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('A`)は異世界で戦うようです

1名も無きAAのようです:2014/05/25(日) 20:21:36 ID:gOpuSR2Q0
鬱田ドクオとは、一言で言えば弱い人間だ。

過去を振り替えれば後悔しなかった出来事はないし、ましてや努力なんて言葉とは無縁の存在である。

テストは赤点ギリギリ、運動能力は一般人より少し劣る程度、体つきは貧相なもので米俵一俵持つのが精一杯。かといってそれらを補うための努力をしたいなぁとは思っても、けして実行することはなかった。

そんなわけだからドクオは自分という存在が嫌いだった。変わりたいと願っても、変えようとすること自体がめんどくさくなってしまう。

大学を卒業し、なんとか内定をもらった会社も周囲の環境に溶け飲むことが出来ず、やめてしまったことも自己嫌悪の一つの原因である。

よって、ドクオにとっての自分とは、あってもなくても変わらない路傍の石のような存在で、そんな自分が世界に与える影響など皆無だと信じ込んでいた。

*鼹類燭辰榛*、この瞬間までは。

521名も無きAAのようです:2014/07/22(火) 22:28:02 ID:n5T5Y6H.O
読んでる

522名も無きAAのようです:2014/07/23(水) 21:06:39 ID:Ze/wv61.0
これまとめついてほしいなぁ
こんなワクワクする連載久しぶり

523名も無きAAのようです:2014/07/24(木) 16:12:57 ID:QiXnGvaY0
>>522
文が綺麗で上手いんだよな
一時は説明ぽかった時もあったがそれは作者も自覚してたし何よりそっからレベルが上がってるのがいい
俺もこれ好き

524名も無きAAのようです:2014/07/24(木) 21:21:14 ID:QvEA4Wgs0
段々読む人増えてるしな

5251:2014/07/25(金) 09:41:02 ID:4GacB82k0
どうも1です
現在鋭意書きため中でして、今週の投下は絶望的です
来週の水曜日までには投下したいと思っておりますので、それまでもうしばらくお待ちください

>>520>>521
ありがとうございます
読者様がいるだけで感謝感激です

>>522>>523
手放しに褒められると調子に乗ってしまいそうです
文章に関してはいまだ自信がないので何ともいえませんが、とりあえず勉強というか参考というかはある程度やっております
語彙力がないのでひたすらに読みやすい文章というのは徹頭徹尾励んでいきたいですね

>>524
そのようでうれしい限りです

526名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 13:18:42 ID:0fTL4zfk0
( ^ω^)僕は今まで読んだなかでこの作品はアルファベットに匹敵するものになると思ってるお

527名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 20:23:09 ID:G21XDRY.C
残り109話か、完結まではまだまだだな

5281:2014/07/27(日) 13:19:41 ID:tVeqCan60
>>526
いやぁそんなことはないと思いますよ
そこまで長くなるとは思いませんし、ましてや初心者なもので
ですがそう言っていただけてとても励みになります

>>527
そんなに続きませんよw

5291:2014/07/28(月) 21:40:41 ID:5PlpwITw0
どうも1です
仕事の都合で投下が金曜日にもつれ込みます
ぽんぽんと投下できていただけに最近の更新遅延が目立って仕方ありません
ですが逃亡は致しませんので生暖かく見守って頂きたいです

530名も無きAAのようです:2014/07/29(火) 02:31:25 ID:iP2M7AtE0
( ^ω^)待ってるお

5311:2014/08/01(金) 21:06:26 ID:Fg3tJaY20



第十二話「心の在処」





5321:2014/08/01(金) 21:09:10 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

从;'ー'从ノシ「あ、ツンちゃ〜ん」

ツンを見付けた渡辺は大声をあげて手を振った。街のどこにも魔物がいないことから安心してしまっているのである。本当はどこかに隠れているのかもしれないという不安はあるのだが。

ξ゚⊿゚)ξ「あんたね、どこに魔物が潜んでるのか分からないんだから少し自重しさなさいよ」

渡辺より消耗が少ないツンは、多少息を弾ませているものの顔色は良好である。渡辺と同じくドクオを探し回っていたはずだが、やはり黒の魔術団での経験があるからだろう。

从'ー'从「あのね、どっくん見付かったんだぁ〜」

ξ゚⊿゚)ξ「本当に? よかった……。本人はしぃのとこに?」

从'ー'从「うん。あとは任せろぉ〜って」

ξ;゚⊿゚)ξ「それ死亡フラグよ」

从'ー'从「でもでも、どっくんはやるときはやってくれるんだよぉ〜」

ξ-⊿-)ξ=3「信頼するのもいいけど、あれだけいた魔物が急にいなくなったのはおかしいわ。もしかしたら何かあったのかもしれない」

从'ー'从「そういえば、まだ術式が見つかってないよぉ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。それに、鉱山の方で大規模な爆発があったわ。もしかしたら中にショボンさん達がいるかも」

5331:2014/08/01(金) 21:10:38 ID:Fg3tJaY20

从;'ー'从「ふぇぇ〜、それじゃあ……」

ξ゚⊿゚)ξ「まだわからないけど、事態は急を要するわね。多分だけど、この街の至るところに術式が張り巡らされてるみたいだし」

从;'ー'从「ん〜と、え〜と」

ξ゚⊿゚)ξ「混乱するな。とにかく、一度宿舎に戻って荷物を回収した方がいいわ。中に魔力探査の道具とかもあるし、全体の構図を把握しないことには私達は動けない」

从'ー'从「それは、うん。そうだね」

ξ゚⊿゚)ξ「魔物召喚やら仲間の分断やらうまいことやってくれたみたいだけど、このままやられっぱなしってのは癪だわ。さっさと反撃にでるわよ」

从'ー'从「おー」

走り出すツンに追走する形で渡辺は足を動かしていたが、唐突にツンが速度を緩めると立ち止まった。

ξ゚⊿゚)ξ「……あのさ、ちょっと気になったんだけど」

从'ー'从「なぁに?」

ξ゚⊿゚)ξ「私達が途中よった街で意味の分からない術式があったの覚えてる?」

飛行馬車を降ろされた際に寄った街に確か用度不明の魔法陣があったのを思い出す。その街は人がいなかったことも印象深い。

从'ー'从「覚えてるよぉ。そこから魔物が一杯出てきたよねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「それってさ、この街の状況と似てない?」

从'ー'从「……あ」

渡辺達は自分の目で魔法陣を見たわけではないが、人のいない街で魔物の大量発生。言われてみれば驚くほど酷似している。

だが魔物と戦闘している最中に魔物を喚び出す、もしくは生み出している術式があるのではないかと話をしていた。

ξ゚⊿゚)ξ「さらに、魔法ってのは規模の大小に関わらず魔力を使うものよ。これだけ大きい術式なら余計に魔力をくうはず。この魔力は一人で補える量を越えているといってもいい」

5341:2014/08/01(金) 21:13:01 ID:Fg3tJaY20

从;'ー'从「人のいない街の魔法陣って……」

渡辺は自分の内に浮かんだ考えを否定しようとするが、叶わない。ツンの憶測はどこまでも筋が通りすぎている。

ξ゚⊿゚)ξ「確かドクオ達の話では他の街でも似たようなものを見たってことよね。それらを考慮すれば、ほぼ間違いないと思う」

从;'ー'从「人を魔力に変えたってこと?」

信じたくはない。信じたくないが……。

ξ゚⊿゚)ξ「ええ」

無情にもツンはそれを肯定した。黒の魔術団での経験がこの現実を受け止める心を、冷静さを作り出したのだろう。

ξ゚⊿゚)ξ「そして、私はこんなことができるやつを一人だけ知ってる。黒の魔術団の中でも有名だったわ。自由奔放、唯我独尊で上からの命令なんかくそ食らえ。もっとも扱いが難しいなんて言われてた」

渡辺は無意識に拳を握りしめていた。

罪のない人々を、懸命に生きる人々の未来をこうも簡単に奪ったのだ。

从'ー'从「許せないよ。そんなの」

感情が昂っていくのを止めることができない。今すぐにでもそいつの前に行って文句の一つでも言ってやりたい気分だ。

ξ゚⊿゚)ξ「落ち着きなさい。そいつはオサムっていうんだけど、戦闘はあまり得意じゃなくて、どちらかと言えば頭脳戦がメインよ。けど、こんな風に自分の僕を生み出したりして戦うからある意味貞子より質が悪い」

从'ー'从「どうするの?」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオやショボンさん達が戦ってるんなら、私達がやるべきことは敵の術式を解除するのがベストでしょうね」

从'ー'从「それじゃあ!」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。まずは魔力を辿りましょう。そのためにも宿舎に急ぐわよ」

敵の正体は分かった。やるべきことも定まった。

渡辺はツンの後ろを走る。こんなこと絶対に許してはならない。

そのためにも渡辺は止まってはならないのだ。

握った拳は、固く固く握られたままだった。

5351:2014/08/01(金) 21:16:22 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

(゚A゚)「Aaaaaaaaa!!」

ドクオの全身を得体の知れない何かが駆け巡っていく。自我を食い破り、倫理観を破壊し、人としての理性すら闇の底へと沈んでいった。

もう戻れない。いや、戻らない。

大切なものを守らなければならないのだ。そのために必要なら、ドクオは自分すら投げ捨てる覚悟を決めた。

貞子を殺した時、初めて生き物の命を奪った時、ドクオは罪悪感を覚えた。けれど、そうしなければ渡辺やツン、しぃやショボンにモララー、王都に住む人々全てが傷つけられていただろう。

ドクオは自分のせいで誰かが傷つくのを見たくない。

だから強くならなければならない。

今以上に、それ以上に。

(゚A゚)「Foooooooooo!!」

ドクオは立ち上がり、人形へと肉薄する。

(;∵)

一瞬だが人形の顔に焦りが見えた。だが今更そんなことはどうでもいいことだ。

袈裟斬り。斬撃は目で追えないほど早く、空気を切り裂き真空を生む。

刹那、人形の体は肩口から分断された。さらに真空が刃を発生させ、第二波。人形の体のあちこちに深い傷を作っていく。

そこから回し蹴り。分断された人形の上半身は軽く数メートルを越える距離を飛んでいく。

5361:2014/08/01(金) 21:18:43 ID:Fg3tJaY20

(゚A゚)

それを追ってドクオは走る。一瞬でそれに追い付くと元の形が残らぬほど縦横無尽に斬撃を繰り出し、最後に大きく上方から降り下ろすと、前方広範囲がまとめて消し飛んだ。

ドクオはゆらりと残した下半身へと振り返る。

街全体を覆っているはずの結界が淡く色付いていた。そこから幾筋もの光が人形に集まり、人形は元の形へと再生する。

( ∵)

(゚∀゚)「GYAHAHAHAHAHAHA!!」

笑いが止まらない。楽しい、愉快だ。

壊しても壊してもこいつは戦える。殺しても殺してもこいつは動ける。

ならばもっと徹底的に、もっともっと絶望的に蹂躙してやる。

(゚∀゚)「Haaaaaaaa!!」

( ∵)

人形が動いた。再生した腕をこちらに向け、同時に大量の魔力が収束。全てを殺す絶対的な力が地を抉り、周囲の建物を薙ぎ倒しながらドクオへと向かってくる。

ドクオは片手を前に出し、軽く払った。それだけで魔力は霧散し、沈黙が訪れる。

(゚∀゚)「AHYA!」

ドクオが跳んだ。一瞬で人形の真上に移動し、落下する勢いを利用して剣を降り下ろす。

対応できない人形は数瞬遅れて防御するが、間に合わない。頭から真っ二つになりごみのように転がる。

着地したドクオは人形に近付くと片方を持ち上げた。

(゚A゚)

先程までの笑みはもうない。

がっかりだった。あまりにも面白くない。神を謳いながらこの程度の力、自分の足元にも及ばないなど甚だしい。

これは油断だったのかもしれない。強大すぎる力を持つがゆえの慢心、ドクオは持っていたそれを投げ捨てる。

5371:2014/08/01(金) 21:20:51 ID:Fg3tJaY20

だから、ドクオは気付かなかった。気付けなかった。

振り返ったとき、持たなかった半身がいつの間にか消えていた。辺りを見回しても見当たらず、まるで始めからなかったかのように跡すら残っていなかった。

途端、頭上から光が降り注いだ。ドクオの半径数メートルが吹き飛び、砂塵があがる。さらに四方八方から光球が踊り、ドクオは避けることさえできず余すことなく被弾した。

(#A"+)

攻撃が止み、視界が開けた頃にはドクオの体は肉が抉れ骨もひしゃげ、全身から血を流し、本来ならば死んでもおかしくないほどの傷を負っていた。

ドクオから数メートル離れたところに光の粒子が集まり、人形が現れる。切られたはずの体はすでに再生しており、余裕を見せつけるようにこちらの様子をうかがっていた。

(#∀"+)

ドクオが顔を歪めて、笑う。直後、彼を中心として暴風が吹き荒れた。

(( ∵))

人形は微動だにしない。それでもよく見なければ分からないほどではあるが、小さく震えているのをドクオは確認した。

自分達は戦いの権化だ。壊すために生まれ、殺すために存在し、全てを無に帰すために生きている。

泣け、逃げ惑え、恐怖しろ。

それがドクオを更なる存在へと昇らせるのだ。

(#∀"+)「Aaaaaaaa!!」

ドクオと人形の戦いはまた一つ高みへと進む。

もはや人という存在では止められないところまで。

5381:2014/08/01(金) 21:23:33 ID:Fg3tJaY20



(*- _-)「ん……」

大気を震わせ地を揺らすほどの爆音でしぃはようやく目を覚ます。

確か、自分は得体の知れない何かに襲撃されて抵抗できずに気絶してしまったはずだ。間違いなく死んだと思っていたのだが、五体満足でいるところからどうやら生き延びているらしい。

