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イベント優先スレ
694
:
名無しさん
:2011/11/17(木) 08:03:00 ID:HbHPxpxY
追加
(今回の目的の為だ、巴津火。)
姉妹へと手を出そうとした巴津火へ、大剣を投げた。
もっと方法はあったんじゃないか、と後悔しながら。
695
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 18:08:10 ID:EK/9fLvc
>>692
巴津火が慟哭して、あれだけ自身を侮辱された。
両親までも雨子神に口汚く罵られて、それでもまだ神代には、
彼女たちに襲いかかるような素振りは見えなかった。
『屑が英雄になれるチャンスだったのに!!
宿敵のとどめすらもできないんだ!!塵の子は塵だな!!』
そんな神代に更に降りかかるのは、顔をひくつかせている雨子神の罵声。
それによってなのだろうか、巴津火が丁度堪忍袋の緒を切った時、
神代の手に黒炎の槍が握られた。
明らかに今までの雰囲気と異なる神代は、全身から夥しい力を発している。
「もう、止めてください」
小さな声で呟く神代。
この因果の怪物は、標的への照準合わせも振りかぶる態勢も、
槍に力を込める事も全ての動作が目にも止まらぬほど早かった。
神代の黒炎の槍は、巴津火の速度すらも上回って、
彼の牙が穂産姉妹へ到着する前にはもう、槍は標的を射たのであった。
神代の激情がこもった一撃は、巴津火に胴体に命中した。
>>693
、
>>694
「それは困るなぁ?」
討伐の意を明らかにした彼の後ろから、
含み笑いのある上機嫌な男性の声が聞こえてきた。
その声に稀璃華が振り返れば、目の前にはあの農夫がいるだろう。
「せっかくいいところなんだ。
それに、あんな姉妹を助けたいと思うような場面でもねえと思うがな」
実は、秋牙羅未の大剣を手に持たれた時に農夫は、
それで神代に果敢にも挑むものだと思っていた。だが予想は外れ、
大きく光る刃の向かう先は巴津火。
その為、笑顔の農夫だがこの稀璃華の対処をどうするべきか、
若干決めあぐねているというのが本音である。
696
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 18:58:21 ID:1gBuqmPQ
>>693-695
姉妹の力を奪わんとする巴津火の、神体への攻撃は防がれる。
秋牙羅未の大剣はようやくその役割にふさわしい使い手を得た。
二心を持って姉妹を狙うのでなく、ただ守るがためにこの神器を振るう者の手を。
稀璃華の手の中で力を増した大剣は、真っ直ぐに投げられて巴津火を貫く。
その長い蛇体の中ほどを串刺しにして、大地へと縫いとめたのだ。
そして動きを止めた大蛇を、神代の一撃が襲う。
神代のその一撃を、黒い蛇は待っていた。
破邪の剣に貫かれ、雷の業に焼け焦げて尚、全ての運命を歪め全てを打ち壊す紫狂として
暴れ狂う悦びのほうを選んだのだ。
「ボクは許さないぞ!!天の卑劣漢どもめ!!」
黒い蛇の背は苦しげに反り、その頭は高々と持ち上がり、焦げた胴は大剣に巻きついて
尾は稀璃華たちへ横なぎに地を払う。
そして神代の呟きに、黒い蛇が答えた。
「神代が、神代の言い分を、はっきり突きつけてやらないのならば、ボクは止めない」
黒い蛇は天に向かい、哄笑と共に瘴気を吐き散らす。
「どうする神代!!お前がペテンとやらを明かさずに何時までも何もしないならば、
ボクが今ここでお前を含めて全てを無にしてやるぞ!!」
雨子神の罵倒とはまた違う形で、巴津火もまた神代に行動と選択を迫ったのだった。
697
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 20:00:13 ID:HbHPxpxY
>>695-696
秋牙羅末の剣を当て、攻撃を防ぐ事の出来た稀璃花だが、安心できない。
農夫、彼が立ち塞がったのだ。
「いいところだって?あれはバットエンドにしかならない。」
今すぐにでも戦闘できるであろうが、稀璃花には武器がない。
槍も剣も、自分から取れる位置にはない。
しかも、春宇知厄との戦闘もあって稀璃花はかなり不利であった。
(姉妹連れて逃げられれば・・・・・・。だがこの戦況。
僕も死ぬかもな。)
「農夫、君が止めるなら、この稀璃花、押し通る!」
698
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 20:21:15 ID:EK/9fLvc
>>696
飛びかかる激怒とはまったく対照的に、
迫られている神代の顔に浮かぶのは、何故か焦りと苦笑。
哀しげに笑う様は今までもあったとはいえ焦燥については、
おそらく巴津火の言葉を契機にして隠せなくなったものと思われる。
「農夫が途中遊んでいた為に遅くなったが、
問題なく結界は発動できる」
それ故なのかちらりと、榊の方へ振り向く神代に彼女は、
冷淡な顔で返答をした。それに伴って榊は片手を空へ向け上げて、小さく呟く。
するとその一瞬を持って、この空間は銃弾を遮る防弾のガラスのような、
いわゆる亜空間と呼ばれる結界によって全体を覆われた。
辺りを見渡して確認したらしい神代は、ようやく穂産姉妹神のもとに歩み寄る。
「急かさないでください巴津火さん。僕も今ようやく、自由になったのですから」
『だったら早く殺ってみろよ!!ぐだぐだ言ってないではや』
「・・・。僕は神体を得た、ここも遮断された。
もう全て終わったんです。だからもう頑張らなくても良いんですよ?
だからもうこれ以上、自分を傷つけないでください、穂産雨子さん、穂産日子さん」
あろうことか巴津火の歯牙も恐れず、姉妹に接近した神代から出た言葉は、
今までにも、そして神話にも刻まれなかった、優しいものだったのだ。
>>697
「そうだ、バッドエンドにしかならねえ。
それも上手くいきゃあ史上最大、前代未聞、空前絶後なワーストエンドだ」
神代たちと、稀璃華を直線で結んだ間の地点に割り込む農夫の顔は、
つい先ほどまでの彼とは別人物と思わる程に、
醜悪で、邪悪で、凶悪で、狂悪に笑い歪んでいた。
だが彼に構えるそぶりはない。
しかしそれは、何もしてこない訳ではなく、既に事は起していたからであった。
「させねえよバカたれが。
おらは、おら達は、この瞬間こそをずっっっっっっと待ってたんだ!
長さはそれぞれだがおらの場合は、人類の始まりのあの時からな」
そう言って稀璃華の意識を逸らした農夫の術は既に、
稀璃華の足元で発動されている。
突如地面が二か所隆起を始めたかと思うと、その二つから、
太い木の幹が異常な早さで成長して、
それらは稀璃華の体のそこらじゅうに絡まり、身体を拘束した。
699
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 21:22:49 ID:1gBuqmPQ
>>697-698
「榊も榊だ。
ぼさっと見てる暇があったら、そっちの金髪の首根っこ引っつかんでさっさと連れて来いっつの」
いつの間にか大剣にその身を巻きつけていた黒い蛇は、人の姿に化身していた。
「ぐああっ、くそっ!」
地に両膝を付き無事な左腕でなんとか上体を支えているが、その背は大きく焼けただれ胴を大剣が貫いている。
右腕と肩は土の顎に噛み潰されて腕らしい形を成していない。
「いいざまだな稀璃華、この落とし前としてしばらくはその格好でいろよ」
拘束された稀璃華を首だけで振り返ってニィッと笑った顔は血の仮面をつけたように赤く、
紫濁の瞳には橙色の煌きが混じり始めている。
「おい金髪。これ抜くの手伝え」
立ち上がって大剣を地から引き抜くことには成功したものの、背から腹へ貫いたその刃は
この姿の巴津火の身の丈ほどもあり、左腕一本では到底抜くことが出来ない。
(このくらいのハンデはありだな)
突き刺さったままの秋牙羅未の大剣は、巴津火の邪神としての力を徐々に削いでいた。
その影響で巴津火には神格としての自覚が強まってゆく。
憤りはもちろんまだあるが、感情とはまた違う理由で担うべき役割を自覚し、
神代と天界との間の真実を見た巴津火は限界まで己の我侭を貫くことにした。
(あの時も正々堂々と戦ったなら、ボクは決して負けはしなかった)
遥か昔に敗者として全ての栄光を奪われ貶められた、かつての強大なる神格は
今度こそ正攻法による戦いをするつもりなのだ。
(神代、ボクはそうしなければならない。『悪い』な)
700
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 21:47:44 ID:HbHPxpxY
>>698-699
「離せ農夫っ!今すぐこれを解け!!!」
もう無理なのは分かっている。
だが体を無理に動かしたり、懸命に振りほどこうとした。
「巴津・・・・・・・・・。」
巴津火が言い放った言葉は、深く突き刺さった。
何も出来なかった自分が惨め過ぎて、泣けてくるのだ。
事は一向に進み、ただ稀璃花は見ているしかなかった。
701
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 22:06:08 ID:EK/9fLvc
>>699
,
>>700
「私は堕天術の調整がある。
それに急がなくとも良い筈。結果は同じなのだから」
巴津火の悪態を聞きながらもまったく変化のない榊は、
巴津火に事情を説明するために、神体が未だ置かれている陣を指さす。
それにここから動く気もなく、農夫を急かす気もないらしい。
「まあ無理だ。
お前も最後まで見ればいいじゃねえか
それに巴津火、お前も刺さったままにしておくぞ。どうせ死なないだろ?」
ここで暴れられても困る、そう判断した農夫は稀璃華を残し、
呑気な口調で巴津火たちのもとへ歩み寄る。
先に見せた笑みが、まるで嘘のように暢気な顔であった。
『なにがだよ!?良いから早く殺しゃあいいいじゃねえか!!』
「嘘までついて自身を殺させ、でもそれももう意味が無くなったんですよ?」
『な、何が意味ないだ!せっかくの神命・・・神命・・・を』
面に浮かんでいた邪悪よりも、どこか必死な雰囲気が雨子神からは、
いや、穂産姉妹から滲みだしていた。
下劣な笑みもなく、今は唯、視線は定まらなくなって。
「僕はもう、全てを知ったんですよ。禁伝の部分も」
『・・・いやだ。やめ、やめて・・・・』
「お願いだから!これ以上は言わないでください!!
私たちは貴方を、貴方をのろ」
「守っていた、ですよね・・・?」
最後に神代の言葉を聞いた頃の穂産姉妹は、
唇はわなないて、既に泣き出しそうな顔色を浮かべている。
目には涙を浮かべて、まるで子供の駄々のように首を振っていた。
702
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 22:20:30 ID:1gBuqmPQ
>>700
>>701
「バカヤロー!まだ死なないけどこのままじゃ動きづらいんだ!」
何としてでもこの剣を抜いてやる。そして暴れてやるのだ。
巴津火は剣が刺さったままうろうろと辺りを見回し、手ごろなものを見つけた。
(刃先を押して抜けば何とか)
稀璃華のほうへふらふらと歩み寄って、その剣先を木に当てた巴津火は力いっぱいに寄りかかる。
上手くすれば刃先を押し戻して抜くことができると踏んだのだ。
「うああああっ!!」
綺麗に抜くのとは違い、ごそりと刃で傷口をかき回される感触に、流石の巴津火も苦鳴を上げた。
剣を抜けば酷く出血するだろう。
「あの金髪め…、後で同じ目見せてやる。おい稀璃華!その手で握れるか」
最終手段として巴津火は、捕縛された稀璃華の手に大剣の柄を握っていてもらうことにしようと
思ったらしい。
703
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 22:30:50 ID:HbHPxpxY
>>701-702
「・・・・・・。」
ただ大剣を無言で握る。
溢れ出る血を目に止めず、神代達を眺めていた。
「(な、なんだ?あのさっきまで狂ってた奴の雰囲気が変わった?)」
非常に気になるが、縛られていて何も出来ず。
704
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 22:47:37 ID:EK/9fLvc
>>702
、
>>703
今度は巴津火の声をシカトして、穂産姉妹達の近くに立つ。
背中は見せても巴津火たちの動きの警戒は怠らず、
仮に今巴津火が出し抜けに襲いかかろうとも、迎撃はできるようだ。
「やっぱりこうなったな!!ペテンなんて無理なもんだ!
復讐の相手をずらすなんて荒業、最初からできると思う方がおかしい!!」
農夫のしばらく後にやってきた包帯男。
馬鹿デカイ声を上げてやってきたために、農夫は彼の首元に拳を決めた。
邪魔しないように黙らされた包帯男は、気道を確保するために地面でもがいていた。
「僕だって最初は、神話どおりに実行しようとしました」
『だったら・・・だったらその通りに・・・お願いだからぁ・・・』
「でも、復讐すべきは穂産日子さん穂産雨子さんじゃない」
雨子神はもはやすがりつくように涙を頬に伝わせて、
力なく神代に訴えかけた。
そして彼らの間で理解不能なやり取りがなされている最中に、
巴津火の中の禁伝第二項、それの更なる続きが溶け出した。
そこはより機密として封印されていたらしく、情報の流出までに時間がかかっていたようである。
―大きな力を手に入れた二柱の神は、
人々に結実豊作と、子宝児童安全の恵みを与え、より江戸の人から信仰を集めていました。
そしてそんな優しい神々にはその時、特に愛おしい存在があったのです。
それは、悪魔と尊の垣根を超え、固い愛によって結ばれているとある夫婦でした。
悪の骨頂の彼と、それに相反する巫女がここまでの愛を生み出したのには、
彼らの間で数々の死闘、論争、それらを超えていったからなのです。
黒と白、善と悪、それらを二分せず中庸して愛する彼らが子を宿した時、
同じく中庸を愛する、穂産姉妹神は大変喜びました。
全ての子を愛する母性神は特にこの子供を可愛がり、
安産、児童安全、彼女たちの持ちうる全ての力や祈りを用いて祝福しました―
705
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 22:50:29 ID:EK/9fLvc
>>704
訂正
悪魔と尊×
悪魔と巫女○
706
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 22:59:52 ID:1gBuqmPQ
>>703-704
稀璃華が大剣の柄を握ったのを確かめると、一つ深呼吸して思い切り身体を前へと投げ出した。
「がほっ!!」
破邪の大剣からずるりと解放されて、膝を突いた巴津火は血混じりに咳き込む。
しかしその顔には不穏な笑みが広がっていた。
「よし、ボクには左腕一本あればよい」
夥しい量の血を足元に零しながら、巴津火は立ち上がった。
その時、機密とやらが胃の腑で溶けたらしい。
「…ペテンってよりも茶番か。蛸の言うとおり、神格ってやつはめんどくさい代物らしい」
大剣から解放された巴津火の表情は、既に紫狂のそれである。
「稀璃華、その剣よこせ。ボクがさっさと終わらせてやる」
ボロボロになりもはや邪魔な上衣を苦労しながら脱ぎ捨てて、ニタリと笑った血まみれの半邪神は、
振り返って稀璃華に左手を差し出し大剣を渡すよう要求した。
今、秋牙羅未の剣は新しい主と定めた稀璃華の手に、重さを殆ど感じさせずに握られている。
その気になれば、稀璃華はこの剣を振るうことが出来るだろう。
707
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 23:16:04 ID:HbHPxpxY
>>704-706
秋牙羅末の大剣は、稀璃花を新しい主として認めてくれたらしい。
それは気持ちの問題か、元を辿れば鉱石と言う同じ原子だからか、理由は解らないが。
「巴津火、僕は君の事、凄く好きだ。だけどね、その捻くれた性格だけは好かない。だから剣も渡さない。(ちょっとの間、僕の武器として力を出してくれ。)」
植物を瞬時に切り落とすと、傷が深いであろう巴津火に一発、殴りかかる。
「(何が終わらせる、だ。いい加減にしろよ・・・。)」
708
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 23:27:27 ID:EK/9fLvc
>>706
>>707
―しかし穂産姉妹には祝福された夫婦の愛も子供も、
善と悪、絶対的な極端を信ずる天界の神々は決して許しませんでした。
彼らの不実に激怒した神々は、穂産姉妹神の術を打破しなおかつ死産させるよう、
数人がかりのアマツカミに命令し、赤子を呪いました。
秘密裏の呪術を穂産姉妹が知ることはなく、
更には赤子に重ね重ね祝福を彼女達は続けるのでした。
そうして知らず知らずに行われた術比べの結果は、誰もが勝つことはなく、
強いて言うのならば、誰もが完全敗北を喫したのです。
悪魔の邪、神気の正、胎児が受け継ぐであろう二つの力を両方活性化させ、
巫女の子宮の中で胎児を、正邪の衝突によって殺す目的の呪術。
どのような障害があろうと全てを退け、無事に出産を促す祝福。
これらの力が招いたのは、正邪の衝突を体内で起こしながらも全て中和し、
その分を外界へ全て発散してしまう、呪われた赤ん坊でした。
そこから、全てが狂いだしたのでした―
「ずっと待っていたんです。
大きくなった僕があなたたちの前に立って、立派な姿を見せる瞬間を」
ローブの中から神代は何かを取り出して優しく言った。
神代の手に握られたものは、穂産姉妹神の祝福の込められたお守り。
自らの邪気で黒く浸食しながらも、効力はまだ消えていないようであった。
「っと何してんだお前ら?」
そのようなやり取りの中、
後ろの不審な動きを察知して農夫は、やれやれと呆れながらも振り返った。
するとそこで見えるのは巴津火を切りつける稀璃華。
当初から彼らを今一理解していなかった分、この状況を、
まだじゃれあいの延長だということでしか見ていない。
709
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 23:35:48 ID:1gBuqmPQ
>>707
「ごふっ」
稀璃華の拳を、巴津火はたたらを踏んで持ちこたえる。
「…よりによって傷のある腹を殴るか?それにボクは前から言ってるとおりお前が大嫌いだ」
ぺっ、と血を吐きながら巴津火は稀璃華の売り言葉に買い言葉。
稀璃華を嫌いな理由は、もちろん撫で回されて触られるからだ。
「お前今、良い加減にしろ、って思っただろ」
巴津火は稀璃華の表情を瞬時に読み解いた。
「ボクは神代に対して、それと同意見を持ってる。
だからあいつを一発殴ってこの茶番を終わらせてくるんだ」
紫濁の瞳に強い橙色の輝きが混じった。
「手伝うか稀璃華?
ボクをコケにしてくれた天界への意趣返しに、神代とあの姉妹の殺し合いに
全く違う形で決着をつけさせてやるんだ」
一段声を低くして、農夫たちには聞こえないように稀璃華にそう囁いた巴津火は
邪気と神気の両方を入り混じらせ、その声にはぞくりとするような真剣さがあった。
今ならこのひねくれ者は、稀璃華の問いへ正しく答えることだろう。
710
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 23:37:41 ID:1gBuqmPQ
//安価ミス、
>>708
まで含みます。
711
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 23:48:53 ID:HbHPxpxY
>>708-709
「ごめ・・・勢い付けすぎた・・・。」
軽く涙目になりながら、謝罪。まさか血を吐くなんて思わなかったからである。
「巴津火らしい、一発、やって来い。僕は見届けてやる、茶番の最後を。」
巴津火の肩を叩き、走り寄って行く先には・・・春宇知厄だ。
「生きてるか?あんたの主含め、一緒に見届けよう」
712
:
穂産姉妹大社
:2011/11/18(金) 00:01:30 ID:EK/9fLvc
>>709
、
>>710
「全てを知っているあなた達なら、これから僕達がやることも知っているでしょう?」
「だから、それは駄目です!」
『死しか見えてないじゃないか!なんで生きようとしないの!?』
再び大事そうに、お守りを懐にしまった神代に大声でそう叫ぶのは、
今もまだ必死な形相で止めようとしている穂産姉妹。
心ではもう、目の前のこの少年がこれから一生、
体の全てが絶えて血に伏すその時まで止まらないことは分かっていても、
やはり穂産姉妹の神格の元になった心は、それでも否定するのだ。
「それで、お前らは何してんだ?」
途中から意識が巴津火と稀璃華へ向けられていて、
更に榊の進言があったことで、農夫は余計に警戒を強めていた。
なんとか回復できた包帯男も、彼の隣に立って、
状況を飲み込んでいないながらも警戒を強めた。
「・・・。」
稀璃華が駆け寄った、縛られたままだった春宇知厄の顔は、
目や口を大きく開けて、驚愕の様相を浮かべている。
何も言葉を発さないのでなく、発せないのだ。
713
:
穂産姉妹大社
:2011/11/18(金) 00:02:10 ID:EK/9fLvc
/安価ミス
>>711
も含みます、スイマセン
714
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 00:08:15 ID:1gBuqmPQ
>>711-712
「…って見てるだけかよおい!」
いやむしろお前手伝えやコラ、と慌てて巴津火は稀璃華を追う。
「せめてその剣だけでもよこせ。これじゃないと出来ないことがあるんだ」
足を引きずりながらのろのろと追いすがり、稀璃華の手から秋牙羅未の大剣を奪おうとする。
大剣を手にしたら、今度はそれに縋りながら穂産姉妹の所へ取って返すだろう。
(もう一度あの因果を漱ぐ。この剣でなら雨子神を殺さずに漱げる)
半分しかない神格にで双子神の因果を背追うことは出来るだろうか。
やってみなければ判らない。
(死にたがりが3人か)
姉妹と神代の間の会話が巴津火にも聞こえてきた。
「稀璃華、包帯と農夫の注意引いてろよ」
(榊は多分、最後にしか動かない)
黒衣の人物、と衣蛸が言っていたのを今更に思い出す。
715
:
名無しさん
:2011/11/18(金) 00:17:39 ID:HbHPxpxY
>>713-714
「は?なんで僕が?・・・後さ、その剣、使い終えたらくれない?」
不思議と剣に興味を示した稀璃花。
一旦巴津火に手渡した。
「春ちゃん、こんなんなっちゃったね。君はこれでもいいか?」
解きながら、稀璃花は話した。あまりに、驚くべき事だろうが、現実だ。
農夫さん、包帯さん、と手を振りながら、注意を引くことも忘れず。
716
:
穂産姉妹大社
:2011/11/18(金) 00:31:03 ID:EK/9fLvc
>>714
、
>>715
「・・・。」
返答は、まだ出来ないでいる彼女。
確かに神代と穂産姉妹の因縁自体がペテンであり、
今、彼らはお互いを守ろうとしているこの光景を見たときのこの驚きは、
春宇知厄から言葉を奪うのは簡単だったのだろう。
彼女の驚きのほとんどが、そんなことじゃないことを除いても、
やはり驚きは大きすぎるほどに大きかった。
「なんだ?おらはあれと絡むのは嫌なんだがな・・・」
警戒をしていたが、いや、ある意味警戒していた分稀璃華の動きに敏感になり、
半ば条件反射のように手を振り返す。
それゆえ警戒は稀璃華にだけ注がれ、
状況を理解できていない包帯男も役に立たないので、まさに今は巴津火の独断場であった。
717
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 00:42:12 ID:1gBuqmPQ
>>715-716
「使い終わったらお前に投げるから上手く掴め」
巴津火の手を嫌がってキシキシと剣が軋むところを見ると、
投げ渡さなくても剣自らで稀璃華の元へと飛んでゆきそうではある。
(もう一度、もう一度だ)
既に血の気のない頬を、流れた血が汚して誤魔化してくれる。
稀璃華が作ってくれた隙に、穂産姉妹と神代の元へ巴津火は左手に大剣を引きずりながら向かう。
既にこの刃は巴津火の血で汚れているのだ。
(この血が流し損になったら、それこそ本当の茶番だな)
そして目の前には雨子神の背中。
神代と目が会えば、愛想良く笑って見せながら禊の刃を雨子神に突き立てねばならない。
(今だ!)
日子神を漱いだ時と同じく、形式上雨子神を殺害することで、残るもう半分の因果を巴津火は引き受けた。
あのニヤニヤ笑いを神代に向けて貼り付けたままである。
「死にたがりの2人目を始末。三人目がいたら名乗り出ろ」
巴津火が秋牙羅未の大剣を抜き去ると、雨子神の身体はゆっくりと日子神のほうへ倒れた。
息はまだある。
718
:
稀璃花
:2011/11/18(金) 00:54:52 ID:HbHPxpxY
>>716-717
「春、おーい。・・・ダメだこりゃ。」
しばらく彼女はほっぽっとき、絡むのをいやがる農夫へと近寄った。
きっといい迷惑である。
「おっさん、僕と結婚しよう?おっさんは正義って決まってるからね。」
女装があったならいいかも知れないが、今、話してるのは完全なる男。
農夫にはかなりのダメージを与えられた・・・と思う。
ちなみに包帯さんには無関心だ。
719
:
穂産姉妹大社
:2011/11/18(金) 01:09:20 ID:EK/9fLvc
>>717
ほんの少し前まで、巴津火は穂産姉妹の命を狙っていた。
その事を知っていた神代でも長年の悲願、
それを果たしかけていたこの瞬間には油断して警戒は意識の外へ。
贈られた笑みに本心からのそれを贈り返し、
それでも巴津火に真意を把握できていなかった神代は数秒後、
彼の行おうとして現に成功せしめた事実を、目の前に叩きつけられることとなる。
「な・・・んで?」
自らの片割れを突然刺された日子神は状況が呑みこめず、声が掠れていた。
雨子神の生存は、体が崩れていない事で分かるがやはり、
巴津火の凶刃は彼女から思考を奪うことは容易いことである。
「僕もたいがいそうだと自覚していたつもりなのですが。
巴津火さん、今あなた以上に、死にたがりな方はいませんよ」
だが、金縛りにあったように動けない日子神と対照的に、
呪われた怪物はこの出来事を見てまだ優しく明瞭ながらも、
かの地獄の王ルシフェルの姿を後ろに見える程の憤怒を体から発して、
巴津火にゆっくりと喋りかける。
【ジャッジアンリーゾナブル】
言葉の後、数秒も待たず巴津火には、計6本、
先ほどよりも長く太く、強靭な黒炎の槍が凄まじい轟音とともに放たれた。
>>718
「(にしてもあの守護神・・・
神だから当然の報いっちゃあ報いだが、お気持ちはお察しするぞ)」
遠くの彼女を眺めながら、農夫は顔をしかめた。
そして稀璃華がこちらへ残念なことに接近して、余計に顔のしわが増える。
「は?
結婚って・・・・てか駄目だありゃあ。
おい稀璃華、今はどうでもいいから避難しとくぞ」
いつも通り稀璃華のようなキャラに翻弄されるかと思っていたが、
農夫は目の前の神代を見て、それはない事を知る。
今はただ逃げるだけ、それほどの危機が存在しているからだ。
720
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 01:28:30 ID:1gBuqmPQ
>>718-719
稀璃華のほうへからん、と大剣を放りなげて巴津火の様子が変わった。
もともと邪気は持っていたが、それがさらに純粋なものとなる。
「ふふ、神格が重荷で押さえ込まれたか」
その瞳は鬼灯色に赤く輝き、神代を真っ直ぐに見た。
「死にたがり?残念だが私はまだまだ生きるつもりだ」
物柔らかに力強く語る大人びた口調は、とても巴津火とは思えない。
「さもなくば、天に仕返しできないからな」
指先で軽く天を指すと同時に、地下では水脈の中に広がった、あのガラス玉が一斉にはじけた。
八本の水柱が大地に固定された大蛇の周囲から鎌首を持ち上げ、
各々口を開いた蛇の形となって、黒炎の槍に襲いかかっていく。
6本の槍とそれにに絡みついた水蛇は互いを相殺し、2匹の水蛇を残して消えた。
「このくらいの挑発は許してもらおう。お前達のペテンに付き合ってやったんだからな」
巴津火は呆然とした日子神を見て笑う余裕があった。
雨子神も日子神も、因果を漱がれたことで悪影響は出ていないようだ。
「次は私の番だな。多田羅!」
その手には明々と輝く鉄の刃があった。
薄紫の炎を纏うその灼熱の刃を神代に叩き込むべく、清々しい笑みを浮かべて巴津火は跳んだ。
残った二匹の水蛇がその身を守っている。
721
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 01:34:56 ID:1gBuqmPQ
//
>>720
訂正です
×八本の水柱が大地に固定された大蛇の周囲から鎌首を持ち上げ、
↓
○八本の水柱が巴津火の周囲から鎌首を持ち上げ、
722
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 01:52:11 ID:EK/9fLvc
>>720
、
>>721
神代の顔には笑顔、だが厳密に言うとそれは正しくなく、
神代は顔だけに笑みを浮かべそれ以外には、
七つの大罪の一角、憤怒を結晶化させたような激情が迸っているというのが正しいだろう。
「いいえ、あなたには死んでもらいます。
こんな言葉を使うのは、おとうさんおかあさんは喜んでくれないでしょう。
でもたまには子供らしくわがまま言って、我を通させてもらいましょう
死ね、死ね死ね死ね死ね死ね。
死んでしまえ!!」
投げられた槍の数は6。
だがそれは、一度に、投擲できる数の最大であって、
必ずしもこの技の本数が6本までと限られた訳ではないのだ。
目にもとまらぬ、風すらも追い越すような速度で、
神代は黒槍を投げ二匹の水蛇を一瞬にして破壊し消滅させた。
守るものが無くなった無防備の巴津火へと、神代も衝突するように接近した。
手にはどの術なのか定かではないが、雷迸る両手剣が握られていて、
その刃は巴津火の眉間を目指して、煌めいている。
しかしそこへ、正体不明の長さは10cmにも満たない、
小さな妖気を纏っただけの針が、神代の手の甲へと突き刺さった。
大したダメージにならなくてもそれによって、刃をふるう際の動きに、
若干の遅れが生じるだろう。
723
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 02:13:18 ID:1gBuqmPQ
>>722
憤怒する神代を、ニコニコと微笑ましげに鬼灯色の瞳で見つめて、巴津火が迫る。
使い物にならない右腕では黒槍を叩き落しながら、かまわずに左手で逆手に持った灼熱の刃を神代につきたてようとする。
その途端、じゅんっ!と、赤熱の刃が音を立てて消えた。
その時にはもう、紫濁の瞳が神代の目の前でニヤニヤと憎たらしい薄笑いを浮かべている。
「バーカバーカ、ひっかかってやーんのー。あと、誰が死ぬか」
その台詞と同時に、ぺろりと二股の舌がつき出た。
上手いことペテンが成功して、この小憎らしいお子様は大喜びである。
「守ってやるって、言っただろ。
さっきので、お前とあの二人の因果は全部消えた」
姉妹神の代わりに因果を背負い、巴津火は神代と戦った。
そう笑いながら、満身創痍な巴津火は満足そうに神代の腕の中に倒れこんだ。
神代の懐で、お守りのあのガラス玉は割れてしまっていることだろう。
「あと、ボクを打ち負かした奴には、ご褒美をやるんだ。
神代におとうさんとかおかあさんはやれないけど、何かいらないものを捨てさせてやれる。
捨てられなくて困ってるものがあったら、ボクが水に流させてやるよ」
(そうだ。昔々に罪人を一人漱いだ。罪を漱いで英雄にした)
「何か捨てたいもの、いらないものあるか?」
巴津火は僅かに動く左手で不器用に神代を撫でてやった。
724
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 02:33:21 ID:EK/9fLvc
>>723
「!?」
剣の衝突を予期して、自らの手に精一杯の力を込めていた分、
フェイクを振り切った時の力は空へと発散し、神代の体勢は崩れ切る。
しかしそれと同時に神代の眼に映るのは、
こちらに倒れこんでくる力を使いつくしたであろう巴津火の姿。
「ぼ・・・・僕の・・・僕の因果が」
自らの体で支えるために倒れはすまいと踏ん張ったおかげで、
巴津火は地面に身を叩きつけることは無くなった。
しかし支え切って見せた神代の顔には、言い知れないほどの虚無が生まれていた。
「おい!!榊!!
