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俺は小説家を目指している。

1某経大生:2004/06/12(土) 05:10 ID:Vrdb/e4Y
俺は小説家を目指している。
主人公は高崎経済大学の学生だ。
それだけは譲れない。
冴えないダメ男が恋愛や挫折、色々な事件によって
成長していく話だ。

2某経大生:2004/06/12(土) 22:32 ID:vNYmxUDA

また私小説か?

3某経大生:2004/06/12(土) 22:42 ID:EF2cbGHM
ま た お ま え か

4某経大生:2004/06/13(日) 15:39 ID:teyCcAfk
気温28度、湿度は80%、不快指数はMAXで空は鉛色。
世界はじめじめと薄暗く、キャンパスに集まる学生らの
顔もどことなく不機嫌に見える。どいつも能面に見える。
タバコを咥えて傘を差して自転車こいでる学生。
おそらく新入生だろう。四年も通っていればおのずと
雰囲気でわかるようになる。これを人は老化現象と言
うこともある。知り合いとすれ違った彼は、挨拶をし
ようとしたが、咥えたタバコを膝の上に落とした。
その場に一瞬の笑いと気まずさが支配する微妙な空気
が流れた。僕ならば心のそこから思うがさま笑ってや
るのだが、そこが一年生たる所以なのだ。まだお互い
の関係が成立していない。
「やっべ〜…ありえねぇ〜…マジ最悪〜…」
一通りのお約束のリアクションで彼の役割が演じられる。
その言葉ははたしてイミダスに載っているのだろうかと
不思議になる。…あとで調べよう。

5某経大生:2004/06/13(日) 15:55 ID:teyCcAfk
タバコの薄紫にたゆたう煙が不定形の線形を空中に描く。
雨の日のキャンパス。三号館と図書館の間はこんもりと
茂る銀杏の覆われ、なお暗く、緑の匂いのかぐわしさは
いや増す。直接吐き出された煙はきれいな線を描かない。
なにより経大生はタバコの吸い方が下品だし、高校生の
延長を抜けていないように感じる。それはタバコの持ち方
ひとつとってもそうだ、彼らはタバコを吸うのが目的な
のではない、吸っている自分が他人にどう見られるかが
問題なのだ。哺乳瓶を手放せない乳児と似たようなものだ。
彼らにタバコの煙の、幾何学的で、動的なアルゴリズムなど
その思考の差し挟む余地など、始めからありはしなかったのだ。

6某経大生:2004/06/13(日) 16:31 ID:teyCcAfk
キャンパスでは多くの人間が生きている。学生だけではない、
社会人もいる、研究者がいる、維持管理を嘱託された人がいる、
運営し、経営する人がいる...サービスを供給する側と、享受
する側がいる。多くの接点、リレーションシップが構築され、
ダイナミックな動作を実現している。それはシステムだ。
しかし、個々の動作は緩慢で、ステティックだ。
ここで私は始めて一人称によって、自己をこのドラマのなかに
顕在させた。私が生きていることの証左であり、これは他への
顕示なのだ。見知らぬ不特定多数との交流が、ネットを通じて
行われようとしているのだ。
しかし、これは果たしてヴァーチャルだろうか?私はこうした
動的なファンクションに組み込まれていながら、私はこうした
ドラマの役割に参加してはいなかった。鶴鷹祭?三扇祭?イン
カレ?サークル?部活?ゼミ?講義?
それらは私を通り抜けて、どこか遠い世界で行われた、ブラウ
ン管越しの出来事だった。私にとっては、唯一学生証だけが、
そのものとのかかわりを証明するものだった。そう、それは
タバコの煙のように、不定形で、不安定なアルゴリズム。
空中に消え行く非生産物。学生という機能が消滅すれば、最早
私はなんでもない。死人でもないのだ。
図書館の書庫で、気の遠くなるような時間を誰の手にも触れら
れず過ごしてきた本のように、私は存在しながら、その存在が
失われようとしていた。

7某経大生:2004/06/13(日) 16:49 ID:teyCcAfk
私が消え始めた兆候を、どこで認めるかは難しい判断だ。
とにかく私はこの大学で存在を失い始めていた。
見つけることは容易いはずだ。ただ、誰も私を知ることは
ないのだ。
都市に埋没していく人間を描く作家にポール・オースター
がいる。ニューヨーク三部作で一躍有名になった作家だが、
作品はあまりにおぞましく、グロテスクだ。その内容は
非日常性の顕在で、自己の内面の喪失、そして他の内面化
と自己の外部化だ。自分が他人に見せられた装置のように
振舞われる挙動という衝動は、抑えがたく暗鬱としている。
図書館の明かりだけが唯一現実味を帯びているように感じる。
人工物の明かりでも、暗いよりはよろしい。目で確認できる
ことの安心感。健常者に許された怠惰だ。
私はまだ失われてはいないのだと感じる瞬間。私を認めるのは
ほかの誰でもない、この蛍光灯の明かりだけだ。

8某経大生:2004/06/13(日) 17:24 ID:teyCcAfk
私はもうじきこの大学を去るだろう。
誰にも気づかれず、誰にも知られることもなくだ。
簡単な事務手続きが行われて、きっとこう言われる
はずだ。「もう少しがんばってみたら?せっかく入学
したんだから」それも悪い話ではない。ただ、私にとっ
て、それが良い話ではないというだけのことであって。
すべてが終わって、私の命が甦るという保証はない。
空は青を取り戻し、緑は風に揺れて木漏れ日の潤いを
差し出すとは限らない。すべてはもはや手のつけられぬ
ほどに事態は深刻かもしれないし、まだ一縷の望みは
期待できるかもしれない。どちらにしろ、私の命はもう
長くはない。失われたものの計り知れなさ。棘は進むべ
き道を閉ざし、それは私を立ち止まらせた。
畸形の心を外面にあらわした私の姿を、あなた方は想像
することができるだろうか?耐えうるだろうか?
狂った形態は言いえぬ形容詞を擬態に求める。
思えば彼女が私の傍から消え去ったときも、やはり私は
違う姿をしていた。この鉛色の空のように、憂鬱の正体
はもはやキリストの地獄征服以前に戻されたアダムのよ
うに、私を悠久のリンボに縛り付ける。
私は、ここから抜けださなければならなかった。

9某経大生:2004/06/14(月) 19:23 ID:SyvAwfu.
正直、おまい自分の表現に酔ってるだろ。

>この鉛色の空のように、憂鬱の正体
はもはやキリストの地獄征服以前に戻されたアダムのよ
うに、私を悠久のリンボに縛り付ける。

とか。見てるほうが気恥ずかしくなるぐらいだ。
小説家を目指してるんなら、まずは読み手の立場で考えられるだけの
想像力を養え。今の表現は興味のない読み手にとってどんな風に
受け止められるのだろうか、とか。話はそこからだ。

10某経大生:2004/06/14(月) 19:47 ID:vNYmxUDA
>>9
他人のすることにいちいち難癖つけてんじゃねーよ
我々の役割は「生暖かく見守る観客」なんだからよ

11某経大生:2004/06/14(月) 22:02 ID:SyvAwfu.
>>10
それは済まない事をしたな。じゃあ>>1よ、早く続きを。

121じゃないけど...:2004/06/15(火) 19:43 ID:tabBtR.E
>>11
実は>>1がこのスレ立て逃げしたみたいなんで、モタイナイから書いてみただけ。
正直漏れ、自分の表現に酔ってる...むしろ酔ってなきゃ書けん罠。
散文形式をとったんで一応>>8で終わりなわけでつ。メンゴメンゴ┃ω・`)チラッ
では>>1よ、はよ晒せ!!

13某経大生:2004/06/17(木) 17:25 ID:bIs8UfKk
   切腹チャーハン

夕暮れを悲しむ人...一日の終わりに虚無の慰撫。
冷たい暗闇の感覚。闇の帳がゆっくりとカーテンコールを知らせている。
「まるで人が死ぬのを見ているようだ...」
学生食堂の窓際に座り、従業員の制服を着た中年の男性が窓の外を眺めて
いた。横顔はどこか疲れた様子で、それはきっと西日の光の加減かもしれ
ない、ぼんやりと外を眺めていた。浅間山は赤く燃えていた。
こんなにもぼんやりと何かを思いつめたことはないなと、人生の大半を仕
事に追われて必死に生きてきた彼はふと思った。それは生きるため、家族
を養うため、そして尊厳のためだった。生きることの尊さと、生きねばな
らぬという切迫した観念が、これまで彼をなんら疑問を抱かせることもな
く猪突猛進させていた。学生が夕方の営業にあわせてちらほらと現れはじ
めていた。「幸せな光景だ」彼は思った。学生の笑顔が笑い声にのせてち
らほらと見えた。幸せな世界なのだと感じた。豊かで、そして不自由のな
い若者たち。不景気とは言葉だけの世界で、彼らは生きている。本当の地
獄を知らないのだから。いや、知る必要はない。そのような社会であるべ
きはずはないのだ。
彼はそこで一端思考を中断して、手元にあるメモ用紙に目を向けた。
それは、日ごろから学生たちの意見や要望を募るために用意したものだっ
た。学生食堂を経営するうえでは当然の処置と言えるし、何より彼らの意
見は参考になるものも多かった。

14某経大生:2004/06/17(木) 17:48 ID:bIs8UfKk
多くはメニューに対する要望だった。
中には実現したものもあるが、レシピのよっては難しいものもある。
鮮度、品質、コスト、手間、需要があれば実現したいのはやまやまで
はある。しかし、特に手間のかかるメニューは、単位時間が収益に明
確に反映される分、不可能なのだった。
彼は両手で優しくその紙を包んだ。そこには、入学したばかりの留学
生が書いたのだろう、形が崩れ、おぼつかない日本語で書かれていた。
「おいしいチャーハン 私 食べたいです」
握り締め、そして額に手をあてた。彼は迷っていた。銀シャリのように
長時間形が崩れず、鮮度が保たれる性質のものとは違う。時間がたてば
たとえ保温しても油が変質してまずくなる。しかも、材料を混ぜて炒め
る手間は他の料理の追随を許さない。何よりテクニックだ。チャーハン
は素人には無理なのだ。火の通り加減や塩の混ざり具合は、パートさん
の熟練度では実現できない。あの黄金の輝きを生み出すのは並大抵の技
ではない。ましてやお客に出す売り物であればなおさらだった。
彼はチャーハンの恐ろしさを知っている。知っているだけに、迷うのだ
った。そして心の中の、あまりに人間的な部分が、彼に訴えかけていた。
「チャーハンを食べさせてあげたい」と。

