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SS練習スレ2

107シンの嫁774人目:2011/11/13(日) 15:17:30 ID:OdT2Gi5U

 一方、その頃の博霊神社
 普段やる気の感じられない霊夢は、今回ばかりは必死に祈祷を捧げていた。
「お願いします……神様仏様紫様」
「お願いします」
 ぶつぶつと呟く霊夢の隣で魔理沙もそれに倣い同じように唱える。
 シンが行方不明になってから既に数時間。
 とりあえずの捜索はその道のプロである紫に任せ、二人はこうして神頼みをするしかなかった。


 気付けば、話始めてから結構な時間が経っていた。
 雨はまだ止んでいないが、先刻と比べると随分雨足は弱まってきている。
「ねえねえ、さっきのはなしのつづきは?」
「大体話し尽くしたと思うけど……」
 幻想郷で身の回りに起こっためぼしい事件を思い返すが、あと残っているのはほんの些細な出来事くらいだ。
 それこそ、あとはもうコズミックイラでの出来ごとくらいしかシンには話すネタがない。
「それじゃあ、今までの話で何か聞きたいことある?」
「ききたいこと?」
「うん。もう話すことないからさ、何かあればと思って」
 首を傾げる少女に続けて言う。
「そうだなー。それじゃ、そのうさんくさい妖怪について教えて」
「うーん……あいつか。実は、俺もよく知らないんだよな……まあ、胡散臭いな。それと滅茶苦茶強いらしい」
「らしい?」
「本気で戦ってるとこ見たことないんだ。でも、日常的に使ってる力だけでも相当なもんだよ」
 それを聞くと、少女は目を輝かせる。
 今までは割と落ち着いた雰囲気でいたが、この反応はシンにとっても意外だった。
「すごいね!わたしもすごくつよい妖怪になりたい!」
 いいんじゃないかな、と首肯しかけたところで、思わず違和感に気付く。
「……もしかして君って妖怪?」
「そうだよ!」
 上手くかみ合わなかった歯車がきっかりと合った気がした。
 なるほど。両親がいないのも、こんな人が来る気配もない森の中に一人でいるのも、妖怪だったからか。
 シンの知り合いにも見た目が幼い妖怪は数多くいるが、この少女に関しては実際に生まれてそう長くないようだ。恐らく、
見た目通りの年齢だろう。
 幻想郷についての知識も持ち合わせていないのは流石に、長寿の者には在り得ない。
「…………おにいさん、わたしのことこわい?」
 少女は急にシンが押し黙ったせいか、その瞳は不安に揺れている
 それを目の当たりにし、シンは胸が締め付けられるような罪悪感にさいなまれる。
「さっきも話したろ、妖怪の友達もいるって。だから別に怖くない」
「じゃあ、すき?」
 取り繕って言った言葉に被せられた返答が思わぬもので、シンは面食らう。
「ねえ、わたしのこと、すき?」
 さっきまでのマイペースはどこへ行ったのか。少女は急に居心地が悪そうにシンの腕の中でそわそわし始めた。
 その上、シンの表情を窺うように、ちらちらと見上げてくる。
「あー……っと。まあ、好きだよ」
「じゃあ、およめさんにしてくれる?」
「……なんか、話が大きく逸れてるないか」
「いいじゃん」
 最近の若い子はませてんな、とシンは内心毒づく。
 まさか数時間前に合ったばかりの男に婚約を申し込むとは。
 だがまあ、シンも昔は妹や女友達と遊ぶ過程で仮初の結婚なんて何十回もしてきたし、今さらこんな小さな子を相手に戸惑っ
たりはしない。
「い、いいいよ」
「……どーよーしてる?」
「し、してない」
 知らぬ間に漏れ出た動揺を今度はしっかりと飲み込む。
「じゃ、わたしはおにいさんのおよめさんね。指きりしよっか」
「ああ、いいよ」
 こうなればもう何でも言うことを聞いてあげよう。
 なんだか投げ槍な気持ちで彼女と小指を絡ませ、契りを結ぶ。
「満足したか?」
 シンはなんだか手玉に取られているみたいで面白くない。
 そのため年上らしくない、皮肉で少女に尋ねる。
 しかし、少女はくすぐったそうな声を上げて満面の笑みを浮かべた。
「うん!」
 混じりけのない純粋なその笑みは、シンの心にあった黒い感情はあっさりと崩壊する。
「そっか」
 そんな少女に脱力しながら、自分もまだまだ青いな、とシンは己の未熟さを痛感していた。


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