在なんだって。
役目のかわりはできても、人のかわりができる人なんていないんだって、それまで知らないわけじゃないよね…?」
「…………」
「そうよ、さっきあなただって、ピサロの代わりはできないって言ってたのに、どうしてあなたの代わりをできる人はいると思うの…?」
「…………」
「あなただって、あなたのことだって、ピサロとおんなじくらい大事な存在なのよ?それは、わかるわよね…?」
「…………」
「…………」
「………………」

アドンは手で顔を隠した。なんにも答えない。唇はふるえてて……。

490従者の心主知らず 代わり 12/18:2017/05/11(木) 21:57:33 ID:7O11Q12w
「アドン…」
「…………」

なんにも答えない……。
涙はぽろぽろこぼれてる。手で顔を隠してても涙までは隠せない……。

「ねえアドン……あなた今まで、大事にしてもらったこと、ないの…?」
「…………」

アドンは答えない。ただ立ちつくしてる……。

「あなたのことだって大事なんだからね」
「………………」
「私、あなたのことも守るからね」
「……………………」

アドンは手で顔を隠したまま。少しだけ息が乱れたのがわかった。

「なぜ…っ」
「……」
「なぜお前が、そんなこと……」
「…………」
「なぜ……」

消え入りそうな声。なぜって、こっちが聞きたいくらい。
どうしてそんなに大事にしてもらえなかったんだろう。どうして大事にされてるんだって、教えてもらえなかったんだろう。
これじゃあまりにアドンがかわいそう。

「……寂しい思いをしてたのは、あなたのほうだったのね……」
「…………」
「大丈夫だよ。ロザリーはあなたのことも、おんなじくらい大事に思ってるよ」
「………………」
「大丈夫だよ…。大丈夫だからね」

アドンは手で顔を隠したまま、無言で小さくうなずいた。
肩もふるえてる。子どもみたいなアドン。なんだかクリフトと重なる。やっぱり重なる。
初めて会ったときからずっと気になってたのは、どこかクリフトと似てたからなのかも……。
どうすれば泣きやんでくれるかな。笑顔になってくれるかな……。
そうだ!私はいいこと考えた。

491従者の心主知らず 代わり 13/18:2017/05/11(木) 22:01:05 ID:7O11Q12w
「ねえアドン、ケガがちゃんと治ったらさ、勝負しましょうよ!」
「……」
「今度は殺しあいじゃなくて、腕をきそって闘うの。剣とこぶし、どっちが強いか勝負しましょ?
ねえ、いいでしょ?ねっねっ」
「…………」

アドンはしばらく手で顔を隠してたけど、ふっと笑ったような気がした。

「ああ…」
「アドン…?」
「ずっと、悪い夢を見ていた……」
「……」
「最初はただの夢だと思っていたし、その結末でも構わないと思っていた……」
「……」
「いつしか、その夢はこれから起こる現実であり、俺が招いた結末なのだと思うようになった……」
「うん…」
「だから、同じ現実を迎えるのなら、直接俺が手を下して……」

――悔いのないように……――

「…………」
「だが…」
「…………」
「実際は、違ったのだな……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……これが……」

――これが、私の運命か……――

アドン…?
アドンは手を離してこっちを見た。顔はもう泣いてなかった。

「そうだな。俺もお前と闘ってみたい」
「ほんとに?」
「ああ。コンドルを一撃で倒したその実力を見せてもらおう」
「やったやった!」

アドンが笑った。前みたいに少しだけじゃなくて、ほんとに笑ってくれたの。
これがアドンのほんとの笑顔…?

492従者の心主知らず 代わり 14/18:2017/05/11(木) 22:04:33 ID:7O11Q12w
「約束よ!」
「約束だ」

アドンが笑ってる。笑ってるよ。よかった…。
よかった……。

「じゃあじゃあ、とりあえず今は休んでて!」
「?待て、お前…っ」
「よいしょっと」
「ちょ、おまっ…力っ強っ…」

私はアドンを抱き上げてベッドに寝かせた。
あわてて起きようとするアドンを押さえておふとんをととのえる。

「だ、だからなぜここに寝かすんだっ!俺の部屋は下!一階下なんだっ!!」
「いいじゃない。今までだってここで寝てたんだし」
「いいわけないだろう!…お、お前にはわからんかもしれんがな、よっ夜っ夜が困るんだっ!」
「なんで夜が困るのよ」
「聞くなっ」
「むー。じゃあ下に行く?」
「……………………」

アドンはしばらく難しい顔して黙ってたけどかけたおふとんをたぐり寄せて口もとを隠した。

「やっぱりここでいい…」
「いいんじゃない」
「〜……」

今度は目まで隠しちゃった。ヘンなの。でも少ししたら目だけ出した。

「クリフトといったか。お前の男」
「男じゃないって。私の家来なのっ。今は大切な仲間なのっ」

なんでか一気に否定しちゃった。
そうよ。そもそもアドンがヘンなこと言うから私がヘンになったんだからっ。

「ああ、そういうことか」
「どういうことよ!」

アドンは笑って私を見た。なによなによー。

493従者の心主知らず 代わり 15/18:2017/05/11(木) 22:08:04 ID:7O11Q12w
「幸せな男だな」
「なにそれ」
「少し不憫な気がしないでもないがな」
「どういうこと?」
「お前こそ早めに気づいてやれ」
「なにをっ」

アドンがくすくす笑ってる。何に気づけばいいのかぜんぜん教えてくれないし。
本人に聞いてみろですって。
っもう!クリフトがぜんぜん教えてくれないから他の人たちに教えてもらいたいのにっ!

「アリーナ」
「なによっ」
「ありがとうな」
「なにがっ……え……?」
「借りは返す」
「…………うん…………」

「やだっやっぱりいらないっ」
「?」
「借りは返さなくていいから、そのぶんロザリーと幸せになるのっ」
「……」
「ロザリーといっしょに、ずっとずっと元気に楽しくめいっぱい生きるの!」
「……」
「約束して!」
「…………」

「それはさすがに無理だ。ロザリー様にはピサロ様がいる」
「どうしてそこでピサロが出てくるのよ!ロザリーとあなたの問題なんだから、ピサロは関係ないじゃないっ」

アドンがものすごくびっくりした顔でこっちを見るの。な、なによー。

「……じゃあじゃあ、ピサロとさんにんで幸せになるのっ」
「………………」

アドンがまたおかしそうに笑った。めちゃくちゃだなって言いながら。
それからありがとうって。なんかもういちどありがとうって言われた。なんで二回言うのよ。
アドンが笑ってる。ほんとうに笑ってるよ。素敵な笑顔。もう大丈夫だよね。

――もう死のうとなんかしないよね――

494従者の心主知らず 代わり 16/18:2017/05/11(木) 22:11:47 ID:7O11Q12w
「姫さま」
「あ、クリフト」

外に出たらクリフトがいた。ずっと私を待っててくれたみたい。
思わずごめんって言おうと思ったらクリフトが深々と頭を下げたの。

「お見事でございました」

え。

「聞いてたの…?」
「申し訳ありません。ピサロさんが部屋から出てきたもので話がすんだものと思い……」
「…………」

「どこまで聞いてたの…?」
「途中で席を外しましたからすべては聞いていません」
「そう…」
「…………」

「姫さま……」
「ん?」
「私は、幸せ者です……」
「え?」

もしかして、最後まで聞いてた…?
クリフトは向こうを向きながら歩いてるから顔がしっかり見えないの。
今どんな顔をしてるの?

「姫さまと私の問題だから、他の障害も……」
「え?」

クリフトが小声でぼそぼそ言うからうまく聞き取れない。

「今なんていったの?」
「いえ、アドンさんにとってあの言葉は、他のどんな言葉よりも救われる一言だったのではないかと」
「え?どの言葉?」
「姫さま」

クリフトが笑ってこっちを見た。
その笑顔がなんだかとてもやさしくて、まぶしくて、私は思わず目をそらしちゃった。
うー、なんだかくやしい……。
あ、そうだ。そうよそうよ。今なら頭がはたらくわ。よし、まずはこっちから。

495従者の心主知らず 代わり 17/18:2017/05/11(木) 22:15:14 ID:7O11Q12w
「ねえクリフトー」
「はい、姫さま」
「ピサロがロザリーのちからで魔族に姿に戻ったとき、クリフトすごーく喜んでたわよね」
「……ああ、そうでしたね」
「あのときもなんて言ってたのか聞き取れなかったの。今ならわかるから教えてちょうだい」
「…………」

――信じていれば……愛をつらぬけば……私だっていつかきっと……――
――……を幸せに……!――

「……ええと……なんて言ってたんでしたっけ」
「えー?」

クリフトが苦笑いする。

「覚えてないの?」
「ええと、そうですね……。
愛のちからはすばらしい、なににも勝ると言っていたのは覚えています。そのあたりですか?」
「えー、私がクリフトに聞いてるのに」

クリフトは口に手を当てながら苦笑いしてる。申し訳ありませんって言いながら。っもう。
でも、そっか。クリフトでも忘れることあるのね。私なんかしょっちゅう忘れるけど。

「じゃあ思いだしたらちゃんと教えてちょうだいね」
「はい、姫さま」

あ、そうだ。クリフトの何に気づけばいいのかも教えてもらわなくっちゃ。
本人に聞いてみろっていったって……私はクリフトをじっと見る。

「?」

うーん、どうやって聞けばはぐらかさずに教えてもらえるのかしら。
今いちばんの難題だわ。

「姫さま」
「んー?」

クリフトはまた笑って私を見る。そして私もまた目をそらす。
っもう、なんで目をそらしちゃうのよ。クリフトの笑顔はずるいわ!ほんとうにくやしい……。
そしたらクリフトがふっと笑ったような気がした。

496従者の心主知らず 代わり 18/18:2017/05/11(木) 22:18:43 ID:7O11Q12w
――どこまでもお供いたします――

姿勢を正して、胸に手を置いて、クリフトはもういちど私に深々と頭を下げたの。
えっと……えっと……。
聞こうと思ってたことがみんなどこかにいっちゃって、私はただただクリフトを見てた。


「ピサロとロザリーは塔のほうで過ごすんだって」
「自宅ですものね」
「一緒に寝るんだろうなー」
「……まあそうでしょうね」
「あーあーいいわねえ恋人同士って。あたしもどっかにいい男転がってないかなー」
「姉さん……」
「なによ」

ふーん、そうなんだ。
ああ、そういえばロザリーのベッドにアドン寝かせてきちゃったんだっけ。ああ……
まあいっか。さんにんで寝ればいいのよ。私がクリフトと神父さまとさんにんで寝たみたいに。
そう、クリフト……
お供いたしますって改めて言われた。初めてじゃないはずなのにまた頭がぼーっとしてるの。
さいきんクリフトの笑顔に負けて目をそらすこと多くなってる気がする。
なんだろうな……なんでだろうな……
くやしいな……。
だから今日はこのままロザリーヒルに泊まることになってちょっとほっとしてる。
ピサロのとこに行ってからはたらかなくなっちゃったこの頭をなんとか元通りにしなくっちゃ。
ちらっとクリフトのほうを見てみる。クリフトはいすにもたれて本を読んでた。

「ねえクリフトー」
「はい、姫さま」

あ、いつものクリフトだ。うん、よし、大丈夫。

「ピサロとロザリーはロザリーのベッドで寝るのよね」
「まあ、そうでしょうね」
「あのね、あそこにアドン寝かせてきちゃったの」
「え……あ……」
「大丈夫よね。さんにんでいっしょに寝ればいいわよね」
「あのお三方が一緒に…?」
「明日さ、行きたいとこがあるんだ。ちょっと寄り道になっちまうけどいいかな」

突然ひびいたソロの声。ソロが少しだけ怖い顔してるように見えた。
ソロ…?

497従者:2017/05/11(木) 22:22:23 ID:7O11Q12w
短編集「知られざる伝説」ではアドンはピサロを「陛下」「殿下」と呼んでいますが
本編ではすべての配下たちが共通で「ピサロさま」と呼んでいるので彼も一部そちらに合わせています。
また本編ではピサロナイトは1体しかいませんがヒーローズなど他作品では複数存在していますので
解釈はそちらに合わせました。
またピサロナイトの部屋は本編ではわかりませんが塔の構造的に2階が空いているのかなと思ったもので
2階に隠し部屋的なものがあるとしました。
基本的にはPS版の世界観を優先していますがところどころアレンジまみれですどうかご容赦を……。

ありがとうございました。

498従者:2017/05/12(金) 17:32:16 ID:5EK.IaJU
まさかの三連続書きこみ本当に失礼します;
この投下でまたしばらくは文章化段階に入りお休み(時々小ネタ)しますので何とぞ……。

前回「代わり」の続き(翌朝)でロザリーヒル編最後「天然同盟」14レス分いきます。
ソロの行きたいところに寄り道する前段階で全体そこはかとなくクリアリ要素が入ってきます。
また13/14で性描写を匂わす表現あり、もし問題ありましたらお知らせください。
ではよろしくお願いします。

499従者の心主知らず 天然同盟 1/14:2017/05/12(金) 17:35:54 ID:5EK.IaJU
「ロザリーおはよー!」
「まあ、アリーナさんおはようございます!」
「……ピサロもおはよ……」
「…………」

「ピサロあっち行って!」
「いきなりなんだ」
「ロザリーと話があるの!だからあっち行って!」
「話…?」
「まあ、何のお話でしょう?」
「ふん…」

「手短にすませろ」

ピサロはすたすたとあっちに行った。よし!

「ねえロザリー、昨日はピサロとアドンとさんにんで寝たの?」
「え?あ……どうしてご存知なのですか……?」
「ふふ、そうだと思ったんだ。実はね、昨日ロザリーのベッドにアドン寝かせたの私なの」
「まあ、そうだったのですね」
「仲直りできたのよね?」

ロザリーは心から嬉しそうな笑顔で大きくうなずいた。

「またお部屋に来てくれるって、今度はかぶとを外してお茶を飲んだりお話ししたりしてくれるって約束してくれたんです。
アリーナさん、本当にありがとうございます!」
「ふふ、よかった」

ロザリーの顔がすこしだけくもった。

「……彼、私が拒否したあの日から、ずっと悪い夢にうなされていたみたいなんです。
私が改めて謝ったら泣いてしまって……私が見えていますかって、私の声が聞こえますかって、そんなこと聞くんです。
私、本当に彼を傷つけてしまったのですね……」
「ん…」
「でも、彼が起きるまえからさんにんで寝るかってピサロさまが言ってくださっていたので、一緒に寝ましょうって言うことができて……」
「……」
「本当に、よかった…」
「……うん」
「アリーナさん、アリーナさんが昨日アドンに口添えしてくださったそうじゃありませんか。本当に、本当にありがとうございますっ」
「えー私は何にもしてないわよ」

500従者の心主知らず 天然同盟 2/14:2017/05/12(金) 17:40:05 ID:5EK.IaJU
ロザリーほんとに嬉しそう。よかった。昨日アドンとお話ししてほんとうによかった……。

「ねえねえロザリー、昨日はロザリーがまんなかで寝たのよね?」
「え?あ……はい……」
「ふふ。まんなかってすごーく安心するわよね」
「……ええ、とっても安心しました。あの、でも……アリーナさんもさんにんでお休みになったことがあるのですか?」
「うん。クリフトと神父さまとさんにんで寝たことあるの」
「まあ、そうなのですね」

「ねえ、アドンのことぎゅってした?」
「え?ぎゅ?」
「うん。アドンのこと、ぎゅって抱きしめた?」
「あ……はい、実は……」
「そうなんだ!じゃあじゃあ、かたまらなかった?」
「あ……かたまりましたっ」
「やっぱり」
「もう、まだよろいを着てるのかと思うくらいカチカチにかたまって、ベッドから落ちてしまったんです」
「えーそんなにあわててたの?」
「はい…」

うーん、クリフトがベッドから落ちたことはなかったなー。

「すぐ謝ったのですけど、でも、いやではないみたいなんです…」
「うんうん」
「ピサロさまも口添えしてくださったのでまたベッドに戻ってもらったのですが、それでもまだかたまっていて……」

でもやっぱりクリフトと似てるなー。

「顔真っ赤だった?」
「んー、明かりを落としていたのでそこまではわからないのですが……あ、でも熱っぽかったかしら……。
今朝は頬をすこし赤らめていました。ベッドの中でお話ししていたときとか朝ごはんを一緒に食べていたときとか」
「うんうん」
「それなら明かりを落としたときだってきっと……んー……」

ロザリーは首をかしげながら話す。

「でも、とにかくあわてていました。私、あんなに取り乱したアドンを見たのは初めてなんです。
普段は無口で暗くて冷たくて、怖いくらいなんですから」

うん、やっぱり似てる。そっくり。

501従者の心主知らず 天然同盟 3/14:2017/05/12(金) 17:44:07 ID:5EK.IaJU
「あの、でも、どうしてそんなにアドンのこと、お詳しいのですか?」
「んーとね、実はね、クリフトと似てるとこあるなーって思って」
「クリフトさんですか?」
「うん。クリフトもね、ぎゅってするとカチカチにかたまっちゃうの。
ベッドから落ちたことはなかったけど、たぶんクリフトの場合、動けなくなるまでかたまっちゃうからなのかも。
普段はお説教とかお仕事の話とか難しいことばっか言ってるのに」
「……でも、クリフトさんはとても温和な方ではありませんか」
「私に限っては、うるさかったり厳しかったりするのっ」
「……そうなのですか。意外です……。……でも、そう考えると確かに似ていますね」
「でしょー?」

「あの……でしたら、脱力しませんでした?」
「脱力?」
「ええ、なんというか、最初はとても抵抗していたんですけど、途中から力が抜けたように言いなりになってしまうというか……」
「あるあるっ」
「ありますかっ?」
「うん。いっしょに寝るっていうとすっごくさわぐのに、いざいっしょに寝るとなると笑っちゃうくらい静かになるの」
「ああ、やっぱりあるのですね」
「あるよー」
「かと思えば、いきなり強く抱きしめてきたり、子どもみたいに甘えてきたり……しますか?」
「するよ!強引にぎゅってしてきたり、子どもみたいにずっとくっついてたりするー」
「ああ、やっぱりそうなのですね」
「そうだよ!」
「あの、あの、でしたらっ」
「うんっ」

ロザリーは両手で口もとを隠してもじもじしながら小声でつぶやいた。

「「やっ」とか「だめっ」とか「お願いですっ」とか、お…「お許しください」とか「おかしくなります」とかっ……言いました…?」
「…………」

私は今までのクリフトを振りかえる。ものすごく振りかえる。

「言ったっ!!」
「言うんですねっ!アドンだけじゃないんですねっ!!」
「うんっ!私もクリフトだけじゃないんだって安心しちゃったっ!!」

私たちはいったん深呼吸して落ちつく。

「ベッドに入るとあんなに性格の変わってしまう男の人もいるんですね」
「ほんとだよー。普段は大人ぶって難しいことばっか言ってるのに」
「言い方もきつくて冷たいのに」

502従者の心主知らず 天然同盟 4/14:2017/05/12(金) 17:47:55 ID:5EK.IaJU
私たちは顔を見合わせてふふって笑った。

「でも、私……嬉しかったんです」
「ん?」
「アドンにもう一度抱きしめてもらえたこと……。初めて抱きしめてもらったときに拒否してしまったから……。
あなたたちと初めて出会ったときにも抱きしめてくれたけど、あれはたぶん私を守ろうとしてしてくれたことだから……」
「……」
「昨日彼と再会したときに抱きしめてもらえなかったのが本当に寂しくて……
もう一度、彼に、彼のほうから、強く抱きしめてもらえたらなんて、そんなことをずっと思っていたんです」
「…………」

いちどだけ、アドンを拒否して傷つけてしまったことがあるって聞いたのはロザリーと初めて会ったとき。
ベッドのとなりに座らせてもらって、ロザリーのひざまくらで気持ちよさそうに寝てるアドンにいたずらしたときだった。
あのときは、どうして拒否しちゃったのかまでは聞かなかったの。なんだかつらそうで、聞けなかったから……
でも……

「……そっか……。拒否しちゃったのって、ぎゅってされたときだったのね……。私、今聞いちゃってよかったのかな……」
「……ええ、いいんです……。私もそこまでは話していませんでしたね。
あのときは……ただただピサロさまを引き止めたくて、ピサロさまが見えなくなるまで私を押さえているアドンが本当にいやで。
でも、今までは私が泣きやむまで押さえていて部屋にお戻りくださいって言うだけだったのに、あのときはなぜか……
私の名を呼んで、いきなり抱きしめて……私、思わず悲鳴を上げて振りはらってしまって、怖くてお部屋に逃げてしまったんです…」
「ん…」
「……でも、後になって気づいたんです。アドンが震える声で「申し訳ございません」って言ってくれてたこと……」
「……」
「泣いてた……。アドンもあのとき、泣いていたんです。私、気づかなかった……。きっと、今までも泣いてくれてた……。
思い出そうとすればするほど鮮明になっていくんです。私を押さえたあとの彼の声はいつも震えてた……。
私の知らないところで、ずっと泣いてくれてた……。今まで、どれだけ私の知らないところで泣いてくれていたのか、私……」
「……」
「あれ以来お部屋に来てくださらなくなって、手も見せてくださらなくなって……
でも、お茶は飲んでくれるしお話も普通にしてくれたから、
少しずつお詫びの気持ちを重ねていけばいつかまた元に戻れるなんて、単純に考えていて……
あんなに彼を傷つけて追い詰めてしまっていたなんて、私……」

――もう二度とあなたに触れません!触れませんから、どうか、どうかおそばにいさせてください…っ――

「……顔が見えなかったんだから気づかなくても仕方ないと思うわ。ロザリーはなんにも悪くないわよ」
「……」

――私はもう拒否しません。しませんから、どうか触れてください。抱きしめてください――
――本当にごめんなさい、アドン…っ――

「…………」

503従者の心主知らず 天然同盟 5/14:2017/05/12(金) 17:51:47 ID:5EK.IaJU
ロザリーはすこしだけ寂しそうに笑ってありがとうございますって言った。

「彼の心の傷……これで本当に癒すことができたのかしら……」
「きっとできたわよ。私と話してたときもすっごく素敵な笑顔をしてたし、あなたと話してたときだって笑ってたでしょう?」
「……ええ……」

ロザリーは遠い目をして笑ったの。

「アリーナさんもありますか?」
「え?なにが?」
「クリフトさんに抱きしめてほしいって思うこと」
「えっ?」

抱きしめてほしいって思うことー?そんないきなり言われたって。うーん。

「えーっと、私がぎゅってしたいって思うことはたまーにあるけど……ぎゅってされたいって思ったことは……ない、かなー……」
「そうなのですか?」
「うーん……ある、かなー……」
「?」

なんだか口調がカチカチになっちゃってる。なんで?

「あ。でも、ぎゅってされてすっごく安心したことはあるわ。男の人って、肩が広いじゃない。
なんだか全身包まれてる気がするのよね」
「ああ、それはありますよね」
「ねっ」

あ。ちょっと会話が途切れた。よかったー。

「私、どうしてアドンに抱きしめてほしいと思ったのかしら……。
ピサロさまに抱きしめてもらうと、ドキドキして頭が真っ白になって力が抜けて、何にもできなくなってしまうんです。
でも、アドンは……昨日、こちらに向いてほしくて最初に彼を後ろから抱きしめたのは私のほう……。
抱きしめてもらったときもドキドキしたのに、なぜか彼にもっと触れたくなって、肌を寄せて、手を伸ばして……」

ロザリーが両手で口もとを隠した。顔が赤くなってる。

「この違いは何なのかしら。昨日はどうしてあんなにアドンのこと……。
私、どうかしてしまったのかしら……」

今度は顔まで隠しちゃった。ロザリーってほんとに女の人って感じだなー。
なんだかかわいい。

504従者の心主知らず 天然同盟 6/14:2017/05/12(金) 17:55:17 ID:5EK.IaJU
「ドキドキしたのはいっしょなのね」
「……ええ……」

ロザリーは目だけ出して私のほうを見た。

「アリーナさんはどうでしたか?」
「え?」
「クリフトさんに抱きしめられたとき」
「えっ?」

またこっちに来ちゃった!

「えーっと、どうって……」
「どんな感じでした?」

わー!私はいっしょうけんめい頭の中を整理する。えーと。えーと……。

「……私も、クリフトにぎゅってされて名前呼ばれたとき、体がゾクゾクってなって、力が抜けちゃって、なんにもできなかった。
あのときはじいがお部屋に飛びこんできたからそれで終わったけど、でも、もしあのままだったら、私ヘンになってたかも……」
「変に……ですか?」
「うーーー……よくわかんないっ」

自分がなにいってるかもよくわかんない。もう頭の中がぐちゃぐちゃだわ。

「……ドキドキしましたか?」

…………。

「……うん……。すっごくドキドキしてた……」
「……私の、ピサロさまのときと同じような感じなのかしら……」
「あっでもね、あわてるクリフトをぎゅってしたいときもあるの。神父さまをぎゅってしたいときもあるの。
ロザリーは、アドンのときにそうだったのよね。
きっと、ピサロのときだってぎゅってしたいときもあるし、アドンのときだってなんにもできなくなっちゃうときだってあるんじゃないかな。
ロザリーがどうかしてるとかそんなんじゃなくて、そういうものなんだと思うわ。きっとこれ、女の人の法則なのよっ」

ロザリーはきょとんとした目で私を見た。すこしだけ目線を下げる。

「そういうものなのでしょうか……。私がおかしいのではなくて、そういうものなのでしょうか……」
「そうしとこうよ。だって、自分がおかしいなんて考えたくないじゃない。私だって、自分がおかしいなんて思わないもんっ」
「…………そうですね」
「そうよ!」

私たちは顔を見合わせてもういちどふふって笑った。

505従者の心主知らず 天然同盟 7/14:2017/05/12(金) 17:59:03 ID:5EK.IaJU
「なになに、なーにおもしろそうなこと話してるのー?」
「あ、マーニャ、ミネアも」
「……もう、姉さんったら。お話し中ごめんなさいね」
「いいよー。いっしょにお話ししよっ」

「へえー、ベッドに入ると性格が変わる男ねえー」
「ピサロさんがとなりで寝ているまえでロザリーさんと寝るなんて、抱きしめるなんて……」
「ね?おもしろいでしょ?」
「アドンさん不潔です」
「で、どうしてそんなに性格が変わっちゃうか、答えは出てるのかしら?」
「ええと、それは……」
「男の人だからよねっ!」

私は元気よく返事した。

「だってクリフトが言ってたんだもの。目の前に無防備な女の人が寝てると抱きしめたくなっちゃうんだって」
「…………」

しーん。ん?何か間違ったかな。

「あのクリフトさんが、アリーナさんにそんな話をされるなんて……」
「うん」
「クリフトさん不潔です」
「あんたねー、じゃもしあたしがクリフトなりアドンなりと一緒に寝たら、同じことすると思ってんの?」
「え?ちがうの?」
「ロザリー、あんたもそう思うの?」
「えっと……」

私とロザリーはいっしょになって首をかしげる。

「実に大変すばらしい。ねえミネア、どう思う?」
「私に振らないでよ」
「「?」」

「じゃ質問を変えるわ。まずはロザリーから」
「あ、はいっ」
「あなたの恋人はピサロよね。じゃアドンはどういう立ち位置なのかしら?ピサロとアドンとどっちのほうが好きなの?」
「姉さんっ」
「こ、恋人だなんてそんな……。ええと……でも、そ、そうですよね、私……でも、ピサロさまもアドンもとても大切な人で……
あの…………その…………どうしましょう、お答えできません……」
「どっちも好きじゃダメなの?」

506従者の心主知らず 天然同盟 8/14:2017/05/12(金) 18:02:41 ID:5EK.IaJU
なんとなく思ったまんま口にしてみたらマーニャがこっちに向いた。

「あんただって、例えばクリフトとアドンどっちが好きって言われたらどっちかになるでしょ?」
「姉さん…っ」
「うーん、私アドンのことも守るって約束したし、昨日お話ししてすっごく好きになったし、かわいいって思うとこもあるし、うーん……
どっちも好き!」
「…………」
「…………」
「でも、ピサロはちょっと……わかんないけど……でもロザリーだって、好きな人ならどっちかになんて選べないわよね?」
「……はい……」
「…………」
「…………」

「天然同盟のできあがりね。ピサロとクリフトをちょっと哀れに思うわ」
「姉さん、その台詞はアドンさんに失礼よ。それに、だからこそ惹かれるというのもあるんじゃないかしら。無垢で一途でまっすぐで。
……どうしてそんなに純真になれるのかしら……」
「こんだけ男はべらしといて無自覚なんて、妬けるわよまったく。あーもう、あたしがアドンをおいしくいただいちゃおうかしら。
普段は冷徹イケメン、ベッドの中ではヘタレM、喘ぎ方も好みだわ。クリフトのさわやかイケメンとは違った魅力ね。いじめてみたいわ」
「……姉さんと一部同意見だなんて、ちょっと鬱だわ……」
「なにそれどういうこと?」
「お薬を届けたとき私も一度アドンさんとごあいさつしましたけど、姉さんになびくタイプじゃないと思います」
「あんたねー、そこをどうなびかせるか考えるのが楽しいんでしょ?」

マーニャとミネアが私のわからないこと話してる……。

「ねえマーニャ……」
「んーなあに?」
「私、クリフトもアドンも好き。マーニャもミネアもロザリーも、今いっしょに旅してるみんなが好きなの。それって、ダメなのかな…?
だれかひとりに決めないと、いけないのかな…?」
「……アリーナさん……」
「……あーもうあたしの負け!ごめんごめん!」
「え?」
「いいのよ。みんなが好きって、すごくいいことだと思うわ。あたしだってみんなが好きよ。アリーナのことも、ロザリーのことも、大好きよ!」
「……ん……ありがとう……」
「……ありがとうございます……」
「でもね、今あたしが話してたのは、そういう好きとは別の「好き」って感情があるって話だったのよ」
「別の好き?」
「そ。他の誰よりもこの人だけって思うくらいの「好き」って感情が世の中にはあるの。そういう人はいる?って話だったのよ」

他の誰よりもこの人だけ……?