これもお前の筋書き通りなのか!?坊ちゃんは鎖をなくしちまったぞ!!」
そこへ怒鳴り込むのは、かなりの剣幕な農夫である。
榊の胸倉に乱暴に掴みかかった農夫は小声で、榊と密談を始めている。
一方巴津火を抱く姿勢になった坊ちゃんは、しばし呆然自失としていたが、
すぐに気を取り戻して巴津火を突き飛ばした。
固くはなく丁度戦闘で、隆起した柔らかい部分に飛ぶ巴津火だが、
やはり満身創痍なだけに体にはこたえるだろう。
「捨てる?流す?
そんなもの、いる物もいらない物も、生まれた時から全部なかったですよ!!
半妖の僕には!!なにも得ることができなかったんです!
やっと・・・やっと手に入っていたところなのに・・・」
ひざから崩れ落ちた神代。
笑みを浮かべた顔が邪魔をするが、それでも伝わる悲愴はあった。
725
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 02:47:47 ID:1gBuqmPQ
>>724
「捨てられるもの、あるじゃないか」
弾き飛ばされて尚、ニヤニヤ笑いは巴津火に張り付いていた。
力を使い果たして横たわって居るというのに、さらに相手を挑発するのだ。
「たかが半妖生まれというだけで一々悲壮に暮れているなら、いっそ命でも流してしまうか?」
慌てる農夫や榊に対しても、おちょくったような物言いをする。
「自分たちから協力を頼んでおいて、ボクに目的を隠したりするからさ」
(よーし、怒れ。もっともっと怒れ)
紫濁の瞳は、先ほどまでとはまた違った風に輝き始めた。
726
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 02:57:47 ID:EK/9fLvc
>>725
榊に掴みかかったままの姿勢で農夫は振り向き、
今まで怒っていた、どの表情よりも本物の憎悪ある眼差しを巴津火に向ける。
何か言おうと言葉を探すような素振りがしばらく見てとれたが、
悔しそうに声を漏らしただけで、後はまた榊に怒鳴り散らすだけであった。
明らかに事態の雰囲気は異様で、
この中でも空気を読まない立ち位置の筈の包帯男にも、言い知れない激情があるのだ。
「たかが半妖?どこにも混じれない!嫌われも好かれもしない!
他者の悪意の最大で赴く無関心が、どれほど恐ろしいかも知らないのに!!」
もう心が止まりきれないのだろう、顔に張り付かせた笑顔の仮面も皹が入り、
ところどころに怒り顔の特徴が神代の顔に浮かび始める。
声は今や怒鳴り散らして、面影は声のまだ声変わりのなさだけであった。
「流せるものなら!捨てられるものなら!!
いつだって!!なんなら生まれた瞬間に死んでやるさ!!」
727
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 03:04:15 ID:1gBuqmPQ
>>726
「だってたかが半妖だろう。お前一人が半妖だと思うなよ?
今までにもこれからも、半妖なんて幾らでも生まれてくるんだ」
澪と夜夫婦の間にも、まもなく半妖は生まれてくるだろう。
同じ「ぼっちゃん」のくくりではあっても、巴津火と神代は多分絶対的に違う。
巴津火はいじめっ子なのだ。
「お前だって他の半妖に出会ったこと位はあるんだろ?
そいつら皆、お前みたいなぼっちだったか?」
巴津火は神代の笑顔の仮面をその激情で剥がそうとしている。
体力は無いが余裕はある様子だ。
728
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 03:17:03 ID:EK/9fLvc
>>727
「巴津火さん、あなたが僕を撫でた手、黒く変色していませんか?」
当然来るだろうと思っていた質問。
かつて神代も、誰もいない空間で何度も自問し、
何度もその答えを出して、何度もその答えが自分に該当しないことを思い知らされた、
当てもなく同じことを繰り返した質問。
逆に沸点の上がっていた神代の怒りは醒め、
いやに冷静に、いやに感情を手放して、表情に笑顔を取り戻した。
巴津火が神代の言葉通りに自分の掌を覗き込めば、
おそらくいつかの牛神神社の姫君がそうであったように、黒く変色して、
はっきり言えば邪悪に汚染されているのがわかるだろう。
「禁伝にもあったはずですよ。
僕は僕の正邪に殺されない代わりに、周囲に正邪を振りまく。
清きものと触れあえば邪悪によって焦がし、悪しきものとじゃれあえば、
清純さによって体は清められ消滅するのですよ。
だからあの時あなたを突き飛ばして、穂産姉妹にも抱きつけなかったんですよ」
呪われし赤子、怪物。
その由縁とは、ただの半妖のジレンマではない。
陽のあたる世界では生物を焼死させ、陰の世界では怪物を消滅させる。
どこにいても殺して、どこにいても害してしまうのだ。
729
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 03:27:10 ID:1gBuqmPQ
>>728
「んー?ああ、黒いな」
巴津火は左の手を持ち上げてみる。
ついで、泥だらけのズボンのポケットに手を突っ込んでぐいぐいと拭う。
「ま、ほぼ泥と煤だな」
先ほどは焼けた鉄を握り、今は泥の上に寝転がっているのだ。
「正邪を振りまく?禁伝にそんなことあったんだ?
ボク自分の伝承の方に夢中になってたからなー」
事情を聞いてしばらくポカンとしていた巴津火が、困ったように呟いた。
「神代に言ってなかったっけ?
ボク半分は神格だけどもう半分は、邪神格なんだって。
それに今までも何回か神代にさわったりしてたぞ?ほら、あのお守り渡した時とか」
730
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 03:41:21 ID:EK/9fLvc
>>729
「もちろん撫でただけですよ。
でも一瞬僕に触って、一瞬で巴津火さんの手の表皮は焦げた」
赤熱した鉄なのか、神代の邪悪なのか、
巴津火の手を焼いた方はどちらなのかは分からないが、どちらもかも知れないが、
ただ、触れる機会が一瞬であった巴津火が、
体に大きな黒点を作ってしまう機会を失ったことは確かである。
「あの時も一瞬ですよ。それにそれで済んでいるのは、
何よりもあなたが上位神格を所持できる程の存在だからです」
人間であったならば、身に禊という自己修復能力もなく、
神代の残す黒はより深くより長く残っていたのであろう。
今や完全に落ち着いてしまった神代は顔に笑顔を浮かべ、ちらと穂産姉妹の二人を見た。
どうやら二人は心労でいつかのタイミングに意識がなくなったらしい。
「あなたは日本の神の邪と、西洋の邪を同一視しています。
災厄や災害の神たちの持つ邪な力は、生きる上でどうしようもなく切り離せず、
自然にとっても人間にとっても避けられない、業、なのです。
でも、僕にある悪魔の邪は、人間たちの切り離せるはずの、
それでも手に取ってしまった邪な心による、罪、なのです」
731
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 03:59:15 ID:1gBuqmPQ
>>730
「ちょっとまて、その種類の邪の概念はこの国にもあるぞ?」
西洋の神の邪に相当するもの、人の心における悪の概念は仏典と共に流れてきている。
邪神とされる存在もいる。
「それにボクがお前に触ることができたり、こうして話していることは
さっき言ってた嫌われも好かれもしない、どこにも混じれないということは間違ってるだろ?
あの二人だって、結局はお前が憎いなわけじゃなかったようだし?」
巴津火は、左手をしげしげと眺めた後に神代のほうへ再び手を伸ばしてみた。
「これ握ってみろ」
ニヤリと笑いながら、神代に言った。
732
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 04:14:00 ID:EK/9fLvc
>>731
「この国にも確かに罪の邪は存在しているでしょう。
でもだからって、全身全霊の悪がいたって、
僕がその者を慕って近づけば今度は禊の力で、彼を害するんです」
ちなみに巴津火の邪は前者のほうであるといえる。
自然に罪はない、というより人間ごときが自然の一部分を観測して、
流れを悪と決め付けることはできないのだ。
たとえそれが母、窮奇の残した罪の邪があっても邪神の神格の部が上回って、
結果神代の呪を無効化できるようなものでもない。
「だからあなたは僕の友達で、穂産日子さん穂産雨子さんは恩人なのです。
ですが世界はあなたたちほどはみ出しや、中庸に寛大ではないんですよ。
人の世界では退魔士が、妖怪の世界では界の神格が、
それぞれ僕の追ってとなるんです。弾劾する代表となるんですよ」
そう説明していると巴津火は手を差し出していた。
「あなたはひどい方ですね」
しかし神代は、笑ってそれを拒否した。
今まで可能性を信じて様々な者と触れ合ってきた神代。
そしてその全ての結果を受けて神代は、他者に触れることにすら臆病になっているのだ。
733
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 19:19:31 ID:1gBuqmPQ
>>732
>>715
神代の口から「友達」という言葉と、「ひどい」という台詞を聞いて、
今度は自然なニヤニヤ笑いが巴津火の顔に広がり始めた。
そして少しばかり皮肉げに神代に言う。
「差し出されたものすらそうやって拒否してたら何も手に入らなくて当然じゃないか。
そうやって他の何かのせいにしてきた奴がボクの友達? 笑わすな。
生きるに足るだけの身体も考える頭もちゃんと持って生まれておいて、
いる物も要らない物も何も無いだとか、親が聞いたら泣くか呆れる」
ほんの少し口調を和らげ、
「この手はボクの意思で差し出した。お前が握りたいなら握り返して良いんだ。
多少焦げたってボクにはそんなの日に焼けるのと大差ないんだから。
それでも何にも触れないとか気にするなら、あらかじめ手袋でも嵌めておけ」
既に巴津火の背中も右腕も、神代の術で黒く焼け焦げているのだ。
この左手を拒否したところで、何を今更である。
そしてこちらの様子を伺っている稀璃華に向け、神代が拒否したその左手を振って招こうとする。
絶対に友達なんかではないと互いに言い張るだろう稀璃華と巴津火だが、
それでもこの二人の行動は神代とのそれよりもずっと親しげだ。
「お前が今後あの双子どう馴れ合おうが、ボクが天に文句は言わせない。
望むならその化け物の汚名も漱いでやれる。だから自分の居場所はこれから作れ」
何時までも因果になどしがみついてないで、姉妹とは新しい繋がりを作れば良い。
巴津火が祓ったのは、姉妹と対立しなくてはならぬように天が仕組んだ因果のみ。
彼らの間の想いまでは祓ってはいない証拠に、神代の持つ姉妹からのお守りは無事だ。
「それも嫌なら捨てたいというその命、いつでもボクが喰ってやるから安心しろ。
お前の言う『友達』ってのが手すら掴めない程度の仲のことなら、簡単なことだ」
安心させるつもりの欠片も無い言葉が、遠慮無く神代に注がれる。
神代が悩もうが農夫が怒ろうが天が揺るごうが、巴津火にとっては知ったことではない。
734
:
稀璃華
:2011/11/18(金) 19:33:02 ID:HbHPxpxY
>>732-733
「おっ、巴津火、ある程度は整理ついたっぽいな。」
槍と剣を持った稀璃華はなんだか男っぽい。(実際男だが。)
友達でないにしろ、スキンシップは大切にする稀璃華は、神代にも馴れ馴れしく抱き着いた。
「ほぉら、僕が友達になってあげるよー?神代もぐじくじしてないて、我を通せ、子供らしくな。」
稀璃華には清い物だの、邪悪だのないし、ましてや石の塔。
神代に触れたところで、問題ないのだ。
735
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 23:41:40 ID:EK/9fLvc
>>733
「ふふ、ありがとうございます。
でもやっぱり僕はこの力を認めることはできなくて、
だから、その懐に甘えても誰かにこの力で、害なすことはしたくないのです」
神代の臆病になった他者への関心も、
多少手荒であれ優しい言葉はゆっくり染み入って、神代には笑い声が戻った。
それでもまだ、こう言われようと神代の意思は変わらず、
巴津火には見えないようなところでその手は、悔しそうに握り拳を作る。
神代にとっての巴津火は、友達ということを否定されてもやはり、
人生の中でも特に大事な存在であることに変わりない。
そうであるからこそ、神代は自分の手で大事なモノを汚したくはないのだ。
「くすくす、やりたいことはまだまだありますよ。
穂産姉妹さん達を引き入れることはできなくなりましたが、
僕にはまだやりたいことも、やるべき事も残っている、死ねませんよ」
討伐が終わったなら、全てが終了したなら、その時に神代が生を諦めたら、
この目の前に立つ巴津火が殺してくれる。
以前話したその内容と、今の彼のまったくの不変さに神代は思わず笑みを強くした。
「そうですか、僕の消された因果は穂産姉妹さん達のだけ。
なら僕はまだまだ、安心して死ぬために生きることができます」
遠くで聞いていた農夫も、巴津火によって拭い去られた因果の内容は聞いていた。
そして彼の顔に浮かぶのは、心の底からの安堵であった。
>>734
まさか近づくどころか後ろから、抱きつかれるとは思っていなかったために、
神代は目を少し丸くして驚いている。
先ほどまで警戒を解いていた分稀璃華の体に触れてしまった神代は、
少しの焦りを顔に浮かべて、素早く彼の方へ顔を向けた。
「・・・はは、まったくこの街は本当に恐ろしいですね。
触れても逃げようともしない暴れ神、むしろ手を差し出す邪神、
さらには正邪の外にいるあなたですか」
しかし彼の体に変化はない。
しばらく経て意味を理解して、深く安堵のため息をついた。
「これから、どんどん我を通しますよ。
実はこれでも穂産姉妹さんに対しては、意思を無視して我儘したつもりなのですけどね」
736
:
巴津火「」
:2011/11/19(土) 00:08:54 ID:1gBuqmPQ
>>734-735
「おい、稀璃華……」
稀璃華が神代に抱きつくのを反射的に止めようとした巴津火だったが、途中で思い直した。
下手をすると今動けない自分のほうが稀璃華のターゲットになりかねないのだ。
自分の安全のために神代には犠牲になってもらおうと決めた巴津火は、稀璃華へは
黙っておくことにする。
「神代。安心して死ぬまでにお前の運命の中で強くなれ。
お前はさっき上位神を殺した。だからその神殺しの因果を新しく背負ったんだ」
喰らった巴津火も共犯ではあるのだが、殺したのは神代だ。
「確かにお前の生まれには波乱が付いて回る。
けどそれは、その中で揉まれても諦めなければもっと強くなれるってことだ」
因果を背負い続け、いつか殺した神格の立場を担える強さを証明できたなら。
「お前は神にもなれる」
その時にはお前の背負わされた呪いも縛り付ける因果も漱いでやるよ、と、
友達という関係を早くも諦めたらしい神代にそう約束した。
(あの笑顔の仮面を引き剥がして泣きべそかかせてみたいけど、それはまた次だな。
あーあ、もうちょっと苛めてやりたかったのに……限界だ)
既に巴津火の瞼は半分落ちかけていた。
「お前ら、何時までこそこそしてる」
半ば目を閉じた巴津火の叱責に、直ぐ傍の水溜りがぷくりと泡を吐いた。
737
:
稀璃華
:2011/11/19(土) 07:29:40 ID:HbHPxpxY
>>735-736
「巴津火の言う通り。神代、今の自分の壁を乗り越えろ。きっとお前の世界観は変わるから。
にしても、巴津火とは違った肌の感触だな。これが純粋な男の子か。ぷにぷに」
(そう言えば、あの時の墓の火の子供、今何してるかな。)
少し昔の事を思い出しつつ、神代を撫で回す変態。
巴津火よりも優しく、繊細に撫で回している変態は、もう倒れそうな巴津火を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「巴津火は僕の背中に乗ってく?フフフ」
なんやかんやで一件落着なのだろうか。戦いの場となった神社を眺めながら思った。
738
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/19(土) 09:59:24 ID:EK/9fLvc
>>736
,
>>737
なおも対処をせずに、稀璃華に抱きつかれたままの神代。
笑顔の崩れていないその顔は、巴津火の声で少し俯いて、
神代もその言葉をかみしめるように小さく、しかし意思を持って呟いた。
「・・・もう、殺しちゃったんですよね。
ふふ、これで僕も神殺しですか」
状況の終息を感じた神代の一派は各々が神代の元に集まる。
榊に変化はないが、農夫の方の怒りは何かしらの安心によって収まり、
理由の判明しない包帯男も、あの足取りに考えの無しな雰囲気を見れば、
しっかりと冷めているのが窺えた。
「くすくす、神にもなれる、ですか」
しかし最後の巴津火の言葉に対する神代の笑いには、
どこか悪辣な、それでいて無邪気な雰囲気が見える。
農夫は神代のその笑みを見て、また彼も静かに笑ったのであった。
「なんだ?俺たちは今ここに巴津火の前にいるじゃないか!
近眼なら俺のほうが近づいてやるぞ!!」
「多分今お前以上の近眼はいねえ」
一方水溜りの変化に気付かず、
巴津火の言葉通りに馬鹿らしい返答をして歩み寄る包帯男。
「あはは、くすぐったいです、止めてください。
は、巴津火さんだって稀璃華さんだって男の子じゃないですか」
そんな包帯男とは違う地点では、
嫌がるでもなくただ困ったように笑う神代の姿が。
巴津火のような拒否反応はないらしい。
今まで女性男性関わらず、しっかりと肌で触れ合ったことのない神代にとって男性であろうが、
それが同性との触れ合いであっても拒絶反応は出ない。
だがある意味巴津火と同じように、こしょばいのは苦手なようだ。
「おいおい稀璃華、いつまで坊ちゃんを抱き枕にしてんだ」
しかし農夫は無理やりにでも稀璃華を神代の体から剥がす。
まだあの肌の感触が残る神代は笑いながら、農夫に伴って黒炎を発した。
人の伸長の大きさまで炎を大きくさせると、
彼らは炎に飛び込もうとする。
739
:
巴津火「」 叡肖・ミナクチ
:2011/11/19(土) 12:20:50 ID:1gBuqmPQ
>>737-738
「誰が!!!お前にっ!……おい包帯」
今この場で一番余裕のありそうな稀璃華に、一番余裕の無い巴津火が噛み付くように答える。
もはや包帯男のボケに突っ込む余力はない。
そして帰り支度の神代に巴津火は、最後に念を押した。
「あの建物を作る約束は守れよ。場所は決めておくからな」
いつか敵対するであろう友達と判っていても、このいじめっ子は神代から
目を離すつもりは無いらしい。
「いるなら出て来い。帰るぞ」
その声に答えて、さして深いとも思えない先ほどの水溜りから現れたのは、
等身大の少年の姿のミナクチと、彼を乗せて半ばまで水面に現れた衣蛸の殻だった。
「蛸、お前ガラス玉に何か細工してたな。水蛇が海水だったぞ」
巴津火は半眼のまま、恨めしげに衣蛸を睨む。
『そりゃだって殿下が暴走したら止めるのが俺の役目だしぃー?
あのガラス玉に力を封じるの手伝ったの俺だしぃー?
普段から殿下の行動パターン見てたら、あらかじめ保険掛けておくなんて当然ですよねー』
殻からぬるりとその身を覗かせた大蛸は、その触腕をゆるゆると伸ばして巴津火を抱き上げる。
「お前のせいで傷に塩が沁みるじゃないか」
目を閉じて尚怒りながら、巴津火は衣蛸の殻の中へと引き込まれていった。
『私は稀璃華さんと穂産姉妹を夜行集団へ送り届けてから参ります』
衣蛸のためにこの水溜まりと川を水脈の道で繋げながら、下級の水神はそう伝える。
『判った、なるべく急いでくれ。
このまま宮に戻ると爺ィが煩いし、急ぎだからまず小鳥遊の所で応急処置させる』
水溜まりに沈んでゆく衣蛸に一つ頷くと、ミナクチは稀璃華を招く。
稀璃華の手を借りて夜行集団の本拠地へと姉妹を送り届けるつもりだ。
740
:
稀璃華
:2011/11/19(土) 14:01:12 ID:HbHPxpxY
>>738-739
「うおぅ!?」
農夫に引っぺがされた稀璃華は残念そうにしつつも、楽しそうに笑っていた。
「ははーん、農夫のおっさん、僕が神代に抱き着いたのに嫉妬したの?これだからツンデレおっさんはっ☆」
そして、稀璃華の抱き枕となる残念な農夫だった。
「・・・・・・・・・っと、僕も帰ろー。よろしく、えーと・・・可愛い男の子☆
神代達もまたどこかでな。今度会ったら、たくさん遊んでやるからな。」
本当に男は可哀相だと思う。姉妹を呼び、ミナクチへと送られるだろう。
741
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/19(土) 17:09:07 ID:EK/9fLvc
>>739
「?なんだ!?
俺の顔にはなにもついてないぞ!!布以外な!!」
「ほいほい、訳分からねえ事言ってねえで帰るぞ。
それとおらたちの母国じゃあ、そんくらいは普通だ。
なんならヨーロッパにでも吹き飛べよ、稀璃華」
さっぱり返答の意味を理解していないので、立ち止まって聞き返そうとする。
そんな包帯男の後頭部を軽く小突きながら、
稀璃華に馬鹿にしたような指差しと惜しみない呆れかえりを送った。
「くすくす、なんにせよ約束は守りますよ。
建物を建てるのに苦労はありません、目印ぐらいはつけておいて下さいね」
口元に手をあてて笑えるほどにゆとりを取り戻して、
神代は去り際に巴津火に念を押す。
そして隣の彼に対して別れの笑みが巴津火より少し輝いているのは、
スキンシップを好きなだけ出来た稀璃華に、神代が懐いたからかも知れない。
そんなやり取りをして炎の中に消えたのは、
叡肖たちが水たまりから姿を現すほんの数秒前であった。
「『・・・。』」
未だに意識を戻さない穂産姉妹は叡肖の言葉通り、
重くはないがやはり本拠地まで届ける、
その手間を彼らに負わせることになるのである。
/僕はこれを落ちにさせてもらいます。
/とても長い間付き合っていただき本当にありがとう&お疲れさまでした
742
:
ミナクチ
:2011/11/19(土) 18:06:23 ID:1gBuqmPQ
「え?はい。稀璃華さんにはお初にお目にかかりますね。
私はミナクチ、巴津火殿下に仕えております」
可愛い男の子と呼ばれてしばし戸惑ったミナクチは、稀璃華に一礼した。
「夜行集団の皆様にはこのお二人を護るとお約束していたのですが、
正直申し上げて危ういところでした……」
主の暴走にやや疲れた表情である。性格的に蛸よりもストレスに弱いのだろう。
「初対面の方にお願いしてしまってすまないのですが、
どうかこちらのお二人を支えていて下さいませんか」
稀璃華には姉妹神を頼み、自らは穂産姉妹の神体を丁寧に白布に包んで大事そうに抱くと、
そのの足下の水溜りが揺らいで、雨に煙った夜行集団の本距離が映しだされる。
そして次の瞬間にはもう水をぬけて、店の扉が全員の目の前であった。
//お二人とも絡みどうもありがとうございました!
743
:
稀璃華
:2011/11/19(土) 18:51:48 ID:HbHPxpxY
>>741
「ヨーロッパ?田舎者の僕でも行けるのか?」
懐く懐かないは別として、あそこまで普通にスキンシップさせてくれた子供は久しぶりだ。
今だにぷにぷにっとした感触の残った手を振り、神代と別れた。
「なんだな、呼びにくいな。
よし、ミナチー!運んであげるから、これからはこう呼ぶぞ!」
姉妹を支えながら、訳の解らぬことを言う稀璃華。
(春宇知厄もまたな。)
ミナクチに続き、そこに入ればホストの扉が。
中にはきっと、露希達が待っているはずだ。
//中々参加できず、長引かせてすいませんでした。
夜行さん、蛇さん、長い間お疲れ様でした!
744
:
巴津火
:2011/11/21(月) 23:33:11 ID:1gBuqmPQ
退屈しきった我侭なお子様は、白いベッドの上で泣き言を言っていた。
「こざると一緒の部屋がいい!お菓子欲しい!暑い、痒い、蛸、どこ行った!」
しかし、誰も応答しない。
ナースコールはとっくに鳴らせないようにされてしまった。
ベッドの傍らには水を注いだガラスボトルが置かれ、監視役の水神は水を通して
何時でもこの子供の様子を見ることが出来る。
「うーーっ!!」
右の肩から腕には分厚く包帯が巻かれ、その長さは上腕の半分しかない。
今の巴津火は唯一自由になる左手で、上掛けをばたばたと叩くことしかできないのだ。
それもやりすぎると、他の傷に響く。
病室の扉の前に誰かが来た時、一瞬、期待するようにその子供の表情が輝いた。
745
:
巴津火
:2011/11/21(月) 23:35:02 ID:1gBuqmPQ
//投下ミス 取り消します
746
:
結婚式当日
:2012/01/02(月) 22:20:44 ID:BQ990e1A
新年があけて、数日が経った。
そんなおめでたい時期に、更におめでたい事が。
それの始まりは刻々と迫ってきている。
―――ここは少し山奥にある大きな教会。
辺りには森や湖が広がり、天気も快晴。
本日はここで、結婚式が行われる予定である。
スタッフA「本日、ここで行われますので、参列者の方々はここへ。」
スタッフB「では奥から座っていってください。式はもうすぐです。」
露希「(すっごぉい、こんな大きなところでやるだなんて♪)」
黒龍「(俺も零と…)」
零「」ニコニコ
スタッフの誘導と共に、参列者は席へと移動する。
全員が座った時、式は始まる。
747
:
田中家
:2012/01/02(月) 22:41:19 ID:c1.PBF/s
>>746
そんな人生の幸せを祝福する場所の親族席。
そこに人間……だけどなんか首を傾げたくなるような人達が座っていた。
祖父(父方)「……………………」
祖母(母方)「おやぁ?澪くんの関係者かねぇ?」
下駄をはき、右手に縦に長い何かが包まれたモノを持ち、白いい袴に、長い白髪で白目のおじいさんと
小柄で、花柄の着物を着て、椿の簪をオカッパの白い髪につけ、狐の御面をかぶった女性。
一人は明らかに人の身でありながら鬼に近い存在。もう一人はおばさんみたいな喋り方なのに明らかに声が若い。
けど座ってるのは祖父母の席…
そしてもう一カ所の祖父母の席には…
祖父(母方)「ヘーイ!!!そこのカワイイ子!!僕とお茶………イタタタタ!!!冗談だからヤメテー!!マイハニー!!!」
祖母(母方)「まったく……孫のめでたい席どアナタは…」
黒いスーツに、サングラスをして、三日月のような白い髭を生やした陽気なイタリア人のおじいちゃんと
桜色の着物を着て、少し人間とも妖怪ともつかない中途半端な雰囲気の優しそうなおばさんが座っていた。
従業員のお姉さんにナンパしようとしたおじいちゃんはおばあさんに膝を抓られていた。
田中「おーい!零!露希!黒龍!!こっちだよー」
田中母「おや?あの子達が澪くんの友達かい?」
いつもの田中くんと火傷傷が目立つ田中母が三人に気付いた。
748
:
宝玉院 三凰
:2012/01/02(月) 22:46:53 ID:SmXQZqJk
>>746
,
>>747
「澪の奴、ついに結婚か。」
ゆっくりと辺りを見回し歩いてきた三凰。
「で、友人代表のスピーチは僕が読んでいいのか?」
立ち止まり、スタッフに尋ねる。答えを聞いたら席へ移動するだろう。
749
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/02(月) 22:56:42 ID:3FBgi9l6
>>746-748
『蛸ー…。これ苦しいー』
「こら、タイを勝手に解くな。これでも束帯よりは楽なんだぞ」
会場が教会なので二人とも人間の姿、かつ洋装ではあるが、
しっかり糊付けされて硬いカラーとその上のタイが、逆鱗を持つ巴津火には少々苦しいものらしい。
勝手に服の喉元を緩めようとする巴津火を、せめて式の間だけはきちんとさせようと叡肖は苦労している。
「結婚式がどんなものか見てみたいって言いだしたのは坊ちゃんだろ。そんなじゃ姫に笑われるぞ」
『だってこれ、喉にあたるんだもん…』
同じ蛇である雨邑なら、逆鱗に何かがあたる不快さは判ってくれる筈なのに、と口をへの字に結んで
幼い竜宮の次期当主はせっかく緩めたタイを、再びきっちり締め直す守役を恨めしげに睨んだ。
「公の場ではきちんとしないと、恥かくぞ」
叡肖に背中を押され、巴津火は席へと着かされる。
〔露希がいるぅ…〕
流石にこういう場所で露希も抱きついたりはしないだろうが、
巴津火の気持ちをさらに凹ませるには十分な存在だった。
元気のない巴津火を他所に、叡肖のほうはへらへらと田中家の面子へ愛想よく会釈している。
750
:
名無しさん
:2012/01/02(月) 23:16:53 ID:BQ990e1A
>>747
露希「あ、田中君だ。今行くねー。」
黒龍「よ、夕。お前の姉ちゃんが結婚だなんてな、驚いたよ。」
零 「夕君のお母さんですね?初めまして。」
三人は夕に気づくとそちらへと移動した。
黒龍はとんでもない田中家を見て口をあんぐりしている。
一方で零は礼儀正しく挨拶した。
露希「もうすぐだね。きっと夜さん、奇麗なんだろうなぁ。」
>>748
スタッフC「祝辞の方ですね?それは披露宴で行う予定になっております。」
先程ナンパされてしまった若い女性スタッフは
きっちりと三凰に説明した。
丁度零の隣の席が空いているはずだ。
零「」ニコニ……ずぅぅん
それを知った零はなんというか、落ち込んでいる。やっぱ怖い。
>>749
露希「叡肖さんに巴津火君!こっちです。(ピリっとしてる巴津火君萌えッ)」
黒龍「よっ、巴津火。なんか似合わないな〜(笑)」
零 「三凰が…ぇぇぇッ?」
一人を覗き、にっこり挨拶。
確かに式場は儀式の様な堅苦しい場で、まだお子様の
巴津火には辛いかもしれない。もとい、露希まで。
しかし、まだいるのだ。ちっちゃくて気づかれていない白髪の男の子。
巴津火の声を聞くと、直ぐに振りかえった。
夷磨璃「巴津火お兄ちゃんっ、わぁい♪」
説明しよう。夷磨璃は、纏さんの許可を得て、ここへやってきたのだ!!