ということは、渡辺かツンがドクオを連れてきてくれたのだろう。

(*゚ー゚)「えっと……」

ずきりと体が痛む。人形に掴まれた際体内のマナを根こそぎ奪われた影響か、うまく体が動かず自分の体じゃないような錯覚を覚えてしまう。

(;*゚ー゚)「それより状況は……」

今なお続いている戦闘音はしぃの遥か頭上から聞こえていた。そちらへと視線をやると、宙に浮いた二人の人間が目にも留まらぬ速さで攻防を繰り広げている。

しかも人形は傷一つないのに対し、ドクオの体は目も当てられないほどの傷だった。

なのに、ドクオは歪に笑っている。

攻撃するのが愉しくて仕方ない、傷つけるのが嬉しくて仕方ない。

彼の背中からはっきりと伝わってくる異常とさえいえる感情は、しぃの知っている彼とは似ても似つかない悪魔のような存在へと変貌を遂げていた。

(#∀"+)

(;∵)

(;*゚ー゚)「あれが、ドクオさん?」

5391:2014/08/01(金) 21:25:51 ID:Fg3tJaY20

しぃは、何故だかこの戦いを止めなくてはならないと本能的に察する。このままではドクオが手の届かない遠くへと行ってしまうような気がした。

けれどもこの人外としかいいようのない戦闘は、体力も底を尽きた今の自分では、いや、仮に万全の状態で介入したところで止めることなど出来やしないだろう。

ドクオの剣と人形の手が交差し、衝撃波が生じる。

(;*つー゚)「あぅっ……」

未だ嬉々として攻撃を続けるドクオは、あれだけの傷を抱えながらなおも優勢を保っていた。表情のない人形の方があまりの猛攻に焦っているようにも見える。

やはり、あれはドクオではない。

しぃの知っているドクオは戦うことを嫌っている。

しぃの知っているドクオはあんな歪んだ笑みを浮かべたりしない。

あれは、本人の意思ではなく、悪意ある他人の手により操られているに違いないのだ。

しぃはドクオの仲間である前に、一人の人間としてこんなことは止めさせなければならない。

魔物に囲まれたとき、しぃは選んでしまった。過去と向き合う覚悟を決めた。

もう失ってはいけない。そのために、今、しぃは立ち上がらなければならないのだ。

(*゚ー゚)(何ができるか分からないけれど、やらなきゃ)

ぷるぷると震える足腰に渇をいれ、しぃはしっかりと立ち上がる。ステッキを握り締めて━━

5401:2014/08/01(金) 21:28:18 ID:Fg3tJaY20

( ゚"_ゞ゚)「どこへいこうというのかね?」

唐突に聞こえた声に振り向いた。

( ゚"_ゞ゚)「興を削ぐようなことは控えてもらおう。大切な実験中なんだ」

(*゚ー゚)「あなたは……」

( ゚"_ゞ゚)「君は今、あれを見て恐怖しているかね? ならばそれが正常な反応だよ。あれは人という領域を越えて神の頂に登り詰めようとしているのだから」

全身黒一色の男は顎に手をやりながら、にやにやと不気味に笑っている。おそらく、敵ではあるのだろうが一切の敵意が感じられない。

ただ新しい玩具を与えられた子供のように、どこまでも純粋に、無邪気に今を楽しんでいる。

(*゚ー゚)「あなたが、今回の首謀者ですか」

( ゚"_ゞ゚)「だとしたら?」

(*゚ー゚)「私はここであなたを討たねばなりません」

( ゚"_ゞ゚)「それは不可能だろう。君は魔物との戦いで消耗している。対して、俺は君一人程度ならば簡単にあしらえる力を持っている」

それに、と男は続けた。

( ゚"_ゞ゚)「この実験を見届けなければならない。やるというなら構わないが、早めに終わらせてもらおう」

瞬間、男の周囲に魔法陣が展開された。並の魔力ではない。街一つならば簡単に消し飛ばせるほどの膨大な魔力、あんなものを放たれてはしぃなど一たまりもない。

(;*゚ー゚)「くっ……」

( ゚"_ゞ゚)「これは忠告だ。余計な真似をせず、大人しくあれを眺めていろ。それが正しい選択だ」

また、だ。しぃは己の無力さを噛み締める。

何かが出来るはずなのに、何も出来ないという矛盾。やることは分かっていても力及ばず、無駄に時間をもて余すしかない。

心なき力は暴力だが、力なき心はなんだというのか。

(*゚ー゚)「……一つお聞きしたいことがあります」

5411:2014/08/01(金) 21:30:18 ID:Fg3tJaY20

力はなくとも、心がまだ折れていないのならば、出来ることはあるのではないか。

それだけを信じてしぃは口を開く。

( ゚"_ゞ゚)「何かね?」

(*゚ー゚)「あれはなんですか? そして、ドクオさんはどうなってしまったのですか?」

人のようで人でない存在と、人なのに人を外れた存在。この二つの矛盾がどうにも引っ掛かって仕方がない。

( ゚"_ゞ゚)「簡単な話さ。人のもつ魔力を純度を高めて変換した、いわば人を越えたもの。そして、魔剣の主は言わずとも分かるだろう」

(*゚ー゚)「……分かりません。ドクオさんは今まで人であり続けました。それが、何故今更……」

( ゚"_ゞ゚)「今までは力をうまく伝えていなかったんだろう。彼は力をもて余していた」

(*゚ー゚)「ならば、あれが本来の姿であると?」

( ゚"_ゞ゚)「そういうことだ。神に近しいあれと接触したことで秘められたものが溢れだしたのさ」

(*゚ー゚)「……それと、あの人形は人の魔力をマナに変換したと言いましたが、とさか」

( ゚"_ゞ゚)「元は人だよ」

男が言い終わる前にしぃはステッキを振るった。

しかし、彼は余裕を持ってそれを受け止める。

( ゚"_ゞ゚)「どういうつもりかね?」

(* ー )「あなたは、人を、命をなんだと思っているんですか?」

5421:2014/08/01(金) 21:31:44 ID:Fg3tJaY20

あれが元は人だというなら、この男の手により望まぬ戦いを強いられているということ。

争いなどと無縁の人だったのかもしれないし、温厚な人間だったかもしれない。

( ゚"_ゞ゚)「皆決まって同じことを言うんだな。所詮いつかは死を迎える。早いか遅いか、それだけの無意味な生を俺が意味を与えているんだ」

(#*゚ー゚)「あなたは神になったつもりですか!? 力に溺れ、人の命を悪戯に弄ぶなど許されるはずがないでしょう!!」

人の命は他人に決められるものではない。自分で決めて自分で選ぶことにこそ価値がある。

しぃはそのことに気付くまで時間がかかり、後悔を繰り返してきた。

だからこそ、その行動にどれだけの覚悟と意味があるかが分かる。

( ゚"_ゞ゚)「だからどうした。飯を食い糞を垂れ、性に溺れ寝るだけの存在に意味があるのか? そんなものに俺は興味などない」

(#*゚ー゚)「人の価値はそんなところにあるんじゃありません!! それは心に、魂に、歩んだ道にこそ真の価値がある!! 苦しんで、悩んで、涙を流したとしても、道のどこかで振り返ったとき、その時にこそ人は自分の生に、命に価値を見出だすんですよ!!」

(#*゚ー゚)「それを、あなたは、踏みにじった。私は人として、騎士として、あなたを許しません!!」

( ゚"_ゞ゚)「許さない、ときたか。くっくっくっ、いいだろう。遊んでやろう、若き騎士よ。その人の価値とやら、見せてみろ」

5431:2014/08/01(金) 21:33:21 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

瓦解した鉱山跡地にてモララーは一人槍を振るっていた。

何故自分がこんなところにいるのか、体が本調子ではないのか、疑問は多々あったが熟考する暇もなくモララーは戦闘を余儀なくさせられている。

近くには血塗れのショボンも転がっているというのに、早めに決着をつけねばならない。

( ;・∀・)「しっかし、どうなってんだこりゃ」

( ´W`)

( ・−・ )

虚ろな目をした二人の刺客はうまく連携を取りながらモララーを攻め立てる。

右から一人、華奢な体躯の割りに素早い動きでこちらとの距離を詰めると下から強烈な蹴りが繰り出された。

上体を反らしうまく避けるが、左からもう一人。こちらはハンマーのような大きい鈍器を手にしている。

( ;・∀・)「容赦ねえな、ったくよ!」

モララーは反らした半身を戻さずそのままバク転。返る力でハンマーを持った手を同時に蹴りあげると、男はハンマーを落とした。

不安定な足場だが着地。瞬間、右の男が攻撃の体勢に入っているのが見える。

5441:2014/08/01(金) 21:36:29 ID:Fg3tJaY20

( ・∀・)「そら!」

弱い魔法で牽制すると、男は横に跳んだ。それを追ってモララーも跳ぶと、左の男は素早くハンマーを拾い上げ、こちらの斜線上に投擲する。

( ・∀・)「っと」

下から槍を当てて上方に弾き、広範囲に魔法を放った。モララーを中心に半径数メートルを光の槍が降り注ぐ。二人の男は防御すらせずに槍に貫かれ、力なく倒れていった。

( ・∀・)「なんだよ。もう終わりか」

と、モララーが槍を折り畳もうとしたとき━━

( ´W`)

( ・−・ )

何事もなかったかのように立ち上がる男達。依然彼らの体には穴が空いたままだ。常人であればショック死してもおかしくない傷を負いながら、彼らは平然と立ち上がったのである。

さすがのモララーもこの二人に違和感を覚え始めた。

( ;・∀・)(なんだこいつら。敵の魔法なのか?)

どういうことかは分からないが、この戦いを終わらせるにはこの二人を殺す他ないようだ。

どれだけ切り刻んでも、どれだけ中を掻き回しても、こいつらは体が動く限り戦い続けるのだろう。

( ;・∀・)(とんだことになりやがったぜ)

ゾンビのように酷く緩慢とした動きで向かってくる二人を、モララーは槍でいなしながら考える。

少し離れたところで倒れているショボンと今の状況、さらに正体不明の男と出会ってから定かではない記憶。これらから導き出されるのは、自分が敵に操られショボンと戦わされた。

そして、何らかの方法でショボンはモララーを救いだし倒れてしまった、というところだろう。

5451:2014/08/01(金) 21:37:43 ID:Fg3tJaY20

では、この二人はなんだろうか。これまた推測ではあるが、敵の魔法によってモララーと同じく操られた人間、もしくは始めから作られた存在。

どちらにせよ敵であることには変わりないのだから、さっさと終わらせるに限る。

問題はどこまでのダメージが致命傷となるか、だ。

現状、普通の人間であれば死んでいるはずの傷ももろともせず今だ活動している彼らは、早さはなくなったものの十分に戦えるようだった。

( ・∀・)(てことは、本当に動けなくなるまでやらなきゃこいつらは止まらない)

上等だ。目の前に自分を止める奴がいるなら倒すまで。

モララーはそうやって生きてきたし、これからもそうして生きる。

邪魔をするやつは何人たりとも許さない。

( ・∀・)「行くぜ! おらぁ!」

モララーは槍を大きく振って衝撃波を放つ。

男達が吹き飛び、そのうちの武器を持たない男へと肉薄。急所である心臓部へと槍を突き立て、刺さったままぐるりと体を反転させる。

すぐ後ろまで迫っていた男を横から殴り付け槍を引くと、刺さっていた男も数メートルほどバウンドして動きを止めた。

5461:2014/08/01(金) 21:40:04 ID:Fg3tJaY20

そこから魔法、一点集中型の巨大な光の槍を展開して止め。大きなクレーターを形成して男は瓦礫へと沈んだ。

( ・∀・)「あらよっと!」

すぐに地を蹴り、宙を舞う。片方の男が拾ったハンマーを振りかぶっていた。

地響きと共にハンマーが誰もいない地を叩き、その隙に後方へ回ったモララーは首を切り飛ばす。

何も出来ずに倒れた男を見下ろし、一息つこうかと煙草を取り出しかけて━━

( ・∀・)「おっと」

振り向き様に槍を分解。巻き付けて男を拘束する。

( ・∀・)「こんなんじゃ不意打ちにもならねえぞ」

男の胸に手を当て、魔法陣を展開。体の内部を破壊する強力な攻撃を使い、そこから槍を振って遠くへ投げる。

( ・∀・)「めんどくせえ。終わらせ━━」

(´ ω `)「やめろ……」

( ・∀・)そ「副団長!?」

魔法陣を展開させかけて、モララーは慌てて止めた。敵の二人はもはや虫の息で、起き上がるのにも相当な時間をかけている。

5471:2014/08/01(金) 21:41:03 ID:Fg3tJaY20

( ・∀・)「大丈夫ですか? 俺が油断したせいで……」

(´ ω `)「謝罪は……あとだ。あの二人を、殺してはいけない」

( ・∀・)「はっ?」

(´ ω `)「あれは、一般人だ。間違いなく」

( ・∀・)「一般人て……」

(´ ω `)「僕達は……騎士だ。救わなきゃならない。だから」

満身創痍で立ち上がるショボン。足腰は震え、まるで生まれたての動物のように弱々しい。

( ; ・∀・)「そんな傷で戦うつもりですか!?」

(´ ω `)「当たり、前だ。僕は騎士で、彼らは一般人。命をかけてまで救うべき人達なんだ!! それが、僕の道なんだよ!!」

( ・∀・)「……分かりました。あいつらは敵に操られてるんですよね? なら、副団長は魔法の解析をお願いします。俺は足止めに徹しますから」

(´ ω `)「くれぐれも、殺すなよ」

( ・∀・)「了解」

騎士としての誇りや矜持がショボンを立たせているなら、その部下である自分はそれを支えるために働かねばならない。

尊敬する上司のため、先輩のため、決意新たにモララーは槍を振るう。

( ・∀・)「仕切り直しだよこの野郎」

5481:2014/08/01(金) 21:42:01 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

