したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

あと3話で完結ロワスレ

1FLASHの人:2012/12/09(日) 21:32:05
ルール等詳細は>>2を参照
お前が、このロワを、完結させるんだ……!

664ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:49:33


「だから……もう知ってるはずなんだぜ、おっさん。こいつを殺さなきゃ何も始まらない事くらい」


はじまる? 男が震える声で鸚鵡返しした。はじまる、だって?
地面に横たわるランタンの中で、炎が揺れた。わなわなと肩を揺らす男の顔に、深い影が落ちる。

「今更何が始まるってんだっ。俺達みたいな社会のゴミが集まったところで、何も始まるわけがないっ!」

男は叫んだ。腐っているのを知っているから、せめて綺麗で居たいのだと。
35年。夢を見る事も、生きる事すら、疲れきって諦めてしまうには十分な歳月だった。
成程ならばそれは確かに尤もな意見なのかもしれない。何故って彼等は自他が認める紛れもない屑なのだから。
幾ら烏が集い雲の上を目指しもがいたところで、ただ煩いだけなのだ。誰もが嫌というほど知っていた。
ただ天井が見える年齢になって、それを諦めるか諦めないか、たったそれだけの違いだった。
しかし、いやだからこそその一言は青年の琴線に触れた。分かっていて、それでも逃げてきたのだ。諦める事から目を背けてきたのだ。
同類にだけには、絶対に言われたくなかった台詞だった。

「ふざけんなよ……」
だから、青年は先ず最初に思った事を口に出した。ふざけんな、と。
「まだ負けたわけじゃねぇだろ……」

冗談じゃない。このまま終わるだなんて。全部無駄になるなんて。

「まだ終わったわけじゃねぇよ!」
「いいや終わってるねっ!!」

びくり、と青年の肩が揺れる。喉はからからに渇いていた。心臓がばくばくと、子供が叩く太鼓の様に鳴り止まない。
終わりなんかじゃない。自分に言い聞かせるその想いには、およそ自信と呼べるようなものが悉く欠落していた。

ならば、これから、少女を殺してどうすると?

心の底の波を荒立てるその鉛色の疑問に、青年は何も答える事が出来なかった。
途方に暮れるもう一人の自分の薄汚れた双眸の前には、救いの道など残されていなかったのだ。改めて問われるまでもない。
屑は何処までいこうが屑なのだから。
されど、だが、だけど、でも、しかし、けれど。だからと言ってーーー認めろというのか。
詰みきったこのどうしようもない現実を、未来を。受け入れろと、そう言うのか。
山崎も、柏先輩も、岬ちゃんも、委員長も、城ヶ崎さんも、皆、皆。
皆みんなみんなッ、無駄にしろって言うのか。

「……ふざけろ!!」

気付いた時には、青年の右手が男の胸倉を掴んでいた。青年は自分の行動に、しかし呆気にとられる。
何をしている? 青年は思った。自分は今、こいつに何を言いたいんだ?
ぎしり、と胸の奥が軋む様に痛んだ。

「勝手に俺まで終わらせんな! 何で! 何でそう言い切れるんだよッ!
 まだ何もわからないだろ! 未来なんて!! 誰にも!!!」

どこかで聞いた様な台詞ばかりが、頭の中をごうごうと渦巻く。不意に、デジャビュという単語が浮かんだ。
それは漫画やアニメで、何度も見てきたシーンだった。目の前と重なり、繰り返す。作り物で、偽物で、馬鹿みたいな青春御伽噺。
主人公はいつだって現実に辟易としていながらも何もない日常をなんとなく生きていて、童貞で、幼馴染と妹がいて。
クラスにはエロい男友達が居て、委員長はツンデレで、教師は適当な人間で。理事長の娘は、決まってプライドが高い生徒会長。
主人公の性格は普通で、部活にも入ってなくて、奥手で難聴の癖して稀に無駄に熱くて、何故かは知らないがやたらとモテる。
演出と作画も良くて、BGMも良い。脚本は虚淵にでもすればなお良い。死人を出せば感動もカタルシスも出来るし満足だ。
寄せ集めテンプレ設定でも、それだけでゲームやアニメの台詞には中身があるように見えた。
ところが、現実はどうだ?

665ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:51:58

「まだこれからなんだよ!」

何がだ? いつだって、そうやって待ってて何かが起きたか? 変わったか?

「俺たちはまだ本気を出してないだけだ! 強い奴らが居たから! 仕方が無かった! 戦った事すらないんだから!」

本気なんて出した事が、一度だってあったか? 戦おうとしなかっただけじゃないのか?
あの時はどうだった? ヘンリエッタやビンセント、ルーシーを前に逃げたのは、誰だった? その結果、何人が死んだ?

「球磨川にだって、弱体化が少ない俺達なら敵うはずだ! 敵が居なくなった今なら、きっと!」

戦略はあるのか? 勝算は? 一人でもそれをやれるか? 答えは出てるだろ?

「今まで俺達が逃げてきちまった結果が今朝の事件だろ!?」

本当にそう思ってるのか? 仕方ないって、思ってねぇか? あいつらを見捨てて逃げたのは、何でだ? 罪悪感を言い訳にしてないか?

「またあれを繰り返すってのかよ!」

繰り返すよ。
そうやって卑怯に生きて来たんだろうが、お前は。なぁ、そうだろう? 言葉だけは毎回一人前だからな。それがお前だよ佐藤達広。


ーーー今更、生き方は変えられないよ。


青年の頭の中で、少女の形をした誰かが言った。
全部知ってるはずだよね? 本だって読んだ。ネットに情報はゴロゴロあった。近所にハローワークだってあった。
どうすれば、上手くいくのか。
どうすれば、仕事が出来るのか。
どうすれば、家から出られるか。
どうすれば、親に迷惑をかけずに済むのか。
どうすれば、嘘を吐かずに済むのか。
どうすれば、借金しないのか。
どうすれば、真面に生きていけるのか。
どうすれば、人を好きになれるのか。
どうすれば、脱法ドラッグを止められるのか。
どうすれば、ネズミ講に引っかからないのか。
どうすれば、童貞を捨てられたのか。
どうすれば……こうならずに済んだのか。
裸の少女が、間抜け顏の青年を抱き締める。耳元に少し湿った息が掛かって、青年は鼻息を荒くした。


ーーーね? 全部、知ってたんだよ、佐藤くんは。

  ........ .....
「だいじょうぶだよ おれたちは」


ーーーでも。分かっていても、どうにもならなかったから。だから佐藤くんは、引き篭ったんでしょ?

  .. ......
「まだ やりなおせる」


寄せ集めた言葉。震える唇、閉じた拳。滲む脂汗。歪む視界。霞んだ感情。濁った未来。光の無い眼。
ごとりと重い何かが体の中で転がった。心臓が、ずっと喧しい。
そうして初めて理解るのだから、嗚呼。解っていたつもりだったが、存外自分って奴は馬鹿な生き物なのだ。


中身なんて、ありはしなかった。


餓鬼が喜ぶ紙風船の様にーーーー図体だけが、徒らに立派で。水で割れてしまうほど儚く、脆く、空気の様にどこまでも薄く、軽い。

「佐藤くんは、夢を見過ぎだ」

男は恨みを吐き捨てるように言った。青年は男を見る。眼鏡の奥の曇った瞳は、まるで自分の何もかもを見透しているようで、吐き気がした。

「ここは映画でも、漫画でも、ライトノベルの世界でもない」

男はぽつぽつと、言葉を零す。青年は黙ってそれを聞く事しか出来なかった。

666ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:54:40

「一番俺達がわかってるはずじゃないかっ。現実は、創作じゃないって。
 青春や、起承転結や、奇跡や、ドラマなんてものは……自分の世界には無いんだって」

青年は少女を見た。横たわる少女の目は見開かれ、瞳孔は開き、焦点は合っていない。
彼女は死ぬ。放っておいても、どうせ死ぬ。苦しみながら死ぬ。痛がりながら死ぬ。無様に死ぬ。
虫螻蛄の様に。畜生の様に。ゴミ屑の様に。もうすぐ彼女は、人間でなくただの肉の塊になる。
引導を渡すのは、誰だ?

「主人公はいつも別に居て、成功も、金も、才能も、名声も、処女も、どうしようもないヤリチンが奪ってくんだっ、いつも、いつも!」

そうだ。現実はいつだって非情だった。それを一番知っているのは、生き残ってしまった俺達みたいな、どうしようもない底辺じゃないか。
だけど。

「だから、始まらないんだーーーーーーーーー俺達は産まれた時から、負けてる」




だけどさ。それでも諦めたくないのだと、勝ちたいんだと思う事は、罪なのか?




「あのさぁ……」

ーーー寝耳に水とは正にこの事だ。
青年と男はははっとして、声の主へ顔をがばりと向けた。傷だらけのコンクリートの床に、退屈そうに少年が胡座をかいている。

「……なんか面倒なんで、もう最初に言い出した佐藤さんがやればいいじゃないですか? 埒があかないですよ」

少年が目を逸らしながら、さらりと言った。肩を竦めて、やれやれと溜息を吐きながら。朝におはよう、夜におやすみと言う様に。
「な、な、ななっ」
青年の顔からみるみるうちに血の気が引いてゆく。当然だった。ここで少年が敵に回るとは毛ほども思っていなかったのだから。

「なんでだよ! お前だって殺せばとかなんとか言ってただろ! だったらお前がやれよ!」
「……いいぜ」
「ファッ!?」

思わず、青年がよろめく。少年は気怠そうに立ち上がると、口をあんぐりと開けた二人の元へ足を進め、そして言った。
「俺がやるって言ってんの」
少年は彼等に視線すら寄越さない。足も止めず、目もくれず。少年は地面に臥す少女だけを見ていた。
「お、おい引企谷……お前……」
「何だよ」
青年の問いに、背中を向けたまま少年が苛立った声で応える。
「い、いや……」
青年は助けを求める様に男を見た。男は目を逸らして、額の汗を拭うだけだった。
少年はゆっくりと歩く。コンバースのオールスターが、地面を擦る様に叩いていた。
かしゅっ、かしゅっ、と、ソールが擦れきった右踵が規則的に悲鳴をあげている。


「死……たく、ない……」


消えてしまいそうな声が、少年の耳を打った。桐敷沙子の声だった。けれども少年は表情一つ変えず、その命乞いの主へと足を運ぶ。
落ち着いた桔梗色の長髪に不釣合いなほど華奢な手足が、床に転がるランタンに照らされていた。
飴細工のように繊細そうな体躯は、触れると壊れてしまいそうだった。こうして見ると、ただのいたいけな少女なのだ。
尤も、利発そうな顔は涙と鼻水で台無しになっていたし、右足は捻じ曲がり、右手は砕けていたが。
それでも肌は雪の様に、或いは病的と言っても良いくらいに白く透き通っていたし、顔立ちはやはりフランス人形の様に端正過ぎた。
完璧過ぎる程に、彼女は完璧だった。怖いくらいに、引いてしまうくらいに。
身体は木の枝の様にすらりと細く可憐に伸び、薄紫のワンピースはキュプラ生地が上品でーーー惜しむらくはその全てが赤黒い血に染まっていた事だ。
ねぇ、と少女が震える声を投げ掛ける。ランタンの炎が再びぐらりと揺れて、影と光がぐにゃりと歪んだ。
少女の枕元に立つ少年の顔は、影で暗く、窺えない。
ーーーお願い。
か細い声が地下室の暗闇に消えてゆく。少女の懇願に応える者は一人も居ない。異様な光景だった。
数拍置いて、少年はくたばり損ないの少女を目線だけで見下し、口を開いた。


「……そう言っていた奴等を、お前は何人手に掛けてきた?」


黒神、神楽、行橋、三日月、不知火、アンジェリカ、宇白、レキ、来栖、リル、志熊、ナナ、山崎、志布志、ダイアナ、霧江、小金井、中田ーーーーー雪乃下。
ぽつぽつと、起伏の無い声が念仏を唱える様に犠牲になって来た者達の名前を呟く。

667ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:57:29

「あと何人だ?」声は震えていた。「どれだけ奪えば気が済む?」

口を開かぬ少女を見て、八幡は諦めた様に表情だけで笑った。懐から、獲物が抜かれる。
血で濡れた事は勿論無く、陽の目を見る事は愚か、その予定すらなかった刃。
魔道具、神慮伸刀。持ち主の意思を読み何処までも伸びる魔双刀の片割れ。
今は亡き不知火から受け取ったそれは、使う機会はあったものの使う勇気すら無く、逃げる様に隠したーーー死んだ切札だった。

「答えろ。桐敷」

けれどもそう問われても少女は。桐敷沙子は。
首筋に宛てられる刃を前にしてもなお、震えながらかぶりを降るのだ。私は悪くないと。信じてくれと。

「……わたし、は、やっ、て、ない……人が、人間……が……勝手に……死んだ……だけ、よ……私は、悪く、な……いっ……」

嗚呼、と世界を呪う様に唸る。少年は目を細めながら歯を軋ませた。
こういう手合いには何を言っても無駄だ。多分、死んでも治らない。

「私、がっ、何……を……なに……を、した……って、言う、の……ただ、とも、だち、を、作っ……た……だ、けじゃ……ない…… 」
「作ったのは死体の間違いだろ」

八幡が吐き捨てる様に言った。

「違うわ……私は誰も、殺してない……私は、ただ、人並みに……普通に……生きたかった、だけじゃない……。
 それすら、認めない、の……ならっ……人じゃ、な、いの、は…………………お前達、の……ほう、よ……」

一瞬の静寂の後、部屋の中に哄笑が響いた。佐藤達広だった。

「そりゃそうだよな。俺達は所詮餌だ。いや、別に良いんだぜ。トリエラが言ってたよ。そういうものなんだろ、お前達は」

汚れたアディダスのシューズが、血だまりをぬるりと進む。ざらざらとした床に張り付いた固まりかけの血液が、ソールをねっとりと床に捕まえた。
虫の息の少女の側まで足を進めて、青年は腰から銃を、SIG SAUER P230 SLを抜く。

「佐藤さん……俺がやるって言ったじゃないですか」
少年が呟くと、青年は自嘲した。
「流石に全部丸投げってのはかっこ悪過ぎだからなぁ」
シワだらけのTシャツに色褪せたジーンズ、無精髭だらけのもやし体型の引きこもりと、真新しい拳銃は酷く不釣合いだった。
青年は震える手に力を入れ、少女を見た。哀れだと、決して思わないわけではない。

「……別にさ、俺はアンタが誰かを喰ったからキレてるんじゃねぇんだぜ」

安全装置を外して、トリガーに指をかけ、両手で銃を構える。この距離では外すわけもなかったが、なにせ彼には銃を撃った試しがなかった。
アニメや小説みたいに、可愛い女の子達でも銃を撃てるなんて事があるはずないのだ。
尤も、この島では義体という少女やオートレイヴとかいう奴等がオサレパンク雰囲気アニメよろしく銃火器で猛威を振るっていたらしい。
だが、奴達はほぼ全身が機械のような代物だったという。素人が下手に銃に触れば肩が外れると聞くのは嘘ではない筈だった。
そうだ。何度も言うが此処は決してアニメなんかじゃない。小説じゃない。ゲームじゃない。漫画じゃない。
紛れも無い、現実なのだ。

「それは構わねーんだ。別にお前が誰を喰おうが良かった。いや良くはねーけど、俺には関係無いからな。
 他人がどうなろうが正直な話、ざまぁとしか思わねー」

つらつらとそう零す青年の背の向こう側で、男が間の抜けた表情で立ち尽くしている。
鈴木英雄。彼はただ二人の後輩の背を見ている事しか出来なかった。
背に下がるガリルMARは最早お飾りだ。大量の汗で滑るグリップを何時でも取り出せる様に握ってはいたが、その弾丸はZQNにしか向けられた事はなかった。
どうして、と男は呟く。化け物とは言え、少女。躊躇するには十分過ぎるはずだった。
なのに何故佐藤と比企谷は平気なのかと。



「ーーーでもな。めだかちゃんは、彼女だけはまずかった」

668ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 21:59:38
それを尻目に、青年は続ける。
銃口は震えていたし、膝はがたがたと笑っていた。それでも無様に、間抜けに強がって続けた。

「分かってたはずだろ、お前だって。めだかちゃんは対主催陣営の最後の希望だった。誰もあいつが負けるだなんて、疑わなかった。ちっとも。
 こんなどうしようもない奴等が、夢を見ちまってたんだ。めだかちゃんなら勝てるって、何でも出来るって。信じてた。
 めだかちゃんには皆をその気にさせる何かがあった。口を開けば説得力の方が後からついてきた。めだかちゃんは絶対の存在だった。
 皆言わなかったけど分かってた。俺達がめだかちゃんで保ってたって事ぐらいは。でも言う必要すら無かった。
 何故ってめだかちゃんが負けるだなんて誰も思わなかったからだ。だから心配する必要が無かった。
 ヘンリエッタ・ビンセント・ルーシー戦で沢山の強ェ奴がくたばったけど、皆が諦めなかったのはだからなんだ。
 めだかちゃんが居たから、生きていたから。何とかなるって信じてた。希望を見てた! 本気で!!
 それにマーダーも本当ならヘンリエッタ達で最後だったからな。皆、浮かれてたんだ。
 あとは首輪解除だけだった! それも改心した都城と玲音ちゃん達が居たからなんとかなるはずだった!
 球磨川の『重い愛』の影響もあったけど、それでも乗り越えてきた様な強い奴等だったんだ!
 俺達対主宰陣営の勝利は目前だった……なのに、なんでだよ! それを、何でだ!! 何で!!!」

「……めだかが……悪かっ、た、だけよ……」
少女はけれども血だらけになりながら首を降り、その一言で全てを終わらせる。
いっそ清々しい程の一貫性。ともすればそれが真実なのではないかと疑うほどの真っ直ぐさだった。
或いはそれは、少女の声色と容姿からその奥に純粋さを見ていたのかもしれなかった。
青年は、惑わされてはいけないと銃を握る力を強くする。
winnyを使って小学生の裸を集めた事も、通学路の茂みに隠れて児童を盗撮した事も確かにあった。自分は立派なロリコンだ。
ただ、目の前に居るのは諸悪の根元だった。幾ら純粋無垢な皮を被ろうが、その腐った性根は消えないはずだ。

「勝……手に、皆を……襲って、私……ねぇ、信じて……私は……めだかに、噛、み……付い、たり……してない…の…。
 命、令だっ、てして、ない……めだか、は、私の、大切な……お友達だ……もの……人狼に、なんか……しな、い……わ……」

異様な光景である事は、誰もが理解していた。
血の涙を流しながら罪人でない事を説く少女に、大人が三人掛かりで言葉攻め。どう甘く見ても普通の状況ではなかった。
「私を、信じて」
ただ悲しいかな、彼女の言葉が真実であるか否かは、この場ではさしたる問題ではなくなってしまっていた。
彼等が望むのは、真実ではなく彼女の死そのものだったからだ。
それは自分達が役立たずではなかったのだと、仇を討ったのだと、自分に納得させる為。
あの時逃げたけど、でも今回は逃げなかったのだと、居もしない死者に許しを乞う為。
とことん下らない理由だったが、彼等はそれがないと生きていけなかった。逃げる事が出来なかった。
最後まで現実と立ち向かわない。腐り切った根性は、少女に罪を被せる事でしか、弱い心を守れなかったのだ。
桐敷沙子の正体や諸行は、やはりその為のただの口実に過ぎなかった。

「……もう黙れよ」少年が言う。「桐敷、お前は少しやり過ぎた」

少女は何も言わなかった。その変わりに首筋に当てられた刃を受け入れ死を享受する様に、瞳を閉じて涙を流した。

「返せよ、皆を。生き残ってなきゃいけなかったのは、あいつらだったんだ」

青年が銃口を向け直しながら言う。少女は肩を揺らしながら力無く笑った。自嘲に歪んだ唇は、酷く青白い。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお前なんか、産まれてこなけりゃ良かったのに。




青年が呟いて、銃声が鳴る。
少女はそうしてただの肉片になった。

669ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:03:59






【89:04】






結論から言おう。俺達は運が無かった。

何故ならここまで生き残ってしまったからだ。
敗因は何だ? 考えてみたが至極当たり前の事で、答えは直ぐに出た。理由は一つ。
……俺たちがどうしようもなく弱虫だったからだ。

孤独な人間を集めてバトルロワイヤル。略して孤独ロワ。今思えば最初から企画が破綻していた。
球磨川禊は何を考えていたのか。いや、或いは何も考えてなかっただけなのか。
他人と関わるのを嫌がる奴等ーー例外もあったが大多数はそうだったらしいーーがいくら集ったところで、対主催集団など出来るわけがないのだ。
話によれば天使(天使!?)を中心に少しは出来たらしいのだが、まぁ性格が悪く協調性が無い奴等の集団がどうなったかなんて、結末を言うまでもない。
結局、まともだったのはーーそれも今となっては跡形もないがーー黒神めだかの集団だけだったって事だ。

黒神は、佐藤さんが言った通り不思議な魅力がある奴だった。
今まで誰も信じてこなかった俺ですら彼女の口車に乗せられて半ば信じ、それを死に追いやった桐敷を理不尽に恨んでしまうくらいには、すごい奴だった。
それにしても、今でさえ信じられない。今まで一人で生きてきた俺が何故黒神に頼ってしまったのか。
そのせいでこんなにもやるせない気持ちになり、誰かを恨み、後悔しているというのに。それが嫌で誰にも頼らないと決めていたのに。
とは言えどうにも黒神を好きにはなれなかった訳だが、まぁ成程確かにカリスマ性はあったのだろう。
どこぞの生徒会長にも見せてやりたかったところだ。
しかし彼女がここに呼ばれていたという事は、彼女も孤独だったのだろうか、と思う。答えなんて当人が死んだ以上は今更だが、少しだけ興味はあった。

さて、この世界に呼ばれた奴等の孤独は、大きく三つにカテゴライズする事が出来るのだと、二日前に志熊理科は言った。


   一つ、種族的孤独者。
   二つ、性格的孤独者。
   三つ、環境的孤独者。


ーーー貴方と私は二つ目。葵さんが三つ目。一つ目は先程のルーシーという人があたります。

志熊はそう言って、マーダーになりやすい奴だとか自殺しやすい奴だとかを俺に一方的に話した。
カテゴライズには成程と俺は思ったが、しかしどうにもこの島の奴らの考え方は好きにはなれなかった。
孤独の渦中にいる癖に、まるで孤独を悪の様に語るからだ。自分のせいでそうなったにも関わらず。
皆で力を合わせて信頼し合うのが如何に素敵な事かという言い分は分かる。
しかしだからと言って、一人でやりきる事が悪だ、というのは必ずしもイコールにはならないはずだ。
孤独は悪ではない。俺は志熊にそう言おうとしたが、彼女が隣人部とかいう戯けきった部活に所属する事実を知って、やめておいた。

ーーーおいおいおいおいおい、そりゃあ随分と温い孤独だな。欠伸が出るぜ。それを世間一般だとリア充って言うんだ。
   お前等さぁ、訓練されたプロぼっち舐めてんの? なんなの? 死ぬの?

