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('A`)は異世界で戦うようです
1
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:21:36 ID:gOpuSR2Q0
鬱田ドクオとは、一言で言えば弱い人間だ。
過去を振り替えれば後悔しなかった出来事はないし、ましてや努力なんて言葉とは無縁の存在である。
テストは赤点ギリギリ、運動能力は一般人より少し劣る程度、体つきは貧相なもので米俵一俵持つのが精一杯。かといってそれらを補うための努力をしたいなぁとは思っても、けして実行することはなかった。
そんなわけだからドクオは自分という存在が嫌いだった。変わりたいと願っても、変えようとすること自体がめんどくさくなってしまう。
大学を卒業し、なんとか内定をもらった会社も周囲の環境に溶け飲むことが出来ず、やめてしまったことも自己嫌悪の一つの原因である。
よって、ドクオにとっての自分とは、あってもなくても変わらない路傍の石のような存在で、そんな自分が世界に与える影響など皆無だと信じ込んでいた。
*鼹類燭辰榛*、この瞬間までは。
452
:
1
:2014/07/11(金) 23:02:50 ID:MuFWsT2w0
それを眺めて彼はふむふむと頷く。概ね想像通りだ。あとは最後の仕上げをすればこのゲームは終盤に向けて動き出すだろう。
誰も彼もが絶望の中で泣き叫びながら死んでいくのだ。そうなってようやく彼は絶望する。
人型の生物は声すらださずにただただ立ち尽くす。
( ゚"_ゞ゚)「さて、手始めにここら一帯の街々を焦土に変えようか、悪魔よ」
453
:
1
:2014/07/11(金) 23:03:35 ID:MuFWsT2w0
第十話 終
454
:
1
:2014/07/11(金) 23:08:34 ID:MuFWsT2w0
これにて第十話終了です
今回の一連の話は本来こんなに長期化させるはずではなかったのですが、今後長編をやることが増えると思うので試験的に実施しています
あと二話か三話でこの話を終わらせられるとは思うのでお付き合いいただければ幸いです
最近暑いせいか集中力が続かずお待たせして申し訳ありませんが、次回も来週中には投下という形でお願い致します
その際は必ずこちらに一報いれるので、お待ちくださいませ
それでは今回も読んでいただきありがとうございました
455
:
名も無きAAのようです
:2014/07/11(金) 23:45:46 ID:Mms7zxvc0
乙乙
楽しみにしてます
456
:
名も無きAAのようです
:2014/07/12(土) 10:16:12 ID:buy/pwBo0
乙
最近これだけが楽しみになってきてる
457
:
名も無きAAのようです
:2014/07/12(土) 12:15:32 ID:Ffb0xMZk0
モララーとショボンどうなる…
毎回楽しみに読んでるぜ
458
:
名も無きAAのようです
:2014/07/13(日) 19:40:29 ID:PUmtn9uA0
この話すげえおもしろいと思うんだが読んでる人少ないんだな
459
:
名も無きAAのようです
:2014/07/13(日) 20:36:22 ID:DH2DCfBY0
あまり書き込まないけど更新ペース早いから楽しみにしてるよ?
460
:
名も無きAAのようです
:2014/07/13(日) 21:14:06 ID:ZUBbjO1Y0
読み専の人も居るからね
俺も楽しませてもらってるよ
もうすぐ話が終わるってのは意外だけど完結してくれたらまた読む人も増えるさw
この作者には期待してる
461
:
名も無きAAのようです
:2014/07/13(日) 21:22:52 ID:uxidwceU0
え、もう終わるの?
伏線回収しきってなくね?
462
:
名も無きAAのようです
:2014/07/13(日) 21:28:11 ID:101RRbRwO
第二部という形もありうる
463
:
名も無きAAのようです
:2014/07/13(日) 21:48:35 ID:JwIulYEc0
この話って今の一連の話って言ってるだろ、終わらんよ
464
:
名も無きAAのようです
:2014/07/13(日) 22:54:34 ID:uxidwceU0
だよな
この話で終わるとかありえないだろ
さすがにビビった
465
:
名も無きAAのようです
:2014/07/13(日) 23:56:18 ID:jVIMrjYQ0
ああなるほど
そういう事かww
みんなも作者もごめん
466
:
名も無きAAのようです
:2014/07/14(月) 07:08:16 ID:DaV74fO20
うぇーい無理せずゆっくり書いてねー
楽しみにしてるぞ!
467
:
1
:2014/07/17(木) 00:58:44 ID:BUfRUMoM0
どうも1です
最近色々と環境が目まぐるしく変わっておりましてなかなか執筆が進んでおりません
とはいえ一応十一話は四分の三ほど書き上がっておりますので今週の金曜日か土曜日には投下できそうです
いつになくレスがついていて驚きましたが、こんなにもたくさんの方々が自分の作品を見てくださっていることに感激です
それとこの話は三部作の予定で現状ようやく三分の一ほどシナリオが進んできた感じです
第一部は今やっているモ・トコ編と幕間が二話ほどと中編一本で終わります
ですのでそこそこ長くなるとは思いますがお付き合い頂ければ幸いです
シナリオ自体はとっくに完成しておりますので自分が死なない限りは完結までしっかりやっていきますのでよろしくお願いいたします
468
:
名も無きAAのようです
:2014/07/17(木) 21:30:50 ID:RIqZChuI0
今夜の総合は静かですね
469
:
名も無きAAのようです
:2014/07/19(土) 03:45:14 ID:DRSXC5Xw0
( ^ω^)やっと追いついたお
( ^ω^)僕の出番まだかお??
470
:
名も無きAAのようです
:2014/07/19(土) 10:19:38 ID:tfi3a3E.0
今日辺りかな?
471
:
1
:2014/07/19(土) 13:27:28 ID:UtpfPXNc0
どうも1です
本日の投下ですが、予定が入ったので明日にずらします
こういう時に限って予定が入る会社が憎らしい
待っていてくれるかたには申し訳ありませんが明日お会いしましょう
472
:
1
:2014/07/19(土) 13:28:12 ID:UtpfPXNc0
>>469
君の出番は第二部からだよ
この話終わったら少し出てくるから待っているように
473
:
名も無きAAのようです
:2014/07/19(土) 16:36:16 ID:DRSXC5Xw0
( *^ω^)おっぉっぉ
474
:
名も無きAAのようです
:2014/07/19(土) 21:29:14 ID:Vi6IwJXw0
支援絵かきたいけど絵下手だし登場人物の服装把握できない
475
:
名も無きAAのようです
:2014/07/19(土) 22:07:25 ID:OXctHYVE0
>>474
その辺は想像力と勢いでカバーするんだ!
476
:
1
:2014/07/20(日) 10:24:23 ID:DKaxDB8Y0
>>474
基本的に服装というのはあえて決めていません
異世界という設定ですが、あまり我々の住む現代世界と明確な差はないんじゃないかと私が思っているからです
一応設定が確定しているのは魔法学校の指定が三角帽子とマントだけであとは自由な服装です
騎士団連中は男が甲冑着込んでて、女は魔法学校の三角帽子に帯みたいなのがついているイメージですかね
本日21時から23時の間に投下したいと思います
477
:
1
:2014/07/20(日) 21:11:55 ID:V03MPEb.0
第十一話「神対神、開戦」
.
478
:
1
:2014/07/20(日) 21:12:51 ID:V03MPEb.0
◇◇◇◇
繰り出された大振りな拳を左に跳んで避けると、すぐに後方から巨大な岩石が飛来する。体勢を立て直す間もなくドクオはそれに剣を当てた。
岩は元からなかったかのように消失。しかし、岩の弾丸はさらに左右同時から向かってきている。
('A`;)「くそっ!」
身を伏せて弾が相殺するのを確認し、ドクオはゴーレムとは逆方向に駆け出した。次々に浮かび上がる大小様々な岩や石が雨霰と降り注ぐ中を致命傷を食らわないよう細心の注意を払いながら。
距離を空けて攻撃が止んだ隙に振り返ると、ゴーレムはなおも拳を振るい周囲の石畳をところ構わず粉砕して弾丸を増やしていく。ドクオの視界に映るのは浮遊する岩でほとんど埋め尽くされており、その数たるや数百はくだらないだろう。
ドクオは動くかどうか一瞬だけ迷ってしまった。だが、その一瞬が命取りだった。
ドクオが動かないと見るや、ゴーレムは浮遊した石を一斉に射出し始める。
('A`;)そ「冗談じゃねえ!」
逃げられるほどのスペースもない今、ドクオは迎撃するしかない。一つ二つ三つと高速で動く岩の嵐を叩き落としていくが、ドクオを狙っているわけではなくただ真っ直ぐ飛ばしただけのそれらは後ろにある建物を破壊し、周囲に粉塵を撒き散らしていく。
479
:
1
:2014/07/20(日) 21:13:36 ID:V03MPEb.0
不明瞭になる視界、それでもドクオは自分でも驚くほどの反射神経でもって弾丸に対応していた。
いくつかの破片や致命傷にならないものは微々たる傷を残していくが、動けなくなるほど酷いものではない。痛みがないわけではないがドクオの心が折れるようなことはなかった。
しかし、じわじわと焦りは募っていく。熾烈さを増す攻撃を避け続けるのにも集中力や体力が削られ、攻撃をすればそれに比例し威力も範囲も上がっていくというジレンマ。敵を構築するはずの魔法陣を見つけさえすれば突破口は開くはずなのにその糸口さえ見つかっていないのだ。
('A`;)(どうすりゃいい、どうすりゃこいつを倒せる?)
