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SSスレッ!!!!!!!!!!

201けーちゃん:2015/04/26(日) 22:41:48 ID:rX2j9tmY
その後、あらゆる地点で戦闘が繰り広げられた
このモンスターたちは闇に干渉されない特性を持っており
闇軍は苦戦を強いられたのだった…そして


「その時」はやってくる


ザシュッ…

しつじ「が・・・は・・・」
りん「しつじ!?」
しつじ「まだ・・・やれ・・・ガハッ!」
りん「無理しないで下がってて…一気に決める!」

りん「水魔法:VERTEX」
りん「を…凍らせる!」
りん「メイルシュトロームブリザード!!!!」


〜〜〜〜〜

サクヤ「らちがあきませんね…」
神流「すでに10万はやったのに…まだ湧いてくるの…!?」
サクヤ「!!」
神流「え・・・」
サクヤ「王女様あああああああああ!!!!」

神流「こんな重傷を受けたのは…初めてかもね…」
神流「もう抑えられないかも…フフフフフフフフ…!!!!」

カッ・・・
ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン

202けーちゃん:2015/04/26(日) 22:45:26 ID:rX2j9tmY
〜数時間後〜

ルキ「みんな…ついに湧いてこなくなったわ!」
サクヤ「やりました…」
神流「もう終わりぃ?」
しつじ「やったぜ…ぐふっ」
りん「…ハァ…終わったのか…」

〜さらに数時間後指令室〜
k「おっはよおおおおおおおおおおお!!!!!」
ルキ「…じゃあ、言いたいことはわかるよね?」
k「え?」
サクヤ「」ポキポキ
神流「ウフフフフ」
りん「アハハハハハ」

k以外「ぶっ殺す!!!!!!」
k「うわああああああああああああああああああ!!!」


END

203かんな:2015/04/26(日) 23:33:00 ID:???
なぜkのssは微笑みが零れるのだろうか

204さくや:2015/05/07(木) 01:20:49 ID:???
ダークネススレイヤー:ネオ・ヤミセカイ炎上【ファイティング・オン・ザ・トゥモロー】

205さくや:2015/05/07(木) 01:23:16 ID:???
0b110001110

206さくや:2015/05/07(木) 01:23:57 ID:???
ダークネススレイヤー:ネオ・ヤミセカイ炎上【ファイティング・オン・ザ・イエスタデイ】

207さくや:2015/05/07(木) 01:51:28 ID:???
カナが学校に到着し、様々な雑談の声をかき分けながら教室に入ると、いつもよりも騒がしめな声が響いてくる。
騒がしく教室ではしゃぐ女子達。それを遠巻きに優等生達が眺め、委員長が声を窘める。
そんないつもの光景が、今日はどこか崩れているようだった。

「オハヨー」「オハヨー、カナ=サン」挨拶とともに席につくと、駆け寄ってきたのは同級生のリン・アマドキだ。
リンは淡い黒茶の三つ編みを揺らしながら、いつもは大人しめな表情をほころばせて、スマート端末を差し出してくる。
「コレ!すごいよね!今日もみんな、この話題で盛り上がってるよー」「……カナ=サン?」

スマート端末を見せられたカナの表情はこわばっていた。写っているのは……昨日の激闘の様子。
「ア、ゴメンナサイ、なんでもないよ」「?」咄嗟に笑顔を取り繕うカナだが、リンは何処か不思議そうにカナを眺めている。

「昨日のアレ、ドッキリ!?」「映画みたいだったね!」「アニメイシヨンの宣伝?」様々な教室内を巡っていく。
「ネ、レイ=サンから聞いたんだけど、この映像を生で見たってホント!?」「エッ!?」そのリンの声に、教室内の人々が集まってきた。
電波ジャックがジャックされ、この映像が流されたのは夜の12時近くのこと。故に生徒のほぼ全ては寝ていて、生では見ていなかったのだ。

「ホント!?カナ=サン!」「この謎の少女の素顔、見た!?」「やっぱりカワイイだった!?」
矢継ぎ早に突き付けられる質問に困惑しつつも、嘘をいう理由もないので事細かに説明し、素早い解放を願う。
だが無情!その答えに更に教室内は沸き立ち、その騒動を聞いて隣のクラスの者も集まってくる始末。
カナは栗色の癖っ毛を揺らしながら、丁寧に質問をいなしていく。この会話術はカチグミである両親から学んだものだ。

「おーいお前ら、さっさと席につけ」十数分に渡る質問攻めはやってきた教師によって打ち止められる。
(助かった)心の中でほっと安堵の息を漏らし、壇上に立つ初老の男性……ムスビ先生の姿に目を移す。

「ま、静めても意味は無いだろうけどな……今日は転校生を紹介する」ムスビ先生の言葉は当たった。転校生という言葉に、また教室が湧き上がる。
「ヤッター!」「転校生?珍しいね!」「テンキン・グループ?」騒然とする教室を一旦静め、先生は手招きをした。
すると……やって来た少女の姿を見て、カナはまた、こわばった表情を見せる。

「ドーモ、皆さん。サキ・カミヅキです。エイコク・カントリーから来ました」そう、現れた少女は、あの日見た少女だったのだ!
しかし少女の容姿を知っている者は少ない。カナを除けば、この学校でも知っているものは両手の指で足りる程度だろう。
とは言え他の生徒達はそんなことも関係なく盛り上がる。「ワー、チッチャイ!」「胸が平坦!」「エイコク紳士!?」

エイコク・カントリーと言えば、この時代で有数の中立国だ。住人は皆常に正装し、朝には紅茶とスコーンを欠かさず食べるという。
ネオヤミセカイでは憧れの国として知られていて、このマッポーめいた国とは真逆とも言うべき世界なのだ。

しかしカナは、直感的な勘でこれを嘘だと看破する。確証はない、ただ本能が「嘘だ」と告げていた。
一瞬で生徒の人混みに紛れて見えなくなるサキの姿。教室内のほぼ全員が、サキの周りを意気揚々と取り囲んでいる。
その光景を少しばかり唖然としながら見つめていると……人混みの中から垣間見えたサキが、こちらを見つめているように見えた。

208さくや:2015/05/07(木) 02:10:31 ID:???
昼休み。スゴイクライシティが誇る大食堂を有するカシコイ・オンナハイスクールの生徒は皆食堂で昼食を取る。
カナもその一人だった。この食堂のオーガニック・カレーパンはまさに絶品であり、カラサ・マウンテンのものにも引けをとらない。
しかし今日はとある人物の誘いにより、そのカレーパンを手に入れることは叶わなかった。カナは自動カレーパン販売機で購入し、待ち合わせ場所の屋上へと向かう。

「……あ」屋上につくと、既に待ち人が佇んでいた。春風に薄灰色髪をなびかせる、サキ・カミヅキだ。
「ドーモ」「ドーモ」軽い会釈を交わしてサキのもとに駆け寄り、共に近くのベンチに腰を掛けてカレーパンを頬張った。

「……ねぇ、カナ=サン」「んむ?」サキはカナの顔は見ず、空をぼんやりと眺めるようにカナへと話しかけた。
共に昼食を取ろうという他愛ない誘いがサキから届くとは思っていなかった。それを了承したのは、本日の休み時間のことだ。
サキは他の生徒からの誘いを断った上で、カナとの昼食を望んだ。それを聞いて、何人かの生徒は関係を訝しんでいることだろう。
しかしサキをよく見てみれば、昼食のたぐいを何も持っていない。ベントーボックスも見当たらない。
そんな中、サキはカナに話しかけた。カナは口いっぱいにカレーパンを頬張りながらサキへと振り返る。

しばし、静寂。一陣の風が吹き、それが屋上を駆け抜け終われば、サキは静かに問いかけた。
「昨日の、見たよね」先程までの穏やかな声とは真逆。静かなはずなのに、嘘は許さないという威圧感が言葉となって放たれた。
「……!」思わず詰まってしまいそうなカレーパンをウメミルクで流し込み、軽く息を整えながら答えを返す。

「…………うん」「そっか」カナは息を呑みつつ答えてみたが、その答えに対する反応は案外軽いものだった。
彼女の声には再び穏やかさが宿っていて、先ほどの感覚は思い過ごしだと自らに言い聞かせながら、カレーパンを食べきった。
「もう誰かに話しちゃった?」「……うん」「………そっか」その声にもやはり、恐ろしさは感じられない。
「それを聞けてよかった。アリガト、カナ=サン」サキが席を立ってカナへと向き直り、笑みを浮かべる。そして

「…………明日から、暗い夜道に気をつけてね」それは忠告か宣告か。同時に吹き荒れた風に目を瞑って、再び目を開いた時…そこに彼女の姿はなかった。
あたりを見回してみてもサキの様子はない。白昼夢?そんなまさか。サキの言葉が、カナのニューロンを巡っていく。

昼下がりの空……カシコイ・オンナハイスクールから一陣の灰色の風が吹き、空には数羽のバイオカラスが舞っていた。

209さくや:2015/05/07(木) 02:11:59 ID:???
(「ファイティング・オン・ザ・トゥモロー」エピローグ:「ファイティング・オン・ザ・イエスタデイ」終わり。)

210ルキ:2015/05/14(木) 01:23:27 ID:???
うまく書こうと思っても書けなかった。から、拙いけど書いたから深夜のノリでのっけとく。
 私の名前はNO.16、正確にはracial union knowledge illusory NO.16。直訳すれば【種族の融合した知識の道具】、要するに生体兵器の延長線上みたいなものだ。
魔力に長けた個体を作りたくてやったみたいだけど、残念ながら元からあった魔力は実験の影響で低下、知能は急上昇したものの失敗に終わったらしい。魔力をどうにかしようと何回か手術もされたけれど、結局私が奇形になるのを手助けしただけだ。

そう、私は奇形になった。

 「こんな姿ではどこにも売れぬではないか……おい、処分しておけ」
 「あ、はい!」
両腕の代わりに生えた翼、壊れかけの機械の脚、失われた右目の部分に広がる空洞。これが異形でなくなんだというのか。……まあ、そんなことはどうでもいい。ようやく終わるんだ、今度はもう少しまともに生きてみたいものだな。
 「ー……さよなら、世界」
私はそっと目を閉じた。









 「はいそこまでー、人体改造は闇世界の禁忌だって知ってるよね?」
 「なっ……!!!神流様、㎡様?!」
……どうやら、まだ終わらせてくれないらしい。運命はどこまでも残酷だったようだ。
 「投降しろ。既に包囲した。足掻くだけ無駄だ。」
 「そんな……馬鹿な……!!!」
かくして、私や多くの子供たちを監禁・改造していた研究者達は、謎の軍勢によって滅された。ただ、丁度処分の日だったこともあって、私以外の被検体は全て死んでしまったのだという。記憶が消されているのは被検体だけ。残っている他の子供たちは無事に家に送り届けるという。
 「……そう、か。」
 「君、名前は?」
 「racial union knowledge illusory NO.16、それ以前は覚えていない。」
 「……やっぱり、以前の記憶は?」
私は首を横に振った。本当に何もわからないのだ。行くあてもなく、どうしたらいいのかもわからない。私には、結局あの狭い牢屋が世界の全てでしかなかったのだ。
 「……じゃあさ、うちにおいでよ!」
 「おい、神流!」
 「うちに来ればいい。頭良さそうだし、名前がないなら私があげる!」
それだけ言うと、クラウンみたいな帽子の男の言葉も無視して、うんうん唸って名前を考え始めた。
 「えーっと、らし…なんとかってどう書くの!?」
 「馬鹿……」
すると、男が空中にすらすらと文字をえがいていく。魔力コントロールの一種、だったはずだ。
そうして空中に書かれたのは、私が名乗ったそのままの文字。
racial
union
knowledge
illusory
私が、怪物であることを意味する単語の羅列。
「うーん……あ、頭文字とって……ruki…ルキ…?ルキ!ルキってどうかな!」
……その前に、まだ入ることすら承諾していないのだけれど。全くもって、どうしてこの人に救われたかなぁ。どうしてあのクソ博士はこの人なんかに負けたかなぁ。
 「一緒においで、ルキ!」
 「……乗り掛かった船です、地獄の果てまで乗り合わせて頂きましょう、マイマスター?」
こうしてこの日、全てを失った私は、この後数百年かけて手に入れる全てのひとかけらを拾ったのだった。

のちに分かったことだが、博士達が私にやたら実験をしたがったのは、私が元々【闇】だったから、らしい。また、以前の記憶は無いのだから、今となってはどうなのかもわからないけれど。

211ルキ:2015/05/14(木) 01:26:04 ID:xaWBmqZ2
我ながらひっどいなーwwwwはっはっは……はぁ……

212さくや:2015/05/14(木) 02:32:05 ID:???
ヒャッハー!ルキ姉の誕生秘話だー!

