したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

デジモン02 回るメリーゴーランド

1みけ:2008/10/03(金) 01:10:51
初めまして。
みなさんの見てたら自分も書いてみたくなっちゃって、初めてですが書いてみます。

うまく続けられるかわかりませんが、頑張りますのでよろしくおねがいします。

34みけ:2008/10/08(水) 19:39:25


まるでテレビの電源が落ちたかのような出来事に、タケルは呆気にとられて立ち尽くした。


やっと意識が目覚めてきて、パニックに陥りそうになったそのとき、聞き慣れた羽音と疲れきった声がタケルの意識を救った。


「ターケールー!!」


「パタモン!!」



すっかりその存在を忘れていた黄色いデジモンが、白い帽子を手によたよたとその持ち主の腕の中に飛び込んだ。

その激しい疲れ方に、タケルは目を厳しくして理由を尋ねる。もしかして敵と遭遇したのか??


「うーうん、でも僕疲れちゃった..あの射的の屋台の中だよ...」


その反応に首を傾げるも、パートナーを抱き抱えたままスタスタと示された屋台まで歩く。


母の幻影がずっと覗いていた屋台だ。二丁のおもちゃのゴム銃が置いてある木の台と、その奥に景品が並べられた四段ほどの棚がある。


でも別におかしな点は見当たらない。



「これがどうかしたの??」

「一番上の、右から二番目の景品をみて..」


言われたとおり目をやったタケルは、げっと顔をひきつらせた。あまりの疲労にまぶたをとじながらパタモンは残念そうに言う。

「僕、何か音がするなぁって思って、タケル達が闘ってたけどちょっと様子を見に来たんだ。頑張ったんだけど、僕の手じゃうまくいかなくって..」














そこには体中に可愛いリボンをつけられたアルマジモンが、もごもご言いながら体を自由にしようと棚の上で奮闘していた。



笑ってはいけないと心に念じながら、パタモンを手前の台のそっと下ろすと、アルマジモン救出のために屋台の中に踏み込んだ。






















「ーーーーーふわあ〜助かっただぎゃ〜」

「大変だったね、アルマジモン」

「一体何が起こってるの??」


三人は、椅子もないので射的の台の上に腰を下ろした。


霧の中でイオリを見失ったヤマトとアルマジモンは、イオリを見つけ出そうとあちこち歩いてみたのだが、かえって自分達の歩いている場所も分からなくなってしまったらしい。


「その時だぎゃ、空から赤い馬みたいなデジモンが飛び降りてきたのは」


アルマジモンが声をひそめる。


そいつの体の模様が光ると、射的の屋台からリボンがのびてきてアルマジモンの自由を奪い、ヤマトを連れ去ってしまったらしいのだ。


「屋台の中からじゃよう見えりゃーせんかったが、あいつはまっすぐ右上に向かって跳んでったがや」


話に引き込まれてタケルとパタモンがそろって屋台から空を見上げると、ちょうど『右上』の方向の先に霧に囲まれた高い丘があるのが見えた。


「あそこがそいつのねぐらってわけか」

「手がかりなのに間違いないだろうね。それに話をきくと、その赤いデジモンはこの遊園地のものを自由に操れると思った方がよさそうだ」


そう言ってタケルはDターミナルをポケットから取り出して、メール画面を開いた。大体の話の 全貌はアルマジモンから聞いて分かったし、太一さん達に報告しておいた方がいいだろう。あと、ヒカリちゃんにも。




「大輔には知らせないの〜??」

「大輔くんはミミさんとデジタルワールド捜索のはずだからね。連絡したらそっちを放り出してきちゃいそうじゃない??」

「まあ連絡しても大輔はメールを見なそうだがや」


あははとタケルは渋い顔のアルマジモンに笑いかけながら思った。

確かにヒカリちゃんからならまだしも、僕からのメールはすぐに見ようと思わないかも知れないな。

まあ、送らなかったときの大輔くんの方が怖そうだし。



「ーーしょうがないか」

カタカタと宛先に『本宮大輔』を追加する。次いでタケルは『送信』にポインターを合わせてENTERキーを押した。

35みけ:2008/10/09(木) 01:00:56



ピピッ


「お、今度はタケルだ」


ひとりつぶやきながら母の差し入れた麦茶片手にメールを開く太一。その隣には光子朗のパソコンの画面を見ながら同じく麦茶を一口ごくりと飲む賢がいた。



「京ちゃんにも転送してっと。空と丈はこっちに戻ってくるんだよな??」

「はい。京さんが一度にデジタルワールドをチェック出来るプログラムを組んだので、とりあえずこっちで話を聞きたいそうです」


ふうーとメール画面を開いたままDターミナルを賢に渡すと、太一はため息をついた。



ヤマトが消えたこと、空にどう説明したらいいんだろう。あいつの事だから落ち着いてみせてるんだと思うけど..


ちくりと刺す胸の痛みをごまかすように、太一はグビグビと麦茶を一気に飲み干した。

その横でメールを注意深く読んでいた賢に、ワームモンが膝から問いかける。


「何か分かったの??賢ちゃん」

「うん..はっきりじゃないんだけど」

「何だよ、聞かせろよ」


新しい麦茶のコップを片手に太一も身を乗り出す。


「さっきの八神さんと高石からのメールと、今までの事から考えてみると...」


賢は話しながらパソコンから太一の机の方に向き直り、さっきまでやっていた問題集の裏表紙を開いた。カチカチとシャーペンの芯を出す。


「これが僕達の世界、そしてこれが例の遊園地とします」


白いページに大きな円が一つと、一回り小さな内接円が大きな円の右端に描かれた。

「この遊園地は、現れたり消えたりしてました。現れると、中のデジヴァイスが表示されました。これって遊園地の中にゲートがある時に起きる現象だと思うんです」

「だからデジヴァイスを持ったひとが近づくときだけ現れたんだねっ??」


そうだね、と自分を尊敬のまなざしで見るパートナーに優しく相づちを打つ賢。

太一も手をあごに当てながら考え込む。


「なるほどな。ガブモンが森に残されちまったって言うのも、それなら納得がいく」

「でも、そうするとこの遊園地はデジタルワールドの一部って事ですよね。それなら京さんがもう見つけてるはずか..」


ページにもうひとつ内接円を囲む円を書き込みながら、うーんと唸る賢。


「いや、でも十分ありえる話さ。光子朗がいない分俺らいんてりじぇんす組は人手が足りないんだから、ここはデジタルワールド捜索組に直接きーてみようぜ!!」


さっき覚えたばかりの単語を駆使しながら賢からDターミナルを受け取る太一。京宛てのメールを作り始める。


「そういえば、本宮達はどうしてるんだろう。」

「確かにしばらく連絡がないよね」

「ついでに京ちゃんに聞いてみるか!何か俺ばっかり京ちゃんにメールしてて悪いなぁ一乗寺っ♪」



いや別に..と明後日の方向を見る賢に、ほほーと目を細めて見せる太一。

同じ紋章を持ってるとやっぱり性格って似るんだなぁと、こっそり大輔を思い出す賢。


急に太一はくるっとDターミナルに向き直り、カタカタと文章を打ち出す。









カタカタカタカタカタカタカターーーーーーーーー




「ーーーーーー長い、ですね」


「いやーついでのついでに二人の事も聞いてみちゃおうかなぁーなんてさっ♪いいよな♪」


え゛っと声を詰まらせる後輩を尻目に、にこにこと笑いながら太一はカチャッと最後のボタンを押す。



「はい送信っと」


気弱な賢は何も言えず、ただ肩をがっくりと落とした。

緊張をほぐしてくれるにも、何か他の方法があったんじゃ....



うなだれるパートナーを見上げながら、がんばれ賢ちゃんと心の中で応援するワームモンだった。

36みけ:2008/10/09(木) 22:35:22


Dターミナルがメールの受信を知らせる。




しかし京とホークモンはその音には気づかず、食い入るようにコンピューターの画面を見つめている。

さっきまでは一つのコンピューターしか起動していなかったのだが、京はもう一つ起動して二つを連動させたようだ。


ホークモンの前の画面には、デジタルワールドのいたるところの映像が小さなコマに分けられて映り、一目で見られるようになっている。

そのうちの一つのコマの枠が目立つピンクで縁取られている。どうやらこのコマの映像が隣の京のコンピューターで大画面で見られるように設定してあるらしい。


ヘッドフォンは外されており、代わりにコンピューターの音量のメモリは最大にセットされている。スタンド型に変えられたマイクも京の頭の回転の良さを物語る。


ピコンと音がすると、マイクの電源ランプが黄色から緑に変わった。

「よし、オッケー。しゃべってみて、ホークモン」


手際よくマイクの音量をマウスで調節しながら京は声をかける。分かりました、とホークモンも身を乗り出し、その機械に手をあてがった。











『ーーーーーーーーーみなさん私の声が聞こえますか??』


「ホークモンかぁー??」


ふと森に響いた仲間の声に慣れた様子で大輔は答える。テントモン達も攻撃を中断してその声に耳を澄ませる。ドームのくぼみは多少大きくなってはいるものの、破壊するにはまだまだ時間がかかりそうだ。


『やっぱり大輔さん達でしたか!』

ほっとしたような声に、平たい石の上に腰を下ろしていたミミも声の主を探そうとあたりを見回した。

どうやら背後の草むらから聞こえてくるようだ。


『その近くの茂みの中にテレビがあると思うのですが、見つけて皆さんが見える位置に動かしてください』


「これの事かしら」


よいしょと茂みからテレビを持ち上げたミミは、重そうに自分が座っていた石の上にそれを何とか置いた。







「あーーーっ!!ミミお姉さま♪」


画面に映るピンクの髪の少女をみて瞳をキランキランさせる京。その声を聞いてはぁーい♪と手を振ってみせる少女の傍らから、ゴーグルのつんつん頭の少年が顔を出した。


『なんだあ京もいるのか』


「あったりまえでしょー!!天才プログラマー京さんをなめてもらっちゃ困るわよっ」


フンと得意げに胸を張るパートナーをなだめながらしっかり者のホークモンは話を進めた。


「皆さんはそこで何をしてるんですか??随分長い間攻撃を繰り返しているみたいですが..」


『どうやらこの中に光子朗はんらがおるようなんですわ!!』

『でも、なかなか結界が壊せなくてーー』


ホークモンの問いかけに答えようと画面に入りきらない二匹のデジモンも前に出てきた。


話を聞いた京はうーんとコンピューターから一歩椅子を引いて考え込む。

フレイドラモンの連続攻撃でも壊れないって事は相当の強度ね..こういうときこそ助っ人の出番かしら。

37みけ:2008/10/09(木) 22:37:14


『ーーーーーーー分かったわ、賢君とスティングモンにそっちに向かってもらうようにする!!』

「さんきゅー京っ!!」

「助かるわ♪」


テレビの中からてきぱきと応答する眼鏡の少女に、大輔とミミは思わずしっかり笑みを浮かべる。

スティングモンの打撃技があれば、フレイドラモンの炎と合わせて結界を破ることが出来るはずだ。


『一旦映像は切るけど、音声はつないどくから何かあったら呼んでね!!』

『しっかりこのホークモンが耳をすませておきますからっ!!それでは皆さん頑張っていきましょうっ』


プツンと石の上のテレビは真っ暗になってしまった。しかしバタバタと忙しそうな京達の様子は音声を通して森に届いている。



よーしと大輔はテレビに背を向け、いち早くドームの前に移動したデジモン達を振り返った。


「賢達がくるまで、少しでも多くドームにダメージを与えておくんだ!」

「もちろんや!!」




















元気よく返事をしたものの、テントモンの心の中は虚しさでいっぱいだった。


彼だけが光子朗の不在のため、進化することが出来ないのだ。大輔達は口にしないけれど、スティングモン達が来るのは自分の力不足のためだろう。


たったひとりのパートナーの一大事なのに、わては何もできずみんなの足を引っ張っとるんや.....



哺乳類デジモンならば今涙を流せただろうが、そのすべを持たない昆虫の彼はひたすら巨大な壁に攻撃をぶつけながらパートナーに思いを馳せた。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー光子朗はんーーーーー

38みけ:2008/10/10(金) 00:28:09










ーーーーーーーーー薄暗い道。大丈夫だ、両側から僕は守られているんだもの。たかがこれしきのことで.........




「うわあああっ!!!」




不意に吹きかけた突風とコウモリのキキキキと言う鳴き声に驚いて、思わずのけぞった少年は左右で自分を支える二人分の手にしがみついた。

理屈っぽいその少年は、意外にも自分がこの手のものに弱いことを情けなく思いながら、両親の手をギュッと握りしめて背中を丸めて歩く。


「ははは、さっきまでの威勢はどこへ行ったんだろうな」


「僕びっくりしただけだよお父さん!」


「さあ、それはこれから分かる事ね」



明るく笑う父と母の声を聞いていると自分の恐怖も溶けて行くように感じて、光子朗の顔にも笑みが戻る。


が。


ーーーブブブブブブブブブブブ

「わああああああああっ!!」


突如耳元を掠めた羽音に思いっきり身をすくませてしまった。こんな近くまでおばけが来るのか!?


しかし、目の前をブブブと懸命に飛ぶそれに、光子朗は思わず怖がるのを忘れて見入った。






ーーーーそれは一匹のテントウムシだった。

どこからか迷い込んでしまったのだろう。
薄暗い中だとその虫は、背中に浮かぶ斑点のせいでほのかに光っているように見えた。


薄い羽を素早く羽ばたかせるその動きに目を奪われていた光子朗は、両側から聞こえる声ではっと我に返った。


「まあいやだ、虫??」


「父さんも虫は嫌いだ。潰してしまいなさい」


え??と耳を疑う少年。たかが虫じゃないか、放っておけば飛んでいくよ。


「何だ、光子朗は虫が好きなのか??」


「別に、好きってわけじゃないけど..でも、そんな事したくないよ。ねえ、ほっといて先に進もうよ。父さん、母さん。」


乱暴なことを言う両親をこれ以上見たくなくて、二人の手を懸命に引っ張る光子朗。でも二人はびくとも動かない。




逃げればいいのに、テントウムシも変わらず光子朗の前をブブブと飛んでいる。


やっぱり見間違いじゃない。この虫、なんだか知らないけど光っている。






その光が少し陰った。

お父さんがそいつに大きな手のひらをのばしている。









ーーーーーーやめて。


何でこんな虫に僕が必死になってるのかは分からない。


でも、嫌だ。


「やめてーーーーーーー」


父の手がさらに光を覆い隠す。



さほどの理由があるわけでもないのに、光子朗の目から涙が一筋流れ出た。


喉から言葉が押さえるまもなく突いて出る。








「ーーーーーーーーー命を」















「ーーーーーー粗末にするなあああああ!!!!」
















突如、眠っている光子朗のズボンに下がったデジヴァイスからまばゆい光が流れ出した。



同時に結界の外にいたテントモンの体も輝き出す。


「な.......何なのっ!?」
「進化の光だ....!!」


思わず目を覆う大輔達。




「感じる....光子朗はんや...」


メキメキと光の中で姿を変えていくテントモン。巨大な羽と何本もの手が大きく成長していく。


進化したカブテリモンの手に光が集まっていき、パートナーを守ろうとする強い感情のちからがそこに加わったとき、その巨大な光の玉は勢いよく傷ついた結界に打ち込まれた。






ドオオオオオンという轟音と共に、ガラガラと白いドームは崩れ去っていく。



「今行きまっせ、光子朗はん」



力強く前を見据えるカブテリモンの前に、隠された遊園地が遂に姿を現した。

39舞台裏PART1:2008/10/11(土) 00:17:35
舞台の裏に設けられた一室。

夜な夜なここでは役者達が集まって、反省会が行われていたーーーーーーーーー


果たして今夜のお呼ばれさんはーーーーー


ガラガラガラ

賢「お疲れさまでーす..あれ、誰もいない」
ワームモン「僕らが一番みたいだね、賢ちゃん。先に始めてる??」

賢「そうだね」(用意してある椅子に座る)

賢「物語が始まってからついに、今日で一週間になるね」

ワームモン「早いよねっ!!でも僕達、まだ一回も太一の部屋から出てないんだよね..」

賢「仕方ないよ。でも太一さんの問題集、何とか一冊終わらせられたし」

ワームモン「賢ちゃん中学生の勉強も出来るなんてすごいや!!僕見直しちゃったよ」

賢「いや、太一さんの教科書読ませてもらったからね。それにしても、こんなに出番が少ない僕らが何でここに呼ばれたんだろう」

??「分からないとは言わしませんで!!」




ガラガラガラ

賢・ワームモン「お疲れさまでーす」

カブテリモン「お疲れさま〜」(何とか椅子に座る)