不意に煙の中から巨大な手がぬうっと伸びてきた。ほとんど無意識の内にドクオは剣を振るってしまう。
('A`;)「やべっ!」
岩で作られた凹凸の無骨な手は一瞬で消滅するが、その途端に周囲で漂っていた岩が集まり再び手や腕を再構成する。
さらに集まった石や岩は全て腕になったわけではなく、いくつかがドクオに向かっていた。剣を振り抜いてしまい体勢を崩したままのドクオは避けることもできず岩の餌食となってしまう。
( A )「がぁっ」
石畳を跳ねて転がり、先にあった建物に激突。意識は切れなかったが立ち上がるのさえ厳しい。ようやく顔を上げた時には目の前にゴーレムが屹立し、腕を振りかぶっていた。
('A+;)「こ、のっ!」
間一髪剣で防ぎ、その間に身を低くしたままゴーレムの股下を通り抜ける。こちらを踏み潰そうと巨大な足が床を叩き、衝撃で地面が揺れる。
('A+;)「うおっ」
思わず膝を崩すも転ぶことはない。だが踏み砕かれた石畳の破片がまたも弾丸として襲いかかってきた。
480
:
1
:2014/07/20(日) 21:14:19 ID:V03MPEb.0
もはや避ける術もなく撃ち抜かれ、左腕と右足が歪な方向に曲がっていた。
( A+)「がぁぁぁぁっ!」
さらに追い打ち。ゴーレムの拳がしっかりとドクオを捉える。地面に伏していたドクオは衝撃を殺すこともできずダイレクトに攻撃を食らってしまった。
体中の骨が折れる感触、内蔵も潰れたのか口から血を吐き出してしまう。
掠れる視界の中でゴーレムがこちらを見下ろしていた。止めを刺そうとしているのだろう。
( A+)(……もう動けねえよくそったれ)
もはや体はピクリとも動かない。今の攻撃で剣もどこかにいってしまった。反撃などできるわけがない。
今の今までよく耐えたとドクオは自分を誉めたい気分だった。例えここで命を落とすとしても、ただの一般人である自分が魔法使いなんてチート集団と渡り合えたこと自体が奇跡とさえ言える。
この戦いだってドクオは敵の弱点である魔法術式がどこかにあると予想まではできたのだ。
それが見つからないということは、敵の術者がプロであり自分が素人であることの証明に他ならない。言い換えれば経験の差、短時間でいくつもの死線を越えてきたとしても長きに渡って積んできた経験は絶対に縮まらないのだ。
そんな相手とここまで戦うことができた。もうそれで十分じゃないか。誰もドクオを馬鹿にするやつなどいない。
( A+)(ここが俺の限界だよ。現実から逃げ続けた負け犬の限界)
ゴーレムの足裏が視界に入る。踏み潰されれば即死だろう。
( A+)(ごめん、みんな。先にリタイアさせてもらうよ)
481
:
1
:2014/07/20(日) 21:15:07 ID:V03MPEb.0
ドクオは今も戦っているだろう仲間達に心の中で謝罪をする。
ショボンやモララーは一人で敵と戦っているのだろう。
しぃや渡辺、ツンだって協力して街を守っているかもしれない。
誰も彼もが自分ではない誰かのために戦って傷ついて、その後ろ姿を見てきたからドクオは立ち上がれた。
でも今のドクオは一人ぼっちで、どこまでも無力だ。いつだって誰かがそばにいてくれたからドクオは戦えた。守るべきものを見失わなかったから剣を握れた。
ショボンはドクオを芯の通った男だと、期待通りの男だと言ってくれたのに、中身や想いはそう簡単に変わってくれやしない。
( A+)(ここが俺の着地点だ。だから、もう休ませてくれ)
なのに。
そう思って全てを諦めたはずなのに。
体が全く動かないはずなのに。
( A+)
ドクオは立ち上がっていた。
ゴーレムの足が迫っている。直撃は避けられない。
ドクオは両手を上にあげる。魔剣は手元にない。
それでも、ドクオは受け止めた。
自身の力のみで、何トンもあろうかというゴーレムの踏みつけを、受け止めたのだ。
傷口から鮮血が吹き出るのが分かった。あらぬ方へ曲がった腕や足から何かが砕けるような感触もある。内蔵も破裂しているのかもしれない、嘔吐感が一気に押し寄せていた。
( A+)「駄目なんだよ。みんな戦ってるんだ。俺一人だけ休んでるわけにはいかねえんだ」
482
:
1
:2014/07/20(日) 21:15:54 ID:V03MPEb.0
あいつらはみんな自分以外のために戦ってしまう馬鹿どもだから。
あいつらはみんな誰かのために傷つくのを恐れない阿呆だから。
ここで諦めて死んでしまったら、渡辺が、ショボンが、モララーがしぃがツンがしてきたことを教えてくれたことを全部否定することになる。それだけは何があってもやっちゃいけないこと。
(゚A+)「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
力を入れて押し返すと、ぶちぶちと筋肉が切れるような音が聞こえた。少しずつではあるがゴーレムの足が上がっていく。
(゚A+)「らぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁ!!」
叫び声と共にドクオは地を蹴って飛び上がった。
するとずぅぅぅんと大きな音と共にゴーレムは背中からひっくり返る。じたばたと両手両足を動かしているが体積を増したゴーレムの体は簡単には起き上がれない。
ドクオは近くに転がっている魔剣を回収するともう一度飛び上がり、顔と思しき場所へと切っ先を差し込む。
これで終わりだとは思わない。そのままゴーレムの上半身から下半身へ疾走すると再生する間もなくゴーレムの体が消滅していく。
('A+)「はっ、はっ……」
全てが消滅した。が、周囲に飛び散っている石畳の破片が小刻みに揺れているということは間違いなく再生するのだろう。今回は運よく全身を消滅させられたが、単なる時間稼ぎにしかならない。
いや、収穫はそれだけではなかった。
これでドクオの考えは根底から覆されたのだ。
なんせ、このゴーレムには核となる術式が存在していないのである。
('A+)(全部消したのにまだ動くってことは、これは本体じゃないんだ)
483
:
1
:2014/07/20(日) 21:16:40 ID:V03MPEb.0
始めからおかしかったのだ。こんなに動きが遅く単調な攻撃しかしてこない岩石の人形が自らと周囲の岩を使った二段構えの戦法を取ること自体が。
これだけの大質量を操作するような魔法であればおかしくはないとドクオは無意識の中で判断してしまった。そもそも魔法を詳しく知らないドクオからすれば何もかもが魔法で納得できてしまうのは仕方のないことである。
だからこそ敵はそこを突いてきたのだろう。ドクオが魔法に不得手だということを知り、かつドクオの持つ魔剣の特性を知る故の戦法。
だがドクオはもう迷わない。諦めない。
この瞬間、ドクオは全てに気付くことができたのだ。
('A+)(思えば、ヒントは昨日の夜にあったじゃないか)
ドクオとしぃを別空間に閉じ込め、魔物と戦わせるような魔法。それは魔法を倒した瞬間に解除された、通常よりも異質なもの。
異質だからこそ、それだけではないのだろう。
('A+)(つまり、これは幻。魔法が仕掛けられてるのは━━)
ドクオは剣を握ると瞼を閉じる。暗闇の中で耳と肌が音や風の流れを鋭敏に感じ取っていた。
それに混じって一つだけ風でも音でもない、目を閉じていてもはっきりと映る光がある。けして見えているわけではなく、見えなくとも光だと分かってしまうほど違和感のある光の集合体。
(゚A+)「見えた!!」
目を開けると、周囲にあった全ての岩や石を集めたのか先程よりも数倍大きくなったゴーレムが拳を振るっているとのろだった。
構わずドクオは走りだす。背中越しに空を切る感触が伝わるが、もはやゴーレムに用はない。そこから足裏に力をこめて、ドクオは宙を舞う。
ゴーレムの胸の手前。そこに光の塊を見つけた。
('A+)「ここだぁっ!!」
484
:
1
:2014/07/20(日) 21:17:26 ID:V03MPEb.0
握りしめ、上段に構えた剣を思いきり降り下ろす。
何かを斬りつけた手応えを感じると同時、視界が一瞬だけホワイトアウトした。
高く舞い上がったドクオは痛みで受け身を取ることも出来ず、そのままべしゃりと石畳の上に落下したが思いの外体はピンピンしている。
('A`)「……」
いつのまにかあれだけ重傷だった怪我が一切合切無くなっていた。どころか踏み砕かれ穿たれた石畳も建物も何一つ破壊の爪痕を残してはいない。
('A`)「全部幻、ってことか」
あれだけ心折れそうになったことも、死ぬんじゃないかと思った怪我も、全ては敵が作り出したまやかしだった。
多少拍子抜けはするものの、強力な魔法であったことに変わりはない。死んでいたとしても不思議ではないのだ。
仮にあの術式の中で死んだとしたらどうなっていたのか。考えたくもないが一先ず危機は去ったと見ていいだろう。
('A`)「さてと」
ドクオは立ち上がると剣を構え直す。
随分と長い間閉じ込められていたようだ。辺りにはうじゃうじゃと鳥型の魔物が蔓延っている。
('A`)「こいつら片付けて宿舎に━━」
言いかけて、背筋に悪寒が走る。
何か得体の知れないものがこちらに近付いてきているのを感じた。
その瞬間、百で利かない数の魔物が一斉に消滅する。
('A`;)そ「なんだ!?」
485
:
1
:2014/07/20(日) 21:18:53 ID:V03MPEb.0
周辺を見回すと、いた。少し離れたところに二人組の人間がこちらを見つめて立っている。
( ゚"_ゞ゚)
( ∵)
その内の一人━━いや、人として数えていいのか分からない、まるで人形のようなものの前に淡い輝きを放つ球体が浮かんでいる。
それは口を大きく開けると━━
('A`;)「は?」
( <Θ>)〇
光の球を喰らった。
驚きのあまりドクオはその場から動くことが出来ず、ただただ異質な二人を見つめることしかできない。
やがて、二人はドクオから数メートル離れたところまでやってくると、男の方が恭しくお辞儀をした。
( -"_ゞ-)「お初にお目にかかる、魔剣の主。俺は棺桶死オサム、予想通り黒の魔術団の一人だ」
黒の魔術団。その言葉を聞いてドクオは戦闘体制に入る。
( ゚"_ゞ゚)「おっと、俺は君と戦いに来たわけじゃない。それに俺自身は魔法使いではあるが戦闘能力はほぼ皆無でね、君にはどうひっくり返っても勝てそうにないんだ」
('A`)「……今回の騒動はお前が黒幕か?」
( ゚"_ゞ゚)「その通りだ。ついでに言えば昨日君に魔物を宛がったのも俺さ」
('A`#)「お前たちの目的はこいつだろう。なんで関係のない人達まで巻きこんでんだよ!」
486
:
1
:2014/07/20(日) 21:19:40 ID:V03MPEb.0
( ゚"_ゞ゚)「俺は魔法使いであると同時に研究者でね、好奇心が騒ぎ出すんだ。例えば、その魔剣の仕組みや力の限界。何が出来て何が出来ないのか、非常に興味がある」
('A`)「……そんなことのために、巻き込んだってのか?」
( ゚"_ゞ゚)「そんなこと? 心外だな。分からないことがあれば知りたくなるのが人間だろう。例え何を犠牲にしても、やり遂げねばならないことはあるものだ」
('A`#)「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
気付けばドクオは魔剣を振りかぶり駆け出していた。
オサムの言葉は同じ人間が発したものだと信じられない。貞子も人としての倫理や常識が欠けていたが、好奇心を満たすためだけに人を殺すなど、奴はそれ以上の狂気を感じる。
あと数センチで切っ先が触れるところまできて、ドクオは剣を止めた。
( ∵)
否、オサムの隣にいた不可解な生物に止められたのだ。触れれば喰らわれるはずの魔剣を手で受け止めたのである。
('A`;)そ「なっ」
ドクオがいくら力を込めようとも、押そうが引こうがびくともしない。
( ゚"_ゞ゚)「ふむ、やはり実験は成功のようだな。魔剣にも引けを取らない強度とは」
487
:
1
:2014/07/20(日) 21:20:32 ID:V03MPEb.0
('A`#)「てめえ、こいつは、何者だよ!? これを触って消滅しないなんて、普通じゃねえぞ……っ!!」
( ゚"_ゞ゚)「人は何で構成されているか、君は知っているか?」
('A`#)「何を言ってんだてめえ」
( ゚"_ゞ゚)「答えは色々とあるんだが、突き詰めて言えば人を構成するのは純粋に魔力なんだよ。ただの魔力の塊でありながら生き物はマナという純度の高い魔力を体内で作り上げるのだが、俺はこの事実に驚愕したよ」
('A`#)「だから何を」
( ゚"_ゞ゚)「人というのは生き物中でも特にマナの生成効率が良くてね、作る量も早さもこの世界に生きる生物の中では頂点に君臨する」
ドクオは動けない。目の前の敵に魔剣を握られているうえに、オサムの周囲に魔力が集まりだしているからだ。
下手な真似をすれば殺す、と彼の瞳が言っている。
( ゚"_ゞ゚)「濁りきった魔力で構成された人間が、何故こんなにも純度の高い魔力を生み出すのか。それは人の身体的機能や隠された秘密があるんではないかと、俺は興味を持ってね、調べてみたよ」
('A`#)「調べたって、まさか」
( ゚"_ゞ゚)「生きたまま腹をかっさばいたり、色んな魔法アイテムを埋め込んだり、頭の中に直接魔法陣を書き込んだりもしたかな? まぁ、それは所詮過程だ。つまらない話さ」
ありえない。生きたまま? 切り刻んだり道具を入れたり陣を描くだなんて、人がどれほどの苦痛や絶望を味わうかこいつは理解しているのか? 死ぬなんて生易しいものではないことはドクオにだって分かることだ。
ギリギリと歯を食い縛り、どうすればこいつを殺すことが出来るのかをドクオは考え始めてしまう。
488
:
1
:2014/07/20(日) 21:21:21 ID:V03MPEb.0
( ゚"_ゞ゚)「そんなことを繰り返しているうちにあることに気付いた。この機能は絶妙なバランスによって偶然生まれた素晴らしいシステムなのだと。人は生きているだけで一つの魔法陣なんだ、とね」
( ゚"_ゞ゚)「それに気付くと今度は違う興味が湧いてきたよ。もし、人が己の魔力によってマナを生み出すことが出来るのなら、体を構成する魔力の純度を高めたなら人としての存在はどこまで昇華するのか」
( ゚"_ゞ゚)「その結果、人を越える存在、いわば神とも呼べる圧倒的な力をもったこれが生まれた」
( ∵)
( ゚"_ゞ゚)「つまり、こいつは人でありながら人ではない」
489
:
1
:2014/07/20(日) 21:22:11 ID:V03MPEb.0
( ゚"_ゞ゚)「神」
.
