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デジモン02 回るメリーゴーランド
74
:
みけ
:2008/10/31(金) 21:05:21
どっかと父親は椅子に腰を下ろし、ヤマトが使っていたコップから麦茶を飲んだ。
一方ヤマトは落ち着かなそうに肩をこわばらせている。
「ずいぶん遅かったんだな。用事は済んだのか??」
「ああ....色々あってさ。遅いから明日また話すよ....」
「そうか....」
ぱくぱくとツノモンが勢いよく食べているのを、石田親子は黙って聞いていた。
父親がまたぎこちなさそうに切り出した。
「..めし、食ったか..??」
びくっと顔をひきつらせながらも、ヤマトは口早に答えた。
「うん、少し。すげーうまかったよ!!まさか親父がここまで出来るとは....」
「俺じゃないよ」
ヤマトは息をのんだ。
やっぱり、か。親父はやっぱり独身のつもりだったのか。
何か固まりがのどにつっかえたような気がした。
息子の反応をみて、父親はめんどくさそうに頭をかいた。
「あ〜違う違う。そういうんじゃなくて、その、な??」
あいつが来たんだよ、と観念したように父親は白状した。ツノモンが食べるのを一時中断して顔を上げた。
「あいつって??」
「その、ヤマトの母親だよ。なんかタケルからお前の合宿の話聞いたらしくてな??お前が出かけた日のうちに山のようなタッパーもって来やがった。」
「じゃあ俺が作り置きしといたやつは??」
「代わりにあいつが持ってった」
なんだよ....とヤマトは思い切り椅子にもたれかかった。ツノモンはそれを見ながらにこにことまた食べ始める。
「....じゃ、親父ずっと母さんの飯食ってたってことか」
「その、ジェンダーソースだっけか、俺好きじゃないんだけどな」
ジェノバソース。ヤマトは突っ込みを飲み込んで、もう一口サラダを口に運んだ。フランス人の血を引く母さんは、よくこのソースを作っていた。
昔すぎて忘れてたけど。
「あいつ、お前の事心配してたよ。家事で手一杯で学校の勉強とか大丈夫なのかとかインフルエンザが流行っててその予防注射がどうとか。
その飯も、お前が帰ってきた日用って別のタッパーに分けてやがった。」
ほんとにめんどくさい女だよ、とヤマトの父はのっそり腰を上げた。ヤマトが見上げるとすでに時計の針は2時を指していた。
「俺もう寝るわ。明日も一応会社行く約束だからよ。ツノモンくんもゆっくりしてってくれ」
「はい!おやすみなさい」
「親父」
父が振り返ると、息子がじゃがいもの刺さったフォークを差し出していた。
はんと鼻で笑うと、彼は手をひらひらとふって寝室へ歩き出した。
「勘弁してくれ。もう3日間もそれ食ってたんだから」
おやすみーと伸びた声をかけていく父親の後ろ姿を見ながら、ヤマトもふっと柔らかい笑みを浮かべた。ツノモンがほがらかに言った。
「じゃあヤマトのお母さんも、ずっとヤマトの料理食べてたんだね」
「それならもっと気の利いたもん作っといたんだけどな」
顔を見合わせてくすくす笑うと、ヤマトとツノモンは残りのタッパーの中身までうまそうに食べきった。
『〜〜冒険の後〜〜』終わり
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