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SS練習スレ2

105シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:13:12 ID:OdT2Gi5U
※※※

 見渡す限りの雲。
 分厚い曇天の空を上空に、およそ二メートルの空中に隙間は開いた。
 ぱっと視界に入ったのは鬱蒼と茂った背の低い木々だ。
 普通では見ない視点からそれを見ているということから、シンは今ある己の状況を理解した。
 危ない、と思った時にはシンは既に重力のまま落下していた。
「……ぐぐ」
 全く、飛べないというのは不便である。少し前の自分なら思いもしなかったであろうこんな願望も、幻想郷に慣れてから
というもの日常的な願望になってしまった。
 幸い、太い枝に途中激突したおかげで、それほど大きな痛みはない。
 打ち付けた腰も赤く腫れた程度だろう。
 そう思って、立ち上がろうとするシンだったが、
「いっつ、」
 中腰になったところで、鋭い痛みがシンの腰を襲い、立っていられずにその場で前のめりに倒れる。
 シンはとりあえず腰を刺激しないようにうつ伏せに伏せたままの状態を保つ。
 しかしこの森の中、いつ何時妖怪に襲われるかも分からない。
 どこかに人、ないしは知り合いの妖怪でもいないかと辺りを見回したところで、一際目立つ大木の影に隠れる小さな少女と
目が合った。
「…………」
 金髪に、シンと似たような赤色の大きな瞳を大きく開き、倒れた彼をじーっと眺めている。
「あー、君」
 なんとか痛みをこらえて胡坐になったシンが少女に声をかけると、小さな肩をびくっと震わせて一歩後ろに下がった。
 その反応にシンは地味にショックを受ける。
「あ、あのさ、俺ちょっと怪我してて動けないんだ。だれか大人の人いないかな?」
 少女は警戒するようにおそるおそる近付いてきた。
 間近で見ると、より幼く見える。まだ年の頃は十にも満たないだろうか。
 濁りのない瞳でシンと目を合わせた後、すとんと傍にしゃがみ込んだ。
「おとなの人いない」
「お父さんとかお母さんは……?」
「いない」
 不味いことを聞いた、とシンは後悔したが、少女は気にした素振りもせずにただ彼の背中を見つめていた。
「いたいの?」
「ああ。ちょっとぶつけちゃってね」
 ふーん、と呟いた少女は、特に何かをするという訳でもなく、同じようにシンを眺めてるだけだった。
 シンとしてはこんな森の中、いつ妖怪が襲ってくるかもしれないし、この小さな子ももしかしたら人里からの迷子かもしれないと
いうこともあり、一刻も早く元の場所に戻りたいところである。しかし、あの紫の隙間を介して移動したせいで現在地に全く見当がつかない。
 胸中で腋出しの巫女を万年賽銭不足の呪いで祟っていると、シンの頬を冷たいしずくが打った。
 少女も、ゆっくりと空を見上げる。
「雨だね」
 他人事のように、彼女は言った。


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