したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです

1名も無きAAのようです:2015/10/10(土) 05:03:05 ID:cQB6.m2k0
      ,、,,..._
     ノ ・ ヽ
    / :::::   i
   / :::::   ゙、
   ,i ::::::     `ー-、
   | ::::          i
   ! :::::..        ノ
   `ー――――― '"

176名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:31:48 ID:cBmGMB5A0


 夕飯が済むと、ブーンは顔をしかめたまま私の家を後にした。
 残された私はすみやかにベッドに向かう。が、その途中でお母さんに呼び止められた。

( ФωФ)「ツン、少し話がある」

ξ;゚⊿゚)ξ「お、お母さん……髪の毛が……!」

(; ФωФ)「……それも含めてだ。ちょっとこっちに来い」

 お母さんは一瞬の間に巨大なパーマヘッドを刈り尽くしていた。
 今のお母さんは、そう、まるで壮年男性のようだった。

ξ゚⊿゚)ξ(まあ男な訳ないんだけどネ)


ξ゚⊿゚)ξ(……あれ? でも声とか体格とかも、女には見えな――)

 瞬間、砂を擦るようなノイズが私の思考を掠め取る。
 私には、それを自覚する術がなかった。


ξ゚⊿゚)ξ(――まあ、そんな事ありえないんだけどね)

 私はお母さんに歩み寄り、ひとつ大きなあくびをしてみせた。

.

177名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:32:28 ID:cBmGMB5A0


ξ´⊿`)ξ「それで話ってなーに? 早寝しときたいんだけど」

( ФωФ)「熱をはかる。おでこを出してくれ」

 そう言って差し出されたお母さんの手に、私はそっと額を差し出した。
 最近生活が荒れているから心配されたのだろう。
 ここで反抗期を見せるほど、私は幼稚ではないのだ。

ξ-⊿-)ξ「熱なんてないよ。ただ眠いだけ――……」

( ФωФ)「悪いな。すぐに済む」

ξ-⊿-)ξ「……お母さんの手、冷たくて気持ちいいね」

 季節は冬。
 本当なら跳ね除けたいはずの母の冷たい手は、なぜか拒むことができなかった。
 それに、なんだか眠気がどんどん増していく。安心感とは違う、不自然な睡魔が……。


ξ-⊿-)ξ「あー……寝ちゃう……」

( ФωФ)「布団に運んでおいてやるから、今は眠りなさい」

ξ-⊿-)ξ「……やったー……」

 私は脱力感に負けてお母さんの懐に倒れこみ、そして、意識を失った。


.

178名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:33:08 ID:cBmGMB5A0

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ロマネスクの自問には選択肢が二つあった。
 ツンに魔王としての自身を見せるか、それともまだ秘密にしておくか。

 彼はそれぞれの答えから進展しうる状況を想定し、その両方を吟味した。
 結果、そこには新たな疑問が生じることとなる。

(; ФωФ)(いや、なんでバレてないんだ……?)

 その疑問とは至極シンプルなものだった。

 よく考えれば彼はヅラと服装以外に大した変装もしていない。
 しかもブーンやドクオに目の前で魔王呼ばわりされているのに、なぜか未だに気付かれていない。
 ツンのバカは彼譲りだが、そこに違和感を覚えないほどロマネスクはバカではなかった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

.

179名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:33:56 ID:cBmGMB5A0


 一通りの確認を済ませた後、ロマネスクはツンを部屋に運んでベッドに寝かせた。
 しばし、彼女の寝顔を見つめる。
 

( ФωФ)(……現実を誤謬させる精神操作。
        恐らくはハインの仕込んだ毒であろうが、これが諸々の原因か)

( ФωФ)(効力があるという事は奴はまだ生きている。
        だが姿を見せず、あの女を置いてどこかに消えた……)

 ロマネスクは窓を覗き、夜空を一望した。

( ФωФ)(……どこかから監視しているはずだ。
        今はまだ、気付いていない振りで通すべきか)

( ФωФ)(しかし、もう手を拱いている場合ではない。
        心苦しいが、無理矢理にでも魔王化を覚えてもらわねば……)

 彼はツンの額に人差し指を当て、そこから少量の魔力を送り込んだ。
 これが切欠になり、ツンが魔力という概念を体感してくれれば御の字だ。
 あとはドクオとブーンがこの子を強くするであろう――と、ロマネスクはピタリと動きを止めた。

( ФωФ)(……ハインの立ち位置が分からぬ以上、ブーンが敵ではない保証はない。
        ドクオに監視をさせ、……いや、別の者を呼ぶべきか)

 思案しながら、彼は最後にツンの頬をツンツンしてから部屋を出た。
 上の一文はただの思いつきギャグだった。

.