507従者の心主知らず 天然同盟 9/14:2017/05/12(金) 18:06:37 ID:5EK.IaJU
「そうなんだ。ごめんなさい、私、的外れな返事をしてたのね」
「んーいいのよ。楽しいおしゃべりの時間なんだから、気にしない気にしない」
「ん…」

別の好き……。

「ねえ、それってどんな感情なの?どうすればわかるの?」
「んーこればっかりはねえ、教えてもらってわかるもんでもないのよ。自分で感じてみるしかないわねー」
「……そっか」

別の好き……どうすれば感じられるのかな……。クリフトならわかるのかな……。

「天然同盟、確定ね」
「姉さん、ぜんぜんこりてないのね……」
「あの……アリーナさんとクリフトさんは、恋人同士なのですよね?」
「へ?」

いきなりロザリーに言われて私はすっとんきょうな声をあげちゃった。

「ちがうちがう!クリフトとは幼なじみで、家来で、今は大切な仲間なのっ」
「そうなのですか?でも、クリフトさんのこと、とてもお詳しいですよね」
「ええとそれは、幼なじみだからっ」
「そう、なのですか」
「そう!」

あーびっくりした。

「あの……恋人同士でなければ男の人といっしょに寝てはいけないとか、そういう決まり、あるのでしょうか…?」
「んー、ないんじゃないかなあ。私、お城の神父さまやサランの神父さまともいっしょに寝たことあるけどなんにも言ってなかったし」
「……そうですか……?よかった……」

「ね?天然まっしぐら」
「…………」
「それにしてもアリーナ、けっこういろんな男と寝てるのね。神父って、ちょっとすごくない?」
「その神父さんたちが不潔なだけです」
「あんたねー、不潔不潔って、あんただって恋のひとつもすれば不潔なこといっぱいしたくなるのよ?」
「なりませんよっ」
「どうだかねー」

508従者の心主知らず 天然同盟 10/14:2017/05/12(金) 18:10:08 ID:5EK.IaJU
「アドンがとても不思議がってましたよ。どうしてあんなに世話を焼いてくれたのかって」
「んーとね、初めて会ったときからクリフトと似てるとこあるなーって思って、気になっちゃったのよね」
「クリフトさん?……どうしてクリフトさんと似ていると気になるのですか?」
「え?」

あれ、なんでだろう……。

「……それですと、クリフトさんご自身のことは、一番気になるってことですか?」
「えーと、クリフトは、えーと……」

あれ、なんだろう。なんだか今、頭がまっしろになっちゃってる。

「ふふーん。天然同士の会話ってけっこうおもしろいわね。的を射てることすら無自覚なわけだし」
「おもしろがってる場合じゃ……まあ否定はしませんけど」

「えーと、えーと……」
「…………」

あ。やっと思いついた!

「ちがうの。クリフトに似てたのもあったんだけど、なんていうか、守ってあげなくちゃって思ったの。
ちょっと弱そうに見えたのね。
クリフトもよわっちいから守ってあげなくちゃって思ってて、きっとそれが重なったんだと思うわ。
だから気になったのっ」

ロザリーはきょとんとした顔でこっちを見てたけどふふって笑った。

「アリーナさんって、かわいらしいですね」
「え?なにが?」
「だって、クリフトさんの話になるといつもあわてているんですもの」
「えーそうだっけ?」

「アリーナさんは、クリフトさんと約束ごとをされることはあるのですか?」
「やくそくごと?」

「私、いつだったか、アドンにこう言われたことがあるんです。
たとえ廊下で何があっても部屋から出てこないでくださいって、ずっと隠れていてくださいって。
すぐ終わりますからって……。
ピサロさまにも隠れているようずっと言われていて……。
でも私、アドンがあなたたちと戦っていたとき、言いつけを守らないでお部屋から出てしまった……」
「……」

509従者の心主知らず 天然同盟 11/14:2017/05/12(金) 18:14:05 ID:5EK.IaJU
あのときの……。

「でも後悔はしていないんです。
もしあのとき出ていかなかったら、もしかしたら、アドンはあのまま……
あなたたちにも大きな傷を負わせてしまったかもしれないから」
「ん……」
「アドンにもピサロさまにもそのことだけはまだ言えていなくて……
言いつけを破ってしまったことは謝らないといけない、そう思ってはいるんですけど……」
「……」

「私も言いつけをやぶってお部屋にいなかったことあるよ」
「アリーナさんも…?」
「……私も姉さんの言いつけ守らなかったことありますし」
「まあ、ミネアさんも」
「いつのこと言ってんだか見当つかないわ」
「……私そんなに守ってなかったかしら」
「ま、そういうあたしなんてどんだけみんなの言いつけ守ってないんだかわからないけどねっ」
「まあ、マーニャさんもなのですか」
「自慢することじゃないでしょうに……」

みんなそうなのね。
私もクリフトが木から落ちて起きなかったときやお城の神父さまにお別れですって言われたときのことを思い出して言った。

「でも私も後悔してないわ。
もしあのときずっとお部屋にいたらクリフトは起きなかったかもしれないし
神父さまともお別れしなくちゃいけなかったかもしれないから。
神父さまが言ってたの。
自分であえてそうしようと思ってしたことはそんなに謝らなくていいって。
それよりもしてもらったことのお礼を言ったほうがずっといいって。
あのとき言いつけをやぶってもアドンはあなたのこと責めてなかったと思うの。
ピサロも責めてるの見たことないわ。
だからそのお礼を言ったらいいんじゃないかな。そのほうがロザリーも言いやすいと思うんだけど。
少なくとも私は言いやすかったわよ?」
「…………」

「はい、アリーナさんっ」

ロザリーがとっても嬉しそうに笑ったの。出かけるまえにもういちどアドンとお話ししてみますって。
お礼を言ってみますって。
なんだか私も嬉しくなっていっしょに笑った。マーニャとミネアも笑ってくれたの。みんなで笑顔になった。
きっとアドンももっと笑顔になってくれるはずだわ。

510従者の心主知らず 天然同盟 12/14:2017/05/12(金) 18:17:37 ID:5EK.IaJU
おまけ 従者同盟

ガシャァァンッ!!

「わああっ」
「クリフト…」
「え?あ、アドンさんでしたか。おはようございます。体の調子はいかがですか?」
「問題ない」
「そうですか。何よりです」
「クリフト…」
「……あのー、アドンさん、もう少し穏やかな登場はできなかったのでしょうか。
今、塔から飛び降りましたよね?あの窓、三階だったと記憶しているのですが……」
「問題ない」
「そ、そうですか」
「クリフト…」
「あー、えーと……何でしょうか…?」
「お前……アリーナとよく床を共にするそうだな」
「え?と…と?」
「……よく共寝をすると……」
「とっ…いきなり何を言い出すんですか!」
「アリーナから聞いた」
「ひめさまがっ!?」
「一つ、助力を賜りたい」
「ちょ、ちょっと待ってください!いったい何の助力ですっ?」
「アリーナは、その……積極的なのか?」
「はいっ??」
「お前に……抱きついたり、触れたり、するのか?」
「っ…っ???」
「教えてくれ…」
「……ア、アドンさん、ちょっと待ってください。いったん落ち着きましょう。ふぅ……。
話の流れがまったく見えてきません。つまり、最終的に何を知りたいのでしょうか……」
「…………」

「俺は……お、女と寝たのははじめてだからわからんのだっ女の心理というものはっ」
「なっ……わ、私だって女性の心理なんてわかりませんよっ」
「…………」

「お前も男ならさっさとアリーナに想いを告げろ!」
「人の事情も知らないでいい加減なこと言わないでください!あなたこそどうなんですっ!」
「それがわからんから聞いたんだろうが!ロザリー様はピサロ様の想い人なのだっ!」
「…………」

511従者の心主知らず 天然同盟 13/14:2017/05/12(金) 18:21:05 ID:5EK.IaJU
「女の、からだは……なぜあんなに、やわらかいのだ……」
「……それに、あたたかいですし、いい匂いもしますしね……」
「理性を保てというほうが無理だ」
「同感です」
「……いつもお前が先導しているのか?」
「?せん…?今何と言いましたか?」
「あー……エスコート?」
「……ああ……」

「……そうしたいのですが、気がつくと主導権は姫さまに握られています。
そもそも誘うのが姫さまですし」
「……そうか……。俺と同じだな……」
「…………」

「昨夜は最後までしたのですか?」
「っ…するわけないだろうっ!まだピサロ様にも許していなかったそうなのだ。それを、まさか、俺が……」
「……それはつまり、あなたの入る余地もあるということではありませんか」
「…………」

「お前はどうなのだ。アリーナとはどこまでいっているのだ」
「何もありませんよ。あったとしても、病の看病で薬を口移ししていただいたくらいです」
「……ふん、腰抜けが」
「人のこと言える立場ですか!あの方はサントハイムのお世継ぎなのです!
私は一従者にすぎないのです」
「…………」

「魔族は、血筋は優先せんぞ」
「…………」
「強い者、才ある者が上に立つのだ。いかに優れた者とて、その子孫も同じとは限らんからな。
王家だろうが平民だろうが次代を担う者の立ち位置は同じ。そうしてピサロ様は上に立たれたのだ」
「…………」
「それで成り立っている社会もある。覚えておけ」
「…………ありがとうございます」
「…………」

「これでもう発つのだろう?」
「ええ」
「お前とはまだ決着をつけていないからな、それまでは死ぬなよ」
「……姫さまを賭けてですか?」
「…………」

512従者の心主知らず 天然同盟 14/14:2017/05/12(金) 18:24:36 ID:5EK.IaJU
「違う、男の意地を賭けてだ。俺の心は常にロザリー様のものだ」
「…………」
「……まあ確かに、少しだけ揺らいだのは、事実だがな……」
「…………」

――お前の目がなければあのまま触れていた――

「アリーナあの女は無防備すぎるのだ!どこの馬の骨ともわからん男に平然と抱きつく!涙も流す!
だから」
「…………」
「お前がそばにいて、しっかり守ってやれ」
「…………はい」

「あ、クリフトー」
「アドン、そこにいたのですね」
「ウワサをすればなんとやらね」
「なんというタイミングなのかしら」
「え?」
「あ…」
「クリフトー、アドンとなに話してたのー?」
「アドン、私も少しお話ししたいことがあるのですが…」
「ほらほらナイトさん方、お姫さま方がお呼びよ」
「姉さん……」
「っ……」
「っ……」

「アドンさん、あなたはこういうとき、すぐ平常心に戻れる方ですか」
「……この上ない試練だな……。お前はどうだ」
「……この上ない試練ですね……」
「クリフトー?」
「アドン…?」
「もしもーし」
「姉さん…っ」
「…………」
「…………」

「「今行きます!」」
「おーふたりそろっていい返事」

513従者:2017/05/12(金) 18:28:09 ID:5EK.IaJU
核心をつかれてあわてたり頭が真っ白になったりするアリーナ
核心をつかれて取り乱したりしんみりしたりするクリフト
が思いつきやっと描けました…!
長きにわたりましたがピサロナイトでクリアリ(第一弾)、いかがでしたでしょうか。
サイドでピサロザ、ナイロザも進行していますがクリアリに必要な部分しか描いていないので飛んだり抜けたりしています。
流れだけはわかるようにしたつもりですが不足ありましたらどうかお知らせください。

短編集「知られざる伝説」ではロザリーはピサロを恋人と明言していますが
ヒーローズではピサロはロザリーを知り合いと濁して?いる点、
動植物や平和を愛するというエルフの性質から
互いに惹かれつつもまだ完全に恋仲には進展していない関係(ロザリーが無自覚)としてみました。
またアドンのベッドでのやりとりは完全オリジナルです。
もしイメージと違う方いましたらこの従者シリーズでだけはそんな感じでご容赦ください;

あと数投下で6章が一段落しますのでまた2章に戻ります。
サランの神父でクリアリにてアリーナがちょっとヘンになる回投下予定です気長にお待ちいただけたら嬉しいです。

長々と本当にありがとうございました。

514名無しさん:2017/05/13(土) 01:18:59 ID:JUgNQmls
乙です。
ここでアンドレアル登場ですか。
本体同然の幻影をいくらでも作れるなら各所にあっという間に伝達できるのでしょう。
飛べますし。

アドンに会いたいとロザリーからピサロに言わせるなんて、普通に考えたら地雷すぎます。
そういうところに気を回せないところにもアリーナのまっすぐな個性が見えます。

>>464
「心配してくれた」というより「スレの平穏のため空気に合わせてね」だったのかも…。
私も含め、願いをストレートに書かず丁重にオブラートに包む人は多いです。

まあこの場所は2chと違って平和です。存分にお書きください。
投稿できるときに投稿していただかないと、完結まであと何年もかかる予感が…。

515名無しさん:2017/05/14(日) 03:23:07 ID:smQogS42
区切りをつけるとはまことに乙!
果てしない長丁場でも区切りがあれば読了感を味わえるというものじゃ
その気配りには感服せざるを得ますまい

今までになく好みの分かれる作風になったのも個性というもの
色々な派生を見て新たな発見を楽しめるのも二次創作の醍醐味じゃ

投稿できるのなら惜しみなく投稿してくださればよろしかろうて
多く投下されるということは楽しみが増えることを意味するのですから

516従者:2017/05/16(火) 16:29:12 ID:Z9tHm25k
乙ありがとうございます。

>>514
はい、ここでアンドレアル登場です。その節は盛り上げていただきとても楽しかったです。
人外でいながらピサロのロザリーへの想いを理解できる彼(彼女?)ならば
クリフトのアリーナへの想いも即座に察すれる恋の上級者なのかなと考えてみました。

>アドンに会いたいとロザリーからピサロに言わせるなんて、普通に考えたら地雷すぎます。
確かにw
ソロの了承を得たあと戻ったらロザリーがまだもじもじしていたから後押ししつつ
結局二人で(というかほとんどアリーナが)ピサロに言いに行ったという光景が浮かびました。
あのセリフのあとのことは何も考えていなかったんですありがとうございます。

>「心配してくれた」というより「スレの平穏のため空気に合わせてね」だったのかも…。
でしょうね。
私も冗長でしたと伝えなるべく自重を心がけましたがたぶん今とさほど変わっていません;
ただ、当時はどちらかというとクリアリ作品そのものに目を向ける傾向があったようで、
対話スタイルに関してはその一言をいただいただけでその後叩かれたことはありませんでした。
見逃してくださった当時の皆さまにも感謝です。

>>515
ピサロナイトでクリアリ、初投下が約1年前……
読む人も大変ですよね。長々とお付き合いいただき本当にありがとうございます!
励みになります。

517従者:2017/05/16(火) 16:32:41 ID:Z9tHm25k
突然ですが私のイメージするクリアリは
アリーナの幸せを願いつつもその相手が自分だったらとも思うがゆえ嫉妬に思い悩むクリフト
クリフトが他者と息ぴったりだったり楽しげに話していたりするとなぜかもやもやするアリーナ

ピサロナイトでクリアリでいえば
アリーナはアドンに特別な感情を抱いているわけではない(言うなれば捨てられた子犬に向ける同情と似たようなもの)、
アドンもまた怪しい言動はあったが気持ちははっきりロザリーに向いていることを確認、安堵を覚えるクリフトとか

皆さんのクリアリ像はいかがでしょうか。
似たように捉えている方がいましたら嬉しく思います。

518名無しさん:2017/05/23(火) 03:54:25 ID:OK78NeRw
あの世界って、基本的には単一の宗教なんでしょうかね?
宗派すらある感じがしないんですけどね…
宗派の狭間で悩むクリフトとか悪くない気がしています

519名無しさん:2017/05/23(火) 10:50:07 ID:4LiGJ2lY
クリフトの台詞を見る限りではマスタードラゴンを信仰する一神教に見えますね。
サランやミントスでは信仰と恋愛との間で葛藤している台詞が聞けますが
レイクナバではすでに結婚している聖職者と一般人を見て神は祝福するという台詞が聞けます。
コナンベリーでも寄り添う二人を見て咎めるどころか拍車をかける台詞でした。
クリフトの中では神に仕える者でも恋愛していいのではという思いがあり
国や街によって恋愛を禁止している宗派?を見て悩むという感じはありましょうか。

520名無しさん:2017/05/29(月) 03:05:00 ID:uBeATIMs
はっきりとした宗派が出てこないんですよね。
無駄な設定を公開しちゃうとプレイヤーの気が散るからでしょう。

しかし信仰の対象であるマスタードラゴンに会っちゃうと、信仰が変質するような。
既存の宗教は竜の神様を想像によって偶像化しているはずですから。
本物を見たら「本物は違うよ」と思うのは当たり前です。
そこから宗教界で孤立するクリフトという図式もあり得るでしょう。

521名無しさん:2017/06/03(土) 19:34:06 ID:OPoRXKyY
宗教界で孤立するクリフトを見てアリーナが味方したり励ましたりするクリアリとか。

522名無しさん:2017/06/07(水) 23:51:48 ID:QizZ1VKQ
宗教に興味のないアリーナですが、だからこそ宗教界の常識に縛られないわけで、
宗教界で苦しむクリフトを支えやすいのかも知れませんね

523従者【5章:鬱注意】:2017/06/22(木) 13:34:12 ID:Z5vqYFE.
クリフトがマスタードラゴンに対して反応している台詞は見ないんですよね。
神も絶対の者ではないということを知って思い悩むクリフトを支えるアリーナというのもあるでしょうか。

PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、山奥の村編「勇者」24レス分いきます。
6章続きのソロの行きたいところに行くまえにこちらを投下しておきたいと思い割り込み失礼します。
(このまえにも投下しておきたい分があるのですがそれは2章に戻ってからで;)
時期は5章、アリーナたちがソロたちと合流して間もないころのある夜、クリアリパートは10/24以降です。
今回全体にわたり鬱展開、ソロとの抱擁シーンもあるのですがどうしても外せず、何とぞ。
投下を二つに分けようか迷ったのですが切る場所もよくわからなくなったので一気に行きます。
ではどうぞ。

524従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 1/24:2017/06/22(木) 13:38:05 ID:Z5vqYFE.
ソロは時々いなくなる。そのことに気づいたのはまだ出会ってからほんの数日。

クリフトはもう助からないかもしれない、そんな私たちを助けてくれたのがソロたちだった。
ソロもデスピサロをさがしているとわかってそれなら一緒にって旅することにしたの。
けどある夜、ソロとお話がしたくてお部屋をノックしてもソロは出なくて。
扉の鍵は開いていてソロはいなかった。
それから何度かソロのお部屋をたずねてみたんだけどいないほうが多いことに気づいて……
思いきって聞いてみたらちょっと散歩してただけだって言われたの。
でも朝早く行ってもいないときがあって……。

ソロはどこに行っているの?ちゃんと戻ってきているの?

――ちゃんと寝ているの…?――

「ソロ?」

寝る準備もととのってお手洗いもすませてお部屋に戻ろうとしたらソロが階段を下りていくのが見えた。

「どこ行くの?こんな遅くに」
「あー、ちょっと散歩」
「え…」

また散歩?また……。

「ねえ。私もいっしょに行っていい?」
「…………」

「悪いけどひとりで散歩したいんだ。大丈夫。少ししたら戻るから」

ソロは向こうを向いたまま答える。私のほうはちらっとしか見てくれない。
なんだか落ち着かない様子、まるで早くひとりにさせてくれって言ってるみたい。
ソロ……。

「そっか。気をつけてね」
「ああ」
「…………」

ソロ……。
ソロはこっちを見ないまま外に出ていってしまった。

「…………」

ソロ……。

525従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 2/24:2017/06/22(木) 13:42:17 ID:Z5vqYFE.
「………………」

………………よし!
私は思いきってソロのあとを追うことにした。ソロのことが心配だから……。
私もそのまま外に出る。
外はわりとひんやりした。でも上着を取りに戻ってる時間はないわ。ソロを見失っちゃう。
ソロがまっすぐ門を出ていくのが見えた。急ごう。
パトリシア、寝てる。私は馬車のみんなに気づかれないよう姿勢を低くして進んだ。

「姫さま」

ふと声がして振り返るとクリフトがいた。

「クリフト…」
「…………」

クリフト、すっごくかたい顔してる……。

「後をつけるのはどうかと思いますが……」

…………。

「でも……」

ソロのことが心配……。

「…………」
「…………」

私はなんにも言えなかった。クリフトもなにも言わなかった。
そしたらクリフトがゆっくり上を向いたの。

「どうしても行くとおっしゃるのでしたら……」
「……」

クリフトは視線を戻して私をまっすぐ見た。

「どうか私もお供に」
「え…?」
「早く追わないと見失ってしまいます。さあ、急ぎましょう」

クリフトは自分の首にかけていたスヌードを外してこちらをって私の首にかけてくれた。
さっきまでひんやりしていたからだが一気にあったかくなった気がした。

526従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 3/24:2017/06/22(木) 13:46:40 ID:Z5vqYFE.
「……ありがとう……」
「……いえ」

クリフトは下を向いて返事する。そのまま向こうを向いた。

「参りましょう」
「……うん!」

私はクリフトといっしょにソロのあとを追うことにした。

馬車がないせいか静かに歩いているせいか、私たちは魔物に会うことなく追いかけられた。
ソロはどんどん丘をのぼってく。
西の国に行くまえに一度ブランカ王に現状報告したいって言ったのはソロ。
私もブランカの王さまとお話ししたことある、とってもおやさしくておおらかでステキな王さま。
少しだけお父さまを思い出させる王さま……。
ソロが会いに行きたいっていうのがなんとなくわかって私も行こうってみんなに声をかけたの。
あのときはなんとも思わなかったけど、ソロには他にも用事があったのかな。
丘の上に森が広がってきた。ソロは迷うことなく入ってく。私たちも急いで追う。
森がひらけた先にぽつんと家があった。ソロはまっすぐ向かってく。あれは、ソロの家…?

「今夜はあそこで休むのでしょうか」

クリフトも気になったみたい、木のかげから少し身を乗り出してのぞいてた。

「あ、出てきたわ」

ソロは家を出てそのまままっすぐ山をのぼっていった。
足どりはゆっくりだけどいっしゅんも迷いがない。よく知ってる場所なんだ。
私たちも気づかれない距離を保ちながらあとを追った。

どれくらい山をのぼったんだろう、また森に入ってだいぶ進むとまた少し視界がひらけてきた。
道なのかよくわからないせまい谷間を抜けさらに進んだ先でソロは立ち止まる。そのまま動かない。
ここがソロの目的地…?
ソロのあとをついていかなかったらきっとたどり着けなかった。すっごく歩いた気がするもの。
私はまわりを見わたす。なんにもない。向こうに何か立ってる、あれは……木……え?壁?え…?

「ソロ…」
「!!」

ソロが驚いてこっちを見た。
私、壁に見えるものが気になってずいぶん前に進んじゃってたみたい。

「ごめん…」

527従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 4/24:2017/06/22(木) 13:50:10 ID:Z5vqYFE.
ソロの眉にしわが寄る。信じられないって顔……。

「アリーナ…」
「ごめん…っ」

ソロはゆっくり上を向いて大きくため息をついた。そのまま向こうを向く。
きっと迷惑って思ってる……。大迷惑って……
でも……

「ソロ、ここって……」
「…………」

「俺の……」
「…………」
「故郷…」

ソロは小さな声でつぶやくように言った。

――俺の故郷…――

「ソロさん…」

クリフトも私のすぐ後ろまで来ていて消え入りそうな声でしゃべった。

「なんと、言っていいか……」
「……」
「私は、魔物に襲われたという村を見るのは初めてなんです。
こんな……」
「…………」
「ソロさん…っ」
「…………」

だんだん目が慣れてきてあたりがはっきりしてきた。
なんにもない……。
なんにも……
壁のように見えたのはやっぱり壁だった。建物のあと……ボロボロの建物のあと……。
毒々しい色の沼も見えた……至るところにできてる……イヤなにおい……。
月の光に照らされぶくぶくと泡立ってるところも見えた。ここがソロの故郷だなんて……。
人がいなくなっただけのお城とはちがう……

――魔物に、デスピサロに、滅ぼされた村……――

528従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 5/24:2017/06/22(木) 13:54:14 ID:Z5vqYFE.
「…………」
「……」
「………………」

ここにたくさんの人たちが眠っているのね……。
ここに……。
そしてその人たちの魂はみんな遠いお空で、あの世で、私たちを見てる。見守ってる……。

――お母さまのように……――

「ソロ……」
「…………」

ソロはずっと向こうを向いてる。肩を落として下を向いて……。
少しだけ見えた横顔はとても寂しそうだった……。

「ねえソロ……」
「……」
「ソロがそんな顔して落ち込んでたら、死んだ村のみんなもあの世で悲しむんじゃないのかな」
「…………」

私は思ったことをそっとソロに伝えた。

「みんな、ソロにそんな顔してほしくて死んだんじゃないんじゃないのかな……」
「…………」
「姫さま…」
「だからさ……元気だそうよ……。ねっ!」
「…………」

「お前に何がわかるんだよ」
「……」
「いいこと言ったような気になってんじゃねえよ」
「っ……」

ソロの言葉が冷たく突きささる。

「ごめん…」
「………………」

「お前はいいよな」

ソロは向こうを向いたまま話す。声が少し裏返って……

529従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 6/24:2017/06/22(木) 13:58:02 ID:Z5vqYFE.
「お前んとこはまだ生きてるかもしれないんだろ?死んだって決まったわけじゃねえんだろ?」

――まだ希望があるんだろ?――

「けど、俺は……」
「…………」
「お前に俺の気持ちなんかわかりっこしねえよ!!」
「ソロさん……」

…………。

「なによ……」
「……」
「わたしだって……っ」

ソロがゆっくりこっちを向いた。私はまっすぐソロを見る。

「生きてるって信じてる。ずっと信じてるわ。
けど、信じてれば必ず生きてるって保証はないの。もしかしたら生きてないかもしれない」
「姫さま……」

声が震える…。

「わかんない……わかんないのよ!!
きっと生きてるって思えば思うほどそうじゃなかったときのことも考えちゃって不安になる…っ
頭がおかしくなりそうなの!!」
「…………」
「死んでてもいいから早く姿を見せてほしいって、なんでもいいからはやく終わってほしいってっ、
そんなとんでもないことだって考えたことあるのよっ!!」
「姫さま…っ」
「…………」

胸が苦しい。息がうまくできない。涙で前もよく見えない……。

「あなたがどれだけつらいかは私にはわからないわ。
けどあなただって、あたしがどれだけつらいかなんてわかんないわよっ!!!」
「…………」

苦しい。くるしい……。
私はいっしょうけんめいソロを見た。ソロは……おどろいたような、泣きたいような……
ソロもくるしそうな顔してた。眉にしわが寄って……
ソロ……。
ごめん、ちがう、こんなことが言いたいんじゃない。ケンカしたくて追いかけてきたわけじゃないの。

530従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 7/24:2017/06/22(木) 14:02:15 ID:Z5vqYFE.
一緒に旅する仲間ができて本当に嬉しかった。
ソロに夜はちゃんと寝てほしくて、思ったこととかつらいこととかは話してほしくて……
言葉がうまく出てこない。

「どっちのほうがつらいかなんて、そんなので勝ったってぜんぜんうれしくないじゃない…っ」
「…………」
「つらいことだけに目を向けるの、やめようよ……」
「…………」

ソロはずっと泣きそうな顔してる。開いてた口をきゅって閉じて……。
ちがう、言いたいのはこれじゃない。
仲良くなりたいの。一緒に楽しく笑っていきたいの。
クリフトを助けてくれた、デスピサロに少しでも近づかせてくれた、ほんとうにうれしかったの。
だから……
言いたいことのはんぶんも言えてる気がしない。

「いっしょにいこうよ……」

私はソロに手を伸ばした。
いいことなんにも言えてる気がしない。ソロを傷つけただけかもしれない。
けどこれが今の私のせいいっぱい……。

「いこうよ……」
「…………」
「いっしょに。おねがい……」
「………………」

ソロが私に向かってきた。思いつめたような顔……ぶたれる!私はぎゅっと目を閉じた。
そしたら少しして何かが全身にぶつかってきて……
気づいたら私はソロに抱きしめられてた。すぐ後ろにクリフトがいることもわかった。

「ソロ…?」
「ごめん…」

ソロは私を抱きしめたままつぶやくように言った。

「お前はシンシアじゃないのにな……」

シンシア…?

「まって」

ソロが私から離れようとしたから思わず声をかける。

531従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 8/24:2017/06/22(木) 14:06:08 ID:Z5vqYFE.
「離れなくていいよ…」

離れてすぐ向こうを向くソロ……私はソロを後ろからぎゅってした。

「っ……」
「ソロ、だいじょうぶだから」
「……」
「姫さま…」
「だいじょうぶだから…」
「…………」

ソロはその場に座りこんでしまった。
肩が震えてる……。
いつもキリッとしててみんなを引っぱってってくれるソロ……
でも今はなんだかとても小さく見えた。

「…………」
「……」

ソロ……。

「……ったんだ……」

少ししてソロが独り言みたいにつぶやいた。
聞き取れないくらい小さな声で。

「ソロ…?」
「俺が弱かったんだ……」
「……」
「動けなかった」
「……」
「外ではみんなが戦ってたのに……」

――シンシアだって……――

「それなのに、俺……」
「……」
「俺、みんなが殺されて静かになるまで、一歩も動けなかったんだ…っ」
「ソロ…」
「俺がただ、弱かったんだ……」
「ソロ…っ」
「う……っ」
「…………」
「……っ……」

532従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 9/24:2017/06/22(木) 14:09:56 ID:Z5vqYFE.
「勇者ってなんだよ」
「……」
「なんなんだよ…」
「ソロ…」
「ふざけんじゃねえよ……」
「……」
「いきなり……なんにも……っ」
「…………」

――今まで黙っていたがわしたち夫婦はお前の本当の親ではなかったのだ――
――魔物どものねらいはお前の命!魔物どもはお前がめざわりなのだ――
――今は逃げて……そして強くなるのだ、ソロ!わかったなっ!――
――大丈夫。あなたを殺させはしないわ――
――さようなら、ソロ……――
――デスピサロさま!勇者ソロをしとめました!――
――も、もしやあなたは勇者さま!――
――勇者さま、私たちを導いてください――
――ソロさまが世界を救ってくれる勇者さまだったとは!――

――勇者さま――

「ふざけんなよお…っ!!」
「ん……」

――みんなが俺のことを勇者だ希望だって期待してくれてた――
――俺はいつかこの村の先頭に立ってみんなを守ってく人間になるんだって思ってた――
――ずっとそう思ってた。そのためにがんばってたんだ――
――今だって、デスピサロを倒して、村に帰って、カタキは討ったよって報告して…――
――世界を救うとか地獄の帝王を倒すとか、本当はそんなこと……――

「…………」
「…………」

ソロ、震えてる……。
私はずっとソロをぎゅってしてた。ずっとソロの肩に顔を寄せてた。

――どうか震えが止まりますように――

「…………」
「…………」
「今日は俺、戻らないから」

533従者の心主知らず 勇者【鬱注意】 10/24:2017/06/22(木) 14:14:11 ID:Z5vqYFE.
少しして落ち着いたのかな、ソロは立ち上がって私のほうを向いた。

「この下に木こりの家があるんだ。今日はそこで泊まるから」
「……」

さっきの家……。

「朝にはちゃんと戻ってるから」

ソロは私をまっすぐ見ながら言葉を続ける。

「大丈夫だから……」
「……うん……」

ソロはそれ以上なにも言わなかった。私も返事をしたきりなにも言えなかった。
さんにんでだまって山を下りる。さっきの家のところまで戻ってそこでソロとお別れした。
ソロは今度はちゃんとこっちを向いてくれた。気をつけろよってお見送りしてくれた。

「姫さま」

ブランカまで帰る途中クリフトが後ろから呼ぶ。

「姫さま…」

けど私はクリフトのほうを向けなかった。
たぶん涙で顔がめちゃくちゃだと思うから……。

「だいじょうぶ」

元気よくこたえたつもりなのに声が震えちゃった。もうめちゃくちゃでもいいわ。
私はクリフトのほうを向いた。いっしょうけんめい笑ってみせる。

「姫さま……」
「だいじょうぶだから」
「っ……」
「…………」

どうして……。
どうしてクリフトが泣くの……?
どうして……
クリフトは声を殺して泣いたの。手をぎゅってして……大粒の涙を流して……
クリフト……。

534従者:2017/06/22(木) 14:18:03 ID:Z5vqYFE.
すみません、今回鬱に加えて暴力、流血描写も少しだけ入っていました。
ご覧の際にはお気をつけください。注意書きが遅くなりすみませんでした。

535従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 11/24:2017/06/22(木) 14:22:28 ID:Z5vqYFE.
考えたくなかった。
お父さまが、お城のみんなが、死んで見つかったときのことなんて。
一生かけても見つからなかったときのことなんて……。
けど、時がたっていけばいくほどどうしても考えてしまうの。
もしかしたらお父さまも、大臣も、神父さまも、侍女も、料理のおばさんも、兵士たちも、みんな……
いやだ!考えたくない!!

