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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part29

1■■■■:2015/12/07(月) 21:01:15 ID:WEwdZ/zM
上条さんと美琴のSSをじゃんじゃん投下していくスレです!
別に上条さんと美琴だけが出てくるスレじゃありません。
上条さんと美琴が最終的にいちゃいちゃしていればいいので、
ほかのキャラを出してもいいです。そこを勘違いしないようにお願いします!

◇このスレの心得
・原作の話は有りなのでアニメ組の人はネタバレに注意してください。
・美琴×俺の考えの人は戻るを押してください。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・レスする前に一度スレを更新してみましょう。誰かが投下中だったりすると被ります。
・次スレは>>970ぐらいの人にお願いします。

◇投稿時の注意
・フラゲネタはもちろんNG。
・キャラを必要以上に貶めるなど、あからさまに不快な表現は自重しましょう。
・自分が知らないキャラは出さないように(原作読んでないのに五和を出す等)。
・明らかにR-18なものは専用スレがあるみたいなのでそちらにどうぞ。
・流れが速い時は宣言してから書き込むと被ったりしないです。投稿終了の目印もあるとさらに◎。
・創作しながらの投稿はスレを独占することになりますので、書き溜めてから投稿することをお勧めします。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・以前に投稿したことがある人は、その旨記述してあるとまとめの人が喜びます。
・ちなみに1レスの制限は約4096byte(全角約2000文字)、行数制限は無い模様。

◇その他の注意・参考
・基本マターリ進行で。特に作品及び職人への過度なツッコミや批判は止めましょう。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・クレクレ(こうゆうのを書いてください)等はやりすぎに注意。
・読んだらできれば職人にレスしてあげましょう。職人の投稿するモチベーションを維持できます。
・誰か投下した直後の投下はできれば控えめに。
・倫理的にグレーな動画サイト、共有関係の話題はもちろんNG。
・書きたいけど文才無いから書けないよ!
  →スレの趣旨的にそれでも構いません。妄想と勢いでカバー(ネタを提案する程度でも)。

◇初心者(書き手)大歓迎!◇

前スレ
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part28
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1415780549/

まとめページ
とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫 / 上条さんと美琴のいちゃいちゃSS
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/81.html

まとめページの編集方針
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/213.html

スレ立て用テンプレ
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/82.html

833■■■■:2016/12/21(水) 16:14:52 ID:8Xdg.fB6
(まあ今回の改竄もある意味御坂さんのうっかりミスが原因だしな・・言えないけど)

相手は、学園都市1位、初春から見て仰ぎ見る存在。大学レベルと言われる、名門
女子中を飛び級卒業し、いきなり大学院へ進学する化け物。あれこれ言える立場じゃない。

情報処理技術の1点だけは彼女に対抗できるかもしれない。だが所詮はそれだけ。
統括理事会から風紀委員会の管理を任され、なによりレベル5の一位、能力者の頂点
すべてが違う。それに・・権限という格差はどうにもならない。

樹形図の設計者、書庫、軍事クラウドあらゆるデータべースのフルアクセス権を持つ
風紀副委員長御坂美琴、自分はその権限を一部譲渡され、その範囲内でしか処理を
許されていない。軍事機密という名の重苦しいカーテンが引かれ、自分はその内側に
関与できない現実。その現実が初春飾利の心をささくれさせる。

いつか、このシステムの裏に横たわる、学園都市の奥底に触れてみたい。恐らく
世界の頂点であろう、サーバー群を操りたい。初春はその野心に胸を躍らせる。
いつか、上司の御坂美琴を出し抜いてやると。さえ思っている。
だが・・今は・・まだ早い。自分の行動(ログ)はすべて上司に監視されているの
だから。

予定通り13時に到着した御坂さんを確認し、声をかける。

「御坂さんお疲れ様です」
「お疲れ」
「本当ありがとうね、全部事務作業を押し付けて」
「いえ・・御坂さんや上条さんが短時間で制圧しなければ全部おしまいでしたから」
「ありがとう、そうそう」
御坂さんはカバンから、マネーカード1万円分を取り出す。
「少ないけど、これで昼でも食べて」
「いいんですか・・」
「いや、ここんとこ多忙にさせたし、気持ちよ・気持ち」
「御坂さん。ありがとうございます。」

「じゃ・・14時55分には戻ってね、私次の競技でなきゃないから」
私は、初春さんを見送り、ログを確認する。初春さんを信用していないわけではないが
食蜂クラスの精神系能力者の攻撃を防げる能力者が私と当麻しかいない以上、確認する
必要はある。学園都市とは人間など簡単に操れる街なのだから。

私は、能力で短時間にログを解析する。電子の動きひとつひとつまで見逃さない。

「まあ当然、異常なことはないわね」
「アンダーライン、ツリーダイアグラム、素養格付け、そしてあれね」
「初春さんは、あれの存在に気がついたら正気でいられるかしらね」
「AI捜査支援システムの裏コマンドにあるあれに気が付いたらね」

初春飾利のような表しかしらない人間にいくら有能とは言え、美琴が構成した新暗部の
情報処理の中枢を担わせることに、良心の呵責はある。

だが・・
(まあほかに代わりもいないし、それに・・初春さんが情報処理技術者として学園都市
で生きなおかつ治安関係者である以上いづれ、闇に対峙する日がくる)
(だったら、私とともにかかわったほうがいいんじゃないかな)

私は短時間でログの解析を終え、研究所の決裁作業を始める。
風紀委員・研究者の職務をこなし、なおかつ、手足をしばられた状態で人間の世界で
子供のお遊びにニコニコと笑いながら参加し広告塔の業務を果たす。

(怪獣が人間世界で暮らすにはそれなりの自己抑制が必要な話よ。一方通行や垣根、麦野
はそれに失敗し、一度は闇に落ちた、私がその轍を踏むわけにはいかない)

私は、最低限の仕事を終え、画面をシャットダウンする。

さあそろそろ、お遊戯の時間かな・・
大覇星祭で勝ちの決まりきった勝負をつけに私は走り出す。

////////////////
19時

白井黒子との二人三脚とバルーンハントで圧勝し、お遊戯を終える。
さすがに、私と呼吸ぴったりの黒子、摩擦系数操作能力者の妨害を、磁力で
ぶち壊し、さらに発火系能力者の暴走事故さえ防ぎ、賞賛すら浴びた。

834■■■■:2016/12/21(水) 16:15:53 ID:8Xdg.fB6
又バルーンハントでは、壁を高速で駆け回り、屋根から屋根を磁場で飛び越え
あらゆる能力者の攻撃をかわし母校の勝利に貢献した。攻撃できない以上
逃げ回るしかないが、磁場を巧みに使用し、マスコミ的にもいい絵柄の写真
や動画が提供できただろう。

(まあ、あれちょっと操作を誤ると、干渉数値の制限にひっかかるからやばいけど)

結局、壁を自在に駆け回り、生体電流で握力を350KGにできる能力者など
常盤台でも少数派にすぎないという話だ。

私はレベル1からという底辺からの出発だったので、低レベルで工夫することに頭を
精一杯使ってきた。その経験が大覇星祭で生きてくる。

出場した全試合で勝利に貢献し、面目は保ったのではないだろうか?
他のレベル5は削板以外は出場しないので、(食蜂は棄権)個人部門は
私と削板の争いだが、削板は、あの根性男は予想どおり、干渉数値違反で
レッドカードをくらい、恐らく私の個人総合1位は間違いなさそうだ。

あらかじめ予約した少しこじゃれたホテルの展望室レストランで当麻を待つ。
18時30分から始まった、ナイトパレードを見るためだ。

すでに、テーブルの上に水と前菜の冷たいスープが置かれている。
当麻は約束どおり、19時ちょうどに到着し、テーブルに腰かけている。
あらかじめ注文したウーロン茶が運ばれ、乾杯し、夕食を始める。

ナイトパレードの照明が星空を覆いつくす。

冷たいスープを食し、白身魚のムニエルに手を付ける。

「本当綺麗な景色ね」
「ありがとうな美琴、ここ特等席だろう、高いだろう」
「ええ、普通ならね」
「普通なら?」
「まあ実行委員の役得というやつよ、フルコースで一人1万5000円」
「安くないじゃないの?美琴さん」
(しまった・・当麻の金銭感覚を忘れていた)
「相場なら5万円よ」

当麻が目を丸くする。
「でも、どんな夜景も美琴の笑顔には適わないよ」
(はあ・・たまに気障なことを言うのよね)
「ありがとう、で・・どうだった」
「ああ、不幸もなく結構うまくいったよ。あ・・それと美琴の表彰シーン見たよ
さすがだな」
「ありがとう、でも当麻の学校も結構いい点とっているじゃない」
「まあ、常盤台よりは低空飛行だけどな」
当麻が私の学校を褒めてくれるので私もうれしくなる。

「まあ、母校へ少しでも恩返しできてまずはよかったかな」
当麻が意外な表情で私を見つめる
「美琴は謙虚だな、でも今のところはまだ常盤台が美琴離れしてないけどな」
私は、苦笑いを始める。

「いつか忘れてほしいけど、まだ無理みたいね」
「そうか、でもさ、そうやって後輩に慕われることは凄いことだと俺は思うぞ」
「ありがとう。久しぶりに、黒子とか、食蜂とカラオケでもしない?」
「いいじゃないの?」
「じゃ、今日はよろしくね、旦那様」
「ダメ亭主をよろしくな 美琴」

私と当麻は、デザートのメロンと、エクレアを食べ終え、黒子が手配済みのカラオケ
会場へ向かう。

独裁者が、失踪し先が見えない異常事態の学園都市、でも今の私は一人じゃない
きっとどんな事態にも立ち向かえるそんな気がした。

続く

835■■■■:2016/12/21(水) 16:17:11 ID:8Xdg.fB6
以上とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 14話 3章―④
の投稿を終わります

836■■■■:2016/12/23(金) 14:35:51 ID:UuRSg4Pw
クリスマスの奇跡 1話 

12月19日 (月)

12月上旬に、木原唯一と無数のエレメントにより壊滅させられた常盤台は
昨日18日に無事復旧を終えることができた。

学校法人常盤台学園理事会には食蜂が根回しを行い、設計、施工は私御坂美琴の
分担で、大手ゼネコンの見積もりでは最低3月はかかるはずの復旧工事を実質
1週間で、終える事ができた。

私と食蜂は、この襲撃が、あのいまいましい、木原唯一の犯行である動かぬ証拠を集め、アンチスキルに告訴し、最終的に統括理事会が使用人である木原唯一への使用者責任を認め
常盤台学園の損害数千億円を100%負担することとなった。

私がAAAの技術を応用し、建設工事用に組み上げた土木用駆動鎧は通常の10倍以上の速さで工事を進め、常盤台中の生徒ほぼ総出で再建に取り組んだ成果が私の目の前に
現れる。

(本当・・夢みたいね)

あの惨状が嘘のように、荘厳な校舎が朝日に輝く。

疲労は蓄積しているが、一仕事を終えた爽快感に包まれ、校門へ向かう。

そこへ同じく昨日再建が完了した、内部寮から同級生達が吐き出され、私に挨拶
をかわしてくる。前は一匹オオカミとか言われた私だが、エレメント騒動以来
常に先頭に立って陣頭指揮をしたこともあるのだろう、ぐっと距離が近くなった。

(仲間、かな。やっと私もここの輪の中に交わった気がするわ)

その中に食蜂を見つけた時も、不思議と心が安らいだ。
その脂肪の塊も、能力も、ぞろぞろ大名行列のように、派閥メンバーを引き連れて
歩く姿も、全部が嫌だった。だが、非常事態はすべてを変えた。

学校崩壊の非常事態、お互い手を組みなんとか、今日を迎える事が出来たその事実が、今まで感じたこともない、女の友情を感じるほどの関係を構築したかもしれない。

それに、お互いが、お互いの力を認識したのも事実

短期間の再建と、木原唯一の犯罪の摘発は2人の協力なくしてあり得なかった。
電子情報と機械に対して無双な私と、人間に無双な2人の天才(レベル5)の協力
が不可能を可能にさせ、きわめて早期での復興を可能にした。

その事実が、・・・2人が友達と言えるほどの距離感へ近づけた。

「食蜂 おはよう」
「御坂さん、おはよう」
「なんか、こんな普通に挨拶できる関係になるなんてね」
「そうね・・まさか・・私と御坂さんがねえ」
食蜂が少し表情を変える。
「御坂さん、あれどうするの?」
「?」
「いやだあ、呆け力はいいわよ・・AAAの事よ」

「ああ、・・まだ使うわよ」
「正気?御坂さん・・、副作用力は分かっているわよね」
「分かっているわよ。でも・・これを手放すことはできないわ」
「え?」
「きっとAAAがアイツの役に立つ日が来る」

食蜂が呆れはてた顔で私を見つめる、

「でも・御坂さんは1回死にかけたわよね」

私は、「魔術」に触れ、当麻におぶられ意識を失ったあの日を思い出す。
当麻と学園都市を救うために命を投げ出したことを。

「そうね、リスクは否定できない、だけどこれが、絶対アイツの役に立つ」
食蜂は、顔に笑みを浮かべ、上条当麻に惚れ切った私を眩しい目で見つめる。

「御坂さんは頑固ね、でも・・私にはその強さが羨ましいわ」

837■■■■:2016/12/23(金) 14:38:29 ID:UuRSg4Pw
私は、自分の非力さと、足らざるを自覚させた恩人の顔を思い浮かべる。

食蜂の手を握り、決然と答える。
「私は、常盤台のあの子達も、上条当麻も何があっても守るわ」
「どんな犠牲を払ってもね」

・・・・・・・・・・

午前中、講堂で校舎再建記念集会が行われ、私と食蜂が
全校生徒と教職員の満場一致で
表彰された。以前の私なら辞退するような話だが、自分
とともにAAA運用に協力し、常盤台防衛に立ち上り、あの
絶望的な状況でなんとかエレメントを追っ払い、傷ついた仲間を
病院へ搬送し、さらに再建工事に尽力した仲間のために、表彰を受ける。

以前は、自分ひとりで強敵に立ち向かえばいい。そう思っていた。

学園都市の中では、間違いなく、成功した自分。学校教育の
中では、明らかな優等生。
それは、常盤台でも同じ、この学園都市で最上層である
この学校でも「御坂様」である
事には変わらない。

だけど・・それだけじゃ レベル5なんかじゃ全然足りない

上条当麻の対峙する敵のステージは突出して、自分の
超電磁砲では通用しない。
それが、現実。見たくもない不都合な真実。

そんな荒み切った心理状態でつかみ取ったAAA・
それだろう。自分は変わった。AAAを運営する部活を立ち
上げ、学校の協力で整備場
を立ち上げた。

代償は小さくはなかった。木原唯一に敵対し、常盤台は壊滅した。だけど・・

AAAのおかげで救えた命もあったことも事実。
何より、2度もあの上条当麻を救出し、なおかつ、木原唯一にある
程度対抗しえる力を
手にした。それは事実なのだから。

だから・・副作用はあっても私はAAAを使い続ける。上条当麻を
追いかけるために

・・・・・・・・・

授業は午前で終わり、久々に上条当麻の学校へ行く。

ここしばらく常盤台再建に全精力を傾けたせいもあり、もう10日も
会っていない。
前の携帯番号へ電話したが、一度もつながらない。

私は、事前に、崩壊したとある高校の生徒たちの避難先を確認し、初春
さんに調べてもらった、当麻の避難先の総合学校へ向かう。

私は、微笑みを浮かべながら、脳裏にアイツの姿を思い浮かべる。

「はあ、何を言えばいいかな」
(そんなことはもうわかりきっている)

「当麻の前で冷静でいられるかな」
(なにをかまととぶっている)

「ツンツンしないなんてできるかな」
(もうそんな無駄なことは言わない)

以前は聞こえなかった、冷静なもう一人の自分が、さっさと行動しろという。

自分の限界を知り、学園都市の異常さ知り、生死をさまよった
自分が、今一つ素直になれない自分に突っ込みをやめない。

単純な話、上条当麻を慕う人間は数えきれない。その一人が告白を
成功させれば、もう
自分には上条当麻を愛することはできない。

「ALL IS FAIR IN LOVE AND WARよね」
「恋愛は勝者は一人、あとはすべて敗者」
「もういつ死ぬかさえ、定かではない身、もう先延ばしはしない」
「それが、彼の慕うすべての女の子を不幸にしようとも、私は先へ進む」

私は、決意を固め上条当麻の元へ向かう。
(それが、どんな結果になろうとも、私は後悔しない)

838■■■■:2016/12/23(金) 14:40:28 ID:UuRSg4Pw
・・・・・・・・・

「ここかあ・・随分大規模校ね・・」

私は、あらかじめ、ネットで申請した、来訪届を携帯情報端末の
画面で見せ、面会室で
待機する。

いまひとつ素直にならない自分は、あのバカと言いかける。
(まったくすぐにため口とツンがでる)
「なんなのよ・・この性格は」
私は溜息をつき、自分のツンな性格を呪う。
( あれだけ昨晩、予行練習したのに・・)

運命の人だと思っても、経験が邪魔して素直になれないなんて・・なんか
の歌詞か。

(ああ・・)
私は、何度も繰り返した、自分の性格分析を再試行する。

(結局・・臆病なだけよね、多分)

私と、アイツ・・上条当麻との関係は喧嘩友達から始まった。
気兼ねなく全力が出せるアイツに私は依存し、絶対能力者進化計画の
悪夢から右手一本で救われたあの日から、・・
はっきり意識はしないけど、愛していたんだ。

それをはっきり意識したのは10月以降だけど、・・・でも8月21日
のあの日から
私ははっきりアイツを運命の人だと意識し始めた。

それを、恋と認識できない幼い私は、偽デートとか、罰ゲームと称して
ラブコメのような三文芝居を、だらだらと続けていた。

私は、甘えていたかもしれない。この三文芝居をきっとアイツが
理解してくれる日がくる。

だけど・・、目の前の・・困っているだれかを助けることを
生きがいとするアイツに
とって私は、助けた一人にすぎない。その現実を私は受け入れることが
できていなかった。

最後に分かれた、あの日だって、アイツを救い、救われたあの日
だって、アイツは結局謎の女を同時に助けていた。
それも・・あの熱波を作り出した・・上里の取り巻きの一人
を。だから・・この膠着状態を打破するには私が一歩動くしかないのだ。

それにしても・・なぜかわからない、口で伝えれば、わずか2文字が伝えられない。
臆病な、見栄っ張りな、不器用な私は、自分のパーソナルリアリティを変容させる
ほどの溢れ出す、莫大な感情を伝えることができなかった。
(でもそんな臆病な自分も今日で卒業)
「だから、今日こそは、・・思いを伝える」

///////////////////////
(それにしても遅いわね)

待合室で待たされること、20分アイツはこない。

(それにしても変ね・・面会自体は今朝事務局へ通しているはず)
(やっぱり変だわ・・絶対変・・)

私は、事務室へ電話をかける。
「すいません、今朝面会を予約した常盤台中学の御坂美琴ですが、とある高校
1年7組の上条当麻さんが面会にこないのですが」

私の、必死さが通じたのか事務局の女性が気を回してくれる

本人の携帯で確認してくれるそうだ

「は。そうですか、では、上条の携帯に電話してみますので
少々お待ちください」

回線ごしに、発信音が聞こえる、どうやらアイツはでないようだ。
私は、アイツがまた何かに巻き込まれたことを悟る。

「すいません、上条は出ないですね・・」
「そうですか、」
「担任の先生には伝えておきますので、少々お待ちください」
「ありがとうございます」

839■■■■:2016/12/23(金) 14:42:01 ID:UuRSg4Pw
(しょうがない、監視カメラのサーバーをハッキングするか)
私が待合室の監視カメラからサーバーへのハッキングを考え出
したころ、私の携帯へ別の電話がかかってくる。恐らくは、アイツの
担任だろう。私は当たりをつける

「常盤台の超電磁砲の御坂美琴さんですか?上条の担任の月詠です」
「はい御坂美琴ですが」
「実は上条ちゃんが行方不明になりました」
「え?」
(やはりそうか)

「驚かないでください、昼休みに忽然と消えました」
「そうですか・・ご連絡ありがとうございます」
「アンチスキルには通報しましたので、すぐに居場所は判明します」
(絶対にすぐにはみつからないわ)

「本当にありがとうございます」

私は電話を切り、頭を搔き揚げる。
(もう、悲しみに打ちひしがれる無力な少女は卒業よ)

「何があっても、どんな手段を使っても、たとえアイツが拒否しても
私がアイツを地獄の底から引っ張り出す」

・・・・・・・・・・・
私は、心を完全武装状態に切り替え、食蜂へ電話を入れる。

食蜂操折が、私と同様にアイツになみなみならない関心を持っていることは
知っていた。

だから、アイツのために食蜂にも動いてもらう・・
(恋愛と戦争は手段を選ばないのだからさ)

「食蜂、上条当麻がXX総合高校から拉致された」
「え?」
「時間がない、今は手を組みましょう」
「え?御坂さん、今なんて?」
「無駄口は後、手分けして、上条当麻を探しましょう」

「随分切羽つまっているのね?」
私は、すっと息を吐く
「なんとなく・・嫌な予感がする」
(まちがいないわ)
「御坂さんらしくないわね、そんな根拠のない話をするなんて」
(アンタもわかっているでしょ、変だってさ)

食蜂が電話ごしに苦笑いを伝える。
「まあいいわ、御坂さんの直観力を信じるわ」

「で、発見したら連絡すればいい?」
「ええ、それでいいわ」

私は、食蜂との通話を切り、意識を脳で感知した無線LANへ切り替える。
(さあ作戦開始よ)

(ちょっと前なら、見境なく、監視カメラを確認したんだろうな )
(でもそんなことは・・もうしない)

思った通り、市販品に毛の生えた程度のセキュリティで、洗いざらい調べることが
できた。この学校のサーバをハッキングして監視カメラのデータを、丸ごと入手して、
前にアクセス経路を確保したアンチスキルのサーバーの顔認証システムで上条当麻の
顔を検索する。

(まあ、発想の転換よね、どうせデジタルデータ、全部一遍に調べたほうがいい)
(あ・・こいつらね・・当麻が拘束したのは)
(あとは、解析ソフトにかけて、人工衛星のデータと照合すれば1時間くらいでわかる
でしょう)

「さあ御坂美琴行動開始よ、アイツを助けるわよ」

続く

840■■■■:2016/12/23(金) 14:44:31 ID:UuRSg4Pw
以上 クリスマスの奇跡1話の投稿を終わります。

841■■■■:2016/12/28(水) 15:17:16 ID:mMszZMFw
クリスマスの奇跡 2話

12月19日 14時

当面できうるすべての準備を終え、少し時間の空いた私は、上条当麻の学寮へ急ぐ
常盤台のハンガーから土木工事管理用に制作した、飛行用の駆動鎧を遠隔操作で到着
させ、それを見に纏い、一気に到着する。

前に自分用に作成したAAAをさらに、着脱を容易になおかつ、遠隔操作が可能に
なる改良を加え、パーツごとに軽量化を図り、女性である自分が操作しやすいように
最適化を図る。飛行装置も容易に携帯可能なサイズへ圧縮している。

その飛行装置を駆り、1分ほどでアイツの学寮へ到達する。
背中の飛行装置を畳み
アイツの部屋に到着する。

(ここにはインチキシスターがいたはず)

本来なら、恐らくアイツが庇護し、なおかつアイツを慕う爆食シスターは、私
にとって告白をするうえで一番邪魔な存在だ。
(だけど、・・アイツはあのシスターの庇護をやめることはないだろう)

結局もしも本気で告白を成功させようとするなら、あの妖怪爆食シスターごと、上条
当麻を愛するほかに道がない。

心の中の臆病な自分が、ささやく
(このまま、曖昧な関係を続けて、自己満足を充足させるほうがいいんじゃないの?)
(どうせアイツは、鈍感で誰も選びはしない。私が戦力(主に胸)を充足させるまで
明確にしないほうがいいんじゃない?)

だけど、障害を乗り越えなければ、気が済まない、私のもう一つの声が、声を荒げる。
(時間がアンタの味方なんて、そんな幻想にあなたはすがるの?時は万人に平等なの
よ・・あのインチキシスターだって、戦力が整う日が来るわよ)
(それに・・私は一度死にかけた)

私は腹をくくる。この事件が終わった暁には、アイツの心の本音を聴く。
あのインチキシスターとこの場で決着をつける。

ドアは・・
(鍵かかっていないわね・・)
(嫌な予感がする、まさか・・)
外の世界の三文サスペンスドラマでは死体が転がっている場面だ。

私は最悪の結果も、想定しながら恐る恐るドアを開ける。
「お邪魔します」
(やっぱりね・・いないか)

ひととおり部屋を見渡すが、猫一匹いない。
(ちぇ。空振りか・・)荒らされた形跡もなく、どうやら杞憂だったかもしれない。
(まあ・・あのシスターに捜査情報は期待していなかったけど)

分が悪いな・・。誰もいないアイツの部屋を眺めながら私はつぶやく。

食い散らかされた鍋、机の上に乱雑に重ねられた食器、菓子の袋、そして、乳児のような甘い香りのいかにもあのシスターが寝ているようなベット
ここには、幼い子供が日常起居している佇まいに満ち溢れている。

あの銀ギラシスターは、私の知らないアイツを毎日眺め、まるで小鳥が親鳥から餌をもらう
ように自然に啄み、一緒に寝る。明らかに私は2歩も3歩も親密度の点で周回遅れである
事を自覚する以外にない。

幸い・・アイツが無自覚なのが救いだが、いつの日かあのシスターを女として意識する日が来るだろう。

(そうなれば終わりだわ)
私は、乳臭い幼女の匂いを感じながら、自分の立場の薄さを改めて自覚する。
(もう一刻も猶予はないわね)

私が、決意を新たにしたころ、携帯の着信を感じる。
微弱な電圧の変化を感知できる私は、着信音なしに携帯の着信と誰からの発信かを能力で
検知できる。
(食蜂か・・)

842■■■■:2016/12/28(水) 15:18:52 ID:mMszZMFw
「食蜂?何か分かった?監視カメラの検証はもう少し時間頂戴・・で?なんか
分かった?」
「今回の事件を引き起こした奴がわかったわ」
私は、食蜂の情報収集網に舌を巻く。8月に絶対能力者進化実験で、素早い対処で私の
サイバーテロを阻止し、私を自殺同然の特攻へ追い込んだ男。それを手駒に持つ食蜂の
情報収集力は、一学生の枠を遥かに超える。

だが、食蜂を素直に賞賛する気のない私は、蓋然性のあるカマ掛けで対抗する。
「食蜂早いわね、で木原一族の誰?」
「あらあ、だいたい予期していたの? ポルタガイスト事件て覚えているわよね」
私は、8月に超電磁砲でぶっ飛ばしたある女を脳裏に浮かべる。
私は、苦笑いを浮かべる。結局殺すべき時に殺さないとだめなのか?

「あの時、殺すべきだったわね。木原 ライフライン テレスティーナ」
食蜂がクスクス笑う、表の世界の顔の御坂美琴に殺しなどできないと告げるように。
「御坂さんに殺しは無理でしょ、で因縁の女をどうするつもり?」

「ねえ食蜂、アンチスキルに情報提供して解決できると思う?」
「御坂さんもう答えは分かっているじゃない?多くの事件を結局解決した
御坂さんならね・・、
どうせアンチスキルなんて役に立たないとね」

「そこまで馬鹿にはしていないわよ。相手が悪いだけよ。木原一族は一筋縄には行かない」
「で御坂さんに勝算はあるの?」

「愚問ね。この日の為に土木駆動鎧に偽装して戦力を蓄えてきたのよ」
「私の劣化コピーごときに負けないわ」
毒気を抜かれたように食蜂が私の顔を見つめる。
「御坂さんて結構したたかなのね」
「食蜂ほどじゃないわ」

食蜂が、電話の前で笑い始める。
「そろそろ居場所なんてわかったんじゃないの?」
(こいつさすがに勘はいいわね・・それとも合理的な推論?)

「ええ、今データを送るわ。それと・・これは私の喧嘩、助太刀無用、アンタの
とこの子も含めてね、手だしはいらないわ」
食蜂が乾いた笑いで私に言葉を返す。
「私達食蜂派閥が戦闘できないなんて幻想はぶっ壊すわ」

「アイツの真似・・似てないわね・・」
「でも、頑張りましょう、アイツの為に」
/
/////////////////

15時:とある研究施設

(もしも小賢い人ならこんなリスクは負わないだろうな・・)

私は、自分で突き止めた、アイツの監禁場所を見渡せる超高層ビルの屋上で
センサーを操作しながら、独り言を言う。

自分が普通の女性なら、アイツが行方不明になってことをアンチスキルへ伝えて
終わり、そこで一般人としての義務は終わりだろう?

でも・・人任せにした結果が、アイツの死亡・・という結果に終わるなら
私は生きていけるだろうか?

