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SS練習スレ2

1シンの嫁774人目:2011/01/30(日) 23:08:56 ID:ZxrlcmLE
自分もSSを書いてみたいけど
初めて書くから…
昔書いてたけど長い事書いていないから…
上手く書けるか心配。
そんな人のためのスレです。
他にも投下する前にここに載せて反応を見たい人等、広く募集しております。

SS・感想を書いてくれる人、共に随時募集中。

感想を書く人は気になった点は遠慮なくやんわりと指摘し、気に入った点はしっかり誉めましょう。

※練習スレ利用の注意事項は本スレのテンプレに準じます。
 原作カプを崩すネタを書く場合は、本スレに投下せず、練習スレに注意書きの上で書きましょう。

103シンの嫁774人目:2011/11/10(木) 21:16:57 ID:uywYP2Nk
亡国企業とかまた斬新ですな。GJ続き期待!


俺はそろそろ氏と思った

104シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:11:42 ID:OdT2Gi5U
 それは、博霊神社を訪れていたシンが霊夢に誘われ昼餉を御馳走になり、食後の一服をしていたときだった。
 手荒いを借りようと席を立ったシンは、タイミング悪く茶を飲みに突撃してきた魔理沙と衝突してしまったのだ。更になんの
偶然か彼の掌はまだあどけない少女の胸部へ……。
「今日という今日は許さないわよ!」
「ぐえええ……か、勘弁してくれ」
 そこには触られた本人ではなく何故か顔を真っ赤にして怒り狂う博霊霊夢がいた。細腕のどこにそんな力があるのか、
彼女はシンの襟首を締めあげている。
「なあ、私は別に気にしてねーし。離してやれよ」
 魔理沙は一応シンを弁護をした後、火照った頬を誤魔化すようにちゃぶ台に置かれた茶を一気に飲み干す。
「いいえ、こいつは女の敵よ!」
「お、お前いつも女とかそういうのアピールしてな」
「私が女らしくないですってえ!?」
「そこまでは言ってなぐえええええ」
 煽るようなことを言ったシンに更に腹を立てた霊夢の拘束は、もう限界まで強くなっていた。
「おい、霊夢。いくら仲が進展しないからって本人にあたるのはよくないぞ」
 魔理沙も一声掛けるが、霊夢は全く力を緩める気配を見せない。
 やれやれと嘆息した魔理沙が畳から腰を上げようとした、その時だった。
「楽しそうなことしてるわね」
「あ!?」
「い?」
「…………う、」
 霊夢、魔理沙、シンが順に驚きの声を上げる。最後のシンは絞められているためほとんど呻き声のようなものしか出ていないが。
「ごきげんよう、みなさん」
 優雅に、そしてどこか妖しさを秘めた美女――八雲紫がそこにいた。
 いた、といってもその能力であるスキマから半身だけこの空間を覗きこむ形で見ている。
「紫か……」
 微笑む彼女を見て何を思ったのか、霊夢はシンから手を離す。
 やっと自由になったシンは喉元を押さえて咳込んだ。
「えー、ごほん。紫」
「何かしら?」
 紫はスキマから上半身だけを乗り出し、とぼけたように首を傾げる。
「そこ、借りるわよ」
「え?」
 どういうこと、と隙間妖怪が声を上げるよりも前に、霊夢は足元でぐったりとするシンをスキマに放り込んだ。
「え……?」
 あまりの早業に魔理沙も、そして滅多に動揺を顔に出さない紫ですら目を見開き驚いている。
 その一方で霊夢はすっきりした顔で額の汗を拭った。
「半日くらいは閉じ込めておいて」
(ひでえ……)
 魔理沙は久方ぶりに戦慄した。
「えーと……」
 紫はいまいち状況を把握できていないようで、シンが消えて行った自らのスキマを何度も見やる。
「どうしたんだよ」
「えーと、それがね……あの子、どこ行ったか分からないのよ」
「は?」
「もしかしたら別の世界かもしれないわね」
 珍しく真剣な表情を見せた紫は、腕を組み考え込むようにポツリと呟く。
「そ、それほんと…………?」
 見る見るうちに霊夢の顔が青ざめて行く。
「おい、やばくねえか?」
「やばい、かもね。ちょっと探してみるわ」
 紫は素早く隙間にその身を埋める。すると、それに呼応して裂け目も一瞬の内に消滅した。
 いつもと変わらない、博霊神社の居間。
 遠くで鳴く鳥のさえずりが重苦しい空間に響く。
 室内には顔面蒼白の霊夢と、なんと声をかけたらいいのか分からない挙動不審な魔理沙の二人だけが取り残されていた。

105シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:13:12 ID:OdT2Gi5U
※※※

 見渡す限りの雲。
 分厚い曇天の空を上空に、およそ二メートルの空中に隙間は開いた。
 ぱっと視界に入ったのは鬱蒼と茂った背の低い木々だ。
 普通では見ない視点からそれを見ているということから、シンは今ある己の状況を理解した。
 危ない、と思った時にはシンは既に重力のまま落下していた。
「……ぐぐ」
 全く、飛べないというのは不便である。少し前の自分なら思いもしなかったであろうこんな願望も、幻想郷に慣れてから
というもの日常的な願望になってしまった。
 幸い、太い枝に途中激突したおかげで、それほど大きな痛みはない。
 打ち付けた腰も赤く腫れた程度だろう。
 そう思って、立ち上がろうとするシンだったが、
「いっつ、」
 中腰になったところで、鋭い痛みがシンの腰を襲い、立っていられずにその場で前のめりに倒れる。
 シンはとりあえず腰を刺激しないようにうつ伏せに伏せたままの状態を保つ。
 しかしこの森の中、いつ何時妖怪に襲われるかも分からない。
 どこかに人、ないしは知り合いの妖怪でもいないかと辺りを見回したところで、一際目立つ大木の影に隠れる小さな少女と
目が合った。
「…………」
 金髪に、シンと似たような赤色の大きな瞳を大きく開き、倒れた彼をじーっと眺めている。
「あー、君」
 なんとか痛みをこらえて胡坐になったシンが少女に声をかけると、小さな肩をびくっと震わせて一歩後ろに下がった。
 その反応にシンは地味にショックを受ける。
「あ、あのさ、俺ちょっと怪我してて動けないんだ。だれか大人の人いないかな?」
 少女は警戒するようにおそるおそる近付いてきた。
 間近で見ると、より幼く見える。まだ年の頃は十にも満たないだろうか。
 濁りのない瞳でシンと目を合わせた後、すとんと傍にしゃがみ込んだ。
「おとなの人いない」
「お父さんとかお母さんは……?」
「いない」
 不味いことを聞いた、とシンは後悔したが、少女は気にした素振りもせずにただ彼の背中を見つめていた。
「いたいの?」
「ああ。ちょっとぶつけちゃってね」
 ふーん、と呟いた少女は、特に何かをするという訳でもなく、同じようにシンを眺めてるだけだった。
 シンとしてはこんな森の中、いつ妖怪が襲ってくるかもしれないし、この小さな子ももしかしたら人里からの迷子かもしれないと
いうこともあり、一刻も早く元の場所に戻りたいところである。しかし、あの紫の隙間を介して移動したせいで現在地に全く見当がつかない。
 胸中で腋出しの巫女を万年賽銭不足の呪いで祟っていると、シンの頬を冷たいしずくが打った。
 少女も、ゆっくりと空を見上げる。
「雨だね」
 他人事のように、彼女は言った。

106シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:15:14 ID:OdT2Gi5U
 小降りだった雨は、あっという間にどしゃ降りの雨になった。
 その勢いたるや滝のそれを思わせるようで、あらゆるものを飲み込み流して行ってしまいそうなちょっとした恐怖心が芽生える。
「ありがとな」
「ん」
 少女に引っ張られて先ほどの大木の下まで避難したシンは、彼女と寄り添って雨宿りをしていた。
 止む気配のない雨を二人でただぼんやりと眺める。
「ねえねえ」
「うん?」
 ふと、少女が雨空を見たまま話しかけた。
「おにいさん、どこからきたの?」
「ん、どういうことだ?」
「わたし、ずぅっとあそこにいたけど、おにいさん空から急におちてきたんだもん」
「あー」
 確かに、シンは隙間妖怪・八雲紫の力で訳も分からぬ内にこの場所へ来た。(原因は霊夢だが)
 常人から見れば、瞬間移動のように捉えられてもなんら不思議ではない。
 どう説明したものかとシンが唸っていると、何時の間にか前へ回り込んでいた少女が上目づかいで彼の双眸を見つめた。
 まだ幼いというのに、その顔つきはなんとも妖艶な……訳がない。ただ単に年相応のかわいらしさがあるだけだ。
「もしかして……おにいさんて妖怪?」
「俺じゃないんだけど、知り合いの妖怪の力でね。ここがどこだかも分からない」
「妖怪かぁ」
 少女は何やら考え込むようにその場で足を崩した。
「おい、女の子があんまりそういう座り方をするもんじゃない」
「え〜」
「ほら……下着が見えちゃうかもしれないだろ?」
「したぎ?したぎってなに?」
「え」
「え?」

 閑話休題。

「ま、まあ、とりあえず下着は穿いとけ」
「うん。おにいさんがそういうならしかたない」
「生意気なやつだな」
 くつくつと二人で笑い合う。
 シンは妹とじゃれ合っていた頃を思い出していた。少し生意気なところもよく似ていて、もう何年も前のことだというのに、
すぐ瞼の裏に当時の光景が浮かぶ。
「なんかかなしそうね」
「……そうか?」
 感傷的な気分に浸っていたことを気取られたのが気恥ずかしくて、シンはそっぽを向く。
 少女は小さく微笑むと、その小さな手でシンの頭を優しく撫でた。
「いい子ねえ」
「……い、いいって」
 その手から逃れようともがくシンだが、腰の痛みから思うように動けない。結局、しばらくの間為すすべもなく撫でられるし
かなかった。
「ねえ、おにいさん」
「ん、なんだ」
 今度は少女がシンの胸に体を預ける態勢でいた。
 この幻想郷に来てからそれなりに身長が伸びたおかげで、小柄な彼女の体は丁度いい具合にシンの腕の中に収まる。
 傍から見たら親子のように見えるんじゃないか、とシンはなんとなく思う。
「おにいさんがいたとこの話してよ」
「俺がいたところ?」
 一瞬、デスティニーを駆って戦場を巡ったあの世界を思い出したが、どうやら少女が意図しているのは別らしかった。
 コズミックイラの話はしていないし、先ほどの会話の中で彼女に妖怪の話をしていたこともある。
 恐らく、少女が言うのはシンが過ごした幻想郷のことを指しているのだろう。
「ああ、いいよ。幻想郷ってのは知ってるよね?」
「げんそーきょー?……知らない」
「うーん、まだ小さいし、知らなくても無理はないか」
「……バカにしないでよ。これでもあたまはいいんだから」
「分かった分かった」
 拗ねて唇を尖らせる少女の頭を、さっきのお返しとばかりに撫でる。
 最初は驚いたようだったが、少女はやがて甘えるように頭をシンの胸に預けた。
「そうだなぁ」
 相変わらず雨は降りっぱなしで、当分の間動けそうにない。
「まずは、この幻想郷について話そうか」
 なんとなく、長くなりそうだとシンは思った。

107シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:17:30 ID:OdT2Gi5U

 一方、その頃の博霊神社
 普段やる気の感じられない霊夢は、今回ばかりは必死に祈祷を捧げていた。
「お願いします……神様仏様紫様」
「お願いします」
 ぶつぶつと呟く霊夢の隣で魔理沙もそれに倣い同じように唱える。
 シンが行方不明になってから既に数時間。
 とりあえずの捜索はその道のプロである紫に任せ、二人はこうして神頼みをするしかなかった。


 気付けば、話始めてから結構な時間が経っていた。
 雨はまだ止んでいないが、先刻と比べると随分雨足は弱まってきている。
「ねえねえ、さっきのはなしのつづきは?」
「大体話し尽くしたと思うけど……」
 幻想郷で身の回りに起こっためぼしい事件を思い返すが、あと残っているのはほんの些細な出来事くらいだ。
 それこそ、あとはもうコズミックイラでの出来ごとくらいしかシンには話すネタがない。
「それじゃあ、今までの話で何か聞きたいことある?」
「ききたいこと?」
「うん。もう話すことないからさ、何かあればと思って」
 首を傾げる少女に続けて言う。
「そうだなー。それじゃ、そのうさんくさい妖怪について教えて」
「うーん……あいつか。実は、俺もよく知らないんだよな……まあ、胡散臭いな。それと滅茶苦茶強いらしい」
「らしい?」
「本気で戦ってるとこ見たことないんだ。でも、日常的に使ってる力だけでも相当なもんだよ」
 それを聞くと、少女は目を輝かせる。
 今までは割と落ち着いた雰囲気でいたが、この反応はシンにとっても意外だった。
「すごいね!わたしもすごくつよい妖怪になりたい!」
 いいんじゃないかな、と首肯しかけたところで、思わず違和感に気付く。
「……もしかして君って妖怪?」
「そうだよ!」
 上手くかみ合わなかった歯車がきっかりと合った気がした。
 なるほど。両親がいないのも、こんな人が来る気配もない森の中に一人でいるのも、妖怪だったからか。
 シンの知り合いにも見た目が幼い妖怪は数多くいるが、この少女に関しては実際に生まれてそう長くないようだ。恐らく、
見た目通りの年齢だろう。
 幻想郷についての知識も持ち合わせていないのは流石に、長寿の者には在り得ない。
「…………おにいさん、わたしのことこわい?」
 少女は急にシンが押し黙ったせいか、その瞳は不安に揺れている
 それを目の当たりにし、シンは胸が締め付けられるような罪悪感にさいなまれる。
「さっきも話したろ、妖怪の友達もいるって。だから別に怖くない」
「じゃあ、すき?」
 取り繕って言った言葉に被せられた返答が思わぬもので、シンは面食らう。
「ねえ、わたしのこと、すき?」
 さっきまでのマイペースはどこへ行ったのか。少女は急に居心地が悪そうにシンの腕の中でそわそわし始めた。
 その上、シンの表情を窺うように、ちらちらと見上げてくる。
「あー……っと。まあ、好きだよ」
「じゃあ、およめさんにしてくれる?」
「……なんか、話が大きく逸れてるないか」
「いいじゃん」
 最近の若い子はませてんな、とシンは内心毒づく。
 まさか数時間前に合ったばかりの男に婚約を申し込むとは。
 だがまあ、シンも昔は妹や女友達と遊ぶ過程で仮初の結婚なんて何十回もしてきたし、今さらこんな小さな子を相手に戸惑っ
たりはしない。
「い、いいいよ」
「……どーよーしてる?」
「し、してない」
 知らぬ間に漏れ出た動揺を今度はしっかりと飲み込む。
「じゃ、わたしはおにいさんのおよめさんね。指きりしよっか」
「ああ、いいよ」
 こうなればもう何でも言うことを聞いてあげよう。
 なんだか投げ槍な気持ちで彼女と小指を絡ませ、契りを結ぶ。
「満足したか?」
 シンはなんだか手玉に取られているみたいで面白くない。
 そのため年上らしくない、皮肉で少女に尋ねる。
 しかし、少女はくすぐったそうな声を上げて満面の笑みを浮かべた。
「うん!」
 混じりけのない純粋なその笑みは、シンの心にあった黒い感情はあっさりと崩壊する。
「そっか」
 そんな少女に脱力しながら、自分もまだまだ青いな、とシンは己の未熟さを痛感していた。

108シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:19:40 ID:OdT2Gi5U
「ん。おにいさん、むかえきたかも」
「え?」
 腕の中の少女がすっとシンから離れ、少し遠くの空を指差した。
 シンがその方向へ目を向けると、丁度空間に一筋の線が走った。
 そこからぱっくりと空間が口を開き、中から見慣れた妖怪が顔を出して辺りをきょろきょろと見回している。
「なんで分かったんだ?」
「なんとなく?ピンときた」
「すごいな」
 シンが褒めると、少女は得意げに笑った。
「雨、やみそうだね」
「ああ、何時の間にかな」
 大粒の雨はその勢いを忘れてしまったようだった。途切れ途切れに弱々しい雨粒が降り注ぐ。
 未だ雲に覆われた空を仰ぎ、少女のほうへと向き直る。
「ありがとうな。助かった」
「ん、いいよ。やくそくしたし」
 少女は小指を立てて先程の指きりを強調する。
 シンは苦笑するしかなかった。
「またその内会いにくるよ」
「うん」
 別れは告げず、シンは紫の方へと歩き出そうとしてピタリとその動きを止めた。
「……腰痛いの忘れてた」
「おにいさん、あんがいばかだね」
「うるさいな」
 一先ず紫を呼んで、神社で治療するしかないな。
 シンは声を張って呼び掛ける。
「おーい!」
 シンを視界に収めた紫は、ほっと安堵の息を吐くと、スキマから飛び立ちこちらへ向かってきた。
 とりあえずの安全を確認し、シンは別れを告げるために少女を振り返る。
「――――え?」
 つい数秒前まで確かにそこにいた妖怪の少女。
 その姿形が今ではすっかりと消え失せていた。
「どうかした?霊夢がうるさいから早くあなたを連れて帰りたいのだけれど」
「いえ、ちょっと」
 シンの隣に降り立った紫は少し疲れた声音だった。
 一日の半分は寝て過ごすらしいこの紫だが、もしかしたら自分を探すために睡眠時間を削ってくれたのかもしれない。
 シンがスキマに腰を気遣いながら入ったところで、周囲の風景を真剣なまなざしで見つめている彼女に気付いた。
 紫の視線を辿ると、シンと少女が話をしていた大木を見つめているようだった。
「どうかしました?」
「いえ……なんでもないわ。行きましょう」
 優雅にスカートを棚引かせ、紫は己の空間へと入り込む。
 まるで未練を断ち切るかのように、スキマは一瞬で、固く閉じられた。

109シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:22:26 ID:OdT2Gi5U


 博霊神社に帰って来て、霊夢やら魔理沙やらに喜びだか怒りだかよく分からないタックルを決められて。
 その後、夕ご飯を食べた後のことだった。
 皿洗いは私がやるわと、珍しく気を使ってくる霊夢に甘え、シンは居間で腰の静養をしつつ新聞を読んでいた。
 しかしこれといって真新しい記事はなく、最近あの天狗の取材は不調みたいだなとシンはぼんやり思った。
「暇そうね」
「出た」
「……何よその言い方」
 例によって何時の間にか現れていた八雲紫にさした反応も見せず、シンは小さく欠伸をする。
「レディの前で失礼ね」
「すみません。今日は疲れてて」
「まあ、色々あったみたいだし、別に構わないけど」
 つんと拗ねたように、紫はシンの向かい側に正座した。
 シンもとりあえず姿勢を正すが、だからといって紫が何か言うでもなく、また自身もこの良く分からない妖怪相手に話すこと
もない。
 先日まではアダルティーでセクシーなこの八雲紫が近くにいるとなんだか落ち着かないものだったが、今は不思議とそういっ
た気持ちが沸かないでいた。
 胸のときめきが消えたというか、旧知の仲のような。自分でもよく分からない馴れ馴れしい感覚が、心のなかにある。
「あれ」
 そこで、シンはあることに気が付いた。
 なにを思っているのか、目蓋を軽く閉じて瞑想する紫の顔をまじまじと見つめる。
(似てる?)
 ついさっきまで一緒にいたあの少女と目元や口元といった顔の随所が似通っている気がする。流石に体は別物だが。
「ちょ、ちょっと…………なに?」
 賢者と呼ばれる妖怪にしては珍しく、紫は恥ずかしそうに俯いた。
「いや、知り合いに似てたもんで」
 その言葉を聞いた紫は、はっと目を見開くと、シンをじっと見つめた。
「私も……あなたみたいな人知ってるわ」
 口元に寂しげな笑みを浮かべ、彼女は言う。
「私がまだ小さい頃……どれほど昔のことだか忘れるくらい昔。まだ幻想郷も出来ていない時代に出会った人」
 いまいち妖怪の成長んついては理解していないシンだが、紫の話から察するにどうもこんな立派な隙間妖怪にも純粋にそこらを
駆けまわっていた時期があるらしい。
 しかし、普段の胡散臭さと底知れなさが相まって、とてもそうとは思えない。
(幼少時もすごいませた子供だったんだろうな……)
 盗み見た彼女の横顔はとても儚げで、日常振る舞っている妖美な妖怪はそこにいない。
 まるで大切なアルバムを丁寧に回想して行くように、優しく、愛おしげに語る。
「独りだった私に、いろいろなことを話してくれたわ。実はここを作るときもその人の知恵を拝借してね」
「そうだったんですか……」
 月並みな返事しかできず、思わず己のボキャブラリィに嫌気が差すシンであった。
「なんだか頼りない人でねえ。ちょっとからかうとすぐ動揺するし」
「……なんだかそいつとは仲良くなれそうな気がします」
 大切な話の腰を折るな、と言わんばかりの紫の視線を受け、シンは押し黙る。
 月光を受ける彼女の横顔は、少しだけ悲しそうだった。
「初恋……だったわね」
「…………その人は、」
 遠慮がちに、シンは聞いた。
 なんとなく、いまの紫は嘘をついている気はしなかった。
「結婚の約束してたんだけどね。すっぽかされちゃった」
 笑い話として語ったつもりだろうが、紫の目尻に浮かんでいる涙からして、未だに引き摺っていることが窺える。
 思わぬ出来ごとに、シンは動揺した。
 親しい訳ではないが、
「そ、それにしても、その男もひどいやつですね」
 慰めよう、と思ったのかもしれない。
 とりあえず何か言わないと。そう思って口に出たのが真っ先に脳裏に浮かんだ言葉だった。
「そうかもね」
 紫も頷く。
「紫さんはその……美人ですし、ほっといてどこか行くなんて勿体無いですよ」
「そうそう。こんなかわいらしい女を忘れてしまうなんて、許せないことよ」
「そうですよ」
 わざと大袈裟に頷き、紫はくすりと笑った。
「あなたは霊夢にそういうことしちゃダメよ?」
「な、なんであいつが……?」
「さあ、なんでかしらね?」
「ぐぐ……」
 二人で夜空に浮かぶ満月を見上げる。
 星々が宇宙に散りばめられた宝石のように輝き、幻想郷を照らし出す。
 浮かび上がった自然の風景が、何十、何百、何千と変わることなく悠然とそこにある。
 雲ひとつない晴れやかな夜空を、懐かしい風が駆け抜けて行った。




 後日、シンがスキマの先での出来事を紫に話して大変なことになるとはこの時誰も知る由がなかった。

110シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:23:40 ID:OdT2Gi5U
すみません。投下前に注意書きを忘れました。
東方とのクロスになります。

111シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 18:01:35 ID:.BTdyRAk
GJ!!
ゆかりんxシンとか俺得過ぎて続きが気になって仕方ないw

112シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 20:18:24 ID:BkEros86
リアルに少女臭のする紫!
純な乙女の香りがする。続きがあるならみてみたいです



自分は普段保管をしている者ですが、この作品は保管してもよろしいのでしょうか?
練習スレの作品は基本的に保管はしない様にしているので、これから作品を投下する作者の方も保管して良い作品なら可否を記していただければ保管します

113シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 23:43:42 ID:t0XZfLpg
続きプリーズ

114シンの嫁774人目:2011/11/14(月) 00:19:36 ID:xc/6dv5w
しっかし最近は練習スレに投下してくれる人が多いねぇ、良い事だ

115シンの嫁774人目:2011/11/14(月) 17:09:07 ID:F6RR/8Kg
>>112
ID変わってると思いますが、一応投稿した者です。
保管することに関しては大丈夫です。
しかし恥ずかしいです

116シンの嫁774人目:2011/11/14(月) 19:41:08 ID:BQy0Rnco
ゆかりんもだけど霊夢もカワイイなぁ

117シンの嫁774人目:2011/12/12(月) 01:24:56 ID:LFieSKRc
 とある日の夜半、シンは人間の里を散歩していた。普段ならとうに寝ている筈の時間なのだが、今日は目が冴えていたので、何となくで歩く事にしたのだ。
 夜歩く幻想卿の人里は昼間の賑わい方が嘘の様にしんと静まり返り、シン以外の人の気配はまるでなかった。
 暫く歩くと、シンは一人の人影を見つけその人物に声をかけようと歩み寄る。
 辺りに明かりは無く、遠目の為にその顔はハッキリと確認出来なかったが、その人物が立っている場所が寺子屋の前の為に、シンはそれが誰かがスグにわかった。

「慧音」

「ん……シン、か。こんな夜中に何をしているんだ?」

「ただの散歩だよ、何か寝れなくてな。慧音こそ何してるんだ?」

 慧音は柔らかな笑みを浮かべ、そして夜空を見上げながら言葉を返す。

「夜空が綺麗だからな、少し見ていたんだ」

 月明かりに照らされながら夜空を見続ける慧音を綺麗だなぁと思いながら、シンも空を見上げると満天の夜空が目の前に広がっていた。

「確かに、星が綺麗だな」

 心の底からそう思った。先程までは民間を見たりや昼間の光景を思い出しながら歩いていたからか、シンは全く気が付いていなかったのだ。

「星もそうなんだが……」

 そう言って慧音は言葉を濁らせて少し黙りしてしまう。
 シンは何だろうと思いながらも慧音に何も言わずに彼女が何か言うのをのんびりと待つ。

「……シン」

 沈黙が暫く続いた後に、慧音は改まった様子でシンを呼び、シンも再び慧音の方を向いた。
 慧音は顔を真っ赤にしながらシンを真剣な表情で見つめていて、シンはどうしたのだろうか?等と思いながら慧音に「何んだ?」と返事をすると、慧音は何かを決意した様に口を開いた。

「月が綺麗ですね」

 確かに今日は満月では無いが月が綺麗だったのでシンは慧音の言葉に頷き、自らも同じ言葉を軽い気持ちで返す。

「ああ、月が綺麗ですね」

 慧音はその言葉を聞くと、心底嬉しそうに笑みを浮かべた。
 シンは良くわからずに首を傾げたが―――

(何でか知らないけど、慧音は嬉しそうだし、まあいいか)

 と、あまり考えずに暫く二人で空を見上げているのであった。


おまけ
 後日、シンはこの台詞の少し特種な意味をパチュリーに聞き、妙に慧音を意識してしまったり、その様子が寺子屋の子供達経由で里の皆に知られて噂になったり、文々丸新聞のネタにされたりするのだが、それはまた別の話である。

118シンの嫁774人目:2011/12/12(月) 01:29:24 ID:LFieSKRc
注意書き忘れてた。
昨日の皆既月食を見てたら思いついたシンと慧音の小話です。
書き終わってから慧音の位置はあっきゅんにした方がよかったかなぁって思ったり思わなかったりしてます。
二年近くここに居るのに小話は初投稿な為に、多少文章が下手でも寛大な心で読んでいただけると幸いです。

119シンの嫁774人目:2011/12/12(月) 04:22:34 ID:jp7UdIi.
GJ! 気負わずに手軽に投下してください
シン、求婚だと気付くんだw

120シンの嫁774人目:2011/12/13(火) 13:26:48 ID:SoEtsz0s
>>110
ゆかりん可愛いぃぃぃ!
>>118
まあシンはそう言われてもそのまんまの意味でしか分からんよなw

満月のときに月食が起こると慧音はキモるのかキモらないのかどっちなんだろう

121シンの嫁774人目:2012/01/11(水) 23:43:34 ID:akr7zAz6
ttp://u8.getuploader.com/jyonan/download/183/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%81%BF%E3%81%93.txt

シン×神子でネチョでウフフなSS
もちろんR-18、だけど内容は薄い、それと神子ちゃんのキャラ崩壊注意
パスはmikonecho

ちなみに普段はコテハン持ちですが恥ずかしいのと様子見と>>101を真似して今回は外してます
まぁ正体がばれても問題は無いのですけどねー

122シンの嫁774人目:2012/01/12(木) 14:33:16 ID:9M6Oto5U
>>121
GJでした。
あと俺も昂ぶりますw

123シンの嫁774人目:2012/01/22(日) 00:23:06 ID:4HqhdhBQ

 夜空を覆っていた厚い雨雲は、日の出と共に薄れ始め、正午を過ぎた頃には完全に消え去った。
 今は晴れ渡っている空の下、命蓮寺の住人はいつもと変わらぬ一日を過ごしていた。

 ただ一人、シンを除いては。

 彼は命蓮寺の母屋の、裏庭に面した縁側に一人で腰掛けていた。
 そこで何をするでもなく、ただ昨夜の神子との間に起こった出来事を何度も何度も繰り返し思い浮かべていた。
 神子の様相を思い出す度に心を揺らし、彼女からの奉仕の感覚を思い出しては情欲を感じ、白昼から不埒な事を考える自分に嫌悪して溜息を付く。
 一つ溜息を付いては振り出しに戻り、また心を揺らして自己嫌悪の溜息を漏らす。
 それをこの場所で何度も何度も繰り返していた。

「はぁ…駄目だな、こんな調子じゃ」
「あら、こんな所にいたのね」
「えっ? あぁ、星さん。何か用事ですか?」
「いえ、ただ近くを通りかかっただけですが…あの、大丈夫ですか?」
「えっ、何がですか?」
「何だか悲しそうな顔をしてました」
「…そんな顔してました?」」
「はい…隣、失礼します」
 