751
:
田中家
:2012/01/02(月) 23:40:20 ID:c1.PBF/s
>>748
田中母「あの子が、澪くんの友人代表の子か
今日は澪さんとうちの娘の結婚式に来ていただきありがとうございます」
礼儀ただしく来た人(妖怪)達に礼儀正しく挨拶する母。
……火傷傷のせいでなんか怖いが…
祖母(母方)「山の妖怪に海の妖怪もいるねぇ?随分澪くんは親友に恵まれてるみたいだね。君から見て澪くんはどんな子かい?」
三鳳に向かいそうきく狐面の女性。
>>749
祖父(父方)「…………………………」
父方の祖父が、ハツビーを睨むように見つめてる。
すると懐から飴を取り出しハツビーに渡そうとする。
田中「ハツビー!おじいちゃんが飴食べて元気出して!だって」
そして田中くんがその行動の意味を通訳した。
祖父(母方)「おやー?なかなか礼儀いいねー!君!!僕と同じ匂いするけど、どうだい?この後一緒に僕と女の子をナンパしにいか……グギャッ!!!!冗談だぜー!!!!!痛いよ!二人とも」
祖母(母方)「まったく…ごめんなさいね。うちの人が」ニコリ
田中母「パパの言ってる事は気にしないで叡肖さん。今日はわざわざありがとうございます。娘の店の常連でお世話になってますし」
叡肖に向かい、なんか感じたのかそう言うが隣のおばあさんと田中母に殴られてるおじいちゃん。そしておばあさんは不思議な気配を出しながらも田中母と一緒にニコッと挨拶した。
あ……巫女Bもいるけど夜の友人達が押さえてるから問題はないよ!
>>750
田中「あれ?黒龍に言ってなかったけ?
露希もやっぱり女の子だからこういのに憧れるの?」
普通にそんな会話をし、キョロキョロと色々来る人を見ている田中くん。
田中母「わざわざどうも。
今日は澪さんとうちの娘の結婚式に来ていただきありがとうございます」
零に丁寧にお辞儀し挨拶する田中母だった。
752
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 01:35:59 ID:3FBgi9l6
>>750-751
(,>>三凰)
「やあ露希ちゃん!それじゃお誘いに甘えて」
叡肖が誘われてしまったから仕方ない。
喉元を締め付ける礼服でできる最大の溜息をつきながら、巴津火は席を移動する。
『るっさいっ。好きでこの服着てるんじゃないやい』
黒龍の冷やかしには、じろりとにらみ返して拗ねた返事をする。
ここが式場じゃなかったら黒龍の逆鱗をくすぐってやるところなのだが、巴津火はぐっと堪えた。
気に食わなければすぐ暴れていた以前に比べれば格段に成長しているのだ。
ただし、その身長だけは別だが。
『こざる来てたのか。……あまり無理するなよ?辛くなったら言うんだぞ?』
ここで現れた苛立ちを拭ってくれる存在に、巴津火はどこかほっとしたような表情を浮かべる。
一時は失われていたその右手で夷磨璃を招き、顔を寄せてかがみこむと、
巴津火は夷磨璃の額に自分の額をそっと当てた。
〔熱は…ないな。顔色も、大丈夫そうだ〕
夷磨璃を伏し目がちに観察し、無言で顔を寄せているその様子が、
巫女Bさんや露希の変なスイッチを入れてしまう可能性には気づいてすらいない。
『飴?…どうもありがとう』
伏せていたその視線を上げさせたのは、田中君だった。
田中君とお爺ちゃんへ戸惑いがちに、しかし表情を和らげて巴津火は礼を言い、
貰った飴を夷磨璃と分け合おうとする。
「ナンパ!いいですねー、では早速こちらのお嬢さんなんてどうです?」
叡肖は叡肖で、イタリアン爺ちゃんに意気投合しつつも、茶目っ気たっぷりに
お婆ちゃんの手をお爺ちゃんに握らせようとしている。さりげないイタリアン爺ちゃんへの牽制だ。
(そういうのはねー、隠れてするのが嫁さんへの礼儀ってもんだと俺は思うのよ)
決まった相手がいる場合、余所見はそれを感づかせないようにするのが叡肖の信条。
逆に言えば相手を決めていないうちなら、それこそ遊び放題というものだ。
「こちらこそ何時も美味しい珈琲を飲ませて貰ってますよ?
ノワールに通えない間は他の珈琲じゃ物足りなくてホント困りました、ハハッ」
卒なく田中母に答えているうちに、三凰に気づいた叡肖。
「三凰殿、スピーチ期待してるよっ」
田中家親族に会釈して場を辞し、三凰へと軽く手を振ってから、叡肖は席に着いた。
753
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 13:30:10 ID:SmXQZqJk
>>750
「そうか、わかった。答えてくれて感謝する。」
無表情ながらも珍しくちゃんと礼を言い、そのまま零の隣の席まで行き座った。
「…貴様も来ていたのか。」
特に嫌そうな表情をするでもなく無表情のまま零に言った。
>>751
「随分と妖怪に慣れているようだな。
僕から見た澪?そうだな……絆や繋がりを大切にする奴、かな。ま、それは今日ここに集まった面々を見たら分かるな。」
これも、澪の人柄が良かったからだろう。それに三凰は澪に出会えて良い方向へ変われたのだ。
>>752
「フッ…期待しているがいいさ。」
いつも通りの三凰。緊張とかはしていないようだ。
754
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 14:00:36 ID:HbHPxpxY
>>751
黒龍「聞いてないし!!」露希「お嫁さんは女の子の夢だからね。ボクもいつか・・・・・・キャッ/////」
黒龍はちょっぴりぷんすか。いや、聞いたところで誰得って話だけど。
一方、別の待合室にて。
スタッフ「そろそろ式が始まりますよ。」
澪「はいっ!夜のパパさん、どうかよろしくお願いしますね!」
ぴっちりとした姿で、縛っていた髪も、切られている。
澪は夜に軽くウインクして、一足先にスタッフへついていった。
>>752
黒龍「ぷっwwww」
露希「叡肖さん、中々似合ってますよ、巴津火君も☆」
夷磨璃「ひゃぁ/////お兄ちゃんっ?どうしたでござるかっ!?」
巴津火がなぜおでこを付けたのか、夷磨璃には解らない。なぜか体が触れ合ったことで顔を真っ赤にする。
夷磨璃「せ、拙者は大丈夫でござるよっ!お兄ちゃんも無理したらダメでござるからね!!」
露希「(腐・・・/////)」
>>753
零「ちっ、お前、ふざけんなよ!?(あ、本性が)」
三凰への色々な想いがついに言葉へ。
これはまずい。
零「おい、式終わったら覚悟しとけよ?」
うん、三凰君、スルー奨励。
スタッフ「では、人数が揃いましたので、式を開始致します。本日、御結婚なさる婿さん、入場です。」
入口の扉が開き、そこから現れたのは、澪とフォードさんが出て来た。
どうやらフォードさんは牧師のようだ。中々様になって・・・いるのか?
755
:
田中家
:2012/01/03(火) 14:33:01 ID:c1.PBF/s
>>752
ハツビーと夷磨璃の行動に反応し、巫女Bは息を荒げながら暴走しようとしてるが、友人の結婚式のためなんとか押さえてるようだ。
祖父(父方)「………………」
表情は変わってないのに(*・ω・*)←こんな風にしてるような気がする
田中「ハツビー。なんか雰囲気変わったね。しっかりしたというか何と言うか。なんかあったの?」
不思議そうにそう話す田中。脱皮のことも、神代との因縁も彼はまだ知らない。だが何かハツビーが成長したような気がしてそう聞いたのだ。
祖父(母方)「オー…、フハハハハハ!!コレは一本とられたぜー!!!」
祖母(母方)「ふふふ。わざわざお気遣いありがとう」ニコリ
そういいながら、結局二人は仲良く手を繋いでたりしてる。なんだかんだ言いながらこのおじいちゃんは妻を大事にしてるようだ。おばあさんもそれがわかってるみたいだが…
田中母「よかったら今後ともよろしくお願いします」
>>753
祖母(父方)「私は忍の里出身だからねぇ。妖怪とも関わって暮らしてるからねぇ
それもそうだねぇ……ありがとうねー。スピーチとやらを頑張りなさいな」
そう言うと三鳳の肩を叩き戻っていった。
>>754
田中「ごめんね…黒龍」ナデナデ
何故か黒龍の頭を撫でて機嫌をよくしようとする。
田中「じゃあ今日の姉さんが投げるブーケとるの頑張ってね」
《待合室》
田中父「ええ。こちらこそよろしく頼むよ。澪くん」
黒髪で、スーツ姿の優しそうな糸目の男性がそう澪に言う。
夜「いってらっしゃい♪私もすぐ行くからね〜」
純白のウェディングドレスをきて、普段しない化粧をし、眼鏡からコンタクトにした夜がいた。
756
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 15:44:37 ID:3FBgi9l6
>>753-755
巫女Bさんの妙に荒い鼻息には気づけても、その原因は巴津火には判らないのだ。
こちらをガン見する視線に、ただ不思議そうにちらりと見返すだけである。
『大丈夫じゃないだろこざる、急に熱あがったか?座っとけ』
巴津火なりの気遣いで、赤い顔の夷磨璃をひょいと持ち上げて、右隣の席に座らせようとする。
そして自分の分の飴の包み紙を剥がしながら、田中君の問いにも答えた。
『うー?ボクそんなに何か違う?確かに色々あったけど』
これからもまだ色々あるのだ。
雨邑の刺した釘と神代のことを思うと少々心が重く、苦い表情で目を伏せる。
その思いをぶち壊すように、衣蛸の一言がちくりと刺した。
「一皮剥けたんだよな、それも失敗しかけてw」
『黙れ蛸』
実質これといって何も変わっていない巴津火は、さっと頬に血を上らせて額に青筋を立てる。
脱皮の失敗は蛇にとっては恥ずかしい話なのだ。
茶々をいれた叡肖は、しれっと巴津火の左の席で花婿の入場を待つ。
やがて厳かに入場する牧師と、新郎の澪。
初めて目にするその様と、口に放り込んだ飴玉とに、お子様は不機嫌を忘れた。
『ぷふっ、澪すげー格好w』
「しーっ」
口内の飴のお陰で響かなかったその声は、幸いにも祝福の拍手にかき消される音量だった。
田中家父方祖父のくれたヴェ○タースオリジナル、GJ。
あまりにもいつもと違いすぎる澪の様子が巴津火には面白かったようだが、
式の形式は違えどあれが明日のわが身であることに、このお子様は果たして気づいているのだろうか。
(三凰のスピーチの間も、何もないと良いんだが。頼むぜホント)
叡肖は叡肖で、巴津火が最後まで落ち着いていてくれることを願っている。
零と三凰の間の静かな火花が、巴津火へも飛び火する可能性は高いのだ。
757
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 15:52:19 ID:SmXQZqJk
>>754
「はぁ?僕が何をしたと言うんだ?」
露骨に嫌そうな顔をし言う。
「…決闘なら受けて立つが、今日は武器を持ってきてないんでな。また今度だ。」
>>755
「忍の里…?」
(そんなもの現在もあるのか?)
「ああ、まかせておけ。」
忍の里に疑問を覚えつつも自信満々に言った。
>>756
「澪の奴、なかなか似合っているじゃないか。」
巴津火とは違った反応をしながら澪を見ている。今のところ飛び火の危険性はなさそうだ。今のところは。
758
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 16:06:14 ID:BQ990e1A
>>755-757
バージンロードを歩いてくるフォードと澪。
教会にはよくあるステンドグラスの中心にフォード、右側に澪が立つ。
これで準備は整った。
次は新婦さんの入場である。
一般的には新婦とその父が腕を組み入場→新郎と父が礼をして新婦受け渡し。
…といった手順である。
新郎さんにとっては凄く緊張するところだと思うが、
澪はいつも以上にのんびり笑顔である。
それはありのままの自分を見せる為であって、
この式を準備してくれた方や参列者、田中家に感謝しているからである。
……それ以前に。
澪「(夜のこと、誰よりも愛してるから。)」
759
:
田中家
:2012/01/03(火) 16:38:43 ID:c1.PBF/s
>>756
>>757
>>758
そして、新婦の入場がはじまった。
いつもの恰好と比べ、化粧をし眼鏡からコンタクトに変えた花嫁姿の夜が
黒髪で、スーツ姿の優しそうな糸目の男性と共に入場してきた。
夜はどこか緊張しているのか、動きは少しぎこちない…けど新郎の顔を見て、緊張がとけたようにホッとした表情になっていた。
田中父「……娘をよろしく頼むよ」
ボソッとそう言うと、一礼するだろう。
何事もなければそのまま新婦引き渡しが行われるだろう。
760
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 16:52:15 ID:3FBgi9l6
>>757-759
〔澪の奴、にやけ過ぎ〕
(人間の冠婚葬祭はいろんな形式があるもんだな。後で詳しく書いておくか)
記録の担当もする叡肖にとって、この人妖婚は貴重な経験の場だ。
人と妖の距離がどんどんと広がりつつある昨今、このように双方から祝福された
珍しい例については、事細かに記して残しておかねばならない。
(好事魔多し、この先邪魔が出ない事を俺も祈るか)
人なり妖なり神なり、この先の夫婦の縁に横槍を入れる者が出た場合は、
こうして参列し祝福している以上、竜宮は澪たちの後ろ盾となる立場だ。
(…そうなった場合、坊ちゃんは喜んで守るんだろうが、下の者には災難だな)
『わぁっ!こざる見ろよあれ、すっげーっ!』
場が沸き立ち、現れた華やかな花嫁にすっかり視線を奪われている巴津火を、
叡肖は冷静に、幾分の危惧を含んだ視線で見ている。
(いつか、天からの通達でこの夫婦の子孫の住む地に災害を起こすよう
求められた時、この思い出は坊ちゃんの枷となるわけだ)
神代の件など、これからの巴津火の担う責務を思えば、まだ小手調べのようなものだ。
今は物珍しげに目を輝かせている巴津火の、瑞々しい子供そのものの表情が、
この先失望と諦めの中に傷つき失われゆく様を、叡肖はずっと見守ることになる。
(まったく、爺ィも因果な役目を押し付けてくれやがったもんだ)
祖父アッコロカムイの口車に乗ったことの意味、その持つ苦さと重みを
この華やかな空気のなかで、叡肖自身もようやく悟ったのだった。
761
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 17:00:53 ID:SmXQZqJk
>>758
,
>>759
,
>>760
(澪、もっと緊張してるかと思ったが大丈夫そうだな。)
密かに澪のことを心配していた様だが、澪の様子を見てその心配はなさそうだと安心した。
(まぁ、澪のことだし心配する必要はなかったか。)
762
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 17:20:41 ID:BQ990e1A
>>759-761
深々と夜のパパさんにお辞儀をした。
その返答には短く、こくリと頷いた。
夷磨璃「わぁっ、てんちょーさん、奇麗でござるねっ。」
夷磨璃が見ても奇麗だと分かるくらいの姿。
その姿を誰よりも間近で見ている澪は本当に幸せ者である。
二人が祭壇に立つと、司祭であるフォードはにっこりと微笑み、
聖書を読み始める。
露希「巴津火君、夷磨璃君、目を閉じて二人を祝福するんだよ。三凰さんもね。」
小声で露希はそう伝え、目を閉じた。
やはり天使なだけにそこそこは知っているようだ。
そして静かな教会にフォードの声が鳴り響き終わる頃、アレが来るのだ。
フォード『夜さん、澪さん、貴方方はお互いを永遠に愛し続けますか?』
澪は、そっと夜の手を握る。
一緒に言おう、と言う合図かなにかだ。
きっと夜さんが望めば、一緒に言う筈だ。
763
:
セツコ中
:2012/01/03(火) 17:35:45 ID:c1.PBF/s
>>760
>>761
>>762
静かに聖書を聞いている。
先程さわがしかった祖父母もこの時は静かに聞いていた。
祖父(父方)「…………………」(´;ω;`)ブワァッ
おじいちゃん!?もう泣いてるの!?早くない!?
そして誓いの言葉が始まり、澪が手を繋いでくれ、暖かさが肌まで伝わり、彼の意図に気付き、小さく頷く。
そして、澪と一緒に言うだろう。
「はい♪誓います」
764
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 17:38:13 ID:3FBgi9l6
>>761-763
『祝福するのに、あいてを見ないで目を閉じちゃうのか?』
祝福する対象をしっかり見据えなくて良いのかと、巴津火は不思議に思う。
それに、何もかもが物珍しくて目を閉じるのが惜しいのだ。
「坊ちゃんは坊ちゃんで祝福すりゃいいんだ。ただしあまり目立つなよ」
慌てて耳元で囁いた叡肖に頷き返した巴津火は、一つ息を吸うと掌を地に向けた。
もう片手は天を指す。
呼応した地下の水、天の雲行きが共に夫婦を寿ぐ。
見えない場所の水が障りを拭い、太陽を一時隠した雲が晴れると、
ステンドグラスから差し込んだ日差しが、宣誓する新郎新婦をさっと照らした。
辺りには清浄な気配が、大地から染み出すように満ち始める。
それでよし、と叡肖は教え子に及第点を出した。
765
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 17:45:02 ID:SmXQZqJk
>>762
,
>>763
,
>>764
「………」
黙って静かに目を閉じ、二人を祝福した。
(おめでとう……澪……)
766
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 18:01:10 ID:HbHPxpxY
>>763-765
澪「誓います♪」
巴津火の行った行為のお陰で、ステンドグラスから暖かい光が差し込む。
このタイミングで、スタッフの一人が夜の近くへ近づく。フォードも同時に、祭壇にある物を持って来た。
誓いの後は指輪交換&キスなのです!!
スタッフは夜の持っているブーケ、それから手袋を預かりにきたのだ。
それを預ければいよいよ・・・。
フォードは婚約指輪をそれぞれに手渡した。
澪「夜、手を出して。指輪交換♪」
767
:
田中家
:2012/01/03(火) 18:15:31 ID:c1.PBF/s
>>764
>>765
>>766
夜はブーケと手袋をスタッフに渡し、頬を赤く染めながら
指輪を受け取った。
夜「はい♪」
そう言って、夜は手を出すだろう。
/ちょっとご飯落ちしますOTL
768
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 18:21:05 ID:3FBgi9l6
>>765-767
(こらこら、ここで蛇になるなよおい)
手渡される小さな結婚指輪が、近眼の巴津火にはあまり良く見えない。
あれは一体何だろうと目を眇めて首を伸ばし、あわや立ち上がろうとするその襟首を、
叡肖はすかさず捕まえる。
『ねぇ蛸、あれ何?』
「指輪だ、結婚指輪。結婚の誓約のしるし。
いいから大人しくしてろ、きょときょとするなっての」
小声のやり取りの後、むりやり椅子に尻を落ち着かされた巴津火は、目を丸くして見つめている。
//わかりました、こちらも1時間ほど落ちます。
769
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 18:53:55 ID:SmXQZqJk
>>766
,
>>767
,
>>768
(いよいよか……父上と母上もこんな感じだったのだろうか?
母上……どんな方だったんだろう…)
自分の記憶にない母親のことを考えつつ、結婚というものの深さを考えた。
770
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 19:24:51 ID:HbHPxpxY
>>767-769
澪「よし♪今度は夜の番だね。」
夜に嵌めると次は澪の番。澪も手を差し出し、入れて貰うだろう。
入れて貰い、キスへと入る訳だが、澪は少しそわそわしている。
澪「夜、そのっ・・・・・・。」
その時だ、婚約する二人と参列者の間を隔てるように、白い煙が上から降り注ぐ。
参列者側からは、二人の影だけしか見えないようになってしまったのだ。
澪「キスは・・・本当の姿の僕と、して欲しいな・・・/////」
露希「綺麗だね。あ、あれって・・・!」
参列者側からは信じられないだろうが(一部)影は大きなヤマタノオロチと新婦になっていた。
オロチの一匹が先の裂けた舌を出して、夜の顔に近づく。
澪「・・・っ」
771
:
田中家
:2012/01/03(火) 20:27:55 ID:c1.PBF/s
>>768
>>769
>>770
夜「ええ♪」
嬉しそうに微笑みながら、澪に微笑み指輪をはめてあげるだろう。
そして、白い煙がおおい
澪が本当の姿でキスしたいという言葉に
夜「もちろん♪」ニコッ
そう言い蛇の舌に怯えることなく、上手く口にいれ舌を絡ませながら口づけをかわした。
田中「なんか凄い演出だね」
田中母「確かにね。なんかロマンチックだけど」
祖父(母方)「なかなか面白いぜ!!!」パチパチ
田中家のこの三人だけはなんかの演出と思っていた。
まあシルエットだからね…
ついでに他の田中家四人は普通に妖怪と気付いてたりする。
/ただいまー
772
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 20:46:54 ID:3FBgi9l6
>>769-771
シルエットになにやら興奮した様子で、小声の会話がひそひそと。
近い席の者には聞こえたかもしれない。
『見るの!?これ、見てるの!?ねぇ!マジ?見てていいの!?』
「あぁ、見てるんだよ」
『本当!?大丈夫なの!?人前なのに!?』
「あぁ、しきたりだから大丈夫だよ」
『そうかぁ!ボク式みるの初めてで色々わかんないから!』
「そうだね。わかってないね」
『うん!でもしきたりなんだ!じゃぁボクの時もしていいんだよね!」
「さぁね。いいんじゃないかね」
『そうかぁ!じゃぁボクも式ではキスしよう!』
興奮した面持ちで招待客やフォード達の様子をきょろきょろと見回そうとする巴津火の頭を、
叡肖はキスの間中がっちり押さえつけておく羽目になった。
(あー…どう見てもうちの主は思春期のお子様だわ)
茹でられても居ないのに、衣蛸は赤くなった。
巴津火のようにシルエットの二人へ目が釘付けなせいではない。
//おかえりなさい
773
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 20:53:37 ID:SmXQZqJk
>>770
,
>>771
,
>>772
(おいおい……ここで妖怪の姿になるのか…
ま、ここに居る者達なら特に問題はないか…)
チラッと田中家の者達を見ながら思う三凰。
774
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 21:27:46 ID:HbHPxpxY
>>771-773
澪「ぷはっ//////」
少し荒い息を上げた澪はそのまま人間に戻ると、ぽおっとしていた。
フォード「これにて、この二人の結婚を認めます。」
そして霧が晴れると、ニコニコした表情のフォードが二人の婚約を宣言した。
おめでとう、夜店長!!
露希「す、凄いっ・・・!ね、ねぇ、黒龍?」
黒龍「俺も零と挙げるんだぁっジュルリ。」
夷磨璃「拙者達がこんなの見ていいんでござろうか/////」
何かと騒がしい参列者だが、フォードの宣言後、暖かく拍手した。
澪「・・・夜っ/////」
そして式は二人の退場で幕を閉じる。
澪は夜さんと手を組み・・・・・・いや、お姫様抱っこ!
775
:
田中家
:2012/01/03(火) 21:52:20 ID:c1.PBF/s
>>772
>>773
>>774
田中「ハツビー達には刺激が強すぎかな?」
ハハハと苦笑いしながらハツビーと夷磨璃を見てる田中くんだったが…
田中「………………うん。うすうすは気付いてたけど黒龍
日本じゃ同性の結婚はできないはずだけど?」
ツッコミ所はそこか!?田中!?
祖父(母方)「いいね!!!サイコーだよ!!!!僕は猛烈に感動したぁぁぁあ!!!!!!ちょっとファミリーにこの感動を国際電話で」
祖父(父方)「……………………」(TДT)
祖母(母方)「アナタ達。静かにしなさい」
祖母(父方)「だらしないねぇ。男共はさぁ」
祖父母たちはなんか騒がしくしている。
夜「////……澪っ♪」
キスの余韻に浸りながら、頬を赤く染め、澪にお姫様抱っこされ退場するだろう。
776
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 22:00:00 ID:3FBgi9l6
>>773-776
興奮冷めやらぬ表情で新郎新婦を見送る巴津火に、叡肖が小さな布袋を押し付ける。
「ライスシャワー用に持ってきたから、後で澪達にぶつけてやれ」
『らいすしゃわー?何それ?』
「この形式の挙式は、新郎新婦の挙式会場から披露宴場への移動のときに、
花とか米を振りまいて祝うんだとさ。
それは式場が用意する筈だから、俺らはこれぶつけてやればいい」
ふーん、と判ったような判らないような表情で、巴津火は袋の中身をざらざらとかき混ぜた。
「露希ちゃん達も、どうだい?豆まきならぬ、真珠撒きでも」
誘いながら叡肖が見せた袋の中身は芥子真珠。
ちょうど米粒ほどの大きさの虹色を纏った白い粒である。
「次はいよいよ三凰殿の見せ場だな」
披露宴でのスピーチは、三凰の担当なのだ。
777
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 22:15:11 ID:SmXQZqJk
>>774
,
>>775
,
>>776
「澪の奴大胆なことするじゃないか。」
澪と夜を見てそう呟く。
「ま、澪らしいな。」
親友の結婚を心から祝い言った。
「ああ、いよいよだ。」
叡肖に向け、自信ありげな笑顔で言った。
778
:
名無しさん
:2012/01/04(水) 13:59:51 ID:BQ990e1A
>>775
黒龍「そんな常識、通用する訳ないぜ♪だって俺は魔法少zy(ry」
露希「お姫様抱っこ〜//////
そ、それより田中君のおじいちゃん泣いちゃったりしてるけど大丈夫?」
式が終わった途端、急に騒がしくなるのだ。
澪「披露宴はもうすぐだね。一緒にケーキ食べたり、ぎゅってしたり♪」
澪は澪でこの後が待ちきれないらしい。
>>776
露希「ぉぉっ!やりたいです、叡肖さんっ!!」
零 (思ったけど叡肖さんって結婚とかする気あんのかな。)
式で真珠まきなんてしたことがない露希は
わくわくしながらその案に乗った。
>>777
黒龍「スピーチ、お前がやるのか?噛むなよ♪」
夷磨璃「緊張しないでござるか?」
決して馬鹿にしたつもりはないが、そう聞こえるかもしれない。
スピーチはかなり重役だったりする。
スタッフ「では披露宴会場へと向かいます。準備したバスへお乗りください。」
…とは言っても、披露宴会場はここから湖の反対側のホテルで行うらしい。
きっとすぐにつくはずだ。
ついたら、スタッフの誘導があり、席まで案内があるだろう。
779
:
田中家
:2012/01/04(水) 23:01:50 ID:c1.PBF/s
>>776
>
>>777
>>778
田中「俺もやりたい」キラキラ
祖母(父方)「真珠とは洒落てるねぇ。私もいいかい?」
メリー「私もやりたいんだよー」キラキラ
叡肖が真珠をライスシャワーにするときいて田中くんと巫女Bと一緒に友人席の方にさりげなくいたメリーが目を輝かせた。
そして興味をもったのか狐面の女性(田中祖母)が真珠を見て自分もいいか?と聞いてきた。
田中父「おや?君が澪くんの友人代表かね?スピーチ頑張ってください」ニコッ
三凰にスッと足音立てずに近づきニコッと微笑み浮かべた新婦の父が挨拶しにきた。
田中父「君にとっては余り娘とは面識はないと思うが、澪くんと一緒に娘と仲良くしてやってください」
紳士のような丁寧なお辞儀をし、そう三凰に頼んだ。
田中「魔法少女だったの!?」ガビーン!!
信じるな!!田中!!!
田中「大丈夫だよ!おじいちゃんはいつもの事だから」
祖父(父方)「……………」(TДT)
そう言うが、おじいちゃんは何処からか《孫成長記録帖》と筆で古めかしく書かれた本を取り出し見て泣いてる。
澪が見たら喜びそうな小さい頃からの夜の写真が!!
何故か白黒だが…
というか両親より先に泣くおじいちゃん……
夜「うん♪食べさせっこしましょうね〜
あと…優しくね///」
頬を染めながら周りにお構いなしにイチャイチャするのは変わらず、澪に抱っこされながら向かうだろう。
田中家や夜の友人たちもスタッフに案内され向かうだろう。
780
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/04(水) 23:31:19 ID:3FBgi9l6
>>777-779
『魔法少女っ?黒龍って女?』
芥子真珠を一握りとってから、巴津火は真珠の袋を露希へと渡す。
「もちろん皆さんのもありますよ、順繰りにどうぞ。メリーちゃんから回そうか」
そして叡肖も、もう一つの袋から一握り真珠をとって三凰に差出し、残りを袋ごとメリーに渡した。
これで皆に回るだろう。
この他に式場側の用意するライスシャワーや花もあるのだ。
『その記録帖、ボクにも見せて!』
式場から音楽に送られて出てゆく新婚夫婦に、ライスシャワーの祝福を振りまいた巴津火は
田中家父方祖父の所へよってゆき、お爺ちゃんの手元を覗き込もうとする筈だ。
「夜店長、お幸せになー。俺に祝福される女性は数少ないんだぜ?」
叡肖もお姫様だっこの新婦に、気障なウインクをかましつつ、粉を…もとい、芥子真珠の雨を降らせる。
祝福される女性の数が少ない理由は、この蛸の場合、口説く女性の数のほうが圧倒的に多いせいだろう。
781
:
宝玉院 三凰
:2012/01/05(木) 13:00:51 ID:SmXQZqJk
>>778
,
>>779
,
>>780
「フッ…僕はいずれ百鬼夜行の主になる男だ。スピーチなんてどうってことないな。」
三凰を応援する皆に余裕の表情を見せる。
「フッ…華やかなライスシャワーじゃないか。」
そう言って、一握りの真珠を受け取りライスシャワーを振りまいた。
782
:
名無しさん
:2012/01/05(木) 13:37:17 ID:HbHPxpxY
>>779-781
黒龍「実はな、m「嘘は駄目だよ、黒龍。」」
何かを言おうとしたが、零の制止が入る。
勿論、魔法少女ではない。魔法使えるけど。
露希「いつか氷亜さんとこんな・・・・・・/////」
妄想世界に突入してしまった。
主役の澪、夜が会場に到着、いよいよ披露宴である。
フォード「皆様、この度はこの会場にお集まりして頂いたこと、真に感謝致します。先程、式を無事に終えた夫妻から一言どうぞ。」
澪「皆様、どうもありがとうございます♪僕は凄く感動して、ぐすん、います・・・っ」
夜さんも一言どうぞ。
それが無事に終了したら、新郎側、新婦側の順でスピーチが。三凰の出番だ!