事件は解決しました。でもアイツは死にました、では私は悔やんでも悔やみきれない。

すでに自分だけの現実を覆いつくすほどアイツへの思いが、浸食している現実。
人任せにはできない。
(そのために、力を蓄えてきたんだから)

美琴から見て科学者という人種は、あのバカ・・もとい上条当麻に比べて、種が
自分の知識で対応できるだけ、対処しやすい相手だ。

その打つ手が、電子とか、既存の工学系なら、自分の生の能力で基本どうでもなる。
木原唯一は、美琴が10日前まで種がわからない、謎の力を駆使していたので敗北
を喫したが、
(わかってしまえば・・どうってこともないのよね)

木原唯一の悪行を調べ上げた時に、奴の手口や研究成果を徹底的調査させてもらった。

843■■■■:2016/12/28(水) 15:20:55 ID:mMszZMFw
駆動鎧、AAA、そんなのならどうでもなる。
だけど、
(一番の問題はアイツが人質に取られていること・・よね)
だから・・建設工事用AAAを活用する。

「さあ始めるわよ」

「手始めにまずは目つぶし」

建設工事用に、開発したリモートセンシング装置で走査した、施設のMAP情報をもとに
あらゆる電子制御機器の制御を奪い、稼働を無理やり停止させる。
駆動鎧、ファイバーオーバー、あらゆる精密機器が火を噴き、回線から火花が飛び散る
相手が、兵器の類で武装する限りは私の脅威になりはしない。

発電能力をベースに、マイクロ波・磁場をベースとしたEMP電磁バルス)で機器
を破壊しつくす。さらに、送電線を砂鉄の嵐で断線し、外部電源を奪い、同時に
無停電装置や自家発電装置、
分電盤の制御をネット経由で奪い、施設を無力化させる。
軍隊なら、猟犬部隊なら準備だけに半日かかる作業を完了まで秒単位で終える。

装置に据え付けの警備装置や、AIMジャマ―、キャパシティーダウン木原が小細工に
使いそうな道具の数々、そんなものは種さえ割れれば・・大したことはない。
( それが有ることを前提に叩きつぶす )

ひととおりセンサーで小細工に用いる機材の破壊を確認し、躯体の解体に焦点を移す。
爆破物で自爆テロをされないようにするためだ。

「さあ時間もないし、一気に行くわよ」
( 原子崩しだっけ?)
恐らくは、第4位の能力をベースとしたと思われる、電子が波動と粒子の性格
を持つことを活用した兵器を壁の解体撤去用にアレンジした遠隔操作の装置
で、監禁された部屋の周囲をはぎとり丸裸にする。

メカと一体化した能力をベースとした電子制御は効率的に同時多数の駆動鎧
の遠隔操作を可能とし、瞬間的な躯体解体工事を能率的に実施する。
能力だけでもない、メカだけでもない、AAAの解析で上積みされた力が
ただの破壊ではない作戦を遂行する。

学び舎の園の多くの建築物を解体撤去した、遠隔操作の駆動鎧がテレスティーナの
立てこもるビル効率的に破壊する。廃材を、磁力で周囲に整頓し、研究所は丸裸
になる。

(もともと全部能力でできたことだけど、組み合わせが大事よね)
多くの駆動鎧を能力で遠隔操作し、効率的に同時作動させることで、1国の軍事力に匹敵
するというレベル5本来の力が具現化する。

10秒ほどで、広大な施設は、上半分が消え、見通しがよくなる。

その圧倒的な力で8月に小技で、追い詰められた女を、追い詰める。
キャパシティーダウンや耐電磁装甲を持つ駆動鎧に私は追い詰められた。
私は心の中で、つぶやく
(考えてみれば、そのおかげで、EMP攻撃や砂鉄の嵐を覚えたのよね・・超電磁砲
を砂鉄コーティングして射程を伸ばすとか工夫したのも・・そのおかげかもね)

(さて・・この糞女を殺せればどれだけ楽か・・砂鉄の剣で頭をミンチにしたいくらいよ)
(だけど それをすれば木原唯一の二の舞になる)

私は、当麻の傍で、動きを停止させられた、犯人と対峙する。
「さっさと上条当麻を解放しなさい。もうアンタの手品はネタバレなのよ」
「おとなしく刑務所で刑期を過ごしていればいいものを無駄な努力ね」

電磁パルスとマイクロ波の照射で、動きを止められた駆動鎧を身に着けた、
テレスティーナが、当麻を腕で抱きながら薄ら笑いを浮かべて悪態をつく。

「テメエは、木原唯一に嵌められて、常盤台をぶっ壊されたそうじゃねえか・・」
「いい気味だな・え?」
(馬鹿・・アンタの奥の手なんて全部分かっているのよ)
「私が、いつまでも木原の手の平の存在なんて幻想はぶち壊すわ・・」
「はあ?」

「マグネティク・デブリ・キャノンだっけ・?アンタ自殺はいいけど、他人を巻き込みの
はよくないわよ」
余裕をかましていた、テレスティーナの顔色が変わる。

844■■■■:2016/12/28(水) 15:26:23 ID:mMszZMFw
「え・・テメエ・・なんでそれを・・」
「アンタのやりそうなことはお見通しなのよ」
「アンタの脳波認証をハッキングで無効にしているわ・・」
テレスティーナは最後の切り札を無効にされ悪態をつく
「糞・・テメエ・・実験動物の分際で邪魔しやがって・・」
「その実験動物に2回も完封されたのは誰かしら?」
「後ろ盾がいない今・・アンタにお似合いは電気椅子よ」

テレスティーナが、精神のバランスを崩したような馬鹿笑いを始める。
「悪党をさっさと殺さねえテメエなんぞ怖くねえんだよ」
テレスティーナは突然、抱きしめていた当麻へ顔を寄せる。
「テメエの大事な物を全部奪ってやる・・」
「さらば・・かみ

だが、テレスティーナがその一言を言う時間を与えられることもなく、
蒼天から巨大な電流の奔走が貫く。駆動鎧から顔を出していた彼女にはそれを
防ぐすべもなく、もろくも崩れ去る。

2週間前同じ状況で私は、木原唯一の魔神偽装に取り乱し、AAAに染まることになったが、
その経験が余裕を持った対処を可能にした。
(馬鹿なやつ、駆動鎧を耐電磁装備にして顔を露出させるなんてさ、電流が全部・・自分の
体表を通過するのにさ・・)

「死なない程度には加減しているわ、しばらく寝なさい」
救急車とアンチスキルを手配し、食蜂に電話を入れる。

食蜂はすでに熱波襲来時にテレスティーナの脱獄を手配した、腐ったアンチスキルとその
後ろ盾を摘発していた。学園都市に幅広い人脈を有する食蜂は、容赦なく犯罪を
暴く。その力量に再度私は衝撃を受ける。
(まあ適材適所よね・・敵に回したら恐ろしいわ)

(とりあえず、これで終わりね・・)
後はアイツさえ回復したら、すべて終わる。

私は背伸びをしてその場を立ち去った。

・・・・・・・・・・・・・
19時 病室

アイツはこの前の木原唯一の常盤台襲撃のさいに、私を除くすべての常盤台生がお世話にになった
あの病院に収容された。
本来なら完全下校時間を過ぎ、帰宅しなければならない時間だが、風紀委員経由で外泊届を
申請し、事なきを得る。

医師の話では睡眠薬の効果が19時くらいで切れるという事なので、リンゴの皮を
むきながら待つ。
決死の覚悟で告白をしようとしたのにぶち壊しにされイライラする。
しばらくして意識を取り戻したのか当麻がもぞもぞしだす。

私は、リンゴの皮むきをやめ、当麻の手を握る。
しばらく当麻は蕭然としていたが、やがて意識が回復したのか
しゃべり始める。

「起きた・・?」
「ああ、美琴か・・助けてくれたのか?」
「ええ」
「心配かけてすまないな」
「いや・・でも本当なんともなくてよかった」
「アイツは、テレスティーナは何者なんだ?」

「私に危険な実験を妨害され、収監された学者よ。刑務所を脱走して私と
学園都市へ復讐するためにアンタを監禁した」
「そうか・・でも・・あの熱波の時も、AAAの起動の時も、そして今日も美琴には助けて
もらっている。ありがとな」

顔色を見る限り、恋愛感情とか、関心のある女の子を見る感情ではないだろう。
結局は、喧嘩友達から始まった、信頼できる友人の一人・・それくらいの
感情だろう。このまま話を続けても結局はいつも繰り返し、何も変わりはしない。

(私にはわかる。 これでは何も変わらない)

上条当麻の平常運転は変わらない。
目の前の乙女の身を焦がす熱い思いなど感じとることなどないだろう。

誰が、恩だけで死線をさまようのだ・・

845■■■■:2016/12/28(水) 15:28:56 ID:mMszZMFw
誰が、友情だけで、命を投げ出すのだ・・

(乙女は愛があるから何があっても身を投げ出すのだ)
だから・・私は行動を変える。
(コイツの感情にもう振り回されない。自分がしたいようにする。)
(今しかないわね・・何かが起こる前に)

私は、自分の思い伝えるべく意識を変える。
「私は、アンタに伝えないといけないことがある」
「これは、素直になれない一人の少女の話よ」

私のただならぬ雰囲気に、上条当麻はうつむきながら目をつぶり
話を聞き始める。

「8月21日にアンタに私と1万人の妹達は救われた・・私はアンタ
・・いや上条さんにかえしきれない恩がある」

私が呼び方を変えたことに気が付いたのか当麻が顔色を変える。
いつもなら、何かとちゃちを入れるのだが雰囲気を察したのか何もいわない。

私は、話を続ける。
「上条さんは目の前の不幸な女の子の一人を助けただけと言うでしょう?」
「でも、・・」

私はあふれ出す莫大な思いに胸を焦がし始める。臆病な自分はその思いを上条
さんへ伝えることができなかった。

「最初は、助けられた恩を返すとか、とても自分では太刀打ちできない
一方通行を叩きのめした上条さんへのあこがれだったかもしれない」

「私は、その感情を理解できなかった。私は理解できないまま、上条さん
へ罰ゲームと称して、デートを強制した。ペア携帯電話を契約させた。」
溢れる思いが、涙腺を満たし、目から涙が滴り落ちる。

「これほど、上条さんを思っているのに、素直になれない自分は
・・一言が言えなかった」
「だから・・もう私は自分を偽らない」
「どんな結果になろうとも自分の気持ちに素直になる」
決然と拳を握り臆病な自分と決別し最後の一言を腹の底からいう。

「わた・・私、御坂美琴は・・8月21日にあなたに助けられたその日から
上条当麻を愛しています」

正直怖かった。告白することで、今の儘のあいまいな関係が、
心地の良い、友人以上恋人の居心地の良い空間が壊れることを恐れていた。
(だけど、・・仮に告白したことで壊れるくらいならそんな関係なんかあきらめたほう
がいい)

上条はうつむいたまま言葉を返さない。

いつものお茶らけた雰囲気は一切見せず、沈思黙考を続ける。
客観的な時間なら10秒くらいだろう。だが、その10秒がとてつもなく長く感じる。
緊張が辺りを包み、ピリピリした感覚が全身を覆う。

やがて・・上条はおもむろに口を開く。
「俺は、御坂程、語彙もないし、うまく伝えることはできないと思う。
だけど、今から言うことは・・俺の気持ちだから聞いてほしい」

「正直・・俺は、御坂は凄いいい奴だと思っているし、頼りになる存在だと思っている」
「それだけでなく、何度も助けてもらった、命の恩人でもある」
「だから・・だからこそ簡単に告白を受けてハイと言えない」
当麻が、感情をうまく伝えられないのか、言い淀む。

「それって、・・どうゆうこと?」
「いや・・どうもうまく言えない。御坂という存在は俺にとってそんなに軽い
存在じゃねえ」

「だから・・、悪い・・御坂少し俺の気持ちを整理させてくれないか?」
否定はされてはいないが、今の返答ですぐには納得できるほど人間はできては
いない。だけど・・まあいい・・気持ちは伝えた。

私は若干顔ひきつらせつつ笑顔で答えを返す。

「ハハハ・・アンタらしいわ・・わかったわ、じゃ・・あとで・・・・」

846■■■■:2016/12/28(水) 15:29:55 ID:mMszZMFw
「後、リンゴ切ったから食べてね」
私は自己嫌悪に陥る。確かにいきなり告白したのは軽率だったかもしれない。
(だけど・・まあいい)
少し様子を見よう。私は気持ちを切り替える。

だが、異変はすでに始まっていた。
(ツ・・鼻血・・・)
「御坂・・鼻血がでているぞ・・ま・・まさか又AAAを使ったのか・・?」
別に逃げる必要もなかったかもしれない、だけど、なぜか見られたくなく気持ち
が私を襲う。

「ごめん・・今は一人にさせて・・・」
自分でもわかっている。AAAの副作用を
でも・・力のない私がアイツに寄り添うには、これを否定されたら
アイツの傍にいられない。
私は、いいようもない負の感情に包まれて逃げ去るように走り出す。

続く

847■■■■:2016/12/28(水) 15:31:02 ID:mMszZMFw
以上 クリスマスの奇跡 2話 の投稿を終わります。

848■■■■:2017/01/02(月) 07:59:48 ID:0B0mGKPg
第3話
楽しみに待ってます

849■■■■:2017/01/05(木) 14:12:39 ID:JCK3Pxh2
感想ありがとうございます。
では投稿します。

850■■■■:2017/01/05(木) 14:16:38 ID:JCK3Pxh2
クリスマスの奇跡 第3話

12月19日 午後9時 8月21日のあの橋の上

なんでここに来たんだろうな・・?
街をさまよいなぜか来てしまったここ。

なぜ逃げ出したんだろう?
(そうね、多分アイツにAAAを使っていることをやましいとおもっているからかな)

妙に鋭いアイツは、あの鼻血がAAAの、アイツが「魔術」という異形のテクノロジー
の副作用を感知している。それは間違いない。

多分アイツの言うとおりなのだ。学園都市でも殊に電子制御系でトップの自分、御坂
美琴はこんなものに頼らなくも十分すぎる戦力を持っていると・・

10日前の私の状況とは違う。木原唯一を訴追する過程で膨大な情報を入手した私は
迷えるか弱い乙女は卒業した。食蜂に教わり、食蜂と手を携え、木原唯一とその後ろ盾に
完全な報復を果たした。

学校は再建され、その事業の中で私と常盤台生は格段に強くなった。
だけど、そんなものではアイツに全然足りない。
魔神を知った私は、魔神が別世界に隔離されたことを知っても安心できない。

だから・・アイツになんと言われようとAAAを手放すつもりなどない。
だが・・アイツの正論に私は立ち向かえるだろうか?
私はその件については今一つ自分を信用できない。
だから・・弱い自分は、アイツに立ち向かうことができない私は逃げてしまった・・

・・・・・・・・
どこをどう走ったかわからない。気がつけばここへきてしまった。
私の心の闇の中を示すかのように多摩川の川面から欄干を北風が吹き抜ける。
あの晩夏の夜、私は一方通行と言う怪物へ、ささやかな・・でも自分にとっては
最後の特攻をしようとしていた。

今となっては、あの時の心境はどこか悪夢のように漠然としつつあるものの
雷としかいいのようのない飾り物ではない、本気のそれをぶつけた事実だけが
この腕に感覚として残っている。

あの時に膝上の死にかけたでもとても暖かい上条当麻の、一旦止まった鼓動が、滴り落ちる
涙とともに、復活し、命を懸けて化け物へ立ち向かった、魂のやり取りが、心の中でよみがえる。私のクローン 9969人と、そして私を悪意に満ち溢れた学園都市から救いあげた。その大恩に比べたら、何をしても小さく感じてしまうのだ。

私は、いつも彼の為に何かをしようと焦っていた。受けた大恩を1日でも早く返そう
と気がせいていた。だけど、世界の最深部で、そして世界の頂点で戦う彼の姿はいつも
遠く、追いかけては置き去りにされた。

やっとデンマークの雪原でファイブオーバーの大群から彼を守ることで追いつけたと思ったのもつかの間、あの僧正に、そして彼の右手に私の自分だけの現実は木っ端みじんに打ち砕かれた。

あの晩、私はベッドへふさぎ込んだ。
アイツが遠く感じた。所詮自分は、安定戦力の自分は尖った個性がないゆえに彼の力になりえない、周回遅れの存在。もう私は、上条当麻の傍で戦うこともできないのか?
大恩を返すこともできないのか?

本来なら、好きな男に打ち勝ちたいとか、一緒に戦いたいとか、そんなことは
普通の女の子は考えないだろうな・・

(まあ、守られる女なんて、私には似合わないわね)

小学校のころから、男にだけは負けたくなかった負けず嫌いの自分
その負けん気が、私のパーソナルリアリティの根本を形成する。

今もそれは基本変わらない。上条当麻に守られるだけの女になんかなりたくもない。
彼と共に、支え合う関係になりたい。
だから泣いた、あまりに遠いアイツの距離に打ちひしがれた。

だから・・AAAを知り、閉塞が打ち破られた時は本当に嬉しかった。
ためらいはあった。だけど私は一歩を踏み出した。
(そうだから、これを掴んだことは後悔はしない。)

851■■■■:2017/01/05(木) 14:19:30 ID:JCK3Pxh2
全部は守れなかったかもしれない。失敗もあった、だけど私は一番大事なものを守ることはできた。

(私には全部を守る力はない、だから自分の一番大事なものだけを必死に守る)

私は拳を握り、欄干を軽くたたく。気合を入れなおす。

(そうね、アイツはまだ私を振っていない、だから自分の気持ちだけは確定させない)

諦めない気持ちが今の私を作ってきたのだから。
私はすべてをアイツにぶつける。今度こそ逃げないと・・

気持ちが固まり、ホテルへ向かおうとする。
(今日はもう遅いし・・寮はやめましょう、もともと外泊予定だし)

だが、私が困ったときにいつも駆け付けるアイツは、・・
こんな時も私にとっても都合のいいヒーローをやめなかった。

私が踵を返したその時、息を切らしたアイツが病院を脱走してアイツが
私の視界へ現れる。

そして、・・・アイツは、上条当麻は言い放つ、私の一番聞きたかった言葉を

「御坂美琴・・俺は魂をぶつけに来た、だから逃げるな」
「ええ上条当麻、私も全力をぶつける、アンタをこの場で叩きのめす」

すべてが似通った、本質的にヒーロー体質の2人があの日のように、ぶつかり合う。

・・・・・・・・・・・
その1時間前、病室

御坂美琴が病室を去った後、俺は呆然としてすぐに後を追うことができなかった。
美琴に告白されたという事実が、俺にはすぐに自分のものとして理解できなかった。

ましてやAAAの副作用をちょっと言っただけで美琴が逃げ去るように退出
した事はなおさら理解できない。

(それにしても、告白か・・)

俺が御坂美琴をどう考えているか?
恋愛というものを、不幸という幻想に包まれていた俺には、自分のモノとしてどうに
も実感を持って理解できない。

美琴は、普段は、俺の前では、不器用な情緒も不安定な年相応の女の子だ。
だが、訳もわからず、ただ目の前の女の子を助けた、最初はそんないつもの
俺の日常の一コマにすぎなかった。

だが、・・8月31日にアステカの魔術師に「御坂美琴とその周りの世界を守る」
と約束したその瞬間から運命の糸に導かれるように何かが変わり始めた。

そして・・あの僧正襲来の中、フィアンマという俺が知る限り最強の男が
まったく歯が立たない、危機的な状況で、自分の能力が全く役に立たない状況
で、臆することなく、最善手を模索し続けていた美琴。

美琴は、自分の役割が不満でしょうがないようだが、客観的に見て、あの僧正を
いらいらさせるほど、美琴の頭脳は冴えていた。

何より、あの絶望的な状況で、美琴がいるだけでどれだけ心が落ち着いたか。
魔術の事なら、確かにインデックスやオティヌスはいる。だけど・・あの
状態で、美琴なしにどれだけ落ち着いたか俺にはわからない。

何より、美琴は命を懸け、俺の為にAAAを起動させ、死にかけても、俺の
手を振り払った。
守っているつもりだった。だけど、俺はそれが俺の思い上がりであることを
いやでも認識せざろう得ない。

客観的に、俺は御坂美琴がいなければ、ここにいない。
「何が都合のいいヒーローだ」
俺は手を握りしめる。
「はっきり言って、俺は美琴にとって本当にヒーローなのか?」

俺は、「御坂美琴」という存在に何を感じているのか?
いろいろ考えるが、はっきり思考がまとまらない。
はっきりしているのは、アイツは凄いいい奴だ。どんな状況でも折れず、自分を

852■■■■:2017/01/05(木) 14:22:09 ID:JCK3Pxh2
投げ出して周りを守ろうとする。善性の塊、いるだけで、心地の良さと安心感と
爽快感を周りにもたらす。

そして俺にとって御坂美琴の存在がとてつもなく、大きな存在であること。
その事実は、はっきりわかる。

だけど、・・それが恋愛対象かどうか・・

美琴を大事な存在に思うがゆえ、俺は簡単に告白を受けいることができない。

とても、身近で頼りになる存在だから、それだからこそ、俺は考え込む。

この学園都市、いや日本という、さらに言うなら世界的に見ても
屈指のお嬢様学校、その頂点に君臨する御坂美琴。

その本物のお嬢様の御坂美琴は、何に恋しているのか?

俺にも、答えは分かっている。要するに、この右手が一方通行を叩きのめしたからだろう。
美琴の目には、俺は地獄の底から引き揚げた、とてつもない能力者・・そう映っているだろう。
だが、美琴の目には、俺の学校の悲惨な日常は見えているだろうか?

御坂美琴の目には、竜王の首を持つ、とんでも能力しか見えてないかもしれない。
それが、俺自身にも制御不能で、簡単には使いこなせない、能力である事さえ、多分
知らない。

だけど・・俺は頬を叩く

結局は御坂美琴に本気の告白にどう考えるかそれだけじゃねえか・

御坂美琴という本気の告白が俺の鈍感な心を揺り動かす。

そして、彼女と積み上げた激動の特に12月以降の日々が脳裏を駆け巡る

そうだな、
俺は気が付いてはいなかった、でも俺も心のどこかで、美琴を求め続けて
いたのかもしれない。
それがどうゆう感情か、俺は知らないだけだったのかもしれない。

だが、今なら言える、俺にとって御坂美琴はかけがえのないそして
俺が命をかけるべき唯一の存在であることを、
だから、・・俺はそれを告げる。

・・・・・・・・・・・・・・・

再び橋の上

私は、上条当麻とあの因縁の橋の上で対峙している。
ある意味くだらない素直になれない男女の意地と意地のぶつかり合い。
だが、その関係も終わりが近づいている。2人ははっきりと、似た者同士
の性根にひかれあい、その惹かれ合う心に気が付こうとしている。

「なあ美琴」
「何?」
私は、当麻が初めて、私を美琴と呼んだことに心音が高くなる。

「俺は、この前までお前のことを異性と思っていなかった」
「ふ・・アンタらしいわね、どうせ喧嘩友達くらいにしか思っていないでしょ」

「はは、確かに、な・・」
「だけど、お前は、いつも俺を体を張って助けてくれた。ロシアでもハワイでも
東京でも、そしてデンマーク、でも」
「何より、熱波でもな・・俺とその仲間をエレメントから救ってくれた」
「本当にありがとうな」

私は胸が熱くなる、手段はともあれ、上条当麻にはっきりと頼っていると
言われた。まだまだその背中は遠く、簡単には届きそうもない。
、だけどしっかりと、一歩づつ、彼の力になれている。
顔を綻ばせ、しっかりと彼に答える。
「ありがとう、少しは頼ってもらえるようになったかな」
「正直、12月以降は美琴がいなければ俺は詰んでいた、それが事実だよ」

私は、当麻のいつもの鈍感さに警戒心をいただきつつ、答えを期待してしまう。
それに、もう曖昧にしたくない。

だが、現実は甘くなく、当麻は私の触れられたくない不都合な真実に触れてくる。

「俺は、美琴を信頼できる友人だと思っているし、とても頼りになる存在と思っている」

「だから、お前にとって不都合な事実でも言わなくていけないと思っている」

私は大凡当麻が言いたいことは理解し、身構える。どちらにせよ、この問題は

853■■■■:2017/01/05(木) 14:25:17 ID:JCK3Pxh2
避けては通れない。だから私はこの目の前の男を論破しなければならない。
場合によっては殴り飛ばしても

「はっきり言う。もうAAAは捨てろ」
「電子制御系で圧倒的な能力者、あらゆる駆動鎧を制作・運用できる御坂美琴には
無用なはずだ」

私はおかしくなる。そう・・レベル5で済む事態ならAAAなんていらない。
木原唯一の研究成果を調べ上げ、あらゆる小細工の仕組みと制御方法を脳
コピーした今では、大概の敵はどうにでもなる。
だけど・・そんなものは上条当麻の八竜には遠く及ばない。

「心配してくれてありがとう。だけど、まだAAAを手放すわけにはいかないわ」
「確かに副作用はある、死にかけたこともある。だけど、私はこの奥底にある
アレイスタークロウリーも、魔術も全然理解できていないわ」
「そんなんじゃ、魔神達には全然足りない」

・・・・・・・・・

俺は、美琴の心に僧正が残した傷跡の深さに愕然とする。表面上に毅然と、常盤台
中学のエースを貫いている美琴が心の奥底で、魔神に踏みにじられた、自分だけの
現実の喪失感にさいなまされている現実に、身を焦がされる。

「美琴はまだ僧正の事を気にしているのか?」
「気にしていないと言えば嘘になる」
「正直、こんなAAAに頼りたくなるほどね、自分のポリシーをまげてまで、
副作用があるとわかりつつ、でも・・やっぱり捨てられない」

(俺は、美琴が自分だけの現実が崩壊するほどのショックに耐え、必死に周り
の世界を守り続けるようもがき苦しんでいた現実に、その心が痛む)

「私は、AAAに手を出したことは決して後悔しない」
「失敗したこともある。でも、守れた命もある、それに・・」
「常盤台中学の件、覚えている?」

美琴の目が真剣なものに変わるのを俺は見逃さない

「ああ確か校舎が全壊した・・」

俺は、胸が締め付けられる、俺の力不足で、早々にリタイヤし、結局美琴一人に押し付け
てしまった常盤台防衛戦、美琴は絶望的な状況の元、一人で惨劇に立ち向かった。

「私はあの崩壊した常盤台を仲間とともに再建した」
「え?・・」
「私は、自分の力不足で、木原唯一に敗北し、学校のみんなに迷惑を掛けた」
「それを、みんなの支えによって、どうにか取り戻すことができた」
美琴の顔に決意がみなぎり始める。責任感、自責の念、そして悪意や、闇に立ち向かう
「お姉様」の凛とした顔に変わる。

「今の私のパーソナル・リアリティ(自分だけの現実)は、AAAの使用を前提に
最適化している、今更それを捨てることはできないわ」

「それでも・・」

俺は悟る。御坂美琴は、常盤台・学舎の園を守れなかったことを、自分自身の自責の
念として心に深く刻み込んでいる。

(だけど、このままではロシアンルーレットのようにいつか美琴は致命的な重傷を追う)
俺は、美琴にどうにか説得しようと試みる、美琴は本質的には理性的で話せば分かる
タイプの人種だから

だが、俺が言う前に美琴が先に口を開く
「私はね、正直僧正くらいでこんなに取り乱したりしないのよ」
俺は美琴に意外な話に耳を傾ける
「上条当麻の右腕に潜む、八竜の力に絶望させられたのよ」
「私は、アンタの傍にいた、アンタの力に少しでもなれると思っていた、だけど上条当麻
の右腕は、日常の世界に住む私の理解では想像すらできない性質のものだった」
「だから・・こんなものに手を染めたのよ」

俺は、あの誇り高い強靭な精神を持つ御坂美琴を苦しめていたのが俺の右手だった
現実にぶちのめされる。

「だけど、今の私はある意味AAAに救われたわ、これで失敗をなんとか取り戻した
木原唯一の一味を打倒し、壊れた学舎の園の日常を短期間に再建した」
「だから・・これを手放すわけにはいかないわ、何より」
「私は、決めたのよ。上条当麻が、私とその周りの世界を守るなんて幻想は私が
ぶち壊してやるとね」
「神は自らを助けるものにしか手を伸ばさない」
「私が、自分の手で周りの世界を守り、アンタを、上条当麻をその周りの世界ごと守るとね

854■■■■:2017/01/05(木) 14:32:25 ID:JCK3Pxh2
そのためには手段は選ばないわ」
「もちろん、あのシスターも、元魔神の妖精も猫もね」

俺は、覚悟を決めた美琴のただならない雰囲気に圧倒される。
あの8月21日の橋の上なんて比べようもないほどの圧力を感じる腹をくくった
本気の御坂美琴

学園都市の闇の木原一族の狂気を知り、それでも折れることなく立ち向かうとても
強い少女。あのデンマークの頃よりもさらに科学を極めた女。

だけど・・その少女が本当は性根の優しいただの少女であることを俺は知っている
そしてその少女を何があっても守ると決めた以上は・・

俺は・・・俺がなすべきことは・・ひとつしかない
俺に取って御坂美琴はただ一つの守るべき存在である事実を今告げる。

「美琴、・・俺は・・御坂美琴のすべてを受け入れる」
「お前一人で戦わせない、俺も一緒に立ち向かう、だから」

俺は美琴の前に進み、華奢な腰に手を回す。美琴を引き寄せ、顔をみつめる
こわばった美琴の顔色が驚愕につつまれ、ほのかに紅く染まる

俺は、美琴の端正な顔に頬を寄せる。
「だから・・もう一人で悩むな、命を捨てるなんて言うな」

美琴が万感の思いに、包まれたのか、目から透明な液体がこぼれ落ちる。
よほど耐えていたのだろうか、常盤台のお嬢様たちの前で決して見せることのない
表情を俺に向ける。
やがて少し落ち着いたのだろうか、涙を拭い、端正な顔を作り直す。

そして美琴は形のよい唇を俺の頬に寄せ、意思の籠った声で語り始める。

「当麻はずるいわ・・私の心のなんて、すべて当麻のものよ。8月21日からね」
「だから・・」
「これは、私からのファースト・キスよ」

美琴の、端正な顔、意思の強そうな瞼、その今まで気がついていなかった異性
としての美琴に俺の鼓動が高まる。

(よく見れば、美琴て本当綺麗な女の子だな・・今更だけどな)

俺は、美琴軽く抱擁し、接吻を促す。
美琴が、俺の口に、軽く口を合わせる。

そして・・・

その瞬間、二人の距離が0になる。
2人の口がひとつになる。熱い何かが通い合い、魂が交わり合う
とても似通った、自分の命よりも周りの世界を大事にする2人がお互いを認め合い
一つになった瞬間、感極まった美琴が、その意思の示す凛とした瞼をつぶり枯れたはず
の液体を滴り落とす。

漆黒の闇の中、数々の試練を乗り越えた2人はしばし、お互いの思いを知った喜びに
身を任せ、時の流れに身を任せていた。

だが、・・歩み寄った2人が本当にひとつになるまでまだ、大きな課題が残っている
事を2人はまだ知らない。

だけど、共に手を取り合った2人なら、どんな艱難辛苦も乗り越えるだろう。
2人はそう信じていた。

続く

855■■■■:2017/01/05(木) 14:34:13 ID:JCK3Pxh2
以上 クリスマスの奇跡 3話 の投稿を終わります。

856■■■■:2017/01/15(日) 08:28:09 ID:DzCAFOdQ
お!3話で纏まり切れなかったか
最後まで完走がんばれ

857■■■■:2017/01/16(月) 06:44:14 ID:xEsYFjKo
感想ありがとうございます
近々に投稿します

858■■■■:2017/01/17(火) 14:33:07 ID:ZNZ7f8Ms
とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 15話: 3章―5

9月25日 (金)午前5時 大覇星祭 最終日

さすがに、9月末となると日の出も遅くなる。北風と乾燥した気流が生み出す冷気が辺りを
包む。異常な残暑も底を見せ、遠からず夏は終わりだろう。
最高気温も28度という予想で、今日は余りに日射病の心配もなさそうだ。

5時という時間が、朝から夜へと移行しつつある肌身で感じる。
本来なら一緒に散歩の時間だが、当麻は、前日の競技での頑張りすぎがたったのかまだ
起きない。

最終日・・初日の戦争まがいの大トラブル以外に大きなトラブルもなくタンタンと
日程をこなしている。私の開発したAI捜査支援システムの初期不具合はほぼすべて
初春飾利が塞ぎ、より強化されたセキュリティシステムが正常な稼働を保証している。

依然として統括理事長アレイスタークロウリーの行方は不明だが、どうせ死んだふり
作戦だろうと、気にしない。大覇星祭は問題なく滞り実施されるだろう。親船統括理事
長代行の元で。

実際のところ、今の学園都市学生の関心は、あまりに順調すぎる常盤台の完全総合優勝
が達成されるかどうかに移りつつある。個人総合1位が私であることは事前に想定されて
いたので誰も文句は言わない。それに唯一私に対抗しえる削板がレッドカードを食らい
私の個人総合1位は変わりようがない。

(だけど勝ちすぎはよくないのね)
いつもなら、常盤台対長点上機で盛り上がる頂上対決もすべて常盤台が、私が開発した
AI シミュレータによる効果的な選手配置と作戦提示で、すべて制し、大差になってしま
っている。

いままでレベル4を47人有し、圧倒的に質の面では優位なはずの常盤台がしばしば苦杯
を喫していたのは、主に協調性のなさと、実戦経験の不足だが、私の圧倒的なカリスマと
食蜂の人心掌握術により、統制のとれた軍隊として、動き、結果圧倒的な成果を達成した。

だが・・常盤台が圧倒的に圧勝するのも、大覇星祭の盛り上がりと、来年以降の干渉
数値面であまり望ましくなく、結局一部プログラムを変更し、今日の特別イベントを
実施し、長点上機学園に逆転の可能性を残すことにした。

(まあ、外のお笑い芸人がよくやる手法だけどね・・・)
ゲームは華やかな目立つものにする、常盤台対長点上機の頂上対決
それも1対長点上機の全校生徒 勝った方が総合優勝というご都合主義
(まあ、このくらいの余興は許容範囲でしょう・・)

/////////////////

さすがに、私も当麻も多忙で食事を作る暇もないので、コンビニ弁当で済ます。
それにカップみそ汁を加え、とりあえず腹を満たすだけの食事で腹ごしらえをする。
コンビニ弁当も、幕の内弁当なら食品添加物や、中国製の農薬まみれの食材が多い
事を除けば、それなりの味と品質なのは最近理解した。
(少し薬品臭いけどね・・正直)

「当麻、おはよう」
「今日で最終日だな、で、えらい盛り上がりだな、御坂美琴対長点上機?」
「実態はそうね、建て前は常盤台対長点上機だけど」
「しかしまあ・・これ長点は敗北すれば大恥じゃねえの?」

「まあいいじゃないの。負けたところで来年はその御坂美琴を獲得できるわけだから」
「なるほど・・ある意味双方の利害が一致したわけね」
私は溜息をつく、本来はたかが子供の遊びにここまで糞真面目になる、学園都市関係者の
滑稽さと、その裏にある利権という名のドロドロした大人の都合に

「まあ、たかが運動会じゃないの、本質は。気楽にいきましょう」
「どうせこれが最後だし・・」
「は・・それは甘いんじゃない?美琴」
「え?」

「長点上機が美琴先生を大覇星祭に出さないわけないじゃん」
「結局・・美琴は客寄せパンダの価値がある以上それから逃れるのは無理じゃないの?」
上条当麻は時々いや本質的に鋭いところがある。私以上に世の中を突き詰めてみる目を
持っている。
(だからこいつに惚れたわけだけど)
「そうね。マスコミ的に絵柄のいい写真を提供できればいいわね」