 断りを入れ隣に腰掛けた星から甘いにおいが香る。
 シンは思わずドキリとし、同時に神子の甘いにおいを思い出した。

「神子の方が…」

 何て失礼な事を考えているんだと頭を振る。同時に何故こんな事を考えたのだろうと疑問も感じた。

「…今何か言いました?」
「えっ? いえっ! 大丈夫です…すみません」

 シンの呟きは星には聞こえていなかった事に、小さく安堵の溜息を漏らした。

「そう、ですか…シン。何か悩みがあるのなら、私でよければ相談に乗ります」
「ありがとうございます。でもすみません…他の人にはちょっと…」

 星の言葉は、こんな時でなければありがたい物であった。
 ただでさえ人に話し難い内容に加えて神子が関わっているとなると余計に話し辛い物だ。

「そう…ですか。いえ、誰にだって話したく無い事はありますから」
「…すみません」
「ううん、そんな顔をしないでください…」

 それっきりお互いに言葉無い。肩を並べる二人の間に、少し重苦しい沈黙が流れる。
 シンは星に心配をかけさせてしまう自分に不甲斐なさを感じ、横目で盗み見た星の少し沈痛の浮かんだ顔を見て、さらには自己嫌悪にも陥り始めていた。

124シンの嫁774人目:2012/01/22(日) 00:24:39 ID:4HqhdhBQ

「あっ!」

 星が不意に声を漏らす。
 シンは何事かと顔を向けると、星は胸の前に手を合わせ、何かをひらめいた表情をしていた。

「どうしたんですか? 星さん」
「い、いえ。あのですね、相談には乗れない代わり…と言う訳ではないのですが」

 慌しく縁側に上り、シンの方を向いて正座する。
 星の言葉の歯切れが悪くなり、星の目線が忙しなく泳ぎ始める。シンはとりあえず黙って見守る事にした。

「人に話せない…ならですね」
「はい」
「その代わりと言う訳ではないのですが…き、気晴らし…してみるのはどうでしょうか?」
「気晴らしですか」
「その、里の甘味処でですね…」
「はぁ…」
「とても甘い洋菓子が食べられるそうなのですが…その」
「…一緒に、って事ですか?」
「はい…今度のお休みの日、よろしければでいいのですが」

 星は改めて姿勢を正し、自分を落ち着ける様に深呼吸をする。

「その甘味処に…い、一緒に! 甘味処に行きましょう!!」

 そう告げて勢いよく頭を下げるその姿と言葉は、誘うと言うよりもお願いと言った方が正しい。
 力みすぎたせいか声も大きなものとなってしまい、シンも思わず怯んでしまう。
 シンは呆気に取られたように目をぱちぱちとさせ、星は頭を下げたままの状態。
 身体を強張らせて心臓をバクバクと高鳴らせながら返答を待っていた。

「顔、上げてくださいよ。星さん」

 聞こえていないのか、大声になってしまった事に気恥ずかしさを感じているのか、星は頭を上げない。
 悪いとは思いつつも、シンはその姿に苦笑いを浮かべてしまう。
 シンも腰掛ける体勢から星と向かい合う様に姿勢良く正座する。

「喜んで付き合います」

 その言葉に星はようやく顔を上げた。そしてその表情はパァっと明るい物だった。
 大きく息を吐き出すと、張り詰めていた緊張が一気に抜けて行き、へなへなと脱力していく。
 大げさだと呆れつつ、シンもつられる様に小さく笑みを浮かべた。

 それから二人は当日の予定を決めたりしながら、談笑を交える。
 やがて用事を思い出した星が先に席を立つ事となる。

「それでは当日、楽しみにしてますね」

 可愛らしい笑顔を残し、少しばかり名残惜しげな足取りで縁側を去って行く。
 シンは星の思いやりに感謝しながら後ろ姿を見送っていた。星の姿が見えなくなってしばらくすると再び神子の事を考え始めてしまう。

 結局、シンは一日を終える時までこの調子であった。

125シンの嫁774人目:2012/01/22(日) 00:28:38 ID:4HqhdhBQ
>>121の続き的なお話、シンと星と神子の三角関係?

126相談スレ150:2012/04/21(土) 18:02:36 ID:nPVuWpGQ
小ネタを投下させていただきます。

作品「IS<インフィニット・ストラトス>」とのクロスです。
クロスカプ注意です。とりあえずシャル×シンです。
色々あって、ラウラがシンのことをお兄様と呼んで慕ってます。
シンは想像を絶するぐらい鈍いです。

お試しなので、ものすごい軽い気持ちでお読みください。

127小ネタ1:2012/04/21(土) 18:07:43 ID:nPVuWpGQ
トントン。

シン「シャル、いるか?」
シャル「シン?  ドアなら開いてるから、入っていいよ」

ガチャッ。

シン「シャル、いるか?  頼みがあるんだけどーーあれ、ラウラは?」
シャル「さっき受付に荷物を取りに行ったよ。またドイツから贈り物だって」
シン「今度は何が送られてきたんだ……まあ、それは置いておこう」
シャル「それで、シンはどうしたの?」
シン「そ、その……た、頼む、シャル!  ノートのコピーとらせてくれ!」
シャル「あ!  シン、結局ノートとってなかったんだ!  居眠りばっかりしてちゃいけないって、あれだけ言ったのに!」
シン「う……で、でも!  寝てるのは基礎IS学と社会IS史だけでーー」
シャル「言い訳しちゃダメ。僕、何度も注意したよね?  なのにシンってば、全然聞いてくれないし……」
シン「うぅ……ゴメン、シャル!  一夏は篠ノ之たちが連れてっちゃったし、このままだと再試験まっしぐらなんだ!  だから頼むよ!」
シャル「コピーはダメ。少しは反省させないと」
シン「そ、そんなぁ……」
シャル「ーーコピーはさせないけど、勉強のために自分で写すのは良いよ?  分からない所があるなら、僕が教えてあげるから」
シン「ほ、本当⁉  シャル、ありがとう!」
シャル「ふふっ、ノートは持ってきてる?  それじゃあここで始めよっか」

128小ネタ1:2012/04/21(土) 18:10:13 ID:nPVuWpGQ
シャル「ーーじゃあ、アラスカ条約の締結に尽力したアメリカの大臣は?」
シン「……ジョージ・グレン?」
シャル「残念、正解はピーター・アームストロング」
シン「うげぇ……また間違えた」
シャル「それでもこれだけ勉強しておけば、少なくとも赤点にはならないよ。シンは飲み込みが早いし」
シン「シャルのおかげだよ、ありがとう。……いつもシャルに頼ってばっかだな、俺」
シャル「シンが、僕のことを?」
シン「うん、俺はいつもシャルに助けてもらってるからさ。俺から、何かしてあげられるといいんだけど」
シャル「……違うよ、シン。僕はシンからいろんなものをもらってる」
シン「え?」
シャル「もらってばかりなのは僕の方。僕がシンにしてあげられることなんて、大したことじゃない」
シン「そんなこと!」
シャル「ううん、だって……僕がシンからもらったのは“明日”だから。僕が諦めていた明日を、シンがくれた」
シン「それは、俺が勝手に言っただけだ。シャルは気にしなくても……」
シャル「もう……シンの悪い癖だよ。誰かからもらったものは全部数えるのに、自分があげたものは一つも数えない。できたことを数えないで、できなかったことだけを数える」
シン「⁉  あ……」
シャル「それだと、いつまでも自分が辛いだけだよ」
シン「…………」
シャル「ね、だから数えてほしいんだ。僕がシンといられることを、シンができたことに」
シン「……うん。ありがとう、シャル」
シャル「こちらこそ、いつもありがとう。僕のことを……守ってくれて。僕と一緒にいてくれて」
シン「約束したから。俺はシャルのことを守るって。ずっと一緒にいるって。でもーー」
シャル「でも?」
シン「それはそれだ。やっぱり何か、助けてもらってるんだからお礼しないと」
シャル「……それなら、お願い」

129小ネタ1:2012/04/21(土) 18:11:37 ID:nPVuWpGQ
シャル「手……つないでくれないかな?」
シン「もちろん。だけど、こんなことでいいの?」

ギュッ。

シャル「いいの。こうしてるとね、シンと一緒にいるんだって、一番実感できるんだ」
シン「…………」
シャル「シン、どうしたの?」
シン「……時々、思うんだ。大切な人といる今が、本当に現実なのか……明日がまるで羽みたいな、フワフワした幻に思えることがあって……」
シャル「…………」
シン「けど、俺もシャルと一緒にいると実感できる。シャルは消えたりなんかしないで、俺と一緒にいてくれるんだってことを。それだけは、本当のことなんだ」

ギュッ。

シャル「シン……」
シン「シャル……」

ーードタドタドタッ、バタンッ!

ラウラ「おのれシャルロット!  甘い空気が廊下まで漂い、何人も砂糖を吐き出しているぞ!  私のいない間に何をしていた⁉」
シャル「あ、おかえりラウラ」
シン「テスト対策に、シャルに勉強見てもらってたんだ」
ラウラ「ならば何故二人で寄りそっている⁉   その手を離せ!  離れろ!  そして私にも愛をよこしてくれ、お兄様ぁっ!」

ダダッ、ピョンッ、ガシッ!

シン「うわっ!  ラウラ、 危ないから飛びつくのは止めろっ!」
ラウラ「私も私の愛もお兄様が受け止めれば良いだけの話だっ!」

スリスリスリスリ。

シャル「もう、またラウラが邪魔するんだから……」
シン「そう言わないでくれよシャル。ラウラも一緒に勉強すれば良いだろ?」
シャル「そういう意味じゃないの。まったく、鈍いのだけは絶対に治らないんだから……」
シン「へ?」
ラウラ「お兄様に聞かれれば、私はどんなことでも答えよう。さあさあ、聞くのは私の体にだ。そうと決まればベッドの上にーー」
シン「こらぁっ!  危ない冗談は止せっていつも言ってるだろっ! 」
ラウラ「ちいっ、私の愛は簡単には届かないか」
シャル「はいはい、ラウラは大人しくこっちに座ろうね」
シン「ほら、あとでシャルと一緒に食堂の特製ケーキおごってやるから」
ラウラ「むう……お兄様、約束だぞ?」
シン「分かった分かった、約束する」
シャル「ふふっ、それじゃもうひと頑張りしよっか」

130相談スレ150:2012/04/21(土) 18:13:29 ID:nPVuWpGQ
以上になります。
スレ汚し、失礼いたしました。

131シンの嫁774人目:2012/04/21(土) 20:08:47 ID:pEHKB2Ig
GJです。甘い作品でした
それと最近していませんが、自分はまとめスレに保管している者ですが、この作品は保管してもよろしいのでしょうか?
これからの作品にも保管の有無を明記して頂ければ助かるのですが
これからも投稿待っています

そしてスレが下がっているので上げます

132シンの嫁774人目:2012/04/21(土) 21:19:36 ID:0pJMyLQg
乙です。
とりあえず貴方が誰かは把握したや。

133シンの嫁774人目:2012/04/21(土) 21:49:07 ID:pEHKB2Ig
>>131
自己レス失礼します
まとめスレではなくまとめサイトでした
そしてHNが有れば保管時にまとめるので教えて頂きたいです
私も感想を書かして頂いた者なので誰か解ってしまいましたが、その当時の名前で保管してもよろしいのでしょうか?

134シンの嫁774人目:2012/04/21(土) 22:04:38 ID:6NFXLoVI
GJです
とうとうISとのクロスも読めるなんて胸熱、甘甘で終始2828しました

135ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/21(土) 23:49:58 ID:o.P.r2kk
パソコンから失礼します。先程の小ネタを投下したものです。

>>133
保管の有無の明記、こちらの注意不足で見落としてしまい、申し訳ありませんでした。
稚拙な小ネタですが、保管していただけるのなら宜しくお願いいたします。
そして作者が誰なのかバレバレのようで……もう某所の名前を使用します。トリップってこれで良いのでしょうか?

スマホからの投稿をしたら文字化けもするし、非常に見辛い文章になってしまいました。
次回があればパソコンでしっかり書き込もうと思います。スレ汚し失礼いたしました。

136シンの嫁774人目:2012/04/21(土) 23:51:35 ID:hq3XAULc
GJ。そして久しぶりと言わせてもらおう!氏の作品は大好きで感想書かせていただいてました。

137シンの嫁774人目:2012/04/22(日) 00:11:13 ID:kUVLcOkY
>>135
投下乙!
シンとシャルの手を繋ぐ所が甘くて良かったです
そして氏のラウラの壊れ方が凄く好きですw
ただシンはラウラにもうちょっとシャルと同じ方向性で愛を与えるべき(キリッ

138シンの嫁774人目:2012/04/22(日) 02:54:41 ID:hbrEN6d.
お久しぶりです!!シンのクロスオーバーの中でも上位に好きな作品でして
更新はまだかといつも楽しみにしていました。
続きを楽しみにしてますが氏のペースでがんばってください。

139シンの嫁774人目:2012/04/22(日) 09:01:10 ID:x3ZBRN8Q
やはり氏だったか、ここであなたの作品を読める日が来るとは思わなかった。
では改めて…



ようこそ、本スレへ

140ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/23(月) 00:16:16 ID:DCj/DqvA
うわあ……拙作をお読みいただいていた方はありがとうございます。
皆様が素知らぬ顔でいらっしゃるのなら、私も『シンザン』とかメダロットっぽく格好良い名前に変えられたんですがww

さて、今度はお試し用の短編を投下させていただきます。
某所でお読みいただいていた方には懐かしい(要するにマンネリな)ネタです。
とりあえず小ネタと併せて拙作の雰囲気が多少伝わるかな、と思います。
それでは、投下します。

141ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/23(月) 00:19:29 ID:DCj/DqvA
「動物園に行くのなら冬に限る」

 銀髪の少女がきっぱりと言い放つと、同じテーブルについていた六人が一斉に驚きの声を上げた。

「夏場における水族館の雰囲気は清涼感であり季節柄の客の需要に違わんが、冬場になってしまえば清涼感は寒々しいだけだろう。逆に動物園は構造上アスファルト、鉄檻を使用することが多いが、夏場にはこれが熱を吸収し周囲の温度を飛躍的に上昇させる。夏に行くのは避けた方が良い」

 理由まで的確に読み上げる少女――ラウラ・ボーデヴィッヒに、一同は更に驚いて、口をぽかんと開ける。それもそのはず、ラウラは非常に世俗の事情に疎いのだ。
 軍という環境に身を置いていたことが原因であり、本人の責任は一切ないのだが、ともすれば世間知らずと言えるその偏った知識が周囲を振り回すことも多々あった。
 それがどうしたことか、口調はいつも通りキビキビとしていても、内容は世間一般の認識から外れていないではないか。こんな知識を誰が教えたというのか――

「ラウラ、あんたいつそんな知識を――って、ああ……そういうことね」
「そうですわね、コレもいつものことでしょう」
「そう、いつものアレだ。それ以外考えられまい」
「この前届いた荷物からかなぁ、今度の知識は」
「なんつーか、完全に“勘違いした外国人オタク”状態だな」

