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『解析概論』輪読
1
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:02:10
立ててみました。
書名:『解析概論 改訂第3版』
著者:高木貞治
出版社:岩波書店
交代で解説を行い、他の人がそれに質問、間違いの指摘などを行うことにします。
適宜他の本を参照してもよいことにします。もちろんその場合は、その本を持っていない人でも分かるように書きます。
解析概論持っていない人でもおかしなところがあったらどんどん突っ込んでしまってください。
あ、ちなみに現在僕は所々飛ばして今P57の偏微分と全微分のあたりまでしか進んでないです。やばい(^^;
2
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:03:06
第1章 基本的な概念
1. 数の概念
まず数の概念と四則演算については分かっているものとします。また自然数、整数、有理数、無理数について深く考えないことにします。きちんと定義しません。本来ならば自然数を定義して、そこから整数→有理数(ここは問題ないはずですが)→実数と数の範囲を広げていくのでしょうが、この本ではそれは行われません。我々もこれらについてはとりあえず経験に従うことにします。
自然数 1, 2, 3, …
整数 …-2, -1, 0, 1, 2, …
有理数 整数p, q(p≠0)を用いてq/pと表される数
無理数 有理数でない実数
10進法について
有理数を10進法で表すと有限小数か循環する無限小数になります。逆に有限小数と循環する無限小数は有理数になります。したがって無理数は無限小数でも循環する無限小数でも表されません(なぜなら無理数とは有理数で無い実数のことだから)。
数の幾何学的表現
実数を直線上の点として表すことができます(数直線)。直線XX´上で0を表す点をOとし、これを原点とします。xを表す点Pはx>0のとき半直線OX上に、x<0のとき半直線OX´上にとることにします。xを表す点と原点の距離つまりOPをxの絶対値といい|x|で表します。
次の不等式が成り立ちます。
|x|+|x´|≧|x+x´|≧|x|-|x´|.
これは三角不等式といいます。証明は略します。実数の公理を出発点として証明しなくてはならないのだと大変かもしれませんが、我々は「a≧0かつb≧0のときa≧b⇒a^2≧b^2」さらにはこれを示すための「a, b, c, d≧0のとき(a≧bかつc≧d)⇒ac≧bd」などを使ってもよいので、簡単です。
3
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:04:06
二つの実数x, yの組(x, y)は平面上の点に対応させます。
同様に三つの実数x, y, zの組(x, y, z)は空間内の点に対応させます。
一般にnこの実数の組(x_1, x_2, …,x_n)をn次元空間上の1点といいそれをPで表します。
Pを(x_1, x_2, …,x_n), P´を(x_1´, x_2´, …,x_n´)をするとき
sqrt((x_1-x_1´)^2+(x_2-x_2´)^2+…+(x_n-x_n´)^2)(ただしsqrt(x)は√xを表す。)
をP, P´の距離といい、PP´で表します。
今Pを固定し、
PP´^2=(x_1-x_1´)^2+(x_2-x_2´)^2+…+(x_n-x_n´)^2<δ^2
を満たすならばP´はPを中心とする半径δのn次元の球の内部にあるといいます。
また
|x_1-x_1´|<δ, |x_2-x_2´|<δ,… ,|x_n-x_n´|<δ
ならばP´はPを中心として稜(空間図形の辺のことは正確には稜というらしいです)が座標軸に平行で、その長さが2δなるn次元の立方体の内部にあるといいます。
これらの定義は2次元、3次元の場合の拡張になっています。
2. 数の連続性
全ての実数を次の性質を満たす二つの集合A, Bに分けることを考えます。これらは本文中の表現と同じものです。
(鄯)R=A∪B(Rは実数全体の集合).
(鄱)A≠∅ฺ, B≠∅ฺ,
(鄴)a∈A, b∈B⇒a<b.
このような組み分け(A, B)をDedekindの切断といい、Aを下組、Bを上組といいます。
ここで組み合わせ的にはAの最大元と, Bの最小元の存在について次の4通りが考えられます。
1. 下組Aに最大元max(A)が存在し、上組Bに最小限min(B)が存在する.
2. 下組Aに最大元max(A)が存在し、上組Bに最小限min(B)が存在しない.
3. 下組Aに最大元max(A)が存在しせず、上組Bに最小限min(B)が存在する.
4. 下組Aに最大元max(A)が存在せず、上組Bに最小限min(B)が存在しない.
ただし最大元、最小元を次のように定義します。
定義(最大元、最小元)
Sを実数の集合とする。
MがSの最大元である⇔(def) (M∈Sかつ(∀x∈S)(x≦M)).
mがSの最小元である⇔(def) (m∈Sかつ(∀x∈S)(x≧m)).
しかし1. が起こると矛盾します。なぜならM=max(A), m=min(B)とするとM<p<mなる実数、例えばp=(M+m)/2を持ち出すとp∈AとするとMがAの最大元であることに矛盾します。またp∈BとするとmがBの最小元であることに矛盾します。以上よりp∉ฺAかつp∉ฺBとなりますが、これはR=A∪Bに矛盾します。したがって1. は起こりえません。
では2. , 3. , 4.は起こりえるのでしょうか。
ここで次の公理が成り立つことを認めることにします。
4
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:05:39
公理(Dedekindの公理)
実数の切断(A, B)について次のいずれか一方のみが成り立つ。
1. 下組Aに最大元max(A)が存在し、上組Bに最小限min(B)が存在しない.
2. 下組Aに最大元max(A)が存在せず、上組Bに最小限min(B)が存在する.
