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とある英雄譚のようです

1名無しさん:2018/04/22(日) 20:46:23 ID:G.gIoQVo0

荒野なのか、それとも峡谷なのか。吹き抜ける風に舞う砂塵に覆われた世界。
隆起と沈降の地形を適当に割り振ったかのような褐色の大地。
見渡す限り生命の痕跡が存在しないその地の、中心部。

まるで何者かによって線を引かれたかのように存在している半球の領域。
そこは周囲の澱みをものともせずに、緑豊かな環境が存在していた。
荒んだ太陽が照らすのは、小高い丘の上に伸びる、大きさも形も違う五つの影。
四種類の塊と、それらに囲まれている一つの屍。

骨だけになった腕が掴んでいるのは、身の丈ほどもある杖。
主を失ってなお溢れ続ける魔力は、丘を清浄な空間で包むために漂う。
命を司る蒼の魔力は屍から離れるごとに薄くなっていき、荒野の空気へと溶けていく。

魔力球の中に存在する最も大きな影は、腐り落ちた大樹の幹。
その両隣に突き刺さっているのは、錆びた剣と、その数倍はあろうかという巨大な牙。
向かいにはくすんだ色の十字架があり、それらは綺麗に四方向に配置されている。

人為的な痕跡を残すその場にはしかし、生命の存在は何一つ感じ得ない。
風の呼吸すら止まっているかのような、静かで荒れ果てた大地。

ジオラマのような世界で、突如として錆びた剣が音を立てて傾いた。
その音に引き寄せられるかのように、漂う魔力に流れが生まれ、
魔力によって遮られた空間を濃い霧で覆い隠す。

175名無しさん:2018/04/24(火) 12:18:49 ID:JZ..YL360

|(●),  、(●)、| 「うーんと、全部で十二か。若いのも多いが……随分と増えたものだな」

( ^Д^) 「引導を渡しに来たぞ、骨董品!」

|(●),  、(●)、| 「やれやれ、あれから二か月ほどしかたっていないだろうに。
             プギャーよ、何を焦っている?」

( ^Д^) 「っ! もうすぐ死ぬてめぇには関係ねぇよ。……何だその不格好な龍は?」

ダディクールの隣に並ぶ白い龍。
その身慣れない姿に戸惑いを浮かべる龍属。
それも当然だろう。

龍の死が無ければ、龍は生まれない。
強すぎる種族である彼らには、生殖によって繁栄する術を持たず、
世界中を探し回ったところで、常に二百を少し超える程度の数だけである。

|(●),  、(●)、| 「先の大戦で殆どの龍が眠りに入っておる。
             新旧の争いはもはや無意味。もうやめんか」

( ^Д^) 「はっ、たかだか一頭増えたところで……」

言葉を途中で区切る灰龍の放った一撃が、若い一頭の半身をかき消した。
命を失って崩れ落ちた龍の残った僅かな肉片は溶岩に飲まれる。

176名無しさん:2018/04/24(火) 12:19:59 ID:JZ..YL360

|(●),  、(●)、| 「これで一頭減ったが」

(#^Д^) 「くそがっ!! かかれっ!」

呆気にとられていた龍達が号令に従い襲い来る。
正面から、集団の中心を一直線に飛びぬけたダディクール。
数で勝るはずの新派の龍群は、弾かれたかのように四方に散らばる。
接敵の衝撃で数体は地面にまで叩きつけられた。

( ^Д^) 「っ!! 集中砲火!」

十を超える光が一直線に灰龍に迫った。
一つ一つが巨大な岩盤すら貫くような魔力による一撃。

|(●),  、(●)、| 「嵐灰陣!」

ねずみ色の嵐が灰龍を覆い隠し、全ての光は遮られた。
ただの一つもダディクールには届かない。

|(●),  、(●)、| 「灰の飛礫」

うねりをあげて嵐はその姿を変える。
無数の乱刃となって、灰龍を囲む龍達に降り注ぐ。
溶岩にすら耐える甲殻をずたずたに引き裂き、さらに数体が地に伏した。

177名無しさん:2018/04/24(火) 12:20:39 ID:JZ..YL360

(#^Д^) 「逃げるな! 戦え!」

距離をとっていて無事だった龍達は次々と戦線を離脱していき、
残ったのは以前ダディクールに倒された一体だけ。
プギャーと呼ばれた濃い緑の鱗で全身を覆われた龍。

|(●),  、(●)、| 「さて、どうするプギャー」

( ^Д^) 「てめぇの首を持って帰らなきゃ俺が殺されんだよ……ッ!」

|(●),  、(●)、| 「ローアングは元気にしているか」

( ^Д^) 「はっ……てめぇを殺せるくらいには回復してる」

|(●),  、(●)、| 「だったら自分から出向いてくればいい。
             相変わらず卑怯な奴だ」

(#^Д^) 「っ!」

|(●),  、(●)、| 「そうだな。見逃してやってもいいが、どうだ。
             こいつと戦って勝てたらな」

( ・∀・) 「は?」

灰龍が顎で示したのは戦闘に参加していなかった小柄な白龍。

178名無しさん:2018/04/24(火) 12:21:39 ID:JZ..YL360

( ^Д^) 「そんなチビと……? 舐めるな! 相手にならん!」

|(●),  、(●)、| 「意外とそうでもないかもしれんぞ」

( ^Д^) 「……まがい物の龍と戦えなどと。見縊られたものだな」

|(●),  、(●)、| 「おい」

( ・∀・) 「な、なんだよ」

|(●),  、(●)、| 「あいつに勝ってみせろ」

(; ・∀・) 「そんな無茶な……」

|(●),  、(●)、| 「なに、今までの無茶と比べれば……ふむ、まだ二倍も難しくはないぞ」

( ^Д^) 「何をごちゃごちゃ言ってやがる」

( ・∀・) 「ったく……」

ダディクールは山の頂上に降り、それと入れ替わりにモララーが空に飛びあがる。
自身よりも一回り大きい巨体を前に、一歩も引くことなく。

179名無しさん:2018/04/24(火) 12:22:25 ID:JZ..YL360

( ^Д^) 「お前は……何だ?」

( ・∀・) 「獣の使い手。他所の部族はみんなそういう」

( ^Д^) 「はっ……あの一族か。それが龍の姿かたちをどうやって得た」

( ・∀・) 「僕だって知りたいさ」

( ^Д^) 「成程。だが、誇りのあるこの力をお前如きが扱うのは我慢ならん。
       今この場で死んでもらおう」

( ・∀・) 「好き勝手言いやがって!」

( ^Д^) 「すぐに楽にしてやる」

プギャーの全身から零れだす深緑の霧。
それらは圧縮されて球体になる。

( ・∀・) 「えっ……」

( ^Д^) 「消えろ」

放たれた魔力弾はモララーに届くことなく空中で停止した。
一際強く輝くと、小さな粒が分裂し、肥大化していく。

180名無しさん:2018/04/24(火) 12:23:23 ID:JZ..YL360

( ・∀・) 「まさか」

初めは一つだったものが、百を超える数に。
戦場に散らばった魔力の塊の一つが、モララーの翼に触れた。
ただそれだけで、翼は煙をあげて腐敗していく。

(; ・∀・) 「ぐっ……」

翼の先を切り落とし、魔力を使って空中でのバランスをとる。

( ^Д^) 「腐敗球! 触れれば骨まで朽ちる。
       ここまで拡散する前に、何の対策もしなかったお前はもう生き残れない」

( ・∀・) 「そんなのはまだわからないだろ。お前もこれで近づいては来れない」

( ^Д^) 「やれやれ、生意気なガキだ。でかい口は生き残ってから叩け」

( ・∀・) 「なら、そうさせてもらう」

モララーは龍化を解き、地面すれすれまで落下。
着地の直前に再度龍化し、掲げた頭の先に魔力を集中させた。

(; ^Д^) 「なっ……」

181名無しさん:2018/04/24(火) 12:24:18 ID:JZ..YL360

( ・∀・) 「吹き飛べっ!」

放たれた龍砲は拡散し、多様な軌道をとる。
空中に浮かんでいるプギャーの魔力が込められた爆弾を、乱雑に破壊していく。

( ^Д^) 「成程、確かに甘く見ていたのは俺だったな」

黒い霧が晴れた後、無傷のプギャーがモララーを見下ろす。

( ^Д^) 「獣如きが……!」

急降下するプギャー。
魔力を込められた巨大な爪の鋭利さは、モララーの命を奪うには充分である。

( ・∀・) 「っ!」

寸前までモララーが立っていた地面が大きく抉れた。

( ^Д^) 「小賢しいっ!」

( メ∀・) 「がっ……」

そのまま跳ね上がり、体当たりでモララーの身体を吹き飛ばした。
鎧の様な甲殻に覆われたプギャーと比べると、倍近い体重差がある。
ぶつかり合っただけでもモララーにとっては、致命の一撃。
百メートルは吹き飛ばされて、地面に転がった。

182名無しさん:2018/04/24(火) 12:26:20 ID:JZ..YL360

( -∀・) 「げほっ……」

( ^Д^) 「死ね」

追い討ちをかけるようにその頭を踏み潰す。
龍化を解いて躱し、すぐさま距離をとったモララー。
一息つこうとしたその身体を、太い尻尾が薙ぎ倒した。

(  ∀ ) 「がぁっ……!」

( ^Д^) 「ふん、二度も同じ手が通じるものか。
       見ろ、ダディクール。相手にもならなかったな」

|(●),  、(●)、| 「ふむ……」

( ^Д^) 「龍もどきが本物に勝てるわけがないだろう」

|(●),  、(●)、| 「何をそんなに怖れている?」

( ^Д^) 「俺が? 怖れている?」

|(●),  、(●)、| 「後ろを見てみろ、まだ終わっていないぞ」

( ^Д^) 「……先程の一撃を耐えたか。
       人間サイズと甘く見たな」

溶岩の中から立ち上がったモララー。
身体中の至る所から血を流し、息も絶え絶えでありながらも、
なおその瞳から光は消えていなかった。

183名無しさん:2018/04/24(火) 12:27:20 ID:SDticvYA0
昼間から投下だと支援

184名無しさん:2018/04/24(火) 12:27:26 ID:JZ..YL360

( ・∀・) 「……」

( ^Д^) 「そのまま寝ていれば助かったかもしれない命をわざわざ捨てるとは……愚かなガキだ」

( -∀・) 「痛いなぁ……」

( ^Д^) 「死ね」

振り下ろされた爪は、モララーの目前で音を立てて折れた。
欠片は彼方へと弾け飛び、プギャーはその衝撃でよろめく。

( ^Д^) 「なっ……!」

(#・∀・) 「……リベレーション」

白い炎がモララーの全身を包み、大きくうねりをあげる。
大気を揺らさんばかりの魔力は、鋭い爪と牙、しなやかな尻尾、滑らかな全身を構成していく。
巨大な翼を広げ、金色の瞳に意志が宿る。

頭から真っ直ぐ伸びた青のラインは、両肩から三叉に別れ、両翼と尾の先端に向かう。
それは、大戦に参加せずに生き残った龍属であれば誰もが見たことのあるとある王の証。

|(●),  、(●)、| 「ふむ、上出来だ」

185名無しさん:2018/04/24(火) 12:30:03 ID:JZ..YL360

(; ^Д^) 「なっ……なっ……! なぜ……っ!!」

( ・∀・) 「っ……ふぅー……」

( ^Д^) 「龍王モララー!! 確かに死んだはずだ!!」

( ・∀・) 「僕は僕だ。龍王なんかじゃない」

(#^Д^) 「くそがああああ!!!」

プギャーの全身から吐き出された緑の泥は、大気すらも腐敗させながら拡散される。
自身の甲殻すらも溶かしながら、小柄な龍へと突撃した。

( ・∀・) 「風烈槍」

煙に満ちた空を貫いて降り注ぐ蒼色の槍は、プギャーを貫いて紅い大地に縫い付けた。

( メД^) 「がっあああ!!」

全身を引き千切りながらもさらに前へと進むプギャーは、目の前を埋め尽くす光を見た。
それが巨大な魔力の塊だと気付いた時には、もはや逃れることは出来ない距離。
血が上った彼の頭であっても、自身を容易に蒸発させるであろうことだけは即座に理解できた