 発言の順番に、凰・鈴音、セシリア・オルコット、篠ノ乃箒、シャルロット・デュノア、そして織斑一夏。
 全員が疑問に思いかけたところで、すぐさま一人、また一人とその回答にたどり着き、呆れたように肩を揺らす。
 もはや分かりきった答えを貰うために、彼らを代表して一人の少年が口を開けた。

「ラウラ、それって何に教えてもらったんだ?」
「『縁〜妹〜』というゲームだ、お兄様」
「また直球なタイトルのゲームを……」

 何故か誇らしげに胸を張るラウラの横で、お兄様と呼ばれた少年――シン・アスカは、額に手を当てて、重いため息をついた。

142ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/23(月) 00:24:16 ID:DCj/DqvA
   ◇


 シン・アスカは数奇な運命を辿っている少年だった。
 それは平凡な民間人から、戦争という極限状態を生きる戦士になったこと、そして更に“異世界”に生きる人間となったことが原因だ。
 メサイア防衛戦の後、シンが飛ばされた世界は、『IS』と呼ばれる兵器が存在する世界であった。
『IS』は本来女性にしか使えないはずだが、偶然にもシンは起動に成功。多少のすったもんだがあり、ISパイロットの養成学校であるIS学園に入学することになる。
 学園内でも様々な事件が起こり、シンはほぼ全ての事件においてその渦中にいた。
 事件が原因となる問題行動が多く、良くも悪くも問題児として有名ではあったものの、退学になることもなく三ヶ月以上が過ぎた。
 未だに異世界に来た経緯は不明ながら、新しい生活に新しい仲間達。再びできた大切なものに、守りたい人たち。
 シンも違う世界での生活に随分となじみ、なんとかやってきていたのだ。

 そんなシンも夏休みを控え、仲間達とともに食堂で談笑に花を咲かせていた。
 中身は夏休みに行きたい場所というありふれたものだ。それぞれが思い思いの意見を述べ、誰かが動物園の話題に触れ――

「今日の知識はゲームからか……変なゲームじゃなきゃ良いんだけど」
「日本が誇る妹ゲームの革命作だそうだ。バスタオルを濡らすほどの感動超大作らしいのでな。まだ序盤しかプレイしていないが、縁の“妹らしさ”は非常に参考になっている」

 事態は今にいたる。このラウラ・ボーデヴィッヒ、転入当時の性格は苛烈で多くのイザコザを起こしたが、今は周囲との不和も解消し、シン・アスカを“お兄様”として慕っている。
 なぜお兄様なのか、色々要因はあるのだが、とにかくラウラはシンの“妹”という扱いである。
 ところが、ここで問題となるのが、ラウラが“妹”というものを盛大に勘違いしていることだ。

“妹とはどういうものなのか”、ラウラはドイツの仲間達に相談したのだが、送られてきた資料はなんと、『日本の本、アニメ、漫画、ゲーム』ばかり。
 それをすっかり信じ込んでしまったラウラが、世間の常識から非常に誤った“妹”になったことは言うまでもない。

「妹らしさか……なあ、ラウラ。その縁ちゃんってのはどんな女の子なんだ?」
「とても大きな病気を患っていてな、かなり深刻な状況だ」
「え、重病? それは大変だな……」
「しかし『お兄ちゃんと結婚したら病気が治る』らしい」
「そんなヘンテコな病気があってたまるかぁっ! 思いっきり嘘じゃないかっ!」
「実はお兄様、私も同じ病を抱えていて――」
「頬を染めながら大嘘をつくなああぁぁぁっ! また妙なことを覚えるんじゃないっ!」
「ちいっ、お兄様を落とすにはまだ妹ポイントが足りないようだ」

 全力かつ切実なツッコミを入れるシンと、冷静かつ甘いギャグを放つラウラ。
 この兄妹コントはわずか一月ほどで、他学年からも見物客の訪れる、一学年食堂名物の一つになっていた。
 ちなみにこのコントは新聞部がしっかりとやりとりを記録し、翌日の日刊紙『デイリーIS』に掲載されている。
 見逃した生徒も安心してネタを楽しめると、生徒間で非常に好評を博したことで、デイリーISの部数がかなり伸びたらしい。

143ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/23(月) 00:25:53 ID:DCj/DqvA

「ほんっと毎日毎日、元気で仲の良い兄妹ね」
「そろそろお茶でも準備いたしましょうか」
「おお、それならこの前出かけたときに買った美味い抹茶があるぜ?」
「ならば一夏、よろしく頼む。茶菓子はこちらで準備しておこう。ただ――」
「ただ、何だ?」
「――甘味は抜きだ」
「? まあ、いいけど。じゃあ、部屋に取りに行ってくる」

 騒がしい向かい側の席を尻目に、箒たちは落ち着いた様子である。常に会場最前列でコントを見せ付けられているので、いい加減に慣れてしまっているのだ。

「そもそも妹ポイントって何だよ、妹ポイントって!?」
「妹の実力を表す指標だ。高ければ高いほど兄に愛が伝わると、『萌える妹入門』に書いてあったが――」
「まだあの変な本を持ってたのかよっ!? もう許さないぞ、今度こそ捨ててやるっ!」
「しかしお兄様、私は既にあの本の内容を全て暗記しているぞ。一字一句、間違うことはない」
「くそっ、もう手遅れかよ……」

 しれっととんでもないことを述べるラウラに、ヒートアップしていたシンの熱気も食堂内に霧散していく。ここまで来ると怒っても無駄だと察したらしい。

「はぁ、それじゃ仕方がないか。けど、あんまり突飛なこととか、みんなに迷惑かかるようなことをしたらダメだからな」
「そう言って私を許してくれる優しいお兄様が大好きだ」
「へへっ、ラウラ、ありがとな」
「私の愛を受け入れてくれるのなら、早く風呂に入って二人で寝るぞ。愛を結晶させるのには十月十日必要だ」
「こら待てラウラ、突飛なことをするなって言ったばかりじゃなかったか? まったく……――っ!?」

 ラウラに抱きつかれながらシンは嬉しそうに笑い、彼女の頭を撫でていたのだが、刹那、背後から感じられたプレッシャーに身を震わせた。
 そして今度は背中につきたてられる、冷たく鋭いものの感覚。ぐりぐりと制服ごしに伝わる痛みが、それを与えている人間の不機嫌さを如実に示している。
 非常に恐る恐る、ゆっくりと、シンは振り返った。

「しゃ、シャル……?」
「二人とも、少しベタベタしすぎじゃないかな……?」

 果たしてシンの視線の先に、シャルはいた。
 銀に光るフォークを握りしめ、詰め物でもしたかのように頬を膨らませ、シンをムッと睨みつけていた。


   ◇


 シャルロット・デュノア――フランス代表候補生であり、ラウラと同時期にやってきた転入生である彼女は当初、その複雑な事情により男子生徒として転入し、周囲にも自分の性別をひた隠しにしていた。
 しばらくシンと同室での生活を送っていたのだが、現在は紆余曲折を経て女子生徒としてラウラと同じ部屋にいる。
 ついでにその紆余曲折が原因で、シンに比類のない好意を抱いている。詳細を書くと五万字を軽く越えるほど、長い。
 とにかく、シャルはシンのことが好きで、シンとシャルは四六時中手をつないでいるほど仲が良いのだが――まさかのまさか、シンはシャルの好意に“気がついていない”。
 シンは今や病気と言えるほど鈍く、付けられた二つ名は“ゲキニブ星王子様(命名シャル)”であることから、病気がどれほど深刻かは一目瞭然だ。

 また、問題となることがもう一つ。シンはシスコンなのである。
 ラウラが妹を名乗るようになってもあっという間にシンは順応し、彼女を溺愛していた。
 もちろんラウラが求める過剰なスキンシップはシンも叱るのだが、それでもシスコン+鈍いシンの基準は、他人からすればイチャつく以外の何者でもない。
 そしてシャルからすれば、自分のことを忘れてベタベタとする二人を見れば何を思うか。
 シンと同じようにラウラに優しいシャルであっても、恋のライバルであることに変わりはない。

 つまり、面白くない。焼きもちもそれはそれは、お腹いっぱいなほどたくさん焼ける。

「シャル、えっと……ど、どうして怒ってるの?」
「病気のせいだね、君と僕の」
「え? うわっ!?」

 シャルはぴしゃりと言い放つと、困惑するシンの手を握りしめ、自分のそばへと引っ張り寄せた。
 離さないと言わんばかりに力が込められ、指は固く絡められる。いわゆる“恋人つなぎ”というものだ。当然シンはそれを知らないボンクラなのだが。

「シャル、病気って何?」
「シンの病気は治りそうもないけど、僕の病気なら治せるよ」
「?」
「『シンが僕とずっと一緒にいてくれたら』、僕の病気は治るから。だから離れたらダメ」
「シャルまで、ラウラみたいな冗談を言わないでくれよ……」
「……じゃあ、特効薬くれる?」
「と、特効薬? ――っ!? シャル、ちょっと、ま、待ってくれよ!」

 テーブルの様子を伺っていた食堂内の生徒たちが、一斉に沸き立った。

144ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/23(月) 00:28:57 ID:DCj/DqvA
 きょとんとしていたシンの唇にシャルの人差し指が当てられ、そして今度はシャルが、その指を自分の唇にぎゅっと押し当てたのだ。
 これには流石のシンも慌てふためいた。未遂ではあったが、何度かシャルはシンにキスを迫ったことがあり、その度にサインのように出されたのがこの仕草であった。
 今までと違うのはシャルが悪戯に笑っているのでなく、膨れっ面でいることぐらいである。
 それでも、頬を赤らめてじっとシンを見つめるその顔は、他の生徒から見ても可愛かった。
 

「僕の病気、責任とって治して――」
「おのれシャルロットぉっ! お兄様の唇を奪おうとは許さんぞっ!」
「ぐええええぇっ! ら、ラウラ、く、首が……」

 当然同席しているラウラが許すはずもなく、シンとシャルの二人を引き剥がそうと、シンの首に抱きつき、自分の席に連れて行こうとする。
 シンの首もシン本人も悲痛な声を上げているのだが、残念なことにシャルもラウラも気付いておらず、目の前のライバルと口論するだけだった。

「ちょっと、二人ともー。そのままだと、あんた達の王子様が星に還っちゃうわよー?」
「鈴さん、放っておきましょう。シンさんには良い薬になりますわよ」
「アスカのことだ。たとえ星に還っても、約束だなんだと言って戻ってくるに決まっている」
「それもそっか」

 もはや日常の一コマに収まっているので、箒たちは非常にのんきであった。
 傍から見ればわたくしたちの喧嘩も同じように見えるのでしょうか。それは遠慮したいわね。今後は気を遣った方が良いだろう。
 自分たちの行動を反省しながら、用意したせんべいの封を開けている。対して痴話喧嘩は止まるところを知らなかった。
 
「最近ラウラってばシンに甘えすぎだよ! シンに抱きついて、頭を撫でてもらって! 寝る前にベッドまでお姫様だっこで運んでもらうなんて、僕はしてもらったことないのに!」
「シャルロットは一月もお兄様と同じ部屋にいたではないか! 部屋にいた時はさんざんお兄様に甘え放題だったと、噂で聞いたぞ!」
「僕はラウラほど甘えられなかったもん! 僕が女の子だなんて、シンは全然気がつかなかったし!」
「それでも手をつないでいたのだろう!? 贅沢を言うな! 私も朝から晩まで一日中お兄様と一緒にいたいぞっ!」
「僕だってもっとシンに甘えたいよっ! お姫様だっこはずるい!」
「ええい、ここでは埒が明かん! 部屋で話をつける!」

 激しいやり取りの末に、二人は糸の切れた人形のようなシンを掴んだまま部屋に戻ってしまった。
 肝心のシンが虫の息のまま、話し合いになるのであろうか。きっと明後日の方向に落とし所がつくのだろう。シン当人の意志の介在しない所で。

「みんな、抹茶たててきたんだが……シンが青い顔してたぞ? 大丈夫なのかよ?」
「ありがとう一夏。心配するな、アスカを信じろ。アイツは強い」
「シンが強いのは知ってるけどな……いくらなんでも、アレはやばくないか?」
「一夏さん、あれがあの三人の親愛の表現なのですわ」
「ほらほら、このせんべい美味しいわよ?」
「お、おう」

 腑に落ちない思いを抱えたまま、一夏は差し出されたせんべいをかじり、席に着く。
 騒動の済んだ食堂では、見物の終った生徒たちがまたがやがやと噂話に興じ始め、新聞部の部員が嬉々としてレコーダーを片づけていた。

 ちなみに、シャルもラウラもお互いの立場が羨ましいことがあるのなら『一日ぐらい立場を取り替えてみれば良いのでは?』という結論に達することになる。
 当然シンが振り回されることになるのだが……果たしてシンはどうなったのだろうか。デイリーISの記事になってしまったので、生徒達はほぼ全員知っている。

145ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/23(月) 00:41:47 ID:DCj/DqvA
以上になります。タイトル無し、本当にお試し用の短編です。
何かツッコミどころがございましたら、ズバッとおっしゃってくださると助かります。

……メダロットとシンの組み合わせって面白いですかね?
なんだかスゴイ書いてみたい気もします。KBT型ブラックビートルがヒロインで。

146シンの嫁774人目:2012/04/23(月) 00:47:41 ID:8Ip/CJBU
>>144
まさか最後に書かれてるのは私がリクエストさせて頂いた物への伏線でしょうか?そうならば感謝感謝です
シャルとラウラも姉妹みたいで仲は良さそうで良い感じです
兄妹漫才のオチは毎回ヤンデレシャル登場なんでしょうね

147シンの嫁774人目:2012/04/23(月) 01:31:08 ID:ZDBMJPdc
GJです。非常にニヤニヤして楽しませていただきました。
貴殿の作品、これからも楽しみにさせていただきたく思います。

そしてメダロットとシンの組み合わせ?
それもブラックビートルがヒロイン?
なんの問題もない。というか是非ともやって欲しいです!