490
:
1
:2014/07/20(日) 21:23:10 ID:V03MPEb.0
('A`;)「神……」
魔剣を掴んでいる手が不気味に煌めいている。無機質な肌も、感情を表さない顔も、この存在そのものが意図的に作られた力だというならこいつは━━
('A`)「まさかこいつは、人間なのか?」
( ゚"_ゞ゚)「何を言っているんだ。当たり前だろう。人間でありながらその価値を高めてやったんだ」
( A )「……」
もう言うことは何もない。こいつは冒してはならない領域を越えてしまった。
ドクオには他人の価値観や倫理観を否定する権利なんてない。自分の考えを押し付けることがどれだけ愚かなことなのかも分かっているつもりだ。
だからこそ、ドクオはオサムを許すことが出来ない。いや、許してはいけない。
こいつを認めてしまったら人という存在を否定するのと同じだ。
ドクオは知っている。自分以外の人間が生きているという普遍の事実を。
ドクオは見てきている。自分以外の人間が生活を営んでいることを。
ドクオは痛感している。自分以外の人間が他人のために流す涙がどれだけ温かいものかを。
こいつは、それを、踏み躙った。
( A )「許せねえよ。人の命を、生活を、人生をなんだと思ってやがる」
(゚A゚)「神? 価値を高める? 何様のつもりだ!? 悪戯に与えられた力がどれだけの悲劇を産むか知ってんのかよ!?」
力とは単体では意味などない。それを持つ人間の有り様によって形を変えるものだから。
渡辺のように思いやりが出来るから人を守るための力となり、ショボンのように自らの信念に基づくからこそ大切なものを守るための剣となる。
力があるから戦うのではない。力があるから守るのではない。
目的を達するために望んだもの、必要だったから選んだものが力だったに過ぎないのだ。
491
:
1
:2014/07/20(日) 21:24:05 ID:V03MPEb.0
('A`)「お前はここで倒す」
ドクオはさらに力を込める。人形の腕が徐々に押し込まれていき、ドクオは見計らって腕を弾いた。
('A`)「覚悟しろ。人の痛みを教えてやる。他人にやったこと、全部お前に返してやるよ」
( ゚"_ゞ゚)「できるものならやってみろ。その前に、君のお仲間が死んでいるかもしれないがな」
('A`;)「なに?」
( ゚"_ゞ゚)「騎士団の副隊長だったかな? 彼は仲間である男と生き埋めになっている。いつまで保つだろうな」
('A`;)「ショボンさんと……モララー、か?」
( ゚"_ゞ゚)「さらに騎士団の駐屯所では無限に魔物が湧いている。一体の力は弱いが、数の暴力の前にどれだけ抗えるだろうな」
('A`;)「ぐっ……」
( ゚"_ゞ゚)「俺をやったところで彼らの命は助かるかな? 君のいう命の重さとやら、教えてくれるのだろう?」
醜悪な笑みを浮かべるオサムは人形の背中をポンポンと叩いた。すると人形が目にも止まらぬ速さでどこかへと飛び去っていった。
( ゚"_ゞ゚)「あれには駐屯所を完膚なきまでに叩き潰すよう命令を与えている。君の選択肢は三つ。鉱山に行くか、駐屯所に行くか、ここに留まるか。どれを選んだところで死人は出るだろう」
さあ、どうする?
オサムは笑みを崩さない。他人など知ったことではないとでもいう風に、彼はドクオを煽っている。
('A`;)「く、そっ!」
時間はあまり残されていない。悩んでいる暇も惜しい。
ならば、今は信じるしかない。
ドクオはオサムに背を向けて駐屯所へと走り出す。オサムからの攻撃を警戒していたが、何かをする様子は見られなかった。
('A`;)(間に合ってくれ。誰も死なすわけにはいかないんだ!!)
492
:
1
:2014/07/20(日) 21:26:16 ID:V03MPEb.0
◇◇◇◇
もはや限界だった。倒しても倒しても増え続ける魔物の前にしぃ達の体力はとっくに底をついている。
魔法だって無限に使えるわけではない。鍛えているとはいえ、休む間もなく連戦に次ぐ連戦、彼女達の心が疲弊していくのに比例して体力の消費は倍々に増していった。
从; ー 从「はっ、はっ、二人とも、ごめんね。私、もう無理みたい」
やがて、渡辺が力なく膝をついた。きめ細かく白い肌には無数の傷がついており、服は破れて扇情的な姿を晒している。
ξ#゚⊿゚)ξ「諦めないで!! 少し休みなさい!! それまで私達が持ちこたえるから!!」
かくいうツンも限界を迎えているらしい。得意の魔法を使わずに、媒体として持っていた杖で魔物を殴り付けていく。
(;*゚ー゚)「その、通りですよ!!」
しぃはまだ魔法を使うことはできるものの、もってあと数十分というところだ。たった一人で二人を守り続けるのはまず不可能。しぃの魔法をもってしても体力まで回復させることはできないのだ。
三人が無惨に殺されるのは時間の問題だろう。抵抗は出来れど根本から解決する方法が見つからない。
493
:
1
:2014/07/20(日) 21:27:05 ID:V03MPEb.0
しぃの見立てでは召喚、もしくは生み出すための術式があるはずなのだが、ここの守りを手薄にすれば陥落するのは目に見えている。
仮に術式を発見したとしても、しぃにそれを解除できるかといえば確実ではない。何せこれだけ無尽蔵に魔物を繰り出すということは行使する魔力の量も、術式の規模も並大抵のものではないだろう。
つまり、始めから打つ手など皆無だったのだ。彼女達は舞台の上で踊らされる憐れなピエロでしかなかった。
(;*゚ー゚)(せめて、ドクオさんか副隊長がいれば……)
考えたところでもう遅い。おそらく、敵はそれすらも見越してこの状況を作り上げたのだ。でなければ騎士団がここまで追い詰められるなど有り得ないことだろう。
それに……。
从; ー 从
ξ;゚⊿゚)ξ
騎士団に所属していない一般人を完全に巻き込んでしまっている。元々ここら一帯が立ち入り禁止区域に指定されているものの、個人で訪れるには障害が一切ないのだ。
騎士団の半数以上が遠征から戻っているのであれば規制するにあたって人数を割くことができたのだろうが、現状そこまで手が回らないというのも抱えている問題の一つだった。
494
:
1
:2014/07/20(日) 21:27:53 ID:V03MPEb.0
だからといって彼女達を巻き込んでいいという理由にはならないが、あまりにも条件がこちらに不利な方向へと傾きすぎてしまっているのも事実なのである。
(;*゚ー゚)(このままでは、全滅してしまいます。それだけは、避けないと)
騎士として、そして彼女達を大切な友人として認めているからこそしぃは決断をしなければならない。
誰かに求められたわけでもなく、しぃが自ら判断して動かなければ過去の失敗を繰り返すことになる。
(;*゚ー゚)「お二人とも、頼みがあります」
手を休めることなくしぃは口を開く。迷っている時間はない。
(;*゚ー゚)「この場から離れてドクオさんを探してきてください。ここは私が引き受けます」
ξ;゚⊿゚)ξ「な、何言ってんの!? あんた状況分かってる!? 三人でさえ厳しいのに、一人でなんて」
(* ー )「分かってますよ!!」
しぃは感情に任せて大声をあげた。改めて言われなくたってそれくらいのことは理解している。
(* ー )「それでも、このまま三人で戦うよりは勝算があるんです。これだけ大きな術式です。見つけたとしても私達が解除するには時間がかかるんですよ。ならば、それを破壊できる人がいれば戦況は変わるんです。だから」
从;'ー'从「もし、間に合わなかったら?」
不安げに渡辺が尋ねてきた。声が震えている。言わなくとも分かっているのだ。
(* ー )「私は、騎士です。力のない誰かを守るのが役目、それが年上の方でも、本質は変わりません」
ξ;゚⊿゚)ξ「あんた、死ぬ気?」
(*゚ー゚)「死にません。お二人を信じます」
495
:
1
:2014/07/20(日) 21:28:43 ID:V03MPEb.0
しぃは何もできない。過去から現在まで幼稚な考えと価値観で全てを台無しにしてきた。自分にできることなど何もないのだと勝手に決めつけてきた。
本当は何かができたはずなのに。
見て見ぬふりをして、それが運命なんだと、仕方のないことなんだと諦めてきた。
だが、今のしぃにはできることがある。やらなきゃいけないことがある。
騎士としてではなく、同じ人間として、彼女達の友人として。
それだけで十分だろう。
今までも、それだけで十分だったはずなのだから。
(*゚ー゚)「私が隙を作ります。その間にお二人は市街地へ行ってください」
しぃは今までで最も大きな魔法陣の準備を進める。おそらくこれが最後の魔力になるだろう。それで構わない。
大切なものを守れるのなら、本望だ。
(*゚ー゚)「お願いします」
魔法陣が浮かび、発動。瞬間的に膨大な魔力が周囲を埋めつくし、大量の冷気が魔物を凍らせていく。
(*゚ー゚)「今です!」
一瞬だけ二人が息を飲んだが、すぐに走り出した。そう、それでいいのだ。今生き延びるにはこれしか方法はない。
ξ゚⊿゚)ξ「戻ってくるまで生きてなさいよ! すぐ戻るから!」
从'ー'从「私も頑張るからね! 約束だよぉ!」
496
:
1
:2014/07/20(日) 21:29:54 ID:V03MPEb.0
二人の背中が見えなくなるまで魔法を展開し続け、しぃは途端に脱力してしまう。
嬉しかった。少しでも躊躇してくれたことが、堪らなく救いとなった。
幼くて役に立たない自分なんかを心配してくれたという事実に、しぃは報われてしまったのだ。
(* ー )「簡単には、死にませんよ」
だって、しぃにはやることがある。ドクオと話した神父を探しにいくという約束。彼女達はついてきてくれるだろうか?