15某経大生:2004/06/17(木) 18:07 ID:bIs8UfKk
数日の間、彼の心を支配していたのはチャーハンだった。
現実的にはあまりに無理だった。しかし、仕事中に考えることは
手間を省き、コストをいかに下げるかということばかりで、まるで
なにかにとり憑かれたようだった。「無理なのだ」頭ではわかって
いるのだが、心はいつもどこかでチャーハンを求めていた。
やがて、彼は一つの結論に達した。
それは彼自身が一人でチャーハンを全部つくるというものだった。
宣伝をせず、高めの値段設定で需要を抑えることができると考えた
のだ。しかし、彼の仕事は多用だ。パートさんを統括し、指示をだ
し、業務の円滑な遂行に勤めなければならない。どれだけの潜在需
要があるか未知数なだけに彼の決断はまさに断腸の思いだった。
そう、それこそ腹を切るような思いのチャーハンなのだ。
「これだ!!!」
それは大地を裂く一条の稲妻のような衝撃だった。
そして、メニューの名前は決まったのだった。

16某経大生:2004/06/17(木) 18:10 ID:bIs8UfKk

この物語はフィクションです。
現実の団体、人物とは関係ありそうでありません。

17某経大生:2004/06/17(木) 21:49 ID:vNYmxUDA
黒澤サン キター

18某経大生:2004/06/19(土) 18:36 ID:3Lfz3eWQ
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 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄ ̄ ̄
新校舎作る前に食堂を何とかしてくれ…

19某経大生:2004/06/21(月) 11:23 ID:SG/1xjbY
もうね、おっさんになるとあの食堂行き辛くなるよ
ただでさえ昼間は混むのに最近は休み時間中に
食えるかどうかもわかんないほど混みすぎて…

新校舎に1000人くらい入れる食堂をって無理だな
イートインの店とかつくってくんねーかな

20某経大生:2004/06/25(金) 20:07 ID:62aMSOwE
誰もいない部屋

人の一生の中でどれだけ多くのものが人類の記憶として残るだろうか?
揺り篭から墓場まで、私を構成する時間と所作の多くは、私以外の人間に
とって認知しえない事象であり、その価値もないだろう。
では価値あるものとはなんだろうか?
六月の光、梅雨の合間にのぞく晴れ間は倦怠感を誘い、講義室に漂う空気
もどこか上の空で、まるで閑古鳥が鳴いているようだ。
「あっ、いま天使が通りましたね。」
なんて不意打ちを食らわせても誰も反応しないような気がする二時間目。
講義室に集う履修者は実際の三分の二にも関わらず、起きている学生は
その四分の一に過ぎない。彼らは何のためにここにいるのだろうかと考え
ながら講義を進める。試験結果はさんざんなんだろうなと思うと今こうし
て教えていることがむなしくなってくる。期待できる学生は所詮1%。
そのためだけにこの貴重な時間を費やさねばならないのだ。
時間通りにレジュメの内容を終えた。
眠そうな学生たち。民間企業に就職しても似たようなことをしていくの
だろう。どんなに社会が変わっても、人間は変わらない。これこそ黄金律
というものだ。

21某経大生:2004/06/25(金) 21:04 ID:62aMSOwE
講義を終え、昼食のために一刻も早く研究室に戻りたかった。
最近は不意打ちに学部会が召集されることが多いように感じる。
学部の新設に伴って講師陣も充実した感があるが、それにしても
新設学部はいかにもである。ブルーノ・タウトが言うところの
“いかもの”というやつだ。上越新幹線の上りに乗ると右手に
見えてくる大学と発想はほぼ変わらないだろう。綺麗じゃない。
学生が何人か質問に来た。熱心なのはいい。しかし、調べてわかる
ものは自分で調べるべきだ。私の見解を聞きたいのならまだしも、
「これってなんなんすか?」はないだろう。
適当に切り上げて研究室に戻る。
ドアの鍵を開けようとしたら引っかかった。鍵をかけわすれたらしい。
中に入ると明かりがついていた。安物のパイプ椅子に見知らぬ男性が
座っているのがみえた。
こぎれいな身なりで、スーツは私のより高そうだ。
彼は私を見ると、落ち着いた調子でジェントルな微笑みを浮かべた。
「失礼しております。鍵が開いておりましたもので。」
「はじめまして。部屋はこちらでよろしいのですか?」
「ええ、もちろん。」
「失礼ですがどちらさまでしょうか?」
「ああ、自己紹介が遅れたようで。私は以前、先生にお世話になった
者で、ちょうど近くによったものですからご挨拶をと。」
「そうでしたか。失礼しました。最近忙しいものでしたから。お茶で
よろしいですか?」
「ええ、おかまいなく。」
まったく心当たりがなかった。記憶力は学生時代に比べれば衰えたが
たいてい見聞きしたことは一度で覚えることはできる。
お茶を出し、私もパイプ椅子に座った。
「お元気そうですね。お子さんはお元気ですか?もう中学ですか?」
「ええ、おかげさまで。」
「お仕事のほうも順調のようでなによりです。ご高名は伺ってます。」
「恐れ入ります。」
「先日、本を出版されたとかで。」
「ええ、はずかしながら、大学のテキスト用にと依頼がありまして。」
「そのお若さでテキストを書かれるだなんてすごいな。」
「いいえ、本当にたいしたものでもなくて」
それからしばらくそのようなやりとりが続いた。
名前も素性も、それにつながるようなヒントも得られなかったが、なぜ
か会話が成立していた。論文雑誌の話題も研究仲間のくだらない新刊本
の話題もない。ただ近況や世間話によくあるような、記憶にすらとどま
らないような話題ばかりだ。
いい加減次の講義の準備もしなければならなかったし、何より空腹がひ
どかった。そういえば、朝にシミュレーションの準備をしていて朝食をと
らなかったのだ。
退屈が苦痛に変わる。この男は何をしたいのだろうか?

22某経大生:2004/06/25(金) 22:13 ID:5R9dk0LY
十二時三十分になり、私はこの苦痛から解放されるべく手を打たねば
ならなかった。講義に遅れるのはかまわない、実際遅れたことでクレ
ームがきたことはない。しかし、私は非常に苦痛を感じ始めていた。
男の声、口調、笑ったときの口の動かし方、のどを鳴らす癖。表面的
な問題だけではないのは確かだった。もっと言いようのない、感覚的な
もの。ねっとりとまとわりつく感覚。不愉快だけでは説明できない人間。
そう、わからないときのあのイライラに似ていた。統計データの不備や
推敲不足の論文を読まされたときのような不快感。
私はおもむろに腕時計に目を向けた。
「申し訳ありませんが私はこのあと講義がありまして。」
「ああ、すいません、気がつかなくて。では私はそろそろ。」
以外にあっさりと彼が引き下がったことに少し物足りなさを感じた。
彼は立ち上がると一礼した。
「今日は会えて光栄でした。」
右手を伸ばす。握手をしてくれという意味か?私も手を伸ばし、握手する。
「こちらこそ、おかまいもせずに。」
「お体にお気をつけて、それでは、失礼します。」
あくまで彼はジャントルだった。彼がいなくなると、研究室は以前の静寂
を取り戻した。それは、本の湛える静寂。知性ある無機物の静謐だった。
そこにとらわれた私もまた、ステテューのように一つの無機物の様相を
呈していた。外は静かだった。応援団の練習も今日は終わっていた。キャ
ンパスが静かに感じた。この研究室が外部化しているようだった。
そう、もともとこの世界には何もなかった。
私はその表層に穴を穿ち、空虚な世界に色を与えようとした。
世界は美しい姿をしている。しかし、それは見る人間によるものだった。
それに気づいたとき、私の研究はすでに終わったようなものだった。
ベランダに立ち、銀杏を眺めた。
緑の濃い季節だ。樹木の胎動を感じる。風のやわらかさが心地よい。
「ここは、人間の住むべき世界だ。」
研究室をのぞく。ベランダから自分の研究室を覗いたのは初めてだった。
そこには誰もいなかった。あたりまえのことだが、自分の姿をそこに
投影させてみようとしても、うまくいかなかった。
不釣合いに感じた。
空間は私の居場所を残しはしなかったのだろうか?
いや、もはや私は一部になっていたのだ。これらの本の、壁の、扉の
一部に。そして、私はそれらの機能の外部化として、今ここにいた。
私がいることで、この部屋は補完されえない。私はもはや一つのパー
ツなのだから。
ここは人間のいない部屋。そして、彼は、私以外の、この部屋のため
の人間だったのだ。

23某経大生:2004/06/25(金) 23:57 ID:2svRe7ow
T松さん?

24某経大生:2004/06/26(土) 10:43 ID:EhNB3koU
それはヒ・ミ・ツ!☆

25某経大生:2004/07/31(土) 22:01 ID:hoSK9L1A
ムーンライト

自分でも気付かないうちに膨れ上がった欲望を、
もはや私は収めることが出来なかった。
サンバのリズムで野を駆ける私を、
彼の国の人々は、一体どんな目線で見ていたのだろう。

「パンジャーブ地方って、知ってる?」

坂本金八ゆずりの長髪をたなびかせ、
君は僕にそう訊ねたっけ。
思えば、あれが最初の出会いだったんだね、ジュテーム!

「イタイイタイ病知ってる?」

「サッカリン食べた事ある?」

「お父さんお金持ち?」

次々と浴びせられる問いかけに僕は少々ウンザリしながら、
質問を遮るように彼女の唇を奪った。

「ん・・・若草の香り・・・」

唇を離すと、君は照れたように笑いながら、
そう呟いた。
右手は僕の顔面をアイアンクローで捉えたままで・・・。


あれから5年。
僕はサラリーマンとなり、
団地妻に浄水器を売り歩いている。
浄水器の蛇口をひねるとき、ときどき君を思い出す。

26某経大生:2004/07/31(土) 22:03 ID:Gih1Vt.g
セクシーコマンドーかと思った

27公房:2004/08/01(日) 13:39 ID:dStjehFo
ワ〜カメ〜ワ〜カメ〜

28某経大生:2004/08/01(日) 14:50 ID:XiuGOMoM
特大のホムーランボール☆

29某経大生:2004/08/01(日) 16:33 ID:.KBY1HW.
メモリーズ

スマトラ島に響く歌声で、
今朝も私は目が覚めた。

「ハウアーユー?」

いつものように、カタカナ英語であなたは私に朝の挨拶。
昨夜もあなたの日に焼けた真っ黒な腕の中で眠りに落ちてしまったのね。

「気分はいいわ。だけどとっても心が痛い。」

石塚英彦似の顔をしかめさせながら、意地悪く答える私。

「ソーリー。アイキャントアンダースタンド。」

そっけないフリをして、相も変わらずカタカナ英語で答えるあなた。
だけど私は知っているの。
あなたの右手の引っ掻き傷のわけを。

3年前の夏。
渚のキャットファイターとして名を馳せる私の前に、あなたは現れた。
自慢のくさり鎌を振りかざし、ソバージュヘアーを振り乱し、
バックステップ気味にフェイントをかける私を見ながら、
あなたはただ反復横跳びを繰り返すだけだった。
ふたりの間に流れる、
張り詰めた氷のような空気。
固唾を飲んで見守る、私の師匠。
死んだ魚のような目で横たわる、私の兄弟子・ライオネル飛鳥・・・。

一瞬、よろけるように倒れこむあなた。
体力の限界を超えて反復横跳びを繰り返した結果、右足の筋肉は痙攣し、
もはや使い物にならなくなっていた。
だけど、私は見逃さなかった。
あなたの目は、まっすぐに明日を見ていた。

そして、あなたと私は恋に落ちた・・・

30某経大生:2004/08/01(日) 19:45 ID:zApANjY2
どこ縦読みすんの?

