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デジモン02 回るメリーゴーランド

71みけ:2008/10/31(金) 18:12:12


親切な風がヤマトの声を運んできた。


「おーいみんなー!!そろそろ帰ろう!!太一達も心配してるだろうし、早く駅で連絡入れてやらないとな」

「それに光子郎さんが風邪ひいちゃうからね」

タケルも茶目っ気たっぷりに付け足した。イオリとヒカリも顔を上げて振り返った。


「そうですね、お母さんが心配しますし」

「ここから東京までまだかかるものね」


歩き出す二人とデジモン達の後ろで、チビモンはいまだに落ち葉が舞い上がるのを見つめている大輔を突っつく。


「帰るってさ。俺たちもいこうっ」


しかし大輔は動かない。

それどころか彼は無造作に空き地に足を踏み入れた。


予想外の行動にチビモンは慌ててテコテコとつんつん頭を追う。


「お、おい大輔っ!!みんな行っちゃうぞっ」


無言で落ち葉の山にかがみこむパートナーに、チビモンは呆れたように短い手足をばたばたと振り回した。


「大輔返事くらいしてくれよー!!」


「これ」

「えっ??」


落ち葉を掻き分けて大輔が拾い上げたのは、小さな動物をかたどったキーホルダーだった。

どこかのお土産物らしく文字が書いてあるが、よほど古いものでかすれて読めない。元は赤かったようだが、土の色で茶色く汚れてしまっていた。


大輔が土を払うと、灰色の模様が動物の体を覆うように可愛らしく描かれている。


「――これってもしかして....」

「おまえもそう思うか??」




「―――大輔く-----ーん!!」


はっと大輔とチビモンが振り返ると、ヒカリが森の中から大輔を呼んでいる。見るとみんな森を抜けた駅に向かって歩き出していた。



「置いてっちゃうわよー??」


「今いくー!!」




ゴーグルの少年は、見つけた古いキーホルダーを壊さないように丁寧に手で包むと、もう片方の手で自分のパートナーを拾い上げて森に向かって走り出した。


しかし少年が足を動かすうちに、その手のひらからこぼれでた小さな動物は夏の大気にさらされる。


大輔が走る揺れに合わせて、鎖の先の赤い子馬も跳ねるように落ち葉舞い踊る空き地を駆け抜けた。







こうしてえらばれし子供達の長い長い1日は幕を閉じた。


しかし子供達の夏はまだまだ終わらない。

次の日も、変わらない平凡な気だるい日々が彼らを待っているだろう。


大事なひとをなくすこと、幸せだった過去を手放すこと、ひとりぼっちでいること。

どれも時期こそ違えど必ず誰でも経験するものばかりだ。


だからこそ今、大事な家族と過ごす毎日を、充実したその瞬間を、仲間との日常を、一つ一つ後悔しないように感謝しながら生きていきたい。



デジモン02
『回るメリーゴーランド』本編終わり


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