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小沢民主党は加藤憲政会のように「苦節十年」となるか

1キラーカーン:2008/09/10(水) 22:37:58
 福田首相が辞任表明をして、総裁選モードになっている自民党のあおりを受けて、あわててマスコミ対策を打ち上げている民主党ですが、小沢党首の「威光」を恐れて無投票にした党首選がそもそもの原因ですので、「身から出たさび」といったところでしょう。

という訳で、お題は表題の通りです。

 第二次大隈内閣の与党だった同志会(後の憲政会、民政党)を主体としたは対華21か条などの「失策」により、党首の加藤高明(第二次大隈内閣の外相)も含めて「政権担当能力」がないとみなされ、原政友会内閣が原首相の暗殺後、弱体化して政権担当能力が疑問視されても、元老西園寺が加藤憲政会に政権担当能力がないと判断していたため、なかなか政権の座が憲政会に回ってきませんでした。

 その中で、いわゆる第二次護憲運動のさなかに行われた総選挙で憲政会は第1党となって、加藤高明は「苦節十年」を経て与党に返り咲きます。
 首相となった加藤は普通選挙法や治安維持法の制定など、加藤憲政会が政権担当能力を持つことを実証し、その後の2大政党制による政権交代といった「民主政治」が当時の日本においても可能であるという歴史的実績を作りました。そのため、護憲三派連立内閣が崩壊して、加藤首相も含めた閣僚全員の辞表を提出した際も、加藤の辞表は受理されず、加藤憲政会単独内閣が発足します(この憲政会単独内閣は、かつて第二次加藤内閣とも言われていましたが、最近では第二次内閣ではなく「連立崩壊による内閣改造」とされているようです)。

 小沢民主党は加藤憲政会のように「試験」に合格して、政権担当能力がある政党とみなされるでしょうか、それとも、試験に落ちて、自民党政権の延命に手を貸すでしょうか。それは、遠からず行われる総選挙とその結果組織される内閣の実績で明らかになります。

自民党からみた考察は、またの機会に

2キラーカーン:2008/09/10(水) 22:38:55
自民党総裁選雑感(衆議院と参議院)

 自民党総裁選は麻生、石破、石原、小池、与謝野の5氏で争われることが決定しました。私が「面白い」と思ったのは、山本一太氏が出馬の意向を示したことです。

 日本国憲法上、衆議院が第一院で参議院は第二院とされています。このことから、衆議院議員のみが「代議士」と呼ばれることにも現れています。
 したがって、自民党では総裁以下執行部は衆議院議員『のみ』から構成されています。参議院は独自に議員会長や幹事長を選出し、閣僚も「参議院枠」として、それこそ「党中党」としての活動を認められています(といいながら、参議院議員も各派閥に取り込まれているという現実もありますが。)。
 で、小渕首相が危篤状態に陥ったときに首相臨時代理になったのが青木官房長官(当時)だったのですが、参議院議員の首相臨時代理ということで「異例の臨時代理」とも言われました。

 そのような自民党の政治風土の中で、山本一太氏が出馬の意向を表明をしたことは、自民党の歴史の中で前例のないことだったと思います。(野党では、国会議員の頭数が少ないこともあって、福島社民党党首など参議院議員の党首もいます。)
 結局山本氏は推薦人を集められませんでしたが、参議院議員が総裁選出馬の意向を示すことについて表立った異論が出なかったことは「小さいようで大きな変化」になるかもしれません。

3キラーカーン:2008/09/14(日) 01:45:02
 自民党総裁選雑感(旧来の派閥は崩壊した)

 ということで、派閥から、「党中党」として総裁候補擁立機能が事実上亡くなりました。従来は、総裁候補の推薦人はその候補が属する派閥で固めるのが一般的でした。
 しかし、今回は、石破氏以外の候補は各派閥から横断的に推薦人を集めています。もちろん、無派閥の与謝野氏と小派閥に属する麻生氏(推薦人にぎりぎりの人数しかいないため)の推薦人が複数の派閥にまたがるのは仕方がないのですが、石原、小池の両氏の推薦人が派閥横断的である理由は旧来の自民党ではありえません。それに加えて、各派閥から、複数の候補の推薦人が出ているということも、「派閥の一体性」を考えればありえないことです。

 とすると、派閥の機能である
1 領袖を総裁候補として認知させる
2 政策集団
3 「党中党」としての選挙互助団体
の3つを現在の各派閥は失っているということになります。
 このうち、「3」については、中選挙区制から、(原則)小選挙区制に選挙制度が移行したことによる必然的な結果ともいえますが、「1」と「2」については、そうではありません。とすると、「仲良し倶楽部」以外の何者でもなくなるということになるのですが、果たして、自民党の派閥はどの方向に向かうのでしょうか。
 小泉元首相の言う「自民党をぶっ壊す」というのが、旧来の田中派ー経世会支配からの脱却ということ(=派閥政治の打破)であれば、それは達成できたということになるのでしょう。

(余談)
旧来の派閥の論理からすれば、石原、石破両氏の出馬により、山崎拓、額賀両氏は総理総裁候補として「終わった」ということになります。谷垣氏については、反麻生として与謝野氏を擁立したため(派閥横断的という観点からすれば、「無派閥」の与謝野氏の方が都合がいいという解釈も成り立ちます)、かろうじて残った(温存された)という可能性はあります(安倍元首相退陣後に福田氏が擁立されたように)。

4キラーカーン:2008/09/24(水) 01:41:48
床屋政談(麻生(仮)総理総裁の党三役・主要閣僚)

 自民党総裁選挙は麻生幹事長の圧倒的有利との下馬評ですので、色々、新聞紙上でも取りざたされていますが、麻生総理・総裁を前提とした党幹部・主要閣僚を私も「勝手に」に想像してみました。
 麻生派は20人程度の小派閥であることと、挙党体制から、党三役や主要閣僚については他派閥に明け渡さざるを得ない状況にあります(かつては、「派閥」ではなく一段格下げ「グループ」ともいわれていました。「派閥」=師団、「グループ」=旅団といえばイメージがつかみやすいでしょうか。その伝で言えば、全盛期の田中派はまさに「軍団」でした)

論点は次のようなものです
1 町村派は幹事長を取れるか
2 古賀誠選対委員長の処遇
3 対立候補の処遇(特に小池氏)
4 安倍、中川昭一両氏の処遇
5 「妖刀」二階氏の使いどころ

1 町村派は幹事長を取れるか
 小泉政権以来約7年にわたって総裁派閥として君臨した町村派(旧森派)は久々に総裁派閥ではなくなることと最大派閥であることから幹事長を取りにくるでしょう。この場合、幹事長候補は町村氏が大本命。中川秀直元幹事長(中川(女)とも言われる人)は小池氏を推したので、この時点で脱落です。町村派内の大抜擢なら細田博之幹事長代理(元官房長官)もありえます。ただし、町村氏に三役経験がないので、一度は三役(特に幹事長)を経験したいところ。また、選挙実務に徹するという条件で菅義偉幹事長という「サプライズ」もありです。

2 古賀誠選対本部長の処遇
 福田政権では選挙対策委員長を含めて党四役といわれていましたが、麻生氏は幹事長就任の条件として選挙対策委員長の格下げ(党三役体制への復帰)を要求していましたので、それとも連動します。古賀氏の留任説もありますが、個人的には旧来の三役体制に戻して、菅義偉選対副委員長の昇格が面白いと思います。あるいは、福田首相の当初の構想どおり、二階委員長でも「適材適所」

3 対立候補の処遇(特に小池氏)
 遠からず行われる総選挙は、自民党が下野するか否かが焦点となる選挙ですから、党内抗争に余分な力を割く余裕はないというのは衆目の一致するところだと思います。とすれば、対立候補の処遇には配慮が必要です。

 対立候補は、石破、石原、小池、与謝野の4氏。で、
 石 破 氏:防衛大臣、政調会長、幹事長代理
 石 原 氏:農水大臣、行革担当大臣、政調会長、幹事長代理
 小 池 氏:環境大臣、官房長官
 与謝野氏:農水大臣、財政担当大臣

辺りが個人的には面白いとは思います。
 ただし、環境大臣は現在公明党のポストなので、それを振り替えられるかという問題が残ります。小池氏は女子アナ出身なので、「報道官」としての官房長官には最適かもしれません(調整役としての官房長官としては???ですが)。となると、官房副長官は推薦にも名を連ねた菅義偉氏か最大派閥で手堅い細田博之氏か。この両氏なら官房長官でも務まるでしょう。麻生派内に「女房役」である官房長官の適任者がいないのがつらいところ。

 石原氏は、政治改革担当、国土交通大臣として「不祥事の矢面」に立ったので、大臣ならここか(外務、財務、経済産業という主要閣僚にはまだ早いか)。

 石破氏はこんなところ。幹事長が町村派から出るのであれば、石原、石破両氏は幹事長代理に回る可能性はあります。ただし、同じ山崎派で麻生氏の推薦人となっている甘利氏(前経済産業相)との兼ね合いがあります。

 与謝野氏は、財政健全派なので、財政出動もやむなしという麻生氏とは肌合いが異なる可能性があるのですが、大臣なら政策能力を生かしてここか。

 今回立候補を見送った谷垣氏は、麻生氏の潜在的なライバルとして、農水省(かつて食品安全担当大臣をしていた経験もあります)、国交省という「批判の矢面」に立ってもらう(谷垣氏は「大臣としては」優秀といわれている方なので、ある意味「諸刃の剣」ですが)。

5キラーカーン:2008/09/24(水) 01:42:02
4 安倍、中川昭一両氏の処遇
 安倍氏は前総理としては「若すぎる」ので表舞台への復帰は当然ありえます。しかし、いきなり檜舞台に上るには引き際(の印象)が悪すぎ、また、首相辞任から日がたっていないので、入閣するとしても、拉致担当大臣辺りで地ならしというところでしょうか。

 中川昭一(「中川(酒)」とも言われる人)氏は政調会長、経済産業大臣と党と内閣双方の要職を歴任しているので、重要ポストであってもオールマイティとして使える人です。派閥の領袖である伊吹氏の処遇とも絡んで、今回も「温存」ということもあるかもしれません。「対外強硬路線」でいくなら外相、経済産業大臣辺りでの起用もあります。

5 「妖刀」二階氏の使いどころ
 福田首相も当初、二階氏を選対本部長に就けようとした位の選挙実務のプロでもあり、また、かつての小沢氏の側近でもあり、小沢氏のやり口も知り尽くしている国会対策のプロです。「姫の御乱心」で不発に終わった民主党離党→改革クラブ結成を仕掛けたのも麻生氏と二階氏と言われています。しかし、いわゆる媚中派としても知られており、政策的には麻生氏とは合わないと思いますので、使う
なら内閣より党の要職ということになります。対外的な「顔」という役割を期待しないのであれば、幹事長、総務会長、選対本部長、国対委員長何でもこなせます。

6 独断と偏見の結果
 ということで、この独断と偏見に満ちた「連立方程式」を解けば、(大物議員は基本的に外務、財務、経済産業大臣で処遇)

自民党役員
幹 事 長:町村氏
総務会長:二階氏
政調会長:石破氏
選挙対策本部長:古賀氏(四役から格下げ、副本部長:菅義偉氏)
幹事長代理:石原氏

2 閣僚
総  理:麻生氏
外  務:高村氏
財  務:
経済産業:甘利氏
農  水:谷垣氏(あるいは国交相で留任か)
官房長官:小池氏(副長官:細田氏)
拉致担当:安倍氏(拉致担当首相補佐官:中山氏)

といったところでしょうか。
さて、いくつ当たるでしょうか。

6キラーカーン:2008/10/01(水) 22:39:02
中山前国土交通大臣が舌禍事件で辞任しましたが、JNNのアンケートでは賛否が拮抗しており、「
中山つるし上げ」を目論んでいたテレビ番組の出演者は気勢を削がれた格好となっていました。

 結論から言えば、大臣という国政の最高責任者としては(politically correct:「政治家の文法
」の世界においては)不適切ですが、その発言には少なからず「事実」が含まれている(actually
correct:事実としては(ある程度)正しい)ため、発言自体はかなりの支持を得ている

というところでしょうか。
 成田空港が本来の性能を発揮できないため(「現状で成田の性能は100%発揮できます」や「B
滑走路やC滑走路なんて飾りです」ということは口が裂けても言えない)、アジアのハブ空港争いで
シンガポールや仁川の後塵を拝しているという現状では「一坪地主」に対して一坪では耕作は不可能
ですから「ごね得」といいたい気持ちも分かります。
 また、その思想的背景から日教組に色々問題があるというのも一つの事実でしょう。

といって、「政治家」がそのままの事実を言ってよいかどうかというのは別次元の問題です。竹下元
総理大臣の「言語明瞭意味不明瞭」を極致として、政治家は「断言を避けて、聴衆に都合の良いイメ
ージを持たせる」という技術は必要です。
これは、「敵を作らない」という意味でも重要ですし、また、「妥協の余地」を残すという観点から
も必要な技法です。

中山氏は、大蔵官僚だった方(奥様も)ですので、そういう「内向きの言葉」と「外向きの言葉」の
使い分けは知悉していた筈です。麻生内閣になって、「失言」にはハイエナのように食いつくという
「嗅覚」が働いたのかもしれませんが、それにしても・・・です。

ところが、インターネット時代になって、そのような「内向きの言葉」と「外向きの言葉」の使い分
けがあいまいになっていきます。よく言われるのが、匿名掲示板における言葉使いであり、「内輪」
と思っていたSNSでの発言や、「聞き手」が見えない個人ブログでの「失言」によって電凸を食ら
ったり、ブログが炎上したりするという事象は、この切り口で見れば明解に説明ができます。
その流れに乗って、中山氏の発言も事実としてはあまり間違っていないというところから、「どの場
で話したか」というよりも「何を話したか」で評価され、世論調査などでも擁護論が辞任論と拮抗す
るくらいの割合であるということになるのでしょう。

批判的に言えば、「場による言葉の使い分け」が無意味になる時代であり、
好意的にいえば、インターネットの「フラット化」機能により、肩書きではなく、話した内容で評価
される

ということになるのでしょうか。

7キラーカーン:2008/10/01(水) 22:39:26
諸君 私は選挙が好きだ
諸君 私は選挙が大好きだ

好景気が好きだ
労働が好きだ
生活の安定が好きだ
産業振興が好きだ
減税が好きだ
自主的外交が好きだ

街頭で 駅前で
公民館で 野原で
北の凍土で 都市砂漠で
海上で 空中で
泥中で 湿原で

この地上で行われるありとあらゆる選挙活動が大好きだ

戦列をならべたスピーカーの一斉発声が轟音と共に敵候補者を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられた敵候補者が落選でばらばらになった時など心がおどる

警官の操る「弁士中止」の声が敵候補者を撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて燃えさかる演説会場から飛び出してきた敵候補者を院外団がなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

ミミをそろえた投票用紙の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ
恐慌状態の有権者が既に息絶えた敵候補者を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える

敗北主義の候補者達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ落選者達が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げる院外団にばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ

哀れな敵候補者達が雑多な演説で健気にも立ち上がってきたのを内務省からの実弾が選挙区ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える

内務省の選挙干渉に滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだった選挙区が蹂躙され有権者が買収され転んでいく様はとてもとても悲しいものだ

8キラーカーン:2008/10/01(水) 22:41:37
反対党の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
警察に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ

諸君 私は総選挙を地獄の様な総選挙を望んでいる
諸君 私に付き従う戦友候補者諸君
君達は一体何を望んでいる?