180名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:34:37 ID:cBmGMB5A0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      ,、,,..._
     ノ ・ ヽ  ガンダムは、「ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。
    / :::::   i  有人操縦式の人型ロボット兵器「モビルスーツ」の一つ。
   / :::::   ゙、  現在、鉄血のオルフェンズが放送中である。(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

181名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:36:10 ID:cBmGMB5A0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 パキン、と音が鳴ったのが分かった。
 私はその音で目を覚ます。時計を見ると、時刻は午前三時を回っていた。

 またか、と溜め息をこぼす。
 中学生の私にトラウマを与え、私を非日常に連れ込んだ最大の切欠。
 体内時計が壊れて夜中にスッキリと目覚めてしまうこの現象は、これで三回目になる。


ξ゚⊿゚)ξ「スリープ解除。コード、【ツンデレ・ヴァルキュリア】」

 私は機体のメインシステムを起動させ、暖房をつけた。
 機体の中とはいえ冬場の格納庫はかなり冷え込んでいた。

ハハ ロ -ロ)ハ『グッモーニン。お目覚めですか』

 その声と同時に、全面360度に展開されているモニターに擬似人格のモデルデータが表示された。
 彼女の名前はハローといい、パイロットのサポートプログラムを兼ねた私の友人だ。


ξ゚⊿゚)ξ「おはよう。三分したら肉まんを買いに行くわよ」

ハハ ロ -ロ)ハ『よろしいので? この状況には心的外傷を負っているはずですが』

ξ゚⊿゚)ξ「機体性能に自信がないの? 何かあれば守ってちょうだい」

ハハ ロ -ロ)ハ『オフコース。最寄コンビニへの最短経路算出、および武装のアンロックを実行します』

.

182名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:38:03 ID:cBmGMB5A0


 今でも鮮明に思い出せる。


 同じように夜中に目が覚めてしまい、暇に耐えかねた私は自作MSで宇宙空間に出た。
 宇宙コンビニまで行って帰ろうと思い、十分足らずの道をブースターで前進する。
 その帰り道だった。私は道中のコロニーの真下に、異常な光景を見てしまったのだ。

 コロニーの真下には既に息絶えたMSと、それに深々とビームサーベルを突き刺す別のMSの姿があった。

 私は絶叫を飲み込んで息を殺した。しかし敵MS気付かれてしまい、そいつのモノアイがこちらを向いた。
 音の無い真っ暗闇の中、コロニーの誘導灯に照らされた私達は、まるで舞台に立つ二人の演者のようだった。

 私は目を合わせたまま後ずさった。巻き込まれてしまう、と思ったのだ。
 殺されるという恐怖は一切無く、ただ、このMSと長く一緒に居たら駄目だと直感した。

 通信も交わしてはいけない。目を合わせる事すら駄目だと思い、目を伏せる。
 無関係で居なければ日常が壊されてしまう。その感覚に体を任せ、私は一目散に逃げ出した。
 決して追われはしなかったが、私はとにかく全速力で逃げたのだ。


 ……そういう経験が、こんな夜にあった。


.

183名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:38:43 ID:cBmGMB5A0


ハハ ロ -ロ)ハ『――コンプリート。外敵ありません』

ξ゚⊿゚)ξ「オーライ、って所かしらね。……出るわよ!」


 さりとて私は出撃した。
 射出ユニットが機体脚部で火花を散らし、私は宇宙に飛び出した。
 私はトラウマへの恐怖に負けず、勇猛にブースターを点火する。

 顔付きは自然と険しくなっていった。
 そう、この時点で私はなんとなく分かっていたのだ。
 同じことをすれば、同じ場所で同じことが起きると。


ξ;゚⊿゚)ξ「――ッ! この感じ、奴か!?」

ハハ ロ -ロ)ハ『ツンデレ・ヴァルキュリアの索敵に敵影無し。
       ですがサイド4の監視衛星が高速のMSを補足しています』

 ……現実は、私の思ったとおりになった。


.