(本文中では定理 1.(Dedekindの定理))と書いてありますが、我々はこれを議論の出発点とするのでDedekindの公理と呼ぶことにします。また本文中の「実数の切断は、下組と上組の境界として、一つの数を確定する」という書き方はちょっとあいまいなので公理をこの形で述べることにします。)
これは直観的には数直線に途切れが無いことを意味しています。
3. 数の集合・上限・下限
定義(上界、下界、上に有界、下に有界)
Sを実数の集合とする。
(∀x∈S)(x≦M)なる実数Mが存在するときSは上に有界であるという。またこのようなMをSの一つの上界という。
(∀x∈S)(x≧M)なる実数Mが存在するときSは下に有界であるという。またこのようなMをSの一つの下界という。
Sが上に有界でかつ下に有界のときSは有界であるという。
ある数が上界ならばそれよりも大きい数はやはり上界です。下界についても同様です。
5
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:07:10
命題
Mが集合Sの上界であるときN>Mなる実数NはSの上界である。
Mが集合Sの下界であるときN<Mなる実数NはSの下界である。
証明
上界について示す。
MはSの上界であるから、(∀x∈S)(x≦M).
N>Mだから(∀x∈S)(x≦M<N), すなわち(∀x∈S)(x<N).
ゆえにNはSの上界である。
下界についても同様にして示せる。
このように上界、下界というのはたくさんあるわけですがその中でもぎりぎりのところ、つまりなるべく小さな上界、なるべく大きな下界というものに着目します。
定義(上限、下限)
上に有界に集合Sの上界全体の集合に最小元があればそれをSの上限という。
下に有界に集合Sの下界全体の集合に最大元があればそれをSの下限という。
上の上限について次がいえます。
命題
次の同値がいえる。
aはSの上限である
⇔(1) (∀x∈S)(x≦a),
(2) a´<a⇒(∃x∈S)(a´<x).
なお下限についても同様のことが成り立つ。
証明
(1)はaがSの上界であることを意味している。よってaがSの上界全体の集合の最小元であることと(2)が同値であることを示せばよい。
aがSの上界全体の集合の最小元であるということは、a´<aなるa´はSの上界全体の集合に属さないということと同じである(最小元の定義より)。したがってa´は¬(∀x∈S)(x≦a´)すなわち(∃x∈S)(x>a´)を満たす。以上よりaがSの上限であることと(1), (2)の同値が示せた。
さてSに最大元が存在するときそれはSの上限でしょうか。これは直観的には明らかかもしれませんが、上限というのはある種の集合の最小元として定義されていますから、字面だけ見るとそんなに明らかではないような気もしてきます。以下でこのことを証明します。
6
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:11:05
命題
集合Sに最大元M=max(A)が存在するならばMはAの上限である。
下限についても同様のことがいえる。
証明
先ほどの命題を利用する。最大元の定義からして、Mは(1)を満たす。またa´<MとするとM∈Sであるからa´<xを満たすSの元xが最低一つは存在することになる。よってMは(2)をも満たすのでSの上限である。
定理2. (Weierstrassの定理)
Sは空集合でないとする。
集合Sが上に有界ならばSには上限が存在する。
集合Sが下に有界ならばSには下限が存在する。
証明
Sが上に有界だとして、Sに上限が存在することを示す。
RをSの上界でない実数全体の集合AとSの上界全体の集合Bに分ける。
このとき(A, B)は実数の切断である。
7
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:11:49
∵全ての実数はSの上界であるかないかのどちらかであるからR=A∪B.
またSの元pをとりq<pなる実数qをとるとqはSの上界ではない(qより大きいSの元pが存在しているから)。
ゆえにq∈AであるからA≠∅ฺ.
そしてSは上に有界なので、当然Sの上界が存在するからB≠∅ฺ.
a∈A, b∈Bとする。
aはSの上界でないからあるSの元xが存在してa<x_0.
また上界の定義より(∀x∈S)(x≦b).
よってta<x_0≦b.
ゆえにa∈A, b∈B⇒a<b.
以上より(A, B)は実数の切断である。
するとDedekindの公理より
1. max(A)が存在し、min(B)が存在しない。
2. max(A)が存在せず、min(B)が存在する。
のうちどちらか一方のみが起こる。
そこで2. のみが起こることを示す。
1. が起こるとして矛盾を導く。
1. が起こると仮定する。
max(A)∈Aであるからmax(A)<xなるSの元xが存在する。
ここでmax(A)<b<xなる実数をとる。
するとmax(A)<bよりb∉ฺA.
またbより大きいSの元xがあるからb∉ฺB.
これはDedekindの切断の定義に反する(R=A∪Bに反する)。
したがって1. は起こりえない。
ゆえに2. が起こるからSの上界全体の集合の最小元すなわちSの上限が存在する。
8
:
RSKTTM
:2005/07/26(火) 23:15:52
とりあえず最初ということでやってみました。
どんどん突っ込みお願いします。
あと一部長すぎて省略されています。ごめんなさい。
訂正
>>1
したがって無理数は無限小数でも循環する無限小数でも表されません
のところは
したがって無理数は有限小数でも循環する無限小数でも表されません
の間違いです。
9
:
Je n'ai pas de nom!