更なる総選挙を望むか?
情け容赦のない糞の様な総選挙を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な総選挙を望むか?


『総選挙! 総選挙! 総選挙!』


よろしい ならば総選挙だ


我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ
だがこの暗い藩閥政府で半世紀もの間堪え続けてきた我々にただの総選挙ではもはや足りない!!

普通選挙を!!
一心不乱の普通選挙を!!

我らはわずかに一政党 千人に満たぬ敗残兵に過ぎない
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の大政党となる

我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう
連中に恐怖の味を思い出させてやる
連中に我々の「議長ぉ〜」の声を思い出させてやる

有権者と代議士のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる
三百人の代議士の政党で
衆議院を燃やし尽くしてやる

「最後の政党総裁より全候補者へ」
目標大日本帝国本土帝都議事堂上空!!

第18回総選挙 状況を開始せよ

9キラーカーン:2008/12/24(水) 22:54:12
床屋政談(航空機と新幹線)

 今回は、視点をガラッと変えて、新幹線他の交通政策です。

 最近、整備新幹線の着工に関する記事があり、北海道新幹線をとりあえず「スーパー特急」方式で着工すべきという意見に対する反対意見(=フル規格へのこだわり)があったとのことです。
 ということで、まず、各種新幹線の方式のおさらいです。世上言われている新幹線には「かつて」4種類ありました。つまり
1 フル規格新幹線(東海道、山陽、東北、上越、九州)
2 標準軌新線(北陸(長野))
3 ミニ新幹線
4 スーパー特急
の4つです。このうち、2の「標準軌新線」は事実上の「簡易フル規格」というべきものですが、今では、1の「フル規格」に含められ(事実上同じ規格の現九州新幹線も「フル規格」といわれている)、現在では3種類です。このほかに、「逆ミニ新幹線」というべき「フリーゲージ・トレイン」という別解が研究中です。

 で、正規の新幹線の定義は「主たる区間を200キロメートル毎時以上の速度で走行できる幹線鉄道」というものです(by新幹線整備法)。しかし、事実上の新幹線の定義は、「主たる区間を200キロメートル毎時以上の速度で走行できる幹線鉄道」で標準軌(軌間1435mm)であるもの(その派生的なものとして「踏切がない」、「全線高架」といったことが見た目の特徴となります)とされています(改正前の新幹線特例法で「東京都と大阪府とを連絡する日本国有鉄道の幹線鉄道であって、その軌間が一・四三五メートルであるもの」を「東海道新幹線鉄道」と定義されていたため。現在ではこの条文は削除)。したがって、上記「2」の標準軌新線もこの定義を満たすので現在ではフル規格新幹線と同じものとして扱われています。で、法律上に該当する新幹線は上記の「1」、「2」、「4」となりますが、「標準軌」という制限(と「主たる区間」の解釈による問題?)から、「4」は新幹線から外れ、「1」、「2」の2つが正真正銘の新幹線ということになります。

10キラーカーン:2008/12/24(水) 22:54:41
 この4つの類型の特徴は次のとおりです。
「1」のフル規格は上記の新幹線に乗ったことがある人であれば、見たままです。
「2」の標準軌新線と「1」との違いは
  ・「1」の駅が16両対応であること(「2」では8両対応の駅がある)
  ・「1」の駅には「こだま」が「のぞみ」や「ひかり」を待避できる退避線がある
  (例外:熱海駅、新神戸駅)
  ・「2」は最高速度が260km、高架ではない部分もあり
  (「1」では270km〜300km(あるいはそれ以上の)運転が可能、全線高架)
というものです。

 「3」のミニ新幹線とは在来線の線路の幅を標準軌(在来線は1067mm)に変更して新幹線の電車が在来線にも直通可能としたもので、それ以外は在来線と同じです。従って、法令、運転規則、料金制度上、ミニ新幹線区間は「在来線」として扱われます(列車(電車)に対しては「新在直通特急」という言い方がされます)。端的な例はでいえば、ミニ新幹線区間では最高速度は在来線と同じ時速130kmであり、踏み切りもあり、ミニ新幹線以外の各駅停車の電車も走っています。このことから、ミニ新幹線区間のみを利用する場合の特急料金は在来線と同じですが、「(フル)新幹線」区間とまたがって利用する場合の特急料金には、新幹線と在来線との「乗り継ぎ割引」料金を基準にした「特別の料金」が適用されます。したがって、ミニ新幹線用電車は基本的に在来線と同じ規格で作られ、大きさ(幅、長さなど)は在来線の特急電車と同じ大きさになります。

 「4」は在来線(軌間1067mm)の車両が上記「1」(または「2」)の規格で作られた線路を走る(時速200km以上)ために作られる線路です。つまり、在来線の高速バイパス線という役割を果たします。この方式の利点は、好きな区間から着工できるということです。一例を挙げれば、山越えのため、既存の線路の改修では電車の速度向上がほぼ不可能な区間において、その区間だけ新幹線並みの速度で走行できる特急用の新線(トンネル)を作って、その前後の区間はこれまでどおり在来線を使用するという方法が可能になります。
 そして、この方式で、順次着工して、前線がスーパー特急方式の線路でつながったときに、線路を新幹線用の標準軌に置き換えれば(あるいは在来線と併用)、そのまま新幹線として営業できるというものです(高速道路の部分開業を重ねて、最終的に全線開業にいたる方法と同じ)。この方式で作られた線路としては青函トンネルがあります(青函トンネルには、新幹線用の線路を引く準備がされていて、新幹線と在来線が共用できる準備ができています。新幹線が函館まで延伸すれば、青函トンネルには、勿論、新幹線電車が、200km以上で走ります)。また、北越急行と湖西線は全線高架で踏切がないため、特別の許可を得て特急が時速130km以上の最高速度で運転をしています(一般の在来線では最高速度は時速130km)ので、「準スーパー特急」方式の線路ともいえます(青函トンネル、北陸トンネル内も同様)。
 というわけで、現在開業中の九州新幹線が当初「スーパー特急」方式で開業したのはそれなりの理由がありました。というのは、鹿児島本線の熊本以南は高速化が進んでおらず、また、高速化するのにも線路を抜本的に敷き直す必要がありました。それなら、新幹線規格で新規に線路を作って、当座は在来線の特急をその線路の上に走らせて、博多から熊本まで新幹線が延びたときに新幹線用の線路に引き直せば、そのまま九州新幹線の延長線として使用できるからです(新聞記事にもあった長万部−札幌間をスーパー特急でというのもこの発想です。北海道新幹線の事前着工区間を在来線特急用専用線として先行利用しようというものです)。で、現実は博多からの延長が確実になったので、先行的にフル規格として開業したのです。

11キラーカーン:2008/12/24(水) 22:54:54

 上で少し触れました「フリーゲージ・トレイン(軌間可変列車)」というものもあります。これは、ミニ新幹線が、「新幹線電車の在来線への直通」という観点から作られたものに対し、「在来線から新幹線への直通」という観点で作られたものです。「フリーゲージ・トレイン」の本来の意義は特殊な台車を使うことにより、「異なる軌間(例:新幹線⇔在来線、京浜急行⇔東京急行、阪急⇔南海)」の間を直通できる鉄道という意味です。有名な例が、フランスとスペインとの間を走る「タルゴ」という列車です(但し、タルゴ本来の意味は「(特殊な車両構造の)軽量客車」というくらいの意味で、軌間可変機能は、その特殊な車両構造を生かした「おまけ」でしたが、現在ではその「おまけ」のほうが有名になってしまいました)。
 この方式を使えば、ミニ新幹線のように(その代償として、「在来線」との直通が不可能になります)わざわざ線路の幅を変えるという工事をしなくても新幹線と在来線との間の直通運転が可能となります。つまり、新幹線の途中駅に、在来線との連絡線と軌間変更装置をつければ、現状のミニ新幹線と同じ効果を生み出すことができます。また、在来線の特急でも、一部を新幹線の線路を走ることにより、大幅な時間短縮を図ることが可能です。例えば、大阪駅発(西明石−新山口駅間新幹線)山口行きや大阪発(西明石-博多駅(将来は新鳥栖駅)間新幹線)長崎行きという特急列車の設定も可能となります。現実的な可能性として取りざたされているのは、岡山経由の高松(松山)・米子行き、小倉経由の大分行き、(整備新幹線の成り行きによっては)新鳥栖経由の長崎行きというものです。白紙的には名古屋から北陸、伊勢志摩方面への直通も考えられるのですが、東海道新幹線の運転本数が多過ぎて、乗車定員の減るフリーゲージ・トレイン(フリーゲージ・トレインも在来線区間を走る以上、ミニ新幹線と同じく、大きさは在来線の特急列車と同じになり、新幹線電車より一回り小さくなります)を走らせる余裕はないということです。

12キラーカーン:2008/12/24(水) 22:55:17
新幹線か航空機か
 新幹線の主たる競争相手は航空機です。で、鉄道VS航空機の戦いでどちらが有利になるかという一応の目安が、経験則的に「3時間」といわれています。つまり、鉄道で3時間を切る区間であれば鉄道が有利。それより遠距離であれば航空機が有利ということです。しかし、個別の例では、空港の立地条件などで前後します。
 例えば、伊丹空港、福岡空港という全国でも屈指の都心アクセスを誇る両空港を擁する(それに加えて、新大阪駅が大阪の「都心」より離れていることもあり)大阪−福岡間では、「のぞみ」が2時間30分を切っても鉄道側の苦戦は免れませんが、それよりも空港の立地条件が劣る東京−広島間では、「のぞみ」で3時間以上かかっても新幹線と航空機は互角の勝負といわれています。ちなみに、東京−福岡間では時間的な側面や福岡空港の立地もあり、新幹線は基本的に勝負になりません。
 この法則から言えば、東京−大阪間は「のぞみ」開業時で勝負がついたということになるのですが、輸送需要があまりにも多いので、新幹線、航空機、果ては高速バスまで算入しても「分け前に与れる」という状況になっています。

 この法則に照らし合わせれば、新幹線化すべきところはある程度見えてきます。現状では3時間を越えるが、新幹線化により、3時間程度あるいはそれ以下にまで時間距離が短縮できる区間ということになります。とすれば、輸送需要等からの関係上、現状での候補は
・北海道新幹線(札幌まで)
・九州新幹線(鹿児島ルート。長崎ルートは目的による)
・北陸新幹線(東京・上野−金沢)余裕があれば、北陸新幹線(新大阪・金沢)
・第二東海道新幹線(いわゆるリニア新幹線)
といういわゆる建設中の整備新幹線ということになります。その意味では、現状の整備新幹線の建設というのは間違っていません。あと、考えられるのは、上越新幹線の新潟駅からミニ新幹線あるいはフリーゲージ・トレインで(東京駅から3時間圏内まで)北上させるというところでしょう。

13キラーカーン:2008/12/24(水) 22:55:34
この中で、「三時間の法則」との観点から、一番熱いのは北海道新幹線です。羽田−千歳間の空路は世界屈指の輸送量を誇る路線であり、新千歳空港は札幌から少し離れています。また、冬季には雪の影響で飛行機の欠航や遅延ということもあるので、航空機の運行の安定性は磐石のものではありません。
 このように、新千歳空港の立地条件及び気象条件から、冬季の運行安定性も含めれば、東京−札幌間は新幹線で4時間を切れれば航空機と勝負になるのではないかといわれています。そして、勝負するに足るだけの需要もあるといわれています。また、技術的にも東京−札幌間は鉄道で4時間を切ることが可能というところまできています。

 九州新幹線については、現状でも新八代乗継で博多−鹿児島中央(旧西鹿児島駅)間は3時間を切っていますが、乗り継ぎがなくなる効果は大きなものがあります。そのため、現在でも、福岡−鹿児島間には1日10便の航空機がありますが、鹿児島空港の立地条件から、博多−鹿児島中央間の新幹線が全通すれば、航空機は勝てないでしょう。また、大阪−鹿児島間3時間40分程度になると見込まれますので、大阪−鹿児島間の直通旅客の航空機から新幹線への転移がある程度見込まれるでしょう。
 長崎ルートについては、現状の在来線でも博多までは3時間を切っていますので、対博多では新幹線化の意味はありません。大阪からの直通客を取り込むという観点からすれば、大阪−長崎間は3時間強になるでしょうから、それなりの意味はあると思います。

 北陸新幹線については、東京−金沢間が3時間を切るようになりますから、相応の意味はあると思います。そして、現状でも3時間を切っていますが、大阪-金沢間も新幹線化すれば、万が一の際の東海道新幹線の迂回路として機能します。(北陸新幹線周りで、東京−新大阪間は3時間30分から3時間45分くらいで結ばれる見込みですから、いざという時の迂回路の所要時間としてもまずまずだと思います。
 
この観点からすれば、県庁所在地(中心都市)が新幹線から少し離れている新山口−山口駅間をミニ新幹線かフリーゲージ・トレインで「新幹線化」するということもありえます。更に言えば、鹿児島中央から宮崎、小倉から大分への新幹線の直通も岡山からの(高松(、松山、徳島)、米子(、鳥取、松江)も同様の方式で新幹線が直通することも将来的には検討の俎上に上るでしょう。

 ということで、整備新幹線が開業すれば、ざっと
羽田−千歳便の半分
羽田―青森便の2/3
羽田−三沢便の2/3
羽田−小松便の2/3
大阪−長崎便の2/3
大阪−鹿児島便の2/3
福岡―鹿児島便の2/3

くらいの国内線が休止に追い込まれます。実例を挙げれば、山形新幹線の開業で、羽田−山形便は廃止に追い込まれ、羽田−秋田間では新幹線対航空便はほぼ5分5分の勝負といわれています。言い換えれば、その分羽田空港の発着枠が「開く」ということを意味します。言い換えれば、新幹線網の整備により、羽田の発着枠を空けるという副次的効果もあります。
 で、物流との観点から言えば、現状で唯一の24時間国際空港である関西国際空港にはJR在来線と南海が既に乗り入れていますが、そのJR線に貨物列車を走らせる、建設費のめどがつけば、新大阪駅の東海道新幹線の留置線から大阪湾岸に新幹線を延長して新幹線を関西国際空港に乗り入れさせ、航空貨物便は関西国際空港に集中させるという方策も「将来の夢」としてありえるかもしれません。
 よく言われているのは、アジア各地から短距離国際便を飛ばして関西国際空港をハブ空港とすべきという意見で、これは白紙的には王道を行く活用方法なのですが、そのために必要な着陸料の設定等々の「営業施策」で仁川(阪神競馬場のあるところではなく、ソウル近郊の国際空港)やシンガポールに負けているというところです。関西国際空港の都心アクセスが悪いといわれますが、実際は羽田並みのアクセスを誇っています。