148シンの嫁774人目:2012/04/23(月) 02:02:01 ID:ZgftAcOg
乙です。デイリーISの過去の漫才も拝見したいですね!
やっぱシンはこういう空気が似合うな、某六課しかり某らき板しかり
あまあまやほのぼのしていているところがいい、
また戦いになると、きちんと成長すればスパロボや他のSSみたいにかっこいい主人公に
なる。改めて考えるとこの主人公は、万能だな。

149シンの嫁774人目:2012/04/23(月) 05:10:35 ID:pPklsMeA
>>148
主人公どころかヒロインもできるからな

150ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/24(火) 17:09:25 ID:FcD5A7Tg

小ネタその2

シャル「――だからね、この答えはダメだって!」
ラウラ「何故だ? 簡潔かつ最高の答えだと思うが」
シャル「流石に先生に叱られるよ! 気持ちは分かったから、ね!?」

鈴「二人とも、今日はなーにを騒いでるの?」
セシリア「喧嘩ではないようですが、どうしましたの?」
シャル「みんな、良いところに! みんなからも止めてよ! ラウラがメチャクチャなレポートを書いちゃって――」
箒「それは……来週提出の戦術理論のレポートか?」
ラウラ「私の全てを込めたレポートだ、問題ない」
セシリア「ラウラさん、戦術理論は常に満点でしたのでは?」
鈴「まあ、今度の課題は装備もエネルギー残量も厳しい状況からの打開だったから、結構難しかったけどね」
シャル「そういうレベルじゃなくて、見たら一目でトンデモナイって分かるよ! コレ!」
箒「ほう、どれどれ……」


『――以上の条件を踏まえ、予想される今後の状況を記述せよ。

解 答

お 兄 様 が 颯 爽 と 現 れ て 私 を 守 っ て く れ る 。』


箒・セシリア・鈴「…………」

ラウラ「フン、どうだ。わずか一文で状況が全て解決するばかりか、私のお兄様への愛まで見事に集約されている。これほど完璧な解答は――三人とも、どうした?」

セシリア「箒さん、鈴さん、頼みますわっ!」
箒「任せろっ!」
鈴「了解っ!」

ガシッ!

ラウラ「な、何をする箒、鈴!? 離せ、離さないかっ!」
鈴「こんなレポートを提出させたら、あたし達まで注意されるわよ! 何よこれ!? 戦術理論なのに、理論の"り"の字も無いじゃないっ!?」
ラウラ「しかし、私とお兄様の絆は理論などものともせずに――」
セシリア「仮にそうだとしても、これでは点数になりませんわよっ!」
シャル「今ここでレポートの書き直しをさせるから! ラウラ、分かった!?」
箒「羽交い絞めにしてでも修正させるぞっ!」

ラウラ「なっ、なんだとっ!? 嫌だ、止せ、止めろぉっ! 私の愛が、絆がぁっ!? うわああああぁぁぁっ! お兄様ぁっ、お兄様ああああぁぁぁぁぁっ!」
シャル「ジタバタしないのっ! ビービー泣かないのっ!」

151シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 19:15:56 ID:AAg2la3M
ラウラの暴走は妹どうこうは関係の無いレベルに…
どれだけお兄さまラブなのか
これでシンの回答が、まずシャルやラウラを探すとかなら完璧だ


まとめサイトの方にISの独立ページを作成しました。過去作の保管等にお使い下さい
よろしければ保管の確認等もお願いします

152シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 19:47:34 ID:iX5EIP2k
ちくわヘルシー氏GJと共にお久しぶりです
続きが読めるなんて嬉しいです、シャル&ラウラも可愛いですしシンと一夏の親友っぷりも大好きです

153シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 22:22:11 ID:6WnsbFoo
ちくわヘルシー氏、GJです。
ここでまた氏の作品が見れるとは思わなかった。

願わくば、ここで某所で書いていた本編を書いてほしい…とか我が儘を言ってみたり

154シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 23:09:13 ID:GKnikd5Q
GJです。ラウラは可愛いな。

155 ◆ERINGIN5sE:2012/04/24(火) 23:23:22 ID:ZkebAfdA
このお話ではシンとISヒロインとの間にフラグが発生します。
もしそのような内容が苦手な方はスルーをお願いします。


第一話〜〜時空の向こうは不思議の学園でした〜〜

――数年前IS世界――
世界各地で白騎士事件以来の“ISらしきアンノウン”による襲撃事件が発生。各国の軍事、IS関連施設は壊滅的被害を受ける。
 各国は無用な混乱を避ける為に情報統制を徹底。
 “ある人間からの情報提供により"アンノウンを率いていた機体は髪の毛付きとガンダムと呼称されることになった。


φ


 ―― 多元世界。場所は宇宙――


「ミネルバ、こちらシン。異常なし、続けてパトロールに当たります」
(今日もこのまま何もなければいいけど)
 ジ・エーデル・ベルナル、エグゼクターシステムとの戦いの後、世界は安定にむかっていた。
 シンの所属するZEUTH――地球人緊急救援連合は人手不足である。先の戦い後、皆それぞれの役割の為にあるものは地球へまたあるものは木星や外宇宙へ旅立って行った。
 それ以外のもの達は別の地区や宙域を担当している。そしてこの宙域を担当しているのがザフト及び旗艦のミネルバである。
 (そろそろ帰投時間か、
戻ったらシャワーでも浴びて少し寝よう)
そう一息入れたその時だった。計器類からのアラートが鳴り響く。
「……! この反応まさか」
シンはデスティニーで反応のあったポイントに駆け寄る。
 「やっぱり時空転移かまた何かがくるのか?」
デスティニーの視線の先には小さいながらも次元境界線に歪みが生じていた。

 コンソールを操作し通信回線を開く。
「ミネルバ。こちらシン、
哨戒宙域にて時空転移発生。座標を送り――」
通信を遮るように再びアラートが鳴り響く。歪みが大きくなっている。
 そしてシンは気づく、これはただの時空転移じゃないと、
「まさか時空震動!?」
飲み込まれれば何処に飛ばされるかわからない。
「マジかよクソッ!」
焦りを隠すこともなくデスティニーのスラスター出力を全開にし離脱を図ろうとするが、歪みはそれを上回るスピードで規模を広げデスティニーを飲み込んでいく。
(ダメだ間に合わない……!)
「うわあぁっ!」
激しい衝撃と光に包まれるなかシンは気を失う。そして多元世界から彼だけが姿を消した。

156シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 23:26:26 ID:ZkebAfdA
「――つまり、突如敷地内に現れたということか?」

遠くで声が聞こえる。誰なんだ?
「はい、織斑先生。気づいた時には既に倒れていて、一体どこから入って来たのか、それにこのIS……」

倒れていた? 誰が?
 シンは声に導かれるようにまどろみの中から次第に意識をはっきりさせる。

 どうやら自分はベッドの上にいるらしい。
上半身を起こし辺りを見回すと二人の女性がいた。
 一人は出るとこは出て絞まるところは締まっているメリハリの効いたボディライン。そして緑のショートヘア、やや幼さの残る顔立ちに眼鏡を掛けた女性。
 もう一人はスーツの似合う背が高い鋭い目つきをした威圧感のある女性だ。

 (ここはどこだ? 俺は確かデスティニーに乗って時空震動に巻き込まれたはずだけど……)

 「目が覚めたようだな。
今から幾つか尋問をする。
お前は何者だ?」
スーツの女性が問い掛ける。立っている為かシンを見下ろす形になる所為で威圧感が増しているように感じた。

 「えっと、シン、シン・アスカです」
「何処かの組織に所属しているのか?」
シンが着ているパイロットスーツの左肩に描かれたザフトのロゴマークを見て問い掛ける。
 「はい、ザフトに」
「ザフト?」
(ザフトを知らない? それなら)
「じゃあ、ZEUTH、地球人緊急救援連合というのは?」
「聞いたことがないな山田君は?」
「いえ、私も聞いたことが……」
やや困惑気味の表情で、眼鏡の女性はかぶりをふり否定の意をしめす。

 (そんな……! ザフトもZEUTHも存在しない世界なんて……俺は一体どこに飛ばされたんだ?)
この世界は多元世界や時空崩壊とは関係ない世界ということだろうか?
もしそうだとしたら、こちらの事情を話しても信じて貰えないだろう。こんな事は初めてだ。

 「尋問を続けるぞ。なぜお前はIS学園の敷地内で倒れていた?」
 スーツの女性が質問し、シンは思考の海に沈みかけた意識を引き上げる。
 「倒れていた? 俺がですか?」
どうやらここは学園らしい。するとこの二人は教職員だろうとシンは考える。
 「他に誰がいる? お前は学園の敷地内で倒れ、気を失っていた。」
(そんなバカな!)
シンは気を失う直前まで確かにデスティニーのコックピットにいた筈である。

157シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 23:28:46 ID:ZkebAfdA
 何かの拍子にコックピットから弾き出されたのかとも考えたが、いくらシンといえどもそんな事になれば無事では済まない。
 「それが、俺にもよくわからなくて気がついたらベッドの上だったんで……何でこんな事に……」
嘘は付いていない。デスティニーのコックピット内で気を失い目が覚めたら見知らぬ天井だったのだから

 (とぼけている様子は無さそうだな……少なくとも“何故自分がここに居るか”についてはだが)
何故ここに居るか分からないと言うことは何かしらの目的があってここに侵入してきた訳ではないということか
スーツの女性はおおよその推測を立てる。

 (そういえばデスティニーはどうしたんだ?)
転移する時機体ごと歪みに飲み込まれた以上デスティニーも在るはずだとシンは考えた。
「あの、俺が乗ってたモビルスーツは?」
「モビルスーツ? 発見した時はお前とこのIS以外、何もなかった筈だが」
 スーツの女性が手に持ったピンク色の携帯電話を見せる。それは確かにシンの持っていた物であった。
 「何でアンタがそれを持ってるんだ?」
それはシンの大切な妹の形見である。
 幾ら尋問されている身とはいえ他人に触られるのは気分のいいものじゃない。
 シンは怒気を孕みつつスーツ姿の女性に問い掛ける。
 「そう睨むな。倒れていたお前の近くに落ちていた」
「そ、そうだったんですか、拾ってくれてありがとうございます」
シンはばつが悪そうに礼を言う。
 (ところで、ISって何だ? 携帯の事を言ってるようだけど)
「あの、携帯返して貰っていいですか?」
疑問は増すばかりだが、とりあえず形見の携帯を返して貰おうと手を伸ばす。

 「ああ、だがまた後で見せてほしい」
そう言ってスーツの女性は携帯を差し出す。
 二人の手が携帯越しに重なった瞬間、シンの頭の中に大量の情報が流れてきた。シンとこの世界を融合させ統合性を図るかのように
 「どうかしたのか?」
スーツの女性の声でハッと気づく。
「あ、いえ何でもありません」
(――!何だったんだ今のは?)

158シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 23:30:27 ID:ZkebAfdA
シンは平静を装いつつ携帯を受け取る。正直内心気が気でない上に、頭が割れそうだったが唐突に、漠然にこの世界の事を理解した。

IS〈正式名称インフィニット・ストラトス〉
 元は宇宙空間での活動を想定されたマルチフォーム・スーツであるが後にパワードスーツとして軍事転用されその圧倒的な性能により各国家の抑止力となった。
 女性にしか扱えずそれ故に女尊男卑の風潮が広まった世界。それがこの世界の成り立ちだ。

 シンの元居た世界にもパワードスーツは存在していたが――グティと呼ばれる物で、こちらは後にモビルスーツに取って代わられた為今では殆ど使われない――それとは比べ物にならないほどのスペックをISは有していた。

 (あのサイズでモビルスーツ並の戦闘能力か……そういえばこの携帯のことをISって言ってたけど)
 「あの、この携帯がISって本当ですか?」
「本当ですよ。アスカ君は知らずに持ってたんですか?」

 眼鏡の女性が答え、問い掛ける。スーツの女性はいつの間にか退室したようだ。
「ええ、まあ……」
(これがISだって!?)
 俄には信じられないがこの世界の人間がそう言う以上事実なのだろう。転移してから――携帯が――ISになったのかその前からそうだったのか分からないが
 「それで、ちゃんと調べたいからその携帯を見せて欲しいんだけどダメかな?」
眼鏡の女性が詰め寄り――ベッドの上に座っているシンの目線に合わせる為――両手を膝に当て前屈みの体勢で聞いてくる。
その所為か大きく開いた胸元から谷間が見えた。谷間だけでなく薄い青色のブラも……シンは慌てて視線を逸らす
 アンタそれ絶対服のサイズがあってないだろ! とも言えずシンはどうしたものかと考える。
ISとはいえ妹の形見であることに変わりはない。だからといってこのままでは埒があかないのもまた事実。

 不意にドアの開く音がする。スーツの女性だ。
「山田君、許可が下りた。そっちはどうだ?」
「それが……まだ……」
「あの、許可って何ですか?」
「お前のISを分析するのにラボを借りる許可だ」

159シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 23:32:07 ID:ZkebAfdA
(最初から調べる気満々じゃないか……)
「分かりましたよ」
ため息をついてシンは携帯をスーツの女性に渡す。
 「なんか凄く大事なものみたいなのにごめんなさい」
眼鏡の女性が申し訳なさそうに頭を何度も下げる。
「気にしないで下さい。俺も何でこいつがISになってるのか気になるんで」
どちらにせよ侵入者である自分に選択権など無いことはシン自身が一番よく分かっていた。

 「そういえば、こちらの自己紹介がまだでしたね。私は山田真耶って言います。そしてあちらの方が――」
「織斑千冬だ。ここで待っていろ。
鍵は掛けさせてもらう悪く思うな」
千冬はそう告げ真耶と一緒に退室する。

 (どのくらい待てばいいんだ……?)
 
とりあえず今は二人を待つことにした。


Ф


「山田君、奴をどう思う?」
二人は別室のラボへ向かっていた。
「アスカ君のことですか? 悪い子には見えませんでしたけど」
 「そうか……」
(……先ほどのあれは何だ?)
“先ほどのあれ”というのは、シンに携帯を渡し二人の手が携帯越しに重なった時のことである。
 シンがこの世界の情報を得たように千冬もまたシンのもと居た世界――多元世界――のことを唐突に漠然とだが理解していた。
 故にシン・アスカが悪い人間ではないということは千冬にも分かっていた。
 (どちらにしろ全てはこのISを調べてからか)
そうこう考えてる内にラボへ着く。二人はカードキーを通し中に入る。

160シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 23:33:23 ID:ZkebAfdA
 「不明な部分が多すぎますね。」
携帯を解析器にセットしコンソールを操作しながら真耶が千冬に話しかける。
 解析に掛けてみた結果ある程度までは分かったがコア以外にも所々解析不能な部分があった。
 「解析不能な部分には未知のテクノロジーが使われているみたいですね。
それにデータの一部が欠落しているみたいで……」
「もう少しだけ続けよう」
千冬も解析に加わりコンソールを操作すると、突如目の前のモニターが切り替わる。

(これは……OSか?)


