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SS練習スレ2
109
:
シンの嫁774人目
:2011/11/13(日) 15:22:26 ID:OdT2Gi5U
博霊神社に帰って来て、霊夢やら魔理沙やらに喜びだか怒りだかよく分からないタックルを決められて。
その後、夕ご飯を食べた後のことだった。
皿洗いは私がやるわと、珍しく気を使ってくる霊夢に甘え、シンは居間で腰の静養をしつつ新聞を読んでいた。
しかしこれといって真新しい記事はなく、最近あの天狗の取材は不調みたいだなとシンはぼんやり思った。
「暇そうね」
「出た」
「……何よその言い方」
例によって何時の間にか現れていた八雲紫にさした反応も見せず、シンは小さく欠伸をする。
「レディの前で失礼ね」
「すみません。今日は疲れてて」
「まあ、色々あったみたいだし、別に構わないけど」
つんと拗ねたように、紫はシンの向かい側に正座した。
シンもとりあえず姿勢を正すが、だからといって紫が何か言うでもなく、また自身もこの良く分からない妖怪相手に話すこと
もない。
先日まではアダルティーでセクシーなこの八雲紫が近くにいるとなんだか落ち着かないものだったが、今は不思議とそういっ
た気持ちが沸かないでいた。
胸のときめきが消えたというか、旧知の仲のような。自分でもよく分からない馴れ馴れしい感覚が、心のなかにある。
「あれ」
そこで、シンはあることに気が付いた。
なにを思っているのか、目蓋を軽く閉じて瞑想する紫の顔をまじまじと見つめる。
(似てる?)
ついさっきまで一緒にいたあの少女と目元や口元といった顔の随所が似通っている気がする。流石に体は別物だが。
「ちょ、ちょっと…………なに?」
賢者と呼ばれる妖怪にしては珍しく、紫は恥ずかしそうに俯いた。
「いや、知り合いに似てたもんで」
その言葉を聞いた紫は、はっと目を見開くと、シンをじっと見つめた。
「私も……あなたみたいな人知ってるわ」
口元に寂しげな笑みを浮かべ、彼女は言う。
「私がまだ小さい頃……どれほど昔のことだか忘れるくらい昔。まだ幻想郷も出来ていない時代に出会った人」
いまいち妖怪の成長んついては理解していないシンだが、紫の話から察するにどうもこんな立派な隙間妖怪にも純粋にそこらを
駆けまわっていた時期があるらしい。
しかし、普段の胡散臭さと底知れなさが相まって、とてもそうとは思えない。
(幼少時もすごいませた子供だったんだろうな……)
盗み見た彼女の横顔はとても儚げで、日常振る舞っている妖美な妖怪はそこにいない。
まるで大切なアルバムを丁寧に回想して行くように、優しく、愛おしげに語る。
「独りだった私に、いろいろなことを話してくれたわ。実はここを作るときもその人の知恵を拝借してね」
「そうだったんですか……」
月並みな返事しかできず、思わず己のボキャブラリィに嫌気が差すシンであった。
「なんだか頼りない人でねえ。ちょっとからかうとすぐ動揺するし」
「……なんだかそいつとは仲良くなれそうな気がします」
大切な話の腰を折るな、と言わんばかりの紫の視線を受け、シンは押し黙る。
月光を受ける彼女の横顔は、少しだけ悲しそうだった。
「初恋……だったわね」
「…………その人は、」
遠慮がちに、シンは聞いた。
なんとなく、いまの紫は嘘をついている気はしなかった。
「結婚の約束してたんだけどね。すっぽかされちゃった」
笑い話として語ったつもりだろうが、紫の目尻に浮かんでいる涙からして、未だに引き摺っていることが窺える。
思わぬ出来ごとに、シンは動揺した。
親しい訳ではないが、
「そ、それにしても、その男もひどいやつですね」
慰めよう、と思ったのかもしれない。
とりあえず何か言わないと。そう思って口に出たのが真っ先に脳裏に浮かんだ言葉だった。
「そうかもね」
紫も頷く。
「紫さんはその……美人ですし、ほっといてどこか行くなんて勿体無いですよ」
「そうそう。こんなかわいらしい女を忘れてしまうなんて、許せないことよ」
「そうですよ」
わざと大袈裟に頷き、紫はくすりと笑った。
「あなたは霊夢にそういうことしちゃダメよ?」
「な、なんであいつが……?」
「さあ、なんでかしらね?」
「ぐぐ……」
二人で夜空に浮かぶ満月を見上げる。
星々が宇宙に散りばめられた宝石のように輝き、幻想郷を照らし出す。
浮かび上がった自然の風景が、何十、何百、何千と変わることなく悠然とそこにある。
雲ひとつない晴れやかな夜空を、懐かしい風が駆け抜けて行った。
後日、シンがスキマの先での出来事を紫に話して大変なことになるとはこの時誰も知る由がなかった。
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