184名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:39:36 ID:cBmGMB5A0


ξ;゚⊿゚)ξ「こっちに来てるの?」

ハハ ロ -ロ)ハ『イグザクトリィ。目標は単機でございます』

ξ;゚⊿゚)ξ「機体記録に一致するものがあれば出して!
      あの時と同じ機体ならデータがあるはずよ!」

ハハ ロ -ロ)ハ『サーチ済みです。結果は、イエス』


ξ゚⊿゚)ξ「――なら早い! ファンネル展開、戦闘準備!」

 私はレバーやらなんやらをガチャガチャしてすごい速度で敵に向かった。
 あの日、あの時の屈辱を晴らすなら今しかない。
 ツンデレ・ヴァルキュリアの機体性能は前に比べて遥かにパワーアップしている。ゆえに――

ξ#゚⊿゚)ξ「今なら落とせる! やって……みせるッッ!!」


 その時、暗黒の宇宙空間に、一筋の光が流れた。(CV:銀河万丈)


.

185名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:40:44 ID:cBmGMB5A0




ξ#゚⊿゚)ξ(――見つけた!)

 宇宙コンビニから程近い場所で、私は昔懐かしいMSを索敵に捉えた。

 目前のデブリ郡を全速力で突き抜けてくる赤い機影。
 その手に凶器は無かったが、かわりに、機体の周囲には無数のファンネルがあった。
 敵のファンネルは的確にデブリの一つ一つを打ち落とし、機体が通る道筋を作っていく。
 それを高速移動中に行うパイロットの技量など想像しきれたものではない。


ζ(゚ー゚*ζ「---- ・・- ・---・ ・-・-・  ・-・・ --・・- ・--- ・・-・・ ・・- 」

 記号いっぱいのモールス信号。それはこの場からの逃亡を許された唯一の時間。
 前回の私はここで目を伏せて逃げ出した。しかし、今回はそれをしない。

ξ#゚⊿゚)ξ「ハロー、ファンネル任せた!」

 私はコンパネを弾いてビームライフルを外に射出し、それを機体に握らせた。
 今の私に動揺が無いのは、私自身がパイロットとして大きく成長したからだ。
 ニュータイプにも負けやしない。このツンデレ・ヴァルキュリアなら――!

.

186名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:41:34 ID:cBmGMB5A0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ξ-⊿-)ξ「……」


ξ;゚⊿゚)ξ「……はっ!」




ξ;゚⊿゚)ξ


ξ;゚⊿゚)ξ「なんだ夢か」


 翌朝目覚めると、ツンちゃんは勘が鋭くなっていた。

.

187名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 06:42:55 ID:cBmGMB5A0

   ̄ヽ、   _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     `'ー '´
      ○
       O 
.       ,. -─‐- 、   と思うYF-19であった
      /。 。    r\
    / ,.-─- 、   ヽ、.ヽ
     !/     ヽ、._, ニ|  来週もツンちゃんと地獄に付き合ってもらう
.    {              ,'
     ヽ          /,ソ  
.     ヽ、.____r',/

188名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 07:34:28 ID:44XXNrE20
ボトムズじゃねーか!!乙!

189名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 07:38:07 ID:3HlB5CAs0

覚醒したな

190名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 11:35:21 ID:R8tdI3MY0


191名も無きAAのようです:2015/11/03(火) 11:58:39 ID:TEA1mlbo0
おつ

192名も無きAAのようです:2015/11/05(木) 22:31:30 ID:NlPeMpPY0
おつ!