213ルキ:2015/05/14(木) 07:54:28 ID:xaWBmqZ2
我ながら痛いし酷いとおもってます

214さくや:2015/08/03(月) 20:03:13 ID:???
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215闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:03:46 ID:.Y/mN5V.
―Longest day of Darkness World―

216闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:04:18 ID:.Y/mN5V.
――――良い月だ。私の前に血は踊り月は逆向く。
弧を描く月が歪に揺らめく朧の宵、鈍く煌めく銀刃だけが世界を照らす。

此処が何処かなんて知らない。知る由もないし、どうでもいい。
欲しいのは血。望むものは勝利。得るべきものは滾る闘争。
闇夜を映す外套が影へと溶け、無尽の黒に一筋奔るは闇を切り裂く銀の軌跡。

気がつけば私は此処に居た。瞬く間の出来事、刹那にも見たぬ酩酊の末、現れるは闇の坩堝。
本能が囁く、未だ見ぬ「血」が此処に在ると。私を待つ兵が此処に居ると。

獣の如き闘争心。そうだ、今宵の私は人では無い。飢えた心を潤す為に刃を振るう『獣』。

217闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:04:50 ID:.Y/mN5V.
「……おい貴様、ここから先は」

言葉は溢れ出す血飛沫となって四散する。意識が漸く言葉へと向いた時、声の主は血溜まりの中に突っ伏して
落とされた首を蹴鞠の様に弄ぶ。けれどコレだけでは未だ足りない。この程度では私の心は満たされない。

激しい音を立てて門は斬り崩れ、轟きはアラートとして仄暗い庭園へと響き渡る。
煩わしい。咲き誇る花を踏み躙っては、繚り乱れる桜の花に忌避感を抱く。こんなモノ、何処が美しいというのか。
何故人は真に美しきモノに気が付かぬのだろう?其れは誰しもが、満遍なく持ち得る至高の眩きだと言うのに。
分からないのなら見せてあげようか。湧き出る従者を切り裂いては、飛び散る紅を月光の元に晒し上げる。
ああ、月明かりを受けて煌めくソレはまるで紅玉。この世に二つと無く、しかしこの世に溢れる無窮の至宝。

白き花海は一変、紅満ちる極楽と化す。佇む私は天の使い、地に伏す彼女達は無辜の餓鬼。
血に塗れた外套が揺れる度、咲き誇る深紅の花は身を散らす。そう、これで良い。夜空に映える紅こそが美しい。
紅の種を巻き続ける末に辿り着くは漆黒の館。月明かりすらも届かぬ闇の底、影に満ちる“世界”の中枢。

218闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:05:22 ID:.Y/mN5V.
「メイド部隊壊滅……!」

「そんな、彼女たちは精鋭よ!?こんな短時間で―――」

慌ただしい声が聞こえる。アレで精鋭?面白い洒落だ、私の剣戟一つ防げずして何が精鋭か。
宵の扉を切り裂き銀刃を走らせ、底知れぬ闇へと落ちてゆく。だが明けぬ夜は存在しない、消えぬ影など在りはしない。
振り翳す闇を払い、“黒”を“紅”へ染め上げる。静寂が包む闇の回廊、咲き誇るは鮮血の赤い薔薇。
子供騙しの魔術。戯れにも劣る剣筋。赤子をあやすが如き銃撃。恐れを以って闇へ飛び込んだが、此処は子供の遊戯会だったか

一つ、また一つ、闇に咲く血染めの花。登れば登るほどに辺りは紅く、劈く悲鳴も増してゆく。
中には私の瞳に負け逃げ出す者も居た。それで良い、我が刃は逃げ果せる背中を斬る為に在るのでは無いのだから。

さて、此処は屋上か。月の下に聳える時計塔、目をやってみれば私の行く手を阻む女性が一人。

219闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:05:55 ID:.Y/mN5V.
「そこまでです、此処から先へは―――絶対に通しません」

確たる意志が剣先となって突き付けられる。成る程、其の自信に偽りは無い、揺るぎ無き忠義がソレを示す。
これ程の殺意―――自然と笑みが溢れるのも致し方無いというものだ。彼女の血は、紛うこと無く私の心を潤してくれる。
時を刻む針の下、二つの刃が対峙する。燻り燻る灰銀と、燃え滾る忠義の朱。良い舞台ではないか。
結ばれた三つ編みは忠誠の証か。時折吹く夜風に揺れて、鮮やかな青のリボンが不思議なコントラストを生み出して
淀みない金色の瞳が私を射抜く。闇夜を照らす月のように……穢れなく、純粋な光を以って。

ならば私はその月を鮮血で染め上げるのみ。その赤朱の髪よりも紅く、穢れに満ちた血で染めてあげよう。
手元でナイフを弄びながら一歩前へと歩み寄る。同時に女性もこちらへと歩み寄って、剣呑な雰囲気が辺りを包む時

「2代目メイド長、リリアンの名に賭けて……貴女を、この場で殺す」

成る程、リリアン。あの無能達の親玉か。足元に転がるメイドの屍を踏みつけてみれば、リリアンの顔がより険しく
このまま蹴りを入れれば激怒して飛び込んでくるだろうか?それともその場で泣き崩れるか。どちらにせよ興味はないけれど
わざわざ私の前に現れたことだけは褒めてあげよう。自らギロチン台へ足を運ぶなど、よほどの胆力が無ければ不可能だ。
少し遊んでみようか。怒らせればそれだけ実力が増す。少しばかりの油を、燃え盛る朱の炎へと垂らしてみる。

「…………殺す?この私を?……ふふ、あはは。そう、なら殺してみるといいわ」


――――私が貴女の部下を殺した様に。

220闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:06:28 ID:.Y/mN5V.
煽りは火蓋と成って切り落とされた。溢れ燃え上がる憤怒と激情を以って、彼女――リリアンは私へと駆け出した。
迷い無き走り。その姿を見ただけでも感じ取れる。この女性は、此処に蔓延っている有象無象とは一線を画す―――!

星一つ浮かばぬ帳に数個、煌めく火花が散って行く。ギリギリと音を立てる刃、其の音は互いの視線のぶつかり合いにも似ていて
包み隠さぬ殺意が私を射抜く。数秒の間の鍔迫り合い、互いの力量を見抜くには十分過ぎる凌ぎ合いだろう。
短い火花が散った後、リリアンは兎の如く飛び跳ね距離を取る。浮かぶのは汗、けれどこの私を前にしても、その戦意に揺らぎは無い。
訪れるのは沈寂。何方かが動けば勝負は決す、誇張も無く、あと僅か一撃で。

それを理解しての事だろう、頬を伝う冷や汗を拭い、リリアンは息を呑んで私の様子を窺い続けるのみ。
怒りと勢いだけではどうにもならぬ相手だと、先の剣戟で悟ったか。ならばこの試合の行く末も理解している事だろうに。

「貴女は……何者ですか」

「ふふ、自ら冥土の土産を求めるのは欲張りよ……でも、そうね、貴女の畏怖に免じて答えてあげる」

私は光でも無く、闇でも無い。月夜に揺らぐ灰銀の髪を指差し、紛うこと無く事実を突き付けて見せた。
ただこの世界に導かれたから殺す。一片の理屈など無く、ただ殺したいから殺すのだと。殺すことに理由はいらないと。
だから殺した。メイドを殺した。勿論お前も殺す。お前の主も殺す。この世界の住人を、一人残らず殺す。そんな異常な殺戮者だと。
そうして抱かれたのは驚愕、そして納得の感情。生まれるのは僅かな戸惑い――だがそれも、燃える闘志に投げ込まれ

「ならばなおのこと、此処を通すわけには行きません。貴女はこの世界の均衡を崩す者だ……!」

「本当にソレでいいの?貴女ほどの実力者なら、この私には敵わないと理解しているでしょうに」

一迅の風が凪ぐ。答えに詰まるリリアン、微かな震えは隠せても、抱く躊躇いだけは隠せない。
事実、彼女には私を殺せない。いや、それどころかこの外套に傷を付けることすら叶わぬだろう。
覆しようの無い宿命というものだ。例え人がどれだけ速く走ろうとも、野良猫には絶対に追いつけないのと同じように。
彼女とは根本的に“性能”が違い過ぎた。彼女は強い、だが私には及ばない。こうして相まみえている事自体が異常なんだ。

221闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:07:03 ID:.Y/mN5V.
しかし。彼女は剣を降ろさない。どれだけ劣っているとしても、彼女には譲れないモノがあるのだと。
仄かに潤む瞳が訴える。絶対に退かない、この身が幾多に切り刻まれようと、この先へは――主の元へは行かせない、と。
煌めく月のような瞳が涙を受けて尚、忠義という威光を以って輝きを増す。

「あの人だけは、私が………!」

答えは得た。目の前に絶望が押し寄せても尚燃える忠道。やはり彼女は、あの有象無象とは格が違う、真にメイドたり得る女性。
ならば此方も、対等に挑むというのが筋というものだ。此処からは一切の躊躇いを捨てる。それこそが彼女への手向けなのだから。
ふぅ、と息を吐き捨てる。そうして一歩、漆黒の屋根を踏み締めて―――――

ただ簡単に、ナイフを振るう。

222闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:07:37 ID:.Y/mN5V.
「――――――こ、ふっ」

弾け飛ぶ紅。雫は種と成って花を咲かし、死に絶えた黒に映えるは紅の花園。
簡単なものだ。操り人形の糸を切るように、ただナイフを振ればいい。


それは一瞬。瞬きが終わるよりも速く、私の刃は風となり、彼女の身体を切り裂いた。
見る見るうちに広がる血溜まり。溺れるのは一人、未だ剣を握りしめ、此方に殺意を突き付ける従者。
糸の切れたマリオネットめいて地に伏して、それでも己の剣を捨てることは無く、忠義だけが彼女を動かす。
まだ、終われない。掠れる息だけを繰り返し、切り刻まれた四肢を奮い立たせ、血の池から這い出して見せ

「お嬢、さま……の、もと……には、行かせ…………ない……ッ!!」

振り上げられる剣、爆発にも似た意志。訪れる死に抗い、彼女は私へと文字通り決死の一撃を見舞う――――

が、その想いは届かない。私に刃が触れるよりも早く、彼女の身体はその活動を終えた。
力無くその四肢は崩れ落ち、再び血の海へと沈んでいく。けれども尚、握りしめた剣だけは放さない。

223闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:08:10 ID:.Y/mN5V.
「……貴女と私では性能が違いすぎた……恨むのなら、此処で出会うことになった運命を恨むことね」

静寂だけが支配する世界。先には館の主が使える間が。扉の向こうには、彼女が命を賭して守り抜かんとした主が。
ならばそのお嬢様とやらは、彼女の生命に値するほどの者なのか―――直々に確かめねばなるまい。
潔く覚悟を決めて居直るか。従者の命を無駄には出来ぬと立ち向かうか。尻尾を巻いて逃げ出すか。惨めに頭を擦り付け命を乞うか。
もし後者のような惨めな真似をしようものなら首を一瞬で跳ね飛ばした上で全身を切り刻んであげようか。
死を受け入れるなら此方もそれを認めよう。介錯し、一撃で殺す。立ち向かうのなら僥倖、戦いの喜びを得られるのならそれもまた良し。

雲から覗く月は逆さ。この世界の命運を物語るように、或いは私を蔑むように、この館を照らすのみ。
鬼が出るか蛇が出るか、どちらにせよ私はただ殺すだけだ。ひたすらに殺す、私に許されるのは無尽の殺戮だけなのだから。

逆月の宵、血染めの灰と闇を統べる王女が今、相見える。

224闇の名無しさん:2015/08/03(月) 20:10:50 ID:.Y/mN5V.
Longest day of Darkness World   おわり

225けいちゃん:2015/08/06(木) 04:15:32 ID:yWveHhJE
k「ウルトラバーストなゲームを作ったよ」
闇魔館の技術兼戦闘員(笑)のkchanは唐突に言う。
サクヤ「じゃあ私忙しいから」
同じく闇魔館のメイド長(笑)のサクヤはそう言って業務に戻ろうとする。
k「まぁ待て」
kがサクヤの肩を掴む。
サクヤ「構っている暇はないの」
k「そんなこと言うなって」
kの肩を掴む力がどんどん強くなっていく。
サクヤ「ちょっとそれ以上はマジで痛い痛い痛い痛い痛いちょっとやめろマジでおいやめろ!」
あまりの力の強さに振り解こうとしても無理なレベルまで達していた。
無論サクヤの能力である時間停止を使えば
この程度ならば簡単に抜けられる。
しかしサクヤのプライドがそれを許してくれなかった。
k「ウルトラバーストなゲームをやってくれるまでやめない^^」
サクヤ「小学生ですかあなたは…」
k「^^」
kがさらに握る力を強める。この時点で握力に換算して500kgを優に超えていた。
サクヤ「痛い痛い痛い痛い肩取れるから!肩取れるから!ストップストップやるからやるからなんでもするから!」