783
:
田中家
:2012/01/05(木) 15:48:19 ID:c1.PBF/s
>>780
>>781
>>782
メリー「わかったんだよー」
袋を貰うと、小さな手で真珠を掴み、祖母(父方)へと渡しそこから次々と回されていくだろう。
祖父(父方)「……………………いいぞ」グスッ
(´;ω;`)←な顔でハツビーや近くの人達に見えるようにアルバムを見せてあげた。
そこには
クロコと一緒にお昼寝してる赤ちゃんの夜。
手裏剣を持ちながら笑顔の赤ちゃんの夜。
着物姿で綿飴を食べてる5歳くらいの夜。
忍装束みたいのを着て木の枝からぶら下がってる5歳くらいの夜。
着物を着て茶道をしてる小学生の夜。
父親と母親と手を繋いではしゃいでる小学生の夜。
髪をミツアミにし、眼鏡をかけた中学生の時の普通な感じの夜。
などだ。多分澪に見せたら鼻血モノだが…
様々な皆が知らない過去の夜が写っていた。
きっと中学生の時まで田中くんみたいな普通じゃない普通な子だったんだろう。
田中「ええー!嘘なの…」
黒龍の魔法少女発言が嘘だとわかり、なぜかがっかりする田中だった。
夜「叡肖さん!!ありがとうございます〜!!」
ライスシャワーならぬ真珠シャワーを浴びながら感謝の気持ちを伝え、会場へと移動した。
そして、会場につき披露宴が始まった。
フォードさんに促され、夜からも一言言う事にした。
夜「……コホン。皆さん今日はお忙しい中わざわざ式に参加していただきありがとうございます。
私達がこうして無事に結婚式が迎えられたのも……皆さんの……お…かげです。」グスッ
普段と違い間延びした喋り方ではなく、真面目にスピーチをするものの、涙を堪えながらも感極まり泣きそうな声で喋り始める。
夜「この先……辛い事が…ありゅかも…しりぇましぇんが…ヒグッ……
皆さん!どうか……私達を…澪を…暖かく…見守って…くだしゃいっ!!」ポロポロ
我慢できなくなったのか段々呂律がまわらなくなり涙を流しながらそう言い、澪にそっと寄り添った。
………ところで、皆さんは気付いてると思うが一つ。恐らく夜側の友人代表のスピーチは巫女Bになるだろう。
普段、ショタ発言や変態行動が目立つ為、彼女を知ってる人は不安になるかもしれないが……
784
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/05(木) 17:58:19 ID:3FBgi9l6
>>781-783
式場からの移動中、バスの中でも巴津火はずっと、お爺ちゃんと記録帖に張り付いていた。
写真に写っているあれこれについて矢継ぎ早に尋ねて、お爺ちゃんに息つく暇も与えない。
「こらこら、ご親族をあまり困らせるな。ちゃんと自分の席に着け」
会場ではお爺ちゃんの傍ではなく席次どおりに座らせようと、叡肖は巴津火の襟首を引っ張り、
喉もとに圧迫を受けた巴津火は嫌な顔をする。
「席に着いたら、ご馳走もでるから」
美味しいものにつられた巴津火は、けろりと機嫌を直して大人しくなると、
新婦のスピーチの間、勝手に服の喉元を緩めている。
『あ、やべ』
散々引っ張られて緩んでいたのだろう、ぷちん、とちぎれたシャツの喉元のボタンが
ころころと床を転げていった。
「よっ、三国一の花嫁っ!」
しかし叡肖のほうは、涙と一緒に、その髪からライスシャワーの真珠の粒を零す新婦に
拍手を送るのに気を取られて、巴津火が勝手にタイを緩めているのを見咎めることはなかった。
〔どこへ落ちた?〕
落ちたボタンを拾おうと、座ったままテーブルの下を覗き込んだ巴津火。
かがんだその腰の後ろ、シャツの裾と黒いズボンのウエストの間からちらりと背中が見えている。
着席しているのもあって参列客の席からは気づかれないが、高砂の新郎新婦と親族席、
スピーチに立った巫女Bさんからは、ばっちり見えてしまうかもしれない。
785
:
宝玉院 三凰
:2012/01/05(木) 18:27:55 ID:SmXQZqJk
>>782
,
>>783
,
>>784
スピーチの為に立ち上がり、前へ出る三凰。コホンと咳払いをし、スピーチを始める。
「澪君、夜さん、ご結婚おめでとうございます。この度友人代表スピーチを勤めさせていただく、宝玉院三凰でございます。
新郎の澪君とは、実を言うとそんなに長い付き合いという訳ではありません。しかし、私と澪君は心から信頼しあった親友同士と言えるでしょう。」
澪との出会い、そして今までの思い出を思い出しながら言う。
「そもそも、私と澪君の関係は澪君が怪我をしていた私を助けたことから始まりました。見ず知らずの者を助けるなど、並大抵の優しさではできないことだと思います。そんな澪君だからこそ、沢山の良い友人達がいるのでしょう。この出来事がきっかけで、私達は仲良くなっていきました。」
その言葉からは、嘘偽りの無い信頼関係が伝わってくるだろう。
「この出会いが、お互いの運命を変えたと言っても過言ではないでしょう。それほどまでに、支え合い、励まし合い、助け合って生まれたものは大きいのだと思います。
出会った当初は、澪君に対し、まだなんとも言えませんでしたが、今だから言えます。
澪君は、この私、宝玉院三凰のかけがえのない親友だと。
……こんな彼と結婚できる夜さんは、間違いなく幸せ者でしょう。
最後に、飾らない言葉で祝福させてもらいます。」
ここで一息つき、再び口を開く。
「――澪、本当におめでとう。心から祝福する。良い家庭を築けよ。
以上をもちまして、お祝いの言葉とさせて頂きます。」
心から澪を祝福し、最後に一礼をし自分の席へ戻っていった。
786
:
名無しさん
:2012/01/05(木) 20:10:39 ID:HbHPxpxY
>>783-785
澪「三凰・・・・・・僕のこと・・・ぐすっ、あり、ありがとうございます!!」
三凰が親友と認めてくれた、もうそれだけで幸せである。
普段はツンな彼であっても、このようなときは正直に言ってくれる。
・・・凄く、嬉しかった。
後で礼を言おうと思いながら、そっと夜に寄り添う。
・・・が。
澪「(巴津火!?)」
見えてしまった。
これをみた澪は叡肖にアイコンタクトし、なんとかして貰おうとした。
次はBさんだ。
787
:
田中家
:2012/01/05(木) 22:44:51 ID:c1.PBF/s
>>784
>>785
>>786
記録帖についてのハツビーの矢継ぎ早に尋ねる事に思い出し泣きをしながら口数少ない言葉ながら説明していた。
が、ハツビーが叡肖さんに連れてかれ(´・ω・`)ノ~←と淋しそうに見送った。
三鳳のスピーチが終わり涙ぐみながらお辞儀をする夜。
親族席からも拍手をし感動がこみあがる。
そして、いよいよ巫女Bこと橘 美月の番である。
だが…ショタスキーの心を揺さぶり狂わせるハツビーの背中チラ。
巫女Bのショタ狂いぶりを知ってる澪は慌てているが、夜は意外にも慌ててなかった。何故なら
巫女B「まずは同じ言葉の繰り返しになると思いますが
澪さん。夜さん。結婚おめでとうございます。
新婦の友人代表を勤めさせていただきます。橘 美月です」
…………誰?と言いたくなるほど凜とした雰囲気になっていた。
あ…けど、一瞬だけ鼻押さえた。
「私と夜さんは高校からの友人であり、生徒会で私が会長。夜さんが書記として活動を共にしました。彼女には幾度なく助けられました。私だけではなく彼女が在学した時の生徒には沢山いるでしょう。貴女は知らないかもしれないけどファンクラブあったのよ?
ただ変わった趣味があり、それを自覚し、自ら男から離れ、恋愛も苦手だった貴女がこうして結婚できたのは、分け隔てなく接してくれた澪さんのおかげだと思います。」
顔を手で覆うようにし口だけだしてスピーチをしてる様は泣いてるように見える。
多くの人はそう思うだろう。
「だから………夜。澪さんを絶対離さないであげて……幸せになりなさい……
澪さん……夜をよろしく…お願いします…
以上で終わらせていただきます」
礼をし、急いで退場していった。
向かうのは…外。
誰もが思う。泣くのを見せたくないから外にでたんだと……
実際は鼻血を噴射させるためだったとわかるのは夜と澪だけだろうが
788
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/05(木) 22:56:35 ID:3FBgi9l6
>>785-787
三凰の堂々たるスピーチに賞賛の拍手を送っていた叡肖は、
澪の視線に気づいて巴津火の席を見る。
(何やってんだおい)
「こら、スピーチの間くらいはしゃんとしてないと駄目だろ」
テーブルクロスの下を覗き込んでいる幼い主に声を掛けると、巴津火の頭がもっそりと
クロスの下から出てきた。
『蛸ー、これ取れた。どっか行っちゃった』
「取れたんじゃなく、取ったんだろ。
それに、どっか行っちゃったじゃなく、どっかやっちゃったって言うんだそれは」
叡肖はしかたなくボタンの取れてしまった巴津火のカラーの上にタイを締め直し、
奥の手としてカラーピンを刺して止めてしまう。
「正装のマナーなんだから、もうタイは弄るな」
『喉んところに尖った金属なんて嫌だぁ…』
「下手に弄らなきゃ刺さりゃしないっつの」
蛇妖が苦手とする針状の金属でタイを留められてしまったら、
巴津火はもう下手にタイを弄れない。
そしてかがんでいた間、巴津火の背中が出ていたことに、叡肖は気づいていない。
『ううう…』
他人のスピーチはちゃんと聞け、と叡肖に頭を巫女Bさんのほうへ向けて抑えられてしまったら
巴津火も大人しく拍手するしかないのだ。
視線を左右に投げかけても、メリーも夷磨璃も助けてはくれない。
「二人ともいい友人を持ったな」
スピーチが終わり、乾杯の準備に給仕たちが卓の間を慌しく動き、卓上のグラスが満たされ始めた。
叡肖は機嫌良くグラスを手にしたが、巴津火のほうは大気中に血の匂いを感じて首をかしげている。
〔なんか血腥くないか?どこからだろ〕
きょろきょろと辺りを見回すが、それが外で噴出した巫女さんの鼻血の匂いであり、
自身がその遠因であることを巴津火は知らない。
789
:
宝玉院 三凰
:2012/01/06(金) 13:12:38 ID:SmXQZqJk
>>786
,
>>787
,
>>788
「ふぅ…」
(僕も変わったな……
だが、あの時父上が言っていたこと今なら完全に理解できるな。)
スピーチを終えた三凰は、自分が良い方向へ変われた事、父の言っていた友情の大切さを理解できた事を実感していた。
790
:
名無しさん
:2012/01/06(金) 16:50:07 ID:HbHPxpxY
>>787-789
澪「(任せて下さい、夜は幸せにしてみます。でも・・・鼻血落ちって・・・。)」
フォード「お二人共、良い御友人をお持ちになりましたね。では、ケーキ入刀をお願いします。ゲストの皆様もお立ち下さい。」
2mはあろうかと言うケーキがスタッフによって運びこまれた。
澪「夜、切ろうか。皆、僕達を祝ってくれてるんだから、ぐすっ、泣くことないよっ・・・。」
うむ、澪、泣いてます。
ここは夜さんにリードして欲しいところだ。
黒龍「なあ、夕。お前はこの結婚、嬉しいと思うか?姉が結婚なんて受け入れられたか?」
黒龍は一つだけ気になっていたことを夕に問う。
零「三凰さん、よかったよ。貴方なら、お気づきでしょう?友人の大切さを。」
791
:
田中家
:2012/01/06(金) 17:44:02 ID:c1.PBF/s
>>788
>>789
>>790
親友の久々に聞いた真面目な言葉にウルッとくるが………安定の変態ぶりに思わず苦笑いしてしまう。
夜(…けど、ありがとう)
そして、ケーキカットの時間になり、立ち上がり澪の方を見て緊張が少しとけ、クスっと笑う。
夜「澪が泣いちゃってたらダメよ〜
…じゃあ、切りましょう」ニコニコ
いつもの調子にもどり、澪の手をにぎりながら一緒にケーキ入刀するだろう。
田中「ん?もちろんだよ?
少し淋しいけど…別に二度と会えなくなるわけじゃないし、姉さんが幸せなら俺はいいと思うんだ」ニカッ
黒龍の発言に、夕は正直に答えた。それが彼の答えだ。
メリー「ハツビー。あともう少しでご飯だよー」
落ち着かないハツビーに対し、メリーはそういってあげた。
巫女B「ふぅ…」
あ…なんかスッキリした顔の巫女Bが戻って来た。
792
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/06(金) 21:04:20 ID:3FBgi9l6
>>789-791
『ケーキ!ご飯!』
メリーの言葉の前に既に、スタッフの運び込むケーキに巴津火の注意は全力集中している。
起立を促されたからというよりも、好奇心と食欲の両方から突き上げられるように立ち上がり、
伸び上がって何が起こるか観ようとしている。
「ここで見てるだけだよ」
ふらふらとケーキのほうへ出て行こうとする巴津火を、叡肖が引き止めた。
しかし食べ物を目の前にして、巴津火の空腹と煩悩はMAXだ。
『はーなーせーェ!』
「わー待て!お預け!ここで変化を解くな!」
筆で抑えの呪文を描こうにも、暴れる巴津火を抑えるのに叡肖は手一杯なのだ。
ケーキ入刀のこの場では、一部とは言え蛸の姿を出すわけにもいかない。
「あー、美月さん!すみませんがちょっとこの坊ちゃんを捕まえててもらえませんか」
妙にすっきりした表情の巫女Bさんに、叡肖が声を掛けた。
巫女Bさんが抑えていてくれれば、叡肖は筆で巴津火を抑える文字を記すことが出来る。
793
:
宝玉院 三凰
:2012/01/06(金) 21:39:04 ID:SmXQZqJk
>>790
,
>>791
,
>>792
「そうかもしれないな。」
零の問にそっけなく答える三凰。
とは言え、内心ではそれをきちんと理解しているだろう。でなければ、あのようなスピーチを読むことは出来なかったはずだ。
794
:
名無しさん
:2012/01/06(金) 22:57:15 ID:???
>>791-793
澪「ぐすん、だって嬉しくて・・・・・・」
拍手と共に、ケーキ入刀が行われた。
この後は雑談会である。
澪「夜、新郎新婦は一緒にいるらしいから、一緒にご飯食べよ♪」
そこへ露希がやってきた。
露希「夜さん、どうやって結婚まで持ち込んだんですか!?」ワクワク
795
:
田中家
:2012/01/06(金) 23:50:04 ID:c1.PBF/s
>>792
>>793
>>794
巫女B「はいはい♪ハツビーちゃん。ケーキ切るまで待っててね」
なんかスッキリしたせいなのか変態行動はしないものの、ギュッと抱きしめるように押さえようとする。
一応、普通の状態じゃ力負けするため、若干鬼化してるが。
そして、三凰の方を見て
巫女B「アナタもスピーチお疲れ様。コレからも二人をよろしくね」
ケーキ入刀を終え、雑談会にはいり
夜「もちろ〜ん♪一緒に食べさせっこしましょ〜」ニコニコ
そう惚気てると、露希がやってきた。
夜「どうやってって〜。澪と一緒にいたいと思ったから♪」
夜よ……それ答えになってないぞ…
796
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/07(土) 10:10:52 ID:3FBgi9l6
>>793-795
『むー、むーッ!!』
じたばたする巴津火のシャツを少しめくって、その横腹に筆を走らせる。
巴津火が押さえ込まれたお陰で、叡肖は「煩悩抑制」「変化禁止」の文字を記すことが出来た。
ケーキ入刀が恙無く終わり、皆が安心して乾杯できたのは巫女Bさんのお陰でもある。
大人しくなった巴津火を運ばれてきた食事に一度集中させてしまえば、
新婚カップルの熱に当てられた巴津火が、居並ぶ女性陣へ野放図に甘えに行く心配もないだろう。
落ち着いて食べ始めた巴津火に、叡肖はほっとしてグラスを空にした。
(後は、神代の件さえなきゃ、楽なんだがなぁ)
華燭の宴には相応しくない悩み事を抱えて、叡肖は客達を眺める。
一見穏やかな表情ながらも、どこかつかみ所無い光がその目にはあった。
(飛葉殿でも居たら、こういうややこしい話の一つ二つできたものを)
出世法螺の白累が天界へ掛け合いに行くつもりなのは叡肖も知っている。
その際、天竜川の主に会いに行くよう祖父のアッコロカムイが勧めているのを
耳に挟んでもいた。
(…あー。せっかくの酒が不味くなるからもうヤメだ、ヤメ)
切り替えの速さは叡肖の取り柄である。
さっと遊び人の表情を取り戻すと、面白いものは無いかと辺りを見回し、耳を澄ませ始めた。
797
:
宝玉院 三凰
:2012/01/07(土) 12:47:47 ID:SmXQZqJk
>>794
,
>>795
,
>>796
「なんとか無事に終わりそうだな。」
巴津火達の方を見て、小さく呟いた。
「ああ、わかっている。」
そして、巫女Bに対し目を瞑り当然だとでも言うように答えた。
798
:
名無しさん
:2012/01/08(日) 15:41:54 ID:HbHPxpxY
>>795-797
露希「そ、それだけで結婚!?」
澪「夜にいきなり告白されたけど、嬉しかったなァ。はい、あーん♪」
露希「凄いっ!」
納得しちゃったよ!!
それはそれで答えになっているようだ。
夷磨璃「お兄ちゃん、一緒に食べようでござるっ。」
黒龍「叡肖さん、俺、女体化したい!!」
・・・えっ?
黒龍「女体化したい!大切な事なので二回言いました。」
799
:
田中家
:2012/01/08(日) 18:26:01 ID:c1.PBF/s
>>796
>>797
>>798
巫女B「ハツビーちゃん。カワイイ♪
夷磨璃くんにも好かれてて、やっぱり男の子は見てていいな
(………っと言っても夷磨璃くんはまだ入院生活だし……あの俺様男。次あったら全力でぶちのめすか…)」
ショタ二人のほほえましい光景を見ながら、機嫌よさそうにお酒を飲んでいるが…
やはり夷磨璃が酷い目にあった状況を思い出し、少しイラッときながらも今のめでたい席に集中することにした。
巫女B「まあ、よろしくね。三凰でいいかしら?ところでアナタは澪くんたちのところいかなくっていいの?」
お酒を軽く飲みながら、澪たちの席の方に首をやる。
夜「だから露希ちゃんも彼氏さんがいるなら結婚申し込んでみたら〜?
あ〜〜ん♪」モキュモキュ
幸せそうに澪にあーんされながらアドバイスを送る。
夜「私からも〜♪はい。あ〜〜ん♪」
そして、澪に食べさせっこしながら幸せそうな夜は周りの楽しそうな雰囲気に嬉しそうだった。
800
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/08(日) 18:43:03 ID:3FBgi9l6
>>797-799
『おー、こざるもこっち来いよ!
……ケーキのおかわりって無いのかな』
かなりの速度で皿を空にしていた巴津火が、フォークを片手に夷磨璃を招く。
頬っぺたに飛んだクリームを二股の舌先で舐め取りながら給仕スタッフを目で探す幼い主に、
苦笑いしつつ叡肖は自分の分の皿を譲ると、夷磨璃の分の椅子をこちらへ持ってきてくれるよう、
スタッフに依頼した。
そして大切な事を二度くりかえす黒龍にゆっくりと向き直ると、少々含みのある様子で
「それは、余興ってことで良いのかな?俺の筆で出来るのは一時的なものだし。
完全に女の子になりたいなら、俺よりもっと適任な者を紹介するよ」
黒龍の覚悟の程を確かめるつもりか、あるいは困らせて返答を楽しみたいだけなのか、
どちらにも取れるような質問を、叡肖はにやにやしながら投げかけた。
返答を待つ間、この蛸が横目で夜さんへちらりと目配せしたのは、
余興の許可をとるというよりも衣装の有無の確認のつもりかもしれない。
「もし余興やるというのなら、ステージには複数人欲しいなぁ」
口元だけは愛想よい笑いを浮かべたまま、衣蛸は黒龍だけでなく、零、澪、三凰、田中君をも、
冷たい視線で撫でるように見回す。
途中、巫女Bさんと視線が合ったときだけ、何事も無かったかのように視線の冷たさは緩んで
(先ほどはどうも)
と、軽い会釈をするに留めた。
何かが始まる予感を他所に、テーブルでは巴津火が夷磨璃にグラスのワインを
飲ませようとしている。
こっちはこっちでまた別の注意が必要そうだが、果たして気に留める者は居るのだろうか。
801
:
宝玉院 三凰
:2012/01/08(日) 20:39:42 ID:SmXQZqJk
>>798
,
>>799
,
>>800
「ああ……まぁ、今はな……」
巫女Bにそう答える三凰。
若干顔が赤いのは、酒が入っているからかそれともあのスピーチの後だから照れくさくなったのか
802
:
名無しさん
:2012/01/08(日) 21:20:53 ID:HbHPxpxY
>>799-801
澪「あーん♪三凰もこっちきなよー」モキュ
にこっと微笑み呼んでみる。
黒龍「あー、まあ試しにな。完全にはなりたくない、断じて。お、そこのチビもどうだ?夕も女体化するか?」
夷磨璃「拙者?巴津火お兄ちゃんの父上殿に?」
黒龍「え、叡肖さん、巴津火の親父さん?まさかな。」
澪「ニヤリ」
それはいつかのお返しということで、澪は夷磨璃に吹き込んでおいたらしい。
叡肖は巴津火の親父さんとね☆(澪が一方的に悪いが)
黒龍は、零が女の自分にどう反応するか見たいだけだ。
以前、女装では大丈夫だったが今回はどうなのだろう?
803
:
田中
:2012/01/08(日) 23:04:27 ID:c1.PBF/s
>>800
>>801
>>802
巫女Bはハツビーが夷磨璃のグラスにワインをいれたのを気付いたが止めなかった…
何故なら…
巫女B(酔ったショタもカワイイよね♪だから私は何も見なかった…
酔ってハツビーくんと絡むだろうし……ふふふ♪)
………ダメだコイツΣ(゚Д゚;)ガビーン
巫女B「澪くんに呼ばれてるよ?いってみたら?」クスクス
三凰が顔を赤くしてるのを楽しそうに笑いながら、そう言った。
そして、ペコリと叡肖に頭をさげた。
牛神神社的には天界含め神格連中には良く思われてない為、竜宮とはいい関係をきずきたいという考えもあるためでもあるが。
夜「美味しいね〜?澪♪
」
食べさせっこしながら、フッと視線を感じ叡肖を見て
夜「♪」サッ
何処からかスーツケースを出しやがった!!
その瞬間、夜の趣味を知ってる夜の友人連中はざわめいたのは気のせいではない。何故なら自分たちに飛び火するかもしれないか冷や冷やしてるのであるから…
田中「…あれ?嫌な予感が……」
姉の行動と叡肖の視線に寒気を感じ、不幸体質の彼はトイレに逃げようと立ち上がり歩きだす
が…
田中「ちょっ!?待って黒龍!少し話し合おう!俺は……」
そう慌てながら黒龍に顔を向ける。
だが、背中は叡肖の近く……
やるなら今だ
804
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/08(日) 23:18:54 ID:3FBgi9l6
>>801-803
「うーん、実の息子ならもっと気楽に育てられるんだけどねー。
でも俺はただの教育係、血縁もない」
大した精神的ダメージも無く、叡肖はあっさりと否定する。
『蛸がボクの父親ぁ?誰が流したんだそんな嘘?
……そういえばボクの父親って誰なんだろ』
自分のグラスにワインを満たしながら巴津火も首を傾げた。
いつの間にか、空のボトルが卓上に並び始めている。
叡肖のほうは、ちょっぴり意地の悪い笑みを浮かべた。
「なら、余興に踊りか歌か、してもらうのを条件に女体化してあげよう」
黒龍がうんと言えば、叡肖は女体化の文字を記してくれるだろう。
たった今、夜さんとスーツケースに人間の友人達が注目している隙に、
田中君の服の背中をめくってそこに書き込んだように。
夷磨璃も…もし酔っ払っていなければ、衣蛸の筆の巻き添えを食うかもしれない。
酔っ払っていたら、多分巫女Bさん好みの展開だ。
805
:
宝玉院 三凰
:2012/01/09(月) 00:09:30 ID:SmXQZqJk
>>802
,
>>803
,
>>804
「呼ばれたからには行かなければな。」
クイッとグラスに残った酒を飲み干し、立ち上がる。
「ああ、今行く。」
澪の方へ歩き始めた。
806
:
名無しさん
:2012/01/09(月) 00:16:59 ID:HbHPxpxY
>>803-805
黒龍「歌はアニソンしか知らないぞ?まあ、やるけどな。夕も決定な!」
澪「三凰さぁ、女装しない?てか女体化しなよ〜ヒクッ。」
夷磨璃「巴津火様・・・・・・好き、です。」ギュッ
誰だ澪と夷磨璃にアルコール飲ませたのは!
田中君は残念ながら決定なのです!!
零「騒がしいけど何が?」
露希「美月さん、萌えましょう!」
807
:
田中家
:2012/01/09(月) 09:23:30 ID:c1.PBF/s
>>804
>>805
>>806
田中「えっ!?決定なの!?
…………っていつの間に!?」
何と言う事でしょう。田中くんはカワイイ女の子に変身してしまったではないか。
夜「皆さ〜〜ん!今から私の弟とその友達が女装しながら踊ります〜」
田中「ちょっ!?姉さん!?」ウルッ
女体化された所を一部の人間の招待客に見せない為にワザと大きい声で注目を浴びさせる事にした。
田中「不幸だ…」ガクッ
諦めたようにしながらコスプレがはいったスーツケースをとりにいき、黒龍と着替えにいくだろう。
夜「あらあら〜…いつの間にお酒飲んでたのね〜
ごめんね〜。三凰」
なんか酔っ払って三凰に絡み始めた澪を見て、クスッと笑いながら澪の頭を優しくナデナデしようとする。
巫女B「はぁはぁ…。やっぱり男の子同士の絡みはカワァゥイイィィィィィ!」
おい!酔っ払った夷磨璃がハツビーを抱きしめて暴走してるのを見て、息をあらげてるぞ?
そして、二人の頭をナデナデモフモフしようと魔手が伸びる。
もう確実に通報するべきだ…コイツ…
巫女B「露希も一緒にナデナデしてあげましょう!ショタカワイイよショタ!!」
808
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/09(月) 10:32:36 ID:3FBgi9l6
>>805-807
『こざるー?どした?』
顔色は変わらない巴津火だが、椅子の上で片足を胡坐でもかくように組んでいるあたり、
酒による気の緩みが見て取れる。
しがみつく夷磨璃を抱き上げて膝の上に乗せたが、屈んだ拍子にカラーに逆鱗を圧迫されて
ほんの一瞬、苦しげに眉根を寄せた。
思わずタイを弄ろうとしたその左手が、カラーピンに触れて火傷でもしたように慌てて離れる。
『こざる。これ、外せるか?この金属の』
自分の膝に据わらせた夷磨璃に、銀色のカラーピンを指して、巴津火が酒気交じりの息で囁く。
叡肖に気づかれないように声を潜めているのだが、そのせいで夷磨璃とは顔がやたら近い。
その目の縁がほんのりと染まり始めていることに、夷磨璃ならば気づけるかもしれない。
『んぅっ?!』
気づかぬ間に巫女Bさんの手が伸びてきていて、敏感な耳をさわられた巴津火は一瞬身をすくめた。
酒で気が緩んでいる巴津火は隙だらけである。
椅子に座り、さらに夷磨璃を膝に乗せているので、逃げる訳にも行かない。
そして夜さんが客の気を引いた瞬間に、黒龍のシャツの下にも叡肖の筆が走った。
(三凰殿もやる気か?面白くなってきたじゃないか)
黒龍を女の子に変えながら、にんまりとほくそえむ蛸の歪な瞳孔は、三凰にも向けられていた。
809
:
宝玉院 三凰
:2012/01/09(月) 12:32:59 ID:SmXQZqJk
>>806
,
>>807
,
>>808
「は?女装……?女体化?」
何も知らずに近づいてきた三凰。状況が掴めず首を傾げる。
「するわけないだろ。澪、貴様だいぶ酔っているな。少し休んだらどうだ?」
自分に危機が迫っているとも知らずに言う。そもそも、酔って意味不明な事を言っているだけだと思っているようだ。
810
:
名無しさん
:2012/01/09(月) 13:46:18 ID:HbHPxpxY
>>807-809
澪「ん?三凰、僕は酔ってないって/////んじゃ、女体化行ってみようー、叡肖〜、三凰が〜女体化したいって〜////」
夜になでなでされながら、無理に三凰を掴む。
そのまま叡肖の元へGO!