MOBILE SUIT NEO OPERATION SYSTEM

Generation
Unrestricted
Network
Drive
Assault
Module
G.U.N.D.A.M

――Ver.2.5.3 Rev.07――
Z・A・F・T


(ガンダムだと!?)
OSのイニシャルを見た千冬は、目を見開き驚愕する。ガンダムという言葉に心当たりがあるからだ。

「織斑先生、どうしたんですか?」

「……いや、何でもない」
(このISは“あの事件”と何か関係があるのか?)
 あの事件とは、織斑千冬が現役引退前に起きた今では知る者が殆どいない隠蔽された事件。
 その中心にいたISらしきアンノウンの中にガンダム――上層部による呼称――と呼ばれる存在があった。

 (偶然にしてはできすぎている……)
恐らくシン・アスカはこの事件に関係してない。だが、ガンダムというISがここにある以上ただで帰すわけにはいかない。
 「あいつはこれがISだと知らなかったそうだな」
「はい、そうみたいです」
 腕を組み、顎に手を当て考える。

 「山田君は引き続き解析を頼む。私はシン・アスカの尋問を再開する」
思考を終え、そう告げると千冬はラボを退室した。

161シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 23:34:51 ID:ZkebAfdA


Ф


シンは改めて自分の居る部屋を見渡す。あるのはまる椅子二つと自分が腰掛けているベッドのみ。なんとも素っ気ない部屋であった。

 (問題はどうやって帰るかだよなぁ)
この世界が多元世界とまったくの繋がりが無いなら、此方から帰るのはほぼ不可能だろう。向こうからの接触を待つしかない。
 可能性としては特異点センサーに引っかかるのを待つしかないというのが現状である。
 まだ幾つか気になることはあったが――携帯を受け取った時にこの世界の情報を得た事など――
 ドアの開く音によってシンは思考を打ち切る。ドアの前には千冬だけが立っていた。
 「何か解りましたか?」
預けているのは妹の形見である。シンとしては出来れば早く返してもらいたい

「済まないが、もう少しだけ調べさせてくれ」
「そうですか……」
仕方ないのは分かっているがやはり落胆してしまう、落ち込むシンを見かねてか千冬が告げる。
「終わったら必ず返す。心配するな」
 「ここに来たのはお前に見せたい物があるからだ」
「見せたい物? ですか……」
「付いて来い」


「あの、ここって」
着いた先は、暗いモビルスーツデッキのような場所。自分達以外、人の気配が感じられない。不意に明かりが灯り、何かがシンの目に留まる

「あれって……ISですか?」
「訓練用だがな、これに触れてみろ」

第二世代型IS打鉄。それは両肩に大きな盾を纏った鎧武者のような姿をしていた。

 「でもISって女性にしか反応しないんじゃ――」
「既に前例はある。やってみろ」
前例とは千冬の弟、織斑一夏のことだ。
 前例がある以上、試してみる価値はある。それに本人が知らなかったにせよシンはISを所持していた。
何かあると千冬の勘が告げていたのだ。

 「ハア、わかりましたよ」
 シンはどうも納得いかない様子で答え、打鉄に触れる。すると打鉄は淡い光を放つ
 「嘘だろ? こいつ動くのか?」

162シンの嫁774人目:2012/04/24(火) 23:36:46 ID:ZkebAfdA
 狼狽するシンをよそに千冬は思考を巡らせる
(さて、問題はここからだ……)
「もういい、手を離せ」
「あ、はい」
シンが手を離すと打鉄は沈黙した。
「あの、俺、自分がISを動かせるなんて知らなくって」
シンは焦りを隠さずに言う。まさかこの世界の人間でもない自分に反応するなんて思ってもみなかったのだから
「ああ、知ってる。お前がこの世界の人間でないことも含めてな」
「な、何でそれを!?」
「お前に携帯を返した時、
私の頭に直接情報が流れ込んできた。お前もそうなのだろう? 最もあれがISの能力かお前自身の能力かまではわからんがな」
シンはあの時か! 情報を得たのは自分だけではなかったのかと、思い返す。
「そこでお前に提案があるこの学園に入学しろ」
「入学ですか……でもいいんですか? 俺何かが……」
「貴重な男のIS操縦者だ。それにお前のISには解析不能な部分が多すぎてな、データが欲しい。どうせ他に行く宛てもないのだろう?」
確かにこの世界に来たばかりのシンに行く宛てなどない。
ならば闇雲に移動するより一カ所に止まり迎えを待つ方がいい。
「分かりました。あの、よろしくお願いします」
こうしてシンはIS学園に入学することになった。

163 ◆ERINGIN5sE:2012/04/24(火) 23:39:31 ID:ZkebAfdA
以上です。
できればまとめの方に保管をお願いします。

164 ◆ERINGIN5sE:2012/04/24(火) 23:55:55 ID:ZkebAfdA
すいません。作品名を忘れてました。
タイトルはスーパーIS学園Zデスティニーです。

165シンの嫁774人目:2012/04/25(水) 01:16:02 ID:EBoSqj0E
乙です
スパロボZ版のシンは大人気だけど、いざSSとなると書く人が全然いなかったので期待してます
それにしてもZの世界観は便利だ
なにしろ、どんな人物や兵器が転移してきても時空震動の一言で全部解決するし
第二次以降だと、次元獣という敵として便利な存在もいるし

166シンの嫁774人目:2012/04/25(水) 02:50:26 ID:42LDNamo
GJです。あなたの作品は某所でも読ましてもらいました。
スパロボZのシンは、まさにリアル男主人公でしたね。
第三次はBGMに覚醒シン・アスカがほしいな。

167シンの嫁774人目:2012/04/25(水) 21:15:29 ID:L6DVogYo
>>163
某所で読んでいたが「スパロボZのシン」と言う点が全く活かされていなくて
全くもってつまらない文字束以下だった。
ここではそんな風にならないようにして貰いたい

168シンの嫁774人目:2012/04/25(水) 22:06:11 ID:d5LVRJzg
>>167
テンプレ読め

169シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 00:54:01 ID:fkUD3wSw
>>163
新職人さん乙
スパロボZの設定は便利な反面、本格的にやり出すと大作になりすぎる恐れがあるから匙加減が結構難しそう
とりあえずシンの数年前に既に来ていた謎のガンダム達との関わりが本筋になるのかな
スパロボZ参戦済みの連中なのか、それとも未参戦のガンダムなのか、早くも気になる

170ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:31:03 ID:tHctP/vs
想像以上に拙作を読んでくださっていた方が多いようで……うわあ、むずむずするww
皆様、とにかくありがとうございます。

>>151
保管の確認をいたしました。本当にありがとうございます。

>>163
お久しぶりです。氏の作品に影響を受けて、自分は筆を執りました。
再び続きが読めることを、私も非常に楽しみにしています。


さて、これだけでは何なので、小ネタ3の投下をいたします。

171ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:32:41 ID:tHctP/vs

カチャカチャ……

シン「よっし……できた、っと」
一夏「そんじゃ早速、スイッチを入れて試運転を――」

ガチャッ。

箒「二人とも、入るぞ――今日は何をしている? 機体の整備か?」

一夏「よう、箒。ほらほら、こっち来て見てくれよ、コレ」
シン「整備じゃなくて、ちょっとした工作なんだけど」
箒「工作とは、この丸い機械のことか? そっちは白色で、あっちは赤色だが」
一夏「ペットロボットの『ハロ』っつーんだ。雑誌に作り方が書いてあったし、プログラムソフトも付録で付いてたからさ。整備課から材料と工具借りてきて、シンと二人で作ったんだ。ほら、可愛いだろ?」
箒「やけにはしゃいでるな、どうした?」
シン「なんかハロを雑誌で見つけてから、ずっとこの調子なんだ」
一夏「俺にも分かんねーけど、妙に気に入ってなあ。どうしてだろうな? 懐かしい感じがして、部屋とか廊下とか連れまわしたくなるんだよ」
箒「なるほどな……しかしアスカ、お前はなぜ浮かない顔をしている?」
シン「……なぜだか分かんないけど、元上司の顔がチラつくんだ。関係ないはずなのに」
箒「?」
一夏「いいから早くスイッチ入れてやろうぜ? それ!」カチッ!

……コロ、コロコロコロ。

箒「おお、動いたぞ」
白ハロ『ハロ、ハロ。バナージ、元気カ?』
シン「バナージぃ?」
一夏「うがっ、いきなり俺の名前を間違えてやがる……。バナージじゃないぞ、俺の名前は一夏だ。いーちーかー。はい、りぴーと、あふたー、みー」
白ハロ『ハロ、ハロ。一夏、一夏』コロコロコロコロ
一夏「そうそう、その調子だ」
箒「驚いたな、コレはしゃべるのか?」
シン「ちょっとしたAIを積んでるんだ。それなりに会話できるみたいだな」
箒「ほう、そうなのか」
一夏「ハロ、あっちが箒だぞー。んであっちがシンだぞー」
白ハロ『ハロ、箒。ハロ、シン』
箒「……ロボットに名前を呼ばれるとは変な感じがするな。あっちの赤色のはアスカの分か?」
シン「ああ、簡単な性格設定もできるみたいだから、少しいじってたんだ。俺の方が早く作り終わっちゃったし」
一夏「いったいどんな性格にしたんだ?」
シン「うーん、性格は複数作ってみたけど……すっごく適当にやったから、どうなってるかは分かんない。とりあえず工具を返してくるから、二人でちょっと試しててくれよ」
一夏「おう、了解だ」
白ハロ『オ土産ヨロシク頼ムゼ、シン』
シン「ははっ、分かったって」

ガチャッ、パタパタ――

箒「待て、私まで一緒に試すのか?」
一夏「まあまあ良いじゃねーか。面白いだろ?」
白ハロ『箒モ一緒ダ、箒モ一緒ダ』コロコロ。
箒「まったく、仕方がないな。付き合ってやるか」

172ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:34:41 ID:tHctP/vs

一夏「さーて、それじゃあ最初のヤツを試しますか」カチッ!
箒「簡単なAIなのだろう? それほどの違いは――」

赤ハロ『トゥ、ヘアーッ! モウ止メルンダッ! モウ止メルンダッ!』ピョン、ピョン。

一夏「……なんだ、このハイテンションなのは」
箒「しかも言っていることの意味が分からんぞ」
赤ハロ『シン、コノ馬鹿野郎ッ! バカヤロウッ!』
白ハロ『何言ッテンダ、コイツ』
一夏「これは絶対にミスだな、うん」
箒「さっさと次のヤツに行くとしよう」カチッ!
赤ハロ『俺ハ……焦ッタノカナ……』シューン…

箒「まったく、騒がしい性格だった」
一夏「何だったんだかなあ。まあ、設定を変えて、次だ次」カチッ!

赤ハロ『ハーハッハッハッ! モウ誰ニモ止メラレンサッ!』ピョン、ピョン。

箒「一夏、次に行くぞ」
一夏「ガッテンだ」カチッ!
赤ハロ『無駄ダッ! 抗ウカッ……!』シューン…

箒「……コメントをするのも嫌だ。次はマトモなんだろうな?」
一夏「……流石に三度目なんだから大丈夫だろ」カチッ!

赤ハロ『全機抜刀ッ! 突撃ッ!』ピョン、ピョン。

箒「どこへでも行ってしまえっ!」カチッ!
赤ハロ『ダガ覚エテオケ! ソノ一撃ガ穿ツモノハ……』シューン…

箒「もういい、私は部屋に戻る」
一夏「ちょ、待てって、箒。最後まで試してみないと――」
箒「断言するが、マトモなものは絶対にないっ! 私の勘がそう告げているっ!」
白ハロ『箒、落チ着ケ、落チ着ケ』
一夏「まだまだあるんだから、一つくらいは平気なのが……あったら良いな」


赤ハロ『変ワラナイ明日ハ嫌ナンダッ!』

赤ハロ『生キルホウガ、戦イダッ!』

赤ハロ『キーシャーマーッ!』

赤ハロ『狙イハ完璧ヨッ!』

赤ハロ『許シマセンヨ、ギルヲ裏切ルナンテコトッ!』


箒「私は部屋に戻る。気にするなというのが無理だ。私は戻る」
一夏「ま、待ってくれよ、箒。もう残り一つだから、な? な? な?」
箒「離せ、嫌な予感がする」
白ハロ『スイッチ、オン』カチッ!
箒「待て、勝手にスイッチを入れるな――」

173ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:37:13 ID:tHctP/vs

……コロ、コロコロコロ。

赤ハロ『ハロ、ハロ、一夏、箒』

一夏「おおっ! 最後にマトモなのが来たっぽいぞ!?」
箒「……確かに、コレならな」
赤ハロ『トモダチ、トモダチ』
白ハロ『トモダチ、トモダチ』
一夏「うん、こっちのハロとも仲良くやってるし、大丈夫だろ」
箒「しかし、今度はどうして普通なのか――」

赤ハロ『ハロ、守ルカラ。ミンナ守ル、約束スル』

箒「なんだ、作った奴に似ただけか」
一夏「設定をいじると、そうなるのかもな」
箒「ラウラとシャルロットには作らせない方が良さそうだ。あの二人に似たとしたら、何をしでかすか分からん」
一夏「あー、確かに。なんか大暴れしそうだな」
箒「騒動の一つには確実になるだろう。そして私達がとばっちりを食らうのも確実だ」
一夏「ははは……そう言えば、シンのやつ遅いな。もうとっくに戻ってきててもいい頃なんだが」

ガチャ。

シン「ただいま、遅くなってゴメン」
箒「やれやれ、ようやくか」
白ハロ『オカエリ、オカエリ』
赤ハロ『オカエリ、オカエリ』
一夏「シン、お帰り。何かあったのか?」
シン「ん、実はさ。途中でラウラとシャルに会って、ハロの話をしたんだ。それで――」
箒「まさか……アスカ、お前――」

シン「二人もハロを作りたいって言ったから、ちょっと手伝ってきた。性格も変えてみるらしいから、まず俺のがどうなったかを確認しに――」

箒「こんの馬鹿者がああああああぁぁぁぁっ!」ダダダダダダッ!
シン「へ?」
一夏「と、とりあえず二人を止めに行った方が良さそうだな。ハロ、行くぞ」タッタッタ。
シン「え?」
白ハロ『一夏、待ッテクレー』
シン「はい?」

ポツーン。

シン「……ハロ、俺って何か悪いことしたかな?」
赤ハロ『気ニスルナ、俺ハ気ニシナイ』
シン「はあ……」


余談。
結局この後ラウラとシャルがそれぞれハロを完成させるが、二機ともすぐに逃亡。整備課を占領して仲間を増やし、食堂でシンを取り合う全面戦争を始めてしまう。
赤ハロはシンを庇って犠牲になり、さらにこの騒動が原因でハロが学園内で全面禁止に。
一番泣いたのは、ハロを気に入っていた一夏だったそうな。


おまけ、没になったシャルっぽいハロ。

ハロ『ハロ、ハロ。シンハドコ、ドコ?』
箒『……アスカなら、まだ帰ってきていない』
ハロ『シンイナイ……サミシイ、サミシイ……』コロコロコロコロ。
箒「さっきまでの性格より随分と大人しくなったな」
ハロ『シン、約束シテクレタ。ズット一緒ニイテクレルッテ……』コロコロコロコロ。
箒「しかし……シャルロットにそっくりなのは気のせいか?」
ハロ『シン、好キ、大好キ。ズット一緒、ズット一緒。大好キ、大好キ』コロコロコロコロコロコロコロコロ。
箒「……どうしてこうなった」

174ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:43:25 ID:tHctP/vs
以上になります。スレ汚し失礼いたしました。
とりあえず小ネタ、短編は設定流用した妄想文なので、本編と直接絡むようなものではありません。
ノリと雰囲気だけお楽しみいただければ幸いです。

肝心の本編は……申し訳ありません。ただ今一から改訂中です。アレをそのまま載せるのはちょっと……
こちらに投稿する場合、書き直してから投稿させていただきたいと思っております。

では、失礼します。

175シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 01:56:06 ID:JqNHmmUU
シャルハロからヤンデレの気配がする…
ラウラハロも容易に想像できるな

シンに対するツッコミとしてレイハロだけでも置いとく価値はありそう

176シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 02:01:18 ID:fkUD3wSw
シャルハロとラウラハロは恐ろし過ぎるだろw
危うく、人類vsハロの壮絶な全面戦争が勃発するところだったな……

177シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 04:29:31 ID:YjnSgki2
GJです。あれですね!VガンみたいにISの操縦のサポートをしてくれるんですね!

178シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 19:01:42 ID:ztJC78XI
>>176
束ハロ軍団に私生活を蹂躙されるシンと教官な電波がですね

179シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 23:25:33 ID:vggLJ00k
何でだろう。氏のラウラからは某yagamiと同じ匂いがする

氏の作品のシャルとラウラなら本スレメンバー入りしても空気入りしない気がする

180シンの嫁774人目:2012/04/27(金) 01:45:55 ID:CbO4ZF9Y
>>173のおまけネタからラウラハロも

ハロ『ハロ、ハロ。セシリア、鈴』コロコロ。
セシリア「……この丸い物体は何でしょうか?」
鈴「おもちゃのロボットじゃない? 誰がこんなモノを持ち込んだのかしら――」
ハロ『オ兄様ハドコダ、オ兄様ハドコダ』コロコロ。
鈴「うん、ラウラ以外考えられないわね」
セシリア「シンさんでしたら、こちらにはいませんわよ?」
ハロ『オ兄様イナイ、胸ガ張リ裂ケル、涙ガ止マラナイ、壊レテシマウ』コロコロコロコロコロコロコロコロ。
鈴「うわ、反応がラウラそっくり」
ハロ『ドコダッ、オ兄様ッ。オ兄様ッ、オ兄様ァ――ッ!』ピョン、ピョン。

コロコロコロコロ……――

セシリア「行ってしまいましたわ」
鈴「? セシリア、向こうからまた何か来るわよ?」

――……コロコロコロコロ。

ハロ『シンハ僕ト一緒。約束、約束、ズット一緒。大好キ、離サナイ、渡サナイ』

コロコロコロコロ……――

鈴「…………」
セシリア「…………」
鈴「私は何も見なかった、見なかったんだから」
セシリア「そうですわね、わたくし達は何も見ませんでした」

181シンの嫁774人目:2012/04/27(金) 12:18:17 ID:h4LWA5oU
>>167
一つだけ言わせてくれの精神で生きてると色々疲れるぞ

182シンの嫁774人目:2012/04/27(金) 12:44:27 ID:PnrtiV82
>>180
二人(二機)とも病んでる…
理性が無く欲望が解放されたら二人共こんな状態になるんだろうな
ところで名無しですけど、ちくわヘルシー氏ですか?

183シンの嫁774人目:2012/04/28(土) 19:49:18 ID:Y0SiPQiY
>>182
コテはつけてませんが、一応そうです。

184ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/11(金) 02:37:53 ID:4H1vMymE
小ネタ4

ザアアアアアアアアアア――

ラウラ「ちっ、買い物の帰りに夕立とは……運が悪い」
シャル「雨が降るなんて聞いてなかったからね、傘も持ってきてないし……」
ラウラ「傘を買って帰るか?」
シャル「これだけ降ってると、雨が止むか弱まるのを待ってた方が良いんじゃないかな」
ラウラ「それもそうだな。仕方がない、少し雨宿りをするか」
シャル「じゃあ、そこの喫茶店に入ろうよ」

   ◇

シャル「あちゃあ、全然弱まる気配がないや……」
ラウラ「かれこれ一時間だ。いくらか濡れるのを覚悟するしかなさそうだ」
シャル「荷物だけは濡らさないようにしないと。せっかく服もたくさん買ったんだから」
ラウラ「とは言うが、せめてもう一人はいないと厳しいぞ――」

――カラン、カラン。イラッシャイマセー

シン「良かった、二人ともここにいたんだな」
シャル「え、シン!?」
ラウラ「お兄様!? 迎えに来てくれたのか!?」
シン「ああ、傘持って行ってなかっただろ? 中々帰ってこなかったし、多分足止め食らってるはずだって思ってさ」
シャル「でもシン、そんなに濡れて……」
シン「ちょっと走ってきたから濡れたかも。まあ、俺のことは気にしなくていいって」
ラウラ「お兄様……私のためにそんな姿になってまで……」
シン「ほら、みんなも心配してるから。二人とも、早く帰ろう」
シャル「……うん! シン、ありがとう!」
ラウラ「お兄様! 帰ったら部屋に来て私をメチャクチャにして良いぞ!」
シン「帰ったら部屋に行ってメチャクチャに説教だ!」
シャル「はいはいラウラ、冗談が過ぎるとシンが雷を落とすからダメだってば」
ラウラ「むう……私の愛も未だに雨模様か」

   ◇

ザアアアアアアアアアア――

シン「荷物はなるべく俺が持つよ。はい、これが二人の分の傘」
シャル(……まあ迎えに来てくれるぐらいだから当然だけど)
ラウラ(……私達の分の傘は用意しているわけだ)
シャル(……シンと相合傘……)
ラウラ(……お兄様と相合傘……)
シン「? 二人とも、傘を握りしめてどうかした――」
シャル「ていっ!」バキッ!
ラウラ「フンっ!」バキッ!
シン「……はい?」
シャル「ゴメンねシン! 傘が壊れちゃったよ!」
ラウラ「すまないお兄様! 傘が壊れてしまった!」
シャル「だからシンの傘に入れてくれないかなっ!?」
ラウラ「だからお兄様の傘に入れてくれっ!」
シン「……俺にはシャルもラウラも傘を"壊した"ようにしか見えなかったんだけど」
シャル「ちょっと力が入り過ぎちゃって! 本当にゴメンね!」
ラウラ「お兄様、日本の傘は脆いのだな! 私は知らなかったぞ!」
シン「……いくら丈夫な傘でも、真ん中からわざと"へし折られたら"意味ないって」
シャル・ラウラ「「そんなことは! してな……い……?」

シン「あ、ちょうど良く晴れてきたな。良かった良かった」
シャル・ラウラ「「…………」」
シン「シャル、ラウラ。また降り出さないうちに行こう」
シャル「……ねえ、シン。その前に傘を広げてくれないかな?」
シン「え? けど、もう雨も止んだし……」
ラウラ「……お兄様、私からも頼む」
シン「? まあ、いいけど……」バッ!

シャル「僕はこっち!」ギュッ!
ラウラ「私はこっちだ!」ギュッ!
シン「えっ!? 二人とも何を――」
シャル・ラウラ「「 相 合 傘 ! 」」
シン「べ、別に傘に入る必要なんてないだろ!?」
シャル「ダメっ! このまま帰るからねっ!」ギュゥーッ!
ラウラ「帰るまでこの腕は離さんっ!」ギュゥーッ!
シン「でも――」
シャル「 ダ メ っ ! 」ギュゥーーッ!
ラウラ「 離 さ ん っ ! 」ギュゥーーッ!
シン「……分かったから! 分かったから早く帰るぞ! まったく――」ブツブツ…
シャル「……えへへっ」ギュゥ。
ラウラ「……ふふっ」ギュゥ。

185シンの嫁774人目:2012/05/11(金) 03:00:45 ID:Z/dUZQAo
この二人・・・マジ存在感が圧倒的すぎるw

186シンの嫁774人目:2012/05/11(金) 11:32:17 ID:Q0Suuqi2
GJ
甘くて2828してしまうなぁ

187 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/11(金) 17:22:45 ID:4H1vMymE
 超嘘予告。

 メサイア攻防戦から二年が経っても、世界から争いが消えることはなかった。
「自分たちの力が争いを生むのではないのか」「力はただ力でしかないのか」
 シン・アスカは親友とまでなったキラ・ヤマトと共に、兵器という力に頼ることしかできない現状を悩み、それでも戦い続けていた。
 そんなある日、敵の攻撃からキラをかばったことで愛機『デスティニー』が損傷し、宇宙空間を漂流することになってしまう。
 生存の可能性は絶望的、漆黒の宇宙に意識が消え、孤独な死へと近づいていく。
 しかし運命は死を選ぶことをしなかった。
 機体に迫っていく巨大な円盤。光がデスティニーを包み込み――

 一方、近未来のある星の遺跡に、金魚鉢のようなヘルメットをかぶった集団がいた。
 彼らはロボロボ団。この星に存在するロボット『メダロット』を悪事に使う秘密結社……だった。
 組織が解体され、行き場のなくなった団員達。このままヘルメットを脱ぐしかないのかと、途方に暮れていた。
 その時、ある団員が、『願い事が叶うおまじない』として小銭を遺跡の泉に投げ込んだ。
「神様でも仏様でも宇宙人でもいいから、どうか自分達を助けてくれ」
 団員全員の心が一つになった時、遺跡の上空に円盤が現れ――
「だああああああああああっ!」
「ロボおおおおおおおおおッ!?」
 救世主となる宇宙人が、空から降ってきた。

   ◇

 拾った宇宙人の勘違いで、シンは良く似た別の惑星に降ろされてしまう。
 そこで金魚鉢集団に頼まれたのはなんと、『秘密結社の首領になること』であった!
 行く当てもなく仕方がなしに、新生ロボロボ団――D・ロボロボ団の総司令になってしまうシン。
 気難しいのが見事に揃った、一癖も二癖もあるパートナーメダロット達。
 意外に気がよく、根は良い子でかなーり間抜けな団員達。
 セレクト隊の相手に、旧ロボロボ団との激戦。更には古代メダロ人の秘密にまで迫り!
 そして「メダロットもただの道具・兵器なのか」、悩むシンの出す答えとは――
 今ここに、シン・アスカの新たな戦いが始まる!
 
『メダロット・DESTINY』
 
 執筆予定……今のところなし。

188 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/11(金) 17:26:55 ID:4H1vMymE
 おまけ、ヒロイン候補メダロット達。

 その① KBT−3Y型『ブラックビートル』
 性格は苛烈で我が非常に強く、おまけに結構短気で口も悪いです。
 しかし一度信頼関係が結ばれれば、お互いに最高のパートナーとなれるでしょう。

 サンプル台詞
「フン、お前に指図されるいわれはない」
「指示を出せ、シン。お前と私で、アイツに勝つぞ」
「パートナー、か……お前はいつか、私を置いていくのにか……?」


 その② KWG−3Y『ブラックスタッグ』
 クールかつかなりの皮肉屋で、中々シンに心を開いてはくれないでしょう。
 ただしパートナーになった際の信頼の深さは随一となるはずです。

 サンプル台詞
「指示はいらないわよ、一人で勝てるもの」
「シン、指示は頼むわよ。信じてるから」
「私とあなたは平行線。いくら隣に立てても……道は決して交わらない」


 その③ SLR−1X『セーラーマルチ』
 温和で候補中一番の常識枠ですが、実は人見知りするところがあります。
 良好な関係になったら様々な面を見せてくれる、純粋で可愛い子です。

 サンプル台詞
「私ががんばります。無理はしないでくださいね」
「勝てますよ、シンさんの指示があるんですから!」
「メダロットだって、恋をするんですよ? 『心』があるんですから……」


 その④ CAT−1X『ペッパーキャット』
 KBT並みの気の強さで、最初のうちはシンに非常に苦労をかけます。
 ただし懐いてさえくれれば、本物の猫と同じぐらいベタベタしてくれるでしょう。

 サンプル台詞
「あんた、余計なこと言って足を引っ張らないでよね」
「シン、早く指示を出しなさいよ! ほらほら、早くしてってば!」
「あたしはメダロットで、アイツはヒト……涙はあたしだって流すのにね」


 その⑤ VAL−0XNF『ノエル』
 大変真面目ですが固い性格をしていて、あまり融通が利きません。
 それでも剣を捧げてもらえれば、シンの絶対の騎士として大活躍してくれます。

 サンプル台詞
「下がっていてください、危険です」
「指示をください。この剣、この盾、この身はシン……あなたのためにある」
「私は騎士として失格だ。忠義は守れても……あなたへの思いを、押し殺せない」


 その⑥ DVL−3X『ブロッソメイル』
 子供らしく無邪気ですが、暴走具合は他と比べ物にならないでしょう。
 しつけが成功すると、非常に健気かつ甲斐甲斐しくシンを助けてくれる良い子になります。

 サンプル台詞
「アハハ、暴れるぞ〜っ! アハハ、アハハハハハハッ!」
「シン、シン! ボク、良い子だから、シンの言うこと聞くよっ!」
「ボク、どうしてヒトじゃないの? ボクがヒトだったら、シンもボクのこと……」

189 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/11(金) 17:39:05 ID:4H1vMymE
以上、トチ狂った頭での妄想でした。

……ええ、どうせ私はメダロットにまでハァハァする変態ですよ。
ゴッドイーターでもアリサよりサリエルタソに萌える変態ですよ。

……笑えよコンチクショウ……

190シンの嫁774人目:2012/05/11(金) 17:50:24 ID:avbS/zjM
いや、その……俺に笑う資格無いし?
(部屋を埋め尽くす神姫やフェアリオンとかアイギスを見ながら

191シンの嫁774人目:2012/05/12(土) 12:09:15 ID:ObfzDgIM
自分もメダロットしてましたね、今思えばごり押しばかりしてました

192シンの嫁774人目:2012/05/12(土) 21:56:35 ID:0g4U/MGI
これは是非とも続きを読みたいので是非書くべきそうすべき

サリエルタソprprとか普通ですよ普通
ねーアマテラスタソにヴィーナスタソ

193シンの嫁774人目:2012/05/12(土) 22:21:22 ID:7P8TD7IM
メダロットは知らないが結構面白そうだし続きplz

とりあえず私にはあなたの事を笑えないね、ベクトルは違えど性癖アレだから
例えば蛇女に巻かれたいとかそういうの

194シンの嫁774人目:2012/05/12(土) 22:52:01 ID:555m2pp2
メダロットは漫画版も名作揃いでした。
ほるま版の神・原作は言わずもがな、藤岡版も意外とテーマは深いんですよね。
嘘予告だそうですが、別に書いてもいいんじゃよ?

