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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】
1
:
名無しさん
:2004/11/25(木) 19:54
「自分も小説を書いてみたいけど、文章力や世界観を壊したらどうしよう・・・。」
「自分では面白いつもりだけど、うpにイマイチ自信がないから、
読み手さんや他の書き手さんに指摘や添削してもらいたいな。」
「新設定を考えたけど矛盾があったらどうしよう・・・」
など、うpに自身のない方、文章や設定を批評して頂きたい方が
練習する為のスレッドです。
・コテンパンに批評されても泣かない
・なるべく作者さんの世界観を大事に批評しましょう。
過度の批判(例えば文章を書くこと自体など)は避けましょう。
・設定等の相談は「能力を考えようスレ」「進行会議」で。
262
:
kzd34
:2006/01/21(土) 14:42:18
…あ、有難う御座います!参考になります…。(メモを取っている)
確かに、少し遠慮しすぎて話を短くしすぎましたね…スイマセン!!
山根さんはオフでは『卓志』って言うんですか…分かりました!!(再びメモ)
今は出来ませんが、・・・後でまた話を進めさせて頂きます!!
263
:
名無しさん
:2006/01/21(土) 14:48:02
ごめん、小説自体は好きだけどその話し方は直したほうがいいと思った。
時によっては叩かれそうだから・・・ここなら結構大丈夫そうだけど。
他の部分は好きだし今後も期待してる、頑張ってください。
264
:
名無しさん
:2006/01/21(土) 18:17:43
乙です。続きがもっと読みたいです!
あと正しくは
POISON GIRL BANDです。
POIZUNになってますよ
265
:
kzd34
:2006/01/21(土) 19:58:22
…(恥ずかしい) 修正感謝です!!! 有難う御座いました!!
自分の文章力の無さに自己嫌悪…orz
でも、読んでくれている皆さんに一番にお礼を言います!
後でまた書かせて頂きますので…。 (書き直したい…(涙))
266
:
kzd34
:2006/01/21(土) 21:01:28
「卓志。…あの石、何か変じゃない?」「…急に呼び方変えないでよ…。」
逸早く、石の違和感に気付いたのは山根。言われて、田中も気付いた様だ。
明らかに『普通の宝石』では無い。自分達が持っている石と『同類』だった。
…だが。あの『石』は、本来自分達『芸人』が持っている筈なのに。
と言う事は、あの女性も『芸人』なのか? …謎は深まるばかりだ。
「・・・失礼ですけど、その『石』は何処で拾ったんですか?」
先に沈黙を破ったのは…『POISON GIRL BAND』の一人、吉田だった。
声色に、少なからず動揺の色が見られる。…当然といえば当然だろう。
当の本人は、質問には答えない。しかし『拾った』訳ではないらしい。
自体は分からない筈なのに、石を手で包み込む。…守ろうとしているのか?
「…その『石』は、本来俺達『芸人』が持つ物なんです。」
質問に答えない相手に苛立ったのか、次第に『苛立ち』が混じる。
「…もし、貴方が『芸人』なら…『黒ユニット』に入って貰います。」
『黒ユニット』 この言葉を聞いた途端、彼女は『石』から手を離した。
「…逃げるのかな?」「…多分ね。あの3人…結構強いらしいから。」
2人は『石を渡して逃げる』と予想を立てたが、見事に外れてしまった。
彼女は逃げなかった。…それどころか、3人の方へ一歩近付いて行った。
267
:
名無しさん
:2006/01/21(土) 21:34:42
あんまり長々と反省文書かないほうがいいとオモ。
自己嫌悪もほどほどに。
268
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:45:10
「新しい石の能力を考えよう」スレで、チュートリアルの石の設定を投下した者です。
チュートリアルの二人の短編を書いてみました。他の芸人さんは名指しでは出てません。
二人が石を手にしてから、徳井さんの能力が目覚める時のお話です。
初めてで不安なので、こちらで添削していただけると嬉しいです。
269
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:46:24
徳井義実は今、まさに仕事を終えて帰路につくところだった。
今から飲みに行くからお前も来いよ、と言った相方の福田の誘いを断り、徳井は夜の街を一人で歩いていた。時折人にぶつかりそうになるが、上手くそれを避けながら歩く。
道沿いのとある店の前で、徳井はきらりと光る石の存在にふと気が付いた。店の中の明るさのせいで、その石は特に目立って輝いている。徳井はそれに興味が湧き、拾い上げて手の中で転がした。
「きれいな石やな」
ぽつんともらした、石に対する感想。石は透き通ったグリーンで、その色はマスカットを連想させる色であった。女性が身につけるアクセサリーとしてもよく見かけるような、少し大きめの石である。道端に転がっていたのだが、この石の運が良かったのか一つも傷がついていなかった。
「まあ、持っといても悪うないやろ」
徳井はそう呟いて、石についたほこりを息で飛ばした。その瞬間、微量についていた砂のようなものを吸い込んでしまったが、全く気にかけずそれをさっとジーンズのポケットに入れた。太股に石が入っている感覚があるなあ、と当たり前のことをぼんやりと思い、徳井は再び自宅に向かって歩き始めた。
270
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:47:41
「昨日な、きれいな石見つけてん」
徳井は次の日に早速、相方の福田に昨日拾った石を見せた。福田はふうん、と言い、それをしげしげと見つめていた。
「ほんまにきれいやなぁ。どっかで買うたん?」
「いや、道に落ちてたから拾っただけやねんけどな」
そう言うと、福田は苦笑した。
「なんや、ほんなら汚いやん。さっさと捨ててまえよ」
「え。昨日、家帰ってからちゃんと洗ろたんやけど」
「そういう問題やないやろ。たかが落ちてた石に執着心持つやなんて、変な奴やなぁ」
「うるさいわ」
いちいち突っ込んでくる福田をかわし、徳井はそれを再びポケットにしまった。しまう時、その石が不思議と熱を帯びているように感じられたが、特に気を留めることもなかった。
その後、楽屋で髪型を整えていると、そうや、と思い出したように福田が呟いた。
「石ゆうたら、昨日俺ももらったわ。ファンの子のプレゼントの中に、一つてごろな大きさの石があってん。まあ相手は小っちゃい子なんやろな、『きれいだったからあげます。がんばってください。』なんて手紙が一緒に入ってて」
福田はそう言うと、自分の持ってきたバッグの中を探し、徳井の目の前に出した。徳井はそれをしげしげと見つめ、ふうん、と言った。
「お前のも緑色やな。それにしてもグレーのふが入ってたりして、なかなかセンスええやん」
「そやろ? 俺あんまりアクセサリーとかつけへんけど、これはなんかお守りとかになりそうやから、袋に入れて持ち歩くことにしてん」
「ほう」
どういう風の吹き回しなのやら、と徳井が笑いながら呟くと、福田は拳を振り上げて叩くような仕草をしたが、彼も徳井同様笑いをこらえきれない様子だった。
そこで改めて福田の持っている石を見つめる徳井。福田の石はまろやかな緑色で、先程徳井も自分で言ったとおり、グレーのふが入っている。形も質感も違うが、同じ緑っぽい色の石ということで、徳井は不思議な親近感を持った。
徳井はしばらく眺めてから福田に石を返し、再び鏡の前に立って自分のみだしなみを整えることに集中した。
――自分の“石”がますます熱を帯びていることに、全く気づかぬまま。
271
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:48:53
「はいっ、どうもチュートリアルです」
「よろしくお願いしまーす」
いつもの挨拶で始まった漫才。二人の登場で観客が沸き、二人はいつもの調子でネタを始める。
そう、最後までいつもの調子でできていたはずだったのだ。
徳井がズボンのポケットの中に、何か熱いものを感じるまでは。
――ん?
一瞬顔をしかめる徳井。その後、そういえば拾った石を入れたままだったなあと思ったが、何故それが熱く感じるのかまでは説明できず、徳井は一瞬ネタを続けることを忘れた。
「なんや、どないしたん徳井くん?」
相方の福田にツッコまれ、徳井ははっと我に返る。福田は苦笑しながら、続けてツッコんできた。
「また変な妄想でもしてたんちゃうやろな?」
「いや、ちゃうねん。だからお前がな――」
相方のフォローに感謝しつつ、徳井はネタを続ける。観客はそれもネタの内なのだろうと思っているようで、気に留めることもなく二人のやりとりに笑っていた。
自分たちの出番中、徳井はずっと熱いのを感じたままだった。ネタが終わってから石がどうなっているのか確かめよう、と思いながらネタを終わらせ、舞台のすそに引っ込んだ。
出番が終わってから、徳井は案の定福田に先程のことを訊かれた。
「ほんまにどないしたん? 急に喋んのやめたから、びっくりしたで」
「いや……」
徳井はそう言いながら、ズボンのポケットに入れていた石を出した。手のひらに載ったその石はやはり熱を帯びていて、徳井は首を傾げた。ずっとポケットの中に入っていたから熱い、というような熱さではない。石自身が熱を発しているようである。
福田は不思議そうに石を見ている徳井を覗き込んだ。
「なんやお前、こんなもん入れてたん? さっきの石やないか」
「うん……なんかこれな、熱持ってるような気がすんねんけど」
「え、熱? お前のズボンの中で温められてたんちゃうん?」
「いや、そういう熱さやないねん」
そう言って徳井は石を福田の方に向けたが、福田はまだ信じられないといった様子だった。
「どれ、ちょっと貸してみ」
福田がそう言うので、徳井は福田に石を渡した。福田は石を受け取って手のひらで転がしていたが、すぐに首を傾げて徳井に石を返した。
「俺は別に、なんも感じひんねんけど……」
「えぇ? 俺の手の感覚がおかしいんかな」
徳井に返されたその石は、確かに今も熱を帯びている。徳井の手の中では熱く感じるのに、福田はそれを感じないとは。全く訳が分からない。
「まあ、その石のことは後にしよ。考えて分かるようなことちゃうみたいやし」
福田がそう言うので、まあそうやな、と徳井も同意し、二人は楽屋へ戻ることにした。
272
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:50:20
「なぁ。その石、まだ熱い?」
「ん、ああ、まだ熱持ってる。焼け石ほど熱くはないけど……まあ、カイロぐらいの熱さやな」
楽屋に帰るなり、福田はその石のことを話題に出した。徳井の手に握られた石は、まだ熱を保ったままだ。少しも冷たくなるような気配を見せない。
徳井の返事を聞いて、福田はふうん、と言いながら、どこか腑に落ちないといった顔を見せた。
「なんか変な石やなぁ。やっぱり捨てた方がええんちゃう?」
「そうかなぁ。でもな、なんか捨てたらあかんような気がすんねん……」
徳井がそう言うと、福田は再び苦笑した。
「変な奴やな。別にそんな石、持ってたって何の得にもならへんやん。お前の場合、誰かからプレゼントされたとか、自分で買ったとかでもないし」
「うーん……」
福田の説得は確かにそうだと納得させられたのだが、徳井はまだこの石を捨てる気にはなれなかった。勿体ないからとか、そういう理由ではない。何故か、これは自分の手元に置いておくべきものだという気がしたのである。
座ったまま考え込む徳井、その隣で徳井の反応を窺う福田。そうして二人の間に、沈黙が流れた時だった。
コツコツと、楽屋の扉がノックされ、二人は同時に扉の方を振り返った。
「どなたですか?」
福田がそう答えると、相手はくぐもった声でこう言ってきた。
「すいません、ちょっと中に入ってもいいですか?」
「はあ、別にいいですけど」
いきなり何やろう、と徳井にだけ聞こえるよう呟き、首を傾げながら、福田は立ち上がって扉を開けた。外には見たことのない男が立っていて、顔を隠すようにうつむいていた。
「僕らに何か用ですか?」
福田が訊くと、相手の男はうつむいたまま言った。
「石、貸してくれませんか?」
徳井と福田は一斉に顔を見合わせた。石と言われて思い当たるのは、徳井が今手にしている透き通ったグリーンの石である。二人は怪訝そうな顔をし、福田は男に再び問いかけた。
「石なんて、何に使うんですか?」
「いいから、早く貸してください。説明は後です」
男は苛立ちを隠せない口調だった。名も名乗らない人物からそんなふうに言われ、福田もさすがにカチンときたようだ。不機嫌そうな顔をしながら、同じく苛立ちのこもった口調で返した。
「もう何なんですか、いきなり石を貸してくれなんて。理由もないのに、そんなもん貸せませんよ」
273
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:51:32
そう言った瞬間、男がガバッと顔を上げた。あまりにも突然のことだったので、福田は「うわっ」と声を出して二、三歩後ずさった。