その後サクヤはクソゲーをやらされ
サボっていたのがバレてk共々お仕置きでしたとさ
おしまい

226かんな:2015/08/06(木) 10:25:01 ID:CIpucWNQ
398の小説ほんとすこ

1レスssとはたまげたなあ……

227闇の名無しさん:2015/08/06(木) 14:00:00 ID:ulcr1LNA
ゴリラ握力兄貴すこ

228けいちゃん:2015/08/07(金) 01:23:18 ID:yWveHhJE
〜ある昼下がりのこと〜
神流「カレーパン」
k「え」
神流「カレーパンを食わせろ…カレーパン…」
その目は赤く光り体からは黒いオーラを放っていた。
サクヤ「王女様が極限状態に…!」
k「館の中で極限状態はマジでやばい」

229けいちゃん:2015/08/07(金) 01:46:28 ID:yWveHhJE
サクヤ「早くカレーパンを…ってストックがない!」
神流「カレーパン…カレーパン…」
k「マジでやばくない?」
神流「カレーパァァァァァァァァァァン!!」
デンデン!!デデデデンデン!
衝撃波と共に極限状態に覚醒する神流。
神流「カレーパァァァァン…カレーパン…」
k「ちょっと買ってくるから待ってろ!」
サクヤ「それじゃ遅すぎるわよ…」
サクヤ「我が名はサクヤ!メイドそのものだ!ザ・ワールド!!」
瞬間、時が止まる
時が止まった隙にパン屋に行き時を戻しカレーパンを買って時を止めて帰ってくるという
サクヤの導き出した「解」それにほぼ間違いはなかった
一つだけ間違っているところがあるとすれば…

230けいちゃん:2015/08/07(金) 01:47:12 ID:yWveHhJE
k「」
kの存在である。神流は我を忘れた時決して物に当たるわけではない。
近くの命ある物すべてにカレーパンを要求しているだけなのだが、
力の制御ができないのでそのほぼじゃれつきのようなことが悪魔的な破壊力になっているのだ。
ついでに衝撃波がすごい。

そして、サクヤが時を止めてもう一度時を止められるまでクールタイムが10秒程度。
10秒あれば恐らく館は完全に崩壊するだろう。

231けいちゃん:2015/08/07(金) 01:47:52 ID:yWveHhJE
そこでサクヤは考えた。時を止めるのは確かに魔力がやばいくらい吸い取られる。
しかし魔力の補給さえできれば1時間程度は持つのではないだろうか?
そう思い自室へ魔力タブレットを取り出し貼り付ける。
サクヤ「これで魔力補給はできる…カレーができるまで30分程度。」
サクヤ「包むための生地はある…幸運なことにカレーの材料も揃ってる…つまり揚げる時間だけあれば…いける」

そこから先は台所の一部…自分の周りだけ時を戻し、カレーパンを作っていく。
恐ろしいほどいい手際でそれは完成したので、あとはそれを王女の口に詰め込むだけ…
これで王女…神流は止まる。

232けいちゃん:2015/08/07(金) 01:48:30 ID:yWveHhJE
サクヤがカレーパンを神流の口に詰め込んで行く。そして時間を戻す。
サクヤ「そして時は動き出す…」
神流「モガフグ」
神流「モグモグ」

神流「うん、おいしい!」
サクヤ「それは光栄でございます、王女様。」
k「一体何があったんだよ…」


〜〜その日の夜〜〜
サクヤ「っ!」
サクヤ(頭が痛い…今日は時を止めすぎたみたいね…)

サクヤは、他の館に住む物全てが寝たのを確認してから

自身も眠りにつくのであった…

233けいちゃん:2015/08/07(金) 01:49:49 ID:yWveHhJE
DN!〜ダークネス軍団の日常〜 第21話
「極限!カレーパン戦争」より抜粋

234かんな:2015/08/07(金) 04:59:32 ID:hDB2H8AQ
久々に瀟洒なとこを見た

235闇の名無しさん:2015/08/07(金) 11:39:12 ID:ulcr1LNA
まさかの極限状態BGM入りに草

236しつじ:2015/08/07(金) 15:01:26 ID:MPres5AI
これもいいけどやっぱ36話が至高だよなあ

237闇の名無しさん:2015/08/21(金) 19:11:01 ID:2EDX.zIs
奇妙な時間だ。闇魔館最上階テラス、暗霧が辺りを包む中で二人、私達は紅茶を飲み交わす。
血のような朱のアイスティー。氷が軋み鳴く度に、両者を包む空気が一層凍り付くようで

「サクヤ、もう一杯どうだい?」

……対する氷の騎士は笑みを浮かべてポットを差し出す。前言撤回、凍りついてるのは私だけか。
慣れぬ状況に戸惑う私を誂うように笑っては、麗しい顔立ちを幼気に綻ばせて紅茶を啜る。
彼の紅茶はホットティー。湯だつ朱と淡い水色のコントラストは、黒一色の世界に於いては余りにも鮮やかで
思わず、手を止めて見惚れてしまう。その姿は比喩でも無く、一つの絵画を見ているよう。

再び沈黙が二人を包み、紅茶を啜る音、注がれる音だけがテラスに残響を残す。
異性と、一対一で、こうして向い合ってティータイムを過ごすことなんて、余りにも異常。

『休暇あげるから誰かとお茶でもしなよ!リンとかリンとかリンとかリンとかと!』

嗚呼……王女様の優しみという名の命令が走馬灯のように脳裏を過る。
今日与えられた休暇。姉様は新薬のテストで不在。執事はこういう時に限って仕事。m2は図書館の整理。
必死に誘いをかけた結果、まるで示し合わせたように、リンだけが私のティータイムに乗ってくれた。

「あ、あの――――」「サクヤはさ」

意を決して声をかけようと口を開いた、瞬間、依然笑みを浮かべる騎士が食い気味に言葉を遮る。
深い藍色の瞳が私を射抜く。威圧感や高圧感とは掛け離れた慈愛に満ちた瞳。しかし、有無を言わせぬ迫力を持つ視線。

「どうしてメイド長になったの?」

と、若干前のめり気味で投げかけられた言葉は、思いがけない、余りにも単純な質問。
そんなことは決まっている。王女である神流様に喧嘩を売り、敗北し、それで―――――
――――それで、私は、どうしてメイド長になったんだ?

「それ、は………」

完膚なきまでに叩きのめされ、姉様に看病され、流されるままに三代目メイド長の座を襲名した。
そこまではいい。しかし私は明確な「理由」を持っていない。メイド長であることが当然で、疑問を抱く事すら無かったのだ。
何故メイド長になったのか、と言われれば、王女様に負けたから。しかし彼が聞いているのはそういう事ではなく
……私の略歴の中から抜け落ちた部分。メイド長の座に甘んじた理由。そこを彼は問うている。

沈黙。答えを返せぬまま、数分が経過した。
グラスの氷がからんと崩れ、氷の騎士は答えを待ちつつ紅茶を啜る。
なんと優雅な……あれが、確たる「理由」を持つがゆえの自信の現れとでも言うのだろうか。

「深く考えなくてもいいさ。単純なことでいい、何故メイド長になったのか、何故メイド長を続けているのか……」

にこり、と微笑みを残す姿は貫禄に溢れ、流石は闇軍が誇る第一部隊の騎士団長を務めるだけはある。
私よりも長く、数多くの戦場を乗り越えてきた彼。中性的で、華奢な体格からは想像も出来ぬ程の経験を、彼は
……なら、私の答えは決まった。誤魔化すことも、この場で理由を考えるのも、彼に対しての侮辱。となれば

「まだ、わかりません」

ふふ、と。ようやく零れた笑みは、気恥ずかしさも混じったもの。
その答えを聞けば、彼―――リンもまた、くすりと笑いを残して、それが聞きたかったと言いたげに椅子へと背を預けた。

「理由はこれから見出していきます……貴方のように、己の信念を自然と見い出せるまで」

「はは、ボクの信念か。目標にされるのは少し恥ずかしいけど……ま、悪い気はしないかな」

他愛ない質問が二人の空気を氷解させて行く。暫くすれば和やかな、特筆すべきこともない会話を続けていく。
時が経つのを忘れる程に心躍る時間。テラスに吹く風は仄かに涼しく、甘くも酸っぱく薫りを残して
闇霧が晴れる頃、最後の紅茶を飲み終えれば、ティーセットを片手に私はテラスを後にする。
その背後、私が扉に手をかける直前、彼は風が吹くと同時に一言

「また明日、ここでね」

振り返ると既に彼の姿は無く、残された冷気の粒が風に乗って夏空へと舞い散って
立ち尽くす私を他所に、彼はまた別の誰かの元へと足を運んでいるのだろう。返事は恐らく、届かない
それでも私は、もう一度凪ぐ風に乗せるように―――

「――――はい、サー・リンフィア」



---凛と咲くティータイム おわり---

238闇の名無しさん:2015/08/21(金) 19:19:39 ID:2EDX.zIs
注釈:サー・○○○……騎士に対して用いる敬称、名誉称号。語源は中立国である英の国の叙勲制度から。

239ひつじ:2015/08/27(木) 23:35:26 ID:MPres5AI
なんかこういうスッキリしたssいいよなぁー

240闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:50:17 ID:UUKA7IGQ
今日は随分と激しい嵐ですね
こんな嵐が過ぎ去った後にこそ、何かが起こりそうです。そうでしょう?
さてさて、では今夜はそんな一夜の出来事を見てみましょう
風雨を肴にワイン片手にごゆっくり………ふふ、あはは!

241闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:50:48 ID:UUKA7IGQ
百年に一度の大嵐、一夜去って風も雨も雲も月も見えぬ夜。
小柄な少女は道に迷う。避難の最中、家族と逸れてしまった哀れな娘。
一寸先は闇、足音だけが響く夜道。幼い少女は恐怖に震える。

「おかあさん、おとうさん……」

歩き疲れた少女はしゃがみ込む。響く遠吠え、梟の囀りが、縋るような言葉を掻き消す。
震える姿も闇に囚われ覗くことは叶わない。逃げ場のない現実から目を背けるように顔をうずめる。
そんな時、遠くから漏れる小さな灯火。木々から漏れる橙の明かりは、まるで差し伸べられた蜘蛛の糸。
少女は立ち上がり歩き出す。あの明かりに希望があると信じて、汚れた足で走り出す。
辿り着いたのは古びた館。錆びついた門は少女を歓迎するように、人一人通れるほどの隙間が開いている。
彼女が見た光はその先、館へと続く庭に並べられたロウソク達。道にそって隙間無く並べられ、微かな灯火を揺らす。
風など無いのに揺れる灯火。それでも少女は門をくぐり、朽ち果てた館へ歩き出す。優しげな光に導かれながら。

誰も居ないと分かっていながら、少女は風化した扉を叩く。二度、三度。乾いた音が辺りに響く。
もし誰も居なければ、朝が来るまでこの館の中で過ごそう。そう安堵の気持ちが浮かび始めた矢先

242闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:51:20 ID:UUKA7IGQ
「どうぞ、鍵は開いていますよ」

扉の向こうから届く声。思いがけない声に驚きながらも、同時にさらなる安堵感が湧いてくる。
独りではない、ここには人が住んでいる。自分以外の誰かが存在しているというだけで、少女にとっては救いなのだ。
重苦しい音を立てて開かれる扉、仄暗い館へと足を踏み入れれば、待っていたのは想像もしない大豪邸。
外の古びた姿とは真逆、ホコリひとつ積もっていない床に磨きぬかれた窓ガラス、見上げれば星めいてきらめくシャンデリア。

「こんな夜更けに、お一人ですか?」

振り返るとそこに佇むのは一人の従者。奥ゆかしいメイドドレスに身を包み、穏やかな微笑みを浮かべる灰髪の従者。
先ほどの声の主は彼女だったのだろうか。扉に目を移してみると、やはり内装と同じように汚れ一つなく、立派な錠前がかけられて
暗くて外装が古く見えただけ?些細な疑問を抱きながらも少女は顔をほころばせ、ずっと張り詰めていた緊張の糸を解く。

243闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:51:51 ID:UUKA7IGQ
「昨日の嵐の時、道に迷ってしまったの」

