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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

308 ◆TCAnOk2vJU:2006/02/01(水) 21:31:28
 部屋の中には小杉の相方である吉田がいて、必死な様子で部屋の中をかきまわしてい
た。小杉が呼びかけると三人の方を振り向き、おう、と手を上げた。
「どうや吉田、見つかったか?」
「いや、全然や。鞄の中とか、全部見たんやけど」
 そうか、と言って小杉は軽くため息をついた。そんな二人の様子を見ていた徳井があっ
と思い出したように言った。
「もしかしたら盗まれたんちゃうか?」
 他の三人はその発言にはっとしたようだったが、すぐに福田がそれはないやろ、と否定
した。
「第一、盗む理由が分からへん。財布とかやったらまだしも、育毛剤と肌のクリームやで?」
「そこなんやけどな。でも、二人とも他の場所に持っていった記憶とかないんやろ?」
 徳井が訊くと、ブラックマヨネーズの二人は同時に頷いた。
「ずっと鞄の中に入れてたはずやねん。やから部屋の中を必死に探してたんやけど」
 ふむ、と徳井だけは納得したような表情を見せる。他の三人はまだ腑に落ちないといっ
た様子で、首を傾げていた。
 その時、突然外から声がかかった。
「おい、小杉、吉田! これお前らのとちゃうんか?」
 四人はその声に反応し、びくっと楽屋の外の方に振り向いた。そこには共演者の一人で
あるたむらけんじ、通称たむけんがいつものにやにやとした顔で立っていた。徳井はため
息をつき、たむらに咎めるような視線を送った。
「もう、驚かさんといてくださいよたむらさん」
 たむらはあはは、と気にも留めていない様子で笑った。
「悪い悪い。それよりこれ、小杉と吉田のモンとちゃうか?」
 たむらがそう言って手に持ったものを差し出してきた。四人が一斉に注目し、一瞬の後
にブラマヨの二人はあっと声を上げる。
「それ! それですわ、俺の!」
「やっと見つかった、良かったわ……」
 二人は安堵したようにため息をついて、たむらからそれぞれの持ち物を受け取った。
「なんか本番が終わってから楽屋に帰ったら、机の上に置いてあってん。こんなん持って
るのは小杉と吉田やろうなあと思って、ここに持ってきたんやけど」
「いやぁ、ありがとうございます」
 こんな物を持っている、とさりげなくからかわれたにも関わらず、小杉と吉田は本当に
たむらに感謝したような顔をしていた。そのからかいに気づいた徳井と福田は、今更突っ
込むわけにもいかず傍らで苦笑していた。
 たむらは二人の嬉しそうな様子を見て、うんうんと頷いた。
「良かった良かった。ほんならまたな。今日はお疲れさん」
「あ、はい! ありがとうございました!」
 慌てたように小杉がそう言って、吉田と同時に頭を下げた。
「まあ、これで一件落着、か?」
 福田が言うと、傍らの徳井がそうみたいやな、と頷いた。
「良かったな二人とも。ほんなら俺らもこれで」
「おう、ありがとう」
 吉田が礼を言い、小杉も軽く頷いた。徳井と福田は手を振ってそれに応えた後、ふうと
ため息をついて、自分たちの楽屋に帰っていった。


 これが全ての始まり。
 とある、土曜日の出来事だった。


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