859■■■■:2017/01/17(火) 14:35:00 ID:ZNZ7f8Ms
「結婚式に使えそうな映像をな」
「ふふ・・いいわね。頑張るわ」

・・・・・・・・・
9時

緑地公園に数百名の生徒がたった一人を倒すために集まっている。
本日最大のイベント 御坂美琴対長点上機学園は様々なイベントを行い、1試合でも勝てば長点上機学園の勝利というルールで行われる。

第一試合は、私が数百人の生徒が防衛する、大将を1分以内に気絶させるというもの。
全員電撃を警戒し、晴天にも拘わらずゴム製の雨合羽を装着している
当然のことながら、私には空を飛ぶことも、当然超荷電粒子砲も禁止され、ぎりぎり
レベル5の能力行使ができないので、「電撃」くらいしか攻撃手段がない。

それに風紀副委員長という立場上、殺人はおろか、重傷で病院送りも望ましくない
だから、超電磁砲のような、殺傷力のある攻撃手段も使えない。

だから・・先方は安心して、にやにや笑っている。
たかが電撃、・・その油断。雨合羽を着込んだくらいで・・攻略した気になっている。
(まあそのくらい油断してもらわないと参加者を集められないしな・・)
(まあレベル3くらいの電撃使いには有効かもね雨合羽も)
(だけど、甘いわよね・・砂鉄を使える私には)

号砲と同時に、地面全体から砂鉄を巻き上げ、そこへ電撃を加える。砂鉄嵐+電撃攻撃で
500人中475人が気絶して昏倒する。空気中を浮遊する砂鉄を電流が伝わり大気全体が帯電する。顔から電流が体表を伝わり地面へ流れる。少々の耐電装備ではまったく意味がなく、大局的には生理食塩水に過ぎない人体を電流が伝わる。

(そもそも「素粒子そのもの」を自在に操作できる私に、雨合羽で耐電対策は無謀でしょ)

もしも美琴が記録画像の絵柄を考慮して、手加減しなければ、砂鉄電磁嵐でほぼ全員昏倒
していただろう。そんな片手間のような攻撃でほぼ長点上機軍団は壊滅する。

電撃にある程度耐性のある残り物の能力者が気を取り直し、攻撃しようとするが、ち密な演算が必要なテレポータは電撃の痛みで演算できず戦力外になり、念能力者は電磁砂鉄嵐が作り出す、磁場に妨害され対象物を操作できない。同系統の電撃系の能力者は余りの力量
格差に意気消沈して震えているだけだ。

唯一発動が容易で激痛でも発動できる発火系能力者だけが抵抗を試みるが、・・・・
レベル4の3000度くらいの火炎など、最低でも数万度に達するプラズマを形成
する高圧放電をいつも扱っている、私にはとってはなんらの脅威になりはしない

その様子に、攻撃の効かなかった男性が震えだす。
「糞・・効かねえのか・・化け物が・・」

「ね、私の通り名て知っている?」

「え?超荷電粒子砲・・?」
「荷電粒子て、通常の物質とはまったく性質が別なのは知っているわよね?」
「え?」
「燃焼は、酸化する現象・・でも、酸素分子が分子結合を失い、酸素元素になったら?」
「あなたの自分だけの現実はそれを観測し、確定できるかしら」
発火系能力者は火を生成しようとするが、まったく発生しない。

焦りでがたがた震えだす。
「えーえ・・そんな・・発動すらしないなんて」
「電撃使いを舐めてもらっては困るわね、物性の変性も可能なのよ」
その現実に打ちひしがれレベル4の最強クラスの発火系能力者は戦意を喪失する。

(さてひと通り戦意は喪失させたし・・)

残り20秒か・・そろそろ終わらせるか
( 電気と言えば水よね・・・)
湿気もちょっどいいし・・

私は、カメラ目線で、よくとおるアルトボイスで言い放つ。
「ねえ、まだ30度近い外気温のあるこの時期に、一気に0度まで、冷やせばどうなるかしらね」
腕を伸ばし、大気を構成する窒素と酸素分子から振動エネルギーを奪い急速に氷点下に
下降させる。たちまち大気から水蒸気が凝結し、地面を濡らし始める。
(これもレベル4の分子運動操作能力でいいかな・・ルール上は)

860■■■■:2017/01/17(火) 14:36:18 ID:ZNZ7f8Ms
解答などなく、そんなものは期待していない。動画の鑑賞者への謎かけ
「砂鉄と食塩交じりの結露が地面を覆う。そこを、高圧電流が流れればどうなるかしらね・・」

さきほどの、電撃で筆舌に尽くしがたい痛みを味わった残り物の能力者達は、今度こそ
絶望を味わう。

「処刑開始」
青白い火花が当たりを包み、大気の膨張に伴う轟音が辺りに響き渡る。
スイッチが切れたように、残り物の能力者が抵抗することもなく一瞬に倒れる。
「ミッション・コンプリート」

あたりにオゾンの匂いと、タンパク質が醸し出す焦げた匂いに包まれる。

会場は、あまりに凄惨な光景に最初沈黙に包まれていたが、最後は私への賞賛へ変わる。
結局強い者が賞賛を浴びる学園都市、その中で、行き過ぎた破壊や、残虐行為をしない私は
広告宣伝活動の安全牌、強さと美しさを兼ね備えた存在として不動の地位を保っている。

その地位や評判を守るため、事前にある程度心臓まひの可能性を調べ、可能性がある人間はこの試合への参加を排除している。

「おおいなる力には大いなる責任が伴うか・・
(安全第一よね・・長点上機能力開発主幹と細部を詰めたある意味茶番)
(でも、基本電撃だけでもなんとかなるものね・・)

分かり切った結果を、大げさに伝える、マスコミのインタビューに適当に答えつつ、思考
を巡らす。難しいのは、目立つことのメリットとデメリットを勘案することだ。

( まあ・・ある意味色物扱いされたほうが、いいかもね )

と適当に割り切り、思考を断ち切る。さて・・私は、当麻の姿を観客席に見つけ声をかける。

「当麻、見てくれたの?」
「美琴の晴れ舞台だからな」
「そう・・?見世物みたいなものよ」
「見世物・・まあそうかもな・・TVとか動画でバンバン流すだろう」
「当麻の幻想殺しのほうが、本当は凄いのにね・・素人にはわからないわね」
私は、マスコミというもののくだらなさをあざ笑う。
「美琴の技は映像映りがいいからな」
「ありがとう。今日はいい映像が提供できればいいわね」
「それにしてもさ、干渉数値で縛られ、重傷者も出さず、しかも敗北もできない。
なかなかシビアだね、おまけに綺麗な絵柄まで要求される」
「まあそれができることが期待され、その対価をいただいている以上はそう思う
しかないわね」

私は、少し面倒くさそうに溜息をつく
当麻が私を心配そうに見つめる。

「大丈夫か?他に、研究所や風紀委員会、多忙すぎないか?」
「心配してくれてありがとう。まあ、このイベントが終わったら少し考えるわ」

「無理すんなよ」
「ありがとう」

私は、別の競技へ向かう当麻へ手を振って見送る。
私は手を握り、ささやかなイベントを再開する。

「さて残りをこなしましょう」
学園都市の広告塔の御坂美琴の役目を果たすために

・・・・・・・・・・
同時刻

風紀委員 副委員長室

副委員長室は、御坂美琴の執務室、応接室、マシン室、仮眠室など
まるで官邸のような広大なスペースを占有し、そのこと自体がこの部屋の
主の権限の大きさを示しているようだ。

この部屋の主は、あくまでも風紀副委員長だが、実際には、委員長が飾りであるのは
周知の事実である。

861■■■■:2017/01/17(火) 14:38:05 ID:ZNZ7f8Ms
だが・・それも一皮むけば、AIという名のブラックボックスのお告げこそが
治安機関の主なのではないか?

それを操る初春飾利こそが、アレイスター失踪後の学園都市の影の支配者かもしれない。

副委員長室奥のマシン室で数十台のモニターを眺めながら、初春がAI支援システム
の御守を続けている。人工衛星や監視カメラ、車載コンピュータ、携帯電話の音声記録
携帯電話のGPS発信装置、ICタグ、LAN回線の交信記録あらゆるデータが、集約され、AI支援システムの初期値にUPDATEされる。

書庫、軍事クラウド、樹形図の設計者、莫大な演算処理能力と、自己学習機能が、正確な
指示を形成し、お告げのように取り扱われる。
そのお告げに従い、警備は決定される。万を超す、風紀委員とアンチスキルがまるで
神様のお告げのように、初春の管理するシステムの指示を疑いもせず、従うのだ

イベントは、裏方なくして成功しない。実質的な警備責任者が、運動会ごっごに興じて
いられるのも、その裏で有能な実務者が定められたプログラムを忠実に実行しているか
らだろう。その筆頭の初春飾利には、2つのコンプレックスがあった。

お嬢様への憧れと、前線で戦闘できる能力者への憧れである。
いつもその両方を兼ねそろえる、白井黒子や御坂美琴へ熱い羨望を向けていた。

そもそも初春が風紀委員を志した最初の理由こそ白井黒子への憧れだった。
たまたま、小学校のころ広域社会見学で知り合った白井黒子が、日本で最大級の流通Gの
創業家の一族だと知り、かつ風紀委員ということで、風紀委員への関心を一気に燃え上がらせた。日本で有数の資産家の一族でなおかつ、戦闘のできる高位の能力者、初春はそんな
白井黒子と一緒に仕事のできる風紀委員へ憧れを募らせた。

そして、何度も風紀委員へ志願したのだ。だが、風紀委員はそもそもそう簡単になれるものではない。筆記試験の他に、身体能力をチェックされ、能力も重視される。
必然的に高位能力者や身体能力が優れた者がなりやすい。

初春飾利は、学力はまあまあだが、致命的なほど身体能力が低い。短距離走も、持久走
もダメ。体力の点では到底合格点には及ばない。
ただひとつ、とびぬけた情報処理能力を評価され、1点突破で合格できた。

とはいうものの、能力はレベル1で体力もない初春に前線勤務は許されるわけもなく
白井黒子のバックアップとして堅実に業務をこなしていた。

だが、現場に出ることができない初春にとって、憧れの風紀委員は想像以上に平凡で
退屈な日々の繰り返しだった。もともと風紀委員は、アンチスキルの補助、白井黒子は
独断専行で、始末書の山だが、それでも原則はあくまでも補助。

学校の中の犯罪をアンチスキルへ突き出すお手伝いに尽きる。後は交通整理や、迷子の案内など、犯罪捜査などは原則しない。そんな地味なしかも、事務処理に追われる日々に
少々倦んでいた。だが・・・そんな日々も御坂美琴と出会い激変する。

だが、初春はまだ、その意味をまだ知らない。
御坂美琴の強烈な光芒に隠された学園都市の異形の意味を

そして、御坂美琴が抱える闇の深さを
だが、その闇を今日初めて思い知らされる。捜査指揮を行うある暗殺未遂事件で。

・・・・・・・・・・・・

9時30分
第2試合:障害物競走

第2試合は、私が長点上機学園の全生徒の妨害を受けつつ、制限時間内に、複数の
ポイントで襷をもらい、ゴールへ到着する競技である。

私は、応援に駆け付けた常盤台の生徒、ことにここぞとばかりに体を密着させてくる
白井黒子と会話を続ける。

白井黒子は非常に複雑な演算を有するテレポートを行うだけに、クレーバな頭脳を
有し、今は風紀委員本部で話相手になってもらっている。

「しかし多忙極まりないお姉様がよくこんなしょうもない企画にOKだしましたね」
「まあ、企画自体は外のお気楽お笑い番組でありがちな企画だけどね」
「いいじゃないのこのくらいお気楽な企画でも・・」

「ですが・・」

862■■■■:2017/01/17(火) 14:41:27 ID:ZNZ7f8Ms
聡明な黒子が何が言いたいか大丁想像はつく、「目立ちすぎるのはよくない」と
「逆、逆、どうせこんなお笑い企画に出るなら大したことないと聴衆は思うわよ」


「はあ・・お姉様は、いつもポジティブシンキングすぎて・・」
「客寄せパンダの自覚くらいあるわよ」

「なんにせよどさくさに紛れて、よからぬことを企んでいる輩もいるようですから
警戒を」
「ありがとう警備のほうはよろしくね」
「お任せください、もっともあのシステムさえあれば・・」
白井黒子の顔と口調に、私とあのシステムへの過剰の過信を感じ打ち消しに入る。

「油断は禁物・・でしょ。だから・・」
「あ・・すいません。お姉様への信頼が過信に変わっていました」
「いいわよ、私もブラックボックスに過信していたわ」
「だから、お互いに足元を見ましょう、ね」

それにしても、よくもまあ、こんなしょうもないルールを考えるわね・・

制限時間は60分

その間に私は約30KMを移動し、5ケ所のチェックポイントで襷を受領する。
突っ込みどころは多々あるが、妨害を受けながら30KMをたった1時間で移動
するというのは、どうなんだろうか?

しかもこっちは干渉数値と、移動速度で時速50KMの速度制限を受け、相手の
攻撃手段・攻撃方法は無制限・・
(まったく何の罰ゲームだか・・しかも敗北はできないと)

それでも・・まあなんとかするしかないわよね・・私には敗北が許されない。
どんな茶番でもお遊びでも・・
・・・・・・・・・

号砲と同時にたった一人の障害物競争が始まる。
そもそも30kmの能力なしのランナーの世界記録は約1時間26分
それを60分で妨害されながら走ること自体が相当なレベルだ。

サイコキネシスト(念能力者)がマンホールや看板を私にぶつけてくるのを
ぎりぎりレベル4どまりに抑えた磁力で躱す。
火炎や、電撃、氷あらゆる能力者がスタート地点で妨害を図る。
敵は、無粋にもどうやらスタートさせないことに全力を尽くしているらしく
レベル3〜レベル4弱の多彩な攻撃が私を翻弄する。
それに・・
射撃の発射音やヘリのシャフトの回転音、敵は私を殺そうとでもしているのだろうか・・
(武装ヘリやスナイパーまでいると・・)
(だけど・・ようはレベル4程度の様々な手段を使えばいいだけの話よね)

私は、小細工を弄し、活路をこじ開け始める。
筋肉を操作し、細かなステップで多彩な攻撃を躱す。
そしてある程度スペースを確保したところで、攻撃に転じる。

まず厄介なスナイパーをぎりぎりレベル4どまりに抑えた3億V未満の電撃で打ち倒す。
ヘリを磁力でロータ制御装置を破壊し、撃墜させる。

さらに、人間の脳は、想像以上に音響や、電磁波に弱い。指向性のある音波で、演算を妨害する。
生体電流を操り同士討ちを誘い、残り物の能力者が自滅を始める。

瞬く間に残機が減り、この段階でほぼすべて攻撃が止み、その間隙を縫って、磁力線に沿って体を時速49KMで移動させる。磁力線をワイヤーのように、見えない糸を伝って、結構な高速で戦場を離脱する。

(それに条例違反は・・排除する権利はあるわよね)
私は、インカムを使って、初春飾利へ指示を出す
「もう泳がせる必要はない、条例違反者を全員摘発して」
「了解です」
2分もしないうちに、業務完了の連絡がインカムから伝わる。
(別に銃や戦闘ヘリなんかこわくないけど、・・観客に怪我をさせるわけにはいかない)

今回の茶番劇の目的のひとつに、私の手足足かせを利用して私を殺害しようとする
テロ集団をあぶりだすこともあるのだから・・
・・・・・・・

863■■■■:2017/01/17(火) 14:42:43 ID:ZNZ7f8Ms
御坂美琴が大人の事情でくだらない茶番劇を行っているころ、上条当麻はくだらない
女達の復讐劇が始まるのを待っていた。
美琴には、人手は余っているからいいとは言われたが、どうしても気になり、競技をキャンセルして犯行予定現場へ向かう。

単純に言えば、美琴がレベル5の能力を使えない隙を利用して暗殺を企てる
それだけの話。普通に考えれば人工衛星で常に動向を監視されている殺害対象を
いくらレベル5の能力が使えない状況とは言え殺害するなど無謀の極み。

だが、復讐の鬼にそんな道理が通用するはずもなく、女達は凶行に至ろうとしている。

麦野沈利は、ゴール地点を見下ろす、超高層ビルの屋上でターゲットの到着を待ちかねて
いた。空中を効率的に浮遊する能力を持たない、麦野が、一撃必殺で強敵を葬る確実な
方法は、相手が確実にいる場所に、能力暴走体晶を使い強度をかさ上げした原子崩しで葬ることになる。
しかも・・相手は干渉値の制限を受け、能力に制限がある状態。

麦野は、再編された暗部で、実質的に格下げに近い扱いを受け、学園都市殊に、暗部
を再編した美琴に逆恨みに近い感情を抱いていた。
その恨みの感情が本来は、冷静で怜悧なはずの麦野の思考を狂わせる。

「来た・・」
麦野は、AIMストーカの滝壺の支援を受け、美琴の到着を確信する。
2発目はない。慎重にゴール地点へ照準を合わせる。
なんとかゴールに時間ぎりぎりに到着しようとしている美琴に気がついた様子はない。
「よし・・向こうは気がついていない・・」

麦野は原子崩しのエネルギーを充填し、発射態勢を整える。

圧倒的有利を確信し麦野の顔が喜色に歪む。
それに・・
思えば、3年前に順位がぬかされて以来、あの女が憎らしくてしょうがなかった。
同系統、同性、はっきり言って器用なだけで持て囃される御坂が気になってしょうがない。
(だから・・ここでアイツを一撃で殺す)
よし・・麦野は勝利を確信しほくそ笑む
だが・・

え?・・・
麦野は起きたことが理解できなかった。
原子崩しが・・届かない・・
まちがいなく御坂美琴を貫いた一撃必殺の原子崩し、・・だがその光芒は標的に届く前に
上空へ弾かれ虚空へ消え去る。

何事もなかったように、ゴールテープを切る御坂美琴、麦野は天を仰ぐ。
人工衛星ですべて監視されている学園都市、言い逃れようもない。
風紀副委員長への紛れもない殺人未遂。

やがて原子崩しを弾いた光学迷彩を施した磁性シールドの姿を視認し、麦野は
仕組まれた茶番に気がつく。
(糞・・あの女全部分かっていたのか・・)
そして、音もなく近づいた複数の風紀委員が視界に現れる。

男が、低い声で罪状を告げる。
「そこまでだ麦野、アンタは終わりだ。」
・・・・・・・・・・・
俺は美琴が無事ゴールへ到達したのを確認して胸をなでおろしていた。
罠とは言え、自分の命を天秤にかける度胸のよさと言うのか無謀さに呆れる。
「さて・・言い訳は本部で聞くとして、さっさと手を挙げて投降してくれないか?」
「テメエの犯行はすべて動画に映像・会話が撮られている」

俺は淡々と事実だけを告げる。腐ってもレベル5、不利と判断すれば自分から引く
だろう。たくらみは玉砕し、逆転の目がないことさえ認識させれば

麦野は、それでも・・目に籠った復讐の炎を消さない
「ふ・・正義の味方御坂美琴の婚約者、上条当麻参上か、カッコつけやがって」
「テメエと後ろの風紀委員皆殺しにして学園都市の外へ脱出するだけよ」

(腐ってやがる・・たった1度の完膚なき敗北がここまでコイツを狂わせるのか・・)
「上条・・2度負けるほど私は弱くない、覚悟しろ」
俺は、後ろに控える風紀委員を下がらせ麦野に対峙する。

麦野は拡散支援半導体を配置し、いつでも原子崩しを発射する態勢を整える。

864■■■■:2017/01/17(火) 14:44:11 ID:ZNZ7f8Ms
麦野が、口を開く
「なあ上条、・・お前は婚約者をどこまで知っている?」
「は?」
「まさか・・あの笑顔を振りまいている、人畜無害なアイドルフェイスがアイツの本性
なんて思っていないだろうな」

「ふ・・つまんねえ、精神攻撃だな・・知っているよ、アイツの本性くらい。」
麦野の綺麗な女子大生のような端麗な顔が醜くゆがみ始める。
「ならなぜアイツを断罪しない。御坂美琴の手は真っ黒に汚れている」
俺は、アイツの敵対者のありきたりな断罪の世迷言に内心腹を立てる。

「愚問だな、・・アイツは・・自分の過ちを決して忘れないからだ」
「そして、真摯に自分の犯した過ちを人にせいにせず自分の過ちとして受け止める心の
強さを持っている」
「だから・・俺は何があろうとアイツを信じる」
「ふ・・つまんねえなあ・・恋は盲目か・・だがな上条、御坂美琴は・・一度は世界を・」

「それは過去の事、本人に責任はない、単なる事故だ」
俺はきっぱりと婚約者を擁護する。

麦野は歪めた顔から、場違いな気色悪い声音で、クスクス笑い始める。
「甘いな・・テメエは超荷電粒子砲の本当の威力を知っているだろう。
アイツは自分の意思でいつでも70億人を抹殺できる奴だ」
「まあいい、お互いの正義を語ってもしょうがねえ、死ね 」

麦野は頭部の周辺に莫大な電子を蓄え、原子崩しの発射態勢を整える。
拡散支援半導体で拡散させれば、右手一本しか武器のない俺は、全身を光線に貫かれ
死ぬと。
(まあそんなとこだろうな)
莫大な、まばゆい光芒が・・あたりをつつみ光圧さえ感じるほどの圧迫感
破壊力だけなら、大したものだ。戦艦を一撃で葬ると言われるほどの威力

だが・・
(遅いなあ・遅すぎる)

美琴や木原唯一の攻撃を見慣れた俺には麦野の動作が止まっているように見える。
慣れだろうか・・AIMの制御による力場を俊足で感知できる俺には、見えないはずの
力場の振動が、力の波動がはっきりわかる。 
 
俺は、右手を麦野向け、発射寸前の原子崩しを丸ごと抑え込む。
唖然とした表情で麦野が立ち尽くす。

「お前が、原子崩しで全部壊せるなんて幻想は俺がぶち殺す」
俺の右アッパーがさく裂し、心が砕けた麦野はただの人形のように脆くも崩れ落ちる。

・・・・・・・・・・・・・・
レースが終わり、長点上機とのある意味茶番だが、死闘を制した美琴が
表彰式を終え、俺の元へ駆け寄る。

その後予定されていた2試合は長点側がみじめな敗北で終わることを恐れ、放棄となり
この時点で常盤台の総合優勝が確定する。

すでに美琴の個人優勝は確定しているので常盤台は2冠となり、常盤台を代表して
美琴が学校部門の優勝旗と個人総合優勝のメダルを受ける。
「美琴、優勝おめでとう」
「全部、麦野を排除した当麻のおかげよ」
待合室へ俺を連れ込んだ、美琴が、俺の腰に手を回す。ごく自然にイチャイチャ
し始める。軽く唇を頬に接触させる。
「ご褒美のキスかな」

俺は照れ隠しに憎まれ口をたたく
「まったく、そのうち投稿サイトにのるぞ」
「いいじゃない、どうせ婚約者でしょ、それに・・初春さんがなんとかするでしょ」
「まあそうだが・・」
美琴はさらに体を密着させる。

「でも、本当助かったわ・・」
俺は、用意周到な美琴が万事滞りなく打った芝居の種明かしをする。

「どうせ、本当は光学迷彩電磁射出ステルス弾で射撃する予定だったんだろう」
「あら、分かっていた」
美琴がいたずらのばれた、子供のようなまばゆい笑顔を返す。

865■■■■:2017/01/17(火) 14:45:13 ID:ZNZ7f8Ms
「麦野は下半身くらい飛ばされても文句は言えないわよね」
美琴の笑顔に少々影が浮かぶ。
「殺したところで刑法36条の正当行為で免罪される」

「美琴・・」
美琴が自嘲気味に話しを紡ぐ
「私は、危なく麦野を殺しかけた」
「正義という名の合法的な権力でね」
「だから・・それを止めてくれた当麻には感謝よ」
俺は美琴の心情の吐露を黙って聞く。

「私は、これから何度もこうやってこの街の歪みや悪意にさらされ続ける」
「独裁者が、食い散らかした箱庭を正常化するには並大抵の努力では解消しない」
「だから・・」

美琴の目からわずかに涙が零れ落ちる。だがすぐに表情をもとに戻す。
眼圧を感じるほどの、真摯なまなざしで美琴が俺を見つめる。

「当麻にだけは、私の事を信じてほしい」
「そして、支えてほしい」

「ああ、婚約したその日から・・俺は何があっても美琴とともに生きると決めた」
「だから・・ともに、駆け抜けよう。何が起きてもな」

俺は、美琴の小さなだが、大きな運命を背負った肩を寄せ、腕を回す。
抱擁しながら、汗を吸った体操着越しに鼓動を感じ、声をかける。

「死ぬときは一緒だ」
「当麻、・・・これからも頼りない私を支えてね。お願いよ」

美琴の瞼からきらきらと眼光が輝き、しっかりとした足取りで、祝賀会場へ
向かう。俺はそんな美琴を支えて生きていこうと心から誓う。
道のりの険しさと、やりがいを感じ、不思議な充足感を感じながら

続く

866■■■■:2017/01/17(火) 14:46:17 ID:ZNZ7f8Ms
以上とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 15話 3章ー5の投稿
を終わります

867■■■■:2017/01/26(木) 17:49:50 ID:F1hcrTYI
クリスマスの奇跡 4話 (完結)

12月19日 (月)22時 とある高校 学寮前

あの橋での決死の告白から1時間、冷静になった別の自分は、自分の
状況の困難さに頭を抱えていた。

いや・・・本当はとても幸せなのだ。当麻と手を握りながら当麻の学寮へ向かう。

自分の空回りしがちだった労苦は、意地悪な神様の心すら打ち破ったのか
あの・・驚異的な鈍感男の心を打ち破り、ついに私の思いは届いた。

少なくとも、彼も自分の心を受け止めてくれた。
その事実の重みに、私の心は歓喜のワルツに奏でる。

だが・・正直問題は解決したのだろうか?

私が、ただの恋愛脳に侵された夢見がちな乙女なら、問題は解決した・・そう言ってよいだ
ろう。愛しの彼に想いを伝え、彼はそれを受け入れた。
めでたしめでたし・・だが・・

食蜂に言われたが、私はそんなもので満足するにはあまりに、難儀な性格だ。
はっきり言って守られる女なんてそんな関係なら、私はいらない。

どちらかと言えば、私は守られるより、守りたい性格。頼るより頼られたい性格。
いつもの、黒子、初春さん、佐天さんの4人組でもそう、常盤台でも、学び舎の園でも
はっきり言えば学園都市全体さえも守りたいタイプの性格。

それはたとえ対象が上条当麻でも変わらない。

そんな私にとって、AAAを手放すのは、はっきり言って理屈ではわかっても、感情では
納得できないことだ。

前の何も知らない、私ならそんな疑問すら抱くことはなかっただろう・・

だが、12月以降魔神、上里勢力、アレイスター、木原唯一、天使、etc..が跳梁跋扈
する現実を知り、もはや素のか弱い自分には戻りたくとも戻れない。

誰かを守るには力が必要だ。だが・・それはレベル5では到底足りない。
その現実に打ちひしがれたからこそリスクを承知でAAAに手を出した。

(だけど・・当麻に約束した以上AAAなしで私は上条当麻を守らなければならない)

(それに・・)
もっと大きな問題はイギリス清教、必要悪の教会のシスター魔術の最終兵器 
禁書目録との関係を解決すること・・

故人曰く、言うは易く行うは難しと言う。
そう・・今の私がその状況だ。

2つ解決困難な問題を抱えている。
私は、その2つを、解決しなければ先に進めない。

食蜂なら、洗脳して終わりかもしれない。雲川なら曖昧にして、問題をうやむやにするかも
しれない。だけど・・私は逃げない。不器用かもしれない。だけど、これが私の現実なのだから。

覚悟を決め、当麻とともに学寮へ向かう。

卵かかみつきか、それとも泣き落としか・・私はあのインチキシスターと対峙に
戦場へ向かう。

・・・・・・・・

対して広くもない学寮の上条当麻の居室
そこへ3人入るとさすがに狭苦しい。

インデックスが、緊張した趣で当麻の顔を見つめている。
いつもなら冗談めかしたことを言って、その場をごまかす当麻もさすがに今日は
言わない。元々デリカシーに欠けきらいはあるがさすがに、この場がどうゆう場面か
理解しているのだろう。神妙な顔つきをしている。

868■■■■:2017/01/26(木) 17:51:27 ID:F1hcrTYI
私は、口が重い当麻に変わり、開口一番直球を投げる。

「ねえ、当麻・・ちゃんと話そう、彼女には知る権利があるわ」
「私から全部話してもいいけど・・結局これは当麻の問題でしょ」
「ああ・・そうだな」
「インデックス・・俺は美琴と恋人として付き合うことにした」

静寂が一帯を支配する。インデックスは何やら考え込んでいるようだ。
嚙みつきも、怒りもせず、ただ佇んでいる。まるで来るべき日が来てしまったかの
ように。

インデックスは、鈍感なはずの上条当麻が御坂美琴をしきりに気にかけることに
はっきり気が付いていた。あの熱波の中でも・・そして、その後のごたごたの
中でも。さらにインデックスは、短髪とよぶ御坂美琴が上条当麻へはっきりと
好意を向けていることに気が付いていた。

そんなインデックスにとって御坂美琴がはっきりと告白し、なおかつ当麻がそれに
応えること自体に意外感はなかった。

だが・・

元々インデックスは、誰とでもすぐに親しくなり、すぐにファースト・ネームを呼ぶ
ほどの人物・・だが例外はある。御坂美琴だけは「短髪」と呼び敵意を隠そうとしない。

いや・・おそらく本能的にわかっていたのだろう。御坂美琴の存在が自分にとって
大事な上条当麻を自分から奪いさる可能性のある存在であることを・・

そんなインデックスにとって・・想定はしていたが、来てほしくない瞬間だった。

少し間をおいてインデックスが口を開く。弱弱しくまるで許しでも請うかのように。
「当麻・・私はここに居ていいの?」

当麻が、言葉を選びつつ口を開く。
「インデックスは・・俺にとっては肉親も同じ・・」
インデックスが当麻の顔を凝視している。インデックスは下手すれば私以上に、この
上条当麻に心身ともに依存していたはずだ。そんな彼女にとって、居場所を失うことは
耐えがたいはず、私は同性として彼女の立場に同情を禁じ得ない。
「俺は、お前が居たい限り、ここに居て欲しい」

インデックスが不安そうに声を発する。
「本当にいいの?」

上条当麻が力強く、語り始める。
「インデックスも美琴もどちらも俺にとっては大事な存在だ」
「美琴と付き合うからお前を放り出すようなことは絶対しない」
「だからお前は安心して暮らしてほしい」

私は、少しの落胆と大きな安堵を心の中でつく
(恋する乙女としては、・・敵に塩を送りたくはないけど・・この子が当麻にとって
切り捨てできない存在であることは事実)
(私は・・当麻を不幸にする選択を選ぶことはできない)
私は、目に意思を籠め当麻を見つめる。
(ふふ・・当麻らしいわね。本当・・そうあってほしいと思う私も大概なお人よしだけど)
「美琴・・これでいいよな」
私ははっきりと意思を当麻へ伝える。
「ええ・・。インデックスも私の家族・・それでいいわ、当麻」

「美琴ありがとう。だからインデックスも家族として一緒にいよう」
戦争と恋愛は手段を選ばないとは言う。
本来なら、私はインデックスを追い落とすべきかもしれない。
だけど、私には、インデックスの当麻への思いを知ってそんな選択を選ぶことはできない。
(私はそんなつまらない女にはなりたくない)

それまで、緊張の糸で重くしずんでいたインデックスが目から涙をこぼしつつ、鼻を赤くしながら笑うという器用なことをしながら、私の顔を眺めつつ、抱き着いてくる。
「とうま・・それからたん・・いやみこと・・これから一緒に生きていくんだよ」

私は、インデックスを抱きかかえる。
「ええ・・インデックス、一緒に家族になりましょう」

当麻が私とインデックスを抱きかかえる。まるで・・最初から家族だったように・・
(収まるところに収まったのかしら・・でも・・まだ問題のすべては解消していない。)

