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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】
1
:
名無しさん
:2004/11/25(木) 19:54
「自分も小説を書いてみたいけど、文章力や世界観を壊したらどうしよう・・・。」
「自分では面白いつもりだけど、うpにイマイチ自信がないから、
読み手さんや他の書き手さんに指摘や添削してもらいたいな。」
「新設定を考えたけど矛盾があったらどうしよう・・・」
など、うpに自身のない方、文章や設定を批評して頂きたい方が
練習する為のスレッドです。
・コテンパンに批評されても泣かない
・なるべく作者さんの世界観を大事に批評しましょう。
過度の批判(例えば文章を書くこと自体など)は避けましょう。
・設定等の相談は「能力を考えようスレ」「進行会議」で。
233
:
ブレス
◆bZF5eVqJ9w
:2005/12/17(土) 12:06:25
ちょうど板倉と山本が対峙した公園で、インパルスの2人が『黒』の下っ端と争っていた。
帰り際の板倉を狙い仕掛けてきた連中と、追いかけっこでここまできたのだ。
それを見つけた堤下が板倉を助けにやってきていた。しかし形勢は一向に悪い。
「ちっ・・・」
板倉が舌打ちをする。見れば相手は大勢、こちらは2人。
暗くなり始めている公園の中に、街灯の蛍光灯はちかちかと点滅していた。
そして、点滅の光がまだいるであろうか、その他大勢の顔を照らしている。
「どいつもこいつも・・・、覇気がないんじゃないの?」
『黒』の人間に追われるのが面倒臭くなり始めた板倉が、苛立って呟いた。
そのすぐ隣で困り果てたような表情をしている堤下が、板倉の言葉に
「いや、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!相手が多すぎるよ・・・」
と弱気に突っ込んでいた。
そんな覇気の無い顔が、2人の周りを包囲している。小さな息と迫る足音が砂を掻いた。ざっ、と靴底が擦る音がする。
街灯はいまだちかちかと弱々しい点滅を繰り返していたが、不意にそれが消えた。
一瞬その空間すべてが、黒く塗りつぶされたように感じた、その刹那。
―――ばちっ。何かが爆ぜた。
「俺ね、あんまり手荒なことしたくないんだ」
いつもと変わらない、冷静な声色が聞こえる。
堤下は、それが隣の板倉だと分かっていたが、何やら嫌な予感がしてそちらを向けなかった。
辺りが謎の音と共に瞬間的に明るくなる。その光の元は多分板倉の頭上だろう、と堤下は気づいていた。
電流が街灯から奪われて、それは生き物のように板倉の周りに集合していたのだった。
「でも、来るんならこっちもやるよ」
相変わらず、板倉から放たれる言葉には変化は無い。
周りの群れが、凝視するかのように板倉と彼のアンクレットを見た。
風が冷たく公園を貫いた。
「簡単に石はやらねーぞ」
最後に板倉が、吐き捨てるように言ったのを堤下は聞き逃さなかった。
その言葉が合図だったかのように、ついに男達が爆発して迫ってきた。
拳を振りかざし、唸るように、鋭い眼差しで板倉を目掛けて猛烈に突撃してくる。
しかし、彼らの拳が板倉を捉えるよりも前に、板倉と男達の間に巨大な電撃の束が落ちた。
―――ずどん!
234
:
ブレス
◆bZF5eVqJ9w
:2005/12/17(土) 12:06:51
おおそろしない音が空気を震わせ、衝撃的な電光が目を眩ませる。
驚いて後ずさりして行く下っ端を、板倉が負けず劣らずの冷たい瞳で睨み付けた。
その時一緒に少し唇の端が歪んでいた。
「俺怒ったら怖いよ?」
「・・・そうそう、板倉さんあんまり怒らせないほうがいいって」
黙っていた堤下がちょこっとだけ、しかもなぜか小声で喋った。
しかし、それに対する返答は
「知るかよ」
「さっさと石をよこしてくれませんか?」
「電気を扱うなんて、かなり強いみたいだからな」
と言う、一切話を聞いていない言葉ばかりだった。
「・・・・・・」
板倉は、それを聞いて一瞬だけ黙ったが、それは本当に一瞬で。
「じゃー、こいつで焼け死んでも知らない」
さらりと言ってのけ、次の瞬間にはまたしても電撃が公園中を駆けていた。
そこら中に光の柱が地面に目掛けて突き刺さっている。
電光が空を走り、体を捻り、時に二股に分かれ、男達の降り注いでいた。
「い・・・、板倉さん!あんまりやると周りに迷惑が・・・」
「関係ねーよ、今は」
「電気なんか当ててほんとに死んだりなんかしたら・・・」
「そんなわけ無いだろ、俺だって手抜くよその位は」
「それより!こいつ等俺達を襲う気あるのかな?」
「だっていきなり俺を襲ってきたんだよ、その気はあるだろ」
「そうだけど・・・おかしくない?」
「何が!」
電撃操作に精神を集中している板倉が、自分に話しかけてきた堤下に苛立ちを覚えた。
しかし堤下は、そのまま言葉を紡いだ。
「だってこいつ等、よく見たら減ってるよ?」
「逃げてんだろ?『黒』に洗脳された石の力を使えない下っ端だから、反撃できなく・・・」
言いかけて、板倉はようやく気がついた。
いつの間にか自分の周りにいた下っ端集団が公園の外へ走っていく。
しかしどうもおかしい。逃げるのとは違う、何か急いでいるように見える。
「板さん!」
その時2人は聞き覚えのある声が公園の外からしたのを聞いた。
目を向けると、公園の入り口に向け走るキングコング・ドランクドラゴン、そして秋山と馬場がいた。
板倉に、何となく嫌な予感がしたのはこの時だ。なぜかは分からない。
ただ、次の瞬間には先ほどまでの『黒』の下っ端が、標的を西野に変えていた。
235
:
ブレス
◆bZF5eVqJ9w
:2005/12/17(土) 12:09:40
とりあえずここまでです。
今回はキンコンの2人が『白』と特に接点がないと言うのが前提です。
(あるとすればインパルス経由か関西方面の『白』)
それから、伊藤ちゃんの謎の行動については次回以降に繋げようと思います。
236
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/19(月) 00:53:18
エレキ今立さん周辺のちょっとした話を思い付きました。
重要な展開ではないので全体の流れを邪魔することは多分ないと思いますが、
保守がてら投下しようかと思ってるので、
何か問題がありましたらご指摘くだされば幸いです。
237
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/19(月) 00:55:11
トゥインクルスター ★
その日、エレキコミック・今立進は朝から上機嫌だった。
左足の靴紐が何回となくほどけても、目の前で電車が行ってしまっても、レジ待ちで強引に自分の前に割り込まれても、その買い物の結果財布の中に1円玉がやたら増えようとも、怪訝な顔の相方に顔に締まりがないと指摘されても、とにかく、彼のテンションは高いままだった。
なんたって翌日には恒例の「ゲーム大会」が控えている。
それは、今立を筆頭としたゲーム好きの芸人同士が集まって、舞台上でひたすら古今のゲームに興じるというオールナイトのイベントのことだ。
はたしてそんなものに入場料を取っても大丈夫かと最初は思ったけれど、やってみた限りでは観客もなかなか楽しんでくれたようで、以来時間と余裕とメンバーの予定が合った時には開催されるそのイベントの日が訪れるのを、彼はずいぶん前から待ち望んでいたのだった。
238
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/19(月) 00:56:41
それぞれの仕事を済ませた後参加メンバーが集合し、軽い打ち合わせと最終確認、ついでに飲み会。
あまりの嬉しさにやや飲み過ぎてしまった今立はメンバーの一人、東京03・豊本明長と談笑しながら夜道を歩いていた。
「もう帰ったらすぐ寝ようと思ってさ!明日のモチベーションを高めとかないと、」
「ダチくんもう十分だと思うけどなあ」
「こんなもんじゃないよ俺は!」
酒のせいでさらに上がったテンションを抱え、駅へ続く道を曲がる。そこからだと少し近道になるのだ。細い路地で街灯の数も少ないようだが大の男二人、特に怖がる理由もないだろうと。
だが彼は大事なことを忘れていた。彼らの日常が今はすっかり様相を変えていて、なんの落ち度がなくとも不意に襲われる可能性を十分に秘めていることを。
「………え、」
気が付けば前後の道をいかにも怪しげな男達に塞がれていた。
239
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/19(月) 00:59:00
前に3人、後ろに5人。
その中に見知った顔はなかったし、一様にぼんやりと曇った目をしていたからおそらくは、黒側の末端を構成する超若手の面々が上の思惑で動かされているのだろう。よくある話だ。
自分の石に目立った変化は感じられないので相手方が石を使った攻撃をしてくることはなさそうだが、恵まれた体格と腕力のありそうな男が多いのが気にかかる。
高まってゆく緊迫感とは対照的に、道に沿って続く植え込みでは張り巡らされた大小のイルミネーションがチカチカと陽気に点滅を続けていた。家主の趣味なのだろうか、白に青に水色に色を変えて輝く様は光が行く先を先導してくれているようで、こんな状況でなければなかなかロマンチックな雰囲気だったのかもしれない。
(さて、どうしたもんかなあ)
豊本は眼鏡を中指でくい、と押し上げて小さくため息を吐いた。
この陣形と場所では少々のすったもんだは免れそうにない。しかも自分の石は少数へのかく乱が精々で、こういう状況では基本的に無力だ。となると今立に頼ることになるのだが、彼が能力を使ったあとの代償を考えるにそれはちょっと言い出しにくい希望である。
(みんなでまとまって帰るべきだったかー…闘えそうな人もいたし…)
不注意を悔いたものの後の祭りだった。他に選択肢が増える気配はない。
仕方なく隣の様子を伺うと、人工的な光に頬を照らされた今立が酔いの回り切った目で前方を睨み付けたまま(だから残念なことに威圧感には欠けていた)淡々と言葉を並べはじめた。
「…あのねぇ豊本くん、俺ものすごく楽しみにしてんだ、明日の」
「うん、知ってる」
「なんだったら最近のアンラッキーを全部笑って流せるぐらい」
「ああ…さっき居酒屋でダチくんの頼んだのだけ3連続で来なかったけど全然笑ってたもんね」
「…メイン主催者がゲームにひとっつも触れないってどう思う?」
「超不憫」
「………」
その時豊本は確かに今立の目が据わるのを、見た。
240
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/19(月) 01:00:42
石が震える。
やはり自身の石とそれぞれの身体能力で突破するべきか、そう考えはじめた豊本の思考が思わず途切れた。
(…え、ダチくん?)