「クリフトー……」
「はい、姫さま」
「いっしょに寝て……」
「………………」

「はい、姫さま」

クリフトは少し間を置いたけど私を見て返事してくれた。

ブランカに着いてすぐ宿屋へ。
顔を洗ったり手足をふいたりする元気はもうなくて、私はまっすぐお部屋に向かった。
クリフトも静かについてくる。
そのままクリフトをお部屋に招いた。クリフトは胸に手を置いて頭を下げたあとお部屋に入ってくれた。
わたし今、どれだけめちゃくちゃな顔してるんだろう。
気になったけど手と顔を軽くふいただけで終わりにしちゃった。
クリフトがいるからかな、なんか安心してるみたい。

「……」
「…………」

あ、クリフトがかけてくれたスヌード外さなくちゃ。

「これ、ありがとう」

スヌードをクリフトに返そうと思ったけどこれから寝るんだからクリフトも脱ぐだけよね。
私はスヌードを棚の上に置いた。パジャマのしわをととのえてクリフトに声をかける。

「クリフトも脱いで」
「…………」

クリフトは立ったまま動かない。

「クリフト?」
「……姫さま……」
「ん?」

536従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 12/24:2017/06/22(木) 14:26:49 ID:Z5vqYFE.
クリフトは口もとをきゅっと結んだ。私を見たり下を見たりしてる。
なんだろう、私はクリフトの服を脱がそうとベルトに手をかけた。

「…………」

――いけませんわ。私は神に仕える身――

クリフトが手で私を止めた。一度部屋に戻って身を清めてまいりますって。
すぐ戻りますって。
クリフトは静かに、けど急ぎ足でお部屋を出ていった。お部屋がいっしゅんしんとなる。
私もなんとなくくみ置きのお水で顔を洗ってからだをふいてみた。パジャマの埃もしっかり払う。
そしたらお部屋をノックする音がして帽子と肩のベルトだけ外したクリフトが戻ってきた。
手に持ってた帽子とベルトをゆっくり棚に置く。槍もすぐそばに立てかけて。
さっきと変わらずかたい顔してるクリフト。
私は脱がないのって聞いてまたベルトに手をかけてみたらクリフトもまた手で私を止めた。
自分で外しますっていってゆっくり服を脱ぎ始める。なんだろう。なんかヘンなの。
私も侍女に服を脱がせてもらったり着せてもらったりしたけど手で止めたことなんかなかったわ。

「…………」
「……」

そういえばクリフトといっしょに寝るの久しぶりなんだ。
クリフトが倒れたときもいっしょに寝てぎゅってしたかったんだけど私は寝相が悪いから
寝てる間に蹴ったり殴ったりしたらクリフトが死んじゃうと思って我慢してたの。
今クリフトは普通に動いてる。しゃべってる。寝たきりじゃない、熱もない、本当にもう大丈夫なんだ。
やっといっしょに寝られるのね。

「…………」
「……」

上着を脱いで白い服だけになったクリフトがゆっくりこっちを向く。
なんだか思いつめたような顔……なんだろう。さっきからなんなんだろう。

「クリフト…?」
「……姫さま……」
「ん…?」

クリフトがまた胸に手を置いた。

「私が今ここにいるのは、従者として、もしくは幼なじみとして、姫さまのお望みを叶えるためでございます。
決して、決して他意はございません」
「…………」

537従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 13/24:2017/06/22(木) 14:31:04 ID:Z5vqYFE.
クリフトは静かにしゃべった。まるで独り言みたいに。
タイってなんだろう。クリフトは何が言いたいんだろう。なんだかよくわからない。

「クリフトー」
「……はい、姫さま」
「難しいことよくわかんない」
「あ…はい…」
「クリフト、こっちに来て」
「…………」
「はやく寝よ…?」
「………………」

「はい、姫さま」

やっとクリフトがこっちに来てくれた。

ふたりでベッドに座っていっしょにお祈りする。お祈りは私たちの日課。
クリフトがちょっと離れて座るもんだから私から寄ってってくっついたままお祈りした。
姫さまは奥へっていわれて先におふとんに入る。クリフトはあっちに行っちゃった。
え、どこ行っちゃうの?燭台の前で何かしてる。あ、明かりを消すのか。
少ししてお部屋が一気にまっくらになった。
だんだん目が慣れてきてクリフトがゆっくりこっちに近づいてくるのがわかった。
私はおふとんを開けてクリフトを招く。

「はい」
「…………」

クリフトは失礼しますといっておふとんに入ってきた。ひじをついて足を伸ばす。
クリフト、おっきいな。男の人は背が高いし肩幅も広いからおっきく見える。
そういえばソロもおっきかった。ソロも男の人だものね。なんだかやっぱりくやしいな。
あ、クリフトまくら持ってこなかったんだ。あ、そっか。
クリフトがついたひじを少し伸ばしたから私はまくらを外して頭を上げた。

「…………」
「……」
「……?」
「あれ?うでまくら?」
「え?」

クリフトがまたひじを曲げちゃったから私は宙ぶらりんの頭のまま聞いた。

「あ、しないの?」
「え、あ……ど、どうぞっ」

538従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 14/24:2017/06/22(木) 14:35:45 ID:Z5vqYFE.
クリフトが慌ててうでを差し出す。
そのしぐさがなんだかこっけいで私は思わず吹きだしちゃった。
さっきまでの重苦しいクリフトがいっしゅんでどこかにいっちゃったんだもん。
やっぱりいつものクリフトだわ。

「はい」
「は……」

外したまくらをクリフトに渡して私は差し出されたうでまくらに頭を乗っけた。
うん、やっぱり思ったより寝心地悪くないわ。
クリフトもしばらく頭を上げてたけどやっとまくらにぽふって置いた。

「……」
「…………」

クリフト、またちょっと離れようとしてる……?なんだかなあ。
いっしょに寝るのイヤじゃないっていってたしクリフトからお願いしたこともあったくらいなのに。
いつも何を遠慮してるんだろう。私は思いきってぎゅってした。

「っ…姫さま……」
「こうすると安心するから」
「………………」

そしたらクリフトも空いてる手で私をぎゅって返してくれた。
なんだか全身包まれた気分。今夜はぐっすり眠れそう。

「…………」
「……」
「姫……さま……」
「んー」
「…………」
「クリフトあったかーい」
「え……」

私はもっとクリフトをぎゅってした。クリフトがちょっとびくってなる。強くしめすぎちゃったかな。
少しだけゆるめてみる。

「…………」
「……」
「…………っ」

そしたらクリフトももっとぎゅってしてきた。
ちょっと強引なカンジ……さっきのお返しかしら。

539従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 15/24:2017/06/22(木) 14:40:20 ID:Z5vqYFE.
「…………」
「…………」

そういえばソロにもぎゅってされたんだ。ソロもちょっと強引で……なんで今思い出すんだろう。
てっきりぶたれると思ってた。ソロはあのとき何を思ってたんだろう。
なんていってたっけ……お前は……そう、シンシア、お前はシンシアじゃないのにっていってた。
シンシア……

「姫さま……」
「んー」
「…………」

「姫さまは、ソロさんのことを……」
「え?」
「………………」

クリフトはその先をなかなか言わない。
もしかして私が今ソロのこと考えてたの、わかったのかな。口に出してたのかな。
私はクリフトを見た。
クリフトも私を見てたけど目が合ったしゅんかんそらしたのがわかった。

「いえ、その……」
「?」

「ソロ、だいじょうぶかな……」
「…………」

「わざわざあの家に出向いてまで泊まろうとするのですから安心できる場所なのだと思います」

きっと大丈夫ですよ、クリフトは静かにそう答えた。

「そっか。そうよね」
「………………」

クリフトの胸もとに顔をうずめる。

「っ…」

クリフトほんとにあったかい。いいにおいがする。いつものクリフトのにおい。
なんでだろう、ほんとにすっごく安心する。私はそのまま目を閉じた。

「…………」
「…………」

540従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 16/24:2017/06/22(木) 14:45:13 ID:Z5vqYFE.
私はソロのために何ができるかな。どうしたら笑ってくれるかな。
これからのことを考える。いっしょうけんめい考える。
そうすると私も元気でいられるの。
時々今までのことを思い出しちゃって落ち込むときもあるけどそんなときはクリフトが……
そう、クリフトがこうしてそばにいてくれるからなんとかやってこれたの。
クリフトのおかげ……
私、もうひとりじゃなんにもできなくなっちゃったのかな。そういうことなのかな。
くやしいな……。

「……姫さま……」
「んー……」

クリフトもひとりじゃなんにもできなくなっちゃうことあるのかな。
誰かがそばにいないとダメになっちゃうことあるのかな。
神さまとかそういう目に見えない人じゃなくて……
もしかして、私がいないとダメになっちゃうときなんてあるかな。あるのかな。
あの怖い夢じゃなくて……

「…………」
「…………」

ちょっとくらいそうであってほしいな。
私ばっかりクリフトがいなくなったらどうしようって慌てて泣き叫んでじいになだめられて、バカみたいだもの。
ちょっとくらい……

「……姫さま…?」
「…………」

あれ?今クリフトなにかいった?

「んー……」
「…………」

あれ?なにもいってないわよね?あれ…?

「…………」
「…………」

なんだか眠くなってきちゃった。ソロの村までけっこう歩いたから疲れたのかも。
もう目が開けられない。ねむい。

「…………」
「………………」

541従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 17/24:2017/06/22(木) 14:49:20 ID:Z5vqYFE.
ねむい……。

「……姫さま……」
「………………」

ねむ……。

「………………」
「…………」

…………。

「………………」
「………………」
「…………姫さま…………」

――ただあなたの望むままに――

クリフトにもういちど抱きしめられた気がした。


「ちょっとあんたたち、何やってんのよ!!」

マーニャの声が聞こえた気がしてはっとした。私、寝ちゃってた…!
クリフトは?クリフトがいない…!?
昨日ブランカに帰ってからクリフトをお部屋に招いていっしょに寝て……
クリフトが私をぎゅってしてくれたからすっごく安心できてそのまま寝ちゃったの。
クリフトは!?さっきのマーニャの声……
私は着替えもしないでお部屋を飛び出した。急いで階段をかけ下りる。

まだ時間が早いみたい、外には誰もいなかった。
クリフトとソロが門から少し出たところで向かい合ってるのが見えた。

「どうしたの!?」
「アリーナ」

マーニャが困った顔して私を見る。

「あのバカふたり、なんとかしてよ。あたしまだ寝てたいのに」

私は改めてふたりを見た。
ソロ……すっごく怖い顔してる……。
クリフト……まって、口から血がにじんてる!?
クリフト…!!

542従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 18/24:2017/06/22(木) 14:54:06 ID:Z5vqYFE.
「お前はいいよな」
「……」
「大事な大事なご主人さまがそばにいてさ」
「ソロさん…」

え…?

「回復しろよ」
「……」
「お前の得意技なんだろ?」
「…………」

「回復は、しません」
「……」
「魔法でかんたんに治せるような傷など大したことはないんです」
「…………」

――あなたは、魔法では治せない傷を……――

「負って……」
「…………」

「ムカつくんだよ…」
「……」
「そうやって……」

――誰もがみんな知っていた、一番大事なことを俺に教えてくれなかった――
――教えてくれたときにはもういなかった――
――俺の何をわかってくれてたんだよ。何を守ってくれてたんだよ…っ――

「そうやってわかったような振りされんのが一番ムカつくんだよ!!」

ソロがまたクリフトを殴った。クリフトが地面に叩きつけられる。

「ソロ!!」

止めなきゃ……早く止めなくちゃ……!!

「…………」

どうして……
どうして止めに入れないの……?
足がうまく動かない……。
クリフトは口をぬぐいながら起き上がった。

543従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 19/24:2017/06/22(木) 14:57:39 ID:Z5vqYFE.
「確かに私では、ソロさんの本当のお気持ちを察することはできません……」
「……」
「癒して、さしあげることも……」
「…………」

クリフト……。

「ですが……たとえ大切な人を失ったからといって……」
「…………」
「だからといって、誰かを傷つけていい理由にはならないんですっ!!!」

クリフトが大声で叫んだ。ソロがいっしゅんびくっとする。
私もなにかがビリッと走った。

――死ね――

「そんなことをしても、後悔しか残らないんです…っ!!」

――すべて死んでしまえ――

「残らなかったんです…っ!!」
「…………」

――まだいたのか――
――死をもって償え――

「ですから…っ!」
「……」
「ですから……っっ」
「…………」

クリフト……。
後悔しか残らなかった…?
クリフトも大切な人を失ったの…?いつのことを言っているの…?

――だれのことを、言っているの…?――

「どうか…」
「……」
「どうかあなたまで、闇にとらわれないでください…っ」
「…………」
「どうか……」
「…………」
「どうか……っっ」

544従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 20/24:2017/06/22(木) 15:02:04 ID:Z5vqYFE.
クリフトが泣いてる。すっごく泣いてるの……。
クリフト……。

「……どうかっ……っ」
「…………」
「……っ……」
「………………」

――つらいのはあなただけじゃない――

「…………っ」

――よいか、ソロ。強く正しく生きるのだぞ――
――たとえなにが起こってもな……――

「う……っ……」

ソロの顔がくずれてく。くるしそうな顔……。

――結局悪いのは、弱くてデスピサロたちに立ち向かえなかった……――
――デスピサロがねらってたのは俺だったのに…!――
――かくれろ、逃げろって言葉にかまけてほんの一歩も動かなかった……――
――結局悪いのは……――

――俺――

「ああああぁぁぁあああ……っ!」
「ソロさん…っ」
「うあああぁぁああああああ……!!」

クリフトがそっと手を伸ばす。そのままソロをやさしく包みこんだ。
ソロはクリフトの肩に顔をうずめた。ずっと声をあげて泣いてる……。
泣いてる……。
どれだけの間そうしてたんだろう、ふたりはずっと涙を流してた。

「…………」
「…………」
「もう、アリーナは泣かさねえ」
「…………」
「泣かさねえから」
「…………はい」

545従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 21/24:2017/06/22(木) 15:06:31 ID:Z5vqYFE.
ふたりが小声で何か話してる。なんていってるんだろう、聞こえなかった。
お話が終わったみたいでふたりともこっちを向いた。
すかさずマーニャがケンカは終わった?はい仲直りね、バカ同士、とふたりの肩をぽんぽん叩く。
クリフトはすみませんって謝ってたけどソロはへの字口をしてた。
マーニャ、すごいな。私、なんていえばいいかぜんぜんわからなかった。
ソロがクリフトにベホイミする。クリフトが慌ててお礼を言った。
そしたらソロはちょっとびっくりして。ふっと笑っていらねえよって。そういうのいらねえからって返した。
ソロが少しだけすっきりした顔してるように見えた。
クリフトのおかげ……?
ソロは、自分が勇者だってことに納得してないんだ。なるべくしてなったわけじゃないんだ。
いつもキリッとしてるのは、勇者だからじゃなくて、みんなに勇者だって期待されてるから……
ほんとうは無理してる……?ずっと、もやもやしてるのね……。
なんにも解決してない、なにかできたわけじゃない、けど少しだけソロのことわかった気がした。

ソロがお部屋に戻りにいったから私も着替えてくるっていって急いでお部屋に戻った。
ソロの後ろ姿を見てなにか声をかけたかったけどなんにも浮かばなかった。
私はやっぱりソロのつらさをわかることできないのかな……。
着替えて顔を洗ってお祈りしてまたお部屋を飛び出す。
クリフトはまだ下かなと思って階段を下りてったらクリフトとマーニャが玄関口でお別れしてるのが見えた。

「クリフト?」
「姫さま」

クリフトが慌てたようにこっちを向く。マーニャはもう馬車に戻っちゃったみたい。

「マーニャと何か話してたの?」
「…………」

なんだかクリフトがすごく落ち込んでるように見える……。

「クリフト…?」
「…………」
「どうかしたの…?」
「………………」

クリフトはぼんやり遠くを眺めたあとゆっくり下を向いた。
クリフト……私はクリフトが何か言ってくれるまでじっと待った。

「自分の為すことすべてが正しいとは思いませんが……」
「……」
「人の心とは、難しいものですね……」
「…………ん……」

546従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 22/24:2017/06/22(木) 15:10:40 ID:Z5vqYFE.
…………。

「クリフトー……」
「……はい、姫さま」
「さっきソロとケンカしてたとき、後悔しか残らなかったって言ってたわよね」
「…………」

私はあえて話題をそらしてみた。
マーニャと何の話をしてたのか気になるけど、なんだか聞くのはいけない気がして……
そらしちゃった。

「ああ、言ってましたっけ……」

クリフトは静かに返す。

「それ、いつの話…?クリフトの大切な人って……」
「…………」

「それは……」
「…………」

「クリフトの、お母さま…?」
「………………」

――いやだあっ!!いやだああああっ!!!――
――姫さまああああっっ!!!!――

「………………」
「…………」
「……なんと、申し上げればよいか……」

クリフトは下を見たまま答えない。
こっちのほうが聞いちゃいけない質問だったのかな……。

「いつか……いつかお話しいたします」
「…………」
「ですから今はまだ……どうか、秘密にさせていただけませんか…?」
「えー……」

秘密……。

「私の、知ってる人…?」
「…………」

547従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 23/24:2017/06/22(木) 15:14:28 ID:Z5vqYFE.
「はい、とてもよく……」
「…………」

「女の人…?」
「…………」

私はなぜか話を終わらせたくなくて、立て続けに聞いてしまった。
クリフトは黙ってる。すぐ答えない。何か考えごとしてるみたい。

「はい」

少ししてクリフトは静かに答えた。

「そう…」
「はい…」
「…………」

「いつかは教えてもらえるのね?」
「……はい」
「マーニャとなに話してたのかも教えてもらえる?」

すかさず聞くとクリフトは顔を上げて私を見た。
私も目をそらさずクリフトを見る。

「……はい」
「…………」

「わかったわ」
「……ありがとうございます」

クリフトは私に頭を下げた。胸に手を置いてまっすぐ……。
お話はそれで終わった。

私の知ってる女の人……やっぱりクリフトのお母さま?それとも……?
だれなんだろう。なんでこんなに気になるんだろう。
いつかは教えてもらえる……それはいつなんだろうな。
これから向かうのは西の国。キングなんとかっていってた。初めての場所だわ。
ライアンて人がソロをさがしているんですって。
ライアン……クリフトに言われて思い出した、エンドールの旅の扉で会った人。
あのときなぜか気になった人……また会えるんだわ。
昨日の今朝ですっきりしないけど気持ちを切り替えなくっちゃ。
ソロだってもやもやしたままがんばってる。よし、私もがんばろう!

548従者の心主知らず 勇者【鬱・暴力・流血注意】 24/24:2017/06/22(木) 15:18:21 ID:Z5vqYFE.
荷物をまとめて出かけるしたくもととのって、私たちは馬車の前に集まった。
ソロはいつもと変わらないキリッとした顔でトルネコと地図を見てる。
西の国に行くための経路を調べてるみたい。
クリフトもいつもと変わらず私の後ろに控えてた。
じいもマーニャもミネアも変わらない。昨日のことを知ってるのは私とクリフトだけなんだ。

「ヒヒン」

パトリシアが小さく鳴いたと思ったら私を見てた。なんだろう。なんていったのかな。
あ、もしかして私が昨日ソロのあと追いかけたの知ってた…?
パトリシアはそれ以上なにもいわないでまっすぐ向いちゃった。もうこっちを見てくれない。
うーん、わかんないや。
経路が決まったみたい。ここから船で大陸沿いに進みながら西の国を目指すって。
自分たちの船で旅をするなんて初めてだわ。なんだかわくわくする。
今度こそマストのてっぺんまで登るわ!前に船に乗ったときはできなかったから。
よし、目指すは西の国!

549名無しさん:2017/06/24(土) 01:35:11 ID:3t91cNaA
乙とか色々書いて投稿のボタンを押したらブラウザが落ちました。
心が折れましたが、この一言だけは書き残しておきます。

「乙です」

550名無しさん:2017/06/25(日) 15:13:18 ID:eDoZi91s
乙です。

ああいう境遇の人たちの心を私が描くと、リアルな闇を描かざるを得なくなって泥沼化します。
ミネアのようなカウンセラーがいれば解決は不可能じゃないんですが、終盤まで尾を引くこと請け合い。

一話完結で行けるのはすごいと思います。
そんなに簡単に分かり合えるわけがないだろと思っちゃいましたが、拳で語り合う男の友情ってのは存在し、
むき出しの殴り合いから心が通い合うことは割とあることだったりします。
女性的な感性に男性的感性を若干取り入れた作風なんでしょうね。

551名無しさん:2017/06/29(木) 23:32:07 ID:t5QoWJ6M
ここでも乙という言葉を贈らせていただこうかの

遠慮は要りませぬゆえどんどん投下なさればよろしいのじゃ
完結した後には心行くまで推敲した版を時系列で再投下もよろしかろう
いつになるかは知りませぬが完結を楽しみにせざるを得ますまい

552従者:2017/07/06(木) 15:05:56 ID:YWldpXWg
乙ありがとうございます。続きをすぐ投下できそうになく、今回レスだけで失礼します。
いろいろミスが……>>538の2行目、笑うときのふくは「吹く」ではなく「噴く」でしたね。
また、よく考えたら町に入るときは4人でも宿代は全員分払っている件。
あれです、パトリシア及び馬車の見守り番を夜も交代でやってるとかそんな感じで補完いただけたらと;
最後に、今回の殴り合いでソロとクリフトが分かり合えたわけではないのです。
ただ、こうした生き死にの世界で信念を持って生きている人というのは少なからず自分に恥じない生き方をしている人ではないかと。
次回の6章続きで多少は補完できるかもしれません。
>>550さんのリアルな闇も拝見したいです。そこで描かれるクリアリはどんな作風でしょうか。

553名無しさん:2017/07/11(火) 04:31:56 ID:FbyO/sGY
暑くなってきました。
皆様、熱中症にご注意ください。

クリフトもアリーナも、砂漠とかで熱中症になりかけたりしたのかも。
ブライ様は帽子を着用なさった方がよろしいかと。

554名無しさん:2017/07/12(水) 01:25:32 ID:wVnoHSRQ
仏教のお坊さんは夏でも厚着ですが、クリフトの法衣には夏服があるのかな・・・

555名無しさん:2017/07/12(水) 23:17:46 ID:tLt84B02
カトリック教会では季節や祝日によって服の色を変えるのだとか。
シスターは夏服と冬服で色が同じでも微妙に違うとか。
半袖の神父とか見たことないからもし夏服があっても生地が薄いだけなのかな。
アリーナのほうが夏は薄着になりそうだね。すでに腕まくり?してるし。

556名無しさん:2017/07/16(日) 05:00:09 ID:46Nlm8ao
熱中症対策に水分補給、これ大切!
砂漠越えに馬車が必要って何のこっちゃって思ってましたが、馬車に水を積むってことなんですかね?
半日もあれば徒歩で通過できる程度の砂漠だった気がするので、馬車なしで行ける気もするんですが…

557名無しさん:2017/07/29(土) 01:35:35 ID:vPUzXPqg
本格的に暑くなってきましたね。
皆様、食中毒にはお気を付けください。
昼に作った料理が夕方まで無事とか思わない方が良いですよ。

ドラクエ4の世界だと食べ物が腐る気はしないですね。
お弁当が永遠に腐らないんですから。
ネネさんの製造技術が優れすぎているのかも知れませんが。

558名無しさん:2017/07/29(土) 13:53:40 ID:IftSqn9I
トルネコのダンジョンでは
腐ったパンを拾って食べたら毒にあたることがあったような

559名無しさん:2017/07/29(土) 19:00:12 ID:sAkmBXTk
ややこしくなるので、そっちのダンジョンの世界には触れるのを避けましたが…。

トルネコのパンって、高温多湿+時間経過で腐るものでしたっけ?
普通のパンが腐ることはあっても、何かイベントがあって初めて腐るものだったような。
我々の考える腐敗とは別の概念な気がしますけど、どうなのでしょうね。
トルネコが腐ったパンを食べても、腹を下すかと言えばそうでもないですし。

そもそも具のないシンプルなパンが腐敗するのは難しい気も…。
カビは生えますが、よほど水分が多くないと腐敗しづらい気がします。
あの世界の腐敗って何なのでしょうね。

560名無しさん:2017/07/31(月) 00:09:37 ID:VtEboBNo
不思議なダンジョンは物理法則が違う別世界と考えた方が良いかと・・・

561名無しさん:2017/07/31(月) 06:14:22 ID:RSvK.Nw.
アリーナの手料理vs腐ったパン

562名無しさん:2017/07/31(月) 23:24:38 ID:Ep87dGgw
クッキーを作ったら黒焦げ
ケーキを作ったらめちゃくちゃ
アリーナのお茶を飲んだら昇天
失神するほど地獄の味
キアリー必須
パデキア味

アリーナの料理は色々な描かれ方をしてきました

逆に、美味しく料理するアリーナという切り口でSSがあってもいいですね
一般市民に紛れて暮らすとか、料理上達の経緯とか

563名無しさん:2017/08/18(金) 03:36:32 ID:/T/w.Bfw
関東地方では雨天続きで夏なのだか梅雨なのだか分からない今年。
家具の後ろにも風を通さないと壁一面にカビとかあり得ますのでご注意を。

ドラクエ4の世界では、雨の日は傘を使うのでしょうか。
勇者御一行様も戦闘時以外では傘を使うのでしょうか。
傘があれば相合傘もあり得ますね。
クリアリと傘…今まで見たことのない組み合わせですが案外悪くないのかも。

564名無しさん:2017/08/26(土) 14:19:56 ID:P1RPb4t6
「あー雨降ってるー。さっきまで晴れてたのに」
「姫さま、こちらをお使いください」
「え、なんで傘持ってるの?」
「先ほど鳥が低く飛んでいたもので雨になるかと思い用意を……」
「えー?なんで鳥が低く飛ぶと雨になるの?」
「雨の前は湿度が上がるので空を飛ぶ羽虫の羽根が重くなり低く飛ぶようで……」
「うん、わかったわ。行きましょう」(バサッ)
「」
「あれ、クリフトの傘はないの?」
「いえ、私はこれで充分です。両手を空けていたいもので」
「この傘けっこう大きいわ。一緒に入りましょ?」
「えっそれはその…」
「入るの!」
「は、はい。では私が傘を持ちます」
「両手を空けたいんじゃないの?」
「……持ちます!」
「ちょっとクリフト、肩が濡れてるじゃない。もっと傘をそっちにやりなさいよ」
「いえ、それでは姫さまが…」
「っもう、じゃあもっとつっくけばいいんだわ」
「あの、姫さま…!」
「こうすれば私もクリフトも濡れないわ」
「……!」
「まだ回ってないお店がたくさんあるのよね。早く回りましょう」
「……!!」
「ねえクリフト、あのお店とってもおいしい匂いがするわ。行ってみない?」
「はい!姫さま!(ああ、願わくはこの時間が少しでも長く続きますように…)」

565名無しさん:2017/08/27(日) 18:20:13 ID:nGZnieU6
「ブライ導師様、そのような話を聞いてはおりません」
「聞いておったら王宮にお主は奉職せんかっただろう」
 クリフトはブライの前に狼狽した顔で立っていた。
「無論です。まだ私は若輩者ですから修業したいのです。まだ聖地巡礼もしてませんし、まだまだやり残した事あるんです。だから勘弁して下さい」
「儂としても姫様にさっさと婿を迎えてもらって、楽隠居と行きたいものでな」
「そんな身勝手な。しかし固辞致します。それに私より相応しいお方がおられます」
 ブライの涼しげな顔に対して、クリフトは至極真面目な顔で言葉を返した。
「もう話になりません。転属届け出を出させて頂き、今回の異動は無効にして抱く所存です」
「それは困る。せっかくお父様にお願いしたのに。クリフトが届けを出す前に既成事実作っちゃいましょう」
「姫様!! 」

周囲が押せ押せで引っ付けようとするクリアリネタを気まぐれのように投稿して、はぐれメタルのように逃走

566名無しさん:2017/08/31(木) 21:31:23 ID:nw4BaoGo
ただでさえゆったりなスレなのにはぐれメタルで逃げられては追いかける隙もなし
本当は嬉しいけど一生懸命立場を貫こうとしている照れ隠しなクリフトなのか
信仰にしか関心がなく姫はあくまで姫であると割り切ってもいるストイックなクリフトなのか
アリーナのほうがもっと近づきたいと思うようなストイックリフトもいいね!

567名無しさん:2017/08/31(木) 23:51:49 ID:odCRlWiU
乙です!

傘は何気に恋愛アイテムですがドラクエでは見かけないような
ゲーム内では描かれなくても馬車には積んでるのかも
無尽蔵に荷物を収納できる袋があれば傘くらい持ってますよね

本人よりも周囲が積極的という珍しいパターンも面白いものです
ブライさんが後押ししてくれたら心強いです
色々なクリアリが楽しめるのはいいですね!

568名無しさん:2017/09/21(木) 21:55:15 ID:Wlpex1ic
アリーナのほうがクリフトのこと気になってて幼いころみたいに仲良くやりたいと思ってるんだけど
クリフトのほうはクソ真面目でしれっとしてて仕事一本で全然取り合わない。
けどたまに社交辞令なのか本気なのかよくわからない優しさを見せるものだからアリーナは嬉しくなって
もっと近づこうとしたらまたしれっと返される。いつになったらクリフトと仲良くできるんだろう。

てな感じのクリ←アリ誰か描いてくれませんか。

569名無しさん:2017/09/21(木) 23:55:55 ID:JPLUWk/U
あらすじが書かれれば肉付けくらいはできるかも。
全然違う話の流れに改変するかも知れませんが。
得手不得手があるのでお応えできるとは限りませんけどね。

570名無しさん:2017/09/26(火) 09:32:56 ID:JuKD3592
あらすじを書くのが難しいんですって。例えば

自分の誕生日は国を挙げて祝ってもらってたけどクリフトの誕生日を祝った記憶がない。
何とかどうにか誕生日を聞きだしてこっそりプレゼントを渡すも下々の者と関わっては父上に叱られます、お気持ちだけと返される。
どうしても受け取ってほしくてやいのやいのやってるうちにプレゼントが壊れたりブライが飛んできたり。
アリーナはプレゼントを床に叩きつけて部屋に駆けこんで泣きじゃくる。
次の自分の誕生日、あれからクリフトとなんにも進展ないし憂鬱になってたらクリフトから思わぬプレゼントのお返しが…?
とか

おてんばなアリーナはよくケガをする。すり傷切り傷は毎度のことでたまに打ち身や捻挫をすることも。
その度にクリフトが飛んできてお説教しながら手当てする。
お説教がなければいいのにと思いながらはいはいと答えて手当てを受けるアリーナ、本当はクリフトは自分のやること中断して
こっちに飛んできてるんだから迷惑してるんだろうな、だからお説教するんだろうなと思っていた。
あるとき自分で手当てするからいい、いつも時間つぶされて迷惑でしょとクリフトに言ったらまったくですと返しながらも思わぬ返事が…?
とか。

けどそんな思わぬことが度々起こっても次の日になるとまたしれっと真面目でお説教なクリフトに戻ってるからがっかりな感じな。
あらすじ書くので力尽きました。。。

571名無しさん:2017/09/26(火) 23:19:21 ID:QHdwcI0M
思いの外素敵なあらすじが出てきて驚愕です
そこまで作れるのでしたら書けるに違いないと思ってしまいます
ちょっと台詞を足す程度でもSSとして成立しますからね…

572名無しさん:2017/09/28(木) 02:12:10 ID:CiDN5.oU
あらすじだけでも心を動かれずにはいられないクオリティ
これを乙と言わずして何を乙と言いましょうか
新たな職人が活躍する予感!

