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デジモン02 回るメリーゴーランド

53みけ:2008/10/21(火) 17:53:12



「光子郎、くん........??」


信じられないというように目をまんまるにしてみせるミミの表情を見て、ようやく光子郎の時計は回り始める。


ゆっくりと彼の額に玉のような汗が浮かび、口がひくついた。長年のミミ経験から身についた、彼女の爆発寸前の直感というやつだ。


「み、ミミ、さん..........」

「.................」


案の定、ミミは不機嫌そうにぐいっとあごを突き出すと腰に手をやり、きつい口調で光子郎に問いただす。


「――何で帰ってこないのっ??みんなずぅーっと光子郎君を探してるのよ!!」


そのはっきりとした物言いにうっと言葉に詰まる光子郎。暗闇に響くやりとりは普段の立場と逆転しており、もはや姉と弟のそれに近い。


「す、すいません....でも....」

「何よっ」


言いにくそうにしながら光子郎は適切な言葉を探す。この女の子を納得させられるような言い方はないものか....




――いや、あるわけないか。そもそもミミさんじゃなくったって....


やっぱり少しうつむきながら、光子郎はミミと目線を合わせずに言葉を口にした。


「僕......後悔したくないんです」


「後悔??」


「はい」


ミミの頭にはてなマークが増産される。ずっともの食べてなくて頭が回ってないのかしら、光子郎くん。

そんな失礼な考えはつゆ知らず、光子郎はぽつりぽつりと言葉をこぼしていく。必要な情報を的確に伝える普段の彼の話し方とはかけ離れている、とミミはふと思う。


また彼女は、話しながらだんだんと光子郎の声がうつろに、無機質に響き出すのに気づいた。


「この世界を出たら......もう二度とお父さんとお母さんには会えない.........


...――僕が.....歩くのをやめないと」


光子郎の黒い瞳がさらに暗さを増していく。しかし声の調子には彼の感情が戻ってくる。


「僕が歩くのをやめれば、メリーゴーランドの馬の上でずっと座っていれば――」


ミミは光子郎の激しい感情を感じ取ってはっとした。


「――僕はずっと、本当のお父さんとお母さんと一緒にいられるんです..!!」






吐き出すようにそこまで言い終えると、光子郎はさらに深く頭をうつむかせた。


黙って聞いていたミミは、小さな光子郎に合わせて低くしていた体勢を静かに元に戻した。




暗い空っぽの空間は再び静寂を取り戻した。耳を済ませば、二人分の違ったテンポの鼓動を聞き取れただろう。

しかし今の光子郎にはドクンドクンと自分の心臓が大きく時を刻む音しか聞こえなかった。


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