この共振の元は間違いなく今立だ。しかもかなり、攻撃的な。
冷静に考えたなら明日の為に少しでも使用は控えるべきなのだが、酔っているせいか本人曰くの『最近のアンラッキー』が相当溜まっていたのか、こんな不条理な形で自分の楽しみが妨害されることに対し彼は相当腹を立ててしまったらしい。
気の毒だとは思いつつ、この怒りが下手に拡散するとやっかいなので今立に全てを任せることに決めた。
−でも確か、彼の能力には制約があったはず…
「…イオナズン打ちてえ…」
「いや危ないから」
「じゃあメテオ…やっぱメラゾ−マ…いや団体だからべギラゴンの方が…」
「殺す気だねえ。全部却下。てか無理でしょ?そういうの」
そう、彼は怒りを発散する攻撃の能力は使えないのだった。どうするの?という豊本の視線を感じ取ったのかどうか、今立は不意に「上手く避けてね」と言い放つと、傍らできらめく星の形をしたイルミネーションを引きちぎり、真上に投げた。
電力を断たれたそれは当然瞬時に輝きを失い、ただの透明なプラスチックに戻る。
しかし、その星が重力に引かれはじめる前に、今立のシャツのポケットから眩く白い光が溢れた。
「………!!」
途端に前後の集団がざわめき、距離を詰めようと駆け寄ってくる。
何か効果的な能力を発揮される前に数で押し切り、石を奪ってしまおうという考えだったのだろう。
しかし彼らの手が今立に伸びる寸前、ウレクサイトの白光はひときわ強く瞬いたかと思うと、シュン、と真上に移動した。
打ち上げられた先には落下してくる星型のプラスチック。
−光が吸い込まれる。造りものの星が再び、輝きを取り戻す。
キラキラと光の粒をまき散らしながらゆっくり落ちてくるその星にはなぜか懐かしいような既視感があった。
そう、確か、それを取ればどんなピンチも切り抜けられる…
「…無敵のスターだ、」
豊本が呟くのと星の光を身に纏った今立が前方の集団に向かって体当たりを仕掛けたのは、ほぼ同時。
241
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/19(月) 01:02:11
「……っ、はあ…多分この辺やと思うねんけど…」
今立の石が光ってまもなく、その場に駆け付けた男がいた。アメリカザリガニ・平井善之だ。
同じくゲーム大会の参加メンバーであり飲み会のあとコンビニに立ち寄っていた彼は、黒い欠片と憶えのある石の気配がどこか近くで弾けるのを感じ、何やらよからぬことが起きたのではないかとその気配を追いかけてきたのだ。
戦うことも考えて咄嗟に買った小さなミネラルウォーターのボトルを片手に弾んだ息を落ち着かせ、路地に踏み込む。
しかし平井は、「うわ、」と思わず声を漏らして足を止めてしまった。
視線の先で若い男が、勢いよく宙へ吹っ飛んでいく瞬間だったから。
「 へ ?」
事情を把握できずその場に立ち尽くす間に、その男は派手な音と共に道路に落下する。
気付けば似たような雰囲気の男達がすでに幾人も、その場に折り重なって倒れていた。
ただ一人立っているのはこちらに背を向け肩を上下させる人物−なぜか漫画の特殊効果のように身体の周囲にキラキラと星を散らせていた−で、その背格好からしてそれはつい数十分前まで一緒だった今立に違いなかった。
「−今立、くん?」
「…やっちゃったぁ………」
呼び掛けに振り返った今立はとろんとした目でどこか悲しげに呟くと、ゆっくりその場に崩れ落ちる。
−静寂。
「…何やったんやろ…」
「…………あ、終わった?」
後には展開に追い付けないままの平井と傍らの電柱の陰でなんとか嵐をやり過ごした豊本だけが残された。
242
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/19(月) 01:03:39
「…うん、だからスターでもうちぎっては投げちぎっては投げ」
「うわぁ…無茶したなあ。止めた方よかったんと違う?やって明日、」
「だってダチくんキレてたし無敵だしさあ、吹っ飛ばされるのがオチじゃん」
「そらそうやけど。えーと…8人?これ全部やっつけたん?」
「うん。見事1up」
「1upて…」
全員仲良くノックアウトされていた男達を車に轢かれないように道路の端っこに並べる作業を終え、平井が「こいつ重いわー」とうんざりした顔で一番体格のいい男を小突いた。ついでにポケットに入っていた黒い欠片を浄化して消し、一応俺来た意味あったかなあ、とため息を吐いて苦笑する。
「平井くんこれからさらに役立つよ。俺一人じゃダチくん運べないし、」
最近この人丸っこいからね。豊本はそう言って座らせておいた今立を覗き込む。
「…どう?」
「大丈夫じゃないかな、エネルギー使い果たしただけだよきっと」
そらよかった、と平井は言いかけたが、この出来事のせいで明日彼がどれだけ不幸な目に合うのかを想像して、言葉にするのをやめた。
そう、明日はなんたって−日付が変わってすでに今日だが−“今立進杯争奪”ゲーム大会、なのだ。
豊本と平井に両肩を支えられ立ち上がった今立はむにゃむにゃと何か言っているようだった。そのうわ言はどうもレトロゲ−ムのタイトルのような気がしたが、あえて聞かなかったことにして2人は駅へと歩きはじめる。
「不憫な子やなあ」
「ほんとにねえ」
…今立がそのイベントでゲームを楽しめたかどうかは、彼の心情を考慮して割愛する。
243
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/19(月) 01:09:20
以上になります。
「ゲーム大会」は他にバカリズム升野さんや火災報知器小林さん、18KIN大滝さんあたりをメインメンバーに、度々行われているイベントです(内容は本文通り)
以前、自分の名が冠に付いていたのに、ほぼ他の人のゲームを見ているだけで終わった回があったという話を耳にしたので、その辺を参考にしました。
「相手を攻撃する能力」は使えないのですが、スター効果で触れた人が勝手にやられていくのならいいかなあ、と思い。
それでは失礼致しました!
244
:
名無しさん
:2005/12/20(火) 01:14:28
マリオキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!
以前から、エレキの能力かなり面白いのに、作品投下が無くて残念だったところなので、
最高に楽しめました!乙です!!
245
:
名無しさん
:2005/12/20(火) 15:59:47
今立さんがあまりに不憫すぎで申し訳ないけどテラワロタ。
乙です!
246
:
◆1En86u0G2k
:2005/12/21(水) 01:22:09
>>244-245
ありがとうございます!
投下してこようと思ったら本スレにめっちゃかっこいい話が…!
ちょっと尻込みしつつ行ってきまーす
247
:
ジーク
◆Zw4Un748XA
:2005/12/21(水) 07:21:37
>>229
本当ですか?!
ちょっと手直ししてから出直します…
248
:
◆8zwe.JH0k.
:2006/01/09(月) 18:08:38
長井秀和さんの話を書きました。
本スレに投下出来るか分からないので、見てやってください。
249
:
◆8zwe.JH0k.
:2006/01/09(月) 18:12:31
「いたいた。おい長井、」
今となっては聞き慣れた、鼻にかかったようなその声にピン芸人・長井秀和は口に入れようとした牛丼を寸前で止め、面倒くさそうに振り返った。
「今回も『ビジネス』持ってきたぞ」
「謹んでお断りさせて戴きます」
男が言い終わらないうちに、長井は態とらしいとも取れる態度で深々と頭を下げた。
「オイ待てよ。報酬払ってやってんだろうがよ、いっつも」
牛丼の器を持ち上げ楽屋から出ようとする長井を男は慌てて袖を掴んで制止した。
ドアの前へ回り込んで肩に手を置く。
「やりません。面倒くさいんで」
男が『仕事』を運んでくるのはこれで三回目だ。数日前、うっかり目の前で能力を使ってしまった所為だ。
長井の能力は男にとって利用しない手はないものだった。
いい加減にしてください、と長井は男の手を払い、すたすたと楽屋を出て行く。
男は一瞬困ったような顔つきになるが、廊下へ一歩飛び出し長井の背中に向かって叫んだ。
「じゃあ二倍ならどうだ!?」
長井の足が、接着剤を踏んだかのようにぴたりと止まった。
そして次の瞬間には既に男の目の前まで戻って来ていた。
「…好きだねえ、お金」
「ええ。そりゃあもう」
皮肉混じりの男の言葉を知ってか知らずか、長井は俯いたままあっさりと受け止めた。
金の入った封筒を受け取り、慣れた手つきで中身を確認する。
「…で、今回は?」
「最近黒い破片をあちこちにばらまいてる野郎がいんだよ。うっとーしいからそいつ懲らしめて欲しいんだけど」
「それこそお二人がやれば…、太田さん達だって石持ってるでしょう」
「何で俺が!トロい白の代わりに戦うなんてまっぴら御免だ。お前が石を全部スってくれれば早い話だろうがよ。あとはうちの相方が何とかするから」
理不尽な言葉を投げかけてくる男…爆笑問題の太田光に、長井は今回の仕事がどれだけ面倒くさいかを悟った。
「やっぱりやりません。お金は返しますから…」
「不可。返金は認められねえよ!」
してやったりな表情を浮かべそう言うと太田は廊下の角を曲がりあっという間に走り去ってしまった。
直ぐにでも追いかけようとしたが、長井は片手に持った冷め気味の牛丼にちらりと目をやり、しまった、と呟いた。
250
:
◆8zwe.JH0k.
:2006/01/09(月) 18:14:21
長井はとある建物の駐車場の屋上に立っていた。
太田の話によれば、この真下の場所によく現れるらしいのだが。
(ったく、俺もお人好しだな)
いっそ金だけ持って逃げてしまおうか、とも考えたが、さすがにそんな真似が出来る訳もなく。
長井は鼻水をずずっ、とすすり赤くなった鼻の頭を擦った。寒風が厳しく吹き付ける中、じっとターゲットが現れるのを待つのは、張り込み中の刑事を思わせる。
「よく言うよお前」
斜め下の方から少し高めの声がした。
小さな体をいつも以上に小さく丸めて、寒さでがたがたと体を震わせているのは、仕事を承諾するともれなく付いてくる、太田の相方でもある田中だった。
思っていることをうっかり声に出してしまったのだろうか。
長井はさっと口元を手で押さえ、ふふっと笑った。
「…おっ、ビンゴ!来ましたよ」
ふと、下を見ると。一人の若手芸人が複数に囲まれているのが見えた。
街中で見かけるような不良の喧嘩とはまるで違う、その場に居る者にしか分からないびしびしとした嫌な空気が伝わってきた。
「俺があいつらから黒い破片を盗って来るんで、田中さんはそれを破壊してくださいね」
「おう、がんばれよ」
「何言ってるんですか。一緒に降りるんですよ」
「は!?馬鹿お前、そんなもんギューンて行ってピューンて戻ってくりゃあ良いじゃねえかよ!」
ジェスチャー付きで叫ぶ田中。その腕を無理矢理掴み、丁度フェンスの途切れている所から片足を宙に出す。
「悪いですね、戻るには階段使うしかないんで」
田中は悲鳴を上げる間もなく、暗闇の中に投げ出された。勿論その手はしっかり長井が握ってくれているのだが。
命綱のないバンジージャンプに、思わず気絶しそうになるも、何とか意識を繋ぐ。対照的に長井は、全身に風を受け何とも気持ちよさそうな顔をしていた。
「今日は良い風吹いてますねえ!」
うるせえ馬鹿!と言いたかったが、風圧で口を開くことも出来なかった。
その間にも、もの凄い早さで地面が近づいてくる。
ぶつかる!
そう思った瞬間、長井の黒いコートが大きく広がった。それは瞬時にコウモリの様に、黒く尖った骨格に薄い皮が張り付いた大きな翼へと変化し、二人の体を浮き上げた。
浮き上げた、と言ってもそれほど高度は高くない。
ぶつかる直前に羽根を地面と水平に広げ、ブレーキを掛けることなく、直角に地面すれすれを猛スピードで飛んでいった。
251
:
◆8zwe.JH0k.
:2006/01/09(月) 18:16:25
男たちの中で、大きな黒い影が目にも留まらぬ早さで自分たちの目の前を通りすぎたのを確認出来た者は少なかった。
「あ、長井、通り過ぎた!止まれって!」
「やべっ、ブレーキ効かねえ…」
その直後、バキバキと木の枝が折れる音、バケツが吹っ飛ばされる派手な音が響いた。
二人が突っ込んだのは丁度木々が植えられ土の軟らかい場所であり、枯れ葉が衝撃で大量に舞い上がった。
つかの間の低空飛行体験は、少々の打撲と擦り傷と共に終わったのだった。
茂みの中から長井が、頭を押さえながら現れた。
上着やズボンの所々に枝が刺さり、至る所に鍵状のヌスビトハギの実…俗に言う「くっつき虫」がびっしりと張り付いている。
長井は慌ててコートを脱いでバサバサと力一杯はたくが、ウールにしっかりと絡まったさやはなかなか外れようとしない。
「くそっ、俺の一張羅が…」
自慢の服がすっかり雑草まみれになってしまい、長井はがっくりと項垂れた。
「着地はまた失敗か…いってえ…」
茂った草の中から田中がはい出してくる。
「つい調子に乗って…。でもほら、その代わりに」
長井が手をグーにした状態で、田中の目の前に突き出す。
ゆっくりと手を開くと、バラバラと黒ずんだ小さな石が、建物から漏れるライトの明かりを反射し、田中の手に落ちていった。
男たちは「まさか」と呟くと、慌ててポケットの中身を探る。
「あ、石が無い!?」
「俺もだ!」
全員の視線が長井に集まる。
長井は、うっひゃっひゃっ、と小馬鹿にしたように笑いながら、腕を組むと人差し指で頭をとんとんと突いた。
「何時の間にスッたんだ」
と、田中が手の中の石と長井を交互に見ながら尋ねた。
「さっき、こいつらの前を通り過ぎたときに盗ったんです」
翼による低空飛行とスリの能力を兼ね備えた長井の石は、黒琥珀。
黒玉とも呼ばれ、その場にあるどの石よりも深く、濃い黒色をしていた。
「にしても、きったねー石だな。いらね」
手の中に持って最後の濁った石は、空になった空き缶のように後ろに投げられた。慌てて田中がそれを追いかけてキャッチする。
252
:
◆8zwe.JH0k.