:2005/07/26(火) 23:26:32
ハイラー/ワナーのスレと被るとこありそう。
10
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/07/27(水) 00:10:58
スレたて乙です。
つっこみではないですが、
>>3
>空間図形の辺のことは正確には稜というらしいです
昭和21年、日本数学会が物理学会から分離独立した際、
数学の用語を洗いなおそうとして、そのときに
稜→辺、函数→関数
などの言い換えが行われたという話を
一松信先生のエッセイで読んだような記憶が。
そのときに「極大値」とか「環」などというのも見直しておけばよかったのになーと
思ったり。
11
:
RSKTTM
:2005/07/27(水) 19:42:37
高校のときの数学の先生がちょっとこだわってまして(稜と辺)。
あとその先生いわく、よくドットコムとか言ってるドットはドットじゃなくて
ピリオドだとのことです。ドットはこれ→・ のことだと言っていました。
しかしこちらについては辞書などに「ドットとは中点のことである」という記述を
見つけることができなかったので、やや疑問です。
さて、もし他に何もないようなら次の担当の方を募集したいと思います。
12
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:33:36
いないようなので次も僕がやることにします。
4. 数列の極限
a_1, a_2, …, a_n, …と数を一列に並べた物を数列と呼びます。数列とは独立変数が自然数であるような関
数である(本文の言い方では項a_nが自然数の範囲内において変動する変数nの'関数'である)と、とらえる
こともできます。
数列は{a_n}と表します。
(余談ですが、{a_n}というのは数列全体を表すもので、第n項を表すときはa_nと書きます。僕は{a_n}というの
はたぶん{a_1, a_2, …, a_n, …}という集合の記法を省略したものなのではないか、と思っているのですがどう
なんでしょうか。)
nが限りなく大きくなるときa_nが一定の数αに限りなく近づくならば、数列{a_n}はαに収束(あるいは収斂(し
ゅうれん))するといい、αを{a_n}の極限といいます。これを
lim_[n→∞]a_n=α
または
n→∞のときa_n→α
と書きます。
(本文では「αをa_nの極限という」と書かれていましたが、"数列"の極限という言い方をするので{a_n}の極
限という言い方をしたほうがいいかな、と思いそう書きました。)
正確には任意の正数εが与えられたとき、それに対してうまくn_0をとると
n>n_0のとき|α-a_n|<ε
となるならば{a_n}はαに収束するといいます。これがいわゆるε-n_0論法です。
13
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:35:27
定義(数列の極限)
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε))
が成り立つとき{a_n}はαに収束するという。
(Nは自然数全体の集合)
数列{a_n}が収束するときその極限αは一意的に確定します。
命題
数列{a_n}が収束するならば、それは唯一つの極限を持つ。
証明
数列{a_n}がαに収束し、かつβに収束するとする(α<βと仮定する)。つまり極限の定義より、
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)),
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-β|<ε))
が成り立つとする。
これはどんな正数εが与えられてもうまく自然数n_1, n_2をとれば
n>n´=max{n_1, n_2}のとき|a_n-α|<εかつ|a_n-β|<εということである。
すると特にε<(β-α)/2としてもこれは成り立つ((β-α)/2>0に注意)。
このとき|a_n-α|<ε⇔α-ε<a_n<α+εなどに注意すれば、
β-ε<a_n<α+εとなるがこれは
ε>(β-α)/2を意味し、矛盾する。
β>αと仮定しても同様の矛盾が起こるからα=β.
14
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:37:15
もし、どんなに大きい正数Rをとってもそれに対して
n>n_0ならばa_n>R
となる自然数n_0が存在するならば{a_n}は+∞に発散するといい、
lim_[n→∞]a_n=+∞と書きます。-∞に発散も同様に定義します。
定義
(∀R>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒a_n>R))
が成り立つとき、{a_n}は+∞に発散するという。
(∀R<0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒a_n<R))
が成り立つとき、{a_n}は-∞に発散するという。
{a_n}が収束するとき、{a_n}から有限個の甲を取り去っても、取り去った後の数列はやはり収束し、同じ極限
値を持ちます。これは当然のことです。なぜなら上で使われてきたn_0より先には無限に多くの番号がある
のですから、少々項を取り除いたとしても影響はないからです。
15
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:38:32
定理3.
収束数列の部分数列は、元の極限値に収束する。
ここで部分数列というのをきちんと定義しておいたほうがよいでしょう。『解析入門』(杉浦光夫著)を参照します。
定義(部分数列)
自然数の値をとる数列{n(k)}(k∈N)が狭義単調増加であるとき、{a_n}から作られた数列{a_n(k)}を{a_n}の部分数列(あるいは部分列)という。
ただし狭義単調増加を次のように定義します。
定義(単調増加・単調減少)
数列{a_n}が全ての自然数nに対しa_n<a_(n+1)を満たすとき、{a_n}は狭義単調増加であるという。
数列{a_n}が全ての自然数nに対しa_n>a_(n+1)を満たすとき、{a_n}は狭義単調減少であるという。
数列{a_n}が全ての自然数nに対しa_n≦a_(n+1)を満たすとき、{a_n}は広義単調増加であるという。
数列{a_n}が全ての自然数nに対しa_n≧a_(n+1)を満たすとき、{a_n}は広義単調減少であるという。
上のようにして部分数列を定義すれば、「数列の若干項を取り去った」場合が含まれるだけでなく、例えば偶数番目の項だけを残したような場合も含まれることになります。
16
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:40:08
定理3.の証明
{a_n}はαに収束するとする。つまり
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
さて自然数値を取る狭義単調増加数列{n(k)}を用いてできる{a_n}の部分数列{a_n(k)}について考える。
n(k)は高々第n_0+1項目でn_0より大きくなり、その後もずっとn_0より大きい。すなわち
k>n_0⇒n(k)>n_0.