男は二十代後半といった感じの顔立ちで、表情を見れば明らかに怒っているようである。二人が知っている若手芸人にも、スタッフの中にもこんな人はいない。誰やねん、という疑問を口から発する前に、男の方が二人の方を向いて口を開いた。
「この二人はお人好しやから、すぐに石渡してくれるって聞いたのに……話が違うやないか」
「な、なんやねん、いきなり」
福田が多少驚きつつそう言うと、男はふんと鼻を鳴らした。
「まあええわ。こうなったら、力ずくでも石を渡してもらわな、な」
そう言うなり、男は一番近くにいた福田の方に飛びかかってきた。福田はなんとかそれを食い止めたが、徳井は慌てて立ち上がり、福田の方にかけよった。
「福田! ……お前、何すんねん!」
「ちっ、こいつ石持ってへんみたいやな……ほんならお前からや!」
男は福田に乗りかかりながら一人でそう吐き捨て、今度は徳井の方を睨んだ。
徳井は今、手にあの石を持っている。力一杯握りしめているせいか、石にこもっている熱がより一層増して感じられた。
「福田、お前も石、出しとけ」
横で倒れている相方にそう囁き、福田が頷いたのを確認して、徳井は立ち上がって男を睨み返した。男は徳井を睨んだまま動かない。
自分の隙を窺っているのかもしれないと、徳井は用心しながら後ずさりした。福田が自分の鞄から石を取り出す時間稼ぎをするつもりだった。
男の後ろにいる福田は、ゆっくりと自分の鞄に向かって動いていた。徳井はそれでいいと小さく頷き、男に視線を戻した。
「なんや。いきなり俺らの楽屋に入ってきて、挨拶もなしにこれか」
我ながら冷たい口調だ、と思いながら、徳井は改めてキッと男を睨む。男はそれでも動かない。視界の端で、福田が鞄からそろりそろりと石の入った袋を出すのが見え、徳井は再び声を発した。
「どこの誰か知らんけど、『人の楽屋に挨拶もなしに入ってくんな!』」
その瞬間だった。
274
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:53:00
バン、と何かが破裂したような音が響き、徳井を睨み付けていた男は楽屋の外に吹っ飛ばされた。徳井も一瞬、何が起こったのか分からずぽかんと口を開けていた。
男はくそっ、と言いながら立ち上がり、再び二人の楽屋の中に入ろうとしたが、何故か楽屋の中に一歩踏み出すだけで外に吹っ飛ばされていた。
徳井は慌てて自分の手の中にある石を見ると、石からは光がこぼれていた。相変わらずじんじんと熱さは伝わってくる。まさかと思いながら、徳井は石をじっと見つめていた。
相方の福田も自分の石を持ったまま立ち上がり、徳井の方を信じられないという目つきで見ていた。
「なんや……何が起こってん?」
「俺にも、さっぱり分からへんねんけど」
徳井は首を横に振った。その間にも男は何度も楽屋の中に入ろうとしていたが、その度に何かに吹っ飛ばされていた。まるで扉に、何かの結界が張ってあるかのようだった。
二人が首を傾げて男を見つめている間に、男はここに入るのは無駄だと悟ったのか立ち上がり、
「く、くそっ、覚えてろよ!」
お決まりの捨てぜりふを吐いて、その場を立ち去っていった。
「な、なんやったんや、一体……」
二人が同時にそう発した時、外から他の芸人の声がした。
「おっす! なんかあったんか?」
その芸人はきょとんとした顔で二人を見つめ、二人が驚きで固まっているのを見て、苦笑した。
「なんや二人とも固まって。お化けでも見たような顔してるぞ?」
そう言い、二人の楽屋に足を踏み入れる。
「あ、入ったら――」
あの男のように見えない結界のようなものにはじかれるのではないかと思い、徳井は咄嗟に声を出したが、その芸人は難なく二人の楽屋に入ってきた。
二人はきょとんとし、顔を見合わせる。さっきのは一体何だったのだろう、と。
とにかく、楽屋に入ってきたその芸人を何でもないと言って追い返し、二人は楽屋の扉を閉め、一気にため息をついた。
「な、なんか知らんけど、疲れたな」
「ほんまに何やったんや、あれ」
二人はそう言いながら、手の中にある石を見つめる。徳井の石は先程までの熱が失せ、すっかり冷たくなっていた。福田の石は以前と全く変わりがない様子である。
275
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:53:36
石の確認が終わったところで、徳井がぽつんと呟いた。
「俺が『挨拶もなしに人の楽屋に入ってくるな』って言うた途端、あいつ吹っ飛ばされたよな?」
そうやな、と福田は頷く。それを確認してから、徳井は続けた。
「でもさっきのあの人は難なくここに入ってこられた……なんでや?」
「うーん……ようわからんなぁ」
福田が首を横に振って分からないという顔をしたので、徳井もがくりとうなだれたが、その後すぐにがばっと顔を上げ、そうや、と叫んでいた。
「あいつ、挨拶したよな? 『おっす!』って、ちゃんと」
「あ、ああ、してたけど……まさか、挨拶したからここに入ってこられたって言うんとちゃうやろな?」
「まあ、とりあえず試してみたらすぐ分かるやろ」
そう言うなり、「おい!」と叫ぶ福田を無視して、徳井は楽屋を出て後輩の芸人を連れてきた。連れてこられた後輩芸人は怪訝そうな顔をして、徳井を見つめていた。
「とりあえず、何も言わんとここに入ってみ?」
徳井は後輩芸人にそう命じた。後輩芸人は何を言っているか分からないという顔をしながら、言われたとおりに楽屋に足を踏み入れた。
その途端、後輩芸人は後ろに吹っ飛び、ちょうどそこにいた徳井に受け止められた。
「な、なんなんですか、これ」
後輩芸人は驚いている。徳井はははっと笑うと、今度は挨拶をしてから楽屋に入るよう命じた。後輩芸人は頷き、「失礼します」、と言ってから、おそるおそる楽屋に足を踏み入れた。
「あ、あれ? 入れる……」
「ほんまや、入れるやん」
後輩芸人と福田が同時に言葉を発し、徳井はまたははっと笑った。
「やっぱりな。……あぁ、時間とって悪かったな、もうええで」
「は、はあ」
後輩芸人は何が何だか分からないという顔をしながら、徳井に言われたようにその場から立ち去った。徳井は楽屋に再び入り、福田に向かって得意そうな笑顔を見せた。
「やっぱりそうやったな。多分俺の言ったことに反応して、ここに挨拶せん奴は入ってこられへんよう、結界でも張られたんちゃうか?」
「まあ、そうみたいやけど、なんでや? この石がそうしたんか?」
福田の問いに、徳井は頷いた。
「多分そうやと思う。その後、この石光ってたし、後で熱も冷めてきたし……この石、なんか不思議な力があるみたいやな」
ふうん、と福田が納得したようなしてないような表情を見せ、頷いた。
徳井はその石をズボンのポケットに大事そうにしまうと、立ち上がって福田の方を向いた。
「まあ、とにかく一件落着や。後で飲みに行くか?」
「おっ、ええな。昨日みたいにつれないこと言うなよ?」
「もちろんや」
福田も鞄の中に石の入った袋を大事にしまい、二人はいそいそと帰る準備を始めた。
福田の石がじとりと熱を持ち始めていたのを、二人は知るよしもなかった。
276
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:56:53
これで終わりです。短編というには長すぎたかもしれません…
ご指摘等ありましたらよろしくお願いします。
277
:
名無しさん
:2006/01/22(日) 10:25:05
乙です。
徳井の石って、能力スレにあったやつ?
278
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 10:55:46
>>277
そうです。能力スレの290にあるのがそれですね。
279
:
kzd34
:2006/01/22(日) 15:10:06
予想外の行動を取った『彼女』は、吉田の目の前まで近付いた。
「…『黒』に入ってくれるんですか? それとも、『石』を…?」
言葉の変わりに、首を横に振った。…つまり『否定』した事になる。
この返事に苛立ちが頂点に達したらしく、感情を押し殺した様な声で言った。
「そうですか。それなら…力づく、と言う事で良いですよね?」
そう言うと、手首に巻かれていた『包帯』をゆっくりと解いた。
傷口から滴り落ちる『血液』は、地面には落ちず『空中』に集まった。
血液で鋭利な『ナイフ』を作り出す。それを、彼女の首筋に宛がった。
「…恐くないんですか?もしかしたら、死ぬかもしれないのに。」
首筋から少量の血が滴り落ちる。それは、白い服に『赤い染み』を作った。
ナイフを避ける事も逃げる事もせず、帽子に隠れた顔は相手を見続ける。
「…コレくらいで痛かったら、この『石』は守れませんよ。」
初めて彼女が発した『声』は高くも無いが低くも無い。
だが、表情が見えない分『声色』が…彼女の『感情』を表している。
『石』を守ろうとしている。 そんな『守護心』が、彼女から伝わる。
吉田は、血液を『液体』に戻す。そして、新たな『武器』に作り変えた。
「初めてですよ。俺がここまでしても、少しも恐がらないなんて…。」
「やっぱ『石』の持ち主だから?」「…それは関係無いと思うけど。」「そう?」
阿部との短い会話を終わらせ、また彼女の方へ『武器』の矛先を向けた。
「…後悔しても、知りませんから。」 彼女の『石』が、淡い光を放った。
280
:
kzd34
:2006/01/22(日) 15:54:15
紫色の『光』が、彼女の身体を取り囲む。暫く立つと…『光』は消えた。
否、消えた訳では無かった。彼女の『両足』に、淡い紫色の輪が見えた。
「この石は『アメジストドーム』。…意味は『気の浄化・強い洞察力』…」
「…見た所、対して強そうな石に見えませんけど?」「そして、もう1つは…」
言い終わる前に、吉田は彼女の身体に血で作った『ピアノ線』を放った。
捕まえた筈だった。数秒前までは、彼女は『吉田の目の前』に居たのだから。
それが何故、彼女は『吉田の後ろ』に立っているのだろうか?
「…『冷静な判断力』。貴方の攻撃を、全て『見させて』貰いました。」
冷静に言い放つ彼女に、隙を作らせないほどの速さで『攻撃』を仕掛ける。
だが、彼の『ピアノ線』は地に落ちた。すぐ隣には、彼女の姿が有った。
「…『見える』んです。相手の放った攻撃の『未来の動き』が、全て。」
そう言い放ち、彼女はゆっくりと振り向く。彼は軽い『怪我』をしていた。
「…捕まえようとしても無駄ですよ?相手の動きは、全て『お見通し』ですから。」
彼女が一呼吸整えると、紫の輪は消えた。どうやら『石の力』を解いたらしい。
「…自分は、芸人じゃ有りません。…でも、石の事は知り尽くしています。」
吉田の顔に『傷』が有る事に気付くと、彼女は『紫の光』で傷を癒した。
「…『黒』でも『白』でも無いけど、この戦いには『参加』させて頂いてます。」
そう残して去ろうとする彼女。 だが、その動きは菊地によって封じられた。
腕を捕まれていたのだ。その腕からは…僅かな量の『血』が流れていた。
281
:
名無しさん
:2006/01/22(日) 19:47:06
◆TCAnOk2vJU さん乙です!チュートキター!
本スレに投下してもいいんじゃないでしょうか。
282
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 20:52:45
>>281
ありがとうございます。
もう一度推敲してから、本スレに投下したいと思います。
283
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 19:29:02
>>279
自分の杞憂だったら悪いが
まさかのオリキャラとやらではないよな?
284
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 20:07:05
チュート徳井の能力みて一部の人にしかわからないような話書いたんだけど
投下よい?
285
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 20:09:52
>283
自分もそれ思った。
自分が知らないだけかとも思ったんだけど、
「180cmを越える長身の女性芸人」が思い当たらないんだよね。
286
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 20:57:56
>>279
それより何よりあんまり小出し小出しにしないで欲しい。
一気に読みたいんだが、出来たなら出来た時にやってくれよ。
で、その女性自分も分からないんだが…。
287
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/24(火) 20:59:07
>>284
是非読ませて頂きたいです。投下お願いします。
288
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 21:14:53
>>279
>自分は、芸人じゃ有りません
と言ってるな。この台詞がどうしても引っかかった。
女性の正体次第では『芸人じゃないと石を使えない』という全体の設定を
台無しにしてしまうぞ。
289
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 22:24:07
>>285
,286
さっきふと気付いたんだが。
あの元女子バレー選手の人じゃないか?
