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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:03:05 ID:cQB6.m2k0
,、,,..._
ノ ・ ヽ
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
2
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:06:11 ID:cQB6.m2k0
大小なりに事件はあるが、とにかく世界は平和である。
知らない所でなにかは起こっているけれど、私の周りはすごく平和。
私は今日も学校に行く。
市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために――
.
3
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:07:03 ID:cQB6.m2k0
ξ;゚⊿゚)ξ「ぢごぐぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」 ダダダダダ!
しかし見ての通り私は遅刻寸前なのでこんな独白をしている場合ではない。
私はとにかく走っていた。爆走していた。
邪魔になるので鞄もろとも教科書の類も家に置いてきた。
身一つでの決死の走りのおかげもあって、私はなんとか遅刻を免れたのだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「セーフ!」ガラガラッ
( ´∀`)「遅刻」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
先生の言葉の意味は分からなかったが、私は教室に着くなり速やかに着席し、そして挙手した。
ξ゚⊿゚)ξ「先生、教科書忘れました」
( ´∀`)「うん見るからに手ぶらだったもんね。
ツンさん、遅刻していいから次は教科書持ってこようモナ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい先生」
私は颯爽と着席し、隣の席の生徒に一瞥を送った。
.
4
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:08:10 ID:cQB6.m2k0
(;'A`)「……なんか言えよバカ」
バカって言う方がバカ理論で言うところのバカである隣席の彼・ドクオ。
ドクオは机をこちらに寄せて教科書を見せてくれた。
バカなりに自分の仕事は分かっているようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「授業中に喋らないでよ。空気が汚れるじゃない」
(;'A`)「後半ただの悪口じゃねえか。俺の息はクリーンだ」
ξ゚⊿゚)ξ「緑の吐息ってホントに毒性ありそう」
(;'A`)「グリーンブレスじゃねえって……」
ξ゚⊿゚)ξ「あー早く授業終わんないかしら……」
そう思った矢先、授業終わりのチャイムが鳴り響いた。
さすがに驚いた私はドクオの方を向いてひっそり問い掛ける。
ξ;゚⊿゚)ξ「終わるの早くない?」
('A`)「お前が入ってきた時点で9割終わってたからなぁ」
( ´∀`)「はい、それじゃあここまでモナ。解散!」
解散の合図と同時にクラスの雰囲気が軽くなる。
私は早速席を立った。二時間目にそなえて誰かから教科書を借りてこなければいけないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ねえドクオ、二時間目って数学?」
('A`)「は? もう昼飯だよ」
ξ゚⊿゚)ξ
なるほどね、と心で呟いた。
.
5
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:08:51 ID:cQB6.m2k0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一旦家に帰った私は自宅で昼食をたいらげてから学校に戻った。
不服だが教科書も持っていった。
まったくもって無駄な苦労だったが、世の中とは無駄なものを評価したがる性質なのだ仕方がない。
( ^ω^)
('A`)
程なくして教室に戻ると、私の席には内藤くんが座っていた。
べっべつに内藤くんの事なんて好きじゃないんだからねと言いたい所だが実際べつに好意は無い。
内藤くんと呼んだのもこの独白が初めてである。普段は『お肉』もしくは『ブーン』と呼んでいる。
ξ゚⊿゚)ξ「なに話してんの?」
( ^ω^)「おおっ! いいところに来たお!」
good placeという意味なら確かに私の席はいいところだ。窓際で寝やすい。
( ^ω^)「ちょっと面白い話を聞いたんだお。ほら、ボクのお爺ちゃんから」
ブーンの祖父とは私も仲が良い。
私はちょこっと期待して耳を傾けた。
.
6
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:09:58 ID:cQB6.m2k0
( ^ω^)「正義の味方とか悪者の人って、すごいパワーがあるお?」
('A`)「まあ、色々あるな」
(; ^ω^)「じつはそれ、誰にでもありうる話らしいんだお」
('A`)「……ありうるって、誰でもスーパーパワーに目覚めるってことか?」
ブーンは私とドクオにだけ、ひそひそと続きを話した。
(; ^ω^)「お爺ちゃんはそれを 『激化』 って言ってたお。
戦争の時代とかもうみんな激化しまくってたって」
(;'A`)「えぇ……」
ドクオは顔を引き、そんなの信じらんねぇと言わんばかりにブーンを訝しんだ。
ξ゚⊿゚)ξ「激化ねぇ……まあ、あっても不思議じゃないか」
(;'A`)「確かにそういうパワーについて俺らには情報回ってねえけどさ……」
(; ^ω^)「ていうか見せてもらったんだお!
お爺ちゃんがすごいパワー使ってるところ! 空気がドン! ってしたんだお!」
(;'A`)「……ネタ切れだからって嘘つくなよ」
(; ^ω^)「ホントだお! 激化の方は分かんないけど、お爺ちゃんがスゴイのは本当だお!」
.
7
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:10:38 ID:cQB6.m2k0
ξ゚⊿゚)ξ「見に行っていい?」
( ^ω^)「お? ぜんぜんオッケーだお!」
唐突に聞いてみると、ブーンは二つ返事で快諾してくれた。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、私いますごい熱があるの。早退するわね」
('A`)「お前今から行く気か? そろそろ教師に文句つけられんじゃね」
( ^ω^)「ツンはバカだから人目なんて気にしないお!
家の鍵貸してあげるお! お爺ちゃんに会ったら色々話すといいお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと。私の荷物ちゃんと家に届けてよね」
(;'A`)「自分で持ってけよ」
私は手ぶらで学校を飛び出し、ブーンの家へと走り出した。
.
8
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:11:29 ID:cQB6.m2k0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ブーンの家はそこそこ大きい屋敷だ。
私の家を基準にすると三倍くらいある。
庭が広い。小さい池もある。かつて池に増えるワカメを入れて怒られた事がある。
かくして私は鍵を使って裏口から進入し、ブーンの祖父を探し始めた。
進入の手口が円滑なのは、これが初めてではないからだ。
小さい頃からこうして忍び込んでは、
从 ゚∀从「おう。来たのかい」
ξ゚⊿゚)ξ
こうして先に発見され、背後に立たれている。
ブーンの祖父は異様に若々しく、そしてイケメンだった。
今でも50人くらいは愛人が居そうな雰囲気がある。
彼の名前はハインリッヒ=ヴァルケン・シュタイナー。
ハインリッヒ以降の部分は嘘だがすごく似合う。本当はハインリッヒ高岡という名前だ。
性別は男。彼にブーンと同じ血が通っていると思うと世界の不条理さを痛感する。
.
9
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:12:41 ID:cQB6.m2k0
私達は和室に移動した。
この和室はハインさんの私室でもある部屋で、広い庭が見渡せる。
从 ゚∀从「よっ、こらせ」
ハインさんは座布団に腰を下ろし、私にお茶を出してくれた。
私はそれを無視して自前の午後の紅茶を飲み始めた。
从 ゚∀从「で、またブーンの奴にそそのかされたか」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。激化がどうこうって話を聞いたの」
从;゚∀从「……秘密だってんのに、そのまま喋りやがったなアイツ……」
ξ゚⊿゚)ξ「空気がドンができるんでしょ? やってくれる?」
从 ゚∀从「やらん。頼み方が気に入らん」
ξ゚⊿゚)ξ「できないじゃなくて?」
从 ゚∀从「そうだ。あんまりやると気付かれるからな」
ξ゚⊿゚)ξ「……何に?」
从 ゚∀从「昔の仲間にだ。まあいい、秘密だけど話してやるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴクリ……」
ξ゚⊿゚)ξ(この家の人、誰も秘密を持てないんだなぁ)
その後、私は呆気なく一時代の真実を聞いてしまった。
ハインさんの生い立ちや、色々なアレを大体知ってしまった。
正直その日の夕方には大体忘れたが、とにかく私はなにかすごいことを聞いてしまったのだ。
そして私は家に帰った。そして寝た。一日が終わった。
.
10
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:13:48 ID:cQB6.m2k0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ハインさんから聞いた話の九分九厘を忘れた翌日。
午後二時。昼過ぎまでぐっすり眠った私はカーテンを開け、日光を浴びた。
遅刻がどうこうの話はこの際省略する。
ξ-⊿-)ξ「……あ……?」
しかし、やけに暗いと思った。
カーテンを開けても太陽光の刺激がまったく無い。
私は渋々目を開け、外の様子を確かめた。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
次に時計を確かめ、合点する。
時刻は午前二時だった。そりゃあ暗いに決まっている。
こんな時間に、すっきり目覚めてしまった。
私は途方に暮れてベッドに寝転がった。
ξ-⊿-)ξ「……」
そして寝た、と言いたい所であるが、私は既に寝るという気分ではなくなっていた。
とても嫌な気分だ。
この状況は、私の嫌な思い出をそのまま再現している。
中学生の頃の話になる。
こんな風にいきなり体内時計が壊れてしまった日の夜。
私は、『非日常』に出会ってしまったのだ。
.
11
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:14:28 ID:cQB6.m2k0
今でも鮮明に思い出せる。
同じように夜中に目が覚め、暇に耐えかねた私は散歩に出掛けた。
コンビニまで行って帰ろうと思い、十分足らずの道を歩いていく。
その帰り道だった。私は行く先の街路灯の真下に、異常な光景を見てしまった。
街路灯の真下には、既に息絶えた人間と、それの返り血に服を濡らし、ただ茫然と立ち尽くす女性の姿があった。
その手に凶器は無かったが、かわりに、彼女は人間の頭部を片手にぶら下げていた。
私は絶叫を飲み込んで息を殺した。しかし女に気付かれてしまい、彼女の視線がこちらに向いた。
音の無い真っ暗闇の中、唯一街路灯に照らされた私達は、まるで舞台に立つ二人の演者のようだった。
目を合わせたまま私は後ずさった。巻き込まれてしまう、と思ったのだ。
殺されるという恐怖は一切無く、ただ、この人と長く一緒に居たら駄目だと直感した。
言葉も交わしてはいけない。目を合わせる事すら駄目だと思い、目を伏せる。
無関係で居なければ日常が壊されてしまう。その感覚に体を任せ、私は一目散に逃げ出した。
決して追われはしなかったが、私はとにかく走り続けた。
……そういう経験が、こんな夜にあった。
.
12
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:15:26 ID:cQB6.m2k0
私はこの経験をハインさんに相談した事がある。
相談というよりはただ一方的に喋って不安を解消しただけだったが、彼はやけに真剣に話を聞いてくれた。
私は、彼が最後に言ったことを覚えている。
从 ゚∀从「引き込まれる、って感覚は恐らく正しい。
人は人にこそ恐怖するが、人外に対してはそういうことを思うんだよ」
从 ゚∀从「その感覚の正体は好奇心、怖いもの見たさ。
人間ってのは理解できないものには恐怖と同時に興味を持つ。
いや、近付かなくて正解だったぞ。お前は利口だ」
そのとき不意に褒められた私は、
ξ゚⊿゚)ξ「り、りこうっておま、オヒュウ」
みたいな気持ち悪い反応をしていた。今でも後悔している。
.
13
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:16:10 ID:cQB6.m2k0
この世界――というとまるで別世界があるような言い方だが、
とにかく私が生きてるこの世界における、大体の歴史をおさらいする。
端的に言うと、この世界には超能力があった。
文字どおり過去形で、今はリストアップされた極少数の人しか超能力は使えない。
そして五十年くらい前に超能力を用いたすごい戦争があり、色々あった。
それ以降、超能力の発生は減ってって今はすごい少ない。そして今に至る。
ここまでが一般人向け、つまり表向きの歴史。
色々あったけど今は平和だよ〜という、歴史の教科書に載せやすい形に脚色された物語だ。
中身が曖昧なのは私が歴史の授業中ダンゴムシと遊んでいたからだ。校庭で拾える友達と言えばダンゴムシだ。
しかしこの歴史にハインさんの話を加えるともう少しマシになる。
さっきは面倒臭かったので地の文から省いたが、今こそ一時代の真実を語ろうと思う。
.
14
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:16:52 ID:cQB6.m2k0
ハインさんが生きた時代は、『激化』と名付けられた超能力があった時代。
人類の歴史においてもっとも暴力が幅を利かせ、正義と悪が対立した時代らしい。
まず戦争の結果を言うと、悪が勝った。
これまで正義とされてきたものは秘密裏に抹消され、悪が世界を牛耳った。
しかし、悪が正義を倒しても、世界はそれほど変わらなかった。
悪は正義という隠れ蓑を獲得し、この世界を以前のとおりに運営し始めたのだ。
ただし、ひとつだけ変化があった。
悪は超能力の存在を一切認めず、人々の激化を未然に防ぎ始めた。
つまり正義になりうる――敵になりうる存在を、彼らは虱潰しに殺していった。
戦争終結後、超能力を持つ人が減っていった理由がこれだ。
悪は悪なりに戦争から教訓を得たのだ。戦うより、戦わない努力をするべきだと。
ハインさんいわく、あの戦争は悪の一団にも多大な被害を与えたそうだ。
特に魔王にあたる人物の戦死は、悪の在り方を大きく変えたらしい。
.
15
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:17:32 ID:cQB6.m2k0
――で、午前二時の現実に戻る。
ξ゚⊿゚)ξ
文章に飽き飽きした人のためにAAも出す。
ξ゚⊿゚)ξ(……ちょっくら出掛けるかい)
迷ったが、私はトラウマ払拭を兼ねて決心した。
日本中が秋になろうとしているこの季節、私は渾身の赤マフラーを巻いて外に出た。
目的はコンビニの肉まんである。あれは値段以上に青春の味がするから不思議だ。
あんなものでしか青春を感じられない不感症で本当に親に申し訳ないと思う。
.
16
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:18:12 ID:cQB6.m2k0
さりとて私は歩き出した。
夜風が生脚をなぞり、体温をごっそり奪っていく。(ツンはスカートをはいているぞ)
しかし私は寒さに負けず勇猛に歩いた。
テクテクよりザッザッという擬音が合う歩き方をした。
顔付きは自然と険しくなっていった。
そう、この時点で私はなんとなく分かっていたのだ。
同じことをすれば、同じ場所で同じことが起きると。
……現実は、私の思ったとおりになった。
.
17
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:19:14 ID:cQB6.m2k0
ξ゚〜゚)ξ(うわ居る)ムシャムシャ
コンビニからの帰り道、私は肉まんを頬張りながら昔懐かしい様子を目の当たりにした。
いくつか先の街路灯の下には、既に息絶えた人間と、それの返り血に服を濡らして茫然と立ち尽くす女性の姿があった。
その手に凶器は無かったが、かわりに、彼女は人間の頭部を片手にぶら下げていた。
私は数レス前の文章をコピペした。
あれと同じ出来事が起きているのだから別段問題はなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「――――」
記号四つ分の沈黙。それはこの場からの逃亡を許された唯一の時間。
前回の私はここで目を伏せて逃げ出した。しかし、今回はそれをしない。
ξ゚⊿゚)ξ「……それってホンモノ?」
私はさっさと肉まんを口に詰め込み、彼女に向かって歩き出した。
動揺が無いのは、前と今とで私自身が大きく変わったからだ。
.
18
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:20:11 ID:cQB6.m2k0
ζ(゚ー゚*ζ「――これはホンモノ。貴方、何者?」
ξ゚⊿゚)ξ「ここで韻を踏めるのはラッパーだけ。貴方、ヒップホップね」
冗談を挟むだけの余裕、というかヤケクソはある。
さっき動揺が無いとは言ったが自分でも最早分からない。
動揺が振り切れてこうなったのかもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ「たしか何年か前にも来たよね。
一応、ここ結界が張ってあるんだけど……」
鮮血を滴らせる生首をポイッと捨て、彼女は私に体を向けた。
私は、その軽やかな身動きに見とれて冗談を言う余裕さえ失ってしまった。
ξ゚⊿゚)ξ「……ッ」
想起する。あの時、自分の中で爆発した『非日常』への畏怖。
畳まれていた記憶の風呂敷が広がり始め、私は、ようやく後悔を思い出す。
.
19
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:20:51 ID:cQB6.m2k0
ζ(゚ー゚*ζ「……前は逃げたから見逃したけど、来ちゃったから」
彼女が歩み寄ってくる。
天使のような微笑みを引っさげて、私の体を裂きに来る。
殺される――そんな事は分かっていたはずだ。今更考えてもしょうがない。
高校生のバカな好奇心がここまで育ってしまったと、ただひたすら後悔するしかない。
ζ(゚ー゚*ζ「言い残すこととかある?
これ聞くと素直に死んでくれる人が多いから」
彼女はピッと片手を振るった。
その軌跡に沿って、誰とも知らない人の血が地面に曲線を描く。
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
助けを求めるのか、それとも夢オチを期待するのか。
私は後ずさり、停滞する思考が結論を出すのを待った。
.
20
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:22:16 ID:cQB6.m2k0
「――おう。来たのかい」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ハ、ハインさんっ……!?」
その時とつぜん声がした。聞きなれた声と、聞きなれたセリフだった。
私は周囲を見回して彼の姿を探したが、それはどこにも見当たらない。
ζ(゚ー゚*ζ「……お早い到着で」
私より先に、血塗れの美女が彼を見つけて言った。
彼女の視線は私の背後に向かっている。つまり彼はいつも通り、私の背後に立っていたのだ。
从 ゚∀从「見過ごせんのは分かるだろう。殺されると堪らん」
ξ;゚⊿゚)ξ「――うわほんとに居る!」
私は振り返ると同時に驚き、目を丸くしてハインさんを見上げた。
从;゚∀从「うわって何だよ、この礼儀知らず」
.
21
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:23:16 ID:cQB6.m2k0
ζ(゚ー゚*ζ「その子の為に出てきたの?
なら、お礼にその子は生かしてあげなきゃね」
从 ゚∀从「冗談ぬかすな。わざわざ網を張ってたのはテメェだろう」
ハインさんの錆付いた声が彼女の言葉を一蹴する。
幾多の戦いを越えて来たハインさんは、既に彼女の狙いを見抜いているようだった。
ζ(゚ー゚*ζ「殺さないってば。大事な大事な、私達の未来なんだから」
ξ゚⊿゚)ξ(未来だと? なんだか意味ありげだぞ)
私は伏線の匂いを嗅ぎ取った。
从 ゚∀从「……ツンちゃん、走って逃げな」
ハインさんは私の前に出て優しい声でそう言った。
あの女に向けた殺意ある声ではない、いつも通りのハインさんの声。
从 ゚∀从「こういう面倒事になる前に色々教えときたかったんだが、ぶっつけ本番だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、あの」
从 ゚∀从「走ることにだけ集中するんだぞ。
学校に遅刻するとか、そういう時の焦りを思い出して走れ」
ハインさんは私の狼狽を無視して言う。
だが私はもうとっくに走れるような状態ではない。実は腰が抜けて少しチビっていた。
.
22
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:23:56 ID:cQB6.m2k0
从 ゚∀从「大丈夫だ。お前は一度逃げ切ってる。
今度も同じ事をする、それだけだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……逃げなきゃダメ? 走れそうにないの」
从 ゚∀从「……じゃあいい。そこで目ぇ閉じてじっとしてな。迎えが来るから」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、ハインさんは来ないの?」
从 ゚∀从「ああ。俺はアレを足止めせにゃあならん」
ζ(゚ー゚*ζ
ハインさんがアレを指差して言うと、アレはひらひらと手を振って答えた。
こちらは準備できてますよ、とでも言いたげだった。
从 ゚∀从「それじゃあツンちゃん、また明日な」
それを最後に、ハインさんがこちらを向くことはなかった。
目を閉じていろとは言われたが、私はこれから何が起こるのかをどうしても確かめたかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
私は固唾を飲み、目を見開く。
.
23
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:25:14 ID:cQB6.m2k0
ζ(゚ー゚*ζ「――小競り合いは省きましょう」
瞬間、空気がドンってなった。
なんかあの女からすごいオーラが出て風も出てる。
从 ゚∀从「本番前だろう、後悔するぜ」
対照的に、ハインさんの戦闘準備はとても静かだった。
彼の右腕に優しく火が灯り、その中にするりと細長いものが姿を見せ始める。
ハインさんは火中に現れたそれを掴み取ると、火を払うように右腕を一振りした。
今まで幾度となく同じ所作を繰り返したのだろう、ここまでの動作は実に滑らかで迷いがない。
敵味方で地の文にかなり格差があるかもしれないが問題はなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ(……刀だ。ベタだ……)
ハインさんが掴んだもの、それは博物館でしか見た事がないような立派な日本刀だった。
しかもなにかオーラが出ている。すごい。
( ^ω^)「あれは妖刀。呪物の類だお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……お迎えってアンタなの」
( ^ω^)「そうだお。安心したお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「気が抜けたって意味ならね……」
急に現れて話しかけてきたブーンに、私は普段通りの応答をした。
ブーンも何やら武装しているがそれの描写は次回以降に回すことにした。
.
24
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:26:49 ID:cQB6.m2k0
从 ゚∀从「いつでも来いよ、成れの果て」
ζ(゚ー゚*ζ「んじゃ遠慮なく」
――途端、私の目の前で風が爆発した。
ξ;゚⊿゚)ξ「――――ッ!」
( ^ω^)「おっ」
从;゚∀从「……せっかちだな」 ガチ、ギリッ・・・
私は現実を改めて認識する。
ハインさんが構えた日本刀が女の武器を受け止めている。
先の爆発は両者の激突が起こした余波みたいなものだったのだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「せっかちって、誘ったのはオジサンでしょ?」
女の武器は、ハインさんの刀に比べればかなり見劣りした。
バカな中学生が持っているような十徳ナイフ、それが彼女の武器だった。
しかし彼女の力量の本質は武器には無いような気がした。彼女の強さはもっと別の所にある。
でなければ、日本刀と十徳ナイフが真正面からかち合える訳がないのだ。
.
25
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:27:37 ID:cQB6.m2k0
そこから先、私はただ目に映るものを脳で処理するだけだった。
現実となって展開しだした『非日常』に置いていかれないよう、現実に適応できるように。
从 ゚∀从「――――」
ζ(゚ー゚*ζ「――――」
月光を纏って闇夜を切り裂く二つの刃。
その激突の一つ一つが描く光の軌跡を、私はただ傍観している。
( ^ω^)「……終わるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
傍観者で居られるのは、きっとこれが最後なのだ。
私はなんとなくそれを理解し、戦いの終わりを見届ける。
.
26
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:28:17 ID:cQB6.m2k0
――戦いの終わりは同時に、私の日常にも終わりを告げていた。
.
27
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:29:15 ID:cQB6.m2k0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思う鳩サブレであった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
28
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:48:17 ID:1Xp6fD960
え
29
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:50:39 ID:8Cumm/dM0
おつ
期待してます
30
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 07:05:14 ID:5ew/Xj/o0
なんかすごい戦闘描写にすごい感動したんで続きもすごく楽しみにすごいです
31
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 07:14:09 ID:mM/IsR8Y0
適当な投げやり感がたまんねえな
32
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 08:21:12 ID:XB.xSiog0
この流れるような気持ちいい文章たまらない
33
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 10:37:36 ID:LArC2k7M0
この適当な感じ
壁殴り代行始めましたを思い出す
34
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 10:52:36 ID:hfJtWk4A0
すごく雑な感じがイイ
35
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 20:10:55 ID:1PEZEPfk0
ツンちゃん寝坊しすぎwww
ひ・・・ひよこまんじゅうではないんです・・・?
36
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 21:01:35 ID:NqmnIpHE0
乙
なんという読みやすさ
37
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 21:41:14 ID:ank312uMO
すさまじいツンちゃん愛を感じたぜ
38
:
名も無きAAのようです
:2015/10/15(木) 20:08:56 ID:GJxpEXi60
往け往けツンちゃんDonと往け
39
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:18:10 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「あー終わった終わった」
ζ(x_x*ζ バタンキュ〜
戦いはハインさんの勝利に終わり、女は前時代的な敗北演出をして地面に倒れていた。
( ^ω^)「お爺ちゃん! すごかったお!」
ブーンのすごかったという一言には地の文数十行分の中身があった。
それは筆舌に尽くしがたく、しかしすごいの一言に表すことができる日本語の不思議だった。
从 ゚∀从「……ブーンちゃんよぉ、そいつ連れて帰れって言わなかったか?」
ハインさんは日本刀で自分の肩をトントン叩きながら言った。
どうやら事前に打ち合わせがあったらしく、ブーンはそれを無視して私と戦闘を観戦していたようだ。
( ^ω^)「言ってないお! お爺ちゃんいよいよ痴呆だお!」
从 ゚∀从「そうだっけか? あー覚えてねえ」
.
40
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:19:21 ID:yzbsae9w0
ξ゚⊿゚)ξ「……帰って寝ていい?」
( ^ω^)「いいお! 長話は明日にするお!」
バカが何も考えずに即答する。
しかしハインさんも同じ意見だったようで、彼はブーンの言い分に軽く頷いた。
从 ゚∀从「ブーン、ツンちゃんを送ってやれ。一人は危ないからな」
⊂( ^ω^)「よしきたお! ツンはバカだから僕が送ってあげるお!」
( と)
/ >
ξ゚⊿゚)ξ「別にいい」
( ^ω^)「分かったお!」
私は帰って寝た。
.
41
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:20:01 ID:yzbsae9w0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 鳩サブレーは、神奈川県鎌倉市の豊島屋が製造・販売するサブレー。
/ ::::: i 名前が示す通り鳩を模した形が特徴。
/ ::::: ゙、 主に鎌倉の鶴岡八幡宮に参詣した人の土産として有名。(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
42
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:20:43 ID:yzbsae9w0
あれから家に帰って寝直した私は、その日、学校を休んだ。
そもそも行く気にならなかった。眠い。
ξ゚⊿゚)ξ(あーヤクルトおいちー)チュー
つ臼
こういう甘えが許される内は存分に甘えていくのが私のスタンスである。
私は昼頃に起床し、そのままリビングで昨夜録画したアニメを見始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『ここは市立ハトサブレ学園。俺の名前は鳩サブロウ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ゚⊿゚)ξ(今期覇権候補、サブ学……)
つ臼
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『やっやめろ鳩サブロクロウ! 兄弟でこんな!』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、.
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『なんで拒否するの!僕はサブにぃが好きなだけなのに!』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ゚⊿゚)ξ「……」
つ臼
ツンは前衛的な映像に衝撃を受け、そっとテレビを消した。
それは唐突に一人称が三人称になるくらいの衝撃だった。
.
43
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:21:24 ID:yzbsae9w0
⊂( ^ω^)「ピンピピンポーン!!」ダダダダダ!!
三 ( と)
三/ >
そのときバカがインターホンを押さずに家に駆け込んできた。
もうどうしようもないので私は慎ましく彼を迎え入れた。
( ^ω^)「お爺ちゃんが言っていた。うちに来いと」
ξ゚⊿゚)ξ「行かざるをえないようね」
44
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:22:04 ID:yzbsae9w0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ハインさんが居る屋敷に着いた。
前と同じ部屋に行くと、ハインさんと昨日の女が目に付いた。
从 ゚∀从「よおツンちゃん、昨日は眠れたかい」
ξ゚⊿゚)ξ「なんの話? 帰りたいんだけど」
私は出されたお茶を無視してオランジーナを飲み始めた。
从;゚∀从「帰りたがるな。お前には色々言っとかにゃならんのだ」
( ^ω^)「ツンはバカだから聞いといたほうがいいお!」
ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあまずアレから」
ζ(゚ー゚;*ζ「くっ……」
私は部屋の片隅で「くっ殺せ」と言わんばかりに敵意を見せる彼女を一瞥した。
彼女の両手足はギチギチに縛ってあり、痛そうだなぁとおもった。
.
45
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:22:44 ID:yzbsae9w0
ζ(゚ー゚;*ζ「くっ殺せ! 生き恥を晒すくらいなら……!」
ξ゚⊿゚)ξ(うわホントに言った)
从 ゚∀从「あのセリフな、昨日今日とで6回目なんだぜ。
よっぽど言いたかったんだろうな」
( ^ω^)「あの人もバカだお!」
ハハハ、という哀れみを含んだ笑いがまばらに起こる。
私は飲みかけのオランジーナを女にぶっかけた後、ハインさんの話を聞き始めた。
从 ゚∀从「導入は昨日の話からだ。
昨日、お前に正義と悪の戦争について話したよな?」
ξ゚⊿゚)ξ「あーなんか」
私はあんまり覚えていなかったので適当に合わせた。
从 ゚∀从「簡単に言うと、その女は正義側の人間だ。
超能力っぽいことができる。ほら、空気がドンってしたろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」
.
46
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:23:24 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「……なんで正義の味方が人殺しを? とか聞いて欲しかったんだが」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあそれ教えて」
从;゚∀从「お前さぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
( ^ω^)「じゃあそこから先は僕が説明するお!」
( ^ω^)「戦争のさなか、わずか数十名の部隊で正義の味方を壊滅させた集団があった。
それが悪者の方。辛うじて戦争に勝利した悪者達は正義の力を恐れ討伐に乗り出した。
今、本当の忍空を知る者は少ない。」
ξ゚⊿゚)ξ「すごくわかる」
わかりやすいナレーションが脳裏を過ぎり、私は状況をなんとなく把握できた。
ξ゚⊿゚)ξ「……で、その女はどっち側なの?」
从 ゚∀从「それ数秒前に言ったよな?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
从;゚∀从「……分かりやすく言えば、正義の味方の敗残兵ってトコだな。
もっとも、今じゃ正義なんて名乗れた集まりじゃねえが……」
ξ゚⊿゚)ξ「そのくだりも聞いたほうがいい?」
从 ゚∀从「聞いて欲しい」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
.
47
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:24:05 ID:yzbsae9w0
ハインリッヒ高岡はお茶をすすり、はるか昔の思い出たちをゆっくり想起した。
戦争は長く苦しい戦いだったが、彼にとっては戦場こそが青春の舞台だった。
悲しみの青い春。彼はそれを思い出し、穏やかに語り始める。
从 ゚∀从「……あの頃から『正義』は腐り始めていた。
力を持ちすぎた結果、あの集団は『完璧な正義』が実現可能だと知ってしまった」
从 ゚∀从「可能ならそれをせずにはいられない。
人間の愚かな性の集大成が、あの戦争の真実だ」
( ^ω^)「お爺ちゃん……」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴクリ……」
私はオランジーナを飲んだ。
从 ゚∀从「元々、『正義』には決定的な存在が欠けていた。
『悪』の魔王に匹敵する唯一の存在、勇者だ」
从 ゚∀从「勇者無しでも奴らは十分に強かった。しかし魔王には遠く及ばない。
魔王以外は滅ぼせても、諸悪の根源を絶つことが奴らにはできなかった」
从 ゚∀从「……そこで奴らは思い至った。勇者を作る、という結論にな」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴクゴク……」
.
48
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:24:45 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「勇者の製造に必要なもの、それは悪の技術力だった。
魔物を作る――生命を生み出すという技術が、正義にはなかったんだよ」
从 ゚∀从「後日、正義は悪に対してなりふり構わない略奪と殺戮を開始した。
ゴールは見えてたからな、あとは全速力で突っ走るだけだった」
从 ゚∀从「そして、その過程で正義の腐敗が決定的なものになった。
生命を生み出す過程で、正義は狂気を内包する存在に変貌した」
ξ゚⊿゚)ξ「サブ学見た?」
( ^ω^)「見たお! サブレ食べたいお!」
从 ゚∀从「狂った正義はやがて勇者を作り上げた。そりゃもう大成功よ。
で、その結果戦争が始まった。
完成した勇者と魔王の図をもって、この世に完璧な正義を――っていう魂胆でな」
从 ゚∀从「前に話したとおり戦争は悪が勝った。
だから正義の目論見は失敗した……んだが、実は殆ど奴らの目的は成功していた」
从 ゚∀从「魔王を殺すこと。悪を殺すこと。そして、世界を正義で支配すること。
この三つのうち、中途半端にも三つ目以外を果たしちまった」
.
49
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:25:25 ID:qANEyHLQ0
続きキテる支援!
50
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:25:26 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「急造でも勇者には変わりなかったのか、
運命とでも呼べるものに魔王は倒された。目的1達成」
从 ゚∀从「壊れた正義を目の当たりにし、遂には魔王まで殺された悪もその在り方を変えた。
『悪』は自分達以上の『悪』を前にして、『悪者』としての役柄を殺された。目的2達成」
从 ゚∀从「だが、戦争そのものに負けた正義に世界を支配するだけの余力はなかった。
それだけが正義の誤算だった。魔王を容易く倒せると踏んだ、奴らの油断だった」
ξ゚⊿゚)ξ「帰って寝たい」
( ^ω^)「もうちょっとだから聞いてあげてほしいお!
お爺ちゃんこれ言う為にすごい頑張ってたんだお!」
从 ゚∀从「あとは昨日話したとおりだ。
悪が世の中を動かすようになって、二度と『正義』という間違いが起きないよう働き出した」
.
51
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:26:07 ID:yzbsae9w0
ζ(゚ー゚;*ζ「ふふ、なにが間違いよ……」
ハインさんの話がやっと終わったと思ったら、今度はオランジーナまみれの女が口を開いた。
ζ(゚ー゚;*ζ「そもそも『悪』が時代錯誤なのよ!
魔王や魔物さえ居なければ、私達も激化に頼ることはなかった!」
ζ(゚ー゚;*ζ「……それは貴方が一番分かっているはず。
だって、元は『正義の味方』だったんだから……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ、ハインさんが……?」
私が反射的にハインさんの顔を見ると、彼は微笑んで私に答えた。
从 ゚∀从「おうともよ。ただし、正義を見限って悪についた裏切り者だ」
( ^ω^)「その頃ブーンは生まれてないから無関係だお!」
.
52
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:27:03 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「……ま、一通り全員の立ち位置が分かったところで」
从 ゚∀从「今度はお前の番だ、ツンちゃん」
ξ;゚⊿゚)ξ「えー私が魔王の子孫とかだったら嫌なんだけど」
从 ゚∀从
( ^ω^)「ツンにしては頭がいいお! その通りだお!」
ξ゚⊿゚)ξ
从 ゚∀从「じゃあ次。お前、実はすげー狙われてるんだぜ。
お前ブッ殺して魔王の血を絶やしてしかも次の勇者の素体にする為にな」
ξ゚⊿゚)ξ「待ってすごい重要なのに二行」
从 ゚∀从「これから色々狙われるだろうけど頑張って生き延びて欲しい」
ξ゚⊿゚)ξ「行数の配分がおかしい」
.
53
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:27:43 ID:yzbsae9w0
なんか急にテキパキ進み始めた話に私はついていけなかった。
分かりやすくはあったが、事実を受け止めるだけの時間は一切無かった。
从 ゚∀从「で、今後のためにもこの女から色々情報を聞き出したいんだが……」
ζ(゚ー゚;*ζ「何されたって答えないわよ。それは昨日の夜で分かったでしょ」
从;゚∀从「尋問も無駄で困ってたんだわ。二人とも、なんか名案ねえかな」
ξ;゚⊿゚)ξ「待ってそれどころじゃないの」
( ^ω^)「あーツンはバカだから」
从;゚∀从「コイツ自分の名前すら答えねえんだよ。
若者の相手は若者にと思ったんだがなぁ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあ抱けば? それより私、家に帰んなきゃ」
私は胸のざわつきに従って立ち上がった。
ハインさんの話が本当なら、お母さんがなにか知っているはずだ。
从 ゚∀从「あーその手があったか」
ζ(゚ー゚;*ζ「えっ」
.
54
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:28:23 ID:yzbsae9w0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
走って家に帰った私はリビングに駆け込み、キッチンに向かって叫んだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「おーかさん! ちょっと聞きたいんだけど!」
@@@
@@@@
( ФωФ)「あらあら、どうしたの」
ξ;゚⊿゚)ξ「うちって魔王の血統なの!?」
@@@
@@@@
( ФωФ)「そんな訳ないじゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「まあそうか」
母の言う通りだった。この御時世に魔王がどうこうの話が出てくるものか。
私は納得し、そして安心して言った。
ξ゚⊿゚)ξ「よし寝るぞ」
そして一日が終わった。
.
55
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:29:03 ID:yzbsae9w0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ もみじ饅頭は、饅頭の一種。
/ ::::: i もみじをかたどった焼饅頭の一種であり、広島県の厳島(宮島)の名産品である。
/ ::::: ゙、 職人が店頭で焼き型を使って手焼きし、販売している店舗もある(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
56
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:29:48 ID:yzbsae9w0
――翌日、学校。
たっぷり寝たおかげか、今日ばかりは朝にパッチリ目が覚めた。
私とて普通に目が覚めれば普通に学校に行く。
ここ数日の遅刻欠席はやんごとなき不可抗力であって、決してサボリではないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「しかし、早く来すぎた」
時刻、午前6時。
私の独り言に反応する者は教室内に一人も居なかった。
('A`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……無視するの?」
(;'A`)「……いや、お前がこんな時間に居るとか信じられなくて」
反応こそなかったが、私の独り言を無視する男は一人居た。
そいつの名前はドクオ。生ゴミと見間違えられた回数なら誰にも負けない・・・すごい漢だ。
.
57
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:30:29 ID:yzbsae9w0
ξ゚⊿゚)ξ「あんたこそ何で居るの?
生きる価値ないじゃない」
(;'A`)「早めに登校しただけで存在否定か」
ξ゚⊿゚)ξ「……それが?」
(;'A`)「……なんでもねーよ」
ドクオはそう言って顔をそらした。
彼の顔は真正面から見ていられる顔面ではないのでとても助かる。
( 'A`)「……誰も居ない教室、二人きりか……」
この生ゴミは急に気持ち悪いことを呟いた。
吐き気がする。
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが消えれば一人きりになれるんだけど」
('A`)「……俺だってそーしたい。だけどな、今はちょっと面倒だ」
ξ゚⊿゚)ξ「両脚ちぎれた?」
(;'A`)「……お前さ、もうちょい危機感持ってくれよ」
.
58
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:32:19 ID:yzbsae9w0
その時、私のケータイが鳴り響いた。
メロディはアイドルマスターシンデレラガールズのOP「Shine!!」だった。
ξ゚⊿゚)ξ「あっ最終回見た?」
(;'A`)「……見たけど先に電話に出ろ。たぶんハインさんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あれもう過呼吸で死ぬかと思った」
(;'A`)「感想は後で聞いてやるから出ろって!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんともうみんな一段ずつ階段を上ってきたんだなって」
(;'A`)「ああもう俺が出るから貸せ!」
生ゴミの手が私のケータイに伸びてきた。
私は反射的に生ゴミのチンコを蹴り上げて電話に出た。
( ^ω^)『おっすおっす! 今どこだお!』
電話の相手はブーンだった。やはり生ゴミの予想など当てにならない。
しかしブーンの声はノイズまみれで、激しい物音が向こうから聞こえてきていた。
それは刃物同士がぶつありあう金属音。戦闘の音なのはすぐに理解できた。
ξ゚⊿゚)ξ「……学校だけど。なんか用?」
( ^ω^)『さっきあのメス豚の尋問終わったらしいお!
で、とりあえず隠れてろってお爺ちゃんが言ってるお!』
メス豚というと、先日ハインさんに倒されたあのメス豚に違いない。
.
59
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:32:59 ID:yzbsae9w0
( ^ω^)『なんか刺客が来るから頑張ってほしいらしいお!』
ξ;゚⊿゚)ξ「マジで!? すごい大変じゃないの!」
( ^ω^)『でも全部ドクオに押し付ければ大丈夫だお! じゃ!』
ブーンはそれを最後に通話を切った。ここまでブン投げられるととても清々しい。
私はしばし呆然としたままケータイを見つめた後、生ゴミもといドクオに視線を送った。
('A`)「……そーいう事だ。そろそろシリアスになれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……もう来てるの?」
( 'A`)「一人来てる。俺で対処するから、お前はとにかく逃げてろ」
やけに自信たっぷりに言い切ったドクオ。
言ったからには、こいつにもブーンやハインさん同様のスゴイパワーがあるはずだ。
既に来ているという敵がどの程度かは知らないが、今はドクオのスゴイパワーに頼るほかない。
.
60
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:33:39 ID:yzbsae9w0
(;'A`)「――来たぞ!」
そして、心に余裕を作る時間はもう残っていなかった。
私は周囲に警戒し、じりじりと壁際に下がっていく。
空気の流れが止まり、浮き足立った体がストンと床に落ちる感覚。
現実を強く認識させながら、しかし現実離れした『死の恐怖』が近付いてくる感覚。
その感覚に、私は覚えがある。
ξ;゚⊿゚)ξ(ほんと、嫌な感じ……)
カタン、という音と共に教室のドアに誰かが手を掛ける。
私はドクオの背中ごしにそれを見つめていた。
今の私にできることは何もない。ひたすら逃げる事だけを考え、私は身を強張らせる。
「……それが、魔王の孫娘か」
やがて言葉と共にドアが開き、白い鎧の女が教室に入ってきた。
女は黒い長髪をひるがえし、堂々と教壇に立って私達を見下した。
彼女の高圧的な雰囲気にはドクオも気圧されたらしく、私達は思わず一歩下引きがった。
.
61
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:34:43 ID:yzbsae9w0
川 ゚ -゚)「――素直四天王が筆頭、素直クール。
すまないが、お前達にはここで死んでもらう」
女、素直クールは腰の鞘から剣を引き抜き、それを空中で一振りした。
戦闘シーンを全カットされ、次回開始時には負けているとも知らずに――
.
62
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:35:28 ID:yzbsae9w0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思うかえるまんじゅうであった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
63
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:49:43 ID:qANEyHLQ0
かえる饅頭……?
相変わらずスピーディーな展開に驚天動地なツンのダメっぷりだな
64
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 09:12:00 ID:kIoPdem20
乙
いやはや、デレの扱いがなかなかどうして
65
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 11:25:21 ID:EIDpdI8g0
乙
戦闘全カット宣言かよ
66
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 11:31:47 ID:VhYt/u7.0
おもしろい
67
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 15:37:18 ID:Oiynk6wc0
サブ学のくだりでわろた乙
68
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 18:37:05 ID:nTKGo4cU0
面白い
69
:
名も無きAAのようです
:2015/10/19(月) 14:00:41 ID:udnS5/0k0
一人アホがいるだけでこうなるのか…
70
:
名も無きAAのようです
:2015/10/21(水) 21:14:14 ID:/H99ywC60
ツン母魔王顔だな
71
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 00:56:00 ID:ICVMj68k0
まってる
72
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 11:50:52 ID:4g.XOfMIO
ツンちゃん最高だわ
73
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 14:21:20 ID:HywJ6Hdg0
せんせー!デレちゃんの尋問内容が気になりまーす!
74
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:26:25 ID:d5Oqci1Y0
素直クールは魔物化したドクオに倒された。
すごい戦闘があり、私はドクオをちょっと見直した。
おわり。
.
75
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:27:06 ID:d5Oqci1Y0
( ^ω^)ノ 「おいす〜」
午前8時ごろ、やっとブーンが教室に現れた。
危機感をそぐ気の抜けた挨拶。
二時間前にすごい戦いを終えた私にとって、それは日常を思い出させてくれるすごいあれだった。
('A`)「おー。なんか素直四天王とかいうの倒しといたぞ」
ドクオはさっそく先程の戦いをブーンに伝え始めた。
( ^ω^)「誰が来たお?」
('A`)「素直クールだってさ。知ってるか?」
( ^ω^)「知らんお。たぶん使い捨ての雑魚だお」
('A`)「筆頭とか言ってたけど、たしかに強くはなかったな」
( ^ω^)「向こうも人員不足なんだお。お察しだお」
.
76
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:27:49 ID:d5Oqci1Y0
ξ゚⊿゚)ξ「それより」
と言って、私は会話に割り込んだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオまで正義だ悪だの関係者だったとか、知らなかったんだけど」
('A`)「そりゃ教えてねえもん」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんで教えてくれなかったの? ブーンもだけどさ」
( ^ω^)「ツンはバカだから教えると面倒臭いんだお!
ってお爺ちゃんが言って決めたんだお! 秘密にするって!」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ〜……激化の話はポロッと話したくせに……」
('A`)「この際バラしちまえばな、お前は今までも魔王軍に守られてたんだぜ。
お前を探しに来た正義の連中を撃退したり、身辺警護したり」
( ^ω^)「まあ大体ドクオが一人でやってたけどNE!」
ξ;゚⊿゚)ξ「は? つまりストーカーじゃないの死になさいよ」
(;'A`)「こないだの女、中学の時に相手したの俺なんだぞ。
すげー強くて相打ちが限界だったけどよ、俺が居なけりゃなあ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「変態! どうせ風呂とか覗いてたんでしょ! オゲェェェ!!」
(;'A`)「ブーン、こいつめんどくせえよ……」
( ^ω^)「だから言ったお」
.
77
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:28:41 ID:d5Oqci1Y0
しかし、私の日常からどんどん逃げ場がなくなっているぞ。
ただでさえ日常を構成するものが少ない孤高スキル持ちとして、この現状は致命的と言える。
頼みの綱はお母さんだけだ。
もし本当にウチが魔王のアレだった場合、もう完全に逃げ場はない。
( ´∀`)「おはよぉ〜〜」
その時ふとモナー先生の声がして、私は教室の時計を一瞥した。
もうすぐ朝のあれが始まるくらいの時間だった。
他のクラスメイト達も着々と教室に集まりつつあった。
( ´∀`)「適当に出欠とるから答えてってモナ〜〜」
(;'A`)「でもよぉー、ほんとにまったく気付かなかったのか?
自分がそういうのと関わってるってさぁ」
モナー先生が一人ずつ生徒の名前を読み上げ始める。
その一方で私達は声をひそめ、会話を続けた。
ξ;゚⊿゚)ξ「そんなの、完全ノーヒントで分かる訳ないじゃない!」
(;'A`)「……分からないのが自然だったかぁ」
( ^ω^)「……」
.
78
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:29:21 ID:d5Oqci1Y0
( ´∀`)「じゃあ次、魔王城さん〜」
ξ゚⊿゚)ξ「……あ、はい」
会話に気をとられて返事しそこねそうだったが、私は咄嗟に振り返って返事をした。
私の名前は魔王城ツン。どこにでも居るタイプの女子高生だ。
(;'A`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、次アンタが呼ばれるからね」
( ´∀`)「魔物部く〜ん」
(;'A`)「……はい」
( ^ω^)「ドクオ、ツンはバカなんだお」
苦い表情のドクオに、ブーンは優しくそう言っていた。
.
79
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:30:09 ID:d5Oqci1Y0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ξ゚⊿゚)ξ:魔王城ツン】 ごく普通の女子高生。その正体は一体・・・?
【('A`):魔物部ドクオ】 ごく普通の男子。まものべと読むぞ。その正体は一体・・・?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
80
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:32:26 ID:d5Oqci1Y0
【interlude:1】
妖刀・首断ち。
その刀は、戦時中のハインリッヒ高岡が魔王軍的なあれの中ボスくらいの奴を殺して奪った刀。
刀身の切れ味もさることながら、目を見張る能力は毒性付与・呪術展開・精神操作の三つ。
もともと悪の側で製作された一振りであるため、刀は十全なる悪意に満ちていた。
从 ゚∀从「……お前の名前は」
ζ( ー *;ζ「……デ、レ……」
从;゚∀从「……まだ抵抗できんのか。俺の時より洗脳教育がひでぇな」
妖刀を得たハインが最初に行ったのは自分自身への精神操作。
当時から正義の一団は半ば洗脳に近い教育を行っていたため、そうでもしなければ彼は自分を保てなかったのだ。
もし妖刀を手にするタイミングが少しでも遅れていれば、彼もこのメス豚のように従順な存在に変えられていた。
ζ( ー *;ζ「こ……殺せッ……!」
从 ゚∀从「このまま精神操作に耐えてりゃ勝手に死ぬ。精神崩壊だ。
死にたいなら頑張って我慢するといい。それが出来れば、の話だが……」
ハインは妖刀・首断ちをメス豚――デレの首に当て、ゆっくりと肌を切り裂く。
これで全身三十ヶ所目の切り傷、三十回目の精神操作。
デレの精神は、もう間もなく壊れようとしていた。
.
81
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:33:15 ID:d5Oqci1Y0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 五平餅は、中部地方の郷土料理。潰したご飯を串焼きにしたものである。
/ ::::: i 醤油または味噌に、胡麻など油脂を含むものをあわせてタレを作る。
/ ::::: ゙、 むかし食べたけどすごくおいしかった(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
82
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:34:02 ID:d5Oqci1Y0
( ´∀`)「みんな揃ってるから、次は転校生を紹介するモナ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ねえねえ、やっぱ今日みたいなのってまた来るの?」
( ^ω^)「そりゃもう来まくるお。
お爺ちゃんの居場所がバレた以上、もう逃げてらんないお」
私達はなお先生を無視して小声で話し続けた。
ありがちな転校生の話より、今は私の身の安全の方が大事なのだ。
( ´∀`)「転校生はなんと四人! すごいモナ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「うそだーいやだー……」
('A`)「お前も自衛くらい出来るようにならねぇとな。
いつ第二、第三の刺客が来るか分からねぇ。放課後に特訓でもするか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやだ帰ってアニメ見る」
( ^ω^)「でもお爺ちゃんが今日も呼んでたお。学校終わったら三人で来いって」
ξ゚⊿゚)ξ「行く」
ハインさんはカッコイイので会いに行くのもやぶさかではない。
少なくともドクオと特訓なんて死んでも嫌だ。
.
83
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:37:03 ID:d5Oqci1Y0
( ´∀`)「みんな注目モナ〜」
私達の雑談に気付いたのか、モナー先生がやんわりと注意を発した。
普段から気高い生き様を見せる私は素直に先生の意図を汲み取り、黒板の方を見る。
( ´∀`)「……よしよし。それじゃあ四人とも、入るモナ!」
先生が廊下に向かって言うと、教室の扉が開いて四人のメスがぞろぞろ入ってきた。
ξ゚⊿゚)ξ(なんだどいつもこいつもメスか)
ジョン・トラボルタあるいはシド・バレットを期待していた私は本当にガッカリだった。
( ´∀`)「四人は姉妹で転校してきたんだモナ。
長女のクールさんから、自己紹介をお願いするモナ」
私は教壇に立ち並んだ四人を死んだ目で眺める。
もう本当に興味がないので早く終わってほしかった。
.
84
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:37:44 ID:d5Oqci1Y0
川(#)"-゚)「第一刺客ノ高校から来ました。素直クールです」
ノパ⊿゚)「第二刺客ノ高校から来ました。素直ヒートです」
lw´‐ _‐ノv「第三刺客ノ高校から来ました。素直シュールです」
o川*゚ー゚)o「第四刺客ノ高校から来ました。素直キュートです」
('A`)
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオってあの長女とか好きそう」
長女の素直クールは傷だらけで、おそらく自傷癖があるメンヘラだろうと私は名推理した。
そしてドクオはこういう女が好きだろうと女の感が告げている。
('A`)「……お前さ、まず人の話をしっかり聞こうな」
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
( ^ω^)「ツンはバカだから」
.
85
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:39:06 ID:d5Oqci1Y0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
――VIP高校某所、素直四天王アジト。
お昼休み。
屋上の給水タンクの裏に設置されたテントの中で、素直四天王は第一回作戦会議を行っていた。
某所という描写は単にそれっぽさを演出する単語でしかなく、アジトは普通に屋上だった。
川(#)"-゚)「ククク、これで四天王全員が揃ったな……」
転校初日からボロ雑巾スタイルで登校する事になった長女・素直クール。
不敵に笑ってはいるが彼女は地の文一行でドクオに敗北している。
彼女は四天王最速の騎士であったが、その描写は諸般の事情で全カットされた。
ノハ;゚⊿゚)「姉ちゃんなんでボロボロなんだ!? 転んだ!?」
次女・素直ヒートは力持ち。
lw´‐ _‐ノv「…………」
三女・素直シュールは手先が器用。
o川*゚ー゚)o「いやいや負けたんでしょ。一人で戦いに行ってさぁ〜」
四女・素直キュートは普段は生意気だけど真面目に戦うとすごい強いタイプの敵。
たぶん彼女の戦闘シーンが一番複雑になるので、既にカット候補だった。
以上が、四天王それぞれのポジションであった。
.
86
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:40:24 ID:d5Oqci1Y0
川(#)"-゚)「こ、これは敵の実力を知る為に、あえて尖兵としての役割を……」
o川*゚ー゚)o「そりゃ強いに決まってんじゃん。
私達って別に正義悪のアレじゃないんだよ?」
負け惜しみを語るクールに対し、キュートは爪の手入れをしながら生意気に答えた。
彼女の言う通り、この素直四天王(自称)は別に作中の面倒な設定とはまったく無関係だった。
確かに作品を読み返してみると素直クールが正義の側である描写は一行もない。
そして彼女の戦闘シーンは一行(20字)しかない。
扱いの酷さを考えるに、彼女達が特別重要な存在ではないのは明白だった。
o川*゚ー゚)o「私達、ちょっと身体能力が高いってだけで凡人じゃん?
それで傭兵紛いの事してるけどさ、あんなマジ連中になんか勝てないって、ムリムリ」
川(#)"-゚)「だ、だけどお姉ちゃん、みんななら出来ると思って……」
o川*゚ー゚)o「みんな? 最初から一人で行動してたのに?」
川(#)"-゚)「いや、だって本当に危なかったらみんなを巻き込めないし……」
o川*゚ー゚)o「あーはいはい。またそれね、分かった分かった」
川(#)"-゚)「キ、キュート……」
ノハ#゚⊿゚)「おいキュート! ねえちゃんイジメるなよ!」
o川#゚ー゚)o「……は? トーゼンのこと言ってるだけでしょ?」
川(#)"-゚)「あ、喧嘩はダメだといつも言ってるだろう……」
素直クールは姉妹に対してはヘタレだった。
.
87
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:41:56 ID:d5Oqci1Y0
lw´‐ _‐ノv「…………わ」
ノハ;゚⊿゚)「――ッ!! 待て、シュールが何か言うぞ!!」
o川;*゚ー゚)o「ッッ!!」
川(#)"-゚)「シュール……」
lw´‐ _‐ノv「わ、わ…………」
lw´‐ _‐ノv「――――私が天に立つ」
ノハ;゚⊿゚)「…………」
o川;*゚ー゚)o「…………」
川(#)"-゚)「おお、シュール。なんて頼もしい……」
lw´‐ _‐ノv「先ずは紅茶でも 淹れようか」
第三刺客ノ高校・素直シュール。
彼女が今、ツンちゃん討伐第二の刺客として動き出そうとしていた。
.
88
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:43:28 ID:d5Oqci1Y0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思う支倉焼であった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
89
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:43:59 ID:7Qob8PCE0
乙
90
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:47:59 ID:xp.lNWsQ0
おつおつ
91
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 21:10:09 ID:AtmrqgXQ0
乙
クーぼっこぼこじゃねえか
92
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 21:29:50 ID:PO7V9kks0
ツンちゃんの半端じゃないお馬鹿さが可愛い
素直姉妹は正義側でも悪側でもなかったのかよwwwww
乙でした!
93
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 22:01:09 ID:IFViHNBg0
ツンが本当に馬鹿だ
94
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 22:41:52 ID:.5KNHCjs0
鳩サブレみたいな鳥いいな
95
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 22:49:52 ID:7Qob8PCE0
五平餅は美味いよね
中部地方だからたまにおやつとかに食べるけど飽きない
96
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 22:49:55 ID:RMtD0kb.0
新しいな
97
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 23:45:56 ID:1g0rBq0.0
まるで緊迫感はない
98
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 01:43:15 ID:FS7CgB3.0
乙
ツンとドクオの名字がダイレクトすぎてワロタ
99
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 01:52:35 ID:kqe6L8L60
都城王土
100
:
名も無きAAのようです
:2015/10/28(水) 01:10:39 ID:JhpYg7NAO
支倉焼www唐突な地元の銘菓にフイタwww
久しぶりに食べたい(´・ω・`)
101
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:22:13 ID:OmzQ/CLU0
【interlude:2】
かつて『勇者』と定義された物質があった。
その物質は思考能力を持ち、自我も十分に発達した完璧な生命だった。
しかし人工物である以上、それが純然な生命として認められることはなかった。
人間にとって、人間から生み出されるもの以外はすべて『物』として定義される。
ゆえにその『勇者』はただの物であり、人間が使役する道具の一つでしかなかった。
勇者が誕生したことにより、『正義』は物質としてこの世に受肉した。
これまで形を持たず、単なる思想・法則・所属の名前でしかなかったものが形状を得た。
最早、それは神を人造することと同じだった。
正しくあろうとする意思は、全人類が共通して持っている『野性』。
人類の野性は遂に理性を超越し、あらゆる行為を正当化する物質を完成させた。
人間は、自分の正しさを主張・実行する時にこそ、理性を捨てて他人を傷つける。
ならば正義は野性の別称に他ならないと、かつての魔王は一考していた。
【interlude:out】
.
102
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:22:58 ID:OmzQ/CLU0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
放課後、私達はハインさんの屋敷に集まった。
しかし私は屋敷に着くなり、彼に一言釘を刺されてしまった。
从 ゚∀从「ここから先は命に関わるな話だ。今日ばかりは、誤魔化すなよ」
――誤魔化し。
確かに、ここ数日の私にはそれがあった。
認めざるを得ないが、私は少し、怖かったのだ。
正常であるはずの自分の日常は、その真逆のものに包囲されていた。
数日前までの平和は、私の勘違いと非日常の暗躍で構築されていた。
そんなことを受け入れるには、やはりまだ、時間がかかる。
.
103
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:23:38 ID:OmzQ/CLU0
ハインさんの和室に腰を下ろし、私達は出されたお茶に口をつける。
今日ばかりは私もお茶を飲んだ。お茶請けは鳩サブレだった。
从 ゚∀从「で、さっそく襲撃があったと」
('A`)「ああ。よく分からん奴が一人来た」
从 ゚∀从「素直四天王だったな。グーグルで調べた感じ、ただの雇われだ。
ツイッターの呟きからして間違いない」
そのソースは貧弱すぎる、と私は声を大にして言いたかった。
しかし今日ばかりは真面目に徹すると決めたので、ぐっと堪える。
从 ゚∀从「あとあいつらバカだから大して気にしなくていいぞ。
次の襲撃予告もツイッターでやってるしな、マジのバカだ」
( ^ω^)「ツンに負けず劣らずのバカだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「……次って、いつ来るの?」
私が真剣な面持ちで尋ねると、ハインさんは簡潔に答えた。
从 ゚∀从「あと30分くらいだな。素直シュールが来る。
情報源はツイッター。素直クールのアカウントからだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……これって真面目な話なの?」
从 ゚∀从「当たり前よ。敵がバカなだけだ」
.
104
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:24:18 ID:OmzQ/CLU0
从 ゚∀从「んで、30分後の襲撃に向けて俺達がすること」
話を区切り、ハインさんは私達をそれぞれ一瞥した。
从 ゚∀从「ツンちゃんに戦い方を教えて、素直シュールを迎撃させる」
ξ;゚⊿゚)ξ「――えっ?」
突拍子もないセリフに思わず声を漏らす。
何より文句をつけたいのは時間だ。たった30分で私に何を学べというのか。
从 ゚∀从「安心しな、つってもやる事は単純よ。
ツンちゃんは魔王の血筋、能力回路は既にある。
あとはそこに神経をつなぐだけ。要領は、耳を動かす練習と同じだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……私、耳は動かせるけど超能力は無いわよ」
从 ゚∀从「言っただろ、要領は同じだ。
お前はどうやって耳を動かせるようになった」
ξ;゚⊿゚)ξ「……自分の体なんだから、動かせて当然だと思って……」
从 ゚∀从「それが入り口。あとは欲しい力を想像して、体に反映させるだけ」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ……」
.
105
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:24:58 ID:OmzQ/CLU0
ξ;゚⊿゚)ξ「うーん……」
いきなり欲しい力と言われても、特に無い。
そもそも戦闘行為を知らない私に戦闘を想定した能力を考えろという方が無理だ。
もう真面目に考えているのが辛くなってきた。帰って寝たい。
( ^ω^)「ツンは足早いから身体強化でいいと思うお!」
ξ゚⊿゚)ξ「あーそれでいいやもう」
横から飛んできた名案を取ってつけた私は思考停止して自己暗示を始めた。
ξ゚⊿゚)ξ(アシハヤーイ、アシハヤーイ、スゴーイ)
多分こんな感じでいいだろう。
というか、何がダメなのかも分からないのでこれ以外にやりようが無い。
(;'A`)「……やっぱすげぇな、魔王の一族は」
(; ^ω^)「さ、さすがにやりすぎだお……?」
すごく適当にやっているのに、二人はなぜかすごく驚いていた。
私はまったく無自覚だったが、なんだか周囲の空気が震えているような気がする。
ちゃぶ台の湯飲みもカタカタ震えているし、なにやら魔力的なものの高まりも感じる。
ξ゚⊿゚)ξ(スゴーイ、モットスゴーイ)
脳内で唱えるともっとすごくなった。すごい。
.
106
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:25:38 ID:OmzQ/CLU0
从 ゚∀从「よしよしツンちゃん、その調子で続けてな。
この分なら素直四天王程度は全カットできそうだ」
そう言いながらハインさんは立ち上がり、和室を出ようと歩き出した。
从 ゚∀从「あとはおめぇら二人で見守っててやんな。
俺は野暮用を済ませてくるからよ」
('A`)「ウス」
( ^ω^)「……分かったお!」
ξ゚⊿゚)ξ「スゴーイ、アシガハヤーイ……」
その時、私は見逃していなかった。
ハインさんが腰にしっかりと刀を携え、戦いに赴く剣客の意気を纏っていた事を。
ξ゚⊿゚)ξ(スゴクスゴーイ)
しかし、私はハインさんを止められなかった。
私はどこかでまだ誤魔化し、油断していたのだ。私を取り巻く平凡な日常は、決して欠けたりしないのだと――。
ξ゚⊿゚)ξ(スゴーイ)
.
107
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:26:45 ID:OmzQ/CLU0
【interlude:3】
ハインリッヒ高岡は刀一本を持って屋敷を出た。
夕日に背を向け、夜に向かって前進する。
夕方の住宅街にはまだ人の往来がある。
ここで戦いを始めてしまうのは、彼らにとっても不都合が多かった。
彼ら――それに含まれる人物は十人。
ζ(゚ー゚*ζ「……いいの? あっち放っておいて」
从 ゚∀从「適材適所よ。後の事はブーンに教え込んである」
ハインリッヒ高岡と洗脳調教済みのデレ。
残る八人は、すべて正義側の刺客だった。
敵は既に戦闘可能範囲に居た。
いつでもどこでも戦いを始められるよう、早くもハインを包囲していたのだ。
都合の良い戦場さえ決まってしまえば、この戦闘は一呼吸の間に幕を開ける。
.
108
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:27:51 ID:OmzQ/CLU0
从 ゚∀从「……デレ、敵の情報はあるか」
ζ(゚ー゚*ζ「……言う必要ある? どう見ても総力で潰しに来てるじゃない」
デレの言う通り、敵は全員が主力級の怪物達だった。
敵は戦時中 『王座の九人』 と呼ばれた戦士達。
勇者不在の正義の一団が、形式上あえて勇者に近い存在として認めた最強の九人。
そして今、ハインのもとには 『王座の九人』 から八人が来ている。
その意味が分からないハインではなかったし、戦えばどうなるかも、彼は十分に自覚していた。
あえてツン本人には告げなかったが、正義の側は本気でツンを奪いに来ている。
本来なら今日中に魔王化まで教えたかったが、今の彼女にそれをするだけの精神力はない。
物事には順序がある。時間は無いが、少しずつやっていくしかないのだ。
从 ゚∀从「んなこたぁ分かってる。目的は時間稼ぎだ。
そんで、できれば生きて帰る」
ζ(゚ー゚*ζ「できれば、ね……」
デレは含みのある言い方をして、ハインの顔を覗き込んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「私は貴方の精神操作で恐怖なんか消されてる。
けど貴方は怖くないの? 敵は元上司だし、最強だし」
从 ゚∀从「怖くねぇよ。恐怖なんざ、この刀を持ったときに自分で消しちまった」
.
109
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:28:31 ID:OmzQ/CLU0
从 ゚∀从「――しかし、まあそろそろ場所を決めねえとな」
ハインは枯れた声で周囲の住宅を一望した。
屋根には人影。別段隠れる訳でもなく、淡々とハインを追ってきている。
从 ゚∀从「おい、死ぬならどこがいい」
ζ(゚ー゚*ζ「……海かな。逃げやすいし、戦いやすい」
从 ゚∀从「オッケー決まり」
そう言い、ハインが立ち止まって膝を折る。
目的地が決まった今、これ以上だらだらしている理由もない。
戦いが遅くなってツン達が追ってきた場合、それこそ全てが台無しになってしまう。
从 ゚∀从「海まで飛ぶぞ」
――瞬間、ハインの姿が平凡な町並みから消え去った。
それを追うようにデレが、そして『王座の九人』の面々が、戦場に向かって地面を蹴った。
【interlude:out】
.
110
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:29:11 ID:OmzQ/CLU0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
なんやかんやあって私は身体強化が出来るようになった。
序盤の遅刻シーンの走りがまさかこんな形で回収されるとは私自身も驚きだった。
('A`)「そろそろ30分経つな。ホントに来るのか?」
( ^ω^)「3分前に『がんばれ妹!応援してるぞ!』って呟いてるから多分来るお」
('A`)「もーマジでバカだな」
( ^ω^)「うん」
ξ゚⊿゚)ξ「まったくね」
私達は庭先に出て敵襲を待っていた。
作戦と呼べるものは無かったが、とりあえず私が前に出て頑張る感じだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……やっぱり、殴る蹴るをするのよね」
だが、私の中にはまだ戸惑いがある。
私は日常系作品の主人公だぞ。こんな安易にジャンルを飛び越えていいのか。
くそぉ帰ってアニメ見たい。戦ったら絶対疲れるよ……。
.
111
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:30:17 ID:OmzQ/CLU0
( ^ω^)「……ツン、分かるかお?」
ふと、ブーンが意味不明なことを尋ねてきた。
意図が読めなかったので、私は真顔で首をかしげる。
('A`)「……気配読みはまだ無理だ。もっとも、今やられると色々面倒だけどな」
( ^ω^)「……そうだおね」
二人は今までにない冷たい表情で言葉を交わす。
友人としてあんまり言いたくはないが、その様子は先日のハインさんとメス豚に近い。
つまり、殺し殺される世界に生きる人達の威風。
私の知らないことを多く知る二人は、何かを憂うように揃って遠くを見つめている。
その視線の先で何が起こっているのか、私には分からなかった。
lw´‐ _‐ノv「ククク私は人形使いの素直シュール……」
ξ゚⊿゚)ξ「出たな素直シュールおりゃ」
lw´‐ _‐ノv「くそぉ」
('A`)「魔王すごい」
( ^ω^)「ツンすごいお」
激闘の末、私は素直シュールに勝利した。
そして帰って寝た。今日も一日大変だった。
.
112
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:31:49 ID:OmzQ/CLU0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
素直シュールを撃退した翌日、学校は休みだった。
本来なら惰眠の限りを尽くしあらゆる自己研鑽を放棄するこの休日に、
私はまたしてもハインさんの屋敷に呼び出されていた。
しかしその事をすっかり忘れて約束の時間を6時間ほど過ぎて寝ていると、ブーンとドクオが我が家に来た。
午後6時。夕飯前に迷惑な男達だ。
@@@
@@@@
( ФωФ)「いらっしゃいね、ブーンちゃんドクオちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「おえー」 (ツンちゃんは眠すぎるとまともに話せない)
( ^ω^)「こんばんはだお! おじさん相変わらずすごい魔力だお!」
('A`)「やっぱ次期魔王はすごいっすわ」
@@@
@@@@
(; ФωФ)「ドギクゥ!! ききき貴様ら、我輩が魔王な訳なかろう!
夕飯出してあげるからツンちゃんの部屋で遊んでなさい!」
( ^ω^)「ここまで魔王感が滲み出てる人も中々居ないお!」
('A`)「やっぱスケールちげーわ魔王」
.
113
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:32:29 ID:OmzQ/CLU0
お母さんが魔王一派な訳がないのに何を言ってるんだろう。
私は訝しんだ。そして二人を自室に招き、ふたたびベッドに横たわった。
ξ´⊿`)ξ「話があるなら適当にお願いね……。
なんかもう眠くて眠くて……」
( ^ω^)「そりゃ仕方ないお!
初めて魔力使ったんだから、大体そうなるお!」
ξ´⊿`)ξ「そうなの? あーどおりで」
('A`)「地の文にする暇がないくらいの圧勝だったからな。
あれだけの魔力ぶっ放せばこうもならあ」
ξ´⊿`)ξ「……じゃあ次からは加減しなきゃね」
私はゆっくりと起き上がり、二人の話にちゃんと集中する事にした。
何にせよ敵が来ているのは本当なのだし、まあとりあえず聞いてやるかというスタンスだった。
.
114
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:33:09 ID:OmzQ/CLU0
( ^ω^)「今日はドクオが先生だお!
先生、今日のテーマはなんですかお!」
('A`)「えー今日は魔族の特徴と戦い方です、はい」
起きるなり、ブーン達は早速本題を切り出した。
私はうとうとしながら話を聞いた。
('A`)「いい加減、事情をちゃんと説明しないとゴチャゴチャして面倒ですからね。
今日は情報を整理しつつ、ツンちゃんに現状を把握してもらいます」
( ^ω^)「イェ〜〜」パチパチ
ξ´⊿`)ξ「つまり説明回ね……」
('A`)「元も子もないことを言うとその通りだ」
.
115
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:33:49 ID:OmzQ/CLU0
||
|| ('A`) ☆その1 魔王軍について
||_ (o□o_______________________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| |
||三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
116
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:34:58 ID:OmzQ/CLU0
('A`)「二人とも、数十年前に戦争があったのは知ってるな?」
( ^ω^)「知ってるお! 正義と悪の戦争だお! お爺ちゃん大活躍!」
('A`)「そうだ。その二つの集団に特に決まった名称は無いが、それだと面倒だから一応名前がある。
『勇者軍』と『魔王軍』。分かりやすさ重視だ」
ξ´⊿`)ξ「なんて分かりやすい……」
('A`)「こないだのメス豚は勇者軍、俺達は魔王軍になる。
それぞれ組織体系に違いはあるが、まずは魔王軍について教えていく」
ξ´⊿`)ξ「……ねえ、この話って長い?」
('A`)「ああ、そこそこ長いけど?」
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ なので次回持ち越しを決めた十万石まんじゅうだった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: 十 `ー-、
| ::::. 万 i
! :::::. 石 ノ
`ー――――― '"
117
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:55:37 ID:GzyE9wac0
スゴーイ、オツ
118
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 07:10:47 ID:DSUsy/CE0
>>103
、単刀直入に言うがクソワロタ
119
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 08:09:01 ID:Qgd25EQY0
スゴーイオツ
モットスゴーイオツ
120
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 08:12:11 ID:i5HpjTUc0
埼玉銘菓きたな
121
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 08:27:50 ID:PDpk8ryU0
乙
122
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 09:24:16 ID:r9tUk70I0
おつん
123
:
名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 13:01:12 ID:lP2v6Ufk0
ワースゴーイ、ナンカスゴーイ
124
:
名も無きAAのようです
:2015/10/30(金) 15:00:21 ID:4ni/3yd.0
お母さんじゃなかったのかwww
スゴクスゴーイ乙
125
:
名も無きAAのようです
:2015/10/30(金) 16:09:14 ID:tugaYgiQ0
お母さんでおじさんなんでしょ
ズゲーナスゴイオツ
126
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:23:00 ID:rkuYIrQM0
||
|| ('A`) ☆その2 魔王軍についての続き
||_ (o□o_______________________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| |
||三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
127
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:23:41 ID:rkuYIrQM0
ξ゚⊿゚)ξ「私のターン! 私はモンスターをセット、リバースカードを二枚セット!」
('A`)「とりあえずざっくり言うと、魔王軍はその大半が魔族に分類されてんだ。
で、魔族は共通した一つの能力を兼ね備えてる」
ξ゚⊿゚)ξ「マジック発動、手札抹殺! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、その枚数ドローする!」
つと シャッ!
