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288闇の名無しさん:2015/12/31(木) 04:46:59 ID:6DJo1oZo
ある朝、君は突然姿を消した。
言い知れない何かが欠けた朝。食堂を囲む椅子が一つ、悲しげに空いている。
置かれたスープはいつしか冷めて、皆が席を立って食堂を後にしても、君はやって来なかった。

お昼になっても、日が沈んでも、君は帰ってこない。
隣りに座る執事はいつも通りで、向かいに座る王女もいつも通りで、欠けた一日が続いていく。
どうして誰も気にしないの、と問いかけたい。でも、話したこともない君を心配するなんて可笑しいと思って。
そのまま明日がやってくる。お天道様が昇っても、やっぱり君は帰ってこなかった。

……君のことを、私は知らない。
この館に来てから数年経った。あの事件を引き起こした私を、住人達は受け入れてくれた。
だから私も彼らの期待に応えるために、殺めてしまった彼女たちへの贖罪のために、精一杯働いた。
王女様。師匠。お姉様。執事さん。リンさん。姫様。いそのさん。甘楽さん。そして、女王様。
一つ屋根の下、家族も同然に暮らす彼らの輪にようやく入り込めたと思っていたけど。

K-chan。君はそう呼ばれていた。
私は君をよく知らない。不思議なモノを作っていて、不思議なモノで遊んでいて、不思議なモノを嘆いていた。
彼も私とは関わろうとはしなかった。だから私もいつしか、君とは縁がないのだろうと諦めていた。

でも。君がいない席で冷めていくスープを見ていると、何故だろう、悲しい気持ちで押し潰されそうで。


「……Kの好きな食べ物?」

食後、部屋へ戻るお姉様を引き止めて、そんなことを訪ねてみた。
面食らったような表情でお姉様は戸惑う。私が彼の名前を口にした事に驚いているのか、質問の内容に驚いているのか。
どちらにせよ、暫く考えこんだ後、お姉様は困った様子で「わからない」と答えた。

「アイツは底知れない部分があるからな、誰にもわからんのじゃないか」

「…………そうですか」

肩を落とし、溜息をつく。自分で不思議なくらいに私は落ち込んでいるようで、それはお姉様にも伝わったようで。

「ああ、もしかして、気にしてるのか?アイツのこと」
「そういえばお前は知らなかったか……なに、心配しなくてもいいさ、またひょっこり戻ってくるんだから」

と、私の心を見透かしたように笑っては、頭を撫でて立ち去った。
……いつものことだ、と皆が口をそろえて言う。王女様はにやにやと、どこへ行ったんだろうねと薄ら笑い。
師匠に居場所を探るようお願いしても、面倒くさいの一言で一掃されて。
今日もまた、日が沈む。


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