:2006/01/09(月) 18:17:47
パキン、と乾いた音が響くと、田中の手の石から炭が剥がれ落ちるように、黒い欠片が浮き上がった。
それは空気中にさらさらと流れ、ついには消えて無くなった。
それと同時に男たちは目が覚めたようにハッと顔を上げ、元の目の輝きをとり戻したのだ。
黒い欠片の呪縛から解かれ、石に関する記憶を失った男たちは自分が何をしていたのかも覚えていない。
丁度目に入った田中と長井にとりあえずお辞儀をすると、首を傾げながら街のイルミネーションの中へと消えていった。
「おーい、やったじゃねえの!儲け儲け!」
石を一気に大量に手に入れ、テンションの上がった田中は石を手の中でじゃらじゃら転がしながら長井に向き直った。
「…まだですよー」
くっつき虫を丁寧に一つ一つ外しながら、長井が言った。
田中を抱えて飛んだ為に、全員の石を盗む事が出来なかった。
残ったのは、二人。目を細めてその姿を凝視する。
「ん〜…誰、だ…?」
逆光と暗闇で顔が見えないが、明らかに動揺しているのが分かる。片方が隣の男(相方だろうか)にひそひそと耳打ちする。
「なあ、もう逃げようって、長井さんに勝てるわけないだろ」
(ん…?)
微かに聞こえたその声に長井はひどく聞き覚えがあった。
もしかして…。顔を確かめようと一歩踏み出す。
すると、二人の男はぎくっ、と肩をすくめ猛ダッシュで逃走し始めた。
「ちょ、待てこらぁー!」
田中が怒鳴るが、それで止まる人間が居るはずもない。むしろ逆にスピードを上げてしまう位だ。
長井のコートには未だくっつき虫が付いており、羽根を広げられる状態ではない。
「おいちょっと、逃げちゃうよ、逃げちゃう!」
「うーん、任務は失敗と言うことで…」
「そうは行くかっ!」
田中は長井からコートをもぎ取ると、ぷちぷちとくっつき虫を外し始めた。
乱暴に外すと上等な生地がほつれる、と長井が言ってきたが、そんなことは田中にとってどうでも良い事だった。むかついたのでわざと糸が飛び出すようにむしってやった。
あっというまにくっつき虫を全て取り除き、長井にコートを着せる。
「よっしゃ、行け長井―っ!」
「俺は的士じゃないんですよ…」
ブツブツと愚痴りながらも、長井は田中の両脇に腕を差し込み、背中から持ち上げる体勢になった。
253
:
◆8zwe.JH0k.
:2006/01/09(月) 18:19:25
真剣な顔つきになり、標準を合わせる為に意識を高める。無駄な動きは御免だ。真っ直ぐ、奴らの背中へ。
次の瞬間、二人の体がぶわっと浮いたと同時に、長井は羽根を大きく羽ばたかせ前進した。
地面との距離は、それほど離れていない約二メートル。
冷たい風を顔に受け、逃げる二人組めがけて一直線に向かっていく。
「今だ!」
「え?…ぎゃっ!」
長井は二人組にぶつかる直前に、頭の上を跨ぐようにぐん、と急上昇した。
「低空ミサイル!」
同時に田中を支えていた手をぱっと離す。
二人組は真上から降ってきた田中を避ける余裕もなく。
二人…いや、三人はもつれるように地面に叩きつけられた。
「…1…2…」
地面に降り立った長井が腕時計を見ながらカウントする。
「…3」
三まで数え終わると、ぱりんと黒い欠片がはじけ飛んだ音が小さく響き、田中の下敷きになったまま気絶した二人の手から、浄化された石が転がり落ちた。
石は長井の革靴に当たり、それ以上転がるのを止めた。
「あだだだっ…」
田中が頭を振りながら起きあがる。
「痛えよ…」
もう怒鳴り散らす元気も無いのだろうか。ぽつりと呟くと、ぶつけた頭をゆっくりと撫でた。
それを見て少し反省した長井はスミマセン、と浅く頭を下げたのだった。
「早くどいてあげた方が良いんじゃないすか?」
「え?ああ、そうそう。誰なんだよこいつら…」
哀れ、下敷きになって気絶した二人の顔を覗き込む。
田中は声を上げた。それは、良く見知った顔だった。
「…で、説明して貰おうか?猿橋、樋口」
額に絆創膏を貼り、花壇の縁に座っているのは田中や長井と同じ事務所「タイタン」に属するコンビ、5番6番の猿橋と樋口だった。
自分たちの利益の為だけに悪いことをするような人間では決してないことは、二人を可愛がっていた田中にも分かっていた。
「俺たち、石拾ったのはいいものの…直ぐに黒の奴らに捕まっちゃいまして…」
「操られたくなかったら、黒い欠片どんどん他の奴らに渡せって…」
254
:
◆8zwe.JH0k.
:2006/01/09(月) 18:20:45
「つーか、大体猿があそこでこけなかったら逃げ切れたんだぞ!」
「なんだとー!」
勝手に喧嘩を始める二人を諭し、やっと理由の分かった田中はふう、と息を吐いた。
「もう大丈夫だって。破片も破壊したし、今度何かあったら俺んとこ逃げてこい」
怒られると思っていたのか、今まで顔を強ばらせていた猿橋も、樋口も、その頼もしい言葉にほっと胸をなで下ろした。
「今度こそ、仕事お終いっと」
長井はコキコキと首を鳴らし、煙草を取り出そうとした。
その時。
〜♪
携帯の着信音が乾いた夜空にけたたましく鳴り響いた。
長井はうざったそうに携帯を開き、耳に当てる。
「はい、もしも…し…、…っ!」
目が開かれ、分かりやすいくらい顔が引きつって行くのが分かった。
長井のそのただごとでは無い様子に、田中たちの間に緊張が走る。
「どうした?」
「……女房です…」
「は?」
錆び付いたロボットのように固まったまま首だけ向け、長井が言った。
「連絡を入れるのをすっかり忘れてた…!」
「…ご愁傷様」
離れていても長井の妻の怒った声が聞こえる。
慌てながら必死に「ごめん」「違うって」「そうじゃない」と弁解する長井に相方の姿を重ねながら、爆笑したい気持ちを抑え、猿橋と樋口と共に祈るように手を合わせるのだった。
5番6番の二人からは石を取らず、浄化された石のみを小さな袋の中に入れる。
この石たちを誰に渡すかは実はまだ考えていない。
同じ事務所なら、そうだ。橋下弁護士にでもあげちまうか?
などと下らない冗談を考えながら、新しい主を求める色とりどりの石を見詰めた。
時刻は、既に午後10時。
長井が妻に怒られるのは、可哀想だがどうやら確実のようだ。
255
:
◆8zwe.JH0k.
:2006/01/09(月) 18:24:16
長井秀和
石…黒琥珀(黒玉)
能力…黒い服をコウモリのような翼に変え飛行する
また、相手とすれ違う瞬間に持ち物を一つだけ盗む事ができる。
飛行は、もの凄く速く飛べるがその分ブレーキや旋回が困難。
条件…黒い服を着ていないといけない。酷い汚れが付いていたりすると飛行できない。
256
:
名無しさん
:2006/01/10(火) 17:35:28
乙!おもしろかったです。
長井さんもバクモンもよくキャラが出てるなあと思いました。
本スレ投下OKだと思いますよ。
257
:
kzd34
:2006/01/20(金) 23:11:10
初めまして。私も、皆さんの小説を読んでて書きたくなりました・・。
『午後三時のハイテンション』の続き?っぽくしたいのですが・・(汗)
白ユニットも、本格的に『メンバー集め』をする?と言う感じです。
殆どアンガールズが目立つと思いますが、が・・頑張って書かせて頂きます。
258
:
kzd34
:2006/01/20(金) 23:37:30
『とにかく今は、こっちもメンバー集めて力を溜めるしかねえからな…』
数日前、『白ユニット集会』で言っていた上田の発言は正論だった。
こうしている間にも・・・『黒ユニット』は確実に仲間を増やしている。
今のままでは、お世辞にも『黒ユニット』に勝てるとは思えない。
そこで、田中と山根は…新しい『メンバー』を捜そうと外に出た・・のだが。
「ふぅ・・・山根ぇ、案外良い人って居ないもんだねぇ…。」
「うん。て言うより・・・周りが『黒』ばっかりなんじゃない?」
途中で『黒ユニット』と戦ったり、持っている『石』を狙われたり。
挙句の果てには、『黒に入って貰う』と脅されそうな所を逃げ回ったり。
かなり体力を消耗したので、今日は辞めようか。 そう思った、その時だった。
「?・・・アレ?ねぇ、田中さん。ちょっと・・・あれ見て。」
何か不審な事に気付いたのか、山根はしきりに田中の腕を引っ張る。
「・・ちょっと。俺疲れてんだからぁ!・・・ったく、一体何っ・・・!?」
文句を言っていた田中も、山根が指差す『不審な光景』に気付いた。
…『黒ユニット』の奴等だった。しかも、2人もよく知っている人物。
3人の『芸人』に囲まれている、白い服の『女性』が見えた。
259
:
kzd34
:2006/01/21(土) 00:05:50
芸人の方は、見覚えが有った。『エンタの神様』で何度も共演している。
・・・だが。もう1人の『女性』の方は、2人も初めて見る人物だった。
見つからない様に、用心して『4人』の方へ近付いて様子を見てみる。
『芸人』の方は…『POIZUN GIRL BAND』と『いつもここから』の菊池だった。
『女性』の方は…少なくとも『女芸人』の中には居ない。 誰だろう?
180cm以上はある身長。少なくとも、2人の身長と同じくらい有る。
かなり細身な身体を包む、真っ白なカーディガンとズボン。真っ黒な肌着。
白い肌によく生える、鮮やかな紅茶色の髪。白い帽子を深めに被っている。
『男性』か『女性』かの性別の判断が難しいが、おそらく『女性』だろう。
胸元には、華奢なチェーンに通した…淡い紫色の『宝石』。 …『宝石』?
2人は…否。その場に居た全ての『芸人』が、これを感じた筈だ。
その『宝石』は…明らかに、自分等『芸人』の持つ『石』と同じだった。
260
:
kzd34
:2006/01/21(土) 00:10:19
…(完全燃焼)こ、今回の投稿は、ここまでにさせて頂きます。
感想・苦情・批判!何でも良いので…この作品に対する言葉を下さい!!
皆さんが『読みたい』と言って下されば、続きを書かせて頂きます…。。
261
:
名無しさん
:2006/01/21(土) 02:03:11
乙。話が短い、からもう少し読みたい。
全体としてはいいと思うけどちょっと短いから分からない。
それと山根ちゃんってOFFでは田中さんの事『卓志』って呼んでるって聞いた事ある。
思い過ごしだったらごめん。
262
:
kzd34
:2006/01/21(土) 14:42:18
…あ、有難う御座います!参考になります…。(メモを取っている)
確かに、少し遠慮しすぎて話を短くしすぎましたね…スイマセン!!
山根さんはオフでは『卓志』って言うんですか…分かりました!!(再びメモ)
今は出来ませんが、・・・後でまた話を進めさせて頂きます!!
263
:
名無しさん
:2006/01/21(土) 14:48:02
ごめん、小説自体は好きだけどその話し方は直したほうがいいと思った。
時によっては叩かれそうだから・・・ここなら結構大丈夫そうだけど。
他の部分は好きだし今後も期待してる、頑張ってください。
264
:
名無しさん
:2006/01/21(土) 18:17:43
乙です。続きがもっと読みたいです!
あと正しくは
POISON GIRL BANDです。
POIZUNになってますよ
265
:
kzd34
:2006/01/21(土) 19:58:22
…(恥ずかしい) 修正感謝です!!! 有難う御座いました!!
自分の文章力の無さに自己嫌悪…orz
でも、読んでくれている皆さんに一番にお礼を言います!
後でまた書かせて頂きますので…。 (書き直したい…(涙))
266
:
kzd34
:2006/01/21(土) 21:01:28
「卓志。…あの石、何か変じゃない?」「…急に呼び方変えないでよ…。」
逸早く、石の違和感に気付いたのは山根。言われて、田中も気付いた様だ。
明らかに『普通の宝石』では無い。自分達が持っている石と『同類』だった。
…だが。あの『石』は、本来自分達『芸人』が持っている筈なのに。
と言う事は、あの女性も『芸人』なのか? …謎は深まるばかりだ。
「・・・失礼ですけど、その『石』は何処で拾ったんですか?」
先に沈黙を破ったのは…『POISON GIRL BAND』の一人、吉田だった。
声色に、少なからず動揺の色が見られる。…当然といえば当然だろう。
当の本人は、質問には答えない。しかし『拾った』訳ではないらしい。
自体は分からない筈なのに、石を手で包み込む。…守ろうとしているのか?