□
∩ξ゚⊿゚)ξ「ドローカード! 太陽の書!
さっきのセットモンスターをリバースさせる! メタモルポット!」
ξ゚⊿゚)ξ「互いのプレイヤーはさらに手札を捨て、五枚ドロー!」
(; ^ω^)「ツンお得意のクソゲーだお! 環境無視だお!」
('A`)「それが変身能力。下の方から言うと、魔人化、魔物化、魔獣化とかがある」
.
128
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:24:24 ID:rkuYIrQM0
ξ゚⊿゚)ξ「私はさらにリバースカードを一枚セット、ターンエンド!」
( ^ω^)「よし、ブーンのターンだお!」
('A`)「待って話を聞いて」
私とブーンはドクオを無視して遊戯王を始めていた。
私のデッキは【運バーデストロイ】。かつては全盛期クジャドを沈めたこともある私の相棒だ。
デッキ破壊、バーン、遅延プレイの三要素から相手を煽り殺す友情破壊デッキなのでもうブーン以外誰も相手をしてくれない。
一番気持ちいい勝ち方はリバースモンスターと油断して低攻撃力でD-HEROディフェンドガイに突っ込んできたモンスターに
牙城のガーディアンとクロスカウンターを叩きつけるパターンである。本当に気持ちいい。
('A`)「今すごく大事な話をしているよ」
伏せた三枚は無差別破壊・死神の巡遊・運命の分かれ道。
どれもクソゲーを演出する最高のカード達だ。
もしハーピィが来たとしても手札には速攻のかかしがある。
カップ・オブ・エースという名の強欲な壷もあるのでアドは無視でいい。もしダメでもギャンブルさえ発動できれば元通りだ。
('A`)「あのねツンちゃんはね、変身能力の最上位のね、魔王化がね」
( ^ω^)「ドロー!」
ξ゚⊿゚)ξ「ドローフェイズにトリプルトラップ発動!
無差別破壊・死神の巡遊・運命の分かれ道!」
ξ゚⊿゚)ξ「サイコロ! コイン! コイン!
無差別破壊は失敗、あとは成功!」
(; ^ω^)「クソゲー乙!」
ξ゚⊿゚)ξ「まず死神の巡遊! 正位置により、相手はエンドフェイズ時まで召喚・反転召喚ができない!
続いて運命の分かれ道! ブーンは2000ポイントのダメージ、私は2000ポイント回復!」
これでブーンのライフは残り6000。ダイス・ポットの爆殺圏内に捉えた。
.
129
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:25:20 ID:rkuYIrQM0
(; ^ω^)「僕の【ゴリ押しDD】が止まったお……」
(; ^ω^)「あんまりやりたくないけど、仕方ないお!
早く決着つけないと泥沼化してクソゲーが悪化するお!」
('A`)「これ終わったら話聞いてくれる?
ていうかブーンお前も話す側だったよな?」
( ^ω^)「僕はDDD反骨王レオニダスとDD魔導賢者ケプラーでペンデュラムスケールをセッティング!」
ξ;゚⊿゚)ξ「くっ! なにが止まったのよ、バーンメタを張りおって!」
(; ^ω^)「うるさいお! まだデッキ破壊があるから変わらんお!」
( ^ω^)「――と、これでレベル4から9のモンスターが同時に召喚可能!
これで死神の巡遊の効果からは逃げ切ったお! いくお!」カーン!!
( ^ω^)「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」
( つと
/\
゚゛ "゚ ←振り子のAA
( ^ω^)「ペンデュラム召喚! 来い、僕のモンスター達!」
.
130
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:26:00 ID:rkuYIrQM0
( ^ω^)「DDケルベロス、DDナイト・ハウリング!」
( ^ω^)「そしてシンクロ召喚! 漆黒の花よ開け! ブラック・ローズ・ドラゴン!」
ξ゚⊿゚)ξ「定番ね」
(; ^ω^)「三回限りの仕切り直しだお!
これナシでそのデッキの相手なんかできないお!」
(; ^ω^)「即、効果発動! フィールド上のカードを全て破壊!」ドヒューン!!
(; ^ω^)「ブーンは手札のレオニダスをもう一回Pスケールにセッティング。
これでターンエンド。ここからが泥沼だお……!」
('A`)
('A`)「……さきにメシ食ってくるわ……」
その時、ドクオは一人部屋を出て行ってしまった。
あんまり話に入れないから拗ねてしまったのだろうか。
あとでレアカードをあげよう。それより今は、目の前のデュエルに集中する――!
ξ゚⊿゚)ξ「いくわよ! 私のターン!」カーン!!
(; ^ω^)「来いお!!」コーン!!
.
131
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:26:40 ID:rkuYIrQM0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 【D-HERO ダッシュガイ】は、ツンちゃんお気に入りのカード。
/ ::::: i これで【アルカナフォースXXI-THE WORLD】を出すのが好き。
/ ::::: ゙、 適当に突っ込んだ大型モンスターをダッシュガイで出すクソデッキを所持している。(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
132
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:27:59 ID:rkuYIrQM0
【interlude:4】
@@@
@@@@
( ФωФ)(……共に暮らして十五年余り、騙しきるのも限界か……)
適当に選んだテレビ番組を見つめながら、ツンの母親(父親)は酷く憂いていた。
眉間をすぼめ、切実な現状に深い溜め息をもらす。
昨日、ハインリッヒ高岡が消息を絶った。
連れの女は確保できたが、あの男はおそらく死んでしまった。
今の魔王軍にとってそれは看過できない損失であったが、何よりツンを失う以上の事があってはならない。
今後も犠牲は増え続ける。しかし、我らに出来る事は限られているのだ。
@@@
@@@@
( ФωФ)(……王座の九人を相手に十分やってくれたぞ、ハインリッヒ)
('A`)「……ロマさん、ちょっといいっすか」
不意にドクオの声がした。
彼は表情を整えてから振り返り、ドクオに尋ねた。
@@@
@@@@
( ФωФ)「おや、どうした」
('A`)「ちょっとツンのことで。真面目な話です」
.
133
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:29:23 ID:rkuYIrQM0
@@@
@@@@
( ФωФ)「……夕飯を出そう。それからでも遅くあるまい」
( 'A`)「いえ、話したら俺は帰ります。なんか滅入ったんで……」
よそよそしく申し出を断り、ドクオは軽く頭を下げる。
そして、ドクオは静かに話し始めた。
('A`)「……そろそろマジにならないとヤバイですよ。
魔王軍は現状確かに磐石ですけど、今度は立場が逆なんすから」
逆、というのは先の戦争を指しての言葉だった。
あの戦争では勇者が不在で魔王が健在、しかし今はその逆。
勇者が居て、魔王が居ない。
本来その状態こそが平和をなす形であるが、今の形骸化した勇者軍は狂人達の集まりだ。
彼らが魔王軍を滅ぼした後、世界平和という名の管理社会を作るのは目に見えている。
('A`)「いずれあの勇者……化け物は復活します。
そのとき魔王化を扱えるのが貴方一人なら、今度こそ負ける」
('A`)「ハインの爺さんは一つずつ順にやってくつもりでした。
でも分かるでしょう。そんな余裕、まったくありませんよ」
並ぶ言葉はすべてが事実。猶予などとうに使い果たしている。
ツンには今すぐにでも魔王化を習得してもらいたい――
@@@
@@@@
( ФωФ)(だが、しかし……)
と、ためらう台詞が連続してしまう。
まだ年端も行かない少女に戦争の最前線に立てと、いったい誰が告げられようか。
それが自身の娘であるなら尚更だ――次期魔王・ロマネスクの内心は、混迷を極めている。
('A`)「俺が言えたことじゃないですけど、決断の時じゃないっすかね。
王座の九人が初っ端から出てきた訳ですし、次も誰かが死にますよ」
.
134
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:30:10 ID:rkuYIrQM0
('A`)「……先代が殺された時、誰よりも悔しかったのは貴方だと思います」
@@@
@@@@
( ФωФ)「……ああ」
('A`)「正しさに殺されるなら本望だ。
そう言って戦い抜いた先代は、この世全ての悪に踏み躙られた。
魔王と勇者の戦いは、とっくに人間の欲に染まりきったんすよ……」
@@@
@@@@
( ФωФ)「……親父も言っていたよ、前の勇者は真の戦士だったと。
それに比べれば、この戦いのなんと下劣なことか……」
('A`)「……それでも俺は戦いますよ。でも魔王が居なければ俺達は動けない。
だから魔王軍の誰もが貴方の魔王継承を待っている……って、今更ですかね」
@@@
@@@@
( ФωФ)「……プレッシャーだな。一度逃げた身にはよく染みる」
('A`)「……今度の隠居は正しかったと思います。ツンの事もあったし。
でも、それを終わる時が来たんだと、俺は思います……」
.
135
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:31:33 ID:rkuYIrQM0
('A`)「ツンは貴方を信じてる。だからもしツンを変えられるとしたら貴方だけだ。
現実逃避で遊戯王やってるアイツを変えてください」
@@@
@@@@
(; ФωФ)「……えっ遊戯王? 修行は?」
('A`)「まったくです。昨日すこし身体強化を教えましたけど……」
@@@
@@@@
(; ФωФ)「……思ったより全力で逃げているな、現実から」
('A`)「逃げ足速いっすから、あいつ」
ドクオはそう言い、もう一度頭を下げてから家を出て行った。
一人残されたロマネスクは、彼の言葉を反芻しながら自問する。
@@@
@@@@
( ФωФ)(……このヅラを外し、実は母じゃなくて父だったと伝える。
そして、本格的に魔王としての教育をする、か……)
@@@
@@@@
( ФωФ)(……キツイな……)
【interlude:out】
.
136
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:33:04 ID:rkuYIrQM0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._ ☆サブレアンケート☆(好きな方を選んでね)
ノ ・ ヽ
/ ::::: i A・ロマネスク、ツンちゃんに色々打ち明ける
/ ::::: ゙、. B・やっぱりまだ無理。秘密にしとこ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
137
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:33:44 ID:rkuYIrQM0
〜特に必要のない1レス〜
( `ω´)「ツンとはもうデュエルしないお」
ξ;゚⊿゚)ξ「おこんないでよー」
@@@
@@@@
(; ФωФ)(こいつら本当に遊戯王やってたのか……)
お母さんに呼ばれて一階に行くと、ホカホカのご飯がテーブルに並んでいた。
私は拗ねてしまったブーンをチヤホヤしつつ席に着き、ありがたく夕飯を食べ始める。
( `ω´)「わざと回復させて自爆スイッチ使うなんてクソもいいとこだお。
しかもそれを三回全部やるとか、もう相手しないお」 パクパクモグモグ
ξ;゚⊿゚)ξ「だってレオニダス相手なら使えると思って……」パクパク
( `ω´)「怒ったお。牙城アステカ事件以来の怒りだお」モグモグモグモグ
ξ;´⊿`)ξ「ゆるしてー……またデュエルしてよー……」
@@@
@@@@
(; ФωФ)(ここまで気が抜けるのか、普通……)
.
138
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 14:34:24 ID:rkuYIrQM0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思うポンデリングであった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
139
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 15:06:55 ID:QyJjG0gw0
乙
フリーで自爆スイッチって完全に試合放棄じゃねーか
140
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 16:03:40 ID:0vmEwwNE0
乙
ここまで魔王丸出しでどうやって母親だと思わせてたんだ
>>136
打ち明けてほしい
141
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 16:04:08 ID:i3eWzHGo0
サブレアンケートわろた
B!Bだ!!
142
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 16:51:31 ID:BPcu2VJ20
Aで
143
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 19:02:50 ID:6hc3PZqQ0
ぼくも、ゆうぎおうがすきです
どろーれん で わーるどとらんす できなくなったので、かなしいです
144
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 23:53:00 ID:XgoqLJQcO
遊戯王のせいで開いたスレ間違えたかと思ったじゃねーか!スゴイスゴーイ乙!
サブレアンケートB
145
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 15:41:23 ID:8vm1hrCg0
サブレはAで
146
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 15:45:09 ID:YE94fGks0
サブレBで
それを教えるなんてとんでもない
147
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 16:05:34 ID:QECQIX6U0
Aで
148
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 16:35:21 ID:LhD5D3Do0
Aだっ!
149
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 17:57:17 ID:Xcbse6Ss0
B
150
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 18:37:18 ID:wn.CxIC60
b
151
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 23:18:42 ID:tyu52b0w0
A
152
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 23:32:03 ID:uCjTXQ/A0
いずれ打ち明けるだろう
今はまだB
153
:
◆9mGdTa8gSo
:2015/11/02(月) 10:42:11 ID:CVNtffdY0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._ ☆サブレアンケートは今日まで☆
ノ ・ ヽ
/ ::::: i 票数が同じだった場合、
/ ::::: ゙、. ツンちゃんをガンダムに乗せるよ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
154
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 10:54:32 ID:/oBQKDf.0
A 6票(
>>140
含)
B 5票
ガンダムには乗らないようです
155
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 10:55:13 ID:/oBQKDf.0
違う、B6票だ!ガンダム!!
156
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 12:23:06 ID:TyWCieNs0
A!!!
157
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 12:27:56 ID:xGedzFPQ0
むしろガンダムに乗ってほしいからB
158
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 14:12:24 ID:dJ2Qy8q.0
ツンちゃんにはガンダムファイターじゃなくてデュエリストでいてほしいからA
159
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 16:17:33 ID:xKw18kzg0
B!!
160
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 16:57:54 ID:CXJESXKE0
いたちごっこじゃねーか
俺はもう投票しちゃったので投票なし
161
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 19:15:14 ID:1pgd8q2A0
Aで
162
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 19:43:23 ID:CeXqkadM0
じゃB
163
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 19:49:38 ID:Z4FTkOjU0
Aだ!
164
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 19:56:57 ID:kwE1.PB60
A
165
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 20:11:59 ID:VBHDmTxU0
Bで
166
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 20:35:07 ID:cHoC2Sws0
じゃあCで
167
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 20:47:39 ID:c9/9cqmE0
もうCガンダムに乗るって選択肢を作った方が早いレベル
168
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 20:56:27 ID:.QHLU1qg0
Bだ
169
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 22:10:34 ID:vQEPgWJU0
Cのガンダムで
170
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 23:32:49 ID:SoxpSLqE0
ガンダム打ち切りエンドとかありそうで怖い
171
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 00:01:43 ID:ERDl3TCM0
A 10票
B 11票
172
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 00:11:56 ID:SU/KXOaY0
>>171
今同点じゃないか?
173
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 00:31:38 ID:ERDl3TCM0
>>172
見逃してたわ、11対11で同点
ガンダムか……(畏怖)
174
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 00:35:37 ID:6Z5/glVQ0
ガンダムきたー
175
:
◆9mGdTa8gSo
:2015/11/03(火) 00:35:49 ID:cBmGMB5A0
,、,,..._
ノ ・ ヽ アンケートの結果、ガンダムに乗せるよ
/ ::::: i 遊戯王くらいの扱いなので安心してね
/ ::::: ゙、.
176
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:31:48 ID:cBmGMB5A0
夕飯が済むと、ブーンは顔をしかめたまま私の家を後にした。
残された私はすみやかにベッドに向かう。が、その途中でお母さんに呼び止められた。
( ФωФ)「ツン、少し話がある」
ξ;゚⊿゚)ξ「お、お母さん……髪の毛が……!」
(; ФωФ)「……それも含めてだ。ちょっとこっちに来い」
お母さんは一瞬の間に巨大なパーマヘッドを刈り尽くしていた。
今のお母さんは、そう、まるで壮年男性のようだった。
ξ゚⊿゚)ξ(まあ男な訳ないんだけどネ)
ξ゚⊿゚)ξ(……あれ? でも声とか体格とかも、女には見えな――)
瞬間、砂を擦るようなノイズが私の思考を掠め取る。
私には、それを自覚する術がなかった。
ξ゚⊿゚)ξ(――まあ、そんな事ありえないんだけどね)
私はお母さんに歩み寄り、ひとつ大きなあくびをしてみせた。
.
177
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:32:28 ID:cBmGMB5A0
ξ´⊿`)ξ「それで話ってなーに? 早寝しときたいんだけど」
( ФωФ)「熱をはかる。おでこを出してくれ」
そう言って差し出されたお母さんの手に、私はそっと額を差し出した。
最近生活が荒れているから心配されたのだろう。
ここで反抗期を見せるほど、私は幼稚ではないのだ。
ξ-⊿-)ξ「熱なんてないよ。ただ眠いだけ――……」
( ФωФ)「悪いな。すぐに済む」
ξ-⊿-)ξ「……お母さんの手、冷たくて気持ちいいね」
季節は冬。
本当なら跳ね除けたいはずの母の冷たい手は、なぜか拒むことができなかった。
それに、なんだか眠気がどんどん増していく。安心感とは違う、不自然な睡魔が……。
ξ-⊿-)ξ「あー……寝ちゃう……」
( ФωФ)「布団に運んでおいてやるから、今は眠りなさい」
ξ-⊿-)ξ「……やったー……」
私は脱力感に負けてお母さんの懐に倒れこみ、そして、意識を失った。
.
178
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:33:08 ID:cBmGMB5A0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ロマネスクの自問には選択肢が二つあった。
ツンに魔王としての自身を見せるか、それともまだ秘密にしておくか。
彼はそれぞれの答えから進展しうる状況を想定し、その両方を吟味した。
結果、そこには新たな疑問が生じることとなる。
(; ФωФ)(いや、なんでバレてないんだ……?)
その疑問とは至極シンプルなものだった。
よく考えれば彼はヅラと服装以外に大した変装もしていない。
しかもブーンやドクオに目の前で魔王呼ばわりされているのに、なぜか未だに気付かれていない。
ツンのバカは彼譲りだが、そこに違和感を覚えないほどロマネスクはバカではなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
179
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:33:56 ID:cBmGMB5A0
一通りの確認を済ませた後、ロマネスクはツンを部屋に運んでベッドに寝かせた。
しばし、彼女の寝顔を見つめる。
( ФωФ)(……現実を誤謬させる精神操作。
恐らくはハインの仕込んだ毒であろうが、これが諸々の原因か)
( ФωФ)(効力があるという事は奴はまだ生きている。
だが姿を見せず、あの女を置いてどこかに消えた……)
ロマネスクは窓を覗き、夜空を一望した。
( ФωФ)(……どこかから監視しているはずだ。
今はまだ、気付いていない振りで通すべきか)
( ФωФ)(しかし、もう手を拱いている場合ではない。
心苦しいが、無理矢理にでも魔王化を覚えてもらわねば……)
彼はツンの額に人差し指を当て、そこから少量の魔力を送り込んだ。
これが切欠になり、ツンが魔力という概念を体感してくれれば御の字だ。
あとはドクオとブーンがこの子を強くするであろう――と、ロマネスクはピタリと動きを止めた。
( ФωФ)(……ハインの立ち位置が分からぬ以上、ブーンが敵ではない保証はない。
ドクオに監視をさせ、……いや、別の者を呼ぶべきか)
思案しながら、彼は最後にツンの頬をツンツンしてから部屋を出た。
上の一文はただの思いつきギャグだった。
.
180
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:34:37 ID:cBmGMB5A0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ ガンダムは、「ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。
/ ::::: i 有人操縦式の人型ロボット兵器「モビルスーツ」の一つ。
/ ::::: ゙、 現在、鉄血のオルフェンズが放送中である。(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
181
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:36:10 ID:cBmGMB5A0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
パキン、と音が鳴ったのが分かった。
私はその音で目を覚ます。時計を見ると、時刻は午前三時を回っていた。
またか、と溜め息をこぼす。
中学生の私にトラウマを与え、私を非日常に連れ込んだ最大の切欠。
体内時計が壊れて夜中にスッキリと目覚めてしまうこの現象は、これで三回目になる。
ξ゚⊿゚)ξ「スリープ解除。コード、【ツンデレ・ヴァルキュリア】」
私は機体のメインシステムを起動させ、暖房をつけた。
機体の中とはいえ冬場の格納庫はかなり冷え込んでいた。
ハハ ロ -ロ)ハ『グッモーニン。お目覚めですか』
その声と同時に、全面360度に展開されているモニターに擬似人格のモデルデータが表示された。
彼女の名前はハローといい、パイロットのサポートプログラムを兼ねた私の友人だ。
ξ゚⊿゚)ξ「おはよう。三分したら肉まんを買いに行くわよ」
ハハ ロ -ロ)ハ『よろしいので? この状況には心的外傷を負っているはずですが』
ξ゚⊿゚)ξ「機体性能に自信がないの? 何かあれば守ってちょうだい」
ハハ ロ -ロ)ハ『オフコース。最寄コンビニへの最短経路算出、および武装のアンロックを実行します』
.
182
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:38:03 ID:cBmGMB5A0
今でも鮮明に思い出せる。
同じように夜中に目が覚めてしまい、暇に耐えかねた私は自作MSで宇宙空間に出た。
宇宙コンビニまで行って帰ろうと思い、十分足らずの道をブースターで前進する。
その帰り道だった。私は道中のコロニーの真下に、異常な光景を見てしまったのだ。
コロニーの真下には既に息絶えたMSと、それに深々とビームサーベルを突き刺す別のMSの姿があった。
私は絶叫を飲み込んで息を殺した。しかし敵MS気付かれてしまい、そいつのモノアイがこちらを向いた。
音の無い真っ暗闇の中、コロニーの誘導灯に照らされた私達は、まるで舞台に立つ二人の演者のようだった。
私は目を合わせたまま後ずさった。巻き込まれてしまう、と思ったのだ。
殺されるという恐怖は一切無く、ただ、このMSと長く一緒に居たら駄目だと直感した。
通信も交わしてはいけない。目を合わせる事すら駄目だと思い、目を伏せる。
無関係で居なければ日常が壊されてしまう。その感覚に体を任せ、私は一目散に逃げ出した。
決して追われはしなかったが、私はとにかく全速力で逃げたのだ。
……そういう経験が、こんな夜にあった。
.
183
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:38:43 ID:cBmGMB5A0
ハハ ロ -ロ)ハ『――コンプリート。外敵ありません』
ξ゚⊿゚)ξ「オーライ、って所かしらね。……出るわよ!」
さりとて私は出撃した。
射出ユニットが機体脚部で火花を散らし、私は宇宙に飛び出した。
私はトラウマへの恐怖に負けず、勇猛にブースターを点火する。
顔付きは自然と険しくなっていった。
そう、この時点で私はなんとなく分かっていたのだ。
同じことをすれば、同じ場所で同じことが起きると。
ξ;゚⊿゚)ξ「――ッ! この感じ、奴か!?」
ハハ ロ -ロ)ハ『ツンデレ・ヴァルキュリアの索敵に敵影無し。
ですがサイド4の監視衛星が高速のMSを補足しています』
……現実は、私の思ったとおりになった。
.
184
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:39:36 ID:cBmGMB5A0
ξ;゚⊿゚)ξ「こっちに来てるの?」
ハハ ロ -ロ)ハ『イグザクトリィ。目標は単機でございます』
ξ;゚⊿゚)ξ「機体記録に一致するものがあれば出して!
あの時と同じ機体ならデータがあるはずよ!」
ハハ ロ -ロ)ハ『サーチ済みです。結果は、イエス』
ξ゚⊿゚)ξ「――なら早い! ファンネル展開、戦闘準備!」
私はレバーやらなんやらをガチャガチャしてすごい速度で敵に向かった。
あの日、あの時の屈辱を晴らすなら今しかない。
ツンデレ・ヴァルキュリアの機体性能は前に比べて遥かにパワーアップしている。ゆえに――
ξ#゚⊿゚)ξ「今なら落とせる! やって……みせるッッ!!」
その時、暗黒の宇宙空間に、一筋の光が流れた。(CV:銀河万丈)
.
185
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:40:44 ID:cBmGMB5A0
ξ#゚⊿゚)ξ(――見つけた!)
宇宙コンビニから程近い場所で、私は昔懐かしいMSを索敵に捉えた。
目前のデブリ郡を全速力で突き抜けてくる赤い機影。
その手に凶器は無かったが、かわりに、機体の周囲には無数のファンネルがあった。
敵のファンネルは的確にデブリの一つ一つを打ち落とし、機体が通る道筋を作っていく。
それを高速移動中に行うパイロットの技量など想像しきれたものではない。
ζ(゚ー゚*ζ「---- ・・- ・---・ ・-・-・ ・-・・ --・・- ・--- ・・-・・ ・・- 」
記号いっぱいのモールス信号。それはこの場からの逃亡を許された唯一の時間。
前回の私はここで目を伏せて逃げ出した。しかし、今回はそれをしない。
ξ#゚⊿゚)ξ「ハロー、ファンネル任せた!」
私はコンパネを弾いてビームライフルを外に射出し、それを機体に握らせた。
今の私に動揺が無いのは、私自身がパイロットとして大きく成長したからだ。
ニュータイプにも負けやしない。このツンデレ・ヴァルキュリアなら――!
.
186
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:41:34 ID:cBmGMB5A0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ-⊿-)ξ「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……はっ!」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「なんだ夢か」
翌朝目覚めると、ツンちゃんは勘が鋭くなっていた。
.
187
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 06:42:55 ID:cBmGMB5A0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
. ,. -─‐- 、 と思うYF-19であった
/。 。 r\
/ ,.-─- 、 ヽ、.ヽ
!/ ヽ、._, ニ| 来週もツンちゃんと地獄に付き合ってもらう
. { ,'
ヽ /,ソ
. ヽ、.____r',/
188
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 07:34:28 ID:44XXNrE20
ボトムズじゃねーか!!乙!
189
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 07:38:07 ID:3HlB5CAs0
乙
覚醒したな
190
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 11:35:21 ID:R8tdI3MY0
乙
191
:
名も無きAAのようです
:2015/11/03(火) 11:58:39 ID:TEA1mlbo0
おつ
192
:
名も無きAAのようです
:2015/11/05(木) 22:31:30 ID:NlPeMpPY0
おつ!
193
:
名も無きAAのようです
:2015/11/09(月) 13:30:02 ID:Zp39a2Fc0
なんだこの雰囲気wワロタ
194
:
名も無きAAのようです
:2015/11/09(月) 18:44:10 ID:DJ0xi.gUO
悔しい……でも笑っちゃう…/// ビクンビクン
195
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:39:51 ID:.5.1P20c0
九つの席が用意された円卓。
そこに集まったのは七人。空席は二つ。
暗闇の中、唯一照らされたその場所で、『王座の九人』は沈黙を保っていた。
( ・∀・)「……大失態と言えるな」
円卓に肘を突き、さも不機嫌そうな顔で沈黙を破った男。
モララーはその一言を、己を含めた全員に向けていた。
( ・∀・)「八人が出向いて成果無し。
ならばまだしも、こちらに死人が出ては弁明の余地がない」
彼は空席の一つに視線を送り、今は亡き戦友に思いを馳せた。
ツン強奪の晩、その席に座っていた【アルティメット歯車王Genesis】は死んだ。
ミサイルが5発も出せるすごい奴だったが、彼はハインリッヒとの戦闘でその命を散らした。
β ←ここからミサイルが出る
┌─┴┐
∪ |::━◎┥∪ ウィーン ガッシャン
V| |V
|:日 日:| ウィーン ガガガガ
└┬┬┘
亠亠
.
196
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:40:53 ID:.5.1P20c0
( ・∀・)「正直なぜアイツが円卓に居たのか分からないが、
正義といえばロボットだ。それを失ったのは大きい」
(,,゚Д゚)「フン。この中で一番弱いのが消えただけだろう。
気にするまでもない。居ても居なくても変わらん」
J( 'ー`)し「その道理なら、次に消えるのはギコちゃんになるわねえ」
(,,゚Д゚)「……順でいけばそうだ」
ギコと呼ばれた男はババアの言い分に言い返すことなく、静かにそれを認めた。
(,,゚Д゚)「だがな、次の相手は魔神ロマネスクだろうが。
誰が死んだっておかしくねえ。率直に聞くぞ、アレに勝てると思う奴は居るか?」
ギコの問いに挙手で応えたのは、八人中三人。
( ´_ゝ`)「うん勝てる勝てる」
(´<_` )「まぁいけるよな」
(,,゚Д゚)「コイツらバカだからノーカンだ。やっぱまだ分が悪いぜ、大将」
爪'ー`)「……想定内だ。問題ない」
王座の九人大将――挙手した最後の一人・フォックスはそっと手を下ろしながら言った。
.
197
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:42:07 ID:.5.1P20c0
爪'ー`)「諸君、もはや我々に計画と呼べるものはない。
所詮は敗残兵の集まりだ。しかし、魔王軍は大いに衰弱してくれた」
フォックスは円卓を一望する。
爪'ー`)「それでも強敵は多い。魔神ロマネスクとその子孫、魔王城ツン。
魔王軍総指揮・魔眼のワカッテマス、さらには魔界四天王と数万の魔物達……」
爪'ー`)「これを我々だけで打倒し、魔界を統治することは不可能だ。
だが今の我々には 『勇者』 がある。そして敵の核たる魔王は不在……」
爪'ー`)「……次だ。次の戦争で決着だ。用意は万全、死角無し。
正義の時代はもうすぐだ。不安など微塵もありはしない」
( ・∀・)「――とは言うがな、大将様」
誇らしげに言い切ったところで、モララーがフォックスの言葉に水を差す。
( ・∀・)「勇者の復活にはまだ時間が掛かると聞いているが?
いまさら急ぐ理由もないだろう」
(-@∀@)「グゲェーゲッゲッゲ! オゲェー!」
その時、露骨にマッド・サイエンティスト感を描写する笑い声が円卓に響いた。
.
198
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:43:13 ID:.5.1P20c0
( ・∀・)「……なにがおかしい? アサピー所長」
彼の笑いが癇に障ったのか、モララーは殺気立って彼に尋ねる。
(-@∀@)「ゲロゲロゲー!! 勇者復活だとォ!?
そんなもの、勇者軍の技術力が既に成し遂げているッッ!!」
(; ´_ゝ`)「なん……ッ」
(´<_`; )「だと……!?」
(-@∀@)「お前達のおかげだ! あの男、ハインリッヒのボディは及第点だった!
死体でなければ完璧だったが、いや勇者との適合率は想像以上だったぞ!」
爪'ー`)「この際だ、君達には早めに紹介しておこうか」
フォックスがそう言い、指をパチンと鳴らす。
すると、暗闇の中から音もなく人影が滲み出てきた。
爪'ー`)「諸君、新たな『勇者』を歓迎しよう」
从 ∀从「……」
αβ ←ここからいっぱいミサイルが出る
┌─.┻┐
∪ | ::━◎┥∪ ウィーン ガッシャン
V| |V
|日田日| ウィーン ガガガガ
└┬,┬┘
.┻.┻ ←冬なのでブーツ仕様
爪'ー`)「帰ってきた裏切り者・ハインリッヒ高岡と、復活の歯車王をね……」
(,,゚Д゚)「……お? おお……」
なぜか帰ってきた歯車王に気をとられ、王座の九人の面々は半端なリアクションをせざるをえなかった。
.
199
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:44:15 ID:.5.1P20c0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ;゚⊿゚)ξ「……おはよう……」
( ФωФ)「む、おはよう」
私ともあろうものが、規則正しい起床をしてリビングで挨拶をしている。
そして今、それ以上におかしい事が私の体に起こっていた。
,イ
/ | ゴゴゴゴゴ・・・
, ,r‐、λノ ゙i、_,、ノゝ
゙l ゙、_ 「……どうかしたか?」
<.j´ . .ハ_, ,_ハ (.
{ (ФωФ) /─
). c/ ,つ ,l~
´y { ,、 { <
ゝ lノ ヽ,) ,
ξ;゚⊿゚)ξ「……お母さん、え、お母さんだよね?
そんなオーラ纏ってたっけ?」
Σ(; ФωФ)「え、見えてる!? 抑えてたのに!」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あれ? ていうか男……お母さんはフタナリだった……?」
(; ФωФ)「普通に男である! ブーン達に聞いたであろう、魔王城家は魔族の名門だ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ウソだ!! いやでもよく考えたらそうか……」
(; ФωФ)「納得が早い」
私はなぜか勘が鋭くなり、身の回りにあった違和感をことごとく看破していった。
お母さんは実はお父さんだったという衝撃的な事実を受け止めながら、私は淡々と登校の準備を進めた。
.
200
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:44:56 ID:.5.1P20c0
( ^ω^)「ツン! おはようだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ああ、うん」
家を出ると同時にブーンの大声が鼓膜を叩いた。
しかし、気配? らしきものでブーンが居るのは分かっていたので、そこまで驚きもしなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ(ホゲェーどうしたんだ私は……)
( ^ω^)「なんか魔力がすごい増えてるお!
なんかすごいお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうなの? 自覚ないんだけど……」
( ^ω^)「学校着いたら素直四天王に喧嘩売るといいお!
腕試しにはちょうどいい相手だお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「そこまで酷いことしないわよ。ほら、さっさと学校行きましょ」
( ^ω^)
( ^ω^)「……あ、あのツンが普通の事を言ってるお……」
( ^ω^)「あのツンが……バカなツンが……」
ξ;゚⊿゚)ξ「元々そんなバカじゃないってば」
でも、自分の中にあった楔のようなものが取れた感覚はある。
それがブーンの言うようなバカ要素だったなら、私はもうバカじゃないのだろう。
.
201
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:45:57 ID:.5.1P20c0
歩き出した私達は大した話もせず、昨日見たアニメや何やらの話で暇を潰していた。
ここに魔王や勇者の話は出てこない。多分これが、私に残された最後の日常なのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオって本当に私を見張ってたのね」
気配が分かるようになって、ドクオの言っていた事が本当なのだと分かった。
ドクオは今、私達を遥か上空から見下ろしている。
そこは人の視力では確認できない高度だったが、今の私は見上げて目を凝らすだけでドクオの姿を見つけられた。
ξ゚⊿゚)ξ「……ドラゴンよね、あれ」
( ^ω^)「そうだお。素直クールと戦った時に見てるお?」
そう、ドクオは魔物化すると肉体が龍に変化していく。
先日全カットされた戦闘中でも、ドクオは体を龍化して素直クールを撃退していたのだ。
( ^ω^)「魔物の中でも龍族は特に珍しいんだお。
純血の邪龍化が出来るのは、もうドクオくらいだお」
ξ゚⊿゚)ξ「カッコイイ……あのままなら好きになれるのに……」
( ^ω^)「……ついでだから、僕が魔族の変身能力について補足しておくお」
ξ゚⊿゚)ξ「魔物化とかの奴でしょ? で、魔王化が最上位」
( ^ω^)「そうだけど、もうちょいあるんだお」
.
202
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:46:52 ID:.5.1P20c0
( ^ω^)「まあ単純な話だお。
魔族の中には特異種が居て、魔物化でも凄いパワーがあったりするんだお」
( ^ω^)「最下位の魔人化でも、まぁ魔獣化くらいには匹敵するパワーがあったりNE!」
( ^ω^)「詳しくは下記図Aを参照せよ」
ξ゚⊿゚)ξ「急に教科書」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
図A:変身能力の種別、および戦闘力比較
魔人化≪魔物化<魔獣化≪≪≪≪≪≪原点返り≪≪≪魔王化≪魔神化≪≪
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
( ^ω^)「この中の原点返りがさっきの特異種のことだお。
いわゆる先祖返りって奴で、すごい強いんだお!」
( ^ω^)「ドクオも元々は混血の邪龍で、魔物化が精一杯なんだお。
でも生まれついて原点返りができるから、すごいんだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「すごい」
( ^ω^)「あとは変身能力自体が進化の過程で消滅した例もあるお。
魔眼のワカッテマスさんがその最たる例だお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ちょっと、私に必要な情報だけちょうだい」
( ^ω^)「ツンは魔王化が出来るはずだお。頑張るお」
ξ゚⊿゚)ξ「よく分かった」
.
203
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:47:54 ID:.5.1P20c0
ξ゚⊿゚)ξ「……ところで、魔王化ってどうやるの?」
( ^ω^)
( ^ω^)「あの、あのバカなツンが話を進めようと……」
( ^ω^)「あのバカなツンが、あわわわ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「あんたらの話はもう信じたわよ。
だからさっさと適応しようとしてるだけ。なんか変?」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)(変っていうか、都合が悪いお)
( ^ω^)(お爺ちゃんが死んだか、ロマさんがなんかしたか、
とにかくツンもメス豚も刀の暗示がすごい弱まってるお)
( ^ω^)(……これじゃあもう、お爺ちゃん一人勝ちのルートはなさそうだお)
.
204
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:49:41 ID:.5.1P20c0
( ^ω^)「……ツンが真面目になってくれて嬉しいお!
魔王化のことは後でドクオとおじさんに聞くのがいいNE!」
ξ゚⊿゚)ξ「んー……まあそうよね、ブーンは勇者側の人だった訳だし。
えっと、そっちは何だったっけ……激化?」
( ^ω^)「すごい! よく覚えてたお!」
( ^ω^)「でもこのルートのツンには殆ど無関係だから気にしなくていいお!」
ξ゚⊿゚)ξ「えー気になる」
( ^ω^)「うーん。要はクスリでハイになってマジギレって感じだお。
激化は副作用のある薬物投与が必須で、けっこう危ないんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「……なら、」
とまで言いかけて、私は言葉を切った。
激化がそれほど危険なものなら、今のブーンやハインさんは大丈夫なのだろうか。
ξ゚⊿゚)ξ「……そだ。こないだのハインさんの用事ってなんだったの?」
( ^ω^)
話をそらし、私はハインさんの事を尋ねた。
あの人は急に居なくなる事もよくあるので、そこまで深刻な聞き方はしなかった。
( ^ω^)「お爺ちゃんなら今はポルトガルに居るお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「またぁー!? ていうかこんな時に!?」
そこから先は、また当たり障りのない会話が始まった。
頭上で旋回するドクオの姿をたまに一瞥しつつ、私達は通学路をテクテク歩いていった。
.
205
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:50:21 ID:.5.1P20c0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 紅いもタルトは、おいしいタルトである。
/ ::::: i 年間販売数が1000万個を超え、沖縄土産としても定着している。
/ ::::: ゙、 単純に食べたい(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
206
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:51:11 ID:.5.1P20c0
【interlude:5】
深夜、冷えきった空気に満ちた森の中。
市街を離れたその場所に呼び出された素直四天王は、方々に気を配りつつ短い言葉を交わしていた。
ノパ⊿゚)「なんの用だろうな」
川 ゚ -゚)「分からない。が、二度の失敗を咎められるのは確かだろう」
lw´‐ _‐ノv「済まぬ――――」
川 ゚ -゚)「シュールのせいじゃないさ。私の考えが甘かった」
o川*゚-゚)o「……」
しかし、一人沈黙を貫く素直キュート。
彼女の双眸は森の奥に向けられたまま微動だにしない。
四人の中で唯一、彼女だけが森の違和感に気付いていた。
.
207
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:52:31 ID:.5.1P20c0
――ガサ、と茂みがざわめいた。
とたん、四人の視線が一点に集中する。
間を置いて、暗闇の中から一人の男が歩み出てきた。
( ´∀`)「……お揃いのようで助かったモナ」
川 ゚ -゚)「モナーさん、二度の失敗を謝罪します」
モナーが現れた後、すぐに素直クールが前に出て口を開いた。
川 ゚ -゚)「次の襲撃には四人全員で掛かります。
信用ならないとあれば、作戦の仔細をお伝えしますが……」
( ´∀`)「いや、別にいいいモナ。今日は別件というか、戦力補強とというか」
川 ゚ -゚)「補強、ですか」
それはつまり、自分達の実力に不安があるという事。
素直四天王はモナーの一言に軽蔑を感じ取り、彼に対して僅かに敵意を見せた。
( ´∀`)「ああ、あ」
( ´∀`)「あの人が。君達より強い、あの人をね」
だが、モナーの口振りに異様さを覚えたところで彼女達は思いとどまった。
彼に向けていた敵意をふっと忘れ、再度周囲を警戒する。
冷たく静かな森が、彼女達を取り囲んでいた。
.
208
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:53:24 ID:.5.1P20c0
( ´∀`)「あぎ、逃げいや、なんでもないんだ」
( ´∀`)「洗脳をかけられ、ダメだ本調子じゃない」
( ´∀`)「刀までは復元、ハインリヒに気をつけろ、エサにする、されるぞ」
ゆるやかな風が森をすりぬけ、彼女達の足元を舐めるように這いずっていく。
これに似た感覚は魔法使いと対峙した時にも感じたが、彼女達はそれとも違う不快感を確かに味わっていた。
ノハ;゚⊿゚)「……姉ちゃん、どうすればいい」
川 ゚ -゚)「……私が前に出て対処する。
シュールとキュートで突破口の確保、ヒートは必殺の準備に」
瞬間、素直クールの体を淡い光が覆い包んだ。
それが収まると、彼女は白い鎧を身に纏い、片手に白銀の剣を構えていた。
( ´∀`)「……だ、だる、ま」
川;゚ -゚)「――ッ!?」
.
209
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:54:47 ID:.5.1P20c0
モナーという男は元々正義の側の人間だった。
しかし正しさを歪曲させた今の勇者軍を見切った後は、平凡に生きていくことを目標に頑張ってきた。
彼はハインとは顔見知りだったので、時折話をしては魔王の跡継ぎであるツンの動向を見守っていた。
ツンに素直四天王を差し向けた理由も、彼女を魔王として覚醒させるための一策に過ぎなかった。
その筈が、歯車は大きく狂っていた。
今のモナーは最早 『勇者』 の手駒に変わり果てていた。
薬物投与による超能力の発動――『激化』。
モナーの激化能力はシンプルだったが、それ故に今は、今だけは発動させる訳にはいかなかった。
それを知っていた素直クールは誰より先に飛び出し、四天王最速の名を持ってモナーを斬り殺しに掛かった。
( ´∀`)「さん、が――」
川;゚ -゚)(迷わず首を落とす――ッ!!)
一瞬でモナーとの距離を詰め、風を切って振り下ろされる銀の刀身。
刹那と経たずにモナーの首を切り落とすその斬撃は――
ζ( ー *ζ「――――」
ただの十徳ナイフを持った女に、阻まれた。
.
210
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:55:59 ID:.5.1P20c0
( ´∀`)「ころ……ころん…………」
川;゚ -゚)「くっ! みんな逃げて距離を――」
lw´;‐ _‐ノv「ねえさんはそいつ止めてて!」
背後を一瞥して叫びかけた時、クールの傍らをシュールが駆け抜けていった。
その行動は十徳ナイフの女も意外だったのか、彼女は一瞬の間にモナーの首に手をかける。
lw´;‐ _‐ノv(人形出してる場合じゃない、ワイヤーで直接切らなきゃ――!)
両手の人差し指に引っ掛けた極細のワイヤー。
それを神業染みた速度でモナーの首に括りつけ、シュールは一気に両手を引き抜いた。
途端、モナーの頭部と肉体がずれた。
行き場を失った血液が切断面から溢れ出し、その場に大量の血が飛散する。
川;゚ -゚)「間に合っ――」
( ´∀`)「だ」
否、あとほんの少し間に合わなかった。
体を離れて真っ逆さまに落ちていく頭は、確かに最後の一文字を発していた。
それと同時。
『だるまさんがころんだ』と言い切るのに掛かった時間、おそよ4秒間――
.
211
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:56:39 ID:.5.1P20c0
――――時間が、停止した。
.
212
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:57:26 ID:.5.1P20c0
川;゚ -゚)「――――」
lw´;‐ _‐ノv「――――」
ζ( ー *ζ「……」
止まった時の中で十徳ナイフの女が動き出す。
たった二秒の自由時間。しかし、身近な二人を刻み殺すには十分過ぎた。
次の瞬間、闇夜に無数の銀閃が走った。
停止解除二秒前、
ノハ;゚⊿゚)「――――」
一秒前、
o川;*゚ー゚)o「――――」
そして、時が動き出す。
.
213
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:58:16 ID:.5.1P20c0
ふと、とても弱い風がクールとシュールの体をなぞった。
しかし無数に切断された人型の肉塊は、たったそれだけの事で容易く形を失った。
ぐら、と揺れた瞬間、二人の体は、細切れになって地面に散らばった。
ノハ;゚⊿゚)「……え?」
o川;* ー )o「ヒート、逃げるよ!」ガシッ!
ヒートより早く状況を飲み込んだキュート。
彼女はヒートを抱きかかえて一目散に走り出し、鬱蒼とした森の中に飛び込んだ。
ノハ;゚⊿゚)「キュ、キュート? 今なにが起きた?
殺ったんだよな? 姉ちゃん達はモナーを……」
o川;* ー )o「……間に合わなかった……ッ!」
ノハ;゚⊿゚)「……二人は……」
o川;* ー )o「……後で泣こう、思いっきり……!」
ノハ;゚⊿゚)「…………」
唖然としたまま、ヒートはただ事実だけを脳内で反芻する。
刻まれた姉妹の最期を鮮明に思い出す。湧き上がるのは怒りと殺意。
今すぐ戻ってあの女を殺したい。
ヒートもキュートも思いは同じだが、それをすれば自分達も殺されかねない。
得体の知れない敵に目をつけられた以上、今は逃げる以外の選択肢はないのだ。
たとえ血を分けた姉妹が無残に殺られたとしても、今は感情を殺して生き残る事だけを考えなければならない。
その日、素直四天王はVIPの街から姿を消した。
【interlude:out】
.
214
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:59:54 ID:.5.1P20c0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思う紅いもタルトであった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 秒数を直し忘れてたよ まあいっか!
,i :::::: `ー-、
| :::: i また次回
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
215
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 01:12:11 ID:B/j2PW2o0
乙
急に始まる超シリアス
216
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 01:15:33 ID:5WsSh0bk0
乙!
217
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 01:41:57 ID:gZ/jeGPU0
この怒涛さがたまらん
218
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 02:58:10 ID:m0yJRzUM0
ツンがバカじゃなくなったからシリアスになったのか…!
219
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 03:11:27 ID:hzIWvYOE0
ツンちゃん急成長でびっくり
乙です
220
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 03:24:28 ID:BCAS2ujM0
四天王マジか……
221
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 16:09:54 ID:T407DI.20
紅いもタルトうまいよね
222
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:49:11 ID:KHJgTggc0
シリアスいいね
223
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 04:57:53 ID:pcCP1qPo0
今日の学校はなんだか物静かだった。
そりゃあ先生とクラスメイト四人が居なければ静かにもなるだろうが、事はそれだけではなかった。
ξ゚⊿゚)ξ(……なんだろ、変な気配がするぞ)
空気の色そのものが違うような、そんな感じだった。
私自身には特に影響はないのだが、どうやら一般生徒はそれのせいでゲンナリしているようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとドクオ」
('A`)φ「なんだよ、自習しろよ」カリカリカリ
ξ゚⊿゚)ξ「そんなの終わってるわよ。
それより勘付いてるんでしょ? アンタもこの気配に」
(;'A`)φ ピタ
モナー先生が来ないので自習となった一時間目。
大体の宿題も終わって暇になったところで尋ねてみると、
ドクオは 「は? お前マジ?」 と言いたげな顔をして手を止めた。
(;'A`)「は? お前、マジか?」
ξ;゚⊿゚)ξ(心まで読めるようになった!? なんてこった!)
.
224
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 04:59:55 ID:pcCP1qPo0
(;'A`)「……今日はちっと面倒臭いのが学校に来てんだよ。
これはそいつの影響だ。まあ敵じゃねえからいいんだけどさ……」
ドクオはペンを指の上でクルッと一回転させて言った。
いまいちハッキリとしない彼の物言いに、ブーンが小声で補足しにくる。
( ^ω^)「その人、敵でもないけど味方にするのも面倒なんだお。
一応魔王軍所属で戦力にはなるけど、いやもうマジ面倒なんだお」
ξ;゚⊿゚)ξ「面倒って、なにが」
( ^ω^)「……魔王にすごい心酔してるんだお。
多分ツンを見たら発情したのちアヘ顔で卒倒するお」
('A`)「お前、今の魔王軍では存在自体が超秘密なんだぜ。
危険が及ばないように極少数の魔物しかお前とロマさんが生きてんのを知らねえ」
('A`)「だからもし生きてることがバレたら……、特に今話したそいつにバレたら」
ξ;゚⊿゚)ξ ゴクリ・・・
私は隠し持っていた紅茶花伝を飲んだ。
('A`)「まぁ発情したのちアヘ顔で卒倒するだろうな」
ξ;゚⊿゚)ξ「もう死ぬほど会いたくない」
.
225
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 05:01:37 ID:pcCP1qPo0
('A`)「いやでももう詰んでるぞ。お前魔力抑えてねえし、垂れ流しだし」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、そうなの?」
('A`)「ああそりゃもう大洪水だ。
多少は俺が相殺してっけど、学校内なら確実に気付かれるレベルだぜ」
ミセ*゚ー゚)リ「――おはようございます」ガラリ
その時だった。
見慣れない女教師が教室の戸を開け、私達の方を一望しながら中に入ってきた。
彼女は教壇に立つと、生徒達の注目が自分に向いていることを確認してから開口した。
ミセ*゚ー゚)リ「モナー先生は急病のため、しばらく学校には来られません。
その間このクラスを受け持つこととなりました、臨時教員の餓狼峰ミセリと申します」
ξ゚⊿゚)ξ(あっコイツだ)
勘が鋭くなった私はすぐに直感した。
というか、ここまで苗字がおかしければどんなバカでも気付けるだろう。
まったく魔王軍にはバカしかいないのだろうか。魔王家の者としてとても恥ずかしい。
(^ω^)
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ「なんでこっち見る」
.
226
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 05:02:39 ID:pcCP1qPo0
ミセ*゚ー゚)リ「……魔王城さん」
私を呼ぶ彼女の言葉には、フォントの関係で表示できないハートマークが複数個ついていた。
ミセリ先生は自分の体をぎゅっと抱きしめ、一歩一歩私に近付いてくる。
なんだろうすごいフェロモンを感じる……
ξ;゚⊿゚)ξ「……え? あ、はい……」
ミセ*゚ー゚)リ「……ロマネスクおじさまは元気?」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、はい元気ですけど……」
ミセ*゚ー゚)リ「ああ、そう……うふふ……そうなの……」
ξ;゚⊿゚)ξ
と、思わず答えてからハッと気付く。
こいつはまだ私が魔王の子孫だとは分かっていない。
なのにお父さんの事を聞いてきたとあれば、それは真偽を確かめる為の罠だ。
( ^ω^)「あー鎌かけられた」
('A`)「しばらく距離置くけど許せよな」
ξ;゚⊿゚)ξ(グゲェーやっちまった!!)
.
227
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 05:03:39 ID:qaBXQDHM0
きたーーーー
ペースはええwwww
228
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 05:03:55 ID:pcCP1qPo0
ミセ*゚ー゚)リ「……あっ」
それは確実に喘ぎ声だった。
うら若き生徒達が出揃った教室内、注目集う初登場時に朝っぱらから喘ぐこの女はマジでヤバイ。
ミセ*゚ー゚)リ「……もうダメかも」
ξ;゚⊿゚)ξ「なにが!?」ガタッ!!
瞬間、私はブーンとドクオの言葉を思い出した。
( ^ω^)「発情したのち」
('A`)「アヘ顔で卒倒する」
ξ゚⊿゚)ξ(こ、これは……)
恍惚して今にもアレしそうな餓狼峰ミセリを前に、私は決死の覚悟を固めた。
頭に浮かべた言葉はたった一つ――――私が守護る。
.
229
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 05:04:36 ID:pcCP1qPo0
ξ;゚⊿゚)ξ(うおお!! このスレのモラルは私が守護る! 守護らねば!)
今まで最低限の常識と作品の体を保ってきたツンちゃん夜が往くようです。
それがこんな真性メス豚の痴態でどうにかなってはスレの方向性が更に混迷を極めていく。
やっとの思いでシリアス展開を差し込んだのに、今ここで絶頂シーンを書くことになれば全て台無しだ。
::ミセ* ー )リ::「あの、ちょっとだけ触ってもいい……?」プルプル
ξ;゚⊿゚)ξ「触る!? やめて! いま対応考えてるから堪えなさい!」
::ミセ* ー )リ::「はい、我慢します……っ」
このメス豚は今にもアレをこうして(R18)しそうだった。
清廉潔白な見た目から想像もつかない発情振りは、エロ同人で言う所の水○敬マリみてシリーズに近いものがある。
ξ;゚⊿゚)ξ(ギャー!! 私の頭にもギャグ次元の情報が逆流してくる!)
ξ;゚⊿゚)ξ(急がなきゃエロギャグシリアスが混同した謎スレになりかねない!)
( ^σω^)「うーわ面倒くさそう」ハナホジ
('σA`)「なー」ハナホジ
ξ;゚⊿゚)ξ(AAの造形を無視したハナホジ描写までッ……!)
シリアスに圧迫されたギャグ要素がさらなる高波になって逆襲してきている。
私に残された時間はあと少しだ。打開策を、せめて地の文を元の調子に戻さなければ――――!!
.
230
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 05:05:40 ID:pcCP1qPo0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._ ☆サブレアンケート☆(今日中で締め切るよ)
ノ ・ ヽ
/ ::::: i A・ツンちゃんミセリを抱く
/ ::::: ゙、. B・ツンちゃんミセリを気絶させる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
231
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 05:06:21 ID:pcCP1qPo0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思うジャック・ハンマーであった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
232
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 05:49:14 ID:qaBXQDHM0
超乙
まぁAだろうな
233
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 06:34:00 ID:a6Fn6Avk0
来てると思ったら終わってたおつ
234
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 07:07:12 ID:krKR9qsU0
ツンがすげえ常識人だ
B
235
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 07:47:24 ID:sYDCbHMc0
Aしかあり得ない……
236
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 08:45:36 ID:SuupDHlI0
A
237
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 08:54:19 ID:wvpX9i0k0
乙
同数になったら今度はボトムズかな?
Bで
238
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 09:07:57 ID:iVYVYDwE0
カオスorシリアスか……!
そんなもんシリアスに決まってんだろ
Aで
239
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 10:53:13 ID:V1CFLCog0
B乙
240
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 11:25:38 ID:1xiVTzKI0
同数狙いのB
241
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 11:34:30 ID:Lf3c2Q7sO
乙
せっかくツンちゃんがお馬鹿じゃなくなったのにAにしたらまたギャグになっちゃうな
Aでお願いします
242
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 11:51:43 ID:R20GNmKc0
どっちにしろ気絶しそう
B
243
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 17:07:22 ID:e/MOZ.Og0
BだBだ
244
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 18:08:56 ID:WOhb2wNk0
乙
同数狙いのAで
245
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 18:26:37 ID:yCDti2mA0
A
246
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 19:04:38 ID:aR1E4PeA0
A
247
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 19:44:58 ID:9PRSbrk.0
A
248
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 20:03:09 ID:Q88p5W2oO
B
249
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 20:12:24 ID:Ef7Q81KMO
おバカなツンちゃんはもう見れないんです?
Aでオナシャス!
250
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 21:29:59 ID:XyYdEKCs0
抱け!!抱け!!A!!
251
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 21:36:42 ID:fZ6V74rk0
>>250
ノスタル爺乙
252
:
名も無きAAのようです
:2015/11/13(金) 23:06:04 ID:4MlRHRog0
B
253
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 01:55:59 ID:B7YWQR0Y0
A 11票
B 8票
成し遂げたぜ。
254
:
名も無きAAのようです
:2015/11/16(月) 13:05:25 ID:Bkhm/dLg0
追いついた
楽しみにしてます
255
:
名も無きAAのようです
:2015/11/16(月) 15:04:06 ID:JUeJLKp20
ツッコミ役ツンちゃんええぞ~
256
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:31:11 ID:DgMvPhKk0
――私は決心した。
この女を抱き、その上でシリアス展開に持って行く。
ぶっちゃけ私は非処女でレズなので特に問題ないだろう。
エロゲでもよくある感じの流れだろうから、それで作品の体裁は――
ξ;゚⊿゚)ξ(くそぉ! 私の一人称が捏造されていく!)
ξ;゚⊿゚)ξ(抱いてたまるか! 私は処女でノーマルなのよ!!)
ξ; ⊿ )ξ(チクショーなんとかしてくれ魔王パワー!!)ピカー
その時、不思議なことが起こった。
目の前の景色が暗転し、次の瞬間、私の視界は閃光に包まれた。
そして低く唸るような声が一言、私に向かって命令する。
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『――抗うな』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
限りなく広がる純白の世界。
そこはサブレ時空――ツンちゃんを司る神の領域だった。
.
257
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:31:52 ID:DgMvPhKk0
普段の教室から一転、意味不明な場所に来てしまった。
しかしこれも魔王パワーが成せる業であり、特に不思議ではない自然な流れだった。
ξ;゚⊿゚)ξ(……よし、地の文の支配権を取り戻した!)
ξ;゚⊿゚)ξ(明らかに不自然な流れでも、地の文さえ味方にできれば何とでもなる!)
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『我はサブレ――鳩サブレ。
/ ::::: i 魔王の子よ、よもやこの神域にまで手を出すとは――』
/ ::::: ゙、
ξ;゚⊿゚)ξ「魔王パワーが絶対無敵の世界観で、神様がなんだってのよ!」
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『その傲慢、まさに魔王の気質と見たり。
/ ::::: i なれば我が眼前に立ちはだかるも必然か……』
/ ::::: ゙、
鳩サブレはゆっくりと翼を広げ、鳩サブレの破片を撒き散らしながら飛翔した。
.
258
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:32:52 ID:DgMvPhKk0
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『剣を持て。ここで決着をつけようぞ、魔王の子よ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
ξ;゚⊿゚)ξ「……え? 戦うの?」
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『無論だ。まさか、我が鳩サブレだから戦えぬとでも?』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、ていうかそもそも鳩サブレじゃなくて――じゃない、それ」
瞬間、私は自分の口に手を当てた。
今確かにハッキリと――と言ったはずだ。
奴の真名である――を、確かに言った。
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『フハハハトサブレ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
それは奴の笑い声だった。
.
259
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:34:32 ID:DgMvPhKk0
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『魔王の血であろうと台詞部分への介入は不可能だ。
/ ::::: i その名は既に破却した。故に我が鳩サブレである事は揺らがぬ――』
/ ::::: ゙、
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『さあゆくぞ魔王の子よ!
/ ::::: i その血肉、我が手中に収めてくれよう!』
/ ::::: ゙、
大きく羽ばたき、鳩サブレが咆哮する。
共鳴したサブレ空間が小刻みに震動し、ラスボス戦めいたBGMが流れ始める。
https://www.youtube.com/watch?v=8VDKVSXMas0
ξ;゚⊿゚)ξ(え、マジで戦うの!? これと!?)
,、,,..._ ビャクレンジン
ノ ・ ヽ 『――【冥火 白煉塵】』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
言葉の後、鳩サブレの周囲に無数の魔方陣が展開された。
魔方陣が灼熱を帯び、ツンちゃんに向けて巨大な火炎弾を連射し始める。
ξ;゚⊿゚)ξ(――ギャグシリアスか!!)
納得した私は魔王パワーを全開にして大きく後ろに飛び退いた。
しかし火炎弾は私を追って次々と発射された。その度に私は身体を翻し、奴の追撃から身を守る。
.
260
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:35:30 ID:DgMvPhKk0
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『さすがは魔王の血筋という訳か。
/ ::::: i まともな戦闘描写もなかったのに、よく避ける――!』
/ ::::: ゙、
ξ;゚⊿゚)ξ(アイツの言う通り、私にはまともな戦闘描写がない!
でも、私になくとも他のみんなにはある!)
思い出すのは全カットされたあの女の姿。
黒髪をなびかせた白い鎧の、素直四天王最速の剣士――!
『――私の動きに、ついて来れるか』
脳裏に響く声と、目の前に浮かび上がる素直クールの後ろ姿。
それは幻影だったが、私は彼女の幻影を必死で追いかけた。
他の事は何も考えなかった。
勝つ為には今まで見てきた他者の力を模倣するしかない。
正規ルートに入らず魔王化を覚えられなかった私に出来るのは、ただそれだけだ。
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『成程。地の文の記録を再生するか、小賢しい』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
鳩サブレの嘲笑など聞き流した。
火炎弾から逃げる為の道は彼女が示してくれる。
あとは、その背中に私が追いつくだけなのだから――――
.
261
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:38:51 ID:DgMvPhKk0
,、,,..._ スカーレット・サザンクロス
ノ ・ ヽ 『――【冥火 卍紅耀】』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
展開された魔方陣はそのままに、更に攻撃用の魔方陣が空中に出現する。
火炎弾に続いて始まったのは十字を描いた炎の弾幕。
幾重にもなったそれは火炎で編んだ網のように、私に向かってゆっくり前進してくる。
ξ;゚⊿゚)ξ(――――)
ここは無限のサブレ空間。逃げ場などいくらでもある。
足場の概念があるだけで、前後にも上空にも無限に距離をとれる。
逃げるだけならひたすら後ろに下がればいい。
だが、しかし。
川 - )
ついて来れるかと言った彼女の背中は、炎の弾幕に立ち向かっていく。
ξ;゚⊿゚)ξ(――――当然、追いかける!!)
私は固唾を飲み下して火炎弾に立ち向かった。
しかしその途端、視界を覆いつくすほど巨大な火炎弾が私の目の前に飛来する。
突然現れた火炎弾に私は思わず足を止め、一瞬前の決意を忘却してしまった。
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『終わりだ、小娘!』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
.
262
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:39:58 ID:DgMvPhKk0
ξ;゚⊿゚)ξ(――――)
避けられない、と思考停止した私の目の前には素直クールの背中がある。
瞬間、素直クールは剣をおさめて身構えた。
逃げるのではなく、この火炎を切り裂く為に。
ξ;゚⊿゚)ξ(なにそれ、見たことない……)
それはドクオ戦では決して見せなかった彼女の全力。
風を斬り、風を纏い、風と共に吹き抜ける必殺無双の抜剣術――
川 - )『――ついて来れるか』
構えたまま僅かに振り返った彼女は同じ事を呟く。
迫り来る隕石のような火炎弾を前に、私に出来ることは変わらず一つだけ。
ξ; ⊿ )ξ(――当然、追いかけるッッ!!)
その決意と同時、頭の中に知らない言葉が浮かび上がった。
私の口は、勝手にその言葉を囁いた。
.
263
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:41:10 ID:DgMvPhKk0
ξ ⊿ )ξ「――私の剣は此処に在る」
その時、固いスイッチがパチン! と切り替わるような感覚を帯びて、私の思考は一掃された。
身体は私ではない別の何かに突き動かされ、素直クールと同じ構えを取る。
一瞬前まで在りもしなかった剣を、その手に持って。
川 - )『八刀剣撃――――』
私と素直クールの幻影が重なり、同化する。
これから始まる技の名を、私は既に知っていた。
ξ ⊿ )ξ「――――八重小太刀」
抜剣の刹那、火花を散らして打ち出された八つの剣撃。
一瞬に凝縮された八回分の剣撃は、次の瞬間爆風を放って火炎弾に直撃する。
炎と風の激突――先に消滅したのは、鳩サブレの火炎弾だった。
.
264
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:41:50 ID:DgMvPhKk0
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『――バ、バカな!!』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
狼狽した鳩サブレの火炎弾が一点集中して私に降り注ぐ。
しかし、それが私の肌を焦がすことはなかった。
次の一撃で鳩サブレを斬る。
そのイメージを実現するため、私は――私達は疾走する。
ξ ⊿ )ξ「五刀剣撃――――」
,、,,..._
ノ ・ ;ヽ 『おのれ! 【冥火 紅いもタルト】!!』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
殺人的な紅いもタルトが飛び出してツンちゃんを襲う!
ツンちゃん死亡! 大勝利!
.
265
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:42:56 ID:DgMvPhKk0
ξ ⊿゚)ξ「今更地の文をとったところで――」
私は鳩サブレを無視し、剣を構えたまま空中に跳び上がった。
鳩サブレと同じ高さに到達したところで、私は決着の一撃を振り下ろした。
ξ# ⊿゚)ξ「――――轟断、燕殺し」
,、,,..._
ノ ・ ;ヽ 『や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
鳩サブレはなおも火炎弾を発射してきたが、私はそれらの隙間をすり抜けて奴に差し迫る。
五撃五方向から始まり一点に収束するこの技は、威力・手数よりも命中率に重きを置いている。
まさに必中必殺――たとえ相手が神であろうと、この一撃は確実に相手を斬り刻む。
,、,,..._
ノ ・ ;ヽ 『こうなれば本編ごと終わらせてくれる!
/ ::::: i 我が消えればギャグ要素は消え去る! そんな事、あってはならぬのだ!』
/ ::::: ゙、
音速を超えた五撃一刀の必殺剣が空中に奔る。
――瞬間、鳩サブレの肉体に五つの亀裂が走り抜けた。
.
266
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:43:50 ID:DgMvPhKk0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思う鳩サブレであっ――――
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 サクッ
,i :::::: / /⌒`ー-、
| :::::: / / i
! ::::::::../ / ノ
`ー―" "―――――‐ "
鳩サブレの言葉は、そこで途切れた。
己の行く先を知ったのか、その表情はどこか切ない。かなしい。
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『……もう、よいのか……ツンちゃん……』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
,i :::::: / /⌒`ー-、
| :::::: / / i
! ::::::::../ / ノ
`ー―" "―――――‐ "
ξ゚⊿゚)ξ「……ええ。今までありがとう。
私をギャグ時空で守ってくれて……」
ξ゚⊿゚)ξ「でももう往くわ。
年末年始は忙しいもの、早く完結させなくちゃね……」
私は剣をおさめ、サクサクと崩れ始めた鳩サブレを見つめる。
今まで誰よりも私を守り、傍に居てくれた銘菓――その最期を、私は見届ける。
.
267
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:44:31 ID:DgMvPhKk0
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『……ひとつ、本編のネタバレをしよう』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『本当の敵は正義でも悪でもない。
/ ::::: i 善悪を生み出すのは人間。真の敵は、人間なのだ』
/ ::::: ゙、
ξ゚⊿゚)ξ「……ありがちね……」
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『ふふ、せいぜいシリアス世界を生きるがよい。
/ ::::: i 伏線はある。貴様は世界の残酷さを思い知るだろう』
/ ::::: ゙、
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『我はその姿を見ているぞ。
/ ::::: i いつでも、1,080円(9枚入箱)の鳩サブレとしてな……』
/ ::::: ゙、
https://hato.co.jp/toshimaya/
.
268
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:45:19 ID:DgMvPhKk0
鳩サブレは、やがて風に吹かれて消え去った。
粉々になり、広大なサブレ空間に散っていった。
私は一体どうして鳩サブレと戦っていたんだろう。
そんな疑問さえ、この感動的な別れの前に消えていく。
ξ゚⊿゚)ξ「さようなら、ひよこ饅頭……」
ξ゚⊿゚)ξ「……いいえ、鳩サブレ……」
奴が消えた今、きっとこれが最後のギャグシーンなのだろう。
私の頭上に悲しみの鳩サブレが降り注ぐ。
私はそっと手の平を差し出す。
そこに舞い降りた鳩サブレの破片を、私は静かに口に運んだ。
ξ゚⊿゚)ξ サクッ
ξ゚⊿゚)ξ「……やっぱ、もみじ饅頭だわ……」
その一言でサブレ空間は崩壊した。
私の意識は日常に戻っていく。
さて、あのメス教師の事が何も解決していないぞ――
.
269
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:46:34 ID:DgMvPhKk0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
スヤスヤ
ξ´⊿`)ξ という夢を見ているツンちゃんであった。
ミセ*゚ー゚)リ「よっ、と」
ツンに催眠術をかけたミセリは、清々しい顔で彼女を抱きかかえた。
ミセ*゚ー゚)リ「みなさんは自習を続けてください。
先生は魔王城さんを介抱するので保健室に行きます」
ミセ*゚ー゚)リ「あとドクオ君も来なさい。以上、みんな始めて」
さっぱりとした物言いで教師としての仕事を終えると、ミセリはドクオに一瞥を送って教室を出て行った。
('A`)「あー……?」
( ^ω^)
('A`)「……まぁとりあえず行ってくるわ。
マジであいつ襲われたらシャレになんねぇしな……」ガタッ
気だるそうに溜め息を一つ。
ドクオはミセリに続いて保健室に歩いていった。
( ^ω^)「……潮時かもNE」
静けさが戻った教室にぽつんと呟く。
育ての親をとるか、友人をとるか。
この時、ブーンはそういう選択を頭に浮かべていた。
.
270
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:47:14 ID:DgMvPhKk0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
と思う鳩サブレは、もう居ない
また次回
271
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 02:56:40 ID:lJz6VkHM0
乙!
鳩サブレ…
272
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 07:42:31 ID:DzeoVH.w0
サブレェ……
おつ!
273
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 10:06:45 ID:txSLJzAI0
話進んでねえwww
274
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 10:42:22 ID:C370Widk0
技名が恥ずかしすぎて悶えた
275
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 11:17:50 ID:VVvAB.pA0
ひよこーっ!!
276
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 18:43:04 ID:.gWkoInU0
鳩サブレでシリアスやってやがる...
277
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 19:22:38 ID:eUJefdfw0
鳩サブレはひよこ饅頭でもみじ饅頭でシリアルだったのか
278
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 19:31:04 ID:vAXKHS7Y0
もしや
>>1
は、昨今の和菓子の売れ行きの伸び悩みを解消すべく作品を投下している和菓子業界からの刺客……
279
:
名も無きAAのようです
:2015/11/20(金) 20:14:26 ID:NOBk8hno0
フハハハトサブレでツボった
280
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 22:58:24 ID:IabClKNc0
【interlude:6】
――VIP高校、保健室。
ミセ*゚ー゚)リ「連れてきたわよー」ガラリ
ξ´⊿`)ξ スヌーピー
('A`)「……」
川д川 「……おつかれ。そこのベッドに寝かせといて」
ミセリ達を保健室で迎えたのは白衣の校医、貞子だった。
ドクオが知る限り、身の回りに居る魔界関係の人物は彼女で最後だ。
しかし、なんだか違和感がある。
二人ともツンが魔王の子孫だと知らないはずなのだが、知った今でも存外に驚いていない。
どこかから情報が漏れた、とも考えたが、敵に知られて味方に知られていないのもおかしいなと合点する。
('A`)(なんか別の命令でもあったのか……?)