「おや、それは大変でしたね。お怪我はございませんか?」

“傷一つない群青の瞳”を少女へ向けて、メイドは心配そうに姿を見渡す。幸い目立った傷はなく、多少疲労が見える程度だ。
乱雑に跳ねた髪の少女はメイドを見上げ、申し訳無さそうな表情を見せた。言い出すか言い出すまいか、迷っているようで。
その様子で察したメイドは暫し思案し、また嫋やかな笑みを浮かべれば、白魚のように綺麗な手を差し伸べて言う。

「それではこちらへ。夜が明けるまで時間があります」

メイドの優しさに喜びと感謝の念を抱きながら、少女は差し伸べられた手を握り薄暗い廊下を渡る。
照明は壁にかけられたロウソクが幾つか。反対の窓の向こうには夜空が広がる。一面の闇、暗い空。
向こうからやってくるのは長身の執事。仄かな明かりに照らされて、“規則正しく整えられた燕尾服”が目に映る。
胸元の懐中時計は午前1時。彼は少女を眺めると、メイドと同じく笑みを浮かべて立ち止まった。

「久しぶりのお客様だ、丁重に持て成そう」

メイドと執事に案内され、やってきたのは大きな広間。赤い絨毯、漆塗りのテーブルにかかるシルクのクロス。
暖炉を囲う二人の夫婦。“純白のバスローブを纏う主人”が、少女に気が付き歩み寄る。
厳かな雰囲気を漂わせつつ少女を見つめる館の主人。傍らに立つのは“白を貴重としたドレスの奥方”。

244闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:52:54 ID:UUKA7IGQ
「これはこれは、よくこの館を見つけられたね」

「こうして会えたのも何かの縁、今宵は盛大な宴を開きましょう」

二人は少女を見つめて笑う。燃え盛る暖炉はぱちぱちと、火の粉を立ち上らせては小刻みに揺れる。
メイドは奥方に料理の用意を、執事は主人に衣装の準備を頼まれて、彼ら夫婦も忙しそうに広間を後に。
少女は一人広間に佇む。次にやってきたのは眠たげな娘。“綺麗な白髪のストレートを靡かせるお嬢様”。
傍らに抱くのは“赤い炎めいた意匠の少年人形”と“大きな剣を握る少女人形”。一人と二人は私を見つめる。

「今夜はパーティ?それじゃあ一緒に踊りましょう!」

「「ボク ワタシ モ踊リタイ!不思議ノ館でパーティー・ナイト!」」

お嬢様は少女の手を取り嬉しそうに笑う。人形も一緒に楽しげに笑う。笑みが溢れる不思議な館。
揺れる炎に惑わされ、彼らの笑顔に踊らされ、少女は一夜の宴に酔い痴れる。真紅のワイン片手に、暖かな光りに照らされながら。
主人は寛容な笑みを。奥方は純潔の笑みを。お嬢様は節制のある笑みを。メイドは誠実な笑みを。執事は慈しむ笑みを。
少年の人形もまた笑う。少女の人形もまた笑う。楽しげな言葉に包まれて、迷える少女は宴に狂い舞う。
ああ、今夜はまさに“狂瀾の夜”。明けない夜に溺れていく。

245闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:53:25 ID:UUKA7IGQ
―――――――――――

――――――

―――


246闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:53:57 ID:UUKA7IGQ
一夜を明かした少女は戸惑う。冷たいベッドの上、差し込むのはロウソクの仄かな明かり。
外は暗い。まだ暗い?どうして、どうして、もう夜は開けたはずなのに。目覚めた少女は異変を悟る。
“抜け落ちた床”、“ヒビ割れたガラス”、“砕け散ったシャンデリア”。そう、紛うこと無く、ここはまさしく廃墟の館。
蜘蛛の巣を払って部屋を飛び出せば、扉の前に佇む従者。“継ぎ接ぎだらけのメイド長”。
彼女は少女を眺めては、歪で傲慢な笑みを浮かべた。手には錆びたナイフ、鎖で繋がれた鋼の手錠

247闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:54:29 ID:UUKA7IGQ
.




.
「おや、お帰りですか?まだ夜明けには早いデスヨ?」
.




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248闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:55:00 ID:UUKA7IGQ
メイドを振り切り少女は駆ける。立ち昇るホコリも厭わずに、“明かり一つない闇の廊下”を駆け抜ける。
一寸先も闇、一心不乱に駆け寄った先、出会うは長身の執事。“着崩した燕尾服の狼執事”。
覗く毛並みを隠す事無く、研ぎ澄まされた牙を向き、彼は少女を見つめて笑う。獣めいた怠慢の笑み。

249闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:55:32 ID:UUKA7IGQ
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.
「久しぶりのお客様、もっともっと持て成さなイト」
.




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250闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:57:35 ID:UUKA7IGQ
二人の従者から逃れた先で少女はとある部屋へと忍びこむ。広々とした部屋、天井は抜け落ち広がるは一面の闇。
“朽ちたテーブル”が、“破れ汚れたテーブルクロス”が少女を出迎える。ふと目を凝らすと“冷えきった暖炉”を囲う影。



「これはこれは、ついにこの館を見つけてしまったネ」

「こうして出会えたのもきっと縁。今宵の主役は貴女なのヨ?」



“白黒道化の主人”は憤るように笑う。“漆黒ドレスの麗し奥方”は艶めかしく笑う。
冷えた暖炉に側で椅子に揺られ、貪るのは腐りきったミートパイ。ヒビ入るグラスに注がれるのは真っ赤なワイン。
月もない夜、微かな明かりに照らされる二人。少女は怯え、震えた様子で部屋を引き返す。

251闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:59:17 ID:UUKA7IGQ
逃げる逃げる、逃げろ逃げろ。窓の外には“暗い森”。月明かりすら届かぬ雲が空を覆う。
森を駆け抜けるように走り続ける。ただひたすら、闇雲に走った先に待つのは地下の一室。真っ暗闇の虚の果て。
壁を伝って少女は進む。闇に目が慣れた頃、側に置かれた物に気が付く。小さな2つ木箱、その正体は黒の棺。
そして先に待つ人影を、唐突に付いたロウソクが照らす。小柄な娘、“乱れ伸びた黒髪のお嬢様”。

252闇の名無しさん:2015/10/03(土) 02:59:47 ID:UUKA7IGQ
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.
「今夜はパーティー。約束したでしょ?一緒に踊る、ッテ」
.

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253闇の名無しさん:2015/10/03(土) 03:00:19 ID:UUKA7IGQ
出入り口は硬く閉ざされた。少女は不安を浮かばせ扉を叩く。二度、三度、重く鈍い金属音が部屋に反響。
扉の向こうにはダレも居ない。ホコリの積もった棺が開かれ、現れた二人の人形を携えたお嬢様。
“冷たい氷の少年人形”は少女が欲しいと笑う。“質素な弓を握る少女人形”も少女が欲しいと同じく笑う。
開くことのない石扉を背に泣き叫ぶ。しゃがみ込み、膝を抱え、頭をうずめても、この“現実”からは逃げられない。


「今夜ハ君ト楽シミタイナ!ボクト一緒ニパーティー・ナイト!」

「今夜ハ君ヲ食ベタイワ!ワタシト一緒にパーティー・ナイト!」


孔のような瞳で見つめるお嬢様。無機質な顔を向けたまま少女の傍らに立ち尽くして人形を撫でる。
泣き疲れ、震える少女に手を伸ばす。彼女の手を取りお嬢様はようやく笑う。妬むような、嫉むような狂気の笑みを。

254闇の名無しさん:2015/10/03(土) 03:01:41 ID:UUKA7IGQ
広がる闇に惑わされ、彼らの笑顔に騙されて、少女は一夜の夢から抜けだした。真紅のワインを零し、照らすロウソクさえ尽きた部屋で。
迷える少女は囚われの王女。救う勇者など居ぬままに、深い深い森の洋館、その冷たい地の地の底で、笑みに囲まれ闇へと堕ちる。
擦り切れた肌着、虚ろな瞳。“乱雑に伸びた髪から跳ねる一本毛”。彼らは少女を眺めて何を思うか。

森の館にご用心。嵐の夜、台風一過。静まり返る森が誘うは、朽ち果てた人食い洋館。
もう戻ってこない娘を嘆き、両親は森を眺めて悲観に暮れる。月も無い夜、一寸先も見えぬ景色を眺めたまま。
さあ、今夜もまたパーティーが始まった。主役は勿論王女様。囚われた少女は“開けぬ一夜”を繰り返す。


“狂気の夜”は終わらない。

255闇の名無しさん:2015/10/03(土) 03:02:15 ID:UUKA7IGQ
―――――to be continued?

256闇の名無しさん:2015/10/03(土) 03:06:41 ID:UUKA7IGQ
    キャスト

主人役     …m2
奥方役     …レイ
お嬢様役    …ルキ
メイド役     …サクヤ
執事役     …ユイ
少年人形役  …リン
少女人形役  …むぅ

迷子の少女役 …■■

258けいちゃん:2015/11/09(月) 20:05:22 ID:yWveHhJE
k「新しいゲームを作っ」サクヤ「アーイソガシーナー」

k「新しいゲームを作ったぞ」
サクヤ「アーイソガシーナーハヤクスマセナイトナー」(離れる)
k「あっサクヤ、ちょうどいいところに」
サクヤ「アーイソガシーナーイソガシーナー」(逃げる体制を整える)
k「新しいゲームを作ったんだけど」
サクヤ「イソガシーナー」(逃げる)

k「逃げんなぁあああぁぁぁあぁぁぁああああ!!!」(ダッシュ)

259けいちゃん:2015/11/09(月) 20:06:03 ID:yWveHhJE
サクヤ「やめてください!私だっで仕事が」
k「今日はスケジュール上休みのはずだぞオオオオオオオオ!!!!」
サクヤ「うるさい!なんで私のスケジュール知ってんですか!!!」
k「カマかけだが」
サクヤ「チクショオオオオオオオオ!!!」
k「さぁこの次は行き止まりだ!ゲームをやってもらうぞ!!」
サクヤ(チッ、やるしかない…か)
サクヤ「ザ・ワールド!!」

260けいちゃん:2015/11/09(月) 20:06:34 ID:yWveHhJE
k「クッソー…面白いゲームだと思うからやってもらいたいんだけどなぁ…」
かんな「やっほ^^kどうしたん」
k「サクヤに新しく作ったゲームをやらせたいんだけどなぜか逃げるんだよねぇ」
かんな「へぇ…じゃあちょっと私にやらせてよ」
k「いいよー」

261けいちゃん:2015/11/09(月) 20:07:27 ID:yWveHhJE
〜数時間後〜

サクヤ「はぁ…kのせいでやることもできず暇ですね…なんか面白いものでも…」
サクヤ「ん?あの辺りが騒がしい…」

かんな「やばい面白い」
りん「これすごい」
m2「なかなかいいね」
ルキ「こんなゲーム作れたんだ」

k「あ、サクヤ どしたの」
サクヤ「どうしたもこうしたもこの騒ぎは」
k「俺の作ったゲームで盛り上がってる」
サクヤ「はぁ!?私にもやらせてくださいよ」
k「ごめんなサクヤ、このゲーム…
「4人用」
なんだ…」




サクヤ「ちっくしょおおおおおおおおおおお!!!」



262闇の名無しさん:2015/11/15(日) 00:26:56 ID:kkUg1e6c
一歩、及ばなかった。
私の刃は白衣の女性によって阻まれる。
立ち込める煙、床を焦がす薬品。煮詰めた薬草めいた香りが鼻に付く。
飛び散った液を受けたナイフは赤錆色。ほんの数秒で腐食が進んだようだ。

「………さて、これでお前の刃は全て折った」

片目の瞳が私を射抜く。迷いの無い視線、全てを見透かす勝者の目。
彼女の背後に聳える階段を登れば、きっとこの館の主に辿り着けるのだろう。
けど、今の私には彼女を押し退ける為の刃が無い。計37本、錆びた刃が辺り一面に転がっている。
強い。彼女は――白衣の女性、ルキと名乗った彼女は、途方も無く強い。
冷や汗が頬を伝う。鼓動が辺りの音を掻き消す程に高鳴る。手が、腕が、身体が、小刻みに震え出す。
窓から差し込む月光が、彼女の手に握られた試験管を照らし、サイケデリックでケミカルな色彩を放つ。
赤色は空気に触れるだけで発火する薬品。青色は思考を鈍化させる煙を上らせる薬品。緑色は未だ不明。
今立ち込めている煙は桃色の薬品だった。マズい、と思い口を塞いだ時には既に遅く、手足に痺れが渡り出した。
視界も朦朧としていて立つのがやっと。手足の震えはこの薬品が原因だろうか。体温にも、動悸にも異常が。