夷磨璃「んふっ、巴津火、大好きだよ・・・・・・。」
カラーピンを瞬時に取り外し、膝に乗せられたまま、巴津火の肩の裏に手を回す。
夷磨璃「目の色変えて、やらしいね、巴津火はァ////」
露希「美月さん、夷磨璃君とか酒飲んで大丈夫なのかな?・・・カワイイ」
ゆっくり巴津火に口づけしようとする夷磨璃を見てニヤニヤする露希だが、少し躊躇うとこもある。
黒龍「ぁ、ちょ、胸が・・・////苦しい・・・っ///」
黒龍は大人のお姉さんになったよ!胸はそこそこだが、体が細くなって服の合間から胸が見えry
黒龍「夕はロリっ子か、俺は主人公を惑わすやらしいヒロイン・・・かな♪」
服は学園系がいい、と夜さんに付け足し、ついていくだろう。
零「叡肖さんも女体化してよ」ボソッ
811
:
田中家
:2012/01/09(月) 16:49:35 ID:c1.PBF/s
>>807
>>808
>>809
巫女B「はい。ストップ♪」ハァハァ
微笑みながら、夷磨璃がハツビーにキスしようとするのを止めてあげようとする。
巫女B「酔ったショタもカワイイけど、酔った勢いで過ちを犯したらそのあとが気まずくなるからメッ!」ハァハァ
そう言いながら夷磨璃を持ち上げ、露希に渡すだろう。
巫女B「だから場の状況を見て私たちショタコンはショタ達を手助けし見守るの。例え嫌われてもね」ハァハァ
そう露希にウィンクする巫女B。
……だが、この原因の半分はお前だ…
そして、コイツなんか頬を染めて息あらげてるし…言ってる事だいなし…
夜「じゃあ三凰《と澪》も女装しようね〜」キラーン
ちゃっかり後ろについていき二人にそういう《変態》が目を光らせた。
田中「うぅ……」
夜「任せて〜♪」
一瞬の早業で田中と黒龍を物影に連れ込み、化粧と着替えをさせた。
もちろん。ゲームに出てきそうな学園ものの制服だよ!
田中くんはロリ系美少女だ!露希さん…出番です。
そして夜の友人たち(妖怪人間とわず)は被害者たちに合掌するも余りにも似合ってる為歓声をあげてたりする。
更に零の一言に夜は目を光らせた。
夜「叡肖さんも女装似合うわよね〜♪
美人秘書風のコスプレが〜〜♪」ニコニコ
………ミイラ取りがなんとやら、《変態》のターゲットが叡肖にもうつりそうだ…
812
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/09(月) 18:04:34 ID:3FBgi9l6
>>809-811
「三凰殿が?流石だな、親友のためにもう一肌脱ぐのか」
スピーチに加えて余興まで出るとは、澪と三凰の仲はかなり親しいのだろう。
そんな風に言外に匂わせて、叡肖は三凰達にも筆先を向ける。
ここで抵抗しなければ、澪も三凰も女の子にされてしまうことだろう。
『ふわぁー…楽になったーぁ♪こざる良い子!』
夷磨璃に忌々しいピンを外してもらい、巴津火は喉元をくつろげて伸びをする。
さっきボタンの取れてしまった襟は開いて、夷磨璃の目の前には
血の色を淡く透かした薄い皮膚に包まれた鎖骨がある。
『…ぅえ?おい、こざる?』
やらしい、とか言われても何のことやら。夷磨璃の唇が迫ってくるのを、ぼーっと見ている巴津火。
このまま行くと雨邑さんに往復ビンタどころじゃなく、もうひと皮剥けるまでしばき倒される未来が
待っている……筈だったが。
巫女Bさんのフォローによって年嵩ショタの未来は救われたらしい。
そして叡肖は、というと。
「OK。そんな程度ならお安い御用だけど、お兄さんこのまま脱いでも凄いんだぜ?
いいのかー?女の身体で?」
ひらひらと肩まで上げた両掌を人間のお客達へ振って、わざわざ注目を集めながら物陰に下がる。
「先に着替えをこっちにくれないか」
物陰にいる零や三凰、澪の前で、堂々と礼服を脱ぎ始めた衣蛸。
上着を脱ぎ、タイを緩め、カフスボタンを外してシャツに手をかける。
さて皆さんはご存知だろうか。
蛸の身はその殆どが筋肉で、脂肪分がごく少ないのだ。
腹持ちもよく高蛋白低カロリー、ダイエットしたい方にはお勧めな食材である。
日頃は服の下で存在を匂わせもしない引き締まった肉体に、色素胞の文字が浮かぶと、
叡肖はすらりとした、しかしどこか冷たそうな美女に化けた。
「んー、スリットはもうちょっと深くても良いかもなー」
黒のタイトスカートのスリットを、ガーターがちらりと覗く程度の深さに裂くと、
グロスで艶やかに唇を彩り、アップにした髪と眼鏡、ハイヒールで女秘書の出来上がりだ。
シャツのサイズはあえてワンサイズ小さめを選び、胸元のボタンの隙間からちらりと
谷間が見えるようにしてあるが、舞台にでるまでそれは色鮮やかなスカーフで隠してある。
筋金入りの遊び人、叡肖には、この程度の余興は何てこと無いのだ。
「俺の準備はできたけど?零、君はどうする?」
夜さんのGOサインで叡肖は何時でもステージに出られるが、
零君がその気なら文字を書く気は満々なようだ。
813
:
宝玉院 三凰
:2012/01/09(月) 19:39:55 ID:SmXQZqJk
>>810
,
>>811
,
>>812
「おい、待て澪!僕はするわけないと言ったんだぞ!や、やめろー!!」
じたばたと暴れる三凰。
「女の格好などできるわけないだろ!!ましてや女体化って一生の恥になるだろう!
ええい!近づくな!その筆を僕に向けるな!」
筆先を向けた叡肖に対し叫ぶ。
「……こうなったら!」
叡肖が着替えている間に蝙蝠の姿に戻り、そのまま天井付近まで飛び上がった。
「ふははは!どうだ?この高さなら誰も手を出せまい!」
814
:
名無しさん
:2012/01/09(月) 20:47:06 ID:BQ990e1A
>>811-813
夷磨璃「僕の巴津火が遠のいていく……。
僕は一生巴津火の…ヒクッZZZ」
露希「何!?巴津火君が好きすぎて生きるのが辛い!?」
変な解釈は良しとして、酔っ払った夷磨璃をそっとおぶってあげると、
ニヤニヤしながら夷磨璃の肌に触れる。スキンシップだ。多分。
黒龍「じゃあ、夕は生徒会の会長だな。ロリキャラの!!
俺は副会長的な流れで、叡肖は俺らの担任…てっとこか?」
勝手に学園物の約設定だよ!
夕君は絶対、いじられるひんにゅーなロリry
零「無理無理。私が女体化したって誰得。」
黒龍「俺得!!」
零「しょうがないなぁ。じゃあ私はオカルト研究部部長、って感じかな?」
零、アウトー、叡肖さん、お願いします。
澪「僕は見てればいいんだよね。わくわくー♪
あ、三凰はやらなきゃ。」
ピン、と痛みはないであろう麻痺入りの弓を構え、放った!
自分がこの後何をされるかいざ知らず、相変わらずなのんびりっぷりだ。
815
:
田中家
:2012/01/09(月) 22:12:00 ID:c1.PBF/s
>>812
>>813
>>814
巫女B「慕われてるのね。ハツビーちゃん」クスクス
眠った夷磨璃と呆然としてたハツビーを交互に見ながら微笑み、どさくさに紛れハツビーの頭を再びナデナデモフモフしようとする。
田中「え?俺は生徒会長になれる器じゃないよ?普通だし」
そう言いながらステージにあがり、女装した叡肖を見て「綺麗だなー」と思う。
夜「叡肖さ〜ん。やっぱり美人ね〜
澪の女装の方が1番だけど〜」ノホホーン
田中「じゃあ、何やりましょうか?とりあえずダンスはなんとかできるけど……アニメだったら《●宮ハル●》のやつ?」
ちょっと古いぞ!田中!つうか踊れるのか!?
夜「澪は女装しないの〜?」
ちょっと寂しそうな瞳で澪を見てるよ!
816
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/09(月) 23:56:27 ID:3FBgi9l6
>>813-815
『こざる、寝ちゃった』
夷磨璃の頬をつつき、巴津火もあくびする。
撫でてくれる巫女Bさんの手に、気持ちよさそうに目を瞑る。
うとうとしている巴津火はほんのりほろ酔いで、今ならモフり放題だ。
「三凰殿。たった一度の女装よりも、そうして見苦しい姿を晒すほうが
余程男が廃るんじゃないのかね」
天井に逃げた三凰に、叡肖は口の端に冷笑を浮かべ、女の姿で男らしさを語る。
こういう場ではさっさと乗ってしまった者勝ち、盛り上げた者勝ちだと叡肖は思うのだ。
追い討ちをかける澪を横目に、恥をかくことも必要だと、
三凰のその先を生暖かく見守ることにする。
「俺担任?保険医とかが良かったなー。で、どういう筋でやんの?」
零に筆を走らせつつ、学園モノの寸劇になりそうな気配に口を挟んだ。
これで三凰と夷磨璃、巴津火以外は全員が女性となったわけだ。
817
:
宝玉院 三凰
:2012/01/10(火) 13:54:22 ID:SmXQZqJk
>>814
,
>>815
,
>>816
「……澪、何をした……」
澪の麻痺の弓が命中し、ゆっくりと落ちてくる三凰。
「ぐ……やればいいんだろ!やれば!女装だろうが、女体化だろうが好きにしろ!」
蝙蝠の姿のまま横たわり、叡肖の言葉により逆ギレし叫ぶ。
818
:
名無しさん
:2012/01/10(火) 15:51:14 ID:HbHPxpxY
>>815-817
澪「麻痺弓だよ、三凰。三凰は可愛いからね。僕は・・・」
チラリと夜を見ると・・・!
澪「や、やろうかな。うん。」
流石は夜さん!
夜さんには弱いらしいよ!
黒龍「ハル○できんのか夕!見直したぜ!!」
零「私もアレは出来るね。」
黒龍「じゃあ叡肖とかもいるし、全員アドリブで☆」
女体化した零はミニスカに、黒い目立つリボンをつけ、眼鏡装着!
澪「服装は夜に任せるね。」
露希「胸熱!」
819
:
田中家
:2012/01/10(火) 18:01:10 ID:c1.PBF/s
>>816
>>817
>>818
巫女B「寝てる顔もカワイイなー」ハァハァ
寝てるハツビーを起こさないように優しくナデナデモフモフしながら、ステージの方に目をやった。
夜「じゃあ〜、澪はコレね〜〜♪」
白衣と眼鏡とハイヒールを用意したよ!叡肖がやりたかった保健医をやってって事だろう。
田中「ん〜……じゃあとりあえず(コホン
あーっ…あああああ」
そう言って田中は声を調整し始め
田中「は〜い☆皆さん!コレから文化祭の行事について話し合いたいと思います☆
叡肖先生!!今回の文化祭は私たち生徒会はダンスをやりたいんですけど、大丈夫ですか?」キャピーン
…………………誰?と言いたく成る程のアニメばりの声を出し、完全にロリ生徒会長になりきってる田中がいた…
コイツ…女装になれてやがる…
820
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/10(火) 19:06:28 ID:3FBgi9l6
>>817-819
「それじゃ三凰殿だけ、男のままの女装でハ●ヒダンスってことで」
氷の微笑で鬼畜秘書が宣言しやがった。
きっちり女体化しての女装ならただの綺麗どころの団体様だが、
その中の一人だけ男のままで女装したら浮くだろうことを見越しての発言だ。
逆に男のままでも目立たないほど化けられたならば、それはそれで男としてどうなんだろう。
残る抵抗の道はこのまま舞台へ上がらないことであるが、何を選択するかは三凰次第。
頼めば叡肖は三凰にも文字を記してくれるだろうが、急がねばさっさとステージに出てしまうぞ。
さて、三凰は何か行動できるのだろうか。
「音楽の準備は大丈夫か?」
最後にそう確認して叡肖がステージに出る。
そして眼鏡を光らせつつ、女教師らしい艶のある低めの声で田中君との掛け合いを始めた。
「皆さーん、異論は無いかしらー?
ところで夕さん、具体的にどんなダンスを見せてくれるつもり?」キラーン
客席からはフラッシュや動画撮影のケータイがこちらを向いている。
ステージに集中しているせいで、巫女Bさんとその胸にもたれて寝こけている巴津火、
夷磨璃には誰も注目していない。
こっちはこっちで巫女Bさんのやりたい放題タイムである。
821
:
宝玉院 三凰
:2012/01/10(火) 19:28:46 ID:SmXQZqJk
>>818
,
>>819
,
>>820
「麻痺弓だと……流石だ澪。ていうか、可愛いって言うな。」
やはり、可愛いと言われるのは嫌なのだろう。不機嫌そうな表情をしている。
「くっ…まぁ、女体化よりはマシだろう。」
浮いてしまうなど先の事を考える余裕は、今の三凰にはなかった。ちなみに、逃げることはもう諦めている様子だ。
822
:
名無しさん
:2012/01/10(火) 20:44:52 ID:HbHPxpxY
>>819-821
澪「コホン、皆さん〜、保険体育の勉強として、ダンスしますよ〜。」
零「UFO・・・来る・・・・・・」
黒龍「あらぁ、夕、もう少し先生に頼むんだから丁寧に話した方がいいわよ〜(ハート)
せんせ〜、生徒会の役員&αでおどりましょ〜んふ☆ミ」
胸のリボンを取り、胸の大きさを強調させる。
やらしい。
ロリ夕君も中々だ。
夷磨璃はすやすや寝息を立てているが、じわりじわりと巴津火によっていっている。
巫女さんが止めないと・・・ヤバい!
823
:
田中家
:2012/01/10(火) 22:16:42 ID:c1.PBF/s
>>819
>>820
>>821
夜「女装なら任せて〜〜」
もし、三凰が夜に女装を任せたら、見た目完全に女性の今時女子高生にされてしまうだろう。
やるかどうかは三凰しだいだ。
田中「任せてくださ〜い♪
ふえぇ…黒龍ちゃん。ごめんなさい…
では……ミュージックスタート♪」
メリー(いきなり私の出番だよー)ポチッ
突然、会場のスピーカーから《あの音楽》が流れだし、ハ●ヒのポジションで踊り始める。メリーがケータイに入ってる音楽をミキサーにつなげ流してるのだ
予断だが…ロリ夕が一瞬ロリータに見えてしまった…
メリー(にしても…なんかカオスだよー
アドリブって怖いんだよー)
巫女B「コレは天国ねー」ホクホク
寝てるハツビーとそれに近づく夷磨璃を自分に引き寄せ抱きしめて、しあわせそうにしている。
上手く夷磨璃が再びハツビーにキスしないようにしているが…
824
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/10(火) 22:41:14 ID:3FBgi9l6
>>821-823
「では澪せんせ、お手本をどうぞ」
ステージ前方へ保健医を誘い、あの音楽が始まると叡肖自身も
古●ポジションで踊る。
なぜかばっちりハル●ダンスが踊れるのは、
遊び歩いた夜のお店でネタにやったことがあるせいかもしれない。
そしてダンスの最後、決めのポーズではスカーフを外して、はちきれそうな谷間を見せつけ、
イタリアンなお爺ちゃんへ投げキッスをする。
夷磨璃と巴津火は、各々磁石でも入っているのか、そもそも夷磨璃が狸寝入りなのか。
夷磨璃に絡み付かれても、巴津火はもぐもぐと何か呟いただけで、
相変わらず寝息を立てている。
825
:
宝玉院 三凰
:2012/01/10(火) 23:09:29 ID:SmXQZqJk
>>822
,
>>823
,
>>824
「好きにしろ……」
夜に対し、消沈した様子で言う。もう抵抗する気もないだろう。
(ああ、そうだ。これは澪の為だ。澪の為だ。)
もはや、現実逃避のように思い込む三凰。がっくりと下を向いている。
826
:
名無しさん
:2012/01/10(火) 23:27:51 ID:HbHPxpxY
>>823-825
零「・・・・・・」キメッ
長○ポジションの零は何処からか取り出したクラッカーをパン!と鳴らす。
黒龍「うふふ、叡肖先生やらしい〜♪」
とかいいながら、こちらもイタリアンおじいちゃんに投げキス!
夷磨璃「むにゃむにゃ。」
露希「鼻血止まらないよ、クヒヒ・・・!」
大量出血している露希と美月さんにもふられている夷磨璃は残念ながら、ショーどこではない。
澪「注射しちゃうぞ♪」
澪は玩具であろう注射を夕にぷすっと刺し、ウインク!きっと麻痺の効果かな。間違ってもLEVEL5とかではない。
827
:
田中家
:2012/01/11(水) 00:05:18 ID:c1.PBF/s
>>824
>>825
>>826
田中「はぅぁ〜!?」
最後にキメっとポーズをしたが、クラッカーに驚きこけてしまい、ちょうど観客にパンツを見せる形になってしまった。
田中「あうあうあう」///顔を真っ赤にし恥ずかしそうにしている……が皆さん彼は男ですので悪しからず。
夜「は〜い♪出来ましたよ〜
遅れてるから早くいってらっしゃ〜い」
そう言いながら見事女装した三凰をステージに送り出すだろう。
祖父(母方)「おう!ありがとう!いやー、僕はモテるね。………いたたたたたたたた!!!菊ちゃん!?つねらないで!?あの子たち男だよ!?」
祖母(母方)「わかってますよ?けど…ねえ?」ニコッ
田中母「相変わらずラブラブだな。我が両親は」
田中父(……義父さん。同情しますよ?あと紅花。私には義母さんは嫉妬しやすいのではないか?)
二人に投げキスされ、イタリアン爺さんは、嫌な顔せず、嬉しそうにしながら投げキスを仕返すが……それでもおばあさんの嫉妬にふれてしまったようで、おもいっきり膝をつねられていた。
おばあさん……かなりのヤンデレかもしれない?
巫女B「ここは天国ね。露希」
…おい!コイツも鼻血流してるぞ!!
夜「二人とも〜?鼻血はやめましょうね〜」ニコニコ
田中「ちょっ!?」プスッ バタッ
注射され、痙攣しながらそのまま倒れてしまった。相変わらずの不幸属性だ……
828
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/11(水) 00:41:07 ID:3FBgi9l6
>>825-827
「やらしい、だけじゃなく、色っぽいとか蠱惑的とか艶めかしいとか
もっと語彙を増やしたほうが表現の幅が広がるのよ、うふ」
客から向けられたカメラに愛想良く応えながら、叡肖センセから黒龍ちゃんへと
大人の指導入りましたー。
しかし巴津火の今後が色々と心配になる教師っぷりである。
「三凰殿、がんばれw」
これからは遅れてきた三凰の見せ場なのだ。
舞台は三凰に譲り、パンツを見せたまま倒れてしまった田中君をお姫様抱っこで回収した叡肖は
一度舞台裏へ下がる。
その際、田中家祖父母のやり取りに、叡肖の悪戯ッ気が触発された。
(あの老人にこの格好でちょっかいかけたら面白そうだな)
もしかしたら、田中君の不幸属性はイタリアン爺ちゃん譲りかもしれない。
そして一度巴津火の様子を見に来ると、鼻血の二人にハンカチを渡す。
「ありゃ、坊ちゃん寝たのか。
こう毎度食べて飲んで寝てると、ツチノコになるぞ」
叡肖に鼻をつままれた巴津火は眠ったままむずかるように顔をしかめて、
傍らの夷磨璃をぬいぐるみのように抱え込もうとする。
寝ているときは巴津火のほうが夷磨璃より幼い。なんだかんだ、まだゼロ歳児なのだ。
829
:
宝玉院 三凰
:2012/01/11(水) 00:54:10 ID:SmXQZqJk
>>826
,
>>827
,
>>828
「……どうしてこうなった」
どんよりとした表情のまま舞台上へ上がることになってしまった三凰。
当然踊ることなど出来ず、ただただ立ち尽くし落ち込むばかりだ。その姿は遠くから見ると、薄幸の美少女に見えなくもない……かもしれない。
830
:
名無しさん
:2012/01/11(水) 07:31:39 ID:HbHPxpxY
>>827-829
露希「あ、ありがとうこまざいまふ・・・」
笑顔でハンカチを受け取りつつ、叡肖や三凰をニヤニヤ見ている。
黒龍「先生、解りました♪」
零「・・・戻る」
そうこうしている家に零達も舞台から降りる。
澪は三凰と手を繋ぎ、ダンスのリードをしている。
夷磨璃「ふへ、巴津火・・・・・・ヒクッ」
酔っ払っているこちらはこちらで大変な様子。
式が終盤に差し掛かると、フォードが前に出てきた。
フォード「さて、新婦さん、前へどうぞ」
これは新婦が両親に対して気持ちを伝えるアレだ。
よくお父さんが泣いているやつである。
831
:
田中家
:2012/01/11(水) 12:19:50 ID:c1.PBF/s
>>828
>>829
>>830
巫女B「どうも」ペコリ ダラダラ
ハンカチを受け取り礼をすると抱きしめてた、お子様二人を叡肖に引き渡そうとする。
田中「叡肖さん…すいません……本当身体動かない…」ピクピク
叡肖にお姫様抱っこで回収され、どこかに寝かされるもまだ動けない。
何をされても抵抗はできないのだ……
夜「……はい」
真面目な表情で、緊張したように息を整えながら前へと進む。
そしてスピーチが始まった
夜「お父さん。お母さん。
今まで育ててくれてありがとうございます。私が結婚すると聞いて、二人とも反対するどころか喜んでくれましたね?
正直……お父さんは反対するかと思ってました。けど、反対せず見守ってくれてありがとうございます」
「私は結婚しても喫茶店《ノワール》にいますから離れたわけではありません。だから…コレからも澪と私を見守ってください。
短いですがコレでおしまいです」ペコリ
スピーチを終えると、両目に涙をためながら静かに退場した。
……あ、田中母ないてる。
そして田中祖父(父方)何故お前が号泣している。
田中父は嬉しそうに微笑みながら、拍手をしていた。
832
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/11(水) 18:42:15 ID:3FBgi9l6
>>829-831
「少しここで寝ていたほうがいい」
巫女Bさんから引き取った巴津火達と一緒に、ソファに田中君を座らせて、
叡肖は解毒の文字を書き込む。
痺れ薬が切れるまでは、もう少しだけかかるだろう。
●REC(これは違う意味での見ものかもしれんな…)ジー
田中君が落ち着くと鬼畜秘書は携帯電話を取り出し、ステージで棒立ちな
女装三凰の様子を録画している。どうみても丸っきりの嫌がらせ目的だ。
しかしこのままでは三凰君は良いとこ無しだぞ!頑張れ御曹司!
やがて場面は花嫁のスピーチへと流れてしまった。
「もうこの式は大団円だな」
叡肖は、親族席の感涙が落ち着いた頃合を見はからうと、
持っていたスカーフをイタリアンなお爺ちゃんの首にふわりと結ぶ。
「んふっ♪」
気を持たせるようなウインクと共に連絡先のメモをその結び目に挟み、
元の服に着替えるために物陰へ去っていった。
キャバ嬢の営業並みのこの行為、イタ爺ちゃんの運命や如何に。
833
:
宝玉院 三凰
:2012/01/11(水) 19:19:13 ID:SmXQZqJk
>>830
,
>>831
,
>>832
「ま、待て澪!僕は踊るつもりなんて……」
澪にリードされぎこちなく動く三凰。とても踊っているようには見えない状態だ。
「貴様も撮るんじゃない!今すぐやめろー!」
撮影を始めた叡肖に向かい怒鳴りつける。
834
:
名無しさん
:2012/01/11(水) 23:10:38 ID:HbHPxpxY
>>831-833
フォード「ありがとうございました、新婦さん。では、これにて式を終了させて頂きます。本日は、誠にありがとうございました。」
澪「よ、夜!!」
静かに退場した夜の元へと寄り添った。
泣くことはない、無事に終わったのだ、と笑顔で返すと参列者への挨拶をしに行った。
黒龍「お爺さんったら〜、そんなにこの胸が触りたいの?」
零「黒龍、もう止めよ?」
黒龍「お、おう。」
黒龍、イタリア爺ちゃんにちょっかい出したよ!しかも本来の女体目的をさっぱり忘れています!
露希「・・・・・・」
夷磨璃「・・・・・・」
こっちはノックダウンしている。なんだかんだな結婚式だったが、澪にとっては最高の物となった。
835
:
田中家
:2012/01/11(水) 23:46:56 ID:c1.PBF/s
>>832
>>833
>>834
田中「…ありがとう…ございます」ピクピク
解毒されながら、とりあえず静かにする事にした。
夜「うん…
皆さ〜ん!今日はありがとうございます!」
最後に集まってくれた全員に御礼を言い。
夜「三凰もなんかごめんね〜
ありがとう♪」
そして色々とばっちり喰らった三凰に謝り、そして御礼を言った
祖父(母方)「いやー、ありがとうねー
おっ!触らせてくれ……」ゾクッ
「き…菊ちゃん?いえ、菊乃さん…ちょっ…ちょっと落ち着こう?ここはめでたい席だよ?だから……」ダラダラダラダラダラダラダラ
祖母「私は落ち着いてますよ?
ア ナ タ ?
後で《お話》しましょうか?」ニコッ
叡肖にスカーフをまかれ名刺を貰い、男とわかりながらもサッと早業でしまい、黒龍に言われ反応するが………
突然、母方の祖母から神格…ほどではないが強い妖気と霊気が混ざり合ったような不気味な気配が感じられるだろう。
どうやらこの祖母…人間だが半妖とは違う人間と妖怪が混ざり合った存在のようだ。
……だけど笑顔でイタ爺を見ながら《優しく》言っている。
イタ爺も冷汗ダラダラで謝ってる。
どうやら田中家の異常さはこの祖母が原因かもしれない。
もしかしたら夕や夜にもこの力が受け継がれてる可能性が…
836
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/11(水) 23:59:39 ID:3FBgi9l6
>>833-835
撮るなと言われてやめるような衣蛸ではない。
三凰の勇姿(?)はばっちりメモリの中に保存された。
誰に見せるのかって?もちろん、三凰自身に見せるのだ。
「撮られても恥ずかしくないように堂々と行動していれば良いのさ」
中途半端に恥ずかしがるのが一番悪いって判ったろ、
と元の姿に戻った叡肖は静かに笑うと巴津火を抱え上げた。
「ほら、しっかり掴まるんだ。落ちるぞ?」
『……っhmう』
なにやら返事らしきものをしゃっくりで呟いて、酔った巴津火が叡肖の首に腕を回す。
片腕で巴津火、もう片腕で夷磨璃を楽に持ち上げて支え、帰りの車までを苦もなく歩き出す。
「夜さん、ハネムーンから帰ったら土産話頼むよ」
ゲストを見送る新郎新婦に挨拶して退出してゆく叡肖。
陸に戻ってこられたのだから、また珈琲を飲みにノワールへ通うのだろう。
(ありゃー、あの老人きっちりメモは保管するのかい)
とは言え、イタ爺ちゃんからの連絡は楽しく待つつもりの蛸である。
そして気配を感じ取った巴津火が、ぼんやりとその紫濁の瞳を開いて
叡肖の肩越しに菊お婆ちゃんと視線を合わせていた。
837
:
宝玉院 三凰
:2012/01/12(木) 00:29:26 ID:SmXQZqJk
>>834
,
>>835
,
>>836
「ち、ちくしょう!それを消せ!今すぐ消せ!すぐに消せ!」
叡肖が撮ったメモリを消すように必死で訴える三凰。まぁ、訴えたところで無駄だろうが。
「はぁ……まったく、散々な目にあった。」
疲れた顔でため息をつく三凰。
「澪の奴もむちゃくちゃだ。僕が踊れるわけないだろう……
……そんな澪に釣り合う女は貴様くらいしかいないだろうな。」
と、夜の方を振り向き言った。
「何はともあれ、お幸せにな。」
最後にそれだけ言い、背を向け去って行った。
838
:
七罪者
:2012/02/11(土) 23:14:27 ID:c1.PBF/s
繁華街のとあるビル。
その前に一つの影が見える。
口元を黒い布で隠し、灰色マントみたいなのを着た、赤い髪の男――七罪者の一人で怠惰の大罪を持つ《死神》。
彼はビルを悲しそうに見て、首をふるとビルの中に入ろうとする。
死神「…………」
「おい!!!君っ!!ここは関係者以外立入禁止だよ!帰った!帰った!!」
そのビルの警備員らしき二人が慌てて彼を止めようと触れようとする。
………が
死神「僕に触らない方が…」ボソッ
「え?……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
死神がポツリと言った小さな声は警備員の絶叫で掻き消された。
警備員は死神に《触れた瞬間》に火だるまになりそのまま動かなくなった。
「うわぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
もう一人の警備員は悲鳴をあげ、逃げていこうとするが…
見えない壁にぶつかったように弾き飛ばされる。
………そう、このビルの周りに結界がはられ、ビルから《人間》が出たり入ったりできないようになっていた。
警備員は何が何だかわからず必死に見えない壁をどんどん叩くが目の前を通る《外側》の人達は気付かない。
必死で声をあらげ叫びをあげ助けを求めようと必死だ…
グチャッ!!!!
煩く喚いてた《ソレ》は何かの潰れる音で静かになった。
暴君「静かにしてろ…クソが…他の妖怪に気付かれたら面倒だ!
まあ、俺様がボコボコにするがな!!」
短い金髪に、毛皮のコートを着て、右耳にピアスをした今時の若い男−−《暴君》が自分より大きな金棒を赤く染まらせながら自慢げに笑う。
彼らの目的はこのビルの破壊と下に眠ってる《生玉》を呼び起こすこと……その為に…
暴君「死神!!テメーはビルにいる人間全員殺しとけ!!!《悪魔》が言うには《生玉》は人が死ぬのが嫌いだから、全員やっとけば嫌でも出て来るだろ!!!」
ビルにいる人間全員の抹殺
果たしてこの人間は気付かない殺戮劇に気付くモノはいるか?
……いや、妖怪なら気付くだろう。
839
:
黒蔵
:2012/02/11(土) 23:31:25 ID:3FBgi9l6
>>838
ぜぇはぁ言いながら建物の方へ走ってくる貧乏ホスト。
身体スペックはある一部を除き、完全に普通の人間である。
それが振り返りながら建物の入り口に飛び込もうとしたのは、追いかけてくる警官が居たからである。
「何で!追いかけて!くるの!」
今時、刀なぞ持って街中をうろついていたら、職務質問されるのが普通なのだ。
獅子王はむき出しではなく鞘に納まり袋に入れられてはいるものの、
ずしりと重たげなそれは十分に警官の目を引いたのだろう。
ばちん!