31某経大生:2004/08/01(日) 20:35 ID:zApANjY2
  夜空に見上げた星座の記憶

「君がいなくなったって誰も困りはしないさ」
午後八時を過ぎたばかりの盛り場は、サラリーマンや学生の飲み会
で熱気がこもっていた。騒がしい掛け声やら怒鳴り声やらがあちこ
ちから聞こえてきたが、彼の口調はいたって平静だったので、僕は
彼の言葉を聞き取るのに体を彼のほうに寄せなくてはならなかった。
もう少し大きな声で話せばいいのにと思ったが、僕はいつも我慢す
る役にまわる。つまりは人間関係のいざこざが煩わしいのだ。話し
て分かり合えるほど利口な人間なんて、ツチノコが存在する確率よ
りも低いはずだ、と僕は思うわけだ。無駄なエネルギーは浪費しな
い。なんて僕は環境にやさしい人間なんだろうとざっと経済的利益
を頭で計算してみる。しかし、いつの間にかメニューの薩摩芋焼酎の
金額の重心を求めてテイラー展開したあと、繰り返し積分ベクトルを
計算していた。多少酔っているなと感じる。
「君がどんなにかけがえのない人間だとしてもだ、君はいつか死な
なくちゃならない。君が死んでアポトーシスを起こすような脆弱な
プログラムを許容できるほど、社会は不安定じゃない。すぐに君に
代わる才能をリストアップし、計画の修正を図るはずだ。それは誰
が望んだことじゃない、誰もが気づかずそのシステムの一端を担っ
てるっていうだけの問題なんだよ。」
相変わらずつまらない話だった。もう30年近い付き合いになるが
彼の話が楽しいと感じたことが一度もなかった。しかし、それでも
30年もの間交友関係にあるのはある意味奇跡だった。それは今に
して思えば非常に長い年月に感じられたが、やはり彼との交友にな
んらかの意義…それはないとしても、彼の魅力のようなものを僕が
感じ取っていたのかもしれない。僕はグラスに残ったバーボンを呷
った。
「僕はそこまで傲慢な男じゃないさ。僕はただの大学教授だよ。牛
革の座椅子にしがみついてる哀れな老いぼれさ。体も脳も、あとは
縮むばかり。」
そういってつまみのスナックを口に放り込んだ。
時間がゆったりと流れてるのを感じることができる瞬間だった。
体感時間では今までの流れですでに10分は経過していてもおかしく
はなかった。しかし彼といる時間はゆっくりと流れた。まだ3分ほ
どしか経っていなかった。これも奇跡の一つかと思うと可笑しく思
われた。
「お兄さん、この薩摩芋焼酎ってのもらえる?おい君、君ももう一
杯いくだろ?」
彼はカツオの切り身をサラダとあえて醤油と山葵をどっとかけてか
らずずっとすすった。僕にも残しておけよと言いたくなったが同じ
ことは二度言わないことにする。焼酎二杯とサンドウィッチを一人
前注文した。どうも僕は昔からサンドウィッチというやつに目がな
いのだ。
「なんだ、君はまだサンドウィッチ伯爵に拝謁願おうってかい?ま
ったく君って奴は食えない奴だな。」
「君がカニバリストだなんて初耳だよ。」
「まぁ、生きてこそってやつだな。」
「僕を自殺に追い込もうとしてた奴のいう台詞じゃないな。」
「はは、僕はブディストなんでね、ハエっ子一匹殺せやしないの
さ。」

32某経大生:2004/08/01(日) 21:50 ID:zApANjY2
時間はいくらでもあるように感じた。若い頃には想像もつか
なかったことだった。とにかく時間がなかった。本を読むだ
けで過ぎていく時間がむなしくてどれだけ徹夜したかわから
なかった。そういう強迫観念のようなものはいったいどこか
らきたものだったのだろう?どうして今はそんなことを感じ
なくなったのだろうか?
今はほとんど本を読む必要はなくなった。理論的な体系の再
構築が主な仕事になっており、書評を頼まれたとき以外では
専門の分野でも本を開かなくなった。ほとんどの時間を出力
に費やし、システムの開発と支援に取り組んでいたせいもあ
るが、他にも雑誌への寄稿やパブリシティーへの対応など、
割と飄々とこなしていた。
「君は、最近疲れていないか?」
僕が尋ねると、彼はちょっと考えた。時間は2秒から3秒、
言葉の裏を探っているのだ。彼のこうした計算の速さは歳
をとっても衰えない。
「なにか悩み事か?」
「いや、そのままの意味だよ。」
彼はまた少し口を閉じた。今度は記憶領域を検索している
のだ。
「とくに疲れてもいないか。最近はすっかり干されてるか
らな。君はどうなんだ?」
「僕のほうも君と似たようなものかな。平和そのものさ。」
「君が平和だなんて穏やかじゃないな。ちょっと前まで飲み
屋に来てまで戦々恐々と本を読んでた男がだ、平和というの
は信じられんね。」
「それが嘘のように平和でね。僕も最近驚いているのさ。な
ぜだろう?空気の流れ、大気の躍動、大地の鼓動、若木の萌
える草木の馨り、どれをとっても少し昔まで、なんら意味の
なさない記号だった。それが意味を持ち始めたんだな。君に
分かるかな?ほら、色が映えるというか、よく薔薇色の世界
なんて表現をするだろう、あの意味が今ではなんとなくわか
るんだな。」
若い店員が焼酎のグラスとサンドウィッチをテーブルに置い
た。僕らはそれを手に取り、再び静かにグラスを重ねると、
一口呷った。
「小さい頃、憧れてたスポーツ選手がいてね、武道の選手だ
ったんだ。身長は150くらいしかないのにとても強くて、
相手が何人いようとひねり倒してしまう。うそみたいに倒し
てしまうんだよ。」
彼はそこで言葉を区切り、口唇を濡らした。
「僕はどうしてもその強さの秘密が知りたいと思ってね、毎
日彼の真似をしたんだ。同じような動き、呼吸、時には複数
の相手と喧嘩もしたな。まだ10歳のことさ。でも僕はね。
そうした鍛錬を通じて割りと強くなってたんだな。いや、割
となんてものじゃない、当時じゃ負けなしだった。無敵にな
ったような気がしてね、とても気持ちが良かったものだよ。」
「それで、その強さの秘密は分かったのか?」
「いいや、むしろ別の問題がもたげたんだ。結局僕が追求し
ていたことは死んでしまえばお仕舞いなわけだ。それに銃に
勝てるわけがないし、いくら相手が多くて勝てても必ず限界
がおとづれる。」
「当然だ。」
「そう、当然なんだよ。僕はね、このとき目から鱗が落ちる
というのを始めて経験したんだ。つまりだね、僕は死ぬこと
を当然と認識したんだ。恐れなくなったんだ。切り離され、
独立し、生の対極の概念として捉えなくなった。」

33某経大生:2004/08/01(日) 21:50 ID:zApANjY2
「つまり、それによって人生に楽観的になれたと?」
「そんなセラピーみたいなことを言ってるんじゃないんだよ。
もっと単純に、そして正直な問題なのさ。僕は死ぬという事実
これだけで十分だということなんだ。それから僕は一切喧嘩を
しなくなった。殴られても殴り返さなくなった。ひどい虐めに
会うようになったが、なんとか耐えた。」
「サティーヤグラハか?」
「そう、非暴力不服従さ。まるで無意味なんだよ、暴力も、示
威も。」
「それで、それと僕と、何の関係があるんだ?」
「君は歳をとり過ぎたのさ。生への執着が消え、ただ研究と指
導の毎日を送っている。若い頃の君は、なにかとりつかれたよ
うな気迫があった。奥さんや子供のこともあったし、生きるこ
とに必死だった。しかし最近の君は違う。自分でもう十分だと
どこかでセーブしているんじゃないか?もういつ死んでもかま
わないと、なにか安泰した気持ちがあるんじゃないか?」
彼は僕の目をのぞきこんだ。僕はすぐに目を逸らして焼酎に口
をつけた。心臓の鼓動が早く感じるのを感じた。こんなにも無
防備だと感じるのは久しぶりのことだった。思い出す、妻から
妊娠したと聞かされたときの衝撃、何も考えられず、妻が無言
で部屋を出て行くのを呆然と見ていた。僕は追いかけられなか
った。単純なオーバーフローだった。二日後、僕は彼女の元に
むかった。一度目は玄関先で彼女の両親に殴られ、惨めな思い
と屈辱を胸に溜め込んだ。泣きたかったが泣かなかった。二度
目は父親が殴ろうとするのを彼女が止めた。僕は少し力を得る
のを感じた。僕は結婚を申し込み、父親は中絶を言い張った。
三度目、僕は死ぬ覚悟だった。ナイフを隠し持ち、父親の前で
断れるとそのナイフで自分の手首を切りつけた。
私は言った。「許して下さるまで、私は自分の腕を切り続けま
す。彼女のお腹の子の命がいなくなるのであれば、僕が死んだ
のも同じです。」何度も手首を切るつける僕に父親は動揺した。
間違った方法だったと思う。僕は父親になる資格なんてなかっ
たのかもしれない、しかし僕はそれを選んだ。僕は生き、妻と
子供と、必死に生きる道を選んだのだ。
時間の流れを感じる。長い月日の潮が一気に満ちてゆくのを感
じた。砂が洗われ、そのしたから隠された星屑の欠片が姿を見
せる。時間の外に取り残された星屑は、空に鏤めてしまえばい
い。悠久の時は未だ僕にその余地を与えている。
「僕はね、確かにもう十分生きた気がするよ。死も恐れる気持
ちがない。昔はこんなことは考えられなかった。」
「君が死んだって、ストックはいくらでもある。」
「しかし、孫の顔が見たくなってきた。」
「僕が代わりに見てやるよ。」
「こればかりは、もう少し僕にやらせてもらうよ。」
サンドウィッチを頬張る。
時計は、もう九時にさしかかろうとしていた。