素直に腹が立ったので、俺はそう言った。志熊は苦笑こそ浮かべたが、反論はしなかった。
その二時間後に志熊と葵は調査だとか言って地下室を出たが、それっきり戻ってくる事はなかった。
俺が次に彼女達の名前を聞いたのは、それから四時間後の放送だ。
俺はそれから黒神が助けにくるまでの数日、引き篭もった。他人に関わりたくなかったからだ。
下手に関わるから悲しくなったりするのだ。人はどうせ死ぬ時は一人なのだから、最初から独りで良い。
途中不知火や葉山が来たが、それ以外にイベントらしいイベントは皆無だった。故に俺はさしたるフラグも持っていない。
元々イベントやフラグとは無縁の人種だし、特に不便もなかった。だからそれで良かった。

良かったのだ。



「おかえりなさい!」



階段を上がった俺達を迎えたのは、機械仕掛けの少女の声とシチューの匂いだった。

670ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:05:46

「あ、あぁ」

佐藤さんは応えると、ぎこちない苦笑を浮かべてオートレイヴ少女、ピノの頭を撫でる。
「達広たち、なにしてた?」
ピノが笑顔で佐藤さんに尋ねた。俺達は彼女にだけは状況を説明していなかったのだ。
相手が機械とは言え、流石にこんな少女に真実を告げる気にはなれない。コギトウイルスに感染しているなら尚の事だ。
だから岩倉に彼女の御守りを任せて、男面子だけで重症を負った桐敷の後始末を行う事にした。

佐藤さんは何をしていたのかを思い出してしまったのだろう。
みるみるうちに顔を青くすると口を押さえて逃げるようにトイレへ駆け込んだ。
無理もない。頭が破裂した死体なんか、2chでさえあれど実際に目の前で見たのは二人とも初めてだったのだから。
俺はそれに比べてまだマシだった。見た事はあったし、一度だけ人もーーそれもクラスメイトだった葉山隼人をーー殺したから。

「? ねぇ、達広どうしたの?」

ピノが小首を傾げて鈴木さんに尋ねる。鈴木さんは中空を見たまま、譫言の様に何かをぶつぶつと呟いている。

「ピノ。今は鈴木さんも佐藤さんも、少し休ませてやってくれ」

ピノは怪訝そうな表情を見せたが、直ぐに頷いてにかりと笑った。唯一の癒しだな、と俺は苦笑する。
オートレイヴの奴等は、コギトに感染して自我と暴力性に目覚めない限りは人間に忠実で決して嫌わないらしい。
なんて素晴らしいのだろうか。しかし、俺は知っている。もし仮に、俺の世界にそんな常識があったならばーーー俺は確実にロボットに恋をしていたと。
全く、イヴの時間かってんだ。そう思えばある意味まだ運が良かった。俺の嫁はこの島に呼ばれなかった戸塚だけで良いのだ。
戸塚マジ天使。TMT。

「……岩倉は?」
「れいんは、おりょうり!」

俺が誰も居ない部屋を見渡しながら尋ねると、ピノが猫のフードを被りながら応えた。
だが、悪いなピノ。材木座ならともかく、俺はそのあからさまな萌えには騙されない。
それはそうと、岩倉は上のキッチンに居るらしい。
匂いからすれば此処の冷蔵庫の食材から作った普通のシチューだとは思うが、あまり期待は出来そうにはなかった。
俺は佐藤さん以上に岩倉が苦手だったからだ。
例えそれが如何に美味かろうが、あの能面の様な顔を見ながら飯を食べるというシチュエーションだけで味は三割減だ。
全くもって、ピノと岩倉どちらが人間でどちらがオートレイヴなんだか分かりゃしない。あそこまで考えてる事が分からない人間も中々居ない。
それ以前に、そもそも人を殺した直後だ。飯なんか食べる気分でも無かった。自分と佐藤さんはまだしも、鈴木さんは特に駄目だ。

「鈴木さん、取り敢えず座って休んだらどうですか?」

俺の提案に、鈴木さんは白い顔で頷き、部屋の隅に腰を下ろした。彼の服にはべっとりと血が染みていた。当然だった。
なにせあの瞬間、俺達を押し退けて桐敷の頭に散弾を捻じ込んだのは他でもない鈴木さんだったのだから。
俺はサックの中から白いシャツを取り出して、鈴木さんの目の前に置いた。サイズが合うかは別にして、その血はこちらとしても勘弁願いたかったからだ。
慣れているとは言え、決して気分は良くなかった。

「……どうして、あの時撃ったんですか」

レジ袋を口に当てながらえづく鈴木さんの隣に腰を下ろして、俺は尋ねた。
遠くからショパンの“子犬のワルツ”が響いていた。ピノが何処かでピアニカを吹いているようだった。

「俺は……」鈴木さんはレジ袋から口を離して深呼吸をした。「俺は、ヒーローだし……」

ヒーロー。俺は舌の上でその言葉を転がしたが、さっぱり意図が掴めなかった。

「ヒーロー?」何を言っているんだ? 俺は思った。この人は何を言っている?「意味が分かりませんけど」
「分からなくても、別に、良い……」

鈴木さんは力無く笑うと、レジ袋の中に吐瀉物をぶちまけた。嫌な臭いが部屋に満ちる。
とても“子犬のワルツ”を聴く気分じゃないな、と俺は思った。

「……ふぅー。や、やっぱり俺には無理だな。こんなに酷い事を繰り返すのは。か、身体が保たないぜぇー。つれぇーっ」

一通り吐いた後、胸をさすりながら鈴木さんが言った。同感です、と俺は応えた。
遠くで“子犬のワルツ”が途中で終わって、今度はパッヘルベルの“カノン”が流れ始めた。
演奏に慣れていないのか、やけにぎこちなかった。

「そ、その割に引企谷君は、平気、みたいだけども?」

そう言うと、鈴木さんは再びレジ袋に吐瀉物を吐いた。
シチューの匂いと胃液の臭いが混ざり合って、なにやらよくわからない臭いを作り出していた。
夜の満員電車でたまに嗅ぐ匂いだな、と俺は思った。

671ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:08:36

「平気じゃないです。我慢してるだけですよ。それに人を殺した事は一度ありますから。ほら、俺この通り極悪人なんで」

佐藤さんと岩倉と黒神は好きにはなれなかったが、何故だかこの人はそこまで嫌いじゃないな、と俺は思った。何故かは知らないが。

「お、俺は生きてる人を殺したのは、うぷ、は、初めてだった……。
 見捨てた事なら、一度だけあったけど……ごぷ。ぅぐぇー、きもちわるっ」

血で濡れたシャツを脱ぎながら、鈴木さんは言った。
服を脱いだ後、鈴木さんは決まりきった出来事の様にレジ袋に吐瀉を吐いた。俺は最早何も思わなかった。

「それで気分を悪くしてるんですか?」
俺は尋ねた。鈴木さんは首を横に振る。
「違う……違うんだっ。同じだったから……ZQNを殺す感覚と、同じだった……」
「解らないな」俺も首を横に振った。「だったら何処に、気分が悪くなる理由があるんですか?」
鈴木さんはレジ袋に吐くと、長い溜息を吐いて、そして俺の方を見た。

「俺が元の世界で殺してきたZQNは、人間だったんだって……だったらやっぱり、殺人だ……そう思ってしまったのでっ……。
 だったら彼女だって、化け物とは言うけれど……お、同じ人間だったんじゃ、ないのかって……。な、なら。ならだ?
 それって、つまり、俺が、やった、事、は、その、」

俺が鈴木さんの言葉を遮って反論しようとした時、トイレの扉が開いてげっそりとした面持ちの佐藤さんが出て来た。

「すまん、待たせた。もう大丈夫だぜ。ちょっと堪えたけど……」
「俺も……もう行ける」
佐藤さんの言葉に、鈴木さんも続いた。どう見ても大丈夫そうにはなかったが、彼なりの気の遣い方なのかもしれないので放っておいた。
「なら、上に行きましょう。食べる気分じゃなくても、最期の晩餐くらい胃に入れとかないと」

俺は立ち上がって、階段の上で鍋を見張る岩倉を見た。
どうか神様。あれが空鍋でありませんように。
俺は今生最期の祈りを、密かに神に捧げた。






【80:12】






「悪いな、玲音ちゃん。メシまで作ってもらってさ」

佐藤さんが申し訳なさそうに言って、席に着いた。向かい側に座る岩倉は無表情のままこくりと頷く。
「……最期の晩餐」
隣で、独り言の様に鈴木さんが呟く。もし本当にそうならこの場に裏切り者が居る事になるな、と俺は思った。
ならば果たしてそいつは銀貨何枚で俺達を売るのだろうかと思ったところで、俺は考えるのを止めた。
メリットが無いからだ。故にそれは有り得ない答えだった。最早裏切る必要さえも無い。

「さいごって?」

ピノが左を向き、佐藤さんに尋ねた。
「皆消えちゃうって事さ」
佐藤さんは悲しそうに笑って、ピノの頭を撫でる。

「きえる?」
「何も無くなるって事だよ」

岩倉がコッペパンを齧りながら淡々と言った。
ピノは眉間に皺を寄せて暫く考えているようだったが、やがてかぶりを振って考える事を止めたようだった。
黒くくすんだスプーンを手にとって、俺はシチューを口へ運ぶ。
スプーンはきっと高級な代物なのだろうが、銀装飾がごつごつと指に当たってどうにも慣れなかった。
シチューの味は、本来こうあるべきというシチューよりーー少なくとも俺の知っている常識で考えてーーだいたい十倍ほど薄く、そして必要以上に塩辛かった。
隣の鈴木さんはしかめっ面を浮かべている。体型的にも濃い味が好きそうだもんな、と俺は思った。二郎とか行って呪文唱えてそうだし。
……俺は食べられなくはなかったが、それでも不味いという事実は避けようがない。やはり岩倉は普段料理をする人間ではないらしい。
まぁそういう風にも見えないし、不自然に美味いよりかは下手な方が余程良いかもしれない。

「……なくなってもまたつくれる?」

数分間はカトラリー達が音を立てていたが、ふと不安そうな顔をしたピノがそう呟いて、四人の手は止まった。

つくれる?

俺は間抜けに口を開けたままその発言の意図を咀嚼してみたが、意味が掴めずそのままスプーンを口へ運んだ。
人を作れるのかどうかと、そういう事を訊いているのだろうか。この幼女の世界ではクローン技術でもあるのかもしれない。
なにせオートレイヴとかいうアンドロイドが当たり前の様に居るのだ。そのくらいあっても別段おかしくはないだろう。

672ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:09:29

「ピノはそうかもしれない。でもそれは、今のピノとはきっと違うピノだよ」

きっと誰もがお手上げ状態だったであろう質問に応えたのは、意外にも岩倉だった。
「? ピノはピノだよ?」
ピノが言った。岩倉は紙ナプキンで丁寧に口を拭き、静かにスプーンをテーブルに置く。
「……ピノの持ってる鍵盤ハーモニカがあるでしょ? 他の鍵盤ハーモニカじゃなくて、ピノの。
 それがなくなるって事……みたいなもの、かな」
「れいん、ピノよくわかんないよ……」

しかしピノはかぶりを振る。随分物分りが悪いアンドロイドだな、と思った。これではまるで人間の幼女じゃないか。
フィリップ=K=ディックさんよ、朗報だぜ。どうもこのアンドロイドは電気羊の夢だって見れそうだ。

「ごめんね、また後で説明してあげるよ」

とかなんとか下らない事を思っていると、岩倉が眉を下げながらそう言った。
珍しい表情だった。少なくとも俺達には向けられた事はない類の。
岩倉とピノは付き合いがそれなりに長いらしい。仲もまぁ、普通に良いのだろう。
似た者同士なのか、或いは足りない何かを互いに求めているのか。
ロボットの様な少女と、人間のようなロボット。彼女達が少しだけ奇妙な関係に見えた。



「ピノちゃん、死ぬのは怖いかい?」



食事を終えて暫くして、ソファに座っていた鈴木さんが何の脈絡もなく言った。
中々面白い質問だと思ったので、俺は視線だけを彼等の方へ向ける。今読んでいた参加者詳細名簿よりは、少なくとも中身がある話だった。

「こわくないよ」階段に座っていたピノが応える。「パパがいってたもん。しぬのはしあわせなことだって」

パパ? 俺は思ったが、直ぐに考える事を止めた。どうせ死んでいるのだ。考えるだけ無駄だった。
この名簿と同じ。居ない人間の情報など塵にも等しい。
「幸せな事、か……そうなのかもしれない」
鈴木さんは視線を落として自嘲混じりに呟く。まるで自分に言い聞かせている様だった。

「それに、みんないっしょ! だからピノ、こわくない!」

アンドロイドは大層御立派だなと思った。
俺は早く死にたいが、それでも死ぬのはまだ少しだけ怖いというのに、この少女は怖くないのだと言う。


「ーーーーーーーもう、みんなひとりじゃないもんね」


窓際に腰掛ける岩倉が、熊のフードを被りながらぼそりと呟いた。一番彼女と近かった俺さえ聞き逃してしまいそうな程、か細い声だった。
俺は少しだけ怖くなった。一番その言葉から遠そうな岩倉がそう言ったのは、何かとても深い意味がある様に思えたからだ。

……ひとりじゃない。

いや、違う。都城達と組んで首輪を解除しかけたほど賢い岩倉なら尚更分かっていたはずだ。
人間は種として一人じゃない。だが、人間は生物としてはどこまでいこうが独りだという事を。

俺は岩倉をまじまじと見た。瞳孔が開いた大きな双眸は、吸い込まれそうな黒に染まっている。
冬の深い夜を丸めた様なその冷たく澄んだ瞳には、けれども人も月も光も、一切の景色は映っていなかった。

お前は一体、何処を見ている? 俺は心の中で彼女に訊いた。

何も見ていないよ。俺の心の中で、彼女は無関心そうに応えた。

673ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:10:48








【50:08】







「悪かった、鈴木のおっさん」
「へ?」

俺がトイレから帰ってくると、佐藤さんが鈴木さんに頭を下げていた。何事かと俺は彼等の会話に耳を傾ける。

「やっぱりさ、無理だった。耐えられねーよ。もうあんな思いをするなんて二度と御免だ」

佐藤さんは力無く笑っていた。俺は漸く状況を理解する。きっと桐敷を殺す時のあの口論の謝罪なのだろう。

「い、いや俺だって悪かったんだしっ……謝らないでいいって、佐藤くん」
「駄目だ。謝らせてほしい。……だけど、これだけは言いたいんです。
 俺は考える事を止めたわけじゃない。やっぱり色んな事考えちまうよ。でも俺には優勝は無理なんだ。脱出も。
 もどかしいけどこればっかりは仕方無いんだよな。力も覚悟も勇気も頭も、足りねぇ。俺、馬鹿でヘタレですから。
 貴方達がやろうとしてる答え意外、選択出来なかったんです。それが一番……楽だったから」
「佐藤くん……」

ピアニカの音が階段の方から聞こえていた。譜面は多分、小瀬村晶の“light dance”だった。
透き通った音は確かに綺麗だったが、佐藤さんの苦い表情と固く閉じた拳とは、その雰囲気と曲調は酷く不相応だった。

「なぁ、引企谷」
「ん?」
「確か球磨川は“無かった事に出来る”んだったよな?」

佐藤さんは不意に何かを思い出した様に顔を上げると、手を濡らしたまま立ち尽くす俺にそう質した。

「……少なくとも黒神と都城と行橋と不知火は、そう言ってました」
俺はソファに腰を下ろしながら応える。
尤も、今はその眉唾情報を確かめる事すら叶わないのだが。
「『大嘘憑き(オールフィクション)』。現実(すべて)を虚構(なかったこと)にする能力、らしいですよ」

正直不知火から聞いた時は半信半疑だったが、黒神と都城から聞けば納得するほかなかった。
ラノベ顔負けな設定だが、スキルや魔道具とかいうものがあった以上、ファンタジーも最早ファンタジーではなくなりつつある。
いや、それでも十分中二っぽいファンタジーなのだが。

「だよな……尚更お手上げだわ。何でも有りじゃねーか。そんなのチートだぜ、チート。
 “ぼくがかんがえたさいきょうきゃら”かよ。MUGENなら糞キャラ扱いだぜ?
 アクションリプレイでもそこまで出来ねぇよ」
佐藤さんは肩を竦めて諸手を上げ、そして諦めた様に笑った。

「認めるよ鈴木さん。俺は負けた」
「……でもっ、佐藤くんは俺と違って迷って決めた事、だろ?
 なら、産まれた時から負けてたと思ってた俺よりは、ずっとマシだと思うけど……ど、どうだろう?」
「よしてくださいよ。結果は同じじゃないですか」

胸ポケットから桃印のマッチを取り出しながら、佐藤さんはあからさまなフォローを嗤った。

「俺の方が、よっぽど道化ですよ」

深い溜息と共にそう続けて、佐藤さんはソファに深く腰掛ける。カリモクソファーの木製脚がぎいと軋む音を上げた。
鈴木さんは中空に目を泳がせて、開きかけた口を閉じる。それ以上二人の間で言葉が交わされることはなかった。
遠くから、下手糞な“light dance”が聞こえている。部屋の隅の窓の外には、月が浮かんでいた。
天井から垂れ下がる電球に、小さな蛾が一匹、体当たりを繰り返していた。
本棚の影では、岩倉が体育座りをしたまま膝にパソコンを載せ、一心不乱に何かを打ち込んでいる。

俺は時計を見た。あと46分で俺達はこの世から消えてしまうというのに、時計は素知らぬ顔をして秒針を進めている。
針は細く、動きは軽やかで、死のタイムリミットは余りにも軽々しく進んでいた。
きっとあと46分後にも、一秒もずれることなく時計の針は進むのだろう。
俺達の命は、あんなに細い時計の秒針一つ動かせない。