建物の入り口に飛び込んで、追っ手をやり過ごそうとした貧乏ホストは
人間の出入りを拒む結界に激しくぶつかった。
「なっ?!にこれ?壁??」
目に見えない結界を、ドンドン、と激しく拳で叩く。建物の入り口は開いているのに、なぜか逃げ込めないのだ。
しかも道の反対側からも、別の警官の姿が走ってくるのが見えた。
「うわうわうわうわ…!!」
挟み撃ちにされて、見えない結界の壁に背をぴったりつけてオロオロする貧乏ホスト。
このままでは捕縛されるのは時間の問題のようだった。
840
:
夜行集団
:2012/02/11(土) 23:48:11 ID:EK/9fLvc
>>838
、
>>839
理由も分からないまま、逃げ込む事ができないで立往生している黒蔵の背面に、
あまりにも出し抜けで前兆も無く、圧倒的な存在感が突然発生した。
「喜劇的だ、お前はここを安全地帯と思っているようだが、
お前が今にも逃げ込もうとするこの建築物は、なによりもの修羅場だぞ?」
窮奇のような邪悪さや、桔梗姫の充足感、青行燈のような不明瞭さらのどれとも違い、
黒蔵の背後に降り立ったこの天狗から発せられる気配は、
なによりも人を圧倒させ、おし潰れる事もひれ伏す事も許さない程の威圧感であった。
「唐突的だが、俺は少しここに野暮用がある。
黒蔵、今から私と同行せよ、拒否権はもとより存在しない」
悠然とした態度で目の前のビルを見つめたまま、黒蔵に手みじかに命令を下す。
そして彼がどんな反応や反論をしようとも聞く耳を持たないとでも言うように、
天狗は懐から小さな小刀を抜きだす。
「挑発的に自己を紹介しよう。
お前らがどのような物かは知らんが、
この地にいる人間は吾輩のものだ!!」
突如響き渡るような大声を声高に叫んで、天狗はその小刀をビルに向かって立て一文字に振るった。
するとこの建物を覆っていた結界の、小刀が通った部分だけが突如幕を切ったかのように裂けた。
そして天狗の行った結界の破壊の衝撃は、中の者にも伝わるだろう。
841
:
七罪者
:2012/02/12(日) 00:16:35 ID:c1.PBF/s
>>839
>>840
死神「……………」ピタッ 中へ進もうと歩いた死神は…突然立ち止まり上を見上げた。
暴君「どうしたんだ?死神?」
急に立ち止まった死神に疑問を感じ結界の外を見た。
そこには人間が人間に追われ逃げてる暴君にとってくだらない光景。
死神が人を殺すのを今更躊躇ってると思ってしまう。
だが……すぐに暴君はそれは違うと知らしめられた。
暴君「なっ!?」ゾクッ
死神「…………………」
圧倒的な存在感、気配、威圧
暴君はその気配に圧倒され、小刀を振るう動作を見逃してしまった。
暴君「なっ!?テメー!!俺様達の邪魔を!!
作戦変更だ!!目撃者を全員殺すぞ!!!」
死神「…………………」
結界を破壊され、ビルが揺れた為大きく揺れた為ビルの人々は地震だと思い慌てている。
この異常事態に気付き避難されるのも時間の問題だ。
そして目の前の警官達は突然現れたように見えた二人と二つの死体を見てしまうだろう。
死神「ごめん」ボソッ
死神が手を翳すと、白き炎が放たれ、ソレは大きな赤ん坊の形になり天狗に抱き着こうとする。
僅かにその炎から《神格》の気配がする。
暴君は黒蔵と警官達に向かい巨大な金棒を振るい落とそうとする。
普通の人間なら潰れてしまう…そのため暴君は黒蔵に対し油断し、なんとか避けれる速さだろう。
842
:
黒蔵
:2012/02/12(日) 00:31:23 ID:3FBgi9l6
>>840-841
「天ッ?!」
見知った相手ではあるものの、天狗の威圧感は人の身となった黒蔵を硬直させるには十分であり、
その行為は結果として裂け目の中へと黒蔵が仰向けに倒れこむ結果をもたらした。
「ぐぇっ!?」
肩に食い込む獅子王の重みに引きずられて、黒蔵の倒れこんだ先は、先ほどの警備員の成れの果て。
むっとする血臭は人間の嗅覚でも十分に感じられ、警官達からの黒蔵の見た目は、
殺人の現行犯そのものとなった。
「ぃぃ嫌ぁぁぁぁぁ!!」
魂が妖怪のままの黒蔵は、人間の死体に悲鳴をあげたわけではない。
単に天狗の命令に反射的に拒否反応を示しただけである。
天狗がクラブ組織のどれほど偉い人であろうと、その所有物に自分が数えられるのだけは
断固拒否したい貧乏ホストであった。
「こっち来んなぁぁぁ!!」
どうやら妖怪は見えない性質らしい警官の一人が駆け寄ってくるのを、
仰向けのままで黒蔵は蹴り飛ばす。
それは単に捕まりたくない一心であったが、呆然と妖怪たちを見つめて立っていた
もう一人の警官を巻き込んで、結界の裂け目の外へ二人ともしりもちをつかせることには成功したようだ。
結界から締め出された警官からは、天狗も黒蔵も死体も妖怪二人も、
一度に消えたように見えることだろう。
そして、そんなことをしている間にも暴君の金棒は黒蔵の上へ落ちてくるのだ。
「ひーーっ!!」
それを袋に収まったままの獅子王で、かろうじて受け止めた。
大太刀である獅子王の一端は地に付いていたため、そこを支点に黒蔵の力でも何とか、金棒の軌道をそらす。
「死ぬーっ!!マジやめてお願いーっ!!」
暴君からは見覚えのある顔の人間が、そんなことを言いながら起き上がって逃げ出そうとする。
843
:
夜行集団
:2012/02/12(日) 00:41:21 ID:EK/9fLvc
>>841
「好都合的だ、さっそくこの偉大な僕の前に馳せ参じてくるとは。
ふむふむ、だがどうやら実力は十分、自殺志願者とは違うらしいな」
結界を引き裂いた天狗は前方を見つめながら、これからこの建物の中、
害敵を虱潰しに探さなくてはいけないかもしれないという倦怠感を感じていた。
しかし、彼の予想とは反しそんな一切の手間が省かれ、
眼前に現れた1組の人影を見つけ、存外に天狗は上機嫌になった。
「心外的だ、わたくしの目測ではそこそこの実力者と判断したが、
よもやお前の先手がこれほどに小手調べ程度のものでしか無いとは」
天狗は死神の放った術を見て、残念そうに眼をつぶり首を振った。
しかし天狗はそのような反応を示したが、死神の術の実際の威力はかなりの威力なのだろう。
「根本的に某は天狗、確かにこの国の伝承ではそういった謂れは無いのであろうが、
むしろ火炎は自分の眷族であり分身なのだ。
お前がいくら磨き上げられた焔を灯そうが、わしを焼くに至れるかは不明瞭だ」
天狗、天を駆ける狗とは、
古くから中国において流れ星を妖怪と錯覚した者たちの伝承によるものなのだ。
つまり、本質的に天狗の司る属性は火。
そして天狗信仰が具現化した存在であるこの天狗は、日本の信仰とともに中国の信仰も身に帯びているのである。
「大罪的だ、警備のものであろうが建築物であろうが、
己の者に危害を加えた罰、その身を持って償え」
そのような力によって生まれた結果は、
死神の放った赤子の術が天狗の支配下に組み込まれたという事であった。
天狗は不遜な態度を崩さないまま、今度はこちらから火炎の赤子を死神にけしかける。
844
:
夜行集団
:2012/02/12(日) 00:41:53 ID:EK/9fLvc
>>843
すいません
>>842
も含みます
845
:
七罪者
:2012/02/12(日) 01:07:59 ID:c1.PBF/s
>>842
>>843
結界はまた塞がり、黒蔵を出れないようにしてしまった。
そして、暴君は黒蔵が刀で自分の金棒を防ぎ流したのを見て…顔に怒りを浮かべた。
暴君「テメー!ただの人間じゃねえな!!
そして俺様をおちょくりやがって!!!あの天狗の使いだろ!!!なめやがって!!」
突然、暴君から妖気のような気配な強欲と青行燈のような不気味な妖気が溢れ出し
5mの巨体で、短い金髪に、毛皮のコートを着て、右耳にピアスをした、赤い肌に、凶悪な顔の二本角の鬼に変貌した。
暴君「死ね!!!」
今度は飛び上がり力任せに辺りの大地を砕く様に黒蔵へと振り落とそうとする。
一方…
死神「………」
赤ん坊が天狗の力により死神に抱き着く………が、死神はなんともないように《燃えていた》。
死神「僕は炎であり、炎は僕
僕が何もしなくても皆死ぬ」
その炎は段々強くなっていき、彼は悲しそうに天狗を見た。
死神「君は僕と相性が悪いが君も僕と相性が悪い」
そう言いながら、放たれる妖気は………日本神話の神の気配?
だが何か違う。けどその気配はたしかに…
日本神話の神産みの話に出て来るイザナミを殺し、イザナギに殺され、神を産みだした……
炎の神……火之迦具土神
だが天狗は気付くだろう。コレは本物の火之迦具土神でなければ、転成体や分霊の類の火之迦具土神ではないと……
では火之迦具土神は?
死神「炎が効かないならこっちはどうかな?」
そんな疑問をよそに
そう言いながら死神はビルに触れようとする…ソレが意味する事は………
846
:
黒蔵
:2012/02/12(日) 08:32:34 ID:3FBgi9l6
>>843
>>845
(不味い)
飛び上がった暴君が棍棒を振り上げた。その狙いは黒蔵の頭。
妖気を感じ取れなくなった黒蔵にも感じられるぴりぴりとした危険が、
その皮膚を粟立たせる。
がづっ!!!
金棒の二撃目を転がって避けた傍らで、黒蔵の代わりに攻撃を受けたコンクリートが砕け散り、
その破片が黒蔵の耳を掠めて飛んでゆく。
(この距離にいたら、確実に死ぬ)
地べたを転がり、死者の血に汚れて立ち上がった黒蔵は、獅子王の重みに苦労しながら袋の口を解く。
袋の中でその鯉口を切ると、解放された刃から破邪の気が吹き上がった。
目覚めた獅子王が、あたりの妖気も邪気もその持ち主が誰であれ、無差別に喰らい始めたのだ。
「ちっがーうっ!俺と天狗さんとはただの知り合い!
そういうお前は何なんだよ一体っ?」
答えは無いのだろうが、状況が今一良く判っていない黒蔵は、結界越しに見える警官たちへも
気を取られながら、生き残るためだけに行動を始めた。
「くっそぉ!!あいつデカ過ぎるっ」
鞘から抜きかけの獅子王を手に、巨大化した暴君から距離をとろうと駆け出す。
その方向は、自分を追う鬼が天狗へその背中を向けるように誘導していた。
しかし、先ほどまで重たい獅子王を抱えて警官から逃げ回っていたため思うようには
距離をとれず、鬼の金棒の届く範囲からは離脱し切れない。
そしてコンクリートの破片で傷ついた耳たぶからは、黒蔵自身の血が滴り落ちている。
その傷は以前に、黒蔵と同じ顔のあの糞ガキ、巴津火が暴君につけた、
ピアスをちぎった時の耳の傷と同じ場所であった。
847
:
天狗
:2012/02/12(日) 21:40:21 ID:EK/9fLvc
>>845
、
>>846
揚々として術をけし掛けた天狗は、思った通りの効果が発揮されなかったことで、
少し不機嫌そうに片眉を上げて向こうを睨んだ。
相手も火を使役する者であるから、ある程度この術が尻すぼみする事は予想してはいたのだが、
やはりそれにしても一切の痛手を与えられなかったのは不満なのだ。
「貴重的だな、よもやこれほどに錬度の高い神性と遭遇できるとは。
上位神か?それとも単にアマツカミの誰かか?どちらにせよ、滅多に見れる物ではない」
しかし、そんな天狗の顔も正体を現した死神を見た時、
まるで綺麗な石やセミの抜け殻などを見つけた子供のように、きらきらと輝き始める。
そこには全く怯えが混じっておらず、むしろこの状況に歓喜しているようでもあった。
「ほうほう、好奇的好奇的。
名前は知らぬがお前程の実力者、次に何を見せてくれるのか胸が躍って仕方がない!」
するりと動き始めた死神を見て、天狗は静かに口角を上げてニヤつく。
今現在、あまりにも不用心で不遜な態度を取っている天狗に、
次の動作に身構える様な素振りは見られなかった。
848
:
七罪者
:2012/02/12(日) 22:56:28 ID:c1.PBF/s
>>846
暴君「テメー見てるとイライラすんだよ!!!俺様の耳を引きちぎったあのガキみたいでよ!!!!」
避けられ、更に八つ当たりに似たような怒りを覚えながら暴君は地面に減り込んだ金棒を横へと薙ぎ払い、黒蔵へ一閃を放とうとする。
暴君「その耳の怪我は俺様への挑戦かぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
力任せの一撃が襲い掛かる……だが、思ったよりスピードは遅いし、先程より威力は弱い。
何故なら獅子王が周りの邪気を吸ってるのに、暴君は気付いてない−−そのため自分の力が弱体化しているのだ。
更にこの一撃を上手く防げば、暴君の胴体に隙ができるはず。
>>847
死神「そうであり違う。僕は違う」
そう言いながらビルの一部に触れると金属部分が溶け、まるで生き物のように動き始める。
死神「僕は《火之迦具土神》の残留思念と《黄泉の禍津》を練り込んで産まれた《火之迦具土神》の偽物」
その溶けた金属を操るのは鍛冶の神としても崇められてる火之迦具土神の神性の力。
死神「偽物だからって………僕を舐めないで」
そう言うと溶けた金属は銀色の奔流となり、まるで巨大な大蛇が口をあけ敵を丸呑みにしようと天狗に襲い掛かる。
849
:
黒蔵
:2012/02/12(日) 23:27:46 ID:3FBgi9l6
>>847-848
「それどう見ても八つ当たりィィィ?!!」
鬼から背を丸めて逃げながら、黒蔵は鞘から獅子王の長い刀身をなんとか引き抜く。
しかし、反撃する前に、逃げるその足元を救うような横なぎの一閃を受けて、投げ出されるように前に倒れた。
「ぐわあぁっ!!」
あとほんの少しで建物に逃げ込めたのに。
獅子王の刀身は黒蔵の手を離れてがらんと地面に転がった。
「!!」
そして、立ちあがろうにも右足首には力が入らないのだ。
上体を捻って反転し、座り込んだままの姿勢で、やけくそになった黒蔵は手にした唯一の武器を振り回す。
(多分死ぬ、きっと死ぬ、ここで俺死ぬ…)
それは、袋に入ったままの獅子王の鞘だった。
恐怖に引きつった表情で泣きながら、黒蔵は袋の口についていた紐を握り、ぶんぶんと振り回す。
その長さは、袋の長さ+紐の長さで2m弱。
どうみても金棒のリーチの方が長いです本当にあ(ry
「もうどうにでもなーれ!!」
振り回して勢いの付いた袋と鞘を、そのまま暴君の額へと投げつけた。
ちなみに袋の中に隠れた鞘そのものは木製だが、その先っちょには金属製の石突が付いていたりする。
そして獅子王の刀身はというと、ぎりぎり持ち主の手の届かないところで
周囲の邪気や妖気を存分に吸い取りまくっていた。
850
:
天狗
:2012/02/12(日) 23:43:50 ID:EK/9fLvc
>>848
、
>>849
「なるほどの、残留物とは言え素材は一級品の神性、通りで侮れん気配を出す訳じゃ
だが、僅かばかりに疑問的。
お前が模造品であろうが転生体であろうがウチは知らぬが、
まるで何がしかの意思を持って、お前が"製造"されたかの様な口ぶりじゃな?」
彼によって鉄骨が物の見事に溶解した様を見て、天狗の死神を見つめる瞳の光りは増す。
しかしその一方、天狗は微かに眉間にしわを寄せ首を傾げた。
本来偶発的に彼が生まれたのなら、大方"混ざり合って"と言葉を選ぶ所なのだが、
敢えて死神は"練り込んで"という、何者かの意思を匂わせる言葉を用いた。
その事から、天狗は彼の言葉の内に何者かの影が見え隠れしたような気がしたのだ。
「くっはっはっは!愚問的、少々お前は先走った自論を持っているようだ。
紛い物が必ずしも劣るとは限らんぞ?拙者がそうであるようにな」
なによりも天狗であるこの天狗は、その為になによりも天狗からは程遠い存在にいる。
なぜなら全ての天狗信仰を継承する天狗など、どの種類の天狗信仰にも該当しないのだから。
「孤高的、模造的、違法的、故に最強!!」
銀の濁流を目の前にして、天狗はそう声高に叫んだ。
しかしそんな天狗の剛毅な叫びも全く意に介さず、鉄は天狗の体を全て飲み込んだ。
「圧倒的!お前の術は確かに我を満足させる事が適う物であった!
だが、吾輩はそれすらも超越する!!
恨むのなら、運命を恨め!!」
天狗の姿が消えてからしばらく静寂が死神のいる空間に広がる。
しかし、その静寂は彼の流した鉄の一部が激しく赤熱した事によって、脆くも崩れ去った。
橙に光り始める鉄の中から、天狗が超高速で飛び出して来たのだ。
天狗はあの時、鉄の濁流に唯呑まれたのではなかった。
むしろ、超高速で前進することによって自身をより流星に近い物に変化させ、
熱を持って鉄を更に溶かしその流れの中を縦断して見せたのだ。
突如出現した天狗はその超高速のまま、片手に先ほどの小刀を握っていた。
そして天狗は勢いをそのままに死神を貫かんと突進をした。
851
:
七罪者
:2012/02/13(月) 00:47:20 ID:c1.PBF/s
>>849
暴君「八つ当たりではない!!!俺様がそう言うなら間違いない!!!!」
そう叫びながら、武器を放した黒蔵を見て獰猛な笑みを浮かべた。
完全な勝利の確信。
暴君は獲物をどう刈り取ろうか…そういう余裕を見せる。
だが
暴君「ガッ…!?」
その油断と一閃からの隙により黒蔵が投げた鞘が暴君の額に当たる。
僅かに後ろに下がり、怯んだ。
刀を拾う余裕を黒蔵に与えてしまうだろう。
>>850
死神「君の質問に答える義理はない。お喋りはここまで……」
その影は…果たして大禍津日神なのか青行燈なのかはたまた別の誰かか天狗にはわからないだろうが…彼は確かに《何者》かに作られた。
死神「…………確かにそうだね。けど君は……なっ!?」
天狗が金属の奔流に飲まれたのを確認し、また悲しそうに見つめるがソレはすぐ驚愕の色に変わる。
流星と化した天狗に対応しようとするが、流星に近い天狗の熱は、死神のイザナミを殺した炎の身体を越えており、ソレは死神の身体を貫いた。
プスプスと嫌な音を奏でながら死神は膝をつく。
死神「……ま…だ……ぁ…ぼくは…まぁ………」
もはや完全に死ねのも時間の問題……
だが……死神の身体から不気味な負の気配と青行燈のような不気味な妖気が沸き上がる。
ソレは死神の《怠惰》
産まれた瞬間に母を焼き殺した火之迦具土神の自分の力を使いたくないという残留思念。
ソレが巨大な胎児の形になり、死神の身体から出て来た。
不気味な産声を上げ、動き始める。まるで母親を求めるように。
だがソレが動く度に周りが燃え始める。
異常に気付きビルから出ようとパニックになってる人々に被害が及ぶのも時間の問題だ。
>>二人
そんな時ビルの下から不思議な気配が発生してるのがわかるだろう。
まるでパニックになってる人間を落ち着かせようとする優しい力が……
852
:
黒蔵
:2012/02/13(月) 18:17:54 ID:3FBgi9l6
>>850-851
袋ごと鞘を投げた後、当たったかどうかを確認するよりも先に、黒蔵はあたりを見回して獅子王を探す。
身体を引きずって獅子王を掴み、立ち上がろうとしてうめき声を上げる。
右足首がありえない方へぐんにゃりと曲がっていた。
これでは一太刀浴びせに行ったところで、あっさり返り討ちに逢って終わる。
なにしろ相手は体躯5mの鬼なのだ。
これではいくら獅子王が破邪の剣でも、有効な攻撃ができるほどの接近は難しい。
(四十萬陀)
何としても生き延びたい。
しかしこの足ではきっと、逃げることも叶わない。
(織理陽狐さん)
泣きべそをかきながら、先ほど投げたのは鞘だった。
今度は獅子王の刀身を大きく振りかぶると、鬼の心臓めがけてはっしと投げつける。
(多分、これじゃ致命傷にもならない)
暴君の前で、黒蔵はあまりにも小さかった。
獅子王は黒蔵にとってあんなにも重かったのに、大きな赤鬼へと飛んでゆく今は酷く頼りない。
(俺はここで殺される)
警備員の血に汚れた左手がポケットを探り、その中の黒い羽を握り締めた。
(蛇神、ごめんなさい)
暴君の金棒と獅子王には、すりこぎと爪楊枝ほどの差がある。
飛来する獅子王を暴君が弾き飛ばせば、黒蔵にとっては何もかもが終わるのだ。
853
:
天狗
:2012/02/13(月) 21:47:47 ID:EK/9fLvc
>>851
,
>>852
手応えを感じた天狗は、滑らかな手つきで刀を体から引き抜いた。
そして懐から小さな絹の布切れを取り出し、刀に突いた血を小慣れた手つきで拭き取る。
もう決着はついたと思ったのだろう、刀は仕舞い天狗は満足げな顔つきで死神を見つめた。
「くっく、愉快的、実に心の躍った戦闘であった!
まあ、高等な神性を手先誤って絶命させてしまったのは、少し悔いが残るがな」
用は済んだ、とばかりに天狗は視線を黒蔵の方へ向ける。
先ほどから驚くばかりの反応を見せる黒蔵だが、いつまでも放置している訳にもいかない。
しかし、そんな暢気な事を考えて死神から意識を外してしまったばかりに、
天狗は彼の大規模な変容を見逃すことになってしまった。
突如死神の体を捨てて出現した膨大な妖気には、天狗も思わず動きから悠然さを失くし、
顔には多量の疑問を浮かべて振り向いた。
「直情的、どこまでも純粋で混ざりけの無い激情・・・
だが、素晴らしい!!やはりここまで貫き通して然るべしだ。
こうまでして童を楽しませるとは、その思いに報いてやる・・・」
だがこの状況を理解してからの天狗の反応は、やはり先程死神に向けていた物と同じであった。
嬉しげに惨状を見つめる天狗は静かに笑い、懐からなにかを取り出そうとする。
「うん? ・・・ほう、酔狂的。
何が来て何をするかは分からんが、手並みを見せてもらおうか」
しかし、ふつふつと沸く何かを地下から感じた天狗は、その手を懐から引き抜く。
とは言っても正体が全く分からない相手に全て、
黒蔵の救済を含めた全てを任せるわけにもいかないので、もちろん天狗は意識の半分を黒蔵に向けていた。
854
:
暴走した七罪者
:2012/02/13(月) 23:13:44 ID:c1.PBF/s
>>853
>>854
暴君「クソがぁぁぁぁぁあ!!!!!舐めやがって!!!!」
油断していたとはいえ、額に当たったダメージは微量のもの。まだまだ自分に有利がある。
刀とはいえ、投げたなら自分のこの金棒ならたたき落とせる。
そう考えなら暴君は刀をたたき落とそうとする……
が…それが油断だ。
暴君「!?」
その刀は周りの妖気や自分の邪気を吸い込んでる。それが力になり金棒を貫いた。
だが軌道がずれたのか心臓からそれている。
だが……
暴君「がぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!」
その刀から突き刺さった場所から妖気と邪気が吸われていき、もがき苦しむ。
慌てて刀を抜き、黒蔵から少し離れた位置に投げ捨てる。
血を流し息を荒げ苦しみながら、視線をずらす。
そこに見えたのは《死神》の死体と彼から離脱した《残留思念》。
暴君「…!?死神………テメェェェエ!!!」
仲間の死は避けられないものは七罪者は理解してる。だが割り切れない時もある。
暴君は天狗を睨み、最後の力を振り絞り、両手を地面にやった。
暴君「………もう俺様は長くねえ………だから最後にビルの人間全員とテメーらの命を奪う……」
すると暴君のいる地面から巨大な古びた門が競り上がってく。
そこから無数の妖気と邪気が感じられるだろう。
《羅生門》
その門が一度開けばそこから無数の悪鬼共が溢れ出るだろう。
そうなれば、本格的にこのビルは地獄絵図になる……
死神「――――――――――――」
そして死神は……いや《残留思念》はビルを掴むとそこから炎が広がりビルを燃やそうとするだろう。更にそこから炎と熔けた鉄が無数の触手になり暴れ回り、それは天狗にも襲い掛かる。
だが……不思議と人間達はまだ死んでいない。
それは地面の下から沸き上がる不思議な力の影響だ。
人間に生命力を与え、この場からなんとか逃げ出させようとしてるのだ。
そして、それは人間の身体である黒蔵にも影響を与えるだろう。
そして、その何かは段々黒蔵の足元へと近づいてくる。
すると地面から小さな白い何か……《生玉》が出て来るだろう。
それが結界内の人間に生命力を与え、なんとか生かせようと頑張ってるようだ。
855
:
セツコ
:2012/02/13(月) 23:28:54 ID:c1.PBF/s
間違えた…
>>854
は
>>852
>>853
宛てです
856
:
黒蔵
:2012/02/14(火) 18:44:54 ID:3FBgi9l6
>>853-854
「やった…てないっ!!」
獅子王が金棒の防御を突き抜けて暴君に刺さったのを、祈るように固唾を呑んで見つめたが、
すぐに獅子王が投げ捨てられるのを見て黒蔵の表情は判りやすく落ち込み、慌てて獅子王へと這いよってゆく。
幸い、暴君は黒蔵を追うのではなく仲間の死神に気をとられ、
かつ何かを召喚・出現させていたため、その隙に再び獅子王を掴むことには成功した。
「え?扉だけ?」
そして肩越しに振り向いて、現れた《羅生門》に間抜けた表情で疑問を浮かべた。
それが暴君の苛立ちをさらに増すことになるとは思っても居ない、阿呆面である。
天狗と異なり、今は人の身である黒蔵は気の類には鈍感だ。
それゆえ邪気も妖気も感じ取れず、《羅生門》のヤバさもなんとなくしか理解できていない。
異界への扉について話には聞いたことのあるものの、所詮は下級の蛇妖、
実際にその手の物を目にするのは始めてなのだ。
そして気でアピールしても気づかないニブチンに、《生玉》も業を煮やしたのだろうか。
「痛でっ!!……んん?」
折れた足首に《生玉》がこつんと当たったことで、ようやく黒蔵は《生玉》に気が付いた。
《生玉》の作用だろうか、ずきずきとした足首の痛みはそれがぶつかった直後から、一気に緩んでゆく。
(何だこれ?)
右手の獅子王を杖がわりに、右膝を地に付いたままで立ち上がりかけ黒蔵の左手は《生玉》を拾い上げようとした。
その左手には夜雀の黒い羽をまだ握ったままであり、
拾い上げられれば《生玉》は、羽と、そこに篭った恋する想いとに触れることとなる。
857
:
天狗
:2012/02/15(水) 22:14:54 ID:EK/9fLvc
>>854
,
>>856
巨大な赤子にしがみ付かれ、どんどん炎上していこうとするビルを天狗は見つめる。
その顔には、裏表の一切を感じさせない程のおぞましい怒りが浮かんでいた。
それはここにいる人も妖怪も大差なく、
思わず身を委縮させてしまうほどの膨大な妖気と威圧感と共に発せられる。
「ほうほう、不遜的・・・
よもや俺の所有物を破壊しようなどとは・・・万死に値する!!」
怒りと同調して天狗の体から炎が噴出し、再び天狗は高速で死神に接近する。
唯のた打ち回るだけな触手の茂みを意に介さず力技でかわしていった。
「そして・・・奇妙的、なにかはわからんが大袈裟な物が飛び出しおった」
その中でも、暴君が門を召喚した事を視界の端に捉え、小さく愚痴るように呟く。
すると天狗は突如、自身の両腕に妖気を多量に纏わせて、赤子の腹部辺りを二か所突き刺した。
「黒蔵!!絶対的な命令だ!!
この建物から出たその何かは、もちろんわしの所有物!!決してそれから手を離すな」
腕を突き刺したままの天狗は、黒蔵の方を向かずに唯吠えて命令する。
それがなにかを天狗は一切知らない。しかし、絶大な程に我儘な天狗の欲望は、
その何か分からない物も自分の所有物と勝手に決定していた。
黒蔵に言い残してから天狗は、腕を突き刺したまま背中の黒い羽を広げた。
すると天狗は大きく羽ばたいて、死神と共に上空へと上昇していく。
空に連れ去られた赤ん坊の今現在いる高度は、眼下にあるビル群が霞んで見える程。
天狗は赤ん坊がビルを焼かぬ様、空へと退場させたのだ。
「絶景的、実に心地よい眺めじゃ。しかし、お前よ。
これから捨てられる立場のお前からは、この世界どう見える?」
それから天狗は静かに赤ん坊に囁いてから、赤ん坊に突き刺していた手を離した。
死神は天狗という上空での支えを失くして凶悪な高度から落下するだろう。
そして赤ん坊が落ちるであろう地点は、丁度暴君の召喚した門の真上であった。
858
:
七罪者
:2012/02/16(木) 00:02:36 ID:c1.PBF/s
>>856
>>857
黒蔵に持ち上げられ、生玉は黒蔵の想いを…その手に握る羽の持ち主の想いを読み取っていく。
この羽の持ち主は貴方の安否を心配している…無事であるよう願ってる。
貴方はこの場から生き残りたいか?再び愛する人に会いたいか?