よって{a_n(k)}は
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(k>n_0⇒|a_n(k)-α|<ε))
を満たしているから、αに収束する。
さて本文には「数列の各項a_nが絶対値において一定の数を超えないとき、その数列は有界であるという」
と書かれていますが、ここでは今まで出てきた有界の定義を採用することにします(単に僕の好みです)。
これらの定義は同値です。
a_nが(すでに出てきた定義により)有界ならば全ての自然数nに対しN≦a_n≦MとなるN, Mが存在しますが
このとき-max{|N|, |M|}≦a_n≦max{|N|, |M|}が成り立ちますから、a_nは「絶対値において一定の数(max{|N|, |M|})を超えない」ことになります。
逆は自明です。a_n≦|M|⇔-M≦a_n≦Mだからです。
収束する数列は有界で、極限値もその限界を出ません。
17
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:42:11
定理4.
収束する数列は有界である。つまりa_n→αのとき|a_n|≦Mなる定数Mが存在し、|α|≦M.
証明
仮定より(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
番号n_0より先ではa_nは十分狭い範囲に閉じ込められているのである。
よって|a_n-α|<ε⇔α-ε<a_n<α+εであったから
Mを|a_1|, |a_2|, …, |a_(n_0)|, |α+ε|, |α-ε|をこれらのどれよりも大きい数とすると
全ての自然数に対して|a_n|<M.
(n≦n_0のときに成り立つのは当然であるが、n>n_0のときはa_nの絶対値は全て|α+ε|か|α-ε|よりも小
さいので成り立つのである。)
さて|α|>Mと仮定する。αにいくらでも近いところにたくさんのa_nが存在するはずであるが、
今はMによって|a_n|たちと|α|が分断されているから、そのようなa_nで問題が起きそうである。
|α|>M≧|a_n|であるから|α|-|a_n|≧|α|-M(>0).
ところが三角不等式より、|α-a_n|≧|α|-|a_n|であるから、|α-a_n|≧|α|-M.
これはa_n→αに矛盾する。
(どんなε>0をとってきてもn>n_0ならば|α-a_n|<εとなるはずであるがこのようにε=|α|-Mとすると成り立
たないのである。)
したがって|α|≦M.
18
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:43:27
命題
a_n→αのとき全ての自然数nに対してa_n≦MとなるMが存在するときα≦M.
証明
α>Mと仮定するとα-a_n≧α-M(>0)となるので先ほどと同様の矛盾が起こる。
ゆえにα<M.
数列の極限について次の性質が成り立ちます。
定理5.
{a_n}, {b_n}が収束し、lim_[n→∞]a_n=α, lim_[n→∞]b_n=βとする。
このとき次が成り立つ。
(1) lim_[n→∞](a_n+b_n)=α+β.
(2) lim_[n→∞](a_n-b_n)=α-β.
(3) lim_[n→∞]a_nb_n=αβ.
(4) b_n≠0かつβ≠0のときlim_[n→∞]a_n/b_n=α/β.
19
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:44:18
証明
(1)(2)の証明
仮定より
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)),
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
つまりいかなるε>0が与えられてもうまくn_1, n_2∈Nをとれば
n>max{n_1, n_2}のとき|a_n-α|<εかつ|a_n-α|<ε.
よってn>max{}n_1, n_2}のとき|(a_n±b_n)-(α±β)|=|(a_n-α)±(b_n-β)|≦|a_n-α|+|b_n-β|<ε+ε=2ε.
以上より成り立つ。
3)の証明
定理4. などにより|a_n|<Mかつ|β|<MなるMが存在する(当然M>0)。
するとある番号より先では
|(a_n)(b_n)-αβ|=|(a_n-α)β+a_n(b_n-β)|<M(|a_n-α|+|b_n-β|)<M(ε+ε)=2Mε.
よって成り立つ。
20
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:45:27
(4)の証明
まずlim_[n→∞]1/b_n=1/βを証明する。
任意のε>0に対してあるn_0があってn>n_0のとき|b_n-β|<ε.
これは特にε=|β|/2としても成り立つ(β≠0より|β|>0に注意)。
n>n_1のとき|b_n-β|<β|/2になるとすると
n>n_1のとき|β|/2>|b_n-β|≧|β|-|b_n|.
ゆえに|β|/2<|b_n|.
したがってn>max{n_0, n_1}のとき
|1/b_n-1/β|=|(β-b_n)/b_nβ|=|(β-b_n)|/|b_nβ|≦2|(β-b_n)|/|β|^2<2ε/|β|^2.
以上よりlim_[n→∞]1/b_n=1/β.
よってこれと(3)より(4)は証明された。
また単調数列については次の重要な定理があります。
定理
上に有界な単調増加数列は収束する。
下に有界な単調減少数列は収束する。
21
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:46:08
証明
上に有界な単調増加数列が収束することを証明する。
{a_n}は上に有界だから上限αが存在する。
lim[n→∞]a_n=αを示す。
α´<αなるα´をとるとa_n>α´を満たす自然数nが存在する。その一つをpとおく。
{a_n}は単調増加だから、n>pのときa_n>a_p>α´.
ここでα´は上限(よって上界)であるから全ての自然数nに対してα≧a_n.
よってn>pのときα-a_n<α-α´(>0).
ここでα´はα´<αを満たす任意の実数であるから、α-α´は任意の正数値をとる。
よっていかなる正数α-α´が与えられてもn>pとすれば|α-a_n|<α-α´ことになるからa_n→α.
下に有界な単調減少数列{b_n}についても同様でlim[n→∞]b_n=inf({b_n}).
(ただし集合Aに上限があるならばそれをsup(A)と書き、下限があるならばそれをinf(A)と)書く。)
22
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:54:12
ところで上の中に
{a_n}はαに収束するから
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
よってどんなε>0に対してもn>n_0とすれば|a_n-α|<ε.