193名も無きAAのようです:2015/11/09(月) 13:30:02 ID:Zp39a2Fc0
なんだこの雰囲気wワロタ

194名も無きAAのようです:2015/11/09(月) 18:44:10 ID:DJ0xi.gUO
悔しい……でも笑っちゃう…/// ビクンビクン

195名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:39:51 ID:.5.1P20c0


 九つの席が用意された円卓。
 そこに集まったのは七人。空席は二つ。

 暗闇の中、唯一照らされたその場所で、『王座の九人』は沈黙を保っていた。


( ・∀・)「……大失態と言えるな」

 円卓に肘を突き、さも不機嫌そうな顔で沈黙を破った男。
 モララーはその一言を、己を含めた全員に向けていた。

( ・∀・)「八人が出向いて成果無し。
      ならばまだしも、こちらに死人が出ては弁明の余地がない」

 彼は空席の一つに視線を送り、今は亡き戦友に思いを馳せた。
 ツン強奪の晩、その席に座っていた【アルティメット歯車王Genesis】は死んだ。
 ミサイルが5発も出せるすごい奴だったが、彼はハインリッヒとの戦闘でその命を散らした。



     β ←ここからミサイルが出る
  ┌─┴┐
∪ |::━◎┥∪  ウィーン ガッシャン
 V|    |V
  |:日 日:|  ウィーン ガガガガ
  └┬┬┘
   亠亠
.

196名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:40:53 ID:.5.1P20c0


( ・∀・)「正直なぜアイツが円卓に居たのか分からないが、
      正義といえばロボットだ。それを失ったのは大きい」


(,,゚Д゚)「フン。この中で一番弱いのが消えただけだろう。
     気にするまでもない。居ても居なくても変わらん」

J( 'ー`)し「その道理なら、次に消えるのはギコちゃんになるわねえ」

(,,゚Д゚)「……順でいけばそうだ」

 ギコと呼ばれた男はババアの言い分に言い返すことなく、静かにそれを認めた。


(,,゚Д゚)「だがな、次の相手は魔神ロマネスクだろうが。
     誰が死んだっておかしくねえ。率直に聞くぞ、アレに勝てると思う奴は居るか?」

 ギコの問いに挙手で応えたのは、八人中三人。

( ´_ゝ`)「うん勝てる勝てる」

(´<_` )「まぁいけるよな」

(,,゚Д゚)「コイツらバカだからノーカンだ。やっぱまだ分が悪いぜ、大将」



爪'ー`)「……想定内だ。問題ない」

 王座の九人大将――挙手した最後の一人・フォックスはそっと手を下ろしながら言った。

.

197名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:42:07 ID:.5.1P20c0


爪'ー`)「諸君、もはや我々に計画と呼べるものはない。
     所詮は敗残兵の集まりだ。しかし、魔王軍は大いに衰弱してくれた」

 フォックスは円卓を一望する。

爪'ー`)「それでも強敵は多い。魔神ロマネスクとその子孫、魔王城ツン。
     魔王軍総指揮・魔眼のワカッテマス、さらには魔界四天王と数万の魔物達……」

爪'ー`)「これを我々だけで打倒し、魔界を統治することは不可能だ。
     だが今の我々には 『勇者』 がある。そして敵の核たる魔王は不在……」


爪'ー`)「……次だ。次の戦争で決着だ。用意は万全、死角無し。
     正義の時代はもうすぐだ。不安など微塵もありはしない」

( ・∀・)「――とは言うがな、大将様」

 誇らしげに言い切ったところで、モララーがフォックスの言葉に水を差す。

( ・∀・)「勇者の復活にはまだ時間が掛かると聞いているが?
      いまさら急ぐ理由もないだろう」


(-@∀@)「グゲェーゲッゲッゲ! オゲェー!」

 その時、露骨にマッド・サイエンティスト感を描写する笑い声が円卓に響いた。


.

