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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

275 ◆TCAnOk2vJU:2006/01/22(日) 01:53:36
 石の確認が終わったところで、徳井がぽつんと呟いた。
「俺が『挨拶もなしに人の楽屋に入ってくるな』って言うた途端、あいつ吹っ飛ばされたよな?」
 そうやな、と福田は頷く。それを確認してから、徳井は続けた。
「でもさっきのあの人は難なくここに入ってこられた……なんでや?」
「うーん……ようわからんなぁ」
 福田が首を横に振って分からないという顔をしたので、徳井もがくりとうなだれたが、その後すぐにがばっと顔を上げ、そうや、と叫んでいた。
「あいつ、挨拶したよな? 『おっす!』って、ちゃんと」
「あ、ああ、してたけど……まさか、挨拶したからここに入ってこられたって言うんとちゃうやろな?」
「まあ、とりあえず試してみたらすぐ分かるやろ」
 そう言うなり、「おい!」と叫ぶ福田を無視して、徳井は楽屋を出て後輩の芸人を連れてきた。連れてこられた後輩芸人は怪訝そうな顔をして、徳井を見つめていた。
「とりあえず、何も言わんとここに入ってみ?」
 徳井は後輩芸人にそう命じた。後輩芸人は何を言っているか分からないという顔をしながら、言われたとおりに楽屋に足を踏み入れた。
 その途端、後輩芸人は後ろに吹っ飛び、ちょうどそこにいた徳井に受け止められた。
「な、なんなんですか、これ」
 後輩芸人は驚いている。徳井はははっと笑うと、今度は挨拶をしてから楽屋に入るよう命じた。後輩芸人は頷き、「失礼します」、と言ってから、おそるおそる楽屋に足を踏み入れた。
「あ、あれ? 入れる……」
「ほんまや、入れるやん」
 後輩芸人と福田が同時に言葉を発し、徳井はまたははっと笑った。
「やっぱりな。……あぁ、時間とって悪かったな、もうええで」
「は、はあ」
 後輩芸人は何が何だか分からないという顔をしながら、徳井に言われたようにその場から立ち去った。徳井は楽屋に再び入り、福田に向かって得意そうな笑顔を見せた。
「やっぱりそうやったな。多分俺の言ったことに反応して、ここに挨拶せん奴は入ってこられへんよう、結界でも張られたんちゃうか?」
「まあ、そうみたいやけど、なんでや? この石がそうしたんか?」
 福田の問いに、徳井は頷いた。
「多分そうやと思う。その後、この石光ってたし、後で熱も冷めてきたし……この石、なんか不思議な力があるみたいやな」
 ふうん、と福田が納得したようなしてないような表情を見せ、頷いた。
 徳井はその石をズボンのポケットに大事そうにしまうと、立ち上がって福田の方を向いた。
「まあ、とにかく一件落着や。後で飲みに行くか?」
「おっ、ええな。昨日みたいにつれないこと言うなよ?」
「もちろんや」
 福田も鞄の中に石の入った袋を大事にしまい、二人はいそいそと帰る準備を始めた。
 福田の石がじとりと熱を持ち始めていたのを、二人は知るよしもなかった。


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