573名無しさん:2017/09/30(土) 23:08:25 ID:.R5DGmgo
>>570
1個目で書こうと思ったけれど、ちょっと手が止まるところが…。

プレゼントは何を渡しましょうか?
お城にあるものですか?
何か手作りしましょうか?
お花とかの採集物にしましょうか?
慣れないお外でモンスターを倒して何か買いましょうか?

姫様というお金を持たない身分の人なので、贈り物の入手方法が違ってきます。
税金を元に家来に買わせて…というのは避けたいですよね。
そうすると心を込めた何かを贈るわけで、そこに物語性が発生せざるを得ません。
贈るものが何かは重要な気がします。

色々なパターンを書くのも良いですけど、贈って終わりじゃないので大変です。
1つのパターンが決まっていれば物語を進めやすいです。

あと、何歳くらいのときを想定したあらすじでしょうか?

574名無しさん:2017/10/01(日) 00:29:58 ID:ruOvejKo
夜が更けて薄暗い馬車の中でマーニャとミネアと一緒にお菓子を囲むアリーナ。
「まさか野宿で誕生日を迎えるとは、ある意味忘れられない誕生日になるわね。
早く平和を取り戻して、次の誕生日は普通に過ごせたらいいわね。」
「早く落ち着いた生活に戻らなきゃね。」
そんなミネアやマーニャを、祝われるアリーナは不思議そうに見ていた。
「そう?私はこの旅の生活を結構気に入ってるし、この誕生日は今までで一番楽しいわよ。」
妙に嬉しそうなアリーナを見て、ミネアとマーニャは顔を見合わせた。

「アリーナの今までの誕生日って、やっぱり国を挙げて盛大に祝ってもらってたの?」
ランタンの揺れる光が曇るアリーナの表情をゆらゆらと照らした。
「うん…そうだけど、祝ってもらってるっていうよりは儀式だから、いつも以上に窮屈なのよ。
人間じゃなくて儀式をこなすお人形さんでいなきゃいけないから、1日中何も楽しいことがないの。
だから、こうやって間近で心から祝ってもらう誕生日ってすごく新鮮で、すごく嬉しいわ。」
揺れる炎に合わせて揺れる影がアリーナの抱える切なさのようで、ミネアは胸に傷みを感じた。

「でもさ、女だけで祝うってのもアレよね。本当はクリフトに祝ってもらってもいいんじゃない?
テントで寝てると思うけど、あとで起こして2人きりで祝ってもらったら?」
無遠慮に色恋方面に話を持っていこうとするマーニャに、ミネアはため息をついた。
「もう…そういう話ばっかり。クリフトさんなら、どうせもうアリーナさんを祝ってるでしょ?」
「うん…プレゼント、もらっちゃった。」
炎の色に紛れて分からないたが、アリーナの頬が心なしか赤くなったように見えた。
「こんなの初めてなの…いつもは言葉だけのお祝いだし…
私がプレゼントを渡そうとしても、下々の者と関わっては父上に叱られますとか、お気持ちだけとか…
だけど今は…今までのように距離を置かなくなって…すごく身近に感じられるの。
私、この旅がずっと続けばいいのにって思う…。」

「へぇ…」
思わぬ収穫とばかりにニヤけるマーニャ。
「あ、もちろん早く平和にしたいし、早くお城のみんなに戻ってきて欲しいのよ。
ただ、この旅が終わるとしたら…寂しいなって…」

「クリフトさんにも立場がありますからね。この旅が終わったらまた距離を置こうとするでしょうね。
それでも、この旅で築いてきた絆が消えることはないし、元通りの関係に戻ることはないわ。
そこから先、どう外堀を埋めていくかが大切ね。」
「え、外堀?」
ミネアの分かりづらい言い回しにキョトンとするアリーナに、マーニャが優しく語り掛けた。
「お城でもクリフトと距離を縮めたいなら、2人にそれなりの努力が要るってことよ。
周りは身分不相応とか言って引き離そうとしてくるだろうし、クリフトだって気を遣うに決まってる。
だから、周りの人を納得させるように頭を使わなきゃってことよ。」
「えー、何をすればいいか全然分からないわ。」
「1人で考えちゃダメよ。そういう悩み事こそクリフトの得意技でしょ。
今のうちにクリフトと戦略を練っておけばいいのよ。
ずっと近くにいたいから方法を一緒に考えようって。」
「それ、いいわね!」
アリーナの表情が一気に華やいだ。
「こうしちゃいられないわ!クリフトのところへ行ってくる!」
思い立ったらまっすぐなアリーナは、勢いよく馬車を飛び出した。

馬車に残った2人の横顔をランタンの炎がゆらゆらと照らした。
「姉さん…尊敬するわ。」
「うふふっ」


更け行く夜、叩き起こされたクリフトとアリーナが何を話したのかは分からない。
ただ、2人の距離が縮まったのは確かなようだ。

575名無しさん:2017/10/01(日) 00:35:30 ID:ruOvejKo
決まってない部分を避けて書いてみましたよ。
職人じゃない人が結末とか考えずに行き当たりばったりで書いてます。
誤字もありますねぇ…すみません。

他の方の書く作品も見たいです。職人さんじゃない方も是非。
無理やりでも書き始めなきゃ何を始まらないんですよ。

576名無しさん:2017/10/01(日) 04:42:19 ID:0ZdFmGTU
「姫様、またお怪我ですか」
「こんなの怪我のうちに入らないわ!」
「治療します。お見せください。」

暖かな光で傷口が癒される。
「一国の姫様なのですから、もっとご自覚をお持ちください。」
「もうっ、今日もお説教なのね!」
「それだけのことをなさっているのですよ。」
「はーい」
暖かな光、暖かな声。
クリフトに治療してもらうのは暖かくて好きなんだけどな。
お説教がなければいいのにな。

「いつもクリフトが来てくれるわよね。
今度から自分で手当てした方がいいよね。
いつもお仕事を中断して駆け付けて、迷惑でしょ?」
「まったくです。
治療しようとしても姫様が嫌がるとかでいつも私が呼ばれて。
姫様を治療するのは好きですが、姫様がお怪我ばかりではこのクリフト…」
「え?」
「あ、いや、王様がいつもお嘆きです。
将来の国を背負うお立場ですから、相応しい振る舞いをなさいませんと。」
「うん…」

何だろう、今、すごくドキッとした…
クリフトって時々何を考えてるか分からない。
闇のようなものに吸い込まれそうな気がして、でもとても暖かくて。

「ねえクリフト」
「何でしょうか?」
「やっぱりまた治療に来てくれる?」
「またお怪我をなさるおつもりですか?」
「もしもの話よ、もし怪我をしたら!」
「…もちろんです。」

あ、クリフト、笑ってくれた。
いつも難しい顔をしてるけど、時々笑顔を見せてくれる。
「ありがとう、クリフト。」
「何ですか、急に。」
クリフトの照れたような笑いに、アリーナもつられる。

なんだかクリフトには不思議な力があって。
お説教ばっかりでも一緒にいたいって、もっと笑顔を見たいって思っちゃう。
不思議だな…

577名無しさん:2017/10/01(日) 05:24:04 ID:0ZdFmGTU
なんかIDが変わりましたが、また行き当たりばったりで書きましたよ。
話の締め方が思いつかないまま惰性で書きましたよ。

こういう書き方の良し悪しはともかく、こだわり始めるといつまで経っても書きづらいわけで。
いくら悩んでも無投下なら成果ゼロ。ゼロは嬉しくないですね。

同じあらすじから別の作品が生まれたらきっと楽しいですね。
他の方はどう肉付けして書くのでしょうか。
職人の方はもちろんですが、そうでない方の作品も見たいですね。

578名無しさん:2017/10/01(日) 16:11:13 ID:ys5YElfY
誕生日は国を挙げて祝ってもらってたけどクリフトの誕生日を祝った記憶がない。
何とかどうにか誕生日を聞きだしてこっそりプレゼントを渡そうとしても、下々の者と関わっては父上に叱られますとかお気持ちだけとかで返されて。
どうしても受け取ってほしくて押し問答してたらプレゼントが壊れたりブライが飛んできたりしたっけ。
プレゼントを床に叩きつけて部屋に駆けこんで泣きじゃくったっけ。悲しかったんだもん。

今日は私の誕生日。今年も1日中解放してもらえないんだろうな。
あれからクリフトとなんにも進展ないし、今日は会えないんだろうし。憂鬱だな。

「姫様。」
床に就くアリーナに、侍女が小声で囁いた。
「何?」
訝しげに問いかけるアリーナに、侍女は小さな包みを差し出した。
「クリフト様からです。」

(皆様の脳内で)続く。

579名無しさん:2017/10/01(日) 16:22:08 ID:ys5YElfY
省力化パターンでも書いてみましたよ。
ほとんどあらすじの流用で成立しちゃうのは、あらすじが上手いってことです。
あらすじがほぼSSなのですよ。
完成目前で力尽きるなんてもったいないです。

580名無しさん:2017/10/01(日) 21:35:52 ID:bCQ9nqXY
ちょ、あの、なんというか、

GJGJGJ!!

まさか本当に描いてくれる方が現れるとは…!しかもなんという微笑ましい…!!
テンション上がりまくって感想が追いつきません。本当にGJです!!

>>573
いや、改変してもらえると思ったもんでまったくもって適当でございました。
>>565さんのクリフトがめちゃめちゃカッコよくて何かそんな感じのクリアリが見たかったんです。
なにぶん自分自身がストイックリフト描くの苦手なもので……
けど>>573さんのおかげでとてつもなくテンション上がったら何かこんな風に仕上がりました。
あらすじがただ細かくなっただけみたいなのですがどうぞ。本当に感謝です!!

5811/3:2017/10/01(日) 21:40:16 ID:bCQ9nqXY
今日はアリーナ姫の生誕日。国を挙げての祝賀行事はアリーナにとって退屈でしかなかった。
好物のおいしいものがたくさん食べられる代わりに行事が終わるまで拘束される、自由に動き回れない。
社交辞令を適当に済ませながら早く終わらないかなとアリーナはぼんやりしていた。
ふと遠くにクリフトが見えた。
ごあいさつするときは国民全員が集まるからだわ、アリーナは思いながらクリフトをぼんやり見た。
そういえばクリフトの誕生日いつだっけ、ふと思う。
誕生日なんてなくなればいいのにと思っていたアリーナは他の人たちの誕生日を気にしたことがなかった。
一通りの儀式を済ませたあとアリーナはブライや大臣、神父にそれとなく誕生日を聞いて回り
クリフトの誕生日を聞きだすことに成功した。
よし、お父さまとお母さまだけじゃなくクリフトにもお誕生日プレゼントを渡してみよう、心に決める。
でも何を渡せばいいんだろう、アリーナは身の周りをきょろきょろしてみた。そこで目に留まったもの。
「じい、私フルーツバスケットを作ってみたいの!」
最近アリーナ姫がもの作りにはまっているという噂がまことしやかに囁かれるようになる。

試行錯誤して完成させたいびつなフルーツバスケットを大事そうに抱えアリーナは城内を歩き回る。
出会う兵士や国民に完成したのと笑顔で見せながらそれとなく教会へ向かった。
神父にあいさつを済ませいざクリフトのもとへ。
笑顔いっぱいで完成したのと見せるとクリフトも笑顔でおめでとうございます、素敵ですねと返してくれた。
「あのね、これほんとうはクリフトへのプレゼントなの」
「は…?」
「クリフト、今日誕生日でしょ?こないだ神父さまから聞いたの」
「…………」
「だから、お誕生日おめでとう!これ、私からのプレゼント。はい!」
両手をいっぱいに伸ばしてフルーツバスケットを差し出すアリーナ。
だがクリフトは微動だにしない。
「なんと……もったいない……」
「え?」
思わず顔を上げるとクリフトは眉にしわを寄せ表情を曇らせていた。

「アリーナ姫、そのお気持ち、ご祝辞、このクリフトしかとお受け取りいたしました。
ですからそのプレゼントは、そのまま、お持ち帰りください…」
「え…」
「下々の者と関わったとあればお父上に叱られます。
まして私は男、あらぬ噂を立てられたとあればアリーナ姫の御身が……」
「いや!」
アリーナは大声でクリフトの言葉をさえぎった。
「クリフトに渡したくていっしょうけんめい作ったの!受け取って!おねがい!」
「姫さま…」
なんとか受け取ってもらおうとクリフトの胸にプレゼントを押しつける。だがクリフトは丁重に戻そうとする。
何度か押し問答を繰り返しているうちにバキッと鈍い音が響いた。
「あ!!」

5822/3:2017/10/01(日) 21:46:30 ID:bCQ9nqXY
弦がいくつか折れてしまいいびつなフルーツバスケットはますますいびつな形に変わってしまった。
壊れたプレゼントをぼんやりと見つめるアリーナ、クリフトはみるみるうちに顔が青ざめ唇を震わせた。
「姫、さま……申し…訳……」
「姫さま、ここにいらしたのですか!」
戻りの遅い姫君を心配したのかじいやのブライが部屋に飛びこんできた。
止まった時間が一気に動き出す。
「うわあああん!!」
アリーナは大声で泣きわめき壊れたプレゼントを床に叩きつけた。
止めようとするブライを押しのけ教会を飛び出し周囲の目も気にせず泣き散らしながら自室に駆けこんだ。
じいに見つかっちゃった、プレゼントが壊れちゃった、クリフトに渡せなかった……、
いろいろな悔しさやるせなさがアリーナを襲う、その日はベッドにくるまり朝まで声を上げて泣き明かした。

クリフトの誕生日とアリーナの誕生日は近かった。
ぼんやりしているうちにまたアリーナの生誕日、あの退屈な祝賀行事の日がやってきた。
あれからクリフトとはほとんどしゃべっていない。
もとより気軽に話せる関係でもなかったがあの日からますます縁遠くなっていた。
誕生日がますます嫌になっていたアリーナは憂鬱な気分を隠せずにいた。
無理やり作った笑顔でなんとか一通りの儀式をこなしやっと退屈な時間から解放されたアリーナ、
玉座でぼんやりしていると面会の申し出があった。
「だれ?」
「神官のクリフト様です」
「え!?」
思わず大きな声を上げてしまった。
やだな……そう思いつつ少し迷ったが、結局通すことにした。

緊張しているのか待っている間ずっと背筋が伸びているのがわかった。なんだかドキドキする。
少しして大事そうに荷物を抱えたクリフトが王座の間に現れた。
「あ…」
その手にしていたのは紛れもない、あの日壊れてしまったクリフトへのプレゼント、フルーツバスケットだった。
折れた部分はすっかり元に戻りいびつな形すらなくなっているように見えた。
「アリーナ姫」
クリフトは恭しくアリーナの前でひざまづく。アリーナはクリフトから目が離せなくなっていた。
「こちらにございますのは以前姫さまが私にお見せくださったフルーツバスケットにございます。
あの日私は取り返しのつかぬ粗相を犯し、姫さまの大事な手作り作品を壊してしまいました」
クリフトは切なげな面持ちで静かに話す。
「元通りとはいきませんでしたが、私なりにせいいっぱい修繕を試みました。
こちらがその成果でございます、どうか、お受け取りいただけますでしょうか」
あの日の粗相をお許しいただけますでしょうか、クリフトは両手であの日のプレゼントを差し出した。

5833/3:2017/10/01(日) 21:50:32 ID:bCQ9nqXY
「…………」
アリーナは答えられなかった。それはクリフトに渡したくて作ったプレゼント。だから……
答えられるはずもなかった。
その空気を察したのか、クリフトはアリーナにしか聞こえないような小さな声でまた話し始めた。
「私のような立場の者では、姫さまのプレゼントを堂々とお受け取りすることができません。
堂々と差し上げることもできません……。ですからこれは、私なりの、精一杯の……」
クリフトはそこで言葉を止めた。
その先を続けることがはばかられると言わんばかりに唇を噛んでいる。
「…………」
だが少ししてことさらに小さな声で言葉を続けた。
「精一杯の、あの日いただいたプレゼントのお返しなのです…」
「…………」
言い終えるとクリフトは苦し気な表情で目を閉じ、頭を下げ、床を見つめた。

まるで泣いているように見えた。
アリーナはこんなに重苦しく、切なげで、真剣な顔のクリフトを見たことがなかった。
「…………」
気がついたら自分の目に涙があふれていることに気づいた。
なぜだろう、からだが熱い……。
「姫、さま…!」
戸惑うクリフトをよそに席を立ち差し出されたプレゼント、フルーツバスケットを手にする。
これはクリフトからのプレゼント、あの日私が渡したプレゼントを受けてのクリフトからのお返し……。
そう思ったら嬉しさがこみあげてくるのがわかった。
「うん……うん……ありがとう」
きっとみんなはそんなこと知らない。
私の手作り作品をクリフトが壊したから直して返しに来た、きっと周りにはそうとしか映らないんだろう。
だからこれは私とクリフトしか知らないプレゼントのやりとりなんだ。
そう思ったら今まで憂鬱だった気持ちが一気に晴れていくのがわかった。思わず笑顔がこみあげる。
「ありがとう!」

アリーナの自室のテーブルにはフルーツバスケットが置いてある。思い出の一つだ。
あの日からアリーナはまた城内をうろうろし教会にも足を運ぶことが増えた。
「クリフト、またプレゼント渡すからね!」
あるとき笑顔で話すアリーナをよそにクリフトはあんぐりと口を開けたままかたまっていた。
「何をおっしゃるのです!もうおやめください。そのようなもったいないこと……!」
眉にしわを寄せ険しい面持ちでアリーナに向く。
「そのお気持ちだけでじゅうぶんです。姫さまはもう少しご自分の立場をご理解ください」
「えー」
あの日の切なげなクリフトはどこへやら、まるで何事もなかったかのようにお説教されてしまった。
「ぜったい渡すもん!」
「姫さま…!」
次のクリフトの誕生日、アリーナがまたこっそりプレゼントを渡したかどうかはまた別のお話。

584名無しさん:2017/10/01(日) 22:11:57 ID:0/skaGTA
乙です!
本格派の書き手さんでビックリ。
このスレにはとんでもない人材が潜んでおられたようです。

思い悩みがちなクリフトらしい人柄がにじみ出ますね。
堂々とやりとりできない間柄ゆえの精一杯のやり方。
そういうのを描くのもクリアリの大きな要素であり魅力だと思うのです。
大きな壁があるから物語が深まり、より大きな幸せを感じられます。
盛大な拍手をお送りいたします。

585名無しさん:2017/10/04(水) 05:04:37 ID:PraHDcKM
同じあらすじから別のものが生まれる不思議!
本格派もあれば軽いのもアリで乙な競演!
さらに続けばさらに乙!

5861/2:2017/10/07(土) 23:49:49 ID:4xKmoTEA
「クリフトもブライも、私にとってすごく大切な存在になったわ。
もちろん2人とも大切だったけど、今はすごく身近で、2人といるだけで心強いの。」
「もったいないお言葉でございます。」
頭を下げるクリフトに対してアリーナは苦笑い。
「本当はそういう距離を取りすぎた言葉遣いがなくなると嬉しいんだけどね。」
「それはいけませんぞ。だいたい姫様は…」
いつものようにお小言を始めるブライを横目に見ながら、アリーナは話を続けた。

「クリフトはともかく、ブライはもういい年でしょ。隠居してのんびり暮らす頃よね。
それなのにこんな楽じゃない旅について来てくれて。
感謝してるし、すごく申し訳ないって思ってるわ。」
「フン。まだまだ年寄り扱いされるには早いですわい。」
憎まれ口を叩きながらもブライはどこか嬉しそうだった。

「この3人で旅してるのは何かの縁だと思うの。
平和を取り戻してお城に戻っても、この縁は大切にしていきたいと思ってる。
クリフトもブライも、私の特別な存在だからね。」
「私はともかく、ブライ様と距離を縮めることは喜ばしいことです。」
「もうっ、クリフトも一緒よ!
私たちは家族みたいなものなの。ブライがおじいちゃんで、私たちは孫なの。
ブライのお葬式も私たちで挙げるのよ!」
ブライの眉がピクッと上がった。
「葬式…?」
「家族なんだから当然よ。ブライは私たちで看取って、お葬式も私たちが挙げるの。」
「いえ、私は教会の者としてブライ様をお送りする側ですので…」
「クリフト、お主まで…」
「いや、姫様、縁起でもない話をするものではございません。
ブライ様がお倒れになってからで良いではありませんか。」
「むぅ…」

「しかし、ブライ様はともかく、私は姫様のお側に仕える者ではございません。
お気持ちはありがたいのですが、やはり近しい存在にはなりづらいかと。」
「うーん。それよね。何か私の近くにいられる役職はないのかしら。
近衛兵も距離を置くから、侍女くらいかしら?」
「男は無理ですな。男をむやみに近づけると問題になりますゆえ。」
「ブライは近くに仕えてるじゃない。」
「ワシは問題にならん年齢ですからな。」

「うーん。いっそクリフトと結婚すればいいのかなぁ?」
驚きのあまりクリフトはせき込んだ。
「ひ、姫様は、ご自分より強い男とでなければいけないのでは、ないのですか…?」
「私より強い男を探そうと思っても、ソロとかライアンくらいしかいないだろうし。
人間以外から探すのもさすがに無理だと思うの。
そう考えていくと、クリフトは案外悪くないのよね。
腕力はないけど一緒に闘う相棒としてならじゅうぶん強いわ。
性格も悪くないし権力欲や金銭欲もないんだから、悪くないって思わない?」
問われたブライは顔をしかめる。
「…身分の差というものがありましてな。」
「その身分の差って何?どんな害があるの?」
「…王家の格が下がるのですが、何より諸侯の支持を得られないのです。
そうすると姫様の代になったときに足を引っ張られ、政治が難しくなります。」
「それを防ぐために今から何ができないの?
お父様はまだ若いんだから対策をする時間はあると思うの。
ねえ、クリフトはどう思う?」
「そ、そのような話は、いけません。…畏れ多いお話です。」
「また距離を置こうとするのね。私じゃ不満なの?
もっとおとなしい女の人の方が良いんだろうけど…。」
「そんなことは…姫様くらいお元気な方が…良いかと…」
頬を赤らめるクリフトを見ながらも、鈍感なアリーナはクリフトの気持ちに気づかない。
「うーん、クリフトって立場でものを話すから本音が分からないのよね。
ねえブライ、クリフトは私と結婚したら幸せになれるかしら?」
「…ワシに聞かんでくだされ。」

深呼吸して、クリフトは自分の気持ちを落ち着けた。
「…夫婦になるからには、恋愛感情を抱ける相手でなければなりません。
その、私で良いのなら、それも否定しきれるものではありませんが…」
横からのブライの視線がクリフトに突き刺さる。
「そ、そういう意味で好きになれる相手なのか、よくお考えになった方が良いかと…。」
「クリフト…違うのよ。私は普通に過ごしてたら政略結婚させられるの。
最初から恋愛結婚なんてないんだから、お互いに恋愛感情がなくても問題ないの。」
「いや、しかし…」
なぜかアリーナから結婚を迫られる流れになる反面、恋愛感情はないと宣告されている。
喜びとショックが混ざり合って、クリフトは言葉が出せなかった。
「そんなに恋愛感情が大切なの?
なら私を好きになる努力をしてくれないかしら?
私もマーニャに方法を聞いて努力してみるから。」

クリフトは目を閉じ、また深呼吸をした。
ブライからの無言の圧力を感じながら、クリフトは告げた。
「                 」

5872/2:2017/10/07(土) 23:58:40 ID:4xKmoTEA
平和が戻ってから暫く後、ブライは病の床についていた。

「ブライ、あの時の約束通り、お葬式は私たちが挙げるからね。」
「ただの風邪ですゆえ、縁起でもないことを言わんでくだされ…」
「そうですよ、姫様。」
「もうっ、いつまで姫様って呼ぶつもりなの?」
「そう言われましても、習い性でして…」
「そろそろ普通に呼んでくれてもいい頃よね?」
「そう…ですが…」
頬を赤らめるクリフト。笑顔のアリーナの頬もほのかに赤かった。
「いったい何をしにきたのですかな?
風邪が感染りますぞ。早く出て行ってくだされ!」


2人が出て行った後、ブライはあの時のことを思い出していた。
何気ないはずの会話から運命の歯車が回り始めた瞬間。
若い2人の未来のために力を尽くそうと思った瞬間。

「まだ心残りだらけで、死ねもせんわい…」
目を閉じながら、ブライは幸せそうな微笑みを浮かべた。

588名無しさん:2017/10/08(日) 00:20:46 ID:9pQHSkqg
誕生日のあらすじに沿って書くはずが、何の関係もない話になってしまいました。
それでもあらすじが起点になったのは事実です。>>570さんの功績は大きいです。

ストーリーに余白を大きく残しました。結末すら想像任せです。
「想像に任せすぎ!」と思う方は、ぜひ具体化した版をお書きになってください。泣いて喜びます。
皆さんがどう補完するのか興味をそそられます。

589名無しさん:2017/10/14(土) 17:42:39 ID:SkOjuWFo
「姫様、最近表情が優れないご様子ですが、何かお悩み事でもお持ちなのですか?」
クリフトは心配そうにアリーナの顔を覗き込んだ。
「子供の頃…ケガの手当てをするとき、そういう風に心配してくれたよね。
あの頃は良かったな…」
「姫様?」

「あのね、私、もっとクリフトと仲良くしたいって思うの。
昔はもっと仲が良かったのに距離が開いちゃって。一緒に旅してる今でも距離が開いたままで。
いつになったらクリフトと仲良くできるんだろうって、ずっと考えてるのよ。」
「それが…姫様のお悩みなのですか?」
「そうよ。」
まっすぐなアリーナの視線に吸い込まれそうで、クリフトは目をそらした。
「それは…やはり難しいです。
姫様にも私にも、それぞれの立場というものがございます。」
「お城にいたときにはそうでも、今は違うわよね。
咎める人がいたとしたらブライくらいでしょ。」
「そう…だとしても…」

煮え切らないクリフトに、アリーナは新しい言葉を続けた。
「クリフトって私のこと、好きなの?」
「え…それは、どういう…」
「マーニャは恋だって言ってた。そういう意味で私のことが好きなの?」
「わ、私は買い出しに行かないと…」
その場を離れようとするクリフトの手をアリーナが掴む。
「買い出しにはブライたちが行ったわ。」
「お、お離しください!」
「嫌よ。」

手を振りほどこうとするが、クリフトの力で振りほどけるものではない。
「ひ…姫様は…それを聞いてどうなさるおつもりなのですか…
どのような答えをお求めなのですか…」
「私は…恋愛感情が分からない。
私のことが好きなら恋愛感情を教えてよ。
そうしたらずっと私たち、ずっと一緒にいられるかも知れない。」
「…姫様が望まれているのは子供の頃の関係ですよね。
私たちはお互いに子供ではありません。子供の頃の純粋な関係には戻れません。」
「クリフトは…どうしたいのよ…」
アリーナの瞳から涙が溢れ出した。
「私たち、求めてるものがそんなに違うのかな…」

クリフトはどうすれば良いか分からなかった。
アリーナが自分に向けている好意には恋愛感情がない。
アリーナのために、国のために、自分はどうするのが一番なのだろうか。

「クリフト…苦しいのよ…」
アリーナはクリフトの胸に顔をうずめて泣き始めた。
「私も…苦しいのです…」
肩を抱くこともできず身を震わせるクリフトの頬を涙が伝った。


「どーにかしてやれねーの?」
物陰に潜んでいたソロは隣のブライにささやいた。
「若者の未来のために一肌脱ぐのも年長者の務め…ってな。」
「うむむ…」

590名無しさん:2017/10/14(土) 18:10:30 ID:SkOjuWFo
書いてるうちに悲恋になって切なくなってきたので、唐突にソロとブライが登場。
悲恋も好きですけど、そういうのを描く心境ではありませんでしたので。
ほんのり暖かな恋愛模様を描くつもりで悲恋ラストって、さすがに私の心が追いつきません。
ケガのあらすじに沿って書くはずが、あらすじどこ行った状態ですね。

591名無しさん:2017/10/14(土) 22:42:40 ID:SkOjuWFo
「恋愛感情ってどういう感情なのかな?」
「恋愛感情…ですか?」
「そうよ。私、恋愛感情を知らないまま一生を終えるのかしら?」
「それは…きっと…素敵な王子様が現れるのでは…」
アリーナはムッとして言い返した。
「いないわよ。この旅で色々な国の王族に会ってきたけど、どの王子もひ弱だったわ。
そんな貧弱な王子に一生かけて守りますとか言われても悪い冗談にしか思えないわ。」
「…そうでしょうね。」
姫様は腕っぷしの強いお方でないといけないのでしたね…

「クリフトがどこかの王子だったら良かったんだけどな。
そうしたら、子供の頃に婚約してて、今頃は結婚してたりするんだろうね。」
「いや、私は姫様好みの腕っぷしの強い男ではありませんので…」
「クリフトは強いわ。どこの王子と手合わせしても勝てるだけの剣の腕前は持ってる。
腕力は弱いけど、私と2人なら最強のパートナーになれる。」

「世界を救ったらクリフトも救世主だから、どこかの国に養子に行って王子になれないかしら?
そうしたら私はクリフトを結婚相手に選ぶわ。」
「その…恋愛感情的なものは…よろしいのですか?」
「きっと訓練すれば何とかなるわ。
クリフトは強いし一緒にいて悪い気はしないから好きになれるはずよ。
だからクリフトも私のことを好きになって。」
「私は…大丈夫です。」
「大丈夫って何?」
「あの…もうお慕い申し上げて…」
真っ赤なクリフトに対し、アリーナはあっけらかんとしていた。
「なら都合が良いわ。結婚できるように全力を尽くすわよ。
結婚できたら恋愛を教えてね。」

かくしてアリーナとクリフトは結婚の約束を交わした。
約束を果たすためには、まずブライの理解と協力を得なければいけない。
さて、どうなるだろうか。

続く(…かもしれない)

592名無しさん:2017/10/14(土) 22:50:26 ID:SkOjuWFo
さっきのを書くとき、第1稿の後半部分をボツにしたので整えて別の作品に仕立てました。
今のスレには1つでも多くの作品があった方が良いかなと。

続きを書くにしても、ブライの協力をいかに得るかだけでしょうね。
そこから先があまり思い浮かばないので書かないかも。
皆さんの想像の中で話が進めば良いのかも知れません。

593名無しさん:2017/10/16(月) 04:06:29 ID:F8joZzhM
この流れには乙という言葉を禁じえません
同じはずのあらすじから色々な作品が生まれることになろうとは
しかもあらすじを書いたご本人はまだ2つ中1つしかSSにしていないご様子なので、期待が膨らみます!

