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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】
328
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:00:05
「おごってもらう分際で文句言うな、ったく…ん?」
「どーしたんすか?」
上田は眉根を寄せ、声を低く落とした。
「…誰か尾けてきてんな、一人だ。」
「えっ…」
場数を踏んだためか、上田はいつしか芸人には不必要なほど気配に鋭くなっていた。
うろたえる後輩たちに、落ち着いた様子で言葉を重ねた。
「騒ぐな、一旦さっきみたいに馬鹿話してろ。
さすがにここじゃ仕掛けてこねえだろ、どっかで巻くぞ。」
「…分かりました。」
野村はそう言うと声の調子を素早く切り替え、明るく振る舞う。磯村や北陽の二人もそれに続いた。
「あ、財布忘れたとかなしっすよお?」
「そんなせこい真似したら、番組で言いふらしちゃいますからねー。」
「観念して、お寿司!お寿司!」
「上田さんは可愛い後輩に肉もおごってくんないって奥さんにチクってやるーっ」
「るっせえよお前ら、ぐだぐだ言うとコンビニ飯にすんぞ。」
「あーそれ嫌だ!」
「もう食い飽きました!」
演技にしては自然な会話をしながら、曲がり角で上田は不意に目配せをした。
「(行くぞ!)」
五人は追跡者を振り切るため走りだす。
後方で電柱の陰に身を潜めていた男は、慌てて追いかけた。
角を曲がり、路地を走り、次の角へさしかかる――
「うわあっ!」
男の腹に、勢いよく何かがぶつかっていく。
衝撃で後ろへ倒れた体へ、そいつが唸り声と共にのしかかる…ように男は感じた。
「うわ、何だっ、なに、わあああっ!」
男はパニックを起こし、振り払おうとめちゃくちゃに暴れる。
が、それはびくともせず、男の肩口に噛みついた。
痛みにもだえわめく男の姿を、五人の目が冷静に見つめていた。
「…やっぱアンタだったんだ。」
虻川が悲しそうな顔で呟く。その目には涙さえたまっていた。
「きくりん」
彼は何も言わず、ただ眼鏡越しに虻川を睨み付けた。
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