ステッキを構え直し、しぃは肉弾戦に移行する。あまり得意ではないが抗う術は残されていない。
(* ー )「私は、生きなければなりません」
前方の魔物の頭部をステッキで突き刺し、抜き様に後方へ。建物との距離を計りながら魔物の群れに突っ込まないよう注意を払い、撹乱しつつ丁寧に一体一体潰していく。
どれだけ時間が経ったかは分からないが、体に付いた傷の数はけして少なくない。
何度も何度も挫けそうになりながら、それでもしぃは膝を折らなかった。送り出した二人が必ずや戻ってきてくれると信じているから。あの二人は自分を裏切ることはしないと確信しているのだ。
だが、強く持っていたしぃの心も魔物の軍勢の前に少しずつではあるが弱くなっていった。
すでに千にも届こうかという数の魔物は容赦なくしぃに牙をむき、彼女の体を傷付け、強さを増していた。
そんな中でのことだった。しぃのステッキが魔物の攻撃を防いだ際に弾かれ、宙を舞った。
(;*゚ー゚)「ぐっ」
497
:
1
:2014/07/20(日) 21:30:48 ID:V03MPEb.0
もはや攻撃する手段は拳しかない。彼女の非力な拳ではろくにたダメージを与えられないだろう。
前方の魔物を殴り付ける。しかし人よりも固い筋肉で構成された魔物の体はびくともしない。
ニヤリと笑ったかどうかは分からないが、その隙に魔物が鋭く尖った爪をしぃに振るった。身をそらしギリギリでかわすも体勢が崩れる。
その時、しぃの背中に抉るような痛み襲った。ちらりと視線を向けると魔物が立っている。
(;*゚ー゚)「く、はっ!」
ぐらりと揺れる体、一気に力が抜けていく。その姿を見て我先にと押し寄せてくる魔物。しぃは死を意識する。
(* ー )(やはり、私では……)
冷たい石畳の床に転がり、視界一杯に映る魔物達は自分の体をどう見ているのだろう。
単なる捕食物か、はたまた意識あるサンドバッグか。もしかしたら何も考えていないかもしれない。
(* ー )(ごめんなさい、ドクオさん。約束、守れそうにありません)
動かない体、ぽっきりと折れた心。死を覚悟した彼女は瞳を閉じる。もはやどうすることも出来ないだろう。
過去の出来事が走馬灯のように流れていく。後悔ばかりの人生だった。せめて最後の最後くらい、これでよかったと思う人生でありたかったが、それも叶いそうもない。
けれど、渡辺とツンをここから遠ざけることができたのは誇ってもいいだろうか。騎士として、あるべき姿であったと胸を張ってもいいだろうか。
しぃは訪れる死を待つ。
(* ー )「さよなら。ドクオさん」
死の縁にたって思い浮かんだ彼の名を呟いた。何故彼が浮かんだのかは分からない。
きっと最後に約束をしたからだろう。神父を探しにいくという、小さな小さな口だけの約束だ。
そんなことでも彼は必死に守ろうとするんだろう。それくらい彼は優しい人間だ。自分とは違って、迷いがない。
498
:
1
:2014/07/20(日) 21:31:34 ID:V03MPEb.0
最後に考えることがこんなことなのか、と半ば呆れながら横たわっていたしぃだが、いくら待っても死はやってこなかった。
恐る恐る目を開けてみる。
(*;゚ー゚)「……えっ?」
魔物が消えていた。
あれほど大量にいたはずの魔物は姿形を消して、どこにもいない。あるのは戦闘の際に破壊された床や建物の破片だけ。
ゆっくりと時間をかけて立ち上がり、もう一度念入りに確認しても状況は同じだった。
(*;゚ー゚)「魔物は……まさか、ドクオさんが?」
可能性はある。二人のどちらかがドクオを探しだし、術式を破壊したのかもしれないが、いくらなんでも早すぎやしないだろうか。
しぃは案外近くにあったステッキを拾うと、建物に背を預けて座り込んだ。とにかく戦闘は終わったのだ。それだけで十分だろう。
(*゚ー゚)「助かったんですね、私」
いまいち実感がわかないが、急死に一生を得たのは幸いだった。
傷だらけの体はすでに少女といっていいか分からないほどに汚れており、女性としてはあるまじき姿かもしれない。
早く終わらせてシャワーを浴びたいな、なんて考えてしぃが息を吐いた時。
( ∵)
499
:
1
:2014/07/20(日) 21:32:22 ID:V03MPEb.0
(;*゚ー゚)「━━」
なんの前触れもなく、それは現れた。
人形のようなのっぺりとした顔、作り物のような肌。まるで人間らしいものがどこにもない。
それは周囲に光の球を引き連れており、ともすれば幻想的に見えなくもないがしぃはあまりのことに呆然としていた。
( ∵)
不意に、漂っていた光球がしぃの横を通過していく。次の瞬間、しぃの体は吹き飛ばされごろごろと地面を転がっていた。
何が起こったか分からない。しぃの目には球が近くに来たくらいの認識でしかなかったのだ。
(;*゚ー゚)「こいつ……」
はっきりとしているのはこいつは紛れもなく敵だということ。もしかしたら魔物が消えたのはこいつが何かしたのかもしれない。
( ∵)
立ち上がる間もなくしぃは胸ぐらを掴まれ持ち上げられる。先ほどにも増して倦怠感が襲ってきた。
(* ー )(まさか、マナを吸い取って━━)
自分の中の魔力が根こそぎ失われていく感覚、さらには意識さえ朦朧とする。抵抗も出来ず、しぃは考えることもままならない。
( ∵)
それが空いている腕をあげた。何をするつもりかは分からない。確認をする間もなく、しぃは意識を失った。
500
:
1
:2014/07/20(日) 21:34:08 ID:V03MPEb.0
◇◇◇◇
(;´・ω・`)「ふっ、はっ」
( ∀ )
逃げ場のない狭い空間の中でショボンはひたすらモララーの攻撃をいなしていた。
攻撃は全て急所狙いの単調なものだ。いなすのは難しくないが、そのスピードが尋常ではない。
筋力や反射神経強化の魔法を使っているのかもしれないが、人間が可能とする動きを大きく上回っている。これでは筋肉や内部器官に相当な負担をかけているのは間違いないだろう。
にも関わらず、モララーの表情は一切変わらない。うっすらと汗が浮かんでいるくらいで、痛みに顔を歪めることも疲労による身体能力低下もなく、ひたすらにショボンという敵を躊躇なく殺そうとしている。
カキン、キン、カキンと金属を弾く音が部屋の中に響いている。何も知らぬ人間が見れば剣舞をしているように見えるかもしれない。基本にどこまでも忠実だったモララーだからこそ一挙手一投足が芸術のように洗練されているのだ。
モララーの槍がショボンの右脇を通過する。伸びきった腕をショボンは真下から蹴りあげた。
モララーの腕が上がると同時にショボンは剣を横に振る。
浅く腹部を裂いただけだった。あの状況からモララーはバックステップで致命傷を避けたようだ。
一度ショボンは距離を取る。滝のような汗が全身を流れていくがそれに構っている暇はない。
(;´・ω・`)(獲物のリーチに差がありすぎる。かといって魔法を使えばこの部屋は崩落しかねない)
501
:
1
:2014/07/20(日) 21:35:00 ID:V03MPEb.0
崩れた鉱山の中、強引に作り出した部屋は少しの衝撃で簡単に崩れるだろう。さらにショボンは生命維持のために様々な魔法を使っているのだ、細かい調節は効きそうもない。
そんなことすら分からないのか、モララーの周囲に魔法陣が浮かぶ。彼が得意としている光系の攻撃魔法だろう。
(;´・ω・`)(まずい!)
ショボンは慌ててスペルキャンセラーを展開したが、陣が消失したとみるやモララーは一瞬でこちらとの距離を詰めてきた。
ショボンは右に飛ぶが、間に合わずに槍の切っ先が脇腹を掠める。着地と同時にモララーの死角に回り込んで袈裟斬りを見舞った。
だが、彼の槍は意思を持っているかのようにぐにゃりと曲がって攻撃を弾いた。多節棍ならではの操作魔法である。
大きく体勢を崩したショボンにモララーは槍を突き入れてきた。身を捻りなんとかかわすものの、さらに二つ三つと突きが襲いくる。
(;´ ω `)「がはっ」
捌ききれず、深々と突き刺さった槍は腹部を貫通している。激痛が全身を駆け巡るが、それを無視してショボンは剣を振った。
モララーが地を蹴り、ショボンを越えて後方へと回る。槍は自然とショボンの体から離れ、視界から消えた。
(;´ ω `)「おぉぉぉぉぉ!!」
振り向き様に横薙ぎの一閃。だがモララーはすでに距離をとっている。空を切る剣、傾いた体勢。次の瞬間には地面から槍の切っ先が近づいていた。
(;´・ω・`)「く、そぉっ!」
やむなくショボンは魔法を使用する。低レベルの防御魔法だったが、出力を間違えたのか槍に触れた途端に魔力の壁が消失した。
502
:
1
:2014/07/20(日) 21:35:45 ID:V03MPEb.0
だが、槍の動きは一瞬だけだが確かに止まった。ショボンは横に跳ぶとごろりと一回転、すぐさまモララーへと視線を向け━━
( ∀ )
(;´・ω・`)「なっ……」
目の前にモララーが立っていた。槍を構え、こちらに狙いを定めている。
(;´・ω・`)「くっ!」
再び横へと転がり、大振りの一撃をかわす。その間に立ち上がると、ショボンは魔法を発動した。
モララーの足元から光が溢れ、周囲を漂いながら彼の体に纏わりつく。
(; ∀ )
拘束を確認、さらに自身の姿を周囲の景色と同化させて見えなくさせた。これでしばらく時間を稼げそうだ。
モララーはすぐに拘束をほどいたが、こちらの居場所までは分からないらしく、キョロキョロと辺りに目を配っている。
(´・ω・`)(勝負はここからだ。勝利条件は三つ)
503
:
1
:2014/07/20(日) 21:36:31 ID:V03MPEb.0
一つ、モララーを殺さずに無力化すること。
自我を失い、普段以上の力を持っている彼を止めるというのはなかなかに骨が折れるだろうが、ショボンが騎士であり信念を持った一人の人間である以上これだけは確実に守らねばならない。
二つ、閉鎖されたこの空間から脱出すること。
現在魔法で強引に作られた部屋は少しの刺激で簡単に崩壊するという危うさを秘めている。ましてや周辺には魔導鉱石が大量に埋まっているのだ。下手を打てば二人揃って生き埋めになる可能性が極めて高い。
三つ、ショボンの魔力がなくなる前に決着をつけること。
この空間を支えているのはショボンの魔力だ。つまり、ショボンがここを維持できなくなった場合ショボンだけでなくモララーも即死亡となる。モララーが自我を取り戻していればまだ救いはあるだろうが、現状それも期待出来そうにない。
(´・ω・`)(三つ、この三つが全て揃わなければ僕たちは死ぬ。その前に終わらせるために、全力を注がなければ……)
ショボンが思考を終えた瞬間、モララーが拘束をほどいた。しかし、体のあちこちが不自然に歪曲している。
(´・ω・`)「痛みさえ感じないか。ならば、まだ手はある」
剣を握り直し、モララーに肉薄。ショボンの体も相当に消耗しているが、やってできないことはない。
(´・ω・`)「ふっ!」
504
:
1
:2014/07/20(日) 21:37:26 ID:V03MPEb.0
急所を避けて袈裟懸けに斬りつける。血飛沫が舞い、さらに逆袈裟。
モララーの横を抜けて背後へ。強烈な横蹴りを見舞うとモララーの体が吹き飛んでいく。