869■■■■:2017/01/26(木) 17:53:06 ID:F1hcrTYI
能力者にとって一大事のパーソナルリアリティの再構築が残っているのだから。

・・・・・・・・・・・・・・
12月24日(土) 16時:とある高校 再建工事現場

「出来たわね・・」
高尾山系に早すぎる太陽が沈みかけその残照が学園都市を照らす。

私は、あの僧正により全壊した、とある高校の解体・再建工事現場で、自分が設計・施工
した作品の出来栄えを確認していた。

もっとも、元がスタンダートを極めたごく普通の校舎のため再建自体に手間はかからない。
費用もたかだか50億円ほど、常盤台の100分の一にすぎない。

費用は、常盤台の建設工事の剰余金が500億円ほどあったのでそれを流用しても
十分賄えたが、食蜂が親船理事と交渉し、統括理事会の予備費で建設することとなった。

ちょっと前までは、とてもお互いに協力するなんて、それが如何に利益があろうとも
やれなかった。だが、強敵にぶつかり学校存立の緊急事態に、2人で立ち向かう道
を選択し今に至る。

その経験が、ごく自然に私の脳裏に食蜂に依頼するという
選択肢を提示する。はっきり言って統括理事会の根回し関しては食蜂の手腕は見事
としか言いようがない。あっさりと必要な物を分捕ってくる。

(まあ私も少しは成長できたかな・・)
(それに・・)
正直な話、いまだAAAなしで、上条当麻のステージに存在する化け物達に匹敵する
自信はないが、学園都市に散在するAIM拡散力場のリソースを使い自分の演算力
をかさ上げする方法はある程度、効力を発揮し、通常より短時間でこの工事を終える
事が出来た。

(通常なら工期1年、どんなにゼネコンをせかしても3月、それを3日でできたのだから)
(そしてそれをAAAなしで達成できた。小さいけど一歩でも成し遂げる事ができた)

常盤台の私の設置した、機械工学部のメンバーが駆け寄ってくる。
先日の熱波以来私とともに、数々の困難を共にした仲間達。
時に、常盤台再建工事に時は、工期が厳しい中、私とともに数々の難問に立ち向かって
くれた。私の同志達に思いっきり握手をする。
(この子達が献身的に尽くしてくれたか、全部予定どおり終わった)

私は声を一人一人へかける。
「ありがとう。みんなの協力で予定通り終わった」

部員達は私をほめたたえる。
「いえ、御坂様のご指導のおかげです」
私は、大げさな美辞麗句に恐縮する。熱波の時も、常盤台再建の時も私への過剰な過信は
結局収まることはない。
(私は、賞賛を受けるほどの人物じゃない。ほかの人よりほんの少し、電子制御や機械
工学に長けているだけが、それに全部を自分一人でやり遂げたわけでない)
(アイツは、神様のような奴に右手ひとつで立ち向かった・・それと比べれば自分なんて
まだまだだ・・でも・・やっぱり少しでもやり遂げたことがうれしい)

私は、簡単に賞賛の声に答える。
「そうね、でもみんなよく頑張ってくれたわ・・建設工事はこれでおしまいだけど、
機械工学部の部活は継続してもいいわよね」

部員全員が私を見つめる。
(でも・・弱い私は、こうやってみんなと力を合わせてこの街の闇に立ち向かなければ
ならない。そのために常に嗅覚を研ぎ澄まし、自分を研鑽して、みんなの模範になら
なければならない、間違っても傷ついても何度も立ち上がらなければならない)
(だがら・・そのためには)

私は、一歩前へ踏み出す。
「これからも、いろいろあるでしょ、だけど皆と一緒に力を合わせて立ち向かって行こう」
「微力な私に力を貸してほしい、私は何があっても先頭に立って戦う」

部員達が感極まったのか目に涙を浮かべつつ、歓声を上げる。
食蜂がみたら派閥の決起集会に見えるかもしれない。そう・・今になってわかる。

古来より、弱い人間は、群れて外敵に立ち向かった。
その群れは、かならずリーダーを必要とする。少しでも能力のあるものは、弱い者の

870■■■■:2017/01/26(木) 17:54:20 ID:F1hcrTYI
先頭に立って外敵に立ち向かう。それが世の中の習わし。そして真理。
だから・・私は皆の先頭にたって戦う。命がけで。

(そんなものではアイツの世界には立てないかもしれない・・だけど)
今の私には、一人で全部を解決する力はないだろう。だけど、駆動鎧や木原の
最先端技術、それを運用する、電子制御に特化した頭脳。

それでひとつひとつ問題に立ち向かっていく。自分のやれる範囲で、自分の手で
掴めるものを掴む。これが私の選択。学校教育では天才だが、世界の頂点にはあと
少し能力の足りない安定戦力の選択。

そして常盤台の、学び舎の園の、ひいてはアイツの住む学園都市を守る。
そして、・・本当に困ったときは、・・みっともなくともアイツに頼る。

私は、右手一つで、世界の頂点に立ち向かい、何度も世界を丸ごと救った男を見つめる。
その男は、私の周りに集まった常盤台生に会釈をしながら、私に向かってくる。
気配を察した部員が道をあけ、当麻は私の目の前に寄り添う。

「当麻・・来てくれたの・・」
「ああ・・だけど・・美琴は凄いな・・大人の会社でも半年はかかるものをわずか3日
で、完璧に完成させるなんて」
「ありがとう。でも私一人の力ではないわ、ここにいるみんなのおかげよ」

「みんな・・あ・・そうだな。美琴は現場監督なんだよな」
「ええ、私が図面や工程表、組み立てや打設用の駆動鎧は作成したけど、それの整備
や運用なここにいる皆の協力がなければできなかった」

「だから、・・当麻には常盤台生みんなも褒めてほしい」

「ああそうだな」
当麻が深々と礼をする。自分の学校を再建したお嬢様軍団に感謝の意を込めて。
部員たちは、あの熱波のさいに私が拾ってきた、謎の男が深々と最敬礼を
したことに好奇の目を向ける。

私は部員に声をかける。
「みんなに報告することがある」

「私はある事件で死を覚悟した。その時、巨大な敵に立ち向かい、私を闇の中から
引き上げてくれたのが、こちらの上条当麻さん」
「上条さんは、私の命の恩人で、私は上条さんに救われました」
お嬢様たちは、私の意外する告白に驚愕の表情を浮かべる。
当麻は当麻で私の突然のカミングアウトに、思考を停止したような唖然とした表情を
見せる。
「美琴・・?」
私は、一気加勢に話を続ける。

「それだけではなく、大覇星祭、9.30事件、第3次世界大戦、東京事変、12月の僧正事件以来の大熱波事件、そのすべてで彼はその身ひとつで、学園都市を守ってきました」
「私には、上条さんのように右手一つで、学園都市を救う能力などありません」

「ですが、こんな微力な私でも、クリスマスの前に何か一つでも恩を返すことが
できるのでないか、そう悩んでいました」
「そんな中で、先日以来皆さんと、一緒に取り組んできた常盤台再建工事」
「私にも、できることがあることに気が付きました」

「常盤台を再建した皆さんにわかるとおり、学校は、学生にとって心のよりどころ
です」
「彼の学校は僧正の無差別攻撃により、崩壊させられました」
「彼は心のよりどころの学校を失い、いまだに別の学校に間借りの身です」
「本来なら学園都市は、恩人である彼の学校を最優先で再建するべきなのに
彼の学校は高位能力者偏重という学園都市の偏った政策によりいまだに正当な扱いを
受けず放置されていました」

振り絞るように話を続ける。

「微力な私にとって、彼への大恩を返す機会はこんなことくらいしかありません」
「私が、今回この学校の再建工事を皆さんとともに始めたのも少しでも大恩ある、
上条さんへ感謝の気持ちを込めた、実施しました」

私は、みんなが話を咀嚼できるように敢えて間をあける。
そして思いをはっきりと告げる。
「本当に多忙な中、私の勝手な思いに、協力してくれてありがとう」

871■■■■:2017/01/26(木) 17:55:51 ID:F1hcrTYI
私は深々と部員の前で頭を下げる。

「最後に、私の今の思いをみなさんに伝えます」

「私は、命の恩人、そして学園都市とともに私達全員を救ってくれた上条さんへ
心より感謝します。そしてこの学校は私達から上条さんのへ感謝の気持ち
です。いまこそ上条さんへ感謝の気持ちを伝えましょう」
唖然としていた部員達は、上条当麻を賞賛し、たたえ始める。
ネットやSNSでほぼ完成を聞きつけたほぼすべての常盤台生や教師、そして
とある高校の面々が満場一致で拍手を送る。

(これこそが、私から上条当麻への感謝の気持ち、そして、AAAを手放した私の着地点)
(本当に小さな一歩だろう。だけど・・これこそが、私にとってのクリスマスの奇跡)
(臆病な私が、胸襟を開き、告白し、そして彼の日常を必死に自分の仲間とともに
取り戻した)

彼が、上条当麻が私の手をとりそして、深々と礼をする。
そして訥々と心境を語り始める。

「まず初めに、美琴は思い切り美化したけど・・俺はただのレベル0だ」

「成績もさえない三流学校の平凡な普通の高校生」
「美琴が言った数々の戦績は、決して俺一人の力で成し遂げたものではない」
「ここにいる学園都市の多くの人、とりわけ・・」
俺は美琴の目を見つめる。
「美琴には危ないところを何度も救ってもらった」

「それに、美琴は返しきれない大恩と言った。だが・・僧正以来、いつも美琴は
体を張って、俺の為にそして学園都市の為に戦っていた」
「正直、美琴がそして常盤台の皆さんがここまで必死に俺たちの学校再建に取り組んで
くれたことに言い尽くせないほど感謝している」

「俺は・・まず、常盤台中学の皆さんに心から御礼を申し上げる」

俺は美琴の手をとり、自分の思い人となった少女に感謝を心からはっきりわかるように
しぐさで示す。

「そして12月以来全身全霊学園都市の危機為に勇気を振り絞り、立ち上がった、御坂美琴
へ感謝の意を示しそう」

周囲の、聴衆が万来の拍手で同意を示す。
さらに当麻が話を続ける。

「俺から見て、美琴は紛れもなくヒーローだ」
「俺はそんな美琴を心から・・愛している」

俺は美琴の背中に手を回し、抱擁する。御坂美琴の不器用な、だが真摯な思いは、鈍感
大王の心を貫いて彼女の恋心を認識させた。そして、彼の口からはっきりと明確に思い
を聞けた。集まった、関係者の拍手は鳴りやむことはなく、この小さな奇跡を祝福するようだ。その昂揚した気持ちの中で私は当麻に抱擁されながら滲み出る女としての幸せを
心から満喫する。

私は当麻に精一杯の謝意を締めす。
「当麻・・本当にありがとう」
そして、一息ついて、深々とお辞儀をして感謝を示す。

関係者の拍手は、しばらく止むことはない。
今生まれたカップルの将来を祝福するかのように。そしてそのカップルが、混迷する学園都市を照らす新たな光の象徴であることを示すかのように。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12月24日 (土)18時 展望レストラン 特別室

私は、1月の前にあらかじめこの日の為に予約していた特別室に当麻と入室する。
インデックスは、しっかり事情を説明し、納得の上月詠先生と焼肉パーティに
行ってもらった。正直2人には悪いことをしたが、今日だけは当麻と今後を語り
会いたいので、気持ちを伝え相応の費用を負担した上で了解してもらう。

50階の窓の外には、夜景が広がり、東には新宿新都心や東京駅周辺のビル群まで
見える。机の上にはクリスマスケーキと、贅を尽くした料理が運ばれる。

最先端兵器や、駆動鎧、そして生身で10億Vの最大規模の雷に相当する
電力を扱う超能力者であっても、本質は乙女な私、ロマンチックな場所で

872■■■■:2017/01/26(木) 17:57:10 ID:F1hcrTYI
告白にあこがれがあった。

「当麻、本当にありがとう」
「美琴・・びっくりしたぞいきなり公の場でカミングアウトして」
「ごめんなさい。でも・・当麻への気持ちを隠すことはできなかった」

「美琴は、まだ僧正の事がトラウマなのか?」

「気にしていないと言えばうそになる。だけど・・いやだからこそ」
私は腹に力を籠める。
「トラウマの元をもとに戻した。」
「そうか・・美琴らしいな。AAAを止めるために俺の学校を再建するとか
やっぱり美琴はスケールが違うよ。俺と違ってな」
一歩を超えて私は素直に、そして正直に答える。
「まずは褒めてくれてありがとう。」
「でも、当麻には全然かなわないわ、世界をまるごと救う当麻には」
私は、アップルサイダーを飲みながら当麻を褒める

「美琴は・・俺に夢見すぎだよ。」
「はっきり言えば俺の右手に」
私は当麻の顔を凝視する。いつにもない真剣なまなざしに心打たれる。
その熱い視線に心を震わせながら言葉を発する。

「当麻はいつも言う。不幸だ・・神の加護さえ打ち消す右手で幸福をも打ち消すと」
「でもね。当麻・・私はその右手に救われたのよ」
「妹も、学園都市も・・いや世界さえも」
私はさらに言葉を続ける
「もちろん・・当麻の右手の限界も知っているわ・・」
「それが無敵でないことも、当麻に多くの不幸をもたらしたことも」
「八竜を当麻の意のままに操ることができないことさえもね」

「私は、当麻と違って、一人で世界を救うことなんかできない」
「だけど、・・自分の周りの世界ぐらいは自分で守る、インデックスも当麻も
守る。いつかは学園都市そのものだって守れるようになる」
「当麻の不幸も私も背負う、一緒に不幸に立ち向かいましょう」

当麻が、嘆息したようにしゃべる
「美琴は・・本当に前向きで強いな・・」

「でも・・無理しなくていい。あ・・美琴に期待しないわけじゃない。もちろん
美琴の能力のすごさや、強さは分かっている。」
「だけど美琴は頑張りすぎる」
「美琴は意思が強すぎるから、どんな強敵でも立ち向かうとする」
「でも・・そんなに頑張りすぎなくてもいい」
「立ち止まって周りを見回して、頼ることも覚えてほしい」

「それに・・」
「御坂美琴とその周りの世界は俺も守る」
「だから・・、自分ひとりだけで立ち向かう必要なんてない。俺のことも頼ってほしい」
当麻は私の顔にそっと軽く唇を頬によせる

私の瞼から涙が零れ落ちる。常盤台の子達の前ではみせない私の涙。
その涙を拭い私は当麻へ声をかける。
「ありがとう、当麻、・・ええ・・私は今回の騒動で自分だけの能力でできないことも
力を対処することを学んだ・・だから当麻の力がいるときはもちろん当麻にも頼る」

「当麻・・」
「美琴・・」
私と当麻は立ち上がり、当麻は両手を腰に回し、しっかりと抱擁する。
耳元で当麻は私に囁く
「何があっても俺は美琴も守る」
私も囁く
「私も、当麻の周りの世界を守る」
「そして・・死ぬときは一緒よ」
そして・・2人の距離が0になり、・・熱い接吻の感覚が私の脳裏を駆け巡る。

紆余曲折の末、相思相愛となった2人。アレイスターの負の遺産の解消はそんな
簡単ではなく、多くの困難が2人を襲うだろう。だが・・どんな困難も・・
上条当麻の熱い心と、御坂美琴の技術で乗り越えるだろう。
これは後に統括理事として辣腕をふるい、学園都市を文字通り科学の世界の中心と
して名声を博す基礎を作った2人のなれそめの始まりにすぎなかった・・

FIN

873■■■■:2017/01/26(木) 17:58:08 ID:F1hcrTYI
以上でクリスマスの奇跡4話 (完結)の
投稿を終わります。

874■■■■:2017/02/09(木) 13:29:54 ID:RTuyQ23Y
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 16話:4章―①

9月26日 (土)5時

薄暗い早暁の街並みを、いつもように散歩する。
長すぎた夏は終わりを迎え、乾いた冷涼な空気が辺りを包む。
昨夜は、深夜まで祝勝会でどんちゃん騒ぎで結局床に就いたのは午前2時だった。

生体電流を操作し精神の制御ができる能力は便利なもので、
生体電流を操作し2時間死んだように眠り、何事もなく起きる。
(まあ電極までぶっこんで能力者にもなってこのくらいできなきゃメリットないわ)

婚約者にはその恩恵はなく、いまだに死んだように眠っている。
叩き起こすのも可哀そうなので一人で歩く。私は選手兼警備責任者としての
慌ただしい日々が終わり、いつも通りのリズムを取り戻す

過酷な能力開発時も雪が降ろうが欠かしたことのない朝の散歩。現時点の
自分の位置を確かめ、将来への道のりを再確認する場。20分ほどだが、眠気もとれ頭の回転をよくする
儀式として欠かせないもので私の生活のリズムに組み込まれている。

落ち着いてみると、この街の大人の事情に嫌でも関わる自分の立場に気づかされる。
木原の乱の後処理は何も終わっていないのだから。

・・・・・・・・・・
7時

私は、久しぶりにブルームバーグの経済ニュースを聞きながら、朝食
を作り終える。
ECB(欧州中央銀行)が、金融危機対応で量的金融緩和政策とマイナス金利政策を決定した
以外に特に大きなニュースもなく、淡々と作業を続ける。

久しぶりに、朝食に時間をかける。かぼちゃの冷製スープ、オニオンと大根、ニンジンとレタスに軽くオリーブ油を軽くかけたサラダ。そこにいり卵と軽く焼いたベーコン、カットして軽く焼いたフランスパン
(まあささやかな朝食だけどね・・)

パンとベーコンの香りが食欲を誘う。寝坊助の婚約者を起こしにベットルームに向かう
婚約者は、まだ眠そうだが一応起きていた。

「おはよう目は覚めたようね。朝食ができたわよ」
「ありがとな・・でも美琴て本当タフだな・・」
「まあ体力は自信あるからね・・それに能力で最適化できるし」
「さすがだな・・でも無理するなよ」

私は当麻を連れて食卓へ向かう、久々の休日思いっきり当麻に甘えよう。
一山超えた安ど感が2人を包む

当麻が食卓に座り、目を凝らす
「久しぶりに手間かけたね」
「まあ、普通の朝食メニューだけど」
「いやいや、本当に食欲をそそります」

私と当麻は、呼吸を合わせて唱和する
「いただきます」
15分ほどで食事を食べ終え、一方通行の影響で飲むようになったブラックコーヒー
を飲みながら、私は話を切り出す。昨晩突然急きょ決まった出張その話を婚約者に
告げなければならない。私は、コーヒカップを食卓におき、おもむろに語り始める

「当麻、突然なんだけどフランスへ出張することになった」
「え?」
「私もびっくりよ、本当なら木原唯一が主宰するAI兵器開発の国際学会に統括理事会から
直々のご指名で代わりに私が指名されたわけよ」
「だけど・・」
「代わりがいないそうよ」
「そうか・・まあ美琴ならそうかもな」

「学園都市のAI兵器開発部門の元締めは木原唯一だった」
「その穴を埋める存在は私しかいない。そうゆうわけよ」

「でいつからいつまで?」
「現地時間で9月27日から9月29日までよ。明日正午に出国するわ」
「えらく急だな」
(まあ当麻がそう思うのも、無理はない私が聞いたのも昨晩だしな・・)

875■■■■:2017/02/09(木) 13:32:11 ID:RTuyQ23Y
「で・・風紀委員会副委員長はどうする?」
「まあ、AI任せかな、その辺はいつもと一緒」
私は少しいたずらっ子のような表情を作り、話を続ける

「それと・・当麻にはボディーガードを頼みたいわ」
「はあ?美琴にそんなものいるのか?」
当麻が釈然としない顔をする。学園都市のレベルファイブとは軍隊に比肩する存在
一人で戦争ができるレベル・・ましてやその1位。お遊びで本気のレベル3〜4の
能力者1000名を片手間で捻りつぶした存在だ。

私は多少笑いながら話を続ける
「もともとレベル5の出国には制約があるのよ?それに能力の使用は原則禁じられている」
「何枚の誓約書を書かされて、やっと出国ができる」

「え?まあ・・だけど・・美琴は無視するじゃん」
当麻はイギリスやアメリカで私が少々実力行使をしたことを指摘している。
後で大量の始末書を書かされたことは当麻はしらないだろうけど。

「前わね、緊急事態だったし」
「それに・・あの時と違って今回私はただの科学者としての身分・・」
当麻が、まじまじと私の顔を見つめる。

「どうせ、刑法36条の正当防衛とか言うつもりだろう?」
ふふふふ・・・私は声を出して笑い始める。

「当麻わざと言っている?」
「え?」
「まったく・・そんなの建て前に決まっているじゃない」
当麻がきょとんとしている
「え?」

「婚約旅行したいだけよ・・実際は」
当麻が申し訳なさそうな顔で私をみつめる
「ああ・・そうか御免・・」
私はわざとらしく溜息を聞こえるようにつく

「ふ・・まあもう少し乙女心の機微に敏感にならないと当麻は砂鉄剣か電撃の槍で刺されるわよ」
当麻が苦笑いする
「ああ怖い怖い、そのうち殺されそうだ」

「馬鹿ね・・そんなことするわけないじゃない」
「愛しているからね」
「俺もだ・・」

私は軽口をたたきながら、化粧を整え、出立の準備をする。出張前の準備をするために

玄関で軽くいつもようにキスをかわし出勤する。
・・・・・・・・・・
9時

私は、久々に研究所へ出勤する
約1週間ぶりの出勤だ。実際には、ウエアブル端末を脳に直接脳につなぎリアルタイムで
研究員の研究状況や体調もデータで把握はしているが、やっぱり顔を見たい時もある。

それに今日は、私にとって大事な日でもある。
唐突な人事異動なのだから。

「所長1週間ぶりに出勤しました」
「いや悪いね、フランスなんかに付き合わせて」

「いえ私たちの研究成果が学園都市幹部に認められた成果ですから」
「木原唯一も失脚したしな」
「ええ・・その分面倒なことも増えますが」

「で・・今日は」
所長は立ち上がり机の上の辞令を取り出す
「御坂君へ新たな任務を付与しなきゃな・・」

「御坂美琴:9月26日付けで、統括理事会兵器開発部開発主幹に任ずる」
「それと当面はここの副所長は兼務ね」

「え?」

876■■■■:2017/02/09(木) 13:34:21 ID:RTuyQ23Y
私は絶句する。統括理事会兵器開発部開発主幹?
(まあ確かに・・木原唯一の後任だけど・・いきなり?)
(14歳の若造がやる仕事じゃないでしょ)

所長がにやにや私の顔を眺める。
「まあ御坂君も疑問に思うのも無理はない」
「実は私も昨日付で開発部長になった」
(なるほど・・論功行賞か・・)

私は頭の中で統括理事会の権力抗争の見取り図を描く。
(統括理事会の中で親船統括理事代行が、木原幻生派を重用するという話か・・)
(その子飼いの所長と私を重用すると・・)
(まあ、学園都市のパワーバランスなんかどうでもいいけどね)
まあ、統括理事長でない今所詮は宮使えの身、ありがたく受けることにするか・・
私は、常盤台で叩き込まれた完璧な作法で、恭しく辞令を受理する。

「学会の出発前に親船統括理事代行に会わなくてよろしいですか?」
「いや・・帰国後でいいと本人から聞いた」
「親船さんは、能力者の人権について殊の外、考慮されている」
「本来なら、まだ14歳の御坂君にこれほどの重責を負わせることについて、
代行も忸怩たる思いだが、現状は余人に代えがたいそうだ」
「そうですか・・」

所長は私の顔を眺めながら、少々含み笑いを籠めて話始める。
「ところで、婚約者さんも連れていくそうだが」
「ええ、欧米では夫婦同伴というのがレセプションの決まりですから」
「まあそうだな、南仏はそろそろ秋だしな。まあ婚約旅行を楽しみたまえ」

私は、所長に黙礼をし、話を切り上げる。
急遽決まった、出張前にどうしても済ます行事があるのだから

・・・・・・・・・・・・・
10時 風紀委員会本部

「御坂さん、おはようございます」
私は、ほとんどこの部屋にいないので、実際の主はこの花飾りの女性と言っても
過言ではない。その部屋の実質的な主に私も返礼する

「おはよう、初春さん」
「あれ・・でも今日は休みじゃないの?」
初春飾利ははきはきと返答する
「御坂さん・・犯罪者に休みなんてないですよ」
生真面目で、なおかつ情報システムの構築に全精力を注ぐ彼女は、土日も関係なく
大覇星祭のさいには、ほぼ泊りがけで捜査の管制指揮をここでとっていた。

「まあそうだけど、ほぼ完全オートなシステムだからログ解析と、ウイルスチェックだけ
してくれればもう十分よ。ほぼ1月運用して初期不具合も解消したでしょう?」
「もう一覧端祭までは、1日5分間のリモートコントールでいいわよ」
「まあ釈迦に説法かもしれないけど」

私は、この糞真面目で職人肌の彼女に言い聞かせる。まだ13歳の女の子、少しくらい、気を楽にしてほしい。それに大学院へ入学した私と違ってまだ高校入試だってある。この
能力偏重の学園都市でレベル1の生徒が、進学するのは結構大変な事だ。

風紀委員活動は確かに内申点の底上げになるが、それでもレベル3以下ではきつい、ましてや恐らく彼女が行きたがっている長点上機では・・今のままでは、学力点・・特に語学は大丈夫だろうか?まあ英語くらいは大丈夫だろう。
でも第2外国語はどうだろう?フランス語が今の状況で手が回るだろうか?

名門校の受験はレベル1、2の学生にとってはたやすいものではない。能力値の下駄
がない彼女には相当つらいはず・・だから彼女には早く日常へ復帰してほしい。
だが・・彼女は私の想いとは違う返答を始める。

「御坂さんが今、私の成績や学校を気にされて、仰ったことは感謝します」
「ですが、私はこれに命をかけています。」
普段は、穏やかな彼女が心境を吐露し始める。私はそれを黙って聞く。

「私は・・実戦で司令官ができる御坂さんと違って、これしかできません」
「国際学会を主催できるほどの学識も、ほぼすべての言語を流ちょうにしゃべること
も、できません」
「御坂さんが構築したこのシステムを一から立ち上げるなんてこともできません」

877■■■■:2017/02/09(木) 13:37:06 ID:RTuyQ23Y
「だから、御坂さんが私に預けたこの子を完全なものにさせてください」
「私はこの子に人生をかけています」

正直、過大評価もいいとこだ。
(学園都市のありもののリソースを繋ぎあわえた、アレに人生をかけるなんてね・・)
(だけど・・初春さんは本気だ・・)
私は、腫物をさわるように慎重に言葉を選ぶ
「初春さんありがとう、でも無理はしないでね」

「ええわかっています」
私は、初春さんの表情を確認し、さきほどの激情が収まったことを確認し、話を続ける
「初春さんが倒れたら、佐天さんやご両親に申し訳ないわ」
「だから絶対無理しないで、私だって力になれるから」
「御坂さんありがとうございます。」

初春さんの少しにこやかになった笑顔を確認し、私は離席する。
他に何か所か回らなければならない私は初春さんのサインに気が付くことはなかった。

だが、私はもう少し、初春さんの立場で考えるべきだったかもしれない。
もの見え方や視線が立場によって異なり、その認識のずれがもたらす問題に
だが私のその時点でその問題に気が付くことはなかった。

それが引き起こす問題の深刻さに
・・・・・・・・・・・・・
12時 常盤台中学 談話室

私が社会生活を営む上で必要な資金を拠出するために盟友である食蜂とはどうしても
会う必要があり、いつもようにここで幕の内弁当をテークアウトして食べる。

味の事はよくわからない。ただようは時間の節約。ある程度の品質と栄養バランス
をしっかり管理栄養士が判断している点で安心だ。

まあ、アウトソーシングよね。
時間は無限ではなく、人生は有限。専門家にある程度権限を譲渡しなければならないこともある。私は、統括理事会の兵器開発の実質的な長になった以上、今の広げすぎた手を縮小して、非中核事業を他者へ引き渡す必要がある。

その一つが、投資ファンドの実質的な共同経営者の地位。私はそれを、全部食蜂へ引き渡すつもりを固めている。もうちょっとした国家の年金ファンドに匹敵するほどの規模のそれを、片手間でやること自体に無理がある。

学園都市の幹部、殊に統括理事会や、常盤台の父兄、つまり日本の政財界に巨大なコネを
持つ食蜂なら私の資金も含めてうまく運用してくれるだろう。
所有と経営の分離は近代資本主義の原則、私は一株主の立場として経営からは身を引こう。

食蜂が幕の内弁当を食べ終え、ナプキンで口を拭きながらしゃべり始める

「御坂さん、正気力ある?投資ファンドの経営から手を引くなんて」
「ええ?ああ・・まあコンプライアンスの観点でね」

「統括理事会事務局入りするからァ?」
「ええ利益相反取引とかいわれると面倒だしね」

食蜂のしいたけのような目が、いたずらぽい輝きを発し始める
「御坂さんも変わったわね。権力者になりたがるなんて・・研究と金さえ
あればそれでよかったんじゃないの?」

「別に権力に色気があるわけじゃないわ」
食蜂が愉快げに笑い始める
「権力は目的のための単なる手段とでも」

私は食蜂に聞こえるように溜息をつく
「私は不幸な婚約者を不幸から救いだけよ。究極的にはね」

「え?」
食蜂があっけにとられた顔をする。が、しばらくして私の意図を理解したかのように
少し真面目な顔に変わる。
「なるほど、彼の不幸力の根を断ちたいと?」

私は苦笑いを始める。
「まあ、私の力なんて微力だけどね」
「せめてこの街だけでもきれいにしたいわ」

878■■■■:2017/02/09(木) 13:40:26 ID:RTuyQ23Y
食蜂が音と立てて笑い始める
「御坂さんて難儀な性格ね、御坂さんならなれないものなんてないでしょ。
そうゆう面倒な事をせずに世俗的な成功を求めるだけなら」

はっきり言ってそんなものならもうすでに達成済みだ。
金、地位、研究成果、14歳の少女では過分すぎるほどのそれを
だが、・・・

「そうね・・でもアイツは、上条当麻はそれで止る男ではないでしょ」
「この街が非人道な街であり続ける限り、アイツは不幸であり続ける」
「私はアイツを幸せにしたい」
「誰よりも不幸や不条理を許せない目の前の不幸な奴すべてを救おうとするアイツをね」
「だから私は少しでも内側からこの街を変えたい」

私は水で飲みながら話を続ける。
「簡単な話じゃないでしょ。実験動物と学生を呼んで憚らない
研究者、それを放置し、わけのわからないプランを推進する
独裁者に取り入り得体のしれない実験を、壁に囲まれた閉鎖
空間でマスコミの監視もない、親御さんのけん制もない環境で
ひそひそ行う、いかれた研究者の意識を変えるのは」

「それが私は微力という本当の意味」

食蜂が面白そうに私の顔を眺める
「で、微力と言いはる学園都市1位の御坂美琴さんは
この街をどうしたいの?」

そんなのは簡単な事だ。私ははっきりと言う。
「上条当麻が右手で幻想を壊す必要がない学園都市にしたい」

「で?・・統括理事長でもなりたいの?」
「それが上条当麻を幸福にできるならね・・どんな手も使う。
手段は選ばない」
食蜂が溜息をついて語り始める。

「そうね・・私も旗幟を鮮明しなきゃないかな・・」

食蜂が私の手をしっかりと握る。うんちで握力が25KGくらい
しかないはずなのに
以外にしっかりと握ってくる、まるで決死の覚悟でもあるかと
告げるように

「美琴、私の命と派閥の力を全部貴方に捧げる」
「ありがとう、操折。あなたの力を無駄にしない。」

私と食蜂は立ち上がり、がっちりと抱擁を始める。

人の心理を操るエキスパートと、機械・兵器のエキスパートが
がっちりと手を握る
これ自体がささやかなでも重大な転換点かもしれない。

「上条当麻を、一緒に幸せにしましょう」
「私達の力で」

こうしてささやかだが、重大な意味を持つ同盟が成立し、私は
食蜂に深々と礼をして退出する。顔さえ覚えてもらえない少女は、それでも
彼を信じて、その婚約者である
私ともともに立ち上がる。

・・・・・・・・・・・・
16時

私は、学会出席前に必要な挨拶をすまし、自宅へ戻る。
婚約者はリビングでPCの端末でせっせと、学校の課題をこなしている。
だいぶ、学習も慣れてきたのだろうか、動作が洗練され板についている。
その光景が微笑ましい。
私は婚約者がやる気を出してくれたことを素直に喜ぶ。

「ただいま」
「おかえり」
「どう?はかどっている」

「ふ・・、まあ徐々にですよ・でも少し勉強も楽しくなったかな」
「よかった」

「でもさ・・前に美琴が言った通り小さな結果積み重ねは大事だな」
「そうね。どんな小さな一歩でも自発的にやることが大事よね」

「まあそれも美琴の開発したアプリのおかげだけどな」

879■■■■:2017/02/09(木) 13:45:02 ID:RTuyQ23Y
「それも当麻がやる気をだしてくれなきゃ意味がない。
当麻が一歩前に進んでくれた」
「それがどんな小さな一歩でもね」
「だから私は全力で当麻を支える」
私は立ち上がり、こぶしを握り、上条当麻の顔を見つめる。

「美琴・・」
当麻がほほえましい表情を作り私を見つめる。
「ああそうだな、2人で不幸を卒業することにした」
「小さな幸福を積み上げ、幸福のためを作るだったな」

私は、当麻の言葉にうなづき、さらに言葉を繋ぐ。
「そう。ヒロインを救う主人公が不幸だなんて、シャレにならないわ」
「ジャンヌ・ダルクのように一つの国家を奇跡で救い、死後聖人になっても、処刑されて
は意味がない」

「私は、当麻にはガンジーやマンデラのように最後は成功し、盛大な葬式の元死んで欲しい」
「私は、そのために必要な事はなんでもする。能力・人脈・財力・科学知識すべてを捧げる」
「だから・・ともに荒海へ漕ぎ出そう」

私と当麻は立ち上がり抱擁を始める。無言で2人の体温を、吐息を、鼓動を感じながら
(もう言葉なんていらない)
熱い何かが、まるで生体電流の奔流のように私の体を貫いていく。
(やっぱり私にはコイツしかない。それは理屈じゃない)

だから、・・私はこいつを、上条当麻を何があっても支える。

限界なんて知らない、意味ない、この力が光り散らすその先まで

続く

880■■■■:2017/02/09(木) 13:49:18 ID:RTuyQ23Y
以上とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 16話 4章―①の投稿
を終わります

881■■■■:2017/02/11(土) 00:18:21 ID:3blkAcc6
ここも投稿者減ってるけどガンバって最後まで書ききってくださいね
陰ながら応援してます

882■■■■:2017/02/14(火) 18:11:39 ID:9vY1CdV.
感想ありがとうございます
完結まで頑張ります

883■■■■:2017/02/14(火) 18:22:41 ID:9vY1CdV.
とある乙女のバレンタインデイ・キス 1話

私は忘れていた。
記憶から抜け落ちていた。恋する乙女にとって最も重要なあの日を

これは、明らかなチョコレートメーカーの戦略に出遅れたうぶな、恥ずかしがりの少女の
決死の告白とそれに伴う大騒動を書き残したものである。

2月13日(月) 午前7時

(正直眠い・・)

私は、寮生の前であくびを噛み殺しながら、急いで朝食を食べる。

12月の熱波事件、クリスマスの最後の審判事件で壊滅的な大損害を
受けた学園都市。その傷跡は決して浅くはなかった。

幸い学びの園は、熱波事件の教訓で私と食蜂が防備を固め、クリスマスの最後の
審判事件での打撃を受けず、年明けに授業を再開することができた。

私は、上条当麻と命を懸けた果し合いの末、彼の説得に応じ、AAAを手放したが、空白
部門を除き、AAAの単なるAIM拡散力場の投射装置としての機能を利用した駆動鎧と
して建設工事に活用する装置へ改良し、9割以上破壊された学園都市の再建事業のお手伝いを行った。アレイスターの隠し遺産約100兆円を利用し、数万もの土木用駆動鎧を効率的に運用することで、急ピッチに再建工事は進み、10年かかると言われた再建工事は
2月10日(金)に無事完了した。

ローラの原型制御崩しによる暴露戦術により、アレイスターの過去の非人道的な実験のほぼすべてが明らかになり、魔術師、反科学原理主義者の特攻攻撃を受けた最後の審判事件。

その中で唯一生き残った学び舎の園。私は多少なりともそこへ避難した
200万人を守り抜くことに貢献できた・・とは思う。

だが・・上条当麻の最後の決戦に、彼一人を生かせたこと。あの子とともに、見守ることしかできなかったことが、釈然としないわだかまりを作ったことは事実。

もう周回遅れではなかったとは思う。原型制御を外され、この世の真の姿は分かって
いたとは思う。だが・・AAAの空白部分は理解できても、結局彼の心を私は理解できて
いたのだろうか?そんな空虚な気持ちを補うように必死に働いたのだろうか?