198名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:43:13 ID:.5.1P20c0


( ・∀・)「……なにがおかしい? アサピー所長」

 彼の笑いが癇に障ったのか、モララーは殺気立って彼に尋ねる。

(-@∀@)「ゲロゲロゲー!! 勇者復活だとォ!?
      そんなもの、勇者軍の技術力が既に成し遂げているッッ!!」

(; ´_ゝ`)「なん……ッ」

(´<_`; )「だと……!?」


(-@∀@)「お前達のおかげだ! あの男、ハインリッヒのボディは及第点だった!
      死体でなければ完璧だったが、いや勇者との適合率は想像以上だったぞ!」

爪'ー`)「この際だ、君達には早めに紹介しておこうか」

 フォックスがそう言い、指をパチンと鳴らす。
 すると、暗闇の中から音もなく人影が滲み出てきた。

爪'ー`)「諸君、新たな『勇者』を歓迎しよう」



从 ∀从「……」



    αβ ←ここからいっぱいミサイルが出る
  ┌─.┻┐
∪ | ::━◎┥∪  ウィーン ガッシャン
 V|     |V
  |日田日|  ウィーン ガガガガ
  └┬,┬┘
   .┻.┻ ←冬なのでブーツ仕様



爪'ー`)「帰ってきた裏切り者・ハインリッヒ高岡と、復活の歯車王をね……」

(,,゚Д゚)「……お? おお……」

 なぜか帰ってきた歯車王に気をとられ、王座の九人の面々は半端なリアクションをせざるをえなかった。

.

199名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:44:15 ID:.5.1P20c0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




ξ;゚⊿゚)ξ「……おはよう……」

( ФωФ)「む、おはよう」

 私ともあろうものが、規則正しい起床をしてリビングで挨拶をしている。
 そして今、それ以上におかしい事が私の体に起こっていた。



          ,イ
        / |   ゴゴゴゴゴ・・・
,     ,r‐、λノ  ゙i、_,、ノゝ 
   ゙l            ゙、_  「……どうかしたか?」
 <.j´ . .ハ_, ,_ハ   (.
   {   (ФωФ)   /─  
   ).  c/   ,つ   ,l~
  ´y  { ,、 {    <
   ゝ   lノ ヽ,)   ,


ξ;゚⊿゚)ξ「……お母さん、え、お母さんだよね?
       そんなオーラ纏ってたっけ?」

Σ(; ФωФ)「え、見えてる!? 抑えてたのに!」


ξ;゚⊿゚)ξ「……あれ? ていうか男……お母さんはフタナリだった……?」

(; ФωФ)「普通に男である! ブーン達に聞いたであろう、魔王城家は魔族の名門だ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ウソだ!! いやでもよく考えたらそうか……」

(; ФωФ)「納得が早い」

 私はなぜか勘が鋭くなり、身の回りにあった違和感をことごとく看破していった。
 お母さんは実はお父さんだったという衝撃的な事実を受け止めながら、私は淡々と登校の準備を進めた。


.

200名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:44:56 ID:.5.1P20c0


( ^ω^)「ツン! おはようだお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「……ああ、うん」

 家を出ると同時にブーンの大声が鼓膜を叩いた。
 しかし、気配? らしきものでブーンが居るのは分かっていたので、そこまで驚きもしなかった。


ξ;゚⊿゚)ξ(ホゲェーどうしたんだ私は……)


( ^ω^)「なんか魔力がすごい増えてるお!
      なんかすごいお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「そうなの? 自覚ないんだけど……」

( ^ω^)「学校着いたら素直四天王に喧嘩売るといいお!
      腕試しにはちょうどいい相手だお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「そこまで酷いことしないわよ。ほら、さっさと学校行きましょ」

( ^ω^)



( ^ω^)「……あ、あのツンが普通の事を言ってるお……」

( ^ω^)「あのツンが……バカなツンが……」


ξ;゚⊿゚)ξ「元々そんなバカじゃないってば」

 でも、自分の中にあった楔のようなものが取れた感覚はある。
 それがブーンの言うようなバカ要素だったなら、私はもうバカじゃないのだろう。


.