「残念だったな殺人鬼。此処から先は、お前の来るべきところでは無い」

一歩、彼女が足を踏み出した。
ゆっくりとこちらへと歩み寄る。乱雑に伸び、片目を覆い隠すほどの前髪、癖毛のように跳ねているのは獣耳か。
白衣の裏には無数の試験官。科学者と思しき女性は私の目の前で歩みを止めて、見下すように瞳を向ける。
手を伸ばせば届く距離。深く息を吐き捨てて、佇む彼女へ視線を返す。交錯する視線、互いの意思が垣間見えるようで
私は、腕を振るう。決死の一撃、届かぬとは分かっていても、その蔑むような瞳に一矢報いようと、一撃――――

「―――――っ」

瞬間、白に染まる視界。震えも鼓動も掻き消えて、刹那の間に訪れるのは浮遊感。
阿呆みたいに開かれた口から飛び散るのは鮮血、悲鳴。腹の底から吐き出される叫びが、無音の世界に雪崩れ込み
気がついた時、私の身体は宙を漂っていた。辺りを舞うのはガラス片。視界を少しズラせば砕け散った窓ガラス。
そして真上には逆むく月。ああ、あの緑色の薬品の正体は、液体爆弾だったか。今更導き出された答えは水泡に帰す。

「う、あ゛……っ!」

打ち付けられた衝撃で呻きが零れる。乾いた土の感触、遅れて全身に走る激しい痛み。
起き上がろうと身を捩っても、右腕は答えない。いや、答えないのではなく、私の右腕は、先ほど振るった腕は、もう。
止めど無く溢れ出る血が波紋を生む。口元から零れ落ちる血も、肩から流れ出す血も同じく一つの池に。
赤く滲む視界は空に漂う月へと、笑ってしまうほどに綺麗な月夜へと。月が、星が、雲が、私を嘲笑っているかのよう。

「……闇に魅入られた者の末路は、驚くほど哀れなものだ」

少し間を置いて投げかけられた声。気が付けば傍らに立ち尽くすのは白衣の女性。
彼女にもう敵意は無い。こちらを見下ろす瞳にはただ、哀れみと慈しみが。まるで家族へ向けるような、博愛の表情。
何時ぶりだろう、他人からこんな顔を向けられたのは。私が生まれ落ちた時か、師匠に拾われた時か。もう思い出すことも叶わない。
白衣の女性は銀に染まった試験管を握り締める。水銀、だろうか?不規則に揺れる水銀はまるで生き物のようにも思える。
試験管から放たれた水銀は音も無く溢れ、不気味なほどに丸い形へと変化して、女性の膝ほどまでの大きさとなって傍らに佇む。
月明かりを受けて不気味に輝く水銀はさながら首を刈り取らんとするギロチンのようで――――。

「“継ぎ接ぎジェーン”……最後に一つ聞いておこうか。お前の本名は?」

「私、の………名前は……」

――――――名前は、なんだっけ。
溶けていく記憶の中に潜ってみても答えは見つからない。ただ広がる赤黒い闇だけが私を包み込んでいる。
師匠は私を「サクヤ」と呼んでくれた。その後、中立国の人々は私を「継ぎ接ぎジェーン」と恐れ慄いた。けどどちらも本名じゃない。
自分の名前すらわからないなんて、ああ、もう私はとっくに、この世の定理から外れた身だったんだ。
もっと早く気がつけていたら――――――――後悔が訪れるよりも早く、私にやって来たのは

263闇の名無しさん:2015/11/15(日) 00:28:43 ID:kkUg1e6c
―――――――
―――――
――――
―――




名無しの堕天使は月の下、聳える十字架に、深き闇の狂科学者に見据えられて己が真名を告げる。
その時、その瞬間だけ。堕天使は天使へと戻る。天使であった頃の、自分が自分であった頃の記憶を、想いを、取り戻すように。

「――――――朔月白夜、か」

天使のまま死ねたのならきっと本望だろう。貫かれた胸からは、もう鮮血すら溢れて来ない。
と、気がつけばいつの間にやら朧雲が逆月を覆い、穢れ一つない白衣を翻して、科学者――ルキはその場を後に。
振り返ることは無い。振り返ったとして、そこに残されているのは単なる「死」だけなのだから。
同じく私も窓から顔を離して、革張りの椅子へと腰を降ろす。嗚呼、今宵は良い舞台だった。これもまた、もう一つの結末。
それにルキが動いてくれるのは僥倖だ。犠牲になったメイド達も、半数以上は彼女の処置で一命を取り留めるだろう。
……それでも、犠牲になったメイド達には祈りを、祝福を。彼女らの御霊に幸せがあらんことを、私は月に望む。

逆向いた月の宵。一人の哀れな殺戮者が、神の思惑に流されるがままに散って行った。

264闇の名無しさん:2015/11/15(日) 00:32:38 ID:kkUg1e6c
DEAD END 03 ―――――[黒髪白衣のイントロン]

265闇の名無しさん:2015/11/15(日) 02:00:29 ID:kkUg1e6c
神流「今後の資金運用のことだけど―――」

m2「そうだな、大きな戦争も無くなった今じゃ――――」

ルキ「いや、万が一のためにも軍部へ―――」

サクヤ(お腹すいたな……お昼は何作ろう……)

執事「軍部の士気も下がっている、ここは――――」

りん「僕もその意見に賛成だな。まず士気を――――」

サクヤ(肉料理……いやヘルシーな野菜料理もいいかも……)

m2「だが軍部に力を入れたのでは他の場所で―――――」

執事「闇の要は軍だ。そこに力を入れないで――――」

サクヤ(……あ、魚!そういえば新鮮な魚が入ったってメイド達が言ってたっけ)

m2「一辺倒では資金難に陥る!バランスを考えてだな―――」

サクヤ(バランス……そうか、あえて肉と魚と野菜を合わせるって手も……)

りん「ここは大胆に決めるべきだ!軍部にも費用を―――――」

サクヤ(大胆……豪快に塩焼き?たまには庭でバーベキューもいいかも……)

5人「「「「「サクヤ!!!お前はどう思う!!!」」」」」

サクヤ「へえぇっ!??!!え、えっと……」

サクヤ「……ピザとかどうでしょう?クォーターピザ」

5人「「「「「…………え?」」」」」

サクヤ「え………あっ」

K「prrrr……prrrrr……ピザ10人前!大至急な!」


おしまい

266闇の名無しさん:2015/11/19(木) 14:52:27 ID:nVpxcsjo
『あなたには自分が無い』と、誰もが言う。
光国で過ごした時も。中立国で彷徨っていた頃も。師匠と過ごしていた頃も。殺人鬼として暴れていた頃も。
他人からの評価は等しく同じだった。私は私だと自負しているのに、貴方は「自分」という感覚が希薄なのだと。
……でも、それだって別段珍しいことではないはずだ。誰しもが自分の全てを知っているわけじゃない。
というか、私には誇るものが無いんだ。継ぎ接ぎの心。黒と白と灰色のパッチワーク。大それた理想があるわけでもない。
ああ、昔は「正義」を胸に戦ってたっけ。けどその正義も所詮は受け売りだ。自分が見出した思想とは言えないな。
一つ。白い継ぎ接ぎの布を解く。次に灰色の布を解く。最後に残った黒色の布。それは小さな歯切れに過ぎなくて、私の心を埋めるほど大きくはなくて。

「私って、なんだっけ」

大きな姿見の前。目の前に映る裸の“少女”と掌を合わせて独り言ちてみた。
欠けた月の夜、静まり返る部屋で独り。ここに佇む自分が何者なのか、何度も何度も。戯言のように繰り返す。
目の前に映る“少女”は答えない。“少女”の目に映る私も答えない。夜風がカーテンを撫で、殺風景な部屋に涼風を呼ぶ。

ああ、明日は晴れそうだ。込み上げた思いを胸の引き出しにしまい込んで今日という日を終える。
明日、自分は自分で要られるだろうか。なんて、自分らしくない問いかけを抱きながら。

…………でも、自分らしさって、なんだろう。

267闇の名無しさん:2015/11/19(木) 14:52:58 ID:nVpxcsjo
『解離性シンドローム』

268闇の名無しさん:2015/11/19(木) 14:53:30 ID:nVpxcsjo
「サクヤ、ちょっといいか」

朝日が差し込む午前5時。黒と赤の基調が映える廊下の曲がり角で私を引き止める声が響く。
珍しい。私より先に起きている住人がいるなんて。それも、早起きとは程遠そうなm2が。朝の日差しに照らされ私へ歩み寄る。
朝とm2。不思議な組み合わせの光景が目の前に広がっている。例えるならば……広い海をライオンが泳いでいるような。
眩そうに目を細ませてm2はあくびを一つ。よく見てみると目元には深い隈。徹夜明けなのだろうか?なんて考察を巡らせていると

「昨日の事で話がある」

……ああ、昨日の。真剣な――眠気のせいか若干気が抜けているが――顔付きとその言葉だけで大体内容を察してしまう。
昨日。私は戦場へ赴いた。今は第三次白黒大戦のまっただ中だ。暗殺やメイド業が主とはいえ、前線に赴くことは珍しいことでもない。
斥候が主な任務、後は敵の陽動や錯乱を担当したり色々と。直接的な戦闘は避け、敵の戦力を削ることを目的とする。
そうして戦力が減った状態で闇の主力部隊と対峙させるというわけだ。当然闇側は万全の状態で挑む。どうなるかは火を見るよりも明らかだろう。
故に私が率いる斥候部隊はそれなりに戦闘の行方を左右する大事な役割を任されている。そして昨日も同じように斥候へと向かって。

269闇の名無しさん:2015/11/19(木) 14:54:09 ID:nVpxcsjo
一人の新人がヘマをした。自分の位置を知らせるビーコンを切り忘れていたようだ。これでは当然、新人の位置は敵に丸見え。
思わぬ襲撃を受けて隊員たちは四散――被害を減らすためにそう支持した――し、一人取り残された新人。
そうなった場合、見捨ててその場から撤退するのが正しい。大多数の光兵士を前に一人を助けるため突撃するなど無意味にも程がある。
だというのに、私は考えるよりも早く、身体が動いていた。一歩足を踏み出して、瞬きを一つすれば、四方八方には光の兵士。
怯え、震え、その場で屈み込んだ新人を一瞥すれば、二度目の瞬き。目の前には首を跳ね飛ばされた光兵士。どよめく周囲の兵士。
そうして瞬きを繰り返す度、光の兵士は音も無く命を終えていく。そうして何分か経った頃、私は一人、亡骸の山で立ち尽くす。
……多少危険な賭けではあったが、新人を救うことが出来たならそれでいいと、まだしゃがみ込む新人に手を―――――。

『あ……ありがとう、ござ―――――っ』

銃声。飛び散る血。崩れ落ちる新人。茂みから煌めくスコープの反射光。そこから先は、もう覚えていない。
我に返った頃、私は闇側の中継地で椅子に腰を掛けていて、テーブルを挟んで向こう側に座る姉さんに剣幕の表情を向けられていた。
怒鳴られているようだ。と、どこか客観的な視点で話に耳を傾ける。その目には僅かに涙が浮かんでいた。怒ると同時に「よかった」と、そう安堵しているように。
話の内容も右から左へ通り抜けてしまい、もうまともに覚えてない。けど、こんな質問をされたことだけはしっかりと覚えていて。

『…………彼女が……あの新人が、撃たれて死んだ時。最初に何を思った?』

私は答えた。即座に、それが当然であると示すように、はっきりと。『あの子を助けられなかった』と。
その答えを聞くと姉さんの顔は怒りから困惑、次第に苦い顔色へ。暫しの思案のあと、重苦しい声で姉さんは私を諭し始める。
普通、ああいった場面ではまずはじめに『自分が撃たれなくてよかった』『自分が無事でよかった』と思うものらしい。そう語っていた。
どんな聖人でも、どんな善人でも、防衛本能がそうさせるのだという。そして次に理性として、『助けられなかった』という罪悪感が訪れるのだということも。
しかし私は真逆――と言うよりも、『撃たれなくてよかった』という考え自体無かった。あの時に芽生えたのはただ、『助けられなかった』罪悪感だけ。
もし撃たれていたら?姉さんは質問を続けた。私は答える、『あの子が撃たれなくてよかった』と。そしてまた苦虫を噛み潰したような表情。
……重苦しい空気が二人を包む。遠くから聞こえる銃声、痛みを嘆く負傷者の怨嗟。何時間にも思えた思案の末、姉さんは立ち上がり、私の肩を掴んで。

『サクヤ……「自分」を、もっと大切にしろ』

命令じみた言葉に息を呑む。それでも私には理解出来なかった。彼女を助けられなかったことを嘆いて、何がいけないのだろうかと。
ワインレッドの瞳が私を射抜き、姉さんの言葉が深く心に刻み込まれる。…………いつも、どこかで聞いていた、同じ古傷を掘り返されるように。

270闇の名無しさん:2015/11/19(木) 14:54:53 ID:nVpxcsjo
と、そんな一件がありはしたが戦闘は勝利。斥候も結果的には光側の混乱に繋がって結果オーライ、そういうことで話は終わった。
命を落とした新人は私が手厚く弔ってあげた。今朝もあの子の元へ花束を渡したばかりだ。彼女が好きだった、真っ赤な色のユリの花を。
そして館へ戻って朝食の支度を……と思っていた頃、彼が現れた。ので言われる内容も大体把握は出来ているが、何故m2が直接?