「…その『石』は、本来俺達『芸人』が持つ物なんです。」
質問に答えない相手に苛立ったのか、次第に『苛立ち』が混じる。
「…もし、貴方が『芸人』なら…『黒ユニット』に入って貰います。」
『黒ユニット』 この言葉を聞いた途端、彼女は『石』から手を離した。
「…逃げるのかな?」「…多分ね。あの3人…結構強いらしいから。」
2人は『石を渡して逃げる』と予想を立てたが、見事に外れてしまった。
彼女は逃げなかった。…それどころか、3人の方へ一歩近付いて行った。
267
:
名無しさん
:2006/01/21(土) 21:34:42
あんまり長々と反省文書かないほうがいいとオモ。
自己嫌悪もほどほどに。
268
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:45:10
「新しい石の能力を考えよう」スレで、チュートリアルの石の設定を投下した者です。
チュートリアルの二人の短編を書いてみました。他の芸人さんは名指しでは出てません。
二人が石を手にしてから、徳井さんの能力が目覚める時のお話です。
初めてで不安なので、こちらで添削していただけると嬉しいです。
269
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:46:24
徳井義実は今、まさに仕事を終えて帰路につくところだった。
今から飲みに行くからお前も来いよ、と言った相方の福田の誘いを断り、徳井は夜の街を一人で歩いていた。時折人にぶつかりそうになるが、上手くそれを避けながら歩く。
道沿いのとある店の前で、徳井はきらりと光る石の存在にふと気が付いた。店の中の明るさのせいで、その石は特に目立って輝いている。徳井はそれに興味が湧き、拾い上げて手の中で転がした。
「きれいな石やな」
ぽつんともらした、石に対する感想。石は透き通ったグリーンで、その色はマスカットを連想させる色であった。女性が身につけるアクセサリーとしてもよく見かけるような、少し大きめの石である。道端に転がっていたのだが、この石の運が良かったのか一つも傷がついていなかった。
「まあ、持っといても悪うないやろ」
徳井はそう呟いて、石についたほこりを息で飛ばした。その瞬間、微量についていた砂のようなものを吸い込んでしまったが、全く気にかけずそれをさっとジーンズのポケットに入れた。太股に石が入っている感覚があるなあ、と当たり前のことをぼんやりと思い、徳井は再び自宅に向かって歩き始めた。
270
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:47:41
「昨日な、きれいな石見つけてん」
徳井は次の日に早速、相方の福田に昨日拾った石を見せた。福田はふうん、と言い、それをしげしげと見つめていた。
「ほんまにきれいやなぁ。どっかで買うたん?」
「いや、道に落ちてたから拾っただけやねんけどな」
そう言うと、福田は苦笑した。
「なんや、ほんなら汚いやん。さっさと捨ててまえよ」
「え。昨日、家帰ってからちゃんと洗ろたんやけど」
「そういう問題やないやろ。たかが落ちてた石に執着心持つやなんて、変な奴やなぁ」
「うるさいわ」
いちいち突っ込んでくる福田をかわし、徳井はそれを再びポケットにしまった。しまう時、その石が不思議と熱を帯びているように感じられたが、特に気を留めることもなかった。
その後、楽屋で髪型を整えていると、そうや、と思い出したように福田が呟いた。
「石ゆうたら、昨日俺ももらったわ。ファンの子のプレゼントの中に、一つてごろな大きさの石があってん。まあ相手は小っちゃい子なんやろな、『きれいだったからあげます。がんばってください。』なんて手紙が一緒に入ってて」
福田はそう言うと、自分の持ってきたバッグの中を探し、徳井の目の前に出した。徳井はそれをしげしげと見つめ、ふうん、と言った。
「お前のも緑色やな。それにしてもグレーのふが入ってたりして、なかなかセンスええやん」
「そやろ? 俺あんまりアクセサリーとかつけへんけど、これはなんかお守りとかになりそうやから、袋に入れて持ち歩くことにしてん」
「ほう」
どういう風の吹き回しなのやら、と徳井が笑いながら呟くと、福田は拳を振り上げて叩くような仕草をしたが、彼も徳井同様笑いをこらえきれない様子だった。
そこで改めて福田の持っている石を見つめる徳井。福田の石はまろやかな緑色で、先程徳井も自分で言ったとおり、グレーのふが入っている。形も質感も違うが、同じ緑っぽい色の石ということで、徳井は不思議な親近感を持った。
徳井はしばらく眺めてから福田に石を返し、再び鏡の前に立って自分のみだしなみを整えることに集中した。
――自分の“石”がますます熱を帯びていることに、全く気づかぬまま。
271
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:48:53
「はいっ、どうもチュートリアルです」
「よろしくお願いしまーす」
いつもの挨拶で始まった漫才。二人の登場で観客が沸き、二人はいつもの調子でネタを始める。
そう、最後までいつもの調子でできていたはずだったのだ。
徳井がズボンのポケットの中に、何か熱いものを感じるまでは。
――ん?
一瞬顔をしかめる徳井。その後、そういえば拾った石を入れたままだったなあと思ったが、何故それが熱く感じるのかまでは説明できず、徳井は一瞬ネタを続けることを忘れた。
「なんや、どないしたん徳井くん?」
相方の福田にツッコまれ、徳井ははっと我に返る。福田は苦笑しながら、続けてツッコんできた。
「また変な妄想でもしてたんちゃうやろな?」
「いや、ちゃうねん。だからお前がな――」
相方のフォローに感謝しつつ、徳井はネタを続ける。観客はそれもネタの内なのだろうと思っているようで、気に留めることもなく二人のやりとりに笑っていた。
自分たちの出番中、徳井はずっと熱いのを感じたままだった。ネタが終わってから石がどうなっているのか確かめよう、と思いながらネタを終わらせ、舞台のすそに引っ込んだ。
出番が終わってから、徳井は案の定福田に先程のことを訊かれた。
「ほんまにどないしたん? 急に喋んのやめたから、びっくりしたで」
「いや……」
徳井はそう言いながら、ズボンのポケットに入れていた石を出した。手のひらに載ったその石はやはり熱を帯びていて、徳井は首を傾げた。ずっとポケットの中に入っていたから熱い、というような熱さではない。石自身が熱を発しているようである。
福田は不思議そうに石を見ている徳井を覗き込んだ。
「なんやお前、こんなもん入れてたん? さっきの石やないか」
「うん……なんかこれな、熱持ってるような気がすんねんけど」
「え、熱? お前のズボンの中で温められてたんちゃうん?」
「いや、そういう熱さやないねん」
そう言って徳井は石を福田の方に向けたが、福田はまだ信じられないといった様子だった。
「どれ、ちょっと貸してみ」
福田がそう言うので、徳井は福田に石を渡した。福田は石を受け取って手のひらで転がしていたが、すぐに首を傾げて徳井に石を返した。
「俺は別に、なんも感じひんねんけど……」
「えぇ? 俺の手の感覚がおかしいんかな」
徳井に返されたその石は、確かに今も熱を帯びている。徳井の手の中では熱く感じるのに、福田はそれを感じないとは。全く訳が分からない。
「まあ、その石のことは後にしよ。考えて分かるようなことちゃうみたいやし」
福田がそう言うので、まあそうやな、と徳井も同意し、二人は楽屋へ戻ることにした。
272
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:50:20
「なぁ。その石、まだ熱い?」
「ん、ああ、まだ熱持ってる。焼け石ほど熱くはないけど……まあ、カイロぐらいの熱さやな」
楽屋に帰るなり、福田はその石のことを話題に出した。徳井の手に握られた石は、まだ熱を保ったままだ。少しも冷たくなるような気配を見せない。
徳井の返事を聞いて、福田はふうん、と言いながら、どこか腑に落ちないといった顔を見せた。
「なんか変な石やなぁ。やっぱり捨てた方がええんちゃう?」
「そうかなぁ。でもな、なんか捨てたらあかんような気がすんねん……」
徳井がそう言うと、福田は再び苦笑した。
「変な奴やな。別にそんな石、持ってたって何の得にもならへんやん。お前の場合、誰かからプレゼントされたとか、自分で買ったとかでもないし」
「うーん……」
福田の説得は確かにそうだと納得させられたのだが、徳井はまだこの石を捨てる気にはなれなかった。勿体ないからとか、そういう理由ではない。何故か、これは自分の手元に置いておくべきものだという気がしたのである。
座ったまま考え込む徳井、その隣で徳井の反応を窺う福田。そうして二人の間に、沈黙が流れた時だった。
コツコツと、楽屋の扉がノックされ、二人は同時に扉の方を振り返った。
「どなたですか?」
福田がそう答えると、相手はくぐもった声でこう言ってきた。
「すいません、ちょっと中に入ってもいいですか?」
「はあ、別にいいですけど」
いきなり何やろう、と徳井にだけ聞こえるよう呟き、首を傾げながら、福田は立ち上がって扉を開けた。外には見たことのない男が立っていて、顔を隠すようにうつむいていた。
「僕らに何か用ですか?」
福田が訊くと、相手の男はうつむいたまま言った。
「石、貸してくれませんか?」
徳井と福田は一斉に顔を見合わせた。石と言われて思い当たるのは、徳井が今手にしている透き通ったグリーンの石である。二人は怪訝そうな顔をし、福田は男に再び問いかけた。
「石なんて、何に使うんですか?」
「いいから、早く貸してください。説明は後です」
男は苛立ちを隠せない口調だった。名も名乗らない人物からそんなふうに言われ、福田もさすがにカチンときたようだ。不機嫌そうな顔をしながら、同じく苛立ちのこもった口調で返した。
「もう何なんですか、いきなり石を貸してくれなんて。理由もないのに、そんなもん貸せませんよ」
273
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:51:32
そう言った瞬間、男がガバッと顔を上げた。あまりにも突然のことだったので、福田は「うわっ」と声を出して二、三歩後ずさった。
男は二十代後半といった感じの顔立ちで、表情を見れば明らかに怒っているようである。二人が知っている若手芸人にも、スタッフの中にもこんな人はいない。誰やねん、という疑問を口から発する前に、男の方が二人の方を向いて口を開いた。
「この二人はお人好しやから、すぐに石渡してくれるって聞いたのに……話が違うやないか」
「な、なんやねん、いきなり」
福田が多少驚きつつそう言うと、男はふんと鼻を鳴らした。
「まあええわ。こうなったら、力ずくでも石を渡してもらわな、な」
そう言うなり、男は一番近くにいた福田の方に飛びかかってきた。福田はなんとかそれを食い止めたが、徳井は慌てて立ち上がり、福田の方にかけよった。
「福田! ……お前、何すんねん!」
「ちっ、こいつ石持ってへんみたいやな……ほんならお前からや!」
男は福田に乗りかかりながら一人でそう吐き捨て、今度は徳井の方を睨んだ。
徳井は今、手にあの石を持っている。力一杯握りしめているせいか、石にこもっている熱がより一層増して感じられた。
「福田、お前も石、出しとけ」
横で倒れている相方にそう囁き、福田が頷いたのを確認して、徳井は立ち上がって男を睨み返した。男は徳井を睨んだまま動かない。
自分の隙を窺っているのかもしれないと、徳井は用心しながら後ずさりした。福田が自分の鞄から石を取り出す時間稼ぎをするつもりだった。
男の後ろにいる福田は、ゆっくりと自分の鞄に向かって動いていた。徳井はそれでいいと小さく頷き、男に視線を戻した。
「なんや。いきなり俺らの楽屋に入ってきて、挨拶もなしにこれか」
我ながら冷たい口調だ、と思いながら、徳井は改めてキッと男を睨む。男はそれでも動かない。視界の端で、福田が鞄からそろりそろりと石の入った袋を出すのが見え、徳井は再び声を発した。
「どこの誰か知らんけど、『人の楽屋に挨拶もなしに入ってくんな!』」
その瞬間だった。
274
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:53:00
バン、と何かが破裂したような音が響き、徳井を睨み付けていた男は楽屋の外に吹っ飛ばされた。徳井も一瞬、何が起こったのか分からずぽかんと口を開けていた。
男はくそっ、と言いながら立ち上がり、再び二人の楽屋の中に入ろうとしたが、何故か楽屋の中に一歩踏み出すだけで外に吹っ飛ばされていた。
徳井は慌てて自分の手の中にある石を見ると、石からは光がこぼれていた。相変わらずじんじんと熱さは伝わってくる。まさかと思いながら、徳井は石をじっと見つめていた。
相方の福田も自分の石を持ったまま立ち上がり、徳井の方を信じられないという目つきで見ていた。
「なんや……何が起こってん?」
「俺にも、さっぱり分からへんねんけど」
徳井は首を横に振った。その間にも男は何度も楽屋の中に入ろうとしていたが、その度に何かに吹っ飛ばされていた。まるで扉に、何かの結界が張ってあるかのようだった。
二人が首を傾げて男を見つめている間に、男はここに入るのは無駄だと悟ったのか立ち上がり、
「く、くそっ、覚えてろよ!」
お決まりの捨てぜりふを吐いて、その場を立ち去っていった。
「な、なんやったんや、一体……」
二人が同時にそう発した時、外から他の芸人の声がした。
「おっす! なんかあったんか?」
その芸人はきょとんとした顔で二人を見つめ、二人が驚きで固まっているのを見て、苦笑した。
「なんや二人とも固まって。お化けでも見たような顔してるぞ?」
そう言い、二人の楽屋に足を踏み入れる。
「あ、入ったら――」