なら望め。そして、求めよ。
そう問うかのように、生玉から黒蔵に生命力を与え、痛みを和らげ、多少の傷を癒し、生き残る為に力を貸そうとする。
……願えば、刀での最大の一撃で振るう為の力を与えてくれるだろう。
暴君「俺様は…酒呑童子の旦那たちの敵を…俺達から全てを奪ったこの《國》から全てを奪う……
その為なら俺様の命くらいやるっ!!!!」
暴君がそう叫ぶ中
《死神》は天狗を焼き殺そうとするも、その意思なき触手は避けられていく。
そして、天狗の両手が突き刺さり、動じてないが、上空へと持ち上げられていく。
そして、天狗の問いを答えることなく……いや、残留思念に触れてる天狗なら想いが読み取れるだろう。
《僕は…この世界が憎い》
《産まれてすぐ、望んでない力で母を殺し、父に憎まれ殺された》
《父は愛してた母を黄泉から取り戻そうとした。それなのに父は醜くなった母を見て拒絶した》
《自分勝手だ。理不尽だ》
《この國は…世界は理不尽ばかりだ》
《僕は…もう何もしたくない…》
《ただ……ただ……》
《大禍津日神が…僕にいった。母を黄泉から連れ出そう。そして父に…》
―――謝ってほしかった――――
そして、死神は落下した。
暴君「……開け!!!《羅生門》!!!!!!!」
一方、羅生門はゆっくり開きそこから無数の悪鬼共が顔を出す。一匹一匹が並の妖怪より強い………
だが………それは完全に開く間もなく。
落下した死神により暴君ごと潰され、それは一気に炎上した。
それと同時に結界は粉々に砕けビルは隔離から解放された。
呆気ない幕切れ。
だが災難は終わらない。
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に向かい襲い掛かろうとし
別の5匹がビルに向かおうとし
最後の5匹が繁華街に出ようとするだろう。
859
:
セツコ中
:2012/02/16(木) 01:37:18 ID:c1.PBF/s
>>858
訂正
×
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に向かい襲い掛かろうとし
別の5匹がビルに向かおうとし
最後の5匹が繁華街に出ようとするだろう。
↓
○
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に襲い掛かろうと近付こうと
別の5匹がビルの中にいる人を狙おうとビルに向かおうと
最後の5匹が敷地ないから殺戮を繰り広げようと繁華街に出ようとするだろう。
860
:
黒蔵
:2012/02/16(木) 20:27:13 ID:3FBgi9l6
>>857-858
「何?」
ただの物と思って何気なく拾い上げた《生玉》は、言葉ではない方法でその意を黒蔵に伝えてきた。
(四十萬陀に会いたい。山に帰りたい)
《生玉》により足首の痛みが薄れ行くのと共に、恋心が、里心が、ひどく掻き立てられる。
それは死の覚悟を、生き延びる意欲へと転じた。
そこに、天狗からの一喝が降って来る。
「いっ?!これ、天狗さんのだったの?」
天狗の威圧感に思わず身を竦めて、反射的にジャケットの内ポケットに羽と《生玉》を押しこんだ貧乏ホストが、
破壊された《羅生門》から吹きあがった炎から、左腕で庇った顔を再び上げたときにはもう、
15匹のうちの5匹の悪鬼が黒蔵に向かって来ていた。
(嫌だ!!!死ぬのは嫌だ!!!)
寄って来る悪鬼たちへ、黒蔵は遮二無二右手の獅子王を振り回す。
死への恐怖と生への執着は、内ポケットの《生玉》にも伝わってゆく。
(絶対に生きて帰る)
太刀筋も何もなったものではないが、それでも獅子王は空を切って低く楽しげに唸り始めていた。
「え?…あ?……おお?」
重たい筈の獅子王を、片手で振っていることに黒蔵が今更気づいたときには、
獅子王の動きに誘われるかのように、折れていたはずの足首で一歩目を踏み出していた。
獅子王の唸りが高まる。それは巨大な猫が満足気に喉を鳴らしているような音だった。
「うわぁぁぁぁいっ??!」
慌てて左手も太刀に添えたが、獅子王は己で望むかのように動き、黒蔵を振り回す。
やがて彼らは悪鬼の間を舞い始めた。かつて織理陽狐が獅子王を扱ってみせたときのような
優雅さは無いものの力強く、その気まぐれな動きは捉え難かった。
一打
右足が強く地を蹴った。
二拍
踏み込んだ左足の沈み込みをバネに、一匹目の鬼へ右下から左上へと斬り上げて、
次の鬼へと跳んでゆく。
獅子頭も囃子も無いが、その足裁きと跳躍は厄を祓い幸を呼び、
祝いの場を寿ぐ獅子舞のそれだった。
861
:
夜行集団
:2012/02/16(木) 21:54:04 ID:EK/9fLvc
>>858
,
>>860
死神を捨てた天狗は堂々と、大きく羽を羽ばたかせながら地面に降下していく。
そして地に降り立った天狗はただじっと死神を見つめて黙っていた。
「・・・ふむ、実に称賛的、死すら超越しようという気概は。
だがな、己からすればその願いは少々お節介、と言えぬ事はないぞ?」
木の高下駄を鳴らしながら、天狗は落下させられた死神に近づき話しかける。
どうやら今の彼は地獄の鬼に関して全く興味を示していないようだ。
「確かにあやつらはお互いを憎み合った、必然的にな。男は女の醜さを憎み、女は男の薄情を憎んだ。
それでお互いが別の世界に腰を据える事になるのも当然じゃ。
だがな、奴らにとってはそれでいいのじゃ。
仮想的にいえば、二人がまたも同じ世を共にすればどうなる?
生の理と死の理が、またも混じりあえばどうなるか、思考せぬ程怠惰でもあるまい?
それに男も、既に女に対する非礼の償いはしておる。
何せ奴は自らの力で生み出した人間達の命を、いつも女に献上するという憂いを追っているのじゃぞ?」
その因果がどこまでの力を有して現在も成立しているかは分からないが、
それでも男は命を女に渡し続けている。
そして女も男を既に許しているのだ。その証拠にそれと同じ量、冥府から再びこの地に命を贈っているのだから。
「無礼的、いつまでも私の前で死んだふりをしておるのだ?
ここはあの何かの力の有効範囲、お前も例外なく死んでおらぬ筈だが?」
天狗はそう言って死神の腹を強く蹴った。
「それと、邪魔的。奴らは冥府に帰しておこうかの」
辺りを見回してから天狗は呟き、またもや右腕に妖気を込めた。
それから近くにあった小石を5個拾い、目線を暴れ回ろうとしている悪鬼たちに向ける。
【天狗礫】
天狗は大きく振りかぶり悪鬼たちへとその小石を投擲する。
膨大な妖気を帯びたその投げ石は本来の石の攻撃力を超えた速度に変化し、
まるで散弾銃のような効果を持って悪鬼たちへと向かっていった。
862
:
七罪者
:2012/02/16(木) 23:26:25 ID:c1.PBF/s
>>860
>>861
天狗の言う通り…まだこの範囲は《生玉》の能力の範囲内だ。
死神「――――――」
《……君の言う通り、僕も暴君もまだ生きてる。けど時間の問題だよ。僕らは生命力でギリギリたもってるだけ、だから生玉が能力をやめれば僕らはすぐ死ぬ》
ピクリとも動かない死神は腹を蹴られるも動きはしないが、念波が送られてくる。
《暴君――牙王丸が最後によんだ鬼達が勝つも負けるも生玉が生命力を送るのもやめれば僕はもうダメ》
羅生門の残骸の下から負の感情の塊である《強欲の大罪》が飛び出しどこかへ飛んでいった。
そして死神の身体からも、負の感情の塊である《怠惰の大罪》が飛び出しどこかへ行った。
死神「――――」
《僕ら七罪者はこの國に…父・イザナギに…復讐するのも目的です。生と死が混じり合い、この世界を混乱させる為に…》
《……父と母が互いを許しあってるなんて……嘘だ…それじゃあ…僕は……僕は…………》
そこから死神はしばらく黙り
死神「――――」
《…………僕らの役目はもう終わりだ。大罪が身体から飛び出した。死んだも同じ》
《速く僕らを殺しな……生命力でも回復仕切れないように消せばいくら生玉でも無理だよ。君ならそれくらいできるはず》
《もう僕は疲れた。何もしたくない……》
《母を呼び父に復讐するのも父に謝罪させるのも大禍津日神に任せるよ…》
《……………》
一方、悪鬼共は…
黒蔵に向かった5匹の内一匹は斬られ上半身が地面に落ちた。
更に切った際に妖気と邪気が吸われていく。
斬られた鬼は反撃もできず動けないが生玉の力で死ぬことはできない…あるいみ死ぬより酷いが…
そして2匹目の鬼は向かって来た黒蔵に警戒しながら、頭を狙おうと右手の鋭い爪を振るおうとする。
残り3匹の鬼は左右に1匹、2匹目の鬼の後ろに1匹と連携して攻撃しようと構える。
ビルに向かった5匹の鬼は天狗の攻撃により行動するもなく消滅した。
それを見た繁華街の5匹の鬼は急いで繁華街に逃げようとする。
だが…ビルの敷地外は生玉の範囲外だ……
更に繁華街は夜行達の縄張り…
はたしてどうなるか…
863
:
黒蔵
:2012/02/18(土) 00:18:16 ID:3FBgi9l6
>>861-862
鬼の爪を掻い潜るように舞い手は身を沈めて、正面から受け止めようと獅子王を振るう。
右手の爪はがっきと刃を受け止めたが、徐々にその妖力は獅子王に喰われてゆく。
『そこの君、武器を捨てなさい!』
その時声を上げたのは、先ほど黒蔵を見失って戸惑っていた警官の一人。
繁華街は夜行集団だけでなく、人間の縄張りでもあるのだ。
ビルが結界から開放された今、警備員の遺体も壊れたビルも、彼らから見えているようだ。
天狗や七罪者ほどの妖怪ならその存在を人目に映らぬようにできるだろうが、
人の身である黒蔵はこの状況で逃げも隠れも出来ないのだ。
警官の目からみれば、もしかしなくても黒蔵は現行犯なのである。
声を上げた警官は、抜き身の太刀を手にした黒蔵にまっすぐ銃口を向けている。
見えない性質なためか、悪鬼にはノーマークだ。
見えるほうの警官も銃を向けてはいるものの、悪鬼達とその存在に全く動じない同僚とに、
どこか戸惑ったようにその銃口は揺れている。
(あれ、だ)
向けられた銃口に、黒蔵の背筋を恐怖がぞわりと這う。
目の前の鬼の左手も怖いが、向けられた2つの銃口はもっと怖かった。
あれは過去に2度受けた。一度は腹に、一度は背に。
警官に気を取られた黒蔵が、蘇る記憶に硬直したことが、その背後の悪鬼達には付け入る隙となった。
864
:
夜行集団
:2012/02/18(土) 15:34:31 ID:EK/9fLvc
>>862
「なるほどのぅ、全体的に貴様らの状態は把握した。
貴様らの命運はあのよく分からん玉に左右されているという事じゃな?」
死神の言葉を聞いて天狗は低く唸って納得した。
彼らが今どれだけ衰弱しているのか、それは外から見ても確認できる程。
むしろよくこれで生きていれると驚くくらいであるが、それが生玉の力なのだろう。
「じゃが逆説的に言ってしまえば、お前はあの玉があれば命を繋ぐわけじゃ。
おい!!そこの奇妙的な玉よ!!わしの命令を聞け!!」
天狗は一度死神に向かってにやりと悪辣に笑った後、生玉の方へ振り向き指図をする。
その天狗の態度は願いや嘆願というよりも、拒否権を認めない絶対命令の様相であった。
「この怠惰的な者の命を救え!!貴様ならば生命力を回復させる事も出来よう!!
回復が適わぬのなら、この状態を維持し続けよ!!」
繁華街という広い空間、特にこのあたりの地域ならば天狗の所有物な土地も無く、
天狗にとって助ける必要が無いため、今現在天狗は悪鬼を無視している。
>>863
「おまわりさん、こちらの方が大変だっていう」
視認できる中で、最も不審な黒蔵に拳銃を向ける警官の耳元に、
どこか人を不安にさせる様な奇妙な声色の男の声が囁かれる。
警官はそんな奇妙極まりない声に反応して、背後を思わず振り向くかも知れない。
「ここは俺達が取り持つから、お前らはゆっくり眠っていろ」
もし彼らが後ろを振り向いたのなら、目の前にいるのは肉や皮の無い骸骨。
だが警官達は驚く暇も与えられることなく、その骸骨に息を吹きかけられ、
霊の息を吸ってしまった者達はすぐさまに昏倒するだろう。
「クロロなんとか的な奴だっていう」
前門の虎、後門の狼な黒蔵の眼前に霞のように立っているのは、彼もよく知る人物である。
しかし霊観の無い黒蔵には姿を見る事は出来ないかも知れない。
だが、あのいつも黒蔵を常々おちょくっているあの声だけは、なぜか聞き取れている状況であった。
そして黒蔵が後ろを振り向けば、霊観が無くとも視認できるあの蒼い髪色のイケメンが、
悪鬼たちの前に大きく立ちはだかっているのが見えるだろう。
865
:
七罪者
:2012/02/18(土) 17:34:53 ID:c1.PBF/s
>>863
>>864
黒蔵と対峙してる悪鬼はその右手を防がれ、更に自分の妖気と邪気を吸われていくのに若干動揺している。
だが、黒蔵が後ろの警察に気を取られたのを見てすぐさま持てる力を振り絞り、刀を下へと払い、左手の鋭い爪で黒蔵の腹部を突き刺そうとねらうだろう。
そして、後ろの三匹の鬼は連携を狙い、すぐさま黒蔵を狙おうとするが……
新たに現れた男にそれは防がれた。
真ん中の一匹が雄叫びを上げ、その鬼特有の怪力で雪男に右手で薙ぎ払おうとする。
そして、天狗の答えに応じたのか、生玉は強く光ると、死神の状態を維持し続けだろう。
今は他の人間達や黒蔵に生命力を与えてるが、この戦闘が終れば死神(天狗がいえば暴君も)を集中的に生命力を送り時間は関わるが回復させてくれるだろう。
死神「―――――――」
《………どういうつもりですか?》
天狗のその答えに死神は戸惑いながら念波を送った。
一方、繁華街に潜り込んだ5匹の悪鬼はあの状況をみて、この辺りは強い妖怪達がいると思い、人を襲うのは後にし闇夜に隠れ、状況を見てから人を襲うと少ない知恵をしぼり行動をしている。
866
:
黒蔵
:2012/02/18(土) 18:29:31 ID:3FBgi9l6
>>864-865
警官たちは二人とも骸骨の吐く息に、誰何する間もなく、くたりとその場に膝からくずおれる。
一時的な昏睡に陥ったのだ。
「虚冥さん!!」
聞き知った声を頼りに、見えない相手を探す黒蔵。
獅子王に圧された悪鬼の右手が弱っていたからこそ、そこに生じた油断。
そこを衝いて、悪鬼の左手がその爪で黒蔵の腹を貫いた。
(しまっ…!!)
獅子舞の足裁きが乱れる。
借り物の仕事用ジャケットとシャツは裂かれて血が滴り落ち、内ポケットの《生玉》と羽が、
服の裂け目からこぼれ落ちた。
落ちた《生玉》は、一度地を跳ねて《死神》の元へと転がり、天狗の足元に差し掛かる。
一方、夜雀の羽はふわりと風に乗り、それを追いかけるように黒蔵の右手が伸びる。
左手のみに支えられた獅子王は切っ先を下げてしまい、腹は鬼の左手に貫かれたまま、
焼ける様な痛みと共に生命は流れ出してゆく。
それでも黒蔵は、あの黒い羽だけは、絶対になくしたくはなかった。
「…くっ!」
伸ばした指先が、かろうじて羽を風から奪い返す。
次の瞬間、悪鬼は左手を包む生暖かい肉の収縮と圧迫とを感じることだろう。
黒蔵が痛みに耐えながら総身の力を振り絞り、鬼の首を横薙ぎにしようと、その左手の獅子王を振るうからだ。
(四十萬陀ぁっ!!)
悪鬼を睨むその両眼は、死の影を濃くしつつある表情の中にあって尚、生きる意思に煌いていた。
867
:
夜行集団
:2012/02/18(土) 23:02:23 ID:EK/9fLvc
>>865
、
>>866
「うん、別に君達に恨みはないんだけどね。
一応うちの後輩がお世話になったから、けじめくらいはつけといてもらうよ」
悪鬼を前にしながら飄々と、たじろぐ様子も逆に不遜な様子も見せずに、
ただ氷亜はへらへらと笑って中央の鬼に話しかける。
だがそんな暢気な口調ととは対照的に、悪鬼に対する報復は圧倒的であった。
殴りかかる悪鬼に向かって、氷亜はため息のように息を吐く。
すると鬼はその息がかかった部分、場合によっては全身が強烈な勢いで凍結しだした。
いくら相手が怪力であろうが、自分の体全ての操作権限を失えば意味をなさない。
「愚問的、どうもこうもない。わっちがお前の生を望んだからに決まっておる。
生と死の概念すらも超越できると盲信するその愚かさ、己は痛く気に入ったのだ」
一体何の偶然か、足元に転がって来た玉を拾い死神にかざした。生玉は天狗の望み通りに死神の回復を始める。
その回復のスピードは天狗の妖気の助力がある分、
本来持っている能力を遥かに超えて見る見るうちに死神の傷を治していく。
「当然的に、貴様に同情した訳ではないぞ?本来貴様は死を望んでいたのだからな。
だが貴様は死を選ぶことは許されない。
運が悪かったと思い、せいぜい拙が飽きるまで生き続けよ」
しかし、天狗が興味を示したのは死神だけ。
彼が天狗に暴君の救済を懇願しなければ、当然の如く暴君はそのままのろのろと死んでいくだろう。
868
:
七罪者
:2012/02/18(土) 23:53:08 ID:c1.PBF/s
>>867
>>868
殺った!!
そう黒蔵と対峙した悪鬼は自らの勝利を確信した。
―――いくら相手が厄介とはいえ所詮、人間。身体は脆い―――
だが……暴君と同じ……それは油断だ!!!
!?
―――腕が抜けない?馬鹿な…!?俺の妖気が吸われたとはいえ、ビクともしないっ……!!この人間のどこにそんな力が……!?―――
《悪鬼》は侮っていた……目の前の存在の……
ザシュッ!!………ボトッ
生きようとする命の輝きに!!
そう気付いた時には、悪鬼の頭は地面へと落ちていった。
そして氷亜と対峙した中央の鬼は、動こうとした時に自分の異変に気付いた。
―――身体が動かn……―――
そう気付いた時にはすでに彼は凍り付き、意識は遠退いていた。
そして、二匹の鬼は理解した。自分達がいかにヤバイのを相手してると……
―――どうする?―――
―――俺らのような小鬼じゃ、倒せない。中鬼、大鬼も一緒に現世に来てれば話は別だ。壊れる前に出れたのは俺らだけだ―――
―――他の仲間で逃げたのがいる。ソイツらに合流しよう―――
悪鬼同士しか理解できない言葉で、そう会話すると残った二匹は逃げようとする。
……だが、それを許してくれる程、目の前の雪男は甘くないだろう。
死神「――――――」
《…………ハハハハハハ。君には敵わないよ…力も器も全て……》
《僕達は妖魔より先に貴方に会いたかった……》
諦めたような、悲しんでるような、尊敬してるような、複雑な感情で念波を送る。
身体は修復されていき、動き出すと羅生門の瓦礫を持ち上げ、中からズタボロで原型がギリギリわかるくらいの鬼――牙王丸をとりだした。
死神「――――――」
《お願いします。僕より牙王丸を治してください。彼も國を怨み自分の命を捨てて母を蘇らせ國に復讐を誓った《仲間》なんです。口は悪いし自分勝手だけど……》
《治したら僕らを好きにしていいです。お願いします。貴方の軍門にも下ります》
自らの死を望み、復讐を願うモノ達でもやはり仲間の死は嫌なのだ。例え仲間が自分の死を望んでいても……
自分勝手で我が儘で、自分の命は安くみるのに、仲間の命は重く。なんという我が儘で、罪深い。
はたして目の前の天狗はその願いを聞いてくれるか……
869
:
黒蔵 ミナクチ
:2012/02/19(日) 00:47:31 ID:3FBgi9l6
>>867-868
脱力した悪鬼の左手を体内に残したまま、黒蔵はゆっくりとその場に膝をつく。
左手の獅子王を支えに、俯いたまま長い長い吐息を吐く。
その息の白さに、虚冥だけでなく氷亜もこの場に居ることを知った。
(寒いのは、怪我のせいだけじゃないんだ)
のろのろと頭を巡らせて氷亜を探そうとするも、既に視界は昏くなりつつあり、
人の身の脆さを黒蔵はまざまざと実感した。
この程度の怪我でこれほど急激な生命の減衰を感じることは、妖怪の身体の頃には無かったのだ。
〔なぜ、私を呑まない。許しは与えておいたのに〕
不意に深い声が黒蔵の心に響いた。
閉じていた目を開け、獅子王を置いて震える左手で首にかけた紐を探る。
服の下、胸元に下げられていた小さな翡翠の輪の蛇が、その頭を持ち上げて黒蔵をじっと見つめていた。
(俺が呑みたくないから。蛇神には傍に居て欲しい)
〔苦しむのですよ?〕
(うん)
ミナクチの欠片に答えて、そこで黒蔵の意識は途切れた。
倒れゆく際にその身体から、鬼の左手がずるりと抜ける。
翡翠の蛇は紐から抜け出すと、倒れた黒蔵の上を這い、その腹に開いた穴を覗き込む。
〔黒蔵、お前のその選択で私の賭けは勝ちと決まった〕
《生玉》を持った天狗と《七罪者》に、後の心配が無いことを確かめると
黒蔵の致死の傷を重傷にまで和らげる代償として、翡翠の蛇は長さの半ばから砕け、
蛍火色の光となって虚空へと散っていく。
〔その功の報いに欠片の私がしてやれるのは、その命を繋ぎとめるところまで〕
黒蔵がしっかり握ったままの黒い羽に、消えて行きながら翡翠の蛇は少し笑ったようだった。
〔もうしばらく苦労するでしょうが、腐ることの無いように〕
蛇神の欠片は、この先のことを予想していたのだろうか。
倒れた警官たちと夜行集団へ目礼すると、最後にその頭と尾が燃え尽きるようにして消えた。
870
:
夜行集団
:2012/02/19(日) 01:05:37 ID:EK/9fLvc
>>868
「当然当然、俺を上回っていく者なぞ存在する筈がないであろう?絶対的にな」
基本的に自分では到底気恥ずかしくて言えないような自画自賛を、
天狗は大笑いしながら臆面も無く言い切った。
そして死神が天狗の前で、同胞の命乞いをしている最中その天狗の目は、
またもきらきらと輝く。
「根本的に、僕はその男に対して興味は微塵も無い。
が、貴様が我が傘下に加わる際更にこのような手土産を献上するという、
貴様の吾輩に対する忠誠心は気に入った!!
貴様にはその忠誠に応じた、童からの偉大な褒美をやろう」
天狗にとっての手土産とは、きっと牙王丸も同時に軍門に下らせることを意味しているのだろう。
そんな彼なりの価値観に死神の願いは響いたのか、
天狗は意気揚々として生玉の力を暴君へも分け与え始めた。
>>869
虚冥や氷亜、そして天狗も含めた夜行集団は失態を晒した、としか言いようが無い。
なぜなら仲間の黒蔵の怪我の回復も満足にできず、
その結果としてミナクチの守護を失う事になったというのに、
その事にすら戦闘に夢中になって気づく事が出来ていなかったのだから。
「ゴメン・・・黒蔵君。弁解の余地も無いよ・・・」
今更過失に気付いた氷亜は顔から笑みを失くし、倒れこんだ黒蔵にとぼとぼと歩み寄る。
黒蔵の隣で彼はしゃがみこみ、冷気を帯びていない深いため息をついた。
それが黒蔵に超常的な力を与えるわけではなくとも、ミナクチのその輪は黒蔵にとって、
少なからずとも精神の支柱となっていた筈なのだ。
自分の愚かさにうなだれる氷亜の背後には、完全に全身を冷凍された鬼達の姿があった。
そして氷となった彼らから、まだ妖気を感じる事が出来るという事は、
氷亜の放った冷気が簡易な捕縛ようの物だという言う事を意味していた。
氷亜は黒蔵に害をなした悪鬼の処分を、どうやら黒蔵に託そうとしているらしい。
871
:
七罪者
:2012/02/19(日) 10:15:37 ID:c1.PBF/s
>>869
>>870
死神「――――――」
《ありがとうございます》
《僕達の力…貴方の為につくしていきます》
天狗の命令により、生玉は牙王丸に生命力を与えていく。
身体が徐々に回復していってるのがわかるだろう。
死神「――――――」
《牙王丸には私がよくいっておきます。天狗さまコレからもよろしくお願いします》
こうして、死にたがりの七罪者の内、《死神》と《暴君》は死ぬことなく天狗の軍門に下り、生玉も天狗の手に渡っていった。
凍り付いた悪鬼達を処分するのも黒蔵と氷亜しだいだ。
余談だが、ビルの中にいた人間たちも無事に逃げていき、ニュースではガス爆発による火災として処理され、最初に亡くなった警備員2人は爆発に巻き込まれたとして処理された。
/これにてイベントは終わりです
/蛇さん、夜行さん一週間お付き合いいただきありがとうございます!
/お疲れ様でした!
872
:
黒蔵
:2012/02/19(日) 16:29:05 ID:3FBgi9l6
>>870-871
「氷亜さん?」
近寄ってきた気配に、黒蔵は目を開けた。
「お店で借りた服、駄目にしちゃった」
死から免れはしたものの、今だ重傷で横たわったままの黒蔵は、浅い呼吸の中で
クラブからの借り物の衣装の件を詫びた。
「お店にも迷惑かけるね」
黒蔵の仕事に穴が開くのだから、その分のしわ寄せは他のメンバーに行くのだろう。
もしかしたら、それだけでは済まないかもしれない。
(虚冥さん、怒るだろうなぁ…)
「あっちは天狗さんが勝ったんだ」
二人の《七罪者》と天狗、《生玉》の様子を見て取った黒蔵は安心した。
凍りついた鬼達からの妖気は相変わらず感じ取れないままであるが、《暴君》が天狗の軍門に下る
ということはその配下の悪鬼達もまた、夜行集団の傘下に加わるのかもしれない。
「……人が来る。氷亜さん、これお店で預かっておいてくれる?」
傍らの獅子王を指して氷亜に託す。これを現場に置いておくわけには行かない。
既に遠くからは、緊急車両のサイレンが聞こえ始めていた。
《生玉》の力でも《七罪者》二人に加え、黒蔵までも回復させるには少しばかり時間が足りないだろう。
「もう行って。氷亜さんまで警察に事情を聞かれることになるのはまずい」
これから人目も増えるだろう。氷亜の容姿はどうしても目立つのだ。
(お店のことだけは、黙っていよう)
この件がガス爆発として処理されることは、この時点での黒蔵はまだ知らない。
人間に何か聞かれたら、ホストクラブについては当たり障りの無い返答で済ませるつもりでいた。
氷亜に後を頼み、喋り疲れた黒蔵は目を瞑る。
このまま人間達に運ばれて、回復すれば色々事情を聞かれることになるだろう。
今回、《生玉》が天狗のものとなったことで、夷磨璃の回復手段としての《生玉》を交換条件にして
巴津火と取引するという手段を、黒蔵は失ったのだった。
873
:
夜行集団
:2012/02/19(日) 19:23:55 ID:EK/9fLvc
>>871
「上々的、忠誠の挨拶にしては面白みが足らんがな。
これより貴様らは常にわしのため、骨を粉にし身を砕き全生命を賭し私に貢献せよ」
最後に高笑いをしたかと思うと天狗は目の前の二人を、
特に暴君に関してはかなりかさばるであろう事も全く意に介さず、
抱きよせて洗濯物を干すかのように天狗の両肩に掛けた。
「ここの後始末もろもろは貴様らに任せたぞ氷亜、虚冥よ。
基本的に僕は後始末を好まない」
そして大きく黒い羽を広げてから、振り返り同胞の二人に命令を下す。
快活にまた一笑いしてから天狗は羽ばたき始め、あっという間に空の中に姿を隠した。
>>872
やはりミナクチのお陰で、黒蔵は今現在急を要する様な容体ではないらしい。
少し安心して息をついた氷亜であったが、黒蔵の弱り切った声で放った言葉に苦笑して首を横に振る。
「それは君が気に負うようなことじゃないよ。
誰がどう言おうと強者が弱者を保護する僕達の掟に、僕達が全く及んでいなかったんだから」
それでも、それ故に黒蔵が今思っているであろう怪訝をせめて払拭するために、
氷亜は優しげに笑い自腹を切る事にした。
そんな時黒蔵は指でどこかを指し示し、氷亜はそれに従って彼の指先にある物を見つめた。
要件を把握した氷亜であったがその時には既に虚冥が、
部下の中でも屈強な霊に命令を下し黒蔵の獅子王の回収を済ませてあった。
「分かった、先輩がいが無くて本当に申し訳ないんだけど、
お言葉に甘えて逃げさせてもらう事にするよ。
出来る限り拘束を早く解けるように働きかけるから、ほんの少しだけ待っててね」
治療を行なえる術師や妖怪は夜行集団にも在籍しているし、
しようと思えば、黒蔵の怪我の治療も不可能ではないのであるがそれ以上に、
ビルの一件が起こる前に黒蔵はあまりにも騒ぎすぎていたため彼も姿を消してしまえば、
余計に黒蔵への懸念が増えてしまう事を恐れ、氷亜は渋々ながらもこの場を後にする。
完全凍結させた悪鬼たちも霊達に回収させ、彼らの取捨選択はまたの機会にする事になった。
874
:
インコレツジ(忌黄烈迅)
:2012/10/04(木) 21:35:23 ID:znuO.6vI
畏れる者は無い。
未だ、ヒトいうものを理解しえない。
食べれば、解かるカな?
一口、女の首を喰らい込んだ。
居てはならぬ。生きてはなら――。
俺様は人間を、シっている...?
記憶にあるのだ。ならば、もっと喰えば思い出すだろうか。
首より下も、噛み砕き咀嚼する
ああ、ここは、生きていけないから、だから人間を止めて、妖怪になろうと――?