.
281
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 22:59:05 ID:IabClKNc0
('A`)「ミセリ、お前どこで知った?」
ミセ*゚-゚)リ「どこでって、ロマネスク様から直接聞かされたわ」
ミセリはツンをベッドに寝かせると、ツンの寝顔を見つめながらドクオに答えた。
彼女の表情は、ツンのことを憂うように暗く沈んでいる。
('A`)「……なんか冷静だな。
お前の事だから、すぐさまそいつに求愛すると思ってたが」
ミセ*゚ー゚)リ「……実際に会って気が変わったのよ。
そんな事をしてる場合じゃないって。ドクオは気付いてないみたいだけど」
川д川 「どいて。診るから」グイ
ツンとミセリの間に貞子が割り込む。
彼女はツンの頭に手をかざすと、瞑目してその手に魔力を集中した。
紫がかった陽炎が貞子の手に灯る。
貞子は魔力を帯びた手をツンの頭から喉元、胸部、下腹部、脚部爪先へと順に当てていった。
('A`)「……どこか悪いのか?」
ミセ*゚ー゚)リ「私でも分かるくらいにはね。
ドクオ、人間界に慣れて色々鈍った?」
.
282
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:00:07 ID:IabClKNc0
('A`)「……どうなんだ、貞子」
ミセリの小言から逃れるように、ドクオは貞子に話し掛ける。
貞子が行っているのは一種の健康診断のようなもので、対象の状態を正確に把握する意味がある。
診断を終えると、貞子は結果を脳内でまとめてから口を開いた。
川д川 「……抑圧と錯誤の呪術が掛けられてる。
これはロマネスク様の言ったとおりだった。覚えのある呪術式だし」
(;'A`)「なッ……!」
川д川 「呪い自体は半分くらいが解けている。
ロマネスク様の魔力が上手く作用したんだろう。問題無い」
川д川 「だけど呪いの副作用がすごく深刻だ。
単純に言って、彼女の身体は呪われている状態に慣れすぎた。
このまま抑圧・錯誤の呪いが解けて魔力が全開になれば、彼女の心身は自壊する」
(;'A`)「――ま、待て! その呪い、誰がやりやがった!?」
貞子は気だるそうに振り返り、長く伸ばした前髪の隙間から、じと、とドクオを見つめた。
川д川 「決まってるだろハインリッヒ高岡だ。
呪術式は私が作った『妖刀・首断ち』のそれと一致する。
ゆえに解除は容易だし、ロマネスク様にもそれを頼まれてるんだけど……」
ミセ*゚ー゚)リ「それをすれば、ツンちゃんを死なせかねない」
川д川 「その通り。時間があれば魔王化の修練も可能だけど、参ったな……」
.
283
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:01:05 ID:IabClKNc0
(;'A`)「……すまない。何も、気付いてなかった……」
ミセ*゚ー゚)リ「いえ、貴方は十分やっていたと思う。
私達が呪術に関してもう少し教えておけば、って感じ」
川д川 「ロマネスク様も人がよすぎるんだ。裏切り者は何度だって裏切る。
ハインリッヒなんかを信用するから……」
(;'A`)「……これからどうする? 何か言われてるんだろ」
ドクオは二人を一瞥し、脳裏に浮かんだ最悪の事態を予感した。
それは内藤ホライゾンの抹殺。魔王軍はどこまでも行っても悪である。
魔王の娘に手出ししたとあらば、親族皆殺しなど当然の処置に過ぎない。
ブーンをどうにかする、というのは十分ありうる話だった。
ミセ*゚ー゚)リ「……そうね。まずは、内藤ホライゾンの確保かな。
ツンちゃんにはもう少し寝ててもらうとして、そっちは今すぐやりに行く」
川д川 「殺しまでは言われてない。ただ少し、状況が変わりつつある」
(;'A`)「状況、って……?」
川д川 「……その話は後だ」
ふと、貞子が天井を見上げた。
彼女はじっと天井を見つめた後、ドクオとミセリに向けて言った。
川д川 「間もなくこの学校に結界が張られる。
内藤ホライゾンも分かっているらしい――――」
【interlude:out】
.
284
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:01:46 ID:IabClKNc0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
世界の色が変わる。
あらゆる風景が灰色を帯び、現実との乖離を象徴する。
結界――無害な人間達に被害を出さぬよう、最低限の配慮として勇者軍が行う術式。
これで、何が起ころうと現実に影響は出ない。
戦う場所が用意された以上、ドクオは彼との戦闘を考えねばならない。
魔王軍の一人として、ツンを守る任務の一環として。
必要とあらば、彼は内藤ホライゾンを殺さねばならなかった。
( ^ω^)「……」
そして、それはブーンにとっても同じこと。
もしも彼らが自分を殺しに来るのなら、そこで始まるのは単なる殺し合い。
生きていなければ何も成し遂げられない――彼は、その事をよく理解していた。
.
285
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:03:03 ID:IabClKNc0
――VIP高校、屋上。
もぬけの殻になったテントが、風になびく。
灰色の世界に一人立つブーンは、既に臨戦態勢をとって彼女達の攻撃に備えていた。
( ^ω^)「……」グッ・・・
両手でやっと構えられる巨大な一振り。
その大剣を一言にまとめるなら、それは血肉と臓物の塊だった。
剥き出しの臓物がドクドクと脈打ち、血を巡らせ、剣自体が一つの生命のように脈動している。
切先から柄にかけては常に血が滴っている。その乾いた血が、持ち主とこの剣をべっとりと繋ぎ止めていた。
しかしあくまで一つの剣として、その肉塊は、己の異質・異様さを外界に吐き出し続ける。
ブーンが投薬によって獲得できる激化能力は『復元』。
いま復元したこの剣は、彼が知りうる中で最も凶悪な武器――勇者喰らいの大剣、グランギニョル。
先の戦争において、魔王が勇者を殺すのに用いた曰くつきの魔剣である。
ミセ*゚ー゚)リ「……こっちは話し合いの用意があるけど、どうする?」
大剣を向けられたミセリは、最後の勧告として尋ねる。
ぶつかり合う両者の視線。平和的和解など、とても考えられない。
( ^ω^)「言っとくけど、勇者軍に関しての情報量はそっちと大差ないお。
むしろ、お爺ちゃんがどうなったか教えて欲しいくらいだお」
ミセ*゚ー゚)リ「あの人は死んだ。死んで改造されて、手駒にされた」
( ^ω^)「……まあ、だろうとは思ってたお」
ミセリの言葉で確信を得たのか、ブーンはさして大仰な反応もせず納得する。
.
286
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:03:43 ID:IabClKNc0
ミセ*゚ー゚)リ「命令は確保だけなの。殺せとまでは言われてない。
一応ツンちゃんのお友達だしね、どうする?」
( ^ω^)「悪いけどどっち側にもつく気はないお。
お爺ちゃんはそっちに味方してたけど、最終的にはどっちも潰すつもりだったお」
ミセ*゚ー゚)リ「……その考えは、貴方も同じなの?」
( ^ω^)「そうだお。僕の敵は魔王でも勇者でもないお。
敵の敵は味方でも、あんたらは敵ですらない。関わる理由がないんだお」
ミセ*゚ー゚)リ「だからと言って無関係になれる訳じゃない。
確保の命令は遂行される。いい?」
( ^ω^)「僕を殺さずに捕まえるつもりなら、死ぬお」
ブーンは血肉の大剣を肩に担ぎ、グッと腰を低くした。
.
287
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:05:08 ID:IabClKNc0
ミセ*゚ー゚)リ(……グランギニョルの性質は融合。
斬撃は二の次。問題は、あれに触れれば肉体を喰い取られる事)
ミセ*゚ー゚)リ(レプリカ版とはいえその性質は変わらないはず。
さて厄介だけど、剣を除けばやりようはある……)
あの剣は魔王が使えば脅威だが、子供が使ったところで十分な性能は発揮できない。
ならば必ず扱いきれずに隙ができる。その一点を見逃さなければ攻略は容易い。
――その早合点が、間違いだった。
( ^ω^)
ブーンはただ、剣を持ってそれを支えていればよかった。
確かにこの剣を従えるのは至難だ。それこそ魔王でなければ不可能だろう。
でなければ、従えなければいい。
ブーンはただ、この凶器のオンオフさえできればよかった。
あとの事は勝手に剣が終わらせる。無尽の食欲に任せて動き始める。
故に、彼には最初から制御という考えは無かった。
.
288
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:07:00 ID:IabClKNc0
ミセ*゚ー゚)リ「ッ?」
それはほんの一瞬、まばたきする間の出来事だった。
どちゅ、という音がミセリの腹を貫いていた。
己の身体を見直す余裕もない。
ミセリの意識は、その音を聞き届けた時点で潰えていた。
( ^ω^)「……」
彼女に血肉の大剣を突き刺したブーンは、剣で彼女の中身をぐちぐちと掻き混ぜてからそれを引き抜いた。
グランギニョルの能力は融合。
ミセリの体内と融合したこの剣は、彼女の臓物を連れて外に引きずり出てきた。
人体丸々一体分の内臓が血肉まみれでアスファルトに落ちる。
その血と肉の塊を、グランギニョルは貪るように啜って己の一部に変えていった。
絶命したミセリが膝をついて崩れ落ちる。
臓物の大剣は、その残りカスすらもしっかりと食べ尽くした。
.
289
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:08:55 ID:IabClKNc0
( ^ω^)「――お?」
しかし、捕食を見守っている最中、唐突にブーンの足元が強烈に光り輝いた。
屋上いっぱいに広がる閃光。
(; ^ω^)「あっぶ――ッッ!!」
それが攻撃の前兆だと察した瞬間、ブーンは咄嗟にフェンス際まで退避した。
(; ^ω^)「もう一人居たのかお……!」
回避を見せると、その閃光は何事もなく収まっていった。
当たらない攻撃などする必要がない、という事だろう。
ブーンはもう一度グランギニョルを構え直し、フェンスを足場にして空中に跳び出した。
着地地点はグラウンド中央。
重量級の大剣を持ったブーンが地に落ちるとズドンと音が響き、空高く砂煙が舞い上がった。
川д川 「……人間というのは、相変わらずその剣のように醜いな」
( ^ω^)「……生みの親はそっちだお」
川д川 「担い手の話だ。勘違いするな」
砂煙の向こうの声と軽口を飛ばしあう。
次の相手はさっきのように油断してくれないだろう。
ブーンは一度グランギニョルの復元を止め、使い慣れた無銘の長剣を手に持った。
.
290
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:09:35 ID:IabClKNc0
( ^ω^)「言っとくけど、逃がしてくれるなら戦わないお」
そう言い、長剣で砂煙を振り払う。
晴れた視界の先――捉えた敵は三人。
川д川 「……」
('A`)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……あーあ」
無表情の一言。しかし、それにはあらゆる感嘆が込められていた。
せめてツンには知られないままお別れしたかったが、それも駄目になってしまった。
まあとりあえず平和的に進めてみよう、とブーンは剣を捨てて両手を上げた。
( ^ω^)「話し合う気になったお。身の安全を要求するお」
川д川 「……たった五分で心変わりか、裏切り者らしい振る舞いだ」
川д川 「だけど、今この場にお前の話を聞く者が居ると思う?
二人にもしかと見せておいたぞ。あの剣と、殺しの瞬間をな」
.
291
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:10:34 ID:IabClKNc0
( ^ω^)「……ドクオ」
('A`)「……俺は魔王軍の一員だ。貞子さんの判断に従う。
事情が何であれ、戦うことも厭わない」
ドクオに助け舟を求めても、彼は冷徹に自身の宿命に準じていた。
魔王軍と勇者軍はそもそも相容れない存在。友人関係も簡単に瓦解する。
( ^ω^)「じゃあ、ツンはどうだお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……私は……」
しかしドクオから言質は頂いた。貞子はドクオの上司だが、ツンは更に上の魔王の娘。
それが確たる判断を下した場合、二人はそれに従わざるをえない。
卑怯だという自覚はある。
が、切り抜けるなら一番弱い所を突くのが一番なのだ。
ブーンはツンを言い包め、なんとかこの場を乗り切ろうと考えていた。
( ^ω^)「確かに僕はあの人の勧告を無視して殺したお。
でも、話し合いが嘘だったら殺されてたのは僕だお?」
( ^ω^)「お爺ちゃんはツンを洗脳して何かをしようとしてた。
それは事実だし、僕もそれに加担してたお」
( ^ω^)「でも信じて欲しいお。僕もお爺ちゃんも、ツンに危害を加える気はなかったお。
もっと言えば魔王にも勇者にも用はないお」
川д川 「回りくどいぞ。そんな嘘だらけの説得、聞くだけ無駄だ」
貞子が空に手をかざす。と同時、空中いっぱいに無数の円が描かれた。
魔界文字を円形に束ねた最高位魔術式の大群。ひとたび起動すれば、この学校など塵芥も残らない。
.
292
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:11:43 ID:IabClKNc0
( ^ω^)「ツン。僕のお父さんのこと、知らないお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……え、うん……」
( ^ω^)「僕のお父さん、勇者なんだお。
人造じゃない本物の、最後の勇者」
( ^ω^)「お父さん、先代魔王と一回戦ってるんだお。
でもその戦いでは死なずに、生きて帰ってきてるんだお」
( ^ω^)「そうだお? ドクオ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……そうなの?」
('A`)「……あいつが勇者の息子かは知らんが、あの戦いではどちらも死ななかった。
痛み分けっていう形で決着して、勇者は魔界を去っていったよ」
川д川 「お嬢様、聞く耳を持たないように。結論は既に出ています」
今にも火蓋を切って落としそうな貞子。
残された時間は少ない。ブーンは急いで話の続きを口走る。
.
293
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:12:31 ID:IabClKNc0
( ^ω^)「お父さんは一度帰ってきた後、治療の為に入院したお。
国が秘密裏に作った専用の医療施設に、今も入院中だお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……でも不思議じゃないかお?
一度は魔王を倒しかけた男を無視して、なんで勇者軍は勇者を作り始めたお?」
( ^ω^)「簡単な話、勇者軍は人間に 『勇者は死んだ』 と教えられたんだお。
ある意味そこが分岐点。勇者軍が狂い始めた原因がそれだお」
川# д川「いい加減にッ――」
ξ#゚⊿゚)ξ「――黙ってて」
川; д川「っ……!」
( ^ω^)
話に乗ってきた、と心の中でほくそ笑む。
ブーンは、最後の一押しを語り始めた。
.
294
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:13:16 ID:IabClKNc0
( ^ω^)「ハッキリ言うお。僕のお父さんは今、その施設で研究材料にされてるお。
僕とお爺ちゃんはそれを何とかする為に、正義と悪を利用したんだお」
( ^ω^)「敵は人間。奴らの目的は、勇者と魔王の完全排除。
この事を知ってるのは僕とお爺ちゃん、そしてツンたち三人だけ……」
( ^ω^)「……正義と悪の小競り合いで時間を無駄にしたいなら、信じなくていいお。
もし僕を信じて協力してくれるなら、僕は魔王軍の一人として戦うお」
( ^ω^)「……何にせよ捕まる気はないお。だから、捕まえたいなら戦うことになるお。
あとの事は、もうツンの判断に任せるお」
( ^ω^)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
沈黙が渦を巻く。ツンはしばし、頭の中で情報を整理した。
この場の決定権はツン一人に押し付けられた。
彼女自身もそれを理解し、焦燥に追われている。
だから、一刻も早く答えなければならない。
ブーンを信用するか否か。ツンは迷いを振り切れないまま、もごもごと口を開いた。
.
295
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:14:10 ID:IabClKNc0
ξ;゚⊿゚)ξ「わ、私は……」
A:ブーンを信用する。
B:ブーンを信用しない。
しかしふと、その二択を脳裏に浮かべた瞬間、ツンは鳩サブレの言い分を想起した。
ξ;゚⊿゚)ξ(……あいつ言ってた! 敵は人間って、確かに夢で言ってた!)
ξ;゚⊿゚)ξ(もし本当ならブーンの話とも一致する! だったら――)
.
296
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:15:09 ID:IabClKNc0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆アンケート☆
A・鳩サブレを信じ、ブーンを信じる。
B・鳩サブレを信じない。ブーンも信じない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
297
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:17:32 ID:IabClKNc0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思う鳩サブレであった また次回
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 アンケートはこれが最後です 今日中で締め切りです
,i :::::: `ー-、
| :::: i 同票の時は沈黙 THIS WAY
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
298
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:21:12 ID:4ZJHjui60
A
299
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:28:02 ID:NnKyRwQ60
A
300
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:30:30 ID:G4R7xjVE0
乙
シリアルな展開だな
鳩サブレを騙るひよこまんじゅうなんて信じられるわけないからBだB
301
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:34:44 ID:0USaXWJc0
乙!
Aで
302
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:40:12 ID:uPWSoHOs0
乙!今回も面白かった!
A
303
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 00:22:23 ID:TR.wEzJk0
B
304
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 00:24:23 ID:H0LSJ.T20
>>303
時間切れっっっっでぇ〜〜〜〜〜〜す
305
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 00:25:38 ID:q2ey3gsw0
アンケ終わってたけどAになってよかった
306
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 03:51:55 ID:5h9yDtFE0
あっという間にミセリが死んでた
307
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 10:25:20 ID:vWscmJsw0
ツンちゃんミセリのこと完全スルーしてんな
哀れ
308
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:29:03 ID:itsNRXGA0
初対面の印象が最悪だったからしょうがない
309
:
◆9mGdTa8gSo
:2015/12/03(木) 04:47:43 ID:Ip8umvoQ0
,、,,..._
ノ ・ ヽ 鳩サブレです
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 今日の21時頃に投下します
,i :::::: `ー-、
| :::: i たまごボーロでした
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
310
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 09:07:36 ID:41zDWU/M0
ひよこ 生きとったんかワレ!
311
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:05:51 ID:Ip8umvoQ0
【interlude:7】
私は、ブーンの言葉を信じることにした。
一歩前に出て振り返り、私はドクオと貞子さんに言った。
ξ゚⊿゚)ξ「私、ブーンの話を聞こうと思う」
川д川 「……それは認められません。お下がりください」
ξ゚⊿゚)ξ「イヤ。要は仲間だって確証があればいいんでしょ?
それぐらい簡単よ。全裸にしてこっち連れてくるから」
私は彼女達への視線を切り、ブーンに向かって歩き出した。
迷いはない。テクテクよりザッザッの歩き方でどんどん彼に近付いていく。
川;д川 「待って! 我侭を仰らないでください!」
('A`)「貞子さん、放っておきましょう。
ツンはバカだけど無駄死にするような奴じゃないです」
('A`)「いざという時に動けるよう構えてて下さい。空の魔術式もそのままで……」
川;д川 「……当たり前だ! クソ、お転婆が過ぎるぞ……!」
312
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:08:34 ID:Ip8umvoQ0
私はブーンと向かい合い、すこし沈黙した。
ふだん平然としている対面だが、今ばかりは嫌な汗が滲み出てくる。
もしも、と考えると不安で堪らない。
私もあんな風に殺されるかもしれないなんて、微塵も考えたら駄目だ。
( ^ω^)「……とりあえず、どうすればいいお?」
ξ゚⊿゚)ξ「……えっ?」
( ^ω^)「そっちの話し合いに応じる、って言ったお?
場所変えたりするのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、そっか。
話があるのは貞子さんだし、私が来ても意味ないのか……」
(; ^ω^)「何しに来たんだお……」
ξ;゚⊿゚)ξ「うーん……とりあえず全裸で」
(; ^ω^)「全裸!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「うん。全裸で連れてくるって言っちゃったから……」
(; ^ω^)「なんでまた全裸なんだお……」
ξ;゚⊿゚)ξ「決意の表れというか」
(; ^ω^)「すごい傍迷惑だお……」
.
313
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:10:39 ID:Ip8umvoQ0
「――――ここらが、好機か」
不意に、どこかで声がした。
.
314
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:11:19 ID:Ip8umvoQ0
(; ^ω^)「――――ツン、後ろだお!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、なに――――」
ブーンの絶叫と同時に私は振り返る。
爪'ー`)「――――」
一瞬、誰かの顔。
しかし思い出している間もなく、私は巨大な衝撃に体を薙ぎ払われた。
(; ^ω^)「ドクオ! ツンを頼むお!」
弾き飛ばされる最中、辛うじてブーンの背中を捉えられた。
ブーンは私を庇って前に出ると、次の瞬間、先の男と剣を打ち合い始めた。
爪'ー`)「ほう、私に構ってくれるのかね」
(; ^ω^)「どっちでもいい! 急いでツンを――」
.
315
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:12:42 ID:Ip8umvoQ0
衝撃のあまり地面を転がり続ける私。
かれこれ100メートルは転がったかというところで、ようやく何かにぶつかって勢いが収まった。
ξ; ⊿ )ξ「い、いたい……すごい痛い……」
(;'A`)「我慢しろ! ほら掴まれ、逃げるぞ!」
ξ; ⊿ )ξ「わ、わかった……」
私は朦朧とした意識のまま、ドクオの声に従って彼の腕に抱きついた。
私とて女の端くれ。胸はそこそこあるのでドクオにとっても役得だろう。ウィンウィンと言える。
――などと、思っている場合ではなかった。
(;'A`)「ツン、今すぐ『俺』から離れろッ!!」
爪'ー`)「余所見する余裕は無いだろうに――ッ!」
ξ; ⊿゚)ξ「……なんか、声遠くない?」
声の方向に違和感を覚え、私は目を凝らして周囲を見る。
すると、吹き飛ばされる直前まで私が居た辺りにドクオ達の姿があった。
ドクオはブーンに加勢したのか、今はブーンと一緒にあの男と戦っている。
しかし、だったならば、いま私が抱きついている方のドクオは――
.
316
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:15:24 ID:QpqfWib.0
なんだなんだ
317
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:16:00 ID:Ip8umvoQ0
川 ゚ 々゚)「よっ、久し振り」
ξ; ⊿゚)ξ「……」
見直してみるとドクオの顔は消えており、かわりにどこか見覚えのある顔が私を見下ろしていた。
素直クール、のような、でも違う……そういう曖昧な感覚が、私の判断を鈍らせる。
その間に、ふわ、と私の体に細い糸が巻きついた。
ξ;゚⊿゚)ξ(これ、ヤバッ――!!)
私は咄嗟に体を起こして糸の輪から逃げ出した。
しかし、どうしても急所の糸だけが解けない。
間もなく首と太ももに巻きついた糸がギチ、と音を立てて締まり始める。
全身二ヶ所をぐるっと一周する鋭い痛みは段々強くなっていき、皮膚を切って肉の深部にえぐり込んでくる。
ξ; ⊿ )ξ「ッ……!」
川#д川「――動かないでください!」
その声と同時だった。
ガトリングガンのような絶え間ない炸裂音と一緒に、灰色に染まった結界空間に紫色の閃光が弾けた。
最初ブーンに対して展開していた空の魔術式が向きを変え、私達に1メートル大の魔力の弾丸を発射し始めたのだ。
川 ゚ 々゚)「おおっ」
それは無数に降り注ぎ、謎の女を私から引き離した。
もちろん魔力弾は私には一発も当たらず、私を殺しかけた糸を的確に断ち切ってくれた。
ξ; ⊿゚)ξ「ハッ……ハッ……」
私は一度大きく呼吸してから、魔力弾の隙間をぬって駆け寄ってくる貞子さんに目を向けた。
.
318
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:17:19 ID:OU1/Ee9A0
しえーん
319
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:17:44 ID:Ip8umvoQ0
川;д川 「お嬢様、すぐに退避します!
あれは『王座の九人』のフォックスです! 今は倒す準備がない!」
ξ; ⊿゚)ξ「え、なに……王座がなに……?」
川;д川 「とにかく逃げるんです! この場は余りにも危険すぎる!」
貞子さんに抱き上げられた途端、貞子さんは私ごと空高くに跳躍した。
彼女は跳んだ先にも魔術式を用意し、さらに上空へと駆け上がっていく。
ξ;゚⊿゚)ξ「――ま、待って! ドクオとブーンはどうするの!?」
川;д川 「……足止めが必要です……」
苦しい表情で、貞子はハッキリと答えた。
川;д川 「もって数分です。その間にロマネスク様のところへ……!」
.
320
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:18:56 ID:Ip8umvoQ0
ξ;゚⊿゚)ξ「それじゃあ二人はどうなるの!?
助けに戻るのよね!?」
川;д川 「約束します! ……ですが……」
そこまで言って貞子は口ごもった。
しかし、言われなくても既に分かっている。
フォックスと呼ばれた男の強さは桁違いだ。
先日見たお父さんの魔力量も大概だったが、奴はその何倍もの覇気を放っていた。
そして、あれと対峙しているブーンとドクオは、きっと私以上に奴の力量を理解している筈だ。
ξ;゚⊿゚)ξ「――貞子さん、急いでウチに帰って!
お父さんなら何とかできるんでしょ!?」
川;д川 「はい! 結界を抜けます、舌を噛まないように――!」
貞子さんが上空に一際大きな魔術式を展開する。
私達はそこを通り、現実の世界へと帰っていった。
私は、当然のように舌を噛んだ。
.
321
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:20:23 ID:Ip8umvoQ0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
爪'ー`)「……ふむ、本命は逃げたか」
フォックスは空を見上げて淡々と言った。
(# ^ω^)「おおッ!!」
爪'ー`)「今回は偵察だけと思っていたが」
ブーンの長剣がフォックスの胴元を薙ごうと風を斬る。
フォックスはそれを片手間に弾き、がら空きになったブーンの腹を前蹴りした。
蹴りの威力は絶大。ブーンはその衝撃に嗚咽し、グラウンドの隅まで吹き飛んでいった。
爪'ー`)「君らが仲間割れをしていて気が変わったよ。
漁夫の利というのかな? それを狙ったのさ」
爪'ー`)「しかし良い話を聞いた! 勇者が生きていたとは朗報じゃないか!
本物を使えばより強大な勇者を作れる! フフ……」
途端フォックスは剣を下ろし、自分の顔に手を当てた。
醜悪な笑みを晒すまいと手で隠したのだろうが、その邪悪さは片手で収まりきるものではない。
爪'ー`)「――フハハハハ!! 本当に笑いが止まらない!
まずここで勇者の血を回収、その次は魔王の娘!」
爪'ー`)「この二つが揃えばまさに磐石! この世はおろか、魔界すら他愛ない!
内藤ホライゾン、すべてキミのおかげだぞ!」
.
322
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:20:29 ID:Zhqd36nQ0
いつも二転三転の急展開を用意してるな
支援
323
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:22:25 ID:Ip8umvoQ0
(; ω )「ぐっ……ううっ……」
グラウンドに響き渡る愉悦の笑い声。
ブーンは軋む体に鞭打ち、ゆっくりと立ち直る。
(;'A`)「おい、大丈夫か!?」
ブーンの元にドクオが駆け寄ってくる。
しかしブーンはそれを拒み、鋭い目付きでドクオを一瞥した。
(; ω゚)「ドクオはさっさと邪龍化するんだお!
僕の時間稼ぎを無駄にさせる気かお!?」
(;'A`)「……ッ!」
ドクオはぐっと踏み止まり、フォックスに視線を戻した。
今、ドクオの身体は邪龍化しつつあった。
既に両手足は鈍色の鱗に覆われ、血肉も人間のそれではなくなっている。
あとはとにかく魔力を高めて邪龍化を進行させるだけ。その為の時間稼ぎはブーンがやってくれている。
しかし、完全な邪龍化にはまだ時間が掛かる。
現状40%程度、五分もすれば変身可能な70%には達するが、それまでブーンが無事でいられる訳がない。
(;'A`)「相手は四天王クラスの化物だぞ!? 半端でも二人でやった方が」
(# ^ω^)「僕は生きて帰りたいんだお! ドクオは違うのかお!?」
(;'A`)「だからお前一人じゃ今すぐ死ぬって言ってんだろうが!
邪龍化したところでお前が死んでたら――――」
(# ^ω^)「だから、死なない為に戦ってるんだお!!」
ブーンは叫び、ポケットから無数の錠剤を握りとって自分の口に放り込んだ。
ガリガリと音を立てて噛み砕いていくそれは、激化能力を発動する為の薬。
本来一つも飲めば十分な物を滅茶苦茶に喰って飲み下す。
今この瞬間を生き残る為に、ブーンは己の未来を捨てる気でいた。
副作用など考えない。
今は目の前の敵を、いずれ来る破滅はいずれ考えればいい――――
【interlude:out】
324
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:23:45 ID:Ip8umvoQ0
【interlude:8】
https://www.youtube.com/watch?v=1ErwgLxBNL0
内藤ホライゾンは己の激化能力を発動し、その能力を行使した。
彼の能力は思い描いたものの『復元』だが、しかし今度は単なる『復元』ではない。
グランギニョルの時も実物に迫る性能ではあったが、あれが偽物である事実はどうしても変わらない。
本物が実在するものを復元した所で、それはどう足掻いても本物の劣化品にしかなり得ないのだから。
ならば――と、内藤ホライゾンは考える。
そもそも完成しなかったもの、製作段階で完成を諦められたもの。
想像はしたが実際には作成されなかったもの――この世に無数と存在する、未完の剣。
もし偽物が本物に勝るものを作れるとすれば、その方法は一つ。
未完成のものを自分の手で完成させ、自分の物とする事だけ。
他者に生み出され、しかし完成しなかった剣の『未完成部分』のみを復元能力で補う。
それが内藤ホライゾンがクスリの過剰摂取で獲得した『補完』という能力だった。
ブーンは、ポツンと脳裏に浮かんだ言葉を呟く。
起動の合言葉は、とても静かに告げられた。
リベレイター
(# ω゚)「――――≪原典乖離≫」
.
325
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:24:52 ID:Ip8umvoQ0
瞬間、ブーンは記憶の一部を喪失した。
思い出せない――という事すら自覚できないほど、綺麗サッパリに記憶が消滅する。
しかし、それを燃料にして補完能力が発動――
(# ω゚)「おおおおおおおお!!」
絶叫と共に振り上げた右手に、細長い光が収束した。
その光の正体は、彼の記憶から捏造された未完の剣。
爪'ー`)「……ははあ、なるほど。死ぬ気か。
過剰摂取は命取りだと、その薬を使うなら分かっているだろうに……」
ブーンの鬼気迫る様子を見ながら、なおも余裕を損なわないフォックス。
彼は悠然と剣を構え、ブーンが戦闘準備を終えるのを待つ。
爪'ー`)「……フフ、しかし随分と悠長に戦ってくれるのだなぁ?
まさか、時間を稼いでいるのが君達だけだと思っているのかね?」
(# ω゚)「――ッ」
フォックスの一言に、ブーンの眉がピクンと跳ねる。
爪'ー`)「結界の外に敵が居てもおかしくないと、想像しなかったかな?
我々は常に全力で敵を討伐する。魔王が敵なら尚更だ」
爪'ー`)「ツンも、ロマネスクも、君達も……皆殺しだ」
.
326
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:25:33 ID:Ip8umvoQ0
(# ω゚)「――今すぐ、殺すッッ!!」
急いで殺すならこれじゃ駄目だ、とブーンは記憶を犠牲にして更に能力を行使する。
同時、ブーンの頭上に数十の剣影が具現化し、その切先がフォックスに向けられる。
(# ω )「お、おおお……ッ!!」
記憶の中身を洗いざらい篩に掛け、復元補完できる剣を全て具現化していく。
検索、照合、補完、具現化――記憶の消却。その工程を刹那に縮めて実行。
補完対象は自分が知る物だけに止まらない。
この世界に残された可能性の残滓。ブーンはそれすら掬い取り、己の剣として実体化させた。
(# ω゚)「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ッッッ!!」
具現化した剣を一つ手に、ブーンは百の剣を従えてフォックスに迫った。
地を蹴った次の瞬間、ブーンはフォックスの眼前で剣を振り下ろしていた。
爪'ー`)「――っと」 スッ
フォックスが防御としてかざした剣と、ブーンが完成させた未完の剣が激突する。
一度巨大な金属音が響いた後、空気が炸裂。二人を中心にして地面が大きく陥没した。
ギリギリと音を立てて拮抗する両者の剣。
その拮抗を壊したのは、空から飛来する無数の剣影達だった。
爪'ー`)「良いものを作る。味方に欲しいくらいだ」
戯言を刻み潰すように、フォックスに百の剣影が降り注ぐ――!
.
327
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:28:12 ID:Ip8umvoQ0
巻き起こる砂煙――その中から先に飛び出してきたのはフォックス。
続いたのは彼を追跡してきた一振りの剣。
遠隔操作の剣がフォックスに斬りかかり、彼の剣と互いの刃を弾き合う。
爪'ー`)「持ち手なしでも、存外しっかりしているッ!」
(# ω゚)ズザザザザザッ!!
フォックスがその剣と打ち合っている隙に、ブーンは彼の背後に一気に滑り込んでいた。
爪'ー`)「む、」
背後のブーンに気を取られた瞬間、遠隔操作の剣がフォックスの剣を空に弾き飛ばす。
記憶を犠牲に作り上げた勝機――それを逃がす訳が無い。
(# ω゚)(補完、具現化……【流麗刀 舞姫】ッ!)
次に作り上げた剣は、かつてツンちゃんがモンハン二次創作を書いていた頃に考えた最強の剣。
これで斬るとリオレウスとかが死ぬ。すごい。
ブーンの補完能力で作れる最強の剣は、とどのつまり『ぼくがかんがえたさいきょうそーど』である。
そしてツンちゃんは上記の剣の他にも沢山の最強ソードを妄想していた。
そして大半が掲示板閉鎖により未完で終わっていた。
結果、ブーンの剣製に限界はない――――!
.
328
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:28:52 ID:Ip8umvoQ0
(# ω゚)(もらったお!)
フォックスの背後から高速で斬りかかるブーン。
その手にはツンちゃんが考えた最強ソード、【流麗刀 舞姫】。
太刀の切先が地面を削り、一気にフォックスの背中を斬り上げる。
爪;'ー`)「――やってくれたな、小僧ッ!」 ズオッ!
しかし相手は王座の九人。
背中を斬られてなお、フォックスは振り返ってブーンに反撃を仕掛けた。
武器を用いない近接戦闘。ここまで剣同士だったせいか、感覚が噛み合わない。
(; ゚ω゚)「ッ!?」
フォックスの行動に虚を突かれ、ブーンは彼の拳戟を急所に受けてしまった。
鳩尾――その深部の内臓に、フォックスの拳がメコ、と抉り込まれる。
(; ゚ω゚)「……お゙っ……!」
爪;'ー`)「――ッッッ!!」
フォックスが力強く一歩踏み込む。
瞬間、彼の拳で衝撃が爆発し、ブーンを再びグラウンドの端へとブッ飛ばした。
.
329
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:29:32 ID:Ip8umvoQ0
爪;'ー`)「……あー。ビックリした」
休息も束の間、ブーンを吹き飛ばした方向から数本の剣がフォックスに向かって飛んできた。
遠隔操作はされていないようだが、その威力は想像するまでもなく必殺であった。
爪;'ー`)「ああもうッ」
フォックスは一本目の剣をその場で跳んで回避。
続く二、三本目を徒手で弾き、四本目は肘と膝で挟み取って真っ二つに砕いて見せた。
爪;'ー`)「あーメンドくせっ」
しかし、なおも飛来する剣に痺れを切らしたフォックスは、
四本目を掴み取り、残りの攻撃を全てその剣で打ち払った。
放った剣は全滅。
だが、時間は十分に稼いだ。
.
330
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:30:14 ID:Ip8umvoQ0
(# ω゚)「検索、原典定義、規定、【大長刀・アハト】――『補完』」
(# ω゚)「――『過程再現』――【最大長刀・アハト=アハト】」
ブーンが次に作り上げるは数メートルを超える巨木のような大刀。
最早それは人間が扱う域を超えた規模。
それもツンちゃんが二次創作で考えたモンハンの大剣。
とにかく馬鹿でかい剣。これならアカムも真っ二つだ!という説明文があるような一振りだ。
しかしこの大剣が出てきた物語は未完。故に、最終形態はブーンによって補完される――
爪;'ー`)「……ああ?」
(# ω゚)「――――『最終定義』、【無限大長刀・アハト=インフィニティ】」
瞬間、ブーンの真上に空を突き刺す果てしない刀身がそびえ立った。
月ごと切り裂いて振り下ろされそうな化物染みた大剣を、ブーンはフォックスに向け――
(# ω゚)「死ねおォォォォォォォォ!!」 ズァァァァァッッ!!
――なんの策略もなく、振り下ろした。
爪;'ー`)(避けるとか、じゃない。学校どころか、街ごと潰される――!)
フォックスに到来するのは人を斬るという目的を無視した圧倒的な破壊。
結界内でなければ数万という人間を同時に殺しかねない一刀が、フォックスの視界を暗転させる。
.
331
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:30:54 ID:Ip8umvoQ0
――次の瞬間、地球上に一筋の斬撃が奔り抜けた。
.
332
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:31:34 ID:Ip8umvoQ0
……刀の一振りが引き起こした大地震が、次第に収まっていく。
この攻撃でブーン自身も大きく吹き飛ばされ、学校や町という風景は剥き出しの大地に成り果てていた。
もはや質量の暴力――木端微塵に破壊し尽くされた光景に、文明の跡形は一切ない。
(; ω゚)「……化物はどっちだお」
しかし、ここまでやってなお――
爪;'ー`)「……あーもうしんどい。帰りたい……」
怨敵は健在、肢体にも傷一つなかった。
(; ω )「――ぐッ!」パキッ
途端、ブーンの視界に致命的な亀裂が走った。
それが切欠になったのか、補完復元した剣も光の粒になって一斉に消滅してしまった。
(; ω )(まだ、駄目だお。倒れる訳には……!)
だが、思いとは真逆にブーンの体からはふっと力が抜けていった。
思わず膝が折れ、体がそのまま地面に倒れていく。
(; ω ) ドサッ・・・
.
333
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:32:16 ID:Ip8umvoQ0
爪;'ー`)「……終わった? じゃあもういい?」
ブーンが倒れたのを見るや、彼はすぐさま錠剤を一つ取り出して飲み込んだ。
爪;;;;;;;:)「身代わりやんのも大変じゃんか。ったくよお……」 グチ、ネチョ・・・
フォックス――の形をしていたその顔、その肉体が、グチャグチャと音を立てて変形していく。
その様子を視界の片隅で見ていたブーンは、ここでようやく自分がミスを犯したのだと理解した。
(; ω゚)「お前、誰だお……ッ!?」
川 ゚ 々゚)「――はいっ! つーわけで、くるうちゃんでした!」
川 ゚ 々゚)♭「残念ッ! 本物は、あっち!」
正体を晒した女は空を指して微笑する。
(; ω゚)「……お?」
ぐっと顔を上げると、ひび割れた視界に不自然な黒い点が映った。
黒点は徐々に大きく――いや、ここに向かって落ちて来ている。
(; ω゚)「……ド、クオ……」
能力の対価にならず、おぼろげに残っていた名前を呟く。
今や顔も声も思い出せないが、あの黒点がドクオという名前だった事だけは確信できた。
.
334
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:33:39 ID:Ip8umvoQ0
爪'ー`)「代役ご苦労、こちらも済んだ」 トッ
川 ゚ 々゚)「あ、おかえんなさい」
くるうの傍らに本物のフォックスが先んじて着地する。
彼は刀剣に付着した紫色の血液を振り払うと、剣を収めてブーンを見た。
爪'ー`)「いや、すまないね。
邪龍の方が厄介だと思って、先にやらせてもらったよ」
(; ω゚)
烈風を巻き起こす漆黒の両翼、するりと伸びた尻尾。
そのどちらもが致命傷を受け、原形を留めないまでに破壊されている。
フォックスの剣に鱗ごと斬り裂かれたであろう胴体には、内臓に達するほどの深い斬撃が刻まれていた。
邪龍の巨躯が地に落ち、灰色の世界に横たわる。
ブーンは、その姿を見て阿鼻を零すことしか出来なかった。
(; ω )「お、おお……!!」
腹の中で不快感がのた打ち回る。
名前しか覚えていない筈なのに、あらゆる感情が理性を超えてぐちゃぐちゃに混ざり合う。
混ざり、次々とその色を変えていく感情は次第に純粋な一色に落ち着いていく。
それは色んな絵の具を混ぜて、最後に行き着く色彩と同じ。
.
335
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:34:19 ID:Ip8umvoQ0
(# ゚ω゚)「――――」
殺意を表す無明の黒。
しかし、一瞬真っ黒に染まった感情はすぐさま熱を失った。
内藤ホライゾンが次に対価に差し出した記憶は、今必要な記憶以外の全てだった。
( ω )
目の前の二人を殺す。
彼はその指向性だけを肉体に残し、『内藤ホライゾン』という個性を放棄した。
爪'ー`)「……くるう、次からは即座に止めを刺せ」
川 ゚ 々゚)「あーい」
一度は収めた剣を抜き、ブーンの動きに集中する。
彼はもう一度立ち上がる――フォックスの予感は、間もなく的中した。
.
336
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:35:55 ID:Ip8umvoQ0
( ω )
――立ち上がり、思考を展開する。
相手は二人。通常火力では太刀打ちできない圧倒的な格上達
しかし残された記憶は僅か。それも失う訳にはいかない最後の記憶だ。
記憶を材料にして剣を生み出すこの能力に、使える記憶はもう無い。
ならばリスク無しで使える『復元』の能力を使うしかない。
そして『復元』の対象は自分自身―― 一度は消却した記憶を、復元の能力で再構築する。
当然それは元の記憶に比べれば劣化品になる。
『元々あった記憶』ではなくなり、『後付された他人の記憶』に成り下がってしまう。
だが今は、それこそが必殺の武器を剣製する為の鍵であった。
『補完』の能力は元の情報が曖昧で不安定であればあるほど独自性を付加できる。
元が70%の完成度なら30%のオリジナルを――
元の数字が低いほど、この能力は原典を捻じ曲げて強力な剣を捏造できる。
具現化、記憶の消却、記憶の劣化復元、具現化、記憶の消却、劣化復元――
これを繰り返す度に剣は独自性を増し、ブーンは己の記憶を完全に失っていく。
.
337
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:36:00 ID:Z4H0F3no0
どう見てもFateです本当に
338
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:36:42 ID:Ip8umvoQ0
破滅と引き換えの片道切符――行き着く先は、無限の剣製。
――――今ここに、『原典』は完成した。
.
339
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:37:29 ID:Ip8umvoQ0
灰色の結界世界、一面荒野に変えられた大地。
そこに立つ男達は、戦いの前に言葉を交わす。
( ^ω^)「……もう、何も覚えていないんだ、」
( ^ω^)「自分の名前も、ここに居る理由も。
過程で一度は記憶を取り戻しても、それが自分の記憶だという実感はない、」
爪'ー`)「……ならばどうだろう? 我々の仲間になるというのは」
フォックスは軽く手を差し出し、彼に微笑みかけた。
彼はその手をしばし見つめた後、鼻で笑って問い掛けに答えた。
( ^ω^)「残された記憶は三つだ、。
お前達を殺せ。後ろの邪龍を何としてでも助けろ、剣を作れ」
( ^ω^)「俺はこの記憶を絶対に果たす気でいる。
ならば、お前の仲間になるというのは無理な話だ、」
爪'ー`)「……いや残念。本当に、残念だ……。
その意気で分かる。君は本物の勇者になりえた。実に、惜しい……」
手を下ろし、ポケットから薬のケースを取り出したフォックス。
彼は激化を促す薬を一粒、二粒と飲み下し、ふたたび剣を握りなおした。
爪'ー`)「だが嬉しい事もある。戦いの勝敗はどうであれ、君はここで終わりだ。
その能力、もう二度と使うことはできまい?」
爪'ー`)「勇者軍を壊滅しかねないその力、ここで使い果たして往け」
爪'ー`)「相手は『王座の九人』、フォックスが承った。
存分に、命を削りあうとしよう……」
.
340
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:38:18 ID:Ip8umvoQ0
――そのとき、空から一振りの剣が落ちてきた。
剣は大地に突き刺さり、静寂する。
爪'ー`)「くるう、君は戻ってモララー達の援護だ」
川 ゚ 々゚)「え、いいの? 死ぬよ?」
爪'ー`)「君が居ても同じだよ。それに、これの足止めは私以外には出来ない。
あとの事はモララーが仕切るだろう。問題ないさ」
爪'ー`)「それより、先代勇者の居場所を絶対に突き止めるんだ。
ハインリッヒは上等な素材だったが、魔界を攻め落とすにはまだ足りない」
フォックスは、最後にくるうを一瞥した。
川 ゚ 々゚)「……なんか言い残す?」
爪'ー`)「……新参が気を遣う必要は無い。早く行け」
しばしフォックスの背中を見つめると、やがてくるうは意を決し、結界空間の果てへと駆け出した。
これで邪魔はない。あとは始まりの合図があれば、それで火蓋は落とされる――
.
341
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:38:59 ID:Ip8umvoQ0
落ちてきた剣が、ざく、と大地に突き刺さる。
そして、それはもう止まることをしなかった。
空から降り注ぐ無数の剣影。
彼を取り囲むように飛来するそれらは、その全てが『補完』によって捏造された架空の剣。
未完のオリジナルを勝手に補完し、己の想像力で支配した人智の強欲――その化身。
( ^ω^)「……」
彼は身近にあった剣を掴んで引き抜き、フォックスに切先を向けた。
( ^ω^)「――工程、加速」
爪#'ー`)「――――ッッ!!」 ダッ!
二人の剣士は、同時に大地を蹴った。
【interlude:out】
342
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:40:31 ID:Ip8umvoQ0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
343
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:41:11 ID:Ip8umvoQ0
【epilogue:内藤ホライゾン】
「……復元、補完……」
荒野に一人立つ男。
彼は脳に刻まれた工程をひたすら繰り返し、今この瞬間の命を保っていた。
戦いは終わった。敵は殺した。しかし、その代償は自分自身の全てだった。
.
344
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:41:51 ID:Ip8umvoQ0
肉体を復元し、補完し、今となっては全身どこが本物(オリジナル)なのかも分からない。
記憶すら全て失い、個人としての定義を完全に失った存在。
それが今の彼――内藤ホライゾンと呼ばれていた男の末路だった。
.
345
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:43:20 ID:Ip8umvoQ0
「……復元……ッ」
工程の実行と同時、ぼと、と右腕が崩れ落ちる。
剣ならともかく、肉体は構造が正しくなければ肉塊に過ぎない。
最初こそ元通りに作れていた肉体も、記憶の劣化復元の果てに精密さを失っている。
体を復元しようにも、今の彼は癒着もままならない肉塊を作ることしかできなかった。
生ける屍とはこういう事を言うのだろう、と彼は内心で自嘲する。
.
346
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:44:36 ID:Ip8umvoQ0
「……やめだ、。もう、もたない」
長剣を地面に突き刺し、その傍らにどっと腰を下ろす。
そして脱力感に任せて倒れようとしたその時、彼の背中を硬いなにかが受け止めた。
彼は僅かに振り返って背後を見た。
そこにあったのは黒い壁――邪龍化したまま意識を失ったドクオだった。
「……ああ」
彼が思い出せることは三つしかない。
その内の一つに『何としてもドクオを助ける』という記憶があったなと、彼は想起した。
ドラゴンの生命力は魔界でも随一だ。
内臓まで斬られているだろうに、ドクオはまだしっかりと息をしていた。
幸い、肉体の破損は30%程度に収まっている。
これなら復元の能力で何とかできる――彼はドクオに手をかざし、彼の体に能力を行使した。
それで最後だ。彼は、ドクオという存在を忘れきった。
.
347
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:45:16 ID:Ip8umvoQ0
「……はぁ、終わった、」
思考の展開が、徐々に終わり始める。
速度を失い、工程を放棄する復元・補完の激化能力。
彼の体はそれにつれて壊れていく。
しかし痛みはなく、ただ、役目を終えたという充実感があった。
.
348
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:46:02 ID:Ip8umvoQ0
「――――と、まだ、最後の仕事があった、」
彼はドクオに背を預けたまま、そっと腕を持ち上げ、空中にとある剣を思い浮かべた。
その剣は『妖刀・首断ち』。
これを遺しておかねば、あの子はこの先の戦いで必ず命を落としてしまう。
「……えっと、あの子って誰だったか、……」
「……まあ、思い出せる訳がない、……」
.
349
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:47:11 ID:Ip8umvoQ0
……最期の力を振り絞り、ジリジリと妖刀を作り上げていく。
彼はこの剣だけは戦いの最中でも復元しなかった。
劣化を最小限に抑えなければ、オリジナルの洗脳に対抗できないかも知れないからだ。
そしてあの子がこの剣を持てば、きっと自分の魔力をコントロールできるようになる。
完成した妖刀が、カランと音を立てて地面に落ちる。
それを見届けた彼は、ようやく胸をなでおろして一息ついた。
.
350
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:48:39 ID:EiR2.jx.0
ブーン……
351
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:48:54 ID:Ip8umvoQ0
「……ああ、そうだ」
最後に空を見上げ、微笑む。
思い描いたのは後ろ姿――金髪を翻す、少女の背中。
「確か、赤いマフラーが似合っていたな、あの子は――――」
【epilogue:end】
352
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:49:07 ID:Zhqd36nQ0
無茶苦茶あついじゃないかこの野郎
353
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 21:50:43 ID:Ip8umvoQ0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思うバターサンドであった また次回
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 fateであった 二次創作であった
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
354
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 22:09:24 ID:OU1/Ee9A0
紛うことなきfateだった
乙
355
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 22:12:03 ID:YRuf3wrg0
乙
fateわからないです
356
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 22:12:24 ID:otxL.ejQ0
ふぇいと分からないから普通にかっこいいと思いましたまる
357
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 22:35:32 ID:Zhqd36nQ0
fate見てみようと思いましたまる
358
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 23:19:59 ID:KWY6xELs0
MHXでもやってんのかと心配したわ
359
:
名も無きAAのようです
:2015/12/03(木) 23:43:07 ID:41zDWU/M0
乙
fateかな?とおもったらfateだった
サブレかな?とおもったらひよこだった
しかし面白い
360
:
名も無きAAのようです
:2015/12/04(金) 00:57:17 ID:p90Irzew0
フェイトは文学でしたっけはてな
361
:
名も無きAAのようです
:2015/12/04(金) 02:29:11 ID:qUbTkf4U0
>>356
おまおれ
362
:
名も無きAAのようです
:2015/12/04(金) 02:48:16 ID:VKzDDJgoO
ブーンはリタイアか…
乙
363
:
名も無きAAのようです
:2015/12/04(金) 08:25:23 ID:AgiHtwRI0
fate分からんがくっっっそかっけえ
364
:
名も無きAAのようです
:2015/12/04(金) 09:50:26 ID:LMAfkviI0
fateわからない方が楽しめると思う
365
:
名も無きAAのようです
:2015/12/04(金) 19:50:29 ID:cF/cwxvU0
どうみてもfateだがもともとfateがおもろいから関係なし
366
:
名も無きAAのようです
:2015/12/05(土) 12:54:21 ID:X2o5JwaA0
おい作者とりあえず約束の年末だぞ
367
:
名も無きAAのようです
:2015/12/05(土) 15:32:44 ID:dSE5Wsdk0
年始がまだある
落ち着くんだ
368
:
◆9mGdTa8gSo
:2015/12/26(土) 00:29:20 ID:Hzh2RXDs0
【prologue:二週目、冬の夜】
――冷えきった夜を歩く小さな足音。
ξ;゚⊿゚)ξ「あ゙ーさぶ。はよ帰って寝よ……」 テクテクテクテクテクテクテクテクテクテク
赤マフラーを巻いた少女・魔王城ツンは暇に堪えかねて散歩に出掛けていた。
冬の夜中は人気もなく、灯りも街路灯が点々とあるばかりだ。
そんな中を歩いて数分。
コンビニで買った肉まんも食べ終え、ツンは身を震わせながら自宅に帰っていく。
徒歩の擬音がしつこいくらい多いのも全ては冬の寒さが原因だった。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
しかしふと、彼女は足を止めて遠くに目を凝らした。
ζ(゚ー゚*ζ
いくつか先の街路灯の下には返り血を浴びた女性。
そして、彼女の足元には満身創痍の男が一人。
( ・□・)くそお やられるもんか!
その男は、世界観が違った。
.
369
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:30:06 ID:Hzh2RXDs0
ξ゚⊿゚)ξ「……なんだか分かんないけど」
ξ゚⊿゚)ξ「見過ごしてたら魔王の恥よね」
ツンはマフラーを緩め、穏やかな呼吸を繰り返した。
白い吐息が風になびいて夜にとけていく。
そして、彼女の周囲に不自然な風が流れ始めた。
Σζ(゚ー゚;*ζ「――ッ!」ビクッ!!
魔王城ツンの変容に気付いた女は、咄嗟に振り返ってツンを凝視した。
そうして目に映ったのは、魔力が彩る真紅の気配(オーラ)。
ζ(゚ー゚;*ζ「……やらかした」
魔王の血筋にある少女――魔王城ツンの圧倒的な存在感が、一瞬にして女を釘付けにする。
ξ゚⊿゚)ξ「……仕事は分かるわね」
(::::::::::::)「…………無論ダ」
ツンの言葉を受け止めた『それ』は、闇の中から静かに滲み出てきてそう言った。
『それ』は実体を持たず、地面から少し浮いてツンの傍らに佇む。
.
370
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:30:48 ID:Hzh2RXDs0
ζ(゚ー゚;*ζ「まったく、変なのに気を取られたせいでッ……!」
( ・□・)なんだあれ!?わからない!
ξ-⊿-)ξ「今度のはずいぶん目立つ刺客ね。
いよいよ勇者も手駒が尽きてきたかしら」
小さい頃から魔王としての強さを自覚していた彼女は、
自滅しかねない程の膨大な魔力に形を与えて出力する術を身に着けていた。
習得には多大な時間を要したが、今度のツンにはその為の時間が十分にあった。
『一週目から引き継いだ強さ』は、確かに『今のツン』に備わっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「さっさと倒して帰るわよ、“ゼノグラシア”」
(::::::::⊿)「……」
光のもとに現れてなお全身を影に覆われた『それ』の名はゼノグラシア。
彼の鋭い一瞥が、闇に光る。
( ・□・)すげー!
.
371
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:31:30 ID:Hzh2RXDs0
こうして――――
前回と今回をつなぐ説明は後の展開に丸投げされ――
ツンちゃん夜を往くは、二週目の世界に突入するのであった――
.
372
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:32:10 ID:Hzh2RXDs0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思うサンタクロースであった また来年
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 クリスマスのせいで説明をすべて省きましたが、
,i :::::: `ー-、 このスレはラスボスを倒すまで強くてニューゲームを繰り返します
| :::: i 省いた部分はその辺りの説明をしてましたという説明でした
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
373
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:33:27 ID:Hzh2RXDs0
☆ステータス更新☆
≪ ξ゚⊿゚)ξ / 能力無し→“ゼノグラシア” ≫
【本体名】 魔王城ツン
【タイプ】 アホ→やる時はやるアホ(アホ)
【基本能力】 ※二週目開始時の能力
[破壊力:A] [スピード:A] [射程距離:B]
[持続力:A] [精密動作性:A] [成長性:A]
【概要】
一週目の最後の戦い(全カット)において魔王の力を解放したツンちゃん。
その強さを引き継いだ結果、彼女はスタンド能力らしきスタンド能力を得た。
戦闘能力は魔王の名に相応しいほど凄い。
“ゼノグラシア”に実体はなく、常に影のようなアレになっている。
ツンちゃんの赤マフラーとオーラでやんわり繋がっている。
ツンちゃんが本気になると実体を得る。その時はツンちゃんっぽい見た目になる。
374
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:34:22 ID:Hzh2RXDs0
☆ボスキャラ一覧☆
≪爪'ー`) / ??? ≫
【本体名】 フォックス
【傾向と対策】
『Aルート・王座の九人編』のラスボス。ブーンが自滅覚悟でようやく互角に戦える相手。
序盤に出てくるため、本気ブーン以外にはまったく対処できない。
今のままだと毎回確実にブーンが死ぬので何とかしよう。ロマネスクをぶつけると死ぬ。
≪??? / ??? ≫
【本体名】 ???
【傾向と対策】
未登場。しかしフォックスを無事倒したところで登場はしない。
ツンちゃん達がフォックスを連れて魔界に帰ると 『Bルート・未完の勇者編』 に突入し、このボスが登場する。
その際には素直四天王が輝く。ボス初登場までにブーンを強くしておくと、とてもよい。
≪??? / ??? ≫
【本体名】 ???
【傾向と対策】
未登場その2。『ツンちゃん夜を往く』における最大のラスボスであり、倒すと完結。
『未完の勇者編』の山場でツンちゃんが間違いを犯すと、『Cルート・夜明けの鎮魂歌(レクイエム)編』に突入する。
突入までに王座の九人を一人でも殺しているとバッドエンドが確定する。
375
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:35:30 ID:Hzh2RXDs0
,、,,..._
ノ ・ ヽ おやすみプンプンです
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 今後の展開はこういう事になりました
,i :::::: `ー-、 マルチエンディングなので、いつか確実に逃亡します
| :::: i Cルート完結まで書ければ上等ですが、逃亡の際はお知らせします
! :::::.. ノ
`ー――――― '" また次回 おそらく2月になります
376
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:36:18 ID:JlJ7AX9.0
まさかの周回ゲーだった
377
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:36:59 ID:JlJ7AX9.0
乙
378
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 00:39:55 ID:leEVBYhk0
なん・・・だと・・・
379
:
名も無きAAのようです
:2015/12/26(土) 10:43:28 ID:RyTRjhwk0
この設定を年内に畳んで完結させるつもりだったというのか…!
380
:
名も無きAAのようです
:2015/12/27(日) 02:00:15 ID:IEOkrYNM0
ただのコメディと思ってたけど予想以上にすごい展開になってきた
381
:
名も無きAAのようです
:2015/12/28(月) 01:24:14 ID:p6vMnKhY0
難しくなってきたからもうついていけん
382
:
名も無きAAのようです
:2015/12/29(火) 11:36:30 ID:GKyPyh6g0
いや、これは絶対に読み切りたい
頑張ってくださいお願いします
383
:
名も無きAAのようです
:2015/12/29(火) 14:01:19 ID:I/g/lKYE0
これでついていけないってのは流石に……
384
:
名も無きAAのようです
:2016/01/02(土) 08:19:05 ID:JbvaJml60
まさかの展開に期待が膨れ上がってる
逃亡とか悲しくなるだろ…支援支援
385
:
名も無きAAのようです
:2016/01/18(月) 22:50:28 ID:YZ/lsgRM0
熱過ぎるだろ、続きが見たい。
386
:
名も無きAAのようです
:2016/03/01(火) 15:01:17 ID:KhAdyT1E0
,、,,..._
ノ ・ ヽ 信玄餅です
/ ::::: i 2月30日がない事に昨日気付きました
/ ::::: ゙、 週末には投下するNE(^ω^)
387
:
名も無きAAのようです
:2016/03/01(火) 15:09:08 ID:hBjciW3.0
やったぜ
388
:
名も無きAAのようです
:2016/03/01(火) 15:09:40 ID:.GMprELI0
成し遂げたぜ
389
:
◆9mGdTa8gSo
:2016/03/05(土) 07:03:41 ID:/Ny0Anw.0
【interlude:1】
――――血潮は正義の名の下に。
みたいな、そんな感じのカッコイイやつ――――
ξ´⊿`)ξ ングォーー
ああ、なんか、すごいカッコイイ夢を見てる――
なのにめっちゃ眠い――うわすごい眠い――――――
【interlude:out】
390
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:06:42 ID:/Ny0Anw.0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
⊂( ^ω^)「ツーーーーーーン!」ダダダダダ!!
三 ( と)
三/ >
( ^ω^)「朝だおーーーー起きてーーーカンカンカン!」
ξ-⊿-)ξ「ぐぅ、ぐぅ……」
( ^ω^)「起きてーーーーーー」
ξ-⊿-)ξ「すや……」
( ^ω^)「起きてってばーーーーーーうわーーーーー」
ξ-⊿-)ξ
ξ#-⊿-)ξ ブチッ
.
391
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:07:31 ID:/Ny0Anw.0
大小なりに事件はあるが、とにかく世界は平和だった。
知らない所でなにかは起こっているけれど、私の周りはすごく平和。
いちおう魔王城家の娘という立場がある以上、少しは慌しいけれど……。
('A`)「うぃーす。朝から元気だな」
(#)^ω^)「おっおっ。今日はほっぺた叩かれたお」
ξ#゚⊿゚)ξ「この起こし方続けるなら、いつか絶対チンコ蹴る」
(^ω^)「わーおうふふ」
私は今日も学校に行く。
市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために――
.
392
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:08:11 ID:/Ny0Anw.0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
王座の九人編
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
393
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:09:39 ID:/Ny0Anw.0
他愛ない会話が大体二十分くらい続くと、私達はVIP高校に到着していた。
部活動やらなんやらがどうこうしているのを横目に、私達はさっさと校舎内に足を踏み入れる。
下駄箱の前で靴を履き替えていると、ドクオが改まって話し始めた。
('A`)「そういやツン、お前また襲撃されたんだってな」
ξ゚⊿゚)ξ「昨日のこと? べつに大丈夫だったわよ」
('A`)「まあそうだろうけどさ、とりあえず貞子さんには見てもらっとけよな。
盗聴器とかはお前じゃ見落とすだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「それも昨日の内にやった。心配しすぎよ」
( ^ω^)「ツンはアホだから仕方ないお!」
('A`)「お前がつえーのは分かるが、油断してたらバッサリやられんだからな……」
ドクオは鬱々とした表情と口振りで、嫌味ったらしく呟く。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、アンタまだ護衛外されたの気にしてるの?」
( 'A`)「……そんなんじゃねえよ」
私とドクオの出会いは小学生の頃だった。
最初は主人とその護衛という関係だったが、私は成長と共にどんどん強くなってしまい、
中学に入る頃にはドクオは特に必要のない存在になってしまったのだ。
本当ならその時点でドクオはお役御免。
魔界に帰らされる筈だったが、そこは私の発言力でなんとかしている――という話は、彼には秘密だ。
しかし、そのせいでドクオの性格がちょっと暗くなってしまったのは少し罪悪感がある。
ξ゚⊿゚)ξ(まあ元々暗いから、ぜんぜん罪悪感ないけどね!)
( 'A`)「おら、二人ともどうせ宿題やってねえんだろ。
写したいんなら急ごうぜ。時間ねえぞ」
(; ^ω^)「おッ!? 宿題!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あったの!?」
(;'A`)「そっからかよ……」
.
394
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:13:34 ID:/Ny0Anw.0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日の分の宿題を書き写し終える頃には、既にホームルームが始まる寸前であった。
( ´∀`)「おはようモナ〜〜〜〜」ガラガラ
ふにゃけた挨拶と同時に教室の扉が開く。
モナー先生は早速教壇に立つと、教室内をぐるっと見回してから言った。
( ´∀`)「欠席ゼロ。いいことだモナ」
( ´∀`)「今日はなんと転校生が来てるモナ! しかも4人!」
( ´∀`)「四人とも、入ってきてほしいモナ!」
ξ*゚⊿゚)ξ「エミリオ・カスティーヨ来るかしら!?」
('A`)「来ないと思う」
( ^ω^)「来ないお」
ξ゚⊿゚)ξ
私は机に突っ伏して寝た。このまま下校まで起きない所存だった。
.
395
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:14:14 ID:/Ny0Anw.0
川 ゚ -゚)「第一刺客ノ高校から来ました。素直クールです」
ノパ⊿゚)「第二刺客ノ高校から来ました。素直ヒートです」
lw´‐ _‐ノv「第三刺客ノ高校から来ました。素直シュールです」
o川*゚ー゚)o「第四刺客ノ高校から来ました。素直キュートです」
( ^ω^)「ドクオ」
('A`)「うーん明らかに刺客だなあ」
( ^ω^)「どうするお」
('A`)「放置で。ミセリさんに言っとけば始末してくれんだろ」
( ^ω^)b 「オッケーだお」
川 ゚ -゚)(ククク……予想通り、あいつらは我々の正体に気付いていない……)
川 ゚ -゚)(まさかこんな堂々と刺客が来る訳がない。その裏を突いたのさ……)
('A`)(さっさとミセリさんにメールしとくか)
川 ゚ -゚)(フハハ、今夜は焼肉だぞ妹達よ)
この作戦が裏どころか表すら突けてないアホ作戦だと彼女達が気付くのは、もう少し後のことだった。
.
396
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:16:16 ID:/Ny0Anw.0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
――放課後。
ξ´⊿`)ξ スピーピュルルルピー
('A`)「おいツン、起きろ。おい」
( ^ω^)「カァーッ! これだからドクオは! まったく!
僕に任せるお! ツン起こしはこうやるんだお!」
⊂( ^ω^)「起きてーーーーツーーーーーン!」ダダダダダ!!
三 ( と)
三/ >
( ^ω^)「ツンツツンツーーーーンうわーーーーーー」
( ^ω^)「ツンちゃ♪ ツンちゃ♪ ツンちゃ♪」
( ^ω^)「ねぇ起きてよーーーーーーーー」
( ^ω^)「はやく起きッ」 ゴチュッ
ξ#-⊿-)ξ「……一日に二度もやるな」
( ゚ω゚)
私の拳は、この怒りに導かれてブーンの股間を強打していた。
柔らかい感触が手に触れ、そしてぐにゃあと変形する。
男にはこれが痛い。私は手を引き、大きく背伸びをして見せた。
397
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:17:04 ID:/Ny0Anw.0
ξ´⊿`)ξ「〜〜〜〜っと。あーよく寝た。いま何時?」
('A`)「六時だ。もう帰ろうぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ私、昨日のことでハインさんに呼ばれてるの。
だからブーンの家に寄っていくけど、ドクオも来る?」
( 'A`)「……いや、俺は聞く必要がないしな。遠慮しとく」
ξ゚⊿゚)ξ「別にいいのに。ねえブーン?」
( ^ω^)「金タマめっちゃ痛いNE!」
('A`)「……それじゃあ先に帰るわ。また明日な」
ドクオはさっさと荷物を片付け、私達を置いて教室を出て行ってしまった。
彼はやはり、護衛を外された時から私と距離を置いているような気がする。
必要以上の馴れ合いを拒んでいるような……少なくとも、友人という立場は居心地が悪そうだった。
彼はあくまで護衛という仕事上の付き合いを求めているのだ。
なのにこうして友人らしく振舞っているのは、ドクオの優しさかただの義務感か……。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「金タマめっちゃ痛いお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、私達も行きましょうか」
( ^ω^)「よっしゃ帰るお!」
私達は学校を出て、ブーンの家に向かった。
.
398
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:18:54 ID:/Ny0Anw.0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ブーンの家はそこそこ大きい屋敷だ。
私の家を基準にすると三倍くらいある。
庭が広い。小さい池もある。かつて池に乾燥シイタケを入れて怒られた事がある。
( ^ω^)「じっちゃーーん!! ただいまだお!!」
从 ゚∀从「おうおかえり。ツンちゃんも一緒かい」
ξ゚⊿゚)ξ「ウィス。お邪魔します」
ブーンの義理の祖父・ハインさんは異様に若々しく、そしてイケメンだった。
今でも60人くらいは愛人が居そうな雰囲気がある。
彼の名前はハインリッヒ=リヴァイヴネイカー。
ハインリッヒ以降の部分は嘘だがすごく似合う。本当はハインリッヒ高岡という名前である。
性別は男。ブーンとは比べものにならないほど、男らしいフェロモンめいたものが漂っている。
从 ゚∀从「とりあえずあがんな。茶も用意したからよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ウィス」
私達はハインさんの後に続き、彼の私室に移動した。
.
399
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:19:34 ID:/Ny0Anw.0
从 ゚∀从「よっ、こらせっと」
ハインさんは座布団に腰を下ろし、私とブーンにお茶を出してくれた。
私がそれに口をつけようとすると、ハインさんは早速昨日の一件について話し始めた。
从 ゚∀从「始末はつけた。案の定、勇者軍の残党だったぜ。
まだ尋問が終わってねえから別室に居るが、明日には魔界送りだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……尋問って、別に聞くことなくない?」
从;゚∀从「いやいや。ツンちゃんよ、あるだろうが」
ξ゚⊿゚)ξ「分かんない」
从;゚∀从「あの女、デレって名前なんだが……。
あいつが狙ってた男。そいつの情報だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そんなん居たっけ」
从 ゚∀从「助けた相手くらい覚えといてやれ。
しゃーねえ、ちっと呼んで来るから待ってろ」
( ^ω^)「お菓子の追加も頼むお!」サクサクサクサクサクサク
从;゚∀从「おめえは食いすぎだ! お菓子はそれで最後!」
( ^ω^)「市政の圧迫を感じるお」
.
400
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:20:27 ID:/Ny0Anw.0
从 ゚∀从「というわけで連れてきた」
( ・□・)おっす
(; ゚ω゚)「おととととお父さん!?」
( ・□・)久し振りだな 息子よ!
从 ゚∀从「勇者軍に捕まってたが逃げてきたらしい。
やったなブーン。これで隠し事はなくなるぜ」
( ;ω;)「やったおーん! 嬉しいおーん!」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほどスピーディな展開ね」
〜〜
('(゚∀゚∩「解説のなおるよだよ!」
('(゚∀゚∩「冒頭でデレちゃんが殺そうとしてたのは実はブーンちゃんのパパだったんだね!」
('(゚∀゚∩「でもツンちゃんが強くなっていたのでブーンパパは生存!
これで一週目にあったようなブーン達の行動はなくなったよ! やったね!」
('(゚∀゚∩「今後も大きな変化があったらちょくちょく解説していくんだよ!」
〜〜
.
401
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:21:09 ID:/Ny0Anw.0
( ;ω;)「おおおお〜〜ん!」
( ・□・)おお息子よ、大きくなって 下ネタじゃないけど
ξ゚⊿゚)ξ「……で、このアホっぽい人は何なの?」
从 ゚∀从「先代勇者だ。ブーンの親父さんでもある」
ξ;゚⊿゚)ξ「……勇者? いや、でも勇者は……」
この世界でかつて起きた正義と悪の大戦争(
>>13-14
)――その一時代前。
本物の勇者と、最後の魔王が命をかけて戦った最終決戦。
その戦いで魔王に致命傷を負わせ、あまつさえ魔王に「真の勇者」とまで言わしめた男。
( ・□・)
それがこの男、らしい。
既に死んだものとされていたが、どっこい目の前で生きている。
ξ;゚⊿゚)ξ「どどどどーいうこっちゃ!?」
从 ゚∀从「……ま、事情ありだ。ブーン、たっぷり甘えとけよ」
.