14キラーカーン:2009/03/09(月) 22:14:17
昨今、ある「政府高官」の発言が問題となって、「政府高官」とは誰かということが話題になりました。オフレコの懇談で、発言者をあいまいにすることで、取材する側も「本音に近い」談話を引き出せるという利点があるので、これまで慣用的に使われてきたものです。
 一般的には

政府首脳:官房長官
政府高官:官房副長官
政府筋 :首相秘書官、(首相補佐官も?)内閣官房の高官など、それ以外の総理を補佐する役職の人々

○○省首脳:○○大臣(+副大臣も?)
○○省幹部:○○省の次官、局長級
○○省筋 :それ以外の○○省の人

消息筋  :その組織の「中の人」ではないが、その組織の事情に詳しい人

 他は上を参考にして推測してください(在京外交筋など)
 ただ、これで、オフレコといっても「通り一遍」の談話しか取れなくなるでしょうね

15キラーカーン:2009/03/25(水) 00:39:04
伊丹、関空、神戸の3空港の将来という関西の航空政策の話ですが、個人的な意見としては
1 関空をメイン空港
2 神戸をサブ空港(LCC:低価格航空会社向け空港)
3 伊丹は首都圏災害時のバックアップ機能+関西災害時の各地からの物流拠点
ということが最適だろうと思います。
理由を以下述べます。

 現状でも関空の空港としての絶対的能力は日本で3本の指に入ります。運用時間、滑走路といった関空のカタログ上の能力は日本で1番といっても過言ではありません。
 日本の主要空港で3000m以上の滑走路を複数持っているのは関空の他には新千歳と羽田だけで、かつ、完全な24時間運用可能な空港は日本では関空だけです。部分的に24時間運用可能な空港は新千歳、羽田、中部空港(この他に那覇、北九州両空港)しかなく、しかも、空港整備や騒音の関係で24時間運用はなされていません。

 関西3空港及び日本の主要空港の滑走路は次のとおりです。
(ちなみに、関 西空港:4000m+3500mの2本)
      伊 丹空港:3000m+1800mの2本)
      神 戸空港:2500m1本)
      成 田空港:4000m+2500mの2本)
      新千歳空港:3000m+3000mの2本)
      羽 田空港:3000m×2+2500mの3本)
      中 部空港:3500m1本)
      福 岡空港:2800m1本)

空港アクセスも、関空からノンストップで行けば
関空−天王寺30分
  −なんば30分
  −梅 田45分
  −新大阪60分

は十分可能で、羽田と比べてもそんなに悪くはないです。

(ちなみに、羽田−品 川20分弱)
      羽田−浜松町20分弱)

で、東京、新宿といった都心部までであれば、関空とそんなに変わらないです。
 ただ、関空の場合、乗客の絶対数が足りないため、途中駅に止まらざるを得ない(特に「ラピート」は空港特急と通勤ライナーを兼ねないと「元が取れない」という状態にあります)ため、現行では上記の時間より10分程余計に時間がかかっています。

16キラーカーン:2009/03/25(水) 00:40:06
 で、問題は、大阪北部(阪神間を含めた北摂地域)からの空港アクセスが悪くなるということです。この地域の輸送需要は新幹線に肩代わりしてもらいましょう。少なくとも、目的地が新幹線沿線であれば、大阪北部(阪神間を含めた北摂地域)から伊丹に出るのも新大阪(新神戸)に出るのもそんなに変わりはないはずです。むしろ、チェックイン等に要する時間を考慮すれば、新幹線のほうが有利です。このあたりは後述します。
 ちなみに、京都、滋賀方面からであれば新幹線を選択するでしょう(伊丹経由東京では、所要時間、料金で新幹線に勝てず、伊丹経由福岡方面では余計な乗換えと空港から都心への移動が必要になるので、これまた新幹線に勝てません。)
 国際線は、現在でも関空発着であるのでこの場合でも状況は変わりません。

 とすれば、(「沈没」問題を除いて)空港としての「基礎体力」に関して日本屈指の実力を誇る関空の能力を100%発揮させるにはどうすればよいかという問題に移ります。24時間空港という利点を生かすのであれば
・ 航空貨物
・ 深夜の乗り継ぎ便の設定
ということがまず考えられます。

 航空貨物ということからすれば、現在、東京−大阪間を貨物列車が最短6時間15分程度で結んでいます。(ちなみに、これは、東京−大阪間の在来線最速記録です。)このことからすれば、東京−関空間は7時間程度で結ぶことが可能です。これであれば、関空の新や発着枠を利用することにより、成田空港の運用停止時間(午後11時〜午前6時)の間隙を縫って東京都心部から西側の航空貨物についての「ハブ」となることもできます。

 乗客については、韓国の仁川が直接のライバルとなります。日本国内、あるいは韓国、台湾、中華人民共和国の沿岸地方の地方都市からの乗り継ぎ客を集める方策を考える必要があります。香港やシンガポールでは深夜発着便(午後11時〜午前1時)という便も結構ありますので、関空でもそのような時間帯での乗り継ぎ便を設定できるようにする必要があるでしょう。

 そのためには、着陸料の大幅な割引が必要でしょうし、関空自体を「テーマパーク」化させて関空への「観光者」を増やす。加えて(シンガポールでも行われているように)、関空での乗継客(国内、国外からの乗客を問わず)には、大阪・神戸・関西の1日ツアーを設定するというような「営業」も必要でしょう。往復の時間も入れると、4時間、6時間、1日(8時間)というコースくらいでしょうか。JRの在来線を使えば、関空−京都間は1時間半の所要時間も可能です。

 と、関空について述べてきましたが、このことから、残りの2空港の役割を逆算すると、上述のようになります。伊丹空港周辺の人には申し訳ありませんが、伊丹空港は、関空建設当時の約束として、あきらめてもらいましょう。神戸空港については、空港の能力からいっても、空港は不便だが、運賃が安い航空会社(LCC)専用として、関空と済み分けることとしましょう。

17キラーカーン:2009/03/25(水) 00:40:30
 この問題を語るには鉄道アクセスなどについても語る必要があるのですが、別スレ(『JR、南海「なにわ筋新線」事業化検討再開について』)とも重複しますが、便宜上ここで述べます。
 結論から言えば、関空アクセスという観点からすれば、「なにわ筋新線」は必要ありません。JRなんば、南海汐見橋両駅ともターミナル駅としては立地条件が悪すぎます。また、JRは阪和線と大阪環状線との連絡線を複線化して、新大阪・梅田方面から関空・和歌山方面への直通本数を増やす準備をしています。
 現在、大阪環状線では、「大阪−西九条−天王寺」間の運転本数は「大阪−京橋−天王寺」の半分です。その空いたところを利用して、「はるか」、「くろしお」、「関空快速」といった環状線−阪和線直通電車が運転されています。これまで、環状線−阪和線の連絡線が単線だったため、その増発のネックとなっていたのですがそれを複線化して解消しました。(現実には天王寺駅の阪和線ホーム発着電車との調整が必要になるので、完全な解消ではありません)。これで、1時間3〜4本程度は運行できます。
 それでも、増発の余地がなくなれば、環状線−関西本線直通の快速を「おおさか東線−JR東西線」に振り替えて、増発余地を捻出する方法も残されています。
 また、梅田付近の「はるか」が通る線路も地下化される予定ですので、合わせて複線化と西九条駅の配線の改良を行えば若干のスピードアップも可能です。
 
 一方、ラピートをなにわ筋線に振り返るということは、なんば発着をあきらめるということになるので、南海にとっても不利です。もし、地下鉄で南海が北上するのであれば、なんばパークス辺りから地下にもぐる別線を作って、近鉄難波駅の真下に「別線なんば駅」を建造して、そこから北上を目指す(可能であれば、阪急と乗り入れか十三の地下まで延伸)ということくらいまでしないと南海にとってうまみはないでしょう。

 どうしても、なにわ筋新線を建設するのであれば、需要からして長堀鶴見緑地線と同じミニ地下鉄方式で、南海汐見橋線と相互直通させるくらいでしょうか。

 ちなみに、JRと南海、阪急、阪神、近鉄は直流1500V、パンダグラフ方式で、線路の幅が異なっても大阪市営地下鉄(直流750V第三軌条方式)よりは相互直通はしやすいです。(阪急の線路(標準軌)の間に狭軌の線路を引けばよいだけです。厳密には、ATCの方式もからみますがこれも解決可能です)

 今月には「阪神なんば線」が開業して、神戸と難波が直結します。これで、神戸となんばが最短で30分くらいで結ばれるでしょうから、阪神(近鉄)⇔南海(ラピート・空港急行)の乗り換えをスムーズに行く(エレベータやエスカレーターで一回上り下りすれば乗換えができる)ような駅の位置にすれば、
JR:関空−天王寺、梅田、新大阪、京都
南海:関空−なんば、神戸、奈良(+阪急)
という住み分けが可能となります。

 資金に余裕があれば、現在、新幹線新大阪駅の新神戸方にある引き上げ線を延長して、大阪湾岸から関空へ延長させるという方法(越後湯沢−ガーラ湯沢、博多−博多南方式)もあるのですがこれは「夢物語」としておきましょう。これができれば、京都はもとより、岡山(場合によっては広島)から関空へ直接乗り付けることも時間的には可能となります。更には、「ドクターイエロー(新幹線の終電から始発の間に走る保線用の特別電車)」に貨物電車を併結すれば、東京まで3時間足らずで到着できますので、関空深夜着の貨物便でも成田到着便と充分勝負になるでしょう。

18キラーカーン:2009/04/14(火) 22:22:59
今年は、5月だけではなく、9月にも5連休が発生します。ということで、ちょっとした小ネタを。

ここで話題にする祝日法ネタは主に
1 国民の休日
2 振替休日
3 いわゆる「ハッピーマンデー」
の3つです。かつて、5月4日は平日で、「国民の休日」経て、現在は、「みどりの日」となっています。これは、祝日法で、「祝日と祝日の間は休日」とするという規定があって、この規定が適用されるのは長らく5月4日だけでした(「憲法記念日(5月3日)」と「こどもの日(5月5日)」との間だったため)。

最近、4月29日が昭和の日となったことに伴って、みどりの日が5月4日に異動したことによって、この規定が適用される祝日はなくなったと思われましたが、「ハッピーマンデー」によって、敬老の日が9月15日から9月第3月曜日に変更になったため、9月21日、9月23日と隔日で祝日になる組み合わせが復活し、祝日と祝日との間の日である9月22日に「国民の休日」が復活することと。

あと、「みどりの日」が5月4日に異動したことによって、「振替休日」と祝日が重なる場合が生じることとなりました(「憲法記念の日」あるいは「みどりの日」が日曜日になった場合。なお、「国民の休日」は祝日ではないので、日曜と重なっても振替休日の恩恵はありません)。そのような場合、振替休日と平日が重なる最初の日が振替休日となります。今年がその規定が適用される最初の年となります。

ここで問題です。では、5月1日が何らかの名目で祝日となった場合、GWはどうなるでしょうか。この場合は、「祝日と祝日の間の日は国民の休日」という規定によって、4月30日と5月2日の2日が「国民の休日」となります。つまり、
・4月29日が土、日曜日であれば、前後の土日とつながるので9連休
・4月29日が月曜日であれば、4月27日(土曜日)から5月6日(振替休日)の10連休
・4月29日が火、水曜日であれば、4月29日から5月6日(振替休日)の8連休
・4月29日が木、金曜日であれば、4月29日から5月5日までの7連休
となります。

ということで、5月1日を何らかの名目で祝日にしてしまえば、問答無用のGWが発生するわけです。とすると、どのような名前の祝日にするかですが、昔々、「メーデー」にすればよいという新聞記事を見たことがあります。「メーデー」だと「労働組合」等々政治臭が強くなるので、労働つながりで「勤労感謝の日を」5月1日に移動させて、11月23日を「収穫感謝の日」とすれば、丸く収まるのではないかと思う次第です。

といいながら、交通機関などでは、土日祝日も営業してますから、あまり、意味はないかもしれませんが。(土日祝日の以外の休日という意味での「代休」が増えるかもしれませんが)

19キラーカーン:2009/04/20(月) 21:50:45
この件でも有利子負債の問題が焦点となっていますが、そもそも論を言えば、もはや、事業主体が交通インフラを整備することに耐えられなくなっている時代ともいえます。その意味では、道路、鉄道、空港といった交通インフラを公共事業で整備するのはある意味正解です。

但し、完全な上下分離(インフラ整備会社と運輸会社との完全分離*後述)を目指した英国の鉄道改革は相対的な失敗例だといわれていますので、その当たりの「匙加減」をどのようにするかは問題となりますが。

最早、残念ながら、関空の有利子負債を収益で賄うことは事実上不可能でしょう(それはおそらく、成田や羽田も同じといいますか、そのレベルの空港でも高騰する日本の空港建設費の負債を賄うことは不可能というのが私の直感的結論(=いわゆる「勘」レベルですが、当たらずと言えども・・・とは思います)。

関空会社についても、建設費相当分(建設費に係る有利子負債)については、国の負担になるのか。結論としては、いつの時点でいくらになるかは分かりませんが、その時期は来るでしょう。関空と比べても比較にならないほどの国際線の需要がある成田であっても、世界最高級の着陸料を徴収し、旅行者から空港施設利用料を徴収しているのです。

ということで、海外の国際空港との競争を視野に入れた日本の航空製作という観点からは、空港整備は国(+関連地方自治体)の負担で賄い、運行会社からそれなり(建設費を賄いきれないレベル)の着陸料を徴収する「上下分離方式」へ舵を切らざるを得ないのではないでしょうか。

関空の発着量を増やすということであれば、関空便での直行便を諦め、国際便の殆どを成田経由便(例:成田⇔欧州便を関空⇔成田⇔欧州)にしてしまえばいいと思います。それなら、不採算路線の便数を増やすという航空会社の負担を軽減することができます。但し、成田経由の分、関空からの所要時間は増えますが、これまでの純然たる成田乗継よりはましでしょう。

だからといって、関空廃止、神戸空港の拡充というのは下の下策だと思います。神戸空港の(交通アクセスを含めた)立地条件では、伊丹空港は言うに及ばず、新神戸、新大阪両駅にも勝てず、更には関空にも勝てません。その上で、神戸空港の拡充に伴う(有利子)負債を拡大させようというのは問題の解決にはなりえません。

そのような資金があるのであれば、それこそ、なにわ筋新線や新大阪−関空アクセス新幹線の建設にでも振り替え、そして、そのアクセス新幹線を現在の梅田貨物線上に建設して、現在の梅田貨物駅辺りに「新幹線大阪駅」を設置する等々に投資した方がより生産的です。

有利子負債の局限という観点からは、現状の施設をどのように有効活用するか、言い換えれば、関空をどれだけ有効活用できるかということにかかっています。
ここから上下分離の解説ですが、分かりやすいので鉄道(いわゆる「路面電車」を除きます)を例にして話をします。