594名無しさん:2017/10/19(木) 12:24:43 ID:3oNLMqyQ
570です。たった2つのあらすじからたくさんのお話本当にすごいです。ありがとうございます。
導かれし者たちが二人の恋路を陰ながら応援する話は本当に心温まりますね。
ケガのほうのあらすじは576さんがイメージ以上の話を描いてくださり私からは出そうにないですよ。
やはり「このクリフト……」って言葉はグッときますね。
589さんのお話も悲恋気味で切ないですが一番ストイックリフトを表しているのかなと感じます。
立場を弁えての言葉なのか恋心を寄せているがための言葉なのか気になるところです。
ソロとブライが出てきてくれたことにより一層続きが見たくなりました。
586さんの余白、591さんの「もうお慕い申し上げて…」あたりが個人的にも浮かびましたがいかがな
クリフトにとっては一世一代の告白の場、その緊張感が伝わってきていいですね!

確かに今のスレには1つでも多くの作品があったほうがという点にはまったくの同意です。
長くても短くても思いついたものを誰でも気軽にぽんぽん載せられるようなスレにしたいものです。
先陣を切ってくださる592さんに本当に感謝、お話を描いてくださった皆さまに心からGJです!
最後に>>581-583の続きができたので載せます。やはりストイックリフトを描くのは難しいです。

5951/3:2017/10/19(木) 12:30:11 ID:3oNLMqyQ
最近アリーナ姫がお菓子作りにはまっているという噂がまことしやかに囁かれるようになった。
その噂を耳にしたクリフトは一瞬手が止まる。まさか……
クリフトの誕生日はもうすぐだ。まさか本当にプレゼントを?今度は手作りお菓子で!?いやいやまさか……
クリフトは動揺を隠せずにいた。
アリーナ姫がクリフトにまたプレゼントを渡すと言ったものの今日まで何事もなく日々が過ぎていた。
たまたま時期が重なっただけだ、クリフトはそう結論づけ再び書物に手を伸ばした。

アリーナは焦っていた。目の前の真っ黒なケーキがかすむ。目がうるんでいるのがわかった。
どうして!?どうしておばさまと一緒に作るときはうまくいくのに私一人だけで作ると失敗するの!?
アリーナは手を強く握る。うるんだ目をぎゅっと閉じて涙をこらえた。
プレゼントの中身や渡し方、言い方は万全、後はちゃんと仕上げられる腕だけだった。
だって、だってこれでクリフトが私のことどう思ってるかわかるかもしれないから……。
アリーナはふうっと息を吐いた。もう一度一人だけで作ってみよう、そう思い再び分量を量り始めた。

日課を終えクリフトは部屋に戻ると軽く息をついた。
何事も起こらなかった……。
僧服を脱ぎ普段着に着替えようとした最中、ドアをノックする音が聞こえた。
神父に案内され入ってきたのはアリーナ、その手には小さな箱を持っている。
クリフトは固唾を飲んだ。
「クリフト」
「はい、姫さま…」
緊張するクリフトをよそにアリーナは満面の笑みを浮かべ小さな箱を差し出した。
「お誕生日おめでとう!はい、プレゼント!」

予期していたことが起こってしまった、クリフトは小さく息をついた。
「姫さま…」
「ん?」
クリフトは恭しく一礼する。
「ありがとうございます。このような身にもったいないお言葉です」
頭を上げ少し切なげな表情で言葉を続ける。
「ただ、去年同様プレゼントをお受け取りすることはできません。
その、立場が、ございますので……」

来た!アリーナはお見通しと言わんばかりに言葉を返した。
「去年はなんだかんだいって受け取ってくれたじゃない」
「…………」
「大丈夫よ、今回は形に残らないものにしたの。ケーキよ、食べちゃえばわからないわ」
「ケーキ…!い、いえ、そういう問題ではないのです」
「じゃあどういう問題なのよ」
「お受け取りするという行為自体が立場を超えているのです」
クリフトは一歩も引き下がらない。
「もう、クリフトってほんとに堅苦しいのね」
「なんとでもおっしゃってください」
「じゃあこれならどうかしら」
「?」
アリーナは自信満々に言葉を続けた。
「今回のプレゼントはお父さまの許可を得ているの。だから立場とか考えなくていいのよ?」

5962/3:2017/10/19(木) 12:34:56 ID:3oNLMqyQ
一瞬何を言われたのかわからなかった。
おてんばで破天荒なアリーナはいつも人と違うことを言ったりやったりしてしまう。
王の許可を得ている……クリフトはその言葉の意味を理解するのに時間を要した。
アリーナはそのあいだ緊張した面持ちでクリフトを見守る。
立場を考えなくていい、プレゼントは形にも残らない、だからこれでわかるはず。
クリフトがプレゼントを心から喜んでくれるかどうかが…!
クリフトは何を考えているのか真剣な表情でずっと足もとを見ていた。
アリーナはその様子をじっと見守る。
「…………」
「…………」
考えがまとまったのか、クリフトはふと顔を上げアリーナを見た。

アリーナは見た。クリフトの頬がほのかに赤らむのを。
クリフトはアリーナのずっと先を見ているかのような遠い視線で棒立ちになっていた。
「クリフト?」
クリフトはとっさに横を向く。口もとに手をやり少しだけ眉を寄せた。
「王は、王はなんとおっしゃったのですか?」
「お父さま?喜んでもらえるといいなって言ってたわ」
手で隠しても隠し切れない、クリフトは頬を赤らめたまま目を強く閉じた。
「プレゼント、受け取ってもらえる?」
アリーナは間髪入れずプレゼントを差し出す。クリフトは目線だけプレゼントに向けた。
「…………」

答えない。クリフトは目線を戻し眉を寄せたまま黙っていた。
「クリフト?」
「最近お菓子作りをしていらしたのは、このためですか?」
「そうよ」
「王の許可を得てまで?」
「そう」
「…………」
クリフトは再び目を閉じた。

どうしてもすんなりと受け取ってはもらえない。
やっぱり私のことキライなのかな、アリーナは少しずつ気分が落ちていくのを感じた。
「そこまでしていただいて、私はどうお返しすれば……」
「あ、お返しなんていいのよ。その代わり」
「?」
アリーナはかねてから考えておいた言葉を口にした。
「今度の私の誕生会にクリフトも出てほしいの」
「は…」
「ううん、誕生会だけじゃない、これからも呼んだときは来てほしいの。
都合が合えばだけど」

5973/3:2017/10/19(木) 12:40:25 ID:3oNLMqyQ
クリフトは信じられない事態が起こったと言わんばかりに目を見開きアリーナを見た。
いつの間にか手は解いている。その変わりようにアリーナも少なからず戸惑った。
「そ……」
クリフトは言葉が続かない。
「それでお返しはじゅうぶんだから。ねえクリフトお願い、受け取ってよ」
再びプレゼントを差し出す。クリフトはゆっくりとプレゼントに目を落とした。
「…………」
「クリフト」
「もう……」
「え?」
クリフトは声の調子を下げ、呟くように小さな声をもらした。
「もう、これ以上……」
「…………」
「これ以上、私を……」
「…………」
私は惑わせないでください……。

クリフトが何を言おうとしたのかアリーナにはわからなかった。
アリーナはただ時間をかけて計画したこのプレゼント作戦を成功させたかった。
もう自分のことを嫌いでもいいからとにかく受け取ってほしかったのだ。
まるで懇願するかのごとくか細い声でねだる。少し目がうるんでいるのも気にせずに。
「ねえクリフト、おねがい。受け取って…?」
「…………」

「はい…」
小さな声が、喜びとも悲しみともつかない静かな声が、しかし確かに聞こえた。

「王よ、よかったのですかな」
「何がかね」
玉座の間で王とじいやのブライが二人にしかわからないほど小声で話している。
「クリフトは一僧兵に過ぎませぬ。いくら姫さまの望みとはいえ下々の者と関わるのは……」
「クリフトの母には世話になった。彼女が乳母を務めてくれなければ今のアリーナはなかったのだからな」
「しかし……」
「何か問題があるかね」
「は…」
今ごろ二人は共にケーキをつまんでいるころだろう、王は表情を緩め言葉を続けた。
「アリーナはただ幼なじみの友人に誕生日プレゼントを渡し自分の誕生日パーティーに招待しただけじゃよ」

後に訪れたアリーナの生誕祝賀行事にはクリフトの姿があった。
誕生日なんてなくなればいいとすら思っていたアリーナが初めて心から笑顔を見せた日でもあった。
その後も時折アリーナの呼び出しによってクリフトは玉座の間に姿を見せることになる。
ある者はその待遇を羨みまたある者は嫉妬や厳しい目を向けた。
それでも今日まで何事もなく日々が過ぎているのは一重にクリフトが立場や礼節を弁えているからだろう。
そのことを知らない、深く考えないアリーナはこの先もその奔放さでクリフトを惑わせていくことになる。

598名無しさん:2017/10/20(金) 01:06:27 ID:RtESMUAc
乙です!
ストイックなクリフトから離れてあらすじからも離れて咲き乱れるフリーダム!
そうなるとご本人の作品がますます気になりますし、さらに他の方の作品も見たくなってきます!
同じあらすじからというのも作風の違いが際立って面白いですね!

599名無しさん:2017/10/23(月) 08:05:12 ID:Lky01EVw
最近wiki管理者さん見ないけど元気かな

600名無しさん:2017/10/24(火) 22:39:28 ID:hdNTc/6A
長いことwikiに動きがないんですよね
作品のない過疎スレを見張り続けるのはしんどかったのかも

避難所内に作品まとめ専用スレを設けるのもアリですが、
歴代の作品と一緒にwikiに載ったほうが便利ですよね

601名無しさん:2017/10/29(日) 02:05:20 ID:hU4gk2.g
>>586-587って本当に大きな余白を残したストーリーで、2人の関係とかブライの心残りとか色々と謎のまま
ブライの心を動かすほどの会話があったはずだけど内容は読者の想像に任せるというのもね
脳内補完せざるを得ないので読者は意図せず創作者になります
読み手が書き手になるきっかけになるのかも?

>>595-597のような続き物って意外と多くないので貴重です
次に続きそうな終わり方が想像を掻き立てますし続編への期待が膨らみます
ご本人が書いただけあって、あらすじから忠実に発展していったストーリーに安心感を覚えます
こういう方向性を持ったあらすじだったのかと知る楽しみがあります
そしてご本人が書く治療+ストイックものがどうなるのか気にならざるを得ません

過去スレにないほど活発なコラボ企画が発生中と言えるかも
GJです!

602名無しさん:2017/10/31(火) 14:01:54 ID:mOUg/6C2
570です。乙ありがとうございます!GJ嬉しいです!
それにしてもまさかのひどいミスをしました。
>>597の1段落目最後
私は惑わせないでください……。
じゃなくて
私を惑わせないでください……。
ですよ一番大事なとこ間違えましたよすみませんです……。
自分が描くとどうしてもクリフトが照れたり慌てたりしてしまうので
治療+ストイックはいよいよ描けませんて。
誕生日の話からの治療+その後のクリアリなら描けるかな。
としてもすぐには浮かばないので小ネタを置いて逃走

603名無しさん:2017/10/31(火) 14:05:31 ID:mOUg/6C2
「クリフト、今日はかぼちゃの日なのね」
「かぼちゃの日?ああ、ハロウィンのことですか」
「かぼちゃをくり抜いて飾ったりかぼちゃをかぶったりかぼちゃ料理を食べたりかぼちゃで戦ったりするんでしょ?」
「行事の一部分しか引用していない上に最後がおかしなことになっていますが」
「ねえクリフト、かぼちゃでどうやって戦うの?」
「そんなことを私に聞かれましても……」
「あ、そのまえにかぼちゃがなくなっちゃったら大変だわ!戦う分だけとっておかないと」
「姫さま、本当にかぼちゃで戦うおつもりなのですか」
「こうしちゃいられないわ!私とクリフトの分だけでもとっておきましょ!」
「わ、私と姫さまが戦うのですか!」
「ちょっとクリフト、急いで!早く食堂に行きましょ!」
「ひ、姫さま、手をつなぐのはおやめください!」

「えー!かぼちゃで戦うんじゃないのー!?」
「そもそもハロウィンとは秋の収穫を祝い悪霊などを追い払う行事で……」
「悪霊?悪霊とかぼちゃで戦うの?」
「姫さま、まずは戦うことから離れてください。これは行事なのです」
「むー」
「有害な精霊や魔女から身を守るために仮面をかぶり魔よけのたき火を焚いていたことから……」
「クリフトのバカー!わからずやー!」
「ぐはっ!ひ、姫さまのかぼちゃ攻撃、き……効きました……」(バタッ)


ただのギャグになってしまった。

604名無しさん:2017/10/31(火) 22:48:52 ID:cPGFJ/nM
>>602
乙です。そんなところに誤記があったとは気づきませんでした。
人間の脳はそれらしく読みかえてしまうものですから。

今のところストイックで書いた作品はあまり出てないように見受けられます。
ならそのストイックはどういう感じだったのかなと気になるわけです。
いよいよハロウィンでストイックな治療ものが書かれるのでは期待が膨らみます。

605名無しさん:2017/11/02(木) 00:23:37 ID:M84U7sSo
乙です!
ハロウィンでクリアリは意外と見かけたことがないです
ヨーロッパ的な世界観とハロウィンは相性良し!

仮装一色になる城下町に行きたいアリーナとか
お城でのイマイチなハロウィンを華々しくしようと画策するアリーナとか
アリーナのためにハロウィンで精一杯スベってしまう王様とか
旅先のハロウィンに心躍るアリーナとか
ハロウィンでアリーナに楽しんでもらえないか悩むクリフトとか
ブライの頭をハロウィンらしく華やかに飾ろうと考えるアリーナとか
マーニャたちに連れられてハロウィンを満喫したアリーナとか
ハロウィンでストイックな治療ものとか

ハロウィンにはクリアリのネタが豊富にありそうです!
時期遅れの投下にも期待します!

606従者:2017/11/07(火) 16:37:39 ID:o46AGxQI
お久しぶりです従者です。まったりしたクリアリコラボ本当にGJです!書き手さんもっと増えるといいですね!
流れを切って恐縮なのですがこちらももう少しで6章が終わりまったりできそうなので何とぞ……
PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、山奥の村編最後「やりたいこと」26レス分一気にいきます。
6章(>>496>>499-512)の続きでソロの行きたいところに行った先でのこと、クリアリパートは9/26〜21/26くらいです。
こちらも少しですが暴力、流血、(回想にて)残酷描写、オリジナル展開もありますご覧に際にはお気をつけください。
ではどうぞ。

607従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 1/26:2017/11/07(火) 16:41:15 ID:o46AGxQI
――ピサロさまがソロさんの村を…?――

私たちは今ソロの村に来てる。魔物に、デスピサロに滅ぼされたもうなにもないこの村に……。
今は夕暮れ。遅くなっちゃった。
ロザリーヒルで私たちがお話ししてたときにソロはピサロと山奥の村に行く話をしてたみたいで。
私たちのお話が終わるまで待ってたら子どもや動物たちが集まってきたんですって。
ピサロと話したいこといっぱいあったみたい。
そしたらソロはゆっくりでいいぜって、存分に話せよって、みんなが話し終わるまで待ってくれたの。
ロザリーを生き返らせたことで私たちも受け入れてもらえて、みんなでゆっくりしてたら今になった。
ソロは何を思ってたんだろう。ほんとうは早く行きたかったんじゃないのかな……。
ソロはほんとうにすごいなって思った。

ソロは村にピサロだけを連れていくつもりだったみたい。
けどロザリーがどうしてもついていきたいって言い出して、思わず私もってお願いしちゃったの。
そしたらマーニャにこういうときは空気読むもんでしょって言われちゃって……
そういうものなのかな……。
けどソロは少ししていいぜって、あんな村でよけりゃついてこいよって言ってくれたの。
すかさずクリフトのほうを向いてお前も来るんだろって、クリフトもついてくることを許してくれて……
クリフトは恐れ入りますって静かに頭を下げてた。

村に入る直前で私はソロに呼び止められた。
ソロは私に小さく耳打ちしたの。

「もし俺がバカなことしそうになったら止めてくれな」
「え?」

――アドンのときみたいに……――

ソロ…?
ソロはそれ以上何も言わないでピサロにこっちだって招いてた。
バカなこと……ソロは何をするつもりなの……?
ソロ……?

「姫さま…」

私の足が止まっちゃったからね、クリフトが寄ってきた。

「ソロさんと、何か話したのですか…?」
「ん……」
「…………」

ソロ……。

608従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 2/26:2017/11/07(火) 16:45:04 ID:o46AGxQI
「大丈夫」
「…………」
「ソロならきっと大丈夫」
「……そうですか」
「うん」

なんとなくじゃなくてほんとうにそう思ったから私はしっかり答えた。クリフトもうなずいてくれた。
私たちもすぐにソロのあとを追った。


村とはとても呼べないありさまにロザリーはすっごく驚いたみたい。
ずっとあたりをきょろきょろしてた。

――ピサロさまがソロさんの村を……――

「……では、ソロさんがピサロさまのおっしゃっていた勇者…?」

ロザリーはソロを見つめた。驚いたままの顔……ロザリーは知らなかったのね。
ソロはずっとピサロを見てる。でもピサロはソロを見なかった。

「ソロさんが……」

――聞いてくれロザリー。ついに勇者を見つけたのだ。ブランカの北、山奥の小さな村に匿われていた――
――…………――
――始末してきた。庇おうとする人間もろともな――
――そんな……殺したのですか……?――
――……ああ――
――どうして……どうして……っ――
――ロザリー……。もう時間がないのだ。人間は変わらなかった――
――いいえピサロさま、そんなことはありません。人は変われます。どうかもう罪を重ねるのはおやめください…っ――
――……お前の自由だけは必ず保障する――
――いやです!自由などいりません!どうかもう一度あのころのピサロさまに戻ってください…っ――
――ロザリー……。過ぎてしまえば思い出になる。それまでは……――
――ピサロさま!お待ちくださいピサロさまっ!――
――……――
――あっ…放して……お願い放してっ……っ放しなさいナイトっ!!!――
――…………――
――っ…ピサロさま!!まだ間に合います!!きっと間に合いますから!!!どうか……ピサロさまっ!!!――
――…………――
――……ああぁぁああああっ……!!!!――
――………………ロザリー様……――

609従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 3/26:2017/11/07(火) 16:51:17 ID:o46AGxQI
「…………」

ロザリーの顔がみるみる青ざめてく。悲痛な顔……
ロザリー……。

「わたしは信念にもとづきこの村を滅ぼしたまでだ。何かを得るためには何かを失う、それは当然のこと……
少しもまちがった事をしたとは思っていない」

突然響いたピサロの声。
は…?なに言ってるのこいつ…!?

「……だが、大切なものを失う悲しみはわかる。一度はロザリーを失った今ならな……」

そこまで言うとピサロは目線を下げた。ソロは……震えてた。
震えてた…っ。
ふとにぶい音がしたと思ったらピサロが宙に舞ってた。派手な音を立てて地面に転がる。
ソロが殴ったんだ。起き上がって口をぬぐうピサロをまた殴る。
ロザリーの悲鳴が上がった。けど私はただ見てることしかできなかった。クリフトも動かない……。
再び起き上がろうとするピサロの前にソロが立った。

「立てよ」
「…………」
「あいつらの痛みはこんなもんじゃなかった」
「ソロさん!!」

ロザリーが駆け寄ってピサロの前に出る。

「どけ」
「いやです!」

ピサロがロザリーを無理やり引き戻そうとするけどロザリーは払いのけた。

「ソロさん!どうか殴るのでしたら私を殴ってください!斬っても構いません!!」
「ロザリー!」
「本当に、本当にごめんなさい…っ!!」
「ロザリーどけ!!」
「いや…っいやです。離れるのはもういやです…っ!!」

ピサロはロザリーを引き戻すけどロザリーは必死にピサロにしがみつく。なんどもなんども……。
結局ピサロがロザリーをかばうような体勢でソロを見上げることになる。
ロザリーは泣きながらピサロの背中にしがみついてた。涙がいく筋もルビーとなってこぼれ落ちる。

「本当に、本当に、ごめんなさいっ……ごめんなさい……っっああぁぁぁあああああ…っ!!」

610従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 4/26:2017/11/07(火) 16:54:49 ID:o46AGxQI
ロザリーはソロに謝る。なんどもなんども……。
泣き叫ぶ声があたりに響いた。その声を聞いて私も目が熱くなった。
ロザリー……。
私はソロを見た。ソロは……顔を伏せてた。
ソロ……。
どれだけの間そうしてたんだろう。けっこう長い時間たったと思う。
ソロが少しだけ上を向いた。

「よけいな寄り道しちまったな。みんな、悪かった。帰ろう」
「ソロ……」

ソロはピサロとロザリーに背中を向けた。

「なぜだ……。意味がわからん」

ピサロが後ろから声をかけた。

「わたしをここに連れてきたのは、ここでわたしと戦うためではなかったのか?
なぜ来ない!お前はいったい何がしたいのだ!」
「うるせえよ…」
「それほどまでにこのわたしが憎いのなら、それほどまでにこの村の人間どもが大事だったのなら!
なぜ世界樹の花をそいつらに使わなかったのだ!!」
「…………」
「意味がわからない……」

こいつ…っ!!
ソロ……
ソロが震えてる……。
ソロ…っ

「使わなかったんじゃない……」
「……」

ソロが勢いよく振り返る。

「使えなかったんだよ!!」
「…………」

ソロ…っっ

「だとしても、なぜ、ロザリーを……」
「…………」

「そんなこと……」

611従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 5/26:2017/11/07(火) 16:58:54 ID:o46AGxQI
――俺が聞きたいくらいだ!!――

「大切にしてやれよ」
「…………」
「いつでもそばにいて、守ってやれよ。俺も、できる限りエルフ狩りがこの世からいなくなるよう呼びかける。
だから、これ以上大切な人を泣かせるような真似すんな」
「………………」

――俺は決してお前と同じにはならない――

「ソロ…っ」
「ソロさん…っ」

ソロはそう言うと再びピサロに背中を向けた。こっちに歩いてくる。
ソロ……。

「わたしは……」

ピサロはずっとソロを見てた。

「わたしはまちがっていたのか…っ!?」

「ソロ……」
「この下に木こりの家があるんだ。ちょっとじいちゃんとこ寄ってっていいかな…?」
「うん、いいよ。ソロの行きたいとこに行こう」

ソロがちょっと泣きそうな顔で、けど明るい声で言うものだから私はすぐうなずいちゃった。
ずっと黙ってたクリフトもうなずいてくれる。
馬車のみんなにも行くよって声をかけたらみんなも何も言わずにうなずいてくれた。
ソロのあとについて木こりの家へ向かう。
ピサロとロザリーはずっと私たちを見てた。もう来ないのかなって思ったけど少しして後からついてきた。
こんなことがあってなんでまだついてくるんだろう……でもソロはなんにもいわなかった。

「わんわんわん!」
「なんだ、またおめえか。生きてたのか」
「じいちゃん……」

家には犬とおじいさんがいた。
木こりの家っていうんだから木こりのおじいさんなのね。
あのとき、まだソロと出会って間もなかったとき、ソロはここで泊ったんだ。
ここがソロの安心できる場所……?

「じいちゃん…っ」

612従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 6/26:2017/11/07(火) 17:03:22 ID:o46AGxQI
ソロはおじいさんをもういちど呼ぶと崩れるように寄りかかった。
おじいさんがびっくりする。

「なんだてめえは、ガキみたいに甘えるんじゃねえ!」
「殺さなかった」
「……」
「俺、殺さなかったよ……」
「……そうか……」

ソロ……。

「おう、あんたら連れのもんか。悪いがこいつは今使いものにならねえ」

木こりのおじいさんがソロの頭をグーでこつこつやりながら話す。
ソロはおじいさんにずっとひっついてた。

「そこの戸だなに茶がある。そこらにあるもん適当に食っていいからゆっくりしていきな」

おじいさんはそう言うとソロを奥に招いた。
ソロは肩を落としてうつむいたまま中に入っていった。
私たちのほうは見なかった。

「お言葉に甘えてお茶をいただきましょうか」

クリフトがすかさず声をかける。

「うん、そうね」

なんとなく場を取りつくろおうとしてくれてる気がして私もすぐ返事した。
振り返るとさっきの声とはうらはらになんかかたまってるクリフト……

「ちょっとクリフト、どうしたの?」
「え?」
「なんか、かたまってない?」
「そ、そんなことはありませんよ」

やっぱりかたまったままお茶をいれようとするクリフト。
なんかちらちら犬のほうを見てるような……なんだろう、犬が気になるのかな。
お茶を飲みながら家の中を見て回る。
お茶、ちょっと苦い……おじいさんは苦いお茶が好きなのかな。
犬は私たちが来たときわんわんて吠えてたけど家に入ってからは静かに座ってた。

「俺、裏切り者なのかな……」
「裏切り者ってなんだよ」

613従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 7/26:2017/11/07(火) 17:07:05 ID:o46AGxQI
家の中を回ってたらソロの声が聞こえちゃった。
近づきすぎちゃったんだわ。これじゃ盗み聞きになっちゃう。早く離れないと……。
でも……
でも…………
私は結局離れることができなかった。

「あいつは、あいつはみんなを殺したんだ。親も、先生も、シンシアも、みんな……」
「……」
「でも俺、あいつを殺さなかった。けど俺……」
「……」
「わかんねえんだ。
みんなのこと考えれば考えるほど憎いのに、あいつらのこと考えるとなんかどっかで許さなくちゃって思ってる。
それが許せねえ。なんかもう、わかんねえんだよ」
「…………」
「あいつは、俺があいつを憎むずっとずっと前から人間を憎んでたんだ」

――ニンゲン……――
――ニンゲン…ッ!!――

「夢を見たとき、その憎しみを肌で感じたんだよ。鳥肌が立った。半端なかった。俺、あいつと一緒に泣いちまったんだ。
けど、俺だって……俺だってぇ……っっ」

――ソロや。わたしのことはいいからすぐにお逃げ!――
――よいか、ソロ。強く正しく生きるのだぞ――
――たとえなにが起こってもな……――
――今は逃げて……そして強くなるのだ、ソロ!わかったなっ!――
――大丈夫。あなたを殺させはしないわ――
――さようなら、ソロ……――

――大好き!――

「もう、わかんねえ……。もう、やだ……」
「…………」
「じいちゃんおれもうわかんねえよぉ……っ」
「…………」
「うっ……ぐすっ……」
「…………」

ソロ……。

「で、わかんねえなりきにとりあえずてめえの出した結論は、殺さなかったってことか?」
「…………うん…………」

…………。

614従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 8/26:2017/11/07(火) 17:11:01 ID:o46AGxQI
「いいか、ソロ。よく聞け」
「……」
「この世に絶対的に正しい答えなんてものはねえんだよ。
てめえがてめえの頭で考えて、どうすりゃいいか必死に悩んで、でもっててめえの意志でそうした。
てめえでてめえのことができるようになったんだ、親とすりゃこれほど嬉しいもんはねえっての」
「……そうなのかな」
「てめえも親になりゃわかる」
「じいちゃんはわかるのか?」
「…………」

「……できのわりい息子だったさ、てめえみたいにしけた面してやがってな」
「……」
「だが芯は強かった。このオレに反抗しやがったんだからな。
反抗して、結局オレの言うこときかねえで死んじまったけど、それでも最期まで幸せそうな面してやがった」

――罪を犯しても生き続けるのだから、いつ死んでも悔いのない生き方をする――
――彼はよくそう言ってましたよ――
――とても幸せそうでした。今も、いい顔してますよね。まるで眠っているようです――

――きっと、幸せだった……――

「胸クソわりいけどな、親ってえのは、子どもが自分の意志でその道選ぶってんなら、最後はそれを応援するもんよ」
「…………」
「てめえがわかんねえながらも必死に考えてそうしたってんなら、てめえの親も応援してくれるさ」
「……そっか……。よかったのかな、俺……」
「悩むくれえならその場になってから答えを出しゃいいんだよ。最初からひとつにしぼる必要なんかねえさ。
途中で答えが変わったっていいさ。答えをすぐに出せなきゃ出せるまで立ち止まったって後戻りしたっていいんだ。
大切なのは、そんときどんだけ真剣に考えたかだ」
「…………」

少しだけ間が空いた。
思わずのぞいたらおじいさんがソロの頭をなでてるのが見えた。

「てめえはよくやった」
「…………うん…………」
「それでもまだふっ切れてねえんだろ」
「…………うん…………」
「あせる必要はねえさ。答えはその男が出させてくれる。そいつと一緒にいられる時間を好都合だと思いな。
てめえはもう、殺そうと思えばいつでも殺せるくらい強くなってんだからよ」
「……殺しても、いいのかな……」
「んなこたてめえで考えやがれ。てめえの人生なんだ、てめえでじっくり考えな。誰もせかしゃしねえからよ」
「…………うん…………」

615従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 9/26:2017/11/07(火) 17:14:38 ID:o46AGxQI
ソロ……。
ふと振り返るとクリフトがいた。すっごくかたい顔してる。
わたし……!
けどクリフトは私を見ると小さく笑って首を横に振った。少しソロのほうを見たあと手で戻りましょうの合図をする。
クリフト、私が盗み聞きしたの、許してくれるの…?

しばらくしてソロとおじいさんがこっちに戻ってきた。クリフトがお茶のお礼を言う。おじいさんはなんか適当に返してた。
ソロはさっきとは打って変わって明るい顔してた。

「じいちゃん、俺もお茶飲みてえ!」
「勝手に飲みやがれ!」
「おう!」

お茶を飲みながらソロは私たちに茶目っ気たっぷりの笑顔を見せる。

「へへ。じいちゃんをじいちゃんって呼んでいいのは俺だけだからなっ」
「てめえ!久しぶりに来たんならマキのひとつも割りやがれ!!」
「わかったよじいちゃん!」
「おう、それが終わったら裏の倉庫からいちばんダルふたつ持ってきとけ」
「え?」

「いちばん風呂やるのか!?」
「こんだけの人数だ、やるに決まってんだろ」
「馬車にあと5人いるんだけど呼んでもいいか!?」
「あったりめえだ、どんどん呼びやがれ!」
「やったあ!」
「?」

おじいさんは台所からとっても大きなナベをいくつか重ね持って外に出ていった。
ソロは嬉しそうな顔して私を見る。

「いちばんぶろってなに?」

ソロがにやっとした。
え、なに?え…?

