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デジモン02 回るメリーゴーランド
48
:
みけ
:2008/10/19(日) 14:33:22
この緊急事態に場違いな楽しげな音楽が、ゆっくりとテンポを刻みながらアトラクションを回していく。
メリーゴーランドの上の赤い馬に竹刀を振り回す男の子と、その馬に乗る少年を何とか引きずり落とそうとしている自分。
......いや、むしろ場違いなのは俺達か??
いやいや、そもそも考え事なんかしてる暇ないはずだろ!!
脳裏をかすめるばかばかしい考えを振り払うように、ヤマトは光子郎をつかむ手にさらに力を込めながら叫ぶ。
「いい加減に起きろっ!!光子郎!!!!」
しかし彼の瞼は閉じたまま、むしろデジモンにしがみつく手を強めたような気さえする。ヤマトは引っ張る手を緩めずに舌打ちをした。
「-----ッ---くそッ」
このまま長引けば、デジモンの気をひいているイオリも攻撃を受けてしまうだろう。頭の中に弟の顔が浮かぶ。
「タケルはまだなのか---------!!」
ヤマトの呟きをわずかに聞き取ったイオリは、デジモンの攻撃を避けながら叫んだ。
「----僕ならまだ大丈夫ですから、確実に光子郎さんを保護して下さい!!」
先輩と違い、イオリ本人はまだまだ時間を稼げると踏んでいた。
この赤い馬型のデジモンは、どうやらその額にはまった核が力の根源らしい。体に刻まれた黒い文様も、全てその玉から体中に伸びているし、イオリへの攻撃も今のところその玉から発する直線的な光線だけだ。
これだけなら剣道で鍛えた目で光線の軌道を見分けて間合いをとればいい。それにやはりその核が弱点らしく、竹刀ではさすがに強いダメージは与えられないが、そこを狙うだけでそいつは焦ってこちらに集中するようだ。
これなら玉を狙いながら上手く間合いをとっていれば、延々と時間を稼いでいられるというわけである。戦いの中で瞬時に分析できてしまうのが、『知識』のデジメンタルを持つイオリらしい。
しかし、イオリと光子郎の違いは年齢だった。光子郎ならこのままヤマトが人質奪還までこの戦法を続けるところを、イオリはさらにデジモンの動きを止めようと考えた。
面を思い切り核に当てれば、こいつの動きが止まったときに光子郎さんを二人で引っ張れる--------!!!
サッと発射される光線から体の軸をずらすと、イオリは助走をつけて飛び上がり、面を打とうと思い切り振りかぶった。
下を向いていた馬のデジモンが顔を上げる。
そこには光線を打ち出す直前の、なみなみとした赤い光をたたえる核があった。
空中では、しかも腕を振り上げているこの状態では避けられない。
「しまった-----------!!」
なすすべもなく恐怖で固まるイオリに、赤い光線が発射された。
「!!イオリ!!」
ヤマトの短い悲鳴と赤い光とが、軽やかな音楽と共に霧に囲まれたメリーゴーランドを覆った。
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