( ・∀・) 「殲光」

186名無しさん:2018/04/24(火) 12:31:10 ID:JZ..YL360

戦場を覆いつくすほどの強い光が弾け、再び静寂が訪れた。
拡散した微小な魔力が放っていた光の粒子も消え、煙が紅の大地を覆う。
強大な一撃が自身のすぐ隣を通過したせいで、プギャーは前後不覚に陥って動けない。

|(●),  、(●)、| 「殺さなんだか」

( ・∀・) 「……殺す必要はないと思ったので」

|(●),  、(●)、| 「ふむ、ようやく自身の力の深奥を知ったか」

( ・∀・) 「最初から気づいて……知っていたのか、僕のことを」

|(●),  、(●)、| 「半分は勘だ。
             もう半分は……そうだな、そろそろ説明してやってもいいかもしれん。
             そのためにはまず、龍の墓場に向かうとしよう……っと、なんだ根性のない奴だ」

(; ∀・) 「根性なら……今見せただろ……」

龍化が解けたモララーは、両手両足を投げ出し岩場の上に寝転がる。

( ・∀・) 「怪我が……」

|(●),  、(●)、| 「真に王の力を使いこなせれば、その程度の治癒など造作もない。
             仕方あるまい。今回は連れ帰ってやろう」

187名無しさん:2018/04/24(火) 12:31:44 ID:JZ..YL360

( ・∀・) 「そうしてくれると助かる。もう指一本動かせない」

|(●),  、(●)、| 「ふん。プギャーよ。ローアングの手の届かない南に逃げるんだな」

( ^Д^) 「っち……」

ダディクールはその大きな口で少年をくわえ、宙に放り投げた。
ニ、三回転してから広い背中に落下したモララー。

( ・∀・) 「いだだだ……もう少し丁寧にだな……」

受け身すら取れず全身を打ったモララーの小言を無視し、
ダディクールは翼を広げて大空に飛び立った。

188名無しさん:2018/04/24(火) 12:32:46 ID:JZ..YL360

>4


|(●),  、(●)、| 「見えたな……」

( ・∀・) 「……あれが、龍の墓場」

平野に散らばった無数の骨は、殆ど原型を残していない。
散在する頭蓋骨はどれも砕かれており、どれほど激しい戦いが行われたのかを物語っていた。
同心円状に拡がった残骸の中心に鎮座した骸は、一つだけ異彩を放っている。

( ・∀・) 「龍王、モララー」

聞かずともわかるほどの存在感を放つ亡骸。
死してなお失われていない威厳。

|(●),  、(●)、| 「降りるぞ」

ダディクールが降下し、その背からモララーが飛び降りた。
大地に足をつけ、王の遺骸と向き合う。

( ・∀・) 「……」

|(●),  、(●)、| 「王よ……。ただいま御身の元に戻りました。
             長くお待たせして申し訳ありません」

189名無しさん:2018/04/24(火) 12:33:31 ID:JZ..YL360

龍王は灰龍に応えない。
平野を吹き抜ける風が言葉を攫って行く。

( ・∀・) 「ダディクール」

|(●),  、(●)、| 「……君に説明してやると約束したんだったな。
             龍の死からしか龍は生まれない。それは覚えているか」

( ・∀・) 「うん」

|(●),  、(●)、| 「その理由はな、龍魂と呼ばれる存在のせいだ。
             全ての龍はこれをその身に備えている。例外はない」

( ・∀・) 「龍魂……でも……」

途中で遮られ、モララーは最後まで言うことができなかった。

|(●),  、(●)、| 「なぜか、ということはわかっていない。
             ただ、そうであるという事実だけが存在している。
             もう一つ、再び龍として生まれてしまえば、龍魂は以前の姿を特定できない」

( ・∀・) 「えっと……つまり、死んだら死ぬ前と別になるってこと?」

|(●),  、(●)、| 「そうだ。存在そのものが完全に変化する。
             同じ龍魂から生まれても、以前の記憶も無ければ、姿も違う。
             龍属最大の特徴である龍技すら全くの別物」

190名無しさん:2018/04/24(火) 12:34:56 ID:JZ..YL360

( ・∀・) 「龍技……?」

|(●),  、(●)、| 「あぁ、説明していなかったな。
             龍の持つ固有の力だ。私の灰の飛礫、以前戦ったプギャーの腐敗球もだ。
             強い力を持つ龍であれば、より多くの龍技を扱う。
             龍王モララーは七つを使いこなした。これは龍の歴史では最大数だ」

( ・∀・) 「そんなに……もしかして、僕の放った二つも?」

|(●),  、(●)、| 「威力以外は龍王と同じだ
             その理由を知りたいんだろう。焦るな。少し歩こうではないか」

そう言うとダディクールの姿は縮んでいき、髭を生やした老人になった。
どこからどう見ても人間そのものの姿。

( ・∀・) 「えっ!?」

|(●),  、(●)、| 「龍化があるのだ。人化があっても驚くことではなかろう」

( ・∀・) 「確かに……」

灰龍の歩幅に合せるように、モララーは少し駆け足で。
並んで歩く姿はまるで老人とその孫のよう。

龍王の屍を見上げる様にして、その周囲を歩く。
モララーは何も言わず、ただダディクールの言葉を待つ。
ぐるりと大きく一周したところで、漸く老人が口を開いた。

191名無しさん:2018/04/24(火) 12:38:08 ID:JZ..YL360

|(●),  、(●)、| 「君たち森の獣が戦う時に解放する本来の姿。
             それは、生まれながらにして魂に刻み込まれている。

( ・∀・) 「父さんと、母さんも……?」

|(●),  、(●)、| 「君の両親のことは知らぬが、森の獣はただ一人の例外を除いてそうだという」

( ・∀・) 「例外」

|(●),  、(●)、| 「簡単なことだ。魂が本質であるとするならば、
             その魂が干渉を受けることによって本質は変化する」

( ・∀・) 「言っている意味が……」

|(●),  、(●)、| 「龍王の魂を得た森の獣がその本質を解放すれば、
             龍王と同等の力を操ることも可能ではないか、といった仮説が生まれる。
             死んで転生する前の魂を、森の獣の生まれたばかりの子供に授けた」

( ・∀・) 「それが……僕……」

|(●),  、(●)、| 「一体どうやったのかまるで見当もつかない。
             いきなり現れた不気味な魔術師が丁寧に説明していきおった……」

モララーは目の前の龍を見上げる。
その静謐な瞳は、静かに少年を見つめ返す。

192名無しさん:2018/04/24(火) 12:38:55 ID:JZ..YL360

( ・∀・) 「……」

胸の奥から湧き上がる熱。
それが意味するところはモララーにはわからない。
だが、確かに感じる強い鼓動は彼の足を前に勧める。
腕を上げて遺骨に触れた瞬間、頭部が崩れ落ちた。

( ・∀・) 「っ!!」

脳内に流れ込む鮮明な映像。
空を埋め尽くすほどの龍群が放つ、多彩な龍砲。
様々な性質を持ったそれらを、ただの一撃で相殺した龍王。

( ・∀・) 「……今のは」

|(●),  、(●)、| 「ほう、面白い」

モララーの目の前にあったはずの骨は忽然と消えていた。

( ・∀・) 「なんだろう……欠けていたものが満たされたような……」

|(●),  、(●)、| 「遺骸に残されていた力を手に入れたのだろう。
             これで龍王としての力は全てその身に宿ったはずだ。
             どうする。今なら私と対等……いや、それ以上かもしれない」

193名無しさん:2018/04/24(火) 12:42:02 ID:JZ..YL360

( ・∀・) 「いろいろと腹立たしいことはあったけど、今そのつもりは無いよ。
        それよりもこの力、すぐにでも使いこなしたい」

|(●),  、(●)、| 「その心は未だ復讐に囚われているか?」

( ・∀・) 「あれから地獄の方がマシなような特訓を受けてきたんだ。
        今、十分な力も手に入れた。もう呪術師だって殺せる」

モララルドが無作為に腕を振るった。
その軌跡を追うように生まれた衝撃波は、龍の墓場を深く抉る。
かろうじて形の残っていた死骸もバラバラに吹き飛んだ。

|(●),  、(●)、| 「ふん……。私との約束を先に果たしてもらえるとありがたいのだがね」

( ・∀・) 「ああ、手始めに僕の座を取り返しに行こう」

|(●),  、(●)、|  「性格まで変わったか」

( ・∀・) 「そんなことはないさ。それで、何処にいるんだ?」

|(●),  、(●)、|  「王の座は、ここから北に向かった龍神峡にある。
              そこにローアングはいるだろう」

194名無しさん:2018/04/24(火) 12:42:33 ID:JZ..YL360

( ・∀・) 「そうか……リベレーション!」

モララーが白竜へと変化する。
身体は以前よりも一回り大きく、内包する魔力の量も質も段違い。

|(●),  、(●)、|  「もう行くのか」

( ・∀・) 「早いほうが良い……ん? なんだこれは」

飛び立とうとしたモララーの眼の前に突如として現れた光の手紙。

( ・∀・) 「邪魔だ」

切り払うように放たれた魔力の刃の直撃を受けてもなお、
手紙は傷一つ無く浮かんでいた。

( ・∀・) 「なんだこれ」

|(●),  、(●)、| 「……手紙の魔術」

( ・∀・) 「知ってるのか?」

|(●),  、(●)、| 「私も人伝でしか聞いたことがない。
             その話の内容を聞く限りであれば、触れてみればわかる」

195名無しさん:2018/04/24(火) 12:42:58 ID:JZ..YL360

爪の先が手紙に触れた直後、弾かれたようにその腕を引っ込めた。
額に皺を寄せながら、モララーは小さなため息をついた。

( ・∀・) 「……ふぅ」

|(●),  、(●)、| 「どうだ」

( ・∀・) 「残りの猶予は一年間という事らしい。
        さて、行くぞダディクール」

|(●),  、(●)、|  「急いては事をと言うが……良いだろう」

龍の墓場から飛び立った二頭の龍。
真っ直ぐと北に向かい、霧の中に消えた。

196名無しさん:2018/04/24(火) 12:43:47 ID:JZ..YL360

>5


(#・∀・) 「お前っ……」

手紙の魔術に導かれ、約束の丘にたどり着いたモララーを出迎えたのは、
四人の強者。そのうちの一人は、忘れることもできない呪術師の男であった。
すぐさま白き龍と化し、目の前の男を見据える。

('A`) 「お前は……」

【+  】ゞ゚) 「驚きました……。まさかあの時の」

(#・∀・) 「お前だけは……お前だけは絶対に殺す」

殺意と魔力を練り合わせ放った一撃は、オサムに直撃する前に霧散した。
ドクオが話しながら組んだ魔術は、強力な一撃を容易く相殺した。

(#・∀・) 「邪魔をするな!」

('A`) 「待て。今ここで戦いを起こされるのは困る。
     そのくらいのことは手紙に選ばれたお前ならわかるだろう」

(#・∀・) 「知るものか。ここでそいつを殺すことができるなら、その後なんでどうでもいい!」

怒りに任せて魔力を溜め、オサムたちの座る円卓に向けて吐き出した。
龍王と同等の力を持つはずの一撃は、やはりドクオによって簡単に吹き消される。
オサムは反撃の態勢すら取らず、それが尚更モララーを苛立たせた。