ξ;゚⊿゚)ξ「何よ、これ」

宿舎までたどり着いたツンと渡辺は、目の前で繰り広げられる戦いに萎縮してしまった。

人を越えた戦いとはまさにこのことだろう。黒の魔術団でさえここまでの実力を持つものはいなかったはずだ。

つまり、これは奴が生み出した戦闘兵器ということなのだろう。

从'ー'从「……どっくん」

渡辺が不安げに目の前の光景を眺めて呟く。

ツンは何かを言わねばならない、と察したがそれよりも大事なことがある今それを言うときではない。

ξ゚⊿゚)ξ「渡辺。早く宿舎に入りましょう。私達にはやることがある。優先順位を間違えちゃ駄目よ」

从'ー'从「うん」

戦場を避けて宿舎に侵入すると、中は大分荒らされてはいるもののツンと渡辺の荷物は無事だった。中身も無事だ。

ξ゚⊿゚)ξ「これと、これ。あとは、これもね」

必要なものを取り出し、持参したポシェットに入れていく。すると、隣でそれを見ていた渡辺が、

从'ー'从「そういえばしぃちゃんはどこかなぁ?」

ξ゚⊿゚)ξ「……確かに見当たらないわね」

彼女も相当消耗しているはずだ。魔物がいなくなったとはいえ、敵は無尽蔵に魔物を生み出すような魔法を操れるのだ。どこかで休んでいるのならばいいのだが。

5491:2014/08/01(金) 21:43:33 ID:Fg3tJaY20

ξ゚⊿゚)ξ「……一応これ飲みなさい。全快とはいかなくても、魔力は回復するわ」

小さな瓶詰めの液体を渡辺に渡し、自らも同じものを飲み干す。これで魔物と遭遇しても対応できるはずだ。

从'ー'从「……ねえ、やっぱり」

ξ゚⊿゚)ξ「分かってる。もしかしたらって可能性もあるしね。念のためこの周辺を━━」

ツンが言い終わる前に、部屋の壁を突き破って何かが飛んできた。二、三度床を跳ねて止まったそれを見て、思わずツンは駆け寄る。

(*#ー")

ξ;゚⊿゚)ξ「しぃ!?」

从;'ー'从「しぃちゃん!!」

傷だらけのボロボロ。衣服は破れ、露出した肌は裂けて血が滲んでいる。

( ゚"_ゞ゚)「おや、小娘と遊んでいたら忌み子と道具に遭遇するなんてな」

穴の空いた壁から男が顔を出した。

ξ゚⊿゚)ξ「棺桶死オサム……」

( ゚"_ゞ゚)「久しいな、貞子の道具。君も俺の研究対象として欲しかったのだが、もはや無用の産物だよ」

ツンはオサムを睨み付ける。この男ほど生理的に嫌悪感を抱かせる人間も珍しい。見ただけで嘔吐感が込み上げてきた。

5501:2014/08/01(金) 21:44:56 ID:Fg3tJaY20

ξ゚⊿゚)ξ「あんたなんかに体をいじくられなかっただけ不幸中の幸いだったわ」

( ゚"_ゞ゚)「そう嫌わないでくれ。今俺は気分がいいんだ。魔剣を覚醒させ、神を創造した。もはや君達では止められないほどに事態は進展したのさ」

ξ゚⊿゚)ξ「冗談じゃない。あんたのやり口くらい私が分からないとでも思ってんの? 止めてみせるわ。こんなくっだらない計画、全部ね」

( ゚"_ゞ゚)「相変わらず威勢だけはいい。王都の連中に感化されたようだ」

ξ゚⊿゚)ξ「……渡辺」

ツンは杖を構えてオサムと対峙する。

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと野暮用ができたの。しぃを連れて話した通りにできる?」

从;'ー'从「え? でも……」

ξ゚⊿゚)ξ「お願い。黒の魔術団とのけじめはきっちりつけときたいの。特にこいつは、私の体に描かれてる魔法陣の考案者だからね」

本来であれば貞子に対するけじめだったのだ。しかし、この男も貞子同様人を弄ぶ、いやそれ以上の屑。黒の魔術団を知るツンとしては何がなんでも止めなければならない。

(*#ー")「駄目……です」

臨戦態勢に入ったツンの後ろから、小さな小江が聞こえた。

从;'ー'从「しぃちゃん!? 立ち上がっちゃ駄目だよ!!」

しぃはよろよろと立ち上がると、ツンの隣でステッキを構える。

(*#ー")「この人は、私が倒さないと……」

5511:2014/08/01(金) 21:46:16 ID:Fg3tJaY20

小さな声だが、確かな意思を感じる声色。つい先程までおどおどしていたはずの彼女とはうってかわって、決意が溢れている。

ξ゚⊿゚)ξ「無茶よ。何があったかは知らないけど、その体じゃろくに戦えない。休んでなさい」

(*#ー")「人を、命を、この人は弄んでいるんです! たくさんの可能性を、未来を奪い、自分の欲求を満たすための道具にしか思ってない人間を、私は許せません!」

从'ー'从「しぃちゃん……」

しぃの想いは人として、騎士として至極当然のことなのだろう。そして、本人もそうありたいと願うからこそ、ここに立っている。

自分の命を省みずに。

ツンはしぃと自分を重ねてしまった。

自分の理想や思想なんて、黒の魔術団に入った時からどこにもなかったとツンは気づかされる。

どこまでも真っ直ぐで、愚直なほどの理想をツンはどこかに置き忘れてしまったのかもしれない。

ξ゚⊿゚)ξ(……子供なのは私なのかも)

全てに絶望した自分と、そこから立ち上がろうと足掻くしぃ。

ツンにはしぃを止める権利などありやしない。

从'ー'从「それなら、私も協力するよぉ〜。一人じゃ出来ないことも、みんなでやれば不可能じゃないよ」

(*#ー")「ですが」

从'ー'从「ね? ツンちゃん」

渡辺に振られツンは少しの間、迷う。

自分は二人の隣に立つ権利があるだろうか?

どこまでも愚かな自分は、正義のために戦えるのだろうか?

ξ-⊿-)ξ

5521:2014/08/01(金) 21:47:35 ID:Fg3tJaY20

そんなもの、ありやしない。けれど、ツンは今自分の意思で決めることができる。

心のままに、歩くことができる。

ξ゚⊿゚)ξ「しぃはまず体力と魔力の回復をしなさい。そこの鞄に回復瓶が入ってる。渡辺と私で少し時間を稼ぐわ」

从'ー'从「ツンちゃん!」

ξ゚⊿゚)ξ「勘違いしないで。こいつを倒すには三人の方がいいって判断しただけよ。それじゃ、やるわよ!」

( ゚"_ゞ゚)「相談は終わったか? それじゃ心置きなくやらせてもらおう」

オサムの周辺に魔法陣がいくつも出現する。そこから三体の魔物といくつかの光球が現れた。

ξ゚⊿゚)ξ「渡辺は右の魔物を、私は真ん中と左のをやる」

从'ー'从「了解だよぉ〜」

ツンは杖を前に振ると、すかさず攻撃を放つ。貞子直伝の闇魔法、巨大な爪を模した黒い塊がオサムのいた辺りをまとめて抉りとった。

さらに頭上から黒雷。敵の立っている場所をまとめて吹き飛ばす。

ξ゚⊿゚)ξ「これで終わりじゃないでしょ?」

もくもくとあがる煙の中から浮かんでいた光球が飛来した。

ツンはひらりと横に飛んでそれをかわす。闇魔法では一切の防御魔法を形成することができないため、防御や回避は己の体術次第なのだ。

从'ー'从「えーい!」

渡辺が隣で箒を降っていた。部屋全体を包む莫大な炎の渦がいくつも巻き起こり、周辺の物という物が消し炭になっていく。

5531:2014/08/01(金) 21:49:20 ID:Fg3tJaY20

ξ;゚⊿゚)ξ「出力間違えてんじゃないの?」

渡辺の攻撃に呆れながらも魔法をいくつも設置していく。部屋から出さないように、しぃに被害が及ばないように考えながら、敵の行動を予測しながら。

( ゚"_ゞ゚)「なかなかやるな」

視界が一気にクリアになる。オサムが何かしたのか、煙が一斉に掻き消えた。

( ゚"_ゞ゚)「だが甘い」

オサムの目の前に生き耐えた魔物が横たわっている。それらはすぐに光となり、魔法となり、凶器となってツンと渡辺に降り注ぐ。

从'ー'从「ツンちゃん!」

渡辺がツンの前に躍り出て防御結界を形成した。結界に弾かれ、光の槍は霧散する。

ξ゚⊿゚)ξ「喰らいなさい!」

床が盛り上がり、板を突き破って黒い棘が現れた。それに触れた木の板は瞬時に溶けていく。

オサムの後方にまで及んだ黒い棘は、彼の行動を制限すると同時にこちらの動きを見えなくさせた。

5541:2014/08/01(金) 21:52:02 ID:Fg3tJaY20

さらにツンはその棘を起点として黒い霧を噴出させる。

( ゚"_ゞ゚)「これは……」

ξ゚⊿゚)ξ「闇毒よ。体内に入れば魔力と臓器を蝕む強力な毒にあんたは耐えられるかしら」

( ゚"_ゞ゚)「戦法としては面白いが、まだまだだな」

不意に、後ろから衝撃。一気に部屋の端まで叩きつけられる。

ξ ⊿ )ξ「がはっ……」

( ゚"_ゞ゚)「幻も見分けられないとは、やはりまだ子供か」

从'ー'从「ツンちゃん一人じゃないよ」

渡辺の炎がオサムを包んだ。周囲の魔力が瞬時に膨れ上がり、さらに火力を増す。

ξ;゚⊿゚)ξ「駄目! それは━━」

( ゚"_ゞ゚)「幻だ」

从;'ー'从「え?」

渡辺の目の前にオサムが現れ、グーで殴り付ける。体を崩した渡辺を、さらに魔法で弾き飛ばす。

ξ゚⊿゚)ξ「こんのぉ!」

闇で作られた龍がオサムへと迫る。同時に設置した魔法も発動。四方八方を囲んで動きを封じたはずが━━

( ゚"_ゞ゚)「弱いな」

オサムは手を頭上に掲げる。それだけで魔力に戻された魔法が彼の掌に収束してしまった。

( ゚"_ゞ゚)「君達程度の魔法なら瞬時に解析できる。勝ち目はないと思うぞ」

(*゚ー゚)「それはどうでしょうか」

5551:2014/08/01(金) 21:53:13 ID:Fg3tJaY20

しぃの声が静かに、しかしはっきりと響いた。オサムが振り向く前に肉薄していたしぃは彼の体に魔力を放出する。

魔法として論理的に構築されたものではなく、相手を傷つけるだけの暴力的な魔法。

オサムは防ぐ間もなく直撃し、部屋の壁を破り、ツンの設置魔法をいくつかその身に浴びながら彼は外へと押し出された。

从'ー'从「もう大丈夫なの?」

(*゚ー゚)「ええ。大分回復しました。お二人ともありがとうございます」

ξ゚⊿゚)ξ「礼を言うより、やることがあるわ。さっさと終わらせてシャワー浴びるわよ」

三人で外へ出ると、ボロボロになったオサムが立ち上がるところだった。肩で息をしながらにやりと笑っている。

( #"_ゞ゚)「さすがに、今のは効いたよ。うまく連携を取られる対処できないものだな」

ξ゚⊿゚)ξ「さっさとこの街に張り巡らせた魔法を解きなさい。そうすれば半殺しで勘弁してあげる」

( #"_ゞ゚)「それは無理な相談だ。すでに計画は最終段階に入っている」

从'ー'从「どういうこと?」

( #"_ゞ゚)「さてな。俺はここらで退かせてもらおう。あとは君達の目で確かめるといい」

5561:2014/08/01(金) 21:54:35 ID:Fg3tJaY20

そう言ってオサムの姿が薄くなっていく。ツンはすぐに魔法で攻撃するものの、幻を貫通しただけでどこかへいってしまった。

あとには沈黙と破壊の爪痕だけが残る。三人は互いに顔を見合わせるが、言葉はない。

ξ゚⊿゚)ξ「計画ってなんなのよ」

やがて、ツンがぼつりと呟いた。

从'ー'从「なんだろう。でもでも、よくないことなのは何となくわかるよぉ〜」

渡辺が気の抜ける間延びした声で言うが、彼女からすれば十分に気を引き締めているのかもしれない。

(*゚ー゚)「……そういえば、ドクオさんは?」

思い出したようにしぃが言うと、ツンもはっとなる。確か、のっぺりとした人形のようなものと戦闘していたはずだが、近くだというのにめっきり音が聞こえない。

ξ゚⊿゚)ξ「さすがに死んでないとは思うけど、様子を見に行きましょう」

5571:2014/08/01(金) 21:55:58 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

