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SSスレッ!!!!!!!!!!

275闇の名無しさん:2015/11/19(木) 18:11:43 ID:/i8Ox0j6
「私って、誰だっけ」


――――――脳裏に響くこの声を、聞き間違えるはずもない。
突き放つような言葉が残響を残す。目を見開き、声の主を確かめようと意識を覚醒させた時。広がるのは無限の部屋。
広い。壁も、天井も、全て暗闇の中。唯一確認できる床は白と黒の市松模様。鮮やかな青とは打って変わって無機質な世界。
私はその場に佇んでいた。傷一つ無い綺麗なメイド服を身に纏って、手には一本のナイフ。真新しい、新品の食事用ナイフ。
明らかに異質な空間で不思議と私は落ち着いていた。何故だろうか、感覚的にこの場所は不変だと確信している。この空間は落ち着ける、と。
一歩歩み出すと足音が響き渡る。響く音に限度は無い。きっとこの場所は無限に広がる大部屋なのだろう、と理解した。
光源はないのに自分の姿だけは確認できるし足元も確認できる。都合の良い夢を見ている時のように、思ったことが現実になる世界。
ここでも私は行く宛もなく彷徨い続ける。目的も無く、生き甲斐という道標を失ったまま、色の無い世界を延々と。

渺茫の白黒世界。歩く度に自分の色が褪せていく。何分、何時間、何日、何年歩いただろう。行けども行けども壁は見えない。
疲労も成長も無い泡沫の世界に取り残された私は、ふと、目の前に光を見た。どこからとも無く差し込む光はスポットライトめいて。
照らされたモノクロの床。何となく、その光に向けて手を掲げてみる。何故だろうか。そうすれば、出会える気がした。
確信はないけど、出会えるはずだと。この世界へ落ちる前、脳裏に響くあの声の主に。私へと語りかけてきた、あの―――――


「また会ったね」


継ぎ接ぎだらけの“私(きみ)”に。


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