これは特にε=1/2としても成り立つ・・・・・・
のような論法がありますが、これは厳密にはまずいと思います。
なぜなら先に「どんなε>0に対しても」があって、εを決めてからそれに対してうまくn_0をとるからです。
よって次のように書くべきでしょう。
(∀ε>0)((∃n_0∈N)(n>n_0⇒|a_n-α|<ε)).
よって特にε=1/2としてもうまくn_0をとれば
n>n_0⇒|a_n-α|<1/2.
23
:
RSKTTM
:2005/07/31(日) 13:57:52
さてこんな感じです。しかしこの分だとだいぶ時間がかかりそうですね。
なるべくあいまいさがないようにと思って、細かくやっているつもりなのですが、
これだと微分に入るのさえいつになることやら・・・
正直言ってメインに入らなきゃ面白くないですからねえ。
そういうことも含めてご意見をお待ちしています。
24
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/09(火) 19:23:24
>>23
この間は、
>>1
-
>>8
までの原稿だけを読んでコメントしたのですが、
テクストを読み返してみたところ、さらに気づいたこともあるので、少々。
有理数を二進法で表したときに循環二進数になることとか、
三角不等式についてはもう少し詳しく述べてもよかったのでは?
とくにn次元の三角不等式はちょっとしたトピックだと思うんですが。
というわけで、ここに書いてもいいんですけど、昔のように
「東大」「数学」「補完」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4125/1081779039/
に問題として投下しておきます。
25
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/13(土) 06:45:47
えー。
「集合・位相入門」演習スレッド
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4125/1097576246/34-37
に,問題を投下しました.
Zの切断が
>>3
の1.の型に限ることを示す問題と
Qの切断で
>>3
の4.の型のものの例を挙げさせる問題です.
RSKTTMさん、やってみてはいかが?
26
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/13(土) 06:59:22
>>3
ありゃ、いまみたら切断の定義に「A∩B=Φ」がぬけてますね。
27
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:07:03
では。つづきを担当しましょうかね。
例1.
a>0ならばlim[n→∞][n]√a=1.
証明
a>1のとき,[n]√a/[n+1]√a=a^{(1/n)-(1/(n+1))}=a^{1/n(n+1)}=[n(n+1)]√a>1
なので数列{[n]√a}は減少数列.すべての自然数nに対して[n]√a>1であるから
定理
>>20
より数列{[n]√a}は収束する.
lim[n→∞][n]√a=αとおけば定理4によりα≧1.
α>1であるとするとα-1>h>0なるhが存在し,
すべての自然数nに対して[n]√a>1+hが,したがってa>(1+h)^n>nhが成り立つ.
1+h≧[n_0]√aとなる自然数n_0があるとすれば{[n]√a}が減少であることより
n_0以上のnに対して,α>1+h≧[n]√aとなり{[n]√a}はαに収束しなくなってしまうからである.
さて,n>a/hなる自然数nに対してnh>aとなるのでこれは矛盾.したがって,α=1.
a=1のときは[n]√a=1となるのでlim[n→∞][n]√a=1.
0<a<1のときは1<1/aであるので定理5(4)より
lim[n→∞][n]√a=lim[n→∞][n]√{1/(1/a)}
=lim[n→∞]{1/[n]√(1/a)}=1/1=1■
28
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:07:38
例2.
a>1,k>0ならばlim[n→∞](a^n/n^k)=∞.
証明
k=1のとき
a^n=(1+(a-1))^n>nC2(a-1)^2=(a-1)^2n(n-1)/2より
a^n/n^k>{(a-1)^2(n-1)/2}.
任意のMに対して{2M/(a-1)^2}+1より大なる自然数nをとれば,
M<(a^n/n^k)となるのでlim[n→∞](a^n/n^k)=∞.
0<k<1のときはn^k≦nであるので(a^n/n^k)≧(a^n/n)>{(a-1)^2(n-1)/2}.
任意のMに対して{2M/(a-1)^2}+1より大なる自然数nをとれば,
M<(a^n/n^k)となるのでlim[n→∞](a^n/n^k)=∞.
1<kのとき,a^(1/k)>1.よって任意の1より大きいMに対して,ある一定以上の自然数nで
(a^n/n^k)=[{(a^(1/k))^n/n}]^k>M^k>Mだから
lim[n→∞](a^n/n^k)=∞.■
29
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:08:12
例3.
a>0ならばlim[n→∞](a^n/n!)=0.
証明
k>2aなる自然数kに対して C=a^k/k!とおくと,n>kなる自然数nに対して,
a^n/n!=C・{a^(n-k)/(k+1)(k+2)・n}<C・(a/k)^(n-k)<C/2^(n-k)=C・2^k/2^n≦C・2^k/n.
よって,任意の正の数εに対して
n>C・2^k/εなる自然数nに対して,0<a^n/n!<ε.■
30
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:08:46
例4.
lim[n→∞]a_n=αであるならば,lim[n→∞]{(a_1+…+a_n)/n}=α.
証明
b_n=a_n-αとおくと定理5(2)より
lim[n→∞]b_n=0.
{(a_1+…+a_n)/n}={(b_1+…+b_n)/n}+αより
lim[n→∞]{(b_1+…+b_n)/n}=0を示せばよい.
いまlim[n→∞]a_n=αであるから任意の正の数εに対して,
n_0以上の自然数nなら|a_n-α|=|b_n|<ε/2となる自然数n_0がとれる.