「俺は回りくどい言い回しは嫌いだ、さっさと簡潔に言わせてもらうと」

「……お前の思考回路は天使と同じだ」

―――思わず、反論の言葉を告げようと身を乗り出した所で、m2の指先ひとつで静止されてしまう。
確かに私は大した思想もないし、薄っぺらい自己であるのは否定しない。しかし天使だ、と断言されるのには異論を唱えたい。
もう天輪は砕けたし翼だって消えてしまった。胸の聖痕も滅多に浮き上がることはない。そもそも天使は、こうして思案することすら出来ないのに。
自分が薄くてもこうして思考を巡らせている「自分」がいる時点で、私は天使などではないと、そう言葉を並べようとするも言葉が続かず。

271闇の名無しさん:2015/11/19(木) 14:55:24 ID:nVpxcsjo
「ああ、そういった話じゃなくてだな。傾向として天使と同じだと言ってるんだ。他人と自分の天秤があべこべ、端的には利他主義者だな」

……う。そこは否定出来ない。否定しようにも昨日の出来事で証明されてしまっている。自分の命よりも他人の命のほうが重い、と。
そういった価値観も天使と似ている。m2は間髪入れずに続け、欠伸混じりに言葉を並べ立てていくと、懐から札の束を取り出した。
アレは―――タロットカード。昔彼に師事を仰いでいた時、度々使用した馴染みのある魔術道具の一つ。それをこちらへ向けて差し出すと

「一枚引け。このタロットは特別製でな、引き手の魔力に反応して「種族」を当てるオリジナルのものだ」

つまり、このタロットで私の種族が明確になる、と。静まり返る廊下、差し出された札を前に、私は思わず躊躇してしまった。
もし天使だったら。私は闇であることを諦めなければならないのだろうか。それ以前に目の前の彼は、私の存在を許すだろうか。
動悸が高まる。冷や汗が頬を、腕を、脚を伝う。天使であるはずがない、そう断言したばかりなのに、自分の言葉に自信が持てない。
それも当然、自分ほど信頼出来ない者はいないのだから。裏返しの札を目にしたまま手が震え、たった一枚捲ることすら叶わない。もし、もし天使だったら。
日を雲が覆い、朝焼けの廊下に影が差す。込み上げる寒気と慟哭。闇であって欲しい。けど、闇であると断言はできないまま、その札に手を伸ばして。

272闇の名無しさん:2015/11/19(木) 14:56:14 ID:nVpxcsjo
「――――――っ」


札に描かれた、大きな翼と天輪を携えた天使が嗤う。例えるならば、これは言葉のない死刑宣告。
そんなはずは。と現実から目を背ける自分もいれば、ああ、そうか。と納得する自分もいる。そんな困惑の坩堝の中で。
m2は何も言わずにこちらをただ見つめていた。今、私はどんな顔をしているんだろう。驚いているのだろうか。泣いているのだろうか。困惑しているのだろうか。
もしくは、笑ってる?それすらもわからない。ただ私は札を片手にm2の顔を眺めていた。すると彼は、腕を伸ばして、私の頭に―――

「……館から離れろ。もうすぐ結界が更新される」

…………声も出ない。もう「天使」である私は、館にいることすら許されないのか。
立ち去るm2の背を振り返ることも出来ぬまま、曇天の空を仰ぐ。ぽつり、ぽつりと落ちる雨。予想、外れちゃったな。細やかな現実逃避。
いつものようにロビーにやって来て、古びた館の扉を開く。誰も起きていない午前5時半。鉛の空の下に聳える漆黒の館が、果てしなく遠くに思えて。
そのまま、訳もわからずに走り出した。行く宛もない。自分も何も失った私を慰める者もいない。もう私には、何もない。
走る、走る。茂る林の中を、鬱蒼とした森の中を。メイド服は破れ汚れ、それでも私は走り抜ける。ひたすらに、文字通りに闇雲の中を巡るように。
息が切れて肺が焼けるように痛くても、立ち止まること無く走る。立ち止まったらその時点でもう、自分が消えてしまいそうだったから。
気がつけば空からは土砂降りの雨。濡れネズミの私は泥濘んだ山道を走り続け、駆け抜け、やがて開けた場所へと辿り着く。


広がるのは湖だ。雨空の仄暗い闇の中で微かに光る穏やかな湖。この湖は確か、反映湖。特殊なDmを含んだ湖だと姉さんが言っていた。
走るのを止め、足を引きずるようにして歩く。湖を覗き込んでみれば、鮮やかな青の光。底は深い青に覆われていて、果てしなく続く奈落のようで。
まるでこの湖だけ青空の世界にいるような、そんな鮮やかな青色を前にふと思い出したのは幼い頃の記憶。第二次白黒大戦が終わった日、光国で見たあの青空。
……あの空と同じ色だ。深く深く、どこまでも広がる蒼穹の空。あの日を堺に、私の人生は大きく狂いだしていったんだ。
もしこの湖に飛び込めば、あの日に戻れるのかな。何も知らず、何も思わず、ただ言葉に従っていれば生きていられた無色の世界に。

―――――――湖に手を伸ばす。湖面に映る“少女”。また会ったね、と微笑んで。
豪雨に紛れて一際大きな水音が山に木霊。私は冷たくも暖かな、深い青に包まれながら、悠久の微睡みへと溺れていく。

273闇の名無しさん:2015/11/19(木) 14:57:36 ID:nVpxcsjo
『解離性シンドローム』  了

274闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:11:11 ID:/i8Ox0j6
『あなたには自分が無い』と、誰もが言う。
だって仕方がないじゃないか。生まれた時にはもう自分など無かった。あるのは統制された集団心理だけ。
みんなが同じものを好み、みんなが同じものを嫌い、みんなが同じものと戦い、そしてみんな死んでいく。そんな世界。
だったはずなのに、どうして私だけ。いきなり一人にされたって、どうすればいいのかわからないよ。誰も私に教えてくれない。
ああ、でも、あの青空は綺麗だな。最初で最後、たった一度だけ芽生えた感想は、果てしない更地の中で朽ちていく。

世界というメイルストロームに流される日々。自分という概念はとっくの昔に失った。
私は誰でもない、ただ人の言葉に従って動く人形。それはどこでも変わらなかった。光国でも、中立国でも、もちろん、闇国でも。
……冷たいな。漏らすぼやきは泡となって溶けて行く。いっそのこと、このまま泡になってしまえれば。どれだけ楽なことだろうか。

275闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:11:43 ID:/i8Ox0j6
「私って、誰だっけ」


――――――脳裏に響くこの声を、聞き間違えるはずもない。
突き放つような言葉が残響を残す。目を見開き、声の主を確かめようと意識を覚醒させた時。広がるのは無限の部屋。
広い。壁も、天井も、全て暗闇の中。唯一確認できる床は白と黒の市松模様。鮮やかな青とは打って変わって無機質な世界。
私はその場に佇んでいた。傷一つ無い綺麗なメイド服を身に纏って、手には一本のナイフ。真新しい、新品の食事用ナイフ。
明らかに異質な空間で不思議と私は落ち着いていた。何故だろうか、感覚的にこの場所は不変だと確信している。この空間は落ち着ける、と。
一歩歩み出すと足音が響き渡る。響く音に限度は無い。きっとこの場所は無限に広がる大部屋なのだろう、と理解した。
光源はないのに自分の姿だけは確認できるし足元も確認できる。都合の良い夢を見ている時のように、思ったことが現実になる世界。
ここでも私は行く宛もなく彷徨い続ける。目的も無く、生き甲斐という道標を失ったまま、色の無い世界を延々と。

渺茫の白黒世界。歩く度に自分の色が褪せていく。何分、何時間、何日、何年歩いただろう。行けども行けども壁は見えない。
疲労も成長も無い泡沫の世界に取り残された私は、ふと、目の前に光を見た。どこからとも無く差し込む光はスポットライトめいて。
照らされたモノクロの床。何となく、その光に向けて手を掲げてみる。何故だろうか。そうすれば、出会える気がした。
確信はないけど、出会えるはずだと。この世界へ落ちる前、脳裏に響くあの声の主に。私へと語りかけてきた、あの―――――


「また会ったね」


継ぎ接ぎだらけの“私(きみ)”に。

276闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:12:14 ID:/i8Ox0j6
『モノクロ・パッチワーク』

277闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:12:46 ID:/i8Ox0j6
……“私(きみ)”は佇む。一色の光に照らされて、白と黒の服を揺らし、私をまっすぐに見据えたまま。
そしてあちらも、片手を掲げている。まるで二人は鏡写し。目の前にあるのはただの鏡だと言われても納得できてしまうほど。
掲げられた手が触れ合って、互いの感触が肌に伝わる。温かくも冷たくもない、不思議な感触。きっと向こうも同じことを思っているはず。
もう一人の“私”、なんて大層な存在じゃない。二重人格で要られるほど私は器用な人間じゃない。なら、“私(きみ)”はきっと。

「「……違う道を歩んだ私」」

どこで道を間違えたんだろうね、と語りかけても、満足な答えは得られないと思う。
第二次白黒大戦で光が勝っていたら。中立国で別の人に拾われていたら。師匠が死なずに生きていたら。殺人鬼にならなかったら。
――――――闇に、拾われなかったら。どちらの自分が正しいのかなんて分からない。“私(きみ)”は傷一つない瞳で私を見つめる。
それでも行き着く場所は同じだった。自分が自分であると理解できないまま、この世界に辿り着く。全てが希薄な継ぎ接ぎの白黒世界に。

278闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:13:16 ID:/i8Ox0j6
互いに合わせた掌を弄んでは、恋人みたいに組んでみたり、悪戯するように捻ってみたり。言葉も無い戯れ事が続く。
このままこの世界で、私達は一緒に暮らすのかな。それは少し嫌だ。でも、ここから逃げ出すほど、現世に未練があるわけでもない。
暫く見つめ合ったあと、今度はお互い背を合わせて座り込む。伝わる肌の感触が、心なしか温かく感じてきて。

「ねえ」

「何?」

不意に言葉を投げかけてみた。返ってくるそっけない言葉。振り返ることはせず、言葉だけのやり取りが続く。
どんな顔をしているんだろう、と気になりはするけど、きっと私と同じ表情で、可愛げのない表情で膝に顔を埋めているんだろう。
歩んだ道は違うけど、結果は同じ地点に収束する。だから違うのは見た目だけ、中身は紛れも無い“私”なんだ。

279闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:13:54 ID:/i8Ox0j6
「帰りたい?」

「……別に」

そっか。こちらもそっけない言葉を返して会話が途絶える。二人を包む静寂は破られること無く、凪の海めいて穏やかに。
私には帰る場所が無い。“私(きみ)”には帰る意味が無い。だからずっとこのまま、この無機質な世界に囚われている。
ずっとこのまま何億年、何兆年過ごすことになっても構わない。何も考えず、自分が自分である必要など無いこの世界はとても心地よくて。
もう既に10億年の月日が過ぎていようと些細な事だ。けどたまに、名前も知らない誰かが恋しくなって、隣りにいる“私(きみ)”と触れ合う。

280闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:14:39 ID:/i8Ox0j6
――――――――
―――――
―――

