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SS練習スレ2

198 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/13(日) 14:09:44 ID:QGuKP5FQ
 気が付くと、俺はベッドの上に寝かされていた。
 清潔感のある白い壁とベッド……病院の中らしい。
 部屋の中には、知らない女の子が一人で立っていて。
 声をかけると、俺に抱きつき泣き出してしまった。
 淡い紫の髪と、真っ白な肌。そしてメイド服と、俺と同じ赤い瞳。

「取り乱してしまって、申し訳ありませんでした……シンさん」

 俺の名前を呼んだ彼女は、涙を拭って微笑んだ。
 でも俺は、彼女のことなんて知らない。

 目が覚めた蒸し暑い昼下がりは、俺には『悪夢』でしかなかった。
 戦いに負けて、結局守れたものは一つもなくて。
 何もかも失った俺に与えられたのは、得体の知れない『過去』。

 みんなはどうして『俺』のことを知ってるんだ?
『俺』じゃない『俺』のことを、みんなが『俺』に押し付けて……
『俺』はここで暮らしていたことなんてない。
『俺』には家族がいた。父さんと母さんと、マユ……オーブで、みんなで暮らしていたんだ。
 あの子のことも知らないし、父親だって言われた、写真の人も知らない。
 記憶障害なんかじゃない。そんな一言で、俺の全てを否定させやしない。
 俺が戦ってきたことも……幻なんかじゃない。
 ナチュラルも、コーディネイターも、ZAFTもプラントもMSも、戦争も、オーブのことも。
 俺の知っていることが、全く存在しない世界。
 なのになんで、世界は『俺』を『シン』だって知っているんだ?

 現実の『悪夢』に加えて、夢の中も『悪夢』だった。
 あの子と同じ、白い肌に赤い瞳。違うのは全てを吸い込むような黒い長髪。
 誰だか知らない男が、その子を弓で射殺す場面が繰り返される。
 毎夜の『悪夢』は、消えることがなかった。
 いったい、俺に何を伝えたいんだろうか。
 ただ、『悪夢』はいつも同じ終わりを迎えていた。
 男が俺のことを見つめて、何事かを呟く。
 でも俺は、その言葉が聞こえない。

 何もかもが不確かで曖昧な、この世界で。
 俺にとっての真実は存在するんだろうか。
 まるで水面に浮かぶ月影のような……『水月』のような、この世界で。

  ◇

 メサイアでの戦いに敗れ、見知らぬ場所で目が覚めたシン。
 そこにいた少女、『琴乃宮雪』に聞かされたのは、自分が交通事故に遭ったということ。
 戦争はどうなったのか。メサイアは落ちたのか。ミネルバはどうなったのか。
 医師に尋ねたシンだったが、全ては記憶障害だとして一蹴されてしまう。
 自分の知る『過去』と、周囲の人間から語られる、知らない『過去』の食い違い。
 縋るものの存在しない明日に戸惑い、苛立ち、恐怖しながらも、シンは前へと歩んでいくこととなる。
 果たしてシンがたどり着く真実とは……。


『水月〜運命〜』

 執筆予定……当然ながらなし。


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