{|b_1|,…,|b_(n_0-1)|}の最大数をMとおくと,n_0以上の自然数nで
|{(b_1+…+b_n)/n}|≦{|b_1|+…+|b_(n_0-1)|+(n-n_0)(ε/2)}/n
<{(n_0-1)M+(n-n_0)(ε/2)}/n<(n_0M/n)+(ε/2).
よって
n>2n_0M/εとなる自然数nで|{b_1+…+b_n/ n}|<ε.■
31
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:09:17
例5.
数列{(1+(1/n))^n}は収束する.
lim[n→∞](1+(1/n))^n=eとすると2<e<3.
証明
a_n=(1+(1/n))^nとおくとすべての自然数nで
a_n=Σ[k=0,n](nCk/n^k)
=1+Σ[k=1,n]{n(n-1)…(n-k+1)/ n^k・ k!}
=1+Σ[k=1,n]1・(1-{1/ n})…(1-{k-1/ n})・{1/ k!}
≦1+Σ[k=1,n]1・(1-(1/(n+1)))…(1-((k-1)/(n+1)))・(1/k!)+(1/(n+1)^(n+1))
=1+Σ[k=1,n+1](n+1)Ck/(n+1)^k=a_(n+1)
であるから{a_n}は増加数列.
2=a_1≦a_n=Σ[k=0,n](nCk/n^k)=2+Σ[k=2,n](nCk/n^k)
=2+Σ[k=2,n]1・(1-(1/n))…(1-((k-1)/n))・(1/k!)
≦2+Σ[k=2,n](1/k!)=(5/2)+Σ[k=3,n](1/k!)
≦(5/2)+(1/2)Σ[k=3,n](1/3^(k-2))
=(5/2)+(1/2)・(1/3)・(1-(1/3^(n-1)))/(1-(1/3))<(11/4)<3
となるので{a_n}は有界で2,3はそれぞれ{a_n;n∈N}のひとつの下界と上界.
したがって定理
>>20
と定理4の証明の後段より 2≦e≦(11/4)<3.
実際には2=a_1<a_2<a_3<…だからe≠2.■
32
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:10:02
5. 区間縮小法
定理
各自然数nに対して閉区間I_n=[a_n,b_n]をI_(n+1)⊆I_nを満たすように定める.
このとき閉区間I_nの幅b_n-a_nがnの増大とともに限りなく小さくなるとすれば,
すべての閉区間I_nに共通して含まれるただ1つの点が存在する.
この定理によって1つの数を確定することを区間縮小法という.
33
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:10:35
証明
I_(n+1)⊆I_nが各自然数nに対して成り立つことより
a_1≦ a_2≦… a_n<b_n≦b_(n-1)≦…≦ b_1,
すなわち数列{a_n}は有界な単調増加数列,{b_n}は有界な単調減少数列である.
定理
>>20
より{a_n},{b_n}は極限値lim[n→∞]a_n=α,lim[n→∞]b_n=βを持つ.
m,nを自然数とするとn≦mならばa_n≦a_m<b_m≦b_n,
n>mならばa_m≦a_n<b_n≦b_m.いずれにしてもa_n≦b_m.
mを固定してn→∞とすればα≦b_m.
mは任意の自然数であるからm→∞としてα≦β.
lim[n→∞](b_n-a_n)=0なので,任意の正の数ε>0に対してある自然数n_0が存在し,
n>n_0のとき0≦ b_n-a_n<εが成り立つ.
ここでn→∞とすれば定理5(2)により0≦β-α<ε.
これはβ=αであることを示している.
m,nを任意の自然数としてa_n≦b_mであるが,mを固定してn→∞とすればα≦ b_m,
nを固定してm→∞とすればa_n≦α.
したがって任意の自然数m,nに対してa_n≦α≦b_m.
とくにm=nとすれば,任意の自然数nに対してα∈I_n.■
34
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:11:10
なおこの定理においてI_nが閉区間であることは重要である.
I_n=(-2^(-n),2^(-n))とすると-2^(-n)<-2^{-(n+1)}<2^{-(n+1)}<2^(-n)だから
I_(n+1)⊆I_nであり,lim[n→∞](2^{-n}-(-2^{-n}))=0-(-0)=0であり,
lim[n→∞]2^{-n}=lim[n→∞](-2^{-n})=0は,すべての自然数nに対して0∈I_nとなるが,
I_n=(0,2^{-n})であるとすると
0<2^{-(n+1)}<2^{-n}だからI_(n+1)⊆I_nでありlim[n→∞](2^{-n}-0)=0であり,
lim[n→∞]0=lim[n→∞]2^{-n}=0であるが0はどのI_nの元でもない.
これまでDedekindの公理
>>4
を仮定し,そこからWeierstrassの定理
>>6
を導き,
Weierstrassの定理
>>6
から定理
>>20
を導き,定理
>>20
から定理
>>32
を導いてきた.
いま定理>>からDedekindの公理
>>4
を導くことができればこれら4つの命題は
皆論理的に同値である.そこで定理>>を仮定し,Dedekindの公理
>>4
を導く.
35
:
Мечислав(☆9)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/22(月) 23:11:57
A⊆R,B⊆R,A≠Φ,B≠Φ,A∪B=R,A∩B=Φとし,任意のx∈A,y∈Bに対してx<yが成り立つとする.
A≠Φ,B≠Φであるからa_1∈A,b_1∈Bなる実数a_1,b_1がとれる.
(a_1+b_1)/2がもしAの元であるなら(a_1+b_2)/2=a_2,b_1=b_2とし,Bの元であるなら
その点をa_1=a_2,(a_1+b_2)/2=b_2とする.
いずれにしてもa_1≦ a_2<b_2≦ b_1,a_1∈A,a_2∈A,b_1∈B,b_2∈Bである.
