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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

339名無しさん:2006/02/11(土) 16:14:39
「こらあ、上田さんを離せー!!」
虻川の叫び声に合わせて、きくりんの背中にドーベルマンが飛びかかる。
「うわっ…」
大型犬に体当たりされ、きくりんは上田を下敷きにし、転げる。
上田はどうにかそこから這い出すと、激しく咳き込みぜえぜえと荒い呼吸を繰り返した。
「おいこら…俺まで殺す気か…」
解放された喉元をさすりながら、力なく呟く。
虻川はすいません、と短く謝ると、悲しみに顔を歪め、更に犬を呼んだ。
「わたしは負けるわけにはいかない…あなたたちに…お前らなんかに負けるわけには…」
きくりんは立ち上がるとぶつぶつとそう繰り返し、焦点の定まらない目で虻川を見ていた。
ズボンのポケットを探ると、何かをつかんで口に放り込んだ。二、三回咳き込んだが、顔を上げると引きつった顔で笑う。
虻川はその行為に不審そうに眉を顰め、数匹の犬を従えて、無言のままきくりんを睨み付けた。
「いっけーお前らー!」
様々な犬種の犬が、一斉に駆けた。
きくりんの石が光り、また新たなスケッチブックを出す。
「今までの犬は獰猛でした…そこでこれからは、全員おとなしくしてしまいましょう!」
藍色の光が犬たちを包む。
途端に、ごろりと寝転がる者、欠伸をする者、仲良くじゃれあう者…。
虻川は舌打ちをしてすべての犬を消した。新しく二匹ほど呼ぶも、それもまたやる気がなくなっている。
「ちくしょ…」
犬を封じられ、為す術がなくなった。
上田は未だ倒れ伏したままで、必死に考える。
「これで終わりですよ。」
きくりんの声がどこか遠くに聞こえる。
「今まであなたがたは石を持っていました」
どうすれば、どうすれば…
「しかし、たった今からは」
頭が巡らない。首が痛む。…くそ、いわゆる『絶体絶命』だ。
「その石は僕の手に――」

「困ったときのっ、」
きくりんの言葉を遮り、突然に声が響いた。

「スーパーボール!!」

淡い紫の光が辺りを包み、弾け、大量の小さな球体となって落下する。
「わ、あ、ああああああっっ!!!」
どどどどどどどどどどどどどどっ……!
狙うはきくりんただ一人だ。
滝のように落ちていき、雪崩のように凄まじい音を立てて命中していく。
ぎゃあああああ、と断末魔が響き、そして途絶える。
上田と虻川は、突如現れたスーパーボールの大群を見て呆然としていた。
「やった、成功!」
「よっしゃ、名誉ばんかーいっ!」
その声に二人が振り返ると、医者の格好をした野村と、立ち直ったらしい磯山が立っていた。
「上田さーん、お寿司おごってくれますよね?」
それに、笑顔の伊藤も。
上田はあまりにもあっけないと言えばあっけない結末に肩をすくめると、
「…まわる奴で勘弁しろ。」
と言って、気が抜けたように笑った。


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