402
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:22:01 ID:/Ny0Anw.0
( ;ω;)「おぉ〜ん! 会いたかったお〜」ギュウウ
( ・□・)パパもだよ でもごめんな もう時間切れみたいだ
自分に抱きつくブーンを優しくなだめるブーンパパ。
だがそれも束の間、ブーンパパの体は徐々に透け始めていった。
从 ゚∀从「……本人は未だ敵の本陣。その体は複製されたものだそうだ。
内藤さんが首尾良く脱出させたはいいが、それも限界……」
( ;ω;)「おっおっ……嫌だお〜……」
( ・□・)ブーン、学校は楽しいかい
( ;ω;)「楽しいお……今日は金玉殴られたお……」
( ・□・)金玉はともかく、それはよかった 友達を大事にするんだぞ
( ・□・)ハインリッヒに聞いたぞ 随分無茶をしているようだが、それも止めなさい
( ・□・)勇者軍、そしてその後ろに控える組織は手強い
信じられる仲間と一緒でなければ、お前は確実に人として壊れてしまう
( ;ω;)「おーん……おーん……」
父親の胸ですすり泣くブーン。泣きながらも、父の言葉の一つ一つに深く頷く。
人として壊れる・・・ブーンの戦いは、それすら覚悟したものだったのだろう。
ξ;゚⊿゚)ξ
私もさすがに沈黙し、彼らのやり取りをじっと見つめていた。
するとふと、ブーンパパの目が私の方を向いた。
.
403
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:22:41 ID:/Ny0Anw.0
( ・□・)そうか、君が魔王スカルチノフの孫娘か
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ・□・)・・・まだまだ伸び白があるようだ 頑張るんだよ
( ・□・)ブーンの事もよろしく頼む
意地っ張りで無茶をする子だから、君が止めてやってくれ
( ・□・)
( ・□・)ところで二人はもうセック
そこでブーンパパは完全に消え去ってしまった。
ありがとうブーンパパ・・・さようなら・・・
( ;ω;)「ぐす……また今度だお、お父さん……」
从 ゚∀从「……内藤さんから敵の事情は聞いておいた。
それとデレから聞き出した分も合わせて色々話がある。
ブーン、ツンちゃん。しばらく忙しくなるぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「……なにか分かったの?」
ハインさんは思わせぶりな言葉の後、表情を改め、はっきりと言い放った。
从 ゚∀从「勇者軍のアジトが分かった。
そう遠くない内に、こっちから攻め込む事になるだろうな」
.
404
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:23:45 ID:/Ny0Anw.0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
九つの席が用意された円卓。
そこに集まったのは七人。空席は二つ。
暗闇の中、唯一照らされたその場所で、『王座の九人』は沈黙を保っていた。
( ・∀・)「モルモットが逃げ出したそうだな、アサピー」
円卓に肘を突き、さも不機嫌そうな顔で沈黙を破った男。
モララーはその一言を、研究開発局の局長・アサピーに向けていた。
(;-@∀@)「ぐぬ、ぐぬぬぬ……」
( ・∀・)「抹殺に差し向けた部下も失った。優秀な人材だったのにな、あー残念だ」
(;-@∀@)「う、うるせー! ここの誰かが行ってりゃ問題無かったんだよ!
なのにお前ら俺からの連絡無視しやがって!」
(;-@∀@)「お前らそんなに俺がキライか!?」
( ・∀・)「嫌いだ」
(,,゚Д゚)「大嫌い」
J( 'ー`)し「死んでちょうだい」
( ´_ゝ`)「ドロースタンまで」
(´<_` )「通します」
(-@∀@)「グゲゲーーーーー(血反吐を吐いて死亡)」
.
405
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:24:25 ID:/Ny0Anw.0
爪'ー`)「ふふ、仲睦まじくてなによりだ」
王座の九人筆頭――フォックスは、円卓を一望して微笑む。
( ・∀・)「そう言っている場合か?
敵にハインリッヒが居るならこちらの情報は全部抜き取られるぞ」
(;-@∀@)「お、おれは悪くねえからな!!」
爪'ー`)「心配するな。なにも問題ない。
ここがバレたなら、それなりの対応をするまでさ」
フォックスは膝で手を組み、その余裕ぶりを過剰に演出して見せた。
爪'ー`)「魔神ロマネスク、その娘・魔王城ツン。
ひいては魔界を統べる数万の魔王軍軍勢……」
爪'ー`)「……その全てをこちらから出向いて倒すのは、正直しんどい。
故に、今回のことは都合が良いとさえ言えるよ」
爪'ー`)「もし向こうから攻めて来たなら、その時はこちらの陣地での戦闘。
用意周到に彼らを出迎える事ができる」
爪'ー`)「それに元より敗残兵の負け戦、いまさら不利が増えたところで他愛ないさ……」
.
406
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:27:28 ID:/Ny0Anw.0
(,,゚Д゚)「……ま、大将様に言われたんじゃ焦ってもしゃあねえ」
(,,゚Д゚)「それにもう次の手は打ってあんだよな?
一手ずつ、確実に詰めていこうぜ」
( ・∀・)「次の手? ……聞いてないぞ、アサピー」
(;-@∀@)「んだよォ! いちいちお前に報告する義務なんかねーよバーカ!!」
爪'ー`)「さっき魔王城ツンのもとに歯車王を向かわせたそうだ。
なんでも今度のバージョンは自信作らしくてな、期待しようじゃないか」
(; ・∀・)「いや……。どう考えても無理だと思うが」
モララーからの冷ややかな反論。
しかしそれを見越していたのか、アサピーがマッドサイエンティストっぽい笑い声を張り上げた。
(#-@∀@)「オブボフヘアアア!?(笑い声) ブァァァカめ!」
(#-@∀@)「ぅ我が勇者軍の科学力は常に! あ、常にィ〜〜〜??
この時代の最先端をォ、バッサリ切り開いていくものであァァアアァァッる!!」
(,,゚Д゚)「うっせ」
J( 'ー`)し「殺していいかしらぁ」
.
407
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:28:16 ID:/Ny0Anw.0
(#-@∀@)「せいぜいそこでふんぞり返っていろモララー!
その一席ィ……いずれ誕生する歯車王二号機の為に温めておくんだなぁぁぁ〜〜ッ!?」
( ´_ゝ`)「これ終わったらカラオケ行く?」
(´<_` )「いいな。美川憲一の採点やろうぜ」
爪'ー`)「やはりカラオケか……私も同行しよう」
( ・∀・)「帰って寝るか〜〜〜〜」
(#-@∀@)「フフフハ、ハーーッハッハッハ! ワハハハーーーー!!」
――各々、テンションの差が酷い王座の九人だった。
408
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:29:47 ID:/Ny0Anw.0
【interlude:2】
「……それが、魔王の孫娘か」
その言葉と共に扉が開き、白い鎧の女が教室に入ってきた。
女は黒い長髪をひるがえし、堂々と教壇に立って瞑目する。
川 - )「――素直四天王が筆頭、素直クール。
魔王城ツン。すまないが、お前にはここで死んでもらう」
女、素直クールは腰の鞘から剣を引き抜き、それを空中で一振りした。
戦闘シーンを全カットされ、次回開始時には負けているとも知らずに――
川 ゚ -゚)「……」
川;゚ -゚)「って、ちょっ、あれ? 誰も居なッ……」
放課後の教室、いざ襲撃だ!と意気込んで教室に入ってきた素直クール。
ところが教室内はもぬけの殻。夕日が差し込む、物悲しい風景があるだけだった。
川;゚ -゚)「……フッ。わ、私の実力を知って逃げ出したか」
川;゚ -゚)「魔王城ツン。その命、今週いっぱい預けておくぞ……!」
クールは誰も居ない、誰も居ない、本当に一人ぼっちの教室で照れ隠しを呟いた。
.
409
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:31:30 ID:/Ny0Anw.0
照れ隠しも言い終わって、あーもう帰ろうと剣をおさめる素直クール。
そうしているとふと教室の扉が開いて、見知った顔がひょっこり中を覗いてきた。
o川;゚ー゚)o「……あー。やっぱり」
川;゚ -゚)「む、キュート」
素直四天王・素直キュートは、参ったなこりゃという困り顔で教室に入ってきた。
o川;゚ー゚)o「……お姉ちゃん、ここ来る前に下駄箱見た?
魔王城の靴、なかったよ?」
川;゚ -゚)「いや、その……これは予行演習というかな、気合有り余ってというやつでな……」
o川*゚ー゚)o「……はいはい、分かったから。ありがとお姉ちゃん。
とりあえず今日はもう帰ろう? 特売終わっちゃうよ」
Σ川;゚ -゚)「特売ッ!? こうしてはおられんッ!」
キュートの一言に発破を掛けられた素直クールはすぐさま武装を解除し、
然るべき女子高生の格好に戻って一目散に駆け出した。
o川*゚ー゚)o「いけいけお姉ちゃん! よっ! 四天王最速ッ!」
三┏川;゚ -゚)┛「キュートも急いで帰ってくるんだぞ! 今日は焼肉だからな!」ダッ!
.
410
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:32:10 ID:/Ny0Anw.0
.
411
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:34:43 ID:/Ny0Anw.0
o川*゚ー゚)o「……さて」
と、一人残されて一息ついた素直キュート。
o川*゚ー゚)o「そこのロボット、もう出てきていいよ」
彼女は教室の隅に目を向け、得意気に腰に手を当てて言った。
しかし彼女が見つめる先には誰も居ない。
窓があり、風になびくカーテンがあり、机椅子がある程度。
それでもなお、彼女は誰も居ない空間に向かって言葉を投げかける。
o川*゚ー゚)o「……なんだっけ、光学迷彩?
凄いね。人間じゃないから本当に気配が無い。
違和感そのものに気付かなかったら、多分魔王城でも分からないよ」
くすり、と素直キュートが微笑む。
その直後、不気味な重低音が教室内に響き始めた。
それは敵の光学迷彩が解除されていく音――徐々に姿を見せていくそれを、素直キュートはじっと見つめる。
.
412
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:35:26 ID:/Ny0Anw.0
β ←ここからミサイルが出る
┌─┴┐
∪ |::━◎┥∪ ウィーン ガッシャン
V| |V
|:日 日:| ウィーン ガガガガ
└┬┬┘
亠亠
o川;゚ー゚)o「……思ったより、見た目はレトロだね」
|::━◎┥「――目標、確認デキズ。目撃者、一名」
|::━◎┥「機密保持ノ為、殺害ヲ実行シマス」
|::━◎┥「教室内ニ結界ヲ展開。逃走ハ、不可能――」
地の文にすると数行必要なことを一言で済ませてくれた歯車王。
彼はそれだけを宣告し、その姿を再び光学迷彩の中に消していく。
.
413
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:36:33 ID:/Ny0Anw.0
o川*゚-゚)o「……なにそれ、めんどくさ」
o川*゚-゚)o「運悪くブッキングしただけじゃん。
狙いは魔王城なんでしょ? 別に殺すとかよくない?」
「武装展開、完了――」
無機質な音声と、銃火器の起動音が四方八方から素直キュートを捕捉する。
最大火力による絨毯爆撃はもう間もなく――だが、彼女は顔色を変えない。
o川*゚-゚)o「……チッ」
唾棄するような舌打ちが一つ。
歯車王の攻撃が始まったのは、まさにその直後だった。
414
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 07:38:06 ID:/Ny0Anw.0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
――結界が解けると、戦闘の形跡は綺麗サッパリなくなっていた。
外はすっかり夜に沈んでいた。夕飯時なのか、どこかから良い匂いが漂ってくる。
o川*゚-゚)o「……」
静まり返った戦場を惜しむように、彼女はしばし、その場に佇む。
だがそこに達成感も満足感もありはしない。この戦いで彼女が得たものは、耐え難い空腹感だけだった。
もちろん単純にお腹も空いているが、彼女にはそれだけではない“飢え”があった。
そして、その“飢え”が満たされた事は、これまで一度として無かった。
o川*゚-゚)o「……つまんない」
素直キュートは、足元の鉄屑をコツンと蹴り飛ばした。
切り刻まれ、叩き潰された歯車王の残骸は、もうその一片しかこの世に残っていない。
o川*゚-゚)o「つまんない、つまんない、つまんな〜〜〜い……」
リズミカルに、同じ言葉を繰り返す。
彼女は最後に溜め息をつくと、鞄を持って教室を出て行った。
何事もなかったかのように振る舞い、いつもの面倒臭がりな自分に戻る。
o川*゚ー゚)o(……そういや焼肉だっけ、急ごっと♪)
姉同様、戦闘シーンを全カットされたとも知らず――
【interlude:out】
.
415
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/03/05(土) 07:41:52 ID:/Ny0Anw.0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思うやわもちきなこであった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 ブン動会に出るので次回遅れるのであった
,i :::::: `ー-、
| :::: i あとトリップもこっちに統一するのであった
! :::::.. ノ
`ー――――― '" また次回
416
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 08:26:23 ID:T8osC5VE0
相変わらずバッサリ切るなぁ
乙
417
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 08:29:54 ID:kfijDeJg0
乙なのであった
前出てきた時はそこまで強そうじゃなかったけどそんなことないのか素直シスターズ
418
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 08:49:05 ID:SKj37rc.0
おつおつー!
今回のルート、ドクオが不安要素だなぁ……
ブン動会応援してる
419
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 09:12:25 ID:H3q5Qwlg0
乙乙
このざっくり感が癖になる
420
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 10:19:13 ID:Ab3kDPCI0
乙!
前のルートであれだけ過酷だったブーンが幸せそうで良かった
421
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 10:24:31 ID:e4hg474g0
>>417
モナーの首を落とすシーンのクーもシューも強そうだっただろ!!
422
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 15:22:05 ID:NuQZi8sw0
この人の戦闘描写好きだから戦闘もみたい
423
:
名も無きAAのようです
:2016/03/07(月) 12:36:09 ID:c4azjSGc0
キュート強すぎワロタ
こいつらただの人間じゃなかったっけ
424
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/04/01(金) 01:56:28 ID:GnBXv.tI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
4月バカ編
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
425
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 01:57:12 ID:GnBXv.tI0
ポワンポワン(テレポートめいた演出)
ξ;゚⊿゚)ξ !? ここは一体?・・・
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『――フハハハトサブレ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
限りなく広がる純白の世界。
そこはサブレ時空――ツンちゃんを司る神の領域だった。
ξ;゚⊿゚)ξ ま、まさかエイプリルフールだからって・・
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『そうだ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
ξ゚⊿゚)ξ なるほど
ツンちゃんは怒り狂った。
426
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 01:58:25 ID:GnBXv.tI0
,、,,..._
ノ ・ ヽ 5月です
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 馬鹿なので今日から三日間に及ぶながら投下をします
,i :::::: `ー-、 三日で収まらない可能性は十分あるので三日で終わるかは分かりません
| :::: i 計画はなにもないです 頑張ります
| :::: i あと今回の血迷った行為は本編とは無関係の混沌になります
| :::: i なのでご注文があれば最大限反映します 頑張ります
| :::: i
| :::: i
| :::: i まずは寝ます
! :::::.. ノ 起きたら頑張ります
`ー┬――┬― '"
| |
とつ” とつ” †X† ブン動会逃亡作者より贖罪の意を込めて †X†
427
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:03:21 ID:GnBXv.tI0
少女の目覚めはそれはもうスッキリ爽やかであった。
昨夜の就寝時間は22時。現在時刻はそこから8時間後の午前6時。
(*゚ー゚)(早寝早起きにも慣れたかな)
少女は得意気に思いながら時計のアラームを解除する。
その後すみやかにベッドをおりて寝室を出て、顔を洗ったり歯を磨いたり。
およそ起床後にするであろう大体のあれこれを済ませると、少女はテレビのリモコンを持ってテーブルについた。
テレビを点けると彼女は迷わずニュース番組にチャンネルを合わせた。
バラエティとの住み分けを忘れたニュースキャスター達が、駆け足に世間のニュースを読み上げていく。
誰彼が法を犯した、選挙がどうだ、噂のスイーツだなんだと、良し悪し入り混じった話がざっと20分は続く。
(*゚ー゚)(……今日は、無いかな)
テレビを見ながら摘んでいた卓上のお菓子もいよいよ尽きるぞという寸前。
少女の安堵を裏切るように、突然、テレビに緊迫した様子のニュースキャスターが映し出された。
彼は数枚の原稿用紙をざっと一瞥すると、ゆっくりとその口を開き、語り始める。
『たった今、入ったニュースです』
『昨年から始まった連続殺人に、あたらな犠牲者です』
少女は目を見張り、テレビの音量をぐんと上げた。
.
428
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:11:58 ID:GnBXv.tI0
『被害者は十代前半の少女。遺体の損傷は激しく、身元判明には時間を要すると――』
『――警察は今回の事件も同一犯の犯行であると断定。
特別捜査本部の調査対象となる模様です』
そこでまたも画面が変わり、一分間まったく無意味な街頭インタビューが流れた。
こうなるともう具体的な話はない。適当にしめて、ニュースはいつもの平和を語り始める。
『一刻も早い事件解決が、望まれています。では――』
(*゚ー゚)(……都内はもう、駄目かもしれない)
少女はテレビを消してテーブルにうな垂れた。
静まり返った室内に、小さく溜め息をつく。
(*゚ー゚)(もう連絡が取れない子の方が多い。
残った子もいずれ狙われる。早めに行動を起こさなきゃ……)
(* ー )(……魔法少女が狩られていく。こんなの、正気の沙汰じゃないよ……)
少女はわずかに身震いする。
影のような存在に、少しずつ、少しずつ追い詰められていく感覚。
魔法少女になった時は、そんなものを味わうなんて全く思っていなかったのに……。
.
429
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:16:11 ID:GnBXv.tI0
湧き上がる恐怖にぎゅっと目を閉じてしまった少女。
すると、その少女の肩にフワフワとした綿のようなものがとまった。
( ∵) ≪……しぃ、元気を出して≫
綿には三つの点があり、それが顔の役割を果たしていた。
綿から聞こえてきた声は直接少女の脳内に。励ます声は、とても優しい。
(*゚ー゚)「……ねえ、ビコーズ。私達の戦いって、終わったんだよね」
( ∵) ≪もちろんだよ。僕らの敵、怪人商会なら二年前に倒したじゃないか!≫
(*゚ー゚)「……なら、いま私達を狙ってるのは誰なの?
どうして殺されるの? なんで……」
( ∵)
(*゚ー゚)「……あなたはこの質問にだけ、答えてくれないのね」
( ∵) ≪……ごめんね。とにかく、今は安全第一だよ。
本当は外出もしない方がいいんだけど……≫
(*゚ー゚)
(*゚ー゚)「……そうだね。学校、あるもんね」
しぃは儚げな笑みをビコーズに見せると、顔を上げて思いっきり背を伸ばした。
.
430
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:21:22 ID:GnBXv.tI0
(*゚ー゚)「らしくない! らしくないぞ、わたし!」
(*゚ー゚)「きっとみんな生きてる! 捕まってるだけ!」
(*゚ー゚)「それを私が見つけ出して助ける! それだけ!」
( ∵)
( ∵) ≪そうだそうだ! いいぞしぃちゃん!≫
しぃは勇んで立ち上がり、父親が寝ている部屋に駆け込んでいった。
(*゚ー゚)「おとーさんっ!! 朝だよーーーー!!」バッ
(;,,゚Д゚)「のわッ!?」
布団を引っぺがすと、しぃの父は飛び起きるように目を覚ました。
一瞬の狼狽。やがてしぃと目を合わせると、父親は幸せそうに頬を弛ませた。
.
431
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:27:43 ID:GnBXv.tI0
(*,,゚Д゚)「この悪い子め〜〜〜やりやがったな〜〜〜」
(*゚ー゚)「ねぼすけのお父さんが悪いんだも〜〜ん!」シャッ!
しぃはカーテンに手を掛け、追い討ちと言わんばかりに勢いよくカーテンを開け放った。
燦然と注ぎ込まれる日光。父はグワー! と叫んでのた打ち回り、一人娘のイタズラに翻弄される。
(*゚ー゚)「へへっ! 朝ごはん作るから、ちゃんと起きるんだよっ!」
(*,,゚Д゚)「分かった分かった。ったく、余計なとこばっか母さんに似やがって……」
(*゚ー゚)「あ! お母さんの悪口禁止! 罰として朝ごはん減らっ」
窓ガラスが割れ、少女の言葉が不自然に途切れる。
(,,゚Д゚)「……ん?」
「第一目標沈黙。目撃者一名、狙撃続行を進言する」
それを理解する間など、目撃者にすら与えない。
狙撃手はこの家屋から2km離れた先のビル屋上に構えていた。
故に彼らに認識される事はないが、生存者に警察に駆け込まれては厄介だ。
リスクは最小限に抑えなければならない。
「……了解。狙撃する」
返答は簡潔。
その直後、引き金に掛けた狙撃手の指が静かに動いた。
.
432
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:28:40 ID:GnBXv.tI0
――――そこは現代。20XX年の日本。
.
433
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:30:11 ID:GnBXv.tI0
(//‰ ゚)「……クリア。撤退する。始末は任せたぞ」
――――幾多の魔法少女が実在し、ささやかな非現実が許された世界。
.
434
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:31:42 ID:GnBXv.tI0
――――20XX年、4月1日。
この日、東京都内最後の魔法少女が死亡。
遺体解剖の結果、少女の死因は銃器による長距離射撃であると推測される。
以前同様、使用された銃器はチェイ・タック社のライフルである可能性が濃厚。
少女の実家は何者かに放火され、近隣家屋に延焼するほどの大火災に発展。
警察は事後処理、事実隠蔽などを優先した。
『半人半機』に関する情報収集には、まだ時間を要するとのこと――――
.
435
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:33:48 ID:GnBXv.tI0
(//‰ ゚)(……右腕の関節部に違和感)ギッ
(//‰ ゚)「…………」
そこは現実。血肉が尽きれば死ぬ世界。
現実に生きる少女達は、どうしようもなく、現実の一部でしかなかった――――
.
436
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:34:28 ID:GnBXv.tI0
半人半機の魔法少女 Wizard of half cyborg
.
437
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:35:56 ID:GnBXv.tI0
.
438
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:37:56 ID:GnBXv.tI0
(-@∀@)「横掘、依頼が来てるぜ」
隠れ家に入った途端、アサピーはホットミルクと一緒に紙切れを差し出してきた。
私はホットミルクだけを受け取り、フリースペースのソファに腰を下ろす。
体勢を安定させ、ボディをスリープモードに移行。
視界にメンテナンスメニューを表示し、私は右腕の可動域チェックを実行した。
私の意思とは関係なく、右腕の内部機構が動き始める。そこに私の感覚はない。
(-@∀@)「どこか不具合か?」
(//‰ ゚)「あるかどうかを確かめている。依頼を読み上げてくれ」
口も目も今は動かない。初見には、私という死体から声が出ているようにしか見えないだろう。
今の声も、私の声から作り上げた合成音声でしかない。
(-@∀@)「……ふむ。分かった読み上げてやる」
(-@∀@)「依頼は前回と一緒。民間の軍事組織からだ。
へんてこな格好の少女が、魔法のようなもので攻撃してくるんだとさ」
(-@∀@)「場所は××国の紛争地帯。
どうする、受けるか? ××国にひとっ飛びする事になるが」
(//‰ ゚)「……また捕虜の少女が魔法少女になったか。連中には格好の的だな」
(-@∀@)「そう言うな。この御時勢、力が欲しいのは誰だって同じさ」
.
439
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:42:33 ID:GnBXv.tI0
(//‰ ゚)「……都内のは一通り片付けた。
ここらで資金調達に行くのも悪くない案だな」
右腕内部の駆動音が静寂する。
今度は関節部が動き出し、肘から先が滑らかに上下する。
その後、視界にコンプリートの文字列が表示された。
ここでチェックを終わってもよかったが、一応五指までしっかりやることにした。
アサピーの話もまだ続きそうだ。
小指の関節をひとつずつ畳み、その動作を親指に向かって順番にやっていく。
(-@∀@)「本気か? これ罠だぞ」
(//‰ ゚)「だろうな。前回もそうだった」
……メンテナンスに熱が入ってきた。
私は右腕のみならず、左腕でも同じ工程を繰り返す。
.
440
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:49:20 ID:GnBXv.tI0
(//‰ ゚)「しかし、もう終わった事だ。マザーブレインは私を殺さない。
私が魔法少女にとっての『必要悪』である限り、あれは私を殺せない」
(-@∀@)「……これもマザーブレインの思惑通りだと?
お前が魔法少女を殺し続け、今後も生き続けるっていう」
(//‰ ゚)「あれは限界まで自身を増大する能力は持っているが、その中には確実に無駄な部分がある。
それを削除し、容量に隙間を作ってやるのが私の役割なんだろう」
(-@∀@)「……効率の為の必要悪ね。インテリだ、魔法少女」
(//‰ ゚)「つまり今回、向こうとしてはなるべく早急に片付けたい問題児が居るという事だろうな……」
(-@∀@)「前と同じくな。いや、あん時は参った……」
(//‰ ゚)「……思い出させるな」
スリープモードを解除。
肉体の支配権を得た私は立ち上がり、壁に向かって左腕を突き出す。
(-@∀@)「あ、気をつけろよ」
(//‰ ゚)「分かっている」
そう答えると同時、私の左腕前腕部が上下に開き、骨格に備え付けたバレルを走って一本の杭が射出された。
(//‰ ゚)「――ッ」
その反動に肉体が一瞬震える。手応えは十分。
程なくして杭は自動で引っ込み、左腕は元の形状に戻った。
直径15cm、太さ3cmの杭。
杭打ち機を模したこの武器は、並の魔法少女の防御魔法を容易く貫通する。
暗殺・狙撃が不可能な場合の中距離戦闘ではこれが活躍する場面も少なくない。
もっとも、それ以上に人間相手での使用率が飛びぬけているが……。
.
441
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:50:21 ID:GnBXv.tI0
(//‰ ゚)「アサピー、紛争地帯の情報収集は済んでいるか?」
(-@∀@)「お、行くのか。出来てるぜ。
向こう用のリュックサックも作っておいた。すぐにでも出発できる」
(//‰ ゚)「なら行ってくる。こっちの情報収集、サボらずにな」
――私は脳内で唱える。機械とは別の、人間としての私の部分で。
それに応じてポンッ! と現れたのは綿のような姿の妖精。
マザーブレインから分裂し、少女に取りつく生きた端末機器、ビコーズ。
( ∵) ≪――変身かい?≫
(//‰ ゚)「ああ。海を渡る為に飛行魔法が欲しい」
(;∵) ≪……そりゃまた大変だ。君なら大丈夫だろうけどさ≫
ビコーズが空中でくるんと一回転して見せる。
途端、私の手中に細長い光が現れた。
私がその光を掴み取ると、光は弾けるように消滅し、光の中から傷だらけのステッキが姿を現した。
.
442
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:51:25 ID:GnBXv.tI0
( ∵) ≪決め台詞とか、決めポーズはいいの?≫
(//‰ ゚)「無駄だ。早く済ませろ」
( ∵) ≪はいはい。って、君の場合、これでもう終わりなんだよね≫
またも空中で一回転。
それによって現れた物は、一枚の赤いスカーフだけだった。
スカーフはシュルリと私の首に巻き、そして普通の布切れになった。
( ∵) ≪……いい加減、衣装変えてもいいんだよ?
君の衣装は、もうあの時に消し飛んじゃったんだし≫
(//‰ ゚)「用済みだから消えろ。昔の話はするな」
(-@∀@)「ホルマリンに漬けないだけありがたく思え。消えろ」
私とアサピーは揃ってビコーズを睨みつけた。
お互い、過去にはなるべく触れないようにしているのだ。
目には決して見えないが、私達は同じ場所に違う傷を持っている。
( ∵) ≪……はいはい。それじゃ、また変身する時は呼んでね〜≫
呆れた声色で捨て台詞を残し、ビコーズはスポン!と音を鳴らして姿を消した。
(//‰ ゚)「……リュックサックの中身を見ておきたい」
(-@∀@)「おう。こっちだ」
私は残りのホットミルクを飲みきってから、アサピーの後についていった。
.
443
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 10:55:30 ID:GnBXv.tI0
,、,,..._
ノ ・ ヽ カレーを作ってきます
444
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 11:05:28 ID:wzhlr78c0
カレーパーティーだ
ハヤシライス味にしてくれ
445
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 11:14:03 ID:UUjq6O560
ハヤシライスを食え
446
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 13:59:31 ID:GnBXv.tI0
―― ××国 市街地のホテル ――
ホテルの受付に、一人の少女が近付いてきた。
見た目は確かに十代。
しかしその立ち振る舞いは毅然としていて、このホテルに見合うだけの風格はあった。
ホテルマンは彼女に対する見下してる感じの思いを胸の奥にしまい、笑顔で彼女を迎えた。
('、`*川 「こんにちは。予約した部屋はちゃんと空いてるかしら」
「いらっしゃいませ。失礼ですが、ご予約のお名前は……」
('、`*川 「ジャン=ピエール・ペニサス。国籍はイタリア」
「少々お待ちください」
ホテルマンは片手でパソコンを操作し、目の前の彼女と予約時の顔写真を見比べた。
問題なく、同一人物だった。
.
447
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 14:20:51 ID:GnBXv.tI0
「……はい、確認いたしました。ご案内いたします」
('、`*川 「テロがあると手間が増えて大変ね。
客としては、変なのが入ってこなくて安心だけど」
「いえいえ、当然の事です」
「それに市街地はまだ警察が機能していますから、十分観光を楽しめますよ」
ホテルマンはカウンターを出て、少女の前に立った。
だが、その手にはハンディタイプの金属探知機が握られていた。
どんな相手であろうと、信用とは疑いを晴らす所から始まるものだ。
このホテルマンは、しっかりとそれを弁えていた。
「失礼ですが、お持ちの金属類は一度検めさせていただきます」
∩('、`*川 「ええ。でも多いから、命が幾つあっても足りないわね」 スッ・・・
「……はい?」
少女はふと片手を上げて言った。
それと同時、ホテルマンの全身に十個の赤い点が浮かび上がる。
レーザーポインターは人体の急所にそれぞれ的を絞り、次の指示を待つ。
448
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 14:31:39 ID:GnBXv.tI0
∩('、`*川 「こういうのってさ、結局形だけなのよね」
∩('、`*川 「善人の不安を解消する為の行為なんて、悪人への対策にも予防にもならない。
確固たる“決行”の前に、あらゆる怠慢は打ち砕かれる」
「――だッ! 誰か、警察を呼べ!!」
('、`*川 「さようなら。このホテル、ちょっと借りるわね」
ペニサスは歩き出し、静かにその手を下ろした。
直後、『ドツッ』という音が数秒間連続し、少女の背後でホテルマンが死に絶える。
タイミングよく、彼女が乗ろうとしていたエレベーターが一階に降りてきた。
客が降りてくる前に、ペニサスは懐からサブマシンガンを取り出す。
('、`*川 「行くぞ、まずは皆殺しだ。作業スペースを作る」 ジャキッ
その命令は、彼女の左耳のインカムから本隊50名の志願兵に向けて通達されていた。
本隊からの返事は待たない。ここから先は、血の雨が降る。
「……じゅう?」
ドアが開き、いざ降りようと一歩踏み出してきたスーツ姿の男性客。
彼はサブマシンガンの銃口を見た瞬間、ピタリと身動きを止めた。
('、`*川 「ハロージーザス。道をあけな」
ペニサスはエレベーターの客に愉快な笑みを送ってから、ありったけの銃声で彼らを出迎えた。
449
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 14:45:22 ID:GnBXv.tI0
('、`*川 「〜〜♪」
神は生きている。神は居る。神はすぐそこに居る。
なぜ見ようとしないのか。なぜ事実を受け入れないのか。
('、`*川 「二階制圧。三階どうだ」
『――……三階制圧。十階まで滞りなく順調。』
貴方はなぜ神ではなく悪魔を信じるのか。
神を信じなさい。神は常に傍に居る。神を受け入れなさい。
('、`*川 「オーライ。お客様全員にしっかり朝刊を配ってやれ。
仲間外れはナシだ。ジーザスジーザス」
『了解。作戦に戻ります。』
('、`*川 「……ンッン〜〜♪」
.
450
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 14:51:33 ID:GnBXv.tI0
――――20XX年、4月3日。
××国、有名ホテルがテロリストによって占拠される。
組織名は不明。犠牲者は従業員と宿泊客の全員。
目的は不明。彼らは今もなおホテル内に立てこもっている。
国境付近での紛争がいよいよ市街地にも伸びてきた。
市民は家屋に引きこもるか、国外逃亡を余儀なくされている――――
451
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 15:46:14 ID:GnBXv.tI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ξ⊿´`)ξ「んんんん・・・・ んっちゅ」スヤスヤ
ちゃんツンはねむっちまったんだなあこれが
つまり ブン投げたんだなあ
「――おきてお」
ξ-⊿-)ξ「……ん」
すっかりスヤスヤ寝ていたツンを起こそうとする声。
ツンはしばし布団の中で身もだえしてから、ようやくその声に応えた。
ξ-⊿-)ξ「まったく……誰よこんな自衛隊のガヤにかき消されそうな起こし方をするのは・・・」
452
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 15:47:37 ID:GnBXv.tI0
,..ィソリ///ミYレ/彡三三三ミミ
ィリソリ〃〃レ'三三三三ミミミミミミュ
/テ孑''´ ``''' ====ミ三三ミミミ
l//' `ヾ川ミミミ!
|l!' :.}!リリ||!lミ
| .:.:リ川ミミ}}
| .;;.从川||
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r=====;;;;,.. ソソレ⌒ ;
. | rェ;ェ._ ; l;:.. ,ィァ ァ,._ リ /
. l .;:'. ; l;;: . `´ l! ./
l .; ;: ;,. ィ ノ
l ;' ;:,. 、 /
l ー- ‐ ' ;.:. ,;'
! ,: ' ; : ; ハ
', .r‐ -- -一 ィ .:.;,/ ヘ
_,,.. - ''´ . ‐--‐ .:,.ィ }`'' - ,,,__
ヘ .::. .;:.. ,.ィ リ
ヽ .____,,. '
デデデデエェエェェェエェッェツェェェェェエェエーン!!
( ^ω^)「なに言ってるお? 早く学校に行くお!」
ξ-⊿-)ξ「うーんまだ寝惚けてるみたい・・・ちょっと下で待ってて」
⊂( ^ω^)⊃「おk!」
453
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 15:54:07 ID:GnBXv.tI0
大小なりに事件はあるが、とにかく世界は平和だった。
知らない所でなにかは起こっているけれど、私の周りはすごく平和。
たまに勇者軍からの襲撃もあるけど、パピーが雇ってくれた凄腕ボデーガードさんが守ってくれる。
( ^ω^)「――おっ。ツン遅いお〜!」
ξ´⊿`)ξ「ごめーん・・・」
( ФωФ)「ツン。おにぎりを作っておいたから早く行ってきなさい。
もう時間が無いから学校に着いたら食べるのだぞ、いいな」
ξ゚⊿゚)ξ「はーい。いってきま〜す」
⊂ニニニ( ^ω^)ニ⊃「レッツ登校だおっ!」ダッ
< ・・・待ちなさい
ξ゚⊿゚)ξ !?
( ^ω^) !?
< 君達の身の安全は 私が守護る・・・・・
( ^ω^) こ、この横綱の小指を掴み取りそうな声は!?
454
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 15:58:24 ID:GnBXv.tI0
('A`)「俺だよ」
( ^ω^)「なあんだドクオかお。ガッカリした」
(;'A`)「普通に出てきただけなんだが・・・・」
(^ω^)「それだけでガッカリなんだお。察してほしいお」
('A`)
(^ω^)
ξ゚〜゚)ξ「行きましょ〜」モグモグ
つ△
(; ^ω^)「あ、さっそく食べちゃってるお・・・」
(;'A`)「おめえ女だろうが。歩き食いは・・・・」
△
∩ξ#゚⊿゚)ξ「うるへえ!腹減ってんだどっこいコノヤロウ!!」
455
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 16:06:45 ID:GnBXv.tI0
〜学校〜
ξ゚⊿゚)ξ「あのねえ」
( ^ω^)「なんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「昨日さあ 夢を見たのよねえ」
('A`)「前置きはいいから言えよ。喋りたいんだろ?」
ξ#゚⊿゚)ξ ピクッ
ξ#゚⊿゚)ξ「あーもー喋りたくなくなった!!!!!!!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ドクオのせいだ!! あーーあ!!!!!!!!!」
(^ω^)「ドクオ、謝るお」
('A`)「ごめん」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「それでねえ、夢を見たのよねえ」
(^ω^)「ツンは年中バカだから助かるお」
('A`)「だよなあ」
456
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 16:23:30 ID:GnBXv.tI0
ξ゚⊿゚)ξ「昨日見た夢にはねえ、ブーンが出てきたのよねえ」
(^ω^)「ほほう。それでそれで」
ξ゚⊿゚)ξ「おみくじとか、お賽銭とかやってたのよねえ・・・」
('A`)「へえ。お正月か? 珍しい夢だな」
ξ゚⊿゚)ξ「だってさあ この夢、紅白の没ネタなんだもの・・・・・」
(^ω^)
('A`)
ポワワン(回想)
━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━━
457
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 16:24:25 ID:GnBXv.tI0
内藤ホライゾンVSヘリカル沢近 おみくじ十本勝負
|┃三
|┃ 、_ おわり
____.|ミ\__*(‘‘)*
|┃=__ \
|┃ ≡ ) 人 \ ガラッ
458
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 16:25:06 ID:GnBXv.tI0
<1月1日、VIP神社>
ガヤガヤ(すごい人だかりの音)
(~)
γ´⌒`ヽ
{:i:i::i:i:i:i:i:}
(; ^ω^) 「すごい人だかりだお・・・」
(:::::::::::::)
し─J
(~)
γ´⌒`ヽ
{:i:i::i:i:i:i:i:}
(; ^ω^) 「これじゃお賽銭もおみくじもやれないお・・・」
(:::::::::::::)
し─J
( ^ω^)「・・・お?あっちにも神社あるみたいだお?」
( ^ω^)「人気も少ないし、今はあっちが穴場みたいだお! 早速行ってみるお!」
(~)
γ´⌒`ヽ ブーン
{:i:i::i:i:i:i:i:}
⊂( ^ω^)⊃ 「れっつら!」
(__)
/ ヽ
459
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:19:42 ID:GnBXv.tI0
<同日、ヘリカル神社>
( ^ω^)「お賽銭も!おみくじも!誰も並んでないお!」
(; ^ω^)「ていうか心配になるほどスッカラカンだお・・・」
( ^ω^)「とりあえずお賽銭をやるお!」
つミ
⑩ ポイッ
「お客さん、ちょっと待とう」
( ^ω^)「おっ?」
|┃三
|┃ 、_
____.|ミ\__*(‘‘)*
|┃=__ \
|┃ ≡ ) 人 \ ガラッ
、_
*(‘‘)*「さすがに10円ってなくない?」
(; ^ω^)(奥からなんか出てきたお・・・)
460
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:20:23 ID:GnBXv.tI0
(; ^ω^)「あの・・・ダメでしたかお?」
、_
*(‘‘)*「ダメとかじゃなくて、気持ち?
そういうのが金額に出るよねって話」
、_
*(‘‘)*「神様的には何で年明けからシケた金遣いしてんの?って感じ
もうちょい貢いでこ? バチ当てないからさぁ・・・」
(; ^ω^)「・・・神様なんですかお?」
、_
*(´.`)*「あぁ〜現代人。そういうの聞いちゃう感じ」
(; ^ω^)「・・・とりあえず普通にお賽銭やってもおk?」
*(‘‘)*「更に1000円入れると二拝二拍手が省略できますけど?」
(; ^ω^)(なんかソシャゲっぽい課金制度が導入されてるお・・・)
つと パンパン
*(‘‘)*「あぁ〜普通にやる感じの」
461
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:21:11 ID:GnBXv.tI0
(; -ω-)(えっと・・・今年も良い一年を過ごせますように)
つと
*(‘‘)*「・・・あのさぁ」
(; ^ω^)「はい?」
*(‘‘)*「普通思わない? 黙ってお願いされてもこっち分かんないよ?」
(;;^ω^)
(; ^ω^)「・・・今年も、良い一年をお願いしますお」
、_
*(‘‘)*「うん分かった! 10円分は確実に叶えとく!」
(; ^ω^)「うん・・・」
*(‘‘)*「おい着膨れまんじゅう! おみくじも引いてけよ!」
(; ´ω`)「はい・・・」
、_
*(‘‘)*「ところで今ならSSレアみくじが10回3000円ですけど!?」
(; ´ω`)「ノーマルみくじ1回でお願いしますお」
*(‘‘)*「今だけなのに・・・」
462
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:21:57 ID:GnBXv.tI0
|┃
|┃ 、_ 「まぁいいや。おみくじあっちね、それじゃ!」
____.|ミ\__*(‘‘)*
|┃\_ \
|┃ ) 人 \
(; ^ω^)「はい、ありがとうございましたお」
. 三 |┃┃
. ≡ |┃┃
. |┃┃
三.|┃┃ピシャッ!
.|┃┃
(; ^ω^)「・・・なんかすごく面白い子に出会ってしまったお」
( ^ω^)「・・・気を取り直して、今度はおみくじ引きにいくお!」
ξ;´⊿`)ξ
(; ^ω^)「先客がすごい微妙な顔してるお・・・」
ξ;゚⊿゚)ξ「おげぇ!ブーン!」
(; ^ω^)「人を見るなり吐瀉しないでほしいお」
463
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:22:52 ID:GnBXv.tI0
( ^ω^)「ツンもこっちに来たのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんか空いてたから・・・」
(; ^ω^)「・・・お賽銭は?」
ξ゚⊿゚)ξ「お賽銭?普通にやってくけど・・・」
|┃三
|┃ 、_
____.|ミ\__*(‘‘)*
|┃=__ \
|┃ ≡ ) 人 \ ガラッ
(; ^ω^)「お賽銭に反応されちゃったお・・・」
ξ;゚⊿゚)ξ「・・・ブーンはおみくじ?」
、_
*(‘‘)*「お賽銭こっちだが〜〜〜??」
(; ^ω^)「そうだお、ノーマルみくじをやりに来たお」
、_
*(‘‘)*「お〜〜〜〜〜〜いこっちだってば〜〜」
ξ;゚⊿゚)ξ「それなら気をつけてね、ここのおみくじ変だから・・・」
、_
*(‘‘)*
464
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:24:33 ID:GnBXv.tI0
、_
〜〜 *(‘‘)* トコトコトコトコ
(; ^ω^)「こっち来たお・・・ツンのせいだお・・・」
ξ;゚⊿゚)ξ「話題振ったのブーンでしょ!?私知らないわよ!」
、_
*(‘‘)*「着膨れデブは初心者だろぉ〜おみくじのやり方教えてやるよぉ〜」
(; ^ω^)「おぉん・・・」
*(‘‘)*「ああ、そっちのクソうんこ巻きグソツインドリルの冷やかし脱糞小娘は帰っていいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・私、さっきおみくじ引いて、コレが出たんだけど?」
つ□と
、_
*(‘‘)*「・・・むっ!それは!」
( ^ω^)「おっ?大吉でも出たのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「いえ、チッチキ吉が出たわ」
(; ^ω^)「チッチキ吉!?」
、_
*(‘‘)*「それは大吉の一個上の奴です!巻きグソうんこマン、こちらへ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「その呼び方やめなさい!」
*(‘‘)*「きびきび歩けやキビウンコ」
465
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:25:17 ID:GnBXv.tI0
、_
*(‘‘)*「ちょっと売店の中に入るから待ってて!」
ξ;゚⊿゚)ξ「はいはい・・・」
(; ^ω^)「ついていくのが精一杯だお・・・」
______*(‘‘)*______
| 〔ヘリカル神社〕 |
|______________|
┃ |┃三 .┃ ガラガラッッ!!
┃ |┃ 、_「よっしゃ!」 ┃
┃___|ミ\__*(‘‘)* ┃
┃ |┃=__ \ ┃
┃ |┃ ≡ ) 人 \ ┃
:||.「 ̄「 ̄「 ̄「 ̄ ̄|--────--|
:||.|≡:|: :: |;; ; |~~^^^|/.品品■■ △|
:||「 ̄「 ̄「 ̄「 ̄ ̄|||[][]ロロロロロ⇔|
:|||≡:|: :: |;; ; |~~^^^|||∩∩¨〓〓φ:|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;:|
|∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
466
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:26:29 ID:GnBXv.tI0
、_
*(‘‘)*「大吉以上が出た人には粗品をプレゼント!」
、_
*(‘‘)*「うんこマンはチッチキ吉だから商品一個持ってっていいよ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ・・・」
、_
*(‘‘)*「おすすめはトイレットペーパーだ! クソ漏らしにはお似合いの一品w」
ξ#゚⊿゚)ξ「いい加減キレそう」
(; ´ω`)「許してあげるお。子供だお」
、_
*(‘‘)*「っててちょいちょい! 誰が子供じゃ〜〜〜〜〜い」
\ドッ/
( ^ω^)「あっこの笑い声を模した爆発音は!」
ξ゚⊿゚)ξ「爆発オチ!」
467
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:27:15 ID:GnBXv.tI0
............... ..ヽ . ;: . / .⌒ _,,..__ ヽ ) ;. :ノ......... .........
:::::::::::::::::::::::::::ゞ (. (::.! l,;::) .ノ ノ ./::::::::::::::.......:::::
._ゝ,,. .-ー;''""~ ';;; - .._´,
._-" ,.-:''ー''l"~:|'''ーヾ ヾ \ドッ/
::( ( . |: ! ) )
ヾ、 ⌒〜'"| |'⌒〜'"´ ノ
""'''ー-┤. :|--〜''""
:| |
\ワハハ/ j i
ノ ,. , 、:, i,-、 ,..、
_,, ,. -/:ヽ::::::::ノ::::Λ::::ヽ::::-- 、ト、
,,/^ヽ,-''"::::\::::::/:::::|i/;;;;;;/::::;;;;ノ⌒ヽノ:::::::::ヽ,_Λ
(^ω^)「うわーーーもうおみくじはコリゴリゴリラだお!」
ξξΔξ)ξ
ヘリカル沢近 圧勝
完
468
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:30:41 ID:GnBXv.tI0
〜〜〜〜〜
( ^ω^) うおーん!こんなオチはあんまりだお!
('A`) いくら書き溜めが間に合わなかったからって酷すぎるぜ!
< 安心していいんだ
( ^ω^) え?
('A`) ん?
< このスレのオチは 私が守護る
( ^ω^) !? こ、この横綱の小指を掴み取りそうな声は・・!?
('A`) ま、まさか!!?
469
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:31:21 ID:GnBXv.tI0
ゞミミミffrンリ ノノノィイ彡 ィ彡彡ノノf三ミ
,ィ'三≧ミミソリノ彡=-―=ニ、三彡彡彡ソノノノ
な 守 俺 _ノノミソ `ヾツ'´ V三彡彡イノノノ
,ィ化ミ{-‐ ''"- 、` ー- -- -`"´ ̄ヾ三彡彡
ら 護 が (f彡「二x,ヽ /` >- ―-- `、 ヾ三彡'
ヾ〈r==ヘ'、〈 f彡ミ三三ニ==、、 ヾ彡' /
ぬ ら ,イ豺ーtュ、'; {! ,.'二.,ニ=ァテ; Xノ
=彡イリ` ==' } 'く`三´=彡″ /; ;{
ね ノノ! ノ:..._,.. 、 / ; ;,に
ノ,.イ人 ( ヽ__ 人 _ ,.ノ ; ; ;リ
ば 巛fリリ下、`,ニ;´,.,., ` ,イ ̄ , ;,} ; ,;ッ" /
W〈(イイハヘ,;f^_ニニ、';、; ; , , / } , ; ; ;ノ''" /:,.
∨ヘヽヽンヘ;,'、 ̄`ン'"⌒'; ; ; ;! ; ; シ' /::;ノ:,
ヾゝ':::´〈::{:ハ;,`¨´ , ; ; ;ノ'"´ /:/:::ノ
,. :´:::::::::::::}::}::}X; ;';'; ; , , ; ;シ' ,..ノ:::ノ:::/:::
/:::::/::::::::::::{::{:::| `'ー'-'z'彡-‐ ァ´:::_ノ::_ノ:::/
デデデデエェエェェェエェッェツェェェェェエェエーン!!
( ^ω^) も、本部以蔵だおー!!
('A`) う、うわぁ、本物だあーっ!!
本部以蔵 「ヘリカル沢近、テンプレ1、ロリAA枠」
本部以蔵 「片腹痛い・・」クスクス
< フフフ… そうだ、その通りだ
( ^ω^) え?
('A`) ん?
< 紅白の秩序は私が守護る、フフフ…
( ^ω^) !? こ、この自衛隊員のガヤでかき消されそうな声は・・!?
('A`) ま、まさか!!?
470
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:33:13 ID:GnBXv.tI0
ゞミミミffrンリ ノノノィイ彡 ィ彡彡ノノf三ミ
,ィ'三≧ミミソリノ彡=-―=ニ、三彡彡彡ソノノノ
な 守 俺 _ノノミソ `ヾツ'´ V三彡彡イノノノ
,ィ化ミ{-‐ ''"- 、` ー- -- -`"´ ̄ヾ三彡彡
ら 護 が (f彡「二x,ヽ /` >- ―-- `、 ヾ三彡'
ヾ〈r==ヘ'、〈 f彡ミ三三ニ==、、 ヾ彡' /
ぬ ら ,イ豺ーtュ、'; {! ,.'二.,ニ=ァテ; Xノ
=彡イリ` ==' } 'く`三´=彡″ /; ;{
ね ノノ! ノ:..._,.. 、 / ; ;,に
ノ,.イ人 ( ヽ__ 人 _ ,.ノ ; ; ;リ
ば 巛fリリ下、`,ニ;´,.,., ` ,イ ̄ , ;,} ; ,;ッ" /
W〈(イイハヘ,;f^_ニニ、';、; ; , , / } , ; ; ;ノ''" /:,.
∨ヘヽヽンヘ;,'、 ̄`ン'"⌒'; ; ; ;! ; ; シ' /::;ノ:,
ヾゝ':::´〈::{:ハ;,`¨´ , ; ; ;ノ'"´ /:/:::ノ
,. :´:::::::::::::}::}::}X; ;';'; ; , , ; ;シ' ,..ノ:::ノ:::/:::
/:::::/::::::::::::{::{:::| `'ー'-'z'彡-‐ ァ´:::_ノ::_ノ:::/
デデデデエェエェェェエェッェツェェェェェエェエーン!!
( ^ω^) も、本部以蔵だおー!!
('A`) う、うわぁ、二回目だあーっ!!
本部以蔵 「ご明算かな……?」
本部以蔵は一度目の登場後、煙幕を利用して二人の背後に回りこんでいたのだ。
それが二回目の登場の真実であった。
( ^ω^) じ、地の文まであるなんて・・
('A`) この本部以蔵ならやってくれる!いっけええええええ
471
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:33:53 ID:GnBXv.tI0
、_
*(‘‘)* アァ〜ン? なにが本部以蔵じゃコラ スネを蹴るぞスネを ゲシゲシ
本部以蔵 「ヘリカル沢近。ワルいが」
本部以蔵が刀を抜き、その切先をヘリカル沢近に向ける。
両者の間に、強い風が吹き抜ける――
本部以蔵 「――遊んでもらうぜ」
、_
*(‘‘)* 遊ぶの大好き
( ^ω^) な、なんてことだお・・・・
('A`) 地の文のせいで本当に戦い始めそうだぞ・・
( ^ω^) やめてお!ぼくらは誰かに傷付いてほしいわけじゃないんだお!
('A`) 本部さん!刀を納めてくれ!
< じっ
( ^ω^) !?
('A`) !?
472
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:34:58 ID:GnBXv.tI0
< 地の文と云うよりは行動の羅列 ト書きだな
< しかし何故(なにゆえ)幼女やアスキーアートを・・・・・・・・・・?
本部以蔵 「なんだァ?てめェ・・・・・・・・」
◇本部、キレた!!
( ^ω^) この声はまさか!?
('A`) あ、あの剣豪が助けにきてくれたっていうのか・・!?
473
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:36:42 ID:GnBXv.tI0
,..ィソリ///ミYレ/彡三三三ミミ
ィリソリ〃〃レ'三三三三ミミミミミミュ
/テ孑''´ ``''' ====ミ三三ミミミ
l//' `ヾ川ミミミ!
|l!' :.}!リリ||!lミ
| .:.:リ川ミミ}}
| .;;.从川||
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r=====;;;;,.. ソソレ⌒ ;
. | rェ;ェ._ ; l;:.. ,ィァ ァ,._ リ /
. l .;:'. ; l;;: . `´ l! ./ ブーン系とはさしずめ児戯!
l .; ;: ;,. ィ ノ
l ;' ;:,. 、 / 小童の遊びといったところか
l ー- ‐ ' ;.:. ,;'
! ,: ' ; : ; ハ なア!
', .r‐ -- -一 ィ .:.;,/ ヘ
_,,.. - ''´ . ‐--‐ .:,.ィ }`'' - ,,,__
ヘ .::. .;:.. ,.ィ リ
ヽ .____,,. '
デデデデエェエェェェエェッェツェェェェェエェエーン!!
( ^ω^) み、三島由紀夫だおー!!
('A`) う、うわぁ、本物だあーっ!!
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r=====;;;;,..
| rェ;ェ._ ; l;:.. ,ィァ ァ,._ フフ・・ そうだ、私が平岡公威あらため三島由紀夫・・
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r=====;;;;,..
| rェ;ェ._ ; l;:.. ,ィァ ァ,._ この由紀夫、AA達の悲鳴を聞いては黙ってはいられん・・・!
474
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:37:22 ID:GnBXv.tI0
本部以蔵 「三島由紀夫ォォッッ!!」
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r=====;;;;,..
| rェ;ェ._ ; l;:.. ,ィァ ァ,._ フフフ・・久し振りだね本部以蔵・・・・
( ^ω^) !? 二人は知り合いなのかお!?
('A`) 二人の過去にいったい何があったんだ・・・・・
本部以蔵 「こいつはあの宮本武蔵を一瞬でなぶり殺しにした怪物だ・・」
本部以蔵 「てめえらア!! 間違っても手ぇ出すなよ!!」
(#^ω^) うおおおん!!そいつは聞けないお!!
(#'A`) 俺達だって戦えるんだ!!本部さん、一緒に戦わせてくれ!!
、_
*(‘‘)* あたしだって!
三島由紀夫を前に意気込む三人――
しかし、そんな彼らを前にしても、本部以蔵の判断は変わらなかった。
475
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:38:05 ID:GnBXv.tI0
トンッ
それは首への手刀だった。
( ^ω^) うッ!?
('A`) うッ 本部さん・・
、_
*(‘‘)* なんでっ・・・
本部以蔵 「こいつと戦えばお前達は死ぬ
守護るには、こうするしかねえのさ……」
ドサァ・・
三人は地面に倒れた。
本部以蔵 「さァ 始めようぜ・・・」
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r=====;;;;,..
| rェ;ェ._ ; l;:.. ,ィァ ァ,._ フフフ、勝ち目など初めからから無いというのに・・・
476
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:38:45 ID:GnBXv.tI0
デデン!!
──こうしてブーン系AAたちの熱き争いが始まった!──
──そして月日は流れ──
477
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:39:25 ID:GnBXv.tI0
( ^ω^) ・・お?ここは・・・
( ^ω^) !? そうだお、本部さんと三島由紀夫はどうなったお!?
──本部さんはジャングルジムの近くで三島と戦っていたお
二人とも傷だらけだったけど三島の方が膝をついていたお
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r=====;;;;,..
| rェ;ェ._ ; l;:.. ,ィァ ァ,._ フフ、腕を上げたな・・本部よ・・・・
本部以蔵 「・・・・スウ」
本部以蔵 「三島由紀夫、敗れたりッッ!!」
デデン!!
( ^ω^) うおおおおやったお!本部以蔵の勝ちだお!
('A`) ・・・ん? あ、ああ・・・! 本部さんが勝ってるじゃねえか!!
( ;ω;) やったおー!やったおー!!
(;A;) 本部さんが守護ってくれた・・・ブン動会は大成功だ・・・・・・!!
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r=====;;;;,..
| rェ;ェ._ ; l;:.. ,ィァ ァ,._ フフフ これで僕の役目は終わりだ ・・達者でね
本部以蔵 「え?」
478
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:40:31 ID:GnBXv.tI0
l,;;iiii=z;;;,,,_ ,.r,.;;;;;;;;;;;:::::.....
| rェ;ェ._ ; l;:.. ,;;;;;;;;;;;;::::::::::::::............. ・・・・・・
サラララァ...
( ^ω^) !? み、三島先生!!?
('A`) 三島先生が消えていく!!?
本部以蔵 「・・・・」
( ^ω^) ・・! そうだお そういえば忘れていた・・! 三島先生は、もうこの世には・・!
('A`) そ、そうか! 指摘がなかったからうっかりしていたが・・ 先生は既に・・!
( ;ω;) おーん! 三島先生ありがとうだお! 僕達はもう爆発オチに逃げないお!
(;A;) ありがとうございました! 俺達は一生ブーン系を書きます!
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::.............
サララアァァ...
( ;ω;) おーん! 三島先生ぇー!!
本部以蔵 「・・・それじゃア 次は俺の番だな・・・・」サラサララァァ・・
本部以蔵の体が風に散っていく。
479
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:41:12 ID:GnBXv.tI0
( ;ω;) そんな・・!本部さんまで居なくなったら僕らは終わりだお!
(;A;) 頼むよ・・残ってくれよ・・!
本部以蔵 「爆発オチから君達を守護れて 本当によかった・・・」サラァ・・・サララァァ・・・・・・
( ;ω;) うおーんおんおん!もう爆発オチになんて頼らないおー!
(;A;) これからはちゃんと自分でオチを作って終わらせるよ・・!
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::.............
サララアァァ...
( ;ω;) おーん! 本部以蔵ぉー!!
──本部以蔵は優しい笑顔で消えていったお
本部は僕らに武士のなんたるかを教えるために少しだけこの世に戻ってきたんだお!
僕らはそれを忘れずに創作に励まなきゃダメだお!! 先生の思いを無駄にせず、これからも精一杯頑張るお!!
辛くとも一生懸命作品をつくるおー!!
480
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:41:52 ID:GnBXv.tI0
\ デデン!! /
i
〈 ̄ヽ ,!'| `
,、____| |____,、 j i! i
〈 _________ ヽ, ,J`:、,ィl! l! {′
| | | | ,j` Yl!|: | |'i,
ヽ' 〈^ー―――^ 〉 |/ ’ λ' ,j、l! / 、 ., ,il{ ,゙!j!;| :
,、二二二二二_、 ゙ハ! ;. ゙:、 j| '/'}′ ,
〈__ _ __〉 じ:、 i,' ゙:、 ,,., ′彳レ/
| | | | 丶、v{ ヒ! i!||il. , 八 Z
/ / | | |\ __ _,ゝ、;_ ゛:|! ゙ ,rカ  ̄
___/ / | |___| ヽ _  ̄`ζ」'(´ ヽ j! ゛ ,ィ彡′_.. -
\__/ ヽ_____) 二 ニ ゙て∠rιク_;.,、_,ー-'^- =ニ_
481
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:44:27 ID:GnBXv.tI0
ご静読、感謝致します。
そしてわたくしは昨今の安易な爆発オチに対して警鐘を鳴らす者であります。
書き溜めが終わらない。その事実から目を背けるため、都合のよい免罪符として爆発AAを張る。
そんな性根が諸君らの文章力を腐らせるのであります。わたくしはこれを日本男児にあるまじき精神の堕落であると考えます。
わたくしはこの件について非常に強い憤りを感じると共に、ここにファイナル板の閉鎖を宣言いたします。
非常に短い間でしたが、このような堕落が染み付いては畑をひっくり返す他にありません。
なおファイナル板の次は三島由紀夫&本部以蔵板への移住を推奨しております。
諸君らの賢明な判断に期待し、爆発オチという甘えからの脱却を心から願っております。
著者:◆c9sFVHJv2E
代表作:ブン動会撃沈!!三島由紀夫が参加者全員蹴散らして無双するようです
厄姫様は別に不幸では無いようです
グラップラー刃牙 刃牙 範馬刃牙 刃牙道
ブン動会参加作品の全て 他多数
〜〜〜〜〜
ξ゚⊿゚)ξ「っていう 夢ね」
( ^ω^)「ゆめ」
('A`)「夢なら仕方ないな。早いとこ忘れちまおうぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「でもねえ もうひとつ夢を見たのよねえ」
(^ω^) !?
('A`) !?
ポワワン
━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━━
482
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:46:04 ID:GnBXv.tI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
渋澤は行きずりの茶屋前で足を止めると、和菓子の誘惑に負けて腰掛けに座った。
彼が目先の森を眺めつつ息を整えていると、まもなく暖簾をくぐって一人の女性が顔を見せた。
从 ゚∀从「そこの坂、凄かったでしょ」
確かに彼が上ってきた坂道は斜度30%はあろう絶望的坂道。
そんな矢先に丁度よく茶屋を構えるという策略は、見事渋澤の足を止めさせていた。
_、_
(;,_ノ` ) (なるほど。あの坂の後じゃあ誰だって茶屋で休む……)
渋澤は適当に茶と団子を頼み、それを頬張りながら道先の事を考えた。
目的の場所は近い。ちゃんと休めるのはこの茶屋が最後だが、渋澤の頭に休むという考えは無かった。
渋澤の目的は、この山奥の寺院に現れるという“千年僧”に会う事だった。
千年僧はその名の通り千年を生きた者として知られ、一部では天狗や風神とも比喩された人物だ。
しかし千年僧の行方は誰も知らず、既に人々は千年僧を 『もうこれ妖怪じゃん』 と言って妖怪扱いしていた。
.
483
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:46:08 ID:wzhlr78c0
夢見すぎだろ
484
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:47:03 ID:GnBXv.tI0
从 ゚∀从「アンタも寺院に行くの?」
_、_
( ,_ノ` )「その通りだが……俺以外にも千年僧目当ての奴が?」
从 ゚∀从「そうそう」
千年“僧”と“そう”を掛けた高次元ギャグだったが渋澤は無視して話を進めた。
_、_
( ,_ノ` )「そいつら、結局どうだった?」
从 ゚∀从「なんも居ねー。うわー。無駄足だったーうわー」
从 ゚∀从「みたいな事言いながら、み〜んなトボトボ帰ってくよ」
_、_
( ,_ノ` )「そりゃあ、ご愁傷様だな……」
从 ゚∀从「っていうか居ると思う方が変じゃない? だって、千年僧って妖怪じゃん」
ξ‐⊿‐)ξ「それが、そうでもないんだよなぁ……」
千年“僧”と“そう”を掛けているらしいがもうどうでもいい。
ふと会話に割り込んできたのは、桃色の和服を着た金髪の少女だった。
少女は何食わぬ顔で渋澤の隣りに座っており、いつの間にか団子を平らげ、茶を飲んで一服していた。
.
485
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:47:43 ID:GnBXv.tI0
从;゚∀从「お、お客さんいつの間に……?」
ξ゚⊿゚)ξ「すごく美味しかった。はいこれお勘定」
ξ゚⊿゚)ξ「さぁ行くわよ渋澤」
_、_
( ,_ノ` )「……あいよ」
从;゚∀从「ま、まいどー……?」
.
486
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:48:44 ID:GnBXv.tI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
男、千敵を切り裂き、屍の道を歩みゆく。
孤高の人斬り、名を渋澤と……
【 剣豪渋澤・銹錆刀と千年僧のようです 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
487
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:49:24 ID:GnBXv.tI0
山道に入ると、すぐに金髪の少女が口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「千年僧は絶対に居るからな」
少女の名はツンといい、ぶっちゃけ忍者だった。
詳しい事はよく分からないが、とにかく忍者だった。納得出来ない奴は前に出ろ殺すぞ。
_、_
( ,_ノ` )「居なけりゃ次の場所に行く、居ればコイツの事を聞くだけだ……」
ツンと並んで歩きながら、渋澤は腰の刀に手を添える。
渋沢の腰には二本の刀があった。
片方はしっかり手入れされた刀。もう片方は、鞘すら色褪せるほど古ぼけた刀だった。
そして彼が手を添えたのは古ぼけた刀で、彼が千年僧を目的とする理由はこの刀にあった。
ξ゚⊿゚)ξ「……後ろ、来てるぞ」
_、_
( ,_ノ` )「あいよ」
ツンが言うまでもなく、渋澤は背後に忍び寄る気配を察していた。
_、_
( ,_ノ` )「てめえは退いてな」
渋澤が言うまでもなく、ツンは既に姿を消していた。
488
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:50:09 ID:GnBXv.tI0
渋澤は歩調を乱さず歩き続ける。
彼はその最中に周囲の音を聞き分け、追手の数を推測した。
敵数、およそ三人。
その三人が立てる極僅かな音は散り散りで、後方と左方の森に隠れているようだった。
_、_
( ,_ノ` )「……帰った方が身のためだろうに……」
突風が森を駆け抜ける。
瞬間、渋澤は刀を抜いて身を翻した。
∠ ̄\
|/゚U゚| 「覚悟ッッ!!」
身を翻すと、その視界に二人の男が飛び込んできた。
忍装束を纏う彼らは忍者であり、その手には武器としてのクナイを構えている。
彼らは真っ直ぐな戦意を渋澤に向けていた。
話す間も無く、忍者の一人が渋澤に切りかかった。
渋澤はそれを後退して避けると、迷いなく忍者の顔に拳を打ち込んだ。
この一撃で忍者は狼狽し、一瞬の隙を露にした。
渋澤はその隙を見逃さず、刀を振って忍者の胴に刃を走らせた。
.
489
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:53:52 ID:GnBXv.tI0
〜〜〜〜〜〜〜〜
ξ゚⊿゚)ξ「っていう ゆめ」
(^ω^)「ゆめ」
(;'A`)「おめえどんだけ夢見る少女なんだよ」
( ^ω^)「でも銹錆刀っていうのはカッコイイお!
モンハン二次創作時代の片鱗を感じるお!」
ブーンの知識量が「1」上がった。
ξ*゚⊿゚)ξ「へへっ」
(;'A`)「・・・・・そういや俺も変な夢を見たな」
(^ω^)
ポワワン
━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━━
490
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:54:45 ID:GnBXv.tI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
巍晶山は人里からちょっと離れたところにある普通の山。
この山のてっぺんにはものすごい大きな水晶があり、村人達は毎年その水晶の前で巍晶祭というお祭りを催していた。
しかし今年の巍晶祭、その前日に祭りの象徴となる巨大水晶がどこかに消えてしまった。
それについて村人達から相談を受けた巫女ツンは、風邪だったので友達のブーンに異変解決を押し付けた。
ブーンは頑張ることにした。やれいけ内藤ホライゾン、巨大水晶を取り返すのだ!
「頑張るお!」
/⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
| / ブーン
( ヽノ
ノ>ノ
三 レレ
491
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:55:31 ID:GnBXv.tI0
ξ;゚⊿゚)ξ「ゲホゲホ、あーつら……」
ツンデレ神社の神主兼巫女の少女・ツン。
彼女は 畳の上 に大の字で寝転がり、数日前から続く高熱と戦っていた。
ξ;゚⊿゚)ξ「いやだぁー……動きたくないー……働きたくないー……」ゴロン
ξ;゚⊿゚)ξ「クソォー……なんでこんな時に限って熱なんかぁー……」ゴロンゴロン
「ツーーーン!!」
/⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
| / ブーン
( ヽノ
ノ>ノ
三 レレ
その声と共に庭先に現れたのは内藤ホライゾン。
ツンとは色々あって友達である。彼は時折ツンデレ神社に遊びに来るのだった。
.
492
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:56:48 ID:GnBXv.tI0
( ^ω^)「ツン遊ぶお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、見てのとおり風邪なんだけど……」
(# ^ω^)「いいから遊ぶお! おんぶしてあげるから走ろうお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「イヤよ。あんた絶対転ぶし」
(# ^ω^)「僕が転んでもツンだけは守るお! キュン・・・」
ξ;゚⊿゚)ξ「勝手にキュンとさせないで。分かった、分かったから……」
( ^ω^)「おっ! 遊んでくれるのかお!?」
ξ;´⊿`)ξ「お仕事片付けたらねー。
なんか山の水晶が消えたとかで探さなきゃいけないのよ」
( ^ω^)「うはwwそんなの楽勝すぐるwwww」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、なら代わりにやってきてくれない?
その間に風邪治しとくから」
⊂二二二( ^ω^)二⊃「お任せあれだお! 早速凸ってくるお!」ブーーン
ξ;´⊿`)ξ「いってらー……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ(……今の内にデレの家に逃げ込もっと)
.
493
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:57:40 ID:GnBXv.tI0
┌───────────┐
│ ブーン加速中。。。。 .│
└───────────┘
/⌒ヽ
⊂( ^ω^)⊃
( 、ノ ブン
ノ> ノ
レレ
494
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:58:20 ID:GnBXv.tI0
【Stage 1:ツンデレ神社のお友達】
【BGM:オリエンタルダークフライト】
https://www.youtube.com/watch?v=nG3HiNCzwgM&index
.
495
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 17:59:00 ID:GnBXv.tI0
( ^ω^)「とりあえず村に行って情報収集するお!」
⊂二二二( ^ω^)二⊃「さっさとこの山を降りるお!」 ブーーーン
('A`)「おっす」ヌルッ
( ^ω^)「おっドクオ! なんか用かお?」
('A`)「いや、ツンのとこ行こうとしたらお前が居たからよ。
暇だし話しかけてみた。お前こそなに急いでんだ?」
( ^ω^)「向こうの巍晶山に行くんだお! 水晶が無くなって大変らしいお!」
(;'A`)「あのデカブツ水晶が!? そりゃやべーな・・・」
(^ω^)「ドクオは何か知ってるかお?」
('A`)「初耳だしなんにも知らん。けど知ってそうな奴なら心当たりは」
⊂二二二(# ^ω^)二⊃「それをさっさと吐けお! バトル!」ブーーーーン!!
(;'A`)「は!? いや普通に教えるんだが!?」
496
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:01:39 ID:GnBXv.tI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
('A`)「という」
(^ω^)「ゆめ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああっ もうひとつあったわ」
(^ω^)「もはや敗戦処理だお」
ポワワン
━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━━
497
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:03:07 ID:GnBXv.tI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
その1 「魔法少女の日」
夕暮れ時、下校時間、夕飯前のちょっと小腹が空いちゃう時間。
陸上部の先輩方はとっくに家に帰っちゃって、いま、私は一人で校庭を走っている。
寂しいとかは全然ない! そもそも私は足が遅いから、それをなんとかしたくて陸上部に入ったのだ。
なのでこうしてちゃんと努力できる今の生活、私は気に入っているんだ。
ミセ;*゚ー゚)リ「ファイッ! おー! ファイ!」
ミセ;*゚゛ー゚)リ「んっ! 転ぶ!」 ツルッ
・・・結果が伴うと、もっと幸せなんだけどね!