そこで(a_2+b_2)/2がAの元なら(a_2+b_2)/2=a_3,b_2=b_3,Bの元なら
a_3=a_2,(a_2+b_2)/2=b_3とする.いずれにしてもa_1≦ a_2≦ a_3<b_3≦ b_2≦ b_1,
a_1∈A,a_2∈A,a_3∈A,b_1∈B,b_2∈B,b_3∈B.
この操作を繰り返しI_n=[a_n,b_n]とおくと, I_{n+1}⊆ I_n,lim[n→∞](b_n-a_n)=0なる
閉区間の列が得られる.よって定理>>により,すべてのI_nに属する点αが存在する.
この点αがAの元であるとするとα<yであるならα≦ b_n<yなる自然数nが存在する.
y∈Aならb_n∈Bだからy<b_nとなってしまうのでy∈B.
したがってαはAの最大数である.このときBに最小数βが存在するとしたら,
α∈A,β∈Bだからα<βである.
lim[n→∞]b_n=αだからα≦b_m<βなる自然数mが存在するが,b_m∈Bであるので矛盾.
よってBに最小数はない.
αがBの元であるとするとx<αであるならx<a_n≦αなる自然数nが存在する.
x∈Bならa_n∈Aだからa_n<xとなってしまうのでx∈A.したがってαはBの最小数である.
このときAに最大数γが存在するとしたら,γ<αである.lim[n→∞]a_n=αだから
γ<a_n≦αなる自然数nが存在するが,a_n∈Aであるから矛盾である.
よってAに最大数はない.
以上によって定理
>>32
よりDedekindの公理が導かれた.
36
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:37:42
6. 収束の条件 Cauchyの判定法
定理
数列{a_n}が収束するための必要十分条件は,
任意の正の数εに対して,自然数n_0が存在し,p>n_0かつq>n_0ならば|a_p-a_q|<ε
が成り立つことである.
証明
数列{a_n}がある数αに収束するなら,任意の正の数εに対して,自然数n_0が存在し,
n>n_0であるなら|a_n-α|<ε/2が成り立つ.よってp>n_0かつq>n_0であるなら
|a_p-a_q|≦|a_p-α|+|a_q-α|<εが成り立つ.
数列{a_n}が,任意の正の数εに対して,自然数n_0が存在し,p>n_0かつq>n_0ならば
|a_p-a_q|<εであるという条件を満たすならば,自然数Nが存在してp>Nのとき
a_N-1<a_p<a_N+1が成り立つ.
Mを{|a_1|,|a_2|,…,|a_N|,|a_N-1|,|a_N+1|}の最大数とすると,
すべての自然数nに対して|a_n|≦M.
自然数nに対してl_n,m_nを{a_k;k∈N,k≧n}のそれぞれ上限,下限とする.
m_(n+1)<m_nとするとm_(n+1)≦a_(n_1)<m_nを満たすn+1以上の自然数n_1が存在することになり,
m_nの定義に反するのでm_n≦m_(n+1).
同様の議論でl_(n+1)≦l_n.また,すべての自然数nに対して
m_n≦a_n≦l_nである.
37
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:38:30
よってI_n=[m_n,l_n]とおくとI_(n+1)⊂I_n.
任意の正の数εに対して,自然数n_0が存在してp>n_0なら
|a_p-a_(n_0+1)|<ε/2がなりたつのでn_0以上の自然数pに対して
a_(n_0+1)-ε/2<a_p<a_(n_0+1)+ε/2.
これは{a_p;p∈N,k≧n_0+1}⊂(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2)であることを示しており,
すべてのn_0+1以上の自然数pに対してl_(n_0+1)≦a_pであるのでl_(n_0+1)<a_(n_0+1)+ε/2.
また,l_(n_0+1)<a_(n_0+1)-ε/2とすればl_(n_0+1)≦a_q<a_(n_0+1)-ε/2なるn_0+1以上
の自然数qが存在することになってしまい,
{a_p;p∈N,k≧n_0+1}⊂(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2)に反する.
よってl_(n_0+1)∈(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2).
同様の議論でm_(n_0+1)∈(a_(n_0+1)-ε/2,a_(n_0+1)+ε/2).
したがって0≦l_(n_0+1)-m_(n_0+1)<ε.
n_0+1以上の自然数nに対してl_(n_0+1)≦l_n≦m_n≦m_(n_0+1)なので0≦l_n-m_n<ε.
定理
>>32
によりすべての自然数nに対してm_n≦λ≦l_nを満たす実数λが存在する.
lim[n→∞](l_n-m_n)=0より任意の正の数εに対して,
ある番号以上のnでλ-ε<m_n≦λ≦l_n<λ+ε,即ち,ある番号以上のnで
λ-ε<a_n<λ+εが成り立つ.
これはlim[n→∞]a_n=λであることを示している.■
38
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:39:02
有界な数列{a_n}に対して{a_k;k∈N,k≧n}の上限,下限をそれぞれl_n,m_nとおくと,
すべての自然数nでm_n≦l_nで,{l_n},{m_n}ともに有界な単調数列であることは,
定理
>>36
の証明中に述べた.よって定理
>>21
によってlim[n→∞]l_n=λ,
lim[n→∞]m_n=μが存在する.λ,μをそれぞれ{a_n}の上極限,下極限といい,
limsup[n→∞]a_n,liminf[n→∞]a_nと書く.
{a_n}が有界なら,m_1≦m_2≦…m_n≦…l_n≦l_{n-1}≦…≦l_2≦l_1だから
すべての自然数p,qでm_p≦l_q.
p→∞としてμ≦l_q.
q→∞としてμ≦λ.