あの男のように見えない結界のようなものにはじかれるのではないかと思い、徳井は咄嗟に声を出したが、その芸人は難なく二人の楽屋に入ってきた。
二人はきょとんとし、顔を見合わせる。さっきのは一体何だったのだろう、と。
とにかく、楽屋に入ってきたその芸人を何でもないと言って追い返し、二人は楽屋の扉を閉め、一気にため息をついた。
「な、なんか知らんけど、疲れたな」
「ほんまに何やったんや、あれ」
二人はそう言いながら、手の中にある石を見つめる。徳井の石は先程までの熱が失せ、すっかり冷たくなっていた。福田の石は以前と全く変わりがない様子である。
275
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:53:36
石の確認が終わったところで、徳井がぽつんと呟いた。
「俺が『挨拶もなしに人の楽屋に入ってくるな』って言うた途端、あいつ吹っ飛ばされたよな?」
そうやな、と福田は頷く。それを確認してから、徳井は続けた。
「でもさっきのあの人は難なくここに入ってこられた……なんでや?」
「うーん……ようわからんなぁ」
福田が首を横に振って分からないという顔をしたので、徳井もがくりとうなだれたが、その後すぐにがばっと顔を上げ、そうや、と叫んでいた。
「あいつ、挨拶したよな? 『おっす!』って、ちゃんと」
「あ、ああ、してたけど……まさか、挨拶したからここに入ってこられたって言うんとちゃうやろな?」
「まあ、とりあえず試してみたらすぐ分かるやろ」
そう言うなり、「おい!」と叫ぶ福田を無視して、徳井は楽屋を出て後輩の芸人を連れてきた。連れてこられた後輩芸人は怪訝そうな顔をして、徳井を見つめていた。
「とりあえず、何も言わんとここに入ってみ?」
徳井は後輩芸人にそう命じた。後輩芸人は何を言っているか分からないという顔をしながら、言われたとおりに楽屋に足を踏み入れた。
その途端、後輩芸人は後ろに吹っ飛び、ちょうどそこにいた徳井に受け止められた。
「な、なんなんですか、これ」
後輩芸人は驚いている。徳井はははっと笑うと、今度は挨拶をしてから楽屋に入るよう命じた。後輩芸人は頷き、「失礼します」、と言ってから、おそるおそる楽屋に足を踏み入れた。
「あ、あれ? 入れる……」
「ほんまや、入れるやん」
後輩芸人と福田が同時に言葉を発し、徳井はまたははっと笑った。
「やっぱりな。……あぁ、時間とって悪かったな、もうええで」
「は、はあ」
後輩芸人は何が何だか分からないという顔をしながら、徳井に言われたようにその場から立ち去った。徳井は楽屋に再び入り、福田に向かって得意そうな笑顔を見せた。
「やっぱりそうやったな。多分俺の言ったことに反応して、ここに挨拶せん奴は入ってこられへんよう、結界でも張られたんちゃうか?」
「まあ、そうみたいやけど、なんでや? この石がそうしたんか?」
福田の問いに、徳井は頷いた。
「多分そうやと思う。その後、この石光ってたし、後で熱も冷めてきたし……この石、なんか不思議な力があるみたいやな」
ふうん、と福田が納得したようなしてないような表情を見せ、頷いた。
徳井はその石をズボンのポケットに大事そうにしまうと、立ち上がって福田の方を向いた。
「まあ、とにかく一件落着や。後で飲みに行くか?」
「おっ、ええな。昨日みたいにつれないこと言うなよ?」
「もちろんや」
福田も鞄の中に石の入った袋を大事にしまい、二人はいそいそと帰る準備を始めた。
福田の石がじとりと熱を持ち始めていたのを、二人は知るよしもなかった。
276
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 01:56:53
これで終わりです。短編というには長すぎたかもしれません…
ご指摘等ありましたらよろしくお願いします。
277
:
名無しさん
:2006/01/22(日) 10:25:05
乙です。
徳井の石って、能力スレにあったやつ?
278
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 10:55:46
>>277
そうです。能力スレの290にあるのがそれですね。
279
:
kzd34
:2006/01/22(日) 15:10:06
予想外の行動を取った『彼女』は、吉田の目の前まで近付いた。
「…『黒』に入ってくれるんですか? それとも、『石』を…?」
言葉の変わりに、首を横に振った。…つまり『否定』した事になる。
この返事に苛立ちが頂点に達したらしく、感情を押し殺した様な声で言った。
「そうですか。それなら…力づく、と言う事で良いですよね?」
そう言うと、手首に巻かれていた『包帯』をゆっくりと解いた。
傷口から滴り落ちる『血液』は、地面には落ちず『空中』に集まった。
血液で鋭利な『ナイフ』を作り出す。それを、彼女の首筋に宛がった。
「…恐くないんですか?もしかしたら、死ぬかもしれないのに。」
首筋から少量の血が滴り落ちる。それは、白い服に『赤い染み』を作った。
ナイフを避ける事も逃げる事もせず、帽子に隠れた顔は相手を見続ける。
「…コレくらいで痛かったら、この『石』は守れませんよ。」
初めて彼女が発した『声』は高くも無いが低くも無い。
だが、表情が見えない分『声色』が…彼女の『感情』を表している。
『石』を守ろうとしている。 そんな『守護心』が、彼女から伝わる。
吉田は、血液を『液体』に戻す。そして、新たな『武器』に作り変えた。
「初めてですよ。俺がここまでしても、少しも恐がらないなんて…。」
「やっぱ『石』の持ち主だから?」「…それは関係無いと思うけど。」「そう?」
阿部との短い会話を終わらせ、また彼女の方へ『武器』の矛先を向けた。
「…後悔しても、知りませんから。」 彼女の『石』が、淡い光を放った。
280
:
kzd34
:2006/01/22(日) 15:54:15
紫色の『光』が、彼女の身体を取り囲む。暫く立つと…『光』は消えた。
否、消えた訳では無かった。彼女の『両足』に、淡い紫色の輪が見えた。
「この石は『アメジストドーム』。…意味は『気の浄化・強い洞察力』…」
「…見た所、対して強そうな石に見えませんけど?」「そして、もう1つは…」
言い終わる前に、吉田は彼女の身体に血で作った『ピアノ線』を放った。
捕まえた筈だった。数秒前までは、彼女は『吉田の目の前』に居たのだから。
それが何故、彼女は『吉田の後ろ』に立っているのだろうか?
「…『冷静な判断力』。貴方の攻撃を、全て『見させて』貰いました。」
冷静に言い放つ彼女に、隙を作らせないほどの速さで『攻撃』を仕掛ける。
だが、彼の『ピアノ線』は地に落ちた。すぐ隣には、彼女の姿が有った。
「…『見える』んです。相手の放った攻撃の『未来の動き』が、全て。」
そう言い放ち、彼女はゆっくりと振り向く。彼は軽い『怪我』をしていた。
「…捕まえようとしても無駄ですよ?相手の動きは、全て『お見通し』ですから。」
彼女が一呼吸整えると、紫の輪は消えた。どうやら『石の力』を解いたらしい。
「…自分は、芸人じゃ有りません。…でも、石の事は知り尽くしています。」
吉田の顔に『傷』が有る事に気付くと、彼女は『紫の光』で傷を癒した。
「…『黒』でも『白』でも無いけど、この戦いには『参加』させて頂いてます。」
そう残して去ろうとする彼女。 だが、その動きは菊地によって封じられた。
腕を捕まれていたのだ。その腕からは…僅かな量の『血』が流れていた。
281
:
名無しさん
:2006/01/22(日) 19:47:06
◆TCAnOk2vJU さん乙です!チュートキター!
本スレに投下してもいいんじゃないでしょうか。
282
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/22(日) 20:52:45
>>281
ありがとうございます。
もう一度推敲してから、本スレに投下したいと思います。
283
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 19:29:02
>>279
自分の杞憂だったら悪いが
まさかのオリキャラとやらではないよな?
284
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 20:07:05
チュート徳井の能力みて一部の人にしかわからないような話書いたんだけど
投下よい?
285
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 20:09:52
>283
自分もそれ思った。
自分が知らないだけかとも思ったんだけど、
「180cmを越える長身の女性芸人」が思い当たらないんだよね。
286
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 20:57:56
>>279
それより何よりあんまり小出し小出しにしないで欲しい。
一気に読みたいんだが、出来たなら出来た時にやってくれよ。
で、その女性自分も分からないんだが…。
287
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/01/24(火) 20:59:07
>>284
是非読ませて頂きたいです。投下お願いします。
288
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 21:14:53
>>279
>自分は、芸人じゃ有りません
と言ってるな。この台詞がどうしても引っかかった。
女性の正体次第では『芸人じゃないと石を使えない』という全体の設定を
台無しにしてしまうぞ。
289
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 22:24:07
>>285
,286
さっきふと気付いたんだが。
あの元女子バレー選手の人じゃないか?
あくまでも自分の予想だけど。
290
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 22:25:07
>>284
です。
添削よろしくお願いします。
某有明のスタジオの楽屋にて
集合時間は11時。
大阪から毎度通う2人はいつも早めに到着し楽屋でおもいおもいの時間を過ごしていた。
「極上のエロスやぁ〜」
そう呟く徳井が見てるのはエロ本でも何でもなくTVのニュースでやっているどこかの祭りの風景。
「はぁ〜」
ちらっと横目で徳井を見てため息をつく福田。
「お前な?最近やたらとエロスエロスって真昼間から勘弁してや。」
「お前かて巨乳巨乳真昼間から言うとるやんけ!」
「アホ!巨乳好きは常識じゃ!」
ついていけへんとさっき東京駅で買ったおはぎを福田は口に押し込めた。
291
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 22:26:07
>>290
続き
「ん?ええこと思いついた。」
「常識」「おはぎ」という言葉で何かひらめきニヤリとする徳井。
そしておもむろにポケットから石を出した。
瞬間嫌な予感がする福田。これから徳井がやろうとしていることは幼馴染の勘・・・
・・・否この流れからいってだいたい察しがつく。
「ちょっやめぇ!なに考えとんねん。」
時すでに遅く石は光を放ち始めた。
「よっしゃ!いくでぇ!『おはぎはエロスです!!!』」
チャチャーーーーーーン!!
少なくとも福田にはいつもの効果音が聞こえた。
おはぎ自体の見た目は全く変わっていない。
ただ何かが違う・・・
そう、おはぎを見てると何故かムラムラしてきた。
「うわっやってもうたぁ」
甘いものが苦手だかなんとなく気分でおはぎを買ってしまった自分を軽く恨んだ。
292
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 22:26:42
>>291
続きラスト
「おはようございます!・・・てあれ?」
そろそろ11時。人が集まりだす頃だ。真っ先に楽屋にきたのは綾部。
「先生!今日も気合入ってますね!エロスの台頭『おはぎ』をわざわざもってきて
本番前に眺めるなんて!いやぁ〜さすがおはぎ!もうオーラが違いますよねぇ。」
おはぎを見て興奮する綾部。
徳井は満足そうに微笑み、福田はあきれ返った。
すると又吉も到着した。
あの又吉がどんな反応をするのか期待に満ちた目で徳井は見ている。
しかし又吉は挨拶して特におはぎのことは触れずに着替え始めた。
もう石の効果が終わってしまったのかと安心しかけた福田は見てしまった。
又吉の頬が赤く染まっていることに・・・
そんなこんなで打ち合わせも終わり本番が始まった。
ただエロスなものとなったおはぎは誰も手をつけずに楽屋でエロスオーラを放っていた・・・
そうして1日5回のリミットをすべてしょうもないものをエロスな物にかえることに
消費していく徳井だった。
293
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/24(火) 22:30:55
以上です。もう終わってしまった番組ですが思いついたので。
ただ気がかりなのが今他の書き手さんのところにピースがでているのに
こっちでも出してしまったことです。
たいした出番じゃないからよいかなぁと。
添削よろしくお願いします
294
:
名無しさん
:2006/01/24(火) 23:40:49
>>289
世界の大林はついに芸人になってしまったのか・・・
295
:
名無しさん
:2006/01/25(水) 00:07:32
>>290
-
>>293
乙です!ワイワイワイキター!もう終わった番組でも番外編てことで本スレ投下OKだと思いますよ。又吉の反応にワロタw
296
:
名無しさん
:2006/01/25(水) 01:33:03
◆mXWwZ7DNEI さん
乙です!