「タルのお風呂に入るの!?外で!?おもしろそう!!」
「ひ、姫さま…!」

外に大きなタルを用意して沸かしたお湯をたっぷり入れてそのままタルの中にどぼーん!!
ふたつ用意するのは、男風呂と女風呂と分けられるようにするからだって。

616従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 10/26:2017/11/07(火) 17:18:19 ID:o46AGxQI
「そのタルどこにあるの!?私もひとつ持つわ!」
「まずはまきを割ってからだよ」
「じゃあ私もいっしょに割る!」
「お前にできるかな。オノとか切り株とかちがうもん割りそうだぜ」
「失礼ね!できるわよ!」
「オノは重たいんだぜー?」
「むー」
「お」

ソロがちらっと私の後ろを見た。

「ともかくさ、すぐすましてくるからお前はクリフトと馬車のやつら呼んどいてくれよ」
「えー」

そういうとソロも大きなオノを手にして外に出ていった。
家の中がいっしゅんしんとなる。

「っもう」

振り返るとなんか複雑そうな顔して扉のほうを見てるクリフト……

「ちょっとクリフト、どうしたの?」
「え?」
「なんか、複雑そうな顔してない?」
「そ、そんなことはありませんよ」

クリフトは苦笑いして目線を下げた。そのままぼんやり遠くを見る。
笑ってるようでぜんぜん笑ってない、何か考えてる。
私はクリフトの考えがまとまるまで待った。こういうときのクリフトって言葉を考えてることが多いから。
みんなを呼びに行くのなんてそんなに時間かからないし。

「最近、いろいろなことがありすぎまして……」

言葉がまとまったのかな、少ししてクリフトが話し始めた。
やけに静かな声。

「うん……」
「情けないです……」
「そう?」
「はい……」
「そうかなー」
「…………はい…………」

――ソロさんには敵わない――

617従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 11/26:2017/11/07(火) 17:21:48 ID:o46AGxQI
クリフトが苦笑いしてる……ぜんぜん笑ってないのに笑ってるの、なんでだろう。
前もこんなことあったかな、なんだかクリフトに隠しごとされてる気がする、なんでだろう。
私はぜんぜん笑う気になれない。時々クリフトのことがわからなくなる。

「あの、姫さま……」
「ん、なに?」
「いちばん風呂、というもの、その……」
「ん?」
「入られるのですか?」
「もちろん!おもしろそうだし!」
「…………」

クリフトが何かを言いたいけど言えないみたいなもどかしい顔してる。
むー。

「なに?」
「その……」
「んー?」
「あまり、肌をさらすのは……」

ああ、それか。確か前もあったわね、こんなこと。
あ、もしかしてそのことを気にしてたのかな。んー?

「じゃあクリフトもいっしょに入ればいいのよ!」
「そっ…」
「今度こそいっしょに入るの!いいわね?」
「っ……」

クリフトは口をあんぐり開けたまま私を見てた。何かを言いたいけど言えない顔。
心なしか赤くなってきたような……いつもの得意技が出たわね。
もう夜だから日焼けする心配はないしみんなもいるから敵の心配もないし、何がそんなに心配なんだろう。
ほんとクリフトって無駄に過保護で心配性だわ。


パチパチとたき火の音が聞こえる。
お湯は次から次へと沸かしてるしお水もたっぷりあるからどんどん使っていいって。
すぐ近くにきれいな川があってそこからくんできてるみたい。
タルはとっても大きくてなんにんか一気に入っても大丈夫みたい。すごいなー。
男湯のほうは年長者からなんていってブライやトルネコ、ライアンが入ってる。
みんな嬉しそう。やっぱりお湯のほうがさっぱりするし湯船につかったほうがあったまるわよね。
私たちはさんにんそろって外とうや布を羽織った。クリフトに言われたからじゃないけど首までしっかり隠してみる。
みんなが私たちに注目した。クリフトも見てる。
私たちは目で合図、みんなが注目する中そろって羽織りをほどくしぐさをする。肩をちらっ

618従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 12/26:2017/11/07(火) 17:25:44 ID:o46AGxQI
「「「「「え!?」」」」」

びっくりするみんな。私たちはそろって顔を見合わせた。

「「「せーの!」」」

バッ!!

「「「じゃーん!!」」」

ハダカかと思いきやさんにんピンクのレオタードー!
女性だけの国ガーデンブルグに行ったときにいいわねってさんにんおそろいで買ったの。
さすがに男の人たちの前で濡れた布を巻いただけじゃ恥ずかしいから。

「私としたことが、年がいもなく……お恥ずかしい」
「姫さま!しもじもにまぎれてなんちゅうはしたないマネをしておるんじゃ!!」
「脱ぐときは少し恥じらいつつゆっくり脱いでもらうほうが……私ってヘンですかね」
「…………」
「…………ぶはあっ!!」
「ちょっとクリフト、どうしたのよ!!」
「あー、ソロとクリフトにはちょっと刺激が強かったかしら」
「クリフトさんは姉さんじゃなくてアリーナさんに反応されたのだと思います」

クリフトがまた鼻血を出しちゃったの。ソロも心ここにあらずみたいな顔してるし。
っもう、せっかくの楽しいお風呂が台なしだわ。
とりあえずクリフトは丸太に座って安静にしてもらった。ハンカチで鼻を押さえてもらう。
私もレオタード姿のままはなんだからまた自分の外とうを羽織った。

「……大丈夫?」
「……申し訳ありません……」
「そうじゃなくて、大丈夫?」
「……はい……」

血は止まったみたい。よかったー。
なんか前にもこんなことなかったかしら。

「ねえクリフトー」
「……はい、姫さま」
「これ、ピンクのレオタード。ちゃんとした装備なの」

私は外とうの前を少しほどいてレオタードの生地を見せた。
クリフトは目だけこっちに向けたけどすぐ戻した。

619従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 13/26:2017/11/07(火) 17:29:40 ID:o46AGxQI
「……まあ腕とか足とか出てるけど、でも肌をさらしてるわけじゃないからね」
「…………」

胸もはんぶん出てるし説得力ないかな。でもほんとうに肌をさらすつもりはないの。
私はクリフトの目を見て言った。

「だいじょうぶだからね」
「………………」

「……はい」

クリフトがふっと笑った気がした。

――ありがとうございます――

クリフトはハンカチをほどいて私に頭を下げたの。やっぱり笑ってた。
よかった。もう大丈夫そうね、クリフト。

「姫さま」
「ん?」
「私はもうだいじょうぶですから、どうぞ湯浴みをなさってください」

クリフトはそう言うとお風呂のほうを見た。

「えー、まだいいわ」

私もマーニャとミネアがお風呂に入ってるのを眺めながら返した。

「ソロさんとゆっくりされてはいかがですか?」

え?

「なんで?」
「…………」

突然ソロの名前を出されて思わず聞いちゃった。
クリフトも聞き返されたのが意外だったのかな、驚いたような顔で私を見る。

「いえ、先ほどもソロさんと楽しげに話をされていましたし……」

…………。

「別にソロと話すのが楽しかったわけじゃないわ、いちばん風呂が楽しそうだったの」
「そう、なのですか」
「そう。今は別にソロと話す用事はないし」

620従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 14/26:2017/11/07(火) 17:34:08 ID:o46AGxQI
あれ、今なんの話をしてるの?

「特別話したいわけでもないし……」
「…………」
「だからもう少しここにいるの!」

あれ、なんだろう、なんで私ムキになってるんだろう。

「そうですか」
「そう!」
「わかりました。ではもう少し、ここにいてください」

え?

「…………」
「…………」

今なんて言ったの?
クリフトはお風呂のほうを見てる。さっき笑ったときみたいに穏やかな顔で。
えっと……今、クリフト、ここにいてって……言ったのよね。私に……
え…?

「あ、あのね!」
「?」
「私ちょっとお話ししたい人がいるの。ソロじゃなくてっ」

あれ、なんで私話をそらしちゃってるんだろう。

「ほら、あそこ、おじいさん!」

私はたき火の近くでまきを足しているおじいさんを見た。クリフトも目で追う。

「ひとりだとちょっと話しにくいの。いっしょに来てくれる?」

クリフトはまた驚いたような顔して私を見たけどすぐにさっきの穏やかな顔に戻った。

「はい、姫さま」


「お、大丈夫か?」

おじいさんのところに行こうとお風呂の近くを通ったらソロが声をかけてきた。

「はい、ご心配をおかけしました」

621従者:2017/11/07(火) 17:37:35 ID:o46AGxQI
すみませんちょっといったん席を外します。
また再開します。

622従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 15/26:2017/11/07(火) 18:14:16 ID:o46AGxQI
クリフトは苦笑いしながら頭を下げる。ソロもつられて苦笑い。ん?なんで苦笑い?
ふとソロがクリフトのずっと向こうを見た。苦笑いはなくなってた。

「ピサロ」
「え?」

ソロの視線の先には木かげに腰を下ろしてるピサロとロザリーがいた。

「あいつも呼んでくる」
「え…?」

ソロはおけにお湯をくんでピサロのほうに歩いてった。
ソロ……。

「おいピサロ!」

バシャッ!
ソロがピサロに勢いよくお湯をかける。服や髪がびしょびしょになるピサロ。
驚いてソロとピサロを交互に見るロザリー。

「…………」
「ソロさん……」
「服洗たくするからよ、ぜんぶ脱げよ。血もついてるからな」
「…………」

ピサロは無言でソロを見上げる。濡れた顔を手でぬぐうこともしないで。
ピサロって、敵の攻撃はひょいひょいかわすくせにソロが殴ったときや今はよけないのね。
なんでだろう、なんだかよくわからない。
ソロとピサロがこっちに歩いてきた。ロザリーも後から静かについてくる。
歩きながらピサロはそばに置いてあったおけを手にした。すかさずお湯をくむ。
バシャッ!!

「わっ!」

ピサロがすごい勢いでソロにお湯をかけたの。

「やったな…!」
「……」

ソロとピサロのお湯かけ合戦が始まった。

「ねえ、なにあれ……」
「さあ、なんでしょう……」

623従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 16/26:2017/11/07(火) 18:18:04 ID:o46AGxQI
なんでふたりとも必死なの。

「おいてめえら、遊んでねえでさっさと入りやがれ!」
「わ、わかったよじいちゃん」
「てめえもだ!そっちは女風呂だ、そこの耳のなげえじょうちゃんのためにとっときやがれ」
「む……そうか……」
「え…?わ、私も入っていいのですか?」
「あったりめえだ、みんなで入るように作ったんだからよ」
「まあ……ありがとうございます!」

「入ろうぜ」
「…………」

「ピサロさま……」
「………………」

ソロとピサロが向かい合わせでお風呂に入ってる。なんか、なんかヘンな感じ。
ピサロは髪が乱れないように上で束ねてるからますますヘンなカンジ。

「…………」
「…………」

「……なんだ」
「…………」

「なんでもねえよ」
「…………」


「おじいさんは、ソロの、本当のおじいさんなんですよね……」
「…………」

ソロとピサロのお湯かけ合戦も落ちついてお風呂へのお湯足しも終わってまき足しに戻ったおじいさん、
私は思いきって聞いてみた。

――むかしむかし、北の山奥に天女が舞いおりたそうです――
――そして木こりの若者と恋に落ちふたりの間にはそれはそれはかわいい赤ちゃんがうまれたとか――

――その昔、北の森の中に木こりの親子が住んでおった――
――木こりの息子は森の中で美しい娘と出会って結婚までしたのじゃが……――
――ある日雷にうたれて死んでしまったのじゃ――
――息子は死んでしもうたが親父のほうは今でもひとりで木こりをしておるそうじゃ……――

624従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 17/26:2017/11/07(火) 18:22:05 ID:o46AGxQI
――その昔、地上に落ちて木こりの若者と恋をした娘がおりました――
――しかし天空人と人間は夫婦になれぬのがさだめ――
――木こりの若者は雷にうたれ娘は悲しみにうちひしがれたままこの城に連れ戻されたのでした――
――しかし娘はどんなときでも地上に残してきた子どものことを忘れたことはありません――
――もし今のソロを見ればきっと涙にくれるでしょう――

――ひとつはっきりしたことは、ソロさんのお父上は死んでこの世にはいない、ということですね――

ブランカの言い伝え、天空城での言葉、クリフトの言葉……いろんなことを照らし合わせると見えてくる真実。
このおじいさんは、ひとりで木こりをしているお父さんのほう、つまり、ソロのおじいさま…!

「どうだかな」
「…………」

「北の森の中に木こりの親子が住んでたって。
息子さんは雷にうたれて死んでしまったけど、お父さんのほうは今もひとりで木こりをしてるって。
それ、おじいさん、あなたのことなんですよね…?」
「…………」

「さあな」
「…………」

だめだ、取り合ってもらえない。こっちを見てもくれない。このままじゃはぐらかされちゃう。
でも、でも、きっと合ってるはず。このおじいさんがソロの本当のおじいさまのはずなの。

「ソロには名乗ったのですか?教えてあげたのですか…?」
「………………」

「あいつが今求めてるのは身内でもねえしなあ」
「そんなのわからないじゃないっ」

おじいさんはちょっとびっくりして私を見た。私もまっすぐおじいさんを見た。

「ああ……」

おじいさんはずっと私を見てる。私も目をそらさないでずっとおじいさんを見てた。

「お前か……」
「え?」

おじいさんは手を止めた。私からいったん目をそらして遠くを見る。

「あいつも、お前みたいにまっすぐしゃべるやつだったな」
「え…?」

625従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 18/26:2017/11/07(火) 18:25:39 ID:o46AGxQI
おじいさんは改めて私をゆっくり見た。さっきとちがうとっても優しい目をしてた。
丸太を無造作に置いて私たちに座るよう勧めてくれる。私たちが座ったあとおじいさんも向かいに座った。
何かを言いかけようとしてやめて、また言おうとするけどやめて。
まるで口にするのが惜しいと言わんばかりにためらいながら、けどゆっくり話し始めたの。

――手放したくなくなっちまうからよ――

…………。

「ソロを……あいつを初めて見たとき、いっしゅん息子が帰ってきたのかと思った。
本当にそっくりだったんだ……。
しけた面も、ちょっときついこと言うと大声で泣きだすしぐさも、すぐ逃げだそうとするくせも……
なにもかも……。
ああ、こいつはオレの孫で、村でなんかあったなって、すぐわかった。
煙が上がってたようだったからな、空も紅かったし、まあそういうことだったんだろう」
「…………」
「なんで助けに行かなかったんだって、思うか?」
「ん……」
「…………」

「オレはオレでまあいろいろあったんだ。もうあの村には戻らないつもりでここに家を建てた」

まさか、村がなくなるとは思わなかったがな……おじいさんは小さくつぶやいた。

「もしソロに名乗っちまったら、お前はたったひとりの身内なんだって伝えちまったら……」

おじいさんはそこで一息つく。また惜しそうに遠くを見ながら、けど言葉を続けた。

――また手放したくなくなると思う……――

…………。

「手放したくなくて、意地でも手もとに置こうとして、反抗させて、村に逃げられることになって……」

――そうして息子は失った――

「…………」
「オレなりにちったあ反省して息子と嫁と孫を受け入れる準備はしてたんだ。あの風呂もそのひとつでな」

言いながらおじいさんはお風呂のほうを見た。
お風呂の中で結局取っ組み合いになってるソロとピサロに苦笑いする。

「だから……」
「………………」

626従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 19/26:2017/11/07(火) 18:29:22 ID:o46AGxQI
「ごめんなさい…っ」
「…………」

わたし……いつの間にか目に涙がたまってた。息が詰まる。胸が苦しい……。
クリフトはなんにもしゃべらない。おじいさんもしばらく黙ってた。

「嫁も、お前みたいな気の強い女だった」
「…………」
「オレをまっすぐ見やがって、嫁と認めてもらおうと必死だったな」
「…………」
「息子を生き返らせてもらおうと必死だったって、後から聞いた……」
「…………」

――天女っつったって、オレたちとなんら変わらない……――

人間だったんだ、おじいさんは聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。

「あんただろ?やたらソロに話しかけてくれてたのは」
「え?」

――じいちゃん、こないだ仲間になった女の子がやけに俺に話しかけてくるんだ――
――ほとんどがどうでもいい話だけど――
――へえ――
――さっきもどこ行くのって聞かれた。別にどこだっていいだろうのに、なんなんだろうな――
――そりゃてめえ、てめえのこと心配してるからじゃねえか?――
――心配?――
――おう――
――…………。……俺のこと心配するやつなんかいねえよ――

――俺は、地獄の帝王を倒して世界を平和にする勇者さまだから……――

――そいつがそうだったらどうすんだよ――
――どうって……――
――興味がなきゃ話しかけねえさ。少なくともそいつがてめえのこと気にしてんのは確かだ――
――…………――

――……じいちゃん……――
――あ?――
――俺……――
――…………――
――…………――
――……まあ茶でも飲むか――
――………――

627従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 20/26:2017/11/07(火) 18:34:05 ID:o46AGxQI
――泣かせちまった……――
――…………――
――アリーナ泣かせちまった……――
――……ああ、おまえによく話しかけてた女か――
――……うん……――

――シンシアを泣かせてからもう二度と女は泣かせないって決めてたのに……――

――……で、そいつはなんて言ってた?――
――…………。……一緒に行こうって……――
――へ、やっぱりてめえのこと気にしてるんじゃねえか――
――…………――

「…………」

おじいさんは私をのぞき込むように見る。うーん、なんだろう。

「ソロを見てると息子を思い出して、あんたを見てると嫁を思い出す」
「…………」
「あんたに先約がいなけりゃソロの嫁に欲しかったな」
「え!?」

そういうとおじいさんはクリフトを見るの。びっくりするクリフト。

「いえ、あの、私は、その……」
「?なんだちがうのか?」
「っ……」
「じゃあ、ソロにもチャンスがあるってことか?」
「いや、あの…っ」
「え?なんの話?」

クリフトがすっごくヘンな顔してるの。眉にしわが寄って……
こまる?くやしい?もどかしい?うーん、なんだろう、ほんとにヘンなカオ。

「はっはっはっ」
「〜…っ」
「?」
「それに、あいつももう気づいてるかもしれねえ」

――じいちゃんをじいちゃんって呼んでいいのは俺だけだからなっ――

「少なくとも、あいつにとってオレは特別な存在みたいだ」

それだけでじゅうぶんだよ、おじいさんはソロを見ながら言葉を切った。

628従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 21/26:2017/11/07(火) 18:37:47 ID:o46AGxQI
「それにしても……」

おじいさんはまた私とクリフトを交互に見る。うーん、なんだろう。

「てめえらはまったく……」
「…………」
「???」
「いつどこで誰がどうなるかわからねえ時代だ。
今日笑顔で別れたやつと明日も笑顔で会えるとは限らねえ。だから」
「…………」
「…………」
「思ったことはそんときちゃんと伝えな。後悔しねえうちにな」
「…………」
「…………」

思ったことはそのときに……

「はい」
「…………はい…………」

私に遅れてクリフトが返事した。あんまり元気のない声。
クリフト…?

「じいちゃん」

ソロが頭をふきながらこっちに歩いてきた。

「俺たぶん、あいつを殺したいんじゃないんだと思う」
「あ?」

ソロはいっしゅん私たちのほうを見たけど気にしない様子で言葉を続けた。

「俺さ、あいつを殺したいんじゃなくて、あいつに頭を下げさせたいんだと思う。
罪を認めて、償って、二度と同じこと繰り返さない生き方をさせたいんだと思う」
「…………」

――あいつのこれまでの人生を俺の手でひっくり返してやりたいんだ――

「あいつを殺しちまったらそれまでだ。きっと本当の意味であいつに復讐を果たせない。だから」

――バルザックはもういない。でもお父さんも帰ってこないのね。……当たり前か――
――バル……お父さん……――

629従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 22/26:2017/11/07(火) 18:41:26 ID:o46AGxQI
「あいつはまだ殺さない」
「……そうか」

「やりてえことが見つかったじゃねえか」
「……うん」

ソロ……。


「みんな、寄り道させて悪かったな」

お風呂も終わってご飯もすませて、一息ついたところでソロが声をかけた。

「いーえ、さっぱりしたしー」
「楽しかったわ、ソロさん」

マーニャとミネアもすっきりした顔してる。私もいい気分転換になったわ。
いちばん風呂、とっても広々してて手足いっぱいに伸ばしてもゆったり入れたの。
空を見ながら入るお風呂なんて最高!
あったかくてお湯もたっぷりで、ずっと入ってたいくらいだったわ。

「なんだ、もう行くのか?」

荷物をまとめようとするソロにおじいさんが声をかけた。

「ん、うん」
「…………」

「ふん!てめえらみたいなガキどもはこのままひと晩泊まっていきやがれ!」
「え?」

「こんな人数だけど泊ってっていいのか!?」
「毛皮ぶとんでよけりゃあな!」
「やったあ!」
「?」

「毛皮ぶとんってどんなの?」

ソロがまたにやっとするの。

「羽根ぶとんとはまた違うぜ?寝てみるか?」
「うん!」
「ひ、姫さま…!」

630従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 23/26:2017/11/07(火) 18:47:13 ID:o46AGxQI
「えー?なにこれ、みんな毛皮ぶとんなのー?高級じゃーん!」
「先ほどの大きなタルといいおじいさんて手先が器用なのですね」

ベッドがひとつにあったかそうな毛皮ぶとんがみっつ。けっこう広めだからひとつにふたりで寝られそう。
おじいさんは自分が食べる分しか動物を狩らないから毛皮ぶとんはとっても時間をかけて作ったんですって。
場所によって毛並みが違うからなんまいもぬい合わせて……
これはきっと、おじいさんの息子さんとお嫁さんとソロの分だったんだ……そう思ったらまた目が熱くなった。

「あまり大人数で押しかけてもなんです、私は馬車で休むとしましょう」
「あ、私もそうします。どうぞ皆さんごゆっくり」
「ふむ……。あまりクリフトのアホーめに姫さまを任せたくはないが、この人数ならまあよいでしょう」

ライアンとトルネコ、ブライはおじいさんにごあいさつして馬車へ戻ってった。
気を利かせてくれたのね。じいはクリフトにも何か小声で話してた。ふたりともまじめな顔。なんだろう。
半端に残ってる毛皮があったみたいでおじいさんが防寒に使いやがれってみんなに渡してた。すごいなあ。
私は毛皮ぶとんで寝てみたいから泊めてもらうようお願いした。
ピサロとロザリーはまたどこかに行っちゃったからあとはソロとクリフトとマーニャとミネアのよにん、
みんなでかたまって寝ればいいわよね。
おじいさんはベッドにお願いしてソロとクリフトで毛皮ぶとんひとつ、私たちさんにんで毛皮ぶとんをふたつ使わせてもらった。
さんにんで並んで寝るなんてそんなにないから嬉しい。
私たちはおやすみのあいさつをしても明かりを消しても小声でずーっとおしゃべりしてた。
羽織りをいっせいに放り投げたときの話がいちばん盛り上がった。
最初はあんまり乗り気じゃなかったミネアがけっこうノリノリで飛ばしてたのよね!
そしたらおじいさんにさっさと寝ろって怒られちゃった。あ、日課の腕立てふせが……うーん、ムリか。

「おやすみ、マーニャ、ミネア」
「おやすみー」
「おやすみなさい」


「てめえら、いつまで寝てんだ!」

朝、おじいさんにたたき起こされる。
私よっぽど疲れてたのかしら、毛皮ぶとんが気持ちよかったのかな、起きたときには日が高くのぼってた。

「あーよく寝た!」

おじいさんの家で朝ごはんをとらせてもらう。ちょうど動物を狩ってきたってお肉料理を用意してくれた。
馬車のやつらにも持ってけって持たせてくれる。
おじいさんて……マーニャが正に私が思ったこと、おじいさんてけっこうやさしい人じゃないのって代わりに言ってくれた。
クチは悪いけどって茶化しながら。おじいさんはいっしゅん手が止まる。

「やめてくんな!けつがかゆくならあ!」
「えー?」

631従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 24/26:2017/11/07(火) 18:50:53 ID:o46AGxQI
「おしりがかゆくなるなんて変なおじいさん」
「照れているのですよ」
「え?そうなの?」

なんで照れるとおしりがかゆくなるんだろう。よくわからない。

「私が照れるとおしりではなく頭のほうがかゆくなってきますけどね」

クリフトもよくわからない。
クリフト、昨日は元気なさそうに見えたけど、だいじょうぶだったのかな。
今はなんともないみたい。相変わらずすぐそこに座ってる犬を気にしてる。
うん、だいじょうぶかな、クリフト。

「あーあ、赤くなっちゃって。おじいさんて照れ屋さんなのね」
「うるせえ!」
「ちょっと姉さん……。
でも、照れるとおしりがかゆくなるなんて、ずいぶんと変わった体質の持ち主ですね」
「てめえもだまってやがれ!」

赤くなったおじいさんにマーニャがにやにやしてる、ほんとに照れてるのね。
どうしてみんなわかったんだろう。私さっぱりわからなかったわ。

私たちはおじいさんになんどもお礼を言った。
おじいさんはまた照れたのかな、さっさと出てゆきやがれってまた怒られちゃった。
ソロがおうって元気よく返事する。これがふたりのあいさつなのね。
また来たいな。ソロのおじいさま、いちばん風呂にやわらかな毛皮ぶとん!
修行のために山にこもってこんな小屋で過ごすってのも悪くないわ。
あ、修行といえば……

馬車に戻って出かけるしたくを整えたあと私は腕立てふせを始めた。
きのうはすぐに寝かしつけられたから日課の腕立てふせができなかったんだわ!
日課をこなしながらソロに声をかける。

「ねえソロ!」
「あ?」
「ソロはおじいさんのことが好きなのね!」
「…………」

「……まあ、俺の親代わりみたいな人だからな」
「そうなのね」

私は腕立てふせを急いですませてソロのそばに寄った。

632従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 25/26:2017/11/07(火) 18:54:42 ID:o46AGxQI
「村をなくして独りになって、最初に着いたのがこの家、最初はじいちゃんに追い出されたんだ」
「え…?」
「けど俺が、まあ、出ていこうとしたら引き止めてくれてさ、昨日みたいにひと晩泊まってけって、結局何日も泊らせてくれたんだ。
こづかいもくれたし防具もくれた。飯も食わせてくれた。だから俺も木こりの手伝いした。どんだけここにいたんかなあ」

そう言うとソロは少しだけ笑った。きっとそのときのことを思い出してるのね。
懐かしそうな顔してる。

――おい、あんまりひっつくなよ――
――…………――
――まったくてめえは……――
――…………――
――おい、寒いのか?震えてんじゃねえか――
――…………――
――だいじょうぶか?――
――……うん……――
――もっとしっかりくるまりやがれ。風邪ひいたらつれえぞ?ふとんいちまい足しとくか――
――…………――

――なんか……父さんみたいだ……――
――てめえみたいなしけたやろうを息子に持った覚えはねえわ――
――へへ、父さんみたいだ……――
――…………――
――父さん…っ――
――だいいち歳が離れすぎてるだろう。オレのことはせめてじいさん……じいちゃんって呼べ――
――じいちゃん……うん、じいちゃん……っ――
――…………――

――じいちゃん……いてえ……いてえよお……――
――てめえ!なにやってんだ!――
――いてええ…!――
――キリキリバッタか、また派手に喰われやがって…!さっさと横になりやがれ!――
――うん…っ――

――いてえ……いてえよ……じいちゃああん……――
――あせるんじゃねえ、だいじょうぶだ。ゆっくりちゃんと息しやがれ――
――うん……はあ……ふう……――
――目は開けたままにすんな。よけい疲れるぞ。ちゃんとまばたきしやがれ――
――うん……――
――ちょっとくれえ閉じたって死にゃあしねえからな――
――うん…っ――

633従者の心主知らず やりたいこと【暴力・流血・残酷注意】 26/26:2017/11/07(火) 18:58:19 ID:o46AGxQI
――いてえ……――
――だいじょうぶだ、だいぶ血は止まったからな――
――俺、死ぬのかな……――
――バカやろう、ちょっとはらわた喰われたくれえで死ぬわけねえだろう――
――そっか……よかった……――
――まったく……――
――じゃあ、なんでこんなにいてえのかな……――
――そりゃてめえ、生きてるからに決まってんだろ。いてえっていってるうちはだいじょうぶだ――
――……どうしよう、そんなこといったらあんまりいたくなくなってきた……――
――バカやろう、いてえことにしとけ――
――うん……いてえよお――

――おう、あんまり無理すんな――
――腹の傷は治るのに時間がかかるし後にも響くから厄介なんだ。ここでちゃんと治していけ――
――……うん……――

――いいか、ソロ――
――どうしても相手を殺さなきゃならねえときは首か腹を狙え。そこが急所だ――
――腕や足を斬りおとしたところで相手は死にゃあしねえ、長く苦しませるだけだからな……――
――逆に相手もそこを狙ってくる。どこ失ったって急所だけはぜったいにとられるんじゃねえぞ――
――うん――

「実戦はぜんぜん違った。俺が村で習ってたことは本当に基礎で、じいちゃんに教わったことも多かった。
じいちゃんには敵わねえよ」

ソロが笑いながら話してる。なんだかすっきりした顔。ふっ切れたのかな。
きっと迷いが晴れたのね。やりたいこと、本当に見つかったんだ。見つけられたんだ。
それはきっとおじいさんのおかげ……
私もお城のみんながいなくなったときクリフトがそばにいてくれた。クリフトがぎゅってしてくれた。
だから今まで元気にやってこれた。
ソロにとってはここの木こりのおじいさんがそうだったのね。私はふとクリフトを見る。

「……?姫さま?」
「ううん、なんでもない。見てただけ」
「そ、そうですか」

クリフトがいてくれてほんとうによかったって思う。なんだかくやしいな。ひとりでなんでもできるはずだったのに。
でも、私も……
私のやりたいこと。

――思ったことはそんときちゃんと伝えな。後悔しねえうちにな――

ソロはピサロとの戦いに一区切りをつけた。だから次は、私の番。
あまりにいろんなことが起こりすぎて頭の中がぐちゃぐちゃだったけど、私もやっと決意が固まった。

634従者:2017/11/07(火) 19:02:40 ID:o46AGxQI
何かと謎の多い山奥の村ときこりの家ですが、山奥の村では宿屋の主人が「昔の習慣」と言いつつ部屋の掃除をしていたことから
かつてあの村は宿屋が稼働できるくらいには人の行き来があり木こりの親子も最初はそこで暮らしていたとしました。
それがソロが地獄の帝王を倒して世界を平和にする勇者と予言されてからは理解者のみを残して人を寄せつけなくなり
ソロが物心つくころには村の存在自体語られなくなったとしました。
(宿屋の主人は理解して村に残ったので別に宿屋が稼働しなくても生きていけるのですが何かと昔の習慣が忘れられなかったということで)
ブランカでは木こりの親子の存在は知られているも天女の存在はおとぎ話にされていたことから
村の存在を語られなくするために木こりのおじいさん(というかおじいさん世代の人たち)も一役買っていたのではと考え至りました。
また6章後にでもクリアリに絡めてこのあたりを書けたらと思います。ソロでクリアリ第二弾、どうぞ気長に待っていてください。

ありがとうございました。

635名無しさん:2017/11/11(土) 00:38:52 ID:c2bhkkMI
あら、これはこれは乙です。
長らくお見かけしませんでしたがお変わりなさそうで何よりです。
お越しになる頻度は人それぞれ。ご無理は禁物。
便りがないのは無事の知らせと前向きにとらえております。
wikiの管理人さんもきっとご無事なのでしょう。

作品を書く方も乙。他人投下のきっかけを作る方も乙。
今日の読み手も明日の書き手候補。
皆さん乙です。

636従者:2017/11/15(水) 17:27:10 ID:2e7LBrXc
乙ありがとうございます。お心遣い痛み入ります……。
以下の投下で6章は最後のエビルプリースト戦を残すのみですのでこれでやっと2章に戻ります。

PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、6章「失踪の行方」25レス分一気にいきます。
ほぼオリジナル展開ですご覧の際にはお気をつけください。クリアリパートは1/25〜14/25くらいです。
前回も今回もクリアリ以外の部分がとてもデリケートな問題で恐縮です。
2chではまず投下できなかった範囲と存じます。このスレの寛大さに心より感謝いたします……

637従者の心主知らず 失踪の行方 1/25:2017/11/15(水) 17:30:54 ID:2e7LBrXc
――お父さまたちを返してもらう――

「ピサロ」
「…………」
「話があるの」

食堂で夕食をすませたあと私はまだいすにかけていたピサロの前に立った。
ロザリーが驚いて私と後ろのクリフト、ブライを見る。ピサロは目だけこっちに向けた。

「私はアリーナ、サントハイム王の娘よ」
「……」

「そのようだな。エンドールの武術大会で知った」
「そう……」

「なら話は早いわ」

私はピサロをにらむ。

「お父さまたちをどこにさらったの」
「……」
「返して」
「…………」
「アリーナさん……」

ピサロは目線を戻して小さく息をついた。

「わたしではない」

…………。

「報を受けサントハイムに向かったときにはすでに廃墟になっていたのだ」
「なんじゃと…?」

なに言ってんのこいつ……。

「うそおっしゃい!」
「うそをついて何の得があるのか」
「だって、あんたがいなくたったとたんに魔物たちもいなくなったって聞いたわ。
あんたが魔物たちを連れてお父さまたちをさらったんでしょう!?」
「逆だ。魔物たちが身を潜めたから大会を放棄して現場に向かったのだ」

…………。

638従者の心主知らず 失踪の行方 2/25:2017/11/15(水) 17:34:31 ID:2e7LBrXc
「だって、だってお城を乗っ取ったじゃない!」
「ああ……。空き巣だったからな」
「そんな言い方…!」
「姫さま……」
「ピサロさま……」
「あんたじゃないっていうなら誰だっていうのよ。誰がみんなをさらったっていうの!?」
「教えてやる義理もない。どのみち、今となってはもうどうでもいいことだ」
「なんですって…!!」
「ピサロさま…!」
「返してよ…!!お城のみんなを返してよっっ!!」
「…………」

ピサロが笑った。笑ったの。こいつ…っ!!