そんなものなのだ、人の命なんて。

674ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:18:25







【38:37】







「……なあ比企谷。NHKって知ってるか?」

箱の背でマッチを擦りながら、佐藤さんが言った。
「知らない奴が居るのかよ。黄金時間の量産型糞クイズ番組でも全員正解レベルだわ―」
俺はそう答えた。日本人なら知らない人間は居ないだろう。
「何か勘違いしてないか? 何を想像してた?」
「……日本放送協会?」
俺の代わりに鈴木さんが質問に答える。いや、と佐藤さんはかぶりを振った。
「違うんですよそれが」火の点いたマッチが薄暗い部屋に光の残滓を振り巻く。「答えは日本人質交換会」
煙草に火が点いて、何とも言えないリンの匂いが鼻をつんと突いた。

「にほんひとじちこうかんかい?」俺が文句を言う前に、玲音はそう言って小首を傾げる。「なぁに、それ」
「ピノもしらないよ?」
岩倉の隣で、ピノが言った。そもそも本来のNHKすら彼女たちの世界にはなさそうだな、と俺は思った。

「その胡散臭さMAXな会があるのかは置いといて、それって造語じゃないんですか?」

俺は肩を竦めて言った。聞いた事もない単語だし、なによりNHKの略称をそんな戯けた会に許すほど、日本放送協会は懐が深くないと思ったからだ。
佐藤さんは少しだけ笑うと、不味そうに煙草の煙を吐いた。

「俺の知り合いが作ったんだ。人質交換会ってのはな、会員同士で人質を交換するんだよ。自分の命を人質にして互いに差し出すんだ。
 まあ、つまり“あんたが死んだら俺も死ぬぞコラ!”って事だな。
 そうすると、あたかも核保有国の冷戦下ににおける睨み合いのごとく身動きがとれなくなって、死にたくなっても死ねなくなるんだとよ」

俺達は黙って佐藤さんの話を聴いていた。きっと、その知り合いはこの島で死んだのだろう。俺は何よりも先ずそう思った。

「でも注意しなきゃいけない点がひとつだけあってな。
 “あなたが死んだって、そんなのどうでもいいよ”って状況になるとこの会のシステムは破綻しちまう。
 だからそうならないように気をつけなきゃいけねーんだ」

俺達は黙っていた。きっと俺を含めこの場にいる誰もが、誰が死んでもどうでもいいと思っていたからだ。
俺達は生き残ったが、何一つとして絆は無かったし、心の底から仲間と呼び合える間柄でもなかった。

675ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:20:13

「不思議だよな。俺も、多分お前らも、“あなたが死んだって、そんなのどうでもいいよ”って心の底では思ってるだろ?
 でも今の状況って、なんか脅迫じみたもんがあると思わねーか? 自分の命を人質にして互いに差し出してるみたいなもんに思えてきたんだ」

佐藤さんが言った。確かにそうかもしれない。自分が仮に死にたくなかったとしても、恐らくこの状況では生きたいとはとても言い出せないだろう。
しかし生憎、今この部屋の中に生きたい奴は居ないだろうし、この話に中身があるとは俺には思えなかった。
ただ、不思議な状況であるというのは俺にも何となく理解できた。集団自殺もこんな雰囲気なのだろうか。

「……誰も言わないから、俺が訊いとくぜ。俺達は今から死ぬ。そうだよな?」

佐藤さんが続けた。俺は周りの皆を見た。岩倉も、鈴木さんも、頷いている。
ピノは未だに理解していなさそうな表情だったが、死ぬことで幸せになれるとか、死ぬことが理解できないとか言うアンドロイドだ。
最早彼女が理解していようがいまいが、どうでも良かった。無理に理解させようとして話が拗れる方が面倒だ。

「だよな。まあ良いんだけどよ。飽き飽きしてたんだ。ただぶらぶらと宛てもなく、変わらない毎日を生きるって事に。
 なぁ、不謹慎だけど本当は皆思ってたんだろ? 今まで生きてきて、初めて生きた気がしたってさ」

胸の奥がいやにざわついた。
その言葉は、たしかに本質を突いていたからだ。誰もが思っていながら言わないであろう、黒い感情だった。
不謹慎と黙殺されるが、人間はきっと何時だってそうなのだ。誰かが死んで、目の前で事件が起こって、災害が起きて、戦争が起きて。
大変なことだと思いながら、きっとそれにワクワクしている。高揚している。

「映画とか、漫画とかにはさ。起承転結があって、感情の爆発があって、結末がある。でも元の生活には、そんなもん無かった。
 だけど、此処はそれがあった。程度はあっても確かに始まりがあって、小さくてもドラマがあって、感情の爆発があって、約束された結末があった」

バトル・ロワイアル。まるでハリウッド映画やゲームの世界の出来事だった。北野武の映画の中だけの事件だと思っていた。
ところがある日目が覚めると、自分が参加者。笑っちまうよマジで。目の前で人が死んで、毎日誰かが死んで。でもそれに目を背けた。
不知火を看取った。葉山を殺した。紅麗や黒神の死を間近で見た。
その度に妙な高揚感があったのは確かだ。

「辛い思いをしてまであの灰色の世界に帰るのと、このファンタジーの世界で、役者としてエンドロールを迎えるの。
 どっちが良いかなんて、考えるまでもなかったのかもな……」

約束された、結末。
俺は胸の中でその言葉を繰り返す。その時俺は何を思って、何を感じて、どんな表情で死んでいくのだろう。

676ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:24:59






【30:00ーー岩倉玲音とピノの場合ーー】





あれから、自由行動ということになったので、玲音はピノと一緒に散歩することにした。
いくつか部屋を見て、それから辿り着いた廃ビルの裏口には、ハンス・ウェグナーのYチェアが二脚、ぽつんと置いてあった。
一脚は苔と黴に覆われ自慢の曲線美は失われてしまっていたが、もう一脚は比較的新しく、岩倉玲音はそこに腰を下ろした。

「何をしているの?」

玲音が小首を傾げながら尋ねた。ピノは落ち葉が重なった地面に、木の枝を立てているところだった。
「おはかっ、つくってるの!」
ピノは玲音へ振り向いて、大きな声で答えた。顔は泥だらけだった。
「……桐敷ちゃんの?」
玲音はノートパソコンに何かを打ちながら訊いた。エンターキーを打つと同時に、ピノの体がびくりと大きく跳ねた。
ビルの入り口からは太い細いが入り乱れた様々なコードが溢れ、玲音の持つパソコンやその周辺の大きな機材、そしてピノの背中とを繋いでいた。
「うん。うごかなかったから。うごかなくなったら、おはかをつくるんでしょ? ビンスがおしえてくれたよ」
今度はピノの声は聞き取れないほど小さかった。玲音の指がパソコンに何かを打ち込む。当たり前の様に、ピノの身体がびくんと跳ね上がった。

「ピノはビンセントさんが好き、なんだね?」
「すき?」
「えっと、違うの?」
「ううん。すきって、なにー?」

ピノが小首を傾げる。愛玩用だから辞書をインストールしておかなかったんだね、と玲音がパソコンのモニタを見ながら小さく呟いた。

「ピノ、すきってわかんない。だけど、ビンスはほうっておけないやつ。だからピノがついてなきゃいけないんだ」

ピノは鼻の頭を擦って、したり顔を浮かべた。玲音は目を白黒させた後、肩を揺らして小さく笑った。
「ふふっ。ピノと話してると、不思議な気分になるよ」
ふしぎなきぶん、とピノは歌う様に繰り返す。ふしぎな、きぶん?

「ともだち、だから?」
「ふふふ、そうかもね?」

玲音は口元を隠して笑うと、キーボードを指で静かに叩いた。
画面は暗い緑色のスクリーンで、意味ありげな文字列がずらりと並んでいたが、それを覗いたピノには意味がさっぱり分からなかった。

「……ねぇ」数分の沈黙の後、玲音は思い出した様にそう切り出した。「ピノは人が動かなくなったのを見たって言ってたよね?」

ピノは苔の生えたYチェアーの上でピアニカを吹いていたが、玲音の質問にうーんと唸る。
ピアニカの唄口を咥えたままだったので、警笛を失敗した様な間抜けな音が鳴った。

「ラッカがね、くびをしめてっていうから、しめたの。そしたらうごかなくなっちゃったんだ。ピノ、びっくりしたな。
 れいん。あれがみんなのいう、“しぬ”ってことなんだよね?」

玲音の指がするするとキーボードを走る。スクリーンに浮かぶ小窓にはRakka、と黄緑色の文字が浮かびあがった。
エンターキーを押すとほぼ同時に、ずらりと何かの一覧が新しいウィンドウで飛び出した。そのうちの一つがタブで選択される。
玲音はそれをドラッグして、haibaneというフォルダにドロップした。

「うん。そうだよ」
「ピノにはすこしむずかしいな」

ピノが口を尖らせて言う。玲音は手を止めて、ピノの頭を猫耳フード越しに撫でた。

「れいんはわかってる?」
「私にも、難しいよ。リアルワールドでの死なんて、解らない。意味も、価値も。知りたいと思った事も、ない……から」
「ふうん……?」

玲音は熊耳のついたフードを深々と被って、目の前に広がる景色を見た。
小さな枝が墓標の様に地面に刺さっていて、しかしその下には死体は埋まっていない。
コギトに感染し、死んだ事を理解できて、弔いの文化や墓について知っていても、そこには感情と意味が欠落していた。
人が死んだら、墓を作って弔わなければならない。ピノはその一文を条件と結果の一致としか見ていなかった。

「ピノは今、幸せ?」

677ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:27:48
玲音が思い付いた様に尋ねる。目線は墓の向こう側の暗い森を見ていた。
よくわかんない、とピノは応えた。玲音はピノの方へ視線だけを動かした。ぐるり、とやや大き過ぎる目玉が回転する。

「ピノ、ニンゲンじゃないから、よくわかんないの。でも“死ぬのは幸せな事だ”って、パパ、いってた」
「オートレイヴだから、よくわからない?」
「わかんないもん、そんなの」
頬を膨らませながらピノは言う。玲音は少し悩む様な素振りを見せた後、再び口を開いた。
「でも、ピノはコギトウイルスに感染しているんだよね?」
「うん。でもわからないの!」
「どうして?」
「わかんないっ。れいんはときどき、よくわからないこという!」

ばん、とピノが椅子の上に立ち上がって、玲音にサックを投げ付ける。
サックの中身が散らばって、玲音の膝の上のパソコンは落ち葉の海にダイブした。

「……。……ごめんなさい。ピノがどう思ってるか、知りたかっただけなの。許してくれる?」

玲音は立ち上がり、ピノの支給品をサックの中に入れながら言った。ばつの悪そうな表情だった。

「ううん……ピノも、ごめんなさいする。ピノ、れいんのことしりたいよ。ピノだって、しあわせ、おしえてほしいもん」
「私は……私みたいな人の事なんか、知っても良い事ないよ」
玲音は苦笑を浮かべて言った。ピノは首を振って、椅子を飛び降りる。錆色の木の葉が少しだけ地面の周りを踊った。

「トリエラがいってた。きっとともだちってやつは、おたがいのことをよくしってるものなんだって」
「トリエラが……?」
「トリエラ、それからヘンリエッタこわしたんだ。そしたらトリエラきゅうになきだしたの」
「……きっとコギトに感染してたんだね、トリエラも」
「トリエラ、さみしいっていってた。ピノもね、そのあとうごかなくなったビンスをみたの。そしたらむねがなんか、きゅーってしたよ。
 だからピノ、きっとトリエラがいってた“さみしい”っていうびょうきなのかもしれないなって」

玲音は無表情のまま、空を見上げた。星は一つとして顔を出していない。
ーーー寂しい?
自分に問いかけるように呟いたが、やがてその言葉は森の向こう側の闇に沈んでいった。
いつまでもそうしていた玲音の腰あたりに、ピノは不安そうな表情を浮かべて抱き付いた。
熊のフードと、猫のフード。白い肌、暗い髪の毛。端から見れば、姉妹の様に見えなくもなかった。

「……ビンス、いつここにくるのかな」

不意に、ピノが呟く。顔は玲音の胸に埋まっていた。玲音はピノの肩を優しく掴み、ゆっくりと引き離す。
「……あのね、ピノ」
「うん?」
「ビンセントさんは、もう帰ってこないんだよ」

678ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:30:03

半秒の間があって、どうして? とピノが首を傾げた。玲音はパソコンを拾うと丁寧に枯葉を払い、椅子に腰をかけ、そして口を開いた。

「ビンセントさんは、死んじゃったから」

しってるよ、とピノは応えた。
「めだかがいってたもん。だからビンス、もういっこないかなって」
違うの。玲音は言った。違うんだよ、ピノ。

「無いの、ピノ。人は、一つしかないんだよ」

「……ふべん、だね?」
「そう。不便、人間は。だから、死ぬのは寂しいんだよ。
 ピノも知ってたんじゃない……? もういっこのビンセントさんは、ビンセントさんだけどビンセントさんじゃないって。
 だから寂しかったんじゃない、かな」
そうなのかなぁ、とピノは俯きながら口を尖らせた。
「じゃあ、ビンスにはもうあえない? でーたでも?」

奇妙な間があった。

答えに悩んだのではなく、聞きそびれたからという訳でもない。六秒半という絶妙な間の後、玲音は無表情のまま笑った。
ふふふ、と無機質な声が蔦だらけの廃ビルの身体を舐め回す。そして一通り笑うと、息を小さく吸って玲音はピノを見た。
そして、微笑みながら言うのだ。

「……また、会いたい?」

それは、凡そ有り得ない質問だった。或いは相手がオートレイヴの少女でなければ、その質問に疑問を持てただろう。
しかし少女ピノはオートレイヴだったし、剰えその心は下ろしたてのシャツや刷りたての画用紙よりも遥かに白く、無垢で、純粋だった。

「あいたい!」
「会えるよ。きっと」
「ほんと!?」
うん、と玲音は応えながらパソコンを開く。
「そういう風に出来てるの。ビンスにも、リルにも……ピノのパパにだって、会えるんだよ」
「ほんと!? すごい、れいん!」

かたかたかた。パソコンのキーボードが囁いて、それが止むと同時に生温い風が吹いた。
風は少女たちの髪をさらさらと靡かせた。

「ピノは、みんなと繋がっていたい?」

玲音が尋ねる。つながる? とピノは訊き返した。
「うん。みんなの考えをわかりたいなぁとか、みんなとずっと一緒がいいなぁとか、思う?」
「うん! おもうよ!」
「私なら、繋げてあげられるよ。ずっと」
「ずっと!?」
「ふふ。うん。ずーっと、永遠にみんなと一緒。うふふっ。もう寂しくないんだよ。だから、ね?」

玲音はにこりと笑って、愛玩用オートレイヴ少女の首にゆっくりと手を伸ばした。
ピノの視界に、灰色の砂嵐が走る。高揚の無い笑い声が、夜の森の向こう側に響いていた。


「こんな世界、もういらない」

679ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:32:12





【30:00ーー佐藤達広と比企谷八幡の場合ーー】






ソファに腰を深く沈めた。緑色のベロア生地に金色の刺繍は中々に高級感があって、座り心地も悪くはなかった。
サイドテーブルからカップを手に取って、口へ運ぶ。注いである珈琲は、何故だかいつもより苦く感じた。

「どうして」

カップの中の黒い水面を見ていると、そこに映っている冴えない男の口から声が漏れた。

「どうして、俺達なんだ」

どうしてなんだ、と。腹の底から捻り出す様に言う。半ば無意識の言葉は、その九文字は、この一週間の苦い想いの全てが詰まっていた。

「生き残ってなきゃいけなかったのは、めだかちゃんや紅麗さん達の方だった」

対面の高校生は、何も言わなかった。ただ光の無い黒い目を、こちらに向け続けていた。
励ます人も、怒る人も同意する人も、殴ってくれる人すら、もうこの世界には居ない。
残ってしまった五人は生きてこそいれど、軒並み心が死に尽くしていた。
優しさなどありはしない。温かさなどありはしない。希望は愚か、絶望すらありはしない。
そこにあるのは、ただただ“無気力”だった。
抗う事すら諦めた。勇気なんてものは、端からありはしなかった。人の形をしたその中身は、ひたすらに空虚だった。

「俺達は守られちゃいけなかったんだ。死ぬべきなのは俺達だった。ずっと前からそう思ってたんだ」

珈琲を飲み干して、ソーサーの上にカップを置く。
まるで泥水のような不味さだった。こんなにも不味く感じたのは初めての事だった。

「そうさ、ずっと思ってた事だ。ずっと見てきた事だ。自殺していく奴や、戦って死んでいく奴。殺してもらう奴、集団で死ぬ奴。
 俺もそうなるはずだった。せめて人間らしく、誰かに悲しんでもらって逝く筈だった。それが、なんで」

震える両手を目の前に出す。一週間を生き残ったにしては、彼等の掌はあまりに綺麗で、あまりに白かった。
目頭が熱くなる。視界が滲んで。頬をゆっくりと雫が流れ落ちた。



「ーーーなんで、ここに居る?」



わななく口で、震える心で、絞り出す。
死にたくなかった。
死ねなかった。
生きたくなかった。
戦いたくなかった。
ただどうしようもなく、生きてしまった。

「こんな守る価値も無い引き篭もりでニートの屑が、なんで。なんでだよ……なんでだ……」

一緒に死のうと言ってきた奴が居た。俺は怖くて、薬を飲んだふりをした。そいつだけ死んだ。
脱出を誓った奴も居た。敵に襲われて、俺はそいつを餌に逃げた。
俺を元気付けてくれた奴も居た。救ってくれた奴が居た。戦いを任せていたらピンチになったので、見捨てて隠れた。
全員、ゴミ屑の様に死んでいった。自分なんかよりもよっぽど価値ある命が、まるで羽虫の様にこの島の呪いに喰い散らかされた。

「俺達は此処で何をしてきた? 何を誇れる? 俺達に一体何がある?
 ただだらだらと長い時間引き篭って、助けられて、縋って、仲間を見捨てて、ひたすら現実から逃げて……そんな俺達の命に何の意味がある?
 守られて、頼って、逃げて、任せて。一度も戦ってこなかった俺達に、今更何が出来る?」

680ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:36:52
対面のソファに座る高校生は、口を開く素振りすら見せない。
何だってこんな仏頂面の可愛くもない歳下餓鬼相手に、俺は必死になって雄弁になっているのかーーーあぁ、そうか。
そっくりなんだ。昔の自分に。高校の時、達観した気分になって、斜に構えてれば格好良いと思っていたあの時の俺に。

「悪い、こんな事いきなり言われても困るよな」
目尻に浮かんだ涙を拭きながら、俺は言った。まったく、今日の俺はどうかしてる。
「しかし……本当にさ。何でこうなっちまったんだろうな。何処で間違えちまったんだろうなぁ」

ソファに全身を預け、胸ポケットから煙草を取り出す。
火を点けて咥えてみるが、マールボロ・ライト・メンソールは、すっかり“メンソール”の部分だけが抜け落ちてしまっていた。
これじゃあただのマールボロ・ライトだ。やれやれと鼻から息を吐きながら、俺は天井を見た。
湿気た煙草は世辞にも美味くはなかったが、味気ない天井に向かって漂う紫煙を見ている気分は、何故だか決して悪くはなかった。
不味い珈琲に不味い煙草、小さな矩形窓が一つだけの味気ないコンクリートの部屋。
だが或いはこんなロリコン薬中引き篭もりニートの最期には、相応しいシチュエーションなのかもしれなかった。

「ヒキタニ君は、何でだと思う?」
「……分かりませんよ。自分の胸にでも聞いてみて下さい。あと俺の名前間違ってます。不快です。死にます」

へへへ、と思わず笑みが零れる。頭を起こして、俺は仏頂面の引企谷を見た。
この目だ。周りを見下して捻くれた目。高校生の時、俺が委員長を見ていた目もきっとこうだった。

「でも、何が出来るか、って言いましたよね。あれには答えられますよ」

引企谷が言った。へぇ、と俺は先を促す。

「何もできねぇと思いますよ。俺にも、佐藤さんにも。だから俺達には嘆く資格も権利もありゃしないんです。
 俺達がやってきた事の皺寄せが今の状況なんですし。
 今更逃げる脅威も無い。抗う勇気も気力も無い。なら、受け止めるしかないでしょう? 今更決めた事迷うとか、それでもぼっちの先輩ですか?
 まあでも、俺は今も間違ってなかったって思いますけどね。そうやって狡賢く不器用に生きる事が、俺の生き方だったんですから」