あくまでも自分の予想だけど。
290
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 22:25:07
>>284
です。
添削よろしくお願いします。
某有明のスタジオの楽屋にて
集合時間は11時。
大阪から毎度通う2人はいつも早めに到着し楽屋でおもいおもいの時間を過ごしていた。
「極上のエロスやぁ〜」
そう呟く徳井が見てるのはエロ本でも何でもなくTVのニュースでやっているどこかの祭りの風景。
「はぁ〜」
ちらっと横目で徳井を見てため息をつく福田。
「お前な?最近やたらとエロスエロスって真昼間から勘弁してや。」
「お前かて巨乳巨乳真昼間から言うとるやんけ!」
「アホ!巨乳好きは常識じゃ!」
ついていけへんとさっき東京駅で買ったおはぎを福田は口に押し込めた。
291
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 22:26:07
>>290
続き
「ん?ええこと思いついた。」
「常識」「おはぎ」という言葉で何かひらめきニヤリとする徳井。
そしておもむろにポケットから石を出した。
瞬間嫌な予感がする福田。これから徳井がやろうとしていることは幼馴染の勘・・・
・・・否この流れからいってだいたい察しがつく。
「ちょっやめぇ!なに考えとんねん。」
時すでに遅く石は光を放ち始めた。
「よっしゃ!いくでぇ!『おはぎはエロスです!!!』」
チャチャーーーーーーン!!
少なくとも福田にはいつもの効果音が聞こえた。
おはぎ自体の見た目は全く変わっていない。
ただ何かが違う・・・
そう、おはぎを見てると何故かムラムラしてきた。
「うわっやってもうたぁ」
甘いものが苦手だかなんとなく気分でおはぎを買ってしまった自分を軽く恨んだ。
292
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 22:26:42
>>291
続きラスト
「おはようございます!・・・てあれ?」
そろそろ11時。人が集まりだす頃だ。真っ先に楽屋にきたのは綾部。
「先生!今日も気合入ってますね!エロスの台頭『おはぎ』をわざわざもってきて
本番前に眺めるなんて!いやぁ〜さすがおはぎ!もうオーラが違いますよねぇ。」
おはぎを見て興奮する綾部。
徳井は満足そうに微笑み、福田はあきれ返った。
すると又吉も到着した。
あの又吉がどんな反応をするのか期待に満ちた目で徳井は見ている。
しかし又吉は挨拶して特におはぎのことは触れずに着替え始めた。
もう石の効果が終わってしまったのかと安心しかけた福田は見てしまった。
又吉の頬が赤く染まっていることに・・・
そんなこんなで打ち合わせも終わり本番が始まった。
ただエロスなものとなったおはぎは誰も手をつけずに楽屋でエロスオーラを放っていた・・・
そうして1日5回のリミットをすべてしょうもないものをエロスな物にかえることに
消費していく徳井だった。
293
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 22:30:55
以上です。もう終わってしまった番組ですが思いついたので。
ただ気がかりなのが今他の書き手さんのところにピースがでているのに
こっちでも出してしまったことです。
たいした出番じゃないからよいかなぁと。
添削よろしくお願いします
294
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 23:40:49
>>289
世界の大林はついに芸人になってしまったのか・・・
295
:
名無しさん
:2006/01/25(水) 00:07:32
>>290
-
>>293
乙です!ワイワイワイキター!もう終わった番組でも番外編てことで本スレ投下OKだと思いますよ。又吉の反応にワロタw
296
:
名無しさん
:2006/01/25(水) 01:33:03
◆mXWwZ7DNEI さん
乙です!
うわ〜懐かしいですね!
わたしも番外編だったらいいと思います。
というかぜひ投下してほしいです!
297
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/25(水) 17:13:43
>>295
>>296
クスです!
後半が適当になってたのでちょっと文章をたしてから
本スレに番外編として投下させていただきます。
ただまだ題名がorz
タイトル決めたら投下しますわ
298
:
kzd34
:2006/01/29(日) 00:12:54
今日は頑張って書きます!ここで・・・『彼女』の正体?が明らかになります。
捕まれた腕からは、ダラダラと『血』が流れて地面に落ちる。
彼女は表情を変えない。それどころか、菊地の腕を振り払おうともしない。
菊地の能力は『水操作』。・・・なら、『水の針』を造る事も可能だろう。
だが、彼女の腕が冷たいのは・・・自分の『水』だけの所為では無い。
掴んだ腕からは、人間の『体温』が全く無かった。・・・鼓動も感じない。
それは・・・『死体』と言うよりも、まるで『生きてない』無機質の塊。
血を流しても、顔色1つ変えず『痛い』とも言わない。『涙』も流さない。
不気味に思った菊地は、力を解く。彼女の腕は・・・水と血が混じっていた。
例の『石の力』で傷を癒す。彼女の白い服は、転々と赤い模様が付いている。
「忠告しておきます。・・・私には『痛い』と言う感情が無いんです。」
だから何にも感じません、と付け加えるが完全に信じられる訳が無い。
4人の間に沈黙が走る。傍で隠れている2人は、嫌な空気を感じ取った。
「・・どうすれば良いんだろう・・?」「な・・・何で俺に聞くんだよ・・?」
だが、この場を放っておく訳にもいかない。2人は必死で答えを探す。
彼女は『芸人』では無いと言いながらも、必死で『石』を守っている。
2人は『芸人』であり『白ユニット』として、必死で『石』を守る。
『石を守ろうとしている』 それは、彼女も2人も同じ理由だった。
299
:
名無しさん
:2006/01/29(日) 00:34:51
>>298
小出ししすぎ
メモに纏めてから投下しろ
アンガールズ主役か?それ
女訳ワカラナス
それからsageろよ
お前に言いたいのはこれだけだ。
厳しく言っとくが書くならきちんとやってほしい。
作品が良いだけに更にがっかりだから。
300
:
kzd34
:2006/01/29(日) 00:53:14
2人は決断した。「・・失敗、するなよ?」「・・お前に言われたくないよ。」
『彼女を安全な場所へ移す』 ・・・些細だが、優先するべき事だと思う。
「・・・で、誰が連れ出す訳?」「卓志。」「じゃぁ、お前は・・?」「後で行く。」
簡単な作戦を立てる。・・・後は、それを実行出来る『チャンス』を待つだけ。
立ち止まる彼女の前へ、吉田が1歩近付いた。手には、血で出来た『武器』。
1歩。・・・まだだ。 2歩。・・・まだ早い。 3歩。・・・もう少し。 4歩。『今だ!』
合図と同時に田中が飛び出し、山根が隠れた場所で『石』を光らせた。
目晦ましには丁度良い『白い光』は・・・案の定、吉田の視線を一瞬外した。
「コッチです!!」 その一瞬の『隙』を逃さず、彼女を連れて走る。
彼女の手の冷たさに一瞬驚きながらも、必死で離さない様に握った。
彼女の方は多少驚いた物の、田中の手を握っているのに必死な様子。
「待てっ!!」 後ろから声がする。それでも、振り返らずに前へ進む2人。
よく分からない通路を、右や左・・・とにかく。逃げる事で精一杯だった。
走る事数分後、後ろから声はしない。・・・どうやら、逃げ切ったらしい。
田中は疲れ切っている様だが、彼女からは息切れや動機は感じられない。
「だ・・・大丈夫っ、ですか?」「・・・ハイ。それより、貴方の方こそ・・・。」
息をするのが苦しい。彼女の『紫の光』が当たると、不思議と呼吸は楽になる。
一呼吸すると、彼女へ礼を言った。彼女の方も、丁寧に言葉を返してきた。
「・・・さっきから傍に隠れていましたよね?」「えっ!?ぁ・・・あの「田中〜!!」
田中の言葉を掻き消す声。・・・山根だった。どうやら、無事だったらしい。
安堵の息を吐いた田中に「お前、足速すぎだって・・・」と山根の駄目出しが入る。
「はっ・・・走れって言ったのお前だろぉ!?」「限度って言うのを知れよ・・・。」
目の前で始まった痴話喧嘩に、彼女は何も言葉を言わずに黙って見ていた。
301
:
kzd34
:2006/01/29(日) 01:04:07
名無しさん!厳しいお言葉有難う御座いました!(sageって何ですか?)
明日、ちゃんと文章を勉強します。なので、今日はここまでにさせて頂きます。
本当に勝手でスイマセン。少しでも、皆さんが楽しめる分を書きたいからです。
ここまでの感想・厳しい言葉!覚悟しているので宜しくお願いします!!
302
:
名無しさん
:2006/01/29(日) 09:35:30
sageるには、E-mailの欄に「sage」と入力すればいい。
あと、『痴話喧嘩』の使い方間違ってるよ?辞書引いてみ。
303
:
名無しさん
:2006/01/29(日) 15:36:41
kzd34さんへ
三点リーダー「…」の代わりに中黒「・」を使うことの是非はあえて置いておくとして
せめて一つの話の中ではどちらかに統一して欲しい。
「…」自体も使い過ぎ。なんとなく雰囲気で使ってない?
文章を推敲して本当に必要なところだけに使うようにしないと読みづらいよ。
あと既に指摘があったけど
石の使い手の女性が「自分は芸人ではない」と話した点について
これから投下する話できちんと説明されるのかな。
もし全体の設定を引っくり返すような展開になるとしたら
この先を投下する前に進行会議スレで相談したほうがいいと思う。
304
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:26:03
まだ途中までではありますが、チュートリアルが主人公の話を
書いてみましたので、プロローグ部分のみですが載せたいと思います。
本スレに投下しても大丈夫か、チェックお願いします。
305
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:28:40
とある土曜日、チュートリアルの二人は関西ローカル番組「せやねん!」の収録のた
め、朝早く、収録の二時間前から楽屋入りしていた。
何故二時間も前に来たかというと、この間の土曜日の収録で二人揃って遅刻してしま
い、他の出演者たちに怒られたためである。もちろん、この時間に楽屋入りというのは普
通の感覚で言えば早すぎるので、他のメンバーはまだ一人も来ていない。
自分たちの楽屋でめいめい好きなことをしてくつろぎながら、二人は同時にあくびをし
た。
「やっぱり、いくらなんでも早すぎたかなぁ」
「そやな。まだ誰もおらへんしな」
福田のため息混じりの言葉に答えながら、徳井はいつものようにズボンのポケットに入
れている自分の石を取り出した。徳井の持つ石はプリナイトと呼ばれるもの。その透き
通ったグリーンの色は、果物のマスカットを連想させる。つい先日徳井はこの石を手に入
れ、能力に目覚めたのであった。部屋の光に透かして石を眺めている徳井を見て、福田は
再びあきれたようにため息をついた。
「ほんまに好きやな、その石」
「はは、そう見えるか」
徳井は笑いながらそう返し、手に持った石をもてあそび始めた。
福田はそれをしばらく見つめていたが、自分の鞄の中をごそごそとやりだし、自分も徳
井が持つのと同じような石を取り出した。色は徳井と同じグリーンだが、白いふが入って
いてまろやかな肌触りを持つ石である。徳井は福田が石を取り出したのを見て、お、と
言った。
「お前の石な、どんな石かわかったで」
え、と言う福田に、徳井は言葉を続けた。徳井はインターネットを駆使して、自分の石
や福田の石のことも調べてきたらしい。
「名前はヴァリサイト。物事を冷静に見つめる助けを促すて書いてあった。まあお前には
ピッタリの石なんちゃうか?」
「どういう意味やねん。俺、そんなに冷静でないように見えるんか」
「たまにテンパってる。ツッコミやのにな」
徳井がそう言って笑うと、福田はうるさいなぁ、と言いながら、さほど不快ではない様
子だった。こういうやりとりは二人の間では日常のことである。幼なじみだから、遠慮な
くこういうことが言い合えるというのもある。そんなやりとりを終えた後、福田は自分の
石に視線を落とした。
306
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:29:23
「そやけど、まだようわからへんなぁ。お前の能力のことも、俺のこの石のことも」
「まあな。俺も自分の能力は把握したけど、この石が一体何なのかまでは掴めてへん」
石はある日突然、二人の元へやってきた。徳井は道端に落ちていたのを拾い、福田は
ファンからのプレゼントとしてもらったのである。そこから徳井は、二人の楽屋に突然
襲ってきた男を撃退するのに石の能力を使ったことで、能力に目覚めたのであった。
無論、二人とも最初は石を気味悪がった。あの能力を使えたのは現実的に考えて有り得
ないことであったし、目の前で起きたこととはいえ、とても信じられる話ではなかったか
らだ。
しかし捨てる気だけはしないという、二つの異なる気分に挟まれた末、二人は今もなお
石を手元に置き続けている。徳井はズボンのポケットに、福田は小さな袋の中に入れて常