うわ〜懐かしいですね!
わたしも番外編だったらいいと思います。
というかぜひ投下してほしいです!
297
:
◆mXWwZ7DNEI
:2006/01/25(水) 17:13:43
>>295
>>296
クスです!
後半が適当になってたのでちょっと文章をたしてから
本スレに番外編として投下させていただきます。
ただまだ題名がorz
タイトル決めたら投下しますわ
298
:
kzd34
:2006/01/29(日) 00:12:54
今日は頑張って書きます!ここで・・・『彼女』の正体?が明らかになります。
捕まれた腕からは、ダラダラと『血』が流れて地面に落ちる。
彼女は表情を変えない。それどころか、菊地の腕を振り払おうともしない。
菊地の能力は『水操作』。・・・なら、『水の針』を造る事も可能だろう。
だが、彼女の腕が冷たいのは・・・自分の『水』だけの所為では無い。
掴んだ腕からは、人間の『体温』が全く無かった。・・・鼓動も感じない。
それは・・・『死体』と言うよりも、まるで『生きてない』無機質の塊。
血を流しても、顔色1つ変えず『痛い』とも言わない。『涙』も流さない。
不気味に思った菊地は、力を解く。彼女の腕は・・・水と血が混じっていた。
例の『石の力』で傷を癒す。彼女の白い服は、転々と赤い模様が付いている。
「忠告しておきます。・・・私には『痛い』と言う感情が無いんです。」
だから何にも感じません、と付け加えるが完全に信じられる訳が無い。
4人の間に沈黙が走る。傍で隠れている2人は、嫌な空気を感じ取った。
「・・どうすれば良いんだろう・・?」「な・・・何で俺に聞くんだよ・・?」
だが、この場を放っておく訳にもいかない。2人は必死で答えを探す。
彼女は『芸人』では無いと言いながらも、必死で『石』を守っている。
2人は『芸人』であり『白ユニット』として、必死で『石』を守る。
『石を守ろうとしている』 それは、彼女も2人も同じ理由だった。
299
:
名無しさん
:2006/01/29(日) 00:34:51
>>298
小出ししすぎ
メモに纏めてから投下しろ
アンガールズ主役か?それ
女訳ワカラナス
それからsageろよ
お前に言いたいのはこれだけだ。
厳しく言っとくが書くならきちんとやってほしい。
作品が良いだけに更にがっかりだから。
300
:
kzd34
:2006/01/29(日) 00:53:14
2人は決断した。「・・失敗、するなよ?」「・・お前に言われたくないよ。」
『彼女を安全な場所へ移す』 ・・・些細だが、優先するべき事だと思う。
「・・・で、誰が連れ出す訳?」「卓志。」「じゃぁ、お前は・・?」「後で行く。」
簡単な作戦を立てる。・・・後は、それを実行出来る『チャンス』を待つだけ。
立ち止まる彼女の前へ、吉田が1歩近付いた。手には、血で出来た『武器』。
1歩。・・・まだだ。 2歩。・・・まだ早い。 3歩。・・・もう少し。 4歩。『今だ!』
合図と同時に田中が飛び出し、山根が隠れた場所で『石』を光らせた。
目晦ましには丁度良い『白い光』は・・・案の定、吉田の視線を一瞬外した。
「コッチです!!」 その一瞬の『隙』を逃さず、彼女を連れて走る。
彼女の手の冷たさに一瞬驚きながらも、必死で離さない様に握った。
彼女の方は多少驚いた物の、田中の手を握っているのに必死な様子。
「待てっ!!」 後ろから声がする。それでも、振り返らずに前へ進む2人。
よく分からない通路を、右や左・・・とにかく。逃げる事で精一杯だった。
走る事数分後、後ろから声はしない。・・・どうやら、逃げ切ったらしい。
田中は疲れ切っている様だが、彼女からは息切れや動機は感じられない。
「だ・・・大丈夫っ、ですか?」「・・・ハイ。それより、貴方の方こそ・・・。」
息をするのが苦しい。彼女の『紫の光』が当たると、不思議と呼吸は楽になる。
一呼吸すると、彼女へ礼を言った。彼女の方も、丁寧に言葉を返してきた。
「・・・さっきから傍に隠れていましたよね?」「えっ!?ぁ・・・あの「田中〜!!」
田中の言葉を掻き消す声。・・・山根だった。どうやら、無事だったらしい。
安堵の息を吐いた田中に「お前、足速すぎだって・・・」と山根の駄目出しが入る。
「はっ・・・走れって言ったのお前だろぉ!?」「限度って言うのを知れよ・・・。」
目の前で始まった痴話喧嘩に、彼女は何も言葉を言わずに黙って見ていた。
301
:
kzd34
:2006/01/29(日) 01:04:07
名無しさん!厳しいお言葉有難う御座いました!(sageって何ですか?)
明日、ちゃんと文章を勉強します。なので、今日はここまでにさせて頂きます。
本当に勝手でスイマセン。少しでも、皆さんが楽しめる分を書きたいからです。
ここまでの感想・厳しい言葉!覚悟しているので宜しくお願いします!!
302
:
名無しさん
:2006/01/29(日) 09:35:30
sageるには、E-mailの欄に「sage」と入力すればいい。
あと、『痴話喧嘩』の使い方間違ってるよ?辞書引いてみ。
303
:
名無しさん
:2006/01/29(日) 15:36:41
kzd34さんへ
三点リーダー「…」の代わりに中黒「・」を使うことの是非はあえて置いておくとして
せめて一つの話の中ではどちらかに統一して欲しい。
「…」自体も使い過ぎ。なんとなく雰囲気で使ってない?
文章を推敲して本当に必要なところだけに使うようにしないと読みづらいよ。
あと既に指摘があったけど
石の使い手の女性が「自分は芸人ではない」と話した点について
これから投下する話できちんと説明されるのかな。
もし全体の設定を引っくり返すような展開になるとしたら
この先を投下する前に進行会議スレで相談したほうがいいと思う。
304
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:26:03
まだ途中までではありますが、チュートリアルが主人公の話を
書いてみましたので、プロローグ部分のみですが載せたいと思います。
本スレに投下しても大丈夫か、チェックお願いします。
305
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:28:40
とある土曜日、チュートリアルの二人は関西ローカル番組「せやねん!」の収録のた
め、朝早く、収録の二時間前から楽屋入りしていた。
何故二時間も前に来たかというと、この間の土曜日の収録で二人揃って遅刻してしま
い、他の出演者たちに怒られたためである。もちろん、この時間に楽屋入りというのは普
通の感覚で言えば早すぎるので、他のメンバーはまだ一人も来ていない。
自分たちの楽屋でめいめい好きなことをしてくつろぎながら、二人は同時にあくびをし
た。
「やっぱり、いくらなんでも早すぎたかなぁ」
「そやな。まだ誰もおらへんしな」
福田のため息混じりの言葉に答えながら、徳井はいつものようにズボンのポケットに入
れている自分の石を取り出した。徳井の持つ石はプリナイトと呼ばれるもの。その透き
通ったグリーンの色は、果物のマスカットを連想させる。つい先日徳井はこの石を手に入
れ、能力に目覚めたのであった。部屋の光に透かして石を眺めている徳井を見て、福田は
再びあきれたようにため息をついた。
「ほんまに好きやな、その石」
「はは、そう見えるか」
徳井は笑いながらそう返し、手に持った石をもてあそび始めた。
福田はそれをしばらく見つめていたが、自分の鞄の中をごそごそとやりだし、自分も徳
井が持つのと同じような石を取り出した。色は徳井と同じグリーンだが、白いふが入って
いてまろやかな肌触りを持つ石である。徳井は福田が石を取り出したのを見て、お、と
言った。
「お前の石な、どんな石かわかったで」
え、と言う福田に、徳井は言葉を続けた。徳井はインターネットを駆使して、自分の石
や福田の石のことも調べてきたらしい。
「名前はヴァリサイト。物事を冷静に見つめる助けを促すて書いてあった。まあお前には
ピッタリの石なんちゃうか?」
「どういう意味やねん。俺、そんなに冷静でないように見えるんか」
「たまにテンパってる。ツッコミやのにな」
徳井がそう言って笑うと、福田はうるさいなぁ、と言いながら、さほど不快ではない様
子だった。こういうやりとりは二人の間では日常のことである。幼なじみだから、遠慮な
くこういうことが言い合えるというのもある。そんなやりとりを終えた後、福田は自分の
石に視線を落とした。
306
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:29:23
「そやけど、まだようわからへんなぁ。お前の能力のことも、俺のこの石のことも」
「まあな。俺も自分の能力は把握したけど、この石が一体何なのかまでは掴めてへん」
石はある日突然、二人の元へやってきた。徳井は道端に落ちていたのを拾い、福田は
ファンからのプレゼントとしてもらったのである。そこから徳井は、二人の楽屋に突然
襲ってきた男を撃退するのに石の能力を使ったことで、能力に目覚めたのであった。
無論、二人とも最初は石を気味悪がった。あの能力を使えたのは現実的に考えて有り得
ないことであったし、目の前で起きたこととはいえ、とても信じられる話ではなかったか
らだ。
しかし捨てる気だけはしないという、二つの異なる気分に挟まれた末、二人は今もなお
石を手元に置き続けている。徳井はズボンのポケットに、福田は小さな袋の中に入れて常
に鞄の中に。徳井はそのせいで、ズボンのポケットの中に手を入れて石を触る癖がついて
しまったらしい。
石の能力に目覚めてから、徳井は自分の石のことについて調べ、また自分で使ってみる
ことで能力を把握した。彼はどうやら、人の記憶や何かの定義、常識などを自分の思うと
おりに書き換える力があるようだった。
いつだったか飲み会で、とある芸人に冗談を言われ、ズボンのポケットにある石を握り
締めながら「お前俺のこと、なんも知らんのとちゃうか」と言った瞬間、その芸人は徳井
に向かって「誰?」と言い出し、他の芸人が徳井のことをどれだけ話しても、全く思い出
さないという異常な事態が発生したことがある。
徳井はこれは石の能力だと思い、もしかしたら彼は一生自分のことを思い出さないので
はないか、と危惧したが、何時間かするとだんだんと記憶が戻ってきていた。効果はいつ
までも持続するわけではないということも、ここで分かった。
一方相方の福田は、石を持ってはいるものの能力の類を発揮できたことがない。福田は
それでもいい、と常に言っていた。これはファンからもらったものなのだから、そんな変
な魔力が封じ込められているわけがないと。そう何度も何度も語る様子は、まるで福田自
身に言い聞かせているかのようにも見えた。
「まあ、別にええんちゃうか。知っても知らんでも、生活に支障はなさそうやし」
「まあな。今んとこ何も起きてへんしな」
それは事実だった。徳井が能力に目覚めたあの時以来、二人の身の回りで変わった事件
などは起こっていなかった。二人がそう言って、安心するのも当然といえた。
「……おっと、もうそろそろスタンバイする時間ちゃうか」
「ほんまやな。ほんなら行こか」
いつの間にか時間が過ぎていたことに気づき、二人は腰を上げて楽屋を出て行った。
307
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:30:43
「せやねん!」の収録は無事に終わった。前回の遅刻に突っ込まれることもなかった。
二人はそのことに胸をなで下ろしながら、自分たちの楽屋へ戻ろうと廊下を歩いていた
時だった。
共演者の一人・ブラックマヨネーズの小杉が二人の前に現れたのだ。とても慌てている
様子だったので、気になって徳井は声をかけた。
「小杉、そんな慌ててどうしたんや?」
小杉は徳井と福田に気づき、おう、と言ってから、心配そうな表情を見せた。
「いや、ちょっと……俺の持ち物がなくなったんや」
言葉を濁すような言い方だったので、福田は首を傾げた。
「持ち物って、何なくしてん?」
「いや、それがな」
とても言いにくそうにしている。いつもの彼からは考えられない態度だったので、徳井
は少し笑いながら言った。
「そんなに言いにくいモンて何やねん」
「ほんまや。お前キョドりすぎやぞ」
福田もつられて笑う。小杉はまだ迷っている様子だったが、ついに観念したように言っ
た。
「……実はな、育毛剤やねん」
その答えを聞いた瞬間、二人は笑いをこらえきれず、ぶっと言って笑い出してしまっ
た。小杉はやっぱりな、という顔をして顔をしかめている。ひとしきり笑った後、福田は
言った。
「お前、そんなもんなくすて……やばいんちゃうんか」
「いや、ほんま冗談やなくてマジでやばいんやって。お前ら知らんか?」
そう言って、小杉はとあるメーカーの育毛剤の名前を挙げた。二人はさあ、と首を横に
振り、小杉はそうか、と肩を落とした。
「実は吉田も肌に塗るクリームなくしたって言うてんねん。なんかおかしいわ」
「二人ともなくしたんか? しかもめっちゃ大事なモンやのに」
福田が訊くと、ああ、と小杉は頷いた。チュートリアルの二人もさすがに笑うのを止
め、一緒に探したろか、と申し出た。小杉は助かるわ、と頷き、二人を自分たちの楽屋に
連れて行った。
308
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:31:28
部屋の中には小杉の相方である吉田がいて、必死な様子で部屋の中をかきまわしてい
た。小杉が呼びかけると三人の方を振り向き、おう、と手を上げた。
「どうや吉田、見つかったか?」
「いや、全然や。鞄の中とか、全部見たんやけど」
そうか、と言って小杉は軽くため息をついた。そんな二人の様子を見ていた徳井があっ
と思い出したように言った。
「もしかしたら盗まれたんちゃうか?」
他の三人はその発言にはっとしたようだったが、すぐに福田がそれはないやろ、と否定
した。
「第一、盗む理由が分からへん。財布とかやったらまだしも、育毛剤と肌のクリームやで?」
「そこなんやけどな。でも、二人とも他の場所に持っていった記憶とかないんやろ?」
徳井が訊くと、ブラックマヨネーズの二人は同時に頷いた。
「ずっと鞄の中に入れてたはずやねん。やから部屋の中を必死に探してたんやけど」
ふむ、と徳井だけは納得したような表情を見せる。他の三人はまだ腑に落ちないといっ
た様子で、首を傾げていた。
その時、突然外から声がかかった。
「おい、小杉、吉田! これお前らのとちゃうんか?」