煙草を銀皿に押し付けて火を消して、俺は懐からもう一本を取り出した。かちり、とライターの火打石が火花を散らす。

「だから俺は嘆かない。泣かない。逃げない。これで良い。俺は此処で孤独に死ぬ。そう決めた。
 自分勝手に生きてきたんだ。人間、報われないまま終わる事もありますよ。
 テトリスと一緒ですよ、人生なんて。長い棒野郎を待ってる時は来ないし、待ってない時に限って降ってきやがる」

人間、報われないまま終わる事もある、か。
咀嚼する様に胸中で反芻しながら、俺はぼんやりと煙越しに引企谷を見た。そこまで当時の俺は達観してただろうか。
いや、少なくともその振りだけはしてたか。こいつもそうなのかもしれないけど……ま、関係ないか。

681ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:38:39

「今更考え方を変えても過去も未来も変わらない。屑は屑らしく、嫌われ者は嫌われ者らしくしてれば良いと思うんです。
 佐藤さんがどう思うかは知りませんけどね、俺には何も期待しないで下さい。
 貴方の事なんか知ったこっちゃないですよ。なんてったって、あと数十分で別れる他人なんですから。
 くれぐれも内輪揉めとかに俺を巻き込まないで下さいね。俺は内輪に居たくないんで」

引企谷はきっぱりとそう言って、ソファから腰を上げる。埃が少しだけ舞って、天井からぶら下がるナトリウム灯の光にきらきらと踊った。
少し迷って、口を開く。今日の俺は何故だか饒舌だった。

「……俺はそれでも悩んで悩んで、最後まで悩んでいたい。勇気もないし、抗う気力もないけど。
 何も変わらなかったとしても、悩む。決めたとしても、やっぱり迷う。
 人間、そんなもんじゃないのか? 少なくとも俺はそういう情けない奴だよ。ニートだし。大学中退だし、引き篭もりだしな。
 ただお前みたいな奴は、俺から言わせればただの格好つけたがりの糞生意気な餓鬼だね。
 感傷的な気分にでも浸って星空でも見上げてろよ。あれがテネブ、アルタイル、ベガってさ(笑)。
 その間にも逃げて、悩んで、結局いつもいつも駄目な結果で。
 死ぬのを決めた今でもまだ死にたくないとか、あの時こうしてればとか、色んな事を後悔し続けておくからな。俺は。
 俺達は確かに現実に負けた屑だけど、まだ25分くらいは生きてるんだぜ。全部放り投げてくたばっちまうのは……それからだろ。
 迷わない考えない悩まないってのはお前、そりゃあ最早人間じゃなくて機械の域だぜ。俺はそう思うけどな」

引企谷は口をへの字に曲げて俺の言葉を聞いていたが、やがて溜息を吐いて俺に背を向けた。

「非生産的ですね。きっと球磨川大先生は、今のアンタをモニタ越しに見ながらメシウマしてますよ」

肩を竦めて僅かに嘲笑しながら、引企谷は扉の向こう側に消えてゆく。なにやら原因不明の苦しい気持ちだけが、胸の奥に深く残っていた。
部屋は静かになってしまった。錆びた鉄扉へ煙の輪を飛ばしながら、俺は黴臭いソファに上半身を委ねる。

「格好つけてるのは俺の方だ……なぁ……本当にこのままで、良いのか? 教えてくれよ、岬ちゃん。
 俺はまだ自分の人生の中で、一度も答えを見付けた事がないんだ。笑っちまうよなぁ。
 でもさ、死ぬ時くらい、見付けたいんだよ……何の答えかは分からないけどさ。何かを見付けたいんだ。何か一つでいいんだ」

俺はポケットに手を入れた。いつか山崎と作った脱法ドラッグは、まだ確かに残っている。
この島に来てから、一度も使っていなかった。そんな気分にはなれなかった。だが、今なら使ってもいいかもしれない。
どうせ死ぬからなのだろう。そんな気分だった。

ーーー佐藤くん、また私に会いたい?

重い鉄の扉の向こう側から、そんな声が聞こえた気がした。
あぁ、岬ちゃん。会いたいよ。またこの夢の粒を飲めば、答えを教えてくれるかな?
君は、俺を救ってくれる天使だもんな。


「いつかの星空の、続きを見に行こうぜ。岬ちゃん」


だけど、嗚呼ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー高校の時あんなに覚えた星座の名前、もう殆ど忘れちまったよ。

682ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:40:26






【30:00ーー鈴木英雄の場合ーー】






小さな頃から、絵が好きだった。

アニメのキャラクターを真似てはクレヨンや色鉛筆で広告の裏に描き、両親や親戚に見せた。絵が上手だと言われて、嬉しかった。
十歳の時に、初めて他人に絵が褒められた。校内コンクールで金賞を取ったからだ。先生にも褒められた。英雄くんは絵が上手だね、と。
運動能力は皆無。学業は普通以下。顔も中の下。背も高くなければ、体型も良くないし、モテすらしない。真面に褒められた事など皆無っ。
そんな俺にとって、それは“勘違い”させるに十分過ぎる出来事だったと言える。
今思えばそれが始まりだった。
中学。並の受験勉強で、並の学校に入学した。相変わらず勉強は出来ず恋人も出来ず運動も出来ず。
ただ、美術だけはいつも成績が良かった。自分にはそれしかない。俺はそれが分かっていた。齢十四にして。分かってしまった。

僕は勉強ができない。答えが書けない。けれどもーーー絵だけは描けた。

これはアイデンティティと言うべきか? まぁ、それは置いておいて。その頃、丁度漫画の面白さを知ったのだ。俺は。
読み漁り買い漁り、自力で初めて漫画を描いたのもその頃だった。
見せる人は居なかった(今思えば到底見せられる代物でもなかった)けれども、当時はその達成感だけで十分だったのだ。
十七の頃、それで満足出来なくなり、雑誌に漫画を投稿した。銅賞を取った。編集に褒めて頂いた。
自分の才能はこんな小さな世界で完結すべきでないと考え始めた。
俺は漫画家になって、金をたんまり稼いで、いい女とそれこそメロンブックスで売ってる男性向け同人誌顔負けなセックス三昧の日々を送るのだと。

高校三年生の夏、再び銅賞を取って、漫画家になろうと決意した。俺には才能があったのだ!
例年より些か暑く、雨が少ない夏だった。

二十代になって、週刊漫画は糞だと切り捨てた。自分には作風が合わないし、自己表現に週刊漫画という媒体は向かない。
長いスパンで見た場合、アンケート打ち切り制度など、自ら漫画界の将来を閉ざす間抜けな戦法じゃないか。
編集は糞しかいないし。奴等は何も理解していやしない。いや、理解はしているが営利主義と顧客主義の面から見て……或いは仕方ないのかもしれないが……。
それにしたって十週打ち切りとかなんだの、あんまりだろっ。物語の始まりの『は』も始まってないじゃないか。
ここからは漫画の意味という根本的な問題から話す事になるが、まず。まずだよ。
誰しもが、思春期を境に気付き始める。まずい、と。自分の人生は存外つまらないなと。
だから漫画があるわけだ。他人の人生を覗いて、その恐怖から逃げる為に。それで満たされる。
経験と充実を代替してくれる素晴らしい媒体だ、漫画は。でも漫画の主人公だっていつも上手くいくわけじゃない。
だから“静”は必要だ。アンケートも当然その時は票数が取れないだろう。でもこれからなんだよ。これからだ。
漫画の主人公だって、これから味が出てきて、話も盛り上がるんだ。
なぁ、そうだろう? これからなんだ。
俺の漫画『アンカットペニス』だって、これからだったんだ……。

二十代後半、そろそろだなと思っていた。本気を出すなら今だと。でも、気付けばアシスタントを繰り返す日々になっていた。
そうこうしていて三十になった。そこで漸く気付くのだ。俺は。漫画家は夢を与える職業だと誰かが言ったが、それは違うと。



漫画家は、夢を見る仕事だった。



社会の不条理の中に揉まれて。徹夜明けのマクドナルドの中で。京王線の満員電車の中で。新宿駅のトイレの中で。
腐り切った世界で、濁った目で、汚れた夢を見ていた。叶わない事なんか知っていた。
漫画は売れない。このままプロアシとして血反吐を吐いて、身体を壊して廃業。
独身のまま、ナマポで飯を食っていく。そんな未来を認めたくないだけだった。バクマンみたいに上手くいかないんだ、漫画は。

現実を見ず、夢を見る。それが取り残された漫画家の唯一の生き方だ。

683ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:45:15
「ふぅーっ」

溜息が自然に出た。吐く物は全部吐き尽くしていたが、息だけは未だに吐ける事に少しだけ安心した。
まだ自分が生きている事の裏返しのように思えたからだ。

「こんな事になる前に早く誰か可愛い女の子を守って、格好つけてから自殺すれば良かった……」

何となしに、空を仰いだ。雲で暗く淀んで、星など見えはしなかった。今生最期の夜だと言うのに、気の利かない空だ。

「くそ。俺の馬鹿っ。結局集団自殺とかっ」
赤く錆びた手摺に額をごつりと凭れる。ざらざらとして、少しだけ痛かった。
皆と別れた後、テラスへ出た。あの息が詰まりそうな地下室に居ると、吐き気が治まりそうになかったからだ。
テラスは二階の東側にあった。こぢんまりとした、一畳あまりの一人用テラスだった。
夜風は涼しく、湿気は適度。虫一匹いない。自然光は皆無で、朧月が僅かに辺りを照らしているだけ。中々どうして良い環境だった。
テラスの外には深い森ーー参加者達からは“黒い森の庭”と呼ばれて恐れられたーーが見えた。
屋久杉顔負けな巨大な杉達は天を目指してそれぞれが競うように伸び、ひしめき合っていた。
森の中には深い谷があり、そこには川が流れていて、滝壺に落ちる水の音が、空にどうどうと響いていた。
めだか、紅麗、トリエラ、ジョーカー、夜空、クルス、王土、坂東、メラン、ヘンリエッタ、ルーシー、ヴィンセント、桜田、黒木。
少なくとも今朝から夜にかけての惨劇で、13の死体がその森に眠っている筈だった。

「はぁーっ。ついてなさすぎだろぉっ、俺……」
溜息と共に、言葉が唇から零れ落ちる。そのうちの一人になれたならどれだけ幸せだったろう。
自殺だなんて、そんな事想像すらした事なかった。自殺する奴は馬鹿だと思っていた。
漫画家の世界では別段珍しくはなかったが、それでも親や大家に迷惑だし、折角生きてるのに自分から命を終わらせる意味もさっぱりわからなかった。
だがそれがここにきて現実味を帯びて心を襲う。
かつて自分が貶してきた最も間抜けな最期が、目前にあった。皮肉にも程がある馬鹿げた話だった。

「……でも。俺なんかが格好つけられる様なシーン、どこにも無かったよなぁ……」

初日から、俺は洞窟の奥に引き篭もった。DQNとの戦いで学んだ事は、とにかく静かにして身を隠す事が一番という事だったからだ。
三日目に差し掛かる頃に、中原岬さんと小野寺雄一さんの二人が洞窟へ来たが、その二人も結局自殺して。
その後も黒神めだかさんが来るまでずっと引き篭った。格好つける余裕も隙も、機会さえありはしなかった。

「おぇ。まだちょっと吐き気する。くそっ」
瞳を閉じると、少女の頭が弾け飛ぶ瞬間が壊れたテープの様に繰り返す。
「けど、悪くない……俺は……悪くない……大丈夫……大丈夫……」
網膜に焼き付いてしまったみたく、最期の瞬間が離れない。

「……ようつべで見た、外人が輪ゴムで西瓜を割る動画みたいだった……」

人を殺した以上、天国には行けないな、と思った。ただでさえ今だって不法侵入してるし、器物破損もしてきた。元の世界でも。
これじゃあ、バカッターに犯罪自慢するDQNと何も変わらない。
寧ろローソンやブロンコビリーのアイスケースや冷蔵庫の中に入る方がエンターテイメント性があるだけまだマシじゃないか。
……あ―あ。ガリガリ君の梨味と炭焼き厚切り熟成ぶどう牛サーロインステーキセット400g……死ぬ前にもう一回食べたかったなぁ。

「自分の人生って、やっぱり自分で思ってる以上に大した事ないよな。俺の持論は身を以って証明された訳だ……。
 自分の人生がつまらないから、漫画で他人の人生を覗きたがる。そこに現実を見て、経験を補いたい。だから人間は漫画を見るのだという理論が……」

684ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:46:31

“なぁ、不謹慎だけど本当は皆思ってんだろ? 今まで生きてきて、初めて生きた気がしたってさ”
佐藤君の言葉が、頭の中でずっと渦巻いていた。元の世界では、三谷さんも同じ様な事を言って死んだ。
何も変わらない毎日は、確かにDQNやバトロワのせいで変わった。生きる事を初めて意識して、命に対する想いも変化した。
死に触れる事で、生きている事に実感が持てた。だけど、結局本質は変わらない。死なない様に引き篭って脇役に徹しただけだった。

「俺は……俺の人生くらい、自分がヒーローにななりたかったんだ……それだけなのに」

しかし結局、どうやらヒーローにはなれずに人生は終わってしまいそうだった。
……でも、本当にそれでいいのか?
ふと思い出して、胸ポケットの煙草を取り出す。煙草は好きではなかったけれど、その一本の煙草だけは、ヒーローになれた時に吸おうと決めていた。

「こんな時に、どうして思い出しちゃうかなぁ……俺は……」

ーーーヒーローになりたいです。
三日目の昼、俺は雄一さんに言った。雄一さんはふむ、と唸り、煙草をふかしながら暫く考え込んでいた。
その夜、雄一さんは俺の隣に座って、眼鏡のレンズをTシャツで拭きながら言った。
ーーー僕ァね、鈴木くん。ヒーローになりたければなればいいと思うよ。
   ただ君以外の誰もが、君がヒーローである事に、興味なんてないんだ。
俺は何も反論する事が出来なかった。
ーーーだけどヒーローは街を壊すし、全員を救えないし、法律と警察無視で直接悪を殺すし、誰にも理解されない。
   それでもヒーローであり続ける自信が、責任を取り続ける覚悟が、君にはあるのかい?

「……誰もやらないというなら、俺がやってやる……今しかないんだ、チャンスは。俺なら、うん。出来る」
ガリルのグリップを握って、空を見上げた。雲の向こう側で、十六夜の月がぼんやりと浮かんでいる。


「アイアムア、ヒーロー」


ーーーないです。
俺は言った。
ーーーないけれど、どうしていいか分からないけど、ヒーローになる方法も、貴方の言う覚悟も分かりませんけど。
   でも、なりたかった。それって、悪い事なのでしょうか?
雄一さんは笑って煙草に火を点けた。まるでエクトプラズムの如く煙は洞窟に浮かんで、やがて岩壁に吸い込まれるようにして消えていった。
ーーー今度、君の漫画を見しておくれよ。そしたら、答えてあげても良いかな。
雄一さんはそう言って煙草をふかした。いいですよ、と俺は応えた。
その夜、雄一さんは遺書と一本の煙草を遺して洞窟を出ていった。

『僕ァ、ヒーローにはなれそうにないからね』

遺書の最後の一文には、汚い文字でそう綴られていた。

685ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:47:52





【20:00】






俺達は孤独だ。

心も弱いし、勇気は無い。運動能力も無ければ、運もないし、挙句勉強も出来ない。
モテすらしないし、凡そ才能やカリスマ性と呼ばれる類のものとはとことん無縁だ。
だけど別に、それを悪い事だと思った事は一度だってない。誇れる事だと思った事もないが、しかしそれを咎めるリア充共よ、成功者共よ、俺は問いたい。
だからなんなのだ、と。
そもそも俺達が居なければ、お前達は高説を垂れ流す事も、成功する事も、悦に浸る事すら出来なかったはずではないのか?
とは言え俺は別にそれを恨んでいるわけではない。可哀想と思いたくば思え。嫌いたくば嫌え。
ただ、それを認めている俺達に、お前達は意見を言える立場にあるのかと言いたいのだ。
俺はお前達から蔑まれる事も、無視される事も、負ける事も認めている。だからお前達も、俺達が孤独である事を認めろ。
俺達からその立ち位置すら奪おうというなら、それは最早白痴や傲慢以外の何物でもないだろうに。

俺達は弱い自分を受け入れた人間だ。そして少なくとも俺はーーーそれが諦観とは違うと思っている。
俺は幾ら啓発本を読んでも自分が変わらない事を知っている。ゲームやアニメじゃないんだ。人間、中身はそうそう変わらない。
でもそれでいい。変わりたいと思う事も確かに少しはあるし、すごい奴には……まぁ多少なり憧れるが、その反面で確かに今の自分を享受しているし、嫌いではない。
何より結果として変わらないのは、変わりたい気持ちよりありのままの自分を選んでいるからだ。
クズでいい。ニートでいい。馬鹿でもコミュ障でもいい。
恋人が出来なくとも、体育で2人組を作れなくとも、友達が居なくとも、ヒーローになれなくても、主人公じゃなくても良い。
何故ならそれが俺の人生だからだ。

だからお前、頭によく刻め。お前達が何をもって“ハッピーエンド”と呼んでいるのかはこの際問わない。








だがそれでもーーーーーーーーーーーーーーーこの物語を。結末を。決して“バッドエンド”とは言わせない。



















【桐敷 沙子 死亡確認】

【孤独ロワイアル 残り5人】

686ep298.主人公はもう居ない ◆LO34IBmVw2:2013/08/22(木) 22:48:58
投下終了。長くてすみません。

687剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:02:34
 崩落する仮初の世界、無へと還る殺戮の舞台。
 そこに大神の筆しらべが走り、異空へと繋がる幽門が開かれる。
 黄金神と大神の導きを受け、戦いの中で散って逝った数多の剣士達の魂は、還るべき世界へ還っていった。
 それは、彼らの振るった幾多の剣も同じ――。




 エピローグ 剣の還る場所
 其の一『聖剣イルランザー』




 ガルディア大陸から遥か南方に位置する、幾つもの島々からなるエルニド諸島。
 かつては大陸で名を馳せた蛇骨大佐率いるアカシア龍騎士団によって統治されていたが、数年前に中枢メンバーが死海へと遠征に向かい全員が行方不明となり、少し前にその死海も消滅してしまった。
 現在は交易の中心である港町テルミナを始め、本島はパレポリ軍の統治下――事実上の支配下――にある。
 そんな世間の喧騒から隔絶された、小さな離れ小島があった。
 豊かな緑に囲まれたそこは一見無人島のようだが、中心部には小さな小屋があり、そこには1人の女性が住んでいた。
 彼女は今日も、2人分の茶器を用意して、2人分のお茶を淹れて、じっと、椅子に座ったまま待っていた。机を挟んだ対面の席に来るべき人が来ることを、帰るべき人が帰ることを。
 女性の顔にはおよそ精気と呼べるものは見られず、悲しみや嘆きのような感情すらも垣間見えない。
 ほんの数年前、この離れ小島に大怪我を負った騎士が記憶喪失の状態で流れ着くまで、彼女はずっと1人だった。それが当たり前だった。
 世間から隔絶された場所で、彼女はずっと1人で生きて来た。死が訪れるその時までそれは変わらないと、そう思っていた。
 だが、彼が現れてから彼女の世界は一変した。
 彼は命を救われた恩を返す為だと彼女の手伝いを買って出た。木を伐ったり薪を割ったりと力仕事が主だ。
 彼女もそのお礼にと、彼には腕を振るって食事を御馳走した。
 またそのお礼にと青年が、またそのお礼にと彼女が、とその関係はずっと循環していた。
 彼と共に暮らし、語り合う内に、彼女の心に今まで感じたことの無い感情が芽生えた。
 それが恋であり、愛なのだと悟ることに、さして時間はかからなかった。
 その想いを自覚すると同時に、彼女の内に一つの恐怖が生まれた。それは、彼と別れる時が訪れること。
 彼はいつか、記憶を取り戻すかもしれない。或いは、彼の知り合いがここに来るかもしれない。そうなってしまったらと思うと、胸が張り裂かれるようだった。
 彼がここに来る前の日常に戻るだけだと頭では理解できているし割り切れるものだと思えるのに、心は、そんなものには耐えられないと叫んでいた。

688剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:07:31
 けれどある日、唐突に、全く予期せぬ形で、彼は彼女の前から姿を消してしまった。
 不可思議な闇の霧、暗黒のオーラとも呼ぶべきものが彼の体を包んだ時に、一緒に巻き込まれそうになった彼女を助けて、彼は闇に呑まれて消えてしまった。
 突然の別離を受け入れられず、彼女はまるで、彼が少し出掛けてしまっただけだと自分に言い聞かせるように、食器と食事を2人分用意して、そのまま待ち続けるという奇行を繰り返していた。
 今日で5日目。その間、彼女は自分も用意した食事や間食に一切手を付けていない。睡眠はとっているのでなんとか保っているが、人間が飲まず食わずで生きられる限界とされる時間を既に超えてしまっている。
 今も意識が朦朧としておりいつ倒れてしまってもおかしくない。その朦朧とした意識の中で、彼女はもうすぐ薪が無くなってしまうので、木を伐らなければならないことに気付いた。
 いつもは彼が率先してやってくれていたので、すっかり忘れていた。
「………………ダリオ」
 彼の姿を思い出して、彼女は一度も呼んだことの無かった彼の名を唱えた。
 離れ小島での隠遁生活とはいえ、食料の買い出しに行くことはあるし、そこで噂や世間を騒がせるニュースぐらいは知っていた。
 アカシア龍騎士団四天王筆頭にして、聖剣イルランザーの新たなる所持者となった人物の名と容姿の特徴を、彼女が知らないはずが無かった。
 それでも言えなかった。教えられなかった。彼にもう帰る場所が無くなっていたからとか、そんな理由では無く。彼と、ずっと一緒にいたかったから。
 彼女の頬を、一筋の涙が伝った。寂しさから、後悔からか、それとも哀しさからか。それすらも、もう分からなくなっていた。
 このまま何も分からなくなってしまおうかと思った、その時、家の扉を叩く音が聞こえた。
 一瞬、彼が帰って来たのかと思ったが、彼ならばすぐに入って来るはずだ。なのに、今ドアを叩いた人物は返事を待っているのか一向に姿を現さない。
 自分の冷静な思考に落胆しつつ、彼女は立ち上がって客人を出迎えようとしたが、体に力が入らず、椅子から立ち上がれない。
 止むを得ず、椅子に座ったまま声を掛けて客人を招き入れる。
「どうぞ。鍵は開いています」
「失礼する」
 彼女の声に応じて入って来たのは、金の長髪を束ねて纏めている、青い鎧を纏った騎士だった。異様に大きな足の部分が特徴的な鎧だ。

689剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:11:59
「何のご用でしょうか? ご覧のとおり、ここは何も無い島ですよ」
「俺の友……ダリオの剣を届けに来た」
 青い鎧の騎士の言葉を理解するのに、普通よりも遥かに時間が掛かった。
 もう二度と聞けないと思っていた名前が、唐突に告げられたから。
「ダリオの!? 貴方は、一体……?」
 彼女が問うと、騎士は兜を脱ぎ、答えを口にする。
「俺はゼロ。ダリオに救われ……ダリオを死なせた大馬鹿だ」
 その報せを聞かされて、彼女は言葉を失い、何とかその場に崩れ落ちるより前に椅子に座る。
 覚悟はしていたはずなのに、改めて他人の口から事実として告げられたその言葉は、ダリオの訃報は彼女の心を粉々に砕いてしまう程に強烈だった。
 暫時、小屋の中を静寂が包む。彼女は伝えられた言葉を受け入れなければならないと分かっていながら、上手く飲み込めないまま、ただただ沈黙だけが過ぎて行く。
 やがて、堪りかねたのか、或いはこのままでは彼女は一言も発せないと察したのか、ゼロと名乗った騎士が再び口を開いた。
「俺が我を失って暴走した時に、ダリオと衛有吾……俺の友は、俺を斬り捨てることを選ばず、俺を救うことを選んでくれた……。なのに、俺は、あいつらを……殺して、しまった」
「そんな……」
 告げられた、あまりにも残酷な事実に、彼女は言葉を失った。
 もしもゼロが、虫が鳴くように表情を変えずに声を発していただけだったなら、彼女はゼロを憎み罵声を浴びせることもできただろう。
 だが、ダリオともう1人の友人の死について語ったゼロの表情は、隠し切れないほどの悲しみと後悔に塗れていた。
 感情を不要に表に出すまいと表情を強張らせているのが分かってしまい、殊更痛ましかった。
 それでも、ゼロは決然とした表情で、言葉を紡ぐ。
「あんたが望むなら、俺はここで死んでもいい。だが、その前に……どうか、この剣を受け取って欲しい」
 そう言って、ゼロはダリオの形見というべき剣を、彼女へと差し出す。
 幾度かゼロと剣とを交互に見比べて、彼女は一つの疑問をぶつけた。
「……何故、私にこの剣を?」
 この剣を返すならば、廃墟と化しているとはいえかつてアカシア龍騎士団の本拠地だった蛇骨館か、歴代の四天王の御魂が祀られているテルミナの霊廟こそが相応しいはずだ。
 それを何故、ゼロはわざわざ辺境の小島の、誰も知らないような女の下まで届けに来たのだろうか。
 気が動転して、却ってそんな率直で素朴な疑問が湧いて出て口を突いて出てしまった。

690剣士ロワエピローグ ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:15:49
「ダリオから、あんたの事は聞いていた。全てを失った自分を救ってくれた、誰よりも大切な女性だと。だから、こいつを預けるならあんたしかいないと、そう思ったんだ」
 帰ってきた答えは、予想はおろか今の今まで、ただの一度も思いもしなかったことだった。
「ダリオが、私を……?」
 彼女には負い目があった。ダリオが記憶喪失のままずっと自分の傍にいて欲しいという、浅ましい欲望。
 そんな欲に目がくらんでダリオに少しの真実も教えようとしなかった自分に、ダリオが好意を向けてくれているなど、考えたことも無かったのだ。
「ああ。全部の記憶を取り戻した上で、あいつがそう言っていた」
 彼女の反応からその内心を僅かながらも察したのか、ゼロは肝心の事を付け加えてくれた。
 或いはダリオが何も知らない、思い出せないからこそではないかという不安も、その言葉で消えた。
「ゼロ、そろそろいいかい? 次の世界への入り口が見つかったみたいだよ」
「了解した、すぐにそちらへ向かう。……俺はもう行く。ダリオの剣を……イルランザーを頼む」
 外からゼロを呼ぶ青年の声が聞こえた。ゼロはその声に応えて、彼女に一礼をしてから小屋を出た。
 彼女は自分でも気付かぬ内に、イルランザーを受け取り、それを両腕でしっかと抱き締めていた。まるで、愛しいひとの体を抱きしめるように。
「ダリオ……」
 本来なら感ずるはずの無い、まるで自分自身も抱かれているような温もりを、彼女はイルランザーを通じて感じていた。





 こうして、聖剣イルランザーは緑豊かな名も無き小島の小さな小屋に住む女性の下へと辿り着いた。
 彼女はその剣をアカシア龍騎士団の宝剣ではなく、ダリオの形見としてとても丁重に扱い、大事にした。
 後に修羅の如き剣士の手の中で風のように舞い、輝ける聖剣と共に星のように輝いた、もう一つのイルランザーを携えた冒険者達が彼女の下を訪れるのだが、それはまた、別の物語である。

691 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/08/26(月) 01:30:05
剣士ロワエピローグ、これにて投下終了です。
その一と銘打ちましたが続く予定はありません。構想程度はありますが。
こんなマイナーキャラ(名無しのモブキャラ)メインのエピローグとか、普通のロワだったら絶対怒られますよね……。

>>653
まとめ乙です! いやぁ、これはありがたい。
想い出ロワとかまだまとめられていないロワを読み返す時に探すのが地味に大変だったので。
目当てのロワじゃないロワをつい読みふけってしまったりで。

692名無しロワイアル:2013/08/26(月) 21:36:46
>>654
遅くなりましたが、感想を

正直いって殆ど把握していない作品ばかりだけど……
凄く面白かった(KONAMI缶)
一点のヒロイズムも存在しない生き残りたちが6人残るってのは、
最初から順を追って書いた小説では考えにくい、3話ロワならではの状況で
その苦悩を描いたのは斬新に感じられました

693名無しロワイアル:2013/09/27(金) 23:28:41
ううむ、過疎ってるなぁ

早くDQロワの完結が読みたいというのにw

694名無しロワイアル:2013/10/28(月) 00:58:48
誰もいない……試しに話を振ってみよう。
剣士ロワの主催者にアサルトバスターが名を連ねていたのは、彼の切り札に由来します。
その名も嵐暴神ストーム・サン。暗黒の世界に君臨する「もう一つの太陽」。
そのサイズは機兵(MSみたいなもの)を内部に搭載するという規格外の巨体。
ここまで来ればお分かり頂けるでしょう。当初のジェネラルジオングポジでした。
しかしカードダスだけで資料もクソもあったもんじゃないので、技や能力をでっちあげるのすら困難を極めたので構想段階で没に。
なのでアサルトバスターさんにはあと3話時点で故人になって頂きました。

695名無しロワイアル:2013/10/28(月) 18:08:10
裏話だなーw

696名無しロワイアル:2013/10/28(月) 20:25:26
裏話……か。

拙作虫ロワの対主催の本拠地突入は、
風の谷のガンシップ@ナウシカで火蜂を撃破っていう没案があったなぁ
突入者も、ユピー、虫愛づる姫の他は、一文字@ライスピ、リグル@東方の予定だった。

テラフォーマーズっていう良作漫画の存在を知ってから、
突入メンバーをティン&ヤマメに変更したんだけどねw

ガンシップじゃなくて王蟲さんで突入する案を採用したのは、
乗員数の問題と、ラストシーンで働いてくれそうって理由があったからかな。

697名無しロワイアル:2013/10/29(火) 00:31:33
>>696
ゆぴぃと姫は確定だったんですね!(歓喜)

698名無しロワイアル:2013/10/29(火) 21:15:33
>>694
うん?アサルトバスターって主人公サイドのMSじゃねえの?
SDだと敵なん?

699名無しロワイアル:2013/10/29(火) 21:37:07
>>697
スマヌ……
彼らもまた確定ではなかったのだ……
原案では、ゆぴい@ハンタはチビィ@ドラクエ7だったし、
虫愛づる姫君は、ナウシカ@風の谷のナウシカ、レコ姫@虫姫さま、ファーブル@史実
で迷ってたのだ……

唯一役柄が確定してたのは、主催兼ジョーカーのしあーん@パワポケ12秘密結社編だけっていうね……

最終話の展開は全くノープランだったしなw

700名無しロワイアル:2013/10/30(水) 01:06:21
>>698
うん。幻魔皇帝アサルトバスターが登場するシリーズが始まる際、SD製作陣にバンダイの偉い人が
「本家ガンダムの人気がSDに食われ気味だから、主人公ガンダムのモチーフに今アニメ放送してるVガンダム使うの禁止な」
という理不尽な業務命令を出した結果、主人公機の最終形態がラスボスになったという。
主人公にするなと言われただけで、モチーフにするなと言われてはいないけど思い切ったことしたもんだよ。
ちなみに実力は歴代ボスでも屈指、そして見た目は目玉が全身についてて非常にグロくてキモイ。

余談ながら、主人公ゼロガンダムのデザインモチーフはシャッコー。ウッソ少年が最初に乗ったMSだね。
ついでにV2モチーフの騎士ガンダムも後に味方側で無事に登場している。

701名無しロワイアル:2013/10/30(水) 21:30:52
>>700
ゼロガンダムってガンダムWのアレじゃないのか・・・w

702名無しロワイアル:2013/11/08(金) 11:31:20
>>701
ウイングゼロモチーフの騎士は翼の騎士ゼロと超鎧闘神ウイングだよ!
ウイングゼロよりもゼロガンダムの方がずっと先だよ!
ググれば画像はすぐに見つかるから、是非一度見て欲しい。そしてレジェンドBBを買おう(ステマ)

703名無しロワイアル:2013/11/14(木) 21:26:22
そろそろこの企画も1周年か……。

704名無しロワイアル:2013/11/14(木) 21:36:48
1周年記念に何か投下しようかな……

705名無しロワイアル:2013/11/15(金) 23:11:27
そういえばこれ年末駆け込み企画からスタートしたんだっけ……
スレなくなるような板じゃないけどまさかこの時期まで人がいるようなスレになるとは
思ってなかったんじゃよ……

706FLASHの人:2013/11/21(木) 21:57:17
せっかく一周年なのでもっとぶっ壊れた企画やろうか
名づけて
「あと3行で最終話ロワ」
とか

3行だけラスト書いて、
【○○ロワ 終了】(これは行に含めず)
みたいなの

707名無しロワイアル:2013/11/21(木) 22:06:49
「Go d b e my mas r……yo  c n ch ng thi wo ld」
レイジングハートは、最後の力で己のマスターに勝利を告げ、もう光ることはなかった。
巴マミは己の命、ソウルジェムとそのひび割れた赤い宝石を握り締めると、強く祈る。これより、世界は再生される。

【魔法少女決戦ロワ 完】

こんな感じ
いや、さすがに3行無茶だわ。
33行くらいが限界か。

708名無しロワイアル:2013/11/22(金) 18:25:10
全ての悲劇を乗り越えて、、誰かの立場に則って、語り口に挙がるのはハッピーエンド。
だから、これもまた「めでたし、めでたし」で終わるおとぎ話。
笑顔で終わる物語。それだけではなかった筈の物語。

【おとぎロワ 完】

三行だと特定作品ぶっこんだり個性出すのは無理ゲーっぽいなー

709名無しロワイアル:2013/11/23(土) 01:08:30
「人はただ、宿命に殉じるのみである!」
「貴様らの語るぬるい情や正義など、この俺が斬り捨ててくれるわ!」
「さぁ見るがいい。闇との血盟によって得た、我が激越なる真力をォ!」

【剣士ロワ主催者達の自己紹介(?) 完】
ロワを語れないならキャラに語らせればいいじゃない(混乱)

710名無しロワイアル:2013/11/23(土) 20:05:36
――クックックッ……。





――――ハッハッハッハッハッハッハッ……。





――――アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!





【木原マサキ  生還】
【スパロボキャラバトルロワイアルR 完】





空白除けば3行
Rはリスタートまたはリピーターの意、全員復活しロワの記憶を持ったままリスタート
でも大方の予想通り、やっぱりまた冥王が一人勝ちしたようで

711名無しロワイアル:2013/11/24(日) 00:19:18
0.5畳の空間で繰り広げられる死闘は、いま正に佳境を迎えていた。少年の想いが届いたカブトムシが、遂にラジコン操作の悍ましきゴキブリキメラを高々と投げ飛ばしたのだ。
今や眼前に残るのは斜向かいに住む幼なじみの少女の駆る、アシダカグモのみ。ふと、二人の視線が交錯し、誰からともなく口にした……「決着をつけよう」と。
頂点に立つのはどちらか?睨み合う最後の2匹。一陣の風が吹き……決戦の火蓋が、切って落とされなかった。二匹は、突如現れた野良猫の口の中に収まっていたのだった。


【虫ロワ:終了】
【生存個体:無し】


やっぱり3行ロワなんて無理だったよ・・・w

712名無しロワイアル:2013/11/26(火) 22:35:13
そうしてそこに溢れ返るのは、強く激しく輝き過ぎた、力や意志や言葉や歌や勇気や魂や『想い出』が、すべて砕けて爆ぜて潰え切り、神の悪夢に呑まれたが故の、ただ深く真っ白な霧だけでしかなかった。
誰からも顧みられず、観測されず、意識すらされないその場所は、もはや世界としての形を保てはせず、微かに残響する泣き声さえも、やがて消えてしまうに違いない。
そう、それはもはや、ただ忘却されるだけの、虚語<ウツロガタリ>。

【それはきっと、いつか『想い出』になるロワ Oblivion End】

おかしい
3行で完結するロワを書いていたはずなのにポエムが出来ていた

713名無しロワイアル:2013/11/27(水) 19:18:00
 
そう、これで、すべておわり。ゆめにみた、もとのせかいがひろがる。
うれしいきもちと、ごめんねがいっしょにきて。まぶたからなみだが、ほほをぬらす。
「さよならを、いわずにきょうをむかえたかったな。ひとりだけしんでしまったのは、くやしいよ…」

【五十音ロワ 完結】

しんだのはだーれだ

714名無しロワイアル:2013/11/27(水) 21:25:27
>>713
あ……!?

715名無しロワイアル:2013/11/28(木) 07:46:19
>>713
空母?級「ヲッ、ヲッ」

716名無しロワイアル:2013/12/10(火) 23:57:12
そういえば、あと3話ロワももう1年かー

717 ◆MobiusZmZg:2013/12/19(木) 23:46:07
|U∞) U◉◉) ……
……なにも文面を考えていなかったコトを小鬼@迷宮キングダムでごまかすのはよそう!
ということで、はい。自分の3話ロワを俺ロワにリファインしたので、花という名のURLを置いていきます。

 ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1387460732/

[参戦作品]
『Splendid Little B.R.(3話で完結ロワ)』
『GOD EATER BURST』『OZ −オズ−』『あかやあかしやあやかしの』
『エヌアイン完全世界』『花帰葬・花帰葬PLUS+DISC』『ラスト レムナント』
『シニカルポップ・ダンジョンシアター 迷宮キングダム』『忍術バトルRPG シノビガミ』
『ダブルクロス The 3rd Edition』『Replay: 真・女神転生TRPG 魔都東京200X』

向こうでも言ってますが、『雨時々僕たちまち君』とかいう莫迦な話を書いた時点で、
「これ企画の概要に沿うことが出来ないわ……」となっていたので、いっそ縛りを外して、
ここ二年ほど構想したりプロット固めたりしてた世界にブチ込んでしまおうと、そういう感じで。
純粋にこのスレにおける容量面での専有っぷりも気にしてたので、あのレスがいい区切りにもなりました。
感想の有無と構成とは関係ないですし、ついてこれるヤツがいない名簿でやった自分が悪いんで大丈夫です。
むしろ、なにか言うにしても文章しか褒めるコトが出来ないような物語の出来損ないを綴ってしまって、すみませんでした。

718名無しロワイアル:2013/12/20(金) 15:09:12
>>717
ムラクモがメインという俺得ホイホイなロワなので復活嬉しいです!
……けど参戦作品はエヌアインとゴッドイーターしか分かりません。悔しいなぁ……。

719 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:09:11
>>717
やった! また読めるッ! しかもオープニングから読めるッ!
楽しみにはしておりますが、御無理はなさらないでくださいな

さて、あと3話で完結ロワ企画も一周年!
記念ってことで、ひっそりとひとつ投下していきます

『それはきっと、いつか『想い出』になるロワ』エピローグです

720夢と『想い出』が交差するその日 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:12:06
 食欲を遠慮なく刺激してくる香りが、湯気と共に立ち上る。
 木造の部屋の真ん中、テーブルいっぱいに料理が並べられていた。
 酒場にも負けないほどの色々なお酒に、アランヤ村近海で獲れる新鮮な魚介類をふんだんに使った料理、更にはアーランドの食堂にでも行かないと食べられないような豪勢な料理、それに、ハニーパイ、ミルクパイ、ベジパイ、ミートパイ、おさかなパイなどなど、様々な種類のパイが所狭しと置かれたその様は、なかなかに壮観だった。
 そして、それだけの料理に負けないほどの人々が、その部屋には集まっていた。
 老若男女を問わず集った人々は皆、談笑に興じ笑い合っている。
 その部屋は、あったかさで溢れる空間だった。
 そんな、寂しさからも悲しさからも切なさからも虚しさからも切り離されたような部屋の隅っこで、トトリは、ティーカップを片手にぼんやりと佇んでいた。
 ぐるりと、人々の様子を眺めてみる。
 夢中で料理を食べ、幸せそうに笑う男の子がいる。
 自分より少し年上くらいに見える女の子が、とろけそうな顔でパイを頬張っている。
 楽しそうにお喋りをしながらも、空いた皿をてきぱきと片付けていく女性が見える。
 豪快にお酒を煽る中年女性の隣で、同じくらいの年の男性が苦笑いをしている。
 他にも、他にも、他にも、他にも、色んな人たちがいる。
 そのすべてが、なんとなく知っているような、けれどよく見ると見覚えのない、曖昧な人たちばかりだった。
 ティーカップに注がれた黒の紅茶を一口飲む。舌が溶けそうなほどの甘さに顔を顰めて、トトリは小さく息を吐いた。
「ねえ、ベアちゃん」
 呼びかける。
 すると音もなく、トトリの隣に黒衣の少女が現れた。
「この紅茶、甘すぎるよ」
「そんなことない。美味しいわ」
 小さな両手で持ったティーカップに口をつけると、ベアトリーチェは満足そうに笑ってみせた。
「ベアちゃんは子どもなんだから」
「わたし、トトリよりずっと、ずーっと、ずーーーーーーっっと長く生きてるもん」
 頬を膨らませて反論してくるベアトリーチェを、あやすようにしてぽんぽんと撫でてやる。
「こ、子ども扱いしないでくれる?」
 トトリと目を合わせずにそう言いながらも、拒絶せずに甘ったるい紅茶を啜るベアトリーチェに感じるのは、微笑ましさだった。
 ベアトリーチェの頭を撫でながら、トトリはもう一度部屋を眺める。
 不確かな人々が作り出す、仮初めいた喧騒こそが、ここが夢の世界であると物語っていた。
 だから。
 ふと、遠くから聞こえてきたノックの音に気付いたのはトトリと。
 夢現渡り鳥<アローン・ザ・ワールド>によって現着されているベアトリーチェしかいなかった。
 ここではない遠くから響くそのノックは、不確かに揺らぐこの部屋の騒々しさに比べれば小さなものだ。
 けれどそれは、確かに鳴り響く音だった。
「起きなきゃ。アトリエに誰か来たみたい」
 トトリは部屋の外に目をやって、ベアトリーチェの髪から手を離し、大きく伸びをする。
 瞬間、賑やかしさはゆっくりと遠ざかり、美味しそうな匂いが薄れていき、部屋が色を失い始める。
 ベアトリーチェが慌てて紅茶を飲み干した直後に、トトリの手にあった陶器の感触が、風に吹きさらされた砂のように消え失せた。
 渡り鳥の羽撃きが響く。
 夢から現へと渡る鳥の鳴き声が、夢を溶かし目覚めを促してくる。
 そうして消えゆく夢を。
 賑やかで、いい匂いで、あったかくてあったかくてあったかくて、堪らない夢のカタチを。
 トトリは、噛み締めるように見つめていた。