私は、多くの学び舎の園の学生とともに、まるで何かにとりつかれたように再建工事を
成し遂げた。・

だが・・なぜか・・いや・・意図的にか・・彼の事を・・忘れていた。

無力な自分に触れる事を恐れていたのだろうか?
それとも、彼の真の姿に向き合うことができなかったのか?
それは私にはわからない。だが、約40日本当に忘れていたのだ。

・・・・
食後、疲れの溜まった私は5分ほど食堂でうとうと眠っていた。

疲労というよりは、成し遂げた達成感による、安心感なのか心地のよい疲労感。
張りつめた糸がまるでぷっつり切れた、安ど感なのだろう。昨日は16時間以上
寝ていた。それでも・・まだ眠気は取れない。

意思の力で起きようとするが、体がそれを拒否している感じだ。
(はあ・・こんなことなら、生体電流を操作して無理やり疲労を取ればよかった・・)
私は、ここ2日の選択を悔やむ

私は生体電流を操作することで、強引に疲労を解消することはできる。
現に正月以降の復興工事では、ほぼ2時間程度の睡眠を40日続けていた。
それを強引に生体電流操作という力技で乗り切った。

でもすべてが終わった今それをする気にならなかった。私は自分の体力には過信というべきほどの自信があり学校では化け物級の体力と呼ばれるほどだから、普通に乗り切れると思っていた。だが体の隅々までたまった疲労は想像以上だった。

結局丸2日休んでも全く体調が回復しない。
(所詮は・・生身の女子中学生か・・ああ・・能力使えばよかった・・)
(本当・・今日は休みたいけど・・いっそ風邪ひいたことにして休むか・・?)
私は、ずる休みを思案し始める。

884■■■■:2017/02/14(火) 18:24:24 ID:9vY1CdV.
(だけどな・・今日は復興式典だったしな・・一応学生代表なんて大役を
しなきゃないし・・)

結局は、周囲の期待や要望に流される私は、ずる休みという選択を拒否し、のろのろと
朝の支度を始める。
(ああ・・面倒くせ・・・食蜂に押し付ければ・・な・・)
私は、式典で生徒代表を拒否し私に押し付けたあの女の顔を思い出し苦笑いを浮かべる。

確かに、学園都市復興事業で、事業計画、施工管理、駆動鎧の作成・制御・運営に貢献したことは自分でも達成感はあるし、誇りには思っている。

自分は多くの学生の先頭には立ってはいた。だけどそれは電子制御系の最高の
能力者として当然のことをしただけにすぎないのでは?なんて自分では思っている。

あの上条当麻は、右手ひとつで、プランを破壊されたことに逆上し、「すべて」を壊そう
とした独裁者を完全にぶち壊した。そんなことは彼一人にしかできない。

( はあ‥結局は蚊帳の外か・・)
負の感情に包まれそうになる。

最後の審判事件の流れ弾の襲来から学び舎の園へ避難した約200万人の
避難民を守ることくらいしかできない。それ以上の事は・・私にはできなかった。

だけど・・無力感にさいなまされる必要なんてない
そんなことは分かっている。私は一生懸命自分にできることはしたつもりだ。

誰にも後ろ指刺されることもない。市民を暴虐から守り抜き、そして灰燼に帰した学園都市
を再建した。これ以上、14歳の女の子に無慈悲な神は何を望むのか?

そんなとりとめもない非生産的な後悔の念を頭に抱いていた私は、縦ロールが似合う
知り合いの問いかけによって目を覚まされた。

「御坂さん、どうかされましたか?」
「え?ああ・・最後の審判事件を思い出していた」
「まだうなされますか・・?」
「ええ・・でも私は無我夢中だったけど、他の子のほうがつらいんじゃないの?」
縦ロールさんが首をかしげる
「でも御坂さんと食蜂さんのおかげでこうして生きています」
「は・・本当ね・今もこうして自分が生きていることが信じられないわ」

私は、誰にも知られることなく、一人でこの宇宙そのものを崩壊から救った上条当麻を
思い浮かべる。だが・・そのことを知っているのは、数人くらいしかいない。
「でも・・御坂さんはすごいですね・・本当、200万人を生物兵器や隕石の襲来から
守り抜き、再建工事の陣頭指揮をとられて・・」

上条当麻の功績は・・すべて伏せられており学園都市でも限られたものしか知らない。
(私なんてたいしたことはしてないけど、・・でもアレは知られない方がいいだろうな)
私は一般人の無責任な会話に適当に話を合わせる。

「まあ、でもみんなの協力のおかげよ・本当」
縦ロールさんは、にこやかに話しを続ける
「御坂さん、明日のバレンタインデーに女王が御坂さんの慰労会を開くのでぜひ出席していただけませんか?」

私は、すっかり仲良くなった食蜂の側近に、肯定の合図をする。
「え?ああそうね。じゃ・・あとで食蜂によろしくね」
目もすっかり覚めたが・・私はある単語を思い出す・・
「バレンタインデー?」
「え?御坂さんまさかお忘れでした?」
「ああ・・そうか・・」

私はすっかり忘れていた。あの男とともにチョコレート会社の策略で始まった
行事の事を・・
(くそ・・出遅れた・・なんの準備もしていない・・)
私は、慌てて部屋に戻ろうとする縦ロールさんを呼び止める
「悪い・・急用を思い出した・・慰労会はパスするわ・・」
縦ロールさんが悲しそうな顔をする。
「え?ですが・・主賓の御坂さんが来ていただかないと・・」

正直悩ましい・・少し前ならともかく、今は食蜂とは良好な関係を構築している。
あの木原唯一の乱以降、盟友のような関係になりつつある。そんな食蜂の顔に泥をぬる
事態は避けたいところだ。

885■■■■:2017/02/14(火) 18:26:39 ID:9vY1CdV.
(はあ・・なまじ立場とか、目立つとつらいものね・・公的な立場を持つという事は)

正直フットワークのよさを維持するために帰宅部や孤高を維持していたが、一人で対処
できない異常事態に対処するために、派閥のようなものを作り、食蜂と手を組みかなり濃密なネットワークを形成した自分には無視できないしがらみがある。
(はあ・・・めんどくさ・・)
(しょうがない・・狙いは見え透いているがあんな奴でも今は「親友」だ)

私は、折衷案を提示する。
「そうね・じゃ・・途中で抜けると伝えて」
縦ロールさんが明らかにほっとした顔をする。
「御坂さん本当ありがとうございます。では女王に伝えますので、
明日は宣しくお願いします」

( ああ・・中途半端にえらくなると大変だな・・)
学園都市を救ったヒロインなんて実体に合わない過大な肩書が独り歩きを始め、身動きが
とれなくなりつつある自分。公的な立場を今まで嫌ってきたがそれが自分を縛る。

(昔のように気楽になりたいなんて・・無理だろうな・・)

本当憂鬱な気分になる。自分が望みもしない、
学生のトップに祭り上げられ、食蜂とともに権威が失墜し、親御さんの信頼を失った学園都市の最後の希望としてコテコテに飾りつけられる。アレイスターの負の遺産が、その呪縛が私の進路をふさぐ。
(はあ・・たかが客寄せパンダならよかったけど・・正直救世主扱いはつらいわ・・)

だけど・・この崩壊した街がなければ、能力者は生きられない
だから・・私は彼との約束を守る・・「御坂美琴とその周りの世界は自分で守る」という
約束を

私は気を取り直し、背筋を伸ばし、顔を叩く。
「さあ・・御坂美琴・・自分の勤めを果たすのよ」

なんとか、学生たちの生存本能だけでかろうじて生き残っているこの街を支えるために
私は微力を尽くす。
・・・・・・・
親船統括理事長代行と学園都市の最高幹部が列席する中の復興式典はしめやかに
執り行われた、灰燼に帰した学園都市・・だがわずか40日で復興させた
ボランティア・・殊にその中心で尽力した私は最大限の賞賛を浴びた。

だが、本当に賞賛を浴びるべき存在の彼は賞賛を浴びることがない。
その現実に私の心は揺れ動く。

だが、公式には自殺したアレイスター・クロウリーが
実際には宇宙ごとこの世界を抹殺しようとした事実とそれを防ぐため右腕一つで特攻
した彼の功績は永久に表には出ない。

私は叫びたい・・本当に祝福されるべきは上条当麻だ・・
だが・・彼は・・その彼は・・

私は不意に思い出した。なぜ・・上条当麻を愛していた私が、莫大な感情で闇落ち
すらしかけた私が彼を忘れていたか・・

上条当麻は・・・昏睡状態になったことを・・その事実に耐えられず、私が彼を忘れた
事を・・

・・・・・・・・
私と命を懸けた果し合いの末、私を黙らせ完全に覚醒した上条当麻は
アレイスターとの最終決戦の後、身も心もボロボロになり、昏睡状態になった。

まるでHPを使い果たしたように。シスターインデックスの回復呪文も全く効力を示さず、蛙顔の医師の治療も徒労に追わり、すべてを終えた彼はすやすやと笑顔を浮かべ眠っている。

その光景をフラッシュバックのように思い出し、あのシスターが泣き崩れた
光景がまざまざと脳裏によみがえる。なぜか・・いやその光景に耐えられなかった
私は、地獄のような、隕石や異形の化け物どもが、学園都市を蹂躙するそんな
状態に耐えた、雷神になり、身をもって盾になったそんな私が、上条当麻の凄惨な
その姿に耐えられず、気絶したことを今思い出す。

(アイツはどうしているだろう?・・)

886■■■■:2017/02/14(火) 18:28:52 ID:9vY1CdV.
常盤台の仲間達と表彰を受けながら、私はアイツの顔を思い浮かべる。
傷つき、しかも賞賛されることもない、アイツ。
75億人類のすべての業をしょって神降ろしの術式を飲みつくした上条当麻
その真相を唯一見た私がなぜかその事実を失念していた。
なぜだろう?本当に40日前の自分が理解できない。

まあいい・・しでかしたことはしかたない。私は、ひな壇の学園都市のお偉方を
眺めながら、挽回計画を立て始めた。ほかの子達に勝つために・・
・・・・・・・・・・・・

式典がつつがなく終わり、常盤台の理事長や校長、教職員の賞賛を受けつつ
私は式場を去り、忘れてしまった上条当麻へ会う準備をする。

だが・・上条当麻は信じ難いことにまだ昏睡しながら昏睡中だった。

昔の、12月以前の私と違うことは手段を選ばなくなったことだ。
学園都市復興ボランティアの長のような地位に祭り上げられた私は、書庫や
軍事クラウドへのフルアクセス権を有している。そんな私にとって一学生の
所在を掴むことなどたやすい。書庫にアクセスし、上条当麻の居場所を掴む。

同時に病院のサーバーにアクセスし、電子カルテも読み込む。
(いまだに・・原因も不明?あのヘブンス・キャンセラーが?)
私は信じがたいアイツの惨状に吐き気を覚える。

正直昏睡状態なら彼に会ってもしょうがない。だが・・
( やっぱり顔を見たい・・)数少ない真相を知る、もっとも彼に
近い人間として・・

・・・・・・・・・・・・
私は、あらかじめ掴んでいたアイツの病室へ急ぎ足で進む。

アイツは病床へ横たえ相変わらずスヤスヤ眠っている。蛙顔の医師の話では、いろいろ覚醒措置を試すが、カルテに書かれている通り起きない。ということだ・・

まるで上条当麻の魂が現世への復帰を拒否しているかのようだ。
心電図、血圧、脈動にはなんら問題なく、意識だけが現世への復帰を拒んでいる
そんな感じだろうか?
(ふふ・・だらしない顔・・)
まるで安ど感に包まれた彼は本当にすこやかに、すやすや眠っている。
(不幸な彼を現実へたたきおこす権利は私にあるのだろうか?)

私は反問する。アイツは本当に起きて幸せになれるだろうか?
不幸しかしらない上条当麻、その苛烈な人生にアイツは、アイツの魂はもはや
耐えられなくなっているのではないか?

だとしたら・・そのままアイツが自分の意思で起きようとするのを待つのが正しい
選択じゃないか?そう思う。

私はアイツの見舞いに持ってきた日持ちのきくチョコ・クッキーを机の上におき、そろそろ
完全下校時間も近いので帰ろうとする。

だが・・思わぬ声を聴き足を止める
「御坂美琴ちゃんですか?」
「あれ・・月詠先生?今日は・・」
身長135cmの小さな博識の教師を私は見つめる。
「上条ちゃんは私の大事な生徒です、なので毎日通っています」

「そうですか・・」
「上条ちゃんは、御坂ちゃんを大変気に言っていました。アイツはずごい、アイツには
何度も助けられたと」
(へえ?アイツがねえ・・私の事をそんなに評価していたんだ・・意外だな・・)
思わぬアイツの高評価に私は顔にほっこり笑顔を浮かべる。
だが、その後の月詠先生が語った思わぬ事態が私を動揺させる。
「正直・・上条ちゃんは今微妙な状況です」
「へ?」
「上条ちゃんは今留年の危機です」

「へ?・・でも彼は最後の晩餐事件の被害者では・・」
「ええ他の真面目に通っていた子には何ら問題はありません」
「ですが、上条ちゃんはもともと熱波事件の前から留年の危機でした・・」
「私は、上条ちゃんを守るためにいろいろやっていました。ですが・・今のままでは
、もうかばいきれません」
私はおかしくなる。75億人を3度も救った彼がたかが出席不足だけで断罪される。

887■■■■:2017/02/14(火) 18:29:49 ID:9vY1CdV.
そのしょうもなさに、呆れる。正当に評価できない大人とはいったいなんだろう・・
「ですが・・上条当麻は多くの事件で人類を・・・」
言いかけて私は口噤む・・人類を抹殺しようとしたアレイスターの所業は触れる事さえタブー私はそのことを改めて思い出す。
月詠先生はさらに痛いところ突いてくる。
「御坂ちゃんは、学業成績はどうですか?」
「まあ・・悪くはないとは思いますが・・」

「奥ゆかしいですね・・御坂ちゃんは・・ものすごく良いの間違いではないですか?」
「御坂ちゃんは人助けと自分の立場をちゃんと両立させています。しかも文句のつけようがないレベルで」

「ですが・・」
「ええ・・、ですからここからは私のお願いです」

「御坂ちゃんに上条ちゃんを託したいのです・・」
月詠先生がロリ顔に真剣な表情を浮かべる。
「少し具体的な話をしましょう・・正直期末試験で80%以上の評点がないと
留年させるしかありません」
「まず・・上条ちゃんを叩き起こし、しかも後2週間で80%の評点を取らせる
そんなことが可能なのは学園都市で御坂美琴しかいない・・とそう思ったわけです」

「ですが・・」
「御坂ちゃんは上条ちゃん大好きですか?」
まるで私の恋心などお見通しなようにみかけ10歳のロリ教師は話を続ける。
「私は残念ながらクラスの担当にしかすぎません・・ですが・・御坂ちゃんはどうですか?」
月詠先生が深々とお辞儀をする
「今上条ちゃんを救えるのは御坂ちゃんしかいません」

「月詠先生顔を上げてください」
「私は上条当麻に何度も命を救われました。ですから先生に頼まれなくても、私は上条
当麻を助けるためになんでもします・・ですが・・・」
「正直、あのシスターがいては・・無理ではないですか?」

「御坂ちゃんはなかなかするどいですね」
「そういうと思っていました。上条ちゃんが危機状態を脱するまで私が預かります」
(もう受けるしかないだろうな・・アイツは私の命の恩人だ)
「分かりました、微力を尽くします」

私は月詠先生に深々とお辞儀をして退室する。
まずはアイツを叩き起こす、そんな決意を秘めながら

私は、冥土返しの医師から上条当麻の症状を聞き、すべきことを頭に描き始める。
恐らく生半可ことでは起きないだろう。

普通の医学的な方法では無理だ。
しかもインデックスさえ方法を思いつかないとなると・・

(食蜂でも使うか・・それでだめなら・・・)

私は、アイツを、アイツの留年回避のためになんでもすると誓う
そして、・・その手段は選ばないと・・
まるでこの世を捨てたアイツを、この世へ戻すために・・私は走り始める。

2話へ続く

888■■■■:2017/02/14(火) 18:30:42 ID:9vY1CdV.
以上とある乙女のバレンタインデイ・キス 1話
の投稿を終わります

889■■■■:2017/02/17(金) 19:46:12 ID:xVLGpr5E
歴史上では高卒や中卒で総理や社長になった人とかもいるし
上条当麻の実績や能力や学園都市暗部での扱いなどを考えると
中退でも金や職などには困らないんじゃないかなあ。

890■■■■:2017/02/24(金) 19:03:00 ID:XuQ7L.6g
感想ありがとうございます
おしゃるとおり人間の価値は学歴では測れません

が、学歴のない人間は実際には苦労するのは事実だと
私は思います

891■■■■:2017/02/24(金) 19:05:01 ID:XuQ7L.6g
とある乙女のバレンタインデイ・キス 2話

2月13日(月) 夕刻17時

私は、食蜂に会う前に大丁の提案を纏める。
あの女にはノープランで会うのは危険で誘導されるのも嫌なので
こっちペースで進めることにする。
正直食蜂の力を借りるのは癪だが、他に手段もない以上
選択も余地もない。そもそも上条当麻はなぜ昏睡しているのか?
心電図にも脳波も異常もない、つまり自分の意思で起きることを拒否している。
そういう結論になる。

だとすると、叩き起こすというよりは、アイツがこの世へ復帰する意思を促すよりほかに
ないという結論になる。クリスマスの最後の審判事件とそれ以降の学園都市の復興事業
で気が付いたことだが、アイツのアレイスターによって作られた不幸と、オティヌスとの
対峙で無限ともいえる期間繰り返された一方的な虐殺、アイツはその不条理に耐えた。

私は怒りがふつふつ沸いてくる。何がこの世の基準点だ。何がこの世の審判者だ。
だけど、それは自分にも突き刺さる。自分も含めて誰もアイツの苦悩を理解できていな
かった。アイツの右手を過度に信頼し、知らないうちにアイツなら何があっても大丈夫
と思っていなかったか?

そんな周囲の過度の、過信とも言うべき信頼が知らず知らずのうちにアイツを追い詰めて
いたのではないか?後悔の念が私の脳裏をよぎる。もっとアイツに触れ、アイツの悩みに
アイツの立場に立って考えることはできなかったか?

だけど、覆水盆に返らず、起きてしまったことはどうにもならない。
これから、自分の本当の気持ちを伝えて行こう。そのためにはどんな手を使う。たとえ
自分が苦手な奴だろうが、そんなことは関係ないのだと、自分を納得させる。
・・・・・・・・・・・
私は再建された常盤台中学の生徒会室にいる。食蜂が副会長で私が会長だ。
あの女は、私を焚き付け、「この非常時には御坂さんの野蛮力が必要なの」
なんていい半ば強引に生徒会長に据えた。
(まあそのおかげで金集めもボランティア集めをはかどったのは事実だけど・・)

私は、この女が苦手だ。どちらかと言えば余り関わりたくない。ドッペルゲンガー事件
以来腐れ縁になりつつあるがその関係性にはさほど変わりがないと思っている。
だが、・・上条当麻の事なら話は別
それに、これはおそらく私だけでもダメ、食蜂だけでもダメだろうから・・

私は、会長席に座りながら対面の女に話かける。ほかの委員は席を外している。
「慰労会の件、ありがとうね」
私はとりとめもない世間話から話を始める。
「で、今日はどうゆう風の吹き回し、御坂さんからわざわざ私に依頼ごとなんて・・意外力
一杯ね」
私は席が立ち上がり、防弾仕様の窓から外を眺める。改装時に、木原唯一襲撃や熱波事件
の教訓から、学園の主要部分は核戦争を想定した作りへ私が改装した。

「アンタの事だから知っているだろうけど、上条当麻が昏睡状態なのよ」
食蜂は笑い始める。
「え・・まさかァ知らなかった?」
「意外?正直必死だったのよ・・200万人の家を失った学生や教師のためにこの街の日常
を取り戻す活動でそれ以外の周りが見えていなかった」

「そう?・・」
私は自分の古傷をえぐりそうな食蜂に待ったをかける。
「それ以上は言わないで。ええ・・私は彼の悲惨な姿に心を閉ざしていたかもしれない」

それまでいたずらっ子のようにクスクス笑いをかみ殺していたあの女の表情が真剣なものに変わるのを私は見逃さない。

「それでエ・・御坂さんは今さらどうしたいの?」
「彼は科学力的な方法では覚醒しないわよ。もちろんオカルト力でさえもね・・」
私は溜息をつく。まったくこの女の情報網には適わない。いつも私が知らない情報を
どこからかかき集めて私を焚き付ける。
(それでも・・コイツも結局常識の範囲を超えない・・)

「ええ・・普通の方法ならね・・」
私は、低音で少しドスを効かした声に変える。
「だけど・・アイツを殺す気でやればどうかな・・」
食蜂がぶるぶる震え始める
「正気?」
「このままでは・・アイツは、人生を踏み外すわ・・人助けの末にアイツが人生をふみはず

892■■■■:2017/02/24(金) 19:07:02 ID:XuQ7L.6g
すような事は絶対あってはならない」
「だから私がアイツを叩き起こす」

食蜂が驚いたような半ば呆けた顔で私を見つめる
「本気なのね・・」
「ええ、大嫌いなアンタに頭を下げるほどには・・ね」
私は食蜂へ深々と頭を下げる。

「残念ながら今回も微力な私の力では、上条当麻を正気に戻すことができない」
「だから今回も食蜂操祈の全力を貸してほしい」
2人の間には微音の空調音のみしか聞こえない。

沈黙を破り食蜂が声を発し始める。
「御坂さん・・頭をあげて・・御坂さんは簡単に頭を下げてはいけないわ・・」
「私を変えた彼のことだもの、私も微力を尽くすわ・・」

あの飄々とした食蜂の目から涙が零れ落ちていることを私は確認する。
(食蜂も・・私と同じように彼に救われた一人だから・・)
「ありがとう」
食蜂は目から流した液体をさりげなく、ハンカチで拭き私に囁きかける
「で、・・具体的にはどうする気?」
「科学もオカルトを見逃した彼をどうやって救う気?」

私は、食蜂の服越しでもはっきりわかる豊かな胸を眺めながら口を開く
「ね・・なんで上条当麻は覚醒を拒否しているのかな・・」

「それは・・・・」

「脈動も呼吸も脳波も正常、普通なら8時間も睡眠すれば起床する」
「これは、医学の問題ではないと思うわよ。」
「だから・・これはどっちかというと食蜂の領域だと思うわ・・」
食蜂は慌てて、否定し始める。あらゆる幻想をぶち壊す幻想殺しに洗脳などできない
とでも言いたいように。

「だけど・・御坂さんも知っているように彼の洗脳はできないわよ・・」
「ええ・・全身に効果が及ぶ能力は彼に効き目はない。だけど、確かテレパスなら
私と同じく、貴方の能力も上条当麻へ届くはずよ・・」
「え?・・」
「ダメ元とも言う・・諦めることを確定する前にやれることは全部やろう」

「分かっているわよ・・」

・・・・・・・・・・・・・
病院 2月13日 20時

アイツは、上条当麻は本当に幸せそうな顔で目を覚まさない。
(本当に幸せそう・・正直・・コイツにとって何が幸せか・・私にはわからない・・だけど
私は幸せになるためにコイツに起きてほしい)
それは、私のエゴかもしれない。だけど・・コイツには笑って生きてもらいたい。
それは隣にいる食蜂も同じだろう。それだけでなく、コイツに救われた多くの
不幸な運命をコイツに救われた女の子達の願いだろう。

私はコイツの左手を握る。
「さて始めるわよ」
私は頭に紫電を蓄え、数億Vに達する静電気を作り出す。
「まずは・・これを左手に流す・・」
私は右手でアイツの左手を掴み、左手で頭を触り電流の回路を作る。
青白い眩い輝きが当たりを包む。

「そろそろいいかな・・」
私は夏休みのレベルアッパー事件を思い出す。木山春生を電撃で気絶させた後で
偶然つながった電気回路ごしに、伝わった彼女の記憶。

もちろんそれだけでは、上条当麻の心のドアを開ける事はできない。
だから、
「食蜂・・今回路がつながっている・・私の心の声を彼につなげてくれる・・?」
食蜂が、ち密な操作で私の心の声を上条当麻へ繋ぐ。

食蜂には足りない電気的な出力を私がこじ開け、私ではできないち密な精神回路制御を
食蜂が行うことで、上条当麻の強固な精神に風穴を開ける事に成功する。
とはいえ、強大な電流でまだ心をこじ開けただけにしかすぎない。
私は精神を研ぎ澄まし、繋いだ回路で呼びかけを始める。

893■■■■:2017/02/24(金) 19:08:29 ID:XuQ7L.6g
「よし・・」
莫大な情報が彼の心の声が聞こえる。

多くの不幸な少女を救った記憶。
何度も強大な力に蹂躙され、それに抗い生き残った記憶。
魔神オティヌスに幾万回と殺された記憶。そして、あらゆる時空・次元を
破壊しようとしたアレイスターの狂気。彼の狂気のような経験が奔流のように流れ込んでくる。

分かっていたつもりだった。彼の置かれた理解しがたい異様な環境。彼が立ち向かってきた
この世のあらゆる悪意。その重苦しさに私の心は壊されそうになる。彼が最終局面で私の
参戦を拒否した本当の理由を始めて悟る。直接触れたわけでないのに、少し触っただけで
押しつぶされそうになる。

だけど・・ここで私が折れるわけにはいかない。全人類のため?
いいや、そんな御大層な物じゃない。
救ってくれた幾万の不幸な少女なため・・それは違う。
そう・・全部自分の為だ。だから私はそのすべてをかけて今度こそ彼を救い出す。

・・・・・・・・・・・

正直楽じゃなかった。私は自分の心を侵食する悪意にくじけそうになる。
「くそ・・このままじゃ飲み込まれる」
彼の引き籠った心を邪悪な心が包み込んでいるのがはっきりわかる。
「食蜂・・私の脳を刺激して」
私は生体電流を操作し、私への精神攻撃を物理的に破壊する。

電圧・電流を精緻に操作し、彼の心へ悪意を植え付けている回路を特定し、超電磁砲の
イメージを形作り攻撃を加える。細胞と神経細胞の単位で超電磁砲に見立てたナノ単位の
電磁パルスを使い外科手術的に粉砕する。

だが・・破壊しても破壊してもまるでガン細胞にように再生され、一向に減る気配はない。
(AIMバーストやドッペルゲンガーと同じ・・再生の核を壊さない限り何度も復活する)
私は、食蜂にサインを送り、微細に回路情報から彼に負のイメージを送る核をサーチさせる。
私はその情報を読み取り、素粒子の単位で位置を特定する。
(魂とは言ったところで、脳細胞なしに心は成り立たない。私はそのエネルギーの核を
叩く)
正直私の脳細胞もきつい、普段しないような、数百億を超す脳細胞とその脳細胞から
張り巡らされたニューロン、小さな宇宙とさえ呼ばれる複雑極まりない世界を、慎重に
なおかつ、私の脳への精神攻撃を防ぎつつコアをサーチする作業は目もくらむ作業だ。

雨あられのように悪意の塊が高速回転する電磁シールドに見立てた防壁に突き刺さり
まるで精神内とは思えない程の衝撃を感じる。だけど・・

食蜂だけなら出力が足りない、私では細かな操作ができない。不足するものを補い合った
2人の少女の協業は、ついに・・悪意のコアを見つけ出す。

「みいつけた」
「これがコアね・・」

電圧・電流をち密に調整し、周りに被害を与えずかつ完全に破壊する超電磁砲に見立てた
電磁パルスを形成する。
「アンタを追い詰めている悪意を粉砕する」
「いけえ・・」

閃光が辺りを包みコアの破壊を確認する。
「終わったわね・・」
すべてが終わった私は、精力を使い果たしへたり込む。
(久しぶりの電池切れね・・)

だけど・・本当に良かった・・
(今の自分でやれることはすべてやった)