201名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:45:57 ID:.5.1P20c0


 歩き出した私達は大した話もせず、昨日見たアニメや何やらの話で暇を潰していた。
 ここに魔王や勇者の話は出てこない。多分これが、私に残された最後の日常なのだ。


ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオって本当に私を見張ってたのね」

 気配が分かるようになって、ドクオの言っていた事が本当なのだと分かった。
 ドクオは今、私達を遥か上空から見下ろしている。
 そこは人の視力では確認できない高度だったが、今の私は見上げて目を凝らすだけでドクオの姿を見つけられた。


ξ゚⊿゚)ξ「……ドラゴンよね、あれ」

( ^ω^)「そうだお。素直クールと戦った時に見てるお?」

 そう、ドクオは魔物化すると肉体が龍に変化していく。
 先日全カットされた戦闘中でも、ドクオは体を龍化して素直クールを撃退していたのだ。


( ^ω^)「魔物の中でも龍族は特に珍しいんだお。
      純血の邪龍化が出来るのは、もうドクオくらいだお」

ξ゚⊿゚)ξ「カッコイイ……あのままなら好きになれるのに……」

( ^ω^)「……ついでだから、僕が魔族の変身能力について補足しておくお」

ξ゚⊿゚)ξ「魔物化とかの奴でしょ? で、魔王化が最上位」

( ^ω^)「そうだけど、もうちょいあるんだお」

.

202名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:46:52 ID:.5.1P20c0


( ^ω^)「まあ単純な話だお。
      魔族の中には特異種が居て、魔物化でも凄いパワーがあったりするんだお」

( ^ω^)「最下位の魔人化でも、まぁ魔獣化くらいには匹敵するパワーがあったりNE!」


( ^ω^)「詳しくは下記図Aを参照せよ」

ξ゚⊿゚)ξ「急に教科書」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
図A:変身能力の種別、および戦闘力比較

 魔人化≪魔物化<魔獣化≪≪≪≪≪≪原点返り≪≪≪魔王化≪魔神化≪≪
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


( ^ω^)「この中の原点返りがさっきの特異種のことだお。
      いわゆる先祖返りって奴で、すごい強いんだお!」

( ^ω^)「ドクオも元々は混血の邪龍で、魔物化が精一杯なんだお。
       でも生まれついて原点返りができるから、すごいんだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「すごい」


( ^ω^)「あとは変身能力自体が進化の過程で消滅した例もあるお。
      魔眼のワカッテマスさんがその最たる例だお」

ξ;゚⊿゚)ξ「……ちょっと、私に必要な情報だけちょうだい」

( ^ω^)「ツンは魔王化が出来るはずだお。頑張るお」

ξ゚⊿゚)ξ「よく分かった」

.

203名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:47:54 ID:.5.1P20c0

ξ゚⊿゚)ξ「……ところで、魔王化ってどうやるの?」

( ^ω^)


( ^ω^)「あの、あのバカなツンが話を進めようと……」

( ^ω^)「あのバカなツンが、あわわわ……」


ξ;゚⊿゚)ξ「あんたらの話はもう信じたわよ。
       だからさっさと適応しようとしてるだけ。なんか変?」

( ^ω^)「……」




( ^ω^)(変っていうか、都合が悪いお)

( ^ω^)(お爺ちゃんが死んだか、ロマさんがなんかしたか、
      とにかくツンもメス豚も刀の暗示がすごい弱まってるお)


( ^ω^)(……これじゃあもう、お爺ちゃん一人勝ちのルートはなさそうだお)


.

204名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:49:41 ID:.5.1P20c0


( ^ω^)「……ツンが真面目になってくれて嬉しいお!
      魔王化のことは後でドクオとおじさんに聞くのがいいNE!」

ξ゚⊿゚)ξ「んー……まあそうよね、ブーンは勇者側の人だった訳だし。
      えっと、そっちは何だったっけ……激化?」

( ^ω^)「すごい! よく覚えてたお!」

( ^ω^)「でもこのルートのツンには殆ど無関係だから気にしなくていいお!」

ξ゚⊿゚)ξ「えー気になる」

( ^ω^)「うーん。要はクスリでハイになってマジギレって感じだお。
      激化は副作用のある薬物投与が必須で、けっこう危ないんだお」


ξ゚⊿゚)ξ「……なら、」

 とまで言いかけて、私は言葉を切った。
 激化がそれほど危険なものなら、今のブーンやハインさんは大丈夫なのだろうか。

ξ゚⊿゚)ξ「……そだ。こないだのハインさんの用事ってなんだったの?」

( ^ω^)

 話をそらし、私はハインさんの事を尋ねた。
 あの人は急に居なくなる事もよくあるので、そこまで深刻な聞き方はしなかった。


( ^ω^)「お爺ちゃんなら今はポルトガルに居るお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「またぁー!? ていうかこんな時に!?」

 そこから先は、また当たり障りのない会話が始まった。
 頭上で旋回するドクオの姿をたまに一瞥しつつ、私達は通学路をテクテク歩いていった。


.