197名無しさん:2018/04/24(火) 12:44:21 ID:JZ..YL360

('A`) 「いいからまずは落ち着け。じゃないと……」

(#・∀・) 「戦えっ! この臆病者! でなければ、死ね!」

モララーは自身に宿る龍王の力、その一端を引き出す。
周囲の空間を捻じ曲げる龍技。
あらゆる防御を正面から叩き潰す龍王にのみ許された王たる術。

( ・∀・) 「圧捩……!?」

内に秘めたる力を全力を発しようとしたその時、モララーは地面に叩き伏せられた。
両翼に痛みが奔り、その後四肢と首の全てが強制的に地面と繋がれる。

( ・∀・) 「こんなもの……っ!」

龍王たる自分を誰が封じ込めることが出来ようか。
モララーの自信は簡単に打ち砕かれた。

川 ゚ -゚) 「うるさいな。いい加減にしろ」

右手に本を持ったまま、その背に降り立った女性は、
龍王など意にも介さないかのように読書を続けた。

198名無しさん:2018/04/24(火) 12:45:11 ID:JZ..YL360

(#・∀・) 「何を……なんで!」

無理やり動こうとしたものの、全身は全く反応を返さない。

('A`) 「いいか。まずはその牙を収めろ。でないと、お互いに損をする」

( ・∀・) 「……くそっ」

多勢に無勢を悟り、モララルドは龍化を解いた。
彼を覆っていた魔力の肉体は彼自身の中へと還っていく。

川 ゚ -゚) 「おっと」

足場を失ったクールは元いた場所に飛び降りた。
我関せずとばかりに、本のページをめくる。
その様子を一睨みし、モララーは正面に立つドクオに向き直った。

('A`) 「まずはお前の話を聞こう。と言っても、俺は大体予測はついているが」

( ・∀・) 「ふん。話すことなんかないさ。その呪術師の男は両親の仇だ」

( ФωФ) 「といっておるが、本当か」

【+  】ゞ゚) 「本当ですよ。最も、彼の両親には私の仲間もかなり殺されてきたわけですが」

199名無しさん:2018/04/24(火) 12:46:12 ID:JZ..YL360

( ФωФ) 「呪術師と獣使いの戦争か。耳にしたことはあったが。
         この場に両者が揃うとはな。何という偶然か」

('A`) 「いや、既定路線だ。
     成程。無事に育ったというわけだ、龍王の魂を持つ獣の子」

【+  】ゞ゚) 「どういうことですか?」

( ・∀・) 「お前は何を知っている……魔術師!」

('A`) 「一つの約束だけだ。龍王とのな」

ドクオは杖を振るい、魔術を発動させる。
それは記憶を引き出し、他人に譲り渡す魔術。

(; ・∀・) 「なっ……!?」

モララーはドクオに与えられた記憶でもって、自身の持つ力理由を知った。
その意味もまた同時に。

('A`) 「龍属における新派旧派の戦いで命を落としたと言われている龍王。
     その今際の際に立ち会ったのは俺だ」

川 ゚ -゚) 「あちこちと放浪していたのは知っていたが、そんなこともしていたのか」

200名無しさん:2018/04/24(火) 12:47:01 ID:JZ..YL360

('A`) 「偶然さ。その時に龍王と契約したのさ。
     龍王の龍魂を獣の使い手で生まれる子供に授けるとな」

( ・∀・) 「じゃあ、あんたがダディクールの言っていた魔術師」

('A`) 「俺の魔術でも協力はしたが、お前にその力を宿した転生もどきは龍王の力だ。
     勘違いで恨むなよ」

( ・∀・) 「むしろ感謝しているさ。あいつを殺すだけの力をもらったんだ」

('A`) 「残念だがな。龍王はお前よりもずっと上手だ。憎しみでその力を扱えない様になっている。
     先程の攻撃、思っていたよりも威力が出なかっただろ?」

( ・∀・) 「なんで……」

('A`) 「自らの力が悪用されるのを防ぐためだ」

( ・∀・) 「正当な復讐が悪用だと……!」

('A`) 「少なくとも龍王はそう決めた。
     もはや意思もないだろうが、お前の中に彼は確かに存在している」

( ФωФ) 「なぜ龍王は自らの力をその少年に託したのだ」

201名無しさん:2018/04/24(火) 12:48:01 ID:JZ..YL360

記憶を与えられたモララー以外の英雄は、状況を飲み込めないでいた。

('A`) 「俺が龍王に会ったのは、新派旧派の戦いに赴く直前だった。
     全面戦争が避けられないと知った龍王は、旧派の龍達を戦わせまいと説得していた。
     勿論、旧派の多くは信頼の厚かった龍王と共に戦うと宣言した。
     だが、彼はそれを許さなかった。
     俺は旧派の龍達を戦いが終わるまで遠ざけておくように頼まれたんだ」

【+  】ゞ゚) 「龍を遠ざける? そんな馬鹿なことが」

一頭が天変地異クラスの力を有する龍属。
それを抑えておくなどということは、口で言うほど簡単でなはい。

('A`) 「勿論、正面切って抑えるなんて流石に無理だ。
     だが、騙すことは出来る。龍王の声を借り、本来の戦いの場とは全く違う場所へと誘導した」

( ФωФ) 「成程。旧派の龍属達が気づいた時には全て終わっていたということだ」

('A`) 「そして俺は龍王との契約を守った。おかげで数体の龍には未だに恨まれているがな。
     そんなことはどうでもいい。
     そして龍王は俺との契約通り、来たるべき終焉の戦いに力を貸すと自らの龍魂を俺に差し出した」

202名無しさん:2018/04/24(火) 12:50:10 ID:JZ..YL360

【+  】ゞ゚) 「なるほど。魂に刻まれた情報を解放して戦う獣の使い手なら、
         自らの力を再現できると踏んだわけですね」

('A`) 「そういう事だ」

( ・∀・) 「…………」

('A`) 「お前の復讐心はわかる。
     だが、その相手がこれから終焉を戦いに向かう英雄の一人だとは予想できなかった。
     どちらも失いたくない戦力だ。それに、憎しみはお前の力にならない」

( ・∀・) 「戦うことが不利だと言いたいんだろ」

人生の大半の間恨み続けた相手が目の前にいるのだ。
平常心で戦うことなどできるはずがなかった。

( ・∀・) 「今は……終末を生き抜くことに協力してやる」

('A`) 「助かるよ。よろしく頼むえっと……」

( ・∀・) 「ふん……モララーだ」

('A`) 「モララーか、龍王と同じ名前だとはね。
    名前負けしない活躍を期待している」

( ・∀・) 「協力はするけど、そこの呪術師に手違いがあっても知らないからな」

少年は既に揃っていた英雄達とテーブルを囲うことなく、
少し離れた場所に一人座った。

203名無しさん:2018/04/24(火) 12:50:54 ID:JZ..YL360



・・・・・・

204名無しさん:2018/04/24(火) 13:00:47 ID:SDticvYA0
一区切りかな?おつおつ

205名無しさん:2018/04/24(火) 16:44:07 ID:ysZ8awxc0
くっそおもしろい

206名無しさん:2018/04/24(火) 16:44:18 ID:JZ..YL360

o川* ー )o 「はっ……っぅ……はぁ……ぐ……」

胸を抑えて蹲る少女。
突然始まった苦痛によって、夢の世界から引き戻された。
心臓の鼓動は激しく、痛みは身体中を駆け巡る。

o川*゚ー )o 「っ……ぁ……」

巨大な牙から噴き出していた魔力が、少女の身体に染み込んでいく。
少女の内包する魔力と異なる魔力が反発し、苦痛を生み出していた。

o川* ー )o 「……ぅ…………」

わずか数分の出来事であった。
少女にとっては数時間にも感じられた痛みの連続は、
始まった時と同様に唐突に終わりを告げた。

o川;゚ー゚)o 「はぁっ……はっ……」

大粒の汗を額から零しながら、震える腕をついて起き上がる。
潤んだ瞳が捕らえたのは、巨大な影。
陽炎のように揺らぎ、その姿を明らかにしない。

o川*゚ー゚)o 「あなたは……」

207名無しさん:2018/04/24(火) 16:44:49 ID:JZ..YL360
「自由に生きろ」

ただ一言だけを発し、それは消えた。
まるで最初からなにもなかったかのように。

o川*゚ー゚)o 「どういう……意味……」

ぐったりとした少女は、牙にもたれ掛って空を見上げる。
赤く染まり始めた空は、相変わらず静かで虚ろであった。

o川*゚ー゚)o 「ロマネスク……オサム……クール……モララー……」

樹、十字架、剣、牙。
それぞれに対応する四人の物語。
それらは彼女の問いかけに答えるのに十分ではなかった。

o川*゚ー゚)o 「誰が……何のために……私は……」

誰もいない場所にただ一人生きている少女。
彼女のために誂えたかのような空間。
もはや少女は知っている。

人間が無から自然に生まれることはありえないと。
魔力が込められたこの空間が、偶然に出来上がることはありえないと。

208名無しさん:2018/04/24(火) 16:45:47 ID:JZ..YL360

o川*゚ー゚)o 「……」

牙に手を突きながら立ち上がり、足を引きずりながら歩く。
崩れた剣のその横、ぽかりと空いた黒い穴。
子供一人くらいが辛うじて通り抜けられるほどの小さなもの。
光の射さない底部に、それは存在していた。

o川*゚ー゚)o 「……ママ?」

白い骨は人間としての形を崩さずに埋もれていた。
今の彼女ならば気づくことができた。微かに残っている柔らかな魔力に。
それが愛する者を護るための魔術の鱗片だということに。

o川*;ー゚)o 「っ……? なに……?」

零れた滴は、暗闇の中へと消えた。
次々止め処なく溢れ出て来る哀しみ。
その原因がわからず、困惑した表情を浮かべながら俯いていた。

o川*;ー゚)o 「っ……」

209名無しさん:2018/04/24(火) 16:46:44 ID:JZ..YL360

涙と共に全身から漏れ出した純粋な力。
魔力の奔流は、少女の全身から一気に解き放たれた。
無属性の暴風によって少女の世界を覆っていた薄い膜は破られ、
少女を囲んでいた四つのシンボルは瓦礫と化した。

o川*゚ー゚)o 「……何が」

清涼としていた空気は流れ去り、鼻腔を満たすのは焦げた臭い。
肌を焼くような強い日差しと、息苦しいほどの湿気。
おおよその不快を詰め合わせたような環境が、大挙して押し寄せてきた。

o川* ー )o 「っほ……ごほっ……っ……!!」

少女の目に飛び込んできたのは、今まで見えていたものとは全くの別物。
赤黒入り乱れた大地は火を噴き上げて一秒ごとにその姿を変え、
空を覆う厚い雲の中は幾条もの光が迸る。

巨大な氷が音を立てて崩れる傍から、炎が渦を巻き雲すらも貫いて立ち上がった。
空から降って来た塊がいくつも大地にぶつかり、衝撃で地面諸共弾ける。

咽るような熱気と、凍える様な寒気とがまばらに拡がった世界。
罅が入り、歪み、軋んで崩れてしまった、壊れかけの世界。
その時、少女は真実の世界を認識した。

210名無しさん:2018/04/24(火) 16:47:14 ID:JZ..YL360

o川*゚ー゚)o 「そんな……」

およそ生物が生きられるような環境を徹底的に排除したかのような、荒んだ世界。
それが、今彼女が立っている場所であった。
細かい振動と共にひび割れていく不安定な大地。
彼女を護っていた空間は無く、助けを求める人もいない。

o川*;ー;)o 「やだ……もうやだよ……どうなってるの! ねぇ……誰か……。
         ママ……! ……誰!?」

頭の中に響く声が少女を呼ぶ。
呼ばれて振り返った先には、光放つ杖。

o川*゚ー゚)o 「……!!」

少女の叫びは地響きの轟音に消え、ついに足元が崩れた。
崩落に巻き込まれた少女は、必死になって上から落ちてきた杖を掴んだ。

211名無しさん:2018/04/24(火) 16:47:38 ID:JZ..YL360

>1


('A`) 「っあー……さって、次は誰行くかねぇ」

事前に用意したリストに記してある名前は二十を超えている。
バツ印がついているのは、まだ五つ。
世界を三周以上するほどの移動距離と、相応の時間がかかることは容易に想像がついた。