ノハ;゚⊿゚)「……おい、転ぶ前に転ぶ宣言するのは冗談だよな?」
ミセ;*゚ー゚)リ「あ、ヒートちゃん……。ごめん、半分マジ」
すっ転んだ私を引っ張りあげてくれたのは友達の素直ヒートちゃん。
部活にはなにも所属してないけど、運動神経は私の何倍もある。
宝の持ち腐れだ! しかもおっぱいまでデカイ! 理不尽だ!
ノパ⊿゚)「なあよミセリ。アタシが言えた事じゃねーけどさ、人には向き不向きってのがあるんだ」
ミセ;*゚ー゚)リ「えと、どういう意味?」
ノパ⊿゚)「適材適所って言葉がある。後で調べて自分に当てはめてみな」
ミセ;*゚ー゚)リ「……ぐぬぬ……」
ミセ;*゚Д゚)リ「クソー! 才色兼備! 巨乳! 処ッ」
ノハ#゚⊿゚)「――口は災いのもとッ!!」ヒュッ
処女と言いかけると、ヒートちゃんはすぐさま私の頭を思いきり叩いた。
うるせー全部本当の事だもんバーーーカ!! という反抗的な視線を送ると、もう一発叩かれた。
498
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:03:58 ID:GnBXv.tI0
ミセ;*´ー`)リ「痛いよ〜……辛いよ〜……」
ノパ⊿゚)「因果応報。それに人目が無いからって言っていいこと悪いことがある。
アタシに愛想つかされていいなら、いくらでも喋ってていいがな」
ミセ;*´ー`)リ「チクショー……弾圧だぁー……」
ノパ⊿゚)「とにかく今日は帰ろうぜ。
日が落ちたら危ねえって、こないだから言われてんだろ?」
ミセ;*゚ー゚)リ「はあい。分かりましたあ」
間延びした返事をすると、ヒートちゃんはやれやれと呟いて踵を返した。
ふと空を見上げる。そろそろ太陽が沈みきり、夜が来る。
今日は四月末。明日は五月。どこぞの国ではワルプルギスの夜なんて呼ばれるこの夜。
ノパ⊿゚)「お〜い。さっさと部室戻ろうぜ〜」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、ごめん。すぐいくー」
私達はそんな夜の道を往く。
ちょっぴり不安。だけどヒートちゃんが居るし、大丈夫。
半年前からこの町には危ない噂が広まってるけど、それも噂だけに決まってる。
大丈夫、大丈夫、大丈夫……。どんな言葉も三回唱えれば魔法になるって、お母さんが教えてくれた。
私は大丈夫。未来に不安なんかない、大丈夫……。
ミセ;*゚ー゚)リ(っと危ない! 五回以上は呪いになっちゃうんだった!)
ミセ;*゚ー゚)リ(あぶねぇ〜)
ノパ⊿゚)「おいミセリー! 肩貸すかー?」
ミセ;*゚ー゚)リ「はいはい! だいじょぶだから! すぐいくってば〜〜!!」
.
499
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:04:38 ID:GnBXv.tI0
――学校を出てテクテク歩く私達。
ミセ*゚ー゚)リ
ノパ⊿゚)
私とヒートちゃん、実はあんまり喋らない。
友達ではあるけど、あくまで他人。そういう線引きがお互い心地良い。
きっと人との距離感の取り方が似ているんだと思う。だから終始無言でも、私達は友達で居られる。
ノパ⊿゚)「コロッケ食べたい」
ミセ*゚ー゚)リ「分かる」
一言交わしてまた五分の沈黙。テクテク。
そんな感じの帰路は、現実の過酷さを忘れさせてくれる。
頑張っても頑張っても頑張っても、どれだけ頑張っても届かない場所がある事を、忘れさせてくれる。
ノパ⊿゚)「……なあ、進路なんだけどさ」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
ノパ⊿゚)「……ああ、やっぱ県外行くわ。この町は少し、居心地が悪い」
赤みがかった茶髪をかき上げて、ヒートちゃんはぽつんと言った。
彼女は、自分が思いのままに羽を伸ばせる場所に行くと決めたようだった。
うん、正しい。でも思わず、足が止まってしまった。
500
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:05:30 ID:GnBXv.tI0
ミセ*゚ー゚)リ「……そっか。残念」
ノパ⊿゚)「……お前はどうすんだよ。先生みてーな聞き方だけどさ」
私が立ち止まるとヒートちゃんは振り返ってくれた。けれど、彼女は決して足を止めなかった。
うん、正しい。自覚こそしてないだろうけど、彼女はこういう時の同情が意味を持たないことを知っているんだな。
私は歩き出し、ヒートちゃんの隣に戻る。
ミセ*゚ー゚)リ「多分、普通のとこ。推薦貰えそうだし、それで楽しようかなって」
ノパ⊿゚)「……そか。なんか安心した、けど……やっぱ寂しいな」
ミセ*゚ー゚)リ「またどっかで会うでしょ。同窓会とか、色々」
ノパ⊿゚)「……それもそうだな。ま、そん時はよろしく。多分ぼっちだからよ」
ミセ*゚ー゚)リ「や〜い、コミュ障〜」
ノハ;゚⊿゚)「くっそお〜〜言い返せねえ〜〜〜」
そんで今度は十分くらい沈黙。それで今日の会話は終わり。
ヒートちゃんと別々の道を歩き始め、私は一人になった。
・・・こういう無駄な比喩いる? やっぱメンヘラ感が出るからナシで
.
501
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:06:55 ID:GnBXv.tI0
ミセ*゚ー゚)リ「……もう走ろう! よっしゃ!」タタタタッ
って事で走り始めた!! 私は青春らしさの過剰演出に打って出た!!
イヤッフーーーヤッターーーーー青春だーーーーーうわーーーーーーーー
ミセ*゚Д゚)リ「ホギャーーーーーーーーーーーーーー!!!」ダダダダダダダダダ!!!!!!
・・・って感じ。こんな自分だ。大好きハッピーリフレイン。
うん、思いついただけ。走るのサイッコーーー現実死ねーー!!
・・・そんな感じ。
退屈で、嫌味ったらしくて、ほんとう、私なんかにゃどうしようもない現実だ……。
502
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:07:53 ID:GnBXv.tI0
* * * * *
「――『ヴヴォォォォォォォオオオオッッ!!』」
街から遠く離れた山、鬱蒼とした森の中。そこで人外の絶叫が弾けた。
耳を劈くその声――音声は、もしかしたら街の方まで届いたかもしれない。
鉄の体に電子の心。森の木々にも劣らぬ巨躯。
四足歩行、長く太い鼻、どでかい手足に
どかーん!
(⌒⌒⌒)
||
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ 「『パオーン!!』」
| ・ U |
| |ι |つ
U||  ̄ ̄ ||
 ̄  ̄
とくれば、これの正体など語るにも及ばないほど明白。
いま少女の目の前で雄々しく暴れ狂う(下ネタではない)それは、まさしく『象のロボット』と言う他にない代物であった。
.
503
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:08:46 ID:GnBXv.tI0
「『――――ヴァオオオオオオ!!』」
象のロボットが前足をもたげ、勢いをつけて走り出す。
一歩一歩が地面を揺らす強烈な突進は、一人の少女に向かって更に加速していく。
ξ;゚⊿゚)ξ「チッ、通常魔法じゃ火力不足か……!」
対するはピンクでフリフリフワフワな魔法少女っぽい魔法少女。
魔法少女!? ボブは悩んだ。ボブって誰だ!? マイクは困った。
ξ;゚⊿゚)ξ「しゃーない! 全力火炎魔法で消し飛ばすッ!」 ジャキッ!
少女は魔法のステッキっぽい魔法のステッキを前に構え、すう、と静かに息を整える。
途端、少女の脳内になんだか凄い文字列が羅列され、それっぽいアレが、凄い感じでアレだ――ッ!
ξ# ⊿ )ξ「火炎魔法全種起動!!」
ξ# ⊿゚)ξ「まず一発! 全力ファイア!」
木々を薙ぎ倒して迫り来る象のロボット。
それを迎撃せんと繰り出されたのは、3メートル超えの特大火球!
ξ#゚⊿゚)ξ「やっちまえ! 象の丸焼きだ!」ブンッ
少女が殺意を込めて魔法のステッキを振るう。
それと同時に火球が飛び出し、象のロボットと真正面からぶつかり合った!
どかーん!
(⌒⌒⌒)
||
ドタドタドタ
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ とてもあつい!!
| ・ U | 三三
| |ι |つ 三三三
U||  ̄ ̄ || 三三 疾走感≡≡≡
 ̄  ̄ ドタドタ
だがッ! 象のロボットは止まらないッ!!
火炎を突き抜け跳ね除けて、なおも少女に向かってくるッ!!
.
504
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:09:26 ID:GnBXv.tI0
ξ#゚⊿゚)ξ「だったら次! 全力フレイム!!」
⊃―☆
うわあ!火炎魔法だ!しかも凄い方の火炎魔法だ!
ツンは後方に三度跳躍。十分な距離をとり、象に再び照準を合わせる。
ξ;゚⊿゚)ξ(これで駄目ならもう奥の手しかない!
森ごと焼ききるつもりの火炎魔法! 頼むから効いて――!)バンッ
少女の手の平が地面を叩く。
瞬間その場所に爆発が起こり、巨大な爆炎が中空に溢れ返った。
そして、爆炎は象ロボットの視界を一瞬で真っ赤に染め上げた。
「『――ッ!?』」
唐突に現れた爆炎に狼狽した象ロボットは思わず足を止めて数歩引き下がった。
それも束の間、爆炎はすぐさま象ロボットを取り囲むように変形し、その退路を遮断する。
ξ# ⊿ )ξ「全力ッ……!」
少女の声は頭上。
象ロボットは咄嗟に空を見上げ、ステッキを振りかぶる少女を捉えた。
しかし既に二手遅かった。紅蓮を纏う魔法少女は、上位火炎魔法の発動を宣言する。
ξ#゚⊿゚)ξ「――バーンフレイムッッッ!!!!!!!」
505
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:10:06 ID:GnBXv.tI0
( モクモク
) )
( ::( ) ::)
) ::) (:: .(
// )::) プスプス
v l/
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ やられたぞう
| × U |
| |ι |つ
U||  ̄ ̄ ||
 ̄  ̄
\ ☆
| ☆
(⌒ ⌒ヽ /
\ (´⌒ ⌒ ⌒ヾ /
('⌒ ; ⌒ ::⌒ )
(´ ) ::: ) /
☆─ (´⌒;: ::⌒`) :; )
(⌒:: :: ::⌒ )
/ ( ゝ ヾ 丶 ソ ─
ドッカーーーーーーーン!!!!!!
ξ゚⊿゚)ξ「やったわ」
決着ゥゥ――――ツ!!!!
.
506
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:10:58 ID:GnBXv.tI0
――否。安息する間もなく、少女は次の気配を察知していた。
燃え盛る象ロボットの残骸を背に、少女は周囲の森に目を見張った。
ξ; ⊿ )ξ(…………)
ξ; ⊿゚)ξ(次の敵、もう来たのね……)
数は三、いや四……そう数えている間に、敵はどんどん数を増やしていく。
厄介極まりない、と少女は固唾を飲む。
闇に紛れてはっきりとは目視出来なかったが、敵は象ロボットのような大きさでない。
かわりに小さく、そして疾走(はや)い。
まるで暗殺者のように少女を取り囲む次なる敵のロボットは――
.
507
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:11:38 ID:GnBXv.tI0
昆虫界のハヤブサ――――ギンヤンマッッッッッ!!
,r‐- 、 ! |
', . :.:`ヽ、 | i
\ ::.::.:.:丶、 __/| く|
\ .:::. :.::`ヽ、 rヘ土,.)、! .ト、
\ . ::.::::.:..::`丶、 ! /´ )-+'
/´ `丶.,_ :.: .:::.:`ヽ、 Y´>-=チl l
( :.::. ::.`丶、 :::.: :.:::`<=(__,.ノl.}ト、_レ'′
ヽ、 :::::.::..::..::.`:.ー-..、ヨ -―--!|_ |
\ :::. :.: :: :. :::..:::..:式rト、:::.:. :.:`丶、
ヽ、 ..::.. :.::.:::. {(ー-}::`ヽ、:::.: .::.:` ー- 、_
`丶、 ::.:::.:::::)L_,' ..:::.:::`ヽ、 ::. :.:.::.:::.:.::`..:ー-.、
`ー一'´ ,'-l! .::.:.:.:.::.:::丶、 ::.:: .:.::::..::..:.:.:::`ヽ、
/、V.'、 ::.::::.:::: .::`丶、 ::::.:::: :.:. :.:::. .:ヽ
/ー/ ヾ、 :::. :.:.::.::::..:丶、 ___ , . 、 -‐'
/`7 lヽ、 ::.:: :.:::.::..:.:::.:`ヽ、
/ー/ | |`丶、 ::::. :.::.::::.:::::ヽ、
/`7 i l ` 丶、 :::..::.:.::\
/ー/ l ! ` 丶 、_ ::::.:.ヽ
/`フ i l `ー‐'′
レ′ | |
≪出てこないと思ったら出てきてしまい、使わざるをえなくなったギンヤンマのAA≫
508
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:12:49 ID:GnBXv.tI0
ξ; ⊿゚)ξ「――ッ!」バッ!
その時、少女は咄嗟に腕を引いた。
ほとんど無意識の、直感的な行動だった。
ξ゚⊿゚)ξ「やられた……けど残念。相性が悪かったわね」
自分の腕を一瞥し、少女は嘆息を零した。
腕に刻まれた一撃――本来それは、腕一本を丸ごと切り落とす筈の攻撃であった。
しかし、それは少女の薄皮をほんのちょっぴり裂いた程度の傷にしかならなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「それに、さっき象ほど装甲が厚くないならッ」
少女は腰を落として両腕を眼前で交差させ、次の魔法を体内に展開する。
同時に始まるバチバチという炸裂音。起動された魔法は、身体強化の電撃魔法――ッ!
ξ# ⊿゚)ξ「こいつで一掃できる!!」
逆立った髪の毛を翻し、少女は交差させた腕を一気に振り払った。
それはスタートダッシュの合図。その時既に、少女の姿は電撃の残像を残して消滅していた。
.
509
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:13:29 ID:GnBXv.tI0
――森の中に小さな爆発がひとつ、ふたつ。
小さな爆発は連鎖するように次々と発生し、次第に一回一回の間を狭めていく。
_
(疾走感) ,.::'´:::::::;!_____
_/:::::::::::::/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_,.::'´::::::::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_,..::'´::::::::::::_;::- '_____
r::v'::::-=ニ二´.....______
`7ハ>ヾ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´
≪とても速いトンボ≫
森の中を飛び交うギンヤンマ達は、もはや少女にとって動く的でしかなかった。
一匹一匹が電撃に追走され、追いつかれ、一瞬の閃光と共に焼け焦げて地に落ちる。
それが繰り返されて早くも二十。最後の一匹も既に少女の指につままれ、電撃によって燃えカスに変えられていた。
ξ゚⊿゚)ξ「私以外の魔法少女だったら、これも有効だったかもね」ポイッ
電撃魔法を解き、ストンと肩を落とす少女。
だが、これだけやってもまだ、少女の周囲には無数の敵が潜んでいた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……いいわよ、何体でも来いっての……」
暗がりに現れる機械的な赤い光の数々。
少女は魔法のステッキを携え、それが動き出すのを待ち構えた。
.
510
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:18:03 ID:GnBXv.tI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
( ^ω^)「ツンは魔法少女になりたいのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「え、なんで」
('A`)「いや夢見てるじゃん。魔法少女もの、二回も」
ξ;゚⊿゚)ξ「うーん、そうなのかなあ……」
ツンは状態異常 『魔法少女?』 にかかった。
ξ゚⊿゚)ξ「そうかもしれない! 今度やってみる!」
キーンコーンカーンコーン
('A`)「お、授業が始まるぜ」
( ^ω^)「一限目は国語だお! ツンには必要な分野だお!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっと! それどういうこと!?」
(^ω^)「ツンは賢いって事だお」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「なあんだ。さっ、授業の時間よ」
(^ω^)
('A`)
511
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 18:24:55 ID:GnBXv.tI0
,、,,..._ ハヤシライスを食べてきます
ノ ・ ヽ 次からツンちゃんの方を書きます
紅白は本当に逃亡です(エイプリルフール) 赤組がんばれ!
512
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 19:08:06 ID:WM3cbDNA0
ヘリカルの眉毛あるAAとか
>(# ^ω^)「僕が転んでもツンだけは守るお! キュン・・・」
の下りとか所々笑える
待ってるよ
513
:
名も無きAAのようです
:2016/04/01(金) 20:55:34 ID:wzhlr78c0
ハヤシライスくれ
514
:
名も無きAAのようです
:2016/04/02(土) 02:27:48 ID:6a6OFfI.0
ハヤシライス食べたい
515
:
名も無きAAのようです
:2016/04/02(土) 02:39:16 ID:ry9B0ApY0
,、,,..._ ハヤシライスを食べながら寝てました
ノ ・ ヽ 寝ます 起きたら頑張ります
516
:
名も無きAAのようです
:2016/04/02(土) 02:52:23 ID:4z168sh60
設定も砕けた地の文もドストライクでどれも面白そうなんじゃー!
ゆっくり休めよ
517
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/04/02(土) 13:18:43 ID:ry9B0ApY0
ごめんなさい予定入っちゃいました!!
全然書けてないね!食って寝てるだけなのがバレてしまった!!
この血迷いは日を改めます!!没ネタ披露だけで終わってごめんなさい!!
今から紅白頑張ります!!!!!!心を入れ替えます!!逃げませすん!!
518
:
名も無きAAのようです
:2016/04/06(水) 23:03:33 ID:0rHfD2LI0
逃げたら泣く
519
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/04/17(日) 06:55:26 ID:voff0Dl60
【interlude:3】
――――血潮は正義の名の下に。
振るう剣はとうに錆び、この身でさえも地に崩れ―――
ξ´⊿`)ξ グコー グコーー
――また寝ている―――――
ξ゚⊿゚)ξ パチッ
あっ――続きが言えそう――――
ξ゚⊿゚)ξ
ξ´⊿`)ξ
ξ´⊿`)ξ ングォーー
んもおぉぉ―――――
【interlude:out】
520
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 06:56:09 ID:voff0Dl60
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前回のあらすじ!
ツンちゃん起床! 素直四天王登場! ブーンパパ登場!即死!
素直キュートVS歯車王! ヤキニク! スシ! ヤッター!
勇者軍のアジト発覚!? どうなる!? 分からない・・・・
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
521
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 06:57:00 ID:voff0Dl60
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〜学校〜
( ´∀`)「じゃあ先生は出張だから」
( ´∀`)ゞ「あと自習ッ」 ガラガラッ
┗(^ω^)┛「やったお!」
('A`)「暇になったなあ」
きわめて簡潔な自習宣言。教室はあっという間にざわめきで溢れ返った。
カキカキ
( ^ω^)φ「スゴロクでもやるお! ちょっと待ってね、今から作るお……」
( 'A`)「サイコロは鉛筆でいっか。よし、俺からな」 コロコロ
ξ゚⊿゚)ξ「……」
('A`)「ほれほれ3が出たぞ。はやくスゴロク書けよ」
(; ^ω^)「ひどいお! まだ完成してないのに始めないでほしいお!」
( '∀`)「次はなにが出るかなァ〜〜?」 コロコロコロ
(; ^ω^)φ「助けておーーーーー!!」 キュッキュッキュッキュ!!
.
522
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 06:58:18 ID:voff0Dl60
ξ-⊿-)ξ「……ねえ、二人とも」
('A`)「6が出たぞ。書けよ」
(^ω^)「はい」カキカキ トンッ
【ドクオ、出家前に戻る】
('A`)「!?」
(^ω^)「これは今から出家スゴロクだお」
('A`)
(^ω^)「徳を積んで解脱に至るお」
('A`)
ξ-⊿-)ξ「……今は敵の本拠地が分かって、ハインさん達が作戦を練っているって時なの」
ξ゚⊿゚)ξ「遊ぶのはいいけど、あんまり気が抜けてるのは関心しないわね」
ヘ( ^ω^)ノ 「よし! 大体書けたしブーンもやるお!」 コロコロ
【ツン、解脱】
( ´ω`)「……ゴールだお……」
('A`)「世俗から解き放たれたな」
.
523
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 06:59:02 ID:voff0Dl60
現状をまとめるとこうだ。
脱走してきたブーンパパのおかげで敵の本拠地が判明。
ハインさんは先んじて魔王軍にそれを伝え、今はお父さん(魔王ロマネスク)と一緒に作戦会議中。
で、現状とりあえずの決定事項が以下のとおり。
遅くとも二週間後には襲撃をかける。
そしてそのメンバーは少数精鋭。魔界からも何人か呼び寄せるらしい。
そんな感じ。なんて分かりやすいんだ!
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……意気込むのも分かるお!
でもツンはバカだから考えたってしょうがないお! 元気出すお!」
('A`)「そうだそうだ。モンハンやろうぜ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ-⊿-)ξ「……ごめんなさい。あんまり、今はそういう気分じゃないの。
この戦いが終わったら、またいっぱい遊びましょう……」
私は席を立ち、髪をファサーとしながら教室を出て行った。
キマった! なんて理知的な去り方なんだ・・・
テクテク・・・・
.
524
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 06:59:49 ID:voff0Dl60
( ^ω^)
('A`)
( ^ω^)「……ツンはなんで頭かいてたお?」
('A`)「風呂に入ってないから痒かったんだろ。察してやれ、デリカシーだ」
(^ω^)
<(^ω^)>「オーマイガッ! デリカシーショック!」
('A`)
('A`)「これで一発ギャグ作れそうだな。考えるか」
(^ω^)「いいNE」
525
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:01:05 ID:voff0Dl60
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〜ツンちゃんハウス〜
ツンちゃんハウスのリビング。
お昼休みのウキウキ番組を垂れ流しつつ、ハインとロマネスクは敵地襲撃作戦を練っている。
作戦会議開始が始まって早くも一時間。
参加メンバーの絞り込みも進み、ようやくうんたらかんたら(地の文が思いつきませんでした。ごめんなさい)
从 ゚∀从「――俺とアンタは確定。で、ミセリと貞子とワカッテマスは第一候補。
魔界の四天王とツンちゃん、ブーンは次点と……」
ハインはメモ用紙に羅列した名前を見直し、ロマネスクに言った。
从 ゚∀从「急いで集められるのはこんくらいか? ちぃと不安だな」
526
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:01:45 ID:voff0Dl60
( ФωФ)「……そうか? 最初から言っているが、我輩だけでも十分なのだぞ」
从;゚∀从「いや、勇者軍の本拠地がどんな規模か分からねえだろ。
そりゃあ魔王軍に比べれば小規模だろうが、あんた一人じゃ敵に囲まれて終わるぞ」
( ФωФ)「ムッ」
从 ゚∀从「考えてもみろ。少なくとも四天王クラスの敵が九人、あんた無事で済むのか?」
( ФωФ)
( ФωФ)┛「やれる! 任せておけ!」
从 ゚∀从
从;゚∀从(……魔王軍は参謀を置くべきだ。こいつバカだ!)
☆まめちしき☆
(^ω^)「ツンのパパもバカだお!」
527
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:02:57 ID:voff0Dl60
ガチャ それは玄関が開く音
トテトテ それは誰かが近付いてくる音
ガチャ それはリビングのドアが開く音
☆脳死した地の文、恥を知らず――!
( ´∀`)「お邪魔しますモナ〜」
( ФωФ)「ムッ。誰であるか。新聞の勧誘か、殺すぞ」
从 ゚∀从「おーう。遅かったな」
入ってきた男に手を振って見せてから、ハインはロマネスクにその男を紹介した。
从 ゚∀从「勇者軍抜ける時に一緒だったヤツでな、モナーってんだ。
俺の持ってる情報は大体こいつから貰ったもんだ。使えるヤツだぜ」
( ´∀`)「どうも〜」
.
528
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:03:37 ID:voff0Dl60
( ´∀`)「……という紹介で、十分モナ?」
( ФωФ)「……ふむ、まあよい。敵の敵であるなら誰であろうとな」
素っ気無く言い、ロマネスクは腕を組んで背中を丸めた。
( ФωФ)「しかしハインリッヒよ。
ずいぶん長い間、我々を謀っていたようだな」
( ФωФ)「特にブーンの血筋だ。あれには驚かされた。
まさか勇者の末裔だったとはな……」
从 ゚∀从「悪いが目的があった。ブーンの父親を助け出すっていう目的がな」
ロマネスクの詮索に、ハインリッヒは特に悪びれる様子もなく答える。
从 ゚∀从「俺もあいつも長期的な情報収集の為に魔王軍とつるんでたんだが、
オヤジさんの居場所も分かった今、下手な芝居をうつ必要もなくなった」
从 ゚∀从「なんにせよ俺もブーンも敵の敵だ。今はそこまでがハッキリしてりゃあいいだろう?
お互い戦力も情報も不足してんだ。今までどおり仲良くしようぜ」
( ФωФ)(魔王の娘が勇者の息子と学園生活など完全に事案ではないかよくやった……)
ロマネスクは話を聞いていなかった。
.
529
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:05:41 ID:voff0Dl60
( ФωФ)「……なるほど、話はちゃんと聞いていたので理解した。
ならば、人の娘を切り札扱いしておった事にも目を伏せてやろう」
从;゚∀从 ギクッ
( ФωФ)「妖刀・首断ちも大して悪用していなかったようだしな。
色々と、まあ、許してやろうではないか。ちゃんと聞いていたのでな」
从;゚∀从「悪かったって。実害も出てないんだから勘弁してくれ、な?」
( ФωФ)「だから許すと言っている。ただし、次はないというだけでな」
从;゚∀从「……あいよ」
( ´∀`)「いやあ魔王様の寛容な精神、まったくもって痛み入るモナ」
( ´∀`)「それで早速だけど敵の内部情報をいくらか聞き出してきたモナ」
多少の息苦しさを物ともせず、モナーはさっぱりした態度で話を進めにいった。
モナーはさっさと席につき、どうこう (ここもダメでした! ごめんNE!(^ω^)
( ФωФ)「聞き出してきた? 誰からだ」
( ´∀`)「こないだの女の刺客。デレとかいうらしいモナ」
ああ、とだけ呟き、ロマネスクは瞑目する。
530
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:06:32 ID:voff0Dl60
从 ゚∀从「で、何が分かった」
( ´∀`)「……単純に言って内部分裂だね。
勇者軍の中に王座の九人を中心とする武闘派が一つ。
それとは別に、ブーン君のパパを利用した実験をしている派閥が一つ」
( ´∀`)「表向きは王座の九人が全体を指揮しているけど、危険性は後者のが上らしいモナ。
こっちは勇者万歳の宗教団体。勇者製作の為なら手段を選ばないんだと」
( ФωФ)「……なるほど。そいつらが裏から王座の九人を操っているという事か」
( ´∀`)「多分その認識で間違いないと思うモナ。
なんにせよ、敵は二つの集団だと見るべきモナ」
( ФωФ)「そうだな。どちらにせよ、いずれ二つとも全滅させるが……」
从 ゚∀从「……とりあえずツンちゃんどうする。
確かな戦力にはなるが、敵の狙いもツンちゃんだぜ」
从 ゚∀从「しかも今の話からして捕まれば即刻実験材料だろ?
どうなんよ。そこら辺、父親として……」
( ФωФ)
ハインリッヒに視線を向けられ、ロマネスクは少しのあいだ沈黙した。
女子供とはいえ一人娘である以上、いずれはツンが魔王の座を継ぐことになる。
それを思えば此度の戦いもまた試練。ここで終わるような者に継がせるものなど何も無い。
.
531
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:07:23 ID:voff0Dl60
( ФωФ)(ほんとは死ぬほど可愛がってフリンフリンの服を着せたかった)
( ФωФ)(我輩みずからピアノを教えてやりたかった・・・あとやっぱり犬も飼いたかった・・・)
( ФωФ)(ちっちゃいツンと子犬? 最高ではないか・・・)
( ФωФ)(なのに何故どっちも拒否したのだ、ちっちゃい頃のツンよ……)
( ФωФ)(嘆かわしいぞ、ツン……今からでも遅くはないぞ……)
( ФωФ)(犬を飼いたがれ、ツン……!)
――魔王が情に走って血統を軽んじるような真似は出来ない。
ロマネスクは、極めて魔王らしい思慮を終えた。
( ФωФ)「――ぬるい事を言うなよハインリッヒ。ツンも連れて行く。
アレとて自分の身を守れるだけの力は付いている」
从 ゚∀从「……んじゃ三人目は確定か。
あとはどうする? いっそのこと、もう全員連れてくか?」
(; ´∀`)「……考えるの面倒臭くなってるモナ?」
从 ゚∀从「いやあ、だって要は残党狩りだしなあ……。
王座の九人を倒したら終わりだし、そんな意気込む事もねえかなって……」
( ФωФ)「あとは順当にミセリと貞子を連れていけばよかろう。
範囲攻撃に関しては魔術師が一歩先を行く。数での不利もこれで解決だ」
.
532
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:08:32 ID:voff0Dl60
从 ゚∀从「それでいっか。いいよ、大体俺らで片付けるし。
ツンちゃん達にはザコを一掃してもらう感じでさ」
从 ゚∀从「俺が三人倒す、アンタが六人倒す。
それで王座の九人は壊滅。オッケー?」
( ФωФ)「よし、心得た」
紆余曲折の結論は、とても簡単な引き算によって導き出されてしまった。
もう面倒臭いからなんでもいいという極めて分かりやすい理由によって。
( ´∀`)「一応僕も部下を連れて近くに待機しとくモナ。
なんというか、怖いのは王座の九人だけじゃない気がするモナ」
从 ゚∀从「……分かった。なら諸々の備えは任せる。暗躍は俺よりお前のが上手い。
こっちに報告もしなくていい。好きに動いてくれ」
( ФωФ)「こちらも異存ない。邪魔さえしなければ何でもよい」
( ´∀`)「しないと約束するモナ。とにかく、僕は合理と利益の為に動くモナ」
( ФωФ)「……利益」
.
533
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:09:41 ID:voff0Dl60
( ФωФ)「……お前達、何が望みだ。世界の半分か」
从 ゚∀从「……ちげェ。俺はただ、俺のもんを返してほしいだけだ」
( ФωФ)
从 ゚∀从「ありゃあ戦争中の出来事だったな。
懐かしいぜ。そっちの四天王が三人掛かりで俺を囲んでよお……」
从 ゚∀从「……ま、俺はギリギリ生き残ったが、代わりに自分の武器を大半失くしちまった」
( ФωФ)「……」
ロマネスクはモナーが口にした「利益」という言葉に言外の意図を察していた。
とどのつまり、結局のところ――
从 ゚∀从「……ひとつ残らず返せとは言わねぇ。
だが今度の戦いに必要な分だけは絶対に返してもらう」
从 ゚∀从「それが今回、俺がおめえらに協力する為の条件だ」
――目的が無ければ、行動は起こらないという事だ。
.
534
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:10:31 ID:voff0Dl60
ピョイン
∧_∧ ┌────────────―
◯( ´∀` )◯ < 僕は日本円で十億欲しいモナ!
\ / └────────────―
_/ __ \_
(_/ \_)
lll ☆その男、現実主義――!!
.
535
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:11:11 ID:voff0Dl60
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
536
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:11:52 ID:voff0Dl60
【interlude:4】
――――勇者軍本拠地、医療区画――――
.
537
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:12:46 ID:voff0Dl60
スライドドアの前に立つと、センサーが反応し、プシウと音を立てながら道を開けた。
ギコは持ってきたささやかな花束を傷つけまいと、そおっと病室に足を踏み入れる。
(*゚ー゚)「でね、そのときお兄ちゃんがね――」
病室にはベッドが一つ、少女が一人。彼女の話し相手として看護婦も一人ついていた。
二人は穏やかな雰囲気のなか、一人が笑えばもう一人も笑うような仲睦まじい様子を見せていた。
今している話が余程盛り上がっているのか、二人はまだギコが入ってきたことに気付いていない。
平和な時間を遮ってしまう事に申し訳なさを感じながらも、ギコは空いた手で壁をノックする。
二人の視線が、ギコに向けられた。
(,,゚Д゚)「よっ」
(*゚ー゚)「あ、お兄ちゃんだ! シスコンの!」
看護婦「あら、シスコンのお兄さん……」
(,,゚Д゚)「どうも、こんにちは」
逐一訂正しているとキリがないくらい、ギコのシスコン設定は勇者軍全体に広まっていた。
噂の発信源は彼の妹・しぃ。
それを咎めることは容易いが、余り構ってやれない負い目から、ギコはとりあえず彼女の多弁っぷりを見逃してやっていた。
病弱なのにやたらヤンチャをしたがる手間の掛かる妹だが、ギコにとってはたった一人の家族。
彼女のワガママを聞いてやれる人間は、もうこの世にはギコ一人しか居ない。
.
538
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:13:39 ID:voff0Dl60
(,,゚Д゚)「元気そうだな」
(*゚ー゚)「……あれ、シスコン訂正しないの?」
(,,゚Д゚)「もう手遅れなくらい広まってるから訂正しない。諦めた」
(*゚ー゚)「噂って怖いね!」
(,,゚Д゚)「お前が広めたんだけどな」
(*´ー`)「でへへ……。愛ゆえに、ってヤツですなあ」
(,,゚Д゚)「そうだな。ありがとうよ」
しぃの枕元に立ち、ギコは彼女の手を取った。
シスコンかな? 看護婦は思った。
(,,゚Д゚)「……今日も元気か、しぃ」
薄く、透き通るような綺麗な手。
だが、それは決して彼女を褒める言葉には成りえなかった。
(*゚ー゚)「ん? 元気元気、顔色もバッチリでしょ!」
しぃが外出や激しい運動を禁止されて十年余り。
かけっこで転んで出来た傷も、勉強を頑張るあまり出来てしまったペンダコも、友達と喧嘩をした思い出も。
彼女が一人の人間として生きてきた過去は、この十年の療養生活に真っ白に塗り替えられてしまった。
綺麗な手だが、この手が彼女の望む平穏な日常を掴む事は二度とない。
死を約束された命、空白に塗り替えられた体。
急がなければ彼女はいずれ本当に全てを失ってしまう。
ギコは彼女の手を見るたび、己の無力さと確固たる決意を思い出す――
.
539
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:14:23 ID:voff0Dl60
(,,゚Д゚)「……そうか。ならいい。よかった」
ギコは花束をしぃに渡し、ほんの少し笑みを見せた。
しぃ以外にはこれが彼なりの笑顔だとは分からないほど、ほんの少しだけ。
(*゚ー゚)「またお仕事行っちゃうの?」
(,,゚Д゚)「ああ。帰ったらまた来る。
でも次はちぃと大仕事でな、いつ帰れるか……」
(*゚ー゚)「……分かった! なら、約束。ちゃんと帰ってきてね」
差し出された小指。
ギコは一瞬押し黙ってから、そこに自分の小指を引っ掛けた。
(,,゚Д゚)「てめえに嘘をつけるかよ。心配すんな、帰ってくる」
(*゚ー゚)「……うん! また待ってるから、信じてるから」
指をほどき、踵を返す。
ギコは最後にしぃの顔を一瞥し、病室を後にした。
.
540
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:15:25 ID:voff0Dl60
(-@∀@)「あの子、そう長くは持たねえぞ」
(,,゚Д゚)「分かってる」
廊下に出た途端、脈絡なく突きつけられた言葉に即答する。
ギコはアサピーに目もくれず、立ち止まらずに歩き続けた。
(-@∀@)「一人じゃ無謀だぞ」
(,,゚Д゚)「だからって誰が来るんだよ」
(-@∀@)
(-@∀@)「……ま、誰も来ねえなあ」
(,,゚Д゚)「……俺が三日以内に魔王城ツンを仕留めてくる。手段は選ばない。
テメエは手術の準備だけ済ませておけ。大急ぎでだ」
(-@∀@)「……死ぬぞ」
(,,゚Д゚)「死なせない為にいく」
ギコは一人、道を行く。
その背中を見送りながら、アサピーは呟いた。
(-@∀@)「……昔は、ウチにもああいう奴が沢山居たもんだ……」
(-@∀@)「……居心地わりぃぜ。なあ、フォックス……」
懐の煙草を一本抜き取り、それをくわえて口を閉ざす。
火は点けなかった。アサピーにとって、煙草はただの口封じでしかなかった。
.
541
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:16:36 ID:voff0Dl60
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〜学校〜
( ´∀`)「出張終わり!」
( ´∀`)ゞ「でももう放課後! 解散! また明日!」
┗(^ω^)┛「やったお!」
('A`)「暇になったなあ」
きわめて簡潔な終了宣言。教室はあっという間にざわめきで溢れ返った。
('A`)「これからどうする? 遊んで、……は、いかねぇか」
(^ω^)「そうだNE! はやく帰って寝たいお」
('A`)「だな。近々でかいことすんだろ、頑張れよな」
( ^ω^)「ツーーーン! 帰るおーー!」
( ^ω^)「……」 シ
|
('A`).「……」 ン
.
542
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:17:17 ID:voff0Dl60
( ^ω^)「おかしいお。ツンが居ないお」
( ´∀`)「魔王城さんなら早退しましたよ。聞いてないモナ?」
(^ω^)「いつ!?!?」
( ´∀`)「自習の時かな? 気分が優れないって言ってたモナ」
(^ω^)
(^ω^)「……ドクオ気付いてたお?」
(;'A`)「……そら気付いてたけど、ていうかなんでお前が気付いてねえんだよ」
(;'A`)「いちおう護衛役だろ? いや、じゃあ今あいつどこに……」
(^ω^)
(^ω^) ヤベッ
(゚A゚)
543
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:17:57 ID:voff0Dl60
(;;^ω^)「ま、まあツンも強い子だお! 大丈ブイ!」
(^ω^)v ダイジョウブイ
(;゚A゚)
(;;^ω^)「……とりあえずツンの家に行くお。
居なかったら、探しに行くお」
(; ´∀`)「居なかったよ。さっき出張帰りにお見舞いしてきたけど……」
( ^ω^)
(^ω^)
(^ω^) ウーワ
【interlude:out】
.
544
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:19:20 ID:voff0Dl60
〜〜駅前 カラオケ屋〜〜
<アザッシァー
ξ゚⊿゚)ξ「あー歌った」 テクトコ
適当に理由をつけて学校を抜け出してきた私、魔王城ツン。って今更かな? うふふ
学校を出てから暇だったので三時間ほどカラオケにこもっていた。楽しかった。
从'ー'从「たのしかったね〜」
そしてもちろん一人ではなかった。
この子は渡辺ちゃん。数少ない、本当に数少ない私の女友達である。
学校を抜ける時に誘ったら一緒に来てくれたのだが、多分本人には学校をサボった自覚はない。
ξ゚⊿゚)ξ「学校サボってよかったの?」
从'ー'从
从;'ー'从「何にも言わずに出てきちゃった!!」
案の定であった。
ξ゚⊿゚)ξ「やれやれ。明日行ったらちゃんと謝るのよ」
从;'ー'从「ぶぇ、ぶぇぇ〜」
彼女はいわゆるアホの子で、本当にヤバイと思っている時は死にかけのブブゼラみたいな声を出す。
なので今日のサボりはヤバイ判定なのだろう。となれば少し、罪悪感も湧いてくる。
.
545
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:20:46 ID:voff0Dl60
ξ゚⊿゚)ξ「なんか食べてから帰る? 奢っちゃうよ」
从*'ー'从「え、いいの!? わーい!」
ξ゚⊿゚)ξ「何がいいかな……。駅前だから何でもあるし、リクエストある?」
从*'ー'从「ヤキニク! 上カルビ!」
即答だった。
ただいま時刻は午後五時を回ったくらい。
この時間から制服を着た女子高生二人が焼肉屋に入るというのも憚られ
ξ゚⊿゚)ξ「よし、行こう!」
ない! ヤキニク最高! 私達はスキップした。
しかしそろそろ帰宅ラッシュがどうこう。
焼肉屋は駅の向こう側なので、このままだと人混みに飛び込むことになる。
私はその場でスキップしながら周囲を見渡した。
近道、近道……そうして探してみると、ちょうど近道になりそうな路地を発見。
私は見つけた道を指差し、渡辺ちゃんに提案する。
ξ゚⊿゚)ξ「あそこの路地裏通ってく? きっと早いわよ」 スキップスキップ
从'ー'从「えっと……うん! よくわかんないからついてくね〜」 スキップスキップ
.
546
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:21:33 ID:voff0Dl60
とりあえず道も決まったので、私達はスキップでその路地裏に入っていった。
大体の感覚で、なんとなく進んでいく。
それから大体3分後、
ξ゚⊿゚)ξ「うーん」 スキップストップ
从'ー'从「どうしたの〜」 スキップストップ
ξ゚⊿゚)ξ「迷った」
从'ー'从
迷った。
.
547
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:22:37 ID:voff0Dl60
ξ゚⊿゚)ξ(……マズったな)
――というのも建前で、今の私達は実際ヤバイ。
ここは既に勇者軍の結界内だった。
しかも今回、その結界ですら何かが違う。
ξ゚⊿゚)ξ(結界の展開を察知できなかった。
今までそんな事なかったのに。この結界、特別製か……)
ξ゚⊿゚)ξ(……敵の狙いは私だけでしょ。渡辺ちゃんとは離れた方が……)
从'ー'从「えっと、どうする〜? スマホで調べる〜?」
思案を打ち切り、振り返る。
きっと表情が険しくなっている。私は笑顔を作り、それを彼女に見せた。
ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず前進あるのみでしょ!
私はこのまま真っ直ぐ行くから、渡辺ちゃんは来た道を戻ってみて」
从'ー'从「うん! 分かったぁ〜」
え? それだと私だけ焼肉屋に着かなくない? いやいや、もしこの道が近道なら後でケータイで呼ぶから大丈夫。
というやりとりまで考えていたが、渡辺ちゃんはやはり致命的なアホのようだった。
なんの疑問も抱かず、彼女は来た道をスキップで帰っていった。
ξ゚⊿゚)ξ(アホで助かったー)
.
548
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:23:17 ID:voff0Dl60
ξ゚⊿゚)ξ「……さて」
息を整え、全身に満ちる魔力に私の意思を通す。
魔力は意思に反応し、意識をもって私の求めに応じる。
仄かな閃光――私の首に、赤いマフラーが具現化する。
ξ゚⊿゚)ξ「行くわよ」
私は自分の影を見下ろし、ゼノグラシアに声を掛けた。
(::::::::⊿)「……」
影の中で揺らめく曖昧な存在。確かにあるのは鋭く光る片目だけ。
これがゼノグラシアの待機状態。無愛想は相変わらずだった。
ξ゚⊿゚)ξ「敵は気配を消してる。魔族でもないから魔力探知もできない。
目立つところに立って、向こうから出てくるのを待つ」
(::::::::⊿)「……愚行ダナ。的ニナルゾ」
ξ゚⊿゚)ξ「言ってなさい。移動する。迎撃任せたわよ」
(::::::::⊿)「……了解シタ」
.
549
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:24:15 ID:voff0Dl60
私はぐっと腰を落とし、腕を構えて目先を見据えた。
走り出すタイミングは適当。心の中でカウントダウンを開始する。
ξ゚⊿゚)ξ「いち……に、さんッ」
心の中で言うつもりが口に出ていた辺りは愛嬌。
とにかく、走り出した私はさっさとトップスピードに入ることにした。
――肉体が風を切る。
体表の熱は瞬く間に吹き飛び、空気の塊をかき分けて進む感覚がどんどん強くなっていく。
たなびく赤マフラーが騒がしくバタバタと音を立てている。
さすがに音を置き去りにはできないのでここら辺で加速を止める。というかこれが限界。
これで助走は十分。路地の突き当たりも見えてきた。
あとは適当にホップステップジャンプで空中に出るだけだ。
ξ゚⊿゚)ξ「よっ――」
歩幅を大きく広げて軽く跳躍。ふわっ、と体が浮く感覚。
ξ゚⊿゚)ξ「ほっ――」
着地と同時に地面を蹴る。跳躍は高度を増し、滞空は数秒に渡った。
ξ#゚⊿゚)ξ「せえ……」
次で飛ぶ。
タイミングを計り、私は最後の跳躍に向けて両足にぐっと力を込めた。
.
550
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:25:18 ID:voff0Dl60
ξ#゚⊿゚)ξ「――のッ!」
着地の瞬間、私は両足で地面を叩いた。
体が一気に空に舞い上がる。数秒後、私は駅前のビル群を眼下に一望できる程の高さにまで到達していた。
浮遊感が始まった。この感覚は束の間だ。私に体はすぐに落下し始める。
私はくるっと体を翻し、着地できそうな建物に目星をつけた。
ξ゚⊿゚)ξ(あそこにしよう)
今度は赤マフラーに魔力を込める。
そもそもが魔力で出来たこのマフラーは、命じればその通りに動く私の手足でもあった。
私は赤マフラーをぎゅっと握り締め、赤マフラーの尾で空中を叩いた。
空気が弾ける乾いた音。途端、落下と加速が同時に始まった。
目標の建物はあっと言う間だった。
私は赤マフラーを先に着地させ、衝撃の大半をマフラーで受けきった。
それからゆっくり安全に、私はその建物の屋上に降り立った。
.
551
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:26:07 ID:voff0Dl60
ξ゚⊿゚)ξ「――さて」
静止した夕日、わずかに紫がかった結界世界。
ビル群に乱反射した夕日を浴びながら、私は――
(,,゚Д゚)
――視界の一端に、敵を見つけた。
.
552
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:26:48 ID:voff0Dl60
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第一戦 王座の九人・ギコ
VS 【欺帝審判】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
553
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:33:05 ID:voff0Dl60
☆敵のステータス☆
≪ (,,゚Д゚) / 欺帝審判(フェイク・アンド・バニシングエクスカイザー) ≫
【本体名】 ギコ
【タイプ】 スタンド
【基本能力】
[破壊力:C] [スピード:C] [射程距離:B]
[持続力:D] [精密動作性:C] [成長性:D]
A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み E=よわい F=論外 S=最強
【概要】
真実と欺瞞を暗示する激化能力。発動するとジョジョ的スタンドが現れる。
スタンドで触れた物の 『真実』 を 『望んだ嘘』 と入れ替える能力がある。
硬い物は柔らかく、冷たい物は熱く、偽物を本物にしたりなどが可能。
あらゆる物質の性質を好きなように変化させられるが、代わりに持続力は低い(頑張っても10分)。
特に偽物を本物のするのはかなり疲れる。あんまり無理があると一瞬で能力が切れてしまう。
真実と嘘を入れ替える事は出来るが、その逆は出来ない。
なので、ギコには激化能力とは別に ≪真実を見極める目≫ というスキルがある。
滅多な事では騙されない鋭い観察能力がある。すごい!
そしてあくまで『入れ替える』なので、嘘と入れ替えた真実は、そのままスタンドの性質として活用できる。
硬い物を嘘と入れ替えた場合、スタンドはとても硬くなる。軽い物と嘘を入れ替えれば、スタンドは軽くなる。
しかも獲得した真実は能力発動中はずっと消えずに留まり、増えていく為、入れ替える度にどんどん強くなっていく。すごい!
一時的に敵の能力を奪うことも可能。
以上、なんだかとても頭を使いそうな激化能力であった。
彼の能力はブーンの能力と似通った部分も多く、もし彼が仲間になれば、きっとブーンの良い師匠になるだろう。
554
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 07:33:46 ID:voff0Dl60
,、,,..._
ノ ・ ヽ 次回、戦闘! 頑張ります!
/ ::::: i しっかり書き溜めるので一ヶ月はかかると思います!
/ ::::: ゙、 頑張ります! 頑張ります! 頑張ります! うおおおお!
.
555
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 09:10:05 ID:F4Q2Qf6E0
何時の間にか奇妙な冒険になっとる
556
:
名も無きAAのようです
:2016/04/17(日) 11:42:23 ID:jToFjfoo0
乙!
相変わらず面白い
557
:
名も無きAAのようです
:2016/04/18(月) 13:18:45 ID:Tr.Cla/s0
おっ戦闘描写あるんけ?
558
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:00:56 ID:2xBOw8eI0
おつ!!
559
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/05/03(火) 00:45:50 ID:t2s5WCys0
紫がかった夕焼けの結界世界、停滞しきった空気はぬるい。
駅前ビル群の屋上で、私は男の姿をじっと見つめていた。
男は数軒離れた屋上に立っていた。彼もこちらを睨んでいる。
軽快な跳躍――男はひとつふたつと屋上を飛び移り、私と同じ場所まで来た。
フェンスの内側、屋上の端と端。
戦おうと思えば今すぐにでも始められるこの距離で、しかし男は身構えない。
何か言いたげだ。そう思った矢先、男が口を開いた。
(,,゚Д゚)「戦う前に話がある」
ξ゚⊿゚)ξ「待った、その前に聞く。貴方はだれ?」
(,,゚Д゚)「……王座の九人、ギコ」
ξ゚⊿゚)ξ「……丁寧にありがとう。そっちの話を聞くわ」
――王座の九人。
勇者軍最高戦力として選ばれた九人、男はその一人だという。
この結界や徹底的な気配消しからして強敵だとは予想できていたけど、まさか四天王クラスがいきなり来るとはね……。
.
560
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 00:46:30 ID:t2s5WCys0
(,,゚Д゚)「まあ分かりやすく言う。今すぐ降伏しろ。
色々と人体実験を受けるだろうが、しばらくは殺されないだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「……生憎だけどお断りするわ。
私の体、そんなに安くないの」
(,,゚Д゚)「なら話は終わりだ。俺が貴様を倒し、連れ帰る」
淡白なやり取りが呆気なく終わる。
途端、ギコの周囲に薄紫のオーラが立ち上った。
それと同時に彼の体からなにかが剥離し、その姿を露にした。
両手足に鎖付きの枷をはめられた白黒まだらの皇帝姿。
朽ちかけの帝冠、外套は漆黒。
十字架で口を塞いだ真白な仮面が、それの顔面を覆っている。
この能力のAAは、作成技術不足により、ない。
(,,゚Д゚)「……欺帝審判。それが、俺の能力の名だ」
傍らに現れた人型のそれはギコの激化能力・欺帝審判(フェイク・アンド・バニシングエクスカイザー)。
そして、見ただけで十分に理解(わか)ってしまった。
言いたくはない、認めたくはないが――
.
561
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 00:47:36 ID:t2s5WCys0
ξ;゚⊿゚)ξ(――今のゼノグラシアと互角、それ以上か)
私は一歩後ずさり、ゼノグラシアを前に出した。
影に潜ませ待機させている余裕は無い。魔力を供給し、彼を具現化する。
(::::::::⊿)「……難敵ダナ」
やがて、人間の形をした闇の塊が私の前に現れた。
ゼノグラシアは既に戦闘体勢をとっており、いやなんとも心強い。
ξ;゚⊿゚)ξ「……それでも倒してもらうわよ」
具現化したゼノグラシアには常に魔力供給が必要になる。
それも莫大な量の魔力。燃費が悪すぎるのだが、ところが私は魔王の末裔。
こと魔力量に関しては他の追随を許さない。ゼノグラシアとはある意味、相性が良いのである。
ξ;-⊿-)ξ(最初から八割でいく。めいっぱい吸いなさい、ゼノグラシア……!)
魔力を高める――私の周囲に、真紅色のオーラが立ち込める。
十分な魔力量を貯蔵した後、私は赤マフラーの末端を魔力によって延長した。
マフラーがするりと伸び、ゼノグラシアの首元に巻きつく。
魔力で具現化した赤マフラーには魔力の供給ケーブルとしての役割がある。
私達は接続された。そして私の『八割』の全力が、ゼノグラシアの中に注ぎ込まれていく。
.
562
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 00:48:23 ID:t2s5WCys0
――ゼノグラシアの姿が異変する。
ただの影でしかなかったその姿には、次の瞬間、明確な実体があった。
黒いマントを翻し、元気なうさみみをピンと立て、
それは一つの命として地面に足をつける。
(メ._⊿)「……八割とは、ずいぶん豪勢だな」
ξ;゚⊿゚)ξ「そういう相手なの。ウサたんなら分かるでしょう」
(メ._⊿)「……我は三月兎。決してウサたんなどではない」
ゼノグラシア・ウサたんモード! 彼はウサギさんになった。とても可愛い。
私と一緒に赤マフラーを巻いているのもとても似合っていて可愛い。
やはりこの赤マフラーは正解だった。
.
563
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 00:49:22 ID:t2s5WCys0
ξ#゚⊿゚)ξ「いいからやるわよ! 速攻あるのみ!」
ξ#゚⊿゚)ξ「あいつをブン殴りなさい! ゼノグラシア!!」
(メ._⊿)「……心得た」
指示を受け、ゼノグラシア・三月兎モードが地面を蹴る。
(#,,゚Д゚)「ッ」
三月兎が動いた。攻撃が来る。
ギコはその一撃を欺帝審判で防御しようと思考したが、
しかし、その思考が生まれた瞬間、もう既に
(メ._⊿) ストッ
(;,,゚Д゚)「――なッ!?」
三月兎はギコの懐に着地し、ギュウと拳を握り締めていた。
防御・反応がつけ入る隙はもう無い。
ξ゚⊿゚)ξ(初見殺し、成功!)
三月兎はただシンプルに、全力を込めた拳でギコの腹を殴りブチ抜いた。
グチ、という血肉を掻き分けた音が鳴る。
(;,, Д )「ぐ、うおォッ……!」
.
564
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 00:52:34 ID:t2s5WCys0
(;,, Д゚)「――――欺帝審判ッッッッ!!」
(メ._⊿)「!」
しかし攻撃をくらった直後、すかさずギコが声を張り上げた。
三月兎は咄嗟に一歩引き下がった。
その一瞬あと、薄皮一枚を隔てたギリギリ寸前のところを、欺帝審判の左手が掠めていった。
ξ;゚⊿゚)ξ「気をつけて! その手、何かある!」
(;,, Д゚)「ただでは帰さん……!」
(メ._⊿)
ギコは欺帝審判の背後に隠れて三月兎と対峙した。
欺帝審判は三月兎を捕まえようと平手を振るってきた。
だが、その攻撃速度は三月兎の目には殆ど止まって見えていた。
三月兎は一回一回の攻撃を完全に見切った上で、余裕をもって回避することができた。
ξ;゚⊿゚)ξ「おいコラ! 一旦引いて!」
(メ._⊿) ピクッ
しかし、私は三月兎を呼び止めた。
三月兎の性格だとそろそろ反撃を仕掛けるに決まっている。
それはまだ危険な行為だ。少なくとも、敵の手の内が分からない内は一撃離脱が望ましい。
(;メ._⊿)(……おいコラ?)
何より、あの手の平による攻撃は明らかに物理ダメージ以外の何かを狙っている。
敵は王座の九人。一手違いが命取りになりかねない――
.
565
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 00:53:31 ID:t2s5WCys0
三月兎が敵を向いたまま後ろに跳躍。
後退してきた三月兎は私の前に立ち、ふたたび悠然と身構えた。
その間、欺帝審判はじっとしたまま三月兎を追っては来なかった。
ギコもこちらの攻撃がよほど効いているのか、苦しそうに荒い呼吸を繰り返している。
ξ;゚⊿゚)ξ「……一撃は入った。次で致命傷を入れるわよ」
(メ._⊿)「心得た」
ゼノグラシア・三月兎モードの全速力は時速300kmにも達する。
予備動作ほぼナシ、ブレーキ要らずで行うこのダッシュは、常人の目には瞬間移動と大差ない。
もっとも、現状私の全力8割を使っているのだから、これぐらいは出来てくれなければ困るが……。
――三月兎が軽く前傾した。突撃のタイミングを見計らっている。
(;,, Д)「……ッ!」
その時、ギコの体が大きくよろめいた。
明確な隙――三月兎は刹那を見切り、地を蹴った――!
.
566
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 00:56:10 ID:t2s5WCys0
ξ#゚⊿゚)ξ「決めろッッ!」
(メ._⊿)「――――ッ!!」
三月兎は一瞬でギコとの距離を詰めた。
完璧な位置につき、今度は手刀でギコの喉元を突きにいった。
最悪ギコの首をも飛ばしかねないその一撃は、人間が認識できる容易く速度を超えていた。
(,, Д )「……なるほど」
(;メ._⊿)「ッ!?」
ところが次の瞬間、三月兎の攻撃は欺帝審判の両手にガッシリと掴み取られていた。
先程の攻防からは想定できない反応速度――私は、最悪を予感した。
(,, Д゚)「次はそのパワーを『入れ替える』」
瞬間、欺帝審判の白黒まだら模様が反転した。
ξ;゚⊿゚)ξ(――あれが能力発動の合図か!)
私は咄嗟に三月兎を引き戻そうと念じたが、
(;メ._⊿)(……手が離れん。敵にパワー負けしている)
返ってきたのは絶対にありえない筈の言葉。
ゼノグラシアの基本性能はぶっ飛んで強い。
それを受け止め、ましてやパワーだけで動きを封じなんて余程じゃないとありえない。
少なくとも、さっきの様子ではまったく考えられな――
.
567
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 00:58:29 ID:t2s5WCys0
(,,゚Д゚)「高みの見物はここまでだ」
――ギコの声が、右隣にあった。
ξ;゚⊿゚)ξ「ッ!?」バッ!
脳内で火花が散る感覚。
私は反射だけで声の方を見向き、両腕でできる限りの防御姿勢をとった。
(#,,゚Д゚)「ゴルァァァッッ!!」
ギコの怒号と同時、私の耳に入ってきた音は二つ。
「グチ」、「ボキ」――魔力で強化している筈の血肉が、ギコの拳に破壊された音だった。
ξ; ⊿ )ξ「い゙ッた……」
今まで感じた事のない規模の痛みに意識が飛びそうになる。
ぼやけた視界に、今度はギコの足が見えた。
(#,, Д゚)「死ねエッ!」 ズオアッ!!
ξ; ⊿ )ξ「ぐ――ッ!!」
ギコの蹴り足が私の横腹を薙ぎ、空に打ち上げる。
痛い、苦しい、クソ……ムカつく……!
ξ# ⊿゚)ξ(……やりやがったな……!)
空高く蹴り飛ばされた私はビルの屋上を俯瞰する。
落ちればひとたまりもない高さ。しかしこのまま落ちる気などトーゼン皆無。
この程度は自力でも何とかできる。が、今は情報整理の為に敵と距離を取るべきだろう。
(#,,゚Д゚)
ギコはまだ私を見上げ、反撃に警戒している。
一方の三月兎は、欺帝審判の拘束に未だ手間取っていた。
.
568
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:01:30 ID:t2s5WCys0
ξ#゚⊿゚)ξ「――ったく! 世話の焼ける!」
これだけ離れても私と三月兎は赤マフラーで繋がっている。
私はマフラーを掴み、彼への供給魔力を“九割”に底上げした。
ξ#゚⊿゚)ξ「ゼノグラシア! 今すぐそれを振り払え!」
私は落ちながら怒る。
彼も私の怒りを察したのか、即座に行動に移った。
(;メ._⊿)「――心得た!」
瞬間、三月兎はフワッとその場で跳躍。
両足を揃えて欺帝審判に向け、その顔面に全力のウサギキックをブッ放した。
この強力な一撃でも欺帝審判はびくともしなかったが、
(;,, Д゚)「ぐっ……!」
ダメージのフィードバックがギコの集中力をそぎ落としていた。
欺帝審判の握力が弱まったところで、三月兎はようやく拘束から抜け出てきた。
.
569
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:02:28 ID:t2s5WCys0
ξ#゚⊿゚)ξ「引っ張るわよ!!」 グイッ!
(;メ._⊿)「承知した!!」
私は全力でマフラーを引っ張って三月兎を引き寄せる。
ビヨーン!! という感じだった。
空中で合流し、私は三月兎の背中に乗った。
馬を扱うように踵でケツを叩き、指示を出す。
ξ;゚⊿゚)ξ「撤退して! フィールドを変える!
あれが敵なら戦闘規模はそこまで大きくならない!」ゲシゲシ
(メ._⊿)「ならばどこに飛ぶ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「イオンの立体駐車場! あそこで迎え撃つ!」
(メ._⊿)「イオン!? イオンだな! 心得た!」
三月兎の足元に魔法陣が出現する。
それは質量をもった足場となり、三月兎の両足を受け止めた。
ξ;゚⊿゚)ξ(ここじゃあ真っ向勝負しかないけど、イオンなら全力が出せる!)
三月兎の体勢が沈む。
私達は敵背を向け、イオンに向かって飛び出した。
.
570
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:03:34 ID:t2s5WCys0
(,, Д゚)「……退いたか……」
ウサギキックをくらった顔面をおさえながら、ギコは飛び去っていくツンと三月兎を目で追っていた。
(,,゚Д゚)「……あのスピード、確かに入れ替えたはずなんだがな……。
これだけのパワーとスピードでもまだ本気じゃあなかったとは、魔王だけある……」
(,,゚Д゚)「だが、これで向こうも力押しでは足を掬われると理解しただろう。
ここから先は警戒を強めていこう。“真実”も二つ、手に入れた事だしな……」
欺帝審判がギコの隣につく。
先程の攻防、三月兎との接触時、欺帝審判は三月兎から『パワー』と『スピード』を奪取していた。
その替わり三月兎には普通のパワースピードをくれてやったが、それでも十分な戦闘力を有していたのには驚いた。
(,,゚Д゚)(……そろそろ“嘘”の期限切れだ。
次は向こうも俺の能力特性を察した上で、行動するだろう)
(,,゚Д゚)(もっとも、欺帝審判が得た真実に“期限”はない。
貴様らから頂いたパワーとスピード、存分に使わせてもらうぞ――)
ギコは欺帝審判を伴い、ツンの後を追いかけた。
.
571
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:05:46 ID:t2s5WCys0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆現在のステータス☆
≪ (,,゚Д゚) / 欺帝審判(フェイク・アンド・バニシングエクスカイザー) ≫
【基本能力】
[破壊力:C→A] [スピード:C→S] [射程距離:B]
[持続力:D] [精密動作性:C] [成長性:D]
A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み E=よわい F=論外 S=最強
【概要】
ツンの能力・ゼノグラシアからパワーとスピードを写し取った状態。
欺帝審判は基本能力が低いため、そこを補えるものを得られたのは大きい。
ギコにとって、これは最善の初手であった。イオンに続く。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
572
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:06:26 ID:t2s5WCys0
―――― イオン 立体駐車場 二階 ――――
.
573
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:08:23 ID:t2s5WCys0
(メ._⊿)「落ち着いたか」
どこぞから帰ってきた三月兎が穏やかに言った。
喉が渇いたのでイオンの売り場からなんか適当に取って来い、と命令しておいたのだ。
自分の能力なので気兼ねなくパシリに使えてすごく助かる。
私は差し出されたトップバリュ濃縮還元オレンジジュース100%1L(参照:
https://www.topvalu.net/items/detail/4901810582686/
)
の飲み口にストローを突っ込んで、深呼吸のようにぐびぐび飲んだ。
ξ;゚⊿゚)ξ プヘッ
ξ;>⊿<)ξ「――〜〜〜ッッッアア〜〜〜〜! 生き返る!」
(メ._⊿)「……やはり九割は疲れるか」
ξ;゚⊿゚)ξ「ったりまえでしょ! ただでさえ未熟なんだから!」チュー
つ臼
ξ;-⊿‐)ξ「……まあ今回は、敵が敵だから仕方ないけど……」
(メ._⊿)「……敵の『入れ替える能力』。どう戦う」
ξ;゚⊿゚)ξ「……正面からは絶対にナシ。ああいう手合は頭が良いのよ。
パワーで勝っても策略でひっくり返される。お父さんもそう言ってたし」
ξ;゚⊿゚)ξ「これでも自分の性格は分かってるのよ。
だからこそ、今は自分らしくない戦い方よね……」
(メ._⊿)「……待て、戻ったぞ。入れ替わっていたパワーとスピードが戻った」
三月兎は手足の動作を確かめながらそう言った。
入れ替える能力は時間制限付き、それも5分程度くらいという事か……。
だったら気をつけていれば今後三月兎の性能を入れ替えられる事はないだろうが、
それだとひとつ、まだ腑に落ちない事がある。
.
574
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:10:21 ID:t2s5WCys0
ξ;゚⊿゚)ξ「ギコとかいう奴、わざわざ自分で『入れ替える』と言ったわ。
ヒントどころか答えになるような事を、王座の九人が言うと思う……?」
(メ._⊿)「……能力を知られても問題無いのかも知れん」
ξ;゚⊿゚)ξ「……入れ替えた時点で、目的を果たせたからかな。
だったら向こうはパワーとスピードが元に戻ってない」
ξ;゚⊿゚)ξ「自分の8割のパワーと戦うのか……うわあ……」
ギコの能力は“入れ替える能力”で間違いないだろう。
だが、もしも彼の能力に“入れ替えたものを蓄積する”という性質があるなら、色々とマズい。
長引かせたら確実に不利になる。本当にうわあという気持ちだった。
早々に、しかもこれ以上敵が強くなる前に、確実に倒さなくちゃ……。
.
575
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:13:24 ID:t2s5WCys0
(メ._⊿)「……全力を出すつもりか」
ξ; ゚⊿゚)ξ「……ここまで来たら九割も十割も一緒よ。
半端なコトして負けるより、断然マシ!」
断言すると、三月兎は眉間をすぼめて言った。
(メ._⊿)「奥の手が敵にバレるが、いいのか」
ξ;-⊿-)ξ「……王座の九人を倒せるなら五分五分よ。
お父さん達もまだ控えてるんだし、ここで確実に倒すのが私の仕事」
(メ._⊿)「……なら、私は引っ込むとしよう」
ξ゚⊿゚)ξ「もういい! もどれ!」
(メ._⊿)「……ポケモン扱いするな」
三月兎が踵を返し、マントを大きく翻した。
その途端、三月兎は黒い霧に包み込まれて姿を消した。
接続先を失った赤マフラーが、ぽすんとコ/ン/ク/リ/ー/ト※NGワードです!気をつけてください!※に落ちる。
↑↑↑デンジャーデンジャーとても危険デンジャーデンジャー↑↑↑
ξ;-⊿-)ξ
ξ; ゚⊿゚)ξ(さて……。まずは、身を隠さなきゃ……)
もうすぐギコもやってくる。
身の安全を確保したら、次は全力で迎え撃つ……!
.
576
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:14:04 ID:t2s5WCys0
.
577
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:15:27 ID:t2s5WCys0
【interlude:5】
イオンの立体駐車場、その一階に足を踏み入れる。
ギコは、その一歩目でぐっと立ち止まった。
(,,゚Д゚)「……」
ほぼ満車状態の駐車場は見通しがいいとは言えなかった。
どこから来るか分からない、というのは十分に認識しておくべき要点だ。
欺帝審判を前へ。
盾にするようにして、さらに一歩踏み込む。
(,,゚Д゚)(……あれだけハッキリ垂れ流してた気配が無い。
魔王城ツンの魔力量は桁違いだ。それを隠しきれるものなのか?)
(,,゚Д゚)(……分からんが、念には念を、警戒には警戒を重ねるとしよう……)
ツンの魔力量は現魔王ロマネスクにも匹敵する。
その気配を消したという事は、確実に何かがある。
ギコは慎重に前進する。支柱の陰に身を隠し、安全を確認してから次の支柱へ。
.
578
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:16:53 ID:t2s5WCys0
(,,゚Д゚)「……」
二階へと続くスロープを前にして、ギコはようやくツンの魔力を感知した。
頭上、二階には五人分。この階に至っては無数に魔王城ツンの気配があった。
無数――それは、正しい認識だった。
ξ ⊿ )ξ
(,,゚Д゚)「……ただの分身、という訳でもなさそうだな」
振り返り、背後に立っていた魔王城ツンを見て呟く。
正真正銘、間違いなく、そこに居るのは本物の魔王城ツン。
ギコは自身の感覚に絶対の自信を持っていた。
真実と嘘を入れ替える能力――それを補完する副次的なスキルとして、彼は≪真実を見極める目≫を持っている。
実際ギコは過去の戦闘においても分身などの誤魔化しに一切引っ掛からなかった。
そういうものは確実に見破ってきた。その目、この感覚を疑う余地など微塵もない。
(,,゚Д゚)(気配は複数、実体は一つ。なのに複数人居ると確信できる)
(,,゚Д゚)(が、しかし目の前には一人だけ……どういう事だ)
ギコは目だけで周囲を一瞥する。
(,,゚Д゚)(……魔王城ツンの気配がとりあえず十人分、俺を取り囲んでいる。
その内、目に見えてるのは眼前の一人だけ。あとの九人は見えない……)
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)(……とにかく、動いてみるか) スッ・・・
ツンから写し取ったパワーとスピードは未だ健在。
それを発揮し、欺帝審判が高速で飛び出した。
狙うは実体を持つ魔王城ツン、その命――
.
579
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:19:41 ID:t2s5WCys0
ξ ⊿゚)ξ ダッ!
欺帝審判の攻撃を見てツンも動いた。
入れ替える能力を回避しようと右へ跳躍――しかし、その速さは今の欺帝審判に遥かに及ばない。
ξ; ⊿ )ξ「――あ゙っ」
瞬間、欺帝審判の手が魔王城ツンの首を掴んだ。
欺帝審判の指先はそのまま彼女の喉を押し潰し、血肉を裂いて奥にねじ込まれていく。
(#,,゚Д゚)「死ね、魔王城ツ――」
――目の前で起こっている事は、本当に起こっている事だった。
欺帝審判は、確かに本物の魔王城ツンを殺していた。
事実、攻撃を受けている魔王城ツンはハッキリと明確な死を体感していた。
あくまで本物の一個人として、魔王城ツンとして。
(,,゚Д゚)
しかしこの時、ギコが視界の端に捉えていたのは、
ξ# ⊿゚)ξ
(;,,゚Д゚)「――なッ!?」
たったいま殺したはずの、魔王城ツンその人であった。
.
580
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:21:59 ID:t2s5WCys0
二人の『本物の魔王城ツン』が同時に実在している。
ギコがその事実に思考を巡らせている余裕はなかった。
もう一人のツンが助走をつけて跳び上がる。
天井に着地し、天井を足場に更に加速して落下。
ツンは空中で身を捩り、ギコに踵落としを見舞った。
(#,,゚Д゚)「欺帝審判ッ!」
直撃の寸前、ギコとツンの間に欺帝審判が割り込んだ。
血塗れの手で踵落としを受け止め、欺帝審判がツンの足を掴み取る。
(#,,゚Д゚)「驚かされたが、これも同じ事だ!」 ブオンッ!
