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デジモン02 回るメリーゴーランド

57みけ:2008/10/22(水) 19:44:27






光子郎は闇の中で気配を感じて振り返った。誰かはわかっていた。


『光子郎.........』


自分の名前を呼ぶ、さっきまでいなくなっていたお父さんとお母さんだった。


ゆっくりと体を両親の方に向ける光子郎。その口元には、幻影達には理解できない種類の穏やかな笑みを浮かべている。


しばしの沈黙の後、唐突に少年は話し始めた。




「―――ちょっと前に、今のお父さんから聞いたんだ。」



お父さんとお母さんの幻影達はぴくりともせずに立ち尽くしている。




「お父さんは優秀な学者だったって。

一度たてた仮説は、自分が納得行くまで何百回も検討し直さないと公表しないような、頑固者だったって」



淡々と光子郎は両親から目を離さずに話し続ける。まるでその姿を網膜に焼き付けるように。




「だからお父さんの理論は一度も覆されたことはなかった。


『一度自分が言い出したことに、必ず筋を通したいんだ』」




その言葉を噛みしめるようにしながら、まっすぐな瞳をお父さんに向ける光子郎。




「それが、お父さんの口癖だったって聞いた」




だから....と光子郎は目を細めて、にっこりと笑った。




「僕もお父さんの息子だから、筋を通すよ。

お父さんとお母さんからもらった命を、一生懸命大切に生きたいと思うんだ」


少年の屈託のない笑顔が最初の穏やかな表情に戻り、その瞳にしっかりとぶれ始めている両親の姿を焼き付けながら、最後の言葉を口にした。


「僕を待っていてくれる人のためにも。」






その言葉を切れ目に、少年の目の前で幻影は姿を消した。


彼らに感情があったのかは不確かだが、光子郎の口元が微かに動いたのをデータ化して飛散しながら彼らは確認した。


音声はなく、その映像から彼らは光子郎の言葉を少ないデータで何とかスキャンする。








――――あ、り、が、と、う








最後の仕事を終えると、そのデータの破片は闇に還っていった。


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