ワームモン「遂に結界壊しましたね!」

カブテリモン「いや〜しんどかったですわ〜寸前までプチサンダー連射しとったもんですから」

賢「でも格好良かった!助っ人の意味なくなっちゃいましたからね(笑)」

カブテリモン「照れまんなぁ♪いやでもまだ分かりまへんて!!助っ人はいつでもありがたいもんですからなぁ」

ワームモン「そう言えば今僕らの呼ばれた理由を知ってるみたいな事言ってたけど..」

カブテリモン「それですわ。あんさんら忘れたとは言わせまへんで〜!!あの遊園地に対する分析!!あんなんいらんのや!!」

賢「え゛....どういうこと..??」

カブテリモン「ああゆうのは光子郎はんの役目なんや!!あそこできっちり分析してしまったら、光子郎はんのありがたみが分からんくなるやないですか!!」

ワームモン「賢ちゃんは太一が分からなそうだから教えてあげただけだよ!!賢ちゃんは優しいんだもんねーだ!!」

賢「ワームモン..」

カブテリモン「何やいっつもべたべたしよって!!絶対わては認めまへんからなっ」




ガラガラガラ「いいじゃないですか」

40舞台裏PART2:2008/10/11(土) 00:19:26


カブテリモン「光子郎はんっ♪」

賢・ワームモン「お疲れさまでーす」

光子郎「皆さんお疲れさまです。すいませんね、手間かけさせちゃって」(椅子に座る)

賢「いいんですよ、光子郎さんがこういうのって珍しいですし。それより僕、いらないことしちゃったみたいで..」

光子郎「そんな事。すごくよかったよ、僕も同じ意見だし。それに心配してたんです、太一さん達だけだとみんな好き勝手やっちゃいそうで(笑)」

賢「ありがとうございます。でも、どうして光子郎さんがここに??」

光子郎「ーーー実は、皆さんに謝らなくちゃいけないことがあるんです」(正座になる)

ワームモン「え??」

光子郎「お気づきのひともあったかと思うんですが、僕間違えたネームタグつけて現場に行っちゃったんです。今は気づいて直しましたけど、ずっと『光子朗』になってしまってました。失礼しました..」

カブテリモン「わても喋りながらおかしいなと思っとったんですわ。でもこれはネームタグ作った人(みけ)の責任ですわな」

賢「ほんとにここ反省部屋だったんだ..」

??「実は、僕達も説明しなくちゃいけない事があるんです」




ガラガラガラ

タケル・パタモン「お疲れさまです」

光子郎「お疲れ様で..すって出番大丈夫なんですか??このあとって聞きましたけど」

タケル「なんか今会議中みたいです。光子郎さん久しぶりですね〜!!カブテリモンも進化したのかぁ〜」(椅子に座る)

パタモン「場所とってるけど退化しないの??」

カブテリモン「わても出番すぐって言われたんで我慢しとるんですわ」

タケル「まぁきみは確かにねぇ〜。ワームモンもお疲れ様っ!」

ワームモン「お疲れ様!!」

賢「結構人数も増えてきたね!!高石達の反省っていうのは??」

パタモン「タケルって言うより、僕の反省なんだぁ」

光子郎「なにしたんですか??」


パタモン「移動を間違えちゃったんだ。タケルとヤマトが闘ってる間にアルマジモンのところに行ってるはずだったんだけど、遅くなっちゃって、しかも間違えてタケルのところに戻っちゃったんだぁ..」

タケル「パタモン昨日わくわくしててちゃんと寝てなかったからなぁ」

賢「あちゃぁ〜それは大変だったね..」

ワームモン「そんなときもあるあるっ」

パタモン「ぐす、ありがとう〜」





カブテリモン「一通り反省会は出来たみたいやな!!」

タケル「じゃぁそろそろ本編の方にいこっか」

ワームモン「僕達どうするんだろうね、賢ちゃん」

賢「見当もつかないよ。でもひとりで太一さん勉強出来るのかな..」

光子郎「まあ普通に考えて出来ないでしょうね。僕もそろそろみんなと活躍したいなぁ。」

パタモン「そっかぁ、ずっと小さいときのまんまだったもんね。早くみんなで揃って遊びたいねっ!!」



ガラガラガラ


それでは舞台へ参ります。

41みけ:2008/10/11(土) 23:11:05





パソコンルーム。コンピューターと格闘する京の横でホークモンがバタバタともどかしげに翼をはためかせている。彼らの足下には幾包みかの空のパッケージとそれの入ったビニール袋、机の上には食べかけのかんぴょう巻きが2本とペットボトルが乗っている。


「ーーーーーーまだですか京さんっ!!」


「あとちょっと....出来たっ!!」


ピコンと音がしてコンピューターにデジタルワールドの映像が受信される。

しかし画面は薄暗く何も映ってはいない。京は苛立たしそうに机をバンと叩いた。


「何で映らないのよー!!大輔達はぁー!?」


「どうやらさっきの音は結界が崩れた音だったようですね..瓦礫にテレビが埋まってしまってます」


「そんなこと分かってるわよっ!!」


京は頭を抱えた。どうしよう、これじゃぁ助っ人も送れない。賢君達はもう学校に向かってきてるのに....




カチカチカチカチ


マウスを動かしている音がする。


京が顔を上げるとホークモンが真剣にプログラムを動かしていた。


「ちょっ何してんのっ??」


「他のテレビを探すんです。隣のエリアから通信すれば、多少時間はかかっても一乗寺さん達を送ることが出来ますよね、京さん!!」


ホークモンの言うとおりだ。今は立ち止まるより先に、前に進むことだけを考えなくては。


「ーーーーーーーーええ、そうね!!今地図を出すわ!!」




あっという間に京のコンピューターは世界地図のようなものを映し出した。その上にはいくつかの点が表示されている。


「さっきの森の中のテレビがこれだから、一番近いのはっと.....ここね!!」


そのうちの一つを指差しながら地図に目を通す京。意外なことにすぐそばにもう一つ点がえがかれていた。


「何だぁこんなとこにあったんだぁ〜ラッキー♪」


「おかしいですね、こんな近くにありましたっけ..」


手を打って浮かれる京をよそに不安そうなホークモン。そのおかしな点は森のもう少し奥を指していた。


「もしかしたら結界が破れて遊園地の中のテレビが機能しだしたのかもしれないわね。でもまぁ使えることに変わりなしっ♪」


正確に分析していながらも緊張感がないのは彼女の長所なのか短所なのか..まあ危険だが時間が短縮出来て確かに好都合だ。


「ではここと接続しますよ京さんっ!!」


「おっけー!!映像と音声の受信はこっちに任せて。賢君達が来る前に終わらせるわよ!!」


りょーかいです!!と答えるホークモンの声を切り目に、二人は無言で作業に熱中し始めた。

賢とワームモンが教室のドアを開けたとき、二人があまりに似ているのに一瞬驚いてしまったのも無理はないだろう。

42みけ:2008/10/13(月) 21:01:31




ギッギッギッ



真っ白な霧の中に懐かしいオルゴールから流れるような音楽が響く。

それに合わせてゆっくりと回転する木馬。

木馬が引く馬車に揺られながら目をぱちくりさせているひとりの少年。



ギッギッギッ


その視線の先には今し方霧の中に充満していた暖かい光の跡。少年の視野にはその大元は入らなかったが、自分が回転しているように光の源も回転しているようだ。


ーーーーーだめだ、目を凝らしても角度的に見えるものじゃない。今の光は何だったんだろう。



彼が馬車の上で目を覚ましたのはついさっきのことだ。意識を十分にはっきりさせる時間もなくあたりをいきなり光が満たし、ついさっき少年がみていた所を最後にすっかり消え去ったのだ。

頭がうまく働かないのも一概に彼のせいとは言えない。


それについさっきまで彼の意識は遊園地の中で父の幻影とヒカリ達と共にあったのだ。今いる場所もどうやらメリーゴーランドのようだから同じ遊園地の中らしいが、こんなところまで移動した記憶はない。


頭の中を一度整理しようと少年が瞼をとじようとしたそのとき、ギッギッギッとアトラクションが軋む音の中で、カクンと何かが少年の後ろで体勢を崩すのが聞こえた。


何だろうと馬車から顔を出して初めて後ろを見ると、見慣れた金髪が木馬に寄りかかっていた。


「ーーーヤマトさんっ!?」


はぐれたはずの先輩が馬から落ちそうになっている。

すぐさま身を乗り出してイオリがヤマトを支えようとした瞬間、シュルシュルと上からコードが飛んできてまるで馬車から降ろすまいとするようにイオリの両腕を縛り上げた。


「うわっ!!」

突然の痛みに驚いたイオリの声に、うっすらとヤマトは目を開いた。


「ん..??」

「ヤマトさん逃げて!!」


前方からの警戒の声と後方から迫るコードのシュルシュルという音で一気に目が覚めたヤマトは、寝起きとは思えない俊敏な動きと判断力で、木馬にまたがったまま上半身を即座に横に倒した。


コードは目標を見失って空中で一瞬とどまる。そこを見計らって、ポケットから掴みだしたギターのピックを敵に投げつけようとヤマトは上半身をねじる。


思い切りピックを後ろの赤い木馬に見舞ったヤマトは、そいつがひるむのを見てそれが自分をさらったデジモンである事を悟った。


ひるんだ赤いデジモンの白く光っていた体の紋様が元の黒に戻るのと同時に、ヤマトとイオリに迫ったコードはその意志を無くしたようにくにゃりと曲がった。

43みけ:2008/10/13(月) 21:04:42


とりあえずの危機を乗り切り、ふうと一息ついたイオリが足元の竹刀に気づいた一方、ヤマトもデジモンから目を離さずに素早く体を木馬の上に戻し、軽く息をはく。バンド練の帰りでラッキーだったな..


よく見ると、まだ目をしばたたせているデジモンの背中の上に何か倒れている。




目をこらす必要もなかった。今日ずっと彼らが血眼になって探していた人物がそこにいたのだ。






「ーーーーッ!!光子郎ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」






えっとイオリも身を乗り出す。

変わらず回り続けるメリーゴーランドの動きに合わせてわずかに上下しながら、確かに光子郎はそこで安らかに眠っていた。


「よかった、無事だったんだ..」

「いや、まだ分からないぞ」


安堵のため息をもらすイオリに、見ろと言うように注意をもう少し下にそらさせるヤマト。

そこには気を取り直してブルルと鼻を奮わせながら目をむく馬型デジモンがいた。


「ここは一度引いて出直した方がいい。ここはこいつのテリトリーの中みたいだし、ガブモン達なしで太刀打ちできる相手じゃない」


冷静にデジモンを睨みつけながら話すヤマトの言葉に、そうですねとイオリも心の内とは裏腹に相づちをうつ。

本当は出直したくなんてない、やっとここまでたどり着いたのに....



ーーと、終わりそうだったヤマトの言葉は思わぬ方向にむかい出した。


「ーーーーだけど、それは俺達がここまでの道を覚えていたらの話だよな??」


「ーーーー僕は、覚えていません!!」




ヤマトの考えている事が自分と同じだと感じ取ったイオリは、竹刀を拾い上げながら答える。そうだ、ヤマトさんの紋章は確か『友情』だった。

ヤマトもイオリの強い口調にクッと笑いながら拳を構える。


「だと思った。気が合うじゃないか」


「それに、出直してからまた霧でうやむやにされたんではかないませんから」


行くぞ!!とヤマトが叫んだのを合図に、イオリは竹刀を握って馬車を飛び降り、赤いデジモンに切りかかった。同時にヤマトも光子郎の体を強く掴む。






実際この二人はこのまま敵を倒せるなんて思ってはいない。

二人の体を動かしていたのは、夢の中で自分たちを助けてくれた仲間がきっと来てくれると言う、強く燃えたぎる信頼だった。

44みけ:2008/10/13(月) 23:01:05






一方、タケル達はあんぐりと口を開けたまま空を見上げていた。






ーーーーーさっきまで霧で真っ白だった空が、まるで掛けていた布を取り払ったかのように一瞬で暗くなってしまったのだ。



何年も結界で囲まれていた遊園地は、久しぶりに夜を迎えていた。長い間使われていなかった街灯が、ゆっくりと灯をともしていく。


「イオリにも見せてやりたいだぎゃぁ」


電灯が徐々に道を形作っていくのを見ながら、のんびりとアルマジモンがため息をもらす。緊迫した空気を和ませる彼にタケルはにっこりと笑いかけた。


その横でパタモンはパタパタと大きく羽ばたきながら指を指す。


「そんなこと言ってる場合じゃないよ、あれを見て!!」


パタモンが示したのは、街灯の並木道が続く先、見えにくいがいまだに霧に包まれている高い丘の方角だった。

視界を少し右にずらすと、観覧車をもう少し行った上空を大きな影が横切っていく。


「何だろうあれ...」


タケルの帽子に着地したパタモンの大きな耳が、小刻みにピクピクと動く。

「分かんないけど..羽音からするとカブテリモン」

「カブテリモン..ってテントモンが進化したデジモンだがや??」


どういうことだぎゃと首を傾げるアルマジモン。うーんと一緒に首を曲げてみせるパタモン。


「とにかく、計画通りあの丘に行こう。カブテリモンもあそこに向かってるなら、僕達の行き先は間違ってないって事だよね!!」


「そうだね、タケルっ!!」


じゃ、行くよとタケルがパタモンにD3をかざすと、デジメンタルアップの声と共に、暗い夜を進化の光が照らした。











ーーーーー同じとき、賢とワームモンは観覧車の中にいた。ゲートは観覧車の一室に開いていたのだ。


「どうやら、あそこが怪しいね」


「すごい霧がかかってる....」


よし、と賢もワームモンをスティングモンに進化させた。他に誰があの丘まで行き着いているかは分からないが、時は一刻を争う。


なにせ光子郎救出計画始動から、早9時間が経過しようとしているのだ。実質光子郎が消えたのはさらに2日前の出来事。たとえ彼が無事でも、かなり衰弱しているに違いない。


そう考えた太一と京は、賢にビニール袋いっぱいのお菓子とかんぴょう巻きを持たせていた。お茶は賢が自分のを入れてきた。

ずっしりと重い右腕を踏ん張りながら、賢はスティングモンに声をかけた。


「ーーー仕方ない。気は進まないけど、スティングモン」

「分かったよ賢ちゃん。少し離れてて」


注意深くパートナーが後ずさると、スティングモンはその鋭い腕の一突きで観覧車の窓を破り、賢を抱えるとそのまま闇夜に飛び出した。

45みけ:2008/10/13(月) 23:12:54



ーーーーーーーブブブブブブ


「おっいたいた♪けーーーーーんっ!!!」


暗ーい緊迫した嫌ーな感じのする闇夜に響く、底なしの明るい声。


「ッ!!本宮ーーーー!!」


気づいた賢も羽音のする方に手を振り返す。そこには大きな黒いシルエットがあった。3つの小さな影がその上から顔を出している。


「へっへー遅かったなぁ♪あの後カブテリモンが結界破ってくれてさ、なっカブテリモン!!」

「照れますわぁ〜」


やっと顔が見える程近づいてくると、大輔がカブテリモンのかぶとをポンポンと叩いているのが見えた。他の二つの影はブイモンと女の子のようだ。


「でも、どーしてパートナーなしで進化できたんだろ??」
「それが謎だよなぁ〜」


「きっと、光子郎くんが近くにいるのよ」

呑気に腕を組む勇気のデジメンタルの保持者達の横で、確信ありげにミミが言う。彼女と顔見知りでない賢は、その真剣な顔つきに圧倒される。


ミミは大輔のDターミナルに届いたメールから、彼女なりに事態を掴んでいた。


ミミはアットホームな家庭で育ち、実の両親を亡くした光子郎の気持ちなんて分からない。しかしなぜか彼女の中では、不憫な子供であるはずの光子郎に対して怒りの炎が燃えていた。


何が過去にとらわれたままのデジモンよ、何が過去に無くした大切な人の幻影よ。そんなの、引っかかる方が悪いんじゃない!!


「とにかく、早くあの霧に入りましょ。みんな油断しないでね」

「「はいっ!!/はいな!!」」









ーーーーーー彼らのいる丘の右サイドとは反対の左サイドでも、テイルモンの進化形・ネフィルティモンにまたがったヒカリが低空を飛んでいた。


「ーーーヒカリ、あの霧....」

「うん、きっと光子郎さん達はあの中...」


目的地が分かっていてもヒカリ達が丘の下を飛んでいるのには訳があった。

ここに入ったときからヒカリが考えていたこと...