・・・・・・・・・・・・・・・
2月13日 23時30分 病室

時間にして20分くらいだろうか・・へたり込んだ私は意識を取り戻す。
彼は・・どうなったんだろうか・・

まだはっきりしない意識の中・・私の目は彼を捉える。
あ・・私は兆候を見逃さない。生き物のように瞳孔が動いている。
(よかった・・)

894■■■■:2017/02/24(金) 19:10:55 ID:XuQ7L.6g
「御坂か・・」
「おはよう・」

「ふ・・しばらく・・寝てたな・・生まれて初めて・・ここちよく寝れた」
陰惨な感情から解放された彼はとてもまばゆく見える。

「ところで、御坂・・俺は何日寝ていた・・?」
「えーと51日になると思うわ・・」
「は?・御坂今なんて言った」
「アンタは51日寝ていたのよ・・」
「嘘だろう・・そんなバカな・・」
つやつやとしていた上条当麻の顔色が変わる。
「御坂今何月何日だ・・?」
「え・ああ‥2月13日 のもう後25分で2月14日になるわ」

上条当麻の顔に落胆の表情が浮かぶ
「うそ・・」
「まじで?」
「そうか・・」
上条当麻が血相を変える。
「はあ・・とうとう・・ダメか・・」

世界を3度も救った英雄がたかが日常のそれも底辺校の期末試験で
思い悩むそのギャップに可笑しさを隠し切れない。

「ふ・・はははは・・」

「へ?」

「ふふ・・感謝してほしいわね・・」
「上条当麻の顔が驚きに包まれる・・」

「それは・・」
「まあ・・世の中には知らないことがいいこともあるんじゃないかな・・」
「まさか・・」
「ふふ・・細かいことは気にしないの・・」
私は、彼の学校のサーバーを改竄し、出席日数の記録をごまかそうとした。
(だけど・・そんなことは上条当麻が喜ばない)

「いや・・御坂の能力のすごさはよく知っているし、絶対それがバレないこともわかる
けどさ・・」
「だけど・・不正はよくないと思う・・」
「もちろん、俺の留年を回避するために御坂がそんな事をしたことは感謝する」

「だけど・・俺のために御坂に犯罪に手を染めさせるわけにはいかない」

「ありがとう。だけどね。・・」
「正直アンタは日本とか学園都市の基準で何か誇れる実績がある?」
「アンタが学園都市はおろか世界を3度救ったなんてさ・・誰が評価するの?」
「それを評価すべきアレイスター・クロウリーはもうこの世にいないのよ」

「それは・・」
「もちろん私にとってアンタは命の恩人よ。それにイギリス清教とか・・アンタを慕う
人間は少なく無いでしょう・・」
「だけどそれがアンタの・・」
私は敢えて核心はつかない。またトラウマをこじらせても困る。
「まあ・・ここから先は言うまでもないわね・・」

「ああ・・御坂の言う通りだよ」
「俺は確かに自分自身が見えてねえ・・いくら魔神や最強の魔術師に勝とうが
俺の成績不振や出席日数不足の事実は消えしねえ・・」
「つまんねえよな・・ライトノベルの主人公なら全部チャラになってさ・・なんとなく
出席不足も成績不振も全部うやむやになってさ・・」

「安心して私もアンタの悩みは分かっているつもり」
「ちゃんと・・後づけだけど統括理事会の特別公休に振り替えているわ」
「まあ・・やろうと思えば成績だって下駄をはかせるわよ。」

「御坂・・」

「約束したでしょ・・」
「私は、必死で御坂美琴と周りの世界を守り切ったわよ」
「その中にはアンタの世界を守ることも含まれるのよ」

895■■■■:2017/02/24(金) 19:12:27 ID:XuQ7L.6g
「御坂にはかなわねえな・・ありがとう」

上条当麻にとって特に11月以降、御坂美琴の存在は多きなものになりつつある。
その事実は、12月の頃には第3者には見え見えの事実だが、以外に鈍感な美琴は
気が付くことはなかった。だけど・・3度目の命を懸けたやり取りで美琴も上条の
自分に対する思いを感じ取ったのだろうか・・初めて美琴は自分の心を伝える覚悟
を固める。

「いいのよ・・」
「私はいつでもアンタの味方になる。」
私は、気分が高揚していたのだろう・・それに・・正直アイツは、上条当麻は
いつみても危なかったしい。最後の審判事件のあの時だって、結局自分の命を投げ出した。
そんなアイツに単純に明日は明日の風が吹くなんて予定調和はあり得ない。
そのことに気が付かされた私は、いつもなら絶対しない選択を選んだ。

(もっと・・いい雰囲気で言いたかったわね・・)
(だけど・・今この場で言わなければ後悔する)

一言いえば結果は出る。だけど、臆病な自分は10月のある日にそれを意識して以来
何度も言う機会があったにも関わらず最初の一歩を踏み出す事が出来なかった。
(だけど・・今しかない。)

「ね・・」
正直、一言言うのがつらい。鼓動が高まり、脈動が早くなる。
バクバクと効果音のような心臓の鼓動。美琴は入学試験もレベル5に初めて認定された
システムスキャンもいつも驚くほどの平常心で乗り越えてきた。

だけど、この恋愛感情だけは、うまくコントールできない。自分だけの現実を侵食され
レベル5には恥ずかしい能力の暴発する引き起こすほどの、管理できない感覚。
(だけど・・それは決して恥ずかしいことではない)
(そして、・・分かってもらえるなんて・・そんな他力本願では通じない)

自分が思うなら、自分が抱えきれない思いを抱えるなら、それを伝えなければならない。
だから・・私はこの思いをはっきりと誤解のしようがない、あの鈍感野郎にも分かる言葉
で伝える。

「ね・・上条さん・・当麻の傍に私の居場所はあるのかな」

言い方を変えたせいなのか、上条当麻の目に驚きが浮かぶ
「え?御坂何を」

「これは一人の女の子の話よ・・」
「8月の夜、その子は、化け物に蹂躙され、1万人の血を分けた親族を嬲り殺しに
された。助けを求めようにも敵はこの街そのもの」
「アンタはその絶望した女を右手ひとつで救いだした。」
「でも素直になれないその子は、自分の気持ちを気が付くこともなく、その想いを伝える
こともできなかった。」
「でもその子は、アックアという化け物に、アンタが立ち向かったときに自分の莫大な感情にようやく気が付いた」
「それが、恋という固有名詞で書かれる感情であることにようやく気が付いた」

いつもはおちゃらけた上条当麻の顔色が真剣な表情へ変わる。
「本当に・・不器用だったわ・・御坂美琴という女は」
「でももう私は自分の心を偽らない」
(もう言ったことに後悔しない)
「上条当麻さん、私は貴方の事が、大好きです。私は貴方のためになんでもやりますので
どうか、私を傍においてください」

「御坂・・」
上条当麻の顔が驚きに包まれる
ふう・・
上条当麻はよろよろと長期の入院で弱り切った体力を振り絞り立ち上げる。
「本当に・・いいのか?」

「え?」
(いったい何を言いたいんだ・・この男は・・まさか・・)
「俺は・・美琴が知っている通り、不幸な男だ」
「しかも・・成績も良くない」
「金銭的にも恵まれない」
「まあ・・そんなことは御坂美琴ほどの人物が全部承知な事は分かっている」
「正直・・美琴の気持ちはうれしい」

896■■■■:2017/02/24(金) 19:14:36 ID:XuQ7L.6g
「だけど、美琴は、常盤台いや学園都市の顔と言ってもいい存在」
「そんな美琴に俺は釣り合うのか・・?」
「底辺の高校で、進級さえままならないそんな男に」
「学園都市でも最高レベルの学校でトップの成績を誇る御坂美琴がな」

(私はおかしくなる・・魔神さえ、学園都市の独裁者さえ右腕でぶっ飛ばした人智を超えた
存在そんな人物がたかがレベル5くらいで何をためらうのだ)

(だけど・・そこまで真面目に考えてくれるのは嬉しい)
私は、少し変化球を投げ返す
「ふふ・・当麻ありがとう。そこまで私の事をちゃんと考えてくれて」

「美琴・・」
「だけど・・当麻・・私は当麻を愛する気持ちに嘘はつけない」
私ははやる気持ちを抑えて呼吸を整える

「ごめんね当麻」
「いつも素直になれなくて私は、自分の思いをきちんと伝えなかった」
「だけど、不器用な女の子の告白は本心よ・・嘘偽りもない。それに・・」
「私が、上条当麻とその周りの世界を守る。どんな手を使ってもね」

「美琴・・」

「だから答えを聞かせて、こんな可愛げもない御坂美琴は上条当麻の傍に居ていいの?」

「え・・それは」
「まだ答えを聞いていないわ。」
何かを悟ったのか当麻が訥々としゃべり始める。

「正直突然の事で、本当に俺が美琴を幸せにできる自信もない」
「だけど、俺は美琴を大事に思っているし、とても頼りにしている」
「だから、美琴の俺を思う気持ちは大事したい」

当麻は、背筋を伸ばし惚れ惚れするほど真摯な顔で、私を見つめる。
「俺は、正直一人の女の子の人生を保証できるほどの甲斐性もない」
「だけど・・」
当麻は私の手を病み上がりとは思えない意外としっかりとした握力で握る。
「美琴は自分の気持ちを偽らずに答えてくれた」

「俺も、自分の気持ちに偽らずに答える。」
「美琴を幸せにすることは多分俺にはできない」
「だけど、俺は美琴が傍にいれば幸せになれると思う」
「だから俺が美琴の傍に居させてほしい」

「本当に・・本当にいいの・・?」
私は当麻の手を握り返す。
そして、私は当麻にはっきりと伝える
「2人で一緒に、お互いとその周りの世界を守ろう」
当麻は笑い始める。

「そうだな・・」

「まずは・・期末試験から頑張ろうか」
「そうね。しばらく人助けは忘れてね・・」
「ああ」
「それと」
病室のデジタル時計が2月14日の午前0時を確認し、私は病室の冷蔵庫から、
病院内のコンビニで買ったショートケーキと缶コーヒを当麻に渡す

「これは私の気持ち」
「え?」
「御免、最近までボランティア活動でバレンタインデーのこと
すっかり忘れていた」
「だから」
私は、無防備な当麻の頬へ軽く接吻する。
その頬の感触が甘酸っぱくとても暖かい

「明日からまず勉強頑張ろう」
「そして当麻の失った日常を取り戻そう」
「ああ」
やっと届いた片思いの恋
これでやっと自分に素直になれたそんな気がした。

続く

897■■■■:2017/02/24(金) 19:15:57 ID:XuQ7L.6g
以上とある乙女のバレンタインデイ・キス 2話の投稿を終わります

898■■■■:2017/03/09(木) 11:35:43 ID:XdD4pC7s
とある乙女のバレンタインデー・キス 3話 (完)

3月1日(水) 19時

「当麻できたわよ」
私は、作り終えたブランド豚とキャベツの生姜焼きを机の上に並べ終える。
適度にカットしたレタスとオニオンと大根とプチトマトとキュウリに胡麻をあえた
サラダと、カブと油揚げとオニオンを赤みそで煮た味噌汁を添える。

少量の麦と雑穀を混ぜた栄養バランスを考慮した無洗米をどんぶりに盛る。
16歳の高校生の食欲を考慮し、溢れんばかりに盛り付ける。

宿題を終えた当麻は目を輝かせ、食卓に着席する。

「ありがとう。でも本当飯くらい俺が作るぞ。美琴の分を含めて」
「いいのよ。もう少し基礎力がつくまでは私にさせて」
当麻が苦笑いを始める。
「はは、ありがとう。でもさ期末試験も無事終わったしもういいよ」

「まだ油断するのは早いわよ。でもよく8割取れたわね」
私は、全科目赤点回避どころか8割を達成した当麻の偉業を称える
「全部・・美琴先生のおかげです」
「何言ってるの?私はお膳立てしただけよ。全部当麻の実力よ」

バレンタインデーの電撃告白から約3週間、当麻の学寮へ通いほぼ毎日勉強を
付き合っている。炊飯・洗濯・買い物、いわば雑事をすべて私が引き受け、通い妻のような
日々を続けている。犬も歩けば不幸にあたる少年に机に向かせる作業は困難を極める。

私は12月の熱波事件以来築き上げた人脈をフル稼働させ、問題へ向き合った。

出席日数不足は、当麻の記憶をもとに魔術関連や暗部関連の欠席日数をすべて統括理事会へ掛け合い、
特別公休へ振り替えさせた。これで期末試験で8割突破の必要はなくなったが、ほとんど
授業に出ていない当麻に可を取らせること自体が難しい。

そこで、月詠先生経由で入手した指導要領と過去の期末試験をAIで解析し、分かりやすい
レジュメと解説集を作成した。それの徹底した反復学習だけをしてもらった
夕刻4時から7時まで、時間缶詰めにして、勉強に集中してもらった。
(それにしても・・)
私は笑いたくなる。本当に想定問題集してやっていない。だが
上条当麻は、知識はないが異様な集中力発揮し、とんでもない高得点をマークする。

(へえ・BIG DATAのAI解析の想定問答集だけやっていきなり全科目8割突破?)
当麻がにこやかに、食事を終えてしゃべり始める
「本当に美琴先生には感謝しかありません」
私は、当麻の幸せそうな顔を見て満足する。
「ありがとうでも、まだ油断しないでね。アレは出る問題を予想しただけだから」
「まあ今は贅沢言えないけど、基礎なんて無視よ・・そんな時間もないしね」
「だからそうね3月いっぱいは付き合うわ・・基礎をやり直すまで」

「え?」
「えじゃないわよ」

「いや・・もうしばらく休んでもいいんじゃない?」
「まったく・・基礎なんか全然できてないわよ」
私は少々声を荒げる。喉元過ぎれば熱さを忘れる?いい加減にしろと言いかけるが
当麻は申し訳なさそうに話を続ける
「いや・・」
「美琴に何から何までやってもらって申し訳ない」
私は当麻からの意外な答えに当惑する
「え?」
私は、留年回避の緊急事態とはいえ当麻を拘束しすぎていたのか不安になる。
「ごめん拘束して迷惑だった?」

「とんでもない、美琴が一生懸命俺の留年回避のために骨を折ってくれたことは
本当に感謝する。」
「今回こんないい点が取れたのも全部美琴のおかげだ」

「そう?じゃ・・まだそばにいてもいいわよね?」
当麻が溜息をつき始める
「いや・・不安与えたら御免・・そんなつもりじゃないんだ」
「せっかく美琴が告白してくれたのに、デートもできなくてさ・・」
私は鈍感だと思っていた当麻からの思わぬ提案に単純だが嬉しくなる
「え?それって」

899■■■■:2017/03/09(木) 11:36:52 ID:XdD4pC7s
「美琴もそそかしいな・・今のところは何にもできない俺の感謝の気持ちよ」

「そんな・・何もできないなんて、私は当麻に何度も助けてもらって」
「助けてもらった大恩を返していないわ」

当麻がにこやかに笑いかける。
「なあ美琴・・もう美琴は十二分の俺を助けてくれた。それこそ何度も何度も
危ないところを・・しかも自分の命を懸けて、だからもう8月の件なんて
とっくに返済済みじゃねえのかな」

「本当にそう?」
「ありがとう、ふふデートなんて楽しみね・・」
「いつ行く?」

「2日早いけどさ 3月12日なんてどうかな?」
私は目を丸くする。
「へえ・・いいじゃない?日曜日だし・・まさか・・?」
「ああそのまさか」

「ふふ・・当麻て気が利くのね、うれしいわ」
「ありがとう」

期末試験の乗り切りが忙しく、せっかく告白したのに全然甘い時間を過ごしていない。
そんな中での当麻からの申し出に心を躍らせる。

「デートプランはお任せするわね・・楽しみにしているわ」
私は、食器を洗い終え、当麻の手を握る。彼はこの謎の手ひとつで世界を救った。
その熱い想いがじんわりと伝わる。
「当麻の手が気持ちいい」
「美琴の手もな・・」

「じゃそろそろ帰るわね」
「ああ門限だったな・・」

「本当は泊まりたいけど、当麻を浴室に寝せるわけにもいかないしね」
私は、うきうきと心を弾ませながら、玄関で当麻に軽く接吻する。

「じゃ・・また明日ね」
・・・・・・・・・・・・・・・・
3月12日 (日)午前9時

俺は、生まれて初めてのデートでどきどきしている。
(まあ・・今にして思えば・・9月30日のアレはデートだったんだろうな)

さすがに鈍感な俺でも、ここバレンタインデー以来素直な美琴を見ればあれが
照れ隠しのオブラートに包んだデートであるのは分かる。
(まあ美琴らしいちゃらしいけどそれに気がつかない俺も大概だな)
(紆余曲折の末こうして、晴れて恋人になったわけだけどな)

俺は、学寮で朝食を美琴と一緒に食べた後、美琴が呼んだタクシーの後部座席で
美琴の腰に手をあてながら目的の遊園地へ向かう車内で他愛のない会話を始める。

美琴が少し申し訳なさそうにしゃべり始める。
「本当はこんな時くらい、おしゃれしたいけど」
「え?」
「まあ、校則で外出も制服着用義務があるからね」
「私が無名ならいいんだけど、さすがに最近は少しばかり顔が売れちゃったし」

「少しばかりか?」
「ただのボランティアよ」

「そんな有名人を1月も拘束してすまねえなあ」
「美琴本当にありがとうな」

「え?」
「留年回避と奨学金増額に奔走してくれて」
「まあ多少はね だけど基本は全部当麻の頑張りよ」
俺は、美琴のサラサラの茶髪を撫でる。ほのかなリンスの香りが漂ってくる。

(本当、柑橘系か美琴はいつもいい匂いがするな・・)
俺の美琴のイメージはこの匂いの記憶がバック・グラウンドにある。

900■■■■:2017/03/09(木) 11:38:39 ID:XdD4pC7s
柔らかなでも弾力のある太ももの感触、小さなだけど、形のいい胸、引き締まり少し
割れた腹筋、服越しに伝わる感触がすべて健康的で艶めかしい。
(今更だけど美琴は綺麗だな)
(それに・・前より随分大人になったな)

夏休みの頃はまだ子供のような顔だった。素材のよさはあれど、まだ粗削りの
面はぬぐえなかった。だが11月以降の戦いと学園都市崩壊の危機は彼女の
精神を研ぎ澄まし、その鍛錬が彼女の顔を研ぎ澄まされた美しい大人の女性へ変えている。
(こんないい女を恋人にして不幸なんて言ったら罰当たりだな)

俺は、美琴の綺麗な顔を撫でながら今は自分の恋人になった女性を眺める。
「今日は、楽しもうな・・」
美琴がまばゆいばかりの笑顔で答える
「うん・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
遊園地で、ひととおり絶叫系マシンを試し、おなかもすいたので少々遅めの
昼食を取る日替わりランチを注文し、水を飲みながら会話を始める

美琴が楽しそうに会話を始める

「久しぶりに楽しかったわ」
「そうか?美琴には物足らないんじゃないか?」
「は・まあ高所の飛行は慣れているけど、これはこれで楽しいわよ」
「それに当麻の気持ちがとても嬉しい。バレンタインデーの返礼に
ホワイトデーの前にこうゆう場を設定してくれたことがね」
「ちょっとありふれていたかなて反省しているけど」
「いいのよ・・こうゆうのは気持ちが大事だから」
「ありがとうな」
美琴は、本当に心の底から楽しそうに笑うのを見て俺は楽しくなる。

そしてウエイターが、日替わりランチのハンバーグ定食を2人分机上へ置き
伝票をおく。ウエイターが美琴の顔を見て顔が微笑むのに俺は気がつく。

結構イケメンのウエイターが、超電磁砲の御坂美琴と気がついたのか声をかける
「御坂美琴さんですか」
美琴が、目をぱちくりさせる
「え?」

「やっぱりそうですか・・うちの学校を再建されているときにお会いしました」
「え?ああ××さんですか・・」
「うそ・・覚えていました?・・さすが記憶力もレベル5ですね、感激です」
「そろそろバイト時間終わるので後でサインもらっていいですか、着替えたら来ますので」

(やっぱ・・美琴は凄いな・・)
分かってはいた。能力開発で教育の成果と言われていた美琴。そしてクリスマス以降
崩壊した学園都市再建を主導した美琴。それに多くのファンがいて、美琴が広告塔
のような役割をはたしている事も。そんな学園都市で誰もが名前を知っているような
女が彼女な事も。

少し悩んでいる間にいつも間にかバイトのウエイターが着替えを終え、サインペンと
Tシャツのようなものを持ってくる。
「御坂さんここにサインしてもらってよろしいですか?」

「どうぞ、でもこそばゆいわね。私なんかのサインでいいの?」
「学園都市の住民は、御坂さんがあの日体を張って学園都市住民の避難民を守り
その後の再建工事の陣頭指揮に立っていたことをよく覚えいます」
「私には芸能人なんかより御坂さんのほうがよっぽど素晴らしい人です」

「なんか照れるわね・・私は皆のちょっと前に立っていただけで、大したことは
してないわ。本当皆で力を合わせたおかげよ。」

美琴は照れながらも、サインは書き終えた。
「御坂さん、本当ありがとうございました、うちの生徒会長も今度、御坂さんに
講演を開いてほしいと言ってましたので後日常盤台の生徒会へご連絡するとおもい
ますのでよろしくお願いします」

「え?ああ**さん?よろしくお願いしますね。副会長の食蜂にも伝えておきます」

俺が寝ている間に、少女だった美琴はすでに深く学園都市に根を張り
独自の世界を構築していることに驚きを感じる。

それは誇らしい。自分は、こんな素晴らしい女を彼女にしているんだ・・だけど、

901■■■■:2017/03/09(木) 11:42:39 ID:XdD4pC7s

胸がもやもやする。嫌・・はっきり言えば面白くない。

(俺てこんな嫉妬深かったのか?)

俺がそんな負の感情に包まれているとき、突然耳元で声がひびく
「ね・・当麻・・なんか悩んでる?」
「え?」

「あの子のこと?」
美琴には全部バレていたらしい。下に恐ろしくは女の直感
「ふふ・・うれしいな・・あのフラグ男に嫉妬されるなんてね・・」
「え?」
「私も当麻にいつも嫉妬していたの」
「だからよくわかるわ、当麻の気持ち」
「でも・・私には当麻しか見えないから安心して」

「そうか?」
「当麻て女の子にモテモテだったじゃない正直私はいつもいらいらしていた。それが
嫉妬という感情だという事に気が付いたのは後の事だった」
俺は美琴の言葉に驚く、俺がモテモテ?誰が?いつ?

「はは・・そうか?」
「今にして思えば、私がAAAに手を出したのも当麻に、もて男の上条当麻に
捨てられたくない一心だったかもね」

俺は美琴の衝撃の韜晦に驚く
「俺がもて男?いや・・そんな」

「不思議よね・・あれほどいろんな子に好かれていたのに
最初に告白したのが私なんてね」

「でも私が最初で本当によかった」
「え?」
突然美琴が小言でささやく
「ALLis fair in love and war」
「何?」
俺には美琴の早口の無駄に発音のいい英文らしき
言葉の意味が全く理解できない
「恋する乙女のひとりごとよ」
「そのうちわかるわ」
「だから今日は楽しみましょう」

素直になった美琴は好意をはっきりとぶつけてくる
手を握り、無防備の健康的な太ももを見せつける。
(ほんとう、コイツはいいやつだな)
いるだけで周りを照らし、生きる勇気を与える存在。
匂い、雰囲気、そして実力に裏付けされた自信

そしてとびっきりの笑顔が眩しい。この笑顔が見たくて
デートをしているんだから

・・・・・・・・・・・・

3月12日 17時

楽しい時間ほどすぐに終わる。そんな経験はないだろうか
今日の俺がまさにその状態だ。美琴はいつも以上に素直に俺に好意をぶつけ、その
笑顔に俺の全身が活性化する。いつまでもそんな時間が続いてほしい。本当に
そう思う。だけど・・楽しいひと時はあっという間に終わり、俺たち2人は観覧車で
最後のひと時を過ごす。まだ肌寒いが順調に伸びた早春の残照が明々と照らす。

その残照で美琴の顔が赤く染まる。だがその赤さに俺への気持ちが混じっている
事を俺は見逃さない。

俺は、可憐な少女の顔が俺への意識で赤く染まるのが素直にうれしい。
(今日は本当に楽しかった)
ファンシー・グッツの店できゃきゃと少女らしくはしゃぐ少女の素顔、そんな少女
が超電磁砲という御大層な2つ名を持ち、学園都市の再建の陣頭に立っていたギャップ
に驚かされる。そんな素顔を知っていることがうれしい。

「なあ、美琴」
「ん?どうしたの当麻」

「俺は、美琴から告白されたときうれしかった
「え?」

902■■■■:2017/03/09(木) 11:44:43 ID:XdD4pC7s
「美琴は、さっきの子みたいに、多くの子に慕われている。常盤台でも、学び舎
の園でもそして、学園都市全体でも」
「そんな御坂美琴に俺は釣り合うのかなんてな」

美琴が何か言いたそうだったが、俺が目で止める

「だけど、美琴の鼻歌を歌いながら夕食を作るときの
生き生きとした表情や、毎日学校へ出るときの笑顔を見るうちに、そんな
小さなことに事にこだわった自分が
恥ずかしくなった」

「今は美琴の気持ちに誠実に答えることが大事だと思うようになった」

俺は、内ポケットから小さな宝石箱を取り出す、そこから安物のリングを2つ
取り出す。

「正直まだ俺は高校生で、美琴のようなお嬢様を一生ささえるだけの甲斐性も
ない」
「それに美琴も知っている通り俺は目の前の困った女の子をいつも助けようとすること
をやめるつもりもない」

「だけど・・美琴を思う気持ちは本物だ」
「エンゲージリングなんてそんな大層なものじゃなく安物だけど」

「これを一緒にしよう」

小さな、ささやかなリングを美琴の指にはめる
何をしゃべるかわからずどきどきしていた美琴の顔がぱあーと明るくなる。

「本当に、はめていいの?」
「ああ」

「ありがとう」
「これからは一緒に生きていこう」

「私も精一杯努力するわ」

俺は美琴を抱き寄せる
「美琴、・・今まで美琴の気持ちに気が付かなくて御免」
「だけど、これからは何があっても一緒だ」

俺は美琴を強く抱きしめる
「今はこんなことしかできなくて御免な」
美琴がそっとよせた頬に想いを籠めて接吻をする
む・・むちゅう・・

ぶは・・
美琴が開口一番しゃべり始める
「いままで私はいつ当麻に捨てられるか、置き去りにされるか不安でしょうがなかった」
「でも、今日やっと言える。私は本当に当麻と一緒に同じ目線で歩いていける」
「だから・・」

「当麻は今まで通り、自分の信じる道を歩いてほしい」
「私は、当麻を信じるから」

観覧車は、1回転を終え、入口へ戻る

俺は美琴をエスコートして、出口から出る
「今日は、1日ありがとう」
「残念ね、でも・・当麻本当ありがとう」

美琴がどこか遠いところを見るような表情を見せる
「正直私悩んでいた」
「え?」
「当麻が信じられなくてね、実は飛び級を申請しようかと思っていたのよ」
「はあ?」
「少しでも当麻の傍に居たかった、離れたくなかった」

「でも、常盤台の生徒会長なんてしてるし、こんな学園都市や学び舎の園が
混乱している時期にそれも無責任だと思ってね」
「でも今日リングをもらって本当当麻と一緒になれると確信できてうれしかった」
「ありがとう」

「美琴・・」
「ね。この前の約束覚えている?」

美琴が今度は、満面の笑みで俺を見る

903■■■■:2017/03/09(木) 11:47:08 ID:XdD4pC7s
こんな笑顔が素敵な女の子の一番になれたことが本当にうれしく、そして
誇らしい

俺は、忘れもしない、その言葉こそ美琴が一番のぞんでいるものだから
「2人で一緒に、お互いとその周りの世界を守ろう」
「もう、何があっても美琴を離さない」

「ね・・今日はホテルへ行かない?」
俺に断る理由もなかった、もちろんすることはちゃんとした上だが、その晩は
俺と美琴にとって、特別な一夜になった

・・・・・・・・・・・・・
その4年後 2月14日 (日)

今日は私にとって、特別な日になる。そう女性にとって一番特別な日
を迎えている。結婚し姓が変わることになった。もちろん上条へ変わる。

激動の4年を乗り越え、ようやくこの日を迎えられた。死にかけたことも1度や2度じゃない。その間に私は駆け足に高校と大学の学部を飛ばし、大学院も先日卒業した。
忙しくも充実した日々だった。まだ妹達問題を含めて、解決していない問題は多い。
だけど、一歩一歩2人・・いや常盤台の関係者それに多くの人の協力を得て一度は地の底へ落ちた学園都市の再建進めている。

今日の式は身内だけのささやかなものだが、披露宴には何人参列するんだろうか?
招待状は約1万枚出したが・・

神父さんの声を聴きながら私はこの4年ですっかり精悍になった当麻を見つめる。
いよいよ、当麻の宣誓も終わり、私ははっきり、腹の底から声を出す
「誓います」
女として、自分の信じる者守るために、そして愛した人間を必死で守る喜び
を噛みしめる。
安物でない、本物の結婚指輪を眺めながら、
私は誓う、何があろうと当麻を守る
私は誓う、何があろうとこの街を守る

そして2人で絶対幸せな家庭を築くと


終わり

904■■■■:2017/03/09(木) 11:48:45 ID:XdD4pC7s
以上とある乙女のバレンタインデー・キス 3話 (完)
の投稿を完了します

905■■■■:2017/03/12(日) 21:00:45 ID:Fm/FqZk2
ありがとう!!!!ありがとう!!!!!