(´・ω・`)(骨が折れてもまだ動かされている。それなら、どうやったって動けないほど痛め付けるしかない)
生きていればまだ回復手段がある。王都に戻れば優秀な治癒術師達がいるのだ。彼を止めるのに遠慮をしていれば共倒れ、それだけは避けなければ。
モララーがよろよろと起き上がる。血も多く流れているし、肉体の損傷も激しい。勝負を決めるなら今しかない。
(´・ω・`)「悪く思うな」
ショボンの目の前に魔法陣が浮かび上がる。出力を間違えてはいけない。
モララーの前後左右に光の柱がそびえ立ち、その頂からいくつもの帯が降り注ぐ。
それは標的に触れると爆発、爆発、爆発。凄まじい閃光が視界を奪うがショボンは構わずモララーに接近した。
(´・ω・`)「一気に決めるぞ」
ショボンの剣に光が宿る。本来ショボンが得意とするのは魔法剣と呼ばれる術式だ。剣に魔法を宿し、斬りつけた部分に威力を収束させる魔法剣術の極み。
体の内部に直接魔法を叩き込むものや傷口から浸入させるものもあるが、今はモララーの動きを封じることに特化した魔法を付与している。
(´・ω・`)「はぁっ!」
505
:
1
:2014/07/20(日) 21:38:10 ID:V03MPEb.0
横薙ぎに腹部を斬りつける。一瞬置いて、傷口から冷気が拡がり、徐々にモララーの動きが鈍っていく。
剣を鞘に収め、ショボンが振り返ったとき、モララーは地に伏してピクリとも動かなかった。
(´・ω・`)「……あとは、ここから脱出━━」
言いかけた時、どこからともなく地鳴りのような音が聞こえてくる。今の戦闘の衝撃で鉱山全体の均衡が崩れてしまったようだ。
(;´・ω・`)「少しやりすぎたか」
あまり愚痴ってもいられない。一刻も早く脱出の手筈を整えなければ。
(´・ω・`)「ここの座標が分からないし、この状況じゃ転送術式はあまり期待できそうもないか。あとは、壁に穴を空けながら進む……現実的ではないな」
様々な方法を思案するが、どれも理論的には可能であってもショボンの残り魔力では到底不可能なものばかりである。
せめてモララーが動ける状態であればまだ救いはあったのだが、仮死状態の彼を起こしたところでまた戦闘になるのは目に見えている。
(´-ω-`)「確実ではないが、仕方ないか」
506
:
1
:2014/07/20(日) 21:39:13 ID:V03MPEb.0
ショボンは自分の胸に手をあて、集中する。自分を中心に巨大な魔法陣が浮かぶ上がった。
(´・ω・`)「こうなれば、この鉱山を纏めて消し飛ばすしかない」
当然それには魔力が足りないが、周囲にある魔導鉱石と自身の生命力、即ちマナを術式に転用すればそのくらいの出力は叩き出せるはずだ。
もちろん取り出すマナの量を間違えればショボンの命はない。
しかし、それでもショボンには部下を死なせて一人生き延びるなんて真似は出来そうもなかった。
自身を媒体に周囲の術式を展開。魔導鉱石も十分な量が確認できた。それらを結びつけて記憶にある座標へと範囲を拡げていく。
(´・ω・`)「……あとは、天に委ねるしか━━」
魔法が完成する直前、ショボンの胸を何かが貫いた。
( ∀ )
(;´ ω `)「なっ……」
首だけを後方に向けると、いつのまにか起き上がっていたモララーが槍を突きだしていた。
大量の血液が傷口から溢れ落ちていく。
(´ ω `)「詰めが……甘かったか……」
もはやショボンの生存は絶望的だった。自身のマナを限界まで抽出し、かつこれだけの失血。生き延びたとしても目を醒ます確率は限りなく低い。
だが、彼にはまだ信頼できる男がいる。
何も知らず、自身の信念のために剣を取れる男が。
(´ ω `)「頼んだ……ぞ……ドクオ……」
507
:
1
:2014/07/20(日) 21:40:05 ID:V03MPEb.0
◇◇◇◇
宿舎に向かう道中、運よく渡辺と合流したドクオはこれまでの経緯を簡単に説明されていた。
たった一人で戦う選択をしたしぃの安否が気にかかるが、隣を走る渡辺は息も絶え絶えで今にも崩れ落ちそうだ。
('A`)「渡辺、あとは俺が何とかする。お前は休んでろ」
从;'ー'从「で、でもぉ……」
('A`)「大丈夫。しぃちゃんは絶対生きてる。俺が死なせやしない」
从;'ー'从「……うん。なら、あとは任せるね」
('A`)「おう。ツンを見付けたあとゆっくり来い。その頃には全部終わらせとく」
渡辺が頷いたのを確認し、ドクオはスピードをあげた。もはや一刻の猶予もない。
オサムはあの人形を駐屯所の方へ行かせていた。ということは、間違いなくしぃはあれと対峙しているはずだ。ドクオの剣ですら軽々と受け止めたあれに、疲労困憊のしぃが敵うとは思えない。
('A`;)(間に合え、間に合ってくれ)
508
:
1
:2014/07/20(日) 21:41:08 ID:V03MPEb.0
速く、もっと速くと両足をひたすらに動かし、宿舎が近付いたところでふと違和感を感じた。
('A`)(魔物が、いない?)
そういえばあれは魔物を一瞬で消滅させたかと思えば魔力に変換し、それを喰らっていた気がする。渡辺の話ではここに大量の魔物が押し寄せていたとのことだったから……。
('A`;)「しぃちゃん!!」
一気に跳躍し、建物を越えて宿舎の前へと辿り着く。
そこには、いた。
しぃと、人形が。
( ∵)つ( ー *)
片手で胸ぐらを掴まれ、力なく気を失っているしぃ。満身創痍でずっと戦っていたことからくる脱力なのか、あれに何かされたのかは不明だがドクオがすべきことは分かっている。
(゚A゚#)「その汚え手を離しやがれぇぇぇぇ!!」
一瞬で距離を詰め、しぃを掴んでいる腕に刃を向ける。ガキン、と金属同士がぶつかるような音。同時にしぃの体がどさりと地面に落ちた。
( ∵)
(゚A゚#)「らぁっ!」
509
:
1
:2014/07/20(日) 21:42:20 ID:V03MPEb.0
反転し、勢いを利用して横薙ぎの一撃。人形はそれを片手で受け止めると、あんぐりと口を開ける。
( <Θ>)
そこから目映い光が放たれ、至近距離で爆発。ドクオは後方に跳んでしぃを片手で引き上げながらそれを避けた。
そのまま申し訳ないと心で謝りながら乱暴にしぃを遠くへと投げ、もう一度人形へ接近。おそらくこの剣でなければダメージは通らないだろう。しかし、人形の反応速度はこちらの攻撃速度を上回っている。
('A`)(なら、こいつでどうだ!)
もう一度横薙ぎ。受け止められる寸前にピタリと止めて、すぐに大きく開いた口目掛けて剣を突きいれる。
がちゃっ、と口が閉じて奥までは到達しない。引き抜こうとしても閉じる力が強すぎて身動きがとれなくなった。
('A`;)(マジかよ)
人形の腕が振り上げられた瞬間にドクオは正面を蹴りつけて、その反動で強引に剣を引き抜く。予想よりも強い力だったせいで、ドクオは後方に一回転。
体勢を立て直し、顔をあげると周囲には光球が浮かんでいる。ドクオが動き出すと同時にそれらがこちら目掛けて飛来した。
横に走り、着弾しては爆発し砂塵が吹き上げられる。視界が遮られるが、特徴的な人形の体はこの距離ならば目視できた。
身動きしない人形の背後に身を低くして近づく。気づかれてはいない。
510
:
1
:2014/07/20(日) 21:43:21 ID:V03MPEb.0
('A`)「こ、のっ!」
振り向く瞬間に跳躍、両足を脇に引っ掻けて一回転。思いの外重さのない人形を地面へと叩きつけ、着地と共に人形に剣を突きいれる。
その時人形が動いた。ごろりと床を転がり、攻撃を避けてこちらの足を掴んだ。
('A`;)「っ!!」
強烈な力で足を払われ、ドクオは転倒。その隙に人形が立ち上がると、先程着弾させた光球が再び向かってきた。
('A`;)「やばっ」
その速さに対応できず、直撃。体の至るところを襲う爆発にドクオは叫ぶことさえ出来なかった。
( A )「あ……がっ……」
なんという強さだ。ろくに動かなかったのは手を抜いていたということだろうか。まったく、なんてものを産み出してくれたのか。こんな状況でありながらドクオは思わず笑ってしまいそうだった。
だが、楽しい。楽しくて仕方がない。これほど壊しがいのあるものなんて初めてだ。
ドクオの中で何かが蠢いている。あぁ、いつものあれだ。身を任してしまえば引き返せないドクオの爆弾。
511
:
1
:2014/07/20(日) 21:44:06 ID:V03MPEb.0
けれど、今のままでは手も足もでないのは明白だ。あれに勝てるのはきっと自分だけ、負けるわけにはいかない。
時間がないのだ。ショボンとモララーのことも気になる。こいつを放っておけばみんな殺されてしまう。戦えるのは自分だけなのだ。
こいつはドクオに力を寄越そうとしている。誰にも負けない圧倒的な力、全てを壊し、他を寄せ付けない絶対的な恐怖。
今ドクオに必要なものをくれるというのだ。
ならば━━
( A )「━━っ」
ドクオの中で、何かが弾けた。
512
:
1
:2014/07/20(日) 21:44:58 ID:V03MPEb.0
( ゚"_ゞ゚)「おぉ、ようやくか。ようやく魔剣の本領発揮というところだな。実に興味深い」
オサムの作ったあれと、魔剣の力。神にも等しい力を持った存在と、神をも屠る最強の魔剣。
黒の魔術団の目的がなんであれ、オサムはこの時この瞬間のために全ての準備を整えてきたのだ。
自分の努力や成果が報われる、この至福は何者にも代えがたい普遍的な価値がある。
( ゚"_ゞ゚)「さあ全てを曝け出せ!! 俺にお前の全てを見せてみろ!! さあさあさあ!!」
爆発的に膨大な力が辺りを埋め尽くしていく。魔力とも違うオサムの知らない力。
神をも殺す絶対的な法則で成り立っているあれを自らの手で解明できたらどれほど楽しいだろう。
その力を自らが扱うことができたならどれほど面白いだろう。
きっと世界なんて小さなものなど玩具にすら劣る矮小なものへと成り下がる。
その瞬間に、オサムは神さえ使役するそれ以上の存在へと昇華するにちがいない。
( ゚"_ゞ゚)「はははははははっ、さあ始めようじゃないか!! 神対神の遊びを!!」
513
:
1
:2014/07/20(日) 21:45:41 ID:V03MPEb.0
第十一話 終
514
:
1
:2014/07/20(日) 21:52:28 ID:V03MPEb.0
これにて投下終了です
今回どこもかしこも戦闘戦闘戦闘で構成されております
そういえば今回の話で初めてショボンが戦闘するわけなんですが別に出し惜しみしていたわけじゃありません
単純に出す機会がなかっただけなんです
一応騎士団のナンバーツーなんで結構強いんですよ
モララーもそこそこ強いんですよ?
ドクオも強いっぽいですけど
しぃはまぁ、年の割りには強いですかね
ようやく今回の話の終わりが見えてきました
すでに十二話十三話の構成をまとめていますが、もしかしたら今までで一番の文量になるかもしれません
一応金曜か土曜に投下予定ですが、場合により来週は見送るかも……
随時こちらで告知はしていきますのでよろしくお願いいたします
では今回も読んでいただきありがとうございました
515
:
名も無きAAのようです
:2014/07/20(日) 22:41:42 ID:jVzG5Qlk0
( ^ω^)オオオオオオオオオオオ
( ^ω^)楽しかったお!!!!