721夢と『想い出』が交差するその日 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:12:45
 ◆◆
 
 アトリエにやってきたのは、冴えないよれよれの衣服を纏った中年の男だった。
 無精髭の生えたその顔立ちは地味なものであり、特筆した特徴はない。
 だがそれだけに、男の瞳は印象強い。
 黒い瞳が、力強い輝きを湛えているのだ。
 生き生きとした輝きからは揺るぎない自信と誇りが見て取れて、それでいて、希望と挑戦を忘れない少年のようだった。
 このような瞳ができるということはきっと、心から打ち込めるものがあるということなのだろう。 
 素敵だなと、トトリは思う。同時に、羨ましいとも思う。
「凄腕の錬金術師だって有名なお前さんに、頼みたいことがあって来たんだ」
「は、はい。なんでしょう……?」
 強い熱が籠る男の声を前に、トトリは緊張を覚える。
 目立たない風貌をしながらも、これほどの情熱を持つ男の依頼が何なのか、想像がつかなかった。
「こいつらを、作って欲しい」
 不敵な笑みを浮かべ、男は一冊の分厚い本を差し出してきた。
 受け取り、表紙に記述されたタイトルを読み上げる。
「帆船解体新書……?」
「ああ、そうだ。ワクワクするだろ?」
「え? えっと、特には……」
「そ、そうか? まあ、まだ題名を見ただけだもんな。ぱらぱらっと見てみろって!」
「はあ……」
 勢いに押されるようにして表紙をめくると、見開きいっぱいに描かれていたイラストが飛び込んでくる。
 それは、波を掻き分け飛沫を上げ、大きな帆いっぱいに海風を受けて大海原を進んでゆく船だった。
 雄大で力強く、堂々としていて美しい。 
 次のページへは、進めなかった。
 ただただトトリは目を見張り、船の駆動音さえ聞こえてきそうなイラストに釘づけになっていた。
 知っている。
 トトリは、この船を、知っている。

 これは。
 この船は。
 顔も名前も憶えていない父が残してくれた船と、瓜二つなのであった。 

「ほら、どうだ! すげーだろ!」
 宝物を見せびらかす子供のように得意げな男の声に、トトリは顔を上げる。
「……船を、造るんですか?」
「ああ、そうだ。といっても、組み立ては俺がやる。お前さんに頼みたいのは船の材料作りだ」
 言って、男はトトリの手にある本のページをめくっていく。
 超重碇、動力操縦桿、百木船体、疾風の帆、防食甲板、神秘の船首像。
 それらの錬金レシピが、詳細なイラスト付きで書き記されていた。
 初めて見るレシピだった。錬金素材にも、知らないものもいくつかある。
 作ったことが、あるはずがない。
 それでも、それなのに、どうしてか。
 深くて深くて深くて、目の届かない心の水底で、正体のわからない何かが、ざわついた気がした。
 何一つ得体のしれないまま浮かび上がってくるそのざわつきは、漂流物を運ぶさざ波のように、トトリの心に何かを届けてくる。
 それが何かは分からない。
 分からないが、それは、楽しい夢を見た覚えはあるのに、内容が思い出せないときのような感覚に似ていた。
 だからきっと。
 この何かは、逃してしまったら、夢の彼方で弾けてしまい、二度と掴めなくなるもののように感じられた。
 逃したくないと、そう思った。 

「採取できる素材は冒険者に依頼して集めてもらうつもりだ。そんで、報酬なんだが――」
「お引き受けします」
 男の言葉を遮って、トトリは、食らい付くようにして返答していた。
 面食らったような男の前に、冒険者免許を見せつける。
「素材集めもわたしにやらせてください。最高品質の材料をご提供します」
 断言すると、男は口の端を吊り上げ、愉快そうにひとしきり笑ってから。
 真っ直ぐに右手を差し出してきたのだった。
 
「自己紹介がまだだったな。俺はグイード。船大工をやってる。宜しく頼むぜ」

722夢と『想い出』が交差するその日 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:13:58
 ◆◆
 
 ぱたん、と音を立てて扉が閉じる。
 諸々の打合せを終えて帰ったグイードの姿を、トトリは首を傾げて腕を組み、思い起こしていた。
「あの人、さっきの夢の中で、見たような……見てない、ような……やっぱり見たような……」
 あのあったかい夢を作っていた人たちの中に、グイードの姿もあったような気がする。
 だからだろうか。
 初めて会った人だというのに、もっと前から知っていたように思えて仕方がなかった。
「グイードさん、グイードさん……」
 落とし物を探して道を歩くように、トトリはその名前を呟く。
 そうやって名を呼ぶことに、奇妙な違和感があった。
 もっと別の呼び方があるはずだと、根拠もなく感じる。
 もっとずっと、親しみのある呼び方があるに違いないと、なんとなくながら思ってしまう。
 その呼び方を知りたかった。
 その呼び方を知らないということが、何故かとても、とても寂しかった。
 だからトトリは、ふわふわとして定まらない感覚に触れる。
 そうして撫でて、捏ねて、混ぜて、探る。
 けれどカタチを作れない。言葉を生み出せない。
 それどころか、考えれば考えるほど遠ざかってしまう。
 親しみのある呼び方など、最初から存在してなどいないというように。
 親しいものなどいるはずがないだろうと、改めて思い出させるように。
 手の届かないところへ、行ってしまう。

 胸の奥が――空白に詰め込まれた世界が、苦しみを訴えた。
 視界が揺らめき、足元がふらつく。
 呼吸が上手くできなくなり、頭の中を掻き回されるような不快感が襲ってくる。
 急速に、現実と夢の境界線が薄れていく。
 わからなくなる。
 現実なのか夢なのか、わからなくなる。
 トトリの意識<現実>と集合的無意識<夢>の境目が、わからなくなっていく。
 目が霞む。
 知らない光景が意識に溢れる。膨大な情報量がトトリを呑み込むべく流れ込む。
 その、瞬間。
 胸のあたりに、熱を感じた。腰に回される、力を感じた。
 それは、確かな温もりだった。
「トトリッ!」
 それは、紛れもない呼び声だった。
 それらによって、トトリは引っ張り上げられて浮上する。
 足裏は床に触れている。
 様々な薬品の臭いが鼻をつく。 
 視線を、ゆっくりと温もりへと向ける。
 ベアトリーチェの頭が、目に入った。
 トトリを強く抱き締めてくれているベアトリーチェが、目に入った。
「ベアちゃん……」
 呼ぶと、ベアトリーチェが弾かれたように顔を上げた。
「トトリ! トトリッ! 大丈夫!?」
 ベアトリーチェは、不安と心配を調合したかのような表情をしていた。
 だからトトリは、笑ってみせる。
 大丈夫だよと、ありがとうと、そう告げるために笑顔を見せる。

 そうやって表情を変えて、初めて気付く。
 涙が溢れ、頬を伝っていることに、だ。
 けれどトトリは、それを拭おうとはしなかった。
 そうして泣いたまま、トトリはベアトリーチェをぎゅっと抱き締め返す。
 今は、ここにある小さな温もりを感じていたかった。
 引っかかったままの違和感も、思い出せない寂しさも、消えてなんていないけど。
 だからこそ、今は。
 今だけは。
 確かなあったかさを、確かなこの場所で、感じていたかったのだった。

723 ◆6XQgLQ9rNg:2013/12/29(日) 23:14:31
以上、投下終了です
それでは、よいお年を

724 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/12/30(月) 21:51:59
想い出ロワのエピ投下来たぁぁ!! 乙です!
トトリとベアトの微笑ましいやり取りと、原作知らなくとも伝わって来るグイードとの悲しいすれ違い、
どちらも素晴らしいです。原作をやる時間を捻出しなくちゃ……!


やろうかどうか悩んでましたが、あと3話詐欺(褒め言葉)の復活、今回のエピ投下など、自分もいても立ってもいられなくなりました。
というわけで、新しい後3話のテンプレを投下いたします。
ちなみにこれは数カ月前に
曹操「剣士ロワには足りぬものがあった。それは女っ気! あと余の活躍」
という天啓を授かってから妄想していたものです。剣士ロワと違って悩みまくり。

【ロワ名】いのちロワ(仮) タイトル絶賛募集中
【生存者6名】
1.アマテラス@大神
2.劉備ガンダム@SDガンダム三国伝:左腕損失、失血多量
3.リチュア・アバンス@遊戯王OCGデュエルターミナル:ラストマーダー
4.暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG:フラッシュバックによる無力化の可能性
5.クローネ@ファントム・ブレイブ
6.Ⅳ@遊戯王ZEXAL :生死不明。何処かで野垂れ死んでいる可能性。
【主催者】
1.ミヒャエル・ハードバーグ@漫画版エレメントハンター
2.バグラモン@漫画版デジモンクロスウォーズ
3.ゾーン@遊戯王5D’s:死亡
4.フェイト(ダークセルジュ)@クロノクロス
5.無限法師@武者○伝シリーズ
【主催者の目的】
・膿み腐る心、人間に醜さを強いる人間の生物としての限界を超越する為、人間に新たなる進化を促す、
或いは新たなる生物へと新生させること。バトルロワイアルはその実験の為のプログラムとされる。
・現在、居ても立ってもいられなくなったフェイトが絶賛暴走中。
【補足】
・ロワ中に数名が別次元(11次元宇宙とされる)へと旅立って消息不明になっています。ゲッターの導きではないのであしからず。
・融合や進化に関するアイテムが大量に登場し、それらによって多くのパワーアップ・暴走イベントが発生。ラストマーダーもそんな感じ。
・曹操将軍の活躍? あと3話より前にちゃんとありましたよ。

ミヒャエルと無限法師を知っている人は僕と握手!

725 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:28:28
いのちロワの投下を始めます。

726第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:30:41
 進むべき未来の消え失せた――生物はおろか時すらも死んでしまった海、死海。
 その中心部に聳え立つ滅びの塔の頂上、バトルロワイアル・プログラムを画策した主催者の本陣に、2人の男が静かに佇んでいた。
 皇帝バグラモンとミヒャエル・ハードバーグ。世界の未来と人の種としての限界を憂い、深く世界を愛すればこそ非情の決断を為し、今回のプログラムを画策した中心人物。
 もう1人の同志、行き過ぎた進化の果てに滅びた未来に生き残った最後の一人【Z-ONE】、ゾーンは彼らとは違った。
 彼は、バトルロワイアルを見守る中で心の奥底で信じ続けていた希望を確信し、突如として反旗を翻し、バグラモンとミヒャエルを討たんとした。
 だが、パートナーを得たバグラモンと自らが率先して人類進化の魁とならんと既に人間を捨てていたミヒャエルを相手に、寿命の迫った体では力及ばずに斃れた。
 それでもゾーンは死の直前に最後の手を打ち、死海の門を開き、バトルロワイアルを生き残った参加者達を導くためのプログラムを起動させた。
 ゾーンの最後の行動を阻止することは不可能ではなかった。だが、敢えてバグラモンとミヒャエルはそうしなかった。
 誰よりも長い年月を絶望との戦いに費やした名も無き英雄に対する敬意の表れであると同時に、彼らの最後の迷いを断ち切る答えを得る為に。
 その答えを持つ者が、もうじき現れる。

727第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:33:39



 滅びの塔の入り口付近で、参加者同士での最後となる戦いが始まっていた。
 劉備によって率いられた一行の前に立ちはだかるのは、最早人としてのかつての面影を何一つとして残していない、異形の怪物と成り果てたもの。
 それは、リチュア・アバンスという名の青年だったもの。
 最愛の女性を失った悲しみから心の闇を暴走させ、獣へと堕した今の名はイビリチュア・リヴァイアニマと、本来ならそう呼ばれるべきだった。
 だが今の彼は、最早そうとすらも呼べない存在になっていた。
 様々なモノが融け合い、ぶくぶくと肥大化したどす黒い体に、イビリチュア・リヴァイアニマの顔が生え、反対側には魔剣シヴァと一体化した尾が生えていた。
 ヘドロが凝固したような醜悪な肉体を、背に当たると思しき部分から生やした9対の翼を羽ばたかせることすら無く浮遊する様は、生物と形容することさえも憚らせた。
 力を得て、勝利を奪い取る為に、アバンスは超融合のカードとダークネスローダーの力を使って、ありとあらゆるものを自分自身に取り込み続けた。
 リチュアの儀水鏡と写魂鏡に始まり、魔剣シヴァ、ジェムナイトたちのコア、ナンバーズのカード、モーメント、暗黒玉璽、龍の涙、シンフォギア『ガングニール』と『神獣鏡』、全ての武化舞可の鎧、
 シャウトモンを始めとする多くのデジモン達、ポジ元素、妖魔王キュウビの仮面、そしてヴェルズ・ケルキオンを殺して奪い取った氷結界の三龍のコア……枚挙に切りが無いほど、膨大に、貪欲に。
 ありとあらゆる物を奪い取り、自らの力とした。ある時は騙し、ある時は不意を討ち、ある時は正面から、ある時は戦いの後に漁夫の利を狙って。
 無様にもなった。汚くもなった。嘗ての仲間から痛罵を浴びせられたこともあった。だが、それでも立ち止まることはしなかった。
 たった一つの願いを、叶える為に。
 何もかもを擲ってでも、何もかもを奪い取ってでも抱き続けた、決して忘れることの無かった、切なる願い。
 ――死んでも、君を救いたい――
「エ、ミリ、ア……」
 最早人のものとは掛け離れた体構造と成り果てた肉体で、アバンスだった怪物は人の言葉を絞り出した。
 それを聞いて、アバンスを知る数少ない1人であるマローネが悲痛な叫び声を上げた。
「もうやめて下さい、アバンスさん! エミリアは、貴方がこんなことをすることを望んでなんかいません!」
 マローネはリチュア・エミリアとバトルロワイアルの初期に出会い、力を合わせて生きて帰ろうと約束した。
 マローネにとってエミリアは、生まれて初めてできた大切な友達だった。幼馴染であり恋人でもあるアバンスとの再会が叶った時は、マローネも心から喜んだ。
 だが、エミリアが妖魔王キュウビの凶刃に斃れ、続いて現れたタクティモンに手も足も出ず逃げることしかできなかった。
 それらの出来事が、アバンスを狂わせてしまった。

728名無しロワイアル:2014/01/16(木) 00:37:42
「ア、バ……? だれ…………??」
 しかし、エミリアの親友の言葉も、今や届かない。
 最早アバンスは、自分の名前はおろか、自分が元々は人間だったことすらも忘れてしまっていた。
 アバンスだった怪物の発した声に、マローネと切歌は悲しみのあまり声を失う。
 その瞬間に生じた隙に振り下ろされた魔剣シヴァを、大神アマテラスの沖津鏡が盾となって防ぎ、劉備が隻腕のまま斬って掛かる。
「忘れるな! 思い出せ! お前はリチュア・アバンス! 俺達の、友だああああああ!!」
 タクティモンに襲われたマローネとアバンスを、絶体絶命の窮地から救ったのが劉備だった。
 劉備はアバンスの心の傷の深さを見抜けず、彼が心の闇に呑み込まれてしまうのを引き止められなかったことを、ずっと悔いていた。
 しかし、劉備とアバンスが共にいた時間も交わした言葉は決して多くない、むしろ少ないくらいだ。
 それでも劉備がアバンスを友と呼ぶのは、彼が元々懐いていた志を聞いていればこそ。
 戦乱で荒れ果てた世界に、2人の母から授かった知識を教え広めて復興の礎となり、人々が笑顔で暮らせる明日を作ること。
 その志は劉備と同じものであり、確かにあの時2人は同じ志を共有する友となれた。そのはずだったのだ。
「ジゃ、ぁ、マぁアアアア!!」
 アバンスだった怪物には、もう劉備の声も届かない。それどころか、事態は急速に悪化する。
 怪物の体から突如として3つの首が現れ、劉備に襲いかかったのだ。
 劉備は咄嗟にかわそうとするも、隻腕となり重心が変化してしまった体では、以前のような身のこなしは出来ず。
「ぐわああああああ!!」
 回避を損ない無防備を晒した劉備の体に、三ツ首の龍の牙が突き立てられる。それに続いて更に2頭の龍の首が生えた。
「劉備さん!」
「劉備!」
 マローネと切歌が悲痛な叫びを上げると、まるでそれを見計らったかのように、更なる龍の牙が劉備に襲いかかった。
 現れた龍の名はトリシューラ、グングニール、ブリューナク。
 ケルキオンによって闇とヴェルズの呪縛から解き放たれたはずの氷結界の三龍。彼らは今、再び闇へと堕ちてしまっていた。
 ヴェルズ化との違いがあるとすれば、それぞれの龍の顔に今はキュウビの仮面が憑いていることだ。
 これこそは、妖魔王キュウビの呪い。
 暴走したアバンスによって逆襲されたキュウビは、自らも取り込まれることを悟るや、その妖力の全てを自らの仮面に封じ込め、アバンスに呪いを掛けた。
 より深く、より暗く、闇の深淵へと堕ち、地獄の底でのた打ち回るように。
 かくしてキュウビの呪いは今この時に実を結び、アバンスが無作為に取りこみ続けた闇の力をも取り込み、増幅していく。
 この上龍帝の魂をも喰らい闇に染めてしまえば、その時は妖魔王の復活もあり得るだろう。