34某経大生:2004/08/03(火) 12:12 ID:FGE.4OGw

              ∩
             | |
             | |
       ∧_∧  | |    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      ( 'A` )//  <  先生!…このスレで存分に語ってやってください
      /     /    \___________
     / /|    /
  __| | .|    | __
  \   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   \
  ||\            \
  ||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄
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     .||              ||

35某経大生:2004/08/07(土) 16:16 ID:pnMjZelQ
アパート

部屋干しトップがうなりを上げて、
僕の下着を押し流す。

「…生乾き」

僕は天井を眺めながら、そっと呟いた。
上戸彩のポスターの口元がかすかに動いた気がしたが、
トヨナガの宣伝ヘリの音に掻き消され、何も聞こえなかった。

「狂牛病を怖がるくせに、タバコはガンガン吸うのね。でもそんなあなたが好き。
 狂おしいほどに好き。」

そう目で訴え掛ける上戸彩のポスターに、
僕はますます首ったけ。
サカリのついた野良猫のように、
ひとり、オンオン言いながら、
六畳一間を駆け巡る。
この部屋は俺のもの。
上戸彩も辻加護も、
みんな俺のためにいる。

タバコに吸い付く勢いそのままに
上戸彩の乳首に吸い付く様子を思い浮かべ、
僕はただひたすらに、
男という名のギターを掻き鳴らす。

36某経大生:2004/08/07(土) 23:14 ID:2X.xFhR6
1/17  スローモーション・フェイズ

それが起こったとき私はまだなにが起こったのか、そしてこれから何が
起ころうとしているのか、まったく検討がつかなかった。それは落雷の
ようになんの前触れもなく訪れ、そして轟音を大気に響かせながらその
存在があったことを知らせる。それは実在するかどうかが問題ではない。
まさに私よりも先に生じたのだという事実が問題なのだ。落雷が落ちた
とき、人は死をもってようやくその事実を確認できるというのは、果た
して幸せか、不幸せか...。死は突然訪れた。

長かった前期も終了し、一部の学生を除いては大学は夏休みに突入した。
まるでキャンパスの中は束縛に満たされ、自由を希求する学生たちが我
先にと自由の外界に飛び出すようだと思い、“突入”という表現はなか
なか面白いなと感じた。
蒸し暑い8月だった。試験期間、あれほど混雑していたキャンパスが今
は廃墟のように静まり帰っている。屋外の灰皿にたむろしていた連中も
もういない。彼らが身に着けている無駄に多いアクセサリは、彼らの容
量が少ない頭が風で飛ばないようにするためだろうかと想像した。アク
セサリをはずした瞬間彼らの頸が吹っ飛ぶのを想像し少し面白かった。
確かに必需品だ、でなければ無駄だ。または、そういった無駄をあえて

37某経大生:2004/08/07(土) 23:15 ID:2X.xFhR6
2/17
許容するサブセットが組まれているのかもしれない。だとすれば無駄な
のは頭の構造、彼らの存在そのもので、そうしたサブルーチンにプロッ
トされた彼らの存在が無駄だということかも知れない。飛躍だと思った
が、彼らのような質の低い(つまり学生としての知的レヴェルを備えて
いない)学生を許容できる大学の体制こそが飛躍かもしれない。つまり
は結局のところオーバーフローを起こしているのだ。クロックが追いつ
いていないのだ。CPUをサーバー用に交換しなければいけないのだ。
「アクセレータも買い替えだな」そう思い、研究室のパソコンのアップ
グレードにかかる費用をあとで見積もることにした。
夏休みは一部以外のためにある。その他の一部にとって夏休みとは、夏
休みでしかできないことをするためにあるようなものだ。つまり、私に
とってはそれは研究なのだ。ゆっくり本を読み、優雅にプログラムを書
き、走らせ、余裕をもって関数の相関関係を修正できる。幸い、この夏
は学会も9月までなかったので、課題をだされることもなかった。
試験中は行くのを控えていた図書館だったが、さすがにもう人がいない。
論文雑誌を1時間ほど眺めて、それから目的の図書を探した。
受付には友人がいた。暇そうに本を読んでいた。
「久しぶり。何してんの?」
私が声をかけると、彼女は本から目を上げずに言った。

38某経大生:2004/08/07(土) 23:15 ID:2X.xFhR6
3/17
「見りゃ分かるでしょうが。それともなに?駆け落ち寸前の恋人を待ってる
世間知らずのお嬢様にでも見える?」
肩まで伸ばした髪を後ろできっちりとまとめた彼女は男にも女にも見える。
ちょうど、男でも女のように見える顔をしている人がいるのと同じだ。彼女
のプライベートは不明だが、彼女と付き合う肝の座った人間は稀だろう。何
せ身長が180cmもあるのだから。彼女いわく「男は女を見下してるから、自分
より優れた余因子を微分できない」のだそうだ。つまり、彼女の交友関係の
範囲には彼女に女性としての定数を与える人間がいないことになる。
「何読んでるの?」
「ミステリィ小説」
「へぇ、珍しいね、あんたがミステリィなんて」
「そうでもないよ。ここって意外と学生が聞きにくるから、専門書読んで
ても集中できないんだよね」
「聞きにくるって?」
「ほら、コンピュータの使い方。検索にOPAC使ってるでしょ?あれの使い
かたが分からないって言うの。ありえないでしょ?」
「本当に?信じられないね。」
「ところであんた、何か用事じゃないの?」
「ああそうそう、本を探しに来たんだった」
「探さないよ」

39某経大生:2004/08/07(土) 23:16 ID:2X.xFhR6
4/17
「ケチ。あとで夕飯食べよう」
「うん、五時までだからそのあと電話するよ」
「ところでその本、面白かったらあとで貸してよ」
「いいけど、ほんとつまんないよ。殺人事件が起こる前に犯人とトリック
分かっちゃったし」
「どうして?殺人事件がおこって手がかりみたいなのが出てくるんじゃな
いの?」
「こういうのってある程度伏線が引かれてるんだよ、あらかじめ。だから
感のいい人ならすぐわかるよ。ある意味不定形カオスの複素非線形を解く
ほうが難しいね」
彼女の言っているのは境界条件が不確定なフェーズを想定したもので、つ
まり殺人事件すら起こっていない事件は解決しようがないという意味だ。
「解析って嫌いのよ」
「勉強しなさい」
「はいはい。それじゃ後でね」
近くの検索端末からOPACを開いて検索を開始した。テンプレートがキーワ
ードに変数を与え、膨大な量のデータベースから解析を開始する。結果が
表示されるまで若干のタイムラグがあった。
結果からさらに絞込みを行い、目的の書籍を見つけた。バイナリナンバを
確認して、所蔵されている階に向かった。図書がすべて電子化されていれ
ば、わざわざ歩かなくても、研究室からダウンロードするだけで済むのに、

40某経大生:2004/08/07(土) 23:17 ID:2X.xFhR6
5/17
と思ったが、実際それだけの労力を市場ベースに乗せるには、まだハード
面とソフト面で多くの課題があるだろうと思い直した。世の中はまだそん
なに完璧ではないのだ。

本棚から本を取り出し、目次を確認した。なかなか良さそうだと思う。以
前にも似たような本を読んだことはあったが、まったく役にたたなかった。
論理の飛躍は思考の合理性を象徴するものだが、現象の説明を疎かにする
が常だ。優れたスポーツ選手が優れた監督になれないのと似たようなもの
だと思う。ただ、スポーツは嫌いなのに確認できないだろう。
数式の解法をいくつかチェックして、それを借りることに決めた。
再びカウンターに戻るわけだが、また彼女に会うことになるわけだ。この
ような日常性は倦怠感を生み、人生を酸化させ、老いを加速する。宝くじ
に当たらないのはそのうちいいことがあるからさと、確率論からのアプロ
ーチを避けるようにネガティヴだと思う。つまり、私は宝くじは買わない
し、常に石橋は叩いても渡らないのだ。たとえ修復されたセルヴィア・モ
ンテネグロの、世界遺産に登録された橋が安全に渡れるようになったから
といって、わざわざ日本から引導渡しみたいな真似はしないということ。
話が飛躍したが、日常には新鮮なネタが必要だということだ。
そんなことを考えている間にカウンターに着いてしまった。私はどうも人
を笑わせるのが苦手な女なのだ。ちょうど>>1さんと同じだ。つまらない
人間なのだ。まぁそんなに自己卑下する必要もない。ましてや髭なんて生

41某経大生:2004/08/07(土) 23:18 ID:2X.xFhR6
6/17
えていない……そしてつまらない
「ねぇ、読み終わった。本借りたいんだけど処理してくれない?」
彼女は相変わらず本を持ったまま頭を下に向けていた。白い肌が微動だに
しなかった。
「ねぇ、ちょっと、まさかエネルギィ切れでOSがシャットダウンしたなん
て言うんじゃないでしょうね?それとも犯人が間違ってて落ち込んでたり
して、あはは、図星だったかな?」
カウンター越しに彼女のポンと肩を叩くと、彼女はそのまま人形のように
慣性にしたがって倒れた、カウンター越しに覗き込むと、彼女は横向きに
なり、背中にはナイフのようなものが刺さっていた。赤黒い血が絨毯にじ
んわりと広がっていった。
私はすぐに携帯電話を取り出した。緊張していたが、私の頭では何をすべ
きかがランクをつけられ、最適な計画案が出力されていた。80%近いクロ
ックを使用し、彼女の血を見てから行動に移るまでに2秒ほどかかった。
のこりの20%は客観的に自分の行動を評価し、問題点をうるさく追求して
いた。そして、どうしてこんなに冷静に対処できるのか不思議でいる自分
がいた。きっと、処置が早ければ彼女が助かるかもしれないと瞬間的に感
じたのかもしれない。呼び出しのコールが鳴る。非常にゆっくりに感じら
れた。オペレーターが出る。オペーレーターの話すよりも先に名前と電話
番号を2秒で言い、状況を5秒で伝えた。最後に大学の住所と、場所が図
書館であることを伝えた。

