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SS練習スレ2

106シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:15:14 ID:OdT2Gi5U
 小降りだった雨は、あっという間にどしゃ降りの雨になった。
 その勢いたるや滝のそれを思わせるようで、あらゆるものを飲み込み流して行ってしまいそうなちょっとした恐怖心が芽生える。
「ありがとな」
「ん」
 少女に引っ張られて先ほどの大木の下まで避難したシンは、彼女と寄り添って雨宿りをしていた。
 止む気配のない雨を二人でただぼんやりと眺める。
「ねえねえ」
「うん?」
 ふと、少女が雨空を見たまま話しかけた。
「おにいさん、どこからきたの?」
「ん、どういうことだ?」
「わたし、ずぅっとあそこにいたけど、おにいさん空から急におちてきたんだもん」
「あー」
 確かに、シンは隙間妖怪・八雲紫の力で訳も分からぬ内にこの場所へ来た。(原因は霊夢だが)
 常人から見れば、瞬間移動のように捉えられてもなんら不思議ではない。
 どう説明したものかとシンが唸っていると、何時の間にか前へ回り込んでいた少女が上目づかいで彼の双眸を見つめた。
 まだ幼いというのに、その顔つきはなんとも妖艶な……訳がない。ただ単に年相応のかわいらしさがあるだけだ。
「もしかして……おにいさんて妖怪?」
「俺じゃないんだけど、知り合いの妖怪の力でね。ここがどこだかも分からない」
「妖怪かぁ」
 少女は何やら考え込むようにその場で足を崩した。
「おい、女の子があんまりそういう座り方をするもんじゃない」
「え〜」
「ほら……下着が見えちゃうかもしれないだろ?」
「したぎ?したぎってなに?」
「え」
「え?」

 閑話休題。

「ま、まあ、とりあえず下着は穿いとけ」
「うん。おにいさんがそういうならしかたない」
「生意気なやつだな」
 くつくつと二人で笑い合う。
 シンは妹とじゃれ合っていた頃を思い出していた。少し生意気なところもよく似ていて、もう何年も前のことだというのに、
すぐ瞼の裏に当時の光景が浮かぶ。
「なんかかなしそうね」
「……そうか?」
 感傷的な気分に浸っていたことを気取られたのが気恥ずかしくて、シンはそっぽを向く。
 少女は小さく微笑むと、その小さな手でシンの頭を優しく撫でた。
「いい子ねえ」
「……い、いいって」
 その手から逃れようともがくシンだが、腰の痛みから思うように動けない。結局、しばらくの間為すすべもなく撫でられるし
かなかった。
「ねえ、おにいさん」
「ん、なんだ」
 今度は少女がシンの胸に体を預ける態勢でいた。
 この幻想郷に来てからそれなりに身長が伸びたおかげで、小柄な彼女の体は丁度いい具合にシンの腕の中に収まる。
 傍から見たら親子のように見えるんじゃないか、とシンはなんとなく思う。
「おにいさんがいたとこの話してよ」
「俺がいたところ?」
 一瞬、デスティニーを駆って戦場を巡ったあの世界を思い出したが、どうやら少女が意図しているのは別らしかった。
 コズミックイラの話はしていないし、先ほどの会話の中で彼女に妖怪の話をしていたこともある。
 恐らく、少女が言うのはシンが過ごした幻想郷のことを指しているのだろう。
「ああ、いいよ。幻想郷ってのは知ってるよね?」
「げんそーきょー?……知らない」
「うーん、まだ小さいし、知らなくても無理はないか」
「……バカにしないでよ。これでもあたまはいいんだから」
「分かった分かった」
 拗ねて唇を尖らせる少女の頭を、さっきのお返しとばかりに撫でる。
 最初は驚いたようだったが、少女はやがて甘えるように頭をシンの胸に預けた。
「そうだなぁ」
 相変わらず雨は降りっぱなしで、当分の間動けそうにない。
「まずは、この幻想郷について話そうか」
 なんとなく、長くなりそうだとシンは思った。


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