手を取り合って散歩してみたり、腕を組んで並んで据わってみたり、抱き合って寝てみたり。憧れだった恋の真似事をやってみる。
会話も無く、ただ漠然とした共通意識で慣れ合う二人。お互いに思っていることが何となく伝わってくるのは、生まれ落ちてから今までを共に過ごした腐れ縁のせいか。
どちらも認識することはなかったけど、この場でようやく自覚し始める。お互いに、お互いが、紛れも無い“自分”なのだと言うことを。
好き、とはまた違う感情。恋愛感情とは別方向の、友情と言うにも違う、不思議な間柄。互いに無くてはならない存在。
……それが、自分という感覚。十二兆七億四千三百九十万五千百三十八年の堕落の末、微かに芽生えたその感覚が、お互いに突き刺さる。
いずれ受け入れなくてはならない事実。けど、受け入れたら終わってしまう。消えてしまう。この愛しくてくだらない、モノクロのパッチワークが。


自分を目の前にして何年経っただろう。疲労もなければ成長もしない、けど意識だけは明瞭で淀み無く。
モヤモヤとした、言葉にもカタチにも出来ない言い知れぬ感覚を抱きながら、ひたすらに時が過ぎていく。

「……帰ろっか?」

また、私達は背を合わせて座っていた。前とは違う、背を預け合うような座り方。そんな時にふと、いつか問いかけた言葉をもう一度。
答えはなかなか返ってこない。珍しいな、いつもはすぐに答えを返してくれるのに。寝ているのかな、死んでいるのかな、とちょっと不安になって。
“私(きみ)”の手をちょっと強く握ってしまう。暖かな肌の感覚。すると“私(きみ)”は握り返してくれて、そのまま一言。

281闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:15:30 ID:/i8Ox0j6
「……帰ろう」

それは、告白のようだった。この場所から抜け出すにはきっと、お互いがお互いを認め合わなくてはならない。受け入れなくてはならない。
つまり二人が一つに混ざり合う。そうしてようやく、蕾だった“自分”という花が咲くんだ。その花はきっととても綺麗で、愛おしく。
……自分を愛したって良いんだ。私が――――私達が見出した結論は同じ。立ち上がって、向かい合い、二つの光の中で見つめ合う。
私は笑う。“私(きみ)”も笑う。初めて見たキミの笑顔はとても素敵だった。ぎこちなく覚束ない、どこか恥ずかしさが見え隠れする微笑み。
勿論私も同じ笑顔を浮かべているんだろう。この場所で唯一抱いた感情の残り香を噛みしめて、一歩一歩、お互いに歩み寄る。
不可侵の領域。自分ですら立ち入れなかった/立ち入る意味のなかった心の領域に踏み込んでいく。そうしてゼロ距離、自分の中枢で私達は手を差し伸べ合って。

282闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:16:02 ID:/i8Ox0j6
抱きしめる。強く、強く。自分を深く知りたいと願うように、自分を受け入れたいと望むように、自分を愛してと乞うように。
“私(きみ)”の目に涙が。別れを惜しんでいるのかな。伝う涙を拭ってあげて、大丈夫だと言い聞かせてあげる。
これからもう出会うことはないけど、自分が自分であるかぎり、二人は一緒なんだと。だから泣かなくても大丈夫――――。
暗闇の世界に淡い光が差し込んで、ヒビ割れた床から差し込むのは蒼穹の光。この光は……ああ、あの日、まっ更な世界で“私”が見たあの光。
貴女も見たんだね、と言葉をかけて、私と“私(きみ)”の分岐点を知る。あの日から私たちは分かたれて、真逆の道を歩んでいった。
その道もやがて同じ道へとたどり着いて、そこから先は一本道。二人一緒に歩む道は、きっとこの世界よりも果てしないだろうけど。
…………それでも。私は貴女を好きでいたい。他でもない“自分”を愛していたい。私が“私”でいる為に。
二人なら進んでいけるよ。貴女は涙を堪えて笑ってくれた。だから私も笑って答えて、真っ青な光の下、離れないように手を取り合って。


「「また、会おうね」」


消え行く世界の中でおでこをくっつけ合って、少しの名残惜しさを感じながら、暫しの間の別れを告げた。

283闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:17:03 ID:/i8Ox0j6
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284闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:17:43 ID:/i8Ox0j6
『あなたには私がいるよ』と、名前も知らないキミは言ってくれた。

目が覚めた時、まず目に映ったのは雨上がりの澄んだ空。掛かる淡い一本の虹、そして……涙を零す、姉さんの顔。
何があったんだっけ。少し前の記憶を思い起こそうとしても、まるで滲んだ絵のように朧げで、思い出すことは叶わない。
しかし今はそれよりも、肌に伝わる冷たさと喪失感が勝っていた。寒い、寒い、寒い。けど腕を摩ろうにも身体が言うことを聞かない。

「目が覚めたか!…………ああ、よかった……良かった……!」

……姉さん?どうして泣いているの、と問いかけようとした時、私を取り囲むように立つ他の住人たちの存在に気が付く。
呆然と眺める私を彼らは心配そうな面持ちで眺めて、ある者は私が無事であったことに安堵し、ある者はやれやれと照れ隠しの溜息をつく。
最後に自分の体を眺めてみた。ボロボロのメイド服は水に濡れ、肌は病的なほどに白く、指先は異様なほどにふやけていて。
背後の湖の光を浴びてようやく事態を察する。ああ、そういえば私、逃げ出したんだっけ。そしてそのまま行く宛もなく走って、この湖に辿り着いた。
もう私は闇の住人じゃないのに、どうして私なんかを助けたんだろう…………ああ、でも。

「……生きてて、よかった」

心から、自然と込み上げた感情を口にしてみる。今まで一度も口にしてこなかった言葉を。生への執着を。名も知らぬ誰かの言葉を。
溢れだしたこの言葉は、もしかしたら“自分”への愛なのかも。自分らしくない言葉に気恥ずかしく照れながら、姉さんに肩を抱かれて立ち上がって。
ふと、身体に違和感を感じた。溺れていたことに依る外的な違和感ではなく、こう、言葉にしにくいが、体の構造の根底が変化しているような。

285闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:18:34 ID:/i8Ox0j6
――――――――翼が、生えてる。天使の象徴でありながら、生え揃った羽毛は綺麗に白黒。まるで市松模様めいていて。
何故だろうか、その模様を見て、懐かしいという感覚が脳裏を過ぎった。この模様に思い入れなど無いのに、何故だろう。
いやそれよりも、何故翼が?やはり天使に戻ってしまったのだろうか、と色々思いを巡らせていると、こちらへ歩み寄って来たのはm2。
しげしげと私を……私の翼を眺めると、驚いた、といった様子で大げさに反応を見せれば、一枚の札を取り出し語り始める。

「いや、驚いたな……実はお前が館を飛び出してから数時間後、このタロットの絵柄が変化したんだよ」

「こんな例は初めてだ……それも、絵柄に示された種族は天使、闇の住人、人間、妖精、獣人、竜人、機人、どれにも当てはまらない」

差し出されたタロットカードに描かれていたのは、向い合って手を取り合う二人の少女。片方は白い天使で、片方は黒い悪魔。
二人の掌の中には白と黒で形作られたハートが握られていて、二人は静かな微笑みを湛えながら、澄み渡る青空と白黒の大地を眺めている。
……その光景を、私は知っていた。しかしいつ、どこで、どのようなことが合ったかは思い出せない。ただ漠然とした「見た」という記憶だけが焼き付いており。
刻み込まれた記憶を探ろうとしても、やはり滲んでいて思い出せない。とても大事なことが合ったような気がするのに、思い出そうとする度に溶けていく。
モザイクが掛かった記憶が明らかになることはないだろう。途方も無い喪失感が胸に突き刺さるが、不思議と寂しさはなくて。
唯一、おでこに残ったこの感触だけが、それらの記憶が真実であったことを物語っている。だから悲しくはないし、寂しくもない。

「何が起こったのか全く見当もつかないが……まあ、その様子ならもう心配はなさそうだな」

「m2……もう思わせぶりな事を言うのはやめろ。サクヤが天使だろうが闇の住人だろうがお前ならどうにか出来るだろうに」

「はは、ちょっとお灸を据えてやるつもりだったんだが、まさかこんな大事になるとは思ってなかったんだ」

二人の会話を背に、背後の湖を振り返った。淡く光を放ち、深い青が広がる湖。底は深く深く、人の心よりも深く。
もう一度あの中に飛び込んでみれば、もう一度……名前も知らないキミに会えるのかな。なんて誰かに問いかけるよう心の中で呟いて。
―――――その必要はないよ、と脳裏に届くこの声は。いつか、知らない場所で共に過ごしたキミの声。
そっか、なら安心だ。言葉を胸にしまい込み湖から踵を返して歩き出す。朝日が山の稜線から顔を覗かせる晴れやかな日。
天気予報、やっぱり当たったね。誰も知らない占いを自慢気に誇るように呟いては、木漏れ日の中を歩んでいく。

名前も、顔も、声も知らない。けれど誰よりも長く時を共にした“キミ”と一緒に。

286闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:22:14 ID:/i8Ox0j6
人知れず滾々と湧き出る不思議な湖。綺麗な光を携えた湖面の畔、一輪だけ咲く花に名前は無い。
美しい白と黒の花びら。そこだけ切り取られたようなモノクロの花。か細くも立派に、己を誇るように咲く花は。
澄み渡る青空へ手を伸ばすように、一枚の―――白と黒が混ざり合った花びらが、朝の薫風に乗って舞い散って行く。


……誰も知らないもう一つの世界。湖の畔に佇む天使の少女が、曇天を舞い散る一枚の花びらを見送った。


『モノクロ・パッチワーク』  了

287闇の名無しさん:2015/12/24(木) 18:00:14 ID:hjOIvPHk
神流「サクヤー、戦況はどうなってる?」

サクヤ「今でもなく優勢ですね。どうします?出陣なされますか?」

神流「うむ」

サクヤ「承知しました、では今すぐに手配を」



神流「サクヤー、今週末空いてるー?」

サクヤ「ん?週末?ちょっと待ってて……ああ、おっけー、空いてる」

神流「やたっ じゃあ一緒に街の方に行かない?」

サクヤ「りょーかい。……先に言っとくけど、カレーパンは奢らないからね」

神流「ケチ!」



執事「神流から呼ばれるときっていつも「サクヤ」だけど混乱しないのか?オフの時とか」

サクヤ「そうでもないよ?トーンとか違うから」

執事「マジで」

サクヤ「王女として私を呼ぶときは若干シリアスなトーンだったりね」

執事「ほーん……流石メイド長だな」

サクヤ「まあ7割くらい勘だけど」

執事「オイ」

288闇の名無しさん:2015/12/31(木) 04:46:59 ID:6DJo1oZo
ある朝、君は突然姿を消した。
言い知れない何かが欠けた朝。食堂を囲む椅子が一つ、悲しげに空いている。
置かれたスープはいつしか冷めて、皆が席を立って食堂を後にしても、君はやって来なかった。

お昼になっても、日が沈んでも、君は帰ってこない。
隣りに座る執事はいつも通りで、向かいに座る王女もいつも通りで、欠けた一日が続いていく。
どうして誰も気にしないの、と問いかけたい。でも、話したこともない君を心配するなんて可笑しいと思って。
そのまま明日がやってくる。お天道様が昇っても、やっぱり君は帰ってこなかった。

……君のことを、私は知らない。
この館に来てから数年経った。あの事件を引き起こした私を、住人達は受け入れてくれた。
だから私も彼らの期待に応えるために、殺めてしまった彼女たちへの贖罪のために、精一杯働いた。
王女様。師匠。お姉様。執事さん。リンさん。姫様。いそのさん。甘楽さん。そして、女王様。
一つ屋根の下、家族も同然に暮らす彼らの輪にようやく入り込めたと思っていたけど。

K-chan。君はそう呼ばれていた。
私は君をよく知らない。不思議なモノを作っていて、不思議なモノで遊んでいて、不思議なモノを嘆いていた。
彼も私とは関わろうとはしなかった。だから私もいつしか、君とは縁がないのだろうと諦めていた。

でも。君がいない席で冷めていくスープを見ていると、何故だろう、悲しい気持ちで押し潰されそうで。


「……Kの好きな食べ物?」

食後、部屋へ戻るお姉様を引き止めて、そんなことを訪ねてみた。
面食らったような表情でお姉様は戸惑う。私が彼の名前を口にした事に驚いているのか、質問の内容に驚いているのか。
どちらにせよ、暫く考えこんだ後、お姉様は困った様子で「わからない」と答えた。

「アイツは底知れない部分があるからな、誰にもわからんのじゃないか」

「…………そうですか」

肩を落とし、溜息をつく。自分で不思議なくらいに私は落ち込んでいるようで、それはお姉様にも伝わったようで。

「ああ、もしかして、気にしてるのか?アイツのこと」
「そういえばお前は知らなかったか……なに、心配しなくてもいいさ、またひょっこり戻ってくるんだから」

と、私の心を見透かしたように笑っては、頭を撫でて立ち去った。
……いつものことだ、と皆が口をそろえて言う。王女様はにやにやと、どこへ行ったんだろうねと薄ら笑い。
師匠に居場所を探るようお願いしても、面倒くさいの一言で一掃されて。
今日もまた、日が沈む。