ギコが下に向かって片腕を振るう。
欺帝審判はそれと同じ動きをし、ツンをkonクリートに叩きつけた。
わずかにコン栗ートが陥没し、血の跡がべっとりとその場所を濡らす。
ξ; ⊿ )ξ「……ッ!」ジタバタ
欺帝審判が再度ツンの足を持ち上げる。
ツンは手足を振るって抵抗して見せるも、宙吊りの状態では大した意味を成さなかった。
(#,,゚Д゚)「やれッッ!」
二人目のツンが殺される――その寸前、
ξ# ⊿゚)ξ
死角から現れた三人目のツンが、欺帝審判の後頭部を拳で打ちぬいた。
その威力は十二分。ギコは欺帝審判もろとも吹き飛ばされ、壁際の車に背中を打ちつけた。
.
581
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:23:01 ID:t2s5WCys0
(#,, Д゚)「――!」
それも束の間、ギコの目が憤怒に染まる。
欺帝審判は邪魔な車を力尽くで跳ね除け、二人の魔王城ツンに向かって疾走した。
ξ# ⊿゚)ξ
ξ; ⊿゚)ξ
欺帝審判が二人のツンの前に立ちはだかる。
殺し損ねた方は既に満身創痍。
欺帝審判はそちらに狙いを定めて手刀を振り下ろした。
瞬間、ばっちり無傷のツンが欺帝審判の脇をすり抜けてギコに迫った。
もう一人の自分を完全に見捨てた選択――その間に、魔王城ツンが一人死んでいた。
(#,, Д゚)「来い……!」
よろめきながら立ち上がるギコ。
パワーとスピードは既に互角。
ギコは拳を構えると同時、鋭く前にステップしてツンを迎え撃った。
――ビスッ!
(#,,゚Д゚)
ξ# ⊿゚)ξ
ギコとツンの拳が交差し、互いの頬を切る。
(#,,゚Д゚)(欺帝審判が戻るまで時間を稼げば、俺の勝ちだ――)
.
582
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:23:06 ID:YiKt4DC.0
こんな時間に
コ/ン/ク/リ/ー/トのくだりワロタ支援
583
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:23:40 ID:LYWKXuvY0
支援
584
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:24:48 ID:t2s5WCys0
――しかしそう確信した途端、ギコの横腹にはツンの拳が深くめり込んでいた。
(;,,゚Д゚)「……なッ……!?」
ξ# ⊿゚)ξ
完璧な形で打ち込まれてしまったボディブローが鈍痛を滲ませる。
ギコは僅かに後退し、殴られた所を手で抑えた。
(;,,゚Д゚)(……いま、確かに奴の右拳は俺の顔面を狙い、そして攻撃してきた……)
(;,,゚Д゚)(なのにその拳は俺の腹部を殴り、逆に頬の痛みはもうない……)
ギコは自分の頬を指先でなぞったが、そこに先程の切り傷は存在しなかった。
一度は確かに刻まれた傷跡が、現在は無いという事実。
何かが起きたという確信を得るには、十分だった。
(;,, Д )(決して超スピードじゃあない。
奴は絶対に俺の顔を狙っていた。それは間違いない……)
(;,, Д )(……顔を殴られたと思ったら、ボディブローを決められていた。
二つの攻撃が同時に起こったのか? そして、片方だけが現実に残った……?)
理解、推察が結論に近づく――
(;,, Д゚)「……貴様の能力、察しがついたぞ……」
ξ ⊿゚)ξ「……」
ギコの言葉にも沈黙を守る魔王城ツン。
彼女はすこし乱れてしまった赤マフラーを整えると、再びギコに立ち向かった。
.
585
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:26:44 ID:t2s5WCys0
(;,,゚Д゚)「――可能性の同時実行、並行存在の同時実在!」
(;,,゚Д゚)「それが貴様の能力だなッ! 魔王城ツン!!」
ギコは欺帝審判を引き戻してツンを殴り吹き飛ばした。
しかしそのとき既に“並行存在のツン”に実在権は移っており、欺帝審判の迎撃は無駄打ちにされた。
(;,,゚Д゚)「化け物め……!」
ξ# ⊿゚)ξ「無駄だ」
次の魔王城ツンが攻撃を仕掛けてきた。
ギコは欺帝審判の手刀でそれを迎撃し、彼女の胴体を深々と斬り上げた。
その一撃で魔王城ツンは確かに死んだ。
だが、もうその瞬間には、次の魔王城ツンがギコの目の前に現れていた。
あらゆる反応・対応を無に返し、常に完全無欠超最高の道筋を直進できるツンの能力。
どれだけ先手を打とうが、この能力の前では全てが“手遅れ”。
今のギコには、彼女の能力への対策が何一つとして存在しなかった……
.
586
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:28:08 ID:t2s5WCys0
ξ# ⊿゚)ξ「――」
(;,,゚Д゚)「――ッ!」
決着の一撃がギコを射程圏内に捉える。
あと数歩の距離で睨み合う二人。身じろぐギコ、魔力を込めて拳を構えるツン。
ξ# ⊿゚)ξ「……この能力は、ジャンケン一回に対してグーチョキパーを同時に出すようなもの」
ξ# ⊿゚)ξ「発動した時点で、私の勝ちは決まっていた……!」
(;,,゚Д゚)「くそっ……くそオッッッ!!」
瞬間、欺帝審判がツンの肩を掴んだ。
欺帝審判は両手に全力を込め、二人を引き離そうと大きくのけぞった。
それでツンは呆気なく引き離せた。
ただし、もうその時点で、次のツンが目の前で身構えていたが……。
(;,,゚Д゚)「――だったら貴様の莫大な魔力そのものを!! ゼロと入れ替えるッ!!」
さらに欺帝審判の両手がツンの頭を鷲掴みにする。
しかし、だが、もうその時、既に、真紅を纏ったツンの拳がギコの顎を打ち抜いていた。
ξ# ⊿ )ξ
(;,, Д )「――あ、」
ギコの意識が、一瞬どこかにちぎれ飛ぶ。
ξ# ⊿゚)ξ「――――!!」
ヒュッ、と空気を切り裂く音。
続く二撃目がギコの心臓を穿ったのは、その次の瞬間だった。
【interlude:out】
.
587
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:30:23 ID:t2s5WCys0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆現在のステータス☆
≪ ξ ⊿゚)ξ / ゼノグラシア・ゲシュタルト ≫
【基本能力】
[破壊力:B] [スピード:B] [射程距離:D]
[持続力:C] [精密動作性:D] [成長性:-]
A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み E=よわい F=論外 S=最強
【概要】
ツンちゃんが魔力を全開にすると発動する彼女本来の能力。
影やウサギだったりしていた能力像はツンちゃんっぽくなり、本人とほぼ同じ存在になる。
能力は『可能性の同時実行』、『並行存在の同時実在』。本人いわくグーチョキパーを同時に出すような能力。
不要と判断された可能性は勝手に排除され、勝利の可能性だけが残って実行される。
Aのツンちゃんが倒されても、倒されなかったBのツンちゃんが敵を倒す。
もしそれが駄目でもCのツンちゃんが敵を倒し、それでも駄目ならDのツンちゃんが敵を倒す。
目的に対して全ての可能性を虱潰しにし、不都合な可能性は並行存在に押し付けてなかったことにする。
そういうことができる能力。これ以上の説明は難しく、とてもすごい
対策は発動させないこと。
発動されたら魔王直伝のゴリ押し物理パワーに殴り殺されて終了。慈悲はない。
もうひとつの対策は、無限の可能性からくる攻撃を回避しつつ本体を見つけること。
能力発動中、本体は仮死状態である。
そこをボコボコにするしかない。みんなで頑張ろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
588
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:30:26 ID:YiKt4DC.0
半端ない
589
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:31:03 ID:t2s5WCys0
.
590
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:32:08 ID:t2s5WCys0
血液の流れが加速した、ような錯覚で目が覚めた。
仮死状態で冷えきっている体に、熱々の血が巡っていく。
なんというか、ぞわぞわする……。
生きている実感を取り戻すにはもう少し時間が掛かりそうだ。
ξ;-⊿-)ξ「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……とりあえず、勝ったか……」
私は安堵して車のシートに背中を預けた。
今は、もう少しだけこのシートの柔らかさに甘えていようと思う。
むぎゅうという感じでシートが受け入れてくれたのでよかった。やったね。
ξ;゚⊿゚)ξ(……緊急事態とはいえ、人様の車をぶっ壊して侵入してしまったな……)
ξ;-⊿-)ξ(後始末はお父さんに頼もう。猫なで声でいけばやってくれるはず……)
ξ;-⊿゚)ξ「……」
しかし、これ以上ゆっくりしている暇もなかった。
ギコが動き始めていた。
満身創痍なのか気配を消すことすら忘れ、覚束ない足取りでどこかに行こうとしている。
最後の一撃には彼の内蔵を破壊したという手応えが十分にあった。
だから死にかけなのは間違いないが、下手な事をされる前に片付けないと……。
私は車を降り、体の調子を確かめる。
手足は十分に感覚を取り戻した。頭も動く、体も大丈夫……。
ξ;゚⊿゚)ξ「……よし、行くか……」
.
591
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:33:27 ID:t2s5WCys0
(;,, Д )「……ふー……」
階下に続くスロープを降りたくらいで、ギコの息遣いが聞こえてきた。
さっきまで私達が戦闘していた辺りには血の跡。
支柱の陰をひとつずつ移りながら、私はその跡を追った。
(;,, Д )(……逃げ……ねえと……)
|はしら|⊿゚)ξ ジィ
(;,, Д )(……しぃを助ける……俺も、生き残る……)
|はしら|⊿゚)ξ ジィ
(;,, Д )(両方果たす……やく、そく…………)
一歩、一歩と前進していくギコ。
それも程なくして止まり、やがて意識を失ったギコはドサァという感じでその場に倒れこんだ。
クソッ私も意識が朦朧としてきた。語彙力に限界を感じる……………
|はしら|⊿゚)ξ(……ギコのやつ、まだ息があるわね……)
.
592
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:34:53 ID:t2s5WCys0
陰を出て、ギコの傍らに立つ。
かぼそい呼吸に支えられた彼の命は風前のなんとやら、あれだ灯火。
このまま放置していれば簡単に死を迎えるだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「……どう思う、ゼノグラシア」
そう呟くと私の影が形を変え、ウサミミになった。
(::::::::⊿)「……『どう』、というのは、どういう意味だ」
ξ゚⊿゚)ξ「殺すかどうかっていう判断がね……。
半端に生かすくらいなら殺せ、っていうのがお父さんの方針。
殺すなら今すぐトドメを刺すべき、なんだけど……」
(::::::::⊿)「……こいつから情報を聞き出すつもりか?
我々は王座の九人の一角を落としたんだ。今はそれで十分だろう……」
ξ゚⊿゚)ξ「……うーむ」
――さて、どうしたものか。
.
593
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:35:33 ID:t2s5WCys0
1.この場でギコを殺す
2.生かして情報を吐かせる
.
594
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:36:43 ID:sBJ0Wh2A0
1
595
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:36:59 ID:t2s5WCys0
(^ω^)おしまい!また次回!('A`)
(^ω^)早くて二週間、遅くて来月くらいになります('A`)
(^ω^)最後の二択は5/3で締め切り('A`)
v(^ω^)同票でもダイジョウブイ('A`)v
596
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:39:52 ID:YiKt4DC.0
乙
今日締め切りか
597
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:42:55 ID:5DtcU/Z20
乙、2番で
598
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 01:57:01 ID:CEuFlXQEO
2
599
:
◆fBYzPFPBqs
:2016/05/03(火) 02:04:37 ID:t2s5WCys0
一応酉キーで先の展開を確定させときますNE(^ω^)
600
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 02:08:49 ID:2f2QABN20
おつです
1
601
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 02:17:38 ID:oz2X77ds0
2
602
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 03:30:55 ID:YfCTRLE60
1
603
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 03:31:41 ID:9b72WF0Y0
乙乙、2かな
604
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 08:09:50 ID:eE3YcIO60
戦闘中律儀に「フェイクアンドバニシングエクスカイザー!」って叫ぶギコさんまじ男前
605
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 08:09:54 ID:909n3kaw0
なんか殺すとやばい気がするから2で
606
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 08:10:45 ID:eE3YcIO60
あ、1で
607
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 14:14:01 ID:qngmzIfwC
2
608
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 15:09:58 ID:Ue9HmX9U0
おつおtwo
609
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 15:24:56 ID:mip8GLCk0
1
奥の手を見られたからには殺すしかない
慈悲はない
610
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 17:14:56 ID:0lRG6B7I0
2
611
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 17:29:19 ID:8VfBm5e60
ブーンを強化したいから2
612
:
名も無きAAのようです
:2016/05/03(火) 18:44:56 ID:LR/eCig60
イオンなら全力出せるってふざけてるようでマジだった
選択は1で
613
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 02:56:06 ID:RGfgeSQs0
2
614
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 08:00:57 ID:UfMmZzgw0
悪ふざけしててもカッコいいところはちゃんとカッコいいなあ
615
:
◆fBYzPFPBqs
:2016/05/04(水) 12:23:49 ID:DOK9cWPI0
(^ω^)締め切り!('A`)
(^ω^)2で書いてきますNE!('A`)
616
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 12:48:51 ID:fnFeqV3Q0
おっ生きた
617
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 13:30:35 ID:YibG5OGk0
やったぜ
618
:
◆fBYzPFPBqs
:2016/06/21(火) 04:25:58 ID:gdPE2cPQ0
(^ω^)今夜投下('A`)
ξ゚⊿゚)ξ
619
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 04:49:28 ID:1/ZiYArc0
おっおっ
620
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 10:02:59 ID:p7RD9Hdk0
キタコレェ
621
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 10:28:52 ID:OQav4f/g0
ktkr
622
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:11:02 ID:gdPE2cPQ0
【interlude:6】
ξ゚⊿゚)ξ「……ま、こいつの処遇は他の人に任せましょ」
(::::::::⊿)「……」
私は、ギコを生かしておく事にした。
ゼノグラシアは何か言いたげだったが、わざわざ言われなくともこれが危険な判断なのは分かっている。
ギコは確固たる殺意をもって私の前に現れた。いま目を覚ませば、きっとまた殺し合いになる。
だけど、それでもと思ってしまったのだ。
この感情が慈悲か同情か定かではないが、とにかく私は今、なんというか……。
ξ゚⊿゚)ξ「……こいつ、思ってたより人間らしかった。
勇者軍ってもっとキチガイまみれだと思ってたから、なんか……」
(::::::::⊿)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……なんか、私は、そこまでやる気にはなれない」
(::::::::⊿)「……さっさと結界を出よう。他の連中が心配している筈だ」
ξ゚⊿゚)ξ「……それもそうね」
ξ-⊿-)ξ「さっさと帰って寝よっと……」
戦い、勝ちはしたが、どこか腑に落ちない。
敵が敵らしくないという事に、私は思いのほか動揺してしまっていた――
.
623
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:13:01 ID:gdPE2cPQ0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第一戦 王座の九人・ギコ
VS 【欺帝審判】
勝利!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
624
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:15:19 ID:gdPE2cPQ0
――カクン、と力が抜けた。
ξ゚⊿゚)ξ
その感覚は右足から左足にも続き、私は抗う間もなく膝から崩れ落ちていた。
私は咄嗟に眼下を一瞥する。
視線の先に見えたのは、血飛沫にまみれたコ/ン/ク/リ/ー/トだった。
.
625
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:17:41 ID:gdPE2cPQ0
ξ;゚⊿゚)ξ「……これは……」
私の膝をなにかが貫いた。
激痛は、それを自覚した直後にやってきた。
ξ; ⊿<)ξ「――い゙ッ!!」
すっかり気が抜けていた、甘かった。
本気で私を仕留めるつもりなら、敵が一人で来る訳がないのに――
ξ; ⊿゚)ξ(……完全に油断した……ッ!)
626
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:20:12 ID:gdPE2cPQ0
ξ; ⊿゚)ξ「――ゼノグラシアッ!!」
(メ._⊿)「……大丈夫か?」
咄嗟にゼノグラシア・ウサたんモードを召喚し、私はぺたんと座り込んで体勢を維持した。
もはや傷を見返す必要もない。私は三月兎の背後に隠れ、彼に命令を下した。
ξ;゚⊿゚)ξ「相手の武器は銃よ! この立体駐車場を狙える位置に敵が居る!」
瞬間、三月兎の片手が空中を払った。
それと同時に “チュイッ” という回転音が三月兎の手中で高鳴る。
(メ._⊿)「……的中だな……」
三月兎の手から魔力を帯びた弾丸が二つ、転がり落ちた。
この一瞬、どの判断が遅れても私は確実に命を落としていた。
最悪の敵――そうだ、これが敵だ。
これに比べればギコとの戦いはまさに王道だった。
ξ;゚⊿゚)ξ(……いや、そんな奴だから囮にされたのか……)
.
627
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:20:55 ID:gdPE2cPQ0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(´<_` )「……ふむ、これはもう無理だな」
流石弟者はスコープ越しに魔王城ツンを見つめたまま、しかし呆気なく狙撃を諦めた。
彼は耳元に装着した通信機を点け、淡白に呟く。
(´<_` )「仕留めよう」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
628
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:24:30 ID:gdPE2cPQ0
三月兎にお姫様だっこで運ばせ、私は支柱の陰に身を隠した。
ξ;-⊿-)ξ「……ありがと」
(メ._⊿)「造作も無い。だが、問題は次だ……」
これで敵の狙撃は防げるが、さて、次だ。
カッツーン、カッツーンと厭味ったらしく一歩一歩靴底を鳴らしながら近付いてくる次の敵を、さてどうしたものか……。
ξ;-⊿-)ξ(……ゲシュタルトモード、こんなに早く攻略されるか……)
あれは 『発動した時点での私』 が 『無限の可能性』 となって相手をゴリ押し圧倒する能力。
よって両膝を破壊された今の状態で発動しても、あの能力は大して意味をなさないのだ。
ゲシュタルトモードがタイマン最強なのは過言ではない事実だが、種が知れれば攻略は呆気ない。
ξ;-⊿-)ξ(……フィールドをここにした私のミスだ。
敵に覗き見られ、情報を与えた……)
さて、さて、さて……反省してれば現実逃避していられるが、そうもいかない。
これでもかというほどハッキリ打ち鳴らされていた足音は、いつしか鳴り止んでいた。
.
629
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:27:59 ID:gdPE2cPQ0
ξ;゚⊿゚)ξ
( ´_ゝ`)「――ギコみたいに名乗っておこうか」
そう言って現れた男は海パン&アロハシャツの変態だった。
私は一瞬 「いやいやなんでやねーんw」 と気前よくツッコミしたくなったが、膝の痛みがそれを打ち消す。
( ´_ゝ`)「王座の九人。流石兄弟の兄、流石兄者」
( ´_ゝ`)「強さは上から五番目だ。よろしくな」
.
630
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:29:35 ID:gdPE2cPQ0
ξ;゚⊿゚)ξ
(メ._⊿)「……ツン、指示を」
私の心境を察しているであろうに、三月兎はあえて私に指示を仰いだ。
敵は王座の九人で五番目に強い男。それをこの状態で倒すのは――思考は、ここで打ち切った。
ξ;-⊿-)ξ「…………」
ξ;゚⊿゚)ξ「…………」
ξ;゚⊿゚)ξ「……足掻きましょう、最後まで」
(メ._⊿)「……倒さないのか? 別に、倒してしまっても構わんのだが」
ξ;゚ー゚)ξ「……あなた、冗談言えたのね」
こんな時でも笑みが溢れる。
だが、おかげで開き直れた。
ξ#゚⊿゚)ξ「……行くわよ、ゼノグラシア」
(メ._⊿)「……心得た」
【interlude:out】
631
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:30:22 ID:gdPE2cPQ0
.
632
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:31:27 ID:gdPE2cPQ0
ブーンは学校を飛び出し、街中を駆けずり回ってツンを探していた。
学校中も、通学路も、途中のゲーセンも、駅の近くも、ツンの家もすべて隈なく探し尽くした。
もちろんドクオに頼んで魔力を辿ってもらう事もした。
だが、それでもツンの気配は一切感じ取れなかったのだ。
最初こそヘラヘラ呑気にしていたブーンも、次第に顔色を変えて必死さを露わにしていく。
ドクオ、ミセリ、貞子……頼れる相手には全員声をかけた。
時刻はとうに午後十時を過ぎている。
ツンはまだ、見つからなかった。
(; ゚ω゚)「ツーーーーーーーーン!!」
(; ゚ω゚)「どこだおーーーーーーッッッ!!」
ブーンは近所迷惑も考えず、ひとけの収まった住宅街をひたすら走り回っていた。
当然のように成果はゼロ。それでも、ブーンは徒労を続けるしかなかった。
『――内藤君、駅前に来て』
ふとブーンの脳内に声が響く。ミセリの声だった。
(; ^ω^)「見つかったのかお!?」
『手掛かりだけ。とにかく来て』
(; ^ω^)「分かったお!!」 ダッ
彼女の冷ややかな声色に気付かないまま、ブーンは駅に向かって走り出した。
.
633
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:32:19 ID:gdPE2cPQ0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
駅から程近い路地裏。飲み屋が多いせいもあって、この時間でも人通りは多い。
そんな中、ミセリ達は壁際で一人の少女を介抱していた。
从 ー 从 「……」
渡辺は、何らかの魔術を受けて意識を失っていた。
貞子いわく、彼女にかけられた魔術は心身操作。
膨大な魔力によって施されたせいで強制力は絶大なものの、術式自体はとてもシンプルな作りだった。
除去も容易らしく、その作業は一分と掛からず完了していた――――
.
634
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:34:06 ID:gdPE2cPQ0
ミセ*゚ー゚)リ「……この子、術者には何を命令されてたの?」
川д川 「細かい所は分からない。ただ、術式の中にはお嬢様の魔力痕があった。
だから多分、命令は単純に “魔王城ツンを殺せ” だと思う」
ミセ*゚ー゚)リ「この子、確かお嬢様の友達よ。
お嬢様の事だから、気付かずにやられてても不思議じゃない」
川д川 「……いや、術式起動の痕跡はなかった。この子は何もしてないよ。
彼女は別の理由で気絶した。それはともかく、今はお嬢様の追跡が先決だ」
ミセ*゚ー゚)リ「その行き先は?」
貞子はしばし沈黙し、その後、大きな溜め息を漏らした。
川д川 「……魔力を追うまでもない。
お嬢様の魔力痕は、敵の本拠地に向かって続いている」
(;'A`)「そんな……!」
ミセ;*´ー`)リ「……問題は山積みね……」
(; ^ω^)「――遅れたおッ!!」
暗く沈みかけた雰囲気に割り込むように、ブーンが路地裏に勢いよく駆け込んできた。
足を止めたブーンは激しい呼吸を繰り返しながら、ミセリ達を見回して息を呑む。
.
635
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:35:47 ID:gdPE2cPQ0
(; ^ω^)「……ツ、ツンは……?」
(;'A`)「……」
(; ^ω^)「……」
川д川 「……生死は分からないけど、敵に連れ去られたのは間違いない」
わずらわしい沈黙を払うように貞子が言い切る。
それに続いてミセリがブーンの目前に立ち塞がると、彼女はブーンを見下ろして言った。
ブーンよりも背が高いミセリ!? 薄い本を予感するには十分すぎるワンシーンだった。
ミセ*゚ー゚)リ 「言っておくけど、必要以上に責任を感じる必要はないからね」
ミセ*゚ー゚)リ 「ドクオと内藤君はお嬢様の護衛役みたいなものだったけど、
正直、お嬢様が負ける相手なら居ても居なくても同じだったから」
語気は優しいが、ミセリの言葉は的確に事実を突いていた。
アホ丸出しでも魔王の娘。単純な戦闘力において、ツンは二人を大きく引き離しているのだ。
.
636
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:38:41 ID:gdPE2cPQ0
(; ^ω^)「……追いかけるなら僕も行きますお!!」
ミセ*゚ー゚)リ 「……追跡、どうする?」
ミセリは貞子に問いかけた。
川д川 「……お嬢様が負けたなら、敵はかなり強いよ」
川д川 「それに、敵の行き先は彼らの本拠地だ。
もしも敵が私達を察知すれば、当然その本拠地から応援が出てくる」
川д川 「応援が来るまでに追いつけなかった場合、追い詰められるのは私達だ」
(; ^ω^)「――それじゃあ、引き下がるって言うんですかお!?」
ミセ*゚ー゚)リ「……悔しいけど、お嬢様を取られた時点でチェックメイトなのよね。
もう四の五の言ってる場合じゃない。魔王様が戻ったらすぐに打って出るしかない」
川д川 「内藤君、ここは引き下がるのが最善だ。
私達の主力はあくまで魔王様。主力を欠いたまま動いても、全滅する」
(; ^ω^)
(; ^ω^)「……ロマネスクのおじさんも、お爺ちゃんも、どこ行ってるんだお……」
(; ^ω^)「こんな時に、よりによって、こんな……」
(; ^ω^)「……いちばん頼りたい時に限って……」
明らかな責任転嫁と、なんの足しにもならない弱音。
しかしそれを口に出さないというだけで、この場の全員、まったく同じ事を思っていた。
.
637
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:40:05 ID:gdPE2cPQ0
( )「――君達、すこしいいかな」
誰もが言葉を失っていたその時、聞こえてきたのはやたら渋いオッサンの声。
足元に差し込んだ謎の人影に、ブーンは咄嗟に振り返った。
(; ^ω^)「だッ! 誰だお!!」
ミセ*゚ー゚)リ「……待って内藤君。私が話す」
ブーンを制止し、ミセリが前に出て話し始める。
ミセ*゚ー゚)リ「……その男、貴方が倒したのかしら」
(;,,-Д-)
男に背負われている人物は王座の九人・ギコであった。
( )「いや、何者かが気を失った彼ともう一人を連れ去ろうとしていた。
私はそれを追いかけたのだが、一人しか取り返せなかった」
ミセ*゚ー゚)リ「……もう一人というのは、金髪の女の子だったりしないかしら」
( )「ああ、その通りだ。そして少女は赤いマフラーを巻いていた。
君達は少女と同じ気配がするのだが、君達は少女の友達で間違いないな?」
ミセ*゚ー゚)リ「……まぁ、そんな所ね」
.
638
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:41:35 ID:gdPE2cPQ0
男はギコを壁際に座らせ、ミセリ達に背を向けてから言った。
( )「彼を頼む。私はもう一度、あの少女を追いかけてくる」
(; ^ω^)ノシ 「あっ! なら僕も! 僕も行くお!」
(;'A`)「おい、さっき言われただろ! 頭を冷やせ!」
(; ^ω^)「うるせーお! 僕だって死ぬ気でやれば王座の九人くらい倒せるお!」
ミセ*゚ー゚)リ「……一応味方として数えるから、貴方の名前を聞かせてちょうだい」
( )「……ふ、名乗るほどの者ではない」
男はキザに微笑んで答え、腰の変身ベルトに専用のカセットを叩き込んだ。
変身……変身!? 誰もがその唐突さに目を丸くした。なんたる急展開か!
.
639
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:43:51 ID:gdPE2cPQ0
\ギュイイーン!!/ \ライドイン!!/ \サブレ!!/
ニチアサめいた何かを彷彿とさせる音声!
男は胸のところで腕を交差させ、叫んだ!
( )「変身ッ!」
男の姿が旋風に包まれる!
(;つA`)「こいつ、まさかッ!!」
( )「……あえてその質問に答えるならば……」
旋風が徐々に集束していく!
やがて旋風の中から現れた男は、いつの間にかその姿を変えていた!
,、,,..._
ノ ・ ヽ 「――通りすがりの、仮面サブレーだ!」
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
( ^ω^)!?
('A`)!?
果たしてサブレは正義か悪か!!
仮面のサブレの真意やいかに!!!!!
つづく!!!!!!!!!!!!!!!!!!
.
640
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:47:04 ID:5yhoYNPQ0
鳩サブレ!?
死んだはずじゃ!?
641
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:47:27 ID:gdPE2cPQ0
【interlude:7】
つづいた。
ここは勇者軍本拠地、アサピーのラボ。
ギコの言いつけどおり手術の準備も完了しており、あとは魔王城ツンの登場を待つだけの状態。
流石兄弟からの連絡を受けて三十分。ようやく、ラボに待ち人がやってきた。
(´<_` )「すまない、遅くなった」
( ´_ゝ`)「追手が強くてな」
(-@∀@)「構わねえよ。それより」
ξ:::⊿:::)ξ
(-@∀@)「さっさとカプセルに突っ込んでくれ。血生臭くてかなわねえ」
( ´_ゝ`)「ういよ」
ツンを抱えた流石兄者がラボの奥に消えていく。
その背中を見送りながら、アサピーはツンの様子を見て不安を覚えた。
(-@∀@)「……あれ生きてんだろうな」
(´<_` )「……あと一時間くらいは」
.
642
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:48:38 ID:wjXBglAs0
ブーンくん死ぬ気でやるとマジで死ぬんだからやめなさい
643
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:48:52 ID:gdPE2cPQ0
(-@∀@)「……ギコはどうした。一応あいつの手柄だろ」
(´<_` )「いや、あいつは魔王城ツンに敗北した。
ギコが居なければ俺達も負けていたと思う」
(-@∀@)
(-@∀@)「……ハイエナめ。捨ててきやがったな」
(´<_` )「どうした今更。マッドサイエンティストが常識を語るのか?」
(-@∀@)「……まあいい。ともあれ計画は前進した!」 バサァ!
アサピーはくたびれた白衣を翻し、弟者を放って奥の空間に歩いて行った。
細長い通路の先にはドーム状の大きな実験空間。
人造勇者計画の根幹を成す設備の大半はここに揃っている。
とにかく薄暗く、謎の液体が満ちた円柱型カプセルがたくさんある感じの、よくある感じがする空間だった。
足元にもよく分からない太いコードが伸びていたりする。そういう感じの空間だった。
( ´_ゝ`)「ん〜〜」カチャカチャ
少し進むと兄者の姿が見えてきた。
彼はやたら大きいモニターとパネルを見比べつつ、よく分からない操作をしていた。
644
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:50:22 ID:gdPE2cPQ0
(; ´_ゝ`)「……えーと、これか?」
(-@∀@)「待て。それは自爆スイッチだ」
( ´_ゝ`)「あ、じゃあこっちか」
(-@∀@)「どうやったら自爆との二択にできたんだよ」
( ´_ゝ`)「よし。これでオッケーだ」 カチャッ ターン!
兄者が景気よく意味不明なキーを叩く。
その後、彼らの背後にあるやたら大きなカプセルによく分からない液体が注がれ始めた。
当然、カプセルの中には深い眠りについた魔王城ツン(全裸)が入っている。
アサピーと兄者は、一列に並んだ 『三つ』 のカプセルを見渡した。
( ´_ゝ`)「例のヤツ、どれぐらいで完成する?」
(-@∀@)「先代勇者と魔王城ツン。そして我らが王座の九人、最後の一人。
これで必要な素体は揃った。九人分の完成だけなら今晩中に可能だ」
( ´_ゝ`)「……そか」
兄者は腰に手をあて、安堵の溜め息をついた。
( ´_ゝ`)「これでようやく、老害どもの勇者信仰を潰せる訳だ」
(-@∀@)「フヒッ! 勇者の復活なんざ、王座の九人は誰も望んじゃいねえっての……!」
ゴウン・・・ゴウン・・・
よく分からないそれっぽい音が、深く静かに鳴り響いていた。
.
645
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:51:54 ID:gdPE2cPQ0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(^ω^) 一方その頃、ゆるふわ魔界ワールドでは・・・? (^ω^)
https://www.youtube.com/watch?v=PCfiqY05BpA
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
646
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:53:45 ID:gdPE2cPQ0
从 ゚∀从「――ああ、俺の言ってきた事は全部本当だ」
ロマネスクとハインリッヒ高岡は魔界に来ていた。
ハインは魔王軍への協力の条件として、彼らに奪取された武器の返還を要求していた。
現在ハイン達が魔界に居るのはその為で、それは、何事もなく終わる軽い用事のはずだった。
从 ゚∀从「もちろんブーンの親父さんには恩がある。
助けてやりてぇし、ツンちゃん達にも思い入れがある」
魔界の空は一面が紫がかっていた。
雲も太陽もない空には、魔力の象徴である満月と無数の星々が浮かび上がっている。
そんな魔界の荒野。
魔王城から遠く離れたその場所で、悪意は、人知れず動き始めていた。
从 ゚∀从「改めて言うけどよ、全部本当なんだ」
从 ゚∀从「魔界に来るまで、俺は本当にお前達の力になるつもりだったんだぜ」
从 -∀从「……積み上げてきたなあ……」
从 -∀从「……だからこそ、今は本当に、言葉に詰まる……」
.
647
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:54:54 ID:gdPE2cPQ0
妖刀・首断ち。
その刀は、戦時中にハインリッヒ高岡が魔王軍の中ボスくらいの奴を殺して奪った刀。
刀身の切れ味もさることながら、目を見張る能力は毒性付与・呪術展開・精神操作の三つ。
もともと悪の側で製作された一振りであるため、刀は十全なる悪意に満ちていた。
……であれば、もしも当時の戦闘で、ハインが一太刀でも食らっていたなら。
そこから入り込んだ毒性は、今この瞬間までの幾年月で、どれだけ彼を蝕んでいたのか……。
ゆっくりと、それこそ細胞のひとつひとつを丁寧に入れ替えていくような些細な変化の積み重ね。
それはいつしか、ハインリッヒ高岡の中に小さな 『好奇心』 を生み出していた。
これだけ積み上げてきた正しさを、なんの躊躇いもなく捨てたらどうなるか。
全てが真実。全てが正義。
仲間を信じ、世のため人のためと心から願い、戦い続けてきた男。
普通ならそれを台無しにしようとは誰も思わない。
しかし好奇心に根付いた悪意というものは、どんな人間の心からも消し去る事はできない……。
.
648
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:56:00 ID:gdPE2cPQ0
从 ゚∀从 「……参ったな。年甲斐もなく、血が騒いできた……」
(; ωФ)「……ハイン、リッヒ……」
恍惚の笑みを浮かべるハインを、ロマネスクは地に伏したまま見上げていた。
心臓を背後から一刺し。いかに魔王といえど、それは十分絶命に値する一撃であった。
(; ω )「……あぁ、あ……」
ロマネスクは自責する――確かにハインリッヒは妖刀を悪用してはいなかった。
それは事実で間違いない。だから、そこで思考が止まってしまった。
ハイン自身が毒に侵されているとまで、考えが及ばなかったのだ。
从 ゚∀从 「……勇者軍を抜けた時とは比べ物にならねえな……」
ハインリッヒ高岡――齢六十を越えて味わう、背信の快感。
自分自身の半生を否定するような無思慮の裏切りは、しかし、彼に人生最大の背徳を堪能させていた。
【interlude:out】
.
649
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:57:59 ID:gdPE2cPQ0
〜〜〜〜
('(゚∀゚∩「解説のなおるよ! 今回はゲーム説明みたいな事をするよ!」
('(゚∀゚∩「とんでもない事になったね!」
('(゚∀゚∩「まずはツンちゃん! 今回、ツンちゃんは負けて実験材料になっちゃったよ!
これはギコ戦の分岐によるものだね! ギコを生かしたがゆえに!」
('(゚∀゚∩「ただしギコを殺す1の場合でも、
ツンちゃんは暗示を受けていた渡辺さんに後ろからド突かれて電車に轢かれてたよ!」
('(゚∀゚∩「つまりギコを生かすこと自体は正規ルートという事だね! わあい!
三周目以降もギコは積極的に生かしていこうNE!」
('(゚∀゚∩「でも今回のツンちゃんはステータス不足で流石兄弟には負けてしまったよ。
こればっかりはどうしようもない! 三周目では頑張ろう!」
.
650
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:59:05 ID:gdPE2cPQ0
('(゚∀゚∩「もう一つ! ロマネスクが呆気なく死んだ事について!」
('(゚∀゚∩「こっちも実はツンちゃん達のステータス不足が原因なんだよ!」
('(゚∀゚∩「ツンちゃん達が頼りないから、ロマネスクは万全を期す為にハインに頼った!
その結果がこれなんだよ! とてもかなしいNE!」
('(゚∀゚∩「各キャラのステータスが十分育っていた場合、
>>533
で分岐が発生していたよ!」
('(゚∀゚∩「その分岐でハインを頼らない選択をしていれば、ロマネスクは死ななかった!
今回の呆気なさすぎる死に方は、ロマネスク個人のバッドエンドなんだね!」
('(゚∀゚∩「ステータス不足が原因で、本来ある筈の分岐が消えている!
今回はまさにそれで、今後もこういう事は起こるよ!」
('(゚∀゚∩「つまり、正規ルートでもステータス次第で大変なことになる!
これはもう周回して強くなるしかない! いったい何度完結すればいいんだろうNE!」
('(゚∀゚∩「そんな感じ! 適当! まだ出てない仕様についてはまた今度!」
('(゚∀゚∩「本編はもう少し続くよ!」
〜〜〜〜
.
651
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 22:59:45 ID:gdPE2cPQ0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
( ^ω^)「……行ってくるお」
翌早朝、ブーンは靴紐を固く結び、家を出た。
ブーンは、ミセリと貞子の制止を無視することにしたのだ。
彼女達は魔界との連絡がついたらすぐ行動に出るとは言っていたが、一晩経ってもそれは叶わなかったらしい。
待っていられる時間は使い果たした。ブーンの決断に、迷いはなかった。
.
652
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 23:01:30 ID:gdPE2cPQ0
('A`)ノ 「……よっ」
玄関を開けると、暗い顔をしたドクオがせめてもの苦笑いを浮かべて待っていた。
( ^ω^)「……」
('A`)「……お前を止めろってさ、ミセリさんに言われてんだ」
('A`)
('∀`)「やめた。一緒に行くわ」
(; ^ω^)「……いいのかお?」
('A`)「勇者軍のアジト、場所分かってんのか?
フツーに歩いてったら昼過ぎちまうぜ」
(; ^ω^)「……頑張るお!」
(;'A`)「いやいや、乗せてってやるから。ちょっと待ってろ」
ドクオは庭先に行き、服を脱ぎ始めた。
( ^ω^)
(; ^ω^)「うわっ、ウワーーーーー!!」
(;'A`)「叫ぶな! 邪龍化したら裂けちまうんだから脱がせろ!」
ブーンはすっかり忘れていたが、魔族であるドクオはドラゴンに変身できるのだ。
とても凄いと思った。
.
653
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 23:02:59 ID:gdPE2cPQ0
(;'A`)「……久し振りだけど出来っかな……」
――ドクオの周囲に金色の魔力が流動する。
その流れは彼を中心にして天に登り、わずかな風を巻き起こしていた。
しかしどれだけカッコイイ感じにしてもドクオは全裸。手の施しようがなかった。
( ^ω^)「ドクオ凄いお! やれば出来る子だとは思わなかったお!」
(; A )「褒めたいなら素直に喜べる褒め方をしてくれ……!」
ドクオの全身を埋め尽くすように邪龍の黒鱗が広がり始める。
血肉の性質も変質していき、邪龍の肉体は少しずつ重みとその大きさを増していく。
ドクオが地面に手足をつけると、金色の魔力が更に輝きを増してドクオを包み込んだ。
それが収まるとドクオは邪龍化していて、ブーンは凄いなあと思った。
『――乗れ』
( ^ω^)(こいつ脳内に直接……)
.
654
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 23:03:55 ID:gdPE2cPQ0
黒の両翼に大木のような尻尾。屋敷の屋根をも超える巨大な体躯。
低く喉を鳴らし、邪龍はブーンに顔を寄せる。
ブーンは(これドクオなんだよな……)と一瞬躊躇ったが、間を置いてから、邪龍の鼻先を撫でて言った。
( ^ω^)「よろしく頼むお」
ブーンは、邪龍の背中によじ登った。
(; ´ω`)「……手が滑って乗りにくいお」 ツルツル
『――頑張れ』
ブーンは頑張ろうと思った。つづく!
655
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/06/21(火) 23:10:04 ID:gdPE2cPQ0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
ト、 ト、
_,.-L:l-l::l
/: : :ヽl::l ヽト、
./: : : ,.-‐ヘ:l。lト、ヽ と思う鳩サブレであった
{: : :/ ハl0l ',
l: : { lnl } 前回の酉は #1datokanasiiNE であった
', ヘ lul j
V、ヽ l゚j / また次回 今月中にもう一話分投下したいのであった
_ト、ミニト、/_/_,.ィ゙
/`ヽ、\\/∨/
,. -‐'"ニ=、`¨`ー-イ7l>、__
_,.-‐'"⌒ヾヽ、_/\__>=ミY´ノノヾ∧:.`ヽ
: : : : :/ ̄ヾ: :l´ \ ヽ lィ゙ lLヽ=ヽ、
ニニ<<__||: :\ヽ// i } } `ヾL__イll
 ̄¨ヽ___ヽ: :`1 ̄ l } }___ト-イ
656
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 23:19:44 ID:8E2tYox.0
乙サブレ
ワクワクしてきたぞ
657
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 23:28:25 ID:orvSa36s0
復活の鳩サブレ乙
一瞬選択肢ミスったかと思ったけどマシな方だったんだな...
658
:
名も無きAAのようです
:2016/06/21(火) 23:29:09 ID:wjXBglAs0
乙
全裸のドクオくんチョーかっこいい
659
:
名も無きAAのようです
:2016/06/22(水) 00:00:25 ID:gkmBJqUI0
サブレ生きとったんかワレ!!!!
660
:
名も無きAAのようです
:2016/06/22(水) 12:42:13 ID:.YaSugdM0
これも全部乾巧って奴の仕業なんだ
661
:
名も無きAAのようです
:2016/06/23(木) 20:14:14 ID:DzwCg6kc0
乙乙!!! 続き楽しみだし3巡目も楽しみ
662
:
名も無きAAのようです
:2016/06/30(木) 16:40:17 ID:lfhJ.FMM0
http://imepic.jp/20160630/597320
ツンちゃんのつもり
次回も楽しみに待ってます!
663
:
名も無きAAのようです
:2016/06/30(木) 17:08:09 ID:9RvDzMi20
クソうめぇえええええええええ
664
:
名も無きAAのようです
:2016/06/30(木) 18:58:55 ID:sgHUlQUg0
かっこかわいい
665
:
名も無きAAのようです
:2016/07/01(金) 00:28:24 ID:gOPewXyM0
かわいくてかしこそう
666
:
名も無きAAのようです
:2016/07/01(金) 01:38:20 ID:QBqLrzPIO
普通に商業作品にいそうな巧さじゃないか
667
:
名も無きAAのようです
:2016/07/01(金) 12:14:25 ID:A55CSaAo0
鳩サブレの薄い本が出るのか!
668
:
名も無きAAのようです
:2016/07/01(金) 17:40:54 ID:6DmIdqWI0
タイトルロゴの左上にいる鳩サブレいいよね…
669
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/07/09(土) 21:15:20 ID:xJn5HPPo0
【epilogue:無力】
日本列島から遠く離れた名も無き孤島。
そこが勇者軍の本拠地。軍の要となる物資・人材・研究設備は全てここに揃っている。
この島を守るのは激化によって感知能力を得た数十名の他、長距離攻撃が可能な激化能力を持った一個中隊。
感知範囲は島を中心にして半径30km。
複数人で互いの死角を補いながら、彼らはほぼ完璧にその範囲を監視し続けていた。
『――敵の射程に入るぞ!』
(# ^ω^)「最速で突っ込むお! 敵の攻撃は僕が相手するお!」 ガリッ!
ケースから直接クスリを口に放り込み、奥歯で噛み潰す。
ブーンの激化能力・復元が、邪龍の周囲に百本近い剣を展開した。
『振り落とされるなよッ!』
途端、邪龍は大きく羽ばたいて雲の上まで急上昇。ひるがえり、翼で風を受けてスピードを落とす。
一瞬の浮遊感の直後、邪龍は翼をたたんで体を細め、全体重を乗せて急速落下し始めた。
そして、それと同刻午前七時。
「アサピー様! 準備整いました!」
(-@∀@)「よし、発射しろ」
二人の奇襲を出迎えるかのように、孤島から三発のミサイルが打ち上げられていた。
.
670
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:16:30 ID:iKqdMG4I0
唐突に来たな逃がさんぞ
671
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:17:25 ID:xJn5HPPo0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第二戦 王座の九人・アサピー
VS 【1st ウェポンズ・ジャケット】
【2nd リバイバル・アーマー】
【3rd リーサル・ウォーリアーズ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
672
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:18:15 ID:xJn5HPPo0
目標めがけて空をゆくミサイル。
それは完璧な演算に基づいた弾道を描き、雲を突き破ってブーン達に迫ってきていた。
『ミサイルが来やがった! 三発だ!』
(# ^ω^)「朝飯前だおッ!」 バッ!
邪龍の背にしがみつく手を片方離し、ブーンは空中に展開した剣を自身の思考に結合した。
思いのままとはいかずとも、これで復元した武器はある程度ブーンの言う事を聞いてくれる。
ブーンは剣の切先を前方に向け、邪龍の背中を叩いた。
(# ^ω^)「でもどの辺狙えばいいお!?」 バンバン!!
『――あの辺だ!』
(# ^ω^)「分かったお!」
脳に言葉を送るのと同じ要領で、ブーンにミサイルの位置を伝達する。
ドクオから伝わってきたそれを直感のように受け取ったブーンは、すぐさま百の剣を三つの束に分けて発射した。
剣はルインズスターのような軌道で雲間の向こうに消えていく。
ミサイル・・・爆発! 撃墜! 凄い爆発が起こり、雲を吹き飛ばす!
爆風がブーンの贅肉を波立たせる! 迫力!
( ^ω^)ノシ「やったお!」バンバン!!
ブーンは喜びのあまり邪龍の背中を叩いた。ドクオに悲しみの3ダメージ……
.
673
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:20:39 ID:t9c/DOxI0
うほっ
674
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:21:18 ID:xJn5HPPo0
「――ミサイルは全弾撃墜! 目標は健在、次の用意だ!」
押し黙り、ミサイルの着弾を見守っていた指令室に怒号が弾ける。
発射から僅かに数分。指揮官は、即座に次の攻撃にとりかかった。
( ・∀・)「こちらの長距離砲台はどうした」
めまぐるしく動き始めた指揮官の隣に、王座の九人・モララーが現れた。
モララーは指揮官と足並みを揃えて歩き、最低限の言葉で彼に問いかけた。
「さきほどの襲撃で陸地の守りが手薄になりました。
長距離攻撃が出来る者は大半がそちらの増援に。私は反対したのですが……」
( ・∀・)「例の仮面のライダーか。それの始末は私に任せろ」
「分かりました。そこのお前! モララー様を前線にお送りしろ!」
指揮官に呼ばれた男が駆け足でモララーの前にやってくる。
彼は素早く敬礼を済ませ、「こちらです」と言ってモララーを先導していった。
.
675
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:22:03 ID:xJn5HPPo0
(-@∀@)「モララー! こっちは俺が出る!」
指令室の二階から身を乗り出し、アサピーが手を振ってモララーを呼び止める。
モララーは一瞥でそれに答え、足早に指令室を去っていった。
(-@∀@)「指揮官、今の聞こえたか!」
「聞こえました! 通常兵器での攻撃はどうしますか!」
慌ただしい指令室の中、二人は一階と二階で大声を飛ばし合う。
(-@∀@)「俺が戦闘を開始するまで続けろ! 足止めできれば上等と思え!」
「分かりました! 追って空挺小隊を出撃させます!」
(-@∀@)「一人で十分だ! 今はこっちの態勢を整えたい!
いいか、魔術師が来るまでに増援に出した中隊を呼び戻せ!
魔術師だけはミサイルじゃあ迎撃できねえ! 分かったな!」
「了解です! ご武運を!」
指揮官は敬礼をして自分の仕事に戻っていった。
アサピーも視線を戻し、二階の専用フロアで出撃の準備を進めていく。
.
676
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:22:51 ID:xJn5HPPo0
アサピー専用の二階フロアは、彼の個人的な研究室になっていた。
そこには戦闘用の兵装が数多く収納されており、それらは一個人が戦争の一勢力になれるほど強力な代物ばかりであった。
左右の壁に整然と展示される火力兵器を横目に、アサピーは研究室の奥へと足を進めていく。
歩きながら、彼は自作の音声認識システムに声をかけた。
(-@∀@)「シリンダーを用意しろ。1番から9番まで全部だ」
『ご機嫌ですね。本日はどちらを』
(-@∀@)「それを答えるのがお前の仕事だ」
『失礼、忘れていました。では対空装備が豊富な4番がよろしいかと』
(-@∀@)「だな。俺もそう思っていた」
アサピーはフロア最奥の部屋に入っていった。
部屋は一面まっさらな空間で、物は何一つとして置かれていなかった。
ところが、アサピーが床に描かれた靴底のマークにぴったり足を揃えると、どこからか単調なビープ音が流れてきた。
数秒後、床が二つに分かれて壁の奥に収納されていく。
無機質だった壁も続々と動き始め、モニターやコンソールなど壁の裏に隠されていた機器を一斉に展開していった。
ガッシャンウィーン的な駆動音を鳴らしながら、空間は、瞬く間にその姿を機械的なものに変えていく。
.
677
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:23:44 ID:xJn5HPPo0
すっかり模様替えも終わった頃合いで、空間中心の床から円筒状のマシンケースが上がってきた。
その巨大なケースには9つの細長いポッドがくっついており、中にはそれぞれ人型アーマーが収納されていた。
ここはアサピー命名“装填室(シリンダールーム)”。
強力な激化能力を持たない研究者が王座の九人に選ばれた理由は、ここにある九個のアーマーであった。
『4番の調整は済んでおります』
音声認識がそう言うと、マシンケースがウイイインと回転し、アサピーの前に『Ⅳ』と書かれたポッドを提示した。
ポッドは自動で鉄扉を開き、アサピーに搭乗を促す。
しかしアサピーはさっさと中には入らず、眉間にシワを作って天井を見上げた。
(-@∀@)「……確かに最善だが、見てみると気分じゃない」
『そうお答えになると思いました』
音声認識は主人のわがままに即時対応する。
ケースをさらに回転させ、今度は『Ⅵ』と書かれたものをアサピーに見せつける。
『私はアナタの気分も考慮できるようプログラムされています。
今回は少しばかり焦りが見えますので、事故に備えて機動力の高いこちらを』
(-@∀@)「……いや、いやいや」
アサピーは頭を振って苦笑う。
しかしポッドの鉄扉が開いて中のアーマーが露わになると、彼は途端に顔色をよくした。
『気分を考慮し、アナタのお好きなコバルトブルーで塗装を』
(-@∀@)
アサピーは瞑目し、眉をあげて答える。
(-@∀@)「いいね」
.
678
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:27:43 ID:xJn5HPPo0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『――ブーン! 島が見えてきたぞ!』
(; ω^)「……お?」
あの後、自分達を撃墜せんと止めどなく注がれた火力弾幕。
寸での攻防を繰り返してそれをかいくぐった二人は、ようやく目的地を目にする事ができた。
水平線に浮かぶ孤島。
ブーンはぐっと目を凝らし、ぼやけた視界に島を映した。
『……大丈夫か?』
(; ω^)「……」
一錠で十分な激化薬を、ブーンは戦闘開始時点で二錠使っている。
戦闘中も合間を見て更に二錠。それが引き起こす副作用は、着実にブーンの体を蝕んでいた。
『……分かった。島に着いたら少し休むぞ』
(; ω^)「……いや、そんな暇は無いお」
『無理言うな。ヤバくなるまでクスリは禁止だ』
(; ^ω^)「そうじゃないお……!」
薬の服用によって鋭敏になったブーンの感覚は何かを捉えていた。
しかし、それをゆっくりと吟味している猶予は皆無――。
.
679
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:30:11 ID:xJn5HPPo0
雲一つない突き抜けるような大空。
見渡す限り、どこにも敵の影などない。
であれば、残された死角はひとつ――真下に広がる深き絶海、その全て。
(; ^ω^)「ドクオ! 敵は海の中だおッ! もう狙われてるおッ!」 ゴクッ!
ブーンは考える前に激化薬を飲み下し、邪龍の真下に巨大な盾を復元した。
邪龍一匹を覆い隠せるほどの大盾は重力に捕まり、海に向かって落下し始める。
『ブーン、お前またッ……!!』
(; ^ω^)「緊急事態だお! とにかく島にッ――――!」
邪龍は大きく羽ばたいて飛翔。
ブーンが作った盾の陰に隠れたまま、遥か上空へと飛び上がる。
瞬間、ブーン達を追撃するように海底から大きな水柱が打ち上がった。
水柱は大盾を容易く吹き飛ばし、邪龍の右翼に直撃する。
吹き付ける水は邪龍の体勢を大きく揺るがし、彼らに大量の水飛沫を浴びせた。
『ぐっ!』
体を畳んで急旋回。邪龍は水柱を回避し、空を滑空して再加速する。
その加速度についてこれないと判断したのか、水柱の噴出は呆気なく鳴りを潜める。
.
680
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:31:10 ID:xJn5HPPo0
(; ^ω^)「大丈夫かお!?」
『翼膜を少し抉られたが、まだ飛べる!』
しかし、彼らが互いの安否を確かめた次の瞬間。
今度は島全体を包囲するように、先程と同じような水柱が次々と噴射され始めた。
『今度はなんだ!?』
(; ^ω^)「……マズいおッ!」
この行動には島への進路を完全に断ち切ると同時に、邪龍を狙撃可能範囲に誘い込む意味があった。
まだ大怪我を負っていないとはいえ二人の疲労は十分。
仮に上空から突入して一斉射撃を回避出来たとしても、その先に残せる余力は殆ど無いだろう。
(; ^ω^)「あれで囲まれたら島に着けなくなるお!」
(; ^ω^)「一応聞くけど、あの水柱を体当たりで突破できるかお!?」
『……やれなくはないが……』
敵は邪龍が体当たりしてきた瞬間、間違いなく水圧を上げて彼の体を切断しにくる。
あの水柱は最早水圧カッターと大差ない強力な破壊兵器だ。
いかに邪龍の身体が頑丈とはいえ、ドクオにはブーンの期待に応えられるだけの自信が無かった。
.
681
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:35:52 ID:xJn5HPPo0
(; ^ω^)「なら急ぐしかないお! ドクオ用の鎧を作るから、それ着て突っ込むお!」
『……待て、もうここまでだ! これ以上は駄目だ!』
(; ^ω^)
(; ^ω^)「……あと少しで島に着くお。ここまで来たら、僕は一人でも行くお」
『……お前……』
(; ^ω^)「……答えろ! これは脅しだお!」
『…………』
(; ^ω^)「……」
大きく首をもたげ、邪龍の咆哮が天に轟く。
人の言葉では語りきれない感情が込められたその一声を、ブーンはしかと受け止めた。
卑怯、悪辣、狡猾。たとえ友にそう言われたとしても、ブーンにはもう前進しかあり得なかった。
ブーンは口に溜まった血反吐と一緒に更に二錠、激化薬を飲み下した。
彼の中で欠けた何かは瞬く間に補完され、友への罪悪感もまた、そのプロセスの中に飽和していく。
( ^ω^)「ドクオ、頼むお」
怒りの息吹を口に含んだまま、邪龍は島に向かって加速する。
ブーンにはもう、ドクオの声が聞こえなくなっていた。
.
682
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:36:58 ID:xJn5HPPo0
――このまま戦闘を行うとドクオが死亡します。バッドエンドを続行しますか。
1.続行し、世界の結末までを見る。(バッドエンドボーナスあり)
2.続行しない。リザルトと初期分岐を済ませた後、三周目へ。
.
683
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:37:43 ID:xJn5HPPo0
(^ω^)以上です。二択は今日中で締め切り('A`)
(^ω^)同票の場合は酷い事をします('A`)
684
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:40:43 ID:4mCSsnow0
乙ー
次周に向けてボーナス欲しいからドクオには悪いが1を(あとドクオの戦闘シーン少しは見たいってのもある)
685
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:43:38 ID:ZS4O0Xtg0
1
686
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 21:46:12 ID:iKqdMG4I0
1でしょう
687
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 22:00:12 ID:YWgJrjtQ0
1かな
688
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 22:07:41 ID:LLulEUjs0
1だな
689
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 22:54:59 ID:7Mbu4VWU0
1で
690
:
名も無きAAのようです
:2016/07/09(土) 23:18:29 ID:sRcgYTP60
1
691
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/07/10(日) 00:17:56 ID:IFk6R1.k0
(^ω^)(^ω^)(^ω^)(^ω^)(^ω^)(^ω^)(^ω^)
(^ω^)締め切り!次回早めに書いてきます(^ω^)
(^ω^)感想や絵をたくさんありがとうNE(^ω^)(^ω^)
(^ω^)(^ω^)(^ω^)(^ω^)(^ω^)(^ω^)(^ω^)
692
:
名も無きAAのようです
:2016/07/10(日) 07:20:14 ID:iNCll1sw0
おつ
693
:
名も無きAAのようです
:2016/07/10(日) 08:13:52 ID:jnTWJnU60
乙
同票の酷いことも見てみたかったNE!
694
:
名も無きAAのようです
:2016/07/10(日) 10:47:47 ID:guTme0w.0
('A`)「え、何この団結。お前らそんなに俺が死ぬの見たいの?」
695
:
名も無きAAのようです
:2016/07/10(日) 10:48:38 ID:jdspsqAw0
ボーナスのための犠牲になったのだ…
696
:
名も無きAAのようです
:2016/07/10(日) 19:38:29 ID:IH0g8CUI0
イベントはコンプしないとNE
697
:
名も無きAAのようです
:2016/07/10(日) 21:27:20 ID:nRAxAtAY0
イベントは最後まで見届けてCGコンプしないと……(エロゲ脳
698
:
名も無きAAのようです
:2016/07/11(月) 12:49:25 ID:L0tuHp7.0
ドクオはいい奴だったよ
699
:
名も無きAAのようです
:2016/08/02(火) 11:23:45 ID:aAWhbBjc0
ボーナスの為に死んでくれ
700
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/08/11(木) 21:52:17 ID:vEgpbyFs0
【Bad end:理由なき刃】
.
701
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 21:53:01 ID:vEgpbyFs0
サブレとブーン達の襲撃によって施設全体が慌ただしい頃。
アサピーのラボでは、とある実験が実を結ぼうとしていた。
先代勇者、魔王城ツン、今は亡き王座の九人・ジョルジュ長岡。
この三人がそれぞれ内包する“回路”は今、勇者軍が作り上げた機器によって一つに繋ぎ合わされていた。
( ・□・)
先代勇者には勇者という理外の力。
ξ ⊿ )ξ
魔王城ツンには底なしの魔力。
_
( ∀ )
ジョルジュ長岡には英雄(ヒーロー)としての超能力。
勇者軍の目的は、各能力分野において最優である彼らの“回路”を利用し、誰にでも使える新薬を作り上げる事であった。
その新薬を用いて勇者軍を増強、ゆくゆくは魔王軍を壊滅に――というのが、彼らの大まかな筋書き。
そして魔王城ツンを捕獲した今現在、彼らの思惑はある一点を除いて完璧に進行していた。
.
702
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 21:53:45 ID:vEgpbyFs0
激化薬の製造過程に必要な材料は先代勇者の血肉。
当然オリジナルを使う訳にもいかないので、材料となる血肉は全て勇者軍のクローン技術によって賄われている。
その血肉を更にジョルジュ長岡の超能力・混合と分解の回路を通し、ほどよく頑張ると激化薬が完成する。
つまり激化薬とはソイレントシステムめいた工程で製造される増強剤。
激化能力も、勇者という規格外の存在を取り込む事で発生するDNAの暴走でしかなかったのだ。
しかし、勇者軍にはこれでもまだ足りなかった。
ただの人間が魔王軍に立ち向かうには超能力の一つや二つでは全く歯が立たない。
王座の九人ですらそれは同じだ。銃を持った人間の強さを5とするなら、素手の平民魔族ですら戦闘力は100。
人間と魔族では、根本的に強さの次元が違う。
ξ ⊿ )ξ
その問題を解決すべく目をつけられたのが魔王城ツン。
彼女の役割は激化薬製造におけるブースター。勇者だけで足りないなら更に倍、魔力をも激化薬に組み込んでやろうという考えだった。
.
703
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 21:55:00 ID:vEgpbyFs0
爪'ー`)「……一晩で十粒。生産量に関しては、アサピーの手腕に期待だな」
アサピーのラボには新薬に興味を示す者達が集まっていた。
この実験を後押ししていた勇者軍のカルト派閥の面々は特に多く顔を揃えている。
実働部隊でしかない王座の九人はこの場にはフォックスと流石兄弟の三人しかおらず、彼らにしても新薬に大した興味を抱いてはいなかった。
( ´_ゝ`)「これ、誰が最初に使うんだろうな。俺は嫌だ」
(´<_` )「俺もパスだ。現行の激化薬も、初期のは本当に酷かった」
兄弟は新薬完成に湧く人だかりから離れ、壁際から冷ややかな視線を彼らに送っていた。
雑談の声は絶え間なかったが、要約すれば「勇者万歳」「次世代の勇者誕生だ」の二種で事足りる会話ばかりだった。
浮足立ったまま地上の戦闘も新薬の危険性も考慮しない彼ら・勇者信仰の集を見ていると、流石兄弟は自然と溜め息をついていた。
.
704
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 21:55:43 ID:vEgpbyFs0
( ´_ゝ`)「……こいつら、本当に何も考えてないな」
(´<_` )「いつも通りさ。俺達だって所詮はあれの同類だ」
爪'ー`)「ふふ、そう言うな」
人混みから出てきたフォックスがそう言いながら近付いてきた。
彼は持ってきた新しい激化薬を一つずつ、流石兄弟に手渡した。
爪'ー`)「王座の九人でそれぞれ一錠だ。
余った一錠は、今ここで志願者が飲むらしいぞ」
( ´_ゝ`)「パフォーマンス」
(´<_` )「人柱」
爪'ー`)「ま、これも彼らにとっては必要な儀式なんだよ。あれはただの宗教だから」
( ´_ゝ`)「……なんか死んでも歓声が上がりそうだな」
(´<_` )「上がるだろうな。全肯定は基本だ」
.
705
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 21:56:30 ID:vEgpbyFs0
「――――俺だ! 俺が飲む!」
やがて人混みの中から一際大きな声が張り上げられた。
フォックス達は呆れ気味に頭を振り、彼らの儀式を傍観する。
声の後、湧き上がったのは盛大なる拍手。
それに後押しされた志願者の青年は、カプセルの上によじ登って新薬を頭上に掲げた。
老若男女、勇者というレッテルに陶酔した人間達の好奇の視線が、青年に集中する。
「俺が、俺が次の勇者になる!」
青年にとって、あの薬は現代における選定の剣。
RPGによくある石に刺さった剣を引き抜くような、命を懸けたごっこ遊び。
青年はただのドーピングサプリを血眼になって見上げる。
そんなものを伝説の剣、自分自身を選ばれし勇者と信じたまま、躊躇いなく口に運んでいく。
「……俺が……!」
青年が激化薬を口に含むと同時、空気は静寂した。
ごくん、と薬が喉を通る。
青年はぎゅっと目を閉じ、身構えたまま微動だにしない。
誰も喋らない。ゴウン、ゴウンというそれっぽい音だけが、地鳴りのようにラボに響いていた。
.
706
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:00:51 ID:vEgpbyFs0
「…………お?」
最初、体の変化に気付いたのは青年本人であった。
体内から湧き上がる透き通ったパワーが、はち切れんばかりに全身に広がっていく。
やがて、青年の体表には真紅のオーラが漂い始めた。
青年の様子から新薬完成を察したのか、周囲の人間達からも感嘆の声が次々と上がり始める。
「す、すげえ! これならもう何も怖くねえ!」
青年もこんな気持ちは初めてだった。
新しい激化薬のパワーは安定したまま漲るばかりで、衰える気配は一切ない。
( ´_ゝ`)「どーやら普通に完成っぽいぞ。アサピー褒めないとな」
爪'ー`)
(´<_` )「……いや、これは」
フォックスと弟者は先んじて気付いていた。
二人の素振りを不思議に思い、兄者も青年を凝視してやっと気付く。
青年の首には、うっすらと赤いマフラーが具現していた。
あれは魔王城ツンが巻いていた赤マフラーと同じものだ。
実物を見ている分、流石弟者は尚更それを直感し確信していた。
(´<_` ;)「魔王城ツンがまだ生きている。息の根を止めてくる」
そう言って一歩踏み出したと同時、弟者の肩をフォックスが引き止める。
爪'ー`)「もう間に合わない」
.
707
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:03:26 ID:vEgpbyFs0
「俺が、俺が――――ッ」
青年の言葉を遮るように、バチュ、という水々しい炸裂音が鳴った。
カプセルの上で高らかに歓喜していた青年は、その音と共に呆気なく姿形を喪失していた。
近くで彼を見ていた者達にも、何が起こったのか咄嗟には理解できなかった。
水風船に針を刺すように一瞬で弾け、黒く変質した“中身”を周囲に撒き散らした一人の青年。
その末路の意味を理解しようと、ラボの空気は再び静寂する。
だが、今度の静寂は明らかに異質だった。
元は青年だった黒い泥のような物を浴びたギャラリー達は、目を丸くしてただ呆然としていた。
それは思考停止からくる静寂ではなく、機能が停止したが故の静寂。
泥が一滴付着しただけでも、その人は人間としての機能を完全に失っていた。
爪'ー`)「……この区画を一時、結界内に隔離する」
爪'ー`)「君達は外に出ていなさい。やる事は分かるね?」
フォックスは旧・激化薬を躊躇いなく五錠飲み下した。
前進しつつ腰の鞘から長剣を抜き取る。空中で試しに一振り、フォックスは手応えを確かめる。
(´<_` ;)「――なっ!?」
その一振りは流石弟者の胴を斬り払った。フォックスが、流石弟者を斬ったのだ。
回避は寸前で間に合ったが、弟者は突然の事に目を見開き、フォックスを睨んだ。
.
708
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:04:25 ID:vEgpbyFs0
(´<_` ;)「フォックスさん、何のつもりだ!?」
爪;'ー`)「……なに?」
この一瞬の出来事に驚いたのはフォックスも同じだった。
フォックスは確かに前進し、流石兄弟を背後にして長剣を軽く振ったのである。
当然そこは剣が当たるような間合いではないし、フォックスはそんなマヌケをする男ではない。
(; ´_ゝ`)「危ねえな! 気をつけ、」
途端、駆け寄ってきた兄者の胴体に真一文字の赤い線が浮かび上がった。
流石兄者はその線を境にして、
(´<_` ;)彡 「――兄者ッ!?」 バッ!
爪;'ー`)「――――おのれ!!」
フォックスの視線がカプセル内の魔王城ツンを捉える。
爪;'ー`)(あれの能力が何かをしている! 今すぐ止めなければ!)
長剣を構え直して床を蹴り上げ、フォックスは超高速でカプセルに長剣を振り下ろした。
直後、分厚い強化ガラスが粉々に砕け散り、カプセル内の溶液が洪水のように溢れ出す。
ξ ⊿ )ξ
水浸しの床に全裸の魔王城ツンが横たわる。
フォックスは足早に彼女に近付き、その首に長剣を突き立て、完全に捩じ切った。
分断された頭と体。
これで魔王城ツンは完全に絶命――する筈だった。
.
709
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:05:24 ID:vEgpbyFs0
(; ´_ゝ`)「フォックスさん、今のは何だったんだ!?」
(´<_` ;)「何がどうなってる!?」
爪;'ー`)
無傷の流石兄者を見て、フォックスは言葉を失う。
爪;'ー`)(……何が、起こっている……?)
「――俺が、次の勇者に選ばれた!」
カプセルの上で青年が叫び、観客達の大喝采が鳴り響いた。
流石兄弟はその様子を見て、壁際で嘲笑を浮かべていた。
爪;'ー`)「…………なにを」
( ´_ゝ`)「やる価値ねーだろ、こんな見世物」
(´<_` )「うちの組織はそんなもんだよ」
爪;'ー`)「――私達に何をした! 魔王城ツ」
.
710
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:06:14 ID:vEgpbyFs0
( ´_ゝ`)「こいつら、本当に何も考えてないな」
(´<_` )「いつも通りさ。俺達も、所詮はあれの同類だ」
爪'ー`)「ふふ、そう言うな」
人混みから出てきたフォックスがそう言いながら近付いてきた。
彼は持ってきた新しい激化薬を一つずつ、流石兄弟に手渡した。
爪'ー`)「王座の九人でそれぞれ一錠だ。
余った一錠は、今ここで私が飲んでみよう」
(; ´_ゝ`)「……マジすか」
(´<_` ;)「いや、止めた方が……」
爪'ー`)「大丈夫。アサピーは優秀だよ」
フォックスはパクッと新薬を飲み込んだ。
それと同時。
ξ゚⊿ )ξ
カプセルの中で、彼女は静かに目を覚ましていた。
.
711
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:06:55 ID:vEgpbyFs0
.
712
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:14:13 ID:vEgpbyFs0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
( ^ω^)「……おっ?」
ブーンが邪龍化したドクオと共に島へ突撃している最中。
島を包囲しようと次々噴出していた水柱が、突然一斉に姿を消したのだ。
(; ^ω^)ノシ「ドクオ、ドクオッ! 今だお!!」
ブーンは邪龍を急かして背中を叩く。
しかし、邪龍はそれを無視して翼を広げて急停止、すぐさま旋回して島に背を向けた。
(^ω^ ;)「ドクオ待つお! なんで戻るんだお!?」
訓練をしていない人間が魔力を感じ取ることは難しい。
ゆえに、今のブーンにはあの島から放たれた魔力の波動を感知する事が出来ていなかった。
('A`;)(…………)
先程までのブーンへの怒りも冷め切っていた。
我に返ったというか、そんな場合ではないと彼は即断したのだ。
.
713
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:15:36 ID:vEgpbyFs0
(; ^ω^)「ドクオ!」
('A`;)(……)
感じ取った魔力の感覚には覚えがあった。
魔界の合成生物キマイラ。他の魔物を食らい、その魔力を取り込んで命を繋ぐ古代の魔物。
さっきの魔力の波動はそのキマイラのものと酷似していた。ドクオが撤退を選んだ一番の理由が、これである。
万が一にも敵がキマイラを人造したとなれば、あの島はもうキマイラの餌場でしかない。
事実、もう既に人間の気配は次々と魔力に変換されており、それら魔力は一点に回収され始めていた。
第二に、島の地下に現れた不自然な空白。
人間の気配と魔力に満ちたあの島の地下に、なにも感じ取れない球状の空白が出現した。
そこは魔力の回収地点として機能しており、上記のとおり変換された魔力はここに集まっている。
そしてなにより、この空白の空間には数分前までツンの魔力があったのだ。
彼女の魔力が消え、正体不明の空白が生まれ、唐突に現れた異形の気配。
何が起こったかは定かではないが、少なくとも、ドクオには魔王城ツンが無事であると思えなかった。
( A ;)(…………)
確かめに行こうなどと、ドクオは微塵にも思わなかった。
ここまで明らかな“手遅れ”を、ブーンとドクオの二人でどうにか出来る訳がないのだ。
味方が、あまりにも少なすぎる。
.
