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デジモン02 回るメリーゴーランド

69みけ:2008/10/29(水) 21:41:25


遊園地の上空を飛ぶえらばれし子供達の目のまえに、光子郎が最初にみたおんぼろの観覧車が広がった。

もはやこの機械も動いてはいないようだ。

吊り下げられたたくさんの箱の中に、一つだけ窓ガラスが割られているものがある。

「あそこだね、賢ちゃん」

「急ごう!!」


賢とスティングモンはまっすぐその中に突っ込んでいく。


しかし。


「うわあっ!!」




観覧車は一瞬のうちに分解して散ってしまった。すでに遊園地の崩壊が始まっているのだ。

スティングモンと賢は途方にくれて仲間を振り返った。


「遊園地の入り口へ行きましょう!あそこならメリーゴーランドから遠いし、崩れるのが遅いかもしれません!!」

「そうしよう!!迷ってる暇はない」


イオリの提案ですぐに一同は全速力で飛び始める。一応他のゲートを調べようとしていた光子郎は、それならとパソコンの画面を閉じる。

そのため彼は、入り口とは別の遊園地内のゲートが一つ静かに消え去った事に気づかなかった。






デジモン達の足元で、風が砂をまき散らすようにアトラクションが分解していく。


光子郎達が両親の幻影と歩いた並木道が消えていく。 その上をまっすぐ出口に向かって全速力で進む子ども達。


出口の白い大きな門が迫った。

力強く羽ばたくカブテリモンの頭上で、ふとミミは後ろを振り返った。




丘もメリーゴーランドも観覧車も他のアトラクションも、何もかもなかった。遊園地の外に広がっていたはずのデジタルワールドもそこにはなく、ただただ黒い闇が押し寄せていた。

まるで小さいときの姿の光子郎と話した幻覚の中のようだ。


その黒い虚空は、今にも彼女達を押しつぶすかのように見えた。


「急いでーー!!!!」




ミミのつんざくような悲鳴が響き渡った直後、彼女はぽーんとカブテリモンの背中から放り出された。

目が点になっているミミのほっぺたのしたには、ふかふかした土のクッションがあった。

その隣で同じく地面に投げ出された光子郎が身を起こす。


「こ、ここは....」

「お、重いでんがな光子郎はん」


彼のおなかのしたからテントモンがのそのそと顔を出した。

やった、元の世界に戻ってこれた....


安心感で気を失いそうになった光子郎の前に、黒い人影がたった。あたりは夜のようで、疲れているのもあるが余計に顔が見えにくい。

「あ、の....」

言葉を発しようとした光子郎は、いきなり暖かい感触に包まれた。彼は自分の顎の下で、母親が肩を震わせて泣いているのが分かった。


母の肩越しに、腕組みをして仁王立ちしている父親の姿も目に入った。



「おかえり。おかえり光子郎」




かすれた母の声に、光子郎は体の力が抜けるのを感じた。


瞳に熱いものがあふれてきて、ゆっくりまぶたを閉じながら息子も言葉を返した。




「―――ただいま」




長い長い3日間を終えて、光子郎はやっと心地よい眠りについた。


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