('A`) 「ってもなぁー、めんどくせぇなぁ……」

最も近い地図の印が百キロほど。
彼にしてみれば大した移動距離でもないが、
その後の面倒を考えれば溜息の一つ二つは出るだろう。

強者とは往々にして傲慢であるものであり、
残念ながら過去五回の邂逅は全て戦闘に始まり戦闘に終わった。

リストに名を乗せる彼らは他に類を見ない程の特殊な能力を持つ者や、
ただ一つの特性を愚直なまでに磨き上げた者達。
当然一筋縄ではいかず、命を落としかけたことすらもあった。

それでも彼が強者を訪ねて歩く理由はたった一つだけ。

212名無しさん:2018/04/24(火) 16:48:34 ID:JZ..YL360

('A`) 「この世代で……すべて終わらせる」

迫り来る災厄に対する対抗手段を得るために。
もっとも、この時点で彼はその戦いに参加する権利すら持っていなかったが。

('A`) 「さって、そろそろいくか……ウィングロード!」

魔力を変換し、術師の思い通りの現象を引き起こす魔術。
最も汎用性が高く、最も多くの術者が存在している力である。
難易度の高い魔術の多くは、どの種族でも血によって受け継がれているが、
単純な魔術であれば魔書からでも習得可能である。

ウィングロードは基礎的な移動魔術であり、
魔術師の家系に属する者であれば誰しもが扱うことができた。
ドクオは大空に飛び上がり、鳥も驚くような速度で空を滑っていく。

('A`) 「次は……精霊の森の……古老。今までのとは一つ二つも格が違う。
    少しは覚悟しとかねーといけないか」

彼の一族は遥か昔から連綿と続く魔術師の家系。
統合と戦死によって数は減り、今はもう三家しか残っていない。
最大派閥のドレイク家、次いでフォーラン家、そして最も小さいルグ家。

213名無しさん:2018/04/24(火) 16:49:06 ID:JZ..YL360

魔力を持ち魔術を扱う種族は数多くいれど、彼らと魔術師の間には決定的な差があった。

五百年に一度訪れる終焉に対抗するための唯一の手段。
仲間を呼び集めることのできる呼応の魔術。
彼らこそが、レタリアの発動を許された唯一の種族である。
魔術師達の中で、当代の最も力の強い魔術師だけがそれを扱うことができると伝えられている。

故に、歴代の英雄達には必ず魔術師の名前が刻まれていた。
多くの英雄を輩出した家の発言力は高まっていき、その逆もまた然り。
ドクオの家系では記録に残っている限り一度も無く、
勢力は下降の一途を辿って来た。

昔は同世代に十人はいたはずの競争相手もおらず、
ルグ家から名乗り上げることのできる魔術師はドクオ一人だけ。

('A`) (じっちゃんとばーちゃん元気にしてるかなぁ……)

手慣れた操縦で飛行の魔術を操り、目的の森を目指す。
侵入を阻むための結界を感知し、ドクオはその場に停止した。

('A`) 「んーっと……頑丈というよりは……試しているような感じか」

結界の持つ特性を即座に理解し、製作者の意図に応えるために魔術を一つを組み上げた。
ただの燃焼魔術を何重にも複雑に組み上げ、結界に投げつける。

214名無しさん:2018/04/24(火) 16:49:47 ID:JZ..YL360

強固な結界に対して小石程度の魔力であっても、
術式を複雑に編み込んだ魔術として発現すれば相応の破壊力を持つ。
人間大の穴が即座に空き、その外周部は再生をを防ぐかのように燃え続ける。

('A`) 「っと、はやいな」

彼の前に現れた数十人の神官。
深緑色のローブを纏い、小型のナイフを一本だけ構えたそれは精霊術師の戦闘態勢。
装備において彼らは、ごく一般的な精霊術師と大差ない。

ただその能力は、こと集団戦闘においては他の追随を許さない。
精霊の森の神官とは、最強の精霊術使い手達のことである

('A`) 「怪我する前に下がったほうが良いぞ」

「何を! 愚かな侵入者が! ここが何処か知っての狼藉か!」

('A`) 「あぁ、勿論だ。ほら、俺はその人を待っていたんだ」

包囲の後ろから現れた小柄な老人。
ドクオを囲んでいたはずの神官達に、より一層の緊張がはしった。

('A`) 「初めまして、ロマネスク」

215名無しさん:2018/04/24(火) 16:51:22 ID:JZ..YL360

( ФωФ) 「こちらの名前は知っているようだが……俺は知らんな」

('A`) 「俺の名前はドクオ・ルグ。魔術師だ」

( ФωФ) 「それはみればわかる。希少な魔術師が何用かな?」

('A`) 「少し話があってね」

( ФωФ) 「ふむ……では他の者には席を外させよう」

「なっ……! このような乱暴者と二人きりにさせるわけには」

( ФωФ) 「大事ない。わざと結界を派手に壊したのも、俺を呼ぶためであろうよ。
         このような場所で話すことも無かろう。ついて来るがよい」

('A`) 「流石。話が分かる」

( ФωФ) 「一人前の神官を育てるのには、相応の時間がかかる。
         無意味に減らされることは避けたいのだよ」

ロマネスクは空中を歩き、精霊の森の中心部に聳え立つ最も高い樹木へと向かった。
その後ろを少し離れてドクオが追う。
背後から放たれるいくつもの殺気を軽く受け流しながら。

('A`) 「初めてだよ、こんなにまともな待遇を受けたのは」

216名無しさん:2018/04/24(火) 16:52:04 ID:JZ..YL360

ロマネスクは空中を歩き、精霊の森の中心部に聳え立つ最も高い樹木へと向かった。
その後ろを少し離れてドクオが追う。
背後から放たれるいくつもの殺気を軽く受け流しながら。

('A`) 「初めてだよ、こんなにまともな待遇を受けたのは」

( ФωФ) 「そうか、他にも訪ねているのか」

('A`) 「誰も彼もロマネスクの名には劣るがな。
     ほんと、対面してわかった。化け物どころじゃねーな」

( ФωФ) 「何、安心するがいい。俺にはさほど特殊な力は無い。
         心も読めぬし、魔術も使えぬ」

樹の頂点に用意されている薄い盆のような場所。
精霊術によって空中に固定されており、支点やアンカーなどは一つもない。

中心には背の低い台。その上に湯呑と茶菓子が二つずつ。
細い湯気を立ち昇らせたそれは、今し方用意されたばかりのものであろう。

( ФωФ) 「ようこそドクオ。まぁ座るがいい」

('A`) 「そうさせてもらう」

217名無しさん:2018/04/24(火) 16:52:36 ID:JZ..YL360

遠巻きに見ている神官達の視線を感じながら、
ドクオは床に腰を落とした。

( ФωФ) 「それで、本題に入ろう。ルグの魔術師がわざわざ来るとは何用だ」

('A`) 「そうか、ルグの名は当然知っているよな。まぁ俺の名前はあまり関係がない。
     俺が今回の戦いに出る」

( ФωФ) 「今、最優秀の魔術師はヒッキー・ドレイクと聞いているが、
         レタリアは彼の手にあるのではないかね」

('A`) 「奪うさ」

( ФωФ) 「随分と威勢のいい話だ。勿論、戦いには最も強いものが出るべきだ。
         勝てるのならそうするがいい」

ドクオは驚き一瞬言葉が途切れた。
浮かべていた間抜けな表情を慌てて繕う。

('A`) 「意外だな」

( ФωФ) 「何が」

('A`) 「もう何回も戦いに赴いているあんたなら、
     そんなやつに背中は任せられないとでもいうかと思った」

218名無しさん:2018/04/24(火) 16:53:35 ID:JZ..YL360

( ФωФ) 「ふむ、殺すという表現を使わなかったのもあるが。
         裏切りそうかどうかなど見て、話をすればだいたいわかる。
         それにな……魔術師はどうせ生き残れん」

('A`) 「……そうだな」

( ФωФ) 「俺がレタリアに呼び出され戦ったのは四回。
         少なくともその四回の戦いを生き残った魔術師はいない」

('A`) 「……」

( ФωФ) 「どんな相手が来るかもわからんのだ。
         人間の身体で戦う魔術師は、簡単なことですぐに命を落とす。
         それでも、その座を奪うというのか?」

ロマネスクから教えられた事実。
それは、魔術師達が過去の戦いに対する記録をほとんど持っていない理由であった。
ルグ家を除いて。

('A`) 「やはり、そうだったか」

( ФωФ) 「強がりか」

('A`) 「ルグ家ってのは、確かに一度も英雄を出したことの無い落ちこぼれの家系だ。
     他の二家とは違う。もはや絶滅寸前とも言っていい。
     だが、一つだけ俺達には他の奴らが持っていないものを持っている」

219名無しさん:2018/04/24(火) 16:54:57 ID:JZ..YL360

( ФωФ) 「なんだ」

('A`) 「情報さ。かつての戦いに関する膨大な量の情報。もともとルグ家の役割は観測と分析。
     戦闘用の魔術こそ殆ど生み出しては来なかったが、それらに関しては完全に別格だ」

( ФωФ) 「それは興味深いな」

ドクオが杖を振るうと、彼の背後に光の歪みが発生した。
その中から飛び出してきた本を一冊手に取り、しおりの挟んであったページを開く。

('A`) 「前回の終焉を戦ったのは、老樹ロマネスク、魔術師パラセルト、天剣使いトール、
     流星群竜ペルセウス、地殻獣モーグ、そして雨乙女ドロップの六人」

( ФωФ) 「……」

('A`) 「生き残ったのはあんたとドロップの二人だけ。
     あんたとドロップ、天剣使いは今までと同様の面子だ。
     天剣使いの一族だけはアンタよりも古いな。あの一族に関しちゃまだ調べ足りないが」

( ФωФ) 「天剣使いは……俺と同期だよ。輝龍クレシアの世代だ」

('A`) 「二千年近く前か」

220名無しさん:2018/04/24(火) 16:55:37 ID:JZ..YL360

( ФωФ) 「それで、それだけの情報があると証明して何が言いたい?」

('A`) 「五百年に一度訪れる終末。そんなふざけたことがあっていいわけがない。
     神か悪魔か知らないが、この世界を滅ぼしたいのなら毎年でも来ればいいだろう。
     なぜそうしない」

( ФωФ) 「その程度の疑問、何千何万回と繰り返されておる。
         誰も答えには辿り着けぬし、来たるべき戦いを乗り切るので精一杯なのだ」

頭を振るロマネスク。
質問には答えなどないと、暗に示していた。

('A`) 「今まではそうだった」

それを止めたのはドクオの強い否定。
老樹の瞳は探る様に魔術師を見つめる。

( ФωФ) 「ほう?」

('A`) 「言ったろ。ルグの家系には膨大な資料がある。
     人生を何度繰り返しても読み切れないほどの。
     だからこそ、俺は一つの魔術を生み出した。全ての知識を直接この身に取り込むために」