ところで……何故にヒロイン候補にナース型とエンジェル型とマーメイド型がいないのでせうか?(^ω^#

195そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2012/05/13(日) 03:46:51 ID:m/ZbWgiU
※下ネタ注意





ギル「今日も今日とて複座式コクピットシートの実験を行う事にした」
QB「へぇ、今回はどんな体位…配置方法だい?」
ギル「前々回と同じ背面座…膝抱っこ式だ。ただ今回は座席ではなくパイロットスーツの方を改良したよ」
QB「なるほど、だからシンとほむらは一つのパイロットスーツを二人で装着しているんだね」
ギル「日本の二人羽織と言う伝統芸能を参考にした開発させた物だ」
QB「これなら操縦桿に手が重なって操縦の障害になると言う問題点を解決出来るね」
ギル「加えて、更なる密着、いやがおうにもお互いを意識させる。その結果二人の集中力は極限まで高められ、精神コマンドの相乗に繋がると私は推測する」
QB「人類の発想には本当に驚かされるよ。これなら以前の時よりも更に多めのエネルギーを回収できそうだ」
ギル「ただし問題がある」
QB「問題?」
ギル「過度な密着はメインパイロットに…つまりシンに対して大きな負担を与えてしまう」

シン「…ごめん」
ほむら「…最低ッ!」
シン「わざとじゃない…頑張って耐えようとしたんだよ…俺は」
ほむら「言い訳しないでよ…ぬるぬるしてるから気持ち悪いのよ」

ギル「…結果、あの様な状況が発生してしまう」
QB「無我の境地、明鏡止水、クリアマインド…様々な名を持つ、人類の雄が一瞬の間だけ到達すると言う領域。
   一瞬とは言え隙を作る状態だ。改善すべきだ」
ギル「それは無理だ。あれくらいの年頃の男子とはそう言う物だからね」
QB「面倒だね、人類の雄は」
ギル「手厳しいね。あははは」
QB「あははは」

おしまい


ほむら「あなたには言いたい事が山ほどあるけど…」
シン 「うん…あいつらを」

ほむ&シン「始末しよう」

ほんとうにおしまい

196そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2012/05/13(日) 03:50:38 ID:m/ZbWgiU

まず簿記入門氏および関係各位に多大なご迷惑をおかけした事を陳謝します
ダメな方向にリスペクトしてごめんなさい
それと関係ないけど、貴君らはロボポン(ボンボン版)好きな人間だろ


それにしても、ちくわヘルシー氏を始めとして、本スレにもモン娘の話題出した人がいたりと、趣味で話の合う人が多くて嬉しい限りです
シンに恋をして戸惑うレイキャシール娘の話はよと思いつつ失礼

197 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/13(日) 14:05:54 ID:QGuKP5FQ
良かった、ここには自分と同じ変た……ゲフンゲフン、同好の士がたくさんいるようですね。

>>194
だって戦闘型じゃないとストーリー(予定ないくせに)に組み込めなかったんだもん!
自分だってヒロインに入れたかったですよ! 泣く泣くカットしたんですよ!
>>196
そろそろ氏、非常にGJです。配置方法もまだまだありますよね……ハァハァ

さてぶった切り失礼ですが、超絶嘘予告第二弾。今度は原作が『水月』です。

198 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/13(日) 14:09:44 ID:QGuKP5FQ
 気が付くと、俺はベッドの上に寝かされていた。
 清潔感のある白い壁とベッド……病院の中らしい。
 部屋の中には、知らない女の子が一人で立っていて。
 声をかけると、俺に抱きつき泣き出してしまった。
 淡い紫の髪と、真っ白な肌。そしてメイド服と、俺と同じ赤い瞳。

「取り乱してしまって、申し訳ありませんでした……シンさん」

 俺の名前を呼んだ彼女は、涙を拭って微笑んだ。
 でも俺は、彼女のことなんて知らない。

 目が覚めた蒸し暑い昼下がりは、俺には『悪夢』でしかなかった。
 戦いに負けて、結局守れたものは一つもなくて。
 何もかも失った俺に与えられたのは、得体の知れない『過去』。

 みんなはどうして『俺』のことを知ってるんだ?
『俺』じゃない『俺』のことを、みんなが『俺』に押し付けて……
『俺』はここで暮らしていたことなんてない。
『俺』には家族がいた。父さんと母さんと、マユ……オーブで、みんなで暮らしていたんだ。
 あの子のことも知らないし、父親だって言われた、写真の人も知らない。
 記憶障害なんかじゃない。そんな一言で、俺の全てを否定させやしない。
 俺が戦ってきたことも……幻なんかじゃない。
 ナチュラルも、コーディネイターも、ZAFTもプラントもMSも、戦争も、オーブのことも。
 俺の知っていることが、全く存在しない世界。
 なのになんで、世界は『俺』を『シン』だって知っているんだ?

 現実の『悪夢』に加えて、夢の中も『悪夢』だった。
 あの子と同じ、白い肌に赤い瞳。違うのは全てを吸い込むような黒い長髪。
 誰だか知らない男が、その子を弓で射殺す場面が繰り返される。
 毎夜の『悪夢』は、消えることがなかった。
 いったい、俺に何を伝えたいんだろうか。
 ただ、『悪夢』はいつも同じ終わりを迎えていた。
 男が俺のことを見つめて、何事かを呟く。
 でも俺は、その言葉が聞こえない。

 何もかもが不確かで曖昧な、この世界で。
 俺にとっての真実は存在するんだろうか。
 まるで水面に浮かぶ月影のような……『水月』のような、この世界で。

  ◇

 メサイアでの戦いに敗れ、見知らぬ場所で目が覚めたシン。
 そこにいた少女、『琴乃宮雪』に聞かされたのは、自分が交通事故に遭ったということ。
 戦争はどうなったのか。メサイアは落ちたのか。ミネルバはどうなったのか。
 医師に尋ねたシンだったが、全ては記憶障害だとして一蹴されてしまう。
 自分の知る『過去』と、周囲の人間から語られる、知らない『過去』の食い違い。
 縋るものの存在しない明日に戸惑い、苛立ち、恐怖しながらも、シンは前へと歩んでいくこととなる。
 果たしてシンがたどり着く真実とは……。


『水月〜運命〜』

 執筆予定……当然ながらなし。

199シンの嫁774人目:2012/05/13(日) 23:33:35 ID:pLFv4vxQ
>>198
乙です!
水月とは懐かしい作品ですね〜
内容をかなり忘れちゃってるけど、雪さんが好きでしょうがなかった事は覚えてますw

200オリキャラ注意 ◆HciI.hUL72:2012/05/17(木) 23:33:52 ID:tuUerXpI
「んー……」
 けたたましく鳴る目覚ましの音に顔をしかめ、寝ぼけ眼のシンは騒音の基を断とうと枕元にある時計に手を伸
ばす。
 しかし寝起きで、しかも顔を背けたままでは距離感などあろう筈もなく。
 二度、三度空振りし、今度こそと伸ばした手は、しかし時計ではなく別の何かを押し潰した。

 ふにょん。

「……ん?」
「んゅ……」

 柔らかでいて、それでいて弾力に溢れた謎の物体。
 耳元では、自分以外の誰かの声が聞こえた。
 この異常な事態は、けれど今日は特別寝起きの悪いシンでは気付く事もなく、五度目に伸ばした手で漸く目覚
まし時計を止めるに至った。

「く……ぁ……」
 欠伸をしつつ、のっそりと上体を起こす。
 何故か掛け布団の具合がいつもと違った気がしたが、ともかく顔を洗って完全に目を覚ましてしまおう。
 ぐしぐしと目元を擦りながら、ベッドから立ち上がる。
 スリッパを突っかけ、流しに向かおうとしたシンは、その段になりようやっと自室の中が普段と違う様相を呈
している事に気が付いた。

「…………」
「…………」

 無言でぶつかり合う視線と視線。
 部屋の中には、見知らぬ女性がいた。

 肩甲骨の辺りまで伸びた、夕焼けを思わせる茜色の髪。
 勝ち気な雰囲気漂う、釣り目がちな赤紫の瞳。
 幼さの残る顔つきからして、コウタと同い年か一つ上くらいだろうか。

 視線を下に向ける。

 胸は、アナグラの女性陣の平均値から比べると些か小ぶり、近似値としてはリッカと同サイズか。
 先端の突起は淡いピンクで、大きさといい見ていると桜ん坊の様に舐め回したい衝動がムクムクと沸き上がっ
て来る。
 水平どころかツンと上を向いた全体の造詣も素晴らしい。
 これがオラクル細胞により齎される美なのだとしたら、世界中の女性は皆、オラクル細胞を取り入れるべきじ
ゃないだろうか。
 思わずそんな馬鹿な考えが浮かぶ程だった

 胸を一先ず横に置き、今度は下へと向けられる視線。

 半ば以上まで引き上げられたショーツにより、かろうじて保たれている神秘の花園。
 直接見られなかったのは残念だが、しかし穿きかけで硬直したそのフォームもまた良しである。
 純白の下地にピンクのフリルがあしらえられた少女趣味全開のショーツは、勝ち気少女という属性を考慮する
と余りにもあざとい気がする。
 しかし、その組み合わせが大きな魅力を持つからこそ多くの者が求め、需要があるからと商業的な理由で安易
なキャラ作り・テンプレートそのままに乱発するが故に『あざとい』と批難されるのだ。
 組み合わせそのものに批難される謂れはない。
 つまりは最高だった。

 目線を少女の顔付近まで戻す。

 なんだかもう、寝ぼけていたとかそんなレベルじゃきかない位に不味い事態になってしまった気がする。
 思考の暴走だけは寝起きだったからで済ませたいが。少なくともアリサに知られる訳にはいかない。色々な意
味で後が恐すぎる。

201オリキャラ注意 ◆HciI.hUL72:2012/05/17(木) 23:34:53 ID:tuUerXpI

「い……いやあああああああああああああああああああっ!!!!」
「…………ここ、俺の部屋だよな?」
「ほぇ…………あ、ヒナちゃん。おはよー」
 目の前の少女の悲鳴に掻き消されないギリギリの音量で、しかしシンの背後、ベッドの上にいる何者かの声が
聞こえてきた。

「ちょ、桜花《オウカ》! アンタまで、なんでアタシの部屋に……って言うかどうして裸なのよ!?」
「いや、ここ俺の部屋だし……」
「ん〜? パジャマは暑くて脱いじゃったんだけど……それよりヒナちゃん、どうして私の部屋にいるの?」
「いやだから、ここ俺の部屋だってば」

 前門のほぼ全裸、後門の完全に全裸。
 どちらも見てはならぬ、と必死に両目をつむり。
 いったい全体何が何やら。混沌たる事象を前に、かろうじてシンが取れる抵抗は部屋の所有権を主張するぐら
いのもの。
 いっそもう一度寝直せばいつも通りの世界に戻れるだろうか、と全てを放棄してふて寝を決め込もうとした所
に、更なる混沌がやって来た。

「……人の部屋で何をしてるんですか、貴方達は」
「あ、ユキちゃん。おはよ〜」
「あ、ちょ、雪水《ユキミ》! 早くドア閉めてよ!」
「……恥ずかしがるくらいなら、さっさと着替えたらどうです? という訳で、そこの女性の生着替えをじっく
 りねっぷり愉しもうとしてるド変態で最低助平野郎の馬の骨さん。早いところ出ていってくれます?」
「……俺の部屋、なんだけどなぁ」
 まあ部屋の所有権はともかく、これ以上ボロクソに言われたくはないのでおとなしく出て行こうとしたシンだ
ったが。

「ちょ、こっち来ないでよ馬鹿っ!!」
「バナナっ!?」
 気を効かせたつもりで、目をつむったまま移動したのが災いした。
 赤髪の少女からすれば、シンの行動はいきなり見ず知らずの、しかも自分の裸をじっくりばっちりと見た変質
者が迫って来たようにしか感じられず。
 貞操の危機を感じた防衛本能は即座に不審者への攻撃を選択。
 片手で胸元を隠したまま、少女はシンのこめかみへと綺麗な左フックを叩き込んだ。
 少女の右腕に嵌められた腕輪はゴッドイーターの証。
 その細腕からは想像出来ない剛力を、しかも防御の意識などカケラもない状況でまともに喰らったシンは、見
事な錐揉み回転をしながら吹っ飛ばされる。

「へ、ちょ、きゃあ!?」
「!? こ、のぉ!」
 殴り飛ばされた先には毒舌少女。
 彼女もこの展開は予想していなかったらしく、飛んできたシンを受け止めきれずに勢いそのまま押し倒される。
 緊急事態と言うことで漸く目を開けたシンは、毒舌少女の後頭部を床に吸い込まれる様に落ちていくのが目に
ついた。
 ゴッドイーターの身体ならば、多少頭を打った程度では危険な事になるとは思えないが、それでも怪我をしそ
うになっている人を見捨てられる様な性格はしていない。
 回転の勢いを利用し、毒舌少女と床の間に手を差し入れる。

202オリキャラ注意 ◆HciI.hUL72:2012/05/17(木) 23:36:07 ID:tuUerXpI
「いてっ」
「ぁいたっ……って!?」
 派手な音を立てて落下した二人。
 シンの行動により、毒舌少女は怪我を負う事はなかったが……しかし、手を差し入れた結果、まるでシンに腕
枕でもされている様な体勢になってしまっており、年頃の少女らしく毒舌少女の顔に朱が刺す。
 普段なら有り得ない異性との急接近に、毒舌少女は完全に硬直してしまい、跳ね退ける事はおろか、身じろぐ
事すら出来はしなかった。

「……何をしているんだ、お前達は」

 頭上から掛けられた言葉に、シンが目線を開け放たれた扉の向こう、部屋の外側に向ける。
 そこには、また新たな少女が一人立っていた。
 ジョギングでもしてきたのか、薄っすらと汗をかいたその少女は、シン達には呆れた眼差しを向け言い放った。

「まあ別に私は、お前達が不純異性交遊をしていようが、それを否定などしない。だがせめてだ、そういった事
 は自分達の部屋でやってくれ。私の部屋でやるんじゃない」
 少女の言葉を受け、色々な意味で停止していた部屋の中の空気が再び動き出した。

「……ハッ!? いつまでくっついてるんですか、この変態!」
「がはっ」
 まず最初に意識を取り戻した毒舌少女に突き飛ばされ、派手に転がるシン。
「虎姫《トラヒメ》! 勝手な事を言わないでくれますか!? 誰がこんな変質者と!! それをしていたのは
 火夏《ヒナツ》と桜花だけです!」
「はあ!? 出鱈目言わないでよ! アタシも桜花も、部屋に勝手に入られた被害者なんだからね!」
「ヒナちゃん、ユキちゃん、トラちゃん、喧嘩しちゃ駄目だよぉ」

「……だから! ここは!! 俺の部屋だあああああっ!!!」
 一方的に言いたい放題されまくったシンはとうとう我慢の限界を超え吠えたのだが……しかし喧々囂々と言い
争う少女達は、誰一人として聞いていないのだった…………。


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