貧しい家に生を受け、早くに両親を亡くして物乞いにまで身を堕とし、日々の食事に困るような生活が続いた自分にも目指すものができた。

報われぬ者に救いの手を。

なんといい言葉だろう。

報われぬ自分には誰も救いの手を差し伸べてはくれなかったが、たまたま盗みに入ったきらびやかな建物の中で一人の男が分厚い本を読み上げていたのを聞いた。

幼かった彼にはそれが何なのかは分からなかったが、あれは神の御教を謳う聖書だったのだ。

それを読み上げる時間は決まっていて、朝昼晩の三回。彼は当初の目的も忘れて何度も何度もその男の言葉を聞きに足しげく通うまでになる。

そんなある日、彼はとうとう見つかってしまった。自分が街で悪評高い盗人だということも男は知っていたが、彼は怒られることもなくもてなされてしまう。

『腹が減ったのならいつでも来るといい。だが、人様の物を盗るのはよくないことだ』

彼はそう言って笑顔で自分の頭を撫でてくれた。

報われぬ者に救いの手を。

その日、その時、その瞬間から彼のいく道は決まっていたのかもしれない。

男は教会に務める神父なのだといった。謳いあげたのは聖書という。

彼は熱心に神父の教えを聞き、その言葉の通りに生きていく。

誰も救ってはくれないが、神父はこんな子供を救ってくれた。

だから自分も同じように、誰かを救う人間になろう。

神の御教をどこまでも愚直に守っていこう。

彼に一つの道ができた。

5581:2014/08/01(金) 21:57:02 ID:Fg3tJaY20



『そうするほか、我が子達を助ける方法はないんだな』

男の声が静かに響いた。目の前にいるのは男と、女。計三人の人間が神妙な顔つきで話し合っている。

『あなたが協力してくれるというなら、私達が口を利いて差し上げますわ。あなた一人と未来ある子供達の命、考えるまでも思いますが……』

『分かっているさ。私は老い先短い。こんな老いぼれの体でよければ喜んで差し出そう』

『話が分かる御仁で助かりますよ。これで俺の研究も飛躍的に進むでしょう』

男がにたりと笑う。その笑顔がけして善意的なものではないことは分かっていた。それでも、彼は提示された条件を飲む他に子供達を救う手段がないことを知っている。

孤児など食い扶持を減らすお荷物でしかない。

みすぼらしい子供を喜んで引き取るような人間はこの世界にはいないのだ。

誰も彼もが地位と権力に固執し、偽善と欺瞞を振りかざし、人を人とも思わぬ愚行を繰り返す。己を魅せるために金を使い、見せしめのために人をも殺す。人命など路傍の石よりも価値のないごみのような扱い。

それでも彼が善であれたのは、子供達の無垢な心と神の教えがあったから。報われぬ者達に救いの手を、悪しきものは裁きの鉄槌を。

それは彼の矜持であり、信念であり、生きてきた道でもある。

だからこそこうして全てを受け入れる覚悟ができた。

『老兵はただ去り行くのみ。世界が戦場ならば、それもまた一つの真理だ』

『殊勝な心がけでございますわ』

『この教会はどうされるおつもりで?』

『信仰などとっくに廃れている。ならば無くなったところで特に影響はないだろう。好きにするがいい』

『そうですか。ならば好きにさせていただきましょう』

559名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 22:03:01 ID:P.oddmBI0
見てるよ
支援

5601:2014/08/01(金) 22:03:22 ID:Fg3tJaY20



『神父様、どうして教会の取り壊しを受け入れたんですか?』

幼い少女に尋ねられて、彼は苦笑する。

神父のいない教会に価値はない。子供のいない孤児院に意味はない。

自分が抱えた荷物は自分だけで背負うものだ。ましてや幼い子供達に負い目を感じて欲しくはない。彼女らは自分の、そして未来を担うかけがえのない財産なのだから。

全てを明かすこともできただろう。明かした上で、選択を強いることもできた。だがそうしたところで彼女達の命を自分一人で守ることなどできやしない。

老兵は去るのみ。

彼はもう世界から消える。大切なものを救うために。

『私の役目はもう終わったのさ。君達は君達の道を歩むといい。生きるための道は信頼できる人間が教えてくれるだろう』

『でも……』

『大丈夫。何も恐れることはない。君達は何でもできて、何にでもなれる。そのための下地は十分に教えたはずだ』

少女は首を傾げる。

聡い子だ、今は分からずともきっと近い将来に理解するだろう。その時、自分が言ったことを正しく導いてくれれば、蒔いた種は芽吹くはず。

自然と笑みがこぼれた。

『いつか君は大きな壁の前に立ちすくむかもしれない。今日という日を後悔するかもしれない。けれども、君は君の信じる道を行きなさい。たとえどれだけ辛くとも、悲しもうとも、歩くことをやめてはいけない。その先にこそ、君が君であるための答えを見つけられるはずだから』

神は人を救わない。どれだけ綺麗なお題目を掲げたところで、それは紛れもない事実。

人を救うのはいつだって人なのだ。人は一人で生きていけないから、手を取り合って助け合いながら生きていく。

魔法が繁栄し、その事実を人が知ったとき、神は必要とされなくなった。

けれども、彼には神がいないとは思えないのだ。人の未来は誰にも分からない。だからこそその先にある巡り合わせというのは運命の悪戯だとか、奇跡だとか呼ばれるのだろう。

願わくば、彼女に幸多き人生を。

5611:2014/08/01(金) 22:06:33 ID:Fg3tJaY20



『何を……する気だ……』

『何、あなたはこれから神にも等しい存在へと昇華する。そのための準備さ』

『……ならばこれはなんだ!! お前達は人々を救うための組織ではなかったのか!? なのに、なのに━━』

目の前に積まれているのはたくさんの人、人、人。どれもこれも血みどろで息をしていない。

『必要な犠牲だよ、神父様。世界の平和というのは常に犠牲の上に成り立っている。先の戦争も多大な犠牲のお陰で終結したに過ぎない』

『だからといって、罪もない人を手にかけていいはずがないだろう!?』

『綺麗事だよ。それに、この世界は近い内に生まれ変わる』

『……どういうことだ』

『この世界に人間という病原菌がいる限り平和など訪れやしない。だから、一度壊すのさ。そこから世界は新たな歴史を歩むことになる』

『何を……』

『あなたには、全てを壊してもらう。世界から、人という人を』

『やめろ……やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』

『あははははははははははははは!!』

5621:2014/08/01(金) 22:09:16 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

( A )「ぐっ……」

間一髪、ドクオは自ら振り下ろした剣を握っていた。

( ∵)

彼の下には傷だらけの人形が横たわっている。驚異的な再生力を見せていたはずが、いつの間にか体中ボロボロで身動き一つしない。

( A )(今のは、こいつの記憶か?)

戦いの最中、突如ドクオの脳裏に浮かんだ映像に出てきた人物はどこか人形の面影があったように思える。

以前にも似たようなことがあった。貞子と戦う前に、ツンのものと思しき記憶が流れ込んできたことが。

何故このようなことが起こっているのか、ドクオには分からない。けれども、この記憶の流出はドクオに何かを伝えているのだということだけは分かる。

ツンも、こいつも、同じく誰かに助けを求めて、助けてもらえなかった。救いの手を差し伸べてもらえなかった。

誰かが手を差し伸べれば、他の道があったかもしれないのに、みんなが笑っていられる幸せな未来が待っていたはずなのに。

( A )(俺は、こいつを斬っていいのか? 殺してしまって、本当に正しいのか?)

剣を握る手に力が入る。

早く殺せと、壊せと内から溢れ出るなにかがドクオに命じていた。

殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセ

5631:2014/08/01(金) 22:10:06 ID:Fg3tJaY20

( A )(くそっ、静まれ! 静まれ!)

なおも強い殺人衝動と破壊衝動が全身を巡り、体が言うことを利かない。この体も、心もドクオのものだ。他の誰でもない、自分のことは自分で決める。

(゚A゚)「邪魔だ! お呼びじゃねえんだよ糞野郎!」

ドクオが叫ぶと同時、声が聞こえた。集中しなければ聞こえないほどの小さな声。それは悲しみに彩られ、深淵の底から響くような暗い感情を引き起こしてくる。

『━━━━』

何を言っているかは分からない。分からないが、意味だけは分かる。

これは単純なる破壊と殺戮を求めている。そのためにドクオを欲していた。自由に動く体を、血塗られた心を。

( A )「がぁぁぁ……」

軋みをあげながら腕が徐々に下へと落ちていく。同時にドクオの指の肉も少しずつ離れていった。

( A )「俺のことは俺が決める。俺がしたことは俺が背負う。だから勝手に命令すんな。俺は」

( A )「こいつを殺さない!!」

瞬間、ドクオの腕はふっと力が抜けた。

('A`;)「はぁっはぁっ」

滝のような汗が流れ、ドクオはその場にへたりこむ。止めどなく脱力感が押し寄せ、気を抜いたら意識を持っていかれそうだった。

だが、まだ終わらない。もしかしたら、この人形は救えるかもしれないのだ。

('A`)「……お前に聞きたい。お前は、しぃちゃんの探してる神父なのか?」

( ∵)

5641:2014/08/01(金) 22:11:19 ID:Fg3tJaY20

ボロボロの人形は答えない。じっとこちらを見つめているだけ。

('A`)「あんたは人を救うために、オサムに利用されたんじゃないのか?」

( ∵)

('A`)「なぁ、答えろよ。しぃちゃんはあんたを探してるんだ。あんたに会いたがってるんだ。あんたに、ありがとうって言いたいんだよ!」

( ∵)

( ;.;)

('A`)「あんたにもまだ人の心が残ってるんだ。今からだって遅くない。しぃちゃんに会ってやってくれよ」

( ;.;)ソウカ……シィガワタシヲ……

('A`)そ「……」

('A`)「そうだよ! 今この街に来てる! だから」

( ;.;)ダガモウオソイ。ワタシハヒトノミチヲオオキクフミハズシタ

('A`)「どんな姿になったってあんたはあんたじゃないか! あの子が欲しいのはあんたの言葉なんだよ!」

( ;.;)シンネンヲウシナッタワタシハタダノドウグデシカナイ

('A`)「違う! あんたはまだ心を失っていないじゃないか。誰かを心配し、人を想い、安寧を願ってる! それは紛れもない人としての心だろう!」

( ;.;)ワタシハ━━

彼が何かを言いかけたとき、後方から殺気を感じてドクオは振り返る。

( ゚"_ゞ゚)「人形相手におしゃべりとはいい趣味じゃないか」

5651:2014/08/01(金) 22:12:29 ID:Fg3tJaY20

('A`)「オサム……」

( ゚"_ゞ゚)「人形にまだ自我があるとは驚いたが、それも些細なことだ。計画はすでに最終段階に入っている」

('A`)「最終段階?」

( ゚"_ゞ゚)「教える義理はないが、俺を追ってこい。そこで全てを見せてやろう」

オサムが指を鳴らすと、人形と共に姿が揺らぐ。

('A`)「ちっ、待ちやがれ!!」

『採掘場に来るといい。君が来るのを待っているよ』

それだけを残して、オサムと人形は消えた。

('A`)「……の野郎」

心の底からあの男への怒りが湧いてくる。

人をあんな風に変えてしまったことを、誰かを想う心を踏みにじったこと、大切なものを奪ったこと。

そのどれもが越えていい領域を踏み外している。

('A`)「お前は絶対に殺す」

誰もいなくなった街で、ドクオは一人呟いた。

そして、ドクオは一つの変化にも気付く。

人の命の重さ、心の在処、その認識が自分の中で価値を変え始めていることに。

从'ー'从「どっくーん!」

遠くから自分を呼ぶ声が聞こえ、そちらに顔を向けると渡辺が手を振りながら走ってきていた。

('A`)「渡辺……」

自分も、人を踏み外した存在なのだろうか。

人形との戦いで力を欲した自分は、ひたすらに破壊と殺戮を望んでいた。それだけが自分の存在価値なのだと信じこんでいた。

果たして、ドクオはまだ人であるのか、自分ですら分からない。

( A )「俺は……」

まだ、人でありたい。

5661:2014/08/01(金) 22:13:41 ID:Fg3tJaY20



渡辺、ツン、しぃと合流したドクオは簡単に近況を交換し、これからのことを相談する。

ξ゚⊿゚)ξ「私と渡辺はオサムが張ってる術式を解きに行くわ。多分だけど、あいつが使ってる術式は私に使われてる術式を応用しているはずだから」

从'ー'从「私が行っても役に立つかなぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「一人じゃどうしようもないかもしれないでしょ。とにかく今は人手が欲しい」

('A`)「……そうだな。ならそっちは任せるよ」

(*゚ー゚)「私はオサムと対決させていただきます。彼の考え方を私は許すことが出来ません」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとは私もそっちに行きたいんだけど、ま、今回は任せるわ。私の分もぶん殴っておいて」

(*゚ー゚)「分かりました」

从'ー'从「穏便じゃないよぉ……」

あれこれと話が進む間、ドクオはしぃに話すべきかを迷っていた。

あの人形は、しぃの探し人だ。お礼を言いたいと語るしぃの表情は真剣そのもので、そして、もしかしたら二度と叶わないものかもしれない。

彼はまだ人間だった。けれどもドクオにはそれを救う手だてがない。戦闘になれば彼ともう一度話す機会はないかもしれないのだ。

そうなれば、ドクオは迷うことなく彼を殺すだろう。人に危害を与えるために作り替えられた存在は、否応なく周囲を破壊し尽くす。それは彼の望むことではない。

5671:2014/08/01(金) 22:14:31 ID:Fg3tJaY20

そして報われぬ者に救いの手を、という信条を持った彼の教えを受け継いだしぃにそれを見せるのはなんとしても避けたかった。

('A`)「……しぃちゃん。君はツン達と行ってくれないか?」

(*゚ー゚)「敵の数は二人ですよ? いくらドクオさんと言えど数の不利は覆せません」

('A`)「けど、その……」

言い淀むドクオにツンが詰め寄った。思わずドクオは一歩下がってしまう。

ξ゚⊿゚)ξ「あんた、なんか隠してない?」

('A`;)「んなことはないけど……」

ξ゚⊿゚)ξ「私の目をちゃんと見なさい」

しばしツンと見つめ合う。気恥ずかしさよりも、自分の心を見透かされそうな瞳に、ドクオは視線を逸らしたくなる。

ξ゚⊿゚)ξ「……しぃ、ドクオと行きなさい。こいつなんか隠してる」

('A`;)「ちょ、おい!」

ξ゚⊿゚)ξ「うっさい! あんたのことだからしぃのこと心配してるんでしょうけど、そういうの余計なお世話っていうのよ? しぃももう子供じゃない。自分の道は自分で決められる。自分の荷物くらいきちんと背負えるわ」