( ФωФ) 「新しい魔術を作り出すことはそう簡単ではないと聞くが。
         本当に魔術師かと疑うほど魔力量の少ない貴様がか」

221名無しさん:2018/04/24(火) 16:56:17 ID:JZ..YL360

('A`) 「魔力量は魔術を生み出す妨げにはならない。
     大量の魔力を用いるのは、効率の悪い出来損ないの魔術だからだ」

( ФωФ) 「では聞かせてもらおうか」

('A`) 「敵が現れる虚空。これが繋がっている先がわかった」

( ФωФ) 「馬鹿な」

('A`) 「あれはいわば門だった。原理も魔術と同じだ。
     あれの先にあるのは虚ろ。そこから奴らは産み落とされる」

( ФωФ) 「虚ろだと? そんなものは法螺にすぎん」

('A`) 「そういうと思ったさ。だからこいつを用意しておいた」

再びドクオの背後に現れた波打つ光。
中から四つの杖が飛び出し、魔術師の頭上に浮かぶ。

('A`) 「これらは魔術を一つだけ保存し、発動することのできる杖だ。
     俺が持っているこの一本の劣化コピーだがな」

( ФωФ) 「何をするつもりだ」

222名無しさん:2018/04/24(火) 16:57:11 ID:JZ..YL360

('A`) 「何、さほど危なくはない。
     同威力の四大属性魔術を同時に放ってぶつけ合うと、
     魔力が不安定化して空間の歪みが生まれる」
   
空中で放たれた火、風、水、地、それぞれの属性を持つ魔術。   
互いに激しく反発し、魔力そのものが乱れ始めた。
対消滅を繰り返し続けた中心部に現れたのは、小さく黒い球。

('A`) 「そうしてできた歪みの中心に、重力魔術による回転をくわえる」

四つの属性が激しく回転し、
小さな黒い球は次第に引き伸ばされて薄い円盤状へと拡がっていく。

('A`) 「後はこのバランスを崩さない様に、空間魔術でこの中に小さな無数の空間を作る。
     その後、時間魔術によって円盤そのものの時を加速すれば……」

突如弾けた円盤は、四大属性の魔術を放つ杖を飲み込んで黒い穴と化す。
内部では透明な泡が有り得ないほどの速度で生成され、潰れていく。
脳を直接揺るがすような音が響き、黒い穴から魔力が零れてきた。

皮膚に触れただけで、吐き気を催すほどの悪意。
内臓を掴まれる様な嫌悪感。
凶悪にして強大な魔力を持つ境界の向こう側の存在を、ロマネスクは知っていた。

223名無しさん:2018/04/24(火) 17:01:06 ID:JZ..YL360

(; ФωФ) 「っ!!!!」

飛び上がったロマネスクが瞬時に唱えた精霊術。
島一つ程度なら沈めてしまうほどの超高密度の空気を従えた大気の精霊。
手のひらほどのサイズでありながらも、小龍なら圧倒できる威力がある。
呼び出された数体は黒い穴へと一斉に突撃をかけ、そのまま消えた。

( ФωФ) 「はっ……ははは……」

空には何一つとして残っていない。
ドクオの四本の杖も、ロマネスクが呼び出したはずの大気の精霊も。
この世の憎悪を詰め込んだような、むせ返るほど邪な魔力も。

( ФωФ) 「良いだろう。ドクオ・ルグ。お前の言葉、信じてやろう。
         それで、お前はこれを確認してどうするつもりだ」

('A`) 「繰り返される終焉に終止符を打つ」

( ФωФ) 「こちらの世界に紛れ込んできた奴らに勝利するのすら精一杯なのだ。
         一体どれほどの危険性があると思っている。
         下手をすれば今のバランスすら失ってしまう」

224名無しさん:2018/04/24(火) 17:02:06 ID:JZ..YL360

('A`) 「五百年ごとに一度。毎回乗り越えてきたとはいえ、次も乗り越えられるとは限らない。
     このまま続けば、いずれ破滅する」

( ФωФ) 「過去数回は少なくとも、レタリアが届かなかったことは無く、
         英雄が現れなかったことも無い。
         お前の自己満足で世界を壊すつもりか」

('A`) 「救えねぇ。耄碌したか老樹ロマネスク。
     だから俺は世界中を渡り歩いている。終末を数十年後に控えた今」

ドクオが杖を地面に叩き付けた。
魔力に寄って拡散された振動が響き、湯呑の中の水面が波打つ。
足元に浮かび上がった世界地図。

五つの大陸の中に大きな赤い星が五つ。
小さな青い星が十以上輝いている。

('A`) 「老聖、老樹、老狼、老龍、老燕と、それらに匹敵するかもしれない力の持ち主の居場所だ」

( ФωФ) 「ふん、大した情報網だな」

('A`) 「俺はこれから全員に会いに行く。会ってその強さを確かめる」

( ФωФ) 「自分が一番強いつもりか?」

225名無しさん:2018/04/24(火) 17:02:53 ID:JZ..YL360

('A`) 「いや、この旅の途中で命を落とすことだって覚悟しているさ。
     全てはこの世界の為だ」

光の地図は消え、床は通常の状態に戻る。

( ФωФ) 「……ドクオと言ったか。お前の試みを邪魔するつもりは無いが、
         わかっているのだろう。避けては通れぬ関門があるぞ」

('A`) 「ヒッキー・ドレイク」

ドレイク家の長い歴史の中で、過去最高の魔術師との呼び名が高い男。
その名前と実力は海を渡って、世界中に轟いていた。

( ФωФ) 「レタリアは間違いなく奴に継承されている。
         お前は奴を倒さなければ舞台に上がることすら許されない」

('A`) 「わかっているさ。この旅のもう一つの目的は、経験を積むことだ」

( ФωФ) 「ふん、俺はどちらでも構わないが……お前を気に入った。
         再び俺の前に現れるのを楽しみにしている」

('A`) 「急な来訪失礼した。老樹ロマネスク」

( ФωФ) 「その呼び方は好きではない。もし次に会うことがあれば名だけを呼ぶがいい」

226名無しさん:2018/04/24(火) 17:03:15 ID:JZ..YL360

('A`) 「そうさせてもらう。それでは」

ドクオは立ち上がり、目の前に座る老人に頭を深々と下げる。
振り返って杖を掲げ、無詠唱の移動魔術を発動した。
その姿は陽炎に紛れて見えなくなった。

227名無しさん:2018/04/24(火) 17:03:51 ID:JZ..YL360

>2


(;'A`) 「まさか……な……」

膝をついたドクオの首元に添えられた光の剣。
汗を滴らせ、肩を大きく上下させながらその持ち主を睨む。

(゚ー゚*下リ  「ふふふ」

('A`) 「俺の負けだ。まったく、現実じゃないと信じたいね」

杖を手から離し、両手をあげるドクオ。
魔術を用いるのに杖は必要ないのだが、降参の意を示すために。

(゚ー゚*下リ  「間違いなく現実ですよ」

('A`) 「どうせ人間じゃないんだろ」

(゚ー゚*下リ  「失礼ですね。正真正銘、人間です」

背の高い女性は光の剣を手の内から消した。
死のプレッシャーから逃れたドクオは腰を落とす。
地べたに座りながら、優雅に立つ女性をじろじろと観察する。

(゚ー゚*下リ  「そんなにみられても困ります。私は既に結婚しておりますので」

228名無しさん:2018/04/24(火) 17:04:29 ID:JZ..YL360

('A`) 「っあー……納得いかねぇ」

(゚ー゚*下リ  「魔術師様が手を抜いてくださったのですよね?」

('A`) 「そう見えるか」

(゚ー゚*下リ  「ええ」

('A`) 「ということは、俺もまだ伸びしろがあるってことか……。
     で、あんたのその化け物じみた力はどうやって手に入れたんだ」

(゚ー゚*下リ  「んー……鍛練の賜物ですかね」

小さくきれいな掌をほほに添え、困ったように笑う女性。
仕草は大人っぽいが、見た目は年端もいかない少女の様に幼い。

('A`) 「俺がサボってたみたいに言うなよ」

(゚ー゚*下リ  「すいません、そのようなつもりは無かったのですが……」

('A`) 「いや、わかってる。すまない。
     現象すら断ち切る天剣の存在は知識としても知っていた。
     だから俺はあんたに実力勝負で負けたんだ」

229名無しさん:2018/04/24(火) 17:05:05 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「なぜ、私に勝負を?」

('A`) 「……天剣の一族なら知っているだろう。
     終末の戦いに関することさ。負けておいて語るなんて恥ずかしいことさせてくれるな」

(゚ー゚*下リ  「あぁ! 成程! では、あなたが今回のレタリアの使い手たる魔術師様なのですね?」

('A`) 「心底嫌なんだが……否定しないといけないだろうな。
     俺はドクオ・ルグ。ただの魔術師だ。レタリアも使えない」

(゚ー゚*下リ  「あら、そうなのですか。でもよかったです」

('A`) 「何が」

(゚ー゚*下リ  「私は次の戦いに参加できないでしょうから」

('A`) 「もう十五年後だ。あんた以外にいないだろう。
     それに、戦えるだけの実力もある。天剣使いがレタリアから漏れた例はほとんどない」

(゚ー゚*下リ  「いえ……」

女性は頭を左右に振る。

(゚ー゚*下リ  「それまで生きていることは出来ないでしょうから」

230名無しさん:2018/04/24(火) 17:05:49 ID:JZ..YL360

(;'A`) 「なっ……!」

(゚ー゚*下リ  「娘が今年三歳になります。心苦しいですが、彼女に任せることになるでしょうね」

('A`) 「馬鹿な。せいぜい二十手前の小娘が戦えるものか」

(゚ー゚*下リ  「私の娘ですから。それでは信用なりませんか?
        それに、彼女の有する魔力量は私よりもさらに大きい。恐らくはスノウ一族で最も」

('A`) 「……」

(゚ー゚*下リ  「ちょうどよかった。魔術師様、一つお願いがあるのです。
        聞いてはもらえないでしょうか」

('A`) 「なんだ」

(゚ー゚*下リ  「私の娘に剣を教えてほしいのです。来たるべき戦いを生き残るために」

('A`) 「俺は剣を扱うことができん」

(゚ー゚*下リ  「簡単なことです。私の動きを全て真似て頂ければいいのです。
        これは親バカと言う物でしょうか。彼女の……クールの瞳を見ていると思うのです。
        彼女には才能がある。確かな師さえいれば、私すらも超えるほどの」

231名無しさん:2018/04/24(火) 17:06:33 ID:JZ..YL360

('A`) 「……あんたの病を治してやる。その方が簡単だ」

(゚ー゚*下リ  「頑固な魔術師様ですね。……わかりました。
        それでは、私はドクオ様の治療を受ける代わりに、
        ドクオ様は私に剣の手ほどきを受けて頂きます」

('A`) 「俺は他にもやらなきゃいけないことがたくさんあるんだ。めんどくせぇことを言うな。
     どんな病気かは知らないが、俺にかかれば不老不死にだってしてやれる」

(゚ー゚*下リ  「おや、これは不思議なことを。
        私程度に負けた魔術師様が、私が解決できない病を治せると?」

('A`) 「そんな挑発には乗らないつもりだ……が、確かに負けたままというのも気にくわない。
     その交換条件を受けよう。剣士の戦い方というのは今後の参考にもなる」

(゚ー゚*下リ  「それでは、もう一本」

女性に手の中で輝く剣は、高純度の魔力の塊。
殺すつもりで放った魔術すら容易に切り裂く。
驚異的なのは鋭さではなく、その性質。

('A`) 「……フォールト」

232名無しさん:2018/04/24(火) 17:07:10 ID:JZ..YL360

ドクオの周囲に多数出現した黒い空間の裂け目。
先程の戦いで唯一、ナインツ・ヘイブンの攻撃を受けることができた断絶の魔術。

(゚ー゚*下リ  「もっと他の魔術はないのですか?」

二振りの光剣が罅割とぶつかり、空間を歪めながら対消滅した。
女性の背後にはすぐに二つの剣が再生する。

('A`) 「その威力で、いくらでも再生できるとか……ほんと、反則でしかねぇ」

(゚ー゚*下リ  「逃げているだけでは勝てませんよ」

飛び込んできた女性の一振りを、ドクオは寸前で躱した。
空振った一撃は勢い余って大気を割る。

(゚ー゚*下リ  「流石ですね!」

嬉しそうににこにこと笑いながら、両手に持った剣を振るう。

('A`) 「近接戦闘なんてまったくやったことなかったんだがな。
     さっきのあんたを見て覚えた」

(゚ー゚*下リ  「魔術師が新しい魔術を生み出すには数年かかると聞きますが」

('A`) 「この程度であれば、俺にはそんな長い時間必要ない」

233名無しさん:2018/04/24(火) 17:07:58 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「でも、見たことの無い動きには……!」

