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SS練習スレ2

144ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/23(月) 00:28:57 ID:DCj/DqvA
 きょとんとしていたシンの唇にシャルの人差し指が当てられ、そして今度はシャルが、その指を自分の唇にぎゅっと押し当てたのだ。
 これには流石のシンも慌てふためいた。未遂ではあったが、何度かシャルはシンにキスを迫ったことがあり、その度にサインのように出されたのがこの仕草であった。
 今までと違うのはシャルが悪戯に笑っているのでなく、膨れっ面でいることぐらいである。
 それでも、頬を赤らめてじっとシンを見つめるその顔は、他の生徒から見ても可愛かった。
 

「僕の病気、責任とって治して――」
「おのれシャルロットぉっ! お兄様の唇を奪おうとは許さんぞっ!」
「ぐええええぇっ! ら、ラウラ、く、首が……」

 当然同席しているラウラが許すはずもなく、シンとシャルの二人を引き剥がそうと、シンの首に抱きつき、自分の席に連れて行こうとする。
 シンの首もシン本人も悲痛な声を上げているのだが、残念なことにシャルもラウラも気付いておらず、目の前のライバルと口論するだけだった。

「ちょっと、二人ともー。そのままだと、あんた達の王子様が星に還っちゃうわよー?」
「鈴さん、放っておきましょう。シンさんには良い薬になりますわよ」
「アスカのことだ。たとえ星に還っても、約束だなんだと言って戻ってくるに決まっている」
「それもそっか」

 もはや日常の一コマに収まっているので、箒たちは非常にのんきであった。
 傍から見ればわたくしたちの喧嘩も同じように見えるのでしょうか。それは遠慮したいわね。今後は気を遣った方が良いだろう。
 自分たちの行動を反省しながら、用意したせんべいの封を開けている。対して痴話喧嘩は止まるところを知らなかった。
 
「最近ラウラってばシンに甘えすぎだよ! シンに抱きついて、頭を撫でてもらって! 寝る前にベッドまでお姫様だっこで運んでもらうなんて、僕はしてもらったことないのに!」
「シャルロットは一月もお兄様と同じ部屋にいたではないか! 部屋にいた時はさんざんお兄様に甘え放題だったと、噂で聞いたぞ!」
「僕はラウラほど甘えられなかったもん! 僕が女の子だなんて、シンは全然気がつかなかったし!」
「それでも手をつないでいたのだろう!? 贅沢を言うな! 私も朝から晩まで一日中お兄様と一緒にいたいぞっ!」
「僕だってもっとシンに甘えたいよっ! お姫様だっこはずるい!」
「ええい、ここでは埒が明かん! 部屋で話をつける!」

 激しいやり取りの末に、二人は糸の切れた人形のようなシンを掴んだまま部屋に戻ってしまった。
 肝心のシンが虫の息のまま、話し合いになるのであろうか。きっと明後日の方向に落とし所がつくのだろう。シン当人の意志の介在しない所で。

「みんな、抹茶たててきたんだが……シンが青い顔してたぞ? 大丈夫なのかよ?」
「ありがとう一夏。心配するな、アスカを信じろ。アイツは強い」
「シンが強いのは知ってるけどな……いくらなんでも、アレはやばくないか?」
「一夏さん、あれがあの三人の親愛の表現なのですわ」
「ほらほら、このせんべい美味しいわよ?」
「お、おう」

 腑に落ちない思いを抱えたまま、一夏は差し出されたせんべいをかじり、席に着く。
 騒動の済んだ食堂では、見物の終った生徒たちがまたがやがやと噂話に興じ始め、新聞部の部員が嬉々としてレコーダーを片づけていた。

 ちなみに、シャルもラウラもお互いの立場が羨ましいことがあるのなら『一日ぐらい立場を取り替えてみれば良いのでは?』という結論に達することになる。
 当然シンが振り回されることになるのだが……果たしてシンはどうなったのだろうか。デイリーISの記事になってしまったので、生徒達はほぼ全員知っている。


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