に鞄の中に。徳井はそのせいで、ズボンのポケットの中に手を入れて石を触る癖がついて
しまったらしい。
石の能力に目覚めてから、徳井は自分の石のことについて調べ、また自分で使ってみる
ことで能力を把握した。彼はどうやら、人の記憶や何かの定義、常識などを自分の思うと
おりに書き換える力があるようだった。
いつだったか飲み会で、とある芸人に冗談を言われ、ズボンのポケットにある石を握り
締めながら「お前俺のこと、なんも知らんのとちゃうか」と言った瞬間、その芸人は徳井
に向かって「誰?」と言い出し、他の芸人が徳井のことをどれだけ話しても、全く思い出
さないという異常な事態が発生したことがある。
徳井はこれは石の能力だと思い、もしかしたら彼は一生自分のことを思い出さないので
はないか、と危惧したが、何時間かするとだんだんと記憶が戻ってきていた。効果はいつ
までも持続するわけではないということも、ここで分かった。
一方相方の福田は、石を持ってはいるものの能力の類を発揮できたことがない。福田は
それでもいい、と常に言っていた。これはファンからもらったものなのだから、そんな変
な魔力が封じ込められているわけがないと。そう何度も何度も語る様子は、まるで福田自
身に言い聞かせているかのようにも見えた。
「まあ、別にええんちゃうか。知っても知らんでも、生活に支障はなさそうやし」
「まあな。今んとこ何も起きてへんしな」
それは事実だった。徳井が能力に目覚めたあの時以来、二人の身の回りで変わった事件
などは起こっていなかった。二人がそう言って、安心するのも当然といえた。
「……おっと、もうそろそろスタンバイする時間ちゃうか」
「ほんまやな。ほんなら行こか」
いつの間にか時間が過ぎていたことに気づき、二人は腰を上げて楽屋を出て行った。
307
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:30:43
「せやねん!」の収録は無事に終わった。前回の遅刻に突っ込まれることもなかった。
二人はそのことに胸をなで下ろしながら、自分たちの楽屋へ戻ろうと廊下を歩いていた
時だった。
共演者の一人・ブラックマヨネーズの小杉が二人の前に現れたのだ。とても慌てている
様子だったので、気になって徳井は声をかけた。
「小杉、そんな慌ててどうしたんや?」
小杉は徳井と福田に気づき、おう、と言ってから、心配そうな表情を見せた。
「いや、ちょっと……俺の持ち物がなくなったんや」
言葉を濁すような言い方だったので、福田は首を傾げた。
「持ち物って、何なくしてん?」
「いや、それがな」
とても言いにくそうにしている。いつもの彼からは考えられない態度だったので、徳井
は少し笑いながら言った。
「そんなに言いにくいモンて何やねん」
「ほんまや。お前キョドりすぎやぞ」
福田もつられて笑う。小杉はまだ迷っている様子だったが、ついに観念したように言っ
た。
「……実はな、育毛剤やねん」
その答えを聞いた瞬間、二人は笑いをこらえきれず、ぶっと言って笑い出してしまっ
た。小杉はやっぱりな、という顔をして顔をしかめている。ひとしきり笑った後、福田は
言った。
「お前、そんなもんなくすて……やばいんちゃうんか」
「いや、ほんま冗談やなくてマジでやばいんやって。お前ら知らんか?」
そう言って、小杉はとあるメーカーの育毛剤の名前を挙げた。二人はさあ、と首を横に
振り、小杉はそうか、と肩を落とした。
「実は吉田も肌に塗るクリームなくしたって言うてんねん。なんかおかしいわ」
「二人ともなくしたんか? しかもめっちゃ大事なモンやのに」
福田が訊くと、ああ、と小杉は頷いた。チュートリアルの二人もさすがに笑うのを止
め、一緒に探したろか、と申し出た。小杉は助かるわ、と頷き、二人を自分たちの楽屋に
連れて行った。
308
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:31:28
部屋の中には小杉の相方である吉田がいて、必死な様子で部屋の中をかきまわしてい
た。小杉が呼びかけると三人の方を振り向き、おう、と手を上げた。
「どうや吉田、見つかったか?」
「いや、全然や。鞄の中とか、全部見たんやけど」
そうか、と言って小杉は軽くため息をついた。そんな二人の様子を見ていた徳井があっ
と思い出したように言った。
「もしかしたら盗まれたんちゃうか?」
他の三人はその発言にはっとしたようだったが、すぐに福田がそれはないやろ、と否定
した。
「第一、盗む理由が分からへん。財布とかやったらまだしも、育毛剤と肌のクリームやで?」
「そこなんやけどな。でも、二人とも他の場所に持っていった記憶とかないんやろ?」
徳井が訊くと、ブラックマヨネーズの二人は同時に頷いた。
「ずっと鞄の中に入れてたはずやねん。やから部屋の中を必死に探してたんやけど」
ふむ、と徳井だけは納得したような表情を見せる。他の三人はまだ腑に落ちないといっ
た様子で、首を傾げていた。
その時、突然外から声がかかった。
「おい、小杉、吉田! これお前らのとちゃうんか?」
四人はその声に反応し、びくっと楽屋の外の方に振り向いた。そこには共演者の一人で
あるたむらけんじ、通称たむけんがいつものにやにやとした顔で立っていた。徳井はため
息をつき、たむらに咎めるような視線を送った。
「もう、驚かさんといてくださいよたむらさん」
たむらはあはは、と気にも留めていない様子で笑った。
「悪い悪い。それよりこれ、小杉と吉田のモンとちゃうか?」
たむらがそう言って手に持ったものを差し出してきた。四人が一斉に注目し、一瞬の後
にブラマヨの二人はあっと声を上げる。
「それ! それですわ、俺の!」
「やっと見つかった、良かったわ……」
二人は安堵したようにため息をついて、たむらからそれぞれの持ち物を受け取った。
「なんか本番が終わってから楽屋に帰ったら、机の上に置いてあってん。こんなん持って
るのは小杉と吉田やろうなあと思って、ここに持ってきたんやけど」
「いやぁ、ありがとうございます」
こんな物を持っている、とさりげなくからかわれたにも関わらず、小杉と吉田は本当に
たむらに感謝したような顔をしていた。そのからかいに気づいた徳井と福田は、今更突っ
込むわけにもいかず傍らで苦笑していた。
たむらは二人の嬉しそうな様子を見て、うんうんと頷いた。
「良かった良かった。ほんならまたな。今日はお疲れさん」
「あ、はい! ありがとうございました!」
慌てたように小杉がそう言って、吉田と同時に頭を下げた。
「まあ、これで一件落着、か?」
福田が言うと、傍らの徳井がそうみたいやな、と頷いた。
「良かったな二人とも。ほんなら俺らもこれで」
「おう、ありがとう」
吉田が礼を言い、小杉も軽く頷いた。徳井と福田は手を振ってそれに応えた後、ふうと
ため息をついて、自分たちの楽屋に帰っていった。
これが全ての始まり。
とある、土曜日の出来事だった。
309
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:32:39
とりあえずこの辺りでいったん切ります。
ご意見ありましたら遠慮なくお願いします。
310
:
名無しさん
:2006/02/01(水) 22:21:44
乙です。
面白いと思います!
本スレ投下は大丈夫だと思いますよ?
311
:
名無しさん
:2006/02/01(水) 23:18:04
乙です。面白かったです!てかぜひ本スレ投下してください!
312
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/02(木) 00:30:39
>>310
>>311
レスありがとうございます。
今見直したら文章のおかしいところを二、三見つけたので、
もう一度推敲して、明日辺り本スレに投下したいと思います。
313
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:04:23
小説作成依頼スレの45です。
オリラジの話、途中までですが投下。
314
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:05:58
一匹のネズミが排水溝から飛び出してくる。ピタリと立ち止まり、赤い目を光らせながら頻りに鼻の頭を動かしている。
小さな耳は敏感に人間の気配を感じ取り、ネズミは再び排水溝の中へ、枯れ草を蹴散らしながら戻っていった。
カビ臭く湿った路地裏は、街の電光も月明かりも届かない。
唯一の明かりと言えば、大通りを忙しく通り抜けていく自動車のライトのみだろう。
それでも、車が一台通り過ぎる度に、また一瞬だけ真っ暗になる。
そんな塀に囲まれた寂しい場所に小さく響いた、鈍い打撃音。
それと同時に、どさっ、と人が倒れた音が重なる。
派手に倒れたのは未だ若々しさの残る印象の男だった。
衝撃に体を丸めて転がっていたが、殴られた頬を押さえようともせず、がばっと体を起こすと目の前の男を見上げた。
そんな若者の様子が気に食わなかったのか、殴った方の男はあからさまに眉を顰めた。
「お願いします。」
倒れたときに切ったのか、口の端にうっすらではあるが血が滲んでいる。
それでもはっきりした強い声で、若者…オリエンタルラジオの中田敦彦は自分を見下ろす男に縋るように懇願した。
男はそんな中田を嘲り冷たく笑う。
「お前ら、石持ってんだって?大した経験もネタも積んで無い駆け出しの癖に何でだろうなあ。」
ああ、流石“売れっ子”は違うな。と皮肉たっぷりの言葉を浴びせられると、中田の表情が一瞬だけ曇った。
異例の速さで世間に出るようになったことは、確かに喜ばしい事でもあったが、また逆に不安な事でもあったのだ。
中田は怒り出すような真似はせず、再び強い視線を向ける。
クソ面白くない。男は少しむっとした顔を造り、何だよ、とそっぽを向いて口を尖らせた。
「お願いします、慎吾を返してください。」
黒っぽいコケや泥水の散乱する地面に膝と両手を付いて、しっかりと相手を見据えたままもう一度言う。
315
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:08:13
中田の相方である藤森は、自らの持つ石に妙な力があることを知った途端、キラキラと眼鏡の奥の瞳を輝かせ何度も「凄え!」と言って喜んだ。
特別な能力を授かった事が嬉しくて堪らないようだった。
有名大学を出ているのに、と言えば偏見になってしまうが、魔法みたいな力を目の当たりにすれば誰でも舞い上がってしまうのだろうか。
とにかく石を使いたくて仕方がない様子の藤森を、中田は何度となく諭してきた。
慎吾、という名指しに男は一瞬首を傾げたが、直ぐに眼鏡を掛けた青年の顔が思い出される。
暫く考え込んだ後、男は意地悪く微笑んでみせた。
「“ガラクタ”一人でも立派な戦力だからな。」
黒に入ったばかりの、盾代わりにしか使われない下っ端や石を持たない者たちは“ガラクタ”と呼ばれている。
知らないうちに黒の誘惑に負けてしまった藤森もその内の一人に過ぎない。
居ても居なくても関係ないが、居ないよりは居る方が良いに決まってる。と男は言った。
中田からしてみればそんな事が納得できる筈もなく。男の進路を塞いだまま尚も引き下がろうとしない。
「お願いします。」
「口で言って分かんねえなら…、」
男がポケットから取り出した濁った石がボンヤリと光り始めた。
中田は俯き、固く目を閉じた。
その瞬間。
短く潰れた声を漏らし、男が蹲った。
薄く目を開くと、男がしゃがみ込んでいるその後ろに、人影が見えた。
逆光の暗闇でも見間違えるはずもない、見事なまでのアフロヘア。
「早く逃げろって。」
「…藤田さん?」
腕をコンビニの袋に通し、その両手をポケットに突っ込んだまま、トータルテンボスの藤田が片足を上げて立っていた。
男の背中には土が足跡の形にスタンプされている。見たところ、どうやら背中から蹴り飛ばしたようだ。
316
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:09:32
石の能力でも何でもない、何とも野蛮な攻撃方法ではあったが。
背後からの不意打ちキックというものは意外と効くらしく、男は苦しげに咳をする。
「うちの大事な後輩いじめてんじゃねえよ。」
藤田は太い眉をぐっと眉間に寄せ、男を威圧した。
喧嘩はそれ程強くはないが目力だけはある彼に凝視されると、普通の人間なら蛇に睨まれた蛙のように一瞬で戦意を失ってしまうだろう。
男は無言で素早く起きあがると、中田と藤田に目を向けることも無く、早歩きで去っていった。
「誰だあいつ…?おい、大丈夫かよ。」
自分の記憶にない男の姿が消えるのを見届けると、向き直り藤田が口を開き手を差し出す。
「え?…あっ、はい。」
尊敬する“藤田兄さん”が現れた事で呆然としていた中田はその声にハッ、と目が覚めたように顔を上げ、差し出された手を取った。
「あの、いつからそこに?」
「さっきの奴が石取り出した所から。俺が偶然気付かなかったら危ねえとこだったぞ?」
ということは、男との会話は聞かれていないと考えて良いだろう。
中田はホッと息を吐いた。
「危ない所をありがとうございます。」
「お前の方が道路側だったろ。何で逃げないのかねぇ。」
「ち…ちょっと腰が抜けてて…。」
冗談めいた口調でぎこちない笑みを作る。
変な奴だな、と藤田は白い歯を見せて笑った。
317
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:11:00