それはここの管理者、寂しさにとらわれたまま時間の流れがとまってしまっているデジモンをどうやって助けるか、という事をもう少し考えるためだ。


「でもヒカリ、そいつは光子郎をこの遊園地に誘い込んで閉じこめているのよ。きっとヤマトやイオリのことも...」


ネフィルティモンは黙り込んでいるヒカリに話しかける。ヒカリもゆっくりと口を開く。


「わかってる、確かにひどい事をしたわ。だけど....」


止まった時間の中で、ひとりぼっち...それがどれだけ寂しくて怖いことか、ヒカリは分かるような気がした。

きっとここのデジモンもそれに耐えられなくて、森に迷い込んできた光子郎さんをさらってしまったんだ..


再び口を閉ざして苦しそうに顔を歪めるヒカリを見て、ネフィルティモンもまた言葉をかける。

「ヒカリが考えてる事も少しだけわかる。ひとりは怖いことだ。ヒカリがそいつを助けたいと思うなら、一緒に考えましょう」


「ありがとう、ネフィルティモン」


そう、この子も孤独を知っているデジモンだった。ヒカリは、自分を捜してひとり放浪していたときのテイルモンの事を思い出して、優しく彼女の柔らかな背中を撫でた。




















こうして様々な思いを抱きながら、子供達はメリーゴーランドのある丘の周りに集まった。

46みけ:2008/10/14(火) 01:11:03








ーーーー頭上には星空が広がっている。

昼間は暑いくらいだった気温も幾分湿気を帯びて下がり、あたりにはあの心が沸き立つような夏の夜の匂いがただよっていた。



「ーーー少し涼しくなってきましたね」


「ええ.....」


「お店の中に入りましょうよ、風邪ひいちゃいますよ」


「大丈夫。ここにいたいんだよ」


ツノモンはベンチの上から心配そうに夫婦を見上げた。この二人は、昼間ヤマト達を見送ってから今までずっとこのベンチで待っているのだ。息子が帰ってくるのを。


「ーーー光子郎なら大丈夫、みんな助けに向かってますから」


今日何回この言葉を口にしたのか分からない、そのたびに夫婦は寂しげな笑顔を向けてきたのだが、今度は違った。

光子郎の母が、表情を曇らせたまま、遠くを見るように呟いた。


「ーーーーーー私、わからないの。あの子がこの旅行を楽しんでくれてたのか」

「おい、おまえはやっとあの子が心を開いてくれるようになったって、喜んでたじゃないか」


励ますように父親が妻の肩を抱く。しかし彼女は首を横に振る。


「私、光子郎とお土産見てたときも、あの子の気持ちがわかった気で送り出した。だけどあの子は戻ってこなかったのよ」


「それは違います!!光子郎はさらわれたんだもの!!光子郎の気持ちに関係なく!!」


ツノモンが激しく否定する。彼女は息子が家出したと思ってるのか!?


「分かってますーーーーーーただ、私、母親なのに..」


辛そうに言葉をつなぐ光子郎の母。その目に何が浮かんでいるのかは、暗くてよく分からない。


「息子を危ない所に送り出してしまったのは、私です。母親なら、それくらい勘で分かるものでしょう??」


妻の肩を抱く夫の手に力が入る。ツノモンは少し考えながら言った。


「俺、母親とかいないし子供もいないからわからないけど..光子郎のお母さんは、光子郎のお母さんですよね。」


うまく説明できずにう〜んと言葉に詰まりながらも、ツノモンは話を続ける。


「つまり、こうして光子郎の事心配してるあなたは、立派にあいつのお母さん出来てるって事です。よく知らないけど、色々事情があるっていう風に聞いてます。」


確認するようなツノモンの視線に答えて、光子郎の父が曇った表情でうなづく。


「それでも、こんなに自分のこと悩んで、心配して、大事にしてくれるご両親がいて、光子郎は幸せだと思います。あいつにとっての最高の親はあなた達なんですから、もっと自信をもっていいんですよ」


自分達の腰どころか、膝までもないこの小さな生き物の言葉で、こんなにも心が暖かくなるなんて..

光子郎の父は思う。きっと妻にも優しいこの言葉は届いているだろう。

ギュッと彼女の肩を抱き寄せると、力強く彼は言葉を発した。


「そうだ、自信をもっていいはずだよ。あいつのために僕らは2日も寝てないんだからね!」

「ーーーそうね、そうかもしれませんね」

「そうですよ」


少し顔に光が戻ってきた二人を見ながら、ツノモンもほほえみかける。


「ーーーーーーそうだわ、帰ってきたらがっつり叱ってやらないとね!!中学生にもなって知らないひとについてっちゃったんだから」

ツノモンの表情が固まる。..どうやらデジモンがひょいひょい光子郎を勧誘にでも出てきたと思っているらしい。真面目な顔でこぶしを固めている妻を見て、光子郎の父もげらげらと笑い出した。


あら何??と言った顔をしている彼女の横で、『母は強し』だなぁとツノモンも笑い始める。




光子郎がちょっぴりうらやましくなったツノモンだった

47みけ:2008/10/18(土) 14:27:28




------瞼の裏から、あたりが真っ暗になるのが分かった。ギュッとつぶっていた目を開くと、光る不思議なテントウムシも消え、ただただ広がる黒い空間の中で光子郎は空っぽな両手を感じた。


小さな手のひらには、通り抜ける風もない。手の上の生温かい空気がそのまま固まってしまったようだ。それくらい、体を動かすのがためらわれる。


考えたくない。この状況を進めたくないからだ。



それでも心臓が脈打つから、光子郎は考える。


どうして僕はあんなこと叫んだんだろう。

『----------命を


粗末にするなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』


ふとほっぺたがパリパリしているのに気づく。そうだ、しかも僕は泣いていたんだ。



光子郎は未だ管理者であるデジモンの支配下にあったが、管理者がヤマト達に応戦していたためにこのとき光子郎の思考をしばるものは緩んでいた。


なんでだろう。いつからか忘れてしまったけど、何かがなくなるのに敏感になっていた気がする。
どうしてだったかな。


知りたがりの少年は記憶の糸をたどる。


そうだ、何か大事なものをなくしたからだ。何をなくしたんだろう..


デジモンの管理下からゆっくりと光子郎の意識が浮上していく。





『交通事故で..』


誰かの声が頭に響く。


『お前の本当の両親は...』





忘れていた記憶に頭がぼうっとする。そうだ、僕の本当のお父さんとお母さんは....
無意識に頭を抑える。


完全に意識を取り戻そうとした瞬間、光子郎の心は反射的にそれを拒否した。


一度浮かびかけた彼の思考は沈んでいく。




「------光子郎」


お父さんの声がして、光子郎は目を上げて暗闇に目を凝らした。しかし相変わらずのからっぽの空間が広がっているだけだ。

押し寄せる不安で空気に向かって叫ぶ光子郎。


「どこに行っちゃったの、お父さん!!」

「私達はずっとここにいるのに。あなたが歩くのをやめないからこうなるのよ、光子郎」


非難するように響くお母さんの声。戸惑う光子郎。


「僕が、歩くのを、やめないから...??」

「そう。このままじゃお前は二度とお父さん達とは会えない」


父の声が厳しく響いた。その言葉の重みに、光子郎の不安は収まりきらないくらい大きくなっていく。


「そ、そんなの嫌だ!!」

「じゃぁ、待ち合わせをしましょう。もうはぐれてしまわないように」


まちあわせ..??なだめるような母の声に自分を落ち着かせながら少年は耳を傾ける。

「赤いお馬さんのところ。落ちないようにしっかり手を回しておくのよ」












軽やかに流れる音楽の中で、光子郎は自分の背中を引っ張る重力の手を感じながら、しっかりと馬にしがみつく手に力を入れた。

48みけ:2008/10/19(日) 14:33:22


この緊急事態に場違いな楽しげな音楽が、ゆっくりとテンポを刻みながらアトラクションを回していく。


メリーゴーランドの上の赤い馬に竹刀を振り回す男の子と、その馬に乗る少年を何とか引きずり落とそうとしている自分。

......いや、むしろ場違いなのは俺達か??

いやいや、そもそも考え事なんかしてる暇ないはずだろ!!

脳裏をかすめるばかばかしい考えを振り払うように、ヤマトは光子郎をつかむ手にさらに力を込めながら叫ぶ。


「いい加減に起きろっ!!光子郎!!!!」


しかし彼の瞼は閉じたまま、むしろデジモンにしがみつく手を強めたような気さえする。ヤマトは引っ張る手を緩めずに舌打ちをした。


「-----ッ---くそッ」


このまま長引けば、デジモンの気をひいているイオリも攻撃を受けてしまうだろう。頭の中に弟の顔が浮かぶ。


「タケルはまだなのか---------!!」


ヤマトの呟きをわずかに聞き取ったイオリは、デジモンの攻撃を避けながら叫んだ。


「----僕ならまだ大丈夫ですから、確実に光子郎さんを保護して下さい!!」




先輩と違い、イオリ本人はまだまだ時間を稼げると踏んでいた。


この赤い馬型のデジモンは、どうやらその額にはまった核が力の根源らしい。体に刻まれた黒い文様も、全てその玉から体中に伸びているし、イオリへの攻撃も今のところその玉から発する直線的な光線だけだ。


これだけなら剣道で鍛えた目で光線の軌道を見分けて間合いをとればいい。それにやはりその核が弱点らしく、竹刀ではさすがに強いダメージは与えられないが、そこを狙うだけでそいつは焦ってこちらに集中するようだ。


これなら玉を狙いながら上手く間合いをとっていれば、延々と時間を稼いでいられるというわけである。戦いの中で瞬時に分析できてしまうのが、『知識』のデジメンタルを持つイオリらしい。


しかし、イオリと光子郎の違いは年齢だった。光子郎ならこのままヤマトが人質奪還までこの戦法を続けるところを、イオリはさらにデジモンの動きを止めようと考えた。


面を思い切り核に当てれば、こいつの動きが止まったときに光子郎さんを二人で引っ張れる--------!!!


サッと発射される光線から体の軸をずらすと、イオリは助走をつけて飛び上がり、面を打とうと思い切り振りかぶった。



下を向いていた馬のデジモンが顔を上げる。




そこには光線を打ち出す直前の、なみなみとした赤い光をたたえる核があった。





空中では、しかも腕を振り上げているこの状態では避けられない。

「しまった-----------!!」





なすすべもなく恐怖で固まるイオリに、赤い光線が発射された。



「!!イオリ!!」







ヤマトの短い悲鳴と赤い光とが、軽やかな音楽と共に霧に囲まれたメリーゴーランドを覆った。

49みけ:2008/10/19(日) 16:00:04



「--------------



------ふぅーーあぶねぇあぶねぇ」

死ぬってこんなに首が苦しいものなのかとイオリが目をつむったまま思ったとき、能天気な声が頭から降ってきた。


思わず目を開けると、下でほっとしたように顔を緩めているヤマトの目線とぶつかった。


「よく来てくれたな、大輔!!エクスブイモン!!」


「遅れてすいませんっ!!間に合いましたぁーー!?」

小さく、おせーんだよとヤマトの声が上がる。

「大丈夫か??イオリ」


「は、はい。おかげさまで何とか....でも大輔さん...」


心配そうに問いかけるエクスブイモンに答えながら非常に苦しそうに大輔に呼びかけるイオリに、パートナーに抱えられながらなんだ??と明るく応じるゴーグルの少年。


「く、くび.....しまってます...」

「あ、わりっ」




「ヤマトさーーんっ!!光子郎くーーんっ!!」「遅くなりましたー!!」

ブブブブという羽音とともに現れたカブテリモンの頭から大きく手を振る二つの人影と、その横を飛ぶスティングモン。


「カブテリモンに一乗寺君!!...って、ミミちゃんまで??うわっ!!」


注意を引きつけるものがなくなって、今度はヤマトを攻撃しようと振り返る赤いデジモン。


「あ、ヤマト先輩っ!!」

「頼む!!スティングモン」

「了解、賢ちゃん」


急降下したスティングモンはそいつのあごを掴んで光線の軌道をずらす。


「!!光子郎はんの様子が変や」

「何ですって」


ミミが目を凝らすと、確かに光子郎は身動き一つしていない。デジモンにしがみついているところをみると、まだ幻影を見ているのだろうか。


「賢ー!!このデジモン一体何なんだぁ〜??見たことないぞー!!」


大輔の叫びに賢も先ほどからのぞいていたパソコンから顔を上げる。そのとき。


「それが、光子郎さんのパソコンにもデータがないんだ。十分注意しないと...」


「ッッッッこらぁぁぁぁぁ!!!!!!!!


光子郎ぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!」



あまりのトーンの大きさに、思わず一同は一人残らず顔をゆがませる。不幸にも声の発信源から至近距離にいた賢はぅゎゎゎゎと口をぱくぱくさせている。


その声の主は、はっしとカブテリモンの頭の上に仁王立ちし、両手を腰に当ててあらんかぎりの力で激を飛ばしていた。


「いつまで寝てるのよーーーッ!!!


そんな幻影なんか見なくても、光子郎くんには優しくて素敵なお父さんとお母さんがいるじゃないのーーーーーッ!!!!」


甘ったれてんじゃないわよぉぉぉとさらに鼓膜をガンガン叩く声に、うるせぇ〜とヤマトは瞳を潤ませながらも健気に光子郎の腰を離さない。


「だから何でミミちゃんがいるんだよ〜..」


ほろりと一人愚痴をこぼしていると、ピクリとしがみついているものが動いた。


はっとしたようにヤマトが光子郎を見やると、まぶたがわずかに動いている。


思わず彼が歓声を上げようとしたその瞬間、きゃぁぁぁと言う悲鳴とともに前方から強い衝撃を受けてヤマトはメリーゴーランドの床にひっくり返った。


「ミミさん!!!!」


スティングモンまでが彼女の声にひるんだとき、その隙をついてデジモンがコードを彼女に伸ばし、自身の背中に無理やり乗せたのだ。

しかしその意図が理解できない。なぜわざわざ遠くにいるミミを、しかも、背中に乗せる..??首を傾げながらもイオリはミミに向かって声をかけた。


「大丈夫ですかー??ミミさーん!!」


返事はない。



ヤマトは絶句した。




ミミも光子郎のように瞼を閉じて、光子郎につかまりながら眠っていたのだ。

50優飛:2008/10/20(月) 00:16:37
こんばんわ、みけさん!
何だか感想久し振りですね(笑)


さて、幻の夢から目を覚まし、メリーゴーランドに住まう赤いデジモンに挑むヤマトと伊織。しかし、隙を突いたつもりが逆に隙を突かれて伊織がピンチに!
そんな時、颯爽と現れてそれを助けたのは――…


…勇気と友情を受け継ぎし少年、大輔!さらに、賢やカブテリモン達も駆け付け、ミミの一喝に光子郎が…?
と思いきや、赤いデジモンの手によって、爆発少女ミミまでもが眠りにおちてしまう――!!
彼らの運命やいかに!?
ヒカリやタケル達、留守番組(笑)がこれからどう活躍していくのかも気になります!


いつも楽しくドキドキしながら読ませていただいてます♪
次回も頑張ってください、応援してますです!!

51みけ:2008/10/20(月) 20:42:09
こんばんわ、優飛さん!!


感想ありがとうございます^^楽しみにしてもらえてるなんて嬉しいです!!

そうなんですよね..(笑)ちょっと淋しい(>_<)けどまぁ頑張っていきます!!



光子郎奪還のため赤いデジモンと苦闘を繰り広げるヤマトとイオリ。


もうだめだと思った瞬間、ヒーローは遅れて登場するもの、大輔がエクスブイモンに抱えられて現れ危機を救います。


次いでメリーゴーランドに到着する賢とミミ達。眠っている光子郎にくすぶっていた叫びをぶつけたミミは、赤いデジモンに狙われて光子郎と同じく眠らされてしまいます。


光子郎達は無事に元の世界に戻れるのか!?また二週間記念で開かれ損ねた反省部屋を次に開くのは誰なのか!?(笑)


タケル達にはもう少ししたら出てきてもらう予定です♪あと実は場面的にはもうすぐ山場を迎えようとしています。

楽しんでもらえるよう頑張りますので、どうぞ最後までおつきあい下さい!

52みけ:2008/10/20(月) 21:49:30










「――――いたたぁ〜....」


もう、なんなのよと足をさすりながらミミは立ち上がり、あたりを見回した。一面真っ白な霧に覆われている。確か赤いデジモンの背中にいたと思ったのに......


『ミミ...........ミミ..........』


自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきて、少女は思わず身を凍らせる。


はっと振り向いたミミがみたものは、最初の冒険で出会ったデジモン達だった。


「レオモン...ピッコロモン..みんな......」


みんな、選ばれし子供達を守って消えていった優しいデジモン達。


みんなが、ミミと遊びたくてミミを呼んでいる。


予想外の光景に耐えられなくて、ミミは唇を噛んで目を伏せた。これの正体が何かは分かってる。こらえきれない思いが沸き上がってくる。これは懐かしさでも泣きたい衝動でもない、ただ.....