906■■■■:2017/03/16(木) 15:40:46 ID:inah4EXk
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 17話:4章―②

9月27日(日)中部欧州標準時(夏時間) 午前7時30分 
パリの北東25KM シャルル・ドゴール国際空港

私と当麻は、学園都市を正午に定刻通り出発し、約9700KMを約2時間の
フライトののち、現地時間の午前7時に到着する。
(時差7時間)

秋も深まったせいか、ようやく日が昇ったばかりで、しかもまだ夏の気配が残っている
学園都市からきた私達には晩秋の気配する感じる陽気だ。

学園都市発行の外交官用パスポートの威力でごく簡単な検査で入国手続は終わり、VIP
出口から、足早にタクシー乗り場へ向かう。

予め予約した送迎タクシーを見つけ、当麻をそこまで誘導する。たった49ユーロで大型バンでホテルまで運んでくれる。
(まあ以外に物価の高いパリの割には安いわね)

私は、当麻と後部座席に乗り、運転手に行先を念押しし、バンは動き始める

フランス語の表記が珍しいのか、それとも私がフランス語を喋るのに感心しているのか
当麻がお上りさんのようにきょろきょろしている。

「美琴はすごいな・・」
「え?」
「当たり前のようにフランス語喋っているのがさ・」
「まあ常盤台では、授業は英語、第2外国語までは最低の教養だからね」

当麻は、驚いたような顔をする
「へ・・俺の学校じゃ日本語さえ怪しい奴が多いのにな」
「当麻それは・・自慢することではないわよ」
(まったく・・こいつは・・だけど・・まあ些細な問題ね本質的には)

「へいへい美琴先生」
「茶化さないの、まあでも・・これつければ会話は分かるわよ」
私は、当麻がまったくフランス語ができないことを思い出し、それをカバーする装置をカバンから取り出す

「あ・・これね・・英語とフランス語を日本語へ翻訳してくれるイヤリングね」
「まだ試作品のレベルだけどね」

「へ・・すごいな」
「まだ、ネイティブから見るといまひとつらしいけど実用性の点では問題ないわね」

「AIか・・」
「そうそれが今回の会議の主題」
車窓からパリ郊外の副都心ラ・デファンスの超高層ビルをながめながら
私には当麻に語り掛ける

街並みが郊外から都市のそれに代わり、絵葉書のような大都市が広がる
「そろそろパリ市か?」
「ええ」

外周高速道路を超え、パリ市に入る。モンマルトルの丘を越え、どこかの旅番組で
見たことがあるパリ中心部に入る。
「ホテルは?」
「インターコンチネンタル・パリ・ル・グランよ」

「へえ・・高そうだな、でなんでそこ?」
「会議場もそこだから」
「なるほど」
「中心部だから観光にもいいわよ」
「ルーブルなんかも歩いていけるわ」

当麻は、パリの中心部をお上りさんのようにきょろきょろ見回す。
学び舎の園というパリの模型のような街を見慣れていた私にはさほど
珍しくない風景だが、当麻にはよほど物珍しいのだろう。

「さあそろそろかな」

渋滞もなく空港から40分、目的地のホテルへついたようだ

907■■■■:2017/03/16(木) 15:42:16 ID:inah4EXk
タクシーはホテルのエントランスへ停車し、私は当麻を促し外へ出る。
「なかなかいいホテルでしょ」
「ああ、本当街の中だな」

「荷物おいたら少し観光しようか、今日は行事ないし」
「ああ」

チェックインを終え、荷物を部屋に置き、エントランスへ出る。
WEBで予約したタクシーが到着していることを確認する。

「じゃ・・お上りさんツアーでもしましょうか?」
「どこへ?」

「まずはベルサイユよね・・」
当麻がバカにしたような顔をする、どうせ言いたいこと分かっている
「まあいいじゃないの、定番も大事よ」
私は何か言いたそうな当麻の口を封じる。
「じゃ、いくわよ」
私は当麻をタクシーの後部座席に乗せ、憧れのベルサイユへ向かう。
・・・・・・・・・
中部欧州標準時(夏時間)9時 パリ近郊ベルサイユ

「ついたわね」
「へえ・・写真通りだな」

「まあ、そうね観光の目的の一つは記憶の確認作業だからね」
「まあ庭園にトリアノン宮殿もあるけど、全部回る時間もないわ」
「さっさと回りましょう」

日曜日のせいだろうか、柔らかな晩秋の日差しが降り注ぐ中、入館
待ちの観客でごった返している
「随分混んでいるな・・」
「日曜日だからね・・」

スマートフォンで自撮り撮影をする、中国人やターバンを巻いたインド系のご婦人
などそこに世界の縮図のような風景が広がっている。
18世紀の啓蒙主義が作り出した幾何学模様の庭園と、雑多な人々がそこに「近代」という
姿を形づくる。

「へえ?さすが世界一の観光地フランスは違うね・・」
「ふふ・・さっきは馬鹿にしてたじゃない?いいでしょベルサイユ」

「まあ、予想通りだけどな、でもそこで空気を吸うのはいいわ」
私は恋人繋ぎをしながら、会議用の黒のタイトミニスカートと7CMのハイヒールの
履き具合を確かめながら当麻の腕をつかみ、ベルサイユ宮殿の庭を観覧する。
陽光に白のブラウスと黒のジャケットが映える。

「へえ・・まるでルイ16世になった気分だな」
私は頭を抱える、よりによってその言葉の選択はないだろう?
コンコルド広場でギロチン処刑されたその人を選ぶか?デート中に
「縁起でもないわね、末路は知っているでしょ?」

「え?有名な王だよな?」
「フランス革命で処刑されたね」
(一般常識がないのは罪ね・・まったく)

「え?」
「まったく・・中学生でも、ここはルイ14世と言うでしょうに、太陽王と呼ばれた」

「ああそうか・・でもベルばらだと確かルイ16世が王だったじゃん」
私は少々おかしくなる。
当麻が大昔のアニメを、しかも少女向けを知っていた事実に
「へえ?当麻がベルサイユのばら知っているんだ?」

「意外か?」
「まあでもいいわ・・今度ベルばらの話を教えてあげるわね」
当麻が明らかに嫌そうな顔をするが私は敢えて無視する。
私がさらに名作ベルサイユのばらをのツボを語ろうとするが肌に異様な雰囲気を感じ
小声に切り替える
「ん?」
「ねえ・・なんか嫌な感じがする」
「嫌な?」

908■■■■:2017/03/16(木) 15:43:23 ID:inah4EXk

「人の精神を誘導するような、微弱のエネルギーを感じる」
「人払いの術式か?」

「おそらくね」
「どうする?」
「まあ、攻撃する気なら攻撃するでしょ」
「多分・・そのうち」
さっきまでごったがえしていた、庭園がまるで最初から誰も
いなかったように無人になる。

何秒かの静寂の地突然爆音が響き渡る

そこへ軍用ヘリらしきものが忽然と出現する。

ご丁寧にミサイルまで備え付けている。バルカン砲もぴったりと私と
当麻を狙っている。
「へえ・・」
(私を殺すには力不足もいいとこだけど)
私は舌打ちをする。あれを落とすことはさほど労力は要しない。
(だけど・・私を狙ったテロとなると会議そのものがおしゃかになる)
(仕方ない・・)
私は頭で最善解を練り上げ、即実施する。
・・・・・・・・・・・・
9時40分

ヘリは突然方向を変え、どこかへ飛び去り、人払いの術式は解除されたのか
元のにぎやかな観光地の風景を取り戻す。

当麻が驚いた顔で私を見つめる
「一体何が・・」
「え?制御装置をハッキングして無理やり遠隔操縦で移動させているわ」
「はあ?」
「外の軍用ヘリの運行プログラムの解析なんて余裕よ」
「まあ、今頃はドーバー海峡へ向かっているんじゃないの?」
私は、冗談めかして言う。
実際には学園都市のパリ近郊の協力都市へ向かっているはずだ
(まあ、捕虜よね・・背後関係を調べる必要があるし)

「いやそれより」
当麻の言葉を遮り結論を先に言う。
「決まっているじゃない相手は私の邪魔をして、会議をぶち壊すつもりよ」
「おそらく、短期な私がヘリをぶち落とすことを期待してね」

当麻の頭にはてなマークが浮かぶのを苦笑いしながら眺める。
「はああ・・?」

「フランス軍のヘリを公然と学園都市の超能力者がフランス領内で撃墜した」

「さてCNNやBBCやアンテナ2などのマスコミから私はどういわれるかしらね・・」
「学園都市のモンスターが民主国家を破壊する?なんてさ・・」
「十字教系のマスコミがここぞとばかり私や学園都市を責め立てる」
「膨大な力を振舞う悪魔が学園都市で世界征服を狙っているとね」

「いやだからって・・」
「学園都市なんて当麻は知らないかもしれないけど外では胡散臭く見られているのよ」
「その超能力者1位、しょせん外では正当防衛なんて言い訳は通用しない」

「鼻から成功するなんて思っていないでしょ・・」
「いわゆる自爆テロ。最初から私に撃ち落とされることを前提に行動している」

「はあ?そうか?」
「まあそうゆうこと」

「でどうする」
「別にいいんじゃない?何をおきてないし」
当麻は苦笑する。
「はあ・・美琴は気楽だな・・」

「別にいいんじゃないの?誰も死ななきゃ」
「まあそれもそうか・・」

「せっかくの観光を続けましょう」
・・・・・・・・・・・

909■■■■:2017/03/16(木) 15:44:23 ID:inah4EXk
11時30分

「本当、観光ガイドみたいだな」
順路に従い、入口でもらった日本語の案内図を見ながら、宮殿の観覧を終える
私は当麻の左腕にしがみつきながら、話始める
「まあなかなかでしょ」
「まあね・・」

「気のない返事ね」
「いや・・いつもなく美琴が甘えるから・・どきどきしてさ・・」
「そう?じゃもっと甘えようかな・・」

「いやそれは・・」
「いいじゃない減るもんじゃないし」
周りに見せつけるように左腕にしがみつきながら私は話を続ける

「そろそろ食事しようか?」
「ああ・・」
当麻が顔を少し赤らめているのに気がよくし、私は宮殿内のカフェに入る

「じゃ・・予約済みだから行きましょう」

昼食はサンドイッチとコーヒーを注文する。健康な男子高校生には少なすぎる気もするので3人分注文する。
当麻は、私の顔を感心したように見つめる。私は当麻のその視線に気が付き、当麻を
見つめる。

「美琴はこうゆうこと慣れているな」
「え?カフェのこと?」
「いや、暗殺未遂を何食わぬ顔でやり過ごす。何一つ発生しなかったように」
私は吐き捨てるように言う。私を殺そうとするのはいい。だがそのために、多くの
人間を使い捨てにする魂胆が気に食わない。

「馬鹿らしいじゃない、せっかくベルサイユに来たのにこんなことで邪魔されるなんて」
「それに・・私は常に狙われ続ける・・」
「それを恐れることも、避けることもできない」
「だから当麻だけは私を甘えさせて」
「いいわよね・・」

たった一言、でも一番聞きたい一言、私だけのヒーローがその一言を放つ
「ああ、最後まで何があってもな」
「ありがとう」

絵画のような雰囲気のカフェーで2人はお互いの存在を確かめ合う
・・・・・・・・・・
ベルサイユを午後2時に出立し、あらかじめ予約したタクシーでルーブルへ向かう
定番すぎるほど定番だが、実質1日の自由時間では回るところは限られる

その途中、車窓から反AI・学園都市のデモがあったようだが今更なので
気にはしない。とはいえ、改めて学園都市が歓迎されているだけではないことを
実感する。元々感じていたが、結局話しても理解できないどころか、話せば話すほど
理解できない気さえする。だがそれを諦めるわけにはいかない。

取り止めない、考えにふけるうちに約30分でパリ市中心部へ戻り、セーヌ河沿いのルーブルへ到着する。他に行きたいところは数あれど、ここは外せない

「さあついたはね」
「美琴少し疲れたか?」
少し目をつぶり、考え考え事をしていたので当麻に気を使わせてしまったようだ
「え?ああ少し考え事をね、コンコルド広場で処刑されたルイ16世はどんな気分で処刑
されたのかね・・」
「え?」

「もともとルイ16世は、わりに人気のある開明的な君主だったそうよ」
「三部会の再開や、税制制度の改革、少なくともフランスと言う国家に改革が必要な
事は理解していた。だけど・・アイスランドのラキ火山や浅間山の大噴火に始まる天候不順による飢饉とアメリカ独立戦争支援による財政悪化には勝てなかった」
「結局は、コンコルド広場で処刑される」
「政治はすべて結果責任、言い訳は許されない」

「私も、その世界を志せば、言い訳が許されないことになる」

910■■■■:2017/03/16(木) 15:45:38 ID:inah4EXk

「それは・・」
「昔、小学校の夏休みの自由研究で、「英仏抗争におけるフランス革命の影響」
なんて論文を書いてね・・」
当麻が目をぱちくりさせる。
「小学生が書くような自由研究か・・それ大学の卒論レベルだろう?」

「え?内容は独創性のかけらものないつまんない内容よ、今見る?」
私は、携帯情報端末を操作し、それを当麻に見せる

「読めないな・・まさかフランス語?」
「ええ・・」
「住む世界が違うな・・」

私はクスクス笑う
「今回の出張で私たちの住む世界の雰囲気に早く当麻にも馴染んでもらいたいわ」
「学会、官界、財界、世界の頂点という世界にね」
「そんな時間はかからないでしょ」
「別に中身なんて理解しなくてもいいわ、将来上に立つ上条当麻は専門家になる必要なんかない。」
「専門家を状況に応じて使いこなせばいい、特に私をこき使えばいい」

当麻は、苦笑いをしながら、私の手をとり、ルーブル美術館へ入る
「姫、お手柔らかにお願いしますよ」
「茶化さないの、でも一緒に頑張りましょう」
私はにこやかに笑う、当麻の暖かい手を握る。
その手が力強く、私は立ち向かう勇気を貰う。
「じゃいこう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後5時 ルーブル中庭

俺は、3時間の詳細なガイド付きの観覧を終え、ガラスのピラミッドの前にいる
「いや美術館がこんなに楽しいとは思わなかったな」
「いや引き出しが多い彼女がいると、見る目が変わるよ」

「へえ?でもモナリザとかハムラビ法典とかなんて知っているでしょ」
「え・・まあそうだけど。でもその背景なんて普通は知らないじゃん」
「知識があるとないで見える風景が変わる。美琴がそれを教えてくれた」
「美琴は教え上手だし、これからもいろいろ教えてほしい」
「ええ喜んで」
秋の柔らかな残照が美琴を照らす。その柔らかな残照の中で赤身に染まった美琴が
本当にうれしいそうに頬を赤らめる。

「じゃ・・そろそろホテルへ戻りましょう」
「ああ」

俺は、美琴の手をつなぎチュイルリー公園を歩く、コンコルド広場のアラベスク、エト
ワールの凱旋門、グランド・アルシュへ続くパリの都市軸を西へ向かう。コンコルド広場まで歩き、そこで待たせているタクシーを拾うつもりだ。

秋の暖かい日差しに心まで温かくなる。好きになった女の子と、恋人繋ぎでパリの街を
歩く、まるで・・新婚旅行みたいだ。
「こうやって当麻と一緒に同じ道をパリで歩けるなんて嘘みたいね」
「ああ」

「でも、まだまだ課題は多いわね」
「え?」
「それは・・」
異変はコンコルド広場についたときにおこった。

それまでそこで普通に日曜日の午後の光景が広がっていたはずだった。
観光客や買い物帰りのパリ市民でごったがえす。

が、広場のオベリスクの脇に場違いなガソリン輸送車が突然停車する・
美琴が手を放し突然右手を前に突き出す。

「やっぱりどこへ行っても退屈しないわね」
「へえ?」
「終わったわよ」
俺には何が起きたか理解できない。タンクローリーから髭もじゃの運転手が慌てふためいて運転席から走り出す。
「警察に通報しておきましょう」

911■■■■:2017/03/16(木) 15:57:21 ID:inah4EXk
美琴は、あらかじめ連絡先に登録していた、フランス内務省の担当部署へ連絡を入れる。
同時に学園都市の統括理事会の事務局へ連絡する。
「予定通り会議をしなきゃないし」
「起爆装置をマイクロ波で破壊したわ」

「まあ穏便にすましましょう。ただのタンクローリーの故障とね」

「最近、宗教原理主義者はね、ソフトターゲットに、ああゆう産業機材でテロするのよ」

「はあ?」
「タンクローリーを火薬で、パリ中心部でドッカンするつもりだったようよ」
「あのサイズのタンクローリーが爆発すればこの広場だけでなく、パリ中心部が
火の海になる。」
「それをたかが私への嫌がらせとあわよくば、上条当麻を暗殺するつもりで」

美琴の顔が怒りに変わる。周りの被害を考えずに嫌がらせの為に無辜の民の命
をごみくずのように扱う奴らに
俺は、瞬間湯沸かし器のように顔を真っ赤にさせた美琴に抱き着き、怒りを受け止める。
俺は慎重に言葉を選び雷神様をなだめる。
「ここで怒り狂って、パリで暴れれば敵の思うつぼだ」
美琴が癖で放出した莫大な紫電は俺の右手に吸収され消える

我に返った美琴は落ち着きを取りもどす。
「御免、少しテンパった」
「当麻の言う通りよ、私はもっと我慢すべき時は我慢しなきゃない」
「ありがとう」

「じゃ帰ろう」
「ああ」
「今日は甘えさせてくれる」
「美琴のすむまでいくらでもな」
「眠らせないわよ」
「お手柔らかにな」
私は当麻の手を繋ぎタクシーに乗る。パリの夜は長くなりそうだ。
私は、不安な気持ちを当麻にぶつけようと算段する。
明日の会議に響かないようにしなくてはそんなことを思った。

続く

912■■■■:2017/03/16(木) 15:58:48 ID:inah4EXk
以上 とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 17話:4章―②の
投稿を終わります

913■■■■:2017/03/16(木) 16:02:58 ID:inah4EXk
>>905
感想ありがとうございます。
近々に別作品を上げます

914■■■■:2017/03/16(木) 17:50:38 ID:9xzHl0sw
がんばれ!

915■■■■:2017/03/25(土) 02:08:21 ID:kyNYZ7eM
超OK!!(≧∇≦)b

916■■■■:2017/04/02(日) 13:09:44 ID:R554/THU
とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 18話: 4章―3

9月28日(月) 中部欧州標準時(夏)午後6時
パリ市中心部ホテルの会議場

午前9時から始まった会議は約60分の昼食をはさみ午後6時に終わった
私は基調演説と、最後のまとめの報告を行い、会議の成功を大々的
に出席者の前で謳った。

AIを使った無人兵器開発について米英仏独ロの開発状況と今後の学園都市の開発方針に
ついて、質疑がなされる。各国を代表して6名の研究者が基調報告を行い、それについて
質疑応答がなされる。約200名の出席者は、最先端のAI兵器開発の進捗状況を熱く語っている。
それは、弾丸の飛び交わない戦場のような光景であり、自国の優位性を言葉と
ホログラフと映像で示す場である。

だがその内実を知っている私から見ると茶番にしか見えない。
私はつい厳粛に会議のなされているにも関わらず笑いかける口元を抑える。

もともとすでにほぼ完全な、実戦で有人兵器を圧倒する無人兵器を開発済みの
学園都市、その兵器の開発側の私にとって、もっともらしく、最先端兵器に関する
開発状況を説明するふりをしながら、学園都市では1世代遅れの兵器をもっともらしく
説明する作業は、笑いをこらえながらの作業となる。

学園都市にとって基幹産業である兵器産業の優位性をアピールしながら。
橋にも棒にもかからない周回遅れの外部公開用のそれを、もっともらしく最先端のそれと
装いながら紹介する。

(まあ演技力も社会人の適性の構成要件ようね・・)
私も相応な社会的地位につき、「組織」という枠で部下も、守るべき組織も
持つようになると、ただ切った張ったで済まない。自分の苦手分野の「演技力」
を身に着けないといけない。

私は、会議を終え退出する出席者への挨拶を終え、会場に一人残る当麻の姿を確認する。
当麻と目でアイコンタクトを交わし、歩み出す

「当麻、退屈だった?」
「え」「いや・・そうでもなかった」
私は、当麻の理解力に驚きながら話を続ける。講演内容は、兵器を制御するAIと
演算内容に関する研究成果の話で、一般人にはちんぷんかんぷんなはずだ
それに、会議はすべて英語で当麻には翻訳ソフト越しというハンデもある
「え・・でも結構専門用語多かったでしょう?」

「正直よくわからない言葉ばかりだった」
当麻がにこやかに笑顔を浮かべる
「だけど、美琴の一生懸命な姿を見るだけで退屈なんて吹っ飛んだよ」
「それに美琴の分かりやすい解説で内容がよくわかった」
私は当麻の心暖かい言葉に、心を揺り動かされる
一言感謝を伝える
「当麻・・ありがとう」
私は後援会の後で予定されている宴会に行くことを当麻へ促す。
私はしっかり腕を組み、当麻に体を密着させる
「じゃ・・行きましょう」
「ああ」

・・・・・・・・・・・・・・・・
午後9時30分 ホテルのバンケットルーム

午後6時30分から始まった、会議の夕食会は午後9時に終わりバンケットルームは
私と当麻だけが残されている。
正直、スーツを着て、未成年なので酒は飲まなくて済むが、社交辞令と顔色をうかがいながら、
会話をにこやかにすること自体がかなりのストレスになる。

体力には自信があるが、欲と利害で接触をする軍需産業の要人と腹の探り合いをしながら
にこやかに会話をするのはそれなりに緊張を強いられる。

しかも・・
「ああつかれちゃった」
パーティドレスの裾を直しながら当麻に話かける
当麻の顔が少し怒りに満ちている。
「美琴は、忍耐強いな」
「え?」
「仕事とは言え、あんなセクハラに・・」

917■■■■:2017/04/02(日) 13:11:44 ID:R554/THU
私が、大手軍需企業のCEOに馴れ馴れしく肉体接触を強要されそうになったことを
当麻が怒っている。当麻はすぐに私の手を引っ張り、助けてくれた
「ありがとう助かった」
「だけど・・なんで」
当麻が、不思議そうな顔をする。御坂美琴なら生体電流を操り感情くらいコントロールできるはずだと。
「うーん、断るのは簡単なんだけど、角は立てたくないのよね」

「年間数兆円の取引を学園都市と行っている企業のCEOだし・・」
私は溜息をつきながら話を続ける。
「あの社長はすけべ爺-さんだけど、政財界の要人に顔が効くのよ」
「だから・・」
私は、会議場の監視カメラの映像を見せる、そこにはCE0が丁寧な言葉ながら、嫌がる
私に執拗なボディタッチをしようとするシーンがはっきりと撮影されている
「なんかの役にたつかもしれない・・自衛手段よね・・外ではか弱い女を演じる私にとって」
私は乾いた笑いを作る。

「学園都市なら紫電一発で威嚇すればおしまいだけどね」
当麻が顔を引きつかせる、幻想殺しでも全方位からの飽和電撃攻撃は対処できないことを私は知っている。
「それは・・あんまりやらないほうがいいんじゃないか?」
私は、苦笑いを口元に浮かべる
「冗談よ、でも明日は・・」

私は突然決まった、協力都市での能力実演デモを思い浮かべる。珍獣みたさか?
怖い物みたさか、最初は予定にないのに、突然フランス政府の要望で組まれた
能力実演デモ。結局、どこへ行こうが私は学園都市の広告塔という立場から逃れることはできない。
(色物扱いは慣れているけど・・しょうがないわね)
当麻は少々怒ったように私に語り掛ける、14歳の少女に重要会議の議事進行を押し付け
夜は、セクハラまがいの接待をさせることにだ。
「人遣い荒いね・・学園都市も?」

「まあ、人権無視の旧暗部よりはいいでしょ」
「それに・・」

「まあ、せっかくフランスに来たんだからもう少しいろいろ行きたいじゃない
モン・サン・ミシェルとか」

「ああそうだな」
「で、いつまでいれるんだ?」
「まあ明日デモやって、明後日の午後6時に帰国」
「そうか・・」
当麻の顔がぱあと明るくなるのが私にもうれしい。そして・・・
「よし・・最高の婚約旅行にしよう」
さりげない一言が、セクハラや商談の疲れでささくれだった私の心を癒してくれる
私は、感動を抑え一言で返す
「ありがとう」
そして、2人でスイートルームの寝室へ向かう

・・・・・・・・・
9月29日(火)正午前 フランス北部協力都市

パリからヘリで1時間ほどにて協力都市へ到着し、そこで午前10時から、始まった能力実演デモは
約60分で終え、清掃ロボットや駆動鎧破壊された無人機や、無人ヘリや、無人戦車が散乱している。

その前に模擬弾による疑似戦闘で有人機を圧倒した無人戦闘機。その性能が観客の
度肝を抜くとともに、その無人戦闘機を地べたから私が撃墜することで、いわば
2段階で観客を驚かせるという仕掛けだ。

(まったく・・本気でやれば秒殺なんだけどな・・)
本当は、マイクロ波やEMPで瞬殺するのは容易だが、それでは面白くないので
少し観客受けすることをやらないといけない。

最初は、数十人のスナイパーが乱射するライフル弾を磁力で防御するところから始め、駆動
鎧を投げ飛ばし、地面から数万トンの大量の砂鉄を巻き上げ、高さ100M以上の人型の巨人を
拵え、ヘリを叩き潰したり、人型の砂鉄から、砂鉄砲を放ち10KM先の戦闘機をぶっ壊す。
そのまるで怪獣映画のようなシーンに観客が沸き立つ。50両の無人戦車を磁力で止め、
ひっくり返し、砂鉄巨人で踏みつぶして戦車をぶっ壊す。

できるだけゆっくりやったつもりだったが完全武装の1ケ師団に相当する武装は1分ほど

918■■■■:2017/04/02(日) 13:14:40 ID:R554/THU
で無力化され、残骸に変わり果てる。

ひととおり観客に挨拶を終え、清掃中のフィールドに当麻が駆け寄ってくる
「美琴、お疲れ」
「まあ・・マイクロ波や赤外線レーザーでつぶすほうが簡単だけど・・」
「映像では意味わからないでしょう」

「美琴はそこまで考えているのか・・」

「まあこれでも一応学園都市の顔みたいなpositionだしね・・230万人のためにもね・・」
「加減は難しいのよ、一応1位だからしょぼくてもいけないし、かと言って外ですべての
手をさらけ出すわけにもいかない」
「だから外では基本は電撃と砂鉄と磁力しか使わないわけ」
私は苦笑いを浮かべる
「なるほど・・」

「私が電撃と磁場しか扱えないと思わせておけば・・」
「敵への対処がしやすくなるか・・」

「そう」
「じゃ・・そろそろいきましょう」
「モン・サン・ミシェルへ」

・・・・・・・・・・・・・・・・
16時 モンサンミッシェル

フランス北部の海岸沿いの協力都市から車で1時間世界遺産モンサンミッシェルへ到着する。モン・サン・ミシェルは8世紀、フランク王国時代に
大天使ミカエル(サン・ミシエル)
がこの地に修道院を開けという夢を見たサン・オペールにより開設されたと伝えられる
島全体が修道院である世界遺産である。英仏海峡の要衝で英仏100年戦争時実際には
要塞として使用された。修道院とともに大砲が見ものの世界遺産である。

実際、周りを潮流の早い海に囲まれ、断崖絶壁の地形を利用した修道院は城として何度も
改修を重ね外観はむしろ要塞に見える。

元々は大天使ミカエルの巡礼地であったこの島は、1979年に世界遺産になっていらい
世界でも有数の観光地として知られる。

俺は仕事を終え、修道院や要塞の観光を終え終始ニコニコな美琴の
顔を見つめている
干潮で干上がった海の中野島と陸を結ぶ道路を2人で歩く。
今晩は島のホテルに泊まるのでゆっくりと島を味わう。

「まるで定番のフランス旅行コースね」
「天気もいいしな・・」
「それにしても・・」

「え?」
美琴はなんかの雰囲気に気が付いたみたいで少し口調が変わる
「なんでもない」
なんでもなさそうな美琴の口ぶりから容易ならざる事態を俺は感じ取る。
「また・・テロか?」
「ええ・・今回はなりふり構わないみたいよ」

「当麻・お客様よ」

どこから現れたのか、目に生気のない死体のような「人間」が
1000人ほど現れる

「美琴・・?」
「生体反応がほとんどない」
「え?」
「いや・・多分・・」

「誰かに遠隔操作されている」
「じゃ・・触れば解除できるのか?」
「理屈じゃそうだけど・・」

「え?」
「アレは・・ゾンビみたいな奴じゃないかしら」
「明らかに凶暴性を増しているし、それに・・」

ゾンビのような、人間は私と当麻へ噛みつこうと必死に飛んでくる。
人間離れした跳躍力で飛び跳ねてくる。それを高圧電流で撃ち落とすが、

919■■■■:2017/04/02(日) 13:17:06 ID:R554/THU
回復力が増しているのか、あまり効果がないようだ。

一瞬で炭化させるのは簡単だが、これでも恐らくもとはまともな人間であった
事実がそれをためらわせる。
何秒か私は沈思したのち、脳を強力な電流でショックを与え、気絶させる選択を選ぶ

「しゃあない・・」
「多分・・意識を操作される術式とウイルスのようなものに感染していると思うわ・・」
「殺すのは簡単だけど・・」

「どうする?」
「まあ・・少し時間をかせぎしましょう」

美琴は、右手を操作し、地中から莫大な砂鉄を巻き上げる、その砂鉄が
磁化し、砂鉄をまぶせられたゾンビを地面を縛り詰める。さらに、砂鉄の鞭をからめ、1ケ所へかき集める。

「炭化させるのは・・簡単なんだけど・・だけど殺したくない」
美琴が苦笑いしながら、俺に語り掛ける。
それでも、生体電流を操作し、ゾンビの記憶を消せば終わる・・はずだった。

だが多数のヘリが状況をさらに悪化させる。バルカン砲が、ロケットランチャーが
俺たちを狙う。御坂美琴が、学園都市の顔が、外で全力をふるうことができず、市民
を殺す事ができないことに付け込んだ卑劣極まりない攻撃。

俺は、この攻撃を仕組んだ敵の狡猾さに歯ぎしりする。攻撃力では太刀打ちできない敵が
絡め手で襲ってくる。

「正直、私を殺す事はできないでしょう」
「だけど、このゾンビと・・当麻を守りながらヘリと戦うのはなかなか難しいわ・・」

「今一瞬でもゾンビの拘束を解けばゾンビが襲い掛かってくる
「生体電流を操れる私はともかく当麻にはウイルスの感染が予想されるからね・・」

「仕方がない」

俺は美琴が決意を固めたことに気が付く。
「美琴・・殺す気か?」
「通常の方法で倒れない奴は、再生速度を上回る速度で完全に炭化する意外に
ないじゃない、それに復活できると思うわ」
「だけど・・・それではお前の手が汚れるかもしれない」
抜群の操作性と汎用力を誇る美琴の電撃でも、加減を誤ると完全に殺すかもしれない
美琴もゾンビ相手に絶対の確信などないだろう。加減だって普段よりはるかに困難だ。
「じゃ・・どうするの?」

「美琴・・俺の右腕を切断してくれないか・・」
「え?」
美琴の顔が驚きに包まれる・・
「本当にいいの?」
「時間がない、すぐにやってくれ」
2秒ほど考え込んだ美琴は決意を固め、左腕を操作する。

右手でゾンビを封じ込め、頭から磁力と電撃で銃弾とミサイルを撃墜しながら、左腕を操作するという器用な事をしながら溶接ブレードを形成する

無音とともに質感を伴った美琴の溶接ブレードは、まったく痛みを感じさせることもなく
あっさりと俺の腕を吹っ飛ばす。
そこから幻想殺しにブロックされた俺の真の力 八竜が現れる。

八竜・・あらゆる異能を食い尽くし、無に還元する謎の力。
俺は正直いまだにその力を使いこなすことはできない。だが・・美琴に俺を守るために
その手を汚させるわけにはいかない。

考える必要もない、・・そして・・
俺の右腕からあふれ出た力が轟音と閃光が辺りを包み、八竜がゾンビ1000体を包む・・
刹那、異能でゾンビが発する異能を八竜が食らい尽くし、異能でゆがめられた空間から
発せられるエネルギーを吸収しつくす。

そして・・力を使い果たし俺はその場に倒れ果てる。
・・・・・・・・・

何分たったかわからない

920■■■■:2017/04/02(日) 13:19:56 ID:R554/THU
俺は美琴に膝枕されていることに気が付く
俺が寝ている間に、事後処理はすんでいた。

美琴がヘリを磁力で無理やり着陸させ、事件を首謀した何者かは逃げたのか人払いの
術式は解除され、辺りは元の観光地の喧噪を取り戻す。フランス政府へ手を回し、
事件の後処理を終える。
表向きには何事もなかったように、すべてが収まる。

後から聞いた話だが、敵はロケットランチャーや、戦闘機を駆使し、戦争でも起こす構え
だったらしい。

だが、そんなものが美琴に通用するはずもなく、一切の攻撃は、届く前に無効化され
世界遺産モン・サン・ミシェルと観光客に何らの被害も発生がない。

あれだけ猖獗を極めたゾンビと化した1000名は八竜の力で、術式を解除され、元に戻っている。

俺の右腕は何事もなく復活している。一体そこにどんな秘密があるのか俺も全く
理解してはいないが、美琴は大した驚くこともなく現実として受けて入れている。

その間に、学園都市の統括理事会事務局と初春飾利へ電話をしていた美琴が通話を終え、俺の元へ歩み寄る。

「ありがとう、助かったわ」
俺は、これだけの事態を何事もなく収拾する美琴の手腕に舌を巻きながら、当然の疑問を
口から発する。

「だけど・・このまま放置していいのか?」
「え?」
「美琴を暗殺しようとした奴の件」

「そうね・・やっぱり事件の首謀者には相応の罪が必要よね・・」
「とは言えここはフランス、私が簡単に動ける場所でもない、だからフランス政府
に事件解決をお願いしたけど、フランス政府に裁けるかしらね・・」

「え?それは」
「当麻・・あのおっさん覚えているわよね、セクハラ親父」

「え?」
「今回の事件は、私に大量殺人の疑惑をかけ、なおかつ十字教の
聖地モン・サン・ミシェルの破壊をイスラム原理主義者に着せる
一石二丁を狙っていた」
「は?・・」

俺は、事態の奇怪さに驚愕させられる。
「それは・・」
美琴が明るい顔で奇怪な話を始める。
「まあ事実は小説よりも奇だったわね・・」
美琴が軽口のようにとんでもないことを話始める
「今回の事件の背後に、イスラムと学園都市の排除を唱える、
イスラム原理主義の皮を被った十字教魔術集団と、それと結託した
軍産複合体がいる・・まあそんな話」

「はあ?・・」
「ようは、現代の十字軍を学園都市と中東へ起こそうとした・・そんな話よ」

「それて・・悪辣だな・・」
「私が・・イスラム原理主義と手を組む?ありえない。だけどそんなねつ造をするのが
十字教と、十字教よりのマスコミのフェイクニュースなのよ」