42某経大生:2004/08/07(土) 23:18 ID:2X.xFhR6
7/17
オペレーターは非常に反応の早い人だと思った。私の言葉に非常に早く反
応し、的確な指示を出した。止血方法、周囲の人間に何をさせるか。私は
その指示通りに動いた。ラウンジにいた学生が二人、私の指示に敏速に動
いたが、残りは駄目だった。10人以上いたにも関わらず動こうとする者は
いない。むしろ様子を見ようと近づいてくるので非常に邪魔だった。
「うわぁ〜、すげぇ〜、マジで血でてんじゃん。死んでんじゃねぇの?」
そう言った男子学生の顔面をおもいっきり殴ると、だいぶ静かになった。

救急車が着くまでの7分間、私には永遠にも近い時間だった。彼女の背中
に刺さったナイフが神経を傷つけている可能性もあったし、下手に抜いて
傷を悪化させることも考えられ、手の施しようがなかった。すでに彼女は
大量の出血でショック状態に陥り、呼吸は止まっていた。背中のナイフの
ために心肺蘇生法もできないでいた。救急車と同時に警察も到着し、彼女
が救急隊員に担架に乗せられるとすぐに現場保存が始まった。
私は第一発見者であり、通報者でもあったから、彼女に付き添っていくこ
とはできなかった。
「発見した状況を教えてください」警察官が言う。
「はい、10分くらい前、つまり発見する前ですけど、私、彼女とそこのカ
ウンターで話したんです。私は本を探してたのですぐに別れたんですけど
本を探して、ちょっと読んだりして、この本を借りようと思ってまたここ
に戻ってきました。彼女はずっと同じ姿勢で、まだ本を読んでるんだとば

43某経大生:2004/08/07(土) 23:19 ID:2X.xFhR6
8/17
かり……冗談のつもりで肩を叩いたらそのまま倒れて、見たら背中にナイ
フのようなものが刺さってたのですぐに連絡をしたんです」
「すると、発見してすぐに連絡をしたと?普通は気が動転するものですが
あなたは肝が据わってるというか、よく動揺しませんでしたね?」
「合理的な行動だと思いますが?それとも動揺したほうが最適な結果をだ
せたと思いますか?」
「まぁ一般論の話でね。君はそういうの強い方?」
「境界条件が曖昧です。とにかく問題は、どうやって彼女が刺されたかで
す。」
「誰が刺したかは問題ではないの?」
「いいえ、被害者は本を読んだ姿勢のまま刺されていたんですよ。おかし
いと思いませんか?刺されれば痛みで苦しがりますし、倒れるなり、悲鳴
を上げるなりするでしょう。すくなくとも、刺される前と同じ姿勢で本を
読んでいられるほど忍耐が強く、犯人に寛容ではいられないでしょう。そ
れこそあなたの言う一般的な人間のとる行動ではありませんか?」
警官は微かに怒ったように眉間に皺を寄せた。今更ながら彼女の言葉が身
にしみて思い出される。
「つまり、犯人がどのように彼女を襲ったかが分かれば、誰が犯人かはお
およそ検討がつく範囲まで絞れる特殊関数だということです」
そこで彼は、私の話はもうごめんだとばかりに手を小さく振った。
「分かりました。とりあえず警察には警察のやり方があります。応援の警

44某経大生:2004/08/07(土) 23:21 ID:2X.xFhR6
9/17
官も増員されますし、いまキャンパスにいる全員が容疑者候補として取調
べられます。いずれ鑑識が何らかの証拠を見つけだすでしょうし、そうす
ればいずれ犯人は確保できるでしょう」
「キャンパスが封鎖されるまでどのくらい時間がかかるんですか?」
「あと20分もかかりませんよ」
「彼女が被害にあってから少なくとも20分が経過してるかもしれないんで
す。あと20分あったらもう加害者はだいぶ遠くまで逃げていますよ」
「非常線を張って検問を実施していますよ」
「誰を探してるんですか?まだ誰がやったか分からないのに?怪しい人に
声をかけてみますか?」
「もういいでしょう、あとは署でお伺いしますから」
「警察まで行くんですか?忙しいんですけど」
「国民の義務です。今日とは言いません。いずれこちらから召喚しますの
で、今日は名前と電話番号、身分証の提示で十分です」

その後、当時図書館だけでなく大学構内にいた学生から教員、用務員にい
たるまで警察による事情聴取が行われた。新聞では彼女のことが報じられ、
優秀な学生を失ったことへの弔意とまだ捕まらない加害者への怒りが発露
された。その一方で、彼女のありもしないスキャンダラスな男性関係や
彼女の身辺に関する勝手な憶測が報じられた。それは彼女を貶めるもので
非常に許せなかった。

45某経大生:2004/08/07(土) 23:22 ID:2X.xFhR6
10/17
警察の地道な努力にも関わらず犯人は未だに見つかっていなかった。事件
があってからすでに3日が経過していた。図書館は完全に封鎖され、しば
らくは誰も立ち入りできなくなり、臨時休館となった。大学のサーバも使
用できないため、メールの確認もできないなんてばかげてると思ったが、
そこはお役所というものだ、仕事の一言でかたずけられてしまう。
「問題はやはりその10分間だろう。その間に殺されたんだ」
彼女は病院に到着してすぐに死亡が確認された。司法解剖の結果はやはり
他殺である可能性を示唆していた。同じ研究室の修士1年の彼は彼女とは
高校からの友人だった。それだけに悲しみも一入だったろうと思う。
「どうやって殺したか?なぜ彼女はそのままの姿勢で死んだのか?誰にも
気づかれないで刺殺なんてできるものかな?」
「普通は声を上げると思うから、図書館みたいな静かな場所ではしない。
でも犯人はそれをした。逆説的に考えれば、そうしなきゃならない理由が
あったからなんだと思う。しかし、やはり一番不思議なのは彼女の様子だ。」
「そこからなにかつながるものがあるのかもしれないよ」
「たとえば?」
「う〜ん、そうだね。ちょっと考えたんだけど、彼女は薬で眠らされて、
そのあと刺されたんじゃないかな?」
「ああ、クロロホルムみたいな?でもクロロホルムって眠りに落ちるまでに
段階があるんだよ。抵抗するんじゃないかな?」
「それもそうだね。」

46某経大生:2004/08/07(土) 23:22 ID:2X.xFhR6
11/17
「でもさ、薬の線はいいと思うんだ。僕が考えたのは、常備薬が副作用を
起こしたケース。例えば、生理のときの飲む薬があるだろ?生理痛を緩和
するの。それで気を失ったとかさ」
「それで犯人にたまたま殺されたの?それじゃ犯人はただ運が良かっただ
けになるんじゃない?必然性がないよ。それに彼女、そんない生理はひど
くないのよ。ほかに薬らしいものなんて服用していないし」
「ああだめだ、袋小路にはまるってこういうこと言うのかな?」
「つまりは過程の問題なんだよね。犯人が犯行に及んだ動機、なぜ彼女な
のか、なぜあの場所を選んだのか。その必然につながるプロセス。」
「だめだな、とにかく情報量が少ないんじゃないかな?この問題を解くた
めに僕らが必要な情報がまだあるんじゃないかな?」
「きっとそうだと思う。まだ何かあるんだよ、きっと」

実際にこの目でみたことだけに、その事件を客観視することが難しく感じ
た。非常に鮮明に思い出される彼女の死の最後の瞬間。彼女の手の感触が
今も脳裡に生々しかった。
「綺麗だと思わないかい?」
「何が?」
「ほら、お人形だよ」
「私、お人形って嫌いなの。気味が悪いわ」
「まさか、女の子はお人形が好きなものなんだよ」

47某経大生:2004/08/07(土) 23:23 ID:2X.xFhR6
12/17
「でもいやなものはいやなの」
「君はいつだってわがままなんだな。人の気持ちも考えずにそうやってわ
がままばかり通すんだ。わかったよ、もうお人形も何も買わないよ。君に
文句を言われるのはもう簡便だ」
父は短気な人だった。そして理性的な人ではなかった。観念でものをいい、
常識が彼の論理の中枢をなしていた。私は大学に入るのに苦労しなければ
ならなかった。まるで無駄な苦労をだ。女という理由で私は危うく研究の
道を閉ざされるところだったのだ。
「君は女なんだ。分かるか?君がいくら勉強したってなんにもなりはしな
いんだよ。君には分からないだろうけれどね、いや、君は分かりたくない
だけなんだ。私はね、君よりも人生を知っている。その私が言うんだ。君
みたいな女性は何人も見てきたよ。しかし誰一人として男性の中ではまる
で働くことができなかった。女性には限界があるんだよ」
それは環境のせいであり、女性に仕事与えない社会慣習があり、そのよう
な慣例があったのだ。その時代はもはや淘汰されたのだ。彼は間違い、私
の仮説は社会が達成してきた。それが合理的であり、経済的であり、そし
て何より民意があったからだ。
意思にそぐわぬ民意を抱えた父は今、故郷で引退し、日々を盆栽に打ち込
んでいた。最近コンピュータを始めたらしいが、OSI参照モデルも知らずに
ネットワークを利用している。不合理を許容し始めた人間の姿は、なんだか
哀れだ。

48某経大生:2004/08/07(土) 23:24 ID:2X.xFhR6
13/17
人間の存在が多様化し、その存在が一つ一つ不足のものを補うだろうか?
困難な問題だ。ひとは死ぬからだ。なぜ人は死ぬのだろうか?それによっ
て他の誰かが生まれてこれるからか?または他の何かに生まれかわるからか?
しかしどちらにしても、それは生きることと相関関係にある、しかし、彼女
が殺されたのはどのような生に関係してたのだろうか?いや、人が殺される
ことで得られるのはエゴだ。それによって得られる利益とは何か?
宗教ならば神であり信仰、会社であれば利潤、それらは目的は違えども
指向するベクトルは同じだ。
犯人はどんな利益、目的があったのだろうか?いや、そんな単純な問題では
ないのだ。何らかの可能性が副次的に関連した総合なのだ。
そう、サブセットの関連。
アクセサリを外しても頭は吹き飛ばないが、彼らがアクセサリを身につける
ことの意味、効果。ミステリィ小説が伏線を張ることの飛躍。それはなんら
関連のない事象でありながら、重要な意味をなしている。
そう、図書館というパブリックな犯行が突き止められやすい空間でなぜ犯行
が行われたのかということ、なぜ犯人は図書館にナイフを持ってきたのかと
いうこと、なぜ彼女は刺されて平気だったのかということ。
これらはまったくつながらないながらも、その複雑性のもとでトポロジカル
に展開するのだ。

