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SS練習スレ2

124シンの嫁774人目:2012/01/22(日) 00:24:39 ID:4HqhdhBQ

「あっ!」

 星が不意に声を漏らす。
 シンは何事かと顔を向けると、星は胸の前に手を合わせ、何かをひらめいた表情をしていた。

「どうしたんですか? 星さん」
「い、いえ。あのですね、相談には乗れない代わり…と言う訳ではないのですが」

 慌しく縁側に上り、シンの方を向いて正座する。
 星の言葉の歯切れが悪くなり、星の目線が忙しなく泳ぎ始める。シンはとりあえず黙って見守る事にした。

「人に話せない…ならですね」
「はい」
「その代わりと言う訳ではないのですが…き、気晴らし…してみるのはどうでしょうか?」
「気晴らしですか」
「その、里の甘味処でですね…」
「はぁ…」
「とても甘い洋菓子が食べられるそうなのですが…その」
「…一緒に、って事ですか?」
「はい…今度のお休みの日、よろしければでいいのですが」

 星は改めて姿勢を正し、自分を落ち着ける様に深呼吸をする。

「その甘味処に…い、一緒に! 甘味処に行きましょう!!」

 そう告げて勢いよく頭を下げるその姿と言葉は、誘うと言うよりもお願いと言った方が正しい。
 力みすぎたせいか声も大きなものとなってしまい、シンも思わず怯んでしまう。
 シンは呆気に取られたように目をぱちぱちとさせ、星は頭を下げたままの状態。
 身体を強張らせて心臓をバクバクと高鳴らせながら返答を待っていた。

「顔、上げてくださいよ。星さん」

 聞こえていないのか、大声になってしまった事に気恥ずかしさを感じているのか、星は頭を上げない。
 悪いとは思いつつも、シンはその姿に苦笑いを浮かべてしまう。
 シンも腰掛ける体勢から星と向かい合う様に姿勢良く正座する。

「喜んで付き合います」

 その言葉に星はようやく顔を上げた。そしてその表情はパァっと明るい物だった。
 大きく息を吐き出すと、張り詰めていた緊張が一気に抜けて行き、へなへなと脱力していく。
 大げさだと呆れつつ、シンもつられる様に小さく笑みを浮かべた。

 それから二人は当日の予定を決めたりしながら、談笑を交える。
 やがて用事を思い出した星が先に席を立つ事となる。

「それでは当日、楽しみにしてますね」

 可愛らしい笑顔を残し、少しばかり名残惜しげな足取りで縁側を去って行く。
 シンは星の思いやりに感謝しながら後ろ姿を見送っていた。星の姿が見えなくなってしばらくすると再び神子の事を考え始めてしまう。

 結局、シンは一日を終える時までこの調子であった。


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