205名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:50:21 ID:.5.1P20c0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      ,、,,..._
     ノ ・ ヽ  紅いもタルトは、おいしいタルトである。
    / :::::   i  年間販売数が1000万個を超え、沖縄土産としても定着している。
   / :::::   ゙、  単純に食べたい(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

206名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:51:11 ID:.5.1P20c0


【interlude:5】



 深夜、冷えきった空気に満ちた森の中。

 市街を離れたその場所に呼び出された素直四天王は、方々に気を配りつつ短い言葉を交わしていた。


ノパ⊿゚)「なんの用だろうな」

川 ゚ -゚)「分からない。が、二度の失敗を咎められるのは確かだろう」

lw´‐ _‐ノv「済まぬ――――」

川 ゚ -゚)「シュールのせいじゃないさ。私の考えが甘かった」



o川*゚-゚)o「……」

 しかし、一人沈黙を貫く素直キュート。
 彼女の双眸は森の奥に向けられたまま微動だにしない。
 四人の中で唯一、彼女だけが森の違和感に気付いていた。

.

207名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:52:31 ID:.5.1P20c0


 ――ガサ、と茂みがざわめいた。

 とたん、四人の視線が一点に集中する。
 間を置いて、暗闇の中から一人の男が歩み出てきた。

( ´∀`)「……お揃いのようで助かったモナ」

川 ゚ -゚)「モナーさん、二度の失敗を謝罪します」

 モナーが現れた後、すぐに素直クールが前に出て口を開いた。


川 ゚ -゚)「次の襲撃には四人全員で掛かります。
     信用ならないとあれば、作戦の仔細をお伝えしますが……」

( ´∀`)「いや、別にいいいモナ。今日は別件というか、戦力補強とというか」

川 ゚ -゚)「補強、ですか」

 それはつまり、自分達の実力に不安があるという事。
 素直四天王はモナーの一言に軽蔑を感じ取り、彼に対して僅かに敵意を見せた。


( ´∀`)「ああ、あ」

( ´∀`)「あの人が。君達より強い、あの人をね」


 だが、モナーの口振りに異様さを覚えたところで彼女達は思いとどまった。
 彼に向けていた敵意をふっと忘れ、再度周囲を警戒する。

 冷たく静かな森が、彼女達を取り囲んでいた。

.

208名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:53:24 ID:.5.1P20c0


( ´∀`)「あぎ、逃げいや、なんでもないんだ」

( ´∀`)「洗脳をかけられ、ダメだ本調子じゃない」

( ´∀`)「刀までは復元、ハインリヒに気をつけろ、エサにする、されるぞ」

 ゆるやかな風が森をすりぬけ、彼女達の足元を舐めるように這いずっていく。
 これに似た感覚は魔法使いと対峙した時にも感じたが、彼女達はそれとも違う不快感を確かに味わっていた。


ノハ;゚⊿゚)「……姉ちゃん、どうすればいい」

川 ゚ -゚)「……私が前に出て対処する。
     シュールとキュートで突破口の確保、ヒートは必殺の準備に」

 瞬間、素直クールの体を淡い光が覆い包んだ。
 それが収まると、彼女は白い鎧を身に纏い、片手に白銀の剣を構えていた。


( ´∀`)「……だ、だる、ま」


川;゚ -゚)「――ッ!?」

.

209名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:54:47 ID:.5.1P20c0


 モナーという男は元々正義の側の人間だった。
 しかし正しさを歪曲させた今の勇者軍を見切った後は、平凡に生きていくことを目標に頑張ってきた。

 彼はハインとは顔見知りだったので、時折話をしては魔王の跡継ぎであるツンの動向を見守っていた。
 ツンに素直四天王を差し向けた理由も、彼女を魔王として覚醒させるための一策に過ぎなかった。

 その筈が、歯車は大きく狂っていた。
 今のモナーは最早 『勇者』 の手駒に変わり果てていた。


 薬物投与による超能力の発動――『激化』。
 モナーの激化能力はシンプルだったが、それ故に今は、今だけは発動させる訳にはいかなかった。
 それを知っていた素直クールは誰より先に飛び出し、四天王最速の名を持ってモナーを斬り殺しに掛かった。


( ´∀`)「さん、が――」

川;゚ -゚)(迷わず首を落とす――ッ!!)