(*゚ー゚)「……はい。それくらい、当然です」

从'ー'从「そうだね。もし、抱えられなくなったら私達が支えてあげればいいもん。しぃちゃんは一人じゃないよ」

女性三人にそう言われると、ドクオはなにも言えなくなってしまう。

小さく溜め息をつくと、ドクオはしぃの頭を撫でてやった。

5681:2014/08/01(金) 22:15:23 ID:Fg3tJaY20

(*゚ー゚)?「ドクオさん?」

('A`)「その、なんだ。必ずしぃちゃんのことは守るよ。けど、色々と覚悟はしといてくれ。多分、俺だけじゃ何も出来ないから」

(*゚ー゚)?「はぁ……」

本当は、あの人形のことだけじゃなく、自分のことも心配なのだ。もしかしたら自分はまた力に飲まれてしまうかもしれない。得体の知れない何かに身を任せてしまえば、ドクオはたくさんの大切なものを傷つけてしまう。それだけは何としてでも見られたくなかった。

('A`)「……危なくなったら逃げてくれ」

(*゚ー゚)「分かりました」

ξ゚⊿゚)ξ「私達は術式の解除が終わったらショボンさん達の捜索に向かうわ」

('A`)「俺達よりお前らの方が大変そうだけど、しくじるなよ。駄目だったら全部パーだ」

ξ゚⊿゚)ξ「誰にもの言ってんのよ。私と渡辺は最高のパートナーよ?」

从;'ー'从「私自信ないなぁ〜……」

(;*゚ー゚)「そこは嘘でも任せてって言いましょうよ……」

('A`)「とにかくやることは決まったな。お互い頑張ろう」

ξ゚⊿゚)ξ「もちろんよ」

从'ー'从「おー!」

(*゚ー゚)「はい!」

そうしてドクオ達は二手に別れて行動を開始する。ドクオとしぃはオサムとの決戦を、ツンと渡辺は術式の解除とショボン達の捜索。

四者四様の最終決戦の火蓋が切って落とされた。

('A`)(*゚ー゚)

ξ゚⊿゚)ξ从'ー'从

5691:2014/08/01(金) 22:16:08 ID:Fg3tJaY20
第十二話 終

5701:2014/08/01(金) 22:22:14 ID:Fg3tJaY20
これにて本日の投下終了です
本当は最後の手前くらいまで書きたかったのですが予想以上に長くなったので半分にわけました
モ・トコでの話もあと二話で終わるかと思います
ちょっと転職などしまして忙しいですが、また来週には投下したいと思います
それでは本日も読んでいただきありがとうございました

571名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 22:41:44 ID:P.oddmBI0

今回もボリュームがあって面白かったよ

5721:2014/08/01(金) 22:51:19 ID:Fg3tJaY20
>>571
投下中の支援ありがとうございました
自分は何分気分屋なもので筆の乗り具合が日によって変わってしまいます
しかも文章の書き方というか、表現の仕方も安定しないので分かりにくかったらすいません
一応一話の文量は電撃文庫換算で30ページくらいに納めています
なのでボリュームがあるかと言われると、実はそうでもなかったりしますw
こういった御言葉はとても励みになります
ありがとうございました!

573名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 00:50:31 ID:g6yeSXj20
乙乙
面白かったです

574名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 04:00:04 ID:wQBqFdF60
( ^ω^)乙だお
( ^ω^)今回もハラハラしたお
( ^ω^)次回も期待だお

575名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 05:42:55 ID:rQG3EmWk0
顔文字君キッショw

576名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 12:16:30 ID:wQBqFdF60
( ^ω^)んだこら

577名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 13:15:25 ID:fa5uI3A20
やめなよ

578名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 17:55:40 ID:7V5cjlh60
君は顔文字じゃなくてブーンって名前がちゃんとあるだろ?

579名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 20:38:04 ID:DseNonJU0
( ^ω^)だおだお

580名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 01:17:39 ID:KJ/61X2c0
誰でもいいけど騙り者は嫌われるもんだ、あぼんしようにもここじゃAAで弾けないしね
だからウザがられてんじゃない?

581名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 01:42:12 ID:pAc3K2eM0
( ^ω^)ウザくないお

5821:2014/08/05(火) 00:49:00 ID:JrzmoqSI0
どうも1です
今週の金曜日に第十三話を投下できそうです
残り二話、気張っていきます

5831:2014/08/05(火) 00:52:26 ID:JrzmoqSI0
それと顔文字付きのコメントに関してですが、今後もスレが荒れるようであれば差し控えていただけると幸いです
できれば皆様には私が書いた作品を滞りなく読んでいただきたいので、心苦しいですがご了承いただきたいと思います
差し出がましいようですが、ご理解くださいませ

584名も無きAAのようです:2014/08/05(火) 12:42:25 ID:P4Kmuoro0
川 ゚ -゚)「作者乙だぞー!!」

↑こういうの駄目って事か?
ブーン系コミュニティでAAレスが否定されるのは違和感があるな
過度の連レスを制限すれば問題無いように思うが

まぁスレの自治は作者に任せる

5851:2014/08/05(火) 13:19:12 ID:62eFFt6g0
>>584
いえ、あくまでそういったレスで荒れるのであればですかね
自分は特に問題はないと思ってますし、嬉しいです
ですが、過度にやり過ぎて不快に思うかたもいるかもしれないので、注意と捉えていただければと思います

586名も無きAAのようです:2014/08/05(火) 18:40:32 ID:KYq37fZc0
何だろうな、顔つるっつるの中坊がガクトやキムタクの真似してるようなそういう類の不快感なんじゃないだろうか

5871:2014/08/09(土) 23:19:22 ID:Mp/6WgvU0
どうも1です
引っ越しやら何やらでまだ半分ほどしか書き上げておりません
本来であれば昨日金曜日の投下だったのですが、おそらく来週のどこかになりそうです
やるやる詐欺で申し訳ありません
近いうちに投下日を告知しに参りますので今しばらくお待ちくださいませ

588名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 01:33:26 ID:EfICnaYE0
超待ってる
だが無理はしないで自分のペースで書いてくれよ

http://www.youtube.com/watch?v=QleN4Bjvl1E&feature=youtube_gdata_player
俺の中でのEDテーマ
なんとなく渡辺のイメージ

5891:2014/08/11(月) 12:49:56 ID:5Fyh4cMU0
どうも1です
今週の金曜日にはなんとか投下できそうですのでお待ちいただければ幸いです
投下前にあと二話で終わると言ったのですがもしかしたらあと三話ないし四話になるかもしれません

>>588
こういうのを見ると書いててよかったなぁと思いますね
やはり動かすキャラには愛着があるのでそれぞれのテーマソングとかイメージ曲なんかは見るだけでニヤニヤしてしまいます
一応自分的オープニングやエンディングもあるにはあるのですが、ここでは明言しないでおきますw

5901:2014/08/15(金) 05:26:19 ID:enxHGJmg0
どうも1です
本日21時より投下開始いたします
百物語と重複すると思いますが、目を通していただけると幸いです

591名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 08:53:48 ID:WlLTJE9c0
百物語も書くのか!
楽しみ

592名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 08:54:36 ID:WlLTJE9c0
あっ勘違いだ
とにかく楽しみにしとく

5931:2014/08/15(金) 21:00:18 ID:YSQy/0hU0



第十三話「戦う理由」



.

5941:2014/08/15(金) 21:03:39 ID:YSQy/0hU0

◇◇◇◇

('A`)「どうやら招かれてるみたいだな」

(*゚ー゚)「鉱山の地下にこんなものを設けているとは……」

ドクオとしぃは目の前に漂う一つ目の魔物についていきながら周囲を警戒する。ここはいわば敵の本拠地、いつ何が起きてもおかしくはない。オサムが不意打ちを仕掛けてこないとも限らないのだ。

明らかに人の手が入った縦長の通路を歩いていくと、開けた場所に出る。ドーム状の空間、その中心に巨大なタワーが建っており、周囲を大規模な術式が囲んでいた。

そこに二つの人影。

( ゚"_ゞ゚)

( ∵)

ドクオはゆっくりと歩いていく。これが最後の戦い。オサムを倒し、神父を救う。これ以上あの人を苦しませてはならない。

('A`)「言われた通り来てやったぞ。随分と悪趣味な秘密基地じゃないか」

静かに、だがはっきりと言葉を紡ぐ。それでも半球状のここではドクオの声が反響していた。

( ゚"_ゞ゚)「どうだ? 俺の研究の成果が全て詰まっているこの場所は。神秘的で、感動的だろう」

('A`)「はっ。お前の美的感覚は壊滅的だな。こんな薄気味悪い場所がお気に入りだなんてどうかしてる」

5951:2014/08/15(金) 21:05:41 ID:YSQy/0hU0

( ゚"_ゞ゚)「褒め言葉として受け取っておこう。だが、そんな口を利けるのも今だけだ。すぐに断末魔の嬌声をあげさせてやろう」

(*゚ー゚)「あなたの悪巧みもここまでです。私達があなたの計画を止めてみせます」

( ゚"_ゞ゚)「下らない正義感、だな。本当にくだらない。人間の本質を理解しているのか? 人の歴史とは戦いの中で生まれてきたというのに、君達はそれを否定するのか?」

('A`)「過去のことなんて知らないよ。俺達が生きるのは今で、その先なんだ。たとえ戦いの中で歴史が作られたとしても、これから先もそうやって歩んでいくとは限らない」

(*゚ー゚)「人の心はあなたが言うほど醜いものではありません。誰かを想い、手を伸ばす優しさを誰もが持っているんです。生まれながらの悪なんて、本当はどこにもいないんですよ」

( ゚"_ゞ゚)「綺麗事だな。よほど幸せな生活を送っていたようだ」

('A`)「引くつもりはないんだな?」

( ゚"_ゞ゚)「元よりそのつもりだが」

オサムの言葉にドクオは剣を抜いて答える。もはや言葉ではこの男は止まらない。

( ゚"_ゞ゚)「君達には君達の理想があるように、俺にも俺の信念がある」

('A`)「黙れ。誰かを死なせてまで手に入れる思想なんて、たとえその先に誰もが笑っていられる未来があったとしても、俺は認めない」

ドクオとオサムの視線が交差する。

ドクオの言葉は奴が言う通り綺麗事だ。ドクオ自身貞子を手にかけている。彼女にも未来があったはずで、その未来をドクオは奪ったのだ。自身の手で自分の言葉を否定している以上、こんなことを言うのは間違っているのだろう。

5961:2014/08/15(金) 21:06:59 ID:YSQy/0hU0

必要な犠牲だったとは言わない。自分の価値観で人の生死を決めたのだからドクオは立派な罪人だ。だからこそ、ドクオはその事実を受け止めて歩かねばならない。

('A`)「俺もあんたと同じ人間だよ。けどな、いや、だからこそ言ってやる。お前は間違ってる」

( ゚"_ゞ゚)「……ふっ、人を殺すために剣を振るうか。ならば、俺も相応の力で答えるとしよう。来い! 魔剣の主!」

オサムが手を振った。瞬間、人形がこちらに走り出す。

( ∵)

大降りのフック。ドクオは後ろに下がって剣を抜いた。人形はそのまま拳の連撃。その全てをうまく避けて、一瞬の隙を見つけて懐へと入る。

('A`)「らぁっ!」

人形の腹に横一閃。金属がぶつかる音、腹部に少し食い込んだだけでダメージにはならなかった。

踏み込んだ足を軸にそこから体を反転させ、回し蹴りを叩き込む。人形の体が吹っ飛び、ドクオは追いかける。

( ゚"_ゞ゚)「俺を忘れるなよ」

オサムの声と同時に下方から地面が盛り上がった。どのような魔法かは知らないが、ドクオは強引に横へと跳ぶ。

着地した瞬間、体勢を立て直した人形が迫っていた。

('A`)「ちっ!」

(*゚ー゚)「ドクオさん!」

人形の横から高速の水弾が四つ。人形がそちらへ意識を向けた。

('A`)「こん、のぉ!」

胸の辺りを狙って鋭い突きを繰り出す。ほとんど同時の攻撃に人形がわずかに動きを止めた。

だが、二人の攻撃は見事に外れることとなる。

人形の体が半透明になり、光となって霧散。ドクオの剣が空を切り、そのすぐ隣に再び人形が構成された。

攻撃の勢いを殺しきれないドクオに人形の光の礫。さらにオサム側からも黒い槍が狙っている。

(;*゚ー゚)「間に合って!」

5971:2014/08/15(金) 21:08:16 ID:YSQy/0hU0

ドクオを覆う水の障壁。光の礫の軌道が逸れた。しかし、黒槍は障壁を突き破りこちらへと侵入する。

突きを戻す勢いを利用して体を返し、槍を消し飛ばす。障壁がなくなるのを見計らって人形の手がこちらに伸ばされるのが見えた。

さらに反転、剣で腕を弾いて全身を前へ。岩に体当たりをしたような反動が返ってきたが、人形との距離が離れた。

中空に光の弾が浮かんでいる。動き出すのを確認してから逆方向へ駆け出し、オサムの位置を確認。あまり離れていない場所に、奴はいた。すでに複数の術式を展開しており、こちらの動向を探っているのだろう。

迷うことなくそちらへ足を動かすと、周囲の床がタワー状にいくつもそびえ立つ。

('A`)「しぃちゃん!」

(*゚ー゚)「了解です!」

ドクオの掛け声で、しぃが用意していたのか広範囲の魔法を発動。巨大な氷の刃が隆起した岩々をまとめて凪ぎ払い、一瞬で凍りつくと粉々に弾けとんだ。

ドクオは最大速度を維持したままあと二歩のところまでオサムに接近、居合いの要領で後ろに流していた剣を目一杯横に振るう。

刹那、視界にノイズが混じった。次の瞬間オサムとドクオの距離が離れ、その中間に人形が現れる。

( ゚"_ゞ゚)「そう簡単に近付かせるほど俺は安くないぞ」

('A`)「くそっ!」

右、左と物理攻撃を交えながら人形は魔法を巧みに操りドクオを攻撃していく。さらにその後方にいるオサムはそこまで強いものではないが魔法で支援。しぃも負けじとオサムの魔法を相殺、攻撃を返していくもののやはり経験の差かドクオ達は徐々に押され始めていた。

5981:2014/08/15(金) 21:09:49 ID:YSQy/0hU0

特にオサムの魔法で厄介なのは空間操作系の術式だった。距離を操り視界を操り、人形をこちらの完全な死角へと移動させていく。意識の外からではドクオもうまく対応が出来ない。

しぃもオサムと人形の飛び道具をうまく対処していると思うが、絶対的に手数が足りないのだ。二人分の魔法に対し、一人でそのほとんどを阻止しなければならない上にオサムと人形はこの場所にショートカット術式を用意しているようで、展開から発動までの時間が早すぎるのである。

しぃが打ち漏らした魔法の弾幕を避けながらの戦闘にドクオの中で焦燥を募らせていく。人形の攻撃は鋭く、そして重い。まともに食らえば意識を断絶させられるであろうことが容易く予想できた。しかも人形は戦闘が長引くにつれて攻撃のスピードを増し、パターンが多彩になっている。ギリギリのところで捌いているものの、少しずつではあるがドクオの被弾は多くなっていた。

('A`;)(どうなってんだよ……戦ってる中で成長してるってのか? それとも、オサムがなんかやってんのか?)