四人はその声に反応し、びくっと楽屋の外の方に振り向いた。そこには共演者の一人で
あるたむらけんじ、通称たむけんがいつものにやにやとした顔で立っていた。徳井はため
息をつき、たむらに咎めるような視線を送った。
「もう、驚かさんといてくださいよたむらさん」
たむらはあはは、と気にも留めていない様子で笑った。
「悪い悪い。それよりこれ、小杉と吉田のモンとちゃうか?」
たむらがそう言って手に持ったものを差し出してきた。四人が一斉に注目し、一瞬の後
にブラマヨの二人はあっと声を上げる。
「それ! それですわ、俺の!」
「やっと見つかった、良かったわ……」
二人は安堵したようにため息をついて、たむらからそれぞれの持ち物を受け取った。
「なんか本番が終わってから楽屋に帰ったら、机の上に置いてあってん。こんなん持って
るのは小杉と吉田やろうなあと思って、ここに持ってきたんやけど」
「いやぁ、ありがとうございます」
こんな物を持っている、とさりげなくからかわれたにも関わらず、小杉と吉田は本当に
たむらに感謝したような顔をしていた。そのからかいに気づいた徳井と福田は、今更突っ
込むわけにもいかず傍らで苦笑していた。
たむらは二人の嬉しそうな様子を見て、うんうんと頷いた。
「良かった良かった。ほんならまたな。今日はお疲れさん」
「あ、はい! ありがとうございました!」
慌てたように小杉がそう言って、吉田と同時に頭を下げた。
「まあ、これで一件落着、か?」
福田が言うと、傍らの徳井がそうみたいやな、と頷いた。
「良かったな二人とも。ほんなら俺らもこれで」
「おう、ありがとう」
吉田が礼を言い、小杉も軽く頷いた。徳井と福田は手を振ってそれに応えた後、ふうと
ため息をついて、自分たちの楽屋に帰っていった。
これが全ての始まり。
とある、土曜日の出来事だった。
309
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/01(水) 21:32:39
とりあえずこの辺りでいったん切ります。
ご意見ありましたら遠慮なくお願いします。
310
:
名無しさん
:2006/02/01(水) 22:21:44
乙です。
面白いと思います!
本スレ投下は大丈夫だと思いますよ?
311
:
名無しさん
:2006/02/01(水) 23:18:04
乙です。面白かったです!てかぜひ本スレ投下してください!
312
:
◆TCAnOk2vJU
:2006/02/02(木) 00:30:39
>>310
>>311
レスありがとうございます。
今見直したら文章のおかしいところを二、三見つけたので、
もう一度推敲して、明日辺り本スレに投下したいと思います。
313
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:04:23
小説作成依頼スレの45です。
オリラジの話、途中までですが投下。
314
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:05:58
一匹のネズミが排水溝から飛び出してくる。ピタリと立ち止まり、赤い目を光らせながら頻りに鼻の頭を動かしている。
小さな耳は敏感に人間の気配を感じ取り、ネズミは再び排水溝の中へ、枯れ草を蹴散らしながら戻っていった。
カビ臭く湿った路地裏は、街の電光も月明かりも届かない。
唯一の明かりと言えば、大通りを忙しく通り抜けていく自動車のライトのみだろう。
それでも、車が一台通り過ぎる度に、また一瞬だけ真っ暗になる。
そんな塀に囲まれた寂しい場所に小さく響いた、鈍い打撃音。
それと同時に、どさっ、と人が倒れた音が重なる。
派手に倒れたのは未だ若々しさの残る印象の男だった。
衝撃に体を丸めて転がっていたが、殴られた頬を押さえようともせず、がばっと体を起こすと目の前の男を見上げた。
そんな若者の様子が気に食わなかったのか、殴った方の男はあからさまに眉を顰めた。
「お願いします。」
倒れたときに切ったのか、口の端にうっすらではあるが血が滲んでいる。
それでもはっきりした強い声で、若者…オリエンタルラジオの中田敦彦は自分を見下ろす男に縋るように懇願した。
男はそんな中田を嘲り冷たく笑う。
「お前ら、石持ってんだって?大した経験もネタも積んで無い駆け出しの癖に何でだろうなあ。」
ああ、流石“売れっ子”は違うな。と皮肉たっぷりの言葉を浴びせられると、中田の表情が一瞬だけ曇った。
異例の速さで世間に出るようになったことは、確かに喜ばしい事でもあったが、また逆に不安な事でもあったのだ。
中田は怒り出すような真似はせず、再び強い視線を向ける。
クソ面白くない。男は少しむっとした顔を造り、何だよ、とそっぽを向いて口を尖らせた。
「お願いします、慎吾を返してください。」
黒っぽいコケや泥水の散乱する地面に膝と両手を付いて、しっかりと相手を見据えたままもう一度言う。
315
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:08:13
中田の相方である藤森は、自らの持つ石に妙な力があることを知った途端、キラキラと眼鏡の奥の瞳を輝かせ何度も「凄え!」と言って喜んだ。
特別な能力を授かった事が嬉しくて堪らないようだった。
有名大学を出ているのに、と言えば偏見になってしまうが、魔法みたいな力を目の当たりにすれば誰でも舞い上がってしまうのだろうか。
とにかく石を使いたくて仕方がない様子の藤森を、中田は何度となく諭してきた。
慎吾、という名指しに男は一瞬首を傾げたが、直ぐに眼鏡を掛けた青年の顔が思い出される。
暫く考え込んだ後、男は意地悪く微笑んでみせた。
「“ガラクタ”一人でも立派な戦力だからな。」
黒に入ったばかりの、盾代わりにしか使われない下っ端や石を持たない者たちは“ガラクタ”と呼ばれている。
知らないうちに黒の誘惑に負けてしまった藤森もその内の一人に過ぎない。
居ても居なくても関係ないが、居ないよりは居る方が良いに決まってる。と男は言った。
中田からしてみればそんな事が納得できる筈もなく。男の進路を塞いだまま尚も引き下がろうとしない。
「お願いします。」
「口で言って分かんねえなら…、」
男がポケットから取り出した濁った石がボンヤリと光り始めた。
中田は俯き、固く目を閉じた。
その瞬間。
短く潰れた声を漏らし、男が蹲った。
薄く目を開くと、男がしゃがみ込んでいるその後ろに、人影が見えた。
逆光の暗闇でも見間違えるはずもない、見事なまでのアフロヘア。
「早く逃げろって。」
「…藤田さん?」
腕をコンビニの袋に通し、その両手をポケットに突っ込んだまま、トータルテンボスの藤田が片足を上げて立っていた。
男の背中には土が足跡の形にスタンプされている。見たところ、どうやら背中から蹴り飛ばしたようだ。
316
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:09:32
石の能力でも何でもない、何とも野蛮な攻撃方法ではあったが。
背後からの不意打ちキックというものは意外と効くらしく、男は苦しげに咳をする。
「うちの大事な後輩いじめてんじゃねえよ。」
藤田は太い眉をぐっと眉間に寄せ、男を威圧した。
喧嘩はそれ程強くはないが目力だけはある彼に凝視されると、普通の人間なら蛇に睨まれた蛙のように一瞬で戦意を失ってしまうだろう。
男は無言で素早く起きあがると、中田と藤田に目を向けることも無く、早歩きで去っていった。
「誰だあいつ…?おい、大丈夫かよ。」
自分の記憶にない男の姿が消えるのを見届けると、向き直り藤田が口を開き手を差し出す。
「え?…あっ、はい。」
尊敬する“藤田兄さん”が現れた事で呆然としていた中田はその声にハッ、と目が覚めたように顔を上げ、差し出された手を取った。
「あの、いつからそこに?」
「さっきの奴が石取り出した所から。俺が偶然気付かなかったら危ねえとこだったぞ?」
ということは、男との会話は聞かれていないと考えて良いだろう。
中田はホッと息を吐いた。
「危ない所をありがとうございます。」
「お前の方が道路側だったろ。何で逃げないのかねぇ。」
「ち…ちょっと腰が抜けてて…。」
冗談めいた口調でぎこちない笑みを作る。
変な奴だな、と藤田は白い歯を見せて笑った。
317
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:11:00
路地から一歩外に出ると、打って変わってイルミネーションの眩しい景色が目に飛び込んできた。
いきなり明るいところへ出た事で黒目が急速に小さくなるのを感じ、ぱちぱちと瞬きする。
泥が付いた手や服が少しみすぼらしく感じた。
「そうだ。これ、これやるよ。」
突然藤田が声を上げる。
ガサガサとビニール袋の中をかき回し、取り出したのは一本のチューハイだった。
「これから大村と二人で遊ぶんだけどよ。買いすぎちまって。」
返事もろくに聞かず、半ば強引に手に握らせる。
急ぎなのか時計を気にしだし「じゃあな」と手を挙げると早々に踵を返した。
「あ、あのっ。」
つい反射的に呼び止める。
藤田が振り返る。藤森の事を話した方が良いだろうか、と思ったが。
頭の中で必死に選んで出てきたのは「お酒…、どうも。」という言葉だけだった。
結局、先程の男は何処かへ行ってしまい、藤森を取り返す方法も見失ってしまった。
二年ほど前までは普通の大学生であり芸歴も極端に短い上、石を手に入れて間もない自分たちが知っているのは、
まだ先輩から聞かされた「白」「黒」という二つのキーワードのみだ。
所々取り付けられている電灯が道を照らしているだけの住宅街を歩きながらチューハイの缶を取り出した。
「いい人だなあ。」
小さく笑ってポツリと言葉を漏らす。
いつの間にか、その顔からぎこちない笑みは消えていた。
318
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:12:25
「―――ホントにね。」
背後から聞こえた高い声に、表情筋が引きつった。
相方である藤森が電柱にもたれかかり立っていた。
「敦彦、ケガ大丈夫?」
「慎吾…。」
目敏く口元の傷を発見した藤森が心配そうに顔を覗き込んでくるのに対し、中田は一歩退く。
いささかショックを受けたのか、藤森は引き留めようとした手をゆっくり降ろし、それ以上近づかなかった。
「…あのさ、俺相方をこんな形でケガさせたくないのね。だからさ…。」
「黒には入らねえ。」
「何でだよ、あっちゃーん!」
言い切らない内に拒絶され、ネタ中と同じ大げさな口調と仕草で不満の声を上げる。
藤森にビシッと言い聞かせるチャンス。中田は身体ごと向き直った。
「何でも、だ。お前もいい加減…、」
目ぇ覚ませ。そう続けようとしたが。
タン、と軽い靴音が聞こえ、離れた所で石の気配が近づいてくるのを感じた。
だが一秒と経たない内にその気配はあっという間に至近距離までやってきたのだ。
その瞬間、振り向く前に一瞬首筋に鈍い衝撃が走り、中田は地面に崩れ落ちた。
チューハイの缶が転がり落ちる。
「敦彦、敦彦!」
驚いた藤森が慌ててその背中を揺さぶるも、気絶しているのか、中田が返事をすることは無かった。
「あーあー、死んでねえから騒ぐんじゃない。慎吾。」
酷く特徴的な声が降ってくる。その声色は落ち着いていて、いかにこのような状況に慣れているのかを理解させる。
319
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:14:28
“オトナの魅力”が漂う、東京ダイナマイトの松田は「よっこらしょ」と中田の上体を持ち上げる。
意識がある時と比べ、気絶した人間の身体は何倍も重く感じる。
成人男性の全体重がのしかかってくるものだから、壁にもたれかかせるだけでもさすがに骨が折れた。
「お前は、こいつと敵対したく無いんだろ?」
もちろん、と藤森が素直に即答する。
ふう、と一息吐き、松田が小さな黒い破片を取り出した。
「これ使えよ。そうすればこいつはずっとお前の味方だ。」
「本当ですか?やった!」
嬉々として破片を受け取る。
お子様のように笑う藤森に対し、松田の表情は相変わらず複雑なままで。
さっそく藤森はなんとか頑張って中田の口に破片を押し込む。
固形から液体へ変わった破片は勝手に喉の奥へ入り込んでいった。
相方を操ることに抵抗は無いのか?と半ばあきれ顔で松田が眉を顰めるも、口には出さなかった。
取りあえず、よかったな、とだけ言ってやった。
特に藤森は悪いことをしようとは思っていない。面白そうだからという単純な理由で黒に入っただけだ。
彼らの若さ故の過ちとでも思っておこう。松田は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
その前に一つ、藤森に言っておきたい事があった。
「慎吾、お前、自分の力を過信しすぎるなよ?」
「…はい?」
「あー、何でもねえよ。…またな。」
二回言うのも面倒くさい。松田は欠伸をしながら適当にはぐらかし、藤森と別れた。
携帯の着信が乾燥した夜の空気に良く響いた。
「どうしたー二郎ちゃん。……何?任務?…そんなの明日だ明日。」
どうやら『裏のお仕事』の命令らしい。
話を聞いたところ、白の芸人の石を奪うという、いつもの命令だった。
別に今日じゃなくても良い。松田は携帯を閉じ、う〜ん、と背伸びをしながら帰路についた。
藤森と中田のことは出来るだけ考えないように、鼻歌など歌いながら。
320
:
名無しさん
:2006/02/03(金) 19:16:51
ここまで書きました。10カラットって番組見たこと無いんで、
バラエティ番組などを見たときの印象のみで書きました。
添削お願いします。
321
:
名無しさん
:2006/02/04(土) 14:59:41
面白い。本スレ投下しても全く問題無いはず。
一つ思った事は、慎吾に黒の欠片を渡す芸人を東ダイ松田じゃなくて
東京吉本の先輩にした方がいいんじゃないか?(ポイズンとか)
松田を使うなら藤森の名前を呼ぶ時「慎吾」より「藤森(君)」の方が
自然だと自分は思う。
322
:
名無しさん
:2006/02/04(土) 19:05:55
「慎吾」にしてみたのは前に松田が藤森の事を名前呼びしてたので…。
でもやっぱ吉本芸人の方がしっくりきますかね。
今本スレでド修羅場中のポイズンですが、それより以前という設定で
投下してみます。
323
:
314〜319
:2006/02/04(土) 19:29:14
一通りスレを見直したところ、2丁拳銃が今どの作品にも出ていないので
こっちを出しても大丈夫ですか?
