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デジモン02 回るメリーゴーランド

70みけ:2008/10/31(金) 18:01:28


泉親子の再会を暖かく見守っていた子供達は、長かった1日の終わりにようやく一息ついた。


自分よりも大きな息子をしっかりと抱きしめている母を眺めながら、ミミはアメリカにいる自分の母を思い出していた。


いつも日本のお土産は買っていくけど、今度は何か特別なものをプレゼントしてあげようかな。

もちろんパパにも。


思いにふけるミミの背後でパートナーを手にたたずんでいた賢は、光子郎の父が眼鏡の奥に涙をためているのに気づいた。


気の利く彼はそっとポケットからハンカチを取り出して、声を押し殺して泣く光子郎の父に差し出した。




光子郎が寝入ったのを見届けて、ヤマトも大きく伸びをする。

「ふわーあ、もうすっかり夜中か」

「お疲れ、ヤマト!!」



ヤマトの足下には、今朝と変わらぬ優しげな目つきでツノモンが帰ってきたパートナーを見上げていた。

ヤマトは顔をほころばせて彼を抱き上げた。


「ツノモン!!心配したんだぞっ!!」


「それはこっちのせりふだよ!!ま、ヤマトならうまくやるって分かってたけどさ」


にやっと笑うツノモンにつられて、ヤマトも疲れがふっとんだようにはははと明るく笑った。




「よかったね、タケル」

「そうだね」

そんな兄を遠目に見ながら、タケルもふっと笑顔を浮かべた。帽子の上からパタモンはいたずらっぽく彼を覗き込む。


「----もしかしてタケルも早く帰りたくなっちゃった??」

「〜〜パタモン!!」

「あはははっごめんごめーん♪」


鼻息を荒くしてみせるタケルの長い手から逃れようと、からからと笑いながらパタモンは夜の空に舞い上がった。




こんななごやかな雰囲気に大いに満足して達成感を味わっていた大輔は、ふと人数が足りないのに気がついた。


イオリとヒカリとそのパートナー達が見あたらないのだ。


焦って後ろを振り向いた大輔は、鬱蒼と続いていた森が彼の背後で終わっているのに気がついた。だんだんとまばらになっている木々の間からわずかに差し込む月の光に照らされて、森の出口に並んで立つ2人と2匹が浮かび上がっている。


微動だにしない彼らを不思議に思いながら、大輔はひょいと足元のチビモンを抱き上げて森の奥に進んでいく。


足を突き出す度に柔らかく地面が沈むのを感じながら、仲間の背後までくると声をかけた。


「どうしたんだよふたりとも」


大輔が不思議がるのも無理はない。イオリとヒカリは何もない落ち葉の山を見つめていたのだ。チビモンが納得いかなそうに首を傾げる。


「落ち葉??今夏だよなぁ大輔。大輔??」


大輔も一歩踏み出して、広々とした空き地を見渡した。大輔達の後ろまで続いていた木々のトンネルの中とは違い、開けた空には星がちらばっていた。




「――ここ、だったのか」

「ええ」


ヒカリが寂しげに答える。

そう、そこは子供達がついさっきまで冒険していた場所だったのだ。クーティェンモンが造った遊園地は、跡かたもなく消え失せていた。


「こんなに何もなくなっちゃうとはね..」


テイルモンもぽつりとこぼす。彼女の横では幼年期に戻った小さなデジモンが、無言のパートナーを心配そうに見上げていた。


彼には自分のパートナーがまだ幼く、その大人びた表情の裏に父の面影が今もちらついている事が分かっていたのだ。


「イオリ....やっぱりさびしいんか??」

「いえ、そんなことは。」


イオリは目線を前に向けたまま小さく答えた。目の前に広がる空っぽの土地から吹く湿った風が、優しく子供達の髪を撫でていく。

少し間を置いて、もうひとつイオリがつぶやいた。


「ただ....何となくクーティェンモンが可哀相に思えて。僕も幻覚の中で、ちょっとだけあいつの気持ちが分かったから....」


ヒカリも静かにうなづいた。


「そうね....でも、仕方なかったのよね」


ヒカリはまた寂しそうにうつむいた。イオリも黙って空き地を見つめたままだ。


大輔の苦手な痛い沈黙が流れるが、彼はおとなしく夏の生暖かい風が空き地を吹き抜けるのを感じていた。風がくるくると季節はずれの落ち葉を散らしていく。


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