路地から一歩外に出ると、打って変わってイルミネーションの眩しい景色が目に飛び込んできた。
いきなり明るいところへ出た事で黒目が急速に小さくなるのを感じ、ぱちぱちと瞬きする。
泥が付いた手や服が少しみすぼらしく感じた。
「そうだ。これ、これやるよ。」
突然藤田が声を上げる。
ガサガサとビニール袋の中をかき回し、取り出したのは一本のチューハイだった。
「これから大村と二人で遊ぶんだけどよ。買いすぎちまって。」
返事もろくに聞かず、半ば強引に手に握らせる。
急ぎなのか時計を気にしだし「じゃあな」と手を挙げると早々に踵を返した。
「あ、あのっ。」
つい反射的に呼び止める。
藤田が振り返る。藤森の事を話した方が良いだろうか、と思ったが。
頭の中で必死に選んで出てきたのは「お酒…、どうも。」という言葉だけだった。
結局、先程の男は何処かへ行ってしまい、藤森を取り返す方法も見失ってしまった。
二年ほど前までは普通の大学生であり芸歴も極端に短い上、石を手に入れて間もない自分たちが知っているのは、
まだ先輩から聞かされた「白」「黒」という二つのキーワードのみだ。
所々取り付けられている電灯が道を照らしているだけの住宅街を歩きながらチューハイの缶を取り出した。
「いい人だなあ。」
小さく笑ってポツリと言葉を漏らす。
いつの間にか、その顔からぎこちない笑みは消えていた。
318
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:12:25
「―――ホントにね。」
背後から聞こえた高い声に、表情筋が引きつった。
相方である藤森が電柱にもたれかかり立っていた。
「敦彦、ケガ大丈夫?」
「慎吾…。」
目敏く口元の傷を発見した藤森が心配そうに顔を覗き込んでくるのに対し、中田は一歩退く。
いささかショックを受けたのか、藤森は引き留めようとした手をゆっくり降ろし、それ以上近づかなかった。
「…あのさ、俺相方をこんな形でケガさせたくないのね。だからさ…。」
「黒には入らねえ。」
「何でだよ、あっちゃーん!」
言い切らない内に拒絶され、ネタ中と同じ大げさな口調と仕草で不満の声を上げる。
藤森にビシッと言い聞かせるチャンス。中田は身体ごと向き直った。
「何でも、だ。お前もいい加減…、」
目ぇ覚ませ。そう続けようとしたが。
タン、と軽い靴音が聞こえ、離れた所で石の気配が近づいてくるのを感じた。
だが一秒と経たない内にその気配はあっという間に至近距離までやってきたのだ。
その瞬間、振り向く前に一瞬首筋に鈍い衝撃が走り、中田は地面に崩れ落ちた。
チューハイの缶が転がり落ちる。
「敦彦、敦彦!」
驚いた藤森が慌ててその背中を揺さぶるも、気絶しているのか、中田が返事をすることは無かった。
「あーあー、死んでねえから騒ぐんじゃない。慎吾。」
酷く特徴的な声が降ってくる。その声色は落ち着いていて、いかにこのような状況に慣れているのかを理解させる。
319
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:14:28
“オトナの魅力”が漂う、東京ダイナマイトの松田は「よっこらしょ」と中田の上体を持ち上げる。
意識がある時と比べ、気絶した人間の身体は何倍も重く感じる。
成人男性の全体重がのしかかってくるものだから、壁にもたれかかせるだけでもさすがに骨が折れた。
「お前は、こいつと敵対したく無いんだろ?」
もちろん、と藤森が素直に即答する。
ふう、と一息吐き、松田が小さな黒い破片を取り出した。
「これ使えよ。そうすればこいつはずっとお前の味方だ。」
「本当ですか?やった!」
嬉々として破片を受け取る。
お子様のように笑う藤森に対し、松田の表情は相変わらず複雑なままで。
さっそく藤森はなんとか頑張って中田の口に破片を押し込む。
固形から液体へ変わった破片は勝手に喉の奥へ入り込んでいった。
相方を操ることに抵抗は無いのか?と半ばあきれ顔で松田が眉を顰めるも、口には出さなかった。
取りあえず、よかったな、とだけ言ってやった。
特に藤森は悪いことをしようとは思っていない。面白そうだからという単純な理由で黒に入っただけだ。
彼らの若さ故の過ちとでも思っておこう。松田は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
その前に一つ、藤森に言っておきたい事があった。
「慎吾、お前、自分の力を過信しすぎるなよ?」
「…はい?」
「あー、何でもねえよ。…またな。」
二回言うのも面倒くさい。松田は欠伸をしながら適当にはぐらかし、藤森と別れた。
携帯の着信が乾燥した夜の空気に良く響いた。
「どうしたー二郎ちゃん。……何?任務?…そんなの明日だ明日。」
どうやら『裏のお仕事』の命令らしい。
話を聞いたところ、白の芸人の石を奪うという、いつもの命令だった。
別に今日じゃなくても良い。松田は携帯を閉じ、う〜ん、と背伸びをしながら帰路についた。
藤森と中田のことは出来るだけ考えないように、鼻歌など歌いながら。
320
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:16:51
ここまで書きました。10カラットって番組見たこと無いんで、
バラエティ番組などを見たときの印象のみで書きました。
添削お願いします。
321
:
名無しさん
:2006/02/04(土) 14:59:41
面白い。本スレ投下しても全く問題無いはず。
一つ思った事は、慎吾に黒の欠片を渡す芸人を東ダイ松田じゃなくて
東京吉本の先輩にした方がいいんじゃないか?(ポイズンとか)
松田を使うなら藤森の名前を呼ぶ時「慎吾」より「藤森(君)」の方が
自然だと自分は思う。
322
:
名無しさん
:2006/02/04(土) 19:05:55
「慎吾」にしてみたのは前に松田が藤森の事を名前呼びしてたので…。
でもやっぱ吉本芸人の方がしっくりきますかね。
今本スレでド修羅場中のポイズンですが、それより以前という設定で
投下してみます。
323
:
314〜319
:2006/02/04(土) 19:29:14
一通りスレを見直したところ、2丁拳銃が今どの作品にも出ていないので
こっちを出しても大丈夫ですか?
ちなみに
>>322
も自分です。
324
:
314〜319
:2006/02/05(日) 12:31:30
アワワ…三連続。↑ですが、藤森に黒い破片を渡すのを2丁拳銃に変更したいけどおk?
って意味です。
325
:
◆y6ECaJm4uo
:2006/02/06(月) 11:39:24
ok。
326
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 15:57:38
芸人キボンスレの86です。
天才ビットくん話、まだ前半までですが添削お願いします。
327
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 15:59:44
収録の合間の楽屋、男が一人と女が二人、座って弁当を食べていた。
全員この教育番組内での役柄の衣装をつけたままなので、少々異様である。
「もうそろそろ再開っすねえ」
時計を見上げながらくだけた調子で話すのは北陽虻川。
「…いつもながら、お弁当食べるの早いわねえ。」
その虻川の食欲に呆れているのは、相方の伊藤である。
「だってしょーがないじゃん、腹減ってんだもん」
虻川があっさり返すと、伊藤はため息を一つついてペットボトルのお茶に手を伸ばした。
ありふれた楽屋の光景である。…彼女たちの足首で密かに光る石を除いては。
「そーだお前ら、…ここ最近、黒はどうだ?」
世間話をするように、しかしそれよりは幾分周囲を気にするように声を潜めて、男…上田が言った。
「あたしらは大丈夫っす、石もちゃんとありますし。」
その存在を示すように太ももをぽん、と叩いて虻川が答える。
「若手の中ではちょくちょく聞きますけど、わたしたちは別に…」
声を落とせ、と虻川に身振りで指示しながら、伊藤が小声で続く。
今、楽屋には彼らしかいないのだが、習慣づいてしまったのか…それとも「どこに敵がいるか分からない」という警戒のためか。どのみち関係する人間にしか分からない、隠語のような会話だが。
「そうか。…でも用心しろよ。最近は若手の中でも病院送りになってる奴もいるらしいからな。やっこさんたち、白を引き込んだり何だりに躍起になってっから…ちょいと手荒になってるみてえだ。」
「上田さーん、その台詞全然カッコに似合ってないっすよお」
と虻川がにやにや笑って茶化す。
二人を気遣っての台詞に水を差されて、上田はほっとけ、と渋い顔で茶を飲んだ。
そんなやりとりを見て、伊藤が楽しげに笑っている。
と、その時。ばたん、とドアが開いて、三人は一瞬体をこわばらせた。
「どうもー。」
軽く挨拶をして入ってきたのは、江戸むらさきの二人。
三人は仲間と分かっている連中だと、ほっと緊張を解いた。
「もー、おどかさないでよ。」
「ああびっくりしたあ、噂をすればかと思ったじゃーん。」
「すいませーん」
北陽の二人が笑って言うのを聞いて、野村が苦笑して謝る。
「どこもピリピリしてっからな。そのうち楽屋は合い言葉制になるかもしれねえぞ」
と笑うと、上田は江戸むらさきにも同じ質問をした。
「俺らも最近は別に。」
「なあ。…あ、でも」
何だ、と上田が聞くと、磯山が辺りをはばかるようにそっと言った。
「…ちょっと、気になる人が。」
「誰、だれ?」
虻川が言う。
「……俺の勘違いかもしれないんすけど…」
磯山が言ったその名前の主は一人、隣の部屋で壁にコップを押しつけ、彼らの会話を盗み聞いていた。
滑稽な行動に似合わずその顔は厳しく、そしてどこかもの悲しさがあった。
「………、です。」
その聞き慣れすぎた響きを聞き届け、彼はそっと立ち去る。
それと入れ違いのようにスタッフが上田たちを呼びに来た。
この会話がその後どれだけの騒動を招くことになるかは、彼らは想像もしていなかった。
収録も終わり、上田と江戸むらさき、そして北陽の五人は帰途についていた。
白の芸人は用心のため、なるべく大人数で行動することにしているからだ。
駅までの道を並んで歩いていくと、料理店の多い通りにさしかかる。
「上田さん、ご飯おごってくださーい!」
「俺ら金ないんすよお」
「今日、俺がんばったじゃないすかー」
「あたしもがんばりましたよー!」
ここぞとばかりに「飯をおごれ」の要求がうるさいぐらいに重なる。がんばった、というのは番組中のゲームの内容だろう。
根負けしたのか、上田は渋々、といった風情で頷いた。
「わーったわーった。…で、何がいいんだ。」
「やった、お寿司!」
「肉!」
「牛の肉!ぶあついの!」
「しゃぶしゃぶー!」
途端に四人の目が輝く。好き勝手な注文に、現金な奴らだ、と上田は呆れた。
「ぜーたく言うな。ここ近くにファミレスあったろ、そこにすんぞ。」
「ケチー!」
「上田さんの守銭奴!」
たちまちブーイングが飛び交う。寿司ステーキしゃぶしゃぶ、の合唱が始まった。
その光景に、道行く人々がときどきくすりと笑う。
328
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:00:05
「おごってもらう分際で文句言うな、ったく…ん?」
「どーしたんすか?」
上田は眉根を寄せ、声を低く落とした。
「…誰か尾けてきてんな、一人だ。」
「えっ…」
場数を踏んだためか、上田はいつしか芸人には不必要なほど気配に鋭くなっていた。
うろたえる後輩たちに、落ち着いた様子で言葉を重ねた。
「騒ぐな、一旦さっきみたいに馬鹿話してろ。
さすがにここじゃ仕掛けてこねえだろ、どっかで巻くぞ。」
「…分かりました。」
野村はそう言うと声の調子を素早く切り替え、明るく振る舞う。磯村や北陽の二人もそれに続いた。
「あ、財布忘れたとかなしっすよお?」
「そんなせこい真似したら、番組で言いふらしちゃいますからねー。」
「観念して、お寿司!お寿司!」
「上田さんは可愛い後輩に肉もおごってくんないって奥さんにチクってやるーっ」
「るっせえよお前ら、ぐだぐだ言うとコンビニ飯にすんぞ。」
「あーそれ嫌だ!」
「もう食い飽きました!」
演技にしては自然な会話をしながら、曲がり角で上田は不意に目配せをした。
「(行くぞ!)」
五人は追跡者を振り切るため走りだす。
後方で電柱の陰に身を潜めていた男は、慌てて追いかけた。
角を曲がり、路地を走り、次の角へさしかかる――
「うわあっ!」
男の腹に、勢いよく何かがぶつかっていく。
衝撃で後ろへ倒れた体へ、そいつが唸り声と共にのしかかる…ように男は感じた。
「うわ、何だっ、なに、わあああっ!」
男はパニックを起こし、振り払おうとめちゃくちゃに暴れる。
が、それはびくともせず、男の肩口に噛みついた。
痛みにもだえわめく男の姿を、五人の目が冷静に見つめていた。
「…やっぱアンタだったんだ。」
虻川が悲しそうな顔で呟く。その目には涙さえたまっていた。
「きくりん」
彼は何も言わず、ただ眼鏡越しに虻川を睨み付けた。
329
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:04:25
一旦ここまで。
ちなみに天才ビットくんは教育テレビで金曜にやってる子供向け番組です。
ゲストなどで意外と芸人さんの出演が多いです。江戸むらも前出てました。
330
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:26:41
>>326-329
乙です!
