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SS練習スレ2

108シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:19:40 ID:OdT2Gi5U
「ん。おにいさん、むかえきたかも」
「え?」
 腕の中の少女がすっとシンから離れ、少し遠くの空を指差した。
 シンがその方向へ目を向けると、丁度空間に一筋の線が走った。
 そこからぱっくりと空間が口を開き、中から見慣れた妖怪が顔を出して辺りをきょろきょろと見回している。
「なんで分かったんだ?」
「なんとなく?ピンときた」
「すごいな」
 シンが褒めると、少女は得意げに笑った。
「雨、やみそうだね」
「ああ、何時の間にかな」
 大粒の雨はその勢いを忘れてしまったようだった。途切れ途切れに弱々しい雨粒が降り注ぐ。
 未だ雲に覆われた空を仰ぎ、少女のほうへと向き直る。
「ありがとうな。助かった」
「ん、いいよ。やくそくしたし」
 少女は小指を立てて先程の指きりを強調する。
 シンは苦笑するしかなかった。
「またその内会いにくるよ」
「うん」
 別れは告げず、シンは紫の方へと歩き出そうとしてピタリとその動きを止めた。
「……腰痛いの忘れてた」
「おにいさん、あんがいばかだね」
「うるさいな」
 一先ず紫を呼んで、神社で治療するしかないな。
 シンは声を張って呼び掛ける。
「おーい!」
 シンを視界に収めた紫は、ほっと安堵の息を吐くと、スキマから飛び立ちこちらへ向かってきた。
 とりあえずの安全を確認し、シンは別れを告げるために少女を振り返る。
「――――え?」
 つい数秒前まで確かにそこにいた妖怪の少女。
 その姿形が今ではすっかりと消え失せていた。
「どうかした?霊夢がうるさいから早くあなたを連れて帰りたいのだけれど」
「いえ、ちょっと」
 シンの隣に降り立った紫は少し疲れた声音だった。
 一日の半分は寝て過ごすらしいこの紫だが、もしかしたら自分を探すために睡眠時間を削ってくれたのかもしれない。
 シンがスキマに腰を気遣いながら入ったところで、周囲の風景を真剣なまなざしで見つめている彼女に気付いた。
 紫の視線を辿ると、シンと少女が話をしていた大木を見つめているようだった。
「どうかしました?」
「いえ……なんでもないわ。行きましょう」
 優雅にスカートを棚引かせ、紫は己の空間へと入り込む。
 まるで未練を断ち切るかのように、スキマは一瞬で、固く閉じられた。


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