49某経大生:2004/08/07(土) 23:25 ID:2X.xFhR6
14/17
「犯人は女だよ」
私が彼に話すと、彼はその理由を知りたがった。私はある仮説に達していた。
それはまだ証明できないが、ある程度科学的痕跡と照らし合わせることで検
証は可能だろうと考えていた。
「どうしてそう思う?」
「まず、なぜ彼女があの場所で、あの時間に殺されなければならなかったが
問題になるけど、これを私たちは合理性や計画性、整合性の観点からしか検
証しなかった。まずこれが最初のミスなんだ。犯人は彼女のある行動……い
え、ある物を見て殺意を抱いたんだよ。それこそ衝動という奴。それで殺し
たんだ。つまり、計画性も何もない、通り魔的な犯行だったんだ。」
「たしかに、それだと昼間の図書館なんて場所で犯行が行われた疑問は解決
できる。犯人は自分が逮捕される危険を顧なかったわけだからね」
「そう、犯人は始め、逮捕されることを考えていなかった、というよりむし
ろ考えられなかったといった方がいいかな、つまりそういうことなんだ。そ
して、犯人を殺意に駆り立てた動機は、彼女がカウンターで読んでいた本だ
と思う。おそらく、彼女の読んでいた本、誰かから借りたものじゃないかと
思うんだ」
「男か?」
私は無言でうなずいた。自分がやましいことをしているような気がして、声

50某経大生:2004/08/07(土) 23:25 ID:2X.xFhR6
15/17
が出なかった。
「多分、犯人の交際相手と彼女の交際相手に何らかの接点があったんだと思
う。それが本に、なんらかの形で現れていたんじゃないかな?例えば本のペ
ージに、その男性がラインを引いていたとかね。彼女、私にこう言ったのよ。
「事件の前に犯人が分かった。伏線が引いてあるから」って。きっと、ライ
ンが引いてあったってことじゃないかしら。ラインなんて同じところに引く
ことって滅多にないし、蛍光ペンやボールペン、他にも色も様々、それに特
徴があるから見分けがつきやすいでしょ?」
「なるほど、それで、犯人は、彼女と自分の交際相手との接点に気づいたっ
てことか。しかし、それだけで殺意を抱くものかな?」
「犯人にはなんらかの予測はあったのかもしれない。だから激情したのよ。
あの場所で殺人ができるほどに」
「しかしまだ疑問が残るよ。ナイフだ。君の説が正しいとしても、凶器のナ
イフを持っていたことの証明としては不可逆的だよ」
「実際、私はそうした状況から勘案して、ナイフは遺失物だと思うの。最近
私、図書館に行かなかったでしょう?その間にナイフの落とし物があったの
かもしれない」
「ナイフの落し物って、ここは大学だよ。誰が落とすんだ?」
「私はそれもかなり高い確率でありえると思うの。だって頭の悪い人間ほど
視覚や聴覚、または暴力で訴えようとするものだよ。つまりアクセサリや最
近よくみかける原色系のファッション、そして暴力的、反社会的な表現。ど

51某経大生:2004/08/07(土) 23:26 ID:2X.xFhR6
16/17
れをとっても学内でナイフのような凶器が装飾品の一部として持ち込まれ、
落とす可能性は十分だと思う。憶測の域は超えないから、この仮説について
は検証が必要だけど、もしそうなら指紋が出てくると思う。今の大学の現状
なら十分ありえるはず」
「わかった、ではそれはそのようなものとして仮定しよう。次の問題は、なぜ
彼女は刺されたことに気づかなかったかってことだ。勿論これまでの推理から
薬物の類は考えにくい、しかし他に方法があるだろうか?」
「気づかなかったのよ」
「え?なんだって?」
「彼女、気づかなかったのよ。彼女ヘルニアを患ってたから、図書館にいて
もデスクワーク以外しないの。だからすることがないとああして本を読んで
いたの。ヘルニアって神経でしょ?だから刺されるのと同じくらい痛いのよ」
「それにしたって、鎮痛剤は飲んでいなかったの?」
「その可能性もあるかもしれないけど、彼女薬らしいものは飲んでなかった
から、きっと飲んでなかったと思う」
「信じられないな」
「出産に立ち会えば信じるようになるよ」

その後、ナイフの所有者が判明した。やはり大学の学生の物だった。彼は友
人らとその日海におり、多数の証言も得られたことでアリバイが成立した。
海辺のナンパに命を救われたのだった。

52某経大生:2004/08/07(土) 23:26 ID:2X.xFhR6
17/17
また、ナイフから得られた指紋が、犯行当日に事情聴取を受けた人物に一致
するものがあり、任意同行を求めたところ、その人物はあっさりと犯行を認
めた。動機は私が考えたとおりだった。犯人は前々から彼女と交際相手との
関係を知っており、それをいつも憎んでいたらしい。それが犯行当日、彼女
が交際相手の部屋にあった本を読んでいた(表紙に著者のサインがあったら
しい)のを見て、殺意を抱いたという。彼女が痛がらないので驚いてすぐに
逃げた、それが彼女の犯行の露見を遅らせたというのが警察の見解だった。
なによりも驚いたのが、その渦中の交際相手が、彼女と高校時代からの同級
生という修士1年の彼だった。今回の事件で名前が出たことで、学校側の処
分はなかったが、さすがに大学にいられなくなったのか、犯人逮捕の翌日か
ら研究室には姿を見せなくなった。
今回の事件を通じていったい犯人は彼女を殺すことで何を得ただろうかと考
えずにはいられない。彼を得ただろうか?いや、彼は自由だ、所有はできな
いはずだ。では、彼女が彼と関係を持たなくなるという状態を得ただろうか?
それにおいては成功したといえるだろう。しかし、根本的な問題の解決には
なっていない。犯人は彼だけでなく、自由と未来までも奪われたのだから。
そうまでして彼女を殺す価値とは、むしろ思うのは、そこに至る過程の問題
なのではないかということ、そして、一瞬の雷の閃光のように、それと気づ
いたときには、もう終わってしまった事象なのだ。

53某経大生:2004/08/07(土) 23:27 ID:2X.xFhR6
↑推理物です
現実の団体や人物とは一切関係ありませんのでツーホーしないでください

54あぼーん:あぼーん
あぼーん

55某経大生:2004/08/08(日) 23:00 ID:exaWFc.I
>>54
藻前、日曜の真昼間から境内ちゃんにそんなくだらないカキコ
しててむなしくならないか?
いや、藻前がむなしいとかじゃなくてさ、漏れらにむなしい香具師
だと思われてることが恥ずかしくないかってことな
いいかげんみんなも藻前の引きこもりを心配してんだからさ
DQNじみだコテなんか捨てて学校来いな
もっと素直になれって、漏れらのこと頼っていいからさ
なにかあったら漏れに知らせれ
わかったな?わかったらもう二度とカキコすんなよ

56某経大生:2004/08/09(月) 21:21 ID:vNYmxUDA
>>55
そんなこと言うな!!
高子タソに謝れ!!

57某経大生:2004/08/10(火) 18:31 ID:9/QLF.ps
心の底から

「尻の穴から噴出す魔法、そう、それは永遠・・・」

ある朝目が覚めると、そんな言葉が頭の中を駆け巡った。
毎朝日課の反復横跳びも忘れて、
僕は歓喜に打ち震え、
心の底から己の両親を呪った。

「ああ、今頃天国のあなたは、
 今日も今日とて、佐藤江里子の胸元に夢中・・・」

そう心の中で己を問い詰める女子高生と恋に落ちた夏・・・

自分では気付かないうちに、体の芯まで蝕まれている事に気付いた秋・・・

気が狂った加山雄三が、全裸で女子アナに飛びかかる24時間テレビ・・・

道端の馬頭観音に世界の平和を祈りながらも、
視線は道行く女子高生の太ももに釘付け。
そんなあなたに今の日本が救えて?マイダーリン!

そんなことを呟きながら、
今日も下校途中の小学生を追いかけ回す私に、
神のご加護があらんことを!



・・・・

「ジョニス・チョッペリン! ジョニス・チョッペリン!」

高校球児が、遠くのグラウンドで練習でもしているのだろうか。
ふと空を見上げると、
全日空のジャンボ機が墜落していた。

58某経大生:2004/08/19(木) 10:17 ID:F0xZwcIM
眠らない不定冠詞

君はこだわらないことにこだわっている
それはこだわることへの嫉妬、あるいは矜持
無関心の堆積が混沌のイニシアティヴ
破壊への宣誓が名声のインセンティヴ
大気の胎動の予感のためにモチベーティヴ
そして不安を思案する懸案のパースペクティヴ

命の声はわずかにうわずって、切望するものか
いつかの哀愁、ときに郷愁、それらが強襲する因習
無駄の時間が万感のユリイカ
倦怠への進退が解体のエチカ
生命の絶命の声明のためのセネカ
そして快楽に堕落する磊落のエセー

草臥れた旅人にも平等に闇夜の安らぎを
また明日が祝福に満たされた光に満ちますように
揺らぎの懐疑が信義のイリアス
探求への感泣が汲々としたアウグストス
義足の安息の補足のためのメルクリウス
そしてやがて瞳に神の微笑み見んとするオデュッセウス

地獄を巡る旅に癒され、発見し、帰郷する旅
落ちたルシファの哀れな姿はやがて朽ちんとする肉体のメタファー
天使に誘われ、神に抱かれ、大地に堕ちた赤子の錯誤
いま一度、私をみつけだすシュピーレンガイスト

59某経大生:2004/08/20(金) 21:35 ID:W35Bto9U
君が思い出になる前に

「ホワッツ、マイケル!?」

道行く老人たちに気軽に声をかけると同時に、
得意技の蟹挟みで次々倒し、
気分は姿三四郎!!

・・・仰向けの老人たちが、
ピクピク、ピクピク痙攣して、

まるで、
理科の実験で電極に繋がれたカエルみたい!!


あ!!

危ない!

「円熟味を増した寺尾聰のような目で私を見つめる小学生どもよ!!
 私のもとにひれ伏すが良い!ひれ伏すが良い!
 ひれ伏すが良い!!」

そう叫んでチャックを上げ下げしながらベルクで半額惣菜を買い漁るお方が現れたわ!!

パッツンパッツンのスパッツで身を固めたあたしは、
しゃべる自動販売機になりすますことで一命を取り留めたのもつかの間、
見切り発車の上州バスに、
今日も今日とて追突される日々であります・・・

飛び出たアバラを戻しながら心の傷を癒す私に、
もう一度笑って見せて。
君が思い出になる前に。

60公房:2004/08/21(土) 22:50 ID:HdNLY2qk
>>57>>59
天才 貴方はマジ天才
創作活動頑張ってください!