一人で行動する上田さんは珍しいですね。
続きを楽しみにしてます。
331
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:40:24
>>326-329
ビット君キター!そういえば今日放送ですね。
あの衣装で語らう三人を想像したら…wwww
しかも上田「やっこさん」てw
リアルに言いそう、と言うより言ってるから楽しめました。
続き期待しております!
332
:
◆LHkv7KNmOw
:2006/02/11(土) 00:12:53
廃棄スレ>361の続き
ついカッコつけて廊下に飛び出したものの…。
さて、何処に行けば良いのか。
宮迫は楽屋の前で腕を組んだ。
後ろでは蛍原が「どうするの?」と期待に満ちた表情で立っている。
(まずは、人に聞くのが妥当か)
とりあえず頭の中に浮かんだのは、今日同じ番組で共演した芸人達。
その中でも真っ先に浮かんだ男に会いに行くため、歩みを早めた。
「蛍原さんの携帯ですか?」
丁度着替えている途中だったのかDonDokoDon山口は随分素っ頓狂な格好をしていた。
「あ、持ってますよ」
意外な返答。
にこやかに言う山口と対照的に、雨上がりの二人は目を丸くした。
山口はテーブルの上に置いてあった小さな携帯をヒョイと持ち上げ、差し出した。
蛍原は山口と携帯を交互に見比べると、やっと口を開いた。
「え、え?何でぐっさん持っとんの。まさか…」
盗人扱いされると感づいたのか、慌てて山口が「違いますよ!」と手を振った。
「置き忘れてたんじゃないですか、蛍原さんが!」
一瞬の沈黙。
「置き忘れた〜?はぁ、なーんやアホらし」
不謹慎だが、ちょっとした“事件”を期待していなかったと言えば嘘になる。
宮迫はどこか残念そうに頭を掻きながら肩を落とした。
溜息を吐き、時折肩越しに蛍原に厳しい視線を向ける。
ちくちくと刺さるような錯覚を頭を揺らして振り払い、
携帯を受け取ろうと手を伸ばした。
その時、
333
:
◆LHkv7KNmOw
:2006/02/11(土) 00:14:54
「ぁあー!無い!」
蛍原の金切り声が廊下中に響き渡った。
宮迫と山口もそのいきなりの大音量にビクッと肩を竦め、耳を塞いだ。
能力を使ったわけでもないのに、耳の奥できーん、と音がする。
「これ、これ見て!」
宮迫の眼前に携帯を突き出す。
その携帯に付けられているストラップ用の細い紐。
その先に取り付けられていた筈の石が、無かった。
よく見ると紐は途中で引きちぎられたような跡がある。
視線が、今度は山口に向けられた。
あ〜あ、と山口は再び眉を下げる。
「ぐっさん」
と、蛍原が詰め寄る。
「だから、違いますって!」
山口はうんざりした様子で手を挙げ、後ろに下がる。
その後ろで何処ぞの探偵のように顎に手を当て、宮迫が神妙な顔をする。
「ぐっさん、ちょっとその携帯…何処で見つけたん?」
「一階のトイレですよ」
「ちょお待てって。俺今日一階のトイレ行ってへんぞ?」
「おーおー怪しいな。…何かおもろい事になりそうや」
にやり、と宮迫は口端をつり上げる。
石を手に入れたのは良いが、自分たちの周りではまだ何も起こっていない。
毎日戦っていて生傷の絶えない者すら居るというのに、
自分には特に生活で変わったことがないのだ。
せっかく石を拾ったんだ。
ちょっと位この平和が乱れないものか、と今思えば何とも馬鹿な事を考えていた。
334
:
◆LHkv7KNmOw
:2006/02/11(土) 00:18:22
誰かが蛍原の携帯を盗み、石だけを引きちぎって携帯の本体はトイレに置いていった。
と思って良いだろう。
「じゃあ蛍原、この近くに自分の石の気配は感じんか?」
その言葉に応えるため蛍原は固く目を閉じ、う〜ん、と集中し始める。
宮迫も山口も息を殺して、瞬きもせずに目を凝らした。
不意に、蛍原が「んっ?」と上ずった声を上げた。
目を閉じたままキョロキョロと小動物のように辺りを見渡す。
その動きに合わせて二人の目も動く。
「…ん〜?」
眉を寄せて、ゆっくりとした歩調で歩き出した。
「宮迫さ…」「しっ、」
静かに、と口元に人差し指を当てる。
身体は微動だにせず、首から上を動かして目線で蛍原を追った。
相変わらず蛍原は唸りながら少しだけ上体を屈めて歩いている。
目を瞑っているからゴミ箱に足を引っ掛け、壁に頭をぶつけたりしていた。
その度に宮迫と山口は目を細めた。
蛍原が曲がり角に差し掛かり、二人の視界から消えた。
顔を見合わし無言の合図をする。
慌ててその後を追いかけた。
どんっ
「うおっ」「あだっ」「わあっ」
丁度曲がりきった所で、三者三様の短い悲鳴が上がった。
角を曲がって直ぐの所で立ち止まっていた蛍原の背中に、勢いよく走ってきた宮迫が、
更にその後ろに芸人にしてはがっしりした体型の山口が立て続けにぶつかったものだから、
一番前の蛍原は吹っ飛ばされるように前方に転んだ。
その上に宮迫が重なって倒れ込む。
下で「うぐっ」、とくぐもった声が聞こえた。
「痛ったい!何すんねん!」
「や、やかましいわ。もっと前におる思ったんや!」
蛍原の頭に強かに打ち付けた顎をさすりながら、宮迫が怒鳴る。
「どうしてこんな所で?」
全くダメージのない山口は二人の前にしゃがみ込み、冷静に尋ねた。
その言葉にはっと我に返り、蛍原が言った。
「そ、そう。向こう!向こうの方から俺の石の気配が…!」
未だ宮迫の下敷きになったまま、前方を指差す。
三人の視線が同じ方に向けられた。
廊下の向こう側で、スタッフと思われる男が歩いているのが見えた。
335
:
◆LHkv7KNmOw
:2006/02/11(土) 00:21:38
その懐で、自らの石のものと思われる光が、きらりと漏れたのを、
蛍原は見逃さなかった。
「あ、あいつ!俺の石持っとる!」
声を張り上げると、そのスタッフは蛍原に気付いたのか、
顔を見るなり血相を変えて逃げ出した。
「決定的、やな」
「追いかけましょう!」
いつの間にか立ち上がっている宮迫と、山口が走り出す。
おーい!と一声。
蛍原もようやく起きあがり、ばたばたと後を追っていった。
距離は一向に縮まらない。
自分たちよりはるかに若いスタッフは、軽い身のこなしで廊下を駆け抜けていった。
三十代後半に差し掛かった雨上がりの二人や、体の大きな山口はなかなか追いつくことが出来ない。
(やばっ、逃げられる…!)
そんな思いが頭を過ぎった、その時―――
あっ、とスタッフが声を上げた。
前から歩いてきたのは、ガレッジセールのゴリこと照屋俊之と、相方の川田。
こちらも山口と同じコント用の派手な服とメイクだった。
全速力とも言えるスピードで走ってくる宮迫たちに驚いた二人は立ち止まり、
何だ何だ?と壁際に避けた。
「ゴリ、川田!そいつっ、そいつ捕まえろ!」
宮迫は二人に向け大声で叫んだ。
「はい?」
「そいつ通すな言うてんねん!」
そいつ、とは。
今こっちに走ってきているスタッフの事だろうか。
訳が分からないが、先程の必死な声を聞くとただ事ではなさそうだ。
「……おりゃあっ!」
本能的だろうか。
ピンクのひらひらのミニスカートをなびかせながら照屋が助走を付け、飛んだ。
照屋の華麗なドロップキックを見事に食らった男は、
廊下を二メートルほど転げ、動かなくなった。
336
:
名無しさん
:2006/02/11(土) 15:44:16
乙!おもしろかったです。続きが楽しみ。
ゴリエのドロップキック…w
337
:
名無しさん
:2006/02/11(土) 16:10:12
>>326-329
の続き。
「戻っておいで」
虻川が指示すると、秋田犬の亡霊がきくりんの上から退いた。
半透明の体を揺らしながら、虻川の元へ行き座る。ご苦労だったね、と頭を撫でてやると、わん、と一つ鳴いて姿を消した。
きくりんは予想外だった犬の襲来に、噛まれた肩を押さえて呆然としていたが、五人の視線を感じたのかやがて静かに口を開いた。
局を出たときには夕方だったのに、もう既に日も暮れとっぷり暗くなっていた。
人気のない路地裏、ビルの窓から漏れる光だけがかすかに闇を照らす。
「…気付いていたんですか」
「ああ、巻こうかとも思ったんだがな。気が変わった」
「相手がアンタなら、改心してもらわないと。」
上田の台詞の後半部を、まだ悲しげな顔の虻川が引き受ける。
「…おとなしく石を出しなさい。」
「痛い目見ねえうちにさっさと降参しろよ。」
「五対一じゃ勝ち目ねえだろ、ほら。」
後輩たちの声に、どっちが黒だかわかんねえな、と上田は苦笑する。
まあちゃっちゃと浄化しねえとなあ、と呟き、石を取り出したその時だった。
「…くっ…はは、ははははは」
余裕ありげな五人を座り込んだまま見上げ、何を思ったか…きくりんは笑い出した。
「面白い、本当に面白いですねあなた方は…」
「はあ?何言ってんだ。
ほらさっさとしろ、あんま怪我させたくねえんだよ…」
一番戦闘向きではない能力を持っているにも関わらず、上田が言う。
「ですが、もう楽しんではいられませんよ。」
しかしそれすらも遮り、きくりんが立ち上がる。声は小さく、半ば独り言のように思えるほどだ。その目はうつろで、しかし物騒な光をたたえていた。
ズボンのポケットに手を入れ、何かを取り出す。途端に発せられる黒みがかった青色の輝きから、それが石であることは五人には明らかだった。
そしてそれが、汚れた悪しき石であることも。
「この…僕の能力の前に、あなたがたは屈服するのだから」
不敵な台詞とは裏腹に、きくりんの体は小刻みに震えている。だがその表情は楽しげに歪んでいて、上田は眉をひそめた。
…ヤバいな、こいつ…
その呟きは口に出る前に消えた。
石がひときわ強く、まばゆく輝いたからだ。
その光は目潰しとなり、五人はうわ、と叫んで腕で目を覆った。
そして次に目を開けた時、きくりんの手には白い…スケッチブックがあった。
「何だよ、今この状況でネタでもやんのか?お前。」
言葉だけは余裕ありげに、上田が笑う。
光の強い衝撃にまだ痛む目をしばたかせる。頬に冷や汗がつたって落ちた。
首もとのホワイトカルサイトが警告で小さく瞬くのをなだめるように押さえて、思考を巡らせる。
相手の能力は不明、仕掛けてくるのを待つか…いや、強力なものだった場合…。
こちらの即戦力は磯山と虻川のみ、野村と伊藤は補助、自分は戦闘では役に立たない…。
他の四人の間にも緊張が走る。かすかに笑ったままこちらを凝視するきくりんだけが異様だった。
338
:
名無しさん
:2006/02/11(土) 16:14:08
「磯山、虻川、とりあえず先手必勝だ!」
上田が叫ぶと同時に、虻川の傍らに犬が二匹現れ、磯山が紫の光を腕にまといきくりんに飛びかかる。
「おりゃあっ!」
腕力強化済みの突きは、しかしきくりんの体には当たらず空をかすめた。
きくりんがその姿からは想像もできない軽い身のこなしで磯山の後ろをとる。
スケッチブックがひとりでにめくれ、得意の漫画的な絵が浮かび上がった。
自動筆記のようにさらさらと描かれていくそれは、デフォルメされた磯山だった。
「今までのあなたは白でした…」
きくりんの抑揚のない声が響く。
磯山は横手に飛び退り、間合いを詰めてもう一度殴りかかった。だがまたも空振りに終わる。
風に揺れる柳のように磯山を翻弄しながら、また一枚、勝手に紙がめくれる。
「そこでこれからは私の手先になってもらいましょう」
言うか言わないかの内に、藍色の光が磯山を捕らえる。
「磯山!」
野村が叫ぶも、もう遅かった。
光が消え、磯山の表情が消える。紙の中の姿と同じように生気がない。
「…邪魔だ!」
そのまま虻川の召還したポメラニアンを蹴りあげる。半透明の体に足は突き抜け地面をかすめるだけだったが、太ももへ噛みつくのを振り払い、もう一匹、愛らしいパグの頭へもかかとを振り落とした。