「そうだ、そうでなくてはな……。
己がため、己が身内のためには手段を選ばない。やはり人間とはそういう生き物なのだ。
安心したぞ……」
「ピサロさま…っ」

寒くないのに寒気がした。鳥肌が立つ。息がつまって……背筋がぞくっとした。
なにこれ……。
気づいたらクリフトとブライが私の前にいて構えてた。とっさに私も身構える。

「何やってんだよ」
「ソロ……」
「ソロさん」
「…………」

「別段何もしておらん。もう寝ようと思っていたところだ」

寒気がいっしゅんで消えた気がした。ぞくぞくも消えてる。
いつもの食堂に戻ってた。
もしかして、さっきのはピサロのちから…?そしてこれは、ソロのちから……?
ピサロはソロが苦手なんだってことがなんとなくわかった。

「待ちなさいよ、まだ話は終わってないわ」
「お前に話すことはもう何もない」
「待ちなさいよ!!」

ピサロは返事もしないで食堂から出ていった。

「ピサロさま、お待ちくださいピサロさま!」

ロザリーが後を追って出ていく。振り向きざまに泣きそうな顔で私に頭を下げながら。

639従者の心主知らず 失踪の行方 3/25:2017/11/15(水) 17:38:07 ID:2e7LBrXc
「アリーナ、大丈夫か?」
「うああぁぁぁああああ…っ!!」
「アリーナ!?」
「姫さま…!」
「姫さま…っ」
「なんで、なんでえ…っ!?ピサロじゃないのお…っっ!?」


「姫さま……」
「…………」

私たちは部屋に戻った。私がお願いしてクリフトといっしょの部屋にしてもらったの。
ソロは何か言いたそうだったけど黙って見送ってくれた。じいも何も言わずにふたりにさせてくれた。

ここはサランの宿屋。私もピサロと決着をつけたい、ソロにそうお願いしたらわかってくれて。
故郷でつけるかって聞いてくれたんだけど、私は今のあのお城にはあんまり行きたくなくて……
でも勇気をわけてほしかったからとなりのサランに連れてってもらったの。
お前も来いよってソロが言ってくれて、ピサロとロザリーは何も言わずについてきた。
お昼をすませて教会に行って、神父さまにごあいさつしてお祈りしてご加護をもらって……

――これで決着がつくはずだったの…!――

部屋に戻ってからクリフトがなんどか声をかけてくれてたけど今は返事をする元気がなかった。
クリフトが私のこと見てるのわかったけど私は見なかった。
見られなかった。頭の中がぐちゃぐちゃでもやもや、なんだかぼんやりしてしまってるの。

「姫さま」
「…………」

クリフトはずっと私を見てる。

「あの口ぶりですと、ピサロさんは確実に何かを知っています。もう一度、話してみる価値はあると思います」

クリフトが話し始めた。やけにゆっくりで静かな声。

「それに……お詫びをしなければならないことがありますし」

え…?

「あんなやつに何を詫びるっていうの?」

私は思わず顔を上げてしまった。クリフトを見る。

「…………」

640従者の心主知らず 失踪の行方 4/25:2017/11/15(水) 17:41:44 ID:2e7LBrXc
クリフトも私がいきなり返事したからびっくりしたのかな、しばらく私を見てたけどまたゆっくり話し始めた。

「私たちは、デスピサロという名前だけを頼りに、漠然としたまま旅を続けてきました。
それがいつしか、サントハイムの皆さんをさらったのはデスピサロなのだと思い込むようになっていたのです」

――そうしなければ旅を続けられなかったから……――

「ですが、今日ピサロさんの話を聞いて、私がただそう思っていたかっただけなのだとわかりました」
「…………」
「サントハイムの皆さんをさらったのはピサロさんではなかったのです。その事実は、受け入れなければなりません。
今まで疑ってしまっていたことを……詫びたいのです」

…………。

「あいつは私たちにさんざんひどいことをしてきたのよ!?」
「姫さま……それとこれとは、話が別なのです。少し、難しい話なのかもしれません。
ですが、どうか、聞いてください……」
「…………」

「サントハイムを占拠したこと、ソロさんの村を滅ぼしたこと、人間を滅ぼそうとしたこと、これまで奪ってきた多くの命、
それらすべては決して許されることではありませんし、私も片ときとて忘れたことはありません」
「…………」
「ですが、だからといって、してもいないことをしたと疑っていい道理はないのです」
「きっとうそついてるのよ!」
「ええ、もしかしたらうそかもしれません。ですが、それを決められるのは私たちではありません。
彼がうそではないと言っている以上、私たちがそれを疑っていい理由はないのです。
誰がサントハイムの皆さんをさらったのか、それを教えていただくためには、まずピサロさんだと疑ってしまっていたことを詫びる、
それは人として、当然の礼儀ではありませんか…?」

……………………。

「わかんない…っわかんないよっ!私はクリフトみたく大人になんかなれないもんっ!」
「姫さま……」

クリフトは忘れてしまったんだ、今までのこと……
ロザリーを生き返らせてあいつに会いに行ったとき、あいつは私たちにお礼を言った。私たちと戦うことをやめた。
アンドレアルが飛んできたときも戦わないよう指示してくれた。あのとき、すこしでもいいやつなのかと思った。
これでよかったのかしらって、ほんとうにそう思った。
けど、ソロに向けたひどい言葉。
ロザリーはあんなに謝ってくれてたのに、あんなに泣いてくれてたのに、あいつはなんにもしなかった。
さっきだって、空き巣とかどうでもいいとか、ぜんぜん悪いことしたと思ってない。私たちの気持ちなんかなにひとつ考えてくれてない!
あんなやつに謝ることなんかひとつもない!!あんなやつ……!!

「姫さま……」

641従者の心主知らず 失踪の行方 5/25:2017/11/15(水) 17:45:29 ID:2e7LBrXc
クリフトは寂しそうな顔してた。

「……必ず、情報を得てまいります……」
「…………」
「必ず、取り戻しますから……」

――サントハイムの平和は、姫さまの笑顔は、このクリフトが必ず取り戻してみせますから……――

クリフト……?
クリフトはとても真剣な顔してた。

「ですから、少しだけこちらで待っていてください」
「…………」

クリフトはそういって上着を羽織った。出かけるしたくをする。
クリフト……

「…………」

クリフトはなんでピサロに謝るの?謝りたいの?あんなやつ……
先に謝るべきなのはあいつのほうなのに、なんで……

「…………」
「…………」

お父さまたちのためなの……?私のために、ピサロに謝ってくるの……?
そうなの?クリフト……

「…………」

いつもの優しいクリフトなの……?いつものお説教クリフトなの……?

――忘れてしまったわけじゃないの……?――

「姫さま、ではすぐ戻ってまいります」

クリフトは一礼してお部屋から出ていった。何の迷いも戸惑いもなくさっそうと出ていった。
お部屋がいっしゅんしんとなる。

「…………」

クリフト……

「……………………」

642従者の心主知らず 失踪の行方 6/25:2017/11/15(水) 17:49:05 ID:2e7LBrXc
クリフトぉ…………

「やだ、まって……クリフトまってよっ」

私は勢いよく扉を開けて廊下へ出た。
私の声が聞こえたのかな、すぐ向こうでクリフトが振り返ってるのが見えた。

「姫さま…?」

私はクリフトのもとまで駆けていく。急いでそでをぎゅってつかんだ。

「姫さま?」
「私が行く」

え…?

「私が謝る……」
「姫さま……」

わたし、なに言ってるんだろう。

「私が謝って、私が聞いてくる……」
「…………」
「ちゃんと、自分のちからで聞いてくる……」
「………………」

「ご一緒いたします」
「…………ん…………」

思わず口をついて出てしまった言葉。自分でもびっくりした。
でも、だいじょうぶ。クリフトが行くのなら、私が行く。私はひとりでだってなんでもできるはずなの。だから、
たった今そう決めた。


「ソロ…ッ!!」

ピサロとロザリーのお部屋の前に行ったらピサロの声が聞こえた。
なんだかイライラしてるみたい。

「なぜだ!なぜだ…っ!!」
「ピサロさま…っ」
「人間とは欲深い生きものだ。愚かな種族のはずなのだっ!」
「ピサロさま、そんなことはありません」
「なぜお前はいつも……お前はこれまでどれだけの人間に狙われ続けてきたと思っているのだっ!!」

643従者の心主知らず 失踪の行方 7/25:2017/11/15(水) 17:53:02 ID:2e7LBrXc
っ…。
胸がずきってした。
そう、ピサロはロザリーを人間の手から守ってきてくれてたんだ……。
それはきっと、ほんとうのこと……。

「お前の必死の呼びかけに応じ、いく度も人間を見逃しては改心を試みさせた。
だが、結果人間たちのとった策は何だった?」
「…………」

……聞きたくない。そんな話聞きたくない。

「お前はどんな人間たちにも寛大だったが、人間たちはたった一人のお前に寛大だったか?
われわれ魔族に、寛大だったか…?」
「…………」

ロザリー……。

「でも……でも……それでもわたしは、誰かを憎んで生きていきたくはないのです……」

――みんなが笑って過ごせる日が、いつか必ず来ると信じてる――

ロザリー…っ

「それに、すべての命は尊ばれるべきだと、わたしに教えてくださったのはピサロさまではありませんかっ」

え?

「………………」

ガタッ。

「…っ」

え。

「んっ…」
「っ…」
「あぅっ…」

え?え…?何してるの?何かにぶつかった音……声を出したいけど出せないみたいな声……
背筋がぞわってした。もしかして、もしかして首とか絞めてるんじゃ…?
思わずクリフトのほうを見る。クリフトも少し焦ったような顔してこっちを見る。どうしよう…!

「ロザリー!!」

644従者の心主知らず 失踪の行方 8/25:2017/11/15(水) 17:56:36 ID:2e7LBrXc
私はいても立ってもいられなくなって扉を勢いよく開けた。

「あ…」
「アリーナさん…っ」

ピサロはロザリーを抱きしめてた。ロザリーを見てたけど、にらみつけるような目でこっちを見た。
ロザリーは顔を真っ赤にして目をそらした。

「何の用だ……」

ピサロはロザリーを離した。
ロザリーは顔を真っ赤にしたまま両手で口もとを隠して後ずさりした。

えっと……今……いっしゅんしか見えなかったけど……えっと……キス、してたのよね……。

「えっと……謝ろうと思って……」
「謝る?」
「疑ったから」
「…………」
「お城のみんなをさらったのはあなたじゃないって言ってたのに、疑ったから……」
「…………意味がわからん」

ピサロがこっちに歩いてきた。私を見下ろしことさらににらみつける。

「オレがきさまらに何をした?
確かにかの人間どもを転移させたのはオレではない。だがあの城を占拠させたのはオレだ。
きさまら愚かな人間どもを滅ぼそうとしているのもオレだ。きさまらにとって敵であることに変わりはない。
何を詫びることがある?頭がいかれたのか!?」
「っ…!!」

ピサロがイライラしてるのが伝わってきた。口調も荒い。
いっしょうけんめい我慢しないと私も頭が沸とうしそう。

「それとこれとは、話が別だから…っ」

わたしはいっしょうけんめい言葉で返した。

「お城を乗っ取ったのは許さない。ソロの村のみんなを殺したのだって、人間を滅ぼそうとしたのだって許さない!
ぜったい許さないっ!!
でも………っ…でも……だからって、みんなをさらってないって言ってるのにさらったって疑うのは悪いことだから…っ」

わたしはクリフトに言われたそのまんまの言葉をならべた。
自分でもなにを言ってるのかわからない。とにかくクリフトに言われたまんましゃべった。

645従者の心主知らず 失踪の行方 9/25:2017/11/15(水) 18:00:11 ID:2e7LBrXc
「アリーナさん……」
「だから…っ」
「………………」
「ごめんなさい…っっ」

ふるえる手をぎゅってして、わたしはいっしょうけんめい頭を下げた。

ガタッ!
いすが揺れた。ピサロがぶつかったみたい。でも私は顔を上げられなかった。
くるしい。もういやだ。いちびょうもここにいたくない…!

「じゃあ、おやすみ……」
「まて……まて……」

パタン……。


「姫さま……。よくがんばりましたね……」
「ん……」

けっきょく聞けなかった。だれがお城のみんなをさらったのか、聞けなかった……。
でも……

「もうあんなやつと話したくない……」
「……はい」

「姫さまは一番言いにくいことを誰よりも先に言ってくださいました。誰よりもがんばってくださいました。
後のことは、どうかこのクリフトにお任せください」

クリフトがそっと私の髪をなでてくれた。心地いい……。
なんだろう、いつもはこんなことしないのに。
私はクリフトを見た。クリフトも私を見てた。とっても優しい顔。優しい目。笑ってる……
クリフト……

――やっぱりいつものクリフトだ――

「ねえクリフト、いっしょに寝よ…?」
「えっ?……いえ、その、それは……」
「お願い、いっしょに寝て……」
「姫さま……」
「おねかい……」
「…………」
「おねがい、そばにいて…………」
「………………」

646従者の心主知らず 失踪の行方 10/25:2017/11/15(水) 18:04:04 ID:2e7LBrXc
「…………はい…………」


「姫さま…っ」
「……」
「あ、あの…っっ」

お風呂をすませ、着替えてお祈りしてベッドに入った私たち、私はクリフトの上に乗りかかった。
なんだか寒いの。からだがふるえてて眠れないの。ひっついてるとあったかいから……

「クリフトあったかい……」
「姫さま……」
「おねがい、このままでいて……」
「……は、はい……」
「…………」
「…………」
「…………」
「………………」

クリフトがわたしの腰にそっと手を回してくれた。
最初はさわったりはなしたりまるでおそるおそるさわるみたいな感じだったけど、だんだんしっかりふれてくれる。
あったかい……。

「…………」

どれくらい時間がたったのかな、ふとクリフトが手をほどいて動いたのがわかった。

「え?クリフトどうしたの?どこかに行くの?」
「…………」
「お手洗い?」
「いえ、ちょっと外に……。大丈夫です姫さま、すぐ戻りますから」
「やだクリフトどこにも行かないで。クリフトが外に行くならわたしも行く」
「姫さま……」
「わたしをひとりにしないで……」
「……………………」

「はい、姫さま」

クリフトはまたからだを戻して私の腰に手を戻した。どこにも行かないみたい。
ちょっと気を抜くと私より早く起きたりどこかに行ったりしてしまうクリフト、私は思いっきりぎゅってした。

「姫さま……」
「…………」
「………………」

647従者の心主知らず 失踪の行方 11/25:2017/11/15(水) 18:08:03 ID:2e7LBrXc
クリフトも私を優しくぎゅって返してくれた。
もう片ほうの手も伸ばして私の背中に回してくれる、私はほとんどクリフトの上に乗っかる感じになった。
私、重たくないかな、だいじょうぶかな……。

「…………」
「…………」

だいじょうぶかな……クリフト、もうどこにも行かないかな……。
だいじょうぶかな……。

「…………」
「…………」

だいじょうぶ、かな……。
わたし、またちょっと気が抜けたみたい。でもクリフトはずっと私をぎゅってしてくれた。
クリフトほんとにあったかい……。

「…………」
「…………」

――…っ――

…………。

――んっ…――
――っ…――
――あぅっ…――

「…………」
「…………」

あのとき……

「…………」
「…………」

キス、してた……。
なんで今になってあの光景だけ思い出すんだろう。ピサロはロザリーを見つめてた。
ロザリーは顔が真っ赤だった。

「ねえクリフトー……」
「……はい、姫さま」
「キスって、そんなに気持ちいいのかな……」
「っ…姫さま…!?」

648従者の心主知らず 失踪の行方 12/25:2017/11/15(水) 18:11:35 ID:2e7LBrXc
「ロザリーはね、アドンともキスしたことあるんだって」
「…………」
「アドンがずっと泣いてて震えててつらそうで、ぎゅってしてもぜんぜんおさまらなくて……
気づいたら自分からしてたんだって。
アドンね、キスしたらすっごく気持ちよさそうにしてたんだって。緊張がとけて、泣いてたのも震えてたのもおさまったんだって。
スライムがキスすると健康にもいいんだよって言ってたんだって」
「姫さま……」
「クリフトにお薬飲ませたときはよくわかんなかった」
「………………」

「ねえクリフト……」
「…………」
「キスしよ…?」
「姫さま……」

「魔族やエルフの文化は私にはわかりません。
ですが、神に仕える者にとって口づけとは誓いを示すものです。将来を誓い合う者たちだけの神聖な儀式……」
「クリフトー……」
「……はい」
「難しいことよくわかんない」
「姫さ…んぅっ」

私はクリフトにキスした。クリフトが逃げないよう首に腕を回して。

「ん…」
「っ…っ」

クリフトのくちびる、やわらかい。あったかい。クリフトの匂いがする。今クリフトとすっごく近いんだ。
あ、ちょっと待って。やだもう、よだれたれちゃう。恥ずかしいなあ。
私は自分のよだれといっしょにクリフトのだえきも吸った。なんかヘンな味。
クリフトは最初されるがままになってたけど私といっしょでよだれがたれそうになったのね、私のだえきを吸ってきた。
私のなんておいしくないのに。キスってやっぱり抵抗あるなあ。
最初は気づかなかったけどちゅ、とかちゅぱ、とかヘンな音が聞こえてきたから私はなんとなく口を離した。

「ん……やっぱりよくわかんない……」
「ひめ…さま…」

クリフトは私を横によけてそのまま私の肩に顔をうずめた。

「クリフト?」
「どうか、このままで…っ」
「ん……」

649従者の心主知らず 失踪の行方 13/25:2017/11/15(水) 18:15:05 ID:2e7LBrXc
なんだろう、クリフトは顔をうずめたままだまっちゃった。
少しだけ息が乱れてるみたい、なんでだろう。
さっきのキス、息が苦しくなるほど長くはなかったと思うけど。

「…………」
「………………」

――思ったことはそんときちゃんと伝えな。後悔しねえうちにな――

またひとつ、思い出した。
あのとき、クリフトは元気ないように見えた。
次の日にはいつもの調子に戻ってたからあんまり気にしなかったけど、あのときクリフトは何を思ってたのかな。

「ねえクリフトー」
「…………」

クリフトは顔をうずめたまま返事しない。ずっとだまったまんま。うーん、ほんとになんだろう。
私は構わずあのときのことを聞いてみた。クリフトもきっと思うこといっぱいあると思うの。

「あのときクリフトは、何を思ってたの…?」
「…………」
「私には、言えないこと…?」
「………………」
「…………」
「……………………」

やっぱりクリフトは答えない。顔をうずめたまま。やっぱり言えないことなのかな……。
少ししてクリフトはゆっくり顔を上げた。今度は私を倒して上に乗っかるような体勢になる。さっきとはんたい。
クリフトが私を見てるのがわかった。でも暗くてどんな顔してるのかはわからない。

「姫さま……」
「ん…?」
「……………………」
「?クリフト?」

クリフトがゆっくり私に顔を近づけてきた。え?
え、もしかして……え、もういちど?え?え?えええ??

「ん…っ」
「っ…」

私たちはもういちどキスした。クリフトから来るとは思わなかったわ。
神に仕える身とか言ってたくせに。私にはよくわからないけどやっぱりキスって気持ちいいのかな。
クリフト、今、気持ちいいのかな。だからもういちどキスしてきたのかな。

650従者の心主知らず 失踪の行方 14/25:2017/11/15(水) 18:18:35 ID:2e7LBrXc
「……」
「……」

うーん、やっぱりキスってよくわかんないや。

クリフトはキスが終わったあとまた私の肩に顔をうずめた。
途中から私をぎゅってしてきて。私もぎゅって返したらちょっとびくってしたけどまたぎゅって返してきて。
ちょっとからだが震えてたからおふとんをかけ直してもっとぎゅってしたら少し落ち着いたみたいで。
そのまま寝ちゃったの。
うーん、なんだったんだろう。変なクリフトだったわ。
私はそっとクリフトの頭をなでた。動かない、よく眠ってるみたい。
きっと朝になればまたいつものクリフトに戻ってるわ。優しくてまじめで堅苦しいお説教クリフトに。
私はもういちどクリフトの頭を優しくなでた。私もゆったり目を閉じる。

「おやすみ、クリフト」


「娘」

食堂で朝ごはんを食べてたらピサロが寄ってきた。娘って私のことかしら。

「おはようございます、ピサロさん」
「……おはよ……」

私はちらっとピサロを見てすぐ視線を戻した。できるならもう話したくないから。

「…………」

ピサロはしばらく無言で突っ立ってたけどそのままあっちに行っちゃった。

「なんなのあいつ」
「…………」

「ピサロさん、夕べはあまり寝ていないかもしれませんね」
「え?」
「目が少しくすんでいましたから」
「…………」

そんなの知らない。

「娘」

朝ごはんを食べ終わったころあいつがまた来た。ほんとになんなの。

651従者の心主知らず 失踪の行方 15/25:2017/11/15(水) 18:22:06 ID:2e7LBrXc
「昨日の話だが」
「…………」
「サントハイムの人間どもを転移させたのは帝王エスタークだ」
「え…?」
「伝えたからな」
「え、待って。エスタークって、あいつでしょ?あの、地獄……そう、アッテムトの洞くつの奥にいた……」
「……そうだが」
「だって、倒したのに……。やっつけたのにどうしてみんなは戻ってこないの?」
「…………」

「術師を屠れば過去に施した転移魔術が反転するなどどんな理屈だ……」
「だって……だって……」
「姫さま……」

「なぜ、エスタークだとわかったのです?」
「……サントハイム城を占拠した目的の一つは時空転移魔術の軌跡を辿るためだった。
ただでさえ高位複合魔術だ、エスタークである可能性は高かった。魔素も強かったからな」
「あのまがまがしい気配ですね……」

「あの気配……。そうか……私としたことが……」

クリフトが手で顔を隠した。

「だが、そのエスターク帝王は予言のとおり討ち滅ぼされた……」
「…………」
「だから言っただろう。今となってはどうでもいいことだとな」
「そんな……」

確かに伝えたからな、ピサロはそう言って食堂から出ていった。

「もういちど、エスタークのとこに行ってみる……。もしかしたら何か手がかりになるものがあるかもしれないし」
「姫さま……」

「ご一緒いたします」


「え?」
「どうしても行きたいところがあって……」
「どこだよ」
「……すぐすむから。後ですぐ追いかけるから」
「…………」

「答えになってねえよ。俺たち今までずっと一緒だったろ?今度だって一緒だろ?」
「……でも、もしかしたら無駄足になるかもしれないし、みんなにも迷惑……」
「あのな、アリーナ」

652従者の心主知らず 失踪の行方 16/25:2017/11/15(水) 18:25:40 ID:2e7LBrXc
ソロは私をまっすぐ見てしゃべった。

「行きたいところに無駄なところなんて一つもねえよ。言えよ。どこでも連れてってやるから」
「…………」

私は口ごもった。なんていえばいいの?なんていえば、ソロを傷つけずに伝えることができるの?
ピサロと決着をつけたいって頼んだときはソロとおんなじ気持ちでいたから堂々と頼めたの。
でも、今回は……まだ希望があることに対しては……なんていえば……

「エスタークだったんです」
「クリフト……」
「サントハイムの人々をさらったのはエスタークだったことがわかったんです。
ですから、もう一度あの場所に行って何か連れ戻すための手がかりがないかを探したいのです」
「…………」

「それを早く言えよ。みんな、聞いたな?」
「聞いてなーい」
「聞いとけよっ」

「なんですって!?」
「行きましょう、アリーナさん!」
「善は急げですぞ、すぐ出かける準備をしましょう」
「皆さん、馬車の準備はもういいですよー」

「な?」

みんな…っ

「どうして……どうしてそんなに優しくなれるの……?」

――ソロの村のみんなは、マーニャとミネアのお父さまは、もうどんなにがんばっても戻ってこないのに…!――

「お前さ、世界樹の花手に入れたとき、真っ先に俺の村のみんなやマーニャとミネアの父ちゃんのこと口にしてくれたろ?
自分とこのやつらが助かる保証なんかどこにもなかったのに」
「…………」
「あれさ……すっげー嬉しかったんだ」
「…………」
「仲間の家族は俺の家族だ。少なくとも俺はそう思ってる。早く行こうぜ」
「………………」

「うん……うん……っ」

「ピサロ、お前は別についてこなくたっていいぜ」
「…………」

653従者の心主知らず 失踪の行方 17/25:2017/11/15(水) 18:29:13 ID:2e7LBrXc
「エスターク帝王のもとへ行くのなら同行させてもらう」

私たちはもういちどアッテムトへ向かった。


「俺も行くよ」
「ううん、お願い。私たちで行かせて」

アッテムトに着いて出かけるしたくもととのって、ソロが同行を申し出てくれたけど私は断った。
これ以上みんなに迷惑かけられない。ただでさえいっしょに来てくれたのに。
これは私たちサントハイムの問題、だから行くのは私とクリフトとブライのさんにんって決めたの。
そう、私たちの問題なのにみんながいっしょに来てくれた……急いですませてこよう。

「わたしは同行させてもらうぞ」

ピサロが口をはさんできた。

「なんで来るのよ……」
「勘違いするな。わたしはわたしで目的があるだけだ。別に並んで歩く必要もない」
「…………」
「ピサロさま、あなたが行かれるのでしたらどうかわたしも……」
「…………」

「お前は、ソロのそばにいたほうが安全だと思うがな……」
「ピサロさま……いえ、わたしは…っ」
「………………」

え、なにこの微妙な空気。

「………………別についてきても構わんが、もうそんな非力な腕でナイフなど振るなよ」


「そういえば、この場所ではお前たちに煮え湯を飲まされたのだったな」

歩きながらピサロがつぶやいた。にえゆ…?

「……まあいい。それはすでに過去のことだ」

いいのなら口にしなくちゃいいのに、私たちがエスタークを倒したこと根に持ってるのかしら。
私たちはそれぞれのペースで洞くつに入ったんだけど敵と戦ってるあいだに結局いっしょになって。
ロザリーもいるからみんなで守るためにもいっしょのほうがいいかもってクリフトに耳打ちされて。
確かにそう思ったからなんだかんだいってやっぱりいっしょに行動することにしたの。
ピサロがすきなく強いのがなんだか腹立つ。この戦いが終わったらぜったい決着つけてやるんだから。
洞くつの奥へ、私たちはエスタークのいる玉座の間まで無事たどり着いた。

654従者の心主知らず 失踪の行方 18/25:2017/11/15(水) 18:32:39 ID:2e7LBrXc
「エスターク!私はサントハイム王の娘アリーナよ!」

私は玉座でぐったりと傾きかけているエスタークに大きな声で呼びかけた。

「エスターク!」

ちからいっぱい大きな声で呼ぶ。

「エスターク、返事して!」

「エスターク!!」

でもエスタークは動かない。

「お願いみんなを返して…っ!!」
「やはり、動かぬ……か」
「姫さま……」
「ふむ……」
「おねがい返事してっ!!」

エスタークはもう動かない。

「おねがいエスターク…っ!!」
「姫さま…っ」

もうにどと動かない。

「エスタークっ!!」
「アリーナさん……」
「おねがいっっ!!」

殺した。

「おねがい返事して…っっ!!」

――私たちが殺した――

「ごめんなさい…っ!」

――時間は戻らない。死んだ者はよみがえらない……――
――ごめんなさいぃ…っ!!――

どうすれば……わたしどうすれば……。

655従者の心主知らず 失踪の行方 19/25:2017/11/15(水) 18:36:05 ID:2e7LBrXc
「姫さま」
「クリフトぉ…っ」
「以前、さえずりの蜜を手に入れたあと、もしエルフたちが戻ってこなかったらとうなだれていた私に、
姫さまはおっしゃったではありませんか。それならそれで、また別の方法を探すまでだと」
「っ……」
「大丈夫です、きっと何か別の方法があるはずです。探しましょう」
「クリフト……」
「大丈夫です。さあ姫さま、戻りましょう」
「…………」
「確かに、この場所にはもう用はありませんな。ささ、姫さま、参りましょうぞ」
「………………」

クリフトとじいの声がとっても優しく聞こえた気がした。

「クリフトどうしたの?」
「…………」
「クリフト…?」
「む、何かあったか、クリフト?」
「いえ、今一瞬、エスタークが動いたような気がしたのですが……」
「え…?」

私は思わずエスタークを見る。

「…………」

動いてるかはわからない。

「……………………」

申し訳ありません、気のせいだったようです、そう言ってクリフトはこっちに向き直った。


「なぜ、詫びたのだ……」
「え?」

帰りみち、ずっとだまってたピサロが話しかけてきた。

「お前たちにとって、かつて地上に闇を落とした地獄の帝王エスタークこそ敵でしかないはずだ。なぜ……」

…………。

「敵だからって、何でもやっつければいいわけじゃないから」
「…………」

656従者の心主知らず 失踪の行方 20/25:2017/11/15(水) 18:39:33 ID:2e7LBrXc
アドンもそう。アンドレアルもそう。
もし最初からお話ができていたら、戦わなくていい敵だった。
きっと、殺し合いの戦いじゃなくて、競い合いの闘いができる相手だった。
もしお話ができていたら……

「何にもお話ししなかった。
お父さまの夢の話とか、歴史の話とか、周りの話しか聞いてなくて、いちばんかんじんな本人とは何にもお話ししなかった。
自分の目で、肌で、ほんとうに悪いやつだったのか、どうしてお父さまたちをさらったのかも、何ひとつ確かめないで攻撃した」

――なに…やつだ……。わが眠り…さまたげる者は……――

「それは、今思えば悪いことだったから」
「姫さま……」
「………………」

アドンやスライムは私たちに謝ってくれたから……。

「……それは、わたしが勇者を……」
「え?」

ピサロが歯ぎしりしたような気がした。すぐ向こうを向いたけど、イライラしてる…?