七本の剣が順次射出された。
一直線にドクオへと迫り、魔術に弾かれる。

(゚ー゚*下リ  「ふふ……っ!」

急接近した彼女が二振りの剣を同時に振り下ろす。

('A`) 「フォールトっ!!」

形成した空間断裂に弾かれた天剣。
最初に飛来した七つは、粉々に砕けていながら未だ消えていなかった。

(゚ー゚*下リ  「刻みなさい! エスノストゥム!」

天剣の欠片はドクオを囲んで巨大な嵐を生み出す。
岩石すらも細切れにしてしまうほどの激しいうねり。
乱反射する光は内部からの衝撃で飛散した。

('A`) 「死んだかと思った……」

(゚ー゚*下リ  「おや、無傷ですか」

234名無しさん:2018/04/24(火) 17:09:01 ID:JZ..YL360

('A`) 「その威力が馬鹿高い剣の構成は魔力におるもの。
     だったら干渉することくらいはできる。
     命がけの状況に追い込まれればな」

(゚ー゚*下リ  「剣に対する支配力は当然私の方が上ですが、
        ほとんど魔力の塊になってしまえばそうではないということですね。
        勉強になります」

女性の背中に再生した七本の天剣は、
切っ先をドクオに向け宙に浮かぶ。

('A`) 「少し、打ち合うか」

ドクオもまた、魔力で創り出した剣を構える。
魔力量の少ない彼が編み出した、ナインツ・ヘイブンに対抗するための剣。
僅かな魔力を糧に、硬化と再生の魔術を半永久的に発動し続けるそれは、
陽炎のようにその姿を一定に留めずに揺らめく。

(゚ー゚*下リ  「不安定な状態ですが……そんなもので受けられるのですかっ!」

フォールの振り下ろしは、甲高い音で弾かれた。
一瞬の驚きを極限まで抑えた彼女は、そのまま二撃目へと繋げる。
ドクオは首を狙った剣先を受け止めた。

235名無しさん:2018/04/24(火) 17:09:49 ID:JZ..YL360

('A`) 「一秒前の俺よりも、今の方が強い。
     魔術の可能性は無限だからな」

(゚ー゚*下リ  「認識を改める必要がありそうですね」

何十合と斬撃を重ねる二人。
お互いに一歩も引かず、目と鼻の先の距離で鎬を削る。
時折飛び散る魔力の欠片が、大地に浅く無い爪痕を残す。

(;'A`) 「っち……」

(゚ー゚*下リ  「ふふふ……」

('A`) 「正直、その底なし沼みたいな魔力が羨ましいよ」

(゚ー゚*下リ  「たったそれだけの魔力で、これほどの魔術を運用しているのは素直に尊敬していますよ。
        それに、すぐさま新たな魔術を生み出せる知識と発想力。
        私は他の魔術師とあったことはありませんが、簡単なことではないでしょう」

('A`) 「はっ……良く喋る……」

(゚ー゚*下リ  「これで、終わりです……ナインツ・ヘイブン!」

236名無しさん:2018/04/24(火) 17:10:51 ID:JZ..YL360

重たい一撃をドクオが受けたのを確認し、距離をとる女性。
断絶と打ち合っていた七本の刃が女性の背に集まる。
手放した二刀と合わせて、後光の様に円形に浮いて配置された九つの剣。

「ローテイシオン」

高速で回転した魔力剣は、光輪となってフォールの背から放たれた。

('A`) 「がっ……」

ドクオが盾として生み出した断絶ごと、その胸を深々と切り裂いた。
人間がおよそ生きていられないほどの鮮血が飛び散り、ドクオは膝から崩れ落ちた。

(゚ー゚*下リ  「……やりすぎてしまいましたか」

('A`) 「痛ぇ……。とっさに再生魔術を自分にかけてなかったら、御陀仏だったな……」

(゚ー゚*下リ  「意識もあるのですか。全く、恐ろしい方ですね」

('A`) 「はは……褒められても嬉しくないな。だが、身体捌きは盗ませてもらった。
     少なくとも俺が相対した中で最高レベルの剣術だ」

(゚ー゚*下リ  「魔術師とは本当に恐ろしい。同じ人間ではないんでしょうね」

237名無しさん:2018/04/24(火) 17:11:27 ID:JZ..YL360

ナインツ・ヘイブンの内、八つをその身に仕舞った。
残った一つをドクオの傷口に向ける。

(゚ー゚*下リ  「リフドロップ」

('A`) 「魔力による強引な再生……普通の人間なら卒倒するぞ」

起き上がって座り込んだドクオ。
不健康そうな青白い顔はそのままに、身体中の傷は完全に治癒していた。

('A`) 「しかし、多彩な魔術を持ち合わせているんだな」

(゚ー゚*下リ  「ナインツ・ヘイブンの持ってる九つの魔術。
        私が使えるのはそれだけです」

('A`) 「それが名前の由来か」

(゚ー゚*下リ  「さぁ、どうでしょう。私が受け継いだ時にはもう、
        この剣に関する歴史などはほとんど失われていましたから」

('A`) 「輝龍クレシアが殺した九体の天使。
     その身体から抉り出した光の魔力をもとにした剣」

238名無しさん:2018/04/24(火) 17:14:21 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「それは本当の話なのですか?」

('A`) 「少なくとも、俺の知る限りは」

(゚ー゚*下リ  「なぜ龍が殺した天使が素材の武器を人間が扱っているのですか?」

('A`) 「文献上だと、輝龍クレシアは人間の男と恋に落ちた。
     そして二人の間に生まれたのがエール・スノウ。初代の天剣使いだ」

(゚ー゚*下リ  「エールという名前は聞いたことがありますね」

('A`) 「龍は種族としての強者。子を為して繁栄することはできない。
     その目に見えないルールを魔力で強引に破ったツケ。
     天使達は輝龍クレシアとその娘の命を奪うために現れた」

(゚ー゚*下リ  「それを返り討ちにしたのですね……。一体どこから現れたのでしょうか」

('A`) 「わからない。ただ、戦場は熾烈を極めたらしい
     環境が変わるほどに。そして再びの襲撃に備え、娘に天剣を残した」

(゚ー゚*下リ  「それが……ナインツ・ヘイブン」

('A`) 「九つの魔術は、それぞれの天使達が持っていた特有の魔術。
     天剣の使用者はそれらを自由に扱うことができる」

239名無しさん:2018/04/24(火) 17:15:18 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「ええ。ですが、逆に言うとそれらの九つの魔術しか使えません。
        魔力を持っていたところで、私はただの人間なので」

('A`) 「その動きは十分に人間を超えているがな」

(゚ー゚*下リ  「お褒め戴き光栄です。
        さて、そろそろ帰ります。あなたの目的は達成しましたよね」

('A`) 「待て。病気の件がまだだ」

(゚ー゚*下リ  「……私の病は人の身には過ぎたこの魔力が原因です。
        本来であれば娘が生まれてすぐに引き継ぐべきだった天剣。
        ですが、幼少時に膨大な魔力をその身に宿すことは、かなりの負担となるのです」

('A`) 「それが寿命を圧迫していると」

(゚ー゚*下リ  「私は娘にそのような思いをさせたくありませんでした。
        ですので、未だに天剣の使い手たる資格を有しているのです。
        彼女がもう少し育ってから、引継ぎを行います」

('A`) 「……嘘は言っていないんだな」

簡単な観測の魔術。
詠唱も無しに発動したそれは、瞬時にフォールの身体状況を調べる。
魔力の歪みが彼女の身体に対して与えている影響は、
想像以上に深刻なものだった。

240名無しさん:2018/04/24(火) 17:15:53 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「断りも無く調べるなんて、失礼な方ですね」

('A`) 「すまん……」

(゚ー゚*下リ  「分かってくださったみたいなので、結構です」

('A`) 「今から天剣を取り除けば、少しでも……」

(゚ー゚*下リ  「天剣の受け入れ先は一人しかいません。
        私が最も望まない答えです」

('A`) 「……」

(゚ー゚*下リ  「あなたに会うずっと前から決まっていたことです。そう気にしないでください。
        むしろ感謝しているのです。私の研いた技を、彼女に伝えることができるのですから」

('A`) 「わかった。数年後、必ず約束を果たそう」

(゚ー゚*下リ  「ありがとうございます。それでは、そろそろお城に戻りますね」

('A`) 「あぁ」

241名無しさん:2018/04/24(火) 17:16:32 ID:JZ..YL360

フォールは風にも劣らない速度で走り去った。
とても身体が悪くなっているとは思えない程に早く、
すぐにドクオの視界から消えた。

('A`) 「娘の名前も聞いておけばよかったな……。
     まぁいい。次は……っと」

地図に書き込まれたリストの内、半数以上は横線によって埋められていた。
残る強者のほとんどは、話し合いにも応じてくれそうにない者ばかり。
先行きの不安を溜息と共に飲み込んで、重たい腰を上げた。

242名無しさん:2018/04/24(火) 17:18:04 ID:JZ..YL360

>3


(-_-) 「誰だ……?」

砂漠の真ん中で、男は待っていた。
目印にしていた枯れ木は、強い日光を遮って大きな影を落とす。
上空から数十歩の距離のところに着地して、声をかけた。

('A`) 「初めまして、か。ヒッキー・ドレイク」

ドクオの接近に気づいていた男は、声を聞いてからゆっくりと顔をあげる。

(-_-) 「あぁ、よく見れば落ちこぼれルグ家の生き残りじゃないか。
      どうだい、一族最後の魔術師になる気分は」

おちょくる様に短杖を振るって言葉を返す。
気にした風は無く、ドクオは続けた。

('A`) 「いいんだよ、ルグ家は俺で完成したんだから」

(-_-) 「随分と高い鼻だな」

('A`) 「お前こそ、随分と自惚れているようだな。
     御先祖様の努力の結晶を何もせずに受け取っただけのくせに」

243名無しさん:2018/04/24(火) 17:19:01 ID:JZ..YL360

ドクオの知っている限り、ヒッキー・ドレイクという男は自ら魔術を生み出したことは無い。
最大派閥のドレイク家で最も膨大な魔力を持つ彼は、
多くの有用な魔術を引き継いでいたからだ。
ルグ家のドクオとは違い、新たに魔術を生み出す必要がなかった。

(-_-) 「……魔術師にとって大事なのは魔力の量だ。
      お前にはそれが圧倒的に足りていない。そんなこともわからないのか?」

それ故、彼は自身の才覚に絶対の自信を持っていた。
魔力量の多い者こそが、最も強い魔術師であると。

('A`) 「分かっていないのはお前さ。魔力の量なんて大した問題じゃない。
     魔術は扱い方によってその性質を幾らでも変化させる」

(-_-) 「ムカつくやつだな。わざわざ俺を呼び出しておいて、したかったのはそんな説教か?
      それともレタリアを使うことができない八つ当たりか」

('A`) 「あーそれだ。レタリアの権利、俺にくれないか?」

突然の話を理解できずに、ヒッキーの思考は完全に停止した。
この時もしドクオが攻撃魔術を同時に唱えていたら、一撃で昏倒させていたかもしれない。

244名無しさん:2018/04/24(火) 17:19:34 ID:JZ..YL360


(-_-) 「は?」


間抜けな声を出して、漸く働きだした脳細胞で言葉の意味を再度吟味する。
結果、腹の底から湧き出てくる笑いをこらえることはできなかった。

(-_-) 「くっくくく……どうした? お前如きでもこの世界のために尽くそうという気があるのか。
      だが、お前では戦いを生き残ることは出来ないだろうよ」