「磯山、やめろ!」
上田の制止の声も聞こえていない。亡霊を相手にしてもらちがあかぬと考えたか、今度は伊藤へ向かい拳を振り上げた。
「きゃああっ!」
悲鳴とともに、伊藤の足首からピンクの光が吹き出る。
「いや、やめて磯山くん!わたしよ、さおりよ!」
その声にすんでの所で磯山の動きが止まる。二つの力がせめぎあっているようだ。
びくりと体が跳ね、耐えられなくなったのか、やがてゆっくりと倒れた。
「磯山くん!」
彼の恋人になりきっている伊藤が、磯山の体を膝の上へ抱き起こす。
慌てて野村が駆け寄り、急いで二人がかりでビルの陰へと磯山を運ぶ。
これで今戦えるのは、上田と虻川の二人のみとなった。
「おや、まあ…いいですよ。いくらでも手はありますから。
…それに、そちらにとっても大きなダメージでしょう?」
きくりんが微笑んだ。白い紙がうっすらと藍色に点滅する。ぐしゃぐしゃと殴り書きが見え、また消える。
「…まずいな、あんな能力だったとは…」
上田の表情に焦りが出る。人数的にはこちらが圧倒していたのに、戦力が一挙に三人も消えたとなってはまずい。残る頼りは虻川の犬だけだ。
夜気と寒風と、ビルの空調熱がまじりあった空気が、やけに重い。
「…てっきりただの偵察役かと、よほど弱いだろうと踏んでたのになあ」
挑発するように上田が言う。それが気に障ったか、きくりんは眉を顰めた。
「あなたは戦闘向きじゃないことは分かってるんですよ、上田さん。さっさと石を渡してもらえませんか。そうすれば…そうすれば…」
後半は壊れたラジオのようになって、そしてまた薄ら笑いを浮かべる。
「ふん、言ってろ。お前がどういういきさつで黒に入ったかは知らねえが…所詮お前は弱いまんまだよ。」
余程癪に障ったと見える。上田の言葉に、きくりんが豹変した。
「うるさい、黙れ、だまれえー!!!」
ありえないほどに激高し、武器であるスケッチブックも放り出して上田につかみかかる。
目の色が赤く変わっているように見えるのは石の作用か、怒りによる充血か。
「が、はっ…」
身長はそう変わらないはずなのに宙高く締め上げられ、上田が苦しげに顔を歪める。息が詰まり、肺が痛む。更に強い力がかかり、首がぎりぎりと言った。
339
:
名無しさん
:2006/02/11(土) 16:14:39
「こらあ、上田さんを離せー!!」
虻川の叫び声に合わせて、きくりんの背中にドーベルマンが飛びかかる。
「うわっ…」
大型犬に体当たりされ、きくりんは上田を下敷きにし、転げる。
上田はどうにかそこから這い出すと、激しく咳き込みぜえぜえと荒い呼吸を繰り返した。
「おいこら…俺まで殺す気か…」
解放された喉元をさすりながら、力なく呟く。
虻川はすいません、と短く謝ると、悲しみに顔を歪め、更に犬を呼んだ。
「わたしは負けるわけにはいかない…あなたたちに…お前らなんかに負けるわけには…」
きくりんは立ち上がるとぶつぶつとそう繰り返し、焦点の定まらない目で虻川を見ていた。
ズボンのポケットを探ると、何かをつかんで口に放り込んだ。二、三回咳き込んだが、顔を上げると引きつった顔で笑う。
虻川はその行為に不審そうに眉を顰め、数匹の犬を従えて、無言のままきくりんを睨み付けた。
「いっけーお前らー!」
様々な犬種の犬が、一斉に駆けた。
きくりんの石が光り、また新たなスケッチブックを出す。
「今までの犬は獰猛でした…そこでこれからは、全員おとなしくしてしまいましょう!」
藍色の光が犬たちを包む。
途端に、ごろりと寝転がる者、欠伸をする者、仲良くじゃれあう者…。
虻川は舌打ちをしてすべての犬を消した。新しく二匹ほど呼ぶも、それもまたやる気がなくなっている。
「ちくしょ…」
犬を封じられ、為す術がなくなった。
上田は未だ倒れ伏したままで、必死に考える。
「これで終わりですよ。」
きくりんの声がどこか遠くに聞こえる。
「今まであなたがたは石を持っていました」
どうすれば、どうすれば…
「しかし、たった今からは」
頭が巡らない。首が痛む。…くそ、いわゆる『絶体絶命』だ。
「その石は僕の手に――」
「困ったときのっ、」
きくりんの言葉を遮り、突然に声が響いた。
「スーパーボール!!」
淡い紫の光が辺りを包み、弾け、大量の小さな球体となって落下する。
「わ、あ、ああああああっっ!!!」
どどどどどどどどどどどどどどっ……!
狙うはきくりんただ一人だ。
滝のように落ちていき、雪崩のように凄まじい音を立てて命中していく。
ぎゃあああああ、と断末魔が響き、そして途絶える。
上田と虻川は、突如現れたスーパーボールの大群を見て呆然としていた。
「やった、成功!」
「よっしゃ、名誉ばんかーいっ!」
その声に二人が振り返ると、医者の格好をした野村と、立ち直ったらしい磯山が立っていた。
「上田さーん、お寿司おごってくれますよね?」
それに、笑顔の伊藤も。
上田はあまりにもあっけないと言えばあっけない結末に肩をすくめると、
「…まわる奴で勘弁しろ。」
と言って、気が抜けたように笑った。
340
:
名無しさん
:2006/02/11(土) 16:19:28
一応これで終わりです、添削お願いします。
…余談ですが、きくりんは本名表記にしといた方が緊張感出たと今気付いたw
341
:
名無しさん
:2006/02/11(土) 17:55:34
雨上がり編もビット編も面白いです!
どっちも本スレに投下キボン。
342
:
名無しさん
:2006/02/11(土) 20:58:14
◆LHkv7KNmOwさん、
>>337-340
さん乙です!
本スレ投下して大丈夫だとおもいますよ。
それと
>>337-340
さん、トリップ付けたほうが良いと思いますよ。
343
:
◆LHkv7KNmOw
:2006/02/11(土) 22:47:56
ありがとうございます。本スレに落としてきます。
344
:
◆vGygSyUEuw
:2006/02/12(日) 10:19:03
337です。アドバイス通りトリップつけました。
ありがとうございます、本スレ行ってきます。
345
:
◆1En86u0G2k
:2006/02/18(土) 01:19:06
こんばんは。よゐこがメインのゆるい話を考えてみました。
添削していただけるとありがたいです。
346
:
◆1En86u0G2k
:2006/02/18(土) 01:21:08
あるバラエティー番組が収録されている某テレビ局のスタジオ。
各自がそれぞれの仕事をこなし、順調に進んでいたはずのその進行に異変が起きたのは、ちょうど撮影スケジュールを半分ほど過ぎたころだった。
「…で、その辺有野さんは…。……えっ?」
「…………」
「……、一旦止めます!」
司会を務める女子アナウンサーの声が戸惑いを残して中途半端に消え、場に不自然な空白が空いた。
スタッフが慌てたように指示を飛ばす。芸人のやりとりに笑いが起きていた舞台裏が、急にどたばたしはじめた。
それというのも、番組に出演しているはずのよゐこの大きい方こと有野晋哉が、なぜか突然その場から消えたのだ。しかもさっきまでは(積極的に前に出ているわけではなかったが)確かに何度か発言もしていたはずなのに。
「有野さんは?有野さんどこ行っちゃったんだ!?」
大勢の目が集まる収録中に姿を消すことなど普通に考えればできるはずがないのだが、現に有野の姿は見当たらない。
予想外の事態に混乱するスタッフをちらっと見て、ぽつんと取り残された格好の有野の相方・濱口優は困ったように頭を掻き、自分の左側へ顔を向けた。
「…やっぱりおかしなことになってるで」
「……うん…」
彼の言葉に返事をしたのは今目下捜索されているはずの、有野だった。
347
:
◆1En86u0G2k
:2006/02/18(土) 01:23:54
状況を説明するには数時間前までさかのぼる必要がある。
黒側の連中に襲われたので、石を使って撃退した。
話はそれだけなのだが、「石を使った」ことが有野にとっては誤算だった。本当はそんなもん使わんで逃げたらよかった、というのが本音だ。数で攻められ、濱口の能力だけでは対応しきれなかったというやむを得ない事情からだったが−ともかく有野は自分の能力を使い、襲ってきた人々にすみやかにご退場を願った。
最後の1人が気を失うのを確認し、ふう、と息をついた有野は、すでに身体を覆う不快な倦怠感に嫌な予感をつのらせながら、念のために濱口にこう尋ねた。
「………どう?」
「…うん、薄い」
「………」
有野の能力は影を操ること。
そしてエネルギーの消費による負荷は、文字通り「影が薄くなる」ことだった。
時間を現在に戻そう。
つまりはじめから椅子に座ったまま一歩も動いていない有野は、存在感の極端な欠如によって、いなくなった、と周りに思い込まれているのだった。
途中まではなんとか目立たない程度で済んでいたものの、微妙に収録が長引いたせいで気力がさらに減少したのか、彼の気配は今、それはもう見事に消えていた。何度か「ここにいますけどー」と呼び掛けてみたが、その声もどうやら認知されていないらしい。濱口は有野の石のことをよく知っていたし、それになにより相方であるから本当はそこにいるのだと正しく認識できていたが、さすがにこの妙な状況を解決する手段までは持っていなかった。
有野が「見つからない」こともあり(この知らせを聞いて有野の両肩がガクンと下がったのを濱口は見た)収録はそのままなし崩し的に休憩時間に入った。
共演者の1人が事情を飲み込めない顔のまま濱口に「相方どうしちゃったんだろうねえ」などと声を掛けてくる。濱口はねえ、と曖昧に笑い、傍らの有野にこっそり合図を送ってスタジオを抜け出した。
348
:
◆1En86u0G2k
:2006/02/18(土) 01:27:46
「…アカンなぁ、完っ全にお前の気配消えとるわ」
「もぉ…腹立つわー、人の目の前で『有野さん?有野さん!?』て…俺ここにおるっちゅうねん!」
「ははは」
「いや、笑わんといてよ…どうしよかなぁ」
スタジオの突き当たりにある人通りの少ない廊下。相方の心底困った声とぐったりした横顔に、濱口はようやく笑いを飲み込んだ。
確かに何の断りもなく番組中に「いなくなった」と思われているのはあまりいい状況ではなかった。番組の進行云々だけでなく責任が問われる話にもなる。
有野の目の前で有野がいなくなったことに関して自分だけが怒られている情景が頭に浮かび、濱口はややこしくなってきたな、と眉を寄せて呟いた。
「どうしたらええの?それ」
「うーん、もうちょっと気力戻ったら多分、みんなに気付いてもらえるぐらいにはなると思うねんけど」
有野は自分の言葉に自分で傷付いたような表情を浮かべる。
と、揃ってため息をついた彼らに声を掛ける者がいた。
「おう、何やってんだ?2人して」
「カトさん…」
2人の目の前には深夜からゴールデンに至るまでずっと共演してきた仲間であり付き合いの長い男、極楽とんぼの加藤浩次が立っていた。
349
:
◆1En86u0G2k
:2006/02/18(土) 01:32:49
「そっか、お前らこっちで収録やってんのな」
聞けば加藤は隣のスタジオで別番組の収録に参加しており、偶然そちらも休憩に入ったところらしい。
相変わらず慌ただしいスタッフの出入りを不思議そうに眺める彼に、濱口がここまでの状況を簡単に説明する。
「…あー、石か。有野のあれ、そういう意味じゃ一番きっつい副作用だよなあ」
冗談じゃねえよな正当防衛だっつうのに。
乱暴だが気遣うように声をかけてくれる加藤の目がちゃんと自分の姿を見ていることに安堵しながら、有野は僕どうしたらいいっすかね、と途方に暮れた声を出した。
「このまんまやったら2人とも絶対怒られるんですよね」
「えー、おかしいって!有野ここおるやんけ!」
「そりゃ納得いかねえわなあ…よし、ちょっと待っとけ」