「かつて、エスターク帝王率いる魔族軍とマスタードラゴン率いる天空軍は大規模な戦争を起こした」

いきなりなに言い出したのこいつ。

「地上は戦火に巻き込まれたが、マスタードラゴンが一つの提案をし、エスタークが承諾し、戦場を時空間に移したそうだ。
天空ではどのように記されているか知らんが魔界の歴史書にはそう記されている。夢世界という単語も出ているが詳しくはわからん。
だが、もしその記述が事実であるなら、時空転移魔術はマスタードラゴンも使える」

え…?

「わたしは偽善者の代表になど会う気はさらさらないが、一度会ったことがあるのなら文字通り神頼みでもしてみたらどうだ?」
「ピサロさん……」

「王は夢でエスタークの存在を知りました。そしてこの場所も……。
エスタークもまた眠っていた……眠りながら転移させた……。
そして歴史書にある夢世界……それと何か関係があるのかもしれません。一度話を聞いてみる価値はあると思います」
「ふむ……夢世界か……」

マスタードラゴン……竜の神さま……

「姫さま、行ってみましょう。天空城へ」

657従者の心主知らず 失踪の行方 21/25:2017/11/15(水) 18:43:11 ID:2e7LBrXc
どうして……
私はピサロを見た。

「どうしてそんなことを教えてくれるの…?」
「…………」

「そんなこと……」

――わたしが聞きたいくらいだ――

エスタークは本当は死んでなかった。クリフトが感じた違和感は気のせいではなかった。
エスタークは生きていて、私たちの声も、私の必死の呼びかけも、みんな聞いていた。動かないのではなく動けなかっただけ。
いつかエスタークは再び目覚めることになる。でもそれは、私たちの知らないずっとずっと遠いお話。


「お前たちがなぜここに来たのかはわかっている。サントハイムの民たちは未だ捜索中だ」

天空城に着いて急いで玉座の間へ、竜の神さまは私たちが名前を呼んだだけでそう答えた。

「捜索中…?お父さまたちは、無事なの…?」
「かの者たちは生きている」
「ほんとに…?」
「転移された直後に察知した気配がそのまま残っている。わずかではあるが死者が出ていないことはわかる」
「ほんとに……っ」

どうしよう、もう前が見えなくなってる……。

「どうして……どうしてもっと早く教えてくれなかったの…っ??」
「それは……」

竜の神さまはその先をすぐ言わない。少し間が空いた。

「必ず見つけ出せるという保証がなかったからだ」
「…………」
「確証のないことで無駄に期待だけを持たせたくはなかった。また期待されても困るからだ。
今こうしてお前たちに話したのも、お前たちが自力でここまで情報を得てきたからこそできたこと」
「…………」

言ってることはなんだか難しくてよくわからなかったけど、私はお話が終わるまで待った。
ずっと竜の神さまを見てた。

「私からお前たちに報告するときは、かの者たちが無事見つかったときだ」

竜の神さまも私を見てくれた。目が合う。竜の神さまは私の目を見たままはっきり言った。

658従者の心主知らず 失踪の行方 22/25:2017/11/15(水) 18:46:42 ID:2e7LBrXc
――全力を尽くして捜索しよう――


「よかった……」
「姫さま」

お父さまたちは生きてる。神さまが言うんだもん、きっと生きてるんだわ。
生きてるならまた会える。きっとまたもとのお城に戻れる。
今は竜の神さまが捜してくれてるけどもしこの戦いが終わっても見つからなかったら私が捜してもいいんだし。
竜の神さまといっしょに捜せばきっとすぐ見つかるわ。

――お父さまたちにまた会える…!――

「よかったぁ……」
「はい、姫さま」
「よかったあああ……っっ」

からだのちからが一気に抜けた。私はふらついて地面に座りこんでしまった。

「姫さま!?」
「だいじょうぶ、ちょっと疲れただけ」
「姫さま……」
「姫さま、ようがんばったのう」
「…………うん…………」

「ソロ……ありがとう」
「俺は何もしてねえよ。お前ががんばったからだろ」
「ピサロ……ありがとう」
「愚かな人間がこれ以上増えるかと思うと虫唾が走るっ」
「なんですって!」

「まあまあアリーナさん、ピサロさんはあれです、照れ隠しなんですよ。
ソロさんやアリーナさんの真剣な思いに胸打たれたんですよね、ピサロさん?」
「うるさい黙れっ」
「「へ?」」

トルネコに言われて私とソロはそろって声をあげちゃった。ふたり同時にピサロを見る。
ピサロもこっちを見たけど口がへの字でヘンな顔してた。

「だから人間は愚かなのだ!もう寝る!!」

ピサロはすごい勢いで馬車に戻っていった。寝るって、まだ寝る時間じゃないけど。
夕食だってすませてないのに、変なピサロ。

659従者の心主知らず 失踪の行方 23/25:2017/11/15(水) 18:50:09 ID:2e7LBrXc
「ごめんなさい、皆さん……。ピサロさまは決して悪気があってああ言ったわけではないんです。
本当にごめんなさい……。私も失礼します」

何度も何度も頭を下げロザリーも戻っていった。

「皆さんが天空城に行かれている間にピサロさんとロザリーさんと少しお話ししたんですよ。
いやはや、なかなか深いことを考えてらっしゃる方々で興味深かったです。
信じられない話ですが、ピサロさんのおかげで私たちはずいぶん平和な生活をさせてもらっていたみたいなんですよ」
「なにそれ……」
「私たちは、世界征服を企み、人間を滅ぼそうとしたデスピサロさんしか知りませんが、そうなるまえのピサロさんの話です。
世界中を駆けずり回って罪人たちを取り締まってくれてたみたいなんですよ。
彼の中ではロザリーさんを狙うエルフ狩りへと転じないためだったのでしょうが、結果的に犯罪者が減っていたのは確かです」
「そんなのうそよ!」

私は思わず大声をあげてしまった。

「ええ、私も最初は信じられなかったのですが、話を聞けば聞くほど細かくご説明をされるものでね。
特にレイクナバやボンモール、エンドールでの話題を出されたときはもううそだと思うほうが無理だと思いました。
あまりに合点がいってしまったんです」
「だって、だって誰もピサロのことを知らないじゃない!」
「何度か各国に罪人を縛り上げて突き出したことがあったそうなんですが、当時の人々は魔族と知るやいなや
罪人を取り締まる味方ではなく国民を傷つける敵と勘違いして追ってしまったそうなんです。それ以来彼は表に出ていません。
ピサロさんも性格が荒いですし、どちらが悪いとは私は言えなかったのですが……」
「…………」

「マーニャさんとミネアさんでしたらこの事件はご存知じゃありませんか?
3年前モンバーバラで人気だった曲芸の一座が一夜にして壊滅、被害者たちは魔物に襲われたと証言するもどこにも証拠はなく、
被害者の素性を調べるうちに当時カジノを荒らしていた犯罪者集団と判明、誰のおかげともわからぬうちに取り締まれた事件」
「あ……」
「うそ……あれ……ピサロなの……?」

ピサロのことがますますわからなくなった。


――自分のことしか考えない魔族と他人のことしか考えないエルフとの出会いは世界を大きく変えた――

「彼は、今こうして人類を敵に回すまえからすでに、たった一人で人類と戦っていたのですよ……。
そして、私たち人類が変わらない限り、気づかない限り、これからもずっと戦い続けるのでしょう」

――終わりのない戦いを――

「もう、ピサロさん自身がそれに耐えられなかったのだと思います」

――希望のない明日に……変わることのない未来に……――

660従者の心主知らず 失踪の行方 24/25:2017/11/15(水) 18:54:06 ID:2e7LBrXc
「…………」

変わることのない未来……。

――たとえお前たちのような良識ある人間がいたとして、罪びともまた生み出される社会がある限り――
――人間はこれからも変わらないのだろう――

――我々魔族では人間を変えられない。変えられなかった……――
――いや、本当はもう、変えようとする前からわかっていたのだ……――

――人間は変わろうとしない。なぜなら変わる必要がないから――

ふと思い出されたのはアドンの言葉。
あのときは何の話をしてるのかわからなかった。けど……

――他種族同士が歩み寄ることは未来永劫あり得ない――

あれは、このことを言っていたの……?

「エンドールの武術大会に参加したとき誰もピサロという名に、その姿に、反応する者がいなかった。
それは彼にとって……」

――失望と落胆……――

「いえ、確か城内で……」

クリフトがすかさず口をはさむ。

「城内で、何名かピサロさんの名前に覚えのある方がいました」

――デスピサロ……。どこかで聞いたような名前じゃが思い出せんわい……――
――デスピサロに気をつけるんだ!――

「誰だって罪を犯したくて犯してる人なんていないわ」

私も思わず口をはさんだ。

「それなのに、罪を犯したからって人類すべてを滅ぼそうとするのはおかしいわ」
「……ピサロさんが言ってたんですよ」

――人間の中に善人と悪人がいるのではなく、人間ひとりひとりの内に善と悪が混在している――
――それまで善人として生きてきた人間とて何らかのきっかけで悪人に転じる可能性は0ではない――

「…………。だからって……そんな可能性……」

661従者の心主知らず 失踪の行方 25/25:2017/11/15(水) 18:57:43 ID:2e7LBrXc
そこから先が続かない。言葉を返せない。どうすればいいんだろう。どう返せば……
そんなときふと浮かんでしまったのは。
お父さまのお声が出なくなったとき焦ってエルフさんたちのさえずりの蜜を盗んでしまいそうになったこと……
事情があったところで罪は罪……エルフさんたちは人間をすっごく憎んでた……。

――確かに人間は、時に過ちを……その、犯します。ですが、それを悔い改めよき道へと進むことができるのもまた人間です――
――……でも、過ちは犯すのね。最初から犯さないっていう選択肢はないのね――

「……………………」

どうすればいいの……?

「いえいえ皆さん、そんな神妙にならずに……」

トルネコは穏やかに笑った。

「だからピサロさんにとってソロさんやアリーナさんのような方はほんとうに理解しがたいみたいです。
やられたらやり返すのが人間の本性と思っているようですね。
それをことごとく覆されたので腑に落ちない、意味がわからないと何度も言ってましたよ。
今まで本当に出会えていなかっただけなのかって。他にもいるのかって」
「…………」
「アドンさんが私たちに太鼓判を押してくださっていたそうで、ますますピサロさんを悩ませているのだとか」
「アドンが…?」

トルネコは笑ってうなずいた。

――ピサロ様、人間をみな滅ぼす計画、今しばらく吟味する必要があるかと……――
――滅ぼすに値しない人間を発見しました。ロザリー様もその者たちにはお心を許しているようです――
――他にも同種の人間がいるのか否か、またその境界がどこにあるのかが未知数――
――少なくとも今現在発見したかの者たちを消すことはロザリー様にとっても得策ではありません――
――恐れながらその者たちとは、奇しくも我々にとって敵でしかないと思っていた……――

「…………」

――勇者ソロとその一行でございます――

アドン……。
ピサロにそんな話をしてくれてたんだ。なんかちょっと言い方が気になるけど。
でも、私たちを信じてくれたのね。

「他種族の、それも魔族の方に評価をいただけるなど、なんとも誇らしいことです」

トルネコは嬉しそうに言葉を続ける。

――ソロさんやアリーナさんのような方がいる限りピサロさんが人間を滅ぼすことはないでしょう――

どれだけ確信を持っているのか、トルネコはそう断言した。

662従者:2017/11/15(水) 19:01:17 ID:2e7LBrXc
短編集「知られざる伝説」及びゲームブックではサントハイム民をさらったのはデスピサロとなっていましたが、
いずれもさらった目的や方法、その後の処置などが不明瞭な点(じゃあ王の失声症は誰のしわざ?とか)、
本編でのミニデーモンの台詞「闇のちからで消された」という言葉と照らし合わせるとどうにも補正しきれない点から
この従者シリーズでは小説版の「光の国」を参考に「夢世界」なる世界をさまよっていたとし
サントハイム王失声、サントハイム民失踪、お告げ所シスター消失はいずれもエスタークのしわざとしました。
また6章後にエスタークでクリアリを構想してはいるので書ける日来ましたら詳細をご覧いただけたらと思います。

それにしても、やっとクリアリのキスシーン書けました!ここまで長かった…!!やっぱこっぱずかしいですね
本当にありがとうございました。

663名無しさん:2017/11/18(土) 00:12:08 ID:gXm.bSbg
ある寒い日で小ネタを思いついたので置いときますね。

「うう、今日は寒い日だわ。クリフトー」
「はい、姫さま」
「手袋を脱いでちょうだい。私も脱ぐから」
「は…?手袋が何かありましたか?」
「いいから早く脱いでちょうだい」
「あ、はい」
「脱いだわね。よっ」
「ひ、姫さ…!!」
「冷たっクリフト手冷たいわよ。手袋つけてるのになんで?私より冷たいじゃない」
「ひめさmはなsてくだs」
「せっかくあっためてもらおうと思ったのに。しょうがないから私があっためたげるわ」
「……っ!!」
「クリフトどうしたの?なんか赤くなってない?」
「いえ、これは、その…っ」
「手をあっためてるのに顔があったまるってどういうことかしら。ヘンなの」
「……いえ、姫さまのおかげで全身があたたまりました」
「なにいってるの、私にそんなちからないわよ。クリフトったら大げさなんだから」

664名無しさん:2017/11/18(土) 00:52:13 ID:D/1bjsTo
乙です!

>>662
途中が空いたままで終盤を迎えたような、そうでもないような
ストーリーの流れ以前に、なんとも不思議な展開ですね
未完成のパズルに順不同でピースをはめていくのでしょう
早く完成図を見たいですがご無理のないように

>>663
発想が上手いですね
ふとしたきっかけで何かを思いついたときにクリアリに結び付けようってのがいいですね
クリアリのことが意識にあるからクリアリに結び付くんですから
クリアリへの愛がありますね

665名無しさん:2017/11/24(金) 19:40:44 ID:dwS9Vqh.
このスレ今どれくらいの人がいるのかな
ROMも入れればけっこういるのかな

666名無しさん:2017/11/28(火) 01:09:42 ID:Y8yjKdTs
偶然流れ着くのも難しい辺境の地、書き手がいることが奇跡といえば奇跡です
前スレが過疎ってから立った避難所ですし

667名無しさん:2017/11/30(木) 05:00:10 ID:YfEEFTtM
ハロウィンネタで書こうと思ったけど、ハロウィンよく分からないから無理でした
子供さんはともかく、子供さん以外がやることって仮装以外に思いつかないんですよ

668名無しさん:2017/12/04(月) 12:02:54 ID:Xx7hXIYQ
「お城の生活ってやっぱり退屈だわ。もうここには私の相手ができる人はいないし」
「……」
「でも、また旅に出たら……もう私のいないあいだにみんなに何かあるのはイヤなのよね……」
「姫さま……」
「そうだクリフト、私と勝負しましょうよ!」
「えっ?」
「この旅でクリフトも強くなったでしょ?私たちがどれだけ強くなったか確かめてみたいわ!」
「そ、そんな姫さま…!」
「さあクリフト、どこからでもかかってらっしゃい!」
「姫さま……恐れながら姫さま、私は今回の旅で昇天呪文ザキを使いこなせるようになりました」
「それがなによ」
「それはつまり、私と勝負するということは、最悪いのちを落とす危険性があるということです」
「だからなによ、クリフトがザキするまえにやっつければいいんでしょ?」
「そ……」
「そうでなくてもザキなんてよけてみせるわ。さあクリフト、かかってらっしゃい!」
「……………………」
「どうしたのよ!」
「姫さま……ひめさまとたたかうなんてわたしにはムリです。もうおゆるしください……」
「なによー、さっきザキするっていってたじゃない」
「おぬしら、玉座のまえで何をやっておるんじゃ。もうすぐ王が戻られるぞ」


クリフトがアリーナをうち負かすのにいっそザキでも使えればとかブツブツ言ってたのは
ザキが使えればそれを理由に打ち負かせられる(勝負も避けられる)と思ってたからかな。

669名無しさん:2017/12/09(土) 13:46:31 ID:S9BQIYO.
なるほどそういう解釈もあり得ますね
ザキ習得の動機について新解釈が出てくるとは意表を突かれました
そういう方向から掘り下げてSSを作っていくのも面白そうです
乙です

670名無しさん:2017/12/12(火) 22:53:06 ID:QNbFksbI
思えば570さんのストイックな治療ものがまだ投下されてないんですね
翌日になったら元に戻るクリフトなんて、あらすじだけでも心をつかんできます

671名無しさん:2017/12/16(土) 14:10:57 ID:P8GpQ726
木こりさんとソロさんの関係性は想像に任されている面が大きいんですけど、
ソロさんの置かれた状況とか考えると、一時的にせよ唯一の拠り所になった方ですから、
やっぱりソロさんとしては木こりさんに親近感を持つのが自然でしょうね
ソロが前を向いて次の一歩を踏み出せたのは木こりさんの力もあるでしょう

672名無しさん:2018/01/04(木) 11:44:21 ID:bIb948tE
あけおめ
クリアリ

673名無しさん:2018/01/04(木) 22:42:01 ID:K6yt.qhs
今年も良い年になりますように

678名無しさん:2018/01/22(月) 03:11:24 ID:JlTUMDlw
日本のバレンタインデーはチョコイベントになっちゃってますけど、
外国流のバレンタインデーでクリアリも捨てがたい気がします。

679名無しさん:2018/01/26(金) 02:18:57 ID:HoYuY.BE
男性から女性にチョコを贈るってのも最近では多いらしいです。
アリーナの手作りを手伝っていたらクリフトの手作りな状態になって、
なし崩し的にアリーナに贈ったみたいになるのも良い気が。

あの世界ではチョコじゃなくて別の物を贈る習慣というのも面白そう。
メッセージカードとか。

680名無しさん:2018/01/29(月) 03:23:16 ID:9jGa0BNQ
バレンタインデーは何か贈り物を贈りあうのが普通なんでしょうね
想い人と一緒にお菓子を食べる日とか設定を付けても面白そう

辺鄙な村のひな祭り→呪いの人形→ミステリーホラー
そんな雰囲気のクリアリ、どなたか書いてくれたら嬉しいです
無茶振りかも知れませんけど

681名無しさん:2018/02/03(土) 15:38:18 ID:ht.BFLxM
祝・クリアリつぶやきスレ新設!

共感を得られにくい特殊ネタなど、こっちに書きづらい話も書けそうです
会話を前提とせずに垂れ流せるつぶやきスレですから

682名無しさん:2018/02/12(月) 01:17:47 ID:xY0M1/zQ
バレンタインデーは想い人と一緒にお菓子を食べると幸せになれる日?

「大切に思ってるから」と、クリフトとブライと一緒に食べようとするアリーナ
「いや、そういう意味の日ではなく…」と顔をしかめるブライ
「こういう日なのです」と律儀に説明するクリフト
「いっそクリフトと結ばれた方がいいのかなぁ」とつぶやくアリーナ

そこから恋愛が始まっても良いかも知れません。

683名無しさん:2018/02/18(日) 02:26:10 ID:c90F54tg
クリフトが桜を好きだったが、色が地味なのでアリーナには魅力が分からず。
年齢を重ねてやっと魅力が分かったが、そのときにはクリフトはいない。
という切ない流れもいかがでしょうか?

684名無しさん:2018/02/18(日) 03:04:28 ID:c90F54tg
ほぼ同じネタが2年前に出ていたようです。
記憶の片隅に残ってたみたいです。

685名無しさん:2018/02/25(日) 21:19:50 ID:4Z42g8Ls
あの世界でひな祭りネタをやろうとすると辺鄙な村の風習が自然ではありますが
呪いの人形はともかくミステリーホラーは書きづらいかもですね…

686名無しさん:2018/03/17(土) 22:04:23 ID:mxeaBXWU
サントハイムに季節はあるんでしょうか。
暑くなったり寒くなったりするなら、そこからストーリーが生まれるかもしれませんね。

687名無しさん:2018/04/15(日) 01:00:39 ID:jJOj4xM.
サラン武器防具連盟による標語
「ちょっとまて! そんな そうびじゃ あぶないぞ!」

準備抜きで先へ行こうとするアリーナと、準備を重視するクリフト&ブライのやりとりを予感させます
そういったやりとりを通じてバラバラだった御一行にチームワークが生まれたりしてね

688名無しさん:2018/05/06(日) 23:29:42 ID:f/0yqmc.
クリフトの帽子って高さがありすぎるので、激しく動くと脱げると思います
戦闘前に兜を装備しているんでしょうか

わざわざ武器防具連盟の立札を設けておく親切さは絶妙です
ドラクエ4はうまく作ってありますね

689名無しさん:2018/06/18(月) 02:51:32 ID:QnWCykkU
2章の冒頭の敵の強さは絶妙で、武器防具を揃えていない場合には全滅しない程度に苦戦します

そこにサラン武器防具連盟による立て札の標語です
立て札の情報を無視した人に立て札の重要性を実感させる仕組みだったのかもしれません
アリーナたちは立て札を見て何を思ったのでしょうね

690名無しさん:2018/08/05(日) 15:53:36 ID:AoGy8YXo
皆様、熱中症にご注意を!

クリアリ×熱中症
あると思います。
アリーナが軽い熱中症になってクリフトが介抱するのが王道でしょうか。

691名無しさん:2018/09/13(木) 12:37:04 ID:fGT.JG2U
「あつい!あつーい!」
「姫さま、大丈夫ですか?」
「っもう、なんでこんなに暑いの!?今までこんな日なかったのにっ。あつーい!!」
「……姫さま、暑いといえば涼しくなるわけでもないでしょうに」
「クリフトちょっと手かして!」
「?…っ!ひ、ひめさま!?」
「あ、やっぱり。クリフトの手冷たい。ひんやり〜♪」
「〜〜△◎×っ!!」
「あれ、ちょっとクリフト、手だんだん熱くなってる。これじゃおでこ冷やせないじゃない」
「そ、そんな……熱いところに触れればそりゃ熱くなりますよっ」
「なーんだ、そっか。はい、手袋」
「あ…」
「じゃあクリフト、氷ぶくろを持ってきてちょうだい。それなら長く冷やせるわ」
「……はい、姫さま…」
「?クリフトなんかヘン。どうしたの?」
「い、いえなんでもっ!氷を取ってまいりますっ!!」
「??」


なんかちがう小ネタになった。

692名無しさん:2018/09/15(土) 04:27:17 ID:9XB1BWcU
乙です。
サントハイムが暑いとなると、テンペあたりが避暑地になりそうですね。
避暑地でも何かストーリーが生まれるのかも。。

残暑がもう1回くらい来そうなので、皆様お身体にはお気をつけて。

693名無しさん:2018/09/17(月) 13:41:36 ID:u0ec1omA
クリアリ成分が足りない!!
堅苦しい理屈とかうんちくとかなしにしてさ、もっとこう、

クリフト「姫さま好きじゃーー!!」
アリーナ「ちょちょっとクリフトどうしたの!?」
周り「ニヤニヤ」
アリーナ「ご、ごめんなさいこの人ちょっと酔ってるんです!お部屋に連れていくわ!」
〜翌日〜
クリフト「姫さま、昨夜は大変失礼いたしました…」
アリーナ「ほんとよもうっ」
クリフト「周りの方々の視線が気になるのですが、私は昨日何をしたのでしょうか。記憶がどうも…」
周り「ニヤニヤ」
アリーナ「え、クリフト覚えてないの!?」
クリフト「え、そんなに何かひどいことをしたのでしょうか!?」
アリーナ「(なんだ、クリフト覚えてないんだ…)」
クリフト「(わ、わたしはいったいなにをしてしまったのだ…!?)」
周り「ニヤニヤ」
ブライ「まあ、あのアホたれのおかげで結果的に姫さまの飲酒は免れたからよしとするかの」

とかさ、最後のブライなんて別になくてもいいからさ、もっとこう、
クリアリきゃーみたいなはっちゃけたノリもほしいよ!!
この板なんか冷静な雰囲気強くて自分だけはっちゃけるの寂しいYO!!

694名無しさん:2018/09/17(月) 13:50:21 ID:u0ec1omA
ちょっと下ネタ注意

「やだやだ今日のお洗濯は自分でやる!」
「何をおっしゃるのです姫さま、いつも私がしているではありませんか」
「今日だけはダメっ!」
「ふむ、よくわかりませんがもうまとめて浸けてありますので」
「きゃああっ」
「……どうしたのです姫さま?今日はいつもとずいぶん様子が……」
「……だって今日……」
「?」
「……今日、月に一度のあれになっちゃったのっ!」
「……」
「だからあんまり見てほしくなくって……」
「……」

ぶはあっ!!

「きゃああっクリフトどうしたの!?」

旅に出てからの洗濯事情よくわからんけどノリで書いた

695名無しさん:2018/10/08(月) 03:29:25 ID:HBrvXdUY
乙です

ほぼ入口のない孤島ですから過疎になるのは致し方なし
まったり運用と前向きにとらえるべきでしょう

696名無しさん:2018/10/08(月) 04:04:29 ID:HBrvXdUY
個人的には色々な作風があれば良いんじゃないかなと

このスレ、2chから派生しているからなのか派生元スレの過去の経緯からなのか、
空気を読めという空気というか空気を乱すなという空気は強めな印象なんですけど、
作品に対しては性描写を含むなどのNG事項に触れない限り許容範囲が広いですね
ウザがられそうな妄想でさえも、つぶやきスレで垂れ流すなら問題なさそうです

697名無しさん:2018/12/10(月) 04:42:50 ID:CutsTV2E
お城のクリスマスも旅路のクリスマスも。
クリフトとアリーナはどんなクリスマスを迎えるんでしょうね。

698名無しさん:2019/02/09(土) 00:32:39 ID:LrEIIavo
570さんの思い描くストイックなクリフトって、どういうストーリーだったんでしょうね
ご本人の投下がないまま話題が終わってしまった感

699名無しさん:2019/07/14(日) 11:43:29 ID:sgbN6/Ys
サントハイムに梅雨があったとしたら、それはそれでドラマを生みそうな予感が。
アリーナは晴天でも外に出してもらいにくいのでしょうけど、それでも気分は変わりますよね。
灰色の雲、終わらない雨。
同じ雨を別の場所で見ながら、クリフトとアリーナが物思いにふけるとか。
幼少の頃に聞いたおとぎ話を思い出すこともあるでしょう。

降り続く雨って、それだけで物語を生みそうな雰囲気をまとっています。
クリフトとアリーナにどんな物語が生まれるのか考えてみるのも楽しそうですね。

700名無しさん:2019/08/23(金) 12:09:45 ID:PS7ebXzw
2ch(5ch?)のクリアリスレがなくなって寂しい思いをしていたら
こんなところにこんな素敵な場所があったのですね…!
ごあいさつ代わりに小ネタを1つ。

701名無しさん:2019/08/23(金) 12:17:06 ID:PS7ebXzw
「アリーナ、お前は一生結婚しないつもりなのか?」

持ち込む見合い話を片端から蹴られ続けている大臣に泣きつかれ、
サントハイム王は、ある日、娘とのお茶の時間を利用して尋ねてみた。

「そんなことはないわ。良い人がいれば結婚したってかまわないのよ。」
にっこり笑う娘にサントハイム王は溜息をついた。
「そもそもお前の言う『良い人』の条件はなんなのだ。」
「そうねえ、当然、私よりも強くなくっちゃ!」
「…この地上でそんな生物は、ピサロか勇者殿くらいですじゃ。」
傍らに控えていた宮廷魔術師が、小さな声で突っ込んだ。
「あら、その2人にだっていつか勝って見せるわよ!…でも、そうね。ピサロは問題外だし
ソロも伴侶って感じはしないわね。だいたいソロにはシンシアさんがいるし。」
「それでは結局、結婚する気はないというのと同じではないか?」
眉根を寄せた父親に、アリーナは肩をすくめた。
「まあ、私より強くなくても、少なくとも組手の相手くらいはしてくれないとね。」
「…その条件でも、当てはまるのはごく少数ですじゃ…。」
「ふむ。それ以外にはないのか?お前と同じくらい強ければ良いと?」
「うーん、あとは、お互いに助け合っていける人かな。夫婦なんだし。」
「お前の傍にあって、お前を常に支えてくれる存在、か。」
「それは立場上、私の方が支えられることは多くなっちゃうかもしれないけど…
でも私だって相手をサポートしたいわ。お互い様だもの。」
「例えば、無理してぶっ倒れた相手のためにパデキアを探したり…とかですかのう。」
「ん?何か言った、ブライ?」
「いえ、何でもありませぬ。」
うそぶく宮廷魔術師を王は軽くにらむと、娘に向き直った。

702名無しさん:2019/08/23(金) 12:22:16 ID:PS7ebXzw
「強くてお互いに支え合って…か。見た目の話がないが、そこはどうだ?」
アリーナは考えるように頬に指をあてた。
「うーん、そうねえ…別に見た目は特に…あ、でも、だらしなくぶよぶよに
太ってるとかは嫌だわ。でもそれは見た目というより鍛錬の問題よね。」
「細身で締まっている体つきがよいということですかな。」
「うん?まあ、そんな感じかなあ。」
「顔は?不細工でも構わないと?」
「ええ、それは構わないわ。でも、笑顔が似合う人だとうれしいかな。」
「いつも姫様に会うたびに満面の笑みを浮かべ…」
王は咳払いしてブライの言葉をさえぎった。
「性格はどうだ?やはり男らしいタイプがいいか?」
「うーん…なよなよじゃ困るけど、ことさらに男らしくなくてもいいわ。」
「ということは、優しい方が良いということですかな。」
「お前をこれ以上甘やかすような男じゃ困るぞ。」
「『これ以上』って何よ、お父様ったら。でもそんなの私だっていやだわ。
言うべきことはちゃんと言ってくれないと。」
「姫様のご身分にかかわらず、くどくど叱ってくれる人、と。」
「…ブライ。」
「いやいや、王よ、老人の独り言ですじゃ、お気になさらず。」

お茶会も終わり、アリーナが出て行ったあと王は宮廷魔術師をじろりと見た。
「…何も言わんでよい。お前の言いたいことは分かっておるわ。」
宮廷魔術師は澄ました顔で答えた。
「あの条件にあてはまる人間は、世界広しといえどもあやつしかいないでしょうな。」

王は大きく溜息をつくと
「まあ、こうなることは初めから分かってはいたが…。」
苦笑いしながら、城に住む神官を呼び寄せるため、卓上の鈴を取り上げた。

703名無しさん:2019/08/23(金) 12:28:26 ID:PS7ebXzw
以上です。
まあこんな安直には行かないとは思いますが…というよりむしろ結婚に至るまでに
いろいろと障害があった方が個人的には萌えるのですが…小ネタということでご容赦を!

704名無しさん:2019/08/26(月) 16:25:49 ID:cgJ4Iq2k
まだまだ暑い中、乙です。
ブライさんが核になると安心感がありますね。
真夏のかき氷のように、ほっと一息。

紆余曲折があってもなくても、それぞれの魅力があり。
どちらも良いですね。

2chのあの場所は惜しかったですね。
文句ばかりの人や空気読まない人のせいで…。
最初から避難所があれば良かったのか…。

705名無しさん:2019/09/01(日) 20:11:47 ID:tp8m7jC2
初めてたどり着いた ここは楽園か

706名無しさん:2020/10/12(月) 01:50:32 ID:OHanocs.
コロナのような疫病にパデキアが効かなかったら、
サントハイムも苦労するのでしょうし、
アリーナやクリフトも苦労するのでしょう


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