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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

350 ◆1En86u0G2k:2006/02/18(土) 01:35:47
 「あ…なんか効いてきた。ありがとう、カトさん」
 「おう。多少存在感出てきたぞ」
 「マジっすか。早いなあ」

 有野が苦笑するのと同時に、「あーー!!」と大声がその廊下に響き、3人は思わずビクっと身を固くする。
 何事かと振り返ってみれば、スタッフの1人が有野の方を指差してわたわたと叫んでいた。

 「あ、有野さん!!どこ行ってたんですか!?探したんすよお!」
 「え、いや、俺どこにも行ってへんよ?」
 「うわーよかったあ!有野さん見つかりましたー!確保しましたーー!!」

 有野の声など耳に入っていない様子のその若いADは、興奮した声で報告しながらスタジオへ走っていく。

 「…確保されてもうたな」
 「まあ、これで大丈夫だな」
 「俺犯人ちゃうわぁ…」

 うんざりした顔で呟く有野を横目に、濱口と加藤は思わず顔を見合わせて笑ってしまう。
 「再開しまーす!」
 活気に満ちた声がスタジオから聞こえる。3人はじゃあ、と挨拶を交わし、それぞれの仕事場へと戻っていった。


 共演者やスタッフに適当な理由を説明して頭を下げ(しかし濱口にだけ聞こえる声で有野は「理不尽や」と呟いた)、その後は何のトラブルも起きることなく、収録は終了した。
 余談だがその番組が放送されたころ、それまでいつも以上に地味だった有野がある地点から急に目立ち始め、いつになく積極的に発言も重ねていたので、笑いつつも「珍しいこともあるもんだ」と首を傾げた視聴者も多かったという噂だ。
 最も彼がなぜ唐突にそんな存在感を発揮したのか−アルコールが入ると有野はたまにとても活発になるのだがーその理由は本人たちと加藤しか、知り得ないことなのだけれど。


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