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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

251 ◆8zwe.JH0k.:2006/01/09(月) 18:16:25

男たちの中で、大きな黒い影が目にも留まらぬ早さで自分たちの目の前を通りすぎたのを確認出来た者は少なかった。

「あ、長井、通り過ぎた!止まれって!」
「やべっ、ブレーキ効かねえ…」
その直後、バキバキと木の枝が折れる音、バケツが吹っ飛ばされる派手な音が響いた。
二人が突っ込んだのは丁度木々が植えられ土の軟らかい場所であり、枯れ葉が衝撃で大量に舞い上がった。
つかの間の低空飛行体験は、少々の打撲と擦り傷と共に終わったのだった。


茂みの中から長井が、頭を押さえながら現れた。
上着やズボンの所々に枝が刺さり、至る所に鍵状のヌスビトハギの実…俗に言う「くっつき虫」がびっしりと張り付いている。
長井は慌ててコートを脱いでバサバサと力一杯はたくが、ウールにしっかりと絡まったさやはなかなか外れようとしない。
「くそっ、俺の一張羅が…」
自慢の服がすっかり雑草まみれになってしまい、長井はがっくりと項垂れた。
「着地はまた失敗か…いってえ…」
茂った草の中から田中がはい出してくる。
「つい調子に乗って…。でもほら、その代わりに」
長井が手をグーにした状態で、田中の目の前に突き出す。
ゆっくりと手を開くと、バラバラと黒ずんだ小さな石が、建物から漏れるライトの明かりを反射し、田中の手に落ちていった。
男たちは「まさか」と呟くと、慌ててポケットの中身を探る。

「あ、石が無い!?」
「俺もだ!」

全員の視線が長井に集まる。
長井は、うっひゃっひゃっ、と小馬鹿にしたように笑いながら、腕を組むと人差し指で頭をとんとんと突いた。
「何時の間にスッたんだ」
と、田中が手の中の石と長井を交互に見ながら尋ねた。
「さっき、こいつらの前を通り過ぎたときに盗ったんです」
翼による低空飛行とスリの能力を兼ね備えた長井の石は、黒琥珀。
黒玉とも呼ばれ、その場にあるどの石よりも深く、濃い黒色をしていた。
「にしても、きったねー石だな。いらね」
手の中に持って最後の濁った石は、空になった空き缶のように後ろに投げられた。慌てて田中がそれを追いかけてキャッチする。


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