加藤はバタバタとスタジオの方へ駆け出していくと、ほどなくして手に紙コップを持って戻ってきた。
「気力が戻りゃいいんだろ?ちょっと強引だけど、多分これで元気は出るから」
そう言ってポケットから何かを掴み出すと、目を閉じて意識を集中する。
すると手の中で濃淡のある灰色の光が輝いた。2人の持つそれぞれの石に波動が伝わる。
「「あ」」
濱口が目を丸くし、有野がカトさんも持ってたんや、と呟く。
光が収まると加藤はコップの中身を確かめ、よし、と頷いてそれを有野に差し出した。
「…何すか?これ」
「俺の能力。液体なら何でも酒になるんだ。飲みゃ気力も体力も回復する。飲んどけ」
収録中に酒入れるのはあれだけど、この状況なら仕方ねえだろ。加藤はそう続ける。
有野はおそるおそる中の液体を少しだけ飲み、「わっ、ほんまに酒や」と驚いて目を見張った。
「マジで?すごいやん、カトさん!有野ちょっと俺にも飲まして!」
「バカ、やめとけ!お前酒弱えだろ、飲めない奴には逆効果なんだよ!」
あわてて止められた濱口が不服そうな表情を浮かべる中、有野はコップに入った分をすべて飲み干し、はあ、とひとつ息を吐いた。身体の中を液体が通っていく感じに続いて、そこから確かにエネルギーが全身へ浸透していくような感覚が広がる。
まとわりついていた独特の疲労感は次第に薄まり、やがて消えていった。
350
:
◆1En86u0G2k
:2006/02/18(土) 01:35:47
「あ…なんか効いてきた。ありがとう、カトさん」
「おう。多少存在感出てきたぞ」
「マジっすか。早いなあ」
有野が苦笑するのと同時に、「あーー!!」と大声がその廊下に響き、3人は思わずビクっと身を固くする。
何事かと振り返ってみれば、スタッフの1人が有野の方を指差してわたわたと叫んでいた。
「あ、有野さん!!どこ行ってたんですか!?探したんすよお!」
「え、いや、俺どこにも行ってへんよ?」
「うわーよかったあ!有野さん見つかりましたー!確保しましたーー!!」
有野の声など耳に入っていない様子のその若いADは、興奮した声で報告しながらスタジオへ走っていく。
「…確保されてもうたな」
「まあ、これで大丈夫だな」
「俺犯人ちゃうわぁ…」
うんざりした顔で呟く有野を横目に、濱口と加藤は思わず顔を見合わせて笑ってしまう。
「再開しまーす!」
活気に満ちた声がスタジオから聞こえる。3人はじゃあ、と挨拶を交わし、それぞれの仕事場へと戻っていった。
共演者やスタッフに適当な理由を説明して頭を下げ(しかし濱口にだけ聞こえる声で有野は「理不尽や」と呟いた)、その後は何のトラブルも起きることなく、収録は終了した。
余談だがその番組が放送されたころ、それまでいつも以上に地味だった有野がある地点から急に目立ち始め、いつになく積極的に発言も重ねていたので、笑いつつも「珍しいこともあるもんだ」と首を傾げた視聴者も多かったという噂だ。
最も彼がなぜ唐突にそんな存在感を発揮したのか−アルコールが入ると有野はたまにとても活発になるのだがーその理由は本人たちと加藤しか、知り得ないことなのだけれど。
351
:
◆1En86u0G2k
:2006/02/18(土) 01:38:31
有野晋哉
石:テクタイト(隕石の衝突によって生じた黒色の天然ガラス。石言葉は霊性)
能力:自分の影を実体化(多少なら変形も可)させて操る。または影と同化して移動する(※気力を大幅に消費する)。
条件:自分に影ができていること。影の濃さは強さと比例し、その時の影の長さで伸ばせる範囲の限度が変わる。
同化しての移動はあくまで平面的なものに限られ(空間は移動できない)他の大きな影に入ったりすると解除される。同化と同時に影の操作は不可能。
自分の完全な同意者であれば、他者の影を使用したり一緒に影と同化することができる。
石を使って減った気力の分、吐き気・頭痛など体調が悪化するほか、存在感が薄れ他人に認知されなくなる(いてもいないと思われるので、結果的に無視されたような状態になる)。
ただし有野と近しい人物はその影響を受けにくい。
廃棄スレで投下されていた能力をベースに、負荷などを追加してみました。
(98さん、丁寧なお返事と詳細設定、ありがとうございました!)
加藤さんは能力スレで挙がっていたものを参考にしています。
話の構成上濱口さんの能力を使うシーンが出てこなかったので、とりあえず有野さんの分を。
改悪になっていなければよいのですが…
ご指導よろしくお願いします。
352
:
小説作成依頼スレ62-65
:2006/02/18(土) 09:11:08
添削続きですが見て頂けると幸いです。
篠宮は息を吐いた。右手に持つ緑の石が、低く唸る。中心には黒い筋。
「やってもうた」脳裏によぎる言葉が空しく頭に残る。
息を吸うたびにじわじわと毒素が回るようにその石に眼を奪われ、それに比例するように脈拍は乱れた。これが…黒の欠片の力か。
数日前、東京の撮影の合間。現場に光る石を見つけた篠宮は、導かれるようにそれを手にしていた。
相方の高松に見せれば、「きれいな石やなぁ」なんてノンネイティブな発音で微笑まれた。
手にしたときに、なんとなくわかっていたのだ。これが噂に聞く、『力を持つ石』なのだと。
先輩や周りから噂は耳にしていて、それなりの情報は得ていたつもりだった。だったのだ。
手にした自分の石が、黒に飲まれる前までは。
きっかけは単純すぎて笑えないもの。「もっと露出を」ただ、それだけだったのだ。
触れれば崩れてしまうような脆さをもつ石−フィロモープライトというらしい−は、その自ら放つ緑の中に、闇色の光を見せ付けていた。
気づいたのが遅かった。
情報はいくらでも頭にあったのに。
いや、むしろ。
自分が思い描いたように、自分の憧れのあの戦隊物のヒーローになれるのだと、
無意識に信じて疑わなかったのに。
「ちっく、しょ…」
フィロモープライトを持つ手は、まるで金縛りにあったかのように開くことはできず、握りこんだその石に、だんだんと思考を侵されていく。
ー奪え。
ーー壊せ。
ーーー殺せ。
考えたくない思考に篠宮は激しく頭を振ると、その手を離す事に集中した。
左手で押さえ、指をはずそうと…しかしまるでもともとの形であったかのように、その指は動くことはなく、逆にかざした左手からも生気を奪われる感覚に恐ろしくなり、勢いよく手を引く。
ふいに視界が明るくなり、意識は遠のいた。
353
:
小説作成依頼スレ62-65
:2006/02/18(土) 09:11:53
「篠宮?」
聞きなれた声に眼を開けると、心配そうに覗き込む高松が立っていた。
「こんなところで何してん。風邪でも引いたらしゃれにならんで」
ほら、と差し出された右手に、自分の右手を出す。
「ん」
「何や」
「篠宮、そんな指輪、しとった?」
言われてから自分の右手の人差し指にはめられた指輪を眺めた。緑の石に、それを覆うように装飾された、黒のリング。
その造りのよさになんだか笑いそうになるのを堪えながら、篠宮は立ち上がった。
「してたわ。つか、そないなとこいちいちチェックすんなや」
「見えたから言うただけやろ」
苦笑する相手を見ながら、妙にはっきりする意識を張り巡らせた。…なかなか、悪くない。
「せや」
部屋を出て行こうとした高松が振り返り、まるで悪戯をしかけた子供のような笑顔で篠宮を見た。一度辺りを見回し、そそくさと相手に近づくと、耳元で囁く。
「俺、聞いてもうたんやけど…どうやら、アメザリさん達、『白』らしいで」
『白』という言葉に体の神経が張り付くのがわかった。そして同時に噴出すような闇色の憎悪。
「おまえの石も、なんや正義っぽいような意味やったやん?せやからな、多分、俺のもそっち寄りちゃうかなーて」
へらへらと笑う相方にあわせ愛想笑いをすれば、自身の指に光る緑の石が鈍く光るのを感じた。
(壊せ)
(奪え)
(白などすべて)
口に出してしまいたい衝動にかられながら篠宮は笑った。
「せやな。俺らも『白』として頑張れるようにならんと」
嘲笑するように光る指輪を押さえながら、出来るだけ丁寧に、出来るだけ正確に『白』の自分を演じてみせた。
『黒』の中で押さえ込まれた自我に、誰も気づかないうちに、すべてを『壊す』そのときまで。
今は。
354
:
小説作成依頼スレ62-65
:2006/02/18(土) 09:17:46
以上です。
序章として考えてました。
篠宮は表向き白/実際黒のスパイとして考えてました。いかがでしょうか?
355
:
◆yPCidWtUuM
:2006/02/18(土) 12:51:30
>>345-351
乙です。よゐこの話面白かったです!
戦闘後の話を中心に書かれているのが何だかすごく
彼らののんびりした空気にあった感じで楽しく読めました。
実は能力スレに極楽の能力落としたの自分なんですが、
こういう形で使ってもらえてとても嬉しかったです。
>>352-354
乙です。続きが気になります!
356
:
名無しさん
:2006/02/18(土) 16:41:00
どっちも本スレ投下キボン。
357
:
◆Oz7uzxju6Q
:2006/02/18(土) 16:49:46
能力スレの323です。千原兄弟の話、冒頭だけできたので、投下します。
358
:
◆Oz7uzxju6Q
:2006/02/18(土) 17:25:03
ーBrotherー
「浩史。バイト持って来たぞ。」
「え?バイト?なんの?」
「お前の石の能力を使えば簡単に出来るバイト。」
「・・・。」
兄・千原靖史に振り回される事は多々あったが、バイトを持ってきたのは初めてだった。
「行きたくない」
「お前が行きたくなくても行くの!」
そう言われて強引に連れてこられた場所はテレビ局の近くにある倉庫だった。
暗くて狭い変な場所。何でこんな所でバイト?
「俺は別の仕事があるから、それが終わったらまた此処に来るからな。」
「じゃがんばれ!」
そういうとどこかに行ってしまった。
・・・兄ちゃん一人だけで仕事なんて珍しいな。
そう思いながら千原Jrこと千原浩史は一人で倉庫にいた。
「そういえばバイトってなんやろ?」
359
:
◆Oz7uzxju6Q
:2006/02/18(土) 18:11:41
いくら待っても兄は帰ってこないし、バイトも始まらない。
イライラしてきた千原はその場で地団駄を踏んだ。
その後しばらく待っていたが誰も来ない。
帰るか。そう思ったときだった。
入り口から、誰かが入ってくる。
にごった色の石を持っているところを見ると黒の若手だろう。
「石をよこせ。」
「いやや!」
「なら倒す!」
相手が闇をまとって突進してくる。
千原は精神統一をし始める。
「相手の攻撃を受け流して、その勢いを利用してぶん投げる!」
不意打ちされ床にたたきつけられた相手は、気絶している。
やれやれと千原は肩をなでおろす。
その後、待ってみたが結局何も無かった。
そして、兄が帰ってきた。そして、待っているときの事を話した。
「結局、バイトってなんだったんや?」
「・・・。」
兄は答えなかった。バイトを持ってきたのは兄だから知っているはずなのに。
360
:
◆Oz7uzxju6Q
:2006/02/18(土) 18:13:21
千原Jr
石:チューライト(霊的な感性に恵まれて、直観力、洞察力を高めるとされる)
能力:反射神経が数倍になり、相手の攻撃を避けやすくなってカウンターが出来るようになる。
条件:神経を研ぎ澄まさなければならない。研ぎ澄ますまでは無防備。
疲労が大きいため、1日10回出せればいいところ。(その日の体調で回数が減ったりする)
361
:
◆Oz7uzxju6Q
:2006/02/18(土) 18:16:33
途中寝てしまい途切れてしまってすみませんでした。
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