したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

314名無しさん:2006/02/03(金) 19:05:58

一匹のネズミが排水溝から飛び出してくる。ピタリと立ち止まり、赤い目を光らせながら頻りに鼻の頭を動かしている。
小さな耳は敏感に人間の気配を感じ取り、ネズミは再び排水溝の中へ、枯れ草を蹴散らしながら戻っていった。
カビ臭く湿った路地裏は、街の電光も月明かりも届かない。
唯一の明かりと言えば、大通りを忙しく通り抜けていく自動車のライトのみだろう。
それでも、車が一台通り過ぎる度に、また一瞬だけ真っ暗になる。


そんな塀に囲まれた寂しい場所に小さく響いた、鈍い打撃音。
それと同時に、どさっ、と人が倒れた音が重なる。

派手に倒れたのは未だ若々しさの残る印象の男だった。
衝撃に体を丸めて転がっていたが、殴られた頬を押さえようともせず、がばっと体を起こすと目の前の男を見上げた。
そんな若者の様子が気に食わなかったのか、殴った方の男はあからさまに眉を顰めた。
「お願いします。」
倒れたときに切ったのか、口の端にうっすらではあるが血が滲んでいる。
それでもはっきりした強い声で、若者…オリエンタルラジオの中田敦彦は自分を見下ろす男に縋るように懇願した。
男はそんな中田を嘲り冷たく笑う。
「お前ら、石持ってんだって?大した経験もネタも積んで無い駆け出しの癖に何でだろうなあ。」
ああ、流石“売れっ子”は違うな。と皮肉たっぷりの言葉を浴びせられると、中田の表情が一瞬だけ曇った。
異例の速さで世間に出るようになったことは、確かに喜ばしい事でもあったが、また逆に不安な事でもあったのだ。
中田は怒り出すような真似はせず、再び強い視線を向ける。
クソ面白くない。男は少しむっとした顔を造り、何だよ、とそっぽを向いて口を尖らせた。
「お願いします、慎吾を返してください。」
黒っぽいコケや泥水の散乱する地面に膝と両手を付いて、しっかりと相手を見据えたままもう一度言う。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板