61某経大生:2004/08/22(日) 15:02 ID:.XPhfmt.
>>59
僕は不甲斐ない>>1さんにかわってここに作品を投稿している者です
穴たの作品って・・・・・・
禿しくイイ(・∀・)!!
かなり笑えた。こしょうを一瓶鼻穴から飲み込んだ気分です。
こんど上州もしもツアーにいっしょに逝きましょう。
次の作品期待してます。

621:2004/08/26(木) 07:27 ID:WHi.0nWE
あれ?まだあったんだ。このスレ。

63某経大生:2004/08/26(木) 21:11 ID:AAqFJWd2
夜を駆ける

「マンチェスター・ユナイテッドゥ!!」

それが近所の子供の名前!!

ビビン麺の海で溺れ死ぬ北島康介を見たのさ、トゥナイト!!

・・・もしも、

もしもアーチェリーが、

股間に矢が刺さる事でしか快感を得られなくなった男たちが、
半裸で股間を射撃し合う競技だったとしたら、
山本博はここまで取り上げられたのだろうか・・・?


そんなアテネを横目にあたしは今夜もプライドかけて、
近所のドブに身を潜め、
通行人が通るたびにゴジラ登場シーンを披露する!!

「デドゥドゥン、
 デドゥドゥン、
 デドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥン!!」

通行人の悲鳴と同時に、
あたしは泥まみれのカラダを振り乱し、

「シャッコー!! シャッコー!! シャッコー!!」

声にならない雄叫びあげて、
ただひたすらに、市庁を目指す・・・

ああ、我が人生に憂い無し!

64公房:2004/08/28(土) 01:30 ID:a3WNanOw
(酔ってる今なら俺にも書ける気がする!)

太陽が昇り始めたのは僕のせいだ

いつもそんな表情を浮かべる貴方は魚肉ソーセージの虜!

富岡製糸で働くのは梨を買うため

ムックがそういいながら鏡に火をつける横で私はいつもの銀時計をしてる

時を刻み、人生を刻む
そういえばIZAMは何をしているんだろう…
9月の到来を前に、鈴虫に敵意をむき出しにするアイバーソンを横目にやり
私は言葉に出来ない焦燥感に駆られた

(…才能無いな、俺)

65某経大生:2004/08/28(土) 16:33 ID:cduHOnZM
>>64
自覚してるだけマシだ

66@:2004/08/29(日) 03:27 ID:peFTcbbI
「乾電池」

必要になる乾電池
常用される乾電池
使えなくなったら捨てられる乾電池
あまりにも酷すぎる乾電池の一生に哀れみを感じてから
乾電池を捨てずにとっておくようにした。
月日がたつにすれれ溜っていく彼ら…
まるで埋葬されずに残ったかぶと虫のようだった。
かわいそうだったから捨てた。

67@:2004/08/29(日) 03:46 ID:RHAzMESw
煙草をふかし、夜空を眺めてみる、
そこには無数の虚無という空間が広がっていた。
夜空を見るとき、いつも心の苦しみがある、
過去の過ちを後悔する時間
無数の闇が僕を責める
その中に弱く輝く小さな光があるのに気付く、
闇の中にいながらも頑張る光
それには嫌なことがあっても「負けない!」という意思を感じた。
光があれば闇もある
その二つで世界が両立していると思えば納得ができた。
小さな光は闇が明けるまで我慢して至福の光を得ようと頑張ってるのだと思うと
どこまでも歩いていけるような気がした。

68@:2004/08/29(日) 04:35 ID:t5v1CglU
ものすごく渋いお茶を彼女に出してみた。
彼女がそれを飲んだあと、僕は震駭した。
色白だった彼女の容姿ががプルプル震えていき、身体中無数にひび割れしていったのである。
彼女はパラパラ落ちていく特殊メイクの中から僕を睨む
僕は思わず叫び声をあげてしまった。それがまずかった
彼女は口器を全開にし、舌を伸ばしてよつんばいになりながら僕を威嚇してきた。
僕はどうすればいいのかわからず、自分の飲んでいた「伊右衛門」を差し出した。
すると彼女は舌でそれを取り上げ、天井に張り付いた。
天井に指跡があったので、僕は彼女の怒りがそれほどのものだと反省した。
「伊右衛門」を彼女は上から撒き散らした。
僕は「あははは、掃除が大変だよ」と笑ってみせた。
彼女は奇声をあげて僕の部屋の網戸を壊して出ていった。
(靴履いて行かなかったけど、いいのかなぁ)

69@:2004/08/29(日) 05:34 ID:Ts9JPZok


今日僕は鳥になった。
あのときは空を味方にしたいだけだった。
僕は毎日空の言葉を待っていた。
でもふと気が付いたんだ、受け身だけじゃ恋は実らないってことを…
僕はそれから毎日空をみたら、挨拶をするようにした。
酒を独りで飲むのではなく空と一緒に飲むように空に向かって酒を振り撒くこともした。(ご飯も)
そして毎日空に語りかける事もした。
ある日、「sora@」を宛先にして、メールを送ってみた。
結果はmail-demonからの通達…
「ああ、僕は空に着拒否されてるんだ…」
なぜ嫌われたのか自分でゆっくり考えた。
何も悪い事はしてないと自分でも確信していた。
今度は猛烈なアタックで空を落とすぞ!と決心した。
何をすればいいかはすぐに思いついた。
そして僕は鳥のようにしたが、空にフラれた…







                       久保塚洋介

70某経大生:2004/08/29(日) 09:45 ID:v.gFdngs
マイケルは自分のビッグマグナムを軽く擦りながら、アンナの蜜壺にあてがった。
2サイクルエンジンのようにピストンしている。そこから奏でるアンナのエンジン音は凄まじい。2サイクル特有の素
敵な高音域が部屋中に響き渡り、また2サイクル独特な香りが部屋中に漂っ
ている。
今レースが火蓋を切って幕を下ろそうとしている。壁を隔ててレースが
始まった。誰が金メダルを取るのだろうか。そういえばあの人は金メダ
ルが決まったときにこう言ったっけ、「超気持ちイイ」って。

71@:2004/08/30(月) 03:52 ID:KWC6XG0Y
ザリガニ

今日外を散歩していたら、道端の水路にザリガニが群がっていた。
覗きこむと、みんな一斉に姿を消した。
逃げ遅れがいないかと周りを見てみると
そこには一匹のザリガニが臨戦体勢で構えていた
小さいのに立ち向かう決死の勇気
そんな彼の頑張りに僕の心は最後まであきらめないという感動をかけられた。
唯一の武器「はさみ」で応戦する彼…
僕はその誠意に応えて最後まで付き合うことにした。
そして持ち帰った。
その後海老フライがキライになった…

72あぼーん:あぼーん
あぼーん

73某経大生:2004/09/01(水) 22:48 ID:w4a5gtFw
夏が終わる

「右手のドリルアームがうなりを上げて、岩盤を粉微塵に砕いてゆく・・・
 それが俺の理想の嫁!!
 あなたに出会ったあの日から、頭から離れないんです。フェイスハガーが。」

そんなラブレターを夜な夜な切り刻んだ夏・・・。
あなたのおねだりワイフになろうと心に決めた夏・・・。

天を仰げば、そこには七色に輝くUFO。
私は廃ビルの屋上に駆け上がり、ただぼんやりと光を見つめていた。

「あなたにも、見えるかな・・・?」

右手のドリルアームが、少しさびしそうな光を放っていた。


夏休みの最後の日。
レンタカーにまたがって、
あたしは一路、熱海を目指すの。
潮の香りが血の臭いを洗い流してくれるから。

・・・目が覚めると、いつもそこはサナトリウム。

745m:2004/09/04(土) 23:40 ID:OeSRwncY
愛のしるし

母国の人々が、能面みたいな顔をして、
一列になって海に次々と落ちてゆく姿を見たんだ!!

さながらレミングの集団自殺のように!!

・・・それが郵政民営化のあるべき形だなんて、
どこの誰が考えるのだろうか?

あたしは頭の片隅に、
福沢朗がズームイン朝で「お前ら、税金払ってるか!」と、
カメラ目線で発言する様子を思い浮かべながら、
残り少ないひとりの時間を噛みしめていた。

背後に潜む室伏浩二の気配を感じながら・・・

はぁ・・・
この森に迷い込んで、はや3日が過ぎようというのに、
一向に出口が見つからないわ!!

にじり寄る金メダリストたちを血祭りに上げながら、
私はひとり、途方に暮れてばかり。

谷亮子の死に際に、
「プシュルルーン!プシュルルーン!プシュルルーン!!」
って言わせてやったのに!!

もう、何の声なのっ!!

この森を抜ければ、
北島康介が眠るゴミ屋敷まで、
あと数キロだっていうのにっ!!

スカッドミサイルみたいな顔で空からあたしに襲い掛かる柴崎コウをかわしつつ、
右手に捕らえた徳光和夫の顔面に、
「絶望」の二文字を刻み込んでやるのさ、トゥナイト!!

「シャネルズ 黒塗り」で検索しましょう、フェルマーの最終定理を。
探しましょう、わざと遠回りしながら。

それがふたりの愛のしるし。

75某経大生:2004/09/06(月) 02:38 ID:ODOuWrO2
ここは痛いスレですね

76@:2004/09/08(水) 17:34 ID:N4VZ89kw
激痛ですね

77某経大生:2004/09/10(金) 01:02 ID:RuHl0dWo
好きですね

78@:2004/09/10(金) 09:44 ID:/tRq7CKw
大好きです��

79某経大生:2004/09/10(金) 09:57 ID:AzFOs.0c
さて、群像の締め切り真間近だし、そろそろ気合いれるかな。
みんなも書けよ!!