「まあ、でも・・売られた喧嘩を私は買う主義」
「どうせあの糞爺さんはたたけば埃がでるでしょう」

「いいのか?」
「本来外の世界の政治に絡むのは、ルール違反だけど・・私の名誉棄損し、当麻を殺そうとしたことは絶対許せない」
美琴の顔が精悍な表情に変わる。
「行きましょう・・私に大量殺人者のぬれぎぬを着せ自分の
都合で大量殺人をする奴に鉄槌を食らわせましょう」
「ああ」

久しぶりに見る、正義感の塊の美琴、その誰もが見惚れる笑顔を守るため
俺も立ち上がる
俺と美琴の周りの世界を守るため

続く

921■■■■:2017/04/02(日) 13:21:17 ID:R554/THU
以上とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 18話: 4章―3
の投稿を終わります

922■■■■:2017/04/02(日) 13:27:55 ID:R554/THU
>>915
遅れてすいませんが数日中に新シリーズを開始します。

923■■■■:2017/04/10(月) 14:29:03 ID:.I78PthU
卒業式 1話

2月12日(日)午後6時

外の世界では、笑点シンドロームとか、さざえさん症候群という言葉がある。
倒産寸前の原子炉メーカーがスポンサーをしている国民的アニメ番組を見終わった
後、勤め人が、翌日からの辛気臭い労働を思い出し、憂鬱な気分になる現象らしいが、
ちょうどいま私もそんな気分に襲われている。

1年前のバレンタイン・デーに自分の気持ちを想い人に告げて以来毎週、私は
ここへ通ってくる。多忙な平日はそれぞれの活動を続け、土曜日の夜から
日曜日の夜までの1日甘美なひと時を過ごす。

土曜日夜に1週間分の食材を買い込み、食欲という煩悩塗れのインチキシスターから
食材を守るため購入した鍵付きの大型冷蔵庫へ食材を購入する。

その冷蔵庫から食材を取り出し、テーブルの上にお肉と白菜としらたき・ネギと高野豆腐を、形よくカッティングした食材と携帯ガスコンロを食卓にセッティングして本日のメインデッシュのすき焼きの準備を終える。割り下をベースした関東風ではなく、肉を直接鉄板の上で焼き、しょうゆと砂糖をまぶし味付ける。お肉の香ばしい香りが漂い、そこへ白菜とネギを入れる。笑点の放映が終わるころには、ぐつぐつとすき焼きセットが出来上がる。

野菜と肉の香りが食欲を誘う。
(安いお肉の割には美味しそうね・・)

「さあ召し上がれ・・」
ご飯を形よく盛り付け、隣にネギとワカメの赤みその味噌汁を配膳する。
「いただきます」

「どう?」
「この肉うまいな・・」
当麻が生卵に、安物の牛肉をつけ、一気に飲み込んでいる。高校生の食欲は恐るべしで
咬まずに、飲み込んでいる。
「ありがとう」
「ふふ・・まあ今日は、あの子には小萌先生と焼肉食べ放題バイキング店に行ってもらって
いるし・・ゆっくり食べられるしね」
当麻は100g200円のカナダ産の安物のお肉を本当に美味しそうに食べてくれる。

私は自分が出すからせめてAランクの100ℊの1000円くらいの肉にしようと言っても
断るのだ。
一通り当麻が食べ終え、少しペースが鈍ったところで私は話を始める

「でも、なんかあっという間ね」
私は当麻の旺盛な食欲を母親のような気持ちで微笑ましく眺めながら、ゆっくりと
安物の固い肉をかみ砕く。
喰うことに夢中の当麻が、私の凝視する視線に気が付いたのか言葉を返す。
「え?ああそうだな」
私は、当麻がようやく話を聞く気になったのでは話を続ける。
「楽しいひと時はつかの間の夢みたいね」
「え・・?」

「違う学校だし、雑事もある。当麻はいつも目の前の誰かを助けている。」

「土曜の夜から日曜の夕方まで、たった24時間しか会えない」
「せっかく・・告白したのに、全然距離がつまらない」

「え?どうしたんだ美琴・・」
白菜を食べ終えた当麻が話に乗ってくる。
「なんか・・せっかく告白して交際を始めたのに全然甘い雰囲気ならないてね・・」

「え・・え・・毎週こうやって会っているじゃん」
「まだ美琴は中学生だし・・」

「そうね・・でももう後1月で私も高校生よ・・」
当麻はしゃべりながら卵とすき焼きの汁に染まったご飯を口へ詰め込みながら
会話を続ける。
「ああそうだな・・」
何かを思い出したのか当麻が私に今更の確認を聞いてくる
「で、本当にレベル5の御坂美琴さんはとある高校なんかに進学なさるんですか?」

私は安物お肉のはちみつで味を誤魔化した安い牛脂を飲み込みながら、話を続ける。
「ふふ・・なんか内の担任みたいなこと言うのね・・」

924■■■■:2017/04/10(月) 14:30:16 ID:.I78PthU
「え?」
「最近、私の担任の綿辺先生が考え直さない?て言ってくるのよ」
「長点上機や霧が丘へ変更する気はない?てね」

「そうだろうな・・月詠先生が御坂美琴の研究開発なんて対応できないとか言ってたしな・・」

私は箸を置いて苦笑いをする。
「まあ、とある高校に勉強や能力開発は期待してないわよ」
「はっきり言って当麻がそこにいなければ行く意味なんてないわ・・」

「私は、いますぐ当麻と一緒に暮らしたいわ」
「こんな週1日じゃ満足できない」
「え・・」
私は本音をぶつける
「ね・・当麻は私といるのが楽しい?」
お肉を食うのを中断した当麻が私の顔を見つめる。
「美琴・・どうしたんだ?」

「いや・・当麻が目の前の困った女の子を助ける事をどうこういうつもりはないの」
「私もそんな当麻に助けられた女の子だし・・」
「その恩を一生忘れることはないし、ささやかだけど少しでも当麻へ恩を返したい」

「だけど・・今は・・できるだけ私だけを見てほしい・・」
「つまんない、ちっぽけな女だけど・・私は当麻の一番になりたいし・・そのために
なんでも努力したい・・」

「美琴・・」
「俺はそんな・・大層な男じゃない・・」
「それに・・」

(しまった・・サザエさんシンドロームで変な事を言ってしまった)
私は当麻が自分を卑下しそうな気配を感じ、軌道修正を図る。
「御免・・当麻と居るのが詰まんないわけじゃないの」

「え?そう・そうか・・?」
「私はもっと当麻に触れたいし、当麻と一緒に過ごしたい」
「でも・・春になれば・・私がとある高校にいけば・・一緒に住めるわよね」

「え?」
当麻は少し、びっくりしたように話を返す
「は・?」
「前から考えていたのよ・・私が卒業したら一緒にマンションに住みましょう」
「そうすれば毎日会える」
「毎日、一緒に学校へ通って、毎日一緒に同じ屋根の下で暮らせる」
「ね・・いいでしょう」

「だけど・・学寮は・・」

「当麻・・アンタの学校の実態を私が知らないと思っている?」
「当麻の学校の雲川さんはずいぶん豪壮な屋敷に住んでいるわよね」
「私達がマンションに住むことになんか問題あるかしら?」

当麻が箸を置いて沈思している。
私は当麻の神妙な顔を眺めながら話を続ける。
「私はね・・とある高校へ勉強しにいくわけじゃないのよ・・」
「そこに当麻いるから行くのよ」
「だから・・来週新居を探しにいきましょう」
「いい?」

「ああ・・」
私は当麻が同意してくれたことを素直に喜んだが、その返事が心からでないことに
もっと注意を払うべきだった・・
だが、自分の世界で盛り上がっている私はそのことを気が付かなかった。

・・・・・・・・・・・・・・
2月13日(月)常盤台中学 面談室 

私は、突然校長先生に呼び出され、校長室へ入室する。
生徒会長として通いなれた場所だが、正直気が重い。その原因を
考えると、余り気が進まない。

(はあ・・やっぱりそうなるかな・・)

925■■■■:2017/04/10(月) 14:33:08 ID:.I78PthU
「失礼します」

「御坂さん、着席ください」
「はい」
校長秘書が、入室し、最高級品であろう銘柄の紅茶を入れる
校長がマナー通りの丁寧な作法で紅茶を一口口に着け2秒ほど間を空け口を開く

「御坂さんは言うまでもなく、この学校にとって誇るべき生徒です」
「能力値、学力、そして熱波事件以降の学び舎の園再建工事や、最後の晩餐事件で
の避難救護活動、その後の学園都市再建におけるボランティア活動」
「そのすべてに置いて、この学校のみならず学園都市の中でも模範的な生徒だと
思っています」
「この学校を代表して、3年間の活動に感謝します」
(あちゃ・・やっぱりそうか・・)
(やっぱりね)
私は心の中で溜息を飲み込む

「ですが・・」
「単刀直入にいいます。御坂さんの進学先には正直当惑を禁じえません」
「とある高校と決められたようですが・・」
「正直・・常盤台の生徒がいくような学校では・・ないですよ・・」

「設備、学力水準、能力開発はっきり言って低レベルです」
「それにこれは老婆心ですが・・」
校長先生が畳みかける
「御坂さんの一生にとってもあまり賢い選択だと思えないですね」
「御坂さんは、将来世界の指導者になりうる逸材だと我々は思っています」
「学園都市の統括理事長や超巨大企業のCEOや世界的な研究者」
「道を誤らなければいづれも御坂さんなら可能でしょう」
「ですが・・とある高校という選択は本当にベストチョイスですか?」

正論すぎる。これに反論するのは困難だ。
確かに校長先生の言うとおり、はっきり言って、自分の将来を考えるなら
余り賢明な選択とは言えない。私の表情を読んだのか、校長先生はさらに
畳みかける。

「「少年老い易く学成り難し」とも「光陰矢の如し」とも言います。
10代の3年は貴重です。その3年を無駄にしていいですか?」

私は必死に反論を始める
確かにとある高校はFレベルで授業水準も、設備もお粗末なものだ。
だけど・・去年、飛び級卒業の要望をけられ1年待ったのだ。そして信頼の失墜した
常盤台や学園都市の顔として、必死に頑張ったのだ。自分の進路ぐらい決めさせて
もらいたい。

「校長先生、私へ過分な評価をいただいて本当にありがとうございます」
「ですが、これは未熟とは言え私なりに必死に考えた結論です」
「人生万事塞翁が馬とも言います。たとえ回り道に見えても
私の一生にとってFランクの学校へ行く事自体が悪いとは・・」

校長が蔑むように溜息をつく
「ウサギと亀の話は知ってますよね・・」

「御坂さんの現時点の優位なんて3年、こつこつ頑張ったレベル4の子
なら追いつけるレベルですよ・・」

「残念ながら人間は怠惰な動物です。いくらストイックで勤勉な御坂さんでも、電子工学や
機械工学では天才的な才能を有する御坂さんでも・・その研究や活動は常盤台のような
名門校の潤沢な資金がなければできないでしょう?」

「御坂さんの制作したAI機器や駆動鎧、大変立派な性能です。そのスペックや仕様書
を見た統括理事の面々は驚嘆されていましたよ」
「正直もったいない」
「こんな逸材をFランクの底辺校で腐らせるのかとね」
「私はそう言われました」

「まあ御坂さんの懸念は分かりますよ・・」
「もう今更出願には間に合わない・・」
「まあ普通ならそうでしょう」
「ですが」
「御坂さんの学力なら・・・長点上機だろうが、霧が丘だろうが今からでも推薦で入れます」
「なんなら、私が今推薦状を書いてもいいですよ」

926■■■■:2017/04/10(月) 14:34:45 ID:.I78PthU

校長先生が常盤台のロゴ入りの推薦状を机の引き出しから取り出す。

そしてサラサラとサインを書きその上に学校の印影を押印する。
「さあ、私は推薦状を書きました」
「金曜日まで待ちましょう」

「私は確信していますよ・・聡明な御坂美琴は賢明な判断を下すとね」
「それと・・」
「八竜も幻想殺しも忘れなさい・・もう有事は終わりです」
「リアルの世界では・・上条当麻は無力ですよ・・」

校長は私も気にしている残酷な事実を指摘し、私に退出を命じた。
・・・・・・・・・・・・・
2月13日 午後4時

私は、よろよろと校長先生の一言にぶちのめされ、部室へ戻る。

机の上には駆動鎧の仕様書や、作業レポートが山積され、私の一読を待っている。
10月に部長は辞めたが、部員達は私を手放さず、部長よりも顧問扱いの私の顔ばかり
見ている。基本義理人情にとらわれやすい私は、部員達を放置できず、結局ここへ
来て、レポートの添削や指導をする羽目になる。

だが今日はさすがにそんな気になれず、部員達へ声をかけ後そそくさと、会議室へ籠る。

「ああ・・言われちゃったな・・」
今の常盤台の校長は切れ者で知られ、私にあそこまではっきり言う以上、必ず私を
長点か霧が丘に入れる自信があるはずだ。

「だけど・・いったい・・どうゆうつもりだろう?」
確かに、校長のいう事は正論だ。学園都市でも最上層の御坂美琴がFランクの学校へ進学
することは余り賢明な選択と言えない。大学院に相当する教育を完璧に習得した
御坂美琴に低レベルの高校で教えられることなどあるはずもない。

会議室のソファーに座りながら、沈思を始める。

それにしても余りの校長のいいようにいまさらながら腹が立つ。
確かに、とある高校はFランクの高校だ。
100人に聞けば99人は校長先生の言葉を正しいと言うだろう。

そもそも幻想しか殺せない男の為に、その研究成果や対戦シミュレーションが
軍事レポートや機械工学や電子工学の教科書に実名が何度も乗るほどの超電磁砲が
人生を捧げるなんて間違っていると言われるだろう。それは私自身が分かっている。
だから・・一層言われたくない。

私自身の事はまあいい。自分の決断だから、それはいい。
だけど、世界を何度も救った上条当麻へ失礼じゃないか?
私は心の中に段々不満がたまっていく。

報道管制で何も知らされていない、一般人が上条当麻を貶すのはいい。
だけど、統括理事長代行にコネがあり事情を知っている校長が、危機に陥った学園都市
を救った学園都市を何度も救った上条当麻へあんな態度をとることが私には許せない。

上条当麻を敬えとは言わない。そんなことは上条当麻が望んでいない

そうではなく、彼の功績に正当な評価を与えてほしい
それだけなのだ・私の希望は

(だけど・・、もしも私が努力をやめれば・・)
(結局は学園都市の超電磁砲を腐せたことでさらに彼の評判が下がる)
それに・・ブラインドの向こうの部室で、駆動鎧の研究を続ける部員達を見ながら
私は決意を固める。
(この活動を続けたい気持ちはあるわね・・)

学園都市の復興活動をする中で私は得難いものを得た。
断ち切ることではなく、人と人を繋ぎ合わせる力が難局を解決することを、
区別することでなく、受け入れることが大きなうねりを作り出すことを学んだ。
一人ひとりの力は小さくとも、力を合わせればできることもある。

この学び舎の園という小さな世界を飛び出したおかげで知ったこの学園都市の現実
私に現実へ立ち向かう勇気と力を与えた上条当麻に正当な評価を与えてもらいたい。

927■■■■:2017/04/10(月) 14:37:01 ID:.I78PthU
(それに・・妹達の問題もある)
行方不明になったアレイスタ・クロウリーのプランが雲散霧消した今、深刻な財政難に陥っ
ている学園都市にとって、基本たかだかレベル2からレベル3にすぎない私の遺伝子を分けた9973人の
クローンの維持が負担になっているだろう。
「結局私が頑張るしかないわね・・」

「いいでしょう・・私は学校に関係なく、自分の思いがこの世を
変える事を立証しましょう」
「校長先生・・私は障害が大きい程、頑張ってその障害を乗り越える女です」
私はしっかりと拳を握り、目的に向かって突き進む。
(こんな話・・あの僧正から受けた屈辱に比べれば些細な話)
「必ず、貴方の幻想をぶち壊すわ・・」

「さあ・・うじうじ悩むのは性に合わない行動開始よ」
私は立ち上がり、頭の中で、組み立てたプランを実施へ移す。

だけど・・そうね・・目の前の書類の束を処理しよう・・

私は、もともとただのレベル1だった自分はこうやって一つ一つの課題を
堅実に処理して今の地位を構築したのだから。
・・・・・・・・・・・・・・
17時

一通り、部員の書類の添削を終え、私は寮へ戻る。

予め予約した会議室に鍵をかけ、ホワイトボードと
付箋紙を用意して考えを書きなぐる
脳内で計画したプランを反芻しながら、可否を一つ一つ検証する。

前提に漏れはないか、正常化バイアスは入っていないか、自己を
ちゃんと客観視できているか、周りの反発を無視していないか、他の
方法をただ面倒くさいから無視していないか
頭脳をフル回転させて考え抜く。

私はある意味自分の限界はよくわかっている。結局、凡人の
自分は、積み上げて反復練習するしかない。それを丁寧に欠かさず
やるから非凡に見えるにしかすぎない。
こうやって考え抜いて、決めたことを実施し問題点を整理して
PLAN-DO-CHECK-ACTIONを繰り返す。それだけだ。
そもそも、・・とある高校に私が進学するデメリットは何だ?

設備か?教育水準か?時間の無駄か?研究か?能力開発ができないことか?
私は課題を分類してホワイトボードをざっと眺める。

(ふーん・・)
私は想像以上に悲惨な状況に頭を抱える
(はあ・・確かにある意味校長の言う通りだわ・・)
(設備や教育水準はどうしようもないわね・・)
(そもそも常盤台以下の授業を受けること自体が時間の無駄だしな・・)

上条当麻の宿題やら、期末テストの問題をざっと解いたことが
あるが、余りの
低レベルに驚いたことを思い出す。

私は無駄になる時間をざっと計算して見る
週30時間✖45✖3=4050時間
(4050時間あくびをしながら復習以下の事で時間をつぶすのか・・?)

私は脳裏に白井黒子や婚后光子を思い出す。彼女達に3年遊んだ
自分に勝てる道が見えない。(これは仕切り直しね・・)
(とある高校に進学するのは、確かにもったいない・・)
校長は確かにやり手だ。私がすべての可能性を検証することを承知の上であの
謎かけをしたのだろう・・その事実に私は打ちのめされる。
(とは言っても・・今更、校長に頭を下げて長点上機や霧が丘に進学するのもしゃくだな・・)
(なんか・・この状況を解決する方法はないのか?)
(いっそ・・大学でもいくか?どうせ長点上機でも常盤台の繰り返しでしょう?)

思考がぐるぐる回転しだし、発散しだす。
(今日はここまでにしよう)
私は、ホワイトボードを写真撮影し、付箋紙を回収する。
「少し、外気にあたりましょう」

私は、あの橋へ向かって歩き始める。
・・・・・・・・・・・・・・
午後6時30分 あの橋の上

久しぶりに寮から磁力による高速移動を使ってここまで移動する。

928■■■■:2017/04/10(月) 14:39:37 ID:.I78PthU
あの日以来私は何か困った時にはここで、しばらく考え事をする。
煮詰まった時は視点を変え、気分展開を図る。

まだ夜風は冬のままで糞寒い。

正直・・自分は甘えていたのかもしれない。常盤台というブランドの
恩恵を受けながら
そのことに結局気が付いていなかった。こうしてその事実を校長に
突き付けられいまさら動揺している。
そんな自分にひたすら橋の上の北風が冷たく感じる。

とはいえ、自分が今まで構築した人間関係や、技術・能力が無駄だったとは
思いたくもないし、それを失いたくもない。この力があるからこそ
救えた人もいる。

(どうしたらいいのかしらね・・)

多分、このまま進学校ルートで進むのが一番楽だろう
だけど・・本当に私がしたいことはなんだろう・・

超能力者でも、AI開発者でもない。ただあらゆる不幸に右手一つで立ち向かう上条
当麻の傍で一緒に戦いたい、それだけだったはずだ。
できるだけシンプルに考えてみよう

よし・・もう1度考えよう、私が踵を返そうとしたときに、私の目は
想い人を捉える。

「美琴・・」
「当麻どうしてここへ」
「白井に聞いた、美琴がただならぬ表情で思い悩んでいると」

「まったく・・黒子も余計な事を・・」
「でも、当麻が来てくれてうれしいわ・・」

「なあ美琴・・もうとある高校なんてやめないか?」
「え?」
「とある高校はいろいろ考えたけど、御坂美琴を受け入れられる
学校じゃない」
「ね・・当麻何言っているの・・」
「美琴だって分かっているだろう、俺の学校のレベルを・・」
「嘘・・」
「なんで当麻がそんな事言うの・・」
「美琴が悩んでいるからだよ・・」
「え?」

「美琴が思い悩んでいる事は俺にも分かっていた」
「お前が俺に遠慮して悩みを言わないこともな」

「白井じゃないが、美琴は優しい、いや優しすぎる、自分が傷つくことを
厭わず全部自分で受け止めようとする」
「それは凄いことだと思うし、俺は美琴のそんなとこすごい好きだ・・」
「でも・・目の前の男はそんなに頼りないか?」
「俺はアステカの魔術師に約束をした。御坂美琴とその周りの世界を守ると」

「だから、俺は美琴がどんな決断をしようが常にそれを支える」
私の目から涙がこぼれだす、ここまで当麻に言わせた私は愚か者だ。
その言葉、本来私が背負うものだ。私こそがリアルの世界では上条当麻を守る
と誓ったのに・・当麻に私の迷いで迷惑を掛けた。
「御免・・私が悪いのね・・」
当麻が寄り添ってくる。
「いや・・美琴が不安になる気持ちはよくわかる」

「もっと早く気が付けばよかった・・」
「な・・美琴・・今日は一緒に学寮へ行かないか?」
「いいの?」
「俺が美琴と一緒にいたい。俺はもっと美琴の傍にいたい」
私の目から涙が止まらない
「ありがとう・・」
「ね・・こんなつまんない女だけど・・今日は泊まっていいの?」
「俺には美琴しかいない、だから美琴の言うことは何でも聞く」

心の中から熱い何かはあふれ出す、その思いが、とてもうれしい。
告白いらい1年、私は初めて当麻と心がつながった気がした。

続く

929■■■■:2017/04/10(月) 14:41:07 ID:.I78PthU
遅くなりました
卒業式 1話の投稿を終了します。

930■■■■:2017/04/21(金) 19:24:43 ID:do8VD7AU
卒業式 2話
2月14日(火)午前7時

制服の上にエプロンを装着して、朝食を作り終える。
炊飯器で米を5合炊き、量だけは大量の朝食を作り終える。
卵8ケと、ベーコンを入れた、ベーコンエッグ、それにほうれん草400gを
軽くサラダ油で炒め、さらに盛り付ける。

もちろんその60%はインチキシスターが食べるわけだが、これでも
全然足りないらしいからどんな食欲なんだと言いたくなる。

味噌汁は、鍋一杯に炒めたもやしと豆腐を1kg投入したもやし味噌汁だ。
味的には・・まあ素材が素材だけにそれなりとしかいいようがないが
これでも当麻とインチキシスターは歓喜してくれる。

私は自分も食べるので材料費は全部出すと言うのだが、妙なところが
潔癖な当麻はそれを拒否し、結局半分を私が出す事で話はついている。
それでも、少々大げさに感謝されるのが私には少しおかしくもある。

配膳を終え、私も着席する。
一同「いただきます」

ご飯をかきこむように食べ終え、当麻が少し食べ始める。
「美琴美味しいな・・」
「え・・そう?材料費なんて一人の200円くらいよ」
「美琴の愛情だよ・・」
インチキシスターは食うのが忙しいのか一言もしゃべらない
「ふふ・・ありがとう」
「美琴もずいぶん素直になったよな・・」
「え?ツンデレアーマーなんてとっくに解除済みじゃない」

「はあ・・そうか?」
「まあ、1年たったしな・・」

「そうね」
「私も・・素直じゃなかったわね・・」
「でも・・」
「もう・・当麻に隠し事はしないわ」
「これからは一緒に暮らすんだもの・・」

私は、軽い食事を終え、方付けを始める。

「じゃ‥当麻そろそろ行きましょう」
「ああ・・」
「美琴も今日はしっかりと頑張れな・・」
「ええ。はっきり自分の意思を示して後悔しない」
私は、昨晩当麻と話あった結果を告げに学校へ通う。
・・・・・・・・・・・
午後4時
今日はバレンタイン・デー

授業も終わり、私はクラスの子からもらったチョコやクッキーを整理し内容を
チェックする。その数の多さにげんなりする。
(まったく・・私は男じゃないのに・・ほぼ全員じゃないの・・)

驚くことに明らかに食蜂派閥の子まで私にチョコやクッキーをプレゼントしてくる。
(まあ元生徒会長への虚礼て話?かな)

基本ノンケの美琴は、女子校の中でどれほど自分が崇拝され、頼れるお姉様扱い
されている事に鈍感だった。そんな美琴にとって、毎年バレンタイン・デーで、
ほぼクラス全員からプレゼントを貰うのが基本煩わしい。

基本女子校である常盤台で本来ならバレンタイン・デーは無縁なイベントに見えるが
なぜか、友人間でプレゼントを贈る日と脳内変換され、盛大に行われる。
しかも・・いつも美琴と食蜂の間でどちらが多くのチョコを集めるかというくだらない・・
ことが去年からイベント化し、結局同数で引き分けとなった。

(まったく・・面倒くさい・・なんで女の私が食べきれないチョコ貰うのよ)
抱えきれないチョコやクッキーの山を宅配便に梱包し、託送の手配を終える。

(部活も含めれば多分100人はいるわね・・)
御礼状と、返礼品の手配を考えると頭が痛くなる。

931■■■■:2017/04/21(金) 19:26:45 ID:do8VD7AU
だけど・・それも・・ことしで終わりか・・
卒業すれば、この子達は私の事はしだいに忘れ、それぞれにパートナーを見つけ
私の記憶は単なる青春の1ページに埋没し、やがて忘れていくだろう。

それでいいのだ。
私は、一人の男を愛し、常盤台の超電磁砲から、ただの学生に戻るのだから・・

・・・・・・・・・・・・
常盤台中学 校長室 17時

私は、上条当麻と話あった結果を伝えに校長室へ向かう。
当麻と腹を割って話あった結果それを校長先生へ伝える。
昨日は緊張したが今日はむしろ晴れやかな気分だ。
「失礼します」

「御坂さんさすがに決断は早いですね」

「校長先生、ありがとうございます」
「あやふやな自分に将来を考えさせる機会を与えてくれて」
「校長先生のおっしゃるとおりとある高校へそのまま進学するのはやめます」
校長先生が安堵した表情を見せる
「さすが・・御坂さんは賢明ですね・・」

「で・・どちらにしますか・・長点上機か霧が丘?」

「長点上機でお願いします」

「まあ御坂さんの能力ならそうでしょうね・・御坂さんは汎用性に優れた能力ですし」
校長はサインした推薦状を机の上に置く

「ただし・・」
「え?」
「私が長点上機へいくのには条件があります」
「条件?」
心拍数が高くなる。これが断られたら、常盤台との関係が決定的に悪くなる
いくら、超能力者でも「大人」と決定的な対立をすることは決して得策とは言えない

「高校がスキップしたいと思っています」
校長が何かに気がついたのか興味深い視線を私に向ける。

「長点上機大学へ進学したいと思います」
校長先生が、飲みかけていた紅茶のカップを机の上に置き、苦笑いを始める。
「なるほど」
「で・・大検を受けると?」

「ええ」
校長先生が立ち上がり、窓辺を見つめる。敢えて私からの視線を無視するかのように
言葉を発する
「つまり・・夏の大検合格までは・・フリーだと?」
「ええそのつもりです」
校長先生は、私にほうへ顔を向け、苦笑いを口元に浮かべる

「なるほど・・とある高校に行っても1年しか一緒に入れない。だったら先回りして
長点上機大学へ進学する・・御坂さんはなかなかやり手だわね・・」
「校長先生はさすがですね。とてもかないません」
「私の意図を、的確に見抜かれました。さすがです」

「確かに御坂さんの学力ならどの高校へ通っても常盤台の繰り返しになりそうですね」
「いっそ・・高校を飛ばして大学へ行く、そのほうが合理的かもしれません」
校長先生が微笑みを口元へ浮かべる。
「いいでしょう。御坂さんが夏の大検取得後、すぐに長点上機大学への推薦状を
出しましょう」
「まあ1年くらいリフレッシュして、周りを見るのも悪くないかもしれないし」
「結果的に2年早く大学生になるのですから遠回りでもないでしょう」

「いいでしょう・・ノープランでとある高校へいくよりはるかに合理的な選択です」

「それで1年フリーな御坂さんはどうするつもりです?」
「それはまだノープランです」

校長がなにやら思いついたように不思議な表情を示す。
「そうですか・・」

932■■■■:2017/04/21(金) 19:29:54 ID:do8VD7AU
校長先生は座りなおして、私に顔を近づける。

「御坂さんは駆動鎧や兵器、AIを開発する部活を始めました」
「その研究水準は非常に高く、統括理事会からも非常に高い評価を得ています」

「ですがその活動は、現状ではまだ御坂さんの圧倒的な能力と人脈に依存しています」
「常盤台にとって、この活動は統括理事会との関係上非常に有用な活動です」
私は校長の予想外の反応に当惑する。
「え・・と・・それは・・」
校長先生の言葉が熱を帯び始める
「御坂さん・・これはお願いです・・」
校長先生が頭を下げる、机に頭をこすりつけんばかりに

「はっきり言って御坂美琴を手放すのは惜しいんですよ・・」
この突然の行動に私は動揺する。
「校長先生・・そんな・・頭を上げてください」
私は心の中でこんなことまで校長先生にさせた自分の虚名の重さに当惑する。
「常盤台は、御坂さんが始めた部活をさらに規模を拡大して正式の研究所へ格上げしたいと思っています」
「今後1年間その研究所の顧問として正式に招聘したいのですが」
「これは学校長としてのお願いです」

私はますます当惑する。単純な一学生の進路の話が学校経営の方向性がなぜ絡む?
確かに私はそれなりに目立つ学生だった。だけど・・しょせんは一学生じゃないか
疑問がだんだん、こみあげるが・・が校長先生の真摯な姿勢が私の気持ちを揺り動かす

さらに校長先生が話を続ける
「まあそんなに悪い話でもないと思いますよ・・」
「え?」
「御坂さんの進路の方向性ですよ」

「それは・・」

「御坂さんの能力は確かに素晴らしいですが、しょせんは電磁気系にすぎません」

「未元物質のようにあらゆる、物理原則を捻じ曲げ物質を生成するわけでも、
あらゆるベクトルを解析し未知の運動法則を解析するわけでもありません」
「それは一般常識や物理原則を捻じ曲げる力ではありません」
「そんな御坂さんが頂点を目指すのならば、既存の研究成果を極めなければならない
のではないでしょうか?」

「そんな私が頂点だなんて・・」
私はただ、上条当麻に並び支える力が欲しかっただけだ・・学園の都市の頂点なんて
別に望んでもいない。周りと自分の認識の差異に驚愕する

「まあ御坂さんが奥ゆかしい性格であることは理解します」
「ですが・・御坂さんが熱波事件以来駆動鎧・AI・クラウドなどの開発に力を入れたのが
力を追い求めるものではなかったのでは?」

「それは・・」

「知的好奇心だといいますか?」
力を求めるなんてとんでもない、学校や学園都市の余りの惨状に自分の力をすこしでも
活用したいとおもっただけだ。

「私は、ただボランティア活動の一環で・・効率的な駆動鎧や情報処理システムが
必要だと思い・・」

校長先生が苦笑いを始める。
「御坂さんの純粋な気持ちを私は理解しているつもりです」
「学園都市を守りたい、困った人を助けたいその純粋な気持ちを疑う気持ちは
ありません」
「ですが、学園都市の上層部は違う考えを持っている人もいるんですよ」

「御坂さんはご自分が思っているより大きな存在です」
「知名度、能力、実績、そしてボランティア活動で多くの学生に慕われた存在・・」
「その御坂さんが学園都市のクラウド・駆動鎧・AI開発のすべての情報を収集し
最先端の開発を行ったという事で学園都市の勢力図に多大な影響を与えうる存在と
上層部には思われています。」

「それに御坂さん・・世の中で正義を通すには、力がいります」
「御坂さんには・・心あたりがあるのではないですか?」




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