知らず知らずのうちに彼女は口を開いていた。


「...........何で、こんな事するの??」


デジモン達の呼び声が止まった。ミミは顔を伏せているので見えないが、ミミを一心に見つめているようだ。

それに気づかずに『純真』の紋章の持ち主は、ただ自分の心に身を任せて言葉をつないでいく。


「みんなは命をかけてあたし達を守ってくれた、大事な人達なの。それを――..」


小さなこぶしがその手入れされた爪が食い込むほどに握られる。


「その思い出を汚すみたいに......




みんなが全部投げ出して守ってくれたから、あたし達はこれからもっともっと頑張っていけるの!!

そんな大事な人達をこんなふうに軽々しく使わないでっ!!」


ミミの言葉とともににぶれだした幻影達は、彼女が顔を上げたときには立ち込める霧と共にデータの塵と化して消え去っていた。

白の代わりにあたりを埋め尽くすのは、漆黒のどこまで続くかも分からない闇だった。

いつもの彼女なら恐怖で動けなくなっていたかもしれないが、今は管理者への怒りと熱い使命感で暗い中でも奮い立つように感じていた。


暗闇の中で何かが見えたような気がしたのも、そのミミのまっすぐな気持ちが良い作用をもたらしたからかもしれない。


しんと静まり返り、自分の鼓動だけがトクトクと鳴る空っぽの空間の中で、『それ』は確かにこちらを見ていた。

なんだか小さいものみたいだ。


動き方を忘れてしまったかのように闇の中に立ちすくんでいる。なのでミミから距離を縮めていく。






トクトクトクトク―――――――――












――――――――――――ドクンドクン....






ミミは足を止めた。



小さい生き物との距離はミミのおおまた2歩くらい。




静かな空間の中ではそれでもなぜか相手の心臓が動く音が聞こえた。




目の前の可愛らしい友人を意外そうに映すまっくろな瞳。



そこには小さな光子郎がひとりぼっちで立っていた。

53みけ:2008/10/21(火) 17:53:12



「光子郎、くん........??」


信じられないというように目をまんまるにしてみせるミミの表情を見て、ようやく光子郎の時計は回り始める。


ゆっくりと彼の額に玉のような汗が浮かび、口がひくついた。長年のミミ経験から身についた、彼女の爆発寸前の直感というやつだ。


「み、ミミ、さん..........」

「.................」


案の定、ミミは不機嫌そうにぐいっとあごを突き出すと腰に手をやり、きつい口調で光子郎に問いただす。


「――何で帰ってこないのっ??みんなずぅーっと光子郎君を探してるのよ!!」


そのはっきりとした物言いにうっと言葉に詰まる光子郎。暗闇に響くやりとりは普段の立場と逆転しており、もはや姉と弟のそれに近い。


「す、すいません....でも....」

「何よっ」


言いにくそうにしながら光子郎は適切な言葉を探す。この女の子を納得させられるような言い方はないものか....




――いや、あるわけないか。そもそもミミさんじゃなくったって....


やっぱり少しうつむきながら、光子郎はミミと目線を合わせずに言葉を口にした。


「僕......後悔したくないんです」


「後悔??」


「はい」


ミミの頭にはてなマークが増産される。ずっともの食べてなくて頭が回ってないのかしら、光子郎くん。

そんな失礼な考えはつゆ知らず、光子郎はぽつりぽつりと言葉をこぼしていく。必要な情報を的確に伝える普段の彼の話し方とはかけ離れている、とミミはふと思う。


また彼女は、話しながらだんだんと光子郎の声がうつろに、無機質に響き出すのに気づいた。


「この世界を出たら......もう二度とお父さんとお母さんには会えない.........


...――僕が.....歩くのをやめないと」


光子郎の黒い瞳がさらに暗さを増していく。しかし声の調子には彼の感情が戻ってくる。


「僕が歩くのをやめれば、メリーゴーランドの馬の上でずっと座っていれば――」


ミミは光子郎の激しい感情を感じ取ってはっとした。


「――僕はずっと、本当のお父さんとお母さんと一緒にいられるんです..!!」






吐き出すようにそこまで言い終えると、光子郎はさらに深く頭をうつむかせた。


黙って聞いていたミミは、小さな光子郎に合わせて低くしていた体勢を静かに元に戻した。




暗い空っぽの空間は再び静寂を取り戻した。耳を済ませば、二人分の違ったテンポの鼓動を聞き取れただろう。

しかし今の光子郎にはドクンドクンと自分の心臓が大きく時を刻む音しか聞こえなかった。

54みけ:2008/10/21(火) 20:05:49


闇の中に取り残された二人の子供達は、お互いに顔を下に向け、相手の言葉を待っているわけでもないのに冷たい沈黙に包まれている。










「――――残って後悔するのは、光子郎くんの方よ」


突如発せられた言葉に戸惑って、え....とミミを見上げる光子郎。


しかしミミとの間には距離があり、おまけに彼女は下を向いたままなので表情が分からない。


ミミは静かに二の句を次いだ。


「歩くのをやめるって....どういうこと??」

どう答えたらいいんだろう。本当にミミさんが分かってないなら、あまり強い言葉を使っちゃいけないな...


「えーと....その、年をとるのをやめるっていうか....」

「年をとるのをやめるってなに??」


畳みかけるように強い調子でさらに問いかけるミミ。


光子郎の中で警報が鳴る。

まずい、怒ってる....

ミミの純真は加速する。

「ミミさん...」
「それって成長しなくなること!!??」







鋭い叫びに思わず肩をすくませる光子郎。でも彼女は何が言いたいのか分からない。光子郎はミミが『年をとらなくなること』と『死』をつなぎ合わせると思っていたが、予想外の返事が返ってきたのだ。


おそるおそるミミに目をやると、彼女は顔を上げていた。真っ赤なその顔は、熱くうるむ瞳を光らせて見せた。


「.........自分の子供の成長を嫌がる親なんて、いるわけないじゃない。そんなのまがいものだわ!!」


震えるミミの声は、しっかりとミミらしい言葉を光子郎に届ける。光子郎は初めて会ったかのように、まじまじと彼女を見つめている。


「そんな安っぽい幻にだまされなくても、光子郎君の成長を楽しみに待っててくれる人達がいるじゃない」


ちくりと胸を刺すものを感じて、罪悪感に顔を歪める光子郎。再びうつむいてしまう。


そんなうじうじしている小さな同級生に、ミミの中の火薬に火がつき、大きくはじけた。

我慢していた涙もぽろぽろとこぼれでる。


「――――いろんな事...





知りたいんじゃなかったの!!!!????」




光子郎の中に何かが走った。
















ゆっくりと彼が顔を上げると、再びひとりぼっちになっていた。しかし最初の時とは違い、不安は微塵も感じない。


ずっと迷っていた迷路の出口を、やっと見つけたような気がした。

55みけ:2008/10/21(火) 20:55:16





ゆっくりと流れる懐かしい音楽。


小さいときママが買ってくれたオルゴールの曲に、こんなのがあった気がする。


小学校に持って行って、みんなに自慢したっけ。


でも教室でみんなが聞いていたら、何だか音が変になってきて....


誰か男の子があたしのオルゴールを何も言わずに取り上げた。自分は聞いてもいなかったのに。


あの子、何て言ってたんだっけ......




「こうしろうくん.....」


うっすらとミミが瞳を開くと、横で自分を支えているヤマトとイオリが安心したように声をかける。


「ミミちゃん!!」

「..あたし...どうしたの??」

「あのデジモンがミミさんを振り落としたんです」


イオリの人差し指の先を追うと、空中戦を展開しているデジモン達が目に入った。その中心にいる赤いデジモンの背中では、やはり赤い髪の少年がうつぶせになっている。

「光子郎くん!!」

「大輔!!くれぐれも遠距離攻撃はするなよ!!」


焦るミミを押さえるようにしながら、ヤマトはエクスブイモンの背中にしがみついている大輔に向かって叫ぶ。


「分かってますって!!光子郎さんには当てません!!」


いけぇエクスブイモン!!という大輔のかけ声に答えて、青い竜のようなデジモンは敵の動きを止めようとスティングモンと敵を挟み撃ちにしようとするが、赤いデジモンはひらりと身を翻した。


「まずい!!上から逃げられたら..!!」


エクスブイモンがつぶやいた瞬間、赤いデジモンの進行方向を鮮やかな黄色い光線が貫いた。


ふいを突かれた赤馬は空中で静止する。その向こうから現れたのは...


「大輔くーん!!」

「タケル!!」


白いデジモンに乗った弟を見つけてヤマトは目を輝かせる。

.....と、空から何かが落ちてきた。


「いーーおーーりぃーー♪♪」

「アルマジモン!!」


やっとあえたパートナーに嬉しそうに手を大きく広げるイオリだったが、あまりの衝撃にもんどりうってしまった。


「いてて....」

「ご、ごめんだぎゃイオリ、だいじょぶかぁ??」

「ううん、とにかく無事でよかった!!」




そんな下の光景をにこにこと眺めるタケルを大輔は怒鳴りつける。


「バカやろう!!背中の光子郎さんに当たってたらどうするつもりだったんだよ!!」

「光子郎さんが??」


びっくりした表情を見せるタケルに、大輔のいらいらが爆発しようとしたその時、スティングモンから制止の声がかかる。


「よそ見してる暇はないぞ、あいつ何かしようとしている!!」


一同が目を向けると、赤いデジモンはこちらに向き直り、額の核を光らせている。


....ったくしょーがねぇなと大輔も頭をかいて仲間達に声をかける。


「みんな気をつけろ!!とにかく遠距離の攻撃は光子郎さんを傷つけちまうかもしれないから、やつの隙をついて押さえ込むんだ!!」


分かった!!の声とともに、えらばれし子供達とそのデジモンたちも臨戦態勢に入る。


ミミは悲しげに空中ですやすやと眠る光子郎を見上げていた。

56みけ:2008/10/22(水) 18:40:54


突如赤いデジモンは同じく赤い球状の光に包まれた。そいつの額の一点がぐるぐると渦巻いている。

どうやら核から放出されているようだ。


空中でパートナーにつかまりながら大輔達は身を固くする。成熟期に進化した甲羅をまとった巨大なデジモンも、子供達を守るべく前に進み出る。


子供達が見守る中、霧の中のその真っ赤なデジモンに刻まれていた黒い文様が一気に白に変わる。


ガタッ


「うわっ!?」

「イオリ!!」


素早くヤマトはイオリをつかんでメリーゴーランドの床から降ろした。

空中からメリーゴーランドを眺めて思わず大輔はつぶやく。


「なんだよ、これ....」


あたりは静寂に包まれていた。

流れていたゆったりとした音楽はとまり、エクスブイモンとペガスモンの下には高速のこまのように回転しているメリーゴーランドがあった。


異常な光景に目を奪われていた賢は、ピピッという小さな電子音を耳にし、急いでDターミナルを開いた。


一瞬画面を見ながら固まった賢は、カブテリモンから身を乗り出して京からのメールの内容を叫ぶ。


「い、今遊園地内のゲートが全て閉じたそうです!!」

「なんだって!?」


きっとヤマトが赤い球体を見上げる。


「俺たちをここに閉じこめるつもりらしいな」


「....ちっきしょーエクスブイモンッ!!」

「分かった!!」


エクスブイモンは大輔を乗せたまま赤い球体に向かっていく。焦ったタケルが警戒の声を発する。


「勝手に動いちゃだめだッ!!!!」


しかし大輔達は止まらない。

赤いデジモンの態勢を崩そうと体当たりを試みた。


が。


―――バチィ!!!!!!


「ぐわあああ!!!」

「エクスブイモン!!!うわわっ」


逆に態勢を崩して急降下しながら退化したブイモンを、大輔は空中でキャッチした。

そして降下する大輔をペガスモンが受け止める。


「だから無茶するなって言ったのに..」


呆れ顔で大輔を支えようとするタケルの手を大輔は振り切る。

「無茶するなとは言ってないだろ」

「同じ事だ」


ペガスモンも口を挟む。ちぇっと舌打ちしながらも、傷ついたブイモンの顔を覗き込みながら顔をゆがめる大輔。


「ごめんな、ブイモン...痛むか??」

「俺は平気だよ。どのみちあいつを止めなくちゃ光子郎も助けられないし....でも」

ブイモンはパートナーのつんつん頭越しに、自分をはね飛ばした赤い球体に焦点を合わせた。


「その前にあのバリアを何とかしなくちゃ..」

「相当の強度だったもんな、あれ」


背後の会話を耳にしながら、タケルも赤いデジモンを見つめている。そいつはあの場所から動いておらず、相変わらずその文様は光り続けている。


ゲートを閉じる以外にも何かしてるってことか??


「どうする、タケル??」

「分からない..こんなとき光子郎さんがいてくれれば....」


ギュインギュインと音がこだまし始めた。

スティングモンがバリアを攻撃している音だ。彼の技は爪先にオーラのようなものをまとわせて切りつけるので、自身が傷つくことはない。




それを見上げながらイオリはため息をつく。隣にいたミミは後輩を励まそうと声をかける。

「大丈夫よ、ああしてどんどん攻撃していけば必ずバリアは破れるわ」

「いえ、それは無理です」


きっぱりと断言するイオリに、ミミは目をぱちくりとさせる。


「え....??」

「そういうたぐいのものなら、あのデジモンはなるべく攻撃を受けないようにするはず。場所を動かないのは、かなりの自信があるからです」


もう一度深い息を吐き出すと、イオリはさらに続けた。


「あいつの目的は、おそらく僕ら全員をあいつの催眠下におくこと。僕らの逃げ道がなくなれば、あいつの管理する遊園地の中で勝ち目はありません。


しかもデジモン達の攻撃は効かず、このままではバリアの中にいる光子郎さんも助けられない」


じゃぁ....とミミは肩をいからせる。


「じゃぁどうしろって言うの!?何もしないでここで見てるしかないの!?」


「ですから....」


口を開きかけたイオリの言葉をヤマトが継ぐ。


「だから俺達は考えないといけない。
光子郎を助けて、ここからでる方法を」




ミミは口をつぐんだ。

気がつくと、バリアを壊すための攻撃にカブテリモンとペガスモンが加わっていた。

57みけ:2008/10/22(水) 19:44:27






光子郎は闇の中で気配を感じて振り返った。誰かはわかっていた。


『光子郎.........』


自分の名前を呼ぶ、さっきまでいなくなっていたお父さんとお母さんだった。


ゆっくりと体を両親の方に向ける光子郎。その口元には、幻影達には理解できない種類の穏やかな笑みを浮かべている。


しばしの沈黙の後、唐突に少年は話し始めた。




「―――ちょっと前に、今のお父さんから聞いたんだ。」



お父さんとお母さんの幻影達はぴくりともせずに立ち尽くしている。




「お父さんは優秀な学者だったって。

一度たてた仮説は、自分が納得行くまで何百回も検討し直さないと公表しないような、頑固者だったって」



淡々と光子郎は両親から目を離さずに話し続ける。まるでその姿を網膜に焼き付けるように。




「だからお父さんの理論は一度も覆されたことはなかった。


『一度自分が言い出したことに、必ず筋を通したいんだ』」




その言葉を噛みしめるようにしながら、まっすぐな瞳をお父さんに向ける光子郎。




「それが、お父さんの口癖だったって聞いた」




だから....と光子郎は目を細めて、にっこりと笑った。




「僕もお父さんの息子だから、筋を通すよ。

お父さんとお母さんからもらった命を、一生懸命大切に生きたいと思うんだ」


少年の屈託のない笑顔が最初の穏やかな表情に戻り、その瞳にしっかりとぶれ始めている両親の姿を焼き付けながら、最後の言葉を口にした。


「僕を待っていてくれる人のためにも。」






その言葉を切れ目に、少年の目の前で幻影は姿を消した。


彼らに感情があったのかは不確かだが、光子郎の口元が微かに動いたのをデータ化して飛散しながら彼らは確認した。


音声はなく、その映像から彼らは光子郎の言葉を少ないデータで何とかスキャンする。








――――あ、り、が、と、う








最後の仕事を終えると、そのデータの破片は闇に還っていった。

58みけ:2008/10/23(木) 21:52:57




一方遊園地の状況はさらに悪くなっていた。



ドドドドドドドドドド


「な、なに!?」


いきなり響きだした轟音にうろたえるヒカリ。パートナーのネフェルティモンは素早く音の原因を目で探す。

メリーゴーランドのある丘の下を飛んでいた彼女達は、今遊園地の結界のあった場所のすぐそばにいた。


ネフェルティモンの鋭い瞳は、はるか下方から伸びてくる何かを捉えた。


「しっかり捕まって!!ヒカリ!!」

「うん」


しなやかな白い羽がグンと空を切って、ネフェルティモンは瞬時に遊園地の中心にある観覧車のてっぺんに降り立った。


そこからは夜の遊園地が一望でき、ヒカリははっと息をのむ。




さっきまでヒカリ達がいた遊園地の端にそって、白い壁がぐんぐんと生えてきているのだ。一カ所だけではなく、同じスピードであらゆる方向からアトラクションを覆っていく。


いまや遊園地は、再び時間の流れを閉め出そうと防壁を張っていた。


「...何が、どうなってるの」

「これもあの管理者が始めたことなのかも。あれを見て」


蒼白な顔をヒカリは霧に包まれた丘に向ける。

真っ白なその場所には、さっきと違い赤い玉が浮かんでいた。


「何かが始まっている」


ぽつりとつぶやくネフェルティモン。その背中でヒカリは霧の塊を無言で見つめた。

そして覚悟を決めたようにパートナーの背中に置いた手に力を込めて言った。


「私達も行こう、ネフェルティモン」

「ええ。何か出来ることがあるはずよ」


再び美しい翼を広げると、軽やかにそのデジモンはペンキが綺麗に塗られた観覧車を蹴り、冷え切った空に身を投げた。


新品とは思えない人工物のきしむ音を耳にしながら、ヒカリは考えを巡らせていた。


私たちに出来ること。




今度の敵とは戦いたくない、かといって光子郎さんは取り戻さないではいられない。みんなにデジモンを傷つけないでとは言えない、だって戦いなしでの解決策が見つからない....


