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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

315名無しさん:2006/02/03(金) 19:08:13
中田の相方である藤森は、自らの持つ石に妙な力があることを知った途端、キラキラと眼鏡の奥の瞳を輝かせ何度も「凄え!」と言って喜んだ。
特別な能力を授かった事が嬉しくて堪らないようだった。
有名大学を出ているのに、と言えば偏見になってしまうが、魔法みたいな力を目の当たりにすれば誰でも舞い上がってしまうのだろうか。
とにかく石を使いたくて仕方がない様子の藤森を、中田は何度となく諭してきた。

慎吾、という名指しに男は一瞬首を傾げたが、直ぐに眼鏡を掛けた青年の顔が思い出される。
暫く考え込んだ後、男は意地悪く微笑んでみせた。
「“ガラクタ”一人でも立派な戦力だからな。」
黒に入ったばかりの、盾代わりにしか使われない下っ端や石を持たない者たちは“ガラクタ”と呼ばれている。
知らないうちに黒の誘惑に負けてしまった藤森もその内の一人に過ぎない。
居ても居なくても関係ないが、居ないよりは居る方が良いに決まってる。と男は言った。

中田からしてみればそんな事が納得できる筈もなく。男の進路を塞いだまま尚も引き下がろうとしない。
「お願いします。」
「口で言って分かんねえなら…、」
男がポケットから取り出した濁った石がボンヤリと光り始めた。
中田は俯き、固く目を閉じた。
その瞬間。

短く潰れた声を漏らし、男が蹲った。


薄く目を開くと、男がしゃがみ込んでいるその後ろに、人影が見えた。
逆光の暗闇でも見間違えるはずもない、見事なまでのアフロヘア。
「早く逃げろって。」
「…藤田さん?」
腕をコンビニの袋に通し、その両手をポケットに突っ込んだまま、トータルテンボスの藤田が片足を上げて立っていた。
男の背中には土が足跡の形にスタンプされている。見たところ、どうやら背中から蹴り飛ばしたようだ。


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