729第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:47:53
 だが、天を翔ける龍は、この程度では落ちない。
「アマテラス! 切歌! マローネ! 今だああああああ!!」
 5頭の龍に貪られながら、劉備は龍帝の力を発揮し、自分諸共にアバンスの魂を蝕もうとする邪悪なる闇の力に拮抗する。
 命など惜しくは無い。友を救う為ならば、命を擲つ覚悟など疾うに済ませている。
 闇に染まったアバンスと氷龍たちは強烈な光の力に苦悶の呻き声を流すが、同時に龍達の目から一筋の涙が伝った。
 劉備には、三龍達の声にならぬ慟哭が、言葉にならぬ嘆きが、ひしひしと伝わって来た。
 あり余る力を利用され、その力故に利用され続け。心も体も侵され、蹂躙され、凌辱され、氷龍たちは泣いていた。邪悪からの解放を願って、ただただ祈り続けていた。
 はっきりと分かる、この龍達もまた、同じ世界に生きる命。劉備が手を差し伸べるべき民なのだと。
 ならばこそ、尚更この命を懸ける意味があるというもの!
 劉備の心に応えるように、アマテラスが草薙の剣と一閃の筆しらべを翻してグングニールとブリューナクの首を落とす。
 残るトリシューラの三ツ首は1つを残して狙いを劉備からアマテラスに変えたが、そこへ切歌の一撃が割って入る。
「堕悪馬吸夢、発射デェース!」
 厳密に言うとそれは発射するものではなく吸収するものだが、そんなことは些細なことだ。
 堕悪馬吸夢(ダークバキューム)は対象の肉体すらもエネルギーに変換して吸収する装置。
 これを利用してアバンスが吸収した様々なものをエネルギーとして可能な限り吸い取り、弱体化させる。これこそが後に続く秘策の為の大前提であった。
 エネルギーを吸い取られ、怪物の膨れ上がった醜悪な姿が次第に小さくなっていく。
 だが、怪物が吸収していたエネルギーの総量は桁外れで、全てを吸収し尽くす前に堕悪馬吸夢の容量の限界に達してしまった。しかし、これで十分。
 怪物が力を奪われ戸惑っている隙に、切歌は続けて一枚のカードを取り出す。
「更に速効魔法『融合解除』、発動デス!」
 これこそが、アバンスを救う為の秘策の第一手。
 アバンスが行った吸収はダークネスローダーを媒介として制御された超融合の力によるもの。
 故に、この融合解除によって取りこんだものを強制分離できるのではないか――蒼沼キリハと遊城十代が遺してくれた希望は、彼らの思い描いた通りの結果を導き出した。
 怪物が取り込んだ諸々が混然一体となったカオスは四散し、本体のイビリチュア・リヴァイアニマの姿が露わになった。
 リヴァイアニマは血走った眼で力を奪った張本人である切歌を睨み、魔剣シヴァを手に彼女に襲いかかる。
 刹那、割って入ったアマテラスの沖津鏡の盾がそれを遮り、続けざまに放たれた神業・イズナ落としによって死海の波間に叩きつけられる。
 この間に、最後の一手をマローネが執り行う。
「彷徨える魂よ、導きに従い現れ出でよ! 奇跡の能力、シャルトルーズ!」
 物質を媒介として、霊魂に仮初の肉体を与える、正しく奇跡の能力。その担い手たるマローネがいるからこそ、この策は成り立った。
 アバンスの救済の願いと共に託されたケルキオンの杖を強く握りしめ、マローネはリチュアの写魂鏡に期せずして閉じ込められてしまった魂――リチュア・エミリアのスピリット体に働きかける。
 今やエミリアのスピリット体は他者に姿を見せられないほどに衰弱している。しかし、マローネのシャルトルーズならば今一度、彼女に仮初の体を与えることができる。
 エミリアとアバンスを、もう1度会わせることができる。

730第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:50:48
 ここで更に大神アマテラスの尾先が翻り、イビリチュア・リヴァイアニマを包む大きな○を描いた。
 2対の鳳凰が認めアマテラスも共感した真の理想を掲げたワカ武者の、その御旗に記された紋様と同じ。日輪と同じ形を描く、命の力を司る桜花の筆しらべ。
 桜花の筆しらべの隠された効果も作用し、力を失っていたリヴァイアニマはそれを拒絶することも無く受け入れて、リチュア・アバンスの姿へと戻った。
 アバンスは突如として儀式の効力が覆されたこと、失われていた理性が急に取り戻されたこと、吸収していた莫大な力が一挙に抜け出た反動で昏倒したが、すぐに意識を取り戻した。
 すぐ傍に、懐かしい魔力を、温かさを感じたから。
「エミリア……?!」
「アバンス」
 互いに名を呼び合い、一方は驚愕に目を瞠り、一方は穏やかな笑みを浮かべた。
 お互いに、もう2度と会えないと、言葉を交わすことは出来ないと諦めていた最愛の人に、名を呼ばれた、名を呼べた。
 これだけでも2人は、2人を見守る者達は感無量だった。
「俺は……」
 しかし、アバンスはそんな感慨には耽ることは出来なかった。
 朦朧とした意識が、却って偽らざる本心を、素直に吐き出させる。
「君を、守りたかった、救いたかった。その為なら、俺の命なんか……いらないのに…………」
 滂沱の涙を流しながら、アバンスは後悔に塗れた言霊を吐いた。その相貌に浮かぶのは、悲哀と自責。
 愛する人を救えなかったことに対する後悔だけが、アバンスをここまで突き動かしていた。
 同時に、理性を取り戻したことで自分を襲った悲劇に耐えられず、その怒りと悲しみを殺戮という最悪の形で無関係の大勢にぶつけてしまったことへの自責の念が、どうしようもなくなってしまった今になって胸を貫く。
 アバンスの口は更に言葉を紡ごうとするが、それ以上は声が出せず、涙を流しながら、餌を求めるひな鳥のようにぱくぱくと口を動かすしかできなかった。
 そんなアバンスの姿を見て、エミリアは柔らかに微笑んだ。
「なら、私からのお願い。私の分も生きて、アバンス」
 あの時に伝えられなかった、大切な人への切なる願い。それを伝えることだけが、エミリアに残された心残りだった。
 同時に、エミリアの姿が薄らぎ、消え始めた。
 シャルトルーズには元々時間制限があるのだが、こんなに早くない。エミリア自身の魂が限界を迎えつつあるのだ。
「エミリア!!」
 アバンスは無我夢中で、消え行くエミリアを抱き締めた。
 力強くも優しく、しっかりと、二度とこの温もりを忘れない為に。彼女が最期に、温もりを感じていられるように。
 エミリアは涙を流しながらも笑顔のままでアバンスを抱きしめ、愛しい人の腕の中で消えて行った。
 誰もいなくなった腕を解いて、アバンスは涙を拭い、泣くのをやめた。最愛の人から託された願いのためにも、泣いている暇などもう無いのだ。

731第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 00:54:11
「アバンス、エミリア……よかった」
 アバンスが立ち直り、エミリアが笑顔で逝けたことを見届けた劉備は、その場に崩れ落ちた。
 龍の牙に貫かれた部分だけでなく、応急処置で止血していた腕の断面からも夥しい量の血が溢れ出て来た。
「劉備!」
「劉備さん、しっかりして下さい!」
 切歌とマローネが駆け寄るが、劉備は荒い呼吸を繰り返すだけで応えることもできない。
 どれだけ傷つこうとも、如何なる困難や強敵に直面しようとも。
 先陣に立って戦い続け、仲間達を導いて来た侠の今にも息絶えてしまいそうな姿は、今まで一瞬たりとも想像していなかった。出来るはずもなかった。
 マローネと切歌は、すぐさま支給品から回復用のエレメントを取り出し、発動させる。
 瀕死の状態から復活させるリカバー、仲間全員の傷を癒すケアルガやヒールウィンドなど、ありったけを使った。
 しかし、劉備は一向に目を覚まさず、傷口からはとめどなく血が溢れて来る。
「どうしよう……血が、血が止まらないデス……ッ」
 それが意味するのは、治癒の魔法やエレメントが通じないほどの状態であり。
 劉備の命は死の運命を覆せない瀬戸際にあることを意味していた。
「俺は……俺は、なんてことを……!」
 全体回復のエレメントの効果の恩恵で傷が癒えたアバンスは、そのことで却って心に傷を負った。
 自分を救おうと、誰よりも必死になってくれた、己の命さえも顧みずに戦ってくれた友の命を、自分が奪ってしまった。
 エミリアの時と同じかそれ以上の自責の念がアバンスを襲うが、もう自暴自棄になることは無い。
 寧ろ努めて冷静に、劉備を救う為の術を見つける為に考えを巡らせていた。
 そこで、ふとある物が目に入った。
 まるで劉備に寄り添うように転がっている4つの珠――氷結界の三龍のコアと秘宝・龍の涙が。
 加えて、自分の腰にはキュウビから奪い返した、ジェムナイトの融合の力の結晶であるマスター・ダイヤの剣が進化した戦友セイクリッド・ソンブレスの短剣がある。
 そして、手にはエミリアが遺したリチュアの写魂鏡、傍らにはケルキオンの二つの杖の内リチュアの儀水鏡が変化した杖もある。
 これらの力を、全て合わせることができれば。
 アバンスが一縷の望みを見出した、その時。
 頭上から、更なる絶望を告げる声が響いた。

732名無しロワイアル:2014/01/16(木) 00:57:47
「深く、黒く、愛に血を流す……素晴らしい戦いだったよ。だが、残念だな。あんなにも美しい憎しみが、完全に掻き消えてしまったとは」
 滅びの塔への門、巨大な黄金と白銀の梟の像の間にある柱の上に、声の主は立っていた。
 身の丈ほどの大鎌を軽々と振り回す、少年の面差しを残した魔人フェイト。その傍らには、蒼い鎧装束に身を包んだ錬金術師・無限法師の姿もあった。
「お前は……フェイト!」
「それに、無限法師か」
 切歌とアバンスはそれぞれに怒りを籠らせた声で、忌々しい2人の主催者の名を呼ぶ。
 特にこの2人の声は放送の度に幾度となく聞かされていたのだから、殊更に討つべき敵として記憶に刻まれている。
 マローネは一言も発さなかったが、このバトルロワイアルで最初に手を差し伸べてくれたヤマネコの亜人――セルジュの本当の体を、そして一番大切な女性を奪ったというフェイトに対して、静かに怒りを燃やしていた。
 アマテラスは早くも臨戦態勢となって2人の魔人を威嚇しているが、フェイトは自分に向けられる怒りや敵意を全て受け止めた上で、全員を睥睨しているようにも、誰も目に入れず虚空を見ているようにも思えた。
「この世で唯一純粋なものは憎しみだけだ。だからこそ、心が憎しみに染まりきった姿は、憎しみが広まっていくその様は、とても美しかった」
 唐突に始まった、フェイトの狂った価値観と美意識の吐露に、無限法師以外の全員が困惑する。
 そんなことはお構いなしに、フェイトは焦点を眼下のアバンスに合わせて、続く言葉を紡ぎ出す。
「リチュア・アバンス。お前がその憎しみでガンダムを……劉備をも取り込むことを期待していた。とても残念だよ」
「超融合のカードとダークネスローダーは返してもらおうか」
 恍惚とした表情で語り続けるフェイトを尻目に、無限法師は淡々と事を進め、目的の物を回収する。
 十代とキリハから必ず取り戻すように言われていた2つの重要アイテムを先んじて回収されてしまったのだが、そこまでは頭が回らず、マローネは感情を吐き出した。
「あなたたちは……一体、何者です!? どうして、こんな酷いことをするんですか!」
 怒りと悲しみ、そして純粋な疑念が織り混ざった問い掛け。
 これにアマテラスも切歌もアバンスも、無言の視線で以って同様の問いをフェイトと無限法師に投げ掛ける。
 事実、このバトルロワイアルを主催した5人を知る参加者は、彼らが放ったジョーカーを除いて、彼らの思惑や真意を全くと言っていいほど知らなかった。
 何故、どうして、なんのために、なにがあって、こんな殺し合いに自分達を、様々な世界や時代から100人もの参加者を集めて殺し合わせたのか。
 バトルロワイアルに関する最大の謎の答えが得られるかもしれない。
 そんな予想から来る緊張感は、フェイトからの返答によって一瞬で吹き飛んだ。
「私は、お前達を……人間を愛している。狂おしいほどに、狂わずにはいられないほどに。だから、私は……お前達と、一つになりたい。その為に、このプログラムが必要だったのだ」
 身の毛もよだつ思いというものを、3人は初めて実感した。
 フェイトの声色は優しく、言葉にも慈愛が込められていることがよく分かった。
 だが、爛々と輝く瞳と恍惚とした面貌には、狂気の二字以外に見出せない。
 切歌が勇気を振り絞って何故そこで愛なのかと言い返そうとしても、口を動かせなかった。

733名無しロワイアル:2014/01/16(木) 01:02:04
 いや、それだけではない。瞼も、眼球も、指の一本さえも、動かせない。
(なん、だ……。体が、動か、ない……!?)
(い、息も、できな、い……っ)
(ど、どうなってる、デスかっ……!)
 自らの体を襲った異変に、3人のみならずアマテラスさえも吐息を一つ絞り出すことさえできなかった。
 不意に、アマテラス達の視界に巨大な翼が現れた。機械仕掛けの梟の翼が。
 フェイトと無限法師の両脇に控えていた、黄金と白銀の魔神像が動き出したのだ。
 それこそは、カムイの國を永久の氷壁に包みこまんとした双子の魔神。
 錬金術師たちの狂気が生み出した、禁忌の力の結晶。
「ホーッホッホッホッホウ。如何かな? 我ら時操衆の最高傑作、双魔神モシレチク・コタネチクの時操術は」
 無限法師は声高らかに、静止した時間の中で自らの力を誇る。
 時操衆から別れた、積極的に時操術を操り全てを支配せんと企んだ一派、時攻流の最後の生き残りとして、この喜悦に浸らずにはいられないとばかりに。
 正真正銘の神すらも縛る自らの力に、無限法師は酔いしれていた。
「無限法師」
 無粋な横槍によって愛の語らいに水を差されたフェイトが、ギロリと無限法師を睨みつける。
 フェイトもまた時空間を超越する力の持ち主故に、平然と双魔神の時操術を撥ね退けていたのだ。
「案ずるな、お前の夢は錬金術師の私としても非常に興味深い。素材は残すさ」
 それだけ言って、無限法師は自らの屍鬼力とした双魔神を標的へと差し向ける。
 白銀魔神コタネチクは翼を羽ばたかせて劉備の下へと向かい。
 黄金魔神モシレチクは死海の波間を独特の歩き方で進み、アマテラスへと迫る。
 切歌が、マローネが、アバンスが、声に出せないまま絶叫を上げる。
 しかし双魔神の凶刃は、無慈悲に劉備とアマテラスへと振り下ろされた――。



「バグラモン。どうやら、彼が間に合ったようだ」
「そうか。さて……希望は絶望に相克しうるのか、見届けようか」



734第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 01:07:40

「この世は単純な一面だけじゃない、複雑な側面を併せ持つ多面体だ。時にその面(ボックス)の構成は、遠近感や距離感を狂わせる仕掛け(ギミック)となる」
 唐突に、静止した世界に青年の声が割って入った。
 その世界を作り出している双魔神達はと言えば、確かに仕留めた――否、そこにいたはずの標的へと放った攻撃が、見当違いの場所に突き刺さっていることに首を傾げていた。
 すると、どこからか、不気味な笑い声が響きだした。
 その笑い声の出所は、双魔神を欺いた機械仕掛けの多面体。
「永続罠、ギミック・ボックス」
 同時に双魔神へと襲いかかる、赤と白の獣の影。
 これによって双魔神の魔術は解かれ、時は再び正常に刻まれる。
「……ふえ?」
 双魔神の魔術から解き放たれてすぐ、切歌は意気を整えるより先に素っ頓狂な声を出してしまった。
 今、目の前で起こったことへの理解が追いつかない。
 劉備とアマテラスを助けたカードに見覚えがあるし、なによりそれを操る声の主にも聞き覚えがあった。
 だが、彼は死海へと突入する際に、死の門の番人アポリアと相討ちになってしまった、そのはずなのだ。
 しかし、彼以外の誰がいよう。これらのカードを巧みに操る決闘者が、ファンの窮地に颯爽と現れるスターが。
「なんだよ、切歌。忘れちまったのか? お前の歌の、一番のファンの顔を!」
 何時の間にやら登っていた滅びの塔周辺に点在する柱の中でも最も高い所から、高らかな宣言と共に1人の決闘者が降り立った。
「Ⅳさん……ホントに、Ⅳさんデスか!?」
 喜びよりも驚きの方が先に立った切歌からの呼び掛けに、Ⅳは笑みだけ浮かべて軽く答える。今は、再会を喜んでいる余裕は無い。
「話は後だ。俺のファン達に随分なことをしてくれたみたいじゃねぇか」
「バカな!? 大神をも縛る双魔神の魔術を、何故人間ごときが……!?」
「ナンバーズを持つ者は、時間操作の類の影響を受けません。悔しいでしょうねぇ」
 絶対の自信を持っていた双魔神の魔術が人間に破られたことに、無限法師は驚愕を露わにした。
 その醜態を、Ⅳはわざとらしい煽り口調と共に鼻で笑って挑発した。
「ファンサービスはしなくていいのか? 希望を与え、それを奪う男よ」
 屈辱にわなわなと肩を震わす無限法師を余所に、今度はフェイトが嘲笑混じりにⅣへと問い掛ける。
 フェイトはその素性も相俟って、全ての参加者の詳細なプロフィールを把握し管理している。
 だからこそ、Ⅳが今と最も掛け離れていた時期を引き合いに出し、動揺を誘う。
 しかしⅣは、これすらも一笑に附してみせた。
「そういう時もあったさ、確かにな。だが、今はそういうわけじゃないのさ。さぁ、切歌! 俺からのファンサービスだ、受け取れぇ!!」
 Ⅳからのファンサービスという号令を受け取って、先程の赤と白の獣が、切歌の前へと現れた。
「ゾナ!」
「ブオー!」
「な、なんデスかこれー!?」
 ……それらは、獣ではあるのだが、本当に獣なのか疑わしいものだった。そもそも鳴き声からしておかしい。
 ふくよかで全体的に丸みを帯びた外見は、赤い鳥と白い牛のぬいぐるみや着ぐるみのようだった。
「ゾナーとブオーだ。切歌、こいつらを使え」
「け、けど、牛と鳥で、私はどうすればいいんデスか!?」

735第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 01:11:30
「アマテラス、あの双魔神には残る3種の神器とお前の分神が1つずつ封じられている。何としても取り戻せ」
「無視デスか!?」
 Ⅳはさも当たり前のように、何の説明も無しに赤い鳥のゾナーと白い牛のブオーを切歌に託し、切歌の抗議を無視してアマテラスにとって最も重要な情報を伝えた。
 アマテラスの残る分神は2つ、幽神と凍神のみ。そしてアマテラスの三種の神器、天叢雲剣と八尺瓊勾玉はそれぞれ雷と氷の力を帯びたもので、双魔神の特徴とも一致するものだった。
 それらの情報は、敵が強大な力を司る凶報であると同時に、アマテラスが全ての力を取り戻すことが不可能ではないという吉報でもあった。
「Ⅳさん、どこでそんな情報を?」
 参加者の身分では決して知りえない主催者側の内部情報。その出所が不思議になって、マローネは切迫した状況ではあるが出所を問わずにはいられなかった。
「Z−ONE……。やはり、裏切ったか」
 するとマローネの問いに代わって答える形で、フェイトが納得したように呟いた。
 自分と同じく、遥かなる時間をかけて人類を見守り、破滅を超えたより良き未来へ導く為に人類の運命を定め、神とも呼ばれた最後の一人。
 彼の人類への愛はフェイトとは似て非なる物であり、いずれ彼が離反し自分達に刃を向けることは予見していた。
 しかしそれもまた運命であればこそ、同じく運命を知るバグラモンもフェイト共々その意志と結末を祝福した。
「奴らも一枚岩じゃなかったのさ。劉備、アバンス、怪我人は大人しく寝てろ。心配しなくても、俺のファンサービスはばっちり見せてやるからよぉ!」
 2体のギミック・ボックスを双魔神と対峙させ、全員を鼓舞するようにⅣが叫ぶ。敬愛する父をその手に掛けた、アバンスに対してさえも。
 Ⅳの父、トロンはⅣとは異なる時間軸から招聘されたが故に主催者のジョーカーとしてバトルロワイアルに参画し、10人を超える参加者をその奸智と実力で以って葬り去った。
 だが、Ⅳの決死のデュエルによって彼に憑り付いていた復讐と憎悪は祓われ、分かり合うことが出来た。
 その少し後、心の整理の為にと1人になっていたトロンを、アバンスは殺した。彼の紋章の力と強大なナンバーズを奪う為に。
 Ⅳはこのバトルロワイアルによって家族を全て奪われ、友すらも失った。
 それでも、決して自分を見失わず、怒りや悲しみを他者に当たり散らそうとしない。
 アバンスには、礼の言葉を言うことすら憚られた。
「……ああ、そうさせてもらう。みんな、劉備は……俺に任せてくれないか?」
 だから、行動で示す。ケジメと、覚悟を。
 誰もアバンスの案に異を唱える者はおらず、劉備の命運は託された。
 一方、ゾナーとブオーに懐かれたのはいいものの、どうしたものか戸惑っている切歌を残し、2人と大神は主催者たちと対峙する。