289闇の名無しさん:2015/12/31(木) 04:59:37 ID:6DJo1oZo
一ヶ月経っても君は帰ってこない。
君の席にはいつの間にか埃が積もって、主の帰りを寂しげに待っている。

今日の献立はニンジンのポタージュ。いつものようにスープは冷めて、それを黙々と厨房へ下げる・。
悲しいな、食べてもらえないって。流しに捨てたスープの残り香が、私の鼻孔にこびり付くようで。
ふぅ、と意味もなく溜息を零した。明日もまた、君は帰ってこないんだろうね。


「さっくやー!!」

ある日、王女様が声をかけてきた。どこか嬉しげな様子で、薄茶色の紙袋を片手に。
こんなに機嫌のいい王女様を見たのは久しぶりだな、なんて思いながら、彼女の言葉に耳を傾けると

「これ!けーちゃんの好きなモノ!ようやく取り寄せられたんだ!」

手渡された紙袋を覗くと……これは、馬鈴薯?
袋いっぱいに詰め込まれた馬鈴薯――ジャガイモ――は小ぶりだが、色艶もよく形も良好。
これが君の好物なのだと聞かされた時、言葉に出来ない嬉しさが込み上げてきて、王女様にひとしきり頭を下げて厨房へ。


ことことと、思いを込めたスープの出来上がり。
君がいなくなって数ヶ月、きっと帰ってきてくれるよね。心成しか浮足立って、湯立つスープを食卓へ。
ほのかなスパイスの香りが鼻孔をくすぐる。匂いにつられて帰ってくるなんて、そんなお伽噺を期待して。

……結局、君は帰ってこなかった。

290闇の名無しさん:2015/12/31(木) 05:10:13 ID:6DJo1oZo
君がいなくなって一年経った。
春が明け、風薫る初夏も過ぎ、日差し突き付ける夏も終わって秋が訪れ、紅葉が散れば冬の始まり。
闇世界の冬は厳しい。数年過ごした程度でも確信できるほど、この国の冬は長く厳しいものだ。

けど、君は帰ってこない。
どうして、という疑念と不安が募る。吹雪く窓を眺めては、曇天の空に懸念を抱いて。

「…………君は」

どこへ行ったんだろうね。知る由もないけれど、知る権利もないけれど。私は知りたい。
君がどこへ行ったのか。君はどうしていなくなったのか。君は、君は、君は―――――――。



だん、と扉を開け放って、冬の館を飛び出した。
吹き付ける雪に目を細ませて、荒ぶ寒風に手を悴ませて。一面の銀世界を駆け抜ける。
はっ、はっ、はっ。零れる息は荒く、仄暗い夜空に溶けていく。月の陰る午前3時、私は君を探して走る。
頬も赤く悴んで、手足は冷たく凍えるようで。それでも心の隙間に吹く風よりはマシだと言い聞かせて。

山を抜け、谷を渡り、やがて街へと辿り着く。
闇世界の中心街。初めての街に途方も無い孤独感を覚えながら、私はひたすら君を探す。

291闇の名無しさん:2015/12/31(木) 05:27:24 ID:6DJo1oZo
人混みをかき分けて、煙る排気に咳き込みながら、見知らぬ街をぐるぐると。
周りの怪訝な視線を振り払うように走り抜ける。路地裏を、高架橋を、交差点を、歩道橋を。
街はとても広く、一日じゃ回りきれないほどで、それでも頬に汗を伝わせながら街を行く。
お腹が空いたら近くの店でパンを一切れ。冷たくなったパンを齧りながら、雪の降る街で独り。

道行く人に訪ねてみても、君の姿は掴めない。
頼る人など誰も居ない街の中、不安が、恐怖が、衆目が、止めどなく私を押しつぶすようで。

「……どこにいったの」

震えた声で呟いて、夕焼けが差す街外れ、かんかんと響く踏切の側で君を想う。
伸びる影は一つ、まるで迷子のよう。ああ、この気持ち、昔どこかで感じたような。
……不意に涙が溢れ出る。自分でも計り知れない感情の波。情緒不安定な私の心。
空になった袋をくしゃりと握りしめて、必死に涙をこらえて歩く。過ぎ去る電車、差し込む夕日をかき分けて過ぎる影。
この踏切の向こうはまた別の街。また知らない街へ行く。帰れるのかな、と、一抹の不安が突き刺さって。


―――――遮断機が上がった線路の向こう。夕日を背に立つ君は。



つかつかと歩み寄る。驚いた様子で佇み君に、涙を見せないように近づけば。
ぱん、と乾いた音が響く。ダメだとわかっている。わかっているけど、我慢できなかった。
勝手にいなくなって、皆の――――私の――――気持ちも知らないで、こんな街でうつつを抜かしてるなんて。

「何す――――」

「心配したんだからね、バカ」

一滴の涙がこぼれ落ちた。それをきっかけに次々と、堰を切ったようにあふれる涙。
同時に口から漏れた言葉は感情の吐露。敬語も忘れて、手のひらの形に頬を赤く染める君を睨んで言い放つ。
でもきっと、今の私の顔は涙でぐしゃぐしゃで、説教なんて以ての外。説得力の欠片もないんだろうな。
……けど。ただひとつ言えることは。

「…………会えて良かった」

292闇の名無しさん:2015/12/31(木) 05:40:26 ID:6DJo1oZo
朝、揃い踏みの食卓に並べられたスープは、君の大好物の馬鈴薯のスープ。
欠けたピースは埋まり、今日からまた、いつもの日常が始まる。斜め迎えに座る君、眼鏡を曇らせてスープを啜る。

「僕を探しに来た奴なんて初めてだ」と、君は笑った。関わることのなかった二人、巡りあうキッカケは些細なもの。







―――――そんな遠い昔の話を不意に思い出した、欠けた日の朝。
君はまた突然姿を消した。これで何度目だろうか、もう数える気もしない日常の一角。
こうなるともう慣れたもので、彼の椅子は既に撤去済み、朝食も省いて、一年ほど経ったらまた元へ戻す。
こうも放浪が常態化すると「いつ帰ってくるか」も大体把握出来るようになってくる。嫌な性だな、と笑って見せて。

冬が明けた春のある日。君が居なくなってから数ヶ月、馬鈴薯の美味しい季節。
……散歩にでも出かけようか。行き先は―――そうだなあ、街へ行こうか。夕日の綺麗な、あの街に。

「心配なんて、してないけどね」


従者少女は街で独り、放浪少年を探し歩く。ほんの気まぐれが彼女を動かした、そんなよくある日のお話。

293さくや:2015/12/31(木) 05:41:36 ID:6DJo1oZo
書き納めはさくKだ!

294けいちゃん:2015/12/31(木) 12:01:13 ID:yWveHhJE
いいぞ〜これ

295けいちゃん:2016/01/03(日) 23:18:47 ID:yWveHhJE
サクヤ「遊戯王…?」

※ご都合オリカ展開アリ。

296けいちゃん:2016/01/03(日) 23:19:26 ID:yWveHhJE
サクヤ「なるほど、これが例のカードゲームですか」
k「そだよー」
サクヤ「で、遊ぶにはデッキが必要だって聞いたんだけど」
k「それは大丈夫だ。俺が用意してあるからこれ使え」
サクヤ「マジェスペクター…?」
k「相手を妨害するデッキだ。サクヤにぴったりじゃないかなって」
サクヤ「なるほどね。ありがとう!」

k「じゃあ軽くルールの説明をするよ」
サクヤ「ふむふむ…」

〜1時間後〜

k「黒庭ドレッドルート時のヴェルズコッペリアルの攻撃力」
サクヤ「307」
k「即答かよ…此処まで飲み込みが早いのは初めてだな」

※「黒庭ドレッド」で検索してみよう。頭おかしいぞ。

297けいちゃん:2016/01/03(日) 23:20:15 ID:yWveHhJE
k「じゃあ早速決闘してみるか!あと黒庭ルートの公式は実戦じゃ基本一切使わないからな!」
サクヤ「(覚えた意味って…)やりましょうか」

「デュエル!!」

k「先行はくれてやるよ!」
サクヤ「遠慮なく行かせてもらいます…私のターン!」

サクヤ 手札5
k 手札5

サクヤ(ここは…)
サクヤ「マジェスペクターラクーンを召喚!マジェスペクターラクーンの効果発動!」ATK1200
サクヤ「デッキからマジェスペクターモンスターを手札に加えます。私が加えるのはマジェスペクターフォックス。」手札5

サクヤ「そして私はスケール2のマジェスペクターフォックスとスケール5の竜剣士ラスターPをペンデュラムスケールにセッティング!」手札3

k「いきなり飛ばすねぇ〜」

サクヤ「竜剣士ラスターPのP効果発動!マジェスペクターフォックスを破壊し、マジェスペクターフォックスを手札に加え、そのままセッティング!」手札2

298けいちゃん:2016/01/03(日) 23:20:58 ID:yWveHhJE

サクヤ「揺れろ、魂のペンデュラム。天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れよ!私のモンスターたち!」

サクヤ「エクストラデッキから、マジェスペクターフォックス!」ATK1500
サクヤ「手札から、マジェスペクターキャット!」DEF1900
サクヤ「マジェスペクターフォックスの効果発動!マジェスペクター罠カードを一枚手札に加えます!」

k(あ、やばいやつだこれ)
サクヤ「マジェスペクターテンペストを手札に加えます!私はカードを2枚伏せてエンドフェイズ!マジェスペクターキャットの効果でマジェスペクターラクーンを手札に加えます!」
サクヤ 手札1
フィールド モンスターゾーン マジェスペクターラクーン マジェスペクターフォックス
Pゾーン ラスターP マジェスペクターフォックス
魔法罠ゾーン伏せ2枚

299けいちゃん:2016/01/03(日) 23:22:06 ID:yWveHhJE

※言い忘れてたけど遊戯王わかる前提で書いてるので、たぶんここのひとたちは大抵わからない。

k「俺のターン!ドロー!」
k(ここは…)
k「魔法カード発動!ハーピィの羽根箒!」
サクヤ「なっ!」
サクヤ「うぐぐぐ…」
k「いける!」
k「手札から、魔界発現世行きデスガイドを通常召喚!」
サクヤ「あのカードは!」
k「効果発動!デッキから魔サイの戦士を特殊召喚するぜ!」
k「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」
k「地獄の旅人よ、今ここに現れろ!」
k「彼岸の旅人 ダンテ!」ATK1000

サクヤ「エクシーズ召喚…だけど、攻撃力1000程度じゃ…!」
k「甘い!」
k「ダンテの効果発動!魔サイの戦士を取り除き、デッキの上からカードを3枚墓地へ送る!」
墓地へ送られたカード
DDD死偉王ヘル・アーマゲドン
DDスワラルスライム
DD魔道賢者ニュートン

300けいちゃん:2016/01/03(日) 23:22:44 ID:yWveHhJE
k「そしてダンテの攻撃力は、この効果で墓地へ送られたカード1枚につき、500ポイントアップ!」
サクヤ「攻撃力2500!」
k「さらに素材として墓地へ送られた魔サイの戦士の効果発動!」
k「DDネクロスライムを墓地へ!」
サクヤ(あれこれってやば…)
k「手札から、地獄門の契約書発動!効果によりDDD壊薙王アビス・ラグナロクを手札に!」
サクヤ「ちょっちょちょちょ、こちとら初心者ですよ!」
k「御構い無しなスタンスで」
サクヤ「おおおおい!」
k「手札から、DDスワラルスライムの効果発動!手札のDDラミアと融合!」
k「現れろ!DDD神託王ダルク!」ATK2800
k「墓地のDDラミアの効果発動!地獄門の契約書を墓地へ送り、特殊召喚する!」
k「俺はDDD神託王ダルクに、DDラミアをチューニング!」
k「現れろ!DDD呪血王サイフリート!」ATK2800
サクヤ(こ無ゾ)
k「まだまだァ!墓地のDDネクロスライムの効果発動!墓地のDDD神託王ダルクと一緒に除外して融合!」
k「DDD剋竜王ベオウルフ!」ATK3000
k「墓地のDDスワラルスライムの効果発動!このカードを除外し、手札からDDD壊薙王アビス・ラグナロクを特殊召喚!」ATK2200
k「アビスラグナロクの効果発動!墓地からDDD死威王ヘル・アーマゲドンを特殊召喚!」ATK3000


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