20キラーカーン:2009/04/20(月) 21:51:11
鉄道を敷くには国交省から免許を得る必要があるのですが、その免許には3種類あります。
第1種免許:自ら鉄道を敷いて、列車の運行を行う
第2種免許:他の会社が敷いた鉄道で列車の運行を行う
第3種免許:鉄道を敷くだけで、列車の運行は他の会社に任せるもの
(ちなみに路面電車(大阪市営地下鉄を含む)はこれとは別の許認可体系となっています)

日本では、多くの鉄道が1種免許を取得していますが、最近は、鉄道会社が線路の建設費の負担に耐え切れないことから、線路敷設(インフラ整備)会社が3種免許を取得し、運営会社が2種免許を取得する例が増えています。

最近大阪で開業した、JR東西線、京阪中之島線、阪神なんば線もこの方式で建設されています。(阪神なんば線といっても、線路や駅が阪神の所有物では「ない」。第1種免許(阪神本線)の場合は線路も駅も電車も同じ会社(阪神)の所有物)

この、インフラ整備と運行を別会社として分離することがいわゆる「上下分離方式」といわれるものです。この代表例として長年言われてきたのが神戸高速鉄道だったわけです。

神戸高速鉄道は、車両を一両も持たない、線路と駅だけを保有する(しかも殆ど地下)会社だったので、文字通り「トンネル会社」といわれたことがあります。ただ、神戸高速鉄道は、当時の法制度上(当時は、鉄道免許といえば、第1種だけで第2種、第3種免許というものはなかった)の制限と乗り入れ会社が4社なので、運賃計算上は別会社となっていることから、「線路とその上を走る電車が別会社」というのが外部からも分かりやすいのですが、上述の例では、乗り入れする鉄道が1社だけなので、運営側が第2種免許を取得して運賃計算上は「同一の会社」として扱っています。

なお、良く似たものとして「相互乗り入れ」というものがありますが、これは、単に、電車が会社の境界駅で折り返すことなく、そのまま別会社に運行していくことを指すもので、相互乗り入れ先の会社の第2種免許を取得しているわけではありません。あくまで、車両は同一ですが、運行は別会社が行っているという論理構成となっています(例、北大阪急行と地下鉄御堂筋線、阪急と地下鉄堺筋線)。したがって、運賃は通しではなく、境界駅で分割して計算されます。

そして、現在、神戸高速鉄道のような第3種免許を持っている会社は線路や駅というインフラ部分だけ整備、保有、維持して、電車の運行は、阪急、阪神、神電、山陽の各社のような第2種免許を持っている会社が行っています。注意してみれば分かりますが、相互直通の場合には境界駅で乗務員(運転士と車掌)が入れ替わります(乗務員が入れ替わらないという方式も可能です)が、第2種−第3種方式では、乗務員は入れ替わりません。

ただし、東京では、初乗り運賃の重複により運賃が割高となるのを避けるために、乗り入れ先の第2種免許を取得して運賃の通し計算を可能にしているという例があります(東京メトロ南北線白金高輪−目黒間:乗り入れる都営地下鉄が第2種免許を取得。但し、目黒から先は東急目黒線で、東京メトロ、都営地下鉄双方とも、東急目黒線の第二種免許は取得していませんので、東急目黒線との運賃の通算はできません)

と長々と話をしましたが、交通インフラの整備には多額の費用がかかることから、交通機関を問わず、このような上下分離方式の例が、最近、増えてきました。それは、道路についても建設国債という「借金」で道路も作られているという、一種の「上下分離方式」によって建設されています(道路特定財源については、建設費を自動車保有者(この場合は、バス会社や輸送会社)が実質的に負担しているので上下分離方式ではないという論理構成も可能ですが)。

21キラーカーン:2009/04/20(月) 21:51:39
関空アクセス鉄道ですが、先般、関西の財界人の集まりで、なにわ筋線の新空港アクセスの観点からも建設が必要との見解が出されたようですが、私は、その点からは懐疑的です。

確かに、梅田からの関空アクセスは良いとはいえません。「はるか」のおかげで新大阪からのアクセスの方が良いくらいです。それでも、時間がかかりすぎているという印象をもたれているので、新線を建設してということであっても、なにわ筋線ではまさに「筋が悪い」ということです。

なにわ筋線とJR、南海との接続駅はそれぞれ、JR難波(旧湊町)駅、汐見橋駅ですが、この両駅とも、立地条件の悪さから、都心ターミナル駅としての役割は既に終えています。

それでも、JRは新大阪(京都)方面は「はるか」梅田及び大阪市内はなにわ筋線を走ると思われる「関空新快速(仮称)」という振り分けが可能ですが、南海は「なんば駅」を見捨ててラピートをなにわ筋線に直通させるということは多大なリスクがあります。せっかく、阪神なんば線が開業して神戸、奈良方面の旅客を取り込めるチャンスをみすみす逃すことにもなります。

それでもというのであれば、南海側は
1 岸里玉出駅でなんば発着となにわ筋線直通の「ラピート」を分割併合させる
2 「ラピート」と一般車を併結して、「ラピート」は現行の停車駅しかドアの開閉(客扱い)を行わない(一般車は空港急行停車駅でドアの開閉を行う)=現行の「サザン」方式の変形を行い、現行の「ラピート」、「空港急行」を2分割して、なんば方面となにわ筋線方面とに振り分ける
という施策を迫られます。どちらの方策を採るにしても、岸里玉出駅の大改良工事が必要(現在は汐見橋支線と南海本線との相互乗り入れは不可能な構造になっています)。
現実的なのは、「2」だと思いますが。

一方、JR側といえば、なにわ筋線に電車を振り分けなければならないほど大阪環状線(天王寺−西九条−大阪)が混雑しているわけではありません。また、阪和線⇔大阪環状線の連絡線を複線化して直通電車の増発に備えています。更にいえば、奈良−天王寺−大阪−(この間各駅停車)−天王寺という直通快速を関西本線(奈良−加美)⇔おおさか東線⇔JR東西線というルートに振り替えて、関空−大阪(新大阪)間の電車の増発余地を捻出することも可能になりました。

ついでに言えば、JRをなにわ筋線に直通させるということはその分天王寺−新今宮間の電車本数がその分純増になります。その観点から言っても、関空−阪和線−関西線−JRなんば−なにわ筋線というのはJRにとってうまみがあるとも思えません。

大阪市内の南北方向の交通という観点からなにわ筋線は必要なのかもしれませんが、関空アクセス鉄道という観点からすれば、現行の手直しで何とかなると思います。それでもというのであれば、大阪(梅田)駅から関空へのアクセス時間を劇的に短縮するとともに、南海との相互直通は実現して更には阪急(宝塚線)との直通も視野に入れるということしかないでしょう。

阪急と南海では、線路の幅以外は克服できる差ですから、極論すれば、なにわ筋線に阪急用と南海用と都合4本のレールを敷設すればよいだけです。ちなみに空港アクセスも、関空からノンストップで行けば
関空−天王寺30分
  −なんば30分
  −梅 田45分
  −新大阪60分
位は現状でも十分可能です。

22キラーカーン:2009/04/20(月) 21:51:51
また、「山形新幹線」開業当時の調査によれば、乗り換え1回の負担は乗車時間に換算して15分〜30分程度とのことですので,乗換えを無くすだけ(≒相互直通)でもかなりの効果があります。その意味で阪神なんば線の開業は神戸−関空間の移動(つまり、関空着の外国人観光客への「観光地」神戸へのアクセス改善)について神戸のチャンスだと思います。

24キラーカーン:2009/05/11(月) 21:21:15
結論を言えば、関空の機能を神戸で肩代わりするには現在の2500m級滑走路では不可能です。つまり、国内線専用空港として建設された神戸空港は国際空港として建設された関空の代替機能を持っていない。したがって、神戸空港の動向に関係なく、関空は存続させざるを得ない。

関空は現状の設備で30年持てば上等でしょう。それだけの期間が経過すれば、関空に関して何らかの「抜本的対策」を考えざるを得ませんから。したがって、「沈没」が問題であれば、解決策を練るだけの時間は十分にあり、現状では主要な問題としなくてもよいと思います。

確認しておきますが、日本における主要空港(含神戸空港)の滑走路は次のようになっています。
関 西空港:4000m+3500mの2本
伊 丹空港:3000m+1800mの2本
神 戸空港:2500m1本
成 田空港:4000m+2500mの2本
新千歳空港:3000m×2の2本
羽 田空港:3000m×2+2500mの3本
中 部空港:3500m1本
となっています。

ジャンボやA380というような大型機の運用(代表例:747、777、A380)やわが国からノンストップで運行している最長距離になる米国東海岸(ニューヨーク、ワシントンなど)、欧州直行便の運行を念頭に置けば、わが国を代表する国際空港の滑走路の長さは3500m以上欲しいところです。

この時点で2500mの滑走路しか持たない神戸空港はすでに能力不足です。ある程度の国際線を運行するためにも、最低でも3000mは欲しい。福岡(2800m)の国際線で最長路線はシンガポール便であり、現在、東南アジア以遠への直行便はありません(過去には、ニュージーランドや米国西海岸便が存在したこともある)。

25キラーカーン:2009/05/11(月) 21:21:47
ということで、当初から国際空港を目指していた成田、関空、中部各空港は3500m以上の主滑走路を擁しています。国交省が羽田の国際化を拒否している理由のひとつとして、羽田の主滑走路が3000mしかないこと(=国際線空港の主滑走路として運用可能だが万全な能力ではない)を挙げているといわれています。そして、成田の第2滑走路(2500m)も主滑走路の完全代替ではなく、近距離国際線の肩代わりを目的としています。

日本−中国、韓国、東南アジア線であれば、ジャンボやA380を使わなくても767に代表される中型機で対応可能な路線ですから2500mで何とかなりますが、大型機、欧米直行便であれば2500mでは能力不足です。それは、上述の福岡就航便を見ても明らかです。

繰り返しになりますが、関空の旅客需要を神戸で肩代わりするには現在の2500m級滑走路では不可能です。つまり、国内線専用空港として建設された神戸空港は旅客、貨物双方において、国際空港として建設された関空の主滑走路(4000m×2)の代替機能を持っていない。

また、国内線にしても、伊丹空港より悪い神戸空港の立地条件・アクセスでは、ドル箱の対東京(羽田)、対福岡便も新幹線の新大阪駅、新神戸駅相手に苦戦するのは確定的です。そもそも、東京−大阪・神戸間、大阪・神戸−福岡間で新幹線の所要時間は3時間を余裕で切っているのです。本来、伊丹空港の立地条件でも新幹線(のぞみ)相手には勝てないのですが、需要が多すぎるために航空便残っています。

新幹線と競合関係のなく、それなりの旅客も見込める札幌、那覇便(甘く見て仙台まで)であれば何とかなるでしょうが、それ以外は厳しい(本来、神戸空港の後背地として見込まれる姫路、明石方面の旅客は最寄り駅から新幹線を利用する)でしょう。

九州新幹線が鹿児島まで全線開業すれば、対福岡のみならず熊本、鹿児島でも神戸空港では劣勢に立たされます。長崎新幹線まで開業すれば、対九州で勝負できるのは宮崎(甘く見て大分)に絞られます。

26キラーカーン:2009/05/11(月) 21:22:25
ちなみに、宮崎県は鉄道、道路網が貧弱なため、対福岡であっても、長距離交通を航空に頼らざるを得ない事情があることから宮崎空港は「最強の地方空港」ともいわれています。このことが、東国原知事がなんと言われようと道路整備に熱心な理由ともなっています。

というわけで、どの道、神戸空港が関空の完全代替空港となりえない以上、神戸空港は関空は共存せざるを得なくなります。このことを前提として神戸空港が生き残る方法を考えれば、豪州のジェットスターに代表されるような近距離国際線{中国、東南アジア、豪州のLCC(低価格航空会社)}専用空港(場合によっては、国内線のLCC(スカイマーク、スターフライヤーなども含めて)として「空港は不便だが、安い航空便(国内線、国際線双方)に乗れる」空港として独自性を発揮するしかないでしょう。

伊丹空港については、近くの伊丹市に陸上自衛隊の中部方面総監部という北陸、東海、近畿、中国、四国の各地方を管轄下に置く司令部(と近畿地方を管轄におく第3師団の司令部)があることから、阪神大震災級の災害が発生した際に陸上自衛隊(大阪府庁)による臨時の災害指揮所、物流拠点(航空機、ヘリで各地に連絡が可能であり、3000mの滑走路もあるので軍用機の運用も可能です)。

場合によっては、各国からの救援物資を空輸によって直接受け入れることが可能で、そこから、自衛隊によって、空路、ヘリによって被災地に迅速に配達することもできます。さらにいえば、関東大震災級の災害が首都圏を襲ったときに、立川の防災基地も機能しなくなるという場合の「バックアップ」としても機能させることができます。

したがって、伊丹を「廃港」にし、かつ、空港機能はそのままにしても十分存在意義はあります。それではあんまりということであれば、八尾空港にある自衛隊の航空部隊を移転させ、平時から運用することによって「遊休地」化を避ければよいでしょう。

27キラーカーン:2009/05/11(月) 21:22:40
空港アクセスについていえば、最近の「エコ」の流れから行って、道路ではなく、鉄道整備をメインにすべきでしょう。和歌山方面からのJR、南海の乗り入れは過去に実績があり(紀勢本線の電化に伴い廃止)、和歌山市−和歌山駅間の電化をすれば、南海電車の紀勢本線乗り入れは可能です。現状でも、ディーゼルカーを使えば相互直通は可能です。

問題は、和歌山以南の紀勢本線の線形改良です。現在は、「くろしお」、「スーパーくろしお」というような急カーブが多い紀勢本線に対応した振り子電車が走っていますが、現状の線路ではこれ以上のスピードアップは困難です。ということで、カーブの多い区間については、特急専用の線路(自動車道路で言う「高速道路」あるい「バイパス線」)を作って、その区間だけは湖西線のように在来線でも160〜200kmで走行できるようにすれば、所要時間を劇的に短縮できます。特急専用であれば、単線ですみます。

理論上、この「バイパス線」を特急が15分未満で走り抜けられるのであれば(現状の在来線の最高速度で約30km、160km/h運転であれば40km未満)、上下あわせて30分に1本の特急列車を走らせることができます。単線ですむのであれば、建設費は抑えられます。また、土地単価の比較的高い市街地を買収しなくても済みます。これなら、高速道路を一から全線を整備しなくても一部の整備で済みます。

大阪市内側で言えば、資金的な問題を度外視すれば、なにわ筋線ではなく、なんばパークス辺りから南海本線の地下別線を作って、近鉄の大阪難波駅の真下に「別線なんば駅」を作って、近鉄・阪神⇔南海の乗換えを便利にする乗り換え動線を設定し、なんば以北は「第2御堂筋線」として北上して、梅田を経由して、そこから地上に出て新大阪駅に接続するということになるでしょう。