私達には何もできない、ヒカリは無意識に言葉を落としていた。少女の言葉を聞かなくてもなんとなく彼女の葛藤を理解していたパートナーは、優しく囁いた。


「一つだけ出来ることがあるわ。あの管理者を理解しようとするヒカリにだけ出来ること」

「なんなの....??」

「受け入れてやることよ。優しいヒカリにだけ出来ること」


その言葉は深い意味を込めていたが、ヒカリは全てを理解しようとはせず、にっこりと微笑んでその言葉を胸にしまった。

時が来ればわかることのような気がしたからだ。ただ心にその光を灯していれば道は見えてくると思った。


それだけ彼女は自分のパートナーを信頼していたのだ。


「しっかりつかまってて」

「気をつけてね」


二人は霧の中に突っ込んでいった。

59みけ:2008/10/24(金) 18:25:32



赤い球体に攻撃を仕掛けるデジモンは三匹だった。

そのうちの一体の背に乗って仲間達が懸命に攻撃する様子を眺めていたタケルは、まるで太陽に飛びつこうとしているバッタ達を見ているように感じていた。


彼らがいくら跳ねようと、太陽は決して揺らがない。


「このままじゃ埒があかない!!」


バッタの一匹...カブテリモンに乗っていた賢が声を上げた。


「このバリアは頑丈すぎる!!」

「何か..何か方法はないんか??」


スティングモンとカブテリモンも焦りのつぶやきをもらしながら、一旦デジモンから距離をとってゆっくり降下し始める。賢は顎に手をやって考え深そうに話し出そうとした。


「何をしているのかは分からないけど、こいつが今している作業を邪魔してやれば....」


彼がまだ話し終わっていないそのとき。


彼の座っていたものが急速に移動したため賢は足場をなくして空中に投げ出された。

「賢ちゃん!!」


瞬時に賢は目を白黒させながらパートナーに抱きかかえられ、空中に留まる。


「どうしたんだカブテリモン!?」


ペガスモンは脱兎のごとく霧の中を滑空していくカブテリモンを見上げた。しかし彼は答えずに、ただただスピードをあげていく。


異変に気づいた大輔も地上からカブテリモンの進行方向に目を凝らした。


何かがまっさかさまに落ちてきているのだ。なんだありゃ..??




















一直線に落ちてきたものをカブテリモンは何とか受け止めた。彼はたくさんの腕を使って大事そうに落ちてきたものを優しく覆い、それが目を開けるのを待った。


ゆっくりと黒い瞳が開かれていく。






「.....カブ..テ....リモン....??」


「光子郎はん....!!!!」


2日ぶりに目を覚ました泉光子郎は、少しやつれた顔で微かにほほえんで見せた。


「久しぶりだね....」

「どれだけ心配しとったと思ってはるんですか!!??ほんまに長いこと顔見てない気がしますわ!!!!」


震える声でパートナーを叱咤するカブテリモンに、光子郎はあっさりと言葉を返す。


「すいませんでした....でも君、僕に会いに来てくれたでしょう??」

「はい??」


分かりにくいが、カブテリモンはキョトンと光子郎に視線を注いでいる。


あははと笑って光子郎は頭をかいた。そうだ、あれは僕の夢の中の話なんだ。


「何でもないよ。それよりみんなのところへ。ただ事じゃない状況みたいだね」

「八方ふさがりですわ。でも光子郎はんが戻ってきてくれれば、あんなやつ倒すのなんて朝飯前や!!」


「朝飯前かぁ...」




光子郎は手をおなかにもっていった。




ブブブブという羽音に懐かしさを覚えながら、光子郎はふと本音をもらした。




「今誰か食べ物持ってるか聞いたら怒られるかなぁ...」


「かんぴょうまきならどっさりありまっせ♪」


かんぴょうまきかぁ..と中学二年生の光子郎はため息をもらした。

本当は何か肉が食べたいところだが背に腹は代えられない。




見下ろすと気の置けない友人達が、彼らに向かって手がちぎれんばかりに手を振っていた。

60舞台裏:2008/10/24(金) 22:54:14
舞台裏に設けられた一室。常に新人達には厳しい反省部屋としておそれられているが、そこはベテラン達にとっては単なるたまり場でもあった---------------




ガララ

光子郎「あ、太一さん」

太一「よぉ、うまそうなの持ってんじゃん。俺にもくれよ」


光子郎はひとり腰かけ机の上に大量のかんぴょう巻きを広げていた。太一は椅子を引きながら許可をとらずにひとつかんぴょう巻きを手に取る。


太一「にしてもすげー量だなぁ。80本くらいあるんじゃないの??」

光子郎「100本です。(もぐもぐ)」

太一「ええ!?いくら2日間寝てたって言ってもそりゃやりすぎだぜ〜!!あ。でも確かこれ持たせたの俺なんだっけ。はははは!!わりーな光子郎っ!!」


ドンといきなり背中を叩かれてかんぴょう巻きをのどに詰まらせむせる光子郎。太一は気づかずにしゃべりつづける。


太一「でもおまえやヤマトはいーよなぁ外行けてさぁ。俺なんか結局母さんに連れ戻されて部屋で勉強させられてんだぜ??」

光子郎「(お茶をごくごくと飲んでから)..でも空さんや丈さんそっちにいるんですよね??」

太一「そーなんだけどさぁ〜あいつら口うるさいったらねーんだよ!ちょっと人が休んでるともう『落ちるわよ〜』『中卒よ〜』とか。ほっといてくれってんだよなぁ」

光子郎「まぁ太一さんの場合ほっとかれたらほんとに落ちちゃいますからね。空さん達が一緒にいてくれれば安心です(もぐもぐ)」


空「ところがそうでもないのよね〜」


ガララ


太一「何だよ空まだいたのかよ。もう10時過ぎてるぞ??」

空「いいのよ明日は学校も休みだし。はぁ〜疲れちゃった」


空、伸びをしながら太一の横のいすに座り大きく伸びをする。


光子郎「なにかあったんれふか??(もぐもぐ)」

太一「分かった。うちの母さんだろ」

空「大当たり。ほんとはあたしと丈先輩も遊園地に向かおうとしてたんだけど、太一のお母さんにつかまっちゃって」

太一「母さん空と話すの好きだからなー。そういえば昼間俺が勉強してるときも空だけリビングに呼ばれて......ってもしかして今までずっと......??」

空「もう!!太一がお母さんにあんなに心配かけるのが悪いのよ!!ちょっとは親孝行したらどうなの??」

太一「母さん、何か言ってた..??」

空「何かもなにも、太一は今の女の子から見たらどうなのか〜とか、今時の中3は整髪剤とか使ってないのか〜とか」

光子郎、かんぴょう巻きを吹き出す。

太一「よけーな心配しすぎなんだよ母さんは!!」

空「そりゃ心配するわよ、だって..」

太一「へっ!!どーせ俺とヤマトは違いますよ」

空「そんなこといってないじゃない」

光子郎「いやでも確かに太一さんとヤマトさんは違いますよ(あたりを綺麗にしながら)」

太一「光子郎ってめえこのやろー!!」


太一は光子郎の襟元を掴む。


光子郎「ち、違いますよ!!二人は違っていて当たり前だと言う意味です。違う人間なんですから」

太一「なんだ。早く言ってくれよ〜」


太一、光子郎の襟元を放す。


光子郎「全く単純なんだから....」

空「そうそう。それで丈先輩はつきっきりで太一に勉強教える羽目になっちゃって」

太一「そういえば丈のやつどこ行ったんだ??撮影終わったらすぐいなくなっちゃってさ」

光子郎「丈さんなら遊園地の方に来てみんなでしゃべってましたよ。休み時間の間だけですけど」

空「そういう時間の使い方もあるのねぇ」

太一「なにぃ!?じゃぁ俺だけずっと撮影の後も勉強してたって言うのかよ!!どーなんだよ光子郎!!」

光子郎「え、僕!?そ。そりゃぁ太一さんは受験生なんだし勉強しないと..」

太一「俺一人で置いてこうってのか!?そーいうことか光子郎!?」


にじりよる太一。距離をとる光子郎。


空「あら。光子郎くんもうかんぴょう巻き全部食べちゃったの??」

光子郎「あ、はい!!みなさんも食べたいですよね!!僕ちょっと京くんにもらってきます!!」


ガララ


太一「おい待てよ光子郎っ!!」


光子郎と太一走って出て行く。残される空。


空「もう太一ったら。暇だからってふざけすぎなんだから..」


ふわーあと欠伸をする空。


空「やだ!!もう11時になるじゃない!!太一〜!!」


椅子をしまい、立ち上がる空。


ガララ


扉を開けて振り返る空。


空「それではみなさん、本編の続きもお楽しみ下さい。ではおやすみなさい♪」


ガララ

61みけ:2008/10/26(日) 12:57:09



―――P.M.9:53



遊園地は白い防壁に埋まりながら、再びその姿を夜のデジタルワールドから隠そうとしていた。


もはや暗さを感知しなくなった街灯は、ポッポッとその灯りを吹き消していく。




一カ所だけ相変わらず霧に包まれたままの丘の上では、最も大きな変化が起きていた。

ずっと拘束されていた光子郎の復帰は、えらばれし子供達に志気を取り戻し、また(大輔とブイモンの見立てでは)赤い馬型のデジモンに焦りをもたらしていたのだ。


とにかく光子郎は状況を把握するため、メリーゴーランドの前に皆で腰を下ろし今後の対策を練っていた。その中にはさっき到着したヒカリとネフェルティモンもいる。




光子郎はガブリと一口かんぴょう巻きをかじった。

「大体のことは把握できたと思います。まずはあのデジモンのデータですね、一乗寺君」

「あ、はい」


隣に座っていた賢は黄色いパソコンを差し出す。


「でもミミさんのデジヴァイスをセットしても、エラーになってしまうんです」

「そうですか。実はこの手のデジモンは普通のやり方ではだめなんですよ」


ミミさん、と光子郎はミミのデジヴァイスを受け取って愛用の機械に取り付け、カタカタと作業に入った。

「特殊なデジモンが相手のときは、デジヴァイスのプログラムの方から展開してやるんです。....よし、出来た」


どれどれと大輔やミミが光子郎の後ろに並ぶ。確かにパソコンの画面にはデジモンのデータが表示されている。


「クーティェンモン:完全体、データ種。やはりイオリくんの言うとおり額の核に力が集中しているようですね」


光子郎はふと目を細める。クーティェン、中国語で『古い日』か....


イオリが顔を赤くしていると、ヤマトがデータ種か..とつぶやいた。


「そうは思えない凶暴さだな」

「一時的に暴走してるのかもしれません。何分古いデータみたいだし..」


「そんな事まで分かるんでっか??」


一旦退化したテントモンが身を乗り出す。

「うん、何だかこれオリジナルのデータみたいで....最後に更新されたのは10年前になってる」

「10年....」


ぽつりとつぶやくヒカリに気付いて、隣のタケルは気遣わしげに彼女を見やる。光子郎はさらに続ける。


「あとあの赤いバリアの事なんですが、カブテリモン、スティングモン、ペガスモンの連続攻撃にも破れなかったんですね??」


「ああ」

「びくともしなかった」


スティングモンとペガスモンがうなづく。うーんと唸りながら、一度目を離した画面に光子郎は再び視線を戻した。


「残念だけど、データにはバリアの事は載ってない....確かクーティェンモンは額の核から光線を出して攻撃してきたんでしたね」

「はい。」


イオリの返事に光子郎は頭を上げた。


「では、こういうのはどうでしょう??奴に攻撃をさせる瞬間を作って、光線が発射された直後にその軌道を使って核に攻撃するんです」

「そうか、そうすればクーティェンモンは攻撃のために自ら穴を作ってくれる..!!」


はっとしたように賢は隣の先輩の顔に目を向けた。そうです、と光子郎は後輩に向かってうなづく。

ヤマトは考え深そうに腕を組む。


「それなら同時に弱点である核も突ける、か....やっぱり光子郎が入ると違うな!!」

「ま、待ってくれよ」


大輔がパソコン越しに目を伏せているヒカリを見ながら制止をかけた。


「ヒカリちゃんの言ってたことはどうなるんだよ!!それじゃ一発であいつKOしちゃうんじゃ..」


「だからこの作戦がいいんですよ」


したたかそうにニヤッと笑ってみせる光子郎に、大輔は??と首をかしげる。ヒカリ達も困惑の色を見せている。イオリだけがにこにこと説明を引き継いでみせた。


「つまりですね、この核さえ壊してしまえば悪さをする力はなくなるって事です。核は何かをするときだけ光りますから、生命維持には何の支障もないはずです」

「そういうこと」


にこにこと笑顔を交わす『知識』の子どもたちにつられて、一同にも笑顔が広がる。

62みけ:2008/10/26(日) 14:21:51
ヒカリの明るくなった顔を見ながら光子郎も話す。


「僕もなるべくあのデジモンを傷つけたくはないんです。あいつの催眠にかかっているとき、危害を加えたいんじゃなくてただ寂しいだけなんだって事を感じたから。」


あの馬は、僕にずっと背中に乗っていてほしいと思っていた。きっとクーティェンモンと僕はすごく似ていたんだ。


「僕には暗闇から連れ戻してくれるひとがいてくれたけど、クーティェンモンにはそれがいなかったんです。いや、いなくなってしまったのかも....」

「だから、誰か一緒にいてくれるひとが欲しかったのか....」


タケルも目を伏せてつぶやいた。自分にもわかるような気がしたのだ。ヒカリはきっぱりと口を切った。


「なら、早く連れ戻してあげましょう。そしたら私達、力になってあげられるよね」


にっこりと笑うヒカリに、ブイモンもじたばたと手足を動かした。


「そうだよ〜!!早くクーティェンモンも何とかして、みんなで晩飯たべようよ〜!!」

「おれも腹減ったがや〜」


アルマジモンもすまなさそうに退化してしまった。そんなパートナーを抱き上げながら、困りましたねぇとため息をつくイオリ。そう言えば自分もおなかが減った。


「あの、皆さんこれ食べて下さい」


優しくコンビニの袋を輪の中心に押しやる光子郎に、ミミは不満げな声を上げた。


「でもこれ光子郎くんの分じゃない」

「いいんですよ、僕これでも結構食べましたから」


やったー!!とブイモンは袋に飛びついた。おいブイモンと顔をゆがめる大輔も、そのうまそうな様子に思わず表情を緩める。それを合図にかんぴょう巻きは次々と一同の手に渡っていく。

最後までしぶっていたヤマトも、きゅ〜とおなかが鳴るのに耐えられず、一本だけ手に取った。




「僕達は電車の中で軽く食べてきたから大丈夫」

「そうね、ネフェルティモン」

「ええ」

「僕達で先に光子郎の作戦を試してみよう」

タケルとペガスモン、ヒカリとネフェルティモンは立ち上がった。


「僕らも太一さんのお母さんに食べさせてもらってきたし」

「助っ人だからね」


賢とスティングモンも身を起こした。それを見て光子郎も立ち上がる。


「ではこのメンバーで役割分担しましょう。幸いみんな飛べるデジモン達ばかりだし」

「ちょーっと待ったあ!!」

「おわっ」


まだかんぴょう巻きを口いっぱいほおばる青いパートナーをひっつかんで、大輔もそのメンバーの中に飛び込み、ちゃっかりヒカリの隣をマークした。光子郎は目を丸くし、賢とヒカリは呆れたように笑っている。