736第298話『運命に囚われし者たち/運命に挑みし者たち』 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 01:16:04
「お師匠様、シェンナさん、セルジュさん、アバンスさん、エミリア……皆さんの運命を狂わせた、仇……。許しません」
 霊剣スカーレットを強く握りしめて、マローネはフェイトを睨んだ。
 イヴォワール九つ剣の1人、大剣士スプラウトは家族を失い天涯孤独となったマローネを助け、生き抜く為の力と戦い方を教えてくれた大切な師匠。
 シェンナは悪霊憑きと忌み嫌われ万人から罵声を浴びせられていたマローネを唯一受け入れ、分け隔てなく接し、住む場所をくれた大切な恩人。
 セルジュはバトルロワイアルという極限の状況下で手を差し伸べ、助けてくれた大切な仲間。
 エミリアとアバンスについては、最早言うに及ぶまい。
 彼らの全てを狂わせたフェイト達は、マローネにとって間違いなく倒すべき敵だった。
 主催者全員を師匠仕込みの剣術、セルジュから譲り受けたシェンナの剣で討つことに寸毫の迷いも無い。
 そんな風に気を張っていたマローネの肩を、Ⅳが軽く叩いた。
「憎しみで戦うのはやめときな。父さんも……そういう心の闇を、奴らに利用されたんだ」
 達観したような眼で、Ⅳは静かに語りかけた。
 Ⅳの父、トロンに関する顛末を知るマローネは、静かに頷いた。
 彼女の瞳に宿るのは、憎しみではなく、怒りと悲しみの代償に得た、強い意志と確固たる決意。
「はい。なら、せめて……あの人達の無念を晴らす為に、私、戦います。戦うの、好きじゃありませんけど」
 マローネの言葉を聞いて、アマテラスは喜びを示す為に大きく鳴き、そのまま決戦を告げる遠吠えを上げる。
 しかしその決意を、黒衣の運命と蒼き鎧の錬金術師は嘲笑う。
「ホウホウ。お前達にとっての神にも等しい我らに、人の分際で挑もうとは愚かなこと」
「お前たちの運命は、私達の掌中にある」
 その言葉を聞くや、Ⅳは左腕のデュエルディスクを構え、右手にカードを握る。
「なら全てぶっ壊してやるさ! お前らの言う運命を、俺達の手でなぁ!!」
 2体のギミック・ボックスをオーバーレイし、呼び出すのは彼の握る切り札の1枚。
 かつては神のみぞ操れる運命の糸を操る者と嘯いたその1枚を、今敢えて召喚する。
「現れろ、No.40! 運命の手綱を断て! ギミック・パペット−ヘブンズ・ストリングス!」
 運命を操らんとする者と運命を見極めようとする者――運命に囚われし者たちと、運命を壊し未来を勝ち取らんとする運命に挑みし者たち。
 バトルロワイアル・プログラムの終わりを告げる最終決戦の幕が、今、切って下ろされた。

737名無しロワイアル:2014/01/16(木) 01:46:14
【劉備ガンダム@BB戦士三国伝 戦神決闘編】
[状態]:意識不明、出血多量、左腕損失、体と鎧に無数の穴。
[装備]:劉備の鎧@BB戦士三国伝、龍帝剣@BB戦士三国伝
[道具]:基本支給品一式、イルランザー@クロノクロス、グランドリオン@クロノクロス、
[思考]:正義を成し、主催者達を討つ。

【リチュア・アバンス@遊戯王デュエルターミナル】
[状態]:疲労(極大)、深い後悔と強い覚悟
[装備]:無し
[道具]:辺りに散乱している
[思考]:劉備を助ける

【アマテラス@大神】
[状態]:疲労(小)
[装備]:沖津鏡@大神、草薙の剣@大神
[道具]:基本支給品一式、
[思考]:闇を祓い、浮世を照らす。

【マローネ(クローネ)@ファントム・ブレイブ】
[状態]:疲労(中)、静かな怒り
[装備]:霊剣スカーレット@ファントム・ブレイブ、ケルキオンの杖@遊戯王デュエルターミナル
[道具]:基本支給品一式、回復エレメント一式
[思考]:主催者を討ち、大切な人達の無念を晴らす。

【Ⅳ@遊戯王ZEXAL】
[状態]:疲労(大)、紋章の力の反動による魂の消耗(大)
[装備]:デュエルディスク&Ⅳのデッキ@遊戯王ZEXAL
[道具]:基本支給品一式
[思考]:主催者共にファンサービス! スターとして、ファンに全てを捧げる覚悟。

【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
[状態]:疲労(小)、困惑
[装備]:赤いマフラー@BB戦士三国伝、ブオーとゾナー@武者○伝シリーズ (※No.カード付き)
[道具]:基本支給品一式、回復エレメント一式、オキクルミの仮面@大神、デュエルモンスターズのカード×10@遊戯王シリーズ
[思考]:みんなと一緒に戦いたいけど、どうしたらいいか分からないデス!

補足説明
・クローネとマローネ
クローネはファントムブレイブの主人公マローネの並行世界の同一人物。
両親だけでなくアッシュさえも失ってしまい、天涯孤独となったIFの存在。
クローネという呼び名は見た目が日に焼けて黒いのと、原作で説明をめんどくさがったある人物が
「クローンのようなもん」と乱暴な上に語弊のある説明をして「クローンのマローネ」を縮めた通称。
なのでこの後3話では彼女の本名のマローネで通させてもらいます。ややこしくてすみません。

738 ◆9DPBcJuJ5Q:2014/01/16(木) 01:49:42
以上で投下終了です。
マイナー作品のネタ多過ぎてすみません。けど大好きなんだ……!

739 ◆uBeWzhDvqI:2014/09/30(火) 21:49:13
【ロワ名】ジャンプキャラバトルロワイアル 俺が書かなきゃ誰が書く

【略称】俺ジャン

【生存者】
○うちはサスケ@NARUTO-ナルト-
○男鹿辰巳@べるぜバブ
○小野寺小咲@ニセコイ
○斎藤一@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
○DIO@ジョジョの奇妙な冒険
○八雲祭@PSYREN -サイレン-

【主催】
バビディ@ドラゴンボール
ダーブラ@ドラゴンボール

【主催陣営】
ヴィクター@武装錬金
鶫誠士郎@ニセコイ
ドルキ@PSYREN -サイレン-
(多分増えたり減ったりします)

【参加作品】
○ドラゴンボール/○ONE PIECE/○NARUTO-ナルト-/○BLEACH/○銀魂/○るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-/○ジョジョの奇妙な冒険
○べるぜバブ/○PSYREN -サイレン-/○武装錬金/○ニセコイ/○アイアンナイト/○恋のキューピッド 焼野原塵/○ダブルアーツ/○タガマガハラ


とりあえずテンプレ的なものを……。
本編及び設定とか流れは10月中に投下できるように頑張ります。

(始めても大丈夫ですよね?)

740 ◆uBeWzhDvqI:2014/09/30(火) 22:27:32

各キャラの動向みたいなものだけ先に。

その一、サイヤ人頂上決戦関係者


【男鹿辰巳】
バビディにベル坊を人質に捕らえられているが弱気にならず己の道を進む。
最初に出会った一条楽、ナルトと行動を共するがブロリーとの戦闘で一条楽を亡くしてしまう。
己の無力を痛感するが止まっている暇はなく他の参加者達と合流し血を流しながらも前を進んでいた。
その先にアイアンナイトとして暴れる少年と交戦し言葉ではなく拳で語るも化け物を取り逃してしまう。

道中ナルトの友達であり敵であるうちはサスケと出会い交戦寸前になるが「ダチの勝負の邪魔はしねぇ」と拒否。
他の仲間と共にナルトの戦いを見守るが突然ナルトが急変し味方にも攻撃を開始する。
戸惑いながら交戦し、「DIO様のために」と呟くナルトを戦闘不能にさせるべく奮戦。
しかし乱入してきた志々雄真にナルトを殺害されてしまう。その後志々雄を倒そうとするもヘルメスドライブで逃げっれてしまう。
死にゆくナルトから謎の紙を託され、彼はなお、前へ進む。

サスケは無言でその場を去り残された男鹿や山田ヤマト達はゲームに乗ったパピヨンと遭遇してしまう。
この戦いでパピヨンを殺すことは出来たが近藤勇が死亡、彼の漢としての最後を看取った。

そしてバビディに洗脳されたベジータと交戦し壊滅級の被害を被ることになる。


【八雲祭】
最初に出会った武藤カズキと共に行動を開始する。カズキの人懐っこい姿に笑顔を見せる場面も。
左之助と承太郎の戦い(勘違いによる)を目撃し謎のビジョン(スタンド)を使う承太郎をPSI使いと認識。
そのまま左之助に加勢し交戦を続けるも勘違いと判明し中断。左之助から「何で邪魔をした」と言われるが基本無視。

その後一条楽の死を知り彼を生きかえらせるためにゲームに乗ったマリーの奇襲を受ける。
ニアデスハピネスの爆発で被害を負うもマリーを無力化し彼女を正す。
しかし改心させる事は出来ずにマリーの決死の自爆で左之助を亡くしてしまった。

進む道中に黒崎一護と小野寺小咲の二人組と合流しゲームに乗ったロンシアと交戦。
これを退け後を追うも其処には何者かによって殺されたロンシアの姿があった。
祭達の脳裏に浮かぶのは「DIO様のために」と呟いていた意味深な言葉だけだった。

殺し合いの遅延を感じたバビディによって放たれた虚と戦っていく中、大きな閃光に包まれた。


【サイヤ人頂上決戦】
バビディに洗脳されたベジータはそのまま男鹿辰巳グループを襲撃した。
カカロットがバビディによる首輪の爆破で死んだ今、彼を止める者は存在しない。
男鹿やヤマト、恋次や銀時など多数の猛者を一度に戦うがサイヤ人の戦闘力は一線を超えていた。

戦闘する中彼の脳裏にはかつての王子であった自分とカカロット達と共に戦うZ戦士がぶつかり合っていた。
銀時の「お前は誰なんだ」を受け己の身体に多大なる負担を掛けながらも洗脳を振り切った。

しかしその場にブロリーが出現し更なる戦闘が始まる。この時ブロリーと交戦していた祭達も加入する。
この時祭達から一護と小野寺が戦闘の余波で逸れてしまっていた。
既に何方の陣営にも被害及び死者が出てしまい戦闘はブロリーが終始圧倒していた。
その最後は承太郎が時を止めブロリーにラッシュを叩き込んだ後に銀時が斬り捨てる幕引き。
だがブロリーは最後の悪足掻きとして己の気を全開にまで高め自爆を引き起こした。

爆心地の距離の関係上生き残ったのは祭と男鹿とベジータの三名。
その後ベジータは洗脳されていた時に多くの命を奪ったケジメを着けるためにその生命を犠牲にして結界を破る。
これによりバビディの居場所がマップ上に出現し祭は乗り込むために足を進める。

一方男鹿はナルトから託された紙が動いているのに気付く。
この紙の招待はビブルカード、つまりこの紙の方向にDIOが居る。
ナルトやヤマトの仇を取るため男鹿は満身創痍ながらも足を進めた。

741 ◆uBeWzhDvqI:2014/09/30(火) 23:46:26
その二、小野寺救出煉獄決戦関係者


【DIO】
承太郎という恐るべき敵が存在する中、このロワでは黒幕的な存在として暗躍していた。
肉の芽によって洗脳に成功したのはナルト、ロンシア、ヤマト、アゲハ、剣心、桂……など多くの参加者を手駒に。
命令を下し自身は光に身体を晒す事無くロワを優位に勧めていた、しかし。

カーズに奇襲され応戦、スタンド能力で優位に立つも身体能力はカーズが優っていた。
時止のアドバンテージでさえも覆すカーズに絶体絶命だったがアゲハが駆けつけ奇跡が起きる。
アゲハの暴王の流星「追尾は無限」でカーズの動きを止める事に成功、そして場所は禁止エリア。
時間が経ちカーズの首輪は爆発しDIOは最大の危機を乗り切った、しかし――。


【小野寺小咲】
殺し合いに巻き込まれ錯乱するが最初に黒崎一護と出会い彼のおかげで平常心を取り戻す。
その後出会った塵を見て驚くが心優しい彼を外見で判断すること無く仲間として受け入れた。
当の塵は小野寺を「恋する乙女」として見守ることを決意していた。

仲間と合流し平穏に進むがDIOに操られた剣心と交戦することになるが小野寺自身は戦わない。
皆が戦い、自分だけ安全な場所に居ることに罪悪感を感じてしまう。

一条楽の死を知り生きる希望を感じられなくなり、泣きながら「私を殺してください」と仲間に頼む。
この発言を仲間たちは受け流すこと無く彼女を論し、支え、励ました。

マリーの死が知らされ追い打ちを掛けられ更に心が空になるも前だけは見つめていた。
アイアンナイトの襲撃に遭うも生き延びる、そして彼の心が泣いていることに気付く。

その後仲間と別れ一護と行動を共にし祭達と合流し襲ってきたロンシアと交戦。
塵の仲間と聞いていたがその性格は全くの別人だった。気になることは剣心と同じく「DIO」という単語を口にしていたこと。
ブロリーの戦闘の際に大きく吹き飛ばされ一護共に祭達と離れる。

そこで小野寺にとって悲劇が起きてしまう。


【斎藤一】
名簿に乗っていた志々雄の名前に疑問を抱くも悪を斬るため動き始める。
最初に出会ったゴルゴンに苛立ちを覚えるも奇術と呼べる瞬間移動の力を目にし近くに置いておく。
……しかし道中何度も苛立ちからか斬り捨てようとしていた。

その後土方十四郎、桐崎千棘らと合流。
土方の名前と新選組関連の情報から騙りと決め付け交戦を開始する。
何方の言い分も本当ではあるが世界が違うため真実は互いに異なっていた。
千棘やゴルゴンが戸惑っている中志々雄の乱入により戦闘は中断、彼の相手を務める。

志々雄の戦闘能力は斎藤一の知っている志々雄と変わらないが時間の制限を既に知っていた。
15分が経過しようとしていた所を武装錬金ヘルメスドライブによって逃げられてしまう。

その後放送により左之助の死を、次の放送により剣心の死を知らされる。
また一条楽の死を知った千棘が暴走の末にエルを殺してしまい自身も自殺してしまう。
少ない間に知った顔が死んでゆくが修羅場を潜り抜けてきた男の心は揺るがない。
その冷静さから反感を買うも彼は悪・即・斬を貫き通す。


【うちはサスケ】
ゲームに乗り悪を殺し願いを叶えるべく行動を開始する。
しかし最初に出会ったシーザーと交戦、彼を殺害するも彼の生き様に過去の自分を重ねてしまう。
心に一瞬の迷いが生まれるが目的のために止まることは許されない、彼は進む。

その後何度か戦闘を繰り返した後パピヨンと出会い同盟を申し込まれる。
サスケは断ろうとしていが近くにナルトの姿があった。
彼を見ているとチャクラに気付かれナルトと交戦する嵌めになってしまう。
この際、パピヨンに「邪魔をするな」と告げた。後のパピヨンVS男鹿一味戦であった。

ナルトと交戦する中、過去の自分を再度重ねるも闇に染まったこの身体に光は受け付けなかった。
途中ナルトが急変し「DIO様のために」と呟く。異変を感じたサスケだが戦闘は止めない。
此処に男鹿達も加勢するが暴走するナルトは大術を発動しながら確実に彼らの生命を削っていた。
その後斎藤達との交戦から回復した志々雄が乱入しナルトを殺害、サスケはそのまま志々雄を追うべくその場を去る。

ナルトの仇を取るつもりはない、だが志々雄を殺すべき相手として認識していた。

742 ◆uBeWzhDvqI:2014/10/01(水) 00:04:50
【小野寺救出煉獄決戦】


殺し合いの停滞を危惧したバビディは志々雄に無限刃と強化した戦闘集団、そして煉獄を授ける。
これを受け取った志々雄はそのままバビディを殺害しようとするもダーブラの介入で失敗してしまう。
直後に後を追ってきたサスケに敵意を向けられるも「これからもっと面白ぇ祭りが始まるから黙っとけ」と言葉を残し消える。
ヘルメスドライブで移動した先は斎藤一のグループであり宣戦布告をした後小野寺を攫い煉獄の中に乗り込む。
煉獄の中に居るのは志々雄と攫われた小野寺、そしてフレアの能力を見込まれたキリだった。


小野寺を救うべく(斎藤はあくまで志々雄を殺すためと言い切る)煉獄へ向かう一行。
道中に肉の芽に支配されたアゲハと帝王DIOと交戦する形になってしまう。
バビディの命令かどうかは不明だが志々雄の戦闘集団はDIO達に加勢しており数では圧倒的に不利だった。

交戦する中埒が明かないため煉獄突入組と残存組に別れる事に。
アゲハを止めるべく残る飛竜を始め、塵や剛太、神埼など他合わせて系6人が残ることに。
煉獄に突入するのは斎藤、一護、土方、ゾロ、ゴルゴンの五人だった。
ゴルゴンの瞬間移動で移動を開始するがDIOが時を止める事により妨害する。
このままでは一生煉獄に突入できないため、斎藤が残ることを決意する。
志々雄はいいのか、と聞かれると「こんな雑魚は速攻で斬り捨てる」と残し他の足を促した。


DIOのスタンド能力に苦戦するもその高いプライドを煽り生まれた隙を狙い牙突を放ち彼の右腕を吹き飛ばす。
そのまま海の中へ蹴り飛ばし斎藤も煉獄の中へ突入した。

743 ◆uBeWzhDvqI:2014/10/01(水) 00:06:38
先に煉獄へ突入していた一護達は志々雄と交戦していた。
志々雄の戦闘能力は本物であり無限刃の存在もあったか苦戦……数では此方が有利。
一護、土方、ゾロ……彼らも一級品の戦闘能力を持っており志々雄とは存在する世界も違うため圧倒。
しかし既に満身創痍のため戦局は五分、やや志々雄が優勢になっていた。ゴルゴンはこの間に小野寺とキリを開放していた。


その後斎藤も合流し四対一となり志々雄に攻め込む。
やがて15分が経ちそうになった所で斎藤が牙突零式で志々雄を吹き飛ばし勝負が終わるはずがない。
志々雄は武装錬金「激戦」で己の身体を修復し再度四人相手に暴れ始める。
殺しても殺しても復活する志々雄、その力の前に斎藤達は徐々に押され始め意識が現界に近づいていた。


サスケも乱入し五対一となるも志々雄の優勢は変わらない、しかしまだ彼が居る。
この状況を破ったのはゴルゴン、激戦で再生する中、逆刃刀を投げ付け妨害し志々雄の身体を破壊する。
発火現象が始まった志々雄はそのままゴルゴンを斬り捨てるが死は免れない。ゴルゴンの顔は笑顔だった。


志々雄が死ぬように煉獄も崩壊を始め、サスケは逸早く脱出する。
ゴルゴンが最後の力を振り絞って瞬間移動させようとするも身体は限界、キリのフレアの力を借りる。
しかしこれではキリも死んでしまう、彼を止めるゴルゴンだがキリはそれを振り切り瞬間移動を始める。


だが伸ばした腕は小野寺に届かず彼女は一人煉獄の中へ残され――崩壊した。


陸地に戻った斎藤達だが彼らを待っていたのは暴れるマスターバロンと桂だった。
DIOはそのまま逃走を図りアゲハは仲間によって倒されていた。しかし飛竜達は死んでしまい、生き残ったのは塵と剛太だけ。
時を同じくしてベジータが結界を破界したため居場所が判明するが移動出来る状況では無かった。

志々雄戦で後半参戦し比較的傷が軽い斎藤を先公させる提案をする土方、この発言にナニカを感じる斎藤。
「いいから黙って行け、それで俺達を受けいられるように宴の準備でもしとけ」「阿呆が」。
ゾロは斎藤に三代鬼徹を託し、彼を走らせた。
土方は桂を止めるため、ゾロと剛太はマスターバロンを止めるために戦う――結果は何方も相打ち。


塵と一護は小野寺の気(霊圧)を感じた方向へ移動していた。
その際塵は何かゴルゴンと会話していたようだが内容は不明、しかし彼らは何時通り笑顔だったという。


塵と一護が駆けつけた先にはアイアンナイトに襲われかけている小野寺だった。
聞けば小野寺はサスケに救出されていたらしく、彼はバビディの元へ行くため小野寺一人を此処に放置したらしい。
暴れるアイアンナイトを止めるのは恋のキューピットと護る力を信じる死神。
志々雄戦で満身創痍の一護はアイアンナイトを止める前に力尽きるが彼の死を笑う者は存在しない。
塵の最期は暴れ悲しむアイアンナイトの心を理解し受け入れた上で其処から「だがお前は最低野郎だ」と突き放し殺した上で自身の生命も停止した。


残された小野寺は一護の斬魄刀である斬月を形見として受け取り、脚が震える中、それでも皆のためにバビディの元へ足を進めた。


こんな感じです。きっと矛盾も生まれる(既に生まれてる)かもしれませんが、頑張ります。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板