( ^ω^)まさかビコーズさんがここで出るとわ
( ^ω^)まさに適役♪
516
:
名も無きAAのようです
:2014/07/20(日) 22:55:09 ID:eLtR1QJU0
乙乙
517
:
名も無きAAのようです
:2014/07/21(月) 12:37:18 ID:AjW1Be.E0
乙
どこもかしこもピンチでハラハラした
続きも楽しみにしてる
518
:
名も無きAAのようです
:2014/07/21(月) 21:40:29 ID:X7K0tEwI0
現行で一番すき
乙
519
:
1
:2014/07/22(火) 15:36:09 ID:/QGsadK20
>>515
ありがとうございます
ビコーズはこんな感じですよね
>>516
ありがとうございます
>>517
今回は色々と試験的な話なのでどこもかしこも戦闘ばかりですね
しばらくはみんなでピンチになってもらいます
>>518
ありがとうございます
そんなこと言われるとハッスルしてしまいます
出来るかぎり早めに次の話を投下できるよう尽力します
520
:
名も無きAAのようです
:2014/07/22(火) 19:06:47 ID:tSs9bl6o0
乙!
521
:
名も無きAAのようです
:2014/07/22(火) 22:28:02 ID:n5T5Y6H.O
読んでる
522
:
名も無きAAのようです
:2014/07/23(水) 21:06:39 ID:Ze/wv61.0
これまとめついてほしいなぁ
こんなワクワクする連載久しぶり
523
:
名も無きAAのようです
:2014/07/24(木) 16:12:57 ID:QiXnGvaY0
>>522
文が綺麗で上手いんだよな
一時は説明ぽかった時もあったがそれは作者も自覚してたし何よりそっからレベルが上がってるのがいい
俺もこれ好き
524
:
名も無きAAのようです
:2014/07/24(木) 21:21:14 ID:QvEA4Wgs0
段々読む人増えてるしな
525
:
1
:2014/07/25(金) 09:41:02 ID:4GacB82k0
どうも1です
現在鋭意書きため中でして、今週の投下は絶望的です
来週の水曜日までには投下したいと思っておりますので、それまでもうしばらくお待ちください
>>520
>>521
ありがとうございます
読者様がいるだけで感謝感激です
>>522
>>523
手放しに褒められると調子に乗ってしまいそうです
文章に関してはいまだ自信がないので何ともいえませんが、とりあえず勉強というか参考というかはある程度やっております
語彙力がないのでひたすらに読みやすい文章というのは徹頭徹尾励んでいきたいですね
>>524
そのようでうれしい限りです
526
:
名も無きAAのようです
:2014/07/25(金) 13:18:42 ID:0fTL4zfk0
( ^ω^)僕は今まで読んだなかでこの作品はアルファベットに匹敵するものになると思ってるお
527
:
名も無きAAのようです
:2014/07/25(金) 20:23:09 ID:G21XDRY.C
残り109話か、完結まではまだまだだな
528
:
1
:2014/07/27(日) 13:19:41 ID:tVeqCan60
>>526
いやぁそんなことはないと思いますよ
そこまで長くなるとは思いませんし、ましてや初心者なもので
ですがそう言っていただけてとても励みになります
>>527
そんなに続きませんよw
529
:
1
:2014/07/28(月) 21:40:41 ID:5PlpwITw0
どうも1です
仕事の都合で投下が金曜日にもつれ込みます
ぽんぽんと投下できていただけに最近の更新遅延が目立って仕方ありません
ですが逃亡は致しませんので生暖かく見守って頂きたいです
530
:
名も無きAAのようです
:2014/07/29(火) 02:31:25 ID:iP2M7AtE0
( ^ω^)待ってるお
531
:
1
:2014/08/01(金) 21:06:26 ID:Fg3tJaY20
第十二話「心の在処」
.
532
:
1
:2014/08/01(金) 21:09:10 ID:Fg3tJaY20
◇◇◇◇
从;'ー'从ノシ「あ、ツンちゃ〜ん」
ツンを見付けた渡辺は大声をあげて手を振った。街のどこにも魔物がいないことから安心してしまっているのである。本当はどこかに隠れているのかもしれないという不安はあるのだが。
ξ゚⊿゚)ξ「あんたね、どこに魔物が潜んでるのか分からないんだから少し自重しさなさいよ」
渡辺より消耗が少ないツンは、多少息を弾ませているものの顔色は良好である。渡辺と同じくドクオを探し回っていたはずだが、やはり黒の魔術団での経験があるからだろう。
从'ー'从「あのね、どっくん見付かったんだぁ〜」
ξ゚⊿゚)ξ「本当に? よかった……。本人はしぃのとこに?」
从'ー'从「うん。あとは任せろぉ〜って」
ξ;゚⊿゚)ξ「それ死亡フラグよ」
从'ー'从「でもでも、どっくんはやるときはやってくれるんだよぉ〜」
ξ-⊿-)ξ=3「信頼するのもいいけど、あれだけいた魔物が急にいなくなったのはおかしいわ。もしかしたら何かあったのかもしれない」
从'ー'从「そういえば、まだ術式が見つかってないよぉ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。それに、鉱山の方で大規模な爆発があったわ。もしかしたら中にショボンさん達がいるかも」
533
:
1
:2014/08/01(金) 21:10:38 ID:Fg3tJaY20
从;'ー'从「ふぇぇ〜、それじゃあ……」
ξ゚⊿゚)ξ「まだわからないけど、事態は急を要するわね。多分だけど、この街の至るところに術式が張り巡らされてるみたいだし」
从;'ー'从「ん〜と、え〜と」
ξ゚⊿゚)ξ「混乱するな。とにかく、一度宿舎に戻って荷物を回収した方がいいわ。中に魔力探査の道具とかもあるし、全体の構図を把握しないことには私達は動けない」
从'ー'从「それは、うん。そうだね」
ξ゚⊿゚)ξ「魔物召喚やら仲間の分断やらうまいことやってくれたみたいだけど、このままやられっぱなしってのは癪だわ。さっさと反撃にでるわよ」
从'ー'从「おー」
走り出すツンに追走する形で渡辺は足を動かしていたが、唐突にツンが速度を緩めると立ち止まった。
ξ゚⊿゚)ξ「……あのさ、ちょっと気になったんだけど」
从'ー'从「なぁに?」
ξ゚⊿゚)ξ「私達が途中よった街で意味の分からない術式があったの覚えてる?」
飛行馬車を降ろされた際に寄った街に確か用度不明の魔法陣があったのを思い出す。その街は人がいなかったことも印象深い。
从'ー'从「覚えてるよぉ。そこから魔物が一杯出てきたよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「それってさ、この街の状況と似てない?」
从'ー'从「……あ」
渡辺達は自分の目で魔法陣を見たわけではないが、人のいない街で魔物の大量発生。言われてみれば驚くほど酷似している。
だが魔物と戦闘している最中に魔物を喚び出す、もしくは生み出している術式があるのではないかと話をしていた。
ξ゚⊿゚)ξ「さらに、魔法ってのは規模の大小に関わらず魔力を使うものよ。これだけ大きい術式なら余計に魔力をくうはず。この魔力は一人で補える量を越えているといってもいい」
534
:
1
:2014/08/01(金) 21:13:01 ID:Fg3tJaY20
从;'ー'从「人のいない街の魔法陣って……」
渡辺は自分の内に浮かんだ考えを否定しようとするが、叶わない。ツンの憶測はどこまでも筋が通りすぎている。
ξ゚⊿゚)ξ「確かドクオ達の話では他の街でも似たようなものを見たってことよね。それらを考慮すれば、ほぼ間違いないと思う」
从;'ー'从「人を魔力に変えたってこと?」
信じたくはない。信じたくないが……。
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
無情にもツンはそれを肯定した。黒の魔術団での経験がこの現実を受け止める心を、冷静さを作り出したのだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「そして、私はこんなことができるやつを一人だけ知ってる。黒の魔術団の中でも有名だったわ。自由奔放、唯我独尊で上からの命令なんかくそ食らえ。もっとも扱いが難しいなんて言われてた」
渡辺は無意識に拳を握りしめていた。
罪のない人々を、懸命に生きる人々の未来をこうも簡単に奪ったのだ。
从'ー'从「許せないよ。そんなの」
感情が昂っていくのを止めることができない。今すぐにでもそいつの前に行って文句の一つでも言ってやりたい気分だ。
ξ゚⊿゚)ξ「落ち着きなさい。そいつはオサムっていうんだけど、戦闘はあまり得意じゃなくて、どちらかと言えば頭脳戦がメインよ。けど、こんな風に自分の僕を生み出したりして戦うからある意味貞子より質が悪い」
从'ー'从「どうするの?」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオやショボンさん達が戦ってるんなら、私達がやるべきことは敵の術式を解除するのがベストでしょうね」
从'ー'从「それじゃあ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。まずは魔力を辿りましょう。そのためにも宿舎に急ぐわよ」
敵の正体は分かった。やるべきことも定まった。
渡辺はツンの後ろを走る。こんなこと絶対に許してはならない。
そのためにも渡辺は止まってはならないのだ。
握った拳は、固く固く握られたままだった。
535
:
1
:2014/08/01(金) 21:16:22 ID:Fg3tJaY20
◇◇◇◇
(゚A゚)「Aaaaaaaaa!!」
ドクオの全身を得体の知れない何かが駆け巡っていく。自我を食い破り、倫理観を破壊し、人としての理性すら闇の底へと沈んでいった。
もう戻れない。いや、戻らない。
大切なものを守らなければならないのだ。そのために必要なら、ドクオは自分すら投げ捨てる覚悟を決めた。
貞子を殺した時、初めて生き物の命を奪った時、ドクオは罪悪感を覚えた。けれど、そうしなければ渡辺やツン、しぃやショボンにモララー、王都に住む人々全てが傷つけられていただろう。
ドクオは自分のせいで誰かが傷つくのを見たくない。
だから強くならなければならない。
今以上に、それ以上に。
(゚A゚)「Foooooooooo!!」
ドクオは立ち上がり、人形へと肉薄する。
(;∵)
一瞬だが人形の顔に焦りが見えた。だが今更そんなことはどうでもいいことだ。
袈裟斬り。斬撃は目で追えないほど早く、空気を切り裂き真空を生む。
刹那、人形の体は肩口から分断された。さらに真空が刃を発生させ、第二波。人形の体のあちこちに深い傷を作っていく。
そこから回し蹴り。分断された人形の上半身は軽く数メートルを越える距離を飛んでいく。
536
:
1
:2014/08/01(金) 21:18:43 ID:Fg3tJaY20
(゚A゚)
それを追ってドクオは走る。一瞬でそれに追い付くと元の形が残らぬほど縦横無尽に斬撃を繰り出し、最後に大きく上方から降り下ろすと、前方広範囲がまとめて消し飛んだ。
ドクオはゆらりと残した下半身へと振り返る。
街全体を覆っているはずの結界が淡く色付いていた。そこから幾筋もの光が人形に集まり、人形は元の形へと再生する。
( ∵)
(゚∀゚)「GYAHAHAHAHAHAHA!!」
笑いが止まらない。楽しい、愉快だ。
壊しても壊してもこいつは戦える。殺しても殺してもこいつは動ける。
ならばもっと徹底的に、もっともっと絶望的に蹂躙してやる。
(゚∀゚)「Haaaaaaaa!!」
( ∵)