875
:
テレビ
:2012/10/04(木) 21:38:43 ID:znuO.6vI
それは、山のふもとで起きた事件。
「人の血だけが落ちていた。防犯カメラには、突然血潮を上げるOL風の女性と、なぎ倒されるかのように倒れた木々が映っていた」
等と警官や報道関係者は語る。遺体は見つかっていない。
山の地滑りや一部崩落かと思われている。
「そういえば、この山は猿が大きめで自生しているそうだね
でも、山から下りてくることは、滅多にないとか」
インタビューに地元の老爺はこう、答えたのだ。
さて、この事件、放置してよいのか?
876
:
七郎
:2012/10/06(土) 22:00:03 ID:???
>>875
木々の間から一匹の小動物が顔を覗かせる。白く胴が長い狐だ。
「十夜……どこ行っちまったんだよ……」
その狐は何やら心配そうな顔をする。どうやら、彼は弟分の人間、十夜を探しているようだ。
「ここいらには入るなってあれほど言ったのによ……」
七郎ももちろん件の事件の事は知っている。そして、この事件の犯人が人間ではなく、自分では適うはずがない存在かもしれないことも当然分かっていた。
だから、焦っていたのだ……
877
:
名無しさん
:2012/10/06(土) 22:14:39 ID:5tjm1s6k
町はずれの民家。
切れかけた街灯が点滅するその隣に一軒家はあった。
かつては全ての妖怪を不幸にしようとした組織、
そして現在は、ただ1つの意地の為に3人の子を”幸せ”にするための組織。
新生・紫狂の本拠地であった。
ニュースを見る青い着物の少女、雨邑。
「・・・」
女性の死亡、謎の多すぎる現場。
これは十中八九妖怪の仕業だ。
「どう思うのだ、宛誄?」
問いかけるは赤い着物の少年にして3兄弟の長男、安木。
宛誄と呼ばれた黒い着物の少年はやれやれと肩を竦める。
「妖怪の仕業だろうね、今時こんなに派手に人を襲う奴が居るなんて考えにくいけど」
そんな3兄弟を諌めるように、この中で一人だけ大人びた乙女がピシャリと言った。
「だめだよ、みんな! また首を突っ込もうとしてるでしょ?」
安木が食い下がる。
「いけませんか、入江姉さん」
「いけません! また・・・また誰かが死んじゃうような事になったら・・・!」
「しかし! 己達はこのような妖怪を放っては置けません!!」
「駄目! この妖怪があなた達よりずっと強い奴かもしれないんだよ!? お願い、お願いだから・・・」
「もうどこにも行かないで・・・」
878
:
名無しさん
:2012/10/06(土) 22:16:32 ID:5tjm1s6k
涙目になる入江に安木はたじろぐ。
雨邑、宛誄もこれには首を縦に振らざるを得なかった。
以前、雨邑が殺されたあの頃。
宛誄は復讐鬼と化し、安木は修羅の道を共に歩み・・・。
そんな状況に入江は心が壊れかけた。
今のこの温かい家族を、もう2度と壊したくない。
それが今の紫狂の共通認識だった。
「やれやれ、みんな情けないね。一回死んだくらいでこんなに憶病になるなんてさ」
「・・・居たのですか、波洵姉さん」
「うん、ずっと。空気に変化してたんだよ、気付かなかった?」
そこに現れたのはかつての最悪の妖怪の実の娘にして、その生き写しの姿をした妖怪。
あらゆるものに化ける能力を持った天魔・波洵。
波洵は黒のドレスをはためかせ、ショートカットの髪を撫でる。
「やれやれ仕方がないね。この妖怪の調査、私が行ってあげよう」
「波洵ちゃん」
入江は反論しようとするが、波洵はニヤッと笑う。
「なぁに、心配いらないさ。私は粉々になっても死なないし、何より私が死んでも誰もトチ狂うほど悲しんだりしないだろ?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「誰か反論しろよ!!」
波洵、ノリツッコミ。
ぶっちゃけ事実なのが悲しい。
「じゃ、じゃあ波洵ちゃん・・・お願いしていいかな?」
「ふん、まぁ瞬殺してきてやるよ」
「まぁ波洵姉さんより強い妖怪ってのも中々居ないだろうしな・・・」
こうして、この事件の調査。
新生紫狂からは波洵が出ることになった
879
:
山猿青介
:2012/10/08(月) 15:43:11 ID:znuO.6vI
近代においては異常といってよかった。
明治に入ってから、妖怪退治の実力は急速に衰えていった。
人間の神を信仰する社の数が、政治によって激減したからだ
だが、今は近代化された組織として、妖怪退治屋が幅を利かせている。
近代化とは、銃器による退魔や、世界各地に設置した聖的拠点を同時起動する妖気弱体化などである。
とにかく、世界規模であり、科学的なのだ。
お頭のやったことは頭が冷えてなさすぎると言っていい。
何が原因で暴走したかは、よく分かる。
お頭は元々の人間の想念なのだ。それが人の血肉を得て、平然としていていられる筈も無かった。
人間だけは、喰ろうてはならなかった。
880
:
山猿青介・インコレツジ
:2012/10/08(月) 15:44:06 ID:znuO.6vI
2人の猿は、対峙する。未来と、己の疑念を代価に。
「ワからぬ、のだ。俺は、何故。俺様とは、何者であるか」
「それを知るのは、冥途だぜ
この山の危機に、繋がる。それだけは、阻止する」
大規模浄化。それが行われれば、弱小のこの猿山など、もつまい。
青介は右手に握った妖気円剣を振り降ろす。インコレツジの周囲に、今までインコレツジが支配していた、猿の亡霊達が集まった。
「アまい。単純に、1人1人の戦闘に対する適性を顧みれば
お前らは、ただ10、12程度の砲撃で、滅する」
「人間に敵対して殺されるなんざ、ごめんでね
妖怪全員で、アンタ、インコレツジ……元お頭を殺しちまいます、できなくても。
できなくても、結果は一緒だ。お前ら、俺に続けぇええ!」
881
:
さぁ、舞台へ上がるのです
:2012/10/08(月) 15:45:05 ID:znuO.6vI
妖怪同士の戦いは、おおよそそのルーツで決まる妖力か、その者の特異能力の相性で決まる。
単なる打撃能力しか持たない、猿。青介も、数十年修練して手に入れたのが輪の形をした刃を持つ妖気の剣を能力とする以外に、特に何も持たない。
勝負は、一瞬だった。
瞬く間に掃滅され、青介と、青介の背後にいた25匹。それだけが、生き残った。
「お前ら、ここは、俺で食い止める
全員、この山から逃げちまえ。どっか、妖気が食えるところ探して、生き続けろ
お頭ァに勝とうとか
無理だわ」
そして、ここで場面は止まる。
ここに、主役達が集う時まで、場面は止まる。
幕を引かれるまで、いささかの猶予を・・・。
882
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/10(水) 22:50:20 ID:SmXQZqJk
>>881
(……なんだ?縄張り争いか?それにしちゃ、あまりに一方的すぎる……もしかして、あいつが例の事件の犯人か…?)
無残にも散っていった猿達を木々の間からこっそりと見る七郎。
(なんにせよ、関わらない方が良さそうだな。俺一人でどうにかなる相手でもないだろうし……早急に十夜を見つけねぇとな……あいつから十夜を守りながら戦うなんて危険すぎる……)
そう判断した七郎は、その場から立ち去ろうとした。
しかし――
「七郎?」
聞こえてきたのは少年の声。七郎が探していた十夜だ。
「良かった!もう出れないかと思ったよ!」
若干、目に涙を浮かべながら七郎に近づく十夜。
『十夜!?馬鹿っ!今、大声出すな!』
そう言っても、もう遅い。十夜はすでに周囲に聞こえるような声を出してしまった。
「え?ど、どうして?まさか……」
十夜が辺りを見渡そうとする。
883
:
波洵
:2012/10/13(土) 21:24:37 ID:Fk4/3PMc
>>881
>>882
「ふぅん、死屍累々って感じだね」
黒いドレスを揺らし、波洵は悠々と猿の屍が山と積もった舞台に舞出でた。
こめかみに指を当て、瞳を閉じるが。
しばしの後に忌々しそうに舌打ちをする。
「くそっ、やっぱりまだ〝貪欲″は使えないか・・・!」
波洵を天魔足らしめた妖術・貪欲。
周囲の者の魂をスキャンし、その長所たる部分を解析し、その長所を形作る回路に変化することで。
相手の長所、能力をそのまま手に入れるという反則じみた力だった。
これにより波洵は実質最強の妖怪となっていたのだ。
しかしとある一戦にて。
波洵は粉々に砕かれ、敗北した。
再生することはできたものの、波洵はこの貪欲という力を失った。
「忌々しいね、貪欲が使えたらここの状況も一発でわかるのにさ」
貪欲は魂をスキャンする、これを応用すれば相手の心を読むという使い方もできるのだ。
波洵は徹底的に弱体化した自分を恨みながら、猿の死体を蹴飛ばし八ツ当たりをする。
「仕方ない、地道に妖気を探るか・・・。
ん、割とおっきめの妖気が1つと、小さい妖気が1つか・・・小さい妖気?」
波洵はその方向を振り向くと、呑気にも声を上げた少年を目に止めた。
「ちっ、人間のガキか! 妖怪のお友達、もしくは使役者ってところか?
しかし馬鹿が! 人間の臭いを振りまいてそんな大きな声を出したら・・・」
大きな妖気が動くのを波洵は感じ取った。
「ほぅら、バレた」
大きな妖気の方角を睨み、手を刃のような金属に変化させる。
「仕方ない、ついでだ。討伐ついでに護衛もしてやるよ!」
884
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/14(日) 19:01:18 ID:znuO.6vI
>>882
>>883
「援軍、ノツもりか
ハッ、情けのない。青介、キ様……俺サまを倒して、この山ァ護る云ったな?ありゃあ、嘘か」
「嘘だ。もう、守るべきもんが8割型死んだしな
けど、逃げる猿に、正義漢、それと迷子もいる。負けられる道理が無ぇ」
「イうわ。去ね、みすぼらしく死ね
我が名は忌黄烈迅。このヨにテ生きられぬ無念の、総体
死せるべきでなく、生かされることもなかった……お前らのように生まれた時から守られた青猿共には、決して解らぬ、この惨めさは」
「……」
「覚悟セぇ!妖気を出し屍となり、人の世にナ染むこともなかった我らの」
インコレツジの声が、一段階、高く、数秒ごとに高く、甲高くなっていく――
まるで、気の狂った、女のように。
「業深き殺戮、食い散らかしたる怨念をッ」
インコレツジが右腕を振り下ろすと、背中の砲筒と同じものが、空中に四門現れた。
「真情を識りえた、我が『無念』という生命の記憶。身の滅びとともに、理解しろ
そして、我が暴食の妨げなる貴様ら4人、皆喰らいつくして、クれる」
鉄の砲弾。花火やミサイルのように破裂することもなく、ただ産まれ出され、落ちた場所に置き去りにされる鉄球。
それは、インコレツジが抱えた闇をルーツに持つ、妖気の武具だった。
8発。まずはそれだけの数、青介、七郎、十夜、波洵に出鱈目な速さで放たれた。
885
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/14(日) 22:17:20 ID:SmXQZqJk
>>884
「う、うわあああああ!?」
辺りを見渡した十夜の視界に入って来たのはインコレツジが放った鉄球だった。
鉄球は十夜の目の前に迫るが――
『あぶねぇ!!』
白髪の男性――瞬時に人化した七郎により突き飛ばされ、十夜は鉄球から一時だが逃れられた。
『ぐはぁっ!!』
しかし、変わりに十夜の居た位置に来た七郎に鉄球が直撃する。七郎はそのまま吹き飛ばされ、近くの木に激突する。
『いきなり……攻撃かよ……くそ……』
放たれた鉄球は8発。1人に2発ずつだとすると、十夜の分も合わせ残り3発の鉄球が七郎に迫ることになる。
1発でこのダメージ――おそらく骨はいくつか折れているだろう――あと3発も食らえば、ほぼ確実に死ぬと思われる。
『十夜!!逃げろっ!早く山から出るんだ!!』
「で、でも…」
『いいから逃げろ!!』
十夜は七郎のことが心配なようで、すぐに逃げ出さなかった。だが、さすがに怖くなったのか七郎に強く言われた後、十夜は泣きながら逃げ出していく。
>>883
『なぁ、アンタが何者だか知らねぇが頼みがある。』
十夜が逃げ出した直後、七郎は波洵に話しかける。
『さっきの人間の子供が無事に山から出れる位まで、あの猿を移動できないように足止めしてくれ。どのみち戦うつもりなんだろ?』
口元から血を垂らしながら、辛そうな口調で話す。
886
:
波山とか
:2012/10/16(火) 21:57:23 ID:cpTCnr7.
>>884
「ぐぅあ!!」
十夜に気を取られていたのか、突如放たれた砲弾に波洵は対処が遅れた。
1発目、とっさにガードした腕の骨が砕かれ、体に衝撃が走る。
2発目、仰け反った波洵の身体の中心に直撃し、波洵を後ろまで吹き飛ばして木にめり込ませる。
土煙の中、波洵の姿が浮かび上がる。
両の腕はグシャグシャに砕かれ、内臓もやられているようでペッと口に含んだ血を吐きだした。
「くっそが・・・。こんなか弱い女の子に向けてよくもこんな暴力的なことができるね」
>>885
波洵はじっとりと湿った目で七朗を睨む。
「それでも男かよ、こんな女の子に守ってくれだなんて」
しかし波洵は立ち上がる。
変化する波洵・・・〝攻撃を食らう前の自分″へと。
「ま、引き受けたけどさ」
十夜の前に歩み出る波洵。
既に攻撃を受けた傷は跡形もなく、波洵はせせら笑うようにインコレツジを見下す。
「この世に生きることが許されなかった存在だって?
くだらねーな、どいつもこいつも・・・どうしてそんなに自分が生まれた意味に拘るんだ」
波洵は指さし、堂々と宣言する。
「そんなに惨めな存在だったら、今から私に虫けらみたいに殺されても文句は無いよね?」
887
:
インコレツジ(忌黄烈迅)、山猿青介
:2012/10/19(金) 18:04:09 ID:znuO.6vI
>>885
>>886
「惨めという言葉ですら、我を形容するに値せぬ
我は、もはや異常な存在として、ある種、生きること自体が悪で、その生への渇望は・・・憎しみに溢れていた」
「四肢の一つが欠けていたとしよう。それは、生まれが名門であれば、その家の血を忌まれ、それ以上の出世が望めなくなる――【だから私は殺されたのです。生まれて三日のことでした】」
状況の仮定が終わると、子供の声が木霊する。
その辺りに落下したままの鉄球から、声が出ているようだ。
「易を読むことができたとしよう。しかし、その時代の終わりに占いは忌まれた
職につこうにも、村人によって手配所と噂は回り、結果、何も悪事を働かずに政府の獄に入れられた
罪無き汚名を被るまいと――【そう、だから私は自ら死を択び、目玉に橋を突き抜いた】」
今度は声変わりした男の声。
「海は綺麗だった。その島では金が採れたとしよう
その価値を我々は知らなかった。ある日、一人の漁師を保護し、国へ返してやった
すると翌日、大軍が来た――【我々は、税を払っていた国主率いる正規軍に、皆殺しにされた】」
子供、女、男、老人。今度は何百という声色が、きちんと調和をもって、一つの鉄球から流れた。
「そんな我々、一万少しの怨念が
惨めか。虫けらか」
「強者は、今ここで去ね
冥土で、敗れ血潮に塗れる苦しさを知れ
そして、思うとおりに生きられた幸福を、冥土で噛み締めろ
お前の絶望だけが、我々の癒しだ」
それは。きっと、異物の妬みだ、社会秩序に組み込まれなかった者が抱く、社会に融和できた者への、羨望だ。
「お頭ァ、そりゃ、妖怪にもなりゃすあな
けど、お頭。アンタのせいで、ここに転がってる猿の屍は、社会から弾き出されたんだぜ
そこから身を守るには、アンタが死ぬしかない
アンタは過去で、逃げた人間の子供と25匹の猿は・・・これからを社会で生きていくしかない、未来そのものなんだわ」
自分を語り始めてから、獣の本能が徐々に曖昧になっていく
その段階を踏むたびに、近接戦闘能力は低下する。
砲台。インコレツジは、今鉄球へと近づいていて、その戦闘能力は砲台へとシフトしているようだ。
なら、攻略の鍵は、5門による砲撃の突破だろうか?
888
:
七郎
:2012/10/19(金) 20:47:44 ID:SmXQZqJk
>>886
「性別なんざ関係ねぇ…だろ……つーか…それ言ったら俺は小動物だ」
辛そうに息切れしながら話す。
「感謝するぜ。……それにしても便利な能力だな。
攻撃食らった時は俺はもう駄目だと思ったが、アンタが味方なら俺も生きてこの山から出られる…かもな……」
傷が無くなった波洵を見て言う七郎。
同時に、もし波洵が敵だったらヤバかっただろうなと思った。
>>887
「いったい何が起こってんだ……?なんでこんなところにこんなに怨念が……?
考えたって分かることじゃねぇか……それより、十夜が心配だ。あいつは、こういった念とかに人一倍敏感だ……もし、この声が聞こえていたら……」
(ちくしょう……怪我さえなけりゃこの場から逃げて十夜を追いかけられるってのによ……)
今の七郎に出来ることは少ない。僅かな力を振り絞り炎で攻撃するか、ボロボロの身体で逃走を試みるか――
だったら早く敵を倒せるように、炎でサポートをする方を七郎は選ぶだろう。
「やってやるよ!過去だか未来だか知らねぇが、俺は現在(いま)を生きたいんでね!!」
七郎は、両腕に炎を灯し立ち上がる。
889
:
名無しさん
:2012/10/19(金) 21:27:25 ID:jvPZh9Bc
>>887
>>888
「へぇ、小動物か。その割には上手く変化したじゃん。私ほどじゃないけどね。
まぁいいや。私が味方に付いたからには、こんな小物いくら相手にしたって問題ないね!」
波洵はインコレツジに向き直り、さて、と一呼吸おいて語りかける。
「強者? それは少し違うかもね。現に私は負けたことの方が多い。
私は天魔雄神・第六天魔王他化自在天の波洵。誰でもあって誰でもない。
その気になればそのくだらねぇ、無念を背負う死者の誰にでもなれたんだぜ?
まぁ、今は無理だけどさ」
波洵はクツクツクツと笑うと、一呼吸おいて大声で捲し立てる。
せっかく語ることで収まりかけたインコレツジの攻撃本能を挑発する。
「無念? 恨み? アホくさ。生きることが許されなかったから、
今度こそマトモに生きてみたい、とかいうならまだわかるけどさ。
せっかく掴んだ2度目の命を復讐なんかに使うなんて馬鹿みたい!」
波洵の服を突き破り、肩から生えるのは蜘蛛のような、蟹のような。
長く甲殻に覆われた4本の脚。
その4本は波洵の身体を持ち上げ、波洵は高みから見下すようにインコレツジを一瞥し、中指を立てて言い放つ。
「お前等は結局私達にどうして欲しいんだ。どうやれば満足するんだ。
全ての者に理解されたいのか? 生きとし生ける者全てに死んで欲しいのか?
それとも同情して欲しいのか、供養して欲しいのか?
「違うだろバーカ」
「お前らがやりたいのは結局意味の無い八つ当たりだろ、ただ暴れまわって殺しまくりたいんだろ?
そんな下らねーことに付き合ってやるほど、私達生きてる奴等は暇でもお人好しでもないんだよ!」
波洵の両の手は蠍の尾のような鞭となる。
もはやその姿は異形と化した波洵、それでも高らかに宣言する。
「死んでる奴が泣き言ぬかすな、黙って死んでろ!!」
ここまで唯我独尊、同情の欠片も見せないとなるともはや清々しい。
波洵は情け容赦なく、先端に穂先の付いた鞭を伸ばし、インコレツジを貫こうとした。
890
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/20(土) 20:24:46 ID:znuO.6vI
>>888
>>889
インコレツジは、ぼんやりとした頭で、右腕を鞭槍へ伸ばした。
インコレツジは、信じられないという表情で、波洵の穂先が刺さったてのひらを眺める。
「ここでも」
「この時代でさえ」
「我々は否定されることしか
社会の枠組みに組み込まれることさえ
その願望の一つさえ
許されずに、また死を選ばされる」
「虫けら。人と呼ぶべき人間が、人とすら認められぬ我々に
理の外にある、余計な存在だ、と」
「我々が生き、その骨灰が埋まりし場所には、新たな生命が、芽吹けば……いいのにな」
幾千の人間の声が重なった雄叫びを天に上げてから、その歪んでしまった心根を露呈する。
「生きるとは。生きるということは
社会に認められる以外に、もう一つある
我々が、我々が、我々を否定する、ヒテイする、生き物全て――死に絶えた時ぞ」
確信を得た妄執は、既に世界の真理の如く思考を突き動かし
そして眼前にそびえる、敵、敵、敵。
自分を認めてくれなかった敵。
「許さない」
「我々は我々を認めるため、自然と同化して、身(てつ)を放ち人を殺す怨念となる」
怨念自体が自然へ帰ろうとしている。
「我々の往くべきだった生命の大道を築く」
七郎へ、二発。
波洵に、三発。
インコレツジは、鉄鉱石を最終的な魂の形態とする。行き着くのは鉄でも、それを解き放つ爆発力はルーツにない。
修行し身につけた妖術の一つ、砲撃。
唯一苦手とする動作。火薬の用意に、二秒かかった。
その隙を、七郎・波洵が活かしきれるかどうか。
近接戦闘能力が皆無の、大猿(インコレツジ)という鉄(くろがね)の外装を叩き壊せるのか。
一方で、山猿青介は、地面に窪みを掘って隠れていた。
自分はいわば保険である、と青介は考えていた。
あの五発が身の上を通り過ぎたら、この剣でインコレツジの首を撥ね上げる。
再発射までの間隔を、ずっと見てきた青介だから狙える。
だが、波洵を見ていれば、たぶん大丈夫だという気もした。
七郎は、きっと耐え切るとも思った。だから、二人の心配はしない。
大怪我をしても、この妖怪の世を守ってくれると、思いたいから……いや、思わせてしまうだけの強さと覚悟を、二人は示していた。
891
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/20(土) 21:47:59 ID:SmXQZqJk
>>889
『は、はは……想像以上にヤバい奴だったみてぇだな……天魔雄神って、おいおい……
今の俺にとっちゃありがたい存在だけどよ……』
波洵の正体に驚愕する七郎。それと同時に若干の畏怖の念を抱く。
>>890
『また鉄球か!?』
今の七郎には鉄球を避ける体力は無い。つまり、七郎が取る行動は一つ。
『耐えてくれよ、俺の身体!狐炎螺旋!!』
鉄球の進行を止めるべく、掌から螺旋状の炎を放った。
しかし――
『ぐはぁっ!!』
炎と鉄では相性が悪かった。鉄球を止めきれず、再び吹き飛ばされる七郎。
激しく地面に叩きつけられる。そこに2発目の鉄球が迫る。これを食らってしまえば、確実に致命傷になる。
(くっ……ここで終わりなのか……?)
目を瞑る七郎。そこに――
「七郎っ!!憑依だよ!憑依!」
現れたのは十夜だった。
『十夜!?なんで戻って来たんだよ!?』
「話しは後!早く憑依を!!」
『くっ!仕方ねぇ!!』
このままでは、自分だけでなく十夜も危ない。七郎はやむを得ず憑依をすることにした。
そして、辺りが光に包まれた。その後、七郎の居た場所には七郎の姿は無くなり、変わりに髪が白く変化した十夜が立っていた。
「行こうっ!七郎!」
『無茶はするなよ!隙を見て逃げ出すんだ!』
憑依十夜は腕に炎を灯す。まずは目の前の鉄球をどうにかするつもりだ。
「『狐炎鉄槌!!』」
二人の声が重なり、腕の炎が大きくなる。そして、そのまま鉄球を――殴った!
鉄球は勢いを失い、その場に落下する。
892
:
名無しさん
:2012/10/20(土) 22:07:18 ID:Glf.uH9o
>>891
「ふふーん、もっと怖れろ、敬え。この波洵ちゃんを」
得意気に胸を反らせる波洵。
やはり畏れられることは妖怪にとって気分が良いらしい。
>>890
「あーーーーっ、もう! ゴチャゴチャゴチャゴチャと!
何が言いたいのかさっぱりわからねぇ! 私にはもう心を読む力がないんだからもっとわかりやすくしゃべれよ!!」
インコレツジの言い回しは、短気な波洵が理解するには回りくどすぎた。
再び砲門がエイムされてるのをチラリと見据えると、さも愉快そうに笑った。
「そー何度も食らってやるかっての!」
4本の脚が一瞬で縮み、直後に跳躍。
その瞬間は大きな砲門を構えるインコレツジよりも幾分か早かった。
「こんなつまんねー技ばっかりなんて脳がないね! この能無し!!」
跳躍した真下にはインコレツジ。
波洵は長い鞭のような腕をらせん状に融合させ、一本の長い槍を作り出す。
「とっとと死ねっ!!」
風を切る長い突撃槍が今まさにインコレツジを貫かんとした。
あと波洵、護衛の事すっかり忘れてる。
893
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/21(日) 13:10:26 ID:znuO.6vI
>>892
>>891
槍は、忌黄烈迅の頭蓋を貫いた。
「自然へ還るとき が 、 来た ようだ」
幾重にも重なった声色で、インコレツジが呟く。
「山猿青介。此処(ここ)という場所は、無念が募りやすい
また我々を見つけたら、今度はちゃんと、二度目の生を送れるように
赤子の猿の時から、躾てやってくれまいか・・・」
山猿青介は微動だにせず、凛然と地面の窪みから立ち上がった。
インコレツジの姿が薄れ、光粉となって消えていく。
鉄屑が辺りに散らばる音と共に、インコレツジは存在を消した。
――
<エピローグ>
――
山猿青介は、十夜と波洵に向き直る。
「すみません。助かりました
ここに無念が募ったら、俺は」
青介は息がつまった。
「俺が、そういう役割の振られた猿の赤子に、ちゃんと、その時その時、とどめ刺します」
それは、社会で生きることが許されなかった者への、焼き直しにほかならない。
しかし、心底にある歪みきった感情を目の当たりにして、生かしておくことも、青介にはできなかった。
――
<イベント終結>
――
「狐さまのほう、怪我平気ですか?
ここの頭として、一応、ちゃんと最後まで義務は果たさないといけないですね
妖気の溜まり場が山と山の間にあって、そこなら怪我も早く癒えると思うので、これから案内しますね」
青介が、義侠染みた声で言った。
「波洵さまは、痛いところ、まあ、無いと思うんですが。ありましたかい?」
894
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/21(日) 21:53:24 ID:SmXQZqJk
>>892
,
>>893
『終わったか……』
「ねぇ、七郎……あの妖怪っていったい……」
『さあな、俺はなんにも聞いちゃいねぇからわかんねぇよ。』
七郎はあえてインコレツジのことを十夜に話さなかった。
その後、静かに憑依を解き、元の狐と黒髪の少年に戻った。そして、青介の方を向き
『礼なら俺には言わなくていい。俺は十夜と自分の身を守る以外、何もしてねぇよ。
って言ってもこんな怪我でしかも十夜にまで助けられて守れたって言えるのかは疑問だけどよ……』
苦笑いしながらそう答える七郎。
『つーか、俺が十夜に礼を言わなくちゃだな。』
「いいよそんなの。それより、七郎が無事で良かったよ……」
十夜は目に涙を浮かべながら嬉しそうにする。
『ああ、それはアイツが居てくれたからだよ。アイツがいなかったら、多分俺は今ごろお陀仏だっただろうよ。』
そう言って七郎は、波洵の方を見る。
「あなたが七郎を助けてくれたんですね!ありがとうございます!」
『俺も言う。マジで助かったぜ。ありがとよ。』
と、十夜は波洵に頭を下げた。
『で、怪我の具合か?まぁ……そうとう酷いな。治せるんだったら早いとこ治しちまいたい。また、あの厄介なのが現れてもおかしくないからな。連れて行ってくれ。』
早いとこ怪我を治したい七郎は、青介に答えた。
『十夜は先に帰ってろ。妖怪にとっちゃ有益な妖気でも、お前みたいな人間には危険だろうからな。』
「う、うん。」
七郎が話した後、十夜が頷く。そして、七郎は再び波洵の方を向く。
『あ、あと、何から何まで世話になっちまうが十夜が山から出るまで護衛頼めるか?いや、もう大丈夫だと思うんだけどよ。念のためな。』
895
:
波洵
:2012/10/23(火) 16:02:24 ID:IsFf8T.o
>>893
長い突撃槍が頭蓋を貫いたのを見届けると、
波洵はそれを勢いよく引き抜き、元の人のような腕に戻した。
「おや、あっけないね。この程度なのかい、お前等の無念とやらは?」
拍子抜けしたようにせせら笑う波洵。
最後まで欠片も同情はしない、代わりに完全に拒絶もしない。
彼女はもっと悪逆で、エゴイスティックな精神によって産み落とされたから・・・。
「私に踏み潰される程度の無念だったらどーってことは無いから、
次は綺麗さっぱり忘れて生まれて来いよ。どーせ次があっても今のままじゃ大したことはできないぜ?」
波洵は消えゆく光の粒子に、満面の笑みで中指を立てた。
――
しばしの後、あくび半分に青助の訴えを聞く波洵。
どこかうんざりしたような顔で言い捨てる。
「あの程度の妖怪で大袈裟だっつーの。
未練だのなんだの知らないけど、間引きだとかそんなことしなくても良いだろうが。
・・・またあーいうくだらねーのが生まれても、一応見届けてやれよ。
成長して、生き抜いて、それでもあんなロクデナシになったなら、私に知らせなよ。また踏み潰してやるからさ」
最後に波洵はニヤッと笑った。
――
お礼を言う七郎に波洵は少し頬を赤くして、胸を反らせる。
「そーだろ、助かっただろー。
もっと褒めろ、讃えろ、敬え、この波洵ちゃんを」
青助の提案に波洵は即答する。
「いらねーよ、そんなもん。
あんなくだらねー奴相手に怪我するわけないだろ?」
空元気である。
波洵の変化による治癒は、怪我のダメージの先延ばしに他ならない。
消耗した分はじっくり時間をかけて回復するしかないのだ。
「おっけー、また任されたぜ。それじゃいくぞおガキ様」
十夜の護衛を快諾する波洵。
大変不安の残る護衛である。
こうして万から成る一匹の妖怪の呼んだ騒動は終わりを告げた。
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