ちなみに
>>322
も自分です。
324
:
314〜319
:2006/02/05(日) 12:31:30
アワワ…三連続。↑ですが、藤森に黒い破片を渡すのを2丁拳銃に変更したいけどおk?
って意味です。
325
:
◆y6ECaJm4uo
:2006/02/06(月) 11:39:24
ok。
326
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 15:57:38
芸人キボンスレの86です。
天才ビットくん話、まだ前半までですが添削お願いします。
327
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 15:59:44
収録の合間の楽屋、男が一人と女が二人、座って弁当を食べていた。
全員この教育番組内での役柄の衣装をつけたままなので、少々異様である。
「もうそろそろ再開っすねえ」
時計を見上げながらくだけた調子で話すのは北陽虻川。
「…いつもながら、お弁当食べるの早いわねえ。」
その虻川の食欲に呆れているのは、相方の伊藤である。
「だってしょーがないじゃん、腹減ってんだもん」
虻川があっさり返すと、伊藤はため息を一つついてペットボトルのお茶に手を伸ばした。
ありふれた楽屋の光景である。…彼女たちの足首で密かに光る石を除いては。
「そーだお前ら、…ここ最近、黒はどうだ?」
世間話をするように、しかしそれよりは幾分周囲を気にするように声を潜めて、男…上田が言った。
「あたしらは大丈夫っす、石もちゃんとありますし。」
その存在を示すように太ももをぽん、と叩いて虻川が答える。
「若手の中ではちょくちょく聞きますけど、わたしたちは別に…」
声を落とせ、と虻川に身振りで指示しながら、伊藤が小声で続く。
今、楽屋には彼らしかいないのだが、習慣づいてしまったのか…それとも「どこに敵がいるか分からない」という警戒のためか。どのみち関係する人間にしか分からない、隠語のような会話だが。
「そうか。…でも用心しろよ。最近は若手の中でも病院送りになってる奴もいるらしいからな。やっこさんたち、白を引き込んだり何だりに躍起になってっから…ちょいと手荒になってるみてえだ。」
「上田さーん、その台詞全然カッコに似合ってないっすよお」
と虻川がにやにや笑って茶化す。
二人を気遣っての台詞に水を差されて、上田はほっとけ、と渋い顔で茶を飲んだ。
そんなやりとりを見て、伊藤が楽しげに笑っている。
と、その時。ばたん、とドアが開いて、三人は一瞬体をこわばらせた。
「どうもー。」
軽く挨拶をして入ってきたのは、江戸むらさきの二人。
三人は仲間と分かっている連中だと、ほっと緊張を解いた。
「もー、おどかさないでよ。」
「ああびっくりしたあ、噂をすればかと思ったじゃーん。」
「すいませーん」
北陽の二人が笑って言うのを聞いて、野村が苦笑して謝る。
「どこもピリピリしてっからな。そのうち楽屋は合い言葉制になるかもしれねえぞ」
と笑うと、上田は江戸むらさきにも同じ質問をした。
「俺らも最近は別に。」
「なあ。…あ、でも」
何だ、と上田が聞くと、磯山が辺りをはばかるようにそっと言った。
「…ちょっと、気になる人が。」
「誰、だれ?」
虻川が言う。
「……俺の勘違いかもしれないんすけど…」
磯山が言ったその名前の主は一人、隣の部屋で壁にコップを押しつけ、彼らの会話を盗み聞いていた。
滑稽な行動に似合わずその顔は厳しく、そしてどこかもの悲しさがあった。
「………、です。」
その聞き慣れすぎた響きを聞き届け、彼はそっと立ち去る。
それと入れ違いのようにスタッフが上田たちを呼びに来た。
この会話がその後どれだけの騒動を招くことになるかは、彼らは想像もしていなかった。
収録も終わり、上田と江戸むらさき、そして北陽の五人は帰途についていた。
白の芸人は用心のため、なるべく大人数で行動することにしているからだ。
駅までの道を並んで歩いていくと、料理店の多い通りにさしかかる。
「上田さん、ご飯おごってくださーい!」
「俺ら金ないんすよお」
「今日、俺がんばったじゃないすかー」
「あたしもがんばりましたよー!」
ここぞとばかりに「飯をおごれ」の要求がうるさいぐらいに重なる。がんばった、というのは番組中のゲームの内容だろう。
根負けしたのか、上田は渋々、といった風情で頷いた。
「わーったわーった。…で、何がいいんだ。」
「やった、お寿司!」
「肉!」
「牛の肉!ぶあついの!」
「しゃぶしゃぶー!」
途端に四人の目が輝く。好き勝手な注文に、現金な奴らだ、と上田は呆れた。
「ぜーたく言うな。ここ近くにファミレスあったろ、そこにすんぞ。」
「ケチー!」
「上田さんの守銭奴!」
たちまちブーイングが飛び交う。寿司ステーキしゃぶしゃぶ、の合唱が始まった。
その光景に、道行く人々がときどきくすりと笑う。
328
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:00:05
「おごってもらう分際で文句言うな、ったく…ん?」
「どーしたんすか?」
上田は眉根を寄せ、声を低く落とした。
「…誰か尾けてきてんな、一人だ。」
「えっ…」
場数を踏んだためか、上田はいつしか芸人には不必要なほど気配に鋭くなっていた。
うろたえる後輩たちに、落ち着いた様子で言葉を重ねた。
「騒ぐな、一旦さっきみたいに馬鹿話してろ。
さすがにここじゃ仕掛けてこねえだろ、どっかで巻くぞ。」
「…分かりました。」
野村はそう言うと声の調子を素早く切り替え、明るく振る舞う。磯村や北陽の二人もそれに続いた。
「あ、財布忘れたとかなしっすよお?」
「そんなせこい真似したら、番組で言いふらしちゃいますからねー。」
「観念して、お寿司!お寿司!」
「上田さんは可愛い後輩に肉もおごってくんないって奥さんにチクってやるーっ」
「るっせえよお前ら、ぐだぐだ言うとコンビニ飯にすんぞ。」
「あーそれ嫌だ!」
「もう食い飽きました!」
演技にしては自然な会話をしながら、曲がり角で上田は不意に目配せをした。
「(行くぞ!)」
五人は追跡者を振り切るため走りだす。
後方で電柱の陰に身を潜めていた男は、慌てて追いかけた。
角を曲がり、路地を走り、次の角へさしかかる――
「うわあっ!」
男の腹に、勢いよく何かがぶつかっていく。
衝撃で後ろへ倒れた体へ、そいつが唸り声と共にのしかかる…ように男は感じた。
「うわ、何だっ、なに、わあああっ!」
男はパニックを起こし、振り払おうとめちゃくちゃに暴れる。
が、それはびくともせず、男の肩口に噛みついた。
痛みにもだえわめく男の姿を、五人の目が冷静に見つめていた。
「…やっぱアンタだったんだ。」
虻川が悲しそうな顔で呟く。その目には涙さえたまっていた。
「きくりん」
彼は何も言わず、ただ眼鏡越しに虻川を睨み付けた。
329
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:04:25
一旦ここまで。
ちなみに天才ビットくんは教育テレビで金曜にやってる子供向け番組です。
ゲストなどで意外と芸人さんの出演が多いです。江戸むらも前出てました。
330
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:26:41
>>326-329
乙です!
一人で行動する上田さんは珍しいですね。
続きを楽しみにしてます。
331
:
名無しさん
:2006/02/10(金) 16:40:24
>>326-329
ビット君キター!そういえば今日放送ですね。
あの衣装で語らう三人を想像したら…wwww
しかも上田「やっこさん」てw
リアルに言いそう、と言うより言ってるから楽しめました。
続き期待しております!
332
:
◆LHkv7KNmOw
:2006/02/11(土) 00:12:53
廃棄スレ>361の続き
ついカッコつけて廊下に飛び出したものの…。
さて、何処に行けば良いのか。
宮迫は楽屋の前で腕を組んだ。
後ろでは蛍原が「どうするの?」と期待に満ちた表情で立っている。
(まずは、人に聞くのが妥当か)
とりあえず頭の中に浮かんだのは、今日同じ番組で共演した芸人達。
その中でも真っ先に浮かんだ男に会いに行くため、歩みを早めた。
「蛍原さんの携帯ですか?」
丁度着替えている途中だったのかDonDokoDon山口は随分素っ頓狂な格好をしていた。
「あ、持ってますよ」
意外な返答。
にこやかに言う山口と対照的に、雨上がりの二人は目を丸くした。
山口はテーブルの上に置いてあった小さな携帯をヒョイと持ち上げ、差し出した。
蛍原は山口と携帯を交互に見比べると、やっと口を開いた。
「え、え?何でぐっさん持っとんの。まさか…」
盗人扱いされると感づいたのか、慌てて山口が「違いますよ!」と手を振った。
「置き忘れてたんじゃないですか、蛍原さんが!」
一瞬の沈黙。
「置き忘れた〜?はぁ、なーんやアホらし」
不謹慎だが、ちょっとした“事件”を期待していなかったと言えば嘘になる。
宮迫はどこか残念そうに頭を掻きながら肩を落とした。
溜息を吐き、時折肩越しに蛍原に厳しい視線を向ける。
ちくちくと刺さるような錯覚を頭を揺らして振り払い、
携帯を受け取ろうと手を伸ばした。
その時、
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