人形が動いた。再生した腕をこちらに向け、同時に大量の魔力が収束。全てを殺す絶対的な力が地を抉り、周囲の建物を薙ぎ倒しながらドクオへと向かってくる。
ドクオは片手を前に出し、軽く払った。それだけで魔力は霧散し、沈黙が訪れる。
(゚∀゚)「AHYA!」
ドクオが跳んだ。一瞬で人形の真上に移動し、落下する勢いを利用して剣を降り下ろす。
対応できない人形は数瞬遅れて防御するが、間に合わない。頭から真っ二つになりごみのように転がる。
着地したドクオは人形に近付くと片方を持ち上げた。
(゚A゚)
先程までの笑みはもうない。
がっかりだった。あまりにも面白くない。神を謳いながらこの程度の力、自分の足元にも及ばないなど甚だしい。
これは油断だったのかもしれない。強大すぎる力を持つがゆえの慢心、ドクオは持っていたそれを投げ捨てる。
537
:
1
:2014/08/01(金) 21:20:51 ID:Fg3tJaY20
だから、ドクオは気付かなかった。気付けなかった。
振り返ったとき、持たなかった半身がいつの間にか消えていた。辺りを見回しても見当たらず、まるで始めからなかったかのように跡すら残っていなかった。
途端、頭上から光が降り注いだ。ドクオの半径数メートルが吹き飛び、砂塵があがる。さらに四方八方から光球が踊り、ドクオは避けることさえできず余すことなく被弾した。
(#A"+)
攻撃が止み、視界が開けた頃にはドクオの体は肉が抉れ骨もひしゃげ、全身から血を流し、本来ならば死んでもおかしくないほどの傷を負っていた。
ドクオから数メートル離れたところに光の粒子が集まり、人形が現れる。切られたはずの体はすでに再生しており、余裕を見せつけるようにこちらの様子をうかがっていた。
(#∀"+)
ドクオが顔を歪めて、笑う。直後、彼を中心として暴風が吹き荒れた。
(( ∵))
人形は微動だにしない。それでもよく見なければ分からないほどではあるが、小さく震えているのをドクオは確認した。
自分達は戦いの権化だ。壊すために生まれ、殺すために存在し、全てを無に帰すために生きている。
泣け、逃げ惑え、恐怖しろ。
それがドクオを更なる存在へと昇らせるのだ。
(#∀"+)「Aaaaaaaa!!」
ドクオと人形の戦いはまた一つ高みへと進む。
もはや人という存在では止められないところまで。
538
:
1
:2014/08/01(金) 21:23:33 ID:Fg3tJaY20
(*- _-)「ん……」
大気を震わせ地を揺らすほどの爆音でしぃはようやく目を覚ます。
確か、自分は得体の知れない何かに襲撃されて抵抗できずに気絶してしまったはずだ。間違いなく死んだと思っていたのだが、五体満足でいるところからどうやら生き延びているらしい。
ということは、渡辺かツンがドクオを連れてきてくれたのだろう。
(*゚ー゚)「えっと……」
ずきりと体が痛む。人形に掴まれた際体内のマナを根こそぎ奪われた影響か、うまく体が動かず自分の体じゃないような錯覚を覚えてしまう。
(;*゚ー゚)「それより状況は……」
今なお続いている戦闘音はしぃの遥か頭上から聞こえていた。そちらへと視線をやると、宙に浮いた二人の人間が目にも留まらぬ速さで攻防を繰り広げている。
しかも人形は傷一つないのに対し、ドクオの体は目も当てられないほどの傷だった。
なのに、ドクオは歪に笑っている。
攻撃するのが愉しくて仕方ない、傷つけるのが嬉しくて仕方ない。
彼の背中からはっきりと伝わってくる異常とさえいえる感情は、しぃの知っている彼とは似ても似つかない悪魔のような存在へと変貌を遂げていた。
(#∀"+)
(;∵)
(;*゚ー゚)「あれが、ドクオさん?」
539
:
1
:2014/08/01(金) 21:25:51 ID:Fg3tJaY20
しぃは、何故だかこの戦いを止めなくてはならないと本能的に察する。このままではドクオが手の届かない遠くへと行ってしまうような気がした。
けれどもこの人外としかいいようのない戦闘は、体力も底を尽きた今の自分では、いや、仮に万全の状態で介入したところで止めることなど出来やしないだろう。
ドクオの剣と人形の手が交差し、衝撃波が生じる。
(;*つー゚)「あぅっ……」
未だ嬉々として攻撃を続けるドクオは、あれだけの傷を抱えながらなおも優勢を保っていた。表情のない人形の方があまりの猛攻に焦っているようにも見える。
やはり、あれはドクオではない。
しぃの知っているドクオは戦うことを嫌っている。
しぃの知っているドクオはあんな歪んだ笑みを浮かべたりしない。
あれは、本人の意思ではなく、悪意ある他人の手により操られているに違いないのだ。
しぃはドクオの仲間である前に、一人の人間としてこんなことは止めさせなければならない。
魔物に囲まれたとき、しぃは選んでしまった。過去と向き合う覚悟を決めた。
もう失ってはいけない。そのために、今、しぃは立ち上がらなければならないのだ。
(*゚ー゚)(何ができるか分からないけれど、やらなきゃ)
ぷるぷると震える足腰に渇をいれ、しぃはしっかりと立ち上がる。ステッキを握り締めて━━
540
:
1
:2014/08/01(金) 21:28:18 ID:Fg3tJaY20
( ゚"_ゞ゚)「どこへいこうというのかね?」
唐突に聞こえた声に振り向いた。
( ゚"_ゞ゚)「興を削ぐようなことは控えてもらおう。大切な実験中なんだ」
(*゚ー゚)「あなたは……」
( ゚"_ゞ゚)「君は今、あれを見て恐怖しているかね? ならばそれが正常な反応だよ。あれは人という領域を越えて神の頂に登り詰めようとしているのだから」
全身黒一色の男は顎に手をやりながら、にやにやと不気味に笑っている。おそらく、敵ではあるのだろうが一切の敵意が感じられない。
ただ新しい玩具を与えられた子供のように、どこまでも純粋に、無邪気に今を楽しんでいる。
(*゚ー゚)「あなたが、今回の首謀者ですか」
( ゚"_ゞ゚)「だとしたら?」
(*゚ー゚)「私はここであなたを討たねばなりません」
( ゚"_ゞ゚)「それは不可能だろう。君は魔物との戦いで消耗している。対して、俺は君一人程度ならば簡単にあしらえる力を持っている」
それに、と男は続けた。
( ゚"_ゞ゚)「この実験を見届けなければならない。やるというなら構わないが、早めに終わらせてもらおう」
瞬間、男の周囲に魔法陣が展開された。並の魔力ではない。街一つならば簡単に消し飛ばせるほどの膨大な魔力、あんなものを放たれてはしぃなど一たまりもない。
(;*゚ー゚)「くっ……」
( ゚"_ゞ゚)「これは忠告だ。余計な真似をせず、大人しくあれを眺めていろ。それが正しい選択だ」
また、だ。しぃは己の無力さを噛み締める。
何かが出来るはずなのに、何も出来ないという矛盾。やることは分かっていても力及ばず、無駄に時間をもて余すしかない。
心なき力は暴力だが、力なき心はなんだというのか。
(*゚ー゚)「……一つお聞きしたいことがあります」
541
:
1
:2014/08/01(金) 21:30:18 ID:Fg3tJaY20
力はなくとも、心がまだ折れていないのならば、出来ることはあるのではないか。
それだけを信じてしぃは口を開く。
( ゚"_ゞ゚)「何かね?」
(*゚ー゚)「あれはなんですか? そして、ドクオさんはどうなってしまったのですか?」
人のようで人でない存在と、人なのに人を外れた存在。この二つの矛盾がどうにも引っ掛かって仕方がない。
( ゚"_ゞ゚)「簡単な話さ。人のもつ魔力を純度を高めて変換した、いわば人を越えたもの。そして、魔剣の主は言わずとも分かるだろう」
(*゚ー゚)「……分かりません。ドクオさんは今まで人であり続けました。それが、何故今更……」
( ゚"_ゞ゚)「今までは力をうまく伝えていなかったんだろう。彼は力をもて余していた」
(*゚ー゚)「ならば、あれが本来の姿であると?」
( ゚"_ゞ゚)「そういうことだ。神に近しいあれと接触したことで秘められたものが溢れだしたのさ」
(*゚ー゚)「……それと、あの人形は人の魔力をマナに変換したと言いましたが、とさか」
( ゚"_ゞ゚)「元は人だよ」
男が言い終わる前にしぃはステッキを振るった。
しかし、彼は余裕を持ってそれを受け止める。
( ゚"_ゞ゚)「どういうつもりかね?」
(* ー )「あなたは、人を、命をなんだと思っているんですか?」
542
:
1
:2014/08/01(金) 21:31:44 ID:Fg3tJaY20
あれが元は人だというなら、この男の手により望まぬ戦いを強いられているということ。
争いなどと無縁の人だったのかもしれないし、温厚な人間だったかもしれない。
( ゚"_ゞ゚)「皆決まって同じことを言うんだな。所詮いつかは死を迎える。早いか遅いか、それだけの無意味な生を俺が意味を与えているんだ」
(#*゚ー゚)「あなたは神になったつもりですか!? 力に溺れ、人の命を悪戯に弄ぶなど許されるはずがないでしょう!!」
人の命は他人に決められるものではない。自分で決めて自分で選ぶことにこそ価値がある。
しぃはそのことに気付くまで時間がかかり、後悔を繰り返してきた。
だからこそ、その行動にどれだけの覚悟と意味があるかが分かる。
( ゚"_ゞ゚)「だからどうした。飯を食い糞を垂れ、性に溺れ寝るだけの存在に意味があるのか? そんなものに俺は興味などない」
(#*゚ー゚)「人の価値はそんなところにあるんじゃありません!! それは心に、魂に、歩んだ道にこそ真の価値がある!! 苦しんで、悩んで、涙を流したとしても、道のどこかで振り返ったとき、その時にこそ人は自分の生に、命に価値を見出だすんですよ!!」
(#*゚ー゚)「それを、あなたは、踏みにじった。私は人として、騎士として、あなたを許しません!!」
( ゚"_ゞ゚)「許さない、ときたか。くっくっくっ、いいだろう。遊んでやろう、若き騎士よ。その人の価値とやら、見せてみろ」
543
:
1
:2014/08/01(金) 21:33:21 ID:Fg3tJaY20
◇◇◇◇
瓦解した鉱山跡地にてモララーは一人槍を振るっていた。
何故自分がこんなところにいるのか、体が本調子ではないのか、疑問は多々あったが熟考する暇もなくモララーは戦闘を余儀なくさせられている。
近くには血塗れのショボンも転がっているというのに、早めに決着をつけねばならない。
( ;・∀・)「しっかし、どうなってんだこりゃ」
( ´W`)
( ・−・ )
虚ろな目をした二人の刺客はうまく連携を取りながらモララーを攻め立てる。
右から一人、華奢な体躯の割りに素早い動きでこちらとの距離を詰めると下から強烈な蹴りが繰り出された。
上体を反らしうまく避けるが、左からもう一人。こちらはハンマーのような大きい鈍器を手にしている。
( ;・∀・)「容赦ねえな、ったくよ!」
モララーは反らした半身を戻さずそのままバク転。返る力でハンマーを持った手を同時に蹴りあげると、男はハンマーを落とした。
不安定な足場だが着地。瞬間、右の男が攻撃の体勢に入っているのが見える。
544
:
1
:2014/08/01(金) 21:36:29 ID:Fg3tJaY20
( ・∀・)「そら!」
弱い魔法で牽制すると、男は横に跳んだ。それを追ってモララーも跳ぶと、左の男は素早くハンマーを拾い上げ、こちらの斜線上に投擲する。
( ・∀・)「っと」
下から槍を当てて上方に弾き、広範囲に魔法を放った。モララーを中心に半径数メートルを光の槍が降り注ぐ。二人の男は防御すらせずに槍に貫かれ、力なく倒れていった。
( ・∀・)「なんだよ。もう終わりか」
と、モララーが槍を折り畳もうとしたとき━━
( ´W`)
( ・−・ )
何事もなかったかのように立ち上がる男達。依然彼らの体には穴が空いたままだ。常人であればショック死してもおかしくない傷を負いながら、彼らは平然と立ち上がったのである。
さすがのモララーもこの二人に違和感を覚え始めた。
( ;・∀・)(なんだこいつら。敵の魔法なのか?)
