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SSスレッ!!!!!!!!!!
285
:
闇の名無しさん
:2015/11/19(木) 18:18:34 ID:/i8Ox0j6
――――――――翼が、生えてる。天使の象徴でありながら、生え揃った羽毛は綺麗に白黒。まるで市松模様めいていて。
何故だろうか、その模様を見て、懐かしいという感覚が脳裏を過ぎった。この模様に思い入れなど無いのに、何故だろう。
いやそれよりも、何故翼が?やはり天使に戻ってしまったのだろうか、と色々思いを巡らせていると、こちらへ歩み寄って来たのはm2。
しげしげと私を……私の翼を眺めると、驚いた、といった様子で大げさに反応を見せれば、一枚の札を取り出し語り始める。
「いや、驚いたな……実はお前が館を飛び出してから数時間後、このタロットの絵柄が変化したんだよ」
「こんな例は初めてだ……それも、絵柄に示された種族は天使、闇の住人、人間、妖精、獣人、竜人、機人、どれにも当てはまらない」
差し出されたタロットカードに描かれていたのは、向い合って手を取り合う二人の少女。片方は白い天使で、片方は黒い悪魔。
二人の掌の中には白と黒で形作られたハートが握られていて、二人は静かな微笑みを湛えながら、澄み渡る青空と白黒の大地を眺めている。
……その光景を、私は知っていた。しかしいつ、どこで、どのようなことが合ったかは思い出せない。ただ漠然とした「見た」という記憶だけが焼き付いており。
刻み込まれた記憶を探ろうとしても、やはり滲んでいて思い出せない。とても大事なことが合ったような気がするのに、思い出そうとする度に溶けていく。
モザイクが掛かった記憶が明らかになることはないだろう。途方も無い喪失感が胸に突き刺さるが、不思議と寂しさはなくて。
唯一、おでこに残ったこの感触だけが、それらの記憶が真実であったことを物語っている。だから悲しくはないし、寂しくもない。
「何が起こったのか全く見当もつかないが……まあ、その様子ならもう心配はなさそうだな」
「m2……もう思わせぶりな事を言うのはやめろ。サクヤが天使だろうが闇の住人だろうがお前ならどうにか出来るだろうに」
「はは、ちょっとお灸を据えてやるつもりだったんだが、まさかこんな大事になるとは思ってなかったんだ」
二人の会話を背に、背後の湖を振り返った。淡く光を放ち、深い青が広がる湖。底は深く深く、人の心よりも深く。
もう一度あの中に飛び込んでみれば、もう一度……名前も知らないキミに会えるのかな。なんて誰かに問いかけるよう心の中で呟いて。
―――――その必要はないよ、と脳裏に届くこの声は。いつか、知らない場所で共に過ごしたキミの声。
そっか、なら安心だ。言葉を胸にしまい込み湖から踵を返して歩き出す。朝日が山の稜線から顔を覗かせる晴れやかな日。
天気予報、やっぱり当たったね。誰も知らない占いを自慢気に誇るように呟いては、木漏れ日の中を歩んでいく。
名前も、顔も、声も知らない。けれど誰よりも長く時を共にした“キミ”と一緒に。
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