{a_n}が収束列であれば,任意の正の数εに対してある番号以上で
lim[n→∞]a_n-ε<a_n<lim[n→∞]a_n+εであるから,
ある番号以上でlim[n→∞]a_n-ε<m_n≦l_n<lim[n→∞]a_n+ε.
よってlim[n→∞]a_n=λ=μ.
逆にλ=μであれば,任意の正の数εに対して,ある番号以上でλ-ε<m_n≦l_n<λ+ε.
そのときλ-ε<a_n<λ+εであるのでlim[n→∞]a_n=λとなる.
即ち有界数列には,上極限とか極限が必ず存在するが,
両者が一致するとき,またそのときに限り,その有界数列は収束するのである.
39
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:39:36
有界数列における上極限について,もう少し詳しく見てみよう.
以下有界数列を{a_n},{a_k;k∈N,k≧n}の上限をl_n,
limsup[n→∞]a_n=lim[n→∞]l_n=λとおく.
任意の正の数εに対して,ある番号以上のnに対してλ≦l_n<λ+εであるので,
ある番号以上のnにたいしてa_n<λ+εが成り立つ.
またλ-ε<l_nがすべてのnで成り立つので,
各nに対し,λ-ε<a_{p_n}≦l_nなるn以上の番号p_nがとれる.
以上より上極限は次のような性質を持っている.
(I) 任意の正の数εに対して,
(1°) 有限個のnをのぞいてa_n<λ+ε.
(2°) 無数のnでλ-ε<a_n.
言い換えれば,
(II) λのどんなに近くにも無数のa_nがあるが,λ<λ'なるいかなるλ'についても,
それはいえない.
あるいは(II)の無数のa_nのみを考えれば,
(III) λに収束する部分列はとれるが,λ<λ'なるいかなるλ'についても
λ'に収束する部分列はない.
40
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:40:23
不等号を逆向きにすれば,これらはすべて下極限の性質になる.
有界でない数列に対しても上極限,下極限を定義する.
上に有界でない数列{a_n}に対しては,{a_k;k∈N,k≧n}はいかなるnに対しても
上に有界でない.即ち上限がない.このときはlimsup[n→∞]a_n=+∞と定義する.
下に有界でない数列{a_n}に対しては{a_k;k∈N,k≧n}はいかなるnに対しても
下に有界でない.このときはliminf[n→∞]a_n=-∞と定義する.
上に有界であり,下に有界でない数列{a_n}については{a_k;k∈N,k≧n}は上に有界であるから,
この集合の上限l_nは存在して,l_n≧l_(n+1)がすべての自然数nに対して成り立つ.
l_n<l_(n+1)なるnがあるならl_n<a_p≦l_(n+1)なるn+1以上の自然数pが存在してしまうが,
p≧nであるからl_n≧a_pとなるはずなので不合理だからである.
数列{l_n}は下に有界にも非有界にもなりうるが,
有界のときはlimsup[n→∞]a_n=lim[n→∞]l_n,
非有界のときはlimsup[n→∞]a_n=-∞と定義する.
41
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:40:57
同様に{a_n}が下に有界で上に有界でないときは,
{a_k;k∈N,k≧n}の下限をm_nとし,{m_n}が上に有界のときは,
liminf[n→∞]a_n=lim[n→∞]m_n,有界でないときはliminf[n→∞]a_n=+∞であると定義する.
±∞を許せば,どんな数列も上極限,下極限を持つ.
上に有界でない数列{a_n}の上極限,下極限がともに+∞であるとすると,
任意の正の数Mに対して,ある番号以上のnで{a_k;k∈N,k≧n}の下限はMより大きい.
よってある番号以上のnでM<a_nとなりlim[n→∞]a_n=∞となる.
逆にlim[n→∞]a_n=∞となる数列{a_n}は上に有界ではなく,下に有界である.
下にも有界でないなら-100より小さいa_nが無数にあるが,
これはlim[n→∞]a_n=∞に反するからである.
{a_k;k∈N,k≧n}の下限をm_nとおく.
lim[n→∞]a_n=∞なので任意の正の数Mに対してある番号n_0以上のnでM<a_n.
よってM≦m_n.
{m_n}は増加列だからliminf[n→∞]a_n=lim[n→∞]m_n=∞となる.
同様の議論で{a_n}がlim[n→∞]a_n=-∞となることと,
liminf[n→∞]a_n=limsup[n→∞]a_n=-∞となることは同値である.
以上より,任意の数列{a_n}は±∞を許せば上極限,下極限を持つが,
両者が一致するとき,またそのときに限りlim[n→∞]a_nは存在し,三者は一致する.
42
:
Мечислав(☆10)
◆QRDTxrDxh6
:2005/08/27(土) 02:41:38
例 a_n={(-1)^n*n+1}/nのときlimsup[n→∞]a_n=1,liminf[n→∞]a_n=-1.
証明 A_n={a_k;k∈N,k≧n}とし,A_nの上限,下限をそれぞれl_n,m_nとする.
nが奇数のときは a_n=(1/n)-1,
nが偶数のときは a_n=(1/n)+1.
よってnが奇数のときは
A_n={-1+(1/k);k∈N,k≧n}∪{1+(1/k);k∈N,k≧n+1}よりl_n=1+(1/(n+1)),m_n=-1.
nが偶数のときは
A_n={-1+(1/k);k∈N,k≧n+1}∪{1+(1/k);k∈N,k≧n}より
l_n=1+(1/n),m_n=-1.よってlimsup[n→∞]a_n=1,liminf[n→∞]a_n=-1.■
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