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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

271 ◆TCAnOk2vJU:2006/01/22(日) 01:48:53
「はいっ、どうもチュートリアルです」
「よろしくお願いしまーす」
 いつもの挨拶で始まった漫才。二人の登場で観客が沸き、二人はいつもの調子でネタを始める。
 そう、最後までいつもの調子でできていたはずだったのだ。
 徳井がズボンのポケットの中に、何か熱いものを感じるまでは。
 ――ん?
 一瞬顔をしかめる徳井。その後、そういえば拾った石を入れたままだったなあと思ったが、何故それが熱く感じるのかまでは説明できず、徳井は一瞬ネタを続けることを忘れた。
「なんや、どないしたん徳井くん?」
 相方の福田にツッコまれ、徳井ははっと我に返る。福田は苦笑しながら、続けてツッコんできた。
「また変な妄想でもしてたんちゃうやろな?」
「いや、ちゃうねん。だからお前がな――」
 相方のフォローに感謝しつつ、徳井はネタを続ける。観客はそれもネタの内なのだろうと思っているようで、気に留めることもなく二人のやりとりに笑っていた。
 自分たちの出番中、徳井はずっと熱いのを感じたままだった。ネタが終わってから石がどうなっているのか確かめよう、と思いながらネタを終わらせ、舞台のすそに引っ込んだ。


 出番が終わってから、徳井は案の定福田に先程のことを訊かれた。
「ほんまにどないしたん? 急に喋んのやめたから、びっくりしたで」
「いや……」
 徳井はそう言いながら、ズボンのポケットに入れていた石を出した。手のひらに載ったその石はやはり熱を帯びていて、徳井は首を傾げた。ずっとポケットの中に入っていたから熱い、というような熱さではない。石自身が熱を発しているようである。
 福田は不思議そうに石を見ている徳井を覗き込んだ。
「なんやお前、こんなもん入れてたん? さっきの石やないか」
「うん……なんかこれな、熱持ってるような気がすんねんけど」
「え、熱? お前のズボンの中で温められてたんちゃうん?」
「いや、そういう熱さやないねん」
 そう言って徳井は石を福田の方に向けたが、福田はまだ信じられないといった様子だった。
「どれ、ちょっと貸してみ」
 福田がそう言うので、徳井は福田に石を渡した。福田は石を受け取って手のひらで転がしていたが、すぐに首を傾げて徳井に石を返した。
「俺は別に、なんも感じひんねんけど……」
「えぇ? 俺の手の感覚がおかしいんかな」
 徳井に返されたその石は、確かに今も熱を帯びている。徳井の手の中では熱く感じるのに、福田はそれを感じないとは。全く訳が分からない。
「まあ、その石のことは後にしよ。考えて分かるようなことちゃうみたいやし」
 福田がそう言うので、まあそうやな、と徳井も同意し、二人は楽屋へ戻ることにした。


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