ヒカリのもう片方の隣からはタケルが驚きもせずに顔を出した。


「ゆっくり食べてればいいのに」

「なーに言ってんだよ、最終決戦におまえらだけじゃ不安だろ??」

「....別に戦うってわけじゃないと思うけど」

「〜〜分かってるよっ!!余計な傷つけ合いを避けるための作戦だよね、ヒカリちゃん♪」


頭の後ろで腕を組んでみせるタケルに大輔も応じ、ヒカリに最高の笑顔で笑いかける。そうね、と笑顔を返すヒカリに大輔は再びやる気が燃えてくるのを感じた。一方タケルは苦笑いをしながらそのやりとりをみている。




「全く緊張感がないんだから」

「ほんとに皆さんにぎやかでいいですね」


その様子をながめながら賢と光子郎も穏やかな顔をしている。光子郎は懐かしい気持ちで、自分が目を覚ましたのをやっと実感していた。


この楽しいメンバーみんなで早くリアルワールドに戻らなくちゃ。

赤い球体を見上げながら思う。


「――さぁ、皆さん行きますよ」


「「「「はい!!!!」」」」


子供達は各々パートナーと共に作戦に乗り出した。

63みけ:2008/10/27(月) 01:10:36




燃えるような赤い色の世界を見つめながら、そいつは全神経を自分の家全体に集中させていた。


早く家中の扉を、窓を閉めなくちゃ。この人達が帰ってしまわないように。この人達は僕の寂しさをなくしてくれる。

そうだ、帰らせてはいけない。

帰らせない。


――彼の思考は長年の孤独の中で、柔軟性をなくしてしまっていた。さびついた心は、一度方向を決めるとその先しか考えられないようになっていた。


そうだ、もう寂しいのは嫌なんだ。

この寂しいのをなくすのを邪魔するものは、何が何でも排除しなくては。

例えそれが目の前の人達でも。

だって、寂しいのは嫌なんだから。




彼の家を、生えてくる白い壁が外の世界と遮断する。今まで彼がここまで自分の力を駆使したことはなかった。


....というのも、今まで一度にこんなにたくさんの人間が彼の家に入ってきたことがなかったからだ。それもデジモンを連れて。


実は彼、クーティェンモンは、デジモンと言うものが何か理解をしていなかった。彼の生きてきた中で見たこともないフォルムの不思議な力をもったその生き物達は、いささか彼を怖がらせていたのだ。


しかし今となっては、彼は恐れをなくしていた。元々寂しさ一色で埋め尽くされている彼の内部には、その種類の恐れは干渉し得ない感情だった。

彼が恐れているのは孤独だったからだ。


そして何年か前、孤独だった彼が自分の心を救う方法として考えついたのが、時間の経過をなくすことだった。


誰かといたときから時間がたつのを感じなければ、それは孤独ではない。


そう考えたクーティェンモンは、その望みの強さからそれを実現させる力を得、時の止まった遊園地を作ってきた。


しかし彼がやはり孤独に耐えられずに誰かを遊園地に招き入れる度に、クーティェンモンが気づかない間に時は少しずつ動いていった。

そして光子郎達を招き入れたとき、クーティェンモン自身が大きく変わっていってしまったのだ。次々と自分の催眠から覚めていく子どもたちに、クーティェンモンは孤独への恐怖をさらに強くした。そして、自分でもわからぬ間に、孤独と言うよりもこの子どもたちに対する執着心が芽生えて始めた。


そのため彼は、攻撃される危険がありながらもその場で自分の家を閉じきるという暴挙にでた。


それでもクーティェンモンのさびついた心は、ゆがんだ時間の流れを歩んできたために、本当の望みと反して、『寂しいのをなくすのを邪魔するもの』は何が何でも排除する、という信念を優先させようとしていた。


それが子供達であってもだ。




そんな危険な思想に侵されているクーティェンモンの視界に、ふと気になるものが映った。

64優飛:2008/10/27(月) 18:35:22
みけさん、こんばんはッ!
たくさんの仲間達の声、ミミの叱責、テントモン(カブテリモン)の存在と叫びに、とうとうデジモン・クーティェンモンの夢の呪縛から目覚めた光子郎!
お腹が空いた…そんな緊張感の無さも空腹を満たすと一変し、いよいよいつもの参謀らしい活躍っぷりを見せつけてくれた光子郎に、一同の顔には喜びの色が浮かび、また士気が上がりましたね。
一方、焦りを見せるクーティェンモン。


クーティェンモンは本当は傷つけたいのではなく、ただ寂しいだけなのでは?


捕らえられて感じたその感情に、光子郎が打ち立てた作戦とは…!
クーティェンモンの想いと子ども達の想いは、激突してしまうのか!?
毎回楽しんで読ませていただいてます、次回も頑張ってください!
応援してます!!o(^-^)o

65みけ:2008/10/28(火) 00:22:26
優飛さんこんばんわ!!って言ってもちょっと遅すぎますね;
いつも温かいコメントありがとうございます^^すごくやる気をもらってます。



やっと光子郎も目が覚めて、物語も終盤に動き出しました。


クーティェンモンの心情は正直どのくらい書こうか迷ったんですが、ちゃんと書いとかないと伝わらないかなと思ったら逆にやりすぎた感があります..笑゛

とにかくクーティェンモンの孤独から逃げたい気持ちが2方向から彼の中でぶつかって、矛盾が出来て暴走し出してるって事がわかってもらえたら嬉しいです。


最終作戦の相談も済み、選ばれし子ども達も行動開始です。

彼らはどのような決着を選ぶのか、そしてクーティェンモンの頑なな心はどこへ行くのか。


試験前なんで更新遅くなるかもしれません....が逆に毎晩ペースになるかもしれません笑゛自分でも分かりませんが、とにかく頑張っていくんでよろしくお願いしまっす!!

66みけ:2008/10/28(火) 19:42:36


クーティェンモンの視界にとびこんできたのは、ひゅっと滑るようにメリーゴーランドに飛んでいく2匹のデジモンだった。

背には子供が乗っている。


その子供達の合図で、デジモン達の足元から金色の線がほとばしる。その光の縄は大きく円を描きながらメリーゴーランドを囲んでいった。


クーティェンモンは目を細めた。

さっきまで自分の催眠下にあったはずの少年の声が聞こえる。


「いい調子ですよ皆さん!完全にはメリーゴーランドを止めないで下さい!!」



大輔、賢、タケル、ヒカリ以外の選ばれし子ども達とそのパートナー達は、メリーゴーランドから少し離れたところで一カ所に集まっていた。

パソコン片手に指示を出す光子郎の横から、イオリが不可解そうな顔で先輩を覗き込む。


「どうしてですか??ヒカリさんの証言と合わせて、あのメリーゴーランドが白い壁を作り出してるものと分かったのでは??」


「ええ、でももうひとつみんなの話を聞いて気づいたことがあるんです」


ちらと光子郎がメリーゴーランドの方に目をやると、ペガスモンとネフェルティモンの光の縄がメリーゴーランドから繰り出された大量のコードによって断ち切られていた。イオリも気がついてあっと悲痛な声をあげる。

一方光子郎はのんびりとしたふうにパソコンの画面に顔を戻し、キーをいくつか打ちこんだ。


「大丈夫、想定の範囲内ですから。このままクーティェンモンの次の行動を待つ間、説明します」


ヴンとパソコンの画面が鳥瞰図に切り替わる。デジタル化されてはいるが、画面を覗き込むイオリとアルマジモンにはどこだかすぐ分かった。


「この遊園地だぎゃ!!」

「正解です。それと、さっきイオリくんのD3を調べさせてもらいましたよね??」

「あ、はい」


思わずD3を握りながら、イオリはパソコンをまたいじりだした光子郎に真剣なまなざしを向ける。

光子郎は湧き上がる好奇心を隠しきれないように目を光らせた。


「実はD3は特殊なデータの流れのようなものを感じ取って、マップに記録していたんです。これを乗せると...」


ピピッと青い線が地図に書き込まれた。イオリが通ってきた遊園地のアトラクションから丘の上までまっすぐ走っている。

イオリは興味深そうに画面を覗く。


「....これって他のデジヴァイスにも??」

「記録されていたんですよこれが」


スイッチが入ったようにキーボードを打ち込む光子郎はどこか嬉しそうだ。一人分ずつの線が次々と描かれていき、全ての色とりどりの線は丘の上へと集結していた。


感嘆するイオリとアルマジモンをよそに、満足そうに光子郎はパソコンから顔を上げ、結論を口にした。


「つまり、このメリーゴーランドはこの遊園地全体を司るメインコンピューターの役目をしているわけです。ですから完全に動きを止めてしまえばそれこそ遊園地の機能そのものを失ってしまいます」


「なるほど。そしたら中にいる僕達も危なくなってしまうわけか」


イオリはやっと納得がいったように手を打った。その側でじっと聞いていたアルマジモンは心配そうな表情を浮かべている。


「それならあいつがメリーゴーランドを止めようとしたら、どぎゃーするがや。あいつは俺たちを閉じこめようとしとるんだぎゃ??」


光子郎は、そうですね....とクーティェンモンを見上げた。赤い球体の中で、馬は体に白い文様を浮かび上がらせて、相変わらず宙に浮かんでいる。

ゆっくりと視線をアルマジモンに戻すと、光子郎は緩やかな調子で言った。


「それはないでしょう。人間だったらあるかもしれませんが、デジモンにはそういう自虐的な思考はないとみていいと思います」

「きゃぁぁ!!」


突然の刺すようなヒカリの悲鳴に全員素早くメリーゴーランドに顔を向けた。


コードが光の縄だけでなく、それを繰り出すデジモン達まで襲いだしたのだ。

67みけ:2008/10/28(火) 21:17:03


すぐにペガスモンが光線を発してネフェルティモンに迫るコードを断ち切る。

クーティェンモンも焦ってきたみたいだ。タイミングを待っていた光子郎も、パソコンを抱えたまま立ち上がって叫ぶ。


「皆さん次の行動に!!」


その声を合図に、ペガスモンとネフェルティモンはコードから逃げるのをやめてメリーゴーランドに向き直り、その屋根に向かって攻撃を始めた。

その様子を見ながらよしとつぶやく光子郎に、ミミは何がよしよとくってかかる。


「あれじゃタケル君達後ろががら空きじゃないの!!」


なるほどミミが言うように、2匹は無防備にもクーティェンモンに背中を向けてしまっている。

それにクーティェンモンも気づいたのか、すぐさま球体から大量のコードの束が噴出してきた。
黒々としたコードの固まりがシュッと2匹に迫る。

「―――――しまった....!!!!」


誰かの焦る声が響いた....

















「―――――――......??」

思わず顔を覆っていたミミは、何の物音もしないのを不思議に思い、ゆっくりと細い指を瞼の上からずらした。

見ると呆れたように光子郎が気の抜けた笑顔を浮かべている。


「―――――――なんちって」


赤い球体から突き出たコードの束は、ことごとくエクスブイモンのたくましい腕によってくい止められていた。

その背中には大輔が余裕の表情でつかまり、いたずら好きな彼はぺろりと舌を出した。


「もう、大輔くん。分かっててもびっくりするじゃない」

ヒカリがネフェルティモンの上から苦笑したまま振り返る。

「悪い悪い。でもしっかりヒカリちゃんは守るからね♪」

「全く....調子いいんだから」


満面の笑みをヒカリに送る大輔を横目に見ながら、タケルはペガスモンの上で小さくため息をついた。


「ほら大輔!!ちゃんとつかまってろよ」

「おっ!!そーだった」


視界の端で光子郎が自分を急かすのを目にしながら、大輔はエクスブイモンにつかまる手にギュッと力を込めた。


エクスブイモンの胸のあたりに光が集まっていく。大輔の勇ましい声が響きわたる。


「よしっエクスブイモン、そのままメリーゴーランドを破壊するんだ!!」


コードを手にしたままくるりと青い竜はメリーゴーランドの方に向き直った。

胸の光がXの形に定まっていく。




ゴクンと隣の光子郎がつばを飲み込む音がして、イオリはなんとなく彼を見上げた。随分と緊張した顔をしている。




―――今にもエクスレイザーが放たれようとしたそのとき、大輔達の背後でクーティェンモンの額の核がひときわ強く輝いた。




「今です!!!!」


ひっくり返りそうな光子郎の叫びに、赤い球体の前にいた3匹のデジモン達はサッと身を翻す。


その瞬間、赤い光線が高速に回転するメリーゴーランドに向けて発射された。


即座に球体の後ろに潜んでいたスティングモンと賢がクーティェンモンの前に回り込む。




一同が固唾をのんで見守る中、スティングモンの鋭い爪の一突きが、攻撃を終えたクーティェンモンの額の玉を貫いた。

68みけ:2008/10/29(水) 20:39:37


「やったぁ!!」

「えらばれし子供達なめんなよっ!!」


勝利の喜びに歓喜の声をあげる子ども達。空に浮かぶ赤い球体は消え、賢とスティングモンの目の前でクーティェンモンは丘の下に落ちていく。

ヒカリはその光景に、嬉しさをかなぐり捨ててネフェルティモンに声をかけ、どんどん小さくなるその赤い子馬めがけて一直線に飛びだした。


彼女達が丘の縁まで到達しようとしたその瞬間、突如グラリとした違和感に襲われて思わず停止する。

「な、何!?」


未だ手を取り合って喜んでいた子供達もぴたりと動きを止め、眉をひそめた。

片時も動かず一部始終を観察していたヤマトが警戒の声を張り上げる。


「まずい!!みんなゲートに向かって逃げるんだ!!」


見るとクーティェンモンの最後の一撃によって、メリーゴーランドの屋根は砕け、今にも動きを止めようとしていた。

メリーゴーランドに反比例して遊園地は大きく揺らぐ。


光子郎はカタカタと愛機を駆使して素早くゲートの安否を確認する。


「ここから近い遊園地内に開いているゲートがあります!!」

「きっと僕達が入ってきたところだ!!」


賢とスティングモンが顔を見合わせる。ヤマトはすかさず二人に先頭を行くように指示を出した。

光子郎やイオリ達もカブテリモンの甲にいそいそと登っていく。スティングモン達はすでに観覧車方面と思われる霧の中に飛び上がっている。

「おーい俺達も行くぞー」

「うんー」


大輔に返事をしながらもタケルはキョロキョロとあたりを見回していた。

やっとヒカリの姿を遠くに見つけたタケルは、どうしてあんなところにいるんだろうと首をひねりながらも大声で呼びかけた。


「ヒカーリちゃーん!!僕達も急ごう!!」

「う、うん」


遠くからでも分かる彼女の曇った表情に、タケルとペガスモンは素早くネフェルティモンに近寄った。タケルは深刻そうにヒカリに尋ねる。


「どうかした??」

「クーティェンモンが....」


ヒカリの視線は霧の中に釘付けになっていた。すでにクーティェンモンは丘から落下した後だったのだ。

状況を察したタケルは唇を噛んだ。悪いデジモンではなく、クーティェンモンはただ寂しがっていた可哀相なデジモンだったのに....


しかし今は複雑な感傷にひたるよりも自分達のここからの脱出が先決だ。彼らが話している間にも空気の振動が大きくなってきた。

ぱっと顔をあげると、タケルはうつむいているヒカリに視線をおいてきっぱりと言った。


「行こう。今は悲しんでるときじゃない」

「二人とも急いで!!」


光子郎の必死な声が耳に入る。ペガスモンとネフェルティモンはパートナーがつかまっているのを確かめると、グンと空を切った。






カラカラカラ.....




