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SS練習スレ2

123シンの嫁774人目:2012/01/22(日) 00:23:06 ID:4HqhdhBQ

 夜空を覆っていた厚い雨雲は、日の出と共に薄れ始め、正午を過ぎた頃には完全に消え去った。
 今は晴れ渡っている空の下、命蓮寺の住人はいつもと変わらぬ一日を過ごしていた。

 ただ一人、シンを除いては。

 彼は命蓮寺の母屋の、裏庭に面した縁側に一人で腰掛けていた。
 そこで何をするでもなく、ただ昨夜の神子との間に起こった出来事を何度も何度も繰り返し思い浮かべていた。
 神子の様相を思い出す度に心を揺らし、彼女からの奉仕の感覚を思い出しては情欲を感じ、白昼から不埒な事を考える自分に嫌悪して溜息を付く。
 一つ溜息を付いては振り出しに戻り、また心を揺らして自己嫌悪の溜息を漏らす。
 それをこの場所で何度も何度も繰り返していた。

「はぁ…駄目だな、こんな調子じゃ」
「あら、こんな所にいたのね」
「えっ? あぁ、星さん。何か用事ですか?」
「いえ、ただ近くを通りかかっただけですが…あの、大丈夫ですか?」
「えっ、何がですか?」
「何だか悲しそうな顔をしてました」
「…そんな顔してました?」」
「はい…隣、失礼します」
 
 断りを入れ隣に腰掛けた星から甘いにおいが香る。
 シンは思わずドキリとし、同時に神子の甘いにおいを思い出した。

「神子の方が…」

 何て失礼な事を考えているんだと頭を振る。同時に何故こんな事を考えたのだろうと疑問も感じた。

「…今何か言いました?」
「えっ? いえっ! 大丈夫です…すみません」

 シンの呟きは星には聞こえていなかった事に、小さく安堵の溜息を漏らした。

「そう、ですか…シン。何か悩みがあるのなら、私でよければ相談に乗ります」
「ありがとうございます。でもすみません…他の人にはちょっと…」

 星の言葉は、こんな時でなければありがたい物であった。
 ただでさえ人に話し難い内容に加えて神子が関わっているとなると余計に話し辛い物だ。

「そう…ですか。いえ、誰にだって話したく無い事はありますから」
「…すみません」
「ううん、そんな顔をしないでください…」

 それっきりお互いに言葉無い。肩を並べる二人の間に、少し重苦しい沈黙が流れる。
 シンは星に心配をかけさせてしまう自分に不甲斐なさを感じ、横目で盗み見た星の少し沈痛の浮かんだ顔を見て、さらには自己嫌悪にも陥り始めていた。


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