どういうことかは分からないが、この戦いを終わらせるにはこの二人を殺す他ないようだ。
どれだけ切り刻んでも、どれだけ中を掻き回しても、こいつらは体が動く限り戦い続けるのだろう。
( ;・∀・)(とんだことになりやがったぜ)
ゾンビのように酷く緩慢とした動きで向かってくる二人を、モララーは槍でいなしながら考える。
少し離れたところで倒れているショボンと今の状況、さらに正体不明の男と出会ってから定かではない記憶。これらから導き出されるのは、自分が敵に操られショボンと戦わされた。
そして、何らかの方法でショボンはモララーを救いだし倒れてしまった、というところだろう。
545
:
1
:2014/08/01(金) 21:37:43 ID:Fg3tJaY20
では、この二人はなんだろうか。これまた推測ではあるが、敵の魔法によってモララーと同じく操られた人間、もしくは始めから作られた存在。
どちらにせよ敵であることには変わりないのだから、さっさと終わらせるに限る。
問題はどこまでのダメージが致命傷となるか、だ。
現状、普通の人間であれば死んでいるはずの傷ももろともせず今だ活動している彼らは、早さはなくなったものの十分に戦えるようだった。
( ・∀・)(てことは、本当に動けなくなるまでやらなきゃこいつらは止まらない)
上等だ。目の前に自分を止める奴がいるなら倒すまで。
モララーはそうやって生きてきたし、これからもそうして生きる。
邪魔をするやつは何人たりとも許さない。
( ・∀・)「行くぜ! おらぁ!」
モララーは槍を大きく振って衝撃波を放つ。
男達が吹き飛び、そのうちの武器を持たない男へと肉薄。急所である心臓部へと槍を突き立て、刺さったままぐるりと体を反転させる。
すぐ後ろまで迫っていた男を横から殴り付け槍を引くと、刺さっていた男も数メートルほどバウンドして動きを止めた。
546
:
1
:2014/08/01(金) 21:40:04 ID:Fg3tJaY20
そこから魔法、一点集中型の巨大な光の槍を展開して止め。大きなクレーターを形成して男は瓦礫へと沈んだ。
( ・∀・)「あらよっと!」
すぐに地を蹴り、宙を舞う。片方の男が拾ったハンマーを振りかぶっていた。
地響きと共にハンマーが誰もいない地を叩き、その隙に後方へ回ったモララーは首を切り飛ばす。
何も出来ずに倒れた男を見下ろし、一息つこうかと煙草を取り出しかけて━━
( ・∀・)「おっと」
振り向き様に槍を分解。巻き付けて男を拘束する。
( ・∀・)「こんなんじゃ不意打ちにもならねえぞ」
男の胸に手を当て、魔法陣を展開。体の内部を破壊する強力な攻撃を使い、そこから槍を振って遠くへ投げる。
( ・∀・)「めんどくせえ。終わらせ━━」
(´ ω `)「やめろ……」
( ・∀・)そ「副団長!?」
魔法陣を展開させかけて、モララーは慌てて止めた。敵の二人はもはや虫の息で、起き上がるのにも相当な時間をかけている。
547
:
1
:2014/08/01(金) 21:41:03 ID:Fg3tJaY20
( ・∀・)「大丈夫ですか? 俺が油断したせいで……」
(´ ω `)「謝罪は……あとだ。あの二人を、殺してはいけない」
( ・∀・)「はっ?」
(´ ω `)「あれは、一般人だ。間違いなく」
( ・∀・)「一般人て……」
(´ ω `)「僕達は……騎士だ。救わなきゃならない。だから」
満身創痍で立ち上がるショボン。足腰は震え、まるで生まれたての動物のように弱々しい。
( ; ・∀・)「そんな傷で戦うつもりですか!?」
(´ ω `)「当たり、前だ。僕は騎士で、彼らは一般人。命をかけてまで救うべき人達なんだ!! それが、僕の道なんだよ!!」
( ・∀・)「……分かりました。あいつらは敵に操られてるんですよね? なら、副団長は魔法の解析をお願いします。俺は足止めに徹しますから」
(´ ω `)「くれぐれも、殺すなよ」
( ・∀・)「了解」
騎士としての誇りや矜持がショボンを立たせているなら、その部下である自分はそれを支えるために働かねばならない。
尊敬する上司のため、先輩のため、決意新たにモララーは槍を振るう。
( ・∀・)「仕切り直しだよこの野郎」
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:
1
:2014/08/01(金) 21:42:01 ID:Fg3tJaY20
◇◇◇◇
ξ;゚⊿゚)ξ「何よ、これ」
宿舎までたどり着いたツンと渡辺は、目の前で繰り広げられる戦いに萎縮してしまった。
人を越えた戦いとはまさにこのことだろう。黒の魔術団でさえここまでの実力を持つものはいなかったはずだ。
つまり、これは奴が生み出した戦闘兵器ということなのだろう。
从'ー'从「……どっくん」
渡辺が不安げに目の前の光景を眺めて呟く。
ツンは何かを言わねばならない、と察したがそれよりも大事なことがある今それを言うときではない。
ξ゚⊿゚)ξ「渡辺。早く宿舎に入りましょう。私達にはやることがある。優先順位を間違えちゃ駄目よ」
从'ー'从「うん」
戦場を避けて宿舎に侵入すると、中は大分荒らされてはいるもののツンと渡辺の荷物は無事だった。中身も無事だ。
ξ゚⊿゚)ξ「これと、これ。あとは、これもね」
必要なものを取り出し、持参したポシェットに入れていく。すると、隣でそれを見ていた渡辺が、
从'ー'从「そういえばしぃちゃんはどこかなぁ?」
ξ゚⊿゚)ξ「……確かに見当たらないわね」
彼女も相当消耗しているはずだ。魔物がいなくなったとはいえ、敵は無尽蔵に魔物を生み出すような魔法を操れるのだ。どこかで休んでいるのならばいいのだが。
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1
:2014/08/01(金) 21:43:33 ID:Fg3tJaY20
ξ゚⊿゚)ξ「……一応これ飲みなさい。全快とはいかなくても、魔力は回復するわ」
小さな瓶詰めの液体を渡辺に渡し、自らも同じものを飲み干す。これで魔物と遭遇しても対応できるはずだ。
从'ー'从「……ねえ、やっぱり」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってる。もしかしたらって可能性もあるしね。念のためこの周辺を━━」
ツンが言い終わる前に、部屋の壁を突き破って何かが飛んできた。二、三度床を跳ねて止まったそれを見て、思わずツンは駆け寄る。
(*#ー")
ξ;゚⊿゚)ξ「しぃ!?」
从;'ー'从「しぃちゃん!!」
傷だらけのボロボロ。衣服は破れ、露出した肌は裂けて血が滲んでいる。
( ゚"_ゞ゚)「おや、小娘と遊んでいたら忌み子と道具に遭遇するなんてな」
穴の空いた壁から男が顔を出した。
ξ゚⊿゚)ξ「棺桶死オサム……」
( ゚"_ゞ゚)「久しいな、貞子の道具。君も俺の研究対象として欲しかったのだが、もはや無用の産物だよ」
ツンはオサムを睨み付ける。この男ほど生理的に嫌悪感を抱かせる人間も珍しい。見ただけで嘔吐感が込み上げてきた。
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1
:2014/08/01(金) 21:44:56 ID:Fg3tJaY20
ξ゚⊿゚)ξ「あんたなんかに体をいじくられなかっただけ不幸中の幸いだったわ」
( ゚"_ゞ゚)「そう嫌わないでくれ。今俺は気分がいいんだ。魔剣を覚醒させ、神を創造した。もはや君達では止められないほどに事態は進展したのさ」
ξ゚⊿゚)ξ「冗談じゃない。あんたのやり口くらい私が分からないとでも思ってんの? 止めてみせるわ。こんなくっだらない計画、全部ね」
( ゚"_ゞ゚)「相変わらず威勢だけはいい。王都の連中に感化されたようだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……渡辺」
ツンは杖を構えてオサムと対峙する。
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと野暮用ができたの。しぃを連れて話した通りにできる?」
从;'ー'从「え? でも……」
ξ゚⊿゚)ξ「お願い。黒の魔術団とのけじめはきっちりつけときたいの。特にこいつは、私の体に描かれてる魔法陣の考案者だからね」
本来であれば貞子に対するけじめだったのだ。しかし、この男も貞子同様人を弄ぶ、いやそれ以上の屑。黒の魔術団を知るツンとしては何がなんでも止めなければならない。
(*#ー")「駄目……です」
臨戦態勢に入ったツンの後ろから、小さな小江が聞こえた。
从;'ー'从「しぃちゃん!? 立ち上がっちゃ駄目だよ!!」
しぃはよろよろと立ち上がると、ツンの隣でステッキを構える。
(*#ー")「この人は、私が倒さないと……」
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:2014/08/01(金) 21:46:16 ID:Fg3tJaY20
小さな声だが、確かな意思を感じる声色。つい先程までおどおどしていたはずの彼女とはうってかわって、決意が溢れている。
ξ゚⊿゚)ξ「無茶よ。何があったかは知らないけど、その体じゃろくに戦えない。休んでなさい」
(*#ー")「人を、命を、この人は弄んでいるんです! たくさんの可能性を、未来を奪い、自分の欲求を満たすための道具にしか思ってない人間を、私は許せません!」
从'ー'从「しぃちゃん……」
しぃの想いは人として、騎士として至極当然のことなのだろう。そして、本人もそうありたいと願うからこそ、ここに立っている。
自分の命を省みずに。
ツンはしぃと自分を重ねてしまった。
自分の理想や思想なんて、黒の魔術団に入った時からどこにもなかったとツンは気づかされる。
どこまでも真っ直ぐで、愚直なほどの理想をツンはどこかに置き忘れてしまったのかもしれない。
ξ゚⊿゚)ξ(……子供なのは私なのかも)
全てに絶望した自分と、そこから立ち上がろうと足掻くしぃ。
ツンにはしぃを止める権利などありやしない。
从'ー'从「それなら、私も協力するよぉ〜。一人じゃ出来ないことも、みんなでやれば不可能じゃないよ」
(*#ー")「ですが」
从'ー'从「ね? ツンちゃん」
渡辺に振られツンは少しの間、迷う。
自分は二人の隣に立つ権利があるだろうか?
どこまでも愚かな自分は、正義のために戦えるのだろうか?
ξ-⊿-)ξ
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