揺れる大気を感じながら、空っぽのメリーゴーランドは壊れたおもちゃのようにゆっくりと回転を止めた。


それにあわせて丘に立ち込めた霧も徐々に晴れていく。同時に遊園地のアトラクションも次々と姿を変えていった。


グラグラと揺れる空を疾走するデジモン達とその背中の子供達がみたものは、入ってきたときの真新しい遊園地とは違い、ボロボロの古い娯楽施設だった。


クーティェンモンのまがいものの時間の流れがはがれていく。

69みけ:2008/10/29(水) 21:41:25


遊園地の上空を飛ぶえらばれし子供達の目のまえに、光子郎が最初にみたおんぼろの観覧車が広がった。

もはやこの機械も動いてはいないようだ。

吊り下げられたたくさんの箱の中に、一つだけ窓ガラスが割られているものがある。

「あそこだね、賢ちゃん」

「急ごう!!」


賢とスティングモンはまっすぐその中に突っ込んでいく。


しかし。


「うわあっ!!」




観覧車は一瞬のうちに分解して散ってしまった。すでに遊園地の崩壊が始まっているのだ。

スティングモンと賢は途方にくれて仲間を振り返った。


「遊園地の入り口へ行きましょう!あそこならメリーゴーランドから遠いし、崩れるのが遅いかもしれません!!」

「そうしよう!!迷ってる暇はない」


イオリの提案ですぐに一同は全速力で飛び始める。一応他のゲートを調べようとしていた光子郎は、それならとパソコンの画面を閉じる。

そのため彼は、入り口とは別の遊園地内のゲートが一つ静かに消え去った事に気づかなかった。






デジモン達の足元で、風が砂をまき散らすようにアトラクションが分解していく。


光子郎達が両親の幻影と歩いた並木道が消えていく。 その上をまっすぐ出口に向かって全速力で進む子ども達。


出口の白い大きな門が迫った。

力強く羽ばたくカブテリモンの頭上で、ふとミミは後ろを振り返った。




丘もメリーゴーランドも観覧車も他のアトラクションも、何もかもなかった。遊園地の外に広がっていたはずのデジタルワールドもそこにはなく、ただただ黒い闇が押し寄せていた。

まるで小さいときの姿の光子郎と話した幻覚の中のようだ。


その黒い虚空は、今にも彼女達を押しつぶすかのように見えた。


「急いでーー!!!!」




ミミのつんざくような悲鳴が響き渡った直後、彼女はぽーんとカブテリモンの背中から放り出された。

目が点になっているミミのほっぺたのしたには、ふかふかした土のクッションがあった。

その隣で同じく地面に投げ出された光子郎が身を起こす。


「こ、ここは....」

「お、重いでんがな光子郎はん」


彼のおなかのしたからテントモンがのそのそと顔を出した。

やった、元の世界に戻ってこれた....


安心感で気を失いそうになった光子郎の前に、黒い人影がたった。あたりは夜のようで、疲れているのもあるが余計に顔が見えにくい。

「あ、の....」

言葉を発しようとした光子郎は、いきなり暖かい感触に包まれた。彼は自分の顎の下で、母親が肩を震わせて泣いているのが分かった。


母の肩越しに、腕組みをして仁王立ちしている父親の姿も目に入った。



「おかえり。おかえり光子郎」




かすれた母の声に、光子郎は体の力が抜けるのを感じた。


瞳に熱いものがあふれてきて、ゆっくりまぶたを閉じながら息子も言葉を返した。




「―――ただいま」




長い長い3日間を終えて、光子郎はやっと心地よい眠りについた。

70みけ:2008/10/31(金) 18:01:28


泉親子の再会を暖かく見守っていた子供達は、長かった1日の終わりにようやく一息ついた。


自分よりも大きな息子をしっかりと抱きしめている母を眺めながら、ミミはアメリカにいる自分の母を思い出していた。


いつも日本のお土産は買っていくけど、今度は何か特別なものをプレゼントしてあげようかな。

もちろんパパにも。


思いにふけるミミの背後でパートナーを手にたたずんでいた賢は、光子郎の父が眼鏡の奥に涙をためているのに気づいた。


気の利く彼はそっとポケットからハンカチを取り出して、声を押し殺して泣く光子郎の父に差し出した。




光子郎が寝入ったのを見届けて、ヤマトも大きく伸びをする。

「ふわーあ、もうすっかり夜中か」

「お疲れ、ヤマト!!」



ヤマトの足下には、今朝と変わらぬ優しげな目つきでツノモンが帰ってきたパートナーを見上げていた。

ヤマトは顔をほころばせて彼を抱き上げた。


「ツノモン!!心配したんだぞっ!!」


「それはこっちのせりふだよ!!ま、ヤマトならうまくやるって分かってたけどさ」


にやっと笑うツノモンにつられて、ヤマトも疲れがふっとんだようにはははと明るく笑った。




「よかったね、タケル」

「そうだね」

そんな兄を遠目に見ながら、タケルもふっと笑顔を浮かべた。帽子の上からパタモンはいたずらっぽく彼を覗き込む。


「----もしかしてタケルも早く帰りたくなっちゃった??」

「〜〜パタモン!!」

「あはははっごめんごめーん♪」


鼻息を荒くしてみせるタケルの長い手から逃れようと、からからと笑いながらパタモンは夜の空に舞い上がった。




こんななごやかな雰囲気に大いに満足して達成感を味わっていた大輔は、ふと人数が足りないのに気がついた。


イオリとヒカリとそのパートナー達が見あたらないのだ。


焦って後ろを振り向いた大輔は、鬱蒼と続いていた森が彼の背後で終わっているのに気がついた。だんだんとまばらになっている木々の間からわずかに差し込む月の光に照らされて、森の出口に並んで立つ2人と2匹が浮かび上がっている。


微動だにしない彼らを不思議に思いながら、大輔はひょいと足元のチビモンを抱き上げて森の奥に進んでいく。


足を突き出す度に柔らかく地面が沈むのを感じながら、仲間の背後までくると声をかけた。


「どうしたんだよふたりとも」


大輔が不思議がるのも無理はない。イオリとヒカリは何もない落ち葉の山を見つめていたのだ。チビモンが納得いかなそうに首を傾げる。


「落ち葉??今夏だよなぁ大輔。大輔??」


大輔も一歩踏み出して、広々とした空き地を見渡した。大輔達の後ろまで続いていた木々のトンネルの中とは違い、開けた空には星がちらばっていた。




「――ここ、だったのか」

「ええ」


ヒカリが寂しげに答える。

そう、そこは子供達がついさっきまで冒険していた場所だったのだ。クーティェンモンが造った遊園地は、跡かたもなく消え失せていた。


「こんなに何もなくなっちゃうとはね..」


テイルモンもぽつりとこぼす。彼女の横では幼年期に戻った小さなデジモンが、無言のパートナーを心配そうに見上げていた。


彼には自分のパートナーがまだ幼く、その大人びた表情の裏に父の面影が今もちらついている事が分かっていたのだ。


「イオリ....やっぱりさびしいんか??」

「いえ、そんなことは。」


イオリは目線を前に向けたまま小さく答えた。目の前に広がる空っぽの土地から吹く湿った風が、優しく子供達の髪を撫でていく。

少し間を置いて、もうひとつイオリがつぶやいた。


「ただ....何となくクーティェンモンが可哀相に思えて。僕も幻覚の中で、ちょっとだけあいつの気持ちが分かったから....」


ヒカリも静かにうなづいた。


「そうね....でも、仕方なかったのよね」


ヒカリはまた寂しそうにうつむいた。イオリも黙って空き地を見つめたままだ。


大輔の苦手な痛い沈黙が流れるが、彼はおとなしく夏の生暖かい風が空き地を吹き抜けるのを感じていた。風がくるくると季節はずれの落ち葉を散らしていく。

71みけ:2008/10/31(金) 18:12:12


親切な風がヤマトの声を運んできた。


「おーいみんなー!!そろそろ帰ろう!!太一達も心配してるだろうし、早く駅で連絡入れてやらないとな」

「それに光子郎さんが風邪ひいちゃうからね」

タケルも茶目っ気たっぷりに付け足した。イオリとヒカリも顔を上げて振り返った。


「そうですね、お母さんが心配しますし」

「ここから東京までまだかかるものね」


歩き出す二人とデジモン達の後ろで、チビモンはいまだに落ち葉が舞い上がるのを見つめている大輔を突っつく。


「帰るってさ。俺たちもいこうっ」


しかし大輔は動かない。

それどころか彼は無造作に空き地に足を踏み入れた。


予想外の行動にチビモンは慌ててテコテコとつんつん頭を追う。


「お、おい大輔っ!!みんな行っちゃうぞっ」


無言で落ち葉の山にかがみこむパートナーに、チビモンは呆れたように短い手足をばたばたと振り回した。


「大輔返事くらいしてくれよー!!」


「これ」

「えっ??」


落ち葉を掻き分けて大輔が拾い上げたのは、小さな動物をかたどったキーホルダーだった。

どこかのお土産物らしく文字が書いてあるが、よほど古いものでかすれて読めない。元は赤かったようだが、土の色で茶色く汚れてしまっていた。


大輔が土を払うと、灰色の模様が動物の体を覆うように可愛らしく描かれている。


「――これってもしかして....」

「おまえもそう思うか??」




「―――大輔く-----ーん!!」


はっと大輔とチビモンが振り返ると、ヒカリが森の中から大輔を呼んでいる。見るとみんな森を抜けた駅に向かって歩き出していた。



「置いてっちゃうわよー??」


「今いくー!!」




ゴーグルの少年は、見つけた古いキーホルダーを壊さないように丁寧に手で包むと、もう片方の手で自分のパートナーを拾い上げて森に向かって走り出した。


しかし少年が足を動かすうちに、その手のひらからこぼれでた小さな動物は夏の大気にさらされる。


大輔が走る揺れに合わせて、鎖の先の赤い子馬も跳ねるように落ち葉舞い踊る空き地を駆け抜けた。







こうしてえらばれし子供達の長い長い1日は幕を閉じた。


しかし子供達の夏はまだまだ終わらない。

次の日も、変わらない平凡な気だるい日々が彼らを待っているだろう。


大事なひとをなくすこと、幸せだった過去を手放すこと、ひとりぼっちでいること。

どれも時期こそ違えど必ず誰でも経験するものばかりだ。


だからこそ今、大事な家族と過ごす毎日を、充実したその瞬間を、仲間との日常を、一つ一つ後悔しないように感謝しながら生きていきたい。



デジモン02
『回るメリーゴーランド』本編終わり

72優飛:2008/10/31(金) 19:07:25
みけさん、こんばんは!


両親の元に戻った光子郎、遊園地を脱出した子ども達。涙ながらの再会に、仲間達はほっと息を吐く。
訪れた平穏は、しかしあの遊園地とクーティェンモンの消滅を意味していた…。
消えた赤いデジモン。
消えたひとつの世界。
それは子ども達の心の中に、様々な思いを残して――…。


最後の言葉も、心にグッと響きました。
素敵なストーリーでした、1読者として読むことができて幸せですv
ありがとうございました
m(_ _)mペコリ


みけさん、本当にお疲れ様でした!
…はて、この物語は終わりを迎えましたが、みけさんはこれからどうなさるんですか?

73みけ:2008/10/31(金) 21:03:23
〜〜冒険の後〜〜






ガチャン

「ただいまー」


久しぶりの我が家だ。


ヤマトは背負っていたギターを玄関の壁に立てかけて、リビングに向かいながらふところからぬいぐるみを取り出す。そいつがぷはぁと息を吸った。


「悪かったな、ツノモン」

「いいっていいって。それよりヤマトんち、変わんないなぁ」

「そっか、前来たのってクリスマスの時だっけ??」


たわいもない話をしながら涼しいリビングに入り、ヤマトはテレビの前の小さなソファーに腰を下ろした。


「ふー気持ちいーな、こんなのあったっけ??」

「わりと新しかったかな」


ツノモンと一緒に改めてヤマトは自分の家を見回した。父親と二人暮らしにしては少し広いくらいのマンションの一室だ。

リビングはダイニングも兼ねていて、食事用のテーブルと4人分の椅子、小さなテレビ、そして新しいソファーが置かれている。

テーブルの奥にはわりと小さめのキッチン。テレビ関係の仕事で忙しい父が立つことは滅多になく、いつもヤマトが腕を振るっている。


自慢じゃないが、きれい好きの自分のおかげで男2人ですんでいるとは思えないほど片づいた家だ。






ぐうーと小さく隣でお腹のなる音がした。見るとツノモンが恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべている。ヤマトもにやっと笑いながらソファーから身を起こした。


「そうだ、飯まだだったよな。」

「ごめんヤマト....」


気にすんな、と足早にヤマトはキッチンに向かう。しかし食事係が不在だった石田家の冷蔵庫になにか入っているわけもなく....

缶ビールのみが並ぶ冷蔵庫の中を見ながら、ヤマトはため息をついた。そうだ、俺バンドの練習合宿から今日帰ってきたばっかりだっけ。


諦めて扉を閉めようとすると、奥の方に石田家には見慣れぬタッパーが置かれているのが目に入った。


なんだろうと中身を確認しようとすると、ツノモンの弾むような声がした。

「ねえヤマトっ!!これ、食べ物じゃないの??」

ふとリビングに目をやると、テーブルの上にラップがかかった皿がいくつか並べられていた。ご丁寧にナイフとフォークまでのっている。

目を疑うヤマトに、ツノモンがせがむように言った。


「ね、食べようよー」

「お、おう。じゃあ食べようか....」


ラップを外すと、大きな皿にはハンバーグが2つとゆでた野菜が添えられている。小さな深皿にはじゃがいもとバジルのサラダ、残るひとつの器にはスイカが切ってあった。


わーいとすぐにぱくつくツノモンの向かいから、ヤマトもじゃがいもを一口つまんだ。


「うま....!!」


絶対に親父が作ったんじゃない。それにこの味は冷凍食品でもない....

ヤマトはなんだか背中に嫌な汗をかいてきたような気がした。




「おかえり....」

「うわっ!!」

すっかり食べ物に夢中になっていたヤマトは、父親が起きてきたことに気づかなかった。

「た、ただいま....」

「そんなに驚くことかあ??」

眠い目をこすりこすり、父はツノモンに久しぶりだなと声をかける。ツノモンもおじゃましてますと頭(身体全体)を下げた。

74みけ:2008/10/31(金) 21:05:21
どっかと父親は椅子に腰を下ろし、ヤマトが使っていたコップから麦茶を飲んだ。

一方ヤマトは落ち着かなそうに肩をこわばらせている。


「ずいぶん遅かったんだな。用事は済んだのか??」

「ああ....色々あってさ。遅いから明日また話すよ....」

「そうか....」


ぱくぱくとツノモンが勢いよく食べているのを、石田親子は黙って聞いていた。

父親がまたぎこちなさそうに切り出した。

「..めし、食ったか..??」


びくっと顔をひきつらせながらも、ヤマトは口早に答えた。

「うん、少し。すげーうまかったよ!!まさか親父がここまで出来るとは....」

「俺じゃないよ」


ヤマトは息をのんだ。

やっぱり、か。親父はやっぱり独身のつもりだったのか。

何か固まりがのどにつっかえたような気がした。


息子の反応をみて、父親はめんどくさそうに頭をかいた。


「あ〜違う違う。そういうんじゃなくて、その、な??」


あいつが来たんだよ、と観念したように父親は白状した。ツノモンが食べるのを一時中断して顔を上げた。


「あいつって??」

「その、ヤマトの母親だよ。なんかタケルからお前の合宿の話聞いたらしくてな??お前が出かけた日のうちに山のようなタッパーもって来やがった。」

「じゃあ俺が作り置きしといたやつは??」

「代わりにあいつが持ってった」


なんだよ....とヤマトは思い切り椅子にもたれかかった。ツノモンはそれを見ながらにこにことまた食べ始める。


「....じゃ、親父ずっと母さんの飯食ってたってことか」

「その、ジェンダーソースだっけか、俺好きじゃないんだけどな」


ジェノバソース。ヤマトは突っ込みを飲み込んで、もう一口サラダを口に運んだ。フランス人の血を引く母さんは、よくこのソースを作っていた。

昔すぎて忘れてたけど。


「あいつ、お前の事心配してたよ。家事で手一杯で学校の勉強とか大丈夫なのかとかインフルエンザが流行っててその予防注射がどうとか。

その飯も、お前が帰ってきた日用って別のタッパーに分けてやがった。」


ほんとにめんどくさい女だよ、とヤマトの父はのっそり腰を上げた。ヤマトが見上げるとすでに時計の針は2時を指していた。

「俺もう寝るわ。明日も一応会社行く約束だからよ。ツノモンくんもゆっくりしてってくれ」

「はい!おやすみなさい」

「親父」


父が振り返ると、息子がじゃがいもの刺さったフォークを差し出していた。

はんと鼻で笑うと、彼は手をひらひらとふって寝室へ歩き出した。


「勘弁してくれ。もう3日間もそれ食ってたんだから」


おやすみーと伸びた声をかけていく父親の後ろ姿を見ながら、ヤマトもふっと柔らかい笑みを浮かべた。ツノモンがほがらかに言った。


「じゃあヤマトのお母さんも、ずっとヤマトの料理食べてたんだね」

「それならもっと気の利いたもん作っといたんだけどな」


顔を見合わせてくすくす笑うと、ヤマトとツノモンは残りのタッパーの中身までうまそうに食べきった。




『〜〜冒険の後〜〜』終わり

75みけ:2008/10/31(金) 21:31:17
優飛さん、こんばんわ!


感想ありがとうございます!

