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俺は小説家を目指している。

21某経大生:2004/06/25(金) 21:04 ID:62aMSOwE
講義を終え、昼食のために一刻も早く研究室に戻りたかった。
最近は不意打ちに学部会が召集されることが多いように感じる。
学部の新設に伴って講師陣も充実した感があるが、それにしても
新設学部はいかにもである。ブルーノ・タウトが言うところの
“いかもの”というやつだ。上越新幹線の上りに乗ると右手に
見えてくる大学と発想はほぼ変わらないだろう。綺麗じゃない。
学生が何人か質問に来た。熱心なのはいい。しかし、調べてわかる
ものは自分で調べるべきだ。私の見解を聞きたいのならまだしも、
「これってなんなんすか?」はないだろう。
適当に切り上げて研究室に戻る。
ドアの鍵を開けようとしたら引っかかった。鍵をかけわすれたらしい。
中に入ると明かりがついていた。安物のパイプ椅子に見知らぬ男性が
座っているのがみえた。
こぎれいな身なりで、スーツは私のより高そうだ。
彼は私を見ると、落ち着いた調子でジェントルな微笑みを浮かべた。
「失礼しております。鍵が開いておりましたもので。」
「はじめまして。部屋はこちらでよろしいのですか?」
「ええ、もちろん。」
「失礼ですがどちらさまでしょうか?」
「ああ、自己紹介が遅れたようで。私は以前、先生にお世話になった
者で、ちょうど近くによったものですからご挨拶をと。」
「そうでしたか。失礼しました。最近忙しいものでしたから。お茶で
よろしいですか?」
「ええ、おかまいなく。」
まったく心当たりがなかった。記憶力は学生時代に比べれば衰えたが
たいてい見聞きしたことは一度で覚えることはできる。
お茶を出し、私もパイプ椅子に座った。
「お元気そうですね。お子さんはお元気ですか?もう中学ですか?」
「ええ、おかげさまで。」
「お仕事のほうも順調のようでなによりです。ご高名は伺ってます。」
「恐れ入ります。」
「先日、本を出版されたとかで。」
「ええ、はずかしながら、大学のテキスト用にと依頼がありまして。」
「そのお若さでテキストを書かれるだなんてすごいな。」
「いいえ、本当にたいしたものでもなくて」
それからしばらくそのようなやりとりが続いた。
名前も素性も、それにつながるようなヒントも得られなかったが、なぜ
か会話が成立していた。論文雑誌の話題も研究仲間のくだらない新刊本
の話題もない。ただ近況や世間話によくあるような、記憶にすらとどま
らないような話題ばかりだ。
いい加減次の講義の準備もしなければならなかったし、何より空腹がひ
どかった。そういえば、朝にシミュレーションの準備をしていて朝食をと
らなかったのだ。
退屈が苦痛に変わる。この男は何をしたいのだろうか?


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