視認できる範囲では特別な魔力の動きはないはずだ。オサムが身体強化系の魔法を使っている様子もない。つまり、純粋に成長しているということになる。

('A`)(確か、こいつは魔力を吸収する力を持ってる。いや、それもあるけど魔法で定期的に放出してるよな。なら、何が……)

もう少し時間があればこの空間における魔力の流れを追えたかもしれないが、敵はそのからくりを簡単に明かしはしないだろう。

意識が思考の渦に飲み込まれ始めた時だった。突如背中で何かが炸裂した。

(゚A゚)「ぶべらっ!」

(;*゚ー゚)「ドクオさん!? 自分から当たりに来ないでください!!」

('A`;)「わ、わりぃ!」

(;*゚ー゚)「って前向いてください! 前!」

('A`)「あ」

( ∵)

振り向くと、人形がいた。

5991:2014/08/15(金) 21:13:20 ID:YSQy/0hU0

腹部に拳がめり込んでいく。

( A )「あ、がっ……」

(;*゚ー゚)「ドクオさん!!」

弧を描き宙を飛ぶドクオ。揺れる視界の中で、人形の方へと魔力が流れていくのが見えた。

( A )(あれ?)

魔法に使われる様子はなく、ただただ人形の体へと吸収されていく。その度に人形の体から魔力が放出、吸収を繰り返していた。

( A )(どういうことだ、あれ)

空中で体を動かし、うまく着地を決める。それを狙ってドクオにトゲ付きの鉄球を模した黒い魔法が降り注ぐ。

それらを大きく剣を降って消し飛ばし、ドクオは立ち尽くした。攻撃に備えていた人形が一瞬動きを止める。

('A`)(魔力は)

一度周囲に展開されたオサムの魔法陣に吸収されると、違う魔力が排出されて人形へと放たれる。

('A`)(もしかして、こいつ……)

ドクオが解を導きだす前に人形が距離を詰めていた。

('A`;)「考え事もできねえのか!!」

ドクオが防御の体勢をとると、右下から鋭利な棘となった床がこちらを狙っていた。

バックステップ、着地。するとドクオの後方から無数の水弾が人形へと飛んでいく。

幾つかが人形の目の前で弾け、隙ができた。ドクオは人形へと近付き一歩踏み込む。

間違いなく当てられる距離。さらに、追加の水弾が人形へと迫っていた。

しかし。

6001:2014/08/15(金) 21:16:09 ID:YSQy/0hU0

( ∵)

人形が水弾に向けて軽く手を振ると、水弾が始めから存在しなかったように消失。さらに逆の手でドクオの剣を握って受け止めた。

(;*゚ー゚)「えっ!?」

('A`;)「はっ?」

予想だにしなかった展開に、ドクオも、しぃも絶句する。確かに、敵は魔力を掌握する術を身につけてはいたが、ドクオの魔剣のように魔法そのものを消す力などなかったはずだ。

( ∵)

驚きのあまり動きが止まったドクオに、人形が魔法を消し飛ばした手を額に当ててきた。脳内に警鐘が鳴らされる。

全力で剣を引き抜き、逃れようとするが間に合わず、目の前で魔力が解き放たれた。

( A )「なっ……」

今のは水の魔法だった。しぃが使った魔法を利用したのか、それとも別の力なのか。どちらにせよこちらの動揺を誘うやり方はオサムの入れ知恵だろう。

うまく受け身をとって最小限のダメージに抑えるが、視界がちかちかと明滅していた。さすがのドクオといえど、至近距離で魔法を使われては威力を殺しきれない。

(*゚ー゚)「どういうことかは知りませんが、意識の死角をつけば━━」

しぃが援護のために術式を展開させるのが見えた。

('A+;)「駄目だ! 避けろ!」

ドクオの叫びにしぃが術式を留めた。途端にゆらりと陽炎が揺れる。

( ゚"_ゞ゚)「それを許すと思うかね?」

しぃの目の前にオサムが現れ、黒い霧を発生させる。

(* ー )「え……」

同時、留めていた術式が暴発。標的を失った水のレーザーはドクオへと向かう。

('A`;)「やべぇ!!」

6011:2014/08/15(金) 21:17:44 ID:YSQy/0hU0

復活したドクオは剣を構えた。が、それを阻むように人形が魔法を展開。周囲を光の障壁が取り囲んでいく。

さらに障壁の中心からは細い糸が噴射され、ドクオの体に纏わりつくと一気に締め上げた。

('A`;)(動か━━)

動きを封じられたドクオは力任せに体を左へと寄せる。圧力のかかった水のレーザーが右肩を抉っていく。

からん、と音が響いた。肩に力が入らない。いつの間にか剣を落としている。

( ∵)

拾っている暇はない。人形がこちらを向いていた。

( ゚"_ゞ゚)「無様だな」

オサムが手を振ると、砕けた岩石の礫が人形を追い越してこちらへと迫る。剣を拾う暇もなく、ドクオは右へ転がって回避。

('A`;)「くそっ!!」

体を起こした時には人形の足がドクオをとらえていた。抉られた肩口に足が触れると、光が炸裂。驚異的な威力と魔法の力でドクオは端にそびえる壁に激突する。

( ゚"_ゞ゚)「弱い、弱すぎるぞ!」

再びオサムの魔法、ドクオの周囲に陣が浮かび上がり、そこから無数の黒い針が突き刺した。

致命傷にはならない程度に調整されたのか、ご丁寧に急所を外されている。腕や足に空いた穴から鮮血が流れていく。もはや痛みすらない。

( A )(早く、剣を回収しないと……)

床に倒れたドクオは急いで立ち上がろうとするが、うまく力が入らなかった。ちらりとしぃを見るが黒い霧はなおも彼女を覆っており明後日の方を向いている。どうやらこちらを認識してはいないようだった。

( ゚"_ゞ゚)「人形よ、これは君の獲物だ」

6021:2014/08/15(金) 21:19:09 ID:YSQy/0hU0

オサムが魔剣を差してにやりと笑うのが見えた。

人形が魔剣を拾い上げる。片手で軽く振るい、具合を確かめているようだ。

( A )「てめぇ、それを……離せ!」

( ゚"_ゞ゚)「何、すぐに返すさ」

オサムが言うと同時、人形を魔法陣が囲む。ドクオが見てきたどの魔法陣より複雑で、巨大な術式だった。

( A )「何を……」

( ゚"_ゞ゚)「外の戦いでは君と魔剣の力の解析をさせてもらった。おかげで魔剣という存在の力をいくらか人形に組み込むことが出来た」

( A )「なん、だと……」

先ほどしぃの魔法を消し飛ばしたことをドクオは思い出す。仮にも伝説上の力を解析、組み込みをやってのけるなど信じられことではない。

だが、オサムはそれをやってのけた。あり得ないと言えることさえも、平然と。

( A )(どれだけ狂ってやがる……)

( ゚"_ゞ゚)「おかげで大分面白いことが分かった。魔剣が魔力を食らうのは、どうやらこの人形ととても似た性質を持っているようでね。元々そういった仮説は俺の中も考えてはいたんだ」

ドクオにはオサムが言う言葉の意味を正しく理解することは出来なかった。

その言い方では魔剣と人形は同質の存在だと言っているようなものだ。

生物としての兵器と、意思を持たぬ武器。相反する二つの存在が、同じだなどととても信じられることではない。

( ゚"_ゞ゚)「魔剣の主である君はもう気付いているのではないか? それとも、目を背けているのかね? この魔剣を持つ意味を、力を、理由を、知らないとは言わせない」

( A )「んなもん……知らねえよ」

本当は、薄々分かっている。あの剣は強い自我を持っていること。人を殺せと、世界を壊せと深淵の淵から呼び掛けている。

6031:2014/08/15(金) 21:20:13 ID:YSQy/0hU0

あれは絶望を、悲壮をもたらすもの。それに取り憑かれたドクオも、もはや同様の存在なのだろう。

( ゚"_ゞ゚)「まだそんなことを言うか。よく目を開いて見るがいい。人であった存在が、体を欲した魔剣が、本当の悪魔となる瞬間を刮目せよ!」

人形から発せられる光が魔法陣を消し飛ばす。静寂が訪れ、徐々に人形の体に変化が生じていく。

体色が黒へと変わり、筋肉が隆起する。頭には黒い髪が生え、周囲に薄い魔力が漏れだしていた。

そして、肩甲骨の辺りから白く大きな羽がばさりと現れ、

( . )Aaaaaaaaa!!

人形は、更なる高みへと上り詰める。

( ゚"_ゞ゚)「ふははははははははは!! これだ、これだよ俺が求めていたものは!! 今、この瞬間、俺の研究は成就した!! 人も、悪魔も、神さえも凌駕した存在を作り出したのだ!! さぁ、殺せ!! 壊せ!! 全てを━━」

( . )

オサムの言葉は最後まで発せられることはなかった。

音もなく近付いた人形の手により、オサムは切り捨てられ、消えた。

自分が生み出した狂気に、殺されたのだ。

( . )Aaaaaaaaa!!

人形は生まれたことを誇るかのように、存在を誇示するかのように、吠える。到底生き物とは呼べぬほどの声で。

( A )「さすがに、これはねぇわ……」

(* ー )「ドクオ、さん……」

状況は絶望的だった。しぃは未だ解けぬ魔法によって視力を奪われたまま。武器もない、他に味方もいない。ただの人間にすら劣るドクオしか、あれを止める人間は見当たらない。

けれども、それでもドクオはやるしかなかった。人形も、いや、ビコーズ神父はどこまでも被害者で、救いを求めている。

人を愛した人間が救われないなんてドクオには認められない。

('A`)「やらなきゃ。俺がやらなきゃ……」

ドクオは立ち上がる。たとえ命を投げ出すことになるとしても、譲れないものがそこにはあるから。

6041:2014/08/15(金) 21:21:19 ID:YSQy/0hU0

◇◇◇◇

(;´ ω `)(さすがに一筋縄ではいかないな)

操られているであろう二人の炭鉱夫にかかっている魔法の術式は酷く難解で、幾重にも渡って解除を妨害する罠が張られていた。

もっと多くの時間が残されていれば簡単とまではいかなくともショボンでも十分に対応できただろう。

しかし、先の鉱山崩壊術式を展開した際に、自身のマナを使用したせいでショボンはまともに動くことができない。

何せ一人の命を全て使うほどの規模だ。最後の最後でモララーが槍を突き立ててくれたお陰で、彼のマナを吸収できたからこそ死ぬことは免れたが、未だ危険な状態に変わりはない。

(;´ ω `)(このタイプの術式はそう簡単に個人で使えるものじゃないんだ。ということは、どこかに大元の術式があるはずだけれど……)

術式の一部を書き換えればご丁寧に魔力の暴走を促す術式を組み込まれているせいで迂闊に手を出せないうえ、魔力の供給元を特定させないように隠蔽術式を展開させているようだ。

その全てを同時に解析、削除しなければ二人の炭鉱夫は死に至る。しかも、マナを利用されてショボンが行った魔法と同規模の破壊を振り撒くだろう。

そもそも、敵が送り出している魔力の量が尋常じゃない。人一人が一度に操れる魔力は最高位の魔法使いですら精々王都の半分ほどである。

だがこの術式は半永久的に作用される仕組みになっていることから見ても、人間が扱う量を大幅に越えていた。

(;´ ω `)(せめて、大元の術式を解除できれば……)

6051:2014/08/15(金) 21:22:07 ID:YSQy/0hU0

連鎖的に積み上がる問題に手をつけられる箇所が減っていく。恐らくではあるが世界的に見てもここまで大掛かりで、なおかつ人を陥れるほど酷いこの術式は最高峰レベルだろう。

知識だけでも、技術だけでもこんなものは作れやしない。それに、人の全てを否定するぐらい冷酷な心がなければ平常な精神ではいられないはずだ。

どこまでも人というものを馬鹿にしている。

王都を襲った貞子とやらも随分と狂った人間だったが、彼女でも比較できるものではない。

故にショボンは諦めることをしてはいけない。風前の灯火となった命さえ投げ出さねば騎士団のルールも、自身の心も根本から折れてしまう。

本来であれば今回の件、全てショボン一人で片付けなければならないはずなのに、帰りが遅い自分を心配してドクオも巻き込まれているはずだ。

失敗して、死にかけて、それでもしぶとく生きているのならその穴を埋める必要がある。結局ドクオに全てを投げてしまったのだから、騎士団副団長としての本質を果たすべきだ。

(;´ ω `)(まだまだ、まだまだだ!)

痛む傷口を押さえながら踏ん張っていた時、突如術式の命令が書き変わったことにショボンは気付いた。

これだけの術式に干渉でき、かつ書き換えるなどその辺の汎用な魔法使い、いやしぃほどの術者であっても到底不可能なはず。さらにここにいる者を考えれば本人以外考えられない。

(;´ ω `)(また不穏分子が現れたのか?)