阪急と南海は線路の幅を除いてはそれほどの差はありませんので、梅田−新大阪間は、4(3)線方式によって十三から阪急の新大阪連絡線に乗り入れるという方法もありえます。なお、現在開発中の車輪の幅を変えられる「フリーゲージトレイン」が実用化されれば、文句なく直通できます。さらに「妄想」モードでいえば、新大阪から、神戸方にある引き上げ線を延長して東海道新幹線を関空まで延長するということも考えられます(博多−博多南駅方式)。

こうすれば、東京⇔新大阪間の新幹線を関空まで延長させて、米原当たりまでの旅客を奪うことは可能ですし、山陽新幹線からも乗り入れさせれば、岡山あたりまでカバーすることも可能になります(現状の配線でもそれは十分可能)。

事実上可能性はないですが、そこから、紀州新幹線、紀淡海峡を通っての四国新幹線という足がかりにもなります。(鳴門大橋は構造上、強度上新幹線用の線路を敷設することができるようになっています。瀬戸大橋も同様)

深夜に新幹線貨物列車を「ドクターイエロー」と併結すれば、関空−東京間が3時間以内で結ぶことが可能(また、新大阪駅で方向転換になりますが、神戸、博多方面からの直通も可能)となりますので、深夜に運行できない成田や羽田の間隙を縫って対東京の空輸便も扱うことが可能です。

もはや、交通インフラ(特に骨幹インフラ)は一企業でまかなえるものではありません。インフラ整備は公共負担で、運用費だけは運営会社に任せるという「上下分離」という方法に向かわざるを得ないでしょう。もちろん、建設費も償還できればそれに越したことはありませんが、それを求めるのは酷でしょう。

そのため、欧州各国の鉄道では国鉄や市営(公営)というものが多く、日本のように私鉄が発達しているところはありません(顕著な例外はスイス)。鉄道整備を民間資本に頼った米国では鉄道は斜陽産業(米国の鉄道輸送は、旅客ではなく貨物輸送のほうが主体)になっています。このため、長距離旅客鉄道部門は各私鉄から切り離され「アムトラック」という別企業体を作って運営(線路は基本的に各鉄道会社のものを使用:JR貨物方式)しています。

28キラーカーン:2009/05/13(水) 22:45:54
というわけで、南海がメリットのある形で、梅田まで延長させるにはハードルがあまりにも高いので、関空アクセス鉄道としての、なにわ筋線(を含めたJR在来線及び南海の新線整備)は必要ないというのが現在の私の見解です。南海汐見橋駅(とJRなんば駅)が都心ターミナル駅としての使命を終えている現在、南海が難波駅を見捨てて、「ラピート」をなにわ筋線に振り替えるメリットはありません。

つまり、阪急からの旅客を取り込むくらいのことをしなければ南海にとってメリットはない。そして、このような多大な投資をするのであれば、「乗換抵抗」(後述)を局限して、路線延長効果を最大限に教授できる態勢を構築しない限り南海はメリットを感じることはないでしょう。

究極的には直通で、この場合、南海の「片乗り入れ」で済みます。つまり、阪急はなにわ筋線に乗り入れる必要はない。さらにいえば、JRはなにわ筋線に「はるか」と関空快速を振り分けなければならないほど現在の路線が混雑しているわけではない。おおさか東線、JR東西線の活用も可能。

ちなみに、交通の分野では、「乗換抵抗」と言う用語がありまして、乗客の乗り換えのための負担は、時刻表上の乗り換え時間よりも長く感じる(負担に感じる)じます。
山形新幹線の場合、その「負担」分は乗車時間に換算して「30分」に相当すると言う調査結果もあります。

さらに言えば、この「乗換抵抗」があるため、航空機での所要時間が短くても、鉄道で乗換なしで3時間までの距離なら鉄道が航空機に対して優位に立てるという「鉄道3時間の法則」が成立するのです。(この場合は空港アクセスなので、厳密に言えば、この法則の守備範囲ではありませんが、「乗換がなくなる」ことの典型例です)

東京−大阪間で言えば、
航空機:所要1時間(羽田ー伊丹)
新幹線:所要2時間半(東京−新大阪)
と言うように、羽田(伊丹)までの移動(乗換)を強いられる負担は「1時間半」に相当します。

それでもというのであれば、「ラピート専用ホーム」を近鉄・阪神の難波駅の直下に新設するくらいでしょう。JRはダイヤ編成上のネックである西九条−新大阪駅の間の改良でしょう。

そのばあい、なにわ筋線は「ミニ地下鉄(=長堀鶴見緑地線:リニアモータ)」方式で建設して、建設費を安く上げ、あわせて汐見橋線もミニ地下鉄方式に変更した上で相互乗り入れし、最終的には(OTSのように)大阪地下鉄に譲渡すると言うことも視野に入れてもいいかもしれません。

29キラーカーン:2009/05/13(水) 22:46:22
関空はいわれているほど、アクセスは悪くないのも以前の投稿のとおりです。再掲しますが
関空−天王寺30分
  −なんば30分(35〜40分)
  −梅 田45分(65分)
  −新大阪60分(55分)
はノンストップであれば十分可能です(カッコ内は現状ダイヤ)。
(ちなみに、羽田−品 川20分弱)
      羽田−浜松町20分弱)

それでは、ググッた結果としての、データですが(数字はすべて「約」がつきます)

在来線単線の場合必要な空間は:幅4m、高さ5.7m
(必要であれば、「車両限界」、「建築限界」で調べてください)

建設費
在来線高速化では約22億円/km
狭軌新幹線では約47億円/km

高速道路の場合
阪和道:60億円/km
舞鶴若狭道:約65億円/km

と鉄道高速化の方が安価になる可能性は十分にあります。
また、高速道路並みの片側2車線の道路を作ろうと思えば、幅は10m(2.5m/車線)くらい必要でしょう。となれば、必要とする用地買収、トンネルの容積でも単線の方がコンパクトにできます。

道路との一体整備と言うことであれば、上下2車線の道路の中央分離帯に単線の高速新線を敷設すると言う方法もあります。これなら、鉄道側は特許で済むので、道路と一体化している部分の用地買収の経費は必要なくなります。

もう少し詳しく知りたい方は「特許線」、「免許線」で検索してください。鉄道の世界ではこの2つは明確に区別されます。前者がいわゆる路面電車の敷設・営業許可に当たるものです。ちなみに、大阪地下鉄は鉄道免許ではなく、この「特許」によって敷設されています(=大阪地下鉄は、法規上、地下を走る路面電車)。

30キラーカーン:2009/05/13(水) 22:46:35
線路の幅が同じというのは鉄道の相互直通に関するひとつの条件にしか過ぎません。例えば、線路の幅が同じ東海道新幹線と阪急電車は相互直通は不可能です。現在の鉄道において相互直通に関する主要条件は

1 車体の大きさと線路用の空間との関係
2 電化方式
3 信号(保安)方式
4 線路の幅

です。
「1」については、先日、相互乗り入れを開始した阪神と近鉄ですが、電車の大きさが異なります(阪神車:全長19m、近鉄車:全長21m)。このため、御影駅では、近鉄の車両が同駅を通過する際に同駅に「触れない」ことを確認しています

(停車させる場合には、ホームと電車との間が開きすぎて危険な状態となるため、事実上、近鉄車が御影駅に停車することは不可能なため、近鉄に乗り入れる快速急行は御影駅を通過します)。

「2」については、阪急をはじめとする関西大手私鉄及びJR在来線は直流1500v、東海道新幹線は交流25000v(60Hz)ということで、新幹線の線路上では、阪急電車のモーターは動きません。その逆も然りです

「3」については、JR福知山線の尼崎駅付近での事故で有名になった「新型ATS」というものがありますが(正式には「ATS−P」といいます)、この方式に対応していない電車は新型ATSの区間には乗り入れできません。

これらの理由から、単に線路の幅が同じというだけでは車両の相互直通は無理で、「相互直通専用の電車」を決めています(他には、地下線を走る場合には、電車の前面に「避難用の扉」をつけること、実際上の理由としては、他の電車の足手まといにならない程度の性能を持つこと等々があります)。

つまり、
・ 上記「1」「2」、「3」が異なり「4」だけが同じ場合
・ 上記「1」「2」、「3」が同じで「4」だけが異なる場合
では後者のほうが相互直通はしやすいということもあります。

もちろん、現実には保線の問題、相互乗り入れ区間をどこまでにするか等々もからむので、そう簡単ではありませんが、阪急と南海では条件は後者の方に近い(ここは推測、ただし「2」は同じです)。つまり、乗り入れ区間が短距離であれば、4(3)線方式の方が簡単で経済的ということがあります。そして、そういう区間は日本を含め外国にも存在します。

数年待てば、フリーゲージトレイン(線路の幅を変えられる電車)が実用化される(現在鉄道総研で開発中)でしょうから、それまで待てば、線路の幅という問題は小さくなります。

そこまでして、南海が難波・梅田以北に乗り入れるメリットがあるかといえば、私は懐疑的ですので、結論は、冒頭のように、南海が難波以北に延長する利益はないということになります。

31キラーカーン:2009/06/18(木) 22:57:26
分量上端折りますが、Rosy America さんの

>24時間航空機を受け入れる空港を少なくとも一箇所は必要である。
>需要が限られた関西に理想の空港を押し付けたのが全ての間違いだが、
>関東に24時間空港がない以上日本として関空をしっかり維持管理しなければならない。 
>国際線と国内線を分離した行政の誤りを正すためにも、
>利用者の利便性改善のためにも、伊丹を廃し関空に集約すべきである。
>一部は新幹線に流れるだろうが、結果的に関空の収支改善になる

に基本的に賛成です。
色々言っても、日本の現役空港で一番の「理想の空港」は関空というのが悲しい現実です。

・24時間運営可能
・3500メートル以上の滑走路が複数あり、同時使用が可能
・都心(ミナミ、天王寺)まで約30分
・国際線と国内線の乗り継ぎが同一の空港で可能
(ちなみに神戸空港とは船で30分と「意外に近い」)

というところだけ見れば、これだけのスペックを誇る関空のどこが不満かと。今の日本で望み得る、まさに「理想の空港」といっても過言ではありません。

32キラーカーン:2009/06/18(木) 22:58:14
航空交通の最適化ということであれば、伊丹を廃止して、関空に集約するのが最適解でしょう。極論すれば、伊丹の代替は新大阪駅と新神戸駅(と京都駅)で可能です。「のぞみ」東京−大阪間が2時間30は普通になりましたから、もはや、伊丹でも勝負になりません。しかし、需要が大きすぎるために、飛行機でも生き残っているという状況でしょう。ただし、関空の潜在能力を生かすには、現状の施策では不十分です。

 航空貨物ということからすれば、現在、東京−大阪間を貨物列車が最短6時間15分程度で結んでいます。(ちなみに、これは、東京−大阪間の在来線最速記録です。)このことからすれば、東京−関空間は7時間程度で結ぶことが可能です。これであれば、関空の深夜発着枠を利用することにより、成田空港の運用停止時間(午後11時〜午前6時)の間隙を縫って東京都心部から西側の航空貨物についての「ハブ」となることもできます。

 旅客輸送については、韓国の仁川が直接のライバルとなります。日本国内、あるいは韓国、台湾、中華人民共和国の沿岸地方の地方都市からの乗り継ぎ客を集める方策を考える必要があります。香港やシンガポールでは深夜発着便(午後11時〜午前1時)という便も結構ありますので、関空でもそのような時間帯での乗り継ぎ便を設定できるようにする必要があるでしょう。

このような施策を行うためには、着陸料の大幅な低減、関空発成田経由の国際線の設定というような大胆な方策が必要になると思います。

伊丹については、「もしも」の際に空港として復活させたければ、そのまま残すもよし、八尾の自衛隊を持ってくるもよし、跡地を何かに開発するもよし、色々あるでしょう(ただし、騒音問題が華やかなりし頃からすれば、飛行機の騒音は格段に減っていますので、そういう「技術進歩」(=騒音が「受忍限度内」になってきたこと)が、伊丹存続論の後押しになっているとも考えられます

33キラーカーン:2009/06/18(木) 22:58:45
 ここからはアクセス(鉄道)編です。阪急電車は、十三−新大阪間の免許は持っていますので、その間の線路を敷設しようと思えば(収支の見通しなどがつけば)今でも可能です。昔は、
・十三−新大阪−淡路間
・曽根−神崎川
等々という免許も持っていましたが、ほとんど放棄してしまい、阪急が今でも保有しているのは十三−新大阪間だけだといわれています。
 新大阪駅にも阪急の駅を建設する準備はできていまして、具体的にいえば、新幹線の26番線の北側に「阪急新大阪駅」が建設される予定です。本来は、2面4線(阪急曽根駅や庄内駅のような感じ)の予定ですが、JRが26番線の北側にもホームを増設したいとのことで、一部阪急新大阪駅用の空間を流用する可能性があるといわれています。
(26番線の外側にもう1本(ホームのない通過用の)新幹線用線路を敷設するスペースはあります。その逆側にも同じスペースがあったのですが、それは現在20番線となっています)

 関空アクセスに関していえば、現状の線路状況でも、停車駅を見直せば、なんば・天王寺までは30分は楽に達成できます。問題は、梅田方面で、現状の線路状況で最大限の降下を得ようとすれば、「スーパーはくと」用のディーゼル車を購入して、

・最高速度を120km→130km
・振り子機能によってカーブの通過速度を上げる

ことによって、阪和線、大阪環状線、梅田貨物線、南海線を「ノンストップ」で爆走させるということになるかと思います。ここまですれば、関空−JR北梅田新駅(ちなみにJRにも「梅田」駅は存在し、現在は貨物専用駅)間は40分くらいにはなるでしょう。

 なぜ、「くろしお」(含「オーシャンアロー」)用の振り子電車を使わないかといえば、電車の場合、振り子電車に対応するために架線の張り方を変える必要がある(そのような対策が必要のない電車(例:JR九州の883系)もありますので、そういう電車を使う方法もあります)のですが、ディーゼル車ではその必要がなく「線路があれば」走ることができるということもありますが、「スーパーはくと」用のディーゼル車の維持整備は智頭鉄道ではなくJR西日本が行っていますので、運用上も問題ないと考えられるからです。

34キラーカーン:2009/06/18(木) 22:59:57
 とはいっても、そういう「関空特急」優先ダイヤを組むことは、快速や普通の電車の本数を削減することにもつながります(F1でいう「クリアラップ」を作る必要がある)ので、アーバンネットワークでは難しそうです。とすれば、新大阪駅の新神戸駅側にある留置線を延長して、十三あたりから阪急の直上高架で淀川を渡り、その後、地下にもぐり、西九条近辺で大阪環状線の直上高架に出てそのまま関空に直結する「関空アクセス新幹線」を作るという方法はあります。

 これなら、新大阪(北梅田新駅)−関空間は30分以内で結ぶことも可能です。また、現状の配線でも京都方面、新神戸方面から直通することが可能です(新神戸方面からは新大阪で進行方向が逆向きになります)。さらに、「貨物新幹線」を設定すれば上述のように、関東(少なくとも、神奈川、静岡)向けの航空貨物であっても、24時間空港の利点を生かして関空扱いにしても勝負することも可能です。
 また、関空から神戸空港では、現状でも高速船で30分というアクセスなので、わざわざ、陸地を迂回するよりは格段に近いです。