('A`) 「本当に与えられてばかりで何も知らないんだな」

(-_-) 「なんだと?」

('A`) 「過去、終末の戦いを生き残った魔術師は一人もいない」

ドクオの杖から魔力が流れ出て、細い線を描く。
それは、人の名前を表す文字になった。
魔術師の中では必須科目でもある終焉に関する知識のうち、
誰もが暗唱できるほど覚えている名前。

245名無しさん:2018/04/24(火) 17:20:43 ID:JZ..YL360

それらは、かつて終焉を戦った魔術師達の名。

(-_-) 「そんなわけが」

('A`) 「ルグ家の役割を知らないのか」

(-_-) 「…………観測と、分析」

('A`) 「よく知っているじゃないか」

(-_-) 「だからどうした。俺が最初の一人になればいい」

('A`) 「お前には無理だ」

(-_-) 「言うのは勝手だが……喧嘩を売った代償は高くつくぞ」

ヒッキーが構えた短杖は膨大な魔力を纏う。

('A`) 「ったく、これだからプライドだけ高い奴は」

ドクオもまた長杖を構え、魔術を発動させていく。
距離を開けて並ぶ両者が杖に集めた魔力には、歴然とした差があった。
片や天変地異レベルの大魔術を発動できそうなほど大きく、
相対するもう一つは吹けば消えるほどに小さい。

246名無しさん:2018/04/24(火) 17:21:20 ID:JZ..YL360

(-_-) 「はっ……可哀想に。そんなちっぽけな魔力で何ができる」

('A`) 「よかったな。ここで俺にレタリアを奪われてしまえば、お前は寿命まで長生きできるぞ」

(#-_-) 「糞が! 押し潰されて死ね! ロックエンド!」

砂漠から持ち上がった大量の砂に魔力が浸透し、
巨大な二枚の壁となってドクオの左右に立ち上がる。
空にまで届くほどの高い壁は、形成された瞬間に中心に向かって動く。
瞬く間に蟻一匹の生存すら許さないほど完全に閉じた。

('A`) 「無駄が多いって言ってんだろ」

砂の一枚板の中心部に無傷で立っているドクオは、
ヒッキーの大魔術が発動される前から一歩も動いていない。
人間一人分の大きさだけが不自然に砕かれた砂の壁。

(-_-) 「何をした……」

('A`) 「分からないからお前は二流なんだよ」

その一言はヒッキーを怒らせるのに十分すぎた。
膨大な魔力が砂の中に染み込んでいき、魔術としての形を得る。

247名無しさん:2018/04/24(火) 17:21:49 ID:JZ..YL360

(-_-) 「サンドアクス」

砂で組み立てられた巨大な斧が三つ。
魔術によって圧縮された砂の重量は、同じ大きさの鉄塊すら凌ぐ。
それらが軽やかに舞い上がり、ドクオの身体目掛けて放たれた。

風切り音ですら大地を揺らすほど。
受ければ盾ごと引き裂かれるのは必然であった。

(#-_-) 「潰れろ! ゴミ!!」

('A`) 「……セパレイション」

ドクオの目前で斧は分解され、砂漠へと還った。

(-_-) 「なんで……だよ……」

('A`) 「お前、本当に何も知らないんだな」

(#-_-) 「糞がくそくそくそくそ!! もういい!
        俺の前から消し去ってやる!」

248名無しさん:2018/04/24(火) 17:22:20 ID:JZ..YL360

大気中に拡散した魔力の奔流がヒッキーの短杖へと流れ込み、
複雑な魔術を幾重にも組み上げていく。
同時発生した空間の歪みの中で加速し続ける魔術は、
光すらも飲み込む暗い穴となって砂漠そのものを吸い込んでいく。

('A`) 「馬鹿やろ……無茶しすぎだ……スライサ!」

ドクオの放った極薄の刃は、次元の歪みごと切り裂いて進む。
単調な風の魔術を何百回と重ねたそれは、
龍属の首すらも容易く削ぎ落すほどに鋭い。
ものの数秒でヒッキーの魔術の根幹に達し、それを破壊した。

(-_-) 「……」

('A`) 「レタリア、渡してもらえるか」

(-_-) 「ああ……」

自身の扱う最大威力の魔術すら容易に砕かれたヒッキーは、
呆けた表情で左腕の袖を捲った。
そこに記された印に右手の指をあて、魔力を込める。
指の動きに合わせて浮かび上がった印をドクオの腕に移した。

249名無しさん:2018/04/24(火) 17:23:04 ID:JZ..YL360

(-_-) 「……一つだけ教えてくれ」

('A`) 「なんだ?」

(-_-) 「お前は何をしたんだ」

('A`) 「無駄が多いと言ったろ。考えればすぐにわかることだ。
     確実に相手、もしくは自分に影響を及ぼす魔術にだけ魔力を込めればいい。
     俺という魔術師一人を殺すのにこの砂漠を丸ごと消す必要なんて皆無だろ?」

(-_-) 「そんなものは机上の空論だ!
      そうやって攻撃や防御にかける魔力を節約していれば、
      想定外の一撃ですぐにでも戦闘不能に追い込まれる」

('A`) 「想定外なんてないんだよ。どんな変化をしようが、即時に対応する。
     それが俺に許された唯一の戦い方だ」

(-_-) 「馬鹿げてる」

('A`) 「俺はそうは思わない。さて、目的は達成した。
     殺すつもりは無いが、お前はどうする」

(-_-) 「……レタリアを失った俺がすごすごと帰れると思ってるのか」

('A`) 「知らん」

(-_-) 「っち……。どこにでもさっさと消えな」

('A`) 「そうさせてもらうさ。そろそろ計画も次の段階だ」

(-_-) 「お前、何をするつもりだ」

('A`) 「何って……終わらせるんだよ。この胡散臭い戦いをな」

250名無しさん:2018/04/24(火) 17:23:35 ID:JZ..YL360



・・・・・・

251名無しさん:2018/04/24(火) 17:25:07 ID:JZ..YL360
読んでくださった方、有難うございました。
今日はここまでの予定です。
レスが励みになります。

あと二回くらいで終わると思いますので、それまでどうぞお付き合いください。

252名無しさん:2018/04/24(火) 17:40:35 ID:SDticvYA0
再開してたか乙乙

253名無しさん:2018/04/24(火) 19:56:40 ID:ysZ8awxc0
おつ

素直に面白い

254名無しさん:2018/04/24(火) 21:19:58 ID:jk1t.2Ac0
おつー

255名無しさん:2018/04/24(火) 21:39:45 ID:1qelsSZc0
おt

256名無しさん:2018/04/25(水) 19:19:34 ID:/7XdDRWs0
>>1の杖とか錆びた剣とかこういうことだったのか……
めっちゃ続き気になる

257名無しさん:2018/04/27(金) 17:44:12 ID:L0fb2YPY0
おもしろい
早く続きを

258名無しさん:2018/04/30(月) 14:54:01 ID:7X8WUdNc0

>1


約束の丘。

レタリアの魔術が導く戦いの場。
集まった英雄達は最大限の力を発揮できるように、
それぞれが最終調整をしていた。

('A`) 「五人か」

【+  】ゞ゚) 「そのようですね」

( ФωФ) 「不足はあるまい。最も少ないときで四人、多いときで八人であった。
         っと、来客だな」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「あら、どうやら私が一番最後のようですね」

決戦を翌日と定めた最後の日、その女性は現れた。
結界を破り、優雅な足取りで五人の元に。
長く美しい蒼色の髪と、戦闘には不向きな白いワンピース。
左右の腕に嵌めた腕輪は、女性の持つ強い魔力に反応して七色に輝いていた。

突然の訪問に膨れ上がる緊張感。
女性の正体にドクオが気付き、警戒を解くように軽く手を動かした。

('A`) 「いろいろと考えが合ってな。少し早めにレタリアを発動させてもらったんだ。
     あんたは……いや、見ればわかるな。アマザイの一族だろう?」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「星霜のフロストといいます。アマザイの一族から手助けに参りました」

259名無しさん:2018/04/30(月) 14:54:34 ID:7X8WUdNc0

川 ゚ -゚) 「ドクオ。アマザイとはなんだ」

('A`) 「過去の文献にもわりと残っている名前だ。天候を操る一族。
     どこに住んでいるのかわからないから、俺は最後まで見つけられなかったがな」

( ФωФ) 「前回のドロップ、そして私が初めて戦ったときにいたヘイル。
         どちらもかなりの実力者であったな」

( ・∀・) 「これで六人。あと一人か……」

('A`) 「発現したレタリアは七通。だけど必ずしも全員集まるとは限らない。
     恐らくこのメンバーで戦うことになるだろうな」

【+  】ゞ゚) 「十分すぎる戦力のように思えますが」

('A`) 「終焉のその先は何が出て来るか、まったく予想もつかない。
     各自万全の態勢を整えておいてくれ。フロストと言ったな。
     一つ説明しておくことがある」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「なんですか?」

('A`) 「レタリアの内容は確認してるんだよな」

260名無しさん:2018/04/30(月) 14:55:14 ID:7X8WUdNc0

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええ」

('A`) 「俺たちは、終焉そのものを終わらせようと思う」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「終焉そのもの?」

('A`) 「五百年に一度という決まった周期で訪れる終焉。
     何者かの意思が関わっていることは明白だ。その何者かを殺すことが最終目標だ」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……見当はついているのですか?」

('A`) 「恐らくその敵がいるであろう空間に接続するための魔術はある。
     どのような敵が現れるかわからないが……。
     もし望まないのであれば、終焉の敵を倒した後に離れてくれても構わない」

フロストは少しだけ考え、その手をドクオに向けて差し出した。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「私程度でよろしければ、お力添えをいたします」

そのか細い腕を握り返し、ドクオは頷いた。

('A`) 「未来の世代のために」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええ」

('A`) 「ちなみに、ここにいるほかのみんなも賛同してくれている。
     俺の調べた限り、過去の英雄たちをはるかに上回る戦力だ」

261名無しさん:2018/04/30(月) 14:55:45 ID:7X8WUdNc0

( ФωФ) 「今の説明で納得ができるのか」

怪訝そうに眉を顰めるロマネスク。
命を懸ける選択に対して、軽すぎる決断。
フロストはその問いに笑顔で答えた。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「私にとっては十分な説明でございました。
         まだ見ぬ未来をより良くする。今の私たちにできる精一杯のことでございましょう?」

( ФωФ) 「まぁいい。他の者も聞くべきことがあれば今のうちに聞いておけよ。
         明日になってからでは間に合わん」

【+  】ゞ゚) 「そうですねぇ、それなら一つ。聞いておきたいことがあるのですが」

('A`) 「なんだ?」

【+  】ゞ゚) 「お子さんの名前は決めたのですか?」

(;'A`) 「っ!? はぁっ?」

予想だにしない質問で思わず噴き出したドクオ。
冷静を装うことすらできていなかった。

262名無しさん:2018/04/30(月) 14:56:42 ID:7X8WUdNc0

( ФωФ) 「確かに、気になっていたことだな」

クールは我関せず、二つの棒きれで天剣をイメージしながら体を動かしていた。
助け舟を出すつもりは無いと気付いたドクオは溜息を一つ。

('A`) 「気づいていたのか」

【+  】ゞ゚) 「気づいてないと思っていましたか」

('A`) 「いや、魔力の痕跡でいずれバレるとは思ってたよ。
     まさか今日聞かれるとは思ってなかったけど」

( ФωФ) 「全く、前代未聞であるな。
         これから最終決戦に赴く二人が色恋沙汰の関係にあるなど」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「へぇー、そういう事ですか」