 一瞬でモナーとの距離を詰め、風を切って振り下ろされる銀の刀身。
 刹那と経たずにモナーの首を切り落とすその斬撃は――


ζ( ー *ζ「――――」

 ただの十徳ナイフを持った女に、阻まれた。

.

210名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:55:59 ID:.5.1P20c0


( ´∀`)「ころ……ころん…………」

川;゚ -゚)「くっ! みんな逃げて距離を――」

lw´;‐ _‐ノv「ねえさんはそいつ止めてて!」

 背後を一瞥して叫びかけた時、クールの傍らをシュールが駆け抜けていった。
 その行動は十徳ナイフの女も意外だったのか、彼女は一瞬の間にモナーの首に手をかける。

lw´;‐ _‐ノv(人形出してる場合じゃない、ワイヤーで直接切らなきゃ――!)

 両手の人差し指に引っ掛けた極細のワイヤー。
 それを神業染みた速度でモナーの首に括りつけ、シュールは一気に両手を引き抜いた。

 途端、モナーの頭部と肉体がずれた。
 行き場を失った血液が切断面から溢れ出し、その場に大量の血が飛散する。



川;゚ -゚)「間に合っ――」






( ´∀`)「だ」



 否、あとほんの少し間に合わなかった。
 体を離れて真っ逆さまに落ちていく頭は、確かに最後の一文字を発していた。

 それと同時。
 『だるまさんがころんだ』と言い切るのに掛かった時間、おそよ4秒間――


.

211名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:56:39 ID:.5.1P20c0



 ――――時間が、停止した。


.

212名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:57:26 ID:.5.1P20c0


川;゚ -゚)「――――」

lw´;‐ _‐ノv「――――」


ζ( ー *ζ「……」

 止まった時の中で十徳ナイフの女が動き出す。
 たった二秒の自由時間。しかし、身近な二人を刻み殺すには十分過ぎた。

 次の瞬間、闇夜に無数の銀閃が走った。



 停止解除二秒前、

ノハ;゚⊿゚)「――――」



 一秒前、

o川;*゚ー゚)o「――――」


 そして、時が動き出す。


.

213名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 00:58:16 ID:.5.1P20c0




 ふと、とても弱い風がクールとシュールの体をなぞった。
 しかし無数に切断された人型の肉塊は、たったそれだけの事で容易く形を失った。

 ぐら、と揺れた瞬間、二人の体は、細切れになって地面に散らばった。


ノハ;゚⊿゚)「……え?」

o川;* ー )o「ヒート、逃げるよ!」ガシッ!

 ヒートより早く状況を飲み込んだキュート。
 彼女はヒートを抱きかかえて一目散に走り出し、鬱蒼とした森の中に飛び込んだ。


ノハ;゚⊿゚)「キュ、キュート? 今なにが起きた?
      殺ったんだよな? 姉ちゃん達はモナーを……」

o川;* ー )o「……間に合わなかった……ッ!」

ノハ;゚⊿゚)「……二人は……」

o川;* ー )o「……後で泣こう、思いっきり……!」

ノハ;゚⊿゚)「…………」

 唖然としたまま、ヒートはただ事実だけを脳内で反芻する。
 刻まれた姉妹の最期を鮮明に思い出す。湧き上がるのは怒りと殺意。

 今すぐ戻ってあの女を殺したい。
 ヒートもキュートも思いは同じだが、それをすれば自分達も殺されかねない。

 得体の知れない敵に目をつけられた以上、今は逃げる以外の選択肢はないのだ。
 たとえ血を分けた姉妹が無残に殺られたとしても、今は感情を殺して生き残る事だけを考えなければならない。

 その日、素直四天王はVIPの街から姿を消した。

【interlude:out】

.


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板