和歌山方面のアクセスですが、
それでは、ググッた結果としての、データですが(数字はすべて「約」がつきます)

在来線単線の場合必要な空間は:幅4m、高さ5.7m
(必要であれば、「車両限界」、「建築限界」で調べてください)

建設費
鉄道の場合
在来線高速化(複線)では約22億円/km
狭軌新幹線(複線)では約47億円/km
フル規格新幹線(複線)では約60億円/km

高速道路の場合
阪和道:60億円/km
舞鶴若狭道:約65億円/km

と鉄道高速化の方が安価になる可能性は十分にあります。
特に狭軌新幹線(いわゆる「スーパー特急」)であれば、200km/h以上で走ることは充分可能です(ミニ新幹線用車両では、新幹線区間を240km/hで走行しています。

また、高速道路並みの片側2車線の道路を作ろうと思えば、幅は10m(2.5m/車線)くらい必要でしょう。となれば、必要とする用地買収、トンネルの容積でも単線の方がコンパクトにできます。

道路との一体整備と言うことであれば、上下2車線の道路の中央分離帯に単線の高速新線を敷設すると言う方法もあります。これなら、鉄道側は特許で済むので、道路と一体化している部分の用地買収の経費は必要なくなり、鉄道敷設費は格段に低くなります。

ということで、温暖化対策などの観点から、鉄道をメインに整備した方が安上がりの可能性もかなりあります。ちなみに、在来線の表定速度では100 km/hが最速ですが、新幹線のこだまでは150 km/hくらいは出ますから、控えめにみて120 km/h 位としても、現在のくろしおが75〜80 km/hですので、鉄道高速化によって、所要時間が2/3くらいになる可能性はあります。

35キラーカーン:2009/06/24(水) 21:45:40
床屋政談(民主党のブーメラン)

「天才軍師キラーカン」とも「ピンチをチャンスに変える男」とも言われる民主党の菅代表代行ですか、氏のブログで

>日本の国家公務員法にもその102条に公務員の「政治行為の制限」が規定されている。
>イギリスの上級公務員は「国政レベルで議論になっている問題について公の場で発言し
>たりマスコミに意見を発表すること」が規則で禁止されている。しかし日本では禁止さ
>れているかどうか必ずしもはっきりしない。ここに問題がある。

と書いていますが、ここまでくると・・・です。

例えば、例の田母神氏の「論文」問題でも、論文作成・提出は「政治的活動ではない」というのが一応の政府統一見解になっているようです。つまり、田母神氏の「規則違反」は論文の部外提出時の報告義務を怠ったということだけのようです。
http://www.mod.go.jp/j/sankou/touben/170kai/syu/tou210.html
ということで、田母神氏が退官に追い込まれたのは、上司である防衛大臣が「こんな部下とは仕事ができない」と「左遷」したところ、「たまたま」定年になったというところです。

また、日本国憲法上も職業を問わず、日本国民には思想、信条の自由が保障されているというのが大前提で、職業に応じて制限がかかるということになります
http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000626.html
http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000627.html
それは、田母神氏でも同じで、田母神氏はその前提で議論をしていましたが、「武人という認識に欠ける」といった批判を受けることもありました。

で、また、民主党は、民主党の方針に従わない高級官僚にはやめてもらうということも言っていますが、そういうことをすれば、現行法制上「解雇権の乱用」にもなりかねません(田母神氏の件でも懲戒免職にはできませんでした)。

 戦前には、そういう官僚を「休職」にして、与党が変われば、現職に復帰する(と入れ替わりに、それまで現職だった人が休職になる)ということもありました。現在では、そういう理由で休職にできるかどうかも疑問です。

ちなみに、日本憲政市場最初の政党内閣といわれている第一次大隈内閣(俗に「隈板内閣」とも言われます)ですが、当時、任用資格のなかった勅任官(現在の局長級以上)に国会議員など政党の息がかかった人物を「報酬」として任命したため、次の山県内閣で文官任用令が改正されて、そのような政治人用ができる職が極端に少なくなりました(ちなみにこの文官任用令の改正で軍部大臣現役武官制が確立しました)。

このような体たらくであれば、民主党政権になっても、加藤高明内閣のように政権担当能力を認められるのではなく、第一次及び第二次大隈内閣のように「失格の烙印」を押される可能性が高くなるでしょう。

民主党の支持母体である官公労は、逆に、このような政治的行為を行なうべきだと主張しているのですが・・・

36キラーカーン:2009/06/26(金) 23:21:21
床屋政談(「ピン芸人」と首長との意外な共通点と議院内閣制)

 東国原宮崎県知事の「衆議院選に立候補するなら自分を自民党総裁候補に」という発言が話題になっていますが、この発言が計算されたものなら、氏は政治体制の何たるか、具体的にいえば、「大統領制」と「議院内閣制」との差とは何かについて、一般国民にも分かりやすい形で提示してくれました。
 大統領制と議院内閣制について簡単に説明すれば

大統領制:国家元首であり政府の長(大統領)を住民の直接選挙で選出する。議会は原則として大統領に対する不信任・解任ができない。

議院内閣制:政府の長(首相)を国会(二院制の場合、一般的には下院・衆議院)が選出する(国民から見れば間接選挙)。議会(下院・衆議院)は首相に対する不信任(首相の辞職か議会(下院・衆議院)の解散の二者択一を迫ること)ができる。その一方、首相は議会(下院・衆議院)の解散権を持つ。また、大統領制とは異なり、国家元首は別に存在する。

ということになります。この場合、名称が「大統領」、「首相」ということにはこだわりません。政府の長がどのように選出されるのかということにのみ着目したものです。

 独国をはじめ欧州には、首相とは別に「象徴元首」としての「大統領」が存在する国もありますが、そのような国は大統領制ではなく、一般的に議院内閣制の国として扱われます。また、台湾の国家元首は「総統」といいますが、この場合は同じ「総統」でも、ナチスドイツとは異なり、大統領制として扱われます(英語で台湾の総統は「president」つまり大統領)。

 実は、この中間に実権を持った国民の直接投票によって選出される大統領と議会の信任に基づく首相の両者が並立する「半大統領制」という政治形態(フランス他)という体制がありますが、専門家でも定義や分類の幅が大きくなりますので、本稿では割愛します。専門家でもなければ、半大統領制はフランス独自の体制(とせいぜい「ワイマールドイツ」)と理解していても事実上問題はないでしょう。

 海外には、議院内閣制と大統領制が機能不全に陥ったときの緊急措置としてこの制度を利用できないかと考えている専門家もいますので、日本の「政治改革」に興味がある人はこの制度を勉強しても面白いかと思います。それでも、日本に半大統領制(或いは「大統領制」)、或いはそれらの変形としての「首相公選制」を導入する場合、「大統領制」と「立憲君主制」が両立するのかという問題は依然として未解決のままです。

37キラーカーン:2009/06/26(金) 23:21:52
実は、この「大統領制」と「立憲君主制」との相克を理解する絶好の機会がこの総選挙で現出します。それは、幸福の科学、つまり、「幸福実現党」の選挙公約である憲法改正案に見ることができます。その案では

第三条
行政は、国民投票による大統領制により執行される。大統領の選出及び任期は、法律によってこれを定める。
第四条
大統領は国家の元首であり、国家防衛の最高責任者でもある。大統領は大臣を任免できる。
第十四条
天皇制その他の文化的伝統は尊重する。しかし、その権能、及び内容は、行政、立法、司法の三権の独立をそこなわない範囲で、法律でこれを定める。

 この案を見れば分かるとおり、幸福実現党は日本を共和国にして大統領制を敷いて、天皇制を廃止することとしています。もちろん、政治学的にいえば、この発想は「王道」を行くものです。天に二日がないのと同様に、異なる正統性を持つ国家元首が複数存在することはありえません(アンドラのような特殊な例外はありますが)。
 首相公選論において「そういう論点を提示する人もいる」と述べるにとどまり、正面から論じることを避けていた「天皇」と国民の直接投票によって選出される「大統領(公選首相)」とどちらが国家元首にふさわしいかというまさに「国体」に関する論点が突如として持ち上がったわけです。

 わが国の場合、国政は議院内閣制を採用しているのはご存知のとおりですが、地方自治体の知事や市町村長(合わせて「首長」ともいいます)は大統領制の地方版といってもよい制度となっています(ただし、議会の議決に対する首長の拒否権や議会による首長の不信任など、純粋な大統領制よりは首長と議会との関係が密接な場合があります。)

 このことは、行政の執行形態においても、国と地方とでの違いをもたらします。つまり、
・ 国では行政は各大臣の合議(全会一致)で推進
・ 地方自治体では知事の主導権で推進
という傾向になり、言い換えれば
・ 首相:ひな壇芸人などを「いじる」司会者(MC)
・ 知事:ピン芸人
・ 大臣:ひな壇芸人(自分のコーナーを短時間でも持っている場合もあり)
・ 議員:視聴者参加者、或いは、スタジオの観客
というイメージになろうかと思います。

 ということであれば、知事(特に「タレント知事」)が国政に進出して「埋没」するといわれるのは、「ピン芸人→ひな壇芸人」になるからということで説明がつきます。これまで、小なりとはいえ、「ピン芸人」としてそこそこやってきた人(=周りの注目を一身に浴びてきた人)がひな壇芸人(その他大勢のうちの一人)としての才能があるとは限りません。国政でも「ピン芸人」としての役割を保障するための「言い値」として

自分を首相候補にしてくれ

というのは、「タレント知事」であるからこそ言えたものだったのかもしれません。
 地方の「ピン芸人(タレント知事)」としてそこそこ人気もある人が、いまさら「ひな壇芸人(陣笠議員)」として今以上の人気が出るかどうか計算が立たない。地方と同じように、ピン芸人で自分の裁量がある程度あるのなら何とかなるかもしれない。また、地方の人気タレントの看板を背負って「東京進出」をするのだから自分を安く売ることもできない。地元を見捨てて東京になびくのかという「ファンの声」もある。これらの事情という「連立方程式」の解が上述の「自分を首相候補にしてくれ」という言葉だったのでしょう。

38キラーカーン:2009/06/26(金) 23:22:33
例えば、東国原知事の要求は

「ミヤネ屋」という読売・日テレ系の番組がありますが、その司会者である宮根氏をレギュラーコメンテーター(=陣笠議員)という形で東京進出させずに、「ミヤネ屋」をそのまま東京でも放映させろ(番組の司会者=首相・党首としろ)

というものに近いといえます。言い換えれば関西で絶大な人気を誇る司会者を東京で「レギュラーコメンテーター」として扱っては、宮根氏の長所を消してしまうという懸念がある。できれば、そのまま司会者(MC)として東京進出させる方が氏の個性が生きるという判断と相似形ではないかと思う次第です。

 官僚出身や国会議員、地方議員出身の知事であれば、或いは「輪を以って尊しとなす」という立ち居振る舞いを身につけている人は、自然と「ひな壇芸人」としての立ち居振る舞いも身につけていますから、こんな発想は出てきません。

言い換えれば、「議院内閣制の常識」にどっぷり浸かった人には全く思い浮かばない発想でしょう。これも、注目・責任を一心に浴びるという「首長(大統領制)」と「ピン芸人(タレント)」との相似性が思いもよらない化学反応をしたということだと思います。これを、「政治家(知事)」として計算した発言であれば、東国原知事の嗅覚・感覚は恐ろしいものがあります。

39キラーカーン:2009/06/26(金) 23:22:52
東国原知事の発言を受けて、「知事の任期も全うしていない」のに何を言うかという自民党側の反論がありましたので、いわゆる先進6カ国(G7、或いはG8から加、露を除いたもの)で、国政に進出してから大統領又は首相になるまでどれくらいの期間を要したかということを、とりあえず、「ウィキペディア」(日本語版→英語版→独語版→仏語版の順)で調べてみました。厳密性にかけるとは思いますが、一般的な傾向を探るには十分だと思います。

 これらのこと(後述)から言えることは、「政権交代可能な二大政党制」という細川政権からの「政治改革」の集大成の時期であれば、自民党議員の「経験年数が足らない」、「1期目途中で」という批判は当たらない可能性はあります。「CHAGE」をスローガンとしたオバマ大統領は上院議員1期目での大統領就任という今の東国原知事と同じ立場であり、劇的な政治構造解改革を体験したイタリアも、非議員内閣という議院内閣制では「禁じ手」を使ったことも考えれば、このような東国原知事や橋下知事のような「ピン芸人」知事という選択肢はもっと真剣に考えてもよいのではないでしょうか。
 といっても、東国原知事の「実績」が分からないままで、その「可能性」に賭けるというのはあまりにもリスクが高すぎます。道路建設については、宮崎の交通インフラの脆弱性は一応知っていますので、東国原知事が高速道路建設に熱心なのは理解できるのですが、それだけです(個人的には、高速道路よりも、九州新幹線の鹿児島−宮崎(空港)延伸とか、宮崎名産で高千穂鉄道の復活とかという方が好みですが)。

40キラーカーン:2009/06/26(金) 23:23:24
1 日本
 橋本総理以降7名の総理を輩出していますが、初当選以降おおむね30年以上の経験年数を要しています。政治家としての経験年数(≒当選回数)が短い(少ない)といわれた 福田前総理(17年)、安倍元総理(13年)でも他の先進諸国と比べて極端に短いというわけではありません。

2 米国
 戦後の大統領では、中央政界(州知事、連邦議員)デビュー(就任)後、10年未満で大統領まで駆け上がったのが、オバマ、ブッシュJr、カーター、アイゼンハワーと4人います。しかも、アイゼンハワーは政治家経験なし、オバマは上院議員1期目途中という東国原知事と同じ立場での大統領当選です。
 この一方、ブッシュ(父)、フォード、ニクソン、ジョンソンは中央政界デビュー後20年以上の経験を経て大統領に就任しています。最長がジョンソンの26年で麻生総理の29年よりも短い。

3 英国
 戦後の首相で下院初当選後20年未満で総理まで駆け上がったのは3名。メージャーの下院議員当選後11年を最短に、ブレア15年、ウィルソン18年。
 一方、ヒューム32年(上院議員)、マクミラン33年、イーデン32年、チャーチル40年、キャラハン30年と1970年代くらいまでの総理(特に保守党)は、30年以上の国会議員が必要で、最近は上述のように短縮傾向でしたが、ブラウン首相が(ブレアに党首の座を譲ったこともあり)下院初当選後28年目の就任とまた長期化の兆しを見せているが、保守党のキャメロン党首が2001年初当選と、メージャーの最短記録を更新する可能性があり、全体として短縮傾向にあるかもしれない。