慣れなくて読みにくいところばかりだったと思うんですが、最後まで読んで下さってありがとうございました^^


子ども達の様々な思いが行き交った遊園地も、ついに消えてしまいました。クーティェンモンについてはこの後舞台裏で誰かに説明してもらおうと思うんですが、とにかくみんながハッピーエンドになるといいなと考えて書きました。


ヤマトだけもやもやが残っているかもしれないなと思い、彼には本編が終わってからももう少し出てきてもらいました^^何かおなかいっぱいになっちゃっただけかもしれませんが..(笑)


最後の言葉気に入ってもらえてたなら嬉しいです♪自分自身色々考えるところがあって付け加えさせてもらいました!一生懸命生きるって当たり前だけど難しいことだと思ったので、読んでくれてる人たちを少しでも応援できたらと思います。


短いお話だったけど、ほんとにいつもコメントもらえて嬉しかったです^^優飛さんも2つもお話書くの大変でしょうが頑張ってください!!これからも応援しています。


このお話の後は....あまり考えてないです(笑)でもこの4週間お話を考えるのはすごく楽しかったので、もし書くことがあったら、また読んでいただけたら嬉しいです。最後まで本当にありがとうございました!!!!ラストの舞台裏も楽しみにしていてください^^

76舞台裏PART1:2008/11/01(土) 19:18:08
舞台の裏に設けられた一室。

そこは反省部屋であると同時に、表舞台に出られなかった役者達の集いの場でもあった--------




既に白い部屋の中には4名の役者達が待機していた。


丈「何だよ、今日でここ開けるのも最後だって連絡あったのに、誰も来ないじゃないか!!」

パルモン「ほんとにもう!!あたしここくるの楽しみにしてたのよ!?」

ヒカリ「まぁまぁ。二人とも落ち着いて..」

テイルモン「そうよ。何とか4週目まで無事に迎えられたんだから、楽しくやりましょう」


ガララ

京「お疲れ様でーっす♪」

ミミ「あらパルモン」

パルモン「ミミ!!!!」


目を潤ませるパルモンに構わずミミ達は椅子に座る。


ミミ「何よ、久しぶりだからって大げさねぇ。丈さんもしばらくぶりっ!!相変わらずみたいですね♪」

丈「久しぶり、ミミくんも変わらないね!!撮影も頑張ってたって聞いたよ」

ミミ「ふふん、あたし今回すごく頑張ったもの!!ここに呼ばれる理由なんてないはずなんだけど、最後だし全員呼ぼうって事なのかしら」

パルモン「何言ってるのよ!!ミミったら、すんごいミスをしちゃってるじゃない!!」

京「何々??何のことー??」

パルモン「ミミったらひどいのよ!!光子郎の話を聞いて、あたしとミミで捜索のためにデジタルワールドで待ち合わせをしてたの。そしたら、ミミったら、待ち合わせ忘れてテントモンと先に行っちゃったのよぅ!!」

ヒカリ「ええっ??」

丈「本当なのかいミミ君??」

ミミ「....そういえばそうだったような....」

パルモン「ミミ!!」

ミミ「....ご、ごめんね??」

テイルモン「やっぱり反省するためにみんな呼ばれたみたいね」

ヒカリ「初めて来たけど、ここって自然と失敗が明らかにされてくから怖いね..」

京「えぇ〜あたし何もないよ〜!!」

??「何か言い忘れてることとかあるんじゃないですか??」


ガララ

光子郎「皆さん、長い間お疲れさまでした」

大輔「お疲れさまでしたっ!!」

丈「いやいや、君達が一番お疲れさまだよ〜!!二人ともずっと撮影続いてたんだろ??」


光子郎、大輔も椅子にかける。


光子郎「確かに忙しかったですね〜特に僕は場所移動が大変でした」

京「そうですよね!!泉先輩は幻覚の中やら遊園地のアトラクションやらクーティェンモンの背中の上やら、いつも探す度に違う場所にいたもん」

大輔「京かんぴょう巻き配りに光子郎さんのこと探し回ってたもんな〜」

丈「大輔だって最初から出てて頑張ってたじゃないか」

大輔「そうっすね〜俺の場合は体力勝負が多かったんすよ。砂漠歩いたりラスト走ったり。最後結局駅まで走らされたんですよ俺」

ヒカリ「それでも元気そうだったからすごかったけど(笑)それにエクスブイモンにつかまってるのも実はすごく疲れそうだもんね」

大輔「そうなんだよ〜!!エクスブイモンて人間っぽい竜だから、すげー手の力使うんだ。さすがヒカリちゃん!!」

ミミ「ほんとにみんなお疲れさま」

光子郎「そういえばこの紙、今朝僕のデスクの上に置いてあったんですけど..」

パルモン「えっと....『反省部屋でクーティェンモンの行方を追え』??」

京「ほんとだ〜。あ、ここあたしの名前書いてある!!」

大輔「あ、俺のも」

テイルモン「三人で協力しろってことかしら」

丈「もしかしたらこれが君達が呼ばれた理由なのかもしれないな」

京「でもあたし、クーティェンモンなんて見たこともないよ〜??」

光子郎「きっとそれでも何か大事な情報を持ってるんですよ。何か思い当たりませんか??」

大輔「京、おまえ何か隠してるんじゃないか??」

京「.....」

??「京さんが答えられないなら、私が答えますっ!!」


ガララ

京「ホークモンっ!!お疲れ」

ホークモン「お疲れさまです、京さん」

丈「きみ何か知ってるのか??」

京「......」

ホークモン「はい。実は京さんも反省しなくてはいけないんです。ね、京さん」

京「....仕方ないわね」

ヒカリ「京さん..??」

77舞台裏PART2:2008/11/01(土) 19:21:22


京「実はあたし、賢君を送るゲートを探す時、ひとつゲートを見落としてたの。遊園地の中にあったやつなんだけど」

ミミ「それがどうして反省しなくちゃいけない事なの??見落としなんて誰にでもあるじゃない」

パルモン「ミミが言ってもダメよ」

ミミ「どーいう意味よっ」

光子郎「まあまあ。それで??京君」

京「あたし....見落としたの気づいてたけど言い損ねちゃってて。それを反省しろってことかも..ごめんなさい」

光子郎「いいんですよ。ゲートはずっと開いてたんですか??」

京「いえ..しばらくは開いてたけど少ししたら閉まってました。」

丈「それどこに通じてるゲートだったかとか分かる??」

京「記録は残ってるから、調べれば..時間がちょっとかかりますけど」

ホークモン「私も手伝いますよ!!」

京「ありがとホークモン。じゃぁちょっと調べてきますね!!」


ガララ

ヒカリ「何か今までの舞台裏と違ってやることがあっていいですね」

光子郎「確かにこの方が僕達に合ってるかも知れませんね。あ、あと実は僕も記録を見てて気づいたんですけど..」


光子郎、パソコンを取り出す。


光子郎「実は僕も見落とししてたんです」

ミミ「ほら、みんなするじゃない」

パルモン「たまたまでしょっ」

丈「何を見落としてたんだい??」

光子郎「みんなで崩壊する遊園地から逃げていたとき、実は開いていたゲートは3つあったんです(パソコンで図示しながら)」

大輔「つまり、観覧車と門のほかにって事??」

光子郎「ええ、たぶん京君が見たものと同じものだと思います。位置的にはメリーゴーランドの丘のふもとですね」

テイルモン「丘のふもと....」

パルモン「大輔は何を知ってるの??」

大輔「俺別にないんだけどなぁ〜」

??「ないってことないだろう」


ガララ

太一「よ、みんなお疲れさん」

大輔「太一さん、空さん!!」

空「みんな、よく頑張ったわね」


太一、空、律儀にずっと立っていたホークモン座る。


太一「でさ、大輔。ブイモンから聞いたんだけど、お前なんかあの後拾ったらしいじゃんか」

ヒカリ「そうなの??」

大輔「あー!!もしかしてこれのことっすか??」


大輔、ポケットから赤い馬のキーホルダーを取り出す。


大輔「あの遊園地の跡地に落ち葉に埋もれてたんす。」

太一「それが手がかりなんじゃないか??ブイモンもそれらしいこと言ってたぞ」

光子郎「ちょっと、見せて下さい」

ミミ「..何だかクーティェンモンに似てるわね」


ガララ

京「わっかりましたぁー!!あ、太一さん、空さん」

太一「おっす」

空「お疲れさま、何が分かったの??」


京、ホークモン話しながら椅子に座る。


ホークモン「私達が遊園地の中で見つけた、ゲートのつながる先です」

京「リアルワールドのあの森に最後に開いたっていう記録が残ってました!!」

大輔「....ってことは??」

光子郎「つまりですね....」


ガララ

タケル「遅くなりました!!」

イオリ「あっ丈さん!!お久しぶりです」

丈「やあ。お疲れさま」

ヤマト「何だ、結構集まってるな」


ギュウギュウに詰めながら、無理やり座り込むタケル、イオリ、ヤマト。


太一「遅かったじゃないか」

ヤマト「悪いな、俺の撮影が長引いちゃって。タケルとイオリは俺を待ってて遅れたんだ」

タケル「気にしないでよ」

イオリ「そうですよ。それより、クーティェンモンがどうとか聞こえましたけど....」

光子郎「では人数もそろってきたことだし、流れを説明しちゃいましょうか。一乗寺くんがまだ来てないのが気がかりですが」

賢「あ、僕ならここにいます」


京とホークモン以外驚いて身を退く。


大輔「なっなんだよ賢!!いるならいるって言えよなぁ〜!!」

賢「ごめんごめん。さっき京さん達と一緒に入ってきたんだけど、言うタイミングがなくてさ」

京「みんな気づいてると思ってたけど」

テイルモン「これで選ばれし子ども達は全員そろったわけね」

光子郎「ふう..改めて見るとすごい人数ですね。デジモン達はそろってないのに」

ヤマト「まあこれで説明してもらえるってわけだな」

光子郎「そうでしたね。ではヤマトさん達は途中から来て分からないと思うので、順を追って話したいと思います」

78舞台裏PART3:2008/11/01(土) 21:55:53
光子郎「まず、時間的に一番早く3つ目の遊園地のゲートを京さんが見つけています。一乗寺くんを送り出す時でしたね??」

京「はい、あたしは無視して観覧車の方のゲートを選んじゃったけど」

光子郎「そしてクーティェンモンと丘の上で戦いました。位置的にもゲートは丘のふもとにあったようですから、戦いが終わった後にゲートに向かうのは可能でしょう」

ヒカリ「そういえば私達が見ている前で、クーティェンモンが丘から落ちていったよね」

タケル「あそこの下にゲートがあったってことか」

光子郎「そしてそのゲートは森の跡地につながっていて、大輔君がそこからこのクーティェンモンによく似たキーホルダーを拾った..」

太一「え、つまり光子郎が言いたいのは..」

光子郎「高い確率で、このキーホルダーがクーティェンモンだと言うことです。デジモンがリアルワールドの物体に変わると言うのがどういう原理かは分かりませんが....」

京「あ、それあたし分かるかも!」

ホークモン「京都で聞いた話ですね??」

京「そう!修学旅行のときに偶然空さんのお父さんに聞いた話なんですけど、デジモンはもともとは九十九神のようなものらしいんです」

空「確かに父さんそんな話をしてた気がするわ」

大輔「つくもがみぃ??」

イオリ「古い家具や物が長い年月の間に徳を積んで神様になることですよ。持ち主を見守っていてくれるんです」

タケル「まえにも京さんが話してくれたじゃない」

大輔「そうだっけ..??」

賢「じゃぁ..クーティェンモンがキーホルダーになったんじゃなく、もともとキーホルダーだったものがデジモンになった..??」

テイルモン「そういうことになるわね」

ミミ「だから最初光子郎くんのパソコンにデータが出てこなかったのかしら」

光子郎「その可能性はありますね。あれは完璧にオリジナルに出来たデータでしたから」

太一「へぇ〜、じゃぁ大輔は知らずにクーティェンモンを拾ってきてたわけか。しかも落ち葉を掻き分けて、みんなに置いてかれそうになってまで」

大輔「うう....気づかなかった....似てるなぁとは思ったけど....」

ヒカリ「ほんとにありがとう、大輔くん。私ずっとクーティェンモンを倒してしまったこと気にしてたの。だって悪いデジモンじゃなかったんだもの」

イオリ「僕もです。大輔さんが見つけてくれなかったら、またクーティェンモンはひとりぼっちになってたわけですから」

ヤマト「お手柄だったな、大輔」

タケル「こんなすごい野生の勘は、大輔くんしか持ってないからね」

大輔「おいタケルっ!!せっかくヒカリちゃん達がほめてくれてんのに何だよその言い方はぁぁぁぁ!!」

一同「あはははははは」


------------------------


光子郎「では名残惜しいですが、そろそろこの反省部屋も閉めましょうか」

丈「何だいその鍵??」

光子郎「これは来るときスタッフさんから預かってきた、反省部屋の鍵です。僕達でこの部屋を閉めてほしいらしくて。はい、太一さん」

太一「何だよ??俺に閉めろってのか??」

光子郎「リーダーですから」

太一「.............」

太一、鍵を光子郎に押し返す。

光子郎「え....??」

太一「光子郎、お前閉めろよ。」

空「そうよ、もともと今回のお話は光子郎くんが主人公なんだから」

光子郎「で、でも....」

ヤマト「物語の方はなぜか俺とツノモンで締めちゃったからな。」

丈「この舞台裏も合わせて『回るメリーゴーランド』だからね。まとめて光子郎が鍵を閉めてくれよ」

光子郎「......」

ミミ「こーしろーくん!」

京「今更このメンツで遠慮なんてしないでくださいよ!」

光子郎「わ、分かりました....」

タケル「それじゃぁみんな、部屋を綺麗にして外に出よう!」




20分後------------------


賢「みんな出ました」

ヒカリ「それじゃぁ、光子郎さん」

光子郎「はい....」

イオリ「お願いします」

光子郎「.....ほんとにみんな、僕のためにありがとうございました。ここまで僕たちの冒険を見守っていてくれた皆さんも、ほんとに...........」

太一「お前の気持ちは言わなくったってみんなちゃーんと分かってくれてるよ」

大輔「そうっすよ!!それにそんな切なそうにしなくったって、俺達がまた反省しなきゃいけないときがきたら、またこの部屋は開きますよ!!」

光子郎「....そうですね....それではみなさん、ほんとにお疲れ様でしたっ!!」

一同「お疲れ様でしたー!!」


ガチャッ




デジモン02
『回るメリーゴーランド』完

79みけ:2008/11/01(土) 23:23:54
こんばんわ、みけです。

この舞台裏を持ってデジモン02回るメリーゴーランドは終わりです。


何か書けることがあればいいんですが、あらかた光子郎達が話してくれたので、感謝の意だけ伝えたいと思います。


ここまで読んでくれて本当に本当にありがとうございました!!

また機会があったらお会いしましょう!!

80xa:2011/06/17(金) 11:27:52
今更だけどあらゆるSSの中で最も楽しめた作品だと思いました。
読み終えるために2時間半ほど浪費しましたが、読み応えのある文章でよかったです。
ありがとう。

81T:2011/10/30(日) 20:16:35
デジモン02が放映されたのが2001年ごろでしたっけ。
10年ほど経つのに、こんな面白い作品がまだ読めるなんて思いませんでした。
ラストも、しっかりとキャラのフォローがされてて良かったです。
いいもの読ませていただきました!ありがとうございます。

82!ninja:2012/02/02(木) 07:22:21
偶然の必然の運命を書き換える物語でも良いよ。

83みけ:2013/05/27(月) 23:51:13
こんばんは、みけです。
このお話を書きこんでから4年、当時高校生だった私も学校を卒業しました。

当時は私自身色々と思うことがあり、自分の考えや気持ちをまとめようとした時、大好きだったデジモンの登場人物達が飛び出してきて、こうしてお話を作ると言う形で助けてくれました。
そんな文章に、随分時間が経つのに、こうして感想をくださる方がいて胸が熱くなりました。ありがとうございます。


コメントを書いてくださった方がいましたが、デジモンシリーズが始まってから、10年近く経つのでしょうか。
時間が経っても、大冒険のなかで人の成長を描いた、やっぱり素敵なアニメだったなぁと思います。今でも、ふとデジモンを観ると、子どもの頃みたいに心が踊ります。

太一達はパートナーをみつけながら、一つ一つ自分と向き合って乗り越えながらデジタルワールドを冒険していて、それを私は「いいなぁ」と思って見ていたけど、実は私たちが毎日を生きてくことって太一達の冒険と一緒なんだなと、大人になってから気づきました。

今は度肝を抜くような変わったアニメが増えましたが、だからこそ、王道でありながらリアルに人を描くデジモンって、かっこよかったなぁ、面白かったなぁと改めて思います。

これからも1ファンとして、そんな良い作品を、「あれはよかったね」「好きだったな」なんて言いながら、皆で愛し続けていけたらいいなと思います。


長文失礼しました。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板