だが、今はありがたい。どこの誰かは知らないが術式の一部が書き換えられたことによりショボンでも手を出せるレベルまで導かれた。

ショボンがこうしている今もものすごい速さで術式が書き換えられている。

(´ ω `)(救ってみせる! 絶対に!)

6061:2014/08/15(金) 21:23:23 ID:YSQy/0hU0




( ;・∀・)(まずいな)

敵の攻撃をうまく無力化しながら、モララーはショボンへと目を向ける。

(´ ω `)

魔力の解析をしているのだろうが、すでに息はあがり大きく肩を上下させ、膝が笑っていた。

もはや彼は限界だろう。体内のマナを著しく消費している、とモララーは感付いていた。

だがモララーが止めたところで、ショボンがそれを止めないことも痛いほどに理解している。彼は彼の信念に基づいて動いているのだから、誰もそれを阻むことなど出来やしない。

( ;・∀・)(俺にできるのは敵の足止め。そしてあの人を信じることだけだ)

傷付きながら、悔やみながら、尚も歩き続けるなんてモララーには出来ないだろう。本当に大切なもの、譲れないものはモララーにだってある。けれど、失ってまで貫かねばならない信念は経験がものをいうのだ。

だからこそモララーはショボンを信じ続けてきたし、尊敬することができた。背中を見て、この人のために剣を取っていこうと誓うことができた。

失いたくない。

もっとこの人の隣で学びたい。

そのために、モララーは退くことをしない。

( ・∀・)「くそったれが!」

6071:2014/08/15(金) 21:24:45 ID:YSQy/0hU0

大きく槍を振るい、衝撃波で二人を吹き飛ばす。先程つけた傷から鮮血が吹き出した。あまり力を込めたつもりはないが、剥き出しになった筋繊維や血管はいとも簡単に破れてしまう。

それでも痛みすら感じず、苦痛に顔を歪めることもない二人の男。一般人であり、生涯炭鉱夫として働き血生臭い戦いとは無縁の人間。

なのに彼らは望まぬ戦いを強いられて傷付いていく。たった一人の心無い人間の手によって。

そもそも一般人を戦闘員に作り変えるなど狂っていなければ出来ることではないだろう。人には人の生活があり、未来があるのだから。

ゾンビのような緩慢な動きと生命力で男達は執拗にモララーへと向かってくる。体のどこかが破損する度に彼らの腕が、手に力がなくなり人間とさえ呼ぶことも躊躇うほどに形を変えていた。

時間が経つだけ振るう刃が重くのし掛かり、自分が騎士であることさえ忘れてしまいそうだ。

モララーは虐げられる弱者のために、大切な人を守れる力が欲しくて騎士になった。目の前にいる二人はまさしく、自分の信念そのものなのに、彼らは自らの不運を嘆くことも、悲嘆に暮れることもなく与えられた命令に従うだけの生き物に成り下がって、モララーはそれを虐げているだけ。

こんなことのために力を身に付けたわけじゃないのに。

心に溜まる汚水はだんだんと行き場をなくし、いつの間にかモララーの瞳を介して流れていく。

( ;∀;)「苦しいよな、悲しいよな。きっと副団長がなんとかしてくれるから。だから諦めるんじゃねえぞ!」

( W )

(  − )

モララーの声は二人に届いたのだろうか。答えはない。

けれどもきっと、届いていると信じるしかない。

これが終わったら土下座でもなんでもしよう。許されるだなんて思っちゃいない。罵りでも嘲りでも好きなだけすればいい。

だから、今だけは、今だけは耐えてほしい。全ての決着をつけるやつらがここには揃っているのだから。

6081:2014/08/15(金) 21:25:30 ID:YSQy/0hU0

◇◇◇◇

ツンは一枚の紙を取り出すと、それに魔力を込める。ふわりと浮かび上がり、宙を舞いながらモ・トコの街を進み始めた。

ξ゚⊿゚)ξ「ふむふむ、こっちか」

从'ー'从「なんだか可愛いねぇ〜、これ」

ξ゚⊿゚)ξ「ただの紙が浮いてるだけじゃない。可愛いもなにもあったもんじゃないわ」

从'ー'从「そうかなぁ〜」

渡辺がまるでお花畑で蝶を追うかのような発言をするのを横目で見ながら、ツンは色をつけ始めた線を確認した。

街中に張り巡らされた大小様々な網目状の線は全て魔法として使われている魔力であり、継続して存在しているということは術式にリンクされているということ。

そして線の太さは魔力の量で、太ければ太いほど魔力が通る量も大きい。つまり、それが術式のメインシステムに繋がっているはずだ。

ツンが使った魔力紙は魔力を視認させると共に最も魔力消費量が多い術式へ誘導するという効果を持つ。ただし速度は遅いので方角を割り出すためにしか使えないのだが、ツンはもう一つアイテムを取り出した。

从'ー'从「それはなぁに?」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁ見てなさい」

ナイフほどの大きさの棒を地面に突き刺すと、細い魔力の線が棒の先へと収束していき、一本の太い線へと生まれ変わった。

从'ー'从「わぁ、おっきいねぇ〜」

ξ゚⊿゚)ξ「驚くのはここからよ」

棒を抜いて手に持ち、先程の魔力紙へと向ける。

6091:2014/08/15(金) 21:27:30 ID:YSQy/0hU0

すると、必要以上に魔力を込められた紙は太いパイプとなった線に飲み込まれて一気に加速していった。

ξ゚⊿゚)ξ「よし、追うわよ」

从;'ー'从「わわ、ちょっと待ってよぉ〜」

杖に乗って空を飛んでいくツンのあとを渡辺が箒で追従する。そこまで速度は出ていないが、急ぐに越したことはない。

棒を使うためにいくつかの細い魔力の流れを潰してしまったが、おそらく問題はないはずだ。ツンの見立てでは細いラインはあくまで補助機構としての役割しか果たしていない。命令そのものはメインラインを通っているはずなので大きな影響は与えないだろう。

ξ゚⊿゚)ξ(ま、こんなもんで簡単に壊れる術式を作るとは思えないしね)

オサムの用心深さと魔法学への執念をツンは間近で見てきたのだ。必要のないものは排除し、徹底的に効率を求める一方できちんと補助的なバックアップシステムくらいは用意する。そういう男だ。

モ・トコの外れへと向かっていく魔力紙は、いくつかの中継点として設置された魔導鉱石を経由してとある場所で止まった。そして、その場所を見てツンは驚きを隠せず呆然とする。

ξ;゚⊿゚)ξ「……嘘……」

从;'ー'从「ふわぁ、おっきいねぇ〜」

ツンと渡辺の十倍以上の高さと幅を持つ巨大な岩。さらにその周囲に展開している魔法陣。

これが、オサムが構築した術式なのは間違いない。間違いないが、同時にツンは舌打ちをしてしまう。

ξ;゚⊿゚)ξ「まさか貞子と同じ手を使うとは思わなかったわ……」

从'ー'从「ほぇ? どういうこと?」

ξ;゚⊿゚)ξ「これ、この街の結界に使われてる魔力炉の役割を持ってる」

ツンが魔法陣を確認しながら言うと、渡辺が小さく嘘、と呟くのが聞こえた。二人にとって結界を利用した魔法というのはあまりいい思い出ではない。

6101:2014/08/15(金) 21:29:09 ID:YSQy/0hU0

从'ー'从「えとえと、解除、難しいの〜?」

ξ゚⊿゚)ξ「完っ全に結界のシステムを利用してるっぽいし、まずは解析していかないと手の出しようがないわ。しかも」

ツンは鉱石を注意深く観察する。これだけ大きなものだ、暴発防止の術式は組まれているものの下手に手を出せばモ・トコの街一つくらい簡単に消し飛ばすだろう。

ξ;゚⊿゚)ξ「とにかく解析に入るから、渡辺は周辺の警戒をよろしく。敵だと判断したら片っ端からぶっ飛ばすのよ!」

从;'ー'从「な、なんとか頑張ってみるよぉ〜」

解析用に持ってきた箱状のアイテムを取りだし、魔法陣のシステムをスキャンしていく。目の前に浮かび上がる魔法モニターには文字の羅列が並び、使用されている術式など情報が細かく表示されていった。

ξ゚⊿゚)ξ(やっぱり私の推測は間違ってない。私につけた術式と王都で使った術式を元にしてるんだわ)

さらに別のモニターを作成し、いくつかのコマンドを打ち込む。使用されている術式の詳細が映し出され、ツンはそれらの内容を頭に叩き込んでいく。

自分の知識と照らし合わせながらの作業、もちろん専門ではない。ツンはあくまで戦闘員としての魔法使いだ。学者として完成されたオサムにはほど遠い。

だが、黒の魔術団で培った経験や知識は皮肉にもツンの血肉となり誰かを救うことができる。

後ろで心配そうに見つめる渡辺を、他で戦っているだろう仲間達を。

汚れきった自分は人間としての道を歩いていいのか、ドクオと渡辺に救われてから何度も何度も悩んできた。

自分の肌に刻まれた魔法陣は呪縛となってツンを苦しめている。破壊の力として闇の魔法を叩き込まれ、より効率的に術式を構築することに特化した体は人を壊すためのもの。

そんなものが、果たして人と言えるのかツンには分からない。一生答えは出ないのだろう。

それでも、ツンは誰かを救える。助けることができる。力は、知識はどこまでいっても使う人間の心によるのだから。

その心があるかぎり、ツンはまだ人であれる。今ここにいるのは、それだけで十分だった。

6111:2014/08/15(金) 21:31:31 ID:YSQy/0hU0

ξ゚⊿゚)ξ(この術式、間違いなく周辺の街の結界と繋がってるわね。しかも街の生体反応を検知して自動的にマナを取り出すようなシステムになってる)

他の街で突如消えた人達は皆マナを取り出されこの術式に集められたのだろう。その行き先は鉱山の地下━━つまりオサムの研究室へと繋がっている。

さらにオサムが使用した魔法を自動で委託し、人が使うよりも効率的に魔力を維持することができるようだ。

集めた魔力の用途はオサムが任意で取り出したり出来るようで、あくまで魔力や魔法の操作、収集、解析がメインのようである。

ξ゚⊿゚)ξ(……現在継続中の魔法は、これか。場所は鉱山? オサムとあの変な人形のほかに誰かいるってこと? なら━━)

そこにショボン達がいる可能性が高い。反応を調べれば二つ分。マナの使用量や動向反応から察するに戦闘を行っているのだろう。

ξ゚⊿゚)ξ(えっと、詳しい場所と他の反応は……うん。やっぱりドクオとしぃが戦ってる場所とは違うみたいね。四人、ってことはショボンさんとモララーさんで間違いない)

四つの反応のうち、二つはこのシステムで強引に生命力を強化され、自我を奪われているようだ。だが、気になるのは今にも消え入りそうな一つの反応。人間が生きていられる限界までマナが減っていた。

十中八九モララーかショボンのどちらかが生命の危機に瀕しているということ。これではこの術式を解除するまで持つかどうか分からない。

ξ゚⊿゚)ξ(助けに行きたいけど、騎士団の二人だから怒られるだろうな。ほんと、男ってのは熱っ苦しいわ。やることやるまで生きてなさいよね)

6121:2014/08/15(金) 21:34:24 ID:YSQy/0hU0

とりあえずメインのシステムの外堀から少しずつ削除していこうとして、ツンはあることに気付いた。

誰かがこのメイン術式に干渉している。しかもツンのように専門的な道具を使わずに、自身の魔法によって。

ξ;゚⊿゚)ξ(こんなことできるの相当な術者じゃなきゃできるわけない。ということは、ショボンさんが? しかも、これって、人心操作系の魔法を解除しようとしてる?)