41キラーカーン:2009/06/26(金) 23:24:16
4 独国
 敗戦による断絶があるため、エアハルト、ブラント、キージンガーの3人はそろって1946年からの政治家生活のスタート(これは伊国にも該当する)のため、データとしてはやや例外として扱った方がいいかもしれない。しかし、経験年数は連邦議会当選後おおよそ15〜20年の範囲に揃っています。アデナウアーだけが、戦前からの政治家経験を持っており、市長就任後31年目での首相(初代西独首相のため、連邦議会議員経験はなし)となっています。アデナウアーがある程度の長期政権となったため、敗戦直後に政治家デビューした人々が相応の経験を積んで連邦首相になることが可能となったため、伊国ほど、短い経験年数で連邦首相に就任することはありませんでした。
 例外は、コール首相で、党首になってから連邦議会議員となっています。もっとも、その前に党の地方代表、州首相など地方政治家経験が豊富で、市議会議員から23年で首相まで上り詰めています。
 これは、連邦制で地方での政治経験も重要視されるというドイツの政治風土のためかもしれません(東独出身のメルケル現首相を除いて、歴代首相は州首相、州大臣、市長のいずれかの職を経験しています)。

5 仏国
 ド・ゴールを除く第5共和制の大統領にサンプルを絞ったため、サンプル数が少なく、傾向がつかみにくい。強いて傾向らしきものを言えば、

保守本流=20年弱
(ジスカールデスタン:18年
 サルコジ:19年
 ポンピドゥー11年(議員経験はなく、銀行頭取→大臣→大統領))、
保守傍流=25年前後(シラク:28年)
革新陣営=30年以上(ミッテラン:35年)

となるかもしれません。
 しかし、ミッテランの35年というのは、革新陣営(社会党)で、かつ、第4共和制からも活躍していた政治家という合わせ技と思われます。

6 伊国
 まず、敗戦による断絶のため、戦後の政治家のスタートは1946年の憲法評議会議員になります。これは、敗戦直後の西独と同様ですが、西独のアデナウアーに対応する存在がいないため、戦後直後は必然的に政治家経験年数が少なくなります。このため、1950年代までの首相就任者は政治家経験10年未満で首相についています。
 キリスト教民主党(DC)の永久与党第1党体制による政権たらいまわし状態と(欧州最強とも言われた)永久野党のイタリア共産党との対立構造という意味では日本の自民党の1党優位体制と一番似ている国かもしれません。1990年代になって、共産主義の崩壊と汚職事件によって、従来の政治構造が崩壊し、政党構造も大幅に変革されています。
 1990年代以前では、上述のように、敗戦後の時間経過につれ、経験年数も上昇し、1960年代での首相初任経験年数は15年を超え、おおむね20年前後になってきました(また、伊国では首相に返り咲く人が多いため、再任を含めた平均経験年数はより長くなります)。ただし、DC以外の首相(スパドリニ、クラクシ)は10年未満の経験年数で首相に就任しています。イタリアのDCでは日本のような「年功序列たらい回し」的な要素が大きいようです。
 しかし、1990年以降、この状況が一変します。冷戦の崩壊によるイタリア共産党の崩壊、汚職事件によるDCをはじめとする連立与党の崩壊によって、自民党の派閥連合政権にも似た伊国の政権構造が崩壊したのです。非議員の首相2人(ディーニ、チャンピ)を挟んで、左右の(緩やかな)2大政党制移行した後は、国会議員の経験年数はダレーマ首相の11年が最長で、ベルルスコーニ首相に至っては、自身が設立した政党(連合)から出馬して初当選で首相に就任しています(プローディ首相は地方政界で30年以上の経験があるので、他の国会議員経験0の首相(ディーニ、チャンピ、ベルルスコーニ)と一緒にしては酷かもしれません)。

42キラーカーン:2009/06/26(金) 23:28:25
日本 麻生 29
福田 17
安倍 13
小泉 29
森 31 29
小渕 35 29
橋本 33 32

米国 オバマ 5 13
ブッシュJr 7
クリントン 15
ブッシュ 23
レーガン 14
カーター 8
フォード 25
ニクソン 23
ジョンソン 26
ケネディ 15
アイゼンハワー 0
トルーマン 11
ルーズベルト 13

英国 ブラウン 28
ブレア 15 12
メージャー 11
サッチャー 20 16
キャラハン 30 30
ウィルソン 19 18
ヒース 20 15
ヒューム 32
マクミラン 33
イーデン 32
チャーチル 40
アトリー 23

独国 メルケル 15
シュレーダー 18
コール 6 -3
シュミット 21
ブラント 20 12
キージンガー 17
エアハルト 14 18
アデナウアー 31 32

仏国 サルコジ 19 24
シラク 28 9
ミッテラン 35 19
ジスカールデスタン 18
ポンピドゥー 非議員 11

伊国 ベルルスコーニ 0 0
プローディ 0 33
アマート 9
ダレーマ 11
ディーニ 非議員
チャンピ 非議員
アンドレオッティ 26
デ・ミータ 25
ゴリア 11
ファンファーニ 8
クラクシ 7*
スパドリニ 5
フォルラニ 22
コシガ 21
モロ 17
ルモル 22
コロンボ 24
レオーネ 17
タンブローニ 14

43キラーカーン:2009/06/27(土) 02:05:44
「タレント知事」として話題になっている橋下大阪府知事、東国原宮崎県知事の双方とも、一種の「非常事態宣言」をして、その非常事態からの脱却を公約に当選をはたしました。
東国原:どげんかせんといかん
橋 下:府職員は倒産会社の社員
というように。

 したがって、この「非常時」を乗り切るために、思い切った施策を打つことも許される立場ではありますが、そういう施策を打つ事態というのは一種の「戦時体制」ですので、いつかは「普通の体制」に戻る時期が来ます。

 つまり、知事が熱心に仕事すればするほど、その仕事のスタイルを放棄する時期が早く到来するということになります。また、「戦時体制」は短ければ短いほど民政に与える影響は小さくてすみます。

 これらのことを勘案すると、橋下、東国原両知事の「現在」のスタイルが通用するのは1基年が限度というのが「相場」だと思います。先の大戦も結局、4年足らずであったというのが「感覚的」な根拠です。つまり、2期目からは、通常の体制、最低でも期限(2期目には終わること)を明示した「出口戦略」を語るを語る必要があります。そうでなければ、県民、府民の「耐乏感」も限界に来ます。

 ということで、2期目には「普通の知事」に戻るか、1期で目処をつけて退任するかという戦略しか残されていないと思います。それができなければ、1期目の余韻で再選はできる(現職知事はよほどのことがない限り、再選時には負けない)が、2期目の途中で「レイムダック」になるか、辞職に追い込まれるかを迫られ、「まとも」な形では2期目の任期を満了できなくなるでしょう。

 その意味では、1期目の途中で転進するのは、案外「賢明」な戦略なのかもしれません。

44キラーカーン:2009/07/07(火) 22:49:50
床屋政談(天皇陛下の外遊と君主大権と立憲君主制)

 現在、両陛下のカナダへの行幸啓に加えて麻生首相もサミット出席のためイタリアへ出発と天皇陛下と総理大臣双方とも国内にはいないという一種の「権力の空白」状態が発生しています。
 解散があってもなくても、9月までには衆議院選挙がある情勢です。解散時期について

天皇陛下の国外への行幸中は解散が行われない
天皇陛下の国外への行幸中に解散を行えば批判を浴びる

という新聞記事がありましたが、日本国憲法の「正統的」な理解(特にマスコミの主流であるリベラル的見解)では、この記事は「的を外している」(理由は後述)といわざるを得ません。もちろん、麻生総理は、「(皇太子殿下が天皇陛下の代理として国事行為を行うため)法的には問題はない」という見解を表明しています。

 天皇陛下の国事行為は日本国憲法第6条と第7条で規定されているのはご存知のとおりですが、その中に「衆議院の解散を行うこと」というものがあります。つまり、衆議院の解散には御名御璽が必要ということになります。一方、天皇陛下(又は摂政を含めた国事行為の代理者)の行う国事行為というものは

内閣の助言と承認によって行い、国政に関する権能を有しない

というものです。つまり、実質的決定権は内閣にあり、天皇陛下はその内閣の決定に対する拒否権を有しない(天皇が「政治的」に動く余地はない)というが「国事行為」であって、そこが、君主が「政治的に」動く余地が残されている(殆ど「ゼロ」ですが、決して「ゼロ」ではない)「君主大権」との本質的な差異とされています。

 つまり、国政に関与する権能が「ない」ということを以って、日本の憲法学者は天皇の立憲君主性を否定しているのです(言い換えれば、立憲君主とは国政に関する権能が「ある」ということです)。さらにいえば、「天皇が行う」行為に特別な意味(特に政治的な意味)を持たせないようにしてきたというのが、戦後のリベラル派の主流であったはずです。多くの憲法の解説書にもこうあります「天皇は象徴に過ぎない」と。

 ならば、国事行為の代行者が国内にいる以上、内閣の天皇に対する助言と承認機能が維持されている限り、その認証行為(国事行為)は誰であっても問題ないという結論に至るのがリベラル派の本流であるはず。私がリベラル派なら、

 天皇陛下ご本人でなければ解散の認証はできないというのは「天皇の神聖化、地位の強化」につながる、控えめに見ても、「天皇本人」が国事行為を行わなければならない「大事」な国事行為があるというような日本国憲法の運用には反対する。

というような論立てをします。国事行為には政治的な権能がないのならば、国事行為について、天皇陛下本人が行おうとしかるべき「誰が」代理しても「政治的」同じです(この問題については後述)。といいますか、同じでなければならない。衆議院解散というような政治的に大事な事柄は当然内閣が決定する。国事行為を行うものが誰かによってその権利が制約されることは象徴天皇制の趣旨から言って許されない(私もこの結論には賛成です)。

 国事行為では、本人が行ってもしかるべき代理の人が行っても政治的にはなんら問題はありません。しかし、実質的決定権者の代理ということではそうは行きません。例えば、現在、麻生総理が外遊中なので、官房長官が内閣総理大臣の代理として職務を行っています。「代理」しかも「包括的な代理」ですから、総理の外遊中において、官房長官は総理の「全て」の権限を行使できるという解釈は当然可能です。
 つまり、総理がサミットで外遊中の隙を狙って総理大臣代理である官房長官が衆議院の解散をできる。この場合の官房長官は閣議で反対されても、総理の代理として閣僚の任免権を行使できます。つまり、「首相外遊中の衆議院解散に反対だ。総理の帰朝を待つべし」という閣僚がいても、官房長官は総理大臣代理の権限を以ってその閣僚を罷免できます。あたかも、閣議で解散に反対した島村農水大臣(当時)を罷免して、解散を「強行」したように。

 その一方、外遊中などの総理大臣代理は、あくまで「代理」であって、現状維持を原則とすべしという解釈も成り立ちます。この場合では、想定外の事態(現職閣僚の死亡により、(兼任も含め)その閣僚の穴を埋めなければならない場合など)衆議院の解散や閣僚の更迭といった「政治的」で「能動的」な行為は極力限定されます。現代では、電話などで現地の総理と連絡を取って、総理大臣代理が総理としての権限を行使することはありえます。

 このように、何らかの「実質的決定」を行うべき人間の代理であれば、その決定は「本人でなければならない」という理由は相応の妥当性を有します。

45キラーカーン:2009/07/07(火) 22:50:02
 ここで、君主大権に話を持っていけば、例えば、英国の立憲君主制ではどの場合(理由)であれば、国王は首相の解散権に「拒否権」を発動できるかということが憲法上の論点として残存しています。一般論で言えば、首相が解散権を「濫用」した場合ということなのですが、どういう場合が「濫用」かということについて議論が行われているということです。

 極端な例でいえば、首相が衆議院を解散して過半数を取れなかった場合、過半数を取れるまで何度も連続して解散権を行使できるかということです。そういう場合には、いくらなんでも君主が拒否権を発動すべきというのが、「憲政の常道」であることは論を待たないでしょう。

 そのように君主(日本国憲法下の天皇も含む)に実質的権限がまだ残っているのであれば、君主本人の外国への行幸中に衆議院解散を行うのは可能な限り避けるべきという命題は成立すると思います。しかし、象徴天皇制の元ではその命題は成立しえません。そのような「政治的な契機」と切り離されたところに君主が存在するというのが、「象徴天皇制」であり、個人的には、これこそが、日本国憲法の憲法学における先進性(立憲君主制のあるべき道)を示したものだと思っています

46キラーカーン:2009/08/18(火) 22:58:59
以前の投稿で、もし民主党政権になれば、

>加藤高明内閣のように政権担当能力を認められるのではなく、
>第一次及び第二次大隈内閣のように
>「失格の烙印」を押される可能性が高くなるでしょう。

と評したことはありますが、では、このような憲政党→憲政本党→立憲同志会→憲政会→民政党とともに二大政党の一翼を担った自由党→立憲政友会(一般的には略称の「政友会」といいます)はどのようにして「統治能力」を身に着けていったのでしょうか。

 政友会が自身に統治能力があることを示したのは、第一次西園寺内閣からです。いわゆる元勲・元老の次の世代が始めて首相になった第一次桂内閣の後を受けて、第一次西園寺内閣が発足しました。当時の政友会は、伊藤が枢密院議長に就任した後、公家出身の西園寺公望が後継総裁に就任し、実質的な党務は松田正久と原敬が担当するという体制でした。首相が政友会総裁であることから、一応政党内閣といわれますが、政友会員は松田と原の二名だけ(西園寺を入れても三名)であり、約10名で構成される内閣の過半数にも満たない入閣者でした。その他の入閣者は、前首相である桂の息のかかった官僚や山縣の養子、旧公家や旧大名といった政友会にとっての「抵抗勢力」でした。これら「抵抗勢力」の入閣者は、再任されることはありませんでした。林と牧野は後の政友会(系)内閣でも入閣していることから、林(外相)、牧野(文相)の両名は政友会に近い外務官僚(牧野も外務官僚)といえるでしょう
 第二次西園寺内閣も、政友会からの入閣は三名(松田と原ともう一名)と増えましたが、閣内での過半数には至っていません。しかし、軍人を除いた新入閣者は後の政友会(系)の内閣に再入閣しており、第一次西園寺内閣のように、非政友会系の人物を入閣させず、明らかに政友会に近い人物を入閣させています。
 政友会員の閣僚が閣僚の過半数を占めたのは第一次山本内閣のときです。この内閣は、大正政変によって生まれた海軍・薩閥と政友会との事実上の連立内閣であり、首、陸、海、外相以外の閣僚は政友会に入党するという条件で発足した内閣です(首相の山本は現役の海軍大将のため、政党員にはなれない)。
 このように、政友会は、可能な限り政友会員で固めた第四次伊藤内閣が短命内閣に終わった失敗から、最初は、政友会色を抑えた「抵抗勢力」との妥協職の強い内閣で、「抵抗勢力」からの信用を得つつ、徐々に政友会色を出していくという「漸進戦略」を採用しました。また、憲政会が統治能力を認められた加藤高明内閣においても、発足当初は「護憲三派内閣」といわれたように、政友会を連立与党としており、原、高橋両内閣(及び閣外協力の加藤友三郎内閣)での与党経験を生かすことが可能でした。そして、その後の連立の崩壊による憲政会単独内閣を経て政友会と並ぶ二大政党への道を歩むこととなったのです。