事情が呑み込めたフロストも茶化すように話に乗る。

( ФωФ) 「どちらが決めたんだ」

('A`) 「クールだ」

【+  】ゞ゚) 「それで、何という名前なのですか」

263名無しさん:2018/04/30(月) 14:57:06 ID:7X8WUdNc0







川 ゚ -゚) 「キュート」







それまで沈黙を保ってきたクールが口を開いた。
消え入りそうなほど小さいが、芯のはっきりとした声で。

264名無しさん:2018/04/30(月) 14:57:45 ID:7X8WUdNc0

【+  】ゞ゚) 「いい名前じゃないですか」

川 ゚ -゚) 「当たり前だ」

('A`) 「俺もそう思う。きっと君に似て可愛くなる」

川 ゚ -゚) 「お前に似て賢くなればいいがな」

( ・∀・) 「っち……緊張感のない」

【+  】ゞ゚) 「御二人とも、もう親バカ全力ですか」

( ФωФ) 「この戦いを生き残ることができてこそだ。
         激しい戦闘になると思うが、そこらへんは大丈夫なのだろう?」

('A`) 「時間停止の魔術と、空間防護の魔術の二重掛けだ。
     子供を危険に曝すわけにはいかないからな」

川 ゚ -゚) 「……最悪、私が死んだとしてもこの子は生まれることができる様にしている。
      二人で決めたことだ。万全を期しておこうとな」

( ・∀・) 「……そんなことには……させない。
        親がいない苦しみは……わかってるつもりだ」

265名無しさん:2018/04/30(月) 14:58:31 ID:7X8WUdNc0

('A`) 「ああ。……明日、か」

川 ゚ -゚) 「今更、怖気ついたわけでもないだろ」

('A`) 「これで世界が変わる。そう思えば、少しな」

( ФωФ) 「そう大きなことではない。失敗したところで、今まで通り戦う者が現れる」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「五百年に一度……。
         少なくとも今の私は生きてはいないでしょうから、想像すらできません」

川 ゚ -゚) 「だが、今よりも確実に良くなる。そう信じているからこそこの命を懸ける」

( ・∀・) 「そうだね」

('A`) 「遂に明日だ。みんな、覚悟を決めてくれ」

ドクオの発破にそれぞれが応え、会話は途切れた。
翌日に起こり得る全ての最悪を想定し、あらゆる対策を講じる六人の英雄。
陽が落ちて少したってから、彼らは眠りについた。

266名無しさん:2018/04/30(月) 14:59:23 ID:7X8WUdNc0

早朝、世代最強の英雄たちは空にあいた大穴を見上げていた。
それは、何の前触れもなく現れた異空間への扉。
強大で邪な魔力の氾濫に、正面から立ち向かう。

各々は互いに確認をせずに戦闘態勢をとった。

モララーが龍化を行い、龍技を発動した。
全身強化の支援術式を許容範囲の上限に設定し、敵を待つ。

クールは九つの天剣を全て展開し、魔力を纏わせた。
全てを貫く矛であり、あらゆるものを遮る盾となる剣の切っ先を天に向ける。

ドクオが腕を持ち上げただけで、あらゆる場所に魔術が現れた。
ただの一つですら世界を揺るがすほどに強力無比な攻撃魔術を、幾つも仕掛ける。

オサムの呪術は彼の全身を覆い、刺々しい黒色の鎧を作り出す。
二回りも大きくなった彼が構えたのは、赤黒い刃を持つ呪術の鎌。

ロマネスクは両手を広げ、周囲の精霊たちに呼び掛ける。
精霊術師である彼に応えるために、空気の、そして大地の精霊たちが集う。

フロストの一族だけが保有する魔術、アマザイに生み出された氷の彫像。
巨大な槍を構え、馬に跨った二体の騎士は彼女の両脇を護る。

267名無しさん:2018/04/30(月) 14:59:43 ID:7X8WUdNc0


遂に異空間より、禍を為す獣が産み落とされた。


.

268名無しさん:2018/04/30(月) 15:00:18 ID:7X8WUdNc0

>2


(メ'A`) 「……みんな、生きてるか」

川 ゚ -゚) 「何ら問題はない」

最初に応えたのは、ドクオの隣に立っていた女性。
長かった黒髪は首元で不揃いに切られており、両腕には大きな傷跡が消えずに残っている。
それでも、背にしたナインツ・ヘイブンは未だ強く光り輝く。

( ФωФ) 「久しぶりに死にかけたな」

ロマネスクは左腕の根元を抑えながら立ち上がった。
肩から先を失った傷口は、ゆっくりと再生している

( ・∀・) 「っててて……自爆かよ。勘弁してほしいよ、ほんと」

瓦礫の中から起き上がった巨大な龍。
周囲の大地が消滅するほどの衝撃の中心部に居たにもかかわらず、
ほぼ無傷のその身体は、龍属の特性を遺憾なく発揮していた。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「驚かされましたね」

【+  】ゞ゚) 「助かりました」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「いえいえ。不死のあなたには余計なお世話だったのかもしれませんが」

269名無しさん:2018/04/30(月) 15:01:08 ID:7X8WUdNc0

【+  】ゞ゚) 「死なないのにも限度がありますから」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「それはよかったです」

表面が波打つ半透明の球体の中に無傷で立っているオサムとフロスト。
防御行動のために消費した精神力が疲労となり、二人は肩で息をする。

('A`) 「これで、作戦の第一段階は終了だ」

( ФωФ) 「ここまでは今までと同じだ。そして、概ね予定通りでもある」

【+  】ゞ゚) 「さて、では……」

宝石の砕けてしまった指輪を替えながら、オサムは二つの呪術を発動させた。
一つは消費してしまった命を補充する不死の呪術。
オサムにとっては生命線となる最も重要なものである。

二つ目は呪術の発動に必要な呪力痕の作成。
彼が胸元から取り出した宝石を一つ砕くごとに、身体中の肌に余すところなく刻まれていく黒い斑紋。

魔力と異なり、発動の為に必要な呪力はすぐに引き出すことが難しい。
故にオサムはその身にあらかじめ呪力そのものを封じることで、
本来呪術師が苦手とする激しい戦闘にすら介入することができる。

270名無しさん:2018/04/30(月) 15:01:48 ID:7X8WUdNc0

【+  】ゞ゚) 「いつでもいいですよ」

川 ゚ -゚) 「ドクオ」

('A`) 「わかってるさ。まずはこの世界を護る魔法だ。
     これから起こる激しい戦いに耐えられるようにな。
     ゴッドブレス!」

杖から放出された透明な魔術は、遥か上空まで立ち昇ってドーム状に拡がっていく。
半径数百キロを覆う無色の防護膜。
威力という概念を減衰させる、ドクオの考え出した最高級の防御魔術。
同じ魔術で生み出した灰色ローブを自身も纏い、
懐から四つの供物を取り出した。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「何が出て来るでしょうね」

( ・∀・) 「フロストは何も準備しなくていいの?」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええ、私のアマザイはいつでもどこでもどんなことでも対応できますから」

フロストの周囲で弾ける冷気。
人間の掌よりも小さな塊が、龍属であるモララーにすら寒気を感じさせた。

( ・∀・) 「確かに、怖いね」

271名無しさん:2018/04/30(月) 15:02:36 ID:7X8WUdNc0

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「そういうあなたこそ龍技は利用しないので?」

( ・∀・) 「戦いが始まってからで十分間に合う」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……そうですね」

('A`) 「お喋りは終わりだ」

ドクオの掲げた杖が、空に四つの魔術陣を描く。
少し遅れて噴き出した魔力が四つそれぞれに注がれて、空間転送魔術を起動する。
その穴から引き出されてきたのは、いずれも最高位の魔術素材。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「これは……凄い力ですね」

('A`) 「レタリアを発動させるまで遊んでいたわけじゃないんだ。
     どうやったら効率よく、かつ長いこと虚ろへとこの世界を繋げておくか。
     俺が考えていたのはそれだ」

川 ゚ -゚) 「全く、恐ろしいほどに勉強熱心な奴だ。
      自身のスキルアップだけに飽き足らず、そんなことまで考えていたのだからな。
      だが、それでこそ私が愛したドクオだ」

( ФωФ) 「最終決戦。それも、この世界の行く末を決めるものだ。
         よくもまぁ、それ程平常心でいられる。人間の図太さには感心すらするな。
         そこの龍も少しは見習えばいい」

272名無しさん:2018/04/30(月) 15:04:13 ID:7X8WUdNc0

(; ・∀・) 「っ! 余計なお世話だ」

鼻息荒く反論するモララー。
そんな彼の意思に反して、大地を掴んでいた四つ足は少しばかり震えていた。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「怖気づいたのですか?」

( ・∀・) 「何が出て来るのか全く予想できないんだ。みんな平然としている方がどうかしてる」

( ФωФ) 「五回も乗り越えれば心が鈍ってしまったというのもあるが……。
         災厄は五度も私を殺すことは叶わなんだ。
         今更、どんな敵がいたところで殺される気はしない。
         お前とてそうだろう。龍王」

( ・∀・) 「……そうだ、そうだ。……わかっている。
        龍属の歴史の中で最も強い龍王。誰も僕を殺せるはずがない」

少年はいつの間にか震えが止まっていることに気付いた。
老樹の言葉と、全身を巡るの魔力の力強さを感じながら、ドクオの魔術を見守る。

('A`) 「地獄の焔、黄泉の風、冥府の海、深淵の泥……」

言霊によって四つの魔術が発現した。
それぞれがお互いを喰らうかのように暴れる。
そのどれもが術者を殺してしまいかねない程の魔術でありながら、
ドクオは容易く完全なコントロール下に置く。

273名無しさん:2018/04/30(月) 15:04:55 ID:7X8WUdNc0

('A`) 「っ……」

ゆっくりと回転を始めた四つの魔術。
ロマネスクの前で実演してみせたものよりも数百倍は巨大な黒球。
四大元素は均等に混じり合い、反発を繰り返す。
高速回転することで押し潰され、円盤状へとその姿を変えた。

('A`) 「準備はいいな。もう引き戻せないぞ」

( ・∀・) 「任せてくれ。どんな巨大な敵が現れたって僕が立ち向かう」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「アマザイはどのような相手に対しても必殺の攻撃手段がございます。
         安心して任せてください」

川 ゚ -゚) 「天剣に切り裂けないものは無く、防げないものは無い。
      神の尖兵が有する地上最強の魔術だ」

【+  】ゞ゚) 「呪術の極致は戦わずに殺すことです。
         もしも大群が現れるようでしたら私が対応しましょう」

( ФωФ) 「万事問題無し。神と呼ばれた精霊使いの力、存分に振るおう」



('A`) 「開け、虚ろの扉。ミスティルティン!」

.

274名無しさん:2018/04/30(月) 15:07:19 ID:7X8WUdNc0

四大属性の最高魔術から生み出した扉の魔術は、
この世ならざる世界と繋がれた。
モララーがゆうに通れるほど拡がった暗き穴の底から溢れ出す混沌の魔力。
先程屠ったはずの神と同質でありながら、さらに濃く澱んでいる。

('A`) 「っ!」

穴の底にゆっくりと露わになった光。
それはあまりにも大きすぎる瞳。

(; ・∀・) 「でか……い……」

(<●>) 「「私の名前はオルフェウス。原初の純術師にしてこの世界の神である」」

問いかけは声ではなく魔力の波長として放たれた。
意識を揺さぶるかのような重たい言葉は、六人の胸の奥にまで届く。

(<●>) 「「一体、何用かね」」

( ФωФ) 「貴様がこの終焉の戦いを起こしていた原因だな?」

(<●>) 「「ほう、また生き残ったのか……。素晴らしい。
       だが、ただの宴程度でそう騒ぎ立てる事でも無かろう」」

川#゚ -゚) 「ふざけ


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