無茶だ。こんな大きな術式を、メインの魔法陣の外から取り外そうだなんて普通の魔法使いなら試みようともしないはず。なにせ魔法陣の中枢の詳細が分からない以上、ダミーとして作られた術式の区別がつかないのだから。

だが、干渉している人間はそれらに引っ掛かることなく少しずつ、確実に網を掻い潜っている。

ξ゚⊿゚)ξ(こんなこと出来そうなのはショボンさんよね。なら、こっちもとことん利用させてもらうわ。うまく書き換えていけばショボンさんの方が解除してくれるかも)

あくまでツンの目的は街を覆うオサムの術式を解除すること。それだけで奴の戦力は大幅に削減されるはずだ。

从;'ー'从「つ、ツンちゃん!」

ツンがいくつかの術式を書き換えた時、渡辺が焦った声でこちらを呼んだ。

渡辺の方を振り向くと、複数の魔法陣が現れ魔物を吐き出し始めるところだった。先程戦った鳥型の魔物だ。

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり侵入者撃退用の術式を組んでたか。渡辺! 何とか堪えなさい! すぐに終わらせるから!」

从;'ー'从「了解だよぉ〜」

すぐに爆発音が聞こえた。渡辺が交戦を始めたのだろう。

あまりいいBGMではないが、ツンはツンのすべきことに全力を傾けねばならない。

ξ゚⊿゚)ξ(渡辺は体力がある方じゃない。ましてや見習いから昇級したばかり。時間をかけてられないわね)

もう一度気合いを入れ直し、ツンは表示されているモニターへ集中した。

6131:2014/08/15(金) 21:36:51 ID:YSQy/0hU0




目の前の魔物に炎の塊をぶつけ、さらに小さく圧縮した火球をばらまく。

始めに放った炎が広がると同時に、火球が連鎖的に爆発。あまり威力はないが、鳥型の魔物は魔法攻撃への耐性が高くないためにまとめて爆散した。

頭上で飛んでいる魔物には炎の渦をいくつも出して牽制する。掻い潜って近付いた魔物は設置型の炎で迎撃。

渡辺の目的はあくまで時間稼ぎだ。ツンが術式の解除を終えるまで堪えることができればそれでいい。何も出てくる魔物全てを殲滅する必要はないのだ。

ならば作戦は簡単だ。使用する魔力、体力を温存しながら近付けないようにすればいいだけのこと。殺すまではいかなくとも、戦闘不能にすればそれで事足りる。

渡辺は自分が出来ることと出来ないことをある程度理解していた。運動は得意じゃないし、戦闘なんかもっての他。勉強も苦手だし、魔法陣の構築も普通の人間より時間がかかる。

けれども今の渡辺は何でも出来そうな気分だった。十や二十できかない数の魔物を目の前にしても、負ける気がしない。

何故なら渡辺は今誰かのために戦うことが出来ているから。王都で貞子と戦った際、渡辺は何もできず泣いてばかり、守ってもらうだけ。あの時ドクオが駆け付けてくれなければ自分は死んでいただろう。

6141:2014/08/15(金) 21:38:38 ID:YSQy/0hU0

だから今、こうしてツンを守ることが出来て、ドクオの手伝いが出来て、とても満ち足りた気持ちが全身を巡っている。

本当は魔物を悪戯に殺生するのだって罪悪感は、ある。

元来争い事を好まない性格だが、何もしないまま死んでしまうなら戦うことを選択できるくらいには彼女も成長したのだ。

ドクオに会う前は自分の命を軽く見ている節があったが、ドクオが戦う姿や騎士団の生きざまは渡辺にいい影響を与えてくれた。少なくとも自分を取り巻く様々な要因を考えて動くことができるのだから。

誰かに優しくして、自身のことを省みない生き方も一つの考え方だろう。感謝されることはなくとも自分の道標として教えてくれた言葉は渡辺の心を大きく占めている。

だが、こうして信頼できる誰かが出来て、そこに自分がいないことを想像して、とても悲しい気持ちになったのだ。

みんなと笑い合えないこと、悲しみを分け合えないこと、辛いことや苦しいことを自分ではない誰かと共有していたら、そう考えるだけで嫌な気持ちになる。

昔の渡辺ならそんなことを思うだけで罪悪感で一杯になっていたが、それは人として当たり前の感情なのだと今は理解している。

いいところも、悪いところもあって初めて人は人であるのだということ。全てを受け止めて笑って許すことができるのは聖人君子でもなければ不可能なのだから。

从'ー'从「えい! ツンちゃんは私が守るんだからぁ!」

6151:2014/08/15(金) 21:41:21 ID:YSQy/0hU0

箒を振って魔法が途切れないように陣をいくつも形成していく。使いきらないよう配分を考慮し、最低限で最大の火力を。

空と陸、二つのルートをきっちり抑えられた魔物達は渡辺に近付けないことから少々不満が溜まっているのか闇雲に突撃を繰り返し、自ら戦闘不能に陥っている。

翼を焼かれ、爪を砕かれ、地に伏せていく魔物達。本来一番頭を使う時間稼ぎという役割を渡辺は忠実にこなすことができていた。

そう、その時までは。

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

从;'ー'从「あれれ〜、三つ首のわんちゃんが出てきたよぉ〜」

嫌な予感がした。鳥型の魔物は数を減らしたままで増えていないな、とは渡辺も気付いていた。このままうまくいくのではないかと少し楽観的になっていた部分も、否定はしない。

しかし、このタイミングで出てきたということはあちらがわもこれが持久戦だと予想していたのだろうか。

从;'ー'从「でもでも、負けないんだから!」

ケルベロスが三体、真ん中の一体が疾駆。迎撃用の魔法が迎え撃つも、強靭な肉体には焦げ痕すら残らない。

从'ー'从「えーい!」

ケルベロスの足元目掛けて爆発系の魔法を三つ。土煙に紛れて渡辺は箒に跨がり宙へと浮いた。ついでに渡辺が陣取った場所へ高出力の魔法を設置。

残りの二体がこちらを視認し、炎を吐き出す。うまくかわしながら渡辺は大量の炎の礫を作り出した。

从'ー'从「いっけぇー!」

6161:2014/08/15(金) 21:42:23 ID:YSQy/0hU0

箒を振って魔法が途切れないように陣をいくつも形成していく。使いきらないよう配分を考慮し、最低限で最大の火力を。

空と陸、二つのルートをきっちり抑えられた魔物達は渡辺に近付けないことから少々不満が溜まっているのか闇雲に突撃を繰り返し、自ら戦闘不能に陥っている。

翼を焼かれ、爪を砕かれ、地に伏せていく魔物達。本来一番頭を使う時間稼ぎという役割を渡辺は忠実にこなすことができていた。

そう、その時までは。

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

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从;'ー'从「あれれ〜、三つ首のわんちゃんが出てきたよぉ〜」

嫌な予感がした。鳥型の魔物は数を減らしたままで増えていないな、とは渡辺も気付いていた。このままうまくいくのではないかと少し楽観的になっていた部分も、否定はしない。

しかし、このタイミングで出てきたということはあちらがわもこれが持久戦だと予想していたのだろうか。

从;'ー'从「でもでも、負けないんだから!」

ケルベロスが三体、真ん中の一体が疾駆。迎撃用の魔法が迎え撃つも、強靭な肉体には焦げ痕すら残らない。

从'ー'从「えーい!」

ケルベロスの足元目掛けて爆発系の魔法を三つ。土煙に紛れて渡辺は箒に跨がり宙へと浮いた。ついでに渡辺が陣取った場所へ高出力の魔法を設置。

残りの二体がこちらを視認し、炎を吐き出す。うまくかわしながら渡辺は大量の炎の礫を作り出した。

从'ー'从「いっけぇー!」

6171:2014/08/15(金) 21:43:08 ID:YSQy/0hU0

炎弾が地面へと向かって躍り狂う。炎に耐性を持つケルベロスには致命傷にはなり得ない。だが、こちらの目的はどこまでいっても時間稼ぎだ。目隠しでもなんでも攻撃を続ける他方法はない。

さらに地と空、挟み込むように二つの魔法陣を形成。その中心に炎がいくつも上から下へと流れていき、地面に触れた瞬間巨大な爆発が巻き起こる。

現在渡辺が使える魔法の中では最大の威力を持つが、効果は期待できそうにない。立て続けに同じものを放つと、渡辺は周辺に目眩まし用の設置魔法を置いておく。

土煙の中から一つ、黒い影が躍り出た。紙一重で横に回避、そしてターン。横から思いきり体当たりをかましてやると、ケルベロスは短い悲鳴をあげて落下していった。

だがほっとするのも束の間、下から巨大な岩がものすごい早さで飛来する。急いで箒を操るも、避けきれず箒の後ろに当たってバランスを崩してしまった。

从;'ー'从「ふ、踏ん張って〜!」

うまく体を使って落下は免れたものの、敵の攻撃は止まない。失速した渡辺を狙って炎が乱れ飛ぶ。服を焦がし、肌を焼きながら宙を行き交い攻撃のチャンスを窺うが、一度離れたイニシアチブはなかなか戻ってこない。

その間にも魔法を設置していくが、こちらの魔法を認識しているのかケルベロス達は弱い魔法を狙ってそれらを潰していく。

炎系の魔法が得意な渡辺にとってははっきりいって相性が悪すぎた。魔力も無限ではないし、高威力の魔法でさえ敵の表面をほんの少し焼くくらいでろくなダメージになっていないようだった。

从;'ー'从(どうしよう……私の魔法じゃ時間稼ぎもできないよぉ……)

敵の数が時間によって増えていくとしたら、渡辺には抗う術がない。広範囲魔法は例によって威力が低いし、騎士団のほとんどが魔法使いであることを考慮すれば魔法耐性がある魔物を選ぶはずだ。

ケルベロス自体魔物としてはそこまで高位の種類ではないし、ましてや物理攻撃に特化した種族は防御を捨てている場合が多い。にも関わらず見習いを卒業した渡辺の魔法さえ通らないのではまるで話にならなかった。

箒を駆って空を飛ぶのですら魔力は消費されていく。このままではツンに被害が及びかねない。

从;'ー'从(でも、手を休めるわけにはいかないよぉ……。きっとみんなも、どっくんもこんな気持ちで戦ってるんだもん)

6181:2014/08/15(金) 21:44:11 ID:YSQy/0hU0

右へ左へ、上へ下へとうまく敵に狙いをつけられないように動き回りながら、この流れを変える一手を思案する。

現在自分が切れるカードはいくつあるのか。まずは状況を整理していかなければならない。

渡辺が使えるのは炎系の魔法、そして空を自由に動き回れるということ。これは陸上しか動けないケルベロス達と相対する上では大きなアドバンテージだろう。

しかしいつまでも逃げ回っていてはいつツンが襲われるか分かったものではない。一応防御障壁を張ってはいるものの、ケルベロスの攻撃力を考えるとすぐにでも壊されてしまう可能性がある。

それとここに来る前ツンからもらった魔法道具もあるのだが、用途の説明を受けることなく受け取ってしまったので使い方はおろかどのような効果があるのかすら分からなかった。

ツンがちらりと言っていたのは攻撃系の道具だそうだが、説明書や仕様書はもちろんながら存在していない。

从;'ー'从(……とにかく使ってみるしかないよね。私がツンちゃんを守るんだから!)

方針は決まった。あとはどのタイミングでそれを使うか。そしてそのチャンスを作れるかどうかにかかっている。

とにかく、今は耐えて天に運を任せるしかない。

从;'ー'从(ツンちゃん、頑張って!)

6191:2014/08/15(金) 21:45:19 ID:YSQy/0hU0

◇◇◇◇

( ゚.゚)

魔剣を手にしたビコーズの動きはまさしく、普段のドクオの戦い方を忠実に再現していた。まるで鏡に映る自分を見ているかのようで、ドクオはあの魔剣がどれほどの力を秘めているかを改めて確認させられる。

剣を一振りすれば地面を消し飛ばし、瞬きの間に姿を消して死角から現れる。

幸いなのは敵がこちらの力を計りあぐねているのか致命傷になる攻撃が来ないことだった。

なにせ魔剣が手元にない今のドクオは普通の人間に毛が生えた程度の力しかない。敵の一撃をもらえば簡単に死ぬし、魔剣で斬られれば即消滅するだろう。

確かに魔剣を持って戦闘を行っていた経験は活かされてはいるものの、元のスペックが天と地ほど離れているため精々攻撃を避けることしかできない。

こちらから敵に踏み込んだところでカウンターを食らうだけだろうし、ましてやダメージが通るのかすら怪しいところだ。

それでもなおドクオが戦い続ける理由は、混乱したままのしぃが残っているからだった。

(* ー )

('A`;)(くそ、このままじゃ攻撃をもらっちまう……早く目を覚ましてくれ、しぃちゃん!)

敵もしぃの存在を分かってはいるのだろうが、あれは戦いそのものを嬉々として行っている。つまり、このままドクオを相手取っている限りはしぃに意識が向けられることはないということ。

もちろんドクオの体力が底を尽きればその時点で二人が生存する確率はほとんどないし、その前にドクオが死んでしまう方が現実的ではある。

今の状況をひっくり返すなんて、やはり今のドクオでは力不足だった。

('A`)(しぃちゃんが目を覚ませばまだ可能性はある。だから、それまでもってくれよ俺の体)

目の前を人形の剣が掠める。すんでのところで体を反らして避けるも、さらに一歩踏み込まれ袈裟斬り。

ドクオはそのまま転倒し、横に転がる。すると上空から光の刃が降り注いだ。

体のバネを使って最速で起き上がると、ドクオは一気に駆け出す。ビコーズが隣を並走するが攻撃はない。

6201:2014/08/15(金) 21:46:34 ID:YSQy/0hU0

慌てて急ブレーキ。突然止まったドクオにビコーズは着いてこれずに遥か先で停止した。ドクオは手近の石を拾うと思いきり投げつける。

一刀の元切り捨てられ、再びこちらへ。ドクオは振り返るとあっさり逃げ出した。

だが、ビコーズの人を越えた身体能力の前では無意味。一瞬で回り込まれ、剣を突き入れられる。

('A`;)「うぐっ……」

体を九十度回り込ませてギリギリ回避。着ていた服に触れ、その部分が一部消失する。

再び距離を取ってドクオは武器になりそうなものを探したが、そんなものはどこにもなかった。もしドクオに魔法の知識があればオサムが用意した魔法陣を利用できたのかもしれないが、考えたところでどうしようもない。

と、ドクオはすぐに思考を中断。目の前で人形が剣を振りかぶっていた。

('A`;)(避けきれねぇ……っ!)

一か八か、ドクオは人形の腕を掴んで押さえ込む。つっかえ棒の役割を果たし、奇跡的にも腕が振り下ろされることはなかった。

('A`;)(ぐっ……さすがに、押さえきれねぇ……)

徐々に沈んでいく体。全ての筋肉を総動員しても歯が立たない。

努力はした。自分にできる精一杯を続けてきた。けれども、この世界の怪物と真っ正面から相対してみればこの通りだ。所詮非力な一般人などその程度しかない。

逃げ出したかった。全てを投げ捨てて崩れてしまえばどれだけ楽になるか。

こんな世界などドクオになんの関係もない。巻き込まれただけの被害者なのに、どうしてこんな痛い思いをして、怖い思いをしてまで戦う理由などどこにあるというというのか。

けれども、ドクオはこの世界に生きている人達の笑顔を知っている。優しさを、強さを、涙を。

この世界にいる誰もがドクオを人として見てくれた。

元の世界で見捨てられ、孤独に死を待つだけの存在であったドクオを、何も言わずに見返りすら求めず拾い上げてくれた人がいる。

きっとそいつはドクオが死んでしまったら涙を流す。たくさんの人が死んだら心を痛める。

ドクオは、そんな彼女を見たくない。そんな顔をさせたくない。

たとえ一秒足りとも悲しませてはならない。

それが今、ドクオがここにいる理由。


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