714
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:16:30 ID:vEgpbyFs0
(; ^ω^)「――ドクオ!! 前だお!!」
ドクオはブーンの叫びで前方を見遣った。
空中に異様な人影。
光沢のある青いアーマーに全身を覆われたそれは、四肢のスラスターを用いて空中に浮遊していた。
ドクオは半身を持ち上げて勢いを殺し、一度大きく羽ばたいてその場に留まった。
すると、青いアーマーは頭部装甲を取り外し、その顔を露にした。
(-@∀@)「……なぜ逃げる。この状況、お前達にとってはチャンスだろ」
(; ^ω^)「あいつアサピーだお、王座の九人の」ボソッ
ドクオに耳打ち、ブーンはアサピーの表情を窺った。
表情は涼しげであったが、彼の雰囲気には余裕がなかった。
それを起点に勘繰ればブーンにもすぐ察しがついた。
島で何かが起こっている。ドクオとアサピーは、それに気付いているのだ。
(; ^ω^)「……どういう意味だお」
(-@∀@)「…………」
小脇に抱えていた頭部装甲を手に持ち直し、アサピーは内側のパネルを操作した。
途端、激しいノイズが頭部装甲の通信機から迸った。
ブーン達にも聞こえるくらいの大音量で流れ始めたノイズは、数秒経ってようやく静かになった。
(-@∀@)「謀反だ。王座の九人が、三人も」
コツン、と靴底が鳴った。通信機からの音だった。
次に聞こえてきたのは短い悲鳴。その後には床に何かが落ちる音と、粘り気のある水音が続いた。
.
715
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:17:23 ID:vEgpbyFs0
(-@∀@)「手を組んでいたのか? 俺以外の王座の九人と」
足音は水溜りを歩いていた。
時折人の声が弾けては、その言葉は途中でプツンと断ち切られる。
やがて 『フォックス』 という名前が叫ばれた。直後、弾けるような金属音が空に響く。
(-@∀@)「答えろよ。……そっちの方がマシなんだ、裏切りの方が」
(; ^ω^)「……罠だお」
ブーンは邪龍の目を見て小さく呟いた。
事ここに至って敵を信用する道理もない。ブーンの判断は正しかった。
正しかったが、ドクオの判断は違った。ドクオは、アサピーの話には聞く価値があると思った。
ドクオは邪龍化を少しずつ解除していった。邪龍の巨躯は次第に小さくなっていき、人間の形に変化していく。
全身を鱗に覆われ、背中に両翼を広げたままの半人半龍の状態で、ドクオはアサピーの目を見た。
ブーンはドクオの両足に捕まって宙ぶらりんになっていた。
(;'A`)「……ツンに何をした」
(-@∀@)「……新しい激化薬の材料になってもらった。
今は、生命維持装置を兼ねたカプセルの中に入っている」
アサピーは研究内容をいとも容易く口走った。
それほどまでに現状は火急。アサピーは、ハイリスクな情報交換をせざるをえなかった。
(; A )「……ストッパーを外したのか」
(; ^ω^)「……ストッパー?」
(-@∀@)「今度はそっちの番だ。知ってる事、教えてくれ」
しかし、どうやらドクオはリスクに見合うだけの情報を持っているようだった。
アサピーは通信機を切り、続くドクオの言葉を待った。
.
716
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:19:06 ID:vEgpbyFs0
(;'A`)「……魔王城ツンは強すぎるんだ。
魔力の生産量、貯蔵量、その両方がズバ抜けてる」
(;'A`)「だけど消費量がつり合っていなかった。
それでも魔界じゃ上位だったが、本人の生産量を考えればゼロに等しい程度だった」
(;'A`)「百万の生産量に、十億の貯蔵量。でも消費量だけは頑張っても一日十万前後。
ロマネスクさん達もなんとか出力を上げようと教育を施したが、限界は早かった」
(;'A`)「暴走は二度起きた。……それからしばらくして、ツンが三歳の時、封印が決まった。
各方の魔術師が集まって実行されたのは時間の経過を止める大界封印。
世界に対して脅威となる伝説級の魔物を空間ごと隔離して放逐する、最大規模の封印術だ」
(-@∀@)「……その封印を俺の装置が解いたのか? 嬉しいねえ」
アサピーは自嘲の笑みを浮かべたが、ドクオは頭を振ってそれを否定した。
(;'A`)「いや、ツンは大界封印から三日で出てきた。自力でだ。
封印の中で何が起こったかは分からないが、封印から出てきた時、ツンには明らかな変化があった」
(;'A`)「魔力の生産・貯蔵量がもっと増強されていて、しかも、彼女の中に複数の別人格が生まれていた」
(;'A`)「さらにツンはその人格達に姿形を与える事が出来るようになっていた。
その能力をツンは“ゼノグラシア”と名付けて常時発動。魔力を使い続ける事で、問題はある程度解決した」
.
717
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:20:12 ID:vEgpbyFs0
(-@∀@)「……てことは、だ」
(-@∀@)「そもそも魔王城ツンを倒そうとした事自体が、間違いだったと」
(-@∀@)「魔王城ツンを仮死状態にして出力を停止。
結果として魔力貯蔵はあっという間に限界に至り、この有様か……」
(;'A`)「あいつがお前達に捕まってからまだ一晩だ。
今のツンなら一週間は能力無しでも生活出来るはずなんだが、心当たりはないのか?」
(-@∀@)「……先代勇者と生まれついての超能力者、この二人と回路を合わせた。
まさか、二人分のエネルギーを魔王城ツンが吸収していたとでも言うのか?」
(;'A`)「……こうなったら人も魔物も関係無いぞ。
悪い事は言わねえから、お前も逃げた方がいい……」
(-@∀@)
(-@∀@)「……そうだな。俺に出来る事は何も無い」
アサピーは頭部装甲を装着し、ドクオ達に背を向けて飛び去っていった。
それを追うように島から九つのポッドが発射され、アサピーと共に姿を消した。
.
718
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:21:19 ID:vEgpbyFs0
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☆ボスキャラ一覧☆
≪爪'ー`) / ??? ≫
【本体名】 フォックス
【傾向と対策】
『Aルート・王座の九人編』のラスボス。ブーンが自滅覚悟でようやく互角に戦える相手。
序盤に出てくるため、本気ブーン以外にはまったく対処できない。
今のままだと毎回確実にブーンが死ぬので何とかしよう。ロマネスクをぶつけると死ぬ。
≪??? / ??? ≫
【本体名】 ???
【傾向と対策】
未登場。しかしフォックスを無事倒したところで登場はしない。
ツンちゃん達がフォックスを連れて魔界に帰ると 『Bルート・未完の勇者編』 に突入し、このボスが登場する。
その際には素直四天王が輝く。ボス初登場までにブーンを強くしておくと、とてもよい。
≪ξ ⊿ )ξ / シン・ゼノグラシア・ガルシオンレクイエム ≫
【本体名】 魔王城ツン
【傾向と対策】
未登場その2。『ツンちゃん夜を往く』における最大のラスボスであり、倒すと完結。
『未完の勇者編』の山場でツンちゃんが間違いを犯すと、『Cルート・夜明けの鎮魂歌(レクイエム)編』に突入する。
突入までに王座の九人を一人でも殺しているとバッドエンドが確定する。
膨大な魔力によって生み出された魔王城ツンの別人格。
人格と言うよりは、もはや魔力という概念と一体化した“意思を持った原理”であり、現象と呼ぶべき存在。
名前がカッコイイ
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.
719
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:22:11 ID:vEgpbyFs0
( ω )「…………」
('A`)「……今言った通りだ。今のツンを止める手段は俺達には無い」
宙ぶらりんのまま、ブーンは俯いて黙りこくっていた。
ツンを助けられないのか、という自問に答える気力すら湧いてこない。
葛藤の余地も無かった。ドクオの言ってる事は正しい。生き残る為の結論はもう出ている。
('A`)「……まあ、ツンは友達居ねえんだよ。生まれがアレで、生い立ちもアレだからよ。
俺も正直あいつが怖いよ。手違い一つで今みたいになるんじゃねえかって毎日思ってたし……」
('A`)「……だからまあ、こっちであいつに友達ができて良かったよ。
その事だけは礼を言わせてくれ」
( ω )「……」
“それでも”という言葉が頭から離れない。
勇者の血筋かブーンの性格か、道理を放棄した考えだけが、ブーンの中で急速に大きくなっていく。
( ω )「……このままだと何が起こるお?」
('A`)「……今回は純粋な魔力だけで起こってる現象じゃないから、俺にも分からない……」
ドクオは曖昧に答えてから、その後に付け足すように呟いた。
('A`)「……時間が経つだけ、多くの人が死ぬと思う」
.
720
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:23:01 ID:vEgpbyFs0
( ω )「……」
( ^ω^)「……なら、止めに行くしかないお」
('A`)「……手段は無いって言ったばっかりだぞ」
( ^ω^)「むかし言われた事があるお。
勇者の仕事は、難しい話を簡単にまとめる事だって」
('A`)
( ^ω^)「……これは簡単な足し算引き算だお。
僕はどうしたって人間の側。“あれ”が人を殺すなら、僕の答えは一つだお」
(;'A`)「おい待て! それじゃあまるでツンを殺すみたいな……!」
( ^ω^)「そう言ってるんだお」
(;'A`)
(;'A`)「……なんでそんなに結論を急ぐ?」
(;'A`)「貞子さん達と合流して、対応を考えてから動くこともできる。
数時間ならあの島だけで収まってるはずだ。とりあえず落ち着けよ……」
( ^ω^)
(; ^ω^)「……あ、そうだお」
(; ^ω^)「なんか、ちょっと焦ってたお……」
(;'A`)「お前、島に近付くにつれて変になってきてないか……?」
(; -ω-)「……うん。自分でも少し嫌な感じが……」
.
721
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:23:45 ID:vEgpbyFs0
――直後、二人が異様な気配に気付いたのは同時だった。
(; ^ω^)「ッ!?」
(;'A`)「!?」
身を捩って振り返ると、勇者軍がアジトとしていた島全体が赤い霧に覆われていた。
霧の向こうに隠れた島のシルエットは暗く不気味に蠢いている。まるで、島そのものが何かに変化しているかのように。
先に合点したのはドクオ。あの島の変容を見て、彼には一つ思い当たるものがあった。
(;'A`)「――ブーン! あれだけはマジで駄目だ!
急いで離脱すんぞ! もうワガママ言わねえよな!?」
(; ^ω^)「お、おうだお!」
ドクオはブーンを空に放り投げ、その間に邪龍化してブーンを背中で受け止めた。
目先はもう迷わない。ドクオは島に背を向け、両翼を羽ばたかせた。
(;'A`)
( ω゚)「――――」
己が首に振り下ろされる、その刃にも目を向けず。
【Bad end:out】
.
722
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:24:40 ID:vEgpbyFs0
.
723
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:25:58 ID:vEgpbyFs0
【リザルト:二周目】
≪ ξ゚⊿゚)ξ ツンちゃん ≫
王座の九人・ギコに勝利する。(戦闘経験↑)
しかし、油断からか流石兄弟の闇討ちに合ってしまう。(警戒心↑アホ↓)
勇者軍に捕縛・実験材料にされる。勇者と英雄の回路を侵食し、“現象”と化す。(戦闘能力LvMAX 協調性↓↓)
【次周特典】
・「激化薬」への接触を回避する選択肢が常に出現する。(“現象化”の予防措置)
・ツンちゃんが自分の過去と危険性を自覚している。(性格がシリアス寄りに)
・次周のみ、戦闘能力が最初から極限状態。(敵の攻撃が慎重になり、平和な日常が長くなる)
≪ ( ^ω^) ブーン ≫
平和ボケしすぎてツンちゃんを見失う。(警戒心↑)
人の言う事を全然聞かない。反省もしてない。(独善↑↑)
島で発生した“現象”にあてられ、ドクオを殺害する。(罪悪感↑協調性↓)
【次周特典】
・ツン&ドクオとの関係が希薄になる。(物の考え方が冷たくなるが生存率↑)
・「内藤ホライゾンの過去」に関する情報開示。
・魔力耐性
≪ ('A`) ドクオ ≫
自主性がなく、ツンの護衛を怠る。(忠誠心↑協調性↓)
ブーンの危うさを認識する。また、彼に殺害された事でバッドエンド補正。(ブーンとの友好関係が白紙になる)
全体的に自主性がない。(自主性↑孤立↑)
【次週特典】
・ドクオが魔王軍の一人としてツンの護衛を遂行する。(ツンとの主従関係↑)
・人間への不信感が最大の状態で始まる。(人間に対して冷酷になる)
・龍種としての成熟度が上昇する。また、ツンとの契約により魔力量が上昇。(戦闘能力↑↑↑)
※大体の感じでなんとなくのリザルトなので曖昧に反映します
.
724
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:27:20 ID:vEgpbyFs0
〜ツンちゃん道場のコーナー〜
デデン!(太鼓の音)
ヽ(^ω^)ゝ「ツンちゃん道場だーーー!!」パチパチパチパチ
ξ゚⊿゚)ξ「メスだけど押忍! 作中では主人公、ここでは一番弟子のツンちゃんです!」
(^ω^)「師範代のブーンだお! ここはバッドエンドの尻拭い最前線!
fateにおけるタイガー道場と全く同じ役割をもった第四の壁の向こう側だお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「師匠! ドクオが呆気なく死にました! あと私はどうなったんですか!」
(^ω^)「ツンちゃんはなんか色々設定が増えていたNE!
封印が解けたり人格いっぱいだったり、でも実際何が起こったかは分からないNE!」
ξ;゚⊿゚)ξ「説明不足であります、押忍!」
(^ω^)「バッドエンドだから問題ないお」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「今まで空白にしてた設定が色々固まってきて書けなくなってしまったんですね!」
(^ω^)「その通り! 鳩サブレが出てきた時点で危険信号だったNE!」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど! サブレ登場はマスターブレインがデンジャーシグナルですか!」
.
725
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:28:03 ID:vEgpbyFs0
(^ω^)「今回、勇者の他に英雄っていう単位が出てきたNE!」
ξ゚⊿゚)ξ「ですね! ジョルジュ長岡さんですか? 王座の九人、最後の一人らしいです!」
(^ω^)「あの人の混合と分解の超能力が激化薬に関わってるのも明らかになったお!
勇者( ・□・)のレプリカを、この超能力で色んな薬品と混ぜて作ったのが激化薬なんだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「れ、例のソイレントシステムですね……これをパクパク食べてる人の気が知れないです……」
(^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
(^ω^)「ま! 二周目まではチュートリアルだお!
一周目で周回系作品と提示、二周目でバッドエンド前提仕様と提示したから、いよいよ次から本番だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「明日から頑張るってヤツですね! 具体的にどうなるんですか師匠!」
(^ω^)「リザルトを加味して普通に三周目を始めるお!
ツンちゃんが最強状態で始まるから、今度は日常パートが長くなると思うお!」
ξ゚⊿゚)ξ「おお!」
(^ω^)「設定が固まってきて書きづらくなってきたが故の対処でもあるお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ? 書き始めた時点でここまで設定してたんじゃないんですか!?」
(^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ「……一応聞きますけど、完結させる気あるんですか?」
(^ω^)
(^ω^)「叶わない夢にこそ、ロマンは宿る」
ξ;゚⊿゚)ξ「そんな夏コミ落とした人みたいなことを……」
.
726
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:29:05 ID:vEgpbyFs0
(^ω^)「ともかく三周目だお! 諦めて次に行くお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ですね! このバッドエンドも一種の逃亡みたいなものですし!」
(^ω^)「逃亡してるのに逃亡してないって無間地獄みたいだNE!」
ξ゚⊿゚)ξ「頑張りましょう! 要は私の真の力を倒せば終わりなんですから!」
(^ω^)「そうだお! その時はバッサリ斬り殺すお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ですね! いい勝負をしましょう!」
ξ#゚⊿゚)ξ「うおお! 明日に向かってランニングだーーー!!」 ダッ!
(^ω^)「次周もいっぱい頑張るぞい!」
∩∩
〜ツンちゃん道場 おわり〜
.
727
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:29:45 ID:vEgpbyFs0
.
728
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:31:39 ID:vEgpbyFs0
【prologue:三周目・やや平穏、やや不穏】
すっかり日も落ちた寒空の下を歩く。
私は肉まん最後の一口を平らげ、隣を歩くドクオと渡辺ちゃんを一瞥した。
('A`)「――――」
从'ー'从「――――」
曲折を省いて言うとドクオと渡辺ちゃんは交際していた。
魔族の上下関係もあって、私とドクオは日常的に距離が近かった。
そのせいか学校では自殺教唆にも等しい噂が流れていたのだが、二人の交際が始まった事でそれも終息してくれた。
希少な私の友人が寝取られた辺りに不快とも愉快とも取れる混濁した感情が湧き上がっていたのも今は昔。
今の私は彼らの交際を静かに見守り、応援している。
果たして渡辺ちゃんはいつまでドクオの堅物っぷりについていけるだろうか……。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ふと、この構図を省みて“売れ残り”という言葉が脳裏に浮かんだ
魔王なんだから単為生殖くらい出来ていいと思うが、魔界の変なモンスターと結婚させられないために私も良い男を探さねばならない。
人間界に来た目的の一部がそれだったりもする。ともあれ、私は人間らしく振る舞いながら高校生活を楽しんでいるのだった。
.
729
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:32:49 ID:vEgpbyFs0
从;'ー'从「ツンちゃあ〜〜〜」 トテトテ
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの」
渡辺ちゃんがドクオから離れて私にしがみつく。
去年の春に私達が人間界に来て、今は冬。
まだ一年にも満たないその間、渡辺ちゃんは幾度となく私にしがみついてきた。
そういう時の原因は大体ドクオである。
正直意味が分からないのだが、私の護衛役であるドクオという龍族、
从;'ー'从「ドクオ君がまた告白されてるよ〜ぶぇぇ〜」
( 'A`)「断ったって言ってるだろ」
やたら人間にモテる。
ξ;゚⊿゚)ξ「……もう、また死にかけのブブゼラみたいな声出して。
半泣きだし。このやりとり何度目なのよ……」
从;'ー'从「だってえ〜」
ξ゚⊿゚)ξ「……で、今度はどこの女なの」
('A`)「はあ、なんとか刺客ノ高校の、素直なんとかですけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「……もう少し人間に関心を持ちなさい。相手に失礼よ」 ボソッ
( 'A`)「……分かりました」
ドクオはやれやれと呟いて頭をかいた。
この野郎、なまじ実力があるだけにちょっぴり生意気だ。
逆にそういう所が人間ウケに繋がっているのだろうか? 人の心は難しい……。
.
730
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:34:38 ID:vEgpbyFs0
从;'ー'从「嫌だよ〜寝取られ趣味はないよ〜」オロオロ
ξ;゚⊿゚)ξ「大丈夫だよ〜ドクオは甲斐性無しだから〜」オロオロ
从;'ー'从「嘘だよ〜ふええ〜」オロオロ
ξ;゚⊿゚)ξ「ホントだよ〜ふえ〜」オロオロ
('A`)「……渡辺、先に行くからな」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっコラ! そういう対応をするなと何度も言ってるでしょ!」
从;'ー'从「ふえ、待ってよ〜」 トテトテトテトテトテ
先んじて帰路を行くドクオを追って渡辺ちゃんが走り出す。
私はしばし立ち止まり、彼女達の背中をじっと見つめる。
ξ゚⊿゚)ξ(……おおむね、平和ね)
貧乳キャラに “概ね” と言わせて笑いを取りに行くのはやめろ。
私は振り返り、今度は電柱の影に視線を集中した。
ζ(゚ー゚*|電柱|
ξ゚⊿゚)ξ
平和だ、と言い切れない理由がこのストーカー女・デレである。
彼女は勇者軍残党で私の情報収集を頑張っているのだが、もうバレバレすぎて追い返す事すら可哀想になってきた人なのだ。
.
731
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:35:52 ID:vEgpbyFs0
ξ゚⊿゚)ξ「……あの、バレてるので……」
ζ(゚ー゚*|電柱|
これでも一応、激化薬も使って気配を殺してはいる。
何度か戦った事もあるから、彼女が勇者軍屈指の戦力という事も分かる。
分かるのだが、私が相手となると彼女の実力では話にならないのだ。
実力差は歴然。それでも私の見張りをさせられている辺り、やはり勇者軍は人手不足らしい。
ζ(゚ー゚*ζ「今日は……どの辺でバレましたか……」
ξ゚⊿゚)ξ「……下校中ずっと居るなぁ、とは……」
ζ(゚ー゚*ζ「……あ、そうですか……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……じゃあ、失礼します……」
ξ゚⊿゚)ξ「お疲れさまでした……」
デレは一礼して帰っていった。
彼女自身とっくに私に対する戦意を喪失しているので、暗黙の内に “見つかったら帰る” という謎ルールが私達の間には生まれていた。
しかしここまで物哀しい隠れんぼがあっていいのだろうか。
敵ながら、この凄まじい末端社畜っぷりには落涙を禁じ得ない。
余談だが、彼女は夕方まで私に見つからなかったらスーパーで半額コロッケを買って晩酌するらしい。
ここ最近は昼には追い返していたが、今日はコロッケを食べてくれるだろうか。
私にできる事は何もないが明日も頑張って欲しいぞい。私は彼女に対して切実にそう思った。
.
732
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:36:37 ID:vEgpbyFs0
从'ー'从「ツンちゃあ〜早く〜〜」
ξ゚⊿゚)ξ チラ
……北西2000km先に殺意。
私を牽制するように点在するその殺意は、私に気取られた直後に消滅した。
勇者軍の連中も少しずつ距離を詰めてきている。
何が目的かは知らないが、連中には私の存在が必要らしい。
協力者に聞いた話だと、激化薬の製造過程に私を組み込むとか何とか……。
ξ゚⊿゚)ξ(……ま、出てこられたら対処するしかないのよね)
私は携帯電話を取り出し、すぐさま協力者に電話をかけた。
ξ゚⊿゚)ξ「……もしもし。今の奴、居場所は分かる?」
『……分かるお』
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあよろしく。生け捕りに出来たら学校の貞子さん達に預けておいて」
返事を聞く前に通話を切る。
私は渡辺ちゃんに手を振って見せてから、ドクオと渡辺ちゃんを追いかけて走りだした。
.
733
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:37:44 ID:vEgpbyFs0
――さて、と安易に区切って日常に戻る。
ただいま魔王軍は人間界を絶賛謳歌中(ついでに勇者軍残党もボコボコにしている)。
私も社会経験の一環として高校生活を楽しんでいる。
とかく、世界はおおむね平和である。
大小なり事件はあるが、とにかく世界は平和である。
「……魔王城ツン、だな」
ξ゚⊿゚)ξ
……いや、きっと私の平和はもう過去形だ。
背後から私を呼び止めたこの声が平和の終止符、になるかもしれない。
どう転ぶんだか分からないが、とりあえず私は安易に振り返り、声の主をはっきり目で捉える。
(´・_ゝ・`)「個人的に話がある。勇者軍の裏事情、知りたくないか」
.r=====b
[]υ_σ[]
特徴の無いおじさんと、人間ではない人型のなにか。
魔族にも人間にも属さない彼ら第三勢力を前に、私はしばし、答えを熟考した――
【prologue:out】
.
734
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:38:36 ID:vEgpbyFs0
次回は平成の内に・・・('A`)
735
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 22:59:41 ID:BUPk8feI0
乙おつんつん
アホのツンちゃんなんていなかったんや
毎度毎度本当面白い
736
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 23:04:31 ID:xpqHZXdw0
乙
737
:
名も無きAAのようです
:2016/08/11(木) 23:17:30 ID:obw8YSaM0
乙乙
初期のデレさんの強キャラ感は微塵もなくなってしまった
ブーンとドクオも素っ気ないが3周目も楽しみだ
738
:
名も無きAAのようです
:2016/08/12(金) 08:48:49 ID:pAcmRPs20
そしたらデレさんといい戦闘を繰り広げたおじいちゃんも空気ってことになっちゃう
739
:
名も無きAAのようです
:2016/08/14(日) 02:13:31 ID:.kMks2J20
乙! 3周目楽しみ。
740
:
名も無きAAのようです
:2016/08/14(日) 08:58:59 ID:O9hfMZH60
乙
ツンちゃんがラスボスとは。。
741
:
名も無きAAのようです
:2016/08/14(日) 12:28:43 ID:54T8etRE0
おつおつ
みんな協調性下がってるのが不安
742
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/09/06(火) 10:31:52 ID:i/qYRSnA0
前回のラストにて謎のおじさんに呼び掛けられた私、魔王城ツン。
本来ならば即時警察に通報すべきこの事案に対し、しかし私は冷静に対処してみせた。
果たしてどうなる魔王城ツン。気になる続きは三行後に始まるのであった。今日も一話分頑張るぞい。
(´・_ゝ・`)「ナンパするのは初めてだったんだが、成功してよかった。
俺の名は盛岡、これは自販機のココアだ」
(´・_ゝ・`)「君の名は。」
ξ゚⊿゚)ξ「最初に名前確認してたじゃない。覚えてないの?」
(´・_ゝ・`)「ぜんぜん」
ξ-⊿-)ξ「……魔王城ツンよ」
私は盛岡が差し出したココアを受け取ってタブを持ち上げた。
しかし冬場の夕暮れという状況に際し、渡されたのは冷たいココア。
対し盛岡は当然のようにホットコーヒーを飲んでいる事から、彼は性格に難があるようだった。
ここは帰路を外れた小さな公園。遊具が二つにベンチが一つ。
私達は公園唯一のベンチを占領し、いざ尋常に話し始める。
(´・_ゝ・`)「勇者軍の話か俺の話。どっちから聞きたい」
ξ゚⊿゚)ξ「後者にまるっきり興味が無いから前者で」
(´・_ゝ・`)「興味関心は人間関係の始点だぞ。まずは俺の事を知ってもらう」
ξ゚⊿゚)ξ「力技かよ」
.
743
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:32:40 ID:i/qYRSnA0
(´・_ゝ・`)「俺の名前は盛岡デミタス。
ま、気安く呼びたい時はタッちゃんとでも呼んでくれ」
(´・_ゝ・`)「ただじゃ済まさねぇけど」
ξ゚⊿゚)ξ
一人で喋らせてた方が面白い事に気付き、私は何も言わない事にした。
(´・_ゝ・`)「で、なんというか立ち位置をハッキリさせる為に分かりやすく俺の所属を言うとだな」
(´・_ゝ・`)「超能力者だ。魔王、勇者ときて超能力者。ま、今日日あり得ない話じゃないだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ コクン
(´・_ゝ・`)「しかしまぁ超能力者は一線から消えた。
その昔、魔王と勇者がどうこうで流行が変わっちまったんだな。
ヒーローとかな、昔は居たんだけどな」
(´・_ゝ・`)「そんな超能力者の俺、盛岡デミタス。
俺の能力は説明が面倒だから教えないが、まぁアンタらに比べれば大したもんじゃない」
(´・_ゝ・`)「で、さらに。今時の超能力者は各地で小さなグループを作っててな。
仕事は主に各地域の活性化、街の安全などなど。
秘密だけど一応国から月給も出てるんだ。超能力者の公務員って訳だ」
ξ゚⊿゚)ξ「すごい」
(´・_ゝ・`)「だが俺は違う。俺達は違う。もう少し踏み入った活動をしているんだ」
.
744
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:33:20 ID:i/qYRSnA0
(´・_ゝ・`)「俺が所属するグループに名前は無い。
便宜上通り名が必要な時に限って、俺達は自身を“始末屋”と名乗る」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「始末、文字通りの意味だ。事を終わらせる、話を畳む、句点を打つ」
(´・_ゝ・`)「これまでウチは何百年間とメンツと名前を変えながらこの仕事をしてきたらしい。
吸血鬼狩り、幽霊退治、未解決事件の始末やらなんやら。古代遺跡の破壊とかもあったな」
ξ゚⊿゚)ξ「すごい」
(´・_ゝ・`)「ま、要はお前ら魔王勇者の連中がドンパチやってるあいだ、
世界中の細かい事件を解決してる連中が居ると思ってくれればいい」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」
(´・_ゝ・`)「分かった?」
ξ゚⊿゚)ξ「よく分かった」
(´・_ゝ・`)「さすがは魔王直系……。理解力もずば抜けているな」
ξ゚⊿゚)ξ「いやあまあ」
.
745
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:34:42 ID:i/qYRSnA0
(´・_ゝ・`)「ここまでの話で俺がどういう奴かは分かってもらえたと思う。
それじゃあ次は勇者軍と、今回なぜ俺達が出しゃばってきたかの話だ」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「まず勇者軍なんだが、ほっとけ」
ξ゚⊿゚)ξ !
(´・_ゝ・`)「ほっとけば連中は勝手に自滅する。
連中は魔王城ツンの魔力回路を欲しているが、現状それを手に入れる手段が無い。
お前が強すぎるせいでな。つまりもう、現時点で兵糧攻めの図が完成してるのよ」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「そんで近々お前のもとに王座の九人が来るだろう。
そいつを上手く匿ってやれ。上手くやれば、王座の九人は味方にできるから」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「王座の九人を味方にできたら次は勇者軍の深部が出てくる。
王座の九人はまだ王道。次の敵は新興宗教だから、それを倒せ」
(´・_ゝ・`)「倒したら次はフォックスを連れて魔界に戻るといい。
ああ、内藤ホライゾンとハインリッヒの動向には注意しておけよ」
(´・_ゝ・`)「まぁそれが済んだら大体終わりだ。お前が暴走しない限り、この世はハッピーエンドだ」
.
746
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:35:24 ID:i/qYRSnA0
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「……分かった?」
ξ゚⊿゚)ξ「……今のは、アドバイス? それとも予言?」
盛岡の口振りは断定的で、さも根拠ありと言わんばかりだった。
言葉の内容より先に、私はこの男の本性を知るべきだと考えた。
ξ゚⊿゚)ξ「未来予知の超能力者でも居るのかしら」
(´・_ゝ・`)「居るし、俺達は一巡前の世界についても知っている」
_,
ξ゚⊿゚)ξ「……一巡?」
(´・_ゝ・`)「ありゃあ失言。ま、お前が俺達に対して疑念を持つのは当然だと思うわ、うん」
その時、盛岡の懐でケータイが鳴った。
彼は缶コーヒーを置いてケータイに出ると、電話の相手と少し喋ってから私にケータイを差し出した。
(´・_ゝ・`)「うちのリーダー、みたいな人からだ。更に不信感が増すだろうが、頑張ってくれ」
ξ゚⊿゚)ξ「……分かったわよ」
私はケータイを受け取り、もしもしと無難に声をかけた。
.
747
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:36:39 ID:i/qYRSnA0
『――やあ、こんばんは』
聞こえてきたのは中性的だが艶めかしい声。
妖艶というか、人を小馬鹿にしているというか、なんというか……。
『私の一言をそんなに考察しないでください。衣服を剥かれるようで恥ずかしいです』
ξ;゚⊿゚)ξ「ご、ごめんなさい」
『改めてこんばんは、魔王城ツンさん。突然のことにも関わらず姿を見せず申し訳ありません。
訳あって海外からお電話していますが、貴方の感知から外れる為とはいえやり過ぎましたか?』
ξ;゚⊿゚)ξ「……姿を見られて不都合があるなら、正解だと思うわ」
『ですか! いやあ魔王のお墨付きとは嬉しい限り。
後生語り継いで津々浦々に伝聞して回りたいところです。嬉しいなあ』
ξ゚⊿゚)ξ「……はっきり言うからはっきり答えて。回りくどいのは嫌いなの」
『自分で面倒臭くしているのに?』
ξ#゚⊿゚)ξ「ンだコラテメッッオ゙ァ゙ア゙ン゙!?」
『おっと失礼。ご質問をどうぞ、丁重に返答させて頂きます』
.
748
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:38:03 ID:i/qYRSnA0
ξ゚⊿゚)ξ「……貴方達がただの人間なのは分かる。
これまで魔王軍が関知しなかったのも、貴方達が一般人の枠に収まる存在だからだと思う」
『ですね。その通り』
ξ゚⊿゚)ξ「それが今になってわざわざ出てきた理由は何?
無関係で居た方がお互い都合が良かったと思うのだけれど」
『それは単純な理由ですよ。関わらざるを得なくなったんです』
『無関係を維持するには貴方は意味を持ちすぎた。
それを正常に戻すのが我々のお仕事。言わば調停員みたいなものでしょうか』
ξ゚⊿゚)ξ「……意味を、持ちすぎた」
『……そう、魔王勇者の物語は我々が介入するしかない状態に陥ってしまったんです。
しかもここ最近で超急速に。速やかに手を打たなければ、色々と困ってしまうほどに』
『ぶっちゃけ私達は“反則そのもの”でして、根本的にそちらとは世界観が違うのです』
『なので基本的に不可侵。お互い見ず知らずのまま、地球のどこかで各々何かと戦っている、というのが理想形だったんですよね……』
相手は口早に語ると、最後にやれやれと呟いた。
.
749
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:39:09 ID:i/qYRSnA0
――パン、と電話越しに手を叩かれた。
私は喉を鳴らして沈黙を誤魔化し、ふたたび口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「それで、何を根拠に貴方達を信用すればいい?
一応そっちは人間なんだから、勇者軍の味方なんでしょう?」
『そうですね。そうですが、我々は勇者軍の味方である前に正義の味方であり、根本的には人類の味方です。
ですから勇者軍への不信感がそのまま我々に向くのは半ば自然ですね』
『なのでこの際、信用信頼といった類は省きましょう。時間の無駄です。
あくまで互いの実益と平和の為の関係。その関係を構築する為にこちらが提供するものは、ずばり』
ξ゚⊿゚)ξ「……情報」
『……そう、情報。ご名答』
長文を省いて結論だけを反芻させるように、彼は同じ言葉を繰り返した。
『こちらが最初に提示する情報はさっき盛岡くんが語ったとおりです。
この世界における第三勢力の存在と直近の未来予測。
情報について捕捉が必要であれば後で彼に聞いてください。しばらくその街に滞在してもらうので』
『で、これに対して我々が貴方に要求するものは現状維持。それだけです』
.
750
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:40:06 ID:i/qYRSnA0
ξ-⊿-)ξ「……まあ、なんとなく分かったわ」
ξ゚⊿゚)ξ「つまり人間界のいざこざに首を突っ込むなって話でしょ?
勇者軍はこっちで始末をつけるから余計な手出しをするな、っていう」
私がそう言うと、電話の彼は三秒沈黙した。
『いやあ、あまり察しが良いと困りますね。これじゃあ余計な事まで気付かれちゃうかも』
『長々と喋りましたが、我々の思惑はさっき仰った通りなんですよね。
勇者軍に関しては時間経過による衰弱・自然消滅を目論んでいますので』
ξ-⊿-)ξ「変なことして刺激するな」
『……あっぱれ次期魔王、話が早い』
さて、と言って言葉を区切り、彼は話を括りに入る。
『とにかく平和に平凡に人間界を楽しんで下さい。結果的にはそれが一番ハッピーエンドです。
性に乱れた高校生活。がっぷり四つならぬしっぽり四つん這い、花びらを散らすなり大回転させるなり楽しんで下さい』
ξ;゚⊿゚)ξ「……貴方って男、女? 通報してもいい?」
『おっと失礼。いや、年頃のレディに向けて言う事ではありませんでした。ご容赦を、なにとぞ』
.
751
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:40:56 ID:i/qYRSnA0
『……私の性別なんですが、どちらでもありません。私には性の概念がありません。
残念ながら私はただの機械なんです。むかし流行った機械仕掛けのなんとやらでして』
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
『オレンジですよ。知りませんか?』
(´・_ゝ・`)「……いや、それは時計じかけだ」
『……あらら。いやあ小っ恥ずかしい、半端に物を語るのはよくないですね。
皆さんが究極の疑問を自覚してくださるなら、私も桶屋を大富豪にはさせないのですが……』
ξ゚⊿゚)ξ「……」
『ツンちゃんさん知ってます? 究極の疑問』
しばし私の返答を待ってから、彼はそれを口にした。
彼が知るところの、究極の疑問とやらを。
.
752
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:42:14 ID:i/qYRSnA0
『究極の疑問。それは、風が吹くことです』
『ではまた次のお話で。今度はちゃんと会いに行きますね』
そこで通話終了。
かくして私は翻弄されるだけ翻弄され、一方的に会話を打ち切られてしまった。
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「言ったろ? 更に不信感が増すって」
黙って盛岡にケータイを返し、私はひえひえのココアをぐびっといった。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「うまい」
(´・_ゝ・`)「よし」
一体何が「よし」なのか分からなかったが、長い話を聞いて疲れたのでココアがうまい。
私はココアをぐびぐび飲み干してやった。うまみは過去形になった。過去形のうまみが喉を通っていく。
語彙力が怪しくなってきた。私は魔王なんだぞ、と形から入る。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
(´・_ゝ・`)「何が?」
.
753
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:43:40 ID:i/qYRSnA0
(´・_ゝ・`)「んじゃあ俺も帰るわ。今日の仕事はこれで終わりだし」
ξ;゚⊿゚)ξ「……待って待って。私なんにも分かってない」
さっさと立ち去ろうとした盛岡を咄嗟に呼び止める。
頑張ってそれらしい応答をしたはいいが、実際のところ私は何一つとして事を理解していなかった。
(´・_ゝ・`)「いやいや簡単な話だったろ。話し方は面倒臭かったけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「……現状維持? いや、それが分からないの。
なんで私が現状維持をする必要があるのか……」
(´・_ゝ・`)「……例えばどっかの国の大統領がいきなり大爆発して死んだら大変だろ?
国も政治も機能しないわで、色々と色んな人がすごい迷惑だろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「わかる」
(´・_ゝ・`)「で、お前は正真正銘魔王の血筋。
世が世ならラノベのタイトルを張ってる重要人物なワケよ」
(´・_ゝ・`)「重要人物だからこそ、お前のトコには展開を加速させようとわんさか人が集まってフラグ立てようとしてくんの。
もしこれが物語の世界なら良い事なんだろうが、そうやって無闇に世の中動かされると色んな人が困るのさ」
盛岡は話しながらカンロ飴を口に入れた。
(´・_ゝ・`)「食べる?」
ξ゚⊿゚)ξ「食べる」
私もカンロ飴を貰った。
.
754
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:44:41 ID:i/qYRSnA0
(´・_ゝ・`)「まーーーーーーーなんだ。アレよアレ」
(´・_ゝ・`)「お前が思ってる以上にこの世はオープンワールドなのよ。
勇者も魔王も超能力者も幽霊も巨大怪獣もなんでもあり得るんだ」
(´・_ゝ・`)「でもそいつらが互いに干渉し合ってたら世の中回らないだろ?
アベンジャーズ見た事あるか? あれが世界中で連発されたら地球滅亡するっての」
(´・_ゝ・`)「要は俺らはそういう色んな世界観を別々に動かす為の仕切りみたいなもんなの。
もちろん勇者魔王を抜きにしたって、その他ジャンル住民は世界人口の1%にも満たない」
(´・_ゝ・`)「たださ、やっぱ面倒臭いんだわ。ジャンルが混ざったりするのって」
ξ゚⊿゚)ξ アメガウマイ
(´・_ゝ・`)「ほらもう面倒臭そうな顔してる。
そりゃ俺らだって各方への干渉は超自粛してんだよ、超面倒だから」
(´・_ゝ・`)「でもお前達は目立ち過ぎた、やり過ぎた。
こっちにまで迷惑が掛かるレベルまで煮詰まっちまった」
(´・_ゝ・`)「俺らが求めるものは 『何百話進もうと大した進展もない日常系ほのぼのストーリー』 なんだ。
物語をつまらない方向に転がして世界平和を実現する、それが俺らの大体の目的だよ」
.
755
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:45:25 ID:i/qYRSnA0
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「……つまり……」
(´・_ゝ・`)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「……そのままの、君でいて……」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「よし頑張った! 今日はもう帰ろう!」 ワシャワシャワシャ
私は盛岡に髪の毛をもみくちゃにされた。
(´・_ゝ・`)「んじゃっ、なんかあったらまた来るから。
あとこれは別件だけど探偵とか必要なら言ってくれ。副業でやってるからさ」 サクッ
盛岡は自身の名刺を私のツインドリルに突き刺し、そそくさと帰っていった。
もう夕飯の時間だ。私も家に帰る事にした。今日はなんだか疲れた、そう思った。
.
756
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:46:03 ID:HAoCOyR20
盛岡良いキャラ
757
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:46:33 ID:i/qYRSnA0
〜寝〜
○丶、
ノ:;_;;.ヽ
| ̄ ̄ξ゚⊿゚)ξ ̄|
|\⌒⌒⌒⌒⌒⌒\
| \ \
\ |⌒⌒⌒⌒⌒⌒.|
\ |_______|
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758
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:47:13 ID:i/qYRSnA0
〜翌日 学校〜
優雅な朝食を経て清々しく遅刻した私はホームルームの真っ最中に教室に入った。
ξ゚⊿゚)ξ「おはようございます」
( ´∀`)「はいおはよう。罪悪感を一切感じさせない素晴らしい挨拶モナ」
ξ゚⊿゚)ξ「お褒めに預かり光栄です」
( ´∀`)「でも時には 『うわーやっちったなー』 っていう顔をしてもいいんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「時は金なり。私は今朝の朝食と遅刻を天秤に掛け、より価値のある方を選んだまでです」
( ´∀`)「塵が積もると何になるか知ってるモナ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴミです。ところでこれは賄賂です」
私は三重の赤福を差し出した。
( ´∀`)「はいホームルームを続けます」
.
759
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:48:04 ID:i/qYRSnA0
('A`)「……遅かったですね」
ξ゚⊿゚)ξ「……やっぱり気付いてなかったか。
昨日、不審者に絡まれて色々聞かされたのよ」
私は席についてドクオと言葉を交わした。
それから昨日の出来事をふんわり適当に伝えると、彼は眉間をすぼめて俯いた。
ξ゚⊿゚)ξ「なんか知らない? あの連中、始末屋のこと」
('A`)「……知らないっすね。あとでミセリさんに聞いておきます」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあよろしくね。私が喋ったあの二人、強くはないけど手強そうだったから」
('A`)「……はあ、なんか複雑な評価ですね」
ξ゚⊿゚)ξ「面倒臭い相手ってコト。向こうの平和主義もちょっと疑わしいかな」
('A`)「……人が集まってくる、か」
ふとドクオが呟いた。私は横目にドクオを一瞥し、言葉の意図を尋ねた。
ξ゚⊿゚)ξ「なによ」
('A`)「いや、そういや今日は転校生が来るとか聞いてたんで、もしかして来るんじゃないかと思って……」
ξ゚⊿゚)ξ「……来るって、転校生が来るんでしょ?」
( 'A`)「……展開を加速させるような、世界観の違う奴らですよ」
.
760
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:50:25 ID:i/qYRSnA0
( ´∀`)「それじゃあ次は転校生を紹介するモナ〜」
ξ;゚⊿゚)ξ !
言われてみれば確かにありえる話だった。
彼らの言い分が正しいのであれば、新たな敵はきっとタイミングを選ばず私の前に現れる。
いわく、この世界は何でもありのオープンワールド。
ここで更に第四勢力が現れたとしても、なんら不思議はないのだ――
川 ゚ -゚)「第一刺客ノ高校から来ました。素直クールです」
ノパ⊿゚)「第二刺客ノ高校から来ました。素直ヒートです」
lw´‐ _‐ノv「第三刺客ノ高校から来ました。素直シュールです」
o川*゚ー゚)o「第四刺客ノ高校から来ました。素直キュートです」
ξ゚⊿゚)ξ
('A`)
彼女達は一体何者なんだ……。
.
761
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 10:53:07 ID:i/qYRSnA0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(; ^ω^)(……何なんだお、アイツら……)
――素直姉妹登場と時を同じくして、隣のクラスでも転校生の紹介がされていた。
しかしこのクラスに在籍するツンの協力者・ブーンから見て、新しくやってきた転校生はまったく未知の存在であった。
魔族ではなく、しかし人間とも言い切れない。
そんな存在を前にして、ブーンは動揺をひた隠そうと息を潜める。
ミセ*゚ー゚)リ「それでは二人とも、自己紹介をお願いします」
担任のミセリに促された転校生の二人は、教室を一望しながら言った。
「……軽延高校、我道アグリ」
「同じく! 軽延から来ました網目間宮ユミです! よろしこ!」
(; ^ω^)(……この二人……)
(; ^ω^)(明らかに……世界観とか文化圏とかが違うお……)
――次回に続く
_n
( l _、_
\ \ ( <_,` ) <がんばるびぃ
ヽ___ ̄ ̄ )
/ /
762
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 11:12:05 ID:HAoCOyR20
乙
久々の刺客ノ高校からの転校生嬉しい
新しい立ち位置の登場人物がドッと増えたなあ
続きも楽しみにしてる
763
:
名も無きAAのようです
:2016/09/06(火) 13:40:18 ID:BkCJydMU0
さりげなくタイムリーネタを入れていく
764
:
名も無きAAのようです
:2016/09/07(水) 00:24:50 ID:n/Sao36o0
すげーよい 乙
765
:
名も無きAAのようです
:2016/09/07(水) 19:40:07 ID:eSTSl8h.0
このオープンワールドや反則そのものの設定オリジナルならマジで凄いと思う
766
:
名も無きAAのようです
:2016/09/07(水) 20:31:37 ID:GEm7ILi20
後悔の公開
ルック・バック・ディメンション
767
:
名も無きAAのようです
:2016/09/14(水) 01:29:16 ID:VCv9L9GI0
盛岡良いキャラしてんなあホンットに
768
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/09/29(木) 09:47:03 ID:vYPVAwrg0
〜昼休み 図書館〜
閑散とした一室。
エロ漫画の舞台になりかねないほど過疎ってるこの図書館、現在の利用者は十人前後。
私達は本棚の前に立ち、目当ての本を探しながら小声で会話していた。
ξ゚⊿゚)ξ「……そっちあった?」
('A`)「……ないっすね」
昨日の連中、始末屋と名乗った彼らの言葉が、私は今でもちょっと気になっていた。
特に最後の“究極の疑問”。あれを言われた時、なんだか自分の無知を笑われたようでムカついた。
なのでこうして昼休みを利用し、疑問とその答えを知るべく図書館に来たのであった。
('A`)「……この時間、多分無駄ですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……まあ、それでも別にいいんじゃない」
都合よく渡辺ちゃんが図書委員だった事もあり、ここに来て数分でパズルのピースは見つけられた。
時計仕掛けのオレンジ、機械仕掛けの神、バタフライ効果。
そして今探している銀河ヒッチハイク・ガイドという小説。
これらを面倒臭く絡めた結果が昨日の会話らしいのだが、正直今でも意味はよく分かっていない。
ただ、リーダー格の彼が言った 『疑問を自覚しろ』 という言葉だけは妙に納得できてしまった。
謎、疑問、分からないもの。
そういう漠然とした捉え方のまま、己に問いも答えもせず誤魔化してきた事柄が、私の人生には幾つもある。
.
769
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:47:51 ID:vYPVAwrg0
……彼が言った究極の疑問は、風が吹くことだった。
分かりやすく形を変えれば、『なぜ風は吹くのか?』 となる。
彼は私にこの疑問を自覚しろと言った。
ならばまず、私にはこの疑問を理解する必要がある。
その為に集めた情報は先程の通りだが、まだ一つ一つの繋がりは分かっていない。
四の五のと面倒臭いが、これらを理解する時間は十分にある。
彼らが私に要求した現状維持にも通じる、いい暇潰しになってくれるだろう……。
从'ー'从「ツンちゃんあった〜?」
ξ゚⊿゚)ξ「……探したけどなかった」
从;'ー'从「……あれれ? 貸し出してないからある筈なんだけどな……」
図書委員の仕事を抜けてきた渡辺ちゃんが本棚をキョロキョロと見回した。
ξ;゚⊿゚)ξ「ああいいわよ、別にそんな気になってる訳じゃないし」
从;'ー'从「ダメだよ〜。ツンちゃんはアホなんだから、貴重な読書欲を無駄にさせたくないよ〜」
ξ゚⊿゚)ξ「……私だって本くらい読むわよ……」
('A`)「例えば」
ξ;゚⊿゚)ξ「……え、エルマーとりゅう」
从'ー'从「うふふ、児童文学だね〜」
.
770
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:48:34 ID:vYPVAwrg0
「――先輩方、ちょっとよろしいですか?」
ふと、後ろから声をかけられた。
それはつい最近聞いたばかりの、薄ら笑いがよく似合う声色だった。
('A`)「……なんの用だ」
「読み終えた本を戻そうかと。で、もしやこれをお探しではと声をかけた次第です」
ξ゚⊿゚)ξ「……タイトルは?」
私は本棚に向かったまま、振り返らずに聞いた。
「銀河ヒッチハイク・ガイド。どうです?」
('A`)「……おお」
从'ー'从「それだ〜!」
.
771
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:49:47 ID:vYPVAwrg0
ξ゚⊿゚)ξ「……ありがとう。それだわ」
振り返り、差し出されていた一冊を受け取る。
声の主は薄っすらと微笑んだまま、私の目を見つめてきた。
「これを選ぶとは中々渋い女子高生ですね。
知識として蓄えてはいても、実際手に取る人は少ないでしょうに」
セーターの校章を見るに、彼女は一年生の女子生徒だった。
膝丈スカートに黒タイツという格好は、我が校の流行的にはかなり硬派な服装である。
すっと佇む肢体にはまだ大きな起伏は見当たらないが、彼女の少女らしからぬ雰囲気があればそこらの男を誑かすのも容易だろう。
髪は明るい茶色のサイドテール。メガネ有り。顔付きは意外と幼い。萌え袖完備。
服装自体が合法とはいえ、彼女の見た目は他人の下心を煽る要素でしっかり武装されていた。
「ははは、そんな長ったらしく見ないで下さい。貴重な語彙力を割くほどの見た目はしていませんよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ああ、ごめんなさい。なんというか、目立つから」
「それもよく言われます。すみません、寒いのが苦手でして」
彼女は自分の見た目を見直しながら謙遜する。
ξ゚⊿゚)ξ「渡辺ちゃん、これ借りてくね」
从'ー'从「うん! 手続きしとくね〜」 スタコラ
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオも行って」
('A`)「……分かりました」
ドクオは未練たらしく私を睨んだが、言う事を聞いて渋々渡辺ちゃんについていった。
既に魔族特有の脳内会話で彼女が始末屋の人間だとは伝えてあるので、とりあえず問題はないだろう。
.
772
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:51:29 ID:vYPVAwrg0
ξ゚⊿゚)ξ「……場所は変える?」
「……定番の屋上に移動してもいいですが、別にここでオッケーでしょう。
もう少し奥に行けば読書スペースに声は届きませんし」
彼女は先んじて図書館の奥へと歩いて行く。
一緒に行って十秒足らず、彼女は片隅のケータイ小説コーナーで足を止めた。
「ツンちゃん先輩、恋空は読んだことあります?」
ξ゚⊿゚)ξ「……ないわね」
「私もです。ケータイ小説についてもブームを過ぎたものという認識しかありません」
彼女は棚の本をいじりながら語った。
棚はホコリまみれで、随分長いあいだ誰にも触られてない事が容易に分かった。
「まぁいわゆるオワコンですね。しかし今でも細々と続いているとかなんとか。
どうです、ちょっと興味湧いたりしませんか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
興味は、微塵も湧かなかった。
.
773
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:52:31 ID:vYPVAwrg0
ξ゚⊿゚)ξ「……ねぇ、こんな話がしたくて姿を見せたの?」
彼女の動きが、ピタリと止まった。
「へえ。こんな話、ですか」
彼女は口に手を当てて笑みを隠す。
今のところ笑顔以外の表情を見ていないので、別に今更隠すまでもないだろうに。
「これは見事に一蹴されましたね。私は貴方の事を意識して喋っていたのに」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……私が、オワコン……!?」
「……微妙に逸れてますが、まあオッケーとしましょう」
彼女の笑みが苦笑いに変わる。
彼女は眉をすぼめ、この答えで妥協してくれた。
「先日お願いした現状維持、あれはつまり“ツンちゃんオワコンになってくれ”という話でした。
そして貴方は今まさにありふれた高校生活を謳歌している訳で、この状況は実に望ましい」
「わざわざ小難しい話をすることにより、見事ツンちゃん先輩を図書館にも誘導出来ました。
正直あんな、小学生がwikipedia見ながら考えたような言葉をここまで真に受けてくれて安心してますよ」
ξ;゚⊿゚)ξ(か、下級生に煽られている……)
.
774
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:53:47 ID:vYPVAwrg0
「あれの答えは要りますか? 答えというか、私の意図した所というか」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、そんなのあるの……?」
「一応は。あーでも面倒なので次行きますね」
彼女がさら〜っと流そうとしたので、私は反射的に「いやいや」と言って会話を停滞させた。
ξ゚ー゚)ξ「ないんでしょ、考えなしで言ったんでしょ……」
やれやれようやく彼女のポーカーフェイスを暴けそうだ。
私はもうテンションが上がってきた。ぐだぐだと小難しい話をしおって、さっさと恥辱に頬を染めるがいい。
「……ツンちゃん先輩、私これでもかなり分かりやすく話をしているんです。
いいんですよ? 地の文たっぷり手加減ナシで説明し尽くしたって」
ξ゚⊿゚)ξ「次の話題にいきましょうか」
彼女は「それもそうですね」と淡白に切り返し、本題に入った。
.
775
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:54:57 ID:vYPVAwrg0
「まぁいきなりやられましたね。新勢力の登場です。それをお伝えしに参りました」
「ツンちゃん先輩の隣のクラスに転校生が来ました。彼らはずばり、やべー奴です」
ξ゚⊿゚)ξ「……転校生ならうちのクラスにも来たわよ。しかも四人」
「素直姉妹はこちら寄りの存在なのでノーカンです。
彼女達については監督役のモナーさんに聞くといいでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「……てことは、モナー先生は貴方を知っているの?」
「ええ。かつて彼とハインリッヒが勇者軍を抜ける際、少しばかり手を貸しました。
とはいっても当時は別名義でしたし、私が出向いた訳でもありませんが」
「言っておくと素直姉妹はヴァンパイアハンターの末裔です。分類はまぁ超能力者って事で」
ξ;゚⊿゚)ξ「……それが本当なら魔族の天敵なんだけど」
そう言うと、彼女はきょとんとした顔で私を見た。
「そういえば吸血鬼も元は魔界暮らしでしたっけ。
その昔、魔界から人間界に移住したはいいが、血を好む習性ゆえに程なくして種族間戦争が開始。
結果多くが人間界で死滅してしまい、今じゃ吸血鬼は絶滅寸前だとか」
「聞けば吸血鬼にとって人間の血は麻薬みたいな依存性があったらしいですね。
まぁあの頃はアヘンがどうこうとか色々ありましたし、タイミングが悪かったかと」
ξ゚⊿゚)ξ「……話が逸れてない?」
「逸れましたね。戻しましょう」
彼女はくすっと笑い、肩を竦めた。
776
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:55:50 ID:vYPVAwrg0
「やってきたのは我道アグリ、網目間宮ユミの二人」
「まったくやれやれ完全に不意をつかれました。
我々が巨大生物の襲来を阻止している間に、小さい虫を通してしまいました」
巨大生物に関してとても興味があったが、それを聞く間もなく彼女は続けた。
「とにかく関わらないように。まずそれだけ徹底してください」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん」
「彼らは捕食者です。食べちゃうんです。色々と。物でも人間でも」
彼女は手をパクパクさせ、ものを食べるジェスチャーをして見せた。
ξ゚⊿゚)ξ「敵なの?」
「そうですね、敵にはなりやすいです。
なんせ彼らは攻撃的だ。魔族の存在を知ったら好奇心で襲ってくるかも」
「ただまぁ彼らとて別に快楽殺人者ではないですからね。
食欲とか好奇心とか、そういうのを満たす何かをあげれば友好関係は築けると思います」
ξ;゚⊿゚)ξ「……なんにせよ、関わらない方が無難なのね」
「ですからこちらで一手打っておきました。
彼らには近日中にあっさり退場して頂きます、そこらのモブキャラのように」
嫌味な笑顔。彼らの登場も、彼女にとっては計略の一部のようだった。
.
777
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:57:30 ID:vYPVAwrg0
彼女が私に一歩詰め寄る。
私は顎を引いて彼女を見下ろし、思わず一歩引き下がった。
「――さておきツンちゃん先輩。私と仲良しになってくれませんか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……な、なかよし?」
「ほのぼの平和な学園生活。それを私と過ごしましょうと言ってるんです。
他の方々が一緒だと否応なしに事件が起こってしまいますからね」
「これでも色々遊びは知ってるんですよ。良い遊びも、悪い遊びも」
ξ;゚⊿゚)ξ(どちらにせよ意味深だ!)
「どうです? もうすぐクリスマス、関係を進展させるには良い頃合いかと」
黙って後退。しかし、たったの数歩で私の退路は本棚によって断絶された。
彼女は私の首筋にぐっと顔を寄せ、ふう、と吐息を漏らした。
ξ;゚⊿゚)ξ(ホ、ホゲーーーー!!)
「……くす、メガネが曇ってしまいました」
彼女が私を見上げ、イタズラに微笑む。
曇ったメガネの向こうには、私の動揺を楽しむ悪魔の瞳があった。
.
778
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:59:23 ID:vYPVAwrg0
ξ;゚⊿゚)ξ
「……ま、この情事は後に取っとくとして」
途端、彼女はパッと離れて私に背を向けた。
後ろから僅かに窺えた彼女の表情は、ここにきてようやく真剣なものに変わっていた。
ξ゚⊿゚)ξ
それは同時に、私が完全に弄ばれていた事の証明でもあった。
女なのに童貞扱いされたような、そんな気分になった。
「聞かせて下さいツンちゃん先輩。貴方の過去を、成り立ちを」
ξ゚⊿゚)ξ「……過去? って、貴方なら知ってそうだけど……」
彼女達は、魔王と勇者がどうこうしていた頃からこちらの存在を知っていた。
だったら私の過去くらい、筒抜けだろうとおかしくないのだ。
「ええ勿論存じていますよ。これはただの取っ掛かりです」
ξ;゚⊿゚)ξ「……回りくどいなあ……」
「性分です。大した文量でもないんですから脳ミソ使って下さいよ」
Σξ;゚⊿゚)ξ(また煽られた!) ガビーン!
.
779
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:00:32 ID:vYPVAwrg0
「ツンちゃん先輩の過去は大体こんな感じですよね?
魔界にスーパーベイビー爆誕、すごく成長、制御できなくて大変、そして今に至る」
他人の人生をここまで乱暴に要約できる人間はそうそう居ないと思う。
「いやあ大変でしたよね。なんでしたっけ、なんとか封印? されたんですよね」
ξ;-⊿-)ξ「……そうよ、大界封印」
('A`)☆大界封印ってなあに?☆('A`)
('A`)伝説級の魔物を空間ごと隔離して放逐するよ('A`)
('A`)みんなでがんばってつくるすごいふういんだよ('A`)
という感じで私は分かりやすく大界封印について喋ったが、彼女はさらっと聞き流してまた話し始めた。
「で、それを超短期間で破ってツンちゃん大脱出と。いやーまったくもって凄い本当に。
大界封印って確かオイスターみたいな名前の名状し難いものでも閉じ込めるって噂ですよね?」
ξ;゚⊿゚)ξ「らしいけど……なんで魔界の噂まで知ってるのよ」
「風の噂です」
ξ;゚⊿゚)ξ「魔界の風が人間界まで届く訳ないでしょ」
「……ツンちゃん先輩が自身の能力を形容できたのは大界封印脱出の折でしたね。
ゼノグラシア、真性異言。意味分かんねーけど心で理解出来たぜ系の言葉、ピッタリだと思います」
ξ;-⊿-)ξ「知らないわよ、名付けは私じゃないし……」
「……へえ。それは、初耳……」
彼女は会話を区切るように、ゆっくり、はっきりとそう言った。
.
780
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:01:57 ID:vYPVAwrg0
「というか、聞いてもいいですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「もうかなりグイグイ聞き込みしてるけど」
「ツンちゃん先輩、その大界結界を破る時にはちゃんと意識があったんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……覚えてない。小さかったし、結界に入る前に眠らされたから」
「なら、出てきた時はどなたがツンちゃん先輩を出迎えたんですか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……聞いてないわよ。目が覚めたら魔王城の寝室だったわ」
「……少し整理します。大界封印を例えるなら、一個人めがけて核ミサイルを発射するようなものでしょう。
つまり魔界の理は貴方を超危険物として処理した訳です。それを安々と元の状態に戻せますかね」
ξ゚⊿゚)ξ「……知らないわよ」
その疑問は、いつも心の隅にあった。
ゼノグラシアという制御装置が出来たとはいえ、私は一度完全に捨てられた身なのだ。
なのになんで、こんな、当然のように――――
.
781
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:03:25 ID:vYPVAwrg0
「普通……というかまず、二度と出て来れないよう閉じ込めたものが即日出てきたら大概みんな焦ると思います。
しかも大界封印を自力で脱出するほどの“何か”が無意識状態で出現したとなれば――」
「意識が無い内に再度封印するか、それに近しい処置があって当然でしょう」
〜〜〜〜〜〜〜
ξ゚⊿゚)ξ「うひーなんか出れた」
( ФωФ)「じゃあ帰ろっか」
イェーイ
ξ゚⊿゚)ξ人(ФωФ )
〜〜〜〜〜〜〜
「という展開は、さすがに平和ボケし過ぎてると思いますし……」
彼女は冗談半分に言って苦笑う。
私は今まで抱えていた矛盾を浮き彫りにされ、言い返す言葉を失っていた。
「そんでまた質問なんですけど、暴走状態のツンちゃん先輩ってどのぐらい強いんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……その時は意識が無いから分からない。けど、周りの人はいつも無事だったわよ」
「……へえ。なるほどなるほど……」
彼女は独りごちて頷く。
「ありがとうございます、お聞きしたい事はもうありません。
私自身、かねてより疑問に思っていた事を軒並み解決できました」
.
782
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:06:29 ID:vYPVAwrg0
十秒の沈黙。
彼女はその後、口火を切った。
「……ええと、これは仮定に仮定を積み上げたに過ぎない仮定なんですけど」
ξ-⊿-)ξ「……なぁに。聞くわよ、もう」
「――ツンちゃん先輩はもしかして、今まさに大界封印を脱出中なのではありませんか?」
ξ゚⊿゚)ξ
は?
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっと、どういう意味?」
会話の点と点が繋がらず、私は言葉の意味を上手く理解できなかった。
「いやほら、例え話ですよ」
「実はこの世界はまだ大界封印の中で、私達“始末屋”はそのメンテ係みたいなもの。
そしてツンちゃん先輩は莫大な魔力をもってこの封印を侵食。
私達メンテ係が総動員される状況になるまで、順調にこの世界を攻略中とか……」
ξ;´⊿`)ξ「……いや、それは流石に……」
「……ま、これはただの妄想ですよ! しかし私は私の理念に確信を持ちました。
やはりツンちゃん先輩には普通の学生生活を送ってもらいます、否が応にでも」
.
783
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:08:32 ID:vYPVAwrg0
「――それでは今日のおさらいを」
「ツンちゃん先輩は転校生に関わらないこと。そして今話した他愛無い仮定の話も忘れること」
ξ;゚⊿゚)ξ「……分かった。分かったって」
「……本当ですか? 見張りも一応つけてるんですからね。
ま、こちらに実力行使が出来ない以上、ツンちゃん先輩にはひたすらお願いするしかありませんが」
ξ゚⊿゚)ξ「……そういえば、聞いてなかったけど」
ξ゚⊿゚)ξ「貴方、名前は?」
問いかけると、彼女の表情から一瞬生気が消え失せた。
彼女は平静を取り繕い、答える。
「……くす。さあなんでしょう。私、どうにも名状しにくいようで」
彼女はそう答え、今日一番の不穏な笑顔を見せた。
途端、予鈴が鳴り響く。
私達は天井のスピーカーを一瞥し、ここが区切りであると察した。
.
784
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:10:59 ID:vYPVAwrg0
「――最後に未来予測。ツンちゃん先輩、昨日話したとおり王座の九人が来ます。
内藤ホライゾンに話を聞いて下さい。危ない橋ではありますが、頑張って敵を籠絡してください」
ξ;-⊿-)ξ「……了解。もう、なんか凄い疲れたんだけど……」
「……では癒やしてさしあげます。合法的に――」
彼女がすとんと私に寄り掛かり、背伸びして私の耳元に口を添える。
そして次の瞬間、
ξ;'゚⊿゚')ξ「――ッッ!??!?!??」
「〜〜〜表現規制の波〜〜〜」
彼女は今まで聞いた事がないようなエッチな声で、私の耳にしこたま淫語を浴びせてきた。
しこたま淫語という言葉の並びすら最早卑猥。行為は実に30秒も継続された。
ξ゚⊿゚)ξ
「……それじゃあツンちゃん先輩、また次回という事で」
彼女の指先が私の頬を伝って胸へと落ちていく。落ちていく程度の胸はある。
彼女は私の胸に手を当てて、ぐっと力を込めて言った。
「忘れて欲しいですけど忘れちゃダメですよ、私とのありふれた会話劇。
貴方が現状を維持しなければ全て崩壊します。知らなくていい事が、この世界は多すぎる」
ξ゚⊿゚)ξ「ウィッス」
インターネットスケベコンテンツめいた事案に対し、私はすっかり思考停止。
結局私はこの昼休み中、彼女の思うがままにされてしまったのだ……。
.
785
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:11:40 ID:vYPVAwrg0
☆三輪車☆
( ^ω^)
( O┬O ('A`) しぬ
≡◎-ヽJ┴◎ ノ( ヘヘ
.
786
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:12:23 ID:vYPVAwrg0
昼休みも終わっていざ午後の授業だ――と意気込んで教室に向かう。
ところがどっこい、それを足止める不届き者が居た。
( ^ω^)「魔王城、少しいいかお」
私を苗字で呼んだ彼は内藤ホライゾン。
私達魔物が人間界で生活するにあたり、色々と手を貸してくれている協力者の一人だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……あ、」
そういえば昨日の事をすっかり忘れていた。
昨日私に殺意を放った不届き者の顛末を、私はまだ聞いていなかったのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「聞きそびれてたわね。どうなった?」
( ^ω^)「……ああ、昨日のなら取り逃がしたお。今はハインリッヒが追いかけてるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……逃がしたって、その割に堂々としてるのね」
( ^ω^)「王座の九人だったお」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ-⊿-)ξ「……そう。まあ、引き続きこの件は預けるわ」
( ^ω^)「……お前も不思議と驚かないお。
王座の九人が来たって事は、いよいよ向こうも最後の賭けに出るって事だお」
それは分かっている、分かっていたのだ。
そんな事より気掛かりのは、盛岡が言った予知がこれで一つ的中してしまった事だ。
ちくしょう嫌な感じだ。他に色々思う事はあるものの、私はまず第一にそう思った。
.
787
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:13:04 ID:vYPVAwrg0
( ^ω^)「……声をかけたのは別件だお。
お前、転校生に屋上に呼び出されるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……そんな愉快な役回りが出来る人柄だったっけ、貴方」
( ^ω^)「転校生に頼まれたから伝えただけだお」
ξ゚⊿゚)ξ「機械的ね。ま、素直姉妹とは話したかったから好都合か……」
( ^ω^)
( ^ω^)「……素直姉妹は知らんけど、こっちのクラスの転校生だお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……え゙っ?」
ξ;゚⊿゚)ξ(マジかよ……)
始末屋から忠告を受けた矢先、このイベントは相当ヤバい予感がする。
絶対に行くべきではないのだが、この先何をしでかすか分からない連中に釘を刺すのも有意義だろう。
何より私は最強だ。私自身の安全は、私自身の力が保証してくれる。
心の準備はしていなかったが、ここで決断を下すとしよう――。
.
788
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:13:44 ID:vYPVAwrg0
ξ;゚⊿゚)ξ(……どうしようかな)
1.屋上に行く。
2.行かない。
.
789
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:14:24 ID:vYPVAwrg0
2
.
790
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:15:04 ID:vYPVAwrg0
ξ゚⊿゚)ξ(……流石に備えも無しに行くのは愚行か。
いかに私が最強とはいえ、無敵じゃあないんだし……)
私はそう結論付け、頭を振ってブーンに言った。
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんそれパス。学生なんだし授業優先でしょ」
( ^ω^)「……分かった」
これにて一件落着! 私の平和なスクールライフに波乱など不要なのである。
向こうが人間に手を出さない内は見逃しててもいいだろう。
そして何より 『関わるな』 と言われた相手だ。まず様子見でも悪い事は起こらないだろう。
( ^ω^)「なら伝えてくるお」 スタスタ
ξ゚⊿゚)ξ「あーよろしく。それじゃ」 クルッ
私は残り一分と経たず始まる授業に向けて歩き出す。
正直もう遅刻確定なので走る気にもならなかった。
こういう時こそ優雅に入室し、格の違いをもって教師を黙らせるのが吉なのだ。
ξ゚⊿゚)ξ(ていうか教科書持ってきてないな) ピタッ
ξ゚⊿゚)ξ(ブーンに借りるか)
.
791
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:15:59 ID:vYPVAwrg0
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとブーン、教科書貸してほしいんだけど……」
私は立ち止まって振り返る。
しかし、そこにブーンの姿は見えなかった。
ξ゚⊿゚)ξ(は? 教室あっちなのにどこ行ったのよ……)
そういえばさっき、伝えてくるとか言っていた気がする。
ならば、ブーンは屋上に向かったのだろうか。
敵か味方かも分からない二人が待つ、屋上に。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……いや、まさかね」
ブーンの身に何かが起こる、なんて想像は無意味だ。
彼はあれでも一人の戦士だ。たかが二人の不意打ちを食らった所で、死んだりはしないだろう……。
ξ;゚⊿゚)ξ
だが、私は内心の不安に負けて階段を登り始めていた。
ξ;゚⊿゚)ξ(一応、一応ね?)
チラ見して帰るだけ。
私はそう自分に言い聞かせ、そろ〜りと階段を登った。
.
792
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:17:10 ID:vYPVAwrg0
【interlude:qAwsetxdrvfygbunli】
Error
.
793
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:17:50 ID:vYPVAwrg0
屋上で魔王城ツンを待つ二人組。男の名は我道アグリ、女の名は網目間宮ユミ。
彼らは世界のどこかで 『捕食者』 と称される存在であった。
「ねえアグリちゃん、魔王様は本当に来るのかな?」
ユミは制服のスカートを翻し、じっと佇むアグリを振り返った。
「……こんな怪しい呼び出し、立場のある奴なら絶対に来ないぞ」
呆れ顔で言い返してアグリはそっぽを向いた。そもそも彼は魔王城ツンとの接触には反対だった。
捕食者と呼ばれ危険物扱いされてはいるが、その実彼らは平和を好む穏やかな種族。
人間を食らっていたのは遠い先祖であって、彼ら自身が人肉を食した事は一度もない。
「んーそうだね。でも来てくれると嬉しいなあ……」
「交渉など不可能だ。俺は森に帰りたい……」
「分かってるってば! でもさ、昨日のアイツらを使えば何とかなるよ!