 もし、民主党内閣ができた場合、参考にすべきは、このような「漸進戦略」をとった政友会の手法でしょう。となれば、具体的には
1 自民党脱党組のベテラン議員(羽田孔、小沢一郎)
2 非自民連立政権での閣僚(江田五月、菅直人、藤井裕久、石井一、熊谷弘)
3 非議員の閣僚(榊原英資、勝間和代氏)
という人物を入閣させて、安定感を出すということになるのですが、浮かぶ人名が・・・

 余談
 立憲政友会は板垣退助が設立した自由党を前身としています。第一次大隈内閣で憲政党と合同して与党になりましたが、結局、分裂してもとの鞘に収まった後、伊藤博文を総裁に迎えて立憲政友会と名前を変えます。それを契機に、金子堅太郎など伊藤派といわれた官僚も政友会に入会します。
 当時の首相は伊藤のライバルで大の政党嫌いでもあった山縣有朋でした。山縣は政友会が結党直後で体制が固まっていない状況で、北清事変の事後処理に一応の区切りが付いたことを理由として内閣総辞職し、伊藤が後継首班を引き受けざるを得ない状況に追い込みました。伊藤は、軍部大臣と外務大臣以外を政友会員で固めた政党内閣を組織します。しかし、この内閣は、いわゆる党人派と官僚派との対立が表面化し、短命に終わります。
 なお、戦前の内閣において、軍人が就任することが当然視されていた軍部大臣の他に外務大臣も外交官経験者(外交官経験者で適格者がいない場合に限り軍人)が就任することが事実上の慣例(この純粋な例外は後藤新平のみ)と化しており、この3ポストは(もちろん与党に近い外交官が就任しますが)純然たる政党員が占められないものでした(原内閣でもこの3ポストは政友会員ではない)。

47キラーカーン:2009/08/29(土) 23:54:45
床屋政談(政友会の下野と自民党、あるいは政友会の落日と加藤高明内閣)

 第4次伊藤内閣の失敗を糧に第1次、第2次西園寺内閣、第1次山本内閣で着実に統治能力を身に着けていった政友会ですが、第1次山本内閣がジーメンス事件で内閣総辞職になって、第2次大隈政権で野党になり、かつ、総選挙で過半数を割ってしまいました。

 政友会は、その後、寺内内閣を経て原内閣で政権に返り咲きます。原内閣は、総裁の原敬の指導力(米国のテツオ・ナジタ氏に「政治技術の巨匠」とまでいわれた)もあり、当時では3年以上という長期政権となりましたが、原首相の暗殺で突然の終焉を迎えました。

 以後、政友会は、迷走を続けます。原内閣の後継総裁・首相となった高橋是清ですが、指導力不足により、内閣は短期間で瓦解します。続く加藤友三郎政権では、閣外協力(貴族院の政友会系の議員のみ入閣)に甘んじ、第2続く第2次山本内閣では、第1次とは異なり、完全野党、そして、続く清浦政権では、「野党ボケ」で清浦首相からの「禅譲路線」を目指す一派が政友本党として政友会から分裂して、総選挙に臨むこととなり、憲政会に第1党の座を奪われてしまいます(しかも、第2党は政友本党)。

 余談になりますが、いわゆる首相と与党を決定する完全な「政権選択選挙」というのは、日本憲政史上このときの選挙のみであり、今回の総選挙が2回目となります(清浦内閣は政党内閣路線へ道を戻す「選挙管理内閣」という側面がありました)

 果たして、政友会が原長期政権の後に

原内閣→高橋内閣→加藤友三郎内閣→第2次山本内閣→清浦内閣→加藤高明内閣

と転落して行ったように(それでも、政権担当能力がある大2等の出現という「メリット」もありましたが)、自民党も、小泉長期政権の後に

小泉内閣→安倍内閣→福田内閣→麻生内閣→鳩山内閣

というように転落するのか、あるいは、民主党が第2次大隈内閣で政権担当能力の実証に失敗して「苦節十年」の時代になるのと入れ替わりに、政権与党に返り咲くのか、日本の大正デモクラシーとの関係で

歴史は繰り返すのかという興味があります

48キラーカーン:2009/10/27(火) 00:43:36
床屋政談「岡田外相と桂太郎と鈴木貫太郎」
平成の御世に犬養毅と並んで「憲政の神様」といわれた尾崎「愕堂」行雄がいれば、同じ「ゆきお」内閣の外相発言についても

詔勅を以って弾丸と無し、玉座を以って胸壁となす

と言うのではないでしょうか。
 この言葉は、二個師団増設問題→上原陸相単独辞任→第二次西園寺内閣総辞職で沸き起こった大正政変(第一次護憲運動)の真っ只中で成立した第三次桂内閣が混乱する政局を収集するために「詔勅」を利用した事を衆議院で尾崎議員が追求した時の有名な言葉です。
 もちろん、現在は、内閣の助言と承認に基づいて天皇の国事行為とそれに準ずる行為が行なわれることとなっていますので、国会召集時の天皇陛下の「お言葉」について、それに対する影響について、内閣が全責任を負うと腹をくくれば、各内閣がその時々の情勢を盛り込んだ「創意工夫に富む『お言葉』を作成すること」も可能でしょう。しかし、首相の施政方針演説ではなく、陛下のお言葉に「〇〇法案・・・」というような個別具体的な案件を載せるということは、それ自体

陛下の政治的利用

といわれても仕方がないでしょう。つまり、首相の施政方針演説に盛り込まれた案件よりも重要な課題として示されたということを意味するのは間違いありませんから。

 ダイシー(や英国の立憲君主制の実例)を持ち出すまでもなく、立憲君主制とは、内閣(や国会)が権力的部分を担当し、君主(天皇)が権威的部分を担当するという権威と権力の分割(と輔弼/助言と承認による融合)という危うい「政治的フィクション」によって成立しています。天皇陛下の「お言葉」もその「フィクション」の反映であるわけです。そのため、「お言葉」は基本的には政治から超越した内容(=一般論極まりない)内容であるわけです。それは

右派の「陛下に責を帰し奉らない」
左派の「陛下の政治的利用の抑止」

という左右両派の妥協の上に現在の象徴天皇制の運用がなされているということです。そのため、現行憲法の「国政に関する機能を有しない」という条文は制定主旨がどうであれ、結論として、日本の歴史にも合致した「よい制度」だと思っています。
 もちろん、その「フィクション」の構造を変えて象徴天皇制を維持するということは論理的には可能です。ひいては、その変更をお言葉に反映させるということも可能です。そういうことが可能かどうか、とりあえず「思考実験」としてみましたが、とりあえずの案は

首相の施政方針演説を廃止して、天皇陛下の「お言葉」に統一させる。「お言葉」に対する質問については首相が全責任を持って答える

とすれば一応は可能です。この主旨は「『お言葉』ー『施政方針演説』=0」という数式を確立することにより、陛下のお言葉の政治的部分については首相(内閣)が全責任を負っているということを明らかにするということです。これは、英国王が議会で「施政方針演説」を行なっているということを参考にしたものですが(http://news.livedoor.com/article/detail/4414310/参照)、これは、英国(女)王陛下は内閣を指して「My Government(私の政府=内閣)」ということが許されているからであって、天皇陛下が同じ事を言えば、それこそ・・・という事態になることは予想されます。
 そして、この件が問題になっての岡田外相の弁明ですが

「陛下のご意思として従来と同じように続けるというのなら、それは陛下の判断だ」

こんな問題で「聖断」を求めてどうするのか。そういう問題が起きないように、内閣が全責任を持って「助言と承認」を行なうというのが象徴内閣制の根本でです。開いた口がふさがらないのは こういうことを指すのでしょう。先帝陛下は好きなテレビ番組を聴かれてもお答えにはなりませんでしたし、大臣の内奏の内容を漏らしただけでも批判を浴びて辞任に追い込まれた実例があります(増原内奏問題)。
 こんなことで陛下の宸襟を悩ませ奉るのは輔弼の臣として失格以外の何者でもありません。降伏か徹底抗戦かの板ばさみで「最後の切り札」として聖断を使った鈴木貫太郎総理(当時)も草葉の陰でないているでしょう。

 書いていて馬鹿らしくなりましたので、ここまでにしておきます。

49キラーカーン:2009/11/20(金) 23:11:57
「いとこ」と少子化(核家族化)と(傍系)男系原理の希薄化

 少子化と晩婚化、独身者の増加で、夫婦と子供2人という「標準家庭」がもはや「標準」ではないといわれて久しいです。
 ここで、表題の「いとこ」ですが、「いとこ」とはご存知のとおり、親同士が兄弟の間柄をいいます。親同士が兄弟ですから、正月やお盆といった帰省ラッシュの時期には「孫の顔を見せる」という名目で親、子、孫という3世代が一つ屋根の下に勢ぞろいすることになるのはそう珍しいことではないと思います。こういった状況から、「いとこ」というのは

家族の一員ではない人の中で一番近しい人
(よく言われる例として、「一緒にいた彼女(彼氏)は?」と聞かれた場合に「いとこ」と答えるというベタなものがあります)

ということになると思います。近くに住んでいるとか家族関係が良好であれば、いとこ同士といっても兄弟同然ということもあるでしょう。
 こういう環境の場合、男2人兄弟であれば、「長男には男の子供がいないので次男(の長男)を後継者として育てよう」という判断をしても、さほど問題がないと思います。それは、帰省という行事を通じて、いとこ同士が祖父の家で定期的に顔を合わせ、しかも「孫」という同格の立場でいることから、おじいちゃんにつながる「近しい親戚」であるという一体感が醸成されるからだといっても過言ではないでしょう。
 ここからが問題です。親が健在の間は帰省もします。そこで、(仲があまりよくなくても)兄弟と顔を合わせますし、その波及的効果として孫である「いとこ」同士も顔を合わせます。しかし、親が亡くなった後で、兄弟同士が一同に会する機会を持つ親戚はどれだけいるでしょうか。核家族化が進んだ現状では、親が亡くなれば、子供は名実ともに一家として独立します。このような状況の中では「またいとこ」以上の関係は感覚的に「親戚」と認識する機会が実質的に失われます。運がよければ、「曽祖父」の葬式や法事あるいは「いとこ」の結婚式で「またいとこ」が顔を合わせる状況はありうると思いますが、定期的ではありません。また、そういう大規模な「法事」は数年毎です。
 さらに、兄弟である親同士の仲が非常によく、また、それだけの「大家族」が一同に会するだけの場所を提供できる(一族総出でホテルに泊まる)だけの物理的・金銭的余裕がなければだめでしょう。あるいは、子供である「いとこ」同士の仲がよければ、「いとこ会」という形で集まって、その子供同士が「またいとこ」として認識できるという機会があるかと思います。
 ここまで述べてきたことは、「いとこ」や「またいとこ」といわれる関係の人がいる場合です。しかしながら、昨今の少子化と晩婚化(一生独身化)によって「いとこ」関係というのが少なくなっていきます。親が一人っ子であれば「いとこ」は存在しません。また、(「未婚の親」という例を除いて)兄弟の一方が独身(結婚経験がない人)であっても同様に「いとこ」は存在しません。となれば、「いとこ」そのものが『希少価値』になります。しかし、「またいとこ」まで関係を広げたとしても、実際に会う機会のない「系図だけ」の親戚関係となって、親戚という実感が湧かない場合が多いのも上述のとおりです。
 更に、「標準家庭」でも子供が二人ですから、男女の出生率からすれば男と女の2人兄弟というのが多くなることから、さらに「男系のいとこ同士」という関係になれば、さらにその『希少価値』が高くなります。このような状況の中で、「家督相続」というような場合を考えてみれば、長男に男の子供が生まれなかった場合

ほとんど他人の傍系の男系血族より近しい女系の血族(例:姉の子供)

の方に親近感が沸いても仕方のない状況になります。場合によっては、男女を問わず子供に継がせようという意識が働くのも無理のない状況になります。これらがあいまって、一番近い傍系血族(いとこ)の存在が希薄となっていった結果と、旧来から日本の商家や職人の家には、「婿養子」という習慣があり直系原理がかなり浸透していたことが相俟って、日本国民の意識全体として

(傍系男系血族の存在の希薄化による)直系の論理の突出

ということになってしまったということです。そして、そのような意識が皇位継承問題に微妙な影響を及ぼしているということです。この状況を評して宮崎哲也氏は

男系原理と直系原理の衝突

と評していましたが、慧眼だと思います。そして、現在の少子化などの状況から、直系原理が強くなる傾向にあります。そのような中で、「皇族」という傍系も含めた親族制度を維持している天皇家の家長である天皇の継承順位がどうなるのかということも合わせて問われているのだと思います。

50キラーカーン:2009/12/03(木) 02:17:32
 前回の「いとこ」の続きですが、「いとこ」関係ということを言い換えれば、「父−子−孫」の三代(いわゆる「直宮家」)で家系が完結するということです。ここまでは、前の投稿で述べたように、多くの人々にとって実感を持って理解できる親戚関係ということになります。つまり、多くの人にとって、自分自身が実感できる「傍系血族」は「いとこ」が限界であるというのが、核家族化の帰結です。
 さらに、言い換えれば「いとこ」同士ということは、「孫同士」ということと同値です。この「孫同士」という意味において、「いとこ」(長子の子供と次子の子供)は同じです。ここからが、皇位継承問題に移行しますが、悠仁親王殿下の誕生により皇位継承論議が一気に下火に向かったのは、悠仁殿下が

今上陛下の孫(この意味において愛子内親王殿下と悠仁殿下は上述のように「同格」)

であったことが無視できない要因であったと思われます。言い換えれば、皇太子殿下の即位後に悠仁殿下が誕生された場合では、

やはり愛子殿下が皇位を次ぐべきだ

という意見が現在よりも大きいのではないかと推測できるからです(今上陛下の長子と今上陛下の甥では「同格」にはならない)。なぜなら、愛子殿下の皇位継承を正当化するのは

直系原理が男系(傍系)原理より優先する

というところに最大の論拠があるからです。「いとこ」同士の場合、孫同士であれば、直系原理でも「同格」ですが、子供と甥では、直系原理で優劣が生じます。
 さらに、ここから更なる思考実験ですが、殿下が生まれたのが秋篠宮家ではなく、三笠宮家系の皇族(例:桂宮家)だったらどうだったでしょうか(桂宮は車椅子の生活ですが、独身であり、若くて健康な女性を娶れば、現在においても、行為継承権者ができる可能性を一応残しています)。さらに仮定を重ねれば、皇位継承権者が三笠宮の系統(寛仁親王、桂宮、高円宮)にそれぞれ存在するという状況であれば、皇位継承に関して、制度的には問題ない程度まで皇位継承権者を有していることになります。
 このような状況の場合、三笠宮系の男性皇族と愛子内親王殿下ではどちらが皇位にふさわしいかといえば、おそらく愛子内親王の方が多数派となるでしょう。なぜなら、悠仁親王が誕生された後でも愛子殿下のほうが皇位継承者にふさわしい(=直系原理が男系原理に優先する)という声が根強くありますから、愛子殿下の「競争相手」が三笠宮系ではそれ以上に情勢が愛子殿下の方に有利に傾くでしょう。


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