80マイケル・J・太郎:2004/09/11(土) 11:04 ID:WyhSiv6c
1/8   意思と言葉と疎通の精度

男と女の仲が体の関係なくして語られなくなったのは、昨今のテレビドラマ
や漫画雑誌の類の影響なのだろう。それでも、私とモモの関係が純粋に「人
間的なもの」であったのは、私が彼女といっしょにいて単純に楽しいという
か、そんなものは偽善者の戯言といわれるけれど、そういう人間としての魅
力のようなものが感じられたからかもしれない。私たちは友達だった。
大学も学部も学科も違うけれど、なにがきっかけで出会うものかは誰にも分
からないものだ。神様でも知らないかもしれない。私たちはふとしたことで
出会い、そして仲良くなった。忙しい合間にも私たちはときどき、お互いの
位置を確認しあい、その距離を測り、必要なエネルギーを算出し、無駄なコ
ストを費やして出会っていた。そしていつも取り留めのないことばかり話し
ていた。大学のこと、友達のこと、映画のこと、音楽のこと、テレビで見た
こと、気がつけば二、三時間はゆうに過ぎている。飾らない彼女と何の気兼
ねもなく話をしている時間がなにより楽しいと感じた。
私たちはなにか大きなものに愛されているような気がしていた。そういう意
味で共通した何かを持っていたのだと思う。お互い、会えない時間に、お互
いにとって関係のないことをしているときでも、不思議な繋がりのようなも
のを感じ取っていた。母体と繋がれていたときもこんな感じなのだろうかと
感じる。不思議と懐かしい感じがした。

81マイケル・J・太郎:2004/09/11(土) 11:05 ID:WyhSiv6c
2/8
初恋が遅かったせいかもしれない。私は女性関係に無頓着になっていた。そ
んなだからモモに対しても積極的になれないのさ、友人は言う。でもそれは
違う。信じる必要はないけれど、そんな単純な関係ではなかったはずだと思
えるのだ。
繋がっている感覚、それが夜空に空を見上げるような感覚。私と宇宙の間の
距離のように、果てしなく遠いけれどすぐそばにある。それが存在。いつも
身近にあるのになかなか気づかない不甲斐なさ。
人間はたくさんいるけれど、モモは一人しかいない。そんなモモとこうして
席を並べて、烏河公園の芝生の上にお弁当を広げて話をしていると、とても
幸せだった。
「そうか、これが幸せなんだ。」私はこのとき初めて知った。
生きていることが最近楽しいと感じ始めたのは、モモと出会ってからかもし
れない。無味乾燥とした砂漠のような心、よく友人がそう揶揄していた。
「君らは余計なことに煩わされすぎるのさ。無駄に時間を浪費して、人類的、
いや宇宙的な発見が遅れたらどうする?俺は君らとは違う、君らのいう恋人
なんて性欲の捌け口だろ、そんなもの娼婦と変わらない。俺は生きて真理に
到達してみせる。人間の生が限られているなんて負け犬の戯言だ、俺は神の
定めたタイムリミットを越えて見せる。」いつかの私がいった言葉だった。

82マイケル・J・太郎:2004/09/11(土) 11:06 ID:WyhSiv6c
3/8
「最近、みんなが俺のことを丸くなったって言うんだ。」
「へぇ、ああ、そぉかもしんないね。」
「そう思うか?」
「満場一致で思うね。」
「満場?だったら五分五分だと思うぞ。」
「あのさ、初めて君に会ったときね、マジでむかついた。」
「突然なにさ?」
「そういうこと、最近いい奴になってきたと思うよ。私から言わせてもらえ
ればまだまだだけどね。君の友達の苦労を考えればさもありなんってとこ?」
「わけがわかんない。」
「わたしも。」
お互い乾いた声で笑いあった。腹の底から笑うなんて、いつの頃からだった
だろうと考える。鬱屈とした少年時代だったのだなと思い出される過去は、
私にとって全ての始まりを象徴するもので、どんなに否定しても、嫌悪して
みても逃れ得ない現実だった。
私は忍辱を噛み殺して、全ての感情を殺して生きていた。それが強さだと教
えたのは、そうした環境に適応しようとする自分だった。何度も自殺しよう
とし、それに失敗し、屈辱を受け、耐えようとし、それに耐えられなくなり、
また自殺を・・・・・・この少年から大人への時間はあまりにも長く感じられた。

83マイケル・J・太郎:2004/09/11(土) 11:06 ID:WyhSiv6c
4/8
現実逃避だろうか?「君は弱かったんだ。しかたないさ。でも今は違う。君
は強くなった。そしてまだまだ強くなれる。」「誰だって愛情は必要だ。君
に笑いかけてくれる人が、不幸にも君にはいなかったってだけのことさ。シャ
ットダウンするものじゃないよ。それは弱さじゃない。人間に必要なものだ。
誰しも一人では生きて行けない。」「生きていけるさ。絶対になれ。お前な
らなれる。お前はそれを叶える力が欲しいのだろ?限界を超えて見せろ。超
えなければ見えないものがあるんだろ?」「努力と自己欺瞞を一緒くたにし
てはいけない。君はこの世界を通して全ての人と繋がっているんだ。」「科
学が全てを解決するんだ。人は神を目指した。そしてなろうとしている。い
や、なれるんだ。なのに何を恐れる?何を求める?神が欲したのは創造だ。
あとは人間にまかせたのだ。それこそ君に与えられた試練だ。」「一般化し
なければ理解できないのが科学崇拝屋の悪いところだ。神は人間を愛した。
いや、愛するからこそ、人間を創った。美しい世界を、美しい心を。」私は
人を愛することを知らなかった。いや、うすうすは気づいていたかもしれな
い、でも、受けた屈辱のために、私は人を愛することに臆病になっていたの
かもしれない。自然と人を拒絶し、避けて通り、関係を喪失しようとする。
人の心にずかずか入り込んでこようとする者を叩きのめし、二度とそんな考
えを起こさないようにする。私が本能的に生きるのに必要だと峻別した機能
だった。そして、生きるとはなんと無意味なのだろうと悟ったのだ。寂寥の
荒野に一人ただ取り残された世界。人の理解の及ばぬ暗黒の宇宙、そうした

84マイケル・J・太郎:2004/09/11(土) 11:07 ID:WyhSiv6c
5/8
中にただ一人、死を望むだけの人生。そんなものに、どんな価値があるのだ
ろうか?そもそもありはしなかったのだ。そんなものは、はなっからありは
しなかった。
「君はなぜ生きてるんだ?そんな低脳大学に行っていてむなしくならないか?」
「私はね、好きでこんな低脳大学に通ってるわけじゃないのよ。」
「はっ?なんだそれ?いいわけか?」
「訊いてきたのはそっちでしょうが!?聞きたくないなら言わないよ。」
「わかったよ、短気起こすなって。で、どんな理由?」
「限界・・・・・・みたいな?ほら、勉強なんてどこでもできるっていうでしょ?
こんな大学でもほんとうに勉強できるかデータとりたくてさ。」
「ふん、ばっかじゃねぇの?」
「馬鹿になりきれないようで天才が務まると思ってる?それに、生きるのに
理由なんて探してたら、タイムマシンが完成したとき自分の親を殺しに行く
やつけっこうでてくるかもね。」
「親が自衛策をとって、先に未来に行って、子供を生むかどうか判断するよ
うになるんじゃないか?そっちだと自殺が増えそうな気がするけど。」
「どっちみち、私には縁のない話ね、だってね、愛に満たされてるのよ。み
んなを愛してるの。」

85マイケル・J・太郎:2004/09/11(土) 11:07 ID:WyhSiv6c
6/8
神を信じているかどうかが問題ではなくて、そういう言葉を自然と口にして
しまう傍若無人ぶりがある種のカルト的要素を連想させた。
愛だのなんだのと、そんな使い古されたキャッチコピーに大枚をはたく人間
がいるのかと訝しくさえ思う。でも、彼女は人間を愛していた。それは父で
あり、母であり、友人であり、いろいろな関係で繋がれた人たちだった。
用意されたフレーズだったのだろうか?私の心を逆撫でする言葉だった。
「愛なんて軽々しく口にするな、無神論者め!」
「私にも神はいるのよ、ただ、まだ現れないだけ。」
「いつ来るんだ?」
「戦争や貧困や、馬鹿みたいなイジメがなくなる頃かな。それまで生きてら
んないと思うけどさ。」
「人間という種は食料のために戦争をするんだ。そして、人口が多くなれば、
人口を調整するために戦争をする。戦争と貧困がなくなることはない。」
「私は一人しかいないのよ。君が日本人と呼ぼうと、三流大学生と呼ぼうと、
そんなの関係ないのよ。私は私、どんなことがあっても私はこの世に一人だ
けしかいないのよ。そして君も。」
「じゃ訊くが、どうやって人口問題を解決する。食料自給率が低下する一方
で、アメリカの穀倉地帯は地下水脈が枯渇しつつある。世界中で土壌流出や
塩害、異常気象の影響で、今後の産出量も低下していくはずだ。なおかつこ
うしている瞬間にも何百人という人間が飢餓で死んでいくんだぞ。君の言っ

86マイケル・J・太郎:2004/09/11(土) 11:08 ID:WyhSiv6c
7/8
てることははっきりいって偽善者のそれだ。」
「だからしなくてはならないんじゃない。そういう連鎖が、愛があるから、
壊す側がいる一方で、救いの手を差し伸べる人たちがいるんじゃない。デー
タを眺めて手に負えないなんて言ってる君の方がよっぽど偽善者よ。」

モモの手を握って川辺のベンチに座った二人を、煌々と月明かりが照らして
いた。
「誰だって愛されたいのよ。」
頬をつたう涙をぬぐい、彼女は夜の湿った空気を大きく吸い込んだ。さっき
まで嗚咽していた彼女も、今は落ち着いたようだった。
「気分はまだ悪い?」
「だいぶよくなった。ありがとう。」
「疲れてたんだよ。最近忙しかったろ?」
彼女はかすかに俯いた。無言で虚空を見つめる僕の瞳には、何も映し出すも
のはなかったけれど、彼女の姿がはっきりと見て取れた。
「愛してるのよ。言葉じゃ足りないのよ。私はね、みんなを愛してるよ、な
のにどうして・・・・・・。」
「て・・・・・・天使のような君が憎いのさ。次、“さ”ね。」
彼女は顔を上げた。キョトンとして私の顔を覗き込んでから、すぐに笑顔を
取り戻して視線を戻した。彼女は空を見上げた。

87マイケル・J・太郎:2004/09/11(土) 11:08 ID:WyhSiv6c
8/8
「さ・・・・・・サボタージュ!」
「勇気を持って言いたいことがある。」
「る!?・・・・・・う〜ん、ルール無用だね。」
「寝ても覚めても君のことばかり。」
「リミッター外れた?」
「たくさんの言葉は好きじゃない。」
「異様な雰囲気。」
彼女がクツクツと笑う。
「君に言いたいことはたった一言。」
「ときどきそんなこと言ってるわけ?」
「結婚しよう。・・・・・・次、“う”だよ。」
一瞬沈黙が訪れた。それは不安とか、焦燥みたいなものとはまるで違っていた。
「・・・・・・うん。」
「やった、俺の勝ちだ。」
手と手を取り合った。こういう星空の下にこそ、人間と人間を結ぶ大きな力
の存在を感じる。私たちが生きている理由なんて、私の存在といっしょでち
っぽけだけど、私には、モモという、帰る場所を与えてくれる存在がある。
たったそれだけで、私はこの世界に大きな意味を与えるようになるんだ。


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