えっと……勇者軍? のギコとその妹! 半生半死で目の前に転がってきた時はビックリしたけどさー」
「……あれは匿わず見殺しておくべきだったよ。無駄知恵を働かせずに」
「そお? 私が思うに、魔王城さんとは仲良く出来るはずなんけどなー」
「……根拠を示せ、根拠を」
溜め息混じりにアグリは呟いた。
794
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:19:01 ID:vYPVAwrg0
――ふと、屋上の扉が開く。
肩の力を抜いて会話していた二人も、その瞬間に目を光らせた。
「……あれ」
ユミは険しい表情でその人を見る。
屋上にやってきたその人は、魔王城ツンとは別人であった。
「誰かな、あなた。授業始まっちゃうよ?」
「――いや、構えろユミ。こいつは敵だ!」
アグリが戦闘態勢でユミの前に勇み出る。
それを見た彼の人は、茶髪のサイドテールを揺らして静かに笑んだ。
午後のチャイムが鳴り響く。その最中、真昼の青空に鮮血が散った。
【interlude:out】
.
795
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:19:53 ID:vYPVAwrg0
☆ネコ☆
_
/´ `フ
, '' ` ` / ,! もぐ
., ' レ _, rミ
; `ミ __,xノ゙、
i ミ ; ,、、、、 ヽ、
,.-‐! ミ i `ヽ.._,,))
//´``、 ミ ヽ ('A`) しぬ
.| l ` ーー -‐''ゝ、,,)) ノ( ヘヘ
ヽ.ー─'´)
`"""´ (^ω^) どうせしぬ
ノ( ヘヘ
796
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:21:01 ID:vYPVAwrg0
(; ^ω^)「――――な、」
絶命した体を掴み上げ、血みどろの中心に立つ少女。
屋上に出たブーンを迎えたのは、その少女と鮮明な血の臭いであった。
「……ああ来ましたか。まったくやれやれ、こんにちは」
律儀に二人分の死体を並べて寝かせ、少女は一息。
眼鏡についた血飛沫をセーターの裾で乱雑に拭ってから、彼女はブーンを見た。
( ^ω^)「……お前、何者だお」
「……いや本当に急でした。私自身、超ビックリって感じで……」
ブーンの問いに答えず、少女はわざとらしく肩を撫で下ろした。
死体の傍でなければ可愛らしく見えたであろうに、その仕草はブーンの目に奇怪な演技として映っていた。
「ヤバい事ですよこれ、何しちゃってくれてるんですか……」
.
797
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:22:18 ID:vYPVAwrg0
ξ;゚⊿゚)ξ「――……まさか……ッ!」
言葉の最中、遅れて姿を現した魔王城ツン。
この惨事と少女を見て合点したのか、彼女は敵意を剥き出しにして少女を睨んだ。
ξ#゚⊿゚)ξ「……貴方……!」
( ^ω^)「……魔王城、あれは敵か?」
肩を並べたブーンとツン。
しかし当の少女は彼らの敵意を意に介さず、一人この状況の意味を考察していた。
「……おかしい。彼ら捕食者がこんなに早く行動に出る動機は無かった。
寸前とはいえ自演は成功、さっきの介入でこの筋道は閉ざせたはず……」
「おかしい、私達よりメタい存在がこの世に居る訳が――――」
.
798
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:23:24 ID:vYPVAwrg0
「…………ああ、そうか」
思考の末に少女は答えを得た。
彼女の双眸はただ冷たく、内藤ホライゾンをじっと見据える。
( ^ω^)
「二番煎じの欠陥品、改悪劣化の権化がゆえに――遂にお前は道を外れたか」
勝手に一人で何かを得心し、彼女は歪んだ顔で空を仰いだ。
「……内藤ホライゾン、魔王城ツン。私はしばし姿を消します。役目は終えました」
「それに際して一つだけ助言を……いえ、私個人の確信をお伝えします」
( ^ω^)「魔王城」
ξ#゚⊿゚)ξ「……捕まえるわよ。殺す価値より情報源としての価値のが高い」
( ^ω^)「分かったお」
ブーンの片手に青い蜃気楼が揺らぐ。
蜃気楼は僅かに雷鳴を走らせた後、実体を得て彼の手中に握られた。
無から現れたるは、鍔の無い深紅のサーベルであった。
.
799
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:24:50 ID:vYPVAwrg0
「――――何者かが、この世界の筋道を壊そうとしている」
(# ^ω^)「おおッ!!」 ダッ!
駆け出したブーンのサーベルは無意味に空を裂き、少女には間一髪届かない。
少女は、一切の痕跡を残さず屋上から姿を消した。
ξ#゚⊿゚)ξ「……逃げられたわね」
( ^ω^)「……気配を感じない。追う手段が無いお」
ξ#-⊿-)ξ「私も駄目、感知もできない」
ξ#゚⊿゚)ξ「……クソッ、なにも殺す事なかったでしょうが……!」
( ^ω^)「……先当たって、貞子さんにこの事を伝えるお」
ブーンは足元の死体を一瞥してからサーベルを手放した。
彼の手を離れたサーベルは、再び青の蜃気楼となって空に散った。
.
800
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:25:30 ID:vYPVAwrg0
( ^ω^)「事情は後で聞くお。今聞いても手遅れだから」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。……私の怠慢だ」
( ^ω^)「自覚があって何より。間が悪ければ僕が殺されてたお」
ξ゚⊿゚)ξ
( ^ω^)
( ^ω^)「なんだお」
ξ゚⊿゚)ξ
ツンは口籠り、ややあってから答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「……いえ。人間って、人間が死んだら動揺するものだと思ってたわ」
( ^ω^)「……さっきの奴も言ってたお。こんな欠陥品、参考にならないお」
気まずい空気が流れ込む。
ツンは踵を返し、ブーンに背を向けた。
ξ゚⊿゚)ξ「見張ってて。私が貞子さんを呼んでくる」
( ^ω^)「分かったお」
事務的な言葉が間を繋ぐ。
ツンが貞子を連れて戻ったのは、それから数分後のことだった。
.
801
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:26:12 ID:vYPVAwrg0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
从;゚∀从「……やあっと見つけた……」 ハァー
敵の追跡を開始して半日。
消えかけていた痕跡を懸命に辿り、ハインリッヒ高岡はやっと確信を得られるだけの気配を察知した。
彼は目前のアパートを見上げた。二階右端の部屋に一人分、激化薬の臭いがする。
勇者軍が使用する激化薬の正体は、勇者と英雄が保有する異能回路の模造品。
ゆえに一度でも激化薬を使った者は人体の仕組みそのものが変質し、気配も人ならざるものに近付いてしまう。
从 ゚∀从(……しかし妙だな)
从 ゚∀从(この距離なら向こうも気付いてるだろうに、動きがない)
从 ゚∀从(探りに行くか)
ハインは腰の鞘から細身の刀を抜き取った。
白昼堂々、人に見られれば一発アウトの光景である。
しかしハインはそのまま歩き出し、階段を上って右端の部屋で立ち止まった。
.
802
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:27:00 ID:vYPVAwrg0
从 ゚∀从(……我道、アグリ)
表札を一瞥。さっぱり知らない名前なので即時忘却。
ハインは刀を肩に担ぎ、空いた手でドアを開け放った。
从 ゚∀从「……生きてるかい」
(,, Д )
リビングの片隅に、両手足を縄で縛られた男が転がっていた。
男は既に瀕死だった。ブーンとの戦闘で負った傷もそのままに、何者かに捕縛されたようだ。
フローリングにも乾いた血の跡が広がっている。顔は青ざめ、意気も薄弱だった。
(,, Д )「……よお、悪いな。わざわざ……」
从 ゚∀从「王座の九人、ギコだったな。
生け捕りがご希望だから死ぬんじゃねえぞ」
(,, Д )「……奥に……」
.
803
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:28:03 ID:vYPVAwrg0
(,, Д )「……奥の部屋に、俺の妹が居る」
从 ゚∀从「……あ?」
(#,, Д゚)「……次に俺が目を覚ました時、妹が死んでたら――……」
从 ゚∀从
(#,, Д )「………………」
从;゚∀从「……ンだよ」
一瞬の激昂。
しかしそれも束の間で、ふつ、と細い糸が切れるようにギコは意識を失っていた。
从;゚∀从「死ぬなって言ったばっかりなんだがな……!」
ハインは土足でリビングに上がり、ギコの容態を確かめた。
死んではいないが応急処置すらされなかったせいで出血が酷い。
戦闘で激化薬を使用した分、今は副作用で生命力自体も低下しているだろう。
最早、ギコは適当な病院に突っ込んで解決するような状態ではなかった。
从;゚∀从「チッ」
こいつを匿った野郎は手当ての一つもしなかったのか、とハインは内心に吐き捨てた。
事は一刻を争う。ハインはギコと、そして彼の妹を両肩に担ぎ、大急ぎでその場を後にした――。
.
804
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:29:05 ID:vYPVAwrg0
おわり('A`)
805
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:37:29 ID:fuVf0y2E0
>>772
おいおいおいおいブーン系ぃぃぃ
相変わらず面白い乙
806
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 11:33:37 ID:VJXcf4Vc0
>私達よりメタい存在
鳩型の菓子かな?
807
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 19:45:56 ID:HDZCnXAU0
来てたのか!
今から読むぜ乙
808
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 21:04:35 ID:ZP7inhII0
乙ー
俺の勘違いだったらいいんだけども、1箇所「彼女」の名前ボカし忘れた?
それとも意図的?
809
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/09/30(金) 02:48:42 ID:y/LL3CPk0
>>808
名前を決めていないので勘違いだと思います!(^ω^)
AA無しで女性多いだけに二人称が紛らわしかったねNE(^ω^)ごめんNE(^ω^)
810
:
名も無きAAのようです
:2016/10/01(土) 11:17:06 ID:cFe4flbo0
乙乙! 続きが気になります。
811
:
名も無きAAのようです
:2017/02/12(日) 10:32:47 ID:UN2CpWPw0
バローだからもう来ないよ
812
:
名も無きAAのようです
:2017/02/16(木) 22:59:17 ID:il.O2mBo0
撃鉄終わるまで待てよ
813
:
名も無きAAのようです
:2017/07/20(木) 16:52:32 ID:AT2G.iuc0
撃鉄終わってから音沙汰ないな
814
:
名も無きAAのようです
:2017/12/10(日) 02:13:25 ID:x6tLqRJo0
これどうなったん?
815
:
名も無きAAのようです
:2018/07/10(火) 01:18:35 ID:ALgkWxhI0
待ってる
816
:
名も無きAAのようです
:2018/07/14(土) 00:02:27 ID:WN1Yo6LI0
もう二年近く休止してたのか
そろそろ続き読みたいな
817
:
名も無きAAのようです
:2018/08/05(日) 05:50:48 ID:6IZ1vrHY0
待ったよ
818
:
◆gFPbblEHlQ
:2020/09/29(火) 22:48:06 ID:45y81Xzo0
投下します
819
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:49:11 ID:45y81Xzo0
――VIP高校 屋上
保健室から貞子さんを連れ出し、屋上に戻って転校生二人の死を説明する。
始末屋に関する情報もすべて話した。
この一件の原因は、彼らを甘く見ていた私の落ち度でもあるのだ。
( ^ω^)「……蘇生は無理なのかお?
死体も五体満足だし、アンタなら何とかできそうだお」
川д川 「……死体、やっぱりそう見えるのよね」
転校生達の傍らに膝をつき、血も気にせずに彼らの体を調べる貞子さん。
彼女はブーンに訝しげな視線を送り、少し逡巡してから立ち上がった。
川д川 「お嬢様にも同じように見えていますか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ごめんなさい。質問の意図が分からないわ」
川д川 「……だったらますます奇妙だ。こんなものは初めて見た……」
後から来たにも関わらず、貞子さんは早くもなにかを察知したらしい。
こういう時に頼れる大人が居てくれるのは本当に助かる。
ほんの少し、肩の力が抜けてくれた。
ξ゚⊿゚)ξ「何か気付いた事があるの?」
川д川 「ええ。気付いたというか、いや、どう言ったものか……」
.
820
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:50:53 ID:45y81Xzo0
彼女はしばし口ごもってから、慎重に選び抜いた言葉で質問に答えた。
川д川 「……催眠、の一種とでも言いましょうか」
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
川д川 「“我々の状態”を一言で表すなら、やはり催眠だと思います。
内藤も、お嬢様も、そして私自身も。
今まさに、私達は催眠にかけられている状態なのです」
川д川 「しかも更に異常がありまして……ひとまず、お嬢様も彼らに触れてみて下さい」
ξ;゚⊿゚)ξ「……死体に触るのね。まぁ、貞子さんが言うなら……」スッ
私は死体の傍で膝を折り、男の死体にそっと手を触れた。
ヌルい血が手に張り付く。恐怖を帯びた冷たさが、私の体に染み込んでくる。
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……え」
ところが、私の手先は小さな動きを感じ取っていた。
死んでいる人間には無いはずのもの――脈動。
そうとしか呼べない鳴動が、この『死体』にはまだ残っていたのだ。
.
821
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:52:37 ID:45y81Xzo0
川д川「……お分かりでしょう。彼らはまだ死んでいないんです。
口に手を当てれば呼吸があるのもハッキリ分かります」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ならすぐにでも治療を!」
川д川「それが出来ないんです。
彼らは我々の見地外の方法で、『死んでいるという事にされている』 のです」
ξ;゚⊿゚)ξ
よく分からない。
川д川「事実として生きている。鼓動も呼吸もある。
しかし、私は今でも彼らの死を確信したままです。
お嬢様達もそうではありませんか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
貞子さんの言った通り、私はまだ彼らの死を確信していた。
種族の別あれど、全ての生き物は生死を見分ける本能的な力がある。
生存を確認した今でもそれが機能していないのは、明らかな異常だった。
川д川「死体からの蘇生ならともかく、私には『生者を蘇生する方法』が分からない」
川д川「損傷を直すだけなら最初に済ませています。
それこそ、死体が動き出してもおかしくないくらいの措置を」
.
822
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:54:03 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……それは、つまり?」
いまいち言葉を呑み込めなかった私は貞子さんに弱々しく問い返す。
二人は生きている、致命傷への処置もした、なのに『死んでいる』。
結果だけを突きつけるような理解させる気のない押し付けに、私は冷静な思考力を失いつつあった。
川д川 「方法は分かりませんが、現実と認識が明らかに噛み合っていません。
『現実が認識を作る』という絶対的な順序が覆されている、ような……」
貞子さんは言葉を選びながら、濁しながら私達に説明する。
それはきっと正解ではないだろうけど、今この瞬間の寄る辺としては十分すぎる推測だった。
( ^ω^)「それじゃあまるで、夢の中にでも居るみたいだお」
ξ;゚⊿゚)ξ(……夢、)
夢の中。
その言葉で、私はなにかを思い出せそうだった。
ξ;-⊿-)ξ(誰かが、そんなことを言ってた気が……)
記憶の再生にノイズが奔る。
顔も名前も曖昧になってしまった何かの記録が、私の脳裏に言葉を捏造する。
【 ツンちゃん先輩はもしかして、今まさにXXXXを脱出中なのではありませんか? 】
……必要のない想起だった。
私は胸をなでおろし、やけに重たく感じる頭を両手で揉みほぐした。
ξ;゚⊿゚)ξ「……でも、それでも生きてるなら見殺しには出来ない。
二人がこうなった原因には私も絡んでる。助けるべきよ」
川д川 「……では二人を預かります。
生死不明のままでも意思をもって動けるよう、やってみます」
我ながらワンパクなお願いをしたものだが、貞子さんは無茶を承知で引き受けてくれた。
ひとまず安心――なんて、マヌケなことを言っている余裕はない。
問題は山積みなのだ。たとえば――
ξ゚⊿゚)ξ
――あれ、そういえば、私は何をしていたんだっけ。
記憶が無い。思い出せなかった。
.
823
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:55:03 ID:45y81Xzo0
('A`)「……どういうこったよ、おい」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、ドクオ」
途端、その声に気付いて振り返る。
私の背後に現れたドクオは、すごく敵意のある感じでブーンを睨んでいた。
貞子さんの気配に気付いて授業を抜けてきたのだろう、彼は早くも怒りを露わにしていた。
('A`)「ほんの一瞬でこの有様か。役に立たねぇな、お前……」
ドクオが私を無視してブーンに詰め寄っていく。
彼は乱暴にブーンの胸ぐらを掴み上げ、この失態を咎めるように重苦しく沈黙した。
しかしこの程度の暴力はまったくの無意味。しばしの間、二人はまったく顔色を変えなかった。
( ^ω^)「……僕は魔王城より先に、一人でここに来てたお。
あいつは勝手に来ただけだし、最悪ここで」
('A`)「自分が殺されてた、だから俺に責任はねえって話か。
保身が上手いなァおい。デブが」
( ^ω^)
(^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
デブと言われて黙るブーン。
およそ事実なので何も言い返せない。
.
824
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:56:10 ID:45y81Xzo0
( ^ω^)「……そんなの言いがかりだお。
僕は雇われだし、知ったこっちゃない」
話を戻し、ブーンはドクオの手を払い除けた。
( ^ω^)「そもそも、こっち側の人間には傷一つ無いのが分からないお?
主人を置いて授業受けてたマヌケが後出しでほざくなお」
('A`)「じゃあお前の仕事は何なんだよ。護衛役の俺や、貞子さん達のサポートだろうが。
なのにだ、たった数分ツンを守る事も出来ないお前の存在意義は一体なんなんだ?
無責任な仕事で一丁前を気取るなよ。ツンが許してるからって――」
ξ゚⊿゚)ξ「……そこまでにして」
私は息を呑み、感情を消して言った。
ξ゚⊿゚)ξ「二人共、今の発言を全て撤回しておいて。今じゃなくていい」
ξ゚⊿゚)ξ「この一件の原因は『始末屋』に関する情報共有を怠った私にもある。
反省するべきなのよ、私達は全員ね」
ξ゚⊿゚)ξ「それでも批判があるなら私に言いなさい。
私だけ棚上げされるのは不愉快よ」
('A`)
( ^ω^)
二人が私に言い返せないのを分かった上で、私は力技で二人を仲裁した。
こういう喧嘩はよくある事で、あまりに度が過ぎた時は『魔王の娘』という立場を利用するしかないのだ。
立場を利用して友人達の言葉を握り潰す。やり方は不誠実だが、今はこれでいい。
ξ゚⊿゚)ξ「……何もないなら始末屋の話をさせて。
たぶん、私達はもう巻き込まれてる気がするから……」
('A`)「……分かりました」
( ^ω^)
.
825
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:56:57 ID:45y81Xzo0
「おお〜い、ドクオ〜〜」
ξ゚⊿゚)ξ ?
――かくして話を進めようとした直後、扉の方からマヌケな呼び声が聞こえてきた。
そうだ、そういえばもうとっくに授業が始まっているのだ。
勇者だ魔王だとはいえ、今の私達は学生という身分に収まっている。
( ^ω^)「これ、見られたらヤバいんじゃないかお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
ブーンはそう言いながら屋上を一望し、現状を再確認するよう私達に促した。
血肉がブチ撒けられた校舎屋上、そのド真ん中に横たわる転校生二人。
しかも私と貞子さんは手に血がべっとりとついていて、つまり犯罪臭がヤバい。
これはまさしく学生の身分にあるまじき状況――
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ
つまり事案である。
川; д川 「――急いで散開ッ! 転校生は私が運びますので!」 バッ!
貞子さんは転校生達を担ぎ上げ、颯爽と屋上のフェンスを飛び越えていった。
(;'A`)「いやでも血の跡どうすんだよ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン! どうにかしなさい!」
(; ^ω^)「人使い荒いお……」 パクッ
ブーンは小言を漏らしつつ、激化薬を飲み下した。
.
826
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:57:38 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「おお〜い……、って」
ξ;゚⊿゚)ξ
('A`;)
( ^ω^)
――ブーンの激化能力は『復元』。
激化能力って覚えてる? 私は今さっき思い出した。
本物に及ばない偽物を作る能力だが、今この瞬間において真偽は二の次である。
(´・_ゝ・`)「……何やってんの? お前ら」
(;'A`)「……何って、見ての通りランチだよ、ランチタイムだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうそう。私が呼び出したのよ」
私達はブーンが復元したレジャーシートに腰を下ろし、さも昼食中で〜すb(^_^)dという体でこの場を乗り切ろうとしていた。
弁当箱は一つも無いが、これなら辛うじて誤魔化しきれるはず。
ぶっちゃけ大きさが足りなくて血肉がちょっと漏れているが気にしないだろう。
.
827
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:59:26 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「まぁいいけどさ。いきなり教室出てかれるとビックリするんだよね」
(´・_ゝ・`)「分かる? 物事には理路が必要なんだ」
(´・_ゝ・`)「急にさあ、投げ出しちゃあ駄目だよね。4年もさぁ……」
嫌味ったらしく注意するのは私達のクラスの、……委員長の、盛ナントカ君だったと思う。
上手く思い出せないけど私と彼は喋った事もないし仕方ない。
向こうは根暗、こっちは魔王だ。そりゃあ会話もない。
(;'A`)「あーはいはい悪かったよ。ツン、戻ろうぜ」
ξ;゚⊿゚)ξ「そ、そうよね! そうしましょ」
私とドクオは腰を上げて屋上を去ろうとする。
かなり際どい隠蔽工作だったが十分に事なきを得たようである。
ξ;゚⊿゚)ξ チラッ
( ^ω^)” コクン
そしてアイコンタクトでブーンに後始末をお願いする。
後でちゃんとお礼を言っておかねば……。
.
828
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:00:06 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……あれ。魔王城さん、手に血が……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ギクゥ!!」
('A`)「これはケチャップだよ。ツンは昼飯にケチャップを一本飲み干すんだ」
(´・_ゝ・`)「ははは、クソ英文みたいな趣味だな」
とんでもない誤解と納得と哀れみを受けた気がするが、誤魔化せたっぽいのでよかった。
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
(´・_ゝ・`)「なにが?」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「おっと、同じ描写をしてしまった」
ξ゚⊿゚)ξ「……なにが?」
(´・_ゝ・`)「なんで〜もないや、やっぱりなんでもないや。
このやり取りを忘れてても仕方ない。時間が経ちすぎてる」
ξ゚⊿゚)ξ ?
(´・_ゝ・`)「ほら、早く教室に戻ろう。この話が続くよう頑張ってきたんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
……なんだろう。どこかに違和感があるぞ。
思い出すのが難しいので諦める。私は足早に教室に戻った。
.
829
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:00:58 ID:45y81Xzo0
〜賞味期限から四年経ったパンによる場面転換〜
_
(⌒⌒⌒).) カビダラケダオ
|^ω^ |:|
──| :::|:|‐─―─('A`)―──
 ̄ ̄ ̄~ ノ(ヘヘ タベキルゾ
.
830
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:01:58 ID:45y81Xzo0
〜放課後〜
ξ゚⊿゚)ξ「いやー色々あった」
夕焼けとか部活とかそれっぽい下校風景を眺めながらテクテクと帰る、そんな私は魔王城ツン。
こっちはドクオとブーン。昼間のこともあってギスギスした空気で辛い。
こいつら一体私をなんだと心得ているのか。魔王城ツンだぞ。もっと接待をしろドリクラのように。
('A`)「……途中でコンビニ寄りませんか。
今日の事を話し合うなら菓子のひとつでもあった方が……」
( ^ω^)「呑気にお茶を飲むような場にはならないお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、じゃがりこの一つでも買っていきましょうか」
じゃがりこを一本あげれば二人の機嫌も治るだろう。
.
831
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:03:08 ID:45y81Xzo0
〜ツンちゃんの家〜
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま〜」
ミセ*゚ー゚)リ「おかえりなさい!」トテトテトテ
ξ゚⊿゚)ξ
家に帰ると、お父さんではなくミセリさんが出迎えてくれた。
それ自体にはさして疑問を抱かない。だが、どういう訳か彼女は全裸であった。
一行上を読み飛ばしてしまった人に向けてもう一度書いておくと、ミセリさんは全裸だった。
ミセ*゚ー゚)リ「疲れたでしょう。さぁまずは服を脱ぎます」
ξ゚⊿゚)ξ「服を着て」
.
832
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:04:08 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「お父さんは?」 トコトコ
ミセ*゚ー゚)リ「ハインリッヒが王座の九人を掴まえたらしいから、それを引き取りに。
あ、後ろの二人もおかえりなさい。貞子に聞いたけど大変だったわね」
('A`)「そうなんすよ……また悩みの種が増えて……」 トコトコ
(^ω^)
('A`)
('A`)「……おい、なにミセリさん見てんだよ」
ミセリさんとドクオは同じ魔族。
今更、同族の全裸くらいで大した反応はしない。
(^ω^)「…………」
しかしブーンは違った。彼はムッツリどスケベ少年ボーイだった。
ミセリさんの全裸が人体のものであるならば、それをガン見しない道理はなかった。
やはり人間は度し難い。これからはもっと気を遣おう。
.
833
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:05:34 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさん、私はしばらく部屋に居るから。
お父さんが帰ってきたら教えて」
ミセ*゚ー゚)リ「はーい。夕飯のリクエストとかあります?」
ξ゚⊿゚)ξ「多種多様な揚げ物」
ミセ*゚ー゚)リ「オッケー! この姿で揚げ物ってことは、油跳ねで死ねということね!」
ミセリさんはパワフルな変態だった。
('A`)「おい、いつまで見てんだ。俺らも行くぞ」
(^ω^)「あ? あ、おお……おっほ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……え、いや男が私の部屋に入れる訳ないでしょ。二人はリビングで待機よ。
許可なく入ったら誰だろうが半殺しだからね」
私はそう言い、ついて来ようとする二人を制止した。
ミセ;゚ー゚)リ「べ、別にちょっとくらいよくないですか……」
ξ゚⊿゚)ξ
制止したのだが、とっくに私の部屋に侵入してた者が居るらしく、手遅れだった。
.
834
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:06:55 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「なんだ、今日は帰りが早いな」
ξ゚⊿゚)ξ「――あ、兄さん」
こっちの会話に聞き耳を立てていたのか、デミタス兄さんが玄関の方にやってきた。
全裸の現役教師が自宅で兄さんと二人きりだった事実から目を逸らし、私は小さな溜息を吐く。
ξ;゚⊿゚)ξ「そうなのよ、今日は色々あったのよ。あとで兄さんも聞かされると思うけど」
(´・_ゝ・`)「そりゃあ大変だったな。俺も今まで目のやり場に困り続けてたけど」
ほがらかに言い、デミタス兄さんはドクオ達に視線を向けた。
そういえばデミタス兄さんが二人と顔を合わすのは初めて、初めてだった気が
(´・_ゝ・`)「やあどうも。今日も三人とも仲良し小好しマツモトキヨシだね。
えっ違う? てめーらさてはドンキ派か」
(´・_ゝ・`)「内藤君は初めまして。兄の魔王城デミタスだよ、よろしく」
兄さんがブーンに片手を差し出す。
しかし、ブーンはこの友好の合図をすぐには受け取らなかった。
( ^ω^)「……」
ブーンは兄さんを凝視している。
まさか初見で嫌悪したのか、ブーンは兄さんに対してあまり良い印象を持たなかったようだ。
まぁ、それも仕方ないなと私は思った(私もあまり兄が好きではないので)。
.
835
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:07:53 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「やっぱりお前がバグか」
( ^ω^)「……は? なんの話だお?」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「さて、どう転がしたもんか」
兄さんは困り顔で握手を諦め、行き場を失った手を腰に当てた。
その意味ありげな仕草は、……しかしまったく意味が分からない。
兄さんは時々こうして意味不明な態度を取る。メタ視点系の中二病なのかもしれない。
ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあ、まぁ二人はミセリさんに服を着せといて」
(^ω^)「フヒヒ分かったお!」
('A`)「ほらもうミセリさん、全裸だとモラルを疑われますよ」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、私の服はお嬢様のお部屋にあるので……」
ξ゚⊿゚)ξ「なんで?」
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様の古着でコスプレしてたんですよ。胸がキッツイのなんの!」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたの服は窓から捨てておきます」トコトコ
私は一人階段を上がっていき、心落ち着くマイルームに入った。
これでやっとこさ一息つける。今日はちょっと疲れてしまった。
今日一日で4年分くらい疲れてしまった。4年なんて経ってないのに不思議だ……。
ξ;´⊿`)ξ「ふー…………」
大きな溜息、大きな背伸び。
束の間の自由と開放感に、私はデカすぎる欠伸を我慢できなかった。
.
836
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:08:34 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「よし、脱ぐか」グッ
〜ここで脱衣シーンのCGが入る〜
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
制服から部屋着に着替えた私は魔王城ツン。
強いて言うならば部屋着の魔王城ツンである。強いる必要は特にない。
(´・_ゝ・`)「おお〜い」 ガチャッ
ξ#゚⊿゚)ξ「あ! ちょっとノックくらいしてよ」
と、いきなり部屋に入ってきたのは三十路のおじさんだった。
この人は盛岡デミタスおね、……いや、お兄ちゃん、兄さん?
まぁ血縁者の誰かだろう。ともかくこの人はデミタス、私にとって何らかの関係者だ。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「ここまで壊れてると会話も成り立たないな」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
彼は一人で何か呟いている。声は聞こえたが意味は分からない。
そうだ、デミタスは隣の家に住んでる幼馴染だった。
しばらく会っていなかったので、すっかり存在を忘れていた。
.
837
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:09:36 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――まどろっこしいから端的にいくぞ」
(´・_ゝ・`)「俺は盛岡デミタス。お前とは完全に他人で、昨日会ってるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ?」
私は首を傾げてデミ君を見返す。
だって私達は将来を誓い合った幼馴染みで、昨日だって一緒にピクニックに……
(´・_ゝ・`)「よく見ろよ俺を。ただのおじさんだぞ。
なんだよクラスメイトって、なんだよ兄さんって」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「思い出せ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ああ?」
(´・_ゝ・`)「ほら出かかった! いいぞ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「昨日、って、……いつ?」
(´・_ゝ・`)「2016/09/06(火) 10:45:25」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
(´・_ゝ・`)「おも、思いだ、思い出し〜〜〜〜」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「〜〜〜いや早く思い出せよ」
.
838
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:10:48 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、ああ〜?」
何言ってんだコイツと断言したい手前、私の脳裏には変な違和感が引っ掛かっていた。
それを解こうと、私は想起できる全ての記憶を反芻していく。
――盛岡デミタス。
なんとなく、私はこの名前をどこかで聞いたことが……。
(´・_ゝ・`)「……思い出した?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの……もッ、盛、モリモリ、モリモリクソ野郎……」
(´・_ゝ・`)「名前は今言っただろ。藤森だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「盛岡じゃないの?」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「盛岡で大正解だよ。やっと思い出せたか」
ξ;゚⊿゚)ξ「……色々思い出せそうなのに思い出せないのよ。
あなたが変質者や不審者の類語なのは確かなのに……」
(´・_ゝ・`)「その類語辞典は焚書対象だな」
.
839
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:11:56 ID:45y81Xzo0
Σξ;゚⊿゚)ξ ハッ
ξ;゚⊿゚)ξ「盛タス!! そうだ、いつかの不審者!!」
(´・_ゝ・`)「山盛りのレタスみたいな略称をありがとう。
俺は盛岡デミタス41歳バツイチ」
(´・_ゝ・`)「今日は俺の能力、……というか性質を説明しに来た。その他質問も受け付けます。
ちょっと話がもつれてな。4年間の空白踏まえ、お前らを『4周目』に送れってさ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……? ??」
(´・_ゝ・`)「……おいおいもう思い出していいだろ。
あのな、やろうと思えば設定変えて相思相愛カップルにもなれちゃうんだぞ?」
(´・_ゝ・`)「ま、その場合は『ウニ抜き』の相思相愛だけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやもう思い出したわよ。ただ理解が追いついてないだけ。
これ以上キモいこと言ったら警察呼ぶからね」
(´・_ゝ・`)「ウを二つ抜いて粗思粗愛。これどう?
上手いこと言えてる? お前の年代こういうの好きだろ」
ξ;-⊿-)ξ「……用があるなら下に行きましょう。みんなに紹介するから」
(´・_ゝ・`)「ああよろしく頼む。俺もやっと本題に入れて嬉しいよ」
(´・_ゝ・`)「世界平和が揺らいでるんだ。こうしちゃいられねえ」
こいつら始末屋は本当に、前置きというものを一切用意してこない。
第三者が私の世界を掻き回している現状にも、これで少しは説明がつけばいいのだが……。
.
840
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:13:06 ID:45y81Xzo0
_人人人人人人人人人人人人人人_
> それからどしたの <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^ ̄
ヘ(^o^)ヘ
|∧
/
(???)
ノ(ヘヘ
.
841
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:14:15 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――初めまして。盛岡デミタスです」
という前置きを理解させるのに三十分くらい掛かった。
まったく意味不明だが、彼には『自身を異様に曲解させる』といった性質があるようだった。
(;'A`)「――嘘だろ、俺のオヤジじゃねえのか!?」
(´・_ゝ・`)「違います」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ私は未だに独り身なんだ」
(´・_ゝ・`)「元カレ設定も勝手に湧いただけで……」
( ´ω`)「ハムエッグ(※1)が帰ってきたかと思ったお……」
(´・_ゝ・`)「ハムエッグは実家に帰ったよ」
ξ;゚⊿゚)ξ(……これは一体、どういう物語なの……?)
各々が何かしらの形で盛岡デミタスを誤認している状況に、なんとか区切りをつけて一息。
それからようやく、私達は盛岡デミタスの話を聞き始めた。
※1 ブーンが昔飼っていたハムスター
.
842
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:15:37 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――という事で、改めましてこんばんは」
(´・_ゝ・`)「俺の名前は盛岡デミタス。
知っての通り、インフィニティ・モンキーズの一員だ」
('A`)
( ^ω^)
(;'A`)「……知ってるか?」
(; ^ω^)「知らないお……」
(´・_ゝ・`)
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「……そういやここではなんて名乗ってたっけ。
101号室の猿? 延命財団? 悪魔の代行者? ポンキッキーズか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ほらあれよ、始末屋。……だったと思うけど」
朧気な記憶からそう答えてやると、デミタスはポンと手を叩いた。
(´・_ゝ・`)「ああ〜それだ! いや名前が多くて困ったもんだよ。
そうそう始末屋、完璧思い出した。いや時の流れは残酷だ」
(´・_ゝ・`)「よし、俺は始末屋のデミタスだ。俺もいよいよ危ないな」
.
843
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:16:19 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「――はい! 前途多難はここまで!!」 バンバン!
私はテーブルを叩き、これ以上の困惑が起こる前に彼に問い掛けた。
ξ;゚⊿゚)ξ「いい加減さっさと状況を理解したいの!
さっさと5H1Wで答えなさいよ!」
(´・_ゝ・`)「――いや待て」
ξ;゚⊿゚)ξ「なによ!?」
(´・_ゝ・`)「5H1Wって、それ逆じゃねえか?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
('A`)「5W、1Hだな」
ξ゚⊿゚)ξ
.
844
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:17:17 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「――うおおおお!! 前途多難はここまで!!」 バンバン!
( ^ω^)(無かった事にされたお)
ミセ;*゚ー゚)リ(お嬢様……素で言ったのですか……)
ξ;゚⊿゚)ξ「盛岡デミタス! まずは貴方の能力を晒しなさい!
私達の誤認も大体貴方のせいなんでしょう!? いい加減にしてよ!」
(´・_ゝ・`)「……ま、察しの通りでそのとおり」
私の怒りを受け流すように、盛岡はさらっと答えてくれた。
(´・_ゝ・`)「お前達の誤認は確かに俺が原因だ。ごめん。
でも昼間の惨劇をやったのは『彼女』の方だ。より正確には※パーフェクト・検閲※だが」
(´・_ゝ・`)「まぁその展開はいつか来るとして、俺の能力――便宜上“能力”と呼称するが、」
(´・_ゝ・`)「俺に今適応されてる能力は、“無駄な因果を結ぶ能力”だ」
ξ゚⊿゚)ξ …?
(´・_ゝ・`)「特に意味のない何かを、特に意味もなく発生させたり引き寄せる能力、性質。
そういうものが今の俺にはある。形容しがたい話だけどな」
(´・_ゝ・`)「例えばそうだな、……俺達が最初に会った時、なんか俺の近くに居ただろ」
ξ゚⊿゚)ξ「いつの話よ」
(´・_ゝ・`)「
>>733
」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」
.
845
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:17:58 ID:45y81Xzo0
何か居ただろ、ってそんな藪から棒に――
.r=====b
[]υ_σ[]
ξ゚⊿゚)ξ「――あっ」
いや、そういえばなんか居た。
(´・_ゝ・`)「そうそう、それそれそれ」
(´・_ゝ・`)「……でもな、あのヘッドホン付けてたアレな?
俺にもあいつが何だったのか、サッパリ意味が分からないんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと待って、あんたも意味が分かんないって……。
あんた、どれだけ私達に疑問符を使わせる気なのよ」
(´・_ゝ・`)「どう説明してもこうなるし、4年も経てば当然だ。頑張ってくれ」
.
846
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:18:45 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「あいつは俺とは一切無関係で、アレはただあの場所に居ただけの何か」
(´・_ゝ・`)「俺への誤認も似たような感じでさ、とにかくそういう性質ってことで理解してくれ。
俺自身に変な力は無いが、なんか意味ありげなものが俺の近くに湧いて出るんだ」
(´・_ゝ・`)「擦れ違っただけで俺に一目惚れするヤツが居たり、
適当なリゾートバイトに行っただけでヤバい目に遭った事もある」
(´・_ゝ・`)「エッチな洗脳アプリがスマホに入ってた事もある」
Σ(; ^ω^)「エッチな洗脳アプリ!?」 ガタッ
(´・_ゝ・`)
(^ω^) ヘヘッ
.
847
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:19:34 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「あとなんだろ……分かりやすい仕事となると呪物の処理とかだな。
勝手に色々縁ができるもんだから、まぁとにかく色々やってるんだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……それってめんどくさそう」
私の感想は、ただひたすらシンプルに『面倒そう』で終わってしまった。
つまりは自分を中心に何かが起こる能力。
確かにそれなら能力と呼ぶより、体質とか、性質と呼んだ方が適切だろう。
――世界の中心を揺るがす能力、なんて形容を思いつく。
魔王城ツンの記憶からその形容は即時抹消されました。
(´・_ゝ・`)「ああ面倒だ。いちいち構ってたら身が持たねえくらい面倒だ。
だから俺はこういう面倒事を、すべて『仕事』って事にして処理してる」
(´・_ゝ・`)「仕事と報酬、需要と供給。いわゆる等価交換だな。
それらを円滑に循環させて、辛うじて正気を保ってるんだ」
盛岡は気だるげにジェスチャーしながら持論を語る。
これが彼なりの人生哲学なのだろう。すごいなぁと私は思った。
ξ゚⊿゚)ξ(すごいなぁ)
.
848
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:20:23 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……って感じ。要するに『人生はクソ』って話だよ。
運命への接客はもう命懸けだよ大変だよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「なんかめちゃくちゃ面倒な人生を送ってきたのね」
(´・_ゝ・`)「分かってくれるか、犬も歩けば棒に当たるマンと呼ばれた俺の気持ちを」
――結論。
盛岡デミタスは『運命の被害者』であり、それを自覚している人物だった。
必然的に超安定志向。
プラスを大きくするのではなく、マイナスを排除するという考え方、生き残り方。
勝つためではなく、負けないための戦い方をデミタスは徹底している。
戦士ではないが策士。勝ちはないが負けもしない。
彼は一時的な勝利より大局の勝利を優先し、そして結果的に生き残るような男だ。
なるほど、あの面倒臭さの塊みたいな『彼女』が傍に置くわけだ。
盛岡デミタス。きっと彼でなければ始末屋の仕事は務まらないのだ。
始末屋については未だによく分からないが、ひとまず彼のことは信用してもよさそうだ。
ξ゚ー゚)ξ(ふふ、なーんだ。いいトコあんじゃん……)
やっぱりデミタスは凄い、そう思っ――――
.
849
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:21:04 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「…………ん?」
と、なんか思考があらぬ方向に走っている気がして、私はピタリと思考を止めた。
なんかおかしい。絶対なんかおかしい……。
ξ゚⊿゚)ξ
Σξ;゚⊿゚)ξ「――ちょっと待った! またなんか認識がおかしかった!」
('A`)「やっぱすげえなデミタスさんは」
( ^ω^)「すごいお!」
(´・_ゝ・`)「へへっよせやい」
ヘ('∀`)ノ 「おいおい謙遜してんぜ伊達男がよ!」
( ^ω^)「なに言ってんだお! デミタスさんは本当に凄い人なんだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「この過大評価は絶対おかしい! 二人とも目を覚ましなさい!」
(´・_ゝ・`)「これもう勝手にこうなるんだよ。耐性つくまで頑張ってくれ」
('A`)「そうだぞ! デミタス王に無礼を働くバカツンめ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「王!?」
(´・_ゝ・`)「こりゃ魔王扱いも近いな」
( ^ω^)「すごいお!」
(´・_ゝ・`)「いやぁ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさん、二人の股間を蹴り潰して」
ミセ*゚ー゚)リ「了解しました」
.
850
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:22:22 ID:45y81Xzo0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(´・_ゝ・`)「――ってな感じで、俺のアレは説明終わり」
(´・_ゝ・`)「彼女いわく 『超因果体質』 とかなんとか。世界との無関係を許されねーのね。
とにかく俺自身まったく求めてないそういうアレが俺にはあるのでした。了」
ミセ*゚-゚)リ「……それで、ようやく話が進むのだけれど」
(; A )(; ゚ω゚) オァァ....
股間を押さえて悶絶する二人をさておき、ミセリさんは声色を落として話し始めた。
ミセ*゚-゚)リ「昼間、『彼女』と呼ばれる何者かは堂々と殺人、……に近い何かをした。
にも関わらず、貴方が何の見返りもなく我々の味方になるというのはありえない」
ξ゚⊿゚)ξ「……ミセリさん、真面目になるなら服を着て。というかなんでまだ着てないの」
ミセ*゚-゚)リ「今はそれどころではないのです。お嬢様、口を挟まないでいただけますか」
ξ゚⊿゚)ξ
服を着てほしいだけなのに。
せめて地の文の中だけでも服を着てもらおう。ミセリさんは服を着ました。
.
851
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:23:02 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……彼女か、とりあえず彼女は盤面を下りたよ。
もう彼女は現れない。その辺の心配は無用だ」
(´・_ゝ・`)「昼間の二人については……まあ保留だな。
その内、適当な時に何とかしとくから安心してくれ」
(´・_ゝ・`)「あれは緊急措置として別ルートに放り投げた。
敵にあいつらを利用されると本当に厄介になる。まぁ大丈夫だから、ほっとけ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……はぁ」
それっぽい事を言いつつ、しかし死ぬほど曖昧な物言い。
最早この物語に呆れつつある私は溜め息をつき、デミタスの言い分を仕方なく呑んだ。
この適当な納得ですら、彼の性質による根拠の無い判断なのだろうけど……。
ξ;-⊿-)ξ「……とりあえず、とりあえずとしか言いようがないけど……」
ξ;゚⊿゚)ξ「私達は昼間の事は忘れないし、貴方達への信用も半疑のままよ。
だから引き続き王座の九人はもちろん、私達は勇者軍との敵対を続ける」
(´・_ゝ・`)「……それで?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……貴方のことは情報源として見逃してあげる。
だけど、少しでも余計なことしたらその時点で敵だから」
(´・_ゝ・`)「いいね。それぐらいが楽でいい」
.
852
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:24:05 ID:45y81Xzo0
ミセ*゚ー゚)リ「――で、ここまでの情報の対価として、あなたは我々に何を要求するのかしら。
ここまでの言い振りを顧みるに、……お金?」
ミセリさんが全裸で言う。
全裸でなければ心強いのにな、つらいな。
(´・_ゝ・`)「俺個人が相手ならそれで正解。まぁ大したことも言ってないし、金も取らんが」
盛岡は気だるそうに天井を見上げる。
行間を埋める為だけに喋るのは飽きてるんだ、と俺は世界に介入する。
(´・_ゝ・`)「俺はただの仲介役だよ。点と点を結ぶだけの仲介役。
『彼女』とあんたらの縁を結んだように、今度もまた別人を紹介するだけだ」
ミセ*゚-゚)リ「……その、『今度』というのはどういう意味ですか?」
ミセリさんは『彼女』の存在を強く警戒しているようで、より一層語気を冷たくして言った。
それでもデミタスは意に介さず、自分のペースで話を続ける。
(´・_ゝ・`)「安心しろよ今度のは話が通じる善人だ。『彼女』みたいなゲテモノじゃない」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
ξ;゚⊿゚)ξ(信用できねえ……)
.
853
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:24:45 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「まぁ今のあんたらには何も要求しないさ。
どうせもう詰んでるルートだし、聞き流してくれればいい」
ξ゚⊿゚)ξ「一言一句すべて聞き流してるから安心して」
(´・_ゝ・`)「そこまでされると困る。せめて『伊藤』って名前は覚えといてくれ」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
(´・_ゝ・`)「よし」
.
854
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:25:41 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……ま、重ねて言うけど言葉は通じる。だから安心してくれ
あと手土産は美味いものにしておけよ。酒があるともっといい」
美味いもの、と聞いて今日の夕飯を思い出す。
そういえばミセリさんには揚げ物を注文していたのだ。手土産にも丁度いいだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「なら夕飯の揚げ物とかよくない?
ミセリさん、今日どんぐらい作るつもりだった?」
ミセ*゚ー゚)リ「今日はドクオ達も居るので大量に準備してますよ。
よければ盛岡さん持って帰ります? 伊藤さんとこ」
(´・_ゝ・`)「嬉しいけど対応が家庭的すぎる」
ミセ*゚ー゚)リ「とりあえず時間も時間ですし作り始めますね。
30分もあれば山盛りできますから待っててください」
ξ゚⊿゚)ξ「あーい」 ピッ
つ[]
ミセリさんは席を立ってキッチンの方へ歩いていった。
私も手隙になったので、テレビを点けて暇を潰すことにした。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「……魔王城ツンは、面倒臭くなるとマジで露骨に態度変えてくるよな」
ξ゚⊿゚)ξ「だってもう話は終わったでしょ?
今日は疲れたしさっさと思考停止したいのよ」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「話が終わった、っていうのは面白い冗談だな」
(´・_ゝ・`)「これから※パーフェクト・検閲※が始まるってのに」
.
855
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:26:22 ID:45y81Xzo0
ミセ*゚ー゚)リ「盛岡さんビール出しますかー?」
(´^_ゝ^`)「あ、飲みますぅー!」
ξ゚⊿゚)ξ「私にも一本ちょうだーい!」
ミセリさんが持ってきてくれたビールを開け、私達はささやかに乾杯した。
なお魔界に未成年飲酒を禁じる法はない。合法飲酒である。
.
856
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:27:46 ID:45y81Xzo0
* * * * *
そんなこんなで数十分後、誰かがうちに帰ってきた。
「ただいま〜」と言いながらリビングに入ってきた人は、間違いなく私の父・ロマネスクだった。
( ФωФ)「おお〜やっているな。今夜は大所帯であるか」
ξ゚⊿゚)ξ「おかえり。こちら盛岡デミタスさん、要約すると誤解製造機よ」
(´・_ゝ・`)「座ったままで失礼、お構いなく」
( ФωФ)「……うむ。久し振りであるな」
(´・_ゝ・`)「……おやおや何を仰る。我々、初対面ですが」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ああそっか。お父さん、あのね……」
『久し振り』という誤認を解こうと、私はまた最初から盛岡の性質を説明しようとした。
しかしお父さんは聞く耳を持たず、当然のように盛岡と握手をしてみせる。
( ФωФ)「安心しろ。こいつの力は知っている。
ツンちゃんは知らんだろうが、こいつは元魔王軍で顔馴染みだ」
(´・_ゝ・`)「そんな覚えはございませんがね」
盛岡はビールを煽って目を逸らす。
嘘八百を背負ったこの男にも、どうやら弱点と呼べる過去は存在するようだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「貴方、どれだけの組織を股にかけてるのよ……」
(´・_ゝ・`)「必要最低限」
( ФωФ)「何十代にも渡って魔王の側近をやっている男だ。
上手く付き合うコツは直視しないこと、真に受けないこと」
ξ゚⊿゚)ξ(盛岡デミタスの年齢計算が大変なことになった)
(´・_ゝ・`)「やめろやめろ、この展開はもう無いんだよ」
それ以上追求するなと言わんばかりに、彼は小さく呟いた。
.
857
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:29:52 ID:45y81Xzo0
突然続きを投下してごめんね。でも本当です
次回は終末くらいに投下します。それで3周目は終わりです
以降はファイナル板でやります
1周目
>>2-26
>>39-61
>>74-87
>>101-135
>>176-213
>>223-229
>>280-295
>>368-374
2周目
>>389-414
>>519-553
>>559-592
>>622-648
>>651-654
>>669-681
>>718
3周目
>>728-733
>>742-761
>>768-803
>>819-856
(今回)
858
:
◆gFPbblEHlQ
:2020/10/04(日) 22:15:23 ID:BRHqwzuo0
【IntervEnd:終末解除(オープンワールド)】
.
859
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:16:30 ID:BRHqwzuo0
ξ゚⊿゚)ξ「お父さん、ミセリさん、おやすみ」
( ФωФ)「うむ。今日はよく眠るのだぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様、おやすみなさい」
ブーンとドクオ、それから幼馴染みのデミタス君も帰っていった夜遅く。
私はお父さん達におやすみを言ってから自室に戻り、この長い長い一日の最後を過ごし始めた。
.
860
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:18:00 ID:BRHqwzuo0
――魔王軍と勇者軍の戦いは、これからもっと熾烈になるのだろう。
そこに介入してきた始末屋だって、未だに目的が分からない。
今は本当に分からない事だらけだ。胸がざわついて、私はどうしようもなく無力を感じる。
ξ;-⊿-)ξ(……自問自答でもしようかな)
不安に駆られた私はちょっとだけ魔力を使い、私自身の力であるゼノ――
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ」
――おかしい。魔力が上手く巡らない。
というか、そもそも私は何をしようとしてたっけな。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……ゼノ、ゼノグラシアだ。そうだ」
私はハッキリと、確かにその名前を口にした。
ゼノグラシア。ウサギさんのような見た目をしていて、とても頼りになる私の相棒。
能力は、確か、……可能性がどうこう、みたいな……。
.
861
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:19:16 ID:BRHqwzuo0
『――――何者かが、この世界の筋道を壊そうとしている』
不意に、言葉を思い出す。
学校の屋上で『彼女』が最後に放ったセリフ。
それを今、この瞬間に思い出したのはなんでだろう。思考が上手く噛み合わない。
ξ;-⊿-)ξ(ダメだ、始末屋のせいで支離滅裂になってるのね……)
自分を説き伏せながら布団に身体を埋める。
おかしい、まるで世界に一人ぼっちになったような気分だ。
メンヘラか? 思春期とはいえ魔王の娘だぞ。
こんなに不安が募るのは、とても気味が悪い……。
.
862
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:21:57 ID:BRHqwzuo0
――ダメだ、やっぱり起きよう。
ξ;゚⊿゚)ξ(たまには夜更ししていいわよね。
今日はちょっとグロいのも見ちゃったし、いいわよね……)
私は布団を脱いでベッドを降り、足早に部屋を出ていった。
階段の電気も点けずに一階へと駆け降り、リビングの明かりに急いで飛び込む。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あれ、」
だが、リビングには誰も居なかった。
部屋の電気とテレビは点けっぱなしで、そこに人の気配は残っていない。
まさかお父さんとミセリさんが一緒にお風呂に入っているはずもないし、そんな音も聞こえない。
喧騒はテレビのみ。それがなぜか、ひどく不気味に思えてしまった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……ちょっとー! お父さんテレビー! 点けっぱなしー!」
私は無理をして、家中に響く大声でお父さんを呼びつけた。
というか、私はリビングにまで何をしに来たんだっけ?
早く寝たいと思ってた筈なのに……。
.
863
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:23:29 ID:BRHqwzuo0
「……ああ、悪い悪い」
ξ;゚⊿゚)ξ
廊下の方から返事がして、私はドアの方に目を遣った。
一人ぼっちの感覚が薄れて安心を覚える。
この声はお父さんだ、きっと書斎に居たのだろう。
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっとお父さん! テレビ点けっぱなしはダメよ!」
(;´・_ゝ・`)「……ああ、悪いね。どうも……」
しかし、リビングにやってきたお父さんはとても酷い顔色をしていた。
今にも死にそうなくらい顔が青ざめていて、来ている黒スーツはボロボロで。
片足を引きずっていて、血だらけ、傷だらけで。
ξ;゚⊿゚)ξ「――ッ」
その姿を簡単に言い表すとしたら、お父さんは『死にかけていた』。
.
864
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:24:55 ID:BRHqwzuo0
ξ;゚⊿゚)ξ「待って、何があったの!? 敵!?」
(;´・_ゝ・`)「察しがよくてありがたいな。特に今は……」
お父さんはそんな軽口を吐きながら、呆気なく床に倒れ込んでしまった。
私が二階に居た時間はそう長くない。
ましてやその間、一階からの物音なんて一つも聞こえてこなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「なんなのよ……どうしてこんな……!」
私が目を離したのはほんの一瞬、たった一瞬なのだ。
なのに、いったい何が起これば、あの魔神ロマネスクがここまで――
(;´・_ゝ・`)「……魔王城ツン、ゼノグラシアを出せるか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ゼノッ……なによそれ!?
とにかく救急車呼ぶから動かないで!」
(#´・_ゝ・`)「――俺の話を聞け!!」
Σξ;゚⊿゚)ξ ビクッ
今まで聞いたこともない張り裂けるような怒声。
私は思わずよろけてしまって、その場に腰を落とした。
(;´・_ゝ・`)「……って、怒鳴るのはガラじゃねえんだ。
頼む、俺の話を聞いてくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ご、ごめんなさい、お父さん……」
(;´・_ゝ・`)「……運がいい。その誤認は、利用しやすい」
お父さんは不敵に笑って居直り、近くのソファに寄りかかって大きく深呼吸をした。
.
865
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:25:57 ID:BRHqwzuo0
(;´・_ゝ・`)「もう一度言うぞ、ゼノグラシアを出せ。今すぐにだ」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、ごめんなさい、分からない……」
ゼノグラシア――という『モノ』は、一体なんだろう。
お父さんの言うことは聞きたいのに、言ってることがまるで分からない。
そういえば、私は『なんなんだ?』
今までどこで何をしたんだっけか。
(;´・_ゝ・`)「……分かった。なら『伊藤』は覚えてるか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、それなら……」
(;´・_ゝ・`)「……ならいい。あとは向こうが分かってくれるはずだ」
ξ;゚⊿゚)ξ ?
(;´・_ゝ・`)「ほんとはこんな手筈じゃなかったんだが、唐揚げ持って帰って正解だったな……」
ξ;゚⊿゚)ξ「昨日のやつ、本当に持ってったの?」
(;´・_ゝ・`)「好評だったぜ。あの女、料理の腕はピカイチだな……」
あの女、というは誰のことだろう。
朽ちた客席のイメージが脳を埋め尽くした。
.
866
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:29:35 ID:BRHqwzuo0
(;´・_ゝ・`)「……いいか、魔王城ツン」
(;´・_ゝ・`)「お前は次に行くんだ。俺達はここに残る」
ξ;゚⊿゚)ξ「……なんの話?」
(;´・_ゝ・`)「『2周目の俺達』だけじゃ守りきれなかった。
バッドエンドの世界だろうが、一応ちゃんと機能してたんだがな……」
ξ; ⊿ )ξ「――分かる、ように、」
(;´・_ゝ・`)「分からなくていい。ゼノグラシアって確かそういう感じだろ」
* * *
ゼノグラシア(英語 xenoglossia)
真性異言 - 学んでいない外国語や意味不明な言語を操る超自然的な言語知識および現象を指す、超心理学の用語。
アイドルマスター XENOGLOSSIA - 2007年に放送されたテレビアニメ。 -wikipedia
* * *
(;´・_ゝ・`)「……この世界はもう終わりだ。
あとはせめて、時間稼ぎに使わせてもらう」
(;´・_ゝ・`)「本当はゼノグラシアも残したかったが、まぁ、そこは妥協だ……」
.
867
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:30:16 ID:BRHqwzuo0
━━━*━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大小なりに事件はあるが、とにかく世界は平和である。
知らない所でなにかは起こっているけれど、私の周りはすごく平和。
私は今日も学校に行く。
市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために――
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*━━━━━━*━━━━
.
868
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:35:55 ID:BRHqwzuo0
(;´ _ゝ `)「――……クソッ」
(;´・_ゝ・`)「……時間が無い、ここで強制終了だ」
ξ; ⊿ )ξ「……だからっ……!」
ξ;゚⊿゚)ξ「――分かるように言ってってば! 私が誰だか分かってるでしょ!?
私がどれだけ強いか、私達がどれだけ強いか!
どんな敵が来たって大丈夫よ! お父さんだって覚えてるでしょ!?」
(;´・_ゝ・`)「誰も覚えていないよ」
ξ゚⊿゚)ξ
━━━━━━━━━━━**━━━━━━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━
( ^ω^)「正義の味方とか悪者の人って、すごいパワーがあるお?」
('A`)「まあ、色々あるな」
(; ^ω^)「じつはそれ、誰にでもありうる話らしいんだお」
('A`)「……ありうるって、誰でもスーパーパワーに目覚めるってことか?」
ブーンは私とドクオにだけ、ひそひそと続きを話した。
覚えていますか?
━*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━**━━━━━━━━
(;´・_ゝ・`)「……いいか、これは俺達の戦いなんだ。
お前はただ、お前が望むものを大切にすればいい。それだけが真実だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「なによ、それ……」
(;´・_ゝ・`)「……綺麗事だよ」
.
869
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:37:05 ID:BRHqwzuo0
━━━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━X━━━━━━
从 ゚∀从「引き込まれる、って感覚は恐らく正しい。
人は人にこそ恐怖するが、人外に対してはそういうことを思うんだよ」
从 ゚∀从「その感覚の正体は好奇心、怖いもの見たさ。
人間ってのは理解できないものには恐怖と同時に興味を持つ。
いや、近付かなくて正解だったぞ。お前は利口だ」
━━━━X━━━━━━━X━━━━━━━━━━━XXX━━━━━━━━━━━━━━
この世界――というとまるで別世界があるような言い方だが、
とにかく私が生きてるこの世界における、大体の歴史をおさらいする。
端的に言うと、この世界には超能力があった。
文字どおり過去形で、今はリストアップされた極少数の人しか超能力は使えない。
そして五十年くらい前に超能力を用いたすごい戦争があり、色々あった。
それ以降、超能力の発生は減ってって今はすごい少ない。そして今に至る。
覚えていますか?
━━━━━━━━━━━━━V━━━━━━━━━━━━━━v━━━━━━━━━━*
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『ここは市立ハトサブレ学園。俺の名前は鳩サブロウ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
━***━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
870
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:38:30 ID:BRHqwzuo0
━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━━W━━━━━━━━━━━━━━━━
<<業務連絡:進捗は良好です。>>
━X━━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
.
871
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:39:22 ID:BRHqwzuo0
<<パーフェクト・ワールドを作成中。パーフェクト・ワールドを作成中。。。。。。。>>
.
872
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:40:04 ID:BRHqwzuo0
――で、
>>15
の現実に戻る。
ξ゚⊿゚)ξ
全部に飽き飽きした人のためにAAも出す。
ξ゚⊿゚)ξ(……ちょっくら出掛けるかい)
迷ったが、私はトラウマ払拭を兼ねて決心した。
日本中が秋になろうとしているこの季節、私は渾身の赤マフラーを巻いて外に出た。
目的はコンビニの肉まんである。あれは値段以上に青春の味がするから不思議だ。
あんなものでしか青春を感じられない不感症で本当に親に申し訳ないと思う。
.
873
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:40:50 ID:BRHqwzuo0
さりとて私は歩き出した。
夜風が生脚をなぞり、体温をごっそり奪っていく。(ツンはスカートをはいているぞ)
しかし私は寒さに負けず勇猛に歩いた。
テクテクよりザッザッという擬音が合う歩き方をした。
顔付きは自然と険しくなっていった。
そう、この時点で私はなんとなく分かっていたのだ。
同じことをすれば、同じ場所で同じことが起きると。
……そして、現実は私の思ったとおりに、
ξ::⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(……もう一人の、私?)
――思ったとおりには、ならなかった。
.
874
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:43:09 ID:BRHqwzuo0
ξ:::⊿゚)ξ
いくつか先の街路灯の下に、私とまったく同じ見た目の誰かが立っていた。
しかし『あれ』と私は根本的に違う。そういう確信が私の胸を貫いていた。
生きている世界が違う、力の差がありすぎる、お話にならない。
視界に入れてしまった時点でおしまいだった。
もう、なにかを考えることすら無意味な気がしてしまう。
ξ;゚⊿゚)ξ(……ヤバい) ジリッ
……全身に魔力を通し、ゼノグラシアを十割の力で即時呼び出す。
私の魔力、赤いオーラが夜に迸る。
(;メ._⊿)「……なんなのだ、あれは」
程なく兎めいた実体を得たゼノグラシアが私の傍らに立ち、私と同じ動揺を見せる。
なにせ相手は自分自身。更には正体不明で自分より強そうときている。
そんな意味不明な存在、全力を出したところで対処に困るのは必然だった。
――詰んだ、詰んだ、詰んだ、詰んだ。
ただその一言だけが思考を埋め尽くす。
……だとしても、『戦わない』だけはありえない。
それだけは魔王城ツンの意思が許さなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「何がなんだか分からないから呼んだのよ。
とにかくやるわよ。あとは生きて逃げ延びて、みんなと合流……!」
(;メ._⊿)「……心得た」
ξ;゚⊿゚)ξ「戦わない。逃げる、逃げ切る……!」
私達は一歩ずつ、確実に『あれ』から遠ざかっていった。
全力ゼノグラシアの能力は『可能性の同時実行』。
万全の状態で発動したこの能力が真正面から破られる事は絶対に、無い、はずだ。
ゲームで言えば『逃げる』と『戦う』を同時選択できるようなブッ壊れ能力。
たとえ無限の選択肢があろうと、その全てを同時選択できる『全選択』の能力。
だから、私のゼノグラシアは絶対に無敵なのだ。
たとえ相手が自分だろうと、なんだろうと、絶対に大丈夫だから――
.
875
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:47:13 ID:BRHqwzuo0
「――笑わせる。まったくもって『ノン・パーフェクト』だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「――誰ッ!?」 バッ!!
どこかから声だけが聞こえた。
私の狼狽を嘲笑うような口振りに気を取られ、思わず私は『あれ』から目を離してしまった。
ξ:::⊿゚)ξ「『Xenoglossia』」
瞬間、『あれ』は私と同じ能力名を口にした。
しかしやっぱり何かが違う。
気配は僅かに似ているけれど、『あれ』には何かが混ざって――
ξ;゚⊿゚)ξ「――ゼノグラシア!!」
(;メ._⊿)「分かっている!!」 ダッ
急げ、思考を巡らせている余裕は無い。
ゼノグラシアは私の言葉を待たずに動き出しており、『あれ』が動く前に決着をつけにいった。
『可能性の同時実行』とは『無限』そのものを相手に押し付けるような行為。
私達が行動に移った時点で発生する無限の分岐――その全てを一瞬に凝縮して攻撃する規格外。
それは同時に私の逃走経路すらも試行し、『絶対に生き残るためのルート選択』を完璧な形で実行する。
この能力を破る方法なんてありはしない。
もしそんなものがあるとすれば、それは――
.
876
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:48:34 ID:BRHqwzuo0
――――カクン、と力が抜けた。
ξ゚⊿゚)ξ
私は抗う間もなく膝から崩れ落ちる。
私は咄嗟に眼下を一瞥する。
視線の先には血飛沫にまみれた地面。
しかし、なにか、おかしい。
.
877
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:49:36 ID:BRHqwzuo0
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「……ここ、は……?」
私は周囲を見渡し、言葉を失った。
今、なぜか私は立体駐車場に居た。
たぶん
>>573
辺りのイオンだと思う。
ξ;゚⊿゚)ξ「なに、何が起こって……!」
空の模様は夕方頃。
さっきまで夜だったはずだ。
住宅街に居たはずだ。
なのに、時間と場所が噛み合わない。
それはもう、私の世界そのものを取っ替えられたような――
.
878
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:51:01 ID:BRHqwzuo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……これは……」
さっき、私の膝をなにかが貫いた。
激痛はそれを自覚した直後にやってきた。
ξ; ⊿<)ξ「――い゙ッ!!」
すっかり気が抜けていた、甘かった。
本気で私を仕留めるつもりなら、敵が一人で来る訳がないのに――
ξ; ⊿゚)ξ(……完全に油断した……ッ!)
――違う、これは私の思考ではない。
少なくとも『今の私』はこんな事を考えていない。
ξ; ⊿ )ξ
なにかされている。私は『あれ』の攻撃を受けている。
さっきまでギコと戦っていた気がするけど絶対に違う。
そこまでは分かる。なのに、なのに――
ξ; ⊿ )ξ(この『攻撃』がなんなのか、少しも理解できない……!)
理解を遠ざけられている。
私を置いて世界が展開する。
白紙が広がり続けている。
(´・_ゝ・`)「お前が思ってる以上にこの世はオープンワールドなのよ」
誰だ今の。
.
879
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:51:44 ID:BRHqwzuo0
ξ; ⊿゚)ξ「……」
(メ._⊿)「……大丈夫か?」
咄嗟にゼノグラシア・ウサたんモードを召喚し、私はぺたんと座り込んで体勢を維持した。
もはや傷を見返す必要もない。私は三月兎の背後に隠れ、彼に命令を下した。
ξ;゚⊿゚)ξ「……私達は今、どこで何と戦ってる?」
(メ._⊿)「……王座の九人、ギコとの戦いを終えた。
そして今は闇討ちを仕掛けられ、キミは足を撃ち抜かれた」
この一瞬、どの判断が遅れても私は確実に命を落としていた。
最悪の敵――そうだ、これが敵なのだ。
これに比べればギコとの戦いはまさに王道だった。
ξ;゚⊿゚)ξ(……いや、そんな奴だから囮にされたのね……)
ξ; ⊿゚)ξ
――という、私ではない私の思考が脳を埋める。
気持ち悪い感覚だった。乖離している、私自身のなにかが乖離している。
私は今、私自身がどこで何をしているのか理解できなかった。
これはどこのシーンで、どこの描写で、どこのルートの物語なのか?
私は思い出せなかった。それこそが物語の終末だった。
.
880
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:52:33 ID:BRHqwzuo0
「確か、こんな名前だったな」
またしても、声が聞こえた。余裕をブッこいている男の声。
間違いなくこの声が敵だ。
ξ;゚⊿゚)ξ「……来る」
今度は声だけではない、足音も聞こえてくる。
私はその足音の方を見て、そして――
( ^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、……?」
――そこに、内藤ホライゾンの姿を見つけてしまった。
.
881
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:54:45 ID:BRHqwzuo0
( ^ω^)「シン、ゼノグラシア、ガルシオンレクイエム」
( ^ω^)「いつかのバッドエンドに偶発した力。
そして、お前がいつか至る筈だった極致の断片」
( ^ω^)「攻略には随分と手こずったが……」
敵は、内藤ホライゾンの顔をひどく歪めて笑顔を作った。
( ^ω^)「……『補完』すればこのとおり、『パーフェクト』だ」
ξ;゚⊿゚)ξ(……違う。ブーンと同じ見た目だけど、あれは絶対に中身が違う……!)
もう頭がグチャグチャになりそうだった。
ブーンみたいなヤツの隣には私と同じ姿の『あれ』も居る。
シンゼノグラシア、ガル…ガルなんとか。
とにかく私のゼノなんとかの色違いっぽいのも後ろに控えている。
ξ; ⊿゚)ξ「……ぁ……」
胸が締めつけられる感覚、自分の詰みを読み切ってしまった感覚。
手遅れ、手遅れ、手遅れ……『これ』とは戦いようがない。
絶望的な言葉が私を埋め尽くしていく。また、なにかされたようだ。
.
882
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:55:44 ID:BRHqwzuo0
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ; ⊿゚)ξ
ξ: ⊿ )ξ「…………」
.
883
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:58:59 ID:BRHqwzuo0
ξ; ⊿ )ξ「……もう、いい」
(;メ._⊿)「なッ――」
……私は、魔力を絶ってゼノグラシアを消した。
私にはもう『可能性』が無い。戦ったとして勝てるわけがない。
永遠に放置された物語のように、私にはもう、前進する為の力が湧いてこなかった。
もう続けることができない。
ただそれだけの絶対的な、そして無責任な感覚が、私をちょっと楽にする。
( ^ω^)「……これも、真実には到達していないか」
( ^ω^)「あとはパーフェクトにやっておけ、パーフェクト・魔王城ツン」
ξ:::⊿゚)ξ
音も、衝撃も、なにもなく。
私はただ無に還るように、次の瞬間、すべてを失っていた。
【IntervEnd:out】
.
884
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 23:02:41 ID:BRHqwzuo0
× × × ◯ - - - -
.
885
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 23:03:21 ID:BRHqwzuo0
【リザルト:?周目】
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886
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 23:04:32 ID:BRHqwzuo0
<<業務連絡:完璧な世界が創造されています。>>
.
887
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 23:10:34 ID:BRHqwzuo0
以上です
続きはファイナル板でやります
1周目
>>2-26
>>39-61
>>74-87
>>101-135
>>176-213
>>223-229
>>280-295
>>368-374
2周目
>>389-414
>>519-553
>>559-592
>>622-648
>>651-654
>>669-681
>>718
3周目
>>728-733
>>742-761
>>768-803
>>819-856
>>857-886
(今回)
関連スレ:ξ゚⊿゚)ξパーフェクトAAが生まれるようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/21864/1503381514/l50
888
:
名も無きAAのようです
:2020/10/05(月) 20:51:40 ID:KlwUPZUs0
乙
889
:
名も無きAAのようです
:2020/10/06(火) 00:29:44 ID:rbW//64Y0
今゛気゛付゛い゛た゛乙゛
890
:
名も無きAAのようです
:2020/10/06(火) 09:25:42 ID:9DkRP7vI0
来てたあああああああ
891
:
名も無きAAのようです
:2020/10/06(火) 22:11:46 ID:1XatfL1k0
なんかもうよくわからんけどがんば
892
:
名も無きAAのようです
:2020/10/14(水) 20:16:20 ID:x8gwT5/c0
次スレ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1602664126/
893
:
名も無きAAのようです
:2